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三木国務大臣 非常に広い範囲内で私の
外交姿勢にも触れられたわけでありますが、私は
外務大臣就任以来ハッスルはしていないのです。それはやっぱりそういうふうに受け取られないことを外務委員の各位に要望をしておきたい。
日本の今日の国際的な地位というものは、受け身では許されなくなっておる。今日の
世界の先進工業国の中で、三位とか四位といわれるこれだけの地位を持って、すべての国際問題に受け身の時代は過ぎたのだ。進んで、やっぱりいまの
堂森さんも
アラブと
イスラエルとの
紛争にただ国際的な
協力だけでは足らぬじゃないかと言われるのですが、そうだと思うのです。すべての問題に
日本の
意見を求められておるのは、今日の
日本の地位からして当然のことだと思う。この
日本の国際的地位に即応した
外交をやりたいと私は念願をしておるわけです。身分不相応な
外交をやろうというのではないのですよ。今日の
日本の国際的地位に相応した
外交をやりたい。だから私の
外交姿勢をハッスルという表現のもとに言うことは当たらないのだ、これは最初に申し上げておきたいのであります。
第二の、アジア太平洋構想というものが、これは
一つのやっぱり構想に終わりゃしないかという御親切な御懸念でありますが、私は断じてこうは思わない。やはり将来の
日本の
外交というものを
考えたときに、このアジア太平洋の連帯感の中にアジア問題を
解決していこうという姿勢が
外交として誤ってはいないということを私は確信するものであります。そうでなければ、これは何といったって、これからの大きな問題というのは南北問題であることは明らかですよ。これは戦争と平和という問題のうらはらになっておるわけですから、このアジアの南北問題を
解決するときに、
日本だけの力ではこれはできないわけです。そんなら西欧
諸国はといえば、西ヨーロッパ
諸国は、アジアの問題にといっても、やはり距離的にも遠いし、関心の度合いからいっても、われわれよりも薄いことは明らかですから、どうしてもアジアの動向に対して直接の
影響を持つ
国々、それは太平洋の先進
諸国ですよ。これがやはり同じアジア太平洋という
一つの大きな地域社会の一員であるという自覚のものにアジア問題を
解決する以外に、
解決の道はないという確信のもとに私は立つわけでありますから、これが単なる構想に終わるということは私は
考えていない。それもEECのような何かすぐにアジア太平洋を結んだ大きな経済機構を生み出さなければならぬのだとは私は思っていないのですよ。アジア太平洋
外交はすでに着々として推進されている、こう私は
考えておる。それは何かといえば、太平洋の先進
諸国に向かっても、アジアというものがやはり安定しなければ太平洋先進
諸国だって安定しないではないか、アジアのために太平洋
諸国に対するPRだって、これは大きな
外交の
一つの部面であります。オーストラリアに対しても、カナダに対しても、アメリカに対しても、ニュージーランドに対しても、機会あるごとにアジアとの連帯感、これをやはりPRするというのは大きな
外交の役目だと私は思っている。
もう
一つは、アジアの地域開発という問題について、アジア
諸国が
協力しなければならぬという機運が相当に高まっているのです。これはやはり
日本が、その地域
協力の機運に対して、ある程度技術の面から、資金の面から援助するという裏づけがあって、アジアの地域
協力というものは推進されておるのですよ。アジア
会議にしても、農業開発基金にしても、
日本が最大の出資者であるというところにアジアの地域
協力が推進されていく大きな原動力があると私は思っている。このアジア
協力の態勢を推し進めていくという
外交は、明日の
外交ではないのですよ。すでに今日の
外交なんです。この
努力というものはすでに行なわれておるのではないか、だから構想倒れになるということはないのだ、いまやっておることがアジア太平洋
外交なんだと私は言いたいのであります。また太平洋先進
諸国の間にも、民間でも太平洋経済
委員会というものが生まれて、そうして太平洋先進
諸国がアジアに
協力できるような、お互いの地域の間の
協力関係を推進して、余力をつくるために
——力がなければアジアに対して援助もできぬものですから、そういう地域
協力のいろんな利点があるわけですから、このアジア太平洋先進
諸国の
協力関係をもっと推進していこうじゃないかという動きは、すでにもう太平洋経済
委員会というのが民間で生まれておるですからね。また学者の間にも、あるいは医者の間にも、
堂森さん御存じのようなアジア太平洋医療
協力機構というものが生まれておる。こういうものが推進されてきておるのですから、これは明日ではないのですよ、いまの課題である。
最後に、私が願っておることは、太平洋先進
諸国とアジア
諸国とをどうして結びつけるかという問題です。この問題はまだ構想というものは固まっておりませんが、こういう提唱をして以来、もうアイデアが幾つも出ておるのです。たとえばアジア太平洋自由
貿易地帯の制定であるとか、あるいは太平洋投資決済銀行の設立であるとか、あるいはOECDのDAC太平洋版というものをつくり上げるために先進
諸国が定期的な会談をやって、東南アジアに対する援助に対してお互いに調整しようではないか、こういう動きもあれば、あるいはまた肥料回転資金というものをつくって、そうしてできるだけグラントや低利の肥料を供給して、その資金によってアジアの農業開発をやったらどうかとか、太平洋とアジアとを結びつける構想というものはたくさんに世の中に出ておる。私はこれでいいのだと思う。
日本がいますぐこういうものをつくるんだということでみな入ってくれと言うようなことは、反発を買うばかりですよ。それだから、
世界各国が知恵をしばって、いかにしてアジアと太平洋を結びつけるかという構想が次々に生まれてくることは、これは非常に喜ぶべき傾向である。その間に一番みんなが納得し、アジアと太平洋とを結びつける適切な構想が生まれて、必ずや将来アジアと太平洋の
協力ができるような機構というものが生まれることを私は信じます。だから、非常に
堂森さんに御心配を願って、おまえの構想はただ一片の構想に終わりやしないかと言われるが、そうじゃないのですよ。現に推進されておるのですから。これをさらにもっとやはり促進できるような体制というものは、明日のものかもしれませんが、現に今日はアジア太平洋
外交時代ですよ。これをわれわれが一生懸命取り組んでやっておるのですから、どうか将来に対する御懸念というものをお持ちくださらなくて、
一緒になってこのアジア太平洋
外交を推進しようではないかということが
日本の
外交の
立場であるという私の確信でございます。こういう確信を持っています。