運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-07 第55回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月七日(水曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 三原 朝雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    臼井 莊一君       福家 俊一君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       木原津與志君    戸叶 里子君       松本 七郎君    渡部 一郎君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   力石健次郎君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君  委員外出席者         農林省農林経済         局参事官    内村 良英君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 六月二日  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の訂正  及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締  約国団の第三確認書の締結について承認を求め  るの件(条約第一九号) 同月三日  在日朝鮮人帰国協定延長に関する請願(福岡  義登君紹介)(第一一八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(中東紛争問題等)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 まず三木外務大臣に御説明を願いたいと思うのでありますが、最近、中近東におきましてきわめて憂慮すべき紛争が起こっておることは、私が申し上げるまでもないことであります。長い間、東南アジアのベトナムにおいては戦火がまた拡大しつつあるきわめて憂慮すべき状態を呈しておる。さらに中近東にそうした戦火が拡大していく、こういうことになりますならば、どう説明しようとも、これは第三次世界大戦になってまいる、こういうことは当然考えなければならぬ重大な問題だと私は思うのであります。中近東紛争現況等につきまして、また本日の早朝の放送等を見ましても、すでに安保理事会決議等、あるいはその安保理事会国連における裏側の米ソ交渉でありますが、いろいろな熱心な交渉が行なわれて妥結の方向に向いておる、こういうふうなニュースが本日早朝伝えられておりました。これはあくまでニュースであります。本日の委員会で、これは日本の国民全体が非常に心配しておるところでございまするし、外務大臣として責任ある今日の現時点における情勢につきまして詳細な御説明をお願いしたい、こう思うわけであります。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 御質問の点についていままでの経過の概略を御説明申し上げて、現在の段階、どういうふうに進んでおるかということを申し述べてみたいと思います。  御承知のように、五月の十八日にアラブ連合から国連緊急軍の撤退を求めた。それから五月二十二日にはアカバ湾封鎖宣言が行なわれた。六月の五日にはアラブ連合シリアジョルダンイラク等アラブ諸国が宣戦を布告して、イスラエル交戦状態に入った。それから六月の五日に国連安保理事会緊急招集をされた。六月の六日にはスエズ運河閉鎖宣言が行なわれた。それからアラブ連合シリアアルジェリアから対米関係国交断絶措置がとられた。それから、クウェートイラクアルジェリア英米向けの送油を停止した。それから、戦闘は、イスラエル軍アラブ連合の北のほうのガザ市、ジョルダンのエルサレム市を占領した。そういう状態が起こっておる。  いま堂森委員も言われるように、これは拡大すれば世界戦争危機をはらんでおるわけであります。したがって、安保理事会としても、何とかしてこれを平和的に解決をしたいということで、努力を続けておったわけでありますが、ただいま入りました報告によりますと、米ソ間の話し合いがまとまって、決議案安保理事会全会一致で成立をした。決議案は、当事国に対して、第一段階措置として、即時停戦を要請する、こういうものを骨子としたものであります。こういう全会一致決議でもございますし、国際的な世論も、この紛争早期にやはり解決するということで、世界世論も一致しておるし、米ソ間の話し合いもまとまったということで、この決議案は、戦争当事国に対して相当な影響力を持つものだと思うわけでございます。  日本立場は、どちらの側に立って、そうして相手を非難するような立場をとらない、厳正中立である、この紛争に介入しない、こういう基本的な立場に立ちながら、国連中心として平和的な解決努力するというのがわれわれの立場であるし、こういう点から国連においても努力をいたしたわけでありますが、こういう状態に立ち至って、一応国際的な大きな世論、こういうものが国連中心として一つ決議としてここに表現をされた、このことが地域紛争解決によい結果を与えるであろうことをわれわれは期待をいたしておるわけでございます。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 いま外務大臣答弁されました安保理事会満場一致決議の内容でありますが、朝のニュースで知りました私の理解は、そうしますると、現在の戦闘状態の姿で直ちに停戦をする。これを具体的に言いますと、イスラエルの陸軍は相当アラブ諸国側に進駐しておると思うのであります。また一方アラブ連合は、御承知のように、アカバ湾封鎖いたしまして、そしてイスラエルの海路を遮断をする、こういう姿に出ておるのであります。そういう現在のままの姿で停戦あるいは原状に戻るとかそういうことではないと思うのでありますが、そうでございますか。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 私が解釈しておることも、とにかくいま撃ち方やめろ、ここで撃ち方をやめて、そうして撤兵というような問題も次の段階話し合いになる。とにかくいまの段階停戦、撃ち方やめろということが第一段階としての決議趣旨であると解釈をいたしておるわけでございます。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 今後安保理事会等で積極的な努力がなされまして、これが平和の方向解決していくように、もちろんわれわれもこれから望むところでありますが、そこで私は外務大臣にお聞きしたいのでありますが、先刻も御答弁の中で、わが日本の国はどちらにもつかないのだ、中立行動もしてきたし、今後もそういう態度を続ける、こういう意味であったと思うのであります。しかしながら、はたして世界人たちはそう思っておるでありましょうか。私はもちろんいろいろな新聞等による報道等を根拠にしておるのでありますが、かなりな報道としては、やはりたとえば安保理事会等における発言等においても、日本国連代表発言は必ずしも厳正な意味での中立であるというふうな報道もしていないように私は見受けておるのであります。また、たとえばアラブ諸国の中には、わが国と石油関係においては最も関係の深いクウェート政府等は、わが日本大使等にも、おまえのほうが米側につくならば、石油については重大な考慮を払うぞというふうな厳重な申し入れをしてきておるということも報道されておるのであります。まあそうだから日本厳正中立でないと申すほどではありませんけれども、これはやはり世界人たち理解をするような堂々たる態度で、厳正中立であるという方針で、そういう現実的な方針世界人たち理解するような態度で、今後も厳正中立でやっていくのだ、そういうふうにやってもらいたいと思います。またそういう方向で行かれるつもりでございますか、重ねて御答弁をお伺いしたいと思うのであります。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 堂森さん、ごらんになっても、日本がいろいろな現在の立場から考えて、これに介入する必要はどこにもないのであります。したがってわれわれの厳正中立という態度は、いままでもそうだし、将来も貫きたいと思っております。この態度アラブ諸国に対しても出先外交機関を通じてすでに通告いたしてあります。明日はアラブ諸国大使連中と私は面会をする予定でございます。日本立場は誤りなくアラブ諸国に伝えたいと考えておる次第でございます。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 この中近東イスラエルアラブ諸国との間の紛争につきましては、これはもうきょうやきのうでなく、あるいは五年や十年あるいは二十年以上さかのぼっても、その原因をわれわれは知ることができるのでありますが、ある意味では二十年や三十年ではない、五千年の昔の旧約聖書の時代からそうした原因があるとも言えると思うのでありますが、このイスラエル建国以来の問題、あるいはしたがってイスラエルにおったアラブ民族の難民として、何でも百万ぐらいおったという話でありますが、これらのアラブ民族が追っ払われて、そしてここにイスラエルの国ができてきたというところに根本的な原因があるようにいわれておるのであります。このアラブ民族とそれからユダヤ人の国であるイスラエル建国、これには多くの問題があるわけであります。もちろんわれわれ日本の国と直接関係があることではございませんが、しからばこの中近東の今後この紛争平和裏解決されていくために、もちろん米ソ等世界の現在におけるある意味では二大国等意見が一致することが当然必要不可欠のことであるわけでありますが、日本外務大臣として、日本政府として、今後具体的にどういう行動をとって——国連中心外交をやっていく、こういつも言っておるのでありますが、国連中心、もちろんそうでありましょうが、具体的に今後外務大臣はどのような対策を講じて行動をとって、一日も早くこれが平和的に解決していくようにされようとしておられるのでありますか、この辺の御答弁も願いたい、こう思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 これはなかなかむずかしい御質問だと思います。われわれもあの付近を歩いて見て、いかに根強いかということは身をもってわかるわけでありますから、これを日本の力だけで、イスラエルアラブ諸国との間の長年月にわたる一つの対立を解消するということは、とても日本だけの力ではできるものではありません、世界各国とこれは協力するよりはかない。ことにそういう国々と深い関係を持っておる大国というものもあるわけでございますから、そういう国々協力をしながら、やはり時間がかかると思いますよ。これを一ぺんに何か過去のいろいろなそういういきさつを捨てて、そうしてイスラエルアラブ諸国というものが友好関係を樹立するということはなかなかむずかしい。年限をかけても、今回のような事態、直接の正面衝突に至らない、そういう緊張状態に置かない関係をつくるために、国連中心にしてほかの諸国とも連携をとりながら努力をいたしますというお答えをする以上に、何か妙案があるかというようなことは、なかなか私としてはこの段階でお答えしにくい問題でございます。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 三木外務大臣ともあろう方が、それはおかしいと思うのです。私はこういうことはどうだということを言っておるわけではないのでありますが、ただ日本の力でそうしたむずかしい中近東の問題が解決できる、そんなことを私も思うものではありません。しかし、ある意味ではアラブ諸国にも非常に同情すべき原因はあると私は思うのであります。たとえばこれは今度の安保理事会等アラブ側イスラエル側とが非常な激論を戦わしておるアカバ湾封鎖問題等でも、アラブ連合イスラエルとは、ある意味では戦闘状態がやはりずっと続いてきておるという解釈が成り立つ。そうすれば、アカバ湾、シナイ半島に続いておるこの湾をアラブ連合が、戦闘というものをやる立場から考えれば、占領するというようなことは、封鎖するというようなこともある意味では理屈は成り立つ。もっともこれは私はそういうことがいいと言っておるわけじゃないのでありますが、なかなかいろいろな意味で複雑微妙ないろいろなむずかしい条件が重なり合って、その紛争は長い間、十年、二十年続いてきておる、こういうことが言えると思うのであります。そういう意味で、ただ国連において一生懸命に各国協力してやっていくんだ、こういうことではなしに、具体的にもっとわが国連代表態度、あるいはまた外務大臣政府が、どういう行動をとるべきかという問題は、具体的といいましても、それはなかなかむずかしい問題でありますが、やはりひとつ大いなる考え方を持つのだというふうな態度ぐらいは宣明してもらう必要がある、私はこう思うのであります。いかがでございましょう。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 いまアカバ湾の話をお出しになりましたが、いまこの環境の中でアカバ湾というものを取り上げてこれをどうこうと言うことは、やはり紛争解決に役立つとは思わないのです。ここで一応アラブイスラエルとの関係が冷静になった場合において、それはみなと一緒ということだけではもの足らぬではないかとおっしゃることはよくわかりますが、それは一応こういう状態、ときどき、やはりあの中近東というものはこういう衝突の危険を持っておるのですから、両方の立場理解しながら、何かもう少し恒久的な安定した秩序ができないか、日本がそういう立場から国連において検討することは必要で、ただみなと一緒にというのではないのですけれども、いろいろなこういう点もあるではないか、ああいう点もあるではないかということは、この段階では、とにかくその紛争を一応静める、そして将来の課題としてみんなと協力しながら考えるということ以上にいろいろ申し上げることは、適当でないという感じが私はいたすのでございます。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 時間もございませんから先に進みますが、すでに新聞でも報道されておりますように、アラブ連合スエズ運河封鎖してまいりました。また、全部の国とは言っておりませんが、イスラエル側に加担すると思われる国々には給油をやめる、こういうような態度も決定しておるようでありますが、スエズ運河封鎖に対し、外務大臣はどのように対処していかれるのか、またどういう態度をもって今後アラブ連合等に話をしていかれるのでございますか。また給油の点につきまして今後の見通し、あるいは日本政府としての今後の態度、どういうふうな方法をとっていくか、あるいは見通しは心配ないのか、いろいろな点について御答弁を願いたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 スエズは、日本が欧州などに対する貿易の上において、スエズが通れないということになれば、非常に迂回をしなければなりませんし、運賃の点においても影響をするわけであります。対外貿易に対してスエズ運河閉鎖されたということは、相当なやはり影響日本は持つものであります。しかし先ほども申し上げたように、国連中心としてこの紛争早期解決しようという努力が続けられておりますから、やはり早くスエズ運河閉鎖を解くような、そういう環境をつくるということが、解決としては一番必要なわけでございます。そういうことで努力することが適当である。  それで油の点については、御承知のように、日本の現在の油はサウジアラビア、それからクウェートイラク、それにイランを加えたら九〇%の油というものはペルシア湾を通じて来ておるわけですから、この紛争地帯にはなっておりませんから、現在のところ日本の油の供給が非常な危殆に瀕しておるというふうには見てないわけでございます。しかし、この紛争進展いかんによっては、これはいろいろな影響を及ぼす可能性はあるわけでございますが、現在のところでは、ペルシア湾については、日本の油というものに対して非常な危険な状態とは見ていないわけでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 スエズ運河閉鎖等につきましては、国連安保理事会等のそうした決議案満場一致通過等によって、常識的には今後好転してまいるという見通しは持てる思うのでありますが、今後の好転をわれわれは心から期待するものであります。そうした方向に向かっておるようでございます。そういうふうに好転しているとしても、一つの重要な点であります向こうにおる在留邦人等の手当て、処置等については万遺憾ないように処置はしておられると思うのでありますが、どういう状態にいまあるのでありますか、この点もお聞きしておきたい、こう思います。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 いま紛争地帯と見られるアラブ諸国イスラエルなどに五百四十五名かの日本人が在留しておる。そうしてアラブ連合には二百十五名ですか、イスラエルには百十名程度の日本人がおる。これが紛争進展いかんによって引き揚げの問題が起こってきますから、場合によっては特別機によって引き揚げをいたさなければならぬので、そういう場合も考えて、そういう場合の交渉をすでに開始をいたしておるわけでございます。この戦局の進展ともにらみ合わして、在留日本人の保護に対しては万遺憾なき準備をいたしておる次第でございます。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 関連して外務大臣に二問だけお尋ねしておきたいのです。  いまの堂森委員の御質問の中で、スエズ運河閉鎖の問題に対する態度でございますが、もとよりこれは一八八八年のコンスタンチノープルにおける条約無害航行第三国に認めるという原則に立っておるわけです。ところが今度の場合を見てみますと、アラブ連合にしましては、今度の紛争における重要な一つの政治的なきめ手のつもりでやっておるわけです。したがってわれわれとしては、あの事件平和裏に終息をし、コンスタンチノープル条約以後の無害航行の自由が確立され、それが日本にも供与されるということは望ましいことではありますけれども、その原則があるからといって、この紛争過程において——私は希望するわけじゃありませんよ。ありませんけれども、先ほどあなたもおっしゃったように、私も同様の認識を持っているのですが、アラブ諸国イスラエルとの関係というものは非常に根が深いわけですから、継続または断続いたしまして、紛争が続いたり、拡大する危険というものもわれわれは見ておかなければならない。  今朝きまったという停戦決議に伴って、第一にお尋ねしておきたいのは、当事国はどういう態度をとったかという情報外務省に入っておりましょうか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 ここにスエズ運河閉鎖に対する発表もあるわけですが、もしああいう紛争が激化して、スエズ運河で船でも沈んだようなことになれば、スエズ運河の通行はできなくなりますから、そういうことをアラブ連合は言っておるようでございます。これはいろいろ国際法上という問題もございましょうが、とにかく紛争早期解決ということで、このスエズ運河閉鎖の一日も早く解けるような、そういう環境をいかにしてつくるかということですから、われわれはそういう角度からこの問題の解決に当たりたい。いまいろいろなことを申しましても、そのことはいろいろな理屈が成り立ち得るでしょうから、この際は、できるだけ紛争自体早期解決、そしてスエズ運河閉鎖の解けるような状態をつくるということに全力を尽くしたい、こういう考えでございます。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 それから、そのことについて質問するためにお尋ねしたのですが、けさの停線決議に対して、当事国はどういう態度をとったか、外務省情報は入っておりましょうか。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 まだ何も入ってないようでございます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 予測はどうですか。
  22. 服部五郎

    服部政府委員 けさ安保理決議がございましたことは先ほどのとおりでございます。決議の採択後、議長は事務総長に対して、右決議を直ちに交戦当事国に伝達するよう要求するとともに、当事国がすみやかにこの決議に従うよう訴えた。したがいまして、撤兵の問題というものは残りますけれども、とりあえずの措置といたしまして、あらゆる軍事行動を停止するようにという措置はとっておるようでございます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 非常にあいまいな見通しでございます。だから私は、このスエズ運河閉鎖問題に対してお尋ねするわけです。  いま申しましたとおり、アラブ連合は、この事件解決のために、理由は、スエズ運河の安全と秩序を守るためという理由でやっておるわけですね。その意味におきましては、コンスタンチノープル条約趣旨と一致したものを提示し、それを理由にして閉鎖しておるわけです。しかもそれは、政治的に見ますと、今度の紛争を有利に解決するための重要な一つきめ手といいますか、それがすべてではないが、その一つ考えられている。したがって、今度の停戦決議に対してどういう態度をとり、あるいはその後、撤兵問題で再び意見が合わないというような場合、いろいろな場合が想定されると思います。その紛争が断続しながら継続する危険のあるときに、その過程の中でただ無害航行原則だけを第三国が訴えて、そしてスエズ運河閉鎖解除決議提案をする。その閉鎖解除決議というものは、予想されるのは、国連の場においてやる場合と、それから英米中心とする自由主義諸国から一方的に提案をする場合とあるわけですね。アカバ湾封鎖反対決議をやろうとしたが、これはアメリカが失敗におちいりましたのでできなかったけれども、あるいは国連の場ではなくて、海運国諸国をいざなうてアカバ湾封鎖反対決議を持ち込もうとしたわけですから、今度のスエズ運河閉鎖解除決議も、必ずしも国連の場においてのみ行なわれるのではなくして、自由主義諸国あるいは海運国側をいざなうて、一方的な決議が提示される場合もあると思う。その二つの場合がいま想定されるわけですけれども、そういう決議提案されたときに、日本はどういう態度をとるかということは、これは現実の紛争過程の中で重要な一つの政治的な態度を示すことになりますから、中立と日では言っておりましても、必ずしも中立態度でない場合が出てまいります。したがって、このスエズ運河閉鎖解除決議国連または第三国グループから出されるような場合に、日本はどういう態度をとるか、私は中立をとるべきであると思いますけれども、これは今度の紛争の重要な焦点でありますから、大臣のお考えをちょっと伺っておきたいのです。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、いま日本として考えておることは、いかにして紛争早期解決をして——解決といっても、根本的な解決はできぬまでも、現在のような全面衝突危機を回避して、そして、スエズ運河閉鎖しなくてもいいような環境というものをどうつくるかということがやはりわれわれの努力の一番の焦点であると思う。したがって、いろいろな決議が今後出てくるかもしれぬが、その決議というものがこの紛争早期的な解決に役立ち得るかどうかということを、われわれとしてはその角度からも考えなければならぬ。原則だけではいけない。こういう紛争が起こってこないときには、それは原則というものはあるでしょうが、この紛争が起こったときに、そういういろいろな決議というものがそういうことの解決に役立ち得るかどうかという評価が、日本政府態度をきめる場合のまた大きな立場になるわけでありますから、今後いろいろなどういう決議が出てくるかわかりませんが、国連の、すぐに停戦しろという、これはわれわれとしても、おそらく日本代表も非常な努力をしたことだと思うものでありますが、しかし、いろいろ出てくる決議に対しては、紛争早期解決、それに役立つかどうか、また、その決議が、両陣営に対して、一方の側に立つというようなものであるかないか、こういうことを判断をしながら日本態度をきめていきたい、日本はいずれにも介入はしない、紛争早期解決を望む、これが日本一つの基本的な立場でありますから、この角度から決議案に対する価値評価をいたしたいと考えておるわけでございます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、紛争過程における解除決議というものが出た場合には、一方に偏することになるから、これに対しては日本中立態度をとる、こう理解してよろしゅうございますね。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 これはどういう決議が出るかわかりませんが、出た場合というのでなしに、日本原則は、どちらにも介入しないのだ、問題は、早く紛争解決するのにどうやったら役立つか、この角度から判断をするということでございます。だから、そういういろいろな決議が出た場合に、その決議に参加することが日本厳正中立立場を害するような場合には、その決議には賛成をいたさないというのがわれわれの態度であります。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 私もそう期待をいたしておきます。厳正中立態度は、あくまで一般的な無害航行原則に従って破れないように、強く要望をいたしておきます。  それからもう一点だけ、これは先走ったようなことでありますけれども、日本並びにアメリカの当局におきましては、ややともすると拡大解釈が常に行なわれますので、この中東の事件がもし断続しながら拡大をするような不幸な状態になったときに、これが極東の安全と平和に影響があるということで、そこにおけるいろいろな問題が出ましたときに、安保条約とは全く無関係でございますね。私は地域だけを言うのじゃないのですよ、機能的にも無関係である、全然関係のないものであると理解すべきであると思いますが、外務省はその点をこの際明らかにしておいていただきたい。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 安保条約日本及び極東の安全ということが前提になっておるわけでありますから、中近東紛争安保条約関係を持つものではございません。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけ。そうすると、蒸し返しになりますが、地域はむろん極東以外ですよ、中東は。しかしながら、その中東の紛争の拡大が極東の平和と安全に機能的に影響があるという解釈はあやまちであるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 あやまちであるかどうか知らぬが、日本政府はそんなに安保条約の規定を中近東に、機能的であるか何かは別として、拡大するような解釈はとりませんということでございます。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 私は実は三木外務大臣に、昨年の暮れ就任されまして以来、アジア太平洋圏構想というものに非常な情熱を傾けておられますので、この点に関して質問を申し上げたい、こう思って準備をしておりましたが、中近東の問題がこうして焦眉の国際的問題となってまいりましたので、そのほうに時間をとられまして、もうほとんど十数分くらいしかないようでありますので、大綱についてお尋ねをしたい、こう思うわけであります。  三木外務大臣は就任以来非常にハッスルされまして、特にこのアジア太平洋圏構想というものに非常な熱意を示しておられるようであります。これは従来、戦後わが国の外交につきまして、何かビジョンがないというような批判もあったりして、あるいは三木さん自体の政治家としてのいろいろなビジョン等もあるでございましょうから、こうした方面に大きな情熱を燃やしておられると思うのであります。しかし私は、問題はなかなかたくさんあるのではないか、こう思うのであります。極論いたしますると、場合によっては、あくまでもこれは構想に終わって、実際には実態が何も伴わない、失礼な言い分でありますが、そういう危険、おそれはない、私はこういうことは言えないと思うのであります。この点につきまして二、三質問をしてみたいと思うのであります。  わが国の外交が、戦後、特にアジア地域において戦前のような指導的な、戦前のようなと申しましても、戦前の外交の内容とは違いますが、一つのあらわれた形態としては、アジアにおける外交の指導的役割りを果たすような姿に戻りつつなってきた、こういうふうに解釈もできると思うのであります。特に昨年はアジア開発閣僚会議でありますとか、一連の東南アジア農業開発会議であるとか、あるいはアジア開発銀行の創立であるとか、たくさんの国際的な活動が東京を舞台として行なわれてきたことは私が申し上げるまでもないところであります。そうして本年の四月、東南アジア農業開発閣僚会議でございますとかが行なわれまして、三木さんもこれに日本代表として出席されまして、演説を行なっておられるのであります。そうしてまた各国の代表等もそれぞれの立場を代表して演説を行なっておるように私はいろいろな報道等を通じて知っておるのであります。三木さんはこのマニラ郊外のケソン市における東南アジア農業開発会議でございますか、ここで演説をしておられまして、今後アジア太平洋圏の安全と繁栄は、東南アジア地域の安全と繁栄がない限り、太平洋地域の安全と平和はないのだ、これはそのとおりだと思うのであります。そこで、わが国は、太平洋圏に属しておる先進諸国、たとえば豪州、ニュージーランド、アメリカ、カナダ等の協力を得て東南アジアの開発に大いに力を尽くしていきたい、ところが、日本はDACでありますか、OECDの開発委員会等の決議にもいっておるように、後進地域への援助等ももっと多くしろ、あるいは技術協力の程度をもっと高くしろということをいっておるのでありますが、この点についても日本はもっとこれを高めていくようにするのだという意味の演説をケソン市でしておられると思うのであります。これは非常に重要なことでありますが、三木さんに私はこの点でお尋ねをしたいと思うのであります。そういうことは重要である。ただ、しかし努力目標である。たとえば国際水準のところまで日本の後進地域に対する援助を高めていく、こういうことは当然の努力目標であるが、一体日本はそう簡単にいかぬと思うのであります。それについて、どういうあなたの外交構想といいますか、外交理念というものをどういう具体的なプロセスで現実にこれを実行していこうとしておられるのか、まずその点の構想を御答弁をお願いしたい、こう思います。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 非常に広い範囲内で私の外交姿勢にも触れられたわけでありますが、私は外務大臣就任以来ハッスルはしていないのです。それはやっぱりそういうふうに受け取られないことを外務委員の各位に要望をしておきたい。日本の今日の国際的な地位というものは、受け身では許されなくなっておる。今日の世界の先進工業国の中で、三位とか四位といわれるこれだけの地位を持って、すべての国際問題に受け身の時代は過ぎたのだ。進んで、やっぱりいまの堂森さんもアラブイスラエルとの紛争にただ国際的な協力だけでは足らぬじゃないかと言われるのですが、そうだと思うのです。すべての問題に日本意見を求められておるのは、今日の日本の地位からして当然のことだと思う。この日本の国際的地位に即応した外交をやりたいと私は念願をしておるわけです。身分不相応な外交をやろうというのではないのですよ。今日の日本の国際的地位に相応した外交をやりたい。だから私の外交姿勢をハッスルという表現のもとに言うことは当たらないのだ、これは最初に申し上げておきたいのであります。  第二の、アジア太平洋構想というものが、これは一つのやっぱり構想に終わりゃしないかという御親切な御懸念でありますが、私は断じてこうは思わない。やはり将来の日本外交というものを考えたときに、このアジア太平洋の連帯感の中にアジア問題を解決していこうという姿勢が外交として誤ってはいないということを私は確信するものであります。そうでなければ、これは何といったって、これからの大きな問題というのは南北問題であることは明らかですよ。これは戦争と平和という問題のうらはらになっておるわけですから、このアジアの南北問題を解決するときに、日本だけの力ではこれはできないわけです。そんなら西欧諸国はといえば、西ヨーロッパ諸国は、アジアの問題にといっても、やはり距離的にも遠いし、関心の度合いからいっても、われわれよりも薄いことは明らかですから、どうしてもアジアの動向に対して直接の影響を持つ国々、それは太平洋の先進諸国ですよ。これがやはり同じアジア太平洋という一つの大きな地域社会の一員であるという自覚のものにアジア問題を解決する以外に、解決の道はないという確信のもとに私は立つわけでありますから、これが単なる構想に終わるということは私は考えていない。それもEECのような何かすぐにアジア太平洋を結んだ大きな経済機構を生み出さなければならぬのだとは私は思っていないのですよ。アジア太平洋外交はすでに着々として推進されている、こう私は考えておる。それは何かといえば、太平洋の先進諸国に向かっても、アジアというものがやはり安定しなければ太平洋先進諸国だって安定しないではないか、アジアのために太平洋諸国に対するPRだって、これは大きな外交一つの部面であります。オーストラリアに対しても、カナダに対しても、アメリカに対しても、ニュージーランドに対しても、機会あるごとにアジアとの連帯感、これをやはりPRするというのは大きな外交の役目だと私は思っている。  もう一つは、アジアの地域開発という問題について、アジア諸国協力しなければならぬという機運が相当に高まっているのです。これはやはり日本が、その地域協力の機運に対して、ある程度技術の面から、資金の面から援助するという裏づけがあって、アジアの地域協力というものは推進されておるのですよ。アジア会議にしても、農業開発基金にしても、日本が最大の出資者であるというところにアジアの地域協力が推進されていく大きな原動力があると私は思っている。このアジア協力の態勢を推し進めていくという外交は、明日の外交ではないのですよ。すでに今日の外交なんです。この努力というものはすでに行なわれておるのではないか、だから構想倒れになるということはないのだ、いまやっておることがアジア太平洋外交なんだと私は言いたいのであります。また太平洋先進諸国の間にも、民間でも太平洋経済委員会というものが生まれて、そうして太平洋先進諸国がアジアに協力できるような、お互いの地域の間の協力関係を推進して、余力をつくるために——力がなければアジアに対して援助もできぬものですから、そういう地域協力のいろんな利点があるわけですから、このアジア太平洋先進諸国協力関係をもっと推進していこうじゃないかという動きは、すでにもう太平洋経済委員会というのが民間で生まれておるですからね。また学者の間にも、あるいは医者の間にも、堂森さん御存じのようなアジア太平洋医療協力機構というものが生まれておる。こういうものが推進されてきておるのですから、これは明日ではないのですよ、いまの課題である。  最後に、私が願っておることは、太平洋先進諸国とアジア諸国とをどうして結びつけるかという問題です。この問題はまだ構想というものは固まっておりませんが、こういう提唱をして以来、もうアイデアが幾つも出ておるのです。たとえばアジア太平洋自由貿易地帯の制定であるとか、あるいは太平洋投資決済銀行の設立であるとか、あるいはOECDのDAC太平洋版というものをつくり上げるために先進諸国が定期的な会談をやって、東南アジアに対する援助に対してお互いに調整しようではないか、こういう動きもあれば、あるいはまた肥料回転資金というものをつくって、そうしてできるだけグラントや低利の肥料を供給して、その資金によってアジアの農業開発をやったらどうかとか、太平洋とアジアとを結びつける構想というものはたくさんに世の中に出ておる。私はこれでいいのだと思う。日本がいますぐこういうものをつくるんだということでみな入ってくれと言うようなことは、反発を買うばかりですよ。それだから、世界各国が知恵をしばって、いかにしてアジアと太平洋を結びつけるかという構想が次々に生まれてくることは、これは非常に喜ぶべき傾向である。その間に一番みんなが納得し、アジアと太平洋とを結びつける適切な構想が生まれて、必ずや将来アジアと太平洋の協力ができるような機構というものが生まれることを私は信じます。だから、非常に堂森さんに御心配を願って、おまえの構想はただ一片の構想に終わりやしないかと言われるが、そうじゃないのですよ。現に推進されておるのですから。これをさらにもっとやはり促進できるような体制というものは、明日のものかもしれませんが、現に今日はアジア太平洋外交時代ですよ。これをわれわれが一生懸命取り組んでやっておるのですから、どうか将来に対する御懸念というものをお持ちくださらなくて、一緒になってこのアジア太平洋外交を推進しようではないかということが日本外交立場であるという私の確信でございます。こういう確信を持っています。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は雄弁でしゃべり過ぎられるので、時間がなくて私は聞きたいことを答弁してもらえぬので困るのです。それは、たとえばOECDの開発委員会でも、日本は東南アジア等に援助をやるようになってきたが、それはけっこうだ、しかしそれは国際的な水準から低いじゃないか、そして技術協力等も非常に低いではないか、日本にもっとこれをふやしてもらいたい、こういう勧告をしておる。三木さんはこのアジア太平洋圏構想を推進するためには、こういう問題を具体的に解決しなければ、幾らおっしゃっても、たとえばケソンの東南アジア農業開発会議でも、フィリピンの代表はどう言っておるでしょうか。なるほどこういう会議によって東南アジアが発展するのは望ましいことであるが、わしらは先進国からものを売り込まれて、あくまでも市場としてとどまるようなことには満足できぬのだ、こう言っておるのであります。またシンガポールの代表でありますか、同様のような御不満をやっぱりこの会議で述べておるということが報道されております。私は、三木さんのそういう構想を具体化するためには、こういう問題をどう具体的に——なかなか国内にも抵抗があると思うのです。たとえば、あなたは外務大臣でありますが、インドネシアに緊急借款をやろう、利子を高くせいといって抵抗したのはどこでございますか。大蔵省でございましょう。あるいはまた経済協力基金をやろうとしても、これは通産省の主管でございましょう。あるいはアジア開発銀行は大蔵省の主管であるとかというふうに、外務大臣の思うようにならぬと私は思うのです。あるいは国内における経済体制等についても、これはなかなか、何を言っているのだ、そんな援助をする余裕はないじゃないかという議論もたくさんあると私は思うのであります。また、ある国々では、日本の国はアジアにおける援助を十分できないので、他の国々に肩がわりするのじゃないかという意見もあるというふうに聞いておるのであります。  いろいろお聞きしたいですが、理事さんが、時間がないと、こうおっしゃられますので、もう一つ同時に答弁をしてもらいたいと思うのです。  七月の五日からでございますか、バンコクで第二回のアジア太平洋閣僚会議でございますかが開かれるということが報道されております。この間の新聞報道を見ておりますと、去年ソウルで開かれたアジア太平洋閣僚会議には、日本は、この会議では主として経済的な問題について話し合おうではないか、政治問題等について話を広げていくことはやめようではないか、これはおそらくマレーシアとか日本等が主張してそうなったというふうに聞いておりますが、今度は、新聞報道によりますと、バンコクの会議にはもっと政治的な方面にもどんどん内容の主体を広げていくのだ、こういう方針にきめた、こういうことが書いてあります。そうすると、去年はそうであってことしはこうだ、そんなに大きな環境の何か激変でもあったのでありましょうか。私はかえって逆効果が多くなってくるのではないかと思う。そしてこの会議で政治的な問題に広げていく意図がどこにあるのか。悪く勘ぐると、これはアメリカ一辺倒が、日本よりもっと強い国々が、東南アジアではたくさんあるわけであります。こういう国がまっこうからベトナム問題を取り上げようではないか、アメリカに密着した姿でのベトナム問題の取り上げ方というような主張が出てきた場合、一体日本の国はこの会議でどういう態度をおとりになるのでありましょうか。私は多くの問題をかかえておると思うのでありますが、アジア太平洋圏構想に関連をして質問をしておきたい、こう思います。  あとは、いずれまた時をあらためまして、三十分や一時間ではできないことでありますので、次にまたいたしたい、こう思います。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 堂森さんの御心配ごもっともで、これはやはり日本の国民の感じと、今日世界に持っておる日本の地位というものの間にはなかなか開きもあると思うのです。それはなぜかといえば、国民総生産が幾ら、世界の何ぼといっても、一人当たりの国民所得というものはまだ世界で二十二番目くらいですからね。そういう点でもう少し国内にしなければならぬものがたくさんあります。しかし、私が言いたいことは、いろいろ私もマニラの会議で、日本もやらんならぬことがたくさんあるのだ、農業とか中小企業あるいは公共投資、社会保障、いろいろだくさんあるのだけれども、できるだけ国民に納得してもらって、日本の対外援助というものを今後ふやしていきたいという演説をしたわけであります。しかし私はやはりできる限り国民にも理解してもらうために、これは説得の努力を続けたいと思う。それは何かといえば、いろいろなことはあるにしても、日本は先進工業国で四番目から三番目になろうというのですから百何十国も国のある中で三番目に日本がのし上がっていこうというのですから、日本の国内にいろいろ問題がありますから対外後進国の援助というものはあまりできませんということでは、世界に通用しなくなっている。だからといって、日本の国力に不相応なことをせよというのではないけれども、その中にあっても、いろいろ国内の仕事が済んでからというのでなくして、これと並行して、できる限り後進国の援助をしてあげようではないかという国民的な理解を得てもらうために、私も今後努力をしたいと思うのでございます。しかしその努力の目標は、国連貿易開発会議あるいはまたOECDの場面などにおいて、国民所得の一%を出すという決議を採択されることに対して日本は参加しておるわけです。何年ということは限ってはないですよ、しかし、できるだけ数年のうちにはそこへ持っていこう、しかもその内容も、できるだけ低利、長期な資金であるべきであるという採択も出ておるわけです。むしろ金利三%以下、期限二十五年以上、こういうことが世界の常識になりつつあるわけですね。だから援助の金額もふやし、また条件も緩和するために、堂森さん御指摘のとおりに、これはやっぱり国内問題にはね返ってくるのですよ。大蔵省との間にも通産省との間にも、これはやはりいろいろ国内のそれぞれの立場から、無理のないことですけれども、そういう点については、しかし国内にいろいろ調整しなければならぬ問題が困難だからといって、この世界の大きな流れに目をつぶるわけにはいかぬ。できるだけ国内の体制もそろえて、そしてあるいは機構の点でなかなか早くこういう問題が解決できぬとするならば、機構の改革も行なって、たとえば海外協力基金などは、これはやはり少し再検討をいたしたいといま検討を加えておる。そういう体制を整えて、そして日本が国際的にもその決議に参加しておる国民所得の一%、しかもできるだけ条件を緩和するという線に今後努力をいたしていきたいと考えております。これは国内問題も御指摘のとおりだと思いますが、それを克服して世界的な義務を日本が果たしていかなければならぬ今日の国力であるというふうに私は考えておるわけでございます。  また、ASPACといわれるバンコクの来月五日からの会議ですが、去年は何か反共、反共という一つの大きなワクの中で、そういうふうな結論を見出すような会議になるのではないかという懸念があったわけですよ。非常に強い反共のためのASPACであるという、そういうことはよくない、そういうことで日本政府としても、最初のうちはあんまり政治問題に入らないような会議にしようという配慮は、あの会議のおい立ちからしてそういう懸念があったことは当然だと思うのです。今日では、二回目になりましたから、私も政治問題ばかり論じようというのではないのですよ。しかしせっかく一年に一回外務大臣が寄り合って話をするのに、この問題はいかぬのだ、あの問題はいかぬのだといって、そうして経済問題だけで、ほかの問題は話しちゃいかぬというのもあんまり子供じみたことではないか。だから政治色を持たすというのではないのですよ。せっかく一年に一回、外務大臣が寄り合うああいう会議はないのですからね。何でも話したらいいじゃないか。自由な討議の場にしたらいいじゃないか。政治問題は絶対にいかぬのだといってワクをつくらないで、みなが考えておることを自由に討議して、お互いの理解を深めるということでも会議の大きな意義ではないか。みなが寄り合って考えておることをみな話し合って、理解を深めるということも一つの意義ではないか。堂森さん、だから特に私は政治色を持たそうというのではないのですよ。しかし、これ以外のことは話しちゃいかぬというのも外務大臣の会合でおかしなものではないか。みな自由に思っていることを話し合って理解を深めよう、こういうのが私の言い分でございます。これは誤りなく御理解を願いたいと思います。
  35. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢君。
  36. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣、あんまり気持ちよくハッスルされて、時間のほうはどんどん進行してあまり時間がたくさんないようでございますから、なるべく簡潔に御質問申し上げますから、大臣もハッスルしながらなるべく簡潔にお答え願いたいと思います。  まず第一に、同僚堂森委員からも御質問のあった中東の危機の問題でありますが、これは私は率直に申し上げまして、議院運営委員会の任務ですけれども、できるならばあしたの本会議あたりで外務大臣から議会に対して報告があって、その上で与野党からの質問というようなことになろうかと存じます。それを予定しながら、緊急な問題でありますから、若干の点を質問させていただきます。  第一には、外務大臣の御説明の、これはあなたのことばですから、私から表現するのは適当でないかもしれませんが、わが国の中東危機に対する基本的な態度としては、要するに紛争には不介入、そして一方の当事者を非難するというようなことは絶対にしないで、いわゆる厳正中立を守り貫いていく、当面まず一番大切なことは紛争の不拡大、したがって、戦闘行為の停止を国連を通じて極力努力していく、こういうような方向ではないかと思います。私はこの方向については実は国内的にも異論がないのじゃないかと思うのです。むしろけさの九時の喜ばしいニュースでは、いろいろ心配をされておったけれども、やはり米ソの間にはあれだけのいろいろなイデオロギー、いわゆる東西の争いは今日にしてもなおありますけれども、両方の譲り合いによって現時点における無条件停戦という、これは実は米ソ話し合いなくしてはとうていできなかったようなことで、この点は喜ばしいといいましょうか、安保理事会一致の決議がとりあえず通った、この点からいっても、いま言われた厳正中立と当面まず実力行使をやめろ、この方向でやることが正しいと思うのです。ただ、私は先ほどの穗積委員の関連質問にもやや問題が出ていたと思いましたが、厳正中立ということはどうでもいいんだということとは違うと思うのです。むろんわが国の基本的な戦争をしてはいけないという立場もあります。またわれわれが戦争に介入しないという基本的立場、同時にわれわれのたとえば海運国としての、これも触れられた点であるけれども、基本的に国際的な水路の無害通行というものについて、われわれは強く基本的な主張を持っているということも中に含まれておる。ただ、そういうことをいまの時点で言うと、一方の側がとにかく紛争解決ができなければ、海洋国だけでアカバ湾、チラン海峡を場合によっては強行突破にも及ぶかもしれない。強行突破の宣言をしてしまうというときに、慎重なかまえで言動を慎んでおられるということについては、これは日本国を代表する政府態度としてわれわれも了解します。同時に両方の当事者に対しても、相当私は歯に衣を着せないようなことを言うべき点があるのではないかと思う。たとえば、イスラエルという国が何といっても中東における一番平等な社会をつくっている。言うならば、やや西欧先進国型のきわめて進歩的な面のある社会で、われわれはそういう国が民族の基本権まで侵される、周囲のアラブ諸国がその国の存在それ自身を否定するようなややともすれば言動をする、こういうことに対してはわれわれはやはり中東における一つの進歩的勢力として、そういう国も含めて平和的共存が必要であろうということで、いわゆるイスラエル立場に対する理解があっていいと思うのです。同時に、アラブ諸国が多年の英仏の植民地主義の侵略及びその犠牲から立ち上がれない、その経済、社会その他の後進性に悩んでいる、ある国は非常にいわゆる急進的な共和制をとり、ある国は非常に封建的な、石油利権がごく一部の社会層にしか及んでいないというおくれた点がある、そういうところから国づくりに立ち上がっていることに対してわれわれは同情する。しかし、双方に対して、少なくとも実力で自分の主張を遂げるというような態度は、われわれとしては断じて承服できない。やはり国連の精神を如実に実行して、少なくとも四八年にも停戦ができ、五六年には世界戦争とまではいかないにせよ、かなり大きな戦争に突入するようなスエズ戦争まで起こして、ようやくできているこの現状は、そこに国連という緊急部隊と申しますか、これが名目的にもあそこに存在することによってかろうじて保たれていた。不安定であるけれども、その一応の現状というものを力で破壊するとか、片一方が力で来れば必ず自衛上からいってすぐ力を用いるということはよくないのだというくらいのことを、やはり私は国民の名において両方に強く主張すべきではないか。そういったような主張をもって、しかもなお一方に偏してはならない、そういう両々相まっていかなければ、問題の進展のいかんによっては、向こうが何と言おうと、日本の基本的立場はこうなんだということを言わなければならないことがあり得ると思うのです。だから、くどいようですけれども、厳正中立、不介入ということは、われわれは骨なし動物じゃないんだ、双方に対して言うべき好意的アドバイスあるいは好意的警告等はちゃんとやっておられると思うけれども、骨のある点はどうなっておるかをあらためてお答え願いたいのであります。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 曽祢君の言われるとおり、やはり航海自由の原則であるとか、あるいは武力による問題の解決をはかるようなことをしないとか、こういうことが基本にあることは当然でございます。だから、いずれの場合においても日本のそういう考え方は前置きにしながら、しかし、現在はこの紛争早期解決するということが戦争の拡大を防ぐ道でありますから、現在は紛争解決ということにアクセントはつけておりますが、日本の主張の根底には御指摘のようなことが当然にあるし、この考え方の上に立ちながら現実の解決策というものを見出していくというのが日本の姿勢であることは、御指摘のとおりに考えておる次第でございます。
  38. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう一つ私非常に気になるのでございますが、やはり国連というものは今後とも非常に重要な役割りを——むろん国連が動くについては米ソ大国のいろいろな理解とか和解とか、いろいろな条件もあるでしょう。とにかく国連という形で動き、国連という形でおさめるということは非常に重要だと思うのです。その意味から言っても、今度の国連事務総長がナセル大統領の要請に従って直ちに国連警察軍といいますか、緊急部隊といいますか、これを最もセンシチブに、最も神経のぴりっとしているガザ地区あるいはチラン海峡等からすぐに撤退してしまった、一体これはどういうわけなんだろうか。なるほど、私は全部見ているわけじゃありませんが、なぜそうなったのだかというようなことは長々しい説明を聞かされています。しかし、問題はそんな理屈じゃないのです。理屈から言えば、それはアラブ連合のナセル大統領の同意なくしてはこの部隊を派遣し、駐とんさせることはできなかったことは事実である。アラブ連合の敵意のもとにいつまでも長くいるということはできない。しかし、あまりにもどんぴしゃりが早過ぎて、皮肉な見方をすれば、むしろナセル大統領のほうが少しタイムテーブルが狂って、実力で封鎖でもやらなければならなくなるとか——、これは少し私は考え過ぎだとむろん思いますけれども、そういったような国連の、これは今後の解決のときにも非常に関連があると思うので気にしているのですけれども、国連事務総長のやり方、これは一体事務総長だけでああいうことができるのかどうか。大体派遣することは、一方におけるハマーショルド前総長の非常な努力によってナセル大統領との話し合いができた。しかし、同時に国連としては国連の機関決定によって、国連の正式機関である総会の決定によって派遣した以上は、一体事務総長がかってにできるのかどうか。そういう場合に事務総長安保理事会にはかったのか、あるいは総会にはかる必要がなかったのかどうか、こういう問題もあろうと思うのです。その間の事実は一体どうなんか。今後非常に重要なことであるとともに、この紛争がある程度スピードアップしたことに若干責任がありはしないかと思うので、この点はこれまた歯に衣を着せずにずばり言って、疑点を残しておるので、御説明を願いたいと思います。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 ウ・タント国連事務総長自身国連軍の撤退した後にああいう事態が起こるとは考えなかったに違いない。権限はウ・タント事務総長として持っておる権限でありましょう。この撤退というものに対しては、曽祢委員も御承知のように、いろいろ理由について説明はいたしますが、私とすれば、ウ・タント氏が日本に来た場合には、この点はもう少し話してみたい点でありました。いろいろこの理由は、ウ・タント氏の説明に対して読めば一応理解のできる面もありますけれども、しかしああいう事態が起こって、すぐに中東の危機というものが招来したんですからね。ウ・タント氏が、国連軍が撤退する場合の中東情勢というものをどういうふうに判断をされ、そうしてまたああいう決意をされたのか、これはやはりベトナム戦争の問題とともに聞きたい点でございました。残念ながら訪日は中止されましたから、この公式のウ・タント氏の報告以上のことは、いま私自身も、どうしてだろうかという感じは持っておるのですけれども、本人から聞く機会を失ったわけであります。どういうことであっただろうかということは、われわれも聞いてみたいという考え方であったわけでございます。
  40. 曾禰益

    ○曽祢委員 その点はこの程度にして、ひとつ慎重に御検討願いたいと思います。  これからの問題ですけれども、なるほど現時点における無条件停戦、これを取りつけるまでもたいへんだったと思うのです。おそらくソ連としては、イスラエル軍が進出する前の線まで、つまり武力行動が起こる前の時点まで無条件回復しろということでなければいかぬということは当初から主張しておったと思うし、また逆に別の側からすれば、すべては国連部隊がおった時分の線に原状回復すべきだというようないろいろなあれもありましたでしょうけれども、とにかく現時点における無条件停戦の呼びかけが通ったことはけっこうだけれども、問題はそのことにいきなり——そういうことばを使うのは適当でないかもしれないけれども、この決議は別に強制力、制裁というようなことが直接ついておるようなややこしいやぼな決議ではないわけです。したがって、どうしたならば米ソ中心とする国連安保理事会全会一致という大きな世界的な世論と、しかもある意味では力の裏づけと相まって、両当事国がむしろ自分のほうに都合のいいように大国を引っぱり込む——と言っては語弊があるかもしれませんが、大国が介入するなんというよりは、むしろ大国が自制している間に両当事国がそれこそ自制しなければならない事態であったんじゃないかと思うのです。どうしてこの停戦を現時点に実現するか。これに対するきめ玉というものは一体どういうものであろうか。これは停戦実現までまだ私は必ずしも楽観できないような気がします。ことにチラン海峡のほうについてはまだアラブのほうが占領しているのでしょうから、そこら辺のことを含めて無条件即時停戦に対する見通しと、どういうふうにこれを持っていくかということについてのお考えをお示し願いたいと思います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 いまこれは外務省の公電ではないのですけれども、AFP通信が、イスラエル停戦を受諾した、こういうことでありまして、おそらくこれは相当な真実性のあるニュースだと受け取れるわけであります。したがって、これだけの米ソとの話し合いというものが行なわれて、その上で、安保理事会でございますから、その決議が単なる決議というよりか相当な決議影響戦争当事国に持つものである、したがってわれわれとしては、まだこれはアラブのほうからは来ていない、これはイスラエルから来たわけですが、アラブもこの国連決議を受諾して、まず停戦、そして今後長続きのする安定の方法論について検討が進められることをわれわれも期待をいたすものでございます。
  42. 曾禰益

    ○曽祢委員 そういうふうにぜひ願いたいと思うのですが、そこでやはり停戦ができたあと、どういうことをやっていくか。基本的には先ほど冒頭にちょっと申し上げましたように、いかに宗教が違い、歴史的ないろいろな恨みつらみがあっても、やはりとにかく全然相手方を無視——無視どころではない、完全に抹殺すると言わんばかりの敵がい心で対抗しているということ自身は非常に不幸なことで、何としても平和共存のほうに持っていかなければいかぬと思うのですが、それはやはり停戦ができたからといって、とても真空状態には置けないと思うのです。露骨に言って、どうしても国連警察軍ですか、あるいは緊急部隊ですか、何でもいいから、比較的大国的でない中小国なりあるいは非同盟国等が入って、同時に東西が入ったほうがいいと思うのですが、そういうような部隊がやはり国連のプレゼンス、国連が存在するということの名目的価値というものをわれわれは高く評価しなければならない、そういう意味でも私は決して意地悪い意味でなくて、事務総長行動にいささか不安を感じた点もあるのですけれども、やはりそういうような国連のいい意味の介入によって部隊を送ることによって、そこで引き離しを実現することによって、紛争が起こらない、再発を防止する、停戦できてもすぐに破られるのでは意味がありませんから、そういうことをひとつやってほしい。そういうことをやることは、存外ベトナム戦争の将来の解決をする上にも、やはり国連の権威と存在理由、特にそういったような停戦ができたならば、兵力引き離し、監視という意味で、小国からなる警察的な部隊を送るということが非常に望ましいと思う。この方面にひとつ日本として——日本が直接部隊を送ることは現状においては問題にならないと思いますが、そういう構想を進めていただきたいと思うのです。この問題について、この点を最後に大臣の御意見を伺いたいと思います。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 まずいまは停戦を実行することが何よりも大事で、その後において長続きのする安定する方向については、国連を舞台にして日本は相当果たし得る役割りもありますから、われわれとしても努力をいたしたいと考えております。
  44. 曾禰益

    ○曽祢委員 次に、小さなような大きな問題で、ちょっと取り上げさせていただきます。それは去る五月五日、沖繩の漁船第8南琉丸、第3八洲丸、これはマグロ漁船でございますが、これがインドネシアの領海付近におきまして操業中、インドネシアの官憲に船が拿捕され、そして船員も現に抑留されている。いまだ解決がないというので、沖繩の船員組合は全日本海員組合の子供の組合になっておる関係から、実は六月二日に海員組合の代表がわれわれと一緒にインドネシア大使館に抗議並びにすみやかな釈放方を申し入れたところが、インドネシア側の説明によりますと、こういうことは実は本年の一月、これは沖繩船でなくて日本船ですが、高知県の漁船二隻についても抑留したことがある、二ヵ月後になって乗員は釈放したということで、先方の言っていることはだいぶ私は高圧的に感ずるのですけれども、この高知県の漁船二隻の問題のときに、先方では三木外務大臣とインドネシア大使との間に——これは先方が言っていることですよ。話し合いが行なわれて、インドネシアが行なっている内水における外国船の航行制限でしょう、説明をした、そして日本側に対してもインドネシアの決定を尊重するように申し入れてある、向こうはこう言っておったそうです。そこで、インドネシアのほうは、一九五九年以来内水制限をやっておるといって説明したそうですけれども、われわれから見ると、第一に、十二海里というものを当然に一方的に宣言していることもすでにどうかと思いますが、特に基線の引き方といいますか、一番遠いところの島と島を直線に引っぱっちゃって、あとはもう出ていけというような、とうていお話にならない主張のように思われます。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 この問題については、むろんインドネシアの新しい、復興した国としての気持ちはわかりますけれども、そういうようなむちゃくちゃなことでなく、領海に対するいろいろな主張はございましょうが、しかし少なくともいままでのような既得的な権利はむろん認められなければならない。わが国の漁業としては、一つの国に譲るということは非常に大きな悪い先例をつくることにもなるので、日本の漁船の場合についても当然に日本の主張があってしかるべきだ。加えて沖繩の船舶については、すでに日本の官民の努力と希望、沖繩島民の強い希望によって、近く、われわれからいえば日本の国旗である日の丸が出せる。またそういうことが、従来ややもすれば三角の琉球旗で航行していること自身がむしろ船籍不明だというのでつかまる原因であったわけですから、すみやかに制度が変わることをわれわれは望むのですが、とにかく沖繩の船、そして乗っている漁民は日本人です。この問題についてもっと特段の関心を持って、外務省がてきぱきインドネシアと交渉し、直ちにその釈放並びに沖繩漁船及び漁民に対する保護権の一つのケースとして積極的に取り上げてもらいたい、私はかように考えますので、大臣の御所見を伺います。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 かつては日本の漁船に対しても事件があり、これは解決しましたけれども、また沖繩の漁船に対しても今回御指摘のような事件があった。日本の出先の大使館としては、漁民に対する保護というものは日本政府が当たらなければならぬという考え方のもとに——アンボンというところで抑留されておるわけですが、そこへ直ちに急行して、そして現地の抑留されておる漁民とも会って、保護に遺憾なきを期すると同時に、インドネシア政府に対して交渉により早期に釈放されることを努力するような指示を与えておるわけでございます。何ぶんにも国内の交通路というものがなかなか整備されていなくて、交通が非常に不便なようでありますが、そういうことで、できるだけ早く釈放が実現できるように——漁船はやはりアメリカ政府が保護の第一の責任を持っておるわけですから、そういうことでアメリカの出先外交機関とも連絡をとりながら、最善の努力をいたしたいと思います。同時に、こういう事件があったら、解決するばかりでなしに、インドネシアとの間に、内水制限というものをわれわれは認めておるわけではないですから、もう少し安全操業という見地からインドネシアとの交渉を開始したいと考えております。外交交渉を始めたい、そして安全操業が確保できるような努力をいたしたいと考えております。
  46. 曾禰益

    ○曽祢委員 ちょっと一言、それはぜひやってもらいたいのです。一つは、何といっても安全操業の確保で、領海に関するいろいろなものもあろうけれども、日本の漁業の安全操業の確保、これを政治的レベルで折衝してきめていただきたい。当面は沖繩の人間に対する保護でありますけれども、船舶についても、近くやはり日の丸を掲げる以上は、アメリカの法権は排除できないかもしれないけれども、日本の法権は及ぶものだと思うのであります。そういう点もございますから、アメリカを通じて云々のことは聞かぬこととして、日本としてぜひ、すみやかなる船員の釈放と抑留船舶の抑留解除を進めていただきたいと強く要望して、私の質問はきょうはこれで終わります。
  47. 永田亮一

    ○永田委員長代理 渡部一郎君。
  48. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はやはり中近東の問題が現在の時点で最大の問題でありますので、それについてお伺いしたいと思います。時間があまりございませんので、簡潔にお答えくださってけっこうだと思うのでございます。  まず、その原因についてでございますけれども、原因をどう見るかによって、われわれのこの問題に対する影響性も立場も全く変わってくると思うのでございます。聖書の昔にさかのぼってその原因をさかのぼることは、政治としてはよろしくないと私は思うのでございます。二千年の昔にさかのぼりますと、たいていの国々は相当な戦い、戦闘状態をやっておるわけでありますから、現実問題としてこの原因をどうお考えになるか、その取り組みの姿勢について外務大臣にまずお伺いしたいと思います。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 イスラエルという国の成立について、やはりアラブ諸国はこれを承認してないという立場で、すでに成立についてやはり問題をかかえておった。その後、そういうことでありますから、国境紛争が絶えない。われわれも特にあの付近は知っておるのですけれども、絶えずこういう今回のような事件が頻発しておるわけではありませんけれども、国境線の紛争というものは年中行事のように行なわれて、それが何らかのきっかけがあればこういう事態を起こすような、そういう原因を常に包蔵しておったということが今回のような対立をかもし出した一つの大きな原因だと見ておるわけでございます。
  50. 渡部一郎

    ○渡部委員 よくわかりました。  今度は本日の停戦の問題についてでございますが、従来安保理事会等において停戦決議が行なわれた後におきましても、停戦が直ちに両者によって認められない場合がございました。たとえばカシミールの紛争等におきましては、およそ二十日間もかかったといわれております。現在イスラエル側は戦勝に乗じて停戦をするようにいまのAFP電では認めたそうでございますけれども、イスラエルは立ち上がりの奇襲によって非常に大きな戦果をおさめて、そうして停戦に応ずる——、こういうことが悪い慣行になってしまったら、国際連合の権威も形なしだと私は思うのであります。したがいまして、そういう道理の上からしましても、アラブ側はなかなかこれを承認でき得ないであろうということは当然うなずけるところでございます。そういうふうにした場合、この安保決議を承認されず、まだ戦闘状態が続くような事態になりましたならば、大臣はこの問題についてどう対処され、どうされるのが妥当だとお思いになりますか、お伺いいたします。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう決議ができる背景の中には、やはりアラブ諸国関係の深い国々とも下相談をした結果がこういう決議としてあらわれたのですから、この決議は単なる決議というよりかは、戦争当事国に対して相当な影響力を持つ決議だと私は解釈しておるわけであります、いまその停戦決議戦争当事国によって受諾されないような場合にどういう紛争が起こり、どう対処するかということは、いろいろな場合を考えなければなりませんが、いまひたすらにこういう形で国連決議が実行されて、停戦の事態が実現するということを期待をいたしておるというのが私の心境でございます。
  52. 渡部一郎

    ○渡部委員 国連中心として外務大臣はこの紛争の処理に当たるべきだというふうに言われます。まことにごもっともな見解でございますが、その二つを伺いましただけでも、まずイスラエルの成立にあたって、当面の責任があるのは国際連合であろうと私は思うのであります。それからまた、停戦の問題云々に関して、紛争当事国が最後まで戦闘するような段階になりましたら、これまた見通しは相当あったといたしましても、国際連合憲章の四十条であるとか四十一条、四十二条等の規定を利用してこれに干渉することは義務づけられてくるであろうと思うのであります。したがいまして、国際連合のあり方については、相当の監視を日本外交方向として必要とするのではないか、私はこう考えるのであります。したがいまして、私は、外務大臣にその点について一段の御努力をお願いしたい、こう思うわけでございます。これは別にお答えは要りませんので、次に移りたいと思います。  それは、この停戦協定が国際連合でできる前に、三つの停戦の案がございました、国際連合において。一つはアメリカ案であり、一つはインド案であり、一つはソ連等が支持する案だったというふうに私は了解しております。この三つの案のうちで即時現状停戦、あるいはもとの位置に戻って停戦、あるいはもっと最初の、国連軍がおった当時に戻って停戦というふうな幾つもの案が出ておったようでございます。ところが日本の場合、先ほどの中立の問題と関係するのでありますが、どこの停戦案に関与するかによって、日本立場というのは大きく色どりをつけられてしまうのではないか、私はそれを心配するのであります。したがいまして、この停戦案についての日本態度について、私は大きな注目を持っておりました。また当初におきまして、この紛争が起こった直後、アメリカがこれに対する決議案を出そうといたしましたときに、一番先に賛成したのは日本の代表だったようであります。この問題に対しては、こういう取り組み姿勢というものが非常に危険だったのではなかろうか。先ほど言われました不介入、絶対中立という立場から大きく逸脱するものではなかったか。現地の国連大使の動向というのは、そういう意味で監督を要するのではなかろうか、私はそういうふうに感ずるのでありますが、大臣の御返答を承りたいと存ずるのでございます。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 どれもみなボートにはならなかったわけですが、しかし、いずれの案も、戦争を早くやめさそうという気持ちから出発しておることは事実で、そういう気持ちがなければ、こういう満場一致決議はできなかったわけです。その途中で日本立場は、一日も早く紛争をやめさすということで、いずれの国の案についても、みなやはりねらいはそこにあったわけでありますから、各国の案に対して日本の代表の反応のしかたが特にどっちかに加担したという態度ではないということを申し上げておきたいのでございます。早く紛争解決したい、そういう点から、各国提案はいずれも内容としてはそういうものを踏まえておったので、日本も、これに対しては、いずれの国の提案についても、できるだけ早く紛争解決するということに役立つならば、日本は賛成しようという立場であったわけでありますから、日本厳正中立という姿勢に対して、それが途中から変わったというようなものではない。だれが考えても、日本紛争に深入りしてどうという、そういうことは考えられないのであります。それはやはり中立的な立場で、この紛争早期解決ということは日本外交としては当然のことでありまして、両論があってというのではないと私は思うのであります。そういうことでありますから、日本立場に変更はないと御理解を願いたい。これは紛争を早く解決したいという一念だけであるというふうに御理解を願いたいのであります。
  54. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、いまの御返答はちょっと事実認識が違うのじゃないか、こう思うのであります。それは、今回のアラブの問題につきましては、両当事国も非常に険悪な情勢を示しておりまして、どちらも平和の意思を持っておるという意味では、ソ連もアメリカも平和であるとか中立国であるとかいっておるのであります。ところが両方の当事国は、おのおのの平和案を出し、おのおの相手の案を傷つけ合っておる段階である。またイスラエル側としても、アラブ側といたしましても、両方とも自分たちに敵するものに対するきわめてナーバスな態度というものをとっておる。したがって、たとえば石油問題等にいたしましても、少しでも敵側に味方をする気配があるならば、そういう国とはつき合わないというような、あるいは石油を禁輸するというような動向すら見えるのであります。敵性国と非敵性国を分けようという考え方がある。そういう事態でありますがゆえに、その際の日本態度というものは、かなり慎重でなければならない。私はそう存じて、御質問を申し上げておるわけであります。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 それぞれの決議案は、撤退の時期などに違いがあったようでありますが、大同小異だと承知しておるのです。撤退の時期をいつにするかというところに決議案に多少の違いがあったようで、国連の代表団の動きが、どちらかに日本が加担した動きをしたわけではない。紛争早期解決ということだけの見地から代表団が動いたので、この紛争に対してどちらかに加担するというような意味から国連代表部は動いてはいないということははっきり申し上げておきたいと思います。
  56. 渡部一郎

    ○渡部委員 当然そうあっていただきたいと私も存ずるのでございます。いまアラブ側では、アカバ湾封鎖に対して世界海運国宣言を英米側がやろうとしているのでありますが、それに参加する国であるかどうかということをじっと見て、敵性か非敵性か見分けようとしております。またイスラエル側は、国連憲章五十一条による自衛戦争であるというふうな表現で主張して、これに賛成をするかどうかによって、イスラエルに対する態度を見分けようとしております。そういう問題が起こっておりますときに、またアメリカでは国内にいる六百万人のユダヤ人の動向によって、きわめてイスラエル支持が濃厚であります。またアラブにおきましては、石油に対する利権を回復しようという大きな要請のもとに、その石油を利用したいろいろな動きもあると聞いております。したがいまして、こういうような条項に一つずつどういうふうに対処されるか。それを、われわれが戦争に巻き込まれないために伺っておきたい。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 第一番のアカバ湾の航行自由に関する共同宣言というのは、英米の間に決議案というものを出そうという動きはあったわけであります。むろん日本に対しても非公式な連絡はあったわけですが、日本立場は、その前からもう日本は、こういう海洋国でありますし、公海自由の原則というのはだれよりも日本は賛成である、その原則は守られなければならぬというのが日本の前からの主張ではあるけれども、一体この時期にそういう決議というものが紛争解決にどういう点で役立つのかということについて、これは十分な検討をなされなければ、ただ原則には賛成であっても、この時期にそういう決議案の持つ効果というものを検討されなければ、原則に賛成だから何でも賛成というわけにはいかぬという慎重な態度をわれわれはとって、直ちにそういう共同宣言に大賛成であるというような意思表示はしていないわけであります。この日本態度というものは、どこの国にも誤解をさすような結果にはなってないと信ずるわけでございます。  また、アラブ諸国に対する石油利権の動きというようなものについては、われわれ承知してないのですけれども、まあ、あそこの中近東石油のいろんな資源、世界資源のやはり中心地でありますから、石油をめぐるいろいろな動きはあるのでしょうが、日本とすれば、とにかく日本石油の九〇%も依存しておるのですから、地域紛争解決されて、日本の産業の原動力である原油の確保に対してこれを不安なからしめる、こういう見地から、ここの利権的な動きなどにはわれわれは関与する意思は全然ございません。
  58. 渡部一郎

    ○渡部委員 それからイスラエルの自衛戦争についてちょっと。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 この自衛戦争——戦争ですね、自衛でも何でも、自分のいわゆる政治の手段として戦争というようなものに対しては、やはり平和的に解決をすべきであって、戦争によって問題の解決をはかるということは、これは日本の平和主義の原則に反することでございます。
  60. 渡部一郎

    ○渡部委員 もう少し詳しく議論をしたいのですが、時間がありませんので、最後にその問題に関しては、いま在留邦人が、先ほどの御説明ではアラブ連合側に二百十五人、イスラエル側に百十人とおっしゃいましたが、そのような総括して五百四十五人というふうに言われたように伺いましたのですが、これの引き揚げをいよいよするその準備でございます。飛行機の手配等についても十分な準備がしてあるかどうか、私は心配しておるのであります。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 新聞の報ずるところで恐縮なんですが、新聞の報ずるところでは、以前におきまして、費用のある者に関してはその積み立てが行なわれておるので直ちに日本へ引き返させることは可能であるが、お金のない者はあんまりいないからいいというような意味合いのことが外務省当局から説明されたような報道がございます。私は、そういうような在留邦人をお金のあるなしによって立て分ける、金のない者は死んでもしかるべきだということばが裏側から出てくるような事態があったら問題ではないか、こう思うのでありますが、いかがでございましょうか。御返答をいただきたいと思います。
  61. 三木武夫

    三木国務大臣 そんなに、金のない者は見殺しだというような政策は断じてとりませんから、御安心を願いたいと思います。
  62. 渡部一郎

    ○渡部委員 それじゃ引き続きまして、けさの読売でございますが、日本は六日、ローマに待機している日本航空の予備機をカイロに出発させ、在留邦人二百二十人のうち、帰国を希望する五十人に便宜を提供しようとした。ところが日本航空と協議したら、一九五八年レバノン紛争のとき、引き揚げ邦人を政府の要請で運んだけれども、その代金が未払いであった。日航から、今回は特別機代を政府が保証してほしいという要求が出された。これには外務省もびっくり。こう書いてあるのです。こういうびっくりなんというのは、おそらく外務大臣は一番おきらいなことばだろうと思いますが、今度はびっくりしないで、お金をちゃんと払っていただくようなことをお考えになっていらっしゃるかどうか、その点を伺っておかないと、私は、見殺しにするようなとおっしゃった先ほどの言明に対してまことに心配なので、一言お伺いしておきます。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 そのいきさつに対しては調べてみますが、今回いろいろ中近東でああいう紛争を通じて引き揚げるような必要があったならば、政府はそういういろいろな処置を講じて、見殺しには断じていたさないということをお約束いたします。
  64. 渡部一郎

    ○渡部委員 ただいまおっしゃったことは、そういう場合には費用等を出して、そして引き揚げをさせる、こういう意味と了解してよろしいですか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 海外における日本人一人といえども、政府はこれに対して無責任な態度をとるべきでない、あらゆる方法を考え在留日本人の保護に遺憾なきを期するということでございます。
  66. 渡部一郎

    ○渡部委員 前のレバノンの分につきましては、外務省はお払いになるおつもりでしょうか。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 これは外務省がそういうふうに人にそういうことをさしておいて払わぬというのはよくないですから、いろいろな解決——事情もあるでしょうから、払わないというのは何もなしに払わないということはないので、いろいろな見解の食い違いなどもあったのだろうと思いますから、これはよく調べて適当な処置をいたしたいと思います。
  68. 渡部一郎

    ○渡部委員 きわめてあいまいな御答弁で、いまの段階ではしかたがないと思いますけれども、これによって政府の威信を傷つけたり、在留邦人に不安を与えないようなよき前例をつくっていただくよう、要望したいと存じます。  それから、もう時間があまりございませんので、きょうは小笠原の問題についてお伺いしておきたいと思うのであります。  その問題に入る前に、せっかく通産省からお願いをしましたので、中近東石油関係につきまして、現在の中近東における紛争が拡大した場合に、日本に対するところの石油の輸入に関してどういう影響があるか、またその影響を克服するためにはどうすればいいか、まことに恐縮ですが、簡潔に一言お答えにあずからしていただきたいと思います。
  69. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいままでに中近東地区におきまして石油の輸出の制限措置がとられておりますのは、イラククウェート両国でございます。そのうち、わが国に対しまして直接の供給制限の影響が出ますのはイラクだけでございます。クウェートにつきましては、対日供給は平常どおり行なわれております。したがいまして、紛争の期間にもよりまするけれども、イラクからの供給停止によりまして受けるわが国の影響はきわめて軽微でございまして、実質上わが国の石油の需給関係には、ただいまの段階におきましては、大きな影響はない、かように考えております。
  70. 渡部一郎

    ○渡部委員 もうちょっと伺いたいのですが、先を急ぎますのでまことに恐縮ですが、これだけにとどめさせていただきます。  小笠原協会が——委員長のほうでこの問題に関しては本職でもおありのようでございますので恐縮なんですが、公式の席上でこの問題がはっきり論じられてないように存じますので、小笠原協会が、今回米国に対して返還困難というのは認識不足だと非常に強い申し入れを行なったように伺っておるのでございますけれども、この問題に関する外務省筋の見解をきょうは公式的に明らかにしていただきたい。返還ができるかできないかとか、帰島させるつもりがあるかないかという大筋の議論は、先ごろの予算委員会等においてかなり議論が進められたように思うのでございますが、私は、もうそういう段階を飛び越えて、実際にその中の議論にいろいろな議論がありますが、軍事基地を持っている沖繩でさえ住民の居住を許しておるのに、小笠原に対して旧住民が戻れないのかというような質問や、あるいは小笠原は農業、漁業に関しては非常に伸展性は乏しいのではなくて、非常に豊かなところであって、そこへ帰りたいという島民の要望は当然ではないかというような議論、あるいは生まれた子供たちが、戸籍の点で非常に不明確な状態になっておって、日本の戸籍を持っておらない。またうわさによれば、米国籍を得るような陳情が行なわれたというようなこともあるし、そういう問題についてはどう考えるかというような問題、また返還に対しての見通しというものはどういうものであるか、こういうような問題については、もう公式的に御説明いただいてもよろしいのじゃないか、そういう段階に来ておるのじゃないか、こう思うのであります。したがって、この席において国民の前に明らかにしていただきたい、そうお願いする次第でございます。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 政府の基本的な方針というものは、しばしば申し上げましたように、小笠原、沖繩の施政権の全面返還、これが政府の基本的な方針でございます。このために努力をしたい。しかし、一方において沖繩の持っておる軍事的な安全保障上の役割り、一方においては一日も早く小笠原、沖繩を返してもらいたいという国民的願望、この間にはやはり距離があることは事実であります。距離がなければ、すぐに返してもらうことが実現することが好ましいわけでありますが、極東の情勢が客観的に見て安定しておる状態とは言えませんから、そういうふうな沖繩の持っておる役割りというものをわれわれ過小評価するわけにはいかないということで、全面的返還というものが直ちに困難であるならば、その過渡的な処置として、できるだけ全面返還に近づけるようなあらゆる努力をしていきたい。アメリカとの間にも、われわれは何かアメリカに対して力で押していくというようなことには考えてない。この問題の解決は、お互いに率直な協議を通じて日本の施政権の返還を求めたいという基本的な態度でありますから、今後予定されるあらゆる日米間の協議の場を通じて、できる限りのことを、すぐに全面返還が困難であることはこれは客観的に見ても事実でありますから、その過渡的な方法として可能な方法を、日米両国で今後検討を加えたい。その中の一つには小笠原の帰島の問題も含まれておるということでございます。
  72. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうしましたら、次にその見通しについてお伺いしたい。要するにこの問題については、もう戦後二十年間にわたって、長い長い間、島民の方々は、生活の困難な日本国内において、自殺者さえも多数出されている中において、この自分の国、郷土へ帰りたいという願いだけを唯一の希望として今日までがまんしてこられた。その長い長い間の苦労に対しては、国民全体が、戦災者に対する、あるいは引き揚げ者に対する、あるいはたくさんの傷病兵に対するそのような激励といいましょうか、それを保護しようという気持ち、そういったもの全部が、あげて同じように小笠原島民の人々に対しても注がれなければならない、こう存ずるのであります。したがいまして、この小笠原の返還問題に関する大臣見通し、またそういう気持ちについて伺いたいと思います。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 ごもっともなことで、大体いつごろどうなるかということを言えとおっしゃる気持ちはよくわかるのですけれども、これは非常にむずかしいことですね。たとえば、施政権の全面返還についても、このことが極東の情勢とも結びついておるわけでありますから、これが一体どういうように極東情勢がなっていくかということについては、われわれの希望的な観測もありますが、希望的な観測だけではいけない面もありますので、年限を切って、こういうふうに、何年が来たらこうなるということを申し上げることは非常に困難だと思います。自分の主観的なものだけでは言えないものがありますから。  それから、小笠原の帰島の問題についても、これは現在アメリカが平和条約三条によって施政権を行使しておるわけでありますから、アメリカとの間にこれは話をつけなければうまくいかないわけであります。この問題については、アメリカとも率直に話し合ってみたいということで、見通しについて、いつどうなるであろうということを申し上げることは、これは日本だけの希望的な観測でもいけませんから、相当もあるし、いろんな客観的な情勢もございますから、年限はどうだということを申し上げられませんが、とにかく全面返還というものが直ちに実現できないとするならば、その過渡期の可能な問題というものは、今後日米間で率直に話し合ってみたい。そうして一歩でも全面返還に近づけるような可能性を探求すると同時に、その実現をはかりたい、こう考えておるんだということを申し上げる以上に、どうなるだろうかということの見通しを申し上げることはなかなか困難であるということを御理解願いたいのでございます。
  74. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は今日までの、三木外務大臣になられてから以後はまた別でございますけれども、今日まで長い間、この小笠原の問題に関しては、財団法人小笠原協会等をはじめとするグループが懸命に処理されてこられたように思いました。その努力をまことに多とするものでありますが、もうそろそろ、日本外交上の重大問題として取り上げるべきときが来たのではないか。さらに進んで、この小笠原協会等の努力がさらに十分に反映しますように、これは財政的な処置も講ずべきではないであろうか、こう思うのであります。非常に単純な比較論で恐縮でありますが、われわれは、沖繩の人々に対しましては百三億円援助金を出しております。ところが、小笠原に対しては援助金というものは出ていないわけであります。また小笠原協会は、費用については、ちょっと伺ったのでありまして正確な数字ではないと思いますけれども、政府がこれに対して出した金額は七百万円であります。ところがこの金額というものは、人数割りにしても、何だかんだで小笠原に関係なさる方は一万人からおりますし、沖繩には同胞が百万人おります。百分の一としても——こんな勘定は成り立たないのですけれども、百分の一としても、沖繩に百億出せば小笠原には一億は出してもいいのではないか、これはしろうと論法で恐縮なのでありますが、私はもっと小笠原の人々に対するところのそういう取り組みが行なわれていいんじゃないか、こういうことを感ずるのであります。したがいまして、私は小笠原協会にだけでなくして、小笠原の返還の問題あるいは小笠原島民の保護の問題、あるいは小笠原の問題に関する対米交渉問題等につきましても、もっと積極的な姿勢、特に財政上の保護、財政上の配慮というものも要るのではないか、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 昭和三十六年でしたか、アメリカから六百万ドルの見舞金が出ておるわけでございますが、これは小笠原の人たちも、見舞金ということだけではなくして、早く帰島を実現したいということを強く考えておる人々が相当多いようでありますから、今後とも日米の間で話し合ってみたいと思うわけでございまして、いま小笠原問題についてわれわれがすることは、第一番に沖繩と一緒に施政権の返還、その過渡的な方法として帰島ができないかということで、いま財政的にどうこうということは考えてはいないのでございます。
  76. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、アメリカから六百万ドル出されたのは当然としましても、日本政府としてもこれに対して財政的な保護を加えるべきが当然ではないかと主張するものでございます。  それからもう一つ、私は率直に伺いますけれども、なぜ帰れないかという問題の際に、米海軍側で、大体日本が最初にかってに島民を疎開してしまったのではないか、そういうような主張をしていると報じられております。外務大臣はこういう考え方にはどうお思いでありましょうか。それは戦争中の疎開の際に引き揚げた者もいた。しかし占領後になってから米軍の命令によって帰らされたのもいた。ともに郷里というもの、国土というものは小笠原であるのは当然であって、この主張は当たらないと考えますけれども、外務大臣はどうお考えでございましょうか。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 小笠原の引き揚げ人たちが帰りたいと思っておることは、現在の段階で事実ですからね。いきさつはともかくも、帰りたいということを考えておることは事実でありますから、アメリカともこの問題については率直に話し合ってみたいと思っております。全般の小笠原、沖繩の施政権返還という大きな日本の根本方針の中で、小笠原の問題もいろいろと率直な話し合いをしてみたいと考えております。
  78. 渡部一郎

    ○渡部委員 この話し合いというのは、日米協議委員会等でお話し合いが進めば、帰島等についてはかなりの程度に解決されるのか、あるいは相当上のレベルで、外務大臣が米国の国務長官やあるいは大統領等と折衝なさらなければいけない問題なのか、ちょっとお伺いさせていただたきいと思います。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、日米間にはいろいろな話し合いの場がありますから、したがってこの小笠原問題については日米の閣僚の会議あるいは佐藤総理が訪米されたときにも、沖繩問題というものは話し合いの議題になり得ると私は思っております。その場合には沖繩というのでなしに、小笠原と沖繩とひっくるめての話になりますから、そういう機会には当然話し合うことになると思います。見通しを示せといっても、それは話し合ってみることによって、お互いに率直な話し合いをするということで理解を深めるということによって、将来どういうふうにするかということは、それから後の問題で、まだ話し合いもしない前に見通しというものを私がすぐ語るべきいま機会ではないと考えます。
  80. 渡部一郎

    ○渡部委員 あとは小笠原のところにおられました皆さん方が言われる意見、それを私は代弁する立場できょう申し上げますけれども、この島は離れ小島で、こんなところに帰るような人間はいそうにない、あるいは農漁業の点においては非常におくれた地域で、とても生活が困難であるとかいうような議論があり、だから帰さないのだとか、あるいは日本人がかってに帰ったのであって、それについてはアメリカは責任がないというような議論、むしろ向こうから、アメリカから言われている議論に対して、外務大臣はどうお考えになりますか。それについて島民の人々も関心を持って、外務大臣のものの考え方を知ろうとしておられますから、御説明いただきたい。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 私が尊重したいと思っておることは、いま帰りたいと思っておる人がたくさんにおるという現実であります。いろいろないきさつはともかくとして、帰りたいと思っておるたくさんの引き揚げ者がおるという現実は、いろいろ話をする場合の私の話の基礎になるということであります。
  82. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はこの問題に関して、外務当局が、小笠原の人々のこういう気持ちだけでなくて、戦後二十年間にわたって負った日本人の痛手というもの、こういう問題を放置されておくということが、日本とアメリカの広い意味における親善友好を阻害し、さらに日米友好感を傷つけるだけでなくて、世界の平和に対して非常にマイナスを与えるということをしみじみと感ずるわけであります。したがいまして、外務大臣になお一そうの御奮闘と御努力をお願いして、なるべく早く、一刻も早く、これらの人々に対するところの十分な吉報を伺えるように期待したいと思います。それは単に小笠原の人々だけの問題でなくて、日本国民の願いであるということをつけ加えまして、私の最後の意見といたします。
  83. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明後九日、午前十時より理事会理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十五分散会