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国務大臣(
佐藤榮作君) お答えいたします。
最近の、
国民の間に醸成されました
政治不信、これに
お触れになりまして、この
不信を除去し、
政治の信頼を高めるゆえんのものは、ただいま起きている
一連の
不祥事件に対してのその
態度できまるのだ、こういう
お話がございました。私は、過日の
所信表明でも申し上げましたように、ただいま
国民の間に
不信を招来し、あるいは
疑惑を生じたような
事件、たとえば
共和製糖事件のごとき、
きわむべきものは、これをきわめ、また正すべきはこれを正す。こう私の
決意を表明いたしたのであります。
国民にその
疑惑を解くという、これは何よりも必要なことだと思います。その
意味で、今回、その
決意を持ちまして、かような
事件をそのままに過ごすことなしに、また、
責任を転嫁することもなしに、その
責任の所在を究明してまいる。そして、
国民の
納得のいく
処置をとるつもりでございます。
また、最近、
政治に対するかような
不信行為が次々に起こる、その
基本は
民主政治の基盤である
選挙、その
選挙がどうも金がかかる。まあ金をかける、金のかかる、かような
状態である。かように思いますので、これから金のかからない清潔な
政治をすることをお誓いいたします。ただいまの
お話によりましても、この
事態は御承認いただいたようでありますが、問題は、これを実行する、
実現する
熱意だ、はたしてわれわれの期待するような
熱意を持つか、かような
お尋ねをいただいたのであります。私は、
所信表明で申し上げたとおり、その
決意は非常にはっきりしておりますので、与党の
諸君は必ず私の
決意をバックアップしてやるから、そのままひとつ思い切ってやれ、かような
激励のことばだと、ただいまの
お尋ねをとったのであります。私は、
選挙制度につきましては、すでに
選挙制度審議会に諮問をいたしております。
答申を得た暁におきましては、すみやかに結論を得まして
諸君の御
審議を得たい、かように思います。もちろんいろいろの問題が
論議されますが、いままでの
選挙で一番
基本的な考えは、
選挙は
政党本位ではなくて、非常な
個人本位の
選挙が行なわれている、こういうようなところにどうも新しい
民主政治の
あり方として
納得のいかないものもあります。
政党政治そのものから申せば、もう少し
政党中心の
選挙があってしかるべきではないか。また、そうすることによりまして金の使い方な
どもよほど変わってくるように思うのであります。これらの点は、ただいま
審議会でいろいろ
審議されておるのでありますから、いずれ御
答申を得ることと思います。その暁におきまして成案を得て、そうして御
審議を願いたいと思います。
同時にまた、
選挙制度は、ただいま申すように、
審議会でいろいろ御
審議をいただきたいと思いますが、今日行なわれております
議会制民主政治、その
あり方につきまして、これで、はたしてよろしいのか、かような
お尋ねであります。もちろんそれぞれの
立場においてそれぞれの御
議論をなさると思います。あるいは
わが国の
議会史は七十五年だといわれておる、また、戦後二十数年、その歴史だともいわれております。私は、この際に特に考えたいのは、戦後の
わが国の
民主政治、これが
議会制民主政治としてほんとうにスタートしたものだと思います。その
意味ではまことに経験の浅いものだと思います。したがいまして、これについて
基本的ないろいろの
議論の起こることは、これは当然だと思います。しばしばいわれますととは、
議会政治、
議会制民主政治、これは、
論議を尽くして、そうして
多数決原則によって決定していくんだということがいわれております。しかし、はたしてそのとおり行なわれておるかどうか。たいへん口の悪い
人たちに言わしむると、どうも
国会は、会合するけれ
ども、
審議をしない、いわゆる
論議を尽くさない。また、
論議を始めたと思っても、議して決せず、こういうような
状態が起きているのじゃないか。これはたいへん口の悪い人の言であります。私
どもは、この批判が、残念ながら、一部当たっているのじゃないかと思う。どうも、会して議せず、議して決せず、そうして非常に非能率になる、かようなことがあっては、せっかく
国民主権、そのもとにおける
民主政治、これはりっぱな成果をもたらすとは思わないのであります。今回の
臨時国会などにおきましても、ただいま申すような、会して議せずと、それではなくて、集まることすら、会することすらこれが実行されておらない。まことに私は
国民に対して申しわけなく思うのであります。
論議を尽くすこと、また、この
国会におきまして
意見を述べること、これは
議員諸君が
国民に負う責務だと、私はかように思うのであります。
審議を放棄しては、
議員の
使命を忘れたと、かように申しても差しつかえないのではないかと思います。
審議を放棄する、これはたいへんな問題だと思います。したがいまして、ただいま
お話がありましたように、
議会制民主政治、それこそが、敗戦の結果、戦後私
ども国民に与えられた
政治の
あり方であります。どうか、これをりっぱに育てていく、そういう
決意で御
協力を願いたいものだと思います。
次の
お尋ねは、
外交問題についてであります。
外交問題についてきわめて限られた
お尋ねでありました。もちろん、
アジアにある日本といたしまして、
アジア外交を積極的に推進していくことは、これは当然であります。
所信表明でも、
アジアの平和と繁栄を追求していくべきことが
わが国の
外交の
基本である、かようなことを申しました。また、そういう
意味で、特に
東南アジア諸
地域に対しましても、この
方針を貫き、また、
先進国としての
役割りを果たしていく、こういう
意味で、それぞれ国力にふさわしい
経済協力をいたしてまいっておるのであります。
アジアの
諸国は、申すまでもなく、独立して、ただいま
国づくりに精を出しておるところでありますが、まだまだいろいろ困難な問題をかかえております。こういう困難な問題に対して
わが国が寄与して、そしてりっぱな
国づくりができ上がること、かようになるならば、私
どもの
使命も達することができると、かように思うのであります。この際必要なことは、
アジア諸国が同一
地域にいるという
認識に立っての
連帯感をお互いに持つこと、そうして
相互認識を深め、
相互に
協力することだ、かように思います。さきに、
東南アジア経済開発閣僚会議を開き、また、十二月になりまして
農業開発会議を開いたり、あるいは
アジア開発銀行が発足したな
ども、ただいま申し上げるような
外交の
基本、同時にそれが
わが国の
使命だと、かように考えて行なっておる次第であります。
中共との問題に
お触れになりました。私は、この点では
所信表明にたいへん長く詳しく御説明をいたしたのでありまするが、在来の
考え方を今日急に変更するような
状態ではございません。
中共との間に、いわゆる
政経分離で、
経済、
文化等の交流は続けていく、この
態度に変わりはないのでありますし、また、私
自身が
所信表明でも申しましたように、中国人と
友好関係をつくる、こういう
考え方には、いまも変わりはございません。しかし、最近の
中共の行き力、
あり方等につきましては、私もまた、もっと仲よくしていく方法はないだろうか、そういう
意味の苦心、これは双方でひとつ考うべきではないかというような感じを持っております。これらの点は、
所信表明で申し上げたのでございますから、そのほうに譲らしていただきます。
次に、
予算編成についての
お尋ねがございました。昨年来の
経済不況は、思い切った
財政政策、ことに
公債発行に踏み切ったということで、
国民の
協力のもとに完全に
不況を克服することができました。私は、ただいま九%
程度の
経済成長をもたらし、また、来年四十二年も同じような
上昇の機運である、かように
確信をいたしております。大事なことは、
公債政策をとりました第二年目であります。
初年度はたいへん成功いたしたのでありますが、第二年度において
財政の
処置が間違うと、これはたいへんな
事態が起こると思います。その
意味でたいへん大事な
段階に来ておるのであります。
基本的な
考え方では、四十一年のような刺激的な、積極的な
予算は、つくるべきでない、むしろ中立的な
予算をつくることが望ましいのではないかと、かように思います。
基本的な
考え方といたしましては、
予算規模、
自然増収、同時にまた、
国民経済と見合った
予算をつくる、そうして節度のある行き方をすべきだ、私はかように考えておるのであります。すでに来年度
予算を五兆円以内にとどめるということを発表いたしました。これがただいま考えております
基本的構想だと思います。たいへんむずかしい
状態であります。したがいまして、あるいは
国民が
要望するような、要求されるような各項目についての
予算を計上することは困難ではないか、かように心配される向きもあるようでございます。しかし、私はこの際に、全体としての
健全性を
確保すると同時に、重点的な配分をいたしますならば、
国民の
要望にこたえてりっぱな
予算ができ、しかも、継続的に
わが国の
経済発展を招来するようなりっぱな
予算ができると、かように
確信をいたしておるものであります。ただいまの
段階におきまして、この
予算の
あり方を詳細に申し上げる
段階ではございません。ことに、一部で要求されておりますような
減税、そういう問題になりますと、ただいまの
自然増収や
財政規模や
公債発行の限度などから見まして、どういうように扱われるか、これはただいま申し上げる
段階ではございません。しかし、
所得税減税につきましては、
国民の間から非常に強い
要望が出ております。私は、
減税財源を見つけることはなかなかむずかしい
状態だとは思いますけれ
ども、これらの強い
国民の
要望にこたえる、こういう
意味でさらに検討を続けてまいるつもりであります。ことに、
国際収支のバランス、同時に、
物価の安定ということを主眼に置きまして、来年の
経済を
成長基調に保ちたい、かように考えておりますだけに、一部でいわれておりますたばこの値上げの問題とかいうことは、これはよく慎重に検討して、しかる上で対処すべき問題だと、かように思いますし、また、
物価に非常な影響を持ちます
消費者米価の決定、これも今日、来年の三月までは上げないということできめておりますが、その後の
処置につきましても、来年度の
予算編成の際に、とくと諸
物価の
動向等を見きわめて、そうして最終的に決定いたしたい、かように考えております。御了承いただきたい。
次に、
交通問題並びに
公害について
お触れになりました。
交通事故の問題は、つい最近起こりました愛知県下の
保育園児のあの痛ましい
事故等を思い起こしまして、今日ほうっておけない、緊急
処置すべき問題だと思います。私が就任いたしまして以来、この
交通事故の絶滅を期するという
意味で、
国民総ぐるみ運動を展開いたしました。
初年度はやや成績があがったようで、まず
総ぐるみ運動が成功したのではないかと、かように思いましたところ、本年になりましては、これはまた自動車もふえてまいりまして、また
交通もひんぱんになりましたが、
史上最高の記録をすでに昨日で現出いたしたのであります。このくらい不幸な
事態はないと思います。で、私は、この問題については、
各界各層の
協力を得なければならないことはもちろんでありますけれ
ども、何といっても、その
設備の点におきまして不十分でありますので、まず第一に、
交通安全施設等の
整備計画を進めていく三カ年
計画ということをいたしまして、そうして
歩行者について特別な保護をするというので、この
施設を
整備する、これがまず第一であります。第二の問題といたしまして、
安全運転の
確保、
安全運転の
確保と申しますのは、ダンプカーその他の運行がはたして安全なりやいなや、そういう
意味で、
運転者の
年齢制限等、あるいは
精神状態、その他、あるいは
労働条件など十分勘案いたしまして、そして
安全運転の
確保を一そう徹底することであります。さらにまた、第三の問題として、
交通秩序の確立、そういう
意味では、
酔っぱらい運転であるとか、あるいは無
免許運転の取り締まりなど、これをさらに徹底さすつもりであります。そして
被害者の
救済策について特別な考慮を払っていく。
緊急医療制度の充実をはかる。病院などをつくる。あるいは
損害賠償等につきまして
相談にあずかるような、
相談に乗れるような「くふう」をするとか等々の試みをしておるわけであります。そして、これは来年度の
予算におきましても、ただいま申し上げるような
交通安全施設の強化に関する
基本的方針で
予算に計上いたしますが、同時に、今日また当面する緊急な
処置、これにも十分対処しなければならないので、大蔵省、
大蔵大臣にも特に注文をつけまして、重点的に
緊急措置を要するような個所、これを選びまして、この
設備の
整備をはかる、かような
措置をとることをいたしておるわけであります。なかなか容易な問題ではございません。同時にまた、
人命の
尊重さるべきこと、とうといこと、これは
十分認識を新たにいたしまして、そして
交通事故で不幸な
状態が起こらないように、この上とも
国民総ぐるみ運動を展開していきたい、かように思います。
公害問題についても、
人間尊重の
立場から同じような
考え方をいたしております。すでに一部におきましては、
公害発生について、あるいは
大気汚染、あるいは
水質汚濁等の
特別立法も見られておりますけれ
ども、どうもこれでは、総合的、抜本的なものだとは言えません。したがいまして、
所信表明にも申しましたように、今度は
公害対策基本法を制定いたしまして御
審議を仰ぐつもりでおります。同時にまた、
基本的な
考え方といたしまして、今日すでに起きておる
公害、これにいかに対処するか、また、これから
公害を生ずるであろうと考えられるような会社その他につきまして、どういうような
処置をとるか。申すまでもなく、工場の立地的な面から、あるいは土地の利用の面から、これに対しましての規制を加えていくということにいたすつもりでおります。今日まで
産業自身が
自由経営をされておりましたものが、
公害問題につきまして
一つの制約を受ける、
産業の
発展にも非常に支障を来たすものだ、かように思いますので、特に
産業との関連におきまして、これらの
公害を排除する、そのために
産業が萎縮するということのないような特別な
措置をとるべきではないだろうか、かように思います。そういう
意味で、
基本法として考うべき事柄は、
公害の
発生源に対する
責任、これもさることでありますが、国及び
地方団体の
責任なりも同時に考究し、そうして固めていくべきではないかと、かように思うのであります。
いずれにいたしましても、新しい問題としてのただいまの
交通事故、さらに
公害対策、こういうことにつきましては、
社会開発のその理念のもとに、これの
対策を万全を有するようにいたしたいものだと思います。
最後に、
リーダーシップのない
政治は
愚民政治だ、かような
意味でおしかりを受け、同時に
激励をいただいたと、かように思います。私は、いわゆる
リーダーシップ云々を申すわけではございませんが、政権を担当する以上、りっぱな
国づくりをする、同時に
国民生活をより向上さしていく、そういうことで全力を尽くしたい、かように
決意いたしております。同時にまた、これは
陣頭に立つこと、率先することである、かように思いますので、
諸君の御鞭撻を心からお願いをいたします。
以上をもちまして答弁にいたします。(
拍手)