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1967-07-19 第55回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十九日(水曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       愛知 揆一君    青木 正久君       臼井 莊一君    中山 榮一君       福家 俊一君    松田竹千代君       毛利 松平君    山口 敏夫君       山田 久就君    安宅 常彦君       石野 久男君    久保田鶴松君       黒田 寿男君    田原 春次君       戸叶 里子君    西宮  弘君       米田 東吾君    渡部 一郎君       谷口善太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省中南米・         移住局長    安藤 龍一君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         厚生省援護局長 実本 博次君         郵政省電気通信         監理官     畠山 一郎君  委員外出席者         外務省中南米・         移住局移住課長 太田 新生君         外務省経済協力         局技術協力課長 小崎 昌業君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         外務省条約局条         約課長     松永 信雄君         外務省情報文化         局文化事業部長 猪名川治郎君         厚生省援護局庶         務課長     江間 時彦君         農林省農政局参         事官      横尾 正之君         農林省農政局拓         植開発課長   藤本 静香君         郵政省電波監理         局無線通信部長 石川 晃夫君         参  考  人         (株式会社東京         銀行取締役)  小野田 晋君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    柏村 信雄君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    太田 亮一君         参  考  人         (海外技術協力         事業団理事長) 渋沢 信一君         参  考  人         (全国拓植農業         協同組合連合会         副会長)    平川  守君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   渡辺  誠君         専  門  員 吉田 賢吉君     ――――――――――――― 七月十八日  委員木原津與志君帆足計君及び川上貫一君辞  任につき、その補欠として安宅常彦君、石野久  男君及び谷口善太郎君が議長指名委員に選  任された。 同月十九日  委員久保田鶴松君及び松本七郎辞任につき、  その補欠として西宮弘君及び米田東吾君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員安宅常彦君、石野久男君、西宮弘君及び米  田東吾辞任につき、その補欠として木原津與  志君帆足計君、久保田鶴松君及び松本七郎君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十四日  アジアアフリカ中近東産業開発援助に関す  る請願外一件(大平正芳紹介)(第三五三七  号)  同外二件(熊谷義雄紹介)(第三五三八号)  同外二件(丹羽久章紹介)(第三五三九号)  同外七件(藤本孝雄紹介)(第三五四〇号) 同月十五日  アジアアフリカ中近東産業開発援助に関す  る請願稲富稜人君紹介)(第三六四一号)  同外一件(上村千一郎紹介)(第三六四二  号)  同外一件(遠藤三郎紹介)(第三六四三号)  同(大石八治君紹介)(第三六四四号)  同(鍛冶良作紹介)(第三六四五号)  同(海部俊樹紹介)(第三六四六号)  同(仮谷忠男紹介)(第三六四七号)  同(菅太郎紹介)(第三六四八号)  同外一件(熊谷義雄紹介)(第三六四九号)  同(斎藤寿夫紹介)(第三六五〇号)  同(坂田道太紹介)(第三六五一号)  同(四宮久吉紹介)(第三六五二号)  同外一件(椎名悦三郎紹介)(第三六五三  号)  同(正力松太郎紹介)(第三六五四号)  同外七件(進藤一馬紹介)(第三六五五号)  同(鈴木善幸紹介)(第三六五六号)  同(關谷勝利紹介)(第三六五七号)  同(田村良平紹介)(第三六五八号)  同(塚田徹紹介)(第三六五九号)  同(内藤隆紹介)(第三六六〇号)  同(中野四郎紹介)(第三六六一号)  同(中山マサ紹介)(第三六六二号)  同外四件(西村直己紹介)(第三六六三号)  同(野田卯一紹介)(第三六六四号)  同(野原正勝紹介)(第三六六五号)  同(葉梨信行紹介)(第三六六六号)  同(馬場元治紹介)(第三六六七号)  同(八田貞義紹介)(第三六六八号)  同(松野頼三君紹介)(第三六六九号)  同(三原朝雄紹介)(第三六七〇号)  同(粟山秀紹介)(第三六七一号)  同(森清紹介)(第三六七二号)  同(山田久就君紹介)(第三六七三号)  同(和爾俊二郎紹介)(第三六七四号)  同(足立篤郎紹介)(第三七七〇号)  同(受田新吉紹介)(第三七七一号)  同(金丸信紹介)(第三七七二号)  同外二件(吉川久衛紹介)(第三七七三号)  同(小泉純也君紹介)(第三七七四号)  同(小坂善太郎紹介)(第三七七五号)  同(佐々木義武紹介)(第三七七六号)  同(塩谷一夫紹介)(第三七七七号) 同月十七日  アジアアフリカ中近東産業開発援助に関す  る請願臼井莊一君紹介)(第三九〇四号)  同(小川平二紹介)(第三九〇五号)  同(大石八治君紹介)(第三九〇六号)  同(斎藤寿夫紹介)(第三九〇七号)  同(佐藤孝行紹介)(第三九〇八号)  同(中垣國男紹介)(第三九〇九号)  同(古屋亨紹介)(第三九一〇号)  同(小渕恵三紹介)(第四〇九五号)  同外一件(大坪保雄紹介)(第四〇九六号)  同(大野明紹介)(第四〇九七号)  同外一件(鍛冶良作紹介)(第四〇九八号)  同(増田甲子七君紹介)(第四〇九九号)  ベトナム戦争及び米国原子力潜水艦寄港反対等  に関する請願田代文久紹介)(第四〇二八  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十七日  在日朝鮮人帰国協定延長に関する陳情書外二  件(第四二四  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第七号)(  参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とニュー・ジーラン  ドとの間の条約を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ノルウェー王国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一七号)  (参議院送付)  国際情勢に関する件  請 願   一 ベトナム戦争解決に関する請願成田知     巳君紹介)(第一二一号)   二 在日朝鮮人帰国協定延長に関する請願     (福岡義登紹介)(第二一三号)   三 同(福岡義登紹介)(第一一八五号)   四 ベトナム戦争反対等に関する請願松本     善明君紹介)(第一九一八号)   五 ベトナム戦争及び原子力潜水艦寄港反対     に関する請願広沢賢一紹介)(第二     〇二八号)   六 アジアアフリカ中近東産業開発援助     に関する請願外一件(大平正芳紹介)     (第三五三七号)   七 同外二件(熊谷義雄紹介)(第三五三     八号)   八 同外二件(丹羽久章紹介)(第三五三     九号)   九 同外七件(藤本孝雄紹介)(第三五四     〇号)  一〇 同(稲富稜人君紹介)(第三六四一号)  一一 同外一件(上村千一郎紹介)(第三六     四二号)  一二 同外一件(遠藤三郎紹介)(第三六四     三号)  一三 同(大石八治君紹介)(第三六四四号)  一四 同(鍛冶良作紹介)(第三六四五号)  一五 同(海部俊樹紹介)(第三六四六号)  一六 同(仮谷忠男紹介)(第三六四七号)  一七 同(菅太郎紹介)(第三六四八号)  一八 同外一件(熊谷義雄紹介)(第三六四     九号)  一九 同(斎藤寿夫紹介)(第三六五〇号)  二〇 同(坂田道太紹介)(第三六五一号)  二一 同(四宮久吉紹介)(第三六五二号)  二二 同外一件(椎名悦三郎紹介)(第三六     五三号)  二三 同(正力松太郎紹介)(第三六五四     号)  二四 同外七件(進藤一馬紹介)(第三六五     五号)  二五 同(鈴木善幸紹介)(第三六五六号)  二六 同(關谷勝利紹介)(第三六五七号)  二七 同(田村良平紹介)(第三六五八号)  二八 同(塚田徹紹介)(第三六五九号)  二九 同(内藤隆紹介)(第三六六〇号)  三〇 同(中野四郎紹介)(第三六六一号)  三一 同(中山マサ紹介)(第三六六二号)  三二 同外四件(西村直己紹介)(第三六六     三号)  三三 同(野田卯一紹介)(第三六六四号)  三四 同(野原正勝紹介)(第三六六五号)  三五 同(葉梨信行紹介)(第三六六六号)  三六 同(馬場元治紹介)(第三六六七号)  三七 同(八田貞義紹介)(第三六六八号)  三八 同(松野頼三君紹介)(第三六六九号)  三九 同(三原朝雄紹介)(第三六七〇号)  四〇 同(粟山秀紹介)(第三六七一号)  四一 同(森清紹介)(第三六七二号)  四二 同(山田久就君紹介)(第三六七三号)  四三 同(和爾俊二郎紹介)(第三六七四     号)  四四 同(足立篤郎紹介)(第三七七〇号)  四五 同(受田新吉紹介)(第三七七一号)  四六 同(金丸信紹介)(第三七七二号)  四七 同外二件(吉川久衛紹介)(第三七七     三号)  四八 同(小泉純也君紹介)(第三七七四号)  四九 同(小坂善太郎紹介)(第三七七五     号)  五〇 同(佐々木義武紹介)(第三七七六     号)  五一 同(塩谷一夫紹介)(第三七七七号)  五二 同(臼井莊一君紹介)(第三九〇四号)  五三 同(小川平二紹介)(第三九〇五号)  五四 同(大石八治君紹介)(第三九〇六号)  五五 同(斎藤寿夫紹介)(第三九〇七号)  五六 同(佐藤孝行紹介)(第三九〇八号)  五七 同(中垣國男紹介)(第三九〇九号)  五八 同(古屋亨紹介)(第三九一〇号)  五九 同(小渕恵三紹介)(第四〇九五号)  六〇 同外一件(大坪保雄紹介)(第四〇九     六号)  六一 同(大野明紹介)(第四〇九七号)  六二 同外一件(鍛冶良作紹介)(第四〇九     八号)  六三 同(増田甲子七君紹介)(第四〇九九     号)  六四 ベトナム戦争及び米国原子力潜水艦寄港     反対等に関する請願田代文久紹介)     (第四〇二八号)      ――――◇―――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際、月その他の天体を含む宇宙空間探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約締結について承認を求めるの件に関して、政府より発言の申し出がありますので、これを許します。田中政務次官
  3. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 去る六月十六日の本委員会における月その他の天体を含む宇宙空間探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約締結について承認を求めるの件の提案理由説明中、「宇宙空間に対する国家主権の主張の禁止」と申し上げましたのを、「宇宙空間国家による取得の対象とはならないこと」と訂正いたしたいので、御了承願います。
  4. 福田篤泰

    福田委員長 ただいまの申し出につきまして、これを了承するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、了承するに決しました。      ————◇—————
  6. 福田篤泰

    福田委員長 これより請願審査に入ります。  本会期中、本委員会に付託せられました請願は六十四件であります。  請願日程第一より第六四までを一括して議題といたします。  各請願内容については、文書表ですでに御了承のことでもあり、また先ほど理事会で御検討を願ったところでもありますので、各請願について紹介議員よりの説明聴取等は省略し、直ちに採決いたします。  請願日程中、第六ないし第六三の各請願は、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  ただいま議決いたしました各請願委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  9. 福田篤泰

    福田委員長 なお、本委員会に参考のため送付せられました陳情書は、お手元に配付してありますとおり十七件であります。この際、御報告いたします。      ————◇—————
  10. 福田篤泰

    福田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 三木外務大臣は明日羽田をお立ちになりまして、モスクワに行かれまして日ソ両国間の第一回政府間の定期協議において、これはあるいはコスイギン首相との協議が行なわれる、こういうわけで、どのような議題を中心にして協議を行なわれるかということにつきましては私も新聞等を通じまして知っておるわけでありますが、この委員会の席におきまして、主たるテーマとして外務大臣がお考えになっている事柄について、ここでまず御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 堂森さんの御指摘のように、明日から第一回日ソ政府間定期協議に出席いたします。そこでは、一つにはソ連といえば世界政治相当影響力を持っている国でありますから、これがグラスボロ米ソ首脳会談をして、その後米ソ関係あるいは中東、ベトナム問題、あるいは核拡散防止、核軍縮、こういう問題がグラスボロ会議では話されたというようにいわれておるわけです。そういう首脳会談以後においてソ連が現在どういう国際問題に対しての考え方を持っているか、これは今後日本外交考えていく上において重要な事柄だと思いますので、アジア情勢もひっくるめて、国際情勢について率直な意見の交換をしたい。それから、日ソ間の問題では、平和条約の問題があります。平和条約を阻害しておるのは領土問題であります。この問題に触れることは当然でございます。それから、漁業の面においては安全操業の問題がございます。この問題にも触れることになる。それからシベリヤ開発の問題、日本経済使節団が参って相当話し合ったシベリア開発に対するソ連考え方、これも話し合い議題になることは当然のことであります。また、ソ連とのいろいろな文化面における交流、こういう問題についても話し合いをしてみたいと考えております。こういうことが定期協議のときの議題になるわけでありますが、これも相手があることで、こちらの考え方を述べ、向こう考え方も聞き、お互い理解を深めることにこの定期協議を役立たせたいと考えておる次第でございます。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣答弁の中に、新聞でも伝えておりますが、日ソ両国民間航空路の問題があると思うのであります。これはおそらく不用意にお忘れになったのだと思いますが、そこでいろいろな問題が重要な議題として取り上げられると思うのですが、私、これは率直に外務大臣所信を伺いたいのであります。  わが国の佐藤内閣外交というものは、たとえばこの間はソウルへ行かれまして四国会談をおやりになった、あるいは九月は早々台湾訪問される、日本の戦後の総理としては初めての台湾訪問である、あるいはその後十月でありますか、東南アジアのいろいろな国を訪問されるが、その中にサイゴン訪問されるという、こう一連の佐藤さんのあわただしい最近におけるアジア、特に東南アジア方面への外交的な意図でありますか、そういう構想でありますか、そういうものと、三木外務大臣はまたこの間ASPACに行かれまして、長期的には中国とも共存をしていくんだ、こういうことで、いろいろと努力をしておられるようでありますが、率直に申しまして、東の国々政治家たちは、やはり公式にも外務大臣あるいは佐藤さんが言っておられるようなこととは逆の意味でのいろいろな批評をなしておる、考えを持っておるということも私は否定することはできないと思うのであります。  そこで、外務大臣としてソ連に行かれまして、そしてコスイギン首相話し合いをされる中で、グラスボロ会談内容を詳しく聞きながら、中近東の紛争問題あるいはベトナム戦争解決問題等についても話し合いたい、こういうふうに言っておられますが、率直に言いまして、外交なんていうものはお互いに信用し合う、信頼する、相手外交のやり方を信頼するというその信頼感がなかったら、それは話はできるでありましょうが、ほんとう腹蔵なく自分たち立場を吐露して外交的な話し合いというものが実を結んでいくということにはいかぬのではないだろうか、これは当然そうだろうと思うのであります。こういういろいろな日本の現段階の佐藤内閣あるいは三木外交というものがおやりになっておる態度、こういうもので向こうほんとうに腹から腹蔵なく信用して、信頼して、たとえば重要な世界の、アジアの平和、戦争というものと密接不可分な問題であるベトナム問題等についても腹蔵ない、腹からの意見というものを述べてくる、そうして腹蔵なく話し合いができるという確信をはたしてお持ちだろうかどうか、私は疑わしく思うのであります。そこで、外務大臣所信を承っておきたい、こう思うわけであります。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 総理東南アジア諸国訪問、これはスケジュールは最終的にきまっておるわけではないのです。韓国はああいう就任式ですから行ったわけです。その後の予定はまだ確定とはまいりませんが、御指摘のような国々予定の国に入っておることは事実であります。そういうことにもし誤解があるとするなら、私は誤解を解いていきたいと思う。これは何かといえば、日本平和主義といいますか、これはもら憲法の大精神であるし、憲法があるからというのでなくして、国民の信念の中に平和主義というものは深く根をおろしておるわけでありますから、どこの国を訪問しようが、その訪問というものは日本平和主義というワクを越えた話し合いができるわけはないのでございます。ことに、いろんな国を訪問して、国交を回復しておる国は、どこの国にも全部行きたいという非常に意欲的な東南アジア旅行総理考えていられる。まあ、大使を交換しておるということは、その国の立場というものを尊重するという前提のもとにしておるわけです。したがって、総理国交回復をしておる国を訪問するということは、私は少しも悪いとは思わぬですよ。訪問してから、どういうことをやるのか、その言動というものは、国民の批判の前にさらされるのは当然だと思いますが、行くこと自体がそんなに悪いということは考えていない。したがって、総理訪問されるならば、この日本の国というものの立場、また、国民の願望、こういうものの上に立って使命を果たしてきてもらいたいと願っておるし、このことに対する世界誤解があるならば、外務大臣として、積極的にその誤解を解きたいと願っておる次第でございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 その問題につきましては、佐藤総理東南アジア等諸国訪問等につきまして われわれは反対である。そして佐藤さんあるいは三木さんは日本の国の将来にとっていいことなんだというお考えでありますから、並行でありますから、討論にわたりますから、私はこれ以上時間を費すわけにはいきませんが、重要な問題であるソ連訪問によって、ただ話を聞くというだけではなく、これはやはり遠いところへ行かれて、そして話をされるのでありますから、日本外交として努力をしなければならない。ベトナム戦争を一日も早く終わらせるということに効果があるような話し合いがなされなければ当然意味はないと私は思うのでありますから……。  大臣はいま参議院へ行かれるのですね。私はなおまだ十五、六分ぐらいお聞きしたいのですけれども、参議院へ行かれるのですね。どうぞ。
  16. 福田篤泰

    福田委員長 この際暫時休憩いたします。    午前十一時四分休憩      ————◇—————    午前十一時二十一分開議
  17. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について、質疑を続行いたします。堂森芳夫君。
  18. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま休憩になる前に外務大臣にお聞きした問題でありますが、いろんな日本佐藤内閣外交姿勢からいって、ソ連首脳との会議ほんとうに心から信用して話し合いに応じてくるという確信がございますかどうかと、こういうお尋ねをしたのであります。これに対しまして率直なる御意見を拝聴したい、こう思います。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 ソ連日本の真意を理解をされるならば、率直な話し合いができると思います。しかし国が違いますと必ずしも——こうやって同じ国の内部であっても違いますから、国内においてもなかなか話し合いが合わぬ場合もありますから、国が違うとなかなかむずかしい点もありますが、これは私としては誠心誠意、この日ソ定期協議の場をお互い理解増進の場にするように努力をしていきたいと願っております。
  20. 堂森芳夫

    堂森委員 そういうふうな答弁をされるだろうと思っておったのでありますが、私はこの間の本会議で、外務大臣はお留守の間でありましたが、総理ソウル訪問について本会議で質問をいたしました。その際総理に対しまして、あなたはアメリカに行かれましたならば、ベトナム和平のための具体的な考え方日本政府としての具体的な考え方というものをお持ちになってアメリカ当局にもお話しになる、あるいはサイゴン訪問されることをおやめにならぬというならば、和平探求のために行かれるというならば、あなた自身も具体的な和平構想というものをお持ちにならなければ相手を説得することは不可能だと思う、これはああした特殊な国であるベトナム首都サイゴン訪問されて向こう政府首脳とお会いになるというならば、和平探求のために行くというならば、そうした具体的な構想を持っていなければ話にならぬのじゃないか、こう私は申し上げましたところ、佐藤さんは、この間の外務委員会における答弁でも、私の具体的な構想とは撃ち方やめということなんですというふうな御答弁があったのでありまして、そんな態度では私は相手国を説得することは不可能であると思うのであります。  また、そういうわけで私は、たとえば三木外務大臣ソ連に行かれまして、そしてコスイギンとの会談において、日本は少なくともこういう考え方アメリカを説得していくのだとか、こういうことをやっていくのだ、たとえば即時北爆を停止すべきである、あるいはまたベトコンの代表を交渉相手として選ぶ、そういうことをするとか、あるいはまたアメリカ軍が撤退するとか何か、そういうふうな具体的な基本的な日本政府の態度というものを持って、そして誠意をもってぶつかっていくということでなければ、向こうも胸襟を開いてほんとうの態度をもって話し合いをするということにはならぬというふうに私は思うのであります。その基本的態度について少しく具体的に三木外務大臣の所見を伺いたい、こう思うわけです。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 ベトナムに対しては一日も早く平和的な解決話し合いによる平和的解決をはかる、これはだれも異存はないが、この方法論というものについてはいろんな意見があろうと思います。ここで私がこういうことを考えておるがということをいろいろ申し上げるのも適当でないと思いますが、私はやはり一日も早くあの戦争が終わることが——アジアはいろいろな国内建設という問題をかかえておりますから、ベトナム戦争がある間は何かアジア全体に不安定な気持ちを与えまして、やはり国内建設のほうにも黒い影になってくるので、一日も早く終わらすことがアジアの安定の出発点であるという強い考えを私は持っておるものでございます。こういう角度に立って、おざなりなことでなしに、やはり相当突っ込んで話をしてみたいと思っております。
  22. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は非常な政治的な考慮を払って答弁をしておられるようでありますから、私も時間がありませんからこれ以上追及しません。やはり大事な時間を使って、大国であるソ連の首脳と話し合うのでありますから、そうした具体的な考え方というものをぶっつけて、そうして効果があるような交渉をしてもらいたい。まるで与党の激励演説みたいでありますが、私は希望をしたいのであります。  この間も、これは私は新聞で知ったことでありますが、コスイギン首相アメリカの実業団の代表がモスクワで会っておりますが、そうすると、コスイギン首相が、中国の参加あるいは承認なくしてもベトナム戦争の終結はあり得るのだ、こういうような話をしたというようなことがたしか新聞に報道されておったようであります。これは私はこんな考えでは正しくないと思うのであります。中国というものを除外したベトナムの和平解決ということは非常に至難であって、かえって逆の方向に行くであろうと私は考えるのであります。この点についても外務大臣意見等を聞きたいと思いますが、時間がありませんから次に進みます。  数年前でありますか、これは経済問題でありますが、たしか日本からパイプを持っていって、ナホトカまで石油をパイプラインで運んで日本に持ってくる、パイプは日本から持っていくというような話がかなり実現しそうなところまでいったのが、アメリカの石油大資本の横やりによってたしか流れたということがあったと思うのであります。何か今回の定期協議の中の経済問題の一つとして、あるいはシベリア開発の一環として、そういう問題が取り上げられるのではないかというふうにも私はある方面から聞いたのでありますが、外務大臣はこういう問題についてどういうふうにお考えでございますか、これもお聞きしておきたいと思います。中近東の紛争等にも関連して、石油の供給源としても、私は中近東に八〇%も九〇%も依存することに対する考え方としても考えるべきではないか、こう思いますので、承っておきたいと思います。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 堂森さん御指摘のように、数年前にはその話があったのですが、いまはその問題は立ち消えになって、いま具体的に私が参りまして話をする議題にはなっておりません。
  24. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がございませんから、私問題を変えまして、ASPACの会議について一、二お尋ね申します。  ASPACの外相会議におきまして、三木さんは演説をされました。率直に申しますと、ASPACというものは、私の党の社会党では、一つの形を変えたNEATOである、したがって原則的には賛成することができぬ、こういう立場をとっておることは外務大臣も御承知であると思うのでありますが、この会議におきまして、日本の基本的な政策は、ASPACにおける態度の基本的な大きな柱が幾つかあるが、その一つは中国との共存——長期的に見るならば共存である、またそのもう一つの柱として、アジアの低開発国に対する経済的援助を積極的にやっていくことが一つの大きな柱である、こういう意味の演説をしておられるように私は新聞で読んだのであります。間違いないようでございます。  そこで、長期的に見るならば中国との共存政策である、ただし現段階においては政経分離でやっていくのだ、こういうお考え方は私は矛盾しておると思うのですが、矛盾していないのでしょうか。いかがでございましょうか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 外交には長期政策と短期政策とがあり、短期政策は外交の基本方針から生まれてくる。また短期政策は、現実的な諸条件の中から現実政策が生まれてくる。長期的な政策からいえば、やはり中国との間に共存共栄を考えることがアジアの安定の前提条件である。過去を堂森さんがお考えになっても、一世紀の間に、アジアの問題は中共問題であったわけです。中国との関係をどう調整するかということが過去の一世紀の課題である。これからも私はそうだと思う。この問題の調整なくして、アジア、太平洋の安定はないと私は思っている。だからどういうふうにその中国との関係を将来改善していくかということは、これは外交の大きな課題の一つであります。そうなってくると、長期的に中国に対してどう日本考えているのか。これは中国との間にはやはり互恵共存といいますか、お互いお互い立場を尊重して共存していきたいんだという日本の長期的な外交の姿勢を述べることは、あの場で私は有益であったと思うのです。しかし中共は平和共存といっても、向こうは自分の認める友好国とだけの平和共存しか認めてないわけですから、日本はそういう好ましい友好国の中に入れてないわけですから、そういうことで現実は中共の政策が普遍的な原理としての平和共存を認める段階になってない。自分の好む国、そういう国とだけの平和共存を認めて、たとえばアメリカとの平和共存などは考えられないという立場でしょうし、そういうふうなことでありますから、まだ平和共存というものを一つの原理として中共は承認してはいない。そういうことで、また国家と人民とを分けるような傾向も持っている。人民はいいけれども、政府は悪いという、これもまた他国の立場を尊重するという道だと私は思わない。したがって、中共が真に世界と平和共存できる国に早くなってもらいたい、私はこれは願っておるわけです。そうして他国の立場を中共が尊重して、そうしてお互いに共存共栄していけるようなアジアを築きたいと私は願っておる。その長期的な、それが日本外交の基調でなければならぬと思うのですが、いまは中共がそういうふうな考え方にはなってきてないわけですから、現実の場合においては政経分離という方針で中共との接触を続けていくことが今日の日本外交政策としては妥当である、これを率直に私は述べたのでございます。これは特にASPACへ行ったから言ったんじゃない、私の年来のこれは政治家としての主張であるわけでございます。
  26. 堂森芳夫

    堂森委員 それはまあ長々答弁されましたが、私承服できないのです。たとえば、長期的に見て共存政策をとっていくのだという基本原則があるならば、現段階はこういう政経分離だ、そこに私は矛盾があると思うのです。しからば、たとえばアメリカと中国は完全に共存してないんでしょう、あなたのお説によっても。それでも大使クラスの話し合いを数限りなくやってきたという努力すら行なわれておる。ところが日本と中国にはそんな努力がございましょうか、政府にいままであったでしょうか 私はそういうことを言いたいのです。だから、いま直ちにそうしたことが何かの形で、百歩といわず十歩といわず、一歩でも半歩でもそういう努力をする方向に日本外交は行っていない、こういうことを申し上げているわけでありまして、そういう大使級による話し合いなどという一つの米中間のそうした関係というものを見ましても、日本政府はそういうことを行うべきである、私はこう考えますが、いかがでございますか。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 現実の条件のもとにおいてはいまの政経分離というワクの中で日中関係を考えていくことが妥当だと私は思っている。しかし、中共自身も、これは堂森さんがごらんになっても、中共の対外政策というものはやっぱり少し柔軟性を欠いていますよ。これはだれが考えてもそうだ。もう少しやっぱり国際的に協調のできる柔軟性のある中共の外交政策になってもらいたい。そして大いに共存共栄をやろうではないか。こういうことは長期的に見れば私はそれよりほかに生きる道はないと思う。しかしまだそこまで中共がないということは、堂森さんもお認めになるでしょう。柔軟性を欠いていますよ、外交政策は。そういうことで、もう少し中共が、やはり中共自身もそういう平和共存をやることが中共のためにもいいのだ、こういうことで普遍的な原理として共存共栄というものを考えるようになってくれることを私は願うものです。そうなれば、日中関係だって米中関係だって改善されてくる。いまは、まだ今日の段階では、現在やっております政経分離の方針のもとにおける日中の接触、この政策をもう全然変更するというような変化が日中関係の中に起こっておるとは私は思っていない、こういうことを申し上げて、将来に対してはもっと日中関係を改善したいという強い希望を持っておることは、これは堂森さんと変わりはない。やっぱり外交政策は、将来の一つの理想も持ちながら現実はきわめてやっぱり堅実な外交政策をとることが必要であると思いますので、私はそういう政策をとると申し上げておるのでございます。
  28. 堂森芳夫

    堂森委員 私どうも承服できないので、いろいろほかに聞きたいですけれども、外務大臣答弁が長いものだから、もう聞くことができなくなってきました。そこで、私はもう一つの点をお聞きしなければならぬと思っておりましたのが、もうこれは質問ができないです。ということは、ASPACにおいての演説で、アジア諸国の援助が一つ重要な政策である、こう言っております。私たちは、いままでの日本の国のアジア諸国に対する援助政策というものは、率直に言って何かアメリカに追随したような、肩がわりしたような、たとえばインドネシアの援助の問題、スカルノが失脚して後に、六月ですか、交換公文が交換された援助政策を見ましても、六千万ドルの援助借款の申し入れ、三%の利息にしてくれ、こう申し入れがあったときに、日本政府は、五千万ドルは借款ですか、そして五%にする、一千万ドルは贈与、こういうことで交換公文の交換がすでにマリク外相と日本大使との間で終わった。いずれ国会の承認を経なければならぬことは憲法の七十三条、八十五条で当然のことだと思います。これはこの間の外務委員会で問題になっておりましたから私はこれ以上聞きませんけれども、従来の援助というものが、かなり大切な国民の税金、預金等を使って行なわれて、これが所期の目的を達することなく、たとえば韓国の借款であるとかあるいはインドネシアの借款というふうに、多くの問題を残してきておると思うのであります。またわれわれは援助ということそのものを全部反対、こういうわけではざいません。あなたのASPACにおける演説のごとく、共存という形を今後伸ばしていくんだ、こういう外交をやっていくんだという意味での援助ということなら、われわれ反対する理由は毛頭ないわけでありますが、そういう意味で、援助を進めていく上において国内体制が全然これにマッチしていない。金利の問題であるとか、いろいろな条件の問題であるとか、役所の管轄の問題であるとか、いろいろな国内体制というものが伴ってない。こういう点について、三木さん、いろんなふろしきを広げるけれども、ちっとも実際的にはその準備が進まぬじゃないかという批判もあることは、あなた、御承知だろうと思うのです。なかなか幅は広げていくが、よくしゃべるが、実際はそれでは内容があるかどうかという批判もあることは、あなたお聞きだろうと思うのでありますが、もう時間もございませんから、そういう努力を今後していかれるについてのお答えを求めまして、私の質問を終わることにいたします。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 堂森君の言う、金を有効に使わなければならぬ、私もそう思います。ただ金を出すというだけでなしに、それが有効にその国の経済再建のために使われるような努力をすることが必要だ。また日本の国内体制、低開発国援助に対する国内体制というものがもっと改善され、整備されることが必要だ、私もそういうふうに考えております。したがって、こういう問題に対しては今後の問題としてこれは十分に検討をしてまいりたいと考えております。
  30. 福田篤泰

  31. 西宮弘

    西宮委員 それでは外務大臣にきわめて具体的な問題について端的にお尋ねをいたします。  外務大臣は、世界ケネディ大統領クラブ、こういう団体を御承知でございましょうか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 私自身は全然そういうクラブというものに対して記憶もないのですよ。何かそういうことの問題があるというふうに聞いて、振り返ってみましたけれども、全然記憶にないのです。
  33. 西宮弘

    西宮委員 それでは、日本理事長と称しておりますが、花村進という人物についてはいかがですか。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 全然、会ったこともなければ、聞いたこともございません。
  35. 西宮弘

    西宮委員 そういうお返事だと、まことに取りつく島がないのでありますが、私が問題にしたいのは、それにもかかわらず、外務大臣三木武夫というお名前でメッセージが寄せられておるわけです。私はそのことを実は問題にしたいわけでございます。この団体の総裁は山岡萬之助さん、かっての貴族院議員、あるいは日本大学の総長をされました、いまでも名誉総長だと思いますが、この山岡萬之助さんが総裁をいたしておりますが、そちらのほうで調べてみますると、山岡さんは、三木外務大臣がメッセージを出しておられるので、それを信頼して総裁に就任したのだ、こういうふうに言っておられるのでありますが、全然御承知ないというのはちょっとふに落ちないのですが、いかがですか。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 私は何でも原稿を自分で書くのです。その文章などは私が書いた文章でもないし、そういうことで、この問題は調べてみようと思います。詳細に調べてみたいと思います。
  37. 西宮弘

    西宮委員 実はそのためにいろいろ私どもも問い合わせを受けたりいたしましたので、この機会にその点を明らかにしておきたいと考えまして質問をしたわけでありますが、実はこの団体は外務大臣がメッセージを送り、そのメッセージの中には、これは国連の仕事である、こういうふうにうたっておるわけであります。したがって、その募集要項等を見ても、国連の仕事であるということを冒頭に掲げまして、いかにも国連自身がこの仕事をやっておるというふうに一般に思わせるような宣伝をしておるわけです。そして世界の各国の組織を動員して、たいへんな数の国がこれに参加している、こういうふれ込みでありますが、その各国を動員いたしましてこの仕事をする。そうして旅行団として世界十カ国十八主要都市に旅行する、こういうことで、しかもその行った先々ではそれぞれの元首に会わせる。たとえばイギリスにおいては女王陛下、オランダでは女王陛下、ローマではパウロ六世、フランスではド・ゴール大統領、アメリカではジョンソン大統領、こういうふうに規定をいたしまして、しかもこの旅行は、本使節団は、訪問国最高元首、首脳の招聘によるものでありますと、こういうふうにうたわれておるのであります。しかもその外務大臣のメッセージは、いかにもそれを裏づけするかのごとく、いろいろな美しい文句が並べられておるわけでありまして、これを見た人たちがそれに信頼を寄せるというのはけだし当然ではないかというふうに思うのであります。若干それに疑問を持った人たちが私どもに問い合わせをよこしましたので、私はお尋ねをしたわけであります。しかも、さらにそういう行った先々では、各国の元首に会わせるということのほかに、これは地方の知事に依頼を出しまして、その選考に該当する者にはこういう認証状を出してくれということを知事に依頼をしておるわけであります。そしてその認証状をもらった人は三年間は無料の留学を許す、こういうことまでうたわれておるわけであります。ただし行く片道の旅費だけは本人が持ってくれということになっておりますが、行けば三年間は無料で留学をさせる、こういうことも書いてあります。さらにわれわれも見のがせないのは、本使節団の誇りある名誉選考委員は、現在の衆参両国会議員全員がなっておられます。こういうことまで念を押して記入しておるわけであります。大臣はそういうメッセージを出したことその他について、全然何も御記憶はございませんか。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 全然ありません。私はいま申し上げたように、そういう問題は自分で書くのです。一切のそういうものを自分で書くわけです。私自身、わりあい慎重なほうなんですよ、こういうことに対しては。生活態度というものはわりあい慎重なほうで、そんなに何か事実に違うようなことを私が承認するということはとても考えられない。このことで善良な国民に対して非常に迷惑をかけたとしたら、まことに申しわけない。私はいままでそういうものを見たこともなければ、事実に反することが多いですから、そういうものにみずから推薦状を書くというようなことはとても考えられないことでございます。
  39. 西宮弘

    西宮委員 大臣が直接筆をとってお書きになったかどうか、それはいま否定しておられるから、そのとおりかもしれません。そのとおりだと思いますが、ただ、秘書官の國弘正雄さん、この人が依頼を受けてメッセージを渡したということだけはわかっておるわけでございます。私は、外務省の組織は、そういう際には大臣に話をしたり、あるいはまた、いやしくも大臣の名前を正式に使っておるわけでありますから、そういうことになりますと、これは役所流に公文書として決裁をとって回答するというのが当然だと思うのでありますが、そういう手続はふだんとられないのでございますか。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 何か役所ではそういうような話があって、それは役所としては断わったような経緯がいままでにあるようです。だから、それはやはり役所として正式にそういうものをするときには役所はちゃんと手続を経なければならない。その点、書いてある内容でも、われわれが見ればすぐわかることですからね。私自身が書いたことでないことは明らかです。その文章を見て承諾を与えることはあり得ないことだと思って、これは十分に調査をいたすことにいたします。
  41. 西宮弘

    西宮委員 これで終わりにいたしますが、実は私も外務大臣の責任を追及しようというようなつもりではなしに、これで惑わされている人がたくさんあるわけです。ですからその点を明らかにしてもらいたい。しかも相手は学生なのでありますから。これは学生を主体にして募集しているわけです。応募しているのも学生でございます。したがって、そういう人が不測の災いをこうむってはいけませんので、その点を明らかにしたい、そういう趣旨で私もお尋ねしたわけであります。しかもこの花村進なる理事長は実は第三国人でございまして、しかも今日まで二回実刑を受けている人であります。そういうこともわかっておるのでございまして、大臣は直接タッチされなかったかもわからないが、その秘書官がそれに関与されたということを、私は実は非常に重く考えておるわけです。大臣は十分これを調査してということでありますから、十分調査した結果をまた他日お伺いをすることにいたしまして、またこういう案件はこういう時代に往々にしてあり得ることですから、今後十分御注意を願いたいということをお願いしたいと思います。
  42. 福田篤泰

  43. 米田東吾

    米田委員 私はまず大臣に御質問申し上げますが、承りますと、大臣は明日モスクワに出発され、日ソの首脳会議に出席されるわけであります。そこで、この国会はあと三日で終わるわけであります。そうなりますと、大臣からこの会期中に所信を聞く機会がございませんので、どうしても私は朝鮮の帰国問題につきまして、きょう最後の大臣所信をお聞きしたいと思いますし、あわせて、大臣はソビエトという社会主義国へ出発されるわけであります。したがって、そのためにもこの帰国の問題についてはひとつ所信を明らかにされて、ソビエトにおける会議が成功裏に進むように、ひとつぜひ大臣の真意をこの関係につきましては明らかにしていただきたいと思いまして、御質問申し上げます。  第一は、いま帰国の問題は、日本政府が打ち切りの閣議決定という事態を迎えまして、朝鮮赤十字側とは意思疎通を来たすことができない状態で、この問題は暗礁に乗り上げておるわけなのです。これを打開するという目的かどうかわかりませんけれども、日本赤十字社は七月五日付で朝鮮赤十字会に電報を打っているわけであります。私はまずこの問題からお聞きをしていきたいと思うのであります。なお五月二十四日のこの外務委員会でわが党の先輩の穂積先生からこの問題につきまして御質問があったわけでありますが、私はなるべく重複を避けまして、具体的にそれ以後の政府のお考え、あるいは大臣のお考えをお聞きしたいと思っておるわけでありますので、重複を避ける意味で、ひとつ大臣からきわめて簡潔にしかも誠意のある回答をいただきたいと思うわけです。  第一点は、七月五日付の日本赤十字社の電報の真意というものはどこにあるのか。要するに会談を開きたいというところに真意があるのか、日本政府が閣議できめておる帰還業務は十一月十二日でありますか、十四日でありますか、これで打ち切るということを通告するというところにねらいがあるのか。まずその電報の目的から私は大臣所信をお聞きしたいと思うわけです。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 米田さんの御質問は、そこにおる穂積さんとだいぶ長いことやったのですが、政府はこの会談をした場合に、政府の基本線をくずすという姿勢で会談に臨むということはできません。その姿勢の上に立ちながら、こういう帰還の業務が円滑に遂行されることが望ましいのですから、そういう基本線の上に立ちながら話し合いをしてみるということだと私は思います。
  45. 米田東吾

    米田委員 この問題をどう解決するかということを考えました場合に、この問題は、私は政府の主張もあろうかと思います。基本線もあろうと思いますけれども、この帰国の問題を今日の状態でどのように解決するかということを考えます場合に、私は基本線はわかりますけれども、まず相手の朝鮮赤十字会と会談を持ち、話し合いをするということが当面最も緊急の、しかも最も重要な問題ではないかと思うのであります。そうだとするならば、政府の基本的態度はわかりますけれども、それをあえて会談に応じていただくという電報のしかも前段に、一方的な政府のこの態度というものを何も通告する必要はなかろう、これでは真の会談というものが持てないのではないか、こういうふうに思うのでありますけれども、そこらあたりの配慮が足りなかったのではないかと思うのであります。それはいかがでありますか。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 しかし米田さん、もしもう政府は白紙に返すと言ったら、いま行なわれておる、帰還のためにいろいろやっておるでしょう、これは全部停滞してしまう。政府がやはり一応きめた既定方針の上に沿うてその電報も、写しを拝見したのですが、その他とかいろいろ書いてありますからね。そういう基本線の上に立って話し合いをするということでなければ全部御破算、白紙ということでは、いまやっておるいろいろな、八月十二日ですか、それで締め切って十一月十二日ですか、それまでに政府がきめて一つの日程をつくってやっておるわけですからね、日本赤十社が。そういうことで政府が閣議でも——政府もこれは赤十字社と話し合いをした結果そうなったわけであります。そういうことですから、その基本線に沿うて話し合いをしないと、白紙に返すということでは、やはり実際問題としてできないという事情も、米田さんのよく御理解を賜わりたいと思うのでございます。
  47. 米田東吾

    米田委員 私はもう差し迫った今日の段階で、あまり論争をしようとは思わない。論争はいままでの外務委員会で相当尽くされておると思いますから、具体的に政治的に今日の段階をどのように打開するかというところに私は主体を置いておるつもりであります。  そこで問題は、大臣どうですか、大臣がどうお考えになろうと、政府がどのような方針や基本線を持っておられようとも、相手の朝鮮赤十字会が乗ってこなければ、これは何もならぬじゃないですか。私は、電報を打った、あるいは大臣は閣議決定やあるいはその後の日本政府会議を通しまして、この問題に対する基本線なりあるいは具体的な善処の方法というものをかりに持っておられるといたしましても、相手の側が出てこない状態のもとにおいては、いつまでたってもこれは解決するはずはないと思う。そこで、どうですか、これは朝鮮赤十字会が大体日本政府日本赤十字社の真意というものをくみ取っておらないのじゃないか、理解しておらないのじゃないか、その点はどういうふうに理解されますか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 向こうからいえば白紙に返してもらいたいということでしょうけれども、われわれ、こちらのほうとすれば、それはできない。日本のきめた基本線に沿うて話し合いをしようという点で、そこが食い違いだと思うのです。したがって、これはやはり北鮮の赤十字のほうも話し合いを初めから全然しないというのではなくして、食い違いは食い違いとして話し合いをしてみれば、必ずしも私はむだだとは思わないのです。しかしそれを白紙に返してといったら、政府はこれには応じられない。だから日本がきめた原則の上に立って話し合いをしてみることは有益だと思っております。
  49. 米田東吾

    米田委員 大臣、白紙に返すといっても、現に現行協定というものはまだ効力を発生しておるわけだ、白紙ではないのです。今日、会談がかりに持たれるとしても、それからその会談で白紙に返せ、あるいは返すなということの議論が出てくると思いますけれども、そう私は、白紙に返せということについて、こだわる必要はないのじゃないかと思う。現にこの協定というものは効力を発生しておるわけなのであります。それからもう一つは、朝鮮赤十字会のほうでは、人民共和国の声明あるいは赤十字会の声明等を見ますと、決して日本政府日本赤十字社の意図といいますか、真意といいますか、そういうものは理解されておらないような要するに平行線、すれ違っておるというふうに見ておるのでありますけれども、これを何とか打開して、会談のいわばテーブルに着かせるということについて、大臣はお考えがないのか、こういうことなんです。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり北鮮のほうに帰りたいという、その帰りたい人の希望を達成するということは、これはわれわれとしても協力しなければなりませんから、いままで長いことやっておったわけですからね、八年やったわけですから、今度の相当な期限を切って、帰る人はこの間に手続をしてもらいたいということを言っておるのですから、何か急に突然もうこういうことは、協定をもって帰還するような業務をやらないというのではないのですから、相当長期にわたってやっているのですから、帰りたいという人はできるだけその期間の内に——みな帰りたいという気持ちから言ったら、多少自分にも言い分もあるでしょうけれども、それにできるだけいろいろ努力をされて、そうして帰りたいという目的を達成できるようにやってもらいたいと思います。それで一応この協定というものがなくなるわけですけれども、しかし帰りたいという人に対してはいまのような形でないとしても、できる限りのいろいろな方法を政府として考えるということは、これは当然だと思います。これで打ち切って、もう帰れぬというのではないのですから、形が協定による帰還ではないということだけの違いでございます。
  51. 米田東吾

    米田委員 大臣とどうも食い違っておるのですけれども、私は今日の局面を打開するためには、日本赤十字社が提唱しておる会談を持ちたい。そうして八月十二日に締め切ったあとの帰還者の問題あるいはその他の問題について話し合いをしたいということの提案の趣旨が正しく朝鮮赤十字会なり朝鮮政府理解されておらないから、このことは大臣も認めておられると私は思うのです。こういう状態のままでは、こちらにどういう具体案があろうと、どういう善処の内容があろうと、これは意味をなさないわけであります。会談に着かせるようなことについて、大臣はもっと具体的に、あるいはまじめに、どのようなお考えを持っておられるのか。この問題は、やはりある程度歴史的な経過を見ますと、それから日本政府が閣議決定ということを一方的にやったという経過にかんがみましても、その打開の策は日本政府がやはりイニシアチブをとらなければならぬ、能動的にならなければならぬ、こういうふうに私は思うのでありまして、そういう質問をしておるのであります。くどいようでありますけれども、もう一回大臣ほんとうの真意を聞かしてもらいたい。具体的な問題はあとで聞きますから。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこの際政府が閣議できめたような線でみなが最大限度の努力をしてもらうという、そうしてその後の状態というものは、それが終わったときに、いろいろどういうふうな状態になるか、それを見ていろいろこれは帰れるような便宜ということは、できるだけのことはしなければならぬが、この政府の閣議決定をもう全然白紙に返してということでなしに、政府の閣議決定というものを、これを尊重しながらできるだけ善後策を講ずるということが実際的だと思うのです。いま、これをそこで私に詰め寄りましても、この閣議決定を白紙に返すということをいたしますということを私はお答えできません。やはりあの線に沿うて、一応この帰還希望者は処理をして、そうしてそういう処理をした後においてどういう状態になるかということは、その時点において考えることはあっていいと思います。しかし現在のところは、できるだけ早く帰りたいという、帰還をしたいという人は、せっかく政府が相当な期間の予告を置いて、そうして帰国を勧誘しておるわけでありますから、この政府の方針に沿うて帰国を、実現されることを切に望むものでございます。
  53. 米田東吾

    米田委員 私は白紙に返せということは一ぺんも言っておりませんので、ひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。打開策を考えるべきではないかということが私の真意であります。  それで、具体的に大臣にお聞きいたしますけれども、この七月五日付の電報を再度日本政府はこれを正しく受け入れられておらないのだから、したがって、打ち直す御意思はございませんか。会談に引き出す、そうして会談が持たれれば、私は日本政府のそういう考え方なり、そういうものも徐々に理解されるような機会もあり得るのじゃないかと思うのでありまして、会談を持つということが先決ではないかと思う。したがって、会談を持つために再度電報を打ち直して、朝鮮政府が受け入れる電報で打ち直して、会談を持つことに全力を尽くすということについてはいかがでございますか。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこの閣議の決定のそういう基本線に沿うて善後策を相談をしたいということで、再度打つことは私はいいと思いますよ。しかし、その再度の電報が方針を変えたのだ、変える余地があるのだ、そういうことでは、かえって帰還業務に混乱を起こさすのではないか。だからこういう政府の基本方針に沿うていろいろ善後策を相談をしたいということなら、二回打っても私はいいと思います。それを根底から変えるのだという、そういう希望を先方にも持たすことは、会議に引き出すことに成功しても、あとのほうがいけません。そんなことでだまかしたようなことはいけませんからね。ちゃんと明らかにして会議をやろうではないかということなら、電報を打つことは私は差しつかえないと思います。
  55. 米田東吾

    米田委員 そうなりますと、やはり大臣ともう少し意見を詰めなければならぬように思うのですが、時間がありませんし、それはあとのわが党の議員がまたつかれると思いますから、そこでもう一ぺんお聞きしたいのは、大臣からもただいまもしばしば答弁がありましたが、この五月二十四日の外務委員会のわが党の穂積先輩に対する御答弁の中にも、しばしば善処をする、要するに、協定が切れても日本政府は便宜をはかる、具体的なものを考える、当然それは日本政府の責任だということが会議録にも残っておるわけであります。今日の段階で私は日本政府が便宜を与える、あるいは善処をする、政府の責任としてこの問題について方法を考えておられることについて、これはこの委員会にひとつぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 いままでのような方式は、その後にはできないですよ。できないけれども、帰りたいという希望者に対してどうやったら希望が達成できるかというのはあらゆる角度から政府は検討してみる必要があると私はいまも考えております。
  57. 米田東吾

    米田委員 そのことは具体的に事務当局に命じてありますか。それから関係当局、たとえば厚生省あるいは運輸省あるいは総理府、日本赤十字社というようなところに具体的に日本政府の意思として検討を命じ、固まっておるのでありますか。
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 これは八月十二日で締め切るわけですから、そういうことで一応の一段落がつけば各省が寄っていろいろ相談をしたいと思います。いままだ帰還する人のそういうふうな業務といいますか手続が進行中ですが、それが一段落すれば関係各省でいろいろ相談をすべきだと思っております。
  59. 米田東吾

    米田委員 大臣、私は実は新潟県の第一区でありまして、帰国の港の新潟港のあるところの出身なんであります。私自身はこの帰国業務が開始された三十四年十二月から新潟県の帰国協力会の副委員長として八年間この問題に取り組んできております。新潟のこの問題についての取り組みの状況あるいは新潟県や新潟県民がこの問題に尽くしている度合いというものは大臣御存じだと思うのです。新潟県はいまこの問題については県民あげて心配をしておるわけであります。私が承知しているところでは、県議会は満場一致で打ち切りについて善処せよという帰還業務継続の意見書を出しているはずであります。二十二の市町村が同様決議をして、政府意見書を提出しておるはずであります。新潟県の県民はあげてこの問題について関心を示して、積極的にこれが継続されることを望んでおるわけでありますが、現状においてはこの県民の協力するという善意、期待にこたえていただげる答弁大臣からないわけであります。非常に残念なことでありますが、大臣もモスクワに行かれるので、社会主義国の会議といいましょうか、そういうところでこれらの問題についてもあるいは話題が出るかもしれません。どうか私は、日本政府が現行協定を延長するか、あるいは朝鮮赤十字会とお互い対等の立場話し合いを持って、これがスムーズに継続されるような方途をぜひひとつ示していただきたい。大臣が出発されるまでに、この問題につきましてはやはり外務大臣が最高の責任者と思いますから、事務当局や関係各省に十分指示を与えていただきたいと私は思うのでありますけれども、この点についての所信を再度お伺いいたします。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 事務当局には研究をさすことにいたします。
  61. 米田東吾

    米田委員 終わります。
  62. 福田篤泰

  63. 安宅常彦

    安宅委員 外務大臣にお伺いいたします。  ただいまわが党の米田さんからいろいろ質問がありましたが、私はちょっと角度を変えて大臣所信を二、三伺ってみたいと思っているわけです。  祖国に帰りたい、あるいはまた自分の親きょうだいがどうなっておるのかと望郷の念にかられる、あるいはまたそういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、昭和二十年以前は、いわば朝鮮民族というのは日本の帝国主義のやり方の犠牲になったいわば亡国の民であった。こういう立場で非常につらい人生というものを送ってきたこういう人々が望郷の念にかられ、郷土を思い、自分の父母を思い、いろいろなせつない気持ちになる、こういうことについては、これは万人共通の一つの念願であり、感情だと思います。こういうことは、大臣は頭のいい人ですから、そのとおりだとお答え願えると思うのですが、どうですか。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 人情はみな共通のものがありますから、いろいろおっしゃるとおりだと思います。
  65. 安宅常彦

    安宅委員 それはそうでしょうね。ですからこの場合特に私がはっきりしておきたいのは、しからば日本の民族がこういう立場に立ったとき——人のことを何か遠いことのように考えないで、わが身をつねって人の痛さを知れという日本のことわざがありますが、こういう立場に立ったときに、あなた自身どういうことを考えるだろうか。やはり人の立場に立って考えてみなければならないと思うのです。その場合に冷酷むざんな仕打ちは受けたくない、これもあなたが言った人情だと思いますが、どうですか。
  66. 三木武夫

    三木国務大臣 どういう伏線が背後にあるのかわかりませんけれども、あなたの言われておることは人情として共通のものを指摘されておると思います。
  67. 安宅常彦

    安宅委員 伏線はありません。私ぐらい正直な人間は世の中にいないのです。伏線はありませが、特に私がここで強調したいのは、朝鮮の人々は日本の国内におって非常に生活が苦しい人が多いのです。あなたのほうの統計を見ても、現在では潜在的な失業者、いわゆる半失業者といいますか、そういう者を含めて大体失業の状態にある朝鮮人が日本の国内においては約八〇%をこしているのではないか、こういう統計さえも出ておるのであります。そういう人々がそれじゃどういう気持ちになるだろうか。これはたいへんなことだ、朝鮮民主主義人民共和国が非常に発展をしておるということをいろいろな機関紙なりそういうものを見て知り、祖国に帰ったならば少しは生活がよくなるのじゃないか、もっと新しい希望が持ち得るのじゃないか、こういう気持ちになるだろうと私は思うのです。それからまた半面、現在そういう道が開かれていないとすれば、この日本という国に住んでおるという立場から何とかこれを打開するために懸命の努力をする。この二つしかないと思うのです。そうでしょう。官立のいろんな官庁や学校にもつとめることができない。普通の民間会社でも、朝鮮人よりも日本人を使おうという気持ちに当然なるでしょう。どこにも就職ができないからパチンコ屋をやってみたり、あるいは終戦後なんかはどぶろくをつくってみたり、ほんとうに悲惨な道を歩んでおる。事業に成功した人はそれでもいいでしょう。しかしそうでない人が底辺にすごく多くおるのです。六十万の朝鮮人の大部分がそうだということ、これはやはり考えてもらわなければならない。こういう人々は、日本においてそういういろいろな差別を受けて、たとえばパチンコ屋をやっておる私の近所の人がおりますが、帰国問題が起きた、こういうときに、何だかんだと言うのなら早く帰ってもらえないかと言われるというのです。金を貸せといって銀行に行くと、帰ったらいいじゃないか、そうするとあんたなんかに貸すとか貸せないとかけんかをすることはないのだし、ちょうどいいじゃないかなどという皮肉を言われる。あるいは金融筋のほうではいろいろ朝鮮人の中で相互の扶助をするための金融の道などを考えたり、これを日本政府にいろいろと嘆願をしたりしているけれども、全然その道は冷酷、むざん——かどうかは知らぬけれども、少なくとも冷酷なやり方でこれに対処をしておる。そうすれば、帰る道はない、生活を向上させる道はない、どうにもならないという気持ちになる。これがちょうど岸さんの時代に大きな運動に盛り上がって、そうして岸さんの時代にこの協定が結ばれた。私はそういうふうに理解しているのですが、大体そんないきさつだったと思いますけれども、そうではなかったでしょうか。
  68. 小川平四郎

    ○小川政府委員 協定のできましたのは御指摘のとおり三十四年、岸さんのときでございます。
  69. 安宅常彦

    安宅委員 岸さんというのは、漫画にかかれると、えらい歯が前に出たりして、あれは悪者の標本みたいにいわれたんですよ。私はひどい男だと思っておった。その岸さんが少しりっぱな人だということをこのごろ考えるようになった。舎弟の佐藤さんはどうもおかしいと思うのですね。そんな気持ちになっておる。  さっきあなたはうっかり言いました。りこうな三木さんには、あれは意外な失言であったと思うのですが、政府がやっている——ほんとうは協定は赤十字が結んだのですが、赤十字がやっているんだと言えばいいのに、政府がやったとうっかり言ってしまったが、そういう政府が、いまやっておる。ところが三木さんはそれよりもちょっとよくて、この間何かASPACなんかの会議でたいへんりっぱな発言をされて敬服しているんですが、そういう人がいるんですから、岸さんの時代よりはもっといいような結論が出る、私らそう思っているんですけれどもね、三木さん。それがどうも岸さんの時代より後退したような答弁をわが同僚の米田君あたりに言わなければならない苦衷、その根源は大体どこから来たのか察しはつくのですけれども、よし、岸さんにも負けないくらいな協定をひとつつくってやろうというような気持ちは、あなた、ありませんか。
  70. 三木武夫

    三木国務大臣 岸さんに限らず、佐藤さんでも、やはり同じように朝鮮の人たちに対してはいろいろ心配はしておるわけであります。しかし、これは何も帰る道をふさぐというわけでないんですから、ちゃんと予告をして、長いことやったし、また今度も予告をして、どうか帰りたい希望の人はこの期間の中に帰ってもらいたいということで、一番の業務は、御指摘のように日本赤十字社がやっておるわけでしょうが、それは政府も経費を出すから、閣議決定で、政府もこれに一枚加わっておるものであることは事実ですよ。そういうことで、できるだけ政府がきめたそういう線に沿うて御協力を願いたいと願っております。
  71. 安宅常彦

    安宅委員 ただいま米田さんに対して、いままでのような方法ではいけないとはっきり言いました。いままでの方法というものは何かというと、岸さんの時代に結ばれた協定です。それではできない。そんならこれにかわる方法を考えております。こういうことですね。その方法というのは、じゃ、一体何ですか。たとえば外交の一般の通例の慣行なりそういうものからいって、人々の評価はいろいろあると思います。概念的にいって。政府が一枚加わっておるとすれば、それよりももっと強力なものか、ちょっとそれよりも弱い線で考えておるのか、どっちなんですか。
  72. 三木武夫

    三木国務大臣 どっちが弱いか強いかは別として、事実あれで協定の期間が終わりますね。そのあとで相当帰りたい希望者があるということになれば、どうやって帰れるだろうかという方法、協定で配船がないとすれば、そうしたらいろんな便船によらざるを得ないわけで、そういう点で政府がいろいろ考えてみる必要が起こってくると私は思います。
  73. 安宅常彦

    安宅委員 もう一回前に戻すようで悪いのですが、在日朝鮮人が、先ほど言ったように生活は苦しいし、これを向上させる手段というのは少なくとも日本人よりは差別を受けてひどい目にあっておる。だから祖国に帰りたい。自由に帰ることはできない。あなたは、何か低いかその上か知らぬけれども、便船か何かというようなことをひょっと言いましたが、何かの方法は非常に不自由な方法しかない。そういう状態なんですが、そういうことも、六十万の在日朝鮮人がそういうように苦しんでおるというその根源はどういうところにあったのかということ、普通の外国人とは違うのだということ、その根源はどこにあったのだということが少し認識不足じゃないかと私は思うのです。一般の外国人とは違うそういう境遇に落としめたのはだれか。現在そういう生活をやらざるを得ないのは、そのほんとに中心的な根源はどこにあるのか。これはいままでの協定のあるいは前文なんかを見ればわかるかもしれませんけれども、そこのところなんか一般の外国人と同じみたいなふうに聞こえるあなたのいまの発言ですから、ちょっとあなたの考えを聞いておきたいと思います。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 朝鮮の人たちはほかの外国人と私も違うと思う。これはやはりいままでの歴史的ないろんな経緯もありますから、したがって、それはほかの外国人と同じだとも私も思っておりません。
  75. 安宅常彦

    安宅委員 だから根源を聞いておるのです。それは何です。これは私さっきちょっと言いましたけれども、日本に朝鮮の人々が来たときの事情、来ざるを得なかった事情、来ないと言えばどういうことになったかというそういう事情、もっとはっきり言えば強制的に引っぱってきたというそういう事情、こういうことに対して、現在の日本国民なりそれを代表するといわれておる政府がこれに対してもっと真剣な、同情なんというものじゃなくて、言うなれば贖罪みたいな意味できちっとした対策を立ててやるのがほんとうじゃないかと私は思うのです。その根源はその辺にあり、しかも日本政府としてはそのぐらいのことをしなければならないという考えを起こすのは当然だと私は思いますが、そういうことを考えてはおられないのかどうか、そこをお聞きしたいのです。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 できるだけのことはやはり日本政府として便宜をはかることは当然だと思います。その便宜の程度というのはいろいろ意見の分かれるところはあると思いますが、できるだけの便宜をはかるということは当然だと思います。
  77. 安宅常彦

    安宅委員 便宜をはからなければならない理由というのは、私がさっき望郷の云々を言ったときも人情としては同じだと言いましたが、それと同じように、過去の日本人が朝鮮の人民に対してやった仕打ち、そういうものが原因になって、今日それらの人々は子供を産み、結婚をし、あるいはその子孫もおる、こういう状態の中で六十万の人々がおる。これらの人々がいま苦しい立場におるのは、私が言ったようなそういう過去の日本のえげつないやり口がそういう結果になっておる。それが大きな根源だというふうにあなたは認めるか認めないかを聞いてみたい。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 それは私は一がいに言えぬ。韓国の人でも、こちらで非常にうまく、われわれが見てもうらやむような人がそれはたくさんいますよ。だから、一がいに、これが全般が非常に悲惨である、これの原因は、日本の何ですか、いま言われた日本が全部責任がある、こういうふうな議論になってくると、意見はいろいろ分かれてくると思います。そういう何か全部原因が日本の責任だと一口にものを言うような言い方には、いろんな意見が分かれてくる。だから、言えることは、できるだけのことは日本政府がする、朝鮮の人たちにできるだけの便宜をはかることは必要だということを申し上げておるのでございます。
  79. 安宅常彦

    安宅委員 うらやむような生活をしている人もおりますよ。だけれども、私が言ったように潜在的な失業者を含めて失業状態になっているのが八〇%以上だというのは、あなたのほうで発表しておるのです。私の言論じゃないのです。そういう人々をあなたはことさらに逃げて、そしてまた私のことばの足らない点をすきをねらったように、意見が分かれると言うのですけれども、問題は分かれ方だ。二〇%ぐらいの就業している人のうち五、六%ぐらいはあるいは人のうらやむような生活をしている人もいるでしょう。これは資本主義の国だからあたりまえで、もうかった人はうまくいっている。だけれども、そういう議論をしないで、ほんとに総体的に見た場合には八〇%も失業者がおるというそういう状態を見てみるならば、責任というものは大部分は背負わなければならない。意見が分かれるなんて、分かれるというのは三つか四つに分かれる、平等に分かれるみたいなことで、論争でありますから、そうではなくて、大部分はそういう責任を背負わなければならないのだというぐらいは、伏線はないのですからね。そういうことを当然言わなければならないのじゃないですか。外務大臣だから、へたな答弁をしてあとからやられるのじゃないかという心配をすることはないから、ほんとうのあなたの気持ちを言えばいいです。どうですか。
  80. 三木武夫

    三木国務大臣 私はそういうふうにものを考えない。それは、考えないというのは、これは全部日本の責任である、これはやはりそういうふうに何か全部が責任であるというふうに考えて、そうなってくると、それなら個人というものが、いろいろ個人の努力もあろうし、いろいろなことで全部責任でというふうに考えるということは私はとらない。朝鮮の人たちがこういういろいろな、戦前戦後こういういろいろな激変の中で、いろいろな犠牲を受けられた面もあるでしょう。それは否定はしないけれども、全部日本政府のやり方がまずいのだ、この罪ほろぼしをせよ、こういう論理では、やはりそれはそのとおりでございますとは私は言えない。
  81. 安宅常彦

    安宅委員 こんなことであまり時間をとりたくないのですけれども、なかなかあなたもがんこですね。  それじゃ分けて言いましょう。日本の国に当時朝鮮から渡ってきた、何か一もうけしようとかあるいは青雲の志を抱いてきた人もおるでしょう。そういう人の分は何も責任を負うことはないかもしれない、あなたのお考えでいえば。私は、これははっきりいって、総体的に全部日本は責任を負わなければならないという考え方が正しいと思うのですけれども、大臣は分かれるなんと言ってなかなか議論をごまかすから、その分は言わないとしても、しからば日本政府が当時、戦争中あるいは戦争直前において日本に強制的に引っぱってきて、そして重労働、強制労働につかせて、そして帰国の自由も、民族のいろいろな諸権利の自由も全部剥奪せざるを得ないような戦争だったと言えばそれまでですが、あなたはそういうことをあるいは言うかもしれないので言うのですけれども、そういう人々の分は責任を負わなければならないでしょうね。どうですか。
  82. 三木武夫

    三木国務大臣 戦争というものは、これはもうだれに対しても非常な犠牲を強いるものですから、いろいろな犠牲を朝鮮の人たちが戦争によって受けたことを私は否定するものではない。だから必要なことは、いまその責任論、だれがこういうふうにさしたのかという責任論ということよりかは、できる限りそういう人たちの希望も——それは限度がありますよ。全部の希望を聞けといったって、それには応じられない。
  83. 安宅常彦

    安宅委員 私は全部とは言ってない。強制的に引っぱってきたやつぐらいはあなたは責任を負わなければならないだろうと言うのだ。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことで、できるだけの、そういう人々が帰りたいというなら、八年もやっておったわけですから、政府がそういうことを考えて、帰国希望者に対しては便宜もはかっておったのですから、政府としてできるだけのことはすべきだと私も思います。
  85. 安宅常彦

    安宅委員 それでは本論に入りましょう。  そうすると、いままで八年間もやってきたからもうたくさんだ、こういう意味ですか。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 帰国をしたい者も帰国を許さぬ、こういうふうに言われるから、そういうことじゃないでしょうということを申し上げたのです。
  87. 安宅常彦

    安宅委員 私はそんなことを言っておりません。帰国の自由を制限しておるということばは、非常に慎重な意味で使っております。あなたがそういうことをしっぺ返しをするという能力を持っておられるということはちゃんと心得ておるから、さっきから帰さぬというのはおかしいなんて一言も言ってやしない。だれが言ったか知らぬけれどもおれは言わない。質問してないことに対して、仮定の立場に立って答弁をしないでくださいよ。  それでは聞きますが、こういう非常につらい生活をしなければならない人が大部分、それから帰るところも、どういう協定によるのか私はわかりませんけれども、別な道があるということをあなたは盛んに言う。なぜいままでの協定でだめなのか、その理由だけはちょっと聞いておきたいのです。もっと詳しく初めに……。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 いままで八年間という期間をやって、帰る人もだいぶ少なくなっていますから、一応のきまりをつけたいということは、赤十字としても、政府としても考えるということは、これはあり得ることでございます。そうしてきまりをつけて、そこで私ども言っておるわけです。そういうことでどういうふうに今後はしていくかということは、各省とも相談をしてみたいと言っておるわけでございます。そこで一応きまりをつけたいということでございます。
  89. 安宅常彦

    安宅委員 それじゃこれは外務大臣でなくてもいいですが、将来、大体いまの在日朝鮮人の人口といいますか、それからいって年間どのくらい、いままでの実績等からいって帰る人が出てくるだろうかという想定は、たとえば厚生省なりそういうところで立てておられるか、どうかそれを伺っておきたい。
  90. 実本博次

    ○実本政府委員 いまのお話の件でございますが、従来、この帰還業務が始められましてから相当な帰還者がございますが、ここ二、三年の実績にかんがみて将来のことを考えますと、大体月間百人から百五十人の程度でお帰りになる、それを一年間で見ますと、大体千五百人程度の方々が続くのではないか、こういうふうな見通しを立てております。   〔穗積委員「現在の申請者数はわからないですか」と呼ぶ〕
  91. 安宅常彦

    安宅委員 それも答えてください。
  92. 実本博次

    ○実本政府委員 六月末現在で二千三百人の方々の申請書が出てまいっております。
  93. 安宅常彦

    安宅委員 これは、技術的なことにはあとで入りますが、そういう人数が帰るであろうという予想を立てておるのです。二千三百人といったら相当の人数ですよ。それでもう八年間もやったから、一たんこれで区切りをつけたい。区切りをつけるのは帰る人がいなくなったという印象のときに区切りをつけるのだったらわかるけれども、二千三百人もおる、こういう中で区切りをつけなければならないという理由はどこにあるのですか。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 だんだんと減ってきておったことは統計の上からいって事実です。
  95. 安宅常彦

    安宅委員 大臣答弁はそういうことになるのです。年間二千人以上ぐらいは帰るであろうという統計をあなたのほうで発表していますね。それを年々減るという、そういう考え方の統計だとあの数字から見て私は思いませんが、援護局長どうですか。
  96. 実本博次

    ○実本政府委員 大体それで横ばいで推移するのではないだろうかというふうに考えられます。
  97. 安宅常彦

    安宅委員 大臣、あなたは減るのだとばかり思っているのだ。だれかから、わからない人から聞いているのだ。これは減らないのだ。初めのときはうんとあったですよ。それは認めますよ。そこから減っていることは認めますよ。よろしゅうございますか。それで、大きなことを日本政府は言えないのは、日本政府が朝鮮民主主義人民共和国と国交があって、日本のほうでは、帰りたいという人に対して日本の船を仕立てて、正常な外交のルートで帰す、こういうことだったらわかるけれども、両赤十字間で話をつけてそうしてやる。そういうやり方でやっておって、しかも船は向こうの船を期待しておるのです。あなたのほうはこちらのほうから出す気はさらさらないのです。早く帰したいから、その場合には日本の船で間に合わせるのだ、それでどんどん帰ってもらいたいという自由が、あなたのほうには国交を回復する意思がないからそういう自由がないのですよ。いまのところはそうでしょうね。それは認めるでしょうね。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 いままでは向こうの船によっておる、それは協定に従ってやっておるわけであります。
  99. 安宅常彦

    安宅委員 そうしますとどうなんですか、減るだろうとかあるいは減った場合はどうするとか、ふえた場合は、じゃ三木さん、船を特別出してやるとか、そういうことも言えない、そういう立場にありながら、一応これでけじめをつけるなどということは、年間二千人以上も帰るという統計を、あなた方の政府側の事務当局の人が、ちゃんと、横ばいの状態でそうなるだろう、こういうふうに言っている中では論理が合わなくなりませんか、どうですか。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 したがって、私が言っておることは、政府としては、まあ、ああいう閣議決定をやったわけですから、あの閣議決定に従って、帰還を希望される人はできるだけその方針に従って帰還を実現してもらいたい、あとの問題については事務当局でいろいろ検討をしたい、こう申し上げておるわけでございます。
  101. 安宅常彦

    安宅委員 そうじゃないのですよ。あなたはそういうふうにいま逃げたけれども、そうじゃないのです。事務当局のほうは横ばいだと言っておるのです。初めとは違うけれども。だけれども、今度はあなたはずっと減ってくる、どんどん減ってくるから、この辺で打ち切りだ——打ち切りだとは言わないけれども、一応の区切りをつけよう、こういう話だね。別の方法を考える、こういうことを言ったから、私は、いまの横ばいで減りやしないですよと、あなたは知らないと思うから言っただけの話ですよ。いまあれだけ帰国者がおるのですから、区初りをつける理由は、別に理由があるのじゃないですかと聞いているのです。別な理由はないのですか。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 これは全体としての趨勢を言ったわけで、これは減ってきたことは事実です。それで今後一体どれくらいの希望者があるか。さっきのは六月末の数字を言ったのですが、八月までの間にどれだけの帰還希望者があるか、こういうことも、やはり将来の希望者の数字を考える場合に一つの要素にはなる。今回どれだけ帰還が実現するか、そういうことも見届けて、将来どういうことになるかということの見通しを立てて検討を加えたいと思っております。
  103. 安宅常彦

    安宅委員 まあ、あなたに聞いてもそういうことを言うだろう。それはまたあと言えないようにしてやるから。  今度は別な人だ。援護局長、あなたのほうは、いままで減っているし、今後も減るか知らぬし、どうだかわからぬから、そういう状況に応じて関係当局で打ち合わしてみよう、こういうことだとあなたはいま私に答弁をしているのですが、あなたのほうでは統計学上いろいろな調査をして、科学的に調べたのだと思いますが、毎年二千人ぐらい帰るだろう、こういうことを発表しているのですけれども、それは正しくないか正しいかなんてここで議論いたしません。少なくとも今日一便の船がかりに一カ月に一回来たとする。急に帰国者がふえた、そのときに朝鮮の国のほうに、いやもっと早く区切りをつけたい——区切りをつけないで、ばらばらにいるのですよ、これはあなたよく考えてもらいたい。こういう人がいるのだから船をたくさん回してくれとか、あるいはそれじゃ日本の船を出しましょうとかいうことは、いままでの協定でもなかなか言う自由はない。そうですね。そういう状態ですから、あなたのほうでは、ふえても、百五十人程度毎日帰る、こういう状況に対する手の打ち方しかほかに手の打ち方はない、私はそう思いますが、何かほかにありますか。
  104. 実本博次

    ○実本政府委員 私が申し上げました見通しというのは、全く従来の経緯にかんがみた私なりの推計でございまして、別に非常に各方面のデータをもってやったわけでもなし、その辺は、そういう数字でございますから、御了承願いたいということでございます。  それから、最初これを始めましたときには、先生も御存じのように、年間二万人から三万人の多くの方が帰られたわけでございますが、最近ここ二、三年の経緯が、大体それに比べますと月間百人から百五十人というふうな経緯をたどってまいっておりますので、そういう意味で、外務大臣もさっきから申し上げておられるように、この辺で、そういった大量に帰国されるときにこしらえた方式を一応は区切りをつけて、月間百人から百五十人程度の人の帰り方を考えたらどうか、そういうふうな御趣旨の答弁をされたのではないかと思っております。
  105. 安宅常彦

    安宅委員 いまの答弁で重大なことは、大量に帰ることを予想した協定だ——ほんとうですか。それが一つ。  それからもう一つは、あなたの発表された、少なくとも政府の一員として発表されたものがそんなに権威のないものを発表したのだということをみずから告白するような答弁を国会でやって、あなた、何か切り抜けするための口実に使ったら、たいへんなことになりますよ。権威のないものなんですか、インチキなんですか、どうですか。
  106. 実本博次

    ○実本政府委員 数字のことは、前もって申し上げましたように、最近の帰還の実績の数字を見まして、それが今後その程度で続いていくだろう、そういうことを申し上げたわけでございまして、別に権威とかなんとかの問題でなくて、事実をそういうふうに申し上げたわけでございます。  それから、最初の御質問ですが、これは協定の中身なり協定のていさいを見ますと、大体有効期間が、最初一年三カ月、いま一年になっておりますが、大体その一年とか一年三カ月とかいうことで、一年一年区切って、帰還の実績を見ながらやっていくという協定の体制をとってきている推移を見ますと、それがやはりたくさんの方が一気にお帰りになるということを想定してつくられた協定ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  107. 安宅常彦

    安宅委員 それはあべこべじゃないのですか。大量に帰還するという見込みでやったら、一年ごとになんか区切らないで——六十万人いるのですよ、あなた。それを何年かに六十万を割って、これぐらいたったらみな帰るだろう、それで何年かやろう、こういうのだったら、大量に帰すという予想をした協定だと思う。そうではない。いろいろな立場があるのですよ。きょう仕事をしておっても、あした突然失業して、どうにもならないから帰りたくなる人だっているのです。いま帰りたくない人でも、あるいは商売の人が、いままで商売がなかなかうまくいっておられる、人のうらやむような生活をしておる人もおりますと三木さんも言ったけれども、そういう人でさえも、いつ商売がぶっ倒れて、手形が割れなくなって困る人が出てくるかわからないのですよ。こういう保証はないのですよ。あるいはそういうことになって、義理がたい人で商売の借金を何年かかかって返してから帰りたいという人もおるのですよ。それから、もうすでに関連した家族、弟さんは行っている、いつか呼んでくれる時期があるだろうと思って待っておる人もあるのですよ。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 こういう人というのは、あなた方の想像外のところにたくさんいる。あるいはまた、むすこが大学を卒業したらそのときに帰ろうかなと思って、計画を立てている人もおるのですよ。ただめくらめっぽうに——あなた方のほうも、日赤の人たちとの話し合いなんかしても、非常に気にかかることばがあるのです。積み残しということばをあなた方はしょっちゅう使うのですよ。豚や牛を積むみたいな積み残しということばは何だ。積み残しの分は何とかその他のところであらわしているつもりでありますとか、電報のことなんか聞くと、すぐ言う。積み残しなんと言うものじゃない。そういう積み残しなんということばは、日本政府の役人さんがどんな考え方で朝鮮人を見ているかという一番大きな証拠がそこにあらわれていると思うのです。そういう人々は、いろいろの意味の人がおるのですよ。だから、私が言うのは、そういう人々も全部考えて、毎年毎年協定を更新する、こういうような気持ちで、大量に一時に帰すなんという協定でないのがいまの協定で、あなたが大量に帰す協定だという観念でおるとすれば、それは間違い、あべこべじゃないかと私は言いたいのですが、どうですか。田中さんは非常に詳しいようですが、あなたはどう思いますか。政務次官なんというのは政治の立場でやるので、事務的な立場でやる人とは違った意味で政務次官というのは任命されているのですから、そういうことぐらいあなたは判断がきくと思いますが、どうですか。
  108. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 やはり最初は相当帰還されるという見込みで計画をしたことは事実であります。ところが、さて実施をしてみますと、だんだん帰還する数が減ってまいりまして、最近におきましてはだいぶ減って、一時、帰還が打ち切られるのじゃないかというので、また数が少し高まっておる事実はありますが、大体いま政府委員から答弁いたしましたように、毎月百名ないし百六、七十名というところが平均した数字ではないかと思っております。したがいまして、最初はやはり大量帰還されるという見込みで計画されたことは事実であります。
  109. 安宅常彦

    安宅委員 協定を結ぶにあたって、それでは日本赤十字社あるいは——赤十字が結んだんだから知らないなんて逃げ口上は許しません。政府も一枚加わって——加わってどころじゃない、政府がやらしておるのだ。打ち切りのときなんか、ほんとうの話をすれば、盛んに打ち切れ、打ち切れと言ったでしょう。だから赤十字の人に聞くと、政府はけしからぬと言っているのです。大臣におこられるから黙っておるだけで、そういう人々の意見を聞くと、そういう人々はそうさえ思っておる。だから私は逃げ道をふさいでおくつもりだったけれだも、武士の情けで一方ぐらい道を開いてやってもいいが、しかし皆さんどうですか。じゃ協定を結ぶときに一時的に大量に帰ったのは事実だとあなたは言いました。大量に一時に帰すという協定を結んだとするならば、大体六十万人いるんだから、そのうち帰国の予定者、希望者というのは何十万ぐらいおって、それを何年ぐらいかかればみな帰せるか。少なくとも、一年では帰せるということで一年更新の協定を結んだつもりはないでしょうね。そんなふうでやるつもりだったか。まるきり誇大妄想狂が考えるような、そういう協定を結んだとは考えておりませんからね。それじゃ、どれくらいの人数で帰すのだということを考えて協定したのか、その辺の構想を——当時の人はおりませんと言われれば、なんですが、何か一つの、予算を立てるのでも積算の基礎があるのと同じように、大量に帰すつもりで結んだというならば、その構想を、だれか知っておる人が答弁してもらいたい。
  110. 小川平四郎

    ○小川政府委員 私の記憶でございますけれども、どれぐらい帰るかというのは、当時協定ができるときにもちろんいろいろな推計をいろいろな人がしたわけでございます。十数万という推定をした人もございますし、三万ないし四万という推定をした人があるように記憶しております。したがって、協定ができますときに、的確にこれだけのものが帰るという正確な数字を基礎にして行なったものではないと記憶しております。
  111. 安宅常彦

    安宅委員 だから、援護局長が答弁したのは、あなたが出した資料も権威のないものだそうですから、あなたの答弁も権威のないもので、大量に一時に帰す協定ではなかったということを言外に答弁したと、こういうふうに理解していいですか。
  112. 小川平四郎

    ○小川政府委員 別にそれに関係ないと思います。私の記憶では、やはり大量に、相当速急に帰るという予想のもとにできたと了解しております。
  113. 安宅常彦

    安宅委員 大量にとは一体どれくらいですか。だから、はっきりいえば何十万人の人を朝鮮がいまの国力で、あるいは日本がこれに船を出す意思は当時から全然ないのですからね。もちろんベルリンの大空輸みたいに、じゃかすか帰すのだったら、そういうことは何十万人を想定したのならば、それは大量に帰る、そういう協定になるでしょう。船が一月に二回か三回ぐらいの程度で大量に帰せますか、帰すことができるという科学的な根拠はどこにもないでしょう。ありますか。
  114. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま申しましたように、いろいろ推定があったわけでございますけれども、私の記憶では、日本赤十字あるいは政府の関係者は、そう大量に十数万人というようなものではないだろう、むしろ小さい数字ではないかというふうに考えておったと思います。三万ないし五万でございますから、これは一年間でやろうとすればできます。少なくとも二年間あればできるような感じ方ではなかったか、こういうふうに記憶しております。
  115. 安宅常彦

    安宅委員 じゃ、十数万という想定をしたのはどこの人ですか。
  116. 小川平四郎

    ○小川政府委員 記憶しておりませんけれども、あるいは朝鮮の方々の、あるいは朝鮮総連、そういうところであったと思います。これは記憶に基づいて言っておりますので、正確なあれでございません。
  117. 安宅常彦

    安宅委員 あなたのほうは三万、四万だと言う。ところがいままで何万帰っておりますか。
  118. 小川平四郎

    ○小川政府委員 現在まで八万帰っております。
  119. 安宅常彦

    安宅委員 今後も帰るという見通しは、その実績の上に立って、援護局長がいろいろと検討して立てた予想だと思いますが、権威のないものだなんてみずから言わないで、今日まで帰っておる——そうして今後年とったら死んでしまって、結婚もしないで子供も生まないで、そういう状態だったら単純な数字が出てくるかもしれませんが、そういう人口の推移等から全部お調べになって、年間最低二千人ぐらいは帰るだろう、こういう予想を立てたのだと私は思います。さっきたいへん遠慮し過ぎて、援護局長は、たいした人数じゃない、私は人数をはじいたときには科学的でもないみたいな推定を出したのだと言ったのですが、そうではなくて、今日まで八万人も帰っておる。今後もそういう状態からずっと帰るだろう。その推計を相当長期にわたってあなたは見て、そうして立てた、こういうふうに私は理解しておるのですが、それでいいでしょうね。援護局長どうですか。
  120. 実本博次

    ○実本政府委員 あくまで私が申し上げておりますのは、最近の帰還実績の二、三年の推移を見て、今後そう大きな社会的変動、あるいは経済的変動がなければ、そういうことで推移していくのではなかろうか、こう申し上げておるわけでございます。
  121. 安宅常彦

    安宅委員 少なくともここ二、三年の少ない期間の状態を基礎にして立てた数字ですね。援護局長そうですね。
  122. 実本博次

    ○実本政府委員 ずいぶん減ってまいっておりますが、とにかく最近の二、三年の……。
  123. 安宅常彦

    安宅委員 最近は少ないでしょう。それを基礎にして立てたのでしょうと言っておるのです。時間がないから簡単に……。
  124. 実本博次

    ○実本政府委員 さようでございます。
  125. 安宅常彦

    安宅委員 正直でいいわい。そうしますと、少ない数字を基礎にして立ててまいって、二、三千人は帰るだろうということならば、何か別に重大な意味でもない限り、いままで延長してきておって、これを打ち切る理由というのは、たとえば南のほうの韓国の政府などを考えたり、そういうことを頭に入れておるから何かやってみたい、こういう気になったりする、政治的なそういう立場の理由しか私はどうしても見当たらないが、そういう理由は全然関連はしていないのかどうか。これは大臣から聞きたい。
  126. 三木武夫

    三木国務大臣 韓国からは何もありません。
  127. 安宅常彦

    安宅委員 そうすると、この間電報を打ちましたね。日本赤十字の名前で政府が打たせました、あれは。私は確かな——うわさにもいろいろ、根拠のないうわさと、確かなうわさとがありますが、確かなところをずっとつついてまいりますと——そんなことはありませんとあなたはがんばるにきまっておるけれども、まず、日赤あたりが原案をつくって、厚生省に見てもらったらこの辺は外務省に見てもらったら、この辺は……。外務省に見てもらったら、この辺の文章はうまくない。官僚のかみそりみたいな頭の、融通のきかない文章にして、それを法務省に持っていったら、今度これは治安を頭に考えるような、そういう連中の頭でさらに電報を修正して、まるで無味乾燥、朝鮮側がかっかとおこりそうな電報に変わっていったと私は聞いておる。しかも打つ時間は相当早いことを予想しておったが、佐藤総理が韓国に行く日程なども考えて、帰ってきた直後に出した、こういうふうにいわれておるのです。ですから、私から考えれば、南の朴さんの幻影があなた方の頭の中にちらちらしておることが、どうしても、私は言いたくないけれども、ほんとうのところは、あなたの顔に書いてあるような気がするのですが、どうですか。
  128. 三木武夫

    三木国務大臣 顔には何も書いておりません。
  129. 安宅常彦

    安宅委員 大体そういうことは、あなた方の下僚の人で実際そういう事実があったのだ。文章を直したのは事実だそうですよ。文章がだんだんおかしくなって、そうしていまあわてて、これはしまった、朝鮮のほうからあっさりけ飛ばされて、声明を出されて、そのほかにこんな電報を打ってよこすとはけしからぬという返事の電報まで受け取って、がく然としておる、こういうことを聞いておりますがね。何とか道がないのか、こういうことでいろいろと、うしろのほうから、あるいは横のほうから、肩をたたいたりして、私どものほうにも触覚を伸ばしてきている人が中におる。まことにあの電報の内容は、打ってしまったあとだけれども、融通のきかない電報だったなという気はしませんか、どうですか。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 これは電報を各省で相談して原案を変える場合もありますが、しまったなんと思っておりません。
  131. 安宅常彦

    安宅委員 それでは聞きますが、いろいろな方法であなたのほうで帰国を打ち切ったのではなくて、何かの方法を考えておる、こういうことならば話し合う用意があるんですか。朝鮮赤十字と日本の赤十字社との間に話し合いをさせるというか、してもらいたいという意思はあるんですか。
  132. 三木武夫

    三木国務大臣 いま私が米田君の質問に繰り返しお答えしたように、あの状態を全然白紙の状態といいますか、そういうことでは困る。そうでなしにあの日本赤十字——政府の意思も加わっておるわけですが、そういうことであの線に沿うて、そうして善処をしようということで話し合いをするならば、これは何もわれわれ話し合いをしてけっこうだと思います。
  133. 安宅常彦

    安宅委員 ああいう電報は、言うならば私の表現で言えば、相手の顔をいきなりぶんなぐっておいて、いままでのやつはだめだぞとぶんなぐっておいて、そうして一方的に押えつけて、そうして今度その範囲内で、日本の言うなりになるならば話し合ってもいい、こういうように受け取った側はそうとると思いますがね。田中さんどうですか。
  134. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 しかし、こちらの日赤の側としましては、やはり正確な意思を先方に報告いたしまして、正しい理解を求めたいという気持ちから、ああいう具体的な詳細な電文を打ったんじゃないか、こういうふうに私は善意に解釈しているわけであります。
  135. 安宅常彦

    安宅委員 それにしては、あの文面からでは人道主義に反し、赤十字精神に反したまことに権力主義的であって、一方的なものにしか、どんなに日本語というものを解釈しても、あの文章からは受け取れません。日本語というのは非常にうまくできているんですよ。あなたがたとしては善処いたしますなんというときにはたいがい善処しないときなんだ、しかるべく取り計らいますというときは大体取り計らわないときなんです。そういうように非常に逃げ道が多いあれを持っているのです、日本語というのは、日本民族というのは。それだったらもう少し余裕のある文章を、そういう気持ちで、善意であなたが解釈するぐらいならば、そういう文章を使うぐらいの、そうしてまた中国の文化というものを受け継いだ日本のあの文章ですから、解釈のしようによっては非常に礼儀正しい文章にも幾らでもつくり変えられる、そういう日本語を持っておるのです、われわれ、皆さんは。そういう国の赤十字が出した電報にしてはまことにもってへたくそな文章です、だれが出したのか知らぬけれども。私はそう思いますが、その感は幾らかあるんじゃないですか。田中さん、どうですか。
  136. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 先ほど御答弁したとおりでございますので、御了承願いたいと思うのであります。
  137. 安宅常彦

    安宅委員 外務大臣どうですか。佐藤さんは反共の親分の国みたいな韓国に行っている。そのときにあなたはバンコクで反共精神の親玉になるのはごめんだと言っておる。たいへん微妙な食い違う発言をしておりますが、日本語でそれを政府の統一見解として佐藤さんと話し合った結果、食い違いがないというふうにでき得るほど日本語というのは自由なんです。あれはあなただけ点数を取ったみたいな発言なんです。そういう点からいっても、同じことを書くんだったら、田中さんは善意で何とか話し合いをしたいという気持ちをあらわしていると言う。それくらいだったら、もっと朝鮮側がかっかとならぬような、そういう電報の書き方があったとは思いませんか、どうですか。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 政府と日赤とでああいう方針をきめた。そういうことですから北鮮側と意見が違うわけですから、話し合いはなかなかうまくいかないですよ。だから、そういう点で意見が違うなら違うで、文章は書く人によっていろいろもっと文章の書き方があったではないかという御批判はあろうかと思いますが、そういうことの文章の文面ということよりかは、一ぺん話してみないと何にも初めからしないということでは——問題としても話し合ったならば、またいろいろのいい知恵も出てくるかもしれないですから、そういうことで北鮮側も話し合いに応ずるようになることが私は好ましいと思っています。
  139. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。まああなた方は、何ぼ言ったってここではあまりひどいことは言えないだろうというので、内心あわ食っておると思うのです。  それでは向こう側にも交渉のテーブルに、話し合いのテーブルに着いていただきたいという気持ちはあるということですね。ああいう電報は打っておきながらも、日本政府はそういうことを考えておるということですね。
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 これは誤解のないようにしておきたいのは、日本のいまの赤十字社のきめておる方針を変更するという意図を含むものではない。ああいう線に沿うて話し合いをすることは話し合いをしていいという意味でございます。
  141. 安宅常彦

    安宅委員 これは局長に聞きますが、打ち切りを変更する意思はないが、何らかの協定に達しなければ、合意に達しなければ——しかし何かを考えて打ち切るものではないという、打ち切らないとして、変える方法があるとすれば、何らかの協定、そういうものが必要だということは認めますね。
  142. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほどからお話が出ておりますように、日赤といたしましては、電報にも書いてありますように、八月十二日に締め切りまして、その帰還をさせるための措置その他について適当な場所で話し合いたいと言っております。したがいまして、八月十二日の締め切りによりまして事態が相当明確になりますので、その段階で何がなし得るかということは、先ほど大臣から御答弁がありましたように、われわれ事務当局にその段階において検討せよという御指示がございますので、その段階で検討いたしたいと思います。
  143. 安宅常彦

    安宅委員 これは赤十字の立場で言うならばどうでしょうかね。両方とも協定はあるのですね。片一方が打ち切りを宣言しておる。宣言しておるけれども、その期間内に電報を打ったりするくらいですから、その協定の内容によって、そこを基本にして交渉を始めるのか、打ち切りたい、あるいは打ち切らないでもらいたい、打ち切らぬのが当然だという議論が起こったとしても、現協定を基盤にしたそういう話し合いを行なうのが外交儀礼上当然だと思いますが、どうですか。それとは全然切り離して交渉するつもりなんですか、いまの九条なり何なりそういうものを無視した形でやるつもりなんですか。
  144. 小川平四郎

    ○小川政府委員 現在の協定を打ち切るということは政府の決定でもございますし、日本赤十字も同意しているものでございますので、現在の協定を延長する方向での話し合いということは現段階では適当でないと思っております。ただ打ち切りに伴いまして、善後措置をどうするかという問題が、話し合いの対象になることであろうと思います。先ほどから申しましたとおり、私どもといたしましても、その段階で検討いたしたいと考えております。
  145. 安宅常彦

    安宅委員 そんなことを聞いておるのではないですよ、いま協定は現実に生きているのですから。生きているうちに日本の赤十字は電報を打ったりなんかしているのです。政府の意図はどうあろうと。そうすると、現協定を打ち切るという場合あるいはその後どうするかという問題を討議するという条項がありますね。その条項によって話し合いをしたいというのか、それとは全然関係なしにやるのか、それを聞いているのです。あなたのいまの答弁は、これは打ち切らせていただく、八月十三日以降の問題についてのみ話し合いたい、その話の内容を言っているのです。そうじゃなくて、話し合いをするそのやり方、めくらめっぽう、やみから鉄砲みたいなぐあいにはいかないから、たとえば九条によって話し合いをしたいということになるのか、協定を基礎にしてやるのか、協定とは離れてまるっきり別な話し合いをするのかどうかということを聞いておるのです。
  146. 小川平四郎

    ○小川政府委員 協定延長の問題は話し合いの対象にならないと思います。
  147. 安宅常彦

    安宅委員 そらさないで言ってください。協定に基づいて話し合いをするのかということです。打ち切るか打ち切らないかはその話し合い内容でしょう。現協定のいろいろな延長や何かの問題は一年ごとにやってきたじゃないか、あなた方は。そういうことでやるのかと聞いている。
  148. 小川平四郎

    ○小川政府委員 今後の方針につきましては、明確に延長をしないという方針……。(「それは日本側の方針でしょう」と呼ぶ者あり)という方針のもとに話し合おうということでございます。
  149. 安宅常彦

    安宅委員 何に基づいてやるかということを聞いているんじゃないですか。質問に答えなさい。そんなことでだめだ。もう一回再答弁だ。
  150. 小川平四郎

    ○小川政府委員 協定の第九条には……。
  151. 安宅常彦

    安宅委員 それに基づいてやるのか、それに基づかないのか、はっきり言え。言えないんじゃ、時間ばかりたってしょうがないじゃないか。
  152. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは基づくとも基づかないとも言えないと思います。
  153. 安宅常彦

    安宅委員 じゃ、どういう話し合いをするつもりなのか。もっと詳しく聞きたいね。
  154. 小川平四郎

    ○小川政府委員 協定が今回打ち切りになるので、それに伴う善後措置その他でございます。
  155. 安宅常彦

    安宅委員 それは九条によらない話し合いをするという意味ですか。
  156. 小川平四郎

    ○小川政府委員 九条を離れることもあり得ると思います。
  157. 安宅常彦

    安宅委員 離れないこともあり得るのですか。
  158. 小川平四郎

    ○小川政府委員 協定九条には……。(発言する者あり)協定九条は「協議の上、本協定をそのまま又は修正して更新することができる。」となっております。その目的のための話し合いではございませんので、九条そのものの話し合いではない。
  159. 安宅常彦

    安宅委員 私はやはり人を信用し過ぎておったと思うのですが、私の質問のしかたが少しとげとげしいから、あわててあなたがうっかり出てしまったのかしれませんけれども、誤りは改むるにしかずですよ。これは九条に基づいて、その内容は打ち切る場合もあるし、あなたは打ち切りたいという主張、九条で話し合いをしなければ、話し合いする余地というのは、じゃどこでやるのですか。
  160. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは赤十字同士の話でございますから、必ずしも何条に基づくということでなくても差しつかえないと思います。
  161. 安宅常彦

    安宅委員 それは外務省の見解ですか、どこの見解ですか。
  162. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま御質問がありましたので、私の考えを申し上げたのであります。
  163. 安宅常彦

    安宅委員 それじゃ大臣にお伺いしますが、そんな赤十字がやることについて断定的な答弁を平気でやる、これさえもほんとうは私はおかしいのです。赤十字がやっているのですよ、 いままでは。それを外務省が、わしの見解だとか大きなことを言って断定的な見解を言っているけれども、赤十字が交渉する限り、あなた方は赤十字を使っていろいろ電報をぶたせたりしている。一枚加わったと正直に言うんだから、そういう場合には、赤十字が話しするときには現協定の九条に基づいて、どういう主張をするかは別として——もう日本の主張はわかっていますよ、あなた方打ち切るということを言ってくるだろうなと思っていますよ。だけれども、その協定が生きているうちに電報を打ったりしておるのですから、その協定が基本になって、第九条に基づいて話し合いになるのでしょう。そうじゃないのですか。それじゃ何やるの。天国の人とでも話をするつもりか。——大臣にいま質問しているわけですよ。
  164. 小川平四郎

    ○小川政府委員 九条には「この期間に帰還事業が完了できないと認められる場合は、協定期間終了三カ月以前に」云々と書いてあります。今回は協定を延長しないという方針のもとに話し合うわけでございますけれども、話し合いそのものは九条に基づく話し合いであると解釈しても差しつかえないと考えます。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 安宅常彦

    安宅委員 それでいいんですが、役人というのはもう少しはっきりしてもらわないと困るのです。解釈しても差しつかえないなんて無礼なことばじゃないですか。私が解釈しても差しつかえないという答弁ですが、あなたがそういう解釈をしているということなら答弁としてはりっぱですが、解釈してもやむを得ない、おまえさんは解釈かってだ、こういうことですか。なめることをするなよ。
  166. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど申しますように、話し合い内容がこの九条を離れることがあり得るわけでございます。ただ、話し合いを起こすということが九条に基づいて行なわれても、これは差しつかえないと解釈しておるわけであります。
  167. 安宅常彦

    安宅委員 あなたが交渉するみたいなことを言いますね。一枚加わったどころの騒ぎじゃないです。これは十枚ぐらい加わっているな、大臣、これはいけないことです。あなた方は赤十字社だの何かといっても、社会主義の赤十字は政府の言いなりじゃないか。われわれは独裁国と違うんだ。あなたしょっちゅう言うくせに、これはもっとひどいね。赤十字なんかに一分のすきも与えないで、外務省がかってにきめるみたいな、そうしてそういう権力があって、そういう方針をのませるんだという意味の発言ですよ。しかも私の見解です。私にどういう解釈してもあなたのかってだみたいな答弁をさしておいて、ああそうですかと私言えますか。そんなことは言えませんよ。それは当然、どういう主張を中でやろうとも、日本赤十字が朝鮮の赤十字と相談する、話し合うときには、その協定の第九条によって、その中で日本は打ち切るんだとか、向こうは打ち切らないのが正しいとか、こういうようになるのであって、どこまでも九条に基づく交渉だ、話し合いだ、こういうふうに私どもは思っておったのですが、当然そうするのが、次の別な方法があるとあなたは言う。別な方法もその中で話によってやるのが、今後帰っていく人のためにいいことではないのですか。そういうことがない限り、向こうだって、あなた、これは自主独立のりっぱな国ですよ。それはあなたから何だかんだ言われてへいへい言う国じゃありませんよ。もちろんあなたのほうも向こうから言われてへいへい言う国じゃありませんから、その赤十字と赤十字が話し合うときには、そういうことについて相手がこういう態度をとられたらどういう気持ちにわれわれはなるだろうかということをもっときちっと考えて、そうして答弁してもらわなければ困りますよ。大臣どうですか。
  168. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員は、この協定に厳重にいろいろ書いておって(発言する者あり)小川君の言うその解釈でいいと私は思います。
  169. 安宅常彦

    安宅委員 それでは具体的に今度聞きますが、何で運ぶのですか。運ぶというか帰すのですか。飛行機じゃないでしょうね。船でしょうね。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 私が言っておるのは、本年八月十二日までに、これでできるだけ早く帰りたいという人は、みなこの方針に従って帰還を実現してもらいたい。そのときになってきたときに一応の見当がつくでしょう。そこで今後どうなっていくであろうか、これをどういうふうに処置をするかということは事務レベルで十分検討いたしますということで、いま何だと、そういうことについていろいろ検討したいと申し上げておるのでございます。
  171. 安宅常彦

    安宅委員 私が船かと聞いているのは意味があるんですよ。いまのところ三千何人ばかりあるそうですね。希望者はもっとふえるかもしれませんね。一挙に帰ってもらいたい、なるべく多く帰ってもらいたいとあなたは言うけれども、船は日本政府が出さないですから、出す気づかいはいまのところない。あなたは出す気がないとちゃんと顔に書いてある。ですから、帰ってもらいたい、帰ってもらいたいと言いながら、船で帰すほかはないし、しかも相手の国の船で帰してもらうほかはないのですね。だから、いろいろな方法が別にあるとあなたが言うから、私はその内容を頭の中に想像した上で言っているのですが、そんな、日本で言ったって、いま貿易で非常に朝鮮は忙しいから日本には小さな船一隻しかよこせませんよと言われても、ぐうとも言えませんね、そういう立場での話し合いですから。だから、あなたの希望をこの国会で幾ら申し述べてみたってだめなんですよ。そういうことを考えると、そういう話し合いというものをしなければならないわけですからね。だから、そういうことを含めて言うといろいろな方法があると思うのです。現在の協定とは別な方法でやりたいということは何回も答弁しているのですが、具体的にどういうことを考えておるのですか、そういう場合に。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、現在の場合に、その話し合いを北朝鮮側ともしたらいいと思うのは、やはり円滑に帰還の業務を行なうためには、話し合ったほうが円滑にいけると思いますからそうやったらいい。その後の協定、これを延長しないという政府考えですから、その後の方法は、一体どれくらい帰還の希望者があるものか、あるいはまたそれに対してどうするかということは今後の問題にしたい。現協定の期間内における帰還は、これはやはり船でしょう。
  173. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、現協定以外の別な方法があるとあなたが言った、その言った場合でも、しかし船ですね。そうですね。そうすると、船というのも新潟と清津という航路しかないんじゃないですか。どうですか。しかも朝鮮の船だ。これしかいまのところ手がない。そうですね。
  174. 三木武夫

    三木国務大臣 この協定が打ち切られた後についてはいろいろな方法を検討してみていいんじゃないかと思っておるのです。
  175. 安宅常彦

    安宅委員 その場合に、朝鮮側が応じてきた場合を一応私は言うのですが、お互いに話がまとまるときのことを考えているのですが、私はそれをまとめることを期待しているので聞くのです。船以外にない。だから、船だとすると朝鮮の船だ。日本の船を出す気づかいは、あなたのほうにはない。そうすれば朝鮮の船は、本国から迎えに行くときには清津の港から日本の新潟に行く航路しかございませんと言われれば、そうですかと言わざるを得ない立場ですね。そうじゃないですか。別の案を出せばなんと言ったって、これもどこを通ってくださいということは言える立場じゃないのです、いまのところ。こっちで船を出さないのですから。そうですね。
  176. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま御指摘のような問題も含めて、八月十二日に数字が確定いたしましたところで各種の方法を検討いたしたいと思います。
  177. 安宅常彦

    安宅委員 各種の方法というのは、検討しても、日本の希望条件はあっても、まとまった場合には、あるいはまとめるためには朝鮮側が船を出す方法しかないということだけは認めますね。
  178. 小川平四郎

    ○小川政府委員 いろいろなその他の方法もあり得ると思いますので、八月の段階において検討いたしたいと思います。
  179. 安宅常彦

    安宅委員 日本政府が船を出すことは考えておりませんね。
  180. 小川平四郎

    ○小川政府委員 現在具体的にどの方法も考えておりません。八月の段階においてあらゆる方法を検討したいと思っております。
  181. 安宅常彦

    安宅委員 また逃げるようなことを言うけれども、それならいいですよ。どんな方法だっていろいろあるでしょうが、赤十字が船を出す能力もなければ、日本政府の援助がなければ船を出すこともできない、だから、日本の船を出す心配はない、それだけははっきりしていますね。大臣、どうですか。
  182. 三木武夫

    三木国務大臣 心配がないということばが適当かどうか、いま日本の船を出すことは、現在の段階で考えておりません。
  183. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。それではそうした立場にあるときに、航路やらあるいは出発地などそういうことも日本政府が保証しなければ、それは協定が成り立たないと思います。国交未回復の国ですから、そういうことですね。
  184. 三木武夫

    三木国務大臣 いま小川局長が申し上げたように、八月の十二日で一応締め切って、そうしてどれだけ帰るか、そういうふうなことも、できればその後一体どうするかということも検討しようと言っておるのですから、それはどういうふうな方法、あらゆるどういう可能性があるかということを検討しようというのですから、いまはいろいろあの場合、この場合というのを申し上げることが適当でない段階だと私は思います。
  185. 安宅常彦

    安宅委員 それはわかって聞いておるのです。私は交渉するときに、こっちはまる裸になっていって——こっちじゃない、あなたのほうだな、まる裸になっていって、実はこういうことになっておりましてというばかはないですよ。そんなことはおれだってわかるよ。だけれども、船は用いる、日本の船を出す気づかいはないことは、これはあたりまえの話です。そうしたならば、出発港のあれなりあるいはその航路なり、そういうものを日本政府が赤十字のうしろだてになって保証しない限り、これはだめなんだということだけ、これだけははっきりしておりますよ。どんな方法を一生懸命交渉でやったって、これだけはきちっとしておると思います。それ以上のことはないでしょう。日本政府が保証しない限り、帰る人も一般の外国人の例によるとするならば、ビザの関係だっていろいろあるでしょう、そういうものを日本政府がやらなければ帰れませんね。これだけははっきりしておるでしょう。交渉がどんなに右へいったり左へいったりしても、これだけははっきりしていますね。
  186. 小川平四郎

    ○小川政府委員 保証とおっしゃることがよくわかりませんが、日本政府の保証とおっしゃる点がよくわかりませんが……。
  187. 安宅常彦

    安宅委員 わからぬやつは答えなくてもいい、わかるようにしてやるよ。あなたが朝鮮に行ったりどこの国に行ったって、日本政府の全然保証なしにあなた自身行けますか、かってに行けますか。
  188. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことですよ、安宅君。八月十二日以後のことはいろいろ検討したい、こう言っておるわけですね。そういう場合に保証というのは、小川局長が言うのは、いろいろ保証ということの意味があるでしょうけれども、協定はなくなるわけですからね。こういうふうな形における協定はなくなって、別の方法を考えざるを得ないわけです。そうなってくると、その場合にいまここで政府が保証するというようなことは、これはなかなかやはり用心深く小川君は答えるということは私は当然だと思うんです。だから、いろいろなそういうものをひっくるめて、八月十二日以後の時点において検討をいたしたいということでございます。
  189. 安宅常彦

    安宅委員 そういうことを聞いているんじゃないですよ。私は悪意を持って聞いているんじゃないんです。何とか、どんな方法か別として、政府がお考えになっている点が、ほんとうにりっぱな協定なり話し合いの合意ができるならば、朝鮮の人々、帰国する者に非常に便利な方法をお互いに見つけたいという意味で言っておるのですから、これは誤解のないようにしてもらいたいと思うんです。だけれども、出国の事務やそれから船が日本の港に入ってきたときの問題、航路の安全、そういうもの、それから向こうに行くときには外国人ですから、自由に行ってもらいたいということを考えているんだ、盛んに言っているんだが、そうした場合の持って帰る金の問題やらあるいは、その他のいろいろな問題について、向こうの入国の関係やそういうものもいろいろ手続があるということはばかでも覚えている、そんなことは。だからそういうものは、出国に関することなり持ち出し品の問題なり、そういうものも日本政府が保証しない限り、これはだめなんですねということを聞いておるんですよ。それはそうでしょう。
  190. 三木武夫

    三木国務大臣 これはこういうことばで置きかえておきましょう。政府はそういう場合において可能な範囲内で便宜をはかります。こういうことでございます。
  191. 安宅常彦

    安宅委員 可能な範囲というのは、国際慣例あるいは現在日本で普通の一般の外国人が出国したり何かしたりするときにやっておる方法、そういうものを全部——特別それよりいいということをやるかどうかは別として、それくらいのことは当然やることだ、こういうふうに理解していいんですね、いまの答弁は。
  192. 三木武夫

    三木国務大臣 可能ということは一般慣例とかあるいは従来のいきさつ、いろいろなことを勘案して可能ということであります。
  193. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。そうするとこういうことは政府が一枚加わったことをみずからあなたが言っているのですから、そういうこともまた一枚加わらなければなりません。したがって、かりに朝鮮赤十字と日本赤十字が協定を結んだ場合には、これを尊重し、どういう協定になるか、あるいは協定という名前がつくか、いろいろなことがあるでしょう。私もわかります。それはあなた方の立場は。反対であるか賛成であるかは別として、わかります。だから、そういう場合にはそれを尊重して、そうして何らかの合意に政府間も達する——表面的にはどうだか裏面的にはどうだか、いままでやってきたということなのですから、こういう協定なり話し合いというものを尊重して日本政府が合意する、こういう立場をとらなければ、事実上帰国はできないということになります。したがって、そういう場合にはあなたのほうできちっとした態度をとって、帰国の希望者のことを考えてやらなければならない。つまり何らかの協定ないしはそれに似たものが成立しない限り、朝鮮人は、八月十三日以降といいますか十一月十三日以降といいますか、帰ることはできなくなるのだ、これだけはそうなんですね。そうでしょう。
  194. 小川平四郎

    ○小川政府委員 赤十字間の話がどうなりますか、その結果をみまして、おっしゃるとおりできるだけの便宜をはかりたいと考えております。
  195. 安宅常彦

    安宅委員 私が聞いているのは、合憲に達する、協定に達する、そういうことがない限りは、幾ら外務大臣が、朝鮮人帰ってもらいたい、あるいは帰してやるぞと言ったって、話し合いが合意に達しなければできやしないのだ、そういうことになりますな。これだけを聞いておきます。
  196. 小川平四郎

    ○小川政府委員 必ずしもそうでないと思いますが、その方法が一番いいかと思います。
  197. 安宅常彦

    安宅委員 必ずしもそうでない場合は、どういう場合でしょう。私しろうとでよくわかりませんから、教えてください。
  198. 小川平四郎

    ○小川政府委員 全く単独に、個々で出国する場合もあり得るわけです。
  199. 安宅常彦

    安宅委員 そうすると密出国みたいなものですか。どんなことですか。私、わかりませんね。全く単独で、個人で日本から朝鮮に行く、あるいは日本からアメリカに行く一どういう方法があるのでしょう。船の底にでも隠れていくのですか。よくわからないけれども……。
  200. 小川平四郎

    ○小川政府委員 外国人の出国は自由でございますので、成規の出国の手続をとれば出国できるわけでございます。
  201. 安宅常彦

    安宅委員 だから正式の出国の手続というのは、日本政府が、じゃ航路もない、朝鮮の船を利用しなければならないようでございますが、そういうときにどんなふうにして行くのでしょう。こんなにして、手で羽ばたいて行きますか。
  202. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは非常にこまかくなりますが、普通、出国する場合には、法務省の入国管理局において出国許可を出しますので、それを申請をいたしますればできるわけでございます。
  203. 安宅常彦

    安宅委員 そういうときに、いま大臣、里帰りだとか何かいろいろと認めようとか認めないとか、これはごちゃごちゃしているのですよ。出国を許すのですか。あなたのほうへ正式の出国手続をとれば帰しますなんて、やれるのかね。どんなことしてやるのだ。インチキな答弁をするな。  そうして、あわせて答えてもらいたいが、そういう場合は、その正式の出国のビザの相手国の名前はどこになります。
  204. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは法務省の主管でございますので、こまかい点は法務省のほうに聞いていただきたいと思いますが、国に帰るのでございますから、別にビザは要らないわけでございます。たとえば香港経由で帰るということがあり得れば、これは出国を許すわけでございます。
  205. 安宅常彦

    安宅委員 こまかいことはわからないけれども、じゃそういう人は、現在のあれで、相手国の名前も出さない、行く先も、香港に行くことにしてごまかして行けば何ぼでも行ける、こういうことですか。
  206. 小川平四郎

    ○小川政府委員 法務省の問題でございますが、法務省の入国管理局が発給する出国証明書に出国の証印を受けて出国することができます。
  207. 安宅常彦

    安宅委員 その場合には、朝鮮民主主義人民共和国と書いてくださいますかね。
  208. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは法務省の問題でございますので、私そこまで承知しておりません。
  209. 安宅常彦

    安宅委員 だから、そういうことはくさいくらい知っているくせに知らないふりして言うと、だんだん詰まって、それは法務省だとあなたは逃げざるを得なくなるのです。ですから、何らかの合意、協定に達していない限り、十一月十三日以降在日朝鮮人は祖国に帰ることができなくなるですねと言ったら、そうですと——必ずしもそうではないなんてよけいなことは言わないで、そうですとあたりまえに答えていれば、こんなにごちゃごちゃならない。そうじゃないですか。今度は法務省がどういう態度をとるか。あなた知らないのですか。ほんとうに知らないのですか。日本政府はそういうことに何にも連絡の話をしていませんか。帰国協定を打ち切らせるときばかり協議しているのですか。あるいは全般にわたって陰謀をめぐらしている場合もあるのじゃないですか。そんなことは私は法務省がどういう態度をとるのかわかりませんが、法務省の見解によるほかありませんなんて答弁外務委員会でする。私はしろうとだからあるいはごまかされるかもしらぬが、こういうところにこういう専門家がいっぱいいるのだ。そういうインチキな答弁はしないでくださいよ。事実上そうなる。日本政府のいまの現状から、そうでない場合もあり得ますなんという答弁にはならないのだということを、それだけははっきり念を押しておきたい。どうですか。
  210. 小川平四郎

    ○小川政府委員 私の承知しております限り、特別の事由がない限り、外国人の出国は法務省において自由に許しておりますので、おことばではございますが、そういう場合があり得ると思います。
  211. 安宅常彦

    安宅委員 大量に帰ることは、あなた方は予想して協定を結んだと言った。大量にそういう申請を法務省に出したとき、どういう態度をとりますか。大臣、特別な事情がない限り日本政府は許可するそうですから。ほんとうにやれますか。協定なしにやれますか。
  212. 三木武夫

    三木国務大臣 安宅君、声が大きいようですけれども、これは帰ってこないならば、私は大量でも可能だと思うのです。もう一ぺん帰ってくるというのは別ですよ。帰らぬ限りということならば、それは大量でも、成規の手続をとれば私は可能だと思います。
  213. 安宅常彦

    安宅委員 成規の手続をとればいい、ただこういうことですね。あなた、全責任を負えますか。
  214. 三木武夫

    三木国務大臣 帰ってこなければ。
  215. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど申しましたとおり、自発的に帰国を希望する者の出国手続につきましては、法務省におきまして出国証明書に証印を受けて出国する、こういうようになっておりますので、可能であると思います。
  216. 安宅常彦

    安宅委員 いままでの帰還でさえも法務省が許可してないのはうんとあるのですよ。私は知っているのです。そんな答弁で何とかこの委員会を切り抜けようなんということがいかぬのですよ。だから私が聞いているのはこういうことなんだ。何らかの合意か協定に達しなければ、つまり日本政府の保証がない限り、朝鮮の人は帰りたくても帰れないということになりますな、ただこれだけ聞いているのですよ。そうですと言えばいいじゃないですか。だから、そういうことにならないように何らかの別の協定か何かに達するように考えているとあなた方は言うのですから、そこで話を合わせて終わりにしようかと思うと、変な答弁をするからこうなるのだよ。
  217. 三木武夫

    三木国務大臣 お話し合いができたほうが円滑にいくことは御指摘のとおりだと思います。  しかし後段の場合、帰ってこないなら、安宅君、大量でもいいのですよ。これは少し声を大きくして言われたけれども、帰ってこないで行くならば、大量でも出国できますよ。私はそう思う。  しかし、この場合はやはり話し合いができたほうが円滑にいくことは御指摘のとおりだと思う。
  218. 安宅常彦

    安宅委員 その場合にどこを経由して——海の中を泳いでいけとでも言うのですかね。そんなばかなことを言いなさんなと言っているのだ。船を出す意思もなければ、航路もない。国交は回復していない。香港へでも行けば、香港で行き先を変えて香港経由て行ったらどうですか——あなた金持ちみたいなつらしているけれども、あなたそう言われたらどうします。かかあ、子供連れて香港経由で帰ってくれなんて言われたら、そのときは帰ってこない限り何ぼでも出しますよなんて言われて、あなた行きますか。そんなばかみたいな答弁しないでください。私はあと法律的にぎゅうぎゅう突っ込むとかなんとかいたしませんよ。そういうばかなことを言わないでください、こういう意味で声を大きくしているのだ。
  219. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど、したがって私は必ずしも不可能でないということを申し上げましたので、大筋につきましては先ほど大臣のおっしゃるとおりでございます。
  220. 安宅常彦

    安宅委員 つまり、私言いますが——もう時間がありませんからやめます。まるでウナギと勝負しているみたいなもんだから。ただ政府がそういう保証をしてない限り、原則として出ることはできない。そういう状態では合意に達せられない。あなた方、どうしてもいままでの協定がだめだと言うなら、協定は再協定を結ばざるを得ない。そうすると、いろいろ考えてみると、いままでの協定の中にずっと書いてあることは、ほとんどそういうことを書いてあるのですよ。あと何にもないですよ。船はどっちから出すとか、いろいろなことを、日本はその場合、政府がどういう態度をとるとか、そういう話し合いもしたのでしょう。私がいま質問していることは、ほとんどが現協定に盛られていることなんです。それをなぜ打ち切らなければならないのか、どうしても私はわからないのです。ただ協定というのがおもしろくないから、協定ではなくて、私は労働組合の出身だから言いますが、団体交渉の結果、協約を結ぶのはいやだから議事録にとどめようとかなんとかいうのがあります。内容は大体同じでも何かそういうことでも考えているのか。何かその考えるところには、南の幻影がちらちらと浮かんでいる。それだけで、あとは内容は同じなんだから、打ち切らぬでもほんとうはいいのだけれども、そういうことなんです、というしか結論は出てこない。そうならば、打ち切らぬでもいいじゃありませんかと私は言っているのです。延長すべきではありませんか、何ら理由はないではありませんかと聞いているのです。内容はほとんど同じになるんです、大臣。ただ私の予想で言えば、貧乏な人、生活保護家庭みたいな人は政府で補助しているけれども、人もうらやむような生活をしている金持ちの人は、あなた言った、その人は自費で帰ってくれとか、その辺だけが少し違うだけで、あとは船の乗員がどうとかこうとかということが少し違うだけで同じですよ。また合意に達してみたところで同じです。それを飛び越えた何らの条文も出てこない。そうすれば、いままでの協定で何でもないですね。ちょっと改定しただけでもいいみたいなものです。それを、なぜいまの協定を打ち切らなければならないのか。理由は何にもないじゃありませんか。それはアメリカから言われたのか、韓国から言われたのか、これくらいしか理由はないと私は断定せざるを得ないのです。そこまで言われたら、協定を再延長すべきだくらいの、それがほんとうは念願だ、しかし何とかかんとかという答弁くらい、あなた、できるんじゃないですか。進歩的な発言をバンコクあたりでやってくるのですから、日本の国会の中で一ぺんくらい言ってみたらどうですか。
  221. 三木武夫

    三木国務大臣 これは進歩でも退歩でもない、そういことじゃないと思います。(「進歩的に見える発言だね、それじゃ」と呼ぶ者あり)いや、進歩とか退歩とかいう問題じゃない。政府がひとまずここで、だんだんと八年もやってきたんだから、ここらで一ぺんひとつきまりをつけて、そしてそのあとの状態はまた検討してみようということですから。そういうことはあり得ますよね。
  222. 安宅常彦

    安宅委員 いろいろあなたの立場はそういうことでしょう。しかし、それは急行列車に八両の客車をつないでいって、そしてうしろの三両ばっさり切って、同じような列車をまたつけたようなもんだ。何にもならない。文章もほとんど同じことになるでしょう。それしかないですよ。船を出すのも向こう、航路も向こうで指定するほか、日本ではくちばしも入れられない。日本で船を出すなら格別、ほとんど違いない。あとは少々のいままでと違った協定、こういうことになるかもしれぬが、協定ということばを使いたくないということを盛んに言っているのが私の耳に入ってきています。ただ題目が違うだけで、南無妙法蓮華経と南無阿弥陀仏だけが違うみたいなもので、たいした違いはない。メンツの問題、メンツを立てなければならないのは、日本の国だけではありませんよ。朝鮮民主主義人民共和国もメンツを立てなければならない、独立国としての矜持がありますから。そういうことでこっちが横やりを入れてわがままを言っているみたいなかっこうになりはしませんか。それは赤十字精神にも、日本外交の面から言っても、非常に私はマイナスになることだと思います。ですから、できるならば、私らの意見というものは、現在の協定を若干修正する程度で再延長するのだったら何ぼでもいい。だけれども、協定を打ち切るなんということはどうしても理解できません。こういうことだけ申し上げて、私の質問を終わります。
  223. 福田篤泰

  224. 穗積七郎

    穗積委員 大臣に関連してちょっと。  実はきょう私、ほかの問題で質問したかったのですけれども、きょう質問者が多かったし、大臣の時間もないということで遠慮したわけですけれども、先ほど同僚の委員が質問いたしました問題の中で、ぜひ明らかにしておかなければならない点が二つありますので、それだけ簡単にお尋ねいたしますから、簡単にお答えいただきたい。  第一は、対ソ交渉について、先ほどあなたは領土問題に触れるつもりだということをおっしゃいました。その場合に、実はわれわれの要望をちょっと申し上げておく必要がある。黙って聞きのがすわけにいかない。それは従来、佐藤内閣になりましてから北方領土についてどこまでも主張するのかということについてあらためた答弁はなかったように記憶いたしております。しかし、歴代保守党内閣は、南千島列島、北は特別区別いたしまして、こういう御意見が開陳されておった。おそらく同様の意見を継承されてソビエト側に主張されるものと私は推測するのでお尋ねするわけです。  実は、私どもは領土問題は原則として戦争によって領土の変更を来たすべきではないという原則で臨むべきだと思います。領土不拡大方針というものは国際法上の原則であると思います。しかし、日本は降伏文書によりまして、武力をもって取った領土は返す。それに朝鮮半島が入る、台湾も入る、それから樺太も入る、こういうことであったわけです。それはわれわれも認めます。しかしながら、国際法上見て、わが国の固有の領土として千島列島全体は降伏文書の規定に該当しないものであるという確信をわれわれは持っておる。したがって、私どもはまだ政権をとっておりませんから、外交上の交渉権、ネゴシエーションする権限はありませんけれども、われわれの解釈、国民の要望というものは、いままで数度にわたってフルシチョフ時代にその意見を述べて、強く検討を要望したことがあります。それはここでは時間がありませんから申しませんが、結論としては、北千島を含む千島列島全体、これが当然われわれの主張すべき原則ではないかというふうに考える。ただ、それに対しては、例のサンフランシスコ平和条約の規定が条約上ひっかかる。それからもう一つは、政治的にいえば日米安保条約がソビエトを敵視しておるかどうか、その解釈について政治的な意見の食い違いがあるわけですけれども、基本に返れば、千島列島は、南に限らず、千島列島全体が基本的にわが国の固有の領土権があるもの、そういうふうに私どもは解釈をし、今日までソビエトの責任者に対しても主張してまいりました。したがって、その強い、正しい要望のあることを、この際佐藤政府に、交渉に当たられる前にはっきり申し上げて、検討を要望するわけでございます。これが第一点であります。
  225. 三木武夫

    三木国務大臣 自民党内閣立場は、南千島の歯舞、色丹、択捉、国後、やはり領土問題としてわれわれが話すのはそういう南千島のいま言った島でございます。
  226. 穗積七郎

    穗積委員 これは講和条約によるものに拘束されてそういうふうに言っていると思うのです。あれはクーリール列島となっておる。それに南は含まないのだという解釈は、あとになって苦しい解釈をしておる。あのときの事情は、実は千島列島全部でありますから、歯舞、色丹以北は放棄したことになっているわけですね。したがって私は、対ソ交渉においては、基本的には千島列島全島にわたって領土権が失われていないけれども、実は講和条約によってその原則を誤って日本がこれを了承しておりますから、それに対する改定が必要である、こういうふうに私は理解するわけです。それらの条約論については、きょうは、時間があればいたしますけれども、時間がありませんからいたしません。そこは、条約局長もおりますから、ぜひその間の経緯は筋道を立てて、日本民族の正しい要求、国際的に正しい原理が貫かれるように善処することを要望しておきます。これはこの際申し上げておかぬと、私どもは、あなたが領土問題に触れるということをこの委員会で報告されて、われわれ社会党議員がそれを聞いてその点を明らかにしておかないということは、これは国民に対する、あるいは国際原理に対する不忠実になりますので、ここで一言意見をつけて質問を申し上げて要望するわけでございます。  それから第二点でございますが、これは帰国協定について、私はこの際両赤十字が友好的に話し合いながらこの問題を解決することを期待いたしております。その場合に、私どもは、協定の無修正延長を希望いたしましたが、政府はそれを変えないということである。それは強制するわけにはいかない。まして相手国、朝鮮民主主義人民共和国政府あるいは朝鮮赤十字会にこれを強制するわけにいかない。同様に、朝鮮側の意見もこれは強制することはできない。これは当然の原理ですね、交渉に臨む以上は。わがほうはこの方針で臨む、この方針は変わらないということを主張されることは何ら差しつかえないことです。ところが相手意見を事前に拘束し、制限をする権限は、日本側にはないわけですね。相手意見は、無修正延長が妥当であるという主張をもって臨んでこられることもまたこれは自由なわけですね。したがって、そこで私が問題にするのは、この間七月五日に打ちました日赤の電報は、打ったというよりは、日赤に電報を打たせました。あれに朝鮮側がなぜ抵抗を感じ、あるいは非礼を感じておるかということは、この国際関係の会談においては、相互の意見お互いに強制はしない、お互いが自分の方針は自分がきめる、相手の方針は相手がきめる、こういう原則に反する心配がある。すなわちあの電文から見ますと、打ち切りを前提として、事後処理についてのみ会談をしようという、その日本側の意見相手側に強制をし、相手側がそれを前提として承認しなければ会談に臨めない、誤解を招く電文であったわけです。私は、会談というものは、およそいま申しましたように、相互自由の原則に従って臨むべきである。日本が方針を変えないということもまた自由でありましょう。向こうがどういう方針をとるかということもまた自由でなければならない。したがって、きょう入港をいたします帰国船に朝鮮赤十字の代表の方もおるようでありますから、日本赤十字を代表する方も新潟へきょう赴いておられて、非公式に接触をして、そして八日十二日締め切り後の事態を踏まえて正式な会談をしようということを申し入れられるわけです。そのときに、政府が打たせた電報は、あれはあくまで日本の方針である、これは今後話をしても変わらないということを日本政府では明らかにしておるだけであって、相手の意思、相手の方針を強制し、相手に対しては日本の方針を了承しなければ会談に応じないという趣旨の電報ではない、こういう理解でいいと思いますが、それは間違いないでしょうね。その点が会談を成立せしめるかせしめないかの焦点なんです。当然のことですけれども、念のために伺って、この際大臣からお答えをいただくことが、会談を友好的かつ円満に開かしめるための重要なポイントだと思う。
  227. 三木武夫

    三木国務大臣 日本政府の方針を述べて、日本政府日本政府の方針に従ってこの問題が処理されることを強く期待をする。しかしこれは強制といっても、話し合いをするという以上、強制といってもそれ以上のことは、これは強制力があるとは思いません。
  228. 穗積七郎

    穗積委員 したがって、相手に対して強制をし、相手の方針に会談に臨むのに制限を加えるものではない、これでよろしゅうございますね。
  229. 三木武夫

    三木国務大臣 制限といいますか、そういう強い政府の方針を体して日本の赤十字社は話し合いに臨むということの態度は変えるものではない。向こうがどういう反応を示すかということは、これは話し合いをしてみなければわからない問題だと思います。
  230. 穗積七郎

    穗積委員 したがって、相手が持っておる議題、提案しようとする議題並びにそれに対する朝鮮側の方針を事前に強制し、または制限するものではない、こういうことですね。——明瞭じゃないですか。そのとおりでしょう。
  231. 三木武夫

    三木国務大臣 これは向こうが、話し合いの場合にいろいろ問題を出してくれば、それは出してはいかぬとは言えませんでしょうから、実際話し合いをしたら、向こうはいろいろな日本政府の期待と違うような議題も出してくる場合もあるでしょう。それは出してきても、それをいかぬとは言えないでしょう。
  232. 穗積七郎

    穗積委員 それでわかりました。私どもも微力ではありますけれども、きょうの答弁を前提として、そうしてこの会談が開かれることを期待をし、できるならばそういうあっせんもしたいと考えております。そういう態度で間違いなく臨むように日赤自身も指導していただきたい。これは外務省、厚生省の所管の幹部諸公もおられるわけですから、そのとおりにやっていただくことをここで確認をいたしておきます。  そこでもう一点だけお尋ねしたいのは、いま申しましたとおり、両方で一致しておる大原則がある。それは何かというと、帰国事業については日本政府もまた理解と協力をする、こういう原則がある。これは両者の間における一致する大きな目標であるわけです。ところが問題は、日本側はこの協定によらざる他の方法によって帰国業務に協力をしようと言っておるわけです。この協定によらざる他の方法とは具体的に何かといえば、さっきも言ったように、いまの段階では出せないと言っている。しかしながら、八月十二日が過ぎてお出しになるものも、結局日本政府日本の日赤、この赤十字だけの考えで実行ができないところに問題があるわけですね。すなわち、相手国または第三国の理解と協力がなければこれは具体的に実行ができない。先ほどからの問題でその点は明瞭になっております。いままでの委員会における討議で明瞭になっておる。そのときに、この方法はどうだ、あの方法はどうだと言ったときに、そのことが実行できるかできないかは、まさに相手当事者とあるいは第三国——場合によれば第三国の協力なくしてはできないことでありますから、それらを含む二者または三者以上の、何といいますか、帰国業務に関する新しい取りきめ、それは協定であろうと交換文書であろうと覚え書きであろうと、タイトルは何でもかまいませんけれども、何らかの取りきめがなければこれは実行できない、それに対して日赤が人道的な立場に立っていままでの協定を延長することができないか。八月十二日以後の新たなる事態、情勢に即して、人道的な立場でこういう方法でやりたいということの協定または覚え書きその他、名称は何でもいいけれども、取りきめをすることについては、政府はこれを妨害をしあるいは抑圧をするということはありませんね。この点だけ明らかにしておいていただきたいわけです。
  233. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり日赤がやる場合にも政府に対して打ち合わせがあると思いますが、いまの場合では新たなる協定あるいはまた覚え書き、取りきめ、そういうものを八月の一応の締め切りが終わった後にやるというような一つの将来に対して方向を与えるようなお約束はこの段階でできません。八月十二日以後に一体今後はどうするかということをいろいろな角度から検討をしようとは考えておりますが、それは新たなる協定とか取りきめをやるかということの御質問に対しては、そういうことを今日の段階でお約束することはできないということを申し上げておきます。
  234. 石野久男

    石野委員 関連して。時間がありませんから、一つだけ大臣にお尋ねします。その後のことをどうするかということは約束できないけれども、しかし、いずれにしても、協定について、現状の協定がなくなるという段階では話し合いをしなければならないということは、先ほど穂積君、あるいは安宅君の質問に対して大臣が答えられた。それはやはり協定の第九条の、この話し合いをするということだ。そこではどういう意見が出るかわからないわけです。日本の側は打ち切りたいという意見をきっちり言うわけだから。向こう向こうとしての自由な意思の表明がある。そこで、話し合いが決裂するかまとまるかわからないけれども、いずれにしても、九条の線で話し合いを持ちたいという意向、これは七月五日に出した電報にはいろいろな意味がありまして、向こうもずいぶん誤解をしている。大臣はこの前の私の質問に対して憤激されておりましたけれども、そういう大臣自身が憤激するくらいに怒りを込めた向こうの声明があるわけです。それは電報の内容に問題があったわけです。ですから、それらのものすべてを九条の線で話し合いをするということになれば、これは決裂するかどうかわかりませんけれども、新しいものはわからないけれども、この段階ではどうしてもそうしなくちゃならないというふうに私たちも感じているし、政府もやはりそういうふうに感じていると見ていいと思うのですが、その点について大臣の、簡単でいいですから所見だけ聞かせてもらいたいと思います。
  235. 三木武夫

    三木国務大臣 今回は政府のきめたいまの方針でいく。その後の事態についてはいろいろ話し合いをしてみたらいいと思っております。
  236. 石野久男

    石野委員 九条の線ですね。九条ということは、読みますよ、大臣。読むから、ちょっと聞いてください……。
  237. 三木武夫

    三木国務大臣 これは小川君も用心深く答えるのは——九条は延長を頭に置いた規定ですから、全体はいろいろ話し合いをするという精神はあるんでしょうが、この九条の中には、一年有効期間とか、あるいはまた協定の期限が終了三カ月以前に協議の上本協定をそのまままたは修正して更新するとか、その協定というものを頭に入れて九条はできておりますから、全体からいえば、話し合いをするというこの精神は九条にあると思います。これは新たなる協定を意味するものではない。しかし、話し合いをするということは必要だ。九条の中にそういう精神があると解釈するならば、また新たなる協定のための九条であるという解釈をとらぬならば、この上に、これの精神にのっとってという——精神にのっとってと言うとぐあいが悪いのですが、これは九条というものが多少の根拠になるとお考えになってもいいでしょうが、強く否定をしておきたいのは、この協定の更新のための話し合いということにそういう会議の性格を決定づけるものではないということだけは申し上げておきます。
  238. 石野久男

    石野委員 わかりにくいことをあまり説明するから何が何だかわからなくなってしまう。大臣は、この協定は尊重されるのかどうかということですよ。もっと端的に言えば、尊重しないというなら、どんな理屈をつけてもいいのですが、するのですか、どうですか、それだけを聞かせておいてくださいよ。
  239. 三木武夫

    三木国務大臣 それはもちろん協定を尊重して話し合いで円満にいったらいいという考えです。
  240. 石野久男

    石野委員 それでわかりました。九条の精神でやってもらえばけっこうです。
  241. 福田篤泰

    福田委員長 本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後二時五分休憩      ————◇—————    午後三時三十四分開議
  242. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とニュー・ジーランドとの間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国とノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上三件を議題とし質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。田原春次君。
  243. 田原春次

    ○田原委員 この三条約内容を見ますると、たとえばその代表的なものとしてブラジル関係を見ますると、第一は日本政府の職員、第二は滞在百八十三日以内の滞在者、第三は二年以内の期限でブラジルに在職する教職員、学習する学生、事業修習者の手当に対して日本側とブラジルと二重に課税しないように、それを回避するということになる協定であります。これによって貿易業者、技術者、その他文化交流等がよくなると思われますので、これらの審議をこれから始めるわけでありますが、よい機会でありまするから、それらの短期滞在者とともに、長期に移住しておりまする人々並びにその子孫のブラジルのいわゆる移住政策、これに対して反省をし、検討する必要があると思うのでありまして、そういう観点でとっくり質問してみたいと思っております。  政務次官にお尋ねしますが、外務大臣は来ませんか。外務大臣が来ない理由……。
  244. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 外務省といたしましては、移住問題につきましてはきわめて重要問題と考えまして、最近におきましては海外移住事業団体に相当な予算をつけまして、本問題の取り扱いにつきましてはきわめて慎重なる態度で現在進んでおるわけでございます。今後もさらに各方面の意見を十分に聴取いたしまして、事業の拡大に進みたいと考えておる次第でございます。
  245. 田原春次

    ○田原委員 移住政策を重視するから海外移住事業団に相当の予算を出してやらしておるというのでありますが、これはあとで一つ一つ検討いたします。必ずしもそうでない点もありますから……。  今日お尋ねしたい重点は、戦争前には民間会社で南米移住のあっせんをしておった時代があります。そのころはいまほど人口が多くなかったにもかかわらず、一カ年に二万五千人ぐらい移住した時代があるのであります。それから終戦後も、政府の息はかかっておりましたものの、大半は民間形式でやりまして、日本海外移住振興株式会社、それから各県にあります海外協会の連合体として日本海外協会連合会、この二本立てで移住者の募集、輸送、現地への割り当て等をやっておりました。これにも大体八千人ぐらいは行っておった。第三次海外移住事業団という一本の形式になりましてから、が然これが減りまして、昨年のごときはたしか七、八百人であります。ことしも表面は一千人行ったことになっておりますが、しさいに調べてみますと、現地からの呼び寄せが三百人ぐらいあるわけであります。純然たる日本からの移住は七百人程度であります。要するに民間時代には二万五千人行っておった。半官半民の団体の時代には八千人も行っておった。全額国庫で、十分な監督をしてやられるといういわゆる公社、公団、事業団方式でやると、が然減ってきた。これはなぜかということ、このことについて外務省はどういうふうに見ておられるか。最近の移住者の減少傾向について御回答を願いたいと思います。
  246. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。  戦前、民間会社であっせんしておりましたころ、年間二万五千人の移住者が出たことがあるとおっしゃいます点、戦前のわが国における経済情勢ないしは社会情勢のもとで、このくらいの数字が出たということは当然うなずける点であると思います。また終戦後移住を再開しましてから数年間、かなりの移住者が出た。昭和三十五年には、八千人をこえた時代でありますが、これも当時の事情としてはうなずけるものがあるのではないかと思います。最近におきまして移住が減りました点も、いろいろ事情があるかと思います。そういうふうに私どもは見ておるのでございまして、これが必ずしも事業団ができたために減ったというふうには見ておらないのであります。たまたまそういう時期と事業団が発足いたしました時期とが重なった、そういうように考えております。  簡単に数字を申し上げさしていただきますると、昭和三十五年の八千三百八十六人をピークといたしまして、三十八年一千五百二十六人、三十九年一千百五人、四十年八百十八人、四十一年度は千五十九人で、やや上向いてまいっております。  私どもの見通しといたしましては、昨今の動向といたしましてはまた再び移住者がふえつつある、そういうふうに見ております。過去四年ばかりの間特に移住者が減少いたしました原因をいろいろと調べてみたのでありますが、第一に考えられまするのは、戦後、海外から引き揚げ者が非常に多く内地へ帰ってきた、そういった人が再び外国へ出たい、そういういわば海外再移住という熱が高かった、そういう時代があったわけでざざいます。この海外再移住の方々が一応出尽くして、これにかわる新たな移住希望者というのが新しく形成されなかった。そういった、また新しく形成される過程にあった、そういう過渡期のために移住が減った、そういうのが一つの原因だと思われます。またもう一つは、わが国の経済の発展に伴いまして、労働力が海外に流れる前に、国内の産業に吸収されるという傾向が強くなってきたことも数えなければならないと思います。もう一つの点といたしましては、同じくわが国の経済発展に伴いまして、国内の生活環境の改善のため、一般に移住意欲が一時停滞を示したというようなことが原因として考えられると思います。
  247. 田原春次

    ○田原委員 必ずしもそういうふうな事情ではないと私は思うのでありますが、それらの検討がきょうの委員会の主たる題目だと思うのでありまして、分けて申し上げます。  第一は、宣伝の不足という点があるのじゃないか。これはあるとき総理府で調査をいたしましたところによりますと、潜在海外移住希望者と申しますか、海外に移住してもいいという考えを持っておる者が大体百万あるといわれておった。これは数年前の統計であります。しかるに実際あらわれてくるのは一千人ぐらいしかないというのは、一つは、国内における宣伝、周知の方法のまずさ、それから第二は、現地からのニュース、いろいろな不徹底な点、まずい点、あるいは悪口、これらがときおり国内に放送されますこと、そのことによって不安を持って行かないのがある、こういうふうに私は分けるのでありますが、この分け方に御同意いたしますか、どうですか。
  248. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 第一点の宣伝の不足の点につきましては、昨年四十年に行ないましたアンケートによりますると、移住の希望者二・六%でございましたが、四十一年の世論調査では六・一%に達しております。一年間で二倍半の希望者がふえておるということは、新しい角度から移住を見るという若い層が形成されてきているということを物語るものであると同時に、ある意味では、宣伝と申しますのも、形態は変えましたが、事業団その他各都道府県の当局のいわゆる地道な海外移住に対する啓発活動が実を結んできている、そういうような一つの証左であるというふうに考えられはしないかと思っております。また、海外に移住した人がうまくいかない、そういったことの悪口がどのくらいはね返っておるかという点につきましては、なかなかこれは把握しにくい点でございますが、一ころ、そういうことによって影響された向きが必ずしも少なくなかったかもしれませんが、最近におきましては、こういった悪口というのも減少いたしましたし、また、こういった悪口をも克服するだけのいわゆる知識を国民一般が涵養してきておるのじゃないか、そういうように考えられる次第でございます。特に、事業団並びに外務省といたしましては、学校における移住の啓発活動に力を最近入れてまいりましたし、今後ますますこの点に力を入れたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  249. 田原春次

    ○田原委員 二つに分けて反省なり検討したいということに対する御答弁は得られておりませんが、それでは、私は二つに分けて現地の事情をまずお尋ねいたします。  ブラジルに限って見ますと、南ブラジルのパラナ州、サンパウロ州は相当日本人が多いし、したがっていろいろ事業も盛んでありますが、北のほうのアマゾン地帯、それから東北地帯、この方面の手配というのはほとんどよくいっていない。移住局のできました当座、外務省は非常にアマゾンに熱を入れまして、十数カ村にわたって人を入れておるのです。たとえばアマゾン上流で申しますと、キナリー村、トレゼ・デ・セテンブロ村、ダイアーノ村、エフゼニオ・サーレス村、ベラビスタ村、それから下流はトメアス村、アカラ村、それから対岸のマタピー村、それからロザリオ村等に行っておりますが、数年後に、これらの地方は地味もよくないし、それから産品の販路の保護もあるいは営農資金の点も不足であるということから、が然アマゾン移住中止論が起こって、そのままほったらかしにしてしまったんですね。いま念のためにお尋ねいたしますが、いま申し上げましたアマゾン上流の数カ村と下流の数カ村に現在住んでおる日本人の戸数をあげてみていただきたい。並びにその変遷ですね、最近十年間における増減の変遷。
  250. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。  キナリーには五戸——現在でございます。トレゼ・デ・セテンブロには二十三戸、タイアーノに三戸、エフゼニオ・サーレス六十二戸、ベラビスタ四十七戸、第二トメアス七十六戸、アカラ二十九戸、マタピー六戸、ロザリオ五戸でございます。現在のところ、北伯では、ピメンタがおもな永年作物でございますが、これにつきましても大体問題が従来より減少した、そういうふうに解釈いたしております。
  251. 田原春次

    ○田原委員 いまあげました数カ村における小学校の有無、それから診療所の有無、これらをちょっとあげてみてもらいたいと思います。
  252. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 小学校は、キナリー、ロザリオ以外は移住地内に存在いたしております。ただキナリーのみは遠距離でございますので、やむを得ず下宿をさしているという状態でございます。また日本語の教育は、集団移住地では行なわれておりますが、少数の移住地では十分でございませんので、今後充実していきたいと考えております。  また診療所は、集団移住地には存在するかあるいは近距離にあるのでありますが、少数移住地の中には、診療所の遠いところ、たとえばタイアーノ、マタピー、ドラードス和歌山もございます。  以上でございます。
  253. 田原春次

    ○田原委員 外務省の募集を信頼して、そしていまだ見ざるところに家族ぐるみで、アマゾンのいまあげました数カ地方に分散しておる。ことばで言いますと近いように見えますが、これはおのおの千キロもあるいは数千キロも離れております。アマゾン川全体が五千五百キロもあるのですから、東京からシンガポールまでくらいの長さであります。その間に、あちらに五軒、こちらに三軒入っておる。そしてその少ないところには、したがって学校もない。あるいは診療所もない。これじゃまるで捨てたものだと思うのです。移住者が一番困っているのは、——移住直後の十年間は一生懸命働いて、子供もだんだん大きくなるから、そう子供のことは心配しないです。しかし、十年もしまして、いよいよ子供が就学年齢になったというときには全く困ってしまう。そこで、政府を信頼して移住したものが、いまは政府を恨んでいる状態である。だからこれに対する対策について、ただそこに多少学校があるとか診療所があるというだけでなくて、今後それをいつまでもそのままの形でほったらかしておくのかどうか。世間のうわさがやかましいから、もう行ったものはそのままで、それ以上増加策もいろんな施設もやらないのかどうか。これらが全く音信不通状態になっておる。あきらめておる状態になっておる。それで、ときたま郷里にたよりをしたりするときに、日本政府のいうことは当てにならぬ、見も知らぬところにほっぽり込まれて、自分のことも何もできない、こういうようなことばが出てくるのはあたりまえだと思うのです。したがいまして、いま特に代表的な貧しい地帯をあげたのでありますが、これらに対する積極的な人口増加策、移住者の増加策はないかということなんです。それをお尋ねしたいと思うのです。
  254. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 行く行くそういう地方にもさらに移住者が入れるよう、いろいろ施策を講じたいと思っておりますが、さしあたりましては、現在の人数のままでもできるだけ定着の援護措置というのを充実していきたい。と申しますのは、学校の点におきましても、診療所の点ないしは巡回診療、そういった点で援護措置を充実していきたい、そういうふうに考えておるのが第一点でございます。それからもう一つの点といたしましては、どうしてもこれでは戸数が少な過ぎて永住するには不便である、したがって、もう少し集団移住地に近いところにかわりたいという希望者が出た場合には、これを積極的に援護する、さしあたってはそういうような二点について考えている次第でございます。
  255. 田原春次

    ○田原委員 次は、これらの土地において営農します資金の問理がすっきりしておりません。事業団にお尋ねいたしますが、以上あげましたアマゾンの中流から上流にかけての九つの村に対して事業団の職員がおるところ、それから営農資金なりその他の金融関係をどうしておるか、直接貸しをしておるならその金額等を、そうでなくて地場銀行等で営農資金を借りておるならばその状況等を知らせてもらいたい。
  256. 太田亮一

    太田参考人 お答え申し上げます。  アマゾン地区の地域の非常に広いところに散在しておりますので、事業団のほうで現在人数を配置いたしておりますのは、ベレーンは別といたしまして、第二トメアスーに事業所がございます。それから中流のマナウス、そこにちようどいまあげられました移住地で申しますとベラビスタ、エフゼニオ・サーレス、これらはいずれもマナウスの郊外というところにありますが、マナウスのほうに支所をいま置いております。それから駐在員が一人、これはロザリオの近くでございますが、サンルイスでございましたか、この町に一人おります。  それから融資の関係でございますが、これはいずれもベレーン支部の管内になっておりまして、ベレーン支部のほうで総括の数字しか現在あがってきておりません。と申しますのは、個別の貸し付けの決定は全部現地支部長に現在まかせておりますので、一々こまかい案件は私どものほうにあがってまいらない仕組みになっておりますので、いまおあげになりました地区ごとにどれだけ貸しておるかという数字はちょっと手元にないわけでございますが、これらを中心にいたしましたベレーン支部全体の金の貸し方と申しますか、そのほうから見てまいりますと、四十一年度におきましては、これは現地の通貨にいたしまして二十一万コント、円額に換算して、二百円で換算してみますと四千二百万円、こうした金額の融資が移住者に対して出ておる状況でございます。
  257. 田原春次

    ○田原委員 金融関係を尋ねましたからついでにお尋ねいたしますが、現地における金融機関の活用状況はどういうふうになっておりますか。これはアマゾンだけではなくて、南ブラジルも含めて、日本から行った農民が土地を購入する、それから家を建てる、あるいは作物をつくる、その後において営農資金の必要な場合、どういうふうな融資状況でありますか。これを事業団とそれから現地の民間金融関係と両方に分けて、東京銀行の方が見えておりますから、それぞれ御説明や御報告を願いたいと思います。
  258. 太田亮一

    太田参考人 ただいま説明を申し落としましたが、現地の金融機関で農業金融をやっておりますところはブラジル銀行でございます。これは大体九分くらいの金利で貸し出しをいたしております。土地、それからその他の施設、こういった長期資金もある程度貸しております。しかし大部分は、どちらかといえば短期資金のほうに重点が置かれておるように聞いております。   〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 またアマゾンの方面には特別にアマゾンの開拓のための銀行がございますけれども、農業金融にはまだあまり手が回っていないという状況に聞いております。それでアマゾン地区のほうは主として事業団の融資、その他特に南方のほうに参りますと、これはいまブラジル銀行、それからそのほかたとえばサンパウロ州立銀行でございますとか、こういったところもかなり資金を出しております。主として短期資金でございますが、こういった金額そのものは私のほうではちょっと調査できかねておりますけれども、かなり古くなられた移住者は現地の金融機関に対する個人的な信用の関係で、特に担保がどうこうとかいうことをあまり言われないで貸してもらえる、そういう状況になっておりますので、事業団の支部のほうにおきましても、これは十分信頼できる移住者だという場合にそういった金融機関のほうにもあっせんをいたしまして、できるだけそちらのほうからも金を貸してもらうというようにつとめておる次第でございます。
  259. 小野田晋

    ○小野田参考人 ただいま農業金融のことにつきまして御質問がございましたが、私ども東京銀行といたしましては、主として貿易、商業金融の関係をやっておりますので、農業金融のほうは金額的にも非常に少のうございます。それで、この機会に、ただいま御質問のございましたブラジルのいまの金融上のいろいろの問題点と、私ども金融活動をしております銀行といたしましてどういう問題点があるか、御参考までに簡単に申し上げたいと思います。  ブラジル政府の経済政策の根幹をなしているものは、一貫してインフレ対策にあると言っても過言ではないのであります。しいがいまして、金融政策におきましても、これまで相当きびしい金融引き締め政策をとってまいったわけであります。また今後インフレの続く限り、このタイト・マネー・ポリシーというものは緩和されそうもございません。したがって、私ども現地で金融業務を行なっておりますものにとりましても相当やりにくい面が多々ございますが、現地で活動する以上、政府の政策には全面的に協力すべきであるということは当然のことでございます。  現在、東京銀行といたしましては、リオデジャネイロとサンパウロにそれぞれ支店を有し、またサンパウロには当行の全額出資による現地法人パンコ・サンパウロ・トーキョーというものを設立いたしまして、三カ店が当行のネットワークとして総合的に運営いたしております。いずれも順調な発展を見せておりますが、何ぶんにもただいま申し上げましたように金融当局の相当きびしい規制下にありまして、その運営も思うにまかせぬ面もございます。その一つは運用資金量の規制でございまして、革命政府が採用いたしましたスワップの全面的禁止措置は、私どもにとりましても手痛い制約となっております。御承知のごときインフレ進行下にありましては、商業銀行といたしましては為替差損を承知の上で外資を持ち込むことは許されておりません。さりとて地場資金の吸収にも厚い壁がありまして、日系進出企業の資金需要にも満足にこたえることができないというのが現状でございます。  次に、これはこの五月に出ました中央銀行の決定によるブラジルにおける全銀行に対する貸し出しの規制というものがございます。この決定によりまして、私どもの銀行もその貸し出し残高の半分はブラジル人に貸し出しをしなければならないということになったわけでございます。この決定の細目解釈等につきましては、まだ明らかにされておりません。しかしながら、私どもの貸し出し業務に重大な影響を生ずるのでございまして、目下その対策に苦慮いたしておるわけでございます。  こういった現地当局の資金運用面における量、質両面の規制のほかに、私どもといたしましては、為替専門銀行としての業務上の限界のあることも御了承願いたいと存じます。すなわち、海外において、中、長期の貸し出しは許されておりません。また与信も、原則として貿易金融を中心とした商業資金に限定されております。  またブラジルの移住者の農業賃金の融資につきましては、それが通常長期にわたるということと担保手続等が繁雑かつ費用もかかるということのために、原則としてやっておりません。ことにリオデジャネイロ及びサンパウロの両支店におきましては、主として対日貿易に関連する為替金融取引、これは主として商社相手となっておりますが、そのほか地場進出企業との取引及び外系並びに伯系企業との取引が大部分を占めておるのが現状でございまして、支店に関する限り、日系コロニアとの取引は遺憾ながらはなはだ僅少であるということを申し上げなければならないのであります。  しかしながら、先ほども申したとおり、私どもはいまから三年ほど前に主として移住者の方々のために現地銀行を設立し、昨年はメルアードというところに支店もつくり、将来も時機を見てさらにサンパウロ地区に二、三店支店を増設したいと考えております。この現地銀行は資金面において移住者の方々の預金に依存するとともに、その運用面においても移住者中心主義でやっていきたいと考えております。  同行はまだ生まれたばかりの赤ん坊で現在は微々たるものでございますが、将来はコロニアの方々の御支援を得て、日系移住者のための銀行として、その利益と発展のために貢献をいたしたい、こう念願しておるわけでございます。
  260. 田原春次

    ○田原委員 事業団の経理、財務関係の人にお尋ねしたいのですが、いま東銀のほうから話のありましたのは、去る五月十一日に決議第五十三号として出たことを意味しているんじゃないかと思うのです。これは商業金融と農業金融双方に関係があるんじゃないか、これを第一にお尋ねいたします。ということは、ブラジルで金融業をやるものは、その貸し出しの総額の五割はブラジル人に貸さなきやならぬ。このブラジル人という中には日系二世も入るかもしらぬと思うのですが、そうなりますと、事業団の金融はどういうふうになるか。われわれ日本側で考える場合は、事業団は日本政府の財政投融資その他の出資によってブラジルにおける日本人に貸すようにということであり、その総額もはなはだ少ないと思っておるのでありますが、その少ない総額の中から、今度は貸し出すには半分は純然たるブラジル人に貸さなきゃいかぬ、そういうこの決議五十三号のもとでやるとして、従来毎年融資しておる額の半分しか使えないんじゃないか、これをどういうふうに処理しておるか。実情は、多額の金融の希望はございましょうが、逆に半分以下になるということになれば、結局困るのは在留農民だと思うのです。これに対する対策はどうすればよろしいか、御方針を聞かせてもらいたいと思います。
  261. 太田亮一

    太田参考人 お答え申し上げます。中央銀行の決議第五十三号の適用の問題につきましては、現地のほうで中央銀行に折衝いたしました結果、移住者の開拓金融というのはこれは特別扱いだということで決議五十三号の対象からはずす、こういう了解を取りつけております。
  262. 田原春次

    ○田原委員 融資問題が出ましたから一つお尋ねいたしますが、これは南伯のほうですね。バルゼア・アレグレ移住地その他移住成績の不振な移住地がたくさんあります。これはいま事業団が全部しょい込んでいるので、事業団自身が買ったのもあるし、前の民間団体時代の引き継ぎもあると思います。ところが、将来性がないというので、どんどん脱耕というか退耕というかを希望しておる。これに対して事業団は融資をもって他へ移していると聞くのですが、ほんとうでしょうか。
  263. 柏村信雄

    ○柏村参考人 いま例におあげになりましたバルゼア・アレグレには、当初五十一家族だったと思いますが、移住をいたしまして、そのうち十七家族が脱耕をいたし、現在三十四家族が残っておるわけでございます。これら移住したところは最初のうち米作で、干害等を受けて相当困った時期もありましたけれども、その後養鶏を入れ、最近はまた畜産を導入するというようなことで、むしろ現在においては安定の道をたどっておるという状況でございまして、ハルゼア・アレグレについて土地が悪いために他へ転住させる、またそのために融資をするということはやっておりません。むしろ東北伯の一部につきまして、土地がよくないということで、転住を希望する者について、その営農の援助としまして融資をした例はございます。
  264. 田原春次

    ○田原委員 それもいま聞こうと思っておったのでありますが、募集要領を信じていまだ見ざる地球の端のほうの南米に一家こぞって引っ越す。そのためには先祖代々の土地や家屋を売って金にかえて行くわけだ。行ってみたら、政府側の宣伝とはまるきり違って、水もない。あるいは干ばつがひどい。あるいは作物をつくってもマーケットが遠いとか、いろんな不便があって、またどこかに引っ越そうという。これは日本人の海外移住の例を見ますと、北米でもそれから南米でも平均八回はかわっておるのです。最初行った甲という土地が好かぬで乙にかわる。乙が気に入らぬで丙にかわる。そういうふうにして甲乙丙丁、八カ所くらいかわるといわれておるのでありますから、したがって、不幸にして自分が気にいらなければ、おまえには土地を売ったんだからそこにおれというわけにいかないから、引っ越したい者に対しては引っ越しの便宜をはからなければいけない。ところがこれを融資でやっていることが問題だ。東北地帯に対しても、これはむしろコンペンセーション、補償でなければいかぬ。国内での募集要領を信じて、政府機関がやるから間違いなかろうと思って行ったところが、向こうではやっていけない。ほかに越したい。そうすると金を貸すからほかに行けというのじゃ、それは利子をつけてまた返さなければならない。政府側に誤りがあったのですから、そういう場合には償いの金を出して、ほかに行かせるのがほんとうじゃないか、こういう声が現地に非常に強いのですが、これに対する御見解はどうです。それは外務省でもいいですよ。
  265. 柏村信雄

    ○柏村参考人 たしかに昨年、一昨年でありましたか、外務省のほうにおかれまして、東北伯、またアマゾン地区について必ずしも所期の成果をあげていないというような面につきまして、現に専門家を派遣して実施調査をせられたのでありますが、その結果として、移住というものは非常に困難を伴うものでありますが、その困難を克服して営農成積をあげていくという、そういう忍耐もまた必要なわけでありまして、大部分の移住地につきましては、とにかく営農を安定させるという方向で指導をいたしまして、一部について、ごく少数の、これもそこに残りたいという人は残し、特に移りたいという人について適当な土地をさがして移させる、それに対して低利の資金を融通いたしまして転住をさせる。しかしその移住した者についてもさらにいろいろな援護の手を差し伸べるということで、まるきりその募集要領が違っておったために不幸な目にあったというのでなくて、その後の干害であるとか土地の状況の変化であるとかいうことによって起こった問題まで全部経済的な補償を政府がするというわけにもまいりませんので、現在事業団としてやれる範囲において援護の手を差し伸べておるわけであります。そういうところに残った者は、出た人のあとの土地をまたある程度利用するというようなことによって営農が安定しつつあるというふうに聞いておるわけであります。
  266. 田原春次

    ○田原委員 日本カトリック移住協議会の機関紙を見ますと、先ほど柏村理事指摘された東北ブラジルの政府のすすめによって行きました土地がまるきり石ころで作物ができない、そこにぼう然としておって、持っていった金で居食いをしておった、そこにカトリックの佐々木神父が行って、それじゃ南のほうに御案内しましょうということで、ずっとそれから二千キロも南のほらのパラナ州のロンドリーナに連れていった。ロンドリーナに行くと、水もあるし作物のはけ方もいいからというので、満足しておるというのですね。こういう場合に、先ほどお話があったように、融資はするが補償はせぬというのであれば、悪いところに行った者は泣く泣くそこで自滅していかなければならぬ。だから、これは事業団の調査の粗漏の点もあろうし、それから事業団以前にあった二団体で購入した点もあろうから、そういう行きがかりを言わずに、移住者本来の立場に立って、他に移転したい者には移転の旅費もそれから移転後の当座の生活費等も出してやる。このくらいのことはしていいのじゃないか。現に日本国内におきましては災害等で非常な御不幸な目にあったごく最近の事例もありまして、そういうところに対しましては政府はそれぞれの予算もありまして、ごめんどうを見てあげておるのであります。海外に行った者は知らぬ顔をする、あるいは初めは融資であったからあくまでそれは金は取り上げる、利子も取り上げる、どんなに困ってもこっちは知らぬというのでは、これから海外に行く人はなくなってくると思うのです。ですから、いまのこういうのは全体の経費のうち一割くらいだろうと思うけれども、やっぱりこういうものに対しては親切な措置がなければならぬ。いまの答弁では私は満足できない。やっぱり当初移住をすすめて行ったところでもし不幸にして作物その他の状況が悪ければ、他に移転する場合には、移転料というとことばはおかしいけれども、補償金を出してやるべきであって、それを融資でやるということはまた負担を重ねるようなものだと思うのです。これに対する事業団としてのぎりぎりの線もあろうが、外務省、政府機関はどうお考えになりますか。そこまで親切にやらなければ、今後は移住者は行かないと思うのですがね。
  267. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 今後はそういう問題が起こらないよう特に入植地の選定については十分検討しなければならない、そういう点につきましては私どもとしては十分今後改善しよう、そういうっもりでおるわけでございますが、従来の入植者の場合につきましては、補償という点につきましては若干デリケートな問題もございますし、必ずしもそういった環境だけの理由でうまくいかないという場合ばかりと限らないで、やはり個人の差があるという点は調査の結果にも出ておりますのですが、いずれにいたしましても、こういった問題をなるべく将来起こさない、そういうことに心がけていきたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  268. 田原春次

    ○田原委員 将来はもとよりそれは当然でありますけれども、現実に起こっている問題に対して無償というわけにいかない。融資でやらすというのでは少し残酷過ぎるのではないかというのが私の質問の趣旨なんです。したがって、臨時救済基金のようなものでも設定するかして、とりあえず生きていくような方法をとらなければ、海外移住がとまってしまうと思うのですね。そういう意味で聞いておるのであります。  それじゃ関連してもう一つお尋ねしますが、現在事業団が、計画移住地の中で、地権といいますか土地所有権を渡してないのがたくさんある。約三十カ所の計画移住地の中で土地所有権をもらったのはアマゾンの下流のアカラ村だけだという。これは事実であるかどうか。特にブラジル側で、指定移住地について、入植契約書によれば、一年目には仮地権をやる、それから三年目には本地権を渡すことになっているのに、いまだに二十九事業団の直轄地でもって仮地権も本地権も渡していない。アカラだけ渡しているといううわさであるが、これはほんとうであるかどうか、これに対する処置はどうしたらいいか。いまの不良土地の問題のほかに、耕作可能という土地であっても、せっかく金は日本で事業団が払ってやる、事業団が五十万なり八十万払って、そのほかに少しキャッシュを持っていっている。そのほかに向こうで営農資金を借り出そうとしても、地権がないからなかなか出さない。地権があればそれを抵当にブラジル銀行あるいはアマゾナス銀行でも貸してくれるのでありますが、事業団が地権をくれていない。はなはだしきはアルゼンチンのガルアベーのごときは、六十数カ所行っているのに、いまだに地権がはっきりもらえない。きょうはブラジルに限りますけれども、ほかの国にもあるのです。そういうことを一体だれを信用して行ったらいいかということになる。だれを信用して前払いをして、日本で円で払って行かなければならぬか。こういう点からみんなが不安がってよそに行こうとすると、融資がなければいかぬ。こういうことではまるで棄てた民みたいなことになるのじゃないか。だれが一体これを代弁して政府を反省せしめ、あるいは改善させるか、だれも方法がない。私のところに山のごとく手紙が来ています。一々これを御紹介してもいいのですけれども、共通した問題を取り上げますと、そういう不親切な点がある。これに対してどういう処置をされたらいいか。すなわち政府直轄、事業団直営の三十カ所の移住地のうちで地権をもらった者はブラジルにおいてはアカラ移住地一カ所だけであって、あとの二十九カ所に対してはいまだに地権を渡されていないがどういうわけであるか、土地を購入した者に対してはどうして安心させたらいいか、具体策があるならばこれを聞かしてもらいたい。
  269. 太田亮一

    太田参考人 事業団の直轄移住地は、ブラジルについてはごく少数でございます。先ほどおっしゃいましたアカラは、私のほうの直轄移住地ではございません。  ただ地権の問題について、これは事業団の直轄移住地に限って申し上げますと、まず土地代の払い方に二種類あることは御承知のとおりでございます。問題が起きますのは一括払いで円で払っていって、現地でもう土地代は残っていない、こういう方に対する地権の交付がおくれている、こういう問題であろうかと思います。これは技術的な面が若干ございますが、実は当方で入植地を設定し、ロッテを割った場合に実際に今度は地権の交付ということになりますと、これについて一々あらためて測量をし直しまして、先方の登記所のほうで公認される測量士の測量図を持って登録手続をしなければならないというようなこと、それからもう一つ実質的な障害になっておりますのは、土地を移転いたします場合に、土地の移転に税金が実はかかるわけでございます。この税金が先方の土地の評価のしかたによりまして、非常にまちまちである。それから移住者の側からいいますと、なるべく負担はしたくないということで、この辺のテクニックと申ますか、評価をどういうふうにさせるかといった面の探りを入れたり、いろいろなことをやっておる。こういった面からのおくれというものもあったかと思います。最近におきまして土地の所有権の移転税が下げられまして、大体一〇%ということになりましたので、その辺から今後移住者の側でもそれだけの金であるならば早く地権を渡してもらおうということでむしろ希望されることになってくるかと思います。そういった手続は早急に進めたいと思っております。  なお、融資の関係でございますが、これは、事業団の直轄移住地内に入っておる方につきましては、そういった土地の地代が分轄払いでまだ未納になっているというような場合でも、適当な保証人等を立てられることによりまして融資はいたしております。また、現地の金融機関に、先ほど申し上げましたブラジル銀行等におきましても、あるいはそのほか農業協同組合なんかに金を貸してくれる特殊の金融機関がございますが、こういったところでも仮地権あるいは土地を使う権利がある、こういう証明書によりまして、先方では適当な金融をやってくれる状態でございます。現実に土地の所有権そのものを持っていなければ金融の道がない、こういうことではないわけでございます。
  270. 田原春次

    ○田原委員 金融の問題になりましたからちょっと農林省にお尋ねいたしますが、農林省は日本の農村に政府出資やそれから中金経由制度金融等で、これを項目別に、大体総額でいいのでありますけれども、私も調べておりますが、そちらで一応どのくらいの金を日本の農民に対しては融資や補助をしておるか、御説明願いたいと思います。
  271. 横尾正之

    ○横尾説明員 ただいま御質問の農林金融関係の融資の状況でございますが、御承知のごとく、農林省関係で特に政策的な観点からやっております金融は、大きく分けまして、農林漁業金融公庫の資金、これは主として中期、長期の施設資金でございますが、そういったもの、それから組合の系統金融を利用しまして利子補給をいたしまして金利を下げるということで、農業経営の近代化をはかるという観点からやっております農業近代化資金といわれるものが大きな柱でございます。前者の農林漁業金融公庫資金につきましては、四十一年度貸し付け額が千二百六十八億円になっております。それから近代化資金につきましては七百七十七億円というようなことになっております。そのほか技術改良といったような意味でやっております無利子の改良資金のごときものがございますが、その他いろいろございますが、特に中心はいま申し上げました二つでございます。
  272. 田原春次

    ○田原委員 いや、私が調べました数字を申し上げますが、間違っておりましたら御訂正願いたいと思うのです。農林金融公庫の資金は昭和四十一年末貸し付け残高が五千三百九十三億円であるという数字が出ております。それから構造改善に出しておる金が四百七十二億円、基盤整備に対して四百六十億円、一般施設が百六十四億円、普通に自創と言います自作農維持創設資金が百四十七億円という数字が出ております。これは間違いありませんか。
  273. 横尾正之

    ○横尾説明員 ただいま先生の御指摘になりました五千三百九十三億円というものは、公庫資金のいままでの貸し付け残高でございまして、御指摘のとおりの数字でございます。  それから二番目にお話がございました経営構造改善資金の四百七十二億でございますとか、基盤整備関係の四百六十六億でございますとか、こういった数字は先ほど私が御答弁申し上げました公庫の四十一年度貸し付け額千二百六十八億の内訳の数字で、数字といたしましては先生が御指摘のとおりの数字になっております。
  274. 田原春次

    ○田原委員 それから降ひょうとか干ばつとか、いわゆる天災における資金で、私の調べたところによりますと、昭和四十一年十二月末現在で貸し付け残高が二百八十九億円に上っております。これは間違いありませんか。
  275. 横尾正之

    ○横尾説明員 御指摘のとおりの数字でございます。
  276. 田原春次

    ○田原委員 そうしますと、日本国内に住んでおる農民に対しましては制度金融もあるし、それから天災、災害に対する融資もある、補助もある、しかるに同じ日本人であって、海外移住を信じて日本の農村を離れ、遠く海外へ行きますと、これはいきなり何の金融上のもしくは政府資金の融資もなければ補助もない、補償金もない。こういうことでは海外に行くのは無理だと思うのです。だから少し農林省にも考えてもらって、農業構造改善等もやっておることでありますから、海外に行きたい者に対しましては、単に旅費を出すというだけでなくて、入植早々数年間の営農資金や設備投資に対しては、国内の農民と同様の方法で貸す。これは銀行関係になると、先ほどのブラジルでの決議第五十三号の制約がありますから、何か他の方法で、向こうの農業協同組合を通じてなり、方法については私はわかりませんが、精神が、行った者は知らぬ、これじゃしょうがないと思うのですね。だからこれから海外に出すというならば、出す者に対しましても、当初の五年間か十年間はせめて日本の農村における融資や補助や奨励や補償等に準じてやるべきじゃないかと思うのでありますが、これらに対しては、外務省がやっておるから知らぬということじゃいけない。外務省の御見解も聞きたいし、農林省の御見解も聞きたいと思います。
  277. 横尾正之

    ○横尾説明員 先ほど来先生のるるお述べになりましたような実態にありますならば、そのことはできるだけ改善をし、改善の一つの方途として金融問題を十分に考えなければならないという点につきましては、お説のとおりであると存じます。その方法といたしましては、私どもの立場で移住政策をできるだけ充実をさせていくということで考えます場合に、本筋の現地におきます金融の問題としましては、一貫した移住の諸般の仕事をするというたてまえでできております移住事業団の事業の運営の充実をはかるということがやはり根幹であり、その一環として金融問題を考えていただきたいというように思いますが、同時に農林金融の面からいたしましても、いわば補完的な立場で、たとえば移住のために海外に出ていくために必要な携行資金でありますとか、あるいは雇用農として現地で働いておる、たとえばコチア青年のごときものが独立をするというような場合に、そのために必要な資金でありますとかいうものを、現在の農林省の金融制度のワク内でできるだけ配慮をしてまいりたい。その一つのあらわれとしまして、農業開拓基金といったものをつくりまして、現在も五億五千八百万程度の基金の造成をいたしまして、債務保証を通じて、いま申し上げましたような趣旨でつとめておるわけでございます。そういった角度で今後も十分に検討し、さらに充実をはかってまいりたいというふうに思います。
  278. 田原春次

    ○田原委員 いまの農業開拓基金というのは、私の調べたのでは農業拓植基金じゃないかと思います。  農業拓植基金の現状について、当初から増加の傾向、それからそれの運用面、そういうことについて全拓連の平川副会長にお尋ねしたいと思います。
  279. 平川守

    ○平川参考人 拓植基金は昭和三十四年から創設いたしました。これは一挙に全国ではございませんで、各県が創設をいたしますそれに対して、それらの集まった社団法人として中央にも連合会的な基金を置いております。現在各地方の基金の総額が、先ほど参事官から御説明がありましたように、約六億円くらいになっております。中央に、それらの基金から拠出をいたしました基金が約一億三千万円くらいになっております。これは主といたしまして、移住者に対していろいろな、たとえば親であるとか、きょうだいであるとか、親戚であるとかいう者たちが援護をしよう、その援護は、せんべつとして金をやる場合もございます。それから、貸してやるというような場合もあるわけでございます。いずれにいたしましても、援護はしたいけれども、自分はいま現金を持たないというような人々が、村の農協から借りるわけでございます。その場合に、村の農協も、五十万円なり八十万円なりの信用を付与するということはなかなか簡単でございません。その場合に保証をしてやるということが目的でございます。現在まで保証いたしました残高が約二億円、そういう状態になっております。
  280. 田原春次

    ○田原委員 重ねてお尋ねしますが、農業拓植基金の現地での運営ぶりですね。現地の日本人を大体三通りに分けて、戦前から純然たる自己負担で行っている者、これを戦前派というわけです。それから、戦後事業団として行った者と、全拓連のグアタパラ村に行った者、しいて三つに分けますれば、いまの農業拓植基金はどこにどのくらい貸しておりますか。資金の分布状況ですね。
  281. 平川守

    ○平川参考人 やはり基金といたしましても、一応回収の安全ということを考えております。   〔三原委員長代理退席、委員長着席〕 大部分は、戦後渡りましたコチア青年の独立の場合と、それからグアタパラその他比較的回収の見通しのつきやすい、たとえばグアタパラでございますと、全員がコチアの組合員になっておりまして、コチアの組合がある程度の責任をもってその回収に当たるというような約束ができております。そういうようなものが大部分でございます。ただ、各県によりましては、県としてこれはだいじょうぶであるというような見通しのもとにその他にも出しておりますけれども、ただいま金額をつまびらかにいたしませんけれども、大部分は戦後のコチア青年の独立の資金、それからグアタパラ等の回収確実と見られる集団的な入植地というふうにお考えいただいていいと思います。
  282. 田原春次

    ○田原委員 今度は事業団にお尋ねいたしますが、いまのお話によりますと、全拓連の直営——というと語弊があるかもしれませんけれども、サンパウロ州のグアタパラ村に居住している者は、農業拓植基金六億五千万円のうち二億円くらい融資を受けておる。これは回収が容易であるからということである。これは理由になると思います。そうしますと、グアタパラ以外の、先ほどあげました直営地等に、事業団で、土地や作物を担保に総計一体どのくらい融資をしておるか、概数でいいですから、ひとつお知らせ願いたいと思います。——御答弁の時間がかかるようならあとでいいのでありますが、時間の関係で、いま海外における入植地の配分それから補償や融資の不徹底の点、それからまた営農資金等に対する問題を聞いております。これはお聞きのとおりまことに不徹底であり少額であり、おまけに手続は煩瑣であって、借りたい者も閉口しているわけですから、これは順次改善していかなければならぬと思います。  それはそれといたしまして、次に第二点としては、どうすれば今後海外移住がふえるかという国内対策についてお尋ねしたい。いまの海外移住事業団の事務所が地方にあります。原則としてほとんど各県庁の中に置いてあります。ところが事業団と地方の府県庁とには有機的な関係は何もないのです。ただ部屋を借りているというだけなのですね。命令系統でも何でもないのです。したがって、事業団の事務所の連中としては、まるで居そうろうみたいな感じで、気がねをしいしい事務をとっておる状態なんです。私たちは当初それを予想しなかった。国策としての海外移住。それは民間団体から全額国庫負担の事業団にしたらもっと能率も上がり、利用者もふえるだろうと思ってやったわけです。私も賛成した一人であります。社会党も賛成したわけです。ところが、その後四年間の状況を見ますと、一番最初に質問の中で申し上げましたように、戦前の南米拓殖会社等に扱わせた時代のほうが二万五千人も出ておる。それが戦後の半官半民の団体になりまして八千人になり、これがピークになって、いよいよ全額国庫支弁の準官庁ともいうべき事業団にしたら千人しか出ない。はなはだしきは千人を割る。これでは、事業団に一体どのくらいの職員がおるか知らないが、かりに五百人おるとしても、千人なら一人で二人平均しか募集しない。その程度ならば民間で言っております。何も別に事業団がなくても、われわれが呼び寄せ専門にやれば、年間二千人ぐらいは出してあげますということを民間の各種団体で言っている。したがって、ここで反省してもらわなければならぬことは、せっかく事業団も整備されて、いろいろ内部の整とんもできたと思います。また寄せ集めの人事でありましたが、大体経験を積んだと思いまするから、思い切って、これからどうしたら海外によけい行くか、またよけいお世話するか、そのために必要な内部改革はやる、あるいは関係団体があれば、これとの提携もする、必要な予算ならば、外務省のみならず農林省系統のほうにも補助や融資を仰ぐ、こういう死にもの狂いの努力をしてもらわなければ、とうてい千人のワクは越さぬのじゃないかと私は心配するのです。これは議論ですから、いやそうは言っても、ことしは大勢出しますと言うかもしらぬけれども、国内を見てごらんなさい。人口は一億をこえますよ。一億でとまるかと思ったら、そうじゃないのです。約三百万ぐらい子供が生まれて、そのうち二百万ぐらいは優生法、ユージニックスで医者が殺している。殺しそこなったのが百万ふえている。来年も百万ふえますよ。再来年も百万ふえるでしょう。無限にふえていくのです。それから東京だって一千百万になっておるのです。これも一千万でとまらないのです。毎年世田谷程度の人口がふえていくのですね。そうしますと、優秀なものを海外へ送るとか、国際協力とか、きれいなことばもいいけれども、このあふれるような人口をどう世界が受けるか、移住を中心とした外交を開いて、南米はもとより、カナダやアメリカのような技術移民はもとより、東南アジア、ことに東ニューギニア、西ニューギニアなどに対しても、外交の手を伸べなければならぬと思うが、そういう努力ができていない。せっかく官庁はできたが、千人しか送れぬ。だれも責任がとれぬということでは、人口は爆発すると思うのですね。この際耳は少し痛いかもしれないが、あなた方総反省してもらって——年間に百万ふえるから、年間百万の人とは私は言いませんが、少なくとも戦前の二万五千くらいにし、進んでは十万や二十万にするような機能を発揮してもらいたいと思う。そういう自信がありますか。きょうは外務大臣がおりませんが、外務大臣代理として、私の尊敬する政務次官がおりますから、政務次官の決意を聞きたいと思う。そうして単なる答弁でなくて、実際に実行に移してもらいたい。今日公社、公団、事業団は百八あります。膨大な予算を持っております。高額な所得者がみなおります。しかしそれはほとんど九九%は物に対する公社、公団、事業団で、鉄道公団とか、あるいは産炭地振興事業団、あるいはその他の団でありまして、これは海外移住とは違う。海外移住事業団は人に関することですから、どんな言いわけをしたり、事務所がきれいであっても、千人しか出なかったら、その存在を疑われると思う。そういう批評をして喜んでいるのではない。どうかしてよけい扱ってもらいたい。潜在失業者が六%からまた二%ふえたという数字が出ておるのです。ですから、いかにすればいいか、私にもありますよ。しかし、一応政府機関から聞いてみたい。どうしたら海外移住者がふえるか。先ほどから聞いておりますと、金融問題であるとか、土地の地権の問題との関連もありますけれども、ともかく国内から行けるようにするにはどうするか、こういうことに対する明快な御答弁を願いたい。
  283. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 海外移住の問題につきましては、過去におきまして外務省、農林省との間に相当意見の食い違い等もございまして、田原先生も御案内のように、過去十年前におきましては、外務省、農林省とが相当対立いたしまして、調整が困難でございました。その後両者の間に調整がつきまして、今日のように海外移住事業団というものが創設せられまして、ただいまではほとんど一元化されて、移住事業が円満に運営されておる実情でございます。  ただ最近の情勢からいたしますと、われわれといたしましては、人口問題解決のために移住政策は最も重要なものと考えているのでございますが、ただ国内の情勢が多少前とは変化いたしておりまして、これは私の私見にすぎないかも存じませんけれども、御案内のように、日本の産業が非常に振興いたしまして、そのために毎年求人難におちいり、あるいはまた就労率も相当高くなっておりまして、若い農村の子弟等が、海外に移住を推奨いたしましても、すぐそのままそれに乗って、それではひとつ移住しようじゃないかというような気持ちが、以前とだいぶ違ってまいりまして、多少そういう点もこの移住熱というものが少し下がってきておるのじゃないかと私は考えております。また同時に、国内における生活がやや安定してまいりまして、海外に移住しなくとも、何とか国内で食っていけるというような安定感というものが、多少移住熱というものを冷やしておるのではないかということも実は考えられるのでございます。しかしながら、今日の日本の人口問題解決のためには、また日本の農業技術等を十二分に効用を発揮するためには、できるだけこうした低開発国に参りまして、日本の農業技術を十二分に発揚いたしまして、その地の農業の開発に貢献するということが、これがやがてまた世界の人口問題あるいは食糧問題解決のためにも役立つことでございますので、外務省といたしましても、今後もさらにひとつ移住問題につきましては努力をいたす考えでございます。ただ府県におきます事務所が県庁の中にあるが、どうも府県の当局との関係が薄い、さっぱりどうも血が通っていないのではないかというような御指摘でありまして、この点はあるいはそういう点があるかも存じません。そういう点につきましては、幸い事務所が府県の中に置かれてある以上は、今後もひとつ府県の首脳部とも十分に連携をとりまして、血の通った事業団の運営を行ないまして、今後のいわゆる宣伝活動に十分意を用いまして、さらに移住者の応募等も、一そう増加を期待するように努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  284. 田原春次

    ○田原委員 私が移住の不振の点を三点に集約して申し上げますから、これに対して御答弁を三点にお願いしたい。それから、第四点には、今後の移住振興の対策について申し上げますから、これに対するお答えをいただきたい。  第一は、先ほど田中政務次官も言っておりましたように、地方庁の非協力の状態、これを改善しなければ、地方での募集はほとんどだめだと思います。そのためには、事業団に府県知事あるいは市町村長を有機的に、何らかの形で迎える方法をすべきじゃないか。しろうと考えでありますが、たとえば、事業団の非常勤理事に全国四十六の都道府県知事をお願いする。都道府県知事が非常勤理事であるとなりますと、その県庁の部課長が動く。それが組織の上で、慣例の上で、法令の上で不可能であるならば、可能なように改正する。あるいは、名称が理事ということで、事業団という国営機関の理事を知事がやるのはいかぬというなら、何か他の方法で、評議員であるとか、参与であるとか、あるいは支部長であるとか、何かの形でもって、一はだ脱がせるような方法を講じたらどうか。まずこの点に対する具体的な御方針を外務省からお聞きしたいのです。あるいは、事業団も、経験上言うことがあれば、聞かしてもらいたい。  ある地方に行きますと、県庁へ、事業団の本部から、事務所に移住者募集のポスターが行きます。事業団の事務所にはわずかしかいませんから、最末端の役場まで持っていけない。それで、県知事の名前を借りて、地方の市町村に送る。そうすると、地方の市町村はお義理でポスターを張ってくれる。ところが、少し事情のわかる者は、われわれ市町村は事業団の下請機関じゃないのだからお断りするというのもあるのですね。これに対する何らの処置もできない。こういうことは知らなかったけれども、地方を回ってみると、そういうことがある。したがって、募集要領の不徹底の原因を除却する。それから、県知事が行けと言うから行きましょうということになるかもしれないが、事業団だけで、地方の事務所程度では、農民も、あるいは炭鉱離職者もあまり信用しない。そういう点がありますから、地方の府県庁、市町村長との有機的なつながりについて、具体案がありゃなしや、これをまず第一にお伺いしたいと思います。
  285. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。  現在、事業団に運営審議会というものがございまして、その委員に県知事が一名——現在は兵庫県知事でございますが、委嘱して、お受けいただいておる次第でございます。こういった点からも考えまして、将来、ただいま御指摘のありましたような、地方官庁と移住事業団の関係を密接化するために、前向きで考慮いたしたいと考えておる次第でございます。
  286. 田原春次

    ○田原委員 その御方針を一応承っておいて、今後の出方を拝見したいと思います。  それから、第二点は、事業団の事務組織の問題。御承知のように、事業団は行動隊でなければいかぬ。企画、立案、法制、予算という問題ではないのです。きまった予算の範囲でどう動くかということなんです。たとえば、事業団に行っても、各部があって部長がおって、じっとすわっておるというのじゃなく、動ける行動隊を数隊つくっておくべきじゃないか。たとえば、三重県の四日市では、産業公害で集団移住したいというようなことが新聞に出ておった。ところが、ただそのままなんですね。ちょっとでも移住という気配があったならば、五、六人飛んでいって、看板でも出して、海外移住はお手伝いいたします。地元でなぐられてもかまわずやるというくらいの熱意が足らないと思うのです。あるいは、長野県の松代は、百数十回の地震でもっておびえています。私たちも議員として見に行ったのでありますが、長野県は海外移住県ですから、海外移住には親しみがあるのです。そういうところにも行って、東京から参りました、ブラジル映画をやりましょう、手続はいたしましょう、資金もこういたしましょうというお誘いのセールスマンというのがいないのですね。じっとすわっているだけです。県庁に行けば、五、六人おるけれども、それがそこまで行かない。あるいは、最近の七月豪雨によって、佐世保、あるいは神戸、呉が大きな被害を受けた。神戸のごときは、海外移住に非常に詳しいところなんです。ああいうところにも行って、お見舞いをするとともに、再建されるならば南米はどうですかと、一軒一軒回るくらいの熱意があってほしいと思うけれども、そういう機能がないですね。いろいろ業務部長とか、総務部長とかおるけれども、それは東京の本部の仕事なんです。見ていると、本部は少しきれい過ぎますよ。どたぐつで、わらじばきで、百姓が来て、わしは南米へ行きたいと思うが、どこがよかろうかというときの相談の機関じゃない。あまりりっぱ過ぎますよ。そうして、土曜は午後一時にはいなくなる。土曜の午後一時から日曜にかけて質問を受けます。あるいは、夜間も、月、水、金ぐらい質問を受けますぐらいのことをやるのがほんとうだと思うのですが、そうなっていない。これは主観的には一生懸命やっているつもりではあっても、われわれから見ると、事務配置がうまくいっていない。だから、ここまでくれば、わずか千人しか出さぬということなら、本部以下に何か欠点はないか。あるいは行動隊をつくる必要はないか。田中政務次官は警視総監だったから知っているでしょうが、警視庁には機動隊というものがおって、われわれ労働組合のデモのときによくやってきますが、海外移住事業団にも地方行動隊ぐらいつくって、どこへでも行く、佐渡ヶ島でも、どこへでも行って御説明いたしますというようにしたらいいが、そういう機関がないわけです。各県に事業団の庶務がおり、会計がおり、所長もおるけれども、それを応援する者がいないわけですね。軍隊を見ても、遊撃隊というものがある。私たちの労働組合でも、青年行動隊というものがありまして、本部の三役のほかに動ける者がいる。だから、事業団にも、たとえば関東、東北に対しては、自動車を三台くらい、ジープぐらい出して、テレビから映画でも持たして、ぐるぐる回るようにしたらいい。どこにでも行く、茨城県が要求すれば茨城県へ行くし、長野県が要求すれば長野県へ行くというような、一定任地がなくて行けるもの、そういうものを置く。あるいは関西、中国、四国だったら、神戸の移住センターに置いておく。一々東京から映画を送って見せるというのじゃなくて、直接そこでそこの民衆に接するようにしたらどうか。終戦直後の海外協会連合会時代というのは、私のほうの福岡県の炭鉱地帯に一週間ぐらい寝泊まりして、じいちゃん、ばあちゃんを口説いて、南米へ行くことをすすめた者がおったですよ。まるで気違いみたいなものだが、いまはそういう努力が足りませんよ。これは少しお役所式になったのじゃないか。柏村理事長のような練達たんのうな人がいるのだから、動ける事業団にするにはどうしたらよいか、これがお尋ねしたい第二点です。事業団の今後の御方針と、外務省の御見解をお伺いしたい。
  287. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま、事業団の運営等につきまして、たいへん有益な御意見を拝聴いたしましたが、事業団の職員も、現在、だいぶいろいろ努力をいたしておるのでございますが、まだ十分でない点もございまするので、今後こうした情勢に対応いたしまして、御意見等も十分尊重いたしまして、今後さらに反省して、一そう有効な活動をすべく最善の努力をいたす覚悟でございますので、よろしく御了承をお願います。
  288. 田原春次

    ○田原委員 まだ掘り下げて聞きたいけれども、時間の関係で次に移ります。  今後の対策として私の考えていることを申し上げて、その賛否の御意見を伺いたいのだが、それは事業団の直営主義では力に限度があるということです。職員の数にも限度があるし、いろいろ限度がありますから、既存する団体を活用する。それは下請というか、名前はどうでもいいが、この事務を委託する。こういう例は、委託調査費なんていって、ほかの官庁にもあります。その団体として考えるのは、いまそこに見えている全拓連の平川守さんのところをもっと活用されたらどうか。あれは農林省では平川元農林次官だったから、かってにやらせておけということでなく、もっと活用する方法がある。これは全国各地の農協に手足があるのだから、平川さんに言いたいのは、グアタパラばかりにへばりつかぬで、アマゾンぐらいに出たらどうか、あるいはパラグアイに出たらどうか、そうして年間に一千名くらいまではあなたの推薦で旅券を出しますからやってくださいというようなことで、全拓連の活用方法がないかということが第一です。  第二は、日本海外移住家族会連合会というものが全国的にあります。これはすでに南米に行っておる者のじいちゃん、ばあちゃん、おじちゃんが会員になっておるのです。外務省の補助等もありまして、一県一名ずつ毎年船に乗って現地に慰問に行っております。さらにそれが帰ってきてから、いいところだから行こうじゃないかと言っております。これなども活用の方法が幾らもあると思うのです。たとえば、最初の質問で申し上げましたアマゾンのかりにキナリーならキナリーに富山県の人がおるならば、富山県の海外移住家族会にキナリーをまかす、何家族か出してくださいというふうに村を限定して依嘱する方法があるんじゃないか。あるいはタイアーノに石川県の人がおらば石川県の県庁が海外協会、海外移住家族会等に依嘱をして募集さぜる、集約して募集し、親類や友だちを連れていけば非常に楽になる。こういう海外移住家族会の活用方法等もあるのですが、これはどうか。これも御答弁願いたい。  それから日本カトリック移住協議会というものがあります。ラテンアメリカはカトリックのところでございまして、神父さんに対する絶大なる信用がある。特にカトリック移住協議会は佐々木神父であるとか青木神父であるとか、熱心な方がおります。中にはヨーロッパから来た神父が日本語を覚えて、いま南米のパラグァイに行って日本人村で布教している者もあります。だから、これもパラグァイならパラグアイに年間二千家族くらいおまかせします。これはパラグァイに全部をばく然とまかせるのじゃなくて、アルトパラナならアルトパラナはカトリックにおまかせしますから募集してください、そうしたら神父が募集しますよ。長崎県の五島の島を回って何家族かをカトリック移住協議会は南米にやっているのです。事業団のお世話になっていない。そういう方法もあるのですから、事業団を活用されたらどうですか。  あるいは日本力行会、これはプロテスタントであります。永田会長がもう八十数歳で、南米には至るところに力行会の卒業生がおります。これも単にそこにある民間団体というのじゃなくて、頼む、委託調査費を出すから何家族どこの村へ入れてくれとあなたのほうで指定すれば、それは感激して協力しますよ。そういう方法があるのに使っていない。どうかそういう点をもっと大胆に。  それから事業団というのは仕事に限度があるのです。これは外務省がやかましいだろうし、大蔵省もやかましいだろうから、一々制約されておりますが、民間団体は楽にできます。以上あげましたのは四つでありますが、このほか各県の海外協会もあります。それから純民間団体で海外移住斡旋業協同組合どいうのがある。旅券業者があります。この連中に言わしますと、ほんとうに呼び寄せをまかしてくれるならば年間二千人は出しますと言う。そういうのがあるのに使わぬ手はないと思うのです。だから以上五つの団体の一団体ごとにはっきり名前を言うてありますから、これに対して御答弁をはっきり願いたい。これは外務省の安藤局長からお願いしたいと思います。
  289. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。  事業団がただいま御指摘のありましたような団体、組合等も活用して、移住の増進につとめたらどうかという御意見というふうに理解いたしたわけでございますが、その点私も全く同感でございますので、そういった団体ないしは組合をできるだけ活用して、移住者の増加それから福祉の増進、そういったことに努力していきたいと考えておりますが、現に啓蒙宣伝につきましては強くその点を感じる次第でございます。  ただ一つ申し上げたいことがございますのは、事業団ができますときのいきさつからいたしまして、事業団の仕事は移住の仕事を一元化するという点にあったわけでございます。そのたてまえを今後も貫く、こういうことは従来同様心がけるつもりであります。  以上をもってお答えにかえます。
  290. 田原春次

    ○田原委員 以上で終わるつもりでありましたが、きょうせっかく来ていただいて御質問申し上げようと思っておりました海外技術協力事業団の渋沢理事海外経済協力基金の渡辺理事に一言ずつ御意見を聞きたいと思います。  きょうのいろいろな問答でおわかりでありますように、海外に行っておる日本人は少ないが、子供はたくさん生まれて教育年齢に達しております。余裕のある者は大学等にやりますが、そうでない者は何か技術を身につけさせたいと思っているのです。したがって、海外技術協力事業団が東南アジアに相当の業績を残したことは認めますけれども、中南米に対する手足が非常に足りない。現在ではたしかメキシコに繊維か何かの訓練所を一カ所、それからブラジルのレシフェに紡績機械か何かの訓練所がある程度でございます。少なくと各国一ヵ所ずつ、パラグアイに本技術訓練所をつくってもらいたい。これは二世も相当年輩になっておりますから、パラグアイに適したような科目、たとえば建築とか家具とかいうものはどうであろうか。ボリビアにも千五百人ぐらい行っておりますから、そこにも一つつくってもらいたい。その土地に適するような技術でいいと思います。アルゼンチンはすでに二万人の日本人が行っておる。二世もたくさんおります。アルゼンチン人の教育もできることでありますから、これは工業中心地には、いま問題になっておるコルドヴァあたりでは、旋盤とかフライス工というのを養成したいといっているそうでありますから、こういうものをブラジルにもアルゼンチン、パラグアイ、ボリビアにも一カ所ずつ、一挙にはできぬかもしれませんが、漸を追うて技術訓練所をつくり、日本から資材と教師を出す。そして現地人中心に教育するのであるが、なお二世も教育するし、また日本から行きたい青年があったらこれも特別生か何かでやるというようなことをやるべきだと思います。そういう御計画があるか。なければやってもらいたいと思いますが、御見解をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  291. 渋沢信一

    ○渋沢参考人 お答え申し上げます。  南米各国にたくさんこしらえたいという御意見はごもっともでございます。ただ、御承知のとおり、これは一挙にやるというわけにはまいりません。現にブラジルにもすでに一つ設けております。ちょっと申し上げておきますが、ブラジルのレシフェの繊維訓練センターには二世の人がカウンターパートとして三人勤務いたしております。これらはブラジル政府の推薦によって私のほうへ招聘いたしまして、これがここで訓練を受けまして、そうして帰りまして向こうの教官的の仕事をいたしておるというわけでございます。それからまた現にブラジルに日本の専門家が七名行っております。そのうちの二名の専門家は、先ほど御指摘のありましたアマゾン地帯農業開発のために、ベレーンのブラジル政府の試験場に勤務いたしております。これはブラジル政府に働いておるのでございますが、これらの人はやはり移住地を回ったりして適当なアドバイスを与えておるというように聞いております。  こういうふうにいろいろの施策を総合いたしまして、技術力というものと移住政策というものと結びつけていくというふうにいたしたいと存じております。  簡単でございますが、以上でございます。
  292. 田原春次

    ○田原委員 海外経済協力基金の渡辺理事にお尋ねいたします。きょうは御苦労さんでございます。  この間インドネシアのマリク外相が来て、六千万ドルの借款をして帰りました。あれを見て私が感ずるのは、もう海外経済協力基金の五十億や百億の金は、東南アジアで要らぬのじゃないか、何千万ドルというものをいきなり政府間の折衝でやるのですから。それならば海外経済協力基金の金を重点的に中南米に向けて貸す。現に数年前に柳田総裁が中南米に行きまして、金を貸しますということを言って、向こう日本新聞に出たのを私は覚えておる。しかし、なかなか貸し方がのろいようであります。思い切って、海外移住事業団の基金部のようなつもりで、あなたらの持っておる全金額はラテンアメリカ日本人の独立営農資金あるいは独立企業資金に貸すようにしたらいいのじゃないか。それに必要な法律的改正があれば、これは自民党本賛成すると思いまするから、改正してもけっこうでありますが、いかがでございましょうか。そういうふうな方向大転換といいますか、あるいは集約といいますか、在留邦人に限定して貸していくというようないき方についてお尋ねしておきたい。
  293. 渡辺誠

    ○渡辺参考人 お答え申し上げます。  海外経済協力基金の設置の目的は、東南アジア等開発途上にある国の経済開発に寄与する案件に金を貸すということになっておるわけであります。ただいま先生から御示唆のありましたように、移民のいろんな事業に金を貸すように方向転換をしたらどうかというお話がございましたけれども、これは政府の政策の問題でございまして、私どもちょっと御答弁申し上げる筋ではないと存じますが、しかし、経済協力基金におきましても、現在の法律の定める範囲におきまして、日本から移住されました方の事業に対しましても金をお貸し申し上げておるのでございまして、これは基金法の規定にもちろん準拠しておるわけでございます。たとえばトメアスーのコショウの加工の仕事、それからエクアドルのアバカの栽培、それから近いうちにはパラグアイのイタプア県におきます桐油あるいは大豆油の搾油のための工場建設等に対しましては融資することになっておりますし、またすでに融資しておるのでございます。そういうことで、基金法に定める範囲におきまして、海外経済協力基金といたしましては、移民の事業であろうとまた現地の人の事業でありましょうとも、法律の目的に沿いまして御協力できる仕組みになっております。またやっております。
  294. 福田篤泰

    福田委員長 これにて三件に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見を賜わり、審査に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、委員長より厚く御礼申し上げます。     —————————————
  295. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  各件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  296. 福田篤泰

    福田委員長 起立多数。よって、各件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました各件に対する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  298. 福田篤泰

    福田委員長 次に、国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。渡部一郎君。
  299. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは国際電気通信条約及び関係議定書に関する質問を行ないたいと思います。  この条約に関しまして今回いろいろな改正点があるわけでありますが、改正の重大な要点について高島さんから御説明していただいたほうが時間的にも短くなると思いますので、改正要点について御説明を願います。
  300. 畠山一郎

    ○畠山政府委員 条約のおもな改正点について御説明申し上げます。  第一は、主管庁会議というのがございますが、従来は、通常、臨時、特別、この三種類がございました主管庁会議を簡素化いたしまして、世界主管庁会議と地域主管庁会議の二種類に整理いたしました。  第二点といたしましては、やはり国際電気通信連合の機関の一つといたしまして管理理事会というのがございますが、その理事国が従前二十五でございましたのを二十九カ国に増加いたしました。  第三は、事務総局長を補佐するための調整委員会の権限及び任務を拡大強化することといたしました。  第四点といたしましては、国際周波数登録委員会という組織がございますが、それが従前委員が十一人でございましたのを五名に縮小いたしました。  次に、国際電信電話諮問委員会と国際無線通信諮問委員会との双方に関係のある問題を研究するために、プラン委員会という組織を設置いたしました。  以上がおもな改正点でございますが、いずれも国際電気通信連合の組織及び運営に関する改正点ばかりでございます。  以上で御説明を終わります。
  301. 渡部一郎

    ○渡部委員 主管庁会議に通常、特別、臨時、この三主管庁会議世界主管庁会議と地域主管庁会議の二種類に分けたその理由はどこにあるのでしょうか。
  302. 畠山一郎

    ○畠山政府委員 従前は、通常、臨時、特別の主管庁会議のそれぞれによりまして条約上権限が異なっておりまして、突発的な事項等によりまして、ある主管庁会議にかけなければならない問題が起こりましても、予定されておりました主管庁会議の権限外ということがございまして、事務が円滑に進まなかったという点が一点でございます。  それから分類が非常に複雑になっておりまして、三種類と申し上げましたが、なおそのほかに特別主管庁会議の中にもまたいろいろ種類がございまして複雑になっておりましたのを、世界と地域というふうに分けたことにいたした次第でございまして、いわば簡素化のためでございます。
  303. 渡部一郎

    ○渡部委員 この条約に関してでありますが、この条約に関しましては、日本が結んだ他の条約、たとえば南米における所得に対する条約等と違いまして、沖繩に対する留保のようなものがこの中についておりませんが、この条約は沖繩及び南西諸島に対しても同じように及ぶと理解してよろしいのでしょうか。
  304. 高島益郎

    ○高島説明員 沖繩は、御承知のとおり、平和条約によりまして日本の施政権が及ばない地域でございますので、これはこの条約の規定によって施政権を持っております米国が特に適用するという宣言もしない限りは、適用ができないわけであります。現在そのような制限をしておりませんので、沖繩にはこの条約は適用になっておりません。
  305. 渡部一郎

    ○渡部委員 この沖繩に適用されていないということについては、日本のいわゆる本土地域だけに限るというふうに外交上の慣例としておるんですか。それとも沖繩にまで及ぶということを慣例とするたてまえでやっておるのですか。
  306. 高島益郎

    ○高島説明員 沖繩に対しましては、日本の施政権が及ばない限り、条約を適用いたしますそもそもの権限が日本にないわけでございまして、そういう観点から多数国間の条約におきましては、現実に施政権を持っておりますアメリカが、沖繩にその当該条約を適用するかどうかということをきめるのが通例でございます。
  307. 渡部一郎

    ○渡部委員 この条約に加盟していない主たる諸国は、どのような国があるのでしょうか。
  308. 高島益郎

    ○高島説明員 現在、この国際電気通信連合員になっておりますのは、第一附属書に掲げております百二十九の国と、その後新しく国連に加盟いたしましたマラウイ、ガイアナ、レソトの三国、合計百三十二でございます。したがいまして、これ以外に現在国際電気通信連合に入っておりません国は、たとえば、中共、東独、北鮮、北越等、たぶんこの四つでございます。
  309. 渡部一郎

    ○渡部委員 参議院外務委員会において、国際電気通信条約は他の国連の専門機関と違って、第二項(a)の「第一附属書に掲げる国又は領域の集合で、みずから又は代理されて、この条約に署名し、かつ、これを批准し、又はこれに加盟したもの」と、そういうものだけが連合員になり得るということになっておりまして、第一附属書に、各連合員になるべき国は全部列挙してございます。したがいまして、それ以外の国が連合員になり得る方法は実はないのでございます。」と高島さんが御説明になっておられるようでございますが、この御説明は少々おかしかったのではなかろうか。これ以外の国が連合員になり得る方法はあるのではないか、このように思うのでございますが、御説明願います。
  310. 高島益郎

    ○高島説明員 ただいま渡部先生が御指摘のとおり、私、参議院外務委員会で御答弁申し上げた内容は、多少舌足らずの点はございました。これは条約の第一条の第二項に、(a)(b)(c)と三つのカテゴリーを掲げてございまして、第一は先生の御指摘のとおり第一附属書に掲げる国、つまり先ほど申し上げました百二十九の国でございます。それから第二のカテゴリーは、掲げておらなくともその後国連加盟国となった国が第二のカテゴリーでございます。第三のカテゴリーは、ただいま私が申し上げました四つほどの国につきまして、これは連合員全部の三分の二の承認があった場合に加盟することができるという規定がございます。したがいまして、この規定によって三分の二の承認を得れば加入の道はございます。その点は訂正させていただきます。
  311. 渡部一郎

    ○渡部委員 この条約の最後に、留保と申しますか、例外的な宣言を行なっている国々が非常にたくさんついているわけであります。私はこのような、多数留保のついている条約の成り立ち方に大いに疑問を感ずるのでありますが、これについて御説明にあずかりたいと思います。
  312. 高島益郎

    ○高島説明員 この国際電気通信条約というのは非常に古うございまして、古くからの慣行で、毎五年に全権委員会議を開きまして、そのつどその基本法たる国際電気通信条約そのものを全面的に改正する、全面的に新しく採択しなおす、そういう習慣がございまして、これに伴ってそのつどいろいろ自分の満足しない点につきまして留保をつけるという習慣がございまして、非常に膨大な量の留保にのぼっております。留保内容を簡単に御説明申し上げますと、全部で八種類ぐらいの留保内容になります。  一つは、自分の国の代表権に関する留保でございます。これは中国に関するもの、南ベトナムに関するもの、朝鮮に関するもの、この三つでございます。  第二番目に国家承認に関する留保でございます。これは自国の認めない国につきまして、この条約に入ってもその国の存在を承認するものではないという趣旨の留保でございます。これはイスラエルに関するもの、それから南アフリカに関するもの、それからマレーシア連邦に関するもの、これは現在はそういうことはないのでありますけれども、当時はインドネシアと敵対関係にあったものでございます。そういう留保がございます。  第三番目に領土権に関する留保でございます。これは南極の一部につきまして、イギリスとそれから中南米諸国間に紛争が昔からございまして、この領土の主権に関する留保でございます。  第四番目は非常に技術的なものでございますけれども、条約の十五条にございます四つの業務規則に関します留保でございまして、ある種の規則については、自分の国は受諾しないという趣旨の留保でございます。  第五番目はそれのはね返りでございますけれども、他国が留保した結果、自分の国の分担金額が増加するという場合に必要な措置をとる権利を留保する、そういう趣旨の留保でございます。  第六番目には、他国が条約もしくは業務規則の規定を順守しない場合または他国の留保によって、自国の電気通信業務の良好な運用が害される場合に、自国の権利を保護するために必要な措置をとるための権利、こういう趣旨の留保でございます。  第七番目は、全権委員会議でポルトガルと南アフリカについて決議がされましたけれども、この決議に対しまして、ポルトガル及びスイスは留保いたしております。  八番目は地域的な会議及び会合に、関係地域に属しない国が投票権を持って参加するという原則は受諾することはできないという南米諸国の留保でございます。  以上八種類の留保がここにいろいろと掲げられてある次第でございます。
  313. 渡部一郎

    ○渡部委員 この条約の第四条二〇の2の(a)でございますが、混信の問題がのぼっております。この混信の実例としてはどのようなものがあるか、またその周波数スペクトルの割り当て登録を行なうということになっておりますけれども、従来これが強力に行なわれてまいったか、私は伺いたいのであります。と申しますのは、北鮮からの混信がある、あるいは中共との混信がある、あるいはVOAだとか、あるいはモスクワ放送だとかのいわゆる海外宣伝放送の強力なものがある、こういうものに対していままでこの電気通信連合からこれに対して強力な異議申し立て等があったという事実を私は知らないのでありますけれども、これに対してどういうふうな態度をとっておるか。これは単なる規定であって空文なのか、それともこういう方向に向かって相当な努力が行なわれているか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  314. 高島益郎

    ○高島説明員 国際電気通信連合においては、ただいま御指摘の問題につきましては、こういうふうな考え方で処理しております。  まず第一に電波の周波数の割り当てでございますが、これはこの条約の附属規則でございます無線通信規則という規則に、業務別、地域別の電波の周波数の割り当てが決定されております。それに従いまして、それぞれの国が自分の国内に電波を割り当てまして、それを国際電気通信連合の機関であります国際周波数登録委員会に通告いたします。そういたしますと、国際周波数登録委員会におきまして、手続き上の問題あるいは技術上の問題につきましていろいろ審査をいたしまして、混信のおそれがないとかいうようなことになりますと、国際周波数登録原簿というものに登録いたします。登録いたしますと、国際的にその波が保護されるという仕組みになっております。ただいま御指摘の混信の問題につきましては、ほとんとがITUの国際電気通信連合の加盟国でない中共、北鮮等の問題でございます。そういう国に対しましては、国際電気通信連合を通じましての規制手段がございませんので、直接たとえば北京の政府に対しまして強力な抗議を申し入れるというような方法をとっております。なお、防衛のための手段といたしましては、こちら側の放送局の出力を増加するとかいう措置をとっております。ただ中共との関係につきましては、御承知のような関係でございますので、その抗議が有効であるかどうかということにつきましては相当問題がございます。いずれにいたしましても、混信の問題につきましては、ITUの加盟国でない中共等との間が主たる原因になっておりまして、これにつきましてはそれぞれの場合におきまして、強く抗議はいたしております。
  315. 渡部一郎

    ○渡部委員 ただいまのお話でありますが、それではソビエトの場合はどうなっているのか。私は日本の対外的な折衝の状況が非常に弱腰であったのではなかろうか、それを思うのであります。特に今度人工衛星がソビエトにおいて飛ばされましたけれども、あの二つの人工衛星がドッキングする場合に使った電波の一方は、日本の商業電波の中にまともにかぶさる電波とか聞いております。そうすると、こういう問題が起こった場合に、実際日本の外務省もしくは郵政省等は、国際電気通信連合に対してこれに関する紛争の提訴あるいは提議を行なったのかどうか、またITUでしたかにその話を持ち出したのかどうか、その事実はいかがでありましょうか。
  316. 石川晃夫

    ○石川説明員 ただいまの問題にお答えいたします。  ソビエトからの混信につきましては、やはり外務省を通じましてこちらのほうから抗議を申し込んでおります。これにつきましては、全部が全部解決していただくことはありませんが、しかし相当数向こうのほうで配慮してくれているようでございます。先ほどのドッキングの問題につきましては、私たちのほうには現在まだ報告が参っておりませんので、そういう事実はなかったものと思います。
  317. 渡部一郎

    ○渡部委員 あなた、そういうひどい話はないですよ。報告がないからそんなことはなかったとは何ですか。そんなでたらめな、いいかげんだったら、あなた、職責怠慢ですよ。新聞にだって載っているじゃないですか。何をやっているんですか。知らないで済みますか。知らなかったら調べると言うのがあたりまえじゃないか。何を言っているんですか、一体。そんなおかしな答弁はないよ。なめるのもいいかげんにしろよ。
  318. 石川晃夫

    ○石川説明員 ただいまの問題につきましては、いま申し上げましたように、私のほうでは資料が入っておりませんので、担当のところを調べまして、後刻御報告申し上げたいと思います。
  319. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういう答弁があたりまえですよ。それじゃ、私はあっさり次に移ります。  そこで、今度は混信というよりも積極的に電波妨害というようなことが行なわれた場合、この条約はどういう解決策を持つのか、解決規定はあるのかどうか、これに対する所見を伺いたいと思います。
  320. 石川晃夫

    ○石川説明員 電波妨害にはいろいろございますが、無線の場合につきましては、ただいま監理官からお話しありましたように、外国との混信、妨害につきましても、高調波の問題なんかもございますが、こういうようなものは全部IFRBのほうに通告することになっております。以上でございます。
  321. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういうことになっておるじゃなくて、現実にやっているかどうかがぼくは大問題だと思う。  それから第二番目に、そういう問題があった場合、いままでのところでは、日本政府からそういう問題についての提議が行なわれた事実というのは、ほとんど私の手元に集まっていない。私の手元にないからといって、私はないとは言わない、あなたとは違って。しかし、そういう問題については、もっと強力な外交手段をとるべきではないか、あるいは郵政省と外務省が組んでこういう問題の交渉に当たるべきではないか、こう思うのです。そこで、そういう問題が起こった場合には、断固それをやる用意があるかどうか、その決意を伺っておきたい。まずは田中次官にお願いしたい。
  322. 石川晃夫

    ○石川説明員 お答えいたします。  正規のものにつきましては、先ほど申しましたように、外交手段によって正規のルートを通してやっております。これは外務省を通じなくても、IFRBを通じまして、十分その措置がとれるようになっております。また、その妨害を与えた国と受けた国と、両国間におきましても、緊密な連絡をとりながら排除しております。ただ、先ほど監理官から話がありましたように、ITUの非加盟国並びにそれに準ずる国につきましては、単なる外交交渉だけにとどまっておりまして、それを強力に進めるという手段につきましては、私たちそういう方向に向けてやっていただいている次第でございます。
  323. 渡部一郎

    ○渡部委員 ソ連及びアメリカにおいて大規模な原爆実験あるいは水爆実験が行なわれる等の際、電波妨害の大規模なものがこの地上において起こっておる。たとえばアメリカにおける水爆実験等においては、太平洋上におけるところの電波妨害というものは非常な大きな規模にわって、世界の電波の通信の機能を根本的に破壊したという事実が明らかだし、またこの間は針衛星というのが飛ばされて、針を空中高くにおいてばらまいて、電波干渉に対する実験が世界各国の非難の中に行なわれた。こういうような場合に、外務省はこれに対して抗議をなさったかどうか、郵政省はこれを国際電気通信連合に持ち出されたかどうか、それをお伺いしたい。
  324. 石川晃夫

    ○石川説明員 お答えいたします。  ただいまのお話の衛星の問題でございますが、針衛星を飛ばした、それの周波数に、現在の実用通信についてはその妨害は影響ございません。  それから、核実験につきましては、私のほうにはまだ資料が入っておりませんので、これは後刻調査いたしたいと思います。
  325. 渡部一郎

    ○渡部委員 外務省はこれに対して抗議をされましたか、されませんでしか。イエスかノーか、それだけでけっこうです。
  326. 高島益郎

    ○高島説明員 針衛星の問題につきましては、私のほうで何ら措置をとっておりません。  それから、核実験と先生がおっしゃいましたのは、だいぶ以前の核実験のことでございますか。米ソの核実験とおっしゃいましたが……。
  327. 渡部一郎

    ○渡部委員 水爆実験です。
  328. 高島益郎

    ○高島説明員 それによりましてどのような電波に対する妨害があったかという事実につきましては、私のほうでは、事情を存じておりません。
  329. 渡部一郎

    ○渡部委員 ただいまの御返答は両方ともきわめて不満足でありまして、これほどの重大な電波妨害の事実に対して、抗議を申し込んだという事実すらつかめていないのでは、これは重大な問題であると思います。委員長、私はこういう原子爆弾あるいは水爆等の実験等に関する電波妨害の事実に対しては、正式な資料を要求させていただきたい。お願いいたします。
  330. 福田篤泰

    福田委員長 承知いたしました。そのように要求いたします。
  331. 渡部一郎

    ○渡部委員 それに関して、法の運用は要するにこれを運用する人にあるがゆえに、私はやかましく伺ったのでありますけれども、これだけの法ができておっても、水爆の実験等の問題になると、これに抗議をすること一つできないのでは、この法の運用の実効が失われる。そういった点、今後、外務省、郵政省に対してこういう問題に対する十分な関心、そして明確な意思の表現をお願いしたい。そういうふうに痛感する次第でございます。  最後に一つ伺わしていただきます。それはこの条約に関しまして、三十九条の「人命の安全に関する電気通信の先順位」の中に宇宙空間が新しく入ったわけでありますけれども、これはどういう経緯で新しく入ったのか、またこのような人命の安全に対するところの電気通信の重要性に関してどういうようないきさつでここに取り上げるに至ったのか、明らかにしておいていただきたいと思います。
  332. 畠山一郎

    ○畠山政府委員 御指摘の第三十九条の規定は、従前は、海上、陸上及び空中における人命の安全に関するすべての電気通信ということに規定されておりまして、一昨年モントルーで開かれました全権委員会議で宇宙空間という規定が入ったわけでございますが、これは数カ国からそういう趣旨の提案がございまして、こういうふうな改正がなされたわけでございます。その趣旨といたしましては、そろそろ宇宙活動等で有人飛行体が飛しょうするような時代になったために、その宇宙空間における人命の安全に関する根本規定を置いておく必要があるであろうということで、全会一致でこういう改正が行なわれた次第でございます。
  333. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、月天体等に関する条約の際にもそうでありましたけれども、その際、日本の外務省では、非常に強力に救済義務というものに対して、いかなるものが打ち上げられるかという通報を受けるだけのわれわれは権利がある、そのように国際会議の席上強く主張されたように伺っております。確かに人命尊重はきわめて重大なことでございます。しかしながら、かってに人工衛星を打ち上げておいて、あるいは人間衛星を打ち上げておいて、そうしてあるいは人の国を観察し、あるいは攻撃する目的を持っているようなものすら打ち上げておいて、突然それが調子が悪くなったからといって援助を求めるということは、それは当を得ないところの片手落ちの条約ではないかと思うのであります。したがって、この問題に関しては人命の救助は当然のことでありながら、このような重大な科学の進歩を含めて人類的な壮挙に対しましては、当然明瞭な通報義務を課するのが当然であり、今後の外交交渉においてそれをやっていただくことが至当だと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  334. 高島益郎

    ○高島説明員 ただいま先生の御指摘の問題は、国際電気通信条約自体の問題ではなくて、すでに御審議をいただきました宇宙空間条約の問題であろうと思います。これはその際に説明申し上げたと思いますけれども、宇宙飛行士の救助それから宇宙飛行物体の返還の問題につきまして、非常に条約自体の規定が十分でございませんので、現在ジュネーブでやっております宇宙空間平和利用委員会で、その宇宙飛行士の救助と宇宙飛行物体の返還の問題につきまして、当然その前提としての登録それから通報等が必要であるということをはっきり訓令として出しておりまして、そういう方針に基づいて現在交渉中でございます。したがって、これはそのほうの成果をまった上で御批判を仰ぎたいと思います。
  335. 渡部一郎

    ○渡部委員 先ほどの電波妨害の問題や混信の問題に関しましても、対ソ連圏に対するところの日本の電波混信の問題は大きな問題であるかと思います。ごく近日中に外務大臣がソビエトへ向かわれるそうでありますから、その際においてこの電波通信の混信妨害等の問題に関するある程度の瀬踏みと、それに対する下交渉というものをしていただきたいと思うのでございますが、それに対する確答をひとつ次官にお願いしたい。
  336. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいまの御意見ごもっともでございますので、大臣の出発前に私からもよく大臣に申し上げまして、意中に入れていただきまして、何かの機会にこれを持ち出していただくようにお願いしたいと思います。
  337. 福田篤泰

    福田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  338. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  339. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべききものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  340. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  341. 福田篤泰

    福田委員長 閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、閉会中もなお国際情勢に関する件について調査を行ないたい旨、議長に対して申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  342. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  閉会中の委員派遣についておはかりいたします。  議長に申し入れることになりました閉会中審査が付託された場合に、委員を派遣し実情調査を行なう必要が生じたときには、その期日、人選、派遣地等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  343. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  344. 福田篤泰

    福田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。谷口善太郎君。   〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕
  345. 谷口善太郎

    ○谷口委員 時間がありませんので、一つの問題だけを、それも端的に政務次官に伺っておきたいと思います。  問題は近く開かれますユニバーシアード東京大会を控えて、朝鮮民主主義人民共和国の参加の問題について、最近この東京大会の組織委員会の間で、未承認国選手団の出入国に関する取り扱い方針という、事実上共和国の代表団が参加できないようになる、そういうこと等を計画した文書がある、秘密文書ですね。これが配付されている事実があります。もちろん、これは外務省は御承知と思いますので、全文をここで公表していただきたい、こういうように思います。
  346. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 お答えいたします。ただいまの文書につきましては、秘密文書でございましょうか、外務省といたしましては入手いたしておりませんので、実はその内容等は十分熟知していないわけでございますが。
  347. 谷口善太郎

    ○谷口委員 御存じないというわけですか。
  348. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 存じておりませんのです。
  349. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この秘密文書にもいろいろなことが書いてございますが、特に次のような点が非常に重大だと思うのです。その分だけ読んでみます。   一、入国者の範囲について。   特定個人につき入国拒否を行なうことがありうる。(特に在日朝鮮人であって、一旦帰国した者の入国は認めがたい。)   大会取材のプレス関係者、大学スポーツ研究会議出席者等は、選手団の取扱いとは全く別に、一般人の入国と同様の見地から処理する。   二、入出国の期日及び滞在期間について。   外交上、韓国の入国許可を与える前に北朝鮮に入国を許可することはできない。 こう書いてあります。この文書は明らかに朝鮮民主主義人民共和国に対する不当な差別条件を規定したものである。こういう重大な文書は、いわば一民間機関にすぎない組織委員会が、こういうことをきめるわけにはいかない。そういうことをやるはずはない。これは政務次官は御存じないとおっしゃるけれども、政府が指示しなければやるはずがない。政府の方針という文書です。どうですか。
  350. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 いまの文面をここで拝聴いたしておりますと、これは入国許可に関するいろいろな許可の標準とか、そういうようなことがうたわれておりますもので、これは外務省としての取り扱いでなくして、それは主として入国管理局と申しますか、法務省関係の取り扱いの標準事項をそこにうたっておるように、私は考えられるわけであります。したがいまして、外務省としては、そういうことにつきましては、実は関知していないわけなんで、それで存じませんと申し上げたわけでございます。
  351. 谷口善太郎

    ○谷口委員 うまいこと逃げましたね。うまいこと逃げましたが、実は逃げておりませんですよ。実際はあなた方は組織委員会を通じて日本政府のこういう、特に朝鮮民主主義人民共和国に対して、これを排除しようという立場が、たとえば国名問題などでも文句をつけているのは、日本政府、これは御承知のとおり。ですから非常な大問題になっているのでありますが、これはあなた方はたとえば法務省関係である、外務省は知らぬ、こういうことでは——外交上の重大問題でしょう。いまおっしゃるとおりに、日本に入れるか入れいなかという問題、それは法務省は法的な責任の官庁でありますから、見地を持っているかもしれませんが、外交問題となると外務省は知らぬというわけにいかぬでしょう。それは法務省のことでわしゃ知らぬということじゃ済まぬじゃないですか。もしあなたがそうおっしゃるなら、私ここで聞きますが、いま申し上げました幾つかの重要な点、それは外務省自体の考えはどうですか。一つ一つ聞きます。つまり、在日朝鮮人で一たん帰国した者は、選手であっても日本へ入れぬというのですね。国名問題その他解決しまして入ってくる。しかし一部の選手が在日朝鮮人であった。そういう過去を持っている人は入れぬというのだから、そんなのは民主主義共和国だって全体として来るわけにいかぬのです。そういう条件をつければ、なかなかそう簡単にはこの祭典には参加できないということを日本政府は条件づけることになる、こういう考え方に対して 外務省自体はどうお考えになりますか。  それから、新聞記者等の入国の拒否ですね、これは秘密文書はいま読み上げましたように、一般人の入国と同様の見地から処理する、こう書いてあるのです。日本政府のいままでやっておるのは、一般人は入国させぬのでしょう。共和国の人民は何か学術だとかスポーツだとかいうような関係では入国できますが、一般人の入国はさせぬ、だから一般人の見地から処理する、選手という立場とは全く違った立場から処理する、こう言っておる。入れぬと言うのだ。ところがこれは選手団と、それを報道するプレス関係の記者諸君、それから大学のスポーツ研究会議に出てくるというのは、こういう人たち全体が今度の祭典に参加する一つのものでしょう。それを一部を参加させぬ。こういうことについて、これは明らかに民主主義共和国に対する差別待遇です。そういう非常に不当な、しかも外交上許しがたい、かつて例のないようなやり方で差別するということなんですから、これはやはり外務省としてちゃんと見解がなければだめです。  それから第三点ですが、韓国の入国許可前に共和国選手の入国を許可せぬ。韓国を入れるかどうかということがきまらぬと、共和国の入国問題は処理せぬ。韓国が一番文句を言っておるのでしょう。社会主義の諸国から参加する、特に朝鮮民主主義人民共和国の参加、これを一番かいらい政権は文句を言っておる。それを先にやらなければできないということになると、これはあなた方たいへんなことでしょう。これは外交上重大な問題なので、外務省の考え方を、大臣がおられたら聞くつもりだったが、政務次官、あなたから聞かしてもらいたい。
  352. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 私はまず冒頭に概括的に申し上げてみたいと思うのでありますが、スポーツでございますから、従来政府としまして、スポーツ競技のために入国するということにつきましては、政治とスポーツは別問題でございますから、スポーツに関する限りは、われわれ政府としましても、できるだけ入国については便宜をはかっておるわけであります。ことに今回のユニバーシアードは世界の若人、学生が集まって、二年に一回競技をしよう、こういう世界の青少年のために万丈の気炎を吐く一つの非常に意義のあるアマチュアの運動競技でございますので、政府としてはできる限り入国に対しては、支障のない限りなるべく入国を許可いたしまして、りっぱな競技会としてこれを運営させたい、こういう精神で実はおるわけであります。  そこでまず第一に一ぺん北鮮に帰国した者はもう絶対に入れないのだ、こういうようなことでありまするが、それは一応そういうことになっておりまするが、これはまた先方から一々入国に対する許可申請書というのが参りますので、それはそれとしまして、一々個別審査によりまして入国に支障なき者は、運動競技でございますから、できるだけ便宜をはかるようにしていったらどうか、こういう考えでございます。  それからもう一つの韓国との関係でございますが、これは外務省としましては、全然いま初めて知ったわけでございますが、そうしたことも冒頭に私が申し上げましたような、スポーツにはひとつ政治というイデオロギーを越えて、できるだけ平等にこれを取り扱って、りっぱなスポーツ大会としてこれを運営していただきたい。こういう精神で進んでおりますので、こういう精神からひとつ御推察願いまして、そうしたことがあるかも存じませんが、われわれとしては、そういう場合においても、十分誤解のないような措置をとっていきたい、かように考えているわけでございます。
  353. 猪名川治郎

    ○猪名川説明員 補足説明させていただきます。  ただいまの第三点の問題でございまするが、韓国と朝鮮民主主義人民共和国の入国においての早いおそいの問題の点についてでありますが、この問題は、大韓民国とわが国とは外交関係を結んでおるわけでございます。したがいまして、すべての往来は、承認、未承認国とを比較いたしますと、より円滑であるということが基本的な面であるわけでございます。したがいまして、その承認、未承認国という観点から申しますると、やはり承認国の場合には、東京のほうには大使館もございますが、未承認国の場合は、そういう外国の代表的な機関がございません。したがいまして、入国の申請を受理いたす場合でも、ただいまの場合には、ユニバーシアード競技大会に参加する選手団あるいは役員等の問題の場合には、現実の運営といたしましては、組織委員会のほうが代理申請をするというようなことにもなるわけでございまして、したがいまして、承認国と未承認国の間ではいろいろそういう点においての違いはございまするが、しかし承認国だから先だとか、未承認国だからあとだとか、そういうような問題ではございませんことを補足説明させていただきます。
  354. 谷口善太郎

    ○谷口委員 おかしいことを言いますな。私の聞きましたのは、韓国を先に入国許可しなければ、そのあとでなければ朝鮮民主主義人民共和国は許可せぬ、こう言っておる。単にその代表機関の外交権があるとかないとか、手続上やっかいだとかなんとかいう問題ではなく、先に韓国を承認しなければ、あとでなければならぬと、こう言う。そんなことじゃないでしょう。しかも承認した国と未承認国とを差別をつけると言う。これは政務次官、あなたの御答弁のあとにすぐ部長がこういうことを言っているでしょう。これは政治の介入じゃないですか。こっちは承認したから優遇する、こっちは未承認国だから優遇しないのだと言い、あなたは、そんなことは介入しないで、スポーツの問題はどこも一緒に、この世紀の祭典を成功させるのに大いにやるとこう言っておる。ところがそうじゃないでしょう。こういうことはやはりうまくないと思うのです。ここはもっとはっきり言ってください。ほんとうに私は具体的に言ったのだから、ケース・バイ・ケースと言わないで、その場合はこうだ、これはこうする、あるいは外務省としてはそうできぬ、こうはっきりしてください。
  355. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 この入国は、今回参加国が四十四カ国以上になると思うのです。したがって、一ぺんに殺到してまいります。したがって、あとから来たものを先に回すということも、これもまずいと思います。ですからやはりこれは到着順で逐次これをうまくさばいていきませんと、非常に不公平を来たすと思います。したがって、私は到着順にこれをさばいていく、たまたま韓国がおそくなって朝鮮民主主義人民共和国が先に来たならば当然これは先にさばいていくということにしなければ、とうていそれはうまくいかぬ、こう思っております。
  356. 谷口善太郎

    ○谷口委員 こういうややこしい話になるから時間が長くならなければ済まぬのです。それじゃ、はっきりしてもらいますか。いまあなたのおっしゃるのだったら、到着順でさばく、だから組織委員会の中で秘密文書がばらまかれて、政府の方針だといって韓国を先に入国承認しなければ、そのあとでなければ朝鮮民主主義人民共和国の問題は処理せぬということは、そういうやり方はやらぬということですね。そうですね。その点はっきりしてください。
  357. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 スポーツでございますから、フェアでいきたい、こういうふうに考えております。
  358. 谷口善太郎

    ○谷口委員 たいへんきれいなことばでけっこうでありますけれども、しかし六月の初めに朝鮮民主主義人民共和国から大会組織委員会に大会取材のために十名の記者を送りたいといったときに、外務省はこれを拒否しているでしょう。それは明らかにしているでしょう。先ほど申しましたとおり、記者も選手団も研究者も、これは一体のものなのですが、これは入れぬ、こうはっきり言っているのですよ。だからあなたが幾らきれいなことをおっしゃっても、これはそういう態度でないということをよほどはっきりしなければいかぬ。問題は国名の問題で、日本政府が一番先に問題を出している。朝鮮民主主義人民共和国に対して、その正規の名前で入ることを認めず、北朝鮮という名前で入るという、そういうことを言っているからこれは問題になっているのでしょう。しかもこういうことを、そういう申請があるかないかの問題ではない。申請はあるにきまっておる。スムーズに入れる条件がある。日本政府は入れないように入れないようにして、共和国に対して敵視政策をとっているからこういうことになる。だから問題は日本政府の態度ではありませんか。しかもこういう秘密文書で、これは国会も知らぬし、いま聞きますと外務省も知らぬというのでしょう。国民は知らぬ。そういう秘密文書でもって政府の未承認国に対する方針だと言っているわけでしょう。それは田中さんは非常にきれいにおっしゃっておる。スポーツのことだからフェアにやりたい、それはわれわれの精神だ、こうおっしゃったけれども、それならこんなことはやはり政府としてははっきりすべきだ。外交上重大なことです。こういう差別待遇をつけるとか、あるいは正式の国名を許さぬとかいうことは、相手の国に対する最大の侮辱ですよ。私はこういう文書を見て、これは二重の意味で朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策だ、こう思わざるを得ない。私はもう時間がありませんからこれでやめますけれども、これは断固として、こういう秘密文書は破棄してください。そうして国名も堂々と正規に共和国の諸君が入ってきて、そうしてあなたのおっしゃるとおりにフェアにこのスポーツの祭典を成功さぜるように、そういうふうな態度でやってもらいたい。そうしなければいかぬのです。この点をあなたは非常に気軽に承知したような顔をしていますけれども、そうはいかぬですよ。だからこの日本政府の朝鮮民主主義人民共和国に対するあの手この手の敵視政策というものは大問題だと思うので、国民はこれを許しません。ぜひこの際こういう態度を改めて、正規な国名で堂々と選手団が入れるようにしてもらいたい。  以上です。
  359. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会