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1967-07-11 第55回国会 衆議院 決算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十一日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 鍛冶 良作君    理事 吉川 久衛君 理事 小峯 柳多君    理事 小山 省二君 理事 高橋清一郎君    理事 佐藤觀次郎君 理事 華山 親義君    理事 吉田 賢一君       菅波  茂君    丹羽 久章君       長谷川 峻君    水野  清君       中村 重光君    浅井 美幸君  出席政府委員         内閣法制次長  吉國 一郎君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         厚生大臣官房企         画室長     首尾木 一君         厚生省医務局国         立療養所課長  加倉井駿一君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 岩佐キクイ君         専  門  員 池田 孝道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十年度政府関係機関決算書  昭和四十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和四十年度国有財産無償貸付状況計算書  (厚生省所管)      ————◇—————
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度決算外二件を一括して議題といたします。  厚生省所管について審査を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。華山親義君。
  3. 華山親義

    華山委員 法制局のお方が出ていらっしゃいますので、お忙しいと思いますから、そのほうからお尋ねをいたしたいと思います。  今後いろいな問題につきまして、赤十字社というものに国との財政の関係が起きると思いますので、その点を明らかにしておいたほうがいいと思って、お尋ねをしていくわけでございますが、この前は、時間の制限もございまして、あまり詳しくお尋ねする時間がなかったわけでございます。  それで、お尋ねいたしたいことは、日本赤十字社法によりますと、日本赤十字社憲法にいうところの公の支配に属するということにつきましては、私もそうだと思いますが、三十九条におきまして、いまここで読みませんけれども、国または地方公共団体は、赤十字社業務実施に必要な施設または設備を整備する場合において、必要があると認めるときは、これに対して補助金なり財産譲渡なりができる、こういうふうに書いてあるわけでございます。そういたしますと、第三十九条では、業務というものを除外している、そういうふうに反面考えられるのが当然だと思うのでございますけれども、公の支配に属するという以上は、業務についても国の支出ということができるのではないか。それなのに、なぜ三十九条にはこういうふうな規定がしてあるのか。三十九条を厳密に解するならば、赤十字社業務自体については、国は支出してはいけない、こういうふうに憲法上なるわけでございますけれでも、それはどういうふうに理解すべきものであるか、お伺いいたしたいと思います。
  4. 今村譲

    今村政府委員 お答え申し上げます。  これは、先生おっしゃいますように、三十六条から規定によりまして、公の支配に属するということは動かないつもりでございますが、問題は、この日赤法がそもそも制定されます当時におきまして、これは第一条にもありますように、日本赤十字社というのは、日本国内のいろんな慈善、博愛というような仕事のほかに、国際的ないろんな赤十字関係戦時の場合とかいろいろございますが、条約がございまして、国際的な機関でもある。しかも赤十字というのは、政府の完全なる従属機関ではないので、やはり敵味方を問わず、戦時には何とかしなければならぬというふうな任務を持っておりますので、本来ならば、憲法八十九条で、公の支配に属しますから、それは全部まるがかえであってもおかしくはないのですけれども、事の性質上、普通の社会事業団体と違いまして、国際的にも、政府から独立して、不即不離——と言ってはちょっとおかしいのでございますが、というかっこうでなければならない。したがって、その財源一般国民拠金あるいは浄財というふうなもので運営するのが大筋である。したがって、本来ならば国庫補助というものでがんじがらめにすることは好ましくないけれども、病院をつくるとか、あるいは看護婦養成所をつくるとかいう、一時に多額建設投資資金が要るというふうなものに限ってひとつ援助をしよう、そのかわり、日常の業務については、補助金を出すといいますと、これは私学振興の関連もまた別にございますけれども、がんじがらめになってしまって、一政府従属機関というかっこうの疑惑を国際的につくるのも避けようではないか、こういう趣旨で、むしろ理論的には全部やるわけでございますが、日赤の本筋から見て、臨時多額投資を、長期的な資本の固定といいますか、ものだけに限定しよう、それがむしろ日赤の本来の使命に徹するものであるから、業務上は本来国民浄財運営するのだ、こういう趣旨立法であったというふうに理解いたしております。
  5. 華山親義

    華山委員 それであるならば、私の理解と同じなのでございますけれども、そういたしますと、一般業務それ自体については、それが国内的であろうとも国際的であろうとも、国は赤十字社に対して支出をしてはいけない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  6. 今村譲

    今村政府委員 これは、たとえば北鮮帰還というふうな業務日赤が行なう、しかもこれは本来ならば、普通政府間の国交がありますならば、政府が当然すべきであるというふうなものを、日赤をして行なわしめる、それが日赤本来のいわゆる使命にも徹するというので、補助金という形におきまして、施設投資ではありませんで、運営経費でありますが、国がその業務を、そういう国際的なものを委託するというふうな意味におきまして、業務経費も出しておりますが、これは日赤の本来の業務をまかなう経常事務費補助ではありません。こういう特定事業を国際的にやらざるを得ない、政府が直接やれないというふうなものについて、委託費というふうなかっこうで、業務的な経費が出ておりますけれども、そういうふうなものは間々ございますけれども、国内における経常活動経費については、業務上の補助金は出さない、こういうことでございます。
  7. 華山親義

    華山委員 そういうことになりますると、この前私が法制局お尋ねしたのと、厚生省の御意見は違う、こういうことになるわけでございまして、政府間において意見の統一をしていただきたい。いまおっしゃったようなことは赤十字社法に書いてありますね。国が委託した事業等については、これは全額を国で負担しなければいけないということを赤字社法にも書いてある。したがって、それについては、私は疑問を持つわけではございませんけれども、この前私が自分で経験したようなことを申し上げて、非常に困ったことを申し上げたのでございますけれども、いま厚生省のおっしゃったようなことであるならば、私はそれで納得ができるわけでございますけれども、この前の法制局の御意見では、私が経験したような場合でもできるんだ、そのときにおれは法制局でそういう話を聞かなかった、こういうお話であったものですから、そのときになおお尋ねすればよかったのですけれども、追及することはやめていたわけです。法制局のほうでは、いまのような厚生省の御意見でよろしゅうございますか。
  8. 吉國一郎

    吉國政府委員 日本赤十字社法の第三十九条の解釈に関しましては、ただいま厚生省社会局長からお答え申し上げました点につきましては、私ども同様に考えております。  先般のこの委員会で、華山委員から、第三十九条に関して問題があったという御指摘がございまして、そのときの問答は、第三十九条第一項の規定によって、国または地方公共団体が、赤十字社に対しては、いわば設備補助あるいは設備に関して一般より有利な条件で貸し付けをしたり、あるいは財産譲渡貸し付けすることができるという規定に対しまして、それ以外の一般的な業務補助ができないという第三十九条をたてにして、当時の政府でございますか、あるいはどこでございますか、そういうようなやりとりがあったというようなお話がございましたので、三十九条の規定があることを理由にしてそういうことではございますまいということを申し上げたつもりでございます。その点につきましては、ただいま社会局長から御答弁申し上げましたように、日本赤十字社の本来の性格からいたしまして、一般業務費用については、社員の社費というようなものによってまかなうことが適当であろう。したがって、一時に巨額な投資を必要とするような設備の整備というようなものについては、国が助成をすることが適当であろうという、その当時の立法精神によりまして、第三十九条ができておるものと思います。しかしながら、第三十九条第一項の規定があるからといって、全く一般業務についての補助なり、あるいは委託した場合の実費の支弁というものはできないということではない、というただいまの御答弁だと思いますので、その点につきましては、私どもも同様に考えております。
  9. 華山親義

    華山委員 それじゃここで、これは一つの例示にもなるものだと思いますので、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。赤十字社がいろいろな事業を行なうために必要な投資的な経費については、国は援助してもよろしい。ただ、一般的な運営業務あるいは運営については、国は原則としてできない。それで、たとえば、いまおっしゃった北朝鮮の送還のような場合にはできるのだ。そのできるのだということについては、どの条項によって、どういうふうに理解すればいいのでしょうか。私は、これができないと言っているのじゃありませんよ。条項的にはどういうふうに理解していいのか。その点を明らかにしていただきませんと、厚生省が今後いろいろな点で赤十字社仕事をしてもらうとき、そういう点に困ると思いますので、その点、条項的に、法律的の根拠をひとつ明らかにしておいていただきたいと思う。
  10. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど、北鮮帰還業務についての説明がございましたが、これは日本赤十字社法の第二十七条、「業務」の規定でございますが、第二十七条第一項に、「日本赤十字社は、第一条の目的を達成するため、左に掲げる業務を行う。」とございまして、そこに一号から三号まで典型的な業務を掲げておりますが、そのほかに第四号として、「前各号に掲げる業務のほか、第一条の目的を達成するために必要な業務」という規定がございまして、第一条の目的達成に必要であれば、前三号に掲げる以外の業務についても、その業務を行なうことができるという規定がございます。また第二項には「前項第一号及び第二号に掲げる業務には、第三十三条第一項の規定により国の委託を受けて行うものを含むものとする。」ということが念のために書いてございますが、この四号の規定によりまして、従来の北鮮帰還援護業務を行なっておると思いますが、これは三十三条と同様に、いわば実質的には本来ならば国の行なうべき仕事でございますので、国の委託を受けて行なっているという考え方だろうと思います。そういうものにつきまして、本来国の行なうべき業務であるからということで、国が支出をいたすということでございます。また三十三条には「国の救護に関する業務委託」という規定がございます。この場合には、その条項の中で、国が日本赤十字社が支弁した費用を補償するという規定がございまして、日本赤十字社が国の委託によって救護に関する業務を行なった場合には、その全部の費用を補償するという根拠がございます。  それから第三十九条の、先ほど申し上げました助成規定解釈と申しますか、趣旨にさらにふえんして申し上げますが、本来、国なり地方公共団体なりが、ある特定事業なり法人に対して補助融資等助成を行なうということは、特定法律規定根拠を要しません。ごく一般的に申すならば、予算上にその費目が計上されておるならば、一般的に、補助なりあるいは融資なり不動産の貸し付けなりができるわけでございますが、この日本赤十字社のごとく、特に助成について憲法八十九条の規定が問題になるようなものにつきましては、日本赤十字社法という、日本赤十字社に関する基本的な法律の中で、国あるいは地方公共団体がとるべき態度を明らかにすることが適当であろうという、当時の立法者のお考えだろうと思いますが、この第三十九条第一項の規定によりまして、先ほど来華山委員の仰せられましたように、巨額の投資を要するような、つまり日本赤十字社業務実施に必要な施設または設備を整備するような場合に、その補助をするというようなことを基本的に規定をいたしました。日本赤十字社に対する国または地方公共団体助成というものは、そういう場合に行なわれるのだという基本的な方針を鮮明にした規定である。したがいまして、この規定があることを理由にして、全く他の場合においては助成が一切できないということはない。ただ、この規定があることによって、日本赤十字社に対する助成基本的態度は、こういう場合に原則として限定せられるのだということがこの法の精神である、というふうに理解すべきものではないかと思っております。
  11. 華山親義

    華山委員 私は、そう言われると、ちょっと疑問を持ってくるのですがね。予算を編成したならばそれでいいというふうなお考えですけれども、予算の編成は法律によって規制されるのじゃないですか。法律がどうあろうとも、予算さえ編成していればそれで補助ができるという性格のものじゃない。そういうことになりますと、予備金支出でも何でも、国が金を出すということをきめれば、法律はどうでもいいのだ、こういうことになるのはおかしいのじゃないですか。
  12. 吉國一郎

    吉國政府委員 私のお答え申し上げましたのが、やや不十分だったかもしれませんが、冒頭に、予算の計上さえあればと申し上げましたのは、一般的に法律によって何ら規制のないような場面についての問題でございます。日本赤十字社については、この第三十九条のような助成規定のあるものでございますから、その点は違うわけでございます。
  13. 華山親義

    華山委員 そうであるならば、私が県庁の役人をしておりたときに非常に苦しんだ問題は、当然私は苦しむべきものであったのであらて、この前のように、おまえはかってに苦しんだ、というような法制局お答えは取り消していただきたいと思います。  次に伺いますが、これは法制局がせっかくおいでになりましたので、まことになんですけれども伺いますが、例のベトナム協会の問題について、吉國さんがお聞きになっておったかどうか知りませんけれども、あれは結局のところ、憲法では支出してはいげないと書いてあるのであって、補助金であろうが何であろうが、支出してはいけないのである。補助金などということばがないわけです。したがって、ベトナム協会に対して、外務省がこれを補助した、金を支出したということは——あのベトナム協会のやった事業は、人道事業じゃない。そうしなければ、私は憲法に違反すると思う。法制局お答えになったように、あの仕事は、梱包するとか送るとか物を買い付けるとか、そういうことをやったのであって、そういうことでいいのだというふうにおっしゃいますけれども、したがって、ベトナム協会のやったあの仕事人道に基づくところのものではない、こういうふうに理解すべきだと思いますが、どうですか。
  14. 吉國一郎

    吉國政府委員 先般お答え申し上げましたのは、ベトナム協会が行なっておりますのは、政府みずからが、ベトナム難民救済のために、ベトナム政府との間に口上書の交換を行ないまして、外務大臣がいわば主体となりまして、ベトナム政府に対しまして一定の物資を送付するという仕事のうち、一定の部分を社団法人たるベトナム協会に、政府から自主的に委託をしたものである、その委託をされたベトナム協会に対しまして、その委託費用を実質的には支払ったものであるというのが、この間私が説明を申し上げました点でございます。
  15. 華山親義

    華山委員 ですから、ベトナム協会委託をされてやった仕事は、人道上の問題ではないでしょう。
  16. 吉國一郎

    吉國政府委員 端的に申せば、そういうことでございます。
  17. 華山親義

    華山委員 そうすると、ベトナム協会の定款には、荷づくりだの梱包だのなんて書いてありませんから、明らかに外務省の出し方は間違っている、そういうふうに言わざるを得ない。きょうは外務省の方はいらっしゃっていませんので、私はそれだけにとどめておきます。  どうも法制局、私に関する限りは、よろしゅうございます。  次に、厚生省の、いま問題になっております健康保険改正の問題について伺いますけれども、今度の健康保険改正につきまして、赤字を補てんするということにつきまして、いろいろな項目をあげておられる。薬代とかそういういろんなことがございますが、その点は社労委員会でも論議されたと思いますので、ここでは申し上げませんが、その中に、厚生省努力によって二十五億円を捻出し、それを赤字補てんの財源にしているわけです。二十五億円ということを出された以上は、相当の検討と試算と根拠があると思いますが、二十五億円を、どういうふうなところでどれだけのものを節約するつもりか、それを伺っておきたい。
  18. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 四十二年度赤字対策一つといたしまして、先生御指摘のように、二十五億の行政努力という項目があるわけでございます。その内訳について御説明申し上げますが、内訳は二つございまして、一つ保険料収納率の向上という問題でございます。これは一応現年度分収納率を、過去の実績から考えまして、九八%と積算したわけでございますが、それにさらに努力を加えて、もう〇・二%収納率を上げるということで、九八%を九八・二%まで、何とか努力して持っていこうというのが一つでございます。金額で申し上げますと、六億一千六百万ということでございます。それからもう一つレセプト点検調査の強化ということでございまして、これはどういうことかと申しますと、お医者さんが医療保険診療をされまして、全国各都道府県社会保険診療報酬支払基金というのがございまして、そこに毎月請求書——レセプトと申しておりますが、それを出されるわけでございます。それで、基金審査委員会というのがございまして、これはお医者さんで組織されておりますけれども、その審査委員会診療の内容を審査をいたしまして、お医者さんに基金から支払いをする、こういうことになっています。そのレセプトが、基金支払いを済ませましたあと——保険者であるところの社会保険庁の出先で、各都道府県社会保険事務所というのがございます。そこに、支払ったあと請求書が回ってくるわけでございます。その社会保険事務所にお医者さんの支払いがずっとついている、こういうことでございますが、そのレセプト社会保険事務所でもう一回点検いたしまして、そしてその医学的な面は基金でお医者さんが審査いたしておりますから、これは原則的に触れませんけれども、往々にして間違ったレセプトがまぎれ込んでくることがある。一つは、たとえば健康保険組合というのが政府管掌と別にございますが、これは政府でやっておるのじゃなくて、健保組合がやっておる、その請求書がまぎれ込んでくる場合が相当あります。それからまた、業務上の障害であるにもかかわらず——業務上の障害は、御承知のように労災保険でやるべき筋でございますが、これがまぎれ込んで、お医者さんが健康保険のほうに回してきている、そういうのをマークする。それから被保険者資格喪失したあと保険証——普通資格喪失いたしますと保険証を返していただくわけでございますが、それがおくれまして、資格のないままに昔の保険証を使ってお医者さんにかかるという元被保険者がある程度あるわけでございますが、そういう人たちは、一応資格を喪失したあと原則として診療を受けられませんので、そういった場合には、これもまたチェックせねばいかぬ。そういう意味レセプト点検調査をやりたい。それによって、金額といたしまして約十八億五千万くらいを浮かせたい。合わせまして二十四億六千九百万、まるめまして二十五億、こういうことにいたしておるわけでございます。
  19. 華山親義

    華山委員 この決算不当事項、そういうことにも出ておりますけれども、保険料ですか、保険金ですか、その九八%、それがいままでの実態でございますが、二%というのは金額でどのくらいに該当するのですか。
  20. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 四十二年度で申しますと、大体六十億くらいでございます。
  21. 華山親義

    華山委員 保険金の徴収の不可能なのが六十億もあるのですか。違っていませんか。
  22. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 これは当該年度にうまく取れないというのでございまして、未来永劫取れないというのではございません。四十二年度に三千億なら二千億取るということで賦課徴収いたしますが、そのうち九八%までは取れる。しかし政管の対象にしております事業主というものが中小企業でございますので、その間に倒産するのもございますし、いろいろあるわけでございます。そうすると、四十二年度には取れない。それを四十三年度に取るとか、あるいはしばらく、三、四年待って取るとか、あるいは公売して強制執行して取るとか、あとの二%につきましては、二年か三年かかってできるだけ取るようにする。最終的に申しますと、大体九九・何%までは取れる実績でございますが、当該年度には、その現年度分は二%くらいまでは取れないものがある、こういうことでございます。
  23. 華山親義

    華山委員 これは会計検査院不当事項として指摘されておるところとは関係があるのですか、どうなんでございますか。
  24. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 会計検査院指摘を受けておりますのは、その収納率については指摘を受けていないわけでございます。確かに、一〇〇%取らない点ではけしからぬ点がございますけれども、しかし現実の問題として、現年度九八%取るというのは相当の努力でありまして、おそらく会計検査院とされましても、それ以上注文するのは無理だということで、指摘を受けないのではないかと思いますが、会計検査院指摘を受けておりますのは、標準報酬というのがございまして、保険料はまず標準報酬を各人についてきめまして、それに保険料をかけて事業主から取る、こういうしかけになっております。したがって、標準報酬を正確に把握するということがまず第一でございますが、その点が欠けておるところがある。したがって、たとえば三万円の月給をもらっておる人が標準報酬が二万五千円で申告されておる、そうするとそこに五千円の差がありますので、保険料をかける場合に、徴収する保険料が違ってくるわけであります。そういう意味で、正確な月給よりもより低い標準報酬を把握しておる、そのために保険料収納が減になっておる、そういう点が改まっていない、こういう点を指摘をいただいておるわけでございます。
  25. 華山親義

    華山委員 その点の是正いうことについては、今度の二十五億ということを計算なさったときに、これを是正していくというふうなことは金額の中には入っておらないのでございますか。
  26. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 その点につきましては、努力はできるだけいたすということでございまして、金額的には、この二十五億の積算の中には入りておらないのでございますが、現実努力はいたしております。それで、昭和四十年度行政努力の中には、そういう標準報酬適正把握ということも、行政努力一つの目標として入れておったわけでございますけれども、しかし行政努力はうまく達成できましても、景気の動向その他によりまして、標準報酬——結局標準報酬行政努力と申しますのは、たとえば当初二万七千円なら二万七千円くらいの標準報酬とこう見るのを、こういう行政努力によってこれをまあ五百円アップする、こういう数字になって出るわけでありますが、四十一年度はそういうことで努力いたしましたけれども、景気のいろいろの動向その他によりまして、標準報酬の伸びが必ずしもうまく入らなかったということで、なかなか努力目標に達しなかったような実績もございましたので、要するにこの努力というものは、こういった標準報酬適正把握努力と、それから景気の変動というものがミックスされて標準報酬の額が出てまいりますので、なかなか数字にあらわすのがむずかしいということで、努力はいたすけれども、それを具体的に、標準報酬をこれによって何百円アップするという形で行政努力金額に出すことが、前年のいろいろな実績からいって、必ずしもうまく出ないということで、今年度はこの二十五億の中には入れなかったわけでございます。
  27. 華山親義

    華山委員 この会計検査院指摘に対しまして、厚生省は、こういうふうなことは極力少なくするように努力いたします、こう言っておられるわけです。そうだったならば、その幾らかというふうな——景気の動向と言われますけれども、一般的なその人の収入というものを把握することは困難かもしれませんけれども、私は、不当なる徴収ということに対して、これを不当にしない、そういう見地からも、ある程度の努力によってこれを埋めることができるし、この決算委員会においてそういうことを約束された以上は、当然これによったところの、どれだけのものが出てくるか、そういうことによってくる財源は、当無行政努力の中に含まるべきじゃないか、こういうふうに考えるんですけれども、どういうことでございますか。これは努力してみたって大して上がらないから、ということのようにも聞こえますが、計算の基礎としては、私の考え方とあなたの考え方と違うようですね。あなたの考え方は、標準的な収入はどれだけだということをつかまえることによって上げるんだということ、これは行政努力じゃない。不当なるそういうふうな保険料の納め方、それを是正することによってどれだけ出てくるかということが、これがやはり努力なんであって、そこに数字として出てこなければいけない、こう思うんですけれども、そういう点のお考え方、ちょっとあなたとものの考え方が違うようですけれども、それが行政労力として、ここで、そういうことをなくすように努力しますと言っておられる以上、そういうものが出てこなければいけないのじゃないか。どうでしょう。
  28. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 確かに先生おっしゃるように、数字としてはっきり出したほうがいいという御見解もあると思います。ただ、私どもは、努力いたしておりますけれども、それで、現に、会計検査院から指摘されます金額も、若干ではありますけれども、だんだん下がってきております。たとえば昭和三十八年にはこの標準報酬の件について指摘されました金額が三千六百六十万でございますが、昭和三十九年は三千六百四十五万、ほんのわずかでございますが、減っております。昭和四十年度にはそれが二千五百八十九万、約一千万ばかり減っておりまして、努力はいたしておるわけでございますが、金額的に言いますと、非常にその減り方が少ない。これはどういう点が問題があるかと言いますと、標準報酬を的確に把握するということは、やはり直接事業所に出向いて行くか、あるいは事業主を呼び出しまして、そしてその届け出ている標準報酬と、現実に勤労者に支払っているところの賃金と、数字が合っているかどうかというのを突き合わすことを全部やらなければいかぬ、こういうことになるわけでございます。それで、事業主が正直にその標準報酬を申告してくれますれば、こういう問題は出ないわけでございます。結局、事業主が、あるいは非常に忙しいためか、あるいは若干の故意もあるかもしれませんが、正確に従業員の賃金を申告してこないということのために、この食い違いが起こるわけでございます。そのためには、一々その帳簿と届け出の額を突き合わせなければならない。この点につきましては、健康保険標準報酬はきめ方が二つございまして、一つは、毎年十月に定時決定というのをやるわけです。これは、五、六、七の三カ月の賃金の平均をとりまして、そして八、九で整理いたしまして、そして十月から、そのAならAという人の標準報酬を三万円とか三万五千円ときめて、そして原則として一年間それでやるということでございます。この定時決定のときには、これは私ども最大限の努力をいたしまして、実質的にもう九七%ぐらい実地調査をやっております。事業主を呼び出しまして、九七%につきましては、ほんとうにその定時決定をやるときには調査をして、そうして実際の給料と標準報酬とが合って、新しい標準報酬として一年間動かす、これを九七%までやっております。ところが、問題はもう一つありまして、随時改定という規定が保険の法律にございまして、これはその一年の間に著しく給与が上がったときには、やはりまた新しく標準報酬を改定する、こういう規定があるわけであります。これがなかなか把握がむずかしい。これは中小企業でございますが、事業所が五十六万ぐらいございます。昇給時期もいろいろ違っております。その昇給の理由もまた違っておるかもしれません。これを昇給しましたときに一々事業主が届け出てくれれば問題はない。これを全部歩いて、その昇給の著しいやつをつかまえて、それで標準報酬を手直しをするということは、これは物理的にも一〇〇%はとてもできない。その点では、会計検査院調査になられますときに、そういったものにぶつかるわけであります。定時決定のときには合っているけれども、その間そのあとで昇給したとかなんとかいうものがあって、それがだから標準報酬と食い違っておる。現実の俸給のほうが高くなっている。これはおそらく随時の改定——その後の昇給があって、それが相当大幅の昇給であって、そいつをつかまえ切れなかったというのがあるわけです。私どもといたしましては、そういう意味で、できるだけ努力はいたすつもりでございますが、非常に一般的な保険料徴収業務もございますし、社会保険事務所の職員も非常にいま多忙でございまして、なかなかそれを全部把握することはできない。その意味で、四十一年度行政努力も、一応努力目標として掲げましたけれども、なかなか思うように成果があがらぬというようなことで、私どもといたしましては、あまり自信のない数字は、行政努力として項目にあげるのは差し控えたわけであります。努力は、できるだけ最大限の努力はいたしたいというぐあいに考えております。
  29. 華山親義

    華山委員 それにしても、会計検査院の報告によりますと、とにかく調査をしたものの三割が徴収不足なんですね。調査客体の三割が徴収不足として報告されている。少し多過ぎるんじゃないか。私のこの三割というものが間違えているかどうかわかりませんけれども、とにかく四千三百三十九の事業体をお調べのところ、その中の千三百が徴収不足になっている。計算いたしますと、三割が徴収不足になっているわけです。あなたのおっしゃるように、九七%と言われたことよりも、あまりにも徴収不足の客体が多過ぎるんじゃないか、こう思うのでございます。それはやり方が違うかもしれませんが、労働省の失業保険においては、これは一割なんですね。失業保険と健康保険の間には、やり方の違いがあるかもしらぬけれども、とにかく片方は一割程度しかない。一万百三十一件のうち九百九十件しかない。失保のほうは一割。これも指摘されておるのにかんがみて、健康保険のほうは三割が徴収不足になっている。行政としてあまりにもひど過ぎるんじゃないか。この点、ちょっと時間がなにでしたら、計算してみてください、私の三割が間違えているかどうか。
  30. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 先生御指摘になりましたように、事業所の数からいいますと、調査された事業所と指摘を受けた事業所の関係は約三割ぐないになるという数字だろうと思います。まことに多くて申しわけないのでございますが、ただ、しいて申し上げますと、その事業所に一人おかしいのがおっても、それは一件ということになるわけであります。被保険者の数で調べますと、調査した被保険者が十九万一千六百七十五名でございます。そのうちで給付が食い違っていたものが七千六百九十三名で、四%ございます。これでも決して少ないとは申しませんが、その三割というのは事業所の数でございます。現実に食い違っていた個々の人間をつかまえますと、調べた人間の四%、これでも決して少ないとは申しません。ことに失業保険とは報酬のつかみ方が違います。おそらく失業保険には随時改定的な規定はないと思いますけれども、しかしいずれにいたしましても、四%もそういう食い違いがございますので、今後できるだけ努力して、少しでもこれを少なくしたいというぐあいに考えております。
  31. 華山親義

    華山委員 四%と先ほどの九八%とは別個の問題ですね。
  32. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 別個でございます。
  33. 華山親義

    華山委員 そういう意味で、行政努力と言う以上は、この辺で非常に正確な数字をつかんでやるべきだと私は思うのでございますし、大体会計検査院から報告があっても、ただ形式的に、まことにすみません、今後努力いたします、そういうことだけであって、少しも出てこない。そういうふうなことであってはいけないのであって、とにかく私の計算によりますれば、これはまたあなたのほうで計算してくだすってもいいのでございますけれども、この会計検査院の報告を土台にして計算をいたしまして、調査対象が少ないのでございますから、必ずしもそのまま当てはまるとは思いませんけれども、約十八億の徴収不足になっている。相当な数字だろうと私は思うのです。十八億というもの、ここには出ていない数字というものを全部引き伸ばしてみますと、そういう数字になっておる。これが、行政目的によってこれを減らそうという努力が、今度の健康保険改正について出てこなかったということは、私はどうかというふうな気がするわけでございます。保険給付につきましても同じでございますが、保険給付につきましてはいろいろな点で出ております。失保についてはほとんどそういう報告もございません。ところが健康保険については相当の数、〇・四、一割四分というものが保険給付の超過ということで会計検査院が報告しているわけでございますけれども、保険給付はどうしてこんなに間違うのですか。
  34. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 保険給付で会計検査院の御指摘を受けておりますのは、傷病手当金の問題でございますが、傷病手当金は、先生御承知のように、被保険者が病気になりまして労務不能になった場合に、保険のほうから、原則として標準報酬の六割を六カ月間に限って支給する、こういうことでございます。それが多目に払われておる。これはなぜかと言いますと、一つは結局保険から六割払いますが、中には、事業主が気の毒だということで、あとの四割を事業所から病気の人に払っている場合が相当あるわけです。そして足すとちょうど十割になりまして、病気する前と大体同じ収入だということで、せっかく事業主がそうやってくれている場合があるわけであります。ところが健康保険では、そういう場合には、四割分は六割から差し引いて、二割しか渡してはいかぬ、こういう規定があるわけであります。要するに事業主から何も出ない場合に六割出せ、少しでも事業主から出た場合には、それだけ差し引いたものを被保険者に渡せ、こういう規定になっているわけであります。これが往々にしてわからないわけであります。たまたま会計検査院から検査されましたときに、事業主から若干の給与が出ている、これは差し引かなければいかぬじゃないか、そういうものがある。それからもう一つは、労務不能の場合に初めて傷病手当金というものは出るわけでございますが、労務可能でありながらこれをもらっている、若干詐欺に近いわけでございますが、そういう者も中にはおるわけでございます。そういうことで、会計検査院の御指摘を受けるような事例が出た、こういうことでございます。
  35. 華山親義

    華山委員 これは行政努力によって妨げないのでございますか。
  36. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 これもまた努力をやっておるということは、言いのがれでなくて、やっておるわけでございますけれども、この努力もなかなか金額に出ない場合があるわけです。たとえば、事業主を集めまして傷病手当金のときには金を出してくれるな、また金を出すときには必ず傷病手当金を差し引かれるのだから、そういう事業主教育と言いますか、それから被保険者教育、そういったものに重点を置いて、もちろん個々に調べもいたしますけれども、なかなかこれはたいへんでございまして、年間に二百が件近い傷病手当金の件数がございますので、個々に全部調べることはできませんけれども、そういった金目にあらわれてこない努力があるわけでございますので、そういう意味で、むしろ被保険者なり事業主の啓蒙——これは知らない場合が非常に多いわけであります。事業主から金をもらった場合には傷病手当金が差し引かれるということを、事業主も知らない、被保険者も知らないで、もらっている場合が相当あるわけでございます。そういう啓蒙宣伝をやる。これは結果がどう出るかということは、なかなか数字がつかめないものでございますから、行政努力の目標額としては掲げなかったわけでございます。
  37. 華山親義

    華山委員 少し私の話がおかしくなってきますけれども、そういうふうに雇い主のほうが温情をもって、多少でも見舞い金をやるというならば、いいのじゃないですか。何でそういうふうに厳重に、雇い主が出したらそれだけ引くなんということにしているのでしょう。これはやはり人間なんだから、気の毒だからといって、多少でも見舞金は出したっていいのじゃないかと私は思うのですが、どういうわけでそう厳重にやって、国のほうばかりもうけようとするのですか。
  38. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 確かに先生おっしゃるとおりに、やや法律は機械的な点があるような感じがするわけでございます。ただ私、説明を間違えましたが、純粋なる一時的な見舞い金は差し引かないようでございますが、要するに、毎月毎月生活補給金的なものを事業主が出す場合には差し引く、こういう既定のようでございます。先生の御趣旨は、それも差し引かぬでもいいじゃないかという御発言だと思いますけれども、確かにそういう考え方もあろうと思います。ただ私どもといたしましては、現業でございまして、こういう法律のもとで仕事をいたしておりますので、この法律を将来変えます場合に、確かに先生の御発言のような点は十分考えて、もう二度再検討すべき点があろうと思いますが、現在のところは、この法律のもとで仕事をやっておる以上、やはりそういう非情なこともやむを得ない、こういうことでございます。
  39. 華山親義

    華山委員 非情とおっしゃったけれども、まことに非情だと思うのですよ。とにかく片方のほうは、たとえば生活保護世帯についてもいろいろな問題がありますけれども、これは国のほうで完全にめんどうを見てあげているわけですからなんですが、健康保険法のほうは、労働者は健康保険の金を出しているのでしょう。それだから国が出したといったって、それは別で、ちょっと私は了解できないですな。保険に対する給付なんですからね。それですから、雇い主が出したからそれだけ引くんだなんというのはおかしいと思うのですよ。当然自分も負担し、出している保険金でしょう。そうして大蔵大臣は何と言った。健康保険は保険なんだ、社会保障じゃないと育った。ほかから何のことがあろうと、保険だったならば、ちゃんと出すべきだ、私はそういうふうに考えるのであって、これが社会保障的なもので、非常に多額のものを国が出しているというならば、これは生活保護世帯のような考え方も出ると思いますけれども、私はいまのやり方が間違いじゃないか、こういうふうに思いますので、この点について、ひとつ検討を加えていただきたいと思うので、次官の御所見を伺っておきたい。
  40. 田川誠一

    ○田川政府委員 いま給付の問題が御指摘に出ましたけれども、この傷病手当金は、病気になったために休んで、会社がそれに給料を出さなかったから傷病手当金を出すということでありますから、傷病手当金の問題そのものを再検討しなければならないことでございまして、いまお話がございましたことは、私ども十分検討しなければならないことだと思います。ただ、先ほど来お話がありました保険料の徴収不足にも関連するわけでありまして、先ほど来お話をお伺いしておりますと、行政努力の中に、保険料の徴収不足というものが基礎の計算に含まれていないという御指摘でございますけれども、計算の基礎に含まれていないからといって、われわれは努力しないわけではございませんで、これはもう一生懸命努力するわけであります。ただ、いまのような華山委員の御指摘からいいますと、やはり保険料の徴収不足ということにも関連が出てくるような気がするわけであります。たとえば、いま加藤部長が説明したように、この徴収不足という中には、こういうこともあらわれていると思うのです。定時決定が行なわれた、けれども、一年たった間に俸給が著しく上がったような人があるわけです。いまの規定でいいますと、著しく上がった場合、たとえば俸給が二号俸一年間に上がったというような場合には、標準報酬も上げて届けなければならないし、それに対して保険料をかけているわけであります。そういう意味規定があるわけでありまして、これは随時改定といいますが、その随時改定が十分に行なわれなかった、そのために徴収すべき保険料も徴収できなかった面がある、そういうものがこの徴収不足の中にも含まれておるわけでございます。ですから、いま傷病手当金のお話が出ましたけれども、この保険料の徴収のことについても、そういう俸給が一年間にぐっと上がった、その次の定時決定までの間に上がったけれども、それも正確に届けなければならぬ、それを把握するのはむずかしいし、またそういうものまではたして改定をして標準報酬を上げているかどうかという問題もありますし、そういうこともあわせて、将来の抜本改正の際に、いま御指摘のあったようなこともあわせて検討をしてみたい、このように考えております。
  41. 華山親義

    華山委員 それでは、その問題についてなおお伺いいたしたいことがありますが、重ねて申し上げますけれども、失業保険との間にどういう違いがあるのか知りませんが、保険給付につきましては、失業保険では、ほとんどございませんね。何か規定が違っておるのかもしれませんが、会計検査院指摘はほとんどない。少しはあります。それでも少しは不当事項として出ておるわけです。  そこで、私がこういうふうなことをお尋ねしますのは、とにかく会計検査院から指摘されたことについて、努力します、改めます、こういうことだけで、それが一体どういうふうに——努力する、減らすというのだから、それが今度の健康保険改正についても、行政努力として数字として出てくるのじゃないか、あるいは数字として出なくても、二十五億のほかにこういう問題がありますから、その点につきましても努力いたします、というふうなことが出てこなければいけないのではないか。とにかく健康保険について、徴収不足による数字、私が計算いたしますと、それは十八億あります。保険給付のよけいであったというものが七億になります。合わせて二十五億、私はこれを言うのかと思った。たまたま偶然の一致でございますけれども、そうではないということでございますから、これは完全にできないかもしれませんが、努力してやりますというなら、両方合わせれば五十億になる、保険料なんてあまり上げなくてもいいのかもしれない、そういうふうな気がいたしますが、その点ひとつ十分研究していただきますとともに、お願いをいたしたいと思います。  それから、いま次官がおっしゃったこと、私ちょっとおかしいと思うのです。あとの保険給付ということと、それから保険料命の徴収ということは別問題だと思う。月給が上がったならば、やはり保険料なんだから取ったらいい。保険料なんだから、保険料収入があろうとも、これは保険金として出ているのですから、国として払うべきだ、両方を混同してお考えになることはどうか、そういうふうに考えますので、抜本的な御研究をお願いいたしたい、こう思う次第でございます。  それから、この間、朝日訴訟がございましたけれども、大臣がおいでにならないで、はなはだ残念でございますが、あのようなことになりまして、判決についての批判はここで申すべき時間もございませんし、また言うべきではございませんが、あの判決が出て、そうして厚生省の責任はかえって非常に重大になってきたのではないかと思いますが、あの判決に関連いたしまして、厚生省のお考え方を、大臣にかわって次官からお伺いいたしたい。
  42. 田川誠一

    ○田川政府委員 朝日訴訟の最終の判決が出まして、ああいうような継続が無効になったということでございますが、私どもは、生活の保護基準がこれで十分であるということはもう決して思っておりません。判決は判決として、さらにこうしたお困りになった方々に対する生活扶助であるとかいうような問題を、もっと真剣に考えなければならない、道義的にも政治的にも、考えなければならない、こういうふうに思っております。  また、厚生大臣の、この生活保護基準の決定の権限と申しますか、そういうふうな重大さというものを十分に認識して、この問題に取り組んでいくつもりでございます。
  43. 華山親義

    華山委員 それについて伺いますけれども、私の計算から見ますと、たとえば結核療養所の患者の食糧の材料費、これが物価の値上がりというものから見ますと、ほとんど変わっていないようなものの考え方が出てくるわけでございますけれども、いま私がここで数字は述べませんけれども、ひとつ数学的に説明していただきたい。
  44. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 お答えいたします。  国立療養所におきます食糧費につきましては、昭和三十八年から、一般食並びに特別食という構成をもちまして、おのおの別立ての単価で予算を計上するようになっております。ちなみに四十二年度予算におきましては、一般食が百五十三円、特別食につきまして百八十三円の単価をもって計上されております。
  45. 華山親義

    華山委員 それは食糧の物価との関係はどうなっておりますか。
  46. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 本年度予算におきましては、四十一年度予算に比べまして約四%の増加を見ております。
  47. 華山親義

    華山委員 いまそこに資料がありませんか。私お願いしていたのですけれどもね。消費者の食糧の値上がりと、それからこの実費との、食糧費との関係が、どういう推移をたどってきたのか、資料をお願いしていたのですが、あれ、ございませんか。
  48. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 お答えいたします。昭和三十八年におきましては、一般食におきまして、百二十円、三十九年が百二十六円、四十年が百四十円、四十一年が百四十八円、四十二年が先ほど申し上げました百五十三円、年々増加を見ております。
  49. 華山親義

    華山委員 何%上がっていますか。
  50. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 大体四、五%ずつ上昇いたしておりまして、大体、物価指数に合わせてございます。
  51. 華山親義

    華山委員 そこで、私は言うのですけれども、物価指数に合わせて上がってきたというのでは、食糧費がよくなったということにならないのじゃないか。三十八年当時と同じような実質の材料費しか支給していないじゃないか。物価指数に合わせればいいんだというものの考え方は、決して、いま次官のおっしゃったように、今後責任をもって、そして結核療養所に入っている人たちの健康あるいは生活、そういうものを保持し向上しようということにならないのじゃないかというふうに私は思う。それで、いおまっしゃった数字というものは、大蔵省がいろいろのときに発表するところの、税は生活費に食い込まない、標準献立とかいうものを発表されますけれども、それよりも以下なんですね。そういうふうなことで、私はもっと、次官の言われるとおりするならば、一つの例でございますけれども、食糧費、そういうものについてはもっと上げるべきじゃないか、こういうふうに思うわけたんです。それで、現実に私が結核療養所等に、一年に一ぺんぐらいたまに行くだけでございますけれども、一番不満の多いのは食糧の問題、食べものの問題。それは患者の方々はじっとしているのですから、いろいろ要求も、不満もございましょうから、食糧ということに関心を持たれるということも当然だと思いますし、それから、同じものでも、家庭と違ってあまりあたたかいものも食べさせられない。千編一律な味つけ、家庭だったら、しょっぱかったり甘かったり、変化もあっておもしろいのですけれども、療養所では同じような濃淡の食べものを出される、そういうこともあると思いますけれども、もっと食糧だけはもう少しよくしてあげたらどうだろう、こういうふうに考えますが、とにかくいまの物価と並んで進んでいるんだというのでは、私は御回答には満足できないわけなんです。次官、ひとつその点、特段の御努力をお願いいたしたいと思います。
  52. 田川誠一

    ○田川政府委員 療養所におきます食糧費は、いま加倉井課長が申し上げたとおりでございまして、私ども、これで十分だというふうには決して思っておりませんですが、しかし、ほかの収容施設等の基準でありますとか、その他の関係によりまして、一挙に引き上げるわけにはなかなかまいりませんで、いま申し上げましたような数字になっておるわけでありますけれども、今後もこうした点につきまして、単に国立療養所の患者の食糧費ばかりでなく、他の収容施設の食糧費の問題、こうしたことにつきまして、鋭意努力をしてまいります。
  53. 華山親義

    華山委員 結核療養所の患者の日用品のための支給額は幾らでございますか。
  54. 今村譲

    今村政府委員 四十二年で二千七百円でございます。
  55. 華山親義

    華山委員 二千七百六十五円というのは、一月ですか、一日ですか。
  56. 今村譲

    今村政府委員 一カ月でございます。
  57. 華山親義

    華山委員 そうしますと、一日約九十円、百円足らずですね。それで患者さんはやれるものですかね、それはほかのものは別ですけれども、九十円だけのお小づかいとかなんとかで、日用品を買えるものですかね。どうなんですか。それは何か算出の基礎があるものなんですか。
  58. 今村譲

    今村政府委員 これは、食事は全部療養所でというようなことで、結局中身は、石けん、ちり紙あるいは歯ブラシとかいうふうなものでございますが、毎日毎日全部歯ブラシを買うわけでもありませんし、耐用年数とかいろいろな問題がございます。また、いわゆる生活保護の居宅において、家具什器みたいなもの、こういうものは療養所では要らない。療養所におけるほんとうの日用消耗品というものだけを選び出しておりますので、私どものほうとしては、十分とは申せないにしても、一人当たり、まあまあある程度の線まではできるのではないか、そういうふうに考えております。
  59. 華山親義

    華山委員 伺いますが、ただいま、開放性結核患者、こういうものは国費で全部持つということに相なっているわけでございますけれども、国のほうで出す金で、家庭の負担というものは全然なしに済ませる金額でございましょうか。たてまえはどうなっておりますか。食べものはある、歯みがきを買う金はある。うちのほうは、病室に入っているのだから、これもいい。こう計算してみると、その家人の出し金というものは少しもないということになりそうですが、そういうたてまえでできておりますか、お伺いいたしたい。
  60. 今村譲

    今村政府委員 御質問の場合、一応いろいろなケース例があると思いますから、生活保護の家庭で、主人なり奥さんなりが入院したというふうな場合を想定いたしますと、たとえば東京、一級地で、生活保護の四人世帯、夫が三十五歳、女三十歳、子供が男九歳、女の子四歳というふうなものを検討いたしますと、生活扶助だけで約二万四千円ぐらい、そのほかに住宅費が、東京で見ますと最高七千二十円ぐらいというふうな、まあいろいろな世帯例によってみな違います。ただその場合、一人入院しますと、残った人方に対しまして、住宅費を入れますと三万幾らというものが出ているわけです。それから、本人は医療扶助で参りますから、医療費、それから日用品費、全部そっちに参ります。そういう状況で、あと残った家族が、それはおっしゃるとおりに、療養所にときどき見舞いにも行かなければならない、あるいはくだものの一つも買っていかなければならぬということでございますが、それは生活保護の四人世帯で残った三人が生活扶助の中でということは、ボーダーライン階層でも、やはり一定の生活水準の中で、諸雑費なりあるいはたまたま病院に行く場合の交通費、足代というふうなものは全部まかなっておるというかっこうで、その辺も含めまして、生活保護費全体が、東京でいいますならば、住宅費全部を含めて三万何千円というふうな計算をいたしております。したがって、ここに、病院に行くから一回何円で何回行って何ぼというふうなものを加算するというところまでは計算いたしておりません。総体の中でそれをやっていただく。少なくとも入院した人は、入院した生活の範囲内においては家族に負担をかけない、こういう仕組みになっております。
  61. 華山親義

    華山委員 話をわかりやすくするためにお尋ねいたしますが、たとえば私が結核になった。家族はだれもいない。収入もない。それで私は結核療養所に収容していただいた。その際に、この私というものに対して、食費はただだ、歯みがき代は出る、まあ住宅とかなんとかはあるわけですが、そのほかに何があるのですか。
  62. 今村譲

    今村政府委員 先生が入院してはぐあいが悪いですから、私が入院したものといたしますと、係累もない、家屋敷もないということで、たとえば開放結核で命令入所ということで入りますと、医療費につきましては心配ない。普通ならば、入りますときに、若干寝巻きとかなんとか一応持っていくわけです。しかし人によりましては、そういうものもないということで、病院のほうでは完全看護、完全寝具で、必要に応じて出してくれるというかっこうでございますから、あと残りますのは、いわゆる日用品費——これは三年おりますか二年おりますか、そういう場合に、実は先生先ほど朝日事件の問題を仰せられましたが、あの当時日用品費の六百円が、三十一、二年ごろでございますけれども、高いか低いかということでございました。現在は二千七百円、これは別に朝日事件の影響ということではございませんが、その辺も考えて、一般の生活扶助基準を上げる。これは毎年一〇%ずつ上げてきております。そのほかに日用品費というものを、病院なり療養所なりの実態を考えまして、一般の生活基準以上にアップ率をふやしておるということでございます。その全額は完全にデラックスということではございません。われわれも努力をするつもりでございますけれども、現在はそこまで押し上げておるということを御了承いただきたいと思います。
  63. 華山親義

    華山委員 私なりあなたなり例になって、ぐあいが悪いのですけれども、話を簡単にするためにお聞きしたわけです。そうしますと、その患者さんは、毎日九十円で、歯みがきを買ったり、タオルを買ったり、ちり紙を買ったりする。そのほかには何もないので、お菓子も買えなければ何も貰えない。もう病院で出した食事を食べて、寝て、自分のものがほかに何もないというわけでございますね。そうなりますか。
  64. 今村譲

    今村政府委員 二千七百円の金額は、いろいろ問題がありますが、新聞を買っても一カ月に四百五十円ですから、新聞もとれるし、ある程度費目をぴちっと、このとおり使えと言っているのではございませんで、ある月にはがまんして小説を一冊買うということもありましょうし、やりくりもございます。最低限度の生活を保障するということで、蓄積はもちろんのこと、とてもそれ以上のことは現状としては考えられないけれども、二千七百円でも、政府としては毎年がんばってここまで押し上げてきておる、こういう状況を御了承願いたいと思います。
  65. 華山親義

    華山委員 私は意地の悪いことを聞いているのじゃないのです。私が聞いたらあなた方の大蔵省に対する態度がもっと強くなるだろうと思って、聞いているのだから、足りないなら足りないと言いなさいよ。私は大蔵省に対してものを言っているのだけれども、これで十分でございますとか、これでは足りないでしょうけれどもしかたありませんとか、あなた方、私に対してそう言うのだから、大蔵省に対してはもっと弱いだろうと思うのです。それは私は残酷だと思うのですよ。私ども実態を見ますと、あの連中はどうしているのかといえば、とにかくカロリー的には間に合うのかもしらぬけれども、それでは嗜好にも合わない。それですから、みんなで協同して、みそを買ってきたり、その地方で特有なワラビを買ってきたり、あるいは魚を買ってきたりして、一面、自分たちで、病院の食べさせているもののほかに、共同炊事みたいなことをして補給するという実態があるわけだ。こういうことから私は申し上げるので、もうとひとつ大蔵省にがんばって取っていただきたいと思うのです。  それから、この前も私予算分科会でお聞きしまして、それが問題になって、テレビなんかに出ました実態がございまして、御努力によりまして、二百人に一人というお医者さんの結核療養所が二人になったようです。これは左沢の結核療養所でございます。「ある人生」か何かに出まして、その反響があったのかどうか、お医者さんがようやく二百人について二人になった。それはたいへんありがたいことだと思うのですが、そのときにも問題にしたのですけれども、全然暖房がないのですね。それで、冬になりますと、患者はほっかぶりしてベットに寝ているのですよ。私が、あれは結核療養のためには寒いほうがいいのであって、へたに暖房はとらないほうがいいのかということをお聞きしたところが、最近の結核の療法ではそんなことはないのだというお話もあったわけでございますけれども、とにかく、少なくとも暖房くらいは早く入れてやったほうがいいと思うのですが、そういう点も大蔵省はなかなか金を出しませんか。暖房くらい早くしてやりなさいよ。
  66. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 お答えいたします。御指摘のように、暖房のない施設もまだ全国的にございます。これは先生も御承知のように、かつて結核が大気安静療法以来の、暖房のない、外気にさらされた病室をもとにいたしました療法をやっておりました当時のなごりでございます。私どもも全国的に多数の療養所を持っておりまして、一度に全部の施設に暖房をつけるということはなかなか実現しない現状でございまして、北海道あるいは東北のほうから逐次やってまいりまして、だいぶ進んではまいっておりますが、御指摘の左沢光風園のように、まだ暖房のない施設もございます。しかしこれは早急に私ども予算を要求いたしまして暖房をつけたい、かように考えております。
  67. 華山親義

    華山委員 このたび、重症心身障害児ですか、あるいは障害の人ですか、そういう者について、結核療養所を御利用になるというふうな計画がございますけれども、あのことによりまして、現在結核療養所に働いているところの職員の労働が過重になる、そういうことがあるのかないのか。労働が過重になることによって、その病院から大切な従業員がむしろだんだん減っていくというふうな傾向でもありますとたいへんだと思いますので、その点についてどういうお考えを持っておられるか伺っておきたい。   〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕
  68. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 重症心身障害児の収容施設につきましては、職員の労働過重にならないように、私どもといたしましては、十分な職員の定数を確保するように努力をいたしておりまして、現在のところ、労働過重になっているということは私ども聞いておりませんので、その点につきまして、将来とも職員のこのような状態にならないように、定員の確保はひとつ努力してまいりたいと思っております。
  69. 華山親義

    華山委員 時間もありませんから、簡単にこれだけお聞きしておきますけれども、そうすると、重症心身障害児の病棟の看護婦さん、それから結核療養所の病棟の看護婦さん、これは別のものですか、兼務するものですか、あるいは巡回的に変わっていくものなんですか。どういうやり方でありますか。
  70. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 重症心身障害児の病棟と結核の病棟の看護婦は別でございまして、たとえば結核につきましては六対一、あるいは重症の結核につきましては四対一というような数でございますけれども、重症心身障害児の病棟におきます看護職員の数は、患者二人に対して一人というふうに、別々に計算をしてございまして、兼務という形はとってございません。
  71. 華山親義

    華山委員 私のいままでよそから聞いた話とは違うのですね。同じところに長く、たとえば重症心身障害児というものを見ろといったってたいへんなわけなんですから、たとえば、数字は別問題といたしまして、三カ月なり四カ月たったならば、その人は結核症棟のほうの仕事をして、そうしていままで結核病棟の仕事をしていた看護婦さんは、重症心身障害児のほうの仕事をしてもらう、こういうふうなやり方だと聞いておりましたけれども、それは違うのですか。
  72. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 私のお答えが不十分だったと思いますけれども、御指摘のように、重症心身障害児の病棟に勤務いたします場合には、精神的な非常な苦痛も起こると思われますので、御指摘のように、四カ月あるいは六カ月ごとに職場を転換いたしまして、気分の転換をはかる予定でございます。
  73. 華山親義

    華山委員 どうも、たいへん長くなりました。
  74. 田川誠一

    ○田川政府委員 華山委員お答えいたしますけれども、先ほど来お話がありました、生活保護の問題その他予算がたいへん足りないということで、激励をいただきましたので、私ども重ねて申し上げますけれども、決してこれで満足しているわけではございません。局長はじめ担当の者は、一生懸命、予算のときには努力しておるわけでございまして、きょう激励をいただきましたが、さらに私ども今後努力してまいるつもりでございますので、ひとつこの点は御了承いただきたいと思います。
  75. 高橋清一郎

    ○高橋(清)委員長代理 吉田賢一君。
  76. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 大臣が見えておりませんので、次官に、かわってお尋ねしたいのですが、児童手当制度の問題を伺ってみたいのです。   〔高橋(清)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、まず伺いたい点は、同じ総理のもとにおきましては、大臣がかわりましても、やはり行政責任は一体であることはこれは申すまでもございません。そこで現厚生省の省としての御意見は、児童手当制度につきましては、前の鈴木厚生大臣時代のお考え方と変わりないのですか。
  77. 田川誠一

    ○田川政府委員 児童手当に対する厚生省態度は、従来から変わっておりません。
  78. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この問題は、戦後二十二年、社会保障制度審議会の答申以来、幾たびかの、中央児童福祉審議会とか地方児童福祉審議会の各答申、人口問題審議会の決議、さらにまた、数次にわたる経済審議会の答申、こういったものが、児童手当制度の創設というものの必要を認めまして、政府に勧告したという経緯をたどっておるようであります。  そこで、試みに最近の国会のこれに対する動きを見てみますと、最も近い例としましては、昨年は、衆参両院において相当活発に論議がされたことがございます。当時の鈴木厚生大臣の発言の要点をずっと拾って読んでみますと、一貫して感じられます点は、児童手当制度については、四十三年度予算に盛り込むように調査、準備を進めておりますという点が一つと、ただ、もし全体の中学生以下の児童ぐらいは月当たり千円を給付するということにでもするならば、三千億円の原資が必要であるという点やら、その他支給範囲とかあるいは家族手当制度、これは母子家庭のことですが、そういう関係とか、そういった予算の関連もあるので、鋭意調査をしております、ただし、四十三年度予算作成期までには何とかして実施に移せるように準備を急いでおる——私も、こういう衆参両院の社労とかあるいは内閣とか予算委員会等における鈴木発言を読んでおるのですが、これは現在もそのとおりですか。
  79. 田川誠一

    ○田川政府委員 前大臣が四十三年度予算までにまとめたい、予算に含めたいということをおっしゃったそうでございますけれども、いま、予算までということをここで申し上げるわけにまいりませんけれども、児童手当につきましては、厚生省といたしまして、できるだけ早く具体的な構想を固めて、具体的な形を整えたいと、鋭意努力をしておるわけでございまして、この問題は、後ほど御質問があると思いますが、人口問題、賃金問題とも密接に関連するところが多うございまして、ただいま各方面の意見を調整しつつ検討をしておるわけでございます。先ほど例にあげられました三千億かかるというお話でございますけれども、これも一つ考え方かもしれませんが、三千億という基礎は、一人の子供に月に千円の手当で、第一子から全員に適用した場合に三千億かかるということではないかと思います。いろいろなケースがございまして、たとえば全児童月三千円ずつやるということになりますれば九千億もかかるというようなこともありますし、また第二子からあるいは第三子からやるという考え方もございますし、そうした問題も含めて、ただいま検討しておるわけでございます。
  80. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまのような御答弁ですと、前前の神田厚生大臣、前の鈴木厚生大臣の時代から、実は後退するのであります。やはり私は、国会の発言はいいかげんにしちゃいかぬと思うのです。いやしくも省の意見としてもしくは国務大臣として答弁せられたら、やはりそのとおりに全責任を持ってもらいたい。人柄のいろいろな批判はあるけれども、たとえば河野一郎さんが建設大臣として、私も別の機会に、この種の問題この種の材料をあらゆる建設事業に使用するとき、何も一々外国から輸入税を払って買わぬでも、日本にざらにあるじゃないかということを指摘したことがあります。そうやりますということを言ったのです。午前に言ったら、午後に部下に命じて、調査せいと言っていました。あくる日私が聞いたところが、実は大臣からきのうそういう指示を受けまして、という話なんです。私は、一つの国会発言に対する責任、これはやはりいいかげんにしちやいけないと思います。それから、一たんイエス、ノーと言ったら、そのとおり明らかに行政行為に出してもらいたいと思います。鈴木さんなり神田さんが述べておるところは、やはり四十三年度めどですよ。その内容のいかんは別です。要するに中学以下全部で三千億要るのならば、そうでないのを選定して一千億円の方法もあろうし、その他の方法もありますから、いずれにしても、やるものならばもっと積極的に、これは答弁の趣旨を生かしてもらわなければいかぬ。何べん聞いても同じようなことを繰り返すならば、意味ないです。第一、国会を何とお考えになっておるかということにもなるわけです。あなたを責めるわけじゃないけれども、やはり国会の発言ということは、いやしくも軽々にすべきじゃない。委員も同様であります。無責任な発言は一切できません。こういうことを思いますので——ともかく私は相当読んでみたのですよ。四十三年と、何回か出ていますよ。すでに述べましたごとくに、四十三年ごろまでに何とか実施に移せるように準備を進めておりますという、それならば、四十三年実施するなら、大小国費が要ります。来月は概算要求を大蔵省に出さなければならぬはずです。八月には要求しなければならぬ。それに頭を出さぬということになれば、いまおっしゃるように、また近い将来ということになってしまう。それは後退することなんです。国会を愚弄する、国民をだます、こういう結果になります。ですから、大臣の答弁はやはり省の全体の意思であり、国務大臣としての答弁は内閣の意向である、こういうふうにわれわれは理解し受け取りたいのであります。かかる意味におきまして、やはりこの点は明確にしてもらいたいのです。今年は用意ないというならないでよろしい。これこれの問題で調査困難、審査進まず、準備進まずというなら、それならそれでよろしい。よろしいけれども、それならそれで、前言を取り消すべき明確な理由を述べてもらいたい。大蔵省に故障があるのか、あるいは省内がサボっておるのか、準備室が十分に準備を進める能力がないのか、どこに欠陥、故障があったかということを明確にしていきたいと思うのです。やはりこの点は、あなたはひとつ大臣にかわっての御答弁として、はっきりしておいていただきたい。
  81. 田川誠一

    ○田川政府委員 おっしゃるとおりに、国会の発言というものは尊重しなければならないし、重要なことでございます。ただ、先ほど四十三年度予算に云々と前大臣が申し上げたことは、目標として、四十三年度予算に計上したいということをおっしゃられたのじゃないかと思います。私どもも、四十三年度にやらないのだということではございませんで、四十三年度を目標にひとつ何とかやりたいということで、今日まで進んできておるわけでございまして、断念をしているわけではございません。とにかくこの児童手当制度のことにつきましては、できるだけ早く実現するように努力をしておるわけでございますが、もちろん先ほど申し上げましたように、問題点も幾つかございまして、御指摘のように、ただいままでまだ具体案を申し上げる段階に至っておりません。しかし私どもの気持ちとしては、とにかく四十三年度を目標にひとつやらなければいかぬという気持ちは今日まで変わっておりません。しかし予算編成の時期が、おっしゃるように迫っておりますので、それじゃ来年度予算に計上できるかということになりますと、これはなかなかむずかしい状態でございます。しかし、とにかくわれわれのできる範囲でやらなければならないという気持ちは少しも変わっておりませんことを、ひとつ御理解、御了承いただきたいと思います。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは予算を伴う施策であることは申し上げるまでもございません。予算なしに念仏を言う施策とは違いますから、当然予算の準備が大小なければならぬ。それならば、やはり来年も予算は準備経費として要求なさる、こういうことになるのでしょうか。具体的に何か実施の頭でも出すというところへいくのでしょうか。その辺のところはどうですか。準備は一体どこまでできておるか。これは準備なさる責任事務はだれですか。何局ですか。
  83. 首尾木一

    首尾木説明員 児童手当につきましては、ただいま官房の企画室で、児童手当準備のための要員を置きまして、そこで検討しておるわけでございます。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そんな程度のことは、もう何べん聞いても同じことですが、そうではなしに、具体的にもう予算の要求期が来ておるのです。来月でございますから、来月予算を要求しなくちゃいかぬ。だから、頭でも——実施について必要な予算を要求なさるほどに準備が進んでおるのか、それとも、依然として来年も準備するという手算要求になるのか、一体その辺が事務的にどこまでいっておりますかということを聞いておるのです。
  85. 首尾木一

    首尾木説明員 最終的に来年度予算を省議においてまとめますのは八月の下旬ということになりますので、最終的にそのときに、どうするかということを省としてはきめるということでありまして、目下のところ、私どもの準備室の段階としましては、具体的な案につきまして検討をいたしておりまして、私どもとしましては、できる限り四十三年度から実施するように、したがいまして、予算要求の段階でも、何らか四十三年度予算に、具体的な成案というものが芽を出すというような予算を要求いたしたい、こういうふうに考えております。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは考えようによっては切実な問題でないようでありますけれども、社会保障制度がかなり日本は形は整ってきて、世界におきましても相当すぐれたグループに入っておるようにも私ども聞いております。児童保障制度は、遠くは、沿革的には、一九二四年のジュネーブにおける児童権利宣言から始まっておるらしいですね。国連総会におきましても、やはり五九年でありましたかに、同じく児童の権利宣言がうたわれたようでありますが、児童手当がそれぞれと充実することによって、乳児から老人に至りますまで手当制度がかなり整備されるのじゃないか。このように世界的には六十数カ国が行なっておるのでありますし、ヨーロッパにおきましても、どの国もみなやっておるようですね。ですから、対象あるいは年齢あるいは範囲とか金額等々の具体的な内容はそれぞれのさまざまな事情もありますけれども、いずれにしましても、長い懸案ですから、児童手当制度はもうこのくらいに解決をしなければ、社会保障について積極的なかまえはこの内閣はないということになりますよ。厚生省所管の社会保障をめぐる諸問題は、社会的にこれからだんだんと台頭してきますよ。でありますので、よほどふんばって、予算が余ったらください式の思想を捨てて、やはり憲法の基本的人権に立脚するというところまで一ぺん立って、そこで、国内的に他の実際の国策とどの程度で調整するかという辺まで積極的なかまえにならぬと、とてもいくまいと思います。そういうふうに思います。だから、これはひとつ次官、大臣と相談されまして、もしこれをうやむやでまた準備準備で日を送っていましたら、これはこっぴどく大臣は追及されますよ。私にしましても、ずっと何回か会議録を読んでみたのだが、読めば読むほど、厚生省は前向きのかまえで答弁しておられます。そして事実まだ何もできておらない。何で一体社会保障というものがこのように冷遇されなけばならぬか、根本的に財政に対する考え方がどこかで間違っておるのじゃないかとさえ、実は思ったのです。よくそれは相談してください。そしてともかく積極的に推進して、何らか頭を出す。何らかの形で頭を出せばいいです。老人の手当でも、私の友人の大分県知事の木下君が始めたのです。国会で少し言っておりましたけれども、らちがあかぬ、よろしい、知事になったとたんに、わしがやると言って、やった。これがばっと広がった。そして、いけるな、よかろうということになりましたのがきっかけと私は記憶しておる。こういうこともありますので、この点ひとつぜひ御協議してもらいたいと思います。御希望申しげておきます。  それから、児童手当につきましては、地方自治体が出しておるところが相当できてまいりまして、これもおもしろい現象ですが、これは積極的に何か行政指導を、これはあなたの所管じゃなしに、あるいは自治省と組んでやらなければいかぬかと思いますけれども、いまこの辺で一番近いところは、武蔵野市で児童手当がありますね。これはおもしろいですね。十八歳未満の児童四人以上を扶養しておる者、これが支給対象になっておりますが、第四子以降の子供一人につきまして月額千円、こういうことになっておりますが、調べるとわりあいに少ないですね。この武蔵野市だけで、対象人員、児童総数が全部で百五十七しかないようですね。ですから金額にしても些少です。給付総額はわずかなもので済んでおる。西宮市と尼崎市はもう少し規模が大きいです。四宮、尼崎の実情を見て調べてみますと、これはまた別でありまして、条件がついておりますが、尼崎では、身体障害者の年金として一級、二級、三級と区別し、一級の生活困窮者、年額にして一万八千円、三級が六千円、西宮は、同じく一級ないし三級、十八歳以上のものでこれは一万五千円、一万二千円、西宮は十八歳以上が入っております。十八歳未満のものは九千六百円、いろいろな段階を設けておるようであります。もう一つ精神薄弱者の年金でありますが、これも十八歳未満、こういうことになっておりまして、年額が六千円、これは尼崎です。西宮の場合は、一万五千円ないし九千六百円等々で、三段階あります。身体障害児童の奨学金なども、一種の年金のようでありますが、こういうものにつきましても、これも最低は月額五百円というようなものを尼崎は設けております。いずれにしましても、これも一つの、ある形の年金であろう、私はこう思うのでありますが、こういうものを地方自治体も率先してやるような進歩的な傾向が生じてまいっております。ひとつ全国的に、地方公共団体に向かって、自治省と相談して、行政指導をやっていくということはどうかと思うが、これは次官、どんなものでございますか。
  87. 田川誠一

    ○田川政府委員 地方の自治体でそれぞれ児童手  当的なものをやっておりますことは、私どももよく承知しております。私の住んでおる神奈川県でも、秦野市などが第三子以降の子供に五千円をやり始めておるということも聞いておりますが、自治体でやっておりますこうした制度というものは、それぞれ目的あるいは手当の支給方法、そういうようなものが違うと思います。地方自治体独自の考え方でやっておりますので、これをどういうふうに行政指導するかということは、なかなかむずかし問題でございますけれども、それだけ、児童手当に対する希望と申しますか、関心というものが非常に強くなっているということを、私ども痛感するわけでありまして、それだけに厚生省といたしましては、先ほど申し上げましたように、国の制度として、児童手当制度というものを早く実現するようにしなければならないということをわれわれ痛感するのみでございまして、今後とも、この問題に取り組んでまいるつもりでございます。
  88. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 児童保護の問題の一つでございますが、こういう実例がございます。これは生活保護に関係するのですけれども、ある児童委員、民生委員などが私に訴えたこと、そういうものが、私があちらこちらで聞くだけで数個ありましたので、指摘して見解を伺ってみたいと思うのでありますが、児童福祉法の二十八条には、保護者がその児童を虐待し、著しく監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合においては、同法二十七条一項三号の措置をとることが、親権者もしくは後見者の意に反するときは、知事は次のとおりの措置をとることができる。つまり家庭裁判所などの承認を得まして特別な措置をとる、こういう趣旨のようであります。問題はどんなのかと言いますと、こういう例があるのですね。二人の小学生のきょうだいがある。二親はあって、妻は、おかあさんは離婚して去ってしまった。夫はよくもうける人であるけれども、内縁の妻を持って外に別居してしまっておる。小学生の二人の子供だけが住んでおる。家が実はあるわけですね。ところが父は適当に金もうけして、千円二千円というものをときどきうちへ置いておいて出るそうです。そして内縁の夫婦は外でけっこう楽しんでおりまして、子供はその千円二千円の金で自分で暮らしている。小学生ですよ。どうにも手がつけられないと言うのです。児童委員やら民生委員、それぞれ心配しようとしましても、これは親がそういう能力があるのですから、生活保護の対象にならない、どうしたものだろうということであります。親の意思に反してどうすることもできない。これはまさに、児童の虐待かもしくは著しく監護を怠ったということに該当しないであろうか、というように私もちょっと感じて、こんな解釈をしてみたのでありますけれども、こういうものは非常に小さな問題として扱うべきではなしに、法律の欠陥かもしくは社会道徳的な問題か、家庭道徳の問題か、どうすれば児童を保護することができるのであろうか。ある人いわく、どこか施設へ連れていったらどうか、親を説き伏せて、というようなことを言っておりましたけれども、これは児童のためにもあまりにも虐待の結果になります。こういうことになるのですが、こういうように、児童に対する保護が法律のすきから漏れておるという問題があるわけでありますが、これは事務の方、たんのうな方もあると思いますので、そういう場合には、日本の法律では何法をどう適用したらいいのか。根本的には、その児童は両親によって保護される権利を持っております。また両親は、学校教育法によりましても、小学校、中学校に就学せしむる義務があります。ただ単に就学だけではなしに、私は、この児童福祉法の基本法律によりまして、完全に監護する義務があろうと思うのですが、この点は、事務的にはどう扱うことが、児童福祉のために一番適切とお考えになりましょうか。
  89. 今村譲

    今村政府委員 ちょっと児童局長がおりませんので、私からいまの事例につきましての基本的な考え方を申し上げようと思います。  現在の児童福祉法、各条項がありますが、私は、やはり親が児童を介護すべき責任を相当程度放棄しておるという事態ではないか、というふうに考えます。したがいまして、児童相談所あるいは民生委員、児童委員というふうなものが、養護に欠ける児童を発見した場合には、これは福祉事務所あるいは児童相談所へ報告する。現実には、それが報告されておるので、先生のお耳に入ったのだと思います。したがって、そういう場合には、都道府県知事が、その子供をほったらかしにしておる親御さん、親権者といいますか、そういうふうな者に、二十七条によって訓戒を加え、または誓約書を提出させること、こういうふうな方法がございまして、先ほどの、家庭を外にして、腕はありますから、金はとるかもしれませんが、子供はただ二千円、三千円やるだけで育つものではございません。しかも別に家庭が持たれておるというふうな場合は、親に訓戒を加える、こういうふうなことが一つある。ただしこれは強制力はなかなかございません。そういう場合にはやむを得ず、児童福祉のためには、施設へ入れるのが残酷だと先生おっしゃいましたけれども、その場合でも、母が引き戻せない、おやじはなかなか言うことを聞かぬというやむを得ない場合には、しかるべき養護施設のほうに入れてあげる、こういうかっこうになるのではないか、かように考えます。
  90. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 別のケースで、同じような似た内容のものがありまして、これは兄のほうが盗みをしだした。非行少年が接近してきて、盗みの手伝いをしたというので、びっくりしまして、親が何かやったようです。ともかく通常の状態に戻ったということを私は知っておるのです。こういうようなことがありますので、そうなりますと、やはり施設というものの全体の実情につきまして、国民的信頼がもっと高まらなければいけません。施設の人、一々ではありませんけれども、何といっても大ぜいの児童を施設の中に入れて指導するのですから、ほんとうの親の愛情のごとき血の通った施設ができつつあるだろうかということについては、これはよほどいつも反省の機会が私は必要だと思います。これはひとりそういう施設のみならず、その他の非行少年の場合におきましてもすべて同様でございますので、とかく役人の事務的行ないに終わる危険がございますので、血の通った施設運営がまた大事になってくると思いますが、ただいまの問題は、一つの事例をあげまして政府の見解をただしただけですから、この程度にいたしておきます。  そこで、次は、保育所の緊急整備五カ年計画の問題でございますが、これは非常に重要な問題でございまして、この点につきましては、すでにその計画の要綱なるものが発表されておりますし、また、保育所の増設などは社会開発の重要課題だというふうに強く指摘されている面、これはしごく私どもも賛成する次第でございます。全国的に何か不足保育所定員が三十万、同保育所数が約四千ということになっておりますが、これはたいへんなことでありますね。しかも四十二年から六年までに完成しなければならぬということになります。そこで私は、気のつくことですが、児童福祉法によりますと、国も県も、児童に対してはしかるべき保育所等を設ける義務があるのではないだろうかというふうにも感じるのですが、どんなもんでしょうか。  そこで、この要綱によりますと、あるいは住宅団地とか、事業所の保育施設の増設あるいは市町村の新設、増築等につきましての補助の問題等々が取り上げられておりますが、私は県立は適当かどうか若干疑問がないでもありませんけれども、こういうように不足定員が膨大な数にのぼっておりますこと、保育実施の実情、必ずしもまだ十分な発達を見ていない現状、それからまた保育所におけるそれぞれの実情、給与その他の実情、あらゆる施設の状況、物的施設の状況等から見ましても、まだまだこれは充実する必要があるときに、県立ができた、国立ができたということで、もし進んでやることになりましたならば、すばらしいものにする必要はありませんから、やはり右にならえというように、かなり模範的なものもまた企画されて、だんだんと全体の改善に寄与するであろうとも考えるのですが、第一、県なり国なりは、この対象にしなかったのはどういうわけであろうか、そしてまた、新設するということを県なり国なりがやることが適当であるかどうか、一体そもそも義務はないのかどうか、この点についてはどういうことになりますか。
  91. 田川誠一

    ○田川政府委員 この保育所の設立を市町村がやることができるということにしておりますのは、何といっても、子供さん方を保育するという仕事は、住民との接触の一番近い市町村がやることが最も効果がある、また市町村のやる仕事として最も適切なものであるという意味から、市町村も設置できるというふうに規定をしたものと私ども解釈をしているわけでございます。何といっても住民と最も密着する自治体は市町村でございますので、そうした意味で、市町村というものを取り上げたものと私ども解釈をしております。
  92. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、ちょっと私は法律の全部を調べておらぬのですが、児童福祉法の三十五条の二項ですね。「都道府県は、命令の定めるところにより、児童福祉施設を設置しなければならない。」と義務づけられております。この中には保育所は入らぬのですか。
  93. 岩佐キクイ

    ○岩佐説明員 ただいまの保育所の設置につきましては、政務次官もお答えになりましたように、市町村長が、地域住民に密着する行政でございますので、市町村で設置することができるということになっておるわけでございますが、仰せのように、都道府県でできないことはないわけでございまして、たとえて申しますならば、こういう児童福祉施設に保母として働く者を養成するための保母養成施設がございます。その養成施設におきまして、実習をするための保育所を、県立として設置をいたします場合もあるわけでございます。しかしながら、国で設置をするというふうなことには、まだいたしておらないわけでございまして、現在のところでは、都道府県が保母養成施設を設置をするというふうなところから、先ほど先生が仰せになりましたような、いろいろなモデル的な保育の内容等につきまして研究をいたしまして、それらを参考として、その都道府県の保育内容を前進させるために役立たせるというふうなことは必要であろうか、このように考えております。
  94. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまの各地方自治体の財政事情は、だんだんと負担増、支出増によりまして、全般的に見ますると、四十二年度一般的な景気上昇のために引当余裕ができたのでありますけれども、ほとんどはみな赤字転落の実情を数年間たどっておるのは、これは趨勢であります。したがいまして、これは市町村よりもより財政の規模の大きい都道府県が、この三十五条の二項によって、「児童福祉施設を設置しなければならない。」と義務づけている以上は、職員の養成もさることながら、やはりまた、地域に特殊な接着した事情から、市町村が保育所を設けることが適当であるということもよくわかりますけれども、やはりこの法律を順守するという意味において、いま四千カ所、三十万の児童を収容しなければならぬというような重大な国策の推進に協力するという意味において、これはやはり積極的にさせるような行政指導があったほうが私はいいと思うのですが、この点はもう一度伺っておきます。
  95. 今村譲

    今村政府委員 便宜私から申し上げます。  先生御指摘になりました三十五条の第二項は、「都道府県は、命令の定めるところにより、児童福祉施設を設置しなければならない。」その命令は、児童福祉法施行令という政令でございますが、その政令の第十条に、「都道府県は、法第三十五条第二項の規定により、教護院を設置しなければならない。」これだけが書いてございますので、三十五条第二項からは、義務的に生じますものは、教護院だけでございます。それで問題は、教護院というのは司法との関連は直接的にはございません。非常にむずかしい問題で、市町村や民間施設でやると、権限をふるい過ぎたというような問題がありますので、これは県でやりなさい。それ以外は特に義務づけてございません。したがいまして、先生おっしゃいますように、保育所であろうが託児所であろうが、県がやって悪いというものではございませんが、義務づけてはおりません。  そこで問題になりますのは、保育所はやはり地域住民に非常に密接な問題でありますだけに、県に持っていきますのは、あるいは権限行使をするような施設であるとか、あるいはモデル的なものをつくる場合とか、あるいは身体障害者の施設を県がつくるとか、技術的に非常にむずかしいというものだけに集中をいたしまして、保育所のように全国津々浦々というようなものについては、第一線の地方自治体である市町村というたてまえで考えております。
  96. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それから、住宅団地に保有所を新設する場合、住宅団地というものは最近ずいぶんあちらこちらにふえてまいりまして、これは住宅事情に対する大きな施策になっておりますが、日本住宅公団などが新設をする住宅団地の保有施設につきまして、これは新設の場合の基準人口、基準児童数というような、何か基準でもあるのですか、その点はいかがでしょう。
  97. 岩佐キクイ

    ○岩佐説明員 ただいまの、日本住宅公団が設置いたしますところの保育施設につきましては、人口あるいはその他家庭等の基準があるというふうなことは、これは私のほうでは存じておらないわけでございます。
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 御希望を申し上げますけれども、やはり住宅公団も、これは膨大な国費もしくは財投の資金がいっておる公団でございまするので、四十二年度、四十三年度の計画において、相当積極的な、これは整備五カ年計画に協力するように、今度御要請になってしかるべきだと思うのですが、これは御希望を申し上げておきます。  それからもう一点は、認可を受けない保育事業についての施設に対する措置ですね。この認可を受けないというもののうち、いわゆる個人の経営する施設は、これは結局は補助の対象にはならぬということになるわけですか。
  99. 岩佐キクイ

    ○岩佐説明員 認可を受けないで保育施設をやって、現在児童の保育を行なっておりますものが、全国に約二千二百カ所ばかりございます。その中で、仰せのように全く個人という経営主体でやっておりますものも若干あるわけでございますが、この認可を受けない保育施設の経営等の補助金につきましては、設置主体がどのようなものであろうと、これは補助金の対象にはなっておりません。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、個人の施設で認可を受けることはできないのですか、もしくは認可をすれば当然補助対象になるのですか、この二点はどうですか。
  101. 岩佐キクイ

    ○岩佐説明員 ただいまの、認可を受けないで保育施設を行なっておりますもののうち、認可を受けますためにはいろいろの基準があるわけでございます。たとえば建物の基準は、児童福祉法の最低基準で定めておりますスペースが必要でございますし、そのほか保母の有資格者を備えなければならないとか、いろいろの基準があるわけでございますが、その基準に合致する中身を持っておりまして、その上になお設置主体が、たとえば社会福祉法人であるとか、あるいは財団法人等でございますならば、これは認可をするように指導をいたしまして、認可を受けました後におきましては、措置費と申します必要な経費を支弁することができるようになっております。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 仏教その他キリスト教などの宗教法人の経営する保育所につきましては、宗教法人に対する補助憲法上の問題もございますが、これはどういう方法をするならば、たとえば宗教法人の直接の経営にあらずして、社会福祉法人にするとかあるいは個人が経常するとか、こういうふうなことで行政指導をやって、そして認可を受ける。もしくはすでに認可を受けておるものは、そういう主体に切りかえる、こういうふうにすると補助対象になるわけですか。
  103. 岩佐キクイ

    ○岩佐説明員 宗教法人等が設置経常をいたしております認可を受けない保育施設につきましては、最低基準に合致するようないろいろな諸条件を擁しております場合におきましては、都道府県におきまして、この施設が認可を受けることが適切であるというふうに考えますならば、認可をすることができるようにはなっておるわけであります。したがいまして、全然宗教法人に認可されていないというものではないわけでございますけれども、保育所と申しますものが、その事業の純粋性あるいは公共性、永続性という点から考えてみまして、やはり望ましいのは社会福祉法人なりあるいは財団法人ということでございますので、行政指導といたしましては、そのような法人化の指導をいたしまして、それでなおかつどうにもできないという条件の整わない場合におきましては、特例として認可をする場合もあり得るわけであります。これは知事の裁量にまかされております。
  104. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、保育所の具体的行政ないしは財政のことを若干伺ってみたいのでありますが、数個の保育所でいろいろと調査してみますると、公立保育所と私立保育所の保母の給与はだいぶ違うですね。これはたいへんだなというふうに感じましたのですが、たとえば私立の保育所においては、短大卒で初任給が月一万三千円ないし二万一千円です。それから公立の場合は二万二千五百円ということになっております。さらに試みに私立の場合の保母の支出の面を、私は保母に聞いてみましたのですが、この保母さんは、保険料が七百八十円、それから厚生年金が四百六十八円で所得税が百八十円、県市民税が年間に六千五百八十円くらい要っております。以上のような支出があるようでございますが、こういうことを思いますと、保母の処遇の問題につきまして、やはり公私の給与差をなくするという問題、全体として保母をもっとよりよく処遇するという問題、こういう点が相当残されておるように思うのでございます。これにつきましては、これは国庫補助関係が相当あるかと思いますが、結局これは保育される児童にかかってくる問題でございますから、この施設その他が劣悪になる危険もあるわけでございます。また経験年数の換算率なんかも若干違っておるようでございますが、こういう点から考えて、公私全体の保母の給与等の処遇を改善するという問題と、公私保育所における保母の給与差をなくするというこの二つの問題について、積極的なかまえで取り組んでいかねばなるまいと考えております。この点は、次年度予算要求——大蔵省との関係もあろうと思いますので、ひとつ次官が省にかわって御答弁をいただきたいと思います。
  105. 田川誠一

    ○田川政府委員 保母の待遇の問題でありますが、いま御指摘のように、全国的に見ますと、公立の保育所の保母と私立の保育所の保母の給与の差があるという御指摘、一面にはそういうこともございましたけれども、昨年でございましたか、私立の保育所の保母の給与の改善についても、厚生省といたしましても努力したわけでございまして、詳しくは課長から申し上げますけれども、御承知のように、保育所をもっと増設するにいたしましても、保母を充足しなければ意味がないわけでありまして、そういう意味におきまして、保母の充足対策といいますか、そういうこともはかっていかなければならぬ。それには保母の待遇をよくしていくということも大きな一つの方針でございまして、この保母の充足対策といたしましては、厚生大臣の指定する保母を養成する学校その他の施設を、今年度は現在百三十三カ所であったのを四十二年度に百五十六カ所にふやす、また都道府県知事の行なう保母の試験、こういう試験を年二回以上実施させるようにして、できるだけ受験の機会をふやし、また保母の養成施設で修学中の者に対しまして、保母修学資金の貸与制度を実施する、それを毎年ふやしていくというようなことで、保母の充足をはかっておるわけでございまして、この保母の給与差、待遇の差、公私立の待遇の差ということに対しましても、私どももっと努力をしていかなければならないと思います。この公私立の保母の格差を是正するために、今回は民間施設運営調整費ということで、この私立の保母の待遇を少しでも伸ばして、差がなくなるように努力をしておるつもりでございます。今後もその点については努力をしてまいります。
  106. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 保育所の問題、もう一点だけ聞いておきます。  用地取得の経費については、補助の対象にはなっておらないようですね。それで、新設なども相当困難だという声もあるようでありますが、この点どうです。
  107. 田川誠一

    ○田川政府委員 用地、取得のことにつきましては、地方からもよくそういう要望も聞くわけでございまして、最近、地価の値上がりによって用地取得が困難であるばかりでなくて、用地を取得する費用がばく大な額にのぼるわけであります。そういうところから、補助金が足りないという声をよく聞くわけでございます。この用地取得の問題については、できるだけ国有財産を利用して取得をするように、私ども希望しておるわけでありますが、いずれにいたしましても、用地取得の問題が大きな一つの問題となっておることは、御指摘のとおりでございます。
  108. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと血液問題もひとつやらしていただきます、簡単にやりますから。  簡単に聞きます。血液行政の問題は、これは三十九無の八月の閣議決定以来、相当重大な日程にのぼって今日まできておりますのですが、これをやはりこの際抜本的に、売血をなくしてしまうというような手はないものでございましょうか。この大体の統計ですか、推定ですか、等によって見ましても、最近の売血の年間の量、これを八万四千リットルといたしまして、一リットル五人といたしますると、四十二万人になります。四十二万人の売血者があるということになりますれば、これはたいへんでございますので、したがいまして、これは根本的に売血をなくするという施策が必要でないであろうか。先年血清肝炎なんかで、ライシャワー大使などの問題もございまして、国会でも騒ぎました次第ですが、最近どうもこの血液需要が少し減ってきたんではないであろうか。三十八年には五十八万リットルぐらいでしたが、四十年ごろには四十万台に下がっておるようでございます。これはやはり血液の純粋性を疑うというところから、なるべく避けるという傾向があるのではないであろうかとさえ、しろうと側は推定するのです。漸減傾向を防ぐということ、こういう点から見まして、抜本的にこれはやはり売血をなくする、献血一本にする、こういうような施策が必要でないかと思うのですが、その基本的な考え方はどうお考えになりましょう。
  109. 田川誠一

    ○田川政府委員 売血のことにつきましては、御指摘のように、閣議でも売血を禁止するということで、本年から売血を禁止しておるわけでございます。おっしゃるような売血の意味がどういうことをさしておられるかわかりませんけれども、売血というものは、ただいま現在では行なわれていない、実施しておらないわけでございます。将来献血一本ということ、そういうような方針でやったらどうかという御意見でございますが、すでに厚生省といたしましては、献血を最も重点的にやらなければならないということで、それぞれ関係者に指示をし、また一般の献血運動というものをもちまして啓蒙をしておるわけでございまして、幸いこれに協力をする方がたいへん多く、献血も次第に多くなっておるわけでございます。まあ、いま預血の制度がございますけれども、預血と相まって、まあ何といっても献血中心にして、保存血液の確保をはかっていくつもりでございます。このためには、職場なりあるいは地域におきまして、一般国民の皆さんに献血の思想を普及しなければなりません。そういう面につきまして鋭意努力しておりまして、まあ現在では、大体血液の需要に何とか支障を来たさないようになっておるわけでございます。先ほどおことばの中にございました、血液の需要が減っているのではないかというようなお話がございましたけれども、これはまあ売血が盛んであった当時、血液を使うほうの側で多少、何といいますか、必要のないところまで血液を使ったという血もあるのではないかと思います。売血がだんだん少なくなって、保存血液の製造量も、売血の盛んであった当時よりも多少少なくなっておりますので、そういう意味で、医療機関のほうで、血液の使用に対してやや厳格になってきた。そういう意味で血液の需要が少し落ちたのではないかと思います。いずれにいたしましても、献血に重点を置きまして、今後とも血液行政をはかっていきたいと思っております。
  110. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私もことばを簡単にいたしますから、ひとつ要点だけを簡単に御答弁いただきたいと思います。委員長たいへんせいておられますので、よろしくお願いいたします。  病院が血液を必要とするときに、やはり一々相当な金を出しております。結局、無料で病院が入手するというようなこと、それは献血と表裏するわけでありますが、外国におきましても、タイとか、インドネシアとか、オーストラリアにおきましても、病院はただで入手しているらしいのですが、こういうような点は、ひとつそこまで踏み切るというくらいなかまえで、これこそ準備できませんかな。
  111. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 現在のわが国の医療保険制度、これはもう先生御存じのとおりでございます。現在の血液の供給価格というものは、医療保険制度の中で、いろいろなかっこうで、この制度の一環として、供給なり配給が行なわれているわけでございます。したがいまして、根本的に申し上げますならば、健康保険のいわゆる点数制度から、血液の価格というものをはずしてしまうという御意見だったと思いますが、この点につきましては、確かにそういうような御意見が一部にあることも承知しております。この問題は、やはり医療保険制度の根本対策とも相当関連が出てまいりますし、また、血液というものを、現在のような仕組みで、一種の医薬品の型の中に入れている、こういうような考え方も相当検討の対象になるわけでございますので、なかなかこの問題は一挙には方向づけが困難だろうと私どもは思っておりますが、いずれにしましても、そういうような御意見が一部にありますので、今後そういう根本問題も含めまして、検討をしなければならぬ問題だ、こういうふうに思っているわけであります。
  112. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最近は、需要に対し供給量の七割は献血、預金である。けっこうです。  そこで、献血する者は善意でこれは出すのですね。善意で肉体の一部をさいて出すのです。これが結局千六百五十円も金を出して取引される。取引と言っては少し悪いですけれども、それでなければ入手できないというようなのは、どこかに欠陥があります。実際そういうような管理費等々が要りますのならば、国の財政措置で責任を負えばいいのです。国が責任を負って、財政的な措置をすれば何でもないことなんです。そこまでいく必要があると私は思う。そうすれば善意の人に報いるほんとうの道ができます。だから、これはすぐにさっとやりなさいと言いません、児童手当と同じように、厚生省として準備をしなさい。これは、法制化、財政措置は、準備をせられる段階に来ていると思う。そうしなければ献血一本化になりません。準備をしてください。要望しますが、それはどうですか。
  113. 田川誠一

    ○田川政府委員 血液制度の法制化と申しますか、制度化と申しますか、そういう問題につきましては、いま御指摘意味も十分わかります。いずれにいたしましても、これは医療保険の制度とからみ合いますので、健康保険の抜本的な改正の際に、そういうような血液の制度の問題、いま御指摘の問題についても、前向きに検討をしてまいりたいと思います。
  114. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 行政機構としまして、行政機構があまりに貧弱過ぎるという感じがどうもするのですが、たとえば細菌製剤課におきまして、血液専門にお当たりになっている方が何人あるのですか。
  115. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私のほうの局で、細菌製剤課で所管しておるわけですが、現在のところ、先年のおことばのとおり血液の専任の職員ということになりますと、係がございますが、係二名でございます。しかしそれに当然課長補佐、それから技術専門家というようなものが血液を担当いたしておりますので、専任の係は二名でございますが、課長以下課長補佐、技術官というようなものがタッチしておりますので、一応現在の体制では、少なくとも五、六名がこの血液問題で仕事をやっている、こういうことになります。
  116. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この画期的な重要問題と取り組んで、専任が二人、五、六名かかっております、そんな貧弱なことでこれはものになりません。これは、採血及び供血あっせん業取締法というこの法律は、「血液製剤の製造等に伴う採血によって生ずる保健衛生上の危害を防止し、」等々——要するにこれは献血法というような法律法律化するというようなことが一つの大きな転換の手だ、こういうふうに思いますので、これも合わせまして、法制化するというところまで合わせて血液一本化する、これは国際的ないろいろな決議等々もあるのでございますから、そういうふうに飛躍するように望みたいと思うのだが、こういうふうに進める準備——いまは準備の段階と思いますが、準備体制をひとつ用意していく、そして三十九年の閣議決定をほんとうに生かして、最終的な結論を得る、そういうところに持っていかねばならぬと思うのですが、こういうふうにひとつ来年はするようにせられてはどうかと思いますが、それはどうですか。まだありますけれども、きょうはこれで終わります。
  117. 田川誠一

    ○田川政府委員 御指摘のことにつきましては、今後十分検討してまいるつもりでございます。
  118. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わります。
  119. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 中村重光君。——時間がございませんからひとつしかるべく……。
  120. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がないようでありますから、答弁もひとつ簡潔に願います。  政務次官、この血液の問題については、たいへん関心を持って勉強しておられるように見受けます。ところが、いま吉田委員からの御指摘があったのですが、業務局の細菌製剤課ですか、ワクチンを扱う課ですね。そこで血液の問題を扱う係一名——こういう重大な問題をそうした貧弱な機構でもって、体制でもって、本気で血液問題を解決しようとお考えになっておるか。しかも厚生省設置法を見ると、献血に関する表示はないですね、政務次官。先ほどあなたは、大体血液は献血によって足りるようになった——とんでもないことです。それでは厚生省は、実際に血液がどの程度必要であるか、いまどれだけ使われておるかということを知っていますか。それから、売血もないんだということですが、預血という名における売血が現に行なわれているのですよ。血液手帳をどんどん売り込まれているという事実も御存じないでしょう。大阪方面に行ってごらんなさい、手配師がいるのですよ、いま。完全な売血がまだまかり通っている。こういうことを、厚生大臣にしても、政務次官にしても、あるいは担当の業務局長にしても、御存じになっておられるのか。問題点が非常に多いのです。血液の問題は、いま委員長とも御相談いたしましたが、非常に重要であるから、あらためてその機会をとるか、きょうはできるだけ時間を短くということでございましたから、問題が重要であるだけに、血液問題はひとつ委員長に、じっくりと時間をかけてこれを議論する機会をつくっていただきたいということを要請いたしますが、政務次官、ひとつあなたから簡単に、ほんとうに熱意を持っておられるのかどうか、私が申し上げたようなことが、事実がないとお考えになっていらっしゃるかどうか伺いたい。
  121. 田川誠一

    ○田川政府委員 血液問題については、役所の中に係の者の数が少ないという御指摘がいまございました。しかし、この血液問題につきましては、私どもも重大な関心を持っておることを申し上げます。  それから、現在どの程度保存血液が製造されておるかということも承知しておりますし、また売血、預血の関心も存じております。ただ、先ほど申し上げましたのは、売血と預血の解釈の問題がございましたので、ちょっとことばをはさんだわけでございまして、この点はちょっと説明が不足だったと思います。しかし、いずれにいたしましても、血液問題についてはわれわれも重大関心を持っておりますし、今後もこの問題に取り組んでいくつもりでございます。
  122. 中村重光

    ○中村(重)委員 政務次官から責任ある答弁ができるのかどうかわかりませんが、いまのような貧弱な機構ではどうにもならない。あなたは大臣その他関係当局と話し合いをやって、そうして、いま薬務局にあるところの一係、そういうようなことではいかぬ。少なくとも局なり、いますぐ急に局までいかなければ、専門の課をつくる、そうして強力にこの血液問題に取り組む、そういう決意をお持ちですか。
  123. 田川誠一

    ○田川政府委員 行政機構の問題については、積極的に内部で検討をして、血液の問題に支障のないように努力をしてまいります。
  124. 中村重光

    ○中村(重)委員 政務次官としては、それ以上の答弁はできないだろう。血液は先ほど献血によって間に合っているというが、最近は血液が不足だというので、子供が急に輸血が必要な病気にかかる、ところがもう血液が足りないというので、八方奔走して血液を集めているという記事が連日のように載っているのです。これから見ても、機構上の欠陥、あるいはまた献血というものによって血液が需要を満たされておらぬということの明らかな証明ですが、この点はまずおきます。  先般の委員会におきましても、厚生省関係局に御出席願っておるわけですが、きょうも時間がありませんで、たいへん残念でございますけれども、せっかく関係局がお見えでございますので、母子福祉の問題と身体障害者の問題について、一点だけお尋ねをいたしまして、あとは原爆の問題を御質問いたしたいと思います。  この母子福祉法であるとかあるいは身体障害者の福祉法によって、売店等の設置、そういう場合、公共施設に対して売店を施設をさせる、そういう規定があるわけでありますが、現在どういう扱いをしていらっしゃるのか、実績について簡単にお答えを願います。
  125. 今村譲

    今村政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のように、身体障害——母子はあとから申し上げますが、身体障害者福祉法の二十二条にありますように、公共的な施設の管理者は、身体障害者の申請があった場合には、売店を設置することを許すようにつとめなければならない、こういうことをこの規定でいっておりまして、これは昭和二十五年の立法でありますけれども、この当時も、義務制にしたらどうだというような話がありました。しなければならぬというような倫理的規定では困る、つとめなければならぬでは困るという議論がありまして、これは身体障害者を一定率雇用しなければならぬという雇用義務制とも関連した問題でございましたが、いろいろな事情があり、営業の自由というふうな問題もありということで、結局倫理的に、許すようにつとめなければならぬというようなかっこうになったわけでございますが、二十五年以来、事ごとに各都道府県なり市町村なり、行政当局のいろいろな会議なんかの場合におきましても、趣旨をよく説明しまして、相当の数字——数字といいますか、実績があるというふうに考えております。ただ問題は、身体障害者でよく聞きますのは、急にからだの調子が悪くなってだめになる、あとの身体障害者へ譲り渡す、あるいは別な一般の健康人に営業権——営業権といいますか、その店の権利みたいなものを譲り渡すというふうなことがあって、ちょくちょくトラブルが起こるというような話もよく聞いております。申しわけないのですが、具体的にこの数字、全国市町村の統計をとっておりませんので、具体的に何千カ所あるいは何百カ所というふうなことで申し上げられませんが、たとえば厚生省の中にも相当大きな売店がございまして、これは書籍販売でございます。これは身体障害者の団体に請け負わしておる——請け負わすというか、やらしておるというふうな実態がございますので、各県庁なりあるいは市役所なりというものでも相当あるかと思います。それから、たとえば公会堂なり体育館の中というようなものも相当ございますが、ちょっといま資料をここに持っておりません。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えにもありましたが、いわゆる強制規定じゃない、そういう点から、どうもこれはそういう母子福祉法には、優先的にそれを認めていかなければならない。ということがあるにもかかわらず、実際はこれは軽んじられてきているのですね。そうした公共施設に対していろいろな売店が出ているのに、身体障害者とかそれから母子の売店というものは少ないのですね。こういうことであってはならないと思うのです。ともかく、私は具体的に両者の問題についてお尋ねしたいのですけれども、きょうは残念ながら省略します。  この前も指摘したのですが、この母子家庭に対する生業資金の貸し付けの状況を見ましても、まだ不用額がある。それから特に不用額で目につきますのは、住宅資金の不用額が多いですね。どういうことであろう。住宅貸し付けは一回十五万円以内、それから、六カ年以内償還である、こういうことが現実問題として考えられるのであろうかということですね。そうした現実遊離の制度というのか、規定というものから、結局この住宅資金なんというものが消化できないで、不用額になっているのじゃないかということが考えられる。また指摘されるまでもなく、こうした問題については目をつけて改めていくという態度でなければならぬですね。私は、いかに福祉行政というものが軽視されているかということを、まざまざと見せつけられているような感じがしてなりません。まだいろいろこうした問題についてお尋ねしたいのですが、この母子福祉あるいは身体障害者の福祉対策というものについて、どういうような決意を持って取り組んでいこうとお考えになっておるか。基本的な問題でもありますから、まず政務次官からひとつお答えを願いたいと思います。
  127. 田川誠一

    ○田川政府委員 母子家庭に対する福祉対策につきましては、経済自立のための資金の貸し付けであるとか、あるいは母子相談員による生活相談あるいは母子寮への入所措置、児童扶養手当あるいは母子福祉年金の支給というような問題、こういう問題につきまして総合的に推進をして、今後こうした母子対策の充実をはかっていく決意でございます。
  128. 中村重光

    ○中村(重)委員 政務次官にも、それから局長にも注意を喚起しておきますが、身体障害者等は住民税の軽減の措置が講じられている、御存じのとおりですね。そのことが、通産省の行政の中に逆の結果が出ておるということを御存じないと思う。したがって私は注意を喚起しておきたい。いわゆる無担保無保証という制度がある。五十万円までは保証人も担保も要らぬ。ところがこれには住民税の所得割りというものを納めなければならないのですよ。ところが、いわゆる身体障害者等に対する税の軽減措置、そういうことから所得割りを納めなくたっていい人がいる。ところがこれは事業を営んでおる。営んでおって、そういう無担保無保証の制度というものをだれよりも先に優先して適用をしてもらいたいのだけれども、いま申し上げた納税要件によって、これがアウトになっておるのですよ。課税最低限というものは、所得税の場合も住民税の場合も引き上げていかなければならない、国会においてはそういう附帯決議をつけておる。ところが逆に、そういうような税の軽減措置によって、これをあえて社会政策と言うならば、そういうような税の面における税の社会政策が行なわれておるのだけれども、一方においてはそのことが逆に害になって、金融の道が閉ざされておるという事実を、私は当該委員会におきましても、その矛盾を指摘しておる。担当の大臣も、これを改めるようにしたい、今回の改正案で、先日成立したのでありますが、これに附帯決議をつけております。通産当局とひとつ積極的に話し合いをされて、そうした問題の是正をおやりにならなければならぬと思います。政務次官、ひとつお答えを願いたいと思います。
  129. 今村譲

    今村政府委員 お答え申し上げます。  この問題は、所得税につきましては、ことしから税法改正で七万円のいわゆる所得控除、いままでは六千円の税額控除でありましたが、それから地方税におきましては税額控除一千円ということでございますので、お説のように、これは身体障害者のためを思ってつくったことでありますけれども、その一千円の税額控除のために、たとえば納税をしておらないという人が、今度先生おっしゃるように資格なしということは非常に大きな矛盾でございます。その点につきましては、融資の条件ということで、おそらく立法じゃなしに、業務方法書その他の改正ということで動くのではないかと思いますけれども、これは仰せのように、至急関係各省と相談してみたいと考えます。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、被爆者の問題についてお尋ねをいたします。  実はきょうは厚生大臣が必ず出席されるであろうと思っておった。前回の委員会にも御出席がない。きょうも御出席がない。私は官房長官あるいは総理府総務長官の出席を求めた。これもいろいろな理由でもって出席をしておられない。特に私この問題を取り上げるのは、御承知のとおり、衆参両院において被爆者援護強化の決議をした。それを受けて、被爆者の実態調査をやっておる。去る二月に中間報告がなされた。ところがこの秋に最終的な集計がされる、そういうこと。いままで被爆者も、あるいは国会におきましても、中間結果の発表を見ても、いかに被爆者というものが生活困窮の状態にあるか、あるいは結婚できないで苦しんでおるかというその事実を知ることができた。私どもは、この中間結果の発表だけでも、強力に施策を講ずべしという要求をしてきたのですが、最終結果はもう間もなく出るのだから、それに基づいて、国会の決議を尊重して、抜本的な施策を講じてまいりたい、そういう答弁であった。私どもそれを期待しておった。ところが先般、佐藤総理大臣が在外財産の補償、この問題をもって、いわゆる戦後処理は終わりである、これを受けて、総理府総務長官は、援護措置は打ち切りであるというような談話を発表した。さっそく官応長管と総理府総務長官に私どもは会いまして、その不当に対して抗議をし、強力に、国会の意思を尊重して被爆者の対策を推進すべしということを要求したのですが、それに答え、できるだけ御期待に沿うような施策を講じてまいりたいということであった。きょうはそうした問題について、担当の厚生大臣にひとつ伺ってみたいと思ったのでございますけれども、おそらく政務次官では、総理のそういう言明あるいは総務長官の談話なんというようなものを否定するようなことは、答弁ができないのではないかというふうにも思いますから、具体的な問題でお尋ねいたしますが、この被爆者の実態調査の集計はどういう状態にいまあるのか、国会の決議というものを尊重する意味で、どのような取り組みをしようとお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたい。
  131. 田川誠一

    ○田川政府委員 原爆の被爆者に対する援護措置の問題は、いまここではっきり申し上げることもできませんけれども、少なくともこれだけのことは、中村委員に申し上げることができると思います。それは、坊厚生大臣は、この問題について非常に重大な関心を持っておるということだけを、私の口から申し上げておきます。この問題について、再三私も大臣と話し合いまして、単なる戦後処理の問題ではないという認識の上に立って、重大なる関心を持っておるということだけ申し上げて、お答えとしたいと思います。  なお、いずれにしましても、被爆者に対する調査あと一年かかるということではございませんし、この秋には一応調査が終わる予定になっておりますので、それを待って、私ども慎重に検討したい、こういうふうに考えておりますので、御理解のほどをお願い申し上げます。  なお、具体的な資料につきましては、担当のほうからお答えいたします。
  132. 中原龍之助

    ○中原政府委員 実態調査の集計の進行状況について、お答えを申し上げたいと思います。  基本調査につきましては、先ほど先生からお話がありましたとおり、大体概略につきまして、ことしの二月発表いたしました。あとは健康面の調査、それから生活面の調査でございます。これは、調査は終わりましたけれども、その集計でございます。集計、分析ということで、現在は広島大学でこれをやっております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは政務次官に伺いますが、いままで厚生当局からお答えになっておったのは、いまあなたがお答えになったとおりです。したがって、この実態調査の最終的な集計というものが秋に出る。それが出ました上で、いわゆる国会の援護強化に対する決議の趣旨に沿って、被爆者に対する抜本的な援助あるいは医療の措置を講ずる、そういう考え方であるというように理解をしてよろしゅうございますか。
  134. 田川誠一

    ○田川政府委員 そこまではっきり言明するわけにはまいりませんけれども、繰り返すようでございますけれども、厚生大臣といたしましては、重大な関心を持ってこれに取り組んでいくということだけで、ひとつ御理解のほどお願い申し上げます。
  135. 中村重光

    ○中村(重)委員 では、時間がございませんから、次に進みます。  先般、軍人軍族遺家族に対する扶助金支給の法律改正がございました際に、被爆者に対するところの援護強化、それから扶助金支給等の積極的な施策を講じろ、そういう附帯決議をつけた。実本援護局長はこれを受けて、長崎の医科大学の学生四百六十七名の犠牲者に対して、いわゆる見舞い金という形で、一人当たり三万円の予算要求をされた。文部省はこれに対して七万円の予算を要求をされた。最終段階において、文部省要求の七万円だけが支給されるということにきまったわけであります。ところで、この七万円の支給に対して、厚生省はどのような解釈を持っていらっしゃるのか、あるいは文部省はこれに対しての解釈はどうなのか。総動員法によるのか、あるいは防空法による支給なのか、あるいは戦時協力令によるところの支給なのか、この根拠が必ずしも明らかでない。したがってその根拠、それから、現在これを支給することについての事務手続等を進められていると思うのですが、現在の進捗状況はどういうことであるのか、それから四百六十七名、文部省が試算をいたしたところによりますと、その他含めまして五百数名かになっておったような資料を見た記憶があるのでありますが、現在調査をして吸い上げられている対象人員はどの程度になっているか、伺ってみたい。これは文部省のほうと両方からお答え願いたい。
  136. 実本博次

    ○実本政府委員 お尋ねの、長崎医大の学生さんで、原爆被爆のために倒れられた方々に対します措置といたしまして、厚生省が、お話のように三万円の見舞い金を四十二年度予算要求いたしました経緯について御説明申し上げます。  このなくなられた医大の学生さん方は、その実態が動員学徒の人たちと同じような状態において、長崎医大の附属病院に、少なくとも病院自身の患者の救護活動のために待機しておられたという状態において、原爆被爆にあわれたということが明らかであったわけでございますが、それが、形式的には、やはり動員学徒におきます例の総動員法の第五条によります協力命令が出ていない。これは長年実態調査をやった結果、出ていない。それからまた、現存援護法では処遇いたしておりませんが、防空従事者扶助令に基づきます扶助の該当者であるかどうか。すなわち防空法に基づきます防空従事者であったかどうかというふうなことも、これもなかなかそういった形式的資料が整いませんものですから、しかし、この実態からいいまして、先ほど申し上げましたような動員学徒の場合、あるいは防空従事者の場合の犠牲者と非常によく似通っているというふうなことがはっきりいたしましたので、これは援護法におきましては、動員学徒と同じように、少なくとも国として弔慰の意を表する必要があるのではないかということで、現在動員学徒の犠牲者の方々には弔慰金を三万円差し上げているわけでございますので、そういう実態に着目いたしまして、準軍属に準じまして、三万円の弔慰金を予算措置として要求したわけでございます。
  137. 天城勲

    ○天城政府委員 ただいま厚生省からの御答弁にも、こざいましたように、端的言って、長崎の被爆学生に対する援護の法律根拠が、ぴったりするものがございません。しかし実態といたしまして、当時の医学部学年としましては、医療救護に当たるという国家的要請を受けておりまして、すでに学徒報国隊を結成いたしておりました。その時点におきまして、総動員業務が発動されていたかどうか、また、そのときの実態がどうであったかということにつきましては、結果的に、資料的にどうしても的確につかむことができませんでした。ただ、当時の状況はいま申し上げましたような状況で、総動員業務に近いと申しますか、そのような状況にあったと判断したわけでございます。もう一つ、原子爆弾によって被爆したという希有のケースということも、われわれとしては、今回支給の一つの大きな根拠考えているわけでございます。それから、第三点といたしましては、当時動員学徒につきましては、動員学徒援護事業要項というものがございまして、勤労動員もしくはこれに類した業務の過程におきまして死亡あるいは傷病にかかった学生に対する援護をいたしておりました。それらの状況を考え合わせますと、法的にはどんぴしゃりこの法律でいくというものはないのでございますけれども、当時の状況をあわせて考えますと、やはり政府として見舞い金を支給するのが適当である、こう判断いたしましたのが、支給の根拠でございます。  それから、その後の仕事の進みぐあいでございますけれども、われわれとしましては、まず、対象の確認でございますけれども、現存長崎大学の医学部が中心になりまして、自分の学校の学年であったということから、できるだけ医科学生の実態について調査をしていただいておりますが、なお、それについて、文部省でも確認調査を並行いたしておるわけでございます。当初正確な数字がなかなかわかりませんでございまして、五百名ぐらいという状況でございましたけれども、いま長崎大学で一応名簿上その他から確認できているのが、五百十九名といっております、まだ最終は確認いたしませんが。これに対して、遺族の状況を把握しなければならぬものですから、遺族状況をいろいろな手で調査いたしておりますが、現在の時点で約七〇%は遺族が判明いたしております。支給につきましては、まず、遺族の申請に基づいて、文部省で直接行なうという考え方をいまいたしております。  それから、支出金の支給を受ける遺族の認定問題とその他の手続でございますが、これはおおむね現行の援護法の弔慰金の例を参考にして行なってまいりたい、こう考えておるわけでございます。その他詳細な点につきましては、すみやかにこの事務を遂行できるようにいたしたいと思って、進めてまいっておるのが現状でございます。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がありませんから、答弁をひとつ簡潔に……。  個々人についての裁定ができる段階にありますか。と申し上げるのは、実は、この遺族の人たちは、ともかく見舞い金にしろあるいは扶助料にしろ、いわゆる物質的な援護というものは当然やってもらわなければならぬ、これは権利として主張している。同時に、靖国神社に対してこれを合祀してもらわなければならぬという。ところが、裁定が行なわれなければ合祀ができないのではないかと私は思うのであります。この点は、面接的には援護局も、靖国神社に対して、これを合祀をしろとかするなと言うことは、私はできないと思うのでありますけれども、しかし少なくとも側面からこれに協力をするという態度であってしかるべしと私は思う。だから、文部省も、裁定をするところまでいっておるのかどうか。靖国神社に合祀をするということが、裁定という条件が必要であるとするならば、秋の大祭までに間に合うようなかまえでもってその裁定を急いでおるのかどうか。それから、合祀の問題について、現段階においてはどこまでいっていると思っているのか。ひとつ文部、厚生関係局長お答えを、簡単に要点だけ願います。
  139. 天城勲

    ○天城政府委員 遺族の判別した状況は、まだ先ほど申したような段階でございまして、七〇%でございますので、全体の把握ができておりません。できた上で、本人の遺族の申請をまってやりますから、その段階で確認されると思います。そういう作業が残っておりますので、私、いまの段階で——それから、支給の事務がありまして、この仕事は、本会計年度中にということで発足いたしたものですから、秋の期限までにぴっちりいくかどうかにつきましては、いま進行の状況でございまして、必ずいくというふうに申し上げかねるわけでございます。
  140. 実本博次

    ○実本政府委員 靖国神社にお祭りする問題につきましては、神社当局から現在の状況を聞いてみますと、一応そういった方々についてのお祭りは、いままでいろいろな規則がありまして、そういうケースがなかったそうでございますが、国からちゃんとした裁定が行なわれたならば、それはお祭りをするものに加えていいというふうなことを言っておりますので、裁定があり次第、お祭りされるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 実本援護局長は、いま天城局長の答弁をお聞きになっておられたわけです。裁定が合祀の条件であるとするならば、遺族は、ぜひ秋の大祭には間に合うようにということを、強く側面協力方を要請しておると思うのですが、見通しとして、どのようにお考えになりますか。
  142. 実本博次

    ○実本政府委員 これはいま文部省からもお話ございましたように、鋭意その裁定を進めていただきまして、なるべく早目にお祭りできますように、文部省とも協力いたしまして、そういうふうな方向へ持ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 政務次官もひとつお聞きになっていただきたい。二十年間ほったらかしているんですよ。いま実本局長は、総動員法にもこれはぴったりしない、法的にはその根拠がちょっとぴったりしたものがない。天城局長もそのようなお答えだった。私ども決算委員会としては、やはり法的根拠がどうかということをお尋ねしなければならぬ。また、支給をしなければならぬ。支給をすべきものをしないでおるということは、これまた指摘しなければならない。私は、総動員法からいっても当然、支給すべき義務が国にあると考えている。しかしこれは見解の違いということも出てくるであろう。いま一つはっきりしていることは、防空法であります。防空法は、昭和二十一年に一廃止法によってこれは消えた。だが、しかし、そのいわゆる補償の対象となるべきものがある場合は補償するというそのことは生きておる。ところが、今日まで、厳たるそういう法的に明文があるのにかかわらず、これを放置してきたという責任はきわめて重大であると思う。おそまきなから、いま七万円の見舞い金というのを出すようになった。防空法の問題は、いま大学の学生の問題だけではございません。防空監視員をどうするか、警防団員をどうするのか、あるいは大学等の医師であるとか、あるいは看護婦であるとか、そういういわゆる防空業務に従事した、いわゆる救護作業をやった人たちははっきりしておる。そういう人たちが焼夷弾によって、あるいは原爆によって犠牲になって、とうとい命を失ったというこの事実は否定することはできない。にもかかわらず、今日まで支給しないでおる。長崎大学の場合におきましては、その学生に対して見舞い金七万円出すようになったが、靖国神社の合祀に対して、秋の大祭までに間に合わないということが遺族に与える精神的打撃は大きいと思う。私は決して、事務的に粗漏にしろと言うのではありません。しかし、すでに予算が成立をいたしましてからもう相当長い時間がたっている。それまでにいろいろな調査もしておるのでありますから、そう裁定までに時間がかかってはならない。そうした遺族の切なる願いをかなえてやるというような努力が文部当局にもなければならないし、厚生当局でも側面協力がなされなければならぬと私は考える。その点に対してどのようにお考えになるのかということと、それから私がいま申し上げました警防団員、防空監視員、あるいはその他いわゆる防空従事者に対して、どのようにお考えになるか。これは社会労働委員会におきましての附帯決議というものも含まれておるのでありますから、そのことについての考え方を、実本局長からひとつお答えを願いたいと思います。
  144. 田川誠一

    ○田川政府委員 長崎医大の学生の靖国神社合祀の問題につきましては、もう合祀される方針ができておるのでありますから、できるだけ早く、ことしの秋の大祭に間に合わせて差し上げたいというのが、私どもの気持ちでございます。ただ文部省のほうで、裁定についていろいろ手間がかかっておるようでございますが、このことについては、私からあまりここで言明するわけにはまいりませんけれども、できるだけ文部省にもお願いをして、ことしの大祭に間に合わせるように、私も努力をしてまいることをここで申し上げておきます。
  145. 実本博次

    ○実本政府委員 旧防空法によります防空業務に従事中、死亡または負傷した防空従事者の処遇の問題につきましては、先生御指摘のように、社会労働委員会でも附帯決議をいただいておるわけでございますが、この問題につきましては、消防庁等の関係機関とも協力いたしまして、鋭意検討しておるわけでございますが、何がしかの措置を講ずるという場合には、どうしても従事者の身分とか勤務の実態というものについて、これは明らかにしておかなければなりませんので、この調査につきましては、昨年の十二月、東京都ほか数県に依頼いたしまして、消防あるいは警察等の関係機関の協力も求めまして、防空監視隊、警防団員、それから医師その他の特殊技能者について、その身分、それから死亡の状況等を調査したわけでございますが、何ぶんにも終戦時に、いろいろな従事者命令とかそういった関係書類が焼却されておることと、それから何と申しましても歳月の経過が長いものでございますので、散逸していることが多うございまして、大半はほとんど資料がなくなっておりまして、たとえば、身分の面から対象者を把握する手がかりとして最も有力な、従事令書等の交付記録あるいは該当者の名簿等は、ごく一部の県でまれな例を除きましては、ほとんど入手することができない。また死亡者の数及び業務上の死亡かいなかを調べる手がかりもございませんので、扶助金の支給記録とか、あるいは殉職者の名簿等が考えられておるわけでございますけれども、何ぶんとにかくこういったものをできる限り集めまして、まず実態をつかんで、あと残りの未調査の県もございますが、消防関係機関とも協力いたしまして、早くその基礎の固めをしてまいりたい、こういう段階でございます。
  146. 中村重光

    ○中村(重)委員 大体学生の場合と同じように、本年度からこれを実施すべきである。ところがこれは残しているんだがいま調査をしておるというので、私もあなた方が調査をしておるということは伺っておる。四十三年度からそうした旧防空法に基づいての防空従事者、あるいはその他関係法規に照らして当然援護措置を講ずべき犠牲者に対して予算措置を講ずる、そういう用意があるならば、この際はっきりしておいていただきたいと思います。
  147. 実本博次

    ○実本政府委員 その方向に向かって努力してまいりたいと考えております。
  148. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十六分散会