○曽祢委員 私もケネディラウンドが全体としてもしこれが失敗したならばということを
考えるならば、やはり
日本の経済発展、貿易並びにひいては
世界の緊張緩和への足がかりとしては、これはプラスに評価すべきではないか。また、長年の間青木大使その他の
日本の全権の諸君がずいぶんいろいろな浮き沈みの中からよく交渉をまとめてきた。さらにまた
政府が宮津経企庁官を最後の
段階で送って、なかなかよくやられたということは、これは評価していいと思うのです。それから、
日本の
外交の反省ですが、いま
三木外務大臣が言われた点、すなわち
日本の経済上、貿易上の地位、したがって、
日本の、
世界の経済の自由化なりあるいは後進国援助、南北
問題等に関する
責任をさらに痛感したということは、そのとおりだと思うのです。ただ、私はこのケネディラウンドだけに限って言うと、どうもちょっと
日本の
外交のケネディラウンドに対する取り組み方はやや
——少なくとも初めのうちは非常に消極的だ。先ほどお話が出たように、
日本がエコノミック・アニマルかどうか知りませんが、どうもケネディラウンドに対する取り組み方の基本姿勢が、まあまあ
日本は工業国なんだから、どこかが下げてくれるのだから、大体輸出のほうにプラスになるのだ、
日本の輸入のほうからいうと、大体食糧、原材料の輸入なんだから相当無税のも多いのだし、ほっておいても損はないやというような、いささかどうも消極的なかまえでなかったか。また
日本の経済力自身が過去五年間に自分で驚くくらい急速に伸びてきた点もありますから、そこら辺に対する自覚も足らなかったかもしれないけれども、そういったような消極的
態度、あるいはまたEECというものがどのくらいに急速に固まるのか、固まれば固まるほど一種の新しい貿易のリベラリゼーションではなくて、ある
意味でのブロック化、そういうふうになるのかならないのか。五年前には何人もまだ予測し得なかった事態であると思うけれども、そしてもしこのEECが大きくなればなるほど、どうもこのケネディラウンドの最後のどたんばの取引というものが、主としてアメリカの農産物をEEC方面に買わせる、そうしてEECの最も得意である製品、特に化学製品等をアメリカに売るという、この二人のジャイアントの取引のほうに振り回されてしまって、存外、五年たって
日本の経済的地位がぐんと伸びてきた、その
日本のほうがいささかつんぼさじきのほうに置かれて、そしてとうてい
日本としては、理屈からいってもまた情からいっても、そのままではのめないような、後進国援助に対する
日本の貢献は必要だけれども、穀物
協定からの妥協として、しかもEECとアメリカとの妥協が、EECとしては自分のほうの穀物の自給度を相当上げることに制限を設けられては困るから、そっちのほうではアメリカには譲らない。そのかわりどうせEECにしてもイギリスにしても、自分らが比較的近いような後進国は大体小麦なんかを買ったり食ったりする
国民だから、小麦も相当買ってそれを援助することはかまわない。これは
日本から見れば大体穀物
協定に関するいわゆる買い上げ
義務ですね。それを
日本の外貨まで使って
日本が絶対に必要な小麦まであるいはこれに対応する外貨まで使って、しかも
日本の一番近い東南
アジアではなくて、あるいは西のほうの
アジアのインド、パキスタンなんかの援助にプラスになるような穀物の買い上げの
義務までへたすればあのままずるずると負わされてしまうのではないか。それでいて、一向に
日本の一番重視すべきアメリカとの交渉はむしろ
縮小再生産というか、両方からオファーを出したけれども、両方のかけ引きもあってだんだん
縮小されちゃって、これもあとで、アメリカとのできた
内容についても評価していかなければなりませんけれども、存外、
日本がもっと売りたい、少なくともいままで主として売ってきた鉄鋼第一次製品あるいは綿織物あるいは合繊というようなものについては、これは五〇%までとうていいかずに、二〇%、三〇%の引き下げに終わるという、存外、
日本の具体的利益というものについては軽視されていると言われてもしかたがないような、最後の
段階の取引ははっきりEEC対USA、アメリカとの取引に振り回されちゃった、こういう感じがあるんじゃないか。加えて、いまあなたが言われたような、さらに後進国に対する特恵
問題等がそれにプラスして、やはり
日本に対する今後の負担として出てくる。だから私がこう申し上げたからといって、全体を否定的に
考えるべきだということを言っておるのではございません。しかし、そういう反省があってもいいのではないか。つまりあまりにも消極的なかまえ、そうして最後の
段階になって相当あわてた。その結果が必ずしもそう全部が、ハラ色の結果でもないのじゃないか。したがって、やはりこういったような経済
外交についてのこれからの進め方についても、やはりわれわれがこの
機会にケネディラウンドに対するかまえから足らなかった点というものを反省していくべきじゃないか、かように
考えるわけですが、御所見のほどをあらためて伺いたいと思います。