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1967-07-12 第55回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十二日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    臼井 莊一君       大平 正芳君    中山 榮一君       福家 俊一君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       久保田鶴松君    黒田 寿男君       田原 春次君    戸叶 里子君       松本 七郎君    渡部 一郎君       川上 貫一君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房副長官 亀岡 高夫君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務政務次官  田中 榮一君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省欧亜局長 北原 秀雄君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省情報文化         局長事務代理  猪名川治郎君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         総理府特別地域         連絡局監理渡航         課長      守谷 道夫君         法務省民事局第         二課長     家弓 吉己君         外務大臣官房審         議官      山下 重明君         外務大臣官房旅         券課長     内藤  武君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         外務省国際連合         局外務参事官  滝川 正久君         専  門  員 吉田 賢吉君     ――――――――――――― 七月四日  委員青木正久君及び山口敏夫辞任につき、そ  の補欠として井村重雄君及び辻寛一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄君及び辻寛一辞任につき、その  補欠として青木正久君及び山口敏夫君が議長の  指名委員に選任された。 同月五日  委員青木正久辞任につき、その補欠として井  村重雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄辞任につき、その補欠として青  木正久君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員青木正久君及び山口敏夫辞任につき、そ  の補欠として井村重雄君及び中曽根康弘君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄君及び中曽根康弘辞任につき、  その補欠として青木正久君及び山口敏夫君が議  長の指名委員に選任された。 同月十一日  委員谷口善太郎辞任につき、その補欠として  川上貫一君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員青木正久辞任につき、その補欠として井  村重雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄辞任につき、その補欠として青  木正久君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月五日  非核武装宣言に関する陳情書  (第二一三号)  在日朝鮮人帰国協定延長に関する陳情書外三  件  (第二一四  号)  同外六件  (第二四二  号)  同外三件(  第二六三号)  同外一件  (第三〇〇号)  在日朝鮮人帰国協定延長等に関する陳情書外  九十六件  (第二四三号)  インドネシア抑留沖繩漁船返還に関する陳情  書  (第  二六四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  旅券法特例に関する法律案内閣提出第九五  号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  旅券法特例に関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の通知がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行についてちょっとお尋ねいたします。  本委員会で、私から内閣調査室の活動並びに予算、機構について資料提出の確約を受けておりますけれども、もうすでに半月以上たっております。その間、私は、意味なくしておくらすことは、かえって国民の疑惑を増すばかりであるから、早く出してもらいたいということを、委員部を通じまして再度御注意と要求をいたしましたが、いまだにない。前の理事会で今朝までに提出をしていただくことを確約いたしまして、それを受け取ってから審議に入ろうということであったのです。その後どうなっておりますか、委員長から内閣のほうへおただしをいただいて、御答弁をいただきたいのです。
  4. 福田篤泰

    福田委員長 本件については、内閣側十分督促をいたしております。おそらくきょうじゅうに入手できるものと考えております。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣がまだお見えになっておりませんので、事務当局から先に聞きましょう。  議題になっております沖繩住民に対する旅券取り扱いについて、第九回日米協議委員会でこの問題が提起され、合意に達したということですが、これの要求は、日本側からなさいましたか、向こうから出たのですか。
  6. 東郷文彦

    東郷政府委員 今回の手続ができますまでは、御承知のように、沖繩住民が外国に行きましても……。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 それはわかっております。交渉経過を聞いております。
  8. 東郷文彦

    東郷政府委員 そういう事情でありましたものですから、こちらからそういう話を持ち出しました。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 それで、そのときに今度の改正のような形式的なことではなくて、出入国審査権日本外務大臣の発行するパスポートを形式的にとるだけでなくて、許すか許さないかを審査する権限ですね。これは日本人ですから、日本政府はそれを要求しなかったのでございましょうか。
  10. 東郷文彦

    東郷政府委員 出入域管理権までこちらに返還させることが最も望ましいことでございましたが、出入国管理の問題はやはり施政権に直接つながる問題として先方からこれを切り離してわがほうに返すという結果までまいりませんでした。手続は、遺憾ながら、出入域管理権向こうに保持したままで、今回の取りきめになったわけでございます。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 一問一答で簡潔にいたしますが、そうすると、理由施政権の一部に属する出入国管理権については日本に譲るわけにいかぬ、これが唯一の理由でございますか。
  12. 東郷文彦

    東郷政府委員 さようでございます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 大臣、あなたが見えないので、ちょっといま与党に協力するために、異例の協力的態度ですけれども事務当局に先に聞いておったわけです。それでお見えになりましたから両大臣おそろいのところで伺いたい。いまも沖繩住民に対する旅券法取り扱い旅券取り扱いについて、すなわち出入国管理について改正案が出ておるわけですが、これは基本的に私は当然こういうことであれば、パスポート日本外務大臣の発行するパスポートにするというだけでなく、または窓口を南方連絡事務所にするという形式的な名ばかりのことでなくて、中身につきましても当然な権利として日本が管理するということが望まれる。そのことをいまお尋ねしておったのです。それは交渉経過のことでございますから、これは事務当局にお尋ねすることにして、あとにいたします。この際、国民の、国民といいますよりは、すべての世界の人々の、人民旅行の自由について日本政府は一体どういうふうに考えておられるのか。本来これは国際的に認めらるべき基本的人権一つである。思想の自由、宗教の自由、表現の自由、団結の自由、これらは近代社会における基本的自由権人権と見て差しつかえないと私は思うのです。移動旅行の自由というものは元来がそうあるべきだと思うのです。わが国は幸か不幸か島国でありますから、特別に外へ出たり入ったりすることに対して特殊な感覚を持っておりますが、御承知のとおり、ヨーロッパ諸国はこれは非常に簡便で、国境から国境へ、まるで昔の日本の国内の国と国との間を旅行するような感覚で取り扱われておる。事実上そういうふうになっておる。ところがわが国では、その点では非常に後進性がありまして、特に最近では当然認むべき人間出入国に対して、いわれなき政治的偏見をもってこれを押えようとする傾向があるものですから、そういう根性でこの沖繩県民出入国問題も取り扱われないかということに関連をいたしまして、この際、まず法の精神の問題ですから、法務大臣から、移動旅行の自由というものはこれは元来近代社会においては基本的人権に属すべき性質のものであると私は解釈をいたしますが、あなたはどういう解釈でございましょうか、伺っておきたいのです。
  14. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説のとおり、国際的な関係から申しましても、およそわが国利益と安全を害する心配がない限りは、原則としてお説のとおり出入国を許すという態度をまずとっていきたいと考えております。  もう一つは、お説に関連して申し上げますと、その利益と安全に反せざる限度においてなるべく手続はすみやかに簡略な手続でやっていきたい、こう考えるのであります。しかるところ、現在の出入国管理令占領下にできたものでありまして、占領落とし子一つがいまだに残っているという事情でございます。これはすみやかにそういう趣旨に合うように改正すべきものである。ことに、最近旅行者が激増しておりますが、中でも短期旅行者が激増している傾向に置かれている。短期旅行者はお説のとおりもっと簡略に、もっと迅速に、国の利益と安全に反せざる限りすみやかに出入国を許すという方向にいくことが近代国家の動向と考えますので、その方針をとっていきたいと思います。  ただし、誤解のないように以上申し上げておきたいと存じますが、わが国友好関係にない国からの出入国というものは、国の安全、利益に反すると考えられることが比較的に多いのであります。そういうことでありますから、一般論といたしましても、どうしてもいま申し上げましたとおり、友好関係を持たざる国家からの出入国というものに対しましては厳格なる基準によって判断をしていく以外に道はない。現在わが国立場はそういう立場に置かれておるということをここにつけ加えて申し上げる次第であります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 もう一ぺんお尋ねいたします。  最後におっしゃいました未回復国との関係、これは相手国存在を事実上は認めておる。しかし国交は遺憾ながら回復していない。この取り扱い回復国とは違ったケースの中へ入ることは当然でありますが、そのときに、三木外務大臣も唱えておるように、未回復国であるたとえば中国との間においても当然これは近い将来、さらに長期的に見てわが国との平和共存を打ち立てなければならない、そういうお考えをいまから持っておる、こういうことなのですね。したがって、手続上は差異のあることは認めますが、基本的精神においては、人間旅行の自由については、差異があるべきではない、すなわち、基本的人権につきましては、法の理論からいきますと、あるべきではないと思うのです。もう一つは、外交上の取り扱いからいきますならば、相互平等主義でいくのが外交原則だと思うのです。もし相手国が非常にかたくなな態度をとっておる場合には、こちらが自由を認めようと思っても、なかなか認めがたい事情も生じてまいりましょう。しかし、相手がそういう点はトレレート態度をとっております場合には、外交つき合いの常識といたしまして、相互平等主義原則だと思いますが、その点はどうお考えでしょうか。相互平等主義についてのお考えですね、具体的なことはあとで伺いますから、原則上のことを伺っておきたいと思います。
  16. 田中伊三次

    田中国務大臣 その点は、必ずしも相対的には判断ができないのではないかと思っております。やはり日本国の安全と利益というものに抵触せざる範囲内において相互主義をとっていく、こういう考え以外に道はないものと考えております。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 続いて外務大臣にお尋ねいたします。  私どもは、いま申し上げましたような精神が正しい原則であるという理解に立って、旅券法にも臨んでまいりました。しかしながら、その法の解釈につきまして、日本政府は時の首班のものの考え方、態度によりましたり、あるいは時の外務大臣法務大臣考えによりまして、これが変更、左右されることをわれわれ苦々しく思っておるわけです。  そこで、これに関連して、ついでにお尋ねいたしておきますが、いま法務大臣の言われた国内的な二つ原則ですね。一つは、国の安全と利益に反しない限り自由であるべきである。第二は、いまの旅券法あるいは出入国管理令はいささか煩にたえないところがあるから、これは時代の趨勢に即して簡素化することが望ましいということであります。実は正確に年月日を記憶いたしませんが、外務省は、数年前にいまの旅券法改正の素案を部局の中でお持ちになりまして、近く国会提出し、審議をし、早くこれが通ることを期待する旨の御内意がございましたが、われわれはそれを歓迎しておった。ところが、それが消えてなくなって、いま全然音さたはないわけです。与党委員先生方も、このことはすでに耳にしておられることと思いますが、外務省当局は、いまの煩にたえない出入国関係旅券法、その他の改正について、その後どういう事情経過にありますか、またお考えであるか、この際、ついでに伺っておきたいと思うのです。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 前段のほうは法務大臣と全く同意見でございます。  後段のほうは、まだ政府部内の調整がつかないために、提出に至らないのでございますが、今後協議、妥結を促進いたしたいと思います。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 事務当局、何かもう少し具体的に最近の経過状況の報告はありませんか。
  20. 山下重明

    山下説明員 いま先生から御指摘を受けましたように、われわれは、二年半くらい前に、鋭意現在の繁雑な旅券法を簡素化すべく研究しておりましたけれども、そのときには、いろいろ関係者の間で話し合いがつきませんでしたので、見送りまして、その後も鋭意研究しておりますが、なるたけ早い機会にわれわれはこれを国会提出するように努力いたしたいと考えております。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 具体的問題について、ちょっとことのついでにお尋ねいたしておきます。  最近われわれが関係をし、取り扱っておるものの中で、はなはだしく苦々しい事件が起きておるわけです。それは、一つは、中華人民共和国中日友好協会代表団の一行の入国問題、もう一つは、朝鮮民主主義人民共和国スポーツ連盟の送るユニバーシアードの選手、役員必要用員一行の入国問題。これらは三木外務大臣が、この間ASPACの会議に出られまして、内外にわたって、わが国外交方針というものは平和共存を旨とする、思想、制度の違いはあっても、同時に共存し得るんだという原則が、世界の平和と安全、独立のために必要なことであるということを言われて、われわれはこれを支持いたします。ところが、その一番近い朝鮮民主主義人民共和国並び中華人民共和国民間代表、一方は友好親善を旨とし、一方は人道問題に次ぐスポーツ問題であります。これが二つありますが、どういうわけでこれに対して政府はチェックをし、ちゅうちょしたり、あるいは不当な妨害を加えておられますか。二つとも入国問題でございますから、所管法務省ですね、まず法務省からお答えいただきたい。  ところが三木さん、このあとユニバーシアード代表入国問題については、外務省が逐一出張って、これに指図をし、妨害を加えている事案があるわけです。この分についてはあなたの外交精神に反するも、はなはだしい、もの笑いだと思うのです。先ほど言われた安全と利益にどれだけ害するところがありますか。そんなに朴さんがこわいんですか。
  22. 田中伊三次

    田中国務大臣 ユニバーシアードの問題は、まだ正式に申請政府提出になっておりません。これを御承知おき願いたい。  それからもう一つ日中友好関係入国問題については、目下慎重に検討中でございます。時間がかかるじゃないかというおことばがあろうかと存じますが、これは時間をかけて慎重に検討する責任がある、こういうことでございます。  現段階でございますが、現段階においては、まだ少し時間をかけてみないと結論は出ませんが、現段階においては、まことに残念な答弁でありますが、非常にむずかしい、こういうのが現段階でございます。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 私に御質問のユニバーシアードのことは、何も申請は出てないんです。これは断わる考えはありません。(穗積委員「あなたの手下が押えているんですよ。」と呼ぶ)押えているというのは、その名前の問題で、どういう名前にするかということで、いまいろいろもめているわけでして、私に関係する入国というような問題では、そこまで来てないのです。申請も何も全然出てないのです。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 聡明善意三木外務大臣が、そんなとぼけた答弁をわれわれお互いの間でされることは、あまり快いことではありません。あなたの部下は、ことに文化事業部諸君が出るべからざる会議にも出て、それでこの問題でチェックしておるじゃありませんか。そんな指導をあなたは指揮されましたか、下僚に対して。その親玉の責任者である外務大臣が、申請が出ないからまだやらないのだ、責任相手にあるのだという言いぐさがありましょうか。私どもは不十分ながらそれらの経過事情をただしてみて、はなはだしく不当な、不愉快なことである、国際的に見て恥ずかしいことであると思って、わざわざこの機会に質問しているのですよ。しかも大臣に質問している。公く政治的な偏向ですよ。私もスポーツのことについては自分もやり関心も持っております。人道上に次ぐ問題として、スポーツの問題なんというものは、この際、国際性、すなわち平和共存外交の一翼としてもこういうものはトレレートに、フランクリーに処理すべき性質のことだと思うのです。実情は日本だけがひとりがんばっておる。それは外務省がさしておる。実行委員会役員を駆使して押えている。一体どういうことでしょうか。それじゃ事務当局に伺いたいが、御所管はどこですか、これは外務省……。
  25. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 お答えいたします。  ただいま入国問題とおっしゃられましたので、それで入国の問題につきましては、具体的申請がございませんのでと御答弁申し上げた次第でございます。ただいまの御発言は、入国問題に関連いたしましていろいろな問題がある、それにつきまして、外務省のほうにおいて明確な態度をしないというような意味にお考えかと存ずるわけでございまするが、私どもはこのユニバーシアードにつきましては、御承知のとおり、ユニバーシアード組織委員会というものが開催の主体でございまして、その組織委員会との協議も随時行なっておる次第でございまするが、ただいままでのところ、入国問題につきましては、まだ明確な申請もございませんから、明確な措置もとっていない状況でございます。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 そういう人を愚弄したような御答弁はかえってされないほうがいいですよ。この問題は朝鮮国主主義人民共和国という名前が困るのだ、困っておるのは日本だけです。このことはすでに外務省実行委員会主体だと言うでしょう。実行委員会に圧力を加えてませんか、実行委員会自主性を認めますか、実行委員会の決定には従いますか。協力しますか。一体何を言っているのですか。すでに下田前次官はこの問題について事前発言をしておる。この間交渉のさなかで——ハバナ会議以後問題になっておるわけですね。やがてこの十七、八日にブラッセルの最終的な会議があり、続いて東京で総会があるわけですね。それらの事前に各国の諸君が、会長をはじめといたしまして苦慮して、日本内外民間の良識の諸君がいろいろな考えを提案しておるのに対して、いまの牛場次官事前にもう北朝鮮でなければいけないという意思表示をしておるではありませんか。だから出せないのですよ。出さないから許可ができないのではない。出せないように押えておるから出さないのです、出ないのです。  順序を追ってお尋ねいたしましょう。このFISU会議登録されておる三十八度線以北朝鮮スポーツ団体は何という国名登録されておりますか。
  27. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 お答えいたします。  朝鮮民主主義人民共和国という名前でもってFISUには登録されております。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 IOCその他の国際団体にこれは全部参加しておる。中華人民共和国も参加しておる国際機関があります。朝鮮は他の、FISU以外の国際スポーツ団体にも何と登録されてますか御存じでしょうか、報告していただきたい。それ以外の、朝鮮民主主義人民共和国以外の北朝鮮なんという国名登録された事実がありますか、あったら示していただきたいのです。
  29. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 お答えいたします。  各種の競技団体内容は非常に複雑でございまして、それぞれの競技につきまして名称は必ずしも統一されてはおりませんが、いまのFISUに関する限りは朝鮮民主主義人民共和国、それからオリンピックに関しましては、これはオリンピックは一九六四年の東京大会に際しましては、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮という名のもとに競技に参加するということをきめております。したがいまして、その競技団体の各内容に応じましていろいろ違っている状況でございます。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 登録されておりませんよ。そういう名前でなければ困ると日本が言ったから、そこで朝鮮は侮辱を感じてこれを拒否したわけですね。登録なんかされておりませんよ。登録されておる事実は私の調べるところではどこにもない。北朝鮮という国名登録されておる事実はありません。そのことを承知して北朝鮮が参加しておる事実もありません。オリンピックの場合には、それでなければ困るという話が出て、それならわれわれは参加しないといってやめた、拒否しておるのです。登録などされておりませんよ。日本だけが特殊事情自主性を失って、朴さんとアメリカがこわくて自主性も何もなしにごきげんとりにそういうことを言ってみたり、これは同じ保守党内閣でも、池田内閣当時、ここにおる大平外務大臣当時は、朝鮮民主主義人民共和国のオーソリティーに対する態度は、これは日韓条約その他の事前審議におきまして明確にしております。国交回復をし、承認を与えていないけれども存在する事実は認めざるを得ないし、認めておる、やがて時期が来たならば、条件がととのったならば、これとの間においても補償問題、賠償問題、つまり請求権問題、あるいはその他の全朝鮮民族に共通した問題については話し合う用意があるという存在を認めておる、中国の場合と同じです。向かいの中国に対して中華人民共和国パスポートを出しておいて、同じ関係にある朝鮮民主主義人民共和国国名でなぜ入れないのですか。内容については差しつかえないといっているのだ。さっき言われた原則、安全とわが国の国益に何ら支障がないものと認めて入れてよろしい、こういうことですね。三木さん、あなたの精神池田内閣大平外務大臣よりは反動化しておるのですか。おかしいでしょう。それではあなた言いなさい、こんな人の名前三木武夫というのを「阿波染夫」という名前で呼ばれたら、あなたはどんな気がしますか。おまえの名前は何でもあるけれども三木武夫では差しつかえる、阿波の国の染夫だ、そういうことでよければ、かりの名でもぐらしてやらぬでもないと言われたときに、あなたはどう思いますか、基本的人権を侮辱されたとお思いになりませんか。そんなばかばかしいことなんですよ。朝鮮民主主義人民共和国相手にしてこれを承認するとかしないとかいう問題でないわけですね。さらに国と国の間、しかも今度は民間団体ですよ。それで民間団体でなくて、政府間のあれを見てみてもそうです。第十八回の総会で、日本は国連の決議に参加署名をいたしましたね。その中で、朝鮮民主主義人民共和国とちゃんと書いてあるじゃありませんか。これに日本政府は署名しておるじゃありませんか。この朝鮮民主主義人民共和国というりっぱな名前があるのに、三木武夫を「阿波染夫」となぜ言わなければならないかということです。名前だけですよ。こんなことにこだわってごねごねしておって、できるかできぬかのせとぎわに来て、来月を控えて、そうして政府が入管でおつくりになった、中川さんのところでおつくりになったと思うが、いろいろなものを見ると、往復で最低一カ月かかるでしょう。文書の手続上だけでももうきめなきゃ間に合わないのです。早く申請手続をとらなきゃ間に合わない。三木さん、どうお考えでしょうか。FISUには朝鮮民主主義人民共和国になっている。政府の署名をしておる第十八回の国連総会の文書では、朝鮮民主主義人民共和国という文書にちゃんと署名をしておる。その国名がなぜ認められないか。内容について実害があるというなら、実際の安全、利益に対して実害があるというなら、これはまた話は別だ。あるなら言っていただきたい。道理にかなわないじゃありませんか。もうちょっとあなたに自主性を持って、おおらかにおやりになったらどうですかね。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、組織委員会がありますね。これがオリンピック方式によってやりたいということで、それでよかろうということでありますので、まあ、こちらは、政府が主催するものでもありませんから、そういうことで向こう組織委員会がそういうことならば、オリンピックの例もあるし、そういうことでけっこうだろうということで、結局主体組織委員会の意向なども尊重してやったほうがいいという意見でございます。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 組織委員会実行委員会が決定したら、その決定どおりに協力しますね。いいですか。
  33. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 国名問題につきましては、先生御存じのとおりブラッセルでもって会議が行なわれる予定でございます。元来このブラッセルの会議の前にテヘランのIOC会議あるいはローザンヌの会議、さらにはまたハバナ会議といろいろと紆余曲折を経まして、その最後の段階といたしまして、十七日、十八日の実行委員会、運営委員会と申しますか、十五カ国からなる運営委員会が開かれまして、それが最終的に国名等を議すると承知しているわけでございます。発足から申しますと、昨年のポルトガルの会議のときには、国名につきましてはオリンピックのときの事例を研究して、その報告を受けて、それに基づいて決定するということをリスボン会議できめているわけでございます。それが、明確な決定にする動きがございましたものの、結局のところ最終的にはブラッセル会議国名がきまろうかと思うわけでございます。その国名がきまりましたならば、政府におきましても、そのときにどういう態度をとるかということをきめることになろうと思うのでございますが、現在までの段階では、日本組織委員会からはオリンピック方式でこの大会を開きたいという要請が来ておりまして、われわれはそれに基ついて処置してまいったわけでございますから、もしブラッセルにおいて決定がなされます場合は、まず組織委員会のほうからどういうようにしてこのユニバーシアードを開こうかという意味の連絡があろうかと思います。いずれにしましても、国名につきましては権限を持っております実行委員会がはっきりした形できめるのではないかと思っております。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 そういう虚構の事実を国会で報告されてはいけませんよ。組織委員会実行委員会は、当然なこととして、FISU登録されておるとおりに、朝鮮民主主義人民共和国が正しい、そのことにこだわるのはおかしいというのが圧倒的多数の意見です。日本から出ておる諸君の中でも、そうなんです。たとえば、この間この問題について日本会議を開いて、先般全く多数は——決裂状態でしょう。たとえば自民党関係で言えば川崎秀二さん、河野謙三さん、それから青木、奥野、こういうような主要なメンバーは、スポーツ立場に立って当然であるということで、このことにこだわってはいかぬということを主張した。ところが外務省が押えつけておる。竹田さんをはじめ大庭とか北沢とか二、三の人が、それを頑強に外務省の命令で抵抗しておる。外務省の部局は文化事業部諸君が直接指導しておるじゃありませんか。だから、こういうことなら、また直前になって参加しないということになる。そうすると、社会主義諸国の大多数は参加しない。そうすると、ユニバーシアード東京大会というものは見るも哀れなことになってしまう。そういうことなら、むしろ返上したほうがいいじゃないか、そんなことで入国させないなら。はなはだ不合理な、道理のないことであるけれども入国の権限は日本政府が握っておるのであるからやむを得ない。不当を明確にしてやめたらどうだという意見がいま圧倒的になっておるわけですね。しかも時期は来月に迫っておるわけでしょう。法務省が出したあれによると、四十日はかかるのだ。北朝鮮とは、モスクワへ行って、モスクワからという、いともふかしぎな連絡ですけれども手続がそういうことになっておるわけですから、そういうときには明らかにきまらぬから、きめさせないでおいて、きまらぬからやらないというのは明らかに妨害です。恥ずべきことです。それなら返上したほうがいいのです。自民党の良識あるいま申しましたような幹部の諸君も、この団体、行事に関係しておって、そうして返上論を主張しておる。それで外務省は返上しては恥をかくというので押えて、それもやらせない。そうしてそれらの諸君は最近は、私が調べてみると役員会にはほとんど出ていない、憤慨をして、あいそをつかして。なぜ悪いのですか。朝鮮民主主義人民共和国——たとえば、いま案の一つとして、国名ではない団体名、団体名は大学スポーツ連盟だ。それはどこの大学スポーツ連盟だと言えば、朝鮮民主主義人民共和国の大学スポーツ連盟主体スポーツ連盟にあるのだという折衷案というか、配慮した案が出ておる。これすら外務省は拒否しておるじゃないの。形容詞として言うことすら拒否しておる。朝鮮民主主義人民共和国代表じゃない、朝鮮民主主義人民共和国の大学スポーツ連盟代表です、入ってくるのは大学のスポーツ連盟代表です。そういう配慮ある意見すら、外務省が先に立って、片っ端からつぶしておるのは外務省ですよ。何が国益に反しますか。田中さん、ビザはあなたのところの所管だから、聞かしてもらいたい。さっきの言ったこととうそがあるじゃありませんか。何が国益に反するの。朝鮮民主主義人民共和国政府ですら、あなたは国連総会で調印していますよ。それならなぜこれは北朝鮮と直させなかったんですか、署名するときに。これはごらんになればわかります。私はでたらめを言っているのじゃない。ここにちゃんと書いてあるのです。十八回総会、朝鮮民主主義人民共和国と書いてある。これに政府すら署名をしている。承認をしているわけですね。存在を認めておるわけだ、そういう国のあることを。何が国益に反するんですか。
  35. 田中伊三次

    田中国務大臣 穗積さん、これは国名問題、これをひとつそうむずかしく仰せにならずに話をつけていただいて、そうして私のほうに書類をお出しをいただくならば、公安を害するやいなや、利益の上からどうかということをそのとき初めて私が判断をするわけでございます。それでこの判断は、あらかじめ申し上げますが、迅速に、時間をかけないように迅速に、積極的な姿勢で好意を持って処置すると、こういうことはいたしますから、早く書類をお出しくださるようにその方面にひとつ御尽力を願いたい。大事なことでありますから、その方面に御尽力をいただきたい。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 国名だけにこだわるのはどういうわけだと聞いているんです。その中身は審査しますよ。だれがもぐっておるか、この間の内河みたいにスパイがもぐってくるかもしれぬという心配があるなら、十分に事前に審査なすったらいいでしょう。それは、そんなことを聞いているんじゃないんです。手続を早くやることも当然なことですから、おやりいただきたい。そうじゃなくて、国名では受け付けないというのが困るんだ。朝鮮民主主義人民共和国では受け付けないというのが困る。道理にかなわないことです。どういうわけで北朝鮮でなければいけないのか、理由をはっきりしてもらいたい。
  37. 中川進

    ○中川(進)政府委員 国名の問題がたいへんいま問題になっておるわけでございますが……。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 問題にしておるのは政府よ。だれも問題にしてやしないよ。あなたのほうだけだ。
  39. 中川進

    ○中川(進)政府委員 本会議において問題になっておりますが……。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 外務省よ。答えるなら外務省から答えなさい。あなた、関係ないことじゃないか。
  41. 中川進

    ○中川(進)政府委員 私どもといたしましては、入国申請がなされましてから、ただいま法務大臣が申されましたように、入国していただくかどうかの許否を下すわけでございまして、まずそのどういう国名申請してくるかどうかということは、申請なさる方の問題でございます。
  42. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 国名の問題につきまして補足的に説明を申し上げます。  ユニバーシアードの開催にあたりましては、一つの先例といたしましてとられたのが東京オリンピック大会でございます。その際に、当時のIOC、国際オリンピック委員会は、国名、国旗及び国歌、この三つにつきまして一つの決定をいたしております。これは、分裂国家につきましては、特に北朝鮮につきましてはこれを北朝鮮と呼ぶ、あるいはドイツにつきましては東ドイツ及びドイツ、そしてその国旗はドイツ統一旗を用いる、あるいはまた国歌につきましては、いまのドイツの場合にはベートーベンの第九交響楽の中からの歌をもってその国歌にかえるとか、そういった意味におきまして、分裂国家につきましてはそれぞれの国際機関はいずれも非常に苦心した決定をいたしているわけでございます。東京の大会につきましてもそのような——つまり本件の問題になっておるのは北朝鮮ということでございますが、しかし、その国の国旗は掲揚してよろしいのである、こういうようなことが先例としてございましたので、オリンピックに次ぐユニバーシアード、これは数十カ国が参加するわけでございますので、東京オリンピック大会を一つの先例といたしまして、したがいまして、組織委員会のほうでは、北朝鮮という国名、また国旗は参加国の国旗、それから歌の場合はこれはユニバーシアードの歌というのがございまして、これをもって組織委員会はおおむねオリンピック方式である、この方式でもっていけばたくさんの国及び団体に満足してもらえるのではないかという考慮がございまして、そのような意味に立っての申請組織委員会から文部省を通じて出されてまいりまして、対外関係に関する部分につきましては外務省のほうではそれに異議がない、そういう回答をいたした経緯がございますことを御参考までに申し上げます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 朝鮮民主主義共和国、それからドイツ、いわゆる東独、この両方へ招待状が出ておりますか。
  44. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 メンバーでございまするから、メンバー国に対しましては、招待、エントリー、いわゆる参加の要請をしております。つまり、こういう次第でもって何月何日から行なうのである、そういう意味の招請は出ております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 国名は何で出ておりますか。その招待状の国名は何で出ておりますかと聞いておるのです。
  46. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 この招請状は、いわゆるFISUがリストをつくりまして、このリストどおりに発送してくれという依頼を日本組織委員会が受けて、そのとおりに発送しております。したがいまして、その発送のアドレスは朝鮮民主主義人民共和国というアドレスであろうと思います。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 朝鮮民主主義人民共和国、そのとおりです。それが招待に対して応諾をして、組織委員会から出したものを応諾して、それがリストを送ってよこして、なぜ手続をとれないのですか。そこで名前がいかぬというのはどういうわけですか。三木武夫殿と招待状を出しておいて、そして三木武夫で返事が来て、そこでさあ門口を入ろうと思ったら、おまえは三木武夫ではいかぬ、「阿波染夫」で入ってこい、こんなばかな話はありますか。ばからしいことを言っちゃいけません。
  48. 猪名川治郎

    猪名川政府委員 ただいま申しましたとおり、日本側が招待状を出したわけではございません。これはFISUの本部がこれこれの国に、世界各国の名をあげまして、その競技団体の名をあげまして、これこれの国に、こういう次第でもって、その運動の競技大会をこれこれの期間において行なうのであるという意味の通知状と申しましょうか、そういうのを送ったということを申し上げたわけでございまして、いわゆる主人がお客さまを招待すると、こういう意味において招待したということではございませんので、その点のことを御了解願いたいと思います。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 もとより主体は、主人はFISUですよ。今度の場合は東京で開くということで、FISUの中の東京がこれを引き受けたわけでしょう。そんなことはわかり切っていますよ。日本だけで招待したものでないことはわかっている。FISUですよ。それを引き受けた以上は、そのとおりにやったらいいじゃないですか。そこでその名前で招待状を出した。事務はとった。そうしておいて名前はなぜ変えなければならぬか。変えなければ国益に反する、組織委員会から申請がないなんておっしゃいますけれども、中川さん、それは外務省が押えているのですよ。早くしたくてしようがないのだ。文化事業部課長さんおられますか。いままで直接御指導なすっておられるでしょう。強力なる指示と圧力を加えておられる。それにおそれをなした事大主義者の竹田氏をはじめ少数の諸君がそれに屈しておる。内閣与党である自民党の方々ですら、こんなばかばかしいことがあり得るかということを強く主張しておられるわけです。それができないなら、もうやむを得ないから、恥を忍んで返上したらどうだ、そういう意見は国際会議でもあったのですね。三木さんお聞きのとおりです。実に恥ずべきことじゃないでしょうか。私は三木さんが、池田さんや大平さんよりも反動的な政治家だとは思わない。佐藤内閣は確かに反動的だ。しかもあなたはこの間ASPACへ行って、勇気をもってその所信を明らかにされたばかりではありませんか。こんなばかばかしいことでビザを出す、出さない、そのためにユニバーシアードは混乱と停滞をしてしまった、その元凶は三木武夫である、こういうことを私は残すことに忍びないわけです。あなたの勇断をもってひとつ踏み切るか。踏み切れなかったら、返上するように御指導になったらどうでしょうか。道は二つです。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 返上しないでやったらいいと思います。それからまた分裂国家といいますか、そういう場合の国名というのは実際やっかいな問題ですね。そこで、オリンピックという、これは世界的にも大成功した会ですから、オリンピックの先例に従うというようなことでやったらどうでしょうかね。これは理屈を言えば、穗積さんいろいろ言われることも、いろいろ穗積さんの立場としてはあり得ることは認めますよ。しかし、この国名の問題はややっこしいのですよ。だからむしろオリンピックという、これは万人が認めて不平が出なかったですからね。大成功だったのです。やはりこの方式に沿うて、あまりこだわらずに、みながこれに出席してくれて盛大にやったらどうでしょうか。その方式に従うなら、われわれも喜んでこれは迎え入れることに何の——これはだれもそうだと思う。どうかそういうふうでこの会がうまく盛大に運営されることをひたすら願っておるということでお答えにいたします。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 私はそんなことを取り持つだけの立場もないし、関係にありませんよ。事実入ってこないというのだから、日本の家庭の事情や恐怖心でそういうことを言われましても、それなら、分裂国家であるならば、南北朝鮮の全体の代表団を一括して全朝鮮代表という案を出すならこれもまた一つの案でしょう。大学スポーツ連盟名前で入るならいいでしょう。いかがでしょうか。それはどこの国の大学スポーツ連盟だといえば、朝鮮民主主義人民共和国の大学スポーツ連盟、入ってくるのは大学スポーツ連盟というならそれでなぜ悪いのですか、まことに配慮ある提案だと思うのです。それに対して、もう目前ですから、もうすぐのことですから、十七、八日ですからね。だからひとつそれについて具体的に御答弁をいただきたいのです。大学スポーツ連盟でいいでしょう。わが党では田原さんが非常になにだし、それから堂森さんもスポーツ議員であれですから、何か御意見があったら関連質問をしていただきたいと思いますが、大臣、それだけお答えになって、ソ連議長との会談もあるようですから、それだけ色よい返事をしてお立ちください。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 実際、穗積さん、これはやがて、この問題というのはやはり大きな、やはりどこでも、ドイツでもそうでしょう。やはり大問題ですね。第二次世界大戦後のこの分裂国家の問題、これはやはり解決する日も私はあると思うのです。それまでの間はお互いにあまりそれを窮屈に考えないで、オリンピックの例に従って、今度はまあ学生スポーツのお祭りですからね。そういうことで穗積さんも、今度はこだわるなと、影響力を行使されんことをお願いをいたす次第でございます。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだしく不満足で、意外な御答弁ですね。あなたの平和共存は、残念ながらそれは見せかけだ——それじゃ午後にまたお目にかかりましょう。御苦労さま。どうぞ。  田中さん、中国のやつは頼みますよ。あれは何もむずかしいことはありゃしない。中国のやつは、あなた国益に反することが何があるのですか。もう国名中華人民共和国できまっておりますよ。いままでそれで出しているのだし、何もない。中身は、あなた、北京大学副学長、有名な国際的な物理学者周培源団長だ。文句のつけようがありますか。あったら知らしてください、率直に。どこが悪いのです。
  54. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほど申し上げておりますように、わが国利益わが国の公安というものの見地に立って目下検討中でございます。検討中でございますが、これはありのままに申し上げますと、たいへんむずかしい。言いにくいのでありますが、たいへんむずかしいということ、好意を持って検討をしておりますが、たいへんむずかしいということだけ一つ、申し上げておきます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっと私は——旅券のほうの改正問題がせんだってからありまして、それから現実には出入国問題のつど、法務省外務省の無理解、政治的偏向のために、私ども、貴重な時間と精力をこのために使わされているのですよ、事実。ばかばかしくてしようがないのですわ。だからこの点は早く政治的に理解し、手続上も簡素化して、そしてもっと、少なくともヨーロッパ並みには国境の出入りをすべきだ、近代化すべきだというふうに思うわけです。  それで、今度の周培源さんの入国問題も、ユニバーシアードの問題も、両方とも入国問題がひっかかっているから、その精神では大体国民旅行の自由に対する認識を欠いておるのではないか、国際常識に反しておるのではないかということでお尋ねしたわけです。いまの中国入国問題はその一例としてあげたのであって、それをここで決着をつけようと私は考えていない。われわれはあくまで入国を実現しなければならない、それが国のために正しいことである、国益に合致することであるというふうに考えております。したがって、この問題につきましては、ひとつあなたとひざ詰めでお話をしたいわけです。  それから参考までに、きょうは内閣調査室の資料報告がある約束になって、それがなければきょうは条約の審議に入らぬという約束になっておったのですが、委員長がきょうじゅうには出すから了解してもらいたいということですから、私は実は質問に入ったわけです。その意味内閣官房長官の出席を求めておったのです。同時に、内閣官房長官に対しましては、入国問題は外務省法務省、両省にわたっておりますから、内閣との政治問題になっておるので、内閣官房長官の手元で両省首脳部と意見の調整をしてもらいたいという要求があって御出席を願ったわけだ。内調の問題については、まだ資料が出ておりませんから、いまこの時間では質問いたしません。そこで、いただいてからあと取り扱いや疑問点についてお尋ねいたしますが、この入国の問題については両方へ一緒に申し上げておきますから、一緒に御答弁をいただきたい。  皆さん方が、公安の立場で、国益に反するおそれがある、心配があるということが部内で討議去れておるということをいまおっしゃいました。一体その具体的な材料は内調の調査でございますか。あるいは代々木共産党からの資料でございますか。どちらですか。両方ですか。具体的に教えていただきたいのです。内調では周培源一行の全体並びに個別審査をして、好ましくないという調査資料を法務省にお出しになりましたかどうか。法務省は一体どこの資料によっておられますか。内調または公安関係か、共産党関係から出ておるもの、それらについては私どもは一々論駁をする具体的な事実を知っております。それを一々やりとりしようとは思わない。思いませんけれども、公安に心配がある、国益に反するということをいま言われましたが、心配になるというにはそれ相当の資料と根拠がなければならぬはずですね。その出どころは一体どこですかと聞いておるのです。まず法務大臣から……。
  56. 田中伊三次

    田中国務大臣 あらゆる面から判断をしていこうという考えでございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 大臣、こういう基本的人権に関することですし、両国の友好の関係に関する外交問題でもありますから、空想や推測ではいけませんよ。自信がありますか。
  58. 田中伊三次

    田中国務大臣 申請に基づき、あらゆる面からわが国の国益を考えわが国の公安を考え、その上で判断をいたしたいと存じます。存じますが、非常にむずかしいということを正直に申し上げておるわけでございます。
  59. 亀岡高夫

    ○亀岡政府委員 調整の立場にあります内閣といたしまして、現在判断をする諸資料等の整備をしておるという報告を聞いておる段階でございまして、そういう面について、ただいま法務大臣からお答え申し上げましたとおり、目下担当省であります法務省でそういう、大臣がただいま申されましたあらゆるデータを検討していただいているもの、近くそういう結論が出次第、内閣として調整をとる段階に至るものと考えておる次第でございます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 それではついでにお尋ねいたしますが、内閣調査室から周培源一行の入国申請問題について、長官、副長官に何らかの報告がありましたかどうか、これが一点。それから内閣調査室からこの問題に対する調査資料を法務省へ回した事実があるかどうか、その二点について所管の副長官としてお答えをいただきたいのです。
  61. 亀岡高夫

    ○亀岡政府委員 内閣調査室から特に今回の件について資料を法務省に送ったかどうか、私まだ確認をいたしておりません。私自身のところにはいまだそういう報告が来ておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 それではこの問題はいずれ所管大臣、敬愛する田中伊三次大臣と一ぺん前向きで懇談をすることを求め、かつ了解をいただいて、審議を進めることにいたしましょう。大臣、いかがですか、賛成ですか、ここでもってやりますか。
  63. 田中伊三次

    田中国務大臣 ここでやってください。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 それではあなたのほうから出してくださいよ、国益に反する事実を、資料を。そういう話は懇談してやったほうがよくないでしょうか。私はそんないいかげんなあれでは、ここでおやりになるなら引き下がりませんよ。
  65. 田中伊三次

    田中国務大臣 ちょっとお答えしましょう。先ほど申し上げたとおり、あらゆる面から、あらゆる資料に基づいて慎重に検討しておる最中でございますから、どうぞその検討の結果が出ますことをお待ちをいただきたい、たいへんむずかしいということを申し上げておるわけでございます。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、その資料が出ましたから、結論を出される前に一度懇談の機会を期待いたしておきます。よろしゅうございますね。  それでは、続いてお尋ねをいたしますが、東郷局長、さっきの途中で大臣見えたので切れましたけれども向こうが管理権を日本に譲渡しないのは施政権の一部であるという理由だけでございますか。そうでなくて、この部分については沖繩住民出入国日本にまかせることは、情報、治安その他の関係内容的に好ましくない、あくまでアメリカ側が握っていなければ困るから返すわけにはいかないのだという内容の点でしょうか、施政権の一部という形式的な理由でございましょうか。
  67. 東郷文彦

    東郷政府委員 出入域管理権は重要な施政権の一部でございまして、特に内容から申しまして、これを日本側に渡してもらうと、直ちに沖繩の施政権行使の上に重要な支障が起こるからということよりは、やはり一般的に重要な施政権の一部である。したがって、米国として沖繩に施政権を保っておる以上は、これは施政権の一部としてこれを日本側に現在返すということはできないということであると思います。
  68. 福田篤泰

    福田委員長 穗積君、予定の持ち時間がだいぶ過ぎましたから……。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると法理論と実施と両方ですね。するといかがでしょうか。たとえばいま政府がワン・オブ・ゼムの一案として考えておる教育行政権の返還も施政権の一部ですし、返還という考え方ですね。そうするとこれにも関連をいたしまして一切困難であるという類推ができるわけですが、その点についての御判断はいかがでしょうか。
  70. 東郷文彦

    東郷政府委員 旅券問題に関する対米折衝段階におきましても、むろんわれわれといたしましては、当初、できるならばこの出入域管理権もこちらに一挙に持ってきたいという希望はむろん——希望と申しますか、そういうことができればいいことは十分わかっておりましたが、この点に対する米国側の態度がやはり非常に固いものがございまして、遺憾ながら現在米国が施政権を持ったままの状況におきましてこれだけを切り離してこちらに返すということは、見通しとしましては非常にむずかしいと考えます。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 この合意は、形式は、文書によっておりますか、議事録か何かという形式でございますか、何でしょうか。
  72. 東郷文彦

    東郷政府委員 協議委員会において合意いたしましたところを、協議委員会が終わりましてから日米政府間に口上書を交換しまして、それによって定めております。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 口上書ですね。これについて期限と条件はついておりますか。
  74. 東郷文彦

    東郷政府委員 特に期限というようなものはついておりませんし、またいまの条件ということよりは、内容として今回の了解は出入国管理権を渡すものではないというようなことは書いてございますが、それ以外、特に期限とか条件とかいうものがなかったと記憶いたします。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、これからやってみて、それが特にアメリカの沖繩に対する軍事管理の立場から見て好ましくないというのでもとへ戻そうという恣意的、ランダムな提案がないとは限らない。その場合にこの覚え書きはどうなりますか。それはアメリカの一方的な不法な違約になりましょうか。またそういう提案があれば、わがほうは話し合いに応じなければならないことになっておりますか。条件といえばそういうことですね。おそらくはそうでしょう、やってみたが好ましくない。列挙主義で条件をつけてはいないけれども、やってみて……。その理解はどうなっておるのでしょうか。覚え書きの話し合いの合意の有効性ですね。
  76. 福田篤泰

    福田委員長 穗積委員に再度申し上げます。予定の時間がだいぶ過ぎましたので、他の委員の質問もありますので、一時間ということでしたから……。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 委員長、そんなことを言うけれども、何時までやるときめたことは一ぺんもありませんよ。
  78. 福田篤泰

    福田委員長 理事会で一応話し合いをして、一時をめどに採決したいということで……。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 一時までと先にきめるなんて、そういうことをきめたことはない。そんな不見識なことをやって……。
  80. 福田篤泰

    福田委員長 持ち時間は一時間でしたから、そういうことで……。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 それはそういうことでやるように努力はしますよ。
  82. 福田篤泰

    福田委員長 努力してください。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 しかしやってみたら答弁次第ですよ。答弁次第です。きめるなんて約束はしませんよ。いやしくもわが社会党は、審議もしないで何月何日に採決しますなんていうことはできない。
  84. 福田篤泰

    福田委員長 委員長としては理事会の話し合いに従ってやっております。——質疑を続行してください。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 そんなばかばかしいことを言うなら、私はやらないよ。そんな官僚的、独断的な委員長の理解は間違っていますよ。委員長、横暴ですよ。大体きょうは、この前の金曜日が流れた。他の議事の関係で流れたのを、一ぺん打ち合わせしてやったらよかろうということで、きょうはやらぬ日だけれども、それを特に入れてぎりぎりの協力をして、一時に上げるように協力しましょうということで……。
  86. 福田篤泰

    福田委員長 理事会の申し合わせに御協力を願います。あなたの言うことはよくわかりました。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 申し合わせだからやっております。私がむだな質問があったら注意してください。審議引き延ばしの戦術の質問なら、注意しなさい。もっと内容のある質問をしなさいというんなら謙虚に伺ってやりましょう。しかし、きょうじゅうに必ず採決するというんならば、やり方がある。質問が済まないで採決するということは、私が理事をしておる外務委員会では、そんなことは開闢以来一ぺんも約束したことはない。質問はやってみなけりゃ、何が出るかわからぬじゃないか。独断的な横暴なことを言ってはいけませんよ、かえって審議が混乱しますから。御注意を申し上げておきます。  いまの点が心配になる。そんな不安定なものではいけない。
  88. 東郷文彦

    東郷政府委員 覚え書きに従って実施しまして、かりに不都合が起こったとしまして、米側がそれを変えたいということになりますれば、協議委員会なりその他の場におきまして新たに相談しまして、もし直す必要が起こったとすれば、新たな合意によって直すことになると考えます。つまり向こうが一方的にこれを引っ込めたり何かというわけにはまいらぬことでございます。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、期限は、固定期限ではない。それから条件はついてないけれども、いずれか一方から改定を目途とする再交渉はあり得る、こういう取りきめになっておると理解していいですね。
  90. 東郷文彦

    東郷政府委員 およそいかなることに関しても協議委員会に持ち出すことはできるわけでございますから、そういう意味において、もし直す必要があれば、そこで新たに協議し、新たな合意をする、そういう意味において結果として改正になるということは考えられることでございます。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 それから次に内容についてちょっとお尋ねいたしますが、沖繩住民はこの法律上の規定内容ではどういうふうになっておりましょうか。いろいろあるんですよ。沖繩出身の者であってもいろいろなものがありますね。この法律の対象になる沖繩住民とは一体どういう規定でございましょうか。
  92. 山下重明

    山下説明員 この法律の対象になりますのは、沖繩におきます日本人全体でありまして、もちろん沖繩に本籍のある沖繩の人、それから日本から行きまして、向こうに長期滞在している人、そのほか短期の人も、もしもそこで旅券の何らかの変更をするという場合には、手続をとりますと、一応日本国民の全部が沖繩においてこの法律の適用になるということでございます。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 私はこういうふうに理解するのですが、どうでしょうか。沖繩の本籍を持っておって、それで沖繩地域外に生活の根拠を持ち、かつは長年にわたって居住しておる者、それではございませんか。いまおっしゃるように範囲を広げますと、たとえば沖繩出身であって、戦前まだ施政権を放棄しないとき、それでわが国に学生として留学して大学を——われわれの友人にはたくさんあるのです。大学を出て、しかるべく日本で市民権を得、就職をしてやっておる者ですね。それが何らかの所用あるいは生活上の事情で沖繩へ行った。そうすると、そこで長期または短期の滞在ということになると、これは日本国民として、日本本国人よりは違った非常にきびしい審査の対象になるわけですから、非常に不当なことがかえって生じますね。それを私は心配するものですから、それで、ここに言うこの法律の対象となる沖繩住民とは、一体どういう規定で取り扱われますか。その点についてはアメリカとの間できちっとした合意ができておりますかどうか。それでないと、沖繩出身であるけれども日本で大学を終え、日本で生活をしておる、それが今度向こうへ行った。それで、アメリカの政策に対して好ましくないあれをやった。それの出国または外国旅行について、日本におればそういう取り扱いは受けないのに、ここで沖繩の管理権の対象となってチェックされるというようなことはありませんかどうかということを頭に置いて、ここでいう沖繩住民というものに対しては、長期または短期の滞在者すべての日本人ということになろると、その心配があるわけですね。
  94. 山下重明

    山下説明員 この法律の適用は、先ほど申しましたように、日本国民全部でありますが、実際上いま御指摘になりました、特に沖繩の人に対して不利な条項というのは、出国許可をとるという条項であると考えております。この出国許可をとるということは、本籍が沖繩であって、しかも現在沖繩に住んでおる人、その人だけが出国許可が必要だ。そこで、もう日本に前から来ておって、ちょっと向こう旅行して、そこで旅券をとるというような場合には、この出国許可をとる必要はございません。これは米国との話がついております。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 相当長期の滞在の場合はどうなりますか。向こうへ行って相当長期の滞在で、短期のトラベルでない場合ですね。日本本国と沖繩と両方に生活の基礎ができる、事業あるいは職業で。
  96. 山下重明

    山下説明員 いま申し上げましたように、沖繩の本籍を持っている人がかかるのでありますが、日本から一時帰るという人もそのような取り扱いになるように取り計らっております。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 続いて出頭免除の場合がありますね、受領するとき。これは列挙的にお取り扱いになりますか。どういう場合ですか。出頭を免除する規定があります。場合によって出頭を免除する。これは役所のほうのランダムの判断でかってにできるのか。列挙的にこういう場合、こういう場合というように制限条項をつけておるのか。これは内規の管理令の問題にもなるかと思いますけれども、もしわかりましたら——実はこれが非常にトラブルを起こすのですよ、出頭を免除するか免除しないかという問題が。それで聞いておるのです。ささいなことのようですけれども……。
  98. 内藤武

    ○内藤説明員 お答えいたします。  出頭免除に関して、まず申請の時点における出頭免除と、それから交付の段階におきます出頭免除と二つございます。われわれのほうの考えといたしましては、日本における出頭の問題との関連もございますので、まず申請段階におきましては、原則的に本人出頭ということにいたしまして、なるべく本人確認をするということでございまして、実際の手続といたしましては、事務所長がそのことを認定するわけでございますが、災害とかそれから、非常な交通不便だとか、交通途絶とか、そういう場合に、万やむを得ないと考える場合においてのみ出頭の免除をする、そういう考えでおります。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 それではもうこれで協力してやめますが、最後に、日本国外務大臣の出しましたパスポートを受領して外国へ旅行いたします。そこで外国へ出まして、行政上あるいは刑事上、民事上のいろいろな事件がもし起きたといたします。被害または加害ですね。そういう場合の保護権については、これはどうなりますか。
  100. 東郷文彦

    東郷政府委員 その問題は、旅券を持って行く、従来のように渡航証明書であるか、旅券を持つかにかかわらず、第三国におきまして、日本人及び沖繩住民に対する外交保護権は一時的に日本政府がこれを行なうということになりましたので、日本政府が一時的に外交保護に当たることになります。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 これがこの間の船の問題でもあるのですけれども、例の施政権の分離問題と関連をして、出入国審査権日本にない、出た者に対する外交保護権は日本が持っておるとなると、外交保護権というものは施政権の一部をなすものではないでしょうか。そこのところはちょっと不統一というか、秀才どものそろっておられる外務省法務省の役人の方のお考えとしては筋が通らないように思うのですが、いかがなものでしょうか。外国から見れば、日本外務大臣の委任状ともいわれるべき日本政府パスポートを持っておる、本国の者に対しては日本国民として取り扱う、沖繩の者に対してはアメリカ施政権下の市民ではない、何と言うのだ、植民地人である、あるいは軍政下の被管理人である、被支配人であるということで、ちょっといろいろな権利義務関係に相違を来たしていると思うのですね。そこで私は、出入国審査権の問題、管理権の問題と、出た場合の外交保護権の問題との平仄が合わないように思うのです。聡明な皆さんのことですから、筋道立てて説明をしていただきたい。事が起きる前に伺っておく必要があると思うのです。
  102. 東郷文彦

    東郷政府委員 出入国管理権は、先ほどから申しておりますように、アメリカが持っておりますが、外交保護権の問題は、これは一たび外に出た者に対する問題でございますので、その意味におきましてこれは別問題と考えてさしつかえないと存じます。むろんこの沖繩の状態に関しましては、現状自身が非常に不自然なものでございますので、出入国管理権向こうが持ったまま日本旅券を発給するというのは、ある意味において片手落ちの措置でございますが、残念ながら今日は出入国管理までこっちが引き受けるということになっておりません。しかしながら、かと申しまして在外にある者に対して、これは日本国民である者が在外におることになりますので、これに対して外交保護を日本側が一次的に行なうということはこれまた当然のことかと考えますので、現在は不自然ではございますが、その間に矛盾、抵触というようなことはないと考えます。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、行政上、刑事上、民事上、権利義務関係を生じたときに、その権利義務関係が個人にとどまらないで、国家間の問題にもなり得る場合がある場合にも日本政府はその責任を持つわけですね。あるいは権利を主張できるわけですね。それから同様のことが第三国において起きたときに、その沖繩住民に対してアメリカの施政権は、外交保護権は何ら発生しないのであるかどうか。この二点についてお尋ねいたします。その点明確にしませんと、沖繩人というものは、憲法もなければ市民権もない。国際的にも、日本国という名前はあっても、権利義務関係の実体のない浮浪人のようなものだ。これからますます外国に出る場合が多いだろうと思うんですね、こういう便宜的な方法が出てきますと。ですから、そういう疑点を含めてのお尋ねでございますから、日本政府外交保護権の中身の権利義務関係と、それからこの沖繩住民に対するアメリカの施政権外交保護権は一体どうなるのか。それから権利義務関係はどうなるのか。その点はっきりしていただきたいことを期待をいたしまして、私の質問は終わることにいたします。再質問しないで済むようにお答えいただきたい。
  104. 東郷文彦

    東郷政府委員 第三国におきます沖繩住民外交保護に関しましては、第一次的に日本政府がこれに当たる。実際問題としてはそれでおそらく解決がつくと思いますが、かりに日本政府外交代表のおらぬような場所におきまして緊急を要する問題が起こった、またそこにアメリカの外交代表がおった、こういう場合にはむろん施政権者であるアメリカの責任において外交保護が行なわれるわけでございますので、その点におきましては、実際は日本及びアメリカ両政府外交保護がありまして、ただ、もともと日本人でありますので、第一次的に日本が行なう、こういう形になるわけでございます。  それから第二の点の御質問に関しましては、いま具体的にどういうことがあるか、ちょっと考えられませんですが、たとえばかりにそういう沖繩の施政権者を交えなければ解決できないという問題が起こりました場合には、やはり日本政府といたしましては、その解決のためには高等弁務官、すなわち琉球における米国当局を通じて、これを解決するということになると思います。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと恐縮ですが、アメリカが第二義的に外交保護権を持っていると言った。本人は日本政府外務大臣パスポートを持っておる。その者に対して国際法上外交保護権はありましょうか。政治的、事実的に口添えはする、努力はするという政治上の道義の問題であって、対外的に権利を主張し得る外交保護権というものが生じるのでしょうか。二カ国が外交保護権を持っているということになりますね。それで第一義、第二義と言われますが、第一義と第二義とはどう違うかということですね。それは政治的な意味で言っておられるのか、法律上も差別があるのか、相手方に対する権利義務の主張の権限について差異があるのか、第一義と第二義の間に。私はこういう事件が起きることを望みませんけれども、お互いに法律を学べば、法律というものは最悪の事態に備えるためにつくっておかなければならない、特に権利義務関係は。そう思うので、もう一ぺんになるようですけれども施政権の一部をなしておるから、出入国の管理権、審査権日本には絶対渡さないと言った、そのものが出た場合に、それらに政治的、行政上——政治的というのは行政上ですね、あるいは外交上でもいいでしょう、あるいは刑事上、民事上の権利義務関係を生ずる事態が起きたときに、日本に第一義外交保護権があって、アメリカにもある。第一義と第二義の間に差異があるかどうか。日本パスポートを持った沖繩人について、アメリカがその相手国に対して外交保護権を発動する権限が一体どこから出てくるのでしょうか。それは法律的にはなくて、政治上、道義上はある。大国であるから相手も無視しないであろうという安心感なのか。それから、第一義と第二義保護権というのは一体どういう違いがあるのか。精神的なものでしょうか。法律上ネゴシエートする権限に差異があるのかどうか。はなはだ疑問が残るわけですね。その点、そういうことが起きることを望みませんけれども審議する以上は、それは重大なポイントの一つとして解明しておく必要が、政府国会の間の義務としてあると思うのです。
  106. 東郷文彦

    東郷政府委員 穗積先生もよく御承知でございましょうが、外交保護権と申しますと、あたかも積極的な権利のようでございますけれども、実際にはその国の国民が第三国にあります場合に、何か身体、生命、財産の保護その他の問題に関しまして問題がある場合に、その国民の属する国の政府相手国政府に向かっていろいろな措置をとっても、これが内政干渉にならないという意味でございまして、むしろこの積極的な権利と申しますよりは——権利と申しましても、その内容は、そういうことが起こった場合に、相手国政府に対する内政干渉ということにならないで救済に関する責任を果たす、こういうことでございますので、現にいま穗積先生のお話のような場合に、第三国におきまして、沖繩住民に関して何か事件が起こったというときに、たまたまそこに日本政府のあれがいなかった。アメリカの領事が出ていったときに、相手国のほうから、おまえは何だ、こういうことがあり得るかもしれませんが、そういうアメリカの権利と申しますが、責任と申しますのは、アメリカが現に沖繩に施政権を持っておるというところから発するものでございまして、その間の事情相手国によく説明すれば、相手国としては、これは道義の問題とかなんとかいうことでなくして、国際法上の権利ないしは習慣として相手国のほうもアメリカの出先官憲がそういう保護にあたる、保護の責任を果たすということは当然受け入れるべきことであると考えます。  また、一義的、二義的と申しますと、いかにも区別があるようでございますが、実際には、日本のほうが、日本国民である沖繩住民に対してそういう保護権を行使するということが望ましいというふうに考えられますし、大部分の場合にはそれで問題は果たし得ると考えております。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの言われるとおり、私も具体的にいい例が、万事に通ずる凡例になるような事件というものは頭に浮かびませんが、たとえば沖繩住民が外国へ出て破壊活動をした、そして政府に非常な損害、不利益を与えた、それからまた周囲におる住民の財産、生命にも非常な障害を与えた、こういう事件が起きたときには、行政上、外交上または民事上、刑事上の損害賠償請求権が相手に生じますね。それに対したときに、本人は支払い能力がない、補償責任能力がない、あるいは同時に死亡をしておったというような場合に、その政府国民の生命、財産に対する補償責任は残りますね。そのときにその補償責任は、日本政府のみが負うのか。アメリカ政府も負うのか。負うとすれば山分けにするのか、どういうことになりますか。いまの外交保護権は甲乙はないという御説明、第一義、第二義ではない、並列だ、こういうお話でありました。
  108. 東郷文彦

    東郷政府委員 どうも仮定の問題で非常にむずかしいのでございますけれども、いまの例でございましたらば、いわゆる外交保護と申しますのは、不幸にしてそういうことを犯しました沖繩住民が現場におきまして警察に逮捕され、牢屋に入れられる、そういう場合に、沖繩住民がその国における人権保護の制度に従って正当な手続を経ているかということを確かめるのが外交保護権の内容でございまして、そこに発生しました損害賠償という問題は、これは日本政府の問題ではなくして、琉球政府及び沖繩の施政権者である米国政府の間において、その損害請求国との間において処理されるべきものでございます。日本政府としては、その間おそらくいろいろなあっせん連絡には当たるかもしれませんが、損害賠償の問題としては、あくまでも米国政府及び琉球政府が処理すべきことでございます。日本政府としては、その損害賠償に対する責任はないと考えます。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 問題点は残りますけれども、これはここで議論しなくてもいいから、他の委員の方に……。
  110. 福田篤泰

    福田委員長 戸叶里子君。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 簡単に、いまの穗積委員の質問ですけれども、そうしますと、私たちがパスポートを持って外国へ行ったときと、沖繩の人が日本人としてのパスポートを持って外国へ行ったときと、どういうふうに違うのですか、保護権とかいうものは。
  112. 東郷文彦

    東郷政府委員 違いはございませんと思います。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 違いはございませんということになると、いまの穗積委員の質問に対するお答えと違うのじゃないですか。いまの穗積委員の質問に対するお答えは、最終的な保護権が沖繩の民政府にある、アメリカにあるわけですね。ところがいまの私に対する御答弁によりますと、同じだというのでしょう。私たちがパスポートを持って行った場合と、沖繩の人が日本人であるというパスポートを持って行った場合と同じだというわけでしょう。そうすると非常に違うわけじゃないですか。
  114. 東郷文彦

    東郷政府委員 先ほど穗積先生には二つの点を御返事申し上げたわけでございますけれども外交保護権ということにつきましては、同じであると考えます。むろん沖繩住民の場合には米国政府としての、沖繩の施政権者としての責任は残っておりますが、その意味においては違いますが、日本政府としての外交保護権については、これは同じであると考えます。穗積先生に先ほどこれは琉球政府及び米国政府の問題と申し上げましたのは、そういう場合に、かりに相手国政府ないしは相手国国民のほうから請求権が起こったというような場合には、琉球政府及び米国政府において処理すべき問題である、こう申したわけでございまして、外交保護権自身については同じであると考えます。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、もう一度念のために申し上げますと、私どもパスポートを持っていくのと、沖繩の人パスポートを持っていくのと、外交保護権は同じである、ただ沖繩の人のパスポートには、出域の許可という民政府の判が押してあるわけですね。そういうところが違うので、そしてまた施政権がアメリカにあって、そういう中で沖繩の人が外国へ行くので、沖繩の人が何か外国で問題を起こして何か請求された場合にはアメリカがこれを負ってやるのだ、民政府が負ってやるのだ、ほかの場合には日本の本土の人が外国へ行った場合と同じである、こういうふうに考えていいわけですか。何か問題を起こして相手国から請求されたときだけ民政府がこれを保護するのであって、ほかの場合は全く日本政府が保護するのだ、こういうふうに了解してよろしいのですか。
  116. 東郷文彦

    東郷政府委員 いわゆる外交保護ということに関しましては内容が同じでございますが、ただ、いまのように請求権とか何かそういうことになりますと、これはやはり一つには沖繩における施政権者のあっせんがなければできないような問題、あるいは場合によっては、先ほどの穗積先生の例によりまして、沖繩の政府が何らかの責任を負うというような問題が出てくる場合の例であったのでございますが、そういうことになりますれば、これはもう外交保護の問題ではなくして、第三国と沖繩との間の問題になりますので、それに関しては、日本政府責任——まあ、あっせん仲介はいたすといたしましても、そこまで入っていくことはできないわけでございます。したがいまして、結論としては、先生の御質問に対してはそのとおりということでございます。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 それで大体わかりました。そうすると、私どもは、今度の沖繩に対するパスポートは、この旅券法改正によって私たちと全く同じ扱いを受けるのかというふうに考えたわけですけれども、いまのお話では、請求権を伴うときには違っているのだということだけはわかりました。そこからまたほかのいろいろな問題が出てくるかもしれませんけれども、ともかくその問題はそういうふうな理解において一応了解したことにしておきたいと思います。  そこで、次の問題に入りますが、いままで沖繩の人がやはり外国へ出たと思うのです。そのときにビザをどういうふうにしていたかということと、それから時間の関係で続けてまいりますけれども、これからはビザはどういうふうにしてもらっていくのか。たとえば日本を通らないで行く場合には、どうやってビザをもらっていくか、この点について伺いたいと思います。
  118. 山下重明

    山下説明員 いままでの場合におきましては、沖繩の人が旅券をとるときに、日本に来てとる場合、その場合には日本においてビザをとっております。それから外国に出まして、外国における日本の領事館へ行って旅券をとります場合には、大体その国の外国の領事館のあるところでビザをとって済ましております。今後は大体沖繩で旅券をとりますので、一応郵送なり何なりして、東京の領事館なりでビザをとる。また移住なんかをいたします場合には、ブラジルあたりの領事館の領事担当の人が出張してビザを出すことも考えておるようでございまして、こういう問題についてはなるたけスムーズに沖繩の人たちがビザをとれるようにわれわれも援助したいと考えております。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、沖繩でビザをもらえる国がありますか、アメリカを除いて。
  120. 内藤武

    ○内藤説明員 いま話されましたことは、二つ問題があると思います。いま山下審議官がお答えされたのは、沖繩住民がいわゆる民政府の発行の身分証明書を持って一たん外国に出て、あるいは証明書を持って日本に参って、旅券をとったあとにおいて査証をいかにしてとるかという問題と、それからもう一つは、米民政府が従来出しておりました身分証明書、すなわち海外渡航用の身分証明書についてどのような訪問国の査証をとったかという問題を含めてのことでございますれば、従来、身分証明書に対しましては、たとえば台湾とか若干の国につきましては沖繩自身において査証をとることができましたし、その他の地域におきましては、その身分証明書そのものに対しまして査証の申請を行なってそれを得ていた。必ずしも全世界の国についてではございませんけれども、そういう手続によって査証をとっておったということでございます。
  121. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、いま沖繩でとれるのは、台湾その他若干とおっしゃいましたけれども、どこなんですか。
  122. 内藤武

    ○内藤説明員 沖繩においてとれますのは、エージェントが代理申請という手続によりまして査証をとっておった国をあげますと、たとえば、オーストリア、英国、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、スウェーデン、スイス、タイ、カンボジア、カナダ、セイロン、ベネズエラそれからベトナム、こういった国が入ります。
  123. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、エージェントがあって、そこに代理申請をすることによってとっていたのですね。わかりました。  そうすると、次にお伺いしたいのは、この特例法の六条を見ますと、「この法律及び旅券法の規定により外務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、南方連絡事務所長に委任することができる。」こういうふうに書いてあるわけでございまして、この六条によって本土の旅券法というのは沖繩に適用されるように政令できめるのじゃないかと思うのですが、そうでしょうか。本土の旅券法とこの今回の旅券法との関係はどうなっておりますか。いわゆる母法とこの関係はどうなっておりますか。
  124. 山下重明

    山下説明員 いままでの旅券法とこの特例法の関係でありますが、旅券法そのものは、実際上は現在までも沖繩まで及んでいた。しかしながら、実際に旅券を出す手続がなかったということで、この特例法をつくりまして、その特例法に述べてありますところで読みかえを行なうということでありますから、両方使って旅券を発給する。  そこで、この六条でありますが、これは特定の事項、たとえば返納を命じた旅券の場合、あるものは失効させるというのが旅券法にありますが、そういう失効の手続をとる手続とか、その他返納命令を出す場合、旅券法の十九条一項というような場合の返納命令を出すのを沖繩だけでできるようにするとか、もしくは実際に無効になりました旅券を今度はボイドにする。それでボイドにしてお返しする、そういうような手続も一応外務大臣がやるようになっておりますから、それを政令で規定しまして沖繩の南連事務所長ができるようにすることにしております。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 旅券法の十三条だったと思いますけれども旅券申請に対して外務大臣が発給を拒否するものがあると思います。これがいつのときにもたいへんに問題になる条項でございますが、すなわち日本の国益を著しく害するおそれのある者には旅券は発給しない、こういうことが書いてあるわけですけれども、これも当然適用されているわけですか。
  126. 山下重明

    山下説明員 今度の特例法によりまして、沖繩において旅券をお出しする場合におきましても、この十三条も当然沖繩で実際に施行されておりまして、実際上の場合には沖繩において申請がありました場合に、領事館において、いままでも渡航先追加のときに領事館がその十三条というものを頭に入れて取り扱っておりましたと同じように、あるものは現地限りで出しますが、あるものは東京に伺いを立てて、東京のオーケーが出てからお出しするということになるので、われわれとしてはなるたけその東京に経伺する必要のある範囲をしぼって、なるたけ現地でスムーズに出したいというふうに考えております。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことじゃないんですよ。現地でスムーズにしたいということはそれは当然なんですけれども、ただ、私の聞いておりますのは、十三条というのは適用されるのですねということだけですから、それだけお答えいただけばけっこうです。  それで、適用されるということがわかったわけです。そうしますと、こういう問題が起きてきませんか。今度南方連絡事務所でいろいろ世話してくださるわけでしょう。そうすると、民政府のほうから出域の許可が出ますね。許可が出ても、南方連絡事務所で、この人は渡航させたくないというような理由をつけて渡航させないような場合が出てきはしないかということをちょっと私は心配するわけです。こういうことはいかがでございますか。
  128. 山下重明

    山下説明員 出域許可がありましても、一応日本旅券法の十三条の点において旅券をお出しできない場合があり得ると思います。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、アメリカのほうで出域の許可を出して南方連絡事務所では出さない、そういうことになると、その調整はどうなるのですか。アメリカの権限というものと日本政府考えというのが違ってくる、そういったときの調整はどういったことになるのですか。
  130. 山下重明

    山下説明員 アメリカはアメリカの出入国管理立場から審査いたします。それと日本が、日本の国のための、先ほどから議論がありました国の利益並びに公安という点から審査をいたします。それは別々に行なわれまして、何ら差しつかえないという了解のもとに事務をしていくことになると思います。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃないのですよ。琉球政府を通して民政府に、私はどこの国へ行きたいからといって出域の許可をもらうわけです。そこで南方連絡事務所へ行って、そしてその国のパスポートをもらう申請をするわけです。そうすると特例法があって——母法があるでしょう、そうするとこの母法で国の利益に反する者ということでもって制限されるわけですね。そうするとこっちのほうの権限というものは死んで、こっちのほうが生かされて外国へ行けないということになるわけですか。
  132. 山下重明

    山下説明員 いまのこっちのほうと言われたのは特例法のことでしょうか。特例法と母法というものは一本になるわけです。母法のうちのある部分を特例法で読みかえているわけですから、母法だけしかない。母法がただ読みかえられているというふうに了解すれば、その母法による審査が日本政府で行なわれて旅券が発給されるということになると思います。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、最初に沖繩の人というのは民政府からの出域の許可をもらわなければならないでしょう、許可をもらって、そしてアメリカのほうでは出してもいいんだということを許可していても、日本政府がこれは出したくないというときには行かれませんね、出しませんね、この点をはっきりしておいてください。
  134. 山下重明

    山下説明員 そういうことがあり得ると思います。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、そんなことはあまりないかもしれませんが、たとえばアメリカのほうではこの人を外国へやりたいのだ、日本のほうではやりたくない、こういうようなときに何かトラブルが起きやしないかというふうに思いますけれども、今度の特例法で沖繩から外国へ行く人は必ず出域の許可とパスポートの両方を持っていかなければならないのですね、いままでは出域の許可だけでよかったのですが、これからはいけないのですね。その点を伺います。
  136. 山下重明

    山下説明員 今度のアメリカとの申し合わせにおきましては、出域許可を持っている人に旅券を出すということの申し合わせができているので、実際上は現在までの身分証明書をアメリカが絶対出さないというところまで話し合っておりません。いままでの身分証明書、いままで沖繩の人たちが外国へ出る場合に身分証明書を持って、その身分証明書を今後は出さないという点においては話し合いをしておりません。そこで、実際上は大部分が旅券でこれから出ることになると思いますけれども、今後絶対にアメリカ民政府の身分証明書で出ないということはないわけで、実際上アメリカがどうしても身分証明書でも出すということは理論的にはあり得ると思いますけれども、われわれは実際上は今後ほとんど旅券で行って、そういうふうにアメリカの民政府とわれわれの間で意見が違って、トラブルになるようなことはまずないものと理解しております。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 意見が違ってトラブルはないかもしれません。しかし今度旅券法改正したのは、日本人というパスポートを出して、そして沖繩の人が外国へ行くようにしたわけですね。ところが、いまのお話では、アメリカとの話し合いでは、まだアメリカの身分証明書で外国へ行けないんだということまでは話してない。したがって、沖繩の人が外国へ行く場合には日本パスポート日本人としてのパスポートをもらって行くか、あるいはアメリカの身分証明書をもらって行くか二通りあるということで、別に二通りで外国へ行けるということなら、この旅券法を出しても全然意味がないじゃないですか、そういうことだったら変わりないと思うのですけれども
  138. 山下重明

    山下説明員 実際上は、いまでも沖繩から出られる人が身分証明書でもって非常に外国で不便して、査証も自由にとれない、そういうことで沖繩の方たちが旅券を持ちたいということで、日本政府が今度旅券を出すように話し合いをしたわけで、そういう希望のある方はみんな旅券をお出しする、そうしてアメリカの出域許可さえあればみんなお出しする。そういうことで、いままで不便であった方々が今後は非常に便利になる。ただその場合に、アメリカ側が実際に身分証明書を出して、そうして沖繩の人で自分は旅券は要らないという人があれば、理論上は今後もそういう身分証明書で行く方が出ると思いますけれども、実際上はほとんどないと了解しております。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことになりますと、旅券法改正してもあまり意味がないのじゃないかというように私ども考えるわけです。二通りの行き方で行けるわけです。いままでの形でも行けるし、また旅券法改正して日本人としてのパスポートを持っても行ける。二通りになると、そこにちょっと混乱が起きるんじゃないかということを私は考えます。これに対して何かおありになったら、あとからつけ加えておっしゃっていただきたいと思います。  時間がないですからその次に入りますけれども、沖繩の公用旅券というのはどういうのをいうのか、そうして沖繩には公務員がいますね、そういう人たちが公用旅券を使えるかどうか、いままでも使ったかどうか、この点を伺いたいと思います。
  140. 内藤武

    ○内藤説明員 今度の特例法の第二条第四項に公用旅券のことについて規定してございますが、ここでいいます公用旅券というものは全く旅券本法のほうの公用旅券ということで、本法においての手続のとおりに国の用務によって国外に渡航する者について発給するということでございます。  それから、いまのお話の沖繩において、従来アメリカ側の米民政府発給の公用の身分証明書というものが琉球政府の職員について出ておったことはございますが、それにつきましては琉球の用務は日本の国の用務ではございませんので、それに対して公用旅券を出すということはございません。したがいまして、琉球においても公用旅券を出すことがある、しかしながらそれは日本政府の国の用務であるということで、全く日本の国内どおりの手続でやります。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 さっきのを山下さんから……。
  142. 山下重明

    山下説明員 さっきの点でございますが、実際上沖繩の方たちは、いままでも、一回外国へ出て旅券をとられるということが、去年、四十一年度におきまして大体六百名くらい、特に南米なんかにおいて非常にとっておられるので、そういう形から考えましても、今後この制度ができれば、直接沖繩の人が日本旅券を持っていかれるということになるものと了解しております。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 けっこうです。
  144. 福田篤泰

    福田委員長 堂森芳夫君。
  145. 堂森芳夫

    堂森委員 もうすでにこの前も質問いたしましたし、また穗積議員や戸叶議員がお尋ねしようと思っておるところをお聞きになりましたので、一点だけ、非常にこまかいようでありますが、問題でありますので、お聞きしたいと思います。  われわれがパスポートをもらうときに、手数料ですか、税金ですか、払っていますね。これは幾らでございますか。
  146. 内藤武

    ○内藤説明員 千五百円です。
  147. 堂森芳夫

    堂森委員 千五百円ですね。ところが、この間沖繩の人に会いましたら、いまは身分証明書が八十セントだそうですね。そうすると、千五百円から見れば非常に安いわけです。今度沖繩の南方連絡事務所パスポートをもらうときに、手数料ですか、税金ですか、幾ら払うようになるのですか。
  148. 山下重明

    山下説明員 この今度の特例法によりまして、沖繩で旅券を出す場合におきましては、大体日本の千五百円にあたるものを政令ではっきり——米ドルで大体四ドル十セントになると思いますが、それを政令ではっきり示す予定にしております。
  149. 堂森芳夫

    堂森委員 沖繩の人の多数の意見だそうですが、日本の内地より所得が少ないんだ、しかも沖繩の人たちが海外に出る場合の非常に多くの部分が、移民の諸君である、あるいは出かせぎに行く諸君である。したがって、旅券に対する手数料ですか、税金だと思うのですが、これが内地並みの千五百円になるということは、こまかいようだが、沖繩に住んでおる住民としては非常な問題になっているのだそうであります。国会の席等でもこれを内地並みにしないように、八十セントでやってきたのだから、これは特別控除を政府がするように要望してくれ、こういうことがございました。あなたの御答弁では、それはもう千五百円にするのだ、これはいかがでございますか。
  150. 山下重明

    山下説明員 いま御指摘がありましたように、沖繩におきましては移住する人たちとか働く人が、非常に旅券が高いというお話でありますが、今度日本側旅券を出すようになりますれば、旅券法の中に手数料のところに規定がありまして、働きに行く人については五百円にしますし、また移住する人については百二十円にすることになっております。特に、移住する人の場合には、今度この旅券と一緒に、日本の海外移住事業団が沖繩の中に事務所を持って、直接世話するようになりまして、その場合には移住する人に対しては渡航費の支給と、そのほかに旅券の手数料なんかを払うために特別に補助金が出ることになりますので、実際上はただで旅券が出るようになるということになります。これは日本の側でも同じ取り扱いであります。
  151. 堂森芳夫

    堂森委員 これに関連しまして、従来沖繩における手数料等の料金は、沖繩政府の収入になっておったわけでしょう。今度はこれは日本政府南方連絡事務所がやるわけですから、日本政府の収入になるわけでしょう。そうすると、そういうものが一年に何か七万ドルぐらいになるとかいうのじゃないですか。これが全部日本政府の収入になっていくということになると、琉球政府としてはもちろんこれは収入減になりますね。これに対して、額はそう多くないにしても、何か日本政府でこれを償いをしていくようなことにするのですか、いかがですか。
  152. 加藤泰守

    ○加藤説明員 その点につきましては、これは一般の財政援助の問題として、琉球政府の財政上の要求とそれに対する収入、その関係をよく検討して財政援助をきめていくことになると思います。これはもちろんアメリカの援助もございますが、そういうことで日本政府の一般財政援助の問題として実際の収入減の問題は処理される、こういうふうにお考えになったらいいと思います。
  153. 堂森芳夫

    堂森委員 それは琉球政府との間に話がついておるのですか。
  154. 加藤泰守

    ○加藤説明員 その点については特に話はしておりませんけれども、しかし、琉球政府の財政規模、それに対する琉球政府の収入、それと日米の援助の相関関係できまるということになりますので、七万ドルの問題につきましては、当然全体の問題として十分検討されると思います。
  155. 堂森芳夫

    堂森委員 ここでそういう答弁をしておっても、実際はほっておくのだということになると困るから、くどいようですが、それは確かなんですね。
  156. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、琉球政府と特にその点を話し合ってはおりませんけれども、将来の問題としては一般援助の問題として考えていけると思います。
  157. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  158. 曾禰益

    ○曽祢委員 私どもがこの旅券法特例法案に特に重大な意義を感ずるのは、むろんこれは沖繩の人たちの外国における活動、その中には移民の活動もあるでしょうが、そういうものに対して便宜を供与するという意味以外に、わが国に沖繩の施政権を何とかして早く返還させたい、これはもう沖繩の住民ばかりではない、日本国民全体の念願ですが、その観点から見て、従来からも部分的にはやっておったけれども、沖繩の住民が日本旅券で渡航ができる。言うならば外国、第三国といいますか、における外交保護権、これは外交保護権という以外に、移民の保護みたいな、従来の外交保護権以上のものもあるかもしれませんが、対外活動に対する保護権という日本の法権が、沖繩の住民に及ぶという意味において、やはり沖繩問題の部分的にもせよ前向きの解決に、一つの新しいかぎを与えるような感じがする。これと並行して、これにややおくれて、ことしの七月一日からやることになった沖繩の船舶に対して、これはアメリカ側のほうは日本の国旗ということは認めてないようでありますが、白地に赤でもいいですが、事実上は日の丸を掲揚し、プラス沖繩の三角形の旗をつけておるようですけれども、とにもかくにも船舶に対しても日本の国旗を持たしていく。人に対しては日本旅券を持たしていく。こういうような一つの新しい形における施政権返還への試みといいますか、アプローチといいますか、こういう意味におきまして私どもはこれを重視し、かついまやっておる内容についてはむろん足らざるところがあるけれども、そうすかっとした解決はできないだろうが、とにかく国の主権の一部でも、わが国の主権が出ていくということにおいて、これを受け入れていきたいという基本的な態度で臨んでいるわけです。そういう意味からいって、同僚委員のいろいろこまかい御質問があったあとですけれども、なおかつもうちょっと質問をしてみたいと思うのです。  第一に、この資料はこれは一体何ですか。日米協議委員会第九回の正式の議事録ですか。この資料の説明がないのですけれども、これは非常に重要な資料だと思うので、これを聞きたい。
  159. 山下重明

    山下説明員 これは昨年の五月九日に外務省の中で行なわれました協議委員会あと、その協議委員会で日米間で合意されましたのは、文書ではなく口頭でありましたので、情文局でこれに基づいて新聞発表したものであります。そのあとこまかい点が討議されて、ことしになってから、最終的な話し合いができたわけであります。
  160. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうしますと、これは情文局の新聞発表のテキストであって、この協議委員会にそういうしきたりがあるかどうか知りませんが、別に協議委員会における正式の議事録でもない、こういう意味ですか。
  161. 山下重明

    山下説明員 はい、そうです。
  162. 曾禰益

    ○曽祢委員 それなら、さっきたしか東郷局長答弁の中にあったように思うのですけれども、これに基づいて、たとえば第三項に書いてあるような「日米間で今後協議することが合意された。」あるいは第四項にあるような「在外沖繩住民の保護について、日本政府が従来以上の責任を負うべきことが合意された。」こういうことの内容については、はっきりした文書、口上書ですか何か知りませんけれども、そういったような文書がきちっとしてかわされているのかどうか。もしかわされているとするならば、そういうものを提出していただかないことには、この特例法だけで審議しろというのは、さっきからの質疑応答を聞いていても、これは少しむちゃじゃないかと私は思うのです。たとえば出入国管理についても先ほどからのあれによれば、一応アメリカに出入国管理権を留保しているようだけれども、同時にわがほうの旅券法のたてまえからいって、わがほうも出入国管理——全般的に言えるかどうかは別として、少なくとも旅券法に基づく旅券を出さないという管理権の作用はやっているわけですね。また在外、第三国に行った沖繩住民に対する外交保護権もこれは先ほどいろいろお話があったけれども、要するにこれは日本の保護権とまたアメリカの保護権とがある意味で競合されて——競合ということは必ずしも抵触するとか悪いという意味でなくて、少なくとも片方だけが行なわれて、片方を排除してないという形において競合されて行なわれている、こういうような非常に法律的にもややこしい状態、これは事態そのものがややこしいからやむを得ない面があるにせよ、そうなればなるほどこういう問題については日米間にきちっとした条約——と言ってはおごそかに過ぎるけれども、いかなる行政的な約束にせよ、文書によるきちっとした取りきめがあるのが当然じゃないかと思うのです。その点、どうなっているのです。
  163. 東郷文彦

    東郷政府委員 日米協議委員会はいわゆる協議の場でございまして、そこにおいて意見の一致を見ました問題につきましては、これを後日整理いたしまして、両政府間の合意という形を整えるわけでございます。今回の場合もその後五月の委員会がありましてからあといろいろこまかい点も検討いたしました末、ことしの二月に口上書を交換して、詳細固めております。
  164. 曾禰益

    ○曽祢委員 その口上書をここで直ちに御提出を願いたい。
  165. 福田篤泰

    福田委員長 政府側に要求いたします。
  166. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は審議に協力するのですけれども、そのくらいなものはなぜ初めからお出しにならないのか。皆さん非常に協力されていると思うのですよ。いろいろスピードの問題もありましょうけれども、そういうものをお出しになれば、相当論議の時間もセーブできるのじゃないですか、それを直ちにお出し願いたいと思います。
  167. 福田篤泰

    福田委員長 政府側に注意いたします。当然の要求でありますから、直ちに取り寄せて提出するようにお願いいたします。
  168. 東郷文彦

    東郷政府委員 これは普通の外交文書でございまして、そのまま発表することはないということで取りかわしておりますものでございますから、どういう形で御提出できるか、即刻検討さしていただきたいと思います。
  169. 曾禰益

    ○曽祢委員 むろん外交文書だから、発表について相談されても当然でしょうけれども、逆に言えば、特に秘密を要するようなことがあろうと思われない。なぜそういうものを進んで審議の材料にお出しにならないのかが不可解ですね、むしろ。直ちに休憩して外務大臣と相談してください。委員長要求します。
  170. 福田篤泰

    福田委員長 速記をやめてください。    〔速記中止〕
  171. 福田篤泰

    福田委員長 速記を始めてください。
  172. 内藤武

    ○内藤説明員 では二月二十日付口上書の渡航文書、すなわち旅券に関する関連部分をその字句どおり読ませていただきます。   渡航文書の問題に関し、上記の日米協議委員  会会合において、沖繩住民が沖繩においても日  本旅券の発給を受けられるようにするため、(イ)  旅券申請するいかなる沖繩住民に対しても、  その者が計画している旅行のために琉球諸島を  出域する許可を有するとの米国民政府からの肯  定的な通報があるまでは旅券は発給されないこ  と、及び(ロ)旅券申請者に交付されるより前に  出域及び再入域に関する通達が米国民政府によ  り旅券面に記入されること、との米側により提  案され日本側の受諾した条件のもとに那覇の南  方連絡事務所長が日本旅券の発給を行なうこと  につき合意された。   さらに、同協議委員会において上記(イ)及び(ロ)  の条件が満たされることを条件に、日本政府が  沖繩住民日本本土への旅行に必要な旅券以外  の文書を発給することについても合憲された。   (二)その後の日米両国外交当局間の協議により  南方連絡事務所における旅券及び日本本土への  渡航文書の発給事務は、沖繩に居住し、または  旅行している沖繩住民以外の日本国民をもその  対象に含むことが合意された。  以上が関連部分でございます。
  173. 曾禰益

    ○曽祢委員 その関連事項と関連事項でないということがよくわかりませんが、私のむしろ問題にしている点は、たとえばこれは戸叶委員の御質問に対する御答弁から明らかになった点なんですけれども、少なくともわが日本側旅券を出すということが渡航の必須条件になっていないのですね。アメリカのほうが依然として身分証明書で行ける、こういう当局の答弁があったのです。そこら辺のことがあまりにルーズな取りきめじゃないかと思うのです。いま読み上げられたところによると、要するにアメリカ側の出入国管理権を留保している。これはお互いに不満はあります。あるけれども、現状において一応やむを得ない施政権のあれとして沖繩からの出入に関してアメリカ側の管理権があるということは認めざるを得ない。同時に、日本旅券法によって日本も拒否権を持つ、これも私は当然だと思うのです。しかし、それなら沖繩の人が行く場合に、身分証明書だけでなくて、日本旅券を必ず持つんだということぐらいどうして話がつかなかったか。少なくともわれわれは、日本側としては、アメリカ側の、いわゆる拒否権といっては語弊があるけれども出入国管理権を認めて、それがオーケーといわなければ旅券を出さない。だとすれば沖繩住民が外国へ行く場合には、日本旅券で行くことだということを両国間で話し合って、それで縛ったっていいんじゃないか。わざわざ抜け穴をなぜ残しておくのか。これは理論的な問題かもしれないけれども、きわめて割り切れざる感じがする。その点はいま読み上げたところには出てないけれども関係部分というのはどういうのか知らないけれども、そこら辺のことについて結局何もきめてないのですか。重要な点じゃないですか。
  174. 東郷文彦

    東郷政府委員 いま口上書を内藤課長から読み上げましたとおり、その点には触れておりません。また先ほど山下審議官からも申し上げましたように、アカデミックな問題としてはそういう道があるわけで、沖繩住民でいまおっしゃる方は、アメリカの渡航証明書で実際出られるわけでございますが、当時その話をいたしましたわれわれの考え方としましては、やはり日本旅券を持つということが沖繩住民全部の御要望であるという立場からやっておりまして、なるほどいま先生が御指摘になりますように、それがあたかも抜け道であるかのごとくに見えるかもしれませんけれども、しかしわれわれのほうから見まして、そういうことは実際問題としてはほとんどないことではないかということで、その点の手当てはしてないわけでございますけれども、それによって非常な支障が起こるということは、実際問題として考えられないのではないかと思っております。
  175. 曾禰益

    ○曽祢委員 それはできてしまったものが底がちょっと抜けていると思うので、強い要望として、またこういうものは補強していけばいいので、いま承るところによると、きちんとした協定でも何でもないんですから、さらに協議会等を通じて、やはりこういう新制度を生かしていく以上は、アメリカの出入国管理権はやむを得ないけれども承認する。同時に、しかし沖繩の人が外国に行く場合には、日本旅券だけで行くんだという、そういうところまでひとつ話をぜひ進めるべきだと私は考えるので、そういうような事実上の協定ができるように強く要望しておきます。  それからもう一つは、先ほど来若干の質疑応答で、私はどうもはっきりしなかった、混乱しているように思うので伺いたいが、私は確かに外交保護権について施政権国にないということは言えないと思うのです。ないということは言えないけれども、事実上は今度は沖繩人が第三国に行った場合の外交保護権を、わがほうが行使することについてはアメリカが認めている。これは一つの進歩だと思うのです。その場合に、ほかの委員の御質問の中に、逆に外交保護権ではないけれども、では日本政府責任が起こらないのかどうかという議論が起こっておったように思うのです。たとえば沖繩の人が向こうで不法行為をやったとか、あるいは犯罪をやったとか、そういうことは純粋に国際法的にいえば、直ちに政府なり国の責任にならないとは思うけれども、しかし沖繩人がやった不法行為等に関連して、外交上のトラブルだとか、あるいは刑法上、司法上の問題が起こった場合とか、その点はどうかというと、外交保護権はあるけれども、国の責任のほうはないというような御答弁だったと思うのです、東郷局長は。そういう解釈もできるかもしれない。そういう重要な点こそ、これは私は日本にとって必ずしも悪いこととは思いません。保護権はあるけれども、国としての賠償、あるいはその他の国の主権の一つのあらわれだと思いますけれども責任のほうはとらなくていい、気楽なようではあるけれども……。それらの点については法律的にも、また政治的にも、これまたはっきりした話し合いがついていないということは、どうもいかにもルーズじゃないかという感じがする。そういう点については話は詰めていないのですか、どうなんですか。保護権ということで、保護権の中には単なる外交保護権以外の、あるいはそれ以上にわたるかもしれないと思うのですが、移民に対するいろいろな便宜を与えるとか、そういうことまで含んでおるということになっておりますね。それはそれでいい、たいへんいいことなんだから。しかし、責任のほうについては一切責任を負わないのだ、そういうことは施政権者のアメリカにやってもらうということになっておるのか、なっていないのか、そこら辺のことについてはっきり御答弁願いたい。
  176. 東郷文彦

    東郷政府委員 先ほどからお話し申し上げていましたような事例は、要するに琉球政府なり、沖繩に施政権を持っておる米国政府施政権行使からくる、施政権を持っておるからこそとれるような責任の問題でございますので、このような問題に関しましては、たとえ日本政府責任を負おうと思っても負い得ないことである。そこで外交的な保護は日本側はやる。しかしながら日本政府施政権を持っていないために果たし得ない責任は、それが完全に果たされるように、日本政府としては施政権者である米国なり、あるいは琉球政府に、その間をあっせんする。こういう状態は、現在の米国が施政権を持っておる限りは、やむを得ないことであると思いますし、また今回の旅券の問題なり、あるいは外交保護権に関する米国との話し合いにおきましても、問題はそこまで掘り下げて、これはこうだと言わなくても、現在のたてまえからおのずからそういう関係になる問題であると考えます。
  177. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう一つ、これを最後にしたいのですけれども、これに関連して船舶のほうについては、日本の国旗を掲げることに関連して、日本の船に対する日本の保護権といいますか、あるいは取り締まり権も両方含むと思いますけれども、この点についてはどうなるのですか。これもアメリカとの話し合いが、日米合同委員会という形で行なわれたようですけれども、しかし締めくくりとしては、やはり口上書みたいなものができておるのじゃないかと思うのですけれども、もしもあるならそれも提出してもらいたいのです。ただ、いまここででは関連事項ですから、詳しいことはお問いしませんけれども人間の場合と本質的に同じような、日本の船としての保護の対象と考えていいのかどうか。この点についての外務省の見解をただしておきたいと思います。
  178. 東郷文彦

    東郷政府委員 沖繩住民の場合には、外交保護という問題は、直接個人と結びつくものでございますので、一時的にわがほうが責任を負うという話ができたわけでございますが、船舶の場合は、保護の問題は船に結びつくわけでございまして、そこで船舶の管理権がだれにあるかという問題がもう一つそこに入ってまいりますので、この前の国旗の場合には、船舶に対する管轄権というものは、いろいろ船舶法その他現在の段階では施政権者であるものが船舶の管轄権を持たざるを得ないという制約がございますので、船舶に関しましては、一時的にはアメリカのほうが保護の責めに当たるということになっております。しかしながら、実際問題としましては、これも、ことに乗っております船員は日本国籍の者でありますし、実際の保護に関しましては、現実に日米双方が協力してこれに当たっておるというのが実情でございます。
  179. 曾禰益

    ○曽祢委員 非常に重要な問題なんで、文書があるわけですね、議事録、口上書みたいなもの、それを示し願って、そのときに論議したいと思います。  ただ、いまのお話を聞くと、残念ながら船に関してはわれわれは日本の国旗だと思っているが、必ずしもその旗国主義が貫かれておらないようなんです。しかし、いま局長答弁の中に第一次的には船舶の管理権はアメリカにあるとしても、しかし、第一次的にはというおことばを使われたので、いろいろな関係でやはり船に対しても日本が第二次的にもせよ、管理権といいますか、保護権といいますか、これを持つ余地があるやに伺えますので、私はその点非常に重要な点であると思うので、これはすみやかに、委員長、これは要求でございますが、この二件に関する完全な、ほかに関連のないところだけ抜かしてもかまいませんけれども、この部分については文書でできておるものはすべて本委員会提出方を私は要求いたします。
  180. 福田篤泰

    福田委員長 かしこまりました。
  181. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで私の質問を終わります。
  182. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君。
  183. 渡部一郎

    ○渡部委員 御質問をさしていただきますが、だいぶおそくなりましたし、それからいままで尊敬すべき同僚議員から多数の御質問がございましたので、私は簡明にこの問題を処理したいと思います。  この旅券法特例に関しまして、私はしごく簡単なことから伺ってまいりたいと思うのでありますが、まずこの旅券法の対象となりますものは、この旅券を得ます場合に、これは沖繩における旅券法の対象となる人々はどういう人々であるか、それをもう一度明確にしていただきたいと思うのでございます。
  184. 山下重明

    山下説明員 沖繩における旅券法の対象となる人々は、日本国民全部——沖繩に本籍を持っておる人も、また日本から沖繩に出かけた人も全部対象になります。
  185. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは私は申し上げるけれども、この旅券法に関しましては、沖繩側において、南方連絡事務所において旅券の発給を受けるべき人々はどういう人々でありますか。
  186. 山下重明

    山下説明員 沖繩に本籍を持っておる人も南方連絡事務所長から旅券の発給を受けますし、また日本から単に向こう旅行に行ってそれで沖繩で今度はまた外国に旅行したいという人も南方連絡事務所長に申請して旅券の発給を受けることができます。
  187. 渡部一郎

    ○渡部委員 先ほどいわゆる日本の本土のほうの人々の受ける旅券と、それから沖繩の人々の受ける旅券とは相違がないというような意味合いのお話があったと思うのでありますが、その場合において、アメリカ側がその出入国に関する管理権を持っているかどうかによってそれだけは違うのであると先ほど北米局長は言われたように私は思うのであります。ところが、そうしますと、ちょうど沖繩の人々とそれからいわゆる本土の間にある奄美大島の人々の扱いはどのようになっておるのか、それを伺いたいと思います。
  188. 山下重明

    山下説明員 奄美大島にいる人々につきましては、沖繩の人と違いまして、出入域許可をとらないので、本土の人と同じような取り扱いになることになります。
  189. 内藤武

    ○内藤説明員 ちょっと補足説明させていただきます。いまちょっと混同があったかもしれません。奄美籍であって沖繩に居住しておる者が南連事務所において旅券の発給を受けるという時点において、日本旅券手続とつながると思います。
  190. 渡部一郎

    ○渡部委員 現在奄美大島籍の人であって沖繩に居住する人々に対しましては、これは長期滞在の形がもっと変形された形であって、永住もしくは半永住の形になっておるはずであります。この人人に対する扱いというものは、いわゆる日本本土の他の地域の人々と違うやり方が行なわれていると思います。私どもがこの点において非常に問題があると指摘したいのは、この奄美大島籍の人で、奄美大島の祖国復帰が行なわれた時点において、かなり長期間沖繩に在住した人々に対しては、半永住あるいは永住の許可が与えられております。ところが、この人々に対する旅券の発給は、いまお話しになりましたような、本土あるいは純粋な沖繩の人々とは違ったやり方が行なわれておると私は思うのでありますが、御説明をいただきたいと思います。
  191. 内藤武

    ○内藤説明員 お答えいたします。  特に沖繩においての旅券申請の時点におきまして、手続的な差異と申しますると、出域の許可を旅券申請の前段階においてとるかとらないかという点でございますが、奄美籍の人であって、沖繩に在住している人たちについては出域の許可を必要といたしません。出域の許可を必要といたしませんので、内国籍者と全く同じ扱いになるということでございます。
  192. 渡部一郎

    ○渡部委員 それは課長さんよく御存じないので、私は時間が短いので、討論するのはやめて申し上げますけれども、実はそうじゃないのです。奄美大島の方々が出域しようとすると、民政府に対して出す書類の中でいろいろな書類が要するのです。たとえば納税証明書です。この納税証明書の全部の提出がなければ出域許可というものは民政府から出されることはない。一々納税証明書をとらなければならないという、そういう煩瑣なことが奄美大島籍の人々だけにかかってくる、こういうことは御存じですか。
  193. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  本土の方が向こうに住んでおられて出る場合もやはり納税等の証明が要ると思います。そういう意味では全く同じじゃないかと思います。
  194. 渡部一郎

    ○渡部委員 それは本土の人々の持っていくべき納税証明書と全く同一のものを提出しなければならないかどうかお伺いします。
  195. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  三十日以上同こうに逗留している方は、本土の方であっても同じことでございます。やはり納税証明書が必要だと思います。——ちょっと訂正いたします。三十日以上の在留登録をされた方でございます。
  196. 渡部一郎

    ○渡部委員 それは半永住及び永住者に対する扱いと、三十日以上の登録と全く同一かどうか、御返事いただきたいと思います。
  197. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えします。  全く同一だと考えております。
  198. 渡部一郎

    ○渡部委員 私がここで問題にしたいのは、実際には沖繩に住んでいるこの奄美大島籍の人々に対しまして、法律的にいいまして、非常に妙な取り扱いが行なわれているように私たちは感ずるのであります。現地の奄美大島会の人々から数次にわたっていろいろな申請が出ておるのでありますが、その中から一つ二つをとってみましても、大体権利においては外国人並みの扱いが行なわれる。もちろんこの外国人ということばは沖繩におきまして日本人を含むものでありますが、権利においては外国人並みである。義務においては琉球人である、こういう妙なことになっております。したがいまして、たとえば税金を払う証明書でありますが、日本本土人が沖繩におきまして働く許可を得て働いて収入を得て出す証明書と、沖繩の人々が払っている税金、それからまた奄美大島の人が沖繩に住んでいて出すものとでは、本質的に差がある。税金の場合には、奄美大島の人々は沖繩にいる場合に限って沖繩人と同じ取り扱いを受けているのであります。したがいまして、出域をするということ自体につきましてはまことに不平等な取り扱いを受けていると私は思うのであります。ということは、少なくとも日本本土人が沖繩において受けるべき権利というものがそこなわれておるということを私は言いたいのであります。たとえて申しますと、どういうような税金の状態になっておるかといいますと、控除額におきまして外国人は外国人の——この表の定義によりますと、「琉球列島内に法律により認められた永久居住地を有しないすべての自然人で、陸軍、海軍若しくは政府の命令又は民政副長官の入域許可により琉球内に居住する者をいう。」こうなっております。この場合基礎控除というのは六百ドルであります。ところが永住者及び半永住者となっておりまして、これは百七十ドルが基礎控除であります。そうするとどういうことになるかといえば、ここに住んでいる奄美大島の人々は、扱いはまさに琉球人と同一の扱いを受けているわけであります。つまり基礎控除が非常に低いということは、税の負担が非常に大きいという意味であります。こういうようなへんぱな状態にある。これが実際にはこの旅券法の陰にあって非常に大きな問題になってくる。税金は沖繩の人々と同じように取られる。そうしておいて、今度は、実際に出域する場合にはこれが要求されてくる。そうすると、この旅券法のたてまえからいいましても、本来日本国民は同じ取り扱いを受けるべきでありますのにかかわらず、いわゆる本土人と奄美大島の人々との間には明確な一線が画されてくる、こういう状況はどう考えられるのか。こういうことがあり得べきことなのか。この点をひとつはっきりしていただかなければ、この旅券法の背後にある不平等性、それから穴というものは隠すことができない、こう考えるのであります。
  199. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  奄美大島の方々は従来のいきさつがございますので、沖繩における永住の関係は本土なんかよりもずっと便宜をはかっているわけでございます。そういう関係で、沖繩の人と奄美の人が税金関係で同じような扱いをされているということは、そういう在留については非常に特権といいますか、そういうものを与えられているのだと思いますが、それ以外の部分につきましては本土の人と同じような扱いになるのも、これはそういう永住についての特権として奄美大島の方に特に認められているものでございますので、税金の関係は、本土の人と同じような扱いをされても、これは琉政のほうの方針としてそうやっておられるのだろうと思いますけれども、一応の立て方としては筋はあるのではないかというふうに思います。ただ、この点につきましては、できるだけそういう不公平のないように今後——私もよく知りませんものですから、よく調べまして、そういう点についてはさらに改善の方法を考えたいと思います。これはもちろん琉政の問題でございますので、そういうような点について琉政のほうとよく事情を聞いた上で相談したいと思います。
  200. 渡部一郎

    ○渡部委員 もう一つ申し上げておきますが、いまのお話はちょっと妙だと私は思うのです。日本人は本来平等な取り扱いを受けるわけです、どこへ行ったといたしましても。それが優遇措置であるなら私は話がわかる。優遇でない措置をそこで受ける必要は別にないと言っているわけです。旅券を出すのに他の日本人とは別な扱いを受けており、そして納税証明書というものが実際には出域許可の重要な条件になっておる。それは直すのが当然なんであります。そしてまた、いまそれが琉政の問題だとおっしゃったけれども、琉政の問題だけではない。日本政府の問題なんです。日本人が沖繩の中にあって、そして別な取り扱いを受けておる。竜美大島籍の人々がその中にあって選挙権も持っていない。沖繩における選挙権は別に持っていない。また沖繩におけるところの種々さまざまな福祉からもずっと遠ざけられておる。そのほか数十項目あります。そのような立場でありながら、今度は出域のときになると、そういう権利を受ける段になると、が然、沖繩人並みになってしまう。利益を受ける段になるとそうなってしまう。それでは日本人を保護すべき日本の総理府としても、また外務省としても、ちょっとぐあいが悪いのじゃなかろうか、これは直すのが当然のことじゃなかろうか。だから、この税金の問題については本土人並みに全部切りかえてしまうか、逆に今度は、日本と沖繩とは一体なんだから税金も同じように払うべきだというならば、今度は出域許可なんかについても、日本と沖繩の一般の人々と同じような、もっと簡素なやり方で扱うべきである、私はこう考えるのであります。したがって、この問題について総理府、外務省、両方から御返事を伺いたいと思います。
  201. 東郷文彦

    東郷政府委員 奄美大島は日本施政権を持っておりますから、奄美大島の住民が沖繩におきましても本土の日本国民と同じ法律に従うということは、これは当然あるべきことだと存じます。そこで、私もいままで、いまの問題に関しましてもそういうふうに理解しておりましたが、同じ一つの法律の中で、滞在の期間とか、あるいは永住のステータスとか、そういうことによって税金が違うということはあり得ることでございますし、同じ法律の適用の結果として、ある人は免税点が六百ドル、ある人は百七十ドル、こういうことになるならば、これは法律の前の平等という点ではやむを得ないことだと存じますが、もしそうでなくて、別の法律が適用されるなり別の扱いを受けているということでありますれば、これはわれわれといたしましても是正するのが当然でございますから、もしそういうことであれば是正するように向こう施政権者とかけ合います。しかしながら、いままで了解しておりますところでは、同じく日本の施政下にある日本の本土国民及び奄美大島の方々に対して同じ法律が適用されている。その結果としては滞在期限その他から相違が起こる、こういうことであると了解しております。もし間違っておれば是正いたします。
  202. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  いま北米局長のお話に多少補足的に申し上げますれば、私は本土の人と奄美大島の人との関係では、永住の関係で奄美大島の方のほうが有利な扱いをされている、その点が違うだけで、税金等については同じではないか、したがってまた、出域についてもただ税金を納めたというそういう証明の問題だけでございまして、その点は本土の人と全く同じだと思っております。
  203. 渡部一郎

    ○渡部委員 なまの加藤さんのお話は、ちょっと違うように私は思います。といいますのは、それは事実認識から大体違うのでございまして、それでは議論にならないのじゃないか。十分お調べの上しかるべく善処をお願いしたい。私はこの問題についてこの辺にしておきますから、直していただきたいと思います。日本人におきましては、沖繩においては税金は沖繩並みにはかからない、そういう状況がございます。ですから私はそれについては十分直していただきたいと思うのであります。  その他琉球におけるところの奄美大島の人々の地位につきましては、非常に不安定な状況下にございます。といいますのは、この奄美大島籍で半永住及び永住権をとっている人々に対しては、これは日本の本土の籍を捨てて沖繩の一般のいわゆる琉球籍をとりたい、こういう希望を持っている人がその大半であります。現在この人々の数字は明確でありませんけれども、一九六一年の統計では九千六百人の人々がこういうような状況下に置かれております。ところがこの人々はまず半永住という状態から永住という状態にならなければならない。永住という状態からさらに進んで完全な琉球籍を得る、こういうふうな段階をとることになっております。ところが半永住から永住になるその間の障害が非常にございます。その障害というものは何かと申しますと、実際に向こうでやってまいりますと、こういう点が問題になります。それは民政府指令第五号によりまして、その三条に「永住への許可申請は最少限、左記の条件に叶つていなければ、これを考慮することはできない。」そのbに「琉球警察による品行方正の証明。」C、「相当の生活を維持するに充分な財産、定職又は自活能力。」こうなっております。この品行方正の証明は琉球警察においては非常に厳格であって、交通違反までこれを含む、あるいは酔っぱらいで町でけんかしたのまで含む、こういう状況であります。また個々の「相当の生活を維持するに充分な財産」となりますと、これまた非常な高額を要するのであります。このような状況下におきましては、半永住から永住の許可を得るのは非常に少ない人数になってしまうのであります。そして永住許可をもらえない、そして琉球籍への転籍がうまくいかないとなりますと、どういう問題が起こるかといいますと、開発金融公社、琉球銀行、大衆金融公庫、農林水産中央金庫等の融資が受けられない、また就職口が制約される、琉球政府の公務員になれない、日本政府の国費、自費学生への応募ができない、日本政府の特奨制度の適用が受けられない、米国留学生試験を受けることが実質的にできない、あるいは琉球政府あっせんの集団就職、海外協会あっせんの海外移住への参加が許されない、こういうような種々の難点がございます。  そういたしますと、私が申したいのは、この旅券法だけの問題に限らず、琉球にある奄美大島籍の日本人についてはこういうハンディーがあるだけではなくて、日本国民としてこれをカバーすることも十分でないとするならば、法律上の一種の穴にこの人々は落ち込んでいるのであって、この旅券法審議を通しても、前後を通しても明らかでありますけれども、十分な配慮がなされていなかったうらみを私は感ずるのであります。したがいまして、この問題についてはさらに十分の検討をしていただかなければ、どうしようもないのではないか、私はそれを感ずるのであります。したがいまして、今回はよくお調べでないようでございますので、その問題については旅券法の本質ともちょっと違いますので打ち切っておきたいと思いますが、米国民政府が持っております出入国管理に対する権限について、その内容を伺っておきたいと思います。
  204. 山下重明

    山下説明員 米民政府が持っております出入国管理というのは、ちょうど外務省旅券を出して出入国管理のほうは法務省の入管がやっているというような関係で、今度われわれのほうで旅券を出しましても、港の出入口で入国管理官が旅券を調べて出すというようなことで、実際上は出入国管理というのはむしろ港なり空港なりで行なわれる出入国管理旅券のほうは旅行文書を出すという事務で、その出入国管理のほうはアメリカがやる。そうすると港なり空港で、渡航者が出る場合におきましてアメリカが事前に出域を許可したという証明になるようなスタンプを旅券に押すという関係になると思います。
  205. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうしますと、日本旅券を出す内容につきましては、これを拒否するもしないも全部米民政府が保持しているのであって、日本政府はこれを保持していない。日本政府旅券発給の権限というものは、出入国とは関係がない、こういう意味でございますか。
  206. 山下重明

    山下説明員 一応出入国とは関係なしに、アメリカ側で出入国関係の審査を経て出域許可を出したという時点で出域許可の出た者に対して日本政府日本旅券法における取り扱い旅券を出すという形になります。
  207. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういたしますとこの旅券というものは、旅券という名はついておりますけれども日本国旅券ではなくて、単なる目じるしとは違うのですか。
  208. 山下重明

    山下説明員 もともと旅券というものは、外国へ出る場合に外国政府に対して日本国民であるということを証明する文書でありまして、現在までも日本なり外国なりで日本政府が出しておる旅券、沖繩の人たちに出している旅券旅券として十分外国に対して旅券としての役割りを果たしおりますし、今度は沖繩に出す旅券についても当然第三国において旅券としての使命を果たすものと考えております。
  209. 渡部一郎

    ○渡部委員 非常に失礼な言い方かもしれませんけれども、そうして今度はその旅券を持った方に対する保護が、先ほど保護権の問題について十分の御検討が行なわれましたけれども、この保護についても、いわゆる外国においてこれらの人々に対して日本の大使館が日本の本土の人々と同じように保護されるのかどうか、それはちょっとこの席で明らかにしておいていただきたい。少なくともこの旅券というのは単なる目じるしではないのだ、これを持っていたら非常なきき目があるのだ、外国においてはこの旅券を持って大使館へ来れば何でもやってくれるんだ、本土の人々と同じだけの保護は与えられるのだ、こういうことが完全に言えるのかどうか、それについて御返答を承りたいと思います。
  210. 山下重明

    山下説明員 いままでも国外において沖繩の方方が困った場合に、日本旅券を持って日本の大使館なんかに来られました場合には、ほんとうに困っている方はいろいろ世話をして、お金のない方は国援法を適用して本土に帰すとか、いろいろな保護事務をいままでもやってきましたし、今後も、沖繩の方々が日本旅券を持っていられる場合には、本土の人と同じように保護を取り扱うつもりにしております。
  211. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はこの旅券について、いまの御説明でははなはだ不満足でありまして、現実問題として、法律的に詳しく研究をいたせばいたすほど、この旅券というものが日本政府のものではなくて、そうして単なる沖繩の人々に対する慰めとして、先ほど局長が別の表現で言われましたけれども、沖繩の人に喜んでいただけるであろうというので出す、同じ形のものを出すというにとどまるのではないか。そういう形であるならば、私は旗の際にもこれを指摘いたしましたけれども、あの旗においても、表示というものは白地に赤く、そういう形になったからいわゆる日章旗であると、いわゆると言いますけれども、上に三角旗のついているものはあれは日章旗でも何でもない船舶旗。旗というのは二種の旗を合一したものはないのであって、あの二つが一緒になったのが一つの旗である以上は、あれは単なる模様であり、色のアイデアにすぎない。私は、沖繩の人々に与えるものがそういうまやかしみたいなものではなくて、その限界をはっきり心得て渡すのでなければ、大きな事故が生ずるおそれがあると思う。それは明確になさらなければならないと思うのです。旅券だって、これが日本国の指定するところの旅券であるといって渡したところが、それは旅行にはたいして必要のないものだった、早い話が、単なる紙切れと同じようなものだったというのであるのだったら、それは沖繩の人を欺くことはなはだしいと私は思うのであります。じゃ、いわゆる日本国本土の人々が持っているところの旅券とどう違うのか。その性能はいままでの審議段階においてはあまり明らかにされていなかった。実質的なそのようなものを渡す以上は、どこに差があるのかをもっと明確にしていただきたいと私は思うのであります。
  212. 東郷文彦

    東郷政府委員 御指摘のように、旅券が出るか出ないかという点においては、米国が出入域管理権を持っておりますので、現実にその沖繩住民の方に旅券が出るか出ないかという点では、確かに制約が遺憾ながらあるわけでございます。しかしながら、旅券はいま山下審議官が申されたように日本の国籍を証明するものでございまして、これは日本政府しかできないわけであります。その意味におきまして、一ぺん出ました旅券日本本土の日本国民に対して出す旅券と全く同じでございます。ですから、旅券が出るまでについては出入域管理権がないためにまことに残念でございますけれども、一ぺん出た旅券につきましては本土の者に対する旅券と全く同じ旅券でございます。
  213. 山下重明

    山下説明員 補足説明させていただきたいと思いますけれども、今度沖繩で出される旅券がたいして役に立たないという御懸念かと思いますけれども、実際上旅券というのは外国へ出ると必ず要りますもので、いままでも南米のアルゼンチン、ブラジルとかいう国では、いままでのアメリカの身分証明書では実際に査証をくれなかったわけで、そういう人たちはいままでも日本の領事館で日本旅券をとっておりまして、その人たちが去年、四十一年に五百五十九名おります。そのほかにおきましても、一般にわれわれは査証免除協定というのがありまして、ヨーロッパのほとんどの国は、旅券さえ持って日本人であるということがわかれば、査証をとらないで行ける。こういうことも、いままでのアメリカ側の身分証明書ではそういうことはできなかったわけでありますけれども、今度は日本旅券を持っていると、査証をとらないでヨーロッパの国々に行けるということで、たいへん沖繩の人たちに喜ばれる、実際上役に立つ旅券であるというふうに考えております。
  214. 渡部一郎

    ○渡部委員 いまの御返事は私の質問を逆にとられたわけであります。私はこの旅券法がいまの意味で大きなプラスになる点のあるのは認めております。それを私は聞こうとしたのじゃないのです。沖繩の人に、今度旅券法も可決されるのでありますから、この旅券日本の公用旅券と完全に同じものでないぞという点があれば、それを明らかにして渡さなければ、間違えられて使われたり、過大な期待を持って使われるとあぶない場合があるのではないか。だから、そういう問題があるならむしろこの際明らかにしておいて、使うときは気をつけてくださいよ、これにはこういう欠点もあるのですよといって渡すのがまともな議論じゃないか、私はこう言っているのです。そうしたら、あなたは、これはうんときき目があると、きき目のほうだけを言われた。ほうちょうだって使うときはそうです。柄のほうを持って使えば、ずいぶんいろいろなものが切れるのだ、だけれども、これは刃のほうを持って使うものじゃないということを、ほうちょうを見たことがない人ならば、教えなければならない。この旅券もそうです。いい点があるのはわかっております。だけれども、私が心配するのは、この旅券を外国へ持っていったときは、こういうときには使えないおそれがある、こういう点が問題だというのなら、それを明らかにして、それを補正して使うだけの手は打つべきではないか、こう言っているのであります。どうぞお願いします。
  215. 山下重明

    山下説明員 日本旅券を持っておりますために沖繩の方々がかえって困った、こういう危険な目にあったということは、いままでも日本旅券を持って沖繩の方が海外に旅行しておりますけれども、一件も聞いておりませんし、今後とも、この沖繩に出された旅券によって本土の旅券を持っている本土の人の場合以上に何か特別に困ったことが起こるということは、予想しておりません。
  216. 渡部一郎

    ○渡部委員 それじゃ私の質問は終わります。
  217. 福田篤泰

    福田委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  218. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  219. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  221. 福田篤泰

    福田委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  222. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。三原朝雄君。
  223. 三原朝雄

    ○三原委員 私は野党の質問に協力をいたしまして、ごく短時間にひとつ、三点総理に対してお尋ねをいたしたいと思います。  第一点は、佐藤内閣外交の基本方針は、自由を守り、平和を愛する、平和に徹するという、常に佐藤総理が述べておられる線に沿って今日まで、たとえば共産圏の諸国との外交におきましても、ソ連、東欧諸国に対しましても、経済、文化の交流について一段とその成果をあげてこられたことにつきましては、その実績に対して高く評価をいたしておるものでございます。  そこで、そういう立場から、今回バンコクにおいて開催されましたASPACにおける三木外務大臣の積極的な努力、そうしてその成果と申しますか、布石に対して、佐藤内閣外交姿勢と三木外務大臣の努力に対して、その布石等に対して二元的な外交ではないかという意見が巷間出ておるようであります。今日の流動する東西問題なりあるいは南北問題、その間に処して、中共の外交政策あるいは韓国、北鮮、台湾等、そうした国の存在なりその動向等、客観的な情勢を勘案されてとられました三木外務大臣の中共に対しまする平和共存の可能性というような御発言等に対しまして、そうした活動の成果が今日までの佐藤総理がとられました外交方針と全く一体の路線に沿っての外交成果だと私は思っておるわけでございます。巷間そうした二元外交というようなものが流布されるということはまことに遺憾だと思うのでございますが、この点に対しまする総理の御見解を承りたいと思うのでございます。
  224. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 巷間で二元外交云々という批評があるという、これは紙上にもそういう文字を私も散見しました。しかし、三木君の発言は、私のかねての主張と何ら変わりございません。申すまでもなく、平和に徹する、いずれの国とも仲よくする。もちろん相互に独立を尊重し、そうして内政に不干渉、そういうもとにおいていずれの国とも仲よくするという、これがいわゆる平和共存というような表現をされるのでありまして、私との間に何らの意見の相違はございません。ことに、いまお話しになりました中共あるいは国府との関係等につきまして、長い目で、長期的な観点に立って共存ということを主張しておりますが、現時点においては、いままで言われております政経分離の形において中共と交渉を持つという、そのこともはっきり述べられておるのでありまして、何ら変更はございません。
  225. 三原朝雄

    ○三原委員 私もそうした立場に立って、外務大臣のASPACにおける言動に対しては、その努力を高く評価するものであります。  次にお尋ねをいたしたいのは、ASPACの性格なりその方向等について、三木外務大臣がタイに出発されるときには、このASPACの動向がどうなるかというような点についてずいぶん心配をいたしたものでございます。特に、第一回の韓国において実施されましたASPACにおきましては、その集まられる国々がベトナムへ軍事的に参戦された国家が多かった関係上、それが政治的な一つの反共グループというようなものの結集への方向に行くのではなかろうかというような懸念もされたのでありますが、今回のバンコクにおきまするASPACにおいてはそういう点をずいぶん顧慮されていろいろな努力が積まれたものと思います。その結果は、なるほどその底流する中には反共的なものも認められると思いますけれども、しかし、表面にあらわれました発言内容なりその動き等については、私どもはそうした反共的な政治的結集ということよりも、各国の安全の確保なりあるいは貧困に対しまする経済発展なりそうした面が強く主張されたものと思うのでありまして、初め懸念いたしました様相はあらわれずに、私どもの喜ぶべきそうしたアジア太平洋地域におきまする各国の貧困あるいは経済開発、そうしたことを一日も早く解決することが、この問題と取り組んでいくことが世界の平和に寄与し、お互いの国の提携というようなものも高まっていくというような方向に終始したことは、ほんとうに喜ばしいことだと思うのであります。総理はそうしたASPACの性格なり将来の方向というようなものが、バンコクに見られた成果というような方向に持っていきたいという御希望でもあろうと思いまするが、そういうASPAC自体の性格なり方向というようなものに対しまして、総理としてのお考えを承りたいのでございます。
  226. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまのASPACの会合、この会議そのものをどちらの方向に持っていくかという、これは一つの問題だと思います。同時に、第一問でお尋ねになりましたわが国考え方、わが国の基本的な方針、これを各国に理解してもらう、その場でもあったと思うのでありまして、私は、第一問で二元外交ではないかというお話がございましたが、しかしその心配はないのだ、それよりも積極的にこのASPACの会議を通じてわが国の平和に徹するあり方、それを各国に、参集国に理解さした点でも非常な意義があったと思います。また、その理解を得た上で初めて各国の協力を得て、いわゆるイデオロギー的な争いに終始するのではなく、とにかくイデオロギー的な争いも、現実にお互いの国民生活を向上さすことによって、そういうものは自然に解決できるんじゃないか、そういうような方向で、貧困との戦い、同時に経済発展を真剣に話し合おうじゃないかという、そしてアジアの連帯感がそこに築き上げられる、そういう方向で三木君が努力されたこと、これは私は高く評価してしかるべきだ、かように思っております。  このASPACの今後のあり方というものは、第一回とはよほど変わりまして、それぞれの国にそれぞれの考え方があるけれども、共通な問題は、ただいま言うように、経済発展、そのもとにおける民族のしあわせというか、生活向上をはかり充実さす、こういうところで努力しようじゃないか、こういうような話し合いができたことはたいへんな成果だ、かように思っております。
  227. 三原朝雄

    ○三原委員 いま総理から御意見を承りましたように、ASPACの今回の会議の性格なり方向というようなものが、イデオロギーに基づきます反共的な政治グルプの結集というようなことではなく、みずからの貧困に対して、積極的にひとつまずおのおのの国が立ち上がって経済開発をやり、そしてそういう間に共同体制をつくりながら、南北問題と取り組んでいこう、この解決に処しようということであるし、また将来ともそういう方向にわが国としても積極的に協力をしていくべきであるという総理のお考えであります。  そこで私は、あの会議において各国が特に日本ということは名ざしませんけれども、このASPACにおける各国の発言内容を見てみますと、日本こそがただ唯一の先進国家だという立場に立っておるのであります。三木外務大臣は、中進的な立場だというようなことを——なるほど先進的なものも、各国においては日本立場を理解されるであろうが、国内のいろいろな面を検討してみると中進的な立場で、御期待に沿い得ない点も苦慮しておるというような意味の御発言をなさったようでありますが、しかし各国が日本に期待するものは、金融でございますとか技術でございますとか、幾多の面があるようであります。会議の結果は、二点具体的に取りきめられたものがあるようでございますが、それは技術者グループの問題とか、あるいは社会文化センターをつくろうではないかというような問題が具体的になりましたが、もっと各国が期待をいたしますのは、日本の経済的な援助なりあるいは技術的な援助等を大いに期待をいたしておるようであります。私はそういう立場において、日本の非常に期待される面をいかにしてアジア太平洋の各国の希望にこたえて責任を果たすかということが、今後に残された、しかもASPACにおける日本の真の成果というようなものは、今後に待たねばならぬと思うのでありますが、そういう点において、具体的にはどうそうした期待にこたえての政策を推進されるか。この点について、総理の御所見を承りたいと思うのであります。
  228. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 東南アジア関係ではそれぞれの会合が持たれております。経済開発の各種の会合あるいはまた東南アジア開発銀行の構想その他がございますが、これらのものと結びつけ合って、このASPAC加入国もやはり東南アジアの一国としてのそれぞれの持ち場における責任を果たしていく、こういうことが望ましいのだと思います。その際に、どこまでもお互いに平和に徹して、そして繁栄への道を歩んでいく、こういう意味の具体的なものをそれぞれ取り組んでいくということだと思います。いますぐASPACでこれこれのものができ上がったというものでもないようでありますが、あらゆる機会を通じ、相互に理解を深めて、ただいま申し上げるような方向で取り組んでいく、これが今後のあり方じゃないかと思います。  問題は、やはり国内的な体制の問題もございますから、先進国だ、いや、中進国だ、こういうふうな問題もありますが、これは申すまでもなく、対国内の問題として私ども考えるのですが、しかし対外的には日本が開発途上にある国に比べてそれより以上進んでおることは、これは確かでありますから、日本責任はまことに重大だと考えざるを得ない、かように思っております。
  229. 三原朝雄

    ○三原委員 最後に要望を申し上げまして質問を終わりますが、いま申し上げましたように、ASPACの成果というのは、私は今後具体的に日本がどう施策を進めて、低開発諸国家でございます参加国家に対する協力をするかということが、私は一番重大なポイントだと思うのでございます。そういう点において期待の大きい反面、期待を裏切るということは、同時に反感を呼ぶものにも通ずるわけでございます。いま総理は、大局的に協力をせねばならぬという御方針はお示しになりましたけれども、個々の問題については今後に残されておると思うのでございまして、どうかそういう点において積極的に物心両面からする協力を推進願いたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  230. 福田篤泰

  231. 穗積七郎

    穗積委員 このごろ総理並びに各大臣委員会出席の時間をかってに切って、国会審議、言論を抑圧しておる傾向があるので、はなはだ不満でございますが、今後そういうことのないようにできるだけひとつ謙虚誠実に協力を願っておきます。  それにいたしましても、きょうは時間がないので、なるべく簡単にいたしますが、実は最近佐藤内閣外交路線というものはインフレから戦争への路線をとり出しているというので、われわれは最も危惧するし、内外ともに危惧しているところです。そこでいろいろな基本問題についてお尋ねしたいのですが、いまちょっと時間がありませんから、あなたがこれから外交行動をされる点を結んでみて具体的にお尋ねいたしますから、正直に御答弁をいただきたい。  前提として、最初に私は三木外務大臣に念を押しておきますが、先ほど午前中の委員会でも申し上げましたが、ASPACにおいて、あなたが平和共存路線というものをわが日本外交路線として内外に主張されましたことに対しては、われわれはこれを支持いたします。そこで平和共存というのは、言うまでもなく思想、制度の違う国々の間においても独立と平等を原則として同時に共存し得るというのが、その他いろいろありますけれども平和共存路線のまず基本の理解でなければならぬと思いますが、あなたの言われる平和共存路線というものはそのように理解して間違いありませんね。
  232. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおり、イデオロギーをこえて、他国の独立、立場を尊重してお互いに内政干渉をしない、こういう立場に立って平和共存をやるということであります。
  233. 穗積七郎

    穗積委員 大体御答弁及第でございます。  そこで佐藤総理にお尋ねいたしますが、まず第一、あなたが今年度における重要外交行動として最初に訪問されたのは韓国——韓国はセレモニーに行かれたわけだが、あなたの言われるとおり政治的会談もやった。そこで一点お尋ねしておきますが、この間同志堂森委員の質問に対してお答えがなかったので伺っておくんだが、例の日韓会談において懸案となっております竹島問題、これは外交上の慣例から見まして、権利の上に眠っておりますと、実は黙示の承認になると理解されても、これは客観的にやむを得ない。あなたはこの間、朴との会談を二回もやっておるんだが、そこで竹島問題について、日本側立場、権利を主張されましたかどうか、事実をありのままに報告していただきたいのです。
  234. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねの前に一つ答えておきたいのは、インフレから戦争への道を歩んでいる、こういう前提でものごとを聞かれてはたいへん困る。そこに間違いが起こるのでございますから、かってな前提をおつくりになること、それは御自由ではございますけれども、さような心配のないことを国民の皆さまにも知っていただきたいと思うし、佐藤内閣はさような方向では絶対に行動はいたしませんから、その点をまず第一に申し上げておきます。  そこで、その次の第二の問題ですが、ただいま言われます点については、全然触れないで帰ってまいりました。
  235. 穗積七郎

    穗積委員 それではあとどうされるつもりですか。幾年も幾年も相手に占有管理を認めておいて、権利があったはずだと国民に言うても、国際的には通用しません。黙示の承認というものは幾たびかあらゆる外交問題の中であることでありますから、あなた、話されなかったなら、あとどうするつもりですか。その点は国民に対して責任がありますよ。
  236. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この日韓関係の基本的な懸案事項というものはございます。この基本的な懸案事項の解決方法は、これは締結の際に国民にも約束いたしております。私どもはその時期を待っている、それが現状でございます。
  237. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣は近く会談をされる予定ですが、そのときこの問題に対してわが方の立場と権利の所在を主張されるつもりであるかどうか、念のために伺っておきます。私はそのことを要望しながら伺うのですから……。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 韓国と会談の予定は持っておりません。やがて日韓の閣僚会議というものが——まだきまっておりませんが、そういう場合があれば当然にこういう問題も議題にはなると思います。
  239. 穗積七郎

    穗積委員 順を追うて佐藤総理にお尋ねいたしましょう。私どもは何もあなた方をけなすために、観念的、独断的にインフレから戦争へということを言うのではない。時間を与えれば、私はあなたが逃げることのできない内外政策の事実を示してそのことを証明したいと思いますけれども、いまのあなたの独断的な平和路線をとっているんだということは、今後の事実の中で明らかにしていきたいと思うのです。  あなたは韓国から帰られて、突如として台湾だけを尊重して切り離して訪問されますが、そこで二点についてお尋ねいたします。  台湾政府の首脳部と話すときに問題になるのは、いまの中国との平和共存問題並びに政経分離に伴う方針で、これとの友好連絡は保っていくつもりであるということですが、そこでまず第一懸念されますことは、例の吉田書簡の問題です。吉田書簡は形式的には政府責任はない。しかもあれはもう立ち枯れになったものである。三木外務大臣は前会この委員会で私の質問に対して、中国との延べ払い問題は、吉田書簡にとらわれることなしに、ケース・バイ・ケースで検討して対処していくつもりだという御答弁があった。今度あなたが行かれて、特に最近の情勢の中でグラスボロにおける会談にしましても、彼らの両首脳の話しました中心の課題はベトナムでも中東でもなかった、中国に対する問題、中国に対する認識が中心の問題であったと外国の情報によっても報道されておるわけです。そういうやさきでありますから、したがって、中国との経済交流問題について、延べ払い問題を中心とする阻害的な意見がかのほうから述べられることが危惧されるわけです。もしそういうものがありましても、絶対に吉田書簡の実質的な復活になるような取りきめはさるべきではないと思いますが、念のためにそれに対するあなたの態度方針というものを事前に伺っておきたいと思うのです。
  240. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私が台湾国民政府を訪問するということは、これはまだ具体的にはっきりきまっておるわけでもありません。しかし、報道されるようなことで、いまいろいろ検討しております。したがいまして、その前提は、この際にはっきりしてこれは動かないんだ、こういうことはまだ申し上げません。しかし、ただいまお尋ねになりました対国府に対する基本的態度並びに対北京政府に対する基本的態度、これは私が台湾へ参りましても変わるわけではございませんから、その点をはっきり申し上げておきます。
  241. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、吉田書簡は、形式的にも実質的にも今後佐藤内閣はこれに拘束をされない。そして対中国貿易の延べ払い問題は政治問題ではなくて、すでに国際的な取引の一つの条件にすぎない段階に来ておりますから、この問題については三木外務大臣同様、ケース・バイ・ケースでこれに対処していく自由があるのだ、自由を拘束されるような口約束といえどもされないと理解してよろしゅうございますね。
  242. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 理由は必ずしもあなたの言われるとおりではございませんが、私、三木君がお答えしておりますように、北京との間においてケース・バイ・ケースできめる、具体的な処理をする、この考え方には変わりはございません。
  243. 穗積七郎

    穗積委員 中国代表権問題について、国連総会もやがて近づくわけですが、もし訪問された場合にはこれを議題とし、相手がどういう態度をもって臨むかわかりませんが、それについてはわが佐藤内閣はどういう態度をもってお臨みになりますか。
  244. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げますように、国府訪問、これははっきりきまっておらないということと、したがって、まだその話し合う問題が、議題として両国間でも話し合われておりません。したがいまして、どういうような話と取り組みますか、そういうことをいまから申し上げるわけにいきません。しかし、この代表権の問題あるいは国連における態度等については、その後の変化等をも十分考えまして、日本のあり方を十分検討して、間違いのないようにいたしたいものだ、かように思っております。
  245. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから次に進みますが、南ベトナムに行かれることは、すでに本会議でわれわれは多くの国民の世論を背景にしておやめになることを主張した。あなたのほうの自民党内部においても、これに対しては、台湾並びにベトナムをこの際訪問されることに対して批判的な意見があることはわれわれも漏れ伺っております。そういうことでありますが、なおかつ行かれるということはさまっておるんだろうと思うのですが、行かれるならば、一体積極的には、いろいろな、さきに言いました韓国、台湾、ベトナム、最後の到達点がアメリカと、こういうことになっておるわけでありますから、ベトナム戦争を支持し、これに協力をする、そういう体制の中へみずから入っていくという危険を実は非常に感ずるわけです。特に国際的に見ますと、SEATOは御承知のとおり、NATOと同様に今日がたがたになってしまっておる。そこで、アメリカの戦略から見ますならば、これを実質的に何か立て直す必要がある。そういう大きなアジア戦略の一環の中へあなたがみずから入っていかれるわけですね。これはあなたの主観にあろうとあるまいと、客観的にそうなんです。したがって、その点についてまず第一、そういうふうに私ども国民も含めまして不安を持っておりますから、だからお答えをいただきたいが、この間わが政府青木大使が日本へ帰って記者会見をあえていたしまして、ベトナム戦争はこの秋ごろから和平解決の方向に向かう可能性が出てきたという判断をした。われわれは遺憾ながらこういう情勢はないと思っております。それは何となれば、アメリカが正しい原則に立たずに、そうしてつまらぬ行きがかりで相変わらず侵略戦争を続けておる、続けようとしておる。マクナマラの今度の視察訪問にいたしましても、まさにその徴候は何ら見えません。むしろわれわれが心配するのは、アジアにおける米中戦争へ近づきつつある、そういう情勢を心配するわけですが、政府の機関の中の一人である青木大使のこの観測について、佐藤総理は一体ベトナム戦争をどう見ておられるか、この際国民にあなたの考え方を明らかにしていただきたいと思うのです。
  246. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 青木大使の記者会見等がいろいろ希望的意見を述べられたということは聞いておりますが、いま言われるように、和平のきざしが非常にあるとか、そういうチャンスがあるのだ、かようには私は考えておりません。そこで、ただいまもいろいろお尋ねがありましたが、私が東南アジア諸国を訪問するのは、ただいま御指摘になりましたように、韓国、国府、ベトナムだけではございません。たまたまそういうところだけを抽出されて組み合わせをされますと、いろいろ誤解を受けることもあるようですが、私が出かけるのは、さらにカンボジアもビルマもそれぞれの国にも出かけるのでありますから、特にいま問題のあるところだけを抽出して、そしてその前提から想像をたくましくしての結論を出されては、これは困ると思いますので、一言申し上げておきます。  ことに、私はいまアジアにある日本として、日本の平和憲法、このもとで日本がございますから、軍事的介入をするおそれは実はないのです。非常に私が特別な考え方で、憲法でも無視するかのような言い方をされますが、私は憲法を無視するような、そんな暴挙をあえてする人間ではございません。したがいまして、私自身、この日本の国をあげて非常な危険のあるところに軍事的介入をする、そういうような危険な行動をとる、そういうことは絶対にございませんから、その前提からの先ほどのような結論はひとつ急がれないように願いたいと思います。  それよりも私は、むしろアジアにおいて平和を心から願っておる、また国民全体が平和を希望しておる、そういう際に、いま問題の中心であるべトナムに出かける、そうしてみずから認識を持ち、そうして積極的にこういう問題と取り組んで和平への道を探求することは、これは国民の希望にも沿うものじゃないのか、期待にもこたえるものじゃないか、私はさよう思うのです。私は、日本自身が、こういう問題から、一切そういうことに触れないで済めば、それほどしあわせなことはございません。しかし、アジアに位するこの日本が、当然こういう問題に影響を受ける、そういう立場であるからこそ平和を願っておるのです。それならば平和への努力を私自身がするのが、これは国民に対する責務でもある、かようにも思います。  また、もう一つ、お尋ねではございませんでしたが、いま南ベトナムでは選挙によって新しい政権を樹立しようとしておる。私が出かけるのもおそらくその選挙後だと思います。そういうことを考えますと、その選挙後において新しい責任者と話し合うこと、これはもうぜひ必要なことだ、かように思っております。アジアにある日本としては、遠い欧州のほうからとは別に、こういう問題を身近に考えて、みずからやっぱりこういう問題、その実態を十分つかむことが必要なんじゃないか、かように私は思っております。
  247. 穗積七郎

    穗積委員 おっしゃるとおり、南ベトナムはいま国民の八〇%以上は戦争を支持していない、戦争に賛成をしていない、むしろ戦争をやめて平和を求めておる。これを反映いたしまして、戦争屋であるグエン・カオ・キ政権に対する反対の意見というものが、政治的にもようやくあらわれてまいりました。したがって、今度の選挙においては、いわゆるタカ派とハト派の間の一つの焦点をしぼった政策上の選挙になると思うのです。いずれが勝つかはまだ私どもも予断しがたい情勢のように伺っておりますけれども、いずれにしても、どちらがどういたしましても、このハト派とタカ派の関係というものは当分続くわけですね。非常に不安定な状態になるわけです。したがって、ここで行かれて、私はそういう情勢の中でお尋ねするのは、あなたはそれでは行かれたときに、不幸にいたしましてタカ派が政権を再びとったという情勢の中で、政府当路と話をされるときに、この戦争に対して一方的に支持を与えるような態度はとりませんね。和平のために行かれるのであるから、一方的に支持をして、どうして一体和平の立場、あっせんの立場がとれるでしょうか。だからむしろ私は政治的に見れば、ベトナムの和平をされるなら、むしろアメリカへ話をしなければ解決しませんよ。南ベトナムのかいらい政権と何を話したって、かいらい政権はかいらい政権です。だから、戦争に対する支持の態度はとりませんね。
  248. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私は戦争に対する支持をするとかいうそういうものでないことは、先ほど来の説明でよくおわかりだと思います。また、アメリカへ行って話をしろ、こういうお話ですが、私はやはりアメリカ訪問の予定もございます。前後は、どちらが先か、そういうことは私にまかせていただきたいと思います。私はいま逃げて、この問題を回避する、こういうわけにはいかないのだ、かように思っております。  そこで、いまハト派だ、タカ派だと言われますが、これは南ベトナムで民主的に選挙によってそれはきまるのですから、ハト派だとかタカ派だとか、こう言って他国からとやかく言わないほうが望ましいことじゃないか、かように思います。それはその国の国民がきめることだ、かように思っております。
  249. 穗積七郎

    穗積委員 これは選挙、選挙といって、自由にして公平な選挙が行なわれればいいけれども、韓国の選挙でもそうだ。こういうかいらい政権というものは、軍事力、警察力を背景にいたしまして、選挙にあらざる選挙をやるわけですね。そういう形式的なことを言われないで、少なくとも交戦国の一方であるベトナムだけを訪問するということは、この行為自身がもう客観的に一方の側に立つものですよ。そういう意味で、われわれはこれはどうしても賛成ができないわけです。それは、議論は時間がありませんから後にいたしまして、和平のためであるなら、アメリカと話すにしても、その前のベトナムと話すにしても、日本政府自身の和平構想というものがなければあっせんの立場はとれないでしょう。しかも、新聞の報ずるところによれば、三木外務大臣は近くソビエトを訪問して、そしてソビエトから北ベトナムに圧力を加えて戦争をやめるように働きかけてくれということの委託を受けておると伝えられておる。いずれにしましても、和平、和平と言うなら、口だけでなくて、和平に対する具体的な原則なり条件というものを持たなければならない。佐藤総理のそのお考えを具体的に伺いたいのです。
  250. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 穗積君、とんでもないお話をされると思うのです、私が南ベトナムへ行けば南ベトナムの側につくという。私お尋ねいたしますが、佐々木社会党委員長は北ベトナムへ行かれるそうですが、北へおつきになるのですか。これはとんでもないことと思います。私はそういうことは、いわゆる私どもが独自の立場外交方針をきめていくという、その独自の態度が失われたかどうか、そこに問題があるのだと思いますから、形で、南へ行ったから南側だとか、北へ行ったから北側だとか、こうきめられることはお互いに迷惑すると私は思いますから、その形の上だけでそういう議論はなさらないように願いたいと思います。  それからまた、いま三木君がソビエトへ出かけるという、これもあらゆる機会を通じて和平への努力をする、これはもう当然なことだと思います。そういう意味で、三木君もあらゆる機会に和平への努力をする。これまた私は十分話し合っておりますので、そういう点では何ら誤解がないようにいたしたいと思っております。
  251. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねは、和平に対する構想ですよ。それを聞きたいんです。それがあなたの和平への熱意と意思があるかないかを証明するものですよ。
  252. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いままで私は、あらゆる機会に、とにかく一応停戦することだ、いま撃ち方やめだ、そして話し合いの場で、相互にひざを交えて話し合って今後のあり方をきめる、そういうことが望ましいんだ、かように思っておりますが、いずれにいたしましても、停戦がまず第一だ、かように思っております。御承知のように、中東の問題でも、熱い戦争にならないで、ただいま停戦をしておる。それによって世界各国がいかにほっとしておるか、これは御想像のつくことでございます。私は、ベトナムにおきましてもまずそのことが必要だ、それぞれの国にはそれぞれの主張があるのでございますから、そういう点が冷静に話し合われること、これはまたわが国の平和憲法の命ずるところでもある、私はその精神をベトナムの南北両当事者に十分理解してもらいたいし、また関係する米ソその他の国々も、どうかそういう暴力、武力によって問題を解決するんでなしに、話し合いで解決する、こういうところをひとつ十分徹底してみたい、かように思っております。
  253. 穗積七郎

    穗積委員 われわれは残念ながら外交権を持っていないのですけれども、そういう甘い、とにかく撃ち方やめろというような提案が、日本の調停あっせんのために乗り出す具体案だという、これは世界の失笑を買うと思うんですね。なぜかといえば、このことは道理にもかなっていないし、また可能性もないんです、そんなことは。われわれから見れば、北爆を無条件に停止をする。それからアメリカ軍のベトナムからの撤退のプログラムを明らかにする。第三はベトコンを交渉相手に加える。これはもうぎりぎりの最小限度の条件だと思うのですね。何となれば、一方の側に立つのではなくて、ジュネーブ協定以後のインドシナ半島全域にわたるこれは原則です、国際的に認められた。それを忘れて、アメリカの代弁のように、ただやめてくれ、こっちはくたびれた、無条件でやめてくれという、そんなばかばかしい、それこそ子供の使いじゃないですか。あなた、それで説得する自信がありますか。戦争をやめさす自信があると思うんですか。そのようなちゃちな案で、まるで子供の使いのような案で、それで一体ベトナム戦争の平和への解決がつかないまでも、一歩前進になるとほんとうにお考えになっているんでしょうか。私どもはとうていそういうことは考えられませんね。私のいま申しましたのは私見です。あなたの御意見を重ねて伺っておきたい。もっと責任のある態度をもってやっていただきたいですね。
  254. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまいろいろ私見を述べられました。そういう事柄はすでに新聞の一部にも報道されておりますから、これは穗積君の新しい考えであろうとも思いません。私は、いずれにいたしましても基本的な解決は、とにかく当時者が話し合ってきめることだ、かように思っております。そこで、大戦への危険、これをまず避けることだ。そのためには、いま申しますように、撃ち方やめだ、停戦だ、これがまず第一だ。無条件で停戦をすること、そうしてただいまのようないろいろの希望なりあるいは要望なりがそれぞれの国であるんだと思います。そういう点をやはり関係者が冷静に取り上げていく、こういうことが望ましいんじゃないかと思います。したがって、どうも穗積君と私は意見が一致しないようですが、これはどうも無理やりに私に賛成しろと言うわけにもいきませんから、この辺で終わらしていただきます。
  255. 穗積七郎

    穗積委員 それではもう一問だけでやめます。  実はベトナム訪問についてまだ問題がありますし、あとアメリカでの会談のために事前に伺っておきたいことがありましたが、時間がもう切れておりますから、最後にベトナム問題についてもう一点だけお尋ねいたしまして、残余の部分は三木外務大臣あとでお尋ねしたいと思います。  それは、いままでベトナムに対しましては、日本は医療の援助協力をしてまいりましたね。その点については、これ以上することが望ましいという意識が、政府部内の一部にも党内にもあったと思うのです。ところが、あなたが行かれるのをきっかけにして、南ベトナムにおける農業、工業、それへの経済援助のために技術協力または続いて資本協力、こういうものが提案される可能性があると思うのです、こちらから出す出さぬは別として。それに対して、私どもは、現在以上の農業並びに工業に対する技術援助、資本援助をすることは、これはまさに軍事力以外の直接的な戦争支持になる、そういうことでは、われわれは外交における和平交渉のためのフリーハンドを失ってしまう結果になると思うのです。そういう疑惑と、それから要望を加えましてあなたのお考えを伺って、私の質問は一応打ち切っておきます。
  256. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 穗積君の御意見をよく伺って、私もこれから先南ベトナムへ参りまして、取り組むところの態度を十分検討したい、かように思っております。
  257. 穗積七郎

    穗積委員 いや、そうでなしに、日本政府はそういうことを考えておられるかどうかを聞いておるのです。
  258. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 日本政府は、過去におきまして、医療援助をした、そういうことはございます。しかし、その後の問題といたしまして、いまアジア閣僚会議で農業開発、そういうことを積極的には考えておりますけれども、いまベトナム自身がその問題について積極的に取り組む、こういう考え方でもないように思っておりますので、これから出かけて、私がきめます場合は、ただいまの穗積君の御意見をよく伺っておきます。
  259. 穗積七郎

    穗積委員 いやいや、技術、資本、その他の援助をするかどうかを聞いておるのです。
  260. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまそれまで考えてないということを言っておるのです。
  261. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  262. 曾禰益

    ○曽祢委員 最近の政府外交、特に総理の韓国訪問あるいは外相のASPAC会議参加等のことを見、あるいは中東問題の国連緊急総会における日本の採決の態度等の見ておりますると、いま同僚穗積委員に対して、総理はだいじょうぶだ、まかしてくれというふうに言われておりまするけれども、どうも日本外交は非常にまだあちらこらちに気がねをし、自主性とバックボーンがないのではないか。たとえば総理が韓国に行かれるのは、日韓国交調整に賛成なわれわれとして当然のことである、議会の都合さえよければ、行かれて、祝賀もけっこう、日韓会談もけっこう。ただ、韓国は、率直に言って、非常に反共意識の強い国ですから、何か反共の政治戦線でもできるようなかっこうをつくるおそれもあるので、向こうに引きずり込まれないように、注意をしなさいということを私どもは申し上げておった。しかし、夫人同伴ということだったけれども、同伴した夫人も五分間でどっかへ消えてしまって、結局四国巨頭会談ということで——私は、実際たいした実はなかったのではないかと思いますが、そういう形に追い込まれた。この次は台湾に行かれる。台湾は、十二カ国のうちに入ったのを抽出して、こにも台湾だけに行かれる。一方においては、ASPACにおいて、三木外務大臣中国問題に対する、何といいますか、長期的な展望、私はたいへんけっこうだと思う。これは総理も賛成されたので、けっこうですが、どらも一つの間の二元というよりは、日本外交相手国によってぐらぐらするという心配を国民が持つのは否定できない事実だと思う。  特に先に取り上げたいと思うのは、たとえば中東の国連緊急総会におけるいわゆる二つの案ですね。ほかの案は別としても、いわゆる非同盟国の案、それから中南米案、この二つの案は不幸にして相いれない要素を持っているのですね。つまり、非同盟案というのは、結局、簡単に言えば、アラブ側の主張をそっくりそのまま認めたようなもので、イスラエルに対して停戦ラインまで引けということだけで、紛争の原因になった自由通航の問題だとか、難民問題はどうするとか、国連問題をどうするとか、そういう問題に触れないところに特色がある。中南米案というのは、そうでなくて、侵略による領土の拡張は認めないとか、撤兵しろとかいうようないい面もあるし、同時に戦後処理といいますか、紛争の原因に触れた解決の方向を示しているが、残念ながら相いれない。ところが、日本の投票ぶりを見ていると、先に来たようだから、先に賛成したという形で、非同盟案に賛成して、非同盟案が破れたら、今度は中南米案に賛成した。そんなおかしな態度をとった国は、一体どこにありますか。国連百二十二カ国のうちで、たった三カ国です。総理は、その三カ国、御承知ですか。——時間を節約する意味で、私が言います。日本のほかは、いわゆるレオポルドビルコンゴ——しょっちゅうごたごたしている。あとはカメルーンです。少なくとも筋の立った国というものは、それは相当な決意が要りますね。場合によっては、両方に棄権をした国もあるし、片っぽうに対して賛成して、片っぽうに対しては棄権するということがあってもいい。しかし、私自身は、非同盟国の案は感情的で、わかるけれども、中南米案のほうが筋は通っていると思う。そういう場合においては、せめて非同盟案に対して棄権するくらいのプライドを持ってもいいんじゃないか。アラブ諸国の石油に対する報復がそんなにこわいのですか。こういう点をどう考えるか、これはあとで総理大臣から、一体そういう外交でいいのかどうかはっきり伺いたいと思うけれども、そういう外交の姿であるがゆえに、私は韓国における個個の行動なんかをあげつらいませんが、しかし、台湾に行かれるのは友好国だからいい、しかし、台湾と南ベトナムは、日本の総理大臣はいままであぶないからなるべく避けてきた国であることは事実なんです。そういうところに勇気を持って行かれる以上、台湾に行ったら、中共との長い目の平和共存というラインをはっきり踏まえた言動をしていただかなければいかぬのじゃないか。その場限りの場当たりでやられたのでは、日本としては非常に困るのではないか。この心配を国民が持っていることは事実です。ですから、むろん台湾に対して、礼を失することはいかぬでしょうけれども、これを機会に、穗積君が心配されたようなレベルの、吉田書簡の再確認、それもそうだけれども、もっと激しい、まさか大陸反攻論に賛成してくれとは言わないけれども、時局柄、何か中共の非常な高姿勢なおりでもあるし、水爆実験のおりでもあるし、感情の高ぶりはあっても、日本が台湾に行く以上、中国問題に対しては、場合によっては国民政府にも長い目で見て、中共を国連に迎えるというようなことをあれするというくらいなレベルの高い話を、すっと出さなくてもけっこうですが、そのくらいの気持ちで行ってもらわないと、出てくるものは反共の共同コミュニケになったのではいけないんじゃないか。  いまのこの二点について、中東問題の日本の採決の方法は、私はおかしいと思うのです。それから、台湾に行かれる心がまえの基本について、はっきりしたことを伺いたい。
  263. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 まず第一は、国連の決議については、なかなか会議場の空気、その他の問題もいろいろあると思います。ただ、一般的にどうも筋が立ってない、割り切れないんだ、こういう御批判だけでも片づかない問題じゃないかと思います。この点は、曽祢君もその道の御出身者ですから、そのときの模様というものをよく御理解がいただけるんじゃないかと思います。これまた外務大臣からすでにお答えしたようでございますから、そのほうに譲らせていただきます。  第二の問題、私が国府に参りましたときの私の心がけについていろいろ御注意がございました。またたいへん好意を持ってのお話のように私思いますので、ありがたく伺って参ります。
  264. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に、これも穗積委員が触れたことですけれども、南ベトナム訪問について、われわれ国民は非常に心配しているのです。それは確かに逃げてばっかりいるのが能じゃないんで、ただ政府は何か追及されると、いや、ベトナム和平の探究に南ベトナムへ行くんだ、こう言われますけれど、この和平ということの意味いかんですけれども、軍事的な停戦とか、そういう意味から言うならば、ベトナム和平のかぎは、だれが考えてもサイゴンじゃないです。これはワシントンであり、あるいはハノイであり、モスクワであり、北京であろうと思うのです。したがって、順序を言うのではないけれども、アメリカにあとで行くからいいじゃないかと言うが、そうじゃなくて、やはり軍事的な紛争解決については、特に日本としては、アメリカともソ連とも友好関係があるので、ほんとうなら、政府の当路者、あるいはその正式の代表者がハノイぐらいに乗り込みたいところじゃないかと思うのです。国民はこのように望んでいると思うのですけれども、せめてソ連とアメリカ、特にアメリカに対して、やはりかなりきつい態度で、アメリカの立場を理解しながらも、軍事紛争の解決へのイニシアチブとそのきっかけづくりは、アメリカの北爆停止からやるべきである。しかし、それは、アメリカだけに軍事的紛争をやめろと言うのじゃなくて、究極的には、やはりそれがきっかけとなって、双方が戦闘を縮小していくことが必要だということは、これは常識が示すところだろうと思うのです。しかし、そういったような日本のきつい紛争解決へのためのアメリカへの正当な批判を含めてのそういう態度を出しながら、そして、その行動をまずアメリカに示し、あるいは三木外務大臣のソ連行きもその一つの目的としながら、そういうことの裏づけがあって——しかし、紛争解決の最後の手段は軍事的なものじゃないですね。私は、共産主義の外からの浸透を非難するものであるけれども、それに対抗するものは武力じゃないと思うのです。やはり浸透を許さないような政治、社会、経済のしっかりした体制だと思うのです。そういう意味で、この紛争解決については、思い切った外交を強いほうの国にやりながら、南ベトナムに行く場合には、やはり民政に移管された後に、民主主義を成長させて、いろいろな不平分子があっても、暴動やらゲリラやテロによってではなくて、民主主義の発達によって、そして中で片づけていく。外からのあれに対して一番身を守るのは、民主主義と民生の安定であるという、軍事的解決なんということはほんとうじゃないのだという、このわれわれ国民の希望を期待、また同情を南ベトナムに伝えにいくというのなら、私は、国民は納得すると思うのです。そういうしっかりしたけじめがなくて、南ベトナムに行くのが何が悪いのだ、和平探求はサイゴンだという、そういう自信がないというか、弁解がましいというのじゃ、国民がさらにますます心配するのは無理がないと思うのです。  そうして、国民のもう一つの心配は、率直に言わしてもらえば、一番大きな政党の総裁であり首相である人が南に行って、日本が巻き込まれることはないにせよ、もしかすると南からの戦争行為を激励に行くのではなかろうか、それからまた、日本の第一の野党の党首が北に行って、そして戦意高揚じゃないだろうけれども、士気を激励されにいくということをある新聞に言ったと伝えられている。これは一体どういうことなのかということを国民は、心配以上にほんとうに、国民は憤慨しているのじゃないかと思うのですよ。日本の国論が二つに分かれて、二大政党の党首が南と北に行き、ポンプ役といわれなくて、マッチ役とはいわれるがごときことがあるとすれば、一体日本外交はどこにあるか。日本の平和憲法の名誉はどこにあるか。私は、これを心配しているのが率直に言って国民の姿だと思うのです。だから、謙虚にその点を真剣にお考えになって、そういうことは、やはり大きな政党の総裁である内閣総理大臣みずからの行動によって、そういうことのないような確信を、やはり国民の前にぴしっと披瀝する、こういうことがあってしかるべきだと思うのですよ。総理のお考えはいかがですか。
  265. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 曽祢君のたいへん貴重な御高見を拝聴することができまして、ありがとうございます。  ただいま、最後の問題で、私が南に行き、社会党の佐々木君が北へ行くという、その点についていろいろ御意見を述べられましたが、実は、この点では、社会党の委員長の行動について注文をつけることはいかがかと私はかように思っております。せっかくの御意見ではございますが、その点では、私は、佐々木君が北へ行くからといって、それに注文をつけるようなことはいたしません。ただ、国民として、私は南に行っても、士気を鼓舞するのではございませんし、そして、平和を招来することに努力をいたします。おそらく、佐々木君も北へ行きましても、新聞でどういうように報道しておりましょうが、北を激励する、鼓舞する、こういうことじゃないだろうと思います。やはり平和への道を探求しておられるのじゃないか、これは平素の主張から当然かくあるだろうと私は想像するのであります。問題は日本のあり方でございますから、両者とも、そういう点について誤解を受けないように、十分慎重な態度が望ましいことは曽祢君の言をまつまでもないことだ、かように私は思います。  ありがとうございました。
  266. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで最後にいたしますが、そこで、儀礼からいえば、民間の使節として行かれるほうから、総理大臣のところに、儀礼的にも会いに行って、そのときにいろいろ懇談されるということもいいかと思いますが、そんな儀礼だ何だということよりも、むしろ、この際総理が佐々木さんにも来てもらう、佐々木さんだけであまりてれくさかったら、民社党の西村委員長と、三党の委員長会談ぐらいやったらいい。そういうお茶会ならばやってもいいと私は思うのです。あるいは西尾顧問がソ連に行くこともあり得ると言っているのならば、そういうお茶会ぐらいをひとつ開いて、国民の前に、お互いに、平和使節で行くのだということを確認するぐらいのことをやったって悪くないと私は思うのです。いかがですか。何だったら、返事をしなくても、考えておくだけでもいいです。
  267. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 御意見よく伺っておきます。
  268. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君。
  269. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、総理と外務大臣が時を同じくして外国へ行かれまして、二元外交と称せられていることにつきまして、正面からお伺いしたい、こう思うのであります。  私が思いますことは、日本における反共よりも、むしろ、東南アジアの諸国における反共に注目したいと思うのであります。それは、これらのASPAC諸国において現在非常に問題になっているのは、何といっても、治安といいましょうか、安全保障といいますか、あるいは共産圏諸国のひもをつけられたところの内乱といいましょうか、そういう問題が一つの大きな柱である。もう一つは経済的な困難である。この二つの不安を抱いて、かの諸国らは、日本に何かの解決を求めんとしてやってきた、こういわれております。ところが、それに対して、このASPACの会議の間において何が得られたのか。特に、経済的な問題については、日本は非常に力こぶを入れるような雰囲気であったけれども、安全保障というか、治安というか、そういった問題、香港の問題、アモイの問題、インド国境の問題、ネパールと中共との関係、あるいはビルマの共産党との問題、そういうような問題がこれらの諸国においては非常な問題になっておるにもかかわらず、これに対して日本は一体何を考えているのか、それが明確でなかったという批評が非常に多いのであります。私は、こういったような問題について、総理がまずどう考えられるのか、そこのところの基本的な姿勢を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  270. 三木武夫

    三木国務大臣 ASPACについての関連のお尋ねでありますから、お答えいたします。  むろん、アジアは非常に不安定ですから、安全をいかにして確保するかということに各国とも重大な関心を持っておったことは事実であります。しかしながら、一国の安全を確保するということは、それぞれの国の安全保障政策というものに関連をするわけであります。したがって、ASPACという場で安全確保という問題について意見の統一をはかるということは私は無理であろう、そういう場ではない。したがって、みな重大な関心は述べ合ったけれども、それでASPACに集まった国々が共同して国の安全を確保するためにこういう共同作業をとるというような、そういう意見の統一をすべき会議でもないし、しなかったわけでございます。
  271. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はその基本的な方向について総理にお伺いしたいのであります。
  272. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは渡部君、もう先ほど来いろいろ話し合っておりますので、おわかりだと思いますが、すべての国が、その国民がみずからの政体をきめるというか、そういう民主的にきめる、そういう権利があると思うのです。お互いに独立を尊重し、そうして内政に干渉しない、そういう原則のもとにおいて、私は、いずれの国とも仲よくしようということを日本自身はきめておるわけなんです。こういう点がいまのような点についての話になると、あるいは国として他国と特別な内政あるいはその独立に対する希望を述べるというようなことになって、これはいろいろ誤解を受けやすいんじゃないかと思います。それよりも、先ほど曽祢君にお答えしておりますように、やはりこの民主主義、民主政治のもとにおいてりっぱな国民生活ができるんだ、よりすばらしい生活ができるんだ、こういうような経済的な発展をしてそして国民生活が向上する、いわゆるイデオロギー的な争いなしにそういう問題がおさまる、そういうことが最も望ましいのではないか、かように私は思います。したがいまして、ただいまのお尋ねになりました点、これはもう積極的に何らか他国の内政と関係を持つということは必ずしも正しい方向ではないんじゃないかと私は思います。それぞれの国民が自由にそれぞれの行き方をきめる、こういうことが望ましいんだ、またそういう意味で、各国とも特に日本に対して助けを頼む、願う、こういうようなことはとらない、ことに日本の場合は平和憲法がありますし、また同時に、力の関係で軍事的会議を一切しない、こういうことが国民とともに約束しておりますから、そういう意味でも日本のあり方は自然にきまっている、かように思っております。したがって、渡部君のお尋ねになるのも私がお答えすることとあまり違わないんじゃないかと思いますが、あるいは私、お尋ねに誤解を持っておればひとつもう一度お聞きをいただきたいと思います。
  273. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、この平和共存という問題がちょっと誤解を招く用語ではないか、こう思うのであります。それは対等の両者が平和共存をする場合と、まるきりスケールが違ったものが平和共存をするのでは違う。ライオンと人間平和共存をする際にはおりが必要であります。ところが、ライオン同士が平和共存をするなら同じおりの中でお互いにしっぽでじゃれ合っていても済む。日本の場合は、現実問題からいって、強大なアメリカの武力という背景を持っているために非常にきれいごとの外交ができるわけでありますけれども、現実の問題からいって、平和共存を唱えるためには多くの施策と対策が必要であろうと私は思うのであります。  東南アジアの諸国が——私が申しますのは、そういう平和の問題に関して日本と同じように平和共存と言えない状態にある、そういうことに対する理解がなければ、こういう問題は東南アジアの諸国との間に大きな断層を生じてくるのではないか。だからこれを埋めるためにはどういう方向で行くべきか、その方針が明確でないがゆえの前回の混乱ではなかったのか、また、東南アジア諸国のきびしい反応ではなかったのか、こういうふうに考えるのでありまして、それに対する御返答を承りたい。
  274. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私は、戦争のない世界、平和を考える。同時に繁栄という道を考える。それならばやはり平和共存ということを言い得るのじゃないか。これは特別な力の関係で平和が維持されるとか、力の関係から見たらこれはもう格段の相違がある、だから平和共存を言えない、かようなものではない、かように思いますし、また同時にそのことはイデオロギーを越しての問題じゃないかと思います。だから他国がどういうイデオロギーの国であろうと、そういうことには一切干渉しない。しかし、こちらのほうからは平和を願うのだから、この平和共存は、相手の国が平和共存を願わないときに問題が起こるのじゃないか、かように思います。私はソ連と日本との間に、ただいま共存関係がちゃんと樹立されている。これはしかしイデオロギーは違っております。しかし、それでも両国はちゃんと共存できている。日本のうしろにはアメリカがいるからだ、かように渡部君は言われるかもしれませんが、それはとにかく、いずれにいたしましても、イデオロギーは違っても共存はできる、かように思います。したがって、いま一部で時の動きでそういう説明をしておりますが、反共か共存かという、これは何か二つが対立するような考え方、しかし、普通使う場合には反共か容共か、これならば実はわかるのでございます。しかし、共存という場合には、容共でなくとも共存できるのだ、その点を御理解いただきたい、また、それは力の関係の問題じゃないように私は思います。
  275. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうすると、首相は反共ですか、容共ですか、滅共ですか、その辺をちょっとはっきり言っていただきたい。
  276. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私はあらゆる機会に、共産主義はきらいだ、かように申しております。しかし、私は共産主義がきらいだとか好きだとかいう問題じゃなくて、共産主義のもとには自由の確保ができない、かように思っております。しかし、隣の国が共産主義の国であるからといって、それを私はいわゆる攻撃をする気持ちはございません。それぞれの国のそれぞれの国民が自分たちの行き方をきめる、かように思っておりますので、それはそれでいいんだろうと思います。
  277. 渡部一郎

    ○渡部委員 嫌共ですか。  それでは次の問題を伺います。  インドネシアにおきましては、一方的に内水宣言を行ないまして、島と島との間を結んで、それ以来その地域に踏み込みます日本の漁船等を十八隻も逮捕しております。また、沖繩の漁船を加えますと、最近でも沖繩の漁船が二はいつかまっております。また最近では、山下汽船の鉱石専用船が、これは魚をとったわけではないにもかかわらず、この地域で逮捕されております。私はこれについて総理が積極的にこういうような問題の解決のために取り組んでいただきたいと要望したいと思うのです。  時間がありませんから次のも一緒に御質問いたしますが、実は沖繩に参りましたときに、沖繩の台湾寄りの島、尖閣列島に漁船が非常にやってきております。これは従来からの既存権のようにもなっておるようなのでありますけれども、最近に至ってその尖閣列島に台湾のほうの人々がやってきて基地を設けておるようであります。これではちょっとまずいのではないか。それからまた金華山沖にはソ連の漁船がやってきて、サンマを大規模にとっておる事実がありますし、また、北洋におきましては北鮮系の船がやってきて、日本のタラバ漁の中に踏み込んできておるような実例もございます。そういたしますと、日本外交的な姿勢が、一体やられるほうはやられっぱなしであって、主張すべきことがよく主張されていないような雰囲気もあります。また、こういったような問題についても、当然主張すべきことは主張すべきであると私はかように考えるのでありまして、それに対する御見解を承りたい。
  278. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私もただいまの渡部君の言われることに全然同感でございます。  インドネシアに対しましては、外交交渉をすでに始めております。これは積極的に問題を解決しなければならない問題だと思います。  なお、沖繩の問題、これはいわゆる施政権がこちらにございませんので、その行き方としては、日本の船が拿捕されたインドネシアに対する態度とはやや違いますけれども、実情をよく話し合いました上で、私どもも台湾に対して場合によったら直接話をしてもいいと思いますが、これはやはり施政権者から話さすりが本筋だ、かように思います。金華山沖の問題、これなどはもうすでに日ソ間でいろいろ交渉しておりますし、ここにはいまは問題がないのじゃないか、かように思っております。また北鮮系のタラバガニ出漁、この問題も日ソ漁業交渉を行なったその地域でありますだけに、こういう問題にもいろいろ対策を立てなければなりません。この前サケマス出漁については、その点ではこちらの日本の漁夫が協力するというような話がありましたが、それはとめたようでございますから、いまそういう積極的な問題はないのじゃないかと思いますが、しかし御指摘のような点があれば、十分注意することにいたしたいと思います。  とにかく最近は、領海の問題をめぐりまして、いろいろ各国でかってな漁業専管水域を設けておるような例もございますけれども、どうもインドネシアの場合は、航行制限といいますか、十二海里領海説をとっているようであります。公海自由の原則から申しましても、日本の主張三海里、これが国際法上の唯一の原則だ、かように思いますので、よく実情を話して、積極的な交渉をして解決するようにいたしたいものだと思います。
  279. 渡部一郎

    ○渡部委員 沖繩の問題について数点にわたってお伺いしたいと思います。  この沖繩の問題につきましては、非常に問題があるのでございますが、四つばかりかためて私はお伺いしたいと思うのです。  一つは、総理はこの間沖繩にお行きになりましたときに、沖繩のおもな映画館でございますか、そこにおいでになりまして、沖繩の人々をお集めになりまして、祖国復帰のことについてはもうちょっとお待ちくださいというふうに言明されたそうでございます。私どもがそこへ参りましたときに、一体いつまで待ったらよろしいのか、そういうふうに現地の人々からあらためて総理に聞いていただきたいというお話がありました。そこで私は、それについて総理からこの場で御返答賜わりたい、こう思うのであります。これは沖繩の人人にかわっての質問であります。  次に、沖繩におきましてはプライス法の見通しが非常にまずいために、財政規模の上に大きな、数十%にのぼる穴があこうと現在しております。この穴のところを埋める方法がないので、現地では苦慮している模様でありますが、もしもプライス法の通過が行なわれない場合には、総理はこれに対して日本国政府の財政援助等を考慮されているかどうか。またあるいはアメリカ政府に対してこのプライス法の通過について特別に要請する御用意があられるかどうか。あるいは第三の方法を用意されているかどうか、お伺いしたいと思います。  第三番目に、沖繩の分離返還の方式についての報道がAP電で行なわれております。これは日本政府のほうが三つの方法について案を提示した、このように報道されておりまして、真偽のほどは明確でございませんが、総理はそのような事案についてどういうお考えをお持ちか、それを伺いたいと思います。  それからその次にもう一つ、これで最後でありますが、これは沖繩の委員会のほうに総理にぜひおいでを願わないと沖繩の特別委員会が進みませんので、ここのところでもう一つお伺いしておきたいのですが、潜在議席の問題であります。いま自民党がこの案に同調しないために、三野党で提出をしようとしております。きょうの夕方の委員会にかかると思うのでありますが、総理はこの潜在議席の法案に対しては反対されているのかどうかは存じませんけれども、自民党は一夜にして非常に弱い姿勢になられて、その案を出されることをためらわれておるようでございまして、この場で総理の御見解を承りたい。  以上四項目にわたって御返事を承りたいと思います。
  280. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 沖繩の祖国復帰、これは私ども心から念願し、できるだけ早く実現したい、そういうことであらゆる努力をしております。  この問題にはもう一つ、祖国復帰の問題とちょうど反対側に立ちますものにいわゆる軍基地の問題があるわけです。こういう問題が解決しない限り——この沖繩問題は一括して解決をするわけでありますので、その一括の見通しがまだ十分立っておらない、こういう状態でございます。したがいまして、いつまで待てばいいか、かように言われましても、いつまで待つその時期を明示するわけにはまいりません。この辺はしばらくごしんぼうを願いたい、なおごしんぼう願いたい、かように思います。  その次にプライス法の、援助法の改正案がしばしば出ております。この金額が限度に達しておるから、さらにそれをふやさなければいかぬ。アメリカでもいろいろ研究されておるということですが、ただいまその援助の法律の改正がまだ実現していない、こういうことですが、このアメリカの財政援助と日本の財政援助、これが同額でなければならないというようなことで別にきまりがあるわけではございません。私は、必要ならば、アメリカがどうあろうと、この沖繩に対して私どもが財政的援助をする、そのことはしてよろしいのだ、かように思っております。しかし施政権者であるアメリカとすれば、どうも日本の援助額が大きいということはこれは面目にかけてもあまりいいことじゃないように思っているんですから、おそらくアメリカ自身が積極的にこういう問題と取り組んでくれる、かように理解しております。私は沖繩の内政上の問題でさらに日本の財政的援助が必要だ、こういうことならば、積極的にそれと取り組むつもりでございます。  その次の第三の問題は分離返還の問題であります。この問題についてはいま沖繩問題懇談会、これをいままで総理府総務長官の関係で大浜君のがございましたが、今度は総理の手元でその問題について取り組もう、こういう考え方でございますので、この返還問題、これは分離返還をも含めて結論を出すようにいたすつもりでございます。  そこで、いま三つとか二つとかそういうお話でございますが、私どもがいまとっておるのは全面返還という考え方でそのことを取り組んでおります。したがいまして、地域的分離あるいは施政権の分割分離とか分割返還とか、こんなことは実はいま積極的な交渉を持っておるような状態ではございません。ただいまの沖繩問題の懇談会、これが取り組む、こういう段階でございまして、まだその結論は出ていない、かように私は思っております。  次の、潜在議席をひとつ沖繩に対して付与しようというお話があるように承っております。しかし私は、これがいま直ちに実効のあがる問題なり実績のあがる問題ならこれと積極的に取り組みますが、ただ形の上だとかあるいは感情論だけなら、これはもっと慎重に検討すべきではないか、かように私は考えておる次第であります。
  281. 福田篤泰

    福田委員長 渡部君、もう時間がだいぶ過ぎておりますから、簡単に願います。
  282. 渡部一郎

    ○渡部委員 プライス法の問題につきまして総理にお願いしておきたいのでありますが、琉球政府においてはプライス法の援助分を分めまして、もはや予算規模が考慮されているようでありますので、特にこの点については十分の御考慮をお願いしたい、こう考えます。終わります。
  283. 福田篤泰

    福田委員長 戸叶里子君。
  284. 戸叶里子

    戸叶委員 私は外務大臣にASPACの問題について、二、三点お伺いしたいと思います。  ちょうど昨年ASPACが韓国で開催されましたときに、国会でもいろいろ問題になりました。まず名前をめぐって、なかなか確定した名前がついておりませんでしたけれども、今度は太平洋協議会の閣僚会議というふうにはっきりと、きちんと名前をおつけになったようですし、また昨年の共同声明の中では、アジア太平洋地域の自由諸国がすべての共産主義の侵略または浸透に対しというような文句が使われまして、たいへんにやかましく騒がれたことを私はいま思い出すわけです。そういう点から見ますと、三木外務大臣がいらっしゃいまして、そして大体ASPACというものに対して、会議に出席されて、平和共存という線を打ち出されてきた。そういう意味におきましては前進されたと思います。ただ、そういうふうな点から考えてみましても、私はその目的なり将来性について、将来どういうふうな形をとっていくんだろうかということに対して、まだ多くの疑問を持っております。そこで目的については、先ほどからいろいろ伺っておりますと、いろんな国が集まって、それぞれの立場で平和の問題を話し合う、あるいはまたこのアジアの貧困の問題をどうやって経済的に豊かにしていくか、こういうふうなことを話し合って、貧困をなくし、経済的に向上をはかっていくのだ、こういうふうな総理の御答弁でございました。そこで、それでは、大体このASPACというのは、いまおっしゃったような目的をもって経済的な問題に限って議論を進めていかれる会議なのかどうか、この点をまず第一にお伺いしたいと思います。
  285. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、ASpACというものが二つの性格を持った会議に育っていくのがいいのではないか、こう考えております。一つは、出てくる者は外務大臣なんです。中には違うのもありますが、大部分外務大臣ですから、アジアの外務大臣が寄るというのは、そう再々ないのです。ヨーロッパなどでは、もうほとんど毎月のように寄っているんですから、そういう外務大臣がせっかく一年一回寄る会議ですから、自由に話し合ったらいい。政治の問題はいけないのだ、何の問題はいいのだと言わないで、自由にみな話し合って、相互理解の場にしたらどうか、これが一つの大きな会議の意義です。もう一つは、この地域はアジア太平洋地域というお互いに影響を受け合う地域ですね。したがって、地域協力、こういうものを相談する場にしたらどうか。だから、理解増進の場であり、地域協力の場としてASPACが健全に育つことがいいんだというのが私の考えでございます。
  286. 戸叶里子

    戸叶委員 少しその性格がわかってきたような気がしますけれども、そこで、いまおっしゃったのは、経済的な問題だけではない、自由な形で、政治的な問題あるいは安全保障の問題もお話しになるでしょう。その地域の問題をお互いに話し合っていくのだ、こういうことで一応受けとめておきまして、あとからこの問題についてまた伺いたいと思います。  そこでASPACの会議にいらして、いろいろその国その国の性格があるわけですけれども、そういう中で平和共存ということをお出しになったわけです。そういたしますと、やはり日本の国が平和共存を出したからには、何らかの形で平和共存を進めていくような態度を来年までにはおとりになっていかなければならないのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけでございます。そういう点に対して努力をされて、来年はお臨みになろうとされるのかどうか、具体的に何をなさろうとするのか、この点をまず伺いたいと思います。
  287. 三木武夫

    三木国務大臣 戸叶さんも御承知のように、共産勢力と直接対峙しておる国がたくさん来ておるわけです。だから、えてしてその会議はメンバーからすると反共同盟の色彩を帯びやすい会議ですね。そうなってきて、この共産主義というものに対して——これはわれわれも共産主義に対しては反対だし、妥協ができると思っておりませんよ。しかし、対共産主義というものになってくると、国によっていろいろ共産主義対策とうものは違ってくるのですね。軍事的色彩を、度合いを強く持たそうとする国もあれば、あるいは政治、経済、社会の安定進歩に重点を置こうとする国もあって、したがって、一ぺんに何か軍事だけで共産主義とひとつ対抗していこうという考え方を持つ国もございましょう。しかし、どういう考えを持っておるか、たとえば共産対策にしても、どういう考え方をみな持っておるのかということを知ることは、私は非常に理解に役立つ。だから今度の会議では、日本外交方針の基本について私は述べたのです。中共に対しても、いますぐ平和共存といっても、御承知のように、中共は自分が認める国とは妥協して平和共存をやるわけですけれども、普遍的な原理として平和共存の原理を中共は認めてないわけですからね。だから、いますぐに平和共存といっても、その平和共存を達成できるような条件はいまでき上がってないのです。しかし、日本はソ連とはもうすでにやっている。ソ連との間ではもうすでに平和共存をやっているのだが、中共でも、日本みずからはやはり平和に共存したいのだ、だから、中共がそういうふうな中共になってくれることを待ちたいのだ、これは十年でも二十年でも待つのだ、力をもって日本は国際間の関係を律していこうという考えはもう全然ないという日本の平和に対する基本的な考え方を述べたので、これから次の第三回の会議では、何かこのことによってわれわれが案を持っていかなければならぬということではなくして、日本外交政策の基調に対するアジア諸国の理解を求めたいということが、私の申した一つの主眼点であったわけでございます。
  288. 戸叶里子

    戸叶委員 日本外交政策に対する基本の主眼点をお述べになり、そしてこういうふうな中共との平和共存の形でいくのだ、その信念のほどはいいと思いますけれども、それは急にはできないとおっしゃいますが、たとえば国連の総会などで中共の承認をする、こういうようなことによっても、日本が中共に対してはこういうふうな考え方を持っているのだという一つの証拠になると思うのです。だから、そういう意味で、やはり国連に行かれたときには、いままでのような中国に対する扱い方、考え方というものでなくて、もっと積極的に中国を認めて、そしてこの平和共存立場をとってアジアの平和を確立するんだ、こういう態度をお示しになって、初めてASPACにおいての外務大臣の演説というものが生きていくんじゃないかと私は考えるわけでございますが、こういう点についてどうお考えになりますか。
  289. 三木武夫

    三木国務大臣 私は中共にも聞いてもらいたいという意味もあります。それはなぜかといえば、中共自身も国際社会と協調して生きていこう、こういう考え方のおだやかな中共になってもらいたい。いまはだれが見ても中共はかたいですわね。戸叶さんが見てもおわかりになるでしょう。かたいです。したがって、中共との友好国というものもいまはあまり多くないですね。世界的に見れば非常に少なくなっている。そういうことで、中共もそういうふうな中共になってくれるならば、われわれ日本からはほんとうに中共とも平和に共存したいのだ、こういうことで中共のほうもこの日本の意図、考え方というものをよく理解してもらいたいという意味もあったわけであります。このことは、相手もあることですから、直ちにおまえはああ言ったから中共に対していろいろ積極的な対策をとるのだろうという結びつきは、これは少し、そういうふうに結びつけては考えていないのであります。それはそのときどきの事情によって検討いたしたいと思っております。
  290. 戸叶里子

    戸叶委員 せっかく外務大臣が進歩的な前進した意見をお出しになったので、その前進した意見に徹していっていただきたいというのが私どもの希望でございます。  そこで第二に、今回のASPACへの参加国というのはおそらく昨年と同じであったと思います。昨年このASPACが開催されまして、帰ってこられてから、閣僚たちはアジア太平洋地域その他の自由諸国が将来この地域に参加するようというような声明書を出されて、そして椎名さんが記者会見をされて、つまり非同盟諸国がこういうふうな会議に入ってくれるのが望ましいのだ、その国として願っていることは、インドあるいはビルマ、パキスタン、カンボジア、インドネシア、こういうところにぜひ入ってきてもらいたいのだということをお述べになりました。ことしも参加国の拡大ということを声明書の中にうたっておられるようであります。しかし、昨年そういうことをうたわれても、一国もふえませんでした。ことしそういうことをうたわれて、はたしてこういう国が入るかどうかということに私は疑問を持ちますけれども、ふえるというふうなお考えをお持ちになっていらっしゃいますか。おそらく来年は参加国がふえるだろうというふうにお考えになるか、あるいはまた参加国をふやすような努力を何かされるのか、この点についての見通しをお伺いしたいと思います。
  291. 三木武夫

    三木国務大臣 参加国がふえていくような努力をしたいと思っています。またふえると私は思います。何カ国ふえるかわからぬが、ふえると思います。今度もラオスがオブザーバーとして来ておったのですが、会議の最後になってきましたら——オブザーバーというものはものを言わないでしょう。会議をやってみて、この会議ならばこれはもうだいじょうぶだといって、演説をしまして、共同声明にオブザーバーでサインしたのです。そして来年は正式のメンバーになる可能性を検討するであろうというようなことを言いましたからね。そういうことで、ラオスの立場というのも非常にユニークな立場ですが、それがしまいにきたらみずから演説して、サインしたですから、私はふえてくると思っております。
  292. 戸叶里子

    戸叶委員 さっき私が申し上げましたような非同盟諸国はいかがでございましょうか。
  293. 三木武夫

    三木国務大臣 私が演説で指摘したのは、戸叶さんのようにパキスタン、インドまでも私は言わなかったのです。少なくともインドネシア、シンガポール、ビルマ、カンボジア、これくらいの国はこの会議に参加してもらうように勧誘すべきであるということを指摘したのでございます。その中には御承知のように非同盟諸国が入っておることは明らかでございます。
  294. 戸叶里子

    戸叶委員 昨年そういう考え方を持っておられて、まだことしになっても入らない、それでラオスだけは、昨年もオブザーバーでございましたが、ことしは来年参加国になるということを約束したのだから、オブザーバーから一つ前進したのだ……。
  295. 三木武夫

    三木国務大臣 約束じゃなくて検討です。
  296. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうお話でございましたが、来年になって非同盟諸国がぐんと入っていくようなことになればまた別ですけれども、なかなか今日の情勢でそういうことができるかどうかということを私は非常に疑問に思うわけです。と申しますのは、アジアにおいていろいろな会議がありますね。たとえばいまおっしゃったようなASPACとかベトナム参戦国会議、あるいはアジア太平洋圏構想というのを外務大臣は持っていらっしゃるわけですね。そういうふうな構想なり、それからさらにまたタイの外相が東南アジア連合というようなものの構想も持っておられるわけですね。そういういろいろなものがあるわけですけれども、そういうふうなものに対して外務大臣はどういうふうな気持ちを持っておられるかをまず伺いたい。たとえばこの会合はこういうことを重点に置くとか、あるいはこの会合もこの会合も共通した一つのものであるということはあり得ないと思うのですけれども、どういうふうな構想を持ってこれらの会議の関連性を持たせていこうとされるのか、この点を伺いたいと思うのです。
  297. 三木武夫

    三木国務大臣 戸叶さんも御承知のように、どうもアジア地域というものは、国際的援助から見ても非常に少ないのですね。一番少ない。何か取り残されておるような地域、ラテンアメリカ、アフリカに比べたら、そういうふうな点があります。人口が集中しておるという点もあるのでしょうけれども、統計上などから見ると、やはり国際的援助は一番少ない。半分にも満たないような状態です。東南アジアなど、比べたら問題にならない。一人当たりの国際援助は一ドル六十セントくらいですが。低開発国はみな五ドルをこえておりますね。そういうのですから、いまはこうアジア、アジアということで、いろいろな地域協力の機構ができることは、私は必要だと思っているのですよ。やがてはまたこういう機構がさらに統合されるような時代が来るでしょう。いまはやはりいろいろな地域協力の機構ができて、そのことがアジアの開発のために役立つならば、この時代としては役割りを果たしていくのではないか。それを無理に、いまの段階でこんなに幾つもあるのはいけないから、一つにしようということよりか、世界から取り残された形になっておるアジアの地域協力を、いろいろな連合体を通じてアジア開発に取り組んでいくことが、いまの段階では実際的な効果があるのではないか、そういうふうに見ておるのでございます。
  298. 戸叶里子

    戸叶委員 地域的ないろいろな協力ということは必要だと思いますけれども、ただ問題は、貧困の問題とか経済的な問題ということを取り上げて話し合っているうちはいいですけれども、安全保障の問題等になってまいりますと、なかなか問題が重大になってくると思います。たとえば共同コミュニケの前文を見ますと、その中に流れている思想として、域内諸国同士が協力を強化する必要性とか、域内諸国の地域的協調とか、あるいは現在の連帯のきずなをさらに一そう強化する必要性とか、こういうことばが見られるわけです。地域的にかたまっていくときには当然そういうものは必要だと思いますけれども、そしてまたこの表現は必要だと思いますが、事、経済的な問題でなくて、軍事的な問題、安全保障というような問題、こういうことが取り上げられてまいりますと、やはり私どもが心配するようなNEATOへの下地をつくるようなことになりはしないか、こういうことが非常に懸念されるわけです。大臣はそんなことはないとおっしゃるかもしれませんけれども三木外務大臣がいつまでもやっていらっしゃるわけではないわけですから、ほかのときにそういう下地になりはしないかという国民の素朴な懸念もあるわけです。こういう点についてもはっきりとした方針を示しておいていただきたい。たとえば、経済的な問題だけで話し合うような会議であるとおっしゃるならばまだ安心ですが、政治、軍事、いろいろな面で話し合ってくると、やはりそういう面が一番懸念されるのではないかと思いますので、お伺いをしておきたいと思います。
  299. 三木武夫

    三木国務大臣 私もそういう点は注意をしまして、私の演説の中でも、各国の安全を確保するということは国の最重要の課題である、しかし、その問題は軍事的な面とも関連をするから、このASPACの場は論ずるべき適当な場ではない、そういう問題については、ここで話すことはいいにしても、ここで何かの合意に達しようということはしてはならないということを私は述べましたし、また共同コミュニケの中にも、この団体というものは、このASPACという場を通じて特定の国、特定のグループに対して対抗するための機構としてあるのではない、こういうことを明白にうたいました。お説のとおり私はいつまでも外務大臣をしておるのではないのですけれども、しかし、だれがなっても、この生まれつつあるASPACの性格というものは変えることができないようなものになっていくに違いないと私は信じておるものでございます。
  300. 戸叶里子

    戸叶委員 安全保障の問題については、相当関心が高くて、議論をされたけれども同意をしなかった、こういうふうなことは私も読んでおります。その問題等もございますが、いまの三木外相の御答弁によりますと、経済問題なり福祉問題はある程度一つのまとまった線を出すけれども、安保全障の問題、軍事的な面では、議論はどこまでも自由にするけれども一つのまとまったものは出さないのだ、こういうふうにもうきめてあると理解をしてもよろしゅうございますか。今後においてもそういうことはあり得ない、ここできめるということはあり得ない、こういうふうに言い切ってもよろしいわけでございますか。
  301. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、もしそういう場にASPACがなるとするならば、ASPACというものは健全に育っていかないと思います。第一ラオスだって用心深く会議を見ておったわけですけれども、最終になって演説して署名をしたのですから、そうすれば、広げるどころか狭くなるですからね。したがって、将来のASPACは、軍事的な面から安全の確保の問題を議論する場では断じてないことを信じております。
  302. 戸叶里子

    戸叶委員 このASPACは年々交代でいくわけですか。参加国をずっと回っていくわけですか。それともどういうふうな形でやられるかというのが一つ。  もう一つは、来年はオーストラリアですから、オーストラリアにいる該当国の大使が常任委員会委員となっていろいろな準備をするようですね。その次の年はどこでやるとかということは、その年に終わったときにおきめになるのですか。それとももうすでにきまっているのですか。この点も伺います。
  303. 三木武夫

    三木国務大臣 その年の会をしまして、次の会はどこにするかということはその会議できめるのです。だから来年のことはきまりましたね。豪州でやる。だけれども再来年のことはさまってない。それは来年のオーストラリアの会議で、いまから言えば再来年の主宰国をきめるということにしております。
  304. 戸叶里子

    戸叶委員 三木大臣は、日本に近い将来持ってきたいというお考えがおありになりますか。私はこの問題は、去年実はスタンディングコミッティーというのがあって、非常に心配したわけです。これに対して外務省のほうでは、常設の機関ではないのだ——機関ではないかもしれませんけれども、常設の機関ではない、連絡員のようなものだ、こういうふうな答弁でごまかされたわけです。ところが今日、やはり常任委員会ということばで共同声明の中にでも何でも訳してあるわけでございまして、外務省はその当時、常設機関だとか常任委員会なんて言いますと、あと何かつつかれやしないかと思って、心配されてそういうふうにお逃げになったようでございますけれども、やはりそういうふうに逃げられないで、はっきりものを言っておかなければいけないので、この際私は外務省に忠告をしたいと思うのです。というのは、常任委員会ということがその当時わかっていながら、そう言うと、韓国でやったASPACであるから、何か痛くもない腹を探られるのじゃないかということでお逃げになったと思うのですけれども、この常任委員会というものは、そうすると今後も当番国にいつも置いてやっていくという形になっているわけですね。
  305. 三木武夫

    三木国務大臣 当番国に常任委員会を置きまして、各国の大使がメンバーになって、その国の外国大臣が主宰して、ASPACでいろいろ取り上げられた問題がありますね。そのあと始末と、来年の大会の準備をする、こういう性格を持つものでございます。
  306. 戸叶里子

    戸叶委員 他の委員会との関係質疑をやめたほうがいいようですからやめますけれども、ただ一点、違う問題ですけれどもお伺いしておきたいのは、国連監視団の問題です。  イスラエルとアラブでその後やはり小ぜり合いがあって、国連で監視団を出すということがきまったわけです。私は三木外務大ににこの前、駐在武官——各国に日本の自衛隊員か行っているその駐在武官というものは、監視団には行かないですねということを申し上げたときに、いや参りませんとおっしゃったわけです。その後、三木さんがおいでにならないときだと思いますが、国連局長が、駐在武官が行ってもいいというような——どういう表現でしたかわかりませんが、法律的違反でないというのかしら、そういうような表現をいたしまして、ちょっと私どもを戸惑わせたような気がいたします。で、もう一度確認しておきたいことは、この監視団にからんでだれか人員を出してくれというようなことの要請があっても、今回は外務大臣はお出しにならない、あるいは駐在武官は観視団としては出さない、こういうふうに、この前と同じようなお考えでいられると思いますが、確認をして私の質問を終わりたいと思います。
  307. 三木武夫

    三木国務大臣 国連局長が言ったのは法律的な解釈だと思うのです。私もそうだと思うのですね。外務省の駐在武官が外務公務員としてそれが監視団に加わっていくことが法律的に違反しておるとも思いません。しかし私はこれは一つの政策の問題ですから、自衛隊をそういう外務公務員にして監視団に派遣する考えは持っておりません。前のとおりです。おそらく法律的にはそういうことは可能だろうということを言ったのだと思う。しかし私は、この問題はひとつ各党においても研究してもらいたい問題点だと思っておる。社会党も国連協力と言っているのですが、協力というのは、ほかの面における協力もあるけれども、国連の総会で満場一致で決議になったような問題の場合に、監視団の派遣というものに日本はどの程度協力するかということは一つの研究の課題だと思う。現在のところ私は自衛駐在武官を外務公務員として監視団に派遣をする考えはありません。しかし、シビリアンの場合は派遣をする考えを持っておるということです。
  308. 戸叶里子

    戸叶委員 シビリアンの場合にはあるということは、普通の公務員の場合にはあるということですか。
  309. 三木武夫

    三木国務大臣 こう資格を変えてというのでなしに、そういうややこしいことをしないでする場合には、これは積極的に考慮したいという考えです。
  310. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ。自衛隊が行く場合には海外派兵になって、そうして外務省に来てもらって外務省の公務員になって駐在武官になればこれはいいのだというのは、私は実態において変わらないのだからおかしいと思うのです。そういうこそくな解釈で問題を解決しないようにしていただきたい。そうですね、外務大臣外務大臣もちょっとお考えになってみていただきたいのですが、自衛隊を海外に出すことはいけないのだ、自衛隊法に違反するのだ、しかし自衛隊を外務省の公務員に変えちゃって、そこから出せばこれは海外派兵でないのだ、ここら辺は実態に変わりがないのに少しおかしいじゃないかということを考えるのは私だけじゃないと思うのですが、いかがでしょう。  それから派兵ということと派遣ということが違うかどうか、この点もついでに伺って私の質問を終わります。
  311. 三木武夫

    三木国務大臣 私はいま自分の方針として自衛隊員を外務省の外務公務員にして、これはシビリアンでございますということで監視団に派遣する考えは持っておりません、こう申し上げておる。しかしこれは研究してみる課題である、こうつけ加えて申し上げておるのでございます。  それからまた、派兵と派遣は実際ちょっと違う点があると私は思うのです。何か少しニュアンスの違いがあると思いますが、これはニュアンスというものばかりでもいかないでしょう。いろいろ実際に、どういう場合にそれがどういう条件でどういう使命をもって、いろいろなそのときの条件にもよりましょうから、ことばの持つニュアンスだけではちょっと一がいに定義づけることはむずかしかろうと思います。
  312. 戸叶里子

    戸叶委員 ではその問題もからんで、よく一度研究をしておいていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  313. 福田篤泰

  314. 山田久就

    ○山田(久)委員 本日は日本外交の一番基本目標である平和の維持、この問題について外務大臣のお考えを承りたいと思うのでございますが、その前に、私も長らく外交界に身を置きまして、ずいぶんいろいろ世界を歩いてみました。しかしながら、民族、国は異なっておりましても、たった一つ共通した悲願というものが見られる。それは何とかして平和の中に生きていきたい、この一点においてはみなこの希望をひとしくしておるということは、はっきり言えるのだろうと思うのであります。にもかかわらず、この平和という問題は非常な悲願ではあるけれども、ただ希望するということでは得られない。結局これにはこれを実現する実際的、具体的かつ有効な手段、方法を伴わなければならない、ここに非常なむずかしさがあるんだと思うのであります。したがいまして、これを研究、探究するためには、やはりこの平和の問題について、現在の国際情勢の中において非常に大きな関係を持っておる幾つかの課題について十分分析して、正しい判断のもとに対策を考えなければならぬ。このたびのASPAC、これを持たれた一連のアジアにおけるわが国外交、これに関連しての背後にある現在の南北問題は、平和への努力の中において、これと不可分な、かつ非常に大きな問題の一つであろうと私は考えます。この点において、いろいろ今日まで政府は努力を続けてきておられるのでありますけれども、端的に申しまして、実は日本の努力にかかわらず、具体的な形ではまだ非常になまぬるくて非常に不十分な点、残念ながらこういう点が非常に多いのじゃないかと思うのです。特に南北問題の中心課題は、御承知のように、貧困、無知、疾病の除去、ことに貧困の除去、安定した経済生活を与えていくということを考えていかなければならないにかかわらず、そうしてまたこの地域においてのアジアの各民族が、日本の最近の異常な経済的発展等に伴いまして、日本に対する期待、これが非常に大きい。また、国際的な日本責任についての期待も高まっておるにかかわらず、たとえば実際問題において、経済協力をやっておる日本の分担額というような点を見てみますと、世界の期待に反して一%にもまだはるかに及ばないというような状況でもありますし、また技術協力というような面でも、まだまだ期待に反して非常に不十分である。また、第一次産品等の貿易に対する特恵関税という問題についても、いろいろわが国事情があることはむろん自分自身の問題であるから十分理解はしておるけれども、しかしながら、より大きな政治的課題というものから考えれば、もっとこの問題に真剣に取っ組んでいかなければならぬ。そういう態度にもまだもの足りないところがある。ことに大臣も御承知のように、この地域の連中は、どうも日本は、やるやるというかけ声だけは言っておるけれども、しかしながら、実際問題では何か貿易本位というか、売り込むことばかりは熱心であるけれども、しかしながら、ほんとうの協力ということについては、先ほど申し述べたような実績からいって非常に不十分だ、こういう声が非常に強いにかかわらず、日本の経済協力、その基本になる基金等も、いま大部分は輸出入銀行の特別な援助という、いかにも貿易くさい、それを裏書きするような形でやっておる。現在協力基金があるにかかわらず、伝うるところによれば、それも銀行の中に入れてしまえというような議論があるというのは、私は非常に残念だと思うのです。何かしら羊頭を掲げて狗肉を売るというような点が非常に多い。この非難に対しては、実は政治的に相当の勇気を持ってやっていかないと、だんだん現実には渋っておるうちに非常に相手をおこらしてしまう、非常な誤解を生ずる。そのときになってからやって、非常に効果がなくなった段階においてやるというようなそしりを免かれないのが現状だと思います。大臣もいろいろ努力はしてこられたように思いますが、この点について私は非常に不満だと思うので、今後この問題について、具体的な一つの方策を伴うという意味において、大臣の今後の方針、決意等をまず承りたいと思います。
  315. 三木武夫

    三木国務大臣 山田さんの御指摘のように、アジアの日本に対しての期待は非常に高まる一方です。これはアジアの中の唯一の先進工業国ですし、日本へ来てみれば、非常に外から見れば繁栄の姿がありますから……。しかし、とにかく敗戦後二十数年ですから、あの資本蓄積を全部なくして、そして建て直してから二十数年ですから、日本の経済成長の陰にはアンバランスがたくさんあるのです。住宅だって道路だって、あるいは公害の問題だって、大きくいえば中小企業、農業、たくさんの問題をかかえておる。だから、海外に対する協力の体制を強化するための一番の必要な条件は国民の理解です。いろいろなものをやってから、これを次にやるんだということでは、向こうの期待にこたえられないですから、どうしても家を建てたり、道を直したりするのと同じような必要性をもって、低開発国に対する援助というものをやろうという、国民的理解を持つかどうかが大事な点。これはやはりわれわれとしても、国民の理解に訴えなければならぬ面がたくさんあると思うのです。それが一つです。そういう国民的理解の上に立って、そして政府自身のいまの低開発国援助、これに対する援助体制というものはまだ整っていません。これは改善しなければならぬ。いま山田さんの御指摘になった海外協力基金にしても、なかなか使えぬようになっておる。金額というよりも条件が非常にきびしくなっている。そういう点で低開発国援助に対する日本の協力体制の整備という問題も起こってくる。また金額も金額ですけれども、条件というものは非常にきびしいですからね。日本の輸出入銀行の金利水準でやるということになれば、ちょっと援助のカテゴリーに入るかどうか問題であるわけですから、こういう点で、単に機構ばかりじゃなしに、この一つの条件緩和というものに対してどのようにこたえていくか、そういう問題をひっくるめて、国民の理解のもとに、援助の条件、援助の機構というものが再検討の時期に来ておる、私も帰ってくるなり閣議でもそのことを申し上げまして、各省とも協力してこの問題に取り組む必要を申し上げたのでございます。今後政府間においてもこういう問題で検討を進めてまいりたいと思っております。
  316. 山田久就

    ○山田(久)委員 日本がいろいろな問題をかかえておる、それとのバランスというようなことで具体的には問題があるということは、それはわからぬでもありません。ただ先ほど私が申し上げましたように、平和を維持していく仕事というのは、あらゆる外交措置あるいは国内的措置、いろいろなものを伴い、かつ一国の安全問題を同時に軍事的な方面からも考えていくということでやっていかなければならないわけでありますが、先ほども指摘しましたように、平和というのは、外交的措置においても具体的な有効な方法を伴わないで、それでただ平和が一番大事なんだという考えがとかく民間その他にも横行しているわけであります。それじゃ困るんだという点をひとつよく理解されて、少なくとも政府においてはそういう見地からの政治的決定を優先してやっていただきたい。具体的なことになると、先ほども金利その他の条件のお話が出ましたけれども、これはいつか非常に事務的に成り下がってしまって、結果においては政治的効果を失うようなことになるということでは、唱えることは平和であるが、具体的措置ということになってくると逆なことをやっておるという結果になることを非常におそれるので、重ねて、この点については、政府の非常な勇断を持った政治的措置を希望してやまない次第でございます。  次にやはり平和の問題に関連しての重要な大きな課題は、何といいましても東西関係、つまり共産圏とのいろいろな関係でございます。戦後共産圏との関係におきましては鋭い冷戦時代を経まして、今日においては核というものの出現とも相まって、共産圏が言い出したことばでございますけれども、いわゆる平和共存という名である種の安定状態というようなものを持っているわけでございます。この間において共産圏にいろいろ変化が生まれてきておる。一体これが戦術的な変化であるか、それとも戦術以上のいろいろな問題がこれにあるのであるかという点については、一つの大事な情勢判断としてこれを正しく評価したその基礎の上においてわれわれは考えていかなければならぬと思うのです。この点について、ソ連もいろいろ変わってまいっておりますし、また共産圏におきましては、かつての一枚岩といわれておる点が非常に多元的な動きを示してきております。一方においては、中ソ対立ということをめぐって、また中共の国内事情から、最近は中共は何か異常な一つ傾向をたどっているわけでございまして、この点はわれわれとしても、対外的には非常に注目してみる必要がある。最近のビルマ、インドあるいはネパール等の反応等も、ある具体的な宣伝あるいは工作にも関連を持っておる点が非常にあると思います。   〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 ごくポイントだけでけっこうでございますけれども、昨今の共産圏の外交、この情勢判断について特に外務大臣考えておられる点。それからまた中共の昨今の対外的な動きとして、平和の保持という点から注目すべき点があるとするならばそれはどういうような点であるか。またこの点についての評価、近隣のアジア諸国あるいはASPACの中においての議論等で何か特に問題にされておる点があればどういう点であったか、ひとつこの際承っておきたいと思います。
  317. 三木武夫

    三木国務大臣 ソ連の動向については山田さんはかつて名声高きソ連大使をされたわけで、よく御存じであろうと思うのです。しかし、とにかく米ソの間の対立が緩和されておる傾向というものは、これは両方ともいろいろ軍事力の面において、核戦力の上においては圧倒的な地位に立っておる。そして核戦争というものはできないという前提の上に両国は立っておる。そういう意味において、米ソがいざ徹底的に対立するというときには、何らかの形で回避されておる。こういう限りにおいて両国ともこれは一つ平和共存考えておる。それは何かといえば、もし平和共存でなくして核戦争を予定するならば両国の存立を危うくすることは明らかですから、知っておる。だから両方ともいろいろ考え方に違いはあるし、政策にも違いは非常に多いけれども、その中において核戦争まで持っていかないという限りにおいての共存態勢が米ソにある。中国はわれわれにしてもまだわかりにくい点がある。中国に進行しつつある文化大革命の帰趨というものは、しばらく時間をかけなければわからないと私は思う。いまこの段階において将来の中国がこうだという断定は早計に過ぎると私は思っておる。しかし、いつかはああいう状態が落ちついてくるでしょうね。いつまでもいまのような状態が中共に続くとは思わない。中共がどうなるかということはしばらく時間をかしたらいいのではないか。幾ら紅衛兵が何をやろうが、日本に関連することではない。これが一応落ちついた後における中国の対外政策というものを見きわめるのには、時間をかけたらいいという感じがいたします。ただ私は中国に対して、ASPACでも言ったのは、とにかく中国でも国内の問題をたくさんかかえておるのだから、よその国の立場をみな尊重して、そして中国がわれわれと違った考え方にあっても、りっぱな国をそれでつくり上げたらどうだ、そうして水爆とか軍事力というのでなくして、もう少し人間をしあわせにするための競争をやってみたらどうだ、中国の内部においても。その競争を、われわれはまた信条が違うんですから、違った信条で日本もまた共産主義よりもりっぱな社会をわれわれはつくる自信を持ってつくりたいと思います。中国中国で、そしてまたわれわれよりもすぐれた社会をつくるというならつくってみたらいいと思う。だから軍事力を中心として、そういう形において優位を保とうとしないで、人間をしあわせにするための競争的共存をしたらどうか。日本はいつでも中国平和共存したいんだ、中国と戦うということはわれわれは考えてない。だから中共も、やはり自分の好きな国だけと平和共存と言わないで、普遍的な原理として平和共存というものを中国が認めるようになって、ほかの近隣の諸国との間にも平和に暮らせる中国に早くなってもらいたい。われわれは何年でも待ちたい気持ちだ。日本からはこういう考え方で中共といきたいんだということを中共にも聞いてもらいたいということで、会議で言ったことは中共だけではないんですが、私はそういう気持ちを持っておるわけでございます。したがって、中共の問題というものは、まだ非常にわかりにくい点が多いので、中共の動向についてはしばらく時間をかけなければ、どうだということを言い切れないと私は思っております。
  318. 山田久就

    ○山田(久)委員 私がこの際申し上げたい点は、実は共産圏のいろんな変化といい、あるいは中共のいろんな出方といい、実は静かにこれを見守ってみますと、一国の対外政策を動かしてきておる歴史的な一つの原理、ナショナルインタレストということ、どのような名目を用いようと、これが動かしている非常に決定的な要因になっているという点をお互いに見のがさないでいかねばならない。そういう見地で実はソ連の変化というものも、あるいは共産圏の中における多元主義というものも見ていかなければならないし、また今後の中共の動向もそういう点をぜひ頭に置いて情勢判断をしていただきたい、この機会にこの点をひとつ要望しておきたいと思うのであります。  さて次にわれわれが平和の問題について検討しなければならないものは、これは一国の安全問題ということであります。先ほども申し上げましたように、この安全というものを考えていくのは、むろんその軍事的な見地からだけではなくして、あらゆる外交的あるいはまた対内的ないろいろな措置と相まっていかなければならない問題でございます。一国の安全問題というものはその国にとっては実は政治的に非常な最高の政治問題である。どこの国にとってもこれは全く同様でございます。にもかかわらず、実は戦後日本占領下に長らく置かれたあるいはアメリカの庇護というものになれたというような関係からして、国民一般の間に、安全問題を自分自身の真剣な問題として一体そういう見地からこれと取っ組んでいるのかどうかという点には、非常にあいまいさ、あるいは安易さというものがあるのじゃないか。これは日本自身にとっても非常に重要な、あるいは嘆かわしい問題であるということにもなりますし、また、これは極東の全般の平和維持という見地からも、ここでもう一ぺんしっかりした認識を日本が、あるいは国民全部が持つという必要があると私は考えます。ことに、先ほども大臣が指摘されたように、核兵器の出現ということは、実は安全問題については基本的な変革をいろいろもたらしておる。こういう見地から十分考えていかなければならないと思うのであります。この安全を保持していくのは、むろんこれは具体的、実際的、実効的でなければならぬわけでございますが、それにつけても、やはりいろいろな現下の今日までの事例等を十分われわれが参考にしてやっていくということは、具体性を持つ一つの方法として私は非常に大事な点じゃないかと思う。こういう見地からひとつ安全問題について御質問したいと思うのでありまするけれども、現在国連に加盟している国の中で、一体軍備を持っていないという国があるかどうか、あるいはまた現在中立国、中立政策を掲げておる国、その国の安全保障についての具体的措置は彼らはどんなふうにしてやっているのか、まずこの点についてひとつ事例をお示しいただきたいと思います。
  319. 三木武夫

    三木国務大臣 国連加盟国で軍備を全然持ってない国は私はないと思っております。全部みなそれぞれに、今日の世界情勢は安定した世界情勢でないですから、好んで持っているとは思わぬけれども、やはりある程度の軍備を持ち、自衛力を持つということが国際的な常識であります。したがって、国連加盟国で軍備を全然持ってないという国は私はないと思う。——あるかね。——なかなか事務当局でもすぐには考えられぬぐらいですから、ないと言い切ってもいいでしょう。  それからまた、非同盟諸国、これはやはりどこの国とも軍事的に結ばないわけですから、したがって、みずからの軍備をみなやっぱり相当に持っている。そういうことで、みずからの軍備を持ちながら、非同盟諸国というものは安全保障の面においては非常な不安定ないま状態に置かれておると思いますよ。しかし、とにかく自分が相当なやはり軍事力をみなが持って、その上に立って軍事的な提携をしないという立場が非同盟の立場である、こういうふうに考えております。
  320. 山田久就

    ○山田(久)委員 いま日本に無防備中立という考え方が存在しているわけでございますが、さらに一つの事例といたしまして、第二次大戦後われわれの念願に反していろいろなところで武力的紛争が起こっておることは御承知のとおりでございます。その起こっておるおもなものを回顧してみて、それらが一体集団保障のかかわりのある国で起こっておるか、あるいは単独防衛、非同盟という立場に立っておるところで起こっておるか、これは大臣でなくてけっこうですが、その事例がわかったら、ここであげていただきたいと思う。
  321. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 分類のしかたはいろいろあるかと思いますが、まず東西両陣営の対立の関係から起こったものとしては、朝鮮動乱とベトナム紛争があるわけでございます。朝鮮の場合には、分裂国家とよくいわれておりますが、いずれの集団安全保障体制にもいまだ入っていない状況のときにああいう動乱が起こったわけでございます。ベトナムにつきましては、いずれも集団安全保障体制にやはり入っておりません。ただ南ベトナムにつきましては、当事国としてではございませんが、その地域は一つの地域としてSEATO条約がカバーし得る地域ということになっておるわけであります。  それから第二のカテゴリーとしては、国内の共産系ゲリラの鎮圧のための軍事行動の顕著な事例として、ギリシァ、マレーシア、それからフィリピン、この三つがございます。これはしかし国際的な集団安全保障体制とは関係のないことでございます。  それから第三のカテゴリーとしては、民族間の対立からきた武力闘争でございまして、これはインド、パキスタン間のものと、それからパレスタインをめぐるアラブ人、ユダヤ人間の対立でございます。このインド、パキスタンは、インドは非同盟でございますが、パキスタンのほうはSEATOに入っておりますけれども、SEATOというものは共産勢力の侵略に対してのみ働くという留保がついておりますので、そういう点からいうと、集団安全保障体制によってはカバーされない紛争であったわけでございます。それからユダヤとアラブの争いにつきましては、アラブ諸国の間は集団安全保障体制をとっておるわけでございますが、イスラエルはそういう関係は何も持っておりません。  それから第四のカテゴリーとしては、民族独立戦争がございます。これも国際紛争というにはちょっと違うわけでございますが、インドネシアがオランダに対して、アルジェリアがフランスに対して、長い間武力闘争を独立をかちとるまでやったことがあるわけでございます。  第五番目のカテゴリーとしては、全く純然たる内戦でございまして、これは戦後中国において、それからコンゴにおいて起こっておるのが最も顕著なものでございます。
  322. 山田久就

    ○山田(久)委員 ただいまの事例、これは事例でございますから、将来も必ずそうであるとは、これはわかりません。しかしながら、これは非常に重要視しなければならぬ事例だと思います。同時にまた、国連自体は、今後の行き行というものはやはり集団安全保障ということによって平和を維持していく、またそういうことを必要としている客観情勢にあるということを、安保理事会が最も重要な機関であるという点からも、そういう客観事態を物語っているものではないかと思うのであります。  そういう点から考えてみまして、いまわが国においていろいろ安保についての論争がございます。ただこれについて、結局万一侵略を受けても無防備で、そんなものはやられっぱなしでいいということは考えているのじゃない。やはり何らかの形において国連等にたよりたいということであろうと思うのです。ところがこの場合において、私の見るところによりますと、自分自身の能力の範囲においてやはりみずからを守る意思と力を発揮しようとしている用意を持たない国、つまり他国の、国連軍という名においても、つまり他国の夫であり、父親であり、子供であるその人には血を流してもらうけれども、わがほうはみずからこれをやる意思がないという状況のもとにおいては、私は集団安全保障というものは、これは倫理的に成り立たないというふうに考えます。またその倫理問題を離れまして、なるほど現在は国連がまだ十分の安全保障の機能を発揮するということは、むしろきわめて不十分と言ったほうが適当だと思うのですけれども、そういう状態にあるからでございますけれども、一体これがわれわれが期待するような十分の措置というものがとられるような段階になったときに、無防備絶対中立ということで、その意味において国連の安全保障のメンバーになり得るかどうか、この点についてひとつ大臣の御見解を承りたいと思うのです。   〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  323. 三木武夫

    三木国務大臣 現在の段階では、私は山田さんの言われるように、集団安全保障というものが安全保障機構の中心だと思います。将来において国連がどのような安全保障の機構としての役割りを果たすかということは、これは相当時間がかかるし、またこれはちょっと予測しにくいものがあります。そのときに国連がそれだけの非常に強力な安全保障の組織を持つということになれば、軍備を持つという各国の考え方も変わってくると思います。したがって、いまはなかなかこうだということは、大体国連にどういうふうな安全保障の機構が将来できるかということを予測することもなかなかむずかしいですから、そのときの各国の軍備がどうなるかということは予断を許しませんが、無防備ということは、それは人類の理想ではありましょう。しかし現実にそういう事態が来るということは、これは相当遠い将来だと考えております。
  324. 山田久就

    ○山田(久)委員 日米安全保障条約は、実はこのような客観情勢から、現実の事態に対応して、国際的、具体的、実効的な措置として生まれたものであると私は判断しておるわけでございます。実は時間の関係で、本日これに触れることができないのは残念でありますけれども、この安保条約の中に、安保改定によって行なわれた重要点があります。しかしながら、その中で最も重要な点の一つは、アメリカが安保改定によって日本の防衛義務を引き受けたという点でございます。通常の対等者の関係においては、その必要としておる地域的集団保障、それにおいて非常に大きな義務を引き受けた対等者間においては、これに見合う義務を当然日本も負担しなければならないけれども、憲法上の制約ということから同じようなことはできないかわりに、実質的にこれに見合う義務というのが、御承知のように基地というものをアメリカに使用させる、こういう点でございます。実はそういう意味日本自身にとってもまたアメリカをしてその重要な防衛義務を負担させるという必要性ということから見ても、またアメリカ自身が極東の安全ということから負っておるいろいろな考慮の点から見ても、実は単に日本本土だけではなくして、この点においては沖繩の果たしておる役割りというものは、私は非常に重要な役割りを果たしておると思う。沖繩の問題というものは、日本自身も、一体今日安全問題というものを各国はどういう考慮でやっておるか、またわれわれはやらねばならぬか、この安全問題というものを離れて、あるいはこれを突っ込んで検討してみないで、ただ感情論だけではこれを取り扱い得ない点があると思います。いずれ日をあらためたいと思いまするけれども、こういう点で問題を回避しないで、新たな核戦力の推移その他の諸条件も加味して、この返還問題というものと取っ組んで、ぜひ真剣に、真正面から検討するように、われわれ努力していただきたい。これはわれわれ共同の義務でもあると思いますので、時間の関係上、この点についての私の基本的な考え方だけを述べて、本日は質問を終わらせていただきたいと思います。
  325. 三木武夫

    三木国務大臣 山田さんの御指摘のように、国の安全確保に関する問題というのは、きわめて国の存立の基礎に関連するものでありますから、日本もこういう問題を回避せないで、やはり国会においても大いに論じられることは私はいいと思う。安全問題をよけて通らないほうがいい。論議していい。これはやはり重大な問題の一つである。そういう機運が最近の国会にもあらわれてきたことは、私はいいことだと思います。沖繩を考える場合に、日本の安全という点から慎重に検討さるべきである。ただこれを、そういう角度からでなくして、別の角度から取り扱うことはよくないという、私たちも同様であります。早く施政権を返還してもらいたいという国民の願望と、極東の安全に対して果たしておる沖繩の役割り、この調整の中に沖繩の問題の解決はある、こう考えております。
  326. 福田篤泰

  327. 川上貫一

    川上委員 時間もだいぶん押し詰まっておりますから、私はごく簡単に外務大臣にお尋ねをいたしますが、どうも外務大臣は、考えが違うんだからと言うて、どうも質問に妙な答弁をされるんです。考えが違うから質問するんですから、考えの合わぬところがあるから討論をするんですから、ああいうことを言わぬように、ひとつ御答弁を願いたい。  この前の五日から七日までバンコクで開かれたASPAC、すなわち太平洋地域閣僚会議、これについてはきょう総理並びに外務大臣からいろいろ答弁されました。答弁されましたが、しかし、その答弁のいかんにかかわらず、一体この会議の参加国はどこだろうかと考えてみたい。そうすると、それはまずアメリカのベトナム侵略戦争への参加国です。それからアメリカのかいらい政権あるいは従属国、いまのところそうなんです。したがって、この会議は、いろいろ答弁されますけれども、アジアにおけるアメリカの侵略と戦争の破綻をつくろって、この侵略戦争に対し互いに手を携えて、協力、加担の体制を一そう強化する、こういうねらいを持ったものであることは、これはもう外務大臣、重々御承知だと思うのです。アジア、太平洋の全域における新しい反共同盟の結成、このことばは、外務大臣、非常におきらいのようですが、事実問題だからしかたがない。これの強化をねらっておる。これはもうだれの目にも明らかだと思うのです。これはいろいろ答弁がありましょうけれども、何人が見てもそうより考えられないということについては、率直に答弁されるのが正しいと思います。しかも日本政府は、この会議で主導的役割りを果たしている。アジアの反共国家のみならず、非同盟中立諸国をも抱き込んで、このアジア反共同盟ですか、これの結成に積極的に協力しようとしておることは、私は周知の事実だと思うのです。だから、それはそうではないとか言わないで、その必要があるんだということを私はこの委員会でははっきり言われる、これが正しいと思う。外務大臣答弁は、実際その会議の本質を隠しておられると言わなくちゃならぬ。それが結果どうなるかというと、世界あるいは日本人民をちょっと欺くことになりませんか。そうではなしに、実はこういう会議にあるんだがと、これをはっきりした上で日本外務大臣の所見をこれまたはっきりさせる、これがほんとうの討議であろうと私は思う。そこで、私はあらためて外務大臣の私の質問に対する所見をお尋ねしたいのです。
  328. 三木武夫

    三木国務大臣 川上さんの御質問でございますが、私の答弁を強要してはなりません。あなたはこういうふうに言えという、人の判断を強要することはいけません。私がこのASPAC会議を顧みてみまして、これが一つの軍事同盟、反共同盟、こういう性格を持ったものでなくして、いろいろな意見を述べ合っても、そういうのは意見の述べ合いだけであって、今後このASPACが共同してやっていく事業は、お互いの経済社会の面の向上を目ざした地域協力ということに主眼が置かれることは、もううそ偽りのない姿でございます。
  329. 川上貫一

    川上委員 外務大臣としてはそう答弁せられるほかにしかたがないのだろうかと思います。しかし、この会議が今後こういうぐあいになってくる、私がいま質問していますようなものになるということは、これは商業新聞の記事にさえも出ておる。この危険があるということではなくて、この方向をたどる会議だと。これは世界がそう認めておるのです。それを私は率直に述べられたほうがよろしいと思うのですが、しかし、こう言う私も、そういう抽象論じゃなくて、ほんとうは一々事実をあげて質問したいのですが、何しろきょうはその時間がないのです。そこで、この会議を前にしてソウルで開かれたあのいわゆる四カ国首脳会談、さらに総理の台湾訪問、タイ訪問、南ベトナム訪問について、これとかみ合わせて外務大臣の所見をお伺いしたい。  まず四カ国の首脳会談でありますが、この会談は、日本政府外交方針とその政策を行動において明らかにした重大な会談だとわれわれは考えておる。ただ一片の話というものじゃないと思うのです。  すなわち、それはまとめて私は申しますが、第一に、日本がアメリカだけではなく、韓国、台湾という反共かいらい政権とかたく手を結んで、今後はさらに一そうこの政策を推進する、こういうスタイル、方針世界に示したものだ。こういう会議というものはそう簡単なものじゃない。外交の問題は、口の問題もありますが、行動の問題が重要です。同時に、これが不安定なかいらい政権、これへのてこ入れをアメリカに約束したものであるといわれてもしかたがない会談だと私は思う。  第二に、アメリカのベトナム侵略戦争に大量の派兵をしておる韓国、これまたアメリカのかいらいである台湾政権を激励し、ベトナム侵略への協力、加担を一段と拡大強化し、率直にいえば、侵略戦争にますます介入する意図を公然と世界に表明したものだ、こういう性格の会談だと私は思うのです。  それから第三には、日本の国内における在日朝鮮人の弾圧政策、これと相まって、今日、米韓軍が繰り返しておる三十八度線の軍事挑発です。これを無言のうちに支持し、朝鮮民主主義人民共和国への敵視政策を一そう強める、こういう考え方を世界に明らかにしたものだと、こう言うて差しつかえない。  第四に、アメリカのアジア侵略政策を強めるために、侵略と戦争のための米・日・韓・台の東北アジア軍事同盟、これが軍事同盟とは私は言いませんが、この軍事同盟結成への考え方をさらに一歩進めたもので、そのために日本は重要な役割りを果たしますという意思を行動によって証明したものであると言って差しつかえないと思う。こういう会談だと思っておる。ですから、現に韓国政府筋はこう言うております。この会談がアメリカを仲立ちとした日本、韓国、国府、三国の結束強化にたいへん役立った、こう言っております。これは事実だと思うのです。  私のあげましたこの事実、これに対して外務大臣はどう弁解されますか。また、それはまるで違うというのならば、そのわけあいを私の述べたことの一つ一つについてお答えを願いたい。  繰り返して言いますが、もともと考えが違うのだからというようなことを言わぬような御答弁をお願いしたい。
  330. 三木武夫

    三木国務大臣 総理大臣が帰ってまいりまして、私もその会議の模様を聞きました。お茶を飲んで、グラスボロの話をハンフリー副大統領から聞いたのが大部分な話で、何にも重要な話し合いはないということでございます。したがって、ずいぶん川上さんは書いておこしになって、そこに読み上げられましたけれども、そういうふうな、御心配なさるような会議ではなかったようです。もう社交的な、そしてハンフリー副大統領から、世界の重大問題ですからね、グラスボロ会議内容を話したということは、そういうような、いま御指摘になったような内容のものではない。したがって、世界に大きな影響を与えたというけれども、まだ読んでおりませんが、世界の新聞では記事にもならなかったのじゃないでしょうか。そんな大きなニュースじゃないですよ。これはそう御心配になるような性質のものではないと考えております。
  331. 川上貫一

    川上委員 どういう話があったかということが私は第一問題じゃないと思う。こういう会談を行なったという、これが問題だと思う。相手はどこかというと、アメリカと韓国と台湾なんです。これは、三木外務大臣のような聡明な人は、もう私が言うまでもなく、御心配になるのがほんとうだと思う。私が心配しておるのじゃなく、ほんとう言うたら、外務大臣が心配せなければいかぬ。どういう相談をしたかというようなことを私は問題にしておるのじゃない。この会議それ自体、これが与える影響、性格、これについて外交としては重大な問題ではないか。しかし、これでこの質問を繰り返しておると、おそらく堂々めぐりになりますから、これはしませんが、この会議だけじゃないのです。佐藤総理は、きょうも話がありますように、この秋に台湾を訪問する。南ベトナム、タイもついでにという。南ベトナムを首相が訪問したのは、西ドイツの首相と韓国だけじゃないか。ここのところへわざわざ行かれるのです。口では平和、平和と言うておられるのです。これは考えてみると、外務大臣も総理も反共を口では否定せられておる。平和外交、経済協力というようなことを言っておられる。しかし実際行動はどうです。このとおりなんです。これで平和外交とか、あるいは平和共存とか、そんなこと言えるでしょうか。口では何とでも言えましょうけれども、私は世界に通用しないと思う。こういうことで真の平和への熱意が認められるものじゃないと思う。一体何しに台湾に行くのですか。また何しに南ベトナムに行くのですか。このことについては、何もかにもの意見が一致しておる、一致しておらぬはともかくも、曽祢委員が、私は南ベトナム訪問についての政府考え方についての一面の鋭い質問をされたと思う。南ベトナム訪問などというものは、そんなあやふやなものではないと思う。それをやられる。こういうことをしておいて、ASPACは平和と経済の会議だという、あるいは日本外交は平和外交だという。やることは経済外交だという、反共などは考えておらぬということは、通用しないと思う。国民も決してこれは腹の底から納得しない。外交というものは口先の問題じゃない。行動で国民に納得を与えなければならぬ。政府の言われる外交政策は、行動においては国民に納得を与えておりません。これは重要な問題であります。時間がありませんから、これで私は押し問答はしませんが、私は、佐藤総理の台湾、南ベトナム、タイ等への今秋予定しておられる訪問計画はやめられるべきだと思う。これが平和を念願する国民に対する政府態度でなければならぬ。また世界の平和勢力に対する佐藤総理の態度であってしかるべきだと思う。どうしてわざわざ台湾から、タイから、南ベトナムに行かなければならぬのか。この計画を直ちにやめてこそ、日本のほんとうの意味の平和外交があるとすれば、これの態度を明らかにすることができると思う。これについて私はもうこれ以上言いませんから、外務大臣のお考えをお伺いして私の質問を終わります。
  332. 三木武夫

    三木国務大臣 東南アジア全般へ行きますから、川上さんのお好きにならぬような国もたくさんあるにはあると思います。しかし、やはり日本の国と国交を回復しておるわけですから、大使も両方交換しておるわけですから、その国がどういう政治形態をとるか、その立場は尊重するということを、外交関係を開いているのでありますから、それは広く東南アジア——いま韓国と台湾だけしかおあげになりませんが、それはカンボジアも参りますし、ラオスも行くし、インドネシアも行く、こういうのですから、政治的な立場の非常に違った国もより好みしないで行こうというわけであります。したがって、特にいま川上さんがあげられたような国だけを行くというなら、これは政治的な意味を持ってくるでしょう。そうでなしに、全般的に東南アジアを旅行したいというのですから、あの国はあんまり行った人がない——必要があればだれが行かなくても行かなければならぬ。みなが行っても行かなくてもいいところもある。必要がないのに行く必要はない。そういうことで全般の一環として行こうというのですから、これは行くこと自体が、私は、国が国交を開いている国としては当然だ。その行動というものが、川上さんの気に入らなければ、大いに御批判を願っていいと思います。行くことは、これは正式の国交を開いている国に、川上さんがお気に召さぬからあの国はのけておけというわけには一国としてはまいりませんから、御承知を願います。
  333. 福田篤泰

  334. 穗積七郎

    穗積委員 時間がおそくなりましたから割愛をいたしまして、ASPACについて二点、対米関係について一、二簡単にお尋ねいたします。  第一にお尋ねいたしたいと思いますのは、ASPACは、三木さんの御説明によりますと、オープンドアの自由な話し合いの場である。それは政治外交からアジア地域の開発問題まで自由に討議するということでした。したがって、プロジェクトの執行機関ではないということであったんですが、今度社会文化センターそれから技術センター、二つがこれは業務を執行する段階に入るわけですね。そうすると、これらがだんだん芽が伸びてまいりますと、ASPAC自身がやはり計画を立て、執行する点にまで発展をしていく可能性がある。そうすると非常にエンクローズされた機関に、オープンドアではなくなるし、自由な討議の場でもなくなってくる側面があるわけです。これは一体どういう御理解のもとにこういうことになったのか、また今後のこれらの実施についてはどういう方針を持っておるか、やがてまた、さらに他の問題についても、アジア地域における開発のためということで具体的提案が出てまいりますと、次次にこういうものがASPACの中に出てくる。そうなるとASPACがいま言いましたように執行機関になり、あるいはまた限られた、エンクローズされた機関になる。意識、無意識は別として対立的なものを呼ぶ危険が生ずる。そういう点をいまのうちに明らかにしておく必要があると思うので、これをお尋ねするのですから、それらの質問の趣旨を御理解の上で、一括してお答えをいただきたいと思います。
  335. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはりお互いに自由に話し合って理解を増進する、それだけではやはり——加盟国がみなそういうことだけでは済まされぬということで、何らかASPACとしての事業を考えようということになるわけです。それが地域協力によってやろう、今度の場合は社会文化センター、技術者登録機関、この二つを置こうということになったわけであります。しかし、それを実施するのは、技術者登録機構というのはオーストラリア政府がやるのです。それから社会文化センターというのは韓国の政府がやるわけです。これに対して加盟国が、これは必ずしも強制するものではないのですが、応分の寄与をしようということになるわけです。だから実施していくのは両国の政府がやるわけです。これに対して加盟国がみなこれに寄与していこうということでございます。そういう意味において、もう初めから全部ASPACというもので事業を計画して、そうしてこちらのほうの計画でするというのではなくて、主体はそれをやる国に置かれて、これにASPACの加盟国が協力するという形をとるわけでございます。
  336. 穗積七郎

    穗積委員 それはその国が実務はやりましても、ASPAC諸国が協力をし、その運営と業務に参加協力するわけですから、ASPACと無関係ではありませんね。無関係ではありませんよ、これは。たまたまASPACの会合、会議の席上で、韓国がこういうことをやろうと思おうと、オーストラリアがこういうことをやろうと思おうと、それは御自由だからどうぞおやりなさいと言って出た話ではないわけです、これは確認事項になっておるわけですから。しかも、その事業分に対して経済的またはその他業務上の協力をするわけでしょう。その関係は、いまの両国がかってにやるのだという御説明では納得ができませんね。  それからもう一つは、今後はどうですか。これ以外のことはおやりになりませんか。
  337. 三木武夫

    三木国務大臣 かってにやるのだということじゃないのです。ASPACの会議においてこういうことをやろうじゃないかということの合意ができたわけでありますから。したがって、かってにやるという性質のものではなくして、ASPACの会議が承認を与えた事業ということになるわけですね。しかし、主体はASPACがみなやるわけではなくして、これは主体になるものはその国である。これからのことは、これは次の会議でどういうことになりますか、いろいろな問題が、そういう事業というものは将来においても私は出てくると思います。ただ議論だけ議論をしてさようならということでは、みな加盟国としてそれだけでは意味が薄いではないか、やはり何らかの事業をお互いに協力して持とうではないかという空気が生まれてくることは当然でございますので、今後もいろいろな事業が考え出されると思います。しかし、ASPAC全体として流れておったのは、あまり野心的な事業を計画しないように、やはり小さくても実現可能なものを取り上げようということが全体の空気でございます。
  338. 穗積七郎

    穗積委員 いまの御説明では、どうも十分解明されていない、われわれも理解ができないのであります。したがって、今後の経過を監視しながら、われわれはこの問題について関心を抱いておることを申し上げて前に進みます。  ASPACの会議でもう一つ問題になりますのは、日本並びに参加国は平和共存政策をとっておる、しかしながら相手国中国平和共存をとっていない、はなはだ遺憾なことである、彼らもやがて平和共存政策にやってくるであろう、こういうふうな理解のされかたですが、これははなはだしく事実を認識していないし、相手を理解していない立場であると思います。  中国はごく最近になりまして、あなたのほうの党の宇都宮徳馬氏と陳毅が、日本国民に伝えるような気持ちで外交方針についての態度を表明しております。文化革命があろうがあるいは紅衛兵の運動があろうが、それは国内の社会主義革命の問題であって、それに関連をして中国外交政策は何ら変わっていない、今後も変わらない。そして平和共存については、私が先ほど言ったように、独立、平等の関係にある国においては、思想と制度が違いましても共存はあり得ます。中国の言っておるのは、平和共存はその条件においてのみ可能性があるのであって、帝国主義または植民地主義をとっておる国が後進国に対して支配搾取をしようとする態度、はなはだしきに至っては武力をもって威嚇をし、侵略をしようとするその二カ国の間においては共存はあり得ない、共存の前提は民族の解放、独立と平等、内政不干渉の原則でなければならない、これを言っておるのであって、独立、平等の国々との間における平和共存を拒否した事実は過去にもありませんし、文化大革命が起きましてからもありません。これは非常な誤解でございますね。中国がいま平和共存政策をとっていない、拒否しておる、武力解決、武力闘争を強く主張しておるので、それでアジアの平和が脅かされておる根源をなしておるのだ、これは全く言いがかりでございます。だから中国日本との経済交流、文化交流、人事の交流についても、いまの状態でも積み上げの方式の段階においても、いままでと変わらず、もっと拡大をしたいと思うと、これは宇都宮氏からもよくお聞きください。解釈は別として事実はよくお聞きになることがいいと思うのです。国交にいたしましても、向こう側は日本の現在の関係において何らこれを拒否する理由はないわけですね。いまの原則さえ明らかになっておれば、貿易協定も結び、航空協定も結び、郵便協定も結びましょう、さらに発展をして国交回復の平和条約も結びましょう、そういうことを主張しておるのであって、平和共存政策を実践してないのはむしろ日中の関係においては日本側にあるわけです。非常な誤解でございますが、国交回復のための条件が国内的にまだ成熟していない、あるいは対米関係、対台湾関係で成熟していないといまの佐藤内閣が御判断になることは、これは私は要望はいたしましても強制はできないのですから、その点は客観的に見れば、佐藤内閣並びに自民党の自由な問題でしょう。しかしながら、この問題については、日中間の経済、文化、人事の交流と友好の発展、国交回復に至る筋道の階梯において、相手側に平和共存原則を否定しておるから障害の原因があるんだということは全く言いがかりでございます。賛成、反対は別といたしまして、やるやらぬは別として、相手態度に対しては正確に理解をし、正確にものを言わなければ、これは平和共存になりませんよ、誹謗と独断と曲解を前提としてそういうことを言いふらされることは。私は何も中国のために弁護するのではございません。日本中国関係がアジアの平和と繁栄のために基本的に重要な問題だと過去の歴史の失敗の中からわれわれは反省をし、つかんでおるから、その立場に立って私はあえて言うのです。ASPACにおいて、あなたが平和共存原則というものを原則としてだけでも打ち出されたことに私は支持を惜しみません。しかしながら、それを案行するにあたって、原因が中国側にのみあるんだという言い方、解釈のしかた、理解のしかたは私は非常な抵抗を感ずる。場合によればためにせんとする悪意すら感ぜざるを得ない。ためにせんとする、自分のなさざることを隠蔽するための言いわけにすぎないとすら感ずるわけです。あなたの主観にそういうものがあるとは思わないけれども、非常にその点については国民の間でも自民党内における良識派を代表するあなたの今度の会議における発言というものはみんな注目しておる。その人がこういうことを言うということの世論への影響、誤解というものは非常に大きいものですから、あなたは責任のある立場におるわけです。したがって、私はこのことについてはあなたの正しい理解を——政策については強制いたしませんが、正しい理解をまず基本にして、アジア政策に対する意見を述べるべきであるということを強く要請いたしまして、御注意を申し上げておきます。これは友好的気持ちで言うのですよ。御注意を申し上げて、そうしてあなたの御所感があればよし、なければなくてけっこうですけれども、指摘いたしておきたいと思います。
  339. 三木武夫

    三木国務大臣 中共の言動というものがどこの国に対しても普遍的な原理として平和共存だ、そういうふうにはまだ私には受け取れない点がある。いまあなたも言われた帝国主義、あの国は帝国主義だから、あの国は何だからというのは、やはりその国の立場というものがみなあるわけですからね。それは向こうから言えばまたその相手の国に対していろいろの批評はあるが、その国民がそういう政体というものを認め合ってできているんですからね。それは尊重するということでなければならない。だから私の言う平和共存は、そういう国が、いろいろ気に入らぬ国もあるでしょう、しかしその国がそれでいいとしてやっておるその国の立場は尊重するということでなければ、人民はいいけれども政府はいかぬというような考えもこれはいかぬですよね。そういうふうにやはりその国の立場は、自分の考え方と違っても、その立場は尊重するという普遍原理としての平和共存というものが打ち立てられるようになれば、これはアジアの情勢が非常に違ってくるんじゃないか。あの国は帝国主義だ、この国は非常に反動主義だ、こういって自分の価値判断だけで言うんじゃなしに、みないろいろ言い分はあっても、その国民がそういう一つの政治形態を認めているんならば、それを尊重するというようなことで、もう少し穏やかにやっていけるような世界ができないかということであります。あるいはアメリカとの間にも中国は共存をしてもらいたいと私は願っております。しかし米国との平和共存はあり得ないと、こう言っておりますが、将来は米中間においても私は平和共存を願っておるものの一人でございます。
  340. 穗積七郎

    穗積委員 これはあなたはまだ非常に誤解に満ちた発言をしておられますよ。私の言ったのは、主義が資本主義だから、制度が資本主義だから共存がないなんということは中国は一ぺんも言ったことはない。民族の解放が問題なんですよ。民族の独立、平等が問題なんですよ。それを認めないものとの間には共存はあり得ない。私は前の前のIPUの会合に出まして、ヨーロッパ、アメリカの国会代表諸君会議をいたしたことがありますが、これらの諸君は、いわゆる先進国ですね。日本にも平和共存について同様の混乱があるから言うのですがこれはいまの世界のシェアだ、現状維持でそれに抵抗を試みないのが平和共存である、こういうかってな解釈をしておるわけですね。これは平和共存ではありません。独立、平等を認めない関係にある国と国との間における平和共存はあり得ない。ところがヨーロッパの諸君は現状維持に満足しておる、そういうことであれば、労働者が自分の立場、現状に満足しておれ、そうすれば平和だ、平和は平和でしょう。民族独立は、抑圧されておる民族が現状にがまんをして黙っておれば平和でしょう。平和ですけれども、平和以上にあやまちとみじめさがあるわけですね。だから原則としては、平和共存は、独立を認め、平等、不干渉ということが原則でなければならない。中国は、主義が違うからとは言っておりませんよ。後進民族の解放についてアメリカが理解をしないから、これとは共存はできないではないか、キューバのカストロにしてもそうです。今度コスイギンが説得に行った。あるいは威嚇に行ったわけです。しかしながらカストロはついにこれに屈しなかった。それは何の問題かといえば、現状をそのまま承認していく、あきらめてそれに抵抗をしない、そういう平和共存、そういうものは平和共存ではありません。その点は明確に、やはり現在の平和共存ということばの、国内におきましても、国際的な使い方でも非常な違いがあるものですから、その点は、私は、中国のためではない、アジアの平和と独立、繁栄のために注意を促しておきたいと思うのです。  次に、お尋ねいたしますが、アメリカとの関係、いまのベトナム戦争についての情勢判断は、私は遺憾ながら和平解決の可能性は少ないと見ております。そうなると、戦争というものは同じ状態にとまっておりません。どこの戦争でも時間が長くなるということは必ず拡大する。これはかってわれわれが戦時中に経験したところでもあります。そうなったときに——三木外務大臣になりましてまだお伺いする機会がなかったので、一応お伺いしておきたいと思ったのだが、その場合に、アメリカ並びに南ベトナムと戦っておる相手国の、日本にある米軍基地に対する報復攻撃が日本の領域内において生じました場合には、安保条約五条との関係においてはどうなりますか。その場合においても安保条約は当然効力を発して、共同行動に出る義務を日本は国際的に持つものであると私は理解せざるを得ないわけですけれども三木外務大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。ベトナム戦争の拡大に関連をして、安保条約第五条の共同行動の義務規定について明確にしておいていただきたいのです。
  341. 三木武夫

    三木国務大臣 その条約上のことは条約局長からお答えしますが、私は絶対にさようなことは信じていないのです。
  342. 穗積七郎

    穗積委員 いや、情勢判断はいいですよ。それはあなたに強要しない。だからそれが起きたときに条約解釈はどうなるかということです。
  343. 三木武夫

    三木国務大臣 条約解釈はしますが、そういうことで国民に不安を与えることはよろしくない、そういうことはあり得ないと私は信じております。
  344. 穗積七郎

    穗積委員 条約解釈はどうですか、それを聞いているのです。
  345. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どこの国からでも、外部から日本の領土に対して攻撃がございましたら、これがよく武力攻撃ということばを定義いたしましたときに、外部から計画的、組織的に日本の領域を侵略の目的を持って武力を使用するものがあったら(穗積委員日本の領域ではない、日本にある基地だ」と呼ぶ)それは日本の領域にあるわけであります。そうしたら日本もアメリカも共通の危険に対処するために行動するという、この規定が当然発動されるわけでございます。
  346. 穗積七郎

    穗積委員 そのことは、私はあえて鬼面人を驚かすようなことを言うのではない。昨年、あなたのほうの党の小坂さん、古井さん、それから今度宇都宮氏が行かれた。そのときに周総理、今度は陳毅外相が指摘しているのはそのことなんです。ベトナム戦争の情勢というものは決して楽観を許さないということ、そして中国を巻き込むことを考えておるのではないか、その場合に一番問題になるのは、はなはだ悲しいことであるけれども日本中国との関係です、それは安保条約に結びつけられておる日本立場がそういうことになるのだ。これは何も思い過ごしでも何でもありませんよ。ウ・タント事務総長自身が言っているじゃないですか。米中対決のぎりぎりの段階に来た。私も危険は常に伴っておると思うのです。欲しはいたしません。だから、それに対する佐藤内閣解釈というものは明確にしておいて対処していただかないと、誤解があるからその点だけ伺ったわけでございます。  最後にアメリカについてもう一点だけ伺いますが、今度佐藤総理が行く前にあなたが行って地ならしされるわけですけれども、沖繩返還について先ほどの御答弁で大体伺いました。全面返還以外は当面考えていないということ。ところが数日前の外国情報によりますと、アメリカ側が発表して、日本外交機関から提案された三つの提案があるということですね。それで、警察権は米側に渡して、そうして教育行政権を、これは機能別返還。第二は一部の島嶼を返還する地域別の返還、すなわち米軍基地を残して返還する。第三は米軍基地のみアメリカに貸与して全島返還を求めて、しかる後にその一部分だけをアメリカに貸す、租借するわけですね、そういう返還方法の提案があったということが出ておりましたが、そういたしますと、これは全く事実無根ですね。  もう時間がありませんから一括してお尋ねしておきます。そうなると、残る問題は、沖繩特別委員会で、私があなたとそれから総理府長官並びに防衛庁長官に問題を提起いたしましたように、アメリカの核基地を撤去せしめて完全返還を求めるか、そうでなければ基地の自由あるいは核つきで、核基地を置くことを認めて返還をする以外にないと思う。それで、この間も申し上げましたように、結論は——説明はもう御理解いただいておると思うから省くけれども、そうなりますと、下田発言の一連の背景というものは、ライシャワー発言から始まっておるわけです。それからフルブライト発言もあるし、その背景の中で出てきて、それで今度の下田発言、最後の発言ですね、赴任される直前の発言に対して、アメリカ側の軍部は、これは取り上げるに値する提案であるという発言をもって、佐藤総理の来訪を待っておるわけです。そうなりますと、全面返還、機能別、地域別の分離返還ではなくて、全面返還だということになれば、われわれとしては核基地を撤去せしめて全面返還をする以外にないと思う。それをぜひ努力して実現をされることを期待するけれども、いまの佐藤内閣の姿勢では、むしろ核基地つき、基地の自由使用を認めた——自由使用の中には事前協議が免除されることを含むわけですけれども、そういう線で交渉が行なわれる危険がある。これは私どもは絶対に阻止しなければならぬと思っております。あなたも幸いにして——この問題は沖繩県民百万が承知するかしないかの問題ではない。このことは、日本自身が、沖繩の返還どころか、日本本土全体を含めて核政策に近づくことであるし、容認することであるし、重大な戦争政策につながるわけですから、これだけはぜひひとつここで確約しておいてもらいたい、こう思ったのですが、総理自身に聞くことができなかったので、あなたは密接な関係があり、有力な閣僚、しかも担当外務大臣です。だからその点は国民に安心を与えるためにひとつこの際御答弁をいただくことを期待いたしまして、私の質問を終わることにいたしましょう。
  347. 三木武夫

    三木国務大臣 沖繩問題はいま三つの案、いろいろな仮定の上に……(穗積委員「報道は誤りでしょう。事実無根ですね。」と呼ぶ)誤りです。事実無根です。したがって、その前提に立って、自由使用とかいろいろなことはお答えする必要もないと思います。
  348. 穗積七郎

    穗積委員 それから下田提案による返還の交渉はしない、これはどうですか。
  349. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、いま沖繩の施政権返還については、総理も訪米されることになり、沖繩問題審議会ですか、そういうのも設置されようということになっておりますから、いろいろな可能性について検討を今後にすべきであって、政府がこういうことということで、こういう形で施政権返還という政府方針はまだきまっておりません。
  350. 穗積七郎

    穗積委員 逃げてはいけませんよ。あなたの意見は言っておるじゃないですか。あなたはこの問題について発言しておるでしょう。下田提案の問題は、沖繩県民がこれを了承するしないの問題ではない、重要な問題だとして、あなたは問題意識を持っておるじゃありませんか。審議会に教えてもらわなければ、まだブランクで何を考えていいかわからぬということじゃないでしょう。こんなものは参考意見にすぎませんよ。あなた自身の確固たる方針を、しかももう接触を始めるのが間近じゃありませんか。だから伺っているのです。
  351. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、これは私自身の考えというわけにもいかない、大問題でありますから、みな衆知を集めて検討することが必要だと思います。私は何も下田発言を、沖繩の住民の考え方だけではいかぬと言ったのではなしに、沖繩問題の解決は政治の最高級の判断によるべきである、これがお答えでございます。
  352. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  353. 曾禰益

    ○曽祢委員 御承知のように、沖繩のマグロ漁船七十六隻のうち八四%の六十四隻がインドネシア海域で操業しておるわけであります。従業員が一千七十名、その生活がこれにかかっておるわけであります。ところが御承知のように、残念ながら日本の国旗、日の丸が掲げられなかったことも一つ理由でありましょうし、またインドネシアの領海あるいは専管区域に関する主張の不当さもございましょうけれども、昭和四十一年までに二十六隻が拿捕され、これはいずれも幸いにして釈放されたのでございますが、ことしに入ってからも、五月の五日並びに十九日、読み方は違うかもしれませんが、第五南琉丸、続いて八洲丸というのですか、いずれも沖繩のマグロ漁船が拿捕された。このことは、先般の当委員会で私から質問をしたわけであります。質問とともに、早く釈放するようにということを外務大臣に強く要請をしたわけでありまするが、今日に至るまでまだ釈放されていないようであります。かてて加えて、われわれが驚いたことは、今度は日本の商船、大きな商船でありまして、山下日本の鉱石専用船の若幡丸、四万四千三百七十二総トンの、三十一名の乗員が乗り組んでおる船が、ブラジルから日本へ鉄鉱石を運ぶ途中、インドネシアのハルマヘラ島の西方約三十七キロと推定されるところでインドネシアの官憲に拿捕されて、アンボンへ連行された。直ちに外務省においては、去る日曜日に現地の大使館に電報を打って、抗議と——これははっきりした抗議と、それから即時釈放方を訓令されたそうでありますし、また新聞の伝うるところによれば、昨日、在京インドネシア大使を招致して、これは大臣からだと思いますが、厳重に、同様に抗議と釈放方の要請をされたようでありますが、その後どうなっているのか。この点に対して、先ほど総理大臣に対する質問にもちょっと出たようでありますが、私は若幡丸ですか、この問題と、インドネシアがまだ抑留している漁船の問題について、外務省の措置と見通しとについてお尋ねをしたいと思います。
  354. 小川平四郎

    ○小川説明員 若幡丸につきましては、ただいま御指摘のとおりの処置をとりました。昨日インドネシア大使は、自分もこれはおそらく何か誤解に基づくものだろうと思うので、直ちに本国政府に伝達して善処を求めるように努力すると申しておりました。なお、ジャカルタにおきます交渉は、一昨日、昨日と当方の大使館からインドネシア政府に続けて、当初の抗議に次ぎまして、さらに早期の釈放を求めております。先方はまだ現地から報告を受けておらないようでございましたけれども、こちらからの説明に対しましては、もっともである、拿捕する理由はないと思うので、直ちに現地に対して、何か特別の事由のない限り釈放するようにという指令を発するということを言っておりました。その結果につきましては、まだ報告を受けておりません。  沖繩の漁船につきましては、引き続き早期の釈放を交渉しておりますけれども、現在までのところ、まだ解決を見ておりません。
  355. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは申すまでもなく、これだけ大きな鉱石船が拿捕されれば、それだけでも、一日でも非常な損害であるし、その補償の問題も起こっているわけです。したがって、アンボンといえばこれはローカル線でも飛行機で行けるのじゃないかと思うのですが、現地に領事を派遣されるなり、すみやかにその釈放方並びに今後こういうことがないように、将来の保証、それから損害に対する損失補償、これらのことをはっきりとひとつ取りつけていただきたい。  それから沖繩の漁船についても、大臣この前もひとつ大いに交渉して早く釈放すると言ったけれども、まだできてないですね。これははなはだ遺憾だと思うのですけれども、これもすみやかに善処方を本委員会の席を借りて大臣からはっきりとひとつ言明をしていただきたい。
  356. 三木武夫

    三木国務大臣 相当日もたちますから、私もこういう問題が未解決で日がたっていくことを非常に遺憾に思っておるので、今後この解決を促進いたすように努力をいたします。
  357. 福田篤泰

    福田委員長 次会は、明十三日午後二時三十分から理事会理事会散会後に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会