○福田(一)
委員 そもそもこの問題を尊重するというたてまえでこの
法案を立案されたのならば、少なくとも
選挙制度審議会設置法はどういう
内容のもので、その当時どういう質疑応答があったかというようなことを、私はそんなことを言いたくないが、事務当局が調べておられぬというのは、はなはだ過怠千万だと言わざるを得ないと思うのです。それじゃしかたがないから、私のほうから御
説明しましょう。私は、こういう
質問をする以上は、ちゃんとそういうことも勉強しなければ
質問しない。それは当然の責任であります。
質問する者が勉強もしないでそういうような
質問をしたとしたら、これははなはだ申しわけないことになるので、私は実は調べてみた。そうすると、池田国務
大臣は、尊重するというのはどういう
意味かということを言ったときに、「一応尊重しておるのが例でございます。しかし、今度は、はっきり積極的に書いた。その答申案によりまして、これを十分尊重して政府は案を作成いたします。しかし、
国会の
審議権は別でございますから、政府がどんな案を出そうとも、十分にあなた方は御
審議願う。政府は、この
審議会の答申を尊重して立案をいたします。
国会におきましては、十分これを御
審議願う」、こういうことが言ってあるのであって、実は先ほどの自治
大臣のお答えのとおりであります。ところが、これについてなぜこの答申を尊重するという一項が新たに設けられたかということでいろいろ応答があるのでありますが、これはひとつそのときの——こんなことをやっていたら時間がなくなりますのであれでありますが、あなたのほうでそれをもう一ぺん読まれたらよろしい。その中にはいろいろとずいぶん——こういうふうに赤を書いたのを私持っておるから、これを政府はもう一ぺんお読みなさい。私は、これをみんな一々
質問していった日にはそれだけで済んでしまう。それはできないから、これはこの
程度にしておきましょう。
そこで、私はここで申し上げたいのでありますが、この答申の
趣旨を尊重してという
意味が、実は立法の
趣旨と反しておる。当時のいわゆる
説明と反しておるということだけを私はここで申し上げておきます。そうして、そのときに言われておることは、十分尊重するというけれ
ども、そのうちでいいものはこれをとります、悪いものは
自分らの見識においてこれはとらない場合があるということがちゃんと答弁されておるのであります。ところが今日、いまの世論といいますか、マスコミの態度や、あるいはまた政府などが何か言われておるらしいことをマスコミを通じて私が知ってみますと、どうも十分尊重するという
意味は、
審議会で出たものをそのまま立法する、これが
行政府の責任であるかのような発言が多い。たとえば、これも私はジョークだと思っております。わが党の総裁のことでありますから、私はジョークだと
解釈したのだが、小骨一本も抜きませんなどというような発言があるところに私は問題点があると思うのであります。したがって、私はそれだから総理がそう考えておったのだとは思わない。しかし、私はそういう発言が出るところに
一つ非常に大きな問題があるのではないかと思っておる。何となれば、
審議会というものの性格をここでわれわれは考えてみなければいけません。そもそも
審議会というものは一体どういう効用があるのかというと、あの
人たちはいわゆる責任を持たない、責任を持たないで思い切ってものを言える
立場で
一つ一つの問題について
意見を述べてもらいたいということを言うことにおいて、これは
審議会が非常に
意味を持つのです。したがって、その答申というものは思い切った
意見が出ます。私が
大臣をしておったときにも、よく答申案というものは出ました。しかし、答申案の骨子必ずしも正しかったとは私はいまでも考えておらない。非常に間違った面もいろいろあるわけであります。それを政府は見識を持って取捨選択するところに実務に当たっておる
政治家の責任というものがあるのだ、私はかように考えておるのであります。その点がどうも取捨選択をする
意味において、何かそこいら辺に、いまのあなたの
趣旨の尊重ということになると、それは答申が出れば十分尊重という
意味は、そのままやるのであるというふうに御答弁になったようなところに、私は実は非常に抵抗を感ずるというか、非常に不満を感じておるわけであります。私は、そういうような
審議会の
意見を尊重するということを、今後あなたの
解釈するような
立場においてやっていくのであれば、政府というものは必要がないのじゃないかと思うのです。
審議会でもってきめたら、それを立法化すればいいので、これは技手か技術者になればいいのであります。それからまたマスコミが、何かそういう
審議会で答申ができると、いかにも第三者の公平な
意見だというようなことばで、まるで
国会の
審議までもこれに拘束されるべきであるというような社説あるいはその他の評論が出てくるというところに、私はまた非常な抵抗を感じておるのであります。実を言いますと、私は、皆さんももう御存じだと思いますが、二十年間新聞記者をいたしておった一人でございます。いまの
評論家のお方たちにも私は懇意に願っておる方が多いのであります。しかし、そういうような親しいとかなんとかいうような問題でこの問題を
論議すべきものではないのでありまして、この場合に私が非常に遺憾千万だと思っておりますことは、いまあなたのおっしゃったような
意味で政府がこの答申を尊重されるというところに私は非常な不満を覚える。最近の政界は言論には非常に弱い。そうしてマスコミはいわゆる
政党とか政府というものに対して非常にさびしいのであります。これは今日どういうふうにしてこの経過が出てきたかといいますと、あなたも御存じだと思いますけれ
ども、「朝日文化人」という単行本がこの六月の下旬に出ました。それにおいて朝日新聞におった優秀な記者の一人が、実は朝日新聞の態度、いわゆる記者としての見識というものについていろいろ言うております。なかなかおもしろい本です。それが必ずしも全部が正しいかどうかは知らぬが、私も新聞記者をしておっただけによくわかる。こういうものもひとつごらんをいただきたいと思うのでありますが、
政党はやはりもっとはっきりものを言うべきだ。同時に、マスコミというものが権威のあるものにたてつくというのは、いわゆるイエロージャーナリズムの流れをくんだゆえんであって、いわゆる販売という面にばかり目を向けさせられておるからこういうことになるのであって、いわゆるマスコミというものは今後反省すべきであるという
意見が十分その中に書いてあります。私は、昔新聞記者であった者の一人として、まことにりっぱな御
意見であると思っておるのでありますが、実はそういう点から考えましても、あなた方が新聞に発表されたのかどうか知りませんが、このごろの新聞を見てみますと、このことについていろいろ御
意見がある。たとえばこれは七月の十三日のある新聞、新聞の
名前を言うことはやめましょう。「継続
審議で収拾を」という見出しでもって実は記事が出ております。その記事のうちにどういうことがあるかというと「政府側が継続
審議が最低限の
措置として必要だとするのは、継続
審議にしても
国民世論の批判は避けられまいが、とくに廃案になった場合には、現在首相の諮問によって
選挙制度全般について
審議している第五次
選挙制度審議会に抜きがたい不信感を与え、同
審議会が
審議を放棄するような事態も起こりかねないという懸念に基づいている。」こう書いてある。私は、そのとおりあなた方が考えておられるのかどうかということは別といたしまして、こういう記事が出ることに問題があるのでありまして、そもそもりっぱなあの
審議会の
委員のお方が、しかも
民主主義とか議会
政治というものについては非常な見識を持っておいでになるお方が、それぞれの
国民は、それぞれの
立場において国のため、社会のために奉仕するという考えを持っておられることは明瞭である。しからば
審議会の
委員というものはどういうことを言うことが正しいか、どういうふうなことを望むことが正しいかということはわかっておいでになると思う。それが、
審議会の答申がもし実行されないならばわれわれは
委員をやめるとか、われわれは答申をやめるというようなことをおっしゃるに至っては、まことに私は不可解千万で、もしそういうことがあったとしたならば、そのお方に一ぺんお目にかかって、ひとつどういうお考えでそうおっしゃるのか、じゃ議会も要らないのですか、政府も要らないのですか、われわれはあなた方の
意見にみな従わなければならないということになるのですかということをまず御
質問申し上げ、納得のいくまでお話し合いを進めなければならないと実は思っておるわけです。この点がまずこの
法案について
私は
選挙制度をよくするとか、政界を浄化するとかいうことにはまことに賛成であります。また、自由民主党の今日の党員の一部がとっておる態度のうちに間違いがあるといって、しばしば責められておるけれ
ども、こういうことは改めなければなりません。私は改めるべきだと考えております。だから、そういう
意味では大いに賛成はいたします。しかし、それだからといって議会
制度の根本をくつがえすような、あるいは責任
政党の内閣責任
政治をやられる政府の根本をくつがえすような態度というものについては、私は何としても納得がいきません。これはこれ以上私があまり追及いたしましても、この問題だけ申し上げましても水掛け論になる。あなたはまた、それはそうでないと言われるかしらぬが、こういうことについては、あなたも私が申し上げたのでもうわかっていただけると思いますから、これ以上はこの問題には触れませんけれ
ども、政府も
政党も、
審議会というものをいかに活用するかというようなことについて、ここで一ぺんはっきりした態度をきめるべき時期にきておると思いますがゆえに、私はこういう
質問をしたのであるという
趣旨を十分了解していただきたいと思います。
それではここで第一項目を終わりますから……。