○堀(武)
政府委員 前回、
船舶とは何ぞやという宿題が出されておりますが、
船舶というものの
定義につきましては、いろいろの
法律に、それぞれの
法律の
目的から見ていろいろの
定義をいたしております。たとえば
商法におきましては、
前回久保先生が御指摘になりましたように、
商行為をなす
目的を持って
航海の用に供するものというふうに、
商行為を行なうものというところに
重点があるわけであります。これは
商法という
法律の性格上、そういうところに着目して
船舶というものを
定義しておるということでございます。その他、
船舶という
定義をしておる
法律には、
船舶法だとか、あるいは
船舶積量測度法とか、あるいは
海上衝突予防法とか、あるいは
船舶安全法とかいろいろな
法律に
船舶というものの概念が出ております。これは、おのおのその
法律の
規制目的と申しますか、そういうものから
船舶をどういうふうにとらえるかということで
規定をいたしておるわけでございまして、たとえば
海上衝突予防法とか
安全法というようなものにつきましては、
商行為を営む営まないとにかかわらず、それを
船舶ということでとらえておるわけであります。これは
法律目的からして当然なことであるわけでございます。そういう
法律に出てくる
船舶という場合は、いま申しましたように、
法律目的に従っていろいろ
規定されておりますが、われわれが内
航対策において
船舶と言っておりますのは、むしろそういうことから離れまして、内
航市場と申しますか、そういうところに
重点を置きまして、いわゆる内
航海運に従事しておる船、それの
船腹調整のためでございますので、当然内
航輸送に従事しておる船というふうに考えるわけでございます。
それで、その場合の船というのは、
社会通念と申しますか、そういうものから考えまして、浮かんでいるもの、そして
輸送に従事するもの、そして内航の場合は、内
航輸送に従事する、こういうふうなものが、ここにわれわれが言っている船である、いわゆる簡単に申しますれば、浮かぶ、運ぶといいますか、そういうものが船である、このように考えている次第であります。
そして
沈船というものは、
一体船であるかないか、これはすでにいま申しましたように、
社会通念上、船というものは浮かんでおらなければ船ではないという
通念から見ますと、
沈船という
状態はすでに船という機能を失っておる。この
沈船、
沈没という
状態をわれわれは
解撤と同じに見なしているというところに意義があるわけでありまして、
沈没という事実を
解撤とみなすかどうかというのが一番根本の焦点になるのではないかと思います。これが第一の問題でございます。
次に第二の問題といたしまして、
許可基準というものをどういうふうに設定するのか、そしてその
許可制をしいたあと、その内
航運送業者の将来図と申しますか、その
集約後の
体制がどういう姿になるのかという御
質問でございます。
第一の
許可基準をどのようにしてきめたかということでございますが、まず
考え方としては、
港湾事情とか
積み荷の
ロットという観点から、
基幹航路というものにおきましては、特殊な
専用船を除きまして、将来は千
トンないし二千
トンの大きさの型の船が標準的なものとなるのではないか。そして
基幹航路以外の
地方航路におきましては、やはり
港湾事情とか
積み荷の
ロットの
状況から見まして、五百総
トン程度の
船型が標準的なものと
予想されるということを、将来の
予想としてまず頭に置いたわけでございます。
さらに、次に考慮しなければならないことは、
輸送につきましては、正確、迅速であるということが一番大事なことでありまして、
主要航路地点に自己の
営業店舗を設けて、いろいろの
輸送業務に万遺憾なきを期して、正確、迅速な
輸送に当たる
体制でなければならない。そしてその場合に、船の隻数の
規模と申しますか、そういうものにつきましては、やはり少なくとも四、五はい
程度以上の船を持って運航するのでなければ、正確で迅速な
輸送がなかなかできないのではないか、そういうような
考え方をとっております。
三番目には、われわれといたしましては、いまの内
航海運業界の
状況から見まして、一番安定したサービスをしておる
中堅企業というものの
程度まで引き上げたい。そういうものはどういう形になっておるかといいますと、これはやはり一応
主要航路地点に
店舗を設けて、そして
船舶の全体の
規模、
船腹の
規模から見まして一万
トン程度の船を動かしておる
事業が、一番安定した経営を行なっている
状況にかんがみまして、そのようなところまで引き上げて将来行きたい。しかし、これはなかなか一挙には非常にむずかしいと思われますので、
段階的にこの
拡大をはかりたいというような
考え方から配慮をいたしたつもりでございます。
それで、このような
考え方をいたしながら、
四つの
段階に
基準をきめたのであります。
まず第一の
範疇に入るものといたしましては、五百総
トン以上の
鋼船を使用する、これは主として
基幹航路でございますが、これがまあ一番上位のクラスでございます。
次の
範疇は、三百総
トン以上五百
トン未満の
鋼船を使用するもの。これは何と申しますか、
主要ローカル線とでも申しますか、そういう
航路に従事するもの。
第三の
類型といたしましては、三百
トン未満の
鋼船を使用するもの。これは
ローカル線でございます。
それから第四の
類型といたしましては
平水資格船あるいは木船、はしけのみを使用して
輸送業務に従事する、これは
局地航路とでも申しますか、そういうものに従事するもの。
こういうような
四つの
段階に区分をいたしまして、それぞれ少なくとも四隻ないし五隻の
規模を持たすようにという考えで
規定を設けた次第でございます。そうしていま申しました第一の
類型は全部の
トン数が五千総
トン以上になることを条件とし、それから次の二番目の
類型につきましては二千総
トン、三番目につきましては千総
トン、第四番目の
局地航路に従事するものにつきましては二百総
トンを
基準船腹量と定めることといたしたのであります。
このような
基準によって
許可制に切りかえた後はどのような姿になるかと申しますと、現在
登録内航業者が全部で九千七百ぐらいあります。そのうちで、たとえば第一の
類型に予定されるものととして考えられるものは百七十六
業者。これには
貸し渡し業者に切りかえるというものはありません。すでにいま申しましたような
基準に適合するものと考えられるものは九十四ございます。それから、この
基準のほぼ六〇%
程度に達しておるというものが三十。六〇%
未満のものが五十二あります。これが、いま申しました
許可制を実施した後には、この第一の
類型に属するものは、内
航運送業者が百三十。そして、
貸し渡し業者、いわゆる
基準にどうしても達する
見込みのないものにつきましては、一方は
集約のほうに持っていって、できるだけ
集約を行なわせる、それが不可能な約半分につきましては
貸し渡し業者に転換する、こういうような措置をいたしまして
貸し渡し業者となるものが、そのうちの三十。
それから第二の
類型に属するものにつきましては、内
航運送業者が八十で、
貸し渡し業者に転換させるものは二百八十。
第三の
類型に属するものは、内
航運送業者が百十、
貸し渡し業者、これは一
ばい船主でございますが、これに転換せざるを得ないと思われるものが千四百八十。
第四の
類型に属するものは、内
航運送業者が千三百十、
貸し渡し業者となるものが四千八百六十。
そのほかに、
離島航路、それから
単一荷主に専属する
輸送業者、それから河川、湖沼のみを航行するもの、こういうものが千。
大体こういうような姿になるというふうに思われます。
以上、概略申し上げます。