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1967-06-23 第55回国会 衆議院 決算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十三日(金曜日)     午後一時十五分開議  出席委員    委員長 鍛冶 良作君    理事 小峯 柳多君 理事 小山 省二君    理事 白浜 仁吉君 理事 高橋清一郎君    理事 吉田 賢一君       阿部 喜元君    菅波  茂君       丹羽 久章君    水野  清君       村上信二郎君    四宮 久吉君       中村 重光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府総務副長         官       上村千一郎君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務政務次官  田中 榮一君         外務大臣官房会         計課長     鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         通商産業省貿易         振興局長    今村  曻君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     渡部 正郎君         法務省刑事局青         少年課長    安田 道夫君         外務省北米局北         米課長     枝村 純郎君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省主税局税         制第一課長   中橋敬次郎君         大蔵省関税局総         務課長     佐藤 健司君         海上保安庁警備         救難部長    長野 義男君         会計検査院事務         総局第一局長  斎藤  実君         専  門  員 池田 孝道君     ――――――――――――― 六月二十三日  委員葉梨信行君辞任につき、その補欠として大  野明君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十年度政府関係機関決算書  昭和四十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和四十年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管総理本府)、外務省所管〕      ――――◇―――――
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度決算外二件を一括して議題といたします。  外務省所管決算について審査を行ないます。  まず、外務政務次官より、概要説明を求めます。田中外務政務次官
  3. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 昭和四十年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は二百三十八億八百七万七千二百五十円でありまして、支出済み歳出額は二百三十二億四千百五十一万三千六百七十七円、翌年度繰り越し額は四億八千百八十七万二千四百十九円、不用額は八千四百六十九万一千百五十四円であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額二百主十一億二十七万円、前年度繰り越し額四億六百五十三が二千二百五十円、予備費使用額、第二回アジアアフリカ会議参加ラオス外国為替操作基金拠出金及びベトナム共和国難民救援費に要した経費三億百二十七万五千円でありまして、前年度から繰り越しましたものの内訳は、海外技術協力実施委託費九千七百八十万四千三百九円、在外公館施設関係費三億八百七十二万七千九百四十一円であります。  支出済み歳出額のおもなるものは、科学技術振興のため、国際原子力機関に対し、同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として、六千九百八十万七千六百円、並びに国際連合その他各種国際機関に対する分担金等として十八億二千四百三十九万六百二円、また、貿易振興一環として、外国におけるわが国商品輸入制限運動に対処して、関係国議会公聴会及び関税委員会公聴会に出席し陳述をする等、輸入制限問題に関し、政界、業界首脳わが国に対する理解を深めしめるとともに、輸入制限動向実情調査、分析を行なって、ラジオ、テレビ、新聞雑誌等マスコミに対する啓発宣伝工作PRパンフレットの配布を行なう等、輸入制限運動阻止のため三億二千七百三十七万三千六十六円、次に、経済協力一環としての技術協力実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員八百十三名の受け入れ及び専門家百五十四名の派遣業務、並びに海外技術センター事業、メコン川開発事業調査、投資前基礎調査海外技術協力事業団交付金、低開発国経済開発技術援助拡大計画、及び国連特別基金拠出等に要した経費三十六億六千三百五十三万五千二百六十六円、さらに、移住振興につきましては、中南米等への移住者八百十八名を送出及びこれを援護するため等の経費十二億四千二百四十六万四千八百六十四円であります。  次に、翌年度繰り越し額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは四億一千二百三万二千四百十九円でありまして、その内訳は、海外技術協力実施委託費二億二千三百四万八千八百九十三円、移住者渡航費貸し付け金九千二十一万八千四十六円、在外公館施設関係費九千八百七十六万五千四百八十円、また、財政法第四十二条ただし書きの規定による事故繰り越しのものは、在外公館施設費六千九百八十四万円であります。  不用額のおもなるものは、外国旅費及び庁費等を要することが少なかったこと、並びに在外公館の項では、在インドネシア日本国大使館事務所新営工事の設計変更に伴い、在外公館施設費を要することが少なかった等のためであります。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次に、会計検査院当局より、検査概要説明を求めます。斎藤会計検査院第一局長
  5. 斎藤実

    斎藤会計検査院説明員 昭和四十年度の外務省所管決算につきまして検査をいたしました結果は、違法または不当と認めた事項はございませんでした。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これにて説明聴取を終わります。     ―――――――――――――
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  8. 中村重光

    中村(重)委員 いま政務次官から御報告がございました中で、予備費使用額で、拠出金及びベトナム共和国難民救援費に要した経費三億百二十七万五千円ということが説明されたのですが、これは具体的にどういう内容になっておりますか。
  9. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 予備費使用額の総額は三億百二十七万五千円でありますが、その内訳を申しますと、第二回アジアアフリカ会議参加が四千九百二十四万一千円であります。それからラオス外国為替操作基金拠出金が一億八千万円、最後のベトナム共和国難民救援費に要した経費が七千二百三万四千円でございます。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 具体的にとお尋ねをしたのは、そういう数字だけではなくて、これに書いてあるとおりにベトナム共和国難民救援費に使ったのだと言えばそれまでなんだけれども難民救済といってもいろいろな救済方法があるわけです。南と北ということもあるわけだから、どういう具体的な救済をやってそういう経費を使ったのかということを尋ねておる。
  11. 小川平四郎

    小川政府委員 ベトナム援助の項目は、品目といたしましては綿織物五千九百七十九万六千円、毛布四百八十万円、家庭薬七百十万円、これを難民救助用として、ベトナム政府に寄贈したものでございます。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 医療協力とかいろいろなことで、血液の問題その他お尋ねしたいことがあるのですが、時間の関係があるので、本会議後にこの内容についてお尋ねしてみたいと思うのです。たとえば在外公館施設関係費その他技術協力の問題等あるわけですが、貿易の問題にからんで、ほかの関係各省からおいで願っておりますので、そのほうを先にお尋ねすることにいたします。  長崎県の対島厳原というところがありますが、ここと韓国との間の貿易はずいぶん古くから行なわれておるわけです。このことが対島経済に好影響をもたらした。輸入ではなくてほとんど輸出なんです。ところが、今度密入国者に扱う。厳原所長の談話という形で出ておるのですが、「“片道貿易”の韓国人」という見出しですが、「福岡入国管理事務所厳原出張所の広渡繁男所長は、三日午前十時から同出張所に、厳原海上保安部対島支庁など関係六官庁の代表を招き、韓国側密貿易をしている、いわゆる“日韓片道貿易”で、厳原に入港する韓国人に、こんごは出入国管理令第三条を適用、不法入国者とみなして取り締まり貿易船の一掃をはかりたい」と語った。ずっとこの先にあるわけですが、従来、正当貿易という形で扱われてきた。それが突然密貿易であるときめつけて、これを取り締まる。私はこの記事を読みまして、実に不可解に思っておるわけですが、この貿易の実態はどういうことであったのかということと、もう一つは、実は通産省からお見え願っておりますから、これも御説明願いたいと思います。時間の関係がありますから、簡単にお答え願いまして、この関係の、入国管理局が、密貿易である、どうしてこうきめつけることになったのか、そこらをひとつ御説明願いたいと思います。
  13. 今村曻

    今村(曻)政府委員 ごくかいつまんで、従来までの経過並びに現状を申し上げますと、たびたび日韓貿易会談を催しました際に、韓国側から、密貿易に対して協力をしてくれという申し入れがございました。少なくとも情報交換はやりたいということで、どういう方法協力できるかということを、これから相談をすることになっておりますが、その際一番問題になりますのは、ただいま御指摘のありました、対島厳原における問題でございます。これは韓国側法令日本側法令との食い違いがございます関係上、先方でいわゆる密貿易というふうに申しておりますが、その実情は、わがほうから見ますると、一応適法に行なわれておるということでございます。これをやや具体的に申し上げますと、主として在日の韓国人が、米ドル等を、福岡あるいは下関の外国為替銀行に払い込みまして、そこに自由円勘定というものを設定いたしまして、その自由円によって、日本国内で繊維とか雑貨等を調達いたしまして、成規輸出手続で、厳原港から輸出をしておるというのが実情でございまして、これは現在の法令に照らしますと、適法輸出であるというふうに私どもは見ておるわけでございます。したがいまして、韓国側のほうで取り締まろうとする範囲とわがほうの法令との関係に、そういう食い違いもございますので、いかなる方法韓国側協力をするか、これはきわめて困難な問題であるというふうに、私どもは考えておるのでございます。  なお、ことしの一月から五月までに、福岡通産局管内為替銀行韓国向け輸出認証をいたしました額は、五百六十七万ドルでございます。このうちに厳原の分がどのくらいございますか、ちょっとここに資料がございませんので、全体の数字だけを申し上げますと、そういうふうになっております。
  14. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまの御質問でございますが、実は厳原におります入国管理局職員が交代いたしまして、それから、入管のみならず、税関海上保安庁、その他、他の中央出先機関の係官の交代がございましたので、その機会に、入国管理事務所支所長と申しますか、そこの所長関係官を集めまして会議を開いたことがあるのでございます。これが六月三日でございます。その内容が、いま先生お読み上げになりました新聞記事となってあらわれたものと思われるのでございますが、私ども報告を受けております限りでは、そのときに述べられましたことは、要するに、この出入国管理を従来どおり法令に従って厳正に行なう、ついては御協力を願うということを述べたものでございまして、その説明に、あるいは韓国から密輸出入船が入ることがあるかもしれないということが述べてあったかもしれませんが、私ども入国管理事務所といたしましては、関心事項密輸出入ではなくて、その船に乗ってくる人の身分証明書、はっきり申しますと船員手帳でございますが、これが合法的であるかどうかということが関心事項でございます。これが合法であるかどうかを審査いたしまして、合法である限りは、入国管理官署としては、その上陸を認めておるわけでございまして、従来と何ら変わった取り扱いをしているわけではございません。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 通産省に伺いますが、いつごろからこの貿易が始まっておると思いますか。つまり韓国釜山厳原との間の貿易が開始された時期はいつごろからであるか。
  16. 今村曻

    今村(曻)政府委員 これは私、いつというはっきりした時点を申し上げる材料は持ち合わせておりませんが、かなり古くから、つまり、いわゆる朝鮮動乱あとから始まりまして、だんだん盛んになってきておるというふうに承知をいたしております。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 私は調べていますが、それはそれでよろしい。  そこで入管お尋ねをするのですが、いままでは、これは合法であるという判断で認めてきたということは間違いないわけですね。船員手帳、それから出国証明を持っているわけですから。そこで、一回も取り締まりをしたことはなかった、また通産省も、これは適法貿易である、そういういままでの判断でやってきたんだから、したがって、あなたのほうも、従来はいわゆる適法にこの貿易は行なわれてきたと考えている、そういうことだと思うのです。
  18. 中川進

    中川(進)政府委員 仰せのとおりでございまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、密貿易云々ということよりも、要するに人の管理の面が仕事でございまして、その乗ってまいります船員が合法な船員手帳を持っておるかどうかということが、私どもとしては一番の大きな関心事項でございます。したがいまして、この点に関する調査を進めておるわけでございますが、従来、ややもすれば、合法でない、偽造船員手帳を持っていた例があったのでございます。したがいまして、この点は抜かりのないように、しっかり調べよということでやっておるわけでございます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 従来、釜山厳原問貿易で、偽造船員手帳を持っておった、そういう事実がありますか。その事実があるとすれば、いつごろ、これは偽造であるということで取り締まりをし、あるいは処分をなされたのか。偽造船員手帳ということになると、密入国者になるわけでしょう。だとするならば、それに対してどのような取り扱いをなさったのですか。
  20. 中川進

    中川(進)政府委員 先ほど先生のお読みになりました新聞記事の中にもございますが、この出入国管理令によりまして、第三条に、「有効な旅券又は乗員手帳を所持しなければ本邦に人づてはならない。」ということになっておりますので、私どもといたしましては、これが偽造船員手帳であるということが何らかの方法ではっきりした場合には、上陸を拒否しておる次第でございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 あなたが、偽造船員手帳を持っておったことがあるのでとおっしゃったから、そういう事実があったんですか、あったとすると、それに対してはどのような処置をなさったんですかと、こうお尋ねをしておるのです。
  22. 中川進

    中川(進)政府委員 何月何日にあったということは、ただいま資料がございませんので、もし必要でございましたら、調査してお答えいたします。ただ、私、けさ福岡所長を呼びまして話を聞きましたら、そういうことでございます。  それから、そのときの処置でございますが、それはいま申し上げましたように、上陸を拒否したわけでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 そういう抽象的なことで、答弁になりますか。私は、このことについて質問をするということの連絡を申し上げた。だから詳しくお調べになって―― わざわざ呼んで、あるいは電話でなさったか知らないが、そういうことで問い合わせをされたんだったら、しかも偽造船員手帳だったら、あなたはもっと的確にお答えができるようなことでないと、何のために私が連絡をしたかわからない。これは、私はよく知っているのです。いままで、偽造船員手帳を持っておったということで、検挙されたりあるいはその他の処分をされたという事実はないはずです。ですが、しかし、あなたのほうのやりとりで時間をとったって、しようがないから……。  そこで、大蔵省谷川関税局長、お見えでございますか。――税関としては、これに対してどういう判断で、どういう取り扱いをしていらっしゃるか。
  24. 佐藤健司

    佐藤説明員 ただいまの御質問でございますが、税関といたしましては、向こうがいわゆる出港許可書を持っておるかどうか、そういう点について調べる必要があるわけでございますけれども、これは前の日韓貿易会談の際も、韓国側から、そういう出港許可書につきまして、許可書の正当に発行されたものを持っておらない者があるのではないかというような申し入れがありまして、そういうものを調べてもらいたいという話がございました。そういう点につきましては、私どものほうでいろいろやっておりますけれども、現在のところ、これが偽造であるという出港許可書は発見されたことはございません。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 そのとおりだと思います。あなたに続いてお尋ねしますが、偽造であるという事実がはっきりされたことはない、私の調査でもそのとおりなんです。  そこで、何か、その貿易船に乗ってきた船員のことに関連いたしまして、トラブルがあったという事実はございませんか。
  26. 佐藤健司

    佐藤説明員 現在のところ、私ども聞いておりますのでは、これは福岡駐在韓国領事でございますか、昨年の十一月か何かに、これは出港許可書の問題ではございませんで、いわゆる船員手帳の問題だったのでございますけれども、何か韓国船に乗り組みまして、それで、その船員手帳か何か偽造の疑いがあるのじゃないかということで、その領事指摘をされたというような事例があるようには聞いております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 その福岡領事館から理事対馬に来ているのですね。船員は、上陸するときには船員手帳税関に預けておるわけですね。そこで韓国福岡のいわゆる総領事館理事が、あなたのほうの対馬出張所というのですか、そこへ来て、三者――船員総領事館理事とそれからあなたのほうと立ち会って、そこでトラブルが起こったという事実がある。これは外務省は、総領事館関係ですから、関係があるから、その事情はよくおわかりだろうと思うので、外務省からひとつこの点はお答えを願いたい。
  28. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいまの件につきましては、私ども報告を受けておりませんので、内容を詳しく承知しておりません。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうは、この貿易船の問題について、韓国から要請を受けて、対馬に行っていろいろ調査をなさった事実があるのでございましょう。
  30. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいまの件につきましては、私どものほうで人を派遣して調査したことはございません。補足いたしますと、領事地方官憲との折衝を主としておりますので、普通、事件が起こりますれば、地方官憲との間で処理するものでございます。さらにそれが重大な外交案件に発展をいたしましたときに、外務省通報を受けまして、外交問題として取り上げるわけであります。ただいまの事件につきましては、通報を受けておりませんので、詳しく承知しておりません。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ、この事件について通報を受けたということはないかもしれない。ところが、この貿易船の問題について、韓国から、これはいわゆる密貿易である、したがってこの取り締まりをしてもらいたい、という要請を受けたことは事実でございましょう。
  32. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいまの件につきましては、貿易会議のときに、韓国側から、先ほど通産省から御説明のあったような要請がきております。単独に受けた記憶はございません。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうから、的野事務官山下事務官厳原においでになったことがある。そこで調査をなさったという事実はございましょう。
  34. 小川平四郎

    小川政府委員 在留韓国人の問題につきまして、職員を派遣したことがございます。九州地方にも派遣したことがございますので、そのときに、厳原にも立ち寄っているはずでございます。一般在留韓国人の問題につきまして調査をいたしましたので、ただいまの密貿易の問題も含めて、調査しておりますけれども……。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたは密貿易とおっしゃった。韓国が、いわゆる密貿易船と言うのでしょうね。あなたのほうが密貿易と言うのではございませんでしょう。そこははっきりしてください。大事なところです。
  36. 小川平四郎

    小川政府委員 いわゆる密貿易ということでございまして、われわれが見ておりますのは、先ほど通産省から御説明があったとおりの見方をしております。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 あとでまた伺います。  そこで、税関出張所で、こういう事件が起こった。船員手帳税関が預かっておった。その預かっておった船員手帳を、本人に渡すのでなくて、福岡総領事館から来た理事に渡した。あなたのほうの出張所でですよ。そして、その総領事はどういうことをやったか。その船員手帳を破棄してしまった。それを、あなたのほうの税関出張所では、そこで見ておって、これに一つも異義を言っていないのです。これを認めたのです。これは、私はたいへんな問題だと思うのです。そこで船員手帳韓国福岡総領事館理事に渡し、そこで破ってしまったのだから、これを認めたということになってくると、その韓国人はいわゆる密入国者という形になってしまう。これをどう取り扱いをしたかということにも、実は問題が出てくるわけなんです。  外務省に、総領事館関係総領事権限等の問題でお尋ねするわけですが、その前にあなたに伺うのですけれども、どうしてそういうことを、あなたのほうの出先は、本人から領かった、しかもそれは偽造ではない、これは適法に発行された船員手帳であるということを認めて、そうして上陸も認めてきた。それを本人に返さないで領事に渡した、ということはどういうことであろうか。これは私はたいへんな問題だと思う。その点はあなたはどうお考えになりますか。
  38. 佐藤健司

    佐藤説明員 私ども聞いておりますところでは、領事入管事務所に参りまして、入管事務所におきまして――船員手帳入管関係になりますので、入管事務所にその領事が参りまして、そこで、海洋号金鎮号という船でありますけれども、それの船長二名の船員手帳を調べて、これを引き裂いた、そうして貼付してあった写真を取り上げた、こういうふうになっております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、それは入管であって、あなたのほうではない、こういうことですか。あなたのほうは立ち会っていないということですか。
  40. 佐藤健司

    佐藤説明員 入管事務所でやったようになっております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ、入管お尋ねいたします。そういう事実をお認めになりますか。
  42. 中川進

    中川(進)政府委員 その事実は、つまびらかにいたしておりません。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 いいですか、大蔵省担当者がその事実をいま認めているのです。調査をしておられるのです。しかも肝心なあなたのほうは、そういうような行為をやりながら、そういうことを知らぬということはおかしいじゃないですか。私が調査をしたことと若干の違いがあるのですけれども、それはことばが足りなかったのですが、あなたのほうも一緒であったということも、私もわかっておったのです。私の持っている資料でも、そうなっているのです。肝心なあなたのほうが、調査をしていないということはおかしい。
  44. 中川進

    中川(進)政府委員 船員手帳入管に預けたかどうか、それからそれはまたいつの船のことであるか、私どもつまびらかにいたしませんけれども、帰りまして、調べて御報告いたしますが、いつの件でございますか。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 いま税関関係について私がお尋ねをしたのに、いまあなた聞いておられたでしょう。私は電報をもらっているのです。私は調べたのです。詳しく知っているのです。あなたのほうにも、この問題について質問するということは連絡をしておいたはずです。だから密貿易の問題等々については、調査をしておられると私は思う。  そこで、外務省お尋ねいたします。領事の権限ですが、韓国領事というのは、どういう権限を持っているのでしょうか。船員に、いわゆる合法的に発給されたものとして、日本の官憲がその船員手帳を預かっているのですよ。それを、税関にいたしましても、あるいは入管にいたしましても、当の本人に渡さないで、領事に渡すということは、これはたいへんな問題であると思うのでございますから、そのことについては、責任ある答弁を伺うわけです。ところが、その韓国領事の行為がそこで問題になるのです。領事というものはどういう権限を持っておるのであるか、それをひとつお答え願いたい。
  46. 高島益郎

    ○高島説明員 お答えします。  韓国との間には実は領事条約がございません。現在領事条約がございますのは、日米、日英の間だけでございます。したがって、韓国領事の一般的な職務権限あるいは特権につきましては、ほかの、そういうような領事条約のない国の領事官と同じように、相互主義に基づきます一般慣習によるというのがわれわれの方針でございます。一般的に領事官の職務権限と申しますのは、その派遣された接受国、つまり韓国の場合ですと日本、に在留いたします韓国人の一般的な保護ということが当面の目的になります。その保護のために、先ほどアジア局長から御答弁があったように、地方官憲と必要な限度において接触する。したがいまして、国と国との関係においての折衝というのは、すべて大使館になる。領事官といたしましては、自国民の保護のために、地方官憲と必要な限度において折衝するのが、一般の領事官の職務態様でございます。  ただ、船舶及び船員との関係につきまして、従来日米、日英の間で結んでおります領事条約は、日本が考えております一般慣習法を法文化したものでございますけれども、具体的に、このケースについてどうこうという判断を、私はいたしかねる立場にありますので、一般的に申しますと、船舶の対外関係、つまり領海に入った場合の対外関係、先ほどからの税関の問題、出入国管理の問題、衛生上の問題、海上における人命の安全の問題、あるいは日本の全体の安全の問題、そういった問題に関します場合は、完全に日本の権限が及ぶわけでございます。ただ船舶内部の事故に関しまして、これは従来、慣習法といたしましては、その国の領事官の権限ということにしているのが、いままでのたてまえでございます。したがいまして、韓国法令に基づきまして、船舶の内部の事故、たとえば船長と船員との争い、あるいは船員を雇用する、解雇する、そういった問題につきまして、いろいろ取り調べたり、あるいはそれを仲裁したりというふうな権限はございます。これは一般慣習法でございます。  ただ、現在問題になっておりますこのケースにつきまして、韓国領事に権限があったかなかったかという問題は、私は実は具体的事実をいま初めて知ったわけでございまして、判断する限りではございませんので、御了解をいただきたいと思います。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 昨年の八月、福岡総領事館からやってきた。船舶の中じゃない。小さい貿易船ですからね。これは厳原の港につないでおった。そこへその船に乗り込んできて、セルモーターをはずした。これを爆破してやるぞ――日本の官憲の前でですよ。実はそういう暴言を吐いた。その上に、今度はその船員が、預けておった船員手帳を取り上げた。これは私は重大な問題だと思う。だから、いわゆる慣習法ということによっても、いまあなたのお答えのとおり、これは自国民の保護というようなこと――これは保護ではない。船を爆破してやるなんて、しかもその船にあるセルモーターをはずしてしまったんですからね。これは破壊ですよ。そうでしょう。そういうことが許されますか。
  48. 高島益郎

    ○高島説明員 先ほど一般論として申しましたとおり、日本といたしましては、どこの国の領事官に対しましても同じ関係でございますけれども外国の船舶に対しましての関係では、税関関係出入国管理関係では、日本に完全な権限がございます。この権限は日本だけが持つ権限でございまして、駐在国の領事官の持つ権限ではない。一般論としては、そういうように考えております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことをやったという行為は、私は許されてはならないと思う。だから、それに対する抗議をやるとか、あるいは日本の国内法に基づいての措置というものが当然行なわれなければならないと思うのです。それが今日まで放置されておったということはどういうことであるか。この点は、ひとつ責任ある措置をおとりになって、その結果を報告してもらうということでなければならぬと私は思う。  本会議の時間になったわけですが、この貿易船の問題について、先ほど来それぞれお答えががございましたように、いわゆる適法に行なわれて、船員手帳出国証明というような問題等も認めて、そしてともかく年間十九億にのぼる実績――ここ二、三年は税関がずいぶんやかましい。それから入管もだいぶやかましいのです。取り締まっておりませんと言うけれども、実際は取り締まっている。そういうことから、貿易商がずっと減ってきたのです。ここ二、三年前は十九億円から十七、八億円の貿易がなされておる。その二割程度が厳原に落ちておったわけですから、あの弱小の地域にとっての、うるおいというものは相当大きかったのです。入管がこれを取り締まるということになったものだから、実は当の厳原町長は、それは困ります、このことについては適法に行なわれておるのだから、何とかこれは従来どおり認めてもらいたい、こう言っている。これは新聞に「これまでどおりの扱いにしてほしい」という一宮厳原町長の談話が出ておるわけです。これを申し入れたが、同入管は二十日前後に再度関係者らに会い、最後的な検討をした上で、「できれば三カ月程度の猶予期間を置いて取り締まり実施に踏み切りたい方針。」と書いてある。これは、この間、私の部屋にも町長がおいでになりました。事情をいろいろ聞きましたが、あなたが先ほど私にお答えになったようなことではございません。なお、この貿易船の問題に関係いたしまして、領海侵犯の銃撃事件が起こっている。これに対して、外務省が今日までこれを放置しておると、私の調査ではなっておるわけですから、この問題については本会議お尋ねをいたします。なお、まだ、それぞれお尋ねをしなければならぬ点がありますから、御迷惑でも、ひとつ本会議後にまたおいで願わなければなりません。銃撃事件の点は、四十年八月二日、これは領海です。対島の琴の沖合い二キロのところですから、いわゆる日本の領海内で、密貿易船韓国の警備艇が銃撃をして沈没させたという事件が起こっておるわけです。これをひとつお調べ願っておいていただきたいと思います。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 この際、本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十六分開議
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  外務省所管について、質疑を続行いたします。中村重光君。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 大臣にお尋ねをしたいことが非常に多いわけですが、本会議の前に、適法に行なわれておる韓国と日本との貿易、具体的には、釜山と長崎県の対馬厳原、この適法に行なわれておる貿易に対して、韓国では、小型の貿易船であるが、密貿易である、それを取り締まってもらいたいという要請が、実は外務省に来ておる。これは私の調査ではそうなっている。先ほどアジア局長の答弁では、必ずしもそういう要請が来ておるということを的確にはお答えになっていません。ところが、いろいろその間にトラブルが起こりまして、福岡総領事館から理事が出てきて、そしていわゆる貿易船に乗っている船員の手帳を――私の調査では、税関関係であるということであったのですが、入管のほうで預かっておったということですが、それを入管のほうでは、船員に渡さないで、理事に渡した、この理事がその船員手帳を破棄してしまった、そういう事件が起こった。それに対して先ほど来お答えがあっているのですが、まだお尋ねを続けなければならない。  それから、四十年の八月二日に、その貿易船――貿易船はたくさんいるわけですから、その中の一隻を、対馬の琴の沖合い二キロのところですが、韓国の警備艇が銃撃して沈没させたという事件が実は起こった。これは二キロのところですから、いわゆるわが国の領海内で起こった銃撃事件です。これに対して、外務省は抗議をしておるという事実が、私の調査では、ないわけです。こういう問題は非常に重大な問題として、これは貿易船だけの不安じゃなくて、対馬の零細な漁民が、いつ自分たちもやられるだろうかという不安を持っているわけです。そういう問題等も実はあるわけでして、いまお尋ねをしているわけですが、大臣の時間の関係がございますので、この問題はあとお尋ねすることにいたしまして、大臣に伺ってみたいのですが、いまも本会議では、ずいぶん総理の東南アジアあるいは韓国訪問という問題について、鋭い批判が、勝間田議員からなされたわけです。そこで、外務大臣が、いわゆるアジア太平洋圏構想、いわゆる三木構想なるものを実は発表された。このことが、私がお尋ねをしようと考えていますところの経済協力あるいは技術協力との関係がございますので、一応考え方を伺ってみたいと思うのですが、大臣が提唱されておるところのこのアジア太平洋圏構想というものに対しましては、アメリカが非常な強い関心を示しておるということも伝えられておる。これは日米間の重大な問題ということで取り上げられているのかどうか、という点を一応伺ってみたいと思います。
  53. 三木武夫

    ○三木国務大臣 関心を示しておることは、アメリカばかりでなしに、豪州もニュージーランドも、みなやはり関心を示している。しかし、日米間の重大な問題として取り上げられるという性質のものではないと、私は思うのであります。と申しますのは、何かアジア太平洋圏構想というものは、にわかに一ぺんに大きな機構をつくって、そうして欧州のEECのような機構をつくり上げようという考え方ではないのです。この目標とするところは、アジア――これは人口からいっても、中共を入れると十七億人も住んでいるのです。そうして、世界のアジアに対する援助というものは非常に少ない。アフリカあるいはまたラテンアメリカに比べて少ない。東南アジアなどでは、一人頭の一年の国際的な援助というのは一ドル五十セントぐらい。その他の地域はみな五ドルをこえているわけです。何か、国際的援助というのが忘れられた地域になっている。アジアは非常に複雑な国際問題をかかえているのですから、したがって、アジア自身の問でもまずみずからの努力をしなければならぬ、アジアが地域協力をやらなければならぬ、ということで、確かに新しい傾向がアジアに生まれてきておるわけです。これに対して、日本もできるだけ、技術、経済あるいは経験等を通じて、アジアに対する協力もしなければなりませんが、どうしても日本の力だけでは限度があるわけですから、もう少し広い範囲内でアジア問題の解決をはからなければいけない。いわゆるアジアの南北問題の解決。これはやはりアジア太平洋という広さでこの問題の解決をはかることが必要である。むろん、世界各国から関心を持ってもらいたいのですが、しかし、何といっても地理的に非常に離れている地域というものは、地理的に近い地域よりも関心は薄いと見なければなりません。アジア太平洋地域というのは、これはもうお互いに非常な関係を持ち合っておる。中村さんも選挙区は長崎県ですが今日、海というものは昔ほどの障害でない。物を運んだりするのに、陸よりもいい場合がある。そういう点で、海に取り巻かれた地域でありますけれども、できるだけアジア太平洋という広い地域で、アジアの開発問題と取り組んでいくような考え方に、アジア太平洋圏の人々がなれないか。その間われわれとしても、日本もできるだけのことをし、そういう考え方を、世界にも、太平洋先進諸国にもPRして、何とか協力体制をつくり上げたいということであります。私のいまやっていることは、すでにアジア太平洋外交なんです。だから、将来は何らかの協力の機構が生まれるかもしれませんが、いますぐに、そんなに拙速に何らかの機構をつくり上げることを急ぐ必要はない。いまやっておることも、アジア太平洋外交の幾つかの側面があるわけです。最終的には協力体制ができるかもしれぬが、それはそれだけの条件が熟さなければ、そんなものを無理につくろうという考え方は成功するものでないですから、そういうことで推し進めていこうということで、これが、日米間の重大な交渉をする議題になっておるというようなものではないと、御了解を願いたいのであります。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 政策上の問題になる点については、また別の委員会でお尋ねをすることにいたしますけれども、日米間の重大問題でないといたしましても、アメリカの援助という名における経済協力、いわゆるアメリカの経済支配ということに対する反発が出ているということは、大臣も御承知のとおり。そこで、アジア太平洋圏構想という中におけるアメリカの果たす役割りが、これまた大きいことは間違いない。そのことで、いわゆるアメリカの経済支配というものが非常に強くなってくるのだという警戒というか、不満が出ていることは事実なんですが、その点に対してはどのように考えておられますか。
  55. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、アメリカが援助をする場合に、援助のしかたが問題だと思うのです。これにひもをつけるようなことをすれば、やはりその援助というものは、アメリカの政治的な意図を達成するために援助するということで、東南アジアは受けつけないですよ。そうでなくて、人類社会においてあまりにも格差があり過ぎる。一方のほうでは豊かな社会をつくって人生をエンジョイしている、一方ではあしたのめしにもありつけないで心配しているというような状態は、これはやはり人道的な立場からいっても、何とかこの格差を是正しなければならぬのだという見地に立って、アメリカが先進国として、これに対して援助をしようというなら、アメリカの金を遠慮すべきではない。要するに出し方である。どういう意図で出すかということが問題であって、アメリカの金だったらいかぬというふうには私は考えないのです。アジアの開発といったら、アメリカの援助も相当な援助を期待しないと、なかなか有効なアジアの開発はできない。その援助の意図、援助のやり方こそ問題であって、アジア諸国が猜疑心を持たないような形でアメリカの援助を受け入れるような、そういう努力を日本がするのが、また日本の外交の一つの大きな使命であるのではないかというのが私の考え方でございます。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 この三木構想に対して、いわゆる大東亜共栄圏構想の復活であるとか、いろいろな批判があるわけですが、その問題はおきます。  そこで、いま大臣から、現在やっているいわゆる協力、こういうことなんで、ことさら形の変わったものが出ているわけではないのだというお答えもあったわけですが、いま日本の低開発国における経済協力あるいは協力関係は、主としてアジアに集中しているわけです。しかし、集中している協力体制にいたしましても、ヨーロッパ諸国から、いたしますと、非常におくれているわけです。これに対して大臣はどのようにお考えになるかということが一点。  いま一つは、この経済協力につきましても、あるいは技術協力につきましても、ほとんどが外務省が窓口になっているようでありますけれども実施官庁はそれぞれ違っている。そこでばらばらになっている。総合的な協力体制というものがなされていない。そのことで、相手国におきましても非常な不満が起こってくるわけでありますし、また協力上の効果も、私は出てこないのではないかと思うわけです。そういうことに対して、大臣はどのようにお考えになっておられるのか。まずその点を伺ってみたいと思います。
  57. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中村さんの御指摘になったのは、まさしく問題点だと思うのです。それはなぜかといえば、日本はいままで、国内にやらなければならぬことがたくさんある。いままであったし、将来もあるわけです。たとえば、農業の問題にしても、中小企業の問題にしても、漁業の問題にしても、また、公共投資の面でも、住宅、道路いろいろあるわけです。だから実際からいえば、なかなかよそへ援助の金を出しにくい国内の状態もやはりあるわけなんです。しかしながら、工業生産力の上においては世界の四位にのし上がってきておる、こういうのですから、国内にいろいろやりたいことがあるから、海外の援助はそう力を入れられませんということでは、なかなかもう過ごせなくなってきておるわけですね。どこの国でも、やはり自分の国にはいろいろな問題をかかえておりながら、これはゆるがせにできない問題であるということで、努力をしておるわけであります。そこで、何かしら私は、国際会議に出ながら思うことは、後進国の援助が国際税的な性格を次第に帯びつつある。何かこう慈善的なものではなくして、先進国の義務という観念が、今日の傾向としては世界的に生まれつつある。そういうことで、日本の国民の各位にも理解をしてもらって、いろいろやりたいこともあるが、それと並行しながら、後進国の援助をやっていくということにしなければ、日本の国際的責務は果たせない。ことに中村さんの立場はわれわれと違うわけですが、防衛費など、日本はよそに比べたら少ないわけですね、予算の七%で。多いところは予算の半分ぐらい使っているんですね。二、三〇%の国が多いでしょう。そういう防衛費でも、社会保険のような感じがあるわけですね。みなだれでも好きこのんで軍事費の予算というものを計上したくはないでしょうが、何かしら安全保障の上において不安なということで、軍事費を出しておるわけです。これも世界の先進国で一番少ないことは御承知のとおりですからね。予算の七%ぐらいの防衛費というものは、やはり世界にないですからね。こういうこともあるし、もう少しやれという声は非常に強くなってきている、やらざるを得ない、というのが大きな方向だと思う。そういうことを考えますと、やる以上は、しかも日本でやりたいことがたくさんある中で、援助をしようというんですから、有効にその援助が使われるような努力をすることが、これは国民に対しても当然の責務ですから、そのためには、日本の海外援助の体制というものは、いまやはり何かばらばらという御指摘がありましたが、ばらばらとも思いませんが、なかなか、これは各省がいろいろ窓口が分かれておって、もう少し行政機構を改革せよというんではないのですが、もっと一体で海外の援助ができるような仕組みにしなければならぬし、また輸銀と海外協力基金などについても、これはいろいろ検討しなければならぬ点がある。ことに金利の点なんかでは、とても世界の要請にこたえられないわけですね。輸銀の金利というのは五・七五%ぐらいのものでしょう。ところが、もう先進国の会議では、二十五年以上、三%以下というのでなければ援助でないという採択が、DAC、いわゆる開発援助委員会、あるいは国連貿易開発会議、こういうので、そういう勧告が採択されておるわけですからね。とても日本の条件とは違うのですから、一ぺんにそこへ日本はなかなか行きにくいにしても、そういう大きな世界の流れがあるわけですから、やはり日本はもっと、いままでのような状態ではなくして、なるべく世界的な要請に近づける努力をしなければならぬ。そのためには、御指摘のような、援助の国内体制というものも一ぺん検討しなければならぬ段階に来ておる。これは検討を現にいたしておりますし、この国会には間に合いませんけれども、次の国会を目当てに、必要があれば法律改正等もいたしたいという所在で、検討を加えておる次第でございます。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 いまのお答えの方向でなければならぬと、私も思うのです。大臣も御記憶がありましょうが、例の経済協力基金問題にいたしましても、外務省外務省のほうでこれを持ちたい、通産省通産省の、あるいは大蔵は大蔵の立場から、全く奪い合いみたいな形、それで、経済企画庁がこれを所管するという形にはなった。実際にこの経済協力基金の問題にいたしましても、所管である経済企画庁がこれは総合計画を立てるという意味において、経済企画庁がこれを所管するというのは、なるほど筋が通ったようであるけれども、実態にはたしてそれがそぐわないことはないのであろうか。どうも実際にそぐわないという面が私はあるような気がいたします。また、技術協力の問題にいたしましても、政府ベースの技術協力がある、民間ベースの技術協力がある。やっていることは違っているのか、やっていることはみな同じなんですね。研修生の受け入れの問題にいたしましても、あるいは専門員を派遣する問題にいたしましても、変わらない。そうして政府ベースの場合は、国が一〇〇%これを負担しておる。民間の場合は七五%程度まで実は補助であって、しかし本人負担というものは別にないので、それぞれの団体が二五%ぐらいは負担する。こういうことも、どうも、技術協力の質的な違いというものがあれば別なんですけれども、そうではないと思います。全く私は、これはむだなことで、官庁のそれぞれの立場からともかく多元化している方向というものは、実際改めていかなければいかぬ。臨調の答申なんかにいたしましても、これは日本の頭脳が集まって、長い問時間をかけ費用を投じて、ああいう答申をしたわけですから、これはやはり一元化の方向に遊んでいくということですから、やはり私は、いま大臣がお答えになりましたように、ほんとうに低開発諸国からも、日本は実のある経済協力をしたということで喜ばれるようなことでなければならないし、また、日本のせっかくのそういう協力というものが効果あらしめるような形でなければ、私はならないと思います。そういう点については、重ねてお答えはいただきませんが、ひとつ十分勇断をもって対処していただきたいということを要望いたしておきます。  次に、いまの協力関係してくるわけですが、ケネディラウンドの妥結に伴って要請されてくるのは、低開発国の特恵関税の問題になるわけです。このことはどういう御方針を大体持っておられるのであろうか、ひとつその点を伺っておきたいと思います。
  59. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、ケネディラウンドというものは、先進工業国の貿易の拡大を目ざすラウンドですね。今度は一応あれでその問題はけりがつきましたから、今後は、問題は、後進国のラウンドに移ってくるわけですね。そうなればどういうことが起こるかといえば、御指摘のように、特恵関税の問題、あるいは第一次産品の輸入促進の問題、こういう問題がさしあたり国際的な規模で論議される場は、来年の二月ニューデリーで開催を予定されておる国連貿易開発会議がこの場になるわけです。それまでの間に、日本は、いま中村さんの御指摘のような特恵関税などについても、日本の方針をきめなければならぬわけです。いま外務省の中にも、こういうスタディインググループをつくりまして、そうして各省とも連絡をとりながら、ただいま検討を加えておるわけです。それはもう、特恵関税はだめだ、貿易自由の原則に反する、ということだけで日本がやっていけない一つの国際情勢が生まれてきている。そこで、これは前向きに検討せざるを得ない。しかし、あまり前向きに検討いたしますると、日本の中小企業などに直ちに影響を与えるということで、実際にこの特恵関税というのは、日本が一番苦しい立場に追い込まれるわけであります。したがって、日本の産業という場も頭に入れながら、世界的な要請にも日本がこたえていかなければならぬという、まことに特恵関税問題というものは、日本としては、よその国よりも困難な問題でありますが、前向きの検討を加えたいと、いま検討を始めておる次第でございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 次にお尋ねをしてみたいことは、万国博覧会がいよいよ積極的な準備段階に入っております。いわゆる名前は万国博覧会、その名実ともに、私はそのとおりでなければならないと思います。御方針として伺いますが、共産圏であろうとなかろうと、すべての国に対して、この万国博覧会に参加をしてもらうということでなければならないと思うのです。その点、大臣はどのようにお考えになりますか。
  61. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうも、万国博覧会というのは、万国博覧会条約によって、政府が招請をいたすわけでありますから、国交を回復しておる国に――招請状を出すにしても、外交機関がないということでは、なかなか出すにしても円滑にまいりませんから、従来とも、各国の例を見ても、国交を回復しておる国というので、万国博覧会の招請状を出しておるようでございます。日本もまたそういう考え方のもとに、今日まで百二十六カ国に招請状を出したのでございます。その中にはむろん共産圏も入っている。ソ連のごときはもうすでにやってまいりまして、敷地を内定するという段階で、共産圏も非常に熱心な国もある。しかしそれは、国交を回復しておる国ということを基準にして、万国博覧会の招請状を出しておる次第でございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、その招請をしていない国というのは、具体的にはどういう国ですか。
  63. 三木武夫

    ○三木国務大臣 近くで申せば、外交関係のない国ですから、北鮮、北ベトナム、中共、そういう国々が、近くにはあるわけでございます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 私が調査したところによると、大臣がお答えのように、わが国と国交のない国、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、モンゴル人民共和国、ベトナム民主共和国、ドイツ民主共和国、アルバニア人民共和国、アンドラ共和国――フランスとスペインの国境にある共和国ですが、こういう七カ国ですか、私はどうもこれを見て不可解に思うのです。中国との貿易は、大臣も予算委員会で私の質問にもお答えになったとおり、積極的に進めていかなければならぬと、相当重視していることは、これは事実ですね。この万国博覧会に、国交を回復していないからということによって、中国その他の国を招請しないということは、私はおかしいと思うのです。大臣としては、これでいいとお思いになりますか。
  65. 三木武夫

    ○三木国務大臣 できるだけ、万国博覧会には多数の国が参加してもらいたいと私も思いますけれども、外交関係のない国には、招請状を出すといっても、実際出すルートがちょっとないのですから、実際問題として、各国とも、国交未回復の国に対しては招請してなくて、いままでの万国博覧会というものは開かれたというのが例でございますので、特に共産圏を排斥するという意図ではないのでありますが、従来の慣行に従って、日本も国交回復国だけに招請状を出したということでございます。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 スポーツ関係に対して、国交を回復していない国を参加させるといったような事例はあったでしょう。
  67. 三木武夫

    ○三木国務大臣 スポーツにはあるようですけれども、万国博覧会の場合には、いつも、国交を回復しておる、国交関係のある国だけに招請状を出しておるのが慣例でございます。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど大臣がお答えになって、国交回復をしてない国なんだから招請する方法がないのだ、こう言われる。いわゆるルートの問題に重点を置いたお答えがあった。それならば、スポーツの場合だって同じなんだ。だから、経済問題、いわゆる万国博覧会が、経済効果というものを大きく発揮している、ひいてはそれが国際親善なんかにも通じてくるわけなんだから、いろいろむずかしい関係等が、国際情勢の立場からあるということはわかりますけれども、こういうようなことにおいてこそ、前例がどういうことであるのか、私もわからないのですけれども、勇断をもってこれを参加させるということこそ、私は三木外務大臣に課せられた使命じゃないかと思うのですね。あなたが外務省入りされてもちっとも日本の発展も進歩もない、こういうことではどうにもしようがないと思うのです。アジア太平洋圏構想にいたしましても、せっかくあなたは構想を持っていらっしゃるわけですから、決算委員会におきましてはそのことに触れませんが、一面から言えば、先ほど来あなたがお答えになったような、そういうブロック経済的なもの、国際性というものを強く持って、そういう方向に進んでいくという面からすると、また矛盾を感じる向きもなしとしない。だから、あなたによって、その吉田書簡の問題等その他いろいろな問題が排除されていく、問題がやはり前進する、前向きで解決するという方向でなければならぬ。そのことについてもお答えを願いたいと思いますが、最後に、ひとつその点をまとめてお答えを願っておきたいと思います。  それから、これは新聞に報道されているのですが、原爆記録映画の撮影をされた貴重な資料が、アメリカに実は持ち去られておるわけです。ここにおられる白浜委員なんか、よく御承知になっております。これを何とか日本に返してもらいたいということは、悲惨な原爆の被害を受けた者は言うまでもなく、長崎、広島の両市にとりましても、これは長い問の願いなんです。ところが、最近アメリカはこれを返還してもいいというような考え方が実はあるんだということが伝えられて、非常に喜んでおるわけなんですが、この点はどういうことになっておるのであろうか。返してもらえるということなのかどうか、ひとつ伺ってみたいと思います。
  69. 枝村純郎

    ○枝村説明員 その原爆被害の記録映画というものは、撮影がどういう経緯で行なわれたか、また、現在アメリカに渡っているようでございますが、これがどういうことでアメリカに渡ったのかというふうなことも、必ずしもはっきりしない点があるわけでございます。それで、かねてから、民間団体の方々からアメリカ政府に対して、こういう貴重な学術的な記録でもあるし、日本の国民にとっては歴史的な意義を持つものだ、こういうことで、ぜひ返してほしいという要請はあったようでございますが、実は政府に、こういうことを正式に交渉しようということで、特に依頼もございませんし、私どものほうにも、文部省からの御相談もなかったのでございます。ところが、去る五月十七日でございましたか、AP電で、いま先生がおっしゃいましたように、アメリカがこれを保有しているということを認めたという記事が流れまして、またアメリカの新聞にもいろいろ報道されましたので、実はワシントンにおきまして、こういうことがあるというわが方の大使館からの報告がございまして、ワシントン、東京で、内々アメリカ側と話し合いを実はしていたわけでございます。ところが、この映画の作成されました経緯というものは、先ほど申し上げましたように、必ずしもはっきりしない、そういうことで、所有権の問題その他いろいろあるようでございます。これは文部省のほうで御調査願っているわけでございます。私どもといたしましては、そういう所有権の問題その他は、日本政府の責任において何とか処理するから、とにかく、返還と申しますか、これは所有権がもしアメリカにある場合にはどういうことになりますか、その管理を移してもらうと申しますか、そういうことについて、アメリカ側に要望いたしております。それで、まだ話し合いが続いておる段階でございまして、はっきりした見通しというものは申し上げかねるのでございますけれども、私が持っております感触といたしましては、アメリカ側も、日本側が、これは反米感情云々というようなことでなくて、貴重な学術的な資料として使いたい、原爆被災国である日本がこれを保管したい、こういう純粋な気持ちに出ているということは、十分認識しているようでございまして、何とか国民の要望に沿い得るように解決し得るのじゃないか、このように思っております。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、いま北米課長からお聞きのとおりですが、これは確かに学術的、歴史的な貴重な資料です。これはひとり長崎とか広島の原爆都市の人たちの願いだけではないと思うのです。だからぜひこれは返してもらわなければならぬ。アメリカも返してもいいという空気になっているということですから、大臣、ぜひこれを返してもらうように交渉を進めていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  71. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのように努力をいたします。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど申し上げました貿易船の問題は、これはだいぶん時間がかかりますから、まだ政府委員との問で詰めてみたいと思います。  吉田委員質問をしたいようでありますから、もう一点だけ、大臣に関係いたしますから、伺いますが、その前に政府委員から伺っておきます。  在外公館施設関係費として先ほど三億八百七十二万七千九百四十一円という説明があったわけですが、この内容をひとつ明らかにしていただきたい。その点を伺ってからお尋ねしますが、一応説明してください。
  73. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 ただいま御質問がございました、在外公館施設関係費三億八百七十二万七千九百四十一円は、前年度からの繰り越しの額でございます。その内容は、パリにございます在仏大使館とOECD代表部の事務所の合同建築をやっております。その費用が一億四千七百万円余りございます。それとナイジェリアの大使館の事務所四千三百万円、それからインドネシアの大使館の事務所一億一千八百万円、これが繰り越しましたものの合計でございます。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、この在外公館の土地だとか建物の借り上げを実はやっておるのではないかと思います。この点はどうなっていますか。
  75. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 在外公館、公邸、事務所そのほかPRセンターなどというものもございますけれども外務省の方針といたしましては、できるだけ土地も建物も国有化していくという方向で努力いたしておりまして、年々大蔵省並びに国会の御理解を得て、その予算を増しつつあるわけでございますけれども、現在におきましては、約一六%程度を国有化したにすぎないわけでございまして、そのほかの事務所、公邸というものは、依然として借料を払って借りているという状況でございます。それで、先ほど申しましたように、外務省はこれを国有化する方針でございますけれども、土地により、国により、どうしても買うことができないところもございますので、そのできる範囲内で、国有化を進めたいというふうに考えております。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 借用料というのですか、それはどの程度払っているのですか。
  77. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 四十年の予算では約八億、厳格に申しますと、七億七千六百万円でございます。
  78. 中村重光

    中村(重)委員 いまのは四十年ですね。四十一年、四十二年とずっと上がってくるのでしょう。四十二年の見通しとしてはどの程度になると思いますか。
  79. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 四十一年の予算では、八億六千五百万円でございます。
  80. 中村重光

    中村(重)委員 あなたから先ほどお答えになりましたように、早く国有化したい、これは白浜決算委員長当時、当委員会で、早く国有化せよ、そういうことを強く要求しているわけですね。借り上げ料を八億も九億も払うなんて、こんなむだなことはない。おそらく大臣は御存じないのだろうと思うのですが、どういう事情があるか知らぬけれども、何をしているのです。こういうばかげた費用を払うということ、それもいけないことなんですけれども、あまり借りてばかりおるというのもかっこうのよいものじゃないでしょう。やはり国有化をする、万難を排してこれをやるということじゃないとだめなんですね。この点、大臣、いまお聞きのとおりなんですが、どう思われますか。
  81. 三木武夫

    ○三木国務大臣 原則的には、中村さんと同感なんですよ。また、やはりこういう地代などを八億も払わないで、国有化すべきである。ただ、いろいろな事情はある。適当な土地がないとか――公館は、どこでもというわけにいかないのですね。どこでもいいというわけではないわけですから、そこにやはり土地の条件などでむずかしいところがあって、なかなか、考えてみればむだと思われるようなことになっているのだと思いますが、今後、御趣旨を体して、国有化のために努力をいたします。
  82. 中村重光

    中村(重)委員 大臣がきちっとした答弁をされたのですが、そこで、日本の場合、日本のそういう在外公館は、いま伺ったように、相当借りている。今度は、外国の在日公館ですね。東京にそれぞれ、アメリカだとかイギリス、フランス、ソ連その他すべての国の公館があるわけですが、これはどうなっておりますか。
  83. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 国によって違うわけでございまして、私の現在承知しております範囲内では、イギリス、フランス等は日本の土地を借りております。アメリカは国有化しております。ドイツも国有化しております。その他、国によって違うわけでございますけれども、概して申しますと、戦後わが国に、東京に在外公館を開きましたような国は、借りている国が多いということでございます。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、アメリカとかソ連はいつごろ国有化になったのですか。
  85. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私いま手元に資料がございませんので、正確なことは申し上げかねるわけでございますけれども、アメリカの場合には、事務所につきましては、戦後これを買い上げたと思います。それから、ソ連の土地、建物につきましては、私、ちょっと記憶ございませんので、お答え申し上げかねます。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 イギリス、フランス、こういう国は、民有を借りているのですか、あるいは国有の土地、建物を借りているのですか。
  87. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 イギリス、フランスは国有地を借りているわけでございます。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、イギリス、フランスに国有地を貸しているということになってくると、その貸し付け料というんですか、それはどのくらい取っているのですか。
  89. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 現在、手元に資料がございませんので、正確には申し上げられませんけれども、そう高額ではないと承知いたしております。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 歯切れの悪い答弁です。そう高額ではないと言っていますが、幾ら取っているのですか。
  91. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 これは国有財産でございますので、大蔵省国有財産局のほうで取っているわけでございますが、私、いま手元に資料がございませんので、その額については、いま申し上げることはできません。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 国有財産だから、大蔵省の所管だ。外務省が、アメリカ大使館のは、国有地であるとか、また、買い上げたんだとか、こう言っておる。そこで、イギリスとかフランスの大使館が使っている土地、そういうものがいわゆる国有財産であるということを知っておられる。それを貸し付けておる。それがどの程度の貸し付け料を取っておるかということがわからないということはないじゃないか。それでいいですか。答弁しにくいから、そういうことを言っておるんじゃないか。
  93. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 先ほど申し上げましたとおり、国によって、もちろん借料が違うわけでございますが、いま資料が私の手元にございませんので、あとで御説明あるいは資料提出ということにいたしたいと思います。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 実際には取っていないんでしょう。ただで貸しているんでしょう。だからそういう答弁をしておる。でなかったら、そう高くないんだということなら、非常に安いんでしょう。はっきり答弁できるところまで答弁したらどうですか。一円も一銭も全然違わぬように答えろとは言っていない、どうですか。
  95. 三木武夫

    ○三木国務大臣 本人は、何も隠す必要がないのですから、知らぬのですから、答えろと育っても無理ですから、調べまして、これは資料として出します。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、時間がございませんから、今度吉田委員質問してもらいます。電話でわかりますから、あとで続けます。ですから、あとお答え願います。
  97. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 吉田賢一君。
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 外務省関係につきまして、インドの食糧危機の救援の問題について、ちょっと一点お聞きしたい。  これは実は去年の二月に、ガンジー首相が、ケララ州の食糧事情が好転するまで、一日わずか六オンスである米の配給を私は辞退します、と言ってサインをしているのが、世界週報に出ております。この記事と写真を私見まして、人道的なある大きな政策上の打つ手が、何か知らぬ、アジアの問題について一つあるような感じが実はしたわけです。  そこで、一体インド問題というものは、二年連続の食糧危機、そうして若干の救援を行なわれておるようでございますが、思えば人口も約五億あるらしゅうございます。これは人口の比重から見ても、またアジアの連帯の立場から見ても、非常に困窮している危急な状態が続いている点等から考えても、日本は先進国といたしまして、経済の実力から、あるいはまたアジアの指導的な使命から考えても、緊要だと考えますので、この食糧危機の救援を契機としまして、相当積極的な手が新たに計画されてよいのではないだろうか。そういうことはないでしょうけれども、もしこの五億の国民が、われわれの意図するような平和に協力しない体制にでもなっていけば、たいへんなことではなかろうか、こういうことも考えられますので、これにつきまして、根本的に、日本としてどういうような大きな手があるのだろうか、この点を伺っておきたいと思います。
  99. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田さんの御指摘のように、インドはアジアの動向に関して重要な影響を持つ国の一つであると思います。御指摘のような二年続きの飢饉で、非常に食糧の危機におちいっているわけでございます。これは国際的にもこれを助けなければならぬ。先般も、日本へアメリカのロストウ氏が参りまして、インドの食糧飢饉を助けようではないかというので、これはほかの西欧の先進国がまだどこも決定していないときに、ほとんど即座といってもいいくらいの早さで、日本が七百万ドルの援助を決定いたしたのであります。しかし、とにかく四億、五億といわれておるような人口、この食糧飢饉でありますから、どうしても国際的規模でなければ、この食糧飢饉を救うことはできませんので、各国と協力をしながら、この危機を脱出するという努力をすることが当面の課題であるし、さらに根本的には、農業の開発に力を入れなければならないと思います。インド政府もいままで野心的な工業化政策をとってきておったのでありますが、最近は、食糧生産の重要性に対して、政府が認識を非常に深めまして、今後は増産に相当国内施策の重点を向けていこうという傾向がありますし、これに対しては、世界的にもこれを援助していこうという風潮も生まれておりますし、一方また、技術協力の面では、八カ所にわたって農業技術指導のセンターなども設けて、日本は日本としてできることをしながら、さらに国際的な協力によって、インドの農業開発に寄与してまいりたいと考えておる次第でございます。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いま重大化しておりまする食糧危機に対処することは、当面の問題でございますが、私は、でき得る限り高い平和指導の視野に立って、今後ぜひ進めてもらいたい。また世界銀行を背景にしました経済協力の線もあるらしいですけれども、しかし、東南アジア諸国のそれと類似した何かの手がさらにそこに広げられまして、そしてもっと積極的に、日本との関係が緊密になり得ることを、私は希望しておきたいと思うのであります。  いま御指摘になりました技術協力の、農業技術協力の問題でございますが、これは日本の一種独得な一つの、開発途上国に対して寄与する手かと実は考えますが、これにつきまして、いまも、現に八カ所の模範農場ありということでございますが、相当これは成果をあげて、また向こうも高く評価しておることも事実のようでございますし、現に、視察してきた人の現地の視察談も、私は伺ってみたわけでございますが、これらの問題につきましては、やはり細々とやるのではなしに、これは四十二年の一般的な海外の技術協力の予算が、外務省では四十七億円ほどとっておるのですが、私の調べたところでは、三十七年から四十一年に三億七百万円ですか、ごくわずかなものらしいのですが、これはいろいろな角度から充実して、そしてもっと根本的にやはり農業の技術革新といいますか、収穫を二、三倍にするということをもっとぐっと広げていくというような指導が、何とかもっと積極的に打たれていいものではないだろうか。これは知る人は知っておりますけれども、しかし非常に高く評価されるべき、一つのきわめて文明的な救援手段だと私は考えておりまするが、これについて、たとえば派遣員の家族に対する処遇の問題でありますとか、あるいは向こうにおける新しい計画の過去における実績との比較、それをまた拡大していくというような方向であるとか、かなり積極的に検討を要する問題があるのではないであろうか。こういうふうにも考えられますし、また私実際を知りませんので、これは一つのほんの推測にすぎませんけれども、しかし稲作にいたしましても、稲作に伴いまする諸般の農業問題もございましょうし、そういうことも範囲を広げて調査をし、調査に基づいてさらに積極的に充実していく、こういうふうな線を一そう強く打ち出していくということはできぬものであろうか。これはインドとの将来の関係にかんがみまして、私は非常に重視する面でございます。  もう一点は、少し欲ばってものを申しますると、やはり出産率がめちゃくちゃに多いらしい。年に千万人もふえるというのですから、どうもその辺につきましても、これは家族計画とか、あるいは医療的な――特に白浜さんが、海外の医療等に対する大きな手をどんどん打っていきなさるのでありますけれども、インドに対しましても、やはりそういった面が一面大事ではないだろうか。これは後進国であればあるほど、やはり貴重な手段でございますので、こういうこともあわせて進めていくという手がないものであろうか。これはせっかく三木大臣いらしたのですから、インド救援、長く提携、平和的な寄与、こういうようないろいろな角度から考えまして、一つの御提案を申し上げるのですけれども、充実し、積極的に進めるということをぜひひとつ考えてもらいたいのですが、どうでございましょうか。
  101. 三木武夫

    ○三木国務大臣 非常にごもっともな御提案であります。インド政府自身も、最近家族計画というものを政府自体の大問題として取り上げておるようでございます。こういう点については、日本も協力のできる面は大いに協力したらいい。人口問題というのは、何か押しつけがましいような態度では反発を受けますから、やはり自発的なそういう運動が起こって、これで協力をするという形をとりたい。白浜医学博士などの協力を、今後も得たいと思っておるのでございます。白浜さんはたいへんにアジア医療協力に御熱心であります。それとまたいろいろ、人口問題ばかりではなしに、日本は、らいの療養所もやっておるわけであります。これはたいへんに喜ばれておるわけであります。らい病の撲滅を目標に非常に効果をあげておるわけで、私はこういう後進国援助というものは、単に金額の問題だけではないと思うのです。金額の問題だけではなくて、やはり何とかそういうふうにおくれておる国に、日本の誠意というものが、非常に端的に手の届いた誠意があらわれるような方式というものがすなおに喜ばれるので、ただ幾ら、何億ドル出したということだけでは、必ずしも現地の人々が喜ぶとは限らぬ。そういうことで、医療協力の面は、これは大事なアジアに対する日本の協力の一面であります。吉田さんの御提案は、私も全く同感でございます。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 せっかくそういった方向に向かって、インドとの関係をさらに一そう親善にせられることを希望いたしまして、一応質問を終わります。
  103. 鍛冶良作

  104. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、保留をしておったお尋ねをいたします。  この、四十年の八月二日午後五時四十五分ごろ、対馬の琴の沖合い二キロのところで、韓国貿易船永徳号というのが、韓国の警備艦から銃撃を受けて沈没をしたという事件が起こっておるわけであります。これは日本の領海内で起こった銃撃事件であるということになるわけであります。これに対してはどのような調査をされたのか、また調査の結果に基づいて、どのような措置を外務省としてはおとりになっておるのか、まず伺ってみたいと思います。
  105. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいま御指摘の点は、先ほど御指摘がございましたので、さっそく調査いたしましたところ、ただいまおっしゃいましたような事実があることを発見いたしました。事実も、ただいま御説明のございましたとおりの事実が大体起こっております。海上保安庁からも、そのような報告を、当時受けております。これに対しまして、八月九日に、外務省の担当課長が、在日韓国大使館の書記官を呼びまして、こういう事件が起こっておるようだが、もし事実であればはなはだ遺憾である。どうであるか、ということを申しましたところが、先方は、事実を調査する、ということでやりとりがあった記録がございます。その後の記録は、先ほど調べましたけれども、その後の記録がございません。注意を喚起して、事実を調査するという段階で終わっております。その後さらに厳重な抗議をしているかどうか、現在のところわかりません。もし抗議をしておらないとすれば、やや手落ちであったという感じを持っております。
  106. 中村重光

    中村(重)委員 お答えのとおりに、真相調査を駐日代表部に依頼をしておられるようです。それは、八月の三日依頼を受けたということを韓国は発表しておる。ところが、その後、抗議をしておられる事実はないわけです。ないばかりか、これの取り締まりについて協力するというようなことを韓国側に約束された、ということが伝えられておるわけです。その点は、調査の結果はどうなっておりますか。
  107. 小川平四郎

    小川政府委員 私の持ってまいりました資料は、九日に同様の申し入れをしておりますので、あるいは先生指摘のとおり、三日と九日に両方やっておるのではないかと考えます。その後の記録が、先ほど申しましたように、出ておりません。その後さらに強く抗議をしていないかと思います。その点は若干手抜かりであったという感じがいたします。  それから、協力の点につきましては、この問題につきまして、協力云々という記録は発見できませんが、この前後におきまして、やはり韓国側は、先ほど御指摘のとおりに、密貿易であるというので、密貿易取り締まり協力してもらいたいということを申しております。これに対しましては、先ほど通産省のほうからお答えがございましたように、わが国のほうといたしましては、これは何ら違法のない貿易であるので、直ちに韓国側の言うとおりには処置できないという問答をしておりまして、その後の状況は、先ほど御説明があったような状況で続いておるわけであります。
  108. 中村重光

    中村(重)委員 厳重に抗議をしてないという点は、私はあとで問題としてお尋ねをすることにいたしますが、外務省は、いわゆる韓国が言うところの密貿易船の動態、そういうものについて調査をしてもらいたい、協力をしてほしいというような要請があった事実はございませんか。
  109. 小川平四郎

    小川政府委員 私の担当しております限りは、ときどき一般問題として、先ほど申しましたように、密貿易取り締まり協力してくれという話は聞いておりますが、具体的に、どういう調査協力してくれというところまでは、言ってきておらないと承知しております。あるいは貿易関係のほうに、そういう話があるかと思いますけれども、私の承知しておる限りでは、特に具体的にごうこうという点で言ってきておる記憶はございません。
  110. 中村重光

    中村(重)委員 四十年八月十一日のソウル放送ですが、外務省は密船動態で情報を送ってきたということが伝えられております。これは、韓国新聞であるとかいろいろな雑誌などが、御承知のとおりたくさん出されていますね。その中に幾つも書いてあります。一つだけではございません。だから、外務省が、四十年八月十一日放送でございますから、この事件が起こったのが八月二日でございますから、九日後情報を送った。これから見ると、この永徳号の銃撃事件に対して厳重抗議をするというようなことじゃなくて、むしろ協力をするという態度をとっておるのじゃございませんか。あなたも、私の質問に対して調査の結果をいま明らかにされた。海上保安庁のほうからの報告も受けておるのだということでございますから、これが領海内であるということをお認めになった。いやしくも日本領海内で、韓国の警備艦が、たとえ自国の船であろうと、銃撃事件を起こすということは、完全な領海侵犯です。重大な問題ですよ。これに対して抗議をしない。そういうことがあってよろしいですか。そればかりではない。私の多数集めております資料によると、むしろこれに協力するという態度をおとりになっていらっしゃる。通産省から伺いましても、あるいは大蔵省の担当官から伺いましても、これは適法に行なわれておる。船員手帳におきましても、出国証明におきましても、これは偽造ではない、したがってこれは密貿易船ではない、という考え方をいまでも堅持しておられる。ところが、外務省が抗議をするのではなくて、これに協力するというような態度をとるということに対しては、絶対納得できないところなんです。これは、その後厳重に抗議をしたかどうかわからない、というようなことでは答弁にならないのです。どうですか。
  111. 小川平四郎

    小川政府委員 先ほど御指摘がございましたので、急遽当時の資料を調べたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、これ以後の資料をまだ発見しておりませんので、その後厳重に抗議があったかどうかは、ただいまのところ申し上げられません。ただ九日には、これが事実とすればはなはだ遺憾であるので、事実の調査をしてくれという申し入れをしております。その後事実の確認をして、抗議ということをやっておらないといたしますれば、手抜かりがあったことと存じます。ただ協力という点は、韓国側に情報があるということでございますが、特別に情報を流しておるという事実は、私どもの記録では発見できません。
  112. 中村重光

    中村(重)委員 私も、こうして質問するくらいでございますから、ずいぶん調査をしておるのですよ。それが、韓国から発表されたのでは、実はいろいろなことを言っているのです。まだ一回も取り締まりを受けたことはないとか、あるいは韓国の合同捜査班は、偽造した船員手帳を所持しているのに、税関は入国を黙認したと言っておる。韓国から連絡または抗議があったのかどうかわからないのですが、向こうではこういうことを言っておるわけです。その他、入管がとった態度、いろいろなことについて情報が実はあるわけですが、先ほど入国の関係あるいは税関関係においても、それぞれお答えがあったわけでありますが、入管のほうではきわめてあいまいな答弁でございまして、答弁にならなかったが、その後、休憩の時間の間にお調べになったのでございましょうから、そのお調べになった結果について、ひとつお答え願いたいと思います。
  113. 中川進

    中川(進)政府委員 まず第一に、偽造、変造の事実があったかなかったかという点でございますが、まずさしあたり五月につきまして三十八名――これはほんとうに偽造であるかどうか、これは人間の判断することでございますから、あるいは真正なのかもわかりませんが、少なくとも入国管理官署におきまして、ほんとうのものでないであろうという心証を得まして、上陸を許可しなかったケースがございます。それはどういうのかといいますと、写真がどうも本人の顔と違う、それから青の高さが違うというようなことで、どうもおかしいということで許可しなかったケースがあるということがわかりました。  それから、先ほどの船員手帳云々の件でございますが、これは入管に――これも何しろ遠いところの話なんで、聞き違いがありますと申しわけがないので、若干の訂正をリザーブさせていただきまして、お答えいたしますと、入管に預かりまして、そうして彼らが上がったわけでありますが、その後、先ほどのお話の、韓国の金領事というのがあらわれまして、そして、その船員手帳を見せてくれということを入管に申したのでございます。これは十一月二十二日でございます。そのときに、入管のほうは、これは困るということで拒絶いたしましたところが、韓国領事さんは、おそらく海洋号の乗り組み員に話したのでありますか、船長が参りまして、そしてその船長さんが、その乗員の乗員手帳を返してもらいたいということであったので、入管はそれを船長さんに返還したのでございます。そうしたところが、その船長から、今度は韓国領事さんがそれを取り上げまして、そして写真をはがして持っていったというようなことを、私ども確かめたわけでございます。
  114. 中村重光

    中村(重)委員 私は現地に行ったんですよ。関係者と会ったんです。そして調査をしているんです。本人に返したんじゃないのですよ、入管は。領事に渡している。そこでばりっと破いてしまった。その上に、先ほど申し上げたセルモーターを船からはずして、そしてこの船を爆破してやるというような暴言をした。日本の官憲の前でやったんです。これは完全な破壊行為だ。これは、警備局長はまだ見えていないだろうと思うのですが、警備局長が見えたら、これは外交問題ということでなくて、地方官憲との接触になるんだ、こういうことですから、どういう扱いをしておるか、警備局長見えたら御質問したいと思いますが、少なくとも、あなたは先ほどは答弁できなかったのだから、いま調査をされて、それだけでも答弁するようにされたという努力は私は認めます。しかしその調査は間違っていますね。どうですか。
  115. 中川進

    中川(進)政府委員 私は、残念ながらまだ対馬調査に行っておりませんので、ただいま先生の御指摘のとおりの事実であるか、私どもが、いまわずかの間でございますが、調べたのが事実であるか、何とも申し上げかねる次第でございまして、その点はさらに十分調査いたしまして、後刻またあらためて御報告させていただきたいと思います。  それから、領事さんがいまの破壊活動的行為をなしたとか、あるいは脅迫的言辞を弄したとかいうことは、これは入管の問題ではございませんので、ひとつ御了承願います。
  116. 中村重光

    中村(重)委員 それはいいです。それはいわゆる地方官憲との接触という、先ほどのアジア局長お答えですから、それはそれなりにお尋ねすることにいたします。  税関のほうで、韓国からこういう発表がなされていますが、これを確認されますか。合同捜査班によって拘束された船長金と機関長丁は、六回密輸船に乗り対馬に行ったが、日本税関員の検査は一度もなかったと、日本税関当局の密輸補助行為を暴露した、こういうことが書いてあるわけです。もう一つ私が持っておる資料によると、税関がその後の取り締まりを、この貿易が行なわれないように協力をいたしましょう、そういうことを約束したということが書いてあるのです。最近の税関の扱いはどうかと見ていますと、非常にきびしい扱いをされている。これではどうにもならないのですという不満を、実は関係の業者の人たち、あるいは自治体の人たちも言っておる。その点、あなたの先ほどの答弁は、案外明確にお答えになったんだけれども、いま私が指摘いたしましたようなことについては、どうなっておりますか。
  117. 佐藤健司

    佐藤説明員 御質問の点でございますけれども、先ほどお話し申し上げましたとおり、出港許可書等につきましても、いままで偽造等によって、私どもが摘発したものはございませんし、何らそういう、いま先生がおっしゃいましたような事件も起こっておらないわけでございますので、取り締まりを特に厳重にしておるというような面も、私聞いておりません。
  118. 中村重光

    中村(重)委員 海上保安庁は、この永徳号の銃撃事件に対しては、外務省にもそのことを報告をしておられるか、あるいはまた、韓国側からこれの取り締まりについて協力要請されたことがあったのかなかったのか、また、これに対してはどういう態度で臨んでおられるのか、伺ってみたいと思います。
  119. 長野義男

    ○長野説明員 永徳号に関しましては、先ほどアジア局長から御答弁がありましたように、事件直後、外務省に詳細報告いたしております。なお、その後、韓国当局から、これが取り締まりについての依頼は、私どもは受けておりません。
  120. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ、一つ一つ確認をしてまいります。  海上保安庁としては、これは適法に行なわれている貿易船である、したがってこれを取り締まりをする必要はない、そういう考え方の上に立っていると了解してよろしゅうございますか。
  121. 長野義男

    ○長野説明員 先ほど来、外務省の方から御答弁がありましたように、船員手帳が正当のものであり、あるいはまた出港免状も正当であるというような点で、特に違反事実はございませんので、これを検挙した事実もございません。
  122. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省佐藤務課長に、お考え方を明らかにしてほしいと思います。先ほども申し上げたように、これは適法に行なわれている貿易船である、いままでもそういうことで対処してきたんだが、この後も、これは密貿易船じゃないのだ、したがって、この貿易は従来どおりこれを認めていく、もしこれに対して不当な取り締まり等をやっておるという事実があるならば、これを排除していくという考え方である、と了解してよろしいですか。
  123. 佐藤健司

    佐藤説明員 今後とも、私ども監視、取り締まりの責任を負わされておる官庁でございますので、正当な取り締まりは、これを続けなければならないと思います。ただ、いままで申し上げましたように、現在まで、そういう事件等はないわけでございます。
  124. 中村重光

    中村(重)委員 ないから、従来のとおりの、いわゆる船員手帳あるいは出国証明等によって適法に行なわれている貿易船であるのだから、従来どおりこれを認めていくという考え方である、と了解してよろしいかということです。
  125. 佐藤健司

    佐藤説明員 今後とも、取り締まりの面につきましては、私ども責任を持ってやらなければならないと思いますが、いままでのところは、そういう状況がないものでございますので、特別に取り締まりを厳重にするというようなこともないと思います。
  126. 中村重光

    中村(重)委員 入国管理局中川さんに伺いますが、先ほど私が、この六月四日付の密入国者に対する貿易船の問題について、厳原出張所の広渡繁男所長の談話を読み上げたら、そういう事実はないということをはっきり否定された。これも適法に行なわれている貿易であるから、したがって、これを取り締まる必要はない、いわゆる密貿易船ではない、そういう考え方を明らかにされたわけですが、今後とも、いまお答えになりましたような態度で対処していかれるという考え方であるのか、この点はいかがでしょうか。
  127. 中川進

    中川(進)政府委員 しばしば申し上げますように、入国管理事務所といたしましては、密貿易とか、あるいは商用であるとかということではなくて、要するに、人の管理、あるいは船の管理でございます。それから、正当な船員手帳を持っておる限りは、私ども何も、入国ないし上陸に対して妨害しようとか、じゃまをしようというつもりは毛頭ございません。
  128. 中村重光

    中村(重)委員 私が申し上げるのは、韓国は、三十トン以下の船は密貿易船であると、こう言うわけです。いいですか、船員手帳がどうであろうと、出国証明がどうであろうと、それは偽造なんだ、三十トン以下の貿易船というものは、韓国貿易船として認めていないのだから、一切偽造である、そういう態度で臨んできておる。この銃撃事件も、そういうことから起こってきているわけです。したがって、日本政府としては、三十トンであろうが、五十トンであろうが、何トンであろうとも、船員手帳あるいは出国証明、そういうものが偽造ではないということが従来とも確認されて、それを認めてきたのだから、従来のとおりのものであるならば、これを不当に取り締まるということがないようにしていかなければならないのだ、こう言うわけです。その貿易船に乗っておる人たちが、たとえ韓国人であろうとも、貿易によって、日本の多くの中小企業者であるとか、あるいはその他の住民であるとか、そういう人たちの生活というものにやはり重要な影響をもたらすことでもあるのだし、その貿易船に乗っておるところの船員というものは、一つの基本的な人権というものがあるんだから、韓国側のそうした言いがかりというものに支配されることなく、き然たる態度を持って対処していかなければならない、私はそういうことを実は申し上げておるわけなんです。あなたがいまそういうことをお答えになったのだけれども、私が何回もくどいように申し上げるのは、私は、この新聞は誤報であるとは思っていないのです。少なくとも、あなたのほうの直接の指示によって、この厳原出張所長がこういうような動きをしたのかどうか、あるいは自発的にやったのかどうか。あなたの答弁によると、そういうことは指示してはいないということなんだけれども、少なくとも、この所長は、関係官庁の人たちを集めて、そういう態度で臨みますよということで協力を求めているのだから、あなたが何か、この新聞なんというのは全然問題にならないのだというような考え方で答弁されるということは、私は問題があると思うのですよ。あなたのお答えのとおりだとすると、完全にこの新聞は誤報だということになる。私は現地へも行ったのだ。また先ほども申し上げたように、現地からも実はやってきた。二、三日前も現地の議会の議長が来られた。その真相も実は聞いた。なお足らないところがあったので、私が問い合わせたところが、先ほど電報が入ったのだ。だから、あなたのように、そうしらを切った答弁をされても、私は納得いかないのです。これが誤報であるというようにあなたが言われるのならば、このことについては、出先が不当な取り締まりをやっているというようなことが事実あるのならば、調査をしてそれを改めさせるようにいたします、決してそういう不当な取り締まりをやって貿易を阻害するようなことはいたしませんと、はっきりお答えになれば、それでいいわけでしょう。
  129. 中川進

    中川(進)政府委員 先ほど新聞をお読みになりましたわけでございますけれども、私は一ぺん承っただけで詳細はよくわかりませんでしたが、よく調べてみます。ただ一つ確かなことは、私からそういう集まりを催すという指示をいたしたことはございません。  それからまた、しばしば申し上げますように、私どものほうといたしましては、たとえ相手の乗ってくる船が三十トンでありましょうと、何万トンでありましょうと、とにかく正当な正規な船員手帳を持ってくる者に対しましては、その上陸を阻害するということは何らございません。
  130. 中村重光

    中村(重)委員 アジア局長に伺いますが、その抗議をしたのかどうか、調べてみないとわからぬとおっしゃったが、やっていないということになると、どういうことになるのですか。
  131. 小川平四郎

    小川政府委員 さらに事実の究明をいたしまして、事実が判明したところで、厳重に抗議をいたしまして、こういうことの二度と繰り返しのないように保障を求めるべきであったと思います。やっておらないといたしますれば、はなはだ手落ちであって、遺憾だと思います。
  132. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど各省の関係官に私がお尋ねしたのは、あなたがお聞きのとおりです。外務省としましても、適法に行なわれている貿易である以上は、韓国からこれに対して、密貿易船であるからこれを取り締まれ、これに協力をしろという要請があっても、そういう不当な要請に対して協力する必要はない、そういう考え方でこの後とも対処される、こういうことで了解してよろしいですか。
  133. 小川平四郎

    小川政府委員 先ほど通産省貿易振興局長から説明がありましたとおり、わがほうとしては適法貿易である、韓国側から見れば不適法貿易であるという矛盾がございます。この点は貿易管理の問題になりますので、通産省の意見に従って決したいと思いますが、わがほうで適法貿易であるという立場をとる限り、これに不当な干渉がないように、善処したいと思っております。
  134. 中村重光

    中村(重)委員 適法貿易であるかどうかということは、船員手帳が、いわゆる偽造でなくて、正規のものであるかどうか――そういうような関係書類によって、いままではこれは適法に行なわれた貿易であるということであったのですから、これは通産省も、先ほどそのとおりと答えられたわけですね。だから、先ほどの通産省の答弁であるならば、外務省としても、それは正当であると認める、こういうことでよろしいわけでしょう。
  135. 小川平四郎

    小川政府委員 そのとおりでございます。
  136. 中村重光

    中村(重)委員 次に、いま渡部外事課長が入られたようですから、伺いますが、昨年の八月でございますが、韓国福岡総領事館領事が長崎県対馬厳原に来られた。そこで、入管に預けておった韓国人船員船員手帳を、入管関係官が――領事と日本の官憲と、それから預けておったその船員、この三人が入管事務所に集まって、そこで船員手帳領事に渡した。ところが、その領事は、その手帳を船員に渡したのではなくて、これを破棄してしまう、そういうことをやった。それだけではなくて、その船員の所有であるかどうかわかりませんが、いずれにいたしましても、その船員が乗っておるところの船のセルモーターをはずして、そうしてそれを爆破するというような言動をやったということで、その貿易関係するところの人たちは非常に憤激をしているということが、実は私の調査によって明らかになった。この領事のそういった言動というものが行き過ぎがある。いわゆる慣習によって行なわれておるところの自国民の保護という線を逸脱して、日本の国内において破壊行為をやったと、私は指摘してもよろしいと思うのですが、そういうことに対して御調査になったことがあるかどうか、という点をまず伺ってみたい。
  137. 渡部正郎

    ○渡部説明員 昨年の八月とおっしゃったように承ったのでございますが、八月でございましょうか、その点をちょっと……。
  138. 中村重光

    中村(重)委員 私の調べによると、この新聞にはこう書いてあるのです。「とくに昨年暮れには福岡総領事館理事厳原を訪れ、抜き打ち検査船員手帳を押収したり、目印に船体に赤インクをかけるなど韓国側はかなり神経質な取り締まりを続け、先月は厳原から馬山に帰る途中の貿易船韓国税関艇に銃撃、逮捕されるという事件まで起こった。」こういうことなんです。「昨年暮れ」とこれには書いてあるのです。しかし私の調査したところによると、八月であったというようにいわれているのですが、あるいはその間、時間的なズレはあるかもしれません。
  139. 渡部正郎

    ○渡部説明員 昨年八月前後には、その種の事件と申しますか、事が起こったということは聞いておりません。
  140. 中村重光

    中村(重)委員 事件が起こったことは間違いないのです。そうすると、昨年の八月前後ということになってくると、いつか起こったことがありますか。
  141. 渡部正郎

    ○渡部説明員 昨年の十一月に、韓国領事の一人が、いわゆる変則貿易といわれております韓国船を訪問して、その種の事が起こったということは聞いております。
  142. 中村重光

    中村(重)委員 あなたが御調査になって、十一月というのだが、韓国領事が訪問しているというお答えがあった。領事の行動ですから、いろいろあなたのほうの出先としても、その動静について調査をされるということはあるでしょうが、特にそのことがあなたのほうに報告されているということは、ある種のトラブルが起こったということがあるのではないか。私の調査とあなたのほうの報告との間に多少の食い違いがあるかどうかは別といたしまして、何かが起こったということだけは事実じゃございませんか。単に訪れたということだけですか。
  143. 渡部正郎

    ○渡部説明員 私のほうの調査によりますと、十一月二十一日のことでございますが、領事韓国船を訪問いたしまして、船長以下船員の人と、いろいろ事情を聴取して、そのときに、船員手帳を調べたりいろいろしたということは聞いております。
  144. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうは、私に対して、事件を明らかにしようという態度で臨んでおられるとは思われない。あなたのほうで調査をして、これを事件にしなければならぬということがあるならば、たとえ韓国領事であろうとも、私は日本の法規に照らして調査もし、あるいは処罰すべきものは処罰をするという態度でなければ、韓国領事はかってなことをしてもいいのだということになってくると、大きな不安というものを起こすであろうし、また反発というものを持つことになるだろうと思います。ですから、その点に対しては、いまあなたのほうの調査の結果によると、これは事件にすべきものではない、そういういわゆる軽微なことだということでございましょうか。
  145. 渡部正郎

    ○渡部説明員 昨年の十一月二十一日の、ただいま申し上げました件に関しましては、当時いろいろな風評もございまして、警察としては関心を持ちまして、関係者その他の調査をいたしましたけれども、日本の法令に触れ、ないしは犯罪を構成する、そういう事実はないということで、結論を下しております。
  146. 中村重光

    中村(重)委員 そういう事実はないとおっしゃるが、先ほどあなたがおいでになる前に、船員手帳がどういう形に扱われてきたかということだって、明らかにされた。ただ違ったのは、一応船員に渡した、私の調査では領事に渡したというその違いはあるのですけれども、いずれにしても写真ははずしたりなんかして、その船員手帳が破棄されたということだけは、これは事実なんです。そういうことが許されていいのかどうか、事件にならないのかという点が問題なんです。  いま一つ船員手帳が破られてしまったということになってくると、その韓国人は、日本にどういう名目でもって滞在することができるのであろうか、それに対してどのような扱いをされたのかということは、私は問題になると思う。船員手帳も持たないということになってくると、それは密入国者になります。当然それに基づいての処置というものがされなければならない、それがどうされたのかということを御調査になりましたか。
  147. 渡部正郎

    ○渡部説明員 一つの問題点は、船員手帳の問題に関しましても、話を現地の者は聞いておりまして、調査したわけでありますが、われわれの判断といたしましては、犯罪を構成しないという結論でございます。あわせて申し上げますが、船員手帳を取り上げられた韓国船員につきましても、直接事情を聴取いたしましたけれども、その人たちが被害届けを出すとか、あるいは告訴する、告発するという気持ちも当時はなかったというふうに聞いております。  なお、船員手帳が破り去られたということでありますが、その後の滞在の問題に対しましては、これは一応私のほうの所管である前に、入管のほうのお仕事だというふうに考えますので、私から答えるのは遠慮させていただきたいと思います。
  148. 中村重光

    中村(重)委員 本人に会って事情を聴取したところが、これを告発するという意思は本人が持たなかった、そうすると、それが破られたという事実は、あなたのほうの調査によっても明らかになったということですね。そうすると、そういう、破るような行為をやった領事の行為というものが許されていいのかどうかということが、やはり問題になる。それから破られた以上は、本人船員手帳を持たなくなったわけですから、それに対してはどういう処置をするかということが当然問題にならなければなりません。どういう扱いをしたかということは、あなたのほうとしては当然御調査にならなければならない。また、警察としては、それを調査した以上は、船員手帳を持たないその韓国人に対してどういうことをするのかということは、当然の扱いとして出てこなければならないはずなんです。
  149. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまの――私が先ほど申し上げましたように、私どもの得ております情報によりますと、船員手帳を破ったという情報は得ておりませんが、いずれにしろ、とにかくこの海洋号のクルーが上がりましたときに、入管といたしましては、ショアパスを渡しておりまして、これは七十二時間有効でございますから、その間に日本を去るときには、何ら問題がないわけでございます。
  150. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは一般論としてお答えになっていらっしゃる。破ったということを聞いているのだ。写真をはずしたということは、船員手帳が破られたということでしょう。そうすると、日本の官憲としては、韓国領事のやった行為というものがきわめて不当であるということを考えたはずなんです。自分たちが正当にこれは認めてきたんだから……。そうですね。それはけしからぬと思ったはずなんです。だから、それに基づくところの措置というものがなされたはずなんです。私の調査によると、船員手帳は持たないけれども韓国領事のやった行為が間違いなんだから、一週間そのまま滞在することを認めた、そうして一週間後に帰ってもらった、そういう扱いをしたというようになっております。私が言っているのは韓国領事がそういう行為をしたということは、これは許されてはならないのだ。当然日本の法に従って、それぞれ処置されなければならない。船員手帳を持たなくなったその韓国船員に対しての扱いはどうしたのであろうかという、具体的なことをお尋ねしておるんです。だからして、それが一日も置いていいとか悪いとかということを言っておるわけじゃないんです。だから、一般論としてあなたにお尋ねはしていないわけなんです。外事課長のほうでこれを調査をした結果、別にこれを事件にしなければならないという考え方ではなかったということであるような、先ほどのお答えであったわけですが、私が指摘しましたようなことについては、当然これは事件にされなければならぬと思いますから、そういう行為をやった領事に対しては、日本の法に従って処置すべきであるということを、強く要求したいと思います。  なお、協定違反で送検をされた、沈没した韓国船の問題について、私はお尋ねをしたいこともありますけれども、時間の関係もございますから、これはまた別の機会に譲りたいと思います。ただ、この点だけは注意を喚起しておきたいと思います、日本の漁船が、いわゆる漁業協定による韓国のほうの専管水域に入った、そういう場合は直ちにこれが拿捕されて、そうして法に従って処分されております。先般、対馬の鴻島の付近において親子二人操業しておった小さい日本の漁船、それに乗っておった親子は釜山に連れていかれて、いま現に懲役に服しておる。ところが、韓国の漁船は日本の水域をどんどん侵しております。いままでは一回もこれを検挙した事実はございません。ところが先般、ただ一隻、日本の警備艇にぶつかってきた漁船が沈没をした。したがってそれを救助しなければならぬということで、実は救助をした。救助はしたけれども、これを救助をしたということだけでは済まないものだから、明らかに日本の専管水域を侵しておるんだから、これを何とかしなければならぬということになって、その漁船員が帰りましたあとで、書類だけを実は送検するということになったのです。これが一回だけです。いままで何十回となく韓国の漁船は日本の専管水域を侵しております。しかしそのつど注意をしたというだけで帰しております。日本の漁船が専管水域を侵したということによって、現に懲役に服して苦しんでおる。だから、韓国の漁船が専管水域を侵した、そういう行為をやった場合は、私は当然、外務省は水産庁とも話し合いをして、そして交換条件みたいなことだってあっていいと思うのです。こちらも見のがす、これを事件にしない、だがしかし、日本の漁船員が君のほうの専管水域を侵したということで刑に服しておる、これをひとつ帰してもらいたい、といったような外交交渉くらいあってよろしいのではないか。しかしそれはちっともなさらない。対馬の漁民というものは、非常にこの点に対する不安と不満を持っております。この後もあり得ることでございますから、ひとつこれらの点に対して、どのようにお考えになるのか、まずアジア局長お答えをいただきまして、これは非常に政治上の問題でありますから、田中政務次官の見解を伺ってみたいと思います。
  151. 小川平四郎

    小川政府委員 日韓漁業協定ができまする以前は、この地域におきましては、非常にトラブルがあったのでございますが、日韓漁業協定ができましてから、このトラブルが非常に減っておりまして、その点、私ども日韓漁業協定の効果を認識しておったのでございますけれども、不幸にして、ただいま御指摘のように、拿捕されまして、処罰された船があるわけでございます。一方、日本の漁船が専管水域に入っておる。韓国船も間々あるようでございますけれども、これは日韓漁業協定をなるべく円滑に実施いたしますために、海上保安庁のほうでも、特に悪質なものに対しましては別といたしまして、勧告、忠告によって退去を求めておるというふうに承知をしております。御指摘のとおり、日本といたしましては、なるべくこの協定の精神に沿いまして、円滑な漁業ができるように考えておるわけでございますが、たまたまこういうように入った日本船を直ちに拿捕捕するということは、なるほど法律上はできるわけでございますけれども、そういう漁業協定の精神に基づきまして、たまたま入ったものに、いきなりそのまま法を適用するということのなるべくないようにということは、この事件が起こりましたときにも、先方に強く申し入れまして、善処を求めたのでございますけれども、先方としては、いろいろ国内の問題もございまして、やはりこの規定どおりの法的処置をとるということになったわけでございます。御指摘のとおり、相互の協力によりまして、なるべくこういうものは防ぐという方針でいきたいと思いますので、わがほうの扱いぶりも、そのときはよく申しまして、善処を求めた次第でございます。不幸にして、本件については、法どおりの処罰がされた次第でございまして、私どもといたしましても、今後も協力精神によって、やたらに乗員を拿捕するということのないように、先方に強く要求するつもりでございます。
  152. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいまの領海侵犯の問題につきましては、まことに遺憾な事件でございまして、すでに四十年八月の事件でございまして、まだ妥結していないことは残念でございます。今後こうした不祥事件が再び起こらぬように、十分ひとつ注意をいたしたいと考えております。最近、両国の関係は、漁船取り締まり関係におきましても、拿捕主義から指導主義に転換をいたしておりまして、双方の監視関係におきましても、お互いに監視官を相互に乗り組みさして、共同で監視をしておるというような、相互協調の精神で取り締まりをいたしておるような状況でございますので、いまのような領海侵犯行為は、まことに最悪の行為でございますので、こうしたことが再び起こらぬように、今後十分ひとつ注意をいたしていきたいと存じます。  なお、前回のことにつきましては、いま少し詰めるべきであったと思いますが、詰め手が少し浅かったということは、まことに遺憾の至りでございまして、今後こうしたことのないように、ひとつ注意いたしたいと思います。
  153. 中村重光

    中村(重)委員 いまアジア局長政務次官お答えになったとおりでありまして、ともかく漁民も、何しろ専管水域と専管水域と重なり合っていますから、これは善意の過失ということがあるわけです。しかし、もうその専管水域を侵しておったというだけで拿捕される。そして処分されている。ところが、向こうの船はしょっちゅう入ってきているんです。きょうは海上保安庁がお見えですから、保安庁は調査していらっしゃると思う。そういう場合に、何も処分しない。だから非常な憤激を感じておる。自分たちだけがなぜいじめられなければならぬのか、韓国はどんなことでもしていいのか、外務省は、水産庁は、何をしているのかというので、非常な憤激になっているのです。だから、こういう点で、私は報復措置をとれとは言わない。そういうことにならないように解決するように努力をなさい。問題は、やはり専管水域のとり方に問題があったのです。漁業協定の際の原案は、決して専管水域と専管水域と重なり合っておったのじゃないのです。鴻島付近、済州島付近に資本漁業の漁場を確保するために、鴻島と干汝群島との間に直線基線を設定した。それから十二海里とったものだから、今度は専管水域と専管水域とが重なり合うようになったのだ。それで、あの零細な数多い漁民のことですから、決して意識的に向こうの専管水域を侵すのじゃない。何しろその間に公海もないわけでしょう。共同規制水域もないわけですから、ちょっと波があったら流れてしまうのです。善意の漁民に対して、そういう不幸な事態が起こらないようにやってもらわなければならぬと思うのです。この点に対しては、先般も予算委員会で、三木外務大臣にもお尋ねもし、考え方も明らかにしてもらっておるわけです。やはり根本を直さなければならぬと思うのです。  最後に、先ほどお尋ねをいたしておきました、在日の外国の公館のいわゆる借り上げの土地の問題、使用料の問題等々について、お答えを願いたいと思います。
  154. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 あとで相談して……。
  155. 中村重光

    中村(重)委員 あとじゃないです、委員長、これは重要な問題ですから、いま御答弁願いたい。
  156. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 先ほど、在日外国公館の借地料の問題につきまして御質問がございまして、現在、ある一部の公館につきましては、設置当時――明治初年当時、歴史的に見まして非常に古いものでありますから、その当時の経済価値に従って使用料を設定しておる。その当時設置した相手方、契約の相手方も、東京府という相手方になっておりまして、そういうような関係もございますので、現在の経済情勢から比較いたしまして非常に安い、こういう観点から、実はその一部の、外国公館を持っておる国々に対しまして、現在外務省といたしましても、大蔵省と協議いたしまして、いわゆる借地料の値上げを現実に交渉中でございまして、できるだけ早い機会にこの問題を解決いたすように、実は努力いたしておる次第でございます。この点ひとつ御了承願いたいと思います。
  157. 中村重光

    中村(重)委員 日本の場合、在外公館は、先ほどお話がありましたように、毎年毎年上がってきている。八億も九億もという、実にばく大な借地料とか家賃とかその他を払っている。ところが、在日外国公館に対しては、無償もしくはただ同然で、土地その他の貸し付けということでは、全く治外法権時代のそのままじゃございませんか。屈辱的もはなはだしいと私は思う。今日までそういうことを放置されてきているという無責任な態度は、きびしく指摘されなければならぬと私は思う。政務次官が、これは全くよろしくないことで目下これを交渉中である、こういうことでございますが、すみやかにそういう屈辱的なあり方というものを直して、向こうに正当な価格をもって買い上げを求めるように、あるいは適正な家賃、地代というものを徴収するようにする、すみやかにこれを実行するという考え方であるのかどうか。ただ話し合いをしておるということでは納得がいかないのです。ひとつその考え方を明らかにしてほしいと思います。
  158. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 政府といたしましては、できるだけ早い機会にこれが是正をはかるべく、努力をいたしておりますので、ひとつ御了承願いたいと思います。      ――――◇―――――
  159. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次に、総理府所管中、総理本府について審査を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田賢一君。
  160. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 総理府を中心に、青少年対策の問題について少し伺ってみたいと思います。時間の関係もありまするから、できるだけ要点だけを御質問をしたいと思いますので、御了承願います。  今日非常に重大化しておりまする青少年問題は、申すまでもなく、総理府の総合施策的な立場から考えまして、かなり根本的な対策をお持ちのことと思うのですが、一体、青少年対策のバックボーンともいいまするか、基本的施策、これは何に置いておられるでしょう。この点をまず伺いたいと思います。
  161. 上村千一郎

    ○上村政府委員 青少年の対策といたしましては、次代をになう人でございまするので、どうしても健全な育成、そしてりっぱな人間をつくり上げていきたい、こういうことでございまするが、政府といたしましては、この青少年対策の問題を担当いたしておりまするところの省は非常に多くございます。で、その施策、事務その他につきまして、総理府としましては、総合的な対策を立てる必要もある、調整もいたしていく必要があるということで、先生も御案内のように、青少年問題協議会というものがございましたが、昨年の四月から、総理府の内局としまして青少年局というものを発足させるとともに、青少年問題審議会が発足をいたしておりまして、ここにいろいろと多岐にわたる事項を諮問いたしながら、いま進めてまいっておるというのが実情でございます。  で、総理府が、青少年局といたしまして現在やっておりまするのは、青少年の健全育成のための環境を整備する、環境施設の総合的な対策を立てよう、あるいは青少年の海外派遣並びに受け入れ等の二つの柱を立てまして、いま青少年局がおもに活動いたしておるというのが実情でございます。
  162. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 問題の多様性も存じておりますし、また総理府その他文部、厚生等、十省庁にわたりましてそれぞれ事務を分担しておられること、これもわかっております。しかし、すでに二十年間もあらゆる施策を講ぜられましたけれども、どうも根本的に明るい方向が見出せないというのが現状ではないであろうか、これが世論であります。  そこで、私が聞きたいことは、よりよい環境、健全育成の目標、けっこうですけれども、もっと具体的に、やはり基本施策をどこに置くか、こういうことが必要でないのだろうか。バックボーンをどこに置くか、これが必要でないのだろうか。必要でなくして、きめがこまかく、多様性に即応するようないろいろな施策を行なう、あるいはそうかもわかりません。しかしそれでも、この段階に来まして、もう二十年の歴史を持っておるのですから、ここが重点だとか、ここがバックボーンだとかいうことがあってしかるべきだ、私はこう思うのです。これは、効果があがってだんだん明るくなっていっておるなら、こうまでお尋ねしませんです。どこか抜けています。それを尋ねるのですがね。環境であるとか、健全育成であるとか、あるいは海外派遣だとか、そういう個々の施策を、この際あなたに聞きません。総理府といたしましては、少なくとも総合の立場、だから根本的な施策は何ですか、こう聞くのです。
  163. 上村千一郎

    ○上村政府委員 実は吉田先生もおっしゃるように、どこか一本くぎが抜けておるような感じもある。何とかしなければならぬ。では、この点が悪いとかあの点がどうとかいうような個々の問題もございまするけれども、何とかひとつ積極的に、いわば国民が期待する青年というようなものを育成していこうじゃないかというような心がまえを持っておりまするが、具体的になりますと、各省いろいろな施策を持っておりますので、いま青少年問題審議会などとの御相談をしつつ対策を練っていっておるというのが、偽らざる実情でございます。
  164. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 日々の新聞等によりましても、やはり凶悪な犯罪とか目をおおうようなできごとの裏に、きっと少年があります。こういうことを思いますと、やはり根本的に、もう非行とかそういうことになる以前に、ともかく日本の人口一億として、十九歳以下が三千四百万と推定されておるらしいですが、この膨大な青少年を対象にする国策ですから、いまの段階におきまして、私は青少年問題審議会の答申なるものも読んでみましたが、このような案は、これは前から言うていることです。目新しいもの、ございませんです。まあそれはそれで必要でしょう。必要でしょうけれども一つの手で全体の解決の手はない、これも思います。思いますけれども、比較的重点を置かねばならぬ問題がどうしてもあろうと思いますので、この点なおあなたのほうで明らかになっておらぬらしいから、それならば、各省なりあるいは審議会等におきまして、重要基本施策を御相談になるときに、いま私が申しますような点について、やはり活発に根本的にひとつ討論してみたらどうだろうか。どこの省が持つとかなんとかいうことはこれはあとのことです。いまあるものをまとめてやるというだけでは済みません。ことし、四十二年度の予算を見てみますると、十省庁の青少年対策の予算総計が六百九十七億円に達しております。毎年五百億円以上のものが投ぜられていっております。それで前途は暗い。これでは申しわけないです。ですから、やはり内閣の重要施策ともなっておろうと思いまするので、これは総理府が中心となって、どこに一そう根本的な重点を置くかということを御検討をわずらわしたいと思いますが、その点どうでしょう。
  165. 上村千一郎

    ○上村政府委員 この問題につきましては、御趣旨に沿うような検討をいたしたいと思います。
  166. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは私見にわたりますけれども、私はやはり、特に家庭対策が重要でないかと実は考えるのであります。家庭対策をいいかげんにいたしまして、どんなに、学校にしても、社会にしても、あるいは行政の指導にいたしましても、いろいろな見聞を広げる、海外へ青少年を派遣することにいたしましても、根本は家庭でないだろうか。この点は、私もまことに寡聞ですけれども、若干、戦後イタリアが非行少年が少ないということを聞いて、先年イタリアで、直接カトリックの家庭訪問を数戸やってみまして、よって来たるところ、身に触れるような感じを覚えたのであります。やはり家庭対策に重点が置かるべきでないだろうか、こういうふうに考えるのですが、この点はどうでしょう。
  167. 上村千一郎

    ○上村政府委員 実は、先生もおっしゃるとおり、非常に重要だと思うわけでございます。それで、総理府に家庭生活問題審議会というものを設置いたしまして、この三月三十一日までに答申が出ることに相なっておったのでございますが、何しろ重大な問題と、多岐にわたるわけで、御熱心な審議会の委員の方々の御審議で、結論が出ないわけであります。それで、この国会におきまして、もう二年間延長していただくということで、御審議を賜わったわけでございます。もちろん、その間便々と待つわけでなくして、できるだけ早い時期に、いろいろと御意見も賜わりたい。もちろん審議会の御意見だけにたよっておるわけにまいりませんので、われわれのほうとしましても、並行いたしまして、いろいろと考えていかなければならぬ、こういうふうな立場に立っております。
  168. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 家庭対策の一つの出発点といたしまして、頭のはげた私がこんなことを尋ねるのはおかしいのですけれども、私は、やはり一番最初は胎児対策じゃないだろうかというふうに考えております。  そこで、厚生省の中原公衆衛生局長に伺いたいのでありますが、いま胎教ということが、あちらこちらで言われ出しておるようでございます。根本的に、児童、青少年の以前の段階の胎児時代に、相当医学的な見地から、あるいはまた教育的見地から、これを保護する、よりよい母体に胎児を置く、こういうことに特段配慮することが、まず出発点の一つでないだろうか、家庭問題を深く掘り下げて、そこから出発のし直しをしなければならぬのではないか、こう思うのですが、あなたのお立場からは、どういうふうにお考えになりますか。
  169. 中原龍之助

    ○中原政府委員 生まれる子供が健全であるようにという趣旨のもとに、厚生省におきましては、妊娠をいたしますと、その妊婦に対しまして、衛生上の問題につきまして、大体保健所を中心にして、あるいは市町村におきましては母子センターというものと連絡をとりまして、妊婦の健康を指導していくというようなやり方をとっておるのであります。
  170. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いま若干手を差し伸べておられることはわかりますけれども、私が申しますのは、やはり青少年問題の基本は家庭にあり、家庭の出発点としまして、胎児を一そう保護しなければならぬ、こういう意味におきまして、より健全な胎児が胎内で育成されていきますように、もっと積極的な手はないものであろうか、こういうふうにも考えるのです。これはあとで触れていきたいと思いますけれども、最近の梅毒の傾向なんかから見ましても、主婦がずいぶんおかされておることが、兵庫県あたりの県庁の調査でもわかっております。そういうことから考えてみましても、何も知らぬ胎児が、母胎の中ですでにおかされつつあることは現状のようであります。だから、ちょっとやそっとの手ではいけません。積極的に胎児を守るという態度を示すこと、これこそ抜本的な青少年問題解決へのほんとうの姿勢に通ずるのではないだろうか、こういうふうにも考えるのです。これはあなたの立場だけではございません。もちろん精神的な面もありますから、単に医学的だけでなしに、いろいろな角度から考えるべきですから、文部省の社会教育局長も何かとお考えになっていると思います。私は、両者ともに手を組んで、胎児を守るという施策を進めてもらいたいと思うのですが、その点、御両人いかがです。
  171. 中原龍之助

    ○中原政府委員 妊婦のいわゆる指導というものにつきましては、先ほど、医学的な見地から、保健所を中心にして指導を行なっているということを申し上げたわけでありますが、ただいま先生は、一つの精神的な問題という面について非常に強調されたわけでございます。その精神的な問題ということにつきましては、全体の医学面におきましても、やはり非常に大きな部門を占めてくるわけでございます。俗にいわれますストレスというものによって胃の病気がふえるとかいうようなことは、一般の人がよく御存じのことだと思いますから、当然に、そういう心を平静にしておることが、胎児に、はっきりはいたしませんけれども、何らか影響を及ぼすであろうということは想像されます。したがいまして、精神的な面及び医学的な面、両方を通じて、妊婦の健康をはかって、それによってりっぱな子供を産むというような方針のもとに、私どもは行なっております。ただし、実際におきましては、精神訓話をしたってなかなかうまくいきません。したがいまして、実際問題としては、精神的面よりも健康の面というふうに、厚生省のほうでは、重点が向いているように思います。
  172. 木田宏

    ○木田政府委員 家庭の問題がいろいろなことの中心になるというのは、御指摘のとおりだと思うのでございまして、文部省も、昭和三十七年ごろから、家庭の問題を教育の場で積極的に取り上げていくという活動に力を入れてまいりました。特に昭和三十九年からは、そのためのことを中心にいたしました家庭教育学級という学級の普及につとめまして、現在一万学級ほどその普及を見ておるのでございます。しかし、現在の段階の家庭教育学級におきましては、主として子供を中心にした家庭、ということが輪郭になっておるわけでございます。しかしながら、社会教育の場で、婦人教育等の場で、いまお示しのありました胎児といったような問題を、全然取り上げていないわけではないのでございまして、市町村によりましては、未婚婦人の婦人学級グループをつくりまして、純潔教育、妊娠と保健、分べんとその準備、あるいは家族計画の理念、そういう胎児の育成に関連いたします基本的な教育活動を、未婚婦人を中心にして指導しておるという事例もあるわけでございます。今後も、私ども御意見の点等考えまして、家庭教育学級あるいは婦人学級を進めてまいります際に、注意を喚起しておきたいと思う次第でございます。
  173. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 次に、児童対策の点でございますが、やはり家庭対策といたしましては、胎児が世の中へ出まして、そして今度は新しい息吹きをする児童に対して、一体どうしたらいいだろうか。この点につきまして、一つの重要な課題は、これは一般的に、児童手当問題の解決を、この段階でしなければならぬのじゃないだろうか、こういうふうに考えるのでございますが、世界的に児童手当が相当行なわれておることは申すまでもございませんし、また児童手当について準備室もできておるようでございまするから、制度化は早晩するかと思いますけれども、しかし、やはり児童を保護するという面になってまいりますると、これは単なる精神的な問題だけではいけませんので、やはり経済的に何とか、栄養も、あらゆる意味において、児童が健全に育成するというもとに、これをつちかうということが必要でしょうから、児童手当の問題をひとつ早急に具体化する、こういうふうには、これはできぬものでしょうか。この点について、児童局長見えておりますかね、御答弁願います。
  174. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいまお話しいただきました児童手当に関しまする制度の問題につきましては、実は児童家庭局及びそのほかの各局との関係がございまして、厚生省におきましては、官房のほうでその事務を取り扱っております。したがいまして、私からは、所管ではないというふうな意味ではございますが、関係の者でございまするので、お答えを申し上げます。  お話しのように、児童手当は、現在のところ、世界各国におきましても、社会・所得保障の観点からも、相当程度の国におきまして実施をされておるわけでございます。わが国におきましては、まだ実施はされておらないのでございますが、現在のところ、関連諸制度、たとえば年金の問題でございますとか、現行の家族手当、そういった関係もございまして、官房におきまして、児童手当準備室というものを設けまして、鋭意検討を重ねておるというのが実情でございます。
  175. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一体、予算化してどのくらい金が要るということになるのでしょうか。もしくは、もう世界各国にある制度でございまするので、これを日本に行なうとするならば、どういう対象にどのくらいの範囲でということは、いま準備段階ですから、およそ青写真に近いものができておろうと思うのですが、この辺は、構想としては、厚生省ではどういうふうになっておりましょうか。できたらひとつ御説明願いたい。アウトラインでけっこうでございます。
  176. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御質問にございましたように、一体どういう範囲――たとえば第一子からか、あるいは第二子からか、第三子からか、こういうふうな範囲の問題にいたしましても、あるいはその額の問題にいたしましても、そういった児童手当創設につきまして、たくさんの諸問題がございます。したがいまして、いまそういった事項につきまして、関連の制度とも関係がありまして、官房におきまする児童手当準備室を中心といたしまして、問題を爼上に乗せまして、検討しておりますので、いま先生の御質問ではございましたけれども、私からは、なお検討中の現段階におきまして、実は直接に担当しておりませんし、なお私も、そういった点につきまして結論めいたものまでもまだできていないと伺っておりますので、この程度で御了承いただきたい、かように思います。
  177. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その点につきましては、ひとつ当委員会にあてて、厚生省の官房の準備室のほうから、いまの段階における構想を、できましたら資料として――構想でけっこうですから、成文化したものでなくてもよろしゅうございますから、それをひとつ出すようにお計らいを願いたい。
  178. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 よろしいですか。出ますでしょう、できたらあとで出してください。
  179. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御要望の点につきましては、担当の者と相談いたしまして、善処いたしたい、かように思います。
  180. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それから、健全な家庭を望む場合に、児童を守る上におきまして、いま非常に重大になっておりますことは、いわゆる欠損児童とか、かぎっ子問題でございます。これは推定によりますると、文部省あたりにおきましては、全国で百六十万ないし二百四十万人あろう、こういうふうに言っておるようでございますが、特にかぎっ子問題につきましては、これはやはり児童を守るその対象といたしまして、早急に相当手を加えねばなるまいじゃないか。もっとも文部省におきましては、放課後指導をしたり、集団的な指導なんかもあるようでございますけれども、これはとかくの批判もございますし、あるいは劣等感を持つとか、いろんな批判がございますから、むずかしい問題ではありますし、直接行政の対象としてはどうかという面もありまするので、非常にむずかしいことですけれども、しかし、児童を守るということは、このかぎっ子対策が相当完全に行なわれるという上におきまして、私は成果を期待したいと思うのですが、この点につきましてはどなたでもよろしゅうございまするから、かぎっ子をどう守るか。交通から守り、悪い環境から守り、悪い慣習に染まないように守る、いろいろな角度から、精神、肉体のまだ成長しない児童を守る、このかぎっ子こそ非常に重要な対象と思われますので、全国的に民生委員などはかなり努力しておる実例も、私は存じておりますけれども、もっと積極的に手を差し伸べることが大事なことじゃないだろうか、こう思いますので、どうお考えになりましょうか。
  181. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 お話しのように、最近、夫婦共かせぎの状態が相当増大しております。したがいまして、いわゆるかぎっ子の数も逐次ふえてまいっております。かぎっ子は、御承知のように、家庭生活の面におきまして、親子の間の結びつきが非常に希薄になりますし、子供の生活も不規則になる、あるいは非社会的あるいは非行というようなことにつながる問題でございまして、厚生省におきましても、このかぎっ子対策につきましては、重大な問題といたしまして、対策を講じておるところでございます。  具体的に申し上げますと、何といいましても、そういった子供たちを指導するという場所の提供でございます。御承知のように、保育所の整備でありますとか、あるいは農村等におきましては児童館の整備でありますとか、あるいは都会等におきましては児童遊園の整備、こういうふうな施設面におきまする充実拡大をはかっていくということがまず第一だろうと思います。それから第二点といたしましては、こういった留守家庭のかぎっ子に対しまして、その余暇の善導をはかるというふうな意味におきまして、いろいろとその子供たちの集団的な、あるいは個別的な指導を、地域におきまして強めていくということだと思います。それからまた、第三点といたしましては、やはり地域におきまする母親クラブでありますとか親の会、こういった組織も、全国的に相当地域ごとにはできておりますので、こういったおかあさん方の組織をさらに充実していく、組織化を拡充していく、こういうふうなことだと思います。なお、第四点といたしまして、行政機関の面からいきますと、児童相談所でありますとか、あるいは家庭児童相談室、こういうふうな児童の福祉に関係のありまする機関でございまするとか、あるいは先ほどお示しの民生・児童委員、こういった方々の援助をいただきまして、子供たちに対する相談、指導の強化をはかってまいりたい、かように思っております。こういったいろいろな方策を通じまして、厚生省におきましては、かぎっ子の健全な生活指導をはかっていくということでございます。
  182. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その場合に、私が希望を申し上げたいことは、もっと行政指導を、法規の適用面に弾力性を持たす必要があるのではないか。先般も、一つの実例ですけれども、三人のかぎっ子がございまして、これを事実上六十幾つの日雇いばあさんが世話をする。学校から帰ってくると――三人の子供は全部小学校です。父、母ともにどこかに出て、おりません。こういうのもいろいろな事情がございまして、生活保護対象にはならぬ、こういうことになっておるのです。こういうことでありまするので、数カ月じんぜん経過しておりまして、盗みを覚える危険が生じてきて、ようやくこれは保護対象になった、こういう実例が実はあるのです。この際私は、要するに行政指導が法規適用にかなり弾力性を持たす必要があるのでないだろうか。乱用は困りますけれども、こういう辺も一考すべき点じゃないかと思いますので、これはひとつ御検討を願いたいと思います。  それからもう一つの問題は、母子家庭の問題でございます。母子家庭も大体は横ばいの状態でございますけれども、終戦後、夫を失った、赤ちゃんを抱いた母、それがずっと伸びてまいっておりますけれども、この母子家庭問題につきましても、いろいろな問題がまだあるようでございまするが、いま母子家庭に対しまして、特に少年の幾らかの手当も出されておるようでございまするが、たとえば資金援助、貸し付け金など、少年が学校に入りますときに、いまは高等学校には貸し付けが月千五百円、大学で三千円、こういうことに実はなっておるようでございます。ところが、高等学校で千五百円、大学で三千円というと、これはおよそ常識はずれになっております。それから、法律ではあれは償還期二十年以内ということになっており、無利息になっておったようでございますけれども、これらももっと増額いたしまして、やはり常識的に、少なくとも大学なら五千円は貸しましょう、それから局等学校なら三千円貸しましょう。これは、もっとも育英会の貸し付け資金の関係があるらしいです。その均衡の問題もあるらしいですけれども、とにかく間尺に合わぬ。しかしそれは教育に熱心な母の立場からすれば、実に貴重な教育資金でございますので、これこそほんとうに母は感謝して受けていると私は思うのです。地域によりますと、母子家庭に対する資金援助は、学資援助が七割も占める、八割も占めるというところさえあるわけであります。こういうものに積極的にあたたかい手を差し仲べるということが、これがほんとうの善政でないだろうか。そういうところになお欠くるものがないだろうか。これはもっとも原資が足りません。原資も、本年度予算で見まして、五億何ぼじゃなかったかと思うのですが、この辺につきまして、もっと額を増額したり、あるいは年限を長期にしたり、二十年以内ということになっておりますから、六年、七年ということでなしに、もっと長くするというふうに行政指導をなさってはどうだろうか、こういうように思うのですが、この点はどうですか。
  183. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 母子家庭に対しまするいろいろな援助施策、たとえば所得補償の問題もございますし、あるいは税金の問題もございましょうが、先生指摘のように、母子家庭の一日も早い経済的自立というものが何よりも大切なものである、かように考えております。お示しの母子福祉資金の貸し付けにつきましては、昭和二十八年から四十年度までに、すでに約七十四万人の母子家庭がこの制度を利用されております。貸し付けをいたしました金額自体といたしまして約百七十億円、こういうふうなことで、母子家庭の経済的自立につきましては、相当大きな効果をあげておるものと考えておりますが、なおお話しのように、ことしの予算額におきましても、政府からの原資が、補助金といたしまして五億五千万円というふうなことでございます。本年度におきましても、こういった母子福祉貸し付け金の内容につきまして幾つかの改善をはかったのでございます。たとえば事業開始資金でございますとか、あるいは就業資金等につきまして、内容の改善をはかったのでございますが、特に先生が御指摘の、就学資金の問題につきましては、非常に御要望が多いわけでございまして、昭和四十年度におきまする就学資金の額が、母子家庭に対する貸し付け金の約半分くらいの額になっております。そういうふうな意味におきまして、就学資金の貸し付け条件を改善するということは大きな問題でございます。現在のところ、お話しのように、高等学校の学生につきましては月額千五百円、大学の学生につきましては月三千円というふうなことでございます。これはまさに先生指摘のように、日本育英会の貸し付けの額と歩調を合わせておるわけでございます。したがいまして、お話しのように、千五百円を三千円に、三千円を五千円にというような問題につきましては、さらに十分検討しなくてはならない、かように考えております。しかしながら、育英会の資金の貸し付けにつきましても、特定の方々に対しましては、高校におきましても三千円、それから大学におきましても五千円まで上げられる、というふうな制度もあるように伺っておりますので、昭和四十三年度以降におきまして、こういった就学資金の内容改善につきまして、ひとつ十分な検討と努力を払ってみなければならない、かように考えております。
  184. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは積極的に推進せられんことを希望申し上げます。  われわれの日常経験するところによると、たとえば大学生でも、通常親から二万円くらいの送金を受けております。これが東京の大学生の現状でございます。そういうことを考えてみますると、何か特別の努力する人でないと、三千円借りましてもどうにもなりません。だから、せっかく母子家庭――つまりこれは青少年対策の一環でもありますし、また母子家庭という、特殊な社会の不幸な立場の人に対するこれは善政でございますので、積極的にこれらは、来年度予算におきましては大きく前進することを、私は御希望申し上げておきたいと思うのです。  関連いたしまして、政府では、まだこれはできておらぬようでございますけれども、母子家庭は、二十でございましたね、二十過ぎましたら、いわゆる未亡人、寡婦になりますね。母子家庭としてのあらゆる保護は受けられなくなってしまう。この問題はようやく世上重大化しているらしいのでございまして、これも全国的に相当な数になっておるようにも私は聞いておりますが、この寡婦対策の一つといたしまして、未亡人対策の一つとしまして、主税局の方に伺うのですが、所得税控除の対象の件につきまして問題がございます。例をあげますと、普通の夫婦に子供一人ある人は、基礎控除が十五万円、配偶者控除が十五万円、扶養控除が七万円、計三十七万円ということになるようでございます。そこで、寡婦の場合に、子供二人があると、基礎控除が十五万円、第一子扶養控除が八万円、第二子の扶養控除が七万円、寡婦控除が七万円、同じく三十七万円。同じであります。そこで、夫婦に子供一人ある身体障害者の場合には、これは特別の身障者としまして七万円つけております。結局夫婦に子供一人ある場合、寡婦に子供二人ある場合、これが同じなんです。ちょっとここは均衡がとれぬように思いますので、この点につきましても、やはり寡婦を保護するという意味におきまして、何とかこれは特別になす必要があるのじゃないだろうか、こういうように思うのですが、主税局、見えておりますね。
  185. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 ただいま御指摘の、寡婦世帯と通常の夫婦世帯とにおきますところの所得税の控除の問題でございますが、夫婦と子供一人の三人世帯の所得税控除額を見ますと、本人分につきましては、基礎控除十五万円、配偶者控除十五万円、扶養控除七万円、計三十七万円、先生指摘のとおりでございます。それに対しまして、寡婦と子供が二人いるという三人世帯、同じ三人世帯をとってみますと、これも先ほど先生があげられましたように、三十七万円になっております。ところが、これにつきましては、実は所得税法上は、すでに二つの点で、控除額についてある程度の配慮をいたしておったつもりでございます。その一つは何かといいますと、まず寡婦等一人の所得者がおりまして、それは配偶者がなくて、扶養親族がおる。それにつきましては、やはりその子供の世話が、他の、夫婦があって子供を世話しておるという世帯と比べると余分の経費がかかるだろうというようなことから、第一の扶養親族につきましては、通常の扶養親族七万円という控除を上回りまして、八万円という特別の控除額を与えておるわけでございます。第二の点といたしましては、ことしから所得控除に変えましたけれども、寡婦控除という特別の控除額がございます。これは改正前は税額控除でございましたものを、今回の、今年度の所得税法の改正におきまして、所得控除に切りかえたわけでございます。これは一つは、実は、寡婦が所得を得ておるというその所得につきましては、他の一般の夫婦者の所得と比べまして担税力が弱いという点に着目しているのが第一の点でございます。第二は、先ほどの第一の点とも相関連いたしますけれども、寡婦であってその子弟を養っているということにつきましては、それ相当の経費がかかるだろうというようなことから、特別控除という制度を設けておりまして、本年度これを扶養控除額と同じに七万円といたしたわけでございます。その結果、二子の世帯につきまして、控除額の合計額は三十七万円、一応バランスがとれておると思っております。ただそれでは、せっかく寡婦控除というのを設けたのに、同じでは、均衡はとれておるといっても、せっかくの配慮がなお足りないではないかというような御指摘だろうと思います。確かにその点は、なお考えれば検討の余地もございますし、現に参議院の予算委員会において、大蔵大臣が山高しげり先生の御質問に答えまして、寡婦控除につきましてはいろいろ議論もございましたけれども、来年度の減税のときにはそれを優先的に検討いたしたい、こういうふうに答えておりますので、今後政府の税制調査会等におきましても検討をしまして、寡婦控除額につきまして検討を加えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  186. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 家庭の問題につきまして、梅毒がずいぶん蔓延しておるということは、これはゆるがせにできない問題がございます。先般も、兵庫県におきまして、県庁が調べた結果によりますと、性病患者七百七十九人のうちで、梅毒患者が五割九分八厘、四百六十六人でございます。そのうち主婦が一割七分、百三十七人になっております。これはさっきもちょっと触れましたが、家庭のためにはたいへんな強敵でございます。梅毒患者が何人あるか、実態は厚生省も掌握できない状態でございますが、実にこれは憂慮すべき実情でございますので、そこで、直接にはこれに対する対症的な施策はどうするかということ、さらに、防御し、予防し、もしくは対策を立てるために、いわゆる家庭の純潔教育というものをもっと系統的に、組織的にやらねばならぬのじゃないかという、この二点につきまして、ひとつ積極的に、厚生省並びに文部省から御意見と、今後の施策へのかまえをぜひ伺っておきたい、こう思います。
  187. 中原龍之助

    ○中原政府委員 ただいま主婦の梅毒が非常に多いというお話がございました。私ども、別に主婦だけが多いというふうには考えておりません。ただ、現在の状況として、戦後は非常に多かったのでありますが、それが一時減ってきた。減って、昭和三十五年ごろから、いわゆる早期梅毒、新しい梅毒がふえ始めたということがございまして、それに対しまして、昨年性病予防法の一部改正を行なったわけでございます。資料として先生がお話しになったのは、現在そこで出しておる数字そのものというように私は思っておりますが、まあ戦前よく、性病は売春婦の病気であるというふうに考えられておったのでありまして、確かに売春婦はたくさんの性病を持っておりましたが、それと関係した男性もやはり性病を持つということになり、また、売春婦をなおしましても、それにうつすのはやはり男性である。そういたしますと、性病というものは、売春婦が持っておるばかりじゃなくて、国民全体の中にやはり蔓延をしておる。男性が持てば当然これは家庭に持ち帰る、家庭内の主婦にうつすというかっこうになる。私どもも最近性病に対する関心を高め、これを何とかいたさなくてはならないという観点から、性病に対する衛生教育というものをやる一方、積極的に、妊婦あるいは婚姻の際の血液検査、その他希望者に対する血液検査、こういうものを進めているわけでございます。したがいまして、私どもがやはり重点としているのは、売笑婦もさることながら、家庭でございますので、家庭に向けてひとつPRをしていくという形で、現在性病対策と取り組んでおります。したがいまして、数の上で患者としてあらわれてくるのは、検査を受ける人が多くなってきますれば、当然そこに出てくる患者の数というものは多くなってまいるのが普通であるというように私は考えておる。しかし、そういうふうにたくさんの患者があらわれる、それを積極的に早くなおしていく、そういうことによって、また次の伝播を防いでいくということでありますので、対策を進めれば、当分の間は、私は患者は増加してくるものというふうに考えております。それから今度は初めて、ある一定の時期以後は、患者は減っていくであろう。それで現在の状態は、したがいまして、われわれ対策をやっておりますので、件数は当然ふえてくるということは覚悟しております。これは当然のことであろうと思います。それで、なお一そうそれを一般の人々にお知らせをいたしまして、一般の人々が進んで性病に対する関心を持って、進んで血液検査を受ける、あるいはその他の病気も医師の診断を受ける、そして早くなおしていく、こういう面で今後一そう努力していきたい、こういうふうに考えております。
  188. 木田宏

    ○木田政府委員 教育の問題といたしまして、純潔教育のことを考えますと、基本的には、学校教育の場で、児童生徒に対します適正な指導ということから始めてまいらなければならないと思っておるものでございます。学校教育の場で純潔教育のことも取り上げておるわけでございますが、基本的には、男性と女性との一般的な交際ということから、その中の取り上げらるべき課題として、中学校及び高等学校の学習指導要領等については、必要な指導を整えておりますし、いろいろな具体的指導事例等も出ておりますので、それらを広く関係者に知らせまして、その方面の指導の徹底を期するようにいたしております。また学校を終わりましたあと、一般の社会教育の場といたしましても、従来、文部省は純潔教育に関しまして、昭和三十三年以来、四冊の指導資料をつくりまして、関係方面に広く配付をいたしておりますし、今日手元に持っておりますような純潔教育の概況等も取りまとめまして、指導者に対する便宜をはかっておるわけでございまして、できるだけの努力を講じてまいった次第でございます。
  189. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと公衆衛生局長に申し上げてみたいのですが、実は売春の問題ですね。実情は相当ひどいですよ。あなたのほうは、売春が、梅毒の媒介の機会がそんなにないようにお思いになっているかもしれませんが、それだったらたいへんでございます。売春の状態というものは、これはちょっと想像ができぬほど蔓延といいますか、はんらんしております。大阪、東京あたりにおきましても、ある繁華街に参りますと、一万円、二万円をふところに持っておりましたら、ふところへ手を突っ込んで裸にして帰すことは、ないとは言えぬのであります。こういうことでございますので、まあひとつ、このおそるべき病毒から児童を守り、あるいは母性を守るということが、どんなに大きな重大なことかということを考えましたときに、売春対策もいいかげんにしてはいけない、非常に緻密な対策を進めていかぬといくまいじゃないかというふうに考えておりますので、この点はちょっと今後の施策として、ぜひとも御注意を喚起しておきたい、こう思うのでございます。  それから、子供が胎内にいるときに母が梅毒になったようなときには、生まれた子供が、何か心身の欠陥につながるのではないだろうか、こういうふうにもいわれるのでありますが、その点は、心身の障害者が相当多くクローズアップしている次第でございますので、その関連におきましても非常に重大だと思うのですが、これは結果的には、やはり生まれた子供が相当影響を受けていくものかどうか、こういう点について、社会局長来ておられますか、あるいは公衆衛生局長か、どなたですかはっきりしませんけれども、ひとつお教え願いたいと思うのです。
  190. 中原龍之助

    ○中原政府委員 母親が梅毒を持っておった場合、その生まれる子供に対してどういう影響を及ぼすかというようなことでございますが、一般的に、母親が梅毒にかかりますと、胎児に対しまして、いわゆる臍帯を通りまして、病原体、スピロヘータですか、これが胎児に影響して、そうして胎児が梅毒にかかるということになりますが、大体、母親が新鮮な梅毒を持っているという場合におきましては、ほとんどが早産、流産あるいは死産という形であらわれてくるのでございます。次に、幸いにして生まれてきたという場合におきましても、そこにやはり梅毒性の変化を見ることが非常に多く、そのために子供は非常に脆弱であります。あるいは胎児によりましては、口のまわりにしわが寄った、しわくちゃのような子供が生まれてくることもあります。それからなお、母親の梅毒が少し古くなったような場合でありますが、そういう場合の子供でありますと、生まれたときはまあそれほどのあれがなかったのでありますが、大体思春期ごろになってまいりまして、いわゆる先天梅毒の症状をあらわしてくる。そうなりますと、そういう場合にはよく三つの徴候に分かれるのでありますが、その中で著名なのは、いわゆる角膜の障害あるいはつんぼであるとかいうような症状を起こしてまいります。その他、歯にちょっと欠陥のあるようなもの、もちろん知能は劣っているというような子供になるわけでありまして、これは親自身にとっても非常に不幸であるばかりでなく、子供にとってはたいへんな迷惑、こういうことでございますので、私どもは、妊婦に対して、妊娠した場合においては必ず血液検査を行なうというようなことを励行して、これを防止するという方法を現在とっているのでございます。
  191. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あと、できるだけ簡略にします。  福祉対策でありますが、青少年の福祉対策というものは、いまの病弱もしくは病身あるいは身障あるいは精薄等いろいろありますけれども、特に身体障害、精薄の児童などに対しましては、今日は相当いろいろな施策が行なわれておることも実は存じておりますが、各方面の実情を聞いたり見たりしてみますと、さらに相当手薄であり、施設は不足し、もしくはこれらにつきまして、もっと強力な施策がどうしてもほしいなという声も相当あるのでございますが、この精薄と重症障害の子の場合に、今後なされようとする福祉対策の重点はどういうふうにお置きになっておりますのでしょうか。
  192. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 お話しのありましたように、心身に障害のある子供たちに対する対策でございますが、心身と申しましても、第一といたしましては、精神に障害のある子供、つまり精神薄弱児に対する対策でございますが、厚生省におきましては、精神薄弱児施設の拡充という点を重点に考えまして、精神薄弱児をできるだけ早くこういった精神薄弱児の施設に収容いたしまして、そこで適切な生活指導なりあるいは教育なり、さらには職業指導、こういうふうなことで進めてまいっておるわけでございます。なおまた、第二の身体に障害のあります子供たち、特に肢体不自由児に対しましても、同様に病院等肢体不自由児施設を設置いたしまして、こういった施設に収容し、あるいは通園をさせまして、同じような生活訓練、それからさらに職業訓練というところまで持っていきたい、かように思っております。なお、在宅のこういった子供たちに対しましても、重度の者に対しましては、重度の特別児童扶養手当といったようなものも支給いたしまして、その対策を講じておるわけでございます。なお、御承知のように、肢体が非常に不自由である、また精神薄弱の程度が非常に重い、こういった重複した子供たちに対しましては、重症心身障害児施設というものを設置いたしまして、これはまだ緒についたばかりでございますけれども、今後こういった重症の方々に対する施設の充実、拡充を早急にはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  193. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最後に伺いたいことは、少年の非行問題でございますが、これは法務省が主となりまして、いろいろ対策もお考えになり、裁判所との関係もある次第でございますが、最近の傾向はやはりどうもひどいらしいですね。統計によりますと、刑法犯、特別法犯、総計いたしまして、犯罪少年が四十一年になお九十五万四千、約百万ございます。たいへんでございます。ことに刑法犯につきましては殺人あり、強盗あり、放火あり、強姦あり、一番多いのが窃盗らしゅうございますが、こういうことになりますので、百万の少年犯罪を持っておるというのでございますから、ともかくこの青少年問題は重大でございます。そこでこの青少年の非行問題に対しまして、これも基本的な抜本的な手は、一つではなかなかいかぬと思いますけれども、一番重要な施策は何をなさろうとしておるか。どの点に重点を置いて今後進めていこうとするのか。こういうことにつきまして――これは、法務省はどなたが見えておりますか。
  194. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 刑事局青少年課長が見えております。
  195. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それじゃ法務省並びに文部省、両方に伺いたいと思います。
  196. 安田道夫

    ○安田説明員 青少年の非行防止の対策といたしましては、大きく分けまして、未然防止と再犯の防止、この二つの面に大別することができるのじゃないかと思います。非行におちいっていない青少年を非行から守る、いわゆる未然に防止するという対策は、結局青少年に対する健全育成とうらはらをなすものでございまして、そういう意味におきまして、教育あるいは厚生、福祉、労働その他各般の行政機関の積極的な健全育成対策が一面あると同時に、他面消極的な面からは、その犯罪を誘発するような不良な環境あるいはまた不良文化財というようなものを一掃する、そういうような対策も考えられるわけでございまして、法務省といたしましては、この未然防止の関係では、主としてとういう消極面でございますので、いわゆる不良環境あるいは不良文化財というようなものの一掃、環境浄化ということに重点を置いて活動をしておるわけであります。  それから、もう一面の、一たん非行におちいってしまった青少年をいかにして改善、更生させるかという問題、すなわち再犯の防止の問題でございますけれども、これは結局、そういった青少年に対して適正な処理、処遇を実現していく、適正な手当てを加えるということに相なるわけでございまして、そのためには、まず事件を処理いたします行政機関におきまして、いかなる処分を相当とするか、これをまず第一次的に判断すると同時に、処分と申しましても、これは保護処分あるいは刑事処分というような、形態はいろいろございますけれども、これはいずれもその処分を受ける者にとってみますと、やはりその自由を拘束したりあるいはまた権利を制約するというような不利益を伴う処分でございますので、人権の保障という面から、慎重な手続、すなわち人権保障的な面の制度的担保を確立しながら、衆知を集めて適正な処分を実現していく、こういうことが必要になってくるわけでございまして、その面で、検察庁あるいは家庭裁判所というものが現在のところ中心になって活動しておりますが、さらに処分がきまりますと、それを受けまして、実際にそれを受け入れて執行を行なっていく機関といたしまして、御案内のように、保護観察あるいはまた少年院というようなものがあるわけでございまして、この辺の整備充実ということも、国の重要な施策の対象として進めておるような次第でございます。  なお、それに関連いたしまして、実は、御承知のように、昨年五月に法務省では、現在の少年法制というものに対して、運用上あるいは制度上いろいろ是正すべき点があるのではないかということで、改正の構想を発表いたしましたけれども、これも結局、現在の犯罪状況から、先生ただいまおっしゃいましたように、最も私どもが心配いたし、また指摘しなければならない特徴と考えますことは、やはり青少年が自分の行為に対する社会的な責任というものをもう少し自覚する必要があるのではないか、こういう点も実質的な問題として考えますし、それからまた、その処分の適正な選択を実現していくために、慎重な合理的な手続を確立したい、そのためには、関係機関協力関係においてそれが考えられなくちゃならぬ、こういうことで、あれこれいろいろ考えました結果の構想を発表して、現在各界からいろいろ御意見が出ておりますので、慎重にそれらの御意見を参考にしながら、成案を得べく努力しておる次第でございます。
  197. 木田宏

    ○木田政府委員 文部省の関係での非行防止と申しますことは、結局は、基本的に健全な青少年の育成のための教育に力を入れるということでございまして、学校教育においては、そのことを念頭に置いて、しっかりやっていかなければならぬわけでございます。また社会教育の場におきまして、特にいま関心を強く持っておりますことは、青少年の団体活動を活発にしてやるということでございまして、実は本日も、社会教育審議会におきまして、少年団体の健全な育成のための指針ということの建議をちょうだいいたした次第でございます。また先ほどお話のございましたかぎっ子等のことも、結局は広くそういう青少年の育成の場を設けてまいりまして、そして学校施設の開放であるとか、あるいは青少年施設の十分な提供等によって、青少年によりいい方向への活動の機会というものを提供していくということが基本の姿勢であります。なお、家庭が子供のことについてりっぱな強い関心を持って健全な指導をするということも、先生当初御指摘のとおり、大事なことでございますので、その意味も加えまして、家庭教育学級等の振興に格段の努力をいたしておるところでございます。
  198. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最後に、一つ上村副長官に伺って、これで終わりますが、やはり青少年問題の根本は、場所的にももしくは社会的にもあるいは教育的にも、あらゆる角度から見て、家庭にあるのではないか。家庭といえども、家庭の構成が戦後家族構成のあり方、考え方が変わっておりますし、したがってやはりそこにおいても一種の新しい家庭道徳がもっと身につかなければいくまい。おやじもむすこも、児童も父も平等ながら、これは人間尊重、人格尊重の立場から当然だろうと思います。しかし昔の父権時代ではありませんけれども、おのずから家庭には秩序があり、おのずからそこに父あり、母あり、子があり、その親子の道徳秩序もなければなるまい。したがって、そこに何らかの精神的な中核がなければならぬ。中核なしに平等思想だと、これは家庭にならぬですね。そういったところに教育もありますまい。でありますので、やはりあらゆる角度から見まして、一そう家庭を重視して――何も昔の家族主義に返れという意味ではございません。ございませんけれども、世界各国のそれぞれの長所も考えながら、日本の伝統的長所も考えながら、私はやはり一段と家庭問題を重視するという方向に進んでいくことが、青少年対策の一つの大きな重点になっていくのではないだろうか、そういうふうに思いますので、この点は、それぞれと対策も立てられつつあるかのように聞いておりますけれども、特に御希望申し上げまして、最後の御所見を伺って、これで終わります。
  199. 上村千一郎

    ○上村政府委員 吉田先生のおっしゃるとおりと存じます。それで、戦前の家庭というものと戦後の家庭におきましては大きな変化を来たしておる。しかも現在におきましては、まだ家庭の真の理想像というものなり目安というものがついてない、そういうようなところに非常に複雑性がある。といって、家庭が中心になる。それであるから、どうしてもそこを中心に一つの大きな対策を立てねばならぬということで、家庭生活問題審議会というものを総理府に設置いたしまして、そして各般の検討――いま先生おっしゃるような諸般の点につきまして、検討が開始されておるわけでございます。そうしたところが、非常に重要であるとともに、御熱心な御意見が一ぱい出ておりまして、それで実はまだはっきりした結論が出ずに、しかも設置期間が過ぎてしまうというような事態に立ち至ったわけでございます。それで、御審議を願って、結局期間を延長するという法案を提出いたしました。総理府設置法一部改正……。それで通過をお願いいたした、こういう経過になっておるのは、いま先生がおっしゃるような点におきまして、どうしてもそこに取っ組んでいかなければならない、けれども、審議会の答申を待ってからというような式では、日々すべての問題が進展しておりますので、総合調整の機能を発揮しております総理府といたしましても、いまの御趣旨のように、真剣に取っ組んでいくという姿勢に立っておるわけでございます。
  200. 鍛冶良作

    鍛冶委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十四分散会