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1967-06-30 第55回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月三十日(金曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員   委員長 森下 國雄君    理事 木村 武雄君 理事 正示啓次郎君    理事 砂原  格君 理事 丹羽喬四郎君    理事 廣瀬 正雄君 理事 石川 次夫君    理事 岡本 隆一君 理事 稲富 稜人君       天野 光晴君    伊藤宗一郎君       池田 清志君    佐藤 孝行君       田村 良平君    高橋 英吉君       谷垣 專一君    葉梨 信行君       森山 欽司君  早稻田柳右エ門君       渡辺 栄一君    阿部 昭吾君       井上 普方君    勝澤 芳雄君       工藤 良平君    福岡 義登君       山口 鶴男君    小川新一郎君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 西村 英一君  出席政府委員         建設政務次官  澁谷 直藏君         建設省計画局長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省河川局長 古賀雷四郎君  委員外出席者         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 六月三十日  委員吉川久衛君及び渡辺惣蔵辞任につき、そ  の補欠として葉梨信行君及び山口鶴男君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員葉梨信行君及び山口鶴男辞任につき、そ  の補欠として吉川久衛君及び渡辺惣蔵君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十九日  主要地方道大淀上北山線笠木隧道工事等の促  進に関する請願吉田之久君紹介)(第二〇三二  号)  主要地方道大淀上北山線国道編入に関する  請願吉田之久君紹介)(第二〇三三号)  元近衛師団司令部建物の保存に関する請願(坂  田道太紹介)(第二一七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地収用法の一部を改正する法律案内閣提出  第六一号)  土地収用法の一部を改正する法律施行法案(内  閣提出第六二号)      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案、右両案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。阿部昭吾君。
  3. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 若干質問したいと思うのでありますが、今度の収用法の一部改正でありますけれども地価対策あるいはいろいろな今日的な問題に対応してこの改正をやるということでありますが、この法律案意味しているものは、国の権力をたいへん強めるということであると思うのであります。したがって、この法律を実際上運用いたします場合、どういうことになっていくのか。私ども現場用地交渉等が行なわれている実際の実情をいろいろ見てみますと、収用法以前のいわば任意協議、この段階で大体用地話し合いというものはまとまるのであります。したがって、この実際の収用法発動という状態になる以前に大半のものは話がまとまる。そこで、この収用法発動以前の任意協議段階で、きびしいことばでありますが、多分におどしの手段として——収用者起業者の言い分に簡単には応じてこないというような場合には、収用法があるのだということがきわめて単純におどしの手段として使われておる、こういう性格収用法は一面において持っておるのであります。この収用法がさらに強権としての機能を強めるというのが今回の改正であると思いますから、したがっていまのようにおどしの手段として従来機能しておった収用法がより以上そういう性格を強める。したがってこの場合に、そのような状態にならぬようにするのに、弱い者いじめという性格を持たないようにしていくために、どういうコントロール機能というものが現在のこの収用法の中にあるのかということをひとつ伺いたいと思うのであります。
  4. 志村清一

    志村政府委員 阿部先生お尋ねのように、収用法の本来の趣旨起業者側が了解せずして、いわば収用法にかけるぞというようなおどし的に使う、また権利者のほうでも収用法適用を受けることが何かたいへん悪いことであるというような感覚を持っておるということにつきましては、累次御指摘がございましたようになお残っておるということは間違いない事実でございます。これらにつきましては、私どもといたしましては収用法の本来の趣旨がそういうものでないということをPRする必要があるということで、何べんもそういう企てをいたしております。また実際の現場で仕事に当たる方々研修といいますか、収用法の本来の趣旨を十分わからせるための研修を建設大学校におきましても行なっておりますし、あるいは収用委員会連合会がございまして、そこの事務局において、毎年二回ないし三回研修会を開きまして研修を行なっている次第でございます。今後におきましても、そういったPRなり研修なり、収用法本来の趣旨十分皆さんにわかるようにつとめたい、かように考えておるわけでございますが、同時に、この改正法案におきましても、事業を認定する場合の縦覧がございますが、それらにつきまして二週間程度縦覧ではなくて事業が終わるまで長期縦覧をせねばならぬ、あるいは収用のいろいろな問題につきまして、各権利者に対しましてPRをするというふうなことを義務づけるような規定も置いているわけでございます。
  5. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 義務づけるということなんでありますが、それもよくわかるわけであります。しかし実際には被収用者立場を守る、いわば擁護する、こういう観点からこの法律は一体どういう規定を持っているのかということになりますと、いまの縦覧期間を長くする、PRをしなければいけない、いろいろなことをいっても、これは単なる何というのですか精神規定のような倫理規定のようなそういうものであって、被収用者立場法律的にきちんと擁護をするということにはやはりならぬのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  6. 志村清一

    志村政府委員 土地収用法改正規定におきましては、ただいま申し上げたようないろいろな問題がございますが、収用法にかかりまして収用手続を経て収用委員会でいろいろ議論をいたしますれば、お互い立場を申し述べて第三者としての収用委員会判断するというたてまえでございまして、不公正なことは起こり得ない。もしそういうふうなことがございますならば、異議の申し立てなり訴訟というふうなことで救済する手続もあるわけでございます。ただ、先ほど先生指摘になりましたように、収用法適用になればいいが、その前の段階で、いろいろ収用法で取るぞというふうなおどかしをするということにつきましては、もっぱら起業者方々あるいは土地所有者権利者等方々に、この法律の本来の趣旨PRすることが大事かと思っております。  同時に、そういった制度のほかに、たとえば事業認定を受ける以前におきまして、一体土地収用法がどんな手続があるかということでございますが、これは十五条の二にあっせん手続がございまして、たとえ事業認定を受ける前でも、起業者側土地権利者側かどちらかがあっせんを申し出るということによりまして、収用委員会も加えましてお互いの間のあっせんを取り計らうということもできるというふうな制度も設けておるような次第でございます。
  7. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 本来収用するという立場の場合に、この法律でも明記をしておりますように、公共利益という大義名分というのですか、にしきの御旗を背景にしてこの土地の問題というのはいつも起こってくるわけであります。したがって一般的に公共利益公共立場というものと個人権益、こういうものを概念的に対置した場合に、特に収用法以前の段階任意協議などの形の場合にどういう状況が起こってくるのかというふうに、私ども現場でいろいろ公共事業などの用地話し合い等が行なわれる場合を見ますと、個人権益主張するのは何か負い目を持っているような、こういう一般的なムードというものが、土地問題が起こってまいります場合には常にその傾向の中に出てきているわけであります。したがってこれが国なりあるいは、起業者が非常に身近でない建設省なりという場合ですと、案外話は被収用者の側の立場でものを言いやすい条件を持っているのですが、これが地方自治体であるとか市町村であるとかこういう場合になりますと、なかなか個人権益というものをそういう立場主張するということは、主張しにくい客観的な事情というものが一般的に多いわけであります。特に市町村などの場合になりますと、単独事業等道路なり何なりをやっていくという場合には、用地などの場合には、ほとんど、道路をよくするのだからあるいは河川やその他を整備するのだから用地はひとつ提供してもらいたい、こういう形で話は進められていく場合のほうが非常に多い。市町村などになりますと、これは財政に限度がございますから、勢い単独事業などを進めます場合には用地はひとつ寄付をしてもらいたいという前提で、公共利益の名において問題をおっかぶされていくというケースが非常に多いのであります。このような場合に収用法まで持ち込んで主張の展開し得るものは、ある意味では特殊な立場、特殊な見解に立つもの以外、一般的に公の利益のためにひとつ協力せよ、こういうのでおっかぶせていく場合が非常に多い。したがって問題は、権利主張し得る、あっせんとかいろいろなあれはあるのだとはいいながら、実際の問題はどうかということになりますと主張はなかなかできない、こういう諸関係のもとに置かれている場合のほうが非常に多い。したがってこの場合に、単なるいわばPRを強化するとか、縦覧期間を長くするというような程度のことで、今回の改正でより収用法というものが全体としては公権力が強まるということに対する被収用者権益擁護という観点はますます弱いものになっていく、こういうふうに私ども思わざるを得ないのですけれども、これを擁護するのにより積極的な法的な立場で一体どんな準備が現在のこの制度の中にあるのかということになりますと、私どもいろいろ検討してみましてもそいつはちょっとないじゃないか、一方的に公権力が強められて、個人権益というのはなかなか擁護され得ない状態になっていくのではないか、こう思っておるわけですけれども、こういう場合に、今回の公権力強化という観点での改正改正として、これから先の見通しとして、先ほど申し上げました財政力の弱い土地などはひとつ地元協力せよというような観点で進められているいろいろな事業の多い中で、土地収用制度というものの将来を考えた場合に、被収用者権益擁護という観点から一体いかなる構想と準備を将来にわたって用意なさっておるのか、伺いたいのであります。
  8. 志村清一

    志村政府委員 先生指摘のように地方におきます公共事業の際にみんなのための道路じゃないか、だから道路はみんなで出してくれ、あるいはこの川がはんらんすると部落全体が困るのだからひとつ協力して土地を出してくれというような事態があることも承知いたしております。市町村とか部落という単位はいわばゲマインシャフト的な要素を非常に高く持っておりますので、お互い協力してお互いにやっていこうというふうなケースが相当ございます。さようなこともあり得るかと存じます。ただいわば受益者負担と申しますか、それによって利益をこうむるのはお互いだからひとつお互いで出そうじゃないかというようなこともあろうかと存じます。これらにつきましてはいわば収用法以前の問題ではないかと思うわけでございますが、収用法に乗りますとそういった無償ということではございませんで、やはり法律に書いてありますように、収用委員会判断いたしましてしかるべき適正な価格でもって補償するというたてまえになるわけでございます。そこへ乗る前の問題かと思うわけでございます。それらにつきましては、私どもといたしましては地元方々お互い土地を出し合ってやるということは、一面必ずしも悪い点ではないとは思いますけれども、強制するというふうな形になるといかぬという点もございまして、従来県道などについてもそういうことが若干あったようでございますが、補助の対象といたしましては十分用地費も見る、工事費も見るというかっこうで進めておるような次第でございます。
  9. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 これは現実に方々地域で私ども体験をしている問題なのでありますが、土地収用委員会に正式に、いわば手続上もちゃんと乗っかっていくという場合になりますと、起業者あるいは被収用者用地関係者の間に正規話し合いがあり主張点が明瞭にされて、これに第三者である収用委員会が、補償額その他の問題について合理的、客観的な公正なものを定めていく、こういうぐあいになるわけであります。しかし補償の公正な価格というのは、どれが公正でどれが当を得ておらぬかということになりますと、なかなか判定がむずかしいのであります。たとえばわれわれの地域などで見ておりますと、現況補償を行ないます場合に、これは収用法以前の段階正規収用法に基づくあっせんではないのですが、価格等の問題については公正なものを出そうというので市町村当局なりそういったものがあっせんのような形をとって、このくらいでひとつまとめたらどうかというようなことに入っていくわけであります。その場合、市町村当局等収用法に基づくあっせんではないのであるがあっせんのような形をとるというような場合に、特に国なり国鉄当局なりあるいはその他の関係機関起業者であるような場合、往々にして市町村自治体あるいは県などの立場からいたしますと、起業者である国なりその他の機関に対して事業を促進してほしいというので、いろいろ一面では要望をして、そうしてその事業が次第次第に具体化をされていく、こういう形になってくるものでありますから、勢いこのような場合でも被収用者用地関係者に対してきびしく協力を求めるという形になっていくケースが非常に多いのであります。こういう場合に主張を最後まで持っていこうとする者は、収用委員会なり何なりに正規手続上も乗っかっていくというところまでいき得るわけですけれども、なかなかそれがそこまではいき得ないままで、安い価格で押し切られる、こういう状態が非常に多いのであります。したがって、これは現行の制度ではなかなか、被収用者用地関係者権益擁護するということは、先ほども局長おっしゃるように、いわば収用法以前の問題ということになってくるのであります。その場合に、今度のこの改正案公権力をきわめて強くするというふうになってくるわけでありますから、より以上に収用法以前の段階で問題の解決が迫られていきまする場合には、より一そう、いわば無理な形で用地関係者にこれを強制していく、こういう機能を持ってくるわけであります。したがって、この面は制度全体としていま直ちにこの制度の中にすっと盛り込むということは、いまの時点では時間とかいろいろな面で困難な面があるかもしれませんけれども、やはり将来の展望としては、一面では公権的なものを強めながら、一面では用地関係者のほんとうに公正な、妥当な、そういう観点での価格等を定めていくといったような、いわば個人権益擁護する方向というのも——公権力を強めて、俗に言われるごて得なり何なりを排除していく、一面ではそういう改正機能を今度持っていくと思うのですけれども、そのことは反面、裏側から考えますと、個人権益というのは、いまみたいに財政力の弱い地方自治体等が何かをやっていかなければならぬときには、協力をしなければならぬというムードの中で押しつぶされていく、こういう機能を持ちますので、一つ問題点として今後の制度のあり方全体として検討の要があるのではないか、こう思うのであります。  そこで現在の土地収用委員会という委員会制度立場なんでありますが、たとえば地方労働委員会といったような労使が争って話が一致しないという場合に持ち込まれていく機構があるわけですけれども、これと比較をすると、土地収用委員会制度というのは、立っておる根拠が非常に弱い立場なんではないか。県段階等になりますと収用委員会知事が任命をするということになるのでありますが、独立機能を持つ機構としては非常に立場の弱いのが現状の収用委員会制度ではないかと思うのであります。したがって、この収用委員会をもっと独立機関というのでしょうか、少なくともある意味で言えば労使関係の中におけるいまの労働委員会のような性格を持たしていくということが考えられていいのではないかと思うのですが、この辺はいかがでしょう。
  10. 志村清一

    志村政府委員 先ほどお話のございました地方公共団体がいわば仲介に立つという問題でございますが、地元意向というものを把握するためには、地方公共団体等の御意向を伺ったほうがいい場合もあろうかと思います。さようなことで地方公共団体にいろいろ御相談をかけるということもあろうかと思います。その結果、先生のおっしゃるように、誘致したのだからといって不当に安くなるとか、あるいは場合によっては公共団体が介入することによって非常に高くなるとかいうふうな問題点が事実提起されておることはございます。しかしかような不当に安くなったり不当に高くなったりするということは適当ではございません。それらにつきましてはこの前も御説明しましたように、公共補償基準をはっきりさせて、あるいは公共補償基準だけでは足らぬ、鑑定評価制度というものを確立いたしまして、さような意味で一体公正な値段は何かということをできるだけ明確にしていくような努力を今後とも続けてまいりたいと思っております。  第二点の収用委員会の問題でございますが、土地収用法規定の中に、「収用委員会は、独立してその職権を行う。」ということになっておりまして、知事が任命するとありますが、同時にそれは都道府県の議会の同意を得るという慎重な手続をとっておるわけでございます。また委員そのもの身分保障を十分いたしまして、知事さんの恣意的な問題によって左右されないように身分保障もされておるわけでございますが、これらにつきましては、起業者代表と、それから権利者代表と、第三者機関を入れるというふうな問題とは多少様子が違いまして、ほとんど全部、いわば法律規定してございますように、「法律、経済又は行政に関してすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる」いわゆる第三者機関によって構成されているわけでございます。これは収用法性格からいってさようなものにならざるを得ないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  11. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 これは私ども地域における土地というものの動きなんでありますが、地方末端まで都市周辺市街地周辺地価の値上がりは非常に著しい。たとえば、地方都市周辺にある農地、これがつい三年ないし四年以前の段階では十アール当たり三十万ないしは三十数万、こういう状態であったのであります。ところが、この地方都市周辺土地宅地化をいたしまして、今度は一挙に十アール当たり三百万ないし四百万、あるいはもっと宅地としての条件を持つような場所に至りますと、五百万などということになってくるのであります。そういたしますると、農地を壊廃をして宅地化をして、転売をしていく。その皆さんは決して売りっぱなしにはいたさないのであります。十アールの土地宅地化して、転売をいたしますると、膨大な売った金が入ってくるわけでありますが、その金をもって十キロないし十五キロ程度遠隔の地に新たな農地の買い求めをやっていくわけであります。そういたしますると、相当遠隔の、十キロ、十五キロ遠隔地域まで最近は全部自動車で農業の経営などにも、農作業などにも乗り込んでいくことが可能でありますから、そのあたりの地価が、つい二年、三年以前の段階では十アール当たり三十万ないし相当条件のところでも四十万程度であったのが、地方都市近郊農地宅地化をされて売られるというような状態になってまいりまして、相当将来とも宅地化可能性を持たない十キロ、十五キロ離れた、農業目的以外には利用の方向が将来とも全くないであろうと思われるような場所農地が、一挙に十アール当たり七十万、八十万といったようなぐあいにつり上げられていくのであります。したがって、この問題が、公共事業などで用地関係が起こってまいりまする場合に、収用委員会は、しかし一挙にそれだけ都市周辺遠隔の地帯が地価が値上がったという判断はしないのであります。依然として数年以前の実情というものを根拠にしながら議論になっていくわけであります。したがって私どもは、今度のこの改正案地価というものを抑制するという機能を十分に発揮し得るだろうかどうかということになりますと、単に土地の提供を公権力でスピードアップをしていく、こういう性格を持つ改正が行なわれただけでは、地価抑制にはならない。そこでわが党が従前から主張しておるところの地方開発利益の吸収の問題なり、もっとやはり公権力を強化するという一面と、もう一つは根本的な地価抑制の方策というものと一致して、並行してとらなければ、この目的を果たすということはなかなかできないのではないか。そういう意味では今度の改正は、私はいわば片手落ちの改正だ、こう言わざるを得ないのであります。  もう一つ土地収用委員会で公正な価格を定めるという場合に、現況地目農地であれば農地というものが基準になるのである。しかし実際はどうかということになりますと、地方都市周辺等の場合でも、現況農地でありますものでも道路を一本切って宅地化はきわめて容易に進んでいくのであります。したがって、土地収用委員会なり、あるいは国なり、それが末端用地交渉をいたします場合に、現況地目農地であれば、農地というものを基準にして用地話し合いが始まっていく。現地の用地関係者はどう受け取るかということになりますと、現況地目農地であっても、実際はその農地宅地に転換するのはきわめて容易、こういう状態にありますので、現況地目主義用地の公正な価格算定をやろうという行き方が、一般的に地方収用委員会にいたしましても、あるいは国の出先機関にいたしましても、地方公共団体にいたしましても、そういう考え方でいくものでありますから、用地関係者との主張の間に非常に多くのハンディというものがございまして、事はなかなか紛糾をする、こういう状況が起こっているのであります。したがって、その意味では今度の公権力を強めるという改正は、あまりにもやはり一面的に過ぎるのであって、もう一面土地価格土地評価基準なり、あるいは補償基準なり、こういったものを実際に運用する場合に実情に即したものにしていくのに、一体どういう心がまえ、どういうやり方でなさなければいかぬのかということになりますと、非常に多くの検討しなければならぬ問題があるように思うのであります。そういう意味で一面で公権力を強化する、一面では用地関係者個人権益擁護する、こういう観点で根本的な考慮があっていいのではないかと思うのですが、なかなか今度のこの改正だけでは、そういうものは倫理規定的な面ではいろいろなことをいっておりますけれども、具体的にさてどうかということになりますと、きわめてあいまいな、公正な価格——公正な価格というのは、これは見よう見方で、取り上げるほうはこれが公正なんだと言うでありましょうし、取られるほうはこれは公正でない、こう言うのでありますが、いずれが公正かということになりますと収用委員会、こうなるのでありますが、収用委員会というのは、大体個人権益を守るという機能よりも、やはり取り上げる場合の立場のほうでいろいろ機能することが従来の関係では多いのであります。これを一体どこまで個人権益擁護するかということをすっきりさせるのかということが問題だと思うのです。
  12. 志村清一

    志村政府委員 ただいま先生お話しのように、いろいろ都市周辺地価が値上がりする、それらを押えていかなければならぬ、地価対策全体を強烈に進めなければならぬ、たとえば、いまお話しの開発利益の吸収の問題とか、あるいは未利用地の利用促進とか、いろんな税制についても、あるいは土地利用計画についてもやらなければならぬ、御指摘はそのとおりかと存じます。きのうもおとといも、総理、大蔵大臣からお話がございましたように、税制につきましても、あるいはその他の利用計画等につきましても鋭意今後努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。  また、収用委員会判断でございますが、現況主義ではないかということでございますが、農地法とか、あるいは固定資産税の評価にあたっての税制とかいう点につきましては、たとえ準宅地であろうと、もう宅地の間に囲まれている農地であろうと、農地として評価いたしております。しかし収用法判断とか、あるいは公共補償基準におきましてはそのような判断はいたしておりません。当然準宅地という概念がございます。宅地に準ずるものということで判断をいたしておりますので、たとえば公共補償基準におきましても、近傍類地の取引価格というのは、近傍が事実そういうことになっておりますと、そういう準宅地としての価格が反映する、あるいはその土地の位置とか形状とか環境とかいうものを全部判断した上できめるということでございますので、現況主義の立場をとっておらぬわけでございます。
  13. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 これは一つの例を申し上げたいのでありますが、私のすぐ近所は国鉄の沿線でございまして、そこでいま線増工事が行なわれようとしているわけであります。複線電化の線増工事。これはまあわれわれも大いに国鉄の整備を急いでもらわなければいかぬというので、一面ではそういう主張をしながら、一面でこの用地の問題が起こってまいりますると、この沿線、現況農地でありますものが直ちにこれは宅地化が行なわれる条件を持っているのであります。したがって、農地として売買をするということになりますると、さっき言った十アール当たり七十万、八十万程度現況なんでありますが、宅地ということになりますると十アール当たり三百万程度にやはりなっていくのであります。ところが、現実にいま国鉄が、これは収用法以前の段階なんでありますけれども農地だ、農地なんで、やはり近傍類地の農地はことごとく十アール当たり七十万、八十万という状態になっているんだ、したがって、これをよしんば宅地化することが可能なんだと言っても、なかなかそうはいかぬ。したがって、どうするかということになりますと、宅地ならば十アール当たり三百万だ、農地ならば七十万、八十万ですから、七十万、八十万に少し毛のはえた程度のところでひとつまとめようじゃないか、こう言ってくるのであります。そういたしますると、公正なる価格というのは、これは収用委員会に行ってみなければわからぬのですけれども、私ども地域では収用委員会に行くようなことはほとんどないのであります。地方になりますると……。ほとんどこの収用委員会以前の段階、任意の話し合い段階で事は固まっていくのであります。その場合に従来の例を見ますると、ほとんどはこの宅地化可能の、宅地化に直ちにきわめて安易に簡便に転換可能な場所でありましても、農地に毛のはえた程度価格がいわゆる公正なあれだ。現地の用地関係者に対して当局側はどういう出方で来るかということになりますると、いや、収用委員会に行けばもっと安くなるかもしらぬぞ、その証拠には固定資産税なんというのはべらぼうに安いじゃないか、普通売買実例が十アール当たり七十万、八十万ということはようわかるけれども、固定資産税ということになりますると、十アール当たり十五万程度じゃないか、したがって収用委員会に行けばもっと安くなるおそれがあるのだということになってくるわけであります。したがって、私は公正なる価格というものを、近傍類地とかなんとかいろいろ言うのですけれども、これはしかし近傍類地にもいろいろある。議論観点は、表からいった近傍類地と、また近傍類地にもまた違った面で作用させる場合といろいろありますわけなんで、いずれが公正なる価格かということについての保障、確たる歯どめになるような保障というものはなかなかない、水かけ論になっていく、こういう性格実情の面では持っているということを、これはやはり局長のほうでよく理解してもらわなければいかぬ、こう思うのです。  そこで私は、この収用法というのは、くどいようなんですけれども、都市の場合はしばしば収用法までいかなければ問題の解決にならぬという場合が多いが、地方の場合は収用法などの段階にいくのはこれはもうないのです。私も県で何年間か収用委員を任命されておったことがあったのですけれども、その間にただの一ぺんも収用委員会というのは動いたことがなかったんです。地方ということになりますと、この収用制度というのは、収用法以前の段階任意協議、任意の話し合いの場にこの収用制度というのは逆に機能していく。その場合にはどういう機能をするのかということになりますると、何度も言ったとおり、前と違って土地の取り上げは収用法でもっとスピーディにやれるようになったんだ、したがってあなた方がぐずぐず言うのならば収用法だぞというおどしの脅迫の手段としてこの収用法は作用する、こういう性格を今度の改正案は持っておる、こう思うのでございます。そういう面で私は、この公正なる価格というものを一体、単なる近傍類地とかいろいろ言うのですけれども、このあれを確たる裏打ちを、ほんとうに歯どめのある形でするのには、現行の制度ではいささか不十分なんじゃないかという気がするのです。したがって、任命制の学識豊かな云々というのですが、これは全部現実に作用する場合には、機能する場合には、当局側の、いわば収用する側の立場に立って作用していく。用地関係者や被収用者の側に立ってその権益擁護するという機能では、現行の地方段階における収用委員会における制度というものはないんですね。それは近傍類地とかいろいろなことで、理屈はあるのですけれども、なかなかそうはなっていかない。私はそういう意味で、問題は公権力を強化するということだけでは逆に地方末端段階ではこの制度がマイナス面だけが出てくる、こういうふうに思うのであります。それで、さっき土地収用委員会機能というのは、まあ制度的にいろいろあるので、労使の間における労働委員会や何かとそれはいささか違うということなんでありますけれども、一番いいのは土地収用委員が選挙か何かで選ばれてくるというのが一番いいと思うのであります。特に地方なんぞは土地収用委員会はむしろ前段のあれですから、そこまでいかない段階でみんな話がきまるのですから、したがって、それだけに何度も言うようにおどしの手段にだけなる。実際上は収用委員会は働かぬままでおどしの手段にだけ公権力が強まったという意味で使われる。そういう性格で、都市の場合なんぞになるとこれからますますいまの都市計画の問題あるいは都市再開発の問題などを考えました場合には、この土地収用法というものの果たさなければならない機能は非常に広がると思うのです。そういう際には、私は何といっても——取り上げられる者だけが補償とかなんとかという問題なんですが、そういうふうにその周辺がどんどん地価が上がったりなんかして開発利益を持つ方々からのその開発利益の吸収という問題を並行して出さなければ、これはやはり片ちんばなものだ、こう思うのであります。そういう観点で、私はこの今回の公権力だけを強め、土地の取り上げだけを容易にする、こういう趣旨改正案には賛成ができないのです。したがってきわめて早い機会に——一面においてはいまの開発利益の吸収の問題、それから地方と都市とでは、土地の問題の持つ、収用制度をめぐって起こってくる状態は違ってくるわけです。都市になりますと、なかなかそう問題は簡単にいかない。地方なんかは土地なんかの問題については私どもはむしろ用地関係者権益をもっと保障する、守っていく、こういう機能をこの収用制度の中では強めなければいかぬのじゃないかとさえ実は思っておるのであります。私どもの党内でもこの問題をめぐって議論をいたしました場合に、地方というものと、それから町の、市街地における土地収用制度というものと一緒くたに議論するわけにいかない。こういう議論が私どもの党内でも実はたいへんに出たのであります。そういう意味で私は地方立場、そういう面から見ますると、一方的な公的権力の強化だけでは問題は全部逆に作用する、こういう面を指摘しなければいけないと思うのであります。もしいま言ったことで答弁があればお聞きしたいのでありますが、時間があれなようでありますから、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  14. 西村英一

    ○西村国務大臣 この改正案で強化されたということ、これは先日勝澤さんからの御質問に答えて、強化というのは、まあ改正案の問題のとらえ方ですが、私は強化ということよりも合理化したのだ、やはりごね得があればそれはたいへんですから。いま阿部さんの所論はところによって違う、これは私も認めます。そういうことはあろうと思います。適正値段の問題、これがやはり、一口に言いますけれどもなかなか容易な問題じゃない。しかしそれは文字であらわせば近傍類地というような文字で言わざるを得ないと思うのです。しかし要は、いまお話がありましたように、収用される人、被収用者、その身にもなって考えてくれというような趣旨でございます。したがいましてこれが改正されたからといって、土地収用法を従来よりもひんぴんに、しげくやるという考えはないわけでございます。あくまでもやはり話し合いの態度をとって、そうして公益のために、大の虫のために小の虫を殺さなければならぬこともありまするから、そのためにはひとつ合理的にやっていこう、こういう趣旨でございますので、運用につきましては、先生の意見も十分考慮いたしまして注意をしてやっていきたい、かように思う次第でございます。
  15. 森下國雄

  16. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいま阿部委員のほうから、土地収用法をめぐりまして公権力が強化されるのじゃないかという点につきまして、いろいろと議論があったわけであります。  大臣も言われたのでありますが、ごね得をなくする、しかし私は、たとえばダムが設置をされる、そうして数多くの水没者が出る。これらの人たちは決してごねようと思って反対をしているのじゃないと思うのです。要は今度の改正法ないしは土地収用法公共用地の取得に関する特別措置法を通じて、欠陥であると思われる、いわば生活補償なり生活再建対策なりこういったものがないところに、結局水没をするなりあるいはその起業によって土地収用される人たちの反対運動の起こる原因が私はあると思うわけです。そういう角度から具体的な問題について一、二お尋ねしてみたいと思うのです。  私の住んでおります群馬県は、いわば関東の屋根のような地位に当たるわけでありまして、いわば治水の名目のもとに建設省の手によってたくさんのダムが今日までできてまいりました。そうして今後も、八ッ場ダムであるとかあるいは沼田ダムであるとか、そういったダム構想がいろいろと建設省のほうから提起をされあるいは産業計画会議等から提起をされたものもありますが、そういう形でこのダムの問題が群馬県の大きな問題になっているわけであります。  そこでお尋ねをいたしたいと思うのですが、ダムをつくります場合に、治水ということでありますならば、これは日本の国土の保全という面から、ある程度公共用地として土地収用法で取得をしていくということは、この理由があるだろうと思うのでありますが、しかし、治水ではなくて利水であるあるいは工業用水を取得をする、こういうために多くの人たちに犠牲をしいるということは、私は非常に問題があるのじゃないかと思います。そこで群馬県の場合でありますが、今日まで五つのダムができ、すでに建設が進められておるわけでありますが、八斗島における洪水調節、四千トンをカットをするということについては、群馬県としてもすでに藤原、薗原、相俣、あるいは建設途上における矢木沢、下久保、これによりまして四千トンをこえる洪水調節はすでにできておる、こういうふうに群馬県民はみんな承知をしておるわけであります。県が正式に発表いたしました文書によりましても、下久保を除いて二千五百五十トンの洪水調節はすでにできている、下久保を加えれば四千トンをこえる、こういうふうに群馬県自体としても確認をしておるわけです。とすれば、いま八ッ場ダムが問題になっておりますが、八ッ場ダムについては——いま申し上げた既設のダムそれから建設中のダム、五つのダムによって十分これが満たされている、かように確認をするわけでございまして、そういう意味から、八ッ場ダムについては治水の面は必要ないのではないか、それに対する御見解はどうでしょうか。
  17. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 御指摘のように利根川の治水計画は昭和二十二年のカスリン台風を検討いたしまして治水計画がつくられております。現在八斗島で流れてくるであろうという洪水量を一万七千トンとして定めてありまして、上流で三千トンをダムカットする。要するに、三千トンをダムカットするということは、八斗島において三千トンの効果を出すようにダムで調節する。したがいまして、ダム建設量と効果量の三千トンとの開きはあるわけでございます。そこで可動で一万四千トンを流すわけでありますが、この計画に従いまして、現在までいま御指摘のありました藤原、相俣、薗原は完成いたしております。さらに矢木沢、下久保ダムが工事中でありますが、これも明年度中には完成する予定でございますが、この五つのダムが完成しますと、八斗島における調節効果は、この前もこの委員会で申し上げましたように、二千四百トン程度と考えられます。したがいまして、この二千四百トン程度のものを、さらに三千トンまで計画を上げるためには、八斗島上流で洪水調節をする必要があるというふうに考えております。ただいま御指摘の四千トンという効果があるという群馬県の資料というお話がございましたが、この点につきましては、群馬県自体のお話であるかと思いますので、さらに検討いたしたいと思いますが、われわれとしましては、いままでの調節効果は二千四百トン程度であるというふうに考えております。  また、一方におきまして、先ほど申し上げました利根川の治水計画は、一応利根川上流のカスリン台風における降雨状況を把握したものでございまして、かように流域の大きい神流川あるいは鳥川あるいは吾妻川あるいは利根本川というように流域が多くなりますと、出水形態も非常に多様性がございます。たとえば、いまちょっと申し上げますと、二十二年の洪水というものを見てみますと、一万七千トンを分析しますと、利根川本川で五千四百トンぐらいであろう、それから吾妻川で三千百トンぐらいであろう、それから鳥川で八千百五十トンぐらいであろうと想定されます。合計一万七千トンでございますが、これを三十三年の洪水を考えてみますと、大体吾妻川で六千七百トンぐらい出るであろうというぐあいに考えられます。さような状況で出水形態が非常に多様でございまして、また降雨の地域的な組み合わせというのは、そのときの前線の都合あるいは台風の方向によって非常に変わってまいります。従来も御承知のように既設ダムは本川筋に非常に偏在しておりまして、したがいまして、鳥川、吾妻川等の第一支川流域に対しましての措置がまだ完全じゃない。特に鳥川等につきましては、下久保ダム等も設置しておりますが、吾妻川筋につきましては一個のダムもないというような状況でございまして、これらが異常の降雨等を降らせば、先ほど申し上げたようにかなり出水が多くなるということも懸念されます。そういうことで、私らは利根川のような重要河川につきましては、国土保全、安全を確保しなくちゃいかぬという見地から、治水上の見地からこれらのダムを進めてまいりたいと思います。また、利水面と申しますか……。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いいですよ、時間がないから。  群馬県の調査だから、建設省は二千五百五十トンすでにカットされて、下久保を加えれば四千トンをこえるカットだということは知らぬ、こういうような御答弁でありましたが、しかし各県の土木部長というのは、おおむね建設省さんからもらって土木部長に据えるというのはどこの県でもやっていることです。群馬県も同様です。歴代の土木部長はみな建設省から来ておいでです。しかも薗原、さらには藤原、相俣、こういうダムを進めておりました際に参りました土木部長は、建設省の開発課長さんをやっておられた方です。現在県の企業局長をやっておりますが、この方が建設省の計画として、とにかく三千トンカットが必要なんだ、そうして藤原では何トン、それから相俣では何トン、そして矢木沢では何トンがおよそカットできるはずだというお話を、ずっと公式の県議会の場所とかその他の場所で言ってきているわけです。そういったものを群馬県としては合わせまして、先ほど申し上げたような資料でまとめておるわけなんですからね。ですから、群馬県は群馬県でかってな計画を言っているんだということは私は聞こえぬと思うのです。  それから低減率というようなことをお話しになりますから、低減率というもの、これは初めからそういうことがあったとすれば考えられているはずじゃないですか。数年前までは低減率なんということは言わぬでおいて、そしていまになって低減率で二千四百トンになるというようなことは、これはどうも私はあまり理屈が通らぬと思う。
  19. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 先ほど、落合企業局長のお話だと思いますが、確かに建設省に従来開発課長ではございませんけれどもおられました。  ただ、いま四千トンカットできると申しましたのは、ダムサイトのカットでございまして、ダムサイトのそれぞれのカット量を申し上げますと藤原が六百七十トン、相俣が三百二十トン、薗原が八百トン、矢木沢が六百トン、下久保千五百トンでありまして、合計三千八百九十トンとなります。これをおそらく落合さんは言っておるのじゃないかと思います。そこでこれを八斗島に換算しますと、流域もああいう形状でありますし、途中の貯流の問題もあります。したがいまして、八斗島に直接効果のある水量としましてはおおむね二千四百トン程度と申し上げたわけでございます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまお答えいただきましたような数字は私も承知いたしております。既設のもので二千三百九十トンでそれに下久保の千五百が加わりますからおおむね四千トンになる。ところで、とにかく建設省からおいでになった方が治水の上で四千トン、三千トンのカットは必要なんだということを強調され、これは群馬県の土地収用される人たちにとってみればたいへんです。しかし治水の上である程度国土保全という大義名分もあるからということで、群馬県としては協力して今日までやってきたわけですね。当初に低減率というようなお話はなかったのですよ。ですから、これでもう建設省が計画しておるカスリン台風の洪水時における洪水調節は完了しておるのだ、こういう気持ちでおるわけです。それが、新しくダムができたときに低減率というようなお話があっても、これは県民は納得しませんですよ。この点はそういう私どもの考え方、群馬県民の考え方だけを申し上げておこうと思います。  さてそこで、昭和四十一年の九月でありますが、参議院の建設委員会で伊藤顕道さんが当時の橋本建設大臣に八ッ場ダムの問題をお尋ねいたしております。八ッ場ダムをつくる目的は一体何か、こういう質問に対して、昭和四十五年までに百二十トンの水が必要だ、しかし現在確保されておるのは八十トンであって、八ッ場ダムあるいは思川あるいは河口ぜき等で百二十トンの用水の確保ができるのだ、これが八ッ場ダムをつくる目的であります、かようにお答えになっておるわけです。当時の建設大臣がこう答えておるのですから、八ッ場についてはいまいろいろ理屈をつけられて治水上必要だと言っておられるが、ほんとうの目的というものは橋本大臣がお答えになっておるようにこれは利水だ、工業用水なんだ、かようにわれわれは考えざるを得ないのですよ。これは前の大臣の答弁ですよ。この点は一体どうですか。
  21. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 橋本建設大臣のお話でございますが、その席に私も同席いたしておりました。その席では治水上の問題もお話しになっておられると私は存じます。おそらくそういう問題と、もしもお話しなければさような問題は一応御了解いただいたとしてお話しになったことと存じます。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 議事録を見ますと大臣は利水だけ答えておるのですよ。それで古賀さんがそばにおられて、あとになってから治水のことを局長さんがお答えになっておるのですね。ですから、責任者である大臣はこれは目的としては利水なんだ、それであなたのほうがそれでは困るというのであとからつけ足した、こういうかっこうじゃないですか、大臣どうですか。この八ッ場ダムの目的は一体何でおつくりになるのですか。
  23. 西村英一

    ○西村国務大臣 治水と利水と兼ねたダムであります。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういうふうに、いま局長さんもおられるのだから、お答えしなければならぬのでしょう、きっと。しかし、昭和四十一年九月にはそういう趣旨のお答えをやっているということをひとつ大臣のほうに申し上げておきますから、これは念頭に置いていただきたいと思います。  時間がありませんから先へ飛ばしますが、同じく九月の参議院の建設委員会の議事録を見ますと、当時の大臣は次のようにお答えになっております。これは土地収用法とも関係があることですから、読んでみたいと思います。「昭和四十二年度に実地調査費を要求をいたしております。もちろん実地調査費を要求したからといって強行のできるものでもございませんので、地元の十分なる納得、理解がいかなければ、予算がたとえ計上されましても、実際上にこれを使用するということは不可能の場合も往々にしてあります。」こう答えておるのであります。ですから、当時はまだ実地調査の予算がついておりませんでした。昭和四十二年度におきまして、八ッ場ダムにつきまして八千万円の調査費がつき、すでに予算はこの国会を通過しておるわけであります。しかし、このときの橋本大臣のお答えがあるわけでありまして、八千万円の実地調査の予算はついた。ついたけれども地元の十分なる納得、理解がなければ予算がたとえ計上されても、実際上これは使わぬ。こういう趣旨においては西村大臣もお考え方は同じでございますか。
  25. 西村英一

    ○西村国務大臣 こういうダムをつくるときには、地元協力が得られなければなかなかできません。聞くところによりますと、地元は非常に御理解を示していただいておるように聞いておりますが、なお地元協力を得られるように私たちもつとめたいと思います。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それは大臣、どなたからそういうお話は聞いたのですか。現に長野原の町議会、現地は絶対反対、満場一致できめているんですよ。そして関東地建の西川という部長さんが説明に過般県へ行ったようです。実地調査は、事務所をつくらしてくれというような話もしたようですが、地元の町では、町長名をもって文書で、これは協力できませんというお答えもしているわけです。それから、水没地域方々の住民の八割以上は、これは反対ですよ。それは一、二大臣の言われるように協力的な人がいるかもしれませんけれども、群馬県議会も議論しておりますが、これに協力するというようなことはまだきめておりません。特別委員会をつくって慎重に議論をしているという段階です。決して大臣、いま大臣がお答えになったように地元は非常に協力的だなんてことはありませんよ。全く反対なんですから、この点は、どなたが大臣にそういう間違った見解を吹き込まれたか知りませんが、その辺はひとつ認識を改めていただきたいと思います。どうですか、その点。
  27. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 地元の反対の御意見のあることも十分承知しております。ただ、われわれとしましては、このダムは先ほど大臣が申されましたように、治水利水上必要なダムでございますので、地元の意見を十分聞きまして、納得を得て実施していく考えでございます。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、ただいまの土地収用法との問題にかかわってくるわけでありますが、今回の土地収用法の一部改正によって、非常に公的な権力が強まるんじゃないかということで、現地は心配をしているわけであります。地元協力を得てやりたいということでありますが、結局地元は、そういう絶対反対という態勢でこれはもう一致しておる。一部協力的な方があるというので、旅館組合まで二つに割れて、九割の旅館は反対派としての旅館組合もつくる。こういう状態なんですから、そういう点の認識は十分お持ちいただきたいと思うのです。  そこで、実施調査事務所ですが、これは長野原の地域に近くつくるおつもりでございますか。
  29. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 長野原の町内につくりたいと考えております。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかしこれも町議会として絶対反対をきめている。町としても協力できぬ。こういう状態では、これはすなおにできるということは考えられぬでしょう。そうした場合に、実施事務所の設置というものを強行するおつもりですか。
  31. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 先ほどお答えいたしましたように、地元と十分話し合いをいたしまして、納得の上にダムの仕事を進めてまいりたいと思っております。そういう段階でつくらせていただきたいと思っております。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、このダムの高さが百三十一メートルという計画のようです。そうしますと、水没の標高は一体何メートルになりますか。
  33. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 水没の標高は、満水面で五百七十八メートルでございます。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これも参議院の建設委員会の論議なんでございますが、これですと、古賀さんは、川原湯温泉という温泉がありますね、この源泉は水没しないだろう、こう言っておる。ところが、百三十一メートル、満水面の標高五百七十八メートルということになりますと、これは源泉は沈みますね。
  35. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 いや、川原湯の源泉は三つございまして、そのうち二つはかかりません。一つがかかりまして、二つはダムの満水面以上にございます。その一つも、まだ精細な調査をやっておりませんから具体的な数字はわかりませんが、満水面からごくわずかの水面下でございまして、これは適当な防護措置をすれば温泉源の確保はできるというふうに理解しております。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 一番中心の源泉がこれは沈むのですよ。ですから、それは少ないのが残るかどうか知りませんけれども、中心のものが沈むというこの事態は、十分認識をしていただきたいと思うのです。  それからさらに、あすこには名勝の関東耶馬渓というのがございます。それから、天然記念物の岩脈というのがございます。ともにこれは、文化財保護法によって文化財保護委員会の同意を得なければ現況を変更することはできないと思うのです。その点については文化財保護委員会等と相談をされておるのですか。
  37. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 まだ正式にはお話はいたしておりませんが、内々文化財保護委員会意向も伺いながら具体的な計画を定めていくようにいたしております。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 群馬県の文化財保護委員会は岩脈をとめることは反対だという態度でいますことをこの際私は局長によく御認識をいただきたいと思うのです。  さて、そこで、全般的にこの問題についてお尋ねしたいと思うのですが、どうも建設省がこの治水の問題につきましては、当初言ってきました計画とだんだんダムが新しくできるときに、言い方というのが変わってくる。私はこの点を非常に遺憾に思うのです。こういうことではやはり地元民とすれば非常な不信感を持つでしょうし、さらに、現在の制度の中で生活再建対策というものが非常に不十分である。そういう中では地元民の協力を得てやりたいと言っても、これは協力を得ることはなかなか至難だということはもうはっきりしていると思うのです。  そこで、これも建設省からいただいた資料でありますが、「国土建設の長期構想案」昭和四十一年八月二十七日というのがございますね。「豊かな社会を築くための国造り」というものでありますが、これを見ますと、「洪水処理」というところがございまして、現在の水害の被害をなくするためには、「重要水系については確率洪水年が少くとも現在の五十年であるものを、おおむね百年以上」にしていきたい、こういっておるわけです。こういうところでも治水の根拠というものを建設省が絶えず変更していこうという意図が見えるわけでありますが、お聞きしますと、すでに利根川、淀川は最も重要だというので、この確率洪水年は百年にしている、こういうことであります。そういたしますと、これから群馬でさらに沼田ダムというものが問題になるだろうと思うのですが、洪水年を変更するということで、まだまだ洪水調節は足りないから、沼田ダムをつくる、こういうような理由は出てこないと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  39. 古賀雷四郎

    ○古賀政府委員 御承知のように、洪水というものは天然現象でございまして、これをつかまえるというのは非常にむずかしゅうございます。ただいま御指摘のありました百分の一、五十分の一というのは、過去の資料に基づきまして、それを統計的に処理しますと、この程度になるということでございまして、その後の集中豪雨等を調べてみますと、一例を申し上げますれば九頭竜川の上流では従来の最大日雨量は三百ミリであったのが、千ミリをこえた、さようなわけで、天然現象で降雨状態が変わるわけでございます。一応われわれといたしましては、百分の一と申しますのは、既往のデータに基づく百分の一でございますので、これらが降雨の状態によりまして、あるいは出水の形態によって当然変わってくることは考えられます。また地域開発が非常に進んでまいっております。そういった段階におきまして、かなり流出が多くなっております。雨がたとえば百ミリ降った、従来は山に遅滞いたしまして、降水として流れてくるのは六五%とか七〇%とかいう程度でございました。かりに東京の例をとってみますと、これはほとんど降雨量全体が降水量になってくるというような状況で、実測した結果になると、流出係数が一という実測が出ております。さような状況で、自然現象もさることながら、地域の開発に従いまして流出係数が多くなって、流出量がふえるということは、社会の変貌に伴って当然起こってまいる問題でございまして、治水計画が時代の進展に応じて変えられていかなければいかぬということは、これは当然であろうというふうにわれわれは考えております。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もちろん国土の状態が変わってくる、そういう中で河川状況も変わってくる。したがって、降水量の計画等も変更が出てくるということは長い目ではわかります。しかし、つい二、三年前までは、とにかくこれで三千トンカットは十分できるのだというような説明があって、一つのダムが建設省から構想が発表されるとたんに、すでに洪水調節量が変わってくるというようなことでは、これは私はなかなか国民は納得しないと思うのです。大臣は、経歴を拝見いたしましても理科系統の出身でございまして、大臣の中では最も科学技術面につきましては専門家の方であるように聞いておるわけです。そういう方が、たまたま建設大臣でおられるわけでありますから、私は治水の面についてもそうだと思いますが、いま日本の水というのは確かにたいへんなこともわかります。しかし群馬県に、あるいはその他の地域にどんどんダムをつくり、現在のような生活設計が不十分な中で、ダムを強行する。そういう中で、しかもコストも高くなってくるでしょう。そういうことをするばかりが能でないと私は思う。いま海水から淡水を取るというようなことが、どんどん世界各国でも普及しているではないですか。とすれば、もっとそういう点については視野を広げて、工業用水をダムをつくって無理に水没地をつくり、地元民を犠牲にして利水をするというような考え方ではなしに、日本が最も恵まれている海水を使って、そうしてこれを淡水化のために、国がその科学技術の全力をあげて、そのために力を尽くしていくというような政策の転換も必要ではないですか。大臣はそういうことについては十分考えをいたしておると思うのです。同じことでありまして、この洪水調節の問題についても、二、三年で数字が違ってくるというような、そういう非科学的なものではなしに、もっと国民によく理解をさせるようなそういう手当てを講ずべきではないでしょうか。  時間もありませんから、私は以上で終わりたいと思うのでありますけれども、とにかく地元が非常に反対が強い。歴代の大臣は、地元民の納得が得られなければ、これを強行できるものではありませんと、繰り返しお答えになっておるわけでありますが、大臣はこの点は全般的な政策の転換問題を考えると同時に、地元民が納得しないままにこれを強行するというようなことはしないで、強制測量をしない、強制実施もしないということについては、この際はっきりひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  41. 西村英一

    ○西村国務大臣 昭和二十二年のカスリン台風の結果、洪水量を利根川につくった。そのときは一万七千トン・パー・セコンドとしたのです。それからこれがどういうふうに変わりつつあるかということを局長は言ったのですから、これは山口さんもよくおわかりだろうと思います。これからやはり何と申しますか、そのために犠牲になる人というのを非常に考えなくてはならない。やはり了解して納得づくでいかなければならぬと思います。しかし総体的にいって、やはり降った水はためていかなければどうにもならぬ、水はためるということなんです。だから私は多目的ダムのみならず、中小河川もやはりためて初めて利用されるので、だからして利水だけのものということはありません。やはり治水と利水と——治水をやってそれが利水になるのだ、それですから、それはやはり多目的です。水はためたいと思います。これは多目的のみならず、単目的でも、ひとつ降水だけでも、それがやはり利水になると思うのであります。したがいまして、今回初めて小さな河川に対するダムを十カ所ほどやりました。これは来年も伸ばしていきたいと思います。とにかく降った水をためなければ、そのとき流してしまったのでは元も子もなくなる。幸いにいたしまして、利根川の上流の方々の非常な御理解によりまして、利根川に五つもダムができました。群馬県民の犠牲と言っては悪いですが、そのために今度は矢木沢ダムの偉力を発揮し、千葉県、埼玉県、茨城県等のかんがいができたのであります。この干ばつに対しても、利根川にこんこんとして水が流れたのでございます。したがいまして、それは非常に大きい容量を矢木沢から放流しておるのであります。あのダムなかりせば、おそらく稲の植えつけはできなかったでしょう。埼玉県も千葉県も、千葉県は非常に……(山口(鶴)委員「それはわかっているのです。」と呼ぶ)やはり所信を申し述べぬと——したがいまして、十分その地域住民の協力を得まして、また山口さんたちも十分御理解の上で進めたい、かように考えております。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 確かに矢木沢ができたことによって効果を発揮したことは事実でしょう。しかし今日まで群馬県民が協力をして、当初の計画でいけば三千トンカット、さらには利水の面についても相当な成果をあげてきたわけなんですから、隴を得て蜀を望むというのですね。追い打ちをかけて、何でも群馬県民に犠牲をかけさせるという考え方は、われわれは全く納得できないということだけを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  43. 森下國雄

    森下委員長 井上普方君。
  44. 井上普方

    ○井上(普)委員 ただいまいろいろと土地収用法に関しまして御質問がありました。大臣もいろいろと御答弁になったのでありますけれども、私どもといたしましては、先ほど阿部委員から申されましたように、私権を抑圧いたしまして、公権力が非常に強くなってきておる。このように私どもには考えられるのでございます。ただ大臣は合理的にできた——最後のお話で、この改正案は合理的にできておる、こう大臣はおっしゃっておられます。しかし合理的という大臣のお考え方は、起業者側に立った場合には合理的であるかもしれません。しかし被収用者あるいは土地を取られる側から見ると、何と申しますか、非常に時間が早くて、たとえて申しますならば、土地細目の公告なども廃せられたという点から考えますと、非常に公権力が強まっておると私どもには考えられるのでございます。  そこで私はこの問題につきまして、いままでの収用法によって一体一年間にどれだけの件数が収用委員会の裁決を待ったのか、そしてまたそれは起業者側の提示した金額と、裁決を受けたときの金額との差がどれだけあるのか、その点をひとつパーセンテージでもよろしゅうございますからお示し願いたいと思います。
  45. 志村清一

    志村政府委員 裁決件数でございますが、昭和三十八年から順次申し上げますと、土地収用法によります裁決件数は、三十八年が三十九件、三十九年が六十三件、四十年度が八十三件、四十一年度は九十八件でございます。これらは公告を受けた件数を取りまとめた数字でございます。それから……。 井上(普)委員 それはけっこうです。時間がございませんので、あとで調べてお答え願いたいと思いますが、現在の公共事業として認定を受けております件数は年間約十万件でございます。そのうちでわずか八十件だ、あるいは六十件だというような件数しか収用委員会にはかかっていないのが実情です。ところがその間で、いままでのこの土地収用法改正の概念、あるいはまた、いろいろと世論といいますものはごね得をなくしなければいかぬ、ごね得、あるいはコネクションによるコネ得をなくしなければならないというようなことが一般世論にございます。これを背景にいたしまして、そしてこの法に賛成する向きもあるようでございます。しかしながら、十万件にわたる公共事業でございますが、こういうような大きいところで、しかもどういう段階においてこの価格が上がっておるかといいますと、かなり協議の段階において調停の段階において実は上がっておる。しかもそれが電電公社であるとか、あるいはまた鉄道であるとかいうようなところにおいて非常に高くなっておるので、これは建設大臣がまあ非常に御賢明であるためかもしれませんが、建設省の場合を見ますと非常に少なく、価格起業者が提示した価格とその裁決のなにとの間にはあまり差がないわけです、裁決した場合に。こういうようなことを考えますと、これは私は、住宅公団あるいは電電公社、鉄道というような公的機関用地を取得する場合に一つの金庫と申しますか、公団のごときものをつくってそしてそれでもって土地収用を一本化していくというような必要があるんじゃなかろうか、このように思うのでございますが、大臣いかがでございますか。
  46. 西村英一

    ○西村国務大臣 この買収を一本化するのは、これはいい方法ですけれども、実際問題としてなかなかできないであろうと思います。そこで次善策として考えることは、やはり各省の用地担当者の密接な連絡会をつくりまして——いまはばらばらでやっていますからね、建設省建設省でもってやっておるし、それから国鉄は国鉄でやっておる、そういうやつを、下の機関用地係、いわゆる用地屋といわれるもの、それの連絡をうまくやりまして、そしてあまり開きがないようにしたらどうかということをひとつ考えたいと思うのですけれども、そういうことはどうも不合理がたくさんあるようです、買い方によって。こういうことは考えたいと思います。
  47. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣、現在むずかしいというお考え方は私はおかしいと思うのです。この間も私、総武線の複々線工事の実例を見ますと、鉄道の取得のやり方というものは、大臣は鉄道出身でございますけれども、まさにむちゃくちゃです。この問題は、これは計画局長もそのとき私らに立ち会っていただきまして、お話を聞いていただいておりますので、その実情について私がここで詳しく申し上げる時間がございませんから省きますが、まさに何といいますか、私権をこれこそむちゃくちゃに踏みにじったやり方が行なわれておるのです。そういうようなことを考えますと、私はどうも一本化するために政府としましては土地政策の一環としてこの収用法を出しておるとおっしゃるのでございましたならば、この政府が買います公共用地の取得については一本化する必要がある。特にこの間私新聞で拝見したのでございますが、日本住宅公団のごときは先般初めて一件だけしかその土地収用をやっていないというようなことがございました。私実は一驚を喫したのです。と申しまするのは、私らのくににおきまして町村長とかあるいは県知事がこの事業をやる場合に、必ずだんびらで、土地収用法でいくのだぞというおどしをかけながら、実はこの公共用地の取得をやっておるのです。そして被収用者は泣く泣く実はやられておるのが実情です。先ほど阿部委員からいろいろとお話がありましたように、町村における公共用地を取得する場合には、これでよくなるのだからおまえはもうこれくらいでしんぼうしておけ、あるいは予算が少ないんだからしんぼうしておけよというので、押えつけられておるのが実情なんです。これはまた国の面から見ましたならば、こういうような被収用者の抵抗の手段がなくなってくるということになりますと、どういたしましても私どもといたしましては公権力の強化であり、かつまた私権が縮小になる。もちろん考え方によれば、土地というものはこれは公共性を持たなければならないというような面も私らはわかりますけれども、現在私権を抑圧して生活までも圧迫するような買収が行なわれておるのが末端におきましては実情であります。先ほど阿部さんが言いましたが、これは都市におけるのとあるいはいなかにおけるのとはだいぶ様子が違います。先日も高知の田村先生とお話ししたのですが、そのとおり、もっと合理的にやってもらわなければ困る、農民というものは苦しめられているのだ、あるいはまたいなかにおいてやられておるのだから、おい、しっかりやれといって、あなたのほうの与党の方からも激励を受けたくらいなんです。そういうふうな点からしたならば現在の収用法でも私は十分なんじゃないか、件数にしてもわずか、年間に十万件もあるうちの八十件だの九十件だのというような数字なんです。これから考えると私は変える意味が、収用法改正をする意味がなくなってくるのじゃないか、このように考えられるのでございます。ごね得をなくするといいますけれども先ほども申しましたように、ごね得というものは住宅公団とか電電公社とか鉄道とかいうような政府が買う出先がてんでんばらばらにやっておるがためにこれが値段をつり上げておるのではなかろうか、こういうようなところが私には見受けられるのでございます。大臣の御感想をひとつお伺いいたしたいと思います。
  48. 西村英一

    ○西村国務大臣 まあ同じことを答えるようになりますが、そういう各省でばらばらに買う不合理は確かにあります。それかといって、みな事業体が違いますし、仕事の種類が違いますから、それを全部、国鉄でやる用地建設省が引き受けて全部買うというような——どういう方法を言っておるのか、御質問のあれがわかりませんけれども——それではもう一回おっしゃってください。
  49. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、公共用地取得公団なり、あるいは金庫なりをつくる必要があるのじゃないか、そしてやっていったらどうか、こういう意味でございます。
  50. 西村英一

    ○西村国務大臣 後ほどひとつゆっくり御相談しまして、検討いたします。
  51. 井上普方

    ○井上(普)委員 この点はひとつ御研究願いたいと思うのでございます。  それと、先ほど来も申し上げましたが、現在の適正な価格、公正な価格というような点につきましては、これは見方見方によって大きく違うと私どもは思うのです。阿部委員も申しましたけれども、日本における土地の研究所といいますか、あるのは、実は不動産研究所とかいうようなのがあるくらいでございますが、これにいたしましても、その権威はあまり十分でないようです。しかも地方の都市と東京の評価の基準というものが、この不動産研究所におきましてもかなり大きく差が——実情と違っておるのが現実なんです。こういうような点から考えますと、適正な価格あるいは公正な価格というものにつきまして、これは正しいものが出てこない、このように私らは思います。したがいまして、どういたしましても被収用者起業者との間に十分な話し合いが行なわれる——これも時間をかけた話し合いがなければならないと私は思うのでございますが、今度の場合、非常に手続を簡素化しておって、起業者には非常に便利でございますが、被収用者としての異議申し立てと申しますか、私権を、権益を守ろうという立場に立った場合に、どうして守れるか、ひとつこの点を事務的にお話し願いたいと思います。
  52. 志村清一

    志村政府委員 起業者権利者との間の話し合いでございますが、土地収用法規定とは別個の立場で、事前にいろいろお話し合いをするということが実態として行なわれてはおりますが、同時に土地収用法の中でも、第十五条の二以下にあっせん規定がございまして、この規定によりますと、改正案におきましては、事業認定を受ける以前におきましても、関係当事者の申し出によりまして、これは知事に申し出るわけでございますが、あっせんをお願いすることができます。  そこで、あっせん委員としては五人ほどございますが、収用委員会が推薦する者、学識経験者で収用委員会が推薦する者というふうなことで、知事が任命いたしております。そういう場において、いわば公的な立場におけるお話し合いもできる。それからまた、事業認定が行なわれました後においても協議が続けられまして、これによりまして協議がととのいますと、改正法案の百十六条によりまして、協議の確認という制度もととのえられております。また収用委員会で審理をしておる最中でも和解ということはできます。これは五十条の規定でございますが、そこにおきまして、収用委員会が和解の勧告などをいたしまして、お互い話し合いをする場も設けるというような手当てをいたしておるわけでございます。
  53. 井上普方

    ○井上(普)委員 事務的に申しましても、前と現在の収用法手続というものとを比較いたしますと、非常に簡素化されている。しかもその協議する段階あるいはまた和解する段階についても、非常にたったったっと行ってしまいます。しかも、先ほど阿部委員が言っておりましたように、土地収用委員会が現在各府県に置かれております性格というものが、起業者側に非常に便利になっておるのが実情です。これは、手続といたしましては、知事が議会の同意を得まして任命するということになっておりますが、しかし、現在の府県における土地収用委員の顔ぶれを見てみますと、お年寄りがほとんどです。あるいは大学の教授とか、あるいはまた、行政手腕のある方とか、弁護士とかいう人が入っておりますけれども、実際見ますと、もう隠居仕事に仕事をしている方々がほとんどでございます。しかも、その事務局はといいますと、土木部の管理課の職員たちがこの事務局を構成しておるのでございます。でございますがゆえに、第三者機関としての権能を発揮することができない。現在の土地収用委員会の実態から言いますと、あるいは私らのくににおきましても、土地収用委員会第三者としての機能を発揮することができていないのが実情なんです。先ほど阿部さんは、被収用者起業者と学識経験者、ちょうど地方労働委員会のような性格にしたらどうかという意見がございましたが、私は、こういうようなことにでもするか、あるいはまた、知事と全く独立した機関にして、公正な判断をさすような機関にしなければならない。それには起業者とそれとの間の事務局についても、別個のものをつくらなければならない、このように思うのでございますが、大臣いかがでございますか。
  54. 志村清一

    志村政府委員 先生指摘のように、土地収用委員会は都道府県知事の所轄のもとに置かれておりますが、法律規定にございますように、独立してその職権を行なうことになっておりまして、身分保障につきましても、在任中その意に反して罷免されることがないということになっております。また委員につきましても、予備委員制度がございまして、委員がやめたからといって、好きな人を委員にすることはできぬ。予備委員の中から順々にやるというふうなことで、制度的には独立機関である、独立して職権を行なうことができるというたてまえになっております上に、委員の任命につきましても、最も民主的である県の議会の同意を得て行なっておるということでございます。委員のメンバーにいたしましても、私どもが調べましたところでは、先生のおっしゃるとおり、大学の先生方とか、あるいは弁護士、計理士といった方等が非常に多いわけでございまして、公正な第三者として構成されているものと考えております。  ただ事務局につきましては、これまた御指摘がございましたように、現在都道府県の土木部の管理課が事務局になっているところが大部分でございます。と申しますのは、収用委員会の実際の事務が少ないわけでございますので、新しい収用委員会の専任の職員を置く収用法規定はございますが、例外として、府県の土木部において収用委員会の事務を整理させるという例外規定適用を受けているわけでございますが、最近東京とか大阪とか兵庫とかいうふうな収用案件の多いところにおきましては、逐次専任の事務局、相当のメンバーを擁します事務局もできております。また、ただいま申し上げました三県につきましては、収用委員につきましても、非常勤の委員でなくて、常勤の委員を一名置くことができるというふうに改定になっている次第でございます。
  55. 井上普方

    ○井上(普)委員 現在の地方実情を申し上げますと、土木部の管理課の起業者としての手続をとる人間が収用委員会事務局を構成しているのです。——よろしゅうございますか。起業者として手続をとり、そして説明をする人たちが収用委員会事務局を現在では構成しているのです。そういうことになりますと、勢い事務局というものが専門家になりますから、これが権限を持ってまいります。それの意見がそのまま収用委員会に反映するわけなんです。しかも収用委員会は、これはお年寄りで隠居仕事にやっておられる方々が非常に多い。平均年齢をとってごらんなさい、全国で申しますと、おそらく六十五、六歳になるでしょう。そういうような平均年齢の方々で一体勉強し実態を調査するだけの能力がありますか。私どもは、そういうような観点から見ますならば、どういたしましても、この収用委員会がこの公権力を増大し、強化しておる、私権を抑圧しようとするこの法律が出てくる以前におきまして、第三者機関としての権能を十分発揮できるような収用委員会にしなければならない。いま局長は専任の職員を置くことができるというようなことにしておりますと、できるにしておるのですよ、しなければならないにしてないのです。ここに起業者が非常な大きい権力を持って、そして被収用者に対して圧迫を加えていくおそれが多分にあるわけでございます。私、四月の十九日に国道拡張事件につきまして御質問しましたけれども、これなんか徹底的にそうなんです。昭和三十六年に六万円で買っておる土地が、続いての土地、四十年の四月に買った土地が六万八千円なんです。その間に土地の高騰は御承知のように高度成長政策によってぐっと上がっておる。あるいは新産都市指定によってぐっと上がっております。そういうような実情を無視いたしまして、あちらのほうが、三十七年に買収したところの方々が文句を言うから、それでひとつここいらあたりでこらえてくれぬかということで、八千円の値上げしかしていないのです。その当時あの土地にいたしましたら十二、三万円した、こういうようなことが言われておるのです。そしてその補償を直すがために、土地は安過ぎる、だから物件補償補償いたしましょうといって、つかみ銭にぽんぽん渡していく。そこに一戸で四千三百万円という補償を渡し、三十三軒合わして、同じ時期における三十三軒合わして四千五百万円というような実情が出てきた。ここにコネ得があるし、ごね得が出てくるのです。こういうようなことを考えますと、私どもはその買収する人々が——収用委員会として、第三者独立機関としての権能を発揮できるような制度にしなければ、私はこのたびの土地収用法改正というものはおそろしいものになってくると思います。大臣の御見解をお伺いいたしたい。
  56. 西村英一

    ○西村国務大臣 この前ちょっとお尋ねがありましたが、その件について私はあまり知らなかったのですが、そういうようなことが行なわれるならばたいへんでございます。したがいまして私は土地収用委員会の構成につきましては、各県に一つずつあるのですから、りっぱに行なわれておるところもあるし、あるいはあなたのおっしゃるようなこともあるかと思われます。しかしあくまでもこれは公正な立場に立っておる人を任命するようにできておるのでございますから、人選を誤まればそれは土地収用法のみならず、どんなものでもうまくいくものではございません。しかしそれかといいまして、法的にもう少し考えなければならぬ点があれば、これも研究したいと思います。実際専任者を置くといいますけれども、年間に全国で百件くらいしかない。収用法にかけられておるのは非常に少ないのです。しかしその一件一件は大事な一件一件なんですが、しかしそのために専任者を置くということは、これはちょっと考えられないのでございます。あくまで、収用委員会の人選というものは、ほんとうに公正を期し得る、起業のほうにもあるいはまた個人権益も守るほうにも十分な配慮ができるような中正な人が選ばれることには留意しなければならぬと思います。しかしそれは各県で選ぶことでございまして、議会の承認を得ることでございますが、制度上欠陥があるならば、さらに私のほうも検討しなければならぬ、かように考えておるものでございます。
  57. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、各県における収用委員会の方は、これで中正で公正な方々ばかりだと思います。しかしながら、その事務局起業者側に立って、そうして手続もするし、あるいはまた収用手続もする人々なんです。和解にも入る人々なんです。この人たちが買収のベテランが実は入っておるわけなんです。こういうようなことでは、先ほど局長もうなずかれておりましたが、現在の収用委員会は、全国で平均いたしますと六十七、八歳になるのじゃないか、こういうようなお年寄りです、幾ら人格高潔でも、土地に対する知識、価格に対する十分な知識がなければ事務局のおっしゃったようにならざるを得ません。だから私は、事務局体制というものを知事から独立さしたものを一つつくらなければならない、このように考えるし、また、現在では大臣はいまはまだ年間百件ぐらいだとおっしゃいましたけれども、実際はこれは建設省関係において百件ぐらいだと思います。あるいは全国ではかなり多いのです。(西村国務大臣「全国ですよ。」と呼ぶ)全国ですか。しかしそれにいたしましても、おそらく、これだけ手続が簡素になりましたならば、おそらくどんどんやらなければ、収用法をだんだん適用しなければ、この収用法の成立する意味もなくなってくるわけです。こういうような点を考えますと、私はもう少し第三者機関としての権能発揮のために格段の御努力を願いたいと思うのです。大臣は運用によって適正をはかる、まかしておけ、こういうことをおっしゃいます。私は西村大臣を敬愛いたしておりますので、大臣が大臣である間は建設省関係のほうは心配ないと思います。しかしながら、私ら地方実情を申し上げますと、町村営の学校をつくるのに、敷地に対して反対運動が起こりますと、土地細目の公示をやります。やるのに、役場の前にばんとビラを張りまして、夜のうちに張って、そうして写真をぱちんととってすぐに引き破ってしまうというような事例もあるのです。こういうようなことが末端で行なわれているのです。だから関係住民はいつ公示せられたのかわからぬようなことでずんずんいってしまうというようなこともあるのです。大臣はそう言いますけれども地方末端におきましては、収用法というのは伝家の宝刀のごとく関係民に対して圧迫を加えておるのが実情なんです。この場合収用法をやるときには、地方末端の職員とかあるいは出先機関に対してひとつ十分なる教育をやっていただかなければ、おそろしい武器になると私は考えるのでございますが、大臣いかがでございますか。
  58. 西村英一

    ○西村国務大臣 十分運用には留意をいたしたいと思います。井上さんのところがどこであるか知りませんが、知っていますけれどもその名前をあげると悪いでしょうからあげませんが、あくまでも公正に、中正にやられるように、この法案が通過いたしましたらいろいろな点において運用について考えたいと思っております。用地がばらばらで買われて値段がつり合わないとか、あるいは用地屋というものが難儀をしておるとかあるいはいままでの収用委員会が中正でない、あなたが言われるように何かちょこちょことやってすぐにはいでしまうというような、これは特殊な県ですよ。全部がそうだとは私は思われません。特殊なところは、そういうようなことが行なわれておれば十分こちらも指導しなければならぬと思っております。あくまでも運用には十分留意いたしたい、かように考えております。
  59. 井上普方

    ○井上(普)委員 私まだいろいろ聞きたいことがあるのでございますが、まだあとちょっと質問さしていただきたい。  残地補償の問題につきまして十分留意していただきたいということが一つでございます。  それからもう一つは、土地改良区のごとき、あるいはまた改良組合のごときものがありました場合に、まん中に鉄道あるいは道路がすぽっと入るとします。そのときの処置というものがこの法律には十分出てないのです。これはまさに和解だけで話をしようとしています。ここらあたりも考え方といたしましては十分にやらなければならない。ここは抜けておりませんか。局長いかがでございます。
  60. 志村清一

    志村政府委員 残地補償の問題につきましては、収用法規定に基づきまして十分の留意をするように配慮いたしたいと思います。  土地改良区等の調整につきましても、今後とも十分配慮してまいりたいと思います。
  61. 井上普方

    ○井上(普)委員 特にそういうような点につきましてこの法律には入っていませんし、私どもといたしましては農民あるいは被収用者のためにお考え願いたいと思うのでございます。  さらにもう一つの問題といたしましては、実はこの法律によりますと在日の米軍の施設に対してもこの収用法適用できるのでございます。どうも私どもにはその点が納得できないのでございます。この収用法の第一条は公共の福祉でございますか、一体米軍が日本に在留し、そして施設を持つこととわれわれ国民が受ける公共利益というものとはどんな関係があるのか、私にはわかりかねるのでございますが、大臣の御答弁をお願いいたしたい。
  62. 志村清一

    志村政府委員 駐留軍施設用地の使用等に関する特別措置法でございますが、これはすでに法の制定ができておりまして、その法律の内容は、補償原則をはじめ具体的な使用手続の大半を土地収用法をそのまま適用するという形の法律になっております。ところが適用され得る収用法が今回改正になったわけでございますので、全く技術的に、改正された土地収用法適用されるということにいたしただけでございまして、今回の施行法における改正は法技術的な問題でございます。
  63. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はこの問題につきましていろいろとひとつ話してみたいわけでございますが、時間もございませんのでなんでございますけれども、何を申しましても米軍施設に対して公権力を強くしておるのです。私権を抑圧しておる。この収用法をそれに適用できるようにしておることにつきましては私は大きい不満を持つと同時に、国民全体といたしましても割り切れぬものがあると思います。この点をひとつ大臣に御答弁を願いたいと存ずるのでございます。
  64. 西村英一

    ○西村国務大臣 すでに法律でそう定められておるので、今回の改正に特別に関係はないわけでございます。それは別の問題でございます。
  65. 井上普方

    ○井上(普)委員 公権力を増大いたしまして、そして私権を抑圧する土地収用法でございますから関係はないといっても、やはり米軍の遊興施設とかあんなものにこの収用法をかけるようなことにつきましては私どもはどうも納得いたしかねるし、国民自体といたしましても納得できない問題であると思います。この点については大臣と私どもとは意見が異なるので、これ以上やると議論になりますからやめますが、しかしこの土地収用法の大臣の説明にも、第一項に土地の高騰を押えるとかいうことが載っておりましたけれども、私はこれのみでは何ら地価抑制にはならないと思います。そして、いま土地の高騰しておる原因は何かといいますと、大資本によるところの思惑買い、あるいは土地に対する投機に私らは大きい原因があると思います。これの抑制なしにただ単にこの改正法を通すということにつきましてはどうも納得のいきかねる面があるし、そして土地の高騰を押えることができずに、公権力の強化、私権の抑圧という点につきましては私どもは納得いたしかねるということを一つ表明いたしまして質問を終わりたいと思います。
  66. 森下國雄

    森下委員長 これにて両案に対する質疑を終了することに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 森下國雄

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  68. 森下國雄

    森下委員長 これより両案を討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  69. 森下國雄

    森下委員長 起立多数。よって、両案はいずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  70. 森下國雄

    森下委員長 ただいま議決いたしました土地収用法の一部を改正する法律案に対し、正示啓次郎君外八名より、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党四派の共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。正示啓次郎君。
  71. 正示啓次郎

    ○正示委員 四派を代表いたしまして、附帯決議の趣旨を簡単に説明します。  まず、決議案の案文を朗読いたします。     土地収用法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、総合的な地価対策の一環として、本改正案を提案したのであるが、昭和三十九年五月の衆議院本会議において議決された「地価安定施策の強化に関する決議」の趣旨に則り、(一)土地利用計画、(二)地価の公示制度、(三)土地の有効利用を促進し、また開発利益の帰属の適正化をはかるための税制を設ける等、積極的な諸施策を速やかに講ずべきである。   なお、土地細目の公告制の廃止は、収用をうける農民等の立場を著しく弱めるおそれがあるため農地等の収用に当つては、営農補償、生活再建措置等について十分の配慮をなすべきである。   右決議する。 というのであります。  本委員会は、前後六回まことに恪勤精励に各党の御協力により、このきわめて重要な法律案を本日この委員会を通過させていただいたことはたいへん感謝にたえません。  ときあたかも政府側では税制調査会、物価安定推進協議会で地価対策を総合的に推進するようであります。  ぜひとも政府においては、われわれ国会の意思を尊重して強力な地価対策、そしてまたこの改正法の運用にあたりましては質疑応答を通じて表明せられた御意見を十分参酌して、慎重なる運営をはかられまするよう希望いたします。
  72. 森下國雄

    森下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議については別に発言の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  正示啓次郎君外八名提出の附帯決議を付すべしとの動議に賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  73. 森下國雄

    森下委員長 起立総員。よって、本動議は可決せられました。  この際、建設大臣から発言の申し出がありますので、これを許します。
  74. 西村英一

    ○西村国務大臣 ただいま決議されました附帯事項につきましては、政府はこれを尊重してやってまいるつもりでございます。     —————————————
  75. 森下國雄

    森下委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 森下國雄

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  77. 森下國雄

    森下委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる七月五日水曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することといたし、これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会