運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-19 第55回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十九日(水曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 小沢佐重喜君    理事 大石 武一君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 福田  一君    理事 古川 丈吉君 理事 島上善五郎君    理事 堀  昌雄君 理事 岡沢 完治君       赤澤 正道君    奧野 誠亮君       小泉 純也君    高橋 英吉君       永山 忠則君    藤尾 正行君       松野 頼三君    大柴.滋夫君       角屋堅次郎君    西宮  弘君       畑   和君    広瀬 秀吉君       吉田 之久君    伏木 和雄君  出席国務大臣         自 治 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務省刑事局長 川井 英良君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         議     員 篠田 弘作君         議     員 林  百郎君         自治省選挙局選         挙課長     山本  悟君         自治省選挙局管         理課長     鈴木  博君     ————————————— 七月十九日  委員四宮久吉君、久保田鶴松君、小松幹君及び  門司亮辞任につき、その補欠として藤尾正行  君、角屋堅次郎君、広瀬秀吉君及び吉田之久君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員藤尾正行君、角屋堅次郎君及び広瀬秀吉君  辞任につき、その補欠として四宮久吉君、久保  田鶴松君及び小松幹君が議長指名委員に選  任された。 同日  理事門司亮君同日委員辞任につき、その補欠と  して岡沢完治君が理事当選した。     ————————————— 七月十七日  小選挙制反対に関する請願(谷口善太郎君紹  介)(第四〇二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  閉会審査に関する件  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一四四号)  公職選挙法の一部を改正する法律案篠田弘作  君外四名提出衆法第二九号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小沢委員長 これより会議を開きます。  去る六月二十六日本委員会に付託になりました篠田弘作君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 小澤佐重喜

    小沢委員長 まず提案者から趣旨説明を求めます。篠田弘作君。
  4. 篠田弘作

    篠田議員 ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について、その提案理由とその内容の概略を御説明申し上げます。  日本国憲法は、主権在民の思想に基づき、民主主義の原理に立脚して、地方自治理念を高く揚げ、地方公共団体議員はもとより、その長について、住民が直接これを選挙する住民自治制度を採用いたしているのであります。  これにのっとり、日本国憲法施行と同時に、地方自治法施行され、地方公共団体の長は、選挙人投票によりこれを選挙し、その任期を四年とする制度が確立されたのであります。  御承知のとおり、都道府県知事選挙は、新憲法施行に先んじて、昭和二十二年四月に行なわれ、自来今日に至っておるのでありますが、その現実を見ますると、去る四月十五日に施行された統一地方選挙後の現状におきまして、連続して五回当選知事五人、四回当選知事四人、三回当選知事十四人でありまして、四十六都道府県知事のうち、先ず本法案対象となる三選以上の知事は、二十三人となるのであります。これらの方方が地方自治伸展のために日夜その努力を傾倒せられていることに対しましては、深く敬意を表するものであります。  従来知事多選制度については、その利害得失が種々論議されてきたのであります。その利点としては、特に一貫した長期計画に基づく重要施策の実施、あるいは複雑専門化している地方行政に精通することによって能率的行政が期待される等のことが述べられているのであります。しかしながら、他面において、新憲法制定当初より危惧されておりました知事長期在職に伴う重大な弊害が現われていることも事実でありまして、私は一々ここにその具体的事例をあげることを省略いたしますが、地方自治体の内部のみならず、国との関係におきまして、また地方住民との関係その他におきまして、多くの問題が各方面において惹起されていることも事実であります。  本来民主主義は、その歴史的沿革から見ますれば、その基本理念において、長期にわたり行政執行権がひとり占めされ、それがさらに強大化されるようになることとは、本質的に相いれない観念でありまして、同一人が長期知事の職にあり、その地位の保有期間が長ければ長いほど、制度的必然的に行政執行権がひとり占めされ、その強大化の危険を内包するに至り、民主主義の本質に相反する傾向を生ずるのは免れ得ないところであります。アメリカをはじめとし諸外国におきまして、大統領あるいは知事の再選、三選等禁止しておりますのは、まさにこのような趣旨からなされているものと思うのであります。  また、知事長期在職は、一面におきまして、中央との関係においては割拠化傾向を伴い、自治体内部関係においては行政偏側化傾向を招来する等、制度的に種々の弊害を内包し、地方自治伸展を妨げ、他面におきましては、行政権力がますます選挙と密着することにより、選挙選挙民の自由に表明せる意思によって、公明かつ適正に行なわれることを確保する憲法及び選挙法趣旨に沿わない結果となると考えるのであります。  以上の基本的な考え方の上に立ち、知事在職長期化に伴って、その弊害は必然的に制度自体に内包するに至るという観点から、私どもは、一般的制度的に法律をもって知事多選禁止しようとするのでありまして、このことこそ、地方自治の本旨に沿い、かつ、選挙公正確保趣旨にも沿うのみならず、憲法が掲げる公正の福祉の要請にこたえるゆえんであると確信するものであります。  なお、禁止限界を四選に置きましたのは、以上の趣旨にかんがみ、立法政策上四選以上を禁止することが妥当であると考えたからであります。  また知事のみを対象とし、内閣総理大臣国会議員あるいは市町村長、特に六大市長等について何等の制約を加えないのは不公平ではないかという議論もあろうかと思うのでありますが、内閣総理大臣につきましては、御承知のように、憲法議院内閣制のたてまえをとり、国会指名に基づいて国会議員から選ばれることとなっておるのでありますから、知事と同一に論ずることはできないと考えます。また、国会議員は、議決機関構成員でありまして、合議体でない独任制機関である知事とは全く性質を異にするのであります。六大市長その他市町村につきましては、知事とは行政執行面におきましてその権限等も異にし、その影響力も大いに相違するものと考えますので、現時点におきましては、特に弊害があると認められる知事についてのみ、その禁止措置を講じようとするものであります。  なお、これが提案に至りました過程におきましては、問題の重要性にかんがみ、数年にわたりたびたび会合を重ね、その間、学者、評論家知事経験者報道関係者等意見を聴取し、慎重に検討を重ねて参りましたことをつけ加えておきたいと思います。  次に、法律案内容の大綱につきまして、御説明申し上げます。  現行公職選挙法第八十七条の次に第八十七条の二として新たに一条を加え、引き続き三期にわたって一の都道府県知事の職にある者またはあった者は、当該都道府県の次の期の知事選挙における候補者となることができないと規定し、連続四期目の当該都道府県知事選挙に立候補することを禁止することといたしたのであります。これに伴って公職選挙法第六十八条第二号を改正して、立候補禁止知事の氏名を記載した投票は無効とすることとし、なお第八十六条中立候補の届け出につき所要改正をすることといたしました。  その他以上の改正に伴い、この法律施行の日に、すでに四期以上知事の職にある者に対しては、所要経過措置を講ずることといたしました。  なお、この法律は、諸般の事情を考慮して、この法律の公布の日から施行することといたした次第であります。  以上がこの法律案提案理由およびその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 小澤佐重喜

    小沢委員長 以上で趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 小澤佐重喜

    小沢委員長 この際おはかりいたします。篠田弘作君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案については、先ほどの理事会の協議のとおり、これを閉会中もなお審査を行なうことができますように、議長に対し閉会審査の申し出をいたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼び者あり〕
  7. 小澤佐重喜

    小沢委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  8. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次に、政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。藤尾正行君。
  9. 藤尾正行

    藤尾委員 この前ごく一部の質問をさせていただいたのでありますけれども、いろいろな支障によりまして時間がなくなりました。今回引き続いてやらしていただくわけであります。多少問題が重複をいたす点があるかもしれません。この点は大臣におかれましても御了承いただきたいと思います。  まず、この前の質問から引き続きまして、私ども選挙活動あるいは政治運動というものに多額の金がつきまといまして、政治影響を与えるということが公共福祉に反するから、そういった国民的な政治活動に寄与しようとする者の多額寄付は、その額において制限をしたい。それがこの法案趣旨の一部であります。大臣におかれましても六月三十日の稻葉委員質問に対する答弁で、そういうことを述べておられるのであります。この場合に公共福祉ということが問題になっておるわけでありまするが、公共福祉ということになりますると、これは国民の大多数が利益を受けるということをもって公共福祉という考え方をしておられると思うのであります。そういたしますと、一方におきまして、そのことばの概念からいいますと、国民大多数の利益と対照的な立場に立つ少数利益というものが一方に想定をされるわけでありまして、その比較において公共福祉という憲法第二十九条第二項の精神が生きてくる、こういうことになると思うのであります。したがいまして、寄付された金が国民大多数の利益を非常に損傷をしておるということが、一方の少数利益と比べましてはるかに大きいという比較証明がなされれば、ここに公共福祉に役立つということがいえると思うのでありますけれども、この証明がなされないで、寄付された金が正しく使われる、そうしてそれが政治活動という面におきましてより大きな公共福祉ということに貢献がされておるのだということになりますと、この考え方は根本的に私は違ってくる、かように考えなければならぬと思います。この点どのように解釈をしておられるのか、大臣にお聞きしたい。
  10. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まず最初にお断わりいたしておかなければならないのは、政治活動、これには相当の金がかかることはわれわれも認めるわけでございまして、たびたびお答えいたしたのでございますが、たとえば六千万人に近い有権者の一人一人に自分政策といいますか、あるいは政党政策を徹底しようとすれば、それだけでも、はがき一枚出したところで数億の金がかかるわけでございますから、したがいまして、今回のこの政治資金規正法におきまして、これもたびたびお答えいたしましたが、政党その他の政治団体に金が入らないようにして、そして政治活動に金をかけないようにしようというねらいは全然持っていないわけでございまして、そのことは、これまたたびたびお答え申し上げておるように、政党あるいは政治団体の受け取る総額については何ら規制をいたしていないわけでございます。そのことを前提にして、ただいまの御質問にお答えいたしますが、要するに、財産権の処分というものは、本来憲法に保障されたように自由に処分さるべきものであろうと思います。ただ、憲法第二十九条の第二項によりまして、その財産権というものを公共福祉に合うように使わなければならないということでございます。それで、これまた先般お答え申し上げたように、特定の者があまりに多額な金を寄付することによって政治勢力に悪影響をもたらす、そして国民一般福祉よりもその特定の者の何らかの利益に奉仕されるような政治が行なわれてはならぬ、こういうことでそこの限界を示したのが今回の制限であるというふうに考えておりまして、もちろんそれは、そのすべての政治献金がそうなるとは言っておるわけではございませんで、しばしばお答えいたしましたように、おそれがある、その特定の者があまりに多額寄付をしたことによって政治勢力影響を受け、国民大衆利益よりもその特定の者の利益になるような政治が行なわれるおそれのあることはやはり避けなければならないのではないか、そういう趣旨におきましてこの制限を考えておるわけでございます。
  11. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいまの大臣の御意見はわからぬではないのでありますけれども、これは非常に大事な問題でありますから、明確に一つの折り目、筋目は立てておかなければならぬと思います。と申しますのは、非常に多額献金が行なわれた場合、それが公共福祉に反するような、一部の献金をした人たちにのみ奉仕をするような政治になってはいけない、そういうおそれがある、こういう御表現でありますけれども、これは私はその政治をなす為政者、この為政者倫理によるものだ、道義によるものだと思う。これは決して献金をする国民の側にその責任があろうとは私には思われません。その判定を、どっちが悪いのだということの限界を一体どこでおきめになるのか、この点は明確にしておきませんと、非常にいろいろの面で誤解を生ずるといけませんから、重ねて申しわけないようでございますけれども、この点、もう一ぺん大臣の御見解を承りたい。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに、いかに多額献金を受けましても、政党側といいますか、政治家側倫理性というものが高くて、たとえ寄付者側にどのような意図があろうとも、そういうものを排撃して正しい使い方をする、そういう政党並びに政治家倫理性というものが中心でなければならぬことは御指摘のとおりだと思います。ただ、従来ありましたようないろいろな実績、過去の経験から考えまして、やはり特定の者が相当多額寄付をするというようなときに、寄付者側にもその意図があり、しかもその寄付者側意図に動かされて行なわれた事例もないではないわけでございます。そういうことも考えまして、根本はもちろん政党あるいは政治家倫理性の問題ではあろうと思いますけれども、しかし過去の経験からいたしまして、そういう事態もあったわけでございますので、その辺のところを今回の規制におきまして彼此勘案をいたして、このような規制をいたしたというふうに御理解いただければ幸いだと思います。
  13. 藤尾正行

    藤尾委員 まだまだ私はこの問題に対して明確な私の理解ができないものであります。と申しますのは、高い倫理を持つとか持たぬとかということでありますけれども、そんなことはもう政治家として、あるいは一つ政治団体として、あるいは政党としてあたりまえのことなんであって、そんなものは論議以前の問題である。たまたま過去においてそういうワク外にはみ出した例があるということで、しからば政治家政治団体あるいは政党というものを法によってその弊害規制しなければならぬという論拠に一体なるのかならないのか。これは私だけの問題でありませんので、いままで論ぜられたところであろうと思います。この点につきまして私は徹底的に突きとめたいのでありますけれども、そういたしますと時間がなくなりますから、この点はあとの方々の御質問にもございましょうから、ひとつ保留させていただいて、さらに御検討いただきたい。  ここでただ一つ、例外的にお聞きをいたしたいのは、七月五日の鍛冶委員の御質問の中に匿名寄付という問題がございました。匿名ということは、結局自分名前を出さないわけですから、そういたしますと、それに対する見返りというものを期待していないことはもちろんであります。しかも、その金がほんとうに政治という形で国民大かた方々に非常に大きな利益をもたらすという場合は——むしろ私はその九〇%、九五%までそうだろうと思います。そういうことになりますと、ここに匿名寄付というところまでひっかけて、その問題の取り締まりに含められておるということは、非常にこれは私にはわからない点であります。これはそういうことを言っておられるわけでありまするが、社会事業への寄付でも、匿名ということは非常に称賛をせられておる。ましてや政治活動政治といいまするものは単なる社会事業のごときものと異なりまして、その国家、国民に裨益するところはきわめて大きい、私はかように思います。そういう非常に大きな公共福祉に合致するもの、だれが考えてもそうだと思えるものまで、何ゆえをもって禁止条項にひっかけられるのか、私にはこれはどうしてもわからない。その点をひとつお伺いいたします。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに匿名寄付ということは、一般的に申せばむしろ善行と申しますか、非常に役立つ寄付をしながら自分名前は出さないという、いわば非常にゆかしいと申しますか、そういう意味善行であろうと思います。その点は政党に対する匿名寄付でも、いま御指摘のようにそのとおりだと思います。たとえば匿名である以上、これはもう反対給付を求めるようなことは絶対ないわけでございますし、その限りにおいては、私は政党に対する匿名寄付というものを、決してそれが悪いものだということを考えておるわけではございませんけれども、ただ政治資金につきましては、そのすべてを公開して、そうして国民の判断にまつ、そういう公開原則をとっておりますので、したがいまして、元来は善行であろうと思われる匿名寄付ではございまするけれども政治資金公開という原則に立ちまして、これはその公開原則にもとるものということで禁止をいたしておるわけでございます。
  15. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、公開原則というものは何にも優先するものだ、こういう御帰結になろうと思う。私はその点はそうでない。当然すべての原則には除外例というものはあるべきである、そういうように私は考えるのです。しかしながら、大臣がどうしても公開原則というものをたてまえにされて、これをどうしても貫く意味で一切の除外例的な規定というものは認めないのだと言われるなら、これも一つの見識でしょう。これは議論の相違かもしれませんから、私はこれ以上追及しようと思いませんけれども、しかしながら、一つ原則を打ち出すということは、すべてに妥当する原則というものは古今まれである。しかもこれを実際政治の場で当てはめていこうというような場合には、やはりそこに生きた解釈、生きた適用というものがあってしかるべきである。私は、こういったことは除外例として当然お考えになってしかるべきである、かように思います。しかしながら、これは議論になるところでありますから、これ以上のことはいたしません。御返答も無用でございます。  それで、次にさらに進ましていただきまするが、政治資金あるいは政治活動を、こういった寄付制限というようなことで規制しようという制度は、アメリカにありまして、イギリスにはございません。なぜアメリカにあってイギリスにないのか、この原因は究明されておられますか。
  16. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治資金規制あるいは選挙法というようなものは、おのおのその長い歴史の中からその国その国で現実に起こったいろいろな事象を入れながら、だんだんに手直しをされて完成の方向へ向かっておる、そういう性格のものであろうと思います。したがいまして、国情国情によって、また、その国の選挙あるいは政治活動の中に起こったいろいろな事象、そういうものをとらえまして、そうしてやってきておるわけでございますので、やはり国によってその国に適した政治資金規制であるとか、選挙制度とかいうものが生まれてきておるので、そういう意味におきまして、イギリスにおいてはそういう規制はございませんけれども、御承知のように、たとえば労働組合献金については相当きびしい規制をいたしておるというようなものもございます。これはやはりその国その国のおい立ちあるいは選挙制度選挙並びに政治活動の中に起こったいろいろな事象、それをとらえてやっておるというふうに解釈するほかないのではないかと思っております。
  17. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいまの御所論でございますけれども、そうすると、その国その国の政治的な個性というものに適応した制度があってしかるべきであるという御所論かと思うのでありますけれども、しからばアメリカにあってイギリスにない、そういうものを日本に当てはめました場合に、どうしてもアメリカ的でなければならないという一つ根拠というものがありますか。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 アメリカ的でなければならないというような根拠はないと思います。したがいまして、アメリカでああいうことになりましたのは、アメリカらしいいろいろな従来の選挙制度あるいは選挙実態政治実態から生まれてきたものと思います。したがいまして、わが国におきましては、わが国に適した、またわが国の従来の選挙実態あるいは政治実態から生まれてくる妥当なものをやっていくことが最も適切だと私は考えております。
  19. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、大臣におかれましては、こういう規制をするという制度が、日本国情あるいは政治現実個性というものに非常に適合しておる、やらなければいけないのだ、そういう解釈になりますけれども、さようでございますか。
  20. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 適しておるというよりも、従来の政治並びに選挙実態からいたしまして、あるいは日本における政治献金実態からいたしまして、この程度規制はやむを得ない、あるいはこの程度規制をする必要があるという考え方でございまして、非常に適したとか適していないというよりも、従来の政治実態政治献金実態からいたして、この程度制限はやむを得ない、こういう考え方でございます。
  21. 藤尾正行

    藤尾委員 この点につきましても、私はまだまだ研究がきわめて不足であって、そうして大臣そういう議論を言っておられますが、よくよく大臣のお立場もわかりますし、特に高通な識見を持っておられる平素私が尊敬をする大臣の言われることでありますから、それにはそれなりのお立場というものがあるということはわかっております。したがいまして、意地悪にこれをどこまでも追及して明るみに出そうという気はございませんけれども、しかしながら、いまも述べましたように、これはいまのところ、いままでの何かそういった暗い事件があったり、いろいろと世論もやかましく言うので、審議会等におかれましても何らかの措置をしなければいかぬというような答申をせられた。そこで、とりあえずそれを尊重するという意味においてお出しになったのであって、基本的に政治というもの、あるいは政治家というもの、あるいは政治団体政党といいまするものがその道義においてなすべきことを、法によって、その政治活動を賛助しようという国民にまで網をかけて規制をしようということとは、私はその間になお相当の議論があってしかるべきである。かように思いまするし、また、この論議をやっておりますと、私は一日かかると思うのです。そういった意味合いでこの問題も私はどうも受けかねる点がありますけれども、この程度にとどめさせていただきます。  そこで次に、政治活動ということが非常に政治資金規正法のもとになっておる考え方であろうと思います。これに当たるものに政党あり、政治団体あり、個人があるということで、その実態はどのようになっておるかということを、いままでの質問の中にも、政党というものは幾つあって、あるいは政治団体というものは幾つあってというようなことを言っておられるのでありまして、私はこの点にも非常に疑問の多い点があると思います。あると思いますけれども、これは一つ一つあげて議論をしておりますと、これまた切りがない。そこで、質問時間も限定をされておるようでございますので、この問題も飛ばしていきますけれども、ただ、ここで私が見のがし得ないことは、憲法に保障された平等の原則というものがございます。この平等の原則政治活動、あるいはそれを援助しようという資金を一部規制しようというこの法律案提出をせられました考え方の間に、これは誤解があってはいけないので、その点をひとつお聞きしたいのでありまするけれども、こういったことになりますと、一体新人の政治活動といいまするものはどのような取り扱いを受けるとお思いになりますか。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは先ほども申し上げましたが、政治活動そのものには、ことにそれが正しい政策の普及徹底というようなことになりますと、相当に金もかかることだと私は考えております。そういう意味で、なるほど政党政党以外の政治団体に対する規制のしかたは違っております。違っておりますが、しかしながら、政治団体あるいは政党が受け取る総額につきましては規制をいたしておるわけではございません。したがいまして、これは政党なり政治団体なり、あるいは政治家方々が、そうした政治資金を収集するにつきましていろいろなくふうをされることはあろうと思います。そういう意味では、もちろん従来のような形で集めようとするといろいろな支障があることは、私も率直に認めるわけでございますが、くふうをしていただきますならば、そういう総額制限ではございませんので、私はある程度政治活動については自由な活動ができるものと思います。思いますが、しかし、現実の問題として、こういう制度が急速に施行されるということになりますると、特にこれから政治活動をされようとするような方々につきましては、なかなか困難も伴うものであるということは事実上認めざるを得ないというふうには考えます。
  23. 藤尾正行

    藤尾委員 そこのところが私はたいへんに重大な点で、へたをいたしますと、これは憲法の精神に違反をするものではないか、かように考えられる非常に大きな問題だと思います。これは事実上、いまも大臣がお認めになりましたように、新人が新たに政治活動をやる、その政治活動については無制限である、幾らおやりになってもよろしい、こういうことでありますけれども、事実上はそれはなかなか困難だということを大臣はお認めになった。私はそのとおりだと思う。それは既成の政治家政治団体あるいは政党といいまするものが、そのいままでの積み上げられました実績というものに基づいて、そうして今後このような政治活動をしていくんだという旗じるしがあって、そうしてそれは大いにやってほしいという賛意があって、そこに政治献金、資金の提供という行為が起こってくるわけであります。それが実績が何もない、これからやろうという人の場合は、私・は、その場合は非常に特別な政治資金の提供者というようなものがなければ、これはとてもじゃないけれども、いままで実績のある方々と肩を並べた同じような政治活動というものはきわめて困難だ、困難だというよりも、もっと私はことばをきびしく申し上げてもいいぐらいきびしいものがあると思うのであります。これは政党の場合でも同じでございまして、ただいま公明党さんなどというものは堂々たる天下の政党になっておられるわけでありますけれども、公明党が全然議員を持ってなかった、そのときのことをいま現在である、かように仮定をいたしますと、これはいつまでたったって政党になれない、こういうことになる。これは国民の権利、義務というようなものさしではかって、容易ならぬ問題である。それはいま現にこういう席に連ならしていただいておるわれわれのような立場の者はともかくといたしまして、今後政治といいまするものは、環境の変化とともに政党も新しくどんどん出てくべきものである。また、政治団体といたしましても、いろいろな政治団体が生起をして、あるいは消滅をしていって当然である。また政治家自体も、どんどんと変わっていかなければ、これは私どもの国の政治といいまするものの信を国民の間に置き、そうして世界の場で新しく時代の波に合った新しい政治を絶えず確立をしていくという生々の原則というものに反していくだろうと思う。そういった意味合いで、この考え方といいまするものが憲法第十四条に保障をせられました平等の原則というものを一方に考えて、そうしてはたしてわれわれ、がそういう態度をとっていいものであるかどうかということは、この際徹底的な論議をしておきませんと、これは後世非常な批判の的になる。かように思うので、もう一ぺんこの点についての大臣の御見解を承りたい。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 個人につきましては、今回、これは申し上げるまでもなくすべての政治家個人がこの規制を受けるわけでございますから、その意味においては、旧人といえども新人といえども規制を受ける程度は同じことでございます。そこで一体、しかし新しく出ようとする方々が、いわば俗なことばでいえば広く浅く政治的な援助を受ける、政治資金の援助を受けるような体制がとれるかどうかということになりますと、私がさっき、事実上なかなか急速には困難であろうと申し上げたのは、そういう意味でございます。ただ私は、やはりこの新人の養成ということは、政党が本来やっていかなければならぬことだと思うのでございます。かってにおまえたち出てこい、出てきたら入れてやるということではなくて、やはりその政党みずから新人を養成し、自分政党の次代をになってくれるような人を養成していくという努力も払わなければならないのだと思いますので、そういう意味からいえば、この規正法が憲法による平等の取り扱いの原則に反したということは言えないと思います。ただ私は、いま申しましたようにいろいろ事実上の困難がございますので、そういう点はやはり政党みずからがそれを打開してやらなければいけないものと考えておるわけであります。
  25. 藤尾正行

    藤尾委員 いまの大臣の御答弁の御趣旨はわからぬではございません。わからぬではございませんけれども規制をせられるときには、当然これは政治家あるいは政治団体政党倫理においてやらなければならないものであるけれども、しかし一時的なこういう事象があるから、法的規制を加えて、国家権力によってこれは押えなければならないという考え方が一方に存在をする。片一方の半面においては、ただいま大臣が言われましたように、それは当然不公平、不平等が起こる、そういうことは事実あるのだ。しかしながら、そういうときには法は何もこれに対しまして助力をすることはできない。だからそいつは政党なり政治団体というものがかってにやったらよかろうというものの考え方が一方において存立をしておる。こういう便宜的な、便宜主義的な、私のことばはあるいは当を失しておるかもしれませんけれども、その場その場でかって気ままにいいほうをとっていくというものの考え方でこの法律改正案といいまするものが考えられ、作成をせられ、運用をせられるということになりますと、これはちょっといただきかねる面が出てくると思うのであります。特に国民の権利とか自由とか財産に対して制限を加えるという国家の権力作用というようなものは、いたずらに恣意をもって行なわれるべき筋合いのものではない。したがいまして、この場合に平等の原則というようなものがまずあって、そういったものから演繹的に合理的な法の支配というものが要求をせられると思うのです。ただいま大臣は、政党が当然やるべきものだというように言われました。私は、事実上そうあってほしい、私も同じような考え方を持っておるのですが、政党そのものがやはり自然発生的なもので、それを法によって縛っていくという、その活動を縛っていくというようなものの考え方は、政党自体の政治活動の芽をつんでいくようなおそれは一体ないのかあるのか、この点は論争は論争として、別個にこれは大臣にお考えいただかなければなりませんし、これを明らかにしていただきませんと、国民の皆さま方も、あるいは将来ともに政治におれは志してやろうというようなりっぱな方々が出てこられる際に、私は非常に重要な影響を及ぼすおそれがある、かように思います。この点をひとつお伺いをいたしたい。
  26. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 繰り返した答弁になって恐縮でございますが、今回の政治資金規制の目的は、あくまで特定の者が多額の金を寄付するということを規制するわけでございまして、政党そのものあるいは政治団体政治家個人、これの受け取る総額を規制しているわけではございません。したがいまして、もちろん従来のやり方と今後政治資金の集め方は変わってくるだろうと思いますけれども政党といたしましては十分ないろいろなくふうをされますならば、政治資金そのものの総額は減少させない、あるいは場合によっては増加できるようないろいろなやり方もあろうと思うのでございまして、そういう点では政党活動が活発になるという芽をつむというような意味では今回の規制はないわけでございます。いかにも世間の一部には、政党にあまり金をやれなくなって、政党があまり金をつくらなければ政界が浄化されるのだというようなふうにこの規正法をお受け取りになって、それで賛成されておるような方もあるように思います。今回の規制は、繰り返すようでございますが、そうではないので——なるほどいままでのようなやり方ではあるいは無理かもしれませんけれども、この範囲において政党がいろいろくふうをされますならば、資金の収集についてはなお十分な資金の収集もできるものと私は考えておるわけでございます。
  27. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいま島上先生から、もう大体時間がきたのでやめろという御注意がございましたので、ほんとうは議論は私はできるだけ避けて、問題の提示だけにとどめておるわけでございますけれども、ごく焦点をしぼりまして、あと二、三点だけお伺いをいたします。  改正法では現行法より処罰規定が強化をせられておる。強化をせられておるというよりも、これはもう質的にも根本的にも、私が前に申し上げたように違っておると言ったほうが正しいと思うのでありますけれども、こういう処罰規定が正しく運用されるかどうかという点をきわめなければいけないわけであります。これは政府がおやりになるということでなくて、いよいよこれを究明していきますと、立法府、行政府から全く手の放れた司法という検察の手を借りなければ、これの正しい究明というものはできないということになるわけであります。  そこで、まず伺いたいのは、大体公共福祉という観念は、これは民主主義国家から出てきた観念じゃありません。公共福祉という観念は、まず警察国家、絶対主義国家において発生したものであって、これは人権という観念と両立できないところがあるのであります。これは読んでもあれになりますけれども憲法調査会の議論の中にちゃんと出てきておる。そういう立場のものである。公共の安全、福祉というようなものと秩序の維持、こういうものが取り締まり当局の裁量権にまかされるということになりますと、取り締まり当局の裁量権が当然に拡張されるということになって、もっと上位の考え方である憲法の原理というものが、あるいはもっとその憲法の原理よりさらに基本的なものであるべき人権の保障というようなものの考え方が侵されるという可能性があると思いますけれども、この点はいかがお考えでありますか。
  28. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 一般論といたしまして、いろいろ問題があろうかと思いますが、今回の、たとえば寄付制限、二千万円以上はいけないとか、あるいは資本金の千分の二・五をこえてはならぬとかこういうことは相当客観的にわかるわけです。たとえば会社の業績等は何らかの形で公表される。資本金がどれだけあるかというようなことは客観的にわかっているわけです。そして、それに反するか反しないか、いわば非常に明白な違反ということになるわけでございます。もちろん、それに故意があったか、善意であったかというような、意思の問題等がいろいろむずかしくなると思いますが、しかし、少なくとも今回の寄付制限等につきましての捜査というものは、そういう意味におきましては、従来時に行なわれるような、会社の帳簿をひっくり返して調べなければわからぬというようなものでないという点を一面において考えます。そういう意味では、今回のこの改正につきまして、警察権とかあるいは司法権というものがやたらに入ってくるというような余地のあるものではないと私は考えておるわけでございます。もちろん、そういう意味におきまして、私ども警察を預かる者といたしましては、十分そういう心がけでこの問題には対処してまいりたいと考えております。
  29. 藤尾正行

    藤尾委員 いまの大臣の御答弁は、御答弁としては私にもわかるような気がいたしますけれども、これはなかなかむずかしいですよ。というのは、一体国民が、あるいは法人でもいいですが、個人、法人が、規制をせられたワクから逸脱をしておるかどうかというものを決定する基準というものは明確じゃありません。しかも、これに対して警察並びに検察権が発動をせられるおそれがあるということなんでありますから、(「心配要らぬよ」と呼ぶ者あり)心配要らぬよなんてのんきなことを言っていられる人がありますけれども、これはこの前私が申し上げたが、治安維持法ができましたときにも、一番初めのものの考え方では、これはただ単なる秘密結社というようなものをできるだけ押えようという非常に簡便なものの考え方から発足をした。ところが、それは大臣やいまの自民党が政権をとっております間は、そのようなばかなことはありませんけれども、もしかりに政権がかわって、わけのわからぬのが出てくるということになりますと、そういったものが武器になって、いつ何どきどのような形で発動をせられるかわからぬ。これはおそるべきことなんですよ。ですから、そういったことを考えてみますと、限定をせられた考え方でこれは出発しているのだという大臣の善意というものは私にはよくわかりますけれども、しかしながら、こういった法律案を成立させるかいなかという境目のどたんばに立たされた場合には、そういったおそれに対しましてはこういう手がある、あるいはそういうおそれを判断するときにはこういうことをやるのだというものが明確になっておりませんと、これは非常におそろしい。大臣が善意でお考えになって、その善意で済まないような結果を引き起こすおそれがないとはしない。そういうおそれのあるということは、これは私は非常に大事なことだと思います。その点について、政府はほんとうにそれだけの確信をお持ちになってこういうものをお出しになったのかどうか、その点をひとつお聞かせ願います。
  30. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の資金規制について、しばしば当委員会でも御議論になりましたように、ただ届けっぱなし、見っぱなしでは何も役に立たぬではないか、何か審査権と申しますか、調査権を持つような調査機関をつくったらどうだというような御議論もございました。しかし、私どもは、元来政治資金というものはそういう性質のものでない、行政権がそう介入すべきものでないということで、調査機関を設けるようなことはとらなかったところでございます。  それからもう一つは、それじゃ罰則にかかるような事案が生じたときにどうであろうかというと、非常に複雑な犯罪の内容ではございませんで、たとえば寄付制限額をこえた、資本金の千分の二・五をこえたというような、いわば定型的と申しますか、そういう内容のものでございますので、そのおそれがあるということで一々司法権なり警察権が政党あるいは政治家方々に、あるいはまた会社に介入するというような性格のものでないというふうに考えておるわけでございます。もちろん、藤尾さんが心配されるようなことが、もし非常な警察権の乱用等が行なわれるような事態になりまして、絶対ないということを私申し上げるまでのあれは持ちませんけれども、この規制内容からいたしまして、私はさようなことはあり得ないというふうに考えておるわけでございます。
  31. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいまの問題につきましても、私は、ほんとうを言うと、まだまだ議論をしなければならぬと思う。しかしながら、公共福祉ということだけで取り締まりを強化するというようなことになると、自由権が不当に侵害される危険があるということは、これは私どもの十二分に考えなければならない点でありまして、ほんとうを申し上げると、警察、検察権なんというものは、できるだけ狭くしていくというのが民主主義原則であろう、私はかように考えるのであります。したがいまして、ここで行政権に対する人権の尊重確保、あるいは司法秩序の維持尊重というようなことを十二分にお考えになっていただきたい、かように思うのであります。  しかられますので、あと一点だけ残っておりますから、最後の一点だけを御質問をさせていただきます。  一番最後は、問題の選挙制度審議会というものと政府の立場との関係であります。選挙制度審議会といいますものは、私の考えでは、これは諮問機関である。その諮問機関である審議会の答申というものを尊重するというのは、一体尊重する主体はだれかという問題であります。つまり、もっと具体的に申し上げれば、たとえばこれは私どもから申し上げると非常におかしいのでありますけれども行政府の首長としての総理大臣といいまするものは、同時に私ども政党の総裁である。そうして、立法府におきまする重要なる地位を占めておられるわけであります。その立場に非常な矛盾が起こってくる可能性がある。たとえばこの審議会の答申を御尊重になって——まあ尊重ということばは非常に問題はありますけれども、こういった法律案改正をお出しになった。これがもしかりに否決をされるということになりましたならば、一体、この尊重をする立場にあられる行政府の首長というものの立場と、立法府で非常に重要な地位を占めてこれを審議をする立場政党総裁というものの立場との間に、非常な矛盾撞着が起こりはせぬか、この点どのようにお考えになっていますか。
  32. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 選挙制度審議会設置法の第三条は、御承知のように答申あるいは意見の申し出を政府は尊重しなければならない。こういう条文が入っておる審議会というものも珍しいことは御承知のとおりでございまして、例の臨時行政調査会法の設置のときあったと思いますが、非常に珍しい条文が入っておるわけです。これは審議会や調査会をつくった以上は、その答申を尊重しなければならないことは政府の責任だと思いますけれども、そういうものが法律に入っておるというのは、これはまあ異例のものでございます。そういう意味で、政府といたしましてはその答申を尊重いたしまして、それを国会の御審議を願うという責任はあろうと思います。しかし、国会におきましてそれをどう御審議になるのか、これはあくまで立法府としての権限と見識においておやりになることでございます。ただそこで、行政府の長としての総理大臣が、現在のような政党内閣においては政党の長であるというところの問題はあろうと思いますが、あくまで政府といたしましては設置法の第三条によって尊重して、これを国会の御審議に、国会はまた国会の立法権としての御見識のもとに審議をされるものと私は考えております。
  33. 藤尾正行

    藤尾委員 私は、いまの御答弁の内容はわかりますけれども一つ議論としては、この問題もまだまだ議論する余地がある。ほんとう言いますと、政党とか政治団体とかいうものを規定されておられるわけですから、これからそういったものの概念について質問をしたいのでありますけれども、特にこの改正案が、政党というものを中心にしてできるだけ政党というものを政治の中心に置いて運営をしていきたいという思想のもとにこれはつくられておると思うのであります。したがいまして、政党というものの規定あるいはその政党法律化しようというような政党法というものの考え方、こういった問題についてとことんまで突き詰めませんと、なかなか問題がむずかしくて、簡単にわかったとかどうだというわけにいかないと私は思うのであります。他に質問者もたくさんおられまするし、非常に質問時間が制限を加えられておりまして、やめろという御意見もおありになるようでありますから、この辺でやめますけれども、少なくとも、こういったものを、いままで私が議論をいたしましたものの中でも、議論が正しく折り目、筋目が立ってない、わけのわからないうちに処理されておるという面がまだ非常に多いと思います。そういった意味では、少なくともこういった大事な政治活動に関する、あるいは国民のより大きな政治といいまするものの関心という問題とも関連をいたします非常に大事な法案審議いたしますときに、こういう非常にあいまいな、少なくとも完ぺきでないものをお出しになったということを、私はきわめて遺憾といたしますし、そういった意味におきましては、ひとつ党におかれましても、これは十二分にお考えになっていただけるだろうと思いますけれども、非常な大きな反省をもってこの審議大臣としても当たっていただきたいということを希望さしていただきます。  しかられますから、ほんとう言いますと、私もこれだけ材料を持ってきておるわけですから、もう少しやらしていただきたいのですが、お許しがいただけないようでございますから、これをもちまして一応私の質問を終わらしていただきます。
  34. 小澤佐重喜

    小沢委員長 次は福田一君。
  35. 福田一

    ○福田(一)委員 私は与党の議員として、自治大臣、特にこの法案提案されておる政府のお方にこういう質問をほんとうはしたくないというか、感情論からいえば、決してこんなことはやりたくてやっておるわけではありません。しかし、ただいま藤枝自治大臣からも、ちょっと前の質問藤尾君にお答えになったように、立法府というものは立法府の立場で十分御審議になればよろしいというのは、あなたのお考えであろうと私は考えておるのでございまして、その意味では私と意見を同じゅうさしていただいておると思うのでありますが、しかし、あなたが提案理由説明の中で、審議議会の答申の「趣旨を尊重して」——答申を尊重してとはあなたは言うておいでにならない。答申の「趣旨を尊重して」と、こういうおことばを使っておいでになるのでありますが、その答申の「趣旨」というその「趣旨」というのはどういうことを意味するのか、まずお伺いをいたしたいと思う。
  36. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申には、御承知のようにはっきりものを言っておる部分と、それからあるいは準ずるとかというようなことばを使っておるところもございます。また、答申をされました審議会の審議の途中におきましていろいろ御議論があった、結論的にはああいう答申が出ましたが、その審議の過程においていろいろ御議論のあったところもあります。したがいまして、はっきりいたしておりまするものは、できるだけそれをそのまま使う。しかし、答申の言わんとするところは、単に文字ばかりでなくて、内容的にいろいろ問題を持っておるものもございます。そういうものにつきましては、その盛られた内容を意訳すると申しますか、そういう意味で成文化をはかった。そういう意味におきましては、答申そのものを尊重したと申しますか、というよりも答申の趣旨を、ねらっておるところを尊重した、こういう感じを持っております。
  37. 福田一

    ○福田(一)委員 そうしますと、答申があった場合には、その骨格をなしておるようなものはこれを尊重して立法をする。それからまた、不明瞭な面があれば、推理を加えて案をつくる、こういう意味解釈してよろしいのですか。
  38. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そのとおりでございます。
  39. 福田一

    ○福田(一)委員 そうすると、私はこの尊重という意味についてもう少し掘り下げてみなければならないと思っております。それは、この法案は、これはあなたもちろん御存じですが、三十六年六月八日に通った選挙制度審議会設置法というものに基づいておる。これが衆参両院でいろいろ審議をされておる過程において、当時の池田総理あるいは安井自治大臣が、尊重という意味をどういうふうに答弁をしておるかということをまず局長から、これは大臣でなくて局長から答えてもらいたい。
  40. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 当時の安井大臣がどういうふうに答弁されましたか、いまここにそのとおり申し上げる記録がございませんので、あとで調べて答えさせていただきます。
  41. 福田一

    ○福田(一)委員 そもそもこの問題を尊重するというたてまえでこの法案を立案されたのならば、少なくとも選挙制度審議会設置法はどういう内容のもので、その当時どういう質疑応答があったかというようなことを、私はそんなことを言いたくないが、事務当局が調べておられぬというのは、はなはだ過怠千万だと言わざるを得ないと思うのです。それじゃしかたがないから、私のほうから御説明しましょう。私は、こういう質問をする以上は、ちゃんとそういうことも勉強しなければ質問しない。それは当然の責任であります。質問する者が勉強もしないでそういうような質問をしたとしたら、これははなはだ申しわけないことになるので、私は実は調べてみた。そうすると、池田国務大臣は、尊重するというのはどういう意味かということを言ったときに、「一応尊重しておるのが例でございます。しかし、今度は、はっきり積極的に書いた。その答申案によりまして、これを十分尊重して政府は案を作成いたします。しかし、国会審議権は別でございますから、政府がどんな案を出そうとも、十分にあなた方は御審議願う。政府は、この審議会の答申を尊重して立案をいたします。国会におきましては、十分これを御審議願う」、こういうことが言ってあるのであって、実は先ほどの自治大臣のお答えのとおりであります。ところが、これについてなぜこの答申を尊重するという一項が新たに設けられたかということでいろいろ応答があるのでありますが、これはひとつそのときの——こんなことをやっていたら時間がなくなりますのであれでありますが、あなたのほうでそれをもう一ぺん読まれたらよろしい。その中にはいろいろとずいぶん——こういうふうに赤を書いたのを私持っておるから、これを政府はもう一ぺんお読みなさい。私は、これをみんな一々質問していった日にはそれだけで済んでしまう。それはできないから、これはこの程度にしておきましょう。  そこで、私はここで申し上げたいのでありますが、この答申の趣旨を尊重してという意味が、実は立法の趣旨と反しておる。当時のいわゆる説明と反しておるということだけを私はここで申し上げておきます。そうして、そのときに言われておることは、十分尊重するというけれども、そのうちでいいものはこれをとります、悪いものは自分らの見識においてこれはとらない場合があるということがちゃんと答弁されておるのであります。ところが今日、いまの世論といいますか、マスコミの態度や、あるいはまた政府などが何か言われておるらしいことをマスコミを通じて私が知ってみますと、どうも十分尊重するという意味は、審議会で出たものをそのまま立法する、これが行政府の責任であるかのような発言が多い。たとえば、これも私はジョークだと思っております。わが党の総裁のことでありますから、私はジョークだと解釈したのだが、小骨一本も抜きませんなどというような発言があるところに私は問題点があると思うのであります。したがって、私はそれだから総理がそう考えておったのだとは思わない。しかし、私はそういう発言が出るところに一つ非常に大きな問題があるのではないかと思っておる。何となれば、審議会というものの性格をここでわれわれは考えてみなければいけません。そもそも審議会というものは一体どういう効用があるのかというと、あの人たちはいわゆる責任を持たない、責任を持たないで思い切ってものを言える立場一つ一つの問題について意見を述べてもらいたいということを言うことにおいて、これは審議会が非常に意味を持つのです。したがって、その答申というものは思い切った意見が出ます。私が大臣をしておったときにも、よく答申案というものは出ました。しかし、答申案の骨子必ずしも正しかったとは私はいまでも考えておらない。非常に間違った面もいろいろあるわけであります。それを政府は見識を持って取捨選択するところに実務に当たっておる政治家の責任というものがあるのだ、私はかように考えておるのであります。その点がどうも取捨選択をする意味において、何かそこいら辺に、いまのあなたの趣旨の尊重ということになると、それは答申が出れば十分尊重という意味は、そのままやるのであるというふうに御答弁になったようなところに、私は実は非常に抵抗を感ずるというか、非常に不満を感じておるわけであります。私は、そういうような審議会の意見を尊重するということを、今後あなたの解釈するような立場においてやっていくのであれば、政府というものは必要がないのじゃないかと思うのです。審議会でもってきめたら、それを立法化すればいいので、これは技手か技術者になればいいのであります。それからまたマスコミが、何かそういう審議会で答申ができると、いかにも第三者の公平な意見だというようなことばで、まるで国会審議までもこれに拘束されるべきであるというような社説あるいはその他の評論が出てくるというところに、私はまた非常な抵抗を感じておるのであります。実を言いますと、私は、皆さんももう御存じだと思いますが、二十年間新聞記者をいたしておった一人でございます。いまの評論家のお方たちにも私は懇意に願っておる方が多いのであります。しかし、そういうような親しいとかなんとかいうような問題でこの問題を論議すべきものではないのでありまして、この場合に私が非常に遺憾千万だと思っておりますことは、いまあなたのおっしゃったような意味で政府がこの答申を尊重されるというところに私は非常な不満を覚える。最近の政界は言論には非常に弱い。そうしてマスコミはいわゆる政党とか政府というものに対して非常にさびしいのであります。これは今日どういうふうにしてこの経過が出てきたかといいますと、あなたも御存じだと思いますけれども、「朝日文化人」という単行本がこの六月の下旬に出ました。それにおいて朝日新聞におった優秀な記者の一人が、実は朝日新聞の態度、いわゆる記者としての見識というものについていろいろ言うております。なかなかおもしろい本です。それが必ずしも全部が正しいかどうかは知らぬが、私も新聞記者をしておっただけによくわかる。こういうものもひとつごらんをいただきたいと思うのでありますが、政党はやはりもっとはっきりものを言うべきだ。同時に、マスコミというものが権威のあるものにたてつくというのは、いわゆるイエロージャーナリズムの流れをくんだゆえんであって、いわゆる販売という面にばかり目を向けさせられておるからこういうことになるのであって、いわゆるマスコミというものは今後反省すべきであるという意見が十分その中に書いてあります。私は、昔新聞記者であった者の一人として、まことにりっぱな御意見であると思っておるのでありますが、実はそういう点から考えましても、あなた方が新聞に発表されたのかどうか知りませんが、このごろの新聞を見てみますと、このことについていろいろ御意見がある。たとえばこれは七月の十三日のある新聞、新聞の名前を言うことはやめましょう。「継続審議で収拾を」という見出しでもって実は記事が出ております。その記事のうちにどういうことがあるかというと「政府側が継続審議が最低限の措置として必要だとするのは、継続審議にしても国民世論の批判は避けられまいが、とくに廃案になった場合には、現在首相の諮問によって選挙制度全般について審議している第五次選挙制度審議会に抜きがたい不信感を与え、同審議会が審議を放棄するような事態も起こりかねないという懸念に基づいている。」こう書いてある。私は、そのとおりあなた方が考えておられるのかどうかということは別といたしまして、こういう記事が出ることに問題があるのでありまして、そもそもりっぱなあの審議会の委員のお方が、しかも民主主義とか議会政治というものについては非常な見識を持っておいでになるお方が、それぞれの国民は、それぞれの立場において国のため、社会のために奉仕するという考えを持っておられることは明瞭である。しからば審議会の委員というものはどういうことを言うことが正しいか、どういうふうなことを望むことが正しいかということはわかっておいでになると思う。それが、審議会の答申がもし実行されないならばわれわれは委員をやめるとか、われわれは答申をやめるというようなことをおっしゃるに至っては、まことに私は不可解千万で、もしそういうことがあったとしたならば、そのお方に一ぺんお目にかかって、ひとつどういうお考えでそうおっしゃるのか、じゃ議会も要らないのですか、政府も要らないのですか、われわれはあなた方の意見にみな従わなければならないということになるのですかということをまず御質問申し上げ、納得のいくまでお話し合いを進めなければならないと実は思っておるわけです。この点がまずこの法案について  私は選挙制度をよくするとか、政界を浄化するとかいうことにはまことに賛成であります。また、自由民主党の今日の党員の一部がとっておる態度のうちに間違いがあるといって、しばしば責められておるけれども、こういうことは改めなければなりません。私は改めるべきだと考えております。だから、そういう意味では大いに賛成はいたします。しかし、それだからといって議会制度の根本をくつがえすような、あるいは責任政党の内閣責任政治をやられる政府の根本をくつがえすような態度というものについては、私は何としても納得がいきません。これはこれ以上私があまり追及いたしましても、この問題だけ申し上げましても水掛け論になる。あなたはまた、それはそうでないと言われるかしらぬが、こういうことについては、あなたも私が申し上げたのでもうわかっていただけると思いますから、これ以上はこの問題には触れませんけれども、政府も政党も、審議会というものをいかに活用するかというようなことについて、ここで一ぺんはっきりした態度をきめるべき時期にきておると思いますがゆえに、私はこういう質問をしたのであるという趣旨を十分了解していただきたいと思います。  それではここで第一項目を終わりますから……。
  42. 小澤佐重喜

    小沢委員長 それではこの際暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後零時四十八分開議
  43. 小澤佐重喜

    小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。福田一君
  44. 福田一

    ○福田(一)委員 私は、この法案内容に入る前に、日本のいわゆる民衆の政治意識、政治に対する認識というか、あるいはまた英米、フランス、西ドイツというようなところの選挙制度その他選挙意識というか、民主主義というものを理解する程度というようなものを、もちろん十分研究されてこの法案を立案されたのだと思っておるのでありますが、先ほども実は質問があったのですが、私が英国あるいは米国の、フランスの、西独の立法を、そう深い勉強をしたわけではございませんけれども、一応読んでみまして、そしてこの法律とにらみ合わせて考えてみると、先ほども質問がございましたように、大体日本の法制はアメリカの法令を参考にして立法されておる面が非常に多い、これは自治大臣も、また役人の局長その他も認めてもらえると思うのです。ところが、御案内のように、アメリカでも資金に関する立法というものは、どうもざる法になってしまってさっぱりうまく行なわれない。いままでのやり方ではだめだというので、そこでジョンソン大統領がことしの一月教書を出すにあたって、大統領選挙についての選挙資金の問題について一つ提案をいたしました。それは十分御存じだと思うけれども国民ができるだけみんな政治に関心を持つようにするためには、一人一ドルだけは税金のうちから政治資金寄付しますということをいえば、国庫においてそれを収納いたし、そうして大統領選挙で千五百万票以上とった政党だけにこれを配分する、こういうやり方をしたい、それからまた個人百ドルまでは、いわゆる控除制度を設けて優遇する、こういう案を出されたわけであります。言うなれば、今度出されておるような法案の骨子というものは、アメリカでは、とてもこれではうまくいかぬぞというような奥付がついた法律を一部模倣しておる。私は全部模倣したとは申しませんよ。そうしてすでにアメリカでは、旧法ではだめだからといって新法にいま臨んでおるという時期であると私は思うのであります。こういうときにあたって、日本制度に合わした立法をするのであるというあなたの御答弁から考えてみて、私はもっともだと思うのです。そうあるべきだと思いますが、アメリカとかイギリスというのは、御案内のように二大政党が対立しておるところであります。ところが、日本の場合において非常に違っておるのは、いまのところ二大政党ではございません。これは理想であるかもしれませんけれども、自由民主党、社会党、それから民社党、公明党、共産党というような各党が出ておるのでありまして、言うなれば、こういうような姿というものは、むしろフランス的な政党のあり方だと私は思っておるのであります。フランスという国は自由民権の発祥地でありますが、しかし、フランスでは選挙資金の問題など全然触れておりません。何をしようと、集めようが集めまいが、そういうことには触れないというやり方をしておる。こういう点を、あなたは御参考にお考えになっておったのかどうかということをちょっと承りたいと思います。
  45. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の政治資金の規正をいたすに際しまして、いろいろ外国の立法例等も調査をいたし、また、それの中に一体学ぶべきものがあるかどうかというようなことも考えたわけでございます。ただいまの御指摘のように、アメリカのあの制度につきまして、現在の大統領が違った提案をしたことも承知をいたしております。また、御承知のように西ドイツにおきましては政党法をつくって、国が政党に金を出す。もっとも選挙制度審議会の審議の過程においても、個々の委員の方の中には、国が金を出したらいいではないかというような御議論もあったのでございますけれども、しかし、わが国の実情といたしましては、そこまではまだいかないのじゃないかというようなことでございまして、しばしばお答え申し上げたような観点に立ちまして今回の資金規正法の改正案を出した、こういうことでございます。
  46. 福田一

    ○福田(一)委員 私は日本選挙制度、また政党のあり方というものを、これは独断であるかもしれませんが、私なりに率直に解釈いたしますと、自由民主党というのは、実をいえば、政党ともちろんいえますけれども、しかし、それをつくっておる構成分子は何であるかといいますと、各代議士の、あるいは参議院議員の個人後援会というものが主体をなして、そうして自由民主党というものができておると思うのであります。これによる弊害というものは非常にございまして、党内においてどうも同じ選挙区の人はお互い同士の仲が悪いというようなことがある。これが小選挙区論が出る一つの大きな理由ではありますけれども、しかし、大体においてそういうような傾向、そういうような組織の形態をしておると思うのであります。それから社会党は、——よそのことを申し上げてはなはだ恐縮でありますけれども、私の認識でありますから、誤っておりましたら社会党の方からおしかりを受けてもいたしかたないのでありますけれども、社会党というのは、いわゆる労働組合というようなものと、個人の後援会というものとを併用されておる。そのパーセンテージは、やはり労働組合のほうに重点をよけい持っておる。これは民社も同じでございます。公明党のほうは、また別個の一つ立場から結集をされておる公明党は、いわゆる個人を中心にして金を集める、そういうふうにして政党組織をつくるのが正しいんだという行き方に、その意味では当てはまっておる政党だ、こういうふうに認識しておるのであります。その主義に全面的に賛成するかしないかは別として、組織論からいうとそういうふうに解釈しておる。  ところが一般のわれわれ大衆は、たとえば自由民主党が今度の総選挙で四九%内外の投票数を得ておりますが、棄権をしておる者もずいぶんあります。棄権をしておる者や、または自由民主党に投票しておる者のうちの、これも大部分とまではいかぬが、少なくとも半分くらいの人の意識、あるいはもっと上かもしれませんが、その意識はどういうことかといいますと、大体官尊民卑の風がわが国においては非常に強いのであります。そして議員になるなどというのは非常に名誉なことであって、そういうことになるんだったら頼めばやってやるけれども、頼まないのに何でわれわれはそんなことをせにやならぬのか、いわゆる政治に、われわれの代表として働いてもらう上から、まことに御苦労さんであるけれども、ひとつぜひお願いをいたしたいというような意味で、それに投ずる人がどれだけあるかということになったら、まことに少ないと思う。こういうことはよその党にも、一部そういう面があるように私は漏れ承っておりますが、私は、よその党のことまでは申し上げません。しかし、そういうことが実相ではなかろうか。それが今日のいわゆる民衆の意識でございまして、そしてわれわれ議員に対して、どうしてそれなら投票しておるか、政党じゃない、何で投票するかというと、それは自由民主党に所属しておる人は、どちらかといえば政策を実行していく場合に穏健で、あまり革命だとか、いや何をやっても通るんだというようなことを言わない、非常に穏健な、しかも進歩的な考えで政策を順々に実施してくれる。こういうところにみんなの信頼が集まって投票が集まっておるんだ、こういうふうに私は考えておるのでありまして、いわゆる政党としての活動を、たとえば自由民主党が地方の末端までどれだけやっておるかということになったら、まことにこれは少ない。遺憾ながらやはり個人の議員を中心にしたその集まりが自由民主党であるというのが大体当たっておるのじゃないか、私はそういうふうに解釈をいたしておるのであります。そうして一般の大衆からいえば、選挙とか何とかといっても、ある者は、もうめんどくさい、そんなものには行きたくないと言う。それから敗戦の結果ではありますけれども、権威を尊重しないという風潮が一部にはあってもう自分のことさえ考えればいいんだ、衣食住さえうまくいかないのに、選挙の、政治の、そんなことを言っておる騒ぎではない、われわれは食えればいいんだという考え方もまた下のほうにはありまして、政治に関心を持たすということが非常に困難だというのが実相だと思う。私は自分選挙区の姿を通じて、こういうことを特に感じておるのですが、自治大臣はこういうことについてどういうふうな御認識を持っておられるか承ります。
  47. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在における政党、特に自由民主党あるいは政治家選挙実態、これは福田さんがいま分析されたようなことに私も考えております。
  48. 福田一

    ○福田(一)委員 そこで、私は何もここで審議会の人がどうこうということはあまり言いたくはありませんけれども、およそ政治というものは、まず実態をほんとうに身をもって体験し、そうして実態をほんとうに把握した者が政治を責任を持ってやるということが必要なんです。そこで、思い切った発言を審議会にしていただくということはけっこうでありますが、審議会の委員の方たち。が、おれらが言ったことをなぜやらないんだということをむやみにおっしゃるけれども、その方たちが政党にでも一ぺんお入りになって、議員に立候補してもらえぬだろうかと私は思っておる。そしてほんとうに日本政治実態というものを把握して、その上に立ってどうやったらいいかという考え方で発言をされておると解釈すれば、それは私も大いに審議会の委員にお礼を申し上げなければならぬとは思うのだけれども、もちろん審議会の委員は一生懸命やっていただいておるし、何も悪いことばかり言っておられるのじゃないが、いわゆる実相把握というものが少し足りないのではないだろうか。そして個人を中心とした政党組織をつくることが理想であるということを言われた。私はごもっともだと思う。何もそのことに反対するのではない。これは理想でございます。私はそうあるべきだと思う。しかし、それにはいまの姿はあまりにもかけ離れ過ぎておる。そのかけ離れ過ぎておるものを、いまわれわれがすぐにその理想に基づいてやろうといたしますと、お月さんがとれるからといって二階から飛びついてみようとして、二階から飛びついたら落ちて死んだというようなことで、いわゆる政党というものを圧殺してしまう可能性が多分にあるんじゃないかということを、私は実は非常におそれておる。それで今度の法案について、もう一ぺん十分政府としても考え直してごらんになる必要があるのではないか、はなはだ失礼なことを申し上げて恐縮だけれども、実は私はそういうことを感じておるのであります。これはあまり新聞やあるいは委員の方のことばかり言うて、われわれも十分に責任を果たしておらぬという面もあると思いますので、みずからもまた十分考えなければいけないし、自民党も大いに考え直さなければいけない面が多分にある、これは私は率直に認めます。そして先ほども申し上げたように、選挙を浄化するとか、あるいはまた政治資金の使い方をどうこうするということについては、十分われわれも反省をいたすべきであるとは思いますけれども、しかし、選挙民の実相というものをほんとうに把握した上で、それをどういうふうにだんだんとよくしていくかという政策でございませんと、とんでもない間違いがここに起きる可能性があると思うのであります。  私は、こんなことをあなたにお説教申し上げるというような意味で申し上げるんじゃありませんけれども、いまや世界的に第二の大きな革命が起きようとしておるということは、ドラッカーという人が大いに主張しておるが、なかなか一つ意見だと思う。それは、いわゆる近代国家はまさに崩壊しつつあるということを言うておる。近代国家の権威は失われつつあるということを言うておる。そしてまた、コンピューターといって電子計算機というものが非常に発達してまいりました。そして、あの蒸気機関が発明されて産業革命が起きて、それによって物が大量に生産され、その大量に生産した利益を資本家が奪い取り、そうしてこれを労働者に与えなかったというときにおいて、マルクスのああいう理論が出たんではないか、こう私は考えておりますが、今日もう一ぺん頭脳の革命というものが行なわれておるというような時代がきておるということも、あなたは十分御認識だと思う。たとえばサーべーヤーといって、月の世界へ行って月面の土地の状況その他を送ってきたあの機械をつくっておる会社は、ヒューズ・エアクラフトという会社で、カリフォルニアにある。その会社はどういうことになっておるかというと、資材をコンベヤーの上に載せるだけで、あとは不良品の仕分けから何から全部機械がやって、そうして最後には製品になってくる。そういう時代が出てきておるのでありまして、もうすでに労働組合とか資本家とかいう問題を越えた、たいへんな一つの革命がいま行なわれようとしておる。  それから近代国家から考えてみますと、われわれ日本においてもそうでありますが、皆さんからおしかりを受けるけれども、お医者さんだって何も政府の言うことを聞きはしません。昔は厚生大臣が言えば、ああそうですかといってすぐこれに従ったのだけれども、今日ではお医者さんの団体はお医者さんの団体で一つ意見を持たれる、農協は農協で一つ意見を持つというふうに、国家が権力を掌握しておった時代から、いまは権力がだんだん分散する時代にきておる、こういう時代でもある。  こういうときに私たちは政治を担当させていただいておるのでありますから、古い理論だけでものを考えてもいけないし、というて架空な、いわゆる抽象的な、できもしないことをえらそうなことを言うのもいけない。そこに、大勢を見ながらすべてをやっていくという必要があると私は考えておるのでありまして、こういう意味からいって、今度の法案はもう一ぺん十分検討の余地がある。なぜかといいますと、これからの政治家というものは、強力な団体の間の非常に正しい裁定者になることが必要になると思うのです。自分が権力を持っているからこうしなさいとかああしなさいということよりは、もうすでに各産業団体でも、たとえば鉄鋼にしてもあるいは油にしてもみんな専門家がおりまして、ちゃんと一生懸命世界の大勢を見ながら、これにおくれまいとしてこれを育成していくところの、一つの見識を持っていまや動いております。私たちがそういう問題にあまり頭を突っ込むと、かえってうまくいかない場合があるのであります。わけもわからない者がそんなことを言うということになる。ただ問題は、たとえば鉄鋼と石炭との関係をどう調整するか、いわゆる裁定者の立場に立つということが、非常に必要な政治情勢にいまやなりつつある。今後ますますそういう傾向になるだろうと私は思うのです。  そういうときに、前の議論に返って恐縮ですが、実を言うと、審議会とかなんとかいうものの意見をそのまま取り入れるような姿であってはいけない。見識を持ってこれを取捨選択するところに、初めて政治家の値打ちが出てくるというのが私の考えでありますが、これについての御意見を伺いたい。
  49. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、設置法によりまして尊重しなければならないということはございますが、その尊重というのは、あくまでそのねらっておるところを考えながら、しかも、現実政治のあり方その他を考えてやっていかなければならないという意味で実は私どもも考えておるわけでございまして、答申をそのままうのみにするという態度でないことは御理解いただけると思うわけでございます。今回の答申の大部分について、私は私なりに現在並びに過去のいろいろな政治上の実績にかんがみて、この程度規制はやむを得ないのではないかというふうに考えて御提案申し上げたのでございまして、それは、ただ審議会がそういう答申をされたからそれをそのままうのみにしたという意味ではないことだけは、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  50. 福田一

    ○福田(一)委員 大局的な問題についての意見はこの程度にいたしましょう。私はあなたのいまの御説明は、さっきの趣旨を尊重するという意味の御説明とちょっとニュアンスが違うように解しますが、その点を追及しておっては時間がありませんから、これはやめにしておきます。  そこで、今度はこの法案内容について、とてもたくさんございますが、同僚の委員からも御質問がありましたから、その一部を項目別に少し申し上げて御意見を承りたい、こう思っておるのです。  実はこの法案提案される一つの大きな理由をなしたものは、私は黒い霧であったと思うのでございます。しかし、黒い霧というものをだんだん解明していきますと、その一番いけないことは、議員が職権を乱用した、そして自分の職権、正しい権利を行使しないで不当に権利を乱用しておる、あるいは悪用といいますか、そういうことが黒い霧というものの本質であったと思うのであります。これと、政治資金をどういうふうに使うことが、いわゆる国民政治意識をもっと持ってもらうのに必要かということは、私は分けて考えるべきではないか、かように考えておりますが、これについてどういう御意見ですか。
  51. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろんこの答申が出されるようになった原因の一つとして、いわゆる黒い霧問題、それはいま御指摘のありましたように、政治家がその特権を利用したというようなものもございましょうし、あるいは寄付者側においてある種の請託をして、それが実現を望んでいたというようなこともあろうかと思います。そしてそういうものが一つの動機となってこのような答申ができたと思いますけれども、あくまで今回の規制のほうは、寄付者側特定の個人あるいは会社等があまりに多額な金を寄付することが、政治の勢力にいろいろな影響を与えるおそれがあるという意味において規制をいたしたのでございまして、答弁を繰り返すようでございますが、政党あるいは政治団体が受け取る総額を規制しておるわけでございませんで、そうした政党あるいは政治団体政治活動というものが活発に行なわれるということにつきましては、何らこれを否定いたしておるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  52. 福田一

    ○福田(一)委員 私はその点については、はなはだ遺憾でございますがあなたと意見が違いますが、その問答はもうここでは繰り返しませんけれども、少なくとも今日のような政治意識の少ない国民政治なんかにはあまり関心を持たない国民を、政治にもっと関心を持たせなければならないこの時代においては、私は、いわゆる善意の寄付者を処罰するということは、これはどうしても賛成はいたしかねます。この点はあなたもしばしば答弁されておりますから、これ以上追及はいたしませんけれども、それでは国民がほんとうに政治関係しようと思わなくなる、私はこう思うのです。  あなたは先ほどの御答弁のうちで、罰則が規定されてもある最高額を押えてあるから、もう絶対にそういうようなことは起こり得ないと思う、いわゆる警察国家になるようなことはないだろうと思う、検察庁があまり無理することはないだろうと思う、こういうおことばがございました。そこで私は、この際法務省の刑事局長にちょっとお伺いしてみたいのですが、この法律ができまして——この法律はできるとは思っておりませんが、この法律ができたと仮定して、ある人から、あの会社は二千万円以上の金を寄付しておるということがしばしば投書があったとしたら、その場合には検察庁としてはどういう態度をおとりになりますか。
  53. 川井英良

    ○川井政府委員 新しい類型の犯罪でございますし、また運用が実態に即して変わってくるかと思いますけれども、従来の規正法違反の罰則の運用の状況は、御承知のように非常に慎重で、数においても少ないわけでございます。ところが、今回のいわゆる総ワク制限の犯罪は、いままでの規正法にも、それから公職選挙法にもなかった類型でございますので、どういうふうな実態になってまいりますか、ちょっと今日から予想はできないのでありますけれども、公選法なんかが規正法に比べて非常に事件が多いのは、ただいま御指摘のように当局に対して投書、密告が非常に多いということでございます。それらをたんねんに整理いたしましてセレクトし、検討いたしますが、それだけでは多くは捜査権を発動しておりません。別にまた内偵捜査その他の資料を加えて、ごく確率の大きい悪質なものについてこれを取り上げて捜査するというのが、いままでの公選法なんかの場合の投書、密告の取り扱いでございます。したがって、今度もしこの法案が通りますと、総ワク制限なんかの場合におきましても、あるいは御指摘のように、私どものほうに投書、密告が多く殺到することも予想されると思います。そのような場合には、公選法の場合と同じような態度でもって慎重に運用してまいらなければならない、この程度のことをいま考えておるところでございます。
  54. 福田一

    ○福田(一)委員 そこが私実は非常に心配するところでございまして、そんなことはあまりないだろうというような大臣のお答えもございましたけれども、実際に警察のいままでのやり方を見ますと、警察と検察庁は一体とは言いませんけれども、大体選挙のときには泳がせるということをよく言うんですよ。まず、そういうことをすると選挙違反になるからとちょっと注意してくれればいいのに、知っておってわざわざどんどんやらせるわけです。そうしておいて、あとでもってこういうことをしたじゃないかということで、全部材料をそろえてさあどうだ、こういうやり方、これがいわゆる警察国家になるというわれわれの一番不満な面でございます。もちろん悪いことをするのはいけませんから、そういうことは気がついたらすぐに注意して、そんなことをすると選挙違反になるぞ、こう言ってなおかつそれを押し切ってやった場合には、これは私はいいと思うけれども、ちゃんと知っておって、そしてどんどんやらしておいて、それで選挙が済んだら、さあ来いと言って引っぱっていってこれを処罰するというのが今日の姿である。私は、そういうようなことがこの法律にも適用される可能性が、多分に起きると実は考えておるのであります。この点においても、寄付者に罰則をつけるということについては、私はますます政治国民が関心を持たなくなる、もうそんなものには触れないようにしよう、こういう感じを持つようになるだろうという感触がいたしておるのでありまして、この意味で、私は従来の経過に徴してその点は反対であります。法案内容については、私は反対であるということを明らかにいたしておきたいと思います。  それから、その次にもう一つ承りたいと思うのでありますが、大体わが自由民主党においても、あるいは社会党その他においても、派閥というのがしょっちゅういわれておるのでありますが、今度の政治資金の規正においては、政党が金を集める額は幾らでもかまわないということになっておるけれども、もし派閥をなくさなければいけないという考えを自民党が持っており、あるいはまた総理、総裁が持っておられるのならば、あるいは自治大臣がそう思っておられるのならば、なぜ個人が集め得る限度というものを、これぐらいまでは集めてもいいけれども、これ以上は個人は集めちゃいけないということを入れなかったか。いままで派閥というものが金を集める、そしてその金を集めるのは実力者だ。その実力者が金を集めて方々に——物見遊山に使ったわけでもなければ、芸者買いに使ったわけでもありませんよ。これはやはり若い代議士で、まだ十分に選挙民に理解を持ってもらえないような人が非常に困っておる、そういう人に金を渡しておるのが大部分だと私は思っております。新聞にはいろいろと、まるで佐藤さんやら何やらがむちゃくちゃなことばかりしておるようなことを書いておるけれども、その人の名前を出して、あれに百万円やったとか、あれに五十万円やったなんていうと気の毒だと思ってそういうようにされると思うけれども、その多くは、何も全部料理屋に行って金を使ったわけでも何でもない。そういうものではないと私は理解いたしております。また、実際私がタッチしておるというか、ほかの人から聞いた面でも、私はそのとおりだと思うのでありますが、しかし、いずれにいたしましてもこういうような政治資金の問題について、使い道を規制していくということは非常に必要だと思うけれども、同時に、派閥解消ということをいわれるならば、政党に属しておる個人が金を集める場合においては、これ以上集めてはいけない——私はそういうものもある程度集めて、そして若い者を育成することに使うということも、いまの日本の実情から言えばやむを得ない面があると思っているのです。しかし、それにはあまりたくさん集めると、いわゆる派閥政治というものができるから、それはやめようというくらいのことがなぜこの法律の中に新しく追加されていなかったかというところを、ひとつ聞かしていただきたいと思う。
  55. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御承知のようにこの改正案におきましては、政党については、寄付者側制限はございますけれども、受け取るほうについての制限はつけなかった。しかしその他の政治団体につきましては、一つの個人あるいは会社、団体等から一年間に受け取る額は五十万円までというふうにいたしまして、政党と差をつけたわけでございます。また税の優遇措置につきましても、政党に対する寄付については税の優遇措置をいたしましたが、その他はいたしていないというようなことでございまして、やや政党本位と申しますか、その色彩を持っております。派閥の功罪についてはいろいろ御議論があろうと思います。しかし自由民主党とされましても、だんだんそうした派閥を解消して政党を中心に動くようにという方向で、いろいろな答申その他もなされておるわけでございます。そういう意味で、一会社あるいは一団体から一年間に受け取る額については制限をいたしましたが、その受け取る総額について制限をいたさなかったということにつきましては、やはり政治団体政治活動をする上におきまして、それはいろいろあろうかと思います。いまおあげになりましたように、若い方々に十分政治活動をやってもらうために、政治団体が資金を出すというようなこともあろうかと思いますが、いずれにいたしましても政治団体そのものが政治活動を活発にしていただくということを、何も否定する必要はないのじゃないかという考え方に立ったわけでございます。
  56. 福田一

    ○福田(一)委員 私はそのお話では、実を言うとほんとうは納得いたしかねるので、こういうものは制限をある程度しておいたほうがいいと思う。弊害がある。実力者は、一つの個人あるいは会社などから五十万円しか入らないにしても、方々から集めて、二億も三億も金を集めて、党内をその金でコントロールするような印象を国民に与えないためにも、ほんとうに議員がそれぞれみんなおのおの独自の立場においてやっておるんだという姿をあらわす意味においても、ちゃんと派閥解消というようなことをやったら、なるほど今度の政治資金の問題については派閥解消の手も一つ打ってあったというような、そこにわれわれ政治家というものは、自分が言ったらそれを実行していくという姿があらわれてしかるべきものだ、こう思うわけであります。  それから、時間がとうとうなくなってしまったので、たくさんありますが、最後に一つだけお伺いをいたしたいと思うことは、今度の政治資金規正の問題について、自由民主党、社会党、あるいは民社党、公明党といろいろ意見が違っておる面があると思う。社会党さんと民社党さんは御一緒だと思いますが、私は意見が違っておると思います。しかし、私は非常に遺憾に思っていることが一つあるのです。それはどういうことかというと、社会党さんや何かはこれをすぐに通してしまって、少し自民党をいじめてやろう、こういう考え方がある。(発言する者あり)それからまた自民党のほうも非常に間違いをおかしておる、私はそう思っておるのです。これは自分意見だから、ぼくの意見に反対なら反対をされたらいい。やじは禁じますよ。あなたも長い間の議員でしょう。私はこう思うのです。自民党のほうはこの法案には、どっちかといえば反対なんです。車の両輪論で反対だとこう言う。そして今度は小選挙区制を出せば、今度は社会党が反対するだろう。合わせてこれが両方ともつぶれてしまうだろうと、どっちもが責任のなすり合いをするような態度をしておる。天下の政党が行動をしておれば、大体どこがどんなことを考えておるくらいのことはみんな知っている。それを相手につぶさせようというようなものの考え方、相手をいじめてやろうというようなものの考え方審議に当たるということでは、私は実は間違っておると思うのであります。  いま小選挙区制について、小選挙区比例代表制というものが問題点として出ておる、こう言っておるけれども、その小選挙区制には、実を言うと私も条件づきで賛成なんです。それは、候補者の乱立がないということならば私はいいと思っておるのですが、候補者の乱立を防ぐことができるという法律的な根拠があるか、あるいは審議会の意見がどういうふうになっているか、ひとつ御説明願いたい。
  57. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まだ審議の途中でございますので、あまり軽率に申し上げるのもいかがかと思いますが、要するに、審議会におきましては選挙区制の問題と選挙運動の問題とはうらはら、したがって政党本位な選挙制度になれば、やはり選挙運動も政党本位に行なわれなければならないというような点におきまして、いま御心配になっておりまする候補者の乱立の問題をも含めまして、選挙運動についてそれがどういうふうに入っていくかというようなことを中心に、いろいろと御議論になっている最中でございます。
  58. 福田一

    ○福田(一)委員 私はこの間ちょっとあるところで、実はあなたのところのお役人のほうから資料をもらったりしていろいろ研究しているんですがね。そうすると、たとえば五百人以上の人が署名すればだれでも立候補できるんだ、小選挙区になっても。ただし、その場合には政党法というものをつくって政党活動をする。どの政党でも立候補した者には政党活動のできる人がどんどん応援してくれるから、だから無所属の者はもう出なくなるだろう、こういう意見を言うておられるのですが、これがまたたいへん実情と相反しておるということを私は考える。大体日本選挙民選挙意識は、こんなことを言うとおこられるかもしれないけれども、必要に低い。同情をするというと、すぐその同情したほうが勝ってしまうです。いままでにその例は幾らでもあります。たとえばAとBの候補者があって、Aのほうは公認になってBのほうは公認にならない、そうするとその人は同調者を得て五百人の署名を提出することができるということになると、まずBの人はどういうことを考えるかというと、五百人の署名をとる事前運動を朝から晩までやるわけですね。小選挙区ですからわけなくできる。そうするといよいよ選挙になったときには、片っ方は政党の応援、自民党が応援する、社会党が応援してくれる、私はほんとうに皆さんのために働こうと思うのに、政党はみんな私を圧殺するようなことをやってまことに残念である、どうか私に同情してくれと言うと、日本選挙民というのは、あれはかわいそうだな、じゃ、まあそうしてやろうかというような意見が出る可能性が多分にある。それからだれが出ようと、とにかく選挙区のその地元の人間というのはその人に大部分を投票するというのが、これまた日本のいまの姿です。よそもそうだろうと思いますが、こんなときに、小選挙区制をやってはたしていまの弊害が除去できるかどうかということになると、私は非常に疑問を持つわけです。だから政党法というものができて、ほかの者は絶対に立候補させないということができるかということを質問すると、それは憲法上無理でありましょう、こういう答弁になる。それでは、私は小選挙区制というものは非常にむずかしいんじゃないかと思うのであります。乱立ができないという形であれば私は必ずしも小選挙区に反対はいたしませんけれども候補者が乱立できるという形の小選挙区というものは、ある意味において意味がないんじゃないか、そういうふうに私は考えております。まあ社会党さんが言われる小選挙区反対と私たちが言う小選挙区反対は、これは意味が違いますよね。しかし、いずれにいたしましても小選挙区制についても十分審議をしなければならないものだ。その小選挙区制の答申が出るか出ないか心配だから、この法案の扱いは慎重にやってくれというような意見が、自治省から出たりあるいは政府当局から出るというようなこと自体が、またわれわれに納得がいかない面がある。こういうことはわれわれとしてあまりあなたには言いたくないことなので、まことに失礼なことを申し上げたかもしれぬけれども、それはきょうだい同士がお互いにけんかしたいとはだれも思いませんよ。しかし、私はほんとうに日本の民衆を政党政治になれさせていくというためにも、そういうような罰則をつけたような法案はつくらないがいい。そうして、これからはどうしても自治省に五百億円か千億円ほど金をつけて、それでもって民衆の政治意識を大いに高揚する運動をしようというようなことであれば、私は非常に賛成する。たとえば、農村に行けば部落まで、あるいは町であれば町内会まで行って、政治というものにわれわれは関心を持つ義務がある、またそうしなければ政治というものはよくならないのですというような意味の啓蒙運動をまずするということのほうが、今日一番大事なんで、まだ国民の意識がそこまでいかないのに、お月さんへ飛んでいって、お月さんの土をとって帰ってくるような話は、もう一ぺんお考え直しを願いたいということを最後に申し上げまして、ちょっと時間が延びましたけれども、私の質問を終わらせていただきます。
  59. 小澤佐重喜

    小沢委員長 午前中の会議はこの程度で打ち切ります。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後四時四十九分開議
  60. 小澤佐重喜

    小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についておはかりをいたします。  理事門司亮君の辞任に伴いまして、理事が一名欠員を生じております。この補欠選任につきましては、委員長指名に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 小澤佐重喜

    小沢委員長 御異議はないものと認めまして、岡沢完治君を理事指名いたします。      ————◇—————
  62. 小澤佐重喜

    小沢委員長 質疑を続行いたします。  この際、おはかりいたします。議員林百郎君より委員外の発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 小澤佐重喜

    小沢委員長 御異議はないものと認めまして、さよう決定いたします。林百郎君。
  64. 林百郎

    ○林議員 私は、主として本法案の当面の責任者である藤枝国務大臣質問をしたいと思います。  言うまでもなく本法案に関して、その前提である答申が選挙制度審議会から出され、さらに本法案を政府が提出せざるを得なくなったいきさつというのは、昨年以来のいわゆる田中彰治事件、さらには共和製糖グループ事件というような政界の腐敗が次から次に明るみに出され、さらにそのことから振り返ってみると、造船疑獄あるいは昭電疑獄等、自民党あるいは自民党の前身である日本の保守政党が、一九四八年から六四年の間だけでも多くの政界腐敗を繰り返しており、検挙された者だけでも、公務員の汚職が三万一千人、そのうち各種の議員が一千五百人以上にものぼっている、こういう数字が明るみに出されてきた。例の東京都議会の不正問題も都民のきびしい糾弾を受け、さらに全国の地方自治体や議会にも次から次へと汚職と腐敗が広がってきた。こういう状態のもとで、この根源が、国民の大事な税金の大部分が、国と地方自治体の財政のパイプを通じて、自民党の高度経済成長政策とか、あるいは不況の救済などという名目で大きな会社につぎ込まれ、大きな会社では、資本主義の国では世界第一の速さで資本を蓄積し、設備を改善し、もうけをふくらましてきた。こういうみにくい政府自民党の政治と経済界との仕組み、このことが明るみに出されまして、国民の要求は、この根源を断ち切らなければならない、こういうことから、この選挙制度審議会の答申と本法案を出さざるを得なくなったということは、言うまでもないと思うのであります。このことは、藤枝自治大臣自身も、答申が出ました四月九日に、このたびの答申は、共和製糖事件に端を発し、政界の浄化と政党の近代化という大きな目的を持っている、本心かどうかは別としても、こう言わざるを得なかった。そこで、このような国民の要求、すなわち、明らかな財界と政界とのみにくいつながり、これを根本的に断ち切って、そして政界の浄化と政党の近代化をなし遂げられたいというのが国民の要求なのでございます。  そこで、私たちの党といたしましては、その国民の要求を受け入れまして、政治資金規正については、次の五つの方針を出したのであります。  その一つは、営利会社をはじめ、すべての団体からの政治献金禁止する、それで政治資金寄付は個人に限る。第二は、個人の寄付は年間四十万を限度とする。ただし、国または公共企業体、地方公共団体から補助金、給付金を受けたり、資本金の出資を受けたり、請負契約などを結んでいる団体の役員は、個人としても政治資金寄付をしてはならない。第三は、政党以外の政治資金収集のための団体についても、寄付だけでなく、一切の収入の届け出を義務づけて、会費その他の名目による脱法的な政治献金を防止する。第四は、営利会社の交際費、会費その他の名目による事実上の政治献金を一切禁止する。第五としては、以上の実施について猶予期間を設けず、直ちに実施する。私どものほうとしては、こういう基本的な政策を立てたわけです。  それで、こういう立場から見ますと、第五次選挙制度審議会の答申自体も、法人から限度額二千万円までの献金が条件によって許され、さらに、個人献金も一千万までの献金が許されるということでございますから、わが党の主張している政治献金はすべて個人に限り、営利会社あるいは団体からの政治献金禁止するという基本的な方針に反しておりますので、われわれはこの答申自体にも、若干の改善はありますけれども、基本的には、大きな欠陥があって賛意を表するわけにいかないという態度をとってまいりました。ましてや、この答申をさらに後退させた、いま当委員会審議対象となっている法案についてはわれわれは絶対反対だ、こういう立場に立っているわけです。  そういう立場に立ってまず質問をいたしたいと思うのでありますが、藤枝自治大臣までがそう言わざるを得なかったこの政治資金規正の問題について、非常に答申よりは後退した、ざるもざる全くざる法である本法案、しかも、営利会社の政治献金を二千万まで認める。これも、わが党の調査によりますと、二千万まで認めるということになりますと、少なくとも昭和四十一年度の財界からの献金を見ますと、二千万以上の大口献金をした団体というのは九団体ぐらいしかない。あとは全く二千万円以下の献金だというところを見ますと、これは自民党にとってはそう痛くもかゆくもない。このようなざる法が、国会法案としての成否が重大な段階にきておるということです。大体政府自民党が本気になって、選挙中に国民に公約した政治資金の規正ということを考えておるかどうかということは、重大な問題だと思うのです。  そこで大臣は、当法案についての国務大臣としての直接の責任者であるわけですから、一体これをどうするつもりなのか。あともう委員会を開かれるのは、きょうと明後日の二日しかない。そして、われわれはこの法案は反対ですけれども、かりにこの法案を通すとすれば、さらに参議院もあるという段階ですね。そういう段階で、あなたはこれをどうするつもりなんですか。政府としては通したいのですか。
  65. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いま林さんは本気かどうかとおっしゃいましたが、私どもといたしましては、本気で政界の浄化あるいは政治献金にまつわるもろもろの問題を払拭いたしまして、国民の信頼を回復する意味におきましての一つの手段として、この法案はぜひとも成立をさせていただきたいという気持ちで終始をいたしておったわけでございます。もちろん、国会の御審議にいろいろ御注文がましいことを申すわけにはいきませんけれども、しかし、常にこの法案の成立につきまして御協力をいただくように努力をいたしてまいりました。ただ、いま御指摘のような段階になりまして、あと明後日一日という、こういう段階になって、そうしてはたして成立させていただけるのかということにつきましては、私も危惧なきを得ませんけれども、何とかこの法案につきまして所期の目的が達成できまするように、ひたすらお願いをする次第でございます。
  66. 林百郎

    ○林議員 ひたすらお願いをいたしますということは、どこへ、どういうお願いをすることですか。
  67. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会で御審議をいただいておるのですから、国会の皆さま方にお願いをするわけでございます。
  68. 林百郎

    ○林議員 そうすると、これはもちろん政党政治でありまから、しかも多数を占めているのは自民党でありますから、自民党へ、あなたはぜひ通過さすようにとお願いをすべきですね。現に、本会議で佐藤総理大臣はこう答弁しているわけです。「成立を期さないような法律案を、皆さま方のごやっかいと申しますか、お手をわずらわすような考えはございません。成立を期すればこそ提案したのでございます。それを誤解のないようにお願いします。」とまできれいごとを言っているのですけれども現実にはどうやって成立を期すのか。あなたは国会へお願いすると言うけれども、自民党の諸君が与党としての責任をとるということになれば、これは不可能なことはないでしょう。自民党に対してどういうお願いを政府としてしているのですか。
  69. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これはしばしば当委員会でもお答えいたしましたが、私としては党の責任者に対しまして、ぜひともこの法案の成立ができますように、党内の取りまとめを常にお願いをしてまいった次第でございます。
  70. 林百郎

    ○林議員 ところが、本日与党の委員質問の中で、本法案を慎重に検討し直すべきである、こういうことを言っているわけですね。いまごろになって、しかも与党の委員がこういう質問をしているわけでしょう。すなわち出直せということですよ、はっきり言えば。さらには善意の寄付、すなわち法人の政治献金等を規制し、さらに処罰をするがごときは反対である、すなわち政治資金の規正をすることは反対だと言っているんですよ。政党政治であることが本来のたてまえであるこの政府自民党で、政府のあなたはぜひ通過するようにお願いしておると言うし、与党の議員の方は出直すべきだ、善意の政治献金を取り締まること自体反対だと言っているじゃないですか。これで何で政党政治立場に立っていると言えますか。あなたは、政府与党の委員がこういう立場に立っているのに対してどうお考えですか。これでは幾らあなた口で成立を期す、期すと言ったって不可能なことじゃないですか。
  71. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そういう御質問に対しまして、私はこの法案はこの時点におきまして——この時点と申しますか、いろいろな過去の政治情勢その他からいいまして、この程度規制というものは必要であるという意味において、そうした御意見に対して答弁をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。
  72. 林百郎

    ○林議員 あなたはそういう答弁をしている。ところが、その政府に対して責任を持つべき、また政府の行政行為に対して、あるいは立法行為に対して最大限度の協力をすべき与党が、あなたの言うことと全く反対のことを言っているということでは、これは政党政治でないじゃないですか。それで第一、答申が四月九日に出て、国会提案されたのが六月十六日です。答申が出て法案提出されるまで約二カ月以上かかっているわけなんですけれども、これについても世間からはいろいろの批判があったわけですね。われわれはもちろん答申に対しては反対の立場ではあったけれども、しかし国民の中では、とにかく不十分なものをもっと十分なものにして、この国会政治資金の規正をしてもらいたいという声が非常に強かったわけです。ところが政府のほうは二カ月も期間をかけた。どういう言いわけをしたかというと、これは与党の意見を調整しているんだ、だから時間がかかるんだ、いろいろの意見があるから調整するのだと言っている。そのために二カ月の期間を要して、そうしてようやく国会へ、ざるもざる、もう骨を抜くったって骨の抜きようがないような法案ですけれども、それを出して、しかもこの法案にいまになって、意見を調整したはずの与党の中から、出直してこいというような意見が出るのじゃ、これはもう支離滅裂じゃないですか。もうここからも自民党という政党は、政党政治を行なう資格のない政党だと言われてもしかたないじゃないですか。第一総理が、成立を期さないような法律案は皆さまのごやっかいにならないと、これは自民党の総裁であり総理大臣ですよ、それが本会議でこう言っているのに、自民党の党員の方は当委員会の発言で出直しなさい、撤回しなさいと言っている。こんな政党がどこにありますか、藤枝さん。これでは、口はばったく政党の近代化だとか何とかと言う資格ないじゃないですか。どうするおつもりでしょうか。
  73. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 自由民主党に対する御批判は御自由でございます。私は……(林議員「何が自由ですか」と呼ぶ)自由民主党に対する林さんの御批判は御自由だと申し上げておるわけでございます。しかし、私は私なりに政府の責任者といたしましてこの御審議を願い、しかも、御審議を渋滞させるようなことがあってはならぬとつとめまして、資料その他は十分皆さまの御納得のいくような資料も整えまして、そうして誠心誠意御審議をいただいておると私は考えております。
  74. 林百郎

    ○林議員 そうすると、あなたはぜひこの法案を通していただきたいんだ、そうおっしゃってますね。通していただくには、それではあなたはどうやれば少なくとも会期中に衆議院が通るとお考えですか、いまの段階で。ちょっとあなたの考えを言ってみてください。
  75. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そうでございますから、私は党の責任者に対しまして、早く党の意向をきめていただきたい、そうしてこれが成立できるようにつとめてほしいということを、再三申し上げておるわけでございます。
  76. 林百郎

    ○林議員 その党の責任者というのはだれなのか、具体的に言ってください。これはこの国会審議の上から非常に重要ですからね。そうして、その人はあなたにどういう答えをしているのですか。これは大臣としてのあなたの責任を問うために質問しているのだ。私は、何も自民党の党内に干渉するつもりはありませんよ。しかし、大臣としてのあなたの責任を追及するためには、そのことを明らかにせざるを得ないので私聞いているわけです。
  77. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 党の責任者というものは、その機関機関にございます。そうした機関の責任者に対しましてお願いをいたしておるのでございまして、私とその責任者との間の応答を申し上げることは、控えさしていただきたいと思います。
  78. 林百郎

    ○林議員 そうすると、あなたがこの法案を通過させるために誠意をもって国会にお願いし、与党である自民党にもお願いしたと言いますけれども、だれにお願いしたかも言わないし、その人がどういう回答をあなたにしたかも言わないということになれば、あなたのお願いなんというものは、少なくとも当委員会の私の質問に対しては何の権威もないことになるじゃないですか。ただ口でそう言って、ごまかしごまかししていって、ほんとうの腹はこれは通すつもりはない。もちろん、私たちはこの法案についての態度は、先ほど言ったように賛意を表するわけにはいきませんけれども、しかし、いままでのあなた方の言っていたことに対する責任という立場であなたに私は質問しているわけですよ。だから、そういう立場で聞いてもらいたいのですけれども、あなたが私の質問に対して、与党であるだれに大臣としてこう言った、それに対して与党の責任者はこう答えている、だから私としては当委員会に対して十分私の誠意と責任をもってお答えすることができるということを言わなければ、あなたが口でどんなことを言ったって——だれに言ったかも答弁しない、そしてその人からどういう答えがあったかも答弁しない、そして私は誠意をもってやっていると言っても、それは責任ある私の質問に対する答弁にならぬじゃないですか。それじゃ、あなたにだれがどう言ったかは別として、与党はこの法案の成立についてどう言っているのですか。
  79. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私のお願いに対して誠意をもって、その方向で進むように努力をされておるわけでございます。
  80. 林百郎

    ○林議員 そうすると、あなたが与党にそういうお願いをした、与党はそれに基づいてこの法案の通過のために誠意のある行動をしていると、こういうわけですかそういうことですね。それならば与党は具体的にどういうことをおやりになっているのですか。
  81. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私のお願いに対しまして、誠意をもって努力をされておるものと私は信じております。
  82. 林百郎

    ○林議員 あなたのその答弁が、誠意と真実をもって答弁しているかどうかは、いずれきょう後刻はっきり事実が証明すると思うのですよ。そういう白々しいことを言っても、もうこの数刻の後には、あなたの言うことが全くうそだということが——あなたの言われる、自民党が今国会中本法案の成立について誠意をもってなんということが、これから数刻たてばその事実が証明されるのですよ。それにもかかわらず、あなたがそういうことをおっしゃるということは、いままであなたの言ったことはすべて本心でなかったという証拠になるのじゃないですか。私はこの問題はこれで、他の党の諸君も質問すると思いますから打ち切りますけれども、いまのあなたの答弁を聞いても、ほんとうに政府並びに自民党がこの政界の腐敗と汚職を一掃するという点で、ほんとうに誠意をもって行なうという意思はないんだということを断ぜざるを得ないと思うのです。
  83. 島上善五郎

    ○島上委員 いまのことに関連して伺いますが、今国会で成立を期するとすれば、きょうこの委員会で質疑を打ち切って採決する以外には、私は方法はないと思うのです。あさって、最終日に定例委員会があるのみですから、きょう採決してあしたの本会議にかければ、ほんのわずかではありますけれども参議院に送ることができる。それ以外には、口で何と言おうとも、成立させる道は全然ないと思うのです。きょう採決しないでも、参議院で審議をして成立を期する方法があったらお答えを願いたいと思います。
  84. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会の御審議について、いろいろ注文がましいことを申し上げることは差し控えたいと思います。きょう通さなければもうだめなのか、それは結局国会のお扱いでございまして、私がきょうでなければだめだとか、あしたでもだいじょうぶだとかいうことを申し上げる立場にないわけでございます。いずれにいたしましても、私はこの問題をぜひとも皆さんの御努力によって解決していただきたいという念願ばかりでございます。
  85. 島上善五郎

    ○島上委員 われわれ野党はこぞって、けさの理事会でも明らかにしましたが、自民党さんの質問者があるなら、きょう夜十二時までやってもよろしいから、きょう質疑を打ち切って討論、採決しようじゃありませんか、こう具体的に提案しておるのです。これこそが今国会に成立を期するための具体的な誠意というものです。きのう総理大臣は自民党の役員に、他の法案については至急に通せという指示を与えているではありませんか。これは総理大臣としてあるいは党の総裁として当然のことだと思うのです。しかるに、この法案に対してだけは何ら、今国会に成立を期すると口では言っておるけれども、成立を期するための具体的な指示なり命令なりを発していない。こういうことは、あなたはいまこの期に及んでも成立を期するなんて、だれが聞いても白々しいことを言っておりますけれども、そういう具体的な野党の行為に対して与党が反対しておるこの事実に対して、何の指示も協力要請もできないとすれば、いまここでお答えになっていることばは全く空虚な、無意味なものとしか受け取れない。これは私がそう受け取るばかりでなく、聞く者はみんなそうだと思うのです。きのうの総理大臣の指示の際に、政治資金規正法改正案をきょうの委員会で質疑打ち切り、討論、採取するように指示をされておるかどうか、あなたが指示されなくとも総理大臣がそういう指示をされておるかどうか、おわかりだったらお答えを願いたい。
  86. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 昨日総理がどういう御指示をなすったか私は存じておりません。ただ、私の存じておる範囲におきましても、総理が党の執行部等を通じましてこの問題についての促進方をはかられたという事実のあることは、私も承知いたしております。   〔堀委員「議事進行に関して動議を提出いたします。直ちにこの法案の質疑を打ち切り、社会、民社……」と呼ぶ〕
  87. 小澤佐重喜

    小沢委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  88. 小澤佐重喜

    小沢委員長 速記を始めて。  この際休憩をいたします。    午後五時十六分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕