○
石川委員 私は、かねがね
農薬の
人体に及ぼす
影響、あるいはそれを扱う
農民に対する
影響というものはおそるべきものであることを伺ってもいたし、また
新聞等でも取り上げておるわけであります。したがって、これは何としても大いにこの実相というものを
究明し、
対策を早急に講じなければならぬ、こういうことで質問の通告をいたしたのでありますけれども、実は
昭和四十一年、昨年の三月ごろ、この問題についてはかなり詳細な
質疑応答があったようであります。したがいまして、私の申し上げることは、極力重複は避けるつもりでありますけれども、重複する点があればお許しを願いたいと思います。
最初に申し上げたいのですが、終戦後、
日本の農業が非常に
人手不足で、
増産をするということのために鋭意努力をしたその
成果が、このごろになってあがってきた
原因といたしましては、何といっても新しい品種というものがどんどん
開発をされておるということ、それから肥料がどんどん改良されておるという点、
農薬がたいへん有効に用いられておるというようなことで、
農薬と農作業というものとは切っても切れない仲になっておるわけでありますけれども、そういう功績は認めるにやぶさかじゃありません。しかし御
承知のように、レーチェル・カーソンという
女史、女の方が
アメリカにおいて「
沈黙の春」という書物を書きまして、これが
アメリカを非常に震憾させた、というほどではないでしょうけれども、かなりの衝撃を与えたわけです。この「
沈黙の春」という題は、私から申し上げることもないわけでありますけれども、最近は、夏の風物にふぜいを添えるホタルがいなくなった、あるいはトンボが少なくなった、それからドジョウもいなくなったというようなことで、非常にわれわれにわびしい思いをさせておりますことも大きな問題でありますけれども、この「
沈黙の春」という題の示すものは、将来は人間それ自体も
沈黙ぜざるを得なくなるのではないかという警告を含んでのこの題名ではなかったかと思うのであります。私はそういう
危険性をこの
農薬の問題についてはくみ取ることができるわけであります。
ただ、私、非常に感心だと思うのは、
ケネディ大統領がこれを読みまして非常に感動いたしまして、
大統領顧問を中心とする
委員会というものをつくって、
ウイズナー報告というものを真剣につくり上げておるわけであります。これはもちろん
カーソン女史がこれを書いた場合に、業界から
相当の抵抗があったようであります。あるいはまた、これはふしぎな現象でありますけれども、
アメリカにおける
農務省というところの方々は、盛んにこれに対する弁解といいますか、そういうふうなことを行なっているような
傾向があるようでありますけれども、とにも
かくにも、
ケネディが国民の生活、生命、こういうようなものを非常に考えまして、
ウイズナー報告というものを出された。
ただ、ここで注意しなければならぬのは、一番有害な薬品は一体何かといいますと、何といっても
有機水銀でございます。
日本で一番使われるのは
有機燐剤であり、その次は
有機塩素剤であり、その次に
有機水銀ということになっておりますけれども、
アメリカではこの
有機水銀剤、
フェニル酢酸水銀というものは種子の殺菌にだけ使われておるのですね。ほかには使われておらぬわけです。ところが、
日本では、御
承知のように、
いもち病という特殊な病気がある。この
対策のために、
日本の
研究は
相当進んでおりますから、この
フェニル酢酸水銀というものを使うことによって、この
いもち病を防除できるという非常な
成果をあげたわけでありますけれども、
アメリカでは
有機水銀を使っておらない。一番有害の
水銀剤を使っていない。いないにかかわらず、これはたいへんなことだということで、
政府全体が
有害農薬というものを排際するということに真剣に取り組んだ。
日本の場合は、残念ではありますけれども、人が死んでから初めて
有機水銀の
有害性というものが取り上げられるというかっこうになっておるわけであります。
水俣病あるいは
阿賀野川の問題というものも、もちろん私から言うまでもありませんが、それを除いて、たとえば
昭和三十九年の統計によりますというと、死者が
中毒によって十二名、これは水虫の薬からも
死亡者が出ておるようであります。それから
中毒が百七十五名、ただ、この百七十五名という
数字は、保健所を通じて正規に
報告をされた
数字であって、これ以外の
中毒者というのは
相当の数が出てくるのではないか、こういうことがいわれるわけであります。
それで、この
有機水銀というのは、これらの
農薬の中で最も有毒であるということは、だれでもが認めておるわけでありますが、
じん臓とか
肝臓障害あるいはガンの
原因になる、こういうことが臨床的に証明されておるようであります。
カーソン女史は白血病の
原因がこれではないかということを盛んに強調されておるようでありますけれども、臨床的な
研究というものはまだはっきりしておらぬように思います。しかし、とにも
かくにも、
相当な
障害を与えるということは、これは認めざるを得ないと思うのであります。この微生物を殺すために、その
代謝機能を阻害するという
目的でこれが使われるのでありますが、これは同時に、正常な細胞というものにも
相当の
障害を与えるのではないかということもいえるわけであります。
御
承知のように、この
農薬を使っておる
農民について調べました結果が
報告されておりますけれども、四二%までは、この
有機水銀を使う、あるいは
農薬を使うということによって生ずる
障害というものを訴えております。下痢だとか、あるいはしびれだとかというような
障害を四二%までが訴えておるというようなことであって、非科学的な言い方でありますけれども、ちょうど毒ガスを平気でまいているような感じさえ私はするわけであります。
そういうことで、この
急性の問題につきましては、
水俣病あるいは
阿賀野川の問題というものを契機にいたしまして、積極的にこの
対策を講じようということでいろいろ方策もとられておるようでありますけれども、この
慢性的なものについては、まだ何らの
対策もとられてないのではないか、何らのというと語弊がありますけれども。
それで私がまず第一に伺いたいのは、
毛髪の中にある
日本人の
残留水銀というのは、大体
外人の三倍だということが普通いわれております。
外国人は一・八
PPMであるけれども、
日本人の場合は、大体
東京の場合に六・五
——東京の場合に六・五というのは、
農薬を直接かぶるわけじゃありませんから、これは
残留水銀というものを摂取することによって
毛髪の中に滞留するものである、あるいはまた、
日本人が
外国に行った場合には、やはり
外国人並みの
毛髪の中における
水銀残留というものになるけれども、
日本に帰ってくると、すぐ
日本人並みに一四
PPMぐらいになってしまう。ということは、明らかにこれは
日本人の食べる食べ物の中にこの
水銀が入っているということが証明されるわけであります。ところが、
外人が
日本に来た場合にも同じようにふえるということも立証されておるようでありますけれども、これは別に米を食べているわけではありませんから、米だけではなくて、米以外のものからも摂取しているのではないか。その証拠には、
日本人ほど高くはならぬようであります。しかし、
日本に来れば急に倍ぐらいに上がってしまうということが証明されて
報告されているようであります。
そこで、そういうふうに長い間、そういう
残留毒性というものを積み重ねた場合には、
相当人体に
影響を与えるのではなかろうかということは当然いえるわけであります。したがって、
慢性のこれに対する
障害といいますか、
残留毒性というものを続けた場合にどういう
障害が出るのか。
急性のものは
相当究明をされておるようでありますけれども、
慢性の場合はどうなるかというようなことについての何かはっきりした
調査というものがその後進んでおるかどうかということについて、これは
厚生省の
環境衛生局長でも、あるいは小高さんでもけっこうでございますけれども、お願いをしたいと思うのであります。