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1967-06-14 第55回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十四日(水曜日)    午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 八木 一男君    理事 天野 公義君 理事 小山 省二君    理事 板川 正吾君 理事 島本 虎三君    理事 折小野良一君       塩川正十郎君    砂田 重民君       田村 良平君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    藤波 孝生君       三原 朝雄君    加藤 万吉君       河上 民雄君    工藤 良平君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       吉田 之久君    岡本 富夫君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         法務省刑事局長 川井 英良君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         建設省河川局長 古賀雷四郎君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         議     員 岡本 富夫君         厚生省環境衛生         局公害課長   橋本 道夫君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 石丸 隆治君         水産庁漁政部漁         業振興課長   藤村 弘毅君         運輸大臣官房審         議官      鈴木 珊吉君         運輸省港湾局臨         海工業地帯課長 木内 政鋭君         海上保安庁警備         救難部参事官  榎本 善臣君     ————————————— 六月十四日  委員工藤良平辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として工  藤良平君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十三日  公害対策基本法案岡本富夫君外一名提出、衆  法第二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律  案(内閣提出第六〇号)  公害対策基本法案岡本富夫君外一名提出、衆  法第二四号)  産業公害対策に関する件(ばい煙及び水質汚濁  対策等)      ————◇—————
  2. 八木一男

    八木委員長 これより会議を開きます。  岡本富夫君外一名提出公害対策基本法案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。岡本富夫君。
  3. 岡本富夫

    岡本(富)議員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま上程されました公害対策基本法案につきまして、その提案理由並びに要旨について簡単に御説明申し上げます。  わが国の産業経済の著しい発展は、人口の都市集中及び都市化を増大し、都市の過密、交通量の激増と生産設備拡大増設は、住宅難交通難に加えて、必然的に産業公害発生の規模を増大し、これが国民の健康に重大な被害を与え、一時も看過できない問題となっています。  すなわち、国家のすべての施策は、常に国民大衆福祉増進をその目的とした手段でなくてはなりませんが、経済高度成長政策は、産業経済発展のみにすべてを集中し、国民生活の上に産業公害をおおいかぶせ、国民大衆に最も大切な健康維持の上に犠牲をしいる結果になったのであります。本来の産業経済発展は、常に国民大衆の健康の維持文化的生活の向上を確保する義務が伴うべきものでなくてはなりません。ところが現実は、この目的に対する法の整備がきわめて不十分であり、今日における全国的な公害を招来したのであります。  いまわれわれの急務は、すでに極度に汚染された大気と騒音、振動、河川汚濁と臭気、さらには、人体をむしばんでいく有毒物から国民の身体を守り、その原因の除去に全力を傾注しなければならないことであります。  しかるに、今回上程されております政府案には、重大なる問題点が数多くあらわれているのであります。  まず、その目的において、国民の健康、生活環境を守るとともに、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」とうたっていますが、国民健康優先あと回しにし、経済発展いかんによっては、国民の健康も維持できかねるという底意をあらわすもので、大きく法律目的を失うものであり、総理の言う人間尊重に相違していると言えましょう。  次に申し上げたいことは、事業者責任が不明確である点であります。現行法における規制のあいまいさは、事業責任者社会生活の上から道義的に公害防止をはかることを裏づけにすべき精神と解せられるものでありますが、現実公害状況は、もはや事業者責任を明確にしない限り、公害防止できないと言えましょう。  また、被害者に対する救済損害補償についても責任ある手段が明文化されていないことは、政治責任をのがれようとする態度であります。  さらに環境基準設定においても、経済調和を強調している点は、結論的には、経済状態法的措置が大きく左右されることとなります。  このような理由においてわが党は、画期的な公害対策基本法案提出し、徹底的に公害を追放し、最優先的に国民の健康を保護するとともに、国家の繁栄に資するべきであるとの立場から、本法案の御審議を願うものであります。  では、その要旨について簡単に御説明申し上げます。  その要点は、一、人間性尊重第一義としたこと。二、発生原因者責任を明確化するとともに、中小企業に対する助成措置を特にうたったこと。三、被害者救済制度の確立をはかったこと。四、行政一元化をはかるとともに、地方公共団体にも行政上の権限を与えたこと。  次に法案の内容についてその概略を御説明申し上げます。  第一は、その目的において、人間性尊重大衆福祉立場より、国民の健康、生活環境保全第一義として、先に提出されました政府案のように「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」という、人命と経済の並列をなくしたことであります。すなわち国民健康保全があらゆる事業活動における利益の追求に優先することを原則としたことであります。  第二は、事業者、国、地方公共団体の責務を明確にした点であります。特に公害発生の多くを占める事業者責任については、無過失責任も負うべきことを明らかにし、公害対策は、すべての産業政策に優先して策定されなければならないことを明らかにしました。  第三は、公害防止計画でありますが、五年ごとの長期計画を立案し、その目標を達成するための総合計画及び年度別計画を作成し、国会提出するとともに、一般にも公表し、また実施状況を毎年国会に報告することとして、公害対策計画的推進を保障しようとするものであります。  第四は、環境基準排出基準及び排出基準設定を行なうにあたっての、厳重な規定を設けております。環境基準については、諸条件等を十分に考慮して実効的な基準を定め、かつ運用についてより適切な措置が行なわれるよう規定し、排出基準については、今日までの対策の実情を考慮し、より適切な措置が行なわれるよう整備を行ないます。特にこの基準は最高のものであって、できるだけ努力すべきことを明らかにし、また、改善命令停止命令等による規制強化を行なった点であります。さらに規制強化のみでなく、中小企業等に対する助成にも特別措置をうたったことであります。  第五は、公害に関する研究調査については、科学技術振興、また必要な指導及び助成を行ない、公害発生防止と、発生した公害に対する措置実施を保障するよう規定整備を行ないました。  第六は、公害の顕著な地域の特別の施策についてであります、このような地域については、その地域基本方針を定め、これに基づいて具体的計画を樹立し、その達成に必要な措置を講ずべきことを規定しました。  第七は、公害による被害についての救済制度整備について、救済の遅延、不完全、不履行等防止するため、国が責任をもって必要な施策を講じ、事業者に対する分担金賦課等制度を確立し、また紛争処理制度を確立するのに必要な施策を講ずべきこととし、救済の保障を明確化したことであります。  第八は、行政事務及び紛争処理等事務を統一的に、かつ公正に行なうために総理府の外局に、国会の同意を得て任命される委員によって組織される中央公害対策委員会を置くこととし、地方には地方公害対策委員会を設けることとしました。特にこの点は、公害行政統合一元化ということであり、行政効率化行政委員会による行政中立性を確保しようとするものであります。  以上公明党提案公害対策基本法案につきまして、提案理由並びに法案要点のみを御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして説明を終わる次第であります。      ————◇—————
  4. 八木一男

    八木委員長 この際、産業公害対策に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますのでこれを許します。板川正吾君。
  5. 板川正吾

    板川委員 昨日の夕刊に、四日市ぜんそくでまた自殺、こういう記事が報道されております。菓子工場経営者で、大谷一彦さんという方が、昨年七月以来公害病患者認定を受けて、同市病院において通院治療を受けておった。奥さんの話によると、最近ぜんそく発作が激しく、ノイローゼぎみだったといい、また警察では病気を苦にして自殺したものと見ている、こういっておりますね。なお、報道によると、例年五月ごろからスモッグが非常にひどくなって、夜間にぜんそく発作に悩まされておった、こういうことが報道されております。御承知のように、四日市では、昨年七月にやはり公害病患者木平卯三郎さんが自殺をされております。また、その家族はもうブラジルに移住するということも決定しておるそうであります。  そこで私は伺いたいのでありますが、この四日市ぜんそく原因は一体大気汚染にあるということですが、いかがですか。わかっていることですが……。
  6. 田川誠一

    田川政府委員 四日市ぜんそく原因大気汚染によるものであるというふうに私どもは聞いております。現在そういうような大気汚染によって病気になられて認定を受けた患者数も三百六十三名おるわけでございます。
  7. 板川正吾

    板川委員 大気汚染原因者というのは、これは個々がどういう割合原因を構成しているかということは別として、包括的にいうなら、原因者というのははっきりわかっているのじゃないでしょうか。たとえばその地域煙突からばい煙を出して、そして企業活動をしているもの、これが原因であるということはわかっておりませんか。
  8. 田川誠一

    田川政府委員 たとえば具体的な企業になりますと、わからない面もあるかもしれませんけれども、大体そういうような亜硫酸ガスとかいうようなばい煙を出す工場原因になっておるということはわかるはずでございます。
  9. 板川正吾

    板川委員 ばい煙規制法には「大気汚染による公衆衛生上の危害を防止するとともに、生活環境保全」ということがいわれておりますね。四日市ぜんそく原因大気汚染である。その大気汚染というのはその地域企業活動されておる企業家である。だれがどういう割合でその公害原因に寄与しているかは別にして、そういう企業体であることは事実だ。そうすると、そういう企業体全体でこういう実際の被害者というものを救済する制度というのは、自主的な救済はどういうことで行なわれていますか。犯人はわかっているのだし。それはまた別として、では、三百六十三人の公害被害者に対してどういう救済処置をとられておるのか、その点について伺いたい。
  10. 田川誠一

    田川政府委員 現在四日市におきまして、そういうような被害を受けてお困りになっておられる方は、認定を受けられた方につきましては、医療費の一部の負担をしておるというような状態であります。
  11. 板川正吾

    板川委員 これは国が百万円、それから県が百万円、市が二百万円ですか、そして同額の四百万円を企業者負担して、年間八百万の予算をとっておる。そしてこれを三百六十三人で割ってみますと大体月千五百円、自殺者も出る、あるいはノイローゼにもなるというようなこういう病気に対して、月千五百円程度治療費を出しているからいいということは、どうも私は不十分だと思うのです。この汚染原因工場群にあるのですから、そこにもっと負担をさせて、もっと手厚い処置をとるべきじゃないでしょうか。法律があるなしにかかわらず、それは政府行政指導として、あるいは県、市におきましてもうちょっと手厚い医療処置をとるべきじゃないだろうか。何百何十という企業に対して年額四百万程度出させて、そしてききもしない薬を飲ましている程度でお茶を濁ごしているような状態ではないですか。この点どういうふうに考えますか。
  12. 田川誠一

    田川政府委員 ただいま処置をいたしておりますような医療費の一部を負担することが決して十分であるとは思えません。こういうような被害を一人でもなくしていくように努力していかなければならないと思います。ただ、現在におきましては、工場立地条件であるとか、あるいはその工場が誘致された当時の条件であるとかというような、なかなか微妙な問題もございますし、一がいに全部企業者負担させることができるというような状態にまで至っておらないわけでありまして、まことに残念なことでございます。そういうような問題もございますのて、政府といたしましては、今後こういうような救済制度というものと、もっと具体的に真剣に取り組んでいかなければならないというふうに考えておるわけでございまして、現状は決していいものであるというふうには私どもも思っておりません。しかし、医療の面、そういう面につきましてはできるだけの面を考えていかなければならない、このように考えております。
  13. 板川正吾

    板川委員 私がきょう取り上げた気持ちは、公害基本法政府救済制度を早急に考える、こう言っているのです。しかし、政府救済制度を早急に考えるといっても、それがいつまでに出るかわれわれはわからぬ。一年後かもしれない。あるいは一年後できても、大した効力がないかもしれない。あるいは二年後かもしれない。ともかくいつまでに出すか、まだその点明らかになっておらないのです。いずれにしましても、国の救済制度法律によって確立するまでの間、暫定的な処置として——私はいまの四日市公害被害者をそのままにしておくべきじゃないのじゃないか、緊急に救済対策というものを打ち出して強化しておくべきではないかと思う。それは将来法律ができてもっと手厚い救済に変わるかもしれませんが、とにかく月千五百円程度で、医者にかかって、そして難病といわれる公害病がなおるはずはない。これは新聞にもありますように医者も言っておりますね。産業医学研究所大島秀彦助教授三重県立医大先生ですが、公害病を根治するためには公害地にいてはだめだと言っている。これでは全快なんかできないと言っていますね。だから、公害地にいて薬をちょっと飲ませるという程度処置では、公害病患者がいつになってもなおらない、ノイローゼになって自殺をする、こういうことになるのじゃないかと思うのです。阿賀野川の場合は一応原因者が裁判で争いになっておりますね。私のほうは関係ないと言っておりますし、被害者側は昭和電工ということになって、その点が争いになっております。水俣病の場合には、水俣病の直接の原因政府政策で行くえ不明になっておりますね。途中でほうり出されて行くえ不明、実はこれの救済しておる現在の取りきめでも私は問題があると思うのです。行くえ不明になっておる。しかし、四日市のこの公害だけは原因者が明らかになっているのですよ。産業活動によるその地域工場を持っておる企業者のためにそういう公害になっておるということは明らかになっておるのですよ。加害者が明らかになっておる。そうであれば加害者からもっと金を取って、もっと手厚い治療の方式をとったらいいのじゃないでしょうか。四日市にはいわゆる資本金五千万円以上、従業員三十人以上の企業が全部で幾つありますか。
  14. 舘林宣夫

    舘林政府委員 二十を少し割る程度、十数工場あると思います。
  15. 中井徳次郎

    中井委員 関連して。さっきからいろいろお話を伺っておりますが、少しどうも御答弁のほうがなまぬるいように思うのですが、どうですか。いま三十名以上のものが二十なんというのは、冗談じゃない。いまのあなた方が二十というのは、何十億という大きな会社が二十という意味だろう。そうでしょう。私は板川さんの質問が非常に肯綮に当たっていいと思います。皆さんはそれに対してもっと真剣な答弁をしてもらいたい。たった八百万か千万、これは去年あなたのところの、そこにおる橋本君が、市役所に行って、そして各業界を回って大いにまとめてくれた、その努力に対してはぼくは多とします。その当時のぼくの質問に応じて皆さんはやってくれました。しかし、結果を見ると、わずか四百万の金を出すのに、何十億の資本金で一年の生産高何千億というようなグループの大会社、三井、三菱系統の、あるいは民族資本でも大協というふうな大きな資本会社がわずか四百万円、問題にならぬ。しかも、私は事情を知っているから申し上げるのですが、三百何十名の患者と言いますが、もっとほかにたくさんおる。しかし、毎日毎日働かねばなりませんから、そんな病院に登録して通って月に千何百円かもらったくらいではかないませんので、それで逃げておる人もおるし、きのう自殺をした人なども重症患者にはなっていない。そういうことと、もうなおらないという判定のついている人が三十六名、これも去年この委員会専門家医者からそういう発表がちゃんとありました。それに対してわずか四百万円くらいで、しかしながら法律も何もないから、まあとにかく暫定措置として厚生省の一課長が行ってやってくれたということについてはぼくは敬意を表しますが、その当時から佐藤総理以下全部が、公害基本法をつくります、つくったらきれいにいきます。責任はどこにあるのだ、みな企業にあります。こう全部言いました。今度公害基本法が出てきた。その付属法が出ているかというと何も出ていない。あなた方の出した公害基本法の二十一条の二項にこれはあるのだが、費用負担その他は「別に法律で定める」とある。これは法律を出してくればいいが、法律は出しておらぬ。そういうことでは何かどこかへいってしまって、少しずつ問題をそらしておるだけで、ずらしておるにすぎない。こんなことではもう政治不在と私は言わねばならぬと思う。四日市市役所が、市当局としてもいろいろ意見があっても、思い切って、ことしは二千万か三千万か知りませんが、もっともっと出しているでしょう。そういうこと。それからさらに問題は、患者が指定されて病院に通う経費はいいと思いますが、その人たち生活を守らなければ、いま入院している人などは、一家の主人でありますと、入院していると生活できないのですから、それはどうするんだといったら、生活援護だ、こういうのです。この自殺された人もお菓子屋さんであります。ですから、りっぱに中小企業をやっていると思うのです。だからこんなままでは何ともしょうがない。私は、どうして思い切って——そういう大企業がたくさんあるのですから、企業者責任というのはわかっているのですから、公害というものは不特定多数の者が不特定多数の者に害を及ぼすなんていう、ああいう概念は間違いです。特定多数です。公害の対象はきまっているのです、たとえ何百あろうと何千あろうと。隅田川の汚水だって、東京都が調べてみたら、その原因をなしているのは何千の工場、四千何ぼありました。それがきまっている。四日市あたりは、そういうものに比べて非常に少ないのです。二十なら二十、何でもないと私は思います。本省の一課長などにまかせずに、これは政府が直接行って、大臣なり何なり行って、事業者を呼びつけてやれば、その程度のことは一ぺんに私は解決すると思うのです。あなた方の仕事は気魄が全くない。何か板川君の質問を何とかうまく逃げたらいい、そういうふうに感じられる。板川君はそういう意味質問されているのじゃない。あなた方のあげ足をとったのじゃない。政府のこの問題に対する基本的なかまえというものを聞いているのです。どうぞそういう意味でもっとびしっとした——あなたでできなければ、坊大臣が来るまでほくたち質問を留保します。どうですか。
  16. 田川誠一

    田川政府委員 中井先生のおしかりでございますが、私どもも決してこういう四日市公害の問題を軽視しているわけではございません。いまるる御質問がございましたが、企業者費用負担ということについても何とかしなければならないということを考えております。しかし、なかなか企業を誘致したほうの側と企業者との関係とかいうような微妙な問題もございます。でありますので、今日までそういうような問題も十分にいかなかった面もございます。四日市につきましては、私自身も前に公害の問題で詳しく見さしていただいたこともございます。こういう事故が起こってから私どもが動き出すということも、いろいろ言われるかもしれませんけれども、御質問がございましたので、私自身は、こういう事件が起こったのを機会に、工場側にももっと積極的に何らか打開するような処置をすべきではないかという、そういうことをわれわれのほうから言わなければならない段階に来ているんじゃないかというふうに思っております。御質問がありましたから申し上げるわけで、決してこういう問題を無視している、軽視しているということでないことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  17. 中井徳次郎

    中井委員 いまのお話、まあわからないわけではありませんし、了解しないわけでもないのですけれども、問題はやはり厚生省と通産省だろうと思う。去年、関係の業者を呼びまして、いろいろ質疑をしておる。その質疑の中で、特にまた私は個人的にも、会社重役連中に来てもらいました。話の中で、一体公害関係に対してあなたのほうは幾ら金を出しているか、返事にいわく、何ぽと書いて出したらよろしいのだろう——ほんとうですよ。一体何言っているんだというわけで、一つ会社は五億を出しております、一つ会社は一億五千万円です、たったそんなものでやっているのかと言ったら、あくる日、いや、八億ですということを言ってまいりました。これはほんとうです。それくらい何かみんなが本質の周辺をうろうろ、うろうろしているのです。私は別に事業者の悪口をここで言うつもりはない。どうすればいいかわからない。それで、去年一年の私どものこの委員会質疑の成果はやはりないわけではない。ことしは黙っておっても、四日市工場の諸君は、煙突を高くすることだけはみんなで競争的にやってくれるようでありまして、それだけでもやはりものをいうようであります。そういうような形で追い込んできている今日でありますから、被害を受けた人の救済のごときものの経費は、これはいま政府が折衝して、ことしあたり厚生省予算に出しておるが、これの十倍ぐらいは当然話をすれば相手は出すと思う、それくらいの経済力のごときは問題ないのですから。みんな本社は東京にあって、工場長現場でやっておる。東京連中現場と連絡がとれなくて、工場長営業成績さえ上げたらいい。まるで植民地に行くようなかっこうで、二、三年行ってまた帰ってこい、そのときは重役やというような、そういう問題の本質——意外なところにいろいろな問題がころがっておる。そこをやはり私は政府についてもらわなければならぬと思うのです。四百万円だ、五百万円だ、そういう問題ではありません。これはまた政治に携わっておるぼくらもやはりいかぬと思うが、お互いに何か公害の問題は、新聞に出したり、雑誌にあげたり、テレビに出すには、非常に好個の材料でございます、あそこでこうなったという現象をとらまえて。しからば対策いかんということになって、どうすればいいかという具体論になると、みんな逃げてしまう。一番逃げておるのは、私は政府だと思う。公害の排除なんていうものはできないわけじゃない、できるというのです。白砂青松の日本の国土を守れると思うのです。ちっともむずかしいことはない。どこをどうすればどうなるかという具体論がちっとも前進してない。これを政治家の皆さんにうんと認識してもらわなければならぬ。そんなたいした金でもありません。私ども二、三年前にこの公害基本法を出しましたときに、ジャーナリストの諸君が、中井先生、社会党が出したら予算関係はどうですかというから、ぼくは、いや、予算なんか要りませんよと言った。一兆の金の中の百億もあれば、二百億もあれば、どんなに間違っても千億もあれば、一%か二%あれば、これはもうずっとよくなる。だから、何か問題の所在が明らかでない。ごく一部の人は知っておる。環境衛生局長橋本君は大体わかっておるが、小さなものだ。それがどうも私はここで基本法が出たこのときに、たとえば「別に法律で定める。」なんという規定をどんどん前進さしてもらわなければ片づかぬと思う。  以上のことを申し上げて、私は、質問か何かわからぬが、あまりあなた方の御返事がのんきでなまぬるいので、申し上げる次第であります。
  18. 田川誠一

    田川政府委員 中井委員のお説も、私どもおっしゃっていることはよく了解できます。できるだけわれわれといたしましても、もっと真剣に公害対策に取り組んでいかなければならないという気持ちは十分持っておることを御理解いただきたいと思います。
  19. 板川正吾

    板川委員 私が言いたいのは、それはちゃんと義務的に徴収する場合には法律が必要でしょう。それはわかります。しかし、原因がこの企業活動によるということだけは明らかなんですから、それならば企業者がもっと任意的に話し合いで年額四百万だなんていう気持ちじゃなくて、もっとたくさんの金を出してもいいんじゃないか。それが社会に対する責任を負うことではないだろうか。工場を呼ぶというのは、四日市でこいというから誘致されてきたんだ、責任はそっちだ、こんな言い方はないと私は思うのです。たとえば大企業が四十あったといたしますと、四十というのは、この四百万の負担をする場合には、わずか十万円ですね。月に一万円にもならないんですね。何億という売り上げを持つ会社、たくさんの企業を扱っている会社が月一万円も負担しないんですから、私はもっと将来の公害防止施策あるいは施設、これは必要ですよ。しかし、現にその工場産業活動によって被害を受けておる人にもっと手厚い処置を、法律がなくとも、原因がわかっているんですから、すべきじゃないでしょうか、厚生省なりあるいは自治省なり、そういうところが話し合いをして、もっと企業から資金を出してもらって、そして手厚い治療ができるような対策をこの際やるべきじゃないだろうか。もちろん、これはやがて法律できまる救済制度とは別ですよ。こういう必要があるんじゃないかということを私は言いたいんです。それをやる意思がありますか。四百万でことしやっていくつもりですか。
  20. 田川誠一

    田川政府委員 こまかい話になるかもしれませんが、金額の面になりますと、医療費が保険になっておりますので、自己負担という形になって、その自己負担分を公費で補っておるというようなことになりますので、金額としては非常に低い金額になっておったわけでございます。私ども医療費もさることながら、もっと考えなければならないことは、そういうような病気になったために、すべき仕事ができないというような補償と申しますか、そういうようなことも考慮すべき問題ではないだろうかと思うのであります。そうなりますと、そういう費用の出し方などもなかなかこれが一つの問題になるわけでございまして、いま出ております医療費ということになりますと、金額があの程度でおさまるのではないかというふうに私ども思っております。しかし、その医療費だけで事が足りるんだということではございませんで、たとえばいま申し上げましたような仕事に対する、収入源に対することももっと重要なことではないかと思いますし、また、こういうようなばい煙が出ないような施設をもっともっと強化するというような費用のこと、これのほうがもっと重要なことではないか。しかし、いま板川委員がおっしゃったように現実に病人が出ておるわけですから、そういう病人に対する手当というものに対しては、県あるいは市、そういう地方団体と十分に検討をさしていただいて善処していきたい、このように思っております。
  21. 板川正吾

    板川委員 私の言いたいのは、県とか市とかに相談して、これから金を出させる、これからも出させることも考えるということでしょうが、私は、この場合は企業責任として、とにかく企業産業活動によって起こっていることだけは事実なんですから、それが何億も負担しておって、それでたいへんだというならばわかるんですが、何十とある大企業がわずか四百万円程度しか負担しないというのは、だれが見てもおかしいじゃないか。だから、企業責任があるんだから、もっとこれから取って、それが医療費といっても——私はこの間阿賀野川へ行って、この患者に会いましたけれども公害病患者というものは、これもしたい、あれもしたいと思いながら、それに対して、たとえば阿賀野川の場合は月千円です。千円で、何か薬程度をもらうくらいでしょう。場合によっては、重い人は転地をすることも必要じゃないかということを当面早急にやるべきではないでしょうか。公害防除の施設をどうするかということは当然やらなければなりませんし、また公害基本法が出て、環境基準がきまり、排出基準がきまれば、それに応じた施設をつくらなければなりません、また、基本法によって救済制度もあるいは金を徴収する制度も何年か後にはできるでしょう。しかし、何年か後でしょう。いま現実にかかっている公害患者にもうちょっと手厚い当面の対策強化したらいいじゃないかというのです、将来のことは別として……。ぜひこれは私はさっそく地域に派遣して、あるいは大臣でも次官でも局長でも行って、もうちっと手厚い処置をするようにやってみてください。いかがですか。
  22. 田川誠一

    田川政府委員 四日市の問題につきましては、私自身も現地へ行って、政務次官としての立場から、いま板川委員がおっしゃられたような業者の費用負担の問題、そういう問題についてぜひ話したいと思っておるところでございます。そういうようなことでひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  23. 板川正吾

    板川委員 きょうは十分という予定であったものですから、以上で終わります。      ————◇—————
  24. 八木一男

    八木委員長 この際、連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。  本委員会で審査中の船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案につきまして、運輸委員会より連合審査会を開きたい旨の申し出がありますので、連合審査会を開会することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 八木一男

    八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、開会の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。      ————◇—————
  26. 八木一男

    八木委員長 船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案について参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 八木一男

    八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 八木一男

    八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  29. 八木一男

    八木委員長 これより質疑を行なうわけでございますが、運輸当局より発言を求められておりますのでこれを許します。鈴木審議官。
  30. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 前回並びに前々回におきまして中谷委員から御質問がございまして、まだ御回答申し上げておりません。また、砂田委員からも御質問がございましたが、まだお答えしておりませんので、この機会にしたいと思います。  最初に中谷委員の御質問でございますけれども一つは在日米海軍の艦船につきまして船舶の廃油処理がどうなっているかという御質問でございますけれども、これは調査いたしましたところによりますと、米軍艦船は原則といたしまして、アメリカ合衆国は条約の締約国であるということで、条約の趣旨を尊重いたしまして沿岸から五十海里離れて捨てておる。それから沿岸から五十海里以内におきましては——いわゆる艦船はオイルセパレーターは持っておりませんけれどもコンタミネーテッドオイルタンク、これは廃油等の汚水を受け入れるタンクでございますけれども、そういうタンクを装備しているそうでございます。そこで廃油等はこの船内のタンクの中に入れておくということであります。それからそれが港に入りますときに、特殊なドーナッツという名前の一種のバージでございますけれども、それにその油をポンプで船から移すということであります。それで、そのドーナッツというバージで油水分離いたしまして水は流してしまう。それで残った油は民間業者に払い下げる、または処分をするということでございますそうです。それからドーナッツというのは横須賀と佐世保に二隻ずつあるということであります。さらにドーナッツを使わないで、直接接岸いたしましてパイプでもって、陸上の基地にございます廃油専門の貯蔵タンクでございますけれども、そこへ廃油を船から直接移しまして、そこでもって同じように民間業者に払い下げる、処分をするというのが現状でございます。  それからもう一点でございますけれども、船が廃油等を排出した、禁止の規定に違反した場合の外国の罰則の例でございますけれども、イギリスの例を調べましたところが、体刑はございませんで千ポンド以下の罰金、約百万円以下でございます。それから米国は、一年以下の禁錮もしくは五百ドル以上二千五百ドル以下の罰金、またはこれを併科する。したがいまして、約十八万円以上九十万円以下ということでございます。それから大陸のフランスでは、二千フラン以上、五千フラン以下、約十四万七千円以上三十六万七千円以下の罰金に処する。再犯の場合には十日以上六ヵ月以下の懲役もしくは五千フラン、三十六万七千円以下の罰金に処する。またはこれを併科するということになっておるそうでございます。  それからあとは港則法によります取り締まりにつきましては、お手元に資料がございますと思いますけれども、別途海上保安庁のほうから御説明申し上げます。  それから砂田委員の先般の御質問でございますけれども、港内におきまして流出した油の除去につきまして、港湾管理者と海上保安庁のその責任分担はどうなっておるかということでありますが、これにつきましては、例外の場合でございますけれども、大量に油が船から流れ出まして、その結果非常に緊急処理を要する場合には、災害防止の観点から応急措置といたしまして海上保安庁が油の除去等を行なう。これは例外でありまして、一般の場合には、港湾管理者が港湾法によりまして自分の港湾区域を良好な状態に置くというために、港内清掃の一環としてそういった油の除去を行なうということを業務として行なうべきものであるというふうに解しております。  以上であります。
  31. 八木一男

    八木委員長 それでは質疑の申し出がありますので、これを許します。砂田重民君。
  32. 砂田重民

    ○砂田委員 私は、質疑というよりは、ただいまの鈴木審議官の御回答をいただきましたので、いままで油が港の中へ流れた場合の原状回復の義務はどこが負うべきかという明確でなかった点が、その原状回復の義務責任者は港湾管理者であるということが明確になったと思います。そこで、これからはそういう事態が起こったときに港湾管理者がはっきり責任を持ってそういう海水のよごれの原状回復の処置をしてくれることを期しておりますが、ただその港湾管理者というものは、今回本法で指定された各項のいずれを見ましても、港湾の施設のためにいわゆる一般公共事業方式でやってきたために、地元負担も相当な金を寝かしております。その起債の元利償還にきゅうきゅうとしているのがいまの財政的な現状であろうかと思いますだけに、こういった新しい仕事も前からやらなければいけない仕事であったかもしれないけれども責任の所在が明確でなかった。運輸省からはっきりそういう責任の所在が明確になったからには、責任を持ってそういうために仕事をやっていかなければならない。そういったことについての資金的なといいますか、財政的なといいますか、国の援助もしてやらなければ、なかなかその任務は遂行できないのではないかと思いますので、こういった点に運輸省としての御努力をこの際お願いをいたしておきたい。これを要望いたしまして私は終わります。
  33. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまの御要望に対しましては、極力沿うようにいたします。
  34. 八木一男

    八木委員長 島本虎三君。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 きょうは船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案について、いままでいろいろ委員各位からの質問がありましたが、もうそろそろこれをまとめる段階になりまして、いままでいろいろ質疑応答のございました中でまだ明確に私どもが理解し得なかった点、新しい事態はもちろんありますけれども、一そうこれを明確にしておきたい、こう思いまして、これから数点にわたって質問申し上げたいと思いますので、そういうような意味において的確にお願いしたいと思います。  まず第一番に、ただいま補足説明として鈴木さんからなされた答弁がございました。これは原則として、米海軍の場合はもう条約締結国であり五十海里を離れて捨てているし、廃油は決してそれによって被害を与えるようなことがないのだ、こういうような意味に私とれたのです。そのように理解していいのですか。
  36. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 廃油の処理は、そういうことであるということでございます。
  37. 島本虎三

    ○島本委員 ところが、そうじゃないのです。これは政府のほうで調べたはっきりしたデータです。それによると、昭和三十八年二月米第七艦隊の旗艦、これが廃油を捨てているのです。そしてそのためにノリの被害が発生して岩国漁業協同組合からこれに対しての抗議を受けて補償しているのです。これが三十八年の二月です。そういたしますと、もうそういうようなことはあり得ないと言いながらも、第七艦隊の旗艦ですらそういうようなことがもうすでにあるのですから、いまのようなことばをまるのみして、もうこれで事故はないのだということは、このデータによっても私は信じがたいのです。ことにいままでいろいろ答弁をしていただきましたが、この船舶の油による海水の汚濁防止に関するこの法律案の適用範囲、この中には海上自衛隊の持つ艦船、それからいわば米艦隊等も適用されるものである、こういうようなことを承っておるのです。ことにこの第七艦隊なんかはこういうようにしてもうやっている。これでもって捨てているから、これは心配ありませんということは直ちにいただけなくなってしまう。これはどうなんです。
  38. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいまの岩国の事件、実は私よく存じておりませんけれども、それは故意なのかあるいは事故が起きたのか、ちょっとよくわからないのですけれども、今後はこういうことがないというようにわれわれは信じております。故意には捨てまいと思います。
  39. 島本虎三

    ○島本委員 今後はこういうことがないように——いままでも原則としてそんなことはなかったということはうそであった、あったのだ。しかし今後はないのである。その点についてはこれを議事録にとどめ、ここにおりますところの主管大臣である運輸大臣を通じて厳重にその点は監視をする責任がある、こういうように思うわけです。いままであったのですから、今後はないということによってこの法律意味が生きるのですから、そういうようなことでなければならない。ありきたりのそういうような答弁をしてはいけません。大臣、ちょっとこの点に対して伺いたいと思います。
  40. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この法律が制定されまして、国内に有効に実施されるということになりましたならば、運輸大臣といたしましては法律の施行について全責任を負うわけでございますから、自今適用範囲の水域につきましては、内外いかなる船に対しましても油の問題については厳に監視をいたしまして、それぞれ救済措置を間違いなく講じさせ、あるいは誤ってやった場合には是正の措置を講じさせる、こういうようにいたしたいと思います。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 それでは次に移らせてもらいます。  被害者救済についていままでいろいろな答弁がございましたけれども、特に各委員からこの問題等につきましては詳しい質問があり、大臣からも答弁がございました。その中で、不法行為であるから司法的措置がとれるのであるから、今後こういうような問題等については問題はないであろうというような答弁のように私承っておりました。それであるとすると、今度実際問題点として、あの広い海のことですから、当然夜間だれかが流すようなことがあったとすると、これは見当かつかない。しかしながら、加害者がわからなくとも被害だけは明確に生ずることが今度はあり得るわけです。その救済についての措置はどうするか、これはやはりはっきりしておいたほうがいいと思います。というのは、油濁関係のこういうような被害であっても、今度は公害対策基本法ができますから、基本法の中で関係立法によって完全に処理すべきものであると考えていいのか、それとも大臣において今後はその責任において救済制度をつくり上げてこういうようなものに対してはっきり対処せんとするのか、これはどのようにわれわれは解釈していいか、この点結論を得るようにしていただきたいと思います。
  42. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。本法案には、そういった場合の救済につきまして何の規定もございません。公害対策基本法案の中には被害者救済についての条文がございます。したがいまして、今後こういう問題につきましては厚生省のほうと十分打ち合わせいたしまして、どういう対策をしたらいいか考えていきたいというふうに存じておる次第であります。
  43. 島本虎三

    ○島本委員 公害課長厚生省から来ておりますので、こういうような対策について、並びに公害対策基本法の中にこういうようなことを具体的に救済するような方途が考えられているのかいないのか。
  44. 橋本道夫

    橋本説明員 先生の御質問でございますが、基本法の中では、政府が今後その制度整備するということでございまして、具体的な規定は今後の制度整備によってこれにつとめなければならないことになっております。そういう点におきまして、厚生省としては、基本法ができて方針がきまるということだけでございますので、あとは先ほど運輸省の審議官がお話しになりましたように、新しく救済制度制度化しなければならないというように考えております。
  45. 島本虎三

    ○島本委員 やはりそういうような一つ関係立法ができない以上、これは救済されないのです。厚生省の方は公害対策基本法に対していわば主管課です。それでもこういうような問題に対して、今後の問題についてはまだわからないと言っている。おそらく関連法律として当然立法化しなければならない問題だろうと思うのです。  運輸大臣、こういうような状態でございます。こういうような点、公害対策基本法の中に入れてこれに対してはっきり処置するというならばそういうように、また、この問題に対しては主管官庁が運輸省であるから、運輸省のほうで単独にこれに対処するというならば、大臣責任においてこの救済制度をつくり上げてもらわなければならない、こういうことに相なろうかと思うのであります。どうも厚生省のこの関係の方の腰が弱いようでございますから、重ねて運輸大臣にこの救済措置問題の立法化についてお尋ねいたします。
  46. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 すでに公害対策基本法案におきまして、救済措置について制度を完備するということをうたってあるのでございまするから、油による海水の汚濁につきましても、これは従来からいろいろ被害の例がたくさんございますので、急速に救済措置整備する必要があると存じます。これは厚生省のほうで、公害基本法に基づきまして、油のことばかりでなく水質の汚濁全般について網羅的な救済措置を講ずるようになりますか、あるいは油による海水の汚濁については、被害の実例も多うございますから特別に法律をつくることになりますか、そこは今後政府部内で相談いたすわけでございますが、もし油による海水の汚濁だけは別な法律をつくれということでございましたならば運輸省においてつくりますが、なるべくならば水質の汚濁全般につきまして、厚生省に十分急いでもらいましてできるだけ早い機会に法案をつくって御審議いただくようにいたしたいと思います。
  47. 島本虎三

    ○島本委員 そのように強力に要望しておきたいと思います。  次に、外国船——これは軍艦じゃありませんで外国の油送船でありますが、この外国船がかつて九州の三池港に入港して油を流したという事件がございました。そしてノリ、魚礁に被害を与えたのであります。これは条約も批准していない当時であり、当然外国船舶相手のいろいろな訴訟ということにならず、原油積み取りの日本の運輸会社を相手にして損害賠償の民事訴訟が提起されているわけでありますけれども、こういうような事件について運輸省では御存じでしょうか。
  48. 榎本善臣

    ○榎本説明員 ただいまの御質問の点につきましては、われわれ存じておりますし、また、当時すぐに事件の調査をいたしました。いま先生から御指摘がありましたように、相手が外国船でございますので、補償関係につきましては、海上保安庁直接ではございませんが、この油の投棄が故意でありましたか、その他事情を調査いたしまして、現在までのところは刑事事件としては検挙し書類送検いたしております。しかし、本件につきましては、四十年の十月十日に事件発生しまして以来ずっと調査を続けております。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 そういうふうにして、いままでの状態ではなかなかこういうような問題等についての結論が出にくかったのであります。しかし、この船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案、これが実施されたあとには、当然これは外国船として軍艦まで入るという解釈が成り立ち、国内では自衛艦までこの対象になるのでありますから、外国船舶相手の裁判によって損害賠償は当然できるものである、こういうふうに確認されるべきである。私はこう思っておりますが、私の考えどおりでありましょうか、この点も明確にしておいていただきたいと思います。
  50. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 日本の領海内でございますれば、日本の裁判で民事として取り扱われる、こう思います。ただ問題は、強制執行できるかどうかという問題になりますと、外国まで行って執行できないのじゃないかという点は、現行制度では一般にはできないというふうに存じております。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 ただいままでのいろいろな質疑応答の中で、やはりこの油濁防止に戻してのいろいろな管理者の責任だとか、監視の体制だとか、ここで質疑応答が繰り返され順次明らかになってきたのであります。そしてこれは義務責任が港湾管理者にある点がある程度明確になってまいっているわけでございます。そうなりますと、こういうように外国船が油を流す場合、これは港則法によるところの範囲の問題であるとすると、管理者ということになる。当然停船して油を積みおろししているわけですから、そういうようなことは明確なはずです。いままでは荒尾漁業組合のほうから当然こういうような問題に対して提起されておったわけであります。被害の額もはっきりいわれておるわけであります。しかし、こういうような問題についてもはっきりしなかったのは、法律がはっきり現存しないからであり、条約が批准されておらなかったからであります。そうなりますと、今後は当然条約は批准されるだろうと思います。それから本法律案は法律化するのであります。そうなりますと、当然そういうような外国船については、そういうようにかってに逃げ出すようなことはさしておくはずはないと思うのです。行ったものはしようがないなんて、そんなことを言って——油を流すのは現場で押えられるのですから、被害の点の認定だけはあとになっても、もうすでにそういうのは現行犯でわかるわけですから、そういうのは外国に行ったらしようがないなんて、それは答弁になりません。私どもとしては、そういうようなことじゃなく、今後そういうようなのはわかる、損害額の決定、こういうようなことについては、当然外国の船舶であろうと日本国の裁判によってこれは損害賠償の請求をなし得るものである、これが当然そういうふうになるのだということを確認しておきたいのです。そうなのか、そうでないのか聞いているのです。
  52. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 外国船舶の海上における油の投棄は、本法の成立によりまして明らかな日本国内法の定める犯罪行為になるわけでございます。したがいまして、いやしくもさような犯罪をなす船舶がありましたならば、ことに外国船でありましたならば、海上保安庁といたしましては今後一そう厳重に取り締まることにいたしまして、いやしくも損害の補償を行なわない間は船を差し押えて、出ていくことのできないようにする行政措置を今後検討いたします。そして完全なる補償を確保するというふうに行政的にやってまいるつもりでございますので、そういう意味でひとつ御了解をいただきたいと思います。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 本件についてはそういうふうに了解をし、今後こういうような事故の発生がないことを望みます。  次に、第三点として、この点もお伺いしておいて結論を得たいと思います。  最近のタンカーによる座礁、衝突事故というようなものはいままでに明らかになっておりますが、漸次これは累増の状態にあるわけであります。タンカーの衝突では、和歌山県で一億二千万円の損害を漁業関係者に与えておった。それから座礁による損害は徳島県だと思いましたけれども、五千数百万円の損害を与えておった。主として損害を受けるのは沿岸漁民でありまして、根つけ漁業と申しますか、ノリだとかいうようなものに対しての被害が多い。ところが、それだけではなしに、今度定置網だとか底びき漁場、こういうようなものに対しての損害さえもはっきりあらわれてきておるのであります。そうなりますと、そこについていたものが損害を受けた場合はすぐそのものの損害額はわかるのであります。定置網によるところの年間のこういうような収入を見てやる場合、または底びき漁場、こういうようなものが汚濁並びに損害を受けた場合におきましては、原状回復させるということについてはなかなか困難な事態に相なろうかと思うのです。これはだれが見てもそう思うのです。したがって、今回この条約が批准されたあと、本法案法律になる。このあとにはこういうような漁業それから財産権——漁業権は財産権でありますから、そういうような意味において、こういうようなものに対する救済と補償というような点も十分考えられなければならないはずじゃないかと思うのですけれども、この点についていかがでしょう。
  54. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この救済の問題になりますと、先ほど申し上げました公害対策基本法案付属法律といたしまして今後制定されるべきものだと存じますので、その際に御趣旨のような点についても十分検討いたしまして、適当な対策を織り込めるようにつとめたいと思います。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 ことに、いままで相当の損害もありますが、これだけではなしに——水産関係の人は来ておられましょうか。
  56. 八木一男

    八木委員長 水産庁の藤村漁業振興課長が見えております。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 それでは漁業振興課長にお伺いいたしますが、こういうような漁場に対する荒廃化並びに定置網漁場に対しましての損害、こういうようなものが現在までの間に相当あり、この補償や賠償等につきましてある程度の結論、もう実施済みのものもあろうかと思うのですが、こういうようなことに対して水産庁はいままでどういうような指導をしておられましたでしょうか。
  58. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 加害者の明確なものにつきましては、そのつど補償で解決するように指導しております。いままでにやりました例で、資料をただいまちょっと持ってまいりませんでしたけれども、三十七年ですか、千葉県で起きましたイーグル・クーリエ号につきましては、そういうものを含めまして一億九千万の補償をいたしまして解決いたしました。いま先生お話にありました和歌山県に起きましたテキサダ号と銀光丸の事件につきましては、一億二千万ということでいま会社側と話を進めているところでございます。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 そのほかにいろいろとまだ未解決の問題が——こういうようないろいろ漁場の荒廃になったものに対してはまだまだ手を染めてない点も多いと思うのです。資料を持ってこないという以上はしようがありませんが、こういうような点は、いま救済措置を講じてやろうとしても、漁業関係の分だけは特に水産庁あたりで十分見てやって、連絡を緊密にしてこの問題に対処をするのでなければならないのじゃないかと思うのです。せっかく運輸大臣救済に対する対策に対しては万全を期していきたいというのですから、いままではほとんど水産庁のほうで泣き寝入りの状態が多かったと思いますが、今後はそういうことのないように十分連絡をとって進めてもらいたいと思います。
  60. 藤村弘毅

    ○藤村説明員 今後は運輸省と十分連絡をとって、御趣旨に沿うように進めたいと思います。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 第四点として、石油コンビナートの問題についての脱法行為についてちょっとお伺いしたいと思います。この法律案によると、百五十トン以下のタンカー、五百トンまでの一般船舶ということになるのであります。そうなりますと、一般船舶の場合は、もう港則法の適用を受けて一万メートル以上離れたところへ捨てると、それに対しての拘束は何も受けない。そういたしますと、小型の船であるならば、油並びに油を含んだ残滓と申しますか、そういうようなものを捨てるのに、当然場所を得ない。そのために一万メートルをこえる場所へ小型の船で定期的に行って捨てても何ら取り締まりの対象にならないということに相なろうかと思います。しかし、やはり水は流れますからいろいろな点で被害を発生してくる。適法であっても妥当ではないという結果になるわけであります。そうなる場合には、完全にこれは脱法行為として今後やろうと思えばできてまいります。ことに四日市や川崎なんかは捨てるのに場所がないほどでありますから、当然そういうような方法は、いまのところはないだろうと思いますが、しかし、本法律案ができたあとでもいまのようなことをやろうと思えばできるわけであります。これに対してはやはり処置がないものであるのかどうか。またないとするならば、これはたいへんなことに相なろうかと思いますけれども、これに対する取り締まり並びに監視の方法について明確にひとつ御答弁を承りたいと思います。
  62. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お話のごとく、この油により海水の汚濁防止に関する法律では、一万メートル以上の水域に小型船で廃油を投棄することを取り締まることはできません。しかし、このたびこういう法律ができたのでございますから、小型の船舶につきましても、特にそうした油の放出という業務に関係が深いようなものにつきましてはよく調査をいたしまして、そういう船については特別なる行政指導をいたしまして、捨てる場合においては五十海里の外に捨てるというふうに指導をいたしてまいりたいと存じます。運輸省といたしましては船舶業者に対しましてはいろいろな面でめんどうも見ておりますので、本気で行政指導をいたしましたならば相当効果をあげ得るだろうと思います。それでも効果がないということになりましたならば、特に伊勢湾であるとか東京湾であるとか瀬戸内海であるとかいうようなところにおいては、一切の船舶の油の投棄を禁止するというような新しい立法も場合によっては考えなければならぬと思っております。いずれにいたしましても、運輸省といたしましては、この立法を機会に海水の油による汚濁については本気で取り組んで努力いたすつもりでございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 そういうように強力に対処されるように望みたいと思います。  第五点目として、これは保安庁関係にお伺い申し上げたいと思います。最近四十一年度の海上保安白書なるものが発表されたと聞いておるわけです。その内容は、四十一年中の遭難漁船は二千八百二十四隻で、五百四十五隻は沈没、行くえ不明であり、五百四十四名の生命はなくなったものである。そして損害額は百三十六億に達しておる。そして小型の鋼造船と大型タンカーの遭難がことに最近多くなっておる。一千トン以上十五隻、うち十一隻は一万トン以上である。そして油送船の海難が百三十八隻だ、百トン以上五百トン未満の鋼船というようなものは百三十七隻であり、全船舶の約一割、一〇%に達しておる、こういうようなことをいわれておるわけであります。そういうようなことをいわれておりますけれども、大体これは今後油送船関係のものは特に気をつけなければならないという保安庁の一つの含みがあるのではないか。鋼船、木造船を問わずこれは気をつけろという意味ではないかと思うのですが、この白書の内容は大体こういうふうなことでございますか。
  64. 榎本善臣

    ○榎本説明員 いま島本先生からの御指摘の点は海上白書の内容でございます。小型の漁船あるいはタンカーの海難について御指摘がございましたけれども、最近確かに多くなっております。特にタンカーにつきましては、隻数自身が石油の需要の増加に応じまして多くなります。したがって、事故の数も遺憾ながら多くなって、もちろんここで事故と申しますのは、沈没したもの、衝突、乗りあげ、それらの事故が全部入るわけであります。タンカーの事故につきましては、油濁の防止法案が成立いたすのと相まちまして、特に大臣からも強い御指示がありまして、海上保安庁といたしましても、現在の船艇に必要に応じて消防能力を持たせまして、あるいは一たびタンカーの海難が起こったりしたときには、救難、それから事故の拡大を局限いたします。そういう措置を十分立てられますように、これには時間がかかるかと思いますが、最善を尽くしたいというのでいま準備中でございます。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 この鋼造船並びに油送船の海難とあわせて、小型漁船の遭難が千百四十五件もあった、こういうふうなことも報ぜられておるわけであります。これに関連する問題に相なろうかと思うわけでありますけれども、ことに漁業船舶でも小型でも、全部油を使ういわゆる機動力のある船舶によるところの損害が相当多い状態が発表されているわけであります。そうなりますと、その背景には相当これまた漁船の遭難、これには貧しいがゆえに無理をしている、こういうようなこともあろうかと思うのです、最近では北海道あたりでも、これは私よく存じておりまするけれども、北朝鮮の辺まで北海道から漁獲のために行って遭難している例もあるのです。松登丸という船、ほんの小さい船ですけれども、北朝鮮の近海まで行っていそのです。そして五月二十三日に遭難している。——遭難じゃありませんが事故を起こしているのです。これはもう保安庁で御存じだろうと思うのですが、それも乗り組み員と船だけは帰り、船長だけがそのまま人質に拿捕されておる。こういうようなことなんです。しかし、そういうようなことでも一つの海難、海の遭難でございまして、理由のいかんを問わず、やはりこれは解決しなければならない問題、あってはならない問題なんです。いまこういうように見ますと、やはり早期帰還をこいねがう妻子のいろいろな訴えも申し述べられておるわけでございまして、日赤を通じて北朝鮮の日赤との交渉、こういうようなこともいろいろいわれておるようであります。こういうような漁船の遭難、こういうようなことも保安庁でも最近著しくなったことは十分お認めのとおりだろうと思うのです。この北海道の松登丸の、ことに北朝鮮の近海まで行ってレーダーの故障によってそれを直している間にやられたということに対しましては、なかなか国交が回復しておらない現在、困難等もあろうかと思いますが、この五月二十三日の松登丸事件に対してどのような調査を進め、またこれに対しての解決の方法を講じられておりますかどうか。本題よりは若干はずれますけれども、ひとつこの際御猶予願って、ぜひはっきりした考え方といままでの措置を聞かしてもらいたいと思います。
  66. 榎本善臣

    ○榎本説明員 第八松登丸の件につきましては、先生御指摘のとおり、先月二十三日に事件が発生いたしまして、先方の漁船に松登丸船長が抑留され、その後まだ未帰還であります。二十三日にその事件を知りまして、翌々日関係の外務省、水産庁とも協議いたしまして、御連絡申し上げまして、先生御指摘のとおり、北鮮のことでもございますので、国交がなく、赤十字社を通じまして早期に釈放方を二十五日に先方に依頼いたしました。その後外務省に五月三十一日に、北鮮の当局が松田船長、第八松登丸が北鮮の沿岸水域で犯罪行為を犯したという容疑のため目下調査中である、こういう連絡を間接に受けております。なお時間もたってまいりましたので、さらに一両日中にやはり日本赤十字社を通じまして、先方に早期釈放を再度強く要請をいたすように、早急に対策を立てたいと思っております。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 これは本法案からは少し遠のいておりますけれども、同じ事故の問題としてはこれは深刻な問題でありますから、なお運輸大臣を通じましても、こういうような一つの事故の問題でございまして、ぜひ早期釈放もできるように強力に対処してもらいたい。この点を委員長からもひとつ要請しておいていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  68. 八木一男

    八木委員長 委員長から御要求申し上げます。島本委員の発言の問題について、運輸省で至急に対処していただきますように御要望申し上げます。
  69. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府部内の関係機関に十分連絡いたしまして御要望に沿うようにいたします。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 こういうような油送船の事故対策の必要なこと、これはもう言うまでもないことに相なっているのであります。そして海上の交通関係の法令の抜本的な整備ももうすでに必要になってきている段階じゃないかということも思われるわけであります。すなわち、港則法、海上衝突予防法ですか、それから特定水域航行令ですか、こういうものを総合的にもう一回検討してみなければならないような状態になろうかと思います。そうするのでなければほんとうに船舶の油による海水の汚濁防止、こういうようなものに対しては魂を入れることに相ならぬのじゃないかと思うわけでございますから、広い行政的な整備、これを含めて十分御検討願いたいことと、港湾行政の問題等につきましても、多元化の傾向があるとするならば、これを一元化する方向が望ましいのじゃないか、こうも思うわけでございまするけれども、これに対して大臣どのようにお考えでございましょうか。
  71. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この法案ができましても、海上における公害全般の改善につきましては決して万能ではございません。そのほかのいろいろな行政上の施策が要ることはもちろんでございまするし、また、行政上の施策だけで不十分な場合においては、さらに新たなる立法も要するでございましょう。これらの事態に対しましては、運輸当局といたしましても今後の推移を見て最善の措置をとるように気をつけたいと思っております。  また、港湾の一元化の問題でございます。港湾管理者、海上保安庁等関係機関は、従来からも連絡をとりながら港湾の全般的な取り締まりについてはかなり成果をあげてきておりますけれども、この点につきましては今後とも一そう留意をいたさせます。したがって、さしあたり港湾管理者と海上保安庁とはそれぞれの職責に努力をする、連絡をとりながら進めていく、こういう体制でしばらく成果をあげるようにつとめたいと思います。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 最後に一つ要望をかねて質問し、善処方お願いしておきたいと思います。それは直接は本法案の対象外になろうかと思うのです。しかしながら歴然とした汚濁被害がある事実なんです。これは福岡県の雁ノ巣、昭和四十一年三月ですけれど、ここに空軍の施設から重油が流出して、ノリその他に被害を与え、箱崎漁業協同組合から補償の訴えがあり、まあいろいろ補償額の決定についてのトラブルがあった問題もあったわけです。これは当然空軍施設からの油の流出によっての被害であります。船舶の油じゃないのでこれはちょっと何ですけれども、油は同じでありますから、こういうような点についても今後十分注意させる権限はどこにあるのか。被害者はやはり漁民になりますので、またなかなかこれは困る問題になろうかと思います。こういうような点でも、この拡大解釈は私はよろしいと思いますから、その被害者救済のためにもこういうような点は今後十分善処してもらわなければならない問題である、こういうように思っております。そのほかやはり米軍の基地関係からのいろいろな泊、たとえば貯油所から送油中の油が海中に漏れた被害。そのほかいろいろまだまだあるのであります。船じゃございませんけれども、油は油だ。これはもう処置なしとして投げられる可能性のある問題でもあるわけでございます。しかしながら、これはやはり投げるようなことなく、拡大解釈して、こういうようなことがないようにすることが第一番。あったならば直ちに原状回復させるようにし、損害の発生した場合には当然損害の賠償等についても、今後これを考えてやっていただかなければならない問題だと思うわけです。この点について大臣いかがでございましょう。
  73. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題は、ただいまの官庁機構から申しますと、水産庁並びに防衛施設庁の共同の仕事に相なるかと存じます。しかし、このたび油による海水の汚濁防止に関する法律というものができまして、私どもも、船舶に原因する油ではございませんが、海上の油の問題を取り扱うことに相なりましたので、船舶以外の油についてもおのずからわれわれの見聞に入ってくる事柄もあろうかと存じます。こうした点は、自分の役所の守備範囲でないというような考えでなおざりにいたすようなことはなく、それぞれ関係官庁に適当な施策を要望するように十分連絡をいたして、被災者のためにお世話をいたしたいと存じます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わります。
  75. 八木一男

    八木委員長 河上民雄君。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 私は、いま審議されております船の油による海水汚濁に関する法律案につきましては、総括的にまた部分的にすでに二回にわたって御質問いたしているわけでございますが、前回私が質問いたしましたときに、たまたま取り締まり並びに罰則について御質問いたしましたとき、それぞれの担当係官の方がおられないのでお答えを得られなかったので、その項に関する質問を留保いたしました。本日再びここに立ちましたのは、そのような理由によるものでございます。しかしながら、私の質問の際に、中谷委員よりそれに関する資料要求並びに補足の御質問をいただいたわけでございます。それに対し、本日冒頭に鈴木審議官よりお答えがございました。また、取り締まりの問題につきまして、本日は島本委員より詳しい御質問がございましたので、私がお聞きしたいことの多くはすでに触れられておりますので、あまり重複をいたしますのもいかがかと思いますので、ごく簡単に質問をいたしまして終わりたいと思います。  私が取り締まり並びに罰則のことをお尋ねをいたしましたのは、この法律が、国際条約に基づいてそれとの関連において整備された国内法ではございますけれども、従来の港則法の現状から見て、ざる法になるおそれはないだろうかということを案じたからでございまして、先ほど島本委員の御質問に対するお答えによりますと、この法律には損害賠償に関する規定がない。その問題については公害基本法にまたなければならない。ところが、公害基本法については、一般的な宣言的規定はあるけれども、具体的な実施上の規定はない。まだこれからであるというようなお話でございまして、何かそうした不安を一そう強くいたしておるわけであります。  先般中谷委員より御要求いただきまして得ました従来の港則法に関しての取り締まりの状況を拝見いたしますと、どうも従来あまりこれについて真剣に取り締まりがなされていなかったのではないかという感を深くするわけでございます。ことに港則法を拝見いたしますと、第二十四条に次のようなことが書いてございます。「何人も、港内又は港の境界外一万メートル以内の水面においては、みだりに、バラスト、廃油、石炭から、ごみその他これに類する廃物を捨ててはならない。2船舶は、特定港内において、前項に規定する廃物を処理しようとするときは、命令の定める標識を附したごみ船であって港長の提定するものにこれを移し、又は港長の指定する場所にこれを捨てなければならない。」という規定があるわけでございますけれども、これまでバラスト水あるいは廃油に関しましては、一体こういう規定が守られておったのかどうか、お伺いしたいと思います。
  77. 榎本善臣

    ○榎本説明員 河上先生の、従来港則法二十四条の一項、二項が守られたかということにつきましては、守られるべく違反につきましては検挙につとめてまいった。しかしながら、現在の港則法では、いまここで御審議をいただいております油濁防止法案と違いまして、いまも先生から御指摘がございましたように「みだりに」ということばがあります。したがって、故意に捨てたとかあるいは正当な理由なくして捨てた者は罰するということになっております。取り調べをいたしました者の有罪になりました者が、四十一年、昨年度で七件という少ない数字になっておりますのは、実はそういうことであります。今後さらに油の違反につきましては、港則法の二十四条の違反につきましては、また、さらにただいま御審議中の新法案が施行になりましたら、取り締まる場合、最善を尽くしまして法の目的とするところが確保できますように海上保安庁としてはいたしたい、こう思っております。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 いまはそういうみだりにやった場合に処罰の対象になったというお話でございますけれども、この二十四条の第二項によりますと、これを指定の場所で処理しなければならない、こうなっているわけでございますが、いま本案で審議しておりますことで明らかになっておりますように、従来こういうものの処理施設がないわけでございます。したがいまして、この第二項は全然守られなかったというふうに理解しますけれども、それをはっきりとここで承認されますか。
  79. 榎本善臣

    ○榎本説明員 バラストが港の中で多いわけでございますが、廃油を処理します廃油処理船、これがなかったわけではございません。ただ十全であったかという点につきましては、陸上の今度の法案にありますような処理施設というのはいままでございませんでした。廃油処理船、これは不十分でございまして、そういう点では御指摘のとおりの現状だと思います。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 いま海上保安庁の方がはっきりと認められましたように、港則法は、いわばやむを得ざる事情があったにせよ、ざる法であったということが一つ。それからいま一つは、この公害問題に関する取り締まりというものは、単に精神主義的なものでは解決しない。それに対する相当の社会的な投資をしなければならないということをここに示しているように思うのであります。そういう点から見まして、今度の法律も大いにざる法になる危険があるんじゃないかと、私はそう思うのでございますが、海上保安庁は今後、先ほどの島本委員お話にもございましたように、国内船ばかりではなく、外国船についてすらこれを取り締まらなくてはいけないわけでございますが、こういうものをもし故意に廃棄、もしくは知らない間に漏らしているような場合、これを取り締まるにはまず発見しなければならないわけでございますが、海上保安庁として、こういう問題について取り締まりのためにどの程度の船をさくことができるのか、それをここでお知らせいただきたいと思います。
  81. 榎本善臣

    ○榎本説明員 海上保安庁で現在持っております巡視船艇は大型、小型合わせまして二百九十八隻でございます。そのほか航空機が十六機ございます。もちろんこの巡視船艇の業務の一つといたしまして、また重要な業務といたしまして、あるいは航空機による空からの油による汚染があるかどうかという調査等を進めたいと思いますけれども、このうちどれくらいが油に専念できるか。海上のことでございますので、ほかの取り締まりあるいは海難の予防的な業務のかたわら、油の流出があるかどうか、法律の違反があるかどうか、これを監視いたすことも目的であるわけでございますが、このうち何隻が油の防止あるいは法の監視のためにさき得られるかと申しますと、ちょっとここでお答えいたしかねます。そのようなわけでございます。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 では、いまのような状態で十分に実効をあげ得るとお考えになっておられるか、残念ながら不十分であるという見通しでおられるか、その点を伺いたいと思います。
  83. 榎本善臣

    ○榎本説明員 現在与えられております勢力は船艇、飛行機、ことに船艇の配属を十分考えますし、また、これは大臣からも特に今後油の対策には海上保安庁は当たれということでございます。今後その増強あるいは適正な配置等につきまして強力に進めさしていただきたいと思っております。現状で十分かどうかと申しますと、十分だというふうには私どもといたしましては断言いたしかねます。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 要するに、いまのような現状、お答えでは、この法律も、どうも港則法がざる法であったというのと同じような結果になるおそれがあると思います。私は、そういう点を憂えて御質問したわけでございますが、ひとつこの点につきましては、今後努力していただきたいと思うものでございます。  なお、海上保安庁は、港湾の中については管理権はないと理解しておりますけれども、そうでございますか。
  85. 榎本善臣

    ○榎本説明員 港湾の管理権……
  86. 河上民雄

    ○河上委員 いや、港湾の中の取り締まり……。
  87. 榎本善臣

    ○榎本説明員 これは現在の港則法でもございます。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、普通港湾管理者は、油の投棄あるいは漏出というような問題について、港湾管理者として取り締まるという権限があるのかないのか。海上保安庁との取り締まりの限界、接点という問題につきまして、先般わが党の加藤委員より油火災に関して御質問がありましたが、その際も、どうも火災に対する責任というものの接点は非常にあいまいであるということが露呈されているわけでございますが、この取り締まりの面についての接点というもの、責任範囲の接点というものはどういうふうにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  89. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 各港湾には港湾ごとに港長というものがおりますが、これは海上保安庁の出先機関に相なっております。この港長が港域内における港湾警察権を持っておるわけでございます。それに対しまして港湾管理者というものは、営造物としての港湾を持維管理する、これが仕事になっております。したがって、港湾を修築いたしますとか、あるいは港湾の一部が破壊されたときにそれを修理いたしますとか、また先ほどちょっと他の委員の御質問にございました、港湾の一部に油が投棄されて臭気を発し、これの除去には、警察権の行使として行なうよりは、港湾管理者が港湾の良好なる状態を回復する処置として行なうというような場合におきましては、これは警察権でなく港湾管理権として行ないます。そういったような港湾の管理権を行なうのが港湾管理者であり、取り締まりその他港湾の警察権を行ないますのは海上保安庁、したがって、執行権は海上保安庁が持っております。これは機関としては先ほど申し上げました港長でございます。
  90. 河上民雄

    ○河上委員 この問題をお伺いいたしましたのは、油火災の場合なんかに非常に入り組んだ関係がございまして、たとえばいまの施設という話で、港で火災が起きても消火の必要上接岸した場合は、これは港湾管理者の責任になるのかどうか、そういうような非常にむずかしい問題があるように聞いておりましたものでちょっとお伺いいたしましたが、そういう場所というよりも仕事の性質で分けるように伺ったわけですけれども、それでよろしいわけですか。
  91. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 それから、この限界という問題に関連してでございますけれども、すでに皆さまから再三御質問がありまして、本法並びにそのもとになります条約では五十海里というようなことでありますけれども、小型船については港則法による一万メートル、その間のギャップというものは今後も野放しになる。小型船については野放しになるということがもうすでに明らかになっておるわけでございます。しかしながら、政府としては、小型船についても港につくりました施設を利用するように行政指導をされるつもりなのかどうか、それとも、百五十トン未満のタンカー並びに五百トン未満の一般船については、その施設はむしろ利用させないと言ってはあれでございますが、させないようにするつもりなのか。法を厳格に実行するために、非常に込んできた場合には、一般船五百トン以上並びにタンカー百五十トン以上はやらなければいけないわけですね。そういうものを優先させると、小型船のほうはちょっと待ってくれというようなことになる場合も考えられるわけでございますけれども、そういう場合に、施設の利用について、小型船についてはできるだけそれを利用するように指導するのか。それとも、ちょっと待ってくれというような事態が想定されるのか。その点についてお伺いしたいと思います。
  93. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいま御質問のとおり、百五十トン未満のタンカーと五百トン未満のその他の船につきましては、本法案の適用がございません。したがいまして、港則法の港域並びに一万メートル以内におきましては、これらの船舶について港則法でもって、受け入れ施設があればそこで廃油を処分できますので、違反は取り締まれます。ただその中間の水域のものは、そう数は多くないと思いますけれども、やはりこういったような方向での行政指導はしていきたいと思っております。さらに、もしもそういう被害が非常に多いということであれば、トン数も拡大しまして、それ以外の船にも本法を適用していくというふうに今後直していくということも必要かと存ずる次第でございます。  なお、処理施設の利用でございますけれども、やはり本法の適用を受ける船を先に優先的にやらざるを得ないというふうに考えております。もちろん施設がたくさんできれば、それも行政指導で、やはり利用してくださいというふうに指導はしていきたいというふうに考えております。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 もちろん、理想としてそうなれば一番いいわけですけれども、事実上いまの六港においてさっそく施設をつくるわけでございますけれども、それで法律の適用船を十分にまかない得る見通しがあるのかどうか、その点ちょっとついでに伺っておきたいと思います。
  95. 木内政鋭

    ○木内説明員 廃油処理施設でございますが、港湾管理者のつくります廃油処理施設につきましては、国の補助で施設の整備をしていくことになります。その場合に、いま河上先生から御指摘のございましたような運用でございます。これは海上のことでございますから、法律に定められた百五十トン以上の船を先にやって、小さい船をあとにやるというような運用は、なかなかむずかしゅうございます。精神としましては、海をきれいにするということが精神でございます。取り締まりの対象になる船以外も海に捨てないようにするためにはできるだけこれを便利な捨てさせ方をさせるというような運用をさせるように指導していきたいと思います。施設の能力でございますが、算定されました能力には、平均の能力でございますと非常にピークがあります。天候によりましても、港の場所によりましても非常にピークがございます。十分余裕がございます。弾力的に運用するように指導していきたいと思います。
  96. 河上民雄

    ○河上委員 では、いまのお答えは若干食い違いがあったように思うのでございますが、後者のほうが正しいというふうに理解してよろしいわけでございましょうか。
  97. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいまの木内課長のが正しいと存じます。
  98. 河上民雄

    ○河上委員 私は、もし二者択一の場合、小型船を施設に連れてくるというのか、それとも一万メートルの外に行って捨てろというのか、そういう問題をちょっとお伺いしたのですが、政府としては、できるだけ施設に余裕のある限り施設へ連れてくるというふうに指導するというお考えだと理解してよろしいわけでございましょうか。
  99. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 さようでございます。
  100. 河上民雄

    ○河上委員 それでは最後に一つお伺いいたしますが、それは海上交通に対する政府のお考えでございます。これはあるいはこの問題と若干離れているかもしれませんが、「海上保安の現況」という白書によりまして、先ほど島本委員が四十一年中における遭難船舶の実情につきまして引用されておったのでありますが、この同じ白書によりますと、三海里未満の海域の事件というものが、隻数でいいますと七二%に上る、こういうようなことが出ているわけでございます。したがって、その中には当然タンカーによる遭難事故あるいは衝突事故というものが多分にあるのではないかと思うのでございます。そのような意味で、海上交通の問題とこの油による海水汚濁の取り締まりの問題とはかなり事実において密接な関係がある、こういうふうに思うのでございます。実を申しますると、最近五月二十六日、それから五月三十日に、それぞれ神戸港で船の衝突事故が相次いで起こりました。二十六日の事故は別府航路の客船と小型タンカーとの衝突でありまして、三十日は貨物船と貨物船の衝突でございます。新聞などによりますと、この事故の原因には多分に海上モラルの欠除というようなことも要素の一つにあげられておるようでございますけれども、しかし、基本的には陸上と同様、非常に海上交通が激しいというところからきているわけでございまして、こういう海上交通に対する取り締まりといいますか、指導といいますか、そういうものがはっきりとしない限り、油による火災とかあるいは衝突事故による油の流出という問題はどうしても付随的に起こる、こういうふうに考えるわけであります。したがって、海上の交通難に際しまして、政府の海上交通に対するお考えというものをちょっと伺っておきたいと思います。
  101. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 最近になりまして非常に海上交通がふくそうしておることは御承知のとおりでございます。ことに東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等が非常な込みようでございます。しかもタンカーの大型化によりまして、大型船はこれが運航にもいろいろ技術的に困難がございますので、特定の航路を優先的に使用させるという必要もあるのでございますが、いまだにそうしたことになっておりません。そこで運輸省といたしましては、何とか狭水路における船舶交通のふくそうを緩和し、事故を極力避けるという意味において、出入の航路を明確にしよう、そのために必要があれば航路の開さくであるとか、あるいはまた航路標識の完備であるとか、また将来は飛行機と同じように、電波によって航路を誇導するというようなことをも考える時期があるかもしれませんが、そうした措置をいま申し上げました三つの水域について急速に立てよう、こういう方針を決定いたしまして、関係当局におきまして、それぞれそれらの地区について実態に即した計画を立てておるわけでございます。すなわち、出入の航路をどうするか、どこに設定するか。それに対していかなる保安設備を必要とするか。また、水路を掘さくする場合においてはどの程度予算が必要か、こういうふうなことをただいま具体的にやっております。近く結論を得ましたならば、ぜひ来年度の予算要求には頭だけでも出したいし、また、来年の通常国会においては必要な立法措置について御提案申し上げたい。それをいま準備中でございまするので、いましばらく御猶予賜わりたいと存じます。
  102. 河上民雄

    ○河上委員 いまの海上交通に対する対策は、この委員会の専門の事項ではないと思いますけれども、非常に関係のあることでございますので格別な御検討をいただきたいと思いますが、いま私が御質問申し上げただけでも、お答えの中にはっきりと示されておりますことは、どうも現在の港則法というものはほとんどざる法に近いような状態である。また、現在審議中のこの法律実施された場合にも、それを実行する上で必ずしも万全ではないという印象を受けますので、船の油による海水汚濁条約が港則法の二の舞いにならぬように、ひとつ御努力いただきたい。特にその点を留意していただきたいと希望いたすものであります。  なお、罰則の件につきましては、私は同様の観点からお尋ねするつもりでございましたが、中谷委員も先般その点を特に強調されておりますし、この問題につきましては法律家である中谷委員からやっていただきたいと思いますので、私の補足の質問はこれで終わりたいと思います。
  103. 八木一男

  104. 中谷鉄也

    中谷委員 ごく簡単に十分ばかりお尋ねをいたします。  保安庁の参事官にお答えをいただきたいと思いますが、「港則法第二十四条違反事件処分結果」という参考資料をいただきました。これは本法案の罰則の取り締まりの効果をあげる上で関係があるということでいただいた資料でございますが、その中で一点だけこの資料をもとにしてお尋ねをいたしたいと思います。   〔委員長退席、板川委員長代理着席〕  昭和三十九年検挙件数四十九件、昭和四十年検挙件数百十二件、昭和四十一年検挙件数百二件とございます。そこで昭和三十九年未済等十一件、昭和四十年未済等五件、昭和四十一年未済等六件、こういうことに相なっているわけでございます。そこでお尋ねをいたしたいのですけれども、昭和三十九年の未済というのは、一体これはどの時期における未済なのか、この点をひとつ最初にお答えをいただきたい。
  105. 榎本善臣

    ○榎本説明員 いま三十九年から三ヵ年の検挙件数のうち未済が十一件、五件、六件、この未済の状況につきましては、お手元にお持ちかと存じますが、その資料の注の二にございますように、現在検察官の処分結果の出ていないものまたは他の検察庁に移送中のものを含んでおるわけでございます。
  106. 中谷鉄也

    中谷委員 御答弁中ですが、質問の趣旨はわかっていただけたと思うのです。三十九年度どの時期で未済ですか、どの時期で移送しているのですかということを聞いているのです。もう一度お尋ねしますけれども、二年も三年もたって未済だ、移送中だというはずはないんだから、この表は不親切ですよ。こういうことを結論をいえば言いたいのです。ですから私が聞いたのは、未済だ、移送中だとおっしゃるけれども、一体それはどの時期をとっておっしゃっているのですか、こういう質問なんですよ。
  107. 榎本善臣

    ○榎本説明員 これは三十九年度末におきまして未済のもの十一件と考えます。——失礼いたしました、暦年でございます。
  108. 中谷鉄也

    中谷委員 いまから十五、六年前に大橋運輸大臣が法務総裁のときに、私、訓示を受けた記憶があるのですけれども、運輸大臣のほうが非常にお詳しいようですけれども、参事官にもう一度お尋ねします。  この表はそういう点から申しますと、未済、それは注の二に出ておりますけれども、少なくとも昭和三十九年末とかいうことの未済等というふうな表としては、その後その未済が、昭和四十年、昭和四十一年においてどういうことになったかということについては資料のお持ち合わせがない、こういうことでございますね。
  109. 榎本善臣

    ○榎本説明員 そのとおりでございます。
  110. 中谷鉄也

    中谷委員 非常にこまかいことをお聞きしたと思うのです。私がなぜそんなこまかいことをお尋ねしたかと申しますと、現在審議をいたしております法案がざる法になるおそれがあるではないかということで、このような参考資料をお出しになってきたことが、そもそも港則法二十四条の取り締まりにおいてもあまり熱心じゃない。こういうふうな未済件数昭和三十九年十一件、こんな表が出てくるはずがないわけです。移送した結果どうなったかをずっと調べていけば、おそらく昭和三十九年の未済なんというのはゼロのはずですね。そういうことでございますね。——その点でまず私は非常にこまかいことをお尋ねした。  同じくこまかいことをお尋ねいたします。私は、港則法がどうもざる法であり、あまり厳格でないように思うからお尋ねしますけれども、そういうことがわかっておるのだということであれば、もうけっこうでございますが、違反した船の船種、トン数、そういうことの類別ですね。これはお答えいただけますか。
  111. 榎本善臣

    ○榎本説明員 ただいま手元にございませんけれども、時間をかしていただければ、港ごとに、年ごとに、件数一件ごとに資料はできると思います。
  112. 中谷鉄也

    中谷委員 せっかくこの前委員長にお願いをいたしまして、こういう参考資料を出していただいたわけだから、何も詳しいものをそこまでお書きいただかなくても、そういうふうな資料要求があれば、当然そんな質問があるというふうなことは予想していただいて、その程度はやはり準備をしていただきたいと思うのです。逆にいうと、そんなことについてお調べいただいていないということが、港則法がざる法なるゆえんのものだと思うのです。まさにこの一覧表の中からそのことを論証せざるを得ない。私はこのように思うわけです。  それでは傾向としてお伺いいたします。どのような種類の船——しろうとですから、そういう表現がいいかどうかわかりません。どのような種類の船、どの程度のトン数の船が港則法二十四条のこの資料の違反を一番犯している傾向が強いですか。一般的な性格論でなくて、お話として伺いたい。
  113. 榎本善臣

    ○榎本説明員 ちょっといま手元に資料を持っておりませんので……。
  114. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、この違反件数二百六十三件は、いわゆるどの高等検察庁、地検、あるいは区検管内が一番多いのですか。結局それはどの港と対応するのだということは、一般的な傾向としてはすぐお答えいただけますか。
  115. 榎本善臣

    ○榎本説明員 お答え申し上げます。昭和三十九年で申し上げますと、油によるもの東京湾が三十一件でございます。伊勢湾で一件、大阪湾で二件、瀬戸内海で一件、関門付近で四件、九州で六件、裏日本で五件、合計して五十件となっております。
  116. 中谷鉄也

    中谷委員 それではお尋ねいたしたいと思いますけれども、それは出入りする船の数と必ずしも検挙件数と一致していないのではないかと私思います。そうすると、いわゆる港則法によるお取り締まりについて、かなり地域的なあるいは港による差異、いわゆる色合い、濃淡、強さ弱さ、こういうものがあるのじゃないかということがいままでの御答弁の中から私感じますけれども、この点は統一的な取り締まりということに努力しておられるのでしょうけれども、結果としてそういうふうな数字が出てきたならば、そういうことはあるかもしれないというように私疑問を感じますが、この点いかがでございましょう。
  117. 榎本善臣

    ○榎本説明員 取り締まりにあたりましては公平を期し、あるところで特別にということはございませんけれども、ただ限られた船艇、人員でやっておりますので、あるときにはそこにおきまして検挙した件数が多かったということはあることと存じます。
  118. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで次に、港則法二十四条の四項についてお尋ねをいたします。このような四項を適用されたという場合は、この検挙件数と一致しますかどうか、この点はいかがでしょうか。
  119. 榎本善臣

    ○榎本説明員 二十四条の四項によって港長が場所等を指定いたしますこととこの件数とは直接関係はございません。
  120. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、少なくとも検挙した件数の中で、自主的に四項で命ぜられる以前に処置をしない者に対して命じた場合があると思うのですが、どの程度命じた件数がございますか。それは三十九年、四十年、四十一年でひとつお答えいただけますでしょうか。
  121. 榎本善臣

    ○榎本説明員 二十四条の四項の規定で実際に命じたことはございません。できるだけ行政指導等で目的が達せられるようにいままでやっております。
  122. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、前回大臣が御答弁になりました——参事官おいでになっていましたでしょうか、行政代執行というお話も、行政代執行もできるのだ、命じてそれに応じなければできるのだという法律的なお話をなさったというふうに質疑者としては理解しておけばいい、また理解をせざるを得ない、こういうことになりますか。
  123. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 法理を申し上げたわけでございます。
  124. 中谷鉄也

    中谷委員 たいへん恐縮ですが、法務省刑事局長さんにお尋ねいたします。実は港則法の審議じゃないのですけれども、私非常に気にかかる点があるのです。と申しますのは、港則法二十四条の一項に「みだりに」とあることは明白でございます。前回の委員会では、——これはそういうふうな御説明で私いいのだと思いますけれども、「みだりに」だから目に余るものを検挙するんだというようなおことばがあった。きょうはまた先ほどからお聞きしておりますと、それはこういう意味だというようなお答えがあった。あるいはまた「正当な理由なしに」というようなお答えがあった。「みだりに」というようなことばについても、前回から三つ、四ついろいろなおことばが出てくるわけです。「みだりに」だから検挙件数も少ないのだということですけれども、港則法というものを真剣に適用しようということになれば、それほどこの委員会で「みだりに」ということばが、説明の便宜上とはいえいろいろなことばが次々と飛び出してくるはずがないのです。ですからジユリストの間では「みだりに」でいいと思いますけれども、「みだりに」とはこんなことだということを刑事局長さんのほうから——起訴猶予の件数も若干あるようでございますから、この点を御答弁いただきたいと思います。
  125. 川井英良

    ○川井政府委員 「みだりに」とか「故なく」とか「ことさらに」とか「正当の理由がないのに」というように、最近は行政取り締まり法規にいろいろなことばが使われておりますが、これはその時代によりまして、一つ一つ法律にやはり立法理由等の関係でそれぞれのニュアンスの相違があるようであります。しかしながら、私どもの最近の解釈といたしましては、いろいろありますけれども、構成要件等との関係の解釈におきましては、結局は「正当な理由がないのに」という程度のことばであろう、こういうふうに解釈しております。
  126. 中谷鉄也

    中谷委員 こまかいことばかり質問しておって非常に恐縮ですが、一点だけ最後にお聞きをいたします。  港則法二十四条の四項において、違反した者に対してそういうふうなものを取り除くことを命ずることができる、要するに原状回復といっていいのですが、そういう規定がございます。ところが、先ほどから港則法に関して非常にこまかいというとこまかいことですけれども質問させていただいたのですが、資料のお手持ちがないということで必ずしも答弁が御明確でないということは、逆に言うと、港則法二十四条というものについてのお取り締まりということについてはそれほど真剣にお取り締まりをやっていない。海上保安白書を拝見いたしましたけれども、密輸等非常に大事なお仕事等ございます。しかし、保安白書の中に出ておるその他の海事事件という一覧表、二、三行しかお書きになっていない。それはそれとして、そういうことだとすると、罰則が今度の法案では港則法よりもふえて重くなっているけれども、二十四条の四項に似たような規定というのは、今度の法案の場合にはどういうふうな理解をしたらいいのでしょうか。この点をひとつ審議官のほうからお答えいただけませんでしょうか。
  127. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 審議官名ざしで御質問でございましたが、便宜私からお答えを申し上げます。  従来、港則法第二十四条の取り締まりについて当局の熱意が不足であったようだという御断定でございましたが、私もこの点については中谷委員の立言に賛意を表するわけでございます。確かに従来熱心にこれの励行につとめておったとはいえないようであります。   〔板川委員長代理退席、委員長着席〕 それはどういう理由かということを考えてみますと、やはりその取り締まりの励行についての社会的の要求というものがそれほど高くなかったということもあるのじゃなかろうかと思うのでございまして、そういう場合において、取り締まり当局が取り締まりにあまりに熱を入れるということは、かえって社会の批判を呼ぶことになりますし、取り締まり者の立場として無理のない取り締まりをしておるということだったろうと思うのです。それが証拠に、先ほど数字の内容について説明がありましたが、検挙件数では、東京湾の湾内でおおむね行なわれております。これはやはり東京湾が非常に被害が多いことと、それから東京湾の漁業者がそういった問題について非常に熱心でございましたので、自然と取り締まり当局もそれにささえられてきたと思うのでございます。こうした場合におきまして、港則法の規定はいままでのとおりでございますが、新しく今度の海水汚濁防止法ができるということになりますと、これ自体が取り締まりの一つのささえとなるべき世論を示すものでございますので、このたびの法律が成立いたしましたならば、港則法二十四条の取り締まりにつきましても、おのずから取り締まり当局は従来と同じ態度を続けることは不可能になる。こう思うのございまして、そうした場合においては二十四条をできるだけ完全に運用して、場合によっては二十四条第四項というものをも活用する、そういう態度になるだろうと思いますし、また私といたしましては、そういう方向に、世論の動向から見まして取り締まり当局を指導する責任がある。かように考えておるわけでございまして、立法後においておのずから厳重にいたしたい、またそうなるであろう。この点をひとつ御了解いただきたいと思います。
  128. 中谷鉄也

    中谷委員 大体質問はこれで終わったわけですけれども、一点だけ念のためにお聞きしておきます。  法案の三十条の第四項です。「第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」、人権保障の規定だろうと思います。この種の規定については、税法等にもしばしば見受けるところでございますけれども、検査をいたしまして、本法案に記載されておりますような書類等の任意領置はできるのかどうか、この点はいかがでしょう。
  129. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 任意領置できるというふうに解しております。
  130. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、検査をした書類あるいはその他の物件が他の犯罪に結びつくという場合、検査の結果そういうものを認めた場合、これはその四項とはどういう関係に相なるのか、質問そのものが若干整理できておりませんが、お答えいただきたいと思います。
  131. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。結局三十条一項の趣旨でございますけれども、こういった趣旨で領置し得るというふうに解しておりますから、別の犯罪と関係なしというふうに解しております。
  132. 中谷鉄也

    中谷委員 いろいろな法案についてもこの種の条文がありますし、判例もありますが、新しい法案ですから念のためお聞きしたのですが、いまの御答弁では、四項そのものをお読みになっただけのような気がいたします。  そこで、私もうこれで質問は最後だと申し上げましたので、これで終わりたいと思いますが、実は委員長にお願いしたいと思います。それは油送船の百五十トン、五百トン、これは各委員からもずいぶん質問がありましたが、気になるわけです。したがいまして港則法二十四条違反事件、この表のうち違反している船の種類、それからどの程度のトン数の船が違反して検挙されているのか、この二つについてひとつ資料をお出しいただきたい。それから、これは前のことで無理かもしれませんけれども、この三十九年の未済十一件というのはふていさいだと思いますので、この間の未済の行くえについて、これもそれほど努力を要しないということであるならば、誠実な資料の出し方という観点から、これらの資料の提出方について委員長より御指示いただきたい、これをお願いいたします。
  133. 八木一男

    八木委員長 ただいま中谷委員から要求のありました資料について、政府のほうで至急作成して委員会に御提出されることを要求しておきます。次回の委員会は、来週の火曜日を予定いたしておりますので、それまでに間に合うように至急御作成を要望いたします。
  134. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。      ————◇—————
  135. 八木一男

    八木委員長 この際、公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  136. 岡本富夫

    岡本(富)委員 最初に、運輸大臣に一言お聞きしたいのですが、このたび提案されております海水の汚濁防止法案につきまして、先ほどからいろいろ質問がありましたが、不慮の衝突というような災害によって受けたところの漁業者の被害救済についての考慮が非常に抜けている、こういうように思うのですが、運輸大臣どうでしょうか。
  137. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは不慮の衝突を予防するための法律でなくて、船から海上へ油を投げ捨てるというようなことを取り締まるためでございまして、これらの行為についての取り締まりだけを規定いたしております。その後の被害者に対する救済規定というものは、海上に油を投棄する行為についても規定はいたしておりません。それらの事柄につきましては、先ほど申し上げましたごとく、将来公害対策基本法によりまして被害者に対する救済制度を完備する、そういう規定に基づきまして、必要ならば立法を行なうということになっておりますので、運輸省といたしましても、将来この公害対策基本法ができまして、それに基づいて特に海水の油による汚濁について特別な立法を行なうことが適当だという結論になりましたならば、その際に考えることにいたしたいと思います。   〔委員長退席、板川委員長代理着席〕
  138. 岡本富夫

    岡本(富)委員 なぜそのことを申し上げたかと申しますと、先ほど板川委員のほうから四日市ぜんそくの話が出まして、被害者が首つりをした、こういうようなほんとうに人命にかかわる話があった。正反合の原理と申しまして、一つ法律が出れば必ず今度はその逆を救済していく、こういうものを考えて、そしてやらないとやはりりっぱな政治ができないと思うのです。そのためにまあ申し上げたわけでありまして、人命に関する、すなわち漁業者が被害にかかって、そして食べていけない、こういうような状態になったときに、その救済をやはり考えておいていただかなければならぬ、こう思うわけであります。それで、これはいま運輸大臣のほうから、次の機会にそういう状態のときには考える、こういうお話でありますから、この問題はこれでおきます。  そこで、経企庁の水資源局長来ていますか。
  139. 板川正吾

    板川委員長代理 来ております。
  140. 岡本富夫

    岡本(富)委員 大臣、ちょっと待っていただきたいと思います。  大牟田川公害につきまして、参議院の公明党のほうでいろいろと聞きもし、また質問もしておりますけれども、日本一きたない川、これはちょうど昨年福岡の公明党の木村という議員が県、国に再三要請をして、いろいろ調査をしてもらいたい、こう要請したことがありますけれども、これについてのその後の調査あるいはまた対策、これについてお伺いしたいのです。
  141. 松本茂

    ○松本政府委員 大牟田川水質汚濁の問題でございますが、本件につきましては、昨昭和四十一年度におきまして、経済企画庁におきまして水質基準設定するための水質調査実施いたしました。ようやく最近その一年間にわたります調査が終了いたしまして、報告も手元に届いてきておりますので、現在その結果を整理、取りまとめいたしておるところでございます。詳細の点につきましては、できるだけその作業を急ぎまして、状況を的確につかみたい、こう思っております。さしあたりの調査報告によりましても、たとえばCODで見てみますと、上流のほうは一三・四、しかし中流のあたりになりますと八五・八、河口のあたりで一六・七、また海中におきましても、干潮時におきまして五・四、満潮時では一・三、こういうふうにかなり汚濁が激しい状況でございます。先ほど申しましたように、できるだけこの整理、解析を急ぎまして、その結果によりまして関係各省と今後どういうふうに措置してまいりますか十分協議いたしまして、また同時に、その状況と相関連いたしまして、水質審議会にもはかりまして作業を進めていきたい、こういうふうに思っております。ただこの河川は、先ほど御指摘になりましたように、また調査からもおおむね推測されますように、非常によごれておりまして、平素はほとんど自然の流量がなく、雨になれば非常に流量がふえる、平素は工場排水がほとんど流れており、水量の全部を占めておる。そういう状況でございまして、これの措置につきましては、水質基準設定するということもさることながら、さらに総合的にいろいろ考えていかなくてはならないところではないか、こういうふうに思っているわけでございます。   〔板川委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この川は、聞くところによりますと、私ども調査でもそうですが、三井化学、東洋高圧、あるいは三井金属、三井三池、こういうような大工場が廃液を一手に受けて流しているような、悪水川と呼ばれておる。しかも昭和三十三年の八月ごろから市民の苦情が殺到しておったと聞いておりますけれども、非常に手の打ち方がおそいじゃないか、この問題について、なぜ今日までこの川に対して経済企画庁が手をつけなかったか、また厚生省のほうが要求しなかったか、この二点について厚生省のほうと両方からお答え願いたいと思います。
  143. 橋本道夫

    橋本説明員 ただいま御質問のございました大牟田川の件につきましては、昭和四十一年の夏に福岡県から微量の水銀が含有さているという報告を受けまして、有機水銀かいなかということにつきましては、その段階においては判明いたしておりませんでした。本年度の調査におきまして詳細に水銀の性質を調べ、食品の中の水銀の性状を調べるということでございまして、現在その計画を進めておるわけでございます。どうして厚生省がこの点について要望をしなかったかという御指摘でございますが、大牟田川自身は全然水道原水としては使っておりませんので、そういうことで厚生省としましては水道水源としての要求を従来の形でとっておりましたので、今日まで至ったわけでございます。早急に詳細な水銀の性状につきましての調査をいたしたいと思います。
  144. 松本茂

    ○松本政府委員 経済企画庁で各河川につきまして水質調査をいたします場合には、各県と御連絡申し上げまして、各県の御要望を聞き、各県の県下を流れております川の、いろいろな川のうちの順序、次第につきまして県のほうの御要望も聞いて、毎年調査すべき河川を決定いたしておるわけでございますが、昭和四十年度に福岡県のほうからこの河川について調査の要望がございましたので、昭和四十一年度に水質基準調査実施した次第でございます。
  145. 岡本富夫

    岡本(富)委員 なぜそういうように私が聞くかと申しますと、この川には無機水銀ですか、あるいは有機物質を含んでおる、こういうようなうわさが非常に飛んでおるわけです。その河口にあるところのノリの状態が、ガン腫病というのですか、こういう病気にたくさんかかって、その付近の漁業者が非常に困っておる。去年は一万七千だな——大体二十メートルの長さのノリのたなが一万七千廃棄処分になった、こういうような被害を受けておるわけであります。しかも、ここに私はそのノリを二つ持ってまいりましたけれども、そこでとれたいいノリと悪いノリ、被害にかかったノリは非常に色が違う。これを福岡の水産試験場で調査しましたところが、シアンあるいはフェノールの溶液におかされているのじゃないか、こういうような判定をしているわけです。この一万七千だなですか、これだけ廃棄処分したという漁業者の被害は非常に気の毒なわけでありますし、それ以上に、こうした色の変わったノリが売り出されて、これを食べて人間のからだに無害であるのか、こういうことを考えますれば、さきに水銀の問題がありまして、阿賀野川あるいは水俣ですか、あの面から考えますと、こういう三つの点から考えたときは、非常に早急に手を打たなければならぬ。これについて経企庁あるいは厚生省の意見を伺いたい。
  146. 橋本道夫

    橋本説明員 ただいま御指摘いただきましたノリの件でございますが、私どもまだノリにつきましての詳しい化学分析をいたしておりません。ただ本年の調査対象といたしてはおります。しかし、今年ということでは時間がずれますので、その点につきましては関係の食品衛生課のほうに連絡いたしまして、地元のほうでまず検査をしてもらうようにというような措置をとりたいと思います。
  147. 松本茂

    ○松本政府委員 経企庁が昨年度調査をいたしたわけでございますが、その調査を委託いたしました一つの先であります福岡県からの調査報告書によりましても、その中に戦前から何回か水産業、ノリ等につきましての被害が起こっておったという報告もございます。ただ、県からの調査要望が昭和四十年度に出てまいりましたので、さっそく経済企画庁といたしましては次の年度の昭和四十一年度に調査いたしたわけでございます。今後委託先から出てまいりました調査結果を十分よく整理、解析いたしまして、その結果につきまして厚生省あるいは農林省、そのほか関係各省と十分協議いたしまして、今後の対策を検討してまいりたいと思っております。
  148. 岡本富夫

    岡本(富)委員 調査なさるのもけっこうですし、また、するのがあたりまえでありますけれども、私のいま特に申し上げたいのは、こういうようにすでに売り出されておる。その間に、買った人は食べているわけです。これは一日も早くやらなければならぬ。昭和三十三年ごろから騒がれ、また四十年の十月に参議院の公害対策特別委員会の各委員が行っていろいろ調査もしておる。しかしながら、まだ調査中でございます。事水銀の問題であり、またこういう食品の問題になりますと、やはり人命尊重の上から特別に早く手を打たなければならぬ、こういうように私は思う。  かつてインドのパール判事というのは、あの日本の終戦のときに、戦争犯罪人であるところの当時の日本の軍部の首脳者に対して、それは人命尊重の上から日本の戦争犯罪人だけを取り調べる、あるいはまた処罰するというのは間違いである、こういうような結論を出した判事がいますけれども、やはり世界ではそんなに人命尊重、人間尊重というものをしているわけです。  したがって、私は、何をおいてもこういう問題に対して早く取り組んで、そして結論を出さなければならぬ。こういうように思うのですが、さらに厚生省の見解を承りたい。
  149. 橋本道夫

    橋本説明員 失礼いたしました。私ちょっとお話を聞き漏らしまして……
  150. 岡本富夫

    岡本(富)委員 こういう食品は、人命にかかわることでございますから、ただいまことしの調査に入れますとか、あるいはまた調査中でございますとか、そうでなくして、いつごろ、どういうスケジュールで、またどういうプログラムで早く調査をして資料を出していただけるか、これをお聞きしたいのです。
  151. 橋本道夫

    橋本説明員 食品の検査につきましては、食品衛生法がございますので、県のほうに直ちに連絡をいたしまして調査をいたします。結果はいろいろ分析がございますので、私、一週間でできるか一月かかるかということにつきましては、ただいま即答いたしかねますが、食品衛生課のほうの専門のほうと連絡いたしまして、先生のほうに御連絡いたしたい、こういうように思っております。
  152. 岡本富夫

    岡本(富)委員 経企庁のほうも、そういうわけですからひとつ早くやっていただきたいと思います。  では、この問題は、あとで私のほうに知らしていただきたい。プログラムを全部出してもらいたいと思います。  そこで、同じように川の問題で、兵庫県に猪名川という川がありまして、この川は御承知のように伊丹市の水源になっております。この猪名川の問題は、ちょうど川西に皮革工場がある。ここから非常にきたないところの汚水が流れておりますが、これに対して武庫川あるいはまた猪名川、あるいはまた神崎川——神崎川は川でないです、どぶといってもいいですね。この方面の計画について経企庁、それから建設省の方だれか来てもらっておりますから、両省からひとつお聞きしたいと思います。
  153. 松本茂

    ○松本政府委員 神崎川、またその上流でございます猪名川につきましては、すでに調査も完了いたしておりまして、現在水質審議会におきまして、他の近畿圏の諸河川と合わせまして都市河川方式で早く水質基準設定したいということで、鋭意その作業を急ぎ、また審議を急いでやってもらっているところでございます。お話しのように、神崎川の上流でございます猪名川は上水道の水源にもなっておりまして、特に軍行橋以上はその水源地帯として非常に大切なところでございますので、水質基準設定いたします場合には、それに応じましたかなりきびしい基準設定することにいたしたい、こういう考えでおるわけでございます。本川につきましては、水質基準設定することも不可欠な一つの要件でございますが、御指摘のように、上流の川西市におきます皮革業者の排水が非常に大きな汚濁源になっております。したがいまして、これをどういうふうに措置するかということが非常に重要なポイントになるわけでございますが、この点につきましては建設省から詳しく御説明があろうかと思いますが、川西市におきまして現在特別都市下水路を建設中でございまして、これは四十三年度には完成する予定でございます。これができ上がりますれば、その排水はこちらへ放流いたしまして、ある程度の浄化をいたしました上で猪名川に放流する、こういうことになるわけでございます。しかしながら、これだけではなお不十分でございます。将来は、現在建設中であります猪名川流域下水道をなるべく早く完成いたしまして、そしてそれへ川西市の下水を導入いたしまして、豊中にあります処理場でよく浄化いたしまして、高級処理をして放流する、こういうことが必要であろうかと思っておるわけでございます。  経済企画庁といたしましても、関係各方面に対しまして、これらの下水道の整備を速急に進行していただくように特に要望しておるところでございます。
  154. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 お答えいたします。ただいま経済企画庁の水資源局長から御答弁がありましたとおりでございますが、なお詳細に申し上げますと、川西市につきましては特別都市下水路を設けまして、皮革工場を一団地にまとめて処理するということで、四十一年から四十三年までの間にこれを行なうつもりでございます。  それから猪名川の流域下水道につきましては、先ほど水資源局長からお答えがありましたが、本年度からかかりまして、おおむね四十六年度までに仕上がります。大規模な処理場を設けまして、猪名川の浄化に役立てたいと考えております。  さらに猪名川につきましては、河川改修をしましても、あの地区では非常に改修ができにくい川でございます。国際空港のあるそばなんかはやぶだらけでございまして、ああいう川が残っておるのはふしぎなくらいでございます。最近人口も非常に多くなっておりますし、河川管理者としましても、当然これらの問題につきまして早急に改修を行なうとともに、流域の上水道の水源問題ともからみまして、ただいま上流に一庫ダムというダムを予備調査中でございます。それらの結果を待って今後どういうぐあいに猪名川の水質を浄化していくか、経企庁、関係各省とよく打ち合わせましてやっていきたいというふうに考えております。
  155. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題についてはいろいろたくさん資料が来ておりまして、私のほうにも陳情が参っておりますので、こういう状態は日本の全国にあると思うのです。今度基本法をつくる予定になっておりますけれども、いま、騒ぐと公害、騒がなかったら知らぬ顔をしているというふうな状態でありますが、私の申し上げたいのは、再びああいう阿賀野川のような被害が起こりないように、こういう人体に影響のあるものに対しては特に一日も早く手を打っていかなければならぬ、こう思うわけであります。  それで、猪名川の水系は昭和三十七年に水質調査河川に指定された。これは建設省から調査実施されておると聞いております。これはこまかい問題もわかっておると思いますが、ずいぶんよごれておりますから、あとで建設省の計画あるいは経企庁の計画をひとつ資料として出していただきたい。これを要求しておきます。  運輸大臣が非常に急いでおりますので、運輸大臣にお聞きしたいと思いますが、最近自動車の排気ガスが非常に問題になっております。大まかに言いまして自動車の排気ガスは完全に防止することができるのかどうか、現在の技術ではどうなのか、まずこれを答弁願いたいと思います。大臣よろしくお願いします。
  156. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御承知のとおり先般省令を改正いたしまして、新しくできます自動車については、一酸化炭素の排気ガス中の含有量三%以上のものは許さないことにいたしたわけでございます。今後売り出される自動車はみなこの規格によるところになります。しかし、一台一台の出す排気ガスは少なくとも、何ぶんにも自動車の交通量が年々ふえてまいりますので、交通ふくそうの個所における街路上の排気ガスあるいはその付近の排気ガスというものはなかなか容易には消すことはできない。むしろ今後ふえるということを覚悟しなければならぬだろうと思います。しかし、一方におきまして、排気ガスを三%にとめるようなエンジンの製作技術が可能であるとすれば、さらにそれを二%なり一%なりにとめていくという技術も一面において可能だろうと思いますので、今後とも製造メーカーのほうと十分連絡いたしまして、できるだけ排気ガスを出さないような自動車をつくって売り出してもらうようにすべきものと思います。
  157. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうすると三%にとどめる。ところが今度は中古車になりますと、これはどうしようもないわけですね。いまひっくるめて運輸大臣からの答弁では、車がたくさん停車して排気ガスをたくさん出さないように行政面で考えなければならぬ、たとえば道路行政、こういうふうに私も思うのですが、どうでしょう。
  158. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 確かに交差点交差点でとまっては動き、とまっては動き、しかも非常なのろのろ運転をするというところに排気ガスがふえてくる大きな原因がございますから、ただいま仰せられましたように高速道路を完備して、あるいは踏切の施設を完備して、のろのろ運転ないし停車の機会を減らすということは、これは排気ガス防止上たいへんいいことだと思います。
  159. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そこで実はこの問題も私のほうにいろいろ話があるのですが、これは建設省の方にお聞きしたいのですが、いよいよ万国博で外国から大きな資材がどんどん入ってくるようになると思うのです。神戸港あるいはまた大阪港、これを大阪のいまの予定地に運ぶにつきましては相当な道路が必要である。そこでいま西宮の中央を通過するところの西国街道というのがあるのですが、この街道は幅が非常に狭い。十メートルから十五メートルくらいしか幅がないのです。いまそこを利用して西宮市内を通過して第二阪神の、要するに二国へ車が流れておるわけですが、この万博の問題を考えても、また阪神電車と阪急電車と二つ電鉄があるのです。両方とも踏切になっておる。ここで車が多く停滞して、そして排気ガスを出し、それからこれはひっきりなしに夜中でも通っておるわけです。非常に振動が多くて、ちょうど西宮市内の中央を通るわけです。それで西宮のほうからすでに陳情がこの公害について建設省のほうに出ておると思うのですが、建設省の方どうでしょう。
  160. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 ただいまのお話の西国街道、これはわれわれのほうで一般国道百七十一号線になっておりますが、これにつきましては、いまおっしゃいましたように非常に交通量が激しい国道の一つでございます。現在これに対しまして、お話ございました阪急電車との立体交差をやっておりまして、この計画は現在の国道よりちょっと西側に札場筋線というのがございます。これについて立体交差、これは阪急を上げることを考えております。これは四十一年度で大体終わっております。さらにその阪急から現在の国道二号線までの間に国鉄山陽本線との立体交差がございます。これは非常に狭くなっております。この間につきましては大体二十二メートルから二十七メートルで現在都市局の区画整理事業として幅を広げることを施行中でございます。この完成を非常に急いでおるのでございますが、普通のテンポでいきますと昭和四十五年ぐらいになるのではないか。これをもう少し急ぐようにいろいろ検討中でございます。その先の阪神電車の平面交差を通りまして第二阪神四十三号線に通ずるのでございますが、この辺の立体につきましてはいまいろいろ検討中でございます。
  161. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この付近は、西宮市の中央を通りますので、夜の夜中にもたくさん車が通りますので、その振動で眠れない。また御承知のようにあの西宮というところはベッドタウンですから非常に静かな町です。それでここの住民が非常に困っておるわけですが、そこで国道百七十一号線ですか、西国街道が西宮市に入る手前に武庫川という川があります。この川の右岸か左岸から二国のほうにバイパスを通したらこういう問題は全部解決するのじゃないか、こういうような意見が出ておりますけれども、建設省の見解はどうでしょうか。
  162. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 ただいまの百七十一号線の分かれた武庫川沿いの道路、これは現在県道がございまして、西宮−宝塚線という一般県道でございます。これにつきましては郡市計画で大体十五メートルくらいまで広げる予定でございますが、現在のところ、それよりもうちょっと西側に中津浜線という線がございます。これが都市計画の決定が約二十二メートルの幅員になっておりまして、これにつきまして現在四十二年から一部街路事業で拡幅を施行の予定でございます。  ただいま仰せの武庫川沿いの県道の拡幅につきましては、これは道路の五カ年計画の中でどうするかでございますが、非常にこの難点は、阪神だと思いますが、すぐ並行して電車が通っておるということもございまして、十五メートルに拡幅するにはどうも阪神の電車を移設しなければならぬというようなこともございます。また、武庫川にいろいろ橋がかかっておりまして、その交差をどうするか、この辺に非常に技術的な困難性があるのでございます。これもやはりこの地区とすればまだまだ道路の面積の足りないところでございますから、いずれ道路の投資規模の拡大とともに、こういうものの改修を将来はかっていきたいというふうに考えております。
  163. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いま計画されておるのは、この西宮市内のいろいろの状態から見ますと、抜本策でない。ますます車がふえてきますので、やはり提案しましたあの武庫川の上にバイパスを高くして通せば、立ちのき問題、いろいろな問題がスムーズにいきます。ですからその問題を一ぺん計画していただいて、そうして私のほうに提出していただきたいと思うのですが、これはいつごろになるかということをやはり考えていただきたいと思うのです。  以上、きょうはそれだけ要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  164. 八木一男

  165. 中谷鉄也

    中谷委員 阿賀野川の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  時間もすでに五時でございますので、私自身が、この点だけはどうしてもお尋ねしたいという点にしぼってお聞きをいたします。したがいまして答弁もひとつ明確にお願いをいたしたいと思います。  実は阿賀野川の問題につきましては、何と申しましても人の命が失われている。死んだ人が帰ってこないということで、社会的な大問題になったということは当然のことであります。そういうふうな中で、最近ついに被害者の遺族の人がたまりかねて民事訴訟の提起も行なわれている。厚生省の結論もようやく出てきている。こういうふうな状況であることはすでに御承知のとおりであります。そういうふうな状態の中で、阿賀野川のいわゆる昭和電工を管轄する新潟地検が、新聞の報道によりますると、「捜査不適切と結論」「水俣病立証できない」というふうなところの報道がなされているわけであります。そういうようなことは私は検察のあり方としてあり得ることではないと思う。したがいまして、まず最初に、検察庁として、この阿賀野川の問題について真相究明という立場においてどのようにお考えになっているか、この点についてお答えをいただきたいと思います。  この問題については、すでに予算委員会等におきましても、法務大臣からの答弁もあったことでございますので、まず最初に検察庁、法務省のこの問題に対する態度について、ひとつこのいわゆる水俣病事件、阿賀野川事件について検察庁はどのようにお考えになっているか、捜査不適切というふうな結論を出したという事実があるのかどうか、まずこの点についてお答えをいただきたい。
  166. 川井英良

    ○川井政府委員 その記事を私も見まして、すぐに新潟地検のほうへ照会をいたしました。その回答によりますと、新潟地方検察庁としてそのような趣旨の発表をしたことは絶対ない。地検としては、非常に高度の科学的な知識を前提とする容疑の事件でありますので、権威のある厚生省をはじめとする中央の官庁の委嘱に基づく研究班の調査の段階にありますので、その調査の結果を待って、刑事事件として捜査すべきものか、しなくていいものかということを判断したいという態度を堅持しているのだ。こういう返答でありました。私もその態度が相当であろう、こう思います。
  167. 中谷鉄也

    中谷委員 まさに検察としては当然のことだと私は思うのですが、しかし、質問をしている私の立場からは、その検察の立場に必ずしも私は同調できないものがある。いま一歩進めるべきではないかと思うのです。刑事局長さんにお尋ねをいたしますけれども、この事件に法務省、検察庁は無関心ではないということをまず前提として私はお尋ねいたします。無関心でないとするならば、この事件の発生日時は一体いつとして検察庁は——証拠の問題は別として、予想される、推定される事件の発生日時は一体いつなのか。そうすると公訴時効との関係は一体どういうことになるのか。事件の発生日時を検察庁はいつというふうにお考えになっているのか、この点についてまずお答えをいただきたい。
  168. 川井英良

    ○川井政府委員 もちろん、犯罪として容疑のある事件について、検察官といたしましては、それぞれの事件の公訴時効を念頭において捜査を進めることは御指摘のとおりであります。しかし、事件につきましては、もし容疑ありといたしますならば、おそらく業務上過失致死傷というようなものがまず刑法の条文としては一番最初に頭にのぼってくる条文でございますが、その条文につきましても、そう長い公訴時効の期間を持っているものではございませんので、私どもといたしましては、先般参議院の予算委員会等における法務大臣答弁にもありましたとおり、関係各庁に対しまして、なるべく早い機会に迅速にこの結論を出すようにそれぞれ要望しているところであります。
  169. 中谷鉄也

    中谷委員 もう少し私もストレートにお尋ねをいたします。検察庁のほうで、法務省のほうでお考えになっているその容疑がいよいよあるとするならば、一体事件が発生した、要するに公訴の時効が進行するその時期は一体いつだというふうにお考えになっているのか、公訴の時効の完成はいつになるのか、お聞きしたいのはその点なのです。いつ事件が発生したというふうに検察庁はお考えになっているのかということです。
  170. 川井英良

    ○川井政府委員 犯罪捜査の機関は検察官だけではなくて警察もあるわけでございますが、新潟地検としましては、この事件が国会でも問題になったことにかんがみまして、私ども中央のほうから特に検察庁に、この事件については最大の関心を払って内偵なり調査なりを進めるようにという指導をしているわけであります。  そこで問題の核心でございますが、これは要するに犯罪が成立したときから公訴の時効というものは進行するというふうに考えるのが当然のことであろうと思います。そこで本件につきましては、いろいろ調査し、また聞くところによりますと、死亡されたり、あるいはその結果病気になられて療養中の方もある、こういうことでございますので、その方が、いつどういうふうな事情と原因によってそういうふうな病気になられたか、あるいは何を原因として死亡されたかというようなこと、それは個々について具体的に調べてみないとわかりませんが、もしこれが議論されておりますように、この廃液が原因としてそういうようなことになったというようなことが、科学的の経路によって、また証拠法上の証拠によって立証されたということになりますならば、そういうふうな廃液が流され、またその廃液を含んだ魚を食したというようなことがいわれておりますけれども、もしそういうふうなことが事実関係として立証されるならば、そういうときからおそらく犯罪が成立し、またそこから時効が進行してくる、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
  171. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。そうすると、廃液が流されたとき、そのときに犯罪の着手があった、そうして人が死亡したときに犯罪の完成があったということになると、すでに内偵をなさっておられるそうでございますけれども、業務上過失致死ということになった場合に、人の命は返ってこないのだという前提でお尋ねをいたします。一体時効はいつ完成するということになりますか。そういうことについて大体のところでけっこうです。昭和何年の何月ごろに最初になくなった人がいる、名前もけっこうです、私は時効が非常に迫ってきているという前提でお尋ねするのです。いつ犯罪が完成し、一体公訴の時効はいつなんだということについてひとつお答えをいただきたい。
  172. 川井英良

    ○川井政府委員 私まだ、実は具体的な事件として検察庁が立件捜査をしているという段階のものではございませんので、人がなくなったというようなことについて、検察庁からの、いつ幾日こういう方がなくなった、それはこういうふうな容疑に基づくものだというようなこまかい報告は受けていないわけでございます。したがいまして、いまの御質問の具体的にどういう人についてどういう犯罪容疑があり、いつから公訴の時効が進行してくるかというようなことについては、いまお答えする資料を持ち合わせておりません。
  173. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。新聞の報道によりますと、要するにもう事件の起きた四十年六月から考えてみると、あと一年しかないのだ、こういうことがいわれているわけです。そこで私は一番初歩的にもとに返ってお尋ねをしたいと思うのです。  これは検察からも報告を受けてないということなら、そういうことでお答えをいただきたいと思いますけれども、要するに検察のお仕事というのは、こんなことをとにかく大先輩の刑事局長さんに申し上げることは非常に恐縮であるけれども、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにする、そうして刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することが検察の目的である、これはあたりまえのことなんです。一体何が検察庁をして捜査に着手させないのですか。一体なぜ捜査に着手されないのか。厚生省まかせだ、あるいはよそにまかせて、よその結果待ちだというふうなことで、そういう結果が出ない限りは検察庁独自の捜査に着手されないという方針、そんな方針を堅持されるのですか、ということを、私はこれは法曹の一人としてどうしても納得できない。人が死んでいるのです。そのことについてひとつお答えをいただきたい。結論が出ない限りは捜査に着手されないのですか、このことです。
  174. 川井英良

    ○川井政府委員 犯罪の捜査は御承知のとおりでありますので、根本論はやめにしますけれども、人がなくなったということは非常に重大なことでありまして、この重大なことを決して検察としておろそかにするわけではございませんけれども、人がなくなった、あるいは人がけがをされた、あるいは変死をした、あるいは病死をしたというふうなことにつきまして、それがはたして刑事事件として立件されるものかどうかということにつきましては、慎重な考慮が必要であるわけでございます。  そこでこの種の事件は、いろいろ問題になっておることから申しましてもおわかりのように、非常に科学的にむずかしい内容のものであります。原因と結果というものの証明が非常に困難である。それが証拠には、最も専門家である厚生省の研究班ないしは厚生省の食品衛生調査会というふうな諮問機関があるのでございますけれども、先般四月八日提出された研究班の結論を、厚生省から聞くところによりますと、諮問機関である食品衛生調査会にかけてその結論を検討中だ、それはごく近い機会に出る予定だというふうなことの通告が私どものほうにまいっております。おそらくそういうふうな結果を待って、そうしてその原因と結果というものを証拠的に固めていくというのでありませんと、ずぶのしろうとである検察官がすぐこの事件に取り組みましてやるにいたしましても、結局鑑定が前提になるわけでございます。この鑑定をする学者が日本にはたして何人あるでありましょうか。私、水俣病のときにも全く同じ経験をしたのでございますけれども、検察庁でやろうといたしましても、日本で最も権威のあるこの道の学者というのはそうたくさんいないわけでございます。大学においてもしかりでございます。したがいまして、そういうふうな科学的な研究というのは、まずほかの行政機関であるものが最初に調査を委嘱してやっておりますので、結局はそういうふうな結論を待たなければ、検察庁が事件といたしまいてすぐ着手いたしましても、正確な鑑定は得られないわけでございます。むしろ、厚生省が主になってその鑑定というか、その調査を急いでおりますので、その権威のある鑑定が出ますれば、それを資料とし、それを証拠として、検察官が事件になるかならないかを検討する、こういうことであります。これはいまの日本の現状におきましてはやむを得ない実情ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。犯罪捜査の任務を法律によって与えられております検察官が、この事件を前にいたしまして決して拱手傍観しておるわけではございません。私は、筋といたしましてはおそらく警察がやるべき事案だと思いますけれども、そうでなくて、検察官みずからもこの事件について事前に相当の資料を集め、さらに関心を持ってその結果を待っておるということでございます。現在の状況はそういうところでございます。
  175. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねいたします。私はきょうは少し納得がいきません。私はあまりしつこく聞かないほうですけれども、きょうは一、二点ちょっと聞かしていただきますが、そうすると、そういうふうな被害が出た、人が死んだ、病気になった、手が動かなくなった、そういうふうな状況の事実を昭和電工のすぐ近くにある新潟地検が探知されて、そのようなことについての鑑定あるいは鑑定の依頼——鑑定をすべきだというようなことについていつ法務省と相談をされましたか。法務省とこの問題についての方針をおきめになったのは一体どの段階なんですか。先ほど局長の御答弁によりますと、国会で問題になったから放置していないという趣旨の——聞き間違いかもしれません。そういう御答弁がありました。国会で問題になったからじゃないですね。事件はずっと以前にあったのです。放置されておればこそ国会で問題になったのです。だから逆にお尋ねいたしますけれども厚生省がこの件についてのいわゆる調査に出向いたのは、法務省との打ち合わせの上で行かれたのかどうか。あるいはまた法務省が厚生省に強く要請をされて、そうして厚生省が出向いたのか。そういうような事実なんでしょうか、どうでしょうか。要するに、検察庁としては拱手傍観していないとおっしゃるけれども、いつどのような時期にこの事件を捜査すべきかどうかの判断をすべきだということについての方針をおきめになったのか、この点について私はお答えをいただきたいと思います。
  176. 川井英良

    ○川井政府委員 参議院の予算委員会で問題になったときに、新潟地検のこの事件に対する対処の心がまえなり状態はどうなっているかということを直ちに照会いたしましたところ、新聞等においてやかましく報道されておるという事実も踏まえて、前からこの事件については関心を持って捜査当局が内偵をしておる、こういう報告を受けました。
  177. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたしますけれども、問題は、先ほど局長の御答弁の中に鑑定を必要とするのだ、そして内偵だ、こういうふうな御答弁がございましたね。そうすると、とにかく鑑定をしよう——ある意味ではこれは完全犯罪ですよ。この事件について、とにかく岩をも貫くような気持ちで検察庁が独自に鑑定をやり、他の行政機関と相協力をして、この問題について早急に科学的な結論を出そうということで法務省が口火を切られたという事実があるのですか。この点をまずお答えをいただきたい。
  178. 川井英良

    ○川井政府委員 そういうことはございません。
  179. 中谷鉄也

    中谷委員 公害課長にお答えをいただきたいと思います。  法務省から要請を受けて、法務省の捜査の資料を提供するというような趣旨で、そのような鑑定あるいは調査におもむかれたという事実はない、こういうようにいま川井さんの御答弁にありましたけれども厚生省のほうでもそのようにお聞きしてよろしいかどうか、その点だけです。
  180. 橋本道夫

    橋本説明員 非常に申しわけございませんが、調査の点は全部食品の衛生課に一元化しておりますので、そちらのほうでどのような経緯があったかということにつきましては、ただいま非常に急な御質問でございましたので、食品衛生課のほうから人が来てもらうように言っておりますので、私即答をいたしかねます。
  181. 中谷鉄也

    中谷委員 私、こういうようにお尋ねしておっても非常に残念で、この問題についてはぐっと胸にこみ上げてくるような感じがするのです。率直に申し上げて、検察庁はなお国民の信頼を失っていない役所の一つだと思うのです。いろんな問題はあります。いわゆる公安条例の問題だとか、あるいは道交法についての問題だとか、いろんな問題がありますけれども、なお大部分の国民の信頼をつないでいる役所の一つだと思うのです。阿賀野川の被害者は、自分たち加害者だと思い込んでいる会社からは捨てられ、しかもほかの役所も信頼できない。公益の最大の代表者であるところの検察庁も他の役所待ちだというようなことでは、被害者は一体だれをたよったらいいのですか。結局、やむなく貧乏のどん底に落ち込んだところの被害者が弁護団を編成して裁判所に民事の訴訟を起こしている。私的な救済を求める以前に、なぜ公益の代表者であるところの検察庁のほうが権力を発動されないのか。鑑定が大事だということは私もわかります。だからといって捜査に着手して悪いという理由が一体どこにあるのですか。鑑定と捜査の着手、人的証拠の収集と並行してやってなぜいけないのですか。この場合守られなければならない基本的人権というのは、昭電側の工場長あるいは昭電側の重役、そういう人をもしかりに容疑がないのに被疑者扱いをして引っ張たっら、基本的人権はなるほどその面においてはある程度制約されるでしょう。しかし、そのようなことは、この公害がやかましい現代社会においては受忍すべきことなんです。そういうようなことは、とにかく忍ぱなければならないことなんです。そのような人的証拠というふうなことについて、やってもむだだというふうなことは絶対にないと思います。私は捜査というものは許しくわかりませんけれども、そういうような捜査の着手さえもしておられないということについては納得がいかない。捜査をはばんでいるものは一体何なんですか。なぜそのような捜査に着手されないのですか。証拠の収集ということは現在やっておられないということですが、証拠の収集をやっておられれば捜査に着手したということになると思うのです。そういうような捜査の着手をされておらないということは、私は納得いきません。お答えいただきます。
  182. 川井英良

    ○川井政府委員 何もやっていないということは先ほどから申し上げておりませんで、詳しくこまかい内容まで報告に接しておりませんけれども新聞にも出ておりましたように、この事件のあれについては、検察官としては検察官なりのそれぞれ調査なり内偵をしておると思います。ただ、検察官がこれは刑事事件であるとして立件し、捜査に踏み切るということは、御存じのとおり刑事訴訟法上に基づいた資料なり証拠がなければ動けないわけです。本件について、確かに公害問題は非常にめんどうで、また全国民公害防止ということに関心を持っている。私もよく承知しているつもりでございますけれども、検察官が、いわゆる捜査権限を持っている者が、その証拠なくして、また将来の立件になる見通しなくして軽々に捜査権を発動するというようなことについては、これは私、相当慎重でなければいけない、こう思うわけであります。したがいまして、この種の事件につきましては、やはり科学的な資料というものが中心でありまたそれが前提である、これは御存じのとおりだろうと思うわけであります。この科学的な権威のある調査結果を待って、立件すべきものなら立件して迅速に捜査に踏み切るというのが、私、これは捜査官に与えられたまことに慎重であり相当な態度である、こう思うわけでございます。
  183. 中谷鉄也

    中谷委員 かりに電車が転覆したとする。その場合まず現場を押えますね。現場の変更をしないようにして、それから大学の工学部に頼んで鑑定をしますね。現在は、現場が変更されようが、証拠が散逸しようが野放しの状態でしょう。そしてしかも、その鑑定は全然検察庁とは独自の、検察庁の捜査目的とは全然別のどこかよその役所や、よそのところでやっているものをとにかく利用しましょうというお話じゃないですか、お話としては。自分の力で、これだけ全国民が阿賀野川問題をどういうふうに検察が処理するかということは、検察に対する国民の信頼をつなぐかつながないかの問題だと私は思うのです。その問題について——私は捜査はもちろんしたことはありませんし、捜査のしろうとです。局長のように私は捜査のベテランじゃありませんけれども、鑑定の結果を待たなければ何にもできないのだというふうなことは、私は法律家としてそれは信じられません。また、そういうふうな局長の御答弁には、私は、はいそうですかと言って引き下がるわけにはまいりません。そんなことなら、いままでのいわゆる航空機の事件にしろ何にしろ、全部科学的な鑑定を待つまで、全然人を呼ばなかったか、呼んでやっているじゃないですか。それがあたりまえだと思うのですが、昭和電工の関係のいろいろな人を呼んで調べるということがどうして悪いのですか。それをはばんでいるものは一体何ですか。私はそういうことはわかりません。そんなことをしてもむだというのですか。じゃ、もう一度お尋ねしますけれども、新潟地検で一体これはだれが主任になって、どんな体制で、いつでもこい、いつでも捜査しましょうという体制になっているのか、そんなことについての御報告を受けておられますか。その点についての御答弁もあわせていただきたい。
  184. 川井英良

    ○川井政府委員 後段からお答えしますと、この種事件は非常に重大な事件であるということで、聞いたところによりますと、地検の次席検事が主任になって調査を進め、また責任を持ってやっているということで、私も相当な体制ではないか、こう思っております。  それからなお、検察に対すそ非常な激励と、また御信頼に基づく御質問だ、こう私も考えますが、非常にうれしいのでありますけれども、戦後は御承知の通り、大きな航空事故でも、それから自動車の事故あるいは電車の事故でも、これは実は御案内のとおり全部警察官がやっているわけであります。いずれにしても、もし事件になれば検察庁へくるわけでありますから、日がたってからきた事件を検察官が見ましても、現場の状況の再現ということは非常に困難でありますので、捜査に協力するという面で、特殊重大なものにつきましては、随時検事がオブザーバー的なかっこうで現場に臨んで、警察官のやる検分なりあるいは検証というようなものを見分するというかっこうになっておるのが、現在におけるこの種事件に対する検察庁の捜査のあり方であるわけであります。したがいまして、この種事件につきましては、ごく特異な事件だということで地検が次席検事を主任検事に任命して、前からこの事件についていろいろ関心を持って警察当局と並んで調査を進めているということでございますので、捜査の体制なりやり方なりにつきましては、私は地検のやり方でいいのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。
  185. 中谷鉄也

    中谷委員 こういうふうなことばを局長御存じでしょうか。検察公害ということばがございます。これは公害特別委員会ですからあえて申し上げます。検察公害ということばがある。どういうことかというと、これはもちろんいろいろな言い方はあると思うのですけれども、いわゆる公益の代表者たる検察官というのは事件にならなければとにかく何もかもほったらかしなんだ、これは大内兵衛さんのことばなんです。「日本の裁判制度」というあの有名な本の中で。それに対して、我妻先生は、検察官というものは事件がないのに捜査するわけにいきませんよという、大内先生に対して専門家立場からお話しになっておる。しかし問題は、私は検察公害というようなことばをここで云々するのじゃないけれども、もう一度申し上げますけれども、そうすると、新潟地検としては、新潟の昭和電工を所轄しておる警察に対して、この事件はもうすでに具体的な事件でありますね、立件されておるかどうか、その点についての一歩踏み込んだところまでいっておりませんけれども、一般的な指示権はないにしても具体的な指示権はあるわけですが、具体的な指示権を出されたというふうな事実はございますか。この点、あるかないかだけお答えください。
  186. 川井英良

    ○川井政府委員 たいへん申し上げにくいのですけれども、刑事訴訟法百九十二条、三条をよくひとつごらん願いたいと思います。検察官は警察官に対して一般的指揮権はありますけれども、原則として具体的指揮権はないわけであります。これは戦前と最も大きな相違でございます。したがいまして、戦後における警察と検察との関係は原則として協力関係であります。検事がみずから捜査した事件、ないしは警察から送致を受けた事件について、その具体的な事件について若干の補充捜査を必要とするというふうな場合に、初めて具体的捜査権がその三項で働くわけでございます。その働く場合においても、この関係は指揮権ではなくて、これは本筋である協力に基づく関係のものだというのが現在の百九十二条、三条に対する解釈の通説でございます。そういうふうな関係になっております。しかし、いまここで、この種の重大な事件を前にいたしまして、指揮権があるとかないとかいうようなことは私は実は申し上げたくございません。やはり検察は検察として、指揮権があろうとなかろうと、独自の立場に基づいて万難を排してやるべき事件はやるということが私は正しいと思いますので、きょうの御指摘もありましたので、その趣旨を十分くみまして間違いのないように新潟地検に対して指導をしてまいりたい、こう思います。
  187. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねします。百九十二条、百九十三条でございますね。それではあらためてお尋ねします。  司法警察職員、いわゆる所轄の警察署と互いに協力しなければならない。それではそういうふうな話の打ち合わせ、これを新潟地検としておやりになった事実はありますかどうか、百九十二条の関係でもう一度お尋ねします。  そこで、いま一度百九十三条を拝見をいたします。そしてお尋ねをいたします。要するに、こういうふうな具体的な事件がある。これはたいへんな事件です。こういうふうな事件について、しかし一般的な指揮という百九十三条の一項によって、こんなことをぼやぼやしておったらいかぬじゃないか、これは具体的な指示と一般的な指示というものははっきりしませんけれども、こういうようなことについて、警察に対して指揮をされたという事実はあるのかどうか、この点はいかがでしょうか。  さらにお尋ねをいたしたいと思いますが、そうすると検察官は、この阿賀野川の事件については、新潟地検御自分で捜査をしようという決意をお持ちになっておられるか。要するに、百九十三条の三項の決意、そういうふうな決意をお持ちになっておるというふうにお伺いしてよろしいでしょうか。
  188. 川井英良

    ○川井政府委員 一般的指揮権というのは、ここで講釈をするつもりはございませんけれども、阿賀野川の事件というようなものは早急に捜査に着手すべきだというふうなことを、検事正が管内の警察官に対して一般的指揮をすることは相当でない、そういう解釈になっております。言うなれば、もっと抽象化いたしまして、公害ということが非常に国民の健康をむしばんでいる、それからまた放置するならば社会的な不安も醸成されるというふうな状況にある。だから当面の捜査官の方針としては、公害的なそういうふうな犯罪について大いに目を向けるべきだ。こういうふうな趣旨の指揮ならば、一項にいうところの一般的指揮で私はできると思う。具体的な事件をつかまえて、この事件を君のところの署でやれ、こういうことは今日の刑事訴訟法では警察との関係においてやらないし、またできないというふうな話し合いになっております。  それから第二点でありますけれども、この事件について具体的に検察官と所轄の警察署との間に、この事件を捜査するかしないか、また、するとするならばどちらでやるかというふうなことについて話し合いをしたかどうかについては私聞いておりません。また次の機会に、一応照会した上でその事実を明らかにしてみたいと思っています。  それから第三点は、百九十三条の三項の具体的指揮権に基づいて、検察官がみずからこの事件を事件として捜査するという決意をしているのかどうか、その決意をしているならば、その三項の具体的指揮権に基づいて警察を指揮できるじゃないか、おそらくこういう御質問だろうと思う。この事件については、先ほどもるる申し述べておりますように、新潟の地検が事件として捜査をすべきだというたてまえに立って次席検事を当面の責任者に指名しているということでありますから、警察の意向いかんにかかわらず、検察庁独自の立場で事件として捜査をしたい、すべきだという考えに立っていることは間違いございません。
  189. 中谷鉄也

    中谷委員 では、お尋ねをいたします。そうすると、検察庁がこの事件について捜査に着手されるという資料がどこから出てきたときに立件する、あるいは立件しない。要するに、捜査に着手していくんだということについての判断、決意をされるのかどうか。  それと、いま一つお聞きしておきますけれども、いずれにしても捜査をしないというときには、頭からもう事件にならないんだから捜査をしないんだというものでは私はないと思うのです、公益の代表者である以上は。要するに、犯人が死んだって捜査はしますね。殺人が行なわれた、犯人も死んだ、これは処罰する犯人がなくなってしまっているんだけれども、結局捜査はされますね。だから、事件になるのかならないのかという立場から徹底的に真相の究明をされるというのが検察の立場だと私は思うのです。そういうことになってくると、私は何が一体その捜査をはばんでいるのかということがどうしてもわからないのです。要するに、事件になるのかならないのか。これだけ世間が騒いでいるわけでしょう。社会党の調査団が行っているわけでしょう。民事の訴訟が提起されているわけでしょう。民事の訴訟というのは、加害者がいて、被害者は死んだんだ、その被害者の遺族が慰謝料の請求の訴訟をしているわけでしょう。一つの在野法曹の弁護士がついて、因果関係があるんだ、故意、過失があるんだということで民事の訴訟を起こしているんです。全然勝つ見込みのないものだったら訴訟を起こしませんよ。そういう訴訟を起こしているんでしょう。そういうふうな権力も持たない、強制捜査権もない在野の法曹でさえも、どんなことがあってもこの事件は勝ってみせるんだといって訴訟を起こしている、それを公益の代表者である権力をお持ちになっている検察官がなぜ捜査できないのか。あるいはなぜ捜査をしないのが適切だというふうなことが出てくるのか、どう考えても私は理解できない。なぜすみやかに捜査に着手されないのか。それが検察の国民に対する期待にこたえる道であり、国民の検察に対する信頼をつなぐ道ではありませんかと聞いているのです。いかがでしょうか。
  190. 川井英良

    ○川井政府委員 捜査をしないとは申し上げておりません。むしろ捜査をするという前向きの体制で新潟地検はかまえをとっているということを申し上げました。しかしながら、捜査というものは素手ではできないのでありまして、もう一つ、また強制捜査一つするにしても裁判所の令状なくしては捜査らしい捜査はできないわけでありまして、さような令状がいまの段階においてとれるでしょうか。私はなかなか令状はこの種の事件につきましては出ないと思います。先ほど例をあげられましたけれども、汽車が転覆したというような事件は、おそらくその運転者の業務上の過失に基づいて直ちに死傷という結果が招来しておる。本件の場合、これは具体的な内容になりますから検察の現場におらない私がここでいろいろ申し上げることは適当でないと思いますけれども、廃液と死亡ないし死傷等の原因の中にまたいろいろほかの因果関係がはさまっておるわけですね。そういうふうな段階におきまして、おそらく新潟地検としては、私ここで申し上げることは適当でないと思いますけれども、いろいろきびしい御質問がございますけれども、実際はかなりなことをやっておるのではないかと思います。ただ残る問題は、この死亡なり障害なりと、この廃液が故意または過失によって流されたこととの間に科学的な因果関係があるということによって、事件が白か黒かすぐきまる問題ではないでしょうか。ほかにむしろどういう捜査が必要な事件かというくらいな問題だろうと思います。したがいまして、その辺のところは権威のある国家がやっておるこの事件についての大がかりな、しかも日本の権威をすぐっての調査の結果というものが、聞くところによりますとごく近いときにこれを出したいし、また出すといっておりますので、それを受けて、いままでの調査した資料とあわせて、事件になるかならないかを判定して結論を出したい、こういうことでございますから、御指摘にありますように捜査をはばんでいるものは何か、こう聞かれると、実は私は返答に困るわけでありまして、何も別に捜査をはばんでおるわけではありませんで、そういう有力なきめ手となる最も有力な権威ある資料が出ることを検察官は首を長くして待っておるのだということでありますから、私どもといたしましては随時関係方面と連絡いたしまして、なるべく早くこの権威ある調査結果を出してほしいということを要望しておるわけであります。どうぞひとつ御了解をいただきたいと思います。
  191. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。納得できない点があるのです。強制捜査権が発動できない、令状がとれない、だから令状請求しない、令状請求して却下されたらあまりかっこうがいいものでないからしない、これはよくわかります。そうすると、今日まで物件を任意領置などされた事実はございますかどうか。私、先ほどちょっとその点をお尋ねしましたが、要するに、厚生省関係の方はおいでいただきましたけれども厚生省関係調査、あるいは立ち入って検査される防疫班、疫学班についてはどの程度の権限があったか疑問があると思う。しかも証拠の散逸あるいは証拠の隠滅などということについての責任は、捜査に着手しなかった検察官が結局全部負わなければならぬ問題でありましょう。要するに局長さんのおっしゃるのは、工場排水口から水銀が出た、それと結局なくなった人との間の因果関係さえ立証されたら、それで有力なんだとおっしゃるけれども、そのことについての故意、過失という人間との結びつきというのを御捜査になるのが検察官のお仕事でありましょう。こんなことを申し上げるのはそれこそまさに釈迦に説法でございますけれども、なぜ人的な問題について固める仕事をされないのか、どうして一番基本の因果関係のところの判定を首をツルのように長くして待たなければいけないのかということが、どうしても私は納得できないのです。証拠が散逸したり現状変更されたり、また散逸するどころか、隠滅することについての防止の方法というものは、手をこまねいて拱手傍観するのではないとおっしゃるけれども、拱手傍観することになるじゃないかということがどうしても私は言いたいことなんです。現場の写真なんかはおとりになっていますか、あるいは当時の現場については現在も変わらないままだというようなことを、ここで局長さんの口から言っていただけるかどうか、そういう点がこの事件についての一つのポイントでございましょう。いかがでございましょうか。
  192. 川井英良

    ○川井政府委員 事件の捜査として証拠品を領置しているかどうか、それから現場の模様について写真等を撮影して現場保護の措置をとっているかどうかというふうなことは、事件のごく具体的な内容でございますので、私はよく承知しておりません。また、この種の事件について、これから事件にしていこうというふうな内容のものでありますから、これが事件になった場合またならなかった場合、いろいろまた影響があろうかと思いますので、その事件の捜査の内容について具体的に申し上げることは適当でない、これは何事件に限らずそういうふうな態度がいいだろう、こう思っております。
  193. 中谷鉄也

    中谷委員 いつもそういう御答弁が出るのですけれども局長さんが私に、中谷君、そんなもので一体強制捜査ができるか、こうおっしゃるから、それでは任意領置していますか、こう聞いたんです。そうですね。捜査の秘密とかなんとかでなしに、令状がとれますかというようなことをおっしゃるから、任意領置していますかということを聞くのは当然でしょう。具体的事件について捜査の秘密だからとおっしゃるのでは、私、先ほどの御答弁は何だか納得がいかない、どうもすっきりしない。いつもの局長さんに似合わずはっきりしない。しかし、いずれにしてもこういうことなんですね。時間もあまりないようですから、これは検察をある意味においては信頼し、ある意味においては激励し、ある意味においては在野法曹として非常に不満だという立場でお聞きするのですから、事件として御捜査になるたてまえの前提には、業務上過失致死傷になり得る、要するにほかの法律の違反になるかもしれませんけれども、まず大きな柱は業務上過失致死傷、そういうたてまえでまず事件を捜査されようという姿勢をおとりになっている、その姿勢は絶対くずさないのだということが一点。いま一つは、首を長くして調査結果を待っているということ、この二点。  では、その調査結果というのは、各方面とおっしゃったけれども、一体どことどことの調査結果が出たらいよいよ検察はこの問題について乗り出されるか。死んだ人のお盆も近づいてきます。霊は浮かばれないと思います。いつどことどことの調査結果が出たら検察は乗り出されるか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  194. 川井英良

    ○川井政府委員 二点ございましたけれども、最初の第一点のほうは、水銀の規制に関する特別法がありますけれども、私はこの事件の筋というのは、やはり御指摘の刑法の業務上過失致死傷、これがこの事件の筋だろうと思います。ただ、具体的に新潟地検がいかなる法条を適用してやるかは別問題でございまして刑事局長としては御指摘の法条の適用が筋であろう、こう思っております。  第二点の関係方面は、厚生省がおいでになったようでございますので、厚生省のほうにまずお聞きを願いたいと思います。
  195. 中谷鉄也

    中谷委員 局長厚生省に聞くことは簡単なんです。ただ、日本じゅうを騒がしておる事件なんですから、局長の頭の中に、どこの資料が入ったらその資料をもとにしてというおことばを局長の口から言っていただきたいのです。
  196. 川井英良

    ○川井政府委員 わかりました。厚生省の研究班が四月八日に厚生省に対して報告書を提出されたということを聞いております。厚生省は、それにつきましてさらにまた別な調査会にかけて、その結果の検討をしておる。こういうことでございますので、その後、関係官庁は厚生省だけではございませんで、先ほどここにも見えておりましたいろいろな官庁が、このことについて行政的なまた科学的な観点から、それぞれ関係を持っておられることであります。先ほどの食品衛生調査会ですか、そういうようなものの結論が出た後には、早急に直ちに関係のある行政官庁がその取り扱いを協議して、国としての立場からの権威のある調査結果が出るだろう、こう思っておるわけであります。
  197. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に一点だけお尋ねしますけれども、いやしくも結果は出た、捜査に着手をした、公訴の時効になってしまった、死んだ人の魂が浮かばれないというようなことだけはない。全力をあげて、責任をもって事件処理になるまで、公訴の時効というようなことで罪のある者がのがれるというようなことは断じてさせぬということだけは、局長さんから責任をもって御答弁いただかなければならぬ、これが一つ。  いま一つは、本件の捜査にあたっては、非常に困難な事件である。しかし、何といっても人が死んでいる事件ですから、場合によっては強制捜査、要するに逮捕、勾留というようなことも、必要な場合にはこれをも辞さぬということだけは、捜査の進展によってはそういうこともあり得るということはひとつ御答弁いただきたい。  いま一つ。最後に、私自身も、この新聞を見て非常にショックを受けたけれども、「水俣病立証できない」「地検、捜査不適切と結論」などということは、これは法務省においても全くそのようなことはあり得ないことである。現にいわゆる内偵を続けておるのだ、努力を集中しておるのだというふうに伺いたいと思うのです。  いまの二点についてお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  198. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的には、現場の検察官が独自の独立した立場において捜査を進めていくということでありますけれども、法務省といたしましても、いま御指摘のような事柄につきまして、断固たる態度でもって、そうしてなるべく迅速に、しかも公正妥当な結論を得るように努力するように伝えたいと思います。
  199. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に一点だけ厚生省の方に伺いますが、いつ結論が出ますか。
  200. 石丸隆治

    ○石丸説明員 ただいま食品衛生調査会で審議中でございまして、食品衛生調査会の結論は、一応二カ月をめどにやっておりますが、ただいまのところ若干延びる予定でございます。ただいまの予定では、七月中には何らかの結論を出す、こういう予定で作業を進めております。
  201. 中谷鉄也

    中谷委員 どうも私厚生省の方の答弁がよくわからない。「何らかの」というのは、そのどちらかという趣旨ですか、それとも中間報告というような趣旨なんですか、それはどうなんですか。
  202. 石丸隆治

    ○石丸説明員 ただいま申し上げましたことは、実は食品衛生調査会に対する諮問が二つの点がございまして、第一の点が、今回の事件の調査の検討でございまして、この点につきまして七月中には結論を出す、こういうことでございます。第二点の、今回の事件と離れまして諮問をしております形というものか、水の汚染に伴う食品によそ危害、こういう諮問をしておりますので、その後段の一般的な点につきましての結論が七月中に出るかどうか、この点につきましてはまだわからない、こういうことでございます。
  203. 中谷鉄也

    中谷委員 けっこうです。終わります。
  204. 八木一男

    八木委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時四十九分散会