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1967-06-07 第55回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第8号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
四十二年六月七日(水曜日) 午後一時四十三分
開議
出席委員
委員長
八木
一男君
理事
天野 公義君
理事
奧野
誠亮
君
理事
小山 省二君
理事
丹羽 兵助君
理事
板川 正吾君
理事
島本 虎三君
理事
折小野良一
君 亀岡 高夫君
塩川正十郎
君 砂田 重民君 葉梨 信行君
橋本龍太郎
君 藤波 孝生君 三原 朝雄君 加藤 万吉君 河上 民雄君 工藤 良平君
中井徳次郎
君
中谷
鉄也
君 吉田 之久君 岡本 富夫君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君 運 輸 大 臣 大橋
武夫
君
出席政府委員
経済企画庁水資
源局長
松本 茂君
厚生政務次官
田川 誠一君
厚生省環境衛生
局長
舘林
宣夫君
通商産業省鉱山
局長
両角 良彦君
運輸省海運局長
堀
武夫
君
委員外
の
出席者
議 員
角屋堅次郎
君 議 員
折小野良一
君
農林省農地局計
画部資源課長
上田 克巳君
食糧庁業務
第二
部砂糖類課長
石田 徳君
通商産業省企業
局立地公害部長
馬場 一也君
運輸大臣官房審
議官
鈴木 珊吉君
運輸省海運局次
長 高林 康一君
運輸省海運局参
事官
野村 一彦君
海上保安庁警備
救難監
猪口 猛夫君
建設省河川局水
政課長
上妻 尚志君
—————————————
六月七日
委員中井徳次郎
君
辞任
につき、その
補欠
として
中谷鉄也
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員中谷鉄也
君
辞任
につき、その
補欠
として中
井徳次郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
六月二日
公害対策基本法案
(
内閣提出
第一二八号)
公害対策基本法案
(
角屋堅次郎
君外六名
提出
、
衆法
第一一号)
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置
法案
(
角屋堅次郎
君外七名
提出
、
衆法
第一二 号) 同月七日
公害対策基本法案
(
折小野良一
君外一名
提出
、
衆法
第一六号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件 船舶の油による海水の
汚濁
の
防止
に関する
法律
案(
内閣提出
第六〇号)
公害対策基本法案
(
内閣提出
第一二八号)
公害対策基本法案
(
角屋堅次郎
君外六名
提出
、
衆法
第一一号)
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置
法案
(
角屋堅次郎
君外七名
提出
、
衆法
第一二 号)
公害対策基本法案
(
折小野良一
君外一名
提出
、
衆法
第一六号)
産業公害対策
に関する件(
自動車排気ガス
及び
水質汚濁対策等
) ————◇—————
八木一男
1
○
八木委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
の
公害対策基本法案
、
角屋堅次郎
君外六名
提出
の
公害対策基本法案
、
角屋堅次郎
君外七名
提出
の
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置法案
及び本日付託されました
折小野良一
君外一名
提出
の
公害対策基本法案
を
議題
とし、順次
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
八木一男
2
○
八木委員長
坊厚生大臣
。
坊秀男
3
○
坊国務大臣
ただいま
議題
となりました
公害対策基本法案
の
提案
の
理由
を御
説明
申し上げます。 近年
わが国
においては、目ざましい
経済
の
高度成長
が遂げられつつあり、
産業構造
の
近代化
、
人口
の農村から
都市
への
集中
、
工業地帯
の
形成等
が予想を越えた速度で進行しておりますが、このような急激な
経済的社会的変動
の過程において、
企業
の
公害防止施設
や
社会公共施設
の
整備
の立ちおくれ、
立地
や
土地利用
に対する適正な配慮の
不足等
のため
大気
や水の
汚染
、
騒音
、
悪臭等
による
公害
の
発生
が各地に見られ、人の健康や
生活環境
に対する脅威となって、重大な社会問題を引き起こしております。 このような
公害
を除去するため、
政府
としては、従来、
大気
の
汚染
、
水質
の
汚濁等
の
発生源
の
排出
の
規制
、
公害防止施設
の
整備
を促進するための金融上、
税制
上の
措置等
をそれぞれ講じてまいったところでありますが、
公害
問題は、複雑かつ困難な問題を内包しているため、必ずしも満足すべき
効果
をあげえず、また
対策
が制度化されていない
公害
も残されている
現状
であります。 これらの個々の
対策
を今後とも強化充実することは、もちろん必要とするところでありますが、
公害対策
は、相互に有機的な
関係
を保ちつつ総合的、
計画
的に推進される必要があり、そのためには
公害対策
の共通の
原則
を定め、
事業者国
及び
地方公共団体
の
公害
の
防止
に関する
責務
を明らかにし、
公害防止
のための基本的な
施策
を確立することが重要であります。 このような見地から、
国民
の健康を保護するとともに、
生活環境
を
経済
の健全な
発展
との
調和
をはかりつつ保全することを
目的
として、ここに
公害対策基本法案
を
提案
することといたした次第であります。 次にこの
法律案
の
概要
について御
説明
申し上げます。 第一に、
公害
の
防止
に関する
事業者
、国、
地方公共団体
及び
住民
の
責務
を明らかにしたことであります。 第二に、
大気
の
汚染
、
水質
の
汚濁
及び
騒音
については、
環境基準
を定めることとし、
公害防止施策
は、この
基準
の
確保
を目標にして総合的かつ有効適切に講ずべき旨を
規定
いたしたことであります。 第三は、
公害
の
防止
のために国及び
地方公共団体
の
実施
すべき
施策
について
規定
するとともに、
特定
の
地域
については、
施策
の総合的な
効果
を
確保
するため
公害防止計画
を策定し、その
実施
を推進することといたしております。 その他、
公害
にかかる
被害
に関する
救済制度
の
整備
の促進、
公害防止
についての
費用負担
、
財政措置
並びに
公害防止
のための
行政組織
として
公害対策会議
及び
公害対策審議会
を
設置
することを
規定
しております。 以上がこの
法律案
の
提案理由
でありますが、何とぞ慎重に御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
—————————————
八木一男
4
○
八木委員長
角屋堅次郎
君。
角屋堅次郎
5
○
角屋議員
二
法案
ございますが、まず冒頭に
公害対策基本法案
について御
説明
申し上げます。 私はただいま
議題
となりました
公害対策基本法案
につきまして、
日本社会党
を代表して、
提案
の
理由
並びにその趣旨を御
説明
申し上げたいと存じます。 およそ
公害
は、今日、洋の東西を問わず、
産業
、
経済
の目ざましい
発展
、
人口
の
都市集中化
、
交通機関
の高度の
発達等
に伴い、逐年
増大
の
傾向
を示し、大きな社会問題政治問題になっております。したがいまして、いづれの国においても、
国民
を
公害
から守るために、
公害
の
予防
、
排除
、
救済
について、思い切った
措置
を講ずべきことは、まさに
現代政治
に課せられた重大な
責務
と申さなければなりません。
災害
は忘れたころにやってくるということわざがありますが、
公害
には必ず
公害
の
発生源
があり、この
発生源
に対する総合的な
対策
を誤れば、ときに
被害
が
人命
にまで及ぶことがあります。かの有名なイギリスの
ロンドン事件
では、一九五二年十二月五日から九日まで約一週間のスモッグで、四千名にのぼる痛ましい
犠牲者
を出しました。また、ベルギーの
ミューズ事件
、
アメリカ
の
ドノラ事件
、メキシコの
ポザリカ事件等
でも相当の
死者
を出しております。
わが国
では、熊本の
水俣病事件
で四十一名の
死者
を出し、その
原因
の
徹底的究明
をあいまいにしている間に、第二の
水俣病事件
が新潟の阿賀野川で
発生
し、現在大きな社会問題、政治問題になっていることは、御承知のとおりであります。いやしくも、
公害
が
人命
にまで
被害
が及ぶことは、
近代国家
の恥辱であり、人道上からも絶対許し得ないところであります。この
意味
で、二度にわたる
水俣病事件
の
政治的責任
は、きびしく糾弾されなければなりません。
わが国
の
憲法
は、その第二十五条第一項において、「すべて
国民
は、健康で文化的な
最低限度
の
生活
を営む権利を有する」ことを述べ、同条第二項において、「国は、すべての
生活部面
について、
社会福祉
、
社会保障
及び
公衆衛生
の
向上
及び増進に努めなければならない」旨
規定
しております。
わが国
の
公害
の
現状
を見るとき、はたしてこの
憲法
の条項は完全に守られているといえるのであろうか。いな、むしろ、
公害
にかかる
国民
の
基本的人権
は全く無視され、侵害されていると断ぜざるを得ないのであります。 今日、
都市
の
住民
は、
ばいじん
によごれた空気を吸い、
亜硫酸ガス
のためにぜんそくなどで苦しんでおります。かつては魚をつり、遊泳ができるほど澄んでいた川の水は、
工場
の廃液や家庭の
汚水
のためにどぶ川と化しつつあります。また、ジェット機や
交通騒音
のために、静穏な
日常生活
は破壊され、学力の低下や
食欲減退
、高血圧の
増加等
を引き起こしております。
地下水
の過剰くみ上げ等による地盤の沈下は、
災害
の危険を
増大
させております。その上
住宅難
、
交通難
、
生活難
等々が加わるのであります。かくして
都市
の
生活環境
に望まれる安全、健康、能率、快適の
条件
はますます遠のくばかりであります。
東京
都の
美濃部知事
が、選挙の際、「
東京
都に青い空を」と都民に訴えて共感を得たことは、けだし当然のことと申さなければなりません。
日本
の
都市公害
が、
国際的レベル
において決して好
条件
にないことは、
降下ばいじん量一つ
をとってみても、おのずから明らかであります。
降下ばいじん量
は、毎月一平方キロメートル当たりのトン数で表示されますが、
東京
の二十六・五トンに対し、
ロンドン
は半分以下の十一・五トンであり、大阪の三十三・七トンに対し、
ロスアンゼルス
は四分の一以下の七・七トン、ピッツバーグでも半分の十六・四トンであります。その上、
総合エネルギー調査会
や
経済審議会
の
答申
にもあるとおり、
昭和
四十六年度の
総合エネルギー需要
が、
石炭採算
で三億七千万トンと
昭和
四十年度
実績
の一・六倍に達し、しかも石油が
供給構成
の六八%を占めると見込まれております。したがって、
亜硫酸ガス
の
発生等
による
大気
の
汚染要因
がさらに
増大
するわけであり、それに
工場
、
事業場等
の
増加
による
大気汚染
、
水質汚濁等
の
悪化要因
をあわせ考えれば、今後
公害
の
予防
、
排除
のため、
総合計画
に基づく
土地利用区分
の
設定
、
工場立地
の
適正化
、
公害防止施設
の
研究開発
、厳格な
規制等
、なすべきことのきわめて多いことをあらためて痛感するものであります。その際、
アメリカ
の
ロスアンゼルス
、
日本
の宇部市など、
大気汚染防止対策
で顕著な成果をあげてきた教訓は、
公害防止
の指針として積極的に取り上げられなければなりません。 いずれにせよ、今日
わが国
の
公害対策
が、従来のような
産業偏重
、
生産
第一
主義
の
姿勢
では、これからの
公害対策
の万全を期することはとうてい不可能であり、われわれがつとに
国民
の健康、静穏な
日常生活
、
財産
及び
農林水産資源等
を
公害
から守るという
大前提
に立ったみずからの
公害対策基本法案
を提示し、
政府
に強く善処を
要請
してまいりましたのも、
責任
ある政党の
立場
としてけだし当然のことであります。
佐藤内閣
も、われわれの強い
要請
と世論の前にようやくみこしを上げ、先ほど
坊厚生大臣
より御
説明
のありました
内容
の
政府案
を
提案
されたのでありますが、
政府案発表
当時あらゆるマスコミがあげて批判したごとく、
経済界
の圧力に屈して、当初の
厚生省試案
より大幅に後退し、およそ
公害対策基本法案たる
にふさわしいバックボーンに欠けていることはまことに遺憾であります。
政府
は、かっての
水質
二法、
ばい煙規制法等
で、本来の
公害防止
よりも
産業
との
調和
に目を奪われ、ほとんど実効をあげ得なかった過去の誤りを再びここで繰り返さんとしているのであります。われわれは、
わが国
の
公害
の
現状
と将来に深く思いをいたし、
国民
の
公害対策基本法案
に寄せる
期待
にこたえるため最善の努力を尽くさなければなりません。その
意味
において、われわれの案こそまさに
国民
の
期待
にこたえる最良の案と信じ、以下、若干
政府案
にも言及しつつ、その
内容
のおもなる点を御
説明
いたします。 まず第一は、本法の
目的
に関する
事項
についてであります。 われわれの掲げている
目的
は、そのまますなおに御理解いただけると存じますが、
政府案
には「
経済
の健全な
発展
との
調和
を図りつつ、」というきわめて重要な字句が挿入されているところに問題があります。この表現は、第一条の
目的
と第八条の
環境基準
に出ておりますが、本来
公害
の
防止
とは異質のものであり、
国民
の
生存権
にかかる
公害対策
が、
産業界
の要求に道を譲って
公害対策
の万全は期し得ないし、
企業自身
も、他の
企業
の
公害
によって
被害
を受けている
事例
に徴しても当然削除すべきものであります。
国民
の健康と
福祉
の保持が、
事業活動
その他の
経済活動
における利益の追求に優先することを
原則
としない限り、
公害
の
発生
を
防止
することはできないと思考するからであります。 第二は、
公害
に対する
事業者
の
責任
を明確にうたっていることであります。 本来
公害
は
発生責任主義
によって
処理
すべきものであり、
公害
の主たる
発生源
たる
事業者
は、その
社会的責任
の
立場
から見ても、進んで
公害防止
のための万全の
措置
を講ずべきであります。このことは、われわれの
基本的主張
であるのみならず、
公害審議会答申
、
社会開発懇談会中間報告
、
人口問題審議会
の
意見
、
国民生活向上対策審議会
の
答申等
の中でも一致して同様の
主張
を述べております。 従来、
日本
の
事業者
の場合、
政府
の
企業擁護
の
政策
と相まち、
公害
に対する
企業責任
の自覚に欠け、あるいは
責任
を回避する
傾向
の強かったことは、経団連の「
公害防止対策
の基本的な考え方」の中でも、明らかに読み取れる点であります。
事業者
の中には、
日本
の
産業経済
や
地域開発
に貢献しているというゆえをもって、ある程度の
公害発生
は大目にという尊大な気持ちがあったり、あるいは
企業問競争
や
国際競争
に勝ち抜くためには、コストのかさむ
公害防止施設
の
設置
や、
所要
の
公害防止事業
の
実施
などほどほどにという、
企業エゴイズム
の強いものもあります。われわれをして率直に言わしむれば、年間六千億円をこえる
交際費
のたとえ三分の一でも四分の一でも、思い切って
公害防止事業
に振り向けるという新しい
企業者モラル
を持つべきだと思うのであります。 われわれは、一方で強く
企業責任
を追及する
姿勢
をとる反面、
責任遂行
に伴う必要な資金の
確保
及びあっせん、
税制
上の
措置
、
助成金
の
交付等
の
施策
は、
企業
の
実態
に即して十分やってまいりたい
所存
であります。 なお、
公害防止
の徹底と
公害
にかかる
被害
の
救済
に万全を期するため、
事業者
の無
過失賠償責任
を明らかにしたことはきわめて重要な点であります。 第三は、国及び
地方公共団体
の
責務
を明確にし、
公害
の
発生
の
防止
のみならず、
公害
にかかる
被害
の
救済
に関する
施策
を講ずることを明らかにいたしました。 第四は、
政府
が
公害対策
に関する五ヵ年
計画
を作成して、
国会
に
提出
するのみならず、これを広く天下に公表し、毎年その
実施状況
を
国会
に報告する義務を課しております。これはなぜか
政府案
から除かれておりますが、
公害防止
に関する
総合計画
の樹立こそは絶対必要であり、その
年度別計画
の
実施状況
とあわせ、
国会
と
国民
にその
内容
を明らかにすることは、
責任政治
の
立場
から見ても当然のことであります。 第五は、
公害行政
の
一元化
による
所要
の
機構整備
をはかったことであります。 すなわち、今回新たに
公害
の
発生
の
防止
に関する
行政事務
及び
公害
にかかる
紛争
の
処理
に関する
事務
を統一的に、かつ、公正に遂行させるため、総理府の外局として
中央公害対策委員会
を置き、この
委員会
に
事務局
及びその
地方支分部局
、
中央公害対策審議会
並びに
公害防止研究所
を置くことといたしております。 また、都道府県または
指定都市
に
地方公害対策委員会
を置くことができることとし、
地方公共団体
の
自主性
を尊重しつつ、
公害行政
の
一元化
をはかる
所存
であります。これらの新たな
機構
には、
技術的職員
の配置を含め、
公害行政
の
一元的運営
に必要な陣容を
整備
することとし、
公害
に対する
国民
の強い
要請
にこたえてまいりたいと存じます。 この点について、
政府案
は、現
体制
の上に
公害対策会議
といういわば
関係閣僚会議
ともいうべきものを設けるにすぎず、従来の各省のセクショナリズムの
排除
、迅速的確なる
行政運用
などほとんど
期待
し得ないことは、過去の
実績
に徴してもおのずから明らかであります。 第六は、
公害
にかかる
許容限度
の
設定
についてであります。
中央公害対策委員会
は、
中央公害対策審議会
の
意見
を聞いて、
大気
の
汚染
、
水質
の
汚濁
及び
騒音
のそれぞれについて
許容限度
を
設定
することとし、その
基本的条件
は、
住民
の健康、静穏な
日常生活
、
財産
、
農林水産資源等
が侵害されないようにするため、必要かつ十分なものでなければならないと明確に
規定
して、
公害
から
国民
を守る国のき然たる態度を明らかにいたしております。しかも、この
許容限度
については、常に適切な
科学的判断
を加えて、必要な改訂を行なうことといたしております。 第七は、
排出等
の
基準
の
設定
についてであります。
排出等
の
基準
の
設定
については、
中央公害対策委員会
が
中央公害対策審議会
の
意見
を聞いて行なってまいりますが、その権限を一部
地方公害対策委員会等
に委任することができることとし、
中央
、
地方
を通じ、
実態
に即した
機動的運用
をはかる
所存
であります。
許容限度
と
排出等
の
基準
との
関係
は、
発生源対策
としてきわめて重要な点でありますが、
政府案
のように両者の
関係
があいまいで、しかも
環境基準
が
経済
の
発展
との
調和
で制約されるようでは、そもそも
環境基準
を設けた本来の意義が失われてまいります。その点、われわれの案では、前述の
基本的条件
に適合した
許容限度
を越えないという
大前提
に立って、
発生源
たる
事業者等
の順守すべき
基準
を
設定
してまいるのであります。 第八は、
公害
にかかる
被害
についての
救済制度
についてであります。 これは
公害
にかかる
被害
を受けた
国民
からすれば
重大関心事
でありますが、従来の
事例
に微しても、
公害紛争
は、
被害者
と
加害者
の問で短期間の間に
処理
されることが一般的に困難であり、かつ、
加害者
が不
特定
多数で見きわめがたい場合において、現に
被害者
が
公害
にかかる死亡もしくは病気という
事態
も当然予想されます。 したがって、われわれは、
公害
にかかる
被害者
の
立場
に立って、
救済基金制度
や
救済
のための
公害保険制度等
の創設を検討し、その結果に基づく
救済制度
を確立して、
公害
にかかる
被害者
に対する医療の
給付
もしくは
生活費
の
給付
または
公害
にかかる
被害
についての
原状回復等
の
救済
がすみやかに行なわれるようにいたしたいと存じます。 また、
公害
にかかる
紛争
が生じた場合における
中央公害対策委員会等
による
紛争
の
処理
についても、必要な
施策
を講じ、問題を迅速的確に
処理
してまいりたいと考えております。 最後に、
公害
の顕著な
地域等
における特別の
施策
については、
政府案
は、
基本法案
の中に
実体法的性格
の
内容
のものまで含まれていると考えられますが、われわれは、この点については明確に区分し、別に
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置法案
として、
基本法案
と同時
提案
しておりますことを申添えておきます。 以上がわれわれの
提出
いたしました
公害対策基本法案
の
概要
であります。何とぞ慎重御
審議
の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして、
提案理由
の
説明
を終わる次第であります。 引き続きまして、
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置法案
の
提案
について御
説明
申し上げます。 私は、
日本社会党
を代表いたしまして、ただいま
議題
となりました、
公害
の顕著な
地域等
における
公害防止特別措置法案
の
提案理由
と
内容
につきまして、御
説明
申し上げます。 すでに
公害対策基本法案
の
提案説明
の際にも申し述べましたように、今日の
公害
による
被害
の
発生
は日に日に
増大
の一途をたどり、
国民
の健康と
生活
はもとより、その影響は
産業自体
にまで及び、いまや正常な
生産活動
を阻害する
事態
すら招来せしめているのであります。 したがいまして、わが党の
公害対策基本法案
の二十条の
規定
にございますように、特に現在
公害
が著しく
発生
し、また今後著しく
発生
するおそれのある
地域
につきましては、早急に除去または
予防
を総合的かつ
計画
的に
実施
する必要があると考える次第であります。これがこの
法律案
を
提出
する
理由
であります。 以下、その
内容
について御
説明
申し上げます。 第一に、現に
公害
が著しく
発生
し、または
人口
及び
産業
の急速な
集中等
により
公害
が著しく
発生
するおそれのある
地域
について、
中央公害対策委員会
がその
関係地域
の
地方公害対策委員会
に対して、
実施
すべき
公害防止計画
の
基本方針
を示して、その
計画
の策定を指示することといたしました。 また
地方公害対策委員会
は、
中央公害対策委員会
にその指示を求めることができ、
公害防止計画
を作成するにあたっては、
都市計画
その他
土地利用計画
との調整をはかるとともに、
関係市町村長
、
住民
、
事業者等
の
意見
を聞かなければならないことといたしております。 第二に、
公害防止計画
の
内容
は、
公害発生
の
原因
となる
施設
の
立地
及び
土地利用
の
規制
、さらに国または
地方公共団体
の
実施
する
事業
のうち、
緩衝地帯
の
設置
、住居と敷地の買い上げ、家屋と
宅地造成
、
工場移転
、
共同処理施設
、道路、下水道、
汚水処理場
、
清掃施設
、
工場団地
など
公害防止
に
関係
ある
計画
または
事業
を含むこととし、それを推進するために必要な監視、
測定等
の
体制
の
整備
について定めることにいたしております。 第三に、
公害防止計画
を達成するために、国及び
地方公共団体
が十分な
措置
を講ずることはもとより、国と
事業者
はそれぞれその経費の一部または全部を負担することとし、負担すべき
事業者
の範囲と
負担割合
については、
中央公害対策委員会
の定める標準に基づき
関係者
が協議してきめることなど
所要事項
を
規定
いたしております。 何とぞ慎重御
審議
の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
—————————————
八木一男
6
○
八木委員長
折小野良一
君。
折小野良一
7
○
折小野議員
私は、
民主社会党
を代表いたしましてただいま上程されました
公害対策基本法案
の
提案理由
並びにその
内容
につきまして、簡単に御
説明
申し上げます。
わが国経済
の目ざましい
発展
は、一面において、多くの
国民
の
犠牲
の上に成り立っていると申すべきであります。かゝる
高度成長政策
のひずみとして、続発する
公害
は
国民
の健康をむしばみ、
生活環境
の
悪化
はゆゆしい社会問題を惹起しているのであります。しかも
産業
の
集中
と
人口
の
過密化
は、これに対する適切な
措置
のないままに、
公害
の恐怖とその害毒をますます蔓延させているのであります。したがいまして、
公害
の
防止
は、
国民
の健康、
財産
を守り、よき
生活環境
を維持する上で、何をさておいても早急に解決されなければならない国政上の最
重要課題
の
一つ
であると確信いたしますが、現実は、その
施策
の裏づけたるべき法の
整備
が不十分のために、
公害
を全国的に野放しにする結果を招いているのであります。 すなわち、
現行法制
においては、第一に、
公害
と認定される統一された
規定
がなく、そのため
公害排出
に対する
規制
が円滑に遂行されておりません。 第二に、
公害
の
防止
に関する
事業者等
の
責務
があいまいでありましたがために、
公害
の
事前
の
防止
はもとよりのこと、
被害補償
や
苦情処理等
の
救済
も非常におくれているのであります。 第三に、
公害
に関する
基本的事項
が定まっていないため、現在の
公害関連法律
はすべて
事後法
であり、
事前
にこれを
防止
するという十分な
法的措置
がとれない状態にあるのであります。 以上の諸点から、今日の
事態
は
公害
を抜本的に
防止
するための
基本法案
の制定を切実な問題として
要請
しており、本案を
提出
する
理由
はまさにここにあるのでございます。 次に、
法案
の
内容
についてその概略を御
説明
申し上げます。 第一は、その
目的
におきまして、この基本法は
国民
の健康と
生活環境
を守るために、総合的かつ十分な
対策
が講ぜられなければならないことを明確に
規定
したのであります。すなわち
公害対策
についての人間尊重と社会正義の
立場
を宣言したものであります。 第二は、
事業者
、国、
地方公共団体
等の
公害
に対する
責務
を明確に
規定
した点であります。特に
公害
原因
者である
事業者
の
責任
について、故意、過失にかかわらず
責任
を負うべき旨を明らかにし、
公害対策
についての
施策
はすべての
産業
政策
及び
企業
利益に優先して策定され、及び
実施
されなければならないことを明記いたしました。 第三は、
公害
の
発生
の
防止
に関する
計画
等についてでありますが、十年ごとの長期目標を定め、この目標を達成するための
総合計画
及び
年度別計画
を作成し、これを
国会
に
提出
するとともに一般に公表し、または
実施状況
を毎年
国会
に報告することとして、
公害対策
の
計画
的な
実施
を保障しようとするものであります。 第四は、
許容限度
の
設定
と
排出等
の
規制
を行なうための
基準
の
設定
について、明確かつ厳重な
規定
を設けております。
許容限度
については、
地域
の用途別、水域の利用
目的
別、昼夜の別、
人口
密度等を考慮して実効的な
基準
を定め、かつ、運用について適切な
措置
がとられるよう
規定
し、
排出
基準
については、今日までの
対策
の実情を考慮し、より適切な
措置
が行なわれるよう
規定
の
整備
を行ない、特にこの
基準
が最高限度のものであって、できるだけそれ以下にするようにつとめるべきことを明らかにし、また改善命令、停止命令等による
規制
の強化を行なったのであります。 第五は、
公害
に関する研究調査について、科学技術の振興をはかり、必要な指導、助成を行ない、
公害
の
発生
防止
と、
発生
した
公害
に対する適切な
措置
の
実施
を保障するよう必要な
規定
の
整備
を行なうことにいたしました。 第六は、
公害
の顕著な
地域等
における特別の
施策
についてでありますが、このような
地域
については、その
地域
の
公害防止
の
基本方針
を定め、これに基づいて必要な具体的
公害防止計画
を樹立し、その達成に必要な
措置
を講ずべきことを
規定
しました。 第七は、
公害
による
被害
についての
救済制度
の
整備
について、特に現実問題として、その
原因
並びに
責任
の不明確であることによる
救済
の遅延、不完全、不履行等を
防止
するため、国がその
責任
において必要な
施策
を講じ、自後
事業者
に対する分担金の賦課等の制度を確立し、また
紛争
処理
制度を確立するのに必要な
施策
を講ずべきこととし、
公害
による
救済
の保障を明らかにしました。 第八は、
公害対策
についての
行政事務
及び
公害
にかかる
紛争
処理
等の
事務
を統一的に、かつ、公正に行なうために、総理府の外局として、
国会
の同意を得て任命される
委員
によって組織される
中央公害対策委員会
を置くこととし、その下に各都道府県及び
指定都市
に
地方公害対策委員会
を設けることといたしました。特にこの点については、行政
機構
の統合
一元化
による行政の効率化と行政
委員会
による行政の中立性を
確保
しようとするものであります。 以上
民主社会党
提案
の
公害対策基本法案
について、
提案理由
並びに
法案
の要点のみ御
説明
申し上げました。私どもはこの案が最もいい案であるということを確信をいたしております。何とぞ慎重御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
八木一男
8
○
八木委員長
以上で
提案理由
の
説明
は終わりました。 各案についての質疑は後日に譲ることといたします。 ————◇—————
八木一男
9
○
八木委員長
船舶の油による海水の
汚濁
の
防止
に関する
法律案
を
議題
といたします。 質疑の申し出がありますので、これを許します。砂田重民君。
砂田重民
10
○砂田
委員
海水
汚濁
の
防止
に関する
法律
を、読んだだけではちょっとわかりにくい点がいろいろございますの御質問したいと思いますが、前回の当
委員会
ですでに同僚の河上
委員
その他から御質問がございましたので、重複をできるだけ避けまして伺っていきたいと思います。 まず第一に、私が持っておりますのは運輸省で翻訳されたものだと思いますが、ディスチャージということばとエスケープということばが使ってありますが、条約の第一条に、
日本
語で訳してあるのを読みますと、「
排出
」とは、「
原因
のいかんを問わず、すべての廃棄又は流出」ということばが使ってあります。本法の第一条には「この
法律
は、船舶から海上に油を
排出
することを
規制
し、」とございますが、運輸大臣にひとつ冒頭にお伺いをしておきたいと思いますのは、この条約にうたってあるディスチャージとエスケープ、ディスチャージのほうは意思を持って投棄するという
意味
だと思いますが、エスケープということばの
意味
は意思を持たないで油がこぼれてしまった、そういうときにも適用されるように条約の第一条には書いてございますが、本法の「船舶から海上に油を
排出
することを
規制
」するという「
排出
する」というのはディスチャージ、エスケープ、いずれも該当するんだというふうに理解してよろしゅうございますか。
大橋武夫
11
○大橋国務大臣 そのとおりでございます。
砂田重民
12
○砂田
委員
次に、
規制
されます船舶のトン数のことに関連して伺っておきたいと思うのですが、本法でも、タンカーで百五十トン以上、一般の内航船で五百トン以上というふうな、条約と同じ
規制
をしておられるのでありますけれども、内航海運の登録をされております隻数からいいますと、百五十トン以上のものは大体三〇%しかない。百五十トン未満のきわめて小型のいわゆる内航タンカーというのが大体七〇%くらい。タンカー以外の一般の内航船の各港の入港隻数も、やはり五百トン未満が七〇%強であって、五百トン以下のものは隻数で三〇%弱しかないのではないか。運輸省の資料を見ますと、こういう割合になっていますが、はたして今度の
法律
で
規制
をされるこの三〇%以下の内航タンカー、一般の内航船、こういった船について、バラスト、ビルジまたタンククリーニングのそういった油濁物についての
規制
トン数船と、本法で
規制
されない非
規制
トン数船とが持っております
原因
を起こすであろうところのトン数の割合でいきますと、前回の河上
委員
その他への御答弁で、大体九〇%これで
規制
していけるのではないかということでありましたが、この数字はどういうふうに計算をしておられますか。
鈴木珊吉
13
○鈴木
説明
員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げますと、油性混合物だけで見ますと、本法の
規制
対象船舶の
排出
いたしますものにつきましては、トン数から申しますと約八割カバーできるというふうに推計しております。それから油性混合物でなしに油だけで見ますと約九割これによってカバーできるというふうに推計しております。
砂田重民
14
○砂田
委員
簡単でけっこうなんですが、たとえばバラストなんてものは不確定要素が非常に多いと思うのです。積んでくるときもあるだろうし、海がたいして荒れてなければわずかなものしか積んでこないかもしれない。不確定的要素を相当含んだ問題だと思うのだけれども、どういう計算をしておられるか。隻数だけでいきますと、こういうふうに七割三割、逆に
規制
を受けない船のほうが圧倒的に多いのだけれども、油濁物あるいは油そのもの、そういったものは九割八割というふうに押えておる。その計算をなさった基礎を
説明
をしていただきたい。
鈴木珊吉
15
○鈴木
説明
員 要するに廃油の種類をビルジ水とバラスト水と、タンクをクリーニングする場合のクリーニング水、三つに分けまして、内航、外航、漁船、外国の船というふうに四つに分けまして、それでは年間何トンくらいのそれぞれの
汚水
を出すかということを推計いたしまして、トン数によってそれを掛けたというわけでございますけれども、それによりますと、いまのような結果が出てくるというわけでございます。たとえばビルジにつきまして、これはほんとうに微々たるものでございます。総トン当たり年間〇・一トンということで計算しておるわけであります。一番大きいのはやはりバラストでありまして、大体一航過当たりデッドウェートの三分の一くらいバラスト水を流す、そういう計算でやっております。それからタンククリーニングにつきましては一航過当たりデッドウェートの十分の一くらい見込んで洗うということでありまして、そういうふうに計算した結果、こういうことになったわけであります。
砂田重民
16
○砂田
委員
一番大きな問題のバラストが、そういった計算をされるのに不確定要素をだいぶ含んでいるというので、たいへんその計算はむずかしいだろうと思うのですが、八割、九割ぐらいは
規制
されていく、そうあることを
期待
をしております。ところが、この
法律
では
規制
されない百五十トン以下の、特に二、三十トンのこういう油を積んで港内を歩くそういう船も、先ほど申し上げたように隻数というものは非常に大きなものがあるわけなんです。これが今度のこの海水油濁の
法律
では
規制
をされない。前回の当
委員会
での御答弁では、港則法で海上保安庁がこれをいままでも監督をしてきたので、これからも港則法第二十四条で取り締まっていくというふうな御答弁があったようでございますが、実際問題として、いままで海上保安庁はあまり厳格に取り締まってなかったんじゃないかと私は思う。それは、やはりそういう小さいタンカーにいたしましても、それを
処理
してくれる設備なんというものは
一つ
もなかった。バラストだとか、そういったものは港でもどこでも捨てるのが長い間の習慣というか、そういうことで、きょういただきました保安庁の資料で幾つか取り締まった例も出ておるようでございますが、そういった
施設
的なものが何もなしに、ただ取り締まるばかりということでは保安庁もやりにくいということで、あまり厳格な取り締まりをやっておられなかったんじゃないかと思うのですが、そういうことですか。海上保安庁のほうから……。
猪口猛夫
17
○猪口
説明
員 ただいま御指摘のありましたように、
施設
がないから取り締まらなかったんではないかということでございますが、お手元に差し出しました資料にもございますとおり、私たちで目にあまるものにつきましては、港則法の二十四条の
規定
に基づきまして検挙いたしまして、そしてそれぞれ刑事訴訟手続を終っておる次第でございます。決して
施設
がないから港則法に
規定
されております取り締まりをおろそかにしたということではございません。
砂田重民
18
○砂田
委員
港則法二十四条にはどう書いてありましたか。たしか「みだりに」ということばが入っておりましたね。ですから、今度のこの海水油濁
防止
のための
法律
とは何かきびしさが少し違うような気持ちがするのですが、また罰則の
規定
も片や三万円、片方は十万円、罰則もまた違ってきている。ただ先ほども私申し上げたように、トン数ではあるいは小さな船のほうが海をよごすあれは少ないかもしれませんけれども、隻数からいうと相当な数なものですから、これからは保安庁もひとつ御熱心にその取り締まりをやっていただきたい。と同時に、やはりそういう港則法第二十四条の精神というものを——みなそれぞれ小さい一ぱい船主の人たちであろうと思いますから、そういった指導を一生懸命海上保安庁ではぜひやっていただきたい。これをひとつお願いをしておきたいと思います。 それから、いまもちょっと私触れましたが、港則法二十四条の罰則が三万円で、今度のこの
法律
による罰則が十万円。別にひがんで言うわけではないのですけれども、この十万円の罰金ということが変なことに関連をしてくるのです。それは一トンの油、これを海上にこぼした場合に、それを洗剤などの化学薬品で
処理
をいたしますと、一トンの流した油を完全に中和させるだけの洗剤をまいて原状回復をやったら、大体それに十万円ぐらいの費用がかかるということが推定されるんですね。そうすると、第七条の第二号に書いてあるように、流れ出ることを
防止
する努力をすれば第五条、六条の
規定
は当てはめない、適用しないというようなことが第七条に書いてありますが、一トンこぼしてしまった油を
処理
するのに、洗剤をまいて完全に
処理
すると十万円かかる。もしも一トン以上の油をこぼしたときには、これは罰金とられるほうがかえって安上がりになる。これは決して好ましいことではないが、ただそういったような考え方を船側がやって、その第七条第二号の努力をはたしてするだろうか。
排出
防止
を努力する、その努力を徹底的にもう少し命令するような、そういう
事項
を書いておくということが必要ではないだろうか、そういう気持ちがちょっとするのですが、これはいかがですか。
大橋武夫
19
○大橋国務大臣 この取り締まりというのは権力行為でございまして、やり方によってはずいぶんいろいろ手荒なこともできますし、十万円の罰金では安過ぎると思うような場合には、取り締まりの速度を調節いたしまして、一週間、十日ぐらいは動けないようにしておくということもできるわけでございます。まあ、罰金はこの程度でよろしいかと思います。
砂田重民
20
○砂田
委員
罰金というのは
目的
じゃないのですから。ただ、たまたまちょうど一トンぐらいの油を流したときに、それを
処理
するのに十万円ぐらいかかる、調べてみたらちょうど罰金と同じぐらいの金額が出てきたものですから伺ったのです。その七条に油の
排出
禁止を適用しない五項目が並んでおりますが、その第一項目は船舶の安全の
確保
ということであって、第二項目が船舶の損傷した場合、衝突その他によって起こった現象のことだと思うのですが、そこでひとつこの第二項目の場合を想定をして伺っておきたいと思いますことは、小さいタンカーがぶつかった。油が流れ出てしまう。ところが、その流れた油は、衝突してしまった船は損傷を受けて自分で流れた油の
処理
をする能力を失ってしまう。海面に実際に流れてしまっている。そうすると、清掃をして原状回復をする義務を持っているものはだれでありますか。
大橋武夫
21
○大橋国務大臣 この条項は原状回復の義務とは
関係
ない条項でございまして、そうした場合におきましても、原状回復を命ずる場合においては、やはりその船舶の所有者に命ずることができると思います。
砂田重民
22
○砂田
委員
大臣、その船舶の所有者に命じても、実際その船自体はもう
処理
する能力を失っている、衝突によってそういう障害を船自身が受けている。それからその船舶の所有者といいますか、比較的何そうも船を持っている船会社であって、その港の中あるいは近くに同じ船会社に属する船があれば、そういう仕事ができるのですが、どうもそうでない場合がいままでもたびたび起こっているわけでございます。これは港湾管理者がいままで一番苦労もし、苦心もし、どうも理解しにくいと言ってきているところで、原状回復をやる義務者というものをやはり明確にしておく必要があると思うのです。
大橋武夫
23
○大橋国務大臣 一般海域については
規定
はございませんが、港則法の適用ある水域におきましては、港則法第二十四条で、「廃物を捨ててはならない」という
規定
がございまして、それに違背をいたした者に対しましては、「その捨て、又は脱落させた物を取り除くべきことを命ずることができる」ことに相なっております。したがって、この命令につきましては一般の行政処分と同じように行政代執行法でもって代執行をいたしまして、その費用を船舶所有者から取り立てるという方法が
法律
上は備わっておると思うでのございます。そこに船舶所有者がおりませんでも、この命令を出してさえおけば、あとは管理者でその命令をみずから代行して、費用の請求をするという形で
救済
をすることができようかと思います。
砂田重民
24
○砂田
委員
もう
一つ
伺いたいのですが、港湾法第十二条を、
審議
官、ちょっと一ぺん読んでみてください。
大橋武夫
25
○大橋国務大臣 港湾法の十二条の
規定
は、港湾管理者の権限を
規定
いたしておるわけでございますが、この場合において港湾が
汚染
されたとか、あるいはじゃまものが存在するというような場合には、港湾管理者としての
責任
上、当然それを取り除きまして、港湾を良好な状態に置く、そのことを書いてあるわけでございますが、この場合におきましては、その費用は港湾管理者みずからが負担することに相なるわけでございます。ちょうど海上保安庁が行動した場合、自己の行動に基づく経費は海上保安庁みずから負担するのと同じでございまして、船主に対して費用を課するということは、この場合にはできないと思います。
砂田重民
26
○砂田
委員
私が第七条第二号の船舶の損傷によって起こった油あるいは油濁物の流出を前提にして伺って、一番港の中で多いのはそれなんです。ですから、第七条第二号の船舶の損傷によっての油の流出というものは、その船の側で流出を防ぐための努力をすれば、五条、六条は適用されないということですね。しかし、現実問題として油は海に流れている。それを取り除く原状回復の義務を負った者は海上保安庁であるのか、港湾管理者であるのか。それの費用というものはどう見ていったらいいのか。これをひとつ明確にしておく必要があると私は思う。それで伺っているのです。方々の大きい港湾でそういう
事態
が起こるたびごとに、海上保安庁と港湾管理者との間で義務が明確でないためにいろいろな原状回復が迅速にいかない、そういう例がこれまでもありましただけに、この機会に私はそういった点をひとつ運輸省で明確にしておいていただきたいと思うのです。
大橋武夫
27
○大橋国務大臣 本人に費用を課する場合においては、そういう道がある限り、港湾管理機関から港則法による命令を出しまして、本人から費用を出させるということになるわけでございますが、それがない場合におきましては、海上保安庁がやるか、あるいは港湾管理者がやるか、いずれかになるわけでございます。いずれの場合にいたしましても、本人の
費用負担
を伴うものでございますから、いわゆる消極的権限争いというような
事態
が生じやすいと思うでございまして、その点についての砂田
委員
の御質問だと存じます。この点につきましては、いままでどういうふうにするかという取り扱いについての確たる方針がございませんが、御注意の次第もございましたので、ひとつ港湾管理者あるいは海上保安庁相互間でよく相談をさせまして、何らかの規律をはっきりさせておく処置も必要と存じますので、至急そういう運びにさせていただきたいと思います。
砂田重民
28
○砂田
委員
せっかくこれだけの
法律
をつくって海の水をきれいにしていこうということなんですから、いままでも相当広範囲にわたる——特に港湾内の海水の油濁というのは、いま私が申し上げたような事柄から起こってくるのが多かったわけです。これからもそういうことでないかと思いますだけに、またそういう
事態
が起こったときに海上保安庁と港湾管理者との間で原状回復の義務がどこにあるかということが明確でないものだから、迅速に事が運ばなかったということも幾たびか聞かされています。ぜひそこのところの原状回復義務者というものを御検討の上で明確にしておいていただきたい。お願いをいたしておきます。
大橋武夫
29
○大橋国務大臣 いまでは油による海水の
汚染
というものについて、これが航海にすぐ支障を生ずるものでもございませんし、ただ見てぐあいが悪いとか、あるいは衛生上支障があるとか、そういう点が多かったものでありますが、その点についてはっきりした行政権の作用がなかったわけでございます。このたびこういう
法律
ができます以上、やはり港内における油の問題も、それと見合って厳重に取り締まりを励行する必要があろうと存じます。さすれば、港湾管理者ないし海上保安庁系統の官庁の双方の間に、その
責任
についていろいろ不明確な点で起こりやすいと思いますが、これは当該機関の話し合いを行ないまして、どういう場合にはどっちがやるということをあらかじめきめておく
措置
をとりたいと思います。
砂田重民
30
○砂田
委員
海上保安庁も、港湾管理者も、乏しい予算でやっておられるだけに、そういう問題が起こったときに、どうも消極的ななわ張り争いがあったのじゃないかと思う。どうぞその点御調整の上よろしくお願いをいたしたい。 次に、廃油
処理
施設
のことでちょっと伺っておきたいと思いますが、条約の第八条に石油積み込みターミナルは
施設
を備えつけねばならないというふうに条約にはなっているのですが、これと並べて船舶の修理港ということが次の(c)項に出てくるわけです。すらっと読みますと、船舶の修理港と書いてあれば、これは港湾管理者と考えていいと思う。その
一つ
前に書いてある石油ターミナルというこの字句はどういうふうに解釈すればいいのか。今回の海水
汚濁
のこの
法律
では、そういった廃油
処理
施設
というものは主として港湾管理者に
施設
を備えつけさせるというように理解をするのですが、条約でいう石油積み込みターミナルというのは何をいっているのか。石油積み込みターミナルで
事業
をやっている民間
企業
をいっているのか、その民間
企業
の集団をいっているのか、そのターミナルのある港湾の管理者をいっているのか。この条約のいうところの石油積み込みターミナルというのは何をさしているのか。
鈴木珊吉
31
○鈴木
説明
員 条約の第八条の(b)でございますが、条約では油の荷積み場と、
日本
語に訳しますと言っておりますけれども、本法では、そういった修理港とか、油の荷積み場というふうに分けずに、いわゆる港はということで書いてあるわけでございます。そこで、条約で申しておりますのはタンカーが油を積み込む場所でございますので、たとえば
日本
で申しますと精製所でございますが、精製したものをタンカーに積みまして、そして消費地へ持っていくということが主だと思いますが、そこでは積みます場合にバラスト水を流しまして、それで油を積み込むということでございますので、一番よごれる率が多い。こういうことで特に条約では油の荷積み場と書いてあるわけでございます。本法といたしましては、やはりそういったものを入れまして、もちろん精製所のそばの港も全部入るという趣旨で書いてあるわけでございます。特に分けて本法では言っておりませんが、趣旨は同じだと思います。
砂田重民
32
○砂田
委員
本法をそのまますらっと読んでいきますと、港湾管理者が大体その
施設
をつくらなければならないのじゃないか。そうなると、港湾管理者がタンカーのバラスト水を
処理
するための
施設
、それをやるにいたしましても、石油積み込みターミナルは、実際には油槽所であるとか、石油精製
工場
があるところとか、そういった油槽所の敷地内の海に面した場所に設備をすることが、船舶の積み荷であるとか荷おろしとか、そういった船の通常の運航をおくらせることが少なく便利であるという気がする。そこで、そのような場所に
処理
施設
をするについても、港湾管理者がはたして適当な土地を持っているかどうか。やはりわれわれが考える石油のターミナルの敷地内に設備をすれば、船にとっては一番ぐあいがいい。船の運航をおくらせないような場所というのは、そういう場所だろうと思うが、そういう場所を
確保
するために石油業界の協力を必要とすると思うのですが、そういうことを、運輸省あるいは通産省の鉱山
局長
にも来ていただいておりますが、何か業界と話をなさっておられるか。
鈴木珊吉
33
○鈴木
説明
員 ただいまの御質問でございますけれども、運輸省といたしましては、実は本法で自家用
処理
施設
という
規定
がございます。これは主としてそういった石油精製
工場
におもに出入りする船について、精油で出すという趣旨でそういう方途を考えているということが本法にはございます。 それから石油業界と話もいたしましたが、やはりそういった
施設
のあったほうが、先生おっしゃいましたように船の航行率からいいましても、わざわざ捨てに行くよりもいいのではないか、そういうものを
設置
する必要があるのではないかということを考えているわけでございます。
砂田重民
34
○砂田
委員
いまぼくがお尋ねしたのは、質問のしかたが悪かったのじゃないかと思いますが、石油精製
工場
、それも四日市みたいな場合を伺ったのではなく、今度指定された六つの港にそれぞれ石油精製メーカーが油槽所を、タンクを持っておりますね。これは各石油精製メーカーが大体隣合ってたくさんタンクを持っている。そうなると、そういう場所では自家用ではなしに、やはり港湾管理者がそういった場所に
処理
施設
をつくるだろう。そうなると、その港湾管理者は埋め立て地を石油精製メーカーに売ってしまったりして、かっこうな場所に土地を持っていないのじゃないか。そうすると、丸善石油のタンクがある、三菱石油のタンクがある、何々石油会社のタンクが並んでいるというときに、その近くか、その敷地のうち、そういうところに
施設
ができれば一番いいわけです。したがって、そういう敷地提供とかいったことを石油業界にも協力してもらわなければ、なかなかそういう場所は見つけにくいのじゃないか。港湾管理者が、自分が持っている土地が遠くにあったのでは船の運航を非常におくらせる
原因
になるのではないか。そういった
意味
合いから、そういう船の運航をおくらせることのないような場所に設備をする、そういう石油業界へのあっせんを、鉱山
局長
は何かそういう話をなさっておられますか。
両角良彦
35
○両角
政府
委員
汚濁
防止
施設
を港湾管理者において
設置
いたします場合に、その土地その他の便宜につきまして、その近辺に所在する石油精製
工場
その他の石油
関係
の側において、もし協力が必要であるというような具体的な事実が起こってまいりますならば、十分協議をいたしまして、さような方向での協力をいたさすように指導をいたすつもりでございます。
砂田重民
36
○砂田
委員
そういう協力が必要であればという両角さんの御回答だったのですが、そういう協力が必要になってきます。ですから、これは今度運輸省で適用される六つの港、どの港もみな必ずそういう
事態
となってくるのではないか。これはやはり鉱山局と一緒に石油業界も協力について努力していただきたい。そうでないと、これから私が伺いたいと思っている料金、それから内航海運
対策
という
立場
から見た場合のこの
法律
の波及する
企業
の問題、そういったことにも相当大きな影響があるのではないかと思いますので、そういう石油を積み込む小さなタンクが乱立している、各精製メーカーが大体同じような場所に集まって油槽所を持っておりますから、そういう場所に港湾管理者がつくる廃油
処理
施設
というものができるように御努力を願いたいと思います。
大橋武夫
37
○大橋国務大臣 御承知のように、港湾管理者のつくる
処理
施設
に対しましては、
政府
から特別に
助成金
を出すことにいたしております。しかし、これは
政府
の予算金額が必ずしも十分ともいえません。はたしてこれで港湾のタンカーの需要に十分であるかどうか疑問だと思うのでございますが、今後の運用方針といたしましては、運輸省といたしましても、港湾並びに船舶の監督者たる
立場
からいたしまして、石油業者も十分説得いたしまして、そして単独あるいは共同で必要なる
施設
を完備することに協力してもらうように格段の努力をいたしたいと思っております。
砂田重民
38
○砂田
委員
それでは次に、
処理
用地のことを伺っておきたいと思うのですが、いま私が御質問をいたしまして、またお願いもいたしましたことが現実に出てまいっておりますのは、神戸港を例にとってお話ししておきますが、神戸港は、港の東の端、西の端にそれぞれ石油精製メーカーのタンクがある。小さなタンカーの運航をおくらせずに、タンカーにできるだけむだな費用を使わさないでやるためには、どうしても東西二カ所にそういう
処理
施設
をつくらなければならない。大体四十二年度の廃油の
発生
予想というものを神戸港でやっているようですが、バラスト水千三百二十トン、ビルジ九十六トン、タンククリーニング水五十トン、合わせて千四百トン余りの
処理
施設
をやりますので、したがって一カ所七百五十トン程度の
処理
能力を持った
処理
場をつくるわけですが、それぞれ千坪ぐらいの用地が必要なわけです。この用地は、実際問題として各精製メーカーが埋め立て地なら埋め立て地にタンクをずっとつくると相当な広さになるわけです。その中に敷地が設けられないということになると、今度はとんでもない遠くのほうへ行ってやらなければならない。そういう
意味
があるものですから、石油精製業者の持っているタンクがずっと並んでいる場所に敷地等も——いわゆる
産業界
、石油業界の協力がなくては非常に不便なところにつくらざるを得ない。そういう
事態
になってまいりますので、運輸、通産両省ともひとつ石油業界へのあっせんをしていただきたい、そういうお願いをしたわけです。ただ、いま私が申し上げた
処理
場で
処理
をいたしますのに、その
処理
場の建設費用が大体八千万から一億ぐらいかかるわけです。これの半分が国庫負担ということになっております。四十二年度の予算で六つの港、それぞれ
処理
場の規模は違うと思いますが、半分の国庫補助をやれるだけの予算が四十二年度予算で組まれておりますかどうか。
鈴木珊吉
39
○鈴木
説明
員 四十二年度の予算におきましては、半額の三億という予算を
確保
したわけでございます。これで六カ所をやるわけでございます。これを実は本年度と来年度の二年にわたってやるものですから、来年さらにもう三億出さないとやっていけないわけでございます。ですから今年度分は、その半分だけで三億ということでございます。
砂田重民
40
○砂田
委員
それでは、その
処理
場で
処理
をいたしますのに料金を取りますね。港湾管理者がそういう
処理
場をつくって料金を取りますね。その料金はどういうふうに計算されるのですか。それから大体トン当たり幾らぐらいにつくのですか。
鈴木珊吉
41
○鈴木
説明
員 料金につきましては、いわゆる建設費とその
施設
の運営費というのを合わせました金額、それが一番金がかかるわけでありますけれども、そのうち国が半分持つ。あとの半分は港湾管理者が持つ。それから利用者にも持ってもらう。
原因
者でございますので、三者が持ち合おうじゃないかという思想なんでございます。そういうことでございますから、運営費につきまして大体料金でまかなっていったらいいのじゃないかというふうに考えております。これをあんまり高くいたしますと、小型船につきましては船主
経済
に影響を及ぼしますので、適当な値段をつけなければいかぬ。と申しましても、また港湾管理者もつろうございまして、その辺のところは適切な値段を算定していきたいと実は思っておるわけでございます。それから運賃がそのために多少プラスされることもあり得ると思いますので、この点につきましても荷主さんのほうの了解をとって協力を得るということで、三者でそれぞれ適当な分担をするという仕組みで計算したいと思っておるわけでございます。
砂田重民
42
○砂田
委員
運賃のことまで私はまだお尋ねしていないので、その
処理
をする料金が一体どれぐらいになるか。建設費の中に含まれる国が補助をする五〇%というものは、料金計算の基礎に入れなくていいと思うのです。あと半分は港湾管理者がみんな持つというのではなくて、利用者も持つというお話でしたが、利用者は建設費を持てますか。実際問題として利用者側と何か話し合いが行なわれておりますかどうですか。
鈴木珊吉
43
○鈴木
説明
員 利用者も持つと申しましたけれども、それは料金の話で持つというふうに申し上げたわけであります。
砂田重民
44
○砂田
委員
それでは、大体五〇%の港湾管理者が負担する建設費と運営費、これを償却していくというふうな考え方で料金は算定されるのだろうと思うのですが、大体どれぐらいのものになりますか。
鈴木珊吉
45
○鈴木
説明
員 これはまだ仮の計算でございますが、大体バラスト水トン当たり三十円ないし四十円というふうに算定しておるのでございます。これは規模によって違いますが、一応そういう算定をしております。
砂田重民
46
○砂田
委員
実は今度の
法律
を船屋さん、そういったところまでしっかり守ってもらうのに一番私どもが心配をいたしておりますのは、その料金の問題なんです。料金の負担を船主がはたして負担し切れるだろうか、これが一番心配をしているところでございまして、船主の負担は料金だけではなくて、運航に必要な時間とかロスの時間、滞船料、そういったものも幾らかずつはかかってくると思うのです。料金だけに限定して伺ってみたいと思うのですが、いまの
処理
料金が三十円、四十円ということになると大問題じゃないかと思うのです。と申しますのは、いま油を小型のタンカーが一体運賃幾らで運んでおるか。これは海運局が調べてくれた資料を私手元に持っておるのですが、全国内航タンカー海運組合からも調べてみました。そういたしますと、これは海運局が認めております運航経費ですが、運航コストは二百四十八円。ところが、現在船主側が石油業界から支払ってもらう実勢運賃は二百三十円、もうすでにコストを割っている。そこで海造審に運輸省が諮問をされたり、もう
一つ
何とかいう
審議
会がありますね、そういうところでいろいろな計算をされて、運輸省の海運局も認められた調整運賃は二百六十円と見ておられるわけです。だから二百六十円あれば五%ぐらいの利潤は船主にあるんじゃないか。ところが実勢運賃というものは二百三十円です。これは石炭あるいは鉄鋼という、ほかの大きなものを運ぶ場合にも、その運賃折衝といいますか、内航海運業界と荷主の間の運賃の取りきめというものは——石油の場合はちょっと違う形になっているんじゃないだろうか。石炭なり鉄鋼というものは、それぞれ石炭協会あるいは鉄鋼連盟というようなところが、小さい内航海運の業界と集団的、団体的に折衝をされて、航路別に鉄鋼なら鉄鋼で、どこの航路については富士鉄が幹事会社、内航海運のほうはどこの会社が幹事会社、またある航路については今度は八幡が幹事会社、またほかの内航海運会社が幹事会社、そういうふうなことで、業界と業界との間で団体的な折衝が行なわれて、運輸省の計算されておる、海運局の認めておられる調整運賃というものを荷主側も非常に常識的に受け入れて、大体運輸省の認定された調整運賃というところにだんだん落ちついているんじゃないか。ところが、石油業界だけが、いま私が申し上げたようにコストは二百四十八円、運輸省の認めた調整運賃は二百六十円、実勢運賃は二百三十円、コスト割れの状態が今日まで続いている。石油だけがなぜこういうふうな−内航海運側が非常に力が弱いといいますか、こういう運賃をしいられているのか。その一番大きな
原因
は小型タンカーが過剰であるのか、だから船腹の需給
関係
によってきておるのか、あるいは石油業界の、他の鉄鋼とか石炭とかそういう業界には見られない海運界に対する資金的なあるいは資本的な系列下に置かれている、そういった事情が
原因
をしているのか、こういうことをひとつ
審議
官からでも海運局からでもけっこうですが、御
説明
いただきたいと思います。
野村一彦
47
○野村
説明
員 お答えいたします。 ただいまの先生の御質問でございますが、実情は先生が御指摘になりましたように、ただいま
東京
湾の平水のタンカーを例にお引きになったことと存じますけれども、
現状
におきまして、運輸省が承認をいたしました調整運賃より実勢運賃が下回っておるということは実情でございます。この
原因
につきましては、先生の御質問にございましたように、いろいろの
理由
があるわけでございますけれども、まず内航タンカー海運組合という船主団体がございまして、この団体が調整運賃の計算をしまして、それを荷主である石油業界と折衝をしてきめるということでございますが、現在の状況を申しますと、石炭あるいは鋼材の場合のように、一応荷主のほうと話が十分ついてこちらに申請が出てきたというわけではございませんので、計算はして一応石油業界のほうに話をしておりますけれども、石油業界のほうではそれをお認めにならないという状態のまま申請がきておる。ただ運輸省といたしましては、運輸
審議
会にはかって出しました標準運賃から換算をいたしまして妥当であるということで、ただいま例にお引きになりました二百六十円という調整運賃を認めておるわけでございますけれども、これはまだ石油業界としては認めておらない。そういうことで実際に適用されております運賃というものは低くなっておる。こういうことでございまして、これにはただいま先生の御質問のような交渉のあり方といいますものが、大体
企業
対
企業
の交渉は行なわれておるようでございまして、その点、いわゆる荷主団体対船主団体というものの交渉は必ずしも行なわれていない、そういう状況も
一つ
の
原因
であるかと思います。そういう実情であります。
砂田重民
48
○砂田
委員
いまの実勢運賃からいきますと、
処理
料を内航海運が負担する能力がないのじゃないか、一番私が心配しておりますのはこの点であります。
処理
料をいま三十円から四十円というお話だったのですが、三十円、四十円というのは、いまのままでいけば
審議
官の希望的な観測も入っているのじゃないか。いわゆる
処理
料が五十円だと想定したときに、先ほど私が申し上げました運賃はどういうことになるかといいますと、二百七十八円ということになれば、五十円の
処理
料を吸収ができて、しかも五%くらいは内航海運のほうが利潤をあげることができる。実勢運賃二百三十円とはたいへんな差があるわけです。こういったところをそのままにして、この
法律
だけがすべり出してみても、ないそでは振れないということで、内航海運業界というものは、はたしてこの
法律
を守っていけるかどうか。ないそでは振れないといって、かってにそこらに捨てられたのでは、せっかくのこの
法律
というものが食管法のようになってしまってはたいへんでありますから、やはり何とか解決しておかなければいけない、そういう気持ちがするのです。 そこで鉱山
局長
、あなたに直接話していいことかどうかわからぬけれども、いま私が申し上げたように、石炭業界、鉄鋼業界と、それぞれの内航海運業界との運賃の取りきめのいまの状態と、石油業界と内航タンカー業界との運賃の取りきめが違うのですね。そういったことを石油業界にももう少し協力をしてもらえるようなことを、鉱山
局長
から石油業界にいままで話をなさったことがあるかどうか。いままでないとするならば、そのあっせんを通産省はおやりになる決意がおありかどうか。
両角良彦
49
○両角
政府
委員
運賃の取りきめの形態につきまして、石油業界に通産省といたしまして何らかの話をいたしたということは今日までございません。しかしながら、御指摘もございましたように、私どもとしましても、石油の仕事と内航海運というものとはきわめて密接な
関係
がございますので、両業界とも持ちつ持たれつの
関係
で
発展
をいたすべきものと考えております。さような見地から、ただいまお話のございましたような運賃等の取りきめにあたりましては、石油業界としましても、長い目で海運業界に対してでき得べき協力はする、これは当然いたしていくのが筋合いではないか、さような方向で石油業界も、内航海運業界に対する前向きの協力
体制
というものは、われわれとしましても要望いたしたいと考えております。
砂田重民
50
○砂田
委員
私は、内航海運業界を石油業界が助けてやれという
意味
では申し上げてないのです。海水を油濁から防ごう、守っていく、そういう考え方から、内航タンカーなどという小さな力のない
企業
だけではとてもこれはやり切れることではないのです。海が油でよごれるのは石油業界の
責任
ではない、船の問題だというようなことで、石油業界がそういう割り切り方をされてしまったのでは、この
法律
は生きてこないという気持ちがするのです。
処理
料にいたしましても、三十円、四十円、五十円というところでは、なかなかこれは解決がむずかしいのじゃないか。石油業界にも一部負担をしてもらう、運賃の改訂という形での協力をしてもらうとしても、やはり
処理
料というものが大体二十円見当であがるようなそういった予算
措置
を検討していただかないと、私はなかなかむずかしいのじゃないかという気がするのです。
処理
施設
がすぐに完成してことしからスタートするわけではありませんから、まだ時間もあることでありますから、ひとつその
処理
料というものをもう少し低く押えられるような方法を、これは石油業界とは
関係
なしにでも二十円ぐらいであがるような方法を運輸省としても御検討いただきたい。 それが
一つ
と、こういうふうにいたしまして、国も、港湾管理者としての
地方
自治体も、また船舶業界も、海水の油濁
防止
にそれぞれ
犠牲
を払ってでもやっていこう、こういう決意をしていることでありますから、石油業界だけがおれは知らないんだということでは、私はちょっと情けないと思う。
公害対策
基本法も当
委員会
にもうすでに
提案
されたきょうでございます。
国民
の健康と
生活環境
との
調和
ということをこの
公害
基本法もうたっております。
産業
側がその
調和
することすら拒否されたのではこれは重大問題だと思う。石油業界が、きょうの国際情勢の変転の中でたいへんな大あらしのまっただ中におられること、また苦悩しておられることもわかりますけれども、やはり
日本
経済
の
一つ
の花形としての石油業界でありますから、
国民
生活
に奉仕をする
経済
ということもいわれる時代でもあるのですから、ひとつ新しい時代の
公害防止
問題に新しい認識と社会的な
責任
を適切に石油業界も負担をしていただきたい。特にこれは鉱山
局長
に私はいま申し上げているので、
公害対策
基本法に魂が入るか入らないかという将来の問題にこれはかかってくると思うのです。
公害対策
基本法と並んで
審議
をされているような
法律
でございますだけに、重大な
公害対策
基本法というものの精神というものが生かされるかどうか、これは石油業界の考え方によって
公害対策
基本法の行くえを占うような
事態
が出てこやしないか。石油業界というところも、人間的にたいへん私は尊敬もしております指導者がたくさんおられる業界でございますから、何ぶんの協力を必ず得られると私は確信するものですけれども、そういった点について、最後にひとつ運輸大臣と鉱山
局長
のお考えを承っておきたいと思います。
大橋武夫
51
○大橋国務大臣 本
法案
の成立
実施
に伴いまして、特に石油業者の全面的な協力精神が必要であるということは、これは申すまでもないことでございまして、運輸省といたしましても、
関係
省と協力いたしましてそうした機運を醸成することにつとめ、
法案
の
実施
に支障なからしめるよう最善の努力をいたす
所存
でございます。
砂田重民
52
○砂田
委員
これで私質問を終わりますが、先ほど伺いました船舶の衝突などによって船が損傷を受けて油が流れ出た、急速に原状に回復する、その義務を負うものは海上保安庁なのか港湾管理者なのかという点について、大臣は検討してはっきりさせようとおっしゃっていただきましたが、きょうでなくてもけっこうですが、当
委員会
に御回答をいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
大橋武夫
53
○大橋国務大臣 これは現行法では双方に
責任
があるわけですが、いざとなると、どちらも逃げ腰になるということでございますので、この間、
関係
行政機関の間でよく打ち合わせをいたしまして、どういう場合にはどちらがやるということをはっきりさせたいと思います。ことに両者とも運輸省が所管官庁でございますから、話はある程度つくと思います。
砂田重民
54
○砂田
委員
終わります。
八木一男
55
○
八木委員長
板川正吾君。
板川正吾
56
○板川
委員
船舶の油による海水の
汚濁
の
防止
に関する
法律案
、この
法律案
に関しまして運輸大臣にひとつ伺いたいと思います。 まず私は、この海上油濁
防止
法に直接
関係
しておるのじゃないのですが、関連しまして、この海水油濁の中心は御承知のようにタンカーであります。タンカーの
規制
でありますが、そういう
意味
で若干関連をしまして、
法律
に入る前に中東情勢とタンカーの輸送、この問題でひとつ運輸大臣の所見をまず伺っておきたいと思います。 そこで運輸大臣にお伺いしますが、
佐藤内閣
の閣僚として、今回の中東の動乱をどういうふうにお考えになっておるかということが
一つ
です。それはつい二、三日前の新聞では、たとえばスエズ運河の閉鎖はおそらくあるまいというようなことが四日かの新聞に出ておりました。ところが今日では、明らかにアラブ連合によってスエズ運河の封鎖が行なわれたわけであります。このスエズ運河の閉鎖による
わが国
の海運界、主としてタンカー、これに及ぼす影響、これはどういうふうにお考えになっておられるか、こういう点をまず伺っておきたいと思います。
大橋武夫
57
○大橋国務大臣 中東の動乱につきましては、私どもまことに国際平和の上からいって遺憾千万な
事態
だと存じます。何ぶん遠隔の地のことでございますので、どういう情勢で、どうして戦争にまで
発展
をいたしましたか、それらの点につきましては私自身としては詳しく承知いたしておりませんが、願わくはすみやかに収拾されることを念願いたしておるのみでございます。 そこで、スエズ運河の閉鎖の問題でございますが、スエズ運河の閉鎖ということは、
わが国
の海運界には重大なる影響を及ぼす事柄でございまして、貿易方面にも相当の影響が考えられるのでございます。特に問題をタンカーに限ってみますと、
わが国
に対する石油の輸出につきましては、スエズ運河を通過するタンカーというものはあまりないと思います。しかし、
わが国
のタンカーが第三国に用船されまして、三国問の輸送に当たっておるものもございますので、これらについてはむろんスエズを通るものもございますから、相当な影響があろうと思います。しかし、そうは申しますものの、スエズ運河の閉鎖ということ自体が世界的に船舶不足——すなわちスエズ運河を通過するかわりに喜望峰経由あるいはパナマ運河経由ということになりますので、航海日数が延びることによって貨物量に比較して船舶の一般的不足を来たしますので、こうしたことがタンカーの用船料あるいは運賃等に及ぼす影響も考えなければならぬと思います。ただし、実際問題といたしましては、タンカーについては長期契約が多いようでございますので、その限りにおいては、急に
日本
向けの石油の運賃、ことに
日本
船によるものが直ちに上がるとは考えられません。しかし、外国船による石油の輸入というものも、今日
日本
タンカーの不足のために相当多うございまして、これらにつきましてはある程度運賃の値上がりというものも考えなければならぬと思っております。 それからもう
一つ
は、海上保険料が上がりますので、これの運賃に対するはね返り、こういうふうに考えますと、タンカーの運賃が相当上がるのじゃないか。そしてその結果は、海運界といたしましては、
日本
船のタンカー料金はたいして上がりませんが、外国からの用船についてはある程度上がる。このことは結局収支のバランスからいいますと、赤字がふえる率が相当多いということになろうかと思うのでございます。 なお、いまのところではまだ情報がはっきりいたしませんが、御承知のとおり、
日本
のタンカーは主としてペルシャ湾へ入っておりますが、ペルシャ湾におきましては、ある国は全面的に石油の輸出禁止をいたしておるようでありますし、また、ある国は仕向け地あるいは積み込み船の国旗によって制限をしておりますというようなことでございまして、どの国がどうなってどういうふうに扱っておるかというようなことについては、いま
関係
方面でいろいろ調査をいたしております。まことにばく然たる抽象論でございますが、ただいまお答えできることはこの程度でございまして、なお将来情報の確認されるに従いまして、もっと具体的なお答えができればしあわせかと思います。
板川正吾
58
○板川
委員
タンカーの契約は大体二月から半年ぐらいの長期契約になっておりますから、いま突然契約改定期がこない限りは急な改定はないと思います。議論を先へ進めたいと思うのですが、いま
日本
のエネルギーの六割は石油によって
確保
されておるんですね。六割が石油であり、水力がわずか一割、石炭が二割五分、こういう程度であります。この
日本
の第一エネルギーの六割のうちの九一%までいわゆる中近東、この
地域
から入っておるのです。この中東から入っております油送船、これは
日本
の船と外国の用船とあるいは外国の会社が輸送を委託して向こうからくるものと、一体どういうような比率になっているのでしょう。中東方面から
日本
に入るタンカーの国別の比率、これをちょっと伺います。
高林康一
59
○高林
説明
員 お答え申し上げます。 現在中近東方面より入っております石油のうち五八・三%が
日本
船によって輸送されております。残りの大体四二%弱、これが外国船でございます。いま手元に国籍別の資料がございませんが、おもにノルウェーあるいはリベリア、そのような種類の船が大部分でございます。
板川正吾
60
○板川
委員
この中に
アメリカ
、イギリス、こういう国のタンカーというものはどの程度ありますか。
高林康一
61
○高林
説明
員 国籍別のこれらの地区のものの資料が手元にございませんが、大体先ほど申しましたようにノルウェー、リベリア船等が主体でございまして、イギリスあるいは
アメリカ
、こういうようなものは若干はあるかと存じますが、全体的に比較的少ないかと考えております。
板川正吾
62
○板川
委員
いま大臣もちょっと触れられましたように、われわれの情報で伺ってみると、一応向こうでは船の国旗別に、リベリアなりノルウェーなりあるいはパナマなり、そういう国——
アメリカ
資本で運営されており、実質的には
アメリカ
の資本だというようなところであっても、船籍が
アメリカ
でなければ積み出しはいいだろうということになりそうだ、ただいま交渉中だ、こう伺っているのです。しかし、この中東の情勢があるいは不幸にして長引くということになれば、私は、他国の、
アメリカ
でない国籍を持った会社でも、実質的に
アメリカ
系資本の会社であれば、将来積み出しを禁止するというところまで
発展
する可能性もあるだろう、こう思うのです。そういう点を分析をしておかないと、中東
地方
から
日本
の石油の九割一分が輸入されており、しかもその石油によるエネルギーというのは
日本
全体の六割を占めている、しかも現在原油の備蓄が大体二十日間ぐらいしかない、こういうことになりますと、万が一輸送がとだえるようなことになれば、私は
日本
産業
というものは非常な壊滅的な打撃を受ける、こういう可能性を持っていると思うのです。そこで私が心配しているのは、万が一
アメリカ
船あるいは
アメリカ
系、イギリス系の他国にある資本の船でもいかぬということになれば、
日本
はエネルギー
確保
のために別な船を用意するか、あるいは他の
地方
から石油、原油を買い入れなければならぬということになるだろう、こう思うのであります。そういう
意味
で、そういう時に際しての
日本
のタンカーの輸送力というのがどの程度あるものか、こういうふうに考えたわけであります。そこで伺いますが、この中東から入る九割一分の船の積み取り比率というのはどのくらいの割合を示しておるのですか。
堀武夫
63
○堀(武)
政府
委員
原油それから石油製品等ございますが、原油について見ますと、
日本
船による積み取り比率は五七%でございます。
板川正吾
64
○板川
委員
これは大臣にちょっと参考に伺うのですが、アカバ湾の航行を遮断したのが今度の
紛争
の
原因
のきっかけだ、こう思うのでありますが、海運国
日本
として、アカバ湾の自由航行の宣言に署名してくれということを、
日本
政府
に対して英米から強く
要請
されておる、こういうふうに新聞は報道しております。しかし、アカバ湾に航行する
日本
の船舶というのは、われわれ聞くところに上ると、皆無だということです。あの
地域
に
日本
の船というものはほとんど通らない、こういうのであります。 〔
委員長
退席、島本
委員長
代理着席〕
日本
の外交は英米中心に動いてきておりますから、もしその宣言に
日本
が同意をするようなことになれば、当然私はいまのアラブ人の感情からいって、また再三、石油
生産
国
会議
で言明しておりますように、イスラエルを支援する国、それと提携する国には一切石油を出さないという宣言をしておりますから、そういうことになれば、
日本
の石油の九割一分を輸出しておる
地域
からの輸入というものが大きな障害にあうわけであります。一体こういったアカバ湾の自由航行権の宣言というものに対して、
日本
は賛成すべきではない、あくまでも中立的な
立場
をとっていくべきではないか。こういうことはさすがに業界でも
要請
しておるようでありますが、閣僚の一員としての運輸大臣、どういうお考えでございますか。
大橋武夫
65
○大橋国務大臣 今国の戦争に際しましては、
政府
といたしましてはあくまでも厳正中立という
立場
を堅持するという方針に相なっておるのでございまして、アカバ湾航行権云々の問題につきましても、もっぱらこの見地より
処理
されるべきでございます。
板川正吾
66
○板川
委員
そうしますると、米英からそういう
要請
があっても、それに
日本
が参加することは、何ら
日本
には直接
関係
がないことであり、問題の解決になるまいということで、この問題には
日本
政府
はおそらく賛成する
立場
をとるまい、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
大橋武夫
67
○大橋国務大臣 まだ閣議におきまして、アカバ湾の航海自由の宣言につきまして、どういう態度を
日本
政府
としてとるべきかという論議は現実には行なわれたことはございません。しかしながら、閣議で確立されました対戦争態度というものは、これは
日本
は厳正中立、どちらにもくみしない、こういうことでございますから、これによって御推察をいただけると思うのでございます。
板川正吾
68
○板川
委員
軍事的には
日本
がこっちへ介入するというようなことはもちろんありません。ただ、やがてこのアカバ湾自由航行宣言をめぐって議論のある時代があるであろう、こう思うのでありますが、いま言ったように、もし米英側に加担するようなことになりますと、石油、原油源の
確保
という面で重大な影響を受ける。しかもそれが今後の
日本
の外交に大きな影響を受ける、こういうことをひとつお考えになっていただいて、社会党が多年考えております中立外交というものを、ひとつ閣議の際にもとくと
主張
してもらいたいと思うのです。これは希望であります。 そこで私は、
法案
の
審議
に入りたいと思いますが、
法案
に関連して質問をいたします。 海水油濁
防止
法、これがなぜ今日まで
提案
がおくれたかということ、前の質問者も再々聞いたと思いますが、一応私も伺いたいと思います。これは一九五四年、第一回の海水油濁
防止
国際
会議
に参加をして、受諾を
条件
として条約に署名した。一九六二年の第二回
会議
にも参加をしておる。こういうふうに受諾を
条件
にして条約に署名しておりながら、今日までこの条約に批准をしなかった
理由
は具体的にどこにあるのでしょうか。
大橋武夫
69
○大橋国務大臣 この条約を
実施
するにつきましては、国内法の
整備
その他国内の受け入れ
体制
を完備する必要がございましたが、これが今日まで延び延びになっておったということが、おくれた
原因
であり、またそれ以外には何も
理由
はございません。
板川正吾
70
○板川
委員
完備がおくれたというのですが、この
提案理由
の中には、
処理
施設
等がなかなか困難だから今日まで延び延びになったとありますが、
処理
施設
をつくることがそれほど困難であったというのですかということを私は聞きたいのです。海運国といわれておる
日本
が、五四年に受諾を
条件
に条約に署名しておきながら、今日まで十数年間条約に批准する意思をなぜ持たなかったか、それができなかったことはどこに
原因
があるのか、
施設
を
整備
するのに問題があるやに大臣の
提案理由
の中にはありますよ、見てください。しかし、どうも私はこの
法律
を見まして、おくらせるほど重大な支障はなかった。この点においては重大な困難ではないと思うのです。問題は、結局こういう海水油濁のような、いわゆる
公害防止
というものにあまり積極性を持たなかったということがおくれた最大の
理由
であって、困難性というのは、やる気さえあればできたのではないか、こう思うのですが、今日までできなかったという
理由
をひとつ具体的に示していただきたい。
大橋武夫
71
○大橋国務大臣 御承知のごとく、
わが国
におきましては、油による海水の
汚濁
というのは、近年に至りまして急に各地に見られるに至り、また、これに対する
国民
の関心というものも最近とみに高められてまいったわけでございます。したがって、今日に至ってようやくこれを批准するに適当な国内の
体制
と申しましょうか、環境と申しましょうか、そういうものがおのずから整うに至った、それがまあ今回
提案
した
理由
であるわけでございまして、今日までおくれておった
理由
を特にあげろ、こういうことになりますと、まあそういったような環境が今日まで必ずしも進んでおらなかったという点に要約されるのではないかと思われます。
板川正吾
72
○板川
委員
この運輸省で出した資料には、三十七年の第二回国際
会議
にも参加したが、条約上の義務を履行するための国内
体制
の樹立、特に廃油
処理
施設
の
整備
について多くの困難があってこの条約に加盟することができなかった、こういうのです。今度の
法律
を見て廃油
処理
施設
等の概貌がわかりましたが、この程度のことであれば、私はやる気さえあればもっと早く条約を承認することができたんじゃないか、運輸省においていわゆる海の
公害
、海水油濁というものについて積極的
防止
をしなかったという
姿勢
が今日までおくらした
原因
じゃないか、こう思うのです。しかし、水かけ論ならそれはそれでいいとしましょう。 この海水油濁に関連しまして、ちょっとまた横道へそれますが、伺いたいことは、過般英国の沖合いでトリーキャニオンというタンカーが座礁をして、油槽から漏れた油がイギリス海岸はもちろん、フランス海岸までそれが及んだ。そしてイギリス海軍が、この油をなくするために爆撃をして燃やして
被害
を最小限に食いとどめようという努力をされた。こういう世界でも例のない大型タンカーの座礁事件、こういう事件がありました。これはまあ
公害
とは言いません。
災害
かもしれません。しかし、海を油でよごすという点で共通の問題があります。私がここで伺いたいのは、同種の事件が万が一
東京
湾で起こったという場合にはどういう
対策
がとられるのだろうか。トリーキャニオン事件というのは、その種の問題としては新しいいろんな教訓を世界各国に与えた。こういうことが新聞にも報道されていますが、
東京
湾で同種の事故が起こった場合、たとえばこの資料にもありましたように、
昭和
三十七年ですか、千葉の海岸沖で
アメリカ
のタンカーが座礁して事故を起こした事件がありましたね。イーグル号事件、三十七年二月二十四日に一万六千トンの
アメリカ
油送船が座礁をして油を出したという事件がありました。この当時は一万六千トンですからまあいいとしまして、五万トン、八万トン、十万トン、十五万トンというふうな大型船がこうした事故を万が一起こしたとしたらばどういう
対策
があるんだろうか、こういう点でひとつ当局の見解を伺いたいと思います。
大橋武夫
73
○大橋国務大臣 先般のトリーキャニオン号事件は、まことに世界の海運界を驚かした大事件でございまして、いろいろああした惨事の起こりました
原因
を聞いてみますると、いまの海運業者の常識では考えられないような船舶の操縦誤りから起こったということが大体判明しつつあるようでございます。というのは、当然通るべき海峡を通らずに、それと全く違った暗礁のある水域に向かって、しかも白昼全速力で突っ込んだ。そういうようなことでございまして、しかもあの辺を航行した常識ある航海士ならば常識ではちょっと考えられない運転のしかたであるというように聞いておるのです。したがって、ああした事件が
日本
の近海で起こるとは考えられません。
日本
は四面海をめぐらしておりまするので、海上の事件といえば海上のどこでも起こり得る可能性はあるかもしれませんが、しかし、それに対してはいまから全部
対策
を用意するということはなかなかできないと思いますが、特に運輸省といたしましてあの事件を契機として考えております点は、まず、そういうばかげた運転は別として、狭水路その他において通常の航海中にもちょっとした不注意で
発生
することのありそうなタンカー事故というもの、これは十分予想しなければならないし、ことに最近大型タンカーがふえてまいりましたから、大きなタンカーがそういう事故のために故障して油を流すというような
事態
が起こらないとも限らない。こう考えて、ただいまのところ重点を
東京
湾、伊勢湾、それから瀬戸内海、こういう水域に限って特に調査、検討を進めておる次第でございます。 そのまず第一は、事件を起こさないように
予防
に力を入れることが何よりも大切だと思いまするので、これらの湾口につきましては具体的に大型タンカーの航路というものをできるだけ早く決定しよう、特に
東京
湾等におきましては湾口は
一つ
でございますが、その後に川崎方面とかあるいは千葉方面というふうに船の航路も分かれておりまするので、それぞれについてきめ得るものならば航路というものを大型タンカーについて具体的に指定し、かつ、そのきまった航路についてはこれを標識すべき航路標識あるいは灯台等をできるだけ早く完備するとともに、その航路を
設定
しあるいは維持するための水路の掘さく等が必要ならば、それもできるだけ早急に行なおう。それを根本といたしまして、他の船舶の航行等にも逐次
規制
を及ぼしていく、こういうことで、第一に大型タンカーの湾内の航路の指定ということを早くやりたいと思って、いま基礎調査を進めておる段階でございます。何とか四十三年度の予算要求までにある程度の
計画
を立てまして、そのために必要な予算を頭だけでも出したい。さらにまた、こうした
規制
を行なうにつきましては新しい立法も必要でございますので、これもできれば次の通常
国会
に御
提案
申し上げたい、こういう意気込みでただいま進んでおる状況でございます。 しかし、これは
予防
の方法でございまして、現実に事故が
発生
した場合はどうするかということも考えなければなりませんが、タンカーの事故の
発生
の場合におきましては、事故の状況に応じまして海上保安庁を中心として防衛庁、警察、消防、
地方
自治体等の
関係
機関及び民間諸団体等の全力をあげてオイルフェンス等を張りめぐらしたい。そしてこれによって油の流出並びにその拡散を
防止
いたしますとともに、油の除却剤による
処理
などを行ない、必要に応じては油の瀬取り、事故船の安全海域への沖出し、焼却処分等を講じまして、付近海上及び沿岸の危険
防止
の
措置
並びに
被害
を局限するための
措置
を講ずるように相談をいたしております。
板川正吾
74
○板川
委員
そういう
災害
というものは実際予想しないときに起こるもので、イーグル号事件でも富津沖で座礁をしておりますから、あるいは
東京
湾内で座礁がなくても、場合によると衝突ということもあり得るわけですね。そこでこういうよその事故を契機にしまして、安全
対策
というものをひとつ強化してもらいたいと思うのです。 それについて
産業
計画
会議
でいろいろと提言がございますが、大臣御承知と思います。知りませんか。これは
東京
湾海上安全に関する勧告というものでございます。
産業
計画
会議
で出しております。この中で私
一つ
取り上げるべきだと思うのは、
東京
湾というのはある
意味
では全体が
一つ
の港になっておる。しかし、実際は川崎も横浜も
東京
も千葉も、港が幾つにもなっておって、それが自治体の管理下にある、こういうことになっておる。
東京
湾全体としての
一つ
の調整をする機能を持つ必要もあるんじゃないか。そうでないと、大型タンカーのような場合に十分な安全を守られないおそれもある、こう思うのです。いまの大臣の構想というものは、ある
意味
ではそういうものを念頭こ置いての発言ぜろうと思います。ぜひひとつこういうトリーキャニオン事件のようなことが
東京
湾や瀬戸内海等で起こらないような
対策
、配慮をめぐらしていただきたいと思うのです。 それからもう
一つ
、これに関連しますが、万が一事故になった場合の補償ですね。聞くところによりますと、トリーキャニオンでは六十五億の保険がかかっておった。この保険は、船舶の価額以上の保険をかけられないということもあって六十五億だ。しかし
被害
はとても六十五億じゃ間に合わない、こう思います。イーグル号事件の
被害
と、これが示談になった
関係
を調べてみました。これはノリ及び漁業に影響を与えたために損害が三億八千万だということです。しかし実際に富津、木更津海岸における
関係者
は二千人をこえておって、とても裁判になりません。裁判は不可能だから示談にするほかはない、こういうことで、示談は
アメリカ
側の
主張
によって、とうとう損害の四九%、約一億九千万で解決をした、こういうことがいわれておるのです。このイーグル号事件で、どの程度保険金を向こうでかけておったかわからないのですが、保険制度というものもひとつ検討を要するのじゃないか、こう思うのです。船の損害だけでバンザイする、こういうことでは、特に大型タンカーのような場合にはとても船だけでは間に合わないような
被害
が起こると思うのです。保険制度の検討ということもなすべきではないか、こう思うのですが、これはいかがでしょう。
鈴木珊吉
75
○鈴木
説明
員 ただいまの御質問でございますけれども、現在そういった損害を与えますと、民法によりまして、そういう過失があったりした場合には賠償するという
規定
がございます。それが商法で援用されまして、船舶の場合は、船舶とかあるいは運送賃、いわゆる海産でございますけれども、海産の範囲の限度でもってしか船主
責任
はないということでございます。したがいまして、いまお話しのようないわゆる第三者に対する
責任
問題、これは大きな問題があると思いまして、この点は、トリーキャニオン号事件のときも国際
会議
におきましてそういった問題が取り上げられまして、国際条約の面でもそういった面について早急に検討しようということになっております。 ただいま保険の問題でございますけれども、これは任意保険でございますけれども、PI保険と申しまして船主相互保険制度がございまして、そういった第三者損害のてん補につきまして特別の制度がございます。これによりますと、たとえば油を流した場合、清浄に使った費用等あるいは油によりまして海産物が死んだとかという
意味
の損害はPI保険によっててん補がされます。ただ、これはもちろん任意でございまして、強制しておりませんので、今後そういった問題につきまして、もっと強力な
効果
がありますように検討していきたいというふうに考えております。
板川正吾
76
○板川
委員
時間の
関係
で急ぎますが、
法律
の第五条に、「五十海里以内の海域」とあります。この海里という単位を使ったことについて伺いますが、これは計量法の
規定
に違反しないかどうか。計量法ではメートル法を
原則
としておりますが、違反しないかどうか伺いたい。
鈴木珊吉
77
○鈴木
説明
員 これにつきましては法制局と相談いたしまして、計量法に特例があるということで海里ということを使った次第でございます。
板川正吾
78
○板川
委員
特例があるからいいのですが、ではこの一海里というのは一体どの程度の距離をさすのですか。
鈴木珊吉
79
○鈴木
説明
員 千八百五十二メートルでございます。
板川正吾
80
○板川
委員
この千九百五十四年の油による海水の
汚濁
の
防止
のための国際条約、この国際条約第一条に、「「マイル」とは、一海里」こういっておりますが、そうして一海里とは六千八十フィート、千八百五十二メールであるといわれておりますが、こういう計算になりますと、一マイルが千八百五十二メートルということになりますが、間違いありませんか。
鈴木珊吉
81
○鈴木
説明
員 この条約ではそのとおりでございます。
板川正吾
82
○板川
委員
条約の原文に何て書いてありますか。
日本
語に直す場合には、この条約には「「マイル」とは、」とここに書いてありますよ。しかし、この翻訳のしかたは間違っていませんか。
日本
ではマイルとは千六百九メートルじゃないですか。この
日本
文で条約のマイルは千八百五十二メートルと書かれておりますが、これはどういうことですか。
大橋武夫
83
○大橋国務大臣 御承知のとおりマイルには従来から二通りの使い方がございまして、
一つ
は陸上の距離をはかるときのマイルでございます。これはいま仰せになりました長さを昔からマイルと申しております。これは外国から輸入いたしました自動車なんかのメーターなんかのマイルはそれになっております。それからもう
一つ
のマイルは海上の距離をはかるマイルでございまして、これは
日本
では戦前から陸上のマイルと区別する
意味
でマイルとは申さず海里と言っておりました。いまでも船の速度が一ノット、二ノットというのは、一時間に一海里あるいは二海里の速力という
意味
でありますが、これはその海上のマイルをさしたものでございますから、それで距離もこういうふうに違うのだと思います。
板川正吾
84
○板川
委員
翻訳の
日本
語で書いた中に、海のマイルというふうに書けばあるいは誤解がないかもしれないけれども、ただマイルというから、ノーチカルマイルというということであればこれはわかったのでしょうけれども、マイルとは一海里、一海里とは千八百五十二メートルというものですから、距離の単位が違うかなと、ちょっと気になったのであります。 〔島本
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 それから、この
法律
の適用を受けるのが、十条に適用を受けるものと受けないものが
規定
されておりますが、条約には軍艦及びこれの補助艦というのは適用しないとあります。自衛隊の自衛艦は適用されますか、しないかどうか伺いたい。
鈴木珊吉
85
○鈴木
説明
員 自衛艦は本法を適用いたします。
板川正吾
86
○板川
委員
軍艦及び補助艦は適用さわないと条約にあるが、適用される
理由
はどこにあるのですか。
鈴木珊吉
87
○鈴木
説明
員 自衛艦も船でございますので、船は全部適用するという趣旨でございます。
板川正吾
88
○板川
委員
自衛艦はこの条約でいう軍艦ではない、補助艦ではない、こういう解釈でいいのでしょう。
鈴木珊吉
89
○鈴木
説明
員 本法では船であるというふうに考えております。
板川正吾
90
○板川
委員
実はまだ質問があるのですが、四時に
会議
を招集しておりますので、私、これできょうは終わらしていただきます。 ————◇—————
八木一男
91
○
八木委員長
この際、
産業公害対策
に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田之久君。
吉田之久
92
○吉田(之)
委員
私は、この際
政府
に二つの質問をいたしたいと思います。 その
一つ
は、
東京
都の環七ぜんそくといわれる交通
公害
による問題が
一つ
であります。いま
一つ
は、この際特に
産業
公害
や
都市公害
とあわせて農村
公害
というものが各地に
発生
してきておりますのでその問題をとらえて御質問をいたしたいと思います。 まず第一の質問の環七ぜんそくの問題でありますけれども、この間の六月二日の朝日新聞にも報道されておりますように、
東京
都の世田谷区の指折りの交通の難所といわれる大原、三軒茶屋両交差点の
住民
は、自動車の排気ガスによって予想外にからだをむしばまれている。この方面の交通量は、午前七時から午後七時までの車の通行量が九万四百台、これが大原交差点の場合、それから世田谷通りの三軒茶屋の交差点は六万八千台である。ただし、これは去年の九月末の調査になっております。しかも非常に交通が停滞して、車がつかえて、付近の
住民
は真夏でも家を締め切らなければならない。しかも酸素吸入器を買い入れて、こうした呼吸器
関係
の障害に対応しなければならない、こういう問題が出ておるわけなんです。 さらにまた、六月七日、きょうの新聞によりますと、
東京
都の
公害
部が調査したところによりますと、
東京
都全般の
大気汚染
の状況も非常に深刻なようであります。いままで問題になっておりました尼崎あるいは茨城県の鹿島地区と比べまして、
東京
都の
大気汚染
のほうがさらにひどい
現状
であるというようなことが報ぜられているわけでございます。厚生省は四十二年度から自動車の排気ガスの法的な
規制
をしたいと申しておられますけれども、すでにこのようにして
大気汚染
はいよいよひどく、しかも交通停滞の激しい場所では、一酸化炭素によるひどい呼吸器の症状が起きておりますが、こういう問題に対して現に厚生省はどういう対処をしておられるかということをまずお伺いいたしたいと思います。
田川誠一
93
○田川
政府
委員
環状七号線の自動車の排気ガスの問題は前からいろいろと取り上げられております。厚生省では、運輸省や
東京
都、それから国立
公衆衛生
院、東大というようなところと協力しまして、
昭和
四十年に大原地区を中心に調査をいたしました。その結果、いま御指摘のように、大原町におきましては、その付近におきましては、自動車の排気ガスによる一酸化炭素の
汚染
がたいへんひどい。健康の障害までにはいきませんけれども、取り締まりの警官あるいは付近の
住民
の方々に予期以上の影響を及ぼしておるということでございます。 この
対策
といたしましては、運輸省のほうで排気ガスの一酸化炭素の濃度について
規制
基準
を設けるというようなことをやっておられます。この大原町付近の状態は、御承知のように、あの交差点で自動車がストップする、えんえん長蛇の列を連ねるというような状態で、そこが排気ガスが強く出るというような状態でございます。でありますから、その地区だけのことを申しますと、あれを立体交差にすれば、いま言われたような問題は解決されるのではないかと思います。立体交差の工事が進められておりますので、立体交差ができますれば、大原地区の問題は解決されるのではないかと思います。しかし、一般的に自動車による排気ガスの問題は、
東京
や大阪のように非常に激しい交通の渋滞を見るようなところにおきましては、そういうような障害が生じますので、この自動車の排気ガスにつきましては、広く
大気
の
汚染
に対する
環境基準
、こういうような
規制
を設けて
公害
を防いでいかなければならないと思います。大原付近で酸素吸入をやっておるというような話も聞きましたけれども、そういうような事実はないようでございます。——やっておるようなことがあるようでございますけれども、
効果
はないようでございます。根本的な解決のためには、道路交通の
対策
、自動車の排気ガスの防除技術の開発というようなことを積極的にやっていく必要がございます。 それからもう
一つ
は、自動車の排気ガスにつきましては、
公害
に対する一般の啓蒙といいますか、啓発ということが相当影響するのではないかと思います。特に自動車を運転する人たちが、交差点で待機するような場合に、ある程度の注意をしていただきますれば、強い一酸化炭素を出すような排気ガスを防ぐこともある程度できるのではないか、そういう
意味
で
公害
に対する一般の啓発といいますか、そういうような思想ももっとやる必要があるのではないか、こういうふうに私どもは考えております。
吉田之久
94
○吉田(之)
委員
いまのお答えで、いろいろ調査をした、しかし健康障害とまではいえぬが、とお述べになりましたね。私はそれはとんでもない認識だと思うのです。現に世田谷区で同区の医師会に頼んで去年九月とことし三月、この二カ所で
住民
の健康診断を行なったが、その結果、大原交差点で五百六十三人のうち三百九十五人、三軒茶屋交差点で三百二十二人のうち二百二人が、のどや目をやられたり、頭痛や吐きけなどの症状に悩まされておるということが調査されておるわけなんです。現にわれわれが直接耳にいたしておりますことでも、四日市ぜんそくにまさるとも劣らないいわゆる環七ぜんそくに対して、その
地域
住民
の人たちが非常におびえ切っておる。現に健康にいろいろな支障を来たしておる。こういうことが社会一般で言われているにもかかわらず、あなたがそれをさして健康障害とまでは言いかねる程度のものだというふうに申し途べられるとするならば、一体健康障害とはどこに
基準
を置いて言われるのか、この点が
一つ
でございます。 それから、先ほどの御答弁のときに、酸素吸入器までは使ってない、いや使っていますよという耳打ちを受けて、
効果
はないんだというふうな答弁でございますけれども、そういういいかげんな答弁は困ると思うのです。現にあの
地域
の
住民
たちは一台一万五千円もする酸素吸入器で、せめてのどのはれやあるいは呼吸器の異常を直そうとして懸命のみずからの対応をしておるわけなんです。しかもこの酸素吸入器は一人三十分ぐらい使用しなければならない。使用することによって現に幾らか
効果
があるということで、五人くらいの家族ではその酸素吸入器を取り合いっこして使用しておる。しかし、五人家族ではとても一台ではその用に供し得ないというので、無理をして二台くらい用意しておる。今日いわれなき
公害
によって
原因
者不明の
公害
によって、たまたまそこに住んでいる人たちが苦しい
生活
の中から三万円もの酸素吸入器を買わなければならない、こういう
現状
認識があまりにも足らないのじゃないかと思うのです、ただいまの御答弁は。つきましては、再度御答弁をお願いいたしたい。
田川誠一
95
○田川
政府
委員
酸素吸入器のことは、私聞き間違いでたいへん失礼いたしました。 それから健康の障害はないという、これは解釈の相違と申しますか、いま御指摘のように各種の訴えがあるということは私ども承知しております。もちろん、全然影響がないんだということを申したわけではございません。影響があるということはこれは当然でございます。でございますので、厚生省といたしましてもこれを重視しているわけでございまして、そういうことでございます。なお、詳しくは担当の
局長
から御
説明
申し上げます。
舘林宣夫
96
○
舘林
政府
委員
大原地区の調査によります臨床上の所見といたしましては、口の中がかわく感じがするとか、くしゃみがする、あるいは目がしみる、目やにが出る、目が赤くなる、顔がほてって困る、のどが刺激するような気がする、胃のぐあいがどうも悪いような気がする、夜眠られないような気がするというような、感覚的なものが非常に多いわけであります。実質的に障害を起こしておるかどうか、すなわち肺機能の検査をいたしました結果は、一般地区と変化がございません。むしろ肺機能の検査は他の地区に比べて高くなっているような点が見られたわけでございます。これはあるいは一酸化炭素の刺激症状かもしれないわけであります。したがいまして、器質的な変化はございませんので、こういう状況に酸素吸入をするということは全く無
意味
であるというのが専門家の
意見
でございます。なお、ヘモグロビンと一酸化炭素の結合したものの血液の中における割合は、普通の
都市
では二%以下でございますが、この大原町等におきましては四.二七%になっております。しかし、これとても通常はカリフォルニア等の
基準
におきましても、五%以下であればさして障害はないということになっております。したがいまして、そういう数字的あるいは測定的な
意味
合いから申しますと、障害を受けておる状態は必ずしもないわけでございますが、お尋ねのように、訴えとして目の刺激症状というものが出ておるわけでございます。
吉田之久
97
○吉田(之)
委員
結局厚生省は、放置しておいていい程度の状況だというふうに判断しておられるのかどうか。そうでないとするならば、——それは立体交差になり、車がスピーディーに走れば
公害
が減ることはわかっておりますけれども、現にいま困っておる
住民
に対して具体的にどういう指導をする、あるいは必要があればどういう援助をしなければならないか。ひとりここだけの問題ではなしに、われわれは、現に起こっておるこういう
公害
が及ぼす人体への
被害
について、厚生省がどのように処置していこうとしておられるのか、こういうことを聞きたいと思います。
舘林宣夫
98
○
舘林
政府
委員
ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、その解決は自動車の排気ガスの濃度を下げることにあるわけでございます。その手段としましては、自動車の機械装置を変えること、排気の浄化をすること、そういうような自動車のほうに対して
措置
をとること、交通
規制
を行なう、すなわち立体交差にして、ここに停滞しアイドリングによる
排出
を少なくする、こういうことが最大の眼目でありまして、そのいずれも目下国の
政策
として
実施
をしておる段階でございまして、完成までには少し時日を要しますけれども、根本的な
対策
はそれが最も必要であるということで、目下それぞれの担当部局で
実施
に努力をしておる段階でございます。
吉田之久
99
○吉田(之)
委員
政務次官にお聞きいたしますが、こういう問題が起こってまいりますと、
住民
はいずれにしても真剣であります。何かいい方法がないものだろうかということで、それぞれ考え出すと思うのです。そのときに、先ほどの問題のように酸素吸入器なんかも当然考え得ることでありますし、また、そういう器具が大いに売りさばかれると思うのです。私はいまの
政府
の御答弁で、酸素吸入器はあまり
意味
がないのだというふうに承りました。もしそうであるならば、
政府
はそれぞれ
行政組織
を通じて、むしろこういう処置のしかたのほうが正しいのだというふうなことを、よほど懇切丁寧に
説明
してやらないと、この場合がそうだとは私は思いませんけれども、商魂たくましい商人と
公害
とが三重にその
住民
を苦しめていくというふうなことがあると思うのです。実はきょうの新聞で私もちょっと気になったのですが、ある薬屋さんの宣伝で、有名な政治家がサイン入りか名前入りで自分の写真を出して、
公害
がひどくなった、政治でもこれを直さなければならないけれども、この薬はよくきくぞというふうな宣伝をなすっておるのです。私は良識ある政治家がそんなばかなことをするはずはないと思うのです。しかし、政治家が
公害
をだしにする商魂たくましい業者に悪用されたり、あるいは
公害
そのものがそういうことに便乗されたりしては私はたいへんだと思いますので、あわせてお考えを聞きたいと思います。
田川誠一
100
○田川
政府
委員
御指摘のようなことがもし事実としますれば、まことに残念なことでございますが、そういうようなことが起こらないように、私ども努力をしてまいるつもりでございます。
吉田之久
101
○吉田(之)
委員
先ほどの指導はされますか。
田川誠一
102
○田川
政府
委員
そういうことが起こらないように指導をしてまいります。
吉田之久
103
○吉田(之)
委員
次に、第二番目に農村
公害
について質問をいたしたいと思うのです。これは
委員長
の選挙区でもありますし、奥野
理事
の選挙区でもありますし、私の選挙区でもある奈良県でいま起こっている問題であります。穀倉地帯の中心を流れる奈良県の曽我川や飛鳥川が今日のひどい干ばつの中で、農民たちはこの川に水田の水を求めようとした。ところがはなはだきたなくて、くさくて、しかも有害であることがわかって、さすがにこの水は使えないということで、いまや農民は、
工場
の廃液による河川の
汚濁
によって非常な実害を現にこうむっている問題が大きく
発生
しておるわけなんです。こういう問題について
政府
はいままで何か調査をされたことがあったか。あるいは指導をしてこられたことがあるかということについて、まずお伺いいたしたいと思います。
松本茂
104
○松本
政府
委員
いま御質問ございました飛鳥川、曽我川、これは大和川の上流でございます。大和川につきましては、下流の堺市の上水道の取り入れ口のあたりを
基準
にいたしまして、その上流全体につきまして
昭和
四十年十一月に
水質
基準
を
設定
いたしまして、その
工場
排水につきましてその
水質
基準
を守るように
措置
をしておるわけでございます。この
水質
基準
の
設定
につきましてま、既存の
工場
につきましては、たとえばBODで百二十まで特例としてやむを得ないということで、六つの
工場
につきましてはそれをオーバーした点に
基準
を置いておりますが、一般の既存
工場
につきましてはBODで百二十まで。それから四十年十一月のこの
基準
を
設定
いたしましたとき以後に新しく設けられた、あるいはまた増設されるものにつきましては、BODでは二十までというふうな
基準
を
設定
いたしておりまして、そういうことによりましてこの河川の
汚濁
の
防止
に当たっおるわけでございます。
吉田之久
105
○吉田(之)
委員
水質
基準
を
設定
したり、いろいろ大和川の河川の
汚濁
に対して
防止
の
対策
を講じておられることはわかりますけれども、しかし、そういう
法律
をつくったり、あるいは
基準
の適用をしたりしただけで
政府
の仕事が終わったとはいえないと私は思うのです。現に農民にまでこういう深刻な打撃を与える
公害
が各地で起こっておる。しかもそれらがたとえば衆議院等で論議されない限りは、あるいは
政府
は全く知らないままでこれを放置するのではないかというふうな気がいたしますので、いままでにこういうことに関して
政府
みずからが、通産省みずからがいろいろと努力されたことがあるのか、
工場
密集地帯は別として、農村
地域
において問題のある
工場
がいろいろな弊害を及ぼすのではないかということについて、個々に指導したり点検したり監督をされたことがあるのかどうか、まず伺っておきたいと思います。
松本茂
106
○松本
政府
委員
水質
基準
の
設定
をいたしまして、それを
工場
のほうで順守いたしまして
水質
をきれいにしてまいるというのには、まず
水質
保全法によりまして
水質
基準
を
設定
する。次に
工場
排水
規制
法によりまして、
工場
がそれを守っていくことをやっていく、こういうことになっております。
経済
企画庁といたしましては、
水質
基準
の
設定
をいたします
水質
保全法のほうを担当いたしまして、こういう
基準
の
設定
につきましてつとめておるわけでございます。この大和川につきましてはBODで申しますなら、その
汚濁
負荷量は、
工場
が二〇%くらい、一般の家庭下水が八〇%くらいという割合に調査の結果なっておるわけでございまして、非常に大きな要素が家庭下水の
処理
にかかっておるわけでございます。したがいまして、この
基準
を
設定
いたします場合にも、この流域下水道の
整備
が非常に大切である、こういうふうに考えられましたので、
経済
企画庁長官から
関係
の大臣に、下水道
整備
につきましての勧告がなされております。この流域の下水道につきましては、
昭和
四十一年度に建設省におきまして
計画
の調査が行なわれておるわけでございます。個々の
工場
が排水
基準
を守っておるかどうか、そういったことにつきましての調査あるいはその指導といった点につきましては、先ほども申しましたように所管であります通産省あるいは農林省においてやってもらっておるところでございますので、そういった点の詳細につきましては通産省あるいは農林省のほうからお答えいただくのが適当であろうと思います。
馬場一也
107
○馬場
説明
員 ただいま企画庁のほうから
水質
基準
について御
説明
がございましたが、大和川水系につきましては、ただいま御
説明
がございましたような
水質
基準
が
設定
をされておりまして、これを受けまして各
工場
ごとにその
水質
基準
を守る監督、
規制
は通産省の所管、
企業
につきましては通産省、具体的に申しますと各通産局がこれに当たっておるのでございます。大和川におきましては、特に先生仰せになりました飛鳥川あるいはその水系にございまして特に問題になります業種は染色整理業あるいは毛紡績というような
工場
が約三十ばかりありまして、これがBODにつきましては一般既設
工場
につきましては百二十PPM、それから特例を設けられました
工場
、これは五
工場
ございますけれども、これにつきましては二百五十という線で通産局がこの
規制
をやっておりまして、この
地域
につきましてはこの
規制
の範囲内にとどまるように
規制
をいたしておるのでございます。ただ、この既設
工場
につきましても非常に排水量の少ない、具体的に申しますと日量百トン未満の排水しか出さない零細な
企業
につきましては、この
水質
基準
の適用を受けないということになっておりまして、この適用外の
工場
が数
工場
あるということでございます。
吉田之久
108
○吉田(之)
委員
企画庁がいろいろと
基準
をつくられ、あるいは
関係
各省各局にいろいろと指示、通達をして監督をしておられるはずなんでございますけれども、事実はそうはなっておらなかったということを私はこれから申し上げたいと思うのです。特に御承知のとおり現在ひどい干ばつであります。したがって、
工場
排水というものが非常に濃度がきつくなってしまっておる、こういうこと。そこへ、先ほどお話もありました
都市
排水もいよいよひどくなってまいります。これら幾つかの
条件
が重なり合ったときに非常にひどい河川の
汚濁
の現象が一挙に生じてくる。それが農村に対してどうにもならない
公害
を与えてしまったということになったわけなのであります。特に問題は、三和澱粉と称する澱粉
工場
があります。この三和澱粉の場合は原料はトウモロコシです。日量約三百トンを使用いたしております。この日量三百トンのトウモロコシによってでん粉を製造するわけなんでありますけれども、もしそのでん粉
工場
が廃液をストレートに流したならば、その廃液は何とBODで一万をこえるのではないか、あるいはSSで五千をこえるのではないかというふうなことは県側でもすでに想定しているようなのであります。しかもそれはたくさんの窒素化合物を含んでおります。こういうものがそのまま捨てられてはならないので、それぞれ指導はなさってきております。確かに三十九年に同
工場
は活性汚泥方式で
処理
槽をつくっております。設備
近代化
資金からその限度額の三百万を借りまして、さらに他に資金を求めて、一千万以上の経費をかけて
処理
施設
を一応はつくっておるわけなんです。さらに四十年になってから製造工程段階に蒸発がま五個をつくって、そして四十年の五月にこれを据えつけております。スラッジと称するカスを濃縮して
処理
しようという
施設
のようでございます。ある程度誠意を尽くしてその能力の限界まで努力はしておると思うのです。にもかかわらず、
工場
側自身が今日でもこの問題の中で認めているように、相当飛鳥川、曽我川に対して
汚水
を現に流しておる。これは一体どこに問題があるのか、その
処理
技術そのものがまだ不完全なのであるか、あるいはせっかく
施設
をつくってもそれを十分に活用していなかったのか、私はやはりこのどちらかがその一番大きな
原因
を形成していると思うのです。問題はこの辺にあると思うのでございますけれども、こういう点について、いままで何らかの監督や指導をなさったことがあるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
石田徳
109
○石田
説明
員 ただいま先生の御指摘になりましたように、三和澱粉では、トウモロコシを原料にいたしましてコーンスターチをつくっております。先ほど企画庁の
局長
のほうから
水質
基準
のお話がございましたが、現在、先ほど答弁ございましたような
基準
が適用になっておりまして、その指導、監督は一応知事がやっておるわけでございます。これまで実は私たち
公害
について聞いていなかったわけでございますが、きょう先生の御質問があるということでございましたので、急遽電話で私のほうで問いただしましたところ、まだ
被害
の程度なり、それからどうやっておりましたかはつまびらかでございませんが、確かに
被害
の出ていることは明らかでございます。それに対しまして、先ほど先生の御質問では、
理由
を二つあげられまして、どちらかであろうというお話でございましたが、その辺はどちらであるかはまだ調べてございませんけれども、社長の申しますのには、今後は
公害防止
の設備も整っておることでございますので、再びそういうような
災害
の起きないように万全の
措置
を講ずるということを電話で申してまいっておりますので、これは直接には知事の指導でございますけれども、コーンスターチにつきましては私のほうの所管でもございますので、今後そういうような
公害
が出ませんように十分な指導をしてまいりたいと思います。
吉田之久
110
○吉田(之)
委員
でん粉の場合は農林省の
関係
であって、知事に委任をしているようでありますけれども、染色
工場
の場合は、これは明らかに通産局が管理、監督をしているのではないですか。
馬場一也
111
○馬場
説明
員 染色業につきましては通産局が排水の
規制
をやります。それで、この
公害
地域
におきます約三十
工場
の染色
工場
につきましては、昨年の七月一日にこの
基準
が適用になっておるのでございますが、それからただいままで、大体七月一日以降、これは四十一年度でございますが、残り九ヵ月でございますが、この問各
工場
に対しまして、大体一
工場
当たり三回ずつ、通産局の職員が巡回をいたしまして
工場
の廃水を持って帰りまして、それを分析いたしまして、
水質
基準
どおりやっているかどうかというチェックをいたしております。
吉田之久
112
○吉田(之)
委員
そのチェックの結果に異常はなかったのですか。
馬場一也
113
○馬場
説明
員 それは、廃液を採取いたしまして通産局へ持って帰りまして分析をするわけでございます。その結果、
排出
基準
を越えた廃液でありました場合におきましては、その
工場
に対しまして当然
排出
基準
に適合するように指導をいたすのでございます。ただいままで聞きましたところでは、一応そういうことは聞いておりません。
吉田之久
114
○吉田(之)
委員
農林省のほうにお聞きしたいのですが、今度のこの廃液によって及ぼした水田の
被害
の
現状
であります。田原本町において苗しろが六万六千平方メートル、農家戸数にして四百五十戸、耕地面積にして二百ヘクタール、それから三宅村のほうで、苗しろが二万三千五百平方メートル、二百十五軒、耕地面積が七十一ヘクタール。これだけの相当広範囲にわたる農家が、このことによって苗しろに水を引くことができないということで、いま非常に困った状態におちいっております。現に水を引いたところでは苗しろに根腐れが生じてきておる、日に日に苗しろの生気がなくなってきておるというふうなことでございますが、農林省としては何らかの調査をされたことがありますか。
上田克巳
115
○上田
説明
員 いまお尋ねのことに関しましては、農林省では
地方
の農政局が指導に当たっているわけでございますが、こまかいことにつきまして情報を得ておりませんでしたので、午前中に京都にあります近畿農政局に電話を入れて尋ねてみましたところ、農政局の担当の部課は奈良県の当該の課から連絡を受けておりませんでした。そのために状況を存じておらなかったのでありますけれども、さらに奈良県の耕地課と農務課とに問い合わせてみました。それによって、いま先生が御指摘のような事情を知ることができたのでございます。 なお、苗しろの面積だとか、ひいては出てくるであろう本田面積とかいう数字については承知しておりません。ただ、苗しろに
被害
があるが、いま食糧庁
関係
からお答えいたしましたようなことで、
工場
が善処方を約束いたしておりますので、
水質
が好転するのではないかという希望を持っておるわけでございます。しからざる場合には、県庁の当該課のほうとよく打ち合わせまして、できるだけよい方向に努力いたしたい、指導していきたい、かように存じております。 なお、本田期に入りますと、あと一週間ばかり後と思いますが、六月十五日以降は、農林省の国営かんがい排水
事業
で
実施
します十津川、紀ノ川のほうから大和盆地のほうへ取水、分水いたすことに相なっておりまして、その能力が毎秒十一トンでございますので、常時は六、七トンを予定しておるわけでございますけれども、十一トンを放流して
被害
の軽減のために期したい、こういうことを奈良県の農業水利
関係
の機関と近畿の農政局のほうとで手はずを整えておるような次第でございます。
吉田之久
116
○吉田(之)
委員
でん粉の残渣というのですか、それが非常に大量の窒素分を含んでおる。さらに、先ほど申しましたように染色の廃液がまじってくる、あるいはし尿等を含むいろいろな家庭から
排出
される悪水が流れてくる。これらによって相当窒素分を含む有機物が水の中に多くまじっておりまして、これが水田に入って還元作用を起こして、土の中の酸素を吸収してしまう。そういうことによって根部が呼吸困難になって苗しろが枯渇していく、枯死寸前である。六月十五日になれば吉野川の水が分水されて流れ出ることはわれわれもよく承知しておりますけれども、苗の間に
被害
を受けると、あと幾ら十分に水を供給してやっても、水稲というものは大きな影響を最後まで受け続けるということについては、まああなたのほうが専門であると思うのですけれども、しかもこういう問題は全然いままで出先機関のほうから御報告がなかったようでありますけれども、何も新しく数日前に起こった問題ではないのです。三十六年当時に一度こういう状態が
発生
いたしております。これは田原本町の
責任
者もそのことを申しております。全国においてもしばしばこういう
産業
公害
が農業に及ぼす影響が生じておるはずなんです。なぜそういうことがそのつど克明に報告されないのであるか。そういうことが十分に報告されておるならば、こういう
被害
もあらかじめ予知されて、また
防止
できたかもしれないというふうな気がいたしますだけに、通産局からも報告がない、
地方
農政局からも報告がない、この辺に私は今日の
公害
問題に対する行政当局の、まだ積極性を非常に欠いている
傾向
が、代表的にあらわれておるのではないかというふうな気がいたしますので、特に今後留意していただきたいと思うのです。
上田克巳
117
○上田
説明
員 先ほどのお尋ねのときに、私のお答えが少し不正確であったと思います。本日ただいま苗しろが非常に大きな
被害
を受けているというような事実についてあいにく存じませんでした、こういうふうにお答えいたしたわけでございまして、曽我川沿岸の水田が、
都市
下水とか、でん粉、染色
工場
の廃液等によって
被害
を受けている事情は承知いたしております。その点訂正させていただきたいと思います。
吉田之久
118
○吉田(之)
委員
政務次官に申し上げますが、お聞きのようにいまや
公害対策
基本法をめぐって、健康の保全と
経済
の健全な
発展
、これの
調和
をはかるというふうなことがいろいろ論議されておりますけれども、むしろ
産業
が
産業
を破壊しかけておるというふうな点を、この際
政府
も十分に留意しなければならないのではないか。単に人間対
産業
の問題ではなしに、
産業
対
産業
、いわば第二次
産業
が第一次
産業
に対してたいへんな
被害
を与え始めているのではないかというふうなことが考えられますので、基本法制定のためにいまいろいろの論議がされているときでございますけれども、
政府
自身としても、
産業
対
産業
の問題もあるということを、この際十分に念頭に入れておいていただきたいというふうに考える次第でございます。 なお、いろいろとこういう
防止
対策
を講ずる上には、中小
企業
の場合には相当な
経済
的な負担を必要といたします。現に三百万円程度の限度額で、しかも設備
近代化
資金のワクの中から
公害防止施設
というものを捻出していかなければならないというふうなことでは、とても間に合わないのではないかというふうに考えるのでございますけれども、次官のお考え方をお伺いします。
田川誠一
119
○田川
政府
委員
今回御
審議
を願っております
公害
基本法におきましては、御承知のように農林水産、そういうような方面につきましても、
生活環境
保全の一環として保護することになっておるわけでありまして、具体的には各水域の利用
目的
や
水質
汚濁
の程度、それぞれの特性に応じて
水質
汚濁
にかかる
環境基準
を
設定
して、そしてできるだけ
公害
を防いでいこう、こういうつもりで立案をしておりますので、
法案
が成立をいたしました暁におきましては、そうしたいままでのような弊害が起こらないように努力をしてまいるつもりでございます。 また、ただいま後段にお話しになりました、
近代化
の設備に対する融資にいたしましても、低利の融資というようなことも
整備
充実をはかっていく方針でございます。
吉田之久
120
○吉田(之)
委員
建設省のほうにこの問題でお伺いをいたしたいのですが、私の考えでは、いま問題のような川、特に工業用の下水道の役割りを果たしておる川であって、しかも農業用水路の役割りを果たしておる、こういう二つの作用をしておる河川の場合に、いま申しておるような問題が特に強く出てまいります。したがって、現在までの
水質
基準
の
設定
とかあるいはいろいろな
水質
汚濁
を
防止
する方法を考えてきておられるその根拠は、基本的な考え方は、
都市
河川方式と申しますか、いわゆる
都市
部の川をいかに守るか、この程度守り得れば
都市
に対して
公害
を与えないのではないかというふうな考え方が絶えず
基準
の尺度になっておったのではないかと思うのですけれども、むしろ、ただいまからは農業用河川方式と申しますか、いかにして農業用のきれいな水を守るかという点で、あらためて
水質
基準
等の再検討をしなければならないのではないかというふうに考えるわけですが、その点建設省のほうの考え方としては、河川の問題をどういうふうにながめておられるか。 いま
一つ
は、河川法の二十九条によって、当然河川局は、河川の清潔を守り、その流量を
確保
するために、管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、これを禁止もしくは制限してきておらなければならないはずだと思うのです。こういう点について、今度のこの問題で何らかの
措置
をされたことがあるかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
上妻尚志
121
○上妻
説明
員
都市
河川方式とかあるいは農村河川方式というような問題でございますが、この問題は企画庁からお答えしたほうがいいかと思います。 ただ、せっかくの御質問でございますので、建設省のこれに対する基本的な考え方を申し上げますと、河川の
汚濁
の問題については、当然のことながら建設省としても非常に大きな関心を持っておりまして、
水質
保全のためには総合的
対策
を講ずる必要があるというふうに考えております。この
対策
といたましてまず第一に考えられるのは、当然下水道の
整備
の促進でございますけれども、それ以外に必要な河川の維持、用水の
確保
、それから他の河川から浄化用水を導入する、あるいは河床汚泥のしゅんせつ
事業
、こういうようなものを促進して浄化をはかっていくというようなことを考えております。 それから河川の
汚濁
の
原因
となる排水の
規制
につきましては、河川管理者の許可を受けさせる
措置
を講じて強力な
規制
をするというようなことをいま検討しております。それを具体的に申し上げますと、河川法二十九条の政令の制定という問題になりますけれども、これは現在各省と折衝しているのが
現状
でございます。 それからもう
一つ
は、大和川水域の問題でございますけれども、これは大和川の流域下水道
計画
というのをいま
計画
いたしまして調査を進めておるというような段階であります。
松本茂
122
○松本
政府
委員
水質
基準
の
設定
につきましては、その侵害されております
被害
がどういうものであるかということを考えまして、たとえばサケ・マスあるいはアユというふうな水
産業
の
被害
を
防止
しなくてはならない、こういうときには、そういった水
産業
に
被害
がないように、また農業でございますときは、その農業に
被害
がないように、また上水道でございますときには、その上水道として使用するのに支障がないように、そういったことを判断の
基準
にいたしまして利水の
基準
を想定し、それに基づきまして
工場
の
排出
基準
を考えている、こういうことで作業いたしておるわけでございます。
吉田之久
123
○吉田(之)
委員
いま下水道の問題が出ましたけれども、下水道の場合も、大和川流域の下水道を完成する場合には約二百七十億の金がかかると思うのです。ところが、現在の国の補助率は十分の四ですか、しかし実際はそのブランチなどには一切補助がありませんので、事実上は総工費の一二、三%しか補助してもらうことにしかならない。これではなかなか下水道を受け入れることが今日の
住民
の能力ではできない。
地方
の貧しい財政の
現状
では受け入れられないというところに問題があります。したがって、今後下水道
事業
の完成を急ぐためにも、ひとつさらに積極的な、
公害対策
の一環としても
政府
はこの問題に努力を払い、
実施
可能な限度まで国の補助率を上げていくというようなことをなさるべきだと思うのでございます。 特に今度のこの農業
被害
と関連いたしまして、簡易水道にも
被害
が出ております。この流域に百九十七戸、八百六十二人が利用いたしております浅井戸式の簡易水道があるのです。これは私が県
会議
員時代にお手伝いしてできた簡易水道なんですけれども、それが今度の河川の
汚濁
によって非常に危険である。したがって、なま水ではこの水を使用するなというふうなことで、全部町が警告を出しておるというふうな状態まで生じております。したがって、こういう面でも厚生省は直ちにいろいろと指導をなされなければならないと思うのです。 特に河川の
汚濁
だけではなしに、非常な悪臭がその付近一帯をおおっております。この際もうがまんを越える段階に入った。農民の場合はいろいろとこういう点についてはわりとしんぼう強うございますけれども、今度のこの悪臭だけはもはやがまんを越える段階になったということを彼らは言っているのであります。悪臭
防止
については.まだ
公害対策
として
政府
は本腰を入れておられないように私は感じております。測定方法がいろいろとむずかしいようではありますけれども、単に河川の
汚濁
とかいうことだけによって悪臭が出るのではなしに、穀粉
工場
からも相当な悪臭が出ております。あるいは
都市
と農村との接点にあるこの種の
地域
においては、養鶏業者が非常な悪臭を近所に与えて迷惑が出ておるというふうな問題も出ております。この際、
政府
は悪臭問題についてどのように考えておられるのか、もっと積極的に何らかの
基準
をつくるべきであるという
姿勢
を持っておられるのかどうか、お伺いいたします。
田川誠一
124
○田川
政府
委員
最初のお話の簡易水道のことにつきましては、事柄が飲料水でございますので、私どものほうでよく調査をいたしまして善処いたしたいと思います。 それから悪臭につきましては、なかなかこれは
基準
がむずかしゅうございます。けれども、いま奈良県のほうであります具体的な問題ばかりでなく、
東京
周辺にも悪臭の問題でずいぶん表面化しているところもあるわけでございますが、そうした問題につきましては、
発生源
の
対策
を立てまして、できるだけそうしたことの起こらないように努力をしてまいるつもりでございます。
吉田之久
125
○吉田(之)
委員
最後に、こうした問題をいろいろ質問いたしますといよいよ痛感するわけなんですけれども、
政府
はいろいろと
公害防止
のために考えている、検討している、
計画
しているということは承りますけれども、現にこういうふうに
措置
したというふうなことがほとんど出てまいっておりません。また、先ほど来申しておりますように、通産局から通産省のほうへの
公害
に対する報告が十分でない、あるいは
地方
農政局から農林省に対して時宜に適した遅滞ない報告がなされているようにも考えられない。現に末端の市町村に参りますと、いろいろこういう問題で行政苦情を聞きに国や県が来られる場合に、特に
公害
の問題について訴えるのだけれども、それは聞きっぱなしだ、それに対してこのように処置したとかいうふうなことも全くなされない、ただ一方通行でわれわれの苦情を訴えるだけなんであって、それがどのように
処理
されているのか、全然反応を確かめることができないというふうなことも申しております。また、この問題でいろいろ県あるいは町村あるいは国に質問をいたしましても、あるいは経過を聞きましても、各省にまたがっておりまして、はなはだ話はばらばらであります。いよいよこうした
一元化
の
処理
をするためにも何らかの強力な機関が必要ではないか。
中央公害対策委員会
というふうなものがつくられて、その
事務局
が完全に充実して、こういう問題が起これば直ちに出先でもそういう機関があって対応していく、それが全部
政府
のほうに吸収されて、直ちに処置をされていくというようなことにならなければ、
公害対策
というものにしょせん絵にかいたもちに終わってしまうのじゃないかというふうなことを強く感じます。いま起こっております問題につきましても直ちに対処していただきいと存じますし、同時に、この問題を
一つ
の貴重な例として、今後の
公害対策
、特に農村を襲う
公害
問題について対処していただきたいと思います。
田川誠一
126
○田川
政府
委員
ただいまおっしゃられたことも確かに御指摘のとおりでございます。すべて障害をなくすというわけにもなかなかまいりませんけれども、そういうことをとにかく
一つ
でもなくしていこうということのためにも今回
公害対策
の基本法を制定しようということになったわけでございまして、
法律
が制定されるのを
一つ
の機会にいたしまして、総合的に
施策
を打ち立てて、そして実効のある
公害対策
を進めていくように努力してまいります。 それから、
被害
を受けられる方々、そうした方々の声を十分受けとめる、苦情を受取ってそれを
処理
するというような組織といいますか、機関と申しますか、そういうものも何らかの形でつくって、そして
公害
の
防止
の
一つ
の基礎にしなければならない、こういうことも考えておるわけであります。 いずれにいたしましても、基本法の成立を期して実効ある
対策
を打ち立てていくように努力してまいるつもりでございます。
吉田之久
127
○吉田(之)
委員
以上で質問を終わります。
八木一男
128
○
八木委員長
次会は来たる十四日水曜日午後一時より
理事
会、
理事
会散会後
委員会
を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時八分散会