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1967-07-04 第55回国会 衆議院 沖縄問題等に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月四日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 小渕 恵三君 理事 丹羽 兵助君    理事 川崎 寛治君 理事 永末 英一君       大村 襄治君    谷垣 專一君       古屋  亨君    山田 久就君       中谷 鉄也君    西風  勲君       穗積 七郎君    美濃 政市君       横山 利秋君    渡部 一郎君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君  委員外出席者         参  考  人         (弁護士)   寺嶋芳一郎君         参  考  人         (弁護士)   山本 忠義君         参  考  人         (弁護士)   高橋  融君     ————————————— 七月四日  委員森清君及び石橋政嗣君辞任につき、その補  欠として谷垣專一君及び中谷鉄也君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也君辞任につき、その補欠として石  橋政嗣君議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 六月二十八日  沖繩、小笠原の即時無条件返還等に関する請願  (川上貫一紹介)(第二〇〇七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  沖繩その他の固有領土に関する件(沖繩におけ  る人権問題等)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  沖繩その他の固有領土に関する件について調査を進めます。  この際申し上げます。  本日参考人として御出席を予定いたしておりました奥山八郎君より、病気のため出席できない旨の届け出がありました。  つきましては、この際、弁護士高橋融君を参考人として本日意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 本日は、沖繩における人権問題等について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、弁護士寺嶋芳一郎君、弁護士山本忠義君及び弁護士高橋融君、以上三名の諸君であります。  なお、参考人各位は、日本弁護士連合会沖繩問題調査特別委員会現地調査団員として、去る二月十六日から二月二十七日まで十二日間にわたり沖繩に参られ、御専門の法律家としての立場から、沖繩における人権問題等につきまして詳しく調査され、近くその調査報告書が発表されるとのことで、目下調査特別委員会としてこれらの意見の取りまとめのため鋭意検討を進めておられると承っております。  委員長より一言申し上げます。  参考人各位には、御多用にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。沖繩における人権問題等につきまして、それぞれ忌憚のない御意見を承りますれば、まことに幸甚に存じます。  なお、はなはだかってではございますが、時間等の都合もありますので、参考人にはお一人十五分程度、合計一時間以内に御意見の開陳をそれぞれお願いいたし、そのあと委員からの御質問にお答えいただきたいと存じます。  それでは、順次参考人から御意見を承ることといたします。  まず最初寺嶋参考人にお願いいたします。寺嶋参考人
  5. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 寺嶋でございます。  ただいま御紹介にあずかりましたが、私、この調査委員会の第六部会の幹事であると同時に、事務局総括をやっておりますので、全般について一応説明申し上げ、そのあと、特に注意を要するもの、私ども部会では、第三部会 人権、第四部会 軍用地接収という部会でございますが、その人権の問題と軍用地接収の問題について山本高橋弁護士に御説明を願うことにいたします。  説明いたします都合上、私ども委員会でどういう部会に分け、どういう内容のことをやっておるかということを最初にごく簡単に申し上げまして、そして各部会担当範囲内で、基準になっている現行沖繩における法令は何か、問題点は何か、そういうようなものをピックアップしていく、こういうような順序でやりたいと思います。  私ども委員会は、第一ないし第六部会に分かれておりまして、第一部会司法制度、第二部会渡航、第三部会は、人権と申しますか、沖繩におきましてあらゆる問題というのはことごとく人権につながるわけでございますけれども、第一、二、四、五のいずれにも属さない人権問題、特に基地周辺における人権問題、こういうものを担当しております。それから第四部会軍用地接収、第五部会労働、教育、社会福祉、それから第六部会沖繩法的地位統治機構基地問題、復帰運動、そういうようなことを調査いたしております。  そこで、各部会の担当しております分野においてそれぞれ何が軸となって現地沖繩では運用されているか、そして何が問題であるかということについていまから申し上げます。  第一部会で担当しております司法制度分野、ここでは、琉球列島管理に関する行政命令、いわゆる大統領行政命令、一九五七年六月五日に出されておりますが、これが基本になりまして、かと布令六十八号琉球政府章典布告十二号琉球民裁判所制、こういうような基準法があるわけです。それで、大部分大統領行政命令の十節というところに規定してございまして、琉球政府章典は、裁判所制度については、琉球民裁判所制によるんだということを書いております。琉球民裁判所制は、いわゆる琉球政府裁判所の組織とか裁判官の任命資格とか、そういうことを書いてございまして、私どもが一番問題にしております管管に関するものは、大統領行政命令そのものにあるわけです。  すでに御承知のことと思いますけれども沖繩には、民政府裁判所という系統の裁判所と、それから琉球政府裁判所とがあるわけでございます。琉球政府裁判所、これは近く変わると思いますけれども、いまのところは、上訴裁判所巡回裁判所治安裁判所の三段階に分かれております。それから民政府裁判所は、上訴裁判所と第一審裁判所というふうに分かれております。そのほかに、もちろん、軍法会議というものがあるわけです。  一番問題になりますのは、民政府裁判所管轄権が非常に大きいということ。具体的に申し上げますと、アメリカ軍人軍属、その家族に関する刑事裁判権は、ことごとく民政府裁判所にあるわけです。それから民政府民事裁判所管轄権としましては、高等弁務官が、合衆国の安全、財産、利害に影響を及ぼすと認める重大なすべての事件あるいは紛争に関する民事裁判権、これは民政府裁判所にあります。それからそのほかに、合衆国軍隊軍人軍属またはその家族当事者である民事事件で、当事者の意向が琉球政府裁判所裁判を受けるのはいやだというような意思表示をした事件は、ことごとく民政府裁判所に移るわけです。そのような管轄、これは、現在本土にもアメリカ軍基地がございますけれども本土における日本裁判所アメリカ軍人軍属に対する裁判権と比べても、はなはだしく大きいと申しますか、アメリカ側管轄権が大きいということは言えると思います。これが第一部会で問題になる点でございます。  それから第二部会で問題になります点。まず基準法を申し上げますと、布令の百二十五号琉球列島出入管理令というのがございます。それから同じく布令百四十七号琉球住民渡航管理、この二つが基準法でございますが、ここで問題になっておりますのは、渡航制限その他について、何が理由拒否をされるか、あるいは、拒否はしないまでも留保をする、何が理由留保をするか、その基準がきわめて不明確であるということ、それから、許可はするけれども、その許可が、実際の渡航の目的を達するには意味をなさないような時期に許可されることがままあるということ、そういうような点が非常に重要な問題点でございますが、なかんずくこの部分で無視できないと思いますのは、こういう渡航制限が、単に渡航制限だけにとどまらないで、その他もろもろの基本的人権の制約を加えておる。たとえて申しますと、琉球大学なら琉球大学の教授、助教授、そういう人たち自分の考えを発表しようとする、ところが、自分の考えていることを思い切って発表すると、今度は学会その他で本土へ渡るときに渡航の面でチェックをされることがないか、そういうようなことを考えるために、思い切って発表ができない。これは私どもの推測ではございませんで、現にそういう人々がそういう心配を私どもに訴えているわけでございます。といいますのは、渡航制限は、単なる往来の自由の制限であるにとどまらず、思想あるいは表現の自由の侵害を伴っておるということでございます。  それから次は第三部会。これは基地周辺人権、特にアメリカ軍人による犯罪という範囲でございますが、ここでは、基準になっておるものというよりも、むしろ問題になる法令としてあげたいのは、布令の八十七号に琉球民警察官逮捕権というのがございます。それから、これはアメリカ合衆国連邦法でございますが、連邦法号外国人損害賠償法という法律がございますが、これは米国法でございます。その米国法損害賠償について沖繩では適用されておる。そういうことがございます。  そこで、この部分での最も大きな問題点は、何と申しましても、アメリカ軍人軍属による犯罪でございますけれどもアメリカ軍人による犯罪——詳細は後ほど御質問の際に高橋参考人から申し上げますが、はっきり申しますと、正確な数字がつかめないわけです。ここに一つの例として、琉球警察から琉球立法院に対して提出いたしました「年度別発生検挙件数調」と称する報告書がございます。これを見ますと、たとえば発生件数としては、一九六一年九百八十四、一九六二年一千七十八、一九六三年一千百三十一、一九六四年九百七十三、一九六五年一千三、一九六六年一千四百七、こういうような数字が出ております。そしてこれに対する検挙率がそれぞれ一九六一年が六一・八、一九六二年が五三・八、一九六三年が五〇・九、一九六四年が五六・五、一九六五年が六〇・九、一九六六年が六四・一、このような数字が出ております。それから、ついでに凶悪犯だけについて申しますと、発生件数、六一年が八十四、六二年が八十三、六三年が九十三、六四年が七十七、六五年が六十八、六六年が百二十七、こういうことになりますが、ここで注目すべきことは、六六年に至って犯罪総数及び凶悪犯件数が非常にふえておるということ、これがまず第一に注目すべきことでございます。  それから、注意すべきことですが、検挙率が、ただいま申しましたように、六〇%、五〇%、こういうふうに申しましたけれども、これは本土における検挙率とは全く意味が違うということを申し上げたいと思います。と申しますのは、先ほど申しました琉球民警察官逮捕権という布令八十七号の規定によりまして、琉球政府警察官アメリカ軍人軍属逮捕し得る場合というものは非常に限られておるわけです。これは大ざっぱに申しますと、要するに、ある犯罪が行なわれる、それが警察官の目前でやられ、かつ近所にMPその他本来の逮捕権を持っておる者がいない、そういうような場合に限って逮捕ができるわけです。文章をちょっと読みますと、「琉球政府警察局所属警察官は、米国軍法に服すべき者が本人の面前又は視界の中で、人体に損傷を与えたり財産に甚大な損失を与える罪を犯し、若しくは犯そうとし、」途中を省略しまして、「当人がその犯人であると確め得る時で、米官憲が居合せない時は、これを逮捕する権限を有する。」なお、逮捕いたしましたら直ちにこれはそれぞれの米国陸海空軍憲兵隊または海岸警備隊犯人は引き渡さなければならないわけですが、問題は、要するに現行犯でなければ逮捕できない。私どもの周囲の本土におきまして検挙率たとえば六一%と申しますと、これは、あるところで犯罪が行なわれた、だれが犯人かわからない場合もある、それでいろいろと捜査をいたしまして、そして犯人を検挙する、それが検挙率でございます。この琉球政府統計にあらわれております検挙率は、警察官面前で現に犯罪が行なわれておる、それを六〇%逮捕したということは、逆に四〇%は逃がしたということですね。そういたしますと、五〇%の検挙率ということは、半分逃がしたということ、これはたいへんに問題ではないかと思います。  それからなお、外国人損害賠償法については後ほど高橋参考人から詳細は説明していただきますし、この犯罪その他についても、さらに詳細は高橋参考人から説明していただきますが、私どもこの表を一覧いたしまして、これはちょっと私から申し上げておきたいと思いますのは、非常な特徴を感ずるわけです。それはどういう特徴かと申しますと、まず第一に、犯罪統計で比較いたしますと、琉球住民による犯罪統計は、殺人、それから過失傷害というものが傷害罪に対してあるパーセンテージを持っております、その傷害罪に対して殺人あるいは過失傷害の持っておるパーセンテージと、それから米軍人の同じ傷害罪に対して殺人あるいは過失傷害の持っておりますパーセンテージを比べますと、殺人パーセンテージ米軍人のほうが非常に少ないわけです。それから過失傷害もまた少ないわけです。一体それは何を意味するか。つまり、殺人というのは大体逆上して行なわれるものが多いわけですけれどもアメリカ軍人犯罪というのは、そういう逆上性はあまり認められない。だから、人を殺すまでには至らない傷害でとどまっておるわけです。また、過失傷害が少ない。過失というのは、御承知のとおりこれは故意はないわけです。これまたアメリカ軍人の場合には、過失傷害というのはパーセンテージ傷害に対してそんなに高くない。つまり、アメリカ軍人の行なう犯罪と申しますのは、いわば逆上性がなくて、冷静な計算づくの犯罪と申しますか、ことばが適当であるかどうかわかりませんけれども、薄笑いを浮かべて行なわれておる犯罪、つまり、支配者が被支配者に対して何でもできるのだという意識が底に流れておる、その上に立たなければ行なわれないような犯罪の傾向を持っておるということが統計上あらわれております。  それから窃盗強盗とをパーセンテージで比較しますと、琉球住民の場合には窃盗パーセンテージが非常に高いわけです。窃盗に対する強盗パーセンテージでいきますと、軍人のほうはずっと強盗が高い。それから毀棄罪というのは圧倒的に軍人が多いわけです。これなども、先ほど申しました支配者意識というものがやはり相当に影響しておるのではないかと思います。そういうような犯罪上の特性があります。  それから第四部会軍用地接収、この詳細は山本参考人から申し上げますけれども基準になっておりますのは布令第二十号賃借権取得について、それから、この布令第二十号によって大部分効力を失いましたけれども、依然として残っておるわけであります布令第百六十四号アメリカ合衆国土地収用令——ちょっとこの点は調べた上で申し上げますが、アメリカ合衆国土地収用令というものの効力が一部残っております。この土地収用令に関しては、一番問題点は、土地収用そのものについての最終的な決定は行政機関で行なわれており、裁判所に持ち込むすべがないこと、それともう一つは、百歩を譲ってその収用を認めるとした場合にも、その収用に対する賃料がきわめて低額であるということでございます。  それから第五部会、これは基準法としましては、布令百十六号琉球人被用者に対する労働基準及び労働関係法というのがございます。  ここでの問題点は、米国の軍の施設内で組合活動ができないとされておるが、その米軍施設というものの範囲がきわめてあいまいである。と申しますのは、これも御承知と思いますけれども沖繩におきましては軍用道路が非常に多いわけです。しかも、実際に民間にも使用されておるいわば幹線道路ともいうべきものも軍用道路でございます。そのようなところも、単にそれが軍用道路、いわば軍用地であると形式上言えるために、そこで組合活動を禁止するというようなことがはたして許されるのかというような問題がございます。  以上で概略を申し上げまして、きょう特にお話申し上げたい米軍人犯罪及び土地収用につきましては、後の参考人の御説明に譲りたいと思います。  以上をもちまして私の御報告を終わります。(拍手)
  6. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、山本参考人にお願いいたします。
  7. 山本忠義

    山本参考人 山本です。  沖繩における軍用地問題について、その特徴点問題点をとらえて指摘したいと思います。  現在、御承知のように、沖繩には軍用地が六千三百十万六千二百五十坪余りあります。それで、この六千三百五十万余坪は、琉球全体の面積に比較しますと八・一九%、沖繩本島だけで比較しますと一四%、沖繩本島中部地区になりますと三二%、特にその中の基地の最重点である嘉手納村のごときは、八八%軍用地に占められております。  こういった軍用地実態について、アメリカはいかなる法律的根拠に基づいてこれを使っておるかということを見ますと、いろいろと過去十余年間にわたって変化はありましたが、現在は、賃借権取得についてという布令二十号と、それから琉球政府民立法であります土地賃安定法、これは昨一九六六年にできました。布令二十号は一九五九年の二月十二日に制定されております。こういった根拠に基づいて現在軍用地使用占有しておる。  それで、特に問題でありますのは、わが日本本土でありますと、これは日本国アメリカ合衆国国対国対等関係に基づいて土地軍用地使用が認められております。ところが、沖繩における土地収用手続というものは、琉球政府なるものを介するカムフラージュはございますが、直接米国がこの接収手続を行なう、そこに問題点があります。すなわち、琉球政府を介してもその本質には変わりはない。なぜならば、琉球政府は一九五二年二月二十九日の琉球列島米国民政府布告第十三号、同年四月二日改正の布告十三号を見ますと、琉球政府法的地位というものは単なる自治的機関にすぎない、すなわち政府ではないんだ、われわれから見れば単なる事務的な機関というふうにも解されるのでありますが、こういった点で、土地収用手続というものは直接米国琉球住民に対して行なっておるということに問題点があります。すなわち、命令関係であります。  そこで、現在、この布令二十号の内容というものはどういうものかと申しますと、米合衆国取得する権利は、不定期賃借権と、それから五カ年賃借権の二種類があります。その内容は、「土地の上空、地下及び地上並びに当該土地地上物件の完全、かつ、独占的使用占有及び享有に及ぶ」こういうふうに規定されております。それで、その取得方法としては、琉球政府地主と折衝して基本賃貸借契約を締結し、その後琉球政府米合衆国との間で総括賃貸措契約を締結して米合衆国転貸するという方法をとっておりますが、その転貸ができない場合は、すなわち、琉球政府住民転貸についての契約ができない場合、あるいは特別な事情弁務官の特別な認可があった場合、合衆国収用宣告書というものを提出して賃借権強制収用することができることになっております。そしてまた、さらに必要とする土地を直ちに使用及び占有すべき緊急の必要がある場合は、財産取得要求告知書を提出して、収用宣告書を提出するまでの期間はいつでも即時占有命令を発して土地使用及び占有することができる、こういうような布令二十号の内容であります。  これは後ほど問題点は指摘したいと思いますが、どういう点が問題かと申しますれば、強制収用の要件にしても、また即時占有命令の場合でも、何らそこに制限的なものがない。特別の事情契約の不成功、または緊急の必要という米軍の一方的な意思または事情によって接収が可能であるということが第一点。それから第二点としては、そういった接収手続に対する司法上の救済手続が全く見られないということです。これは人権一般についても同じことでありますが、沖繩には憲法がない、すなわち、局等弁務官のオールマイティの力によってすでに支配されておる、そういったような実態から、司法上の救済手続というものがこの軍用地接収あるいは使用についても全く認められてない。単にわずかに土地裁判所という制度ができました。これは司法機関ではなくて、準司法機関ということばを使っておりますが、単に訴願手続である。この土地裁判所も一九五九年にできたのでありますが、単に補償額の点、補償が少ないとか多いとかいうことについての訴願が認められるという程度土地裁判所、それしがなくて、司法上の救済手続日本本土におけるような人権保障手続が全くないということは、大きな問題点かと思います。  しからば、この軍用地問題というものは、一九五三年以来一九五九年の布令布告で一応おさまった。プライス勧告等があって、島ぐるみ闘争というものがなされたのですが、最近というか、昨年ころまではおさまっておった。ところが、ベトナム戦とか、そういった戦争激化によって、最近ではまたこの軍用地問題というものはクローズアップされてきております。一昨年の十一月、米第二補給司令部というものが、東南アジアへの総合的補給支援計画し実施するという命令のもとに、米本土から移駐してきて、基地の増強を推し進めております。このようなベトナム戦激化、それから米第二補給司令部の移駐と時を同じくして、一九六五年の末期から、那覇の軍港勝連半島ホワイトビーチ各地米軍基地拡張工事が推し進められ、また、読谷村、嘉手納村などの各地黙認耕作地——これは後ほど申し上げますが、黙認耕作地というものが次々と取り上げられ、さらに一九六六年五月二十六日のワトソン高等弁務官による新軍港計画声明等軍用地問題が大きくクローズアップされております。関係市町村地主とともにいち早く阻止闘争に立ち上がっております。また、復帰協とか原水協などの団体や労働組合でもこの問題を取り上げております。いずれも反対決議を採択し、高等弁務官、行政府立法院に陳情して、請願書を手渡しておる。一方、立法院でもこの問題を重視しまして、行政法務委員会を中心に、現地の視察、実情聴取等を行なって、一九六六年の六月十日の本会議で、軍用地強制接収に関する反対決議全会一致で採択しております。この決議では、新規接収は、極東の紛争のための軍事基地拡大強化をはかるもので、不安であること、また、接収は農民の生活を破壊するもので、人道上も許せないことを指摘して、高等弁務官に対して接収撤回を要請するという決議内容であります。  それで、具体的に各地新規接収間脳になっているところを二、三述べてみますと、具志川昆布地区があります。この具志川昆布地区というのは、現在二万一千四十一坪の新規接収計画米民政府から明らかにされております。それで、一九六五年の十二月それが明らかにされたのですが、一九六六年の一月二十五日に財産取得要求告知書というものを提出して、翌二十六日には早くも占有譲渡命令を発し、同年二月一日付で土地占有権取得する旨を通告するという強引さでした、布令二十号の問題点として先ほど申し上げた事態が、すでにこのような形で起こっておるわけです。  昆布地区の総面積が七十万五千百六十三坪で、このうち軍用地は三十二万六千坪、約四四%を占めておる。これがさらに二万余坪接収されると、五〇%近く軍用地となります。そこで、接収予定地主は三十八名おりますが、接収によって完全に耕作地を失う者が十七名にものぼり、この中でも、六十歳以上の高齢とか、しかも、たった一人で百坪余りの土地にしがみついて生活している未亡人が数名もいるということ、それから多くの扶養家族をかかえながら生活している高齢者がいることは、この接収がこれらの人たちの生活を断つにもひとしいものであるということをあらわしていると思います。  なおまた、ただいまは昆布地区ですが、糸満の喜屋武というところがあります。ここも新規接収計画が、一九六七年、ことしの一月五日に告げられました。地元では時を移さず、まず一月七日、——世帯主の全戸主会で接収反対決議をして、十二日、戸主会で土地を守る会を結成し、それから二月三日、糸満町喜屋武土地接収反対町民大会を開催しております。これと前後して、民政府とか行政府立法院にも反対決議を手交するとともに、昆布地区を視察して反対の体制を固めておる。接収予定地には、昆布地区と同様に接収反対小屋をつくって反対運動を進めておりますが、その接収内容はどうかといいますと、土地使用目的は、超短波全方向式無線標識を設置するのだ、それで接収予定面積が約四万三千七百坪、うち、実際に用いられる施設がなされる地域というのは約六百坪。たった六百坪です。それで残余は黙認耕作地として各戸主に使わせるというのですが、この点も、たった六百坪の施設を使うのに四万三千七百坪も土地接収しなければならぬ必要性がどこにあるかということを、われわれとしては声を大にして叫びたいのであります。  それで、喜屋武地区の総面積は約四十九万坪、うち耕地は三十五万六千坪で、すでに沖繩ラジオビーコン施設として約一万坪が接収され、いままたさらに接収されようとしておる喜屋武部落では、一月当たり平均わずか九百坪の耕地しかない状況で、まさに零細農業であるということができるので、この土地接収された場合に、直ちに生活の基盤を失う問題が出てきて、たいへんな人道上の人権問題を巻き起こすというように考えます。特にこの部落は、前に沖繩の占領中建物が建てられておった。しかも、土地にはコンクリートが打ってあった。これをつるはしで一本一本砕きながら、四、五年前やっと耕作地にしたというような事情のところで、それだけ農民にとっては愛着もあるし、生活問題としてもなおさら密接な問題があるのです。それで、接収予定地の中では、耕地の八割以上を失う人が二十数名もおります。残りの耕地というものは潮害がひどいので、部落自体の存立というものもここでは危ぶまれておるというようなことであります。  先ほど黙認耕作地ということを申し上げましたが、これは米軍がさしあたって使わない場所、それを一時使用許可している。一応五年程度の時期を区切りながら使わしております。土地使用条件というものはきわめてきびしいものがありまして、使用、修理、維持、回復並びに保護については、合衆国の一般規則に基づいて責任を負う、かつ、全体の取り消しをされないで特定の部分のみ取り消したり追加したりすることができる。そして、耕地内の立ち入りは、日中のうちわずか数時間というふうに限られているので、農民にとっては、黙認耕作は認められたものの、長期農業経済計画は立てられないで、生活上それほどの足しにはなっていない。これは、沖繩側の指導層に言わせますと、地代の二重取りにもひとしいのだから、農民は非常に助かっているんだということを言っておりますが、黙認耕作自体が非常に恩恵的なものであって、農民の農業経済計画というものと全然マッチしないんだということを、声を大にして現地の人は申しております。  以上、こういった土地をとられた場合に、農民の生活というものは、ほとんど基地労働者とか、あるいは比較的若い層は大工などの副業についております。非常に生活面が圧迫されておる。特に土地をとられた場合に、坪当たり年間十セント、多くて十三セントくらいですが、これは一反当たりになりますと、年間三十六ドルくらいの収入です。これが、サトウキビを植えておきますと、反当たり六トンから七トンで、大体その収入額は百ドル、約三倍になるわけです。農民はサトウキビをつくっていたほうが、軍用地にとられるよりも三倍の農民生活ができるというような面に、われわれとしては関心を持たなければならぬと思います。こういったような、農民の生活を圧迫するということ、そういった点は、一つはまた、沖繩の民生一般に関する問題として、お互いに日本本土におる者が救済の道を講じてやらなければならない、こういうふうに思っております。  救済方法としては、外交保護権といったものも考えられるのではないか。入江啓四郎、教授に上りますと、外交保護権というものは、外国に対して自国民を保護する国際法上の原則である。国民が外国での雇用条件として、本国の外交保護権を求めない旨の契約はできるけれども、しかし、その国民の本国ではそういう契約条項には拘束されない、また、当の外国もそういう契約を援用できかい。国家が外交的保護を試みた場合には、それが常に正常な権利行使であるかどうかということはまた別問題である。たとえば、一八九八年十二月二十六日の仲裁判決を見ますと、これはベルギー人に対するイギリスの外交保護権行使問題、それから神戸におけるイギリス人強盗事件について、イギリスのまた日本に対する外交保護権行使問題が見られます。そうした外国人の行為によって受けた国民の重大な損害、そういったものが、その外国の保護行為によるかいなか、つまり、故意、過失による権利侵害なのかいなかの法的問題は追及することなく、国家は外交的保護を試みる権利があるというふうになっております。日本でいえば、ビキニ水爆実験に伴う被害の慰謝料が二百万ドル、一九五五年一月四日の交換公文で認められております。こういった点も外交保護権の行使の一つであります。基地使用土地収用というものは、地主の個人個人とかあるいは農民の生存問題であるばかりでなく、沖繩民生全般の問題だ。その影響を未然に防止するために本土政府が外交保護権を試みることは妥当かつ正当な行為である、そういうふうに思います。日本政府も、あるいはまた国会も、ぜひ外交保証権を行使して沖繩の同じ日本人を救済してもらうのに積極的であってもらいたいと要望したいと思います。なおその点は後ほど質疑の段階でまた申し上げたいと思います。  以上で終わります。
  8. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、高橋参考人にお願いします
  9. 高橋融

    高橋参考人 先ほど参考人から申し上げた米軍人軍属による犯罪でございますが、これが非常にふえておるわけです。先ほど寺嶋参考人から申し上げた統計表によりますと、数の上ではそれほどふえていないようですけれども、この統計表がどれだけ信用できるものかについては、私は若干の疑惑を持っておるわけです。と申しますのは、基礎となるべき各地区別、どこの村でどういう事件が起きたかという統計などは全然公表されていないわけですから、これがどれだけ正確なものであるか、私は非常に疑問を持っておるわけです。いずれにいたしましても、現地の人々は、非常にふえておるということを申しております。たとえばコザの市議会では、ベトナム戦争発生以来ふえておるということで、昨年十二月六日と十一月四日、この犯罪についてその旨の決議をしておりますし、また、沖繩市町村大会というものが十二月十七日にありましたが、これもやはりそういう決議をしております。また、市町村議長会でも十二月二十二日にこういう決議をしておりますので、実際上ふえておるということが現地の実感であろうかと考えます。  ところで、先ほど寺嶋参考人から、逮捕権につきまして、現行犯逮捕権しかないと申しましたが、現行犯逮捕権がすべての犯罪にあるわけでなくて、一定の限界があるわけです。たとえばスピード違反あるいは酒気帯び運転といいますか、酔っ払い運転でございますが、こういうものは、実際に事故が起きてしまわなければ逮捕できない。スピード違反を現に見ておって、あるいは酔っ払い運転であることがわかっていながら、これが逮捕できないというのが、民警察の逮捕権の悲しさであると思います。そうして、そういうふうに不完全ながらそういう逮捕権逮捕されて、あるいは向こうが逮捕しまして引き渡された軍人軍属犯罪人はどうなるかといいますと、あとは琉球政府のほうではノータッチになるわけで、これは軍法会議裁判される。捜査も、向こうの憲兵あるいはCIDというようなところで捜査されるということになりますので、あとはわからなくなってしまう。特に沖繩で、耳目をそばだてたような事件については、特別に公開ということに一応なっておりますので、新聞記者の人たちが見てきたりなどして知っておりますけれども、たとえば一九六三年に起きました国場秀夫君という中学生の轢殺事件が那覇の目抜き通りで行なわれましたが、これは信号で横断歩道を渡っている国場君が軍用のトレーラーでひかれたという事件でありますが、海兵隊の軍法会議に回された犯罪人は、そこの一日半の裁判で無罪になった。無罪になった理由は、光線の反射で当時運転手として信号を確認することができなかったということで無罪放免、こういうことになっておるわけです。また、そうでない者につきましても、ベトナム戦争にすぐ送られてしまったり、あるいは不名誉除隊ということで、実際には刑罰に処せられないで米国へ送還されていくというような者が非常に多いということであります。  ただいまのが米軍犯罪の現況で、これに対しては何らかの措置をとってもらいたいというのが強い意見だと思います。  それから米軍関係の犯罪、あるいは犯罪でないものでありましても、非常に基地が多いわけでありますから、事故あるいは過失によるいろいろな損害が生じてくるわけです。たとえば流れだまがありますし、墜落がありますし、それから落下傘演習の落下物などがあるわけでありますけれども、こういうものにつきましては損害賠償が完全に行なわれていないということが蓄えると思うのです。これは先ほど寺嶋参考人が申し上げましたが、外国人損害賠償法という米国連邦法に基づいて賠償がされているわけでありますけれども、これは沖繩人たちからすれば、米国に対する、あるいは政府に対する権利としてあるわけではなくて、米国が、外交上また政治上、与えることが非常に有益であるということで与えている恩恵にしかすぎない。したがって、そのことについてどこか裁判所に持ち出して裁判を受けて、幾ら幾らの損害賠償を求めるということができるわけではない。しかも最高は一万五千ドルというふうに限られているわけです。一万五千ドルといいますと五百四十万円ですか、最高がそれだけでありますから、現在、日本本土裁判所でいろいろな損害賠償裁判などはすでにもう七百万とか八百万とか、あるいは多いものでは一千万をこしているものもありますけれども、そういう現状と比べると損害賠償額が非常に低い。また、権利性がないために低くさせられているということが言えると思います。しかも損害賠償にあたっては、親米的である、アメリカに好意的であるということが、損害賠償を与える一つの条件になっております。また、その損害賠償額を全面的な満足の意をもって受領するかどうかということが、損害賠償を与えることの要件になっております。したがって、満足して受けたということの領収証を書かなければ与えられない、こういうことになっております。したがって、琉球政府法務局の当局者などは、私どもに、すべて満足して解決していると説明しておりますが、はなはだ疑問の多い点だと思っております。しかもその手続面ではいろいろややこしくて、なかなか完全な補償が得られない。また、現在、漁業権などについての補償は、非常に不完全と申しますか、実際にはされていないのではないかと思われる現状があります。四面海にかこまれている沖繩でありますから、問題は非常にあるはずでありますけれども、これは土地裁判所訴願が出ているということを聞いておりますが、損害賠償という形では考慮されていないようです。  それから、先ほども出ましたけれども、いわゆる集成刑法というものが米国政府から出されておりまして、集成刑法に基づいてさまざまな裁判が行なわれているわけですけれども、集成刑法というのはこれ自体では完全な法律になっておらないし、したがって、それに基づいていろいろな訴訟手続を進める上では完全なものになっておらぬわけです。実際上裁判手続を進める手続として訴訟法が必要なわけですが、たとえば逮捕、勾留などをして被告人を刑事裁判に付さなければいけないわけですけれども、その手続についてこまかく書いたものは、米国民政府裁判所刑事訴訟規則というものが存在するわけです。ところが、私どもこれを探そうと思ってもなかなか見当たらないわけです。きょう持ってきておりますが、琉球法令集というものにそれが一つも出ていない。また、法令全書をひもといてみましても、この訴訟法が出ていない。しかも、官報に当たります向こうの——公報と申したと思いますが、それにも出ていない。したがって、弁護士もその法令を持っていない。そしてそういう中で訴訟をやらなければいけないという、何といいますか、公布されていない法令によって訴訟が進められているというような奇妙な現象が起こっていて、人権擁護の面からは非常に問題があるところだと考えます。私が一件持ってまいりました事件では、その公表されていない刑事訴訟規則に基づきまして逮捕されるときには、米国民政府裁判所逮捕状によるわけですが、これは英文が正文になっておりますので、英文の逮捕状に基づいて逮捕されている。しかもこちらは英語がわからなければ、刑事訴訟手続における人権擁護の目的で定められている逮捕状というものの役割りは、実際上何の役割りも果たしていないということになってしまうわけであります。  いま非常に、何といいますか、不完全なアメリカの支配の中で起こっている問題がたくさんありますが、この程度にいたしておきまして、後に御質問などをお受けして説明したいと思います。(拍手)
  10. 臼井莊一

    臼井委員長 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 臼井莊一

    臼井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、申し出が現在五名ございますので、一応十二時半の終了をめどといたしておりますから、十二、三分程度以内にひとつ御質疑を願いたいと思います。  それでは、中谷鉄也君。
  12. 中谷鉄也

    中谷委員 それではまず最初に、日弁連が特に沖繩問題調査特別委員会をおつくりになりまして、そうして非常に困難な中で沖繩現地調査をされたことについて、心から敬意を表したいと思います。  そこで私は、最初に、きわめて一般的なことをお尋ねいたしたいと思いますけれども、今度日米協議会の中で人権問題が問題として協議の対象になるということに相なっております。そこで、犯罪の抑止あるいは犯罪の捜査あるいは裁判権等の問題について非常な問題があることについて、先ほどから各参考人から非常に詳細かつ具体的な御意見があったわけでありますけれども、そのような調査を踏まえられて、特に沖繩人権問題、ことに日弁連の調査報告書の分類と申しますか、御記載の内容によりますと、いわゆる第三部の人件問題の中においては、特にどのような問題が解決されねばならないか、どのような問題を解決することによって犯罪が抑止され、あるいはまた捜査の問題が解決され——沖繩人権協会が、佐藤総理が沖繩にまいりましたときに、詳細かつ切実な要求をいたしているようでございますけれども、そのようなこととの関連においてひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。たとえば、アンガー高等弁務官が、米軍犯罪の予防というようなことを重点施策だということで申しておりますけれども、いわゆる犯罪予防というようなことは、制度的なものとして解決されなければ、ただ単に犯罪を予防しなければなりませんよというような精神訓話的なものでは、どうしても沖繩県民の人権というものは守れないという観点から、ひとつ参考人の方からお伺いいたしたいと思います。寺嶋先生あるいは高橋先生、どちらからでもけっこうでございますから、お願いいたします。
  13. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 ただいまのことについて私どもの考えを申し述べたいと思います。  申すまでもなく、現在沖繩において行なわれておる人権侵害の主たるものは、アメリカ軍人による犯罪でございます。それで、その犯罪を抑止するための制度的な何か問題点はないかという御質問でございまするが、この際私どもが考えてみますると、先ほど来出ておりますように、琉球側のいわゆる琉球民警察官逮捕権というものが非常に限られておるわけです。それでは、琉球民警察官逮捕権の及ばないものは一体どこで逮捕するか、これはいまの琉球民警察官逮捕権というアメリカ政府布令八十七号によりますと、米国陸海空軍憲兵隊または海軍警備隊、これが逮捕する権限を持っておるわけです。なお、大統領行政命令十節C項によりますと、統一軍法による軍法会議の審判の対象となる者、つまりアメリカ軍人軍属でございますけれども、その刑事裁判権につきましては、関係軍司令官が自分たちの軍法会議でやらないということを決定したものに限ってアメリカ民政府裁判所でやることになっておるわけです。つまり、琉球アメリカとの関係でなくて、アメリカ内部においても、民政府裁判所裁判権というものもまた限られておりまして、軍人犯罪に関する裁判軍法会議でやるわけです。  そこで、その軍法会議というものはどういうふうになっておるかと申しますと、これは陸海空軍それぞれが持っておるわけです。逮捕権を行使する憲兵あるいは海軍警備隊と申しますもの、これも要するに各車におるわけです。私どもはこの点は国会でもさらに御調査を願いたいと思うわけでございますけれども、私どもがいままでのところ調査した限りでは、高等弁務官というものは、同時にアメリカ第九軍の司令官であり、在琉球米陸軍司令官ではあります。しかしながら、現在琉球におります各軍というのはどういう指揮命令系統になっておるかと申しますと、たとえばあそこにおりました第三海兵師団、これは第七十九機動部隊の直轄であります。第七十九機動部隊というのは第七艦隊の直轄であります。そしてその上に太平洋方面アメリカ海軍司令官がおって、その上に太平洋方面総司令官がおる。空軍について申しますと、府中にありますアメリカ第五空軍の直轄であります。そしてその上にハワイの太平洋方面空軍司令官がおり、その上に太平洋方面総司令官がおる。つまり、高等弁務官がみずから握っておりますアメリカ陸軍というものは、同じ太平洋方面総司令官の下に、第七艦隊あるいは第五空軍と並ぶアメリカ第九軍であるにすぎないわけであります。せいぜい沖繩におるアメリカ陸軍司令官にすぎないわけであります。そうしますと、一体高等弁務官である彼が、そういった他の軍の警察機関、そういうものについてどれだけの指揮権があり、どれだけの監督権があるか、これがたいへんに疑問になるわけです。もちろん、第九軍司令官は同時にアメリカ太平洋方面総司令官の代表であるというふうにはされておりますけれども、これは私が調査した限りでは、単に多分に象徴というものに似ております。分列式とか閲兵とかの場合に、高い壇に立って敬礼をする役目であって、指揮権、命令権、あるいはそのうらはらの監督権というものは、少なくとも私の調査した限りでは、ないように思われます。もしそのとおりであるとすれば、ただいまの御質問にございました、確かに高等弁務官は、この大統領行政命令でも、これはこれなりに、人権を保障しなければならないというのが、たとえば第十二節あたりに書いてございます。あるいは、いろいろとアメリカ軍人の非違については取り締まるということを言っておりますけれども、はたして彼が彼の権限において取り締まり得る範囲沖繩におるアメリカ軍全部に及んでいるのかいないのか、はなはだ疑問に思うわけです。まして、ベトナムから戻ってくる、あるいは出ていく、そういう軍人たちが、はたして第九軍司令官の指揮下にあるのかないのか、それもよくわからないわけですが、ともかくそういう高次元での予防措置としては、高等弁務官の権限が私がいま申しましたようなものであるかどうか、さらに調査を加える必要もあると思いますけれども、もし私が調べたようなものでございましたら、より高いところで犯罪防止ということについては勧告をしてもらわなければ、荷等弁務官だけでやっておれば、いまおっしゃったように、単なる訓示規定、精神規定にすぎないようなことでお茶が濁されてしまうのではないかと思っております。
  14. 中谷鉄也

    中谷委員 非常に基本的な点についての問題の御指摘をいただいたわけですが、先ほどの寺嶋参考人最初のお話の中に、いわゆる検挙率についてお触れになった一節がございました。そこで、御指摘になりました布令八十七号につきましては、お話のとおり、殺人傷害、暴行、しかも重傷を食わせたもの、強盗、強姦、夜盗、窃盗、放火、不法侵入などという、きわめて限定された犯罪に対する現行犯逮捕が可能である。このことについてはすでに明らかになっておるわけですけれども、少なくともいわゆる現行犯についての検挙率というものがとにかく五〇%を割っている、五〇%を前後しているなどというようなことは、おそらくわれわれの常識をもってしては考えられないことなんです。私、犯罪白書をただいま持ってまいりませんでしたけれども、おそらく、日本現行犯検挙率、いわゆる本土検挙率というような場合には、九九・九%までは検挙されておるだろうと思うのです。そうしますと、結局現行犯が検挙できないというようなことは、むしろ警察の問題というよりも、非常に何かそれ以前のいろいろな問題があると思うのです。そういうふうに検挙できない理由というようなことについては、おおむね私も想像はできますけれども、そういうことを想像しただけでも非常な怒りを覚えますけれども、ひとつ参考人のほうから、そういうふうに検挙できない理由、逆に言うと、目の前で犯罪を犯してそうしてのこのことどこかへ逃げていってしまうというふうな状況は、一体どこに基因するだろうか、そういうようなことは、私はいわゆる人権問題以上の人権問題だというふうにさえも思いますが、この点についての御調査の結果、ばく然としたことでもけっこうですから、これはこういうところに原因があるだろうと思うというようなことについてお話をいただけば非常に私は幸いだと思います。
  15. 高橋融

    高橋参考人 一番犯罪が起こる頻度の高いところはコザ市周辺の中部地区でありますけれども、これは私どもはパトロールをやっている状況を見ましたが、コーパトロールといいまして、米軍の憲兵と民警察官が一緒におるわけでありますけれども、それ以外に民警察官のパトロールがあるわけです。警察官が一人や二人で回っていてつかまえられるような状況ではないということではないでしょうか。コザ市の場合など、向こうは非常に大ぜいたむろするような形で遊んでおりますし、たしかジャックナイフなど、飛び出しナイフなどは携行許可を全部持っておるはずです。そういうところで実際にそれを使った犯罪が起こっておるわけですから、やはり背のたけも違いますし、いろいろな条件があるんだと思います。しかも、よく聞く話なんですが、呼んで来てもらうころにはもういないんだということを住民の方からは聞いております。警察のほうからはなかなかそういう説明はなくて、治安は良好であるというふうな説明しかありませんでした。
  16. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、米軍人によるところの犯罪というのは、人権以上の問題、生命の安全に対するところの重大な侵害だと私は思う。こういう点で同じような問題を重ねてお尋ねしたいと思うのですけれども高橋参考人のほうでは非常な苦労をされまして、先ほど高橋参考人のほうからもお話がありましたところの全琉球米軍犯罪比較表という資料をおつくりいただいているわけです。ところが、先ほどの参考人各位のお話の中にもありましたけれども、たとえば犯罪案数ということばが許されるとするならば、泣き寝入りをしている、こういうふうな事案に基づく統計にあらわれてきていないもの、あるいは先ほどお話がありましたように、こういうふうな琉球政府警察局の作成したものを根拠にしておつくりになったようでございますけれども、その基礎になっている各地区の警察署におけるところの統計がはなはだ明確ではないというふうなことから、さらに米軍人あるいは軍属によるところの犯罪というものが多数行なわれているのではないか。要するに、あらわれてきているのは、俗なことばで言いますと、氷山の一角でしかないのではないかというふうなことを私思うのです。たとえば泣き寝入りというようなことで私は許すことができない問題だと思うのでありますけれども、バー、キャバレー等の業者にとっては、いわゆるAサインというのは、その仕事を続けていく上での命の綱ということになっておるようでございます。そういうふうな泣き寝入りをしている事実、あるいはまた、特に警察などが本来検挙すべきものを、示談をすすめておるというふうな実情がかなりあると思うのです。こういうふうなことについて御調査の結果お感じになったことがありましたら、ひとつこの機会に明らかにしていただきたい、こういうことでございます。
  17. 高橋融

    高橋参考人 私がここに出しております、きょう持ってきました統計表によりましても、たとえば強姦あるいは器物毀棄などという犯罪は親告罪になっております。親告罪ということは、告訴がなければ犯罪としないということでありますので、この点については警察局長から説明を聞きましたけれども、これはこういうことになっておるから、もっとたくさん起きているはずだということを聞いております。実際にはそういうことになっておるということです。  それからAサインというのがありまして、これを取り消されたら、コザでは、あるいは沖繩米軍相手の商売というものはできないわけですから、Aサインというものを取り消されるということは絶対に避けなければいけないということから、米軍当局の許可を取り消されるような、あるいはきらわれるようなことは絶対に避けるということで——たとえば性病にかかったというような難くせをつけられて取り消されてしまうというのがずいぶんあるそうです。実際には、性病にかかったというのではなくて、そこで犯罪が起こったということで摘発されたために、それを性病にかこつけて取り消されてしまったなどということがあるそうです。また、そればかりではなくて、地区的にそこで犯罪が非常に多発しているということになりますと、地域的にAサインを取り上げてしまったり、あるいは全市取り上げてしまったというようなことがあるそうですから、あまり多い多いということを沖繩では言えないのだということを聞いております。  それから地域別の統計でありますけれども、これはコザの警察署長に聞いたときに、どのくらい起きているかということについては申し上げられないということで、回答いただけませんでしたし、また、警察当局から出されている統計表というものは、地区別などはありませんで、全琉球ということで一枚の表になってております。それ以上詳細なものはありませんので、私どもはこれを把握するすべがありませんでした。したがって、一番基礎になる数字が出てこないで、それを積み上げていった結果だけを見なければいけないということで、私どもは納得がいかないというふうに申し上げてよろしいのじゃないかと思います。
  18. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、小さい問題でありますけれども、いわゆる法律家にとりましては非常にふしぎにも思えるし、とうてい納得のいかない問題ということでお尋ねをしていきますが、布令百四十四号の刑法並びに刑事手続法典については、沖繩人権協会等において、その内審が人権侵害的な内容を持っているということですでに指摘をいたしております。ところが、私、去る五月二日の本特別委員会において、政府委員に対して、その布令と一体となっておりますところの民政府裁判所刑事訴訟規則について公布されていない、したがって、その存在を明らかにしてもらいたい、こういうことを私要求したわけなんですけれども、今日に至るまで政府委員のほうからはその裁判所規則について明らかにされていないわけなんです。日弁連が御調査に行かれてそうしてこの裁判所規則について非常に苦労をされて入手されたということを私お聞きしたことがありますが、こういう規則については入手されたかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。その点だけでけっこうですから。
  19. 高橋融

    高橋参考人 それは入手しております。いま手元にありますけれども、これにつきましては、われわれが親しんでおります日本の刑事訴訟法、刑事訴訟手続等とは非常に違っておりまして、英米法系になっておりますので、非常に難解でございます。
  20. 中谷鉄也

    中谷委員 この機会にひとつお願いをしておきたいと思います。  在野法曹の会であるところの日弁連が、特に沖繩の九十万同胞の人権侵害の事実というものを無視することができないということでとにかく調査された。この調査は今後ともぜひとも継続していただくよう、私も日弁連の一員としてこの機会にそのことを要望いたしたいと思いますけれども、今後沖繩問題が解決するまでこの調査を続けていただきたい、そのことをお願いして私は参考人の方にそういう決意をお伺いすると同時に、この機会に申し上げておきますが、政府のほうでは、日弁連という在野法曹の団体に比べて、いろいろな資料を入手する機会あるいは便宜というものは十分にあるだろうと私は思うのです。ところが、その日弁連の特別委員会の皆さん方が、二月の十六日から非常に詰まった忙しい日程の中においても、裁判所規則を入手してお帰りになっている。ところが、五月二日現在において政府のほうにおいてはそのようなものを入手されておらないということは、非常に遺憾であるし、問題だろうと私は思うのです。したがいまして、今後ともそのような人権問題を中心とするところの調査を続行していただけるかという点が一点と、いま一つこの機会にお伺いいたしたいのは、そのような日弁連の調査というものは、日本において沖繩問題に関心を持っておる君たちの間において非常に高い評価を受けておると思うのです。そのような調査を今後も非常に自由に、かつ積極的に、精力的に行なっていただきたいと思う。その意味で、調査を行なうにあたっての障害あるいは困難性、こういう点について、調査の対象になる各機関の協力が得られたならばさらにその調査が可能であったろうというような、いわゆる調査のネックになっている問題について、この機会に意見を御陳述いただければ非常に幸いだと思うので、この点をひとつ私はお尋ねいたしたいと思います。
  21. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 ただいまの私ども委員会を継続してやるようにというお話でございますが、さしあたり、私ども委員会は、一応現在の委員は任期が二年である、ただし、その委員の任期が満了した際には、継続の問題はあらためて審議をする、こういうことになっておりますのですが、私どもといたしましては、いまおっしゃいましたように、沖繩の問題というのは、単に一回行って調査して、報告書を出してそれで終わりというようなものではございませんので、極力継続をするように日弁連理事者のほうとも話し合ってみたいと思います。  なお、私どもで先ほど申しました六つの部会に分けたと申しますのも、これも単に調査報告書を作成するだけの便宜ではなくて、刻々に起こってくる沖繩における諸問題をそれぞれの担当分野で迅速に処理するためにそういうふうな分け方をしたわけでございますので、できるだけ御期待に沿うような結果が出ますように私どもも努力したいと思います。  それから、ネックと申されましたが、いろいろとございまして、特にやはり私どもが一番苦労いたしますのは、直接アメリカ側と接触する部分について非常に調査がしにくいわけです。一例を申しますと、第二部会渡航関係でございますが、これは総理府なり都庁なりを通じて、東京におります琉球トラベルユニット、RTU、そこを通して、その次が座間にあるアメリカ陸軍の何とかを通って現地に行く、こういうような渡航申請のコースがあるというお話なんですが、座間に行けばもうちょっとはっきりわかるであろうというようなことを関係各官庁で言われるのですが、そこになってくると私どもちょっと手が及ばないわけです。しかも、その部分に、かねがねいわれておる、チェックの理由がわからないというようなその根源的なものが一部あらわれておるのではないかと思われるわけです。さような点がございます。  あとはちょっと——あるといえばたくさんございますが、何よりも一番大きな障害は、私どもは、これだけをやっておっては仕事になりませんので、それぞれ自分たちのほんとうの仕事をやっておる、そしてこれをやっておるという点でございます。あるいは日弁連自身の予算の問題とか、いわばそういう点が基本的なネックでございます。
  22. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうふうな非常にいろんなネックがある。特に、いわゆる政府機関ではない、在野法曹の団体である。言ってみれば、とにかく自前で調査をしなければならないというその状態の中で、先ほど私が指摘いたしましたような、現に幾らそういうものについての指摘をしてみても、政府がその入手ができないのだということを言っている裁判所規則等について、入手して来られた、だから、私はその点については非常に敬意を払うわけなんです。また同時に、沖繩人権を守るということについて政府がどれだけその熱意を持っているかということについて、あらためて政府のそういうふうな努力の足りなさというものを指摘せざるを得ないと思うのです。  最後に、私、先ほど寺嶋先生のほうから特に大事な問題としてお触れになりました渡航問題の中でのいわゆる言論の自由という基本的な自由との関係、渡航問題が同時に言論の自由の制限に及んでいるのだという問題についてひとつお尋ねをいたしたいと思うのですけれども渡航制限の形態等につきましては、非常に論理的と申しまするか、実態を把握された上での分析をしていただきまして、たとえば拒否という形態がある、あるいはさらに保留という形態がある、日時をそらす、あるいは時間ぎりぎりだ、あるいは一たん交付したものを取り消す、こういうふうな形態があるということについて分析をしていただいております。ただ、そういうふうな状態の中で言論の自由との関係ということで先ほどもお話があったのでありまするけれども、何か文章を公にしようとしたときに、その内容について、それが将来渡航拒否理由になるのではないかというふうな考慮をする、あるいは本土へ来ている学生の場合でも、目立った行動をとると、もう一度本土へ来ようとしても来れなくなるのではないかというような憂慮をしておるというようなことは、報告書の中にも御記載がありますし、同時に、その点については寺嶋先生のほうから特にお触れになったわけです。言論の自由という一番基本的な人権、われわれにとっては一番根源的な人権と申しますか、このようなものが渡航制限という中でそのことについての制約がある、あるいはそのことを十分に行使できないというふうなことは、私は非常にいけないことだと思うのです。したがいまして、私、最後のお尋ねをさせていただきたいと思うのでありますけれども、言論の自由が渡航の問題とからんで制限をされているというようなことについての具体的な訴えをいま少しくお話しいただければ非常にありがたいと思うのです。
  23. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 お答えいたします。  先ほど申しましたように、琉球大学の学者である彼らからそういう訴えを受けた。だれからというようなことをここで申し上げることができないほどの状況でございます。
  24. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  25. 臼井莊一

    臼井委員長 横山利秋君。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 たいへん御熱心に御調査をいただいたことを感謝いたします。  最近における沖繩調査で特筆すべき調査は、日弁連の調査と東大の調査であります。対蹠的なものがあると私は思っておるわけです。私が御意見を伺いたいのは、いま本土にあるわれわれはどうすべきか、何をすべきかという観点から、四つ、五つの点を伺いたいと思うのですが、東大の調査について御意見を承るということもおかしなことなんですけれども、しかし、調査方法ということについて考えさせられる点がある。東大の調査で一番特筆すべきことは、もう即時復帰はできないのではないかというような感じがだいぶ出ておるようであります。皆さんは主として人権問題を中心にあらゆる点を御検討くださったのでありますが、根底にあるものは、本土にある私ども沖繩にある皆さんの権利意識というものがもっと高まらなければならぬ。東大の調査は何かその調査方法にも問題があるのじゃないかと思うのでありますが、権利意識が眠っているといいますか、あるいはやってもしようがないという気持ちがありますか、御調査されて、沖繩の百万の人々がこれらの問題についてどう考えておるのだろうか、数々の問題が人権問題としてたくさんあるのにかかわらず、それが十分に表へ出ていかない、それは法律制限もあるだろうけれども、出ていかない沖繩の諸君の心情といいますか、接触されました沖繩の人々の人権に関するものの考え方といいますか、ちょっと抽象的でむずかしゅうございますけれども、お感じになりました点、それが第一であります。私の質問をそういう意味合いで申し上げておいたほうがお答えがやすかろうと思いますから、東大の調査に関連して、沖繩の人々の人権意識はどうであるか、どうお考えになったか、どういうように高揚させたほうがいいかという点が第一であります。  それから第二番目に、いま中谷君が要望いたしましたように、私も、日本弁護士会という、民間で一番権威があるといっても差しつかえないと思うのでありますが、今後継続的にぜひこの種の問題を取り上げて、恒常的な機関をつくってやってもらいたいと考えておるものでございます。その恒常的にやるについて、先ほど寺嶋さんから何か御家庭の事情もお話しになったようでありますが、何か御希望があるだろう、また、弁護士会のみならず、人権問題について沖繩の問題を取り上げるについて、この方法この方法というものをお考えになったことはなかろうか。  それから第三番目には、私も去年法務委員として沖繩調査いたしました。私のようなしろうとでございますが、例の裁判移送問題で、いまお話がございましたような沖繩司法制度の矛盾を身にしみて体験したものであります。その後この沖繩におきます裁判所法その他の問題について改正の動きがあるようではありますけれども、きわめて緩慢、きわめて不徹底という感じがいたすわけでありますが、沖繩における司法制度裁判制度から弁護士制度まで含んで、きわめて広範な御質問で恐縮でございますが、司法制度について検討されました諸点について、御意見を前向きの形でもし承れれば幸いだと思います。  それから外交保護権の点についてお触れになりました。私どもも本委員会政府を鞭撻督励しておることが一つの発動を促すためと考えてはおるのでありますが、あらためて御提起があった外交保護権というものがどういうふうに発動されることを期待しておられるのであろうか、私どもは政治を担当する者としてきわめて常識的にやっておるのでありますが、何かお考えになりました点で、理論的ないしは方法論等に触れてもしさらに一歩進んだ意見があれば承りたい、こう考えておるわけであります。  以上、お答えをいただきましてからまたちょっと補足して伺いたいと思います。どうぞ御自由にどなたでもけっこうでございますから……。
  27. 山本忠義

    山本参考人 第一点の、東大調査に基づく権利意識がどの程度かという点でありますが、現地復帰協の方々に伺いますと、東大調査のあの発表自体が非常に事実と相違する、あれには抗議しなければいかぬといって、いま抗議のデータを集めているところですというような話でありました、それで、軍用地問題等に見られるように、沖繩人民の権利意識といいますのは、結局、従来の軍用地が生活問題ということだけでとらえておったのが、昨年度あたりから、基地の拡充は、平和につながる、住民はそれぞれ平和に生存する権利があるんだ、基地拡大をして軍用地をどんどん拡大していったら、平和の侵害ではないかというような点で、平和に生きる権利、生存権というような観点から権利意識というものが高まってきた。したがって、復帰運動自体も権利の闘争だ。祖国に復帰することは、当然、条約三条による暫定的な施政権というものが——ケネディ声明にあるごとく、信託統治の提案権自体を放棄しておるんだ。すでに放棄しておれば、暫定的施政権の根拠はすでに失われているのではないかというような意見の交換がありまして、すでに条約三条に基づくアメリカの施政権は根拠を失ったので、一日も早く日本に復帰するのはわれわれの権利だというような観点から、権利闘争といいますか、権利意識というものに基づいて復帰運動も進められているというように伺っております。ただ、御承知かと思いますが、教職員組合の福地さんという人が、たまたまそういった復帰運動の中で暴力団員に暴行され傷得を受けた事件がありますが、そういった点で、右翼関係あるいは暴力団組織というものに復帰運動が非常に妨害を受けはしないかという点で非常に復帰協の人々は現在慎重に考慮しているような気風が見られます。  なお、第二点でありますが、日弁連に継続的なあるいは恒常的な機関を置いて調査を続行してもらいたいということでありますが、そういった場合におけるネックは、先ほど寺嶋参考人も指摘されましたが、実は日弁連の予算問題その他において、なかなか調査対象が限られている。しかし、幸いにして国会が日弁連の調査委員を本日参考人としてお呼び願ったのでありますが、国会も国民の代表たる機関として、ひとつ資料面において、国会を通じていろいろ沖繩に関する資料というものをこの委員会が集めていただき、それでその一部をわれわれ在野法曹にも回していただければ、調査はもっと活発化し、また安あがりにいけるのではないか、こういう点でわれわれはぜひお願いしたい。この委員会がどんどん資料を収集されて、その一部は日弁連のほうにもおさきいただきたい、これを、要望したいと思います。  なお、第三点の行政府関係は、寺嶋委員の担当ですから、そちらに譲りまして、外交保護権の問題でありますが、その発動を何を期待するかといえば、やはり沖繩には憲法が——日本製のことばで言えば、観念的には適用されているが、実質的には適用されていない、すなわち、憲法が存在しないというような点から人権問題はすべて派生している。そういった人権関係、憲法の保障に基づく人権擁護という面の補充的な役割りとして、日本政府沖繩に領土権を持ち、しかも人民に対する支配権を持っているのでありますから、外交保護権があるというような観点でぜひ日本政府がもっと積極的に沖繩人権問題に取っ組んでもらって、大いに発言してもらいたい。もちろん、国連総会あるいは安保理事会等に対する人権問題についての出訴権といいますか、訴えを起こす権利というものは、どうやら旧敵国として認められていないような向きもありますが、サンフランシスコ会議におけるアメリカ代表の提案によってそうした決議も採択されているようでありますが、やはりアメリカ国は憲章八十四条に基づく施政権者の義務というものがあります。信託統治地域における施政権者の義務、それは何かといえば、信託統治地域が国際の平和及び安全の維持の役割りを果たすようにすること、これが施政権者の義務であります。信託統治地域予定地区である沖繩においては当然この規定は適用されるべきだ、こう思いますし、国連憲章の一条三項には、人権及び基本的自由の尊重ということをうたわれておりますし、これはあらゆる国の人に対してでありますから、沖繩にも当然これが適用される、そういった面からもひとつぜひ政府は外交保護権というものを発動してもらいたい、こういうように思います。  なお、この点で、連邦ハワイ地方裁判所沖繩をどう見ているかというのをちょっと御紹介しておきますと、これは連邦地方裁判所が下した、一九五四年七月二十七日、城間牛対合衆国事件でありますが、こういった判決を下しております。「日本沖繩に対して残留主権を有することは、法的主権を保持することを意味し、これに対しアメリカが平和条約により、行政、立法、司法上の全権利を得たということであって、」——というのは、事実上の主権を得たということであって、「原籍沖繩県中頭郡の被告人が法的主権者に対して恒久的忠誠義務を負う以上は、同被告人はアメリカの移民及び国君法上は外国人である」こう判示しております。すなわち、沖繩人はアメリカ人ではないのだということであります。  また、アメリカ合衆国の連邦最高裁判所の判例にこういうのがあります。アメリカの市民権は主権事項であって、市民の忠誠義務と合衆国の保護義務との間には、市民権と主権との間と同様、相互保障関係がある。こういった関係で、日本国の主権は、沖繩住民の忠誠義務に対応して外交保護権を行使する当然の義務がある、権利がある、こういうように見られる。そういった点から、「沖繩住民は、日本の国籍法上は日本の国民であり、アメリカの国籍法上は外国人である。」ところが、沖繩は、日本から見てアメリカの施政権下にあるとはいえ、法律的には外国の法域というものを構成している、そういった沖繩法的地位があります。そういった日本国民が施政権者によって生活上あるいは民生上重大な脅威を受けている場合、すなわち人権侵害を受けている場合は、これに対し十分に外交保護権を行使すべきである、こういった点は、国際法学者も学説としてとっているところでありますが、われわれ在野法曹としても、そうすべきであり、日本国政府は何を一体ぐずぐずして沖繩に対する人権擁護にこと欠いているのか、そういった点で、非常に対米従属外交といいますか、非常にもの足りなさをわれわれとしては感ずる。やはり人権というものは、世界のいかなる国においてもこれは擁護しなければいかぬし、これは世界人権宣言にもあるとおりでありますから、日本国政府は何も遠慮しないで、アメリカ合衆国あるいは高等弁務官に対して、人権擁護を確保し、主張してもらいたい、こう思います。
  28. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 司法制度についていまの御質問、ちょっと私はっきり理解できなかったのですが、今後どういうふうにしたらよろしいかということでございますか。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 そうですね。
  30. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 そのことについては、私どもまだ委員会として確たる結論は出しておりませんけれども、ただ、先般琉球立法院の代表としてお見えになりました方々から、それぞれそれなりの、現在琉球立法院で審議されておる内容その他をお伺いしたわけですが、それについての感想と申しますか、それをちょっと申し上げたいと思います。  まず第一に、琉球上訴裁判所その他の裁判官に、琉球籍のない者、たとえば本土裁判官や弁護士を任命するということはどうかという問題がございますが、この点につきまして、大統領行政命令あるいは琉球政府章典によりますと、確かに、立法院議員とか、あるいは市町村の長とか、あるいは行政主席、副主席については、琉球籍というものが要件になっておりますが、司法関係については、文言上そういう要件としてはありません。そういうような点から、法律的には、あるいは現行法のままでも本土の者が裁判官になることができるのではないかと思われますけれども、問題は、その上訴裁なら上訴裁の裁判官に本土側から行く、これはよほど人選をしっかりしないと、かえって本土アメリカのお先棒をかついで琉球人たちに対する圧迫を加えることになる、そういう心配もあるわけです。  それから、たとえば裁判官についていいますと、忠誠義務というのがただいま山本参考人から出ましたけれども琉球における最高法規は一応行政命令となっておるとすれば、日本裁判官が兼職のまま出向という形にいたしますと、そういう忠誠義務の関係はどうなるのかというような問題もあると思います。たとえば、外務省の役人が国連の職員として出ていく場合は、出向でなく、一たん退職して、完全に国連に対して忠誠義務を負うのであって、職務上知り得た日本国にとって不利益なことでも、日本の外務省には出さない、そういうような徹底した形はこの場合にはとれないと思いますので、裁判官から任命する場合には相当問題があるのではないかと思います。  それからもう一つは、本土と同じようにいま行なわれておる簡易裁判所、地方裁判所、それから控訴裁判所、それから上告裁判所の四階級三審制、そういうようなものについては、私個人の見解になりますけれども、一体あの琉球地域に本土と同じような、いたずらに制度裁判所の数だけをふやす、それがそれほど人権を擁護する道になるのかどうか、その辺に対してはいささか疑問を持っております。  司法制度についてどうすればよいかということについては、そういう制度の問題よりも、やはり人間の問題である、裁判官の問題である。たとえば、沖繩現地司法試験は執行されておりません。公認会計士とか建築士とかは現地でやられております。わざわざ司法試験については福岡なり何なりまで出てきて試験を受けなければならぬ。出てくるには、先ほど来申しております渡航の問題がある。そういった面、あるいは琉球における司法試験の合格者を裁判所、検察庁あたりから本土司法研修所に派遣しておりますけれども、それを現在の四人を七人にしてくれ、七人にしてくれれば何とかなるというのが現地側の要望でございますが、わずか三人ふやすのがなかなかできない。きわめてこまかいようだけれども、実はさしあたりの非常に大きな実益のあるようなもの、それを予算的に見て三人ふやすのがどれほどの困難があろうかと思われますけれども、そういうようなこと、その辺からまずやっていったらどうかと思います。問題は、制度そのものよりも、人の問題ではないかと思うし、その人の問題について本土政府としては十分に援助することが可能であると思うわけです。
  31. 山本忠義

    山本参考人 補足して申し上げますが、司法制度上、御承知のシムズ判決がありますが、その法令審査権を現地のアイゼンシュタイン法務局長というのが否定的な言辞をしているというのが、日弁連調査団にわかったのですが、シムズ判決では、一応法令審査権は予定されておる。ただ、予定されておるが、その運用にあたっては、その布告布令が有効になるように解釈すべきであるというような形をとって、実質的に否定するようなことをにおわしておりますが、これも大統領行政命令に対する布令布告、指令等の審査権というものを沖繩側の民事裁判所に与えるよう、政府が外交交渉で確保してもらうと一番いいのではないかと思います。  もう一点は、先ほど米軍人軍属による犯罪の問題があったのでありますが、日本におきましては、公務外の米軍人軍属犯罪については日本裁判所がその裁判管轄権を持っておりますが、沖繩におきましては、米軍人軍属に関するものは一切軍法会議、向こうの管轄であって、琉球民事裁判所側にないというような点もネックになっておりまして、沖繩現地の要望として、公務外における米軍人軍属による犯罪に対する捜査権と裁判権沖繩の民側に移してもらいたいというのが一つあります。  その他、沖繩県民に関する米軍人軍属による犯罪について、現在非公開で、また発表もしないというようなことで、どういう結果になったか沖繩住民にはわからないわけです。たまたま新聞記者がかぎつけて、さっきの国場事件のごときはわかったわけですが、その他の米軍人軍属に関する軍法会議の審理模様は一切公表されないというようなことで、裁判の結果及び執行状況が県民に知らされないということが非常に不満の種にもなっておりますので、そういうことも知らせてもらうよう政府として努力するのが筋ではないかと思います。
  32. 横山利秋

    ○横山委員 一つだけお伺いいたします。  沖繩の人が、本土にいる皆さん、つまり弁護士を弁護人としてつけることについての支障——あなたの御調査によれば、本土弁護士は外国人弁護士として扱われているそうでありますが、そういうことによって起こる支障はどんなことがありましょうか。
  33. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 おっしゃいますように、私ども沖繩で大きな訴訟あるいは訴訟外の活動をしようとすれば、外国人弁護士として登録する必要があるわけであります。もちろん渡航の問題があるし、外資の関係のチェックもあるわけです。そこまで苦労して私どもが行ったほうがいいと思われる点は何かと申しますと、やはり何と申しましても、私どもは根がこちらにあるわけで、自由かってなことを言えるわけです。沖繩現地弁護士さんは、どれほど正義感に燃え、権利意識が強く、一生懸命やろうと思っても、その人にも家族はあるし、友人はあるし、自分だけが一生懸命やっても、自分の周囲にもろもろの見えざるプレッシャーと申しますか、そういうものがかかる、あるいはかかりはしないかと思うと、それによって権利擁護の活動というのは非常な制約を受けると思います。まして、沖繩におけるもろもろの訴訟活動は、きわめて多い部分が対権力者との戦いになる。ならば、その戦う担当者は、なるべくならばそういうアメリカ側のプレッシャーの直接かからない場所におる人間がやったほうがやりやすくはないか、こういうような考えを持っておるわけです。
  34. 横山利秋

    ○横山委員 外人弁護士として扱われるということは、訴訟上何か支障がありますか。いまお話によれば、沖繩弁護士本土弁護士も同じ日本人じゃないか、なぜ外国人として扱うのだという感じがちょっとしたのですが、外人弁護士として扱われることによって起こる法廷上の支障は何かありませんか。
  35. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 法廷における支障そのものはございません。ただ、外人弁護士という……
  36. 横山利秋

    ○横山委員 感じがしゃくにさわる……
  37. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 感じというよりも、これは登録取り消しができるのじゃないかと思う。登録を取り消せば、早刻帰れということになるわけです。
  38. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。
  39. 臼井莊一

    臼井委員長 川崎寛治君。
  40. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 二点お尋ねしたいと思います。  第一点は、軍用地の問題で、たいへん判然としない、非常にあいまいだ、こういうことであるわけですが、そういたしますと、たとえば一号線のような基幹道路、ここで組合の役員がビラをまいておったら逮捕された、こういうような問題が起きているわけですね。あるいは接収の問題にしましても、最終的には米軍側が直接やる、米国が直接やる、こういうことになってまいりますと、沖繩県民の生命、財産を守る、基本的人権を守るという立場から、精一ぱいいって、たとえば特に道路なんかの場合、そういうものをはっきり分けて、沖繩県民の基本的人権を守るということが可能なのかどうであろうか。つまり、入り組んでおるからこそ基地が自由に使えるというわけですね。そういうものを判然と分けて、県民のために生命、財産なり基本的人権を守っていくということが将来の問題として可能かどうかということが一つ。  それからもう一つは、昨年から非常にふえてきておるということでありますが、調査に参られました感じとして、今後もまだふえる見込みですか、どうですか。この二点。
  41. 山本忠義

    山本参考人 向こうの考えとして、すなわち民政府側の考え方としては、道路も基地一つだというふうに見ております。一号線は軍用道路となっておりますから。したがって、御質問の、ここからここまでは基地だ、ここからここは住民区域だといって判然と分けられるかどうかということは、先ほど言ったAサインとかあるいはオフリミットとかいう住民の生活上の問題からいってもまずむずかしいのじゃないかということと、それから道路上の問題、軍用道路の問題等から、基地沖繩側とを分離して取り扱うということは事実上困難ではないかというふうに感じられます。  それからもう一点は、基地接収拡張の問題ですが、先ほど申しましたようにどしどしこれが行なわれておる。昆布地区あるいは糸満地区、あるいは知念村なども今度十二万坪測量の申し入れがあるといったように、次々と基地の拡張の方向にある、そういった点で、沖繩住民たちは島ぐるみの闘争というものを展開するような動きにあります。立法院でも決議がされております。そういった実情であります。
  42. 臼井莊一

    臼井委員長 永末英一君。
  43. 永末英一

    ○永末委員 寺嶋さんにお伺いしたいのですが、特別調査委員会では六つの部会に分けられておる。五つまでお話を伺ったのですが、第六番目の、法的地位ないしは統治機構、そういうことで調査になりまして御意見がまとまっておりますれば、ひとつ伺いたいと思います。
  44. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 私は事務局全体の総括者であるとともに、その第六部会の幹事でもあるわけですが、第六部会と申しますのは、主として法的地位統治機構基地の問題を扱う部会でございますが、これはたいへんにむずかしい問題でございまして、私どもとしましては、実際に行なうかどうかは別として、たとえば国際司法裁判所に持ち出しても、国連の場に持ち出しても恥ずかしくないものをつくりたい、したがいまして、わが国の国際法学者がこう言っておる、ああ言っておる、そういうことを言ってもあまり意味がないと思うので、隣との境界争いを、おれのところの次男坊はこう言っておるというようなことはほとんど意味がないので、むしろ私どもは相手であるアメリカの学説なり判例、あるいは諸外国の学説なり判例、そういうものを求めてきて、それで法的地位というものを検討しようとしておるわけでございますけれども、きわめて残念なことに、そういうことについての日本語の文献というものが非常に少ないわけです。それで、私ども自身も横文字に強いのがそんなにたくさんはおりませんので、たいへんに苦労いたしますけれども、それにしてもわれわれはそうやりたいと思っております。したがいまして、ただいまの御質問にございました第六部会関係はどうなっておるかということにつきましては、たいへんにおくれておる、あるいは第一ないし第五の調査報告と分離してやらなければいけないのではないかと思われる程度に、たいへんな問題にぶち当たっておるということをまず申し上げます。  それから、大ざっぱな考え方といたしましては、残存主権といわれておりますレジデュアル・ソバレンティーは一体どういうことかということをいま一生懸命やっておるわけであります。大勢として大体考えられておりますのは、従来考えられておった主権と、それから最近、信託統治とか、あるいは第一次大戦後の委任統治とか、そういう制度が出てきた以後に考えられておる新しい考え方としての狭い意味の主権というものを考えまして、広い意味の主権、それは狭い意味の主権と統治権からなっておる。広い意味の主権から統治権を引いたもの、それが狭い意味の主権であり、まさに残存主権、レジデュアル・ソバレンティーである。しかし、それはどこまでも広義の主権マイナス統治権というものであって、ポテンシャルではない、顕在しておるのだ。具体的に言えば、たとえば国会の被選挙権が沖繩の人にもあるし、あるいは請願権があるということは政府もおっしゃっておるようだし、あるいは法令の一部が施行されておる。だから、潜在主権とだれが言い出したか知りませんけれども、少なくともレジデュアル・ソバレンティーということを潜在主権などと私どもは考えない。それは残存ではあるけれども、主権そのものである、統治権はないかもしれないけれども、主権は完全に持っておるのだ、こういうような考え方が大体第六部会での考え方の中核をなしつつあるわけです。先ほどの外交保護権その他も山木参考人からるる述べましたように、外交保護権というものは、統治権の作用ではなくて、主権そのものの作用であり、忠誠義務の反対給付である、そういうような考え方を持っておるわけであります。統治機構とか、そういうことにつきましても、そういった考えを基準にして現在まだいろいろ調査を進めておるということでございます。そういう意味でも、私どもといたしましては、この国会の委員会その他の御援助をむしろ今後はお願いしたいと思っております。
  45. 永末英一

    ○永末委員 ひとつぜひ法律的にその面からの御解明をいただくようお願いしたいと思います。  もう一つは、立法院というものができて、そこで法律をつくっておるわけですが、もし立法院を主体にして沖繩住民の行動を法律的に規制しようとすれば、それを主たる軸として沖繩の行政が行なわれねばならぬとわれわれ思うわけですけれども布令布告という、占領中につくったものですね、これが、立法院ができて形態が変わっているにかかわらず、それが残ってこの沖繩の行政が行なわれている。布令布告というものが残っておりますと、その範囲内で立法院の立法行為あるいは政府の行政行為が行なわれる、きわめてその制限がきついと思うわけです。布令布告というものは、法律上、なるほど大統領の一般行政命令に基づいて行なわれているわけでありますけれども、何とか法律上これをなしにする方法とでも申しますか、そういう主張点というものはないものかどうか、そういうことを御研究でありましたら、ひとつお教えを願いたいと思います。
  46. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 これは多少誤解があるかと思いますが、布令布告というのは現在でも出す可能性があるわけです。つまり、大統領行政命令に基づいて、高等弁務官には布告布令を出す権限があり、同じその大統領行政命令の中で、琉球の立法制度はこうあるべきものだということも書いてあるわけで、同じその基本法から出ておるものでございます。ただ、私どもとしましては、そういったいわば行政の面から法が出てくるということはきわめて好ましくないことであるので、なるべく立法ということで多少なりとも民意が反映するような制度になれば、それにこしたことはないと思っておりますけれども、ともあれ、現行の組織からいえば、いずれも同じ大統領行政命令という法源から出てきておる立法権であり、布告布令発布権である。一方、これはやめてこっちを残せというのは、結局大統領行政命令そのものの変更を求めるということになるわけでございまして、これはもう日弁連というよりも、それこそ皆さん方のほうのお仕事じゃないかと思います。
  47. 永末英一

    ○永末委員 先ほど法令審査権の問題が出ましたけれども立法院法律をつくる、ところが、その法律がいままで出ておる布令に抵触したり、あるいはまた、新たに高等弁務官が出してくる布令布告というものに抵触したり、こういう問題が起こりますね。それからもう一つ法律上おかしいと思いますのは、沖繩立法院のつくる法律に対して弁務官拒否権を持っておるわけですね。何か昔の大日本帝国時代の勅令みたいな形を一方とりながら、もっと強い力でこれに臨んでおる。そういう意味合いでは、初めに説明されたように、沖繩政府は、政府ではなくて、自治組織ぐらいなものだとおっしゃった意味はよくわかるのでございますけれども法律的にそのような抵触事項を並べ立てて、一体これをどこの場でどう解決するのか、こういうことで筋道を通して要求していくようなやり方、こういうことは御研究なさいましたでしょうか。
  48. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 ただいま申しましたように、立法院の立法と、それから布告布令に抵触する場合に、布告布令が概して優先していく、あるいは高等弁務官拒否権を持つというようなこと、たいへんけしからぬことでございますけれども、ただ、これを変更するためには、いま申しましたように大統領行政命令の変更以外にはないであろう。その大統領行政命令を変更させるためにどうしたらいいか、その理論的根拠いかん、こういうことになりますと、これはやはり民主主義国家の一般原則として、立法と行政と司法とは分かれるべきである。もう二十年もたったのだから、この行政命令内容自身を考えたらどうだというような考え方が出てくるわけでございます。いまになって行政命令をもう一ぺん変えろなんということを言い出すことがはたして適当であるかどうか、たいへん問題になってくる問題で、むしろ行政命令そのものをそもそも廃止しろと言うべき段階に——ひとつ中身を変えてくれということも非常に問題だと思います。ただ、根拠としては、繰り返すようでありますが、民主主義国家における基本原則であるそれが守られないのはおかしいじゃないかということになるのではないかと思います。
  49. 永末英一

    ○永末委員 ありがとうございました。
  50. 臼井莊一

    臼井委員長 渡部一郎君。
  51. 渡部一郎

    ○渡部委員 今回の御調査、まことに御苦労さまでございました。  ただいま貴重な御意見を伺いましたが、日弁連の調査報告書についてはいつごろでき上がるか、それがまとまるものか、それをお伺いいたします。
  52. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 当初私どもの予定では、今月の末に合宿をいたしまして、来月中にまとめたい、こういう目標を置いておりました。しかしながら、現在まで各部会が月に少なくとも二回、そのほかに幹事会をやり、委員会をやるというふうに懸命に努力をいたしておりますけれども、先ほど申しましたように、第六部会については、八月の末に報告書ができるという見込みはほとんどございません。ただ、第一ないし第五部会報告は八月一ぱいで大体まとまる予定でございます。
  53. 渡部一郎

    ○渡部委員 それではもう一つ伺いますが、現在祖国復帰運動というものが非常に行なわれて、現実の政治プログラムに組み込まなければならない段階にありますけれども、たとえば経済問題等の問題におきましては、非常に祖国への即時復帰というものは困難件を感ずるという、現場のほうの反対論というものがかなりあるわけであります。私はその辺で心配するのでありますが、皆さんがお調べになった司法制度、そういった全般的に復帰を不可能にするような障害といいますか、あるいはその困難性を感じさせて、いますぐに手を打っていかなければ、将来復帰運動が起こった場合に隘路になってしまうというような問題がおありか、また、それに対してはどういう解決策をお持ちか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  54. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 ただいま経済の話が出ましたが、私ども、財界人や中小企業の人たちとお話したり、その他いろいろと調査いたしましたけれども、悲しいことに、私どもそちらのほうはあまり専門でございませんので——ただ、たとえば松岡主席は、米軍が帰って沖繩が一応現状を保つためには、四十万人どっかに引き取ってもらわねばいかぬ、こういうことを言われるし、あるいは野党の安里社大党委員長によれば、三十万人引き取ってもらわねばいかぬとか、そういうようなこと。それから、沖繩の人口が現在九十万である、あるいは基地経済の依存率が四〇%である、大体一致して三、四十万という人を食べさせるにはどうするんだという問題がありそうだというところまでは私どもにわかるのですが、それを一体どうしたらいいかというのはちょっと……。
  55. 渡部一郎

    ○渡部委員 私が伺っているのはそうじゃなくて、そっちのほうは経済の専門家がいますから、そういう経済問題は経済の人にまたやらせますが、皆さんがお調べになった上で、司法制度上の問題でそういうようにいますぐに手をつけて取りかかっていかなければ、返還問題が起こったときに重大な支障になるような状態が司法制度の問題の中にあるかどうか、それを伺っておるわけであります。
  56. 寺嶋芳一郎

    寺嶋参考人 それは、先ほど申しましたように、いますぐにでも手をつけていただきたいのは、沖繩における法曹有資格者というもののレベルを上げることです。そのためにネックになっておるもの、それは何よりも現地における司法試験の実施が行なわれていないということ、それから司法研修所に派遣する人の人数がきわめて限られておるというようなこと、そういうような面は、このままおいておきますと、現地事情に非常に詳しいけれども、法曹資格がない——御承知のとおりに、私ども、その法曹資格についてはきびしく申しておるほうでございまして、現在沖繩における法曹有資格者約三百人、その中で本土における有資格者十数人、検察官、裁判官としては一人もいない、そういうような状況で、いまいきなり合体するということになると、それこそ、好むと好まざるとにかかわらず、沖繩の実情にそれほど詳しくない人間が裁判官、検察官となっていかなければいけないわけです。ところが、実際に能力を持ち意欲も持ちながら、たまたま現地司法試験が行なわれないためになれないというような人たちも相当にあると思われます。これなどは、現に公認会計士の試験はそこで行なわれておるわけですから、それこそ早急にやっていただいたほうがいいんじゃないかと思います。  それから人権の問題について、これも非常にむかずしい問題で、祖国復帰ということがきわめて望ましいことはわかり切ったことでございますけれども、それがいま直ちにやれるかどうかというと、これまたよく御承知のとおりでございます。しかしながら、そのことによって、それじゃ人権問題もこのままおいでおいでいいかということは全く別問題なんで、その人権問題について何とか解決をはからなければいかぬ。それは、いままでいろいろと申し上げておったようなことを少しずつでも実行するしかないんじゃないかと思いますけれども、やはり何よりも大きなことは、一例を申しますと、先ほど出ました集成刑法で、米軍要員である婦女に対する強姦あるいはその未遂というのは、最高、死刑でございます。要員といいましても、アメリカのいわゆる女の軍人でもなくて、アメリカの軍隊と契約関係にある商社の社員の家族、これも修正刑法では米軍要員になっております。要するに、日本の刑法では、強姦罪というのは最高たしか十年だと思います。一方では死刑があり、一方は十年だ。これは決してアメリカがレディファーストであるとかなんとかいうことで笑っておられる問題ではなくて、大体婦人犯罪について被害者の婦人の国籍によって差が設けられておるということは、とりもなおさず、それは男の場合でも差が設けられるであろう、少なくともそういう意識の中で差が設けられるであろう、そういうような基本にあるもの、アメリカが原則として施政権を行使しておる、その施政権行使の底に流れておるものが、もしもそういった民族的な差別観と申しますか、そういうものがあるとすれば、これこそが最も重要な問題ではないかと思うわけで、そのことについて本土政府として強硬に米国政府に申し入れをする、かつ継続して申し入れをするということが必要じゃないかと思います。そういうようなことが、沖繩における祖国復帰の早いおそいとは無関係に、人権を守らなければならないというその人権を擁護するためのいわば最も基本的な必要な姿勢ではないかと思うわけです。
  57. 渡部一郎

    ○渡部委員 最後に、犯罪の問題でございますが、私も向こうへ参りましたときに少し調べさせていただきましたが、先生方がお歩きになったあともだいぶ広範囲にわたられたので敬意を表しますけれども、結論として、そこに、先ほどデータがあげられたのは私も手に入れたのですが、それの何倍くらいが起こっておるというふうに推定されたか、またはそれについての対策としてどういうことが考えられるか。その対策といいますと、これは非常に制度そのものに関する問題なんですけれども、その二つをちょっとお伺いしたいと思います。
  58. 高橋融

    高橋参考人 実数がどのくらいあるかということは、これは推定はできないことだと思います。これが何倍になっているかということは、軽々にも申し上げられないし、そういうことは私ども推測はしていないわけですが、多いだろうということは言えると考えております。  それから対策でございますが、結局、公務外における米軍人軍属犯罪について、捜査権と裁判権を民側に移すということがそうむずかしくなくできることだと思いますしこれは日本の行政協定に基づく刑事特別法というのがありますけれども、それとパラレルなものをつくるということはむずかしくはないものだと考えております。
  59. 臼井莊一

    臼井委員長 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。ここに委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十四分散会