○嶋崎
説明員 ただいまの御
質問にお答えいたします。
御
承知のとおり、災害というのは、災害ということだけで非常にお気の毒な事情にあるわけでございます。そういう意味合いから申しまして、できるだけ助成策を講ずるということは当然のことだと思うのであります。御
承知のとおり、わが国は非常に災害に恵まれた国
——と言うと語弊がありますけれども、台風があり、雪があり、あるいは霜があり、雷がありということで、非常に災害の態様が多くて、しかも天災が非常に多い国だといわれておるわけでございます。戦後いろいろな事情がありまして、試行錯誤的に行政として一体どういう
災害対策が講じられるかということについて、たびたびの試みをやってきておるわけでございます。そういういろいろな行政的な諸
制度の積み重ねの上に、戦後少なくとも十数年たって
天災融資法ができたのは、実は
天災融資法の前にいろいろこういう試みというものがあって、具体的な先例というものがあって、それを集大成して手直しをし、こういう形に訂正されているわけです。
それから
天災融資法とは別の、自作農維持創設資金というものがありますが、そもそも自作農維持創設資金の性格というものは、いわゆる
農業経営を維持していくという考え方から、それが維持できなくなったという場合に、自作農創設の精神から考えてどういう手当てを講ずべきかというようなことをあわせ考えてそういう
制度ができてきた。それを災害の場合にどういうように運用していくかということも、やはりたくさんの先例というものを積み重ねて、いまやだんだん災害についての
対策というものは
一つの体系をなしておるのだろうと思うのです。
ただ、その体系というのが非常に複雑でございますので、理解しにくい点があろうかと思いますけれども、
農林省のほうのこの行政に通じております方々は、われわれのところに相当こまかく事柄を持ち込んで、災害農民に対してできるだけ手厚い措置があるようにということで御要求があるわけでございます。そういうような経緯がありましてできた
天災融資法でございます。先ほど
お話がありましたように、いわゆる国民経済的に相当大きな
被害があるというのは、国民経済という字を入れて、個人の災害ということではないと思うのです。やはり、国民経済というものはわが国の経済という意味なのだろうと思うのです。これは法制局あたりともさんざん議論をしてそういうことになっておるわけでございます。それはどういうことかと言いますと、やはり国の財源を使うこと、国の行政機能ということの限界はどこにあるのだろうか、そういう意味で
天災融資法が発動する原因をどういうぐあいに考えるべきか。非常に局地的に極端な例を言うと、このごろ雷の季節でございますけれども、おしかりを受けるかもしれませんが、雷にあたって焼けるというような場合には、これは灰しか残らぬわけでございます。そういうような場合とだんだん権衡をとって、一体どういう
程度の局地的
被害に対して国が援助措置を講じなければならぬのか、国の行政責任の限界というものをどのように考えるのかということが、やはり問題の基本になっておるのだろうと思うのです。もちろん、先ほど参
事官が言われましたように、日本の国の国民経済はだんだん大きくなっているわけでございますけれども、基準自体はそんなに窮屈に運用しているわけじゃない。ただ、少ないとはいわれませんけれども、三十億の基準の場合に、それがすぐ二十億台でのせるというようなことになると、そこのところで何かうまい理屈はないだろうか、それから、いつも災害ごとに判断をするということになろうかと思いますけれども、たとえば気象
条件の
関係から、少し口を曲げる
程度で何とか
一つの気象災害というような解釈ができる限度においては、
農林省の御意見あるいは気象庁の御意見等も十分に参考にして、従来、
法律を非常に窮屈な形で運用するというよりは、できるだけ災害を受けた方々の気持ちになって各省とも努力をしてきておる点は、もう
皆さま方すでに御
承知のとおりだと思います。したがって、今回の災害につきましても、われわれいたずらに金を惜しんで三十億の基準を一文なりともというような考え方でこれを運用しようというような気持ちは毛頭ありません。しかし、御
承知のとおり、
県報告が、過去の例から見て、相当過大な
報告であったこともあるわけでございます。もちろん、すべての
報告がそうだったというわけではありませんけれども、あったこともあるわけであります。そういうものを運用する基準として、やはり全国的に
統計調査部というものがある、
統計調査部の
調査自体は、出先の諸
農業団体あるいは
農業者、あるいは市
町村等の意見も十分聞いてそして判断をされてくるものでございます。それを
一つの基準にしまして、その
被害金額というものをもとにしながら実態的な運用を行なわざるを得ないわけでございます。そういう意味で、いま直ちに
天災融資法の
適用になるだろうというようなことを言い切るのは、まことにわれわれとしては困難である。しかし、その法の運用自体について、やはり
法律でございますし、われわれ行政官としては、法の規制の範囲内でできる範囲の裁量というものを働かすわけでございます。ある
程度限界はあろうかと思うけれども、不利に不利に事柄を解釈しようという気持ちは毛頭ないということを御理解願いたいと思います。
なお、
農林省からも、そういう気持ちで私のほうには十分
説明もあり、
被害の
状況等について農民の立場に立った御議論がなされるものであるというぐあいに私は考えておるわけであります。