運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-13 第55回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)    午後三時四十分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    臼井 莊一君       中山 榮一君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       久保田鶴松君    田原 春次君       戸叶 里子君    伊藤惣助丸君       川上 貫一君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長事務代理   吉良 秀通君         通商産業省貿易         振興局長事務代         理       高橋 淑郎君  委員外出席者         科学技術庁研究         調査局航空宇宙         課長      謝敷 宗登君         外務省経済協力         局国際協力課長 野村  豊君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         外務省国際連合         局科学課長   大塚博比古君         大蔵大臣官房財         務調査官    堀込 聡夫君         運輸省航空局審         議官      林  陽一君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 七月十三日  委員猪俣浩三君及び渡部一郎君辞任につき、そ  の補欠として帆足計君及び伊藤惣助丸君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家と他の国家国民との間の投資紛争解決  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用  における国家活動を律する原則に関する条約の  締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国家と他の国家国民との間の投資紛争解決に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約に関しての資料を要求いたしまして、詳しく資料をいただきまして大体わかりましたので、簡単に質問をしたいと思います。  この条約の中に、国と他の国の国民との間の投資紛争が起きた場合には、紛争センター付託するかいなかは紛争当事者意思にゆだねられており、紛争当事国または紛争当事者たる民間人はこの条約に基づく調停または仲裁利用することが適当であると判断をした場合にのみこれを利用することになる、こういうふうに書いてあるわけでありますが、そうなりますと、実際にセンターにゆだねることに同意するだろうかどうかというようなことがちょっと心配になります。自分が不利だと思えば、それに同意をしない、そうすればこの条約の適用がされない、こういうことになると、条約ができましてもあまり効果がないのじゃないかというようなことが考えられますけれども、この点はどうなっておるでしょうか。
  4. 高島益郎

    高島説明員 お答えいたします。  この条約が発効いたしましたのは昨年の十月でございまして、実はまだこのセンター紛争付託されたケースがございませんので、いまお話しのような問題につきましては、これからの実績が非常にものをいうことになろうかと思います。その実績に基づきまして各国がこのセンターに信頼を寄せ、そしてこれを活用していくということになろうかと思います。したがって、現在の段階で、はたしてこのセンターが非常に活発に活用され、その結果、投資紛争が防がれるかどうかという点につきましては、正直に申しまして何とも申しようがございません。これからの各国活用いかんということに主としてかかっていると、私はそのように考えます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま正直に答弁されたのですけれども、そしてまたこれに付託されたのがないからどういうふうになるかわからないということですが、こういうものができた場合に、両方同意を要するというのですから、ある国家のほうで、そんなものはこのセンターにはその紛争を持っていきたくないといえばそれまでですし、今度はこっちのほうの投資をしたほうの民間会社のほうでやりたくないといえばそれっきりになってしまうわけで、お互いに話し合って、それじゃ仲裁を仰ごうじゃないか、それじゃ調停を仰ごうじゃないかというようなことが一体あり得るものかどうかということをたいへんに心配するのです。そういうふうな点はいま答弁されたのではちょっと納得できないのですが、その辺のことは十分に話し合った上でこういうものをおつくりになったのかどうか。たとえば国際司法裁判所の例を見ましても、一方で訴えようとしても他方の同意を必要とするわけです。したがって、たとえば竹島の問題なんかも、国際司法裁判所に訴えろという意見があっても、韓国で同意しなければ訴えられない。こういうふうな問題があるわけで、どうも両方同意しなければこの問題の解決に当たれない、仲裁調停もできないということになりますと、なかなか効果があがらないと思いますが、その辺のことはどういう見通しでこの条約をおつくりになったかを伺いたい。
  6. 高島益郎

    高島説明員 この投資紛争解決条約ができましたのは、一方でいわゆる後進国経済開発、このためには、国家国際機関によります経済協力のほかに、どうしても先進国によります民間投資が必要である。そういう必要性国際連合総会で強く認識されまして、国連事務総長がこの任務につきましてどういう方法があるかということをいろいろ検討した結果、経済社会理事会に一応の報告をしまして、経済社会理事会のほうからさらに世界銀行を通じましてこういう条約ができた次第でございます。  したがって、これはいままでいろいろな投資紛争がありまして、その紛争につきましてたとえば世界商業仲裁機関だとか、それから各国におきます商事仲裁機関だとか、あるいはその他の世界銀行総裁によります個人的な仲裁、そういったことによりましていろいろやってきたわけでございますけれども、やはりそれ以外にこういう組織的な制度があったほうが投資紛争自体未然に防ぐ方法にもなるし、また実際に紛争が起きた場合につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これからやってみなければわかりませんが、りっぱな調停官、りっぱな仲裁官を選ぶことによってその紛争事後にも解決し得るということによって、後進国民間投資が促進され、その結果経済開発が促進されるということを期待しているわけでございます。したがって、現在の段階でどうしてもその御納得がいかないという点につきましては、私どもも現在確信を持って、これがりっぱに投資紛争未然にも事後にも十分解決して後進国経済開発が進展するのだということは申し上げられませんけれども、いままでなかった制度を新設して、これによって後進国経済開発を期待しようという国際連合及び世界銀行の発意に基づくものでございますので、私どもそういう観点から作業をしておる次第でございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのお話を聞いておりますと、今後の効果に待とうということのようであります。  それから、これができましたいきさつは、いま国連総会あるいは国連経済社会理事会でこういうふうなものをつくっていこうというふうになったという御説明を聞いたのですけれども、そのほかまだ、世界銀行総会で、世界銀行理事会に対して、投資紛争条約作成して加盟国に提案することを要請するというような決議が採択されたということも聞いているのです。その決議内容経緯について説明をしていただきたいと思います。
  8. 高島益郎

    高島説明員 先ほど申し上げましたとおり、国連事務総長から、いろいろこういう後進国経済開発に関する対策を研究した結果、経済社会理事会を通じ世界銀行にこの問題が持っていかれた。一九六四年に世銀国際復興開発銀行東京総会というものが開かれまして、その総会でそのような国際連合の委託を受けました決議が採択されました。  その決議内容といたしましては、世銀理事会が、国家と他の国家国民との間の投資紛争を任意に仲裁または調停により解決するための機関と手続を定める条約作成に当たる。第二番目に、その条約作成にあたっては、世銀加盟国政府の見解を考慮して、できる限り多くの国によって受諾きるべきものをつくることに留意する。三番目に、理事会は、条約のテキストに理事会が適当と認める勧告を付して加盟国に提出する。大体主としましてこの三点からなります決議が採択されております。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま時間がありませんから、いま急にとは申しませんが、いまの決議内容あとで提出していただきたいと思います。  そこで、世銀が非常にタッチしているという問題について私はあとから質問をしたいと思いますが、説明書を読んでみますと、署名をした国の色分けは、先進工業国が十三、低開発国が三十七、共産圏諸国がなしというふうになっております。この条約は、もともと国際的な債権国アメリカが強い要請をして発足した構想であるというふうに私どもは聞いているわけでございますから、そういうふうないきさつから見まして、今後とも低開発国からの反発がある程度予想されるのではなかろうか、こういうことをたいへん懸念をするわけでございます。この共産圏諸国が参加しない理由と、それからもう一つは低開発国反響と申しますか、こういうものに対する反響、この二つについてお伺いしたいと思います。
  10. 高島益郎

    高島説明員 共産圏諸国が参加しない理由は、実は一九六〇年に国連事務総長各国に、このような組織をつくることにつきましての意見を聞いたことがございます。その際のソ連回答の中で、国家と他の国家国民投資に関する紛争につきましては、その国家裁判所でもっぱら管轄すべき事項である。それ以外の国際的な機関仲裁するのは適当でない。そういう理由でそのような制度は必要がないと認めるというような趣旨の回答がございました。もともと経済的な制度について違った体制をとっているソ連圏諸国でございますので、そういう観点からこの条約に対しましては、これは否定的な態度をとっております。ただしユーゴスラビアは、現在この条約署名をし、かつ批准しております。  それから後進国一般でございますけれどもアジア、われわれの特に関心の強いアジアにつきましては、現在批准をしておりますのは、マレーシア、パキスタン、大韓民国、この三カ国でございます。そのほかにオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールが加盟準備を進めているというふうに承っております。そのほか署名した国は、アフガニスタン、中華民国、それからネパール、日本国でございます。  それから次のアフリカ諸国につきましては非常に熱心でございまして、現在この条約批准国大半は、後進国大半アフリカ諸国で占めておる状況でございます。  それから次に、やはり後進国地域といたしまして中南米でございますが、中南米につきましては、十九世紀以来、アルゼンチンの国際法学者カルボという人がおりまして、このカルボ条項というものがございます。これは契約に基づく債務につきまして、国家と他の国民との間に紛争が起きた場合に、その国民の属する国は外交的保護を与えないということを約束せしめるような条項を常に含ましめるという慣習がありまして、十九世紀以来そういう観点から、本件のような条約が予想しております投資紛争につきましても、これは当然その国家裁判所が管轄すべき問題であって、国際的な仲裁あるいは調停の場に持っていく問題ではない。ちょうどソ連と同じような態度をとっておりまして、そういう観点から実は現在のところまだ、ジャマイカ、トリニダード・トバゴ、純然たるラテンアメリカの国ではございませんが、この二カ国しか批准しておりません。あとの国は全部態度を留保しているということでございます。  その他中近東につきましては、純然たる中近東と言えるかどうか存じませんが、チュニジアそれからモロッコの両国が批准しておりまして、サウジアラビアがいま批准準備をしているというふうに承っております。  後進国全体の反響はそういうことになっております。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 批准をするなり署名をしても、反響がいいから必ずしも署名をするとか批准をするということはないと思います。やはりそれに対する批判があっても一応条約批准をするとか、そういう国もあると思います。なぜかと申しますと、世銀ができたときにも、中立、公平な国際的な投資機関であるというふうにいわれてきたのですけれども、実際にはアメリカ投票権が約三〇%くらいを占めているのじゃないか。そういうふうな形をとっておりますので、何かそれに対して帝国主義的な資本の輸出であるという考え方、そういうような世銀が背景となってできたこの投資紛争解決条約というものであるために、何か新植民地主義の実行をたやすくせしめるのじゃないかというような批判も、あちこちにあるというようなことを私は聞いておるわけです。たとえば、なぜ世銀にそんなにおんぶしなければならないのだろうか、中立的な機関であると思われる世銀は、やはりアメリカが非常に投票権を持っている一大債権国であるということになりますと、それによって支配される面が非常に多いのじゃないか、こういうことを心配する空気を私は聞いたことがあるわけなんでございますけれども、この世銀がこういう条約だとかあるいはこういう機関になぜ深くタッチをするのだろうかということを、ちょっと疑問に思わざるを得ないのです。全く独立機関にしてもいいのじゃないかしらと思うのですけれども、この点はどういうふうに考えられますか。
  12. 高島益郎

    高島説明員 先ほど設立経緯につきましてお話しいたしましたとおり、これは世銀総裁がいままで若干のケースにつきまして仲裁を頼まれまして、それを解決したというような例もございますし、世銀のこういう国際的な投資に関します知識経験というものを生かすのが便利だろうというような観点から、国連経済社会理事会のほうから特にそういう要請もございまして、つくった次第でございます。  なおまた、このセンター自身を、世銀と全然独立に、また別な場所に設置するということの必要性につきましても、もちろんそういう意見もあったわけでございますが、これは常時大きな設備を必要とする機関でもございませんし、そのセンターには、ただ各国から提出されました仲裁人あるいは調停人の名簿を備えつけておいて、いつでも調停仲裁付託に応じ得るようなそういう体制を整えておくことが必要であって、何も大きな設備を必ずしも必要としないというようなことから、やはり従来の世銀知識経験を生かす、それから世銀設備を使ったほうが便利だという、要は便宜主義立場から、世銀と同じ場所センターを特に設けたというふうに理解しております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 やはり効果あらしめるには、世銀というようなところに置かないで、独立機関として置いたほうが、疑われる面も少ないのではないかということを私どもは考えます。ことに、この条約の五条でしたか、世銀総裁職務上当然だということで、理事会議長になるというようなことが書いてありますね。そうしますと、なお非常に密接な関係を持つんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、こういう点は議論対象にならなかったのでしょうか。これだけたくさんの国が加盟をしておりながら、こういうものをつくる場合に、そんなに議論対象にならなかったかどうかを伺いたい。
  14. 高島益郎

    高島説明員 先生の御指摘のとおり、その問題が全然議論にならなかったというわけではございません。ただしかし、職務上当然にという、このエクスオフィシオというのは、当然職務を持っているゆえをもってというふうな意味なんでございまして、その人自身の持つ個人的な能力とかなんとかいうことは関係なしに、その職務に伴って当然にというような意味にわれわれは理解しております。そういうことで、われわれは、これは大多数の国がやはり世銀のそういうアドバイスによったほうが何かと便利であるということから、そうなったというふうに理解しております。  なお、世銀との非常に密接な関係という点につきましては御指摘のとおりでございますけれども形式的な理屈でございますが、やはり当事者はあくまでも当事者意思によって、この紛争解決機関付託するかどうかということをきめる次第でございますから、その点につきましては、世銀は一切タッチしないわけである。また一たん紛争付託された場合には、世銀としましては何ら関係のないものでございまして、その紛争付託に伴う一切の費用も当事者がみずから払う、利用料金につきましては全部当事者が払うたてまえになっております。そういう観点からも、世銀と各当事者との関係につきましても、何ら疑わしい点は私はないと考えております。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 高島さんはこの条約を通してもらいたい立場だから、そんな疑わしい点はないというふうにおっしゃいますけれども、私どもが読みましたときに、なぜ条約でわざわざ世銀総裁議長となるんだというようなことをうたわなければならなかったかということを、たいへんに疑問に思うわけです。この条文をつくるにあたっては、説明書によりますと、一九六四年の十一月二十三日から十二月十一日まで、法律専門家会議が開催されて、そこでもってこの条文がつくられたんだということが説明されてあるのですけれども、この法律専門家会議というのは、この条文をつくるだけの任務だったのですか、それともまだほかにも何か任務があったのか、それから日本からは一体どういうふうな人が出ていったのか、この点を参考までに伺いたい。
  16. 高島益郎

    高島説明員 この法律専門家委員会は、通常条約案作成の場合ですと、当然外交会議という形式をとりまして、各国政府代表よりなる代表会議を開いて、その会議の席上で条約案を採択するというのが通常形式でございます。しかし、この投資紛争解決条約につきましては、この前の段階でいろいろ各国意見を聞き、かつ地域的な会議を開きまして、その地域会議法律専門家を集めて作成し、最終的に理事会最終案つくりました。そのできました最終案を、ただいま先生の御指摘法律専門家委員会付託いたしました。もちろんわがほうからも在米大使館書記官の一人が参加いたしております。そういう結果、この委員会の審議の経過といたしましては、もっぱら条約草案内容につきまして、各条につきましていろいろな意見の交換が行なわれ、若干の修正があったというふうに伺っております。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 専門家会議日本から出席したのは事務官ですか。法律家でなくて事務官ですか。どういう方が出ていらしたのですか。ここには法律専門家会議とありますね。ほかに任務はあるのですかと聞いたのです。このことだけのものか、それともほかのいろいろなことにタッチする法律家専門家かどうかということです。
  18. 高島益郎

    高島説明員 この条約草案につきまして最終的に各国意見を調整するための法律専門家委員会ということでございます。わがほうから出ました人自身は、法律家であったわけではございません。在米大使館に働いております書記官でございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約を最終的にいろいろと審議してまとめていくには、いずれ法律家専門家会議みたいなものを開くのでしょう。これだけ特にやったのですか。この条約だけやったのですか。一応やはり専門家がいろいろと集まって、そして法律的な扱いをするのじゃないですか、法律的な用語だとかいろいろあるので……。この条約だけか、それとも法律家専門家会議を開いたのですか、この辺のことはどうなっているのでしょうか。
  20. 高島益郎

    高島説明員 先ほど申しましたとおり、普通の国際条約作成いたします場合は、法律専門家だけではなしに、非常に政治的な観点からもいろいろ討議され、その結果採択されるという意味での外交会議——普通外交会議と申しております。そういうのが開かれるのが通例でございます。ただこの条約の場合には、この前の段階でいろいろ各国意見を書面をもって聞いたり、地域的に会合を開いて議論したりした結果、世銀理事会がそれをまとめて、そのまとめたものにつきまして、最終的には法律的な観点からだけ取り上げまして、最終的な調整をいたしたというふうに聞いております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 各国からのいろいろな議論があったり、世銀からの提案があったりして、この条約の場合には、特にまとめるのに法律家が当たったのだというふうにいま説明があったわけでございます。そういうふうな方が出られたならば、どういう方がお出になったのか知りませんが、やはり先ほど私が申し上げたように、世銀総裁議長になるというようなことに対して何らかの問題が起きるんじゃないか。いろいろ世銀に密接に結びつき過ぎて、そしてかえって痛くもない腹を探られるような場面も出てくるのじゃないかというようなことぐらい言われてもいいんじゃないかということを考えたものですから、そのことを伺ったわけです。日本としてはもう全然これでいいということで初めから賛成をしたわけですか。それとも幾らか何かの質問といいますか、意見といいますか、これじゃ少し世銀に結びつき過ぎているという意見があったのでしょうか、なかったのでしょうか、この点を伺いたい。
  22. 高島益郎

    高島説明員 この最終的な法律専門家委員会におきまして、わがほうの在米大使館書記官法律専門家の資格において参加したわけでございます。それにつきまして、ただいま先生の御指摘のとおり、だれが見ても世銀とあまりにも密接な関係を持つということについては当然議論が出まして、わがほうもその点につきましては指摘した経緯がでございます。しかし大勢といたしましては、先ほど私が申しましたとおり、実際に紛争付託する段階から全然世銀というものがタッチしなくなったということに留意いたしまして、そういう観点から大勢として賛成したということでございます。  この最終的な法律専門家委員会議論されたおもな事項はそのほかにもいろいろ、たとえば投資の定義の問題とか、それから紛争内容とか、いろいろそういう問題について意見がかわされたわけでございますけれども、ただいまの銀行センターとの関係につきましては、あまり深追いされなかったというふうに聞いております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大勢としてこういうふうなことで納得をしたということでございますけれども、やはり私はこういうふうな機関ができる場合には、どこの国からも疑われないような形でつくってほしいということを考えるものですから、この点を質問したわけです。  もう一点だけ伺いたいのですが、昔だったらこの条約にたいへん適用されるであろうと思われた事件があったと思います。というのは、スエズ運河の問題で、ちょうど海外投資にからむ国家民間会社との紛争としての事例に当たるのじゃないかと思いますが、一九五六年の七月に、エジプトナセル首相スエズ運河会社国有化宣言ということをしたわけでございますけれども、あの当時のエジプト措置主権国家として当然だというふうに言われて世論の支持を得てきたと私は思います。その国有化の将来がどうなっているのか、また国際法上このエジプト措置はどういうふうに解釈をされるか、この点を伺いたいと思います。
  24. 高島益郎

    高島説明員 御質問に十分答え得ないかもしれませんが、この当時の紛争といたしまして、もしこういう機関があったならば付託されただろうという一つケースといたしまして、スエズ運河国有化措置ということがあろうかと思います。これはスエズ運河はもちろん民間の会社であったのでございますけれども、これが接収いたされまして、接収されたことに伴ってアラブ連合政府が政府として民間会社に補償をするという段階になって、その補償の金額その他補償の方法につきましての争いが、このセンターがあれば当然付託されたかもしれないというふうに考えられます。いま現在、この世銀総裁の仲介で解決されたというふうになっておりますけれども、実はこの解決内容につきましては、私もどこからも報告されませんので知る方法はない次第でございます。ただ先生の御質問のようなアラブ連合政府によりますスエズ運河会社の接収は合法であるかどうかという問題につきましては、実は私この席でお答えする十分の資料がございませんので、お答えいたしかねる次第でございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはいま準備資料がないんでお答えできないということですけれども、これは非常に関心のあることでもでございますし、この条約にからまないにしても、やはり知っておきたいことでございますから、あとでまた資料として出しておいていただきたい、こういうことを要望して私の質問を終わります。
  26. 福田篤泰

    福田委員長 穗積七郎君。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 関連してちょっと提案者側の高島参事官に後学のためにお尋ねいたします。  いま戸叶委員の御質問は、私も抱いた疑点の中心の問題でございます。世銀がこういうことを提案して、後進国に対する民間投資を助長せしめようということであったのですが、その投資の元本果実を資本主義的な立場で保証するためには、これでは非常な抜け穴があって、先ほど御指摘のとおりだと思うのです。したがって、当初はやはり立案者の、特に先進国投資諸国はやはりもう少し確たる保証制度つくりたいという意図があったと思われるのです。それがなぜこういうふうなざる条約になったのか、審議交渉の経過をもう少し説明していただきたい。ということは、そういう提案はどういう案をもってなされたか。それに対してどういう国々がどういう理由で異議をさしはさんだか。そこらは今後の運営にちょっと関係いたしますから、参考のために伺っておきたいと思います。
  28. 高島益郎

    高島説明員 後進国経済開発のために先進国民間投資が非常に必要であることは、どなたも御異存がないと思います。その観点から、後進国の側といたしましては、たとえば税制上の優遇措置を講ずるとか、その他いろいろ先進国からきます投資を誘致するための措置をとっておるのが実情でございます。また、先進国といたしましては、これに対しまして、できるだけの安定感を与えることは当然の要求であろうかと思います。そういう観点から、そのための一つ方法といたしまして、先進国にとってもまた後進国にとっても民間の資本が流れていくための促進剤として一つの手段としてこの条約ができたというふうに理解しております。それ以外にも、もちろん先生の御指摘のとおり、外国法人の資産を目的とする条約というような構想もあるわけであります、がまだ現在固まっておらない次第であります。こういうセンターつくりまして、投資紛争解決するために、投資紛争内容について、後進国側といたしましては、できるだけその範囲を限定したい。範囲が広いと、非常に不利に取り扱われることがあるという観点から、審議の過程におきまして、後進国一般の傾向といたしましては、できるだけ紛争の範囲を限定したいという要求が強ようございました。また中身としては全然こういうものはこういう解決方法しか受けつけられない、先ほど申しましたとおり、南米諸国共産圏諸国はそうでございますけれども、当然国家裁判所で専管すべき事項であるという立場をとっておった次第であります。また、先進国は一方で反対になるたけ紛争の範囲を広くして、自己の進出していきます投資について安定をはかるという態度をとった経緯もございまして、結局両方の妥協案として今回御提出したような条約に落ちついたというのが経緯でございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 調停または仲裁の決定にゆだねるのに両者の合意が前提になっておりますね。両者の合意を要せずして調停または仲裁裁定にかけるという案は先進国から出されたのでしょうか。最初に出ておりませんか。
  30. 高島益郎

    高島説明員 先生の御心配のような案が実は最初あったそうでございます。しかし、これは最終的には落とされました。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、先ほど戸叶委員質問のように、この制度ができることによって、投資国側、資本家側にとって、どういう安定感が特に生じたでしょうか。相手の意思を条件としておるわけですから、あってなきがごときこの制度が、一体投資促進に、これをつくったために得になるという制度がこれで打ち立てられていないと思うんですね。そうなれば、投資側のその国に対する政治情勢、経済情勢に対する自己判断によってやる。もしそれが失敗すれば、自分の見込み違いであった。一般の投資の場合と同じですね。それと同じことではないでしょうか。どういうメリットがあるか。投資側にとってこの制度ができることによって実質はないような気がするのですが、どういう効果を生じましょうか。
  32. 高島益郎

    高島説明員 これは先ほど戸叶先生にお答えしましたとおり、実はまだ昨年十月にできましたばかりで、全然活用されておらないのが実情でございます。したがって、これは第一義的にこれが活用されて、活用された結果非常にいい成果を生んだという実例が積み重なっていって、それに対する信頼がもとになってだんだん投資が促進されるというふうに理解されますが、私ども一つの活用の方法といたしましては、たとえば民間の投資がある個人に行なわれます場合、その契約の内容の中に事前に何らかの紛争が起きた場合には、この投資紛争センター付託するという合意をあらかじめすれば、両方の国が当事国であった場合には、そういうことも可能であろうかと考えます。これはしかしそのような契約をするにあたっては、当然このセンターにおきます実績がものを言うというふうに考えるわけであります。また元に返ってきますけれども実績いかんによって、そういうことも可能だろうかと考えます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると網を張っておいて、入るか入らないか、ケース・バイ・ケースで相手の合意を事前に取りつけていくということですね。制度そのものとしてはない。相手の合意を事前に取りつけておくということが、この制度利用する可能性がそこに残されておるということがメリットである、こういうことでございますね。
  34. 高島益郎

    高島説明員 この条約の中に規定してございますとおり、この条約の締約国になりますと、それぞれ自分の国の指定します調停または仲裁人センターのリストに掲げることができるわけであります。したがって、実際にその国が合意して紛争付託する場合には、その中から自分の頼む調停人なり、あるいは仲裁人によって構成されます仲裁裁判所あるいは調停委員会が編成されるということになりますので、そういう観点からも後進国にとって一つの安心感といいますか、そういうものがあろうかと思います。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 それから次には世銀が非常に熱心になったようですが、今後の運営において世銀とこの条約との関連はどういうことになりますか。世銀との関係はありませんね。提案者にすぎないわけでしょう。
  36. 高島益郎

    高島説明員 世銀との関係につきましては、先ほど触れましたとおり、条約作成経緯からいって、非常に密接な関係がございます。先ほど戸叶先生の御指摘のとおり、世銀総裁職務上この理事会議長を兼ねることになっております。またセンターの事務所が世銀の、同じ場所にあるわけです。なお暫定的でございますけれども、まださっぱり活用されておりません現状から、利用料金をとってそれによって維持していくということがでまません関係上、暫定的期間につきまして世銀が予算を見るということになっております。その点だけです。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 この条約に参加してない国に投資をしようとする場合に、投資の条件としてこの条約に参加することを勧奨する可能性はお考えになっていますか。すなわち、投資の条件として、未加盟国に対して投資するときに、資投ずるということをてこにして、この際この条約加盟してもらいたい、こういう運営の方法については日本側としては考えておりますか。
  38. 高島益郎

    高島説明員 現在政府の方針といたしまして、日本として後進国に対する民間投資促進のために、その後進国がもし条約に入ってなかった場合に、条約に入るように勧奨するというふうなことは考えておりません。ただ、国際問題といたしまして、もし将来この条約が活用されて、その結果その国に対する投資が非常に促進されるという事態になれば、結果といたしまして、未加盟国はどんどん加入してくるというふうに考えております。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つお尋ねしたいと思いますのは、全部の例でなくていいのですけれども、いままでの例で、国家間の投資——借款の場合もありましょうが、投資が行なわれる、それから民間から相手の国家事業に対して行なわれる、それから民間から相手の民間に対して行なわれる、そういういろいろな場合がいままでに考えられるわけですが、そのときに政権が革命等でかわりまして、たとえば国有化、あるいは広く言って公有化が行なわれる。すなわち反資本主義的な政策が打ち立てられたときに、その紛争をどういうふうに解決されたか。先ほどスエズのお話がありましたが、その他の前例のもし外務省で資料がありましたら、この際アウトラインでも御説明をいただきたいのです。
  40. 野村豊

    ○野村説明員 一つだけ例といたしまして、アラブ連合、かつてエジプトと言っておりました時代でございますが、エジプトに進出しておりましたわが国の東京銀行のアレキサンドリア支店が、一九六一年にエジプト国有化政策によりまして、向こうのバンク・オブ・ポートサイドという国営銀行に営業権を譲渡されたことがございます。この場合には、譲渡の補償の問題につきましていろいろ問題がございまして、外交ルートでもいろいろ話をつけるとともに、東銀側も先方政府といろいろ折衝いたしました結果、この問題は一九六二年に至りまして、その補償金の一部を日本に送るとか、またはその一部は日本エジプト綿の買い付けに充てるというようなかっこうで解決した例がございます。  そのほか、ビルマへ進出しておりましたわが国の企業が若干接収された例がございますけれども、これは接収の補償金の問題等につきまして、まだ外交レベルで話しておる状況でございます。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 そのビルマの例は、当事者は民間同士ですか。相手は国でございますか。
  42. 野村豊

    ○野村説明員 ビルマの場合には、一つは相手は民間でございまして、もう一つの例は、当初向こうは民間会社でございましたけれども、その民間会社が一種の公社というふうに編成されたかっこうのものでございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 ここで一般的に外務省の権利継承の法理論を伺っておきたいのです。それは、われわれは社会主義を主張しておるわけですから、わが国におきましても、アメリカ投資に対して有償無償をもって国有化の接収をする場合が生じないとは限らない。それから、資本主義制度が続く場合には、相手国政府が革命政権ができて、有償無償による接収が行なわれる。あるいはまた、民間から民間への投資の場合でも、何らかの直接または間接の補償責任を前の国家が持っておった場合に、それが革命政権で政権が交代したという場合、その前政府の権利義務が革命政権に継承されるか。この場合は義務ですけれども、それが継承されるかどうか。そういういろいろなバラエティのケースがあると思うのですが、それらについて、外務省は法の解釈上はどういうふうにお考えになっておられるでしょうか。革命政権は前政府の権利義務を継承する義務が対外的にあると御解釈になりますか。革命政権は前の保守政府の権利義務を継承することはない、免責されるものであるというふうに御理解になっておられるでしょうか。先ほどは事実解決の例を伺ったのですが、法律上の立場から見て、それはどういう態度で臨み、また今後臨まれるつもりであるか、伺っておきたいと思います。それは、国家間の場合と、それから相手が民間であるけれども、それに間接または直接の補償責任を国家が持っておる場合と、それから純民間側同士の場合と、三つの例に分けて、外務省のお考え方を、一般的かつ原則的なものとしてでけっこうですから、伺っておきたいと思います。
  44. 高島益郎

    高島説明員 まず一般的問題といたしましては、日本と外国との関係におきまして、その外国で革命政権ができたということだけの理由によって、日本とその国との間に結ばれた諸種の条約に基づきます権利義務関係が当然に変更するということはないと思います。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 法の効力は国際法上は継続しますね。
  46. 高島益郎

    高島説明員 当然に権利義務は継承されるというふうに解釈されます。その点につきましては、特に国家間の基本的関係を設定いたします通商航海条約等では、そういうことを保障している規定がはっきりございまして、無償でもって相手国の財産接収等をしてはならないというふうな趣旨の規定がたくさんございます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 それから、相手が民間であって、こちらも民間であって、国家が保障しておる場合も同様ですね。いかがですか。これは通商航海条約の範囲外のことになりますね。なりませんか。
  48. 高島益郎

    高島説明員 通商航海条約等では、国民の財産につきましてもそういう保護のもとにございますので、当然無償で接収等をすることはできないというふうに考えております。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、国家の責任が残るということですね。相手国の国家、すなわち交代政権に責任が残る、そういう解釈ですね。民間から民間の場合はどうですか。これに対しては、ありませんね。
  50. 高島益郎

    高島説明員 個人と個人との関係につきましては、もし財産が外国にあった場合には、その財産の所在する国の法系に服することになろうかと思います。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、この条約はそれを保護する役割りは果たし得ないと解釈していいわけですね。
  52. 高島益郎

    高島説明員 この条約は、国家と他の国家国民との間の関係での紛争解決する、したがって、民間同士の、たとえばジョイントベンチャーとか民間同士の投資関係でございましても、その投資事業が相手国によって接収されるということになった場合に、その接収の段階で当然補償すべきものも補償しないということになりますと、これは投資に関する法律紛争ということで、その補償額の問題、それから補償の方法の問題について、当然このセンターの管轄範囲に入ってくるというふうに考えております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 それで次にお尋ねいたしますが、その相手国の政府が相手国の政府をかいらい政権だという解釈をした場合、それによって免責をされる可能性はありますか。
  54. 高島益郎

    高島説明員 御質問意味がよくわかりませんですが、かいらい政権と申しますのは、法律的な概念でなくて、政治的な概念でありますから、ちょっとお答えいたしかねます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 つまりかいらい政権というのは政治的な意味です。ですから、それは法の権利義務関係に入ってこないと解釈するのが私は法理上は正しいことであると思うのですが、そういう抗弁が使われたときにはどういうことになるかということを念のために伺ったわけです。
  56. 高島益郎

    高島説明員 法律的にはかいらい政権というのは意味をなきないように私考えますので、かいらい政権であろうが何であろうが、法律関係はやはり別個のものだと考えます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 この際わが国に関係のあることで具体的に一つお尋ねしておきたいのです。戦時中に、御承知のように昭和六年にかいらい政権と称せられる満州政府ができました。しかしこれはわがほうの解釈としてはかいらい政権ではなくて、当然国家間すなわち政府間の、満州国と日本国との間の外交関係があったものと解釈しておったわけですね。そこで、このごろ新聞の社会面でちょっと有名になりました善隣学生会館というのが小石川にございます。これは旧満州国が自国の在日留学生のためにつくった会館でございます。これは戦後GHQによって接収をされました。数年を経まして、その管理権が日本政府に移譲されたわけです。その移譲を受けた日本政府は、その財産を寄付行為の定款をつくりまして財団法人にしたわけです。日本側の解釈は、このGHQの行為が革命的な行為、日本にとっても革命的、先方にとっても革命的な行為であったわけですが、それによって善隣会館の所有権は日本政府に移ったものである、こういう解釈を一部の人がしたわけです。私はこれは誤りだと思うのです。革命によってつぶれましたけれども、旧満州国の権限並びに満州国人民の利益は今日の中華人民共和国に継承されておる。そうなりますと、GHQが日本政府に移譲いたしましたものは所有権ではなくて管理権にすぎない、新たな権利の主体者である中華人民共和国とわが国、日本国とは国交が回復されておりませんから、その所有権問題がまだ外交上の議題にはなっていない。ところが、国交回復の場合にはこの所有権はいずれに帰属するものであるかということが当然議題になるべき性質のものであります。するかしないかは知りませんが、法律的にはそういうことです。そうなると、いままで日本側が管理権は持っておりましたが、所有権は持っていないという解釈で進むべきだと思うのです。これは革命の一種ですね。所有権の移譲の一種でございます。しかもこれは無償で行なわれております。私は当然GHQが無償で接収をし、そうしてそれを日本政府に移譲し、日本政府が善隣学生会館財団法人に移譲いたしましたものは管理権にすぎないのであって、所有権ではない。したがって、その権限を継承しております中華人民共和国と国交回復の場合には、この財産権すなわち所有権の所在の問題については話し合いをしなければならないし、当然中華人民共和国の所有権は継承され、残っておるものである、こう解釈すべきだと私は考えております。したがって、先ほど申しましたように、一般的に見まして、革命によってまたは革命的なことによって政権の交代、移譲がありました場合にも、権限並びに義務は新政府に継承されるものである、これは当然な法理だと私は考えます。そうなりますと、いまの善隣学雄会館の所有権は日本側にはない、管理権のみがある、こう解釈すべきものであると思いますが、この際政務次、官からでもけっこうですし、高島参事官からでもけっこうですが……。
  58. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 ただいまの件につきましては、外務省側も初めて承った件でございますので、この措置につきましては十分検討させていただきたいと考えております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 いや、私は一般的に言っておるのですよ。もしGHQが所有権を接収したものだとすれば、これは国際法違反ですね、ハーグの協定に反するものです、越権行為ですよ、われわれはそういう法理論をもって臨んできた。在朝鮮の日本の財産についてもわれわれはそのことを、例の日韓交渉における請求権問題のときにはその法理で進むべきである——山田さん、ちょっと失礼ですが、そのことについてでしょうか、あなたは議員ですよ——そう私どもは主張してまいりました。それで善隣学生会館の問題についても、もし所有権をGHQが接収した、それでかってに恣意的に日本政府にこれを無償で移譲したということになれば、明らかに国際法上の違反である。先ほど私とあなたの間で討論し一致いたしました、革命で政権の交代があっても、前政府の権利義務は新政権に当然継承きるべきものである、こちらが所有権を持とうと相手が持っておろうと、そういうことは問うところではありません、非常に明快な事理だと思うのですね。研究する余地はないと思います。いまの法理論からいけば当然でしょう、法理論は正しいのですから。日本の利己的な利益のために主張しておることではない。これからわれわれがこういう場面に到達いたしましたときに、わがほうの権利、財産権を主張するという原則を持たずして、この協定が結ばれるはずはない。そういう考えがお互にあるから、特に革命とか戦争によって政権交代が行なわれたときに、不当に財産権が接収される、あるいはその果実まで接収されることを防ぐためのこの協定でしょう。私は先ほど高島参事官のおっしゃいました、政権交代に伴う新政府の権利義務関係の継承は、解釈は正しいものであると私も信じております。だから、何も調査なさる必要も何もないのです。善隣学生会館は、満州国のお金によってつくったものであり、所有権は満州国にあったのです。
  60. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 ただいま穂積先生の御所論はまさに法理論でございまして、現在GHQが接収をいたしまして、それを日本に管理をまかしたという、その場の措置でございますが、これは私は、単にこれが革命による政権がかわった、はたしてそういう事実があるかどうか、これはもう少し検討する余地があるのではないかと思うのでございますが、革命と言えるかどうか、それから同時にまた、これは現実の問題でございますので、こうした問題につきましては、ひとつその当時の文書、接収に関する文書とかそういうようなものもございますので、そういう点も少し検討させていただきました上で、ひとつ措置させていただくのが妥当ではないかと考えておるわけであります。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 私はあなたの名前を出した、あなたの名前を言ってから失敗したと思った。あなたはそう言うだろうと思っていた。私は法理論を聞いておるのですから、条約をやる以上は万国に通ずる法理論を持たなければ条約は結べません。だから、日本のために有益であるか不利益であるかをきめる。判断するわけです。判断の基準は、万国に通ずる法理論でなければならない、財産権その他に対する権利義務、国際的な権利義務関係の帰属についての。それではこの条約はそんなあいまいなことなら、その御回答を待ってからにいたしましょう、基本に関することですから。  そこで、ちょっと申し上げますよ。善隣学生会館は、もし不当にGHQが財産権を接収したのだ、財産権並びに管理権を日本政府に委譲したのだという事実が、あとで文書その他で、あなたのいうように調べてあれば、それは日本のミステークではないのです。GHQのミステークだ。GHQの国際法違反です。違法行為です。だから何も逃げる必要はないのですよ。少なくとも国際的に見て、この所有権は日本にはないと思うのです。日本の政府または民間の法人にもないと思うのです。そうでなければ、こんなものは何のために、何といいますか、投資保証のための条約を結ぶということがあり得るでしょうか。その事実に対してのあとの政治折衝は、これは政務次官、どうぞあとでやっていただくことにして、いまは法理論、万国に通ずる法理論、すべてのケースに通ずる、所有権問題に対する、あるいは財産権に対する権利義務関係条約を討議しておるのですから、その立場で、政治的責任はあとにしてですね。解釈として事務当局から伺ってけっこうなんです。
  62. 高島益郎

    高島説明員 お尋ねの善隣学生会館につきまして、具体的にここでいま御答弁いたしますのは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。  一般論といたしまして、先ほど私が申しましたとおり、革命政権が私有財産を没収するという場合に、その没収に伴って当然正当な補償をしなければならないというのは、これは当然のことでありまして、私どもいかなる場合につきましても、そういうのは国際法上のケースである、そういう原則をはっきり通商航海条約等で確保するのが現在の政府の立場である。それ以上に具体的なケースにつきまして、御答弁するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 しかし、これは先ほどエジプトまたはビルマにおける権利義務関係が、この条約に関連するような事態が起きて、現にもう外務省は処理しておられるわけです。それでその条約を、いまは投資国の意識で財産権の保障のための条約を、これは正しいものであり、国際的に見て有益なものであると考えて、国会に提案をされて通過を期待されておるのでございます。そう説明をきれておるのですね。そうしてどういう考えでこういう条約をお考えになっておられるか、また条約はいききか抜け穴だらけで効果はないようであるけれども、基本的に、この条約によろうとよるまいと、財産権に関する国際的な解釈、これについていままで審議してきたわけです。その中で先ほどのビルマ、エジプトの具体的な処理についても伺ったわけです。この問題についてだけ、なぜお答えができないのか、はなはだ私は了解に苦しまざるを得ないわけです。当然な法理論のABCじゃないでしょうか。
  64. 高島益郎

    高島説明員 実は私、この問題につきまして伺いましたのは、今回この話が初めてなものでございますので、このケースにつきまして、おそらく外務省等にも資料があろうかと思いますので、検討した上で、後日適当の機会に御返事をいたしたいと思います。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 本来を言えば、これはこの条約に関連のある初歩的な一次方程式ですよ。非常に明瞭だと思うのです。だから、それに対してはっきりした態度がなければ条約の審議は進めません。こういうことが国会の慣例になっておるし、すべきですけれども、信頼する高島参事官のことですから、条約の国会審議の前であろうと、あとであろうと、間違ったことは言われないと信頼をいたしまして、後日の答弁を期待いたします。そのかわり、正しい理論と信頼を裏切らないようにやってください。いいですね。外交は信頼関係が大事ですから……。  それからもう一つ。いまはこの条約を審議するときに、政府も議員の意識にも、まずわが国は投資側に回っておるわけですね。そういう意識で実は財産の安全保障の制度議論されているわけですが、ここで関連をいたしまして、この際ついでに伺っておきたいのは、七月以後、わが国はこれから被投資国になるわけです。投資国でもあるし、同時に、より先進国からは被投資国になるわけですね。そして最近はソニーをはじめとする、あらゆる投資が陸続として進められつつあるという状態、先進国の資本が本土上陸を始めたということがいわれておるのですが、それと並行しまして、わが国の経済に重要な影響を与えますのは、資本の投資の自由化の問題ではなくて、それ以前に先行しております貿易の自由化がございます。商品の輸出入の自由化の問題があるわけです。  そこで関連でお尋ねいたしますのは、ケネディラウンド以後の今後の資本、貿易の自由化の中で一番やはり関心の持たれるのは、後進国からわが国に対する特恵関税待遇の問題でございましょう。そうして国内から見ましても、政府自民党の良識派の人も指摘しているように、中小企業と農業との格差の問題が、これはどういう思想、どういう政策で対処するかは別といたしまして、わが国の一番大事な経済問題、社会問題、政治問題になりつつある。そういたしますと、わが国に対する資本の投資の自由化とともに、後進国に対する特恵関税待遇の問題は、わが国の中小企業、農業政策にとって根本的な問題なんです。この場合は、投資国としての優越感を持って財産を保証するよりは、むしろわれわれは、投資を受ける、輸入を受けるという立場で、特に中小企業、農業、経済全般にわたって、不当にあらざる合理的な自己防衛対策というものがここで必要になってくる。経済の中心の重化学工業の輸出拡大をはかるためには、中小企業、すなわち軽工業並びに農業産品の輸入拡大のための措置が必要になってくるわけです。ここに議題になっております条約は、投資国としての意識で実はやっておりますが、これはすべて利己的にあらざる国益に合致する条約でなければならないわけでしょう。そうなりますと、逆にいまの貿易並びに資本の自由化に伴って特に問題になりますのは、特恵関税の問題でございます。これに対して、窓口になる外務省経済官僚の俊秀の皆さんはどういうお考えを持っておるか、この際関連をしてお尋ねをしておきたいと思います。
  66. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いま先生のお話のございましたように、特恵関税の問題は、日本国内へ輸入するという問題と、日本の産品を第三国へ輸出する、そこで他国産品との競合ということで、検討すべき面が二つございます。非常に基本的かつ重要な問題でございますので、通産省部内におきましても慎重に検討をいたしておりまして、いま結論を得ておりません。関係各省の間でも慎重に検討をいたしております。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 敬意を表しながらちょっと皮肉を申しましたのは、通産省は中小企業をかかえております。大企業の立場にも立てば、中小企業の立場にも立ってものを考えなければならないし、またそういう習性があるわけです。農林省は農業経済の立場に立ってものを考える習性があります。農林省はややともすると農本主義で、国家権力による保護政策をもって農業を守っていこうという、いささか古い、安易な考えと思われるほど農業に対して関心を持っておるわけです。ところが外務省は、その点ちょっと無責任なんです。あなた個人に言うわけではないから、あなたは聞いておいてもらいたいのですが、特に三木外務大臣は、経済外交政策を盛んに振り回されておりまして、アメリカの資本と技術を利用して——アメリカだけではありませんが、そして後進国に経済進出もやっていこう、こういう考え方でアジア太平洋経済圏構想というものを打ち出しておられるわけですが、それを打ち出されなくても、この資本、貿易の自由化に伴いまして、これはどうせ外務省が窓口になるのです。外務省は中小企業も農業も考えないではないが、通産や農林のようにわが身として考えていない。したがって、ややともいたしますと、過渡的なプロセス、たとえば重化学工業にウエートが上がってきていることはわかっておりますが、日本経済全体がそういう方向にいかなければならぬことはわかっておりますが、問題は移行する。プロセスの問題です。経済や政治でも、革命のプロセスが一番問題なわけです、移行するプロセスが。そのプロセスについての実感が外務省にはないのです。したがって、そのより声の大きい重化学工業の輸出拡大の立場に立ってみると、この特恵関税問題は、ややともすると外務省は中小企業並びに農業に対する影響を見落として、そうして業者から見れば無責任な追随をされる危険がある、そういうことでありますから、実は外務省のお考えも伺いたかったのですが、あなたが通産の方とは思わなかった。あなたに聞いたわけではなく、外務省に実は聞きたかったのですが、もし政務次官、高島参事官に御所見、御決意があったら、この際伺っておきたい。
  68. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 私も中小企業関係につきましては、相当密接な関係を持っているものでございまして、そういう団体の会合には常に引っぱり出されまして、いま先生がおっしゃるようなことと同じような意見を常に聞かされているわけでございます。そこで特恵関税を与える場合におきましても、政府としましては、やはり先生のおっしゃるような外務省は大企業だけを考えて、中小企業はあまり考えないのだ、それから小農のことはあまり考えないのではないかというようないろいろお考えがあるかも存じませんが、やはりわれわれがこういうことを処理する上におきましては、もちろん通産省の通商局とかあるいは中小企業庁なんかの関係者と十分に密接な連絡が絶えずとっております。したがいまして、中小企業の保護のためにも十分そうしたことを考えながら処理をいたしておりますので、先生の御心配のように中小企業だけがしわ寄せになるようなことは、といって、さらに今度農業生産者に保護政策の色が非常に強くなるというようなこともやらずに、その辺を対外的に非常に心配しながら実はいろいろ処理しているわけでございます。先生の御心配になるようなことは絶対にないと考えております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは政務次官だから、自分の政治的立場を考えて、重化学工業にも中小企業にも農業にも、みんな立つようによろしくやるからという御演説は拝聴いたしまして、そのとおり実行されることを期待いたしますが、交渉の窓口はやはり事務当局の御意見が非常に反映するわけですから、この際、くどいようですけれども、外務省事務当局の俊才ども、どなたでもいいから、ひとつ決意とお気持ちがあったら表明しておいてください。
  70. 高島益郎

    高島説明員 ただいま政務次官のお答えのとおり私どもも考えております。これは私自身の立場から申しますと、仕事も分業でございまして、私は条約を担当いたしておりますが、あまり権威がないかもしれませんが、私個人としても全く同感でございます。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 これで終わります。
  72. 福田篤泰

    福田委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。
  73. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  74. 福田篤泰

    福田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  76. 福田篤泰

    福田委員長 次に、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約を審議するわけでありますが、この条約は、全体を見ますと、天体、宇宙の軍事利用を禁止しょうという人類生存のためのきわめて重要な内容を持った条約でありますが、書いてあるとおり原則でありまして、具体的にどういうふうに効力を発効していくかということについては、今後宇宙空間平和利用委員会で審議されていくことであろうと思うのであります。  そこで、まず第一に、この条約が生まれるようになったいきさつを見ますと、昨年の十二月でありますか、これが署名されて、各国がこれを批准する、こういう経過になったわけですが、その間約十年の歳月を要してこうした条約が生まれるということになったのでありまして、十年ということは、これを提案しておる数十カ国の間にやはり意見の食い違い、意見の不一致、いろいろなことがあっておくれてきたのではないかと思うわけであります。この条約の提案国の一国であり、また宇宙空間平和利用委員会委員を送っておるフランスがこれに署名をしていないというふうに聞いておるのですが、そういうことでございますか、承っておきたいと思います。
  78. 高島益郎

    高島説明員 この条約は、実は作成経緯がほかの国際条約と少し違っておりまして、先生の御指摘のとおり、一九五八年以来国連総会決議でもって宇宙空間平和利用委員会というものができまして、その平和利用委員会の下に法律委員会と技術小委員会という二つの小委員会ができまして、その法律委員会のほうでいろいろ宇宙空間に関します新しい法秩序をつくるという観点からの検討の結果がここに集大成された次第であります。この条約自体は、昨年の国連総会の末期に全会一致で採択されました。通常ですと、先ほどの条約と同じように、当然外交会議が開かれまして、その席上で採択されるというのが通常の例でありますが、これは国連自体が最初から取り上げて研究した条約でございますので、国連決議の形でこれを全加盟国に対して推奨するというかつこうで採択した次第であります。したがって、フランスも含めまして全加盟国がこれに賛成したという経緯がございます。ただし、御指摘のとおり、フランスはまだ国内的な手続を終わっておりませんので、現在の段階署名かつ批准しているというところまでは至っておりません。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 それはどういう理由でございますか。平和利用委員会にメンバーを送っておりながら、提案国になっていないという国はまだほかにあるわけですね。たとえばアラブ連合、インド、それからアルバニアですか、まあアルバニアは、ああいう国の事情、外交的な事情から提案国に入ってないということについては理解できないではないが、アラブ連合、インドがどうして提案国になっていないのか、その点もあわせて答弁を願いたいと思います。
  80. 高島益郎

    高島説明員 アラブ連合はこの国連総会決議の提案国に入っておりまして、署名もいたしておりますが、まだ批准はいたしておりません。
  81. 堂森芳夫

    堂森委員 では、フランスはどうなっているのですか、その見通しを……。
  82. 高島益郎

    高島説明員 フランスはこの条約の趣旨に全く賛成でございまして、何ら異存はないわけでございます。ただ私ども想像いたしますには一これはほんの想像でございますので、確信を持って申し上げることはできませんが、実はこの条約は核実験停止条約と同じような方式によりまして、世界のすべての国に開放してあるわけであります。したがって、たとえば北鮮あるいは中共、北越、東独、そういったいわゆる分裂国家にも自由に加盟し得るような方式をとっております。その関係で、核実験停止条約と同じように、米、英、ソ、この三カ国が寄託国となっておるわけであります。したがいまして、たとえば東ドイツの例で言いますと、ワシントンには寄託しないが、モスクワには寄託するというふうな便宜をはかっております。そういう関係で、実はイギリスはまだ米、ソに並ぶような宇宙国家ではないわけでありますけれども、たまたま核実験停止条約と同じような方式によったという観点から、イギリスがその寄託国になっておるわけであります。そういう関係で、これはわれわれの想像でございますけれども、フランスがそれに入っておらない。フランスはむしろ宇宙活動についてはイギリスよりも進んでおるわけでありますけれども、その寄託国に入っていないというふうな事情が、あるいはそういう態度をとらしめておる原因ではなかろうかというふうに想像しておるわけであります。
  83. 堂森芳夫

    堂森委員 わかりました。なるほど、私の思い違いでしたか。インドは提案国に入っていないのです、私いま見たのですが。
  84. 高島益郎

    高島説明員 インドが提案国に入っておらないとおっしゃいますこの理由は、私ども日本立場も全く同じなのでございますけれども宇宙空間につきましては完全に平和的にのみ利用すべきであって、軍事的に利用してはならないという原則を主張したわけでありますけれども、それが実はこの条約でごらんのとおり、完全には実現されておらない、なるほど月、天体につきましては軍事利用禁止は確実に規定されておりますけれども、それ以外の宇宙空間につきましては、必ずしもそういう点ははっきりしておらない、そういうふうなことに対します若干の不満から落ちたというふうに聞いております。
  85. 堂森芳夫

    堂森委員 これは、将来この国会にも批准を求めてくるであろうと予想されます核拡散防止条約あるいは今度の宇宙天体の軍事利用の禁止の条約に中華人民共和国が入るということ、それからフランスも核爆発をやっておる国ですから、こういうふうな国々が全部入ってくるということで、非常に大きな存在の価値があるといいますか、そういう条約になってくると思うのでありますが、これはいま私がここで議論しましてもどうにもならぬ問題でありますけれども、そういうことが一つの大きな問題であろうと思うわけであります。  そこで、二、三の点をお尋ねしておきたいと思います。  第一条及び第二条におきまして、宇宙天体は、これはいかなる国も平等の基礎に立って立ち入りが自由である、そしてこれが科学的な調査ということももちろん自由である、こういうわけで、天体、宇宙というものの平等性というものを主張しておるわけです。ところが、この宇宙空間というものと、領空というものがございますね、これとの関連というのはどういうことでございますか、この条約でいきますと。答弁を願います。
  86. 高島益郎

    高島説明員 実は宇宙空間と申しましても、どこから宇宙空間になるのかという点につきましては、従来から国連を中心にしましていろいろ議論されてきております。現在ジュネーブで会合しております国連宇宙空間平和利用委員会法律委員会でもって、国連決議に基づいて、宇宙空間の定義についていろいろ議論しております。したがって、現在の段階で、どこからが宇宙空間になるのかということは言えないのでございます。ただ先生のおっしゃいました領空につきまして、これは従来から国際法上いろいろ説がございますけれども、領域の上空は無限に領空である、つまり、宇宙空間を含めてどこまでも領空であるという説もございます。ただしかし、近年におきます米、ソを中心とする宇宙活動に伴いまして、たとえば、自国の領空と称する無限の宇宙空間に現実に人工衛星等が飛んでおりましても、実際にこれらの各国は何ら異議を申しておらないという観点から、現在は領空につきまして、人工衛星が飛ぶような高い宇宙空間にまでは領空として主張し得ないというふうな慣行が徐々に成立しつつあるというふうにわれわれ考えております。したがって、この宇宙空間と申しますのは、慣行でだんだん固まりつつあります。領空のその上の範囲、つまり空気が全くなくて、実際に人工衛星が飛しょうし得るような空域と申しますかが宇宙空間であり、それ以下の空域が領空であるというふうになってくるのじゃないか。これもまだ現在確定した国際法ではないのでございまして、だんだんそういうふうな慣行になるのじゃないかというふうに考えております。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 領海という定義が国際法上も非常に不明確であるというふうにいわれておる、そういう状態でありますが、やはり領空という問題も、いま高島参事官が答弁になられましたように、きわめて不明確なものであるということは否定し得ないと思うのであります。そういうふうでございますが、この問題についてのみ議論をするわけにもいきませんから、先に進みます。  この第四条にはきわめて重要なことが規定されておるのであります。すなわち「条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと」、もう一つあるわけですね。「いかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約束する。」これはもう全面的に宇宙空間、天体、軌道にはそういう兵器というものを設置したり、あるいはこれを配置したり、あるいはそこを動かしたり、そういうことはしない。その次ですね。「月その他の天体は、もっぱら平和的目的のために、条約のすべての当事国によって利用されるものとする。」そこのところにずっとありますね、私はこれを読んでおりまして思うのですが、実際は「月その他の天体及び宇宙空間は、もっぱら平和的目的のために、」云々とされるのが当然じゃないかと私は思う。前のほうは「宇宙空間に配置しないこと」、今度は「月その他の天体は、」こういって、宇宙空間を省いておるわけですね。これは私は、やはりこの条約の根本的な目的がこれによってもう完全にぎる法になっておる。ざる法ということは、少々のどろぼうあるいは収賄、贈賄が行なわれるくらいならいいのですが、それはざる法でもあるいはと思いますけれども、これがもしそういうふうに宇宙空間というものは何をやってもいいのだというふうなことになると、せっかくこの原則の条約が通っても、私はこれはまるで意味のないものになっていってしまう、こういうふうに思うのですが、政府はどう考えられますか。
  88. 高島益郎

    高島説明員 御指摘のとおり、この第四条はこの条約で一番大事な条項でございます。二つのことを規定しております。第一項では核兵器及び核兵器に類するような大量破壊兵器については宇宙空間利用してはならないというのが第一原則でございます。それから第二の原則は、先生の御指摘のとおり、宇宙空間ではなくて、その中にございます月その他の天体は完全に非軍事化する。この二つであります。  そういう観点らか申しますと、われわれの理想は月その他の天体を含む宇宙空間全体を完全に非軍事化するということが理想でございます。事実日本国連その他で十年来そういう主張を常にやってきております。しかし現実の米、ソを中心とする国際政治の現状からは、とうていそこまでは実現し得なかったというのが実情であります。ただし、少なくとも核兵器については宇宙空間全体に、どこでもこれを使ってはならないというのが第一項ではっきりしております。これは核実験の停止につきましても宇宙空間は含んでおりまして、この条約と相まって核兵器については宇宙空間は一切使わないという点が確保されておるわけでございます。その点では大きな進歩があります。ただ、しかし、将来の目標といたしましては、先生の御指摘のとおり、月その他の天体を含む宇宙全体をもっぱら平和的利用のために使うというふうに持っていくべきものだとわれわれも考えております。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 それはICBMはどうなるのですか。禁止されないのですか。
  90. 高島益郎

    高島説明員 そういう観点から、この条約でもってはっきりICBMのようなものを宇宙空間を通して飛ばすということについて明示的な禁止の規定はございません。またICBMのみならず、たとえば軍事的な衛星もそうでございますが、そういう衛星が宇宙空間を飛ぶということについて明示的な禁止の規定はございません。しかしこの条約の全体の精神と申しますか、あるいはこの条約全体が指向しておる方向といたしましては、そういうものは歓迎すべきものではございません。しかし、現実にこの条約に明示的にそういうことを禁止するという規定はございません。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、ICBMというものは、精神はそうであっても、使われる場合がある、これは禁止できない、こういうことですね。それは非常にたいへんなことだと思うのです。まあこういうところがおそらく米、ソ間等における、特に大国間におけるいろいろな意見の不一致があったのじゃないか、こう思うのです。それからたとえば、そういうものがあるかないか知りませんが、何か宇宙要塞とかあるいはスパイの目的を果たすような要塞ですか、そういうものを宇宙空間に——あるかないか知りませんが、そういうものも今後生まれてくるかもしれません、あるいはいまもうすでにあるかもしれませんが、そういうものがやはり私はさっき、宇宙空間の平和利用のみで軍事利用はいかぬ、こういうことがされないのは大きな問題をかかえておるのではないか、こう申したのでありますが、そういうふうなことであることは、これはまことに遺憾でありますが、これは原則に関する条約ですから、そういうものをもっときちっとやるような方向に今後政府は格段の努力をしていかなければならぬ。イン下なんかがこれの提案国にならぬのは、そういうふうないろいろな面の不満からだ、ほかにもあるようですが、そういうものがあるのではないか、こういうふうに聞いておりますが、どうですか。これ以上私はいま追及しましても、高島さんが、それはこうなる、ああなると言えることじゃありませんけれども、私はこういう大きな欠陥のあるこの条約内容指摘するにとどめたい、こう思うわけです。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕  それから第七条の損害に対する責任というものが規定してあると思うのです。「自然人若しくは法人に与える損害について国際的に責任を有する。」こう書いてあるわけですが、これは具体的な規定は何もしていないと思うのです。私がさっき指摘しましたように、これは原則の条約だから、宇宙空間の平和利用委員会で今後の具体的な取りきめが生まれるのだ、こういう答弁があるに違いない、こう思うのですが、これは日本政府としては、こういうものは国際法によって縛っていく、規制していくことであるのか、あるいはさらにこれをまた他の相手の当事国に要求していくようなことをそれぞれの国内法できめていくようになるのか、政府の具体的な考え方を承っておきたい、こう思います。
  92. 高島益郎

    高島説明員 御指摘の、第七条に書いてございます、物体を発射した場合に起きる損害についての国際的責任に関します規定でございますけれども、これに関しましては、お手元にたしかきょうお配りしてございますはずでございますけれども、この条約を採択した国連総会決議の中にございます。その第四項に、「宇宙空間平和利用委員会に次のことを要請する。」まず(a)といたしまして、「議事日程に掲げてある宇宙空間への物体の発射により生ずる損害についての責任に関する協定」ということで、現在ジュネーブでこの法律委員会の会合をしておりまして、この損害賠償協定というものについていろいろ責任の性質あるいは賠償の方法、賠償額の問題、そういった問題について十分検討中でございまして、それができますれば、別個の協定によって、こういう責任の内容が確定するというふうに考えております。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 それからこの条約のいろいろなところに出てきます平和利用というものと軍事的利用というもの、これは区別はむずかしいと思うのです。だれがするのでしょうか。査察でやっていくということ——査察にもいろいろなむずかしい条件がありまして、査察がほんとうに正当に行なわれるかどうかということも非常に疑問に思われるような条文になっておるのです。これは軍事的な利用かあるいは軍事的な利用をやっていないかということを、これは査察によるのでしょうが、しかし査察もまたいろいろと条件があって、合意がないとできぬとか、そうかと思えば、相互主義によってこれはちゃんとできるのだというふうな規定かと思うと、今度合意でないとできないとか、いろいろむずかしい、国際間のこういう条約をつくるときの取引といいますか、かけ引きといいますか、そういうものがあったことをほうふつきせるような条文になっておると思うのです。この平和利用か軍事利用か、これは一体だれがきめていくのか、どうきめていくのでしょうか、御答弁願います。
  94. 高島益郎

    高島説明員 一般的に平和利用か軍事利用かということばの定職の問題をまず除外いたしまして、この第四条の規定で、はっきり軍事利用を禁止している規定がございます。これはここに番いてございますとおり、「天体上においては、軍事基地、用事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。」というふうに響いてございますので、いわゆる軍事利用ということは、ここに書いてあるようなことが対象であろうかと思います。  なお、これにつきましての査察に関しまして、特に第十二条に規定がございまして、そのような基地、施設、装備、宇宙飛行機、天体上にございますそういったいろいろな設備につきましては、相互主義に基づいて各国代表者に開放されるということになっております。したがって、これは、軍事利用に関する限りは月その他の天体だけで禁止されているわけでありまして、先ほど申し上げましたそれ以外の一般の宇宙につきましては、特に明示的に禁止されておりませんので、そういう観点から何が平和利用であるか、何が軍事利用であるかという点で一番問題になりますのは、四条第二項に月その他の天体における軍事利用その他につきましては、一般的に平和利用すべきであるというたてまえを書いてございますので、その点につきましては、特に、たとえば先ほど先生の御指摘のようなICBMの実験とか偵察衛星の打ち上げということは、これは望ましいことでは決してございませんが、特にそれを禁止されているということにはなっておりません。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 第十二条の査察を規定した条文ですね。これは高島さん、どうですか。これを読んでみると、何か非常にこの査察が自由に行なわれ得るようでもあり、また非常にチェックするような、予告をせねばならぬとか、「合理的な予告を行なうものとする。」とか、何か査察が妥当に行なわれないような不安を持つのですが、私は外交条約条文の書き方はよくわからぬのですが、こういうもので安心ですか。私はどうも安心できないように思うのですが、あなたはどう思われるのですか。政府はどう思っておるのですか。
  96. 高島益郎

    高島説明員 これは特に月でございますけれども、月の基地について査察するというふうなことはだいぶ先の話になろうかと思いますが、これは特に米、ソ関係で考えますと、たとえばアメリカソ連に対して訪問を断わるというようなことがあった場合には、ソ連アメリカに対して訪問を断わって差しつかえないというのが相互定義の原則であろうかと思います。ただしかし、後段に書いてありますとおり、ふらっと来ていつでも自由に入れるということではなくて、訪問するときには事前に協議してくれ、そういうことが響いてあるだけでございまして、後段の規定は、別に査察の条件、非常に厳格な条件というふうには解釈いたしません。相互主義が一番の条件でありまして、相互主義の原則さえ守られるならば、あと準備のための協議、条件というふうに解釈いたしております。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 心配は要らぬという御意見ですね。私、もう一点で終わりますが、第十条の規定は、追跡ステーションの利用に関する問題は何かないのですか。これもやはりさっき私が言った査察と同じような疑問が持たれるわけです。平等の原則に基づいてある国が他の国にこうこうしたいということを申し入れれば、平等の原則で考慮を払う、こう書いてあるかと思えば、次は関係国間の合憲によって決定されるのだ、こう書いてありまして、それはそうだといえばそうですか、これはもう微妙なものじゃないでしょうか。これも妥当にちゃんと、そういうことは、第十条はうまく行なわれるというふうに考えられるものですか。
  98. 高島益郎

    高島説明員 第十条の規定は、たとえば日本について申し上げますと、日本アメリカから頼まれて、日本で追跡をする機会を与えてくれというふうに頼まれて、それに対して日本がオーケーをするというふうなことになった場合には、平等の原則が作用いたしまして、今度その他の国、たとえばソ連からそういう要請を受けた場合、これに対して原則的に断わることができないというのが第一の原則であります。ただ、その原則がありましても、実際にたとえばアメリカから人が来て日本でトラッキングするというようなこともございましょうし、また、単に日本の施設を利用して、日本からデータを送付するということだけで済む場合もございましょうし、いろいろその希望条件等がございますので、そういった条件を相互に協議する、その協議の結果、協議がととのわなければこれは合意がございませんので、結果としてはだめになることもあるかと思います。しかし、あくまでも平等の原則で、ある国に断わり、ある国に断わらないということはできない。しかし観測の機会を与える方法については、合意がなければならないというようなことであろうかと思います。
  99. 堂森芳夫

    堂森委員 いろいろな問題点がありまして、多くの不満を持っているわけですが、全体としてこれはもちろんわれわれ人類として喜ぶべき方向の原則をきめる条約ですから、われわれももちろん賛成でありますが、時間もありませんから、これぐらいで私の質問を終わります。
  100. 福田篤泰

    福田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  101. 福田篤泰

    福田委員長 速記を始めて。  川上貫一君。
  102. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問はそうは長くないのですが、ちょっとお願いしたいのは、参事官の答弁は長いのですな。質問したことにだけ答えてもらいたい。説明は要りません。それから、私はちょっと聴力が衰えておるので、はっきりわかるように言うていただきたい。  この条約は、申すまでもなく月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における、この次が大事なんですが、国家活動を律する原則、ここが私は重要な意味を持った条約だと思うのです。共産党、私のほうは、月その他の天体を含む宇宙空間の探査、利用は、科学の進歩発展、人類の未来に大きな影響を持つものでありますから、平和な宇宙開発をわれわれは一貫して重視しております。それゆえに、この条約で、月や天体の軍事利用を禁止した、それから核兵器を天体に設置したり軌道に乗せることを禁止しておる、また宇宙空間を汚染することを禁じておる、こういう点はもちろん賛成であります。これは当然賛成すべきものだと思います。ところが、ちょっとお聞きしたいのは、月、天体を除く宇宙空間で、核兵器を持った衛星、これを除いて、そのほかの宇宙空間を軍事的に利用することは禁じてないと思う。これはこう考えてよろしいかどうか、よいとか悪いとかだけ言ってください。
  103. 高島益郎

    高島説明員 そのとおりでございます。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 わかりました。  そうすると、核兵器を持たぬ軍事衛星、これはどうなりますか。禁止するのですか、しないのですか。
  105. 高島益郎

    高島説明員 核兵器を持っておらない普通の衛星、これは宇宙空間では禁止されておりません。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 核兵器を持たぬ軍事衛星、宇宙空間にないといいますか。
  107. 高島益郎

    高島説明員 宇宙空間で禁止されておりません。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 禁止されていない、はい、わかりました。そうすれば、核兵器をつけておるのです、つけてはおるが、軌道には乗っていない。つまりこれは軌道でもないし、宇宙空間に配置されてもおらぬ。この兵器は禁止されていないと思うのですが、それでよろしいか。
  109. 高島益郎

    高島説明員 第四条の規定で、核兵器を天体に設置しないこと、それから核兵器を宇宙空間に配置しないこと、これ以外のことは禁止されておりません。
  110. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、核兵器を宇宙空間に設置しない、配置しない、しかし核兵器を持ったものが宇宙空間を通る、これは禁止しない、こう言うていいですか。
  111. 高島益郎

    高島説明員 残念ながら核兵器が宇宙空間を通るという可能性はこの条約によって残されております。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、これはこの条約上でわれわれは大きな疑問を持つ。  ちょっとほかのことになりますが、アメリカのいわゆる軍事衛星は現在何ぼ上げておりますか。
  113. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 国連から送られてまいります資料がございますが、その中でどれが軍事衛星であるかどうかという点については明確に判断はできません。したがいまして、いま御質問アメリカの軍事衛星が幾ら上がっているかという点についてははっきりお答え申し上げられないと思います。全体では四十一年の六月現在で三百十七個が確認されております。これは科学衛星、平和利用目的の衛星、全部含んででございます。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 それじゃ具体的に問いますが、軍事通信衛星、これは何ぼありますか。軍事航海衛星、これが何ぼある。軍事偵察衛星、これは幾らある。軍事気象衛星、これが幾らある。もう一つはMOL、人間軌道研究衛星、これはいまは打ち上がっておらぬかもわかりませんが、一体どうなっておるか。これら一つ一つ軍事的に使われておるかどうかわかりませんと言いますが、いま私が言いました五つ、この数をひとつ知らせてもらいたい。というのは、これは大事なんです。これが全部この条約では禁止されておらぬのですから、この点はどうしても明らかにせねばならぬ。——いまの答えはあとにしますか。  それではちょっと中止して、曽祢委員にやってもらいますから……。
  115. 福田篤泰

    福田委員長 曾称益君。
  116. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣にきわめて短い時間に来ていただいたので、この制約上関連いたしましての簡単な質問をいたします。  私はこの条約はいろいろ重要だと思いますけれども、この条約の一番重要な意味は何といっても天体を非軍事化する。残念ながら宇宙全体を非核武装化するということはできなかったけれども、しかし少なくとも地球のまわりを回る軌道に核兵器その他の大量殺戮兵器を載せて、そこから地球に向かっての攻撃をさせない、こういう限定された目的ではあるけれども、その意味で宇宙の一部の非核武装化ということについての第一歩になるというこのこと、しかもこれが、何といっても部分的核停条約に続いて米、ソの雪どけの産物としてできた?やはり長い核兵器全体を禁止する一つのプロセスの中においての歴史的な位置づけはされていいと思うのです。いまも川上委員指摘されていたような、いろいろ不満だらけな点がありますけれども、ただこの国会はこれで終わりになると思うので、ぜひひとつ外務大臣にこれに関連してもう一つの重要な問題を伺っておきたい。  それは、核拡散防止、核兵器禁止問題について、その後の情勢がどうなったか。つまり核拡散防止問題が五月の休会前には非常に急ピッチでいきそうになった。そこで休会になり、それから再開されるまでには、十八カ国軍縮委員会で米、ソ案が出て、これでほとんど締め切りになるのじゃないかというので、日本の外交もこの問題についてはいきさか立ちおくれだったのに、急ピッチで国論に対しても統一を求め、また各国に対して基本的方向には大体賛成しながら、やはり核保有国だけの御都合で、彼らの有すべき核兵器を縮小し核軍縮をやらせるということについてはそっちおきにして、潜在的核保有国に対するいわゆる核武装しないという約束を取り付ける、加えて核非保有国の平和的利用についても不平等な制限を課するというような方向がかなりあるので、これに対してわれわれの利益を守るために、ひとつ力一ぱいいろいろな方面に対して、特に米、ソに働きかける、あるいは同じような核潜在保有国の仲間がある程度連係を保つというようなことが行なわれたと思うのです。また三木外務大臣は特にこの問題については、超党派外交ということばがいいか悪いか別として、この問題については少なくとも日本の各政党の間に大体了解が得られるのではないかというので、この問題について特別に各党との話をし合うというようなことをやられたわけですね。ところがその後いろいろ国際情勢の発展があって、その中には中東の危機とかいろいろありましたが、幸いに一時危ぶまれておったジュネーブの十八カ国軍縮委員会でこの問題が停滞状態になったことは事実だと思うのです。ところがその間にまた中東戦争みたいな悪い情報があったけれども、また逆にグラスボロ米ソ首脳会談以来、核停条約に関する米、ソのもう一つの話し合いができたやに見えて、あるいはまたブランクになるか、第三条については話し合いがついたか、そこら辺のところはわからないけれども、またこの十八ヵ国軍縮委員会で核停条約の問題が、米ソの連絡が再びできて推進される情勢になったと思うのです。その間の最近の外交の情勢、グラスボロ会議についてもいろいろ情報があるだろうと思うし、またジュネーブの軍縮委員会方面、さらには米、ソその他の各国との折衝によって最近の核停条約問題がどうなっているのか、また、それに関連して、特にこれからの問題は何といっても前々から言ってきたことであるけれども、中共の水爆実験成功ということがもたらす核拡散の傾向に対してどういうふうに対処していくか。特に非保有国の安全保障の問題とそれから第三条と言われる平和利用へのコントロールがどうして不平等性を持たないで済むか。この二点がやはり中心の中心だと思うのです。このことに関連して外務大臣の御意向をあらためてひとつ表明願いたいと思います。
  117. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま曽祢さんが御指摘になったように、グラスボロの米ソ首脳会談においても、この核拡散防止条約、この条約必要性というものに対しては、両者の意見が一致したようでございます。ただしかし、その条項の中は、まだまだ意見の不一致な点もあって、ラスク・グロムイコ会談等である程度こなされたと見るわけですが、まだ一番問題点は、御指摘のような第三条、いわゆる国際保障の問題に関連する国際原子力機構とユーラトムの問題がなかなかやはり米、ソの間の意見が一致しない。だから今日の段階でまだ国際保障の問題について米、ソ間に完全に意見が一致したという情報は受け取っていないのでございます。しかし、大体の情勢では、国連総会等もございますし、したがって、十八カ国軍縮委員会に来週ぐらいはこれを提案できるようにならないと、十八カ国軍縮委員会でも相当これは論議されなければならないし、国連総会等の日程なども考えてみますると、来週ぐらいには軍縮委員会に提案をせざるを得ないという時間的な制約もあって、あるいはブランクのままということもあり得ると思うのですが、その他にも一、二あるようですけれども、大きな問題点はない。だから私の考えでは、来週ぐらいには十八カ国軍縮委員会に提案になるのではないか、こういうふうに見ておるのでございます。そういう提案が出れば、われわれとしても、現地はもとより、だれか派遣をしようという考えもあるわけであります。軍縮委員会のメンバーとも連絡をとりながら、さらに日本の考え方ができるだけ盛り込まれるような努力をいたしたい。出た原案だけで十八カ国軍縮委員会承認するとも限りませんから……。また御指摘の非同盟諸国の安全保障の問題は、やはり国連等の場でやるよりほかないと思います。条約上の問題ということにはならないと思います。
  118. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に一点だけ、この発展いかんによって、おもなる政党等に意見を聞くというようなことはおやりになるつもりであるかどうか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  119. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初にああいうことをいたしました。そして各党から有益な意見を承ったわけですから、草案が出ますれば、その草案を御報告というわけでもないが、草案を中心にして各党の意見を徴する考えでございます。
  120. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで終わります。
  121. 福田篤泰

    福田委員長 川上貫一君。
  122. 川上貫一

    ○川上委員 さきの質問をいたしましたあの点でお答えがあるだろうと思うのですが、それを承ります。
  123. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 気象衛星でございますが、私どもがいま国連の情報で集計してございますのは、これは技術的な資料でございますので、軍事的な気象衛星はこの表には載ってございません。  それから航行衛星でございますが、これは軍が打ち上げたかあるいはNASAが打ち上げたか、技術的な資料でございますので、その点明記してございません。アメリカの海軍が使っておるといわれるトランシットという航行衛星は六つ上がっております。  それから通信衛星は、これは軍事用あるいは平和利用という区別がないのではないか。一般の通信衛星でも使用のしかたによって変わってくるのではないか、こういうふうに考えております。
  124. 川上貫一

    ○川上委員 御答弁がありましたけれども、どうもあなたのほうではようわかっておらぬのじゃないか。きょうは時間がありませんから、この点についてこれがこうということを私のほうから聞く時間がありませんが、この打ち上げておる衛星の三分の二は軍事衛星、これは問題をあげて質問をしてもいいのですけれども、時間がありませんから、政府のほうではあまり知っておられぬのか、知っておっても答弁しないのか、そこはわかりませんが、とにかく答弁はきわめてあいまい、何ぼあるやらわからぬ、こう解釈していいと思う。  そこで、時間も十分ありませんから、これはこれとしておいて、次に聞きますが、アメリカには民間通信衛星というものがあるはずだ。これはいわゆるコムサット米国通信衛星会社が持っておる、この打ち上げておる静止衛星、これは何個ありますか、現在。
  125. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 お答え申し上げます。  これはコムサットが打ち上げを実施しておりますが、世界商業通信衛星暫定組織、インテルサットと申します協定による機関がございます。ここが直接の責任を持って上げておりますが、大西洋に静止衛星が二つ、太平洋に静止衛星が一つ上がっております。三つでございます。
  126. 川上貫一

    ○川上委員 三個ですか。
  127. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 はい。
  128. 川上貫一

    ○川上委員 四個と違いますか。
  129. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 一個は静止衛星軌道に打ち上げることに失敗いたしまして、静止衛星でないところを回っておるわけであります。打ち上げは四個でございます。
  130. 川上貫一

    ○川上委員 三個でも四個でもよろしい。われわれは四個だと思っておりますが、このインテルサット2号B、これについて国防総省は契約をしておるはずです。軍事的に使うというような契約、その契約はどういう契約になっておりますか。国防総省とあなたのおっしゃったインテルサット2号B、これとの契約。——わからなければわからぬと言うてくださってけっこうです。何も責めておるんじゃないんですよ、この条約を審議しておるのですから。
  131. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 私ども日本におきます宇宙開発を担当しておりますところでございまして、インテルサットの件につきましては直接の担当は郵政省かと思います。
  132. 川上貫一

    ○川上委員 これはおよそ何本のうち何本と数字をあげてもよろしいが、このうち全体的には約割五分ないし一割七分、これを国防総省が軍用に使う契約をしております。これが何本のうち何本という本数をあげてもいい。すなわちアメリカはいわゆる軍事衛星を、軍事通信衛星、軍事航海、軍事偵察、軍事気象、MOL、このほかに民間の通信衛星を国防総省が契約をして、その衛星を使うことになっておる。そこで、これは何ぼ御答弁なさってもそうじゃないということにはなりませんので、これを総称して軍事衛星とちょっと言います。もちろん民間通信衛星もこのうちに入るんですが、軍事衛星ということばがいいかどうか別にして、かりに軍事衛星といいます。それは現在一体どういう仕事をしておりますか。もっと具体的に聞いたほうがことは早いと思うのですが、たとえばポラリスの照準、これをきめるのにこの衛星はどういう関係があるか。それから南ベトナムとワシントンとの軍事通言、これにこの衛星はどんな関係があるか。大陸間弾道弾の照準、これをきめるのにこの衛星とどういう関係があるか。この点だけお答えをお願いします。
  133. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 外務省を通じまして国連からもらっております人工衛星の打ち上げの情報にはその点が明記されておりませんので、私どもにはわかりかねます。
  134. 川上貫一

    ○川上委員 これがはっきりせぬと、この条約の賛否はきまりませんよ。昨年の三月にハンフリーアメリカ副大統領はこう言いました。アメリカがいまベトナムでなしつつある多くのことは、通信衛星なくしては不可能だと、はっきりこう言っておるのです。それからことしの一月十八日、これはAFPの通信ですが、八個の衛星の打ち上げに伴うてこれらの衛星は主としてワシントンと南ベトナム間の軍事通信に使用されるものである、こうはっきり書いてある。これは世界の常識なんですね。今日の戦争はこの軍事衛星がなければ実際はできないというところまで来ておる。これはもう軍事関係者のまさに知っているところなんです。これがなければやれない。このことはどういうことになるかというと、アメリカアジアに対するいわゆる戦争政策、侵略政策にこの衛星というものは欠くことのできないものなんですね。地球はまるいのですから、南ベトナムからワシントンへ通信しても行かないのです。いわゆる通信衛星、ここに一ぺん行って、ここに行かなければ、曲がりませんから、電気通信が地球の表面に沿うてぐっと回っていって、これでワシントンと南ベトナムとの連絡をとる、それは不可能なんです。ポラリスの問題もそのとおりなんです。ですから、これはどうしても通信衛星、ここへ一ぺん行って、ここからすっと行きますから、これで今日の戦争が実際はできるんです。つまり核戦争もこれなくしてはできないのです。照準がきまらない。ベトナムの戦争もこれなくしてはできないのです。そうすると、今日の通信衛星というものは、核兵器の使用上、核戦争をやる上において、あるいは核戦争をやらぬ場合でも欠くことのできないものであって、今日の科学では核戦略の一部分なんですね。構成部分なのです。これは単に通信衛星などといっておりますが、これなくしては核戦略が立たない。そうすると核戦略の一構成部分です。これを禁止してないのです。おそらく政府のほうでは、それは一片の条約だから何もかにもなかなか停止できない、だから一部分でも停止したからこれはなかなかいいではないか、こういうことを言われるに違いないと思うのです。しかしこれは宇宙空間における国家活動の原則の規定なんです。とりあえず月、天体並びに衛星をどう利用するというのではないのです。国家活動の原則なんです。この国家活動の原則に宇宙空間を軍事的に利用するということを合法化したのです。こんなものがなかったら、合法化も非合法化もないのです。しかしこうきめましてここだけをとめるということになって、一つの例をあげれば軍事衛星ですが、これをとめてないということになると、原則ですから、そうすると、これはこの条約によって合法化されるのです。これは大きな問題なんです。これはただの抜け穴とかなんとかいう問題ではない。この条約における一つのざるとかなんとかいう問題でもなくて、意識的な条約だといっても言い過ぎではないと思う。言いかえれば、宇宙空間における国家活動の原則を規律する条約、この原則に軍事衛星はとめてない。また軍事衛星だけではない、さっきもおっしゃったように、宇宙空間で軌道にも乗らない。配置でもない、通るだけの核兵器、これをとめてない、合法化するのですから、こうなるというと、月や天体の平和的利用といっても、ちょっと問題ではないかというように思われます。この裏を見るというと、今日の戦争の状態から考えまして、これはどうも簡単な問題ではない。こういう条約、こういう宇宙空間における国家活動の原則、この原則を承認してもいいかどうか。この点になりますので、私はあえて質問したのです。私のほうとしては、この条約はさっきも言いますように、国家活動の原則条約なんですから、この原則条約でいま私の質問しましたようなものを合法化されたのでは、この条約は一見部分的には賛成のできる部面をもちろん持っております。持っておりますけれども、その反面においていま私が指摘するようなものを持っておりますので、これはにわかに賛成することがなかなかできないのではないか。しかし明日も質疑がありましょうから、他の委員の皆さんの質問、政府の答弁を聞いて最後の決定はいたしますけれども、いまの私の質問に対する御答弁の限りでは、これは承認、賛成はできそうにないということを申し上げて私の質問を終わります。
  135. 福田篤泰

    福田委員長 次会は明十四日午前十時から理事会、十時十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会