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1967-07-04 第55回国会 衆議院 決算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月四日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 鍛冶 良作君    理事 吉川 久衛君 理事 小峯 柳多君    理事 小山 省二君 理事 白浜 仁吉君    理事 高橋清一郎君 理事 佐藤觀次郎君    理事 華山 親義君 理事 吉田 賢一君       菅波  茂君    丹羽 久章君       村上信二郎君    中村 重光君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宜夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         会計検査院事務         総局第三局長  増山 辰夫君         医療金融公庫総         裁       安田  巌君         参  考  人         (社会福祉事業         振興会会長)  葛西 嘉資君         参  考  人         (社会福祉事業         振興会常務理         事)      甲賀 春一君         専  門  員 池田 孝道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十年度政府関係機関決算書  昭和四十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和四十年度国有財産無償貸付状況計算書  (厚生省所管医療金融公庫)  国が資本金の二分の一以上を出資している法人  の会計に関する件  (社会福祉事業振興会)      ————◇—————
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度決算ほか二件を一括して議題といたします。  厚生省所管について審査を行ないます。  まず、厚生政務次官より、概要説明を求めます。田川厚生政務次官
  3. 田川誠一

    田川政府委員 昭和四十年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算概要について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額四千八百十九億四千百余万円でありましたが、その後、国民健康保険助成費結核医療費遺族及び留守家族等援護費等不足に伴う補正予算額二百五十九億五千六百余万円、総理府所管及び大蔵省所管からの移しかえ増加額六億九千百余万円、前年度繰り越し額三十三億九千百余万円、予価費使用額七十四億九千六百余万円、計三百七十五億三千六百余万円を増加し、予算税額は五千百九十四億七千八百余万円となりました。これに対しまして、支出済み歳出額は五千百二十八億五千百余万円、翌年度繰り越し額は二十七億九千四百余万円、不用額は三十八億三千二百余万円で決算を結了いたしました。  以上が一般会計決算大要であります。  次に、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費関係に要した経費であります。  生活保護法による保護基準等につきましては、一般国民消費水準の向上に対応し、その内容改善をはかるため、生活扶助基準について一二%の引き上げを行なったほか、教育扶助につきましても基準引き上げを行なっております。  このほか、保護施設職員待遇改善を行ない、生活保護費としては、補正予算を加え、総額一千九十五億七千二百余万円を支出しております。  第二は、社会福祉費関係に要した経費であります。  まず、児童保護費でありますが、収容施設等飲食物費日常諸費等増額したほか、保育所及び収容施設職員待遇改善をはかるとともに、職員の増員を行ない、新たに、児童保健衛生費等を支給し、また、母子栄養対策強化するため、低所得層の妊産婦及び乳幼児に対しては一人一日一本当ての牛乳を無償で支給するほか、身体障害児結核児童及び重症心身障害児療育対策に必要な経費をそれぞれ増額し、特に、重症心身障害児施設を四百七十床に拡充するなど、児輩保護費として補正予算を加え、二百六十四億六千四百余万円の支出を行なっております。  このほか、児童及び重度精神薄弱児扶養手当の支給に要した経費として二十八億六百余万円の支出を行ない、母子福祉対策一環としては、母子福祉貸し付け金として七万八千余人に対し十九億二千六百余万円の貸し付けを行ないました。  次に、保護施設児童福祉施設等各種社会福祉施設整備に対して二十八億六千四百余万円の補助を行なったのであります。  また、老人福祉費については、収容施設飲食物費日常諸費増額したほか、収容施設職員処遇改善をはかり、さらに老人健康診断受診人員増加をはかる等により、補正予算を加え、総額六十六億九千九百余万円の支出を行なっております。  なお、このほか、身体障害者及び精神薄弱者保護更生につきましても、前年度に引き続き増額を行ないましたほか、低所得階層対策一環として、その自立更生をはかるため、世帯更生資金として、三万六千余人に対し、三十二億一千八百余万円の貸し付けを行ないました。  第三は、社会保険費関係に要した経費であります。  国民健康保険につきましては、昭和三十九年度以降四カ年計画をもちまして進められている、家族に対する七割給付の実施につきまして、その第二年分として、所要の国庫補助を行なったほか、医療費緊急是正に対する特別の措置を行なっております。  また、昭和三十九年度において国民健康保険財政が非常に悪化し、これを緊急に改善するため、臨時財政調整補助金として、三十九億九千九百余万円を予備費から支出いたしました。  以上、国民健康保険助成に要した経費として、補正予算を加え、一千四百四十六億一千百余万円の支出を行ないました。  第四は、保健衛生対策費関係に要した経費であります。  まず、精神衛生対策でありますが、精神衛生法に基づく命令入院措置をさらに強力に推進したほか、新たに通院医療費公費負担に要する費用に対する国庫補助制度を設け、在宅精神障害者対策強化をはかり、精神衛生費として、補正予算を加え、百六十九億一千九百余万円の支出を行なっております。  次に、原爆障害対策費でありますが、原爆被爆者に対する健康管理強化をはかるとともに、さらに被爆者の範囲を拡大するなど、原爆障害対策費として、補正予算を加え、十八億五千八百余万円の支出を行なっております。  このほか、結核医療費として、補正予算を加え、三百四十三億九千二百余万円、保健所運営費法定伝染病予防費等保健衛生諸費として六十七億五千六百余万円、らい予防対策費として一億七千二百余万円を、それぞれ支出しております。  第五は、恩給関係費のうちの遺族及び留守家族等援護費に要した経費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費のうち、障害年金遺族年金及び遺族給与金につきましては、増額改定を行ない、百十九億七千二百余万円の支出を行なったのであります。  次に、留守家族等援護費につきましては、留守家族手当葬祭料等一千八百余万円、未帰還者特別措置費として三千二百余万円、戦傷病者特別援護費として、教育費補装具給付費等七億九千三百余万円などの支出を行ない、遺族及び留守家族等援護費として総額百二十九億一千七百余万円の支出を行なっております。  第六は、公共事業費関係のうち、環境衛生対策費に要した経費であります。  明るい生活環境を実現するため、特に環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、昭和三十八年度を初年度とする緊急整備五カ年計画を樹立いたしまして、これに基づいて、下水道終末処理施設百二カ所、し尿処理施設四十四カ所、簡易水道施設五百十四カ所に対して、それぞれ補助いたしました。  これらの経費に、公害防止事業の推進をはかるための公害防止事業団運営費及び環境衛生施設災害復旧費を加え、総額九十三億一千三百余万円の支出を行なっております。  以上、厚生省所管に属する昭和四十年度一般会計決算概要を御説明申し上げましたが、次に特別会計決算大要について申し上げます。  まず、第一は、厚生保険特別会計決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計より二百四十一億三千六百余万円を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済み歳入額二千七百五億余万円、支出済み歳出額二千六百九十五億六百余万円でありまして、差し引き九億九千四百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  昭和四十一年三月末の事業所数は五十三万五千余カ所、年度平均保険者数は、一千百七十万一千余人に達しております。  次に、日雇い健康保険勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額三百二十六億四千百余万円、支出済み歳出額三百二十八億三百余万円でありまして、差し引き一億六千二百余万円の不足を生じたので、これをこの会計積み立て金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均保険者数は九十万四千余人であります。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額三千八百十五億四千七百余万円、支出済み歳出額三百九十八億二千余万円でありまして、差し引き三千四百十七億二千七百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額百十九億六千五百余万円、支出済み歳出額百十一億六千三百余万円、翌年度繰り越し額六億三千八百余万円でありまして、差し引き剰余額は一億六千四百余万円であります。  第二は、国民年金特別会計決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計より六百四億八千余万円を繰り入れました。  まず、国民年金勘定決算額について申し上げますと、収納済み歳入額四百九十七億二千二百余万円、支出済み歳出額十九億四千四百余万円、翌年度歳入繰り入れ額六億八千五百余万円でありまして、差し引き四百七十億九千二百余万円の剰余を生じ、 これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  昭和四十一年三月末被保険者数は二千一万五千余人で、そのうち、保険料免除該当者は二百四万五千余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額四百三十一億二千二百余万円、支出済み歳出額四百十五億三千七百余万円、翌年度繰り越し額十二億五千余万円でありまして、差し引き剰余金は三億三千五百余万円であります。  昭和四十年度において、延べ八百七十六万七千余人に対し、福祉年金給付費支払いを行なっております。  最後業務勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額三百二十四億一千百余万円、支出済み歳出額三百二十三億九千余万円、翌年度繰り越し額二百余万円でありまして、差し引き剰余金は一千九百余万円であります。  第三は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計より十億五千余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額二百十六億五千三百余万円、支出済み歳出額百五十二億一千八百余万円でありまして、差し引き六十四億三千四百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  本年度事業概況を申し上げますと、年度平均の被保除者数は、普通保険で二十五万一千余人保険給付につきましては、疾病保険給付費百十億百余万円、失業保険給付費九億八千六百余万円、年金保険給付費二十二億八千五百余万円の支払いを行なっております。  第四は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計より三十四億三千五百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額三百二十二億一千三百余万円、支出済み歳出額三百十四億八千百余万円、翌年度繰り越し額五億九千九百余万円でありまして、差し引き一億三千百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  本年度事業概況を申し上げますと、入院患者数は一日平均二万六千余人外来患者数は一日平均三万余人であります。  第五は、アヘン特別会計決算であります。  アヘン特別会計決算額は、収納済み歳入額七億四千五百余万円、支出済み歳出額二億八千余万円でありまして、差し引き四億六千五百余万円の剰余を生じ、剰余金は、この会計の幾年度歳入に繰り入れました。  本年度における業務実績は、アヘンの購入五十八トン、売却五十五トンであります。  以上が厚生省所管に属する昭和四十年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算概要であります。  最後に、本決算につきまして、会計検査院から指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  今回指摘を受けましたのは、一般会計におきましては、園路工事施行が設計と相違しているもの一件、補助金経理当を得ないもの八件、国民健康保険普通調整交付金交付が適正を欠いているもの一件、特別会計におきましては、健康保険厚生年金保険及び船員保険保険料徴収不足是正に関するもの、健康保険保険給付の適正を欠いたもの、並びに職員不正行為により国に損害を与えたものであります。  補助金等関係のうち、工事施行不良及び工事出来高不足につきましては、補助等目的に沿うよう必要な指貫を行ない、国庫補助金等を除外すべきものについては、すでに国庫補助金等相当額の返還を命じ、その手続中でありますが、今後は、さらに一そう指導監督徹底をはかり、経理の適正を期する所存であります。  次に、保険料徴収不足につきましては、かねてから鋭意その解消につとめてきたところでありますが、重ねて指摘を受けましたことは、まことに遺憾とするところであります。今後は、さらに適用事業主または船舶所有者に対して、報酬に関する届け出を適正に行なうよう指導、啓蒙を積極的に行なうとともに、調査徹底をはかり、保険料徴収不足解消に努力いたす所存であります。  また、保険給付の適正を欠いたものにつきましては、今後、特に請求内容事業主の証明の適否について調査確認強化するとともに、被保険者に対しては、制度の趣旨はもちろん、関係法令についても十分な説明を行ない、給付の適正を期する所存であります。  最後に、職員不正行為により国に損害を与えたものにつきましては、会計検査院指摘のとおりでございまして、まことに遺憾にたえない次第であります。不正行為防止につきましては、従来から諸般の方策を講じてきたところでありますが、今後は、特に不正防止に重点を置いた業務監察を強力に実施するほか、監督者に対し、適切な監督を行なうよう一そう厳重に指導して、この種事故防止につとめてまいる所存であります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算の御説明を終わりますが、何とぞよろしく御審議のほど、お願い申し上げます。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次に、会計検査院当局より、検査概要説明を求めます。増山会計検査院第三局長
  5. 増山辰夫

    増山会計検査院説明員 御説明に入ります前に、本席をかりて恐縮でございますが、一言ごあいさつ申し上げさしていただきます。  私、七月一日付で第三局長に任命せられました。今後ひとつよろしくお願い申し上げます。  では、厚生省所管についての、昭和四十年度決算検査概要を御説明申し上げます。  昭和四十年度決算検査報告に、不当事項として掲記いたしましたのは、大別いたしますと、第一に健康保険厚生年金保険船員保険の各保険における保険料徴収保険給付に関するもの及び国民健康保険調整交付金に関するもの、第二に、地方公共団体事業主体となって行なう簡易水道卒業等及び国立公園等施設に対する補助金経理等に関するもので、計十四件となっております。  以下、順に御説明申し上げますと、検査報告の三九ページにありますが、一二一号は、群馬県が厚生省の委任を受けて施行いたしました上信越国立公園園路新設事業において、練り積み石がきの胴込め、裏込めが設計どおり施行されていなかったものでございます。  一二二号は健康保険及び厚生年金保険、一二三号は、船員保険保険料徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる被保険者報酬の把握が的確に行なわれなかったため、保険料徴収不足していたものでございます。  一二四号は、健康保険事業における保険給付に関するもので、事業所から報酬を受けている被保険者に対しまして、傷病手当金を支給していたものでございます。  一二五号から一三二号の八件は、地方公共団体事業主体となって実施いたします補助事業にかかるもので、一二五号から一三〇号での六件は、簡易水道等事業、一三一号及び一三二号は国立公園等施設整備事業におきまして、いずれも工事施行が不良なため、補助目的を達していなかったものでございます。  一三三号は、国民健康保険におきまして、市町村の保険財政を調整するため助成費交付するにあたり、都県の調査が不十分のため、交付超過となっていたものでございます。  一三四号は、船員保険におきまして、職員不正行為により保険料を領得されたものでございます。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  6. 鍛冶良作

  7. 安田巌

    安田説明員 昭和四十年度業務概況について御説明申し上げます。  昭和四十年度貸し付け計画額は、当初貸し付け契約額を百七十五億円、貸し付け資金交付額を百七十億円(うち二十億円は前年度貸し付け契約し、交付未済となったもの)を予定し、その原資として、政府出資金五億円、資金運用部借り入れ金百四十億円、及び貸し付け回収金等二十五億円、計百七十億円を充てることといたしました。なお、貸し付け契約額百七十五億円と当該年度中に貸し付け契約をし資金交付することとして予定した額百五十億円との差額二十五億円は、貸し付け受け入れ金として受け入れるものであります。  この計画額に対する実績は、貸し付け契約額で百七十五億円、貸し付け資金交付額で百七十億円でありまして、これを前年度と比較いたしますと、貸し付け契約額で二七%、貸し付け資金交付額で二六%の増となりました。貸し付け契約額内訳は、設備資金百七十一億五千三百万円、長期運転資金三億四千七百万円であり、また貸し付け資金交付額内訳は、設備資金百六十六億五千三百万円、長期逆転資金三億四千七百万円であります。  貸し付け残高は、前年度末三百九十四億円でありましたが、四十年度中に百七十五億円の貸し付けを行ない、四十一億六千八百万円を回収いたしましたので、当期末においては、五百二十七億三千二百万円となっております。  次に決算状況について申し上げます。  昭和四十年度損益計算上の総収益は三十億五千九百十六万五千円、総損失は二十九億三千五百七十九万七千円でございまして、差し引き一億二千三百三十六万八千円の償却利益を生じましたが、大蔵大臣の定めるところにより、固定資産減価償却引き当て金へ三百三十万三千円を、滞り貸し償却引き当て金へ一億二千六万五千円を繰り入れましたので、結局国庫に納付すべき利益金は生じなかったのでございます。  以上で、昭和四十年度業務概況につきましての御説明を終わります。何とぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げす。
  8. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これにて説明聴取を終わります。      ————◇—————
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次に、国が資本金の二分の一以上を出資している法人会計に関する件について、調査を行ないます。  本日は、参考人として、社会福祉卒業振興会より、会長葛西嘉資君、常務理事甲賀春一君の御出席を願っております。  参考人からの意見聴取は、委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。これより質疑を許します。高橋清一郎君。
  10. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 まず初めに、社会福祉事業振興会のできました成立過程と申しますか、仄聞するところによりますると、いろいろ、全額国で心配する資金内容でもあるし、当初におきましては、何々公庫というような名称づけをしよう、というような企てがあったやに聞いておるのであります。それらのことにつきまして、一応御説明いただきたいと思います。
  11. 今村譲

    今村(譲)政府委員 お答え申し上げます。  これができます根本問題は、民間社会福祉事業——戦前はほとんど民間だけでありまして、最近は公立がどんどん出てまいりますが、民間社会福祉事業、たとえば養老院とか保育所というふうなものが仕事やります場合に、たとえば老人や子供を扱うお金は、国なり県なり公費で委託ということが出てまいりますが、施設をつくるというような場合には、国から二分の一、県から四分の一というふうに補助金が出まして、残り四分の一は民間自己負担というたてまえになっておりますので、民間がその自己資金をつくるのは非常にむずかしい。これはあちこちから浄財を集めて自己資金分に充てるわけでありますが、中にはそういうのがうまくいかない。銀行から借りて、相当高い金利を払うというふうな事情もございますので、何とかして民間社会福祉事業施設整備資金というふうなものに、政府低利融資というふうなものができないものだろうかということが、終戦直後からいろいろ議論が出ておりまして、これはいわゆる議員提案でありますけれども、そういうふうなものを別個につくるべきであるというふうなお話になりまして、社会福祉事業振興会法というのが、二十八年の八月に国会を通過ということで、成立したわけでございます。その当時、公庫、公団、事業団という名称はあまり——これは、三十年代に入ってから多く出てまいりまして、あまり名称には、公庫にしなければならぬというふうな議論はなかったので、振興会というふうな、何か民間法人みたいな名前でも、審議経過におきましてはそう問題にされておらなかった、そういうふうな機能さえ持てばいいんだというかっこうで、二十八年に法案が通ったというふうな事情に聞いております。
  12. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 とにかく、公庫というふうな名称づけをしようという企てがあったことはあったのですね。
  13. 今村譲

    今村(譲)政府委員 その当時いろいろ議論はいたしましたが、審議経過におきまして、公庫という名称の問題はなかったと理解しております。
  14. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 あなたのお立場から、あなたの言を信用するのがたてまえでございましょうけれども、私は私なりにいろいろ調査いたしまして、そういうような過程は確かにあった。その当時、あなたはどういうお立場でポストを占めておられたかわかりませんが、私の記憶では、そう信じております。それはあとに関連することでございますから、冒頭にお尋ねしたわけでございます。  次に、いわゆる貸し付け原資の問題でございますが、問題にならぬとは言いませんけれども、この振興会は、原資不足のためにいろいろなやりくり勘定をしていると申しますか、あるいは対象者に対し非常なめんどうを与えておるというようなことを聞いておるのであります。したがって、私の調査でありますけれども、最近の四年間にわたります申し込みと原資関係でありますが、三十九年度が十億三千二百万でありますか、これについて、原資は六億二千二百万、四十年度については十七億三千七百万に対し八億三千八百万——間違っておりましたら指摘してくださいよ。四十一年度につきましては、二十八億に対し十三億余りというようなことと聞いておるわけであります。したがって、資金不足であるがために、せっかく年金福祉事業団資金から貸し出しが行なわれておる、そういうふうな改造分及び四十二年度改正の新築資金の見込み額であるところの約十億円が含まれておる。したがいまして、実質的に見ますると、いま申しました数字は、年ごとに非常に増加しているというような印象を与えますけれども、実際そうでないというふうなことを聞いておるのであります。どうですか。
  15. 今村譲

    今村(譲)政府委員 お答え申し上げます。  計数は過去四カ年大体おっしゃるとおり——四十一年だけ手元に持っておりますが、申し込み二十八億、貸し付けが十二億七千七百万ということで、申し込みの半分を切れるというふうな状況で、民間からは非常に不満が多いというふうな状況であることは事実でございます。そのために、そもそも出発は二十九年からでありますが、政府出資金だけ一億円とか、あるいは三千万とか、いろいろありましたが、それだけではどうにもならぬというので、財政投融資を——三十九年から、三億円から出発したわけでありますが、入れまして、できるだけ財投の面で貸し付け資金をふやすというふうにして、民間の不満を消していこう、こういうふうに努力中でございます。  それから、年金福祉事業団の問題につきましては、いまお話がありましたように、いわゆる明治以来の古い建物でどうにもならぬというのを五万八千坪、全国を調査いたしまして、一万点満点といたしまして四千点以下、非常にあぶないというふうなものを、三十八年から四十二年まで五カ年間で緊急にこれを整備したいというふうな方針で、大蔵と話がまとまりました。ただそれの資金は、振興会には非常に少なくて、ありませんので、年金福祉事業団に特にお願いして、そこのワクの中からやってもらう。年間で約四億ないし五億の融資でございます。  それから、振興会法では資金不足でありますために、新設には貸さない。現にやっておられる社会事業施設の改築とか増築とか修理とかいうふうなものに貸す、新設には貸しがたいという状況でありまして、法律もそういうふうになっておりますので、やむを得ず年金福祉事業団から、老朽施設整備とあわせまして、そちらのほうから貸してもらっておるわけでございます。これは六分五厘でございます。こういうふうな制度をやっておりましたのを、四十二年度から振興会のほうに一本にまとめたいということで、法案をいま国会にお願い申し上げておるというふうな状況でございます。
  16. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 いずれにいたしましても、昭和四十一年九月、社会福祉事業の運営に関する行政監察結果に基づく勧告というものが行管から出ているわけでありますが、その3に「社会福祉施設への融資及び助成について」という項目がございまして、あなたもごらんになったと思いますけれども、「民間の社会福祉施設整備運営に要する資金を低利で融資する目的で、昭和二十九年に社会福祉事業振興会が設立されている。同振興会施設整備資金の貸付状況をみると、資金の借受申込を行なっている施設は、建物、設備が不備で緊急に整備を要すると認められるものが多いにかかわらず、貸付原資が少ないため、次のとおり、申請年度に借受けできないものが例年相当数みられる。」具体的に申し上げますと、「昭和四十年度においては、借受申込額が十七億円に達し、そのうち十三億円については、貸付条件に適合しており、早急に融資を必要とすると認められたが、同振興会は、貸付金の回収率が極めて良好であるにかかわらず、政府の出資が少なく、原資不足しているため、とりあえず八億円について貸付を行なった。しかしながら、残余の五億円についても、とくに緊急に整備を要すると認められるので、翌年度に融資を行なうことを内定することにより、施設が他の融資機関から短期貸付をうけるための便宜をはかっている実状である。」もっと具体的なものとして、「四十年度に四十一年度貸付の内定をうけたもののうち、十三施設は、整備に急を要するため振興会から貸付予定証明書の交付をうけ、これを保証にして市中銀行等から高い利子を払って資金の借入れを行ない、利子負担の増加をきたしている。」という勧告が出ている始末であります。そういうことでごさいまするが——大蔵省の辻さんおりますか。これらの実情については、私がここで申し上げますよりも、もう会長はじめ甲賀さんですか、あなたもおられますし、それについては、監督官庁のお立場でございます社会局長もよく認識していられると思うのであります。厚生省一般の場になりました場合、社会福祉事業のいかに大事であるかということについても一言述べたいと思いますけれども、とりあえず、こういうような状況では、関係の皆さんに御満足をお与えするどころか、できて迷惑だとは言いませんけれども、効率的でないとういことだけは厳たる事実であります。したがいまして、これに関し、大蔵省の辻さんですか、あなたの御感懐をお述べ願いたいと思います。
  17. 辻敬一

    ○辻説明員 資金運用部の問題につきましては、私直接の担当ではございませんけれども、承知している限りにおきまして、お答え申し上げます。  資金運用部の原資につきましては、御承知のように一定の制限がございます。そして、この一定の原資のワク内におきまして、いろいろな資金需要のバランスを考えつつ資金の配分を行なっているわけでございます。したがいまして、今後におきましても、全体の原資あるいは他の資金需要のバランス等を考慮しながら、先ほどの御趣旨もございますので、さらに検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  18. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 会長の立場で、この問題に相当頭を今日まで痛めておられると思うのですが、御感懐を……。
  19. 葛西嘉資

    葛西参考人 いま高橋先生からお話がありましたように、非常に私ども申しわけないことと思います。資金が少ないために、いまお述べになったような貸付証明書というようなことをやって急場をしのいでおるというようなことは、お述べのとおりでございます。かつ、先刻来非常にひよわい福祉事業に対する御同情あるお話を伺いまして、私どもまことに感謝感激をしておるわけでございますが、先刻この問題について局長からお話がございましたように、出初二十八年八月にきまって、二十九年からできましたときは、全額政府出資で八千万円ということ、それから一年ずつ一億円、一億円、一億円というようなのを数年間続けておったのでございますが、三十八年度でございますか、ようやく出資を大蔵省にお願いをして、国会にお願いをして、一億円だったやつを一億五千万というような五割増しにふやしていただいても、これもやはりいま先生お述べになりましたように、焼け石に水であったわけでございます。そこでもうこれはしかたがないというようなことで、三十八年一億五千万だったのでありますが、昭和三十九年からは財投のほうにそれを切りかえまして、そうして先ほど来先生のお述べになったように、三億、六億、十億、二十二億というようなふうに、貸し得る金をふやしました。ところが、こっちのほうは利子が非常に安いのでございます。日歩一銭四厘ということ。そうすると、六分五厘で借りてまいりましたものを、そんな五分一厘ばかりで貸すものですから、どうしても逆ざやになります。これは大蔵省のほうから補給をしていただきまして、そして今日のところでは二十二億円というふうなものを貸しておる。四十二年度、本年度でございますが、そういうことになっておりますが、これもまたやはりただいまの見込みとしては、先生お述べになりましたように、年度末まできれいさっぱりやれるかどうか、まだ自信のないことでございますので、いまの大蔵省の辻主計官がお述べになりましたように、政府御当局、国会等にもお願いをして、さらにこれをふやして、需要に沿うていかなければならぬとかたく信じておるわけでございます。
  20. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 振興会法三十条に書いてあるわけでございますが、長期短期の借り入れ金、それから思い切った——社会福祉事業振興債券と申しますか、その債券が発行できることになっているそうでありますが、ところが今日までその債券の発行がなされておらないという事実。この条文がある限りは、どういうようなふうに——なぜそれならこれを適用しなかったかというようなことについてお尋ねするわけでありますが、共同募金であるとか寄付金ですね、こういうものについて、社会福祉事業に対する民間の善意というものが、今日まで各方面から、多額のものが年ごとになされてきているということは御存じのとおりであります。しかしこういうものがあります限りにおいては、債券の消化ということも、これは将来性として全然見込めないわけでもなしというように考えます場合に、これらのことも、場合によっては、いまのような説明をなされるのでありますから、よし思い切って手を打とうじゃないかということも、一つの題材としては研究すべき時期に来たのじゃなかろうかというような気もいたします。いずれにいたしましても、資金量の増大を確保するということが非常に大事である。それから財政援助等の財務状況の是正をはかりながら、いまのような、本来でございますところの債券の発行をやるという考えはないかどうか、考慮すべき段階ではなかろうか、どうです。
  21. 今村譲

    今村(譲)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの、いたずらに民間資金にばかりぶら下がるというかっこうではいかぬので、いわゆる財投であれ債券であれ、思い切って振興会のほうに原資をふやすのに知恵を働かせろという御指摘でございまして、私どもも、ただぶうぶう、足らぬ足らぬという泣きごとばかりでは先生方にも申しわけありませんので、いろいろ研究しております。この三十条のいわゆる債券発行の規定でございますが、これにつきましては、先ほど葛西会長から御答弁申し上げましたように、三十八年までは政府出資一本やり、ところが年々一億あるいは一億五千万ということで、とても民間の要望に間に合わない。したがって、財政投融資をまず導入したいというのがその当時の念願でございました。ところが、資金運用部資金法によりますと、財政投融資を受け入れることのできる法人というのは、債券発行を法律で認められておるほどの法人でなければならないということでございまして、したがって第一段階としては、債券の発行権をまずこの法人に与え、そうしておいて資金運用部資金を導入するということがまず先決問題であるということで、二十九年に法改正をお願いしたわけでございます。したがいまして、それに基づいて、初めて資金運用部資金が導入できたという状況でございます。本来の債券を発行するかどうかというふうな問題につきましては、これは債券発行となりますと、公営企業金融公庫とかいろいろやっておりますが、そこまでの態勢に一挙に踏み切れるものであるかどうかということで、内部でいろいろ検討はしておりますが、非常に大きな問題でありますので、ちょっとここで申し上げる段階にはまだ至っておりません。
  22. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 いまは三十条についてお尋ねしたのでありますが、今度は二十三条であります。業務の範囲であります。従事者の研修、福利厚生などへの融資ないし助成事業についてでございますが、これが資金関係でなされておらぬということを聞いております。しかしながら、御存じのように、社会福祉施設の中におきましては、こういう性格、職掌柄と申しますか、非常に従事者が集まらない。あるいはまた施設がありましても収容ができない。かてて加えて、従事者は過重労働となっておるというところもずいぶんあるらしく聞いておるのであります。これがすなわち従事者に手不足を生ずる反作用となってあらわれておるということは、これは厳たる事実であります。したがいまして、この二十三条を生かす、すなわち従事者の福利厚生の施設を活用するためにおきましても、これは必要であると思うのでありますが、この規定を実施する御意向がないかどうか。
  23. 今村譲

    今村(譲)政府委員 二十三条の問題は、いま御指摘のように、第二号で、ただ老人ホームあるいは保育所というようなものの施設整備するのに融資するだけではなくて、職員の福利厚生のために、たとえば構内に職員住宅をつくったり、あるいは職員の休養あるいは教育研修の施設をつくったりというようなものにも金を貸す、というふうに規定されておるので、これはもぬけのからではないか、こういうお話でございますが、実は第二号のほうの、資金貸し付けあるいは職員住宅というような問題は、昔は大体住み込みで、社会事業精神というようなことでやっておったのでございますが、人を集めますためには、世帯持ちには家が要るというようなことで、資金のぐあいを見まして、四十年、四十一年というふうに若干ながらワクをふやしながら貸してはおります。しかしまだまだ根っこの、社会事業のほうの資金需要が強いために、どうしても優先的にそっちのほうになってしまう、これも泣きごとのごとくでありますが、資金ワクの問題が一つはございますので、十分に御趣旨のような線に行っておりませんけれども、これは資金状況とにらみ合わせて拡充していかなければ、社会事業施設には人が来ないというような状況になってしまうおそれもございますので、十分今後努力いたしたいというふうに考えます。
  24. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 次には、貸し付けの決定についてのことでございますが、現在、振興会には役員——会長、常務理事、そして非常勤ですが、何名かの方がいらっしゃると思うのでありますが、業務方法書十一条によりますと、貸し付けの決定は会長が理事と合議の上に行なうことになっておるはずであります。ところが機構を見ますと、理事は五名になっておるのでありますが、そのうち常勤は一名、甲賀さん、あなたですね。事務局長を兼務しておられるのですね。常勤は一名である。したがって他の四名の理事は、理事会に出席するだけのことである。したがいまして、結局日常の業務というのはあなたたちお二人、会長と常務ですか、あまりたいした資金でもないのだから、お二人で、自分たちでやればそれきりでございましょうけれども、とにかく態様として世間ていから見て、貸し付けの決定というものは、まず内容を吟味し、相当の年月をかけてしさいに検討するという御努力は払われると思うのでありますけれども、もっと外部から見て、なるほどそれだけの熱意を持って貸し付けの決定が行なわれておるのであるかというようなことを、誤解ではございませんけれども、あまり不審に思われるようなことのないように持っていっていただきたい、私どもの願望であります。したがいまして、この非常勤の理事というのは、貸し付けの決定の場合におきまして、どの程度に関与しているのかということについてお尋ねするわけでありますけれども、四十年度におきましては、貸し付けの審査会は三回開かれておるそうであります。そうしますと年に三回でありますから、早く申し込みいたしましても、まず四カ月、ぎりぎり一ぱい、一カ月後の審査会にかかるというならいざしらず、まじめにやってみた、審査会を終わったとたんにやってみたということで、四カ月待たなければならぬということになりますと、なかなか容易ではないと思うのです。したがいまして、一年間に三回開かれる、これは不文律できまっているのかどうかわかりませんけれども、そういうような決定をもっと早める方法はなかろうか。そして先ほど申しましたような、何とか何とはなしに考えさせる面もはらむというような意味からいたしましても、この貸し付け決定ということについて、もっと前向きの姿で考慮すべき段階に来たのじゃなかろうかという気もします。それについてお答えいただきたい。
  25. 葛西嘉資

    葛西参考人 いま高橋先生お述べになりましたように、私どものところは、会長以下理事五名、それに監事二名でございます。そのほかに十名ないし二十名の評議員というのがおりまして、これがちょっと他のこういう団体と違う点でございます。しかもいま常勤の理事はここにおる甲賀君だけだというお話でございますが、そのほかに、実は社会福祉事業にずいぶん長い専門の方が三人加わっております。それからさらに、不動産銀行の頭取をこの間までしておられました方もこれに入っております。それから監事のほうも、社会事業の専門家と、それから財務のほうの関係の方がおいでになる。そしていまお述べになりましたように、法規には会長並びに理事五名の相談で合議できめると書いてございますが、実際は、監事もこれに加わってやるのでございます。やります前には、書類が出てまいりますのはいつというあれはちっともございませんでどんどん計画があれば送ってまいるのでございます。しかしながら、自然に時期がきまってまいるのでございます。と申しますのは、何と申しましても、民間独自ではできぬのでございまして、国並びに都道府県の補助金がきまる時期がございます。それからもう一つは、自転車振興会、競輪のあれがきまる時期、お年玉年賀はがきのきまる時期、共同募金のきまる時期、こういうものが施設のほうに幾らくらい行く、あるいは市町村独自でやります場合には、市町村議会の議決がきまった時期というものから準備を始めてまいりますと、いままでの経験ですと、大体一年に三、四回くらいのつもりでまとまってくるような感じでございます。別に不文律があるわけではございませんので、そういうものが出てまいりましたつど、なるべく御迷惑をかけないように開くつもりでございます。  もう一つは、先刻高橋先生御指摘になりました貸し付け予定証明書というものを、実は開きましてもお金がないものでございますから、ただまあしかし始めるのには、若干でも来年度、次期か何かに適当な手当を講ずることができれば施設のほうとしても助かりますから、というような場合には、予定証明書というようなものを出して、しばらく間をつないでもらうということはやっております。いまのように一人と五人、それから監事が陪席をいたしております。正式の監事でないと思いますが、陪席いたしてやっておりますので、私どもとしては、公正にやっておるつもりでございます。そして書類は、大体できましたときにずっといろいろな——担保はどうなっておる、保証人はどうなっておる、資産はどうなっておるというふうなこまかい調査をいたしまして、それを理事会に提出いたします。理事会はそれを一々見ながら、どういう人である、この人は信用がある、償還はどうで、緊急度はどうであるということをやりまして、相当時間をかけまして審議をいたしておる事情でございます。御注意等によりまして、なお一そう慎重にやってまいりたいと思っております。
  26. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 二十八年に発足を見ましてから、いろいろな過程を経、いずれにいたしましても、年ごとに、原資増加ということにつきましても、ある程度の予算が見られているということだけは、皆さま方の御努力のたまものだと思って感謝しはしますが、これからちょっと、非常にきわどいことでありますが、そしてまたきわめて私的なことでございますけれども、会長に対し、こうした席上申し上げるのはどうかと思いますが、一言申し上げたいことがございます。というのは、あなたは新潟県出身であり、佐渡郡出身であります。私どもは、郷党の先輩として、能吏であり、非常な人格者でも通って、いわゆる名声さくさくたる大人物だと考えてまいりましたところでありますが、たった一つ、いろいろな御事情がございましょうけれども、選挙にあたりまして、特殊の候補のために動きをとるというような風聞が伝えられておるのであります。私は先ほど冒頭、この社会福祉事業振興会というものは公庫という名前が出たことはございませんか、成立の過程において、と私がお尋ね申し上げましたことも、実はこれから申しますことに関連するのであります。すなわち公職選挙法の第百三十六条の二、「次の各号の一に該当する者は、その地位を利用して選挙運動をすることができない。一 国又は地方公共団体の公務員 二 日本国有鉄道、日本専売公社、原子燃料公社、日本道路公団、愛知用水公団、」ずっとまいりまして「水資源開発公団、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫若しくは医療金融公庫の役員若しくは職員」等々であります。そして私のお尋ね申し上げたいことは、別にこの条文の中に、社会福祉事業振興会の役員は書いてございませんけれども、しかし冒頭申し上げましたように、公庫に類する業務の内容があるという限りにおきましては、会長はもっと日常そうした面も慎重に行動をとるべきものではなかろうかと思う。これは私が間違っておれば指摘してください。あなたにじかにお会いしたこともある。私は正直なところ同志と思っている。この場でこうした御質問を申し上げるのはたいへんではございますけれども、私は私なりに考えるところがございまして、今後あなたを大成させ、そしてもっぱらこういう社会福祉事業振興会の仕事に、いままで厚生次官という前歴もあり、役職全部が、いわゆる厚生官僚とはよく縦の連絡を密にとられている実力者であります。こうした大人物を、変なところで疑いを持たれるようなことをさせてはならぬという気持ちもございますまま、あえて今後のことについて御警告申し上げ、今後の御精進を賜わりたいという意味で申し上げたのであります。所感の一端を……。
  27. 葛西嘉資

    葛西参考人 高橋先生から御注意をいただきまして、申しわけありません。規則にあるとかないとかいうことじゃなしに、私ども、いやしくも公人たる者が疑いを受けるというようなことをやるべきでないということは、私もそのように思っております。ただ、先年お述べになりました、名前はちょっと出ませんが、私どもの後輩であり、私も実は友人でもある関係で、差しつかえない程度で、というようなつもりでやっておるつもりでございますが、もちろん、これは地位利用とかなんとかいうことをやる意思は毛頭ございません。ただ、個人的にと申しますか、何と申しますか、そういう点はいまのような事情もあります範囲で、しかもはでにならぬように十分注意をして、高橋先生から賜りました御注意は腹の底にしっかりと固めまして、今後注意をしてまいりたい、かように考えております。
  28. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 はでにならないようにということばがありますが、はでにならない程度に今後もやるのでございますか。私はそうでないと思うのです。いままではでだった。私どものいわゆる近隣郷党の連中まで、葛西さん動いているぞ、おうおう——なかなか選挙というのは微妙なものでございまして、ある程度の動きは、びんびんと他候補にも影響するのであります。あれほどの大人物が、しかもこうした貸し付け業務に携わっている会長的な方が、ということになりますと、あなたの御人格に影響すると思う。したがいまして、過去のことは申しません、今後のことについて、あなたの大成をはかる意味におきましても、慎重にひとつこの面については身を持していただきたいということの願望であります。あなたを大成させたいからであります。そのことだけは申し上げておきたい。ようございますね。  じゃ、皆さんお帰りください、けっこうです。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 参考人には、お忙しいところ、調査に御協力をいただき、ありがとうございました。      ————◇—————
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次に、昭和四十年度決算外二件中、厚生省所管について審査を行ないます。  高橋清一郎君。
  31. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 これは、やはり引き続き社会局長でございますが、お尋ねしたい。  児童福祉施設整備計面についてでございます。私もいろいろな資料を持っているのでございますが、新聞報道等によりますと、いわゆる重症心身障害と申しますか、こういう人たちを先達にいたしまして、肢体不自由児施設、精神薄弱児施設、情緒障害児施設、盲ろうあ児施設保育所、こういうような収容を要します員数に比較いたしまして、収容定員というものはきわめて少ない。先ほども述べましたが、従業員にいたしましても、非常な重労働が課せられるということで、従業員の応募すらなかなか容易でないというようなことも聞いておるのでございますが、この施設整備計画並びにその資金関係を含めまして、御説明いただきたいと思うのでございます。と申しますのは、私も新聞の材料を持っているわけでございますけれども、冒頭申し上げました障害児の施設を一、二取り上げてありますが、重症心身障害の場合におきましてもそうです。忘れられた一万七千人の児童、何とか施設をふやし、わが子をこのりっぱな施設にという親御の願望というものが、これはきわめて激しいものとなって今日まできておるということは、あなた一番よく知っていると思うのであります。しかしながら、日本は貧しい国である、したがって、貧しい国の施策というのはこの程度だ、九七%が野放し状況であるということも、二、三の新聞に大きく見出しとして伝えられておる。予算にいたしましても、年ごとスズメの涙程度でございますよという状況であります。したがいまして、これらのことにつきましても、ひとつもっと大蔵省の主計官も、先ほどお答えをいただいたのですが、厚生省担当の主計官というのは辻さんだと聞いております。あなたでないですか。さようですね。あなたも、この場でさようなことをひとつようくお聞きいただいて、ことしはしようがございませんから、来年度につきまして、うんと親心を示していただきたいと私は思う。私も、こうした重症心身障害児の家庭も知っているのです。これは親御はノイローゼになっております。親御がノイローゼになると、この重症心身障害児にますます悪い影響を与えて、お互いが神経がいら立ってしまう。何とか落ちついた環境をもたらしたい、これはもう親御としてあたりまえのことであります。国に、何とかいい環境をもたらしてもらうことはできぬだろうかということは、長年にわたるこの問題の焦点であります。したがいまして、いま申しましたように、人手不足で、施設はつくったけれども、さっぱりその機能を発揮しないというようなことももちろんあるということを聞きますと、なおさらのことで、たいへんな問題だと私は思うのであります。社会局長さんですか、その責任において御答弁いただきたい。
  32. 田川誠一

    田川政府委員 高橋委員から、精薄、肢体不自由あるいは重症心身障害児収容施設が非常に足りないということで、たいへん厚生省を激励するおことばをいただきまして、恐縮に存じております。  御指摘のように、精薄、肢体不自由、重症心身障害児施設は、確かに入所希望をしている人たちに比べまして非常に少のうございまして、数字は後ほど局長から説明をさせますけれども、精薄児に例をとりましても、精薄児の施設が定員一万六千六百六人、二百四十一カ所というようなことで、まだまだこれを伸ばしていかなければならないと思っております。本年度は、精薄児の施設に例をとりますと、それでも五九%ふやしまして、定員も二万六千四百人、まだまだこれを満たすには——これは四十六年度までに五九%ふやそうという計画を持っております。これを完全にしていくには、まだまだ相当かかるのではないかと思いますし、私どもさらに努力をしていかなければならないと思っております。  重症心身障害児につきましては、特に最近非常に施設の設置の要望が強うございまして、厚生省といたしましても、国立療養所に収容施設を設置いたしまして、鋭意努力をしております。今年度も国立六百床、公法人立五百床というように増床をいたしております。しかしまだまだ、全国各地からもっとほしいというような要望が強く出ております。高橋委員指摘のように、私どもといたしましては、さらに収容施設の拡充をはかっていきたいと思っております。ただ、御承知のように、こうした特殊な児童を扱う職員の養成というもの、職員を確保することがなかなか容易なことではございませんで、単に施設だけ一ぺんつくりましても、その介護をする人たち、こうした人たちを養成したりあるいは集めたりすることはなかなか困難でございますが、いずれにいたしましても、いま御指摘のありましたことを体して、できる限りひとつ努力をしていくつもりでございます。  細部は、児童局長から御説明申し上げます。
  33. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 児童福祉施設のうち、特に緊急に整備をする必要のありまする各施設につきまして御指摘をいただいたわけでございます。たとえば精神博弱児施設、肢体不自由児施設重症心身障害児施設、まあこういうふうな問題でございます。なお盲ろうあ児施設等もございます。こういった各施設に収容されることを対象としている子供たちにはいろいろの問題がございますが、私ども仕事を進めてまいります上につきましては、こういった子供たちが特に施設に収用保護されることが最も適切であるというふうに考えられる実態調査を進めまして、その実態調査において示されました数字になるべく早く到達する、こういうふうな方針で、各施設整備を進めておるわけでございます。したがいまして、先ほど御指摘いただきましたように、重症心身障害児の問題につきましては、一昨年の調査におきまして、子供、おとな合計いたしまして約一万七千三百名程度の人たちを、一刻も早く収容させるべきであるという結論が出ておりまして、私ども四十五年を目標にいたしまして、この半数近くを施設に収容したい、かように考えて整備計画を立てているわけでございます。なお精神薄弱児施設あるいは精神薄弱者の援護施設整備計画につきましても、一応のデータをもとにいたしまして、なるべく短期間のうちに計画を立てまして、設備費の補助等を実施するという考え方で進んでおるわけでございます。しかしながら、いま政務次官からお答え申し上げましたように、こういった特殊な仕事でありますために、その経営に当たる方々の確保という問題もさることながら、そこに働きまする職員の確保という問題もございます。そういった点を十分検討いたしながら、もちろんこれは、それによって施設整備計画が鈍化するというわけにはいきませんが、ともかくそういった人的、物的、両方の要素をかみ合わせまして、計画的に進めておるわけでございます。こういった方針でまいりますると、重症心身障害児施設整備計画につきましては、先ほど御説明いたしましたとおりでございますが、精神薄弱児施設につきましては、現在一万六千六百六人が収容されておりますが、これを四十六年度までには二万六千名程度の収容をはかりたい、かように考えておりますし、また精神薄弱児のうちで通園施設という種類がございますが、この分につきましては、現在二千六百二十五名が通園しておりますが、これも四十六年までには約四千名程度までに伸ばしてみたい、かように考えております。また精神薄弱者の援護施設につきましては、現在これは昭和三十五年から制度が発足いたしましたために、比較的収容施設も少ないし、そこに入っておりまするおとなの方も六千五十二名程度でございますけれども、こういった方々につきましては極力がんばってみたいと思っておりまして、昭和四十六年度には約二万七、八千人まで収容能力を伸ばしたい、かように考えているわけでございます。また、肢体不自由児施設に関するものでございますけれども、現在は約七千九百名程度収容しておりますけれども、これらも実態調査の結果に従いまして、昭和四十六年度までにできるだけたくさんの子供を収容したい、かように考えているわけでございます。  なお先生先ほど盲ろうあ児の施設等についてもお触れいただいたわけでありますが、盲ろうあ児施設の収容計画整備計画等につきましては、現状におきまして、大体こういった方々の収容はある程度充足を見たような感じもいたします。しかしながら今後の問題といたしましては、盲ろうあ児の幼児、幼児期にある盲ろうあ児の方々の収容訓練の問題でございますとか、あるいはまた精神薄弱を兼ねました盲ろうあ児の対策、こういうふうな別の新しい面におきまして、適切な処遇を行なうという方向で進んでまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  34. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 時間もありませんので、最後に  一つだけ、児童遊園のことについてでございます。児童遊園は、児童福祉法に定められた児童厚生施設で、児童に健全な遊びを与え、その健康、体力を増進し、社会性を培養するとともに、交通事故等による傷害の防止に資することを目的としたものであるということであります。ところが、昭和三十九年度までは補助金交付されてまいりましたけれども、四十年度から、どうしたことが削減の原因であるとあなたのほうでわきまえられたのか知りませんけれども、急に減ってしもうた。零細補助の打ち切りだという理由でもって、国民年金特別融資の貸し付け対象に切りかわってしもうたということであります。したがいまして、激減いたしました原因はどこにあるか、その原因を除去して、もとのような、われわれの地区にもという施設願望が、少なくとももとへ返るだけの態様を整えていただくためにはどうしたらいいかということについてお尋ねし、お答えをいただいて、私の質問を終わります。
  35. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御指摘のように、児童遊園に対しまする国庫補助金は、昭和三十三年から三十九年までの間、三分の一の補助率をもちまして、市町村に交付をしておったのでございます。この理由といたしましては、やはりこの児童遊園の設置が急速に市町村に行なわれるように、刺激的な意味をもちまして、奨励的にも助成をし、こういった地域の仕事に関するものでございますから、市町村におきまして、できるだけ独力であるいは還元融資等の資源を使っていただいて、設置するようにという意味で発足したわけでございます。まあ昭和三十三年から三十九年まで七年間ばかりこれを実施したので、大体地域に密着した仕事になるであろうというふうな予想のもとに、先ほど先生御指摘のように、まあ少額補助というような性格もありましたので、昭和四十年から、国民年金等の還元融資に切りかえてみたのでございますけれども、その結果やはり多少問題が出てまいりまして、個所数が、補助金の時代におきましては、毎年百五、六十カ所くらいの設置が見られたのでございますが、融資になりましてから、その数が相当減ってまいっております。そういった点から、私どもにおきましては、最近の事故対策、交通事故のあおりを食いまして、子供たちが非常に災害を受けるというふうな事情もございまするので、こういった点につきましては、厚生省におきまして問題の重要性にかんがみまして、もう一回ひとつこの、こういった融資によった成績を見まして、考え直してみたい、もう一回検討してみたい、かような感じも持っておるわけでございますが、これらにつきましては、また来年度の予算編成等もございますので、さらに検討を続けていきたい、かように考えております。
  36. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 ありがとうございました。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 小山省二君。
  38. 小山省二

    ○小山(省)委員 私はガン対策につきまして御質問を申し上げたいと思うのでございます。近年、医学、医術の進歩は、各種の疾病に対して予防、治療の面から大きな成果をあげておることは事実でございます。私は関係者の方々の労を深く多とするものでございます。しかるに、ガン対策につきましては、今日なお年々死亡者の数もふえております。また実質的にこのガン対策の面からは何ら前進が見られておらない、こういうのが現状でございまして、たいへん私残念に実は考えておるのでございます。私は医学的な問題については専門的な知識を持っておりませんから、あるいは今後これから行ないます質問が問題の核心に触れるかどうか存じませんが、とにかく国がガン対策にどのような考え方において今日まで施策を進めておるか、その基本的な考え方を、この際承っておきたいと思います。
  39. 田川誠一

    田川政府委員 最近ガンで死亡する方々が非常に多くなってきているということや、著名人がガンでおなくなりになるというようなことで、ガンの対策がここ数年いろいろ叫ばれておるわけでありますが、政府といたしましても、ちょうど昨年でありますか、ガン対策に積極的に取り組んでいかなければならぬということで、関係各省が集まりまして、国をしてガンの対策を重点的に取り上げていこうということになったわけであります。ガンの対策をどういうふうにしてやるかということは、医学的にいろいろございますけれども、とりあえずやらなければならないことは、ガンの専門施設整備をはかる、ガンの研究の助成をはかる、それから、ガンの診療に関する専門職員の技術の向上をはかるというようなことを充実していかなければならない、こういうことで取り組んでまいったわけであります。それから、ガンを早期に発見することも大事なことじゃないかということで、集団検診をもっと一般的にやらなければならぬ、そのためには、集団検診に対する助成も国でやらなければならぬというような考え方から、昨年、予算的にも相当措置をいたした次第でございまして、ガンの診療施設に対する予算につきましても、昨年度は十五億九千八百万円、今年度は二十億八千七百万円、こういうふうに思い切って予算をつけ得られるようになったわけであります。しかし、もちろんこれで十分というわけではございません。もっともっとやらなければならないことがたくさんございます。厚生省といたしましても、ガンの診療施設整備する、あるいは研究の助成をはかる、技術者の研修も充実させる、それから予防対策、いま申しました集団検診をやるために、集団検診車の整備をはかっていくというようなことを実施しておるわけでございまして、とにかく、この問題については、重点的に国の施策としてやっていくというような心がまえで取り組んでおるわけであります。
  40. 小山省二

    ○小山(省)委員 いま次官から御答弁がございまして、昨年来からだいぶガン対策に役所が力を入れておるということは、予算の規模から見て、一応私も了承できるわけであります。ただ、私全体的に今日までの厚生省の考え方を見まして、はたしてガン対策として万全が期せられておるかどうかということを考えると、何か一本大きなものが欠けておるような感じを実は持つのであります。私は、この問題を解決するために、もっと一般開業医を含めて、民間の協力を得るということが一つの大きな要素ではなかろうかというふうに思っております。言うならば予算の規模がふくらんだ、それだけではなかなか問題の解決にはならぬと思う。むしろすぐれた医学者、熱心な研究者をどうして求め、どうしてこういう人たちの協力を得ることをはかるかという点に対して、厚生客の専門家は、一体どういう方法でそういう人たちと協力する体制をとっておるのか、具体的な考え方をひとつ聞かしてもらいたい。
  41. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいまガンの対策について、国がやっている施策の中で一つ大きく抜けておるのは、一般開業医も含めて多数の医師の協力体制を固めることが必要ではないかという御趣旨であろうかと思います。ガンの対策の中に、医療機関の整備ということを特に強く打ち出しております。何ぶんにもガンの診断、治療というものは、現在の医学の段階ではかなりむずかしい高度な技術に属するものでございますので、この高度な技術あるいは高度な設備——高度な設備といいますと、相当金のかかる設備でございます。そのようなものをきわめて普遍的に整備していくということはなかなか困難でございます。そういう意味で、段階的な整備をしていく、かつ医療機関の体系化をはかるという趣旨から、ガンの医療機関を、まず中央には国立がんセンターを中核といたしまして、地方には、少なくともブロックの中心的なところに、地方がんセンターという、俗称でございますが、かなり高度な設備並びに人的な能力を備えたものをつくりたい。現在のところ、地方がんセンターといたしましては、北海道では国立札幌病院、東北地方では仙台におきます宮城県立病院、北陸では新潟県立病院、関東地方では神奈川、中部地方では名古屋、近畿では大阪、中国地方では国立呉病院、四国では国立松山病院というようなところを中心に、高度の設備と能力をまず備え、そこで十分な医療を行なえるようにし、そこをまた研究と研修の機関に充てるということで、そういう中心的な病院を整備いたしまして、さらにそれ以下と言っては失礼ですが、その下に、若干程度は低くても、ガンのかなり専門的な医療機関をたくさん整備していこう、そういう場合の研修、研究の場として、そういうようなブロックのセンターを充てようということで、ブロックのセンターの整備をはかっているわけでございます。そういうところで、地方のその他のさらに小さい病院の職員等の教育、訓練、研修を行ない、また一般の開業医の先生方でも、御勉強になりたい方の御便宜をはかっていただくということで、教育、研修並びに技術の総体的な向上をはかりたいという趣旨でございます。なお、そういうブロック中心の施設のほかに、厚生省と都道府県の衛生当局と協議をいたしまして、さらにそういうガン専門の治療施設整備していこうということで、現在全国に百六十施設を、四カ年の年次計画で設備、能力の整備をはかり、またそれに従事する職員の研修を計画的に実施しているわけでございます。
  42. 小山省二

    ○小山(省)委員 年次計画を立てて、そうした医療施設整備しておるという努力に対しては、私も一応よく理解できるわけであります。しかし、私しろうとでわかりませんが、研究所の内部というものはなかなか複雑だと聞いておるのです。ことに、われわれ政党に派閥があるように、学閥というか、そういう関係は、一朝一夕に、そういうガン研究という大目的のために一致協力するという体制が、現実の姿においてはとりにくい。要するにそれらの閥というものは一つのかたまりをなして、いわゆる秘密主義といいますか、派閥割拠の姿において検討が進められておるというような実情を見ました場合に、国が考えているようなすなおな姿において、成果をあげることができるかどうかということは、実情から考えて、今日の段階では、なお相当困難な面があるというふうにわれわれ聞いておるわけです。したがって、私それだけの国費をつぎ込んでおるにかかわらず、実際の成果として表にあらわれた研究の姿、つまり研究の成果というものは、そう国民の期待しておるような形ではないと思うのです。今日、ガンというものを依然として国民は不治の病と考えております。また現実にガン患者が現代医学の恩恵によって回復したという例は、まあおそらくきわめてまれであろうと思う。それは、われわれの前の総裁であった池田さん自身が、万全の手当を施したろうと思うのですが、今日の医学ではなお未解決な問題があったでしょう、全快するに至らなかった。その他癌研あるいはがんセンターの、田宮博士にしても、田崎先生にしても、いずれもそうした斯界の権威者がみなガンで倒れておるという。私自身、なかなかガンというものに対する対策というものを事前に講ぜられなかったということを一つ見ましても、ガン研究の分野というものは、まだまだ相当未解決の面が多いのではないかというふうに考えております。  そこで、いまのがんセンターは、東京都と話し合って、築地の病院を国で使っておるわけでありますが、このときに東京都とどういう約束をして、あの病院を借用することになったか。つまり借用の条件ですね。それから、当時大塚に癌研があったわけですね。その癌研の機能というものを使わないで、新しく国立がんセンターをつくったという、その理由ですね。従来、既存の経験とか人間とか施設とか、いろいろな面で一応ガンに対しては日本の最高の研究機関——われわれは専門家でないからわかりませんが、そう一般に、定説ですか、言われておった。そういった既存の機能というものを拡大研究するとか改善するとかいう方法をとらないで、新しく築地のがんセンターをつくった理由ですね。国立がんセンターとして、これをつくった理由。  それから、現在全国の国立病院の中にありますがんセンター、これを私見まして、中央の築地にある国立のがんセンターの予算規模と比べてあまりにもお粗末だ。幾ら地方といえども、一方が十五億、十六億であるのに、一方は一億にも満たない、何千万円というような、これで中央と地方の均衡という——私は、予算がないから一カ所に主力を注ぐのだといえば、それはまたそういう理由も成り立つと思う。しかし地方にいる人は、必ずしも中央にばかり治療を求めることができない人が多いのですね。いま地方のセンターでどうしても治療を受けなければならない人がある。そういう人たちの立場から見れば、きわめてお粗末です。何年先に施設が完成するかわからぬというような状態にあるということは、たいへん不安だと思うのです。だから、必ずしも均等にという考えはありませんが、少なくとも、中央に十五億がんセンターの費用を投ずるとすれば、地方のがんセンターに二億とか三億程度の費用がなければ、それは同じような部門を研究をしようとすると、私は、おそらく事実上においては、地方のがんセンターというものは単に名目程度の研究に終わって、実質上の効果というものはあげにくいのではないかというような不安を持っておるのです。そういう不安は全然ないものかどうか。  それから、現在ガンに対する研究されておる成果というものはどの程度まで進んでおるか。これはひとり日本だけではなく、世界的にまだ解決できない面ですから、必ずしも日本が見通しがついたということはあり得ないことですが、とにかく相当の国費をかけておる研究の成果というものが、明るい見通しなのか、まだ全然そういうことに対しては触れることのできない程度の状態であるのか。単に研究しているという範囲より一歩も前進していないという姿であるのか。その辺の研究の実態を、わかっている範囲で、ひとつお示しをいただきたい。
  43. 若松栄一

    ○若松政府委員 いろいろ多方面の問題が提起されましたが、最初に築地のがんセンターができる場合に、すでに昔から存在し相当の権威を持っていた癌研究所の施設を利用しないで、なぜ国立のものをわざわざつくったかという御趣旨の御質問でございましたが、御承知のように、癌研究所といわれておりますのは、財団法人癌研究会の付属病院並びに研究施設でございまして、それは、この民間法人がすでに長い歴史を持ってやっておりまして、きわめてりっぱな診療能力を持ち、研究能力を持った、日本でも屈指のすぐれた団体でございます。したがって、そういうような団体を育成していくということは当然なことでございまして、戦後におきましても、癌研究会は、民間施設としてかなり苦しい時代もございましたが、それを国の財政的援助並びに民間のいろいろな資本融資、あるいはさらに民間の寄付金等のあっせん等も行ないまして、この助成をはかってまいったわけでございます。がんセンターを国が設置する場合に、癌研究所をさらに育成するという方法もございますが、なお国自体としても、専門の施設をより多くつくる必要もございまして、多々ますます弁ずという状態でもございますし、また国が直接投資をいたしまして、国の意思で、国の政策に完全にマッチできるような研究医療機関をつくりたいという趣旨で、あえて癌研究会と並列的な立場で、がんセンターを設置したわけでございまして、決して既存の研究施設を無視したということではなしに、両々相まって、さらにこれを進展させていくという趣旨でございます。したがって、これを設置いたしましたときの施設を、東京都の一部を使いましたが、これをどういうふうに契約しているかということでございます。これはこまかな内容については、実は私現在ここで承知しておりません。ただ、現在の国立がんセンターの敷地は国有地でございます。そうして病棟に使っております部分は、昔の東京市立病院のあとでございまして、したがって、これは東京都の所有でございます。これについては正確に資料がございませんが、これは無償で貸与をしてもらって、これをそのまま使っているという状況でございますが、その後、がんセンター設置と同時に、相当部分を新たに国自体の経費で設置をいたしておりますので、現在は病棟の一部、研究所の一部が東京都の建物になっておるかと思います。その他新しい部分は、ほとんど全部国自体がつくった施設でございます。  次に、ガン研究の問題で、民間あるいは大学その他にいろいろ閥があって、研究の円滑な実施が行なわれないのではないかというお話がございました。ガンの問題といいましても、やはりそれぞれ研究室あるいは大学の教室等に、それぞれの伝統がございまして、それぞれ長い間、研究者が多年の経験を積んで初めていろいろな研究ができるわけでございますので、それらの伝統によって、それぞれの研究施設がいろいろ特徴を持ち、したがって研究施設の間でそういうような意見の違いもあり、実施の方法等についても相当の差があるということもやむを得ないことではなかろうかと思います。しかしできるだけそのような食い違いを少なくして、共同の研究によって研究を推進していこう、というのが最近の研究推進の方針でございまして、施設あるいは個人が単独で研究するというようなことは、現在の研究段階ではもう非能率的であり、またなかなか研究成果もあがりにくいということから、私ども厚生省における研究費も、二億四千万今年度はございますが、それらがほとんど全部、学者が大なり小なりの一つのチームをつくって、そこで一定の方針で一定の約束に従って研究をやっていって、そして共同で大きな成果をあげるというような方向に進んでおります。そういう意味で、いわゆる派閥的なものというようなものが、昔とは違って逐次解消し、すべてが共同研究的な方向に進んでいることは間違いない事実だろうと思います。  なお、研究の成果がどこまで進んでいるかという点につきまして、私も専門の研究者でございませんので、詳細については申し上げることはできませんが、きわめて大づかみな私どもの感覚で申し上げますと、ガンの研究は、現在いわゆる基礎的な研究と臨床的な研究に大ざっぱに分けて実施しております。基礎的な研究と申しますのは、ガンの本体はどういうものか、ガンはどういうふうにして発生してくるか、したがって、そういうものを予防なり治療なりをするためにはどういう考え方でやるべきかという、一番基本的な問題を研究いたします。これは主として文部省の研究費をもって実施されておりまして、ほとんどが大学その他の特殊な研究所で行なわれております。なお厚生省が分担しております部分は、治療研究と称する分野でございまして、研究成果を実際の診断治療に応用していく、また診断治療面を技術的に改革進歩させていく、という方面を厚生省は担当いたしております。したがって、主として病院、大学その他を含めます医療従事者をもって、この研究にあたっております。診療面における研究というものは、御承知のように、ガンの治療というものは、現在、患部の切除あるいは放射線治療という二つの方法しかございません、それと、最近は新しい化学療法が、飲み薬によってある程度ガンの進行を押えよう、あるいは転移したある程度小さな芽を押えてしまおうというような方法が最も大きな部面でございまして、また将来期待できる新しい分野でございます。そういう意味で、化学療法という分野が最近きわめて急速に発達しつつあります。したがって、学者の個人的な見解にもよりますが、相当近い将来に、ガンの化学療法というものが相当の成果を得るのではないかという期待をいたしております。そういう化学療法の発展をなしますものは、どうしてもきわめて基礎的な学問でございまして、この分野は、御承知のように、いわゆる分子科学あるいは分子生物学というような、きわめて微細な生物科学的な分野が開拓されまして、そういう化学療法の基礎をなしているわけでございます。この方面の成果もきわめて顕著なものがあり、ガンの研究については、この一世紀の中できわめて活発な進展をいたしている時代であると言って過言でないと存じます。
  44. 小山省二

    ○小山(省)委員 基礎医学については、文部省のほうでそれぞれ大学あるいは特殊な研究機関に補助をして、研究を進めておる。そういう研究の成果が、直ちにそうした国立なりあるいは地方におけるがんセンターの研究に役立つような有機的な結びつきというのは、どういう方法において行なわれておるのか。治療面を担当するがんセンターが、そういう成果を最大限に活用する必要が私はあると思う。たとえば、私どもの知っておる常識の箱囲内では、どこどこの大きな病院は院長が東大だ、そうするともうそのあれは、外科であろうが耳鼻科であろうが、眼科であろうが、そこに来る担当の専門医というものは東大の系統でなければ用をなさないのです。民間の病院でも、ある病院へ行くと、千葉医大の系統だというようなことで、もうそこに来るお医者さんというものは全部千葉医大の系統でなければ、実際に結びつきというか、運営上何かうまくいかない面があるのだと思うのです。そういうふうな人事でなければ、実際には経営が成り立たないと言われる。われわれはそういう内部的なあれはわかりませんが、そういうふうに非常に学閥的な系統というものがはっきりしている。そういう中で、それぞれ特殊な研究が開発されたとしても、それが違ったがんセンターならかんセンターの——それが千葉医大の先生だとすれば、一部で開発研究したものが直ちにそこにもたらされて、応用されてガン治療上に大きく役立つかどうかということを私は心配したのですが、あなたのお説によると、そういうことはない。総合研究をしているので、そういう事実はない、こういうお話ですから、一応あなたの御答弁どおりわれわれは受け取ることとし、将来いろいろな面で、事実をもう少し確かめて、適当な機会にまた御質問を申し上げたいと思うのですが、本年度は特に研究助成費として五億ほど、いままでは、昨年は二億、その前は一億幾ら、決算に出ているところでは一億八千万ですかの、きわめて——この研究費というものは、こういう形で分配されているのですか。国立のがんセンターにだけ行くのか、あるいは地方のがんセンターにも行くのか、あるいは一般の民間のそういう特殊な研究者、そういうものにも行くのか、あるいはいま言った新しい製薬部門のほうにも、ガン研究費としてそれが流されているのか。その辺をひとつお聞かせ願いたい。
  45. 若松栄一

    ○若松政府委員 ガンの研究費の配分の方法につきましては、先ほど申し上げましたように、基礎的研究は文部省、臨床的研究は厚生省というように、大ざっぱに二つに分けます。そして厚生省の例をとりますと、厚生省として、臨床的研究は、現在の段階でどういう方面の研究をすべきであるかということが、おおよそ大ざっぱな分類ができますので、それによりまして、幾つかの研究項目を立てまして、それによって研究者に応募をしてもらうというたてまえをとっております。そのために、厚生省の研究費の研究配分計画をする委員会を持ちまして、その委員会で、大まかな研究項目の大筋のワクをつくりまして、そのワクの中で、どういうような研究をしたいという方の公募をしまして、応募していただきまして、それに適当と思われる研究費を配分する。その場合にも、同じ系統の研究であると、それを一つのチームに編成して効果的にやる都合上、先ほども申しましたように、個人的な研究というものをむしろ排しまして、個人も一つのチームに参加してもらうというたてまえで、班研究に全部統合いたしまして、現在、本年度の研究費では二十数個班の班に分けまして、研究を実施しております。  なお、研究の成果につきましては、これがいわゆる学閥に支配されて、東大系のものは東大系で独占し、秘密主義にする、あるいは千葉大は千葉大系で秘密を温存するというようなことを避けますために、各大学いろいろな研究者を含めましたチームをつくり、そのチームの総括者が全体をまとめるという形をとっており、それらの研究成果はすべて、年に二回かの研究会を持ちまして、その研究成果を一堂に集まって発表するという方法をとっております。また文部省は文部省で、同じような機構をとっておりまして、その間、文部省と厚生省の問の研究課題の調整、あるいは研究費の配分あるいは研究者の重複というようなものを避けるために、文部省の研究委員会と厚生省の研究委員会が共同委員会を開きまして、その間の調整をはかるというような方法を講じております。また、最も原理的には、ガン学会というような易でそれらの研究発表を行ない、あらゆる全国の学者が集まって討議をし、お互いに利用するという方法で研究を進めております。  なお、国立がんセンターにつきましては、先ほど来の学閥云々、東大系の先生のところは東大の先生だけというようなことを排除し、全国的な視野で、全国的な協力を得、またその研究成果を全国的に分散するという立場から、国立がんセンターの職員は全国から求めるという立場をとりまして、決して一、二の大学に片寄らないという方針をとって、現在でも、非常に多くの学校あるいは大学から職員を求めて、実施するようにいたしております。
  46. 小山省二

    ○小山(省)委員 私資料としてちょうだいした中で調べてみますと、ガンによる死亡者は、昨年十万九千七百八人と記されておるわけです。私どもよく聞く話ですと、ガンによって三分間に一人は死亡しておる、こういうことを言われております。ガン患者は国民五人に一人である、こういう定説からいきますと、死亡名は十七万五千という数が出るわけですが、厚生省の統計が正しいと見まして、とにかく十万以上の、十一万に近いガンによる死亡者があるわけです。死亡率としては非常に高いわけであります。私はこの厚生省のガン対策に要する予算、それは昨年度から年次計画をつくって、とにかく四十年から見ると飛躍的に予算の規模がふえております。たとえばいま言った研究費なども、昨年は二億であったものがことしは五億になったというような面から見ましても、その意味では、飛躍的な予算規模になりつつあるわけでありますが、問題はそうした予算規模が拡大するにふさわしい成果をどうしてあげるか、あげてもらうか、という一点にかかってくると思うのであります。しかし先ほど申し上げましたとおり、依然としてガンに対する研究の分野というものは、遅々としてはかどっておらないというのが実情であります。ただ、ガンの治療の大きな一つの方向というような意味で、関係者が口を開いてよく言うことは、早期発見、早期治療、そしてそのために検診車、集団検診の道を開く、そういう面に予算をつけるとかして、国民のガンに対する関心を深めるようないろいろなPRが行なわれておるようであります。しかし、実際にガンに対する治療の道がない。現在においては、要するに現象としてガンと思われるような部分を切り取る程度である。そういうものが、実際にこういうふうにすればなおるという治療方面の道が開かれておって、早期に集団検診でどんどん発見していくということならばいいのですが、そうでないと、いたずらに国民に多くの不安を与える懸念がないのか。いままで何でもないと思ったのが、あなたはガンの徴候がある——しかし、その人は言われただけで治療の道は閉ざされているのです。今日ガンにかかったと言うことは、もう死の宣告と同じなんです。ですから、医者も、ガンにかかったということを本人に知らせない。私も母をガンでなくしたのですが、一年間くらい一生懸命で隠した。医者のほうから、精神的に参ってしまうから、おっしゃらないでくださいと言われた。ところが、治療に集まる人がみんなガンの患者だから、いつしか本人は自覚して、死を覚悟するようになり、私どももやむを得ないというので、当時から遺言をしたり何かした。それから、私のところの職員が、二、三日前にガンにかかってなくなった。私は見舞いに行って、ほんとうにかわいそうな本人の心境を聞いたんです。家族の者は一生懸命で伏せていたのですが、子供がふとその病人に話した。それでもう本人は、自分はガンだというそれだけでがっくり精神的に参ってしまった。私は、早期発見、早期治療ということは、治療の道があって早期発見、早期検診を大いにやるならけっこうなことだけれども、治療の道が全然まだ未開発で、そしてなおる見込みはない、そういう人を集団検診でどんどん、ガンに近いものであっても、早期に発見する場合には、あるいはガンに将来なるおそれがあるということで治療させるわけですから、かなり不安と動揺を与える懸念があるのではないかというふうに考えますが、その早期発見、早期治療を大々的に奨励するあなた方のお考えの基礎というものは、確実にガンというものはなおるといった確信の上に立って早期発見、早期治療ということを大きく取り上げておるのかどうか、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  47. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、ガンという病気は、ある意味では不治の病である。したがって、これをいたずらに、本人が知らないのに、ガンだというようなことを言う場合には、まさに死の宣告をするのにひとしいという意味で、ガンという疾患に対する診断は非常に慎重にやらなければならないものである。そういう意味で、ガンは現在でも、お話のように、なかなか医師も本人にはその診断を告げないという病気であります。しかしガンの中にもいろいろのガンがございます。たとえば脳であるとか食道であるとかあるいは肺であるとか肝臓であるとかいうようなガンでございますと、お話のように、一部切り取ってみてもなかなか根治しがたいという例が大部分でございます。ただガンの中で、比較的早期発見、早期治療ということが希望が持てるものがございます。それが現在のところ胃ガンと子宮ガンであるということができるわけであります。と言いますのは、胃ガンというものは、早期に発見いたしまして、いわゆる初期ガンといわれる場合、たとえばこれは胃の粘膜にガンが発生した程度であって、まだ深い層には入っていないというガンでございますが、初期ガンでございますと、これは手術によって一〇〇%助けることができる。また初期ガンを多少進んでも、相当高い率で命を救うことができるということがあるわけであります。きわめて単純な例で申しますと、数年前まで、病院に入院して、これはこういう手術ができるのではないかというふうに診断して、胃を全部取ってしまうという場合にも、病院において、いわゆる治癒率といいますか、胃ガンの場合は治癒率というものは、五年後になお生存していたものを一応治癒といっておりますが、五年後の治癒率は二〇%である。ところが、集団検診という形で、比較的自覚症状のないようなものを対象に手術いたしました場合には、五年間の生存率は五〇%になるというようなぐあいで、相当治療効果が向上するわけでございます。そういう意味で、胃ガンに関しましては、早期発見ということが相当有効である。したがって、早期発見といいましても、すでに何らか症状を持っていてようやく発見されたということでは、なかなかそういう早期発見ができないので、現在自覚症状もないというような方々を検診いたしまして、何かおかしなきっかけを見つけ、さらに精密検査をして、比較的新しいガンを、本人が自覚症状のないうちに発見するというような場合は非常に効果があげられる。そういう意味で、胃ガンに関しては、検診車等を用いて、現にあまり自覚症状のないような人を年に一回定期的に検査することによって、早期にガンを発見できる。そういう意味で、胃ガンの集団検診ということが事実上成立するわけで、同じように、子宮ガンにおきましても、日本の場合の子宮ガンというのはいわゆる頸部ガン、子宮の入口に近いところにできるガンが大部分でございまして、諸外国等ではもっと深いところにできる体ガンというものが多うございますが、幸い日本の場合には頸部ガンがほとんど全部である。したがって頸部ガンの場合には、検診によって比較的早期に発見できる。そういう意味で、現在胃ガンと子宮ガンは、相当早期に、しかも効果的に治療できる時代に発見できるという意味で、集団検診の方法が可能なわけでございます。そういう意味で、この二つの病気につきましては、現在都道府県等も、一般的にガン対策の一部としてこれを実施し始めたわけでございます。しかし、これを全国民におしなべて年に一回、二回検診するということは現在の日本の医師の能力、医療機関の能力からいって不可能でございます。したがって、ある意味で部分的ではございますが、啓蒙的な意味も含めまして、部分的に検診を実施しておるというのが実情でございます。
  48. 小山省二

    ○小山(省)委員 そのことは、ほかの問題と関連して、後ほどもう一度御質問いたします。  先日、この委員会で、肺ガンの問題で、専売公社に、それらの研究をどう進めておるかという質問があったわけです。これは、私は、ひとり専売公社だけの責任として放置できない問題であると思う。ガンに関連があるとすれば、やはりその方面を担当する役所も無関心ではあり得ない。現にアメリカあたりでこの面の研究が非常に進んで、現実にそういう可能性もあるということをはっきり表示して、販売店で——日本の場合においては、まだそこまで研究が進んでおりませんから、たばこの売り上げが上がれば国に納まる税金が多いというので、一部の関係者は非常に喜んでおる程度であります。しかしガン問題を検討する場合に、このような大きな問題を放置するということはあり得ない。したがって、がんセンターで、そういう問題を一つの研究課題として、研究項目として、取り上げて検討しておるかどうか、あなたのほうで、そういうことに対する指示をしておるかどうか、そういう点どうでございますか。
  49. 若松栄一

    ○若松政府委員 たばこと肺ガンの問題は、かなりもう古くからいわれていることでございますが、特にアメリカで非常に組織的な調査研究をやりまして、その結果を、たばこと健康という大きな研究論文にまとめられまして、公表されて、これが世界的に大きなセンセーションを起こしたのは三年前でございます。このアメリカの調査研究によりますと、たばこはいろいろな意味で健康上害がある。特に肺ガンにおきましては——大ざっぱに言うと、いろいろ結論がございますが、相当多量に持続的にたばこを吸う人と、たばこを全く吸わない人との間に、肺ガンの発生率で約十倍くらいの差がある。たばこはそのほかに、肝臓ガンあるいは膵臓ガンその他のガンの発生を促進するようでありますし、また同時に、ガンだけでなしに、心臓血管にも非常に害があるということから、健康によくないという表示をたばこにつけさせるというようなことが、アメリカで行なわれておるのでありますが、日本におきましても、その当時以来、たばこと肺ガンの問題を検討いたしまして、日本人にも同じようなデータをそのまま適用されるであろうか、あるいは日本人は日本人としての特殊性なり何なりがあるであろうかというような点も検討いたしまして、病理学者、臨床の学名その他いろいろな御意見を出しまして、原則的には、やはり肺ガンとたばこというものは、民族によって相当の差がございますが、たばこによって肺ガンの発生が多くなることは、まぎれない事実であろうということはわかったわけであります。ところが、日本人の肺ガンとアメリカで報告されました肺ガンを、病理学的な点から見ましても、かなり差があるというようなことから、日本人の場合には、そのままアメリカのデータを適用して考えるということには多少無理があろうというような御意見も聞いております。そういうことで、専売公社等におきましても、研究費を支出いたしまして、たばこの発ガン性というものを検討したり、その研究も発表されているわけでございますが、私どもといたしましても、アメリカの調査ほどの規模ではございませんが、それをある程度追試確認するというような関係で、私どもの研究費の中で肺ガンの問題を取り上げまして、肺ガンとたばこの関係を相当長期間にわたって追求して結論を得たいという計画で、研究の一課題に加えたわけであります。
  50. 小山省二

    ○小山(省)委員 幸いにあなたのほうでお取り上げになって研究を進めておるとすれば、専売公社のほうは、最近売り上げもふえて、そして相当の利益もあるというのですから、その方面から相当研究費をあなたのほうでもらって、委託を受けて研究をするということは私は当然だろうと思うのです。今日愛煙家の層というものは、戦前と違って非常に広いのです。婦人ものめば相当若い層もたばこを愛好しておるのですから、影響するところ大きいことを考えると、そういう研究をさらに拡大強化していくためには、私はやはり、利害関係のある専売公社から研究費を取るということは当然のことだと思う。財源として十分ひとつ考えてもらいたいと思う。  それから先ほどあなたからもちょっとお話が出ましたが、基礎医学については大学でやっておる。臨床についてはセンターでやっておるということですが、一部の人の説によると、ガンの発生の要因というものは血液の中にある。だからあらわれた現象だけを取り除いても、また再びそういう現象は出てくるのだ、こういうことであります。したがって、もっと従来のガンに対する既成概念というものを切りかえなければだめなんだという——これは一部の学者でありますが、私どもガンでいろいろ専門家の話を聞きましても、そういうことを言う学者もおるわけです。そういう人から見ると、そういう基礎医学であるとか臨床面における研究だけでは、決してガンの解決にはならないのだ。そこで、私が先ほど言ったように、広くガンを研究されておる一般の民間の開業医なりあるいは製薬会社のような、そういう面の協力を得る協力体制、そういう方法でなければ、ガンの研究というものは大きな成果をあげられないのじゃないかと思うのです。その場合、新薬が何か大きな成果をあげつつあるというような話をさっき聞いたのですが、私は、そういう意味でも、何か製薬会社など、専門家の協力を得るということを、厚生省はもっと考えてみたらどうか。そういう面に委託研究費を出して、新薬の発見をはかっていくという分野にも、もっと手を広げる必要があるのじゃないか。現在そういう民間の製薬会社などに、委託的な研究費を出しておる事実があるかどうか、またそういう面の協力を得るための努力をした実績があるのかどうか、その辺の考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  51. 若松栄一

    ○若松政府委員 ガンの化学療法のための薬剤の開発のために、国がどのようなことをしているかというお話でございますが、薬の開発をするために、国が、製薬会社あるいは製薬の研究機関に助成しているということは、これまでほとんどございません。ただ、国立の研究機関で、種々の抗生物質等の研究をいたしておりまして、その中でガンに有効な抗生物質が幾つか発見されておる事実はございます。したがって、国立の研究機関等で相当ガンの薬の開発も進んでおりますが、民間の製薬会社等に対する助成はいたしておりません。これは実はなかなかむずかしいことでございまして、薬の開発というものは、ある意味では手探り的にいろいろなものをやっていって、実験をしながら、探り当てるというようなことでございまして、探り当てれば、またそれをさらにたぐっていって、いろいろなものを開発していく。それが製薬会社となりますと、やはりどうしても秘密裏に開発を進めていくというようなことが普通でございます。したがって非常にすばらしいものができれば、当然特許ということになります。そういう意味では、国の助成等を行ないますと、研究が公開になり、また特許権等の問題が出てまいりますので、新薬の開発について、民間の企業である製薬会社に助成することは、事実上なかなかむずかしいのが現状であると思います。
  52. 小山省二

    ○小山(省)委員 もう時間がないというお話ですから、あと一つで切り上げることにいたします。  私さっきお話し申し上げましたとおり、ガンに対しては、現在これという治療の方法がないという実情からいって、一たびガンという病名を宣告されると、本人はほとんど死を覚悟したような考え方になることは当然だろうと思うのです。医学の道で解決できない、医学から見放されたときに、その人たちの気持ちに起こることはどういうことかというと、宗教の道を求めるというように、何か別の面で救いを求めるという気持ちになってくる。最近におきます新興宗教の入信者の大部分というのは、そういう医学的な面から見放された人が、何らか奇跡的な事実をつかもうということで入信しておる場合が多いとわれわれ聞いておる。ところが、先日私の友人で、医学とは全く逆で、ガンというものは切る必要がないのだ、これはもう現代医学のあれではなおらぬということをはっきりと宣言して、東京都内にも六千万枚、そういうことを一般の都民に周知させるために宣伝をしている。あるいは、九段であった世界のガン専門家の会議に行って、その席上で、そういう専門家とガンに対する意見を戦わしている。私、医師会の会長の武見先生に二、三日前に会って、ガンの話をしたところが、実はぼくも弱ったのだ、名古屋の大会で、そういう団体の人に乗り込まれて、医学の問題で討論を要求されて、たいへん困ったことがあるというお話でした。  この一つの団体の主張するところは、ガンというものはいまのところ治療法がないから、早期発見、早期治療といっても、それは手術をしても死を意味するにひとしいことだ。ガンは明らかに切らなくてもなおる道があるのだということを、公然と国民の前に明らかにして、いま政府が考えている早期発見、早期治療ということとまっ正面から対抗したようなことを、堂々と掲げておるわけですね。早期発見をして治療すれば、いま言ったような胃ガンであるとか子宮ガンであるとかいうものはなおる、そういう現代医学を否定して、そういう必要がないのだ、あくまで信仰でなおせるということを言うとなると、そういう道によってなおすために、逆に医学のほうからいうと、あたら生命を失う結果になる。それはひとり宗教団体としてそういうことを言うだけではない。そういう医学の専門家に尋ねて、また相当そういう事実を明らかにして、ガン対策は精神力によって解決するということを宣言している。おそらくガンの問題を扱っているとすれば、あなたの耳にもそういうニュースが入っておるはずだと思うのです。これは放置できない。信仰は自由ですから、どういう信仰を選ぶといえども、それはわれわれの関知するところではないけれども、事ガンに関しては、そういうことをはっきりと宣言して、堂々と医学界に挑戦をしているという事実を放置して差しつかえないのかどうか。事人命に関することです。あるいはあなたのほうで、そういう事実があるのかないのか研究したことがあるのかどうか。これはもうあなたも御存じのとおり、東京でも最も人通りの激しいアメリカ大使館のそばで、大きな看板を掲げて、ホテルオークラの前でやっておるのです。私もあそこを出入りして、常にそういう話を聞かされているのです。ガン問題について、専門にいろいろと対策を御苦心になっておる局長として、こういう考え方をどう受けとめておられるか。これはガン問題の一つとして、この際、この問題とはちょっとかけ離れた御質問ですが、政府として、それはもうほっぽっておくべきものだ、言いたいだけ言わせて、どうなってもかまわぬというようなお考えでおるのか。考え方があったら、お聞かせ願いたい。
  53. 若松栄一

    ○若松政府委員 ガンの問題は、病気が病気だけに、いろいろな問題が多発することは、お話のとおりでございます。私どもといたしましては、ガン対策というようなものを広くやっていきます場合に、どこまでも科学的な立場でこれを推進していくということが基本でございます。したがって、学問を基礎にした仕事を展開していくということでございますので、学問として成り立たないものにつきましては、あえてこれを批判するというようなことはなかなかむずかしい問題だと思います。現在私どもが基本としております科学は、もちろん万全ではございません。したがってガンはいまのところなおらないのが大多数であり、おぼれる者わらをもつかむというような心理から、薬にしても、治療方法にしても、考え方にしても、いろいろなものが出ており、あるいは宗教であるとかあるいは特殊な信念であるとかいうようなものが多々あることは、お話のとおりだと思います。しかし診断、治療というような範囲におきましては、私どもは、現在たとえ不完全であるとしても、やはり学問、医学というものをたよるしかしかたがないことでございまして、その範囲で、私どもはしんぼうせざるを得ない。したがって、科学及び医学の体系を離れたものにつきましては、私どもはこれをガン対策の中に取り入れていくということは不可能であろうと思います。これは、不治の病あるいは非常に困難な病というものには、いつの時代においても必ずつきまとう現象でございまして、昔は、たとえばらいのごときなおらない病気については、いろいろの偏見、迷信があり、またごく近い過去におきまして、結核が非常にやっかいな病気であった場合に、結核に対する迷信あるいは宗教あるいはいろいろな精神的な信念というものがたくさんございました。現在結核も科学的な方法である程度解決がついてきますと、そういうものはだんだん影をひそめてきております。ガンの問題も、現在のような非常に治療、診断が困難な時代におきましては、いろいろそういうような、科学とは全く別の系列でいろいろな事態が起こってまいりますが、私どもとしては、直ちにこれを科学的あるいは論理的に破壊しあるいは批判していくということは現実になかなか困難でございまして、やはりこれは一般大衆に対するガンの正しい認識、科学的な認識というものを普及させることによって、そのような、現在の科学と著しくそごするようなものが影をひそめるようになるということを期待いたしておるわけでございます。
  54. 小山省二

    ○小山(省)委員 最後に、私一言御忠言を申し上げたいと思うのですが、いま言ったように、ガンにかかった人というものは、現代医学においては解決できない面が多く残されておるので、非常に苦しんでおる。それはもうまぎれもない事実です。そういう面に対して、厚生省としては、早期発見、早期治療ということが今日のガン対策としては最高の道であるということによって、広く国民に呼びかけておるわけです。厚生省が呼びかけておるその問題にまっ正面から挑戦をして、そういうことを堂々と否定している。そういうことによって、私は、国民の中にたとえ一人でも不幸な人が起こるという事実が明らかだとするならば——医学的な面から考えた場合においては、それは科学的に、現代医学以外については干渉する必要はないということは言い得るかもしれません。国民全体の健康保持、国民全体の保健行政というものを担当する厚生省としては、多くの国民がそういう間違いをおかさないとも限らぬことに対して、むげに耳をふさぐ必要は私はないと思う。そういう誤ったことのないような方法を講ずる、当然そういう事実に対する調査もする、あるいは逆にガンに対するもう少し国民の認識を深めるための啓蒙宣伝を行なうとか、積極的な対策を講ずることは、厚生省という立場に立った場合当然である。それは医学的な面で解決すべき分野であってというだけでは済まされない問題が内蔵しておるというふうに——それは苦しんだ人が信仰の道を求める、それによって何でもなおそうという、そういう自由をわれわれは束縛しようということではないが、しかし事生命に関する重大な問題である。しかもあなた方の指導している面からいけば、早期発見、早期治療ということなんです。そういうことが全然必要ないということで、まっ正面から挑戦しておるとすれば、そういうことに対する注意をし、そういう問題を一応調査をする、検討するという程度の、単に、われわれは医学的な分野以外については関知しないというだけで放置することの許されない面が、ある程度あると私は思うのです。医学者の立場、医者の立場からそれをどうこう言ったら、それは医学的、科学的な面でそういうことに関知しないということはあり得るけれども、国民全体の保健行政という面を担当する役所とすれば、ただそれだけでそういう問題を放置するにしては、あまりにも私は問題が深刻な要素を持っておるというふうに考えております。御答弁たいへん困難かもしれません。十分ひとつ問題の本質について、役所として、単に聞き流したということでなく、検討をして、そのことがガン対策にどういう影響を及ぼすかという面を、もう少し役所として調査をしていただきたい。次会、適当なときに、また御質問申し上げたいと思います。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 中村重光君。
  56. 中村重光

    ○中村(重)委員 目安が三十分あてということなんですが、一時間あてで……。厚生行政というのは、福祉行政という非常に重要な問題であるから、これはやむを得ないと思います。これは大臣も来ていないから、できるだけ早い機会に、また厚生省関係質疑の機会をつくってもらいたいと思います。  いろいろお尋ねをしたいこともありますが、特にきょう、私が掘り下げて質問したいと考えておりましたのは、献血の行政と原爆の問題である。時間もありませんのと、それから大臣がきょうはお見えでもありませんから、その点はまた別の機会に譲りまして、ほかの問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  いろいろな問題点が広範にあるわけですが、その前に、私は注意を喚起しておきたいと思いますのは、会計検査院不当事項というのもあるわけです。ですけれども、きょうは先ほど政務次官が説明をされたと思うのですが、今後特に不正防止に重点を置いて、業務監査を強力に実施する、こういう決意のほども示されておるわけです。これに期待をいたしまして、この点にはお答えをいただきますことをひとつ省略をいたしたいと思います。ですが、会計検査院指摘あるいは大蔵省の説明資料等を見ましても、不用額とか翌年繰り越しというのが非常に多いわけですね。私は、厚生省の行政というのは、申し上げるまでもなく、非常に気の毒な人たちの救済ということに一番重点があると思うわけです。それだけに、大蔵省との折衝で難関を突破されたのだから、できるだけその事業がなめらかにしかも早く推進されるということでなければならぬと思うのです。なるほど説明には、用地買収に手間どったとか、あるいは設計変更があってやむを得なかったのだ、あるいは不用額にいたしましても、それなりの説明は加えておるようですけれども、私はやはりかまえの問題だと思いますよ。いかに厚生行政が重要なのか。これを一日おくらせると、そうした気の毒な人たちに対してどのような不自由とまた不安を与えていくかということに思いをいたされて、ともかく積極的に推進をしていかなければならないのだという決意の中から、繰り越すにいたしましても、最小限度にとどめることができるでありましょうし、また弾力的な運用をすることにおいて、不用額というものを最小限度にとどめることも可能であろうと私は思うのであります。その不用額の中身を見ましても、重度障害児童に対する対策の費用であるとか、あるいは老人福祉とか、あるいは婦人保護であるとか、あるいは母子福祉の関係であるとか、身体障害者関係の問題であるとか、これは何としても、計上された予算だけでも足りないのですね。だから、もっともっと予算を増額させて、きめこまかい施策を講じていかなければならぬということ、これは異論がないと思うのです。そういうものに対して、繰り越しであるとか不用額が出るということは、いろいろな理由はあるにしても、やはり克服し得べき点が多々あるのじゃないかと私は思います。この点は、時間の関係もありますから、注意を喚起するにとどめたいと思いますけれども、問題が問題ですから、ひとつ政務次官から、簡単にお気持ちのほどをお聞かせ願いたいと思います。
  57. 田川誠一

    田川政府委員 中村委員指摘のとおりでございます。いろいろ理由はございますけれども、社会福祉行政の重要性にかんがみまして、今後そういうことの起こらないように、全力を尽してひとつ努力をしてまいります。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 次は環境衛生局長にお尋ねいたしたいと思います。  最近、新聞に連日のように報道されている有毒食品の問題は、非常な問題点でありますし、また私どもの関心事であります。あなたのほうでは、毎年七月と十二月の二回、防腐剤や着色剤など食品関係の実態調査を行なうために、各都道府県に対して、一斉検査を行なうように指示している。それなりの成果もあがっておるようでありますけれども、また新たな有毒食品が次から次に出回っている。これはどういうことなのか。やはりこの検査が不十分であるということは、否定することができない。検査員の人員というのは、どの程度の人員でやっているのか。またその検査員では、非常に零細な数多いそうしたメーカーの検査なんてできないのじゃないか。おそらく人員等からいたしますと、一年に一回もできないようなことじゃないかと思いますが、どうしてこうした有毒食品が出回るのか。それから検査の実態はどうなのか。そこらあたりをひとつ簡潔にお答え願いたい。
  59. 舘林宜夫

    舘林政府委員 食品の検査に当たります検査員の数は全国で約五千名おります。これが約八百の保健所に勤務をいたしておりまして、一保健所当たりおおむね二、三名ずつ、それに従事しておる職員がおるわけでございます。これらの職員は、必ずしも食品そのものの収去に当たりその検査をするというだけではなくて、屠場の検査も兼ねる、あるいは飲食店の店先に立ち入りまして、台所がきたないとか排水関係が悪いとかいう検査にも当たるということで、努力はしておりましても、必ずしも徹底を欠いておるという点がございます。食品そのものの検査は、年に、夏の食中毒のはやる前の時期と、それから冬の正月食品の出回る直前の時期をとらえまして、一斉検査をして、有害食品の検査に当たっておるわけでございますが、御指摘のように、商品の数も非常に多いということから、必ずしも徹底を欠く、あるいは取り締まりのたびに違反食品が見つかる、こういう現状でございます。これらの食品の中には、規格基準の設けられておるものもあれば、製造に際して規格基準のないものもあるということで、出てきた製品が有害食品あるいは有害色素等を含んだものが発見されるというのが現状でございます。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 今度摘発されたんだと思うのですが、着色剤の禁止食品のボンソアール、これは有毒の程度というものはどういうことなんですか。
  61. 舘林宜夫

    舘林政府委員 御指摘のイギリスのジャムの中にございました有毒色素は、赤色百二号と申す色素でございまして、これは昭和四十年に禁止をいたした色素でございます。これは赤色百一号と並びまして、明治時代から長年使っておった非常に使いやすい、また世界各国でかなり広く依然として使っておる色素でございまして、数年前にアメリカがこれを禁止いたしまして、わが国におきましても、アメリカが禁止したような理由があるかどうか慎重に検査中でございましたところが、毒性が強いというようなことで、昭和四十年に禁止をいたしたものでございます。  お尋ねの、どの程度の毒性であるかと申しますと、これはもちろん長年食用色素として使われておるものでございますので、通常の使用方法で直ちに中毒患者が出るというものではございません。この毒性を調べる場合には、人間が普通の食事としてとる場合には五〇PPM程度の色素が入っておるわけでありますが、それの二百倍ないし千倍程度の多量に使った動物実験をするわけでございまして、そのような多量な動物実験をした場合に、動物に何らかの障害が起こるかどうかという程度の毒性でございます。これはあくまでも人体に絶対安全ということを目標といたしますので、少し毒性の強いものは許さない、こういう方針によって禁止したものでございまして、その意味合いからは、通常の使用方法ではまあ毒性は考えられなかったけれども、同じ色素の中でもやや毒性が強い——毒性といいますのは、試験の結果やや毒性が強いということで、禁止したものであります。その毒性の種類は、じん臓あるいは肝臓に障害を来たす、きわめて多量に使った場合にはそのような障害がある、こういうことでございます。
  62. 中村重光

    ○中村(重)委員 その禁止されたものがたまたま倉庫に残っていて、それを意識して使ったのかあやまって使ったのか、いずれにしても使っている。これは私はたいへん問題だと思うのですね。検査というものがきわめて不十分であったということははっきり指摘できると思います。これとの関連があるのかどうかわからないのですけれども、都衛生局は、メーカーの設置基準に合ってさえいれば開業申請を許可しなければならないと言う。現在の食品衛生法のもとではどうすることもできないのだということを言っておる。これはいま私が取り上げました禁止剤の問題をさして言っているのではないと思うのですけれども、有毒の食品というのが次から次に出回る。検査をやってもなかなかあとを断たない。この実態で、そういうことを都の衛生局は言っているのだろうと思うのですが、やはり現在の食品衛生法、そうした設備の設置基準ということ等にも問題があるのではないか、単に製品だけの問題ではないのじゃないかと私は思うのですが、そういった点からいたしまして、食品衛生法を改めるというようなこと等をあわせて検討しておられるのかどうか。そこはどうでしょう。
  63. 舘林宜夫

    舘林政府委員 いま食品の製造過程あるいは販売店等に対しましては、特に国民保健上重要な店舗あるいは重要な工場に対しましては、これを製造するに際しまして、許可をとらなければならないという取り締まりをいたしておるわけでありまして、したがいまして、先ほど申しまたように、監視員が常時立ち入り検査をいたしたりなどいたしておるわけであります。それに対しまして、お尋ねがございました添加物のようなものを製造する会社、工場等に対しましては、何らの規制がない。出てきた添加物そのものを販売することには許可が要るけれども、それをつくる——ちょうど製薬会社の許可に匹敵するような許可制度がないという問題があります。ところが添加物は、今日国民の口に入る危険性は——薬であれは、病人が病気になったときだけ口に入れるものでございますが、添加物は健康人一億人が常時口に入れるおそれがあるという、これがもし非衛生であれば、きわめて危険なものであります。しかもその販売総額でいえば、医薬品よりは添加物の金額のほうがはるかに多いというほど国民生活に影響の強いものでございます。このような添加物の製造段階に対する何らの規制がないということは、御指摘のように非常に問題でございまして、私どもは医薬品の製造場と同じような規制が必要ではないかということで、ただいま検討いたしておりまして、必要があれば薬品製造工場と同じような規制をしてまいりたい、かように思っております。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えを伺っておりましたが、私は、必要があればじゃない、もう必要があり過ぎるという感じです。ですから、これは改正について積極的に取り組んでいただきたいと思います。なお違反者が営業停止処分を受けておると思うのです。そういうものが、今度また違った製品をつくるというための申請をすることがあろうと思う。そういう場合はまた、その基準に合っていれば認めなければならぬということになりますか。
  65. 舘林宜夫

    舘林政府委員 お尋ねのように、製造場の許可をいたしておりませんから、営業停止をやれないわけでございまして、したがいまして、営業停止をするためには、製造場の認可がなければ製造できないという規定が必要でございまして、その点は、御指摘のように、取り急いで制度化を考えたい、かように思っております。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 これも問題ですね。政務次官どうですか。いまの質疑をお聞きになっておられて、たいへんな問題だと思うのですが、どうあるべきか。ひとつ私の質問、また局長の答弁を含めて、新たにひとつ考えて、お答え願いたいと思います。
  67. 田川誠一

    田川政府委員 ただいまの中村委員のおっしゃられた点は、なかなかむずかしい問題でございまして、私どもといたしましても、よく検討さしていただくということで、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ国民の権利義務関係、その他いろいろあるわけですね。ですけれども、その検討というのが、やはりいかにして国民の保健、衛生を守っていく、ましてやこういうものは、児童の一番嗜好品になるわけですから、非常に問題であると思う。あなたのお答えの検討を、ともかくそういう、まあ何と言うか、国民に対して有毒なそういうものを販売をするという法の盲点を、追ってそういうことをやるということを禁止する、そういうための前向きの検討である、そう理解したいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  69. 田川誠一

    田川政府委員 そのとおりでございます。
  70. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、舘林局長にお尋ねいたしますが、水道行政の問題ですが、私はあなたにはいろいろな機会にこの問題についてはお尋ねもし、また問題提起もやっている。どうも厚生省として、自治省とか大蔵省に押し切られておるという感じがしてならない。依然として解決をしていない問題は、工業用水道に対して国の補助があるのにかかわらず、まあ太陽、水、空気、これが人間が生存するためには絶対に不可欠なものですが、その上水道の施設が国の補助の対象にならない。ようやく今度ダムに対し、あるいは広域水道という形において、若干補助が芽を出した。それはあなた方の御努力の結果なんですから、大いに敬意を表したいと思う。ですけれども、工業用水道というのは全般の施設補助の対象になるわけでしょう。ところが上水道に対しては、そうした広域水道、それからダムだけだ。しかもそれが三分の一とか四分の一、そういうことで、どうにもならぬ。やはりここでは、水道法の改正をやるということが私は必要であろうと思う。検討しておられるというように伺っておるのではございますが、ひとつ局長の決意というか考え方を、簡潔にお聞かせ願いたい。
  71. 舘林宜夫

    舘林政府委員 国会の先生方、特に長崎県の水道等の問題がございまして、中村先生あたりから叱咤激励をいただきまして、本年度予算はようやく、いままで上水道に対しては国庫補助がないものが、芽を出したという状態でございますが、これがわずかに七億ということでございまして、どうも水道管まで補助対象にするわけにまいらないということで、本年度はさしあたって、水源開発のダム、広域につきましては、それぞれ水道、ダムに補助をする、こういうことにいたしたわけでございますが、私どもといたしましては、これは出発点でございまして、御指摘のように、工業用水道を大幅に補助対象にし、補助額も相当大きな全額でもって補助しておるのと同じように、上水道に対してももっと思い切った補助をする必要がある。ことにこれからの上水道の開発は、これはとても市自身でもやり切れないような大きな工事を必要といたします。また、そによれる料金へのはね返りも非常に大きくなってくるということで、どうしても国のてこ人れが必要であるというふうに感じますので、厚生省といたしましても、大きな構想を持ちまして、水道事業を強力に進めたい、そのような決意で、明年度予算はいませっかく編成いたしておるところでありますが、そのような構想を盛り込みたい、さように考えております。
  72. 中村重光

    ○中村(重)委員 水道法の改正に取り組んでおられるのじゃないですか。
  73. 舘林宜夫

    舘林政府委員 従来は、国の助成あるいは広域化等に関します法の規定がございませんので、水道法に確固たる根拠を持った水道の広域化ないし国の助成というようなことができることが最も望ましいということで、目下検討中でございます。
  74. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、私が非常に不合理を感じるのは、利子補給の問題です。あなたのほうでは高い水道料に対しては、やはり利子補給の対象にすべきであるという考え方を持って、関係省との折衝をされたというように聞いている。ところが、それが認められなくなった。たしかようやく四十年度までの赤字というのが、利子補給をしようという対象になった。そこで、四十一年度以降の赤字をどうするかということが一つの問題なんですね。私が不合理であるというのは、水道料金が安いということばが当てはまるのかどうか知らないのだけれども、水道料金が低いということは、やはり赤字が出る一つの要素になる。逆に水道料金が非常に高いということは、赤字というものがそれだけ少なくなってくるということに通ずるであろうと私は思う。それならば、要するに受益者に対して、この高い水道料金、給水料金を押しつけるということは、それだけ犠牲をしていることになる。そのために赤字が出なかった。ところが、低い水道料金で押えたということは、それだけ受益者に対して犠牲をしいなかったということになる。だから、赤字に対して補助がある。水道料金が高いか低いとかいうことを、その利子補給する場合、対象にしないということは、私は公平な公正な行政のあり方ではないと思う。いわゆる正直な者がばかを見ていくというような行政は正しくないと思う。そういうことはだれが聞いても当然それは道理である。それをあなたのほうが折れたということは、いわゆる無理が通って道理が引っ込んだということになる。これは、私がいま指摘していることがそのとおりであったとするならば、問題であると思う。だから、これは当然是正されなければならない。そこで、四十一年度以降の赤字が出た場合、それに対しては利子補給の対象になるのかという点が一点。それから、いま申し上げました水道料金というものの全国平均があるわけでしょう。いま全国平均の水道料金というものは幾らなのか。この平均をはるかに上回って高い水道料金をとっておるというものに対しては、当然利子補給の対象として水道料金をそれ以上上げないように、そういう措置をおとりになる必要があると私は思う。その点に対するお考え方を、ひとつ伺っておきたいと思います。
  75. 舘林宜夫

    舘林政府委員 御指摘の点は、昭和四十二年度から、赤字の再建債が、赤字の水道に対して行なわれた、努力してようやく黒字になっておる、しかも水道料金の高いようなものが放置されておる、不公平ではないか、したがって、四十一年度以降のそういう水道料金を相当高くしてもなおかつ赤字を生じたような場合の措置をどうするか、こういう御指摘だと思います。自治省において赤字債の特別な措置を講じられたのは、これはまた当面の対策でございまして、それに並行して、特に料金の高いような団体に対して、利子補給する予算要求が、これは厚生省も希望いたしまして、自治省から出されたわけでありますが、遺憾ながら本年度予算に計上するに至らなかった。私どもとしましても、自治省と力を合わせまして、明年度何とかしてその分の国庫補助を出すということで、国の補助金でその措置を講じてまいりたい、全国平均というものを頭に置きながら、それからはるかに高いような料金を必要とするようなところには、何らかの国の助成をする必要がある、かように私どもも考えておりますので、明年度予算で考えていきたい、かように思っております。
  76. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたのほうのはっきりした考え方をお聞かせ願ったので、よくわかりました。ともかく、決意も新たに、当然公平な行政を要求して、国民の納得する形において、この問題は解決してもらいたい。  私は、身近な問題として、いつもくさい水その他で問題になります長崎の水を知っているので、特に感ずるのですが、特に長崎は、小さい都市は別としまして、中都市の中では全国一高いですね。三百五十円でございましょう。それに今度ダムの建設を五十八億三千五百万円でやる。それの中に補助の対象となるのはわずかに十三億程度である。そうすると四十億程度というのは補助の対象にならないのでしょう。これを五年据え置いて二十五年間で償還する。給水対象世帯で割ってみると、何と一世帯出たり一カ月四百円ないし四百五十円になります。そうすると、七百五十円ないし八百円の水道料金を負担しなければならぬと思う。日本一高い水道料金であったから、先ほど私が指摘したように、赤字が大して出ておらないというのでもって、利子の補給の対象になっておらない。こういう、だれが考えてみても不合理きわまることがいままかり通っているというこの事実を、私は例として申し上げるわけでありますが、政務次官、この点に対しては十分ひとつ留意されて対処していただきたいということを、要望申し上げておきたいと思うのであります。環境衛生関係の問題について、私は環境衛生法の運営の問題について、きわめて不合理なことを多々指摘してお答えを願いたいと思うのですが、きょうは時間がございませんから、その点はまたにいたします。  ほかの問題をお尋ねいたしたいと思います。私は、最近ダウン症候群、いわゆる蒙古症というものに対して、患者と会ったというか、父兄の方々からいろいろと事情を聞かしていただきまして、実は驚いている。聞きますと、遺伝性ではないというのですね。六百人ないし十人に一人は蒙古症の子供が生まれる。私はもう女房に子供を生ませることはないと思うのですけれども、いつだれにそうしたいわゆる蒙古症の子供が生まれないという保障はない。とろが、そうした名前も聞いていなかったというぐらいでございますから、この蒙古症対策というものがどういう形で行なわれているのかということについても、いままで聞いていなかった。あまりそういうことをやっているようにも感じられない。これはたいへんな問題であろうと思いますので、ひとつダウン症候群、蒙古症のことについて、対策等について伺いたい。いろいろ詳しく伺いたいのですが、時間の関係もございますので、これは対策の点について、どうすることもできないとお考えになっているのか、あるいはそうではなくて、薬餌療法、その他いわゆる医療法というようなものによって、この蒙古症というものをなおすことができるのかどうか。それから、学校等における特殊教育施設というようなこと等について、どのような対策をお考えになっていらっしゃるか。まずそれをお聞かせ願いたいと思います。
  77. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ダウン氏症候群は、先生御指摘のとおり、いろいろと発生の原因につきましては問題があるように伺っております。精神薄弱児になる原因の一つといたしましてのダウン氏症候群ということにつきましては、相当古い時代から検討をされているのでございますけれども、現在の学界等の主流的な意見といたしましては、やはり遺伝的な問題があるのではなかろうかというふうに言われております。ともかく二十一番目の染色体の数が一つ多いというようなことで、こういった症状を呈するということでございます。これが原因の追求につきましても、学界におきましてもいろいろとまだ検討されているわけでございますが、いずれにいたしましても、そういった治療等につきましても、十年ぐらい前からいろいろと検討されておりまして、特にアメリカ等におきましては、それの薬剤等の研究もなされておると伺っておりますし、わが国におきましても、数年前からダウン氏症候群に対しましての薬剤の検討がなされておるわけでございます。いずれにいたしましても、このダウン氏症候群が先天的な問題であるか、つまり遺伝的な問題であるか、あるいは妊娠後におきまするいろいろな理由によるか、こういった点についてはまだ結論は出ていないようでございますけれども、私どもといたしましては、やはり母子衛生、あるいはそういった母性の健康の維持でありますとか、あるいは新生児に対するいろいろな療育の指導でありますとか、さらに幼児あるいは少年の時期につれましてのいろいろな生活指導でありますとか、あるいは職業指導、こういうふうに一貫いたしまして、母性から幼児、少年時期というふうに指導を加えてまいりたい。したがいまして、精神薄弱児の施設、精神薄弱児対策の一環といたしましてのいろいろな施設収容なり、あるいは在宅指導ということに力を注いでまいりたい。現にそういうふうな方向で指導しているわけでございます。
  78. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのお答えでも、これは遺伝ではない。そうなると偶発的に生まれる。いわゆる突然異変ということで、親とは全然違った子孫ができるということになる。私が調べたところによると、蒙古症というのは、染色体の数が、いわゆる健康な人間と比すると多いわけですね。したがって、人間であって人類ではない、そういうことですけれども、いまあなたがお答えになっていらっしゃるように、いろいろな対策があるのだ。だからその薬餌療法ができるということであると、当然そういう措置がなされていなければならないのですね。ところが、その薬というものが健康保険の場合の対象になっていない。アメリカから輸入したものになってくると、非常に高い薬だ、ところが、それでは日本にそういう薬がつくられていないのかというと、つくられておるという。つくられておるのだけれども高い。しかもそれが保険の対象になっていないというために、それを買うことができない。したがって、いわゆる薬餌療法というものが不十分である。こういうことで、非常に蒙古症の子供を持っている親御さんというのは、もう泣きの涙なんですよ。実は私は十人ばかりの蒙古症の子供さんを連れてきてもらって、いろいろと事情を伺った。なるほど蒙古症というのは顔がみんな蒙古人に似ているのですね。親よりも、その蒙古症の子供の顔がみんな同じなんです。しかも、止まれて十歳から老化現象に入って、二十歳くらいで死んでいく、いわゆる寿命であるということ等、いろいろ聞かされた、こういうことを、私一人でおしゃべりすると時間がないのですから、私は言わないですけれども、いまのあなたのお答えを聞いておりましても、どうも対策が不十分だという感じがするのです。全国的な組織もあるようですが、そういう全国的な組織で、いろいろな陳情を受けられたりされたことがないのか。あられるとすると、私がいま申し上げましたような薬を購入するためのいろいろ国の助成というようなこと、保険の対象にする、あるいはその他医療上いろいろとあなたのほうも研究をされて、それに対する適切な対策をひとつお立てになるということが必要ではないかと思います。そこらあたり、おわかりでしたら、ひとつもう少し詳しくお答えを願いたいと思います。
  79. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ダウン氏症候群の子供さんの親御さんたちのいろいろな運動なりお話は、ときに承っております。  問題は、やはりダウン比症候群につきまして、これが学問の領域におきまして、遺伝的なものか後天的なものか、こういうふうな大きな問題があるわけでございます。特に先生御指摘のように、ダウン氏症候群につきましては、特に染色体に異常がある。二十一番目の染色体が、普通の方ならば二個であるにかかわらず、三個あるというふうなことでございますので、学問の領域においては、やはり遺伝的な要素が強いのではないかという意見が支配的になっているわけでございます。そういった問題が一つ。  それからもう一つは、このダウン氏症候群の子供たちに対する薬物療法の進歩というものについて、非常に期待がかけられておるということであろうかと思うわけでございます。アメリカで、こういった子供たちに対する薬剤もいろいろ研究されまして、それがわが国におきましても同様な研究がななれているわけでございますが、先生のお話のように、この薬剤につきましては、まだ検討中といいますか、試薬の段階でございまして——もちろんその薬物の薬剤の中に入っておりますいろいろな単味としての消化剤と申しますか、あるいはビタミン剤でありますとか、こういった薬剤につきましては、健康保険等におきまして適用されるのでございますが、それ全体の薬といたしましては、なおまだ研究中の薬であるという問題がございまして、したがって二つの理由、つまりダウン氏症候群に対する基本的な研究の問題、それから薬剤についてのなお検討中の問題、この二つの問題がございまして、まだ残念ながら、これらが一般的に承認されたというふうな姿では適用されていないわけでございます。したがいまして、いずれにいたしましても、いまの二つの大きな問題につきまして、いろいろと検討を早急に進めてまいりまして、私たちの施策に反映ができるというふうな段階になりましたら、こういった気の毒な子供たちのために、施策にのぼせていくというような態勢で進みたい、かように思っております。
  80. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあそういう趣旨で進みたいとおっしゃるのですから、いままでの対策がおくれていることについて、私は強く追及をいたしませんが、いまあなたが保険の対象になっていると言われる、いわゆる、いわゆるダウン症候群に必要な薬物そのものは対象になっていない。私は、このことは詳しく事情を聞いたのですし、その治療に当たっておるお医者さんからもいろいろ話を聞きました。このパンフレットをお読みになったと思いますが、これに詳しく書いてあるのですね。ダウン症候群の薬物療法については理論的にも可能であるし、治療した結果についても、これは確かによくなりつつあると書いてある。それから具体的には、「身体全体の新陳代謝の異常をできるだけ正常な状態にもどせば、ダウン症候児はおそらく外見的にも、また知能の面でも正常にもどすことができるのではないかと考えられます。」こう書いてあります。詳しくここに出ておりますから、やはり厚生省の取り組みのほうが弱いようですね。ですからひとつ——全く気の毒ですよ。これはお互いにその親の身になってみるとわかるじゃございませんか。ですから、この施設等についても、普通の精神薄弱児と同じような施設でいいのかどうか、あるいは学校期における特殊学級にいたしましても、その他精神薄弱児等と同じような複式編級の教室でいいのかどうかということ等も、十分ひとつ文部省ともお話し合いになって、適切な措置を考えていただきたいと思います。  それでは、あらためて、できるだけ早い機会にひとつお願いしたいと思います。      ————◇—————
  81. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、国が資本金の二分の一以上を出資している法人会計に関する件中、原子燃料公社の調査のため、参考人として関係者の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、参考人の出頭日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会