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1967-06-14 第55回国会 衆議院 建設委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十四日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 木村 武雄君 理事 正示啓次郎君    理事 砂原  格君 理事 丹羽喬四郎君    理事 廣瀬 正雄君 理事 石川 次夫君    理事 岡本 隆一君       伊藤宗一郎君    池田 清志君       吉川 久衛君    佐藤 孝行君       田村 良平君    高橋 英吉君       谷垣 專一君    葉梨 信行君       森山 欽司君  早稻田柳右エ門君       渡辺 栄一君    阿部 昭吾君       井上 普方君    佐野 憲治君       福岡 義登君    内海  清君       小川新一郎君    北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 西村 英一君  出席政府委員         建設政務次官  澁谷 直藏君         建設省計画局長 志村 清一君  委員外出席者         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 六月十四日  委員葉梨信行君辞任につき、その補欠として大  野明君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地収用法の一部を改正する法律案内閣提出  第六一号)  土地収用法の一部を改正する法律施行法案(内  閣提出第六二号)      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。工藤良平君。
  3. 工藤良平

    工藤委員 それでは先般の質疑に続きまして若干御質問をいたしたいと思います。  この前の質問の中で特に土地収用法の第一条の目的とそれから第三条の関係についていろいろとお聞きをいたしたわけでございますが、この第三条を適用させる場合に、この前も若干申し上げましたけれども、具体的な幾つかの事例を見ますと、土地所有者を十分に納得させるだけの起業者としての計画あるいは起業者としての事業実施計画条件を備えていなければならない、こういうことになっておりますけれども、その点について大きな欠陥があるのではないだろうか、こういうことが指摘をされるわけであります。  そこで私は一、二の問題についてその点お聞きをいたしたいと思いますが、先般来から私再三引き合いに出しておりますけれども、下筌・松原ダムの問題が非常に解決が長期化した原因を見てみましても、当初このダム公共性という問題については了解ができる。しかしながら三十四年の一月八日に土地収用法に基づいてダムサイト予定地の立ち入りを熊本県知事に通知をいたしました。同三十一日には法十四条のダムサイト予定地試掘申請を出した。知事も同じく四月九日に許可を与えておるわけでありますが、その後五月十三日に九地建地元民が知らぬうちにその予定地に立ち入って四十年生の杉百本、雑木約百本を伐採した。これがきっかけとなって非常に長期的な、しかも公判闘争にまでも発展をするという事態に立ち至っているわけであります。この一つ事例をとってみましても、このことについてもちろんいろいろと考え方はありましょうけれども、たとえばこういうことを言っている方があります。それは、多目的ダム治水と利水を兼ねたもので、戦後の国土の荒廃と生産力の疲弊にあえいでいたわが国で、これはまさに治水公共性と発電の公益性とをまとうところの実にみごとな衣装であった、こういうようなことを一般に公表しておる学者もあるわけであります。このようなことが非常に大きく発展をして長期化し、そして土地収用法という最大の権力をもって立ち向かわなければならない、こういうふうに話し合いの場というものが失われたわけでありますけれども、こういう点について私はもう少し詰めてみたいと思いますので、これらの点について、特にこの起業者としての基本計画内容について一体どの程度のものを示せば事足りるのか、その点について考え方をお伺いいたしたいと思います。
  4. 志村清一

    志村政府委員 ただいまの御質問でございますが、土地収用法におきましては第十八条におきまして、事業認定申請書の様式を定めております。その中で、添付書類といたしまして事業計画書提出するということになっております。もちろんそれに伴いまして起業地とか事業計画を表示する図面とか、あるいはその事業がいろいろの土地利用規制等関係したり、あるいはその事業を行なうことに関する行政機関意見等がある場合にはそれを添付するということにいたしておるわけであります。その事業計画等を勘案いたしまして、第二十条における事業認定をいたすわけでございますが、その事業認定は、その事業が実際十分行ない得るか、あるいは適正かつ合理的な利用であるかということ等を判断いたした上で事業認定をいたしておる次第でございます。
  5. 工藤良平

    工藤委員 この事業認定内容についてでありますが、現地ダム設置計画説明会を当初開いて、地域住民関係市町村に対して説明いたしておるわけでありますけれども、それは冒頭私が申し上げましたように、一方的に計画確定とそれから準備の進行というものを宣伝をして協力を要請する、こういう形のものが実は唐突に出てきた、こういうことが現地調査から明らかにされているわけであります。  このことは後ほども例を申し上げたいと思いますが、たとえば、土地調整委員会から出ております資料の九六ページに大阪収用委員会高槻市道新設工事事例が出されておりまして、この内容を見ましても、やはり土地所有者に対する交渉がきわめて形式的であった、理解を求めるというよりも強制的に取るという説得のほうに重点が置かれておった、こういうことが指摘されているわけであります。  さらに同じ資料の一一五ページ、守口都市計画街路事業大阪中央環状線建設工事、この内容をちょっと読んでみますと、「強制収用するからには法律又は政令に定められた手続等完全無欠であるべきであり、特に説明会の如きは民主政治基本的理念に基いて真実ありのまま説明し、協力を求めるべきである。然るに政府命令によって事業施行すると説明し、既に決定された如く思はせ、利害関係人法律で許された意見書提出を封じるような言動をしている事は許し難く、」云々と、こういうように、幾つかの事例を見ましても、相当当初において問題を惹起しておる、こういう事例がたいへん多いわけでございます。  したがって私は、この点について、先般もお伺いいたしましたけれども、再度、この三条の適用に関する建設省考え方というものを基本的にお伺いをいたしたいわけであります。  特にこの法の適用にあたっては、強制的に取るということを前提としてものを考える、あるいは事を行なおうとしておる、こういう事実がたくさんある。そういうことから、十分にあらかじめ理解をするという立場に立って話し合いを進めない限り、ややもいたしますと、この土地収用法によって、貧しいがゆえに、あるいは力がないゆえに、あきらめなければならないということ、あるいは公共性という名のもとにあきらめなければならないということが、一般土地所有者についてはしばしば見受けられるわけです。ところが、これは特殊な例でありますけれども、もちろんこういうことはおそらくできないと思いますが、下筌・松原のように相当の資産を持っておりますれば、たとえば室原さんの言ではありませんけれども、暴には暴あるいは法には法という、反対運動が起こった場合に、非常に長期化し、ばく大な資金をつぎ込まなければならないという事態が発生をするわけなんで、この第三条の適用の問題については、ぜひひとつ建設省として十分に住民理解の上に土地収用法については考えていくという立場を明らかにいたしていただきたい、こういうように考えるわけであります。
  6. 志村清一

    志村政府委員 ただいま先生の御発言、まことにごもっともと存じます。過日も申し上げましたように、土地収用法をとかく伝家宝刀考えましておどかしに使うという悪弊がまだ残っておることは事実でございます。片や収用法適用を受ける地主さん方にいたしましても、収用法適用を受けることがたいへん悪いことをしたことになるというふうな誤解を持っておる。双方におけるさような誤解をできるだけ早く払拭いたしたい。土地収用法は、先生御承知のとおり、収用委員会という場において両方が平等の立場において議論をしてきめていくということでございますので、いわゆる伝家宝刀といったようなものでないということを進めてまいりたいと存じますが、しかし、現実におきましては、そのような法のたてまえをなかなか御理解できない面もある。さような意味において、事前に十分説明する必要があるのではないかという御指摘でございます。まことにごもっともと存じますが、特に大事な大きな事業等につきましては、特別措置法等におきまして事業事前説明ということを義務づけております。また、通常公共事業におきましても建設省の、事業のために必要な用地に関する訓令がございまして、この訓令の中におきまして、第二条に、地元協力確保ということを規定いたしまして、事業実施に当たるものはあらかじめ事業目的内容等につきまして、当該事業を行なう土地町村長あるいはその土地並びに付近地住民に対する説明を十分いたしまして、事業施行について地元協力が得られるようにつとめなければいかぬということにいたしております。これらの点につきまして、なおなお不十分な点があるやもしれませんが、この精神によりまして今後とも十分地元の御協力が得られるような線で努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 工藤良平

    工藤委員 そこで基本的な考え方については、ただいまいただきましたので、この補償についての問題でございますが、もう一つ私お聞きをいたしたいのは、この前にもこの補償について、土地そのもの評価という立場補償するか、それとも生活権を守るという立場でそれを尊重しようとするのか、考え方はどうだということをお聞きをいたしたわけですが、やはり生活権を保障するということを一つ前提に置いてものを考えた場合に、もちろん金で解決をする場合もありましょうし、もう一つ換地ですね。それに見合った生活権確保という立場で、やはり働いて何かを得るということが私どもこれはもちろん原則でありますから、そういう立場換地補償という問題について、基本的にどのように考えているか。もちろんこれは道路とかダムというようなことによって、その目的によって大きく違ってくるだろうということは私も了解できますが、その点についてお考えをお聞きいたしたいということと、もし諸外国の場合にこの補償問題等について、この換地補償というものをどのように考えておるかおわかりになればお示しをいただきたいと思います。
  8. 志村清一

    志村政府委員 土地収用法におきましては、原則としてお金で支払うということが第七十条に規定されております。しかし御指摘のとおりお金だけではケリがつかぬという問題があるわけでございまして、それらの問題につきましては、現行土地収用法におきましても、たとえば八十二条に「替地による補償」あるいは八十三条の、農地がない、何といいますか、雑種地を買い入れまして、それを耕地にする、耕地造成というふうなことによる補償、さらにはいろいろの工事をやっていかなければならぬ、その工事代行による補償建物移転代行、さらには家を建てるために宅地が必要だ、しかるべき宅地がない、その宅地造成しなければならぬという宅地造成補償というような、いろいろな、いわば金銭によらざる補償というものを規定いたしております。  諸外国におきましても、原則は私の承知いたしておる範囲においては金銭補償でございまして、物的補償は非常にむずかしい問題があります。補完的に物的補償という問題をとらえて、たとえば家のない人には公営住宅をできるだけ割り当てるというような方式をとっているようであります。  わが国におきましても、法律上はただいま申し上げたような収用法上のたてまえになっておりますが、大規模ダム事業とか、相当長距離にわたって縦貫道なり幹線鉄道が通るというような場合には、生活再建の問題が非常に大きな課題でございますので、これにつきましては、特別措置法の中におきまして、生活再建対策のための協議会をつくりまして、知事さんがそれを主宰いたしまして、生活再建のいろいろな施策を考えていくというふうなことにいたしております。また町のまん中で道路を拡幅していくというようなことになりますと、なかなかかえ地の問題がむずかしいということがございます。それらにつきましては市街地改造法という法律がございまして、表側の商店をさらにうしろにずらす、それを一階に入れる。裏側に住宅を持っておられる方はその上に積み重ねていくという、いわば立体換地的な手法を公共事業施行する際に考え合わせていくという方法などを考えております。市街地の中のそういった問題はたいへんむずかしい問題でございますので、市街地改造法とか立体区画整理方法とかあるいは街区造成法とかいろいろな再開発に関する法律が出ているわけでございますが、それでは十分でないという意味合いにおきまして、ごく最近再開発法案を国会に提出申し上げるというふうな段取りになっております。  また同時に、さような制度が直ちに適用できない場合でも、なるべく公庫の住宅融資を優先するというふうなことは考えを進めてやっているわけでございまして、収用法あるいは特別措置法、あるいはその他の特別立法あるいは行政措置ということによりましてさような方向に努力をいたしている状況でございます。
  9. 工藤良平

    工藤委員 ただいまお話しのように、たとえば都市部の場合には、やはり換地ということもきわめて条件が異なってまいりましょうし、困難な面もあるだろうと私も理解をするわけでありまして、その点は都市開発法なり、そういう問題が出ましたときにさらにいろいろと論議をしたいと思います。ただ問題は、たとえば奥地産業開発道路をつくる、こういうような場合に、土地を取る、こういうことは、奥地にとりましては、やはり利益を生む事項でありますからこういう問題についてはさほど私は問題ないと思うのですが、ただ全体的に非常に大量のダムを建設するというような場合には、何百戸というようなものが湖底に沈む、こういうことになった場合には、私は先般河川の問題でも申し上げましたように、奥地総合開発、こういう立場でやはり換地というような問題も考えていく必要があるのじゃないか、こういうことを御指摘を申し上げたわけなんで、この点については、どうぞひとつ今後の問題として御検討願わなければ、せっかく補償金をもらって、農村におることができずに多くの人たち都市流出をする、その都市流出をした人たちが、わずか三年もたたないうちにほとんど裸になってしまうということが現在の実態で、そういう補償によって逆に悲劇が生まれるというのがいまの実情なんで、その点については、やはり生産をすることによって所得を得るという原則に基づいて、こういう場合にはぜひ土地に対しては、生活できる土地補償してやるという立場で御検討いただきたい、こういうように考えるわけであります。
  10. 志村清一

    志村政府委員 まことにごもっともでございまして、さような立場に立ちまして、先ほどもちょっと触れましたが、特別措置法の第四十七条にございますように、知事生活再建あるいは部落再建というようなことにつきまして申し出をいたしまして、そうして付近町村長とかあるいは関係行政機関等もその会合に交わりまして、いかに生活を再建していくかという方策についてお互いに協議をして進めていくという方向をとっております。これらはどの事業にでもやるというわけにまいりません。先生の御指摘のとおり、大規模な、生活が激変するような事業につきましてさような方策をとっているわけであります。ダム等はまさにその事業に該当すると存じます。これらにつきましては、この法律規定の運用を適正に進めてまいりたい、かように考える次第であります。
  11. 工藤良平

    工藤委員 それでは内容について、ごく二、三点についてお伺いをいたしたいと思います。  大臣の提案理由説明の中の第一項に、収用する土地に対する補償金の額の算定の時期の問題でございますが、これについては、従来の立場を変えまして、事業認定告示のときにおける近傍類地取引価格等を考慮して算定をする、こういうようになっているわけであります。この点についてはごね得をなくするという一つの大きな要素があるのだ、こういうことも先般説明を聞いたわけでありますけれども、この際、後段の、権利取得裁決のときまでの物価変動に応ずる修正率を乗じて出すということを書いているわけでありますけれども、この「物価変動に応ずる」ということでありますが、物価とり方について実はちょっとお伺いをしたいと思うのですけれども、土地の場合に一体どういう物価とり方をするのか、この点お伺いしたいと思います。
  12. 志村清一

    志村政府委員 この「物価変動に応ずる修正」と申しますのは、事業認定時の実質価格を維持するためでございまして、そのためには物価変動に応ずる修正をせねばいかぬだろう。たいへん物価が上がりますと同じ百万円でも値打ちが違ってまいります。それでは地主さんに対して気の毒ではないかという意味修正考えているわけでございますが、いかなる修正をするかということにつきましては、収用法におきまして算定方法についての大まかな線が改正法案において明示されておりますので、いわば技術的なものかと思います。その中身といたしまして考えておりますのは、やはり消費者物価指数あるいは卸売り物価指数というものを総合いたしまして修正率を出して、それをかけていくということで考えたらいかがかと存じておる次第でございます。
  13. 工藤良平

    工藤委員 そういたしますと、消費者物価指数なりあるいは卸売り物価指数は、総理府のものをとるのか、あるいは日銀調査によるのか。いろいろなとり方があろうと思うのですが、そこら辺はどういうことになりますか。
  14. 志村清一

    志村政府委員 卸売り物価指数としてとらえられますいま日本で一番権威のありますのは、一応日銀調査した卸売り物価指数考えられます。また消費者物価指数につきましては、総理府統計局でやっております小売り物価統計調査に基づきます消費者物価指数というものが最も権威あるものと考えておりますので、これらの二つの資料利用いたしたらいかがかというふうに考えている次第でございます。
  15. 工藤良平

    工藤委員 これはとり方全国平均をとるのか、その地域のをとるのか非常にむずかしい問題が出てこようと思うのでありますけれども、その点はどうなんですか。
  16. 志村清一

    志村政府委員 「物価変動に応ずる修正」ということになりますと、こまかに考えますといろいろ問題があるわけでありますが、これはやはりミクロ的に解するよりマクロ的にとるべきではないかということが妥当ではないかと考えますので、やはり全国ベースで取り上げるべきではないかと考えております。
  17. 工藤良平

    工藤委員 物価とり方というのは非常に大きな問題で、それによって逆にまた不公平ができる場合もありましょうし、非常に問題なんで、この点はまたあらためて詰めてみなければならないと思いますけれども、非常に不確定要素を持っているわけです。この点についてはさらに詳細に御検討いただきたい、こういうように考えます。  さらにもう一つは、その前の段階の中で「今回の改正案におきましては、収用する土地に関する補償額算定の時期を原則として事業認定告示のときとし、」とこうなっているわけでありますが、原則というのは往々にして例外があるということに解釈できるだろうと思うのですが、このいわゆる例外というのはどういうことがあるかお聞きをしたいと思います。
  18. 志村清一

    志村政府委員 事業認定時の価格基準にすると考えましたのは、土地に関する補償につきましては事業認定時の価格というものを原則としてとらえていきたい。建物移転料とかそれから営業補償というふうなものはいわゆる開発利益というものとは無関係でございまして、そのもの自体の価値の問題でございます。これはこの法律につきましても明け渡し裁決のときというふうに考えておるわけでございます。
  19. 工藤良平

    工藤委員 近傍類地取引額を考慮してきめる、こうなっておるわけでありますけれども、この近傍類地取引価格というものは、一体だれがどういうふうにしてきめるのか、この点をちょっとお伺いしたい。
  20. 志村清一

    志村政府委員 これは現行土地収用法におきましても、土地価格のきめ方につきましては第七十二条に「収用する土地に対しては、近傍類地取引価格等を考慮して、」云々という規定があるわけでありまして、この点につきましてはだいぶ大きな議論がございます。ただ事業施行しております役所いわゆる行政官庁の中におきましては、閣議了解を得まして公共補償基準というものを作定いたしております。それに基づきまして土地評価等をいたしておりますが、近傍類地における不当な売り惜しみをしたり特殊な価格というものを除きました通常価格というふうなことで解しておる次第でございます。
  21. 工藤良平

    工藤委員 一般土地価格も、現在のように土地が高騰してまいりますと、需要と供給の関係価格の実勢というものがきまるのではないだろうか、こういうように考えるわけでありますけれども、都会地のように土地売買が行なわれておるという地域では、やはり近傍類地価格というものはある程度算定できるのではないだろうかと思いますが、土地売買がほとんど行なわれないという地域がやはりあるだろうと思う。そういう場合の算定というものは、むしろ公共事業をやることによってその周囲の土地価格をつり上げるという結果が出てくるのではないだろうか。非常にむずかしい問題と思いますけれども、そこら辺の判断をどうするか、お聞きをいたしたい。
  22. 志村清一

    志村政府委員 たいへんむずかしい問題でございまして、実はこの土地収用法補償の問題とは別個に、土地価格をいかに評価すべきかということにつきまして鑑定評価に関する法律が制定されまして、ただいま鑑定士あるいは鑑定士補というものが誕生しつつあるわけであります。その中におきましても、鑑定基準土地はいかに評価すべきかという課題が非常に大きな問題であります。土地評価につきまして幾つかの方法がございまして、いわば近傍類地取引価格といったものからアプローチする方法、それから得られる利益を還元いたしまして出す方法、かかりましたコストを複成いたしまして出す方法三つ方法があるわけでございます。その三つ方法を適宜組み合わせながら土地評価をしていくというのが最も妥当な方法ではないかという議論があるわけであります。  土地収用法の場合におきましては「近傍類地取引価格等を考慮して」ということになっておりますので、近傍類地がない場合、あるいはそれに類似したような土地といったようなもので拡大するなり、あるいはただいま申し上げました鑑定評価の理論というものを適用するなりというふうなことで価格判断をしていかねばならぬ。この点につきまして収用委員会判断するわけでありますが、収用委員会は必ずしもそういう専門家ばかりはおらぬわけであります。そのためには、収用委員会判断する場合鑑定を頼む。その鑑定を頼んだ場合、少なくともそのうち一人は法によります鑑定士でなければならぬという規定にいたしておるような次第であります。
  23. 工藤良平

    工藤委員 そういたしますと、鑑定士役割りというのは非常に責任が重要になってくるわけであります。その鑑定士の問題については、その陣容なり資格等について、きわめてきびしい権威のあるものなのかどうか、そこら辺をひとつついでにお聞きをしておきたいと思います。
  24. 志村清一

    志村政府委員 鑑定士はなかなかむずかしゅうございまして、試験としては第一次試験、第二次試験それから第三次試験とございます。第二次試験まで合格いたしますと、鑑定士補になる資格が出るわけであります。さらに実務研修を、二年だと記憶いたしておりますがいたしまして、その上でなければ鑑定士の試験が受けられないということになっております。むずかし過ぎるではないかという御批判もあるのでございますが、先生指摘のとおり非常に重要な役割りをになっておりますので、相当むずかしい試験を経過いたしませんと鑑定士になれないということになっております。
  25. 工藤良平

    工藤委員 この問題は、これは相当詰めなければいかぬと思いますけれども、この程度にいたしまして、次に収用手続の一部保留の問題についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。  この内容を見ますと、大規模事業等においては、全体の用地取得を初年度に完了することができない場合等を考慮して、起業地の全部または一部について、収用手続を一時保留することができるというように変更した、こういうようなことになっているわけでありますが、この場合にこの補償額算定は、収用手続の開始の告示事業認定告示時とみなすということになっておりますが、そうしますと、全体を保留した場合にはいいと思いますけれども、一部保留した場合に、以前解決をしたもの、それから保留したものとの格差というものが出はしないだろうかという気がするのでありますが、その点の関係はどうなりますか。
  26. 志村清一

    志村政府委員 お説のとおり、手続保留をいたしますと、手続保留をした土地については、価格事業認定時の価格基準にして評価されない。手続保留を解除した時点における価格というものを基準にして補償額算定される。そういう意味におきましては、絶対額といたしましては、確かに手続保留をされた土地のほうが、されない土地よりも高い額をもらえるという矛盾はあろうかと思うわけであります。ただ私ども考えておりますのは、事業認定時の価格基準にして計算をいたします場合でも、事業認定をいたしますれば、直ちに補償金の支払い請求が可能なわけでございまして、補償金の支払い請求が出ますと、それを遅滞いたしましたりあるいは手続を怠ったりいたしますと、過怠金とかあるいは加算金というのが日歩五銭というような高いものを重ねて課せられるというような懲罰的な規定もございますので、事業認定時の価格を一応基準といたしましても、事業認定時に直ちに前払い補償などの支払いを請求すればその金がもらえる。そうするとそのときの時価というものにほぼ見合ったものがもらえるということでございます。ところが手続保留地におきましては、手続保留地を解除されるまでさような補償金の支払い請求権がないわけでございまして、手続保留地を解除されたときに初めて補償金の支払い請求ができるということでございます。そのときに直ちに補償金の前払いの請求をいたしますと、そのときの時価に相応した金額がもらえるということでございます。それ自体としてはバランスがとれている。額においてはアンバランスがあるかもしれませんが、それ自体についてはバランスがとれている。同時に先生も御指摘になりましたように、非常に大規模事業、長期継続的にやらねばならぬ事業につきまして非常に広範な面積についてどこもここも事業認定時の価格で決定してしまうということについては、現在の時点においては必ずしも実情に適さない面もあるということで、手続保留という特別な例外的な措置を設けた次第でございます。
  27. 工藤良平

    工藤委員 次に、法案の新旧対照表の中から二、三点お伺いをしたいと思うのでありますが、この中で第八条四項の中に「仮登記上の権利」——この仮登記ということばがしばしば出ているわけでありますが、これは土地収用法そのものとはちょっと話がそれますけれども、仮登記の権利の場合に税制上の問題がどうなっているか、仮登記をした場合に税金がかかるかどうか、これは地価の騰貴の問題ということで最初に質問すればよかったのですけれども、たとえばブローカーがいて土地売買する、仮登記しておいて次にまた転売をするということがしばしばあって、税金をとれないままにくるくる回していくということが事実としてあるのではないだろうかということを心配するわけなんで、これは余談になりますけれども、税制の問題と、仮登記のままで移動していく、そういう実際があるのかどうか、またそれに対する考え方をお聞きしたいと思います。
  28. 志村清一

    志村政府委員 税制上の問題でございますので、私直接の担当でないのであるいは間違えているかもしれませんが、仮登記をいたしました場合におきましても登録税といったような税金は当然かかるわけでございます。土地を買ったのだけれども一応仮登記にしておる、そして転売していくというときに譲渡所得税が仮登記をした人にかかるかというと、おそらく現行制度ではかからぬのじゃないかというような気持ちがいたします。
  29. 工藤良平

    工藤委員 税金がかからないということを私も聞いているわけなんで、この点を特にこれは全体的な土地問題の際に、これは余談でありますから、御検討いただくといたしまして、土地の登記という場面から考えるとやはりこういったある程度ストックをしておいて、ストックしたことが土地価格を引き上げるというかっこうが出てまいりますので、この点についてはぜひ一つ建設省のほうでも関係各省庁とも検討いたしまして、ぜひ改善の方向にお願いをいたしたい、こういうことであります。  本題に戻りまして、第十条の二ですね、この「起業者は、前項に規定する土地を、同項に規定する事業の用以外の他の用に供する工作物その他の施設の用に供するために利用し、又は利用させるときは、当該土地の周辺の環境を阻害しないよう配慮しなければならない。」——「取得した土地の管理」のところです。これはもちろん事業を行なうための付属設備等であるということについては私どもも理解できるわけでありますが、営利を目的としたものというものがこの中に含まれるのかどうか、短期間の間に。それをお聞きしたいと思います。
  30. 志村清一

    志村政府委員 この十条の二は、五十一国会におきまして三党共同修正をされまして挿入された案文をそのまま引用させていただいたわけでございます。二項につきましては、たとえば鉄道敷などがございます。高架の鉄道が敷かれる、そうしますと鉄道としてその土地は使われておりますけれども、高架下のあき地がございます。それをどう利用するか。とかくその利用につきまして、閑静な住居専用地区であるにかかわらず、飲み屋に貸すとか、あるいはがんがんと音を立てる工場に貸すということをいたしますと、当該土地の周辺の環境を阻害することになる。土地を提供された地主さんは、鉄道が通るからやむを得ぬということで貸したのだが、その下がキャバレーなり妙な工場に使われるというふうなことはたえられないというのが常識だろうと思うのです。さような意味合いにおける第二項の規定でございまして、そういうことのないように配慮しようという趣旨でございます。
  31. 工藤良平

    工藤委員 わかりました。  それから次に第十八条の事業認定申請書のところについてでありますが、この問題については先ほど私再三御質問を申し上げまして、事業認定をいたす場合の基本計画についてはきわめて綿密な計画をできるだけ示していただきたいということを申し上げたわけでありますが、この第四項の中に、「土地所有者及び関係人が自己の権利に係る土地起業地の範囲に含まれることを容易に判断できるものでなければならない。」起業地の表示の問題ですね。ここにこういうように書かれているわけでありますが、これは冒頭に申し上げましたように、土地権利者との間のいろいろないきさつからいたしまして、周知をするという立場で、この「容易に判断できるものでなければならない。」ということは非常にむずかしい問題でありましょうけれども、やはりなるべくならばその所有者個人に明確にわかるようにということだろうと思うのでありますが、これは具体的にはそういうことになるわけでございますか。
  32. 志村清一

    志村政府委員 お説のとおりでございまして、土地収用のための事業認定が行なわれても、一体自分の土地がかかるのかかからぬのかということが明確でないというのでは権利者に対して気の毒でございますから、二十六条の二にも「起業地を表示する図面の長期縦覧」という制度がございます。図面を長いこと公衆の縦覧に供しまして、いつでも自分の土地がどうなっているかということがわかるような制度にいたしたい、かように考えておりますが、ただ起業地を容易に判断できるものでなければならぬという場合につきましては、地番による場合もありますが、必ずしも地番によるだけでも明らかでない。地番によることよりも、むしろ道路とか沼とかあるいは建物といったような明白な表示をいたしまして、その線以内というふうなこと等によりまして外周を明らかにするというような図面の提示をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  33. 工藤良平

    工藤委員 その点については先ほど判例を私申し上げましたけれども、この中にも実は当初起業者から示された図面と内容が違うとか、あるいは幅が違うとか、いろいろなものが出されて、それが係争のもとになっているわけなんで、私はそういった意味で、この点については相当やはり綿密なものを示していただかないと、後にたいへん大きな問題を起こすということで、この点を特に御指摘を申し上げたわけであります。  それから、二十六条の問題がいま先に出ましたけれども、二十六条と二十八条の中に、いろいろな周知させるための手続の問題が出ているわけです。確かに国は県に対して、県は市町村に対して、それぞれ市町村は権利者に対して、「公衆の縦覧に供しなければならない。」と、こうなっているわけであります。ところが、やはり一般の人といいますと、もちろん市町村役場のどこかに公示をするのだろうと思いますけれども、公衆の縦覧に供するということで公示はしているけれども、なかなか一年に一ぺんも、呼び出されれば行きましょうけれども、公示をしているのも知らなかったということが往々にしてあるわけで、この点についてもう少しそこら辺を改めて、本人に通知をするということを規定づける、こういうことが必要ではないだろうか。もちろん二十八条の二の中には、「関係人に周知させるため必要な措置を講じなければならない。」こういうことにはなっている。これは補償がきまった場合に、これこれの補償を支払うということを本人に通知をするということだろうと思うのです。二十六条の場合には事業認定告示について、これは市町村段階においては公衆の縦覧に供するという程度になっているわけでありますが、できることならば、これは関係者にやはり個人的に通知をするということができれば最も親切じゃないだろうか、そういう点についてはどうなんですか。
  34. 志村清一

    志村政府委員 事業認定にあたりまして個々の権利者に知らせるということも確かにいい方法だと存じますが、こういう起業をやります場合、相当広範な面積でございます。それから権利の関係内容もいろいろ複雑でございます。登記上の権利者は必ずしも権利者じゃない。また登記簿上にあらわれない、はっきりしない権利者もおるというようなことでございまして、私どもといたしましては、やはり縦覧手続というのが一番妥当な線ではないか。しかも一ぺん縦覧してどこかに隠してしまうというのでは意味ございませんので、二十六条の二に規定いたしますように長期的に図面をお見せする、いつでも見られるというかっこうにいたしたがよかろう、ただし実際問題といたしましては、ある事業を行なう場合に、用地交渉などいたしまして大体付近地の方々にはお話しするというのが通例でございますので、その点につきましてはなお十分考慮しなければいかぬだろう。それからまた、御指摘のように二十八条の二におきまして、単に補償金のことだけではございませんで、たとえば収用法の中におきまして従来は起業者のみが収用法のいろいろな手続を踏むことができたわけでありますが、今回は地主が、権利者側がみずからいろいろな手続を踏むことができるわけであります。前払いの請求とか裁決申請の請求とかあるいは明け渡し裁決の申し立てとか、非常に権利者側の自主的な行動を確保するということにいたしております。それらの点につきましてもあわせて御説明を申し上げる。説明のしかたでございますが、これは説明会あるいは個々にパンフレットを配るとかいうふうな方法でやるように省令の規定をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  35. 工藤良平

    工藤委員 この二十六条と二十八条の関連の中で、二十八条の二については「土地所有者及び関係人に周知させるため必要な措置を講じなければならない。」こういう規定をしてあるわけでありますけれども、二十六条にも、その土地を収用するわけでありますから、やはりそれだけの措置というものは当然行なわれてしかるべきではないか。もちろん計画書そのものを全戸に配って周知させる必要はないだろうと思いますけれども、こうこうこういうところにこういうような事業認定告示を行なうということを周知をするという程度のものは、この二十八条と同じようにしてもしかるべきではないだろうか。その程度のことをやってなおかつやはり話し合いの場でももつれることもあるわけでありますけれども、そういう万全の措置を講ずることによって問題の解決をより早くするということになるのではないか。したがって、私は二十六条、二十八条を同じようにこの周知の措置として十分に講ずるということをうたってもいいのではないかという気がするわけであります。その点について……。
  36. 志村清一

    志村政府委員 お説のごもっともな点も多いと存じます。そういう意味におきまして、たとえばダムとか非常に大規模事業ということにつきましては事前説明というものを義務づけておるわけでございます。ただ通常のそういった大規模でない事業につきましては、あらかじめお話し合いをするというのが通例でございます。先ほども読み上げましたように、建設省規定におきましては、事前説明をしなさいというふうなことでやっておるわけでございます。あらためてさようなことまでする必要はないのじゃないか。むしろそういう法律的な手続をよけい書くことによりまして、かえって工期をおくらせるというふうな問題がありはせぬか、そのような意味におきまして、また冒頭に申し上げました権利者必ずしも明白でないという意味におきまして、長期縦覧という制度によって進めてまいりたい、かように考えております。
  37. 工藤良平

    工藤委員 一々この条項についていろいろ御質問もしたいわけでありますけれども、さらに他の方々の質問時間もあろうと思いますから、一応この程度で終わりたいと思いますけれども、先般来から再三申し上げますように、非常にとうとい私有財産であります。土地を収用するというたいへん重要な問題でありますし、もちろんその問題解決のためにも、より早くこの結論を出して公共の用に供する、こういうことが目的であろうと思います。ただ問題は、この前も論議をいたしましたように、憲法で保障された私有権というものが、公共性の名のもとに私有財産がかりに侵されるということがあってはならない、そういうことについては細心の注意を払う必要があろうと思うし、またややもいたしますと、この土地収用法を振りかざして土地を取る、こういうような感覚というものはやはり依然としてあるわけなので、この点については細心の注意を払って、土地がより公共的な利益として利用できるように、運用についても十分なる検討が必要ではないだろうか、こういうように考えるわけであります。あと幾つか問題もありますけれども、他のときに譲りまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  38. 森下國雄

    森下委員長 福岡義登君。
  39. 福岡義登

    ○福岡委員 まず初めにお伺いしたいと思いますのは、今度の土地収用法の改正が地価対策の一環だということがいわれておるのでありますが、具体的にはどういう点をさして地価対策と考えておられるのか、まず最初にそれをお伺いしたいと思います。
  40. 志村清一

    志村政府委員 地価が非常に高いということは否定できない事実かと思うのでありますが、一体なぜこのように地価が高いかということにつきましては、いろいろな議論があるわけであります。  その理由としてあげられるものは多々あるわけでございますが、そのうちの一つとして、とかく公共事業施行した場合、その補償の金額が非常に高い、その不当に高い値段が周辺の地価を非常に高めておるということもしばしばいわれております。遠くは電源開発が非常に盛んに行なわれましたときにおきましては、電発の補償がその他の地価を高めるという事例もございました。また縦貫道あるいは新幹線という大きな事業が行なわれました場合に、評価が相当高いものにつきまして、それが周辺地の地価を非常に高めるということもいわれております。必ずしもさような評判が事実であるかどうかという点については問題がございますけれども、高い評価付近の地価を引き上げたということは事実ございます。今般の土地収用法改正案によりまして、事業認定時の価格基準にして最低価格考えていくということになりますと、適正妥当な線で公共用地の評価が行なわれる、したがって従来とかく言われておりましたような不当な価格による悪影響というものを払拭できるのではないか、かように考えるわけでございます。また同時に、地価の高騰は、やはり宅地に関する限り需給のバランスがうまくいかないという点があろうかと思います。その意味におきまして、より安い土地が大量に供給されるということが重要かと思うわけでございます。新住宅市街地開発法その他の宅地開発法律がございまして、それらは場合によっては収用権を発動し得るという事業でございますので、それらの事業におきましても、適正な価格によって宅地の取得ができるということによって地価のバランスを回復する役目を果たしたい、かように考える次第であります。
  41. 福岡義登

    ○福岡委員 続いてお伺いしたいのですが、いまのお話で大体要点はわかりますが、具体的に考えてみて、現行法による裁決時と今度の改正案にありますところの事業認定時とのいままでの実績の中における時間的なずれ、そういう時間的なずれがどの程度あったか、同時に、その間の価格変動はどのくらい、これは機械的に計算できぬ面もあると思いますが、おおむね時間的なずれがどのくらいあって、今度の改正法による事業認定時にすれば価格がどれだけ安く買えるか、つまり簡単に言えば、改正法によって従来よりもどのくらい安く用地が取得できるのか、その辺についてお考えがあろうと思いますから、聞かせていただきたい。
  42. 志村清一

    志村政府委員 お尋ねの、一体収用手続に従来どのくらい時間がかかっていたかということでございますが、これは実例から申し上げますと、一番長いもので事業認定から裁決まで千五百四十五日かかっております。それから一番短いもので八十五日くらいでございます。大体標準としましては、三百日くらいでございます。と申しますのは、現行法によりますと、事業認定を行ないましてから細目公告は三年以内にやる、それから細目公告をしてから裁決の申請は一年以内にやらなければならぬ、細目公告でいきますと、四年間は裁決申請ができるというたてまえになっているわけでありますが、今般の改正におきましては、さようなゆっくりしたものではまずいのではないか、特に事業認定時の価格基準にしていくというたてまえから、いたずらに日を延ばすのは権利者に不当な圧迫を与えるという意味におきまして、事業認定を申請しましてから一年以内に裁決の申請をしなければならぬというふうに変えておる次第でございます。さような次第でございますので、現行法による場合よりも改正法による場合のほうが早期に裁決までに至るであろうというふうな想定をいたしております。  さて、それでは事業認定時と裁決時との価格の差でございますが、これは一体どのくらいあるかということでございますが、従来の例によりますと、裁決時の価格事業認定時の価格というものが、裁決時の価格はわかりますけれども、事業認定時の価格というものが明確でないわけでございます。かりに起業者の申請した額というものを事業認定時の価格と仮定いたしますと、実例によりますと、起業者の申請どおりというものが約半分近く裁決価格として出ております。大体四五%増し以内におさまっておるのが現状でございます。
  43. 福岡義登

    ○福岡委員 いまの点でもう少し聞いてみたいのですが、大体長いもので千五百四十五日、短いもので八十五日、平均三百日ぐらい、約一年ぐらいですね。一年間の地価の高騰はどの程度かという推定は非常にむずかしいと思いますが、たとえば一〇%だと仮定をしますと昭和四十一年度において支払った用地取得のための補償費のうちの用地費関係ですね、それが何千億かになっておると思うのですが、それに対して、たとえば五千億と仮定すれば、もう一〇%節約ができる、そういう理解に立っていいのかどうか、その辺のお考えがもう少し具体的にあると思いますから聞いておきたい。
  44. 志村清一

    志村政府委員 事業認定時を基準にいたしまして、その価格物価修正を加えまして裁決時の価格とする、こういうことにいたしておりますと、必ずしも事業認定時の価格がそのまま土地価格にならぬわけでございますが、そういうものを捨象いたしますと先生のおっしゃるとおりなるわけでございます。従来一年かかったものが、一年間の値上がり分を買ったときの値段として払うわけでございますが、事業認定時の価格基準とするからには上がった分だけ少なくて済むということは言えると思います。
  45. 福岡義登

    ○福岡委員 その点でちょっと懸念がありますのは、さっきお話がありました長い千五百四十五日というのは例外としまして平均大体三百日ぐらい、今度の場合でも、いまお話がありましたように事業認定時から一年以内に物価上昇の修正率をかけているということになりますと、現行法と今度の改正案の差というものはそんなに出てこないのじゃないかという一面もまた考えられる。その辺についてどういうお考えですか。
  46. 志村清一

    志村政府委員 法律上は、先ほど申し上げましたように、現行法におきましては事業認定時から裁決時まで四年間であります。改正法におきましては、そんなゆうちょうなことはできないということで一年以内、こういうことをきめますと事業認定そのものの効果がなくなるということに相なるわけであります。そういう意味で非常に大きな差があると存じますが、同時に、手続上におきましては、従来土地収用委員会で審議をいたします場合におきましても、土地代そのものについての議論はそれほど実はございませんで、移転料とかあるいは営業補償とか離作料といったようないろいろな問題がからみましてとかく時間が長引くわけでございます。そういうような意味におきまして今回の改正法案におきましては、土地等に関する裁決を別立てにいたしまして、権利取得裁決という制度を立てます。そして土地は先にケリをつける。その後の建物あるいは営業補償といったような問題については明け渡し裁決という段階で行なう。しかもこの明け渡し裁決に至るまでの期間はもとの地主さんは自分の土地を従来どおり占用してよろしい。そして御自分が早く出たいといった場合には御自分から明け渡し裁決もできるといったような制度にいたしてあるわけでございます。従来非常に時間がかかりましたのは、いまも申し上げたように、土地代そのものよりもほかの課題でございましたので、収用委員会の御審議も相当早まってまいるのではないかというふうに考えます。同時に、土地の所有者側は、いまのような手続のほかに、補償金の前払い請求というのが、事業認定ができますとすぐに出せるわけであります。この前払い請求に伴います裁決申請等におくれますと、起業者は非常に大きな過怠金を払わなければならない、また前払い請求を受けまして払った額が適正な価格と大きく違った場合にも、相当大きな額の加算金を払わなければならないという義務が、起業者側にございますので、用地に関する諸手続は相当スピーディかつスムーズに進むのではないか、かように考えておる次第でございます。
  47. 福岡義登

    ○福岡委員 大体わかりました。続いて次の質問に移りたいと思います。  次の質問は、いわゆる開発利益の取得問題についてでありますが、今度の改正によりまして、取得しようとする土地それ自体に対してはある程度開発利益の帰属というものが理解できるのですが、その周辺の土地につきまして開発利益というものがどのように帰属するのか。今度の改正の中ではそれが具体的に考えられてないように思うのですが、非常に大切な問題だと思う。たとえば道路あるいは鉄道というようなものができまして、その周辺が非常に土地が上がってくる。その鉄道、道路を敷設するために提供した地主、それは簡単にいえば安い補償土地を提供するが、直接提供しなかった周辺の地主は、そのことによって相当不労所得といいますか開発利益というものを受けるわけであります。それについてどうするかというのがいま一つの大きい問題だと思うのですが、今度の改正案の中ではそれが考えられてないように思うのですけれども、一体どういうように考えられておるのかお伺いしたい。
  48. 志村清一

    志村政府委員 先生のおっしゃるとおり、土地収用法法律体系の中においては、いわば開発利益というものについての帰属の適正化というのがはかられておる、しかし、土地収用法外の、土地収用のらち外ではございますが、周辺等の問題については、その問題の解決がついてないではないかという御指摘でございます。土地収用法自体につきましては、先ほども申し上げましたように、周辺地と起業地とのバランスをどのようにとっているかということにつきましては、事業認定時の価格基準にしてやるけれども、事業認定があれば直ちにその補償金の支払い請求ができるわけでございますから、いわばそのときにおける時価がもらえる。その思想は、現行法におきます裁決時におきましてその付近地の時価の価格をもらえるというのと同じことでございまして、現行法におきましても裁決時以降その付近地がどう値上がりするかということについては考えない。もし御本人の御希望があれば従来の土地に相応するような土地をお買いになって開発利益を享受するというようなことでやっていくのが現行法のたてまえでございますが、そのたてまえと改正案と実は同じことでございます。さような意味においては、収用法自体についてはバランスは一応とっておるわけでございますが、さて、そうはいたしましても、土地お金をもうけるのは問題じゃないか、土地というのは公共性が非常に高い、だから土地お金をもうけないように考えるべきではないかという問題になろうかと存じます。これらの点につきましては、たしか五十一国会におきましては、大蔵委員会に、税法の改正といたしまして、著しく値上がりした土地を譲渡した場合には、その値上がりに応じまして税金を少しよけいとるという案が出されたわけでございます。ところが、御存じのとおり、これまた、衆議院の大蔵委員会を通過する際に、自民、社会、民社の三党の共同提案で修正になったわけでございます。すなわち、修正といたしましては、地価対策として税金をよけいかけるという点には、かえって需給のバランス等を乱すという意味合いにおいて問題もある、しかし今後用地を取得して投機的にそれを売ろうという人をほっておく手はない、したがって、土地収用法施行された日以後新たに土地を取得してそれを売った方に対しては、値上がりが大きくなった場合にはひとつよけい税金をかけるということにしようじゃないかという案が、三党共同提案で決定されたわけでございます。そこで私どもといたしましても、大蔵省とも相談をいたしまして、この点は検討いたしたのでございますが、そのような三党共同修正の以前に、すでに現行法では、土地を買いまして三年以内に売った場合には、譲渡所得の全額を課税対象にするという短期譲渡の特別措置があるわけでございます。したがいまして、五十一国会で三党共同修正になりました案でいきましても、少なくとも三年間は実は動かない。三年以後、いわば長期譲渡所得になった場合に初めて多少税金をとられるというかっこうになるわけであります。それらを考え合わせますと、今後四年後、五年後に初めて動く制度でございますので、この土地に関する税制全体につきまして、もう一ぺん根本から考え直して、抜本的に検討する必要があろうということから、今回の国会への提案を取りやめまして、税制調査会等におきまして十分検討しようというたてまえになっておる次第でございます。
  49. 福岡義登

    ○福岡委員 税制の問題は建設委員会の所管じゃありませんから、ここでこれ以上議論してもあれだと思うのですが、いまお話しのような経過はある程度承知しておるのですけれども、土地収用法の改正をめぐって今日までいろいろ議論がやりとりされておるのですが、その中から考えてみて、今度の国会に根本的な税制問題が出されないということについては、強い不満を持っておるのでありますが、その点についてはいずれまた機会を得まして、日にちを変えて問題を取り上げていきたいと思います。  次の質問に移るわけでありますが、建設大臣はいま欠席ですけれども、土地問題の基本について少し見解を承りたいと思うのです。  問題は、国土を全体的にどのように利用していくかという総合的な土地利用計画あるいはまた土地利用区分、そういうようなものが必要だと思うのですけれども、その点についてどのように考えられておるかということをまず承りたいと思います。
  50. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 御指摘のとおりでございまして、全く同感でございます。そこで政府といたしましては、全般的に国土を最も高度に利用する、そういった計画を検討しておるわけでございますが、直接建設省の所管分といたしましては、近く国会に提案することになりました都市開発法案、さらにまた現在鋭意成案を得るのに非常に急いでおりまする都市計画法の改正法案、この二法案はいずれもただいま先生指摘のような考え方に立ちまして、できるだけこの狭い、限られた国土を最も有効に利用していこう、こういう考え方に立っての法案であるわけであります。
  51. 福岡義登

    ○福岡委員 ただいまの次官の御説明もある程度わかるのですが、そういう部分的なものじゃなくて、全体的に、たとえば先般審議いたしました道路の問題についても、幹線自動車道というものができる。建設省としてはそういう道路をつくっていくけれども、その周辺の土地は、いわゆる道路によって開発をされた周辺の地区をどういうぐあいに利用していくのか、この地区は工場用地にする、あるいはこの地区は田園都市にするとか、そういういろいろな総合的な計画を立ててやっていく。私が言っておる意味は、総合的な問題を取り上げて言っているのでありますが、私の承知しておる範囲内では、少なくともいまの佐藤内閣にはそういうものがないように思うのです。今度このように土地収用法の改正をしていって、公共用地を取得する、全体的に公共事業を推進するという側面は否定をしないのですけれども、そういうことよりも、もう少しこういう時代ですから、総合的な国土の利用計画というようなものを出していく、これが基本でなければいかぬと思う。   〔委員長退席、廣瀬(正)委員長代理着席〕 残念ながらいまの佐藤内閣にはそれがない。今後早急にそういうものを考えなければならぬと思うけれども、先ほどの次官の説明では不十分でありますから、もう少し考えられておることを聞かしていただきたい。
  52. 志村清一

    志村政府委員 国土の総合開発をいかに進めていくかということはたいへん重要な課題でございまして、法律といたしましては国土総合開発法というのがございます。そのほか各ブロックごとに、北海道開発法とか、東北開発促進法とかいろいろございます。また同時に首都圏整備委員会あるいは中部圏整備本部、近畿圏整備本部というようなことで、大都市を中心といたしました地域計画を立案する官庁もあるわけでございます。同時に工業等の振興というのが一つのめどになるということで、新産都市あるいは工業整備特別地域という立法がなされました。あるいは低開発の工業を促進するための措置というような各般の土地利用に関する法制が定められているわけでございますが、確かに御指摘のように、必ずしもそれらの立法が十分な効果を発揮し得ないのじゃないかという問題がございます。それらを考え合わせまして、経済企画庁が中心になりまして、そういった地域立法というものを何らか整理統合していくとかあるいはよりよいものにしていくとかというふうなことについての検討を進めているわけでございます。国土総合開発につきましては、法律ができましてからしばらくの間全国計画というのはできなかったのでございますが、たしか四、五年前、四年くらい前になるかと思いますが、初めて全国総合開発計画ができまして、これはまだ不完全なものではございますけれども、一応でき上がったわけでございます。これらの改定もいま準備をいたしておりますが、また首都圏については首都圏の計画あるいは東北については東北の計画等いろいろできております。それらの計画をさらに受けまして都道府県計画というものがあるのでございます。都道府県計画が完全にオーソライズされたものはほとんどございませんけれども、各都道府県ごとに総合開発のための計画を策定している状況でございます。私どもといたしましてもそれらの計画の調整と申しますか、より効率的なものにするということについては今後も努力を進めてまいりたいと思います。同時に、実はこういった地域計画は国民の権利義務を直ちにチェックするという立法ではございません。いわばマスタープランでございます。それらのマスタープランが具体的に国民の権利義務にかかわってまいりますのは実は都市計画法でございまして、先生先ほど御指摘になりました縦貫道等ができるということによって、そこに大きな町づくりができるのじゃないか。工業適地も必要だろうしあるいは住宅適地も必要だろうという御指摘がございましたが、それらにつきましては、都市計画といたしまして個々の国民の権利義務にかかわる即地的な規制が考えられるということでございます。それらの規制につきまして、現行都市計画法は、必ずしも十分に動き得ない点がございますので、今回改正等を検討しておるわけでございます。
  53. 福岡義登

    ○福岡委員 御説明である程度のことは理解できるのですが、いま取り上げておる土地利用の問題は、直接土地収用法関係はありませんが、それでも公共事業の基本になるものですから、もう少し積極的な姿勢というものを示していただきたいし、部分的なものよりも総合的な立場から問題を出していただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、いまお話のありました都市計画法の問題なんですが、これはいつごろこの国会に出される予定になっておりますか。
  54. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 建設省といたしましては、できるだけすみやかに国会に提案したいと考えております。ただ、何ぶん非常に広範な立法でございまして、ほとんど政府全各省に関係をしておる法案でございます。したがいまして、建設省で立案をいたしております原案につきまして、各省からいろいろな意見や要望等が出ておるわけでございまして、現在日に夜を継いでこの調整を急いでおります。何日ごろということをここではっきりと申し上げることは困難でございますが、できるだけすみやかに各省との意見調整を済ませまして、提案をいたしたいと考えております。
  55. 福岡義登

    ○福岡委員 少なくともこの土地収用法の審議が終わるまでには出していただきたいように私どもは思うのであります。できるだけ早く出していただくように要請して、この問題は終わります。  次に移るのですが、次の問題は補償についてであります。先ほど工藤委員質問しておりましたが、憲法第二十九条第三項には、私有財産は正当な補償のもとに公共の用に供する、こう規定してあるのですが、この「正当な補償」というのはことばではわかりますけれども、中身に入ってみると非常にむずかしい問題である。ただ単に金銭補償できないものもある。精神的なものもありますし、結論的には現在やっておるような生活が保障されるかどうかということになると私は思うのですが、この正当な補償というものがそのつど変わってくるような場合もまたあると思うのです。いろいろ要綱などもきめられておるのでありますが、考え方としては正当な補償というのはどういうようにお考えになっておるか。非常にむずかしい質問なんですが、条文はある程度読んで知っておるのですけれども、結論としてどういうことが満たされれば正当な補償というように理解できるのか。
  56. 志村清一

    志村政府委員 非常にむずかしい問題でありまして、憲法に保障されているその正当な補償の具体的な展開が、現行土地収用法におきましては第六章「損失の補償」という項に定められてございます。個々に申し上げますれば、損失を補償すべきものはだれなんだ、あるいは個別払いをしなければいけない、何となくまとめて払ってはいけないとか、あるいは損失の補償について、たとえば土地の収用あるいは土地の使用についてはどう考えるか、あるいは建物移転あるいは残地その他についてはどう考えるべきかというようなことをこの章にいろいろ規定しているわけでございます。これを総合したものが正当な補償ということになろうかと存じております。
  57. 福岡義登

    ○福岡委員 私のほうも正当な補償とはこういうものであるということで数字をあげたりなどして質問できる筋合いじゃありませんから、むずかしいのですけれども、結論として正当な補償というのは現在それぞれが営んでおる生活が最低限保障されるというものでなければいかぬというぐあいに私どもは考える。  そこで、そういう考え方の上に立って、いま一つの例を出しての質問なんですが、たとえばダムが建設をされる。水没地域あるいは付帯工事などの用地の提供をする直接の該当者は、正当であるかどうかは別としても、一通りの補償を受けるから問題がないといたしまして、たとえば水没をする地区のすぐ上流にある人が商売をしている。ダムが建設されたためにそこの人は全部どこかに移転をするわけですから、直接そのダム建設には該当しないで補償されなかったけれども、そのいう意味で間接的な被害をこうむった場合は、現在の補償要綱ではどういうようになっておるか。
  58. 志村清一

    志村政府委員 ただいま御指摘になりました問題は、実は専門家の中でも非常に議論の多いところでございます。しかしお説のとおりダムなどで水没いたしますと、端的に申しますと、山の上のお寺だけが残ってしまって檀家が全部なくなってしまった。そうすると、お布施が出ませんから、坊さんが食っていけないということになるのが実態であります。さような場合も、先生指摘になりました営業の場合も若干あるわけでございますけれども、さような問題をどう処理をするかということにつきましては、先ほど工藤先生の御質問にお答えしました公共補償基準の中におきましても少数残存者補償という項目を設けておりまして、ただいま例をあげましたお寺のお坊さんとか、あるいは買い手がだれもなくなった商店とかいうものについては、少数残存者としての補償をするということにいたしております。   〔廣瀬(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 福岡義登

    ○福岡委員 わかりました。  そこで、かえ地補償について少しお伺いしたいのですが、現在の法律では金銭補償というものが原則になっておりまして、特に土地所有者などが要求する場合は、土地収用委員会が適当と認めればかえ地補償ができる、こういうことになっておりまして、それも限定をされた形でなされるようになっておるのでありますが、今後補償する場合において、金銭補償原則としないで現物補償原則とするというような考え方はできないか、こういう点についていろいろ意見を持っておるのですが、そういうことについてどうお考えになっておるか。
  60. 志村清一

    志村政府委員 生活をもう一ぺん立て直すという必要が出てまいりますためには、先生指摘のように単に金銭補償だけで解決できる問題ではないのじゃないかという御指摘もっともでございます。ただ個々の人の場合に、現物補償をするといたしましてもたいへん態様が異なっておりますし、また現実に起業者としてもいろいろ問題があるわけでございます。さような意味におきまして、よその国の法令におきましても金銭補償というのが原則になっておるように私どもは承知いたしております。ただ御指摘のように、かえ地による補償ということも現行収用法の八十二条に規定がございまして、この規定におきましては、お金にかえてかえ地をもって補償してくれということを収用委員会に要求することができることになっております。収用委員会は、その起業者が持っておる土地を指定してここをかえてくれというような要求がありました場合には、その土地をやりなさいという裁決もできる。ただ土地を指定しないで、または起業者の持っていない土地をくれと言われた場合につきましては、それも収用してまたやるということをやりますと、またがたきみたいになっていつまでも続くわけでございますのでなかなか収用権の発動ができない、その確保ができないという意味におきまして、かえ地の提供を勧告する——勧告するだけではいけませんものですから、国とかあるいは地方公共団体である起業者が、国有地とかあるいは公有地を持っている場合に、かえ地として相当なものがあれば譲渡のあっせんを収用委員会にも申請できるというふうな規定を置きまして、かえ地についてできるだけ配慮ができるというような制度にいたしておるわけでございます。
  61. 福岡義登

    ○福岡委員 これは法律解釈というよりも、ものの考え方として私はこの問題を取り上げておるのですが、たとえば幾らかの補償金をもらったけれども、中にはその補償金を活用する能力がないために、あるいはやろうとするけれども適当な条件が整わないために、もらった補償金がいつの間にかちびてしまってなくなった。あるいは貯金をしても、いまの佐藤内閣の政策では物価が上昇するわけですから、銭の値段も下がってくる。そういうようなことで、事実上たとえば農業しておった人が転業せざるを得ないとか、あるいは出かせぎを余儀なくされるという場合が多いと思うわけです。ですから金銭補償というよりも現物補償によって——小さい公共事業の場合はそうもできぬと思うのですが、たとえば大きい二百戸も三百戸も水没するようなダム建設などの場合は、適当な場所を見つけて耕地あるいは宅地、あるいは区画された町づくり、そういうようなものも併用してごっそりその部落が別のところに移動していって、従来よりも少し条件のいい生活が営まれるというところまで考えていく必要があるんじゃないか。それが直接土地所有者などの利益を守ることであると同時に、国家的な利益にもなると思うのです。そういうケースを今後大きいダムなどをつくる場合に私どもは考えていきたいと思うのですが、建設省としてはそういうことを考えるかどうか。特に、この点は今後将来の問題として大臣からはっきりした考え方というものを聞いておきたいと思います。
  62. 西村英一

    ○西村国務大臣 補償の問題でございますが、ただいまお話のありましたように金銭のみではやはりいかぬということ、これは非常によくわかるのです。民間事業でありますとそういうような体制をとることはできます。ただし官庁は一定のワク内で仕事をすることでございますから、なかなかそういうことができないのです。しかも、ただいま局長からも説明されましたように特例として金銭補償以外のことはありますけれども、そういうような生活の全般についてとことんまでめんどうを見るということはなかなかやりにくいのであります。しかし、私個人としては非常に賛成であります。したがいまして、その方向といいますか、そういうことについてはケース・バイ・ケースということなら別ですが、制度として、行き方としてそういうことが成り立つかどうか、やはり一ぺん検討してみたいと思うのです。それぞれの場合につきましてそういうことはありますけれども、全般的には金銭補償されて、金銭をなくするという場合が非常に多いんです。したがいまして、せっかく金をもらいましても、それをまた投機的に使ってかえって不幸を招くという事例が多々ありますから、もう少しちゃんとした生業について全般的に前よりもいい生活ができるようなことをするには、少しやはり検討をしてみなければならぬ、こう思いますけれども、意見については十分価値がある考え方だ、かように思っておる次第であります。
  63. 志村清一

    志村政府委員 補足さしていただきます。  先生指摘のようにダムとか非常に大きな事業の場合にはさような問題が起こるわけでございます。そういう意味におきまして特別措置法におきましては、そういうような大きな事業のときには生活再建のための措置を考える必要があろうということで、生活再建または環境整備のために、措置として都道府県知事に対しまして権利者、地主等が申し出をいたしまして、ひとつ生活再建なり環境整備について考えてほしいという提案ができることになっております。そういたしまして、宅地なり、あるいは開発して農地とするに適当な土地についての取得あるいは住宅、店舗その他の建物の取得、職業の紹介、指導、訓練、それから他に適当な土地がなかったため環境が非常に悪い土地に住まざるを得ないという場合における環境の整備というようなことに関しまして、申し出によりまして知事さんは関係行政機関あるいは付近の市町村長、やはり市町村長が一番力があって実態がよくわかっているわけですから、それを交えまして、それから起業者も入り、権利者、土地を収用された方々の代表も入る会合を持ちまして生活再建対策をつくっていく、その計画をみなが尊重しながらやっていこうということにしておる次第でございます。実際の運用につきましても、ダム等の場合におきましてかえ地を造成する等のことは各方面で少しずつやっております。ちょっとダムの名前は忘れましたが、中部電力のダムの場合には生活再建が非常にうまくいっている。村づくりというふうなかっこうでうまくいった例もございます。建設省ダムの例におきましても、かえ地の提供というふうなことでいろいろ地元とも折衝申し上げたことがございます。ただ必ずしも地元の方々がそれを欲しないという場合にはいたし方がございませんけれども、そのような問題については、建設省ダムをつくっていくというような場合におきましてはまじめに考えて努力してまいりたいという方向で進んでおる状況でございます。
  64. 福岡義登

    ○福岡委員 もう少しはっきりさせていただきたいと思うのですが、ある場所を私は想定しながらやっておるのです。いまの大臣なり局長なりの御説明ではあまりまだどんずばりの回答にはなってないのですけれども、たとえば三百戸の民家が水没する、一部落がなくなるわけですね。そういう場合は、中には何人かこの際補償金をもらって、都会のほうに子供が出ておるからそこに行きたいという人もあるでしょうが、ダムができるようなところはほとんど農家が多いわけですね。新たに耕地を求めようとしてもそう簡単に求められるものではない。かりにあったとしてもそれは都合の悪いところで、都合のいいところは非常に高い、もらった補償金ではどうすることもできない、そういうようになってくると思います。そこで、何十町歩になるかわかりませんが、水没する耕地に匹敵するようなところを、たとえば水田なら水田が水没する、この水田をどこかにつくるということでなくても、仕事をかえていけば——果樹園をやるとか畜産をやるとか、そういうように変えていってもいいと思う。問題は、いま生活をしておると同じような、もしくはそれ以上の生活が保障されるということが大切なのでありまして、先ほどの御答弁では、そこまで補償考えていない、できればそういう方向に努力をしてもいいけれどもというお話なんですけれども、地元から全員でなくても大部分がそういうことを求める場合には、責任を持って補償していくということをやっていただきたいと思うのですが、再度質問しますけれども、そういう方向についてどう考えられておるか。
  65. 志村清一

    志村政府委員 先ほど大臣もお答えになりましたように、個々の場合によっていろいろ事態が違うわけでありますけれども、先ほど私が御説明申し上げましたように、生活再建対策あるいは環境整備計画といったものをつくりまして、それも被収用者だけではなかなかできにくいものでございますし、また起業者と被収用者だけでもいかぬ。先ほど御指摘のように従来水田であった方が牧畜というふうなことも考えられましょうし、あるいはいかだ流しの方がトラックの運転を習うということも考えられる、いろいろあるわけでありますので、関係行政機関も入れまして、そうして申し出によってそういう組織をつくって生活再建考えていくという方法で進めていく、それに対して関係者はみな喜んで協力するという方向で進んでいただきたいという規定があるわけであります。この規定の運用を十分進めてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  66. 福岡義登

    ○福岡委員 重ねての質問なんですが、そういうケースが起きた場合は、通り一ぺんの取り扱いよりも、ぜひ責任を持って次の生活計画ができるということにしていただきたい。またいずれ具体的にはそのときの話にしたいと思いますが、そういう点を要望して次に移りたいと思います。  不動産鑑定士の問題なんですが、現在のところ非常に鑑定士が不足をしておるというお話が、今日までこの委員会でもほかの委員からも言われてきたのですが、この不動産鑑定士の特別試験制度、これは不動産の鑑定評価に関する法律の附則の第二項に規定されておる。これが去年の十二月三十一日までということになっておりますが、関係者の間ではもう二、三年特別試験というものを延ばしてもらえぬかという意見があるのです。鑑定士が非常に不足しておるという事情を考えてみますときに、そういった措置がとられていいんじゃないかと思うのですけれども、その辺の事情あるいはお考えについて聞かしていただきたい。
  67. 志村清一

    志村政府委員 不動産鑑定士の特別試験は、不動産鑑定士制度ができたばかりでございますので、一次試験、二次試験、三次試験それぞれ非常に厳密な試験をいたすのにかえまして、従来の経験のある方を一部優遇して、短期間ではございますが、特別試験を行なうという制度でございます。この制度につきましては、たいへんたくさんの利用者がございまして、相当数の鑑定士鑑定士補が誕生したわけでございます。この試験をもう少し延ばしてくれという意見は、実は昨年じゅうもぼちぼちあったのでございますが、その後私どもがそのような方向の方々といろいろお話をしましたところ、試験の性格自身御存じない方がたくさんございまして、端的に申しますと、取引業をやっておりますと当然鑑定士になれるのだというような誤解等があった向きが多いようでございます。試験の内容あるいは不動産鑑定士の資格の具体的な内容等についてよく説明しましたところ、特別試験を延長してくれという御意見は少なくなり、ごく一部におきましては、まだやってほしいという御意見はございますが、それぞれの専門家の意見あるいは鑑定士試験の試験委員の方々にお聞きいたしましても、特別試験を受験された方でほとんどしかるべき方はもう鑑定士なり鑑定士補に合格しておられる。これ以上やってもおそらくむだではないかという御意見が多いようでございます。それらの御意見を伺っているうちに、期限が切れましたので、ことあらためて新たに特別試験を設置するということは、ただいまのところ、私ども事務的には考えておらぬ状況でございます。
  68. 福岡義登

    ○福岡委員 これで終わります。
  69. 森下國雄

    森下委員長 石川次夫君。
  70. 石川次夫

    ○石川委員 土地収用法の改正の提案理由説明を拝見しますと、地価対策に着実に次々と手を打っている。その一環としてこの土地収用法の一部を改正するという趣旨の説明になっておるわけであります。ところで地価対策というからには、地価問題について土地収用法に入る前提条件としての問題に若干触れてみたいと思うのであります。  この地価問題は、十年も前から非常にやかましく取り上げられている問題であります。私もだいぶ古いときに、この地価対策を早急にやらなければならぬというので曲がりなりに一つ要綱なんかも出したこともあるわけでありますけれども、そのときと事情は一向に変わっておらない。したがって、政府の打った地価対策としての施策というものが、ほとんどまだ成功しておらないということが率直に言えるのではないかと思っております。ところで、この前もちょっとお話をしたのでありますが、前の建設大臣の瀬戸山さんは土地は商品ではないということを言明をしたわけであります。しかしながら、土地は現実には売買をされておるわけでありますから、これは商品ではないということは若干疑義がある、というよりは正確な表現ではない、こういうことは当然言えますけれども、しかし土地というものは生産はされないわけです。生産がされないという点で、これは確かにほかの商品とは違うという意味で商品ではないということ、これは非常に公共的な性格を持つものであるから、単なる商品として考えるべきものではない性格のものであるということで、商品ではないということを言われたのは、一つの進歩であったと思うわけであります。ところが西村大臣は、特殊な商品であって、商品でないということは誤りであるというような表現があったわけでありますけれども、これはどうも若干後退しているのではないかというふうな疑問を私は感じておるわけであります。しかし、この商品というものは生産をされておらないだけに、価格体系というものを持つことは非常にむずかしいという点で、地価対策というものは非常に困難であるということは議論の余地がないところでありますが、地価がなぜこのように大きな問題になったかということについては、これはだれでもいつも言われることでありますけれども、まず住宅の困窮を来たしておるもとは地価問題であるということが第一点として言えるのではないかと思っております。それから地域開発をする場合に、ごね得やその他の関係があって、地価がどんどん上がるというようなことも含めて、地域開発の非常に難渋している基本的な原因というものは地価問題である。それから現在の通貨管理制度のもとにおいて信用インフレのもとになっているのが、何といっても地価問題ではないか。たとえば坪五万円で買った土地がだんだん値上がりをして十万円になるということになると、その差額に高額の信用を与えるということになるということからくるところの物価対策の一環として、この地価問題というものはきわめて大きな要素をなしてくるというのが実態であります。いままでは土地を持っている人が土地の値上がりでもって利益を受けるということが地価の値上がりと関係していたわけでありますけれども、特に工業用地の値上がりが住宅用地や商業用地に比べて極端に高いというところで、工業生産に地価というものが反映をするというようなことから、財界でも、この地価対策を何とかしなければならぬという声が工業関係の産業界から一応強く出てくるということで、特に自民党を動かした大きな物価対策の一環としての地価対策ではなかったろうか、こう考えるわけであります。  それから最後に、どうも見のがされがちでありますけれども、やはり地価高騰によって得るところの利益というものは完全な不労所得であります。財産権の問題その他法規的な関係はありますけれども、これは完全な本人の財産権として言えるものではない性格のものであります。今日、衣食足って礼節を知るということばがありますけれども、これはもちろん住宅というものが安定をするという前提の上において衣食足って礼節を知るということができたので、なるほど衣食は足ったかもしれませんが、肝心な生活の本拠であるところの住宅というものが安定をしない。このようなことでいわゆる不労所得というものを見のがすということは、非行少年を発生させる遠因になっているということも言えると思うのであります。一つ住宅の過密化ということもありますが、不労所得というものを公然と見のがさざるを得ない政治体制というふうなものも、いわゆる社会教育上非常に大きな問題ではなかろうかという点で、この物価問題を中心としてでもこの地価対策というものとほんとうに真剣に取り組むというような基本的な態度がきまらないと、この住宅の問題、地域開発の問題、物価高の問題、あるいは不労所得を認めるという、こういう社会的な大きな問題を惹起するわけであります。これに対して着々と手は打っておると思いますけれども、しかし私はきわめて不十分であるという見解を披瀝せざるを得ない。きわめて残念であります。こういう点で、これはほんとうはただ単に建設大臣あるいは建設省所管として処理できる問題ではないわけであります。これは、内閣全体に地価を何とか食いとめるという体制ができておのずから物価をとめることができるという体制ができる、こう私は信じております。したがって、物価を何としてもとめるというようなこと、あるいは土地対策を何とか完成させるという前提条件としての地価問題、これを何としても食いとめる、これに不退転の決意を持って当たるという態度を内閣全体として持たなければ地価問題は解決の道はないということが私の信条でありますけれども、この点に対する建設大臣の見解を承りたいと思います。
  71. 西村英一

    ○西村国務大臣 私が先般特別な商品と言ったので、後退したのではないかというお話でございますが、後退したという気持ちはないのですけれども、現実の問題を踏まえてそういうことばを使ったのです。やはり土地のことを国土といいますし、国全体のものという全体の考え方はやはりだれも同じであろうと思うのです。それからまた、生産されないということも、石川さんが言われたとおりです。したがいまして、そういう意味からいって、しかし現実にはそれが売買されておるというようなこともありますから、そういうような表現をしたのです。そこで今回は土地収用法が地価対策の一環だと考えております。しかしそれでもってどれだけどうなるんだ、効果をあげるのかということの計量的な数字はちょっとわかりませんが、とにもかくにも地価対策の一環であるということは確信をいたしております。この法律の制定を見ますれば、相当にこれはまた地価対策の一環となるということでございます。  元来、地価というものがどれくらいな値段が適正かということは、やはりなかなかこれはきめがたいと思うのです。しかし現在売買されていますし、また私たちのように自由主義経済をとっておるもので考えますると、適正な地価とは何ぞやということはきめられないと思うのです。しかしいまのような土地価格であるということは、やはり需要供給の関係から起こっておるものだと思われるわけです。したがいまして、地価を安定させると申しますか、高騰させないためには、需要供給のバランスの上に立って初めてそれがなし遂げられるのではないかと思うわけであります。したがいまして、そのためには、やはり需要供給のアンバランスがありまする大都市付近におきまして、相当な値上がりがするわけであります。全体、同じ地価と申しましても、全国の地価を平均しますれば、それは一般物価の高騰とどれだけの開きがあるかということは、これはそんな開きがない。しかし特定なところについて、特定な開きがあるということは、需要供給のアンバランスからきておると思うのであります。そのアンバランスは何できたのかと言えば、やはり人間が集まるし住宅はほしいのだ。したがいまして、いままでわれわれが考えてきたところは、やはり宅地の大量供給をやらなければならぬのじゃないかということであります。したがいまして、特別な手があれば別でございまするが、現在地価の高騰というものは需要供給のアンバランスによって起こったものであるから、なかんずく宅地等のために起こっておるから、その宅地の供給を十分やってそれを安定させたいというのが一つの政府の考え方でございます。  工場用地の問題ですが、まさに工場用地は住宅用地よりも非常に高いです。この問題は、やはり何と申しますか、経済成長の非常な伸びの一つのあらわれであろうと思うのであります。石川さんは、工場用地が高くなったためにあわてて出したのではないかということを言われましたが、それのみではありません。全般の地価が高くなったから何とか手を打たなければならぬ、こういうことでございます。したがいまして、この土地収用法もそうでありますし、今後政府としては宅地開発もやらなければならぬ。なおこの土地の再開発のために、先般も都市開発法の提案を決定いたしました。これも地価対策の一環になります。なお、近い将来提案をいたしたいと考えております都市計画法による土地利用の確立というようなことも、地価対策の一環になろうかと思うのでありまして、あらゆる手を尽くしまして地価の安定をはかるということであります。もしそれ以外に名案がありますれば、ひとつどんどん提案をしていただきまして、私たちも地価を押えるということに対しては十分な力を政府として注ぎたい、かように考えておるものでございます。
  72. 石川次夫

    ○石川委員 それで土地というものは商品ではない、あるいは国土という観念を持たなければならぬ、公共性を持っておるということは常識でありますけれども、しかし個人の財産ということに限定をしてみた場合に財産権というのは一体何だろうか、こういうことが一つ問題になると思うのですが、これはちょっと法制局でもありませんから議論に流れるかもしれませんが、一応どうお考えになっておるか。大臣でもあるいは局長でもけっこうでございます。
  73. 志村清一

    志村政府委員 憲法二十九条におきまして第一項に、「財産權は、これを侵してはならない。」ということが明定されておるわけでございます。しかし二項、三項におきまして私有財産権が絶対ではない、第二項におきましては「財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」といたしております。また三項におきましては、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定しておるわけでございます。これらの点につきまして、従来フランス革命以後の財産権絶対という思想があったわけでございますが、この憲法の規定自体は、財産権が全く絶対であって他のいかなるものをもってもこれを侵すことができないということは第一条にはいっておりますが、二項、三項によりまして公共の福祉との調整を十分はかっておる、かように考えている次第でございます。
  74. 石川次夫

    ○石川委員 私の質問にちょっと答えていないと思うのですけれども、一応の試案と言うか学界の通説と言いますか、財産権というのは個人の労力と資本とで自由な競争を経て獲得し、蓄積した財産ということになっております。私の個人の意見で言いますと、資本とでという資本というのはちょっとひっかかるわけでありますが、これは通説のようだと思うのです。そうしますと、土地というのは父祖伝来の土地というのがだいぶあるわけです。そうしますと、正当な意味でいう学者の見解の財産権に合わないものが多分に存在しているわけです。自分で獲得した財産ではない、父祖伝来の土地というものもあるわけです。ただ公共の福祉に適合するようにこれを制限することができるというのが憲法でいわれている趣旨であろうと思うのでありますけれども、しからば公共の福祉とは何であるか、こういうことになるわけでありますが、この点御見解があったらひとつ教えていた、だきたい。
  75. 志村清一

    志村政府委員 公共の福祉につきましては、二十九条二項におきまして、「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」ということになっておりますが、たとえば現行都市計画法等におきましても地域、地区を定めまして、住居専用地区におきましては工場とかあるいは映画館とかいったものも建ててはならぬという規制をいたしておるわけでございますから、それぞれの法律におきまして公共の福祉に適合するものはどのようなものかという御議論を経て法が制定されておると考えております。
  76. 石川次夫

    ○石川委員 非常に現実的な御答弁なんですが、一応公共の福祉というのは、各人に日本の国民全体が人間的な生存を保障しようとする社会国家的公共の福祉、こういうふうな概念が大体通説ではないかと思うのですが、そういうことを考えますと、その土地をほんとうに地域開発あるいは生存の本拠である住居に提供しなければならぬというこういうふうな公共の福祉という場合には、相当の制約を与えてしかるべきものである、こういう性格を持っておるのが土地ではないか、こう思っておるわけであります。したがって、この地価というものを抑制し、土地というものを制約するためには、公共の福祉というものは、正当に理解される限りにおいては相当強い力を持ってこれは制約をすべき性格のものである、こういうふうに考えておるわけであります。ところが実際問題としては地価はどんどん上がっておりますけれども、最近の地価の上がり方は大体どういうふうになっておりますか。ひとつ御説明を願いたいと思います。
  77. 志村清一

    志村政府委員 地価の指数でございますが、不動産研究所で調べております全国市街地価格の推移を申し上げますと、昭和三十年を基準にして一〇〇といたしますと、昭和四十一年九月の市街地価格は七六五、約八倍近い値上がりを示しておるわけでございます。ただ最近におきまする地価の上昇は非常に少なくなりまして、特に六大都市市街地価格の上がり方は減っております。すなわち、昭和四十年三月、九月、昭和四十一年の三月、九月を見てみますと、対前回比上昇率でございますが、大体四十年三月が三%、以後は一%という程度になっております。
  78. 石川次夫

    ○石川委員 最近若干鈍化したということは、私も大体そうじゃないかと思いますけれども、しかし依然としてほかの物価に比べては比較にならぬほど上昇している。ただ局地的に見た場合には、特にそういう傾向が非常に強く見られると思うのでありますけれども、昭和三十年に比べると工業用地は一〇〇に対して一三九一、こういうふうな数字が出ております。商業の場合は六四一、それから住宅用の場合には九二八、工業用地に至っては十四倍、こういうふうな、飛躍的に、話にならぬほどの上昇を見ております。特に昭和二十七年から四十一年までの数字を見ますというと、十四年間の上昇率は二十二・五倍という数字が、これは宅地審議会で発表している数字でありますから間違いないと思うのです。こんなべらぼうな値上がりをしているわけであります。こういうふうな値上がりというものに対処して、その一環として土地収用法適用する、こういうことに改正をすることになっておるわけであります。それからここに一つの例としてあげられますことは、たとえば港区に旧陸軍大学があります。これを区でもって払い下げをする場合に、大体坪七千五百円であったわけであります。ところがこれは環状三号線というものをつくらなければならぬというときに、建設省が示した値段はどういう値段になっておるかというと、二十一万八千円と、お話にならない価格になっております。だから、土地収用法の対象となった事業としての環状三号線の坪の値段が二十一万八千円であります。そして大体これが相場でしょう。しかしながら、こういうふうに土地収用法を改正したから土地が上がらないというようなことではないわけですね。これは、同じ公共事業として提供された学校に払い下げた場合は七千五百円。今度は環状三号線の場合は二十一万八千円、こういうことになっておるわけです。しかも、土地収用法をやって事業認定時に、それにただ物価の上昇というものをスライドをさせる、こういうことをやったために、地価対策がこの一環として相当強力な役割りを果たすのだというのは、少し思い上がりではないか、こう思っておるわけです。たとえばほかにもたくさん例がありますが、これは一々あげる時間の余裕もないわけでありますけれども、これはめちゃくちゃに土地が上がっておることの一つの原因としては、建設省がやっておる同じところに対して、今度は別な電電公社が土地収用法の対象じゃないでありましょうけれども、高い値段で買うというような、個々ばらばらな公共の用地としての土地の値段のつり上げというものが行なわれておるということが実態であります。土地収用法を改正することによって土地の値上がりを抑制するという役割りというものは、そう高く評価するわけにはいかぬ、こう思っておりますが、その点はどうでしょう。
  79. 志村清一

    志村政府委員 新しい土地収用法施行された場合の地価対策上の効果でございますが、先生指摘のように、公共事業の用地の価格というのは非常に高いのではないかという御批判がしばしばあるわけでございます。事実私ども見ましても、相当高いと思われるものもあるわけでございます。これらにつきましては、一部におきまして現在の制度が収用裁決時の価格をもって土地を買うということになっておりますために、早期に契約を妥結いたしまして協力された方は少なく、最後まで粘った方は相当よけいもらうという矛盾が出てくるわけであります。そういたしますと、ばかばかしい話でございますから、粘ったほうが得であるということになりかねない。それらのバランス上、とかく公共事業の用地が非常に高い。その高い値段をつけたために付近地まで不当な値段が一般価格になってしまう。公共事業の用地として何十万で買ったんだから、この付近土地は何十万であるというふうなことになりかねないわけでございます。これは先ほども御説明しましたように、電発の例とか、あるいは大規模公共事業施行された場所においてしばしば見受けられる事例でございます。したがいまして、今回の改正におきまして、事業認定時の価格基準にして正当な価格によって補償するということにいたしますと、ごねておりましても、あまり得はないわけでございまして、収用地の地主間相互のバランスもとれますし、早期に協力された方が特に不利であるということもなく済む。したがって適正な値段で公共用地が取得される。したがって周辺地における悪い影響も払拭されるという効果があろうかと存じます。同時に、先ほども大臣からも申し上げましたように、宅地の需給のバランスということが一つの大きな課題でございますので、国なり公共団体等におきまして大幅な宅地の供給をいたしたい。その際、新住宅市街地開発法等によりまして土地を適正な価格で取得できますならば、適正な価格で庶民に供給できるという効果もあろうかと思います。ただ土地収用法の改正によりまして、一挙に地価が下がるというようなことではございません。地価対策はいろいろな方面からアプローチしなければならない重要な問題でございますので、土地収用法はその一端をになっておる、かように考えておる次第でございます。  また、先生の御指摘がございました区有地でございますが、学校に払い下げた値段と、公共用地に払い下げた値段とが非常に差があるということは、具体的につまびらかにしませんが、学校等につきましては、安い値段で払い下げることができるという規定があると聞いております。しかし公共事業の用地であるということによって非常に高い値段をつけるということは、まことに不合理でないかと思いますが、これらの問題が、個々の起業者がばらばらにすることによってとかく醸成されるという御指摘もそのとおりかと存じます。そのために私どもといたしましては、内閣の閣議の了承を得まして、公共事業補償基準要綱というものを定めまして、その要綱に基づきまして、各事業所管の官庁は補償基準をつくる。その共通の補償基準に従って用地の買収をしていきます。同時に具体的にはさような用地を買う各役所が集まりまして、用地対策連絡協議会というものを設定いたしまして、いろいろな研究をするなり、情報の交換をやって、御指摘のような個々ばらばらにやって地価を上げるということのないようにいま努力をいたしている次第でございます。
  80. 石川次夫

    ○石川委員 局長のいま言われたような効果といいますか、そういう面は私も否定するわけではないわけです。たとえば宮崎県のダムの場合に、さっさと妥結した十九戸というものは一戸当たり四十二万。それから最後まで粘りに粘って団体交渉をやったところが五十四戸ありますが、これが一戸当たり九十三万、倍以上の補償土地建物のほかに受けておるという実態があるわけです。したがって、そういうふうな不公平がないようにする効果を否定するものではない。たとえば東名道路なんかも、静岡——吉原間の四十キロメートルのうち、四十メートルだけが非常に難航して、これは局長も御承知だろうと思いますが、坪三万三千円という値段を道路公団では示しておったけれども、不動産鑑定士は四万二千九百七十五円、こういうふうに土地の裁定をしました。ところが最終的に裁定の結果はどうかというと、五万六千円、こういうふうなことで、結局三万三千円で売った。正直者がばかを見たということになるわけでありますから、そういう意味では、今度の法律というものが決して私はむだだということを言おうとするつもりはないのですけれども、しかし、土地の値上がりというものを抑制するためという大上段に振りかぶったその効果を表面に押し出しておりますけれども、実はそうじゃなくて、こういうふうなアンバランスというものが出てくることを押えて、ごね得をなくしていこうという効果は認めるけれども、地価対策の一環だといって大上段に振りかぶったような効果というものは、そう評価すべきだけの資格はない、私はこう思っております。総合的にいろいろな、不退転の決意を持ってやらなければならぬことがたくさんあるわけで、そういう点で、この土地収用法の一部を改正する法律案提案理由説明の第一項として振りかぶったことは、少し大げさ過ぎるのではないか。したがって土地というものは独特のものでありますから、商品といえるかどうかということは別問題としましても、相当強権を持って国土という観点で処理しなければならぬと思います。しかしながら、この法律によってやれることは、非常に仕事がやりやすくなるということの効果のほうが私はむしろ大きいのじゃないかと思っております。ごね得をなくするということはもちろんありますけれども、仕事がやりやすいという効果をここで評価する、そういう点は確かに考えられますけれども、地価対策の一環としてこれをやったのだ、これが第一の理由である、こういうことはどうも考えにくい、こういうことを申し上げたいのであります。  地価対策としてどうするかということを言い始めると切りがないのでありますけれども、宅地審議会でいろいろな案が出ております。それに基づいて新住宅市街地開発法という法律もできております。それから不動産の鑑定評価に関する法律というものもできて、不動産鑑定士というものを設定したことも一つの実績であろうと思います。それから住宅地造成事業に関する法律というものもできておるわけです。それから、これから出そうとしておるものは、土地収用法というものがこの一環として出ておりますけれども、より以上に土地利用区分をきめた都市計画法、これはどうしても出してもらいたい。しかし中身は全然検討しておりませんから、われわれとしても大いに意見があるだろうと思いますけれども、これは出してもらわなければならぬ。それから宅建法というものも今度の国会で出るわけで、これもぜひ通したい法律だと私は考えておりますけれども、何といってもきわめつけと申しますか、土地対策については抜本的に、スイスのように国が全部住宅宅地というものは心配するのだという一元化した形になれば、これは非常に根本的な対策になると思うのであります。しかしながら、そこまでいかないまでも、まだまだやらなければならぬことがたくさんあるのではないかという点で、具体的な提案が宅地審議会からたくさん出ているわけです。これは行政の一元化をして、土地利用計画というものを確立しろということが第一条項に出ておるわけです。ところが利用計画の確立の一環として都市計画法が今度出されておるわけでありますけれども、この中を見ると、これは全国的に国土開発の全面的計画というものができた上に立って、市街地に対する都市計画法というものを適用するという形でないと、あまり十分なものとはいえない、こう思うわけであります。  それから不動産の鑑定士というものは一応できたけれども、これは土地価格の体制ができていないという関係で、土地に対する価格評価というものはばらばらのようです。いわば権威がないということになっている。これに権威を持たすということと、同時に、それによって土地の標準価格というものを公示するということをやらなければ、やはり地価対策の一環というものは生まれてこない、こう思うのであります。いまの不動産鑑定士の中身というものはよくわかりませんけれども、どうも非常に困難な仕事であるだけに、なかなか地価を安定させるための地価の公示というものをやるだけの自信が持てないのじゃないかと思うのです。それで、この地価鑑定士を養成して、地価の標準価格といいますか、そういうものを公示するに足るだけの権威ある価格を設定するということをさせるだけの力を持たせる、その資格基準を与えるということでどれだけ努力しておるかということが、私は問題だと思いますが、それはどういうふうにやっておりますか。
  81. 志村清一

    志村政府委員 地価の公示制度につきましては、衆議院の本会議における三党共同提案による決議の中におきましても、地価の公示を行なうべしという御趣旨が盛られておったわけでございます。私どもといたしましても、鑑定士法を制定させていただきまして、鑑定士を養成した後、大都市の周辺につきまして地価調査を毎年続行いたしております。東京におきましては、大体三年ほど地価調査をやったわけでございますが、その中におきまして、御指摘のように鑑定士も全く新しい制度でございますけれども、完全に熟しておりませんので、東京地区における鑑定士を総動員いたしまして、東京周辺の地価の鑑定をやるということが、同時に鑑定理論を深め、鑑定の実務に熟させるという役割りも果たしているわけでございます。本年あたりは、ひとつ過去の地価調査の実績もあわせまして、東京周辺におきます標準の地価は一体どのくらいであるかということを行政措置として公示したいという決意で本年の地価調査を進めたい、かように考えている次第であります。  また、大阪につきましても、東京と一年おくれて地価調査を、大阪周辺の鑑定士を総動員して始めております。名古屋についても本年から始めることにいたしておりますが、逐次鑑定士の整備と相まって地価調査をやり、その地価調査が同時に鑑定理論を深め、鑑定の実務を深め、そうして地価の公示の橋渡しになるという方向で努力いたしている次第でございます。
  82. 石川次夫

    ○石川委員 宅地審議会の答申を着々実施に移しているという努力は、私ども認めるにやぶさかではありませんが、それは牛の歩みだと思います。私が七年ほど前に出した要綱みたいなことをぼつぼつやっておりますが、その間に地価が急速に上がっておりますので、もっと急速に、もっと力強く前進させるということでなければ、このままいったら、いつの日にか、地価の安定するということの見通しはつかぬというのが実態だと思います。たしか宅地審議会でいろいろな案が出ておりますけれども、宅地を大量に供給するという案も一つ出ております。具体的には、たとえば東京周辺では三千ヘクタール以上の土地を一、二年間に五カ所以上着手する、こういうような一つの例示もできているわけです。このくらいのことをやらなければ、とてもだめだというのですが、それに見合った形で東京周辺で一、二年くらいでどのくらい宅地造成をやり、大量に宅地を提供するということになっているのか、これをひとつ教えてもらいたい。
  83. 志村清一

    志村政府委員 宅地開発についての提案でございますが、たしか物価問題懇談会における都留先生の御報告の中に、相当大規模宅地開発を大いにやるべきであるという御指摘があったように記憶いたしております。その具体的な例といたしましては、多摩の約一千万坪に及ぶ開発を現在進めているわけでありますが、同時に、各方面におきましても、同様な大規模宅地開発を進めたいという計画をいろいろ持っております。まだまだ計画の段階でございまして、直ちに公表するということまではいっておりませんが、千葉あるいは神奈川等におきまして候補地を地元と相談しながら努力している次第でございます。  全体の宅地開発の供給の見通しでございますが、住宅五カ年計画と対応いたしまして、全国的には大体一億五千万坪近くの宅地開発考えておりますが、関東地区におきましては、大略五千万坪程度の宅地開発をいたしたい、かように考えております。  その宅地開発がはたしてできるかできないかということでございますが、単に公的な宅地の供給だけでは十分ではありませんので、民間の宅地造成を促進して、大幅に宅地の供給を進めてまいりたいということで進めているわけでございますが、たとえば公的な宅地開発としましては、あるいは公団なり公共団体等によって施行する新住宅市街地開発、それから公庫の融資に基づきます一般宅地開発あるいは公的な土地の区画整理事業といったようなものを進めておる次第でございます。同時に、民間事業につきましては、民間の土地区画整理組合に対する無利子貸し付け、融資、あるいは民間宅地造成事業者に対する今般御議決いただきました公庫の融資保険の条件をよくすることによって、民間宅地造成事業を大いに進める等の施策を講じる、それによっておおむね所期の目的を達し得るのではないか、かように考えておる次第でございます。
  84. 石川次夫

    ○石川委員 いろいろ努力はされておるようでありますが、物価対策懇談会あるいは宅地審議会あたりで要望しておるような要望からはまだまだはるかに遠いというのが現実だと思うのです。宅地を大量に提供する場合に財源をどうするかという問題が当然出てまいります。これは私個人の考え方でありますけれども、やはり交付公債という形で、インフレにならないような配慮をしながら相当大規模な財源を確保せざるを得ないのではないか、こう思っております。私は、公債を発行することについて原則的には反対でありますけれども、住宅並びに宅地というものはインフレの原因にはならない。これは回収のつくものである。したがってこの発行のしかた、交付公債等の制度というものを十分に検討しながらやれば、インフレを伴わないで住宅という生活の本拠を与えることができるし、宅地というものが提供できるのではないか、思い切った財源措置をやってもいいのではないか、こういう考え方を私個人は持っておるわけであります。そういう点でも、今後ともぜひ検討してもらわなければならぬ、こういうことが課題になっておると思います。  時間が一時という約束になっておりますから、あと一、二だけ若干申し上げて、他の機会に譲りたいと思いますけれども、土地の流通機構というものを抜本的に改革する、こういう問題もぜひ考えてもらわなければならぬと思っております。土地を購入するというのは、一人の人間で大体一生を通じて一回であります。したがって、この流通機構を整備して権威のある流通機構——悪徳業者を排除するというのも今度の法律に出ておるわけでありますが、そういうこと以上に積極的に公的な機関で流通機構というものを整備し、権威のあるものであっせんをしてやる、こういうふうなことで一歩前進をはからなければ、土地問題の抜本的な解決にはならないのではないか、こういうことが一つ考えられるわけであります。  それから、何といっても開発利益というものを起業者に還元をする、この税制がどうしても必要であります。これは正示議員なんかもよく言われておりますように、固定資産税の評価、相続税の評価、収用単価というふうなものが全部食い違っておる。これを何とか統一するということもその一環として当然考えながら、都市計画税というふうなものをそれから財源として吸収をして、その土地開発に還元させる、これはなかなかむずかしい問題であります。むずかしい問題でありますが、将来の構想としてはぜひ確立をしなければならぬ問題であると同時に、この前の土地収用法に関連をして出された周辺地域土地の値上がり、その利益を吸収して本税を開発事業者に還元する。こういう立場を貫かないと、土地収用法だけでは、先ほど申し上げましたように、仕事をしやすくするということに重点を置いただけの印象をぬぐい去ることはできないのではないのか、こう思っておるわけであります。それで、今度の場合は事業認定時の価格で買収をし、そして価格を公表するというふうなことになるのでありましょうから、その点は、私は一つのささやかなる前進であるということは認めますけれども、税制がこれに伴う開発利益を還元するということでなければ、土地収用法だけでは強権を発動させる場を提供しているだけである、こういう印象を私は強く受けざるを得ないと思うわけであります。  意見だけを申し上げまして、あとの機会にまたいろいろと土地収用法の法案それ自体について質問したいと思っておりますけれども、実は、私個人としては補償金庫というものをつくったらどうかという感じを持っておるわけです。それは、補償をする場合に建設省もあるし、農林省もあるし、運輸省もある。いろいろあるだろうと思うのですが、そういう補償の単価というものは各省によってばらばらである。起業者によってばらばらである。たとえば、御承知のように筑波山ろくに学園都市ということで、大都市の過密集中を排除する目的をもってこれに取り組んでおるわけであります。これは坪単価千三百円であります。ところが同じような、東京を中心として五十キロぐらいのところにいわゆる三里塚の空港という問題があるわけであります。これは坪三千円であります。同じ国家事業で、片っ方は千三百円、片っ方は三千円であります。こうなりますと、千三百円で売ったほうは承知するわけがない。同じような条件でありながら、片っ方は千三百円で、国際空港は時代の脚光を浴びておるということで、これは政治的な配慮を払ったのかもしれませんが、三千円だ。倍以上だ。そんなばかなことがあるかということで、筑波山ろくの学園都市の問題が非常にこじれにこじれたという実態があるわけであります。これを全部政府の手でやっておる。こういういろいろな公共用地の買収を各省ばらばらでやっておるというところからこういう問題が出てくるのではないか。こういう問題があるわけであります。したがって相当大きな財源を持って補償金庫でこれを一元化する。私が補償ということばを使いましたのは、残存地で非常に困る人があるわけです。どこにも生活の設計が立ちにくいという問題があるわけです。これはもちろん補償価格基準というものをきめまして、生活再建のためのめんどうは見るということにはなっております。これも各省ばらばらであります。やっている起業者によって考え方が非常に食い違ってくるわけであります。補償金庫で一元化をして生活再建の道も考えてやるということになれば、相当そういう点での配慮をする任務を持った一つの金庫が生まれるということで一つの前進ではないか。したがってそういうことが公共事業を促進するために非常に大きな役割りを果たすのではないか。地価対策等も若干進めておりますけれども、その問題も若干含めながら補償金庫というものが生まれ、片っ方で収用裁定所というような簡単な、裁判所の一歩手前のところで価格というものを裁定する機関をつくったらどうか、こういう感じを私は持っておるわけであります。これについてはここでいますぐ、それはけっこうでありますからやりましょうという御答弁はいただけないでしょうけれども、建設大臣の御意見を伺いたいと思っております。
  85. 西村英一

    ○西村国務大臣 先般から土地の問題につきましては物価問題懇談会が総理の諮問機関としてあったのですが、それの答申もいただいております。また建設省宅地審議会の答申もいただいております。言うことはおおむね同じ方向であり、同じ問題を唱えております。問題は相当に出尽くしたような感じがあるのであります。ただその実行をどういうぐあいにしてやるかということでございます。いずれにいたしましても全部法律をもって対処しなければできないような、行政の範囲内ではできないような問題ばかりであります。したがいまして今回も土地収用法、次はまた再開発法と、いろいろ手を打っていくわけであります。委員会の先生方には、何をぐずぐずしておるのかということでございますが、なるべく早く法律を通してくれることを私からお願いいたしておきます。早く手を打ちたいわけでございます。  もう一つ、いま補償金庫の問題が出ましたが、これは初耳でございまして、いま石川さんがおっしゃいましたように、私のほうで受け持っておる学園都市の問題あるいは飛行場の問題、これはまさにそのとおりで、私自身としても非常に矛盾を感じておるわけであります。しかしこれをどういうふうに解決するかということはなかなかむずかしい問題でございますが、やはり土地はなるべく行政を一元化するということ、それからまた支払いの方法等についても統制をとっていくということ、これは非常に必要だと思われております。先般来経済企画庁長官とも話し合いをしておりますが、いま法律はばらばらで、あとからどんどんばらばらに出しておりますが、もっと全体から見ますれば、やはり国土総合開発の一環として全部を考えていくということも必要であろうかと思われます。しかし現在の国土総合開発法は、これはまた古い法律でございまして、いまの土地利用には全然作用していないというようなことでございますので、今後ともひとつ皆さま方の御協力を得まして、土地問題について真剣に取り組んでいきたいと思っておりますから、どうぞ御審議も早くやっていただきますように重ねてお願いを申し上げる次第でございます。
  86. 石川次夫

    ○石川委員 時間になりましたから、きょうはこれで……。
  87. 森下國雄

    森下委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十六日金曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時十一分散会