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1967-06-30 第55回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月三十日(金曜日)    午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小泉 純也君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 穗積 七郎君       青木 正久君    臼井 莊一君       中山 榮一君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       久保田鶴松君    田原 春次君       戸叶 里子君    渡部 一郎君       谷口善太郎君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         労働大臣官房長 辻  英雄君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局監理渡航         課長      守谷 道夫君         外務大臣官房審         議官      山下 重明君         外務大臣官房旅         券課長     内藤  武君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省関税局関         税調査官    宗  知武君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 六月二十九日  委員川上貫一辞任につき、その補欠として谷  口善太郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員猪俣浩三辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員下平正一辞任につき、その補欠として猪  俣浩三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十八日  ベトナム戦争反対等に関する請願松本善明君  紹介)(第一九一八号) 同月二十九日  ベトナム戦争及び原子力潜水艦寄港反対に関す  る請願広沢賢一紹介)(第二〇二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  同一価値労働についての男女労働者に対する  同一報酬に関する条約(第百号)の締結について  承認を求めるの件(条約第一四号)  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の訂正  及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締  約国団の第三確認書締結について承認を求め  るの件(条約第一九号)  旅券法の特例に関する法律案内閣提出第九五  号)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいま議題になりましたいわゆるILO号条約につきまして、二、三質問をしたいと思います。  この提案理由説明によりますと、「一九六八年は国際連合の定める国際人権年の年に当たるので、この条約締結することは時宜に適したものであります」ということを述べております。私もそう思いますけれども、同時に、この条約をも含めまして、以上の趣旨のことがILOより勧告されたのではないかというふうに考えるわけでございますが、これだけが勧告されたのかどうかをまず伺いたいと思います。
  4. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ただいま先生の御指摘がございましたように、昨年の秋にILOモース事務総長から書簡がございまして、一九六八年が国際人権年に当たるので、人権関係の深い幾つかの条約をできるだけ批准してもらうように希望する、こういうことを申してまいっております。その条約内容といたしましては、先生が御指摘になりましたように、ただいま御審議を願っております男女同一賃金に関する百号条約のほかに、強制労働に関する二十九号条約強制労働廃止に関する百五号条約結社の自由及び団結権擁護に関する九十八号条約農業結社に関する十一号条約、それから雇用差別待遇に関する百十一号条約、これだけでございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この百号条約をも含めまして六条約批准を求められてきているわけですか。勧告があったわけですか。
  6. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 七つでございます。私あるいは申し落としたかもしれませんが、七つでございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 せっかく六つおっしゃったのですから、七つ、ついでにおっしゃってください。
  8. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 どれを申し落としましたか、ちょっと失念いたしまして、もう一度申させていただきます。  強制労働に関する二十九号条約強制労働廃止に関する百五号条約結社の自由及び団結権の保護に関する八十七号条約団結権及び団体交渉権に関する九十八号条約、それから農業結社権に関する十一号条約、それから雇用及び職業における差別待遇の禁止に関する百十一号条約、それからただいま御審議いただいております男女同一賃金に関する百号条約、以上七つでございます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま御説明がありましたように、七つ条約批准をこの際にするようにというので勧告があったわけでございます。そこで、私どもといたしましたならば、ちょうどいいときでもあり、勧告があったときでもございますので、その条約をお出しになるのが当然ではないかというようなことを考えるわけでございまして、先ごろ本会議におきましても同僚議員が百五号条約国会に出すべきではないかということを質問をされたわけでございますけれども、どうして全部お出しにならなかったか、一つだけお選びになった理由はどういうところにあるかをまずお伺いしたい。
  10. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 私どもといたしましては、ILO条約全般につきましてILOに加盟をいたし、これに協力をいたすたてまえでございまするので、できる限り可能なものは批准をするように逐次進めてまいりたい、こういうことで今日まで参りまして、二十五の条約批准いたしておるわけでございます。  ただいま御指摘のございました条約等を含めまして、条約の中には、率直に申しまして、わが国法律との関係が、できて間もないため、その他いろいろな事情がございまして、内容が的確に理解しにくい問題を含んだものがあったわけでございます。  それからもう一つは、たとえば四十時間条約というようなものもございまするけれども、これは望ましいことではありまするが、現在の日本現状から見まして比較的早い時期に取り上げることは困難なもの、こういうものもございます。それらを含めまして、常々検討しておるわけでございます。御指摘のございました今回のモース事務総長から批准の希望の述べられました条約につきましては、なおいろいろ検討はいたしておるわけでございまするが、この百号条約につきましては、提案理由にも書いておりまするように、最近の日本雇用労働事情、特に女子雇用労働者の数の増大あるいは社会的な比重の増大というようなこともありまして、今日の社会現状から見て、これを取り上げるという意義が積極的にもあることだし、法律的にもわが国批准することが可能である、こういうことをあわせまして、百号条約批准するということを政府として決定し御提案を申し上げた、こういう経過でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの御答弁を伺っておりますと、七つ条約勧告を受けたけれども、それらの条約をまだ検討してみないと国内法といろいろな関連もあるそうだから、そういう問題を取り除いた上でやろうとする、百号条約だけは働く女性も多くなってきたのだからやるとおっしゃるのだけれども、私はこの条約批准されるということは、結論的には全国の働く女性にとってたいへん喜ばしいことだと思います。思いますけれども、それについては私は二つの疑問を持たざるを得ないと思います。  その二つの疑問というのは、第一は、いま御説明がありましたけれども、この条約だけを国会に提出したということが何か割り切れないものがあります。なぜならば、これからあと内容について言いますが、今日の実態について申し上げていきたいと思いますので、割り切れない理由一つはわかっていただけると思いますけれども、ただ割り切れないというものの中には、官公労ではこういうことはやれるけれども民間のほうでは実際においては内容的にまだ男女同一労働同一賃金はやってもいない。何とか行政的指導でやれるという見通しをお立てになったのでおやりになったかどうか。これが第一です。第二の問題は、この労働基準法の第四条は同一労働同一賃金というものでございますが、これはもう決定されましてからすでに二十年を経過しております。労働基準法が通ったのは一九四七年ですか、四七年以来相当の日時を経過いたしておりますし、それからまた国家公務員法の第二十七条もこの趣旨規定をされているわけでございます。これらはいずれも国内法であるわけで、このように国内法規定されていて、そして、そういう面から言うならば、この条約はもっと早く批准されてもよかったのではないか。いまおっしゃるような答弁から判断いたしますと、もっと早く批准されてよかったんじゃないか。今までほっておいたのが、いまの御答弁とは矛盾するような感じがいたしますので、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
  12. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 この男女同一賃金に関する条約ができましたのは昭和二十六年でございます。わが国が戦時中ILOから脱退をいたしまして正式に再加盟いたします以前のことでございます。ILOに再加盟いたしまして以降、先生のおっしゃいますように、あるいは先ほど申しましたように、できます条約はできるだけ批准するような方向で検討をいたすということで臨んでおりますが、当初再加盟いたしたときに、それ以前にできた条約のうちでおもなもの、基本的なものを批准してほしいというILOの非公式な意向もあったわけであります。例をあげますならば、労働基準監督に関する条約職業安定組織に関する条約団結権の基本に関する条約、こういうふうなことがございまして、逐次それを進めてまいったわけでございます。したがいまして、別に特にあとに回したということではございませんが、そういう問題に時間をとりまして今日にまで及んだ。ところが、先ほども申しましたように、ただいまにおける女子雇用実態婦人労働近代化の必要というような社会的情勢の中でこの条約を取り上げますことが意義があるという判断をいたしまして、今回批准承認をお願いした、かような経緯でございます。  なお労働基準法との関係につきましては、労働基準局のほうから詳細はお答えを申し上げますが、労働基準法ができましたのは昭和二十二年でございます。二十二年にできまして、ただいままでは約二十年近くたっております。所指摘基準法の第四条の規定につきまして、施行当初よりこれは労働基準局並びに婦人少年局がその趣旨徹底ないし法の施行に長年努力してまいっておりまして、こまかい数字はただいま私存じませんが、その考え方というものはおおむね徹底をしてまいっております。ただ、おっしゃいますように、なお不十分な点があるのではないかという点もございますので、この条約批准していただきます契機に、私どもとしましてもさらにそういう問題に積極的に力を入れてやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 法律というものは守られなければならないと思います。それが国内法だけでなくて、条約批准するということになりますと、国際的にも責任を持たなければなりません。そういう意味で、やはりもしもそれに抵触するようなことがあれば非常に問題を残すわけでございます。いまの御答弁を伺っておりますと、非常に長い間、法律ではきめてあったけれども、いろいろな問題の調整で今日まで批准をしなかったというようなことであり、女子雇用実態考え批准を延ばしたということでございますけれども、それではその間に一体どんなことを具体的におやりになったか、一、二の例をあげておっしゃっていただきたいと思います。
  14. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 労働基準法施行されまして以来、私ども、御承知の労働基準監督制度によりまして監督をいたしております。その経過におきまして、まず違反がありますものを発見いたしたものは、厳重に是正の勧告をいたしますとともに、特に悪質なものはこれは司法事件として取り扱う。こういうことを二十年間いたしてまいっております。もしその数字等につきまして御必要があれば、基準局から申し上げます。それから婦人少年局のほうではしばしば婦人週間等機会をとらえまして、男女同一労働同一賃金の問題を取り上げまして、これに対する講習会講演会あるいはパンフレット、リーフレットの作成その他PRにつとめるというようなことをやってまいっております。例示的に申し上げますならば、そのように今日までやってまいっておりますので、大筋といたしましては、正直申しまして、全国一つももう違反がないというようなところまでは申し上げかねるとは思いますけれども、この法律規定趣旨十分徹底もいたし、かつまた違反というものがありましても、——決してあることがいいということじゃございません。さらに厳重な処置をしてまいらなければならぬと思いますけれども、おおむねは適正に施行される段階に来ておるというふうに考えておる次第でございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま違反問題等が出ましたが、時間を省く意味で、労働基準局のほうにはあとからお伺いすることにして、これだけのことをまとめておいて答弁していただきたいと思います。労働基準法施行以来今日まで第四条の適用をめぐっての違反件数送検件数起訴件数それから有罪判決件数などがどのくらいになっているか調べて、あとお答えを願いたいと思います。  そこで、いまの続きでございますが、大筋のところは、大体この条約にも抵触するようなことはない、国内法でいつても男女同一労働同一賃金は守られている、こういうふうなおことばでございました。私も実はそうあってほしいということを心から願っておりますけれども、なかなかあちこちで調べた統計を見てみますと、実際問題として、ことに民間企業等でそれが実際に行なわれておらない例がたくさんあるわけです。そこで、資料としても差しあげましたが、労働大臣もなかなかお読みになるおひまもないと思いますので、今後それに対するいろいろな行政指導もやっていただかなければなりませんから、参考までに、どういうふうに差がつけられているかというようなことをお耳に入れておきたいと思います。そうして、それをどうしていただくかということを考えておいていただきたいと思います。  大臣、いま男女初任給から格差をつけております企業全国で約四〇%あるといわれております。最近は弱年労働の不足などもありまして、初任給は相当引き上げられて、その格差も縮小されてはおりますけれども、しかし全国平均新規学卒者初任給男女格差というものを見ますと、はっきりと数字が出ております。たとえば高校卒男子が一万六千四百三十円、女子が一万五千六百七十円と七百六十円の差がつけられている。あるいはまた短大が一万八千三百六十円、一万七千八百十円と五百五十円の差がつけられている。大学卒で二万二千九百八十円、二万一千七百四十円で、千二百四十円の差がつけられております。規模別で見ましても、五百人以上のところで、高校卒で七百二十円の差がつけられ、大学卒で千三百七十円の差がつけられている。百人以上四百九十九人までのところで、高校卒で七百円、短大卒で千七十円、大学卒で千百三十円というふうに差がつけられ、またそれより少し小規模のところでは、中学卒で四百十円、高校卒で四百八十円、短大卒で千三百円、大学卒で五百九十円というふうに差がつけられているわけでございます。また、この男女賃金差というものは、規模が三十人以上で、男子を百としますと女子は大体四七・八%だ、こういうことがいわれておりますけれども、こういう差額というものをどういうふうにお考えになるか、大臣にお伺いしたいと思います。
  16. 早川崇

    早川国務大臣 先生の御指摘になりました初任給の差というものは、平均数字だろうと思っております。同じ会社で同じ仕事の場合に、男女、高等学校出、中学校出差別いたしますと、現在の労働基準法第四条の違反になります。そういう意味での初任給格差というのはほとんどございません。ただ、全国平均で、いろいろな職務、職種によるいろいろな差というものを平均すると、あるいはそういうことになろうかと存じますが、それにいたしましても、いまILO号条約というものを批准することによりまして、そういう格差は急速に縮まっていくものと期待をいたしております。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 労働大臣のおことば、私はすなおに受け取りたいのですけれども、これは批准したからといっても、決してあまり狭まらないのではないか、よほどの努力をしていただき、よほどの指導をしていただかなければ、こういう問題は解決しないと思います。むしろ女性に対してこのごろまた少し昔に帰ってきたような空気がありますから、そういうところから見ると、ほっておけばもっともっとその格差がつくのじゃないかということを働いておる婦人たちは非常に心配をいたしております。そういうことを御留意願いたいと思うのですが、やはりこういうことはよく知っておいていただかないといけません。さらに年齢階層別賃金格差というものを見ますと、男子を一〇〇としますと、女子は九六・五%であったのが、いろいろ年齢が高くなればなるほど、男子に比べて女子のほうの比率というものは低くなっておるわけです。年齢層が高くなればなるほど圧迫を加えられておる、こういう数字もここにあるわけです。ここにその数字がありますので、ちょっと御参考までに申し上げますと、十八歳から十九歳までが、男子を一〇〇といたしますと女子の場合は八三・一%であったのが、二十歳から二十四歳になると七一・五%、二十五歳から二十九歳になると六一%、三十歳から三十四歳になると五三・五%、三十五歳から三十九歳になると四七・九%、四十歳から四十九歳になると四一・五%、五十歳から五十九歳になると四三・二%、六十歳以上になると五二・六%というように、たいへん差が出てくるわけでございます。しかも、わが国女子労働者の大多数は製造業に集中しておりますけれども、その製造業でさえも、女子給与総額というものは男子に対して約四四・七%ということがいわれておるわけです。製造業の中でも比較的高いものはたばこ産業に従事しておる人ですけれども、それでも男子が五万九千六十七円のときに女子は三万九千八百八十四円、こういうふうに差がついておるわけでございます。ほかの製造業についておる人たちの場合には、差が非常に多くなってきております。こういうふうな統計が示されておりますし、規模別におきましても差がついておるわけでございますが、こういうことを婦人少年局長はいろいろの数字を通しておそらく御存じだと思います。大臣はそこまで御存じでないと思いますけれども、その点はどういうふうにお思いになるかということと、それからこういう問題は、やはり条約批准するにあたっては当然排除されなければならないのではないか、こういうふうに考えますけれども、この点についてどういうふうにお考えになり、またどういう御努力をされようとしておるかを伺いたいと思います。
  18. 早川崇

    早川国務大臣 これは日本の政治、社会全般の問題に関係いたすわけでございまして、長年にわたって日本では男に比べて女子の地位というものは、男尊女卑という封建的な残滓が残っております。たとえば、長野県でしたか、山梨県でしたか、女子を校長にしようというのが教育委員会でだめになった例がございます、女子ばかりの先生では困るということで。また、労働組合自体をとりましても、総評の例をとりましても、組合員の三分の一は女子労働者でございます。ところが総評の副議長にも婦人がなれない。いわんや書記長にもなれない。私は、岩井君や堀井君に、組合自体女子勤労者というものを軽く見ておるじゃないか、今度の総評大会ではひとつ副議長さんくらいには、婦人を副議長さんにされたらどうですかとアドバイスをしたような実態でございます。そういう状態でございますから、会社その他におきましても、意識、無意識にかかわらず、同じ能力、同じ学歴、同じ労働価値に対しても、知らず知らずに男女差別するという傾向があるわけでございます。労働基準局労働基準法第四条違反を摘発いたしました件数を具体的に調べてみますと、雇用主はそういう基準法第四条を知らなかった、同じ高校出初任給の差をつけまして、いや、そんなことが基準法にあったんかということで、善意の差別待遇。それから基準法第四条の違反は非常に多いのですが、超過勤務に対する手当の支給で男女に差をつけるという違反が非常に多い。こういうのも、要するに悪意とはとれない。いわゆる社会習慣による差別というものがたいへん多いわけでございます。したがって、戸叶先生の御指摘のように、あらゆる面で同一価値労働男女同一賃金ということを助長していくのは、その条約批准したから、法律ができたからといって直ちにできるほど簡単なものではないと私も思っておるわけでございます。ただ、御指摘数字でございますが、初任給はほとんど変わらなくなってきましたことはお認め願えるんじゃないか、中卒、高卒——ただ、年がいくに従いまして、勤続年数が違ってまいる、それから職種が違ってまいるというようなことで、年が経るとともに差ができてきておることもこれは事実でございます。しかし、これが労働基準法第四条に違反するかというと、日本賃金体系学歴あるいは勤続年数、それに職種による差というものを認めておりまするし、これは法律違反にはならないわけでございまして、形式的には違反じゃない。しかし、先ほど私が申し上げましたように、意識、無意識差別、低く見るというあらわれでもあることは、直観的に言えることではないだろうか。そういう意味で、今回基準法第四条に加うるにILO百号というものが国会で御批准されますことを機会にいたしまして、婦人人権を高め、また同一価値労働同一報酬という一つ風潮日本国内に大いに普及していく。特に労働力不足でございますので、そういう社会的有利な背景もございますから、そういう宣言的あるいは啓蒙的、人権宣言的な非常に大きい価値がこの百号批准にあろうかと思うわけでございます。御指摘のように直ちに即効的に先生の御期待のようになるというよりも、ひとつこういう機会に粘り強く社会全般風潮として盛り上げてまいりたい、こういう気持ちでおりますので、そういう面でひとつ御鞭撻を賜わりたいと思っております。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 労働大臣はたいへんに御理解があるようでございますので、必ず何かしていただけるだろうとは思いまけれども、ただおことばの中で気になりますことは、やはり企業の中には昔の習慣がそのまま残っていたところがあって、そういうふうな基準法の第四条みたいなのがあったんですかというふうに、知らないうちに差別をつけていたような場合もあったというお話もございました。私はそうだろうと思います。そういうところがあったと思いますし、まだなきにしもあらずと思うこともあるわけです。ですから、そういうことはやはりこまかく指導をしていただいて、そういうところがないようにぜひしていただきたいということが一つでございます。  それから、労働大臣のお役所には、婦人少年局長婦人でございますし、婦人課長もいらっしゃいます。なかなかけっこうでございますけれども、ほかの官庁を見ますと、おそらく役付なんかをさせるにはたいへんな抵抗です。地方なんかの役所で婦人を係長にするなんということになりますと、まだまだ非常な抵抗がある。こういうことがありますし、何かの理由をつけてそこに昇給をさせないというような例も多々あるところでございます。あるいはまた自治労などの統計を見てみますと、やはり自治体などの婦人というのはわりあいにインテリの人も働いていますし、統計から見ましても相当長い間働いている人がおります。普通の全産業の平均女子で二十八・一歳でも、自治体に働いている人たちはやはり平均年齢が三十二歳ぐらいであり、勤続年数も三・九年ぐらいが普通ですが、それが七・八年というふうにたいへんに高い。婦人職業を腰かけ的に考えないという人たちが、地方自治体、役場とかあるいは県庁とかというところに働いているわけです。こういうふうな例から見ましても、そういうところにいくほど案外いろんな圧力がかかってきております。たとえば、結婚すればおやめなさいとか、子供ができたらおやめなさいとか、あるいは若年定年というような、こういういろんな問題が出てくるわけでございまして、労働大臣が、総評婦人の副議長をつくりなさいとおっしゃる前に、していただかなければならない問題がずいぶんあるのじゃないかということを考えますので、私もそういうことは賛成ですけれども、その前にもっと根本的な問題で解決をしていただかなければならない問題をぜひ解決していただきたい。先ほどおっしゃいました職種とかあるいはまた勤続年限とか、それから学歴とかいうもので賃金の差がつくということは、これは当然だと思いますし、そういうことは私も知っております。ただ、同一労働同一賃金という立場から見まして、さっき申し上げましたような統計が明らかにあるわけなんです。民間産業などにおきまして、ことに小さいところなんかにおいてはあるわけですから、そういうお気づきにならないところも、この機会に、ちょうどいい機会ですから手を入れていただきたい、見ていただきたい、こういうことが私の言わんとするところです。  そのことが一つと、さらにもう一つは、この際はっきりさせておいていただきたいのは、私はあんまりこの委員会で多くの例をあげて申し上げませんけれども、たとえば官庁などにおいての退職勧奨とかあるいは男子差別をつけて早くやめさせるというような問題、結婚によってやめさせるというような問題、こういうふうな問題については一体どういうふうにお考えになり、どういうふうな行政指導をおやりになるか、またその範囲はどのくらいできるかということを伺いたいと思います。
  20. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 定年あるいは退職勧奨に際しまして男女年齢差別を設ける、あるいはその条件に差別を設けるというような例につきましては、主として婦人少年局のほうでその事例を把握するようにつとめております。また、そのような実情が発見されました際、あるいは相談を受けたというような際は、これは何と申しましても男女の平等という立場から望ましいことでございませんので、これを是正、改善しますように行政指導を行なっているわけでございます。婦人少年局の直接の出先でございます婦人少年室を通じまして、そのような事案に対して御相談に応じ、また指導をする、このようなやり方を行なうとともに、一般的な啓発活動によりまして、これらの差別の基底をなしておりますところの女性労働軽視といった考え方の改善にもづとめているところでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 婦人少年局長の意のあるところはわかりますけれども、さらにいままで申し上げましたようなことを大臣もよくおわかりですから、積極的に進言されて、解決をしていただきたいということがお願いでございます。  そこで、先ほど、賃金の差がいろいろな形で行なわれてもそれはしかたがない、たとえば年功序列あるいは学歴等でおっしゃったんですけれども、こういうことも考えられるのじゃないか。たとえば、同じ高校卒をとりましても、女子のほうにある程度職種の差をつけておいて、それを固定化させていってしまう。低賃金で固定化させていってしまう。そうすると理屈上は合うんですね。ちょっと仕事の差をつけておいて、そしてこれは仕事が違うのだから、職種が違うのだから、これは同一賃金はあげられませんよと言って、ほとんど内容は同じだというような場合で、いままで低い標準で固定化されているという面がございますので、こういう面もどうぞお気をつけになっていただきたいと思います。そういうことは絶対にないというふうに大臣言い切れますか。私は言い切れないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  22. 早川崇

    早川国務大臣 戸叶先生の御承知のように、日本は、学歴、年功序列型賃金という欧米諸国では見られない一つ賃金体系をとっております。したがって、能率給、職能給、能力次第という欧米型の賃金でございませんので、最近は、大企業は、単に年とったから賃金が上がるということを是正して、職能給、能力給に移行しつつあるのでございまするが、そもそもILO号条約というものは、そういうものを背景にして、それを前提とした条約でございまするので、そこに若干の日本賃金体系とのアダプトといいますか、適用という問題に今後の問題があろうかと存じます。しかしながら、企業者は、そういう先生の言われるような無意識の人事管理を人事部あたりではやっておると思いますが、同時に御婦人の方がいわゆる、一生、あるいは、一生でなくても、この職業に打ち込むということでなく、いわゆる腰かけ的気分の婦人雇用者も非常に多いという実情をも反映いたしておるわけでございます。労働省のように、局長課長以下、結婚されましてもその職種に打ち込んでおるというような姿の婦人雇用者、勤労者であれば、これは問題はないんでありますけれども、各会社の実情を見ておりますと、結婚までの社会見学だというようなお気持ちの方も非常に多いわけであります。残念ながら、そういう人には非常にだいじな管理職の職種というものはちょっと首をかしげるというような実情もあることは、ひとつ御理解賜りたいと思うわけであります。しかしながら、官庁のほうは進んでまいりまして、先般電電公社で三カ所ほど婦人局長さん、婦人だけの郵便局というものが生まれつつございます。先般申しましたように、校長さん以下婦人である——これは山梨県でしたか、教育委員会が反対しまして、うまくいかなかったのは残念ですけれども、また、婦人でなければできない職種というものがございます。たとえばパンチャーだとか、あるいは、繊維の労働者だとか、あるいは看護婦さんとか、そういうものは婦人でなければなかなかつとまらない。ですから、これは一つ——先般労働省で、「婦人に適した百の職業」という本を発行いたしまして、先生方にもお配りしていると思いますけれども、いわゆる婦人というものは、何というか、一番単純な、簡単な、なるいは重要でないポストにという観念は逐次変わってきつつある。人手がますます不足してきますから、ますますそれが是正されていく。しかしこれには、婦人労働者あるいはサラリーマンという方自身のお心がまえも変えていただかなければならない。アメリカみたいにレディー・ファーストで婦人が非常に強いという社会になるのは、たいへんひまがかかるし、必ずしもいいとは思いませんけれども、そういう前向きの変化は、各企業、官庁、率先いたしまして、出てきておる。そういうときにILO百号の批准というものはたいへん意義があるものと私は思っております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はILO百号を批准することは、意義がないというのじゃないのですけれども、いまのようないろいろな問題を、いい機会ですから、積極的に解決していただきたいという意味でこのことを指摘しているのですから、その点おわかりいただきたいと思います。  それからもう一つは、最近の婦人たちの中には、やはり腰かけ的でなくて、いろいろ自分の生涯の仕事としてやりたいという気持ちを持っておりましても、なかなかそういう機会に恵まれない、あるいは社会がそれを許さないというような場合もたくさんあるわけです。そこで私は、能力のある婦人で、やれるし、また生涯自分がこのことに打ち込んでいきたいということを考えても、やれないということを排除する意味においても、国内ではそれほどの差別がいまないというふうに労働省ではおっしゃるかもしれませんが、まだまだあるわけでございます。さらに百号条約批准して、それをもっと効果あらしむるためにも、ぜひ私は百十一号条約職業雇用差別の廃棄というものも批准をしていただきたいというふうに考えるわけです。この条約は、先ほどの御説明にもありましたように、ILOから勧告された七つの中の一つとしてあるわけです。したがって、私どもとしては百号条約に並列して百十一号条約というものも批准をするように、この国会出していただきたかったと思いますけれども、一体これを近くお出しになる御意思がおありになるかどうかを、労働大臣とそれから外務省のほうの両方に伺いたいと思います。
  24. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 初めに私から事務的に御説明をさしていただきます。  御承知のように、ただいま御指摘ございました雇用職業差別待遇に関する百十一号条約内容職業訓練を受けること、雇用されること、個個の職業につくこと及び雇用の条件について、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由とする差別待遇廃止をする、こういう条約でございます。わが国におきましても、御承知のように、憲法第十四条に、「法の下に平等」というのを一般的にうたっておりますほか、労働関係法規におきましても、労働基準法の第三条では、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする差別扱いをしてはならぬ、こういうふうに書いておるわけでございます。正確に比較をいたしますと、たとえば人権とか皮膚の色とかその他国民的出身とか、そういうことを、具体的には基準法の中には書いておらないわけでございます。このことは、もとよりそういうことをやってよろしいとかという趣旨ではないことは御承知のとおりでございますが、そういう積極的な規定が欠けておる。たとえば——なお事務的なことで恐縮でございますが、職業安定法でも、職業紹介職業指導等について同様な事情による差別待遇を禁止いたしております。これも、掲げられております列記事項が条約より若干少ない面がございます。そういう点が、はたして条約との関係が技術的にどう理解されるのかという点について、なお明らかでない点があるわけでございます。それから、たとえば職業安定法の中にも、いわゆるユニオンショップ、クローズドショップというような場合を予想しまして、これは差別扱いの例外条項になっております。そういう点が差しつかえないものかどうかというような点も、まだ厳密に——事務的に申しますと、おおむねこの条約趣旨とするところはわが国法律の中で生かされておるわけでございますが、厳密に差しつかえないかどうかということにつきましては、なお事務的に検討を要する段階でございまして、私どもとしてはそういう問題を研究さしていただいておる、こういう事情でございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのお話でございますが、事務的にいろいろ明らかでない点を検討した上でということでございますので、いつごろまでにこれをお出しになる御用意があるかということを、大臣を含めて、伺いたいと思います。外務省のほうは、労働省から言われて、それを受けてのことでしょうから、もうお返事はけっこうです。労働省からの御答弁だけいただいておきます。
  26. 早川崇

    早川国務大臣 まだこの百十一号には多少解釈上の問題点があろうかと思います。たとえば雇用の条件で男女差別してはならないということがこの中に入っておりまするが、労働基準法第三条には男女雇用条件の差別待遇禁止の項目は入れておりません。これは別に悪意で入れていないのではないのでありまして、第四条で十分だという考え方であったわけであります。そうすると百十一号を批准する場合には労働基準法第三条を直したほうがいいじゃないかという問題がございます。それから政治的信条によって、雇用の条件なり、雇用機会差別待遇をしてはならないという項目があります。たとえばこの百十一号を批准しておる国を見ると、ソビエト、ポーランドというような国があります。ソビエトではそれじゃ資本主義的な政治的見解を持った人が、そういう見解を表明した人がはたして自由に職業につけるかどうか、これは共産主義の国の場合には明らかにつけない。にもかかわらず、ポーランドやソビエトが批准しておる。その辺の解釈をどう見るか。いろいろそういう問題もございまするので、日本ではすでにこの百十一号に適応したような——むろんアメリカのように皮膚の色による差別、これはほんとうは皮膚の色による差別待遇をやめさせるということが条約のねらいであったわけでございますが、宗教的な信条とか、そういうことは欧米諸国にとってはたいへん大事なことですけれども日本ではこういうのは全然差別待遇がなくなっておりますし、ほかの男女の問題も御承知のとおりでございますから、たいして支障はないと思いますけれども、さればといってそういういろいろな解釈上の問題点を残しながら批准するほどいまさしあたって必要な国内的、社会的な意義があるかと考えますと、これはむしろ百号条約という男女平等というはっきりした問題を批准するとか、そのほうでひとつ検討しよう、こういう考えでおるわけでございます。したがって、いつこれを批准するかというお約束はできない。ただ早急にひとつ十分検討して、そういう疑義をなくして、その上で結論を出したい、こう思っておる次第でございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの御答弁でございますけれども、百号条約をさらに効果あらしめるためには、やはり百十一号条約をコンビにしたほうがいいのじゃないかというような考えを私は持つものでございます。そこで、いま労働大臣もるるお述べになりましたことによってもわかりましたように、それほど問題はないと思うので、なるべく早く批准をするように努力をしてくださるそうでございますので、そういうふうなことを期待しながら、さらに私は、重ねて申しますと、百号条約を効果あらしめるのに百十一号も並列してやっていったほうがいいということを申し上げまして、早く批准していただきたいと要望いたします。  それから最後にもう一点伺いたいのは、この条約の三条に「職務の客観的な評価を促進する措置」ということばがございますけれども国内法にそういうような規定があるのでしょうか、ないのでしょうか。これはどういうことを具体的におっしゃっているのでしょうか。
  28. 辻英雄

    ○辻(英)政府委員 ただいま御指摘になりました条約の第三条に掲げてありまするようなことを規定したものは国内法上はございません。私どもの理解を申し上げまするならば、条文にも書いてございまするように、仕上げるべき仕事に基づく職務の客観的評価がこの条約規定を実施するのに役立つ場合にはこの客観的評価を促進する措置をとらなければならないと書いてございまして、法律的にそういうことを強制的にやれ、こういう趣旨ではないものと理解をいたしております。なお、先ほど来お話も出ましたが、日本賃金体系が、学歴でございますとか、年齢でございますとか、勤続年数でございますとか、そういう職務の質、量そのものではない要素できめられておる場合が多かったわけでございます。最近の雇用労働事情の変化、あるいは技術革新等によりまして、逐次職務との関係による賃金というのが取り入れられつつある、こんな状況でございます。それはそれとして、民間でも部分的に、客観的な職務の分析評価ということが行なわれておりまするし、私どもとしましてもそういう問題も研究はしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど来の質疑応答の中で、労働大臣の今日までのいろいろな問題点はできるだけ早く指導をしながら直すというそのおことばをなるべく促進していただくことを信じまして、私の質問を終わりたいと思います。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 関連。——せっかく労働大臣が見えたので、ちょっと敬意を表して一言しなければならないのですが、それで、戸叶さんに婦人の立場で細目にわたって婦人の地位向上のために質疑応答していただいたわけですが、冒頭に私はちょっと大臣にお尋ねしたい。  それは、わが国の経済のいまの成長過程の中で資本主義の基本的な矛盾である過剰生産の問題もさることながら、これは労働省の所管ではないからお尋ねいたしません。問題はやはり労働力の逼迫による経済的な内部矛盾というもの、これは社会問題ともなっていくようになりつつある。そういう意味でその情勢がいままでサボっておったこの百号条約批准をするに踏み切らせた原動力になると思うのです。そうでありますならば、労働省としては、この条約批准手続をとるだけでなくて、労働事情全体に対する長期の対策というものがどうしても必要になってくると思うのです。そういう点について、一体労働省では今後のわが国労働市場における行政をどういうふうに考え、それに対して総合的、立体的な対策をどこでどういうふうな対策を考えておるか、それをまず第一にお尋ねしたいと思います。婦人の問題もその中の一環に含まれておると思うのです。
  31. 早川崇

    早川国務大臣 穗積先生の御指摘のように、百号条約批准するということは、婦人人権宣言、地位の向上という基本的な問題にあわせまして、婦人労働力というものが、農民を除きまして、九百万人というたいへん大きい比重を占めてまいりました。今後とも労働力不足に進みまするので、職場に入る婦人が安心して、しかも男女差別なく賃金をもらうという、そういう希望を持って勤労戦線に入っていく、こういう二つの大きい意味で百号条約批准をお願いしておるわけでございます。  全般的な雇用問題の御質問でございまするのでお答え申し上げますと、若年労働力が非常に減ってまいりまして、あと七年間、昭和五十年には——現在新規中卒、高卒、大学卒を合わせまして百五十九万人、新規に労働戦線に入っていますけれども昭和五十年には百十万台に減るわけでございます。一方三十五歳以上の中高年層は、寿命の伸び等に伴いまして、十年後現在で五百万人中高年者がふえるわけでございます。したがって、雇用全般としては、しかも損耗補充だけでも二百万人近い人が毎年必要になってくるわけでございます。経済の成長がますます進んでまいりますから、労働力がますます不足してくるということで、若年労働力はふえない、こういう立場で二つのことを雇用政策として考えなければなりません。  一つは、中高年者に大いに働いてもらう、そのためには、各企業の五十五歳定年なんかもひとつ延長してもらいたい、そして、中高年の人の雇用促進をするために、人材銀行も明白東京、大阪、名古屋に設けることにいたしましたし、中高年の人たちが就職するためには住宅奨励金を月四千円、それを雇う中小企業に出そうということが今度の国会で御承認されましたので、あらゆる方法で中高年者が職場に入って働いてもらうという措置をとりたいと思います。  婦人につきましても、現在九百万人の雇用者でありますが、農民を除きまして九百万人というのはたいへんな数ですけれども、大体三分の一は婦人労働力に依存をしておるわけでございます。しかしながら、現在の日本婦人の職場へ入る率は、まだアメリカやイギリスに比べまして少ないのでございますし、しかも質的に違うのでありまして、現在の婦人平均二十八歳、アメリカは平均四十歳、西欧諸国は三十七、八歳、いわゆる一たん結婚で家庭へ帰っても、また三十五歳あたりからどっと職場戦線に出ていく、そして夫婦一緒になって収入を得て、家計も豊かになるし、国の経済にも寄与していく、これがアメリカ型、西欧型の婦人の職場への進出状況でございます。そういう意味で託児所もつくらなければなりませんし、いろいろ問題はありますけれども、何といたしましても、これからは中高年の婦人の方々に働いてもらうという時代が来ておるのではないだろうか、それを助成する措置が労働省としての雇用政策でございます。現に、農村では、御承知のように、中高年の方と婦人が九〇%をこえて、労働力の基幹になっておることは御承知のとおりであります。  そういう意味で、問題は農業以外の産業におきまして、中高年、帰人という方が働いてもらわなければ、どうしても外国労働力を大量に入れなければ日本の経済は伸びないという時代が来る。しかし、一億の人口を持って、外国労働力を韓国やフィリピン、台湾あたりから大量に入れるということがはたしていいことでありましょうか。少なくともここ十年間は日本の国内労働力が高賃金、高能率で、中高年の方も婦人もみんなが働く、そうすることによって、日本で生産した果実を日本国民の中で分け合っていく、こういうことが雇用対策、基本計画のここ十年にわたる一つの目標でございまして、せっかくその線に沿って努力をいたしておるということをお答え申し上げます。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 いまのお話のとおり、情勢の判断については私も同感であります。この問題は、実は労働省、厚生省だけでなくて、政府全体の人口政策にも関連するところだと思うのです。そこで、それを限って考えますと、いま婦人、中高年の問題が出ておるわけですが、これに対しては、ILO条約批准するのをきっかけに、これから国内の婦人労働力の稼働率を高めるということについて具体的にお尋ねするのですけれども、第一に、婦人がなぜ一体勤労者意識を持って自分の生涯の目標として労働につかないかということですね。これはいままでの封建的な男女差別の思想性もありますけれども、生活の環境が整備されてないということです。いま託児所というものもその一つの例としてお話がありましたけれども、これは特に高賃金によって婦人を引き出すということだけでなくて、やはり決定的なものは、社会施設が問題だと思うのです。特にそれは自由主義諸国と社会主義諸国の労働体制を比較してみますと、そこに大きく問題があるわけです。単に意識を高めた、賃金が高いから、高賃金を誘い水として婦人労働につける、こういうことでなくて、遊休労働力というものは、各家庭の中にまだ相当あるわけです。そういうものを引き出すための具体的な方策というものがこの際なければ、この条約を通すということによって、いまの労働事情に対応する政策としては、はなはだしく欠陥があるのではないか。やはり立法、条約にたよらないで、もっと体系的な政策が労働省からむしろ出されていいのではないか。厚生省の立場は、言うまでもなく人権または社会福祉という観点で、これはむろんけっこうなことでありますけれども、いまの労働事情に即応した対策なり発展の施策の原動力は労働省がむしろ握らなければならないのではないかと思うのです。したがって、この条約を通そうとする背景の認識については一致しておるわけですから、そこで条約を通してわが事足れりとするのではなくて、やはりそれに対する施策をもう少し一いま具体的には託児所の例が一つ出ましたけれども労働省のなすべき任務はそれだけではないと思うのです。これはあるいは婦少局長の高橋さんに資料があったら、御研究があったら、この祭明らかにしていただくといいと思うけれども労働省においては、社会主義諸国の労働体制あるいは労働条件、あるいはいま申しました条件の中には、賃金報酬の問題だけではなくて、施設の問題、指導の問題があると思うのです。そういうものについて調査をされ、御研究になっておられるかどうか、この際ちょっと後学のために伺っておきたいと思う。その御答弁あと大臣から……。
  33. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 婦人が職場に出て働きますことを援助する社会的な施策、特に婦人が家庭を持っており、育児の責任を持っておるということを配慮いたしましたところの社会的施策といたしまして、やはり一番重点的なものは託児施設であるようでございます。これは経済体制のいかんを問わず、いずれの国でもそこに重点を置いているようでございます。わが国の場合は、現在働く主婦の子供たちを預かる保育施設が全国に一万一千カ所ほどございまして、それに約八十万の子供たちが収容されていると数字の上では出ておるわけでございます。これを諸外国と比べますと、たとえばアメリカ、イギリス等では比較的保育所の数は少ない数字が出ております。いま正確な数字はございませんが、アメリカ、イギリス等は日本と比べるとかなり少ない。これに対しまして、北欧諸国はややその割合が高いのでございます。それからまたソ連では、これは非常にたくさんの施設があるようでございます。  また、働く婦人の家庭と職場との関係の調和のための方策といたしましては、その出産前後の期間についての休暇の扱いがあげられるかと思います。これも国によって多少の長さの違いがございますが、おおむね産前産後六週間前後といった程度でございます。ただ、この期間を有給にしているという例はきわめて少のうございまして、むしろ公的な社会保険基金から支出するという制度をとっているところが多いようでございます。  以上のようなことでお答えになりましたでしょうか。
  34. 早川崇

    早川国務大臣 ただいま局長から具体的にお答え申し上げましたが、もう少し大所高所からお答えを申し上げますと、労働省でアタッシェの報告を最近全部まとめたのでございますが、イギリスにいたしましても、西欧諸国、欧米にしましても、婦人労働力をどうするかということが最大の問題になっておるわけであります。そこで、日本の場合に、これは大きな家庭の革命的変化を特に都市においてはもたらす問題でございまして、たとえば奥さんが一緒に働く、これはアメリカでは何でもないことですけれども日本ではかぎっ子という問題もございます。託児所がないから非常に困るという問題もございます。もう一つは、家庭生活の合理化がなかなかできておらない。アメリカその他のように、冷蔵庫に一カ月分ほうり込んでおいて、食事をする場合にはすぐ冷凍を戻す。ところが日本の主婦は毎日小売り店に買いものに行くという習慣がございます。ですから、これは社会生活全般の変革というものと相応しなければなりませんが、労働省としては、大きい方向、婦人にもっと働いてもらわなければならないという方向に沿いまして、いま局長お答えしましたように、託児所の設備も増強していく。  それからパートタイム、家庭を持ちながら働くには非常に団地の奥さんなんかにパートタイムが案外受けておりまして、非常に進んできております。この問題をも含めまして、中高年者の雇用とともに婦人雇用問題を最重点的に取り上げて今後検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 いまのお話で、私は提案を込めてお尋ねしたいのですが、託児所の問題です。社会主義国と資本主義国との違いの大きな一つとして、社会主義国におきましては、託児所は全部職場についておるわけです。どんな工場でも託児所がつかないのはほとんどない。それから、教育につきましても、職場本位に付属した専門学校、大学になっております。これは一つ労働条件のテクニカルな問題として、思想性とは別個に検討すべきものだと思う。だから託児所の増設の指導をなさる場合に、やはり職場本位に私はすべきではないかというふうに思うわけです。それについて労働省はどう考えているか。  それから、外務大臣が見えて、これから——委員長、ちょっと時間が迫っていますから、議事進行について一つ——大臣はいつまでおるのですか。
  36. 福田篤泰

    福田委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  37. 福田篤泰

    福田委員長 速記を始めてください。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つは、政府に協力して時間の節約のために、一括して聞いておきましょう。第二は家庭と職場、つまり住居と職場というものが非常に計画的に密着しておるわけですね。この問題は、日本では東京の職場まで平均——私は計算をいたしておりませんが、労働省で計算があったら示していただきたい。各職場で働いておる頭脳労働者、筋肉労働者合わせて、一体通勤のために平均どのぐらい使っておるかということですね。これは時間の問題だけではなくて、労力のエネルギー消耗としても莫大なものでございますよ。これは交通の問題と関連いたしますが、交通のことは労働省の所管ではありませんから、したがって、住居と職場との一体化、その一つとして婦人労働を動員することを考えて、しかも家庭を破壊しないようにということになれば、育児の問題、家庭生活の合理化の問題が出ますけれども、職場の指導の問題におきましては、やはり職場中心の託児所、育児施設、これが決定的だと思うのです。同時に、住居を職場と近接せしめる。これはいまの交通事情の問題だけではありませんが、これに対する政府の計画性がないために、どれだけ一体労働の生産性を阻害しておるかわからないと思うのです。ほとんど平均が一時間以上でしょう。こんな国は外国にはありませんよ。これは生活環境の市民的な不満だけでなくて、この通勤の問題は、労働の再生産、過重労働の問題として入っていないのですね。国会職員の諸君だって、おそらくは一時間以上が圧倒的だと思うのです。これは何も超過勤務の中に入っていない。こういう状態ですから、特に婦人労働の場合はそれが言えるわけですね。パートタイムの量にいたしましても、中高年の婦人労働力を導入するにいたしましても、これは決定的な問題ですから、ぜひ研究して促進されることを希望して、お考えを聞いておきたいというわけでございます。  それからILOの問題を最後に一点だけ。先ほど戸叶委員との質疑応答を聞いておりまして、一体この条約を通せばどういう変化が生ずるか、どれだけの効果があるかということです。すでに民間におきましては、この条約法律の有無にかかわらず、必要に応じて待遇のレベルアップをしておるわけです。中小企業はそれに押されてきているわけですね。すべてそういう傾向になってきておるわけです。これを通すことによって、それがどれだけ促進されるか。国内法においてはすでに労働基準法規定があるわけですから、国内法の新たなる立法または改正は必要としないわけですね。そうすると、一体何が残るかということです。ILO批准することによって、どれだけの実効がここにあらわれてくるかということになると、はなはだしくたよりない話だ。ただ情勢が進んできた、しかも名目は男女同権、基本的人権の尊重だ、こういうことがうたい文句になっておりますが、実際は人権の尊重、性別の法の差別を撤去するということよりは、労働省としては労働力の実効、生産性を問題にしておるわけでしょう。そうでありますなら、この条約批准することによって、一体日本経済、日本国民に対して、あるいは婦人労働者に対して、国会並びに政府はどれだけの功績を果たしたかということです。実効は何もないじゃないか。そうなると、あと行政指導でしょう。一体新たに通すことによって、通さなければできなかった行政措置が、どういうことが用意されておるか。観念的な自己満足にすぎないのではないかという、私は賛成する者として自己批判をしておるわけです。特に責任のある労働大臣局長は、名目だけ通して、通した、通した、労働者にとって理解ある労働省である、そんなことでは何の役にも立たないということでございます。  それからもう一点、ちょっとさっきの労働者の生活環境の改善の問題です。これは法律ですべきことではありませんで、指導——どうせ指導ですけれども男女平等の問題、住宅並びに託児所の職場中心主義というものについてお尋ねいたしましたが、三問として、いま進歩的な情勢を展望しておる会社におきましては、思想性は別として、労働力の生産性を高めるために、合理化するために、週五日、一週間に休暇二日制度が随所に出かかってきておるわけですね。これに対して労働省は一体どういう考え方を持っておられますか。私は、ぜひ労働省は、むしろこれを促進、奨励する立場で指導していただきたい。  それからもう一つは、先ほど婦人局長から、出産、育児に対しての婦人のための特別休暇期間云云ということ、あるいは婦人のための生理休暇というようなこともありましたけれども男女を含めまして、やはり年間有給休暇の日数、これは週五日労働の問題とあわせて、ぜひ、わが国においては会社企業別でばらばらになっておりますから、これを一ぺんに一律に指導することはできないでしょうけれども、やはり週二日の休養のほかに、年間通じて有給休暇の期間を延ばす。たとえば労働力のいま一番少ないイギリス、フランスあたりを見ましても、一カ月は完全な有給休暇を八月一ぱいとっておるわけです。たとえば代表的な工場、ルノーの工場にいたしましても、それは過剰生産だから遊ばしておくのかといえば決してそうではない。需要はふえておるにかかわらず、八月なら八月、とにかく継続した有給期間、年間一カ月というものは、日本よりはるかに労働力不足を訴えておるヨーロッパにおきましてもほとんどとっておるわけですね。日本はこれがさっぱり行なわれていない。ですから、最初に私がお尋ねいたしました三つの具体的な問題、その中にこの休暇の問題を入れて労働省の御方針を伺いたいわけです。私は具体的な提案をしておりますから。  それから最後に、いまのこの条約批准することによって、国内法におきましては何らの違いはないわけです。立法もしなければ改正も必要としない。すでに空文ながら労働基準法にうたわれておる。これを通すという以上は、これによって法の改正は必要としないにいたしましても、行政指導の面で躍進しなければ、この条約を通しても、から念仏ではないか、自己満足ではないかという自己批判を私はしておりますから、それに対して第四問でございますが、あわせて一括してお答えをいただきたい。
  39. 早川崇

    早川国務大臣 具体的な問題は局長からお答えさせますけれどもILO号条約批准することによる積極的意味という御質問でございます。これは率直にいいまして、婦人の平等参政権とともにILOでは婦人人権宣言と考えておるわけであります。これを来年、国際人権イヤーに日本批准するということによる国際的なILOにおける評価ということはもちろん、地位の向上ということはもちろんでございます。国内の面では、日本国民は非常に条約というものを重んじます国民でございます。そういう関係で、この条約批准によりまして、特に法律上抵触する法律はございませんが、広く働く婦人男女平等ということを国民に周知徹底さし、それによる企業内あるいは官庁内その他の面における婦人の地位向上という大きい一つの精神的刺激になろうかと存じておる次第でございます。  なお、この百号批准に伴いまして改正する必要は国内法ではございませんが、この精神を引き伸ばしていきますると、いろんな問題が発展してくるのじゃないでしょうか。これを契機として、産前産後の有給休暇の問題も出てきましょうし、託児所の増設問題も出てきましょうし、その他予測しない広がりを持って、この婦人勤労者の福祉向上に、法律の面もあるいは行政の面も前向きの影響を、ちょうど池へ石を投げたように波紋が広がっていくことを心から期待をいたしておるという次第でございます。
  40. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 保育所の件につきまして、事務的にふえんいたします。  企業の中に、企業中心に保育所を設けてはいかがかという御提案でございましたが、現状といたしましては、先ほど申し上げました一万一千ほどの保育所の大部分は公立のものでございます。地方公共団体が設置しているものがおもでございます。企業が設置いたしておりますのは一千に満たない、そのように理解いたしております。これは主として経済的な事情にもよりますが、また、保育を希望する母親側の立場といたしまして、特に大都市におきましては、先ほど御指摘のような交通難の問題もございますので、幼児を職場の保育施設まで連れていくことに非常に困難がある。したがって地域に保育施設がほしい、このような希望を強く反映しているようでございます。しかし、もちろん企業によっては立地条件等によりまして保育施設を設置することを進めているところもございますし、また労働省といたしましては、企業でその企業の中に福利厚生施設として保育施設を設けたい向きに対しましては、雇用促進事業団の融資を通しまして、これを援助するというような方策もとってその拡充にもつとめているところでございます。
  41. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘の中に通勤時間とかいろいろ労働に密着する関連した問題について御指摘がございました。労働省といたしましても、そういった関係については従来とも関心を持っておりまして、たとえば、これは全国的なものじゃございませんが、京浜工業地帯につきまして地域別労働者生活環境調査で通勤所要時間を調査をいたしたいということもございまして、深甚な関心を寄せておる次第でございます。また、昨年勤労者持ち家政策を大臣が提唱いたしまして、それについての答申をいただきました際にも、住宅そのものの問題よりも通勤距離の問題を十分考慮すべきだという答申をいただきました。しかもこの問題は首都圏整備の問題その他いろいろ広範な問題と関連いたしまして絶えず考慮し、推進しなければならない、こういうような考え方には私どもも全く同感いたしておるところでございます。それを抽象的な形で進めるのじゃなくて、いま申しましたようにいろんな調査資料等も基礎にいたしまして、さらにこういった考え方を私ども検討し、進めていきたいというふうに考えております。  また、週休二日制の問題等のお話がございました。これについても、私ども週休二日制採用の企業につきましてその実態を調べておるわけでございまして、逐年増加傾向にございます。ただ、各種の産業の中で週休二日制度をとりやすいものとしからざるものと、いろんな事情がありますので、これを権力的にどうこうするというのではなくして、できるだけ指導、奨励といった形で伸ばしたい。そのために具体的な実施例等を紹介いたしまして、啓蒙、普及につとめていくということでございます。  しこうして、週労働日が五日になったという場合に年次有給休暇をどうするかというような問題がございますが、これは別に法定の有給休暇を与えなければならぬことは当然のことでありますが、しかしながら、これを十分に活用しているかどうかという点につきまして、遺憾ながら有給休暇の使用につきましては、一〇〇%これが活用されておるとは言いがたい状況にございます。いまここに資料はございませんけれども、まだ不徹底の向きもあるわけでございます。法施行後二十年たった今日でございますけれども、いまだに一部ではございますが、不徹底な向きもある。この面についてさらに有給休暇制度の活用というものを徹底してまいりたいと存じております。  なお最後は、戸叶先生の御質問で、労働基準法第四条違反で、違反件数として指摘したのは一体どれくらいかというお話がございました。基準法施行になりましたのが二十二年で、具体的な監督が展開されましたのは二十三年からでございますが、四十年までの集計では千八百六十八件基準法違反として扱われております。ところが、違反として扱いましても、その賃金の差を支払うという段階になりますと、そうたいした金額でないものですから、支払ってしまいますので、送検するという段階になりますものはきわめてまれでございまして、わずかに五件でございます。しかも、送検いたしますと、今度は相当因業な使用者でも支払ってしまうということで、今度は起訴段階になりますと、ほとんどなくなるという形でございます。結局、男女賃金の差額がごくわずかであれば支払ってしまうものでございます。しかも、具体的な事例を見ますと、大臣からお答え申し上げましたように、法を知らなかったとか、そういった事情によるものがかなり高い率を占めております。違反だというので指摘しますと払ってしまう、こういう事例が多いようでございます。
  42. 福田篤泰

    福田委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。      ————◇—————
  43. 福田篤泰

    福田委員長 次に、関税及び貿易に関する一般協定譲許表の訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。堂森芳夫君。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、本議案に関連しまして、一、二の点につきまして外務大臣その他に質問をいたしたいと思うのであります。  ちょうど本日、六月三十日にジュネーブでケネディラウンドの調印式が行なわれるというふうに報道されておるのであります。そこで、きょうのそうした調印式で行なわれます成果によって、わが国がどのような具体的な成果を得てきたのであるか。この点につきまして、少しく御報告願いたい、こう思うのであります。
  45. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたごとく、本日十時半ジュネーブにおきましてケネディラウンドに参加しております四十九カ国がいろいろな諸文書に署名いたすわけでございます。わが国といたしましては、そのうちいわゆるジュネーブ・プロトコールと称する一九六七年の関税の譲許をつけました最終議定書に署名いたします。そのほか、穀物協定というものが交渉過程におきまして論ぜられましたことは先生御存じのとおりでございますが、穀物協定はまだ成文化されておりませんで、今後成文化の努力が続けられるわけでありますが、その穀物協定の骨子をなすものといたしまして、穀物協定に関する覚え書きというものが今度できました。それにつきましても署名いたしまして、それを中心にして今後穀物協定を成文化していこうということになるわけでございます。そのほか、やはりこれも先生御案内のとおり、アメリカの特殊な関税評価制度、セリングプライスという制度がございますが、これにつきましてもアメリカが交渉過程におきましてこれを今後二年以内にやめるように行政努力をする。またそれとの見合いにおきまして、関税譲許の若干の取引が行なわれたわけでございます。それと日本におきましては、特にイタリアとの関係でございますが、EECの中の一国のイタリアが、現在のところ日本の乗用車に対しまして輸入の制限あるいは禁止をいたしておるわけでございます。これに突発口をつくる意味におきまして、イタリアが来年と再来年とコーターをふやしまして、二年後におきましてこれを自由化するという場合におきましては、日本の小型乗用車の関税を五〇%下げるという意思確認の交換書、この四つの書簡あるいは文書につきまして、東京時間のきょうの夕方六時半、現地時間では十時半でございますが、署名をするということになるわけでございます。  ただいま御質問のどういう利点といいますか、効果というものを日本として受けるかということでございますが、第一の関税譲許につきましては、わが国におきましても、もちろん日本に対する輸入品につきまして関税を引き下げる譲許をいたすわけでございますが、大体大きく見まして、一九六四年の貿易額、それぞれ出入額というものをとってみますと、全般的には日本が約二十一億ドルに相当する、主として工業製品でございますが、これについて関税譲許をやる。これは中央先進国十一カ国でございます。と言いますのは、後進国は相互主義で譲許を求めないというのが今度の一つの原則になっております。中央先進国が二十一億ドルに相当する品目につきまして関税の引き下げの利益を受けるということでございます。それと逆に日本の輸出品について、どの程度のものかということになりますと、これもたまたま同じ数字になるのでございますが、約二十一億ドル見当の日本からの輸入品に対して関税を引き下げるということになるわけでございます。しかしながら、それはあくまで一九六四年の数でございますので、その後先生御案内のごとく、六五、六六年の日本の輸出はふえております。したがいまして、その数字だけの効果よりもさらに日本といたしましては、この交渉の結果から、日本の輸出はそれだけ伸びやすくなる条件が整ってきておるということが言えるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  第二番目の穀物協定の点でございますが、これは先生御案内のとおり、一つの柱が価格帯の引き上げでございます。これは価格帯の引き上げでございますから、現在の国際小麦協定の価格帯よりも上がることになりまして、この意味におきましては日本に不判という面も考えられるわけでございますが、現実の姿は、現在今度の国際穀物協定の価格帯の基準銘柄としてとられますアメリカのハードウインター・ナンバー・ツーというものの下限が一ドル七十三セントということでございますが、実勢価格は現在すでに一ドル八十六ないし七というところになっておりますので、その価格帯の引き上げによりまして、直ちに日本が非常に損失を受けるということは考えられないというふうに考えます。また、その価格帯が上がり、そこで設定されることによりまして、日本は将来さらに小麦の価格が上がった場合には、上限の価格の中で輸入の保証をとりつけるという利点はあるわけでございます。これが穀物協定の面の価格帯の点でございます。  あと問題になりました食糧援助につきましては、日本がこの食糧援助の条項は全部留保するということで、その点が最後までだいぶもめましたけれども、最終的に大体のめないということになりました。したがいまして、それに基づいて穀物協定についてのメモランダムにも署名をするというふうに取り運ぶことになったわけでございます。  あとは先ほどちょっと申しました三番目のアメリカの特殊な関税評価制度、セリングプライス制度、これが二年以内になくなるということになれば、日本の対米輸出はそれだけ伸びやすくなるという点で、いわゆる非関税障壁がそれによってなくなっていく傾向になるわけでありますから、これは日本にとりましても有利なものというふうに考えておるわけでございます。  第四番目は、先ほど御説明申し上げましたごとく、イタリアが日本からの自動車を自由化していくということは非常にけっこうだというふうに考えておるわけでございます。
  46. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま政府側から答弁がございましたが、重要な点が抜けておると思うのであります。すなわち、穀物協定に関する覚え書きの食糧援助に関する条項は留保した。そうしてこちらの政府の意見が通ったのだ、こういう報告でございましたが、実際には援助をすることはきまっておるのじゃないですか。政府はすでに閣議で決定しておるわけであります。大臣にお尋ねしたいのですが、五月中旬ころの状況では大体財政援助が通るんだ、こういうふうに政府はたしか考えておったと思うのです。ところが、最終的には今度は五%という援助の金額を認めております。そして、大臣もおっしゃておられますかなりの部分、半額以上のものは米及び穀物で援助をする。もちろん、それは覚え書きについては留保はしたけれども、実際には援助する、こういうことになったのでありまして、その間の経過ですね、これはやはり大臣として責任がある答弁が必要であろうと思うのであります。この点についての答弁を願いたい、こう思います。
  47. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、堂森さんの御指摘のように、最後までもめた点であります。日本の立場は、こういう二点にあったわけです。一つは、やはり商品協定の中に食糧援助をきめるということは筋が通らぬではないかという筋論。筋論と実際論とがあって、実際論というのは、日本は小麦を輸入している大輸入国です。それが小麦で食糧援助するというのはおかしいではないか。ことに日本が関心を持っておりますアジアは、主要食糧は米ではないか。こういう、筋と実際との立場から日本は反対しております。ところが、各国が援助するわけですから、各国ともなかなか最後まで日本の立場、日本だけがそういうふうな留保をして、肥料や農機具を主としてやろうということでは、われわれ国会批准を求める場合に、そういう日本の立場というものを認められるなら、われわれもそういうふうにしたいというような意見が出てきて、なかなか認めにくいというような国際的な世論が起きてきまして、日本は初めから食糧援助はしようというわけですから、五%のシェアは、日本のような先進国の人道的な責任であるということで、援助しようとしておったので、そこで最後には米ならいたしましょう、小麦は入らぬで、米その他の雑穀、そして、二国間で話し合いをするわけですから、肥料とか農機具とかいう資材が、先方のほうから要請があったら、それもいたしますということで、結局は、日本としては、小麦と現金というのがたてまえですから、これは断わったわけです。そして留保したわけですから、商品協定の中に食糧援助を入れるのはおかしいという留保は認められた。しかしその中に、日本の言っておった立場では、日本の関心を持っておるアジアでは、常食は米ではないかという従来の主張もありましたので、米その他の雑穀というところまでは日本の意図を明らかにすることが、これをまとめる上に必要であるというので、少しこれは譲歩であります。しかし、有効な食糧援助をやるという意思は持っておったのでありますから、この程度の国際的妥協は、堂森さんもお許しを願えると思って、これに踏み切ったわけでございます。
  48. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がございませんから、終わりますが、そうしますると、将来東南アジアの諸国に食糧援助をやっていく場合に、日本独自だけできめますか。あるいはガットの事務同等と相談をするというようなことでやっていくのか、どういう方法が考えられておるのでありますか。
  49. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは二国間で相談いたしまして、国際機関に日本が報告をするということになります。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、日本が独自できめて、その報告を事務局にやる、こういうことでございますね。——けっこうです。
  51. 福田篤泰

    福田委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  52. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 福田篤泰

    福田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。      ————◇—————
  54. 福田篤泰

    福田委員長 次に、同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  先ほど質疑を終了いたしましたので、これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  56. 福田篤泰

    福田委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  58. 福田篤泰

    福田委員長 次に、旅券法の特例に関する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。   〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 昨年の五月に行なわれました第九回日米協議委員会における旅券発給についての合意が行なわれたのでありますが、その合意書を資料として、次の委員会に提出されたいと思います。これをまず要求いたしておきます。  今回のこの旅券法の特例に関する法律案は、今日まで諸外国に行っておる沖縄の人たちの経験として、一体どこの国籍を持った人たちであるか、非常にあいまいなような待遇を受けてこられたのが、われわれの同胞沖縄の人たちであったのでありますが、これがはっきりと日本人であるという国籍が明示されたパスポートを持って、海外に進出あるいは旅行ができる、こういうことになりました点は、私はある意味では唯一の大きな進歩的といいますか、意義であろう、こういうふうに考えるのであります。  そこで私はまずお尋ねをいたしたいのでございます。この旅券法の特例に関する法律案は、もちろんわが日本国の法律であります。この法律に対応する立法を、沖縄政府においてもやはり行なわなければならぬだろう、当然のことであります。そうすると、沖縄政府ではこれを特例法として制定をするのであるか、あるいは従来から海外渡航を扱ってきた米国民政府を布令第百四十七号、すなわち、琉球住民の渡航管理を扱ってきたこの第百四十七号の布令を一応改正してやっていくということになるのでありましょうか、どちらでございましょうか。
  60. 内藤武

    ○内藤説明員 お答えいたします。  まず、米側のわがほうの特例法案に対応する措置といたしましては、随時アメリカ側と話してきておりますが、御指摘のように、米国民政府布令第百四十七号というものによりまして、現在身分証明書というものを出しておりますが、それの一部につき補足ないし改定ということが行なわれまして、それに見合う措置がとられるということに話がなっております。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 旅券に関する合意が成立した当時、高等弁務官、アメリカの民政府では、いろいろな沖縄の人たちの出入国管理についての高等弁務官の権限等についていろいろな発表があったと思うのでありまして、その当時のそうした民政府の声明等、発表等を読んでみますと、今回、旅券の特例法として沖縄の人たちのパスポートの発給についての特例ができたわけでありますが、従来どおり、最終的には民政府の出入国管理の権利というものは従来と全然変わらぬのだ、こういうふうに声明しておったと私は記憶しておるのですが、それに相違ございませんですね。
  62. 山下重明

    ○山下説明員 旅券の発給については、新しい問題についてわれわれは話し合いましたけれども、米側が従来から持っておりました出入国管理権というものは全然変化がない、従来どおり行なわれておるということであります。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、最終権限はやはり民政府が持っておって、端的に言うと、今回は日本の外務省が従来やっておったことを南方連絡事務所がこれを扱う、こういうふうに特例でなっておるわけですが、従来同様民政府がその出入国管理権は持っておるということは変らぬのであるから、ある意味ではかえって事務は複雑になるということにもなるのではないでしょうか、いかがですか。
  64. 山下重明

    ○山下説明員 旅券のほうは渡航文書でありまして、出入国管理権は実際に入ったり出たりするのを管理するということで性質が若干違うと思うのでありまして、いままでは米民政府のほうで出入国管理権と渡航文書を一括してやっておりましたから、ある意味では若干手数がかかるということになると思いますけれども、沖縄住民が実際に海外に行ったときに今度は旅券で非常に便利になるという点からこれは必要だというふうに判断しております。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、あなたが答弁されました沖縄の人たちが海外に行って日本政府のパスポートをちゃんと持って、そして日本国民であるという証明を持って海外に行かれる、それが今度の特例法の非常に大きな意義である、こういうふうに認めるわけですよ。否定をしておるものじゃないのです。賛成なのですよ。しかし実際に、しからば今度の特例法によって沖縄の人が海外に出ようとするときに、パスポートを申請してもらうまでの経過を具体的に一ぺん言ってみてください。私はようわからぬのです。
  66. 内藤武

    ○内藤説明員 御説明申し上げます。  いまおっしゃいましたように、従来は先方が身分証明書というものを発給しておった。それと出域の許可というものが一緒になって一本になっておるから、今度は手間がかかって沖縄住民はかえって不便を感ずるのじゃないかという御質問がございましたが、その点につきましては、われわれ米側と折衝する段階におきまして、従来以上にかからないという点を非常に重点を置いてやってまいったわけでございます。  まず手続について具体的に申しますと、沖縄において旅券を取得しようとする沖縄住民は、まず琉球政府の出入管理庁というところに参りまして、出域の許可の申請をいたします。それは従来沖縄住民がいわゆる海外渡航の身分証明書を取得する際に出していたと同じような申請書でございまして、それを琉球政府出入管理庁に提出いたします。それによりまして申請が終わって、それに対してオーケーになった者は、わがほうの南方連絡事務所のほうにその書類が回付されてまいりまして、その時点におきまして申請者は南方連絡事務所のほうに旅券の申請に参るということでございます。したがいまして、手続から申しますと、その出域許可の書類が回ってくる時点におきまして、われわれのほうで旅券そのものの申請を受け付けますということであります。それによりまして旅券の手続をして本人に交付するということ。  それから、いまおっしゃいました、従来よりはなはだしく不便をかけるのではないかということにつきましては、われわれが配慮いたしました点といたしましては、従来の米側から出されておる身分証明書というものは、すなわち沖縄本島のみならず、地方においても受理する手続が認められておりましたので、なるべくそのような措置、すなわち簡易化措置というものをくずさないという方針でありましたので、たとえば出域許可の申請というものにつきましても単に沖縄本島の那覇においてのみならず、その他の地域においても、渡航といいますか、出域の許可申請はなし得るということに相互に話し合ってきておるわけでございます。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 もう少し詳しく言うてもらわぬとわからぬですよ。  たとえば私が沖縄の人である、そうしてまず海外に出ようとすると、琉球政府のほうへ、海外に、アメリカならアメリカに行きたい、こういう申請をするわけですね。そうすると、琉球政府の独自の判断で南方連絡事務所に行くのですか、そうではないでしょう。やはり民政府の許可をもらうのでしょう。同意を得て、オーケーが来たならばそれを南方連絡事務所に回付するのですか。それから今度は、申請する人はオーケーが来たかどうかわからぬでしょう、聞きに来るのですか、どうなんです。
  68. 内藤武

    ○内藤説明員 それは通常の手続といいますか、出域の許可申請をした時点からほぼの日数というものがあって、慣行によってできますので、従来日本本国において旅券の交付の際におきましても、あと何日以内に出してくださいというようなことで、それは慣行的に大体何日くらいしたところで出入許可がこちらに回付されておるという時点の見通しができますので、その時点に本人が二度、三度出頭しなくて済むように.手配いたしたい、そういうふうに考えて、実際にそういうふうに処理したいと考えております。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 もう少し聞きますよ。どうもはっきりしないんですよ。私が申請をして、出たい、琉球の民政府からオーケーをもらう、それはわかります。そのときにもう一ぺん聞かなければならぬでしょう。本人は、琉球政府にオーケーが来たでしょうかと聞く。そうして出たというと、今度は南方連絡事務所に旅券の発給をお願いする、こういうことでしょう。そうではないでしょうか。   〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 内藤武

    ○内藤説明員 実際のところは、本人がまず申請をした。すなわち沖縄琉球政府出入管理庁にそのことを照会することはもちろん可能でございます。そこですなわち出域許可に対して許可が出たという確答を得て、わがほうの南方連絡事務所に参ってもそれはできます。ないしはほぼの時点を見計らいまして、本人が南方連絡事務所に出頭するということも、実際の慣行としては、大体あと三日で出域許可が出るということになっておりますと、その時期を見計らって参るということで、本人に再々手間をかけないで済むというふうに考えております。こういうふうに思っております。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、はっきりせぬですよ。  三日で、きまっておるか、四日でオーケーがおりるかわからぬと思うのですよ。だからそんなことあなた隠さぬでもいいです。どうせ向こうには施政権はないのですから。だから旅券の発給だけが南方連絡事務所だけの権限でできるということは当然なことと思うのです。でありますから、いまの段階では——われわれはそれがいいと言ってるわけではないのでありますが、現実はそうだと思います。そういうことでありますから、沖縄の人が海外に出るときには非常な不便がある。ある意味では、逆に不便になってくるのじゃないか。もちろん大きな利点があることは私認めるわけですが、そういう手続上は前よりはかえって複雑になってきて、手数がかかり、行ったり来たり何べんもしなければならぬ、こういうふうになるのじゃないかと思う。私は経験があるのです。たしか昭和二十四年か五年ですが、ヨーロッパに行ったことがあるのです。日本政府には当時権限がないものですから、GHQに行って、その当時私はへたな英語で交渉をして、そして判こをもらって、それから日本の外務省からもらった。当時ほとんど国会議員も行っていないころでした。おそらく私が行ったのははしりだったと思うのですが、昭和二十五年のたしか八月か九月だったと思うのです。それと同じことになって、何べんも足を運ばないとオーケーがこない、そういうことになるのじゃないか、こう思いますので、この点が幾ら法文を見ておってもどうもはっきりしませんから、お尋ねしておる。もう一ぺん答弁してください。実際申請した場合に、どういうふうな申請のしかたをして。パスポートをおろすようになるのか、もう一ぺんよくわかるように説明してもらいたいと思います。
  72. 山下重明

    ○山下説明員 沖縄の住民の方が旅券を申請いたす場合に、琉球政府のほうに申請をいたします。そうすると、それが結局アメリカの民政府のほうに回りまして、そこで許可されるということになるわけです。いままでだと、琉球政府の窓口なり昂政府なりで許可が出たかどうか確認する。そこは今度も同じになるわけです。それで琉球政府の許可を得る、民政府の許可も得たということで、それで旅券を申請する。そうすると、確かに御指摘のように旅券をもう一回もらいにいくという事務は重なるわけです。従来だと、民政府の許可が出たというところで、民政府の身分証明書というものを琉球政府から受け取る。ただし、その旅券をそこで得るということは確かに手数でありますけれども、実際に沖縄の方たちが現在まで旅券を得るためには、一回日本に来て、それからまた旅券をもらう、もしくはアメリカの民政府で身分証明書をもらって、それから外国の公館、領事館なりにもらうということから考えますと、今度の制度によって非常に簡便になると私たちは確信しております。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、この法文に関連して具体的に少し答弁を願いたいのですが、第二条の第二項の「前項の場合において、旅券法」云々「申請をする者のうち、沖縄の法令に基づいて発給された沖縄の出域許可に関する書類の添附を必要とされる者にあっては、」こう書いてありますね。これは「のうち」云々の旅券の発給、すなわち訪問国の申請あるいは変更等の「申請をする者のうち、沖縄の」とあります。「のうち」云々、こうあるのは、これはどういう人たちが当たるのですか。
  74. 山下重明

    ○山下説明員 この特例法におきましては、単に沖縄に住んでおられる住民の方たちだけでなく、たまたま本土から沖縄に行って、そこで旅券を必要とするという人たちに対しても、沖縄で旅券を出せるということになっておりますので、その人たちは一々出域許可というものは必要ありませんので、その申請されるうちで、特に出域許可を必要とされる沖縄に本籍のある人とか、沖縄に三年以上、五年とか六年とか長く住んでおられる方、そういう方たちに対しては必要だ、こういうことをこの条項に書いておるのであります。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、沖縄に住んでおる人たち、こういう意味ですね。
  76. 山下重明

    ○山下説明員 ええ、そういうことです。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 それから、たくさん聞きたいことがあるのです。  この法律の中で第六条です。この第六条に「政令で定める」というところがありますね。それから第七条に、詳細は、「外務省令で定める。」あるいはまた附則の第七項の最後のほうに「当分の間、」とありますね。この「当分の間」というのはどういうことですか。「当分の間、政令で定めるところにより、」こういうようになっている。政令にまかすというのが、非常に多いですね。こういう点について、もうすでにそれは、その大綱はきまっていなければならぬと思います。  それについての説明を願いたい、こう思います。それからもう一つ施行期日ですが、公布の日から起算して一カ月間となっている。大体公布の日というのはいつを予定しておるのでありますか。これもあわせて答弁をしてもらいたい、こう思います。
  78. 内藤武

    ○内藤説明員 お答えいたします。  まず、政令で規定するものにつきましては、おっしゃるようにほぼその大綱ができておりまして、二つの点、すなわち、第一は権限の委任ということを考えておりまして、すなわち、沖縄における旅券事務を円滑に行ない得るがために、条文よりはむしろ内容で申しますと、たとえば旅券法第十九条一項の旅券の返納命令をかけるとか、あるいは同じく第十九条の旅券が返納された際において旅券に無効印を押してそれを還付するとか、そういったようなことが現在外務大臣の権限になっておりますので、ほぼそれに類するような事務につきましては、一々外務大臣が手続をするということは煩瑣であり、かつ、能率的でもございませんので、そういった点を規定するということ、さらには、手数料というものにつきましても、政令で規定すると旅券法でうたってありますので、沖縄におきましては円貨で支払うことができませんので、ほぼ旅券法で現在徴収している手数料に見合うドル貨、米貨をもって徴収することになりますので、それについてもそれぞれのたとえば一般旅券の発給でありますとかあるいは出域旅券の発給など、そういった項目につきましてそれぞれ額を定めるというようなことを政令では規定するつもりでございます。  次には、第七条の省令において定める外務省令の委任という項につきましては、たとえば現在の旅券の申請書というものの様式について、すなわち、旅券申請書の様式というもの、あるいは沖縄の特殊事情といたしまして、今回この法律で認めました本人が出頭しない場合においてはどのような申請の手続を経ればよろしいかという点などについて定める必要がございますので、そういう点について規定するということ、あるいは旅券の交付の際におきましても、本人の出頭を場合によっては免除し得ることになっておりますので、どういった人がどういう手続をもってすれば、すなわち、どういう書類を提出することによってそれができるかといったようなこと、あるいは法第五条に掲げておりますところの「沖縄に居住する者で外務省令で定めるもの」といったことはどういうものをさすか、そういったようなことを省令の上で規定するつもりにしております。  それからさらに公布の点につきましても、実際の旅券事務を今回行なうことにつきましては、いろいろ米側との打ち合わせだとか、円滑に行なう必要がありますので、まず「公布の日から起算して三十日」ということで、実際はほぼ七月から起算しまして、法律制定の日から三十日以内に公布することにより、さらに三十日ということで、十分な時間を置いて円滑に行ないたいということでございますから、九月に入るだろうと考えます。  それから一番最後の附則についての「当分の間」ということは、はっきり時点はきめてございません。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 きょうは時間がございませんので、次の機会にまた引き続いて質問することにいたします。
  80. 福田篤泰

    福田委員長 次会は、七月七日金曜日、午前十時より理事会、十時十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会