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1967-05-24 第55回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)     午後一時五十三分開議  出席委員    委員長 矢野 絢也君   理事 小宮山重四郎君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 福井  勇君    理事 渡辺美智雄君 理事 石野 久男君    理事 三木 喜夫君 理事 内海  清君       池田 清志君    岡本  茂君       桂木 鉄夫君    世耕 政隆君       増岡 博之君    石川 次夫君       加藤 勘十君    三宅 正一君       森本  靖君  出席国務大臣         国 務 大 臣 二階堂 進君  出席政府委員         科学技術政務次         官       始関 伊平君         科学技術庁長官         官房長     小林 貞雄君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         科学技術庁振興         局長      谷敷  寛君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君  委員外出席者         農林省農政局参         事官      加賀山國雄君         農林水産技術会         議研究調査官  畑井 眞樹君         参  考  人         (理化学研究所         副理事長)   住木 諭介君     ————————————— 五月二十四日  委員松前重義辞任につき、その補欠として石  川次夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石川次夫辞任につき、その補欠として松  前重義君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十八日  動力炉・核燃料開発事業団法案内閣提出第七  三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力基本法の一部を改正する法律案内閣提  出第七二号)  動力炉・核燃料開発事業団法案内閣提出第七  三号)  科学技術振興対策に関する件(農薬残留毒性科学的究明に関する問題等      ————◇—————
  2. 矢野絢也

    矢野委員長 これより会議を開きます。  去る四月五日本委員会に付託されました原子力基本法の一部を改正する法律案及び五月十八日に付託されました動力炉・核燃料開発事業団法案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 矢野絢也

    矢野委員長 まず、提案理由説明聴取いたします。二階堂国務大臣
  4. 二階堂進

    二階堂国務大臣 原子力基本法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げす。  原子力基本法の制定以来十年余を経た今日、わが国原子力研究開発はようやくその基盤が整備され、原子力発電もその緒につく等、実用化の段階を迎えようとしております。ここに、わが国における原子力発電の一そうの進展をはかり、エネルギーの安定的かつ低廉な供給を確保するとともに、わが国全般技術的水準向上及び産業基盤強化をはかるために、新しい動力炉の自主的な開発が目下の急務となってまいりました。  このような観点から、この新しい動力炉開発を国のプロジェクトとして強力に推進するため、関係方面総力を結集して、総合的、計画的にこれを進める中核機関として、別途御審議をお願いすることとしている動力炉・核燃料開発事業団設立することといたしました。  なお、従来原子燃料公社が行ってきた核燃料関係業務動力炉開発と有機的に関連するものであることをも考慮し、これを新事業団に承継させることとし、原子燃料公社は解散することといたしました。  このような趣旨から、開発機関等に関し原子力基本法改正することが必要となったのであります。  次に、本法案要旨を御説明申し上げます。  まず、改正点の第一は、原子力開発機関として、新たに設立される動力炉・核燃料開発事業団に関する規定を置き、原子力基本法上その設立の根拠を明定するとともに、従来の原子燃料公社に関する規定を廃止することであります。  改正点の第二は、特許法改正に伴いまして特許法引用条文を改めるなど、規定の整備を行なうことであります。  以上、この法律案提案理由及びその要旨を御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。  次に、動力炉・核燃料開発事業団法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  原子力発電は、経済性向上の見通し、外貨負担有利性及び供給安定性等の面から、今後、わが国経済の成長をささえる大量のエネルギー供給の有力なにない手となるものとして、その開発促進が強く要請されています。  わが国における原子力発電は、ここ当分の間は、現在すでに経済的、技術的に実証されている軽水炉がその主流を占めるものと考えられますが、資源の乏しいわが国といたしましては、今後予想される核燃料所要量増大傾向にもかんがみ、核燃料安定供給有効利用をはかるため、より効率的な動力炉を自主的に開発することが、エネルギー政策上の重要課題となっているのであります。また、この新しい動力炉を自主的に開発するととは、産業基盤強化及び科学技術水準向上にも多大の貢献をすることが期待されているものであります。このような観点から新しい動力炉として高速増殖炉及び新型転換炉開発を国のプロジェクトとして、強力に推進することとしているのであります。  しかも、この開発は、わが国にとりまして、かつて経験したことのない新しい分野における大規模事業であり、これを成功させるためには、政府はもちろん、学界、産業界等をはじめとする国の総力を結集してこれを推進することが必要であります。  このため関係方面総力を結集する中核機関として新たに動力炉・核燃料開発事業団設立し、これを積極的に推進しようとするものであります。  さらに、この新しい事業団設立に伴いまして、原子燃料公社業務主体をなしております核燃料開発関係事業は、この新しい動力炉研究開発と密接な関連を有するものであり、一つ事業主体が総合的に実施することが、研究開発の効率的な遂行を確保するゆえんであると考えましたので、ここに原子燃料公社を解散することとし、その業務を全面的に新しい事業団が承継して行なうことといたしました。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、この事業団は、すでに申し上げましたように、高速増殖炉及び新型転換炉という新しい動力炉開発並びに核原料物質及び核燃料物質探鉱生産、再処理等を計画的かつ効率的に行ない、もって原子力開発及び利用促進をはかることを目的として設立されるものであります。  第二に、事業団資本金でありますが、設立に際しまして政府出資する二億円と従来政府から原子燃料公社に対し出資されておりました金額及び民間からの出資との合計額資本金として、この事業団は発足するものであります。このほか、将来、必要に応じまして資本金を増加することができるようにいたしております。  第三に、事業団業務といたしましては、高速増殖炉及び新型転換炉に関する開発及びこれに必要な研究を行なうとともに、これに関する核燃料物質開発及びこれに必要な研究核燃料物質生産、保有及び再処理核原料物質探鉱、採鉱及び選鉱を行なうこととしております。  なお、事業団は、その業務を行なうにあたりましては、政府関係機関及び民間と密接に協力し、それらを活用していくことが必要でありますので、内閣総理大臣認可を受けて定める基準に従いましてその業務の一部をこれらの者に委託することができることとしております。  第四に、事業団の機構につきましては、役員として、理事長一人、副理事長二人、理事八人以内及び監事二人以内を置くとともに、非常勤理事及び顧問の制度を設けまして、関係各界との円滑な協力関係を保って国の総力を結集することとしております。  なお、事業団業務の運営につきましては、特に、動力炉開発業務長期にわたる大規模事業でありますので、内閣総理大臣が定める基本方針及び基本計画に従って計画的にその業務を行なうこととしてあります。  第五に、動力炉開発関係業務と再処理関係業務に関しましては、その性格の特異性にかんがみ、それぞれその他の業務と区分して整理を行なうことといたしております。  第六に、事業団の監督は、内閣総理大臣がこれを行なうこととなっておりますが、この法律に基づいて認可または承認等をする場合におきまして関係ある場合には大蔵大臣に、動力炉開発業務等については通商産業大臣にあらかじめ協議することとなっております。  第七に、この事業団設立と同時に現在の原子燃料公社は解散し、その一切の権利義務は、事業団が承継するものといたしまして、所要経過措置を講ずることといたしました。  その他、出資証券、財務及び会計等につきましては、他の特殊法人とほぼ同様の規定を設けております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  5. 矢野絢也

    矢野委員長 以上で提案理由説明聴取は終わります。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 矢野絢也

    矢野委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、三木喜夫君より発言を求られておりますので、これを許します。三木喜夫君。
  7. 三木喜夫

    三木(喜)委員 前回の理事会で大体御了承を得ておるのでございますが、準備の都合もあろうと思いますので、資料要求をきょうさせていただきたいと思います。  まず、ラムダ4S一号機、二号機、三号機が失敗いたしましたが、それに関しまして技術報告書要求しておりました。その細部にわたって申し上げたいと思います。  まず、技術報告書は七部要求いたします。期日は六月の十五日までに出していただきたいと思います。  内容としましては、第一は、構造設計について、基本設計図基本設計計算書を、ラムダ4Sとミュー4Sについてお願いしたいと思います。  それから、失敗した点の技術的な欠陥はどこかということを明らかにしたものを出していただきたいと思います。  第二は、専門家参考人として招致して、この技術報告書を検討願うようにしていただきたいと思います。その氏名については追って理事会におはかりしたいと思います。  第三は、東大生産技術研究所において、昭和三十二年から三十九年までの間に岩泉定江氏、岩泉一氏岩泉商会に対して支出した金額、その品目、年月日を出していただきたいと思います。  第四は、高木昇氏のユーゴ海外出張に対しまして、科学技術庁にはその計画書報告書があろうと思いますので、この二つをそろえてコピーにして出していただきたいと思います。  第五は、東大ロケッ卜部品として海外から輸入した品目一覧表を、大蔵省関税局要求して出していただきたいと思います。この一覧表はあるはずでありますから、以上五点にわたりまして資料提出要求いたします。お願いいたします。
  8. 矢野絢也

    矢野委員長 ただいま三木喜夫君より要求のありました資料につきましては、委員長においてよろしく取りはからいます。      ————◇—————
  9. 矢野絢也

    矢野委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  農薬残留毒性科学的究明に関する問題について、本日、理化学研究所理事長住木諭介君を参考人として意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 矢野絢也

    矢野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  11. 矢野絢也

    矢野委員長 この際、住木参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、御意見聴取は、質疑応答の形式で行ないますので、さよう御了承願います。  それでは、農薬残留毒性科学的究明に関する問題について、質疑の申し出がありますのでこれを許します。石川次夫君。
  12. 石川次夫

    石川委員 私は、かねがね農薬人体に及ぼす影響、あるいはそれを扱う農民に対する影響というものはおそるべきものであることを伺ってもいたし、また新聞等でも取り上げておるわけであります。したがって、これは何としても大いにこの実相というものを究明し、対策を早急に講じなければならぬ、こういうことで質問の通告をいたしたのでありますけれども、実は昭和四十一年、昨年の三月ごろ、この問題についてはかなり詳細な質疑応答があったようであります。したがいまして、私の申し上げることは、極力重複は避けるつもりでありますけれども、重複する点があればお許しを願いたいと思います。  最初に申し上げたいのですが、終戦後、日本の農業が非常に人手不足で、増産をするということのために鋭意努力をしたその成果が、このごろになってあがってきた原因といたしましては、何といっても新しい品種というものがどんどん開発をされておるということ、それから肥料がどんどん改良されておるという点、農薬がたいへん有効に用いられておるというようなことで、農薬と農作業というものとは切っても切れない仲になっておるわけでありますけれども、そういう功績は認めるにやぶさかじゃありません。しかし御承知のように、レーチェル・カーソンという女史、女の方がアメリカにおいて「沈黙の春」という書物を書きまして、これがアメリカを非常に震憾させた、というほどではないでしょうけれども、かなりの衝撃を与えたわけです。この「沈黙の春」という題は、私から申し上げることもないわけでありますけれども、最近は、夏の風物にふぜいを添えるホタルがいなくなった、あるいはトンボが少なくなった、それからドジョウもいなくなったというようなことで、非常にわれわれにわびしい思いをさせておりますことも大きな問題でありますけれども、この「沈黙の春」という題の示すものは、将来は人間それ自体も沈黙ぜざるを得なくなるのではないかという警告を含んでのこの題名ではなかったかと思うのであります。私はそういう危険性をこの農薬の問題についてはくみ取ることができるわけであります。  ただ、私、非常に感心だと思うのは、ケネディ大統領がこれを読みまして非常に感動いたしまして、大統領顧問を中心とする委員会というものをつくって、ウイズナー報告というものを真剣につくり上げておるわけであります。これはもちろんカーソン女史がこれを書いた場合に、業界から相当の抵抗があったようであります。あるいはまた、これはふしぎな現象でありますけれども、アメリカにおける農務省というところの方々は、盛んにこれに対する弁解といいますか、そういうふうなことを行なっているような傾向があるようでありますけれども、とにもかくにも、ケネディが国民の生活、生命、こういうようなものを非常に考えまして、ウイズナー報告というものを出された。  ただ、ここで注意しなければならぬのは、一番有害な薬品は一体何かといいますと、何といっても有機水銀でございます。日本で一番使われるのは有機燐剤であり、その次は有機塩素剤であり、その次に有機水銀ということになっておりますけれども、アメリカではこの有機水銀剤フェニル酢酸水銀というものは種子の殺菌にだけ使われておるのですね。ほかには使われておらぬわけです。ところが、日本では、御承知のように、いもち病という特殊な病気がある。この対策のために、日本研究相当進んでおりますから、このフェニル酢酸水銀というものを使うことによって、このいもち病を防除できるという非常な成果をあげたわけでありますけれども、アメリカでは有機水銀を使っておらない。一番有害の水銀剤を使っていない。いないにかかわらず、これはたいへんなことだということで、政府全体が有害農薬というものを排際するということに真剣に取り組んだ。日本の場合は、残念ではありますけれども、人が死んでから初めて有機水銀有害性というものが取り上げられるというかっこうになっておるわけであります。水俣病あるいは阿賀野川の問題というものも、もちろん私から言うまでもありませんが、それを除いて、たとえば昭和三十九年の統計によりますというと、死者が中毒によって十二名、これは水虫の薬からも死亡者が出ておるようであります。それから中毒が百七十五名、ただ、この百七十五名という数字は、保健所を通じて正規に報告をされた数字であって、これ以外の中毒者というのは相当の数が出てくるのではないか、こういうことがいわれるわけであります。  それで、この有機水銀というのは、これらの農薬の中で最も有毒であるということは、だれでもが認めておるわけでありますが、じん臓とか肝臓障害あるいはガンの原因になる、こういうことが臨床的に証明されておるようであります。カーソン女史は白血病の原因がこれではないかということを盛んに強調されておるようでありますけれども、臨床的な研究というものはまだはっきりしておらぬように思います。しかし、とにもかくにも、相当障害を与えるということは、これは認めざるを得ないと思うのであります。この微生物を殺すために、その代謝機能を阻害するという目的でこれが使われるのでありますが、これは同時に、正常な細胞というものにも相当障害を与えるのではないかということもいえるわけであります。  御承知のように、この農薬を使っておる農民について調べました結果が報告されておりますけれども、四二%までは、この有機水銀を使う、あるいは農薬を使うということによって生ずる障害というものを訴えております。下痢だとか、あるいはしびれだとかというような障害を四二%までが訴えておるというようなことであって、非科学的な言い方でありますけれども、ちょうど毒ガスを平気でまいているような感じさえ私はするわけであります。  そういうことで、この急性の問題につきましては、水俣病あるいは阿賀野川の問題というものを契機にいたしまして、積極的にこの対策を講じようということでいろいろ方策もとられておるようでありますけれども、この慢性的なものについては、まだ何らの対策もとられてないのではないか、何らのというと語弊がありますけれども。  それで私がまず第一に伺いたいのは、毛髪の中にある日本人残留水銀というのは、大体外人の三倍だということが普通いわれております。外国人は一・八PPMであるけれども、日本人の場合は、大体東京の場合に六・五——東京の場合に六・五というのは、農薬を直接かぶるわけじゃありませんから、これは残留水銀というものを摂取することによって毛髪の中に滞留するものである、あるいはまた、日本人外国に行った場合には、やはり外国人並み毛髪の中における水銀残留というものになるけれども、日本に帰ってくると、すぐ日本人並みに一四PPMぐらいになってしまう。ということは、明らかにこれは日本人の食べる食べ物の中にこの水銀が入っているということが証明されるわけであります。ところが、外人日本に来た場合にも同じようにふえるということも立証されておるようでありますけれども、これは別に米を食べているわけではありませんから、米だけではなくて、米以外のものからも摂取しているのではないか。その証拠には、日本人ほど高くはならぬようであります。しかし、日本に来れば急に倍ぐらいに上がってしまうということが証明されて報告されているようであります。  そこで、そういうふうに長い間、そういう残留毒性というものを積み重ねた場合には、相当人体影響を与えるのではなかろうかということは当然いえるわけであります。したがって、慢性のこれに対する障害といいますか、残留毒性というものを続けた場合にどういう障害が出るのか。急性のものは相当究明をされておるようでありますけれども、慢性の場合はどうなるかというようなことについての何かはっきりした調査というものがその後進んでおるかどうかということについて、これは厚生省環境衛生局長でも、あるいは小高さんでもけっこうでございますけれども、お願いをしたいと思うのであります。
  13. 舘林宣夫

    舘林政府委員 農薬の中の水銀農薬は、主としてわが国ではフェニル酢酸水銀の形で用いられておるわけであります。すなわち、有機水銀の形であるわけであります。この有機水銀の形で用いられたものが人体でどのような変化をし、影響を与えるかということは、前々から研究をせられておるところでございますが、動物実験等を材料に検討いたしてみますと、まず、急性毒性といたしましては、じん臓あるいは肝臓障害を与えるということでございまして、長期にわたってこれが摂取せられておりますと、無機水銀の形に変わったものが肝臓あるいはじん臓に蓄積される。そうして、もちろん相当量じん臓から排せつされるわけでありますが、それはやはり無機水銀の形に変えられて排せつせられる、かようにいわれておるわけであります。  障害といたしましては、先般の阿賀野川の下流に起こりました事例、あるいは水俣におきます事例と同じように、神経組織神経系統をおかしてくる。そこに長期蓄積いたしまして、ほとんど治癒のむずかしいような障害を残すということでございまして、その神経をおかされる範囲は、もちろん脳神経等をおかし、平衡感覚等を失わせるというような症状を起こし、視野狭窄等眼神経がおかされる、このような症状を呈してくるわけであります。
  14. 石川次夫

    石川委員 いま局長から御説明があったのは、急性の場合の話を言っておられるのじゃないですか。  それであと一つ、その答弁の中で私ちょっとふに落ちないで御質問したいと思った事項が出てきたのでありますが、フェニル酢酸水銀というものが、有機水銀でありますけれども、これが体内に入った場合に無機水銀になるという確たる何か臨床的な報告が出ておりますか。これは可溶性があるということは証明されておりますけれども、これが無機化するということの証明がはっきり出ておるのかどうか、この点の疑問が一つその答弁の中にありましたから、御説明を願いたいということが一つと、いま言われましたのはじん臓肝臓等相当障害を与える、あるいは小脳をおかし、神経を麻痺させるというような、これはほとんど不治の病、なおらないという程度の、いわゆる水俣病のような形の障害が起こるということは急性の場合にははっきりしておるわけでございます。  私が申し上げた、慢性の場合が一体どうかということについては、世界じゅうがこの研究に取り組んでおりますけれども、何しろ日本では有機水銀というものを使い始めてからまだ日が浅いのであります。大量の増産の体制をつくり上げるために一ぺんにまき始めたというか、大量に使い始めたというのはごく最近のことであります。その影響というものは、まだ慢性的な症状というものは人体にはっきり証明されない。しかしながら、これについて何らかの研究成果というものがあるならば、それを教えてもらいたい、こういう意味であります。
  15. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま申し上げました、体内無機の形に変化する模様であるということは、FAO、WHOで最近農薬に関する検討が毎年国際会議が開かれて行なわれておりますが、その席におきましても論議されたところでございますが、問題は、フェニルがすべて無機の形に分解されるかどうかということはこれは明らかでございませんで、少なくとも無機の形に一部分解されまして、それが蓄積され排ぜっされるということが確認せられておるわけでございます。  それから、ただいま申し上げました神経系統慢性的におかされるという点は、先般の水俣病における事例が、やはりかなり長期にわたって少量の水銀を魚から摂取しておったということから起こりました症例等から推定いたしまして、神経系統をおかされるということを申し上げましたけれども、それよりさらに微量の、今日われわれが米から摂取しておる程度のきわめて微量なものを、十年、二十年という長期にわたって摂取したら、どのような変化が起こるかということは、お尋ねのごとく、今日まで必ずしも明確になっておらぬわけでございます。
  16. 石川次夫

    石川委員 前段の答弁の中でも、無機化して一部排せつをされるということは私も聞いておりますけれども、これが体内にあってほんとに無機化されておるかどうかということは、まだこれははっきりしておらないけれども、有機化されたままで体内に残るという可能性は十分に考えられる。そういうことが慢性的に続いた場合にどういう障害を与えるかということは、これからの課題ではあるけれども、かなり危険なものを含んでおるのではないかということが、真剣にアメリカあるいはWHOあたりでも取り上げられておるわけですね。でありますから、慢性の臨床報告というのはまだ出ていないわけですけれども、これがもし、考えられるような形でもって慢性症状が出たと仮定をいたしますというと、これは「沈黙の春」という題目が示しますように、人間全体が、特に日本人の場合米をたくさん食べるために一億総中毒化するという危険性が出てきて、そのときには農薬それ自体が使えなくなるのではないかというような懸念すら、極論すれば出てくるわけであります。したがいまして、こういう点についてはあらかじめ相当慎重に対処しなければならぬと思うのでありますけれども、どうもこの程度まではいいんじゃなかろうかというような考え方で現在まで薬品の使用というものを許可しておる、あるいは耕作者が非常にこれは便利だ、重宝だというようなことに負けてずるずると使わしてしまっておるというような傾向が強過ぎるのではないかということを、私は非常に懸念いたしておるわけであります。  それからあと一つ御質問申し上げたいと思うのでありますけれども、土壌の中に、これはアルキル水銀などをあまり使っておらないようでありますけれども、多少なりとも土壌の殺菌用として水銀を使っておるわけであります。そうしますというと、この未処置の場合、全然そういう薬品を使わない場合に比べて、日本調査でもはっきりしましたことは、十五日もたってから土壌の中の残留毒性というもの、水銀というものを調べてみるというと、全然薬を使わない場合の五十倍以上も含まれておる。その土壌から、またさらに、これは植物の中に吸い上げられるということになるわけでありますけれども、この土壌の中の残留毒性というものが一体どのくらいあるかという調査は、この前の速記録を拝見いたしますと、まだ調査中であるというような答弁になっておりましたけれども、その後進んでおりますか。農林省のどなたかひとつ御答弁願いたいと思います。
  17. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいま御質問のございました土壌中に残留いたします水銀の問題につきましては、ただいま御指摘もございましたように、昨年この委員会でいろいろ御質疑いただきましたあと、鋭意調査に励んだわけでございますが、まだ最終的なはっきりした結果は出ておりません。調査中でございます。
  18. 石川次夫

    石川委員 これは四十一年の三月に調査中という二となんですね。これは、むずかしいのかどうか、私は専門家じゃないからわかりませんけれども、きわめて大きな問題として、外国はもちろん、日本でも特に重要な課題だということで取り上げておるのに、もう一年以上たっておるわけですね。けれども、まだ調査結果が出ないというのは怠慢じゃないですか。これは私は非常に残念だと思います。この土壌の中の残留毒性というものはどのくらいあるかということが、これから進める話の基本になると思うのですね。それが、あれだけ大きく国会で取り上げられ、新聞でも取り上げられた問題について、一年たってもまだ調査中でございますというのは、私は怠慢過ぎると思う。それは、結果が出ないものは出ないとして、いつごろわかりますか、この結果は。
  19. 畑井眞樹

    ○畑井説明員 ただいま参事官から御説明のように、土壌での完全な分析はまだ終わっておりませんが、研究所で湛水状態にいたしましたどろで有機水銀、ただいまのフェニル酢酸水銀を入れて経時的な経過を見てまいりますと、大体ポット試験の湛水状態では、二十五日後にほぼ十分の一になった、そこまでは明確に出ておりますが、その先はまだ調査中でございます。
  20. 石川次夫

    石川委員 たいへん調査のやり方が緩慢だということだけ重ねて申し上げておきます。いつできるかということについてはまだ御答弁がないようでありますが、これはまたできるだけ早くというか、早急にこれを調べて、それがまた植物に対して——滞留した土壌の中の残留毒性というものが、さらに植物にどういうふうに影響を与えるかという点については、やはり精密に調べる必要があると思う。そういう点でぜひ調査を急いでもらいたいということを申し上げておきます。去年の三月の会議録を拝見しますと、米の中の残留水銀調査というものはまだわからない、こういう答弁のようであったわけでありますが、その調査でこれがおわかりになったんではないかと思うのですけれども、米の中の残留水銀——玄米というものはたいへん日本人の体質に合う、栄養になるといって喜んで食べておられる方が私の身近にもたくさんおりますが、特にぬかの中に残留水銀が多い。したがって、精白して食わなければならぬという議論が新たに残留水銀の問題から出てきているわけですが、それは別といたしましても、米の中の残留水銀調査は一体どういうふうになっておりますか。
  21. 畑井眞樹

    ○畑井説明員 現在玄米中では、水銀剤をまかない場合には〇・〇五PPM、それから通常有機水銀剤を二回散布いたしますと〇・二PPM残るということが確認されております。  なお、ただいまぬかのお話がございましたけれども、そのうち白米にいたしますと約五〇%が白米中に残る。それから、ぬかには約五〇%近くが残る、こういう研究結果でございます。
  22. 石川次夫

    石川委員 そうしますと、たいへん玄米食が普及される傾向でありますけれども、こういう学者のほうの立場から言わせると、残留水銀相当多いから玄米を食べてはいかぬというような話も、またここにその根拠があるわけですね。それからまた、中には無機化するのではないかというような意見もあるわけです。私は、可溶性、溶けるということはわかっておりますけれども、この米の中の残留水銀につきましては、これは無機化して残るのではないかというような見方も一つあったようでありますが、その点の調査は進んでおりますか。
  23. 畑井眞樹

    ○畑井説明員 はっきり無機化するというよりも、フェニル酢酸水銀が別な形態になるらしいというところまでわかっております。
  24. 石川次夫

    石川委員 とかく、農林省あたりの調査を見ますと、はっきりは出ておりませんが、どうも無機化するんだとか溶けるんだとかいうふうなことで、フェニル酢酸水銀の害というものはたいして大きくはないんじゃなかろうかと思わせるような書き方をしている向きが多いようでございますが、まだはっきりした証明は成り立っておらぬ。やはり有機化したまま残っているといったほうが私は妥当性があるんじゃないかと思う。  こういうふうな見方で水銀の問題は取り組んでもらわなければならぬと思うのでありますが、それは別といたしまして、そういうふうに見てまいりますと、慢性的な症状というものはどういった形で出るかというふうな証明は、まだ成り立たないけれども、世界全体の風潮といたしまして、この有機水銀を含めて、たとえば有機塩素剤についてもそうなんでありますけれども、アメリカあたりでは、ウイズナー報告によりますと、成人一人当たりアメリカ人の場合は百から二百ミリグラムを体内に持っておるということで、この対策を何とかしなければならぬと述べておる。しかし、日本では有機水銀急性の何といいますか、それによるところの水俣病、その他の問題については非常にきゅうきゅうとしてこれを考えておるようでありますが、アメリカあたりでは、慢性のものを非常に警戒をし、いまから何とか対策を立てなければならぬ、こういう考え方で取り組んでいるのです。  それにつきましても、どうも農薬を許可する方針の基準、これが非常にルーズだと私は思うのです。いまのところは、どういうふうに農薬の許可をするというか、許可の基本方針、それをひとつ聞かせてもらいたい。
  25. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいまの御質問でございますが、新しい農薬ができますと、メーカーのほうから、その許可の申請があるわけでございます。それに対しましては、御承知のように、農薬取締法という法律がございまして、それに基づきまして、向こうから提出させるいろいろな材料がございます。その中に、特にいま御指摘がございました毒性と申しますか、そうものにつきましては、非常にきびしい規定を設けておりまして、そういう申請がございますと、農林省のほうで判断をいたしまして、あぶないというものにつきましては、厚生省のほうにお願いをいたしまして、それの毒性等についての検査を行ないます。その間、申請のございましたメーカーに対しましては許可をしない、そういうふうな方針でございます。必要な材料が集まりました場合には、それによってその内容の改善を命じまして、それがもしできない場合は、それを却下してしまう、そういうふうな方針をとっております。  なお、農薬の場合には、どのくらいの毒性があるかということも非常に問題でございますが、それをどのように使うか。やはり農家が使う場合のいろいろな使用基準と申しますか、そういうものがたいへん重要になってくるわけでございまして、そういうものにつきましても、末端の農家の方々が使う場合に、できるだけ使用に間違いがないように、その使用方法等についてもこまかい表示をいたすように、法律をもって定められておるわけでございます。
  26. 石川次夫

    石川委員 農林省のほうの答弁をいただきましたけれども、これは毒性だということになった場合に、厚生省のほうに回す、厚生省のほうでそれを認定するというか、調査するということになっておりますね。厚生省のほうはどういう基準でこれを許可するのか、これはよろしいという認定をいたしますか。
  27. 舘林宣夫

    舘林政府委員 一般薬品、そのほか添加物類等、一般の人体に対する毒性が懸念せられるものに対する毒性の配慮というものは、従来ややもすれば、急性毒性あるいは悪急性毒性を考慮して、毒性の検定配慮がなされてきておるわけでございまして、従来農林省から農薬毒性を調べてほしいという御依頼に基づいた調査は、直接それをまく農民、あるいはそれを取り扱う人々に対する毒性が主として配慮せられておったようなわけでございまして、それがまかれ、食物に移り、食物に長い間残って、慢性毒性を引き起こすかもしれないというような長期の試験というものは、従来はあまり問題となってもおりませんし、主としてただいま申しましたような急性毒性、亜急性毒性等の調査を国立衛生試験所等に依頼をしておるわけでございます。
  28. 石川次夫

    石川委員 農林省は、そういう毒性のある場合には、厚生省に回して、厚生省で認定をする。厚生省急性のものだけについて認定をする、慢性のものについてはほとんど認定はしておらない、こういう御答弁です。そうしますと、われわれがいま非常に懸念している急性のものについてはさんざん騒いでおりましたが、これには私はあえて触れませんが、慢性中毒化するのではないかという懸念に対する配慮は全然払われておらないわけです。  そこで、農薬取締法を見ますと、第三条第三号で「当該農薬を使用するときは、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に著しい危険を及ぼすおそれがあるとき。」このときには許可しない、登録をさせない、こうなっております。この程度のものではたしていいかどうかという問題です。これは非常に問題だと思う。これ以上の基準が厚生省のほうに何かあるかもしれませんが、いまの御答弁では、慢性のほうではなく、急性のほうだけのようなお考えのようでありますけれども、アメリカではWHO、とFAOの昭和三十七年の警告、これは御承知かと思いますが、フェニル酢酸水銀人体への許容量というものは、人体一キログラム当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラムです。これはほとんどゼロです。ゼロでなければいかぬということと同じことなんです。こういうきびしい制約を加えなければならぬという警告を発しておるわけです。  それから、アメリカでは、白ネズミの二年間、犬などの一年間、これだけの実験をやって、そうした上で許可をする。もちろん、その過程の経過措置として、三ヵ月間くらいの実験をして、これはたいていだいじょうぶだろうということで、かりに免許を与える。その上で、いま言ったような二年間、一年間という動物実験というものを継続的にやった上で、初めて正式の許可をする。これだけ慎重な対策をとっておるわけです。日本の場合はちょっと緩慢過ぎるのではないですか。この点について厚生省はどうお考えですか。
  29. 舘林宣夫

    舘林政府委員 これはただに農薬の面のみでなく、従来からややもすれば急性ないし亜急性毒性に対して、主として注目せられておりまして、長期慢性中毒に対する配慮が必ずしも十分でなかったという点は、御指摘のとおりでございまして、その点は、一般薬品、添加物等すべてそういう点があったことは、御指摘される事柄だと思います。  ただ、これはこういう技術的な問題も含んでおるわけでございまして、これらのものの長期試験をする場合には、動物そのものをきわめて長期に生存させる技術的な配慮が必要なわけでございまして、従来の日本の技術水準では、動物を二年以上飼育するということは非常にむずかしかったわけでございます。最近はようやくそういう技術も発達いたしまして、長期試験が可能になったということで、近年はすべて長期の配慮をいたしておるわけでございます。  お尋ねのような農薬に関しましても、現行法では、もしも危険であれば食品衛生法によって販売を禁止はできますけれども、一たんまかれたものの販売を禁止するということはゆゆしい問題でございますので、許可をする前に、そういう配慮をすることは当然必要でございまして、私どもとしても、今後は農林省と十分打ち合わせた上で、そういう危険な慢性毒性を起こしそうな農薬が販売されることのないような配慮が必要かと思っております。
  30. 石川次夫

    石川委員 いまたいへん慎重な前向きの答弁をいただいたんですが、現在そうなっておらないということが問題です。これは科学技術庁長官、両方の調整をとるために、考えてもらいたいんです。  これは、アメリカあたりでは、たとえば有機塩素剤は牧草地に絶対まいてはいけない。それからイギリスでは、有機塩素剤の同類は農業には絶対使うな、こういうきわめてきびしい態度で臨んでおるわけです。このことは、それを使うことによって、農民それ自体が一番大きな影響を受けるわけでありますけれども、それが食料の中に残留毒性として加わる、それが人体に入るということに対する国民全体、人類全体への影響というものを考えて、きわめて強い措置に出ておるわけです。これは、外国でも慢性毒性の臨床実験の結果というものはまだ出ていないわけです。しかしながら、これが慢性化したらとんでもないことになるし、また、そういう可能性が十分にあるのだということを考えて、こういうふうな方針をとっているわけです。したがって、私は、この急性のこともさることながら、慢性中毒化するというようなことも含めて外国のいろいろな実例、WHOなんか、先ほど申し上げたように人体の摂取許容量というものがほとんどゼロでなければならぬ、こういうようなきびしい基準というものが出ているわけです。この国際的な基準というものを少なくとも準用して、これと同じような許可水準でなければならぬということが、いまここできめられるのじゃないですか。いまここの委員会で直ちにということはあえて申しませんけれども、このくらいのことをきめなければならぬという世界の趨勢であるとするならば、日本でもそのくらいのきびしい態度でもって臨まなければならぬということにしなければ私はうそではないかと思うのですが、この点ひとつ科学技術庁長官の御意見を伺いたいと思います。
  31. 二階堂進

    二階堂国務大臣 農薬の有毒性農薬人体に及ぼす影響は、いまお述べになりましたとおり、いろいろなところに問題があるようでございますし、また、農薬を使用する基準につきましては、今後慎重に検討をいたしてみたいと考えております。
  32. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 関連。ただいま石川委員から有機水銀体内における残留毒性について御質問がございまして、御答弁を拝聴いたしたわけでありますが、これは、私、国会におりません昨年の三月九日と三月三十日のこの委員会において、ずいぶん深刻に農薬毒性について論議がかわされております。ただいま御答弁を伺っておりましても、体内に残留した有機水銀ないしは無機水銀の残留分を直ちに除去して、もとの健康体に復するという方法はなかなかないようでございます。これは一体世界的に何か研究が行なわれ、何か見通しがついておるか。それをひとつ……。
  33. 舘林宣夫

    舘林政府委員 やや慢性的な水銀中毒の発生した一つ事例として水俣病があります。この水俣病の治療でいま先生のお尋ねの、いかにして体内に蓄積したものを排除できるか、すなわち治療効果をあげるかということでずいぶん苦心をいたしました。各種の治療を試みたわけでございますが、熊本県で、いまから十四年ほど前に発生いたしました水俣病の治療はほとんど成功しなかった。すなわち、いかなる手段を講じても、一たん水俣病にかかってしまいますと、細胞の変化が起こりますと同時に、体内に蓄積した水銀の排せつを相当促すような薬を使うのでございますが、どうも治療効果があがらなかった。今回の阿賀野川の下流における水俣病の発生に際しまして、新潟大学が総力をあげてこの治療に取り組んだわけであります。ペニシラミソあるいはアルファメルカプトプロピオニールグリシンというような新しい薬を用いまして相当治療に努力をしたわけでございます。今回は前回の水俣病よりは治療効果はある程度進みましたけれども、依然として、一たん蓄積したものを排除するというのは容易でないという状況でございます。
  34. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 きょう参考人としておいで願いました住木博士は、馬鹿苗病菌の研究をされて、シードレスのブドウ、すなわち種なしブドウをおつくりになった大家であるということを記憶いたしておるのであります。  これは委員長にお願いしておきたいのでございますけれども、春年、通産省の発酵研究所で、水銀を食う菌というものを発見したというので、これを発表いたしまして、世界的な反響を呼んだことを私は知っておるのであります。私も、水銀を食う菌というものがおるということになると、これは微生物の世界に非常に大きな進展を見出すべきものであるということで、わざわざ発酵研究所に二回見に参りました。だいぶ大規模に増殖を計画いたしておりまして、白い集落をつくるのと薄い桃色の集落をつくるのと二種が発見されております。はたしてこれをその後動物実験したかどうか、体内に残留した毒性にこの水銀を食う菌を応用してその残留水銀の排除に成功したかどうか、あるいは予算がないからそのままにしておるかと思うのでありますが、もしそういうことで体内水銀排除に一役買うことができれば、ある意味においては進歩を来たすのじゃないか、こう思うのであります。ひとつその資料委員長の名において通産省の発酵研究所から取り寄せていただきたい。それを見ました上でさらにまた、もし効果ありとするならば、科学技術庁にはそういう研究に対する調整費があるのでありますから、大いにそういうところを活用して、広く残留毒性の排除というようなことに役立てたらいかがかと思うのであります。これはひとつ委員長にお願い申し上げます。
  35. 矢野絢也

    矢野委員長 ただいまお申し出のあった資料につきましては、委員長において取り計らいたいと思います。
  36. 石川次夫

    石川委員 去年の三月三十日でしたか、この科学技術特別委員におきまして、「農薬残留毒性科学的究明及び対策樹立に関する件」という決議が行なわれた。そのときの会議録を拝見いたしますと、有機水銀の場合の急性毒性ということを主として対象とした対策であろうと思うのでありますけれども、ともかくアルキル水銀あるいはフェニル酢酸水銀というものは使わせないようにする、大体昭和四十三年に使わせないめどでもって対策を考えるというようなことをおっしゃっておったようであります。そう後どういうふうに進んでおりますか、農政局からひとつ御説明願いたい。
  37. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 昨年の三月三十日の本委員会の決議をいただきまして、農林省としましては直ちに事務次官通達をもちまして、ただいま御指摘のございましたような方向で、要するに三年間で、昭和四十一年、四十二年、四十三年で完全に水銀剤いもち病に対する使用をやめる、そういう指導を現在やっておりますが、四十一年の結果を申し上げますと、約四〇%まで非水銀糸の農薬に切りかえたというふうになっております。四十二年度はこれを六〇%ないし七〇%まで切りかえるように現在努力中でございますが、四十三年度にはそれを一〇〇%まで持ってまいりたい、そのように考えております。
  38. 石川次夫

    石川委員 念のために伺いますけれども、四十三年は一〇〇%にできる見込みがあるかどうか。ということは、やはり農民は使いなれたもの、しかも、これが非常によろしいのだということが頭にこびりついておりますから。  それとあと一つは、使わせ方、使用法が非常に問題だということで指導されておるようでありますけれども、農民というものは、なかなかその使用法どおりには使わない。ゴムの手袋を使うとか、終わったあとから石けんで洗えとか、いろいろなことを指示してはありますけれども、現実の問題としてはなかなかそういう使い方はしておらない。それは非常に残念であるが、現実の姿として認めなければならぬ。そういうような結果から、先ほど申し上げましたように、使っている人の四二、三%までがある程度の農薬を使ったことによる障害を訴えるということにもなっておるのではないか、こう思うのでありますけれども、この四十三年に必ず一〇〇%にするのだという確固たる見通しはありますか。
  39. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 われわれが仕事をいたします場合には、目標を立てて年次計画でやってまいりますが、特に農薬の場合には、農薬をつくる側の問題も一つございますし、ただいま御指摘の農薬を使う側の問題もございますので、四十三年に一〇〇%目標といたしておりますけれども、また、それに対してできる限り達成するように努力いたしたいと考えておりますが、はたして一〇〇%になりますか、それは今後のわれわれの努力いかんということになってくるかと思いますが、特に末端の農民の方々がこれまでの農薬を使いなれておるということは、ただいま御指摘のとおりでございまして、なかなか新しい農薬に切りかえがたいという、そういうふうな習慣と申しますか、使いなれているという問題もございますけれども、末端におります農業改良普及員なり、あるいは病害虫防除所という所を各都道府県に置いておりますけれども、そういうところの職員も総動員いたしまして、かつ各団体の末端の職員等も動員いたしまして、徹底して、そういうことがPRされるように努力を現在払っております。  ただ、たとえば小粒菌核病というような病気がございますが、これに対しましては、現在やはり水銀剤が一番きくと申しますか、水銀剤以外の非水銀農薬というのはなかなかききがたいという点もございまして、これは栽培のほうの改良と申しますか、カリ肥料というものとの関係がだいぶ高いわけでございまして、やはりそういう地帯におきましては、栽培のほうから施肥法の改良を行なうことによって、できるだけそういうふうな病害が出ないような努力もあわせてやってまいりたい、そのように考えております。
  40. 石川次夫

    石川委員 まだ、一〇〇%ということは努力目標、こういうことで御答弁をいただいたわけですが、先ほども申し上げましたように、有機水銀というのは急性毒性があるということは、これははっきりしておる。したがって、これはすぐにでもとめなければならぬ。どうも、一〇〇%という目標でありながら、なかなかそこまで達するかどうかわからぬというような気持ちを含めた御答弁のようで、私は非常に残念だと思う。  と申しますことは、アメリカあたり、あるいはイギリスの例によりますと、有機水銀剤ではない、それよりも毒性がはるかに弱いと思われている有機塩素剤それ自体が、たとえばドリン剤なんかは絶対に使わせないというところのはっきりした方針を立てて、将来の国民の健康を守るという態度に出ていることから比べると、ちょっと日本の場合は差があり過ぎるんじゃないかという気がするのです。  やはり水銀剤というものは、四十三年にははっきりやめさせるというような態度でぜひとも臨んでもらわなければならぬ。そういう意味で、私はきょうは農政局長にぜひ来てもらいたかったわけであります。参事官からぜひそのことを強く要請をしておいてもらいたいと思うのです。これは、農民も使いやすいということは確かです、使いなれたということもあります。しかし農民それ自体も、これによって非常に有害な症状が出ているということは現実に示しているわけでありますから、これは農民の立場を守るということも含めて、農民の使いやすい、農民の要請が強過ぎるということに負けないで、あるいは一説にいわれるように、業界からの圧力が相当あるのじゃないか、したがって、一ぺんにできないんじゃないかというような誤解を払拭する意味でも、これはぜひ四十三年には一〇〇%水銀を切りかえるという覚悟でひとつ取り組んでもらわなければならぬ。これは強く要請をしておきます。  それから有機水銀剤をほかのものに取りかえるという場合に、住木先生がおいでになっておりますけれども、これは前々からお話がありますように、日本の抗生物質の研究というものは相当進んでおるわけであります。そういうことで住木先生なんかが一生懸命努力をされました結果、ブラストサイジンあるいはカスガマイシンというようなものが相当大量にできるようになってきた。しかも、これはブラストサイジンとカスガマイシンというものは、同じ設備でもって両方かねて用いることができるというような利点もありまして、相当大量にこれができるという可能性もある。ただし、前の会議録を読んだ限りにおきましては、大量生産といっても、そう大量につくっておらない。いまのところは値段が若干高い。たとえば十アール当たり百七十五円で済むところが、二百円から二百二十円くらいする。しかしながら、これは大量生産をすることによってカバーできるのではないかというようなことを御答弁なさっておるように、これは住木さんであるかどうかはっきりいたしませんが、そういうふうな答弁といいますか、そういうふうなお話がこの前の会議録に載っておったように思うのです。その点、住木さんからその後の経緯を御説明願いたい。ということは、いま申し上げましたように、昭和四十一年におきましては四〇%、四十二年は六〇%から七〇%くらいまで水銀を使わせない方向に行きつつある、それに代用しておる部分が相当多いんじゃないかと思いますので、その辺のいきさつをひとつ御説明いただきたいと思います。
  41. 住木諭介

    住木参考人 ただいまの石川委員からの御質問でございますが、大量生産すれぱ安くなると言ったのは科研化学の久保参考人でございまして、私ではございません。  私、工場のことはあまりよく知りませんけれども、それはつまり培養法が改良されますれば、たとえばただいま一ミリリッター当たり単位といたしまして二千単位出ておるとしますれば、それが培養法の改良によりまして四千単位出ればそれで値段は半分になる。これはいままでのペニシリンとかストレプトマイシンとか、そういう抗生物質の製造経過から見まして、私もそれは学者としてうなずけると思います。それから安くなると思いますが、ただ日本におきます抗生物質製造会社がどういうふうにそれを取り扱って——やりたい会社もありましょうし、やりたくない会社もありましょうが、そういうふうな点は、これは会社の利益によって、利益のために会社が考えるということでございまして、私としては、いまの日本の抗生物質をつくっておる大きな会社であれば量産はむずかしくない、こう学者として考えております。  御返答になったかどうかわかりませんけれども……。
  42. 石川次夫

    石川委員 去年の三月の科学技術の委員会では、ブラストサイジンとカスガマイシンは原体として百四十五トン、これは粉剤に直して十四万五千トン大体製造能力がある、したがって、いま言ったような技術改良というものも含めて大量生産が可能であるし、また安くなるであろうというふうなことが会議録には載っておるわけであります。  農林省の方に伺いたいのでありますか、この六割くらいまで使う、水銀をやめて、ほかのものに切りかえるという目標でやっていくというその代用——代用といってはたいへん失礼でありますけれども、日本でつくられた優秀な、これにかわるべき農薬というものは一体どういうふうになっておりますか。
  43. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 それにつきましては、ただいまいろいろと検討しておるわけでございますけれども、現在申し上げられる段階のものといたしまして、また、普及いたしておる段階のものといたしましては、ただいまお話がございましたブラストサイジンとかカスガマイシン、要するにこういう系統の抗生物質を使いましたものが一つございます。それからもう一つは塩素系のものでございますけれども、PCPバリウム、それからPCBA、これはブラスチンと申しております。それから、PCMN、これはオリゾンと申しております。それから、CPA、これはラブコンと申しております。こういった塩素系の薬剤、それからもう一つは燐系のものでございますけれども、EBP、これはキタジンと申しております。それからIBP、これはキタジンPと申しております。それからEDDP、これはヒノザンと申しております。それからESBP、これはイネジンと申しておりますが、このように抗生物質系統と塩素系のものと、燐系のもの、かような低毒性のもの、水銀関係のないものを普及してまいりたい、そういうふうに考えておるわでございます。
  44. 石川次夫

    石川委員 こういうふうに抗生物質系統を主として、大体有機水銀にかわるべき、かなり効力が国際的にも認め得るような、そういう新しいものができるということになれば、これは輸出も可能だということになってくるわけですね。と申しますのは、これは科学技術庁長官に申し上げたいのでありますけれども、農薬の新しい研究をやるために、理研では五つの研究室をさいてこれに充てているというので、非常に積極的な姿勢を示しておられるようで、私も非常に喜ばしいと思っております。  ところで、この新しい農薬をつくるということは、言うまでもなく、いままで申し上げましたように、毒性を排除するという目的一つある、それから水銀というものは、非常に貴重なものであり、農薬に使う水銀というものは全体として四百トンくらい毎年輸入しておるわけであります。これは原子力関係や何かでもって、貴重な資材としてほかに転用できるということもひとつ考えていかなければならぬ、こういうこともあると思います。と同時に、外国から入ってくる技術ばかりをまねして現在まで農薬というものはつくられておったという傾向が強いと思われますけれども、さて、これはほかの技術にも言えるのでありますけれども、外国から入ってきた技術をもって農薬をつくって、これを輸出しようと思っても、その技術を外国に輸出をすることは相ならぬということになって、国内だけでということで大量生産が一部はばまれているということもあるわけであります。したがって、これはいわゆる日本の自主開発といいますか、そういうことで、この農薬方面は大々的に開発をするということを通じて、日本人の健康を守るということもさることながら、輸出産業のほうにもこれを持っていくことができるのではないか。ということは、いま申し上げましたように、塩素剤の問題にしても、水銀の問題にしても、かなり有害であるということは、国際連合機関であるWHOあたりからはっきり警告が出されておるわけであります。ほとんどゼロでなければならぬというところまでいけば、どうしてもこれにかわるべきものが必要だということになりますと、これは大いに輸出の可能性が出てくるということも含めて、外国の技術を導入するのではなくて、日本の自主開発の道でこの農薬をどんどんつくり上げていくということに積極的に取り組んでもらいたい。これは現在もかなりな程度これに積極的に取り組んでおるようでありますから、さらにこのことを日本の技術で日本農薬をつくるということにひとつ力を尽くしてもらいたいということをお願いしておきますけれども、この新しい農薬の中で、これは住木先生がおわかりになればよろしいのでありますが、ちょっと専門外かもしれませんけれども、天敵によって害虫を駆除するという問題、あるいは害虫を不妊にさせるというふうな特殊な薬ができたというふうなことも聞いておるのですが、そのほうの研究成果というのは、ついででたいへん恐縮ですけれども、あわせてひとつお教えを願いたい。
  45. 住木諭介

    住木参考人 日本では、ようやくいま天敵とか、あるいはたとえば性的誘引剤、セックスアトラクタム等を用いまして、雄か雌かどちらかを集めまして、そしてその一方にコバルト六〇を照射しまして、交尾はするけれども卵を産まないというような方法もやっております。あるいは、えさの中に虫なら虫が好むものを入れまして、そしてそこへ集めてそれを食べて殺すという方法、あるいはまた、雑草駆除になりますと、あるこん虫をさがしまして、その雑草だけは食べるけれども、農作物には害を与えない、そのようなこともあります。あるいは、大体こん虫は変態と申しまして、卵から幼虫になり、サナギになり、それから成虫になりますから、そのときに大体特殊のホルモンがございまして、そのホルモンがなければ、たとえばサナギは脱皮することもできない、そういうようなものを与えまして、そしてその繁殖を防ぐというようなことなど、あるいはバイラスを用いまして、微生物をそのバイラスでこわしてしまうというようなことなどが、日本としてはようやく研究の緒についたばかりでございますが、アメリカではこのうちの三つくらいはすでに実行に移されております。御返答といたします。
  46. 石川次夫

    石川委員 そういうふうな各方面にわたる技術を駆使いたしまして、これを開発していただいて、ぜひそういう害虫駆除ということについても前進をしてもらいたいと思いますけれども、御参考までに申し上げておきますと、ちょっと資料は古いのでありますが、一九六五年、アメリカ農務省の予算の中で、農薬を中心としての害虫防除予算というのが六十億円とってありますね。これはたいへんな予算です。これは使い切れないといって悲鳴を上げているという話も笑い話みたいに聞きましたけれども、そのくらい積極的に新しいものを開発していくということに非常な熱意を示しておる。  これはやはり日本人に限らず、どこの人も食べものを食べなければならぬから、そういうものについての増産といいますか、しかも、害がないということのための対策というものを含めて、これは非常に積極的に取り組んでおるのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、日本農薬の許可基準というのは、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に著しい危害を及ぼす場合だけ、こういうふうな限定になっておるということは、世界の趨勢からいって非常に立ちおくれておると私は思うのです。  こういう点から、科学技術庁長官などもひとつ中に立っていただいて、世界の傾向というものは、こういうものについてはきわめて熱心に、積極的に、非常に慎重な長期計画のもとに、何とか有機水銀あるいは有機塩素剤を防除するというかまえで、水銀剤人体に及ぼす影響慢性化する危険が多いだけにいまから排除していこう、こういう積極的な取り組み方をしていくというときに、ひとり日本は立ちおくれているという点をお考えいただいて、これはゆるがせにできない問題でありますから、ぜひひとつこれは内閣としても積極的に取り組んでもらいたい。こういう問題についてはどうなんでしょうか、科学技術庁長官としては勧告権というものは発動できないものでしょうか、ひとつ参考までに伺いたいのです。
  47. 二階堂進

    二階堂国務大臣 勧告権があるかどうか私はよく存じませんけれども、しかし、いずれにしましても、先ほどからお話がありますとおりに、農薬の使用基準につきましては、関係各省ともよく連絡をいたしまして、人体の被害をできるだけ少なくするように積極的に検討を進めてみたいと考えております。
  48. 石川次夫

    石川委員 そこで、現在農薬による危害防止月間というのが行なわれておるわけですが、これは厚生省が中心で、農林省は中心になっておりませんか。厚生省だけですか。
  49. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいまの農薬の危害防止月間は、厚生省と農林省とそれから都道府県が一緒になってやっている、そういうことであります。
  50. 石川次夫

    石川委員 そこで私、そのやり方を見ていまして痛感をしたのでありますけれども、これは、それを使うと農民に対してこういうふうな害がある、あるいはそれが土壌の中に入り、作物の中に入り、人体に入って、人間の健康を著しく脅かすおそれがあるのだというふうなことには、あまり重点が置かれておりません。ほとんど、その農薬をいかにして安全に適正に管理するかというようなことが重点になって行なわれているように思われてしかたがないのです。それに何か農民に対する遠慮があるのかどうかわかりませんけれども、その辺は、これは使ってはいけないのだというようなかまえでやらないことには、来年は一〇〇%有機水銀を排除するという考えとマッチしてこない。使ってもいいけれども使い方が問題だというような形、あるいはその管理をどうしなければならぬというようなことに重点を置いたやり方では、使ってはいけないのだ、来年はこれにしろ、こういう前提で指導しておるような姿にはむしろ見えないのですが、この点はどうでしょうか、これは厚生省と両方で御答弁願いたい。
  51. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいま御指摘になりました点につきましては、もちろんそういうことを背景にもちまして指導いたしておるわけでございまして、先ほどから何回も申し上げましたように、ある一定の計画で切りかえていくということもざいまして、また、農家側といたしましては、使いやすいというようなこともございまして、古い薬を使いたがるという現実が現に存するわけであります。しかし、われわれのほうの指導の体制と申しますか、基本的な態度は、やはり悪いものは悪い、新しい、そういうものを含んでいないものに切りかえていくのだということを基本的な姿勢として出しております。ただ、それが末端まで十分に行き渡っていない、あるいは末端で指導いたします場合にそれが十分でないという、そういうことについては御指摘があったわけでございますが、その点等につきましては、さらに注意いたしまして、そのような方向でいきたいと思っております。
  52. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省として農薬に対処する法的な規制は、従来毒物及び劇物取締法を主軸に考えてきておったわけでございます。したがって、先ほど御説明いたしましたように、これが直ちに毒性を発揮する急性、亜急性というふうな配慮をいたしておったわけでありますが、別個の観点から、やはり慢性的な配慮もする必要があるということで、現在の法規制でいえば食品衛生法上危害を及ぼすおそれがある食品を売ってはならないということから、残留農薬の非常に多いような食品は売らせない、こういう措置はとれるわけであります。しかし、そういう形での法規制ということでなくて、あらかじめ農薬開発、新規許可というようなときにもそのような配慮をすることが最も望ましいわけでありますので、近年農林省と十分話し合いをいたしまして、慢性毒性農薬の許可にあたっては配慮してもらうようにということで話し合いが進められておるわけでありまして、既存のものに対する配慮は、そのような観点から指導をしていただくということにできるだけ努力をしてまいりたい、かように思っております。
  53. 石川次夫

    石川委員 蒸し返しのようで恐縮でございますが、WHOあたりでは、フェニル酢酸水銀というものはほとんど残留させてはならない、こういうような基準が国際的にきめられておる。これに非常に熱心なのはアメリカとオランダのようであります。きめられておるそういう国際的な基準が一応あるわけです。そういう基準から推して、これは慢性急性を含めての人体に対する影響というものを考慮した上でそういうものがきめられたと思うので、そういう基準というものを早急に日本にも適用する、そういうお考えはありませんか。
  54. 舘林宣夫

    舘林政府委員 御指摘のように、近年FAOとWHOが共同で残留農薬の許容量といいますか、人体に害を生ずる基準というようなものを検討いたしております。各種の農薬についてすでにその許容量はWHOで話し合いがまとまった状況でございます。中には、まだまだこれから検討が進められるというものもあるわけであります。そのまとまったものの中の一つに酢酸フェニル水銀がございます。御指摘のようにこれは〇・〇〇〇〇五PPMが許容量の限界である、このような意見が出ておることは御指摘のとおりでございまして、それを実際上運用すれば、ほとんどゼロに近いということでございますが、もちろん悪い例もないわけではなくて、許容量がきめられておる国の中にはオーストラリア、ニュージーランド等はそれよりはるかに高い許容量を現在でも許しておるという状況でございますが、わが国としては、あくまでもこのWHOで各国が承認をいたしました基本線の方向に近づけるように農林省にも御協力をいただくようにお話し合いを進めておる段階でございまして、その方向で農林省にも御協力いただけるというような方向で、いま農林省としてもせっかく水銀農薬の適正な処理ということを御配慮いただいておる、かように承知いたしております。
  55. 石川次夫

    石川委員 いま水銀農薬というお話がございましたが、水銀農薬だけじゃないですよ、私の申しておるのは。燐剤の場合もあるし、塩素剤の場合もあるわけです。そういうものも含めて、ひとつせっかく早急と言いますけれども、先ほど来話を伺っておりますというと、どうもわれわれ、ほんとに国民の立場を考えてものを考えておる立場とはちょっと違うような、ちょっと緩漫のように思うのです。何とかこれを早急に——国際的な基準があり、それから先ほど来申し上げましたように、米国では白ネズミが二年間、犬などは一年間という動物の実験をやって、慢性中毒であるかどうかということを実験をした上でなければ正式に許可しない。登録は認めない。まあ仮免許はしますけれども、その結果が出なければ登録は認めないということになっている。ただ日本の場合には、何と言いましても、戦前は十トンくらいで済んだものが、いまは四千五百種類も出ておりますから、なかなか容易ではないと思いますけれども、そのくらい真剣にほかの国では取り組んでおるということをよくお考えいただいて、慎重にということもさることながら、早急にやっていただきたい。ぜひひとつ、このことを強くお願いするとともに、そういうものの調整をはかる立場としては、科学技術庁長官、ひとつ骨を折ってもらいたい。  それから、先ほど来申し上げましたように、この危険防止週間というものの実態を見ておりますというと、危険なんだということを強調するということは、あまり見られない。農薬はもちろん危険だからこそ防止週間というものも設けて指導に当たっておられることはわかるわけでありますけれども、来年から水銀は使わせないんだという前提だとすれば、国民の全員に対する影響、それから農薬を使っている人はとんでもないことになるというようなことを積極的に解明をしながらやっていかなければ、水銀を来年から全部使用を停止するんだということと相呼応した政治はできてこないんじゃないかと思います。こういう点について私は非常に痛感いたしましたので、ひとつ農林省の関係の方によくお伝え願いたいと思うのです。そうして、どうしても一日も早く世界各国非常に懸念をしておる農薬禍から国民、人類の健康を守るために、特に日本の場合にはアルキル水銀、あるいはまた、フェニル水銀残留毒性による影響というものが非常に高いというようなことも兼ね合わせて早急に対処してもらいたい。そのことについては今後ぜひ閣議の場その他を通じて科学技術庁長官が中心になってもらいたい。また日本独特の技術というものは非常に高いものを持っておるだけに、これを積極的に開発し、そのことを通じてまた大量生産をさせるために、また日本の国内生産に寄与するためにも外国に輸出するという必要も生ずるわけであります。それも含めまして科学技術庁長官に十分その仲介の労をとっていただきたい。これをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  56. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 関連して、一言ですが、残留毒性を持たないもので害虫とか有害微生物を殺すものがありますか。
  57. 住木諭介

    住木参考人 たとえば先ほど出ました抗生物質のブラストサイジン、これは植物の葉っぱにかけますと、システミックと申しまして植物の体内にずっと入っていきます。ただし、これはラジオアイソトープを使って研究しますと、大体十日ぐらいでブラストサイジンがこわれてしまいまして、残留毒性のないものに変わってしまいます。ただ、そうなりますと、たとえばフェニル酢酸水銀を一ぺんかけますと、残留毒性があるくらいですから、一ヵ月ももちますが、これでやると、今度一回かけてもまた十日たったら、発生が強ければもう一ぺんやらなければだめだという、費用も人手も二倍かかる、そういう欠点が出てきますけれども、抗生物質の場合ですと、大体が残留毒性が植物体内でこわれまして、残留毒性がないものをさがせると思います。  もう一つは微生物に与えて……。
  58. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 微生物を殺してしまいますね。それで残留毒性を持たないものがあるわけですか。
  59. 住木諭介

    住木参考人 ですからブラストサイジン、カスガマイシンはいもち菌という、これはかびでございますが、それを殺してしまうわけです。
  60. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私はカスガマイシンの発明者に伺ったのですが、あれは殺すのじゃない、発生をとどめるのだ、繁殖ができないようにするのだ、そうでなければだめなんだ。だから農薬の根本というものは、残留毒性を持たないもので害虫を殺したり、それから有毒微生物を殺すものはないのだという話を聞いたのですが、これはきょう私は何も用意してまいりませんからあれですが、これはいわゆる塩素であっても、それから有機水銀であっても、あるいは硫酸アンモニアの硫酸根であっても、こういうものが植物に残留毒性として残る限りにおいては植物は安全ではない、そういうものから逸脱するところにほんとうの農業はあるのじゃないかと私は思っておりますがきょうは時間がありませんから……。ですから、カスガマイシンとかそういうものは、殺すのじゃないのだ、発生を阻止するのだ。さっき放射能によって繁殖ができなくなるようにするとか、ああいうものに類するものであって、いままで農薬として使っている有機水銀とか塩素とか、そういうものと全然趣を異にするのだと思っておりますが、その考え方は妥当であるか妥当でないか一ぺんお教え願いたい。
  61. 住木諭介

    住木参考人 農薬に、私どもが抗生物質でねらいますのは、二つのあれをねらっておるのです。一つは発生を防ぐ、つまり胞子の発芽を防いだり胞子のままで殺してしまう。これは予防になる。それから不幸にしてこれがいいものがない。そうすると今度は、発芽しまして、菌糸というものをつくりまして、菌糸になったときに今度それを殺す、治療効果と申しますか、予防効果と治療効果と分けておりますが、そういうものを二つ兼備えたような新しい農薬をさがす必要があります。それが不幸にしてできなければ、どっちかというものを二つつくりまして、それをかみ合わせまして一緒に与えるとか、そういうふうな研究をいままででもやってきております。そういうあれでございます。
  62. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 あとの質問は保留させていただきます。     —————————————
  63. 矢野絢也

    矢野委員長 次に、宇宙開発に関する問題について質疑の申し出がありますので、これを許します。中曽根君。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 科学技術庁長官に質問いたします。あしたはおいでにならぬというのでちょっといま質問したいと思います。  それは宇宙開発の推進の方策でありますが、昨年の春から夏にかけて、衆議院科学技術特別委員会は、小委員会を設けまして、宇宙開発推進に関する将来の方策等について超党派的に話し合いを行ない、また、参考人等も招致して一つの小委員長報告をまとめました。それは委員会報告されて了承されたものでありますが、その小委員長報告に対して、科学技術庁長官は、これを尊重して、その線に沿って推進する、そういう答弁を前にしておられるのです。その後、宇宙開発審議会において、兼重さんが中心になって建議案をつくりましたが、この建議案は、大体小委員長報告の線に沿って案がつくられ、提出されたわけです。最近、いろいろ科学技術の、特に宇宙開発の一元化問題について議論があるようでありますが、二階堂長官におかれては、この前、衆議院でつくったその小委員長報告の線に沿ってこれを尊重しておやりになるつもりであるか、この点をまず承りたいと思います。
  65. 二階堂進

    二階堂国務大臣 いま中曽根委員からお述べになりましたとおり、この宇宙開発の将来の基本的な態度は、小委員会において決議されたものを尊重いたしまして、その線に沿って推進をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 宇宙開発審議会が建議されたものについてはいかがですか。
  67. 二階堂進

    二階堂国務大臣 大体同じような考え方であろうと思っておりますから、その点についても同じような考え方を持っておるわけであります。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がこういう質問をいたしますのは、最近、東大生産研のロケットの問題についていろいろな問題が起きておる。そこで、政府当局においてあの線をくずすとか、あるいは別の考えをもっておやりになるのではないかという危惧が一部にある。そのために、宇宙開発関係の人の動揺というものが多少私らのところに感ぜられる。東大の宇宙航空研の内部においてもそうであるし、また、科学技術庁の宇宙開発推進本部においてもそうである。これは非常にゆゆしい事態であって、たとえば東大における宇宙航空研究所のあのロケットの成果というものは、長年にわたる国民の税金を使った成果なのであって、一朝一夕にしてできるものではない。しかも、あれはチームワークの所産であって、一個人のアイデアとか一個人の力だけではないわけです。したがって、このチームワークがくずれた場合には、日本のロケット開発というものはここで重大な一とんざを来たすおそれがある。また、科学技術庁においておやりになろうとしておる実用衛星の開発についても、あの成果を応用し、あるいはあの人材の知識を借りたりして、さらに大きな発展を期さなければならぬという状況だろうと思う。そういうやさきに、一部の人々の不注意その他によって世の誤解を招いたり、あるいは問題を提起されたということによって、そのチームワークがくずされたり、開発方針が乱されたりしては、これは重大な結果を生ずると私は思う。そういう意味において、政府がいままでの既定のラインを堅持して関係者に安堵を与え、その道をたくましくばく進ずるという方策を示すことが今日非常に重要であると私は思っている。もちろん、経理上その他の問題について改革すべきところは改革する。そういう点については勇断をふるってやっていただきたい点も、もしあればやっていただいてけっこうだと思う。大方針について、国会並びに政府の権威ある審議会が答申し、あるいは建議し、報告したという点については、いささかもこれについて疑義を差しはさむことがないように、政府の不退転の、しっかりした態度を宣明していただきたい、そういう要望をもって申し上げた次第です。これについて長官の御所見があれば承りたい。
  69. 二階堂進

    二階堂国務大臣 今日この宇宙開発の問題は、大きな問題としてわが国においても取り上げられていることは、御承知のとおりでありまして、しかも、この宇宙開発が、実用衛星を打ち上げて、それが国民生活の上に、また産業経済の上に大きな寄与をなしておるという現状から考えてみましても、わが国といたしましても、この宇宙開発には長期的な計画も立てるし、また、これを実施する責任体制というものも明確にして進むべきものだと私は考えております。  今日までこの宇宙開発の歴史と申しますか、経過を考えてみますと、先ほど中曽根さんが申されましたとおりに、東京大学における宇宙開発は、過去十ヵ年余りにわたる長い間の積み重ねの成果であります。この成果は、私は今日高く評価されていいものがあると思っておりますし、また私も地元でこの施設をつくる関係上、文部省当局と協力をいたしてまいりましたが、東大の宇宙研のこのチームワークによる成果というものは、先ほどお述べになりましたとおり、何十人かの学者の方々が、そしてまた、研究生あるいはこれに携わる産業界の方々の緊密な一つの人的グループができて、チームワークができて、促進されたものだと考えております。しかも、この全く戦後灰じんに帰した科学陣営が宇宙開発に挑戦して、そして研究をしながら開発をし、失敗を重ねて開発をしてこられたという、こういう多年にわたる努力というものは、私は実は高く評価していいものだと思っております。また、これらの研究が世界の学界にも大きな寄与をいたしておりますし、またわずかの頭脳で、少ない金で、非常に効率的な打ち上げができたということ、このことは世界の学界においても高く評価されており、また、このことがあればこそ、世界の学界からも協力を申し込んできておるというようなことも、私は、確かに十ヵ年にわたる東大の宇宙航究研究所のこの成果の結果だと考えております。  しかるところ、まあ最近東大の宇宙航空研究所の一部の問題をめぐって、いろいろの議論のあることは、私も承知しておりますし、これらのことについては、先ほどお述べになりましたとおり、反省し、また改むべき点は、私は思い切って改めていかなければならぬと思っておりますが、学校、学園における研究というものは、これは自由であり、またそれを侵してはならないと思っておりますので、東京大学における宇宙科学の研究については、今後も引き続き、学者が良心を持って、国民からいろいろ批判されないような方向をもって、まじめに研究を続けていっていいものと私は思っております。  なおまた、実用の衛星が打ち上げられる段階に今日日本も直面いたしておりますので、これに関連して、郵政省であるとか、あるいはNHKであるとか、運輸省等々がそれぞれ違った目的を持って衛星を打ち上げるような研究開発に取り組んでおりますが、こうした巨額な金を使って、巨大な計画をばらばらに遂行していくということは、必ずしも好ましいことではない。また、それが金の面から見ましても、人の頭脳の面から見ましても、必ずしも効率的に行なわれ得ないという欠点もあろうかと思いますので、これらの打ち上げをやる機構等につきましては、審議会の答申、建議等にもありますとおり、たとえば一つの方法として、特殊法人等をつくって、そしてそこが一元的にこれらの業務を担当していくというようなことが、私は適当ではないかと考えておりますので、目下私のところにおきまして、一つの案を考えて、これを関係各省とも相談し、さらにまた、宇宙開発審議会の方々にも御相談を申し上げて、できるだけ早い機会に結論を得て、そして国の進むべき計画、責任体制というものを明確にいたしていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これで終わります。     —————————————
  71. 矢野絢也

    矢野委員長 農薬残留毒性科学的究明に問題について質疑を許します。三木喜夫君。
  72. 三木喜夫

    三木(喜)委員 先ほどの石川さんの質問に関連してお聞きをしておきたいと思ったのですが、途中で別のほうについて質問がありましたので、あとになってしまったのですが……。  私、各地で起こっております水銀事件というのは、大体二つに分かれると思うのです。一つ阿賀野川、それから水俣、この両地方に起こったところの、人体に大きな影響を及ぼした事件、それからもう一つは、それから延長して農薬に対するいろいろな配慮、この二つに分かれておると思うのです。  そこで当委員会でもこの水銀禍の問題につきましては二回取り扱い、他の委員会でも、この問題は相当に取り扱われておりますが、いまだに大きな疑問を残しておるところがあいまいにされておるわけであります。たまたま予算委員会で、四月四日にこの点に触れて質問がなされておりますけれども、依然としてはっきりしていないわけであります。何がはっきりしていないかといいますと、当委員会でも取り扱った当時、阿賀野川水銀事件というものは、原因昭和電工の鹿瀬工場から水銀を含んだ廃液が出されて、それが魚の体内に入り、その魚を食べて水銀中毒を起こし、不具にひとしい人が出てきた、こういうふうにいわれております。しかし、昭和電工の側としてはそうでない。これは新潟地震のときに農薬から出た水銀が海に流れて、それが逆流して阿賀野川に入ってきたのだ、そういうふうに二説あったわけですね。それを譲らなかったわけです。そうこうしているうちに、これが政治的にもからんでき、あるいは産業界の大きな金の力がこれに働きかけ、なおマスコミがこれを取り上げてずいぶんややこしくなってきた。したがって、科学技術庁の責任においてこれを学問的に調査しようということで調査をされたはずであります。その調査は、厚生省に委託をして、厚生省のほうは疫学班、分析班、臨床班に分けて調査を行なって、そしてその結論が四十一年十二月二十三日に出たわけであります。その出たことが取り上げられていないのです。先般の四月四日の予算委員会でも、二階堂長官は、私のほうは報告を受けておりません、こういうことで終わっておるわけです。しかし四月四日からだいぶ日がたっておるわけですから、あのときは答弁用で答弁しておったらそれでよろしいというのでなく、その後調査もされ、結論が出されておるなら、それに対処して科学技術庁らしい動きをしていかなければ困ると思う。そうでなかったら、国民は疑惑のままで、原因不明のまま病気に苦しめられておらなければならない。その賠償の問題もあるでしょうし、国としても、その防疫対策をどうするかという問題も当然政治的な問題として派生してくると思う。原爆被害者に対する問題とか、あるいは工場におけるいろいろな災害、病気、こういうものに対する問題と同じように取り上げなければならぬということが起こってくる、そこを一向に明らかにされませんから、政治的な進展がないわけです。政治的な処置をする、そういう進展がないわけでありますから、おそらく阿賀野川沿岸のこうした罹災者は非常に不安に思っているのではないかと思う。その点、科学技術庁長官がおいでになっておりますから、この前の論議を踏まえて御答弁いただきたい。
  73. 二階堂進

    二階堂国務大臣 この阿賀野川水銀中毒事件は長い間の問題であるようでございまして、今日まで明確な結論を出すに至っていないことはまことに私も遺憾に考えております。  先ほどお述べになりましたように、厚生省におきまして、中毒事件のよってきたる原因について三班に分かれて調査がなされました。その調査の結果が、四月に科学技術庁の私の手元に提出されております。これは三班の方々がそれぞれ違った立場で検討されたその結果でございますが、これにつきましては、さっそく厚生省を含めた関係各省に集まっていただきまして、そして関係各省からもいろいろな疑点があるようでございますから、それらについてさらに私のほうからお尋ねをし、また、いろいろお聞きしておるような状態でございます。  ただ、厚生省全体としてのまとまった意見というものは、この三班の報告をもとにして食品衛生調査会にかけられて、その食品衛生調査会の結論が厚生省としてまとまった結論となる、こういうふうに私も了解をいたしておりますので、できるだけ急いでその結論を出してもらいたい、こういうことで目下厚生省のほうにお願いをいたしておるわけでございます。  これとても一週間や二週間でなかなか結論が出るものでないというふうに承っておりますが、できるだけ早く結論を出していただいて、厚生省としてまとまった結論が出てまいりましたならば、私は私の立場において公正な結論を出すように努力をしてみたいと考えております。ただ、いろいろ分析し、研究をし、検討を重ねていかなければならない問題が多いようでございますので、簡単に政治的に、こうだという結論を私の省だけで出すわけにはまいらないと考えておりますが、厚生省のまとまった意見が出てまいりますならば、私はできるだけ早く私の立場においての結論を出したいと考えております。
  74. 三木喜夫

    三木(喜)委員 厚生省も見えておりますが、その取り扱いは、いま長官が言われたような取り扱いがあろうと思います。しかし、私たち科学技術対策特別委員会としては、何を信ずべきかというその拠点を明らかにしておいていただかなければいかぬと思う。また、食品衛生調査会というようなものの中で、あいまいもこにしてしまわれるのなら、そんなものはしないほうがいいわけです。これは厚生省が責任を持って疫学班として昭和四十一年十二月二十三日に報告書を出している。その中で明らかに「昭和電工鹿瀬工場で、汚染機序は、アセトアルデヒド製造工程中に副生されたメチル水銀が工場排水によって阿賀野川に流入し、アセトアルデヒドの生産量の年々の増加に正比例してその汚染量も増し、それが阿賀野川の川魚の体内に蓄積され、それを一部沿岸住民が捕獲、摂食を繰り返すことによってメチル水銀人体内に移行蓄積し、その結果発祥するに至ったものと考える。」こういうふうに結論が出ておるわけです。厚生省の係官に聞いてみると、これは全員一致でまとめたという。ここまで確信を持ったものを、どのように今後厚生省としてこれを結論づけるのか、それをひとつ聞かしておいていただきたいと思う。日をおけばおくほど、政治的圧力、そして産業界からのもみ消し運動、それにマスコミがひっついてわけがわからなくなる。こういう心配があるので、厚生省として責任局長が見えておるようでありますからして、明らかにしてください。
  75. 舘林宣夫

    舘林政府委員 今回の三班のうちの疫学班が一応の結論を出しました判定からも明らかでございますように、この問題は直ちに人体関係する部分だけの研究ではなくて、人体には魚から入ってくる、魚へは何ものから入ったか。それから、少なくとも川へ水銀が入ったに違いない。川へ何から入ったかというような、直ちに人体衛生だけの関連でない、かなり広範な物理化学の分野の考察が必要な原因のように見えるわけであります。ところが、この三班の答申はそれぞれ別個の立場でなされておりまして、三班を統合する総合班という形の班もございませんし、また、疫学班は疫学的視野から結論をまとめておる。こういうことでございますので、食品衛生調査会におきまして、これらの各班を総合した意見を出していただくということで、食品衛生調査会の意見を聞くということにいたしたわけでございます。
  76. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで結論が出るまでにはある程度の日数が要ると思うのですね。しかし時間をおくと、この前の予算委員会でも指摘されておるように、各方面から手が回って、そういう主張を取りやめてくれとか、そういうことはないのだ、これは明らかに農薬が川に流れ込んだためだというようなことをどんどん言っていくし、マスコミはまたそれを取り上げて、こういうような調査をするものは全く邪道であるかのような発表をなさる。こういうことになると、日本の国民は責任官庁に対して何をおまかせし、そして何を信じたらいいかということがわからなくなってくる形で日をおいたらだめなんです。この前も、この辺が非常にあいまいになっておることが明らかにされておりまして、私非常に遺憾に思う。その点、いま科学技術庁としても、お金さえ渡しておいて、何ぼ日がかかってもそれはいいのだ、私らのほうは責任がないのだ、相当日がかかるだろうということで、そのままほっておかれることは、私は責任回避だと思います。したがって、そういうことをせずに——こんな問題が再三再四国会で取り上げられること自体、政治の不名誉です。早く快刀乱麻にひとつ断ち切ってもらいたいと思う。そしてその原因に対しては、それを排除する努力をし、そして被害者に対しては応急の措置をとらなければいかぬと思う。まことにこれは恥ずかしい話です。日本の国の関係官庁といたしましても、政治の実態といたしましても、こういうことじゃ困ると思うのです。大臣、これは、早急にこの点明らかにしていただけますか。
  77. 二階堂進

    二階堂国務大臣 私は今日まで政府当局、特に厚生省関係のほうで故意にこの事件の究明を引き延ばそうという考えではなかったと思っておるし、また、延ばすことによっていろいろ圧力がある、また、あってはならないというようなことでございますが、私はそういうことはないと確信をいたしております。また、私のほうにもそういう圧力も全然ございませんし、また、あってもそういうものを私は聞き入れる考えは毛頭持っておりません。できるだけ早くこの結論が出されるように、厚生省のほうにもお願いをいたしておりますし、また、国会でもこの問題がしばしば議論されておりますので、私の立場といたしましては、取りまとめて結論を出す役所になっておるようでございますから、できるだけ早い機会にこの結論を出すように積極的に働いていきたいと考えております。
  78. 三木喜夫

    三木(喜)委員 以上で、時間もありませんから終わりたいと思いますが、いま大臣の答弁にありましたように、早くこの結論を出していただいて、明確にしていただきたい。いずれこの問題については、当事者である質問された方からも再度質問があろうかと思いますので、それはお含みおきいただきたいと思います。  以上で終わります。
  79. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ちょっといま私、昨年の農薬に関する会議録を読んでみますと、きょうおいでになっておる住木博士もお見えになっておりますし、私の名前が出ておるのです。これは当時岡良一委員の質問に通商産業技官、工業技術院発酵研究所の微生物応用第一部長の岩本説明員というのが木酢のことで説明をしておられます。これを読んでみますと、木酢液五%でいもち菌は培基の中に発生しない、二%でも効果がある、酵母は木酢液一〇%の濃度でも阻止されない、こういう発表をしておる。それに対して住木参考人は、木酢のいもちに対する試験はやったことはない、こういうふうになっておる。こういうことがあったかどうか、私、当時国会におりませんから知りませんですが、これは私が発酵研究所に確かにいもち菌に対する木酢液の効果というものを依頼したことがございます。そういう報告書を私受け取ったようにも記憶いたしますが、いままで農薬に対する質疑応答を伺っていますと、結局は残留毒性の激しいものを農薬として使わせておるということが根本の原因であります。私からいうと、そういう残留毒性の激しいものを農薬と指定して、いままでに一年間に四百トンも水銀日本の田畑にまかせた責任者は一体だれだというようなことまで、ほんとにしゃくにさわって考えることがあるのでありますが、それはいたしかたないといたしましても、残留毒性のない、いもち病に対して特効のあるものがあるとしたならば、それはあくまでも追求していかなければ、私は科学者としての責任は果たせないと思う。二%でも効果がある。たとえば、私の名前が出ておりますから一つの例として申し上げるのですが、五%でも培地に木酢を入れるといもち菌が発生しないというデータがありますれば、木酢液は九八%水でありますから、そこへ入っているところの要素というものは二%、そうすると百分の二かける百分の五ということになりますと、これは千分の一であります。千分の一でいもち菌が発生しないというものがあれば、それをいかにして合成に持っていくかということを研究していけばいいのじゃないか。一〇%で酵母がいかれないということは——酵母はもちろん植物に対しては有益な菌であります。これは私から申し上げるまでもない。それは一〇%でいかれないで、いもち菌は二%から五%でいかれるということがもしあったとしたら、これはいもち菌対策として一つの大きな原動力だと思う。そういうところに研究者の創意くふうというものの重大性があるのじゃないか、こう私は思うのでございますが、こういう論議が科学技術特別委員会で行なわれているのに、科学技術庁はてん然としてこういう問題に知らぬ顔をしておるということもまたふしぎだと思う。何のために委員会が開かれてそして質疑応答をしておられるか、私は非常にふしぎだと思うのです。幸いに理化学研究所では今度予算を三億幾ら四十二年度には盛られて農薬研究の部門を積極的におやりになるということです。ひとつ何とか早くこういう論議が起きないように、とにかく日本の人間の髪の毛の中に外国人の三倍もに及ぶ水銀が残留しておるということとなりますと、毎日生命の不安におびえながら生活をしておる。これを除去するというのがいわゆる科学技術の大きなる使命だと私は考える。そういう意味で、私たちは、四十二年度の予算の理化学研究所農薬研究費というものに双手をあげて賛成したわけでございます。ひとつ長官もこの点御督励くださいまして、なるべく早く残留毒性のないものでいもちその他の病害を除去することのできるような研究をやっていただきたい、こういうふうに思います。
  80. 住木諭介

    住木参考人 非常にいい御発言をしていただきまして、ありがとうございます。  岩本さんのあれは、私、あとで二人で会いまして、千分の一くらいできくのは私は薬でない、百万分の一くらいがいまは頭の中にあるのでございます。それを岩本さんに私、話しましたのは、木酢の中からいろいろなソルベントで抽出されるとかなんとかして、もっと有効成分を取り出す、そうすればもっと少なくて済むでしょうから、まずそれをやってごらんになったらどうでしょうか。たとえばそのために動物試験が必要ならいつでも応援いたします、そういうふうに私は答えておいたのであります。一生懸命理研の農薬研究はやっており、いま半分までやってきております。御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  81. 矢野絢也

    矢野委員長 この際、住木参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のため、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次会は、明二十五日木曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会