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田中(榮)
政府委員 ただいま議題となりました
航空業務に関する
日本国政府と
シンガポール共和国政府との間の
協定の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
日本航空株式
会社は、昭和三十三年にシンガポールへの運航を開始し、昭和三十七年に路線をジャカルタまで延長して現在に至っております。このシンガポールへの乗り入れば、当初わが国と英国との間の航空
協定に基づいて行なわれ、また、昭和四十年以降は、わが国とマレーシアとの間の航空
協定に基づいて行なわれてきたものでありますが、昭和四十一年五月二十八日、シンガポール
政府は、わが国に対し、同国のマレーシアからの独立及びマレーシア航空、本航空
会社は、その後マレーシア・シンガポール航空と改称した。回航空
会社の共同運営に関するシンガポール・マレーシア間の
協定の
締結の結果、
日本・マレーシア
協定上のシンガポール
政府の義務を同日より一年後に終止させたい旨及びそれまでにわが国との間に新たな航空
協定を
締結したい旨を通報越しました。よって、
政府は、昭和四十一年十二月以降シンガポール
政府と新
協定締結のための
交渉を行ない、その結果、
協定案文について合意が成立しましたので、昭和四十二年二月十四日にシンガポールでこの
協定の
署名を行なった次第であります。
この
協定は、わが国とシンガポールとの間の定期
航空業務について取りきめることを
目的とし、業務の開始及び運営についての手続と条件とを
規定するとともに、
両国の航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めているものでありまして、わが国がこれまでに
締結した多くの航空
協定と形式においても内容においてもほぼ同一であります。
この
協定により、
両国航空企業の
相互乗り入れが確保されるのみならず、わが国とシンガポールとの間の
友好関係も一層促進されることが期待されます。
よって、ここにこの
協定の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止に関する
国際条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
この
条約は、船舶から排出される油による海水の汚濁を防止するための措置を
各国が協調してとることを
目的として、一九五四年四月二十六日から五月十二日までロンドンで開催された国際
会議において採択されたもので、船舶からの油の排出の規制、港湾の廃油処理施設の整備等の措置を
締約国がとるべきことを
規定しております。
この
条約は、一九五八年七月二十六日に効力を生じましたが、その後、一九六二年三月二十六日から四月十三日までロンドンで開催された締約
政府間の
会議において大幅に改正され、この改正も、本年五月十人目に効力を生ずることとなっております。
わが国は、一九五四年の
会議に参加し、同年八月十一日にこの
条約に
署名しておりますが、
条約を実施するために必要な
国内体制の整備に時日を要し、その受諾がおくれておりました。
今般、
条約の
規定を実施し得るよう
国内体制を整備する見通しがつきましたので、世界の主要海運国の
一つであるわが国といたしましては、この
条約の当事国となり、諸
外国と協調して海水汚濁を防止するための措置をとることが望ましいと考えられます。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、大西洋の
まぐろ類の保存のための
国際条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
この
条約は、大西洋のマグロ類の資源を最大の持続的漁獲が可能な水準に維持することを
目的とするもので、昨年五月リオデジャネイロで国際連合食糧
農業機関主催のもとに開催された全権代表
会議において採択されたものであります。
この
条約は、全
締約国の代表により構成される大西洋
まぐろ類保存国際
委員会と称する
委員会を設置すること、同
委員会は、調査、研究及び勧告を行ない得ること、
締約国は、この
条約を実施するために必要な措置をとること等を
規定しております。
わが国は、世界第一のマグロ
漁業国であり、かつ、従来よりこの
条約の作成及び採択に積極的に参画してまいりましたが、この
条約の当事国となることによりまして、マグロ
漁業における国際協調に貢献することになるのみならず、将来におけるわが国のマグロ
漁業の安定した
発展をはかることができると考える次第であります。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、
国家と他の
国家の
国民との間の
投資紛争の解決に関する
条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
この
条約は、国際的な民間投資に関連して
国家と他の
国家の
国民との間に生ずる紛争を付託することができる国際的な調停または仲裁のための施設を設けるもので、一昨年三月十八日ワシントンで開催された世銀
理事会がそのテキストを作成したものであります。
この
条約は、
投資紛争解決国際
センターの設立、組織及び財政、
センターに対する特権免除、
センターの管轄、調停手続及び仲裁手続、仲裁判断の
締約国による
承認及び執行等について
規定しております。この
条約は、その
規定に従って、
署名国の批准書で二十番目のものが寄託された日の後三十日が経過した昨年十月十四日に効力を生じました。
この
条約は、民間資本の国際的移動における投資環境の改善という観点から、意義が大きいものと考えられますので、この国際的な紛争解決のための制度の
発展にわが国が協力することは妥当であり、また、開発途上の国の
経済開発に貢献する民間の海外投資が増大することを希望するわが国としては、
国民が
投資紛争解決国際
センターの施設を
利用することができるようにすることにより、この海外投資が促進されることを期待するので、この
条約に参加することはきわめて望ましいと考えられます。
よって、ここに、この
協定の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、
国際法定計量機関を設立する
条約の改正の受諾について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
昭和三十年十月にパリで作成されたこの
条約は、計量に関する諸問題、特に計量器類の使用に伴って生ずる
技術上、行政上の諸問題を国際間で統一的に解決することを
目的とする
国際法定計量機関の設立、機構、任務、事業等について定めたものでありますが、この
機関は、現在英、仏、ソ連等三十三ヵ国が加盟しており、すでにその設立後約十年間に多くの業績をあげております。
この
機関の執行
機関である国際法定計量
委員会は二十人以内の
委員で構成されることになっていますが、このたび、この
機関の業務を一そう効果的かつ円滑に行なうようにするため、同
委員会を全加盟国の代表者で構成するように
条約を改正することになりました。
わが国は、昭和三十六年に
条約に加入して以来積極的にその事業に参加して、計量の分野における国際協力に寄与するとともに、わが国の計量制度の改善、計量器の
技術的進歩等につとめておりまして、わが国がこの機構を改善するためのこのたびの
条約改正を受諾することはきわめて有意義と存ぜられます。
よって、ここに、この改正の受諾について御
承認を求める次第であります。
以上五件について、何とぞ御審議の上、すみやかに御
承認あらんことを希望いたします。
続きまして、
旅券法の特例に関する
法律案の提案理由を説明いたします。
この
法律案は、昨年五月九日開催されました第九回日米
協議委員会におきまして、
日本政府南方連絡事務所において、沖縄に居住する
日本国民に対し
日本旅券を発給することについて合意が行なわれ、その後事務的細目に関する日米間の打ち合わせを終えたことに基づき、本件実施に必要な
旅券法の特例を定めること及び沖縄から本邦へ渡航する者に対する身分証明書の発給について、定めること等をその内容としております。
まず、
旅券法の特例について説明いたします。
第一は、沖縄住民は従来
日本旅券を取得するためには、一たん本邦へ渡航して通常の手続により旅券の発給を受けるか、あるいは米民
政府発行の身分証明書により
外国へ渡航後わが国の在外公館で旅券の発給を受けるかのいずれかの方法によらなければならなかったため、種々の不便がありました。そこで、この点を是正し、今後は沖縄住民が沖縄を出域するときから
日本国当局の発給する旅券を所持し得るように、旅券発給手続の特例を定めたものであります。この結果、沖縄出域の当初から沖縄住民は
日本国民であることが明らかにされた公文書を携行することになります。すなわち、旅券の発給申請の受理及び交付は、一般に都道府県知事または領事官が行なうこととなっておりますが、沖縄においては、
日本政府南方連絡事務所長がこれを行なうこととしたこと、沖縄の地理的
事情及び交通
事情を考慮いたしまして本人の出頭を場合により免除できるようにしたこと、及び米国側が沖縄の出入域管理権を今後も保持することとなっている
関係上、沖縄の出域許可に関する書類の提出を必要とされる場合のあるととを
規定したこと、並びに沖縄においても
外国との間を数次往復する必要のある者に対しては、数次往復用の旅券を発給できるようにしたこと等であります。
第二は、旅券発給等の権限に関するものでありまして、沖縄において発給する旅券は、外務大臣を発行権者としております。したがって、これらの旅券は
日本国外務大臣の名義により発行されることとなりますが、これは沖縄住民の本土との連帯意識を尊重するとともに、
日本国の権限ある当局を発行権者とすることにより、渡航文書としての国際的通用性を確保するよう考慮したものであります。
他方、
現地における旅券行政を円滑、適切に実施できるよう
旅券法上定められた外務大臣の権限を
日本政府南方連絡事務所長に委任できることとし、また、実施上の細目については、
外務省令で制定できることといたしました。
第三は、旅券の効力に関するものであります。わが国の旅券は、
原則として本邦に帰国すると同時に効力を失うこととなっておりますが、沖縄住民等は、本邦を経由して
外国へ渡航し、または
外国から本邦を経由して沖縄へ帰る者も多いと思われます。しかしながら、本邦到着と同時に旅券が失効するというのでは、はなはだ不便でありますので、本邦を経由して
外国へ渡航する場合にも本邦到着と同時に旅券を失効させることなく、旅券の発行の日から六月以内に本邦を出国すればよいこととし、帰路の場合にも本邦到着後一月以内は旅券の効力を存続させることといたしました。
次に、
旅券法附則第七項の改正に関するものであります。従来沖縄住民が本邦へ渡航する場合には、米民
政府から
日本渡航証明書の発給を受けていたのでありますが、これについても第九回日米
協議委員会において、
日本側が渡航文書を発給することに合意が行なわれましたので、これを実施できるよう所要の改正を行なうものであります。
次に、総理府設置法の一部改正に関するものでありまして、同法第十三条の
日本政府南方連絡事務所の行なう事務として、この法律に基づく旅券に関する事務を加えるとともに、この旅券事務については、外務大臣が指揮監督できることとしたものであります。
以上がこの
法律案の提案理由及びその概要であります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。