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1967-06-28 第55回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十八日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小沢佐重喜君    理事 四宮 久吉君 理事 丹羽喬四郎君    理事 古川 丈吉君 理事 島上善五郎君    理事 堀  昌雄君 理事 門司  亮君       奧野 誠亮君    小泉 純也君       白浜 仁吉君    鈴木 善幸君       高橋 英吉君    灘尾 弘吉君       松野 頼三君    大柴 滋夫君       久保田鶴松君    小松  幹君       畑   和君    矢尾喜三郎君       岡沢 完治君    伏木 和雄君  出席国務大臣         自 治 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         法務省刑事局長 川井 英良君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         自治省選挙局選         挙課長     山本  悟君         自治省選挙局管         理課長     鈴本  博君     ————————————— 六月二十八日  委員山本政弘君辞任につき、その補欠として畑  和君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 六月二十六日  公職選挙法の一部を改正する法律案篠田弘作  君外四名提出衆法第二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一四四号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 これより会議を開きます。  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野頼三君。
  3. 松野頼三

    松野(頼)委員 今回の政治資金規正法及び公職選挙法改正につきまして、若干の質疑を行ないたいと思います。  まず第一に、今回のこの政府提案は、その基礎となるのが選挙制度調査会からの四月七日の答申だとわれわれは理解いたします。四月七日から約二カ月の間に、政府としてはこの難解な答申に沿ってほとんど忠実に法案を作成されたことについては、私は私なりに、非常な大きな苦労とその成果を、またその政府努力を心から多とするものであります。  選挙制度につきましては、過去において何回か答申が出ました。そのうち何回か法案として提案をいたしました。その期間を見ますると、大体、長い場合には答申から五カ月を要した場合もあります。短い場合でも二カ月以上を要しております。また、提案になりましてからその審議を見ますると、やはり成立までに二カ月以上かかっておるのがいままでの審議であります。しかし、その内容は、第一次答申は今回のものから比べると非常に小さなものである。第二次答申は、その内容法文化がまことに、今回のものから見れば十分の一程度のものになっております。この一事を見ましても、今回の政府提案は、よく努力された姿、しかも答申に非常に忠実であるということがその特徴であると私は思います。  そこで答申案は、もちろん有識な学者の方がその主たる構成員であり、学者的感覚学者的意見としてこれを出させる。特別委員は、その間に入って経験者という立場から意見を述べる。しかし、ほとんどのものが学者、要するに委員の方の意見が主で、特別委員経験者意見というのは必ずしも多く反映をされていないのが例であります。また、いないことのほうがいいという方もあります。また一部には、経験者があまり入るとお手盛りになるから、なるべく経験者意見を聞くなという傾向もないとは言えません。したがって、答申案というものと経験者意見というのは、ある意味においては経験者現実性実現性にその主力を置いた意見を言い、学識者理想的な、やや理想に走り過ぎる意見を言われるということは、これは当然なことだと私は思います。またそうあるべきだと私は思います。そのために今回の答申あるいは学識者意見が、やはり高い理想を掲げているものであるということには敬意を払いますけれども、実現性現実性においてはやや問題があるのではなかろうかと私は思います。今回の政府提案は、政府自身が判断されるそのことよりも、答申の尊重のほうに重点を置かれた案だとわれわれは考えます。われわれ与党としても、政府立場政府提案というものについて、与党として十分それに協力をする。またその態度にわれわれは十分理解をいたします。しかし、政府答申により忠実に提案されるものについて、今度は経験者であり、実行者であり、実際に行なう政党として、この場を通じて、与党という立場から政府提案意見を言い、またその審議をするということは、非常に民主的なあり方であると私は思います。すべての法案がそうだと私は言いません。政府与党一体となってつくりあげる一番代表的なものは予算案、これなどは——答申というものは、一つの方向として税制調査会答申参考にする、社会保障制度審議会意見参考にするということはありますけれども、政府与党で要するに一体となった案をつくりあげて議会に出すというものとは、今回のこの政治資金は趣を異にすると私は思います。したがって、政府立場に協力しながら、また理解をしながら、また今回の法案の性質から見るならば、与党十分経験者であり、実際にこれを行なうものであり、また審議をする立場として、国民選挙の洗礼を受けた第一党として与党がこの問題についての態度はこの態度であるということは御理解いただき、また当然であると私は思うのです。その意味政府与党一体立場に立ちながらも、この法案についてのいきさつというものを少し掘り下げて議論をすることのほうがまず審議前提に正しいかと私は思います。したがって、今回の提案になりました政治資金規正法というものはどんなものか、どんないきさつでできたか、また諸外国にその例があるか、それはあるいは将来日本民主政治の発展に役立つか、こういう議論は過去においてもなされました。なお、今回現時点であらためてその問題を掘り下げるべき時期ではなかろうかと私は思います。したがって、審議会答申の前に、現行政治資金規正法の原案ができた、現行法ができた当時からもう一度この基本を思い直すべきことが正しい審議だと私は思いますので、そのほうから議論を進めてまいりたいと思います。  昭和二十三年、厳格に言いますならば昭和二十二年第二回国会、当時は委員長は、今日野党であられます社会党の有数な大政治家である浅沼さんが委員長として政党法及び選挙制度特別委員会というのができたと私は記憶します。当時私も一議員としておったと記憶します。そのときは政党法及び選挙制度の問題でした。その中に生まれたのが政治腐敗防止法という構想で、これが発案をされました。その発案議員提案の形で小委員会をつくられて、その起草委員をされたと私は思います。その審議の途中で、政治腐敗防止ということばは必ずしも妥当ではない、政治資金規正ということばにこれがかわりました。したがって小委員会提案政府提案ではなかったと私は記憶します。小委員会提案は、たしか政治資金規正法という名前で、小委員会提案をし、可決し、衆議院から参議院に送られ、参議院は多数だったかもしれません、衆議院はたしか全員でこれが可決せられたと思います。そのときの問題点が実は多々ありました。その問題点代表的なものは、政党法というものをつくるかつくらないか、これは実はいまだに問題であります。今回のこの審議を通じても、二十一年間たちました今日でも、実は政党法の問題はいまだに問題点として国民の中にある。われわれの念頭にあります。その中の一部として政治資金規正法——その当時いろいろな問題がやはり政治の中に出ました。世論を騒がせた事件もないとは言えません。そういうことが一つの原因となりながら今日のこの問題、政治資金規正法というのが生まれたいきさつであると私は思います。  そこで、その問題は何だというならば、政党法というものを今後どう考えるか、これは政府のお考えがあればひとつお聞かせいただきたい。また、われわれ自身のことですから、いずれ政党法というものは再び脚光を浴びて、将来の健全な政党のために必要であるという気が私はいたします。いま日本政党の数が幾つあるか、おそらく何千とあるのじゃなかろうか。何千という数がはたして政党としてあるのか疑問を抱くほど、今日政党は自由であり、乱立であり、規制がない。今回はその政党に関しての政治資金となりますと、現在政党が幾つあるか、どんな制度政党が生まれる要素があるかということを第一にお聞きいたしたい。また、その数もお聞きいたしたい。そういう政党法という基本のものをつくらないから、あるいはそういう弊害があるのかもしれません。その弊害の中に、あいまいの中にこの法律を実施すれば、この法律そのものが、何のために、何を目的としたという疑問が国民に生まれると私は思います。したがって、第二回国会のときに議論された政党法、いまだにこれはできておりません。それに付随して政治腐敗防止法から政治資金規正法が生まれたわけで、この法律の大部分はいまだに生きております。したがって、お聞きしたいことは第一に政党の数、あるいは現在政党届け出制度というか、許可制度というのか、私はいま届け出制度と見ますけれども、その数と現状。第二番目には政党法に対する御意見があればお聞かせ願いたい。第三番目に、この政治資金規正法ができて以来、数回の改正が行なわれたと思います。その改正の時期及び内容について。まとめて三点。なるべく審議を促進する意味で、まとめてけっこうですから三点、政府及び政府委員からひとつお聞かせ願いたいと思います。
  4. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 具体的な数字は政府委員からお答えさせます。  政党法につきましては、長い間いろいろ御議論がありますることは御指摘のとおりでございます。ただ、政党というものが、各国ともいわゆる一種の歴史的な産物でございまして、慣習とかあるいは慣例とか、そうしたものの中で現在生きておるわけでございます。しかしながら、はたしてそれでいいのかどうか、むしろ法律によりまして政党というものを定義づけ、そうしてその定義づけられた政党というものが健全に発達していくようにしむけることがいいのではないかという御議論があろうと思います。政府といたしましても、いろいろこの政党をどのように規制するか、あるいはまた政党法というような法的措置をとるのがいいかどうかということを検討中でございます。また、選挙制度審議会におきましても、それらの点についてもあわせて御審議をいただいておるわけでございまして、また国会の面におきましても、いろいろ御論議を尽くしていただきたいと考えておる次第でございます。
  5. 降矢敬義

    降矢政府委員 最初に政党の数でございますが、四十二年の一月の調べでは、全国で政党は三千四百八十五ございます。それからいわゆる協会その他の団体が一万二百八十で合計一万三千七百六十五になっております。  それから昭和二十三年に政治資金規正法が制定されましてから、今日までの改正でございますが、二十四年の五月三十一日に郵政省設置法に伴う字句整理をやりました。それから大きい改正昭和二十五年の四月十五日で、これは公職選挙法が新たに制定施行されましたことに伴いまして、政治資金規正法に従来収支届け出関係が入っておりましたのを、公職選挙法に移しかえを主とした改正をいたしておりますが、それは選挙運動に関する収支報告関係を、全部公職選挙法の百七十九条から百九十三条までに移しました。それから選挙に関する特定人寄付制限特定人に対する寄付の勧誘及び要求、外国人からの寄付受領禁止等公職選挙法に移したわけでございます。それからいわゆる匿名の寄付禁止及びその受領禁止。それから出納責任者届け出義務違反に対する処罰等を、すべて公職選挙法に移したわけでございます。それからその次は二十七年の七月三十一日、これは自治省設置法の施行に伴う字句整理でございます。それから二十七年の八月十六日でありますが、これは公職選挙法の一部改正が行なわれました際に、収支報告書提出回数を年三回から年二回に改めております。それから選挙に関する収支報告の様式を、総理府令で定めるというふうにいたしております。それから三十年の一月二十八日は、これは公職選挙法の一部を改正する法律に伴う字句整理をやっております。それから昭和三十五年の六月三十日は、自治省設置法の一部を改正する法律に伴いまして字句整理をやっております。それから三十七年の五月十日、これは公職選挙法の一部を改正する法律に伴いまして、収支報告書には領収書の写しを添付することにいたしました。それから会計責任者会計帳簿等を保存すべき期間及び自治大臣選管等報告書等を保存すべき期間を、二年から三年に延長しております。それから政党等は国または公共団体から財政援助を受けているような会社その他の法人から、選挙に関して寄付を受けてはならないという規定を、公職選挙法に対応して入れております。それから無届けの政党政治団体等寄付を受けまたは支出をしたとき、あるいは政党等が違法な寄付を受けたときの罰則を、団体罰から行為者罰に改めております。
  6. 松野頼三

    松野(頼)委員 ただいまの大臣の御答弁の中にもありましたように、いま日本政党が四十二年で三千四百八十五ある、また団体が一万以上ある、合わせて政党及び政治団体が一万三千以上のものが現在ある。こうなりますと、三千四百八十五、われわれも政党に属しておりますけれども、この中で九九%は実はわれわれ自身が知らない政党があるのじゃなかろうか。まして一般国民が、はたして三千の中の一割知っている人は私は専門家以外いないのじゃなかろうかと思う。あるいはこれを審議されておる審議会委員の方でも、はたしてこの名前を一割御存じの方があっただろうか、こういうところにやはり答申だけでうのみにできない、われわれ自身が真剣に討議し、審議をしなければならない問題が第一にひそんでいると私は思います。今回の法律が、三千四百八十五もある、また団体としては一万、これに全部平等に当てはまる政治資金規正法であるとするならば、さあ、この運営とこの方法というものは容易なものではない。いずれ私の同僚の方が触れられましょうが、寄付制限という項目一つ見ましても、ではだれがこれを周知徹底させるか、またかりにさせても、これが周知徹底できるか。それによって罰則がかかるということになると、これは容易なものではないと私は思う。今日こそ政党法的なものによって政党そのもの規制し、助成し、ある意味においては一線を画さなければ、おそらく今日は届け出さえすれば直ちに政党となると言っていいんじゃないかと私は思います。  また、政治団体政党の相違はありません。政治団体として届け出しようが政党として届け出しようが、人数に制限がないというなら、二人以上なら政党として届け出すればおそらく本日でも政党になるんじゃないか。しかも届け出をしたとたんになるんじゃないかと私は思う。告示行為はないんじゃないか。そうなると政治団体として届け出しても、政党として届け出しても、雨後のタケノコ以上に、きょう生まれあすはなくなる。こういうことで、この政治資金規正罰則をかけるようなことがはたしてできるだろうか。言うなれば土台をつくらない法律、今回の政治資金規正法は非常に外側はりっぱでしょうが、土台はゼロにひとしいんじゃないかという疑問が第一に生まれます。したがって、言うなればまず土台をつくる。政党法というものの基本的な考え、また政党法の制定というものをした上に、それに規制されるものが政党である、その政党に献金するものが政治資金であり、また団体寄付するものが政治資金であるということにならなければ、政治資金規正法だけで行なうことに第一に危険性を感じます。  それでは政党とは何ぞや、政治資金規正法にも出ていますが、政党とは何ぞやということです。今日出ております法律では「この法律において政党とは、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを本来の目的とする団体をいう。」第二番目に「この法律において協会その他の団体とは、政党以外の団体政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対し、又は公職候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対する目的を有するものをいう。」これはまことにわかったような、非常にわからない点がある。ことにこれは行為目的ばかりでなしに、行為行動までこれに含まれているんじゃないか。ことに第二項になりますと、おそらく政策を掲げる、そのうち一つでも政治目的ならばこれに合致するんじゃないか。一つでもあったらいけないんだ。また一度でもそういう行為行動をしたものでもいけないんだという拡大解釈が私は生まれると思う。これでいいますならば官公労労働組合は全部二項に当てはまる。当てはまらないものはないと私は思います。このことはちょうどたまたま官公労代表の方が公述人として説明されている中に、みんなこれは当てはまるんだ、実はこういう証言をされておる。みんな当てはまるんだ。この証言一事をもってしましても第二項に全部当てはまると私は思う。  それでは法人はどうだというと、法人政治目的を掲げた法人というのは非常に少ないと私は思う。定款に掲げたり、あるいは条項に掲げた法人は、一般的経済法人にはないんじゃないかと私は思う。しかし、官公労組合についてはほとんど全部がこの第二項に該当すると私は思います。一つ賃金値上げ闘争にしましても、予算闘争にしましても、すべてこれはこの項目に該当すると私は思う。そうなりますと、この法律自身が何を目的政党というものを規定しているか、規制しているかということに非常な疑問が生まれてまいります。  それでは正規の政党とは何ぞや、概念的に言いますならばいろいろな学説がありましょう。要するに志を同じくする者、国民共通立場、そうして国民共通の福祉と利益のために一つの思想的、行動的、目的的団体であるというのが、理想的な一つ定義である。またその中には、お互い利益を追求するために相寄る団体、これが階級政党という代表的なものだと私は思います。国民全部じゃなしにお互いのということばになると、これは階級政党定義、これも政党でないとは私は言えません。そういう一つ一つの例を見ると、政党というのは何だ、やはり基本個人の自由とやむにやまれない情熱である。それから職業的でない者の集まりだということには、どの政党も間違いないと私は思います。政党によって職業を得よう、おれは政党運動に就職したという方は、事務員の方は別ですが、いわゆる政党員というものにはまずいないんじゃないかと私は思います。ないとは言いませんが、定義としてはあり得ないと私は思う。そういう高い精神的なもの、あるいは社会に対する一つの大きな自分の理想を打ち立てるための努力、これが政党だと私は思う。それに必要なのが政治資金だと思う。こう考えてみますと、政党というもののこの第三条の定義は、私はこれはやや疑問がある。今回の政治資金規正法には改正条項に入っておりません。入っておらないが、今後実行する場合には、この問題は非常に議論が出ると私は思う。政党定義政党法を将来作成する場合におけるその考え、したがって、この第三条の根本の運営については非常に疑問があるが、今後この問題について政治資金規正法の、今回の改正にないけれども改正しなくていいのか。あるいは今後この問題についてはさらに改正すべき時期が来るんじゃなかろうか。あるいはこれに対する意見というものは政府として当然——提案改正案にはありませんけれども、やはりこの政党というものの基本については、この問題ではやや疑問が出ております。あわせて政府及び大臣の御意見を伺いたいと思います。
  7. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政治資金規正法現行法は、御承知のように規正法とは言っておりますけれども、要するに政治団体等についてどういう金が流れ込んだか、またどういう金が流れ出したかということを公表して国民の批判にまつといういわば政治資金の公開法的な性格を持っております。したがいまして、政治団体あるいは政党というものの定義がばく然といたしておりましても、その公開をするというだけでありますならば従来は支障がなかったわけでございます。しかし今回の第五次の選挙制度審議会答申によりますと、政党とその他の政治団体とわけて、資金の量について規正をいたしておるわけでございます。したがいまして、この政治団体とは何ぞや、あるいは政党とは何ぞやということを相当具体的に示さなければならない。さような意味におきまして今回の改正の第二条以下の改正案におきまして、政治団体というものはそうした施策を推進し、あるいは候補者を推薦し、あるいは支持し、これに反対するということを主たる目的とする、あるいはそういうことを継続的に組織的に主たる活動としてやる団体、そういうものを一応政治団体といたしまして、そうしてその政治団体の中でいわゆる確認団体自治大臣確認を受けまして、確認団体として選挙活動ができまする団体、これを政党として定義づけたわけでございます。しかし、はたしてこれだけで十分いま松野さんの御指摘のような点が規制できるかどうかという点については、なお政党法というようなものともからんでさらに研究をしていかなければならないものがあろうと存じます。
  8. 松野頼三

    松野(頼)委員 この法律ができました昭和二十三年ですか、そのときの速記録を読んでみますると、その問題が現在生きておるだけに、その問題がいまだに各所に出てまいります。  第一に、これでいけばほとんど官公労労働組合は全部第三条第二項に該当する。そうなると、今度の政治資金規正法改正案において問題になっております答申案の中に——もちろんこの答申案政府は忠実に法文化されております。その答申案の「政治資金規正に関する事項」の中に、「政党政治資金は、個人献金と党費により賄なわれることが本来の姿であるが、その現状は、多くは会社労働組合その他の団体資金に依存しており、」ということが実は書いてあります。そうすると、この政治資金規制の前に政党そのもの規定が問題になってくるんじゃないか。その同じ条文の第三条以降を今度改正されております。そうすると、第三条の前文に疑問があるものが、あと項目規制のほうで政治資金規制するということは、同じ法律の中に二つの矛盾を包含するんじゃないか。もう少しわかりよく言うならば、第三条の第二項に該当する労働組合官公労はほとんど該当する。その該当するものは、今度政治資金規正法改正案のときには該当しない。献金側に実は立って規制されておるんじゃなかろうか。だから、政党として政治資金を受ける者が、あと項目にくると出すほうで規制されているんじゃないか、こういう疑問が実は第三条の条項を見ると生まれてくるのです。これはこの法律成立当時から疑問点です。第三条第一項、第二項のこの政党定義は、どの学者も言っておりますが、みな疑問が多い。政府も必ずしもそれに対して——当時は議員立法ですから何も政府が答弁したという政府責任じゃありませんけれど、実は疑問点を掲げられておるのです。また、その該当者はほとんどそうだとみずから認めておるのです。こういう法律じゃわれわれは政党になってしまう、労働組合じゃなくなるんだ、この第三条はみなそうなってしまうんだという反対意見組合代表はみな強くされておる。そのまま実はこの法律が今日実行されておる。それを前提として、今度はこの政治資金規正法改正案では、出すほうの側になっておる。言うならば、この法案には政党とは何かという基本的な問題がまず存在していると私は思います。この辺が、いずれまだ時間もありますから審議しなければならないと思いますけれども、非常に大きな第一点です。  第二番目に、さてそれじゃ政治資金はどういう姿が望ましいか、どういう姿であるべきか、また、過去においてどういう姿を日本及び民主主義を守る国はやってきたか。  第一は、政治は総合戦である。個人の意思で、個人の自由で、自分の理想社会を打ち立てるために行なう行為行動目的団体、結合である。各党員が、力のある者は自分の力を、知恵のある者は自分の知恵を、資金の余裕のある者は自分の資金を、あらゆるものをお互い共同の目的のために奉仕することは当然である。これはいまでも私は生きていると思う。  第二番目には、選挙資金というものに関しては規制をしなければならない。選挙資金だけはやはり制限をしなければならない。選挙に金をかけることは悪である。したがって、選挙資金に関しての規制をしなければならないというのが第二の範疇に入るのじゃないかと私は思います。  第三番目に入りますのは、この政治資金規正法の中で年間の収支というものは公開を原則とした。収支明細をガラスばりでやるべきだ。ただここに疑問が出ますのは、収支の公開、この一面は明朗であるが、逆に言うならば投票の秘密というものは守られなければならない。自分の支持する候補者、支持する政党は、だれも侵すべからざる個人の民主主義における基本的な特権である、これも忘れちゃならないと私は思います。公開ということと、投票の秘密、自分の支持の自由、これはある意味においては多少矛盾するかに見えますけれど、この問題がやはり民主政治においては守られなければならない。個人の投票の自由である、個人の投票の秘密である、また政党支持の基本的な自由を守られなければならないというのと、資金の公開をしなければならない、この二つはよく考えあわせなければならないと私は思います。もちろん、支持する政党に、支持する候補者に献金をする、あるいは自分の財を応援するということは悪じゃありません。しかし、公開、公開といっても、その限度の問題がおのずからそこにあると私は思います。しかし、資金については明朗にする、明快にするというなら、公開の原則を私は否定するものでもなければ、それをとやかく言うものじゃありません。ただ、選挙というものはそういうものだ、政治というものはそういうものだという両面があるので、一面だけが正しくて一面だけが悪いという早計な考えは私はよくないと思う。  そこで、公開の原則をして、そして政治資金を明らかにするという法律、これは現行法、これはおそらく外国ではアメリカの制度がこうだったと思います。ことに今回諸外国にない例をとったのは、政治資金の公開と同時に選挙資金もあわせて行なった、これは前例がないのじゃないか。選挙資金政治資金一体にした、これが今回問題点として最大の問題だと私は思う。選挙資金制限あるいは一般的総力戦としての制限をなるべくなくすること、あるいは一年じゅうの政治資金規制すること、このほかに一年じゅうの政治資金選挙資金というものを結びつけた、これが私は今回の非常に大きな特徴だと思います。諸外国にこういう例があるかといえば私はないと言っていい。あってもそれはポケットをたくさんつくって、窒息をしないようにある程度の空気抜きは各国の法律にできていると私は思います。私が調べたのが必ずしも全部じゃありませんけれども。政治資金規正法というのは必ずしも政治家として名誉ある法律ではないと私は思います。言うなれば、こういう法律がなくても期待される政治行動が行なわれ、政治に対する信頼というものが得られるならば——このような規正法律によってみずからの手で縛らなければ国民から信用されないということは、政治家として必ずしも名誉なものじゃないと私は思う。しかし、そうしなければならないというその原因から言うならば、今回のこの政治資金規正法改正そのものに私は反対ではありません。今日の時点においてはやらなければならない、その方針については賛成であります。しかし、誇らしげに誇りを持ってこれに賛成する、あるいは誇りを持ってこれをみずから行なうという気持ちは私個人にはありません。早くこういう法律が空文化して、忘れたように政治が行なわれること、あるいは年がら年じゅう政治資金規正法にひっかかるような行為がなくなることに、政治の方向として一番努力しなければならない。  そこで、諸外国の例を見ますと、アメリカは個人に限り五千ドル、禁錮または罰金、政治委員会についてはたしか三百万ドルと思いますが、受け取る限度、個人が出すほうは五千ドルです。非常に簡単な法律のようです。しかし、その政治委員会というのは単位と規格がありませんから、これが政党あるいは個人団体というならば、町村における支部をつくればその支部は三百万ドルの限度に入る。郡において支部をつくる、また三百万ドルの限度がある。県において支部をつくる、また三百万ドル。あるいは個人の後援会をつくる、あるいは政党ならば支部でしょう。支部は幾つあるかという規定がないために、要するに幾つもポケットができる。ざる法といわれる原因はここにあると私は思う。したがって、アメリカで行なわれておりますのは、個人の千ドルでも、十万ドルを百人に分ければそれだけ実は献金ができるという逆論も出ております。またそういう事例もあったようです。十万ドルを何十人かに分けて五千ドルずつ、合わせて十万ドルにした、そういう例も実はあるようです。そうなると、アメリカにおいてはこの問題が法文だけで、実行の内容を見ると日本とは非常に違うのではなかろうか。韓国は政党法という法律によって制限されておる。労働組合あるいは銀行を禁止しておる。やはり相当なもので、労働組合に対して政党化することを特に規制しておる例はあります。民主政治が進んでおるというイギリスでも、労働組合法の中において政治資金規制しておる。この例を見ると、やはりどこの国でも労働組合というものが政治活動と混同される。政治運動というものが労働運動の名において行なわれるということは、やはり一つの過程においては多々あるし、これを見のがしてはならないと私は思います。日本がはたしてどの水準にあるかは、おのずから判断は相違ありましょう。しかし、これはどこを見ても政党法の中に、あるいは政治活動の中に、労働運動との一体的な混合混乱はある。そういうものが今回の政治資金の問題にも出てくるのではないかと私は思います。アルゼンチンにもあるといいますが、これは政党法という法律によって、やはり政治基金というものを組合とは別にしろ、これも労働組合というものと政治運動との混乱を防止しておるように私には見えます。  こうしてみると、アメリカの例にも日本の今回のものはありません。またイギリスの例にも今回の日本のものは必ずしも該当しません。そうすると、今回のものは日本独自のものだ、諸外国に例のないものだということだけはわかると私は思います。そこで、今後私たちが政党法あるいは政党をもう少し明快にすること、あるいは労働組合運動と政治運動とを混乱しないようにすること、あるいは労働組合の今日の姿は政党じゃないのか、この条項に該当するのじゃないか、こういうことはこの法案の一条一条を見ましても非常に大きな疑問があります。これはあえて政府に答弁を求めません。いずれ後日同僚委員から組合のあっせん、チェックオフ条項というものについてもう少し究明されると思います。しかし、私は、この大きな問題点基本的にこの答申案の中において研究がされていないのじゃないかとは言いませんが、され方が少ないのじゃないかと思う。何となしに政治資金は悪なり、入り口をふさげ、寄付制限というのは世界じゅうありません。また私も特別委員でしたが、そういう考えが突然として生まれるとは実は思わなかった。水道の蛇口を締める、いいも悪いもないんだ、この姿は、今回の政治資金規正ということばから、政党を浄化する、育成するということから見れば、現状からは必ずしも合わないのじゃないかと思います。私は悪い金なら百万円といえども悪であるということは常識であると思うし、また、浄財ならば、それが五十万であろうが五百万であろうが、その問題は議論することはおかしいという基本的な考えもあります。先般わが党の代表者の意見は、その点を実は疑問として投げております。しかし、今日の時点と将来の時点とは違いますから、私はこれできよう直ちに政府の答弁をこの点について求める気はありません。  そこで次に進みますが、もう一つ問題点政治資金の公開制です。いままでのものは、政党及び政治家責任の範囲における公開です。要するに受け取った金額とその支出についての公開、これも一つの公開です。今回は寄付者のほうの公開をねらっておる。要するに寄付者のほうが第三者といいますか、しいていうならば有権者あるいは主権者、あるいは主権的立場のほうに今回制限と公開制を求められておる。ここが一つ問題点だと思います。ことに先ほど言いましたように、一万何千という政党政治団体、知らない方まで今回その対象にされておる。ここにやはりこの罰則がかかるとなると、公開制のやり方について問題がある。もう少し明らかに言うならば、政治家が公開を強制される。政治家が公開の責任を負うことならば妥当であり、そのために罰則がかかる、あるいは監査機関を置いても私はいいと思う。しかし、政治に関してややもすれば恐慌、政治的な不安を私は起こしやしないかと思う。これは選挙のときも同じです。選挙法をだんだん窮屈にするたびに選挙の関心——選挙というのは違反を起こすものだ、こわいことだ、政治的信頼がなくなる、関心が薄らぐ、危険がふえる、これは現時点で日本にもあらわれております。今回は一年じゅうの資金についてこれがやられるというところに問題があるのじゃないかと私は思う。これはあとに出てきます政治資金寄付制限も同じです。善意の寄付といえども、選挙人は政治家にさわるとあぶない、花輪をもらうな、弔電もこれはいいのかな、電報まで心配するようになっては、これは政治家をおりの中に入れろというような国民と遊離する問題が寄付制限にも同じに出てきます。今回は、その資金の公開というのはどこまでやるべきか、党員の党費も公開すべきなのか、寄付だけ、政治献金だけを公開する目的を持つのか、この点だけでけっこうです。今回の公開は、党員の党費も公開をねらうのか、あるいは政治寄付だけをねらうのか、今までの法律は必ずしも明快にそれが出ておりません。その点についての答弁を求めたいと思います。
  9. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今回の改正におきましても、公開の原動力となるものは、政党その他の政治団体、それが届け出をして、それが公開されるということでございます。そういう意味においては、政党政治団体協会等のその収支が公開される。その収支は、従来は政党につきましてはすべての収支協会その他の政治団体におきましては寄付政治献金についてだけ届け出がされておるわけでございます。今回は政党政治団体に限らずすべての収入、これはたとえばおあげになりました党費というようなもの、一々だれが幾ら党費を払ったということまではいたしませんけれども、党費も含めたすべての収支届け出られるということになるわけでございます。
  10. 松野頼三

    松野(頼)委員 党員の党費の届け出をするというのは、いままではなかったのじゃないか。党費として幾らという総額の届け出であって、個人の党員の氏名、住所までの届け出は私はなかったのじゃないか。これは当然党員ですから、政党の党則あるいは後援団体の会則に賛成をして、その負担すべき義務の党費だけ、義務の会費を負担するという意味で、これは公開というよりもみずからそのものである。政党の一構成分子であるという意味で、その届け出の必要はなかったのじゃないか。またその必要は今後もないのじゃないか、私はそう思います。かりに言うなら私が自民党の党員である、当然党則に規定したものを納めておる。だからといってこれを特別に届け出をしけなればならないとか、これを寄付者と同様に扱うというのは、これは私は、私自身がその構成分子ですから、その中のものはいいのじゃないか。ちょっと私はいまの答弁に疑問があるのですが、もう一度お伺いいたしたい。
  11. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 党費という性格は御指摘のとおりでございます。したがいまして、だれが、個々の具体の人がどういう党費を払ったかというような届け出は必要はないのでございまして、全体として、総額として党費がどれだけ入ったという報告をしていただけば差しつかえないわけでございます。
  12. 松野頼三

    松野(頼)委員 したがって、この政治資金規正法は、成立当時からいろいろ実は問題があって、たびたび改正をされました。ことに第一回のときは、罰則を見ましても、罰金に処するではなしに、処することができるとか、あるいは禁錮にすることができるとかいうふうな、量刑においても、あまりほかの法律に例のない条文が実は多々できたといういきさつも私はわからぬわけではありません。したがって、修正は何回もされたが、まだ基本的なものは完成していない。完成していないところに今回大きな荷物を上に積み上げた、この感はどうしてもいまだに消えません。言うなれば政党とは何ぞやという第三条の規定、これも疑問である。はたして政党が一万数千もあってこれでいいのか、これに対する取り扱い規制もない。また、政党の今後の育成のための政党法の問題も今回も出ていない。その上に、資金というものは政党に付随する資金ですから、資金のほうは非常に完璧なものを、今回アリのはい出す穴もないように締めくくってしまうような感じ、しかし基本が非常になまぬるい、何もできていないのじゃないかという疑問を私はますます深めます。しかし、今回の法案に対して賛否を私は言うわけではありません。そういう時期ではまだない。政府に対してわが党が協力をするこの姿で今日おります。その問題は、また後日研究をしなければならないと私は思います。  そこで第二番目に、要するに政治資金について、政治にある程度の金が要るんだ、政治資金は悪なりという方は、もう審議会委員にも私が拝聴している中にはありません。政治資金が悪という方はもういない。ただ政治資金が悪に流れやすい、悪に関連すると疑惑を持つ事例が出てきた。あるいは政治資金がある限度を越すと多少疑問が出てくるということが、政治資金の私は今日の考えではなかろうかと思う。  そこで一番大きく問題になるのは、金がなぜ要るか、要らないようにしてはどうだ。もちろんゼロという意味ではありません。多額な金を要さないように、多額な金を使わないように。多額な金が要らない制度は何だというと、期せずして出てくるのが選挙制度です。要するに選挙制度というのが、その具体的な一番端的なものだと私は思うのです。世界じゅうそうです。そこで政府審議会でも、選挙区制、選挙制度改正というのが常に行なわれている。またそれが議会政治民主政治における選挙の方法として常に研究されている。日本でもずいぶんやってまいりました。第一回がたしか小選挙区から始まったんじゃないですか。小選挙区をやり、大選挙区をやり、中選挙区をやり、小選挙区をやり、実は日本選挙制度も改善をされております。第一回が明治二十二年に小選挙区、三十三年に大選挙区、大正に入りましてから小選挙区、大正十四年の普通選挙のときに中選挙区、昭和二十年大選挙区、昭和二十二年中選挙区、今日の現行制度、もちろんそのときの基本的なものは違います。明治二十二年は有権者がわずかに四十五万ぐらいですか、それから明治三十三年が九十万、基本的にこれは違っております。ただいまはもちろん有権者は五千万近くいる。もちろん程度の差はありますが、やはりその時点時点においての制度は常に変わっておる。また、諸外国を見ましても、イギリスが小選挙区でずっとやっていたようです。アメリカも小選挙区制、フランスもだいぶ変わっていまは小選挙区制になっております。西ドイツが小選挙区比例代表制、イタリアが比例代表制、この程度の調査ですが、各国ともやはりそのたびに区制というものは変えておる。ことにフランスはドゴールになって特にまた変わったようです。もちろん、外国の例が直ちに日本の例に及びませんが、やはり苦労して努力しておる姿は日本外国も同じだと私は思う。  そこで、今日の中選挙制度というのがはたしていいか、弊害がないかといえば、弊害は現実に多々出ております。それじゃどうするんだということになると、そこでお尋ねしたいのですが、政府がつくられた選挙制度審議会において、第三次、第四次は、実は区制の中間答申が出ておる。この答申が今後どういうふうに進むであろうか、また進めたいのか、これは政府のお考えは必ずしも審議会を拘束するという危険性は私はないと思うのです。区制というものをどうしたいのか、第三次、第四次の答申政府はどうとっておるか。審議会運営についてはあえて質問しません。第三次、第四次の中間答申政府はどう受け取っておるか。案の内容じゃありません。今回の答申は、もちろん答申として非常に尊重して出されたんです。第三次、第四次は中間答申として区制問題が出ている、一番問題の区制問題。その答申政府が受け取って、どんな態度政府はおるのか。中間だからおれは知らないというのか、中間だからいずれこの方向で進んでくるであろうと思うのか。中間答申をどう受け取っておるか。中間だから政府は関与しないという意味なのか、いや、中間だから大いに参考にしておるというのか、あるいは中間案としてまだ検討しておるというのか、その辺は政府のお考えが私はあると思うのです。もちろん藤枝大臣の前任者が受け取ったんですから、藤枝さんに責任を言う意味じゃありません。しかし、事務的にはそれをどう取り扱い、いまはどう考えておるかぐらいは——中間答申が出ているのです。第一次、第二次で法文化しておる。第三次、第四次はもちろん法文化してありません。今度は第五次が政治資金、こうなってくると、第三次、第四次というのが、この第五次よりも前に中間答申として出ている。事柄が重大であることは、これはわかります。しかし、中間答申をどうとったかということは、今日明らかにされる時期じゃなかろうか。第五次の提案をされるのですから、三次、四次はどうだと聞くのは、これは妥当なことだと思うのです。そのお考えをひとつお聞かせ願いたい。
  13. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 第三次、第四次の、ことに第四次の中間答申、中間報告につきましては、相当詳しい内容を持っておることは御承知のとおりでございます。私どもは、やはり、中間の報告ではありまするけれども、選挙制度審議会の多数がそのような方向に進んでおるという受けとめ方をいたしまして、その場合にどのように対処するかということを現在研究をいたしておる次第でございますが、いずれにいたしましても、今回のこの四月七日の答申にもありますように、「すみやかに政党本位の選挙制度を確立する必要があり、政治資金規正等に関する改善もその一環として行なわれなければならないが、」という前置きをいたしておることは、この政治資金規正の関連もその一環として、選挙制度全般についての改善方策が、第五次選挙制度審議会によって答申がなされるであろうということを私は期待をいたしておるわけでございます。また答申があれば、選挙制度審議会設置法第三条の条文によりまして、政府はこれを尊重して善処しなければならないものと考えております。
  14. 松野頼三

    松野(頼)委員 ここで問題になりますのは、第三次、第四次の答申内容が、いろいろな案があります。もちろん区制ですから、小選挙区制、あるいは小選挙区比例代表制、あるいは二名連記制、この三つが第四次答申に出ております。私もこれを正確にここに読み上げるひまもありませんが、小選挙区制というのは一番、政党政党、あるいは一人を選ぶという意味では、その答えは明快に出る。一人を選ぶのですから明快に出るのです。そのかわり、ある意味においては死票が多いという批判があることも否定できません。第二番目の二名連記制というのは、選挙区を割ることができない。あるいはかつて日本でも大選挙区連記制をやったが、必ずしもよくなかったというので、これも少数意見。三番目に出ておりますのが小選挙区比例代表制、制度がどうか、私も内容はあれですが、ドイツでやっておるからこれがいいだろということです。そこで議論が出るのはこの問題だと私は思うのです。小選挙区比例代表制というのが答申の第三次、第四次——第三次よりも、第四次が明快に出ております。  ただ、ここで疑問が出ますのは、比例代表制というのがはたして憲法論との結びつきが——私は出てくると思う。憲法論というのは、たしか憲法の四十三条ですが、一番端的に出るのは、地方選挙を見ると、これは七十三条か九十三条か、私も正確に覚えていませんが、九十三条かなんかに、地方選挙の市町村長は直接選挙ですか、直接投票をもって行なう。これは明らかに直接選挙を明記している。ところが、衆議院及び参議院の四十三条は、「両議院は、全国民代表する選挙された議員でこれを組織する。」全国民代表する選挙された議員でこれを組織するというこの条項と、直接選挙の九十三条のものと、それから比例代表制がはたして直接選挙なのか、あるいは全国民代表する選挙に入るのか、この辺は私は憲法問題として、過去にも出ましたが、また今後も出てくるんじゃないかと思う。そこで、この問題は、比例代表制というのが大多数であるというならば、四十三条を直接選挙だけを意味するものではないとする説、これ十人ぐらい書いてあります。この十人というのは、学者さんとかそういう方が七名ばかり出ておるわけです。そういった比例代表制が必ずしも——それに疑問があるという説もないわけじゃありません。今回初めて踏み切るのです。またその方向に行きつつある。私はどちらという結論は出しません。またここでその問題の議題じゃないんですから。要するに比例代表制という制度か、あるいは小選挙区制というのか、あるいは中選挙区二名連記制というのか、もう一つわが党で研究しておりますのが現行選挙区における比例代表制といいますか、移譲式というのを自民党で一回研究しました。現行選挙区における移譲式——私たちも常々昭和三十八年以来組織調査会において研究を重ねて、この問題をやっておりますが、わが党としては、小選挙区、小選挙区比例代表制、移譲式、この三つが、私たちも研究して、将来政治資金というものが、ここで両輪論という正論が生まれたと私は思う。両輪論という正論がここで生まれる。これを両輪論がないと言う方は一輪車に乗れる。曲芸師みたいな感じの方は一輪車でいいでしょう。しかし、両輪というのはここで生まれるし、ある場合においては、このほかに選挙運動というものが生まれるならばそれも、四輪になるという理論はここから生まれたと私は思う。それをむりに一輪だ、一輪だというところに、曲芸みたいな感覚では政治は動かない。いずれその方はころびます。いずれころぶ。そこで私たちが考えるのは、やはり正しく、この問題は政治全般の改正でなければならない。ただ資金だけを押えればいいんだという、そういうヒステリックなものであってはいけないと思う。あるいは、いたずらにこれに早まって賛成して、一輪車だけというならば、それはみずから天につばを吐くことであって、いずれそういう者はみずから天につばを吐く者だと私は思う。したがって、総理大臣もこの関連性は認めながら、しかし、さしあたりこの法案が先に出ただけであって、やはり結びつきというものはあくまでも出てくる。そこで区制問題に非常に関心が及ぶのは当然です。また第三次、第四次は五次よりも早いんですから。これは第五次答申です。第三次、第四次はすでに中間に出ている。(「佐藤さんはさしあたり提案したのか、」と呼び、その他発言する者あり)まだありますかな、意見があれば待っておりますから……。  そういう関連がここでしたがって基本的に生まれてくるわけです。私はすべての問題としてこの問題は出てくると思う。現行制度でそれではいいかといって、これを絶対だという議論は私は成り立たないと思う。今回の選挙違反を見ますると、残念ながら今回も非常に累増していると私は思います。もちろんその内容は変わっております。しかし先般の発表でも八千件です。現行選挙区においてこれほどたびたび選挙をしたにかかわらず——選挙違反というものはだんだん累減しなければならないと私は思うのです、最初はなれなかったけれども、この選挙制度が周知徹底されて。にもかかわらず、選挙違反というものがふえるということは、やはり現行制度あるいは選挙の方法というものに疑問があると私は思う。また同時に、このままでいいという議論よりも、何らかこれをしなければならないということはみな——内容については議論がありましょう。しかし方向としては、その問題に応じて取り組むという姿勢は、政府国会も私はなければならないと思う。この選挙制度というものをこう改正されるならば、その時期は既定の事実として目前に来なければならない。これを避けるべきじゃないと私は思う。この政治資金の論議と同時に、選挙制度を直ちに同じ国会政府提案をしていません。しかし方向としては、これは考えなければこの法案の処理というものはできないのじゃないか。政治資金選挙制度よりも一歩前進して出されたことは、これは理解をいたします。そこで、政府考えておるというとおかしいのですが、選挙制度委員会において行なわれておるこの小選挙区比例代表制というのは一体どんな方法か。もちろん答申は出ていません。しかし、第四次答申はこれが多数であるということは出ている。したがって、小選挙区比例代表制というものの長所あるいは短所、あるいは諸外国でどんな結果が出ているかを、お調べがあればお聞かせいただきたい。また、それがまだ調査ができていなくて審議会でおやりになっているなら、もうあえて答弁は求めません。したがって、ここで両輪ということばが生まれてきて、この答申案の前文に実は出ております。ある意味においては思想的にはこれがこの提案の第一かもしれないと私は思う。あえて何べんも読む必要はありませんが、そうなると、このあとのものを見たい。あとのものはいつだ。これは私は緊急性とは関係ないと思う。緊急の必要のためにこれをやったというのだが、これは拙速をとうとんで大事なものを見誤っておった、見るなという議論に私は関連すると思う。したがって、今回はさしあたりすみやかに、あるいはこれを先に提案された、これは認めるのです。またこれも妥当だと思います。だからといって、次のものを議論しちゃいけない、次のものは見ちゃいけない、次のものは反対するのだ、これもまたヒステリックな方の意見だと私は思う。そこで私は、今回はこの問題をずっと憲法論議から、あるいは今日のこの問題をやりますと、次の区制問題というのを議論したいのです。しかしまだ審議会審議中ですから、審議会の制約を私はここであえていたしません。しかし方向としては、この政治資金というものは現行制度でやる政治資金なのか、選挙区を改めて行なう制度なのか、これは大きな疑問だと私は思う。これがこの法案基本的な態度一つに加えていいと思うのです。現行制度でこの政治資金規制を行なうのか、今後とも実行の場合にです。あるいは何らかこの方向に沿った区制改正というものがあるからこの法案というものが効果があるのか、実行が可能なのか、これは内容としてよりも、一つの方向として私は議題として大事な点だと思うのです。この政治資金法律に合うような区制——区制の内容はまた別です。だからこの法律というものが必要なんだ、あるいは実行が非常にやりいいんだという議論と、現行制度でこれをやるならばという議論とは、それは基本的に議論が大きく分かれると私は思う。あるいは現行制度でもやるのだという言い方が、少数でもないとは言いません。それはあってもいい。私たちはその点については非常に問題があると思う。またあるほうが正しいと私は思う。政府が何らか御意見があるならば、政治資金規正法提案した政府はどちらを考えているか。といって小選挙区比例代表制という、その制度内容を聞くわけでない。このままで、現行でこれをやりたいという意味なのか、あるいは何らか改正してこの法律がうまく運用されるようにしたいのか。この辺は答弁が明快でなくてもいいのですが、考えの一部をお聞かせいただけばけっこうです。
  15. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 すでに御承知のように、今回の四月七日の答申におきまして、全体の一環としてやるべきだが、現状はそれを待てないということでございまして、当面緊急を要すべきものという意味答申が出されたわけでございますから、審議会の御意思も現行制度においてもこの程度の規制はやむを得ないのではないかと考えられたと思うのでございまして、政府はその審議会の趣旨をくみまして、現行選挙制度におきましてもこの程度の規制はやらなければならないのではないかと考えた次第でございます。ただ、この答申にもありまするように、「すみやかに政党本位の選挙制度を確立する必要があり、」といわれて、その必要性を審議会でもお認めになっておるわけでございますから、そうした政党本位の選挙制度についてりっぱな答申が出されることを、政府としては期待をいたしておる次第でございます。
  16. 松野頼三

    松野(頼)委員 この法律の各条項を見ますると、一番大きな特徴は、政党本位にという、いままでになかった政党個人及びその他の団体というものが明らかに区分けをされておることは、一つ政党本位の、政党政治における前進だと私は思うのです。その前進の資金をつくりながら、政党本位の選挙政党本位の選挙運動をつくらないというならば、魂というか、実行ができないじゃないか。これは私も大臣と同じように考える。したがって、第三次、第四次という中間答申の意義が私はここに出てくると思う。第六次のことはあえて言いません。第三次、第四次という、すでに答申が出たこの区制問題というものの重要性は、やはり中間答申といえどもこれを見のがしてはならないと私は思うのです。ことに今回の政治資金基本政党本位の選挙ということ、また政党に関してだけは税の優遇もこれを加味した、この一言を見ましても、私は一番いい例は政党というものの育成をはかったことだと思います。もちろん総ワクは窮屈な中にこれをはかったことだけは否定できない。しかし、それじゃいまの選挙政党本位の制度かというと、今日行なわれておる選挙法、政党本位の選挙法が公職選挙法の中に何条あるか。まあ、政党の場合には宣伝カーを何台か使ってよろしい、あるいは政党の場合にはある程度選挙期間中の演説をしてよろしいという条項はありますけれども、選挙そのものに結びついた政党選挙というのはないといっていいと私は思います。いまやっておりますのは、選挙の機会に政党の政策を国民に知らせるという意味において許されているだけであって、選挙を有利にするため、その選挙区の候補者を応援するため、その政党候補者を当選させんがためという条項ははたして何条あるか。現行公職選挙法の中に、私は皆無とは言いませんが、ほとんど考えられていない。まあ逆にいうなら、一般政治活動選挙のときに援用するという意味において許されているだけである。積極的に選挙という、政党として一番働かなければならない、また国民に訴えなければならない大事なときに、政党というものの許しというものは公職選挙法にはないと言っていいと私は思う。そこ一つ見ましても、この政治資金と今日の公職選挙法とは矛盾があると私は思う。これはもう大きな矛盾です。区制は第二にしても、まず公職選挙法に疑問がある。いずれこれも答申が出ると私は思います。そうすると、公職選挙法の中における政治資金が矛盾が出てくるというと、今度はやはり区制が出てこなければいけないのです。こうなると、実は両輪から三輪に前進してくる。一つ一つ条項を見ますと、このまま行なうなら、もう矛盾ばかりです。第一に政党そのものとは何ぞや、この疑問が、もうすでに現行法、この法律の中にあります。政治資金規正法の中における第三条が、もうすでに問題が提起されておる。と同時に公職選挙法改正提案になっております。提案されている同じ条項、同じ条文の中に、もう右と左と、木に竹をついだものが出てきておる。それをほおかぶりしていこうというなら、これは公平な審議じゃないと私は思う。したがって、公職選挙法及び政治資金規正法において政党というものを強く打ち出すならば、今日の公職選挙法改正は必然的に必要である。今回はすみやかにというのでこれを提案をしていなければ、これは近いうちに提案をしなければならないと私は思う。それに合わせて区制の問題もいずれ出てくるであろう、これは否定できないことだと思います。この一条だけ、公職選挙法改正の案文だけ見ても、私はこの答申の中に疑問が出ます。しかし政府は、今回は政府の私見というか政府考えをなるべく抜いて、答申尊重という考えでお出しになったのですから、政府自身も、ある意味においては、ここを直したいな、あそこを直したいなというお考えがあったと私は思う。しかし、答申というものを中心にお出しになった。そこでわれわれも、そこに審議問題点があると思います。  そこで、今後政党中心という選挙運動をやろうというならば、はたして公職選挙法改正はどういう部門がやるか。逆に言うなら政治資金の金の範囲内でやれという逆論もないことはありません。金をきめたのだからその範囲内で自由にやれという議論もいまなされておるようです。要するに自由化ということばが出てきておる。金を縛ったのだからその金の範囲内で自由にやればいいじゃないか。これも一つ意見かもしれません。あるいは金が制限されたのだから今度は公営を大いに活用して公費でこれを行なえ、これもないこともありません。そういう意見も出ております。また審議会の中には、政治資金は、ある意味においては政府から物的あるいはいろいろな面において助成していいのではないかという議論も実は出ました。しかしその前に、そうなると最後に出てくる、政党法がないのに、政党が三千四百幾つもあるのに、どうしてこれでやれるのだという議論がまた循環してくるのです。どうしてもこの問題は、一つ一つだけの議論じゃなしに、くるくる議論を次々に進展すると、政治資金の問題は大きな関連が政治全般に及びます。自民党が政治資金が多いの少ないの、そんなのは第二の問題、大政党がそれだけの費用が要る。これも特に私は否定するものでもなければ何でもないことです。  もう一つ問題なのは、法人ということば制限に一番はっきり出てきた。法人をやや強く政治資金規制の対象の第一に置き過ぎはせぬかという気がいたします。それはなぜ私がそんなことを言うかというと、やはり政党政治団体というものとあわせて考えると、法人というのは政党行為というものはしない、労働組合政治行動行為をしておる、その他の団体もこれは政治行動をしやすい。あれとこれと一緒にしておるところにまた問題点が出てくると私は思う。だから資金規制するなら、行為行動というものをもう少し明快にしないと、資金規制政党行為政治活動とが混合しておるのじゃないかという気がやはり出てきます。その辺が第三番目の問題点として私は提起しておきます。  もう一つ、各国の例、また第一回の例からいいますと、第一次の答申のときに、実はある程度の請負、補助金、出資の制限禁止が出ました。しかしそのときは、答申の中にも、まだこれは無理だから急にやるということは不可能だというので、これは選挙に関してのみ圧縮したわけです。これが現行制度です。これが今回は一年じゅうに延ばされておる。選挙に関してのみにこれを圧縮したから、まだこれで実行できたかもしれませんが、一年じゅうに延ばした場合に、またこの制限が、はたしてどこが制限かということは非常に疑問が多いと私は思います。政党が多い、あるいは政治団体が多い、こういう中にこの制限というものは私は問題が一つあると思う。これはひとつ政府としてもこの実行についてはよくお考えにならないと問題か非常に——逆に罪人をつくる考えになると思います。過去の政治資金審議を見ますると、政治資金を窮屈にすればどうなるか、窮屈にすればするだけ脱法行為を行なうか、あるいは逆に政党以外、制約を受けない団体政党まがいのことをして悪例を残す例が各国であると私は思います。やはり政党というものをあまり縛ったために政党まがいの、看板は文化団体を掲げ、看板は組合を掲げ、そうして政党以上の潜在主権を行使する。看板と内容とが違ってくるという例があるために、各国とも政治資金規制について議論が生まれ、あるいはある場合においては、それが成立してもそういうことを加味したものが生まれる。きつい規制というものはかえって罪悪が生まれるというので、世界じゅうの政治資金はその調和点で成立しておると思います。また、運営においてその調和をはかっておると思う。ちょうど日本も、今回はそれを飛び越えて一挙にやってしまおうという非常な理想論に答申案は出ております。理想としてはわれわれも否定はしませんが、実情を考えるとやや相違がある。したがって、答申案必ずしも実行性のあるものではありません。答申案賛成、賛成ともしも言われるならば、その方は理想を追って現実を見誤る方だと思う。ある政党理想を掲げながら、政府案は一歩前進だからこれがいいじゃないかという現実的な意見を言われている政党もあると私は聞いております。また、逆に答申案を推し進めろというならば、理想を追って現実を見誤る結果になると思う。もしそうではなかったら、答申案が現実に沿ったならば、答申案はこんな案じゃ出てこないと私は思う。私も委員でおりましたけれども、やはりある意味において答申案理想のもとに答申をする、またその方向に将来の努力目標を置く。その条項がやはりこの中に出ております。努力目標として五年ということばが出ておる。したがって、答申案というのは、やはりその理想のもとにある程度の将来性を見て答申をされたというのが学者さん。われわれ経験者、体験者、実際これを行なう者は、現実とこれと合わせる。これをもし答申案を実行しようというなら、おそらく現実にこの実行は不可能だと私は思う。またその法案成立することも非常な問題が出てくるんじゃないかと私たちは考えます。したがって、理想と現実というものを合わせ——政府もずいぶん苦労されたので、ある程度政府案はその現実性を加味されておる。私は、政府案を否定もしません。長所はたくさんある。しかし短所を見のがすわけにはいかない。短所というのは、一番基本政党です、政党法というもの、政治というもののあり方です。第二番目には、将来における区制との関連の問題、あるいは選挙運動との関連の問題、これが第二番目。第三番目には、政治資金の公明、公正を期することはわれわれは賛成です。進んでやるべきである。われわれ自身もこれは賛成である。しかし、その対象と刑罰が、政党とは何ぞや、政治団体とは何ぞやという規定もなく、国民がほとんど知らない現状において、罰則を加えるということは取り締まり的、過酷なものになるんじゃないか。この辺がやはり基本的に、私が本日申しました中における疑問点としてこの委員会を通じて解明しなければならないと私は思います。  今日国民が期待しておる姿も、われわれは代表としてよくわかります。しかし、ただ答申が正しい、答申以外はだめなんだという考えは、私は少し偏向じゃないかと思う。答申答申、実際における実行と現実というものはおのずから加味されるべきだ。その点で問題は、個々にあげれば、ただいまのような議論の中において次に問題点を実はあげたいと思うのです。  はなはだ突然として、政治資金答申の中に出ております。ことばの中に「最近の政治資金をめぐる問題、選挙の実態等、諸般の政治情勢に鑑みるときは、これを選挙制度全般の改善が実現されるまで現状のまま放置することを許さないものがある。当審議会は、当面緊急に措置することを要する事項として政治資金規正および連座制の強化等について、その改善合理化を図る必要があるものと認める。」この条項は具体的に何だということなんです。これは答申ですから、その答申審議会——これはいずれ参考人として高橋さんにお聞きするほうがいいと思うのです。違ってもかまいません、高橋さんに聞くんじゃないのですから。政府はどうとったか、政府はこの条項をどう考えて、すみやかにこれだけを単独に出したか。これは一つ問題点だろうと私は思うのです。したがって、これにはいろいろな問題があります。政治資金をめぐる問題、選挙の実態、諸般の政治姿勢という問題。それからはたして連座制において、一番端的なことは、今回の連座制を行なうような事態、選挙違反が過去に多かったのか、多かったから連座制を強化するのか、あるいはこれをやらなければいけない事項だから、いままでやらなかったからやるというのか。一番はっきりすることは、連座制の改正をなぜしなければならないか。こういう事例が多くて、選挙の公平を期しがたいから連座制の強化をしたというのか、あるいはこういうことを早くやろうと思ったが、やれなかったからやろうとするのか。やれなかったというのは何だ。ほかに条項がたくさんあります、一つずつ言うならば。こういうところに私はやはり問題があると思うのです。政府がすみやかにこの答申によってお出しになったことはわかります。わかるが、この条項をどう解釈すべきか。これはいずれ高橋さんにお聞きするほうがいいかもしれません、この答申の作成者ですから。しかし政府が出したときの考え、多少違ってもかまいません。これは高橋さんと違ってもいいのですから、政府が出した考えは、どういうふうにこの答申理解したかぐらいは言われてもいいのじゃないかと思う。できればお答えを願いたい。
  17. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この前文にあります「当面緊急に措置する」ということは、昨年来いろいろな政治上の問題になりました事象をとらえて、こういうことにつきましては、何とか寄付をする側におきましても分相応の寄付をすべきではないかということがこの答申に流れておる思想だと思います。そういう意味では、やはり従来、昨年来のいろいろな政治情勢からいたしまして、その分相応の寄付に限るべきだというこの答申については、それを現行制度においても実行しなければならないのではないかというふうに受けとめたわけでございます。  また連座制の問題につきましては、一つは、過去の答申にありまして、まだ実行していなかったものでございますが、単に選挙区の地域に分けて、その一つの地域を主宰した者ばかりでなくて、多数のそうした組織とか職域とか、そういうものを主宰した者もやはり連座に該当する主宰者とすることが公平を保つゆえんではないかというふうに考えたわけでございます。
  18. 松野頼三

    松野(頼)委員 政府のお考えはよくわかりました。ただその場合に、同居する家族というものが、意思を通じておろうがおるまいが、同居たるがゆえにこれが連座制にかかるというところは、私たちはいまの日本の家族制度から見ると、これは入り過ぎるのじゃないか。もちろん、それが主宰した選挙に関して違反的な容疑を受けたというなら、これは私たちもわかるのですが、同居しておるがゆえに同じ行為をしてもいけないのだ、またある意味においては、同居した家族は、選挙にはもう一歩も出られないのだという感じがします。  そのほかに最近の政治情勢を見るのに、私はいわゆる黒い霧事件を言われたのだと思いますが、昭和電工事件——この法律が制定されたときは昭和電工事件だったと思うのです、昭和二十三年ですから。正確には覚えませんが、そのころだったと私は思います。昭和電工事件というのと政治資金規正というのが、どっちが原因か、大体そのころにこの問題ができたと私は思う。そうしていままで見ますと、法人というのがすべて事件の対象なのか、あるいはそういうものは別なのか。法人個人との問題をまずこの黒い霧事件という中において議論していいのじゃないか。個人献金あるいは個人代表するものなのか、法人が常に主役を演じておるのか。ここにずっと記録があります。あえて私はいろいろその内容をここで言う意思はありません。ここに一つ疑問が出てくるのは、法人が悪を犯すというところに、私はどうも肯定しにくい社会情勢があると思います。また寄付というものが、今回はある意味においては罪悪視される傾向がある。もちろん限度はあります。応分ということば大臣は答えられた。その応分にもまたこれは議論が出てくる。大体その寄付行為というのを、一般的に社会事業——あるいは一般寄付というものは、個人の場合は贈与、贈呈ということばになりましょう。寄付という場合には、やはり公なものに対する寄付ということが、私は寄付一般的常識だと思うのです。お祭りも、公な町内会のつき合いにおける寄付でしょう。個人ならば、これは贈与税によって贈与になるのですから。そうすると、やはりこれは公なものに対する寄付というのが常識の寄付だ。ある場合には、寄付をすることによって昔なら勲章、いまは勲章ではなしに褒章ですか、褒章をもらえる褒章条例があったのじゃないかと思います。それは社会事業ですか何かに寄付すると褒章をもらえる。あるいは赤十字に寄付すると、赤十字から表彰とメダルがもらえる。神社に寄付すれば神社から名誉氏子の称号をもらえる。代償はいろいろありましょうが、要するに顕彰というか、行ないを明らかにする行為というものが寄付一般概念だ。今回は違うのだというのです。今回はこれが罪悪視される。そこに非常に急激な常識的変化を私は感じるのです。今回はだめなんだという。政治資金についてはある限度を越えると罪悪視される。その限度については議論はありましょう。いずれ同僚委員がされましょう。そうすると、私は一般的な国民の一人としても、また政治家の一人としても、そこに非常に疑問を持つのです。そこで、はたしてこれが憲法における公共の福祉に違反するということばにどう関連があるのだということです。憲法において、個人の私権、私の権利を制約するならば、何らか制約するものがなければいけない。その一番代表的なものは、公共の福祉に違反する場合に、みずからり権利というものがそこで制約されても、ということを憲法は認めていると思うのです。個人の献金が最高額を越えた場合に、はたして社会に悪をもたらすか、憲法の条項にはたしてこれが抵触するかというと、これは憲法論議としては一つ問題点として私は出てくると思う。はたしてどういう憲法学者の方が——賛否両論あるかもしれません。また憲法違反じゃないと言うかもしれません。憲法違反じゃないからいいのだという容認論もあるかもしれません。といって、憲法に合憲だという積極論はなくても、違反じゃないからまあいいじゃないかという妥協案がおそらく出てくるのじゃないかと私は個人的に考えるのです。それが今回の問題として寄付制限というところに基本が置かれたところに、受け取るほうの金額、政治家政党が受け取る金額を、ある限度以上はやはり一般常識でよくない。これはいまでもあるからわかります。いまでも私たちが考えられると思う。また、政党を浄化しようというならば、公明にしようというならば、一人の政治家がある会社から多額なものをということは、それは疑惑を招くということは私は認めるのです。ただ、政党に献金する場合ですね。政党献金の場合に、その金額によって罪悪が行なわれたか、あるいは黒い霧は政党の中にあったか、政党献金の中にあったかというと、私はないほうだったと思うのです。ここに過去における昭和電工事件以来の事件が全部あります。しかし、政党が疑惑を受けたとか、政党がその事件の中に入ったというものは絶無といっていい。やはり政党というものはそれだけの行為というものがあったことだけは認められると私は思う。その政党に対するものが制限される、また個人の自由な寄付行為制限される。ここに私は納得する説明がむずかしいのじゃないかと思う。それが答申案なんです。政府がお困りのところはあえて聞きませんが、これは答申案なんです。それをあえてしようというなら、それだけの何かがなければいけない。何だというと、黒い霧事件だ、こう言うでしょう。じゃ政党にその黒い霧があったかというと、この答えは出てこない。審議会代表的な方が、政党に対しての問題はいままで黒い霧という中には出ていないのです。そこに政党に関しての制限というものが一般的なものと混合しているのじゃなかろうか。なぜ政党だけ一これはせっかくここまで政党本位というならば、個人政治家の私生活、政治家の献金の制限までは、私たちも進んでわが党としても考えております。しかし、政党に関してはすべてのこの条項に当てはまるものがあったのだろうか。「諸般の政治情勢」、「選挙の実態」、政党選挙違反なんかありましたか。「選挙の実態」と書いてある。個人選挙違反というのは先ほど八千何百件あったという。じゃ政党選挙違反があったか。私はおそらくその問題は答えられないと思うのです。そうなると、公職選挙法というものの問題と政治資金の問題というものは、ここで明らかに区分けをして議論しなければならないと思う。この答申の中にもありますこの条項は、全部個人政治家については当てはまるものもあると私は思うのです。しかし、政党について全般についての選挙違反が多かったか。じゃ政党選挙違反で告発された例があるか。過去昭和二十年以来でもいいです。政治資金規正法ができてから、あるいは公職選挙法ができてからというと、これはほとんど政党としてのものはないのじゃないか。じゃ、世間にうわさされるようないろいろ黒い霧が政党にあったか、残念ながらこれもない。幸いにこれはないのです。そうすると、あと残るのは、この条項というのは政党に関しては必ずしも前文じゃなかったと思うのです。私はそう考えてみると、ここに政党に対するいろいろ……(「佐藤幹事長があったよ」と呼ぶ者あり)じゃ、いずれ調査表を読もうか。(「時間かせぎなら読んでもいいよ」と呼ぶ者あり)お互い政党としての襟度というものを持って、(発言する者あり)私はあるのだ。そういうものが私は一つこの問題に出てくると思うのです。そこで私はあえて、政治家だから政治家を弁護するのじゃありません。事実の上に立って、政党というものの存在——幸いにして政党が今日まで清潔な姿ときれいな姿をとってきたこのやり方、政治家政党を分けたといいながら、この条項についても、政党を育成する——それだから私は政党育成だと思うのです。政党撲滅論を言う方は委員の方にもありません。政党をよりよくしよう、政党をこう成長させようという委員はあっても、いまの政党が悪いのだという委員の方は一人もない。また、われわれもそう思っていません。国民もそう思っていない。こうあってほしい、こうしてもらいたいという、ある意味においての手直しとか助成はありますけれども、それはいままでの例において、政党というものが幸いに努力し、今日までいろいろなものがありながら政党というものが成長した過程だと私は思うのです。それをこの答申案には混合しているのじゃないかと私は思うのです、この条項において。したがって、「すみやかに」「当面緊急」というのは一部に当てはまる。しかし、政党全般にはこの前文というのは当てはまる例はない、当てはまらないんじゃないか。ただ政治家政党の集合だからという一つの三段論法といいますか、四段論法というか、議論をするならばそれは不可能じゃないと思う。しかしこの内容は、政党というものについて今度は直接制約、制限をしている。そうすると、この条項については、答申の前文と内容においてはやや問題が出てくるのではないかと私は思うのです。  ちょうど十二時半になりましたから、あとは午後にお願いします。その答えもできれば午後にお願いします。時間を守ってやりたいと思う。
  19. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。   午後零時三十一分休憩      ————◇—————   午後二時十九分開議
  20. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松野頼三君。
  21. 松野頼三

    松野(頼)委員 午前中この答申案の前文の、要するに最近の政治資金をめぐる問題のために、当面緊急に措置する要項として政治資金規正法の改善をするという答申に従って政府提案された、それに対する私の意見は、個人的にはこの条項に該当する事例がなしとはしない。しかし、政党がこの事例に該当したことがあるかというところで実は時間がきましたが、何か政府でこれに対する答弁があるならお答え願いたい。
  22. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに過去のいろいろな政治上の、いわゆる黒い霧と申しますか、汚職等を伴ったものにつきまして、政治家個人が関係したものはございますが、政党政党として関係したこと、あるいは選挙違反について政党がそのまま政党として選挙違反をやったというような事例は、ないことは御指摘のとおりでございます。今回の政府案におきましても、それらの点を考えまして、答申にもありますように、政党以外の政治団体並びに個人に対しての寄付については、相当きびしい制限をいたしておるわけでございます。政党につきましては、なるほど寄付をするほうの会社等につきまして、ある程度の制限はいたしましたが、政党自体が受け取る金額の総額については、何ら制限をしていないわけでございまして、そういう意味におきましては、政党はむしろ善なるものと申しますか、そういう政党は育成すべきものという考え方を入れておるわけでございます。また、政党に対する税の優遇措置を考えたのも、政党は育成すべきもの、健全に発達さすべきものと申しますか、そういう観念が入っておるわけでございます。
  23. 松野頼三

    松野(頼)委員 ただ、ここに注意をしなければならないのは、三千何百の政党の中には、あるいはこの条項に当てはまる泡沫的政党、あるいは名のない政党政党の名において問題を起こしたことがあるかもしれないと私は思います。あるかもしれないというのは、政党が三千四百八十五あるのですから、どの政党か実はわからないので、その議論と同時に、要するにいま代表的な、議会に議席を持つ政党については、大臣の答弁のとおりだと私は思う。しかし、今回はそれだけにあらずして、要するに選挙法にいう確認団体政党という議論と、一般的に、要するに通俗的な政党というものとの二つがここで議論が分かれないと、私は正確なこの審議はできないと思う。もとに戻れば、やはり政党法的な一つのものがないと、今後のすべての問題について差しさわり、支障が出てくるのじゃないか。選挙の際における確認団体的なもの、これがはたして政党法による政党に該当するかどうか、これはわかりません。しかし、少なくとも政党論議をするときには、そのものがどうしても議論の中に混乱しやすいものが出てきておる、私はこう思います。幸いに大臣の答弁は、要するに代表的な議会に議席を持つ政党に対しての答弁であると私は受け取って、議論を先に進めます。  そうなると、政党問題がある意味においては必ずしも個人でない、別にしたことは、これは一つの方向として私も賛成であります。ただしかし、資金規正基本的な考えから見ると、当初政治資金規正法がでまた当時の状況と、今回のこの提案とは根本的に違っていると私は思うのです。その当時のねらいというものはどこにあったか、それと今日これを出しておるものとはどこが違うか。基本的に思想が変わってきていると私は思う。今回政党を量で縛る、またある一線を画することによって、この政党というものが浄化されるのだという思想を持っている。最初のほうは何だといえば、政治資金の公明ということを前提にして、不明朗な政治資金、不明朗な政治というものを明らかにしろというのが、第一の成立当時のねらいであったと私は思う。したがって、公開性というものを主眼に置いてこの法律が制定された。その法律基本はそのままにしておいて、今回はその中に量の制限というものがここに突如として出てきた。ここに私は、前文のほうの基本の各条項と今回の改正案が、法文を読むならば必ずしもそんな大きな差がないかもしれませんが、しかし一つの方向として、ここに木に竹をついだようなものが突如として出てきたという疑問を持つのはこの点だと思う。おそらく公開ということが政治資金基本だったものが、今度は公開プラス量だ。どっちかといえば、量のほうに重点を置いた罰則の方向が示されておる。これが同じ法律の中で、どっちかというと、新しい立場に立ったものがここに乗せ合わされておるのではないかという疑問が出ます。それについては答申だからいいのだというわけには、これは見のがし得ないと私は思う。  ことに答申が出るいきさつにおいては、これは長い間審議されました。小林案、柏村案なんというのが、要するにこの答申の第一案として二つの案が出た。突如として最終的にはその両案の第三案として島田委員長案というのが、要するに今回の答申になってきた。このいきさつを見ますると、非常に大きな変化があると私は思う。また、その答申案が全会一致というわけでもありません。自民党を代表しておる委員の方は、これについては多くの疑問を指摘し、その点については修正、改正あるいは削除を実は要求しております。したがって、答申案が全会一致で一本で出たという形に表面は見えますけれども、その審議の経過、内容においては、少数意見として各所において、いま問題になっておる点については重要な自重論、ある意味においては時期尚早論、ある意味においては修正論、またそれに対して削除論というものが、実は答申いきさつには出ております。ただ意見として出るにあらずして、最終的な採決の場合における最終意見として出ておる。言うなればこれが少数だったかもしれません。しかし、意見が異なかったものが答申の際にあったことは否定できないと私は思う。それが自民党を代表する委員のほうから出たというならば、それは政府としても少数、多数という以上に、この法案の作成、審議については十分留意されなければならぬ点だと私は思います。政府与党一体でありますから、当然同じ気持ちだったと思いますが、答申とそのいきさつは、そこにそれだけの差があったと私は思う。ただいま申しましたような政党についての育成ということばを言いながら、一方では政党に対するワクを、天井を設けた、これが私はこの法案における一つの公開から量の制限にきた、量の制限から個人政党というものに分けてきた、このいきさつは大きな問題点として、この審議基本の問題として、ひとつ提起しておきたいと私は思います。  なお、答申だからいいのだということと同時に、答申のいいところは何だ、答申現状に沿わない点は何だ、答申問題点は何だ、これが審議を通じて、政府と同じ立場の思想のもとにある自民党として、国民の前に議論をしなければならない点だと思います。その第一点がこの答申の前文です。  次に、この答申の大きな問題は、寄付行為というものの中に、法人寄付とその他の寄付というものの基準が問題になってくると私は思うのです。(「まだ前文をやっているのか」と呼び、その他発言する者あり)ほかに不規則発言がなければ先に進みます。それが前文における第一の基本的な立場、あるいは一般的にこれがこの法文の中にあらわれていないことだと私は思うのです。ことに、この中にはまだあります。「昨今、政治資金をめぐって国民の疑惑を招くような事態が生じ、また、総選挙においては買収、饗応等の悪質犯罪があとを絶たなかったことは遺憾に堪えない。当審議会は、これらの問題について、第一次および第二次の二回にわたって答申を行なってきたのであるが、これが十分な実現を見なかったものもある。」こうなると、あるいは最近の選挙の実態、あるいは選挙現状でいいか、これがやはり前文の中に包まれておると私は思うのです。したがって、どう考えましてもこの問題は、すなおにこの答申をとりましても、政党の育成をするならば、今回のような育成ではたしていいか。私は政党というものに対して、これはやや頭をかぶせ過ぎていると思う。選挙そのものもそうです。選挙においての買収、選挙においての供応は個人が多いのであって、政党が買収したり、供応したりした事例はないだろうと思う。この一つをとりましても、今回のねらいが政党育成というならば、この条項において個人政党を分けた点においてはやや進歩的な考えがありますが、それでも政党も縛れ、政党資金の量を減らせと、やはり量に問題を持ってきたところに、まだどうも少し疑問が残ります。言うならば、もし個人の場合には、量である意味では制限されることもありましょう。しかし政党の場合には、その本質に応じた質における規制、質の規制を加味しないということは、やはり妥当なものでなかったのじゃなかろうか。だから、政党においては、量より質によって、その資金というものを公開しながら質によってこれを選択する、ふるいをかけるという、願わくばそういう方向にいくべきではなかったかと私は思います。それはいままでがそうです。いままでの公開制の中においても質の問題が出ておる。よくいわれておりますが、この一番の手本とされるアメリカでもそうです。質の問題について非常に大きく議論をされている。またその他の国も、ほとんど政治資金は公開を原則として、その公開は何だというと、その政治資金の質を対象に公開を原則と掲げておると思います。ことにアメリカの場合は、選挙に関してこれをかけておる。今回は選挙に関してばかりでなしに、全政治資金に関してこれをかけ、しかも、政党の上にもかけておる。あるいは個人の献金にもかけておる。その上に量の制限をしておる。これは二重、三重に、おそらく法律ができますならば、世界で一番きびしい、逆に言うなら、こんな法律日本政治はやらなければならないのかといわれるような、代表的な法律ができるのじゃないかと私は思うのです。あまり名誉なものじゃありません。そうまでしなければならないのか、われわれが現実の政党の一員として、またその構成員として、この点を考えさせられるのであります。  あまりにも質問が長くなりましたが、政府の御意見があればお聞きしたいと思います。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに現在の政治資金規正法は、先ほど申し上げましたように、いわゆる公開法ともいうべきもので、それを公開して、国民がその資金の質等について判断を下し、そうして批判をするということであったわけでございます。それに対しまして今回量の制限をいたしましたことは、確かに従来の政治資金規正法とは違って、ほんとうの意味政治資金規正ということが行なわれるようになったと思います。  ただ、御質問の中にもおあげになりましたように、選挙制度審議会審議の途中においては、一方において政党資金は党費と個人の献金だけでまかなえ、しかし、いますぐはできないだろうから、五年後にするあるいは七年後にするという考え方、一方においては政党個人とを分けて、政党制限なし、個人やその他の政党以外の団体についてはある程度の制限をというような御意見もあり、その中におきまして今回のような答申が出されたわけで、すなわち、会社あるいは個人寄付をする側においてある程度の頭をかぶせたという点につきましては、いろいろ問題はあろうかと思います。会社につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、いわゆる身分不相応な政治献金が行なわれ、それが政治にいろいろな悪影響をいたしたというような考え方から、身分相応な献金をすべきである。その身分相応とは何だということが二千万円という頭打ちで、資本金の千分の二・五というようなことに答申がなされたわけであります。それでは、はたして二千万円は正義で、二千五百万円は悪かというような突き詰めた御質問をいただきますと、私といたしましても、はっきりと二千万円の理由づけを申し上げるわけにはいきませんけれども、選挙制度審議会委員の皆さま万が、身分相応というものを二千万円という限度に限ったというところにおいて、私どもはそれをそのまま採用いたしたわけでございます。  それともう一つは、先ほどもお答え申し上げましたように、個人政党以外の政治団体につきましては、一人の者から一人の者に対して年間五十万円以上は出してはならぬというような、受ける側のある種の制限をいたしましたが、政党については、寄付するほうの量は制限いたしましたが、政党側の受ける量については制限をしなかったということは、やはり政党というものを育成すべきと申しますか、政党が発達していただかなければ困るという考え方をとったわけでございます。
  25. 松野頼三

    松野(頼)委員 ただいまの大臣からの明快なお答えでわかりますが、ただ、それに関連して二千万円という金額あるいは五十万円という金額が出たのはどんないきさつであったのか。これは、私も特別委員をしておりますけれども、私たちが承知する意見の中には金額は出てきておりません。そのいきさつというものは、われわれ特別委員の者が出ていないうちに出てきた。したがって、もちろん委員会の方でなければわかりませんが、まあそばで政府委員が聞いておりましたならば、どんな根拠だったか。いい悪いは別ですが、二千万というものが出てきたのには何かあったんだろうと私は思うのです。  もう一つ疑問を持ちますのは、個人が千万というこの比率です。もし法人の二千万が正しいと見るならば、一般常識では、個人の千万というのは、どっちかというと多過ぎるのじゃないか。個人の千万が正しいというのなら、法人の二千万はどうだろう。この比率はだれが考えましても、千万、二千万と一がいに言いますけれども、私たちはそう簡単に、金額が少ない多いじゃなしに、バランスと常識からいうと、少しどっちかが違うのじゃないか。ただ、あえて質問を詰める意味合いで、二千万というものがどんなもので出たのだろうか、また、どうして個人として千万というものが出たのだろうかということくらいは、ひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  26. 降矢敬義

    降矢政府委員 法人会社の二千万の出た経過でございますが、審議会には、先ほど御指摘のように小林案といたしまして、会社につきましては損金算入限度額というような制限において、分相応のものを考えたらよくはないかという提案がございました。その際、この島田案をまとめるにつきまして、数人の調整委員をあげて意見をまとめられたわけでございますが、調整委員の段階で、損金算入限度額といたしましても、相当大きな会社につきましては、相当の額に相なるわけでございます。そこで、一方四十年の会社の、あるいはその他の団体の正規の寄付額を見ますと、会社等につきましてはたしか二つ、それからその他の団体を合わせましても、二十程度が二千万をこえる団体でございました。そこで、調整委員の段階におきまして、おおむね二千万というような考え方が出たわけでございます。  また、個人につきましては、委員会の段階におきましても、個人について別段制限する必要はなかろうという御意見もありました。しかし、個人の場合におきましても、特定の個人の多額な献金が政治に影響を与えるということもあり得ますので、調整委員の段階で、法人のおおむね半分という程度で、千万程度という話が出たわけでございます。
  27. 松野頼三

    松野(頼)委員 そこで、労働組合において二千万をこえている献金はたくさんあったと私は思うのです。同時に、過去において、法人についても二千万をこえている献金はあったと思うのです。これを制限する、これはそういう方向だと思うのです。それでは、個人で千万以上の献金が届け出として、いままでの二十年間に一件か二件かあったかどうか、あるいはなかったのか。片一方労働組合も、二千万をこしている組合もたくさんあります。だからこれを制限するのだと、これは量の制限をねらっているのだと思うのです。だから制限ということばは当てはまる。今度は個人の場合には、千万以上のものがあるから千万に制限するというのならわかりますが、私の調べではあまり聞いたことがないのです。個人の千万以上というのは、二十年間に一件くらいあったのでしょうか。なかったのでしょうか。
  28. 降矢敬義

    降矢政府委員 わずかではございますけれども、実際の例はございます。
  29. 松野頼三

    松野(頼)委員 それで千万に制限したという意味なのか。もう一つ考えは、法人献金を罪悪視するために、あるいはこれを制限するために、個人のほうをゆるめたという意味の千万かもしれないと思うのです。個人のほうをゆるめて法人制限するという意味で千万というものを、要するに法人個人をともに頭打ちで押えたという意味ではなしに、片一方を押えるかわりに片一方をゆるめたのではないかという意味で、個人の千万というのは疑問を持ちます。それだけに法人というものを、どちらかというと非常に制限を加える。労働組合も同じです。労働組合も二千万以上がたくさんあったからこれを押える。このほうは、逆に言えば、賛否は別としてそういう理論になる。そうすれば、個人の千万は逆にゆるめたのではないのかという気が、この法案の金額からするのです。それは、個人に移行するために個人をゆるめるのか。もう一つ法人及び組合——組合もだいぶ罪悪視されるのじゃないかと思うので、組合も同じですが、ことに法人の場合は、一般的にはほかの法律で、まあ税の減免の例などを見ると、法人には特別なものが認められている。個人には、指定寄付以外は必要経費的なものはなかなか認められていない。ということは、法人としては一般社会の常識としてのつき合い、あるいは社会の単位、ある場合には地域社会の生活においても同じで、そういう法人——税も同じでしょうが、その中において認められている場面がある。ということは、個人献金政治が移行すべきだという方向はかりに正しいとして、またその方向はよろしいとしても、だから法人は悪いのだというものとは結びつかないのではないかと思う。だから法人が悪いのだというのは、少し論理の飛躍だと思う。したがって、法人には法人税の特別優遇という社会的単位として、活動として認められている。また、法人個人一つの集合体である、一つの目標を持った集合体であるというと、そこにどうも法人に対しての立場というもの、見方というものが、私たちとしては少し強過ぎるのじゃないかと思う。政党はやはり個人の献金、党員の党費によってまかなわるべきものである、これが大前提で是なりとしても、法人というものだから悪いのだという結論に少し結びつけ過ぎているように私は思います。原因はいろいろあると思うのです。だからこの問題は、特に資金的なほかの税法における優遇措置を一方でとりながら、一方ではややもすればこれを規制する、ここに政治上においてやや矛盾がある——とは言いませんが、考えがどうかなあという気がします。あえてこれは答弁を求めるわけではありませんが、そういうところが、今回のこの法案の非常に大きな背景となり、政治資金規正法成立当時から一貫した考え方なので、私の質問の焦点に置いたわけです。条項については、次に予定されている委員の方がありますから、私は触れません。  同じことを繰り返すわけではありませんが、それでは、政治資金規正法にいままで問われた件数、あるいはそれによって起訴された件数、あるいは今日行なわれており、まだ済んでいない件数というものがはたしていままでどの程度あったのか。いままで行なわれておったものにはどの程度あったのか。これは今後相当変わってまいります。変わってまいりますが、いままでに問われた件数というもの、またその内容について、おわかりならば御答弁を願いたいと思います。
  30. 降矢敬義

    降矢政府委員 いままでの政治資金規正法違反の受理件数は、検察統計年報によりますと、合計二百五十八件になっております。そのうち既済のものが、総数で二百十四件になっております。内容についてはちょっと承知しておりませんので、後日またお答えさせていただきます。
  31. 松野頼三

    松野(頼)委員 この内容は、おそらく公開の原則を主体としておりますから、届け出違反あるいはその事実と相違した点ということだと私は思うのです。また、それがこの法案における一つのねらいだったと思うのです。そうするとこの問題は、どんな調査で何によってこれをやられたのか。所管は自治省だったと思うが、自治省ではどんなふうにしてこの問題を処理されたか、またこの事件の二百何十件というのは、自治省ではどんな調査でこれをやられたのか、これをお伺いしたい。
  32. 降矢敬義

    降矢政府委員 ただいま申し上げましたのは検察庁の資料でございまして、自治省がいまの事件にタッチをしたということはまだございません。
  33. 松野頼三

    松野(頼)委員 そうすると、この政治資金規正法というのは、公開の原則というのがねらいではあったが、現実には、選挙違反からそれが政治資金規正法に問われる、あるいはその他の事件から、政治資金規正法がたまたま該当するというふうないきさつじゃなかったかと思う。そうすると、この政治資金規正法というものは、政治資金規正そのものが独立したというか、一つの問題にあらずして、他の付随的なものから政治資金規正法というものが実行されたんじゃなかろうか。こうなるとやはり今回は、なおその上に大きな間口を広げる、これが一年じゅうにかかる、あるいは選挙期間が一年じゅうに延びる、こうなると、相当この問題に対して取り締まりというか、実行というか、それについては、よほど運営においてこれは留意されないと、一つ一つが、その法律のねらいと実際が変わってくるんじゃないかという疑問をなお持つのです。もちろんいままでの政治資金規正法は、罰則としては必ずしも軽いものじゃありません。相当重いものがたくさんあった。今回これが一年じゅうになる。したがって、政治運営を浄化するといいながら、現実には非常な取り締まり的なものにおちいりやすいということは、過去の例から見ても出てくるんじゃないかと思う。所管の自治省における態度としては、それはこの法律どおり実行されると思いますが、過去の例から見ると、あながちそのようなものから出てこずに、逆なもの、別なものからこれが出てきている。こういう感じになりますと、今回の政治資金規正法のねらいも、やはり自治省の行政的なもの、あるいは自治省の政治資金規正法の所管省以外の、警察の取り締まりにこれが利用されたり、あるいは選挙違反の一つの方向にこれが付随してきたり、これが非常に出てくるのみならず、今度は逆に寄付する者のほうにもこれが出てくるのです。いままでは政治に携わったものが二百何十件おそらく対象になったと思う。今度は両方、両道になってくる。寄付をした者、受け取った者が平等な禁錮となり、平等な罰金となり、平等なものになってくるという、そこにまた法制的に非常に大きな問題が出てくると思います。もしも二百何十件が起訴されたというならば、今度はこの同数の者あるいは同数以上の者、何倍かの者が対象になる。またそれが一年じゅうになってくる。こうなると、これは相当な問題が出てくると私は思うのです。したがって、これが政治資金規正と公明化というねらいと目標はいいが、現実にこれをやりますと、ずいぶんあぶない取り締まり的なもの、また政治資金選挙というものが、国民からいうならば危険なものだということになる。いまでも相当危険視されております。社会党の方からも、だいぶ選挙違反がおれのほうから多く出た、これは無理に戸別訪問をやったのじゃないかというような質問が今度の選挙後にも出ております。一つの戸別訪問でさえもそのとおりなんで、今度は資金問題がからむというならば、一年じゅうになりますから、おそらくもっとむずかしさが出てくると私は思います。  そういうことで、私たちがこの問題を十分慎重というか、正確に把握しませんと、答申だからいいのだという賛成論では、これは私はうなずけない。また政略的に、おれのほうは困らない、あの党が困るからというふうな賛成論があっては、これは私は不純だと思う。それは政治をみずから誤ると思う。したがって、賛成という前に、議論を正しく見なければいかぬと思う。おれのほうは困らないからいいのだ、そんなふうに政略的に使うべきものではない。またおれのほうはこうだから、これもよくない。答申がいいのだというならば、政府国会も実は答申まるのみ、そんなことはだれが考えたって常識でない。したがって、十分一つ一つ問題点審議会においては、審議会考えとして議論されたでありましょう。しかし、国会議論とはおのずから角度とその立場が違うと私は思います。  そういう意味で、前文について私は大いに述べました。内容については次に譲りますが、しかし前文について、まだ多少疑問の残っておるところは後ほどお尋ねしますが、その間関連して灘尾委員から関連質問の要求がありますから、しばらく灘尾さんに譲って、また後ほどお尋ねいたします。
  34. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 灘尾弘吉君。
  35. 灘尾弘吉

    灘尾委員 与党選挙制度の調査会長たる立場におられる松野君から、今回の法案に関連いたしまして、きわめて慎重に、また、きわめて広範な問題点に触れていろいろ御質問がございました。まだ残っておるようでございまして、私にこの辺で関連質問をやれ、こういうことでございますので、御質問を申し上げたいと思いますが、すべて関連をいたしておるのであります。関連質問でありますから、あまりいろいろなことを申し上げようとも思いませんけれども、私は、今回のこの選挙制度審議会答申を拝見いたしまして、私の感じた点を主としてお尋ねをしてみたいと思うのであります。大体松野さんの御質問でみんな取り上げられ、あるいはまた御意見を述べられた点であるように思いますので、まことに恐縮に存じますが、非常に素朴な考え方でもってお尋ねをしてみたいと思うのであります。  大臣にお尋ねをいたします前に、政府委員でけっこうでございますが、今回の法案は、申すまでもなく選挙制度審議会答申に基づいて出てきたわけでございますが、その選挙制度審議会も、設置以来相当な年数がたっておる。また、審議会も第五次審議会というようなことになってきておるわけであります。その間に数回政府に対して答申もしておられることであります。資料をちょうだいして拝見すればわかることでありますけれども、この選挙制度審議会というものについて、私は国民の諸君にも理解を深めていただくことが必要ではないか、このようなことも思いますので、この際政府委員から、第一次の選挙制度審議会から今回に至るまでの審議会活動状況と申しますか、その答申の趣旨ないしはそれに対する政府の措置、こういう問題について簡潔でよろしゅうございますが、ひとつ御説明願っておきたいと思います。
  36. 降矢敬義

    降矢政府委員 選挙制度審議会は三十六年に発足いたしまして、当時の諮問事項は、「選挙制度審議会設置法第二条第一項各号に掲げる事項に関し、選挙の公明化をはかるための方策を具体的に示されたい」というのが諮問事項でございました。それに基づきまして、三十六年の十二月に第一回の答申がございました。それは主として選挙運動を中心にした問題と、それから選挙管理委員会制度あるいは選挙の当面の合理化の問題についてのものが大部分でございまして、なおその中に政治資金の合理化に関する答申がございました。これは「会社労働組合その他の団体選挙又は政治活動に関し寄附をすることは禁止すべきものである。但し、その実施時期等については引き続き検討を加えるものとし、とりあえず、次の措置を講ずる」ということで、国と請負等の関係にある者あるいは補助金等を受けておる会社等の寄付禁止を中心に答申がございました。  それから第二次審議会が次いで発足いたしまして、諮問は同じ諮問事項でございまして、これが三十八年の十月に答申がございました。このときは、御案内のとおり衆議院の定数是正に関する答申が中心でございますが、なお、政治資金に関しましては、「選挙資金および政治資金についての寄附は、個人に限る。会社労働組合その他の団体からの寄附は禁止するという第一次審議会答申を再確認するものとする。」こういう内容答申がございました。  次いで、三十九年から第三次審議会が発足いたしまして、そのときの諮問事項は「選挙区制その他選挙制度の根本的改善をはかるための方策を具体的に示されたい」というのが三十九年九月に出されました。それに基づきまして第三次、第四次と衆議院の区制及び選挙運動を中心に審議してまいりまして、第四次の中間報告が四十一年に提出されたわけであります。  次いで第五次が昨年の十一月に発足いたしまして、四月に政治資金答申をいたし、引き続き第四次からの問題として衆議院の区制、選挙運動及び参議院制度について目下審議しているところでございます。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾委員 従来の経過は大体わかりましたが、そういたしますと、現在の第五次の審議会は、大体第三次、第四次と続いて、同じ諮問事項とでも申しますか、それに対する検討を加えておられるものと、このように承知してよろしゅうございますか。
  38. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。
  39. 灘尾弘吉

    灘尾委員 第三次以来の調査、検討については、まだ全部の結論が出そろっていない、その間四月に、当面緊急措置を要するものとして政治資金規正法改正というものが答申をせられた。こういうことになったわけでございますが、この第五次の審議会の発足にあたりまして、政府の側から、現在の政界の情勢にかんがみて、選挙制度資金改正法を急いでほしいとかいうような、何かお話でもあったのでありましょうか、それともまたそういう問題には格別触れない、従来の検討事項をそのまま検討していただくものとして、審議会のほうで自発的にこの問題をまず取り上げて答申をしたものというふうに見てよろしいのか、どちらでありましょう。
  40. 降矢敬義

    降矢政府委員 第五次審議会の発足に際しまして、総理及び自治大臣のごあいさつがございましたが、自治大臣のあいさつの中に、「本審議会におかれましては、前審議会に引き続きさらに御審議を進めていただきたいと存じますが、衆議院選挙区制の問題につきましては、参議院選挙制度のあり方とも見合って審議を進められるとともに、選挙運動方法の改善、罰則、連座制の強化、政治資金規正その他の点につきましても、ただいま申し上げたような観点に立って検討を加えられ」云々と、こういうことをあいさつの中に申し上げております。審議会が第一回総会から総会を三回十二月末までに開きましたが、その際審議会におきまして、第一回に総理も出席され、いろいろ御質問もございました。そういう質問の過程におきまして、先ほど申し上げました第一次及び第二次審議会答申のうち、未実施の事項あるいは未措置の事項と申しますか、そういうものにつきまして、これを実施するように再確認したらどうかというような意見審議会の中にございました。こういう点総会を通じて出た議論を、運営委員会を開きまして、そしてさしあたって第一次及び第二次審議会答申のうちで、未措置の事項を中心に審議会として検討を進めようということになりまして、その問題を検討するために、十二月の中ごろだったと思いますが、特別委員会を開いて審議を開始したという経過に相なっております。
  41. 灘尾弘吉

    灘尾委員 そこで大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、この当面緊急措置事項として出されました政治資金規正法改正以外の選挙制度一般に関する問題でありますとか、こういうふうな参議院選挙制度の問題でありますとか、現にいろいろ検討されておりますが、これらの問題については、大体いつごろ答申が出るものと見通していらっしゃいますか。そのお見込みを伺いたいと思うのであります。
  42. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在の第五次選挙制度審議会の任期は十一月の十日でございます。したがいまして、それまでには答申をされるものと私どもは期待いたしております。これは先ほど松野さんにもお答え申し上げましたが、「すみやかに政党本位の選挙制度を確立する必要があり、」ということをこの前文にも書いておられる。その政党本位の選挙制度の確立ということの必要性を強く認めておられる選挙制度審議会でございますから、任期中に必ず答申を出してくださるものと私は期待いたしております。
  43. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私も実はこの答申が出た日に、初めて選挙制度審議会特別委員として出席し、初めて答申を伺ったようなわけでございますが、今後の問題については、部門を分けていろいろ検討をいたしておることは承知いたしております。この答申が今度の委員さん方の任期中に、あるいは任期満了までに出るものといたしますれば、政府としては、その結論につきましては、今回の答申と同じようにこれを尊重せられることは当然のことだと思うのでありますが、その答申が出た場合には、次の通常国会提案せられるようなお心づもりでいらっしゃるかどうか、これをひとつ伺いたいと思うのであります。
  44. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申は、設置法の三条によりまして、政府は尊重しなければならないわけでございますが、その内容を尊重して成文化するのが政府の義務かと存じます。通常国会に出せますかどうか、それはそのときになってみませんとわかりませんが、政府としてはできるだけすみやかに答申の趣旨を尊重して成文化し、国会提出することが義務であると考えております。
  45. 灘尾弘吉

    灘尾委員 もちろん答申内容にもよることでありましょうし、問題が問題でありますから、そう簡単に政府で成案を得にくいというようなこともないとは言えないと思いますけれども、一応の話の筋道としては、いま大臣のお答えになりましたように、通常国会に間に合えばこれを出すというのは、私は今回の答申の関係からいたしましても、当然期待していいことじゃないかと、このように思うのであります。そういう意味で実はお伺いをいたしたわけでございます。  そこで、今度の答申でありますが、この答申が出され、それから今回政府提案せられるまでに相当の期間を必要としたのでありますが、答申それ自体にも必ずしも明確でない点もありますし、立法するということになれば、いろいろ検討しなければならない問題も多々あったように思うのであります。同時に、政府としましては、与党にも連絡をおとりになることは当然のことだと思います。そのような関係で提案がおくれたものと私は思うのでありますが、今次の答申に基づくと、こう言われておる、これを尊重してやったと言われておるこの改正案が、答申と何か特に違った点があるかないか。私は、大体政府答申の筋道を尊重しておつくりになったように了解をいたすものでありますけれども、答申と違ったと申しますか、答申にない事項といいますか、そういうふうな何か変わったものがこの法案の中にあるとすれば、どういう点でありましょうか。
  46. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 答申の精神を尊重いたしましてこの法案をつくりましたので、答申と変わったというところは私はないと存じます。ただ、答申が十分な説明を与えていない面について、法文化の上において手直しをすると申しますか、詳細にいたしたとか、あるいは答申がねらっておると認められるものについて、答申の中のことばにないものでも、答申がねらっておると思われるものにつきまして、法文上はっきりしたというようなものはあると存じます。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私は、この法律案答申を尊重しておるかおらないかということについては、これはいろいろ御意見はあろうと思うのであります。野党の諸君の中には、その点について非常に不満を持っていらっしゃる向きもあろうかと思いますが、われわれとしましては、できるだけ答申を尊重し、その線に沿って立法するために政府がかなり時間をかけて努力せられたということは了とするものでありますが、この法律案の施行の時期は政令に譲っておられるわけであります。これも一つ問題点ではないかと存じますが、この施行の時期をすべて政令に譲っておるというのは一体どういう理由に基づくものであるか。また、もしこの実施の時期についての、もちろん確定したことは申しにくい問題とは思いますけれども、大臣のお気持ちがあればそれを伺っておきたいと思います。
  48. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政令にゆだねましたのは、先ほど松野さんからもお話がございましたように、これは国民全体に影響するところ——寄付をするほうも寄付を受けるほうも影響があるわけでございます。しかも、政治資金の本来の目的からして、それは常に国民なり、政党なり、政治家の自主的な良識にまって規正さるべきだ、そういうような点もございまして、十分に国民に周知徹底するのと同時に、またこれを受けるほうの選挙管理委員会の準備体制等も必要でございます。そういう意味で、それがどれくらいの時間がかかるかということをちょっといまから予測しかねますので、政令に譲ったわけでございますが、常識的に言えば、半年ないし九カ月あればこの準備はできるものと考えておる次第でございます。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私も、本法の施行の時期という問題につきましては、相当な準備期間を必要とするもの、このように思うのであります。国民に周知徹底ということもございましたが、政府はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか存じませんけれども、今度のこの法律案によりますと、寄付する側に対しましても、また寄付を受ける側に対しましても、かなりいろいろな罰則がついておるようであります。また、その寄付する側につきましても、その法人の種類等によりましていろいろ取り扱いが違っておるようであります。こういう場合に、罰則の適用ということがからんでくるということになりますと、寄付する側の、たとえば法人がいろいろある、そういうふうなものについてもこれを明確にする必要があるのではないか。この会社はどういう会社なのか、この会社はどうなのかというふうなことは、寄付する側もまた寄付を受ける側もよく知っておく必要があるのじゃないか。そういたしますと、これを調べるのはなかなか容易でないという気がするのであります。その辺については、私は罰則の関係がありますためにものごとを明確にする必要がある、そうすればそういうことについての何らかの配慮がなければならぬのじゃないか、こう思うのでありますが、これをやるとすればかなりの期間を必要とする、こういうふうにも考えるのであります。その点についてはどんな考え方をしていらっしゃいましょうか。
  50. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘のように、たとえば制限を受けておる会社、国と幾らの請負をその会社がやっているかということは、寄付を受ける側はなかなかわかりにくいわけでございます。それではそういうものを一々公の力によって公表するかといいましても、非常にたくさんの会社を一々われわれの手で調べて公表するわけにもいかないわけでございますから、やはり制限を受けておる側につきましては、自分の判断でやっていただくほかないわけでございます。しかし、そのためにはやはりこの法の趣旨を、そうした会社その他について十分徹底しなければ、善意の寄付者が罪に問われるというようなこともないではないわけでございますから、そういう意味で、相当の準備期間をもってこの法の周知徹底をはからなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾委員 この問題はその程度にしておきたいと思いますが、いずれにしましても、この法の施行については相当な準備期間を必要とするということは、これは明らかだろうと思うのであります。  そういうふうに考えますと、残されておる、先ほど申し上げました他の選挙制度に関する諸問題、こういうものに対する答申が年内にできまして、そしてそれを通常国会にでも提案せられる、こういうことになる可能性ありとしまするならば、せっかく取り急いでお出しになりました法案ではありますけれども、実際の上から申しますと、他の諸制度と歩調を合わせて実施するということになってくるのではないか、そういうような気もするのでありますが、せっかく、急ぐんだということで切り離して答申をせられましたけれども、一々答申の文章を読む必要もないと思いますが、他の制度の改善というものの一環としてこれが考えられておるわけであります。その一環として考えられておる規正法改正でありますからして、ほかの問題が解決して国会提案せられる、こういうふうなことが予想せられるとするならば、むしろ先走ってこれだけやる必要もないのじゃないか、できれば一緒にやったほうがいいのじゃないか、こうも考えられるわけでございます。しかし、これはこれから先の問題でありますから、はたしてそうなるかならないかということを、いまから自治大臣にお伺いするのもいかがであろうかと考えますけれども、実際の問題としては、格別変わった——少なくとも一環というのにはふさわしくないような答申が出されれば別であります。そうでない限りは、私は、結局同時施行というふうなことになるのではないか、また、そうなればそのほうがベターではないか、こういうふうに考えるわけであります。これはどういうふうにお考えでありましょうか。  私は、今回のこの案は、もちろん先ほどの御質問にもあり、お答えもございましたが、必ずしも他の制度の改善というものと切り離せないものではないが、現行制度のもとにおいてもこれを必要とするという認識のもとにお出しになったものと伺ってはおりますけれども、しかし、前提はあくまでも他の制度の一環として考えられておるということを考えますときには、時期が非常に変わっておるとか、あるいはその答申が、この今回の規正法答申と調子の合わないものであるとか、そういうふうな場合は別でありますけれども、現在、審議会といたしましては残った輪を検討しておるところでありますから、これが間に合えば、むしろ一緒におやりになったほうがよろしいのじゃないか、こうも思うのでありますが、これは仮定の質問ということにもなるかもしれませんが、そういうふうなことについてどんなお考えを持っていらっしゃいましょうか。
  52. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、やはりその全体の問題の一つではあるが、政治情勢上現行制度の上においてもこの程度の規制をしなければならないという御答申でありまして、私はそういう意味で、政府としては現在御提案を申し上げ、御審議を願っておる次第でございます。  もちろん、先ほどお答え申し上げましたように、選挙制度審議会におきましては、政党本位の選挙制度あるいは選挙運動について、りっぱな答申を出されるものと期待いたしております。その時期も、おそらく任期が満了するまでに出されるものと思っておりますが、特にその中で、選挙運動も含めて区制等が答申をされますと、その区制による選挙をいつの選挙からやるかというような問題もございまして、従来の例からいえば、おそらく次の総選挙あるいは参議院については次の通常選挙ということになろうかと思います。したがいまして、はたしてその施行の時期とこの政治資金規正の時期とが一致できるものかどうか、その辺のところは、まだあと答申が出ませんので、ちょっとお答えいたしかねる次第でございます。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾委員 お答えの趣旨はよくわかりました。よくわかりましたが、現在の審議会審議をしておられます問題は、これは実は非常にむずかしい問題ばかりだと思うのであります。したがって、はたしてどのような結論が出るのか、あるいはまた任期中に結論が出るのかというふうなことにつきましても、希望とは別に、実際問題としてはかなり議論の多い問題ばかり残っておるように思いますので、同時施行ということを申しますけれども、これができるかできないかという問題につきましては、これは問題があることは申し上げるまでもないことで、私もその辺はわかっておるつもりでございますが、今回の答申の趣旨の前提となっております事柄と違ったような形のものが、答申としてかりにあらわれたということがあった場合におきましては、今度の答申はその一環であるとこう言っておるのが、その一環でなくなってしまう。こうなりますと、この規正法そのものについて再検討せられる必要があるいは生じはしないか、こう思うのでありますが、どんなものでしょうか。
  54. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まあ第三次、第四次と、選挙区制を含めた選挙運動その他選挙制度全般についての御審議をいただいて、その中間報告がされておるわけでございます。私考えまするのに、この今回の四月七日の答申と非常に背反しておるような答申を出されるおそれはないというふうに考えております。当然その政治資金規正もあり、一方においては金のかからぬ選挙と申しますか、政党本位の選挙制度というものを、よりよき姿にして答申されるのでなかろうかと考えておる次第でございます。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私もそのことを希望するわけでありますが、しかし、実際の問題として、かりに例をあげて言えば、小選挙区制であるとか、あるいは小選挙区に比例代表制を加味した案であるとか、あるいは中選挙区に何とかというむずかしい名前の案であるとか、このような案が現実の問題として、結論が簡単に得られるものかどうか。少なくとも今回の政治資金規正の中で、寄付に対する制限と、また金のかからない選挙をやるべしというような考えを成り立たせますためには、また、そのような考えのもとに規正法改正が行なわれたといたしまするならば、これに相応した選挙制度にならなければならぬと思うのであります。私が先ほど申し上げましたのは、もしそうでなかったらこの規正法前提がくずれてきはしないか、そういう意味で実は伺ったのであります。大臣とともに私も、せっかくの規正法答申でありますから、これがほんとうに一環となり得るような制度改正というものを期待いたしておるものでありますが、事実はなかなかそう簡単でもなさそうに私は思います。この点は、その程度にとどめておきます。  そこで、法案について若干伺ってみたいと思うのでありますが、政治資金規正法目的は、いまさら申し上げるまでもないことであります。規正という字が示しておるように、どちらかといえば消極的な性質を持っておるものだろうと思うのであります。政治活動の公明とか、あるいは選挙の公正とか、民主政治の健全な発達をはかること、こういうことが目的となっておるようでありますが、この目的を達する手段として、政治資金法の果たす役割りはどの程度のものかというところに、一つ問題がありはしないかと思うのであります。今度の取り急いで答申をお出しになりました委員の皆さん方のお気持ちはよくわかります、昨年来いろいろ不祥な事件も発生したことでもありますし、国民の政界に対する、あるいは政党に対する、政治家に対する疑惑、不信も高まっておることでありますから、急いで出し、そして政界の浄化をはかっていこうというその気持ちにつきましては全く同感であります。全く同感でありますけれども、ただ、その手段として、政治資金規正法改正という手段が、私は万能薬じゃないと思うのであります。必ずしもこれだけで問題が解決するものとは思わないのでありまして、むしろ、現に審議せられておる選挙制度一般についての制度的な改善も、その大きな役割りを果たすものと考えます。また、そういった方面でなくて、学校教育あるいは社会教育、こういうような面を通じての啓蒙的な施策というものも、お互いにあわせて考えていかなければならぬ問題だと思います。同時に、お互いに政界に籍を置いておる者が、きびしい自己反省をしなければならぬということは、これは言うまでもないことであります。この政治家の自粛、政党の自己反省、あるいは政治の倫理化、こういうふうなものが進んでまいりませんと、私は政界の浄化ということはなかなか実現しにくい問題じゃないかと思います。佐藤総理も、昨年のあの状況に対しまして、長い間の病弊だ、こういうことばをもって言われたわけであります。長い間の病弊でありますだけに、これを直すということは、実はそう簡単ではないと思うのであります。これを直すために、第一に出されたのが今回の政治資金改正法であります。  私は、ただいまの政界の病弊というか、この病気に対しましては、まるきり効果がないというふうなことを申し上げるつもりはありません。ありませんけれども、必ずしも名医の名処方とは考えられない。もっとうまい処方を出してほしかった、こういうふうに思うのは、実はあの答申を拝見しましたときの私の偽らざる感想であります。こういうふうな処方によってどれだけ政界の浄化が確保されるであろうか。その内容とするところは、要するに金さえ持たさなければそれでいいんだ、金をやるからおかしなことになるんだ、こういうまことに明快単純な考え方であります。考え方はきわめて明快単純であるけれども、処方としては、まことに失礼ながらいい処分をなさったことは実は考えられない、そういう気持ちがいたしております。これは私の気持ちでありますから、特に大臣の感想を伺おうとも思いませんけれども、問題は、このような規正の方法だけで政界の浄化を期待するということは困難である。むしろこの規正法によりましていろいろやかましい規定が設けられてきておる、そして罰則までついておる、選挙制度その他には何らの変化もない、こういうもとで今後の政治活動ないし選挙運動が行なわれるということになりますと、はなはだ言いにくいことでありますけれども、かえって妙な事件が事実においてはもっと多くなってきやしないか、こういうふうな心配もしないではありません。お互い選挙をやる者といたしましては、選挙に臨みますというと夢中になってくるのです。目的を達するためには何でもやりたい、こういう気持ちになりがちなものであります。それが、ほかの点について何ら触れることがなくて、資金の点だけ押えていくということになりますと、結果はどうなるかというに、はなはだ言いにくい、残念なことじゃありますけれども、私は、非常にそこに問題点が伏在しておりはしないかという心持ちもいたします。  それからまたいろいろ規制がやかましくなってまいりまして、しかもその規制が行なわれないということになれば、いわゆるざる法であります。先ほど松野君も言われましたが、まことに不明朗きわまる、しかも効果のないざる法をつくってしまった、こういうことになってくるわけでありますが、またその規制を効果あらしめるためには、もちろん個々人があるいは政党が自粛自戒しなければならぬことは、いまさら言うまでもないことでありますけれども、お役所のほうで、やはり法の施行についての責任上、その実情というものを見ていかなければならぬ。見ていかなければならぬと言えばきわめて穏やかなことばでありますが、政界の政治活動というものに対して、いわゆるお役所の諸君があちらこちらに口を出してくる、あるいは介入してくる、こういう事態も、熱心におやりになればそういうことになってくる。その結果、政界というもの、あるいは政治活動というものを、もっと伸び伸びした明朗なものでありたいけれども、かえって暗いものにしてしまいはしないか、そういうことを実はおそれておる。この辺にも、この法律の施行に関連いたしまして考えなければならぬ問題点がありはしないか、私はこういうふうな気持ちがいたしておるということを、問題点として申し上げておきたいと思うのであります。
  56. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘のように、政治資金規正しただけで政界の浄化ができるとは私も考えないのでございまして、根本的には国民政治意識の向上、あるいは政党関係者、政治家等の自粛と申しますか、また選挙制度自身のよりよき制度への移行というようなものが全部そろわなければ、なかなかやりにくいことだと思います。しかし今回、昨年来の政界の事情等からいたしまして、あのような答申が出されましたので、現制度におきましてもあの程度の規制はやむを得ないのではないかとして御提案申し上、げた次第でございます。元来、政治資金というものはみずからが規制していくべきもので、外から規制するというのは確かに恥かしい話でございます。ただ、現状としてはこのようなことでございまして、この程度の規制をいたすことにいたしました。したがって、そのルールを担保するために罰則等もつけてありますが、私どもの気持ちといたしましては、どこまでもそれは寄付する方々、寄付を受ける方々の良識、常識に待つべきものであって、一部には、この制度の中に監査制度あるいは調査制度のようなものを持ち込まなければ、実効はあげられないではないかという御意見もございますけれども、私どもはそれをとらなかった次第でございます。したがいまして、これを担保するために警察等がいろいろと立ち回るとか、そのようなことは絶対にいたさないつもりでございます。私も実は心配をいたしますのは、こういう制度のもとにおいて、あるいは密告であるとか告発騒ぎであるとかというようなことが行なわれて、政治を暗いものにしてはたいへんだと思いますので、先ほども申し上げましたように、十分この法律の趣旨を各方面に徹底いたしまして、そうしてみずからの良識に従って、このルールにはずれないような行動をとっていただくように、国民一般努力をしていただくよう、われわれも注意をしてまいりたいと考える次第でございます。
  57. 灘尾弘吉

    灘尾委員 続いて伺いたいのでありますが、今度の資金規正法では、いわゆる選挙だけでなくて、一般政治活動資金的に規制を受けるわけであります。広い意味でいえば、政党政治活動はすべて選挙に通ずるということもいえると思いますけれども、しかし、政党政治活動を、常に具体の選挙運動と同じように見るべきものではないと私は思うのです。主義主張を普及、徹底させることは、どの政党といえども、政治を志すものの集団といたしまして、当然積極的な努力をなすべきであろうと思うのであります。各政党主義主張、政策、こういったものを国民によくわかってもらいますために積極的な努力をする、そういう意味政治活動と、総選挙における勝敗のための運動と同一視すべきものではないと思います。いわんや政党以外の政治団体につきましては、純粋に政治上の主義主張のための活動もあり得るのであります。普通の意味選挙運動につきましては、総理もしばしば言われておりますように、金のかからない選挙を望まない人は一人もいないと思うのであります。ことに、現行法上各候補者のひとしくこの点は熱望するところであります。しかしながら、そうでない広い意味政党の常時不断の政治活動につきましては、現状でもってはたして十分であると考えるべきものであるかどうか。私は率直に申し上げますれば、他の政党のことをかれこれ申し上げるのじゃございませんけれども、少なくとも私の所属政党のことを考えましたときに、政治活動としてもっともっとなすべきことがたくさんあるように思うのであります。そういう意味から申しますというと、現在の政治資金の何倍も何十倍もほしいという気持ちがするのであります。今度の審議会におかれましても、いろいろ政党の台所についてはお調べになったようにも思うのであります。この程度でやっていけるかいけないかというような角度で御検討なさったようでありますけれども、私はそういう意味から申しますというと、現状でもって満足すべき状態にはない、何とかかんとかかろうじてやりくりはしましても、ほんとうのところをいえば、もっともっと豊富な、潤沢な資金を持って、どの政党も活発な政治活動を展開してよろしいのじゃないか。  そういうふうな観点からいたしますというと、どうも今回の法律案におきまして、新たに寄付制限を設けて、しかもその金額について、あるいは二千万円とか一千万円とか、あるいは五十万円とか、いうふうな数字をもって限度を設けられたということについて、納得しかねるものが実はあるのであります。もとより政治家個人のことを考えましたときには、その政治資金と称するものが、あるいはりっぱな邸宅となり、あるいはぜいたくな生活となり、あるいは不動産を買ったとかいうようなことに使われるということはあるかもしれませんが、それは言語道断だと私は思うのであります。  しかし、まじめな意味の政策に関する勉強でありますとか、政策に関する啓発、宣伝の仕事をやってまいりますとか、こういうことは、個々の政治家といえども大いにやってよろしい。いわんや政党ともなればもっと活発にやりまして、全国民政治に対する関心を高めていく、あるいは意識を向上さしていく、こういうことに貢献していくべきじゃないか。そういうふうに思いますので、どうも資金制限につきまして、いろいろ御苦心の点はあったかと思いますけれども、何となく釈然としないものが実はある、私はこういうふうに思っておるようなわけであります。  また、政治資金に対して限界を設ける、ことに、政党政治資金に対して寄付の限度を設けるということについては、先ほど松野君もいろいろお聞きになっておるので、特に申し上げることもございませんけれども、寄付金が多いか少ないかという問題と政界の浄化という問題とは、必ずしも必然的な結びつきはない。考えようによれば、むしろ小規模なところに、あるいは警戒をしなければならぬ問題も少なからずあるのじゃないか。寄付金が多いから、あるいは大会社からたいへんな寄付を受けたからということをもって、直ちにそれが政界の浄化と結びつく必然性はないというふうにも私は思うのであります。この点は意見にわたることになりますので、あえて御答弁をわずらわそうとは存じませんけれども、この限界をどう設けるか、設ける必要があるのかということは、一つの大きな問題点だということを指摘しておきたいと思うのであります。何か政治活動はいつも不純な金でまかなわれるというような考え方は、あまりにも独断に過ぎると思う。この答申案が特に急がれたということは、それがいかにもムード的あるいは感情的なものをむしろ感ずるわけでございますけれども、最初に申しましたように、私はもっと政治活動の健全な育成、発展をはかるためということを大きくお考えを願えますならば、今回の答申ないしはこれによる法律案は、問題解決についての必ずしも適切な処方せんとは言いがたいということを、繰り返して申し上げておきたいと思うのであります。政界の浄化は大いにやるべきであります。しかし、その方法はいろいろある。まずい処方せんからまず出発するということがはたしていいのか悪いのか、こういう点につきましても、なお納得しかねるものがあるということを申し上げておきたいと思うのであります。  関連質問のことでありますので、また次に手ぐすね引いて質問をなさる方がいらっしゃるわけでございますから、この辺で私は切り上げたいと実は思っておりますが、一、二聞いておきたいと思いますことは、一つ個人寄付についての制限の問題であります。悪いことをすればこれを取り締まることは当然でありますけれども、個人の財産権というものを尊重して考えますれば、個人が自分の財産をもって自分の支持する政党に対する献金、こういう問題についてなぜ一体これに限度を設けなければならないのか、あるいはまた、長い間非常に親しみを持ち支持をしてまいりました政党の発展をはかるために、最後の機会に相当な寄付でも残しておこう、こういうような場合に、それを制限する理由が一体どこにあるのか、こういうことも問題点としてわれわれはあるのじゃないかと思う。自分の財産をどういうふうに処分しようと、それが公共の福祉に反するなら別であります。しかし、公党に寄付する場合に、これが公共の福祉と何の関係があるか、むしろ公共の福祉からいっても望ましいことである、こう申しても差しつかえないものが制限せられるということになりますと、議論のしようによってはかなりむずかしい問題じゃなかろうか、こうも思います。そういう点を私は少なくとも問題としておるという点を、一応申し上げておきたいと思うのであります。  それからいま一つ、飛び飛びになって恐縮でありますが、あまり時間をかけてもいけませんのではしょって申し上げておきたいと思うのです。この法律案の中に労働組合あるいは職員団体というものの寄付の問題がございます。それについてお伺いをしたいと思うのでありますが、現在の国家公務員法ないしは人事院規則によりますと、特定の候補者を支持するとか援助するとかいうような場合の公務員のお金の取り扱いにつきましては、制限を受けておるように思うのであります。もとより個々の公務員が自分のポケットからだれに寄付しようと、それは問題にはならぬと思うのであります。資金カンパというふうなものが公務員の間に行なわれるということになりますれば、人事院規則との関係は一体どういうことになるであろうか。あるいはまたそういう公務員をもって組織いたしております職員団体において、特定の政党ないしは特定の候補者に対する資金の援助をするというふうな場合の決定という問題について、何ら差しさわりはないものであるのかどうなのかということに若干の疑問があります。これはひとつ教えていただきたいと思うのであります。
  58. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 第一の個人寄付制限するのはおかしいではないかというのは、一つの御議論であろうと思います。選挙制度審議会の思想の中には、政党は党費と個人寄付でまかなうべきだということがずっと流れておりますので、そういう意味からすれば、個人寄付制限するのはおかしいではないかという御議論は、私は成り立つものと考えるわけでございます。ただ、一人の個人があまりにばく大な寄付をするということが、場合によって政党への何らかの請託になるというようなおそれもありまして、あのような一千万円という制限審議会は付し、それをまた私どもも、まずまずその程度かというようなことで法案に入れたわけでございます。  第二のお尋ねの公務員に関するものでございますが、御承知のように、国家公務員法及び人事院規則並びに地方公務員法等におきましては、特定の政党あるいは特定の候補者に対しての寄付集めを個人がやることはいけないというので禁止されております。ただ、公務員が結成しておる団体そのものについては、何らの制限が現在の法律上はないわけでございますので、職員団体が特定の政党寄付をするというようなことにつきましては、これは現在の法律上は禁止されておらないわけでございます。もちろん諸外国の立法例にありますように、労働組合寄付をしてはならぬというようなことをやっておるところもございまして、はたして労働組合あるいは職員団体が特定の政党寄付をするということがいいか悪いかという御批判の問題は別にあろうと思いますが、現在の法律上は、公務員が結成しておる職員団体そのものが寄付をすることについての禁止はないわけでございます。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾委員 お答えはわかりましたが、多少の疑問は残ると思うのであります。と申しますのは、個人ならばやってはいけないことが一つ団体になればやっていける、しかも、その世話をやく人も国家公務員である、こういうふうな場合に、国家公務員法上の規制とこの政治資金規正法における規制というものと一体どちらが優先するのかということについては、なお検討を要する問題があるのじゃなかろうかと、若干の疑問を残さざるを得ないのでありますが、これ以上申し上げるつもりもございません。  そのほか尋ねればいろいろございますけれども、この辺でひとつやめようと存じますが、最後に、希望と同時にお伺いいたしたいのでありますが、先ほど来申しましたように、へたなことをやると政界が暗くなる、かえって悪質な行為というものがふえてくるというようなおそれもないではございませんし、また、連座規定の強化も御趣旨はけっこうだと思いますけれども、同居する親族、家族に対する推定の規定があります。推定ということになると反証はこちらがあげなくちゃならぬということになるのであります。それはそれでよろしいようでありますけれども、事件の種にはなるのであります。こういう規定を置くことによってまたいろいろな事件が起こってくる。つまり、事件を多くしていくという危険は私は確かにあると思う。また反証をあげるということも、それほど楽なことじゃないと存じます。かれこれ考えまして、いわゆる乱訴の弊におちいらぬように願いたいと思うのであります。  最後に、今回のこの法案審議にあたりましては、いつもと違ってまず与党が長々と質問をいたしておる、こういう状況でございますが、この問題については総理大臣も、この案については国会の場において大いに論議してほしい、こうおっしゃった。これは、ただ単に野党の諸君におっしゃったおことばとは受け取っておらないのであります。われわれ自由民主党の中にもまだいろいろ議論はあるのであります。議論はありますけれども、とにかく与党でありますので、政府立場を尊重いたしまして、この法案提出についてはわれわれも異議を唱えなかったわけでございます。しかし、国会の場においては十分論議をさしていただく機会が与えられるということで、実はこの法案提出を賛成したようなわけでございます。そういうことでございますので、いろいろわれわれも実は聞きにくいのでありますが、そういうふうなことで、問題が重大であるだけに真剣にみな心配もし論議もいたしておるところであります。これはあるいは御返答がいただけるかどうかわかりませんけれども、そういうたてまえのもとにこの法律案政府提出ということに与党も賛成いたしておるわけであります。政府はもちろん原案のすみやかなる成立を希望していらっしゃることは、これは当然のことだと存じますけれども、国会の場において大いに論議してよろしい、こういうことを前提として考えまするならば、私どものみならず野党の諸君にもいろいろ御意見もあろうと思う。いろいろ論議をしました結果、よりよき道が発見せられる、こういうふうなことでありました場合には、政府は原案を固執することなく、この原案に対する修正に応ずるようなお気持ちがあるかどうか。しかし、これはあるということもなかなかおっしゃりにくい問題だとは思いますけれども、私どもは願わくはそういうベターなものにする、あるいはもっと現実の政治に適合したものにするという意味において、何らかの成案ができ上がりましたときには政府と御相談をしてみたい、こういう気持ちであるということを申し上げ、お答えが願えるものならお答えをいただきますが、もしお答えにくければそれでよろしゅうございます。  この辺で私の質疑は打ち切ります。
  60. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 最初にお述べになりました、この法律等によりまして非常に政治が暗くなるようなことがあってはならぬ。これは私もまず第一に考えなければならないことでありまして、いやしくも官憲が一々立ち入るというようなことで政治を暗くするような、あるいは警察国家といわれるようなことのないように、いまから十分戒心をしてまいりたいと考えております。  こういう性質の法律案でございますので、特に国会議員の皆さま方に直接関係のある法律案でございます。したがいまして、政府はこれを最善として出しましたけれども、よりよき案が得られますならば、決して原案を固執するものではございません。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾委員 終わります。
  62. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 次に高橋英吉君。
  63. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 同僚の松野灘尾両君からいろいろ該博な達識の一部しかまだ表明されていませんが、あとがだいぶ残るらしいので、こういうふうな重大問題ですから、あれを思い、これを思うとなかなか時間を食うものであると心ひそかに心配しておるわけです。したがって、私はなるべく与党の一員として政府案の可及的すみやかな成立を望みますから、できる限りスピードアップしまして簡単に質問をいたしたいと思いまするけれども、生来愚鈍ですし、くどいほうですから勢い長くなるかもしれませんが、島上さんはじめ昔からの盟友ですからあまりやじを飛ばさぬようにして、ひとつ静かに質問さしていただきたいと思います。  先ほど松野議員からの質問の中で、答申案の問題について、これはまあ理想案だというふうなお話がありました。私もいま御注意がありましたように極力重複を避けてお聞きしたいと思いまするけれども、先ほど言ったように愚鈍ですから勢い重複しまするけれども、観点も違いまするし、またいろいろ表現も違いまするから、ひとつお許しを願いたいと思いまするが、理想案というふうに言われましたけれど、私はそうは思わない。この政治資金規制なんかというものは、大体これはあるべきものではない、ほんとうの姿ではないと思う。何かこういう問題については、ただきびしくさえすれば、それが罰則が重いとか取り締まりの規則が重いとかいうことになればそれが理想案であって、それが正しい姿であるというふうに聞こえるようなそれぞれの報道、問答があるようですけれども、私はそうは思わない。理想案といえば、結局この複雑な人類社会においていろいろの条件があるわけですから、そういうふうな条件を勘案して総合的に現実に最も即した立法、そういう規制、取り締まり、そういうものをすることこそほんとうの理想案だと思うわけなんです。したがって、現在の実情にそぐわない、現実にそぐわないような案とすれば、それは理想案じゃない、空想案じゃないかというふうにも思いますが、しかし空想案にもならないと思うのですが、大体政治とか政治資金とか政治活動とか選挙活動なんかというものは、これはほんとうは自由濶達であるべきであって、規制するというのは間違った姿なんですから、ただきびしくすること、より罰則を重くすること、取り締まりをひどくすること、それが理想案に近いんだというふうな考え方は非常に間違っていると私は思います。したがって、もし答申案理想案というふうなことになり、現実に即した最善のものであるとするならば、ベストのものとするならば、これはわれわれ双手をあげて賛成をいたします。いわゆるうのみにしても差しつかえないと思いますが、政府のほうは答申案を尊重しなければいかないという立場におられるわけですから、むろん尊重に尊重を重ぬてこの案を出されたと思います。大骨、小骨が抜かれておるとか抜かれぬとかいうふうな問題はありまするけれども、一番大骨である寄付額の制限、これらは少しも手直しがされていない。決してこれは理想的なものではないとは私ども思う。いろいろ議論はあると思うけれども、政府はこの一番大きな柱、大骨をそのまま土台にして、そしてこの立案をされている。そういうぐあいですから、多少答申案と違っておっても、必ずしもこれは答申案から後退したとか、答申案よりより悪いとかいうふうなことは言い得ないと思います。選挙制度審議会の方々はわれわれ国の最高機関のメンバーの人々よりもより学識経験において優秀な人ばかりであるとは思います。思いますが、しかし、われわれとしましても、国民から選良としてこういうふうに国利民福のために寝食を忘れて働いておる者でございまするからいろいろいい知恵も出ます。したがって、この答申案というもの、これは尊重はしなければならないけれども、うのみにするということは、これはわれわれの職責にも反することにもなりまするし、われわれの使命にも反することになりまするし、政府としても、またこれはうのみというわけにはいかないのではないかと思いまするが、尊重とうのみというものはどの程度違うのか、それをひとつ御答弁願いたいと思います。
  64. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 尊重というのは、その答申内容につきまして、そのねらいとしておるところを忠実に法文化するということであろうかと思います。いま御指摘のように、たとえば寄付制限というのは、あの答申の中でもほんとうに柱に立てておるところでございまして、そういうものはその趣旨を忠実に法文化したというふうに私は考えておるのでございます。また答申の案文につきましては、意を尽くしておられないところもございますし、あるいはこれに準ずるというようなことばで言われております。そういうものは、さらに法律の形として十分受け取れるように手直しをすると申しますか、説明を加えるということは、これは当然政府としてやらなければならないことだと思います。また、ときに罰則のつくものにつきましては、やはりその犯罪構成要件を確実にするために相当詳細な表現をしなければなりませんので、そういう点におきましては、答申で簡単に言っておられることも、法文にすれば、相当長い説明のついた法文になるということもあるのでございまして、答申尊重というのは、ただうのみにするということではないと私も存じます。
  65. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 よくわかりましたが、しかし、いろいろなことを言われまするから、その点、尊重はうのみに反するといいますか、とにかくうのみと尊重とは違うのだということを明瞭に言っていただきたいと思います。大体この法案は、先ほどからたびたび話があったようでございますが、ほんとうにわれわれからいたしますると、屈辱にたえないという法案、不名誉きわまる法案なんです。したがって、本来いえば、こういう法案は、選挙活動の問題や政治活動の問題、政治資金の問題なんかは、自分自身を律するために議員立法というものが本来であるのではないかと思います。資金規正法なんというもののほんとうの姿というもりは、もし必要であればこれは議員立法でやるべきであって、他から強制されてこういう法律をつくるということ、これはほんとうにわれわれの恥辱だと思うのでございます。したがって、本来なれば議員立法でありますがゆえに、たとえその答申案が出ましょうとも、政府がそれを尊重して立案されましょうとも、本質的においては議員立法が正しい姿であるというふうなことになりまする以上、われわれは慎重審議をして、時間の限りを尽くして、徹底的にこういうふうな重大問題——  非常な難問題がたくさんあると思います。  見渡すところ、法務省のほうからおいでになりませんが、たぶん私の質問が長くなって、法務関係の罰則関係とか、法務省関係のほうはあとになるから、きょうは間に合わぬというふうに御遠慮されたんじゃないかと思いまするが、この罰則一つ一つ取り上げましても、これはたいへんな問題を含んでおります。労働組合活動でも何でも非常にお困りになることがたくさんあると思います。非常に抽象的なことばで、もし警察権や検察権の乱用があるということになったら、たいへんな問題になってくる。警察国家とか検察ファッショとかいうふうな問題が起こってまいりまして、とにかくたいへんな暗い政治、暗い国になるというふうなおそれがあるのでございます。そういうふうな関係で、私は議員立法の本質から、議員立法的にわれわれの英知を傾けて、総知を傾けて審議すべきであると思いますので、極力時間がほしい。したがって、政府のほうでは、あまりこれの成立をお急ぎにならないほうがいい。今国会でむろん成立させなければという努力を私どもいたしまするけれども、あんまり無理をなさらないほうがいいと思いますが、政府のほうのお考えはいかがですか。
  66. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 提案を申し上げたので、ぜひ慎重審議はしていただきたいのでございますが、政府としては、すみやかに御可決あらんことをお願いいたしておる気持ちには変わりございません。ただ、先ほども灘尾さんに申し上げましたが、こういう性質の法律案は、特に国会議員の方々に重大な関係のあるものでございまして、これは議員立法にすべきだというような御趣旨もその辺から起こっておることと思いまして、十分御論議を尽くしていただきまして、私どもといたしましても答申を尊重して、最善の案とは考えておりますが、よりよき案がありますれば決して原案に固執するわけではございませんことを申し上げておきます。
  67. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 逐条審議的にいろいろ質問いたします場合に、詳しくお尋ねしたいと思いますが、たとえば本質的の問題になりますと、寄付は、大体先ほど松野さんが言われたように美事善行であって、表彰ものであるというふうなことになるわけです。したがって教育機関とか、むろん学校とか病院とか赤十字とか社会事業とか、そういうふうなものには寄付制限がないというふうなことになっておると思いますが、制限のある寄付がありましょうか、その点お伺いしたいと思います。局長からでもいいです。
  68. 降矢敬義

    降矢政府委員 学校や慈善事業の関係について、特に寄付制限があるということは承知しておりません。
  69. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 学校や赤十字や慈善事業なんかの団体寄付するのは制限がないのに、古いことばで言えば、国利民福を目標、理想としておる政党、一番国で大事な政党その他政治関係者に対する寄付というものが制限されなければならないというふうな根本的な理由ですね。まあ、わからぬことはありません。それはいろいろな弊害が生じたというふうなことではありますが、しかしそれほどまで、寄付の額を制限しなければならないほど、この政党とか政治家は悪いことをする団体や悪いことをする人々の集まりであるというふうなことをお考えになっておるかどうか、この点をどうかひとつ。
  70. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党は善なるものだと私は考えておるのでございます。むしろ相当公共性の高いものであるというふうに考えております。今回の寄付制限につきましては、従来のいろいろな政治情勢からいたしまして、あまり身分不相応な寄付というものが弊害をもたらすおそれありとして、まあ二千万円という限度についてはいろいろ御議論がありましょうけれども、従来の実績等を見て二千万円という答申をいただいたわけでございます。しかし、これは先ほどもお答え申し上げましたが、一会社寄付する限度は最高二千万円でございますが、受ける政党については何らその総額の制限はいたしていないわけでございます。先ほど灘尾さんが政治活動には金がかかる、なるほどさようであろうと思います。六千万に近い有権者にはがき一枚出しましても四億以上もかかるわけでございますから、そういうことでございまして、この答申そのものも決して政党を悪いものだ、政治家が悪いんだという思想ではない。ただ一方、寄付する側を考えてみまして、身分不相応な寄付をするときにあるいは請託が行なわれ、その他の問題を起こす。そういう趣旨であったと私は理解をいたしておる次第でございます。
  71. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 身分不相応の寄付金額というふうなことですが、結局、本質論から出発していきますと、私はそれは納得できないのでございまして、それなら慈善事業だろうと、学校へ寄付するのを、身分不相応だからこれ以上寄付しちゃいかぬというふうなことにはならないと思います。政党関係でいえば、これはまたいずれあとから申し上げますが、たとえばわれわれの自民党にいたしましても、いまの本部が建たない前はなかなか会合をするのに金がかかるから会合ができにくかった。ところが本部ができて部屋ができたものですから、毎朝八時半からの朝飯会の研究会、ほんとうにみんな朝早くからよく勉強されると思って私も感心しておりますが、そういう会合が私一人だけでも、各議員一人だけでも二つや三つ重なるくらいの勉強ぶりです。これはとても本部が建設されない前には想像もできなかったような勉強ができておるわけです。お金が要らずにできておるわけです。そういうふうなので、政党に必要な金というものには制限はないと思うわけなんです。先ほどこういう話があったのですが、政党運営というものは党費や会費が主になるものであって、それだけで運営するのが正しいんだというふうなお話がありましたが、これはどうも私は納得できない。私が参りました学校の例ですが、たとえばスタンフォード大学なんというのは千万坪からあって、その土地の相当の部分を人に貸して、その基本的な財産から収入がある。経営はどうしておるかというと、授業料によって三分の一、それから寄付によって三分の一、その基本的財産の収入によって三分の一、これで運営をしておるのでございまして、学校なんかも寄付というものを非常に重視しております。私はロックフェラー財団から招聘を受けてアメリカの各大学を見学して回ったのですが、その際にロックフェラーのほうの要望は、どうしても学校をよくするのにはお金のある人から寄付をしてもらわなければいけないんだ、その寄付をするのについて免税をしてもらうことが一番大事なので、アメリカも一番これが問題で、それを免税をしておるので、どんどん寄付が高まってきておるというふうな話で、われわれも帰りましてから、免税問題に対していろいろ私学の関係なんかで特に大蔵省と関係を持って交渉するのですけれども、なかなかかたい頭で承知してくれませんが、近ごろやや道が開けたのは同慶にたえないと思っております。そういうぐあいで、寄付基本的財産の収入、それから授業料というのと同じように、党を党費だけでまかなうということはとうてい不可能なんですから、ほんとうにちょっと大臣が言われたように、公共的使命を帯びておるところの神聖厳粛なる政党運営について、要るだけの金はこれは寄付してもらっても差しつかえないというのが基本的なもの。しかし、いろいろな弊害が起これば、それは規制しなければいかぬと思いますが、先ほど松野さんが申し上げましたように、政党として間違いを起こしたことはないはずなんです。したがって、この政党運営は党費だけを主とするというか、党費だけでやるのが理想的な姿であるということは、これは間違っておるんじゃないかどうか、この点をお尋ねいたします。
  72. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 選挙制度審議会委員の皆さま方の頭には、政党は党費と個人寄付でまかなわれるべきことが理想の姿だというお考えが強く動いておるように思います。ただ私は、会社といえども社会の一員として活動しておる。そうして会社の将来の運命は政治によって支配されるということを考えますと、その会社政党寄付するということ、これは禁じなければならないという根拠はないように私も考えておるわけでございます。
  73. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 政党が従来スキャンダルを起こしたことはない、黒い霧に包まれたことはないのすでが、政治家個々については多少いろいろ問題があって、結局今日の問題に立ち至っておるのですが、しかし、大部分の政治家というものはそういう人たちばかりではないというふうに私は思うのです。私どもの体験からいきますと、知っている限りにおきましては、政治家というものは金の点についてはいわゆる通過駅であって終着駅ではない。どのくらい入るかは別問題として、社会党の人たちはあるいは入るかもしれませんけれども、しかしそれは通過駅ですから、終着駅ではないのですから自分の身にはつかない。結局取り次ぎ役にすぎないというふうな状態で、産をなしているというような者ははなはだ少ない。昔から井戸べいというようなのが一つ政治家の姿であったでしょうが、いまは井戸べいどころじゃないというふうな人もありましょう。しかし、ほんとうに政治のために産をなしたという人はないと思いますが、事業をやったりいろいろして、それで利潤を得られた方は産を残した方もあるかもしれませんけれども、要するに、政治家なるものはあまり現在の選挙制度といいますか、選挙制度といいますか、個人本位の選挙でありますがために、平素の選挙地盤の活動関係、後援会活動といいますか、そういうものを封じるとか、今度の寄付禁止の問題もそこからつながってくるわけで、選挙制度をいじらずに寄付禁止をするというのは冠履転倒だと思いますけれども、寄付禁止の全面的全体的禁止は私はあとから申し上げますが、これはまず大賛成です。制限的な寄付禁止というものは中途はんぱで私のとらざるところだという議論はいずれは展開いたします。しますけれども、要するに現在でも政治家はあまりに平素の政治活動選挙活動で金がかかるので、通過駅的な存在で終着駅の存在でない。すなわち、金はたまらぬ立場にあるということを大臣知っておりますかおりませんか。
  74. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 平素の選挙活動選挙活動と申しますか政治活動、これは先ほど申しましたように、ほんとうに自分の政党なり自分の主義主張なりを選挙民に周知徹底することにおきましてはある程度の金のかかることは私もさようであると考えます。したがいまして、通過駅とおっしゃいましたが、とにかく政治家個人政治献金を受ける、それはそうした政治活動に使われておるという事実はいなめないところであろうと考えております。
  75. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 先ほどの質問にもありましたが、いずれまた逐条的にも質問したいと思いますが、この取り締まり規正法というものが強化されればされるほど、先ほど申しましたような警察国家といいますか、検察ファッショといいますか、そういうふうな弊害が生ずるおそれがあるということはこれは十分考えられることでございます。先ほど大臣は、そういう非常識なことをするようなことはなかろうということでございますが、法律ができた以上は、立法の趣旨いかんに関せず、現場関係においては極端な法律解釈が行なわれて、極端な法律の乱用が盛んであることはこれはもう周知の事実でございます。いずれこれはあとから、後援会活動やそのほかで私はこの前小委員長となりまして後援会活動なんかの選挙改正ができたのでございますが、これが私自身の体験においてもその立法の趣旨どおりに行なわれておらない。末端に行ったらほんとうにわれわれから見ると立法の趣旨をじゅうりんし、立法の趣旨を拡大解釈し、そして権力の乱用とも思われるような、そういうふうな行き過ぎもあるのでありまして、したがって、ここで大臣や上つ方の人たちだけが保障されたところで、現場まではたしてこれが徹底するかどうかわからない。わからないじゃない、徹底しないわけなんですから、万一現場へ行ってもそういうことのないようにわれわれは慎重に対策を練らなければならないのでございますが、大体その取り締まり規正によっていろいろな問題が起こってくるのですが、それがほんとうかどうか、届け出の額がほんとうかどうか、届け出の名義人がほんとうの人であるかどうか、匿名人であるかどうかとか、いろいろな点がここにあらわれてくるのですが、これを調べるのにどういう調べ方をせられるのであるか。届け出を一応信用されて——一応じゃない、それを絶対的に信用されて、それ以上警察とか検察庁の手によってそういう捜査をせられないのかどうか、その点についての御確答を願いたいと思います。
  76. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどもお答え申し上げたように、この政治資金規正法改正にからんで官庁による調査権というようなものを置かなければ実効があがらないじゃないかというような御議論もありました。しかし私どもは、これはやはり政治資金規正法という本質から考えて、寄付される方、寄付を受ける方々の良識にまつべきものであって、しかもこの届け出には真実を記載した旨の宣誓書も載っておるわけでございますから、報告書は正しく記載されているものと見ておるわけでございます。ただ明らかな数字の間違いであるとか、そういうものについてのある程度の是正措置はいたしますが、根本的には正しく報告されたものという前提に立ってものを見てまいりたいと考えております。
  77. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 一応大臣の御答弁は了解しますが、いずれ逐条審議のときにまた詳しくそれぞれの関係大臣その他からお聞きしたいと思いますので、問題を変えてお聞きいたしたいと思います。  この選挙制度改正とか、要するに政治活動選挙活動の問題について最も急を要するものとしてこの政治資金の問題が取り上げられたということになっておって、われわれはもう早急にこれを成立せしめて政界の浄化をはからなければいかぬというふうなことを言われておるのですが、これよりももっと先に解決しなければいけない問題、先決問題があるのではないか、これなくしてこれを急いでやったところで、それは本末転倒のそしりを免れることができないのではないかというふうな気がいたします問題が一つある。これは先ほどからたびたび論議されましたので重複するかもしれませんけれども、選挙区制の問題ですが、これのほうが重要だと思います。いろいろ答申案も出ましたが、しかし最も急を要するものとして、第四次ですか、答申になった区制の問題、これは中間報告ということにはなっておるけれども、しかしあの中間報告の形は、あまり摩擦を多くしないためにああいう形をとっただけのことであって、本質的にはそれが最終報告、最終答申だと考えてもいいわけです。これが先になされておるということは、この区制の問題が大事であって、われわれがこれから展開しまする議論もそこから出発するのですが、区制のほうが大事で、これが根本的の問題であって、あとは枝葉の問題であるというふうなそういう考え方、車の両輪どころじゃない、幹と枝葉との違いがあるというふうな考え方であの区制の問題が先に答申されたのではないか。この区制問題が解決しなければ、こういうふうな枝葉の問題を解決しても政界浄化には少しも役立たないというふうな考え方も持っておりますが、大臣はどうお考えですか。
  78. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党本位の選挙制度と申しますか、それには当然区制の問題が入ってくるわけでございます。いわゆる金のかからない選挙ということは、政党本位の選挙が行なわれるということだと思います。それが金がかからぬ選挙と申しますか、正しく明るい選挙につながる非常に大事な問題であることは御指摘のとおりだと思います。したがいまして、いま選挙制度審議会におきましても熱心にこの問題を討議されておるわけでございますが、ただ、先ほど来お答え申し上げておりますように、政界の昨年来の状態等から考えまして、この程度の規制はやむを得ないもの、現行制度のもとにおいてもやむを得ないものとして答申をされたわけでございまして、その答申を受けて立ったわけでございます。しかし、根本的には政党本位の選挙制度というものが確立されることが望ましいことは当然でございます。
  79. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 まことに当を得た御答弁ですが、政党本位の選挙をする場合の金のかかり方と、個人本位の選挙、これは選挙のときばかりではありません。平素の政治活動の場合でも、政党本位の政治活動をする場合、個人による講演会を通じての個人的な活動をする場合、これはおもにわれわれ自民党のあり方を言っておるわけですが、社会党や共産党の場合でもまた類推することができるわけですけれども、そういうふうな選挙政治活動のやり方、いずれがより金がかかりますかということは、答弁のうちにも御明確だと思ったのですが、重ねて念を押しますが、個人本位の選挙政党本位の選挙では、政治家個人の負担はいずれが多くかかりますか。これはわかり切ったことと思いますけれども御答弁を願いたいと思います。
  80. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党本位の選挙運動が行なわれますれば、政治家個人の負担というものは非常に軽くなるだろうと考えております。それから、もちろん現在でも、ほんとうにお金をかけないで選挙をやっていらっしゃる方々もたくさんおられるわけでございますが、個人本位の選挙政党本位の選挙と金の絶対量がどっちが多いかということは、これはこれからの金のかけ方と申しますかで比較はできませんけれども、少なくとも政党本位の選挙が行われますれば、政治家個人の負担というものは非常に軽くなるであろうことは、これは予測できることだと思います。
  81. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 政党本位の選挙個人本位の選挙の違いを、たとえばイギリスにとってみますると、前々回イギリスの総選挙のときに、私青木君とともに行って視察したわけですが、島上君もそのときに行くことになっておったのに、サボったのか、党の重要人物で外遊をさせられなかったぜいか、一緒に来てくれなかったので残念だったのですが、一緒に行ってくれれば非常に啓蒙されて、島上君もだいぶ説が変わっておったと思いますけれども、イギリスの総選挙の場合には、各個人個人候補者のポスターなんか一つもない。ポスターも日本みたいににぎやかにはない。あることはあるけれども、これは党首だけのポスターで、そうして党のスローガン、党の政策などが書いてあるものだけがあちらこちらに掲げてあるというふうなことでございまするし、それから平素の政党活動も、政党の各支部へそれぞれの選挙管理委員会から毎年選挙名簿をよこしまして、それに基づいて各党員のひまのある連中が支部に寄って打ち合わせをして、毎日毎日各方面に出かけて、おまえは労働党か、保守党か、自由党かというふうなことで個人個人に、投票するかしないかなんということを聞くわけじゃございません。労働党の政策を支持するか、保守党の政策を支持するか、自由党の政策を支持するかというので、戸別訪問をするわけです。年がら年じゅうそれをやっておるわけです。大体において一〇%か二〇%除いては、支持政党がはっきりするそうでございますけれども、しかしいろんな問題で変動がないことはない。私どもが行ったときも、スエズの問題があったときで、非常に重大問題になっておりましたので、そのせいで、従来の戸別訪問の実績が役に立たなくなったから、あらためてまた手分けして回らなきゃならないというふうに、戸別訪問を毎日毎日やっておるというふうな状態で、選挙中でもそういうわけなんです。したがって、個人国会議員とか、候補者になろうとする者とか、そういう者の個人的負担は非常に少ない。政策と政策の争いであり、政党政党の争いである。演説会なんかでも、立ち会い演説なんかないので、個人で演説会を開いて、細君も壇上に立ち、応援者も壇上に立って、そして聴衆から質問を受けて、そして質問応答というので何時間も飽かずにやるというふうなやり方をやっておるようでございます。  そういうふうな次第でありまするし、ドイツでいいますると、比例代表——私どももいいと思いまして、島上君もこれを聞いてくれたら非常によかったと思いまするが、これはいずれ区制問題がいずれの国会か出ましょうから、そのときに論議しようと思いまするが、ドイツのごときは、政党本位の選挙ですから、たとえば小選挙区の選挙において五人以上当選した党でなければ当選を認めない。すなわち、四人までしか当選さすことができなかった党は、その当選者の当選は無効になる。そういうふうな選挙制度でありまして、したがって、無所属なんという一人一党なんというものは当選できない。一つの党で四人まで当選しても、五人当選しなければ、その四人の当選が無効になるわけなんです。それほど政党本位の選挙が行なわれておる。日本は非常に時代おくれだと思いますが、この点についての御所見はどうですか。先ほどからたびたびこの点については質問がありましたから、御回答が願えれば回答願いたいと思います。
  82. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 選挙区制の問題につきましては、ただいま第五次の選挙制度審議会において熱心に御審議中でございますので、私の私見を申し上げることは差し控えたいと思いますが、すでに御承知のように、第四次の中間報告におきましては、小選挙区比例代表制度というものが多数の意見であり、そのほかに単純小選挙区あるいは現状における中選挙区連記というような意見が少数であったことは御承知のとおりでございます。
  83. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 もし政治家選挙政治活動その他の言動において批判されるべき弊害が生ずるとするならば、先ほどから言いましたように、個人選挙で、後援会活動を通じての平素の政治活動、これがたいへんな金がかかる。寄付禁止の今度の規制の条文も当を得たものであるとも私は考えるわけですが、しかし、区制を改革せずしてこれのみを先走りをやるということは、これは問題ですから、これはいずれ申し上げまするが、そういうぐあいで非常に金がかかるわけなんです。だから、政治資金規正というものをやるのであったならば、どうしても金のかからない選挙、金のかからない政治活動、平素の政治活動です。選挙のときばかりではない、平素の政治活動もまた金がかからないようにしなければならない。現在保守党では、一つ選挙区で三人も四人も当選している人がある。その一人のところの会合に、党の総裁とか、幹事長とか、幹部連中だとか、そのほかそれぞれの同僚代議士が応援に行くこと、出席することを非常に遠慮する。お互いに遠慮し合って会合がどうしてもはなやかにならない。そういうふうなことになりますと、勢いいろいろなショー的な催しもするというふうなことにもなるわけです。そういうふうなことですけれども、政党本位の選挙になれば、党が総力をあげて、それぞれの候補者に対して、政治家に対する応援ができるというふうなことになる。したがって、金のかかる選挙、金のかかる政治活動というものをなくしなければ、政治資金規正をやったところで、これは本末転倒、ほんとうに根本を改めずして枝葉だけやるというようなことになるわけですから、これは非常に問題だと思うのです。したがって、近くこの区制問題に対する答申が出るわけでございまするから、まずそれが解決するまでこの法案はこのままにして撤回して、その成り行きを見られるというふうなお気持ちはございませんかどうか、ひとつ伺います。
  84. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 政党本位の選挙制度が行なわれ、そしてその一環として政治資金規正も行なわれることが本則。しかし、政界の現状がそれまで待てないような現状であるということで答申が出されたわけでございまして、私どもも、政府といたしましては、その答申の趣旨のとおり、現行制度におきましても、やはりあの程度の規制はやむを得ないというふうに考えてこの提案をいたした次第でございますので、あとにくる選挙区制を含めた選挙制度全般についての答申とは切り離して御審議をいただき、成立させていただきたいと考えておる次第でございます。
  85. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 政府といたしましては、答申案を尊重するというふうな点や、それからまた焦眉の急に対する当面の解決方策としてこれをお出しになった事情もよくわかりますが、しかし、こういう中途はんぱなものはみんな迷惑するというふうなことです。  法務省から刑事局長も見えましたから、いずれこまかく御質問いたしたいと思いますが、要するに、先ほど申しましたように、取り締まりが繁雑になればなるほど、詳しくなればなるほど、強化されればされるほど、現場においてもたいへんなことになる。もしこういうものが続々として生まれまするならば、そういうことが法律になりまするならば、偉大な団体というものができてくる。永久政権をどこかの政党は望んでおられるらしいですが、その政党にでも天下を取られて、警察権や検察権を縦横に駆使されるというような、権力の乱用というか、そういうことになってきましたならば、こんなものはみな生きてしまって、これは国民総縛りというようなことになるおそれがあると思うのです。大臣は、いまそういうことはあり得ないとお考えになるかもしれぬけれども、法律は生きものですから、臨機応変にそのときそのときの情勢に応じてどういうふうな活躍をするかわからない、どういうふうな奮闘をするかわからないのです。そういうふうなことでございまするから、よほど気をつけてもらわなければいかぬと私は思います。  ずいぶん詳しいことをお尋ねしたいのだが、刑事局長も見えておりますが、とにかく立法の趣旨ははっきりしている場合があるわけなんですが、それが法文化された場合に、末端、現場へ行きますと、味もそっけもない解釈をして、その法文の文字どおり解釈して、権力が乱用されるというおそれがあるのですが、そういうことについてお気づきの点はありませんか。いずれ私が資料を要求する場合があります。これは実例が数限りなくありますからやりますが、そういう点について何か反省でもせられるか、心当たりというふうなものがありませんか。どうですか。
  86. 川井英良

    ○川井政府委員 政治資金規正法は、二十三年にできましてから約二十年間たっておりますが、その間の運用の実績は大体二百件くらいで、年間十件くらいというふうな運用の実績になっております。なおしさいに検討しますと、選挙に関連しましてこの違反が出たときにやや事件が多くなっておりますけれども、選挙がないときにはほとんど運用の実績がないというのが、いままでの過去の実績の検討の結果でございます。私どもといたしましては、この法案成立いたしましても、この法規についての罰則の運用については、いままでと同じような態度で、慎重に運用してまいりたいというふうに今日考えておるものでございます。   〔古川委員「名答弁、よくわかった、いい答弁だ」と呼ぶ〕
  87. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 古川君はいい答弁だ、名答弁だというふうに言いますけれども、私はどうも納得ができない。政治資金規正違反というので問題になったのは、いま言われたような数かもしれません。これは大体立法の趣旨も理解してもらっておるし、自治省のほうも慎重な態度でおられますから、いままではこれで済んでおります。それでも何かほかに目的がある場合、ほかの事件を摘発しようとする場合に、別件逮捕としてこれが活用されておる。取り締まりのほうの当局からいけば活用されておるようなことも、最近でも二、三できておる。(島上委員法律があるんだから」と呼ぶ)法律があるから適用しなければいかぬというのが現場の意見であって、これはやはり島上君らがそういうことを言っているけれども、逆にこれは自分が縛られてしまうんだけれども、これがわからない、困ったものだと私は思います。思いますけれども、とにかくこれが情勢が違ってきて、自治省の上のほうはともかくとして、それぞれの係の人や、それぞれの考え方がある人、またいわゆる世論なるもの、そういうものが何かきついことを言い出す、強がりを見せるというような場合においては、それに影響せられて、そして現場においては権力乱用的なものが行なわれるというふうなことですが、政治資金規正の問題ではない。これは私はあとからゆっくり、実例をあげたり、また実例を聞いたりして質問したいと思いますが、たとえば後援会活動の場合です。前回の選挙改正で後援会活動は解散の日までは差しつかえないということになっておる。それはどうしてそういうことになったかというと、後援会活動政治活動選挙活動というものは、これは観念的、理論的には区別ができるけれども、現実にはこれは区別ができない。後援会の最終目的政党の最終目的も総選挙に勝つことであり、また当選することにあるのですから、どういうふうな場合においても選挙の話が出ないことはないし、また、その最終目的選挙だ。したがって、その選挙に関係があるとして検挙された、一々年がら年じゅう、後援会活動をしたからといって、それからそのほかの政治活動をしたからといって、選挙につながるからというので検挙されたのではたいへんなことになるからというので、あの際、解散までと、それから九十日までというふうなことになっている。今度もやはり同様なものが盛られておるわけです。ところが、たとえばこの間の総選挙でも、十二月、十一月、十月、まだほんとうに解散があるかないかわからぬときに後援会活動をやる。その際に、何といいましても、もし解散でもあったらしっかりやらなければいかぬというくらいの発言は、だれかするわけです。後援会の総会や懇親会で来た者もやはりそういう気持ちはあるわけです。したがって、それをごっちゃにされて、年がら年じゅう選挙違反だというふうに摘発されたらたいへんだというので区切りをつけたのでございますが、時間的の点ではっきりしたのですが、しかし、いよいよになりますと、十月くらいのものまでも検挙して、そうして選挙に関係して選挙のために集まったのであろうというふうなことで、結局後援会として役員の選挙をし、いろいろな後援会行事をしながらも、なおかつ選挙に関係しておるというので起訴されておる者が数限りなくあるというふうなことになっておるわけでありまして、島上君なんかは今度もちゃんとなっておるから安心だと言う。そういうふうなこと、ああいう法律があったのでこれはいけなかった。一つの落とし穴みたいなもの。解散までは差しつかえないと思って堂々と後援会をやったが、これが堂々とやったがためにかえって落とし穴になって選挙違反になっておる。選挙違反になるかもしれぬ、事前運動になるかもしれぬというので、こっそりわからないようにやれば何でもなかったものを、あの法律ができたばかりに、かえってその法律が落とし穴となってたいへんなけが人ができてきておるというふうな全国的な実例、これはいずれ逐条審議に入ったときに私からそういうふうな材料を要求いたしますが、いままだそろえなくてもいいですが、私がこの次正式に質問するときにあれをしていただきたいと思いますが、そういう点について刑事局長は自信がございましょうか。立法の趣旨がほんとうに生かされる、そうして政治資金規正の問題、たとえば今度は寄付制限か何かいろいろあります。届け出違反になるかならないか、匿名でやったかやらないか、本人の名義以外のものを使ったか使わないか、そういうことを調べるもの、違反額であるということ、超過した額になったかならぬかということを調べるのはどういうふうなことでお調べになるのか。自治省のほうからでも告発があって初めて手をつけられるのか、積極的に検察庁のほうでもこれはおかしいと思われたら調べられるのか、おかしいと思わなくても嫌疑ありとして幾らでも権力の乱用、捜査権の乱用はできるわけですが、その点について、ほんとうに政界浄化のために、警察国家、検察ファッショというようなそしりを免れるために、そういうふうなそしりが起こらないように、そんな暗い政治、暗い国家にならないように努力してもらうという、努力するだろうという確信がありますかどうか、ちょっとその点お聞きしたい。
  88. 川井英良

    ○川井政府委員 いま御指摘になりました具体的なケースにつきましては、またあとで詳しい御質問があるというお話ですので、その際にまた個々の具体的ケースについての特殊事情についての考え方を明らかにしたいと思いますが、御指摘のとおり罰則は一回できますと確かに一人歩きをしますので、時代を異にして非常に心配なものがあると思います。これは私全く同じ考え方でございます。ただ公職選挙法違反、それから政治資金規正法違反、ごく特殊な法律でございますが、この運用は、先ほどもちょっと申し上げましたように、戦後におきまして、相当何回も選挙を経過しまして運用の実績がある程度軌道に乗ってきておる、こう思うわけでございまして、今回はやや新しい類型の罰則が二つほど付加されましたけれども、多くの罰則の類型は、いままで公職選挙法のほうにあったものを少し形を変えて規正法のほうに移す、こういうふうなかっこうでございますので、全く新しいものとしては一、二の類型にとどまる、こう思うわけでございます。いずれにしましても一部改正でございますので、いままでの運用の実績を、この際特に検察当局として改めまして別に取り扱いをするというふうなことにはならないと思うのでございまして、やはりいままでと同じような慎重な態度でもって運用をしてまいりたい、こういう確信、信念でございます。  なお、戦後におきましては、警察の体制も検察庁の体制も、いずれも新しい憲法のもとに再編成をされておりますので、公職選挙法規正法の運用ということは、取り締まりそのものがやはり非常に政治体制に直結している、こう私は思うわけでございまして、そういう面からいきまして、私どもの取り締まり体制も、戦前のようなかっこうにおいての運用ということは、制度の面からできないというふうにも相なっておりますので、制度のあり方と、それから法律の運用の実績というふうなものにかんがみまして、突然変わったような運用はしたくないのでありまして、いままでと同じような態度考え方でもって慎重に運用してまいりたい。抽象論でございますが、一般論としてはかように考えております。
  89. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 古川君に言わせると名答弁らしいですから、私も名答弁として一応お聞きいたしますが、とにかく警察国家、検察ファッショというふうな批判を受けないように、どういうふうな圧力に対してもき然としてひとつ局長らはじめやっていただきたいとともに、現場のほうはただの成績主義、手柄手義だけで過酷な検挙をしないように、しかもまた私憤とか私情とか私怨とかいうふうなものがまじったりなんかすると、警察なんかもたいへんなわけですので、公安委員長もひとつ気をつけてもらいたいと思いますが、そういうことのないようにしっかりやってもらいたい。いずれ詳しいことを実例をあげまして——きょうはおそらく質問の機会がありますまい。したがって、後日にお尋ねしたいと思いますが、もう一点大臣のほうにお聞きしたい。  いまの規正法の強化に基づく実際上の運用の問題です。これがなるほどいままでは法務省の刑事局長さんのほうから答弁があったように、きわめてわずかな検挙にすぎないというふうなことになっておるのですが、いままでの自治省のやり方が、実情を調査しない、ただ届け出のみを信じ込むというか、ほうりっぱなしで、そのままで届け出を受けただけで実情を調査せずにやっておるからこういう問題が起こってくるのだ、弊害も起こるのだ、そういうふうな一部の批判もあるわけですが、そういう批判に動かされて、三千何ぼの政党、一万何ぼの政治結社みたいなものですか、団体ですか、そういうものに対していわゆる実情調査なるものをせられることになったら、これはたいへんなことになるのですが、いわゆる従来どおり机上査察といいますか、机上だけの届け出主義を一応——と言うと、また一応と言ったら二応、三応というのでほんとうにやられるということになると困るわけですが、従来どおり机上査察でおやりになるつもりですかどうですか。
  90. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 届け出は正しく届け出られたものと私どもは考えておりまして、もちろん、明らかに数字の間違いだというようなものについては是正措置を命ずるような規定を今回入れてありますが、それ以外は届け出が正しくされておるものということでございまして、実情調査等をする考えはございません。
  91. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 私は、いまの憲法をつくったときに参加した一人ですから、基本的人権については非常に深い考えを持っておるわけですが、まだちょっと、原稿の走り書きですけれども、これだけあるのですが、これからやるというと夜を徹することになるので、基本的人権のみで、この程度で、いずれ社会党さんやそのほかの党派さんの了解を得て質問をさしていただく機会を得たいと思いますので、この程度でどうですか、いいですか。
  92. 小澤佐重喜

    ○小沢委員長 次会は公報をもって知らせることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会