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1967-05-24 第55回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 穗積 七郎君    理事 曽祢  益君       愛知 揆一君    青木 正久君       臼井 莊一君    大平 正芳君       川崎 秀二君    中山 榮一君       福家 俊一君    松田竹千代君       毛利 松平君    山口 敏夫君       戸叶 里子君    帆足  計君       渡部 一郎君    川上 貫一君       斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省欧亜局長 北原 秀雄君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     笛吹 亨三君         外務省アジア局         北東アジア課長 野田英二郎君         外務省アジア局         南東アジア課長 木内 昭胤君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月二十四日  委員宇都宮徳馬君辞任につき、その補欠として  川崎秀二君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月二十日  アジア生産性機構の特権及び免除に関する日本  国政府アジア生産性機構との間の協定締結  について承認を求めるの件(条約第一五号)(  予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の領事条約締結について承認を求めるの件  (条約第二号)  国際情勢に関する件(ヴィエトナム問題及び在  日朝鮮人帰国協定問題等)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  この際、政府より発言を求められておりますので、これを許します。藤崎条約局長
  3. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この前の外務委員会で、戸叶委員から、日ソ領事条約の第三十三条(g)の件につきまして御質疑がございましたのに対しまして、私どものほうからお答えいたしました点に不十分の点がございますので、この際、補足させていただきたいと存じます。  御質疑の第一点は、「査証及び旅券その他これに類する書類を発給し、修正し、更新し、有効にし、及び無効にすること。」という規定の、「有効にし、」という点は、日ソいずれのほうから提案したものであるかということでございましたが、これは日本側から提案したものでございまして、その趣旨は、日米日英の二領事条約と調子を合わせようということにあった次第でございます。  それから御質疑の第二点は、「有効にし、」という日本語に相当するロシヤ語がないではないかということでございましたが、この点につきましては、実は交渉の過程において問題になりまして、日本側から何か適当なロシア語を入れるようにということを主張したのでございますが、ソ連側ロシア語ヴォズオブノブリヤーチということばには更新するという意味のほかに有効にするということばに相当する意味もあるということでございました。結局日本語は「更新し、有効にし、」ロシア語のほうはこのヴォズオブノブリヤーチということばだけにするということで、両者の意見が一致した次第でございます。  交渉の経緯はいま申し上げたとおりでございますが、実は現行の日本旅券法には、更新するとか有効にするとかという制度があるわけでもございませんので、「有効にする」ということを特に入れる必要もなかったんじゃないかといえばそういうことも言えるわけでございます。  いずれにいたしましても、御不審の点はまことにごもっともと存じますが、将来旅券法が改正されて、更新するとかあるいは有効にするとかという制度が設けられないものでもないというような考慮から、このように処理いたした次第でございます。この点御了承くださるようにお願いいたしたいと存じます。
  4. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの問題で、私はいまの御説明では了承しかねます。しかし、これはお急ぎのようでございますから、それ以上のことは申し上げませんけれども、いま条約局長がおっしゃいましたように、日英日米領事条約に合わせようとしたところにやはり問題があったと思います。ソ連との交渉であるならばソ連語に忠実な形で、お互い正文なのですから、ソ連語正文日本語正文で、だれが読んでも間違いのないような形の条約をおつくりになるのが妥当じゃないか、こういうことを御忠告申し上げまして、私は不服ながら了承をいたします。
  5. 福田篤泰

    福田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  6. 福田篤泰

    福田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  9. 福田篤泰

    福田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  10. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、きょうはベトナムの問題と核拡散防止条約の二つの問題にしぼりまして、三木外務大臣にお伺いをしたいと存じます。  外務大臣になられましてから私初めてでございますが、さきごろの委員会で、自民党の鯨岡委員に対しての御答弁の中で、たしかアジアにおける平和を望むというような外交方針のことをおっしゃったと思います。私ども三木外務大臣に期待するものは、やはりアジアにおける平和外交をぜひやっていただきたい、こういうことを望むわけでございますけれども、実際問題といたしましてそういうお考えをお持ちになっておりながら、一方においてはベトナムのきびしい戦争が行なわれているわけでございまして、こういう点をいまの三木外務大臣が平和を望むというお立場からベトナムの問題をお考えになったときに、その和平に対する見通しあるいはどういう意欲なり抱負を持ってこの問題に取り組もうとされているか、この点をまずお伺いをしたいと思います。
  11. 三木武夫

    三木国務大臣 アジア平和外交と申しますか、これにはベトナム問題ばかりでなしに、各国への日本経済協力ども平和外交の一環であるわけであります。私は、大体アジアにおける平和が維持できない根底の中には、アジアの貧困、停滞というものが底にある、そういう点でアジアに対する経済協力も強化していきたいという論者でございます。  一方、ベトナムにおいては、これは戸叶さん御承知のように、この問題の解決については各国ともほとんど無関心な国はないくらい、一日も早くベトナム紛争平和的解決を望んでいるわけであります。しかし、なかなか解決の手がかりはない。結局それならばどういう解決があるかといえば、一九五四年のジュネーブ協定精神といいますか、十七度線というものを一応の境界線として、北は共産、南は非共産、こういうことで一応の休戦をして、あの戦争のエネルギーを平和建設のために使うよりほかないのではないか。いかにハノイ政権といえども、今日の段階では南ベトナム共産化するということはできません。また南からもハノイ政権を転覆さすということは許されません。そうなってくると、解決の最終的な形というものは、幾ら戦争がもっと続いても、大体そういう線で解決するよりほかにないのではないか。そうなってくれば、これはアメリカに対しても、ハノイに対しても、何か説く余地があるのではないか。戦争を継続するということによって状態が根本的に違うということではない、幾らやってみても、そこでベトナム戦争を片づける以外に現在のところ方法がないのですから。そういうことでわれわれはアメリカに対しても常にベトナム平和的解決を——軍事的には解決はできない、平和的解決アメリカにも常に、いろいろな機会がございますから、これに強く要請するとともに、何とかハノイに対しても、日本というものは直接の外交ルートはなくても、第三国があるわけですから、そういうものを通じて何とかハノイなどに対しても早く戦争を終わらすということに対して説得できないかということで、限られた日本外交ルートと申しますか、その中でできるだけの努力をしてきたわけでありますが、今後もやはり続けていきたい。こういうことがベトナム紛争に対する基本的な考え方でございます。
  12. 戸叶里子

    戸叶委員 アジア平和外交を唱える場合に、経済問題その他の平和の問題があることは私も了承いたしております。しかし、目下の非常に重要な問題として私どもが非常に危惧をいたしております問題は、何といってもベトナムの問題だと思います。そこで私はベトナムの問題を中心に伺ったわけでございますが、いま述べられたような構想に対して私もいろいろと質問をしてまいりたいと思います。  最初にまずお伺いしたいことは、来月にはウ・タント事務総長がたしか日本に来られることになっております。ウ・タント事務総長は、国連におきましても、ベトナムの問題に対しては相当苦しんでおられますし、またアジア人でございますし、いろいろな面でよくわかると思います。この問題の解決策についても、日本外務大臣が積極的に何らかの提案なり何なりをして、平和の方向へ一歩前進をさせていかなければならない。またそうさせるべき重要なときではないかと思いますが、それに対して何らかの御提案なりお考えなりをお持ちでいらっしゃるかどうかを伺いたいと思います。
  13. 三木武夫

    三木国務大臣 ウ・タント国連事務総長日本へ来て、ベトナム平和的解決についていろいろ話し合う機会があることは私も非常に期待をいたしておるわけであります。ことに、ウ・タント氏が平和的解決に絶えざる非常な努力を払っているということに対しては敬意を表しておりますし、私も面識のあるウ・タント事務総長でございますから、相当突っ込んで話をしてみたい、こう考えておるわけであります。結局私は、ハノイというものに対してどのようにして早く戦争を終らすかということに対して、むろんアメリカにもでありますが、一方においてはハノイに対して、どのようにしてハノイ政府をそういう気持ちにするかという問題は相当大きな問題だと思うのです。そういう点で、最後解決は、私はジュネーブ協定精神に返るよりほかにないと思うのです。ジュネーブ協定そのものじゃありませんよ、事情が違っているから。やはりあの精神による以外にいまの解決はないと私は思う。そうなってくると、最後解決をする基本的な線といいますか、そういうものは、一応形がばく然としてあるわけです。だから、最初ウ・タント事務総長が言ったように、現状のままで撃ち方やめと、これは最初提案ですね。これはそういうことが実行できれば、一つの非常に実現の可能性のある案だと私は思います。現在は、両方が何とか自分のペースでなければ解決しないという立場でしょう。だから一〇〇%北側に立って問題を解決しようとしたってだめだ。一〇〇%南の側に立ってこれを解決して——一〇〇%自分の言うことが聞かれなければ解決せぬというのではだめだ。やはり両方の譲歩が必要だと思います。その線というものは、結局ウ・タント事務総長最初提案したように、現状においてみな撃ち方をやめる、とにかく停戦矛やる、それから話し合いに入れという案は、現状一つ打開策としては、どちらも傷つけないですから、これが実現すれば非常に好ましいと私は考えて、日本政府もこの案に対しては支持するという考え方を表明したわけであります。その後ウ・タント事務総長考え方にも変化があるようですが、日本に参りますならば、ベトナム平和的解決についてウ・タント事務総長ともとっくりと話し合いたいと考えておる次第でございます。
  14. 戸叶里子

    戸叶委員 いま外務大臣ウ・タント事務総長との話も、腹を割って突っ込んでお話し合いになるということでございまして、いらしてみなければ、どういう点でどういうふうな解決策を持つかわからないというようなことでございましたが、その点はやはりいろいろな情勢判断をして、もっと積極的に日本としてもこうあるべきではないかという案を出して臨んでいただきたいということが一つでございます。  さらに、外務大臣が先ほど、アメリカに対しても平和的解決要望している、機会あるごとに要望をしている、これからも要望をする、こういうことをおっしゃってはおられますけれども、私どもがたいへんに危惧いたしますのは、やはり何といっても日本日米安保条約のもとにあるわけでございます。そういう中にあってどうしてもアメリカに言うべきことが言えないような形になっているのではないか。アメリカ戦争行動というものを実質的には支持するような、また結果的にはそういうふうな形になっている点を見ましても、やはり日本としては弱い面があるのじゃないか。このベトナムの問題は、私ども日本人の茶の間の問題として今日考えられているときでございますので、日本政府アメリカにもっと強いととを、たとえば侵略をやめなさい、兵隊を退けたさいというようなことを言うべきときが来ているのじゃないかというふうなことを私ども考えるわけです。たとえば、きのう釈迦の誕生日で、ちょうど休戦状態に入ったというので、何かこのきっかけに、さらにこのままの形がとれないものかということを期待した人は非常に多かったと思います。しかしその夢も破られたり、あるいは非武装地帯にどんどんアメリカが入っていったり、軍事的な行動をエスカレートしているということに対して、何か日本政府がもっとそれをとめられるようなことが言えないのかしらということを非常に歯がゆく思うわけでございます。こういう点はやはり日米安保条約によって縛られているというような面から、どうしても強くなれないのじゃないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、申し上げておきたいのは、日米安保条約があるから、日本アメリカに対して遠慮をして、言いたいことも言わないのではないかという、そういうことはありません。きわめて率直にわれわれもアメリカに対してものを申しておるわけで、そのことによって言いたいことを言わないというふうなことは、これは戸叶さん、絶対にないのです。率直にものを言っているわけです。  ただしかし、戸叶さんのいまのお話にあったように、なぜアメリカ侵略をとめないのか、こういいますと、御承知のようにICC国境監視団ですか、ああいうものの報告書の中にも、北からやはり浸透しているという報告が出ておるのです。だから、ハノイの側に立って考えれば、アメリカ侵略しておるじゃないかというが、またこれをICCというような第三者的な機関においては北からの浸透も認めておる。そうなってくると、一方的にアメリカ侵略しておるという立場に立って、そしてアメリカにいろいろものを申すということは、われわれの立場として、一方的なものではない、やはり両方とも、北からも、第三者のそういう調査団報告書にも出ておるのですから、そういうことで、これはやはり両方の問題である、一方的な問題ではないという立場に立たなければ、一方的な立場に立って、ハノイの側に立って、アメリカはけしからぬ、けしからぬ、こういうことだけでベトナム戦争解決できるとは思わないのです。だからそういう立場を、戸叶さんがアメリカ遠慮してとおっしゃるのかもしれないが、遠慮してないのです。公正に、この紛争の事態を客観的に見れば、そういう立場でものを考えなければ解決はできないのではないか。客観情勢ハノイ側に立って見て、そういう角度からアメリカにものを言うことが日本の自主的な外交の態度だとは私は思っていない。もっと冷厳に客観的な事実を見きわめて、その上に立ってものを言わなければ、平和的解決の話は見出されるものではない。そこで、いろいろ御心配になるような御発言でありますが、アメリカに対して言うべきことは、日米安保条約によって言わないという遠慮はいたしておりません。このことだけは国民にも明らかにしておく必要があるので、ここに申し上げる次第でございます。
  16. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、それではお伺いいたしますが、ベトナムへのアメリカ戦争規模をエスカレートしているという点、それから非武装地帯爆撃、これはだれが見ても少しひどいのではないかと思いますけれども、これはアメリカとしてはしかたがないのだ、こういう見方を日本外務大臣としてなさいますか。それとも、やはりそれはひど過ぎるのじゃないかというふうにお考えになりますか。この点をはっきりさしていただきたいと思います。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 非武装地帯への爆撃はしてはいけないと私は思っています。軍事施設に限るべきである。それからいろいろ戦術上の必要があってもハノイ政府の領域に地上兵力を入れるようなことはするべきではない、こう考えておるわけでございます。
  18. 戸叶里子

    戸叶委員 いまもお話がありましたように、兵隊お互いに退けておくようにというようなことをおっしゃいましたが、先ごろの新聞によりますと、この問題と同じような点を発表されまして、その中にその実施のため日本休戦監視団に参加すべきだと政府考え方を言われておりますけれども、この休戦監視団というような構想は、どういうものをお持ちになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 一体これが平和解決がなったときに、南ベトナム北ハノイとの間の平和を維持するために何らかの機関が要るのではないか。両方話し合いがついて、停戦休戦となったときに、それに対する国際的なこれを監視するような機関が要るのではないかという考え方は、われわれとしてもそういう場合もあり得ると考えられるのでございますが、これに対して日本がどうするというところまで問題はいっていないので、まだベトナム停戦休戦も実現してないときでありますから、そういうふうな場合もあり得るということは考えますけれども、これを日本と結びつけて考え段階にまではいっていないのでございます。
  20. 戸叶里子

    戸叶委員 私ども新聞でそういう点を拝見いたしましたので、外務大臣としてどんなものをどういう構想でお考えになって、こういう発表をされたかということを伺ってみたかったわけでございます。  いずれにいたしましても、やはり機会あるごとにアメリカ和平を望むというようなやり方だけでは、このベトナムの問題というものも解決はむずかしいんじゃないかと思うのです。ことに南ベトナムにおいても反戦、平和というような機運も盛り上がってきておりますし、僧侶の最高指導者ども、やはりこのまま続けていったならば残虐をきわめるばかりだというような空気にもなってきておりますし、この機会にやはりある程度日本なりなんなりがイニシアチブをとって各国に呼びかけて、そしてこのベトナムを平和の方向に持っていくような努力をされるべき一番適当な国であり、適当な時期ではないかということを私は考えるわけでございますし、日本国民もああまたベトナム、がやられた、ああベトナムにこんな戦争が続いているというような形で今日まゆをひそめながら新聞を見ている状態でございますので、やはり日本外務大臣としても、積極的にもう少し、アメリカに対しても、いまおっしゃったように非武装地帯爆撃することは非常に残念であるというようなことから始まって、もう少し何らかの話し合いをして、そしてベトナム平和の確立のための努力をしていただきたい、こういうことを私は念願をいたします。ぜひ、それはやっていただきたいと思います。  そこで、この間の新聞報道で、アメリカの国務省がこういうことまで言っているわけです。このベトナム境界線付近で激戦がありましたときに、現況では核兵器を使用するものではない、こういうふうなことを言われて、ある時期にはまた核兵器を使用しないとも限らないというような含みを残した声明を出しているわけでございます。私はこれを見ましたときに非常に残念に思いましたのは、いま米ソ中心になって核拡散防止条約というようなものを提案して、そしていろんな国に打診を行なっておりながら、一方においては核兵器を場合によっては使うようなときもあるぞというようなことを発表されるのでは、この核拡散防止条約の意義なんかないんじゃないか。やはりこういう核兵器というものは使わないんだ、使用を禁止するんだというところまで進んでいかなければならないんじゃないかということを痛切に感じさせられましたが、この点についてのお考えはいかがでございましょうか。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカはああいう自由な国ですから、いろいろな発言はあると思います。しかし、私はアメリカのワシントンの政府の冷静さと良識というものは深く信じておるものでありまして、核兵器を使うなどということは断じてあり得ないことだと考えておりますし、われわれとしても断じて核兵器ベトナム戦争に使うぺからずと申し上げておきたいのでございます。
  22. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカ良識とかいうことをたいへんお信じになっていらっしゃるようですけれども、いままで幾つかその良識良識でないような場合がいろいろあったわけでございまして、私は三木外務大臣のおことばをそのままいただくわけにはいかないと思います。絶対にやらないと思います、絶対に原潜は来ないと思います、などと言っていながら、私どもはずいぶんだまされた場合がありますので、そのおことばどおりにはいただけないと思います。  そこで、少し核拡散防止条約の内容について触れてみたいと思うのです。いろいろとソ連あるいはアメリカ等でこの核拡散防止条約は持っている国の横暴と独占ということにはならない、こういうことを言われますけれども、どうも私どもは横暴と独占ということに結果としてなるのじゃないか、こういうことを感じさせられます。いまのような場合もそうだと思います。いつかは核を使うぞといって、核兵器を持っているものの威力といいますか、そういうふうな優位性を示しながらおどしをかけていく、こういう意味で非常に危険ではないかということを感ずるのです。もしこの条約をつくるならば、もっと徹底的に核兵器をなくすというところまでいかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。ですから、この条約の中で問題になることは、核を持たない国は、核兵器核爆発の装置を製造しないし、またその製造について援助を受けない、こういうふうになるわけでございますね。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、この条約は、持っておる国はよその国に核兵器を渡したりあるいはつくることを援助したりすることはでき得ない、こういう持っておる国の義務が課されており、持っておらない国は、ですからつくってはいかぬ、よそから譲り受けてはいかぬ、つくることに援助を受けてはいかぬ、これがこの条約の基本になっておるものでございます。
  24. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから結局核を持たない国は、核兵器核爆発装置の製造を禁止するということで、核保有国を現在の五大国に限定して、その他の国は保有をさせないという、こういう条約になるわけでございますね。そういうふうになるから、私どもは、いろいろな面で、この非核保有国が言わなければならない問題として、もしそういうふうな条約であるならば、その条約が、実際に核兵器が使われないようにするような条約内容にしてほしい、そしてまた全面軍縮のほうに持っていってほしい、こういう希望を強く持つわけでございます。  そこでさらに問題になるのは、現在の核保有国が、核兵器を世界のどこの国に配備しようと、貯蔵しようと、これは自由である、こういうふうに考えてもいいのでございましょうか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 この点は、安全保障問題については、各国ともこれはもう政治が第一義的に考える問題であります。だから各国によって安全保障政策が違うわけであります。したがって、この核拡散防止条約によって各国の安全保障体制に根本的な変動をもたらそうということでは、この条約は成立をしないわけですね。そこで、たとえばNATOならNATO諸国というものは、やはり核による防衛ということを欧州の安全保障のために必要だと考えて、核の持ち込みをやっておるわけですが、これは別の問題として、この問題に対処しなければ、核拡散防止条約の中で、各国がみなそれぞれの国の安全のために持っておる安全保障政策に変更を加えるということは、条約の本来の性質からいって私はできないと思います。したがって、これは各国の将来はまた変わってくるでしょう。将来はまたいろいろ国連というものが強化されたりすると、そういう今日の防衛体制に対する変化は、私はあり得ると思います。しかし現在の時点においては、各国が安全保障に対していろいろ独自な考え方を持つこととはやむを得ない。共産圏は共産圏でワルシャワ条約を持っておるし、西欧諸国はNATOを持ち、日本日本の方式を持って、みな各国の安全保障政策というものは、今日の情勢においては各国の政策にたよらざるを得ないものと、こう考えております。
  26. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、いまのようなお話を伺っておりまして、いろいろせんじ詰めて考えてまいりますと、核拡散防止条約というようなことばは、何かしらそぐわないような気がするわけです。むしろ核の保有国がふえるのを禁止するんだ、そういう条約であるというふうにしか私ども考えられませんけれども、そういうふうに理解をしてもよろしゅうございましょうか。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 一つには、核兵器が拡散するのを防ぐと同時に、一方においては強い非核保有国の一致した要請として、保有国の軍縮に対する要請というものが非常に強くなっておるわけですね。だから、どういう形でこの核散防止条約の中に取り入れられるかは、まだこれは今後の問題にはなりますけれども、何らかの形において、この核拡散防止条約の中に核軍縮に関する規定が挿入されることは間違いない、形は別ですよ。そうなってくると、一方においては、核保有国に対しても、一ぺんにはいかぬでしょうが、段階的には核兵器を減らしていく、競争をやめ、それを減らしていく。やがては全廃というところを目標にするわけですが、こういう一つの、第一歩たり得るものはないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  28. 戸叶里子

    戸叶委員 やはり私が申し上げましたように、核保有国をふやすことを防止する、増加防止条約というほうが核拡散防止条約というよりも適当である、こういうふうに考えられるわけでございますが、大体内容から見ればそうであるというふうに考えてよろしゅうございますか。  そこでこの日本の場合でございますが、下田発言以来、日本アメリカの核のかさの下に守られている、それは日米安保条約を結んでいるからでございますが、そういう意味日本は安全であるというようなことをたびたび言われるわけでございますが、これは一面から申しますと、日本は、安全保障の対象として、アメリカの核のかさの下に守られているからだいじょうぶであるという、そういうふうなことばが、いつの間にかそれがアメリカ日本との間の従属関係になる可能性があるのではないか、こういうことをたいへんに私どもは心配をいたします。アメリカの核かさの下にあるから日本は安全である、そういうことがだんだん、だんだん行きますと、ついにはアメリカのほうから、たとえばアジアの平和を守るためには、日本に核を持ってこなければ、とてもこれは安全ではないんだというようなことを言われました場合に、断わり切れないような場面が出てくるのではないか、こういうことを非常に心配するものでございます。こういうおそれはないでしょうか。ないでしょうかと言えば、外務大臣は、ありません、そんなことは危惧ですとおっしゃると思いますけれども、私は真剣にそういうことを考えているわけです。この点についてはどうお考えになりますか。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 核のかさということばが一般に使われている。何かかさというと、日本アメリカだけがかさの中に入っているような感じを一般に与えますが、このかさはそういうものではない。日本アメリカとがこの核のかさの中に入っておるのでなくして、今日の自由世界の防衛というものは、アメリカの核の抑止力の上に私はあると思う、現実には。だから、このかさといえば世界全体のかさです。日本だけがこのかさの中に入っているのではない。ヨーロッパでもそうです。アメリカのいわゆる核戦力というものを度外視してNATOというものは成立するものではない。これは自由世界全体におおいかぶさっておる核抑止力で、戸叶さんが日本アメリカとがかさをさしておるように考えることは、現実には違うんじゃないでしょうか。世界全体である。欧州もそうである。そのことによって援護をせんければならぬというふうな、今日見えておるような西欧とアメリカとの間の関係というものは、西欧の自主性というものが非常に高まっておるときですから、そういう論からいえばそういうことは起こり得ないので、それをあまり日本だけのかさという意味でかさと言うと、何か私は——これは使いなれたことばですから、これを使うことがよくないことは言いませんが、日本だけがさしているかさではない。自由世界全体の防衛のためにアメリカの核抑止力の中にある。それは西欧も例外ではない。そのことが日米外交に影響をもたらすものではない、こう私は考えておるものでございます。
  30. 戸叶里子

    戸叶委員 非核保有国の安全保障という問題でいま議論されているのが二つあると思います。たとえば、日米安保条約のようなものを結んでいる国、それから集団安全保障条約を結んでいる国、いろいろあると思います。ワルシャワ条約のもとにある国、こういうものがあるわけで、いまの御説明のような点は、そのことを申し上げれば、私もわかっているつもりだと思います。ただ日本のわれわれといたしまして危惧し心配をいたしますのは、いままで日本日米関係で、しかも日米安保条約という中でアメリカのこういう、かさということばはいやかもしれませんが、そういうものの下にあるという、その点から日本はそれで安全なんだ、安全なんだ、核拡散防止条約の中で問題になる点はあるけれども、非核保有国でも、非同盟国でないんだからだいじょうぶなんだというようなことばの中に、だんだん従属関係が結ばれていくんじゃないかという心配と、もう一つは、やはりアメリカのそういう体制のもとにあるという、そういう理由で日米安保条約が実質的に長期に固定化するようなおそれが出てくるのではないか、こういうふうな点を私どもは非常に危惧をするわけでございますが、いや、そんなことは別に関係ないんだ、全然関係ないんだというふうなお考えであれば、またそれは別だと思いますが、私どもは関係ないとは考えられないわけですが、この点も一ぺん考えてみていただきたいと思います。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、現在アメリカの核抑止力の中に世界平和が保たれている一面、これは否定できない、そのことで遠慮する必要はないと思っているのです。たとえば中共が核爆発実験をやって、あまり日本に動揺はないですからね。それはやはり何となしに、アメリカの持っておる核抑止力というものが相当にきいている。これを過小に評価すべきではない。中共が核兵器を持ったら、日本もこれに対して持たんならぬというような、そういう衝動的な、日本核兵器持つべしという意見は起こってこないですから、そういうことで、やはり現在持っておる現実の世界情勢というものに対するわれわれの判断というものは持たなければならぬ、こう考えておるわけです。したがって、そのことが安保条約と関連して、安保条約を固定化していくんではないかというお話ですけれども、御承知のように、これは一九七〇年以後どういうふうになりますか、自民党でも検討しておりますが、あのいまの条約について、私は条約論をやりたい。政策論はいろいろ自民党、政府でもこれから検討しなければならぬが、条約からいけば、一年の予告で安保条約は効力を失うことの通告ができるのですから、何も必要がないなら、だれも固定化するという考えは自民党でも持ちません。日本の安全ということが一番なのですから、日本の安全のために必要かどうかという判断であって、それは長くかかる場合もあろうし、あるいはほかの国際連合などでもっと安全保障措置に対して有効な措置が考えられれば、案外そういう地域的な集団安全保障条約というものはそういうものにかわるかもしれないが、いまは現実にないのです。だからこれがずうっと永久のものだとは私は思いません。しかし、日本の安全を守るということに対して、政府は何よりも国民に対して責任を持っています。だから、あまり歯の浮くようなことは言えない。やはり冷厳な安全保障に対する政府考え方は常に持たなければならぬ。日米安保条約というものが日本の安全保障のために必要ならば、長期になってもこれはやむを得ない、というよりかは長期を必要とする。国民がその必要がなくなったと思えば、安保条約はやめればいいと思う。初めからこれは永久のものだときめてかかるのではなくして、日本の安全を中心として判断を国民、がすべきである。初めから固定化とかなんとかというように考える必要はないのではないか、こう思っております。
  32. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの御答弁の中でも私はいろいろ申し上げたいことがありますが、時間の制約もありますから、これ以上申しません。  さらに、科学者などが心配しておりますことは、平和利用ということが認められるならば、この核拡散防止条約に加盟してもいいというような面で、核の活動というものをやはり国際査察にゆだねることになると思いますが、そういうことで日本の原子力開発の技術を外国人に知られるというふうな危険が生ずるのではないか。技術上の秘密の流出とか核保有国との間の技術開発上の不平等とか、こういうようないろいろな問題が出てくるのではないかというような危惧をする科学者もおりますが、こういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 この点は私としても一番この条約について重要視する点であります。日本の場合は、原子科学も相当発達してきておりますし、原子力産業なども、ことに原子力発電というものの依存度は非常に高まってきますから、日本自身も、研究体制というものを進めていく上において、こういう条約に入ることによって日本の研究、開発を阻害されてはいけないということで、これはこの条約の中で念には念を入れたいと私は思っております。だから、たとえば、そのことによって、核爆発実験を日本はやらないのですから、こんな平和と軍事との区別もつかぬときに平和の目的だということでやる意思はないのですから——保有国はまだ地下爆発では実験もできるわけですから、そういうことによって、この原子科学の上に、平和利用の面においても非常に便利な点が研究の上においてもあるかもしれませんね。そういう情報の交換というものはこれは絶対にしてもらわなければ困る。そして、このことが核兵器の拡散を防止するという条約の名のもとに核の平和利用というものの道をふさぐことであってはこの条約は本末転倒ですから、今後核拡散防止条約について、いろいろとこれから米ソの話をつけ、十八ヵ国軍縮委員会においても討議されるのでしょうから、まだ開かれぬですけれども、田中大使をすぐ送りたい、そしてこの平和利用に対して不平等な取り扱いを非核保有国が受けないような最善の努力を払いたいと考えておる次第でございます。
  34. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、これまで核拡散防止条約がいろいろな形から討議されまして、そして出された意見というものは、たとえば何らかの形で全面軍縮をこの条約の中に織り込むということ、平和利用に核爆発を禁止することは当を得ないということ、それから核兵器による攻撃威嚇の放棄、持ち込みに対する危惧、それからまたいまの査察に対するいろいろな注意、こういうようなものがいままであげられてきたわけでございますが、こういうものを織り込んでもらって、そうして日本の意見をある程度通して、その条約がことしのうちに国会に出せるというようなお見通しをお持ちでございますか、どんなふうにお考えになっていらっしゃるかを伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、見通しを言えということは非常にむずかしいのです。これは米ソ間においてもまだ話がつかなくて、それで草案が出ないわけですから。それで、米ソ間で話がまとまっても、十八ヵ国軍縮委員会においてはいろいろな意見が出るに違いない。だからいつ一体この条約がいよいよ十八ヵ国軍縮委員会で最終約に決定になるかということは、やはりなかなか見通しは困難でございます。しかし、核兵器は、戸叶さんの言われるように、われわれが考えても五つの国はそのままにしておくのですから、五ヵ国の持っておる優位性というものはやはり維持されるわけですからね。いろいろ申したいこともあるのですが、しかし、そんならそれがいやだからといって、第六、第七の核兵器を持つ国が次々にふえる事態も困る、こういうことで、やはりある場合が来たならば、政治が決断を下さなければならぬ時期が来る。この趣旨には、私はそのねらっておる精神には賛成である、その立場に立ちながら、しかしそのことが平和利用なんかを犠牲にするようなことであっては、それは条約というものが本末転倒でありますから、これに対しては努力を払っていきますが、できればこういう条約というものが早期に話し合いがつくことが好ましいと私は思っております。しかし、見通しについては、現在のところは申し上げられないのでございます。
  36. 福田篤泰

    福田委員長 穗積七郎君。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 実はきょう私質問の予定ではなかったのですけれども、例の朝鮮の帰国協定問題が、打ち切り声明以後、対朝鮮との関係においても、国内におきましても緊急な事態に差し迫ってまいりましたので、この問題に限って簡潔に御質問をいたします。この前帆足委員からこの問題に対しての質問がありましたが、きょうは私は重複しないように補足的な点についてお尋ねをいたすのでありますから、率直に簡明にお答えをいただきたいのであります。  まず第一にお尋ねいたしますが、昨年の八月、政府は閣議申し合わせと称しまして、一年に限って延長をする、それ以後は延長をしない方針だということを、閣議の正式な決定であるか申し合わせでありますか、軽い申し合わせのようでありましたが、そういうふうに決定された。そのときに、国会の中におきましても、国会外におきましても、政府当局と折衝をいたしましたときに、現状より悪くならない代案を必ずそれまでにつくる、所管は実は内閣官房長官で調整をして、外務、法務並びに厚生の間で相談をしてその代案を示します、それなくして無条件で打ち切るということはいたしませんと言ったにかかわらず、四月二十一日にこれを無条件打ち切りを閣議で決定された。これは公約違反でありますが、どういうわけでこういうことをなさったか、どういうわけで代案が出せなかったのか、その点を最初にお尋ねいたします。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 実際問題として、穂積さん、こう考えているのですよ。政府は決定はしましたからね。八月まで時間もあるでしょう。帰りたいというのは、これは人間の願望としてたいへんなものですから、みなですすめて、帰りたい人に、ひとつそういう便宜があるのだから、早く帰るようにというおすすめを願って、できるだけ帰りたい人をこの機会に処理したい。いま政府は、八月までで打ち切って、十一月に送るということになっているわけですね。期間があるのですからね。いまここでどうするのだ、こうするのだということを、政府がここで閣議の決定をどうせよということは、実際問題としてできませんからね。穂積さんもみな一緒になって、帰りたい人はひとつ早く帰ってもらう。そういうことで、その自後、そういう事態に立っていろいろ考えろということならわかりますよ。しかし、いままだ進行中で、八月というときまで、いろいろこういうことの便宜がありますよということを宣伝して、できるだけ早くそういう人たちが帰れるようにはかろうとしておるのですから、このさなかでまたいろんなことを言うことは、かえって目約の達成を阻害するんじゃないでしょうか。だから穂積さんもみな一緒になって、こういう便宜があるから、帰りたい人は帰ろうじゃないかといって、できるだけ帰りたい人を処理して、そして処理したあとにおいて、その事態というものをどうするかということに対して考えろということならば、いろいろわれわれとしても政治としてこれを考えることは必要でしょうからね。しかし、いまのところ、ここであなたとの質疑応答で、いろいろ政府の従来の方針を変更するようなことは私は申し上げるわけにはいかない。だから、できるだけみな誘って、すぐ帰りたい人は帰るようにお骨折りを願いたいと思うのでございます。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 私は、いま何も、四月二十一日の閣議決定を取り消すのか取り消さぬかということをまだ聞いているのじゃないですよ。それを決定するときに、昨年来の約束の問題が討議されたに違いない。大臣はかわっております。官房長官も変わっておる。しかしながら、佐藤内閣、保守党内閣、自民党内閣というものは継続的な責任を継承しておるわけですから、したがって、そのことを聞いているのです。あとの取り扱いについての政治的な話を何も私は問題にしているわけじゃないのだ。閣議決定を取り消すか、取り消さぬかということを、私はいま質問しているのではないのです。打ち切りを決定されるときに、その問題を討議されたと思うのですが、それについて、どういうわけで事前にこれをお示しになるという約束を実行されなかったか、こういうことを聞いているのです。どういう事情ですかということを聞いているのですから、問題をはぐらかさないでお答えをいただきたいのです。
  40. 田川誠一

    ○田川政府委員 私も当時のことはよく存じておりませんけれども、去年の十一月に、あと一年きりでもう延長しないのだということを取り決めた際に、協定が打ち切りになったあとの善後措置というものを何か考えなければいかぬだろうということが話されたということを伺っております。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことで、前か後かは確約がなかったということであるから、ひとまず打ち切りを決定した。それで、打ち切った場合に生ずる条件というのは、つまり帰国の目的に対して政府で支持、協力するという原則は認めて、方法をいまの協定によってやるか、他に変わった方法によってやるかは当然考えるのだ、こういう意味でしょうか。すなわち、事前ということをわれわれは理解しておった。そういう約束であった。ところが、それはまだ余裕があるから事後でもいいではないかという、そういう意味でございますね、大臣。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 これは二つに分けて考えなければならぬのです。一つは、協定のワクの中でやれることはできるだけ協定のワクに沿うてやる。そのあとのことは、これはやはり帰りたいという人にいろいろ便宜を考えるべきだと思いますよ。帰りたい人があって、それがいろいろの事情で限られたときに、必ずしも帰り得ない人もあるでしょうから、そういう者に対しては、そういう協定の有効期限が切れたときには、あとの措置というものに対してはいろいろ考える必要があろうと私は思います。それだから、それは切り離して考えないと、いまは帰りたい人は大いに帰るようにとすすめている段階ですから、それをやはりみんなでできるだけ勧誘していただく。その有効期限が切れた後のことは、できるだけの便宜というものを政府がいろいろ考えることは私は必要だと思っております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 それでは重ねて確認いたしておきますが、打ち切りを決定する場合には、無条件では打ち切りを決定しない、それが失効した場合のあとの、事後処理について、現在より悪くならない代案というものを必ず考えるのだ、そういういわば条件つきの打ち切りであったということは確認されているわけですね。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、協定は打ち切りますよ。協定による北鮮への帰還は打ち切るけれども、その後の措置についてはいろいろな便宜をはかる必要がありますから、それは方法論を考えましょう。それが、あなたの言われるように悪くならぬという価値評価が入ってきますと、これはいろいろ見解の相違があって、悪くならぬという価値評価的なことは、これは見る人によって、悪くなって約束が違うと言ったら困りますから、いまここで申し上げられることは、協定はもうこれで打ち切り、協定後の帰還希望者に対する措置は、できるだけの便宜をはかるように、政府としては十分考慮いたしましょう。これをお答えいたします。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 つまり、打ち切りは条件つきであることなんですね。そういう意味ですね。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 ちょっと待ってください。条件つきといいますと、これもまた誤解を生ずるので……。協定は打ち切る、その後は、北鮮に帰りたいという人に対して、政府がどういう便利な方法があるかとして研究することは、条件ではなくして、当然の責任だ。帰りたい人を、できるだけ便宜な方法で、どういう方法があるかということをいろいろ検討することは、これは政府としてすべきことだと思いますので、協定打ち切りの条件ではなくして、やはりそういうことを考えることが政府として必要なので、政府の、便宜を与えるという政治の当然の任務としてやるということで、条件つきというとまたいろいろな誤解を生じますから、政治当然の任務といたしまして、協定が打ち切られた後においては、できる限りの便宜をはかるような努力をいたします、こういうことにお答えをいたしておきます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっとつまらないところでひっかかるのは好ましくないのですけれども、それを条件というのですよ。無条件の打ち切りではない。帰国事業は協定によるだけではない。それ以外の非常に有効な方法もあるということで、現協定を打ち切る場合には、この帰国事業がそこで断絶をしないためには、それにかわる適当な有効な方法を必ず考えます、そして、実は、去年の約束は事が重大であるから、打ち切りを決定する場合には、事前にそのかわりの案なるものを皆さんにも示して御意見をよく伺った上でやります、こういう約束になっているのです。約束違反ですよ。
  48. 田川誠一

    ○田川政府委員 いま穂積先生のおっしゃられた事前に話し合うということは、協定の期限が十一月十二日に切れるわけでありまして、それまでの問が事前になるわけでございます。今後そういうようなことが検討されることもあり得るわけでありまして、現在はまだ検討しておりませんけれども、十一月十二日までが事前であるというふうにわれわれは解釈しております。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。それならそれでよろしい。実は約束はそうじゃなかりたのです。打ち切りを決定する場合に、特にこれは協定ですから、相手があるわけです。相手に対して打ち切りの意思表示をする前に必ず皆さん——皆さんの中には、実はそのときに国会の中においてわれわれ議員あるいはその他のものとしては関係の日本の諸団体、あるいは向こう側としては朝鮮の総連の代表、これらのものに事ごとにそのことを約束したのです。だから新しい大臣、政務次官あるいは官房長官は、それを失効の時期までにその代案を考えればいいんだという考えであるならいいが、私どもは実はその安心がないと、ごらんのとおり、第一われわれも恥ずかしい思いをして朝鮮の諸君に説明しなければならない。不当な疑惑を朝鮮赤十字に与えておるわけですから、私ははなはだ遺憾でありますけれども、いまおっしゃるように、帰国事業そのものを純粋に考えますと、継続性はこれで断絶をしないということであれば、失効以前に代案を示されるという約束でも、これは必ずしもわれわれとしてはそんなにとらわれない。それでなければ一歩も譲れぬ、約束違反であるということで、そう動きのとれないような考えを持っておるわけではないのです。しかしながら、無条件で打ち切って、あとは適当にやれというような任意出国だけは認めてやる、任意出国の自由を阻害しないということだけでは、これは代案にならないのですよ。特にこれを担当しておられる厚生省は、普通の帰国者、つまり外国人の出国の場合と、長年ここで生活を定着せしめておった老人、家族、病人まで連れ、家財等、全部権利義務関係を整理して出国する場合と、態様が全然違うのです。そのことはよく御存じだと思うのです。だから、いま申しました代案とは何だといえば、任意出国の、個別出国の自由は阻害をしないというだけでは、これは代案にならないんだよ。三木さん、あなた誤解をしておるけれども、よく前の大臣から聞いてもらいたいんだ。これは、現状より悪くならない代案を必ず用意いたします、こう言った。現状より悪くならない代案の内容はどういうものであるかということについては、多少の解釈が違うでしょう。理解が違うかもしれぬけれども、少なくともめどとしては現状より悪くならない状態において代案を必ず考えます、こういうことになっているのだ。ここでいま押し問答をしてもしようがない。あなたは聞いていないわけですから、一ぺん前任者からよく聞いて、引き継いで、責任を明らかにしてもらいたいと思うのです。  そこで次にお尋ねいたします。代案の約束だけは理解できたということで、時期の問題については……。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 少し行き違いがあるようですから、入管局次長から、そのいきさつをちょっと説明していただいたほうがいいと思います。
  51. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 法務省入国管理局の次長でございます。御指名がございますので、私からちょっと御説明さしていただきます。  昨年の八月に、今回限りというような閣議了解がございました際のことについてのいまの御質問でございますが、私たちは、大臣からもそのような代案ということについては聞いてはおりません。(帆足委員「それは笛吹さんぐらいの身分では官房長官に会う機会がないからだ」と呼ぶ)それだから私は聞いておらないのであります。  それから閣議了解でございますが、閣議了解では、昨年の八月二十三日現在におきまして、本協定は本年の十一月十三日から一年間延長するということと、それから本協定の延長は今回に限る。  それから三番目に……。   〔穗積委員「時間がないから、そういう御答弁なら必要がありません」と呼ぶ〕
  52. 福田篤泰

    福田委員長 穂積君に申し上げます。いま答弁中ですから……。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 そんな閣議の了解事項というものは、ちゃんとわれわれはよく知っておるのです。それでそのときに内閣を代表して官房長官は、所管官庁がないのでと、大体そのときに愛知官房長官はそう言ったのだ。所管官庁が実はないので、これは結局、外務、厚生、法務三省で案を持ち寄って相談をしてもらわなければならないという、そこで私どもは、実はその後、これは外国との協定問題であるから、その点に関しては外務省で一番責任があるではないかというので、そこで実は外務省当局ともたびたび懇談をいたし、それで外務次官から外務省を通じて三省の統一意見は御報告をいたしまして、相談をしたい、事前に御意見も伺いたい、間違いありませんね、けっこうです、こういうことで官房長官とも、外務省とも別れておるのです。それからさっぱり返事がない、回答がないから、何べんも、代案はどうなった、代案はどうなったといって、いろいろな人からたびたびにわたってこれをやっておる。ところがまだ三省間の政府部内における意見がまとまっていないので、もうちょっと待ってもらいたい、こういうことなんですよ。だからこれはいま、あれでありますから、ここでこれ以上大臣、政務次官とやりとりしてもしょうがないから、前任者からよく聞いていただきたい。特に聞いていただきたいのは、そういう意味で椎名外務大臣、下田次官——まだアメリカに赴任しておらないでしょうから。それから愛知官房長官、これが責任者で、もうすべての人に同一の答弁をしておられるわけです。  第二にお尋ねいたしますのは、政府とこの協定との関係についてお尋ねいたします。日本政府は、一方的にこれで大体その協定を打ち切るということを決定されたことによって、この協定の効力に何ら影響あるべきものではない。別の問題であるというふうに法理的に当然考えるべきでありましょう。しかもこの経過から見てそうでありますが、この点については、間違いありませんね。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 この協定は、赤十字同士の協定ですけれども政府は各省にまたがるようなことがあるので、毎年政府間で話をしてこれを認めておるわけでございます。協定の本質は赤十字間の協定である。政府はこれに対して各省にまたがるから、これを認めるという立場に立ってきておるわけでございます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 だから、政府が打ち切りを決定したことによって自動的にこの協定は失効するものではないわけですね。はっきりしておいてください。協定の有効期間、有効性について大事な問題ですから。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 これは本件に関する限りは赤十字もそういうふうな決定を行なっておるので、本件に関して両者の話し合いの行き違いはないということでございます。意見が違ったときにはこの赤十字と政府との間に話し合いをする必要が起こってくる。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 だから、これは政府の決定と協定の効力とは無関係であるということでよろしゅうございますね。条約局長協定解釈だから……。
  58. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 これは国際法の問題じゃないと思いますが、私はやはりいま大臣が仰せられましたように赤十字間の約束である、ただそれが日本政府援助が継続することにかかっておるというふうに私自身は了解しております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 協定文のどこにありますか、そんなことが。日本政府の了解を条件とする協定がどこにありますか。協定文にはどこにもありませんよ。日本政府の委嘱を受け、日本政府の了解を条件としてこの協定を結びます、そんなことはどこにも書いてない。どこにある。ばかばかしいことを言っちゃいけませんよ。政治的な判断は大臣に聞いておるんだ。協定の効力の問題を聞いておるのですよ。協定の当事者の合意によってのみこれは失効すべきものです。第九条の手続によってのみ失効すべきである。それを聞いておるんです。そのことは政治的なことです。国内問題ですよ。日赤と政府との関係は国内問題であって、この外国赤十字を相手とした国際的な民間協定の効力問題には何ら影響がない。そんなことどこにある。政府の協力と了承を得てやるということはどこに書いてありますか。相手がそんなことを了承しておりますか。どこにも書いてないじゃありませんか。条約局長、正確にやってください。これは日本のジュリストの一部ですが、やはり小島惟謙大先輩以来の精神を受け継いでおって、政治的な判断に左右されないで、条約あるいは法律についての正しい意見を持っておられることを、これは日本のある意味の良心の一つだと思うのです。私があなたに聞いているのはそんな政策のことを聞いておるんじゃない。協定の効力のことを聞いておるのですよ。
  60. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この協定の効力自身のことにつきましては、これは国際条約でも何でもございませんから、私から申し上げる筋合いのことじゃないということを申し上げたわけでございます。  ただ私に御質問があった筋は、日本政府とこの協定との関係はどういうことなのかということで、初めてお聞きになった筋が出てくると思いますが、それはこの協定に書いてあるか書いてないかという問題じゃなくて、日本政府がこの協定が続けられることについて財政的援助を継続するということの関係があるということからひっかかりが出てくるんじゃなかろうかという私の知識を申し上げただけでございます。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 それは政治的なことですよ。協定の効力の問題をいま大臣と私でやっているのですよ。政務次官ともやっているのですよ。この効力は政府の決定でどうこうということじゃない。これは効力そのものは継続中であるということですから、この協定を失効させるためには、政府の決定だけでこれは失効するものではないという法理を聞いているのですよ。国家間の条約だなんて私は何も言っておりゃしない。国際的な取りきめですよ。だからその国際的な民間取りきめであるこの協定の効力をいま政府と私との間で議論をしておるわけだから、その効力は政府の閣議決定によって直ちに自動的にこれが失効するものではない、無関係のことである、こういうことで解釈するのが当然でしょう。もう一ぺんそのことだけ答えなさい。そんな政治的なことは聞かぬでもよろしい。
  62. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この協定の効力自身については、政府の者が影響を受けるとか受けないとかいう意見を申し述べる筋合いはないと思います。政府が何か申し上げるとすれば、この協定政府のひっかかりに関するものだけについて申し上げられるわけでございます。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 わかりましたね。そのとおりだ。  そこで大臣にお尋ねいたします。このことについては、せっかく国内処理の一番の責任の立場におり、しかも従来良心的にやってきた厚生省の政務次官、局長がおられますから、御所感があったらお答えいただいていいのですが、そうなりますと、藤山外務大臣時代から成り立ったこの協定の経過、その協定に盛られた精神というものをお互いに居住の自由選択の原則に立ち、人道上の立場に立った赤十字同志が友好的にこれを相互協力をして双務協定を結んで、やりましょう、こういうことになっておるわけです。したがって、これを打ち切る場合には、われわれの理解では、第九条に従ってこれを打ち切るか、無修正延長するとか、修正延長するとか、そういうことに規定されておるわけですが、それの精神に従って、両国赤十字はこの際友好的に、話し合いの中で、もし打ち切るとすれば、政府の意向を伝えるのではなくて、日本赤十字の自主的立場で打ち切ったほうがいい、打ち切らざるを得ないという判断をされるわけですから、その場合には両赤十字間で話し合いをして、友好的に相手の理解を求めて、この問題を処理する、こういうことが最も望ましいことであるというふうに思うわけです。これはどうこう言って政府が指図をしたりするわけのものではありません、赤十字と政府とは立場が違うわけですから。われわれは国際常識から見まして、赤十字の性格から見まして当然なことだと思いますが、外務大臣はどうお考えでございますか。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題はいま法律論がいろいろ出ているわけです。しかし、実際問題としては、単に実態とかけ離れて、法律論だけでは問題の解決にはならない。なぜかと言ったら、やはり政府の予算の中から厚生省に補助金を出してやっています。(穗積委員「そんなことを聞いているわけじゃない、これを失効させる場合の手続を聞いているのです」と呼ぶ)手続は、これは赤十字と打ち合わせをして——これはもう政府は絶えず日本赤十字と打ち合わせをしながらこういうことをやって、そして両方が、政府と赤十字との間に話し合いがなされて意見が一致しないとなかなかこれはいろいろ問題を起こしますから話し合いをやったわけですね。今度の場合こういう決定になっておるということです。日本赤十字社とはこの話し合いは絶えず続けてまいってきておるわけでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 いま私の言っているのは、日本政府日本赤十字との間の協定の問題ではないのでありますから、この協定を失効させようということになって、たまたま政府と赤十字の間で意見が一致したということであれば、赤十字自身の協定であり、赤十字自身が唯一の責任者であるわけでありますから、したがって、赤十字社が当事者である朝鮮赤十字との間で第九条の全文並びに第九条の精神に従って、友好的によく日本立場を説明をし、理解をしてもらって、そしてこの協定の処理をすべきだと思うのですね。それが望ましいことだと思うのです。
  66. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、穂積さん、日本赤十字社と話をするでしょう。日本赤十字社と国際赤十字社と話をして、向こうもこれを了解して、ということになっておるわけですね。だから赤十字と何も無関係で政府だけがこれをやったというのではないのです。やはり両方がよく話し合わなければ実際問題としてできませんから、話し合いはしておる。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 そこで実情は、御承知のようにこちらから文書を送りました。そうしたら向こうからそれに対して反対の意見が出てきた。一致すればこれでいいわけですけれども、あるいは会談を省略しても、文書によっても必ずしも失効しないということではないと思いますけれども、意見が違っており、過去八年間お互い人道的立場で協力してきた事業でありますから、ここで敵対視して決裂するわけではないのです。したがって、そういうことであれば、両赤十字でこの際よく話し合って、そして進めるのが最も望ましいと思うわけでございます。そのことを常識的に聞いている。法律解釈じゃないのです、私のいまの質問は。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 国際赤十字との間に話がつけば、これはまあ赤十字社との話はついたと見なければ——北鮮は反対しておるようですけれども、国際赤十字と日本赤十字との間の話は了解を得たということで、それは北鮮の赤十字社もこれは賛成ということが好ましいのでしょうが、これはどうしてもやはり日本赤十字と国際赤十字とがこのことに対してよかろうということならば、この問題はやはりいいとすべきだと思います。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 あなたがちょっと問題を、頭がよ過ぎてはぐらかしているのか、私もあなたのいまの議論ではぐらかされるほど頭が悪くないものだから、ちょっと都合が悪いのだ。というのは、国際赤十字はこの協定の当事者ではありませんよ。事務を人道的な立場で公平にやっておるかどうかを国際的に見てもらい、アドバイスしてもらうために、日本赤十字があえて頼んで協力者として立ち会ってもらったのであって、この協定を失効せしめよう、これで打ち切ろうというごときは、国際赤十字は関係ないのです。むろん政治的には、協力を求めたのですから、それに対して了解を得るだけの政治的道義はあってしかるべきでございましょう。ただ問題は、協定を失効せしめるためには、相手の朝鮮赤十字と日本赤十字との間で結末をつけなければならない問題でありますから、結末をつけるためには、これはどうしても両赤十字の間の懇談、会談、協議が必要であるというふうなことを言っているわけです。国際赤十字のことはちょっと誤解してますよ。
  70. 三木武夫

    三木国務大臣 協定はそういうふうになっておるようでありますが、しかし、それならば北鮮との間に話がつかなければ、いつまでもこれを、だんだんと人数が少なくなっても……。(穗積委員「そんなことを言っていない」と呼ぶ)ちょっと一言、言います。答弁が終わってから……。(穗積委員「私の質問を聞いてから答弁してください、時間がないので」と呼ぶ)  それで、国際赤十字という公平な立場から考えて、この協定というものはここで打ち切ってよかろうということは、やはり公平な意見だとして……。   〔穗積委員「でたらめですよ、そんな御解釈は」と呼ぶ〕
  71. 福田篤泰

    福田委員長 答弁が終わってから質問してください。
  72. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことで政府は決定をいたしたものでございます。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 そうではありません。朝鮮赤十字の了解がなければ、これを打ち切ることができない、朝鮮赤十字の完全了解がこの協定を打ち切る絶対必要な条件であるなんとは私は言ってないんだ。これを打ち切るためには、両赤十字が前文並びに第九条の友好的な精神に従って、その立場で十分、より多く話し合いをすることが望ましい、こういうことを言っているわけですよ。なぜそれがすなおに聞けないのですか。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 これを延長するときに、やはりそれに対して政府も賛成しないと予算的な措置もできないでしょう。だから延長する場合には、やはり政府がそれに賛成しないとできないわけでありますので、これはずっとあるうちは執行するだけですけれども、延長という場合になってくると政府の意思が入ることはやむを得ないではないかということでございます。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、もっとはっきり具体的に申し上げて御意見を聞きましょう。実はこの間赤十字の最高の責任者とお目にかかりまして、あなたのほうは朝鮮赤十字に経過と意見をお伝えになったようであるけれども、いままで八ヵ年以上の折衝の経過から見て、そしてまた赤十字の人道主義の立場という性格から見ましても、これはぜひ一片の通告をもって事終われりとするのではなくて、やはり日本立場日本赤十字の立場というものを相手側に十分説明をして、了解を受けて、それで今度のことはこれで終わるかもしれないが、国際的な赤十字同士の活動の中においては将来どのようなことが起こるかもわからない、そういう友好の継続ということについては大事なこと一ちょっと聞いておいてください。あとで相談はしていいから。  ということであるからと言ったら、当然われわれもそのように考えております。したがって、適当な時期に適当な方法をもってよく日本赤十字の立場並びに考えを相手にも伝え、相手の言うことも聞いて、その上でこの協定打ち切りの結末をつけなければならないというふうに考えておりますという、まことに妥当な、りっぱな態度であったわけだ。そこでわれわれが心配することは、実は、責任者でもないくせに、一々赤十字を政府の外郭団体、政府の従属物のような考えで、一部の役人が誤った精神を持って、そしてこれに抑圧を加えるというようなことも間々われわれは心配するわけですから、この話し合いの自由については、政府はこれを妨害をしたり阻害はしませんね。また道義的に赤十字に対するお互い政府とわれわれと——お互いに赤十字の立場というものを見ても、政府もわれわれもそういう結末のつけ方、手続をとることは望ましいと思っておるのであろうと予期して私は質問をしておるわけです。そういう事情ですから、したがって、両赤十字の友好的な立場に立った相互理解のための話し合い会議というものを、日本政府は抑圧したりあるいは阻止したり妨害は加えないということでよろしゅうございますね。田川さん、どうですか。国内問題については厚生省が一番関係があるわけですが。
  76. 田川誠一

    ○田川政府委員 日本の赤十字と朝鮮の赤十字と話し合いができるか、できないかということでございますが、これは御承知のように赤十字同士の協定でございますので、赤十字があくまで朝鮮の赤十字と話し合いをするのだということであれば、これは政府がそういうことをしてはいかぬという拘束は法的には受けられないと思います。ただ、先ほど大臣が言われましたように、この日本と北鮮との輸送、帰還の事業は国から費用も出しておりますし、また北鮮と日本との基本的な問題も含まれておりますので、それでは政府がこの協定に全然関与できないかといいますれば、これは関与できるわけであります。しかし、いま御質問のように赤十字同士が話し合いをするということであれば、これをとめるわけにはまいらないと私は思います。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣、それでよろしゅうございますね。私はそれが当然な態度だと思いますが、よろしゅうございますね。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 いままではなかなか北鮮の赤十字との間に話し合いができない、できにくいような、両国の国交もまだ回復しておりませんし、そういうことがあるので、それは話し合いをするといったらとめる権利は政府にはない。ただしかし、この仕事を実施するためには、やはり政府の補助金によっているのですから、政府もこれは関与しなければ目的は達成できないという、この背景もこれは無視することはできませんよ。しかし、たてまえからいえば、両方の赤十字社が話をするということにすれば、やめてくれと言う権利はないことは、田川政務次官の言われるとおりだと思います。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 法務大臣にきょう来ていただくようにお願いしたのだが、お見えにならないので、笛吹入管局次長がお見えになっておるから伺うが、法務省も——これは法律論ではないわけです。社会常識の問題ですけれども、それでよろしゅうございますね。大臣、政務次官のお考えで了解できますか。
  80. 三木武夫

    三木国務大臣 ただ誤解を生じないように申し上げておきたいのは、政府がこれできめたわけですから、その話し合いというのは、政府のきめた方針をまたこれを変更するというようなそういう意味を持つものではないということだけは、穂積さんに御了解願っておかないと、これから話し合いをするのだ、いままでの決定したことは御破算になってしまうのだ、そういう性質のものではない。政府がこれに対して同意しないと費用も出ないわけですから、これも申し上げておかないと、誤解を生ずるといけませんから……。
  81. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 私に御指名でございますので申し上げます。日赤が朝鮮赤十字と交渉をするというのなら、政府としてはそれに妨げをしないかというお尋ねのようでございますが、そういうことはしないとうことで、私のほうもけっこうでございます。ただ一つ申し上げたいのは、これは穂積先生も御承知のように、旧赤から本年の四月二十一日付で朝鮮赤十字社のほうに文書が出ておる、先ほど申されましたが、これは一つのこれで終了するのだという日赤自身の意思表示を、ことしの十一月でこの協定は終了する、それ以上は延長しないのだという意思表示を日赤自身がしておるわけでございます。そしてその中につけ加えてこういうことが言われておるのでございますが、(穗積委員「それはわかっている」と呼ぶ)その点を御了承願いです。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 話し合いの自由を阻害しないということでけっこうであります。  それから帰国事業の完了ということを一体政府はどういうふうに考えておられるか。何をもって帰国事業は完了したとお考えになっておられるか、ひとつ伺っておきたい。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 政府協定による帰国事業というものは、これは政府の責任による——責任というか、その費用は政府が出すわけですから、そういう赤十字間の協定による帰国業務は十一月で打ち切るということでございますが、業務ということは適当でないでしょうが、帰国というそういう事態は、これは十一月からにおいてもあり得ると思いますよ。これに対しては、協定によるものは終わるけれども、できるだけの便宜をはかることは、私は当然のことだと思います。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 私は、この協定にいう帰国事業の完了というのを政府はどう考えておるかということを聞いたわけですが、委員長から時間の催促でございますから、この問題は日赤との間で一ぺん話し合いを譲りたいと思います、この協定の責任者ですから。そしてその上でまた次の機会にお尋ねするかもわかりません。  最後に一点だけ、ぜひお尋ねしておきたいのは、政府並びに日赤の考えは、八月十二日までにこの協定による帰国希望者は申請を完了してもらいたいということですね。そしてそれらの希望者の審査をした上で、そして希望者が、出国者はこれこれだという確認があった場合に、そのときに十一月十二日までに全部を送り返すつもりだ、こういう予定になっておる。ところが厚生省の局長がこの前御報告がありましたように、こういう新しいPR以前において、すでに四千数百名の帰国希望者が現在あるわけです。それにこういうことになればプラスアルファ、相当のものが出てくることが予想される。その数の上からいって、物理的に十一月十二日までに完了しない場合もその側面からもあり得る。これはやってみなければわかりませんが、あり得る。それからもう一つは、日赤の通達文書の中にもありますように、病気であるとか交通事故であるとか災害等によって、それらの緊急正当な理由によって十一月十二日の帰国以前の予定日に帰れなくなった者が出るかもわからない。そうすると十一月十三日以後になるわけですが、その場合にこれらの残存者についてはどういう取り扱いをするつもりであるか、それを伺っておきたいと思います。これはもう協定が失効したのだから、協定による帰国取り扱いはしない、任意出国でいきなさいというのか、協定の条件をととのえて、事実上協定による出国手続をやらしめるのか、それを一点明らかにしておかないといけないと思うのです。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 協定業務は十一月十二日で打ち切る考えでございます。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 それ以後の残存者についてはどうですか。これは厚生省ぜひ……。
  87. 実本博次

    ○実本政府委員 いまのお尋ねの協定期間内に帰られる方で八月十二日までに届け出のあった方につきましては、すべていまの帰還の方式でお帰しするということを予定いたしております。そのためにはやはり、かつては月に四回ばかりの配船を北鮮側からしてみえた場合もございますので、これはやはりそういった北鮮側の配船の回数を協定に従って日赤のほうから御協力を願うというふうな措置をお互いの間でとるということは予定いたしておりますが、要するに有効期間内にお帰りになるということで、八月十二日までの間に申請してこられました方につきましてはすべていまの帰還方式でお帰しする、こういう予定をいたしております。もし万一そういう期間内に帰れない方につきましては、それはまた別途そういうふうな方につきましての取り扱いというものは、なるべくやはりいまの協定期間内に帰られる方に与えられる便宜と同じものを供与するということは考えておるわけでございます。
  88. 福田篤泰

    福田委員長 穂積君、質問の予定の時間が経過しておりますし、次の質問者がお待ちですから……。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 それでいま国際赤十字の了解が完了しておるというふうに大臣は言われましたが、それはちょっと事実に反するから、ちょっとその点だけ帆足君から関連質問で、ここへ手紙も来ておるし、それを私は初めからお願いしておいたわけですから……。
  90. 福田篤泰

    福田委員長 帆足君に申し上げます。予定の時間がだいぶ経過いたしましたから、ごく簡単に。次の委員がお待ちですから。
  91. 帆足計

    ○帆足委員 国際赤十字から返事も来ておりますし、それから両大臣がなれておられないので——私は田川次官それから外務大臣の弾力のあるお心持ちはよくわかっております。結論として、昨年閣議了解事項になっておるから、その事実を踏まえ、それからこの際けじめをつけて、そしてあとのことは事実に即して考えたいというお心持ちのほども実は理論としてよくわかっておる。前回は自民党のほうから質問がありまして、それは超党派的にみなが好意を持ち、心配している問題でありますから、ほんの二、三分ですからお許しを願います。
  92. 福田篤泰

    福田委員長 簡単にお願いいたします。
  93. 帆足計

    ○帆足委員 そこで簡単に、実は、この問題の第一は人の問題ですが、もうすべての統計学者が、年に二千人今後とも帰るということを立証しておりますから第二に、国際赤十字から手紙が来ておりますし、いままでたびたび、ユダヤ人排撃のように、期限をきめて、そして追い返して圧力を加えるというような行き方は間違っておるということを、たびたび私は手紙でもらいました。大臣は、好意でありますけれども、帆足さんもそういう線で説得して早く帰らせるようにというのは、あれはちょっと失言ですからまずいですけれども、そうじゃなくて、淡々として、帰る者は帰らせよう、こういうふうに御修正願います。帰る人がおるとすると、船が要ります。そこを笛吹さんは責任を感じてください。船なしにこういうことを発言したら、法務省は恥ずべきものがなければならぬ。これは軽犯罪で直ちに逮捕すべきですが、執行猶予にいたします。香港航路はだめです。船主協会はきょう会合して、あすの理事会で発表いたします。人をばかにしてくれるなということ。それから第三に、ソ連大使館からは声明があります。もうついていると思いますが、私は日ソ協会の専務理事ですから、話を聞いてきました。そうすると、帰る船はありません。帰る船がないときにどうするか。かりに将来五十人になっても、帰る船がないから、したがって、三木さんの御心配するという別な意味で、将来いろんなことが起こるでしょう。病人とかその他の人たちが不安を感じているのです。船もなしにこういうことを言う。穂積君が言う善後措置というのは、常識的な意味で言っているのであって、いま一区切りの区切りに水をさそうというわけじゃないんです。それを愛知さんが言うたんですから、愛知さんとよく話し合ってください。  それから、時間がありませんから、最後に、国際赤十字は、これは参考人として、いわゆる保証人として入っているのであって、当事者ではありませんので、日赤と朝赤の協定は、協定期間中は協定を守らねばなりませんが、協定期間中に重大な変化を加えたり、やめたり、ふやしたり、あるいは減らしたりする事項が起きたら、両者は善意を持って協議するというのが第九条にございます。したがって、第九条によって、日本赤十字は礼儀正しく相談を始めねばならぬのに、一片の通牒で、手紙を送って、もうやめたという。これを逆に、一片の通牒で、向こうから手紙で来て、帰国船はもう行きませんといったらどういう気持ちがするでしょう。したがって、手続において多少とも礼節を欠いたことを遺憾に思います。国際赤十字ですら、自分協定の当事者ではない、日本から頼まれてきた、しかし、今後自分らが新聞承知しているような事情で帰る人がおって、いろいろ妨害があって困るならば、やっぱり今後とも協力してもいいという気持ちを持っておることを皆様にお伝えいたしておきます。国際赤十字ですら、前途を心配してこう言っている。そのお心持ちの清らかなことは、三木さんのお心持ちが清らかなことと非常に似ているところがあると思って、きょうの答弁を私は非常に明るく拝聴いたしました。  最後に、委員長の御支援によりまして——帰る人はおる。いま打ち切ってもなお自然発生的に、悪意なしにおる。船はない。二度と、香港航路やナホトカ船、貨物船というような口から出たらめを言うたならば、私は虚偽の事実を流布して人心を惑わすものとして、直ちに指揮権を発動せねばならぬ、国会議員としての。または弾劾裁判所に訴えて、そういうことを放任するような裁判官は弾劾せねばならぬし、そういう行政官は今後処罰いたすことを主張いたしますから、二度とこういうでたらめを言って、しかもてんとして恥を知らず、いま前のほうを向いている人はみなうつむくのが当然です。うつむいてお聞きなさい。大臣を半年の間だましておったわけです。帰りの船はありません。それをきょう、私にかわって穂積君が心配して言うたわけです。  以上のような次第ですから、さっきそういう区切りが来る前後の適当なチャンスに、人道的な気持ちは失わないんだと言うた尊敬する田川次官、尊敬する三木外務大臣ことばを私は信用いたしまして——前のいきさつはテープレコダーでいずれお知らせいたしますし、速記録に詳しく出ております。もう御答弁をいただかなくてもよいくらい速記録に出ております。その速記録の内容は、厚生省の援護局長も、小川局長も知っております。ただ、笛吹さんはかわいらしい人物ですけれども、八年間の帰国事業のうち、やっと一年足らずそれに関係されただけでございますから、人物は秀才でかわいらしいですけれども、無知ということ、事情を知らないということのために多少失敗なさった。したがって、御寛大な御処置をお願いしまして、以上をもって北朝鮮帰国問題は、一応のけじめはあるけれども、人道的考慮というものは日本政府に残っておるということをもって了解いたしまして、質問にかえる次第でございます。ありがとうございました。
  94. 福田篤泰

    福田委員長 川上貫一君。
  95. 川上貫一

    ○川上委員 約束が違う、お互いの信義の問題です。——外務大臣は何時までおってくださるか。
  96. 福田篤泰

    福田委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  97. 福田篤泰

    福田委員長 速記を始めて。  本日はこの程度にとどめ、次会は明後二十六日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時九分散会