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阿部(昭)
委員 これは
一つの例を申し上げたいのでありますが、私のすぐ近所は国鉄の沿線でございまして、そこでいま線増工事が行なわれようとしているわけであります。複線電化の線増工事。これはまあわれわれも大いに国鉄の整備を急いでもらわなければいかぬというので、一面ではそういう
主張をしながら、一面でこの
用地の問題が起こってまいりますると、この沿線、
現況農地でありますものが直ちにこれは
宅地化が行なわれる
条件を持っているのであります。したがって、
農地として売買をするということになりますると、さっき言った十アール
当たり七十万、八十万
程度が
現況なんでありますが、
宅地ということになりますると十アール
当たり三百万
程度にやはりなっていくのであります。ところが、現実にいま国鉄が、これは
収用法以前の
段階なんでありますけれ
ども、
農地だ、
農地なんで、やはり近傍類地の
農地はことごとく十アール
当たり七十万、八十万という
状態になっているんだ、したがって、これをよしんば
宅地化することが可能なんだと言っても、なかなかそうはいかぬ。したがって、どうするかということになりますと、
宅地ならば十アール
当たり三百万だ、
農地ならば七十万、八十万ですから、七十万、八十万に少し毛のはえた
程度のところでひとつまとめようじゃないか、こう言ってくるのであります。そういたしますると、公正なる
価格というのは、これは
収用委員会に行ってみなければわからぬのですけれ
ども、私
どもの
地域では
収用委員会に行くようなことはほとんどないのであります。
地方になりますると……。ほとんどこの
収用委員会以前の
段階、任意の
話し合いの
段階で事は固まっていくのであります。その場合に従来の例を見ますると、ほとんどはこの
宅地化可能の、
宅地化に直ちにきわめて安易に簡便に転換可能な
場所でありましても、
農地に毛のはえた
程度の
価格がいわゆる公正なあれだ。現地の
用地関係者に対して当局側はどういう出方で来るかということになりますると、いや、
収用委員会に行けばもっと安くなるかもしらぬぞ、その証拠には固定資産税なんというのはべらぼうに安いじゃないか、普通売買実例が十アール
当たり七十万、八十万ということはようわかるけれ
ども、固定資産税ということになりますると、十アール
当たり十五万
程度じゃないか、したがって
収用委員会に行けばもっと安くなるおそれがあるのだということになってくるわけであります。したがって、私は公正なる
価格というものを、近傍類地とかなんとかいろいろ言うのですけれ
ども、これはしかし近傍類地にもいろいろある。
議論の
観点は、表からいった近傍類地と、また近傍類地にもまた違った面で作用させる場合といろいろありますわけなんで、いずれが公正なる
価格かということについての
保障、確たる歯どめになるような
保障というものはなかなかない、水かけ論になっていく、こういう
性格を
実情の面では持っているということを、これはやはり局長のほうでよく理解してもらわなければいかぬ、こう思うのです。
そこで私は、この
収用法というのは、くどいようなんですけれ
ども、都市の場合はしばしば
収用法までいかなければ問題の解決にならぬという場合が多いが、
地方の場合は
収用法などの
段階にいくのはこれはもうないのです。私も県で何年間か
収用委員を任命されておったことがあったのですけれ
ども、その間にただの一ぺんも
収用委員会というのは動いたことがなかったんです。
地方ということになりますと、この
収用制度というのは、
収用法以前の
段階の
任意協議、任意の
話し合いの場にこの
収用制度というのは逆に
機能していく。その場合にはどういう
機能をするのかということになりますると、何度も言ったとおり、前と違って
土地の取り上げは
収用法でもっとスピーディにやれるようになったんだ、したがってあなた方がぐずぐず言うのならば
収用法だぞというおどしの脅迫の
手段としてこの
収用法は作用する、こういう
性格を今度の
改正案は持っておる、こう思うのでございます。そういう面で私は、この公正なる
価格というものを一体、単なる近傍類地とかいろいろ言うのですけれ
ども、このあれを確たる裏打ちを、ほんとうに歯どめのある形でするのには、現行の
制度ではいささか不十分なんじゃないかという気がするのです。したがって、任命制の学識豊かな云々というのですが、これは全部現実に作用する場合には、
機能する場合には、当局側の、いわば
収用する側の
立場に立って作用していく。
用地関係者や被
収用者の側に立ってその
権益を
擁護するという
機能では、現行の
地方段階における
収用委員会における
制度というものはないんですね。それは近傍類地とかいろいろなことで、理屈はあるのですけれ
ども、なかなかそうはなっていかない。私はそういう
意味で、問題は
公権力を強化するということだけでは逆に
地方末端段階ではこの
制度がマイナス面だけが出てくる、こういうふうに思うのであります。それで、さっき
土地収用委員会の
機能というのは、まあ
制度的にいろいろあるので、
労使の間における
労働委員会や何かとそれはいささか違うということなんでありますけれ
ども、一番いいのは
土地収用委員が選挙か何かで選ばれてくるというのが一番いいと思うのであります。特に
地方なんぞは
土地収用委員会はむしろ前段のあれですから、そこまでいかない
段階でみんな話がきまるのですから、したがって、それだけに何度も言うようにおどしの
手段にだけなる。実際上は
収用委員会は働かぬままでおどしの
手段にだけ
公権力が強まったという
意味で使われる。そういう
性格で、都市の場合なんぞになるとこれからますますいまの都市計画の問題あるいは都市再開発の問題などを考えました場合には、この
土地収用法というものの果たさなければならない
機能は非常に広がると思うのです。そういう際には、私は何といっても
——取り上げられる者だけが
補償とかなんとかという問題なんですが、そういうふうにその
周辺がどんどん
地価が上がったりなんかして開発
利益を持つ
方々からのその開発
利益の吸収という問題を並行して出さなければ、これはやはり片ちんばなものだ、こう思うのであります。そういう
観点で、私はこの今回の
公権力だけを強め、
土地の取り上げだけを容易にする、こういう
趣旨の
改正案には賛成ができないのです。したがってきわめて早い機会に
——一面においてはいまの開発
利益の吸収の問題、それから
地方と都市とでは、
土地の問題の持つ、
収用制度をめぐって起こってくる
状態は違ってくるわけです。都市になりますと、なかなかそう問題は簡単にいかない。
地方なんかは
土地なんかの問題については私
どもはむしろ
用地関係者の
権益をもっと
保障する、守っていく、こういう
機能をこの
収用制度の中では強めなければいかぬのじゃないかとさえ実は思っておるのであります。私
どもの党内でもこの問題をめぐって
議論をいたしました場合に、
地方というものと、それから町の、市街地における
土地収用制度というものと一緒くたに
議論するわけにいかない。こういう
議論が私
どもの党内でも実はたいへんに出たのであります。そういう
意味で私は
地方の
立場、そういう面から見ますると、一方的な公的権力の強化だけでは問題は全部逆に作用する、こういう面を
指摘しなければいけないと思うのであります。もしいま言ったことで答弁があればお聞きしたいのでありますが、時間があれなようでありますから、私の質問はこれで終わりたいと思います。