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1967-05-17 第55回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十七日(水曜日)     午前一時二十九分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 穗積 七郎君    理事 曽祢  益君       青木 正久君    宇都宮徳馬君       臼井 莊一君    大平 正芳君       福家 俊一君    毛利 松平君       山田 久就君    木原津與志君       久保田鶴松君    黒田 寿男君       田原 春次君    帆足  計君       渡部 一郎君    川上 貫一君       斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長         事務代理    鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局次長    武田  敬君         科学技術庁原子         力局調査課長  牧村 信之君         外務省情報文化         局文化事業部長 猪名川治郎君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月十六日  千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名さ  れた国際博覧会に関する条約第四条を改正する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第一三号) 同月十七日  国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)所得に対する租税に関する二重課税回避  のための日本国ブラジル合衆国との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第七  号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とニュージー・ラン  ドとの間の条約を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送  付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の議に付した案件  国際情勢に関する件(核拡散防止に関する問題  及びケネデイ・ラウンド問題等)      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣の御就任後初めてお尋ねしますから、ひとつこの機会に内外にあなたの抱負を積極的に述べていただきたい、というのは在野の外務大臣に対する期待でございますから、きょうはいま問題になっております核防条約問題と、時間がありましたら、関連いたしましてベトナム並び中国問題についてお尋ねいたしたいと思っております。  最初に核防条約についてお尋ねいたしますが、この前与党の永田委員からもお話がありました。これは御意見というよりは御報告が主でございまして、私の理解では、日本政府態度は初め、無条件ではありませんが、賛成態度を先にきめるというような印象を与える態度で臨んでおったのだが、その後西ドイツ態度あるいはスウェーデンイタリア等問題指摘による強硬な態度並びに日本経済界からむしろ平和利用問題についてのいろいろな疑点の提出によって、外務省もようやく腰をあげた。かくて下田発言となり、あるいは国会におけるあなたや佐藤総理発言等も、無原則的に参加するものではない、だから日本の国並びに国民が納得するような条件が満たされることに努力し、それが満たされたならば参加しようという態度であったわけです。その無原則参加でないということについては、変わりはありませんね。ただちょっといやみを言うようですけれども、そうでなくお尋ねするわけですが、実は当初発言されたときは、外務省事務当局あるいは政府もやや強い態度で無原則参加はしないと言っておられたようですが、その後だんだんとむしろ参加協力のほうにべトーネンが置かれて、そしていささか条件は希望にすぎないというような印象、危惧を与えておる。わが国のマスコミの一部も、あなたが特使を派遣するとか、あるいはフォスター氏を呼んで話をするとか、あるいは西ドイツブラント外相との話をするようなことも、実は問題提起はするけれども、それほど強いものではないという印象を受けておるわけです。したがって、あなたの政治的、国内的ゼスチュアではないかということをみんな心配しておるわけですよ。われわれも、この内容を見ますと、これは事のいかんによりましては、重大な、やはり見せかけの条約になる心配があるものですから、いやみでなくて、そういう意味で言うわけですから、そこのところを理解して、無条件参加ではないという態度について変わりがあるのかないのか、そこらのニュアンスをひとつ率直に国民の前に明らかにしていただきたいと思うわけです。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 核拡散防止条約に対して、政府は終始一貫してその趣旨賛成である、それはどうしてかといえば、核兵器を持っておる国が次々にふえていくことは世界核戦争の危険を増大する、そういうことで趣旨賛成である。ただしかし、趣旨賛成であるからといっても、そのためにはたとえば原子力の平和利用であるとかいろいろな面で、将来日本の発展を非常に束縛されるようなものであっては困るということで、やはり日本核兵器を持とうとしてないのですから、何か抜け道をこしらえて核兵器を持とうとする国ならばいろいろ疑って道をふさぐようなことも国際的に考えられる場合もあるでしょうけれども、核兵器を持たないというのですから、開発もしない。こういう日本世界における最も純真な立場ですからね。この日本考え最小限度の要求というものも満たされぬということならば、その趣旨がよくても日本賛成ができぬわけでありますから、そういう態度を終始とってきたわけであります。しかし、私もこれができたほうがいいと思っている。こういう条約が成立することが世界平和のために好ましいと思っている。好ましいとするならば、ただいろいろけちをつけるばかりでなしに、日本考えておる考え方条約の中へ反映されて、公正な条約ができるために協力しようということで、日本考え方、これは一番純真な立場ですから、これを反映さすために、特使も送ったりフォスター氏も呼んだりして努力をしておるわけでありまして、国内的のゼスチュアなどする必要は毛頭ないのであります。日本の意向をできるだけ条約の中に反映さしたいという意図以外には何もないのです。政府態度には初めから今日まで変わりはないということでございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 われわれ社会党におります者から見ましても、いまおっしゃったように、核兵器脅威あるいはその悲惨な使用機会をなるべく少なくする、一歩ずつ少なくするという趣旨にはむろん賛成です。かねてわれわれの主張しておったところです。ところが問題ははたしてそのように進みつつあるかということなんです。そこで、この条約にわれわれとしては努力した上で、われわれの趣旨が入らない場合には参加するかしないかについて重大な決意をしなければならぬ。選択はこちらにあるんだ。したがって、この条約を支持加盟するかしないかは、一体どういう点に不可欠な条件があるのか。この問題についてわれわれの所感を述べながら、日本政府の御意見も聞きたいと思うのです。そうでありませんと、この問題趣旨賛成だというので、党派を越えて全部まるまる賛成だ、これが超党派外交糸口だというふうな無原則印象を与えますことはお互いに迷惑であります。党として迷惑なだけではなくて、日本並び世界の平和にとって迷惑である。このようにわれわれは良心的に考えておるわけです。実は日本政府は特に財界の要望を受けて、外交上の問題安保条約に全く寄りかかってしまって、あまり頭を使わない。そして平和利用の自由と平等を確保するという点にのみこの条約の力点を置いておられるようですが、これは私はちょっと誤りだと思うのです。何といいましても、これは文字どおり核兵器縮小をしていくということが条約の本筋でありまして、ただ平和利用問題は、それをやることによって派生的に非保有国安全保障問題、それから非武装国平和開発問題が阻害をされてはいけないというので、副次的に出てきておるわけです。したがって、私はまず第一に核兵器縮小並びにその使用禁止実験禁止、こういう問題が主要な第一議題でなければならぬと考えるわけです。なぜかといいますと、これは表面は核武器拡散が行なわれると核戦争機会がより多くなりはしないかと一面はいわれておりますけれども、実は他面におきましては、この内容米ソ利己主義によって、その妥協によって、非保有国、しかも潜在保有国ですね。われわれ非保有国ですが、潜在保有国だと思う。そういう国に対して犠牲を要求するということになりますと、国際外交上大きな弊害が出てくるのではないか。特に東側、西側における核を中心とする米ソ指導権がこのごろゆらいできた。特にスウェーデン、ドイツ、イタリア日本並びに前からの部分核停の外に立っておりますフランス、中国、こういうものの最近の成長ぶりを見ておりますと、ますます主導権確保のためにこれが使われる心配がある。なぜそういうことを言うかというと、この前のあの部分核協定の場合におきましても、御承知のとおりに、その前文におきましては全面禁止完全廃棄目標にしているわけですね。ところが、その後御承知のとおり、米ソとも実験は減らないどころか、毎年ふえておる。しかも核実験の予算もふえておる。今度の核防協定提案されました後に、ごく最近、今年の一月一日をもって現在時点においてすべてをこの条約基準としよう、非保有国基準としようということは、これはまさに独占支配の強化、固定ということを裏書きするものと解釈しても差しつかえない状況であります。したがって、そういう点に私は重要な関心を一わが非核武装態度を宣言し、日本世界の平和を憲法でうたっておる特殊な日本といたしましては、その点をまず、日本日米安保条約に依存しておるからだいじょうぶだ、アメリカの核のかさの下におるから、その問題はあまり心配しなくてもいいというようなエゴイスティックな態度でなくて、やはりアジアの最近の情勢の中から、平和の問題について真剣に考え態度が必要だと私は考えます。そういう意味での趣旨ですから、次に具体的にお尋ねいたしますからお答えいただきたいのです。私はまず第一に、保有国に対する核軍縮条約本文への義務づけというものは、これはもう不可欠の条件であるというふうに考えます。これはこの条約が本物であるかにせものであるか、あるいはわれわれにとって歓迎すべきものであるかあるいはもっと悪い側面を出すものではないかという第一のメルクマールは、保有国核軍縮義務規定が、部分核停条約のような努力目標理想をうたった前文でなくて、相当具体的に条約本文の中に規定されなければならない、それがやはり一番大事な点ではないかと思います。あなたはこれに対しては本文規定される大体見通しを持っておるというふうにおっしゃいましたが、その後ジュネーブにおける米ソ交渉等外務省には情報が入っておりましょう。のみならず、そのいかんを問わず、原案が出まして、それでジュネーブ会議でこれが討議されているときに、これはもう不可欠な条件であると私は思うのです。いかがでありましょうか。その見通し外務大臣基本態度について伺いたいわけです。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 この条約は、核兵器拡散防止して、そのワクの中で軍縮をやっていくということが目標でなければならぬ。したがって、最終的には全面軍縮核兵器全面廃棄、これを目標にして進まなければならぬことはお説のとおりだと思う。しかしながら、これが一気にそこまでいけないことは、だれが見てもおわかりのとおりでございます。したがって、これは段階的にそこまでいかなければならぬので、条約の中に期限を切って、そして軍縮の具体的なことを取りきめすることは、私は非常に困難だと思っております。したがって、軍縮への誠実な意図というものがこの条約の中に表明されなければならぬという考え方は、私はあなたと同じように持っておるわけでございます。ただしかし、それをもっと具体的に年限を限ってせよということであるならば、私はそういう規定がこの条約の中に入ることは現在の情勢下において無理である。したがって、ここにその意図を明らかにして、今後条約というものは再審査の機会があるのですから、その機会を通じて軍縮の表明された意図が実行されておるかどうかということをわれわれが再審査する機会があるのですから、あまり縛りつけるような形でこの条約軍縮規定を入れることは無理だと考えております。  また本文の中に核軍縮義務づけを入れろというのが日本主張でございますが、これが大体入る見通しであるという発言を私はしたことはございません。これはやはり大問題一つであるわけでございますから、最後まで努力したいとは考えておるわけで、この見通しがすでに得られたという発言はしたことはない、何らかの誤りだと思います。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、実はフォスターとの会談のあとで、あなたは前文でなくて本文の中に入れられる見込みである、そういう印象を持ったということを話しておられますね。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 それは平和利用についての誤りだと思います。軍縮については私は語っておりません。平和利用についての問題であります。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 私が言いますのは、一挙に、今度の条約協定が妥結するときに、全面軍縮完全廃棄規定をスケジュールに入れて書き込め、その可能性はどうだということを私も言っているわけではございません。ただ問題条約——これはいささか法理的になりますけれども、前文理想目標としてうたっている場合と、それから義務規定として権利義務を生ずる本文の中にうたわれる場合とでは、そのけじめをつける必要があると私は思う。日本としてはあくまで本文の中にそれを書き込むこと——米ソの間で話し合って現在までに予想されてできておるといわれる条約草案によりますと、第一条、第二条において非保有国に対する義務だけは負わせておりますけれども、保有国核軍縮に対する何らの責任も負っていない、こういう状態ではまさに不平等の始まりはここからである、押しつけである、いわば核独占支配外交をねらっておって、軍縮意図はさらにないというふうに私は理解せざるを得ない、その証明はさっき言ったとおりです。部分核停のときに米ソは何と言いましたか。われわれはその善意を期待して賛成してみた。ところが今日まで何ら軍縮に向かって、実験全面禁止に向かって、徐々ながらも進んでおれば別ですけれども、先ほども言ったとおり逆に拡大しておるではありませんか。そういうことでありますから、私は、本文にうたわれる場合と前文にただ理想目標として掲げられる場合とでは、その政治的意味はもう全然違うというふうに理解しているので、ぜひとも日本外務省政府としては本文にこの軍縮義務規定を明確に入れることを強く主張すべきではないか。私どもとしては、そのことを不可欠の条件の第一であるというふうに考えておるわけでございます。そういう意味前文本文のことを私は聞いておるわけでございます。外務省本文に入れることに対して強く主張もし、努力されるおつもりであるか、その点をはっきりしていただきたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 努力はいたすつもりでございますし、いままでも努力いたしたし、今後も努力をいたしますが、この点は現在の見通しとして、本文の中に軍縮規定が入るということについては、見通しとしては相当明るくない見通しであることを申し上げておきたいと思います。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 入らない場合でも、そのことによって、そのことが日本政府はこれに加盟するかしないかの重要な分かれ道として考えておられるかどうか、どうですか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 これは明日ですか、十八日に十八ヵ国の軍縮委員会、これに米ソ草案が出るということが予想されておるわけでございますから、草案全体というものを見なければわからない。いま部分的にこれが通らなければどうするかということは、お答えすることは適当でない。全体を見て、その上にこれは十八ヵ国軍縮委員会でいろいろな議論が行なわれて、修正も行なわれるでしょうから、やはりそういうものの判断は最終の段階でいいと考えております。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねしたいのは、実は部分核停によって温存されておる地下実験問題です。これは前文では法律上の責任はないまでも、政治目標として全面禁止にいくのだということを言っておるわけですが、いまだにそれが実行されてないのみならず、逆な方向に行っておる。そういうことであります。そのときに問題になったのは、地下実験査察探知方法が技術的にないということでしたが、御承知のとおりスウェーデン提案によって専門家会議がストックホルムで開かれて、その後の世界科学技術の進歩というものは地下実験探知能力を持っておるわけです。それでアン・オフィシャルなものではありますけれども、探知クラブというものができておるわけですね。したがって、私は地下実験全面禁止の点をこの機会に強く日本政府としては主張すべきであるし、その方法としては、これはIAEAとの関連でありますけれども、探知クラブに対してやはり国際的な一つの権限を与える必要があるのではないか、そういう内容、その能力を持った組織をつくる、そういうふうに考えますが、外務大臣御所感はどうでありますか。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 地下爆発実験禁止、われわれも非常にこれは望むところでありますが、御承知のような点で査察問題で行き詰まっているわけですね。だからスウェーデン核探知クラブ、これに非常にわれわれは関心を持っている。だから日本もこれに対して協力をしておるわけでありますが、やはりこれは国連などの最も権威のある一つの機関に成長することが好ましいと私も思っております。こういう面から地下爆発を科学的に探知できるようなそういう一つ方法が見出されるならば、この地下爆発実験に対しての一つのそれを停止する糸口になる。今後も協力をしていきたいと考えおります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますから、そういう探知科学技術を保有いたしておる国を中心にして、今後日本政府国連の場においてそのことを主張し、努力されたいと思いますが、そういう御決意がございましょうか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 努力をしたいと考えております。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 次に問題は、核軍縮問題との関連でありますが、実は拡散というのは製造並びに管理権を外へ持ち出すということですけれども、そうではなくて、実は核武器世界の至るところへ持ち出されておるわけですね、朝鮮にしましても沖縄にしましても台湾にいたしましても。こういうことは拡散防止の精神に反するものである、抜け穴ではないかというふうに思います。したがって、核兵器外国への持ち出し、こちらから見れば受け入れ、それからさらに外国において核基地を設定すること、これはもう廃止すべき段階に来ておる。ちょうど拡散防止協定関連いたしまして討議すべき重要な問題ではないかというふうに考えます。これに対する外務大臣のお考えを聞いておきたいのです。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 国の安全の確保ということは、もう国家の政策としては、これは第一義的なものであります。したがって、各国とも安全保障に対する各国政策を持っておるわけであります。日本日米安保条約を持っておる。西欧の諸国NATO北大西洋条約機構を持っておる。共産圏共産圏ワルシャワ条約を持っておる。これは各国ともみなその国の事情によって安全保障政策を持っておるわけですから、核の持ち込みをしなければ、安全の確保に対して、これは確保にならないと考えておる国々もある。NATO諸国はそうであります。したがって、この核拡散防止条約の中に、そういう集団的な安全保障、これもいわゆる核兵器を持ち込むような安全保障はいけないとか、そういうことをこの核拡散防止条約の中で、そんな問題までここで取り扱うとするならば、この条約は成立するわけはない。私はこの条約を通じて、第六、第七の核兵器を保有する国を防ぐ、そのワクの中で核軍縮をやっていく、このことがやはり核戦争防止のこれは一つ入り口である。終点であるとは思っていない。だからといま言われるように、これは米ソ核独占核保有を固定化してけしからぬ、こう言われるわけですけれども、けしからぬから中共が言うように第六、第七、第八の核兵器保有国がふえることがいいのか、ここにやっぱり政治一つの大きな判断分かれ道が私はあると思う。これは言われてみれば不完全なものですよ。現に核を持っているのですから、米ソ優位性というものは否定することはできない。それはけしからぬから、みなかってに核兵器開発しようではないか、こういう考え方がいわゆる核戦争防止に役立つのであるか、不完全ではあっても、これを入り口にして核軍縮をやり、核兵器拡散を防ぐことが平和の前進であるかということは、これは政治家判断、その選択にゆだねるよりほかにないと私は思っております。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にちょっとお願いしておきますが、実はきょうは質問者が多くて持ち時間が非常に少なくなりまして、はなはだ残念です。参議院のように、持ち時間質問者質問時間だけでやっておればいいが、衆議院のように往復で計算されますと、あなたの演説も大いに拝聴したいのだけれども、それをしていると、私がどうしてもお尋ねしなければならぬ問題が残ってしまいますので、ひとつ必要のない——私も、あなたほど頭がよくなくても、多少の理解力を持っておりますから、選挙民に向かってやるような演説はせぬでもいいから、結論だけひとつ言ってもらうように。必要にして最小限の……。  次にお尋ねいたしますが、平和利用の前にもう一つ重要な問題は、非保有国安全保障問題なんですね。これはもう当然です。これもまた今度の条約を成立せしめるためには不可欠な条件だと思うのです。  そこで私は順を追うてお尋ねいたしますが、自分の国の領土内に核兵器を持っていない国に対する保有国使用禁止をする義務規定、これはぜひ私は今度の条約において討議すべき——いままでの数ヵ国が独占をしようということでありますならば、第一の義務軍縮義務であり、第二の軍縮に至るまでの安全保障に対する保有国義務は、その領土内に核兵器を持っていない国に対する核攻撃はしませんということが、まず第一に義務づけられて差しつかえないことではないか、これで義務平等化が行なわれる一つであると思うのですね。そのお考えを伺いたいのです。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 安全保障問題は、私がお答えしておるのは、何か国連総会のような場で、非保有国に対する安全保障というものが一つの大きな国際的な意思として、決議として採択されるような方法がいいのではないかと私は考えております。これはそこにおられる曾弥君の質問のときにそういう御提案があって、私は賛意を表したのでございます。したがって、その決議は、あなたが言われるように、核兵器を持ち込んでいる国は、そういうものは攻撃するかもしれぬ、持ち込んでおらない国には攻撃しないという、そういうややこしいことではなしに、核を持たない非核保有国に対して、核保有国脅威を与えない。また脅威を受けたり攻撃を受けたるときはそれを守る、こういう単純な形の国際的な一つの意思表示があるほうがいいので、核を持っておる、持ち込んでおる国は、そういうことでこれはNATOとも関係しますから……。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 これは実は私も最後に私案があるから提案しようと思っておったところでありますが、順を追うてお尋ねしますから……。  第一に、討議の今度の機会条件にするしないは別として、いずれにしてもいまの問題もこれから私の申す二つの問題も今度の会議問題にするのが絶好のチャンスである、効果的な機会であると思うのです。それが条文の中に生きればいいけれども、生きなければ国連の場で討議するきっかけをこのときにつくる、会議の討議の中で保有国に約束せしめておく、そういうふうに思うから、私はこの問題は忘れないでわれわれ非保有国のグループとしては主張すべきではないか、こういうふうに思っておるわけです。  第二は、保有国、非保有国を問わず、保有国自身が先に武器を使うということを禁止する、お互いに禁止しようではないか、これはすでにソ連、中国はそのことを明瞭にしておるわけですね。残りはアメリカとイギリスだけなんです。ですから、こういうことも今度の会議機会に国際的な規模において討議をし、さらに国連に移してこれを実行せしめるというふうな一つのきっかけをつくらせることは、わが被爆国の唯一の特権ではないかというふうに強く思うわけですが、いかがですか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう核の問題というのは国連の場で全面的に取り上げたらいいですよ。核の世界に対する脅威、これをできるだけ防ごうという善意の討議というものは国連で戦わされてもいい。そのあとに何か政治的な意図というのでなしに、もうほんとうの核戦争を防いでもらいたいという、そういう善意の上に立った発言国連に大いにあってしかるべきと考えております。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 それを発展せしめて、私は核使用禁止協定に発展せしめるべきである、これについてはいかがでございますか。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 それは将来はそういうところへ——いま今度の条約各国ともこれに参加することが好ましいのですけれども、必ずしもそうはいかぬかもしれませんからね。だから……(穗積委員「きっかけをつくらなければだめだよ」と呼ぶ。)きっかけといっても、これは各国ともがこれに参加して、核軍縮の場合にも軍事バランスということもありますから、そういう点であまり国民に幻想を与えるようなこともいけない。そういう点で軍縮というか核兵器問題に対する攻撃もこちらから加えないということはいいですよ。しかしながら、核は全然使用しないということになれば、これはもう核兵器の廃棄の一歩手前まで行くわけですから、そういうのはやはり段階的に行かねばならないですよ。しかし、いまのこの世界世論の前で、自分から先に核兵器を使うというようなことは、こんなことはなかなかできるものでもないし、それは人類の常識になりつつあると思います。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、最後に先ほどのお話の国連の場における安全保障問題でありますが、同時にその内容として考えたいのは、たとえば日本は二国間の安全保障体制を持っておるわけであります。それからNATOは多数国の安全保障体制を持っております。ところが、これはすべて対立的な安全保障体制なんですね、仮想敵国を口にはしないまでも。とにかくそういう危機を前にして、この機会にここまで核が発達して、核に対する国際的な良識と善意が世論的に成長しておるときでありますから、したがって、私はこういう個別的または対立的な多数国安全保障体制というものを解体して、保有国、非保有国を含むいまの安全保障体制より、核の問題についてやはり核不使用——非核散だけでなくて核不使用安全保障体制のほうが、かえってこの際緊張を緩和し、平和に一歩前進するものではないかというふうに思うわけです。包括的な安全保障体制の問題もやはり国際政治の中で討議すべき段階に来たのではないか。そのためには、核の脅威のバランスの中で平和が保たれるといういままでの日本政府のお考えをこの際竿頭一歩進めて、包括的な安全保障体制ということが最も望ましいものである、そのことを非保有国であるわが国においてやはり提案することの特別な地位が与えられつつあるというふうにぼくは思うのです。いかがでしょうか。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、理想としては、将来国際連合などの安全保障の措置が発達をして、核兵器などもそういうところで国際的管理が行なわれて、そうして世界の安全確保の目的が達成できることが一番好ましいと思いますが、それは理想としてはあなたと何も考えが違うわけではない。しかし、核抑止力の上に世界の平和が保たれておるんだという現実は否定することはできません。現実はそうです。したがって、その現実がいいかというと、いいとは私も思っておらない。その人類の理想に向かって前進はしなければならぬけれども、その理想と現実とをごっちゃにして、直ちにそういう理想世界が実現されるという考えのもとに外交をやることは、その外交というものはあまりにも観念的になり過ぎて、私は好ましくない。冷厳な実現も踏まえながら、理想に向かって近づけていくのでなければ、外交は地についたものにならぬ、こう考えております。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 それはリアルな政治論のごとく聞こえますけれども、すでに日本は被爆国としての特殊な地位を持っておるわけです。しかも開発能力を持っておるわけだ。だからこそ私は発言に重みがあると思うのですね。特にスウェーデンが昨年の国連総会のときからもうすでにこの問題を提起しておるわけですよ。必ずしもこの構想と同じではありませんけれども、そういう構想を提起しておる。したがって、最近の核問題中心とする世界平和の問題については、日本よりはるかにソビエトあるいは問題提起者としてはドイツのほうが一つの方針を持ちながらアクチブであるわけです。日本はすでに受動的である、追随的である、出てきたのをいかにして被害を少なくするかというようなナショナル・インタレストのみを追求して、それに見通しも体系もないという批判を受けるようになるわけですから、その点ちょっとあなたに御注意申し上げておきます。あなたに期待するのはそういうことなんだ、官僚外務大臣と違ったあなたに期待するのは。  それから、時間がありませんから次にお尋ねをいたしますのは、平和利用問題ですね。将来、平和利用と軍事利用との区別がつくようになったならば、核爆発の自由は阻害されない、これは阻害されないような余地を残しておきたい、こういう考え方についてはいろいろな技術者の方面からも考えがあるわけですね、意見がある。これはまた聞かなければならないと思うけれども、これについては外務省はその後どういう考えを持っておられますか。これは一つ条件として提起されておるわけです。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 将来——いまは軍事利用と平和利用は区別がつかぬのです。これが将来画然と区別がつくような場合が来るならば、その核爆発エネルギーを平和のために利用する、その機会日本にも同じように保障されなければならぬという考え方がわれわれの考え方です。こうなってきた。どしどしみずから核爆発をやるんだという考え方まで私どもは持っていない。その核爆発エネルギーも、日本もまた同じような条件で、核保有国と同じような条件で、これが日本の平和目的のために利用される平等な機会が保障されなければならぬというのがわれわれの立場でございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 たいへん残念ですが、委員長から時間制限の御注意がありましたので、一括してちょっとお尋ねいたしておきます。  どうせきょう十分できませんから、質問を留保して、また続いて次の機会にお尋ねいたしますが、きょうぜひお尋ねしておきたいのは、平和利用の自由と平等性の問題は、これができるかできぬかは、査察制度にかかっておるわけです。そこで私は二つの点についてあなたにお尋ねをするわけです。一つは、保有国査察を受ける義務は今度の草案では全然ないわけですね。非常保有国にのみ義務を与えておりますが、平和利用に関する限りはこれは平等相互でなければならぬ。これは私は不可欠な条件であると思いますがこれが一点。それから査察の機関と条件でありますが、これはユーラトムとIAEAの二本立てになっておるわけですね。それで、われわれが調べたところによると、日本が受けておるIAEAのほうがはるかに過酷であって、それで開発いたしました新たなる技術施設、これらの秘密は国際的に直ちにどこにでも抜けていってしまう、こういう非常な  ハンディキャップを与えられておるわけですね。したがって、ぜひともユーラトムとIAEAとの間の二本立てでなくて、これはあくまでその実施する機関は一本にし、その間における査察条件あるいは方法の調整統一をこの際はかるべきではないか、その二点について、査察についての重要な点でありますから、外務省態度を明らかにしていただきたいと思います。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれも、平和利用のための査察は、非核保有国核保有国も同じように受けたらいいではないかという意見です。そうしてまた平和利用査察基準というものは、やはり国際的に一緒な基準によるべきである、こういうふうな考え方でわれわれの主張をできるだけ通そうと努力をしておるのですが、この問題が御承知のように米ソ間における一番のやはり問題点だと思います。したがって、明日出されるかあるいは出されないか、これははっきりわかりませんが、これが米ソ間で話し合いをしておる問題としては、——それはほかにもあるでしょうけれども、一番難問題一つだと思っていますが、日本主張は、いま申し上げたのが日本主張でございます。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 平和利用の自由と平等が確保されるかされないかというのは、査察条件方法できまってしまう。したがって、私はこれは条約を支持するかしないかの重要な不可欠の条件であるいというふうに考えます。したがって、いまの二点については——その他たくさんありますが、時間がありませんから次にいたしますけれども、その点はぜひひとつおかしな妥協をしないように、あるいはおかしな威嚇や説得に合わせないように三木外務大臣の健闘を要求し、期待しておきます。  最後に、時間がありませんから、お尋ねいたしますが、実はこれ一問で終わりますけれども、この条約は、国際的に見て保有国全部が入らなければならない。特に潜在能力を持った非保有国が全部入ることが望ましいわけです。それでなければ条約意味がないわけだ。そうなりますと、フランスと中共との参加を得るためには、条約内容に参加できるような条件をつくっておかなければならない。これは深刻にこの条約考える場合に大事な問題であるというふうに考えます。その橋渡しをするものはやはり現在隣国である日本、核あるいは軍備の問題について、外交路線の問題について、お互いに一番関係の深い、関心を持ち合わなければならぬ国である。いま中国とソビエトの間でこの問題について話をする余地はないと判断いたします。アメリカについても同様でありましょう。したがって、中国、フランスとの問題は、むしろこの際積極的な態度をとって日本がそれを考えるべきだというふうに考えております。これに対してのあなたの所感を一点伺いたい。  それから、時間がありませんから一括しておきますけれども、そういうわけで、あなたは施政演説でも、それからこれとの関連においても、またベトナムの戦局から見ましても、中国日本の接触の機会をより多くする。中国の孤立化あるいは中国の敵視政策に手か貸さないようにし、そして中国との接触の機会をいろいろ多くする、相互理解を深めるということが、アジアにおける平和あるいは日中両国の経済、文化の利益のためにも必要なことだと思うのです。あなたの本会議における外交方針演説はその趣旨であるべきであると私は見ておったわけです。したがって、私は、ここに一挙に中国に対する貿易協定を結べとか、国交回復をしろとかいうことを言うのではありません。次の点について二つお尋ねしておきたいのです。  それは第一は、あなたはこの間ブラント外相との話の中で、民族自決による方法、言いかえれば、このことばを台湾の独立による二つの中国による中国問題の根本解決という誤解を非常に与えた。与えるのも無理はない発言であったと思うのです、報道によれば。これは大事な問題です。これは外交中国問題を解決する手だてではないと私は考えておりますが、その点が一点。それから第二点は、経済、文化については、政経分離の原則によって接触の機会を多くしていくと言っているが、その場合に、第二点としてはLTあるいは友好貿易の中で、例の延べ払い問題については、あなたはかねてこのことについては理解を示しておったわけですから、この際あなたの外務大臣在任中にこれはぜひ実現すべき段階ではないか。要するにこれを拒否する条件は何もなくなってきておるというふうに私は思います。これが中国についての第二。第三は、この秋にあなたはアメリカへ行かれるわけですね。そのときに当然安保条約問題について話が出、あるいは中国の代表権問題について話が出ると思いますが、代表権問題については重要事項指定方式の方針をもってあくまで阻止に回られるつもりであるかどうか、これを聞いておきたい。  それからもう一点だけ一ぺんに聞いてこれで終わりますが、安保条約を延長せしめる方法として、規定に従っての自然延長でなくて、相互声明によって、そうして長期間の延長をはかろうとする動きが自民党または外務省の一部にあるようでありますが、これは私は非常な誤りであると思うのです。もしそういう方法で延長をやるとすれば、あの条約の条項の改定になりますから、当然これは国会の承認を求めなければならない内容を持ったものであると思う。したがって、本来ならば声明によるべきではない。もし声明によったときには国会の承認を得べきものであるというふうに思いますが、その点について逐次お尋ねをいたしまして、お答えをいただきたいと思うのです。  以上で私の質問を終わります。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 第一問の、中共もフランスもぜひこの核拡散防止条約に加されることが好ましいことは、私も全く同感であります。これは、だれでもどこの国でも、中共もフランスも入るのは困ると言うのはいないわけです。ところが中共なども、従来の主張からすると、なかなか困難があると思いますよ。むしろ核というものをみなの国が持って、それで核バランスがとれるのだというような感じを持っておるように私には受け取れる。しかし、これは最後まで努力をすべきで、アメリカといえども、中共、フランスにぜひ入ってもらいたいと考えておるわけでありましょうし、またほかの国々でも入ってはいかぬと言うものはだれもいないのです。みな望んでおるのですから、これはあらゆる機会に中共やフランスがこの条約に入るような努力をすることは当然だと思います。しかし、日本はそれの橋渡しができる国だというその評価については、いろいろ問題がございましょう。穂積さんはいろいろお考えもあるのでしょうから、御努力によって中共が入るようなことになれば非常に好ましいのですが、まあこれはなかなかむずかしい問題である。しかし努力はしなければならない。  それから中共の問題については、これは御指摘のように中共と無接触ではいけるわけがない。こんなに近いのですから、接触をしなければならぬ。したがっていろいろな面ですでに接触があるわけですが、ただこの接触については中共側も礼儀正しい接触であるような努力をしなければいかぬ。それはお互いに接触をする以上は、あまり内政干渉などをしないで、お互いの立場を尊重し合って、つき合うということでなければうまくいかないですからね。それは日本もまた接触をしていかなければならぬ。それから日本自身も礼儀正しいつき合いをしたらいい。中共もまた礼儀正しいつき合いをしていく。お互いにお互いの立場を尊重し合っていくという態度でないと、日本ばかりにいつも罪があって、中共の態度はそのままいまの態度でいいんだというふうに考えると、これはうまくいきませんから、両方が努力する必要がある、日中の接触に対して。そういうふうに考えております。  また、中共のプラント輸出に対して輸銀を使うか使わぬかという問題は、これはやはり具体的な問題が起こったときに、具体的な問題として政府判断をしてきめたいと考えております。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 原則的にはどうですか。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 原則ではありません。ケース・バイ・ケースで考えていこうと思っております。  それからまたブラント外相との話の中に私はこういうことを言ったのです。私の発言は、台湾というものについては、日本は平和条約でこれを放棄しておるのだ、それだから台湾の問題の解決ということで発言する法律的な資格は日本にはないのだ、これが私の終始一貫した台湾問題に対する考え方です、世間にはいろいろな意見が出ておるけれども、その意見というものは、それで台湾も中共も納得のいくような解決策は出てない、しかし日本はこんなに近くて関係は多いけれども、平和条約によって台湾の領有というものは放棄したのだから、日本が法律的にこの台湾問題をどうするということをイニシアチブをとって言える立場ではないのだというのが私の申した中心でございます。  また中国代表権問題は、いろいろな国際情勢というものが動いておりますから、いま中国に対してどういう形で国連問題が提起されるかもまだはっきりしないわけでありますから、これはいろいろ国際情勢ともにらみ合わせて検討をしたいと思っております。  安保条約については、自民党も政府もいまこれを検討しておるわけであります。安全保障問題はたいへんな問題で、これは社会党も御研究を願いたい大問題であります。したがって、いまのところは、一九七〇年以後はどういう形で安保条約というものを考えるかということは、自民党と政府はまだきめていないのです。ただわれわれは、今日の国際情勢からして、日米安保条約は堅持していく必要がある。これは自民党、だれも異存はないのであります。どういう形かということに対しては、自民党の中にもいろいろ意見がある。これは多少の時間もありますから検討をすべきもので、必要があったならば、場合によったら言われるような国会の承認を得るような事項も起こってくるでしょうが、いまはどうするかというようなことはまだ検討の段階であって、ただ言えることは、一九七〇年が来ても、安保条約を破棄通告をするような事態は起こらない、どうしてもこの条約は存続していかなければならぬというのが政府・自民党のいまの方針でございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長、法理問題ですから、声明による延長の効力の問題を答えておいてください。
  36. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 法律上の効果を持つようなことをしようとするのでございましたら、先生のおっしゃったとおりでございます。
  37. 福田篤泰

    福田委員長 鯨岡兵輔君。
  38. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 三木外務大臣が御就任以来、非常に意欲的にアジア問題中心として日本外交を積極的に展開なさっておられること、このことはひとしく識者の認めるところであります。従来日本には外交はないなどと悪口を言われたものでございましたが、戦争に負けて全く自主性を失ったその時期はもちろん、国に何らの力のなかった時代は外交的に見るべきものがなかったのはむしろ自然のことであって、ようやく日本は経済的にも力を持ち、先進国に仲間入りをして、未開発の地域に対し援助する、いわゆる南北問題と称する外交問題に援助する側に立って参加する、に至った。この時期ですから、当然外交に対する見通しを立てて、積極的にこれが推進に当たらねばならないことは当然であります。それを三木外務大臣中心として展開しておられる。そのように考えるとまことに喜びにたえないのでありますが、そこで三木外交の唱えるいわゆるアジア太平洋圏構想というものはいかなるものであるか、この外務委員会を通じて明らかにしていただきたいと思うのが第一点であります。参議院等におきましても、このことについて外務大臣は言及なさったそうでありますが、あらためてひとつ衆議院の外務委員会で明らかにしていただきたいと思います。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 アジア太平洋圏外交、これは大事な日本外交目標であると私は考えております。その考え方の背景をなすものは、一番重大な課題は戦争と平和の課題である。もしここで世界戦争みたいなものが起こればたいへんなことになるわけでありますから、この戦争と平和の問題、これと非常な関連を持っておるのが南北問題だと思うのであります。先進国と低開発国との格差は次第に拡大していく。拡大していくことはある程度やむを得ないかもしれぬけれども、しかし、低開発諸国のあしたのめしにも心配をしながら暮らしておる者が人類の三分の二を占めておるこの事態がこのままで拡大していって、そのままにこの問題がおさまっていくとは私は見ていないのです。むしろ世界の平和というものは、そういう貧困と停滞の中にいつまでも取り残されている低開発諸国の中にそういう問題というものが起こってくるのではないか。だからこの問題は低開発諸国問題だといって、よその問題だとすることにはならない。これはどうしてもみずからの平和安全の問題にも関係するし、またみずからの将来の経済発展といったところで、それは先進国同士ではやはりある程度生産力も増大していくのですから、飛躍的に世界経済が発展しようとするならば、低開発国というものが経済的にも向上して生活水準も上がっていく、この面から購買力が培養されてこなければだめです。だから、よそのことのようだけれども、これは自分の課題である。それに対して、世界各国がみな世界問題関心を持つべきでありますが、地域的に近い地域は遠方の地域よりもその関係がもっと直接的ではないか。そういうことを考えてみると、国際問題はみなアジアに移ってきておる。しばらく世界政治アジア中心にして動く時代が来ると思う。先進国の間には未解決な問題はあっても、非常に大きな大事件というものは起こらないかもしれない。むしろ低開発国、その中においてもアジアというものが国際問題中心点になっていく。そういう場合に、やはりアジアの安定を考えたときに、このアジアの動向というものに一番関心を持ち、影響を持つものはどこだ、太平洋の諸国である。それは豪州であり、ニュージーランドであり、日本であるし、またアメリカにしてもカナダにしてもそうであるに違いない。現にそういう機運が起こってますね。その中においてもことに日本は人種的に見ても全くアジアの一員ですから、それはほかの国々よりももっと切実に安定、向上を願っておるわけでありますが、やはり国に力の限度があるわけですね。だからどうしても太平洋の先進諸国というものと一緒になってアジア開発アジアの進歩というものにわれわれが協力するよりほかにない。いまそういう機運はできておるけれども、そういう機運をますます助長して、アジアに対する援助というか協力というか、太平洋の先進諸国がもっともっとアジア協力を深めていくことが絶対に必要である。そこでやがてはこの協力一つの何らかの形が出てくるときがある。しかしいまここで日本外務大臣がこういう形だということを名のっていくことは、せっかく機運として盛り上がっておるアジア太平洋地域の連帯的な気持ちをかえって阻害する面もあるのではないか。だからいまはあらゆる機会を通じて、民間でもはや太平洋経済委員会というようなものができて、太平洋諸国一つの連帯というような組織ができておるのですから、こういう空気を助長し、そして二国間の会議とかあらゆる接触の場を通じてアジアに対する関心を高め、アジアに対する協力の度合いを深め、そしてやがて何らかの協力する一つの機構ができる。その下地をつくっていくことが必要ではないか。その役割りをするものは、やはりアジアと太平洋先進諸国との接点にあるわけですから、日本が一番その役割りを果たすべき地位にあるのではないか。だからそれは肩がわりじゃないのです。日本もやるだけのことはやり、その実績の上に立って先進諸国に対する協力も呼びかけていく、その努力をすることが現在の段階において必要であるということで、日本人はせっかちですから、何かEECみたいなものがすぐできるのか、どんな形だ、こう言いますが、その形をすぐにつくらぬところにアジア太平洋圏というものの現段階における意義があるので、いまの形をつくって追い込んでいくと言ったのでは、みな反発しますから、むしろそういうことであらゆる機会をとらえて、せっかく盛り上がっておる連帯協力の機運をさらに盛り上げるために努力することが今日の段階としては必要である、私はこう考える次第でございます。
  40. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 かなり詳細に御説明をいただいたのですが、そういう三木外交というものに対して一協力してくださいといって呼びかけたアジアの先進国、それから協力されるほうの未開発といいますか、そういう地域、それぞれの受け取り方はいまだ十分でないことは当然ですが、外務大臣はいまの時点でどんなふうにお考えになっておりますか。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 これは豪州もニュージーランドも非常に関心を持っておる。豪州のハズラク外務大臣とも話したが、結局は、アジア問題というものはそういう広さでとらえるよりほかにないだろう、こういう考え方を推し進めるということに対して自分も賛成である。共同コミュニケにもこれは出してある。ニュージーランドもそういう考え方である。アジアというものがどうなっていくかということは、これは世界の平和のかぎを握っておるような地域ですから、このことに対しては各国とも非常な関心を持っていると私は思っています。  また低開発諸国も非常に大きな変化があるのですよ。いままでは政治的独立をやったでしょう。そこにはやはりイデオロギー的なものが——民族の解放、植民地から独立ということで、みながこれに拍手かっさいでしょう。しかし、いよいよ独立をかちえた後にリーダーに課されておる責任は国内の経済的建設であり、経済的な自立であります。政治的独立はかちえても、経済的な自立をなかなか達成できないところに、アジアばかりでなしに、植民地から独立した国の指導者の悩みがあるわけであります。だから、われわれは会議などではしばしばアジア諸国のリーダーとは会う機会があるのですが、ものの考え方が非常に現実的になってきておる、具体的になってきておる。イデオロギーよりもあしたのめしだ。どうやったらめしを腹一ぱい食わせられるか、どうやったら住宅がふえていくのか、こういうことが彼らの関心で、そういうふうなアジア太平洋というようなことになれば、先進国からもう一ぺん経済的な植民地支配を受けるようになるのではないかとか、そういう考え方はだんだん薄らいできた。このままでは、いつまでたっても人口の増加に経済成長が追いつかないのですから、十年という年月をとってみても、たいしたことにはならないのです。だから、どうしてもそこは現実的に考えて、自分たちも自己努力をやらなければならぬ、地域の協力もやらなければならぬが、先進国からの援助ももらわなければならぬということで、これがアジア自体、あるいは全体の感じだと私は思う。低開発国も従来のような植民地主義反対とかなんとかいう——植民地といってももう独立したのですから、段階としては、そういう政治独立から経済建設をどうして有効にやるかという第二の段階に来て、指導者がそういう立場に立って今後政治をやっていこうとしておるのですから、従来とは非常に変化が起こっておる、こう考えております。
  42. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 外務大臣のお話で、アジアの先進国はもちろん、後進国が、現実的に、そして好意的に、この考え理解を持っているということを承って、そうなってくると、これは三木外交というよりは日本外交のビジョンとでも言えるかもわからないが、ひとつもっともっと意欲的に進めていただきたいと思うのであります。  第二番目に、いまの問題とはちょっとうらはらになりますが、しばらく前からわが国のことをエコノミック・アニマルと呼んでいることを新聞や雑誌で見るのであります。言うまでもなくこれは悪口であって、われわれの快く思わない表現であります。なぜそんなことを言われるのであろうか。私は考えて三つの場合を想定するのであります。その三つの場合のうちどれに当てはまるのであろうか。それともそれらは全部当てはまらないで、こういうことだろうというようなお考えがあったらお教えをいただきたいと思いますので、申し上げます。元来、いま外務大臣が言われたように、好意的にいわゆる後進国の方々が考えてくださるならありがたいですが、エコノミック・アニマルみたいなことを言われたのでは、全部がぶちこわしになってしまうという心配からであります。  その一つは、戦後二十年、日本は非常な経済的な発展を示したのにかかわらず、アジア諸国はみな宿命ともいえる貧困の状態から脱却し得ない。そのことに対するひが目であるか。だからエコノミック・アニマルみたいなことを言うのであるか。第二は、さきに朝鮮の動乱による特需が日本の経済に大きな役割りを果たしたように、ベトナムにおける戦争は日本の経済に特需をもたらし、それによって日本経済はささえられている——もちろん私は決してそうは思わないのですけれども、もしそのように考えれば、口ではベトナムの戦争が早く終結してほしいと言っていながら、その戦争によって利益をむさぼっている、いわゆる死の商人的な役割りを果たしているのが日本である、そういう意味でエコノミック・アニマルであるのか。第三番目は、日本は先進国にまじっていわゆる後進国を援助する立場にある。確かに近年は経済援助をしていることを否定はしないけれども、その量と質ははなはだしく他と比較して少なく、そして悪い。すなわち経済援助といっても、その大部分は借款である。そしてその期限も利息も他の先進国に比べて短く、そして高い。経済援助をしているのかあるいは経済的な取り引きをしているのか、極端にいえば判然としない。そういう意味でエコノミック・アニマルであるのか。そのいずれであるか。  いま三つ申しましたが、そのいずれであるか、またはそのいずれにも属さない別の意味があるのか、外務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 エコノミック・アニマルということを非常に分析をされて、いろいろな場合を考えられたのですが、そういうことも、これはいろいろな要素が複合してそういうことをいわれておるのでしょうが、エコノミック・アニマル——アニマルというのがまあおかしいわけですけれども、日本がそういうふうに一生懸命に経済的発展をはかろうということは、それをはからなければ、海外に援助するといっても、力がなければできませんからね。だから、経済に熱心な日本という意味に解するなら、あまりこれは気に介することはないのですよ。あまりフェアな方法でなくてえげつなくやるということはいかぬけれども、経済というものに関心を持って、貿易を伸ばしたりいろいろやろうとする努力というものは、そんなに気にして縮こまってする必要はないと私は思います。しかしアニマルというのはぐあいが悪いですな、アニマルというのは。  そういうことで今後日本が力を入れなければならぬ点は、非常にむずかしいと思うのです。これはやはり各政党とも御協力を得て、国民の納得を得なければならぬのは、国内にもいろいろやることが一ぱいありますからね、その国内のことをほうっておいて、アジアアジアといっても、国内をどうしてくれるのだという感じが国民にはありますからね。これは非常に無理からぬことだと思うのです。しかし、そういって、国内は全部何もかも終わった、さあ低開発国援助だといったって、そのときには事情は変わっているでしょうからね。いまこそほしいのですから。やはり独立したばかりで経済的には安定しないのですから、いまこそほしいのですから、日本の国内でやりたいことを犠牲にするというわけじゃないが、並行的に考えざるを得ない。その努力日本は少し足りないという印象を持っておることは事実ですね。よそから来て日本の東京の姿を見ると、なかなか繁栄しているような姿が見えますからね。やはり一人当たりの国民所得が幾らになっているかというような数字では見ませんからね。やはり外から見たら、日本というものは東南アジアから見たら非常な繁栄ですからね。もっとやってくれてもいいのじゃないか——こう言うと社会党の諸君は異論があろうと思いますけれども、まあ防衛費は少ないですからね。よその国に比べたら防衛費は少ないし、その上に日本の姿を見ればこんなに繁栄しておるじゃないか、もう少しやはり低開発国に対する援助を拡充してくれたらどうか、こういう感じを持ってくるでしょうからね。それがやはりアニマルということばになって出るのだと私は思います。ですから、これは先ほど申したように日本もやらなければならぬことはあるけれども、それは長い目で見れば、アジアというものは常に、ベトナム戦争が終わってもまた次の戦争が起こり、そういうことが繰り返されれば、これは日本の安全にも非常に響いてくるし、日本が発展しようとしても、日本の産業構造が重化学工業に変わっていけば、やはり将来そういうものを買ってもらう国は低開発諸国ですからね。そういうことで考えてみると、それはいまこそ、日本がほしい、国内で使いたいものもあるのに、それを犠牲にする面があるが、長い目で見れば日本の平和と繁栄にも役立つのだと、これをひとつ国民理解を求めて、やりたいという中から一部をさいてやるということが必要で、まあこの努力をすることが必要であって、その努力を積み重ねれば、日本というものは世界から尊敬される国になる。いまはちょっとやり方が少ないぞという御批判がアニマルということばになって出てくるものだと思います。
  44. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 これは外務大臣ではなくして外務省当局のほうからお答えを願いたいのですが、ほかの国が援助している、たとえば借款の期限、利息、そういう面からいって、後進国がやはり日本のほうが少しきついというような印象を与えるのに十分な、そういうデータは出ておりますか。
  45. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 DACの六五年の東京会議の勧告に、国民所得の一%を与える、後進国を援助するという大体の勧告が出ております。同時に、条件につきましては、政府援助の約八〇%ですか、それは贈与かあるいは贈与に準ずるものか、あるいは三%以下の金利、期間につきましてはやはり贈与あるいは二十五年以上の長いもの、こういうものが八〇%でなければいかぬ、こういう勧告がございます。DACのほかの加盟国の状況を見ますと、一%にもちろん達していない国もありますけれども、大体それに近くなっております。条件等も六、七割がそういう状況でございます。ただ日本は残念ながら一%に対しましては、一昨年の六五年の統計で見ますと〇・七三%という状況でございますし、三%あるいは二十五年というのはまだ残念ながらそういうあれはございませんです。
  46. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 やはり外務大臣が言われたように、日本が十分に発展をした、それでもう何にもやることがなくなってしまってから援助をするというのでは、ありがたみがないので、いまこそほしいのだから、日本が多少犠牲を払ってもというお話でしたが、やはりそれが政治だと思うわけです。どうかひとつ外務大臣、その意味におきまして御活躍を願いたいと思うわけでございます。  次は、去る十五日第七回の日米安全保障協議委員会が開かれたのでございますが、この中で、ベトナムの情勢は今後どうなっていくかということについてかなり突っ込んだ討議が行なわれたと聞いております。外務大臣の口から、この会議内容並びにこれに対する外務大臣の所見を承りたいと思うのであります。  すなわちベトナム問題は、数次にわたって総理大臣並びに外務大臣が言明されておられるように、実に痛ましことであって、一日も早くこれが終結を望む気持ちはわれわれのひとしく持っているところであります。しかし、その願望をよそに、最近特に熾烈度を加えていることもまた事実であります。すなわち最近の北爆は、かって聖地といわれたハノイ、ハイフォンに迫って、もはや何人もハノイ、ハイフォンを聖地と呼ぶ者はいなくなったのであります。ハイフォン港を封鎖する情勢にあるともいわれております。アメリカと比較的意見の通ずるようになっているソ連も、最近ベトナムの問題に関しては特にきびしい意見の開陳をしている。これは最近のブレジネフの演説にも明らかなところであります。中国はアメリカの攻撃が中国に入ってきた場合、もしくは北ベトナムが軍事的直接の援助を中国に求めた場合、この戦争に参加して、ベトナム戦争は米中戦争に変わるであろうと従来しばしば言っていたのでありますが、ごく最近周恩来は、アメリカとソ連がなれ合って、この戦争を終わらせようとするようなことをするならば、そのときもまた中国の介入する時期であると演説したと伝えられております。文化大革命による国内の混乱を一挙に外に向けるためにも、中国の参戦はあり得ないか。われわれはその可能性は絶無ではないと心配するのであります。さらに、特に重大なことは、ベトナム問題の平和的解決のために大きな役割りを果たしてきている国連のウ・タント事務総長のあきらめにも似た最近の発言であります。ウ・タント事務総長は、ベトナム問題はもうどうにもならない状態になっておる、アメリカが北爆を停止する以外には解決の糸口さえ求めることはできない、もうすでにある意味では米中戦争は始まっているとも言えるかもしれないという、きわめて絶望的にして悲劇的な発言をなされているのであります。それらのことを考えると、ベトナム戦争はいよいよ重大な段階に立ち至った。われわれはその成り行きが心配でならないのであります。しかし、ただ心配だけしていてもどうにもなるものでもない。一方の国だけ責めたてて解決をはかろうとしても、それは現実的な解決の道ではない。これは十分われわれの承知するところであります。三木外務大臣は、最近日米安保条約の中にいう極東の中にベトナムは入ると言明されたそうでありますが、そうなってくると、ベトナム戦争の破局的段階のわが国に及ぼす影響は、けだし大きいといわなければなりません。一体この先ベトナム戦争はどうなっていくのか、日本はこの際何をしたらいいのか、また何が日本でできるのか、それらについて外務大臣の所信を承りたいと思うのであります。  ついでですが、ICBMを中国開発するのはもうごく最近のことだ、あるいは本年中にそれができるかもしれないといったようなことがアメリカ方面の発言として最近新聞などに書いてあったのですが、この間の協議会において、そのような具体的な話があったかどうか、ついでに承りたいと思うのであります。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 日米安全保障協議会でどういうことをやったかという、ベトナムに関してのお尋ねでございますが、新聞等にも申したように、アメリカは北ベトナムの政府を転覆さすような意思は全然持っていない、ハノイ政府に対して。ただしかし、南ベトナムの独立と自由というものは何代もの大統領に約束したことでこの義務は果たしたい。だから、それ以上のことは考えてはいない。ハノイ政府を転覆さす考えはないのだ。同時にアメリカがそういう約束を途中でほごにして敗退するということは全然あり得ることではない。だから、この真意をハノイによく知ってもらいたいと思うけれども、ハノイがアメリカの真意というものに対してなかなかわかってもらえないのだ。そこに、停戦の機会というものがつかみにくいんだというような話をしたということを言ったわけです。私もこういうふうに思うのです。それは、もしこの戦争が続いていっても、ハノイが南ベトナムを共産化することはこの段階でできないですね。またアメリカの言を待つまでもなく、南ベトナムがハノイのいまの政権を転覆さすようなことはできるわけがないし、そういうことを考えてみると、一九五四年のジュネーブ協定にあるように、十七度線というものを暫定にしても停戦をする一つの境界線にして、そこで停戦をやる。そうして、もう少し安定した基礎の上に立って、将来のベトナムをどうするかということはベトナム人がきめたらいい。しかし、ひとまず戦争を終わらすためには、十七度線というものを境にして、北のほうは共産政権ですから、南は共産政権は困ると言っておるのですから、そういう形で停戦に導いて、戦争の当事者が話し合って、休戦協定を結ぶ、こういうふうな形で解決する以外に基礎的には解決の道はないのではないか。そういうことで、こんなにやってみても、これは軍事的に解決することはできないと思っておる。どうしても政治的に解決するよりない。政治的に解決するとしたならば、一応十七度線というものを暫定的なものであるにしても、そこを境にして一つの平和回復をはかって、そうして今日両方が戦争に使っておるあの大きなエネルギーを国家の建設のために使えば、これはたいへんなものだ。そういうことで、こういう戦争というものを終わらすようなことはできないかということが基本ではないかと思うのでございます。しかし、お互いに両方とも信用しあっていないわけですから、お互いの不信があるわけですから、なかなか額面どおりに受け取らないわけですからね。これを何かアメリカに向かってもものは言わなければならない、ハノイに対してもものは言わなければならない、そういうことで、結局は最後の落ちは、それよりほかにないのですから、戦争を終わらす話し合いがつかないか。日本はもちろんハノイとの間に外交関係はありませんから、なかなか日本がハノイと接触するといっても直接接触の方法はないのですが、第三国もあるわけですから、できるだけそういうことで戦争を早く終わらすということに努力をいままでもしておったし、今後もしていきたい、それがささやかな努力であっても、みなもうだめだ、だめだと言っておってはだめだ、これはおれが解決してあげるという人はだれもいないのですからね、だめだ、だめだというようなことでは何もできないので、みんながこれはだめかもしれないと思いつつも、平和を願う人類の善意というものが、いつまでも絶えることなく、平和探求の努力が続けられておるわけですから、日本もやはりやらなければならない、こう考えておるわけでございます。
  48. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 いま外務大臣は、軍事的に解決することはほとんど不可能であるというふうにおっしゃったのですが、そういうお考えをこの間の協議会でアメリカの代表におっしゃいましたか。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカもまたそう言っておるのですよ。軍事的に解決することはできない。やはり政治的に解決するよりほかにないということがアメリカ全体の意見であります。  それから、ベトナムが極東の範囲というのは、私は範囲だとは言っていないのです。日本を含めて極東の安全に影響を持つ地域である。範囲ということではなくして、ベトナム戦争というものが、日本を含めて極東の安全に対して影響を持っておる、こういうことを私は申したのでございます。やはり問題は、どこまでがどうだということではなしに、日本の安全に対して影響を持つか持たないかということが、ものの判断の出発点ですから、あまりここまでの線は入る入らないということよりも、日本の安全に対する影響、これから考えたら、ベトナム戦争というものが拡大して、これがだんだん、だんだんと戦争がエスカレートすれば、これは当然に日本並びに極東の安全に影響する、こういう考えを持っておるということを申し述べたのであります。
  50. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 ICBMを中国開発するのはきわめて近いうちだ、今年じゅうかもしれないということについては、いかがでございますか。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 これはなかなか、世の中は機密になるわけですから、いつまでというわけにはいかぬが、やはり世界が思っておるよりも中国核兵器開発は速度が早いと見られております。しかし、いつ開発が成功するだろうかということは、ちょっと予測は私の口からは困難でございます。
  52. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 その話は、ひつこいようですが、委員会では出なかったですか。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 この間の委員会には、その話は出ませんでした。
  54. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 外務大臣は、軍事行動をもってしてベトナムの戦争を終結させることはできないと思うというお話があった。それから、中国核兵器開発は、いつというわけにはいかないけれども、普通思われているよりも相当早いであろうというお説の御開陳もあった。そして、これがどんどん発展していくと、日本も非常に危険だということには当然なるであろうというお話もあった。そうすると非常に心配なんですが、そういっている間にも、もう先ほど申し上げましたように、かつては聖地であるといって、とても近所まで爆撃することはできない、それをやればたいへんなことになるといわれたハノイ、ハイフォンも、もうだれも聖地と言う者はいなくなるまでになってきた。ソ連や中国のこれに対する関心も最近非常に激しくなってきたようにも思われる。こういう時点に立って考えてみると、やはり非常な危険を感ずるのですが、日本としては北ベトナムと国交を結ばれておりませんから何もすることはできないような気持ちではおりますけれども、しかし何もしないでいていいものかどうか。一体いま日本は何ができるのだろうか、どうしたらいいのだろうかというようなことについて、私にはいい考えは浮かびませんが、外務省として、外務大臣としては、何かお考えがおありになるかどうか、その点について承りたいと思います。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、停戦、戦争を終わらすということには、一応やはりジュネーブ協定そのものではない、事情が違っておるから、ジュネーブ協定のときの事情とは違いますが、まああそこで一応十七度線を境にしてものを考えようという精神が、暫定的にせよ、出ておるわけですからね、そういうことでひとつ話をつけるということ、戦争を終わらすということに対して、そしてハノイとも何か第三国を通じて連絡はとれないかという努力をすることは、当然だと思います。いろいろ日本外交としても、こんなに近くで戦争が拡大していくことをわれわれが無関心で見のがすわけにはいかぬわけですから、いろいろできないかということで努力しておるのだが、いまはまだ手がかりになるようなことはない。残念ながらないですが、しかし今後もこれは努力を続けていきたいと思っております。
  56. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 時間がありませんから、核拡散防止条約についていろいろ承りたいのですが、先ほど穗積委員からも御質問がありましたので、私が一点だけ伺っておきたいことは、人間が生きていくために行なう経済活動のエネルギー源を、かつて人類は石炭に求め、それが石油にかわり、そしていま核エネルギーにかわろうとしていることは、御承知のとおりであります。したがって、力のある国はもちろん、十分に力を持ち得ない国も、無理をして、原子力の平和利用についてはそれぞれ研究を怠らないでいるのが世界の現状であります。そこで心配なのは、将来このエネルギー源をアメリカやソ連その他核兵器保有国にのみたよらなければならないというような状態にならないか。もしそういうことになるとたいへんなことになるので、悪くいえば、この条約はそういうことが真のねらいなのではないかと言う者もあります。核エネルギーの平和利用についてこの条約が何らの支障にならないという保証があるだろうかどうだろうか、この点について、重複するような感じがいたしますが、もう一ぺん外務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。  それから、日本の電気事業連合会のほうで、IAEAは日本平和利用の施設を、いつでも、どこでも、何でも見る権利がある、そして、何か原子炉からひとりでに出てくる。プルトニウムの行くえを二百グラムまでこまかく調べることができる、だから電気炉もみなとめて、やる、そういうようなことは今後非常な支障を来たすので、先ほど穗積委員からも話がありましたが、ユーラトムのあの西独でやっているような緩和された状態でなければ困るというような意見もあるのでありますが、からめて、これに対して御所見を承りたいと思います。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれもこの核爆発エネルギーが平和利用のために使われるような時代が来れば、これを日本も平等に利用できる機会確保するために、条約の成立に向かってあらゆる努力をしたいと思っております。あらゆる努力をしたい。これは念には念を入れておきたい、そういうことがあった場合にですね。  それからもう一つは、後段でお話のあったIAEAの査察ですね、これはやっぱりユーラトムが——まあブラント氏は私に、査察条件がユーラトムがゆるいからというのでなしに、ヨーロッパの原子力機構としての協力関係を重点に置いておるのだと言っていましたがね。これはやはり日本は、査察基準というものはみな一緒であってほしい、非核保有国の中にまた不平等がつくのは困るので、この査察というものはやはり平等であってほしいというのがわれわれの主張しておる立場でございます。これはどういうふうな草案になるか、今後日本としても努力をしなければならぬ問題点になると考えております。
  58. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 これで最後ですが、沖縄特別委員会ができておりますから沖縄特別委員会で承るのが本旨かとも思いますが、アメリカとの交渉、外交問題に関する沖縄の問題というのは、やはり外務委員会等で承るのがいいのじゃないかと私は個人で思いますので、きわめて簡単に、詰めては沖縄特別委員会でお尋ねしたいと思いますが、沖縄の問題については、アキレス腱にさわらないで議論をしているようなきらいがあって、これではもうどうにもならない。沖縄が日本の安全のために必要であるかどうか、アメリカの基地が必要であるという見地に立って議論をするか、あるいは必要でないという観点に立って議論をするか、そこで大きな違いが出てくると思うのです。われわれは当分の間は必要であるという観点に立って、それじゃ何もしないでいいかというと、そうでない、やはり施政権の部分的返還ということを要求するのがほんとうだと思うのですが、こまかくは沖縄特別委員会で承るとして、外務大臣にこの際承っておきたいことは、裁判権というものに対して、それを全然日本の裁判ができないというようなことをいつまでも続けていくことは、沖縄の人の、ある基地に対する協力ということが薄らいでいくのじゃないか。沖縄の人の協力なくして基地は十分な機能を発揮するということはできないので、せめて普通の犯罪に対する裁判というものの権利を日本が持たなければならぬということは、これだけは要求していいものだと思うのです。時間がありませんから質問が十分にできませんけれども、外務大臣、この点についてはどんなふうにお考えでしょうか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 いまアメリカは、司法に限らず、三権を施政権のもとで持っておるわけですから、したがって、それを、鯨岡君の意見だと分離するという考え——教育権という問題も出てきておるですね。裁判権、教育権、こういう権限の分離返還というものは、いろいろな関連するところがある。それだけ取り出してというのは、なかなかむずかしい問題も具体的には起こってきますので、政府のほうとしては、いまのところ分離返還という考え方でものを考えようという立場ではないのです。何とか全面返還はできぬかということで、政府の方針ですが、沖縄問題というものはあらゆる可能性というものを検討しなければならぬので、いろいろな研究をしてみる題目にはなり得ると思います。しかし、現在のところ、政府は権限の分離返還という立場に立ってアメリカと交渉するという立場ではないであります。しかし、研究はあらゆる可能性を研究してみる必要はある、われわれも研究すべきだと思います。
  60. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 これはもう質問ではありませんが、あの基地が今後も必要だということになってきた場合に、もし分離返還ということでなくて全面返還ということだけだったらやることはないのだと思うのです。研究とおっしゃいましたけれども、それでは何もやることはないんで、分離返還ということを十分に考え、そうして要求し、それをかちとる——と言ってはなんですが、それをとっていくということでなければならぬと思っております。このことについては沖縄特別委員会で承りたいと思います。  終わります。
  61. 福田篤泰

    福田委員長 木原津與志君。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  62. 木原津與志

    ○木原(津)委員 現在アメリカが施政権を行使しておる沖縄の問題について、その施政権行使の基、本的な法的な前提が講和条約第三条に根拠があるとされておる。この講和条約第三条を根本的に再検討する時期に当面来ておるんではないかという点について政府の所信を伺いたいと思うのでございますが、その前に、先ほど条約局長から、穗積委員安保条約の自動的な延長の問題について、従来政府の述べてこられた所見と基本的に違う所信の表明がなされたと私は思う。非常に重大な問題でありまするので、まずその点から外務当局にお伺いをしておきたいと思うのです。  先ほど穗積委員からの大臣に対する質問で、一九七〇年になってさらにその条約を延長する場合においては議会の承認を得なければならぬじゃないかという趣旨質問があったわけです。それに対して、法的に全くそうだというお答えであったが、重大な発言だと思いますので、もう一ぺん少し詳しくその点についてどういう法的根拠があればそういうようなことになるのか、現在の安保条約の第十条の規定からそういうようなあなたのおっしゃるような見解が出てくるのか、その点を初めにお尋ねしておきます。
  63. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は、穗積委員の御質問趣旨は、安保条約の長期固定化ということについて何か日米双方で声明でも出して、実際上安保条約の条項の修正になるようなことをしようというような意見が一部にあるようだが、そういうことについて条約技術的な見地からいってどう思うかというふうに承ったのでございますが、それに対して私はまことに当然のことを申し上げたわけでございまして、法律上の効果を持つようなことをしようとなさるんでございましたら、これは当然国会の承認が要ります、お説のとおりでございますということを申し上げたわけでございます。
  64. 木原津與志

    ○木原(津)委員 一九七〇年になってからそれは自動的に効力が延長するのかどうかということは、法律上重大問題だと思う。そういう場合に日米間でどういう手続を経るのか、経なければならないのかということが穗積委員質問趣旨だったと思うのですが、それについてどういうような御見解を持っておられますか。
  65. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 安保条約というものは、いまの規定によりますと、何もしないでもそのまま効力を持続するわけでございまして、先ほど申し上げましたように、穗積委員の御質問のポイントは、長期固定化ということを何かこそこそやれるのか、国会にもはからないでやれるような構想があるやに聞いておるけれどもという点にあったのでございます。その点に対する私の答えでございまして、いまの条約の解釈といたしましては、一九七〇年にも何もしないでおればそのままずっと有効なのでございます。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 木原津與志

    ○木原(津)委員 大臣にお尋ねいたしますが、一昨日第七回の日米委員会がありました。あの日米委員会の中で、新聞の報道によりますと、ジョンソン大使がこの日米安保条約の効力の問題について発言をしておられるようであります。アメリカの見解としては、この日米安保条約は無期限の条約だ、十年たってから廃棄権が生ずるけれども、一応無期限の条約であるから、一九七〇年が来ても、廃棄の通告をせぬ限り、そのまま条約は存続するのだ、一九七〇年が来たときに効力が消滅をする、あるいは両者間において、日米の当事者間においてあらためてそれに対して意思表示や何か、そういうようなことをする必要はないんだというような趣旨の見解を述べた。それに対して三木大臣もその趣旨に沿うて、日米安保条約を解釈しておられるような趣旨のことが新聞に報道されておりますが、そういう事実があったのかどうか。その点についてのいきさつを大臣から直接お聞きしたいと思います。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 日米安全保障協議会で条約の文書などを読んでおった事実はございます。私もこの条約の第十条を読んで見ますと、これに対して期限がついているとは思わぬ。あたりまえのことで私も同意見であります。これを読んだら、「日本の区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。」と書いてある。だからこの条約には期限がついておるという解釈は、これはだれが見てもこの条約からは出てこない。ただ十年たったら一年の予告で条約の破棄ができるということが第二項についておる。そのときまで効力を有するというか、これを期限をつけられた条約であるとは、これはだれが考えてもそうは解釈できない、この条約からは。私も同意見考えております。
  68. 木原津與志

    ○木原(津)委員 そのお考え政府の公式の見解として聞いてよろしゅうございますか。佐藤内閣の公式見解として聞いていいですか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 条約の効力に対する期限をきめてはいない、こういうことは政府の公式な見解としてお聞きくださってけっこうだと思います。
  70. 木原津與志

    ○木原(津)委員 もしあなたの言われるように、これが無期限の条約だということになれば、一九七〇年に廃棄の通告をせぬ限り、当然効力がそのまま継続しておるので、別に自動延長だとかあるいはこれを固定化するとかいうような問題は起こらない。ところが、国民の間には、あるいは自民党の内部においても、政府・与党の内部においてもそういう解釈をする人と、そうでなくて、あらためて一九七〇年になったら何らかの延長の措置を講じなければならぬというような議論もされておるわけですね。政府がそういうような公式の解釈をしておられるということになれば、そういう問題は、これは雲散霧消すると思うのですが、いかがでしょうか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、この条約をまともに読んだら、だれが見てもそう思います。この条約の解釈として政府がそう考えておるというわけですから、そこでこの条約を、法律的な効果をまた違うものにしようとすれば、改正を必要とするでしょう。しかし、そういうことでなければどうするかという、この問題についてはいろいろ政府・自民党でも検討しようと言っておるわけで、私はどうするという結論をここで申し上げておるのではない。十条の解釈というものが、この条約にひとつの有効期間がついておるという考え方は、ある限られた期間というものがついておるとは、この十条からは考えられないという条約の解釈論を言っておるので、これをどうするかというようなことは、今後検討をいたして、政府態度をきめなければならぬことだと考えております。
  72. 木原津與志

    ○木原(津)委員 政府の公式見解として、この現行の安保条約は無期限の条約だということになれば、そういうことになれば、これは自動延長だとかあるいは固定化するとかいうような、十年たってから固定化しなければならぬとかいうような議論を、これはもうする必要がないと思うのですが、そうでないところに——そうでないところにと申しますのは、いろいろこの条約の解釈、効力の問題についていろいろ解釈のしかたがある。特に安保条約というのは、基地の提供に見られるように一国の主権を制限するというような重大な取りきめがなされておる、こういうような一国の主権を制約をするのについて無期限で、半永久的とも言える無期限の主権の制約ということが、はたして条約として認められるか、あるいは国連憲章の趣旨からいっても、そういうようなことを無制限に認めるという趣旨締結をされたかどうかということが、これは三十五年ですか、あの条約締結のときからこれは問題になってきているわけなんですね。そこで、そういうことから、これは十年の期限つきだ、したがって、政府がこれをそのまま延長するのについては、あらためて両当事国の間で期限の延長についての合意を必要とするのじゃないかというような議論が各界あるいは国民の間でも行なわれてきておる。現に自民党の与党の一部の中でもそういう議論をする人があるわけなんです。われわれ社会党もこの条約は終期は十年、——その終期十年というのは、十年たてば当事国にこれを廃棄する権利ができるということによって十年の期限を持ったものだ。だからあらためて自動延長というようなことでなくて、延長についてあらためて日米間の合意を必要とするという立場を今日まで主張し続けておるのでございますが、自民党のほうでもそういうようなことを言っておる人もある。この点について重ねて、そうではないのだ、政府の公式見解としては無期限の条約であるというふうに解釈をしておられるかということを、もう一回ひとつはっきり大臣の答弁の中で、佐藤内閣の基本的な条約についての見解を明らかにしていただきたい。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 これは無期限という問題でありますが、ここに「国際の平和及び安全の維持のため十分な」「国際連合の措置が効力を生じた」、こういうので何かこれは大きな抽象的であるけれども、期限というものが何も全然無期限に永久だということになると、この解釈としては違うと思いますよ。だから、ここに一つのこういう前提ができた、「国際連合の措置が効力を生じた」というのが、こういうのが多少の期限というものが、これは木原さんの言うように、これは永久に続くのだという、無期限であるとは言えないというのがここにありますね。私のここに言わんとするのは、十年とかそういう限られた年数でこの効力が失うというふうにはこの条約を解釈していないのだ、これは政府の見解でございます。しかし、これはもう永久にいつまでも永久のものかというと、その前に書いてあることが、その期限には多少の関連を持っておることでありますから、永久にいつも変わることないかと言われると、これはそうですと、ちょっと言うのにはこの前のほうがひっかかりますから、十年とか何年とかいう年数を限って効力を有するというふうには、この条約を解釈してない。これは政府全体の見解でございます。
  74. 木原津與志

    ○木原(津)委員 いま大臣の言われるように、国連安全保障措置が効力を発生したと両国が認めるときまで条約が、それが期限だというのでしょう。そうすると、これは無期限の条約でなくて、期限つきの条約と見なければならぬし、その期限つきの期限が大体十年目、十年目にそれを更改するかどうかというような、更改するという趣旨のもとで締結された条約じゃないのですか。それならばこれは無期限の条約でなくて、はっきり期限つきの条約だといわなければならぬと思うのですが、いかがです。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 そんなものじゃないと思いますよ。これは期限を切って、十年たったら効力を失うというなら、この条約は変えなければならぬ。こういう文句を使ってはいけない。だから、そういうふうに十年とか限られた年数でこの効力が失うのだというふうな解釈ではない。そういう解釈をとるなら、この条約は、これはやっぱり変えられなければならぬと思うのであります。
  76. 木原津與志

    ○木原(津)委員 そうじゃないのですよ。少なくとも抽象的に十条の中では国連安全保障措置が効力を発生したと両国が認むるときまでというのを、一応十年の後の廃棄権というものを発生させる、そのけじめを十年というふうに置いて締結をさした、そういうふうに見なければ、主権の制約をそう無制限にいつまでも期限なしに独立国の主権を制約していくというようなことは、私は日米の法のたてまえから、条約のたてまえから、そういったように解釈をすべきじゃないと思うのですが、その点いかがでしょうか。やはり十年目に廃棄権をお互いに持つのだという規定を置いたことは、一応十年を期限として、そしてまだこの国際連合の措置が効力を発生していないという確認の上に立ったら、あらためてそれを延長するかどうかということを両国の協議によってやるのだという趣旨規定がこの十条のすなおな見方じゃないか、私どもはそう思うのですが、いかがでしょう。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、木原さん、もしあなたの言うのだったら、ここに十年と書いておかなければならぬ。だからやはりこの十条を、十年たったらこの条約は効力を失うと解してはいけない。しかし、十年たったときに破棄通告ができるのですから、前段の場合には、国際連合とかいろいろ書いてありますね、もっとあとには、十年たったならばこの破棄通告が一年の予告でできるというのでありますから、そういう意味においては、永久とは言えないのです。どちらかの意思で破棄通告をすれば永久ではなくなるわけですから、そういうことでこの条約自体から、限られた年数の有効期間がついておるという考え方誤りである。しかし、やろうと思えば、十年たったら破棄通告ができるのですから、そういう意味において無期限とは言えない。前段にも、抽象的であるけれども、国際連合の有効的な措置ということも、ある意味において、永久にということを縛っておる文句でもあると思うのです。  ただ、あなたが言われるように、自民党の基本的な考え方は、安全保障というものは非常に国として大事ですから、これがやはり日米の協力によって、日本安全保障という役割りを果たしておるので、こちらがいやでいやでしかたない、主権を制限されておるけれども、それが屈辱的に結んだ条約でという感じではないのですね。やはりこれは日本の安全を守るためにこういう条約をしておるのですから、いやでいやでしかたない、主権も制限されていやだけれども、この条約をしかたなしに結んでおるという感じではないのです。私どもは日米の協力によって日本の安全を保障したいというのです。そのことが、あなたの場合に、この条約の解釈にも多少分かれてくるんじゃないでしょうか。もういやいやだけれども、主権を制限されておるのを、それがしかたないという感じと、われわれはやはり協力して日本の安全を守ることが日本の、安全保障の体制としては一番賢明である、それだから、その点は政策決定じゃないでしょうか。条約論からはあなたの説は出てこない。むしろ政策決定論としてそういう考え方をお持ちになっておるということならわかりますよ。しかし、条約の法律論からは出てこない、こう思うのです。
  78. 木原津與志

    ○木原(津)委員 私は、その法律論からもあるいは政策論からも、こういう基地の提供というような重大な一国の主権を制約するというような条約においては、特に両国の当事国において、無期限というような解釈をとるべきではなくて、これは外交措置としても一定のとき、時期、この場合においては十年で廃棄という規定があるんですから、その十年目、十年目にそういう延長をするか、そのまま効力を持続するかどうかということをあらためて両国で協議をして決定をするということが最も好ましい政治的な措置であり、あるいは条約の解釈上もそういうふうに解釈すべきだという考え方に立っておるわけなんですよ。あなたの言われるように、条約そのものの中からそういう解釈が出てこないというのではない。条約そのものの中からそういう解釈も出てくる。しかも、それが政治的にも好ましい措置であろうと思うのですが、その点について重ねて大臣の御見解をはっきり聞いておいて、先に進みたいと思います。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ重ねての御質問でございけれども、この条約の解釈からは、何年という限られた期限というものは出てこない。日米間が話し合ったりするようなことは、それは必要でしょうよ。しかし、この条約から、もう十年たったら期限が来るから、この有効期限が切れるからということではない。私はそのようにはこの条約は解釈しておりません。そしてまた、安保条約に対しても、それはいろいろな基地の提供もありますけれども、一方においては、アメリカは、いかなる日本に対する攻撃に対しても、日本の防衛の責任を負うておるという点もやはりあわせて考えておく必要があると考えております。
  80. 木原津與志

    ○木原(津)委員 それじゃ施政権問題に入ります。  最初にお尋ねしておきたいことは、現在アメリカが沖縄で施政権を行使しておるその国際法的なあるいは法的根拠は、依然として平和条約第三条のアメリカが唯一の施政権国として国連に信託統治の請求をする、それが可決されるまで沖縄の施政権を行使するということによって施政権が行なわれておるものだということを現在も政府考えておられるのでしょうか。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりでございます。
  82. 木原津與志

    ○木原(津)委員 一昨年の八月ですか、総理が沖縄に行かれて、こういうことを言っておられる。沖縄の問題が解決しなければ戦後は終わらないという有名な発言をされておるのでございますが、講和条約の第三条による信託統治を請求するアメリカの意思、そういった措置がこのアメリカの施政権の唯一の根拠になっておるということになるのでありますが、現在アメリカは、もう信託統治を国連に請求するというような意思を放棄して、はっきりこれは日本領土である、だから、日本に他日返すのだということを何回も——現在のジョンソン大統領、それからさきには、なくなったケネディ大統領も、共同声明あるいはケネディ声明の中でもはっきりそういうことを言っておりますが、この声明を見れば、アメリカは信託統治を請求するという意思なり権利なりを放棄しておるんじゃないでしょうか。放棄しておるということになれば、アメリカの施政権の根拠というものはもうこれはくずれてしまっている。だから、日本は堂々と正面から、第三条に基づいてあるいは潜在主権によって、まっこう切って返してくれろということが言える筋合いであるし、また一国の政府として、当然沖縄の百万の同胞の要望もあることですから、何らかの手順をここにつくって、そうして、もうアメリカの施政権の根拠は、講和条約第三条は変わったのだから、返してくれということを正面切って請求するのに今日は一番いい時期だろうと思うのですが、その点についての外務大臣の御見解はどうです。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 木原さん、アメリカは信託統治の提案を放棄するということを公式に言ったことはまだないのです。またこれは信託統治の義務というものは負うてないわけですからね。私どももいまはもうそんなに回りくどいことをしないで、また条約によって信託統治にもう一ぺんしてというのでなしに、やっぱり直接にアメリカから施政権の返還を求めたい。あんまりこれの条約どおりに順序を追うてどうしてもせんならぬという義務はないのですね。義務はないのに、これがあるからといってそういう順序を踏むようなことでなしに、やはりアメリカの施政権を日本に返還していただく、そういう手続をわれわれとしても好ましいと考えておるわけでございます。
  84. 木原津與志

    ○木原(津)委員 いま大臣から、まだ信託統治を公式に放棄したということをアメリカは言ったことはないと言われるのですが、直接放棄するということばは使ってない。ことばは使ってないけれども、特に私は抜き書きしてまいりましたが、三十七年三月十九日のケネディ声明では、こう言っておるのですよ。「沖縄は日本本土の一部であり、自由世界安全保障上の利益が琉球諸島を日本国の完全な主権のもとに復帰せしめることを許す日を待望しておる。日本の施設下に復帰することになる場合の困難を最も少なくするために」云々というこの三十七年のケネディ声明というのは、はっきり、アメリカの施政権は信託統治はもうやらないのだ、これは日本領土であるから——それまではアメリカは、潜在主権と言っておったのです。日本の主権はもう潜在主権にしかすぎないと言っておったのが、だんだん、だんだん時日の経過によって、三十七年、ケネディは、もうこれは日本に返すのだ、日本の本土の一部だと大統領の声明の中でうたっており、しかも日本の施政下に復帰することになる場合の困難を少なくするために六つの措置をするのだということを声明しておる。その声明の中に、もうアメリカが沖縄の信託統治をする意思はないのだということをはっきり言明しておるというふうに見てもいいのじゃないでしょうか。その点いかがです。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、おそらくアメリカはこれは信託統治にはしようとは考えていないと思いますが、公式にこの権利を——権利というか提案をする権限を放棄するとは、まともには言ってないのです。間接に言えば、アメリカ自身だって、返すときには、信託統治にしてどうというような回りくどい道をしないで日本に施政権を返還したいと考えていると私も思っています。しかし、公式にそれを放棄すると言ったことはないわけでありますから、だからいま言われるように、この三条の状態とは内容に変化が起こっておるではないかというふうに、もし木原さんがそれをつかまえて言おうとしておるならば、それを言えるような公式的な発言はないということでございます。
  86. 木原津與志

    ○木原(津)委員 大臣、それが三木外交でなければならぬでしょう。公式に信託統治は放棄するのだということを言うならば、もう法的根拠はないのだから、アメリカは返さなければいかぬですよ。それを公式にそう言わないで、信託統治の意思はないのだ、沖縄は日本の本土の一部だ、だから返すのだ。で、返しいいようにアメリカは六つの措置で返すことの困難を最も少なくするのだというケネディ大統領の声明があるのですから、それからが外交じゃないのですか。それならばあなたのほうでは、はっきりは言わないけれども、信託統治の意思はない、返すのだというその意思に基づいて、あなたが外交的に、総理と一体となって、沖縄住民の要望に基づいて、外交手段によって返還の措置を講じなければならぬ。これが三木外交の本質なんでしょう。そうでなければならない。それをおやりになる意思があるのだろうと思いますが、もしあるとすれば、沖縄の施政権の返還について今後どういう手順によってやろうとなさるか。その辺現在までやっておられないとするならば、近い将来のうちに自分としてはこういう手順を踏んで返還の請求をしたい。その際にいろいろ問題になってくるのは、安保条約問題だとかあるいは基地の問題が含まってまいりますが、とにかくそういう問題を含めて、どういう外交上の手順を踏んで返還の請求をしようと考えておるか、いっその着手にかかる意思を持っておられるかということをきょうはあなたにお聞きしたい。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 これは日本国民みなひとしく一日も早く沖縄は返してもらいたい、だれもの国民全体の願いであります。しかし、沖縄問題一つのむずかしさというものは、極東全体の安全のために果たしておる沖縄の役割りという問題もあるわけです。だからそういうことを抜きにして——国民の願望からいえば一日も早く返してもらいたいということです。しかし国民の願望と沖縄の持っておる軍事的な役割り、これを一体どう調和さして早期の施政権の返還に持ち込むかというところに沖縄問題のむずかしさがあるので、そういう点でこれはあらゆる機会に、私ばかりでなしに、総理としても、沖縄の早期施政権の返還ということは常にアメリカと会ったときは言わぬときがないくらいであります。しかし、いま言ったようなただ国民の願望だけでもいかぬ、いま言ったような安全上の沖縄に対する役割りというものもありますから、いますぐに沖縄の施政権の全面的返還が達成できるとは私は思わない。あまり甘いことを言って幻想を持つことはよくない。多少の時間がかかる。その時間のかかる間は、これはもうできることは何でもやったらいいというのが私の意見です。そういう最終の目標に向かって近づくことなら何でもやったらいい。小さいことでも、船舶に対する日の丸を掲げるような問題でも、あるいは旅券の問題でも、外交保護権の問題でも、移住の問題でも、これに近づくものなら何でもやったらいい。そういうことで国民の願望と客観的情勢のズレ、それをやはり埋めていく努力が必要だと私は考えております。
  88. 木原津與志

    ○木原(津)委員 近づくことなら何でもやりたいとおっしゃったが、先ほど鯨岡委員からも裁判権の問題があった。先般は森総務長官が沖縄に行ったとき、教育権の返還問題でぶち上げた。ところが、それを、ことしの衆議院選挙のさ中、一月十九日大津の記者会見ですか、佐藤総理は教育権返還なんか、そんなものは考えておらぬ、いかにも全面返還だけが目的だというふうに、教育権の返還は考えておらぬというようなことを言われてから、何か、せっかく教育権の分離返還が国内の世論として盛り上がっておるときに、そういうことを言うものだから、今日これはだめだなということで、うやむやに葬らされてしまっておるような感があるのです。そうすると、あなたの言われることと、佐藤総理のやっていることとは、ちょっと手順が違うようだが、その点、どう考えておられますか。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 何でもやるというというのは、何でもやるといっても、アメリカともうまく話を詰めなければなりませんから、したがって、話がつく問題について小さいことでも努力していこうということであります。この施政権の分離返還というものは一つの権限を分離するというものは、実際問題としていろいろな複雑な問題があるのです。頭で考えたらちょっと簡単なようですけれども、非常に関連するところが多いところですから、政府がこの施政権の権限の分離返還をするんだという旗を掲げて、そして、話し合いをするべくこれはあまりにいろいろ困難な問題を含んでおるので、いろいろ研究することはしなければいかぬし、するけれども、政府の方針として、施政権の分離返還という大きな旗を立てて、対米交渉をするという、そこまで固まった考え方政府考え方としては持っていないということで、研究はいろいろな場合をしてみたいと思っております。
  90. 木原津與志

    ○木原(津)委員 二月十日の読売新聞で私は見たのですが、教育権の分離返還について大浜懇談会というのがありますね。この大浜懇談会の答申を待って、そうして、より広い観点からあらためて、答申を待ってから検討をするという趣旨のことが、二月九日にあなたも含め外務省佐藤総理との間の当面の外交方針の協議の中で決定されたということを新聞で見ました。大浜懇談会の答申がいつごろあるかしりませんが、その答申があった場合においては、それをあなたのほうで早急に具体化して、日米交渉の議題とされる意思がありますかどうか。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、答申が出たら、それを機械的に、衝動的に政府がその答申に沿うてやらなければならぬとは思っていない。やはり政府責任で、長い間の研究ができてきたならば、それは重要な参考にすべきだ、参考にしてみて、政府立場でいろいろ検討を加えて、これは対米交渉の議題にすべきものだという方に達したならば、そういう懇談会を尊重することは当然ですね。しかし、何でもかんでも答申まかせで、答申が出たら衝動的に、そのとおり、使い走りみたいにしていって対米交渉をするという性質のものではない。その答申を重要な参考にして政府判断を加えて対米交渉の議題にする必要があると考えるときにはやるべきである。いま何も出ない前に、出たらすぐそれをアメリカへ行って交渉するかというお尋ねには、やはりそのようにお答えするよりほかに私はないと思います。
  92. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、きょうまず第一に比較的地味な問題ですけれども、重要な問題であるいわゆるケネディラウンドの一応の成功の問題をとらえて、政府に所信をただしたいと思います。外務大臣中心にしながら、しかし同時に非常に関係の深い通産大臣並びに農林大臣の同時出席を求めたのですけれども、きょうは不幸にして衆参両院における各委員会の活動が非常に盛んで、ついにいまになってもとうてい通産、農林両大臣は出られないということで、これはしかしだからといって全部ストップしてしまうのも本意でありませんから、両大臣に対する質問については、これは留保しておきます。  まず、外務大臣質問申し上げたいと思います。最初に、ケネディラウンドが一応成功に終わって、その全体的なおおまかな評価ですね、五年間の過去を顧みて、日本外交の行き方としていろいろ考えるべき点があったのではないか、これからの外交の進め方にも、いろいろ重要な参考になるところがあるのではないか、この意味でおおまかな評価と外交を振り返っての自己反省といいますか、こういうものについて、外務大臣のお考えを伺いまして、それから若干細目にわたって、いろいろ論点を進めてみたいと思います。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 私はケネディラウンドの妥結というものをかなり高く評価しておる。なぜかといえば、あれが、アメリカの通商拡大法の関係から、まとまらなければ、貿易が保護主義的な傾向を帯びざるを得ない。そうなれば、日本のような工業輸出国、工業製品の輸出によって日本の経済のスケールはある程度きまるわけですからね、天井がきまるわけですからね、こんなに貿易に対する依存度の高い日本で、そうして保護主義的な傾向が世界的にあらわれてくるということになれば、長い目で見れば、日本の貿易の拡大に障害になることは明らかであります。だから、いまでは、日本の対米貿易などに対しても、このケネディラウンドというものは、両方がみな評価のしかたがいろいろ違うわけでありますが、全体としてみて、日本に対して、数字の上から見ても、そういう不利なことではない。しかしこれがどう拡大するかということは将来の問題もある。このことによっていままでは海外に貿易ができなかったような物資が、関税が引き下げられることによって国際競争力を持ったりするので、数字の点から詰めることは、やはりしばらく時間がかかると思います。それからアメリカのいわゆる日本に対する貿易上の差別的な待遇、これはまだ解決してないのですからね、今後詰めなければならない。そういうことで、現在のところ、ケネディラウンドの妥結によって日本がどれくらいの利益をあげるかという数字はもっと詰めてみる必要があるけれども、全体とすれば、日本はあのケネディラウンドの妥結ということが不成功に終わるよりも成功したということは、日本の経済の将来にとって非常なプラスではないかという感じがいたしております。そういう意味において、ジュネーブで活躍された全権にも私は敬意を表しておるわけであります。  ただしかし、ここでどういう反省をしておるかということですが、やはり日本がいつとは知らぬうちに、ただ自分のことばかり考えておる立場ではなくして、世界全体の問題に対して責任を負わなければならぬ立場にのし上がってきておる。たとえば、低開発国の問題にしても、これはもうただ受け身でいくわけにはいかない。積極的に日本の方針というものをきめて、そうして世界の潮流というものを日本が受けとめて、そして先に日本の方針をきめて世界に影響力を与えながら、積極的に世界の進歩のために貢献せんならぬような地位に来ておるということですね。ただ受け身で、そのとき、そのときに、さばいていく形ではなくなってきておる。そういう点で今後の外交の姿勢としても日本に直接関係のないような問題についても、世界全体の問題について日本外交というものの方針をあらかじめ前もって検討して明らかにして、むしろ受け身ではなくして、進んで積極的な世界の経済の発展あるいは世界の、平和の維持、こういうものに対して貢献をしなければならないような地位に来ておる。そういう点は必ずしもいままでは十分ではなかった。ひとつこういう交渉を通じて、日本外交に活を入れるの時期であるという反省をいたしておるわけであります。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 私もケネディラウンドが全体としてもしこれが失敗したならばということを考えるならば、やはり日本の経済発展、貿易並びにひいては世界の緊張緩和への足がかりとしては、これはプラスに評価すべきではないか。また、長年の間青木大使その他の日本の全権の諸君がずいぶんいろいろな浮き沈みの中からよく交渉をまとめてきた。さらにまた政府が宮津経企庁官を最後の段階で送って、なかなかよくやられたということは、これは評価していいと思うのです。それから、日本外交の反省ですが、いま三木外務大臣が言われた点、すなわち日本の経済上、貿易上の地位、したがって、日本の、世界の経済の自由化なりあるいは後進国援助、南北問題等に関する責任をさらに痛感したということは、そのとおりだと思うのです。ただ、私はこのケネディラウンドだけに限って言うと、どうもちょっと日本外交のケネディラウンドに対する取り組み方はやや——少なくとも初めのうちは非常に消極的だ。先ほどお話が出たように、日本がエコノミック・アニマルかどうか知りませんが、どうもケネディラウンドに対する取り組み方の基本姿勢が、まあまあ日本は工業国なんだから、どこかが下げてくれるのだから、大体輸出のほうにプラスになるのだ、日本の輸入のほうからいうと、大体食糧、原材料の輸入なんだから相当無税のも多いのだし、ほっておいても損はないやというような、いささかどうも消極的なかまえでなかったか。また日本の経済力自身が過去五年間に自分で驚くくらい急速に伸びてきた点もありますから、そこら辺に対する自覚も足らなかったかもしれないけれども、そういったような消極的態度、あるいはまたEECというものがどのくらいに急速に固まるのか、固まれば固まるほど一種の新しい貿易のリベラリゼーションではなくて、ある意味でのブロック化、そういうふうになるのかならないのか。五年前には何人もまだ予測し得なかった事態であると思うけれども、そしてもしこのEECが大きくなればなるほど、どうもこのケネディラウンドの最後のどたんばの取引というものが、主としてアメリカの農産物をEEC方面に買わせる、そうしてEECの最も得意である製品、特に化学製品等をアメリカに売るという、この二人のジャイアントの取引のほうに振り回されてしまって、存外、五年たって日本の経済的地位がぐんと伸びてきた、その日本のほうがいささかつんぼさじきのほうに置かれて、そしてとうてい日本としては、理屈からいってもまた情からいっても、そのままではのめないような、後進国援助に対する日本の貢献は必要だけれども、穀物協定からの妥協として、しかもEECとアメリカとの妥協が、EECとしては自分のほうの穀物の自給度を相当上げることに制限を設けられては困るから、そっちのほうではアメリカには譲らない。そのかわりどうせEECにしてもイギリスにしても、自分らが比較的近いような後進国は大体小麦なんかを買ったり食ったりする国民だから、小麦も相当買ってそれを援助することはかまわない。これは日本から見れば大体穀物協定に関するいわゆる買い上げ義務ですね。それを日本の外貨まで使って日本が絶対に必要な小麦まであるいはこれに対応する外貨まで使って、しかも日本の一番近い東南アジアではなくて、あるいは西のほうのアジアのインド、パキスタンなんかの援助にプラスになるような穀物の買い上げの義務までへたすればあのままずるずると負わされてしまうのではないか。それでいて、一向に日本の一番重視すべきアメリカとの交渉はむしろ縮小再生産というか、両方からオファーを出したけれども、両方のかけ引きもあってだんだん縮小されちゃって、これもあとで、アメリカとのできた内容についても評価していかなければなりませんけれども、存外、日本がもっと売りたい、少なくともいままで主として売ってきた鉄鋼第一次製品あるいは綿織物あるいは合繊というようなものについては、これは五〇%までとうていいかずに、二〇%、三〇%の引き下げに終わるという、存外、日本の具体的利益というものについては軽視されていると言われてもしかたがないような、最後の段階の取引ははっきりEEC対USA、アメリカとの取引に振り回されちゃった、こういう感じがあるんじゃないか。加えて、いまあなたが言われたような、さらに後進国に対する特恵問題等がそれにプラスして、やはり日本に対する今後の負担として出てくる。だから私がこう申し上げたからといって、全体を否定的に考えるべきだということを言っておるのではございません。しかし、そういう反省があってもいいのではないか。つまりあまりにも消極的なかまえ、そうして最後の段階になって相当あわてた。その結果が必ずしもそう全部が、ハラ色の結果でもないのじゃないか。したがって、やはりこういったような経済外交についてのこれからの進め方についても、やはりわれわれがこの機会にケネディラウンドに対するかまえから足らなかった点というものを反省していくべきじゃないか、かように考えるわけですが、御所見のほどをあらためて伺いたいと思います。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 これはもう曽祢君御承知のように、青木君がこの問題にかかりきりで、牛場君に次官になった辞令を渡すと同時にジュネーブに出張を命じたり、できるだけのことはやったと思います。しかし、経済外交というものは、言われるように、これはそのときということでないのですよ。やはり常にこの問題についても、こっちのほうの利害というばかりではなくて、日本が、世界全体に対して経済でも政治でも相当日本が入り込んでいかなければならぬくらいの日本の地位になってきておるわけですから、だから、そのときになってきてどうというのでなしに、事前にやはり世界が動いておる方向、ことに最後の段階では、言われるように、EECとアメリカとの取引ということになったわけですから、これもやはり経済力、それだけのものを持っておるのですからやむを得ないところがあるが、その中においても、日本が、やはりそのときでなくして、事前にそういうアメリカの方向というものを見きわめて、そして前広く日本自身がその問題に頭を突っ込んでいくという必要は確かにある。これはやはり非常に大きな日本外交交渉ですから、貴重な経験として生かさなければならないというふうに考えます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは少しくどいようですけれども、たとえばEECは、さっきも申し上げたように、とにかく穀物を買わされるのは、自分のほうでもむしろ売りたいくらいですから、国内自給度のほうはけ飛ばしてしまって、これはそういう意味では意外にも非常にみごとな団結をしました。それから一方においてアメリカも相当最後までがんばっていた。いわゆるアメリカン・セリング・プライスというのですか、輸出国の価格でなくてアメリカにおける卸売り価格によって課税する。こういうような実質上の関税値下げに関する問題も、これは相当困難であったものを撤廃させることに成功しておる。そういうようなことでございますから、こういう点から見ても、やはり日本の対米外交上は必ずしもそう満足すべき結果じゃないのじゃないか。  そこでさらに進んで伺いますが、共同声明ですか、コミュニケみたいなものが出ておりますね。あの中にいわゆる反ダンピング条項というようなものが書いてありますね。それからアメリカに対する輸入の量的制限の問題、こういう問題について、確かに関税は下がったけれども、量的制限の問題についてはこの交渉で何らか得るところがあったのかどうか、ここら辺のことについて成果をお教え願いたいと思います。
  98. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生の御質問の点でございますが、一昨日十五日の夜おそく、ガットの事務局長がコミュニケというものを出しました。いま仰せられましたように、アンチダンピングの問題についてもこのコミュニケの中に書いてあるわけであります。このアンチダンピングの問題は、いわゆる関税とは違いまして、関税以外の障壁、いわゆる非関税障壁というもののうちの一つの大きな項目でございます。このほか、先ほどちょっとお触れになりましたが、アメリカン・セリング・プライス、いわゆるASPという制度、あるいは日本との関係におきましては四〇二a条というものがございます。そういう点についてケネディラウンドの交渉の過程におきまして日本の代表団がアメリカ側に強く要請したわけでございまして、アンチダンピングの問題につきましては、ケネディラウンドのいわゆるセクター討議の中におきまして、国際的なアンチダンピングのコードというものをつくろう、各国がそれぞれのやり方であまり怒意的にアンチダンピングの制度を運用しないようにというためにこのコードというものをつくり上げたわけでありまして、この結果によりまして、アメリカの現在問題にしておりますアンチダンピングについての法律の運用というものがかなり改善され得るという期待を私ども持っております。またさらにカナダの場合につきましては、現在のカナダの制度上では、いわゆるアンチダンピングの課税をする場合に、単に公正価格以下で売られているということだけで現在までのところはカナダはアンチダンピングの課税をする仕組みになっておったわけでございますが、今度のアンチダンピングのコードによりまして、単に公正価格以下ということだけではなくて、それプラスその結果によりまして国内の産業が被害を受けている、あるいは被害を受けるおそれがあるという場合にしかできないということになります結果、そういう面におきましても改善されていくのじゃないかというように考えているわけでございます。  それから先ほど御指摘になりました輸入の数量制限のほうの問題でございますが、現在アメリカとの間におきまして明確な形で数量制限されておりますのは、先生御承知のとおり、綿製品でございます。これは綿製品に関します長期国際協定がございまして、それに基づきましてアメリカとの間に二国間の綿製品協定ができております。それによって毎年アメリカに出します綿製品の数量が規制されておるわけでございます。これは国際的な長期綿製品協定に基づく国際的な合意に基づいてやっておるものでございます。そのため日本側から見まして、アメリカが数量的な規制をしているという制度的なものはございませんが、いわゆる自主規制という考え方のものがございます。これにつきましては、約二十品目ばかり自主規制が行なわれております。この自主規制につきましてはいろいろ見方がございまして、日本が自主規制をいたしませんとアメリカ側でアンチダンピングの関税をかけるかもしれない。あるいはエスケープ・クローズをかけるかもしれない。そういう関係からしているものもございます。けれども日本のほうで自主規制をすることによって秩序ある輸出をしよう、自主規制をしないで非常にたくさん急激に進出することによって市場撹乱を起こし、かえって日本の輸出利益にも沿わないという考え方からやっておるものもございます。したがいまして、これは制度的にアメリカから押しつけられた自主規制というふうに考え得るものも若干はあり得ると思いますが、ただいま申し上げましたような輸出秩序の確立という観点からやっておるものがあるということも御了承いただきたいというふうに考えるわけでございます。
  99. 曾禰益

    ○曽祢委員 とにかくアメリカに対してもさらに、関税のほうは下がったけれども、またそのことがいわゆるダンピング法の発動にあったり、あるいはいわゆる自主規制の名における数量制限になったり、それからEECの方でもいろいろ問題があるわけです。単に関税におけるオファーがあった、正式の譲許をもらったからといって、あまりうちょうてんにならずにその他の貿易制限についてももっと力強く大いにやってもらわなければいかぬと思うのです。この点をまず政府に要望しておきます。  それから、食糧援助についてなのですけれども、これもどうもまだ最終的に——これから議定書みたいなものをつくるのですから、むろん現段階においてはまだはっきりしていないということはわかります。たとえば、ある新聞に出ておった青木大使のことばを引用すれば、要するに日本のほうは小麦を買って、それによって援助する、あるいはこれに見合う外貨で、五十億円に相当する外貨で援助するということはやめて、従来やっておったような、肥料、農機具などによる現物援助が認められそうな糸口ができたと非常に遠慮深く遠回しに言っているのですね。私は何もあそこまで最後の段階で話をつけたのだったら、その糸口ができたことをあやしいなんかと言うつもりはない。しかしまだまだこの問題は、はたしてほんとうにクリアーカットにもう済んだと思っていいのか。ほんとうに日本としてはこの議定書の中にはどういう義務あるいは義務免除ができるのか、あるいはそれで日本としては一般的な制限拘束を受けない、そこだけは留保しておいて、それでも国際的には通用する、そのかわり自主的に、いま申し上げたような肥料なり農機具による援助ということでやっていってほんとうに差しつかえないのかどうか、そういう場合に日本が主としてまず第一義的に考える東南アジア諸国ということを中心にやっていいのかどうか、ここら辺はどうなっておるのですか。
  100. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま御指摘の食糧援助の点でございますが、これはケネディラウンドの一環といたしまして穀物協定というものがあるわけでございます。その穀物協定の中で、一つが価格帯の問題でございまして、もう一つが食糧援助の問題でございます。先ほど、たしか私参る前にお話が出たと思いますが、自給率の問題協定からはずされて、結局穀物協定の三つのうち一つが落ちて、二つになったわけでございます。その二つのうち一つが食糧援助でございます。現在十五日の深夜に妥結いたしました大綱によりますと、この穀物協定のもとにおきましては各国が年間四百五十万トンの総額を、たとえばアメリカは四二%でしたか、EECは二三%、日本は五%というようなシェアでもって、小麦または粗粒穀物あるいは現金というものでもってそのシェアの分を援助する。そして援助する先は援助する国自身が指定することができる。そういうような書き方になっておるわけでございます。ところがいま先生御指摘のとおり、日本の場合におきましては、従来食糧援助というものをインドに対して七百万ドルとか、インドネシアに対して百五十万ドルでしたか、というような形で出しております。その場合には、場合によりましてはビルマあるいはタイの米を買って渡しておることもございますし、また肥料とか農薬とか、そういう形で出しておることもあるわけであります。そういう観点もございまして、また穀物協定という商品協定の中で食糧援助という援助をあげるのは本来筋が違うということで、この問題が出始めまして以来ずっと反対してまいって、最後に日本は、したがいまして穀物協定のセクション五というところでございますが、それが食糧援助でございます。そのところにおいては、全面的に留保するということを言いまして、そのかわり日本としては、食糧援助はもちろん大事なことであるから、引き続き食糧援助はいたします。その場合、援助を受ける二国との間の取りきめあるいはその他の方法によって援助をやります。ただ五%という点は日本としてもそれに相当する金額までやることにいたします。第三番目に、こういう毎年やります日本の援助につきましては、将来設立さるべき食糧援助あるいは穀物協定全般を運営する機関ができると思いますが、そこで報告をする。そういう三つの意思を宣明することによりまして、日本が食糧援助のセクション五を留保するかわりにそういうことをするということによりまして、最後の十五日に至りましてそれが大体認められたというわけでございます。しかし、ただいま先生御指摘のとおり、アメリカのほうはそういう日本の意思宣言という形では穀物協定との結びつきが必ずしもはっきりしない、したがってそういう点を含めてもう少し検討したいと言っておりますが、アメリカはそう言いましたけれども、全般の空気は日本のそういうことを認めていいということでもって、ホワイト・ガット事務局長がこれでもって主要な問題は片づいたと言ったわけでございます。しかし、いま申しましたとおり、アメリカのほうは、その結びつきという点につきましてどういうふうに言ってきておりますか、現在まだ公電が入っておりませんが、私どもそれをいま待っておるところであります。問題は、この意思宣言を穀物協定の付属書という形にすべきか、あるいは単にガットの事務局長に対する手紙の中での宣言という形をとるか、今後の問題といたしまして、いろいろな形式、それによって生ずべき義務的な度合いというものもいろいろとニュアンスが違ってまいると思います。私どもの考えでは、義務的な度合いというものを非常に薄めるという考え方でずっとスタートしておるわけでございます。どういう話をアメリカ側とやっておりますか、現在のところではまだはっきりいたしておらない状況でございます。
  101. 曾禰益

    ○曽祢委員 簡単にあれしますけれども、非常に重大な問題ですから、やはりこれを明確にして、いかなる議定書ができて、一般的には食糧援助に関する義務規定がきまり、それを日本がはっきり留保する。留保してもほかの義定書から生まれるその他の権利、利益には一つもマイナスはない。これとは別に、実際上これにかわる措置として、日本のつまり実際上五%に相当する額まで日本が選ぶ方法によって援助をやるということは、これは一方的であろうが約束であろうが、それはかまわないと思うのですがね。それを明確にしないで糸口ができたということだけで、食糧援助問題が解決したなんていって、うちょうてんになっていると、これは甘いように思われる。外務大臣にしっかりこれのめどをつけていただきたいということを申し上げて、先に進みます。  私も時間が制限されているのではしょりますが、全体として輸出、輸入両方について、どうしてもオーストラリアとかカナダの問題が解決されていない、これは一つの大きな課題だろうと思うのですが、ここで輸出、輸入についてのプラス・マイナスをやってみても、まだ私は十分なことはできないと思うのです。また細目のわからない点が多いと思うのです。アメリカのことだけを見ましても、かなり、先ほども申し上げたように、日本が主としていままで重点を置いておったような綿織物、合繊、鉄鋼、こういうのが五〇%いっていないという点で非常に遺憾な点もある。そのかわり乗用車だとかその他、今後の可能性を含んだものについてはかなりいいとか、EECについても同様なことが言えるのじゃないかと思うのです。  そこで、それの功罪の考課表はなかなかむずかしいと思うのですが、ですからそれはやめますけれども、この問題について最後に外務大臣に伺いたいのは、やはり今度のケネディランドの全体を見ての反省とか教訓の中に、大臣も指摘されたように、一つはEECというような一つの新たなるブロックですね。もう一つはアメリカの保護貿易的な傾向、こういうものと戦いながらやっていく。もう一つは、これはある意味で完全なる貿易自由化に対する新しい例外として、どうしても開発途上にある国の産品についての特別な扱いをしてやらなければいけない。これは今度のコミュニケの中にもそういう国に対するオファー等については特別に早く実行してやるとか、いろいろな便宜措置を考えておる。のみならず、一番問題なのが、やはりこれら諸国に対する特恵的な関税の問題があるのですね。これはガット並びにケネディラウンドの形でもきているし、先般の東南アジアの経済閣僚会議においてもこういったような問題がある。  そこで、外務大臣に伺いながら、むしろ決意を伺いたいのは、今度のケネディラウンドの交渉全体を見てもなかなか、日本の経済問題に非常に敏感に響く問題ですから、やはり農業関係をやっている農林大臣としても日本の農業を保護していくという考えが起こるのは当然のことですね、それから通産大臣として見れば、やはり日本の貿易を、輸入の面においても、輸入品からくる競争においても、また日本の輸出の面においても、やはり自国の産品を売り込むということに、あるいは自国の産品に対する外国からの競争に対する自衛ということを考える、これは当然であるけれども、一方ここにどうしても開発途上の国から来る——日本のトランジスタ商人かエコノミック・アニマルか知りませんけれども、どうしてもこれからの日本に対するいろいろな要求ですね、たとえば、むろん国民所得の一%までは当然日本開発途上にある国にもっと有利な、ソフトなローンで売れ、あるいはむしろ頭からの贈与をくれとか、そういう要求とともに、何と言っても特恵関税の問題開発途上の国の原料なら入れてもいいけれども、原料じゃなくて、製品までひとつ買ってくれ、こういう問題が現にあるのですね。そういう場合に、日本の経済構造にも非常に関係のある、内政と外交がそこでもろに競合し合う問題ですから、こういう問題については、外政を担当される大臣としては、なかなか思うようにいかぬことがあると思うのです。しかもなお、こういうことを何とか調整して、ある程度日本の経済構造を無視した外国向けの単なるサービスをやったってこれは意味をなしませんけれども、かといって、そこを調整する大きな手が、内閣の中で、外務大臣中心として打たれなければ、私は口頭禅だと思うのです。開発途上の国に対する日本の援助をどういうふうにやるかという問題は、すべてここにかかってくるのです。究極的には日本の経済構造の、何といいますか、これをもっと近代化することと深くからみ合っているのですから、こういう問題についてひとつ外務大臣、大いに内政面でもがんばることによって、経済外交の実をあげていただきたいと思うのでございますが、これに関する御所見を伺い、あとでごく二、三点だけ核拡散防止条約についてちょっと質問したいと思います。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のように、これはおそらく日本が特恵関税の問題でもこれから一番困難な立場に立つ。これは何かといえば、日本の工業の発展過程が、ちょうどそういう新興諸国と競合するものが多いのです。しかし、自由無差別の原則の旗ばかり立てておっては、日本が孤立してしまうわけです。そこで、非常に国内の産業との調整をしながら、世界の大きな流れに沿うて行かざるを得ない。来年二月にニューデリーである世界貿易開発会議などは、やはりそういう問題が非常に中心の題目になるでしょう。それまでの間に日本態度、しかもその態度は大きな世界の流れもあるのですから、はやりのことばで言えば前向きに検討するよりほかにないわけですからね。それからまた、農業の面においても、東南アジアなどを考えた場合には、いきなり日本の農業と競合するようなものを日本に輸入ということはなかなかすぐにはできませんが、長い目で見れば、いろいろ国際的な分業の考え方もいいんでしょうが、いますぐにはいかないから、どうしても開発輸入をやり、日本の必要なものを現地で開発しながら輸入を拡大していく、そういう努力をしなければ、ただ金の援助や技術の援助ばかりではいけないですからね。貿易の拡大ということがなければ、外貨獲得の手段がないわけですから、そういう点でアジア外交というのは内政面が非常に多いということです。閣僚の間に何かもっと意見の調整をはかるような機関も要るのではないかと思っておるわけです。しかし、そういう機構ばかりをつくるのが能でもないですから、もっと連絡を緊密にしまして、経済閣僚の会議というのはほかにもいろいろあるわけですから。そういうことで、やはり日本の国内ということばかりでなしに、世界の大きく流れつつある歴史の流れ、こういうものを踏まえながら国内の産業政策との調和をはかるために非常な努力をしなければ、やがては後進国の援助、援助といっても、そういうふうな日本ひとりが世界の流れから孤立するようなことでは、アジア外交といってもこれは実を結ぶわけじゃないですから、これはいろいろ曽祢君の言われたことはまことにそのとおりと思って今後私も努力をしてまいりたいと考えております。それを調整しなければ外交はできぬ、こういうところに来ておるというふうに考えております。
  103. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後にいわゆる核拡散防止条約問題ですけれども、これははたして十八日、あしたですが、軍縮委員会が再開壁頭にいきなり新米ソ原案というようなものが出るかどうか、われわれはむろんわかりませんが、たとえばこの問外務大臣特使を出された、日本政府の四点ばかりの重要な要求をもたらした特使を出された、それが帰ってきての報告もあったと思うのですね。それからフォスター氏に来てもらった。これもいろいろ意見の交換があったと思うのです。さらにまた、日本にドイツのブラント外務大臣が来ました。この面においては、われわれがよく言っている非核グループといいますか、通称——少なくとも日本とドイツが、そうどうも世界に向かって共同コミュニケの中で大いに核拡散防止条約について新たなる東京・ボン枢軸ができたなんていうと、ただ鬼面人を驚かすだけで、実際的な効果はマイナスかもしれないから、そうは言わないけれども、特に平和的な利用については、ブラント氏のことばをもってすれば、いわゆる核拡散防止についてはイエスだけれども、核保有国と潜在的核保有国との差別待遇問題についてはバットだ、つまりからいほうですね。やはり潜在的核保有国側が全般的な問題意見が合致するということはないと思うのです。これはあとで特使を出されたその特使の報告を待たずとも、われわれでもわかるような気がするのは、たとえばスウェーデンならスウェーデンはやはり軍縮と並行してやれという点に非常に重点を置くとか、ドイツはドイツで、むしろ安全保障問題ならNATOみたいなものの利益を制限されちゃ困るということのほうが主であって、非同盟諸国に対する考慮のことはあまり本気にならない、平和的開発についてはむしろ積極的にこの条約はそれを奨励するくらいに書かせたいというようなことをちょっと私にも漏らしておりましたけれども、そういう点についてはやはりドイツと日本とが事項別に、平和的利用については潜在的保有国がもっと一緒になって、保有国のわがままを押さえるあるいは差別待遇をつくらせないといったような、そういう意味では日独間の実質的の話し合い、これは相当私は今後とも実りがあるのではないか。ちなみに、ブラント氏が漏らしたことばの中にも、かなり東ヨーロッパ諸国も、本質的にはソ連が核保有国で、自分らは潜在的保有国だという意味で、存外、ドイツとの共通点を訴えている国もあるやに、ちょっと言っておりましたけれども、しかほどさように、やはり潜在的な核保有能力のある国々があらゆる多角的な接触によって、自分らの意見をなるべく通すようにする、こういう努力は大いに積み重ねられていいと思うのです。——自分のほうだけしゃべって恐縮ですけれどもそういう意味で、特使を出されたその総括的な結果、それからフォスター氏とはどういう点について、相当きちんとした話し合いがついたのか、あるいは単なる要望の伝達程度だったのか、それから今後の核拡散防止協定問題について、国内的には、これはまた適当な近い機会にそれらの問題について、野党三党に報告的な相談をされるお考えであるかどうか。国際的には、軍縮会議において、日本の代表を一体どういうふうにしていくか。そういう国際的な面と国内的な面についての今後の外務大臣の方針等をお聞かせ願いたいと思います。
  104. 三木武夫

    三木国務大臣 一つは、大野特使はアメリカですが、ラスク長官、フォスター軍縮長官、これと、——フォスター長官とはかなり時間をかけて、日本立場日本はこういうふうなこの条約に対する見解を持っておるということを述べて、向こうもいろいろ考えを述べ、率直に話し合うことができました。ただしかし、なかなか曽祢君も御承知のように、ソ連との交渉というのがあとに控えておるわけですから、重要な問題になるとコミットできないのですね。アメリカはそういう考えを持っておるけれども、ソ連と話をしてみる必要があるということで、大野特使はいろいろ文書などでは言っておりますが、もう少しふえんして日本立場を説明し、しかもそういうことを頭に入れてフォスター氏は翌日ジュネーブに行ったのですよ。それだけに日本の意向を正しく理解をしてもらうためには効果があったと思っております。  西村特使の場合は、曽祢君の想像のとおり、各国ともやはり関心の持ち方が違うわけですね。スウェーデン軍縮関心を持っておる。インドへ行けば安全保障問題関心を持っておる。ドイツへ行けば平和利用というものに重点を置いて、査察問題、ユーラトムと国際原子力機構との問題、やはり平和利用というものに重点を置いておる。各国とも非常にそのことが、必要は認めるけれども、イエス、バットなんですね。そういうことで、こういう点が満たされなければならぬということで、じかに各国考えておることを聞くことができたということは、これからも連絡のとれる可能性もありますし、それだけに効果のあったものと考えております。  フォスター氏はあの忙しい中に日本へ来て、すぐまた一日泊まって晩帰ったわけですが、かなり長時間、昼めしの時間も、儀礼的なものでなしに、核の話ばかりして昼めしを終わったわけですから、延べ時間にしたら相当長時間になって、率直な話もいろいろ聞けたわけでありますが、日本考えておることを誤りなく伝えたと思います。ざっくばらんに私も言ったわけですから。  そういうことでいまは、十八日、あした一体どうなるかということで、はたして草案が出るものか、そうしたら、ことに米ソの間のいろいろの意見の相違のある第三条というものが一体どういう形で出るかということは、非常な関心を持って見守っておるわけでございます。したがって、この草案が出ますれば、いろいろな報告もいたしたいし、野党の各派の代表者には第二回の会合をいたしたいと考えております。  それから、軍縮委員会に対しては、日本がああいう軍縮委員のメンバーになっておれば、こういう核拡散防止条約にしても、その場で日本がいろいろ発言もできるし、この成り行きというものに対しても、そのメンバーとして影響も与えられるわけですが、まことに残念であるわけですから、これはもうアメリカに対してもソ連に対しても、日本は十八ヵ国軍縮委員会のメンバーになりたいのだ、なってやはり世界軍縮にも貢献をしたいのだ、だから支持してくれということを強く申し入れたわけでございます。何か日本が入ると——トロイカ方式案なんかあるが、もうトロイカ方式なんかやらなくて、入れば日本のでいいじゃないかということで言ってあるのですが、これは即答のできる問題でもないのですが、今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  105. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  106. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君。
  107. 渡部一郎

    ○渡部委員 それではさっそくお伺いをさせていただきます。私は核拡散防止条約につきまして、まず最初にお伺いしたいと思います。  ただいま曽祢さんのお話にもありましたイエス、バットのうちのバットのほうをきょうは少したくさん伺いたい、こう存ずるのでございます。  ただいまフォスター氏との会見の問題につきまして御説明がございましたけれども、ドイツのほうからおいでになりましたブラントさんとの会見の模様等につきまして、各所においてお話が出ておるようでございますが、この際まとめてあわせて御説明を願いたいと思います。
  108. 三木武夫

    三木国務大臣 ブラント氏とは核拡散防止条約ばかりが議題でなかったわけで、日独間の問題あるいは世界一般の問題を議題にして話をしたわけであります。核拡散防止条約もその話の重要な一議題であったことは事実であります。そこで両方の関心が一致したことは、やはり平和利用問題であります。平和利用問題について、ドイツも相当原子力の開発が進んでおるわけで、原子炉なんかも国際入札に入って、そうして大いに原子炉を海外に輸出しようとしておるわけですから、やはり核兵器を持たぬ国としては先頭を切っておるわけですね。日本もまた核兵器は持たない。これはもう二人の意見が一致したのです。核兵器は持たぬ、核兵器開発はやらぬ、これは日独の意見が一致したわけであります。そのかわりに、もうこれだけの核兵器を持とうという考え方を捨てたわけですから、平和利用については、将来このことによって、原子科学、原子産業、こういうものが阻害されるようなことがあっては困るので、この点は念には念を入れて条約の中に反映さそうではないか、連絡もとろうではないかということで、こういう点が一番の意見の一致した点でございます。これはまだ草案が出てまいりませんから、どういうことになるかわからぬが、草案が出ても、そこでイエス、ノーというものをきめるというものでないから、十八ヵ国の軍縮委員会草案がかかって、そして論議されるわけですから、それでいろいろ原案の修正を受ける場合もあるでしょうし、そういうことを見守りながら、今後とも平和利用という面については、日本もドイツも平和利用というものを将来阻害されることのないように、十分連絡をとりながら今後そういう面から見て公正な条約が結ばれることにお互いに努力しようではないか、これが核拡散防止条約については中心問題でありました。
  109. 渡部一郎

    ○渡部委員 ただいまの御発言でよく了解さしていただきましたが、先日特使をお二人お出しになりましたので、その問題につきましては、明日米ソ合議案らしきものが出るか出ないか、それからのお話もあるかとは存じますが、後段の質問にも備えるために、一応その大使の御報告等で明らかになる点がありましたら、ここで明らかにしていただきたいと思います。
  110. 三木武夫

    三木国務大臣 日本立場は、しばしば申し上げておるように、やはりこれが軍縮の第一歩であるべきである、この核拡散防止条約軍縮への第一歩でなければならぬ、こういう点が第一点でございます。第二点は、やはり核を持たない、核兵器を持たない国の安全保障問題というものが考えられなければならぬ。第三点は、平和利用というものが、この条約に加盟したことによっていささかも阻害されるものであってはいけない。第四点は、科学技術の進歩がなかなか激しい時代でありますから、やはりこの条約の運営がどうなっているか、条約のとおりに履行されているか、科学技術の進歩とこの条約とがそぐわないようなことになっていやしないか、そういうことを再審議する機関を五年ごとに持ちたい、こういうことが日本の基礎的な考え方で、これを各国にも日本はこういう考えだということで伝えたわけでございます。
  111. 渡部一郎

    ○渡部委員 それではいよいよバットのほうにかかりますけれども、まず私どもは、この核拡散防止条約の精神につきましては非常に可とするものでございますが、先ほど大臣がおっしゃいましたように、非常に不公平である、不平等である、この感を非常に深くするものでございます。現在まず、その中におきましても米ソ核大国の優位というものが、軍事的に、また経済的に、将来ともにわたって保障されるところの大きな問題があるのではないか。これは言い古された疑問ではありますが、いまだわれわれ国民は納得できないところを感ずるのであります。また米ソ並びに中共及びフランスの場合でありますが、中共及びフランスの場合は特にこの条約に加盟しないことによりまして、おのずから世界の軍事均衡の中にありまして非常に軍事的に大きな力を持つに至ることは明瞭であります。また中共におきましても、これは同等のことが言えると思うのでございます。また、核開発について何ら制御を加えられないこれらの諸国に対しては、非常な優位性が生ずるのではないか。これは何回も取り上げられた疑問だと存ずるのでございまして、おそらくは大臣もこれに対しては同感であろうと察するのでございます。ところが、このような問題考えましたときに、私たちは核拡散防止条約にしからば反対するのが正しいのか、そういう原理的な問題にもう一回なお戻ってこざるを得ないわけでございます。そうすると無制限な核開発というものを続々やってくる。第六、第七、第八の核大国が続々と生じてくる。それはきわめて遺憾であるから、これは核拡散防止条約を結ぶということが平和への入り口であるというのが、大体大臣の申される根本的なお考えであろうと私は思うのでございます。ところが、これをもう一回考えてみますと、ほんとうの平和への入り口になるかどうか、平和への入り口にするためには非常に多くの条件が要るのではないか、これを私は痛感するわけでございます。したがいまして、まじめにお伺いしておるのでございますが、この核大国の優位性がほんとうに世界の平和の将来に対してプラスになるかどうか、その問題について、総括して大臣にお伺いしたいと思うわけであります。
  112. 三木武夫

    三木国務大臣 二つの考え方があると思います。核兵器をどこの国もみな持つ、開発のできるものは持て、そういうことで核兵器を持っておる国が多数にふえて、そのバランスの中に平和が維持できるのだという考え方一つあり得ると思います。一方は、この五ヵ国だけで核兵器というものはもうたくさんだ、だからこれで押えておいて、そうして軍縮ということが、世界的に世論も起こってくるでしょうし、まず第六、第七の核兵器を持つ国を押えて、五ヵ国に押えておいて、そうしてこの五ヵ国の軍縮というものを推進していくほうが実際的ではないかという、二つの考えがあると思う。私はうしろのほうをとるのです。続々ふえて、そのバランスの中に平和が保ち得るという考え方は危険ではないか。だから、むしろ五ヵ国に押えて、五ヵ国の軍縮というものを、段階的にやらざるを得ないでしょうけれども、実際に推し進めていく。そのほうがやはり平和の維持に役立つのではないか、こういう考え方の上に立っておるわけです。だから、そこへきますと、やはりここは一つ政治家判断問題だと私は思うのです。それは私は、核兵器保有国が続々とたくさんにふえて、そのバランスで平和が維持できるよりも、それは戦争を誘発する危険が起こるのではないかという点で、あなたの言われるように実際核保有国は残るのですから、その優位性というものは否定すべくもないのですけれども、しかしそれをできるだけ軍縮の方面に持っていって、核拡散を大体防いでいく、その土俵の中で核軍縮をやる、こういうことで現実の運ばし方としては核戦争防止に役立つのではないか、これが私の基本的な考え方立場でございます。
  113. 渡部一郎

    ○渡部委員 これらの核五国が、いま言われましたこれから核軍縮の方向へ向かっていけば、それは大きな世界平和への足がかりになることは確かだと思います。その五ヵ国が核軍縮に向かう目安があるかどうか、その点については、私は非常に大きな憂いを感ずるのでございます。大臣はその点についてどういう対策を立てられたか私は存じませんが、今回の核拡散防止条約に関するいろいろな折衝等を拝見し、また報道等を見ますと、核拡散防止条約においては、何としてもこの核大国の善意に信頼するような条約であるというのが偽らない私の評価でございます。善意を持ってこの五国がわれわれを見守ってくれればいいであろうけれども、見守らない場合はどうなるか、保障はまずないと思うのでございます。そして今回の核拡散防止条約につきましては、さきの質問におきましても、賢明な委員からの御質問がありました際、大臣はこの核拡散防止条約に続いて核軍縮の方向へ行こうということは、条約本文の中ではなく、そのような精神というものが前文の中に反映されるようなお話がございましたが、それだけではほんとうの核軍縮に対する保障とはなり得ないのではないか。そうしますと、私はこの際日本外交陣がとるべき態度は、世界の平和に対してまことに重大な立場をいまや占めるのであると思うのでございまして、将来のこれら五国に対する核軍縮の方向として、いかなる方途、いかなる考えを持って見通しを立てられているか、それについてお答えをいただきたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれ、やはり核軍縮規定本文の中に入れたほうがいいと思っているのです。しかし、これが本文の中に入るというようなことはいろいろむずかしいような情勢も生まれておるのですが、これは草案を見てみなければわからない。しかし、少なくとも核保有国軍縮を推進していくんだ、核兵器の全面破棄に向かって軍縮を進めていくんだというその意思は明らかにされなければ、これは問題にならぬ、こう考えております。しかし、これがどのような形でこの条約の中にその意思があらわれるかということは、草案を見なければわからない。ことに中共、フランスもこれになかなか入らない可能性というものが非常に多いですからね。そういう点で軍縮という問題もやはりみなが入って、核保有国間だけの軍縮といものは、やはり相互のバランスもございましょうから、総体的なバランスでなければ、一方だけの軍縮を強制するというわけにもいかぬわけですから、そういう点でいろいろ困難がありますね。不完全であることはやはりそのとおりだと思いますが、まあしかし草案などを見まして、あるいはまた再審議をする。条項など等もにらみ合わせてみて、ただ善意を信頼するというようなことだけでなしに、軍縮に対する手がかりはこの条約の中に入れなければいけないと考えております。
  115. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はただいまの大臣の御意見に全く賛成でございまして、その続きが聞きたいと思って御質問申し上げたわけでございます。もちろんきょうは時間もあまりございませんので、回答をこの次にさしていただいて、具体的な提案につき、私どもが安心のできる対策につき外務大臣の見解を聞かしていただきたいと私は思うのでございます。  第一次世界大戦の後におきまして、軍縮が起こりまして・英国とドイツが海軍軍縮協定を結び、また第二次世界大戦の前には有名な日本、アメリカ、イギリス、フランス等におけるところの軍縮協定が海軍について行なわれたことは、よく知られているとおりでございます。ところが、その際におきましても、今回の核軍縮協定とちょっと似たところを感ずるのであります。それはなぜかと申しますと、この軍縮協定は当時強大な軍備を持っていた諸国のその一番侵略戦争の道具とされるであろう海軍について行なわれたのでございましたけれども、陸軍について、また空軍については、これに対して制御する協定は結ばれませんでした。しかもこの協定の中において、この協定の中に入らなかった国の強大な軍事力を見て、ついに強力な軍備拡張競争が起こって、この二協定はこなごなに砕けてしまい、悲惨なる第二次大戦を生んだことは御承知のとおりだろうと私は存ずるのでございます。私が、中共及びフランスの核協定に参加しない問題につきまして非常に心配をいたしている理由もここにあるのでございまして、歴史は繰り返すというような単純なことばではとうてい話はいかぬとは思いますけれども、正面切って軍縮のこれだけの大きな世界的な協定に参加しない強大国がある、それに対して加盟しない強大国があるとき、これに対して適切な対案がたければ、世界的な締めつけというものがなければ、これはもうどうすることもできないであろう。これは常識的にいって明らかであろうと思うのでございます。その点に対して大臣の見通しを一応お伺いしたいと思います。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、いま御指摘のように、単に核兵器ばかりでなしに、通常兵器も加えて全面軍縮協定全面軍縮条約といいますか、そういうものができてやることが本筋でしょうね。核兵器ばかりが縮小されて、地上の通常兵器の軍隊、とれが縮小されなければ軍縮の目的は完全に達成できませんからね。そういう点で、軍縮委員会の役割りはこれから非常に多いと思います。日本も入りたいと思うのは、こういう点から入りたいと思うわけであります。したがって、中共もフランスもやはりこの軍縮委員会に入って——これは世界の世論ですからね。軍縮をやってもらいたいというのは世界の意向でありますから。次々に軍備拡充競争をやれば、それは御指摘のように世界の平和のためには、平和の増進にならぬことは明らかですからね。だからそういう意味で、この核拡散防止条約にも中共も入り、また軍縮委員会等にも中共が入ってくるように、常に入ってくる道は残されなければならぬし、入るような努力はやらなければならぬというのは、御指摘のとおりにわれわれも考えております。
  117. 渡部一郎

    ○渡部委員 核大国のこういう非常な優位性やら、中国やフランスが加盟しないことやら、あるいは平和利用に対して現在時点において大きな制限が考えられることやら、査察問題がある点やら、いろいろな問題がございますが、こういう問題につきまして、私は核兵器拡散防止決議が一九六五年十一月十五日の国連総会で行なわれたことを想起したいと存ずるのでございます。それは十八ヵ国軍縮委員会の中立八ヵ国が提案して二ヵ条の話をきめた。一つは、すべての国に対し核拡散防止条約の早期締結を必要とするすべての措置をとるよう要請する。二つは、十八ヵ国軍縮委員会に対し、早急にその会議を再開し、次の主要原則に基づいて核拡散防止条約について交渉するよう要請する。その次の原則の中に、核拡散防止条約には抜け道を設けない。第二は、核保有国非核保有国相互間の責任義務の均衡をはかること、また三番目には、同条約は軍備全廃特に核軍備撤廃の第一歩とすること、こういうようなまことにわれわれにとって現在核拡散防止条約の一番問題点とされている問題がここに表示されているのを感ずるのでございます。私たちは、このような核兵器拡散防止決議に対して今回の核拡散防止条約がまことにふできなのではないかという不安と批判を持つものでありますが、これに対してどう外務大臣考えられるか。また、私どものこのイエス、バットのバットのほうが、実はイエスバットのバットではなくて、ほんとうは国連総会決議に基づいた正しい主張であって、むしろ核兵器拡散防止条約に対するバットというものはほんとうは核兵器拡散防止決議に対するイエスの市である、こちらのほうがまともな意見なのであると私は感ずるのでございます。したがいまして、国際世論を背景とし、また国連総会決議を背景として、日本外交陣なかんずく外務大臣はこの問題に対してより強力に外交努力を傾けられることが正しいのではないか、私はそのように信ずるのでございますが、外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘になったのは国連第二十回総会の決議でありますが、この決議は一国も反対のない決議であります。賛成十三ヵ国、棄権が五ヵ国ございますが、だれも反対したものはない。全くこのとおりだと思いますね。核拡散防止条約はこの精神そのものでなくてはならぬ。この決議に盛られておる精神が核拡散防止条約の中に実現することを私も強く希望するものでございます。
  119. 渡部一郎

    ○渡部委員 外務大臣にお答えするような言い方ですけれども、次に、そういうような立場から、私たちはこの核拡散防止条約に対して大きな不安を持っていることは国際的な世論の一致するところであるという自信のもとに、次の問題についてこれからの核拡散防止条約に対する態度を取りきめてまいるのが至当であろうと私は信ずるのでございます。  きょうはもうあまり時間がございませんので、あと少々お伺いして終わりとしたいと存ずるのでございますが、査察問題でございます。現在原子力業界におきましては今回の核拡散防止条約によって決定せられるであろう査察問題に対して非常に強い要望が持たれているようでございまして、外務当局なかんずく外務大臣との熱烈な懇切なる話し合いというものを要望しているようでございます。私は寡聞にして存じないのでございますが、外務大臣は関係業者と十分な懇談をされていらっしゃるかどうか。また、いらっしゃらないとすれば、今後十分の業界とのお話し合いもまた必要なことではないかと感ずるのでございますが、いかがでありましょうか。
  120. 三木武夫

    三木国務大臣 個々にはいろいろ話をする場合がありますが、全体として、業界全体の代表者という形においては話はいたしておりません。これはやはり草案でも出れば、われわれも直接話をして、そして原子力産業界の意見も聞きたいと思っております。またアメリカからも専門家なども呼んで、そういう場面で検討する機会もつくりたい。この条約というものに対する平和利用への影響というものについてはできるだけのことをしたい、みなが心配のないように、不安のないようにできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  121. 渡部一郎

    ○渡部委員 現在一番問題とされておりますのは、査察の条項というものが、今日行なわれておりますものが国際原子力機関、IAEAによる査察とユーラトムによる査察と第三者による査察と、三通りがどうやら提案されているようであります。国際原子力機関による査察核拡散防止条約によるところの現在まで明らかにされているところの草案に示されているところでございますし、ユーラトムによるものはヨーロッパの西欧諸国、なかんずくドイツ、イタリア等中心として、国際原子力機関における査察というものがまことにきびしく、また核物質の受け渡し等についてもまことに不自由である。また原子力機構が国連下部機関であるがために、各国情報機関となっておるおそれがある等の問題で、西欧においてはユーラトムによるところの査察というものが強く要請されているやに私どもは伺っているのであります。新聞の報ずるところによりますと、外務大臣は、もしも西欧のグループがユーラトムによるところの比較的おだやかな査察、欧州人による欧州人の原子力機構の査察ということが行なわれるのであるならば、当然日本としても同じような平等な査察を受けるために、国際原子力機関による査察ではなく、ユーラトム並みの標準によるところの査察を要望したいというような御意見を表明されているやに伺っておるのであります。これについて御真意を伺っておきたいと存ずるのであります。  また、日本の業界におきましては、欧州においてユーラトムによるところの査察が行なわれるのならば、日本においてはユーラトムに準ずる第三者による査察を行なうのが正しいのではないか、こういうふうに要望しておるのでございます。この両方の問題につきまして御意見を承りたいと存じます。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこの査察問題は、国際原子力機構がやったらいいと思っているのです。だから別に何か査察の機関をアジアにつくって、それでやるという考え方は私は持っていないわけです。あなたの言われるのは、アジアに何か日本査察機関を別につくって、ユーラトムでもなければ国際原子力機構でもない、別の何か査察機関をつくれというお話ですが、私自身はそういう考えは持っていないのです。だから国際原子力機構の査察でいい。けれどもその査察基準などは差があってはいけないのじゃないか。それはやはり世界的に平等な査察で、私は核保有国査察を受けたらいいではないか、平和利用については。だからやっぱり非核保有国査察基準というものがみな違うということでは困る。査察基準というものは国際的にやはり同じような基準でやるべきではないか、これが基本的な考えで、別に何か日本のために査察の機関をつくるとうい考え方は、そういう発言もしたことはないのでございます。
  123. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは、核の問題につきましては、原子力委員長やその他の関係の方々をお招きしたはずでございましたが、おいでになっておりませんし、また外務大臣は先ほどから長時間にわたっていろいろお話もしていただきましたので、大体この辺で私は締めくくりにしたいと存ずるのでございます。  最後に一言申し上げておきたいことがございます。それはこの核拡散防止条約について、先ほどから外務大臣が大使に命じて各国に要望なさった幾つかの問題がございました。軍備への第一歩であるとか、核兵器を持たない国に対する安全保障であるとか、平和利用が自由に行なわれるべきであるとか、あるいはこの条約の更新期を五年ごとに行なうとか、こういうようなテーマがございました。私はまだこれにつけ加えてもいいと思うのでございますが、とりあえずこういう問題がことごとくだめになった場合、そういう場合でも、核拡散防止条約を多少意義ありとして、外務大臣はこれを推進なさるおつもりがあるかどうか。また核軍縮というものに対する保障が、条文の中において、美辞麗句ではうたわれておっても、何ら核軍縮に対する強い第一歩とはならないで、単なることばで終わるような場合が来たとしても、この核拡散防止条約を進める方向に向かって大臣はなさるかどうか、私は大きな注目をもって政府外交姿勢を見ておるわけでございます。したがいまして、このイエス、バットの、バットの質問の最後でありますが、これについてお答えを願いたいと存じます。
  124. 三木武夫

    三木国務大臣 日本が要求しておりまする幾つかの項目が全部条約の中に反映しないということならば、これはだれも、世界の中でこの条約を支持する国はほとんどないでしょうね。日本の言っておることは、日本のエゴイズムから出てきておるのではないのです。公平な立場から見てこういうことが条約の中に取り入れられなければならぬということを言っているのですから、これが全然問題にならぬというなら、この条約は成立をしないと私は思っております。だからどの程度反映するかというところに最後にどうするかという判断があるので、全然こういう考え方が反映しないということはあり得ません。あり得ないと思っています。ただ軍縮というのは、いま言ったように、中共などもなかなかこの条約に入ってこない可能性もありますし、軍事バランスというものもあろうし、通常兵器との関連もあろうし、これはもう一気に軍縮を進めていくということは、実際問題として困難で、ある程度の段階を置かざるを得ないと思います。それについて、この条約の中に何らかの意思表示は私はあると思うのです。この条約を手がかりにして、そしてこの条約を結んだ国国が、軍縮を推進するために努力していくよりほかにないと思うのです。軍縮をやれという声は世界の声なんですからね。だから、ただ美辞麗句に終わらせるか、これがやはり条約の何らかの手がかりができることは明らかですから、世界でやかましくみな各国とも言っているわけですから、それを手がかりにして、美辞麗句に終わらさないように、この軍縮委員会を舞台にして軍縮を推進していく努力もしなければ、ただ美辞麗句に終わらすということは、核保有国ばかりの責任でもなく、非核保有国もその努力をやらなければならぬのではないか。手がかりがあるのですから、必ずできるでしょう。そういうふうな努力を積み上げていくならば、軍縮というものの第一歩になり得るのではないか、こう私は判断をしておるわけでございます。
  125. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明後十九日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会