運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-07 第55回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月七日(水曜日)    午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 八木 一男君    理事 天野 公義君 理事 奧野 誠亮君    理事 小山 省二君 理事 丹羽 兵助君    理事 板川 正吾君 理事 島本 虎三君    理事 折小野良一君       亀岡 高夫君    塩川正十郎君       砂田 重民君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    藤波 孝生君       三原 朝雄君    加藤 万吉君       河上 民雄君    工藤 良平君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       吉田 之久君    岡本 富夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         運輸省海運局長 堀  武夫君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         議     員 折小野良一君         農林省農地局計         画部資源課長  上田 克巳君         食糧庁業務第二         部砂糖類課長  石田  徳君         通商産業省企業         局立地公害部長 馬場 一也君         運輸大臣官房審         議官      鈴木 珊吉君         運輸省海運局次         長       高林 康一君         運輸省海運局参         事官      野村 一彦君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君         建設省河川局水         政課長     上妻 尚志君     ————————————— 六月七日  委員中井徳次郎辞任につき、その補欠として  中谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として中  井徳次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二日  公害対策基本法案内閣提出第一二八号)  公害対策基本法案角屋堅次郎君外六名提出、  衆法第一一号)  公害の顕著な地域等における公害防止特別措置  法案角屋堅次郎君外七名提出衆法第一二  号) 同月七日  公害対策基本法案折小野良一君外一名提出、  衆法第一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律  案(内閣提出第六〇号)  公害対策基本法案内閣提出第一二八号)  公害対策基本法案角屋堅次郎君外六名提出、  衆法第一一号)  公害の顕著な地域等における公害防止特別措置  法案角屋堅次郎君外七名提出衆法第一二  号)  公害対策基本法案折小野良一君外一名提出、  衆法第一六号)  産業公害対策に関する件(自動車排気ガス及び  水質汚濁対策等)      ————◇—————
  2. 八木一男

    八木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害対策基本法案角屋堅次郎君外六名提出公害対策基本法案角屋堅次郎君外七名提出公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案及び本日付託されました折小野良一君外一名提出公害対策基本法案議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。
  3. 八木一男

  4. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいま議題となりました公害対策基本法案提案理由を御説明申し上げます。  近年わが国においては、目ざましい経済高度成長が遂げられつつあり、産業構造近代化人口の農村から都市への集中工業地帯形成等が予想を越えた速度で進行しておりますが、このような急激な経済的社会的変動の過程において、企業公害防止施設社会公共施設整備の立ちおくれ、立地土地利用に対する適正な配慮の不足等のため大気や水の汚染騒音悪臭等による公害発生が各地に見られ、人の健康や生活環境に対する脅威となって、重大な社会問題を引き起こしております。  このような公害を除去するため、政府としては、従来、大気汚染水質汚濁等発生源排出規制公害防止施設整備を促進するための金融上、税制上の措置等をそれぞれ講じてまいったところでありますが、公害問題は、複雑かつ困難な問題を内包しているため、必ずしも満足すべき効果をあげえず、また対策が制度化されていない公害も残されている現状であります。  これらの個々の対策を今後とも強化充実することは、もちろん必要とするところでありますが、公害対策は、相互に有機的な関係を保ちつつ総合的、計画的に推進される必要があり、そのためには公害対策の共通の原則を定め、事業者国及び地方公共団体公害防止に関する責務を明らかにし、公害防止のための基本的な施策を確立することが重要であります。  このような見地から、国民の健康を保護するとともに、生活環境経済の健全な発展との調和をはかりつつ保全することを目的として、ここに公害対策基本法案提案することといたした次第であります。  次にこの法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、公害防止に関する事業者、国、地方公共団体及び住民責務を明らかにしたことであります。  第二に、大気汚染水質汚濁及び騒音については、環境基準を定めることとし、公害防止施策は、この基準確保を目標にして総合的かつ有効適切に講ずべき旨を規定いたしたことであります。  第三は、公害防止のために国及び地方公共団体実施すべき施策について規定するとともに、特定地域については、施策の総合的な効果確保するため公害防止計画を策定し、その実施を推進することといたしております。  その他、公害にかかる被害に関する救済制度整備の促進、公害防止についての費用負担財政措置並びに公害防止のための行政組織として公害対策会議及び公害対策審議会設置することを規定しております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  5. 八木一男

  6. 角屋堅次郎

    角屋議員 二法案ございますが、まず冒頭に公害対策基本法案について御説明申し上げます。  私はただいま議題となりました公害対策基本法案につきまして、日本社会党を代表して、提案理由並びにその趣旨を御説明申し上げたいと存じます。  およそ公害は、今日、洋の東西を問わず、産業経済の目ざましい発展人口都市集中化交通機関の高度の発達等に伴い、逐年増大傾向を示し、大きな社会問題政治問題になっております。したがいまして、いづれの国においても、国民公害から守るために、公害予防排除救済について、思い切った措置を講ずべきことは、まさに現代政治に課せられた重大な責務と申さなければなりません。  災害は忘れたころにやってくるということわざがありますが、公害には必ず公害発生源があり、この発生源に対する総合的な対策を誤れば、ときに被害人命にまで及ぶことがあります。かの有名なイギリスのロンドン事件では、一九五二年十二月五日から九日まで約一週間のスモッグで、四千名にのぼる痛ましい犠牲者を出しました。また、ベルギーのミューズ事件アメリカドノラ事件、メキシコのポザリカ事件等でも相当の死者を出しております。わが国では、熊本の水俣病事件で四十一名の死者を出し、その原因徹底的究明をあいまいにしている間に、第二の水俣病事件が新潟の阿賀野川で発生し、現在大きな社会問題、政治問題になっていることは、御承知のとおりであります。いやしくも、公害人命にまで被害が及ぶことは、近代国家の恥辱であり、人道上からも絶対許し得ないところであります。この意味で、二度にわたる水俣病事件政治的責任は、きびしく糾弾されなければなりません。  わが国憲法は、その第二十五条第一項において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する」ことを述べ、同条第二項において、「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生向上及び増進に努めなければならない」旨規定しております。わが国公害現状を見るとき、はたしてこの憲法の条項は完全に守られているといえるのであろうか。いな、むしろ、公害にかかる国民基本的人権は全く無視され、侵害されていると断ぜざるを得ないのであります。  今日、都市住民は、ばいじんによごれた空気を吸い、亜硫酸ガスのためにぜんそくなどで苦しんでおります。かつては魚をつり、遊泳ができるほど澄んでいた川の水は、工場の廃液や家庭の汚水のためにどぶ川と化しつつあります。また、ジェット機や交通騒音のために、静穏な日常生活は破壊され、学力の低下や食欲減退、高血圧の増加等を引き起こしております。地下水の過剰くみ上げ等による地盤の沈下は、災害の危険を増大させております。その上住宅難交通難生活難等々が加わるのであります。かくして都市生活環境に望まれる安全、健康、能率、快適の条件はますます遠のくばかりであります。東京都の美濃部知事が、選挙の際、「東京都に青い空を」と都民に訴えて共感を得たことは、けだし当然のことと申さなければなりません。  日本都市公害が、国際的レベルにおいて決して好条件にないことは、降下ばいじん量一つをとってみても、おのずから明らかであります。降下ばいじん量は、毎月一平方キロメートル当たりのトン数で表示されますが、東京の二十六・五トンに対し、ロンドンは半分以下の十一・五トンであり、大阪の三十三・七トンに対し、ロスアンゼルスは四分の一以下の七・七トン、ピッツバーグでも半分の十六・四トンであります。その上、総合エネルギー調査会経済審議会答申にもあるとおり、昭和四十六年度の総合エネルギー需要が、石炭採算で三億七千万トンと昭和四十年度実績の一・六倍に達し、しかも石油が供給構成の六八%を占めると見込まれております。したがって、亜硫酸ガス発生等による大気汚染要因がさらに増大するわけであり、それに工場事業場等増加による大気汚染水質汚濁等悪化要因をあわせ考えれば、今後公害予防排除のため、総合計画に基づく土地利用区分設定工場立地適正化公害防止施設研究開発、厳格な規制等、なすべきことのきわめて多いことをあらためて痛感するものであります。その際、アメリカロスアンゼルス日本の宇部市など、大気汚染防止対策で顕著な成果をあげてきた教訓は、公害防止の指針として積極的に取り上げられなければなりません。  いずれにせよ、今日わが国公害対策が、従来のような産業偏重生産第一主義姿勢では、これからの公害対策の万全を期することはとうてい不可能であり、われわれがつとに国民の健康、静穏な日常生活財産及び農林水産資源等公害から守るという大前提に立ったみずからの公害対策基本法案を提示し、政府に強く善処を要請してまいりましたのも、責任ある政党の立場としてけだし当然のことであります。佐藤内閣も、われわれの強い要請と世論の前にようやくみこしを上げ、先ほど坊厚生大臣より御説明のありました内容政府案提案されたのでありますが、政府案発表当時あらゆるマスコミがあげて批判したごとく、経済界の圧力に屈して、当初の厚生省試案より大幅に後退し、およそ公害対策基本法案たるにふさわしいバックボーンに欠けていることはまことに遺憾であります。  政府は、かっての水質二法、ばい煙規制法等で、本来の公害防止よりも産業との調和に目を奪われ、ほとんど実効をあげ得なかった過去の誤りを再びここで繰り返さんとしているのであります。われわれは、わが国公害現状と将来に深く思いをいたし、国民公害対策基本法案に寄せる期待にこたえるため最善の努力を尽くさなければなりません。その意味において、われわれの案こそまさに国民期待にこたえる最良の案と信じ、以下、若干政府案にも言及しつつ、その内容のおもなる点を御説明いたします。  まず第一は、本法の目的に関する事項についてであります。  われわれの掲げている目的は、そのまますなおに御理解いただけると存じますが、政府案には「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」というきわめて重要な字句が挿入されているところに問題があります。この表現は、第一条の目的と第八条の環境基準に出ておりますが、本来公害防止とは異質のものであり、国民生存権にかかる公害対策が、産業界の要求に道を譲って公害対策の万全は期し得ないし、企業自身も、他の企業公害によって被害を受けている事例に徴しても当然削除すべきものであります。国民の健康と福祉の保持が、事業活動その他の経済活動における利益の追求に優先することを原則としない限り、公害発生防止することはできないと思考するからであります。  第二は、公害に対する事業者責任を明確にうたっていることであります。  本来公害発生責任主義によって処理すべきものであり、公害の主たる発生源たる事業者は、その社会的責任立場から見ても、進んで公害防止のための万全の措置を講ずべきであります。このことは、われわれの基本的主張であるのみならず、公害審議会答申社会開発懇談会中間報告人口問題審議会意見国民生活向上対策審議会答申等の中でも一致して同様の主張を述べております。  従来、日本事業者の場合、政府企業擁護政策と相まち、公害に対する企業責任の自覚に欠け、あるいは責任を回避する傾向の強かったことは、経団連の「公害防止対策の基本的な考え方」の中でも、明らかに読み取れる点であります。事業者の中には、日本産業経済地域開発に貢献しているというゆえをもって、ある程度の公害発生は大目にという尊大な気持ちがあったり、あるいは企業問競争国際競争に勝ち抜くためには、コストのかさむ公害防止施設設置や、所要公害防止事業実施などほどほどにという、企業エゴイズムの強いものもあります。われわれをして率直に言わしむれば、年間六千億円をこえる交際費のたとえ三分の一でも四分の一でも、思い切って公害防止事業に振り向けるという新しい企業者モラルを持つべきだと思うのであります。  われわれは、一方で強く企業責任を追及する姿勢をとる反面、責任遂行に伴う必要な資金の確保及びあっせん、税制上の措置助成金交付等施策は、企業実態に即して十分やってまいりたい所存であります。  なお、公害防止の徹底と公害にかかる被害救済に万全を期するため、事業者の無過失賠償責任を明らかにしたことはきわめて重要な点であります。  第三は、国及び地方公共団体責務を明確にし、公害発生防止のみならず、公害にかかる被害救済に関する施策を講ずることを明らかにいたしました。  第四は、政府公害対策に関する五ヵ年計画を作成して、国会提出するのみならず、これを広く天下に公表し、毎年その実施状況国会に報告する義務を課しております。これはなぜか政府案から除かれておりますが、公害防止に関する総合計画の樹立こそは絶対必要であり、その年度別計画実施状況とあわせ、国会国民にその内容を明らかにすることは、責任政治立場から見ても当然のことであります。  第五は、公害行政一元化による所要機構整備をはかったことであります。  すなわち、今回新たに公害発生防止に関する行政事務及び公害にかかる紛争処理に関する事務を統一的に、かつ、公正に遂行させるため、総理府の外局として中央公害対策委員会を置き、この委員会事務局及びその地方支分部局中央公害対策審議会並びに公害防止研究所を置くことといたしております。  また、都道府県または指定都市地方公害対策委員会を置くことができることとし、地方公共団体自主性を尊重しつつ、公害行政一元化をはかる所存であります。これらの新たな機構には、技術的職員の配置を含め、公害行政一元的運営に必要な陣容を整備することとし、公害に対する国民の強い要請にこたえてまいりたいと存じます。  この点について、政府案は、現体制の上に公害対策会議といういわば関係閣僚会議ともいうべきものを設けるにすぎず、従来の各省のセクショナリズムの排除、迅速的確なる行政運用などほとんど期待し得ないことは、過去の実績に徴してもおのずから明らかであります。  第六は、公害にかかる許容限度設定についてであります。  中央公害対策委員会は、中央公害対策審議会意見を聞いて、大気汚染水質汚濁及び騒音のそれぞれについて許容限度設定することとし、その基本的条件は、住民の健康、静穏な日常生活財産農林水産資源等が侵害されないようにするため、必要かつ十分なものでなければならないと明確に規定して、公害から国民を守る国のき然たる態度を明らかにいたしております。しかも、この許容限度については、常に適切な科学的判断を加えて、必要な改訂を行なうことといたしております。  第七は、排出等基準設定についてであります。  排出等基準設定については、中央公害対策委員会中央公害対策審議会意見を聞いて行なってまいりますが、その権限を一部地方公害対策委員会等に委任することができることとし、中央地方を通じ、実態に即した機動的運用をはかる所存であります。  許容限度排出等基準との関係は、発生源対策としてきわめて重要な点でありますが、政府案のように両者の関係があいまいで、しかも環境基準経済発展との調和で制約されるようでは、そもそも環境基準を設けた本来の意義が失われてまいります。その点、われわれの案では、前述の基本的条件に適合した許容限度を越えないという大前提に立って、発生源たる事業者等の順守すべき基準設定してまいるのであります。  第八は、公害にかかる被害についての救済制度についてであります。  これは公害にかかる被害を受けた国民からすれば重大関心事でありますが、従来の事例に微しても、公害紛争は、被害者加害者の問で短期間の間に処理されることが一般的に困難であり、かつ、加害者が不特定多数で見きわめがたい場合において、現に被害者公害にかかる死亡もしくは病気という事態も当然予想されます。  したがって、われわれは、公害にかかる被害者立場に立って、救済基金制度救済のための公害保険制度等の創設を検討し、その結果に基づく救済制度を確立して、公害にかかる被害者に対する医療の給付もしくは生活費給付または公害にかかる被害についての原状回復等救済がすみやかに行なわれるようにいたしたいと存じます。  また、公害にかかる紛争が生じた場合における中央公害対策委員会等による紛争処理についても、必要な施策を講じ、問題を迅速的確に処理してまいりたいと考えております。  最後に、公害の顕著な地域等における特別の施策については、政府案は、基本法案の中に実体法的性格内容のものまで含まれていると考えられますが、われわれは、この点については明確に区分し、別に公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案として、基本法案と同時提案しておりますことを申添えておきます。  以上がわれわれの提出いたしました公害対策基本法案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして、提案理由説明を終わる次第であります。  引き続きまして、公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案提案について御説明申し上げます。  私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案提案理由内容につきまして、御説明申し上げます。  すでに公害対策基本法案提案説明の際にも申し述べましたように、今日の公害による被害発生は日に日に増大の一途をたどり、国民の健康と生活はもとより、その影響は産業自体にまで及び、いまや正常な生産活動を阻害する事態すら招来せしめているのであります。  したがいまして、わが党の公害対策基本法案の二十条の規定にございますように、特に現在公害が著しく発生し、また今後著しく発生するおそれのある地域につきましては、早急に除去または予防を総合的かつ計画的に実施する必要があると考える次第であります。これがこの法律案提出する理由であります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  第一に、現に公害が著しく発生し、または人口及び産業の急速な集中等により公害が著しく発生するおそれのある地域について、中央公害対策委員会がその関係地域地方公害対策委員会に対して、実施すべき公害防止計画基本方針を示して、その計画の策定を指示することといたしました。  また地方公害対策委員会は、中央公害対策委員会にその指示を求めることができ、公害防止計画を作成するにあたっては、都市計画その他土地利用計画との調整をはかるとともに、関係市町村長住民事業者等意見を聞かなければならないことといたしております。  第二に、公害防止計画内容は、公害発生原因となる施設立地及び土地利用規制、さらに国または地方公共団体実施する事業のうち、緩衝地帯設置、住居と敷地の買い上げ、家屋と宅地造成工場移転共同処理施設、道路、下水道、汚水処理場清掃施設工場団地など公害防止関係ある計画または事業を含むこととし、それを推進するために必要な監視、測定等体制整備について定めることにいたしております。  第三に、公害防止計画を達成するために、国及び地方公共団体が十分な措置を講ずることはもとより、国と事業者はそれぞれその経費の一部または全部を負担することとし、負担すべき事業者の範囲と負担割合については、中央公害対策委員会の定める標準に基づき関係者が協議してきめることなど所要事項規定いたしております。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 八木一男

  8. 折小野良一

    折小野議員 私は、民主社会党を代表いたしましてただいま上程されました公害対策基本法案提案理由並びにその内容につきまして、簡単に御説明申し上げます。  わが国経済の目ざましい発展は、一面において、多くの国民犠牲の上に成り立っていると申すべきであります。かゝる高度成長政策のひずみとして、続発する公害国民の健康をむしばみ、生活環境悪化はゆゆしい社会問題を惹起しているのであります。しかも産業集中人口過密化は、これに対する適切な措置のないままに、公害の恐怖とその害毒をますます蔓延させているのであります。したがいまして、公害防止は、国民の健康、財産を守り、よき生活環境を維持する上で、何をさておいても早急に解決されなければならない国政上の最重要課題一つであると確信いたしますが、現実は、その施策の裏づけたるべき法の整備が不十分のために、公害を全国的に野放しにする結果を招いているのであります。  すなわち、現行法制においては、第一に、公害と認定される統一された規定がなく、そのため公害排出に対する規制が円滑に遂行されておりません。  第二に、公害防止に関する事業者等責務があいまいでありましたがために、公害事前防止はもとよりのこと、被害補償苦情処理等救済も非常におくれているのであります。  第三に、公害に関する基本的事項が定まっていないため、現在の公害関連法律はすべて事後法であり、事前にこれを防止するという十分な法的措置がとれない状態にあるのであります。  以上の諸点から、今日の事態公害を抜本的に防止するための基本法案の制定を切実な問題として要請しており、本案を提出する理由はまさにここにあるのでございます。  次に、法案内容についてその概略を御説明申し上げます。  第一は、その目的におきまして、この基本法は国民の健康と生活環境を守るために、総合的かつ十分な対策が講ぜられなければならないことを明確に規定したのであります。すなわち公害対策についての人間尊重と社会正義の立場を宣言したものであります。  第二は、事業者、国、地方公共団体等の公害に対する責務を明確に規定した点であります。特に公害原因者である事業者責任について、故意、過失にかかわらず責任を負うべき旨を明らかにし、公害対策についての施策はすべての産業政策及び企業利益に優先して策定され、及び実施されなければならないことを明記いたしました。  第三は、公害発生防止に関する計画等についてでありますが、十年ごとの長期目標を定め、この目標を達成するための総合計画及び年度別計画を作成し、これを国会提出するとともに一般に公表し、または実施状況を毎年国会に報告することとして、公害対策計画的な実施を保障しようとするものであります。  第四は、許容限度設定排出等規制を行なうための基準設定について、明確かつ厳重な規定を設けております。許容限度については、地域の用途別、水域の利用目的別、昼夜の別、人口密度等を考慮して実効的な基準を定め、かつ、運用について適切な措置がとられるよう規定し、排出基準については、今日までの対策の実情を考慮し、より適切な措置が行なわれるよう規定整備を行ない、特にこの基準が最高限度のものであって、できるだけそれ以下にするようにつとめるべきことを明らかにし、また改善命令、停止命令等による規制の強化を行なったのであります。  第五は、公害に関する研究調査について、科学技術の振興をはかり、必要な指導、助成を行ない、公害発生防止と、発生した公害に対する適切な措置実施を保障するよう必要な規定整備を行なうことにいたしました。  第六は、公害の顕著な地域等における特別の施策についてでありますが、このような地域については、その地域公害防止基本方針を定め、これに基づいて必要な具体的公害防止計画を樹立し、その達成に必要な措置を講ずべきことを規定しました。  第七は、公害による被害についての救済制度整備について、特に現実問題として、その原因並びに責任の不明確であることによる救済の遅延、不完全、不履行等を防止するため、国がその責任において必要な施策を講じ、自後事業者に対する分担金の賦課等の制度を確立し、また紛争処理制度を確立するのに必要な施策を講ずべきこととし、公害による救済の保障を明らかにしました。  第八は、公害対策についての行政事務及び公害にかかる紛争処理等の事務を統一的に、かつ、公正に行なうために、総理府の外局として、国会の同意を得て任命される委員によって組織される中央公害対策委員会を置くこととし、その下に各都道府県及び指定都市地方公害対策委員会を設けることといたしました。特にこの点については、行政機構の統合一元化による行政の効率化と行政委員会による行政の中立性を確保しようとするものであります。  以上民主社会党提案公害対策基本法案について、提案理由並びに法案の要点のみ御説明申し上げました。私どもはこの案が最もいい案であるということを確信をいたしております。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  9. 八木一男

    八木委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  各案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  10. 八木一男

    八木委員長 船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。砂田重民君。
  11. 砂田重民

    ○砂田委員 海水汚濁防止に関する法律を、読んだだけではちょっとわかりにくい点がいろいろございますの御質問したいと思いますが、前回の当委員会ですでに同僚の河上委員その他から御質問がございましたので、重複をできるだけ避けまして伺っていきたいと思います。  まず第一に、私が持っておりますのは運輸省で翻訳されたものだと思いますが、ディスチャージということばとエスケープということばが使ってありますが、条約の第一条に、日本語で訳してあるのを読みますと、「排出」とは、「原因のいかんを問わず、すべての廃棄又は流出」ということばが使ってあります。本法の第一条には「この法律は、船舶から海上に油を排出することを規制し、」とございますが、運輸大臣にひとつ冒頭にお伺いをしておきたいと思いますのは、この条約にうたってあるディスチャージとエスケープ、ディスチャージのほうは意思を持って投棄するという意味だと思いますが、エスケープということばの意味は意思を持たないで油がこぼれてしまった、そういうときにも適用されるように条約の第一条には書いてございますが、本法の「船舶から海上に油を排出することを規制」するという「排出する」というのはディスチャージ、エスケープ、いずれも該当するんだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  12. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  13. 砂田重民

    ○砂田委員 次に、規制されます船舶のトン数のことに関連して伺っておきたいと思うのですが、本法でも、タンカーで百五十トン以上、一般の内航船で五百トン以上というふうな、条約と同じ規制をしておられるのでありますけれども、内航海運の登録をされております隻数からいいますと、百五十トン以上のものは大体三〇%しかない。百五十トン未満のきわめて小型のいわゆる内航タンカーというのが大体七〇%くらい。タンカー以外の一般の内航船の各港の入港隻数も、やはり五百トン未満が七〇%強であって、五百トン以下のものは隻数で三〇%弱しかないのではないか。運輸省の資料を見ますと、こういう割合になっていますが、はたして今度の法律規制をされるこの三〇%以下の内航タンカー、一般の内航船、こういった船について、バラスト、ビルジまたタンククリーニングのそういった油濁物についての規制トン数船と、本法で規制されない非規制トン数船とが持っております原因を起こすであろうところのトン数の割合でいきますと、前回の河上委員その他への御答弁で、大体九〇%これで規制していけるのではないかということでありましたが、この数字はどういうふうに計算をしておられますか。
  14. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げますと、油性混合物だけで見ますと、本法の規制対象船舶の排出いたしますものにつきましては、トン数から申しますと約八割カバーできるというふうに推計しております。それから油性混合物でなしに油だけで見ますと約九割これによってカバーできるというふうに推計しております。
  15. 砂田重民

    ○砂田委員 簡単でけっこうなんですが、たとえばバラストなんてものは不確定要素が非常に多いと思うのです。積んでくるときもあるだろうし、海がたいして荒れてなければわずかなものしか積んでこないかもしれない。不確定的要素を相当含んだ問題だと思うのだけれども、どういう計算をしておられるか。隻数だけでいきますと、こういうふうに七割三割、逆に規制を受けない船のほうが圧倒的に多いのだけれども、油濁物あるいは油そのもの、そういったものは九割八割というふうに押えておる。その計算をなさった基礎を説明をしていただきたい。
  16. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 要するに廃油の種類をビルジ水とバラスト水と、タンクをクリーニングする場合のクリーニング水、三つに分けまして、内航、外航、漁船、外国の船というふうに四つに分けまして、それでは年間何トンくらいのそれぞれの汚水を出すかということを推計いたしまして、トン数によってそれを掛けたというわけでございますけれども、それによりますと、いまのような結果が出てくるというわけでございます。たとえばビルジにつきまして、これはほんとうに微々たるものでございます。総トン当たり年間〇・一トンということで計算しておるわけであります。一番大きいのはやはりバラストでありまして、大体一航過当たりデッドウェートの三分の一くらいバラスト水を流す、そういう計算でやっております。それからタンククリーニングにつきましては一航過当たりデッドウェートの十分の一くらい見込んで洗うということでありまして、そういうふうに計算した結果、こういうことになったわけであります。
  17. 砂田重民

    ○砂田委員 一番大きな問題のバラストが、そういった計算をされるのに不確定要素をだいぶ含んでいるというので、たいへんその計算はむずかしいだろうと思うのですが、八割、九割ぐらいは規制されていく、そうあることを期待をしております。ところが、この法律では規制されない百五十トン以下の、特に二、三十トンのこういう油を積んで港内を歩くそういう船も、先ほど申し上げたように隻数というものは非常に大きなものがあるわけなんです。これが今度のこの海水油濁の法律では規制をされない。前回の当委員会での御答弁では、港則法で海上保安庁がこれをいままでも監督をしてきたので、これからも港則法第二十四条で取り締まっていくというふうな御答弁があったようでございますが、実際問題として、いままで海上保安庁はあまり厳格に取り締まってなかったんじゃないかと私は思う。それは、やはりそういう小さいタンカーにいたしましても、それを処理してくれる設備なんというものは一つもなかった。バラストだとか、そういったものは港でもどこでも捨てるのが長い間の習慣というか、そういうことで、きょういただきました保安庁の資料で幾つか取り締まった例も出ておるようでございますが、そういった施設的なものが何もなしに、ただ取り締まるばかりということでは保安庁もやりにくいということで、あまり厳格な取り締まりをやっておられなかったんじゃないかと思うのですが、そういうことですか。海上保安庁のほうから……。
  18. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 ただいま御指摘のありましたように、施設がないから取り締まらなかったんではないかということでございますが、お手元に差し出しました資料にもございますとおり、私たちで目にあまるものにつきましては、港則法の二十四条の規定に基づきまして検挙いたしまして、そしてそれぞれ刑事訴訟手続を終っておる次第でございます。決して施設がないから港則法に規定されております取り締まりをおろそかにしたということではございません。
  19. 砂田重民

    ○砂田委員 港則法二十四条にはどう書いてありましたか。たしか「みだりに」ということばが入っておりましたね。ですから、今度のこの海水油濁防止のための法律とは何かきびしさが少し違うような気持ちがするのですが、また罰則の規定も片や三万円、片方は十万円、罰則もまた違ってきている。ただ先ほども私申し上げたように、トン数ではあるいは小さな船のほうが海をよごすあれは少ないかもしれませんけれども、隻数からいうと相当な数なものですから、これからは保安庁もひとつ御熱心にその取り締まりをやっていただきたい。と同時に、やはりそういう港則法第二十四条の精神というものを——みなそれぞれ小さい一ぱい船主の人たちであろうと思いますから、そういった指導を一生懸命海上保安庁ではぜひやっていただきたい。これをひとつお願いをしておきたいと思います。  それから、いまもちょっと私触れましたが、港則法二十四条の罰則が三万円で、今度のこの法律による罰則が十万円。別にひがんで言うわけではないのですけれども、この十万円の罰金ということが変なことに関連をしてくるのです。それは一トンの油、これを海上にこぼした場合に、それを洗剤などの化学薬品で処理をいたしますと、一トンの流した油を完全に中和させるだけの洗剤をまいて原状回復をやったら、大体それに十万円ぐらいの費用がかかるということが推定されるんですね。そうすると、第七条の第二号に書いてあるように、流れ出ることを防止する努力をすれば第五条、六条の規定は当てはめない、適用しないというようなことが第七条に書いてありますが、一トンこぼしてしまった油を処理するのに、洗剤をまいて完全に処理すると十万円かかる。もしも一トン以上の油をこぼしたときには、これは罰金とられるほうがかえって安上がりになる。これは決して好ましいことではないが、ただそういったような考え方を船側がやって、その第七条第二号の努力をはたしてするだろうか。排出防止を努力する、その努力を徹底的にもう少し命令するような、そういう事項を書いておくということが必要ではないだろうか、そういう気持ちがちょっとするのですが、これはいかがですか。
  20. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この取り締まりというのは権力行為でございまして、やり方によってはずいぶんいろいろ手荒なこともできますし、十万円の罰金では安過ぎると思うような場合には、取り締まりの速度を調節いたしまして、一週間、十日ぐらいは動けないようにしておくということもできるわけでございます。まあ、罰金はこの程度でよろしいかと思います。
  21. 砂田重民

    ○砂田委員 罰金というのは目的じゃないのですから。ただ、たまたまちょうど一トンぐらいの油を流したときに、それを処理するのに十万円ぐらいかかる、調べてみたらちょうど罰金と同じぐらいの金額が出てきたものですから伺ったのです。その七条に油の排出禁止を適用しない五項目が並んでおりますが、その第一項目は船舶の安全の確保ということであって、第二項目が船舶の損傷した場合、衝突その他によって起こった現象のことだと思うのですが、そこでひとつこの第二項目の場合を想定をして伺っておきたいと思いますことは、小さいタンカーがぶつかった。油が流れ出てしまう。ところが、その流れた油は、衝突してしまった船は損傷を受けて自分で流れた油の処理をする能力を失ってしまう。海面に実際に流れてしまっている。そうすると、清掃をして原状回復をする義務を持っているものはだれでありますか。
  22. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この条項は原状回復の義務とは関係ない条項でございまして、そうした場合におきましても、原状回復を命ずる場合においては、やはりその船舶の所有者に命ずることができると思います。
  23. 砂田重民

    ○砂田委員 大臣、その船舶の所有者に命じても、実際その船自体はもう処理する能力を失っている、衝突によってそういう障害を船自身が受けている。それからその船舶の所有者といいますか、比較的何そうも船を持っている船会社であって、その港の中あるいは近くに同じ船会社に属する船があれば、そういう仕事ができるのですが、どうもそうでない場合がいままでもたびたび起こっているわけでございます。これは港湾管理者がいままで一番苦労もし、苦心もし、どうも理解しにくいと言ってきているところで、原状回復をやる義務者というものをやはり明確にしておく必要があると思うのです。
  24. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 一般海域については規定はございませんが、港則法の適用ある水域におきましては、港則法第二十四条で、「廃物を捨ててはならない」という規定がございまして、それに違背をいたした者に対しましては、「その捨て、又は脱落させた物を取り除くべきことを命ずることができる」ことに相なっております。したがって、この命令につきましては一般の行政処分と同じように行政代執行法でもって代執行をいたしまして、その費用を船舶所有者から取り立てるという方法が法律上は備わっておると思うでのございます。そこに船舶所有者がおりませんでも、この命令を出してさえおけば、あとは管理者でその命令をみずから代行して、費用の請求をするという形で救済をすることができようかと思います。
  25. 砂田重民

    ○砂田委員 もう一つ伺いたいのですが、港湾法第十二条を、審議官、ちょっと一ぺん読んでみてください。
  26. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 港湾法の十二条の規定は、港湾管理者の権限を規定いたしておるわけでございますが、この場合において港湾が汚染されたとか、あるいはじゃまものが存在するというような場合には、港湾管理者としての責任上、当然それを取り除きまして、港湾を良好な状態に置く、そのことを書いてあるわけでございますが、この場合におきましては、その費用は港湾管理者みずからが負担することに相なるわけでございます。ちょうど海上保安庁が行動した場合、自己の行動に基づく経費は海上保安庁みずから負担するのと同じでございまして、船主に対して費用を課するということは、この場合にはできないと思います。
  27. 砂田重民

    ○砂田委員 私が第七条第二号の船舶の損傷によって起こった油あるいは油濁物の流出を前提にして伺って、一番港の中で多いのはそれなんです。ですから、第七条第二号の船舶の損傷によっての油の流出というものは、その船の側で流出を防ぐための努力をすれば、五条、六条は適用されないということですね。しかし、現実問題として油は海に流れている。それを取り除く原状回復の義務を負った者は海上保安庁であるのか、港湾管理者であるのか。それの費用というものはどう見ていったらいいのか。これをひとつ明確にしておく必要があると私は思う。それで伺っているのです。方々の大きい港湾でそういう事態が起こるたびごとに、海上保安庁と港湾管理者との間で義務が明確でないためにいろいろな原状回復が迅速にいかない、そういう例がこれまでもありましただけに、この機会に私はそういった点をひとつ運輸省で明確にしておいていただきたいと思うのです。
  28. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 本人に費用を課する場合においては、そういう道がある限り、港湾管理機関から港則法による命令を出しまして、本人から費用を出させるということになるわけでございますが、それがない場合におきましては、海上保安庁がやるか、あるいは港湾管理者がやるか、いずれかになるわけでございます。いずれの場合にいたしましても、本人の費用負担を伴うものでございますから、いわゆる消極的権限争いというような事態が生じやすいと思うでございまして、その点についての砂田委員の御質問だと存じます。この点につきましては、いままでどういうふうにするかという取り扱いについての確たる方針がございませんが、御注意の次第もございましたので、ひとつ港湾管理者あるいは海上保安庁相互間でよく相談をさせまして、何らかの規律をはっきりさせておく処置も必要と存じますので、至急そういう運びにさせていただきたいと思います。
  29. 砂田重民

    ○砂田委員 せっかくこれだけの法律をつくって海の水をきれいにしていこうということなんですから、いままでも相当広範囲にわたる——特に港湾内の海水の油濁というのは、いま私が申し上げたような事柄から起こってくるのが多かったわけです。これからもそういうことでないかと思いますだけに、またそういう事態が起こったときに海上保安庁と港湾管理者との間で原状回復の義務がどこにあるかということが明確でないものだから、迅速に事が運ばなかったということも幾たびか聞かされています。ぜひそこのところの原状回復義務者というものを御検討の上で明確にしておいていただきたい。お願いをいたしておきます。
  30. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いまでは油による海水の汚染というものについて、これが航海にすぐ支障を生ずるものでもございませんし、ただ見てぐあいが悪いとか、あるいは衛生上支障があるとか、そういう点が多かったものでありますが、その点についてはっきりした行政権の作用がなかったわけでございます。このたびこういう法律ができます以上、やはり港内における油の問題も、それと見合って厳重に取り締まりを励行する必要があろうと存じます。さすれば、港湾管理者ないし海上保安庁系統の官庁の双方の間に、その責任についていろいろ不明確な点で起こりやすいと思いますが、これは当該機関の話し合いを行ないまして、どういう場合にはどっちがやるということをあらかじめきめておく措置をとりたいと思います。
  31. 砂田重民

    ○砂田委員 海上保安庁も、港湾管理者も、乏しい予算でやっておられるだけに、そういう問題が起こったときに、どうも消極的ななわ張り争いがあったのじゃないかと思う。どうぞその点御調整の上よろしくお願いをいたしたい。  次に、廃油処理施設のことでちょっと伺っておきたいと思いますが、条約の第八条に石油積み込みターミナルは施設を備えつけねばならないというふうに条約にはなっているのですが、これと並べて船舶の修理港ということが次の(c)項に出てくるわけです。すらっと読みますと、船舶の修理港と書いてあれば、これは港湾管理者と考えていいと思う。その一つ前に書いてある石油ターミナルというこの字句はどういうふうに解釈すればいいのか。今回の海水汚濁のこの法律では、そういった廃油処理施設というものは主として港湾管理者に施設を備えつけさせるというように理解をするのですが、条約でいう石油積み込みターミナルというのは何をいっているのか。石油積み込みターミナルで事業をやっている民間企業をいっているのか、その民間企業の集団をいっているのか、そのターミナルのある港湾の管理者をいっているのか。この条約のいうところの石油積み込みターミナルというのは何をさしているのか。
  32. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 条約の第八条の(b)でございますが、条約では油の荷積み場と、日本語に訳しますと言っておりますけれども、本法では、そういった修理港とか、油の荷積み場というふうに分けずに、いわゆる港はということで書いてあるわけでございます。そこで、条約で申しておりますのはタンカーが油を積み込む場所でございますので、たとえば日本で申しますと精製所でございますが、精製したものをタンカーに積みまして、そして消費地へ持っていくということが主だと思いますが、そこでは積みます場合にバラスト水を流しまして、それで油を積み込むということでございますので、一番よごれる率が多い。こういうことで特に条約では油の荷積み場と書いてあるわけでございます。本法といたしましては、やはりそういったものを入れまして、もちろん精製所のそばの港も全部入るという趣旨で書いてあるわけでございます。特に分けて本法では言っておりませんが、趣旨は同じだと思います。
  33. 砂田重民

    ○砂田委員 本法をそのまますらっと読んでいきますと、港湾管理者が大体その施設をつくらなければならないのじゃないか。そうなると、港湾管理者がタンカーのバラスト水を処理するための施設、それをやるにいたしましても、石油積み込みターミナルは、実際には油槽所であるとか、石油精製工場があるところとか、そういった油槽所の敷地内の海に面した場所に設備をすることが、船舶の積み荷であるとか荷おろしとか、そういった船の通常の運航をおくらせることが少なく便利であるという気がする。そこで、そのような場所に処理施設をするについても、港湾管理者がはたして適当な土地を持っているかどうか。やはりわれわれが考える石油のターミナルの敷地内に設備をすれば、船にとっては一番ぐあいがいい。船の運航をおくらせないような場所というのは、そういう場所だろうと思うが、そういう場所を確保するために石油業界の協力を必要とすると思うのですが、そういうことを、運輸省あるいは通産省の鉱山局長にも来ていただいておりますが、何か業界と話をなさっておられるか。
  34. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいまの御質問でございますけれども、運輸省といたしましては、実は本法で自家用処理施設という規定がございます。これは主としてそういった石油精製工場におもに出入りする船について、精油で出すという趣旨でそういう方途を考えているということが本法にはございます。  それから石油業界と話もいたしましたが、やはりそういった施設のあったほうが、先生おっしゃいましたように船の航行率からいいましても、わざわざ捨てに行くよりもいいのではないか、そういうものを設置する必要があるのではないかということを考えているわけでございます。
  35. 砂田重民

    ○砂田委員 いまぼくがお尋ねしたのは、質問のしかたが悪かったのじゃないかと思いますが、石油精製工場、それも四日市みたいな場合を伺ったのではなく、今度指定された六つの港にそれぞれ石油精製メーカーが油槽所を、タンクを持っておりますね。これは各石油精製メーカーが大体隣合ってたくさんタンクを持っている。そうなると、そういう場所では自家用ではなしに、やはり港湾管理者がそういった場所に処理施設をつくるだろう。そうなると、その港湾管理者は埋め立て地を石油精製メーカーに売ってしまったりして、かっこうな場所に土地を持っていないのじゃないか。そうすると、丸善石油のタンクがある、三菱石油のタンクがある、何々石油会社のタンクが並んでいるというときに、その近くか、その敷地のうち、そういうところに施設ができれば一番いいわけです。したがって、そういう敷地提供とかいったことを石油業界にも協力してもらわなければ、なかなかそういう場所は見つけにくいのじゃないか。港湾管理者が、自分が持っている土地が遠くにあったのでは船の運航を非常におくらせる原因になるのではないか。そういった意味合いから、そういう船の運航をおくらせることのないような場所に設備をする、そういう石油業界へのあっせんを、鉱山局長は何かそういう話をなさっておられますか。
  36. 両角良彦

    ○両角政府委員 汚濁防止施設を港湾管理者において設置いたします場合に、その土地その他の便宜につきまして、その近辺に所在する石油精製工場その他の石油関係の側において、もし協力が必要であるというような具体的な事実が起こってまいりますならば、十分協議をいたしまして、さような方向での協力をいたさすように指導をいたすつもりでございます。
  37. 砂田重民

    ○砂田委員 そういう協力が必要であればという両角さんの御回答だったのですが、そういう協力が必要になってきます。ですから、これは今度運輸省で適用される六つの港、どの港もみな必ずそういう事態となってくるのではないか。これはやはり鉱山局と一緒に石油業界も協力について努力していただきたい。そうでないと、これから私が伺いたいと思っている料金、それから内航海運対策という立場から見た場合のこの法律の波及する企業の問題、そういったことにも相当大きな影響があるのではないかと思いますので、そういう石油を積み込む小さなタンクが乱立している、各精製メーカーが大体同じような場所に集まって油槽所を持っておりますから、そういう場所に港湾管理者がつくる廃油処理施設というものができるように御努力を願いたいと思います。
  38. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御承知のように、港湾管理者のつくる処理施設に対しましては、政府から特別に助成金を出すことにいたしております。しかし、これは政府の予算金額が必ずしも十分ともいえません。はたしてこれで港湾のタンカーの需要に十分であるかどうか疑問だと思うのでございますが、今後の運用方針といたしましては、運輸省といたしましても、港湾並びに船舶の監督者たる立場からいたしまして、石油業者も十分説得いたしまして、そして単独あるいは共同で必要なる施設を完備することに協力してもらうように格段の努力をいたしたいと思っております。
  39. 砂田重民

    ○砂田委員 それでは次に、処理用地のことを伺っておきたいと思うのですが、いま私が御質問をいたしまして、またお願いもいたしましたことが現実に出てまいっておりますのは、神戸港を例にとってお話ししておきますが、神戸港は、港の東の端、西の端にそれぞれ石油精製メーカーのタンクがある。小さなタンカーの運航をおくらせずに、タンカーにできるだけむだな費用を使わさないでやるためには、どうしても東西二カ所にそういう処理施設をつくらなければならない。大体四十二年度の廃油の発生予想というものを神戸港でやっているようですが、バラスト水千三百二十トン、ビルジ九十六トン、タンククリーニング水五十トン、合わせて千四百トン余りの処理施設をやりますので、したがって一カ所七百五十トン程度の処理能力を持った処理場をつくるわけですが、それぞれ千坪ぐらいの用地が必要なわけです。この用地は、実際問題として各精製メーカーが埋め立て地なら埋め立て地にタンクをずっとつくると相当な広さになるわけです。その中に敷地が設けられないということになると、今度はとんでもない遠くのほうへ行ってやらなければならない。そういう意味があるものですから、石油精製業者の持っているタンクがずっと並んでいる場所に敷地等も——いわゆる産業界、石油業界の協力がなくては非常に不便なところにつくらざるを得ない。そういう事態になってまいりますので、運輸、通産両省ともひとつ石油業界へのあっせんをしていただきたい、そういうお願いをしたわけです。ただ、いま私が申し上げた処理場で処理をいたしますのに、その処理場の建設費用が大体八千万から一億ぐらいかかるわけです。これの半分が国庫負担ということになっております。四十二年度の予算で六つの港、それぞれ処理場の規模は違うと思いますが、半分の国庫補助をやれるだけの予算が四十二年度予算で組まれておりますかどうか。
  40. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 四十二年度の予算におきましては、半額の三億という予算を確保したわけでございます。これで六カ所をやるわけでございます。これを実は本年度と来年度の二年にわたってやるものですから、来年さらにもう三億出さないとやっていけないわけでございます。ですから今年度分は、その半分だけで三億ということでございます。
  41. 砂田重民

    ○砂田委員 それでは、その処理場で処理をいたしますのに料金を取りますね。港湾管理者がそういう処理場をつくって料金を取りますね。その料金はどういうふうに計算されるのですか。それから大体トン当たり幾らぐらいにつくのですか。
  42. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 料金につきましては、いわゆる建設費とその施設の運営費というのを合わせました金額、それが一番金がかかるわけでありますけれども、そのうち国が半分持つ。あとの半分は港湾管理者が持つ。それから利用者にも持ってもらう。原因者でございますので、三者が持ち合おうじゃないかという思想なんでございます。そういうことでございますから、運営費につきまして大体料金でまかなっていったらいいのじゃないかというふうに考えております。これをあんまり高くいたしますと、小型船につきましては船主経済に影響を及ぼしますので、適当な値段をつけなければいかぬ。と申しましても、また港湾管理者もつろうございまして、その辺のところは適切な値段を算定していきたいと実は思っておるわけでございます。それから運賃がそのために多少プラスされることもあり得ると思いますので、この点につきましても荷主さんのほうの了解をとって協力を得るということで、三者でそれぞれ適当な分担をするという仕組みで計算したいと思っておるわけでございます。
  43. 砂田重民

    ○砂田委員 運賃のことまで私はまだお尋ねしていないので、その処理をする料金が一体どれぐらいになるか。建設費の中に含まれる国が補助をする五〇%というものは、料金計算の基礎に入れなくていいと思うのです。あと半分は港湾管理者がみんな持つというのではなくて、利用者も持つというお話でしたが、利用者は建設費を持てますか。実際問題として利用者側と何か話し合いが行なわれておりますかどうですか。
  44. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 利用者も持つと申しましたけれども、それは料金の話で持つというふうに申し上げたわけであります。
  45. 砂田重民

    ○砂田委員 それでは、大体五〇%の港湾管理者が負担する建設費と運営費、これを償却していくというふうな考え方で料金は算定されるのだろうと思うのですが、大体どれぐらいのものになりますか。
  46. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 これはまだ仮の計算でございますが、大体バラスト水トン当たり三十円ないし四十円というふうに算定しておるのでございます。これは規模によって違いますが、一応そういう算定をしております。
  47. 砂田重民

    ○砂田委員 実は今度の法律を船屋さん、そういったところまでしっかり守ってもらうのに一番私どもが心配をいたしておりますのは、その料金の問題なんです。料金の負担を船主がはたして負担し切れるだろうか、これが一番心配をしているところでございまして、船主の負担は料金だけではなくて、運航に必要な時間とかロスの時間、滞船料、そういったものも幾らかずつはかかってくると思うのです。料金だけに限定して伺ってみたいと思うのですが、いまの処理料金が三十円、四十円ということになると大問題じゃないかと思うのです。と申しますのは、いま油を小型のタンカーが一体運賃幾らで運んでおるか。これは海運局が調べてくれた資料を私手元に持っておるのですが、全国内航タンカー海運組合からも調べてみました。そういたしますと、これは海運局が認めております運航経費ですが、運航コストは二百四十八円。ところが、現在船主側が石油業界から支払ってもらう実勢運賃は二百三十円、もうすでにコストを割っている。そこで海造審に運輸省が諮問をされたり、もう一つ何とかいう審議会がありますね、そういうところでいろいろな計算をされて、運輸省の海運局も認められた調整運賃は二百六十円と見ておられるわけです。だから二百六十円あれば五%ぐらいの利潤は船主にあるんじゃないか。ところが実勢運賃というものは二百三十円です。これは石炭あるいは鉄鋼という、ほかの大きなものを運ぶ場合にも、その運賃折衝といいますか、内航海運業界と荷主の間の運賃の取りきめというものは——石油の場合はちょっと違う形になっているんじゃないだろうか。石炭なり鉄鋼というものは、それぞれ石炭協会あるいは鉄鋼連盟というようなところが、小さい内航海運の業界と集団的、団体的に折衝をされて、航路別に鉄鋼なら鉄鋼で、どこの航路については富士鉄が幹事会社、内航海運のほうはどこの会社が幹事会社、またある航路については今度は八幡が幹事会社、またほかの内航海運会社が幹事会社、そういうふうなことで、業界と業界との間で団体的な折衝が行なわれて、運輸省の計算されておる、海運局の認めておられる調整運賃というものを荷主側も非常に常識的に受け入れて、大体運輸省の認定された調整運賃というところにだんだん落ちついているんじゃないか。ところが、石油業界だけが、いま私が申し上げたようにコストは二百四十八円、運輸省の認めた調整運賃は二百六十円、実勢運賃は二百三十円、コスト割れの状態が今日まで続いている。石油だけがなぜこういうふうな−内航海運側が非常に力が弱いといいますか、こういう運賃をしいられているのか。その一番大きな原因は小型タンカーが過剰であるのか、だから船腹の需給関係によってきておるのか、あるいは石油業界の、他の鉄鋼とか石炭とかそういう業界には見られない海運界に対する資金的なあるいは資本的な系列下に置かれている、そういった事情が原因をしているのか、こういうことをひとつ審議官からでも海運局からでもけっこうですが、御説明いただきたいと思います。
  48. 野村一彦

    ○野村説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御質問でございますが、実情は先生が御指摘になりましたように、ただいま東京湾の平水のタンカーを例にお引きになったことと存じますけれども、現状におきまして、運輸省が承認をいたしました調整運賃より実勢運賃が下回っておるということは実情でございます。この原因につきましては、先生の御質問にございましたように、いろいろの理由があるわけでございますけれども、まず内航タンカー海運組合という船主団体がございまして、この団体が調整運賃の計算をしまして、それを荷主である石油業界と折衝をしてきめるということでございますが、現在の状況を申しますと、石炭あるいは鋼材の場合のように、一応荷主のほうと話が十分ついてこちらに申請が出てきたというわけではございませんので、計算はして一応石油業界のほうに話をしておりますけれども、石油業界のほうではそれをお認めにならないという状態のまま申請がきておる。ただ運輸省といたしましては、運輸審議会にはかって出しました標準運賃から換算をいたしまして妥当であるということで、ただいま例にお引きになりました二百六十円という調整運賃を認めておるわけでございますけれども、これはまだ石油業界としては認めておらない。そういうことで実際に適用されております運賃というものは低くなっておる。こういうことでございまして、これにはただいま先生の御質問のような交渉のあり方といいますものが、大体企業企業の交渉は行なわれておるようでございまして、その点、いわゆる荷主団体対船主団体というものの交渉は必ずしも行なわれていない、そういう状況も一つ原因であるかと思います。そういう実情であります。
  49. 砂田重民

    ○砂田委員 いまの実勢運賃からいきますと、処理料を内航海運が負担する能力がないのじゃないか、一番私が心配しておりますのはこの点であります。処理料をいま三十円から四十円というお話だったのですが、三十円、四十円というのは、いまのままでいけば審議官の希望的な観測も入っているのじゃないか。いわゆる処理料が五十円だと想定したときに、先ほど私が申し上げました運賃はどういうことになるかといいますと、二百七十八円ということになれば、五十円の処理料を吸収ができて、しかも五%くらいは内航海運のほうが利潤をあげることができる。実勢運賃二百三十円とはたいへんな差があるわけです。こういったところをそのままにして、この法律だけがすべり出してみても、ないそでは振れないということで、内航海運業界というものは、はたしてこの法律を守っていけるかどうか。ないそでは振れないといって、かってにそこらに捨てられたのでは、せっかくのこの法律というものが食管法のようになってしまってはたいへんでありますから、やはり何とか解決しておかなければいけない、そういう気持ちがするのです。  そこで鉱山局長、あなたに直接話していいことかどうかわからぬけれども、いま私が申し上げたように、石炭業界、鉄鋼業界と、それぞれの内航海運業界との運賃の取りきめのいまの状態と、石油業界と内航タンカー業界との運賃の取りきめが違うのですね。そういったことを石油業界にももう少し協力をしてもらえるようなことを、鉱山局長から石油業界にいままで話をなさったことがあるかどうか。いままでないとするならば、そのあっせんを通産省はおやりになる決意がおありかどうか。
  50. 両角良彦

    ○両角政府委員 運賃の取りきめの形態につきまして、石油業界に通産省といたしまして何らかの話をいたしたということは今日までございません。しかしながら、御指摘もございましたように、私どもとしましても、石油の仕事と内航海運というものとはきわめて密接な関係がございますので、両業界とも持ちつ持たれつの関係発展をいたすべきものと考えております。さような見地から、ただいまお話のございましたような運賃等の取りきめにあたりましては、石油業界としましても、長い目で海運業界に対してでき得べき協力はする、これは当然いたしていくのが筋合いではないか、さような方向で石油業界も、内航海運業界に対する前向きの協力体制というものは、われわれとしましても要望いたしたいと考えております。
  51. 砂田重民

    ○砂田委員 私は、内航海運業界を石油業界が助けてやれという意味では申し上げてないのです。海水を油濁から防ごう、守っていく、そういう考え方から、内航タンカーなどという小さな力のない企業だけではとてもこれはやり切れることではないのです。海が油でよごれるのは石油業界の責任ではない、船の問題だというようなことで、石油業界がそういう割り切り方をされてしまったのでは、この法律は生きてこないという気持ちがするのです。処理料にいたしましても、三十円、四十円、五十円というところでは、なかなかこれは解決がむずかしいのじゃないか。石油業界にも一部負担をしてもらう、運賃の改訂という形での協力をしてもらうとしても、やはり処理料というものが大体二十円見当であがるようなそういった予算措置を検討していただかないと、私はなかなかむずかしいのじゃないかという気がするのです。処理施設がすぐに完成してことしからスタートするわけではありませんから、まだ時間もあることでありますから、ひとつその処理料というものをもう少し低く押えられるような方法を、これは石油業界とは関係なしにでも二十円ぐらいであがるような方法を運輸省としても御検討いただきたい。  それが一つと、こういうふうにいたしまして、国も、港湾管理者としての地方自治体も、また船舶業界も、海水の油濁防止にそれぞれ犠牲を払ってでもやっていこう、こういう決意をしていることでありますから、石油業界だけがおれは知らないんだということでは、私はちょっと情けないと思う。公害対策基本法も当委員会にもうすでに提案されたきょうでございます。国民の健康と生活環境との調和ということをこの公害基本法もうたっております。産業側がその調和することすら拒否されたのではこれは重大問題だと思う。石油業界が、きょうの国際情勢の変転の中でたいへんな大あらしのまっただ中におられること、また苦悩しておられることもわかりますけれども、やはり日本経済一つの花形としての石油業界でありますから、国民生活に奉仕をする経済ということもいわれる時代でもあるのですから、ひとつ新しい時代の公害防止問題に新しい認識と社会的な責任を適切に石油業界も負担をしていただきたい。特にこれは鉱山局長に私はいま申し上げているので、公害対策基本法に魂が入るか入らないかという将来の問題にこれはかかってくると思うのです。公害対策基本法と並んで審議をされているような法律でございますだけに、重大な公害対策基本法というものの精神というものが生かされるかどうか、これは石油業界の考え方によって公害対策基本法の行くえを占うような事態が出てこやしないか。石油業界というところも、人間的にたいへん私は尊敬もしております指導者がたくさんおられる業界でございますから、何ぶんの協力を必ず得られると私は確信するものですけれども、そういった点について、最後にひとつ運輸大臣と鉱山局長のお考えを承っておきたいと思います。
  52. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 本法案の成立実施に伴いまして、特に石油業者の全面的な協力精神が必要であるということは、これは申すまでもないことでございまして、運輸省といたしましても、関係省と協力いたしましてそうした機運を醸成することにつとめ、法案実施に支障なからしめるよう最善の努力をいたす所存でございます。
  53. 砂田重民

    ○砂田委員 これで私質問を終わりますが、先ほど伺いました船舶の衝突などによって船が損傷を受けて油が流れ出た、急速に原状に回復する、その義務を負うものは海上保安庁なのか港湾管理者なのかという点について、大臣は検討してはっきりさせようとおっしゃっていただきましたが、きょうでなくてもけっこうですが、当委員会に御回答をいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  54. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは現行法では双方に責任があるわけですが、いざとなると、どちらも逃げ腰になるということでございますので、この間、関係行政機関の間でよく打ち合わせをいたしまして、どういう場合にはどちらがやるということをはっきりさせたいと思います。ことに両者とも運輸省が所管官庁でございますから、話はある程度つくと思います。
  55. 砂田重民

    ○砂田委員 終わります。
  56. 八木一男

    八木委員長 板川正吾君。
  57. 板川正吾

    ○板川委員 船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案、この法律案に関しまして運輸大臣にひとつ伺いたいと思います。  まず私は、この海上油濁防止法に直接関係しておるのじゃないのですが、関連しまして、この海水油濁の中心は御承知のようにタンカーであります。タンカーの規制でありますが、そういう意味で若干関連をしまして、法律に入る前に中東情勢とタンカーの輸送、この問題でひとつ運輸大臣の所見をまず伺っておきたいと思います。  そこで運輸大臣にお伺いしますが、佐藤内閣の閣僚として、今回の中東の動乱をどういうふうにお考えになっておるかということが一つです。それはつい二、三日前の新聞では、たとえばスエズ運河の閉鎖はおそらくあるまいというようなことが四日かの新聞に出ておりました。ところが今日では、明らかにアラブ連合によってスエズ運河の封鎖が行なわれたわけであります。このスエズ運河の閉鎖によるわが国の海運界、主としてタンカー、これに及ぼす影響、これはどういうふうにお考えになっておられるか、こういう点をまず伺っておきたいと思います。
  58. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 中東の動乱につきましては、私どもまことに国際平和の上からいって遺憾千万な事態だと存じます。何ぶん遠隔の地のことでございますので、どういう情勢で、どうして戦争にまで発展をいたしましたか、それらの点につきましては私自身としては詳しく承知いたしておりませんが、願わくはすみやかに収拾されることを念願いたしておるのみでございます。  そこで、スエズ運河の閉鎖の問題でございますが、スエズ運河の閉鎖ということは、わが国の海運界には重大なる影響を及ぼす事柄でございまして、貿易方面にも相当の影響が考えられるのでございます。特に問題をタンカーに限ってみますと、わが国に対する石油の輸出につきましては、スエズ運河を通過するタンカーというものはあまりないと思います。しかし、わが国のタンカーが第三国に用船されまして、三国問の輸送に当たっておるものもございますので、これらについてはむろんスエズを通るものもございますから、相当な影響があろうと思います。しかし、そうは申しますものの、スエズ運河の閉鎖ということ自体が世界的に船舶不足——すなわちスエズ運河を通過するかわりに喜望峰経由あるいはパナマ運河経由ということになりますので、航海日数が延びることによって貨物量に比較して船舶の一般的不足を来たしますので、こうしたことがタンカーの用船料あるいは運賃等に及ぼす影響も考えなければならぬと思います。ただし、実際問題といたしましては、タンカーについては長期契約が多いようでございますので、その限りにおいては、急に日本向けの石油の運賃、ことに日本船によるものが直ちに上がるとは考えられません。しかし、外国船による石油の輸入というものも、今日日本タンカーの不足のために相当多うございまして、これらにつきましてはある程度運賃の値上がりというものも考えなければならぬと思っております。  それからもう一つは、海上保険料が上がりますので、これの運賃に対するはね返り、こういうふうに考えますと、タンカーの運賃が相当上がるのじゃないか。そしてその結果は、海運界といたしましては、日本船のタンカー料金はたいして上がりませんが、外国からの用船についてはある程度上がる。このことは結局収支のバランスからいいますと、赤字がふえる率が相当多いということになろうかと思うのでございます。  なお、いまのところではまだ情報がはっきりいたしませんが、御承知のとおり、日本のタンカーは主としてペルシャ湾へ入っておりますが、ペルシャ湾におきましては、ある国は全面的に石油の輸出禁止をいたしておるようでありますし、また、ある国は仕向け地あるいは積み込み船の国旗によって制限をしておりますというようなことでございまして、どの国がどうなってどういうふうに扱っておるかというようなことについては、いま関係方面でいろいろ調査をいたしております。まことにばく然たる抽象論でございますが、ただいまお答えできることはこの程度でございまして、なお将来情報の確認されるに従いまして、もっと具体的なお答えができればしあわせかと思います。
  59. 板川正吾

    ○板川委員 タンカーの契約は大体二月から半年ぐらいの長期契約になっておりますから、いま突然契約改定期がこない限りは急な改定はないと思います。議論を先へ進めたいと思うのですが、いま日本のエネルギーの六割は石油によって確保されておるんですね。六割が石油であり、水力がわずか一割、石炭が二割五分、こういう程度であります。この日本の第一エネルギーの六割のうちの九一%までいわゆる中近東、この地域から入っておるのです。この中東から入っております油送船、これは日本の船と外国の用船とあるいは外国の会社が輸送を委託して向こうからくるものと、一体どういうような比率になっているのでしょう。中東方面から日本に入るタンカーの国別の比率、これをちょっと伺います。
  60. 高林康一

    ○高林説明員 お答え申し上げます。  現在中近東方面より入っております石油のうち五八・三%が日本船によって輸送されております。残りの大体四二%弱、これが外国船でございます。いま手元に国籍別の資料がございませんが、おもにノルウェーあるいはリベリア、そのような種類の船が大部分でございます。
  61. 板川正吾

    ○板川委員 この中にアメリカ、イギリス、こういう国のタンカーというものはどの程度ありますか。
  62. 高林康一

    ○高林説明員 国籍別のこれらの地区のものの資料が手元にございませんが、大体先ほど申しましたようにノルウェー、リベリア船等が主体でございまして、イギリスあるいはアメリカ、こういうようなものは若干はあるかと存じますが、全体的に比較的少ないかと考えております。
  63. 板川正吾

    ○板川委員 いま大臣もちょっと触れられましたように、われわれの情報で伺ってみると、一応向こうでは船の国旗別に、リベリアなりノルウェーなりあるいはパナマなり、そういう国——アメリカ資本で運営されており、実質的にはアメリカの資本だというようなところであっても、船籍がアメリカでなければ積み出しはいいだろうということになりそうだ、ただいま交渉中だ、こう伺っているのです。しかし、この中東の情勢があるいは不幸にして長引くということになれば、私は、他国の、アメリカでない国籍を持った会社でも、実質的にアメリカ系資本の会社であれば、将来積み出しを禁止するというところまで発展する可能性もあるだろう、こう思うのです。そういう点を分析をしておかないと、中東地方から日本の石油の九割一分が輸入されており、しかもその石油によるエネルギーというのは日本全体の六割を占めている、しかも現在原油の備蓄が大体二十日間ぐらいしかない、こういうことになりますと、万が一輸送がとだえるようなことになれば、私は日本産業というものは非常な壊滅的な打撃を受ける、こういう可能性を持っていると思うのです。そこで私が心配しているのは、万が一アメリカ船あるいはアメリカ系、イギリス系の他国にある資本の船でもいかぬということになれば、日本はエネルギー確保のために別な船を用意するか、あるいは他の地方から石油、原油を買い入れなければならぬということになるだろう、こう思うのであります。そういう意味で、そういう時に際しての日本のタンカーの輸送力というのがどの程度あるものか、こういうふうに考えたわけであります。そこで伺いますが、この中東から入る九割一分の船の積み取り比率というのはどのくらいの割合を示しておるのですか。
  64. 堀武夫

    ○堀(武)政府委員 原油それから石油製品等ございますが、原油について見ますと、日本船による積み取り比率は五七%でございます。
  65. 板川正吾

    ○板川委員 これは大臣にちょっと参考に伺うのですが、アカバ湾の航行を遮断したのが今度の紛争原因のきっかけだ、こう思うのでありますが、海運国日本として、アカバ湾の自由航行の宣言に署名してくれということを、日本政府に対して英米から強く要請されておる、こういうふうに新聞は報道しております。しかし、アカバ湾に航行する日本の船舶というのは、われわれ聞くところに上ると、皆無だということです。あの地域日本の船というものはほとんど通らない、こういうのであります。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 日本の外交は英米中心に動いてきておりますから、もしその宣言に日本が同意をするようなことになれば、当然私はいまのアラブ人の感情からいって、また再三、石油生産会議で言明しておりますように、イスラエルを支援する国、それと提携する国には一切石油を出さないという宣言をしておりますから、そういうことになれば、日本の石油の九割一分を輸出しておる地域からの輸入というものが大きな障害にあうわけであります。一体こういったアカバ湾の自由航行権の宣言というものに対して、日本は賛成すべきではない、あくまでも中立的な立場をとっていくべきではないか。こういうことはさすがに業界でも要請しておるようでありますが、閣僚の一員としての運輸大臣、どういうお考えでございますか。
  66. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今国の戦争に際しましては、政府といたしましてはあくまでも厳正中立という立場を堅持するという方針に相なっておるのでございまして、アカバ湾航行権云々の問題につきましても、もっぱらこの見地より処理されるべきでございます。
  67. 板川正吾

    ○板川委員 そうしますると、米英からそういう要請があっても、それに日本が参加することは、何ら日本には直接関係がないことであり、問題の解決になるまいということで、この問題には日本政府はおそらく賛成する立場をとるまい、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  68. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まだ閣議におきまして、アカバ湾の航海自由の宣言につきまして、どういう態度を日本政府としてとるべきかという論議は現実には行なわれたことはございません。しかしながら、閣議で確立されました対戦争態度というものは、これは日本は厳正中立、どちらにもくみしない、こういうことでございますから、これによって御推察をいただけると思うのでございます。
  69. 板川正吾

    ○板川委員 軍事的には日本がこっちへ介入するというようなことはもちろんありません。ただ、やがてこのアカバ湾自由航行宣言をめぐって議論のある時代があるであろう、こう思うのでありますが、いま言ったように、もし米英側に加担するようなことになりますと、石油、原油源の確保という面で重大な影響を受ける。しかもそれが今後の日本の外交に大きな影響を受ける、こういうことをひとつお考えになっていただいて、社会党が多年考えております中立外交というものを、ひとつ閣議の際にもとくと主張してもらいたいと思うのです。これは希望であります。  そこで私は、法案審議に入りたいと思いますが、法案に関連して質問をいたします。  海水油濁防止法、これがなぜ今日まで提案がおくれたかということ、前の質問者も再々聞いたと思いますが、一応私も伺いたいと思います。これは一九五四年、第一回の海水油濁防止国際会議に参加をして、受諾を条件として条約に署名した。一九六二年の第二回会議にも参加をしておる。こういうふうに受諾を条件にして条約に署名しておりながら、今日までこの条約に批准をしなかった理由は具体的にどこにあるのでしょうか。
  70. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この条約を実施するにつきましては、国内法の整備その他国内の受け入れ体制を完備する必要がございましたが、これが今日まで延び延びになっておったということが、おくれた原因であり、またそれ以外には何も理由はございません。
  71. 板川正吾

    ○板川委員 完備がおくれたというのですが、この提案理由の中には、処理施設等がなかなか困難だから今日まで延び延びになったとありますが、処理施設をつくることがそれほど困難であったというのですかということを私は聞きたいのです。海運国といわれておる日本が、五四年に受諾を条件に条約に署名しておきながら、今日まで十数年間条約に批准する意思をなぜ持たなかったか、それができなかったことはどこに原因があるのか、施設整備するのに問題があるやに大臣の提案理由の中にはありますよ、見てください。しかし、どうも私はこの法律を見まして、おくらせるほど重大な支障はなかった。この点においては重大な困難ではないと思うのです。問題は、結局こういう海水油濁のような、いわゆる公害防止というものにあまり積極性を持たなかったということがおくれた最大の理由であって、困難性というのは、やる気さえあればできたのではないか、こう思うのですが、今日までできなかったという理由をひとつ具体的に示していただきたい。
  72. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御承知のごとく、わが国におきましては、油による海水の汚濁というのは、近年に至りまして急に各地に見られるに至り、また、これに対する国民の関心というものも最近とみに高められてまいったわけでございます。したがって、今日に至ってようやくこれを批准するに適当な国内の体制と申しましょうか、環境と申しましょうか、そういうものがおのずから整うに至った、それがまあ今回提案した理由であるわけでございまして、今日までおくれておった理由を特にあげろ、こういうことになりますと、まあそういったような環境が今日まで必ずしも進んでおらなかったという点に要約されるのではないかと思われます。
  73. 板川正吾

    ○板川委員 この運輸省で出した資料には、三十七年の第二回国際会議にも参加したが、条約上の義務を履行するための国内体制の樹立、特に廃油処理施設整備について多くの困難があってこの条約に加盟することができなかった、こういうのです。今度の法律を見て廃油処理施設等の概貌がわかりましたが、この程度のことであれば、私はやる気さえあればもっと早く条約を承認することができたんじゃないか、運輸省においていわゆる海の公害、海水油濁というものについて積極的防止をしなかったという姿勢が今日までおくらした原因じゃないか、こう思うのです。しかし、水かけ論ならそれはそれでいいとしましょう。  この海水油濁に関連しまして、ちょっとまた横道へそれますが、伺いたいことは、過般英国の沖合いでトリーキャニオンというタンカーが座礁をして、油槽から漏れた油がイギリス海岸はもちろん、フランス海岸までそれが及んだ。そしてイギリス海軍が、この油をなくするために爆撃をして燃やして被害を最小限に食いとどめようという努力をされた。こういう世界でも例のない大型タンカーの座礁事件、こういう事件がありました。これはまあ公害とは言いません。災害かもしれません。しかし、海を油でよごすという点で共通の問題があります。私がここで伺いたいのは、同種の事件が万が一東京湾で起こったという場合にはどういう対策がとられるのだろうか。トリーキャニオン事件というのは、その種の問題としては新しいいろんな教訓を世界各国に与えた。こういうことが新聞にも報道されていますが、東京湾で同種の事故が起こった場合、たとえばこの資料にもありましたように、昭和三十七年ですか、千葉の海岸沖でアメリカのタンカーが座礁して事故を起こした事件がありましたね。イーグル号事件、三十七年二月二十四日に一万六千トンのアメリカ油送船が座礁をして油を出したという事件がありました。この当時は一万六千トンですからまあいいとしまして、五万トン、八万トン、十万トン、十五万トンというふうな大型船がこうした事故を万が一起こしたとしたらばどういう対策があるんだろうか、こういう点でひとつ当局の見解を伺いたいと思います。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先般のトリーキャニオン号事件は、まことに世界の海運界を驚かした大事件でございまして、いろいろああした惨事の起こりました原因を聞いてみますると、いまの海運業者の常識では考えられないような船舶の操縦誤りから起こったということが大体判明しつつあるようでございます。というのは、当然通るべき海峡を通らずに、それと全く違った暗礁のある水域に向かって、しかも白昼全速力で突っ込んだ。そういうようなことでございまして、しかもあの辺を航行した常識ある航海士ならば常識ではちょっと考えられない運転のしかたであるというように聞いておるのです。したがって、ああした事件が日本の近海で起こるとは考えられません。日本は四面海をめぐらしておりまするので、海上の事件といえば海上のどこでも起こり得る可能性はあるかもしれませんが、しかし、それに対してはいまから全部対策を用意するということはなかなかできないと思いますが、特に運輸省といたしましてあの事件を契機として考えております点は、まず、そういうばかげた運転は別として、狭水路その他において通常の航海中にもちょっとした不注意で発生することのありそうなタンカー事故というもの、これは十分予想しなければならないし、ことに最近大型タンカーがふえてまいりましたから、大きなタンカーがそういう事故のために故障して油を流すというような事態が起こらないとも限らない。こう考えて、ただいまのところ重点を東京湾、伊勢湾、それから瀬戸内海、こういう水域に限って特に調査、検討を進めておる次第でございます。  そのまず第一は、事件を起こさないように予防に力を入れることが何よりも大切だと思いまするので、これらの湾口につきましては具体的に大型タンカーの航路というものをできるだけ早く決定しよう、特に東京湾等におきましては湾口は一つでございますが、その後に川崎方面とかあるいは千葉方面というふうに船の航路も分かれておりまするので、それぞれについてきめ得るものならば航路というものを大型タンカーについて具体的に指定し、かつ、そのきまった航路についてはこれを標識すべき航路標識あるいは灯台等をできるだけ早く完備するとともに、その航路を設定しあるいは維持するための水路の掘さく等が必要ならば、それもできるだけ早急に行なおう。それを根本といたしまして、他の船舶の航行等にも逐次規制を及ぼしていく、こういうことで、第一に大型タンカーの湾内の航路の指定ということを早くやりたいと思って、いま基礎調査を進めておる段階でございます。何とか四十三年度の予算要求までにある程度の計画を立てまして、そのために必要な予算を頭だけでも出したい。さらにまた、こうした規制を行なうにつきましては新しい立法も必要でございますので、これもできれば次の通常国会に御提案申し上げたい、こういう意気込みでただいま進んでおる状況でございます。  しかし、これは予防の方法でございまして、現実に事故が発生した場合はどうするかということも考えなければなりませんが、タンカーの事故の発生の場合におきましては、事故の状況に応じまして海上保安庁を中心として防衛庁、警察、消防、地方自治体等の関係機関及び民間諸団体等の全力をあげてオイルフェンス等を張りめぐらしたい。そしてこれによって油の流出並びにその拡散を防止いたしますとともに、油の除却剤による処理などを行ない、必要に応じては油の瀬取り、事故船の安全海域への沖出し、焼却処分等を講じまして、付近海上及び沿岸の危険防止措置並びに被害を局限するための措置を講ずるように相談をいたしております。
  75. 板川正吾

    ○板川委員 そういう災害というものは実際予想しないときに起こるもので、イーグル号事件でも富津沖で座礁をしておりますから、あるいは東京湾内で座礁がなくても、場合によると衝突ということもあり得るわけですね。そこでこういうよその事故を契機にしまして、安全対策というものをひとつ強化してもらいたいと思うのです。  それについて産業計画会議でいろいろと提言がございますが、大臣御承知と思います。知りませんか。これは東京湾海上安全に関する勧告というものでございます。産業計画会議で出しております。この中で私一つ取り上げるべきだと思うのは、東京湾というのはある意味では全体が一つの港になっておる。しかし、実際は川崎も横浜も東京も千葉も、港が幾つにもなっておって、それが自治体の管理下にある、こういうことになっておる。東京湾全体としての一つの調整をする機能を持つ必要もあるんじゃないか。そうでないと、大型タンカーのような場合に十分な安全を守られないおそれもある、こう思うのです。いまの大臣の構想というものは、ある意味ではそういうものを念頭こ置いての発言ぜろうと思います。ぜひひとつこういうトリーキャニオン事件のようなことが東京湾や瀬戸内海等で起こらないような対策、配慮をめぐらしていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、これに関連しますが、万が一事故になった場合の補償ですね。聞くところによりますと、トリーキャニオンでは六十五億の保険がかかっておった。この保険は、船舶の価額以上の保険をかけられないということもあって六十五億だ。しかし被害はとても六十五億じゃ間に合わない、こう思います。イーグル号事件の被害と、これが示談になった関係を調べてみました。これはノリ及び漁業に影響を与えたために損害が三億八千万だということです。しかし実際に富津、木更津海岸における関係者は二千人をこえておって、とても裁判になりません。裁判は不可能だから示談にするほかはない、こういうことで、示談はアメリカ側の主張によって、とうとう損害の四九%、約一億九千万で解決をした、こういうことがいわれておるのです。このイーグル号事件で、どの程度保険金を向こうでかけておったかわからないのですが、保険制度というものもひとつ検討を要するのじゃないか、こう思うのです。船の損害だけでバンザイする、こういうことでは、特に大型タンカーのような場合にはとても船だけでは間に合わないような被害が起こると思うのです。保険制度の検討ということもなすべきではないか、こう思うのですが、これはいかがでしょう。
  76. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 ただいまの御質問でございますけれども、現在そういった損害を与えますと、民法によりまして、そういう過失があったりした場合には賠償するという規定がございます。それが商法で援用されまして、船舶の場合は、船舶とかあるいは運送賃、いわゆる海産でございますけれども、海産の範囲の限度でもってしか船主責任はないということでございます。したがいまして、いまお話しのようないわゆる第三者に対する責任問題、これは大きな問題があると思いまして、この点は、トリーキャニオン号事件のときも国際会議におきましてそういった問題が取り上げられまして、国際条約の面でもそういった面について早急に検討しようということになっております。  ただいま保険の問題でございますけれども、これは任意保険でございますけれども、PI保険と申しまして船主相互保険制度がございまして、そういった第三者損害のてん補につきまして特別の制度がございます。これによりますと、たとえば油を流した場合、清浄に使った費用等あるいは油によりまして海産物が死んだとかという意味の損害はPI保険によっててん補がされます。ただ、これはもちろん任意でございまして、強制しておりませんので、今後そういった問題につきまして、もっと強力な効果がありますように検討していきたいというふうに考えております。
  77. 板川正吾

    ○板川委員 時間の関係で急ぎますが、法律の第五条に、「五十海里以内の海域」とあります。この海里という単位を使ったことについて伺いますが、これは計量法の規定に違反しないかどうか。計量法ではメートル法を原則としておりますが、違反しないかどうか伺いたい。
  78. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 これにつきましては法制局と相談いたしまして、計量法に特例があるということで海里ということを使った次第でございます。
  79. 板川正吾

    ○板川委員 特例があるからいいのですが、ではこの一海里というのは一体どの程度の距離をさすのですか。
  80. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 千八百五十二メートルでございます。
  81. 板川正吾

    ○板川委員 この千九百五十四年の油による海水の汚濁防止のための国際条約、この国際条約第一条に、「「マイル」とは、一海里」こういっておりますが、そうして一海里とは六千八十フィート、千八百五十二メールであるといわれておりますが、こういう計算になりますと、一マイルが千八百五十二メートルということになりますが、間違いありませんか。
  82. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 この条約ではそのとおりでございます。
  83. 板川正吾

    ○板川委員 条約の原文に何て書いてありますか。日本語に直す場合には、この条約には「「マイル」とは、」とここに書いてありますよ。しかし、この翻訳のしかたは間違っていませんか。日本ではマイルとは千六百九メートルじゃないですか。この日本文で条約のマイルは千八百五十二メートルと書かれておりますが、これはどういうことですか。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御承知のとおりマイルには従来から二通りの使い方がございまして、一つは陸上の距離をはかるときのマイルでございます。これはいま仰せになりました長さを昔からマイルと申しております。これは外国から輸入いたしました自動車なんかのメーターなんかのマイルはそれになっております。それからもう一つのマイルは海上の距離をはかるマイルでございまして、これは日本では戦前から陸上のマイルと区別する意味でマイルとは申さず海里と言っておりました。いまでも船の速度が一ノット、二ノットというのは、一時間に一海里あるいは二海里の速力という意味でありますが、これはその海上のマイルをさしたものでございますから、それで距離もこういうふうに違うのだと思います。
  85. 板川正吾

    ○板川委員 翻訳の日本語で書いた中に、海のマイルというふうに書けばあるいは誤解がないかもしれないけれども、ただマイルというから、ノーチカルマイルというということであればこれはわかったのでしょうけれども、マイルとは一海里、一海里とは千八百五十二メートルというものですから、距離の単位が違うかなと、ちょっと気になったのであります。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕  それから、この法律の適用を受けるのが、十条に適用を受けるものと受けないものが規定されておりますが、条約には軍艦及びこれの補助艦というのは適用しないとあります。自衛隊の自衛艦は適用されますか、しないかどうか伺いたい。
  86. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 自衛艦は本法を適用いたします。
  87. 板川正吾

    ○板川委員 軍艦及び補助艦は適用さわないと条約にあるが、適用される理由はどこにあるのですか。
  88. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 自衛艦も船でございますので、船は全部適用するという趣旨でございます。
  89. 板川正吾

    ○板川委員 自衛艦はこの条約でいう軍艦ではない、補助艦ではない、こういう解釈でいいのでしょう。
  90. 鈴木珊吉

    ○鈴木説明員 本法では船であるというふうに考えております。
  91. 板川正吾

    ○板川委員 実はまだ質問があるのですが、四時に会議を招集しておりますので、私、これできょうは終わらしていただきます。      ————◇—————
  92. 八木一男

    八木委員長 この際、産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田之久君。
  93. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私は、この際政府に二つの質問をいたしたいと思います。  その一つは、東京都の環七ぜんそくといわれる交通公害による問題が一つであります。いま一つは、この際特に産業公害都市公害とあわせて農村公害というものが各地に発生してきておりますのでその問題をとらえて御質問をいたしたいと思います。  まず第一の質問の環七ぜんそくの問題でありますけれども、この間の六月二日の朝日新聞にも報道されておりますように、東京都の世田谷区の指折りの交通の難所といわれる大原、三軒茶屋両交差点の住民は、自動車の排気ガスによって予想外にからだをむしばまれている。この方面の交通量は、午前七時から午後七時までの車の通行量が九万四百台、これが大原交差点の場合、それから世田谷通りの三軒茶屋の交差点は六万八千台である。ただし、これは去年の九月末の調査になっております。しかも非常に交通が停滞して、車がつかえて、付近の住民は真夏でも家を締め切らなければならない。しかも酸素吸入器を買い入れて、こうした呼吸器関係の障害に対応しなければならない、こういう問題が出ておるわけなんです。  さらにまた、六月七日、きょうの新聞によりますと、東京都の公害部が調査したところによりますと、東京都全般の大気汚染の状況も非常に深刻なようであります。いままで問題になっておりました尼崎あるいは茨城県の鹿島地区と比べまして、東京都の大気汚染のほうがさらにひどい現状であるというようなことが報ぜられているわけでございます。厚生省は四十二年度から自動車の排気ガスの法的な規制をしたいと申しておられますけれども、すでにこのようにして大気汚染はいよいよひどく、しかも交通停滞の激しい場所では、一酸化炭素によるひどい呼吸器の症状が起きておりますが、こういう問題に対して現に厚生省はどういう対処をしておられるかということをまずお伺いいたしたいと思います。
  94. 田川誠一

    ○田川政府委員 環状七号線の自動車の排気ガスの問題は前からいろいろと取り上げられております。厚生省では、運輸省や東京都、それから国立公衆衛生院、東大というようなところと協力しまして、昭和四十年に大原地区を中心に調査をいたしました。その結果、いま御指摘のように、大原町におきましては、その付近におきましては、自動車の排気ガスによる一酸化炭素の汚染がたいへんひどい。健康の障害までにはいきませんけれども、取り締まりの警官あるいは付近の住民の方々に予期以上の影響を及ぼしておるということでございます。  この対策といたしましては、運輸省のほうで排気ガスの一酸化炭素の濃度について規制基準を設けるというようなことをやっておられます。この大原町付近の状態は、御承知のように、あの交差点で自動車がストップする、えんえん長蛇の列を連ねるというような状態で、そこが排気ガスが強く出るというような状態でございます。でありますから、その地区だけのことを申しますと、あれを立体交差にすれば、いま言われたような問題は解決されるのではないかと思います。立体交差の工事が進められておりますので、立体交差ができますれば、大原地区の問題は解決されるのではないかと思います。しかし、一般的に自動車による排気ガスの問題は、東京や大阪のように非常に激しい交通の渋滞を見るようなところにおきましては、そういうような障害が生じますので、この自動車の排気ガスにつきましては、広く大気汚染に対する環境基準、こういうような規制を設けて公害を防いでいかなければならないと思います。大原付近で酸素吸入をやっておるというような話も聞きましたけれども、そういうような事実はないようでございます。——やっておるようなことがあるようでございますけれども、効果はないようでございます。根本的な解決のためには、道路交通の対策、自動車の排気ガスの防除技術の開発というようなことを積極的にやっていく必要がございます。  それからもう一つは、自動車の排気ガスにつきましては、公害に対する一般の啓蒙といいますか、啓発ということが相当影響するのではないかと思います。特に自動車を運転する人たちが、交差点で待機するような場合に、ある程度の注意をしていただきますれば、強い一酸化炭素を出すような排気ガスを防ぐこともある程度できるのではないか、そういう意味公害に対する一般の啓発といいますか、そういうような思想ももっとやる必要があるのではないか、こういうふうに私どもは考えております。
  95. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いまのお答えで、いろいろ調査をした、しかし健康障害とまではいえぬが、とお述べになりましたね。私はそれはとんでもない認識だと思うのです。現に世田谷区で同区の医師会に頼んで去年九月とことし三月、この二カ所で住民の健康診断を行なったが、その結果、大原交差点で五百六十三人のうち三百九十五人、三軒茶屋交差点で三百二十二人のうち二百二人が、のどや目をやられたり、頭痛や吐きけなどの症状に悩まされておるということが調査されておるわけなんです。現にわれわれが直接耳にいたしておりますことでも、四日市ぜんそくにまさるとも劣らないいわゆる環七ぜんそくに対して、その地域住民の人たちが非常におびえ切っておる。現に健康にいろいろな支障を来たしておる。こういうことが社会一般で言われているにもかかわらず、あなたがそれをさして健康障害とまでは言いかねる程度のものだというふうに申し途べられるとするならば、一体健康障害とはどこに基準を置いて言われるのか、この点が一つでございます。  それから、先ほどの御答弁のときに、酸素吸入器までは使ってない、いや使っていますよという耳打ちを受けて、効果はないんだというふうな答弁でございますけれども、そういういいかげんな答弁は困ると思うのです。現にあの地域住民たちは一台一万五千円もする酸素吸入器で、せめてのどのはれやあるいは呼吸器の異常を直そうとして懸命のみずからの対応をしておるわけなんです。しかもこの酸素吸入器は一人三十分ぐらい使用しなければならない。使用することによって現に幾らか効果があるということで、五人くらいの家族ではその酸素吸入器を取り合いっこして使用しておる。しかし、五人家族ではとても一台ではその用に供し得ないというので、無理をして二台くらい用意しておる。今日いわれなき公害によって原因者不明の公害によって、たまたまそこに住んでいる人たちが苦しい生活の中から三万円もの酸素吸入器を買わなければならない、こういう現状認識があまりにも足らないのじゃないかと思うのです、ただいまの御答弁は。つきましては、再度御答弁をお願いいたしたい。
  96. 田川誠一

    ○田川政府委員 酸素吸入器のことは、私聞き間違いでたいへん失礼いたしました。  それから健康の障害はないという、これは解釈の相違と申しますか、いま御指摘のように各種の訴えがあるということは私ども承知しております。もちろん、全然影響がないんだということを申したわけではございません。影響があるということはこれは当然でございます。でございますので、厚生省といたしましてもこれを重視しているわけでございまして、そういうことでございます。なお、詳しくは担当の局長から御説明申し上げます。
  97. 舘林宣夫

    舘林政府委員 大原地区の調査によります臨床上の所見といたしましては、口の中がかわく感じがするとか、くしゃみがする、あるいは目がしみる、目やにが出る、目が赤くなる、顔がほてって困る、のどが刺激するような気がする、胃のぐあいがどうも悪いような気がする、夜眠られないような気がするというような、感覚的なものが非常に多いわけであります。実質的に障害を起こしておるかどうか、すなわち肺機能の検査をいたしました結果は、一般地区と変化がございません。むしろ肺機能の検査は他の地区に比べて高くなっているような点が見られたわけでございます。これはあるいは一酸化炭素の刺激症状かもしれないわけであります。したがいまして、器質的な変化はございませんので、こういう状況に酸素吸入をするということは全く無意味であるというのが専門家の意見でございます。なお、ヘモグロビンと一酸化炭素の結合したものの血液の中における割合は、普通の都市では二%以下でございますが、この大原町等におきましては四.二七%になっております。しかし、これとても通常はカリフォルニア等の基準におきましても、五%以下であればさして障害はないということになっております。したがいまして、そういう数字的あるいは測定的な意味合いから申しますと、障害を受けておる状態は必ずしもないわけでございますが、お尋ねのように、訴えとして目の刺激症状というものが出ておるわけでございます。
  98. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 結局厚生省は、放置しておいていい程度の状況だというふうに判断しておられるのかどうか。そうでないとするならば、——それは立体交差になり、車がスピーディーに走れば公害が減ることはわかっておりますけれども、現にいま困っておる住民に対して具体的にどういう指導をする、あるいは必要があればどういう援助をしなければならないか。ひとりここだけの問題ではなしに、われわれは、現に起こっておるこういう公害が及ぼす人体への被害について、厚生省がどのように処置していこうとしておられるのか、こういうことを聞きたいと思います。
  99. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、その解決は自動車の排気ガスの濃度を下げることにあるわけでございます。その手段としましては、自動車の機械装置を変えること、排気の浄化をすること、そういうような自動車のほうに対して措置をとること、交通規制を行なう、すなわち立体交差にして、ここに停滞しアイドリングによる排出を少なくする、こういうことが最大の眼目でありまして、そのいずれも目下国の政策として実施をしておる段階でございまして、完成までには少し時日を要しますけれども、根本的な対策はそれが最も必要であるということで、目下それぞれの担当部局で実施に努力をしておる段階でございます。
  100. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 政務次官にお聞きいたしますが、こういう問題が起こってまいりますと、住民はいずれにしても真剣であります。何かいい方法がないものだろうかということで、それぞれ考え出すと思うのです。そのときに、先ほどの問題のように酸素吸入器なんかも当然考え得ることでありますし、また、そういう器具が大いに売りさばかれると思うのです。私はいまの政府の御答弁で、酸素吸入器はあまり意味がないのだというふうに承りました。もしそうであるならば、政府はそれぞれ行政組織を通じて、むしろこういう処置のしかたのほうが正しいのだというふうなことを、よほど懇切丁寧に説明してやらないと、この場合がそうだとは私は思いませんけれども、商魂たくましい商人と公害とが三重にその住民を苦しめていくというふうなことがあると思うのです。実はきょうの新聞で私もちょっと気になったのですが、ある薬屋さんの宣伝で、有名な政治家がサイン入りか名前入りで自分の写真を出して、公害がひどくなった、政治でもこれを直さなければならないけれども、この薬はよくきくぞというふうな宣伝をなすっておるのです。私は良識ある政治家がそんなばかなことをするはずはないと思うのです。しかし、政治家が公害をだしにする商魂たくましい業者に悪用されたり、あるいは公害そのものがそういうことに便乗されたりしては私はたいへんだと思いますので、あわせてお考えを聞きたいと思います。
  101. 田川誠一

    ○田川政府委員 御指摘のようなことがもし事実としますれば、まことに残念なことでございますが、そういうようなことが起こらないように、私ども努力をしてまいるつもりでございます。
  102. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 先ほどの指導はされますか。
  103. 田川誠一

    ○田川政府委員 そういうことが起こらないように指導をしてまいります。
  104. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 次に、第二番目に農村公害について質問をいたしたいと思うのです。これは委員長の選挙区でもありますし、奥野理事の選挙区でもありますし、私の選挙区でもある奈良県でいま起こっている問題であります。穀倉地帯の中心を流れる奈良県の曽我川や飛鳥川が今日のひどい干ばつの中で、農民たちはこの川に水田の水を求めようとした。ところがはなはだきたなくて、くさくて、しかも有害であることがわかって、さすがにこの水は使えないということで、いまや農民は、工場の廃液による河川の汚濁によって非常な実害を現にこうむっている問題が大きく発生しておるわけなんです。こういう問題について政府はいままで何か調査をされたことがあったか。あるいは指導をしてこられたことがあるかということについて、まずお伺いいたしたいと思います。
  105. 松本茂

    ○松本政府委員 いま御質問ございました飛鳥川、曽我川、これは大和川の上流でございます。大和川につきましては、下流の堺市の上水道の取り入れ口のあたりを基準にいたしまして、その上流全体につきまして昭和四十年十一月に水質基準設定いたしまして、その工場排水につきましてその水質基準を守るように措置をしておるわけでございます。この水質基準設定につきましてま、既存の工場につきましては、たとえばBODで百二十まで特例としてやむを得ないということで、六つの工場につきましてはそれをオーバーした点に基準を置いておりますが、一般の既存工場につきましてはBODで百二十まで。それから四十年十一月のこの基準設定いたしましたとき以後に新しく設けられた、あるいはまた増設されるものにつきましては、BODでは二十までというふうな基準設定いたしておりまして、そういうことによりましてこの河川の汚濁防止に当たっおるわけでございます。
  106. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 水質基準設定したり、いろいろ大和川の河川の汚濁に対して防止対策を講じておられることはわかりますけれども、しかし、そういう法律をつくったり、あるいは基準の適用をしたりしただけで政府の仕事が終わったとはいえないと私は思うのです。現に農民にまでこういう深刻な打撃を与える公害が各地で起こっておる。しかもそれらがたとえば衆議院等で論議されない限りは、あるいは政府は全く知らないままでこれを放置するのではないかというふうな気がいたしますので、いままでにこういうことに関して政府みずからが、通産省みずからがいろいろと努力されたことがあるのか、工場密集地帯は別として、農村地域において問題のある工場がいろいろな弊害を及ぼすのではないかということについて、個々に指導したり点検したり監督をされたことがあるのかどうか、まず伺っておきたいと思います。
  107. 松本茂

    ○松本政府委員 水質基準設定をいたしまして、それを工場のほうで順守いたしまして水質をきれいにしてまいるというのには、まず水質保全法によりまして水質基準設定する。次に工場排水規制法によりまして、工場がそれを守っていくことをやっていく、こういうことになっております。経済企画庁といたしましては、水質基準設定をいたします水質保全法のほうを担当いたしまして、こういう基準設定につきましてつとめておるわけでございます。この大和川につきましてはBODで申しますなら、その汚濁負荷量は、工場が二〇%くらい、一般の家庭下水が八〇%くらいという割合に調査の結果なっておるわけでございまして、非常に大きな要素が家庭下水の処理にかかっておるわけでございます。したがいまして、この基準設定いたします場合にも、この流域下水道の整備が非常に大切である、こういうふうに考えられましたので、経済企画庁長官から関係の大臣に、下水道整備につきましての勧告がなされております。この流域の下水道につきましては、昭和四十一年度に建設省におきまして計画の調査が行なわれておるわけでございます。個々の工場が排水基準を守っておるかどうか、そういったことにつきましての調査あるいはその指導といった点につきましては、先ほども申しましたように所管であります通産省あるいは農林省においてやってもらっておるところでございますので、そういった点の詳細につきましては通産省あるいは農林省のほうからお答えいただくのが適当であろうと思います。
  108. 馬場一也

    ○馬場説明員 ただいま企画庁のほうから水質基準について御説明がございましたが、大和川水系につきましては、ただいま御説明がございましたような水質基準設定をされておりまして、これを受けまして各工場ごとにその水質基準を守る監督、規制は通産省の所管、企業につきましては通産省、具体的に申しますと各通産局がこれに当たっておるのでございます。大和川におきましては、特に先生仰せになりました飛鳥川あるいはその水系にございまして特に問題になります業種は染色整理業あるいは毛紡績というような工場が約三十ばかりありまして、これがBODにつきましては一般既設工場につきましては百二十PPM、それから特例を設けられました工場、これは五工場ございますけれども、これにつきましては二百五十という線で通産局がこの規制をやっておりまして、この地域につきましてはこの規制の範囲内にとどまるように規制をいたしておるのでございます。ただ、この既設工場につきましても非常に排水量の少ない、具体的に申しますと日量百トン未満の排水しか出さない零細な企業につきましては、この水質基準の適用を受けないということになっておりまして、この適用外の工場が数工場あるということでございます。
  109. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 企画庁がいろいろと基準をつくられ、あるいは関係各省各局にいろいろと指示、通達をして監督をしておられるはずなんでございますけれども、事実はそうはなっておらなかったということを私はこれから申し上げたいと思うのです。特に御承知のとおり現在ひどい干ばつであります。したがって、工場排水というものが非常に濃度がきつくなってしまっておる、こういうこと。そこへ、先ほどお話もありました都市排水もいよいよひどくなってまいります。これら幾つかの条件が重なり合ったときに非常にひどい河川の汚濁の現象が一挙に生じてくる。それが農村に対してどうにもならない公害を与えてしまったということになったわけなのであります。特に問題は、三和澱粉と称する澱粉工場があります。この三和澱粉の場合は原料はトウモロコシです。日量約三百トンを使用いたしております。この日量三百トンのトウモロコシによってでん粉を製造するわけなんでありますけれども、もしそのでん粉工場が廃液をストレートに流したならば、その廃液は何とBODで一万をこえるのではないか、あるいはSSで五千をこえるのではないかというふうなことは県側でもすでに想定しているようなのであります。しかもそれはたくさんの窒素化合物を含んでおります。こういうものがそのまま捨てられてはならないので、それぞれ指導はなさってきております。確かに三十九年に同工場は活性汚泥方式で処理槽をつくっております。設備近代化資金からその限度額の三百万を借りまして、さらに他に資金を求めて、一千万以上の経費をかけて処理施設を一応はつくっておるわけなんです。さらに四十年になってから製造工程段階に蒸発がま五個をつくって、そして四十年の五月にこれを据えつけております。スラッジと称するカスを濃縮して処理しようという施設のようでございます。ある程度誠意を尽くしてその能力の限界まで努力はしておると思うのです。にもかかわらず、工場側自身が今日でもこの問題の中で認めているように、相当飛鳥川、曽我川に対して汚水を現に流しておる。これは一体どこに問題があるのか、その処理技術そのものがまだ不完全なのであるか、あるいはせっかく施設をつくってもそれを十分に活用していなかったのか、私はやはりこのどちらかがその一番大きな原因を形成していると思うのです。問題はこの辺にあると思うのでございますけれども、こういう点について、いままで何らかの監督や指導をなさったことがあるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  110. 石田徳

    ○石田説明員 ただいま先生の御指摘になりましたように、三和澱粉では、トウモロコシを原料にいたしましてコーンスターチをつくっております。先ほど企画庁の局長のほうから水質基準のお話がございましたが、現在、先ほど答弁ございましたような基準が適用になっておりまして、その指導、監督は一応知事がやっておるわけでございます。これまで実は私たち公害について聞いていなかったわけでございますが、きょう先生の御質問があるということでございましたので、急遽電話で私のほうで問いただしましたところ、まだ被害の程度なり、それからどうやっておりましたかはつまびらかでございませんが、確かに被害の出ていることは明らかでございます。それに対しまして、先ほど先生の御質問では、理由を二つあげられまして、どちらかであろうというお話でございましたが、その辺はどちらであるかはまだ調べてございませんけれども、社長の申しますのには、今後は公害防止の設備も整っておることでございますので、再びそういうような災害の起きないように万全の措置を講ずるということを電話で申してまいっておりますので、これは直接には知事の指導でございますけれども、コーンスターチにつきましては私のほうの所管でもございますので、今後そういうような公害が出ませんように十分な指導をしてまいりたいと思います。
  111. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 でん粉の場合は農林省の関係であって、知事に委任をしているようでありますけれども、染色工場の場合は、これは明らかに通産局が管理、監督をしているのではないですか。
  112. 馬場一也

    ○馬場説明員 染色業につきましては通産局が排水の規制をやります。それで、この公害地域におきます約三十工場の染色工場につきましては、昨年の七月一日にこの基準が適用になっておるのでございますが、それからただいままで、大体七月一日以降、これは四十一年度でございますが、残り九ヵ月でございますが、この問各工場に対しまして、大体一工場当たり三回ずつ、通産局の職員が巡回をいたしまして工場の廃水を持って帰りまして、それを分析いたしまして、水質基準どおりやっているかどうかというチェックをいたしております。
  113. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 そのチェックの結果に異常はなかったのですか。
  114. 馬場一也

    ○馬場説明員 それは、廃液を採取いたしまして通産局へ持って帰りまして分析をするわけでございます。その結果、排出基準を越えた廃液でありました場合におきましては、その工場に対しまして当然排出基準に適合するように指導をいたすのでございます。ただいままで聞きましたところでは、一応そういうことは聞いておりません。
  115. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 農林省のほうにお聞きしたいのですが、今度のこの廃液によって及ぼした水田の被害現状であります。田原本町において苗しろが六万六千平方メートル、農家戸数にして四百五十戸、耕地面積にして二百ヘクタール、それから三宅村のほうで、苗しろが二万三千五百平方メートル、二百十五軒、耕地面積が七十一ヘクタール。これだけの相当広範囲にわたる農家が、このことによって苗しろに水を引くことができないということで、いま非常に困った状態におちいっております。現に水を引いたところでは苗しろに根腐れが生じてきておる、日に日に苗しろの生気がなくなってきておるというふうなことでございますが、農林省としては何らかの調査をされたことがありますか。
  116. 上田克巳

    ○上田説明員 いまお尋ねのことに関しましては、農林省では地方の農政局が指導に当たっているわけでございますが、こまかいことにつきまして情報を得ておりませんでしたので、午前中に京都にあります近畿農政局に電話を入れて尋ねてみましたところ、農政局の担当の部課は奈良県の当該の課から連絡を受けておりませんでした。そのために状況を存じておらなかったのでありますけれども、さらに奈良県の耕地課と農務課とに問い合わせてみました。それによって、いま先生が御指摘のような事情を知ることができたのでございます。  なお、苗しろの面積だとか、ひいては出てくるであろう本田面積とかいう数字については承知しておりません。ただ、苗しろに被害があるが、いま食糧庁関係からお答えいたしましたようなことで、工場が善処方を約束いたしておりますので、水質が好転するのではないかという希望を持っておるわけでございます。しからざる場合には、県庁の当該課のほうとよく打ち合わせまして、できるだけよい方向に努力いたしたい、指導していきたい、かように存じております。  なお、本田期に入りますと、あと一週間ばかり後と思いますが、六月十五日以降は、農林省の国営かんがい排水事業実施します十津川、紀ノ川のほうから大和盆地のほうへ取水、分水いたすことに相なっておりまして、その能力が毎秒十一トンでございますので、常時は六、七トンを予定しておるわけでございますけれども、十一トンを放流して被害の軽減のために期したい、こういうことを奈良県の農業水利関係の機関と近畿の農政局のほうとで手はずを整えておるような次第でございます。
  117. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 でん粉の残渣というのですか、それが非常に大量の窒素分を含んでおる。さらに、先ほど申しましたように染色の廃液がまじってくる、あるいはし尿等を含むいろいろな家庭から排出される悪水が流れてくる。これらによって相当窒素分を含む有機物が水の中に多くまじっておりまして、これが水田に入って還元作用を起こして、土の中の酸素を吸収してしまう。そういうことによって根部が呼吸困難になって苗しろが枯渇していく、枯死寸前である。六月十五日になれば吉野川の水が分水されて流れ出ることはわれわれもよく承知しておりますけれども、苗の間に被害を受けると、あと幾ら十分に水を供給してやっても、水稲というものは大きな影響を最後まで受け続けるということについては、まああなたのほうが専門であると思うのですけれども、しかもこういう問題は全然いままで出先機関のほうから御報告がなかったようでありますけれども、何も新しく数日前に起こった問題ではないのです。三十六年当時に一度こういう状態が発生いたしております。これは田原本町の責任者もそのことを申しております。全国においてもしばしばこういう産業公害が農業に及ぼす影響が生じておるはずなんです。なぜそういうことがそのつど克明に報告されないのであるか。そういうことが十分に報告されておるならば、こういう被害もあらかじめ予知されて、また防止できたかもしれないというふうな気がいたしますだけに、通産局からも報告がない、地方農政局からも報告がない、この辺に私は今日の公害問題に対する行政当局の、まだ積極性を非常に欠いている傾向が、代表的にあらわれておるのではないかというふうな気がいたしますので、特に今後留意していただきたいと思うのです。
  118. 上田克巳

    ○上田説明員 先ほどのお尋ねのときに、私のお答えが少し不正確であったと思います。本日ただいま苗しろが非常に大きな被害を受けているというような事実についてあいにく存じませんでした、こういうふうにお答えいたしたわけでございまして、曽我川沿岸の水田が、都市下水とか、でん粉、染色工場の廃液等によって被害を受けている事情は承知いたしております。その点訂正させていただきたいと思います。
  119. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 政務次官に申し上げますが、お聞きのようにいまや公害対策基本法をめぐって、健康の保全と経済の健全な発展、これの調和をはかるというふうなことがいろいろ論議されておりますけれども、むしろ産業産業を破壊しかけておるというふうな点を、この際政府も十分に留意しなければならないのではないか。単に人間対産業の問題ではなしに、産業産業、いわば第二次産業が第一次産業に対してたいへんな被害を与え始めているのではないかというふうなことが考えられますので、基本法制定のためにいまいろいろの論議がされているときでございますけれども、政府自身としても、産業産業の問題もあるということを、この際十分に念頭に入れておいていただきたいというふうに考える次第でございます。  なお、いろいろとこういう防止対策を講ずる上には、中小企業の場合には相当な経済的な負担を必要といたします。現に三百万円程度の限度額で、しかも設備近代化資金のワクの中から公害防止施設というものを捻出していかなければならないというふうなことでは、とても間に合わないのではないかというふうに考えるのでございますけれども、次官のお考え方をお伺いします。
  120. 田川誠一

    ○田川政府委員 今回御審議を願っております公害基本法におきましては、御承知のように農林水産、そういうような方面につきましても、生活環境保全の一環として保護することになっておるわけでありまして、具体的には各水域の利用目的水質汚濁の程度、それぞれの特性に応じて水質汚濁にかかる環境基準設定して、そしてできるだけ公害を防いでいこう、こういうつもりで立案をしておりますので、法案が成立をいたしました暁におきましては、そうしたいままでのような弊害が起こらないように努力をしてまいるつもりでございます。  また、ただいま後段にお話しになりました、近代化の設備に対する融資にいたしましても、低利の融資というようなことも整備充実をはかっていく方針でございます。
  121. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 建設省のほうにこの問題でお伺いをいたしたいのですが、私の考えでは、いま問題のような川、特に工業用の下水道の役割りを果たしておる川であって、しかも農業用水路の役割りを果たしておる、こういう二つの作用をしておる河川の場合に、いま申しておるような問題が特に強く出てまいります。したがって、現在までの水質基準設定とかあるいはいろいろな水質汚濁防止する方法を考えてきておられるその根拠は、基本的な考え方は、都市河川方式と申しますか、いわゆる都市部の川をいかに守るか、この程度守り得れば都市に対して公害を与えないのではないかというふうな考え方が絶えず基準の尺度になっておったのではないかと思うのですけれども、むしろ、ただいまからは農業用河川方式と申しますか、いかにして農業用のきれいな水を守るかという点で、あらためて水質基準等の再検討をしなければならないのではないかというふうに考えるわけですが、その点建設省のほうの考え方としては、河川の問題をどういうふうにながめておられるか。  いま一つは、河川法の二十九条によって、当然河川局は、河川の清潔を守り、その流量を確保するために、管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、これを禁止もしくは制限してきておらなければならないはずだと思うのです。こういう点について、今度のこの問題で何らかの措置をされたことがあるかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  122. 上妻尚志

    ○上妻説明員 都市河川方式とかあるいは農村河川方式というような問題でございますが、この問題は企画庁からお答えしたほうがいいかと思います。  ただ、せっかくの御質問でございますので、建設省のこれに対する基本的な考え方を申し上げますと、河川の汚濁の問題については、当然のことながら建設省としても非常に大きな関心を持っておりまして、水質保全のためには総合的対策を講ずる必要があるというふうに考えております。この対策といたましてまず第一に考えられるのは、当然下水道の整備の促進でございますけれども、それ以外に必要な河川の維持、用水の確保、それから他の河川から浄化用水を導入する、あるいは河床汚泥のしゅんせつ事業、こういうようなものを促進して浄化をはかっていくというようなことを考えております。  それから河川の汚濁原因となる排水の規制につきましては、河川管理者の許可を受けさせる措置を講じて強力な規制をするというようなことをいま検討しております。それを具体的に申し上げますと、河川法二十九条の政令の制定という問題になりますけれども、これは現在各省と折衝しているのが現状でございます。  それからもう一つは、大和川水域の問題でございますけれども、これは大和川の流域下水道計画というのをいま計画いたしまして調査を進めておるというような段階であります。
  123. 松本茂

    ○松本政府委員 水質基準設定につきましては、その侵害されております被害がどういうものであるかということを考えまして、たとえばサケ・マスあるいはアユというふうな水産業被害防止しなくてはならない、こういうときには、そういった水産業被害がないように、また農業でございますときは、その農業に被害がないように、また上水道でございますときには、その上水道として使用するのに支障がないように、そういったことを判断の基準にいたしまして利水の基準を想定し、それに基づきまして工場排出基準を考えている、こういうことで作業いたしておるわけでございます。
  124. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いま下水道の問題が出ましたけれども、下水道の場合も、大和川流域の下水道を完成する場合には約二百七十億の金がかかると思うのです。ところが、現在の国の補助率は十分の四ですか、しかし実際はそのブランチなどには一切補助がありませんので、事実上は総工費の一二、三%しか補助してもらうことにしかならない。これではなかなか下水道を受け入れることが今日の住民の能力ではできない。地方の貧しい財政の現状では受け入れられないというところに問題があります。したがって、今後下水道事業の完成を急ぐためにも、ひとつさらに積極的な、公害対策の一環としても政府はこの問題に努力を払い、実施可能な限度まで国の補助率を上げていくというようなことをなさるべきだと思うのでございます。  特に今度のこの農業被害と関連いたしまして、簡易水道にも被害が出ております。この流域に百九十七戸、八百六十二人が利用いたしております浅井戸式の簡易水道があるのです。これは私が県会議員時代にお手伝いしてできた簡易水道なんですけれども、それが今度の河川の汚濁によって非常に危険である。したがって、なま水ではこの水を使用するなというふうなことで、全部町が警告を出しておるというふうな状態まで生じております。したがって、こういう面でも厚生省は直ちにいろいろと指導をなされなければならないと思うのです。  特に河川の汚濁だけではなしに、非常な悪臭がその付近一帯をおおっております。この際もうがまんを越える段階に入った。農民の場合はいろいろとこういう点についてはわりとしんぼう強うございますけれども、今度のこの悪臭だけはもはやがまんを越える段階になったということを彼らは言っているのであります。悪臭防止については.まだ公害対策として政府は本腰を入れておられないように私は感じております。測定方法がいろいろとむずかしいようではありますけれども、単に河川の汚濁とかいうことだけによって悪臭が出るのではなしに、穀粉工場からも相当な悪臭が出ております。あるいは都市と農村との接点にあるこの種の地域においては、養鶏業者が非常な悪臭を近所に与えて迷惑が出ておるというふうな問題も出ております。この際、政府は悪臭問題についてどのように考えておられるのか、もっと積極的に何らかの基準をつくるべきであるという姿勢を持っておられるのかどうか、お伺いいたします。
  125. 田川誠一

    ○田川政府委員 最初のお話の簡易水道のことにつきましては、事柄が飲料水でございますので、私どものほうでよく調査をいたしまして善処いたしたいと思います。  それから悪臭につきましては、なかなかこれは基準がむずかしゅうございます。けれども、いま奈良県のほうであります具体的な問題ばかりでなく、東京周辺にも悪臭の問題でずいぶん表面化しているところもあるわけでございますが、そうした問題につきましては、発生源対策を立てまして、できるだけそうしたことの起こらないように努力をしてまいるつもりでございます。
  126. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 最後に、こうした問題をいろいろ質問いたしますといよいよ痛感するわけなんですけれども、政府はいろいろと公害防止のために考えている、検討している、計画しているということは承りますけれども、現にこういうふうに措置したというふうなことがほとんど出てまいっておりません。また、先ほど来申しておりますように、通産局から通産省のほうへの公害に対する報告が十分でない、あるいは地方農政局から農林省に対して時宜に適した遅滞ない報告がなされているようにも考えられない。現に末端の市町村に参りますと、いろいろこういう問題で行政苦情を聞きに国や県が来られる場合に、特に公害の問題について訴えるのだけれども、それは聞きっぱなしだ、それに対してこのように処置したとかいうふうなことも全くなされない、ただ一方通行でわれわれの苦情を訴えるだけなんであって、それがどのように処理されているのか、全然反応を確かめることができないというふうなことも申しております。また、この問題でいろいろ県あるいは町村あるいは国に質問をいたしましても、あるいは経過を聞きましても、各省にまたがっておりまして、はなはだ話はばらばらであります。いよいよこうした一元化処理をするためにも何らかの強力な機関が必要ではないか。中央公害対策委員会というふうなものがつくられて、その事務局が完全に充実して、こういう問題が起これば直ちに出先でもそういう機関があって対応していく、それが全部政府のほうに吸収されて、直ちに処置をされていくというようなことにならなければ、公害対策というものにしょせん絵にかいたもちに終わってしまうのじゃないかというふうなことを強く感じます。いま起こっております問題につきましても直ちに対処していただきいと存じますし、同時に、この問題を一つの貴重な例として、今後の公害対策、特に農村を襲う公害問題について対処していただきたいと思います。
  127. 田川誠一

    ○田川政府委員 ただいまおっしゃられたことも確かに御指摘のとおりでございます。すべて障害をなくすというわけにもなかなかまいりませんけれども、そういうことをとにかく一つでもなくしていこうということのためにも今回公害対策の基本法を制定しようということになったわけでございまして、法律が制定されるのを一つの機会にいたしまして、総合的に施策を打ち立てて、そして実効のある公害対策を進めていくように努力してまいります。  それから、被害を受けられる方々、そうした方々の声を十分受けとめる、苦情を受取ってそれを処理するというような組織といいますか、機関と申しますか、そういうものも何らかの形でつくって、そして公害防止一つの基礎にしなければならない、こういうことも考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、基本法の成立を期して実効ある対策を打ち立てていくように努力してまいるつもりでございます。
  128. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 以上で質問を終わります。
  129. 八木一男

    八木委員長 次会は来たる十四日水曜日午後一時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会