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1966-11-11 第52回国会 参議院 法務委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十一月十一日(金曜日)     午前十時十九分開会     —————————————    委員異動  十月十一日     辞任         補欠選任      須藤 五郎君     野坂 参三君  十月十七日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     鬼木 勝利君  十一月七日     辞任         補欠選任      亀田 得治君     北村  暢君  十一月八日     辞任         補欠選任      北村  暢君     亀田 得治君  十一月九日     選任          横井 太郎君     辞任         補欠選任      野坂 参三君     岩間 正男君  十一月十日     辞任         補欠選任      鬼木 勝利君     黒柳  明君  十一月十一日     辞任         補欠選任      松野 孝一君     中村喜四郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 後藤 義隆君                 中村喜四郎君                 稲葉 誠一君     委 員                 岡村文四郎君                 斎藤  昇君                 中野 文門君                 安井  謙君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君                 黒柳  明君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君        国 務 大 臣  塩見 俊二君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        警察庁刑事局長  内海  倫君        警察庁警備局公        安第一課長    山本 鎮彦君        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務省刑事局長  津田  実君        公安調査庁長官  吉河 光貞君        建設大臣官房長  鶴海良一郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        最高裁判所事務        局家庭局長    細江 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (選挙違反事件に関する件)  (少年法改正に関する件)  (朝鮮との往来に関する件)  (気仙沼区検察庁庁舎敷地寄付に関する件)  (盗聴器設置事件に関する件)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) それではただいまから法務委員会を開会いたします。  まず委員異動について報告いたします。  去る十一月九日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として岩間正男君が選任されました。  また同日、横井太郎君が法務委員選任されました。  昨十日、鬼木勝利君が委員辞任され、その補欠として黒柳明君が選任されました。  また本日、松野孝一君が委員辞任され、その補欠として中村喜四郎君が選任されました。     —————————————
  3. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいま報告いたしました委員異動に伴いまして理事が欠員となりましたので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選は先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 御異議ないと認めます。  それでは理事中村喜四郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 検察及び裁判運営等に関する調査を行ないます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣が閣議ですから、それまで主として事実関係について聞いていきたいと思います。  これは、建設省の官房長をやっておった平井學という人と、それから次官をやっていた山本幸雄という人、この人が衆議院選に出たわけですが、それに関連をする国家公務員法並びに公職選挙法違反事件があって、ことしの二月十八日に東京地裁刑事八部で判決があったわけですが、これに関連をする捜査過程森清という代議士調べられたことが東京地検なりであるのですか。
  7. 津田実

    説明員津田実君) ただいまお尋ね事件判決によりますと、ただいまお尋ね関係検察官調書なるものが判決に記載されておりますので、これは取り調べを受けて調書ができたものというふうに考えております
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何で取り調べを受けたのでしょう。
  9. 津田実

    説明員津田実君) その趣旨は、私はわかりません。おそらくこの問題につきまして、判決書にはこの昭和三十九年八月十七日の事柄などを書いてありますので、その関係につきまして取り調べをしたということであるのであろうというふうに考えるわけであります。と同時に、公判におきましての森証人立証趣旨は、山本立候補決意に至るまでの経過及び昭和三十八年衆議院解散時期等の問題についてということでありますから、おそらくその関係事項について取り調べをしたものというふうに私どもは考えております。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その森清という人の検察官調書証拠に援用してありますね。どういう部分にその証拠採用されておるわけですか。
  11. 津田実

    説明員津田実君) 本件事件判決によりますると、森証人はその法廷に出頭して供述しておるわけでありますから、その部分証拠に引用されております。しかしながら、無罪理由の中にただいま申し上げましたように検察官調書内容が一部引用されておるわけであります。その意味において申し上げたわけです。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 山本という人の政界進出までの経緯について、証人としての森清公判廷における供述採用されておる。これはわかりますが、罪となるべき事実についてこれは森清検察官に対する供述調書が引かれておるわけですね。罪となるべき事実に一体森清がどういう関係があったのですか。森清と呼び捨てにしては悪いけれども、一々氏をつけるのはたいへんですから、一応は便宜上そのままにしておきますが、罪となるべき事実にどういうふうな関係があったのですか。これは山本との関係だけですか、罪となるべき事実についての森清証拠採用は。そうじゃないのじゃないですか。そこどうなっておりますか。
  13. 津田実

    説明員津田実君) 罪となるべき事実につきというところにところに検察官に対する供述調書採用されておることは御指摘のとおりでありますが、罪となるべき事実全般についてこの供述調書がいかなる関係にあったかということは私どもにもわかりませんし、裁判所心証がどこを中心に考えたかということはわかりません。しかしながら、ただいま御指摘のように、罪となるべき事実につきという中に引用されていることはそのとおりでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたに言わせると、何か山本無罪のところにこの森清調書採用になっておるように聞こえるのですが、そこを特に強調していられるように聞こえるから、それはまあそれだけじゃないだろうと、平井有罪認定についても森清検察賞調書が罪となるべき事実に採用されているわけでしょう。だから私はそれを聞いておるわけですよ。何かあなたの説明は、まあ意識的かどうか別として、ちょっと誤解を与えるものですからお聞きしたわけで、それはいいです。  平井學氏の罪となるべき事実の認定にも森清検察官調書採用されている、これは間違いないですね。その点だけ確かめますわ。
  15. 津田実

    説明員津田実君) 判決記載はさようになっておりますから、これはもう当然、それのいかなる部分かはわかりませんけれども、そういうふうになっていることは事実と私は思います。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、結局罪となるべき事実に関連して森清さんが調べられたということは、これは間違いないわけですよね。そのことをどうこうというわけではないですよ。それ以上のことをぼくはいまの段階で言っているわけではありませんからね。  そこで、いまあなたが言われた、三十九年八月十七日のことで何とかと言われましたね。これはどういうことなんでしょうか。
  17. 津田実

    説明員津田実君) その点は、判決の中に「昭和三十九年八月十七日衆議院議員会館森清代議士居室で、山本平井らが事件について、打合わせ、その際弁護士から「共犯」について説明を受けた」という事実が出ている、そのことを申したわけです。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「昭和三十九年八月十七日衆議院議員会館森清代議士居室で、山本平井らが事件について打合わせ、その際弁護士から「共犯」について説明を受けた」、こうなっておりますね。この昭和三十九年八月十七日というのは、捜査段階ではどういう段階だったんですか。
  19. 津田実

    説明員津田実君) もちろん捜査中でありますが、どういう段階にあったかは現に私どもも存じませんし、まあその段階内容を御説明することはこれはできないと思うのです。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 捜査段階という意味は、捜査のこまかい内容がどうとか、そういうことをぼくも聞くわけではありませんから、そんなことを聞いたって答えられないのはあたりまえなんで、ぼくの言う捜査段階という意味は、警察から事件が送られて、そして検察庁の手に移っておった段階かどうか、こういうような意味のことを聞いているわけです。こっちの聞き方がちょっとあれでしたから十分意味がつかめなかったんじゃないかと思うのですが、ですから、警察事件を立てたのがいつで、送致がいつだ——昭和三十九年の七月三十日に警察から送致になったわけでしょう、事件は。それから八月二十七日に山本幸雄関係検事認知になっているわけでしょう。そういう段階のことを聞いているわけです。
  21. 津田実

    説明員津田実君) そのとおりでありまして、平井関係昭和三十九年七月三十日に警察から送致になっております。それから山本関係は、三十九年八月二十七日検事認知になって、送検されている、こういうことになっております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、昭和三十九年八月十七日というのは、警察から送致をされて——山本代議士の分についてはこれは警察事件として立てなかったわけですよね。それで検事認知が八月二十七日、この検事認知の前の段階で、検事の手元で捜査が開始されておる段階であることは間違いないんですが、この日は同じ被告人の中の一人が検察庁取り調べを受けた日じゃないですか。そうして、その検察庁取り調べを受けた者が、呼ばれたのか行ったのかは別として、この人の部屋に来ていろいろ打ち合わせをしたんではないですか。
  23. 津田実

    説明員津田実君) これは判決書によることでありますが、判決書の罪となるべき事実に同じく掲げられておるところの高岩に関する調書は、三十九年八月十七日付になっておりますから、その意味において同日高岩取り調べを受けておるということは事実だと思います。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、相被告人高岩という人ですね、これは現在控訴しているわけですね。あとの二人は確定したわけです。その人は検察庁調べを受けて、それが終わって森清氏の部屋へみんなが集まって、事件について打ち合わせをしたのじゃないですか。それは捜査段階で言えないこともあるでしょうけれども、この判決から出てくること、これは少なくとも二人の部分については確定しているわけですから、その判決からこういうことが論理的に出てくるのじゃないかということは、これは言っても法務省としては別にぼくは責任の問題にはならないと思うのですよ。だから、その日に高岩取り調べを受けた、これは間違いない、検察庁に。同じ日に森清代議士部屋山本幸雄代議士——まあ当時代議士じゃありませんけれども代議士になっておりますね。それと平井さんたちが集まって事件について打ち合わせをしたとあるわけですね。ここに「山本平井らが」とあるのは、これはどういう意味ですか。「ら」というのはだれですか。高岩は入っているんですか。
  25. 津田実

    説明員津田実君) この点はわかりません。それからただいまの日時のお話ですが、これは日時の時間の前後関係は全然わかりませんから、同日であるという事実だけを私ども判決書の上から読み取るだけのことであります。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判決書の上からは「ら」がだれだかわかりません。それから、日時は同じであるけれども、時間の前後の関係はこれはわからないわけです。しかし、私の聞いた範囲では、高岩検察庁取り調べを受けて帰ってきて、森清部屋にみんなが集まった、こういうふうに私は聞いているわけですが、よくわからないのは、「衆議院議員会館森清代議士居室で、山本平井らが事件について打ち合わせ、」——何で森清部屋山本平井らが事件について打ち合わせをしなきゃならなかったんでしょうか、そこいら辺はどうなんですか。
  27. 津田実

    説明員津田実君) その点は現に私は承知しませんが、その関係事実は検察庁において相当程度明らかになっておるはずであります。しかしながら、具体的には私はわかりませんし、またこれは被告人らの防衛活動の問題でもありますから、それが、いついかなる会合が持たれたかということを一々問題にするという性質のものでもないというふうに考えます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、防衛活動のことであることはわかります。ぼくは何も防衛活動範囲をこえて証拠隠滅が行なわれたというふうに言っておるわけじゃありませんからね。そういうふうに先回りして考えて答弁されなくてもいいと思うのですけれども、いずれにいたしましても、ぼくらが疑問に思うのは、なぜ森清代議士部屋で、検察庁取り調べを受けた人が帰ってきて、現に検察庁事件調べを受けておる人が集まって事件について打ち合わせをしなければならないのかということです。これはまあ防衛活動かどうかは別として、非常に大きな疑問があることはこれは事実だ、こう思うわけです。ある意味においては疑いが持たれることでもあるわけですね。この点についてはもっと明らかにしなければならぬと思いますけれども、これはまあいまの段階であって、一人は控訴しておるわけですから、その記録を引っぱり出してきて云々するということは国会としてぼくは限度があると思いますから、そういういき方はとらないわけです。ただ判決の中から問題を指摘するわけです。  もう一つ、罪となるべき事実についてこの人の証言が援用されておりますね。これは、この判決の中でどういう点が援用されておるのですか。その検察官調書がどういうふうに援用されていますか。
  29. 津田実

    説明員津田実君) これは罪となるべき事実につき森清検察官に対する供述調書という形であがっておるわけです。この供述調書の形であがっておるものは非常に数がたくさんありますし、またそれより前に公判廷における供述自体もあがっておるわけです。したがいまして、どれがどういうふうに総合認定されておるかということは、私たちはこれはわかりません。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、どれがどういうように総合認定されておるかは、これは裁判所自由心証によって判断することであって、現在の裁判の中では、それがどこからどういうふうに証拠採用になったということは、これは判決の中にあらわれないわけですよ。これは議論がありますけれどもね。証拠の標目を並べればいいわけですから、それでいいわけでしょうけれども判決の中に森清検察官調書をはっきり援用しておる部分があるわけでしょう。それを聞いておるのですよ。ぼくの口から言うのもどうかと思うから、そちらから言ってもらったほうが信憑力があるからと思ったのですが、あるのじゃないのですか、二九ページの判決のところ。
  31. 津田実

    説明員津田実君) それは、先ほど申し上げましたとおり、罪となるべき事実について引用されておることはもちろんであります。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 はっきり森清検察官調書を引っぱって書いてある部分があるでしょうというわけです。これはあるわけですよ。それを聞いておるわけですよ、全体じゃなくてね。それはタイプで打ってあるやつかな、二九ページにありますよ。
  33. 津田実

    説明員津田実君) これは無罪理由関係のある部分だと思われますが、御指摘のとおり引用されております。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし問題は、平井との関係において援用していますね、この調書はね。読んでみましょうか——「しかも平井は、当時河野大臣直系代議士からも暗に山本支援を要請されていたような情況にあり(森清検察官調書)、」、こういうふうになっておるわけですね。この認定からいうと、これは山本無罪の判断に使われたのは、これはわかりますけれども、同時に、平井氏は「河野大臣直系代議士からも暗に山本支援を要請されていたような情況にあり(森清検察官調書)、」ということは、ここに言う河野大臣直系代議士というのは、読み方いろいろあると思うのです、この判決読み方は。だけれども森清検察官調書を引用しているところから見ると、河野大臣直系代議士というのは森清さんだったと、こういうふうにとることがすなおなとり方ではないかと思います。そうでないとり方ももちろんできると思います。だけれども、そういうとり方がすなおではないか、こう思うのです。そうなってまいりますと、平井森代議士から暗に山本支援を要請されていたというふうにこれは読めるのではないか、こう思うわけです。森清代議士部屋にみんなが集まって相談したということから見ても、森清さんが山本幸雄氏の立候補についてあるいは平井氏の活動について相当な関係があったということは、これはもう明らかだとこう思うわけです。官房長である平井氏がその河野大臣直系代議士から一体山本支援を要請されていたというこの具体的内容は、常識的に見て一体何なんでしょうか、この点はどうなんですか。
  35. 津田実

    説明員津田実君) まあこれは判決に引用されておりまする内容でありまして、検察官調書なるものが出ておりますが、その検察官調書内容自体からどういうふうに裁判所が読み取ってただいま御指摘のように河野大臣直系代議士というものを考えたかという問題だろうと思うのですが、その点については私どもこれはわかりません。これは現実にこの事件をやってみなければわからないと思うのでありまして、いまこれがどうであろうこうであろうということを推測して申し上げることは適当でないと思うのです。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 推測ではなくて、森清検察官調書が引っぱってあるのは、河野大臣直系代議士からも暗に山本支援平井が要請されていたというような状況にあると認定されておるのだから、常識的に見て、この河野大臣直系代議士というのは森清ではなかったか。特にそこに森清検察官調書が引用されておるわけですから、こういうふうにとるのがすなおだとぼくは思うのです。判決自体ではなかなかそうも言えないと、はっきり言えないというなら、これはそれでいいでしょう。検察官調書を見なければわからぬことですから。  そこで問題となってまいりますのは、一体この事実は、官房長である平井氏の有罪事実に限定してお聞きしたいと思うのですが、これは一体どういうことで犯罪事実になって認定されたのですか。
  37. 津田実

    説明員津田実君) これは公訴事実といたしましては、山本平井高岩三名共謀の上、昭和三十八年十一月二十一日施行の衆議院議員選挙に際しまして、橋梁会社等国契約を締結するもの二十一社に対して、山本のための選挙運動資金として寄付を求めて、前後三回にわたって六百三十万円の寄付金を受領した、こういう事実を、いろいろこまかくでありますが、裁判所認定しておると思うのでありまして、それに対しまして、その山本関係だけは無罪である、こういうふうに認定したものと私は考えております。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 官房長が、国家公務員法なり公職選挙法で、特定の国や何かと請負契約を結んでいる業者から金をもらってはいけないわけですね、選挙に際して。これで金もらったわけですね、六百三十万。一応、実際この金額であったかどうかはぼくは疑問だと思うのですが、いずれにいたしましても受け取ったときに受け取りを出したのですか。どういう受け取りを出したのでしょうか。この点は明らかになっているのじゃないですか。
  39. 津田実

    説明員津田実君) 判決書からは、その内容は私どもは読み取ることはできませんでした。しかしながら、捜査過程においてそういう問題が出ておったかもしれないと思うのでありますけれども、これは現在高岩控訴中でもありますし、その内容にわたって申し上げることは差し控えたいと思うのであります。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何といいますか、刑事局長は非常に慎重だから、口がかたくて、かたいのはけっこうだと思うのですけれども、非常に慎重過ぎて、かえって逆に——ぼくはあなたの立場はわかるのだけれども、逆になるんじゃないかと考えることがあるのですね。もっとフランクにしゃべれるものはしゃべってもいいじゃないですか。逆にいろいろ推測が生まれてきますよ。受け取り出したでしょう、あとから。最初出したかあとから出したか別として、六百三十万か何か業者から受け取ったのでしょう。そのとき受け取り出したでしょう。あとからか前かは別として、森清の名前で受け取り出しているでしょう。これは事実でしょう。そこら辺、もう認めてもいいじゃないですか。出したことがどうだというのではないのです。出していることは間違いないなら間違いないと認めたらいいじゃないですか。
  41. 津田実

    説明員津田実君) 判決書の中には、高岩名義の仮領収書を出したというような供述高岩供述書にあるということは、もちろん出ております。したがいまして、その範囲においてその事実はあるということになると思うのでありますけれども、それ以外の事実につきましては、いろいろ世上言われておりますし、そのことも私は十分承知いたしておりますが、いまその内容がどうであるかというようなことにつきまして、その内容の真偽について申し上げることは、高岩控訴段階でもありますし、またかりに問題が確定しました後におきましても、やはり捜査内容との関連において申し上げられるかどうか、私はいま疑問に思っております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法律論としては、あなたの言うことはぼくは一理あると思うのですよ。だけれども、そういうふうに言うと、聞いている人はおかしいなと思うのですよ。ぼくの言っていることはほんとうだなと思うのですよ、聞いている人は。かえってあなたの答弁によってマイナスマイナスと生まれてくるのですよ。これ、あなた、あとでおこられるかもしれませんけれども、そこら辺はっきり言っちゃったほうがいいじゃないですか。最初高岩名義受け取りが出ているのですね。高岩はその上に何かつけたでしょう、肩書きね。これはどういう肩書きでしたか。これは法務省がわからなければ、警察のほうが知っているのではないですか。刑事局長、かわったばかりで気の毒だけれども、その点知っているのではないですか。どういう受け取りでした、初め。
  43. 内海倫

    説明員内海倫君) 私、まだ本日刑事局長命ぜられたばかりでありまして、まことに不勉強で申しわけないのですが、いまのところまだ諸般の書類を正確に調べておりませんので、ちょっとお答え申し上げかねますので、あしからず御了承願いたいと思います。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最初出した受け取りと違った受け取りが出てきたでしょう。清和会という会があるでしょう、これは何か清和会森清受け取りが出ているのではないですか、この金。もうそこら辺認めたほうがいいじゃないですか、出ているなら出ているで、出ているけれどもこれはこういう趣旨だったと聞いていると、こう言われるなら、ぼくはああそうですかと言うだけの話で、そこら辺をそういう受け取りがあるようににおわせてみたり、それからこまかなことを言われると、かえって逆になりませんか。あるならあるでいいじゃないですか。ただこういう事情があると聞いていると言われればいいじゃないですか。そのほうがいいんじゃないですか。
  45. 津田実

    説明員津田実君) 内容自体が別に問題になるようなものであるかないか、それは私どもはいまわかりません。したがいまして、その受け取り証の有無の問題につきましても、申し上げてプラスになるかマイナスになるかというようなことは全然私のほう念頭にありませんで、要するに捜査過程なり裁判過程における問題として私どもは申し上げておるわけなんでありまして、それはそのほうがよかったということもあり得るという考え方もありますし、それは悪いという考え方もありますけれども、そこは私どもは別に何も念頭にありません。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ本件の場合、認定されておる事実によっても、平井氏なり何なりが——官房長ですわね、あるいは次官なりが特定の請負業者から金をもらったということならば、これは公職選挙法の犯罪になるわけです。それで、森清さんがもらったということになれば、これは犯罪にならないですね。これは事実でしょう。
  47. 津田実

    説明員津田実君) まあそれは仮定論になりますから、あれでございますから、一般的にどういう金を人からもらうと犯罪になり、犯罪にならぬかということに帰着すると思うのでありまして、いろいろ条件があると思うので、一がいにいいとも言えませんし、一がいに悪いとも言えないということになるのじゃないかと思います。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なかなかここは大臣クラスの答弁になってきたけれども官房長は建設省のあれですね。ですから、その請負業者から、特定の業者から金をもらった場合は、公務員法違反になるとか、選挙法違反になるとか、これは規定があるわけですね。森清という人は、これはその当時はそうじゃないわけですから、だからそれをもらったにしても犯罪にはならぬわけですよ。やったほうも犯罪にならぬわけですよ、これはね。そういう受け取りが出ているんじゃないですか、これは清和会森清として。だから疑いを持たれるのですよ。いいですか、まず最初に疑いを持たれてくるのは、三十九年の八月十七日ですね、衆議院会館の森清さんの部屋山本平井らが事件について打ち合わせをしたという。このことは、それは防御権の活動かもしれませんよ。しかし、それは山本平井らは防御権がありますよ。その二人はあるかもわからぬけれども森清は何も防御権があるわけじゃありませんよ、筋から言ったって。なぜ事件について打ち合わせをしなければならないのかということですよ。検察庁取り調べを受けた人が、私の調べでは、その日に終わって、一緒に集まって事件について打ち合わせをしているということ、なぜしなければならないのかというのが第一の疑問ですよ。それから第二の疑問は、ぼくが判決の中で読んだように、いいですか、官房長はその森清から山本次官が選挙に出ることに対して支援を要請されているという状況にあったということが森清検察官調書の中に出てきている、引用されているわけですよ。こう見ていいでしょう、すなおに見れば。第三には、その金の受け取りについて清和会森清名義の受け取りが出ているわけです。これは、森清名義の受け取りが出れば犯罪にならない、そうでなければ犯罪になるというので、そういう形をとったとも考えられるのですよ。ぼくはそうでないと信じたいのですが、いずれにしてもこういうような事実を三つ並べてみると、悪く考えると、平井官店長に対して出入りの建設省の請負業者、特定の請負業者から金を集めるように指示をしたということは、あるいはいま私が言っている人もその中に入っていたのかもわからないということも考えられてくるわけですね。推測されるわけです。同時に、それに基づいてその部屋での話というものも防御権の範囲を越えた動きではないかということも疑われてくるわけです。それから第三に受け取りを出しておるという事実ですね。このようなことは非常に問題になってくるわけです。考えようによると、公判廷においてその平井という人は自分の先輩である山本次官をかばったというふうに考えられる。公判廷に至るまでの段階において平井官房長は、いま私が言った人たちをかばったというか、しょったというようなことも考えられないわけではないということがぼくは言えると思う。これは警察官出身の人でしょう、官房長は。この人が法律関係のことに詳しくないわけはないわけです。知っているわけです。その知っているわけの人が法律違反を犯すというのは、ぼくはどうも納得いかない。何かこの事件ははっきりしない、かぶっているのじゃないかということも考えられるわけです。  これ以上のことは申しませんけれども、いずれにいたしましても、そういう関係になってきている。ぼくはこの事件については非常に大きな疑問があると思います。実際に金を集めるように指揮したのはいま言った人ではないか、何かこう防御権の範囲を越えた非常に積極的な行動までとっておるのじゃないかという疑いがこの判決自体の中から出て、何かしら非常に不明朗な感じがすると、こういうふうに思うわけです。  法務大臣がおいでになったので、法務大臣についてはまたあとで、いまの質問お聞きにならなかったので、お聞きしますが、建設省にお聞きするのですが、この判決の中にも認定してありますように、建設省の「省内で事務次官が退官して政界へ進出する際は時の官房長が中心になって資金を世話する慣例があるといわれていたこと等を想起し、」と書いてありますね。この判決の一体事務次官が退官して政界に進出するときに官房長が中心となって資金を世話するという慣例がこれは建設省にあるのですか。あったのかしらんけれども、これどうなんです。
  49. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 判決によりますと、そういう供述平井さんがしたということは事実だと思いますが、建設省の中で事務次官が退官して政界に出ます場合に官房長が中心になって資金を集めるというふうな慣例があるということは私は聞いておりませんし、そういう慣例はないというふうに考えております。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまあなたが聞いていないとか、そういう事実はないというのは、それは結論としてはそういう結論になるとしても、どういうふうにあなたが調べて、どういうふうな経過をたどっていまあなたが言われた結論に到達したのかということがはっきり出てこないと納得できないわけですね。ただそう思う——これは平井官房長が言っておることですよ、裁判所で。あるいは自己弁護のためにこういうことを言ったのかもしれませんけれども、少なくとも言って、判決平井に対しては確定しているのですから、その判決採用されておることですから、十分な証拠があって言っていることだと思うのです。実際に事務次官が退官して政界に進出した例が相当あるのじゃないですか。そういう場合に、一体どうなんですかね、集めたことはないのですか。
  51. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 建設省の事務次官が退官後政界に出られましたケースはあります。ありますが……。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 幾つぐらいあるの。
  53. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 事務次官で、参議院に三名、衆議院に一名、そういうケースはございますが、当時の官房長をやっておった人に一々確かめたわけではございませんけれども、私建設省の官房の課長あるいは参事官として当時の官房長を直接補佐する機会もあったのでありますが、当時そういうことは全然ございませんでしたし、また平井さんの事件が起こりました場合に省内の受け取り方でございますが、多年建設省に奉職しておる者としては全く考えられない事件であるというふうな受け取り方を一般にされておったようなことでございまして、そういうふうな慣例があって、慣例によってやむを得ずやったんだというふうな受け取り方は全然ございませんでした。また、私が官房長になりまして以後、一回選挙がございました。参議院の選挙でございますが、当時官房長に対しまして選挙資金のことにつきまして話があったということは全然ございません。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、あなたがよく事実関係調べてですよ、参議院三回、衆議院一回ですか、ちょっと聞き漏らしたけれども、そういう人たちのことに関連して——急だったからね、急な質問ですから十分調べがつかないのは無理がないかもしれませんけれども、よく調べて、そうしてここで答弁するなら、ぼくはいいと思うのですよ。そういうことでなくて、そういう事実がないというような形の答弁は、ぼくは十分な根拠がまだ足りないと、あなたの主観的な意図を述べられるのはけっこうだと思うんですけれども、事実は事実としてよく調べて答弁してもらわないとぼくはいかぬと、こう思うんです。また、あなたが言われた、全く考えられないことだと言いましたね、全く考えられないことをなぜやったかというのですね。この人は警察官出身であって、法律関係は相当詳しいわけです、ことに罰則関係は。選挙法の関係とかいろいろなものがあるのですけれども、なぜこういうふうなことをやったかということですね。上からやらせられたのか、だれかからやらせられたのかということになっているわけですね、話がね。だから、そこでいま言ったぼくの前の質問が生きてくるんじゃないですか。河野大臣直系代議士からも暗に山本支援を要請されていた。暗に山本支援を要請されたというのは、物心両面の支援を要請されたととるのが普通じゃないですか。だから資金面で集めろということを言われておったんじゃないですか。常識じゃないかな、それが。だから集めざるを得なくなってきたというんじゃないですか。ぼくの仄聞するところによると、集め方が足りないと言っておこられたという話なんですね。六百三十万でしょう。これは建設省としては少ないかもしれない、これ集め方が。だからおこられたのだが、だれがおこったかというと、いまぼくが名前をあげた人がおこったという説が飛んでいるのですね。何とかという人が、自分の資金を集めた人が集め方が少ないじゃないかと言っておこったという説がある。これは説ですから、ここで確定しているわけじゃないからあれですけれども、問題はそこにあると思うのですよ。そうすると、これは綱紀粛正という立場からも明らかにしなければならないと、こう思うんですが、いままで事務次官が退官して政界へ進出するときに、一体各建設省出入りの業者から幾らくらい金を集めたのか、これはぼくははっきりする必要があると思うのですよ。あなたは、質問されてもわからぬ、こんなことをぼくに言われてもどうも先生困りますというような答えかもわからぬけれども、これはそういう過去の、何といいますかね、くされ縁というか、退廃というか、そういうふうなものを明らかにしなくちゃいけないと、こう思う。それで、いまあなたが言われた、事実次官が退官して政界へ進出するのが、参議院が三回、衆議院一回かな、その際に、どのくらい一体その人たちが集めたのか、建設省はその中にどういうふうにタッチしてきたのか、これを全部明らかにする必要があると思うのです。ぼくはこれは自治省のほうにもやってもらわなければならぬと思うけれども、建設省自身もやらなければいかぬのですが、こういう点について、あなたとしては、官房長としてはどういうふうに思うか、この点はどうなんですかね。こんなことをいいことだと思っているのかな。
  55. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 退官された方が政治活動を行ないますにあたりまして、政治資金をどのようにお集めになるか、その点につきましてまで、建設当局として、すでに退官された方でありますから、その取り調べを行なうというわけにはまいらぬと思います。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だからね、それは建設省としてはとてもそこまでいけぬというなら、平井官房長が言ってるのは、時の官房長が中心となって資金を世話する慣例があると言ってるんですからね、これは判決の中で。確定判決ですよ。だから、そういう事実が過去にあったかなかったかをやはり明らかにする必要は、ぼくは国民の前にあると思うから、これはあなたに言っても気の毒だと思う、建設大臣に言うのがほんとうだと思いますけれども、そういう事実を明らかにすることは必要だと思う。だから、その人が政界へ出るについてほかから資金を集めたのまで明らかにしろと言ったって、これは無理な話で、それは個人の問題だから、建設省が関与をして集めた例はどのくらいあるかということをぼくは明らかにすべきだ。これはこういうことを明らかにしなくて政治の粛正はできないわけですね。そういう点を聞くわけですよ。これは調べられるのじゃないですか、そうでしょう。その点、どうなんですか。
  57. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 先ほどもお話しいたしましたように、平井事件は別でございますけれども、それ以外の選挙につきまして建設省が直接関与をして資金を集めたというようなことは私聞いておりませんし、そういう事実はないものと考えております。現在の時点で過去の選挙につきましての状況を調べるということは不可能に近いと思うのでございますが、今後ともこのようなことはないように厳に戒めていきたいと思っております。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう事実はないということをあなたが断定しちゃいかぬとぼくは思うのですよ。そういう慣例があると、こう言っているのですからね、官房長は。これ、うそ言ってるわけじゃないと思う。だから、あなたが平井氏なら平井氏に会って、なぜこういう供述をしたのか——これは前後の事情もあるでしょう、自己弁護のためにこういう供述したのかもわからぬけれども、あるいはこういう供述はしたけれども事実は違うのだ、違うけれどもこういう供述をしたのだ、その間の事情はこうなんだということが説明されて、それが明らかになれば、それを聞いてみて納得されれば、ぼくはそれでいいと思うのですよ、聞いて納得できればね。そういうことを全然やらないでいて、ただそういう事実はないのだということになると、どうもくさいものにふたをしろということになる。官房長、いやな仕事ですよ。そんなことは官房長の仕事の範囲じゃないと言うかもしれない。しようがない、あなた以外にやる人はないから、やってもらわなくちゃ明らかにならない、こう思うのですがね。だから、そういう点については、一存ではかりかねる、よく大臣とも相談して、あなたの言われた趣旨よくわかったから、大臣ともよく相談をして、しかるべき機会に御返事しますというふうな答えなら、その点でぼくは一応これはいいと思うのです。その点はどうなんですか。
  59. 鶴海良一郎

    説明員鶴海良一郎君) 平井さんから直接この間の事情を聞いたわけでございませんが、機会がありましたら、どういう事情でこういう供述が行なわれたか聞きまして、御報告できる機会がございましたら御報告したいと思います。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この事件について、検察庁検事認知しましたね、山本代議士を。これはどういう事情からですか。無罪になっても検事控訴しなかったのは、どういうわけですか。
  61. 津田実

    説明員津田実君) この事件につきましては、先ほど申し上げましたように、平井については三十九年七月三十一日に送致があったわけです。それについて取り調べを進めている間に、この山本に関する容疑が認められましたので、検事認知をして、さらに捜査をした、こういうことになるわけです。しかしながら、この点につきまして、先ほど申し上げましたように、三者の共謀として起訴をいたしたわけであります。しかしながら、先ほども仰せられましたとおり、山本については無罪であるという結果が出た。で、検察官としての判断といたしましては、もちろん無罪事実について控訴をもって争うという方法もあるわけですけれども、しかしながら、問題は証拠の価値判断に関する問題でありまして、全然証拠もないという問題ではもちろんないわけであります。しかしながら、価値判断が裁判所検察官のそれと異なるというまあ結果を来たしたということでありまして、その判決について十分検討いたしました結果、これは検察官としては必ずしも満足すべきものではないと判断はされまするけれども、しかしながら、検事控訴をいたしまして、二審において一審をくつがえして、山本について有罪判決を得るだけの確信は検事としては得られないという結論になったわけであります。そこで検事控訴をいたさなかった、こういう事情になるわけであります。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自治省選挙局長お尋ねしたいのですけれども山本代議士の収支の決算報告が出ますね、これにはあれですか、六百三十万の件は出ているのですか。それから判決によると、河野さんから百万円、第一国政研究会から七百万円ですか——河野大臣から直接百万円、それから第一国政研究会から七百万実際支出されておりますという判決が書いてあります。それから建設省関係業者からは六百三十万ですか——となっております。これはどうなんですか、収支決算に出ているのですか。
  63. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) 実は、きのう御質問の趣旨を承りまして、この収支——選挙に関する報告書は三重県の選挙管理委員会に提出されておりますので、電話で問いましたところ、収入は百八十八万六千円でございまして、支出のほうは百八十四万三千四百二十円ということになっております。いま御指摘のしたがって七百万、この判決によれば二五ページの七百万というのは、この金額から見ると入っていないというふうに言わざるを得ないと思います。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 質問の趣旨をよく聞いていて答えてくれませんか。ぼくの質問も悪かったかもしれませんけれども河野大臣から百万円、それから同大臣関係の第一国政研究会から七百万が支出されていると判決に書いてあるでしょう。確定しておりますね。そうすると、本件の業者関係から十一月九日に五百十万、十一月二十五日に百二十万きていることは判決に書いてあるわけですから、確定しておるわけですね。その関係のものは載っていないでしょう、百二十万円は載っているかもわからぬけれども
  65. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) ただいまも御指摘申し上げましたとおり、収入百八十八万六千円でございますが、七百万は載っておりません。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここの法定費用は幾らなんですか。
  67. 降矢敬義

    説明員(降矢敬義君) 二百四十二万七千五百円でございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判決によると、河野大臣から百万円、いま言った第一国政研究会から七百万、十一月九日の五百十万、十一月二十五日の百二十万ですから、一千四百三十万ですね、選挙関連して入っている金は。これは法定費用超過なんですが、こういうことに関連して、検察庁はどうして政治資金規正法なり何なりの事件として立件しなかったのですか、公職選挙法違反として。
  69. 津田実

    説明員津田実君) ただいまのほかの関係につきましては、いま御指摘のような判決に記載がありますし、その届け出関係はいま私は初めて承知したわけですが、しかしながら、この関係の問題につきましては、十分検察庁としまして当時として取り調べをしたというふうに私は聞いております。しかしながら、金の出入りの関係内容及びその金の使途の問題に関しましてどういう結論を得て、したがって検察庁としてはこれを他の事件に問擬することは困難であると判断したかという内容については、私は現に詳細は承知しておりませんが、その当時承知したところによりますと、この寄付金の使途に関する一切の事情を取り調べた結果、その間に犯罪とすべきものは見つからなかったというふうに私は報告を受けております。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公職選挙法の百八十九条、百九十四条によって、当然これは該当するんじゃないですか。これはどうなっているのですか。いまのあなたの説明はよくわかりませんよ。どうしてこういうふうな問題を取り上げなかったのですか。ぼくは取り上げろというのではないのですけれども
  71. 津田実

    説明員津田実君) 金の動きがありましても、その金の使途が結局問題になるわけです。したがいまして、金の動きがあったからすぐにそれは法定費用超過であろうというわけにはまいらぬことは当然のことであります。そこで、それらの関係につきましては当時検察庁としては十分取り調べたことを私どもは報告を受けておりますが、しかしながら犯罪事実として認めるべき端緒はないという結論になって、この面については何ら立件はされておりません。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう事実もあるが気がつかなかった、あるいは公職選挙法とあの関係で立件して起訴したのだからまあそれでいいだろう、いわゆるのむといいますかね、そういう行為がありますね。それでやっているのだからいいだろうと考えていたのなら、それでぼくは説明はいいんです。そうでなく、調べてみたけれども犯罪にならなかったと思って言うのなら、これはいかぬですよ。どういう調べをしたんですか。はっきり判決の中に出てきているでしょう。公判で立会している中でそういうことが出てきている。はっきりしているでしょう。これは検事調書でしょう。三十九年八月十九日の検事調書でしょう。その中で百万と七百万出てきているわけですし、その後の調べ過程であなたは五百十万と百二十万業者から入ったことはわかっているんですからね。はっきりしているでしょう。届け出を見ればわかるし、それから法定費用の制限、百九十四条にあるでしょう。それはわかり切っているでしょう。調べたけれども犯罪にならなかったというのなら、なぜ犯罪にならなかったかということを聞かなければいけませんよ。それはいけませんね。いわば政治資金規正法といっても、選挙法といっても、まああまり重く見ていないのだ、そうあまりやかましく言いなさるなと言うのなら——公の席でそう言えないかもわかりませんけれども、そういう意味ならばまあまあということもあるかもわからぬけれども、おかしいですね。金が入ったことは認めるのでしょう。認めざるを得ないでしょう。どうなんですか。
  73. 津田実

    説明員津田実君) 判決の中に引用されておる山本の陳述書の内容については、御指摘のようなことがあることはもちろん。しかしながら、そのこと自体が直ちに犯罪に結びつくかどうか、これは別問題です。検察官といたしましては、ある事件取り調べておって、他の事件について捜査の端緒を得て、それについて捜査すべきものと判断したものは捜査をいたすわけです。本件についてはさようなことはなかったということを先ほど来申し上げておるわけでありまして、これがのんだものであるというような、まあのんだといいますか、それはいわば一つの事件について処罰の結果を得れば他のものについては処罰を強いて求める必要がないというような判断をする場合も、これは御指摘のとおりあるわけです。しかしながら、本件がそれに当たるものであるか、またその前提たる事実が存在したかどうかという点については、私は十分承知いたしませんが、しかしながら、検察官としてあらためて事件を取り上げて捜査の端緒として捜査を開始すべきものはなかったというふうに私は報告を受けておるわけです。現に、問題の平井に関しまして、今度は山本代議士を立件したということにつきましても、これは捜査の端緒があったから立件したわけなんでありまして、そういう意味におきまして、私ども検察庁の考え方として、事件の端緒があり十分捜査すべきものについては何ら手を下さないというようなことは私はあり得ないと考えております。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣、まあ前のことに関連してはあなたお聞きになっておられなかったのであれですけれども公職選挙法違反だとか、それから政治資金規正法違反だとか、こういうふうなものについては、あれですか、大臣としてはあまり重きを置かないのですか。変な言い方だけどね。みんなやってるんだから、まああまりという気持ちなんですか、どうなんですか。やはりそういう点は政治を粛正する上からいってもぴしっとすべきものはしなくちゃいけないんだと、こういうふうにお考えなんですか。そこら辺はどうなんですか、大臣としては。
  75. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 規定がある以上規定を尊重することは私ども当然のことだと考えております。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそれは当然なことですけれどもね。それならば、ぼくはまあいま現職の人に対して、大臣についてあまりかれこれ言うのいやですから、あまり言いませんけれどもね。これは明らかにあなた法定費用超過ですよ。判決で確定した中でも千四百何方選挙関連してあるのですからね。そうするとあれですか、この判決から、いいですか、選挙関連して、いま言った百万と七百万と五百十万と百二十万入ったことは認めるのですか。法務省として認めざるを得ないのですか。
  77. 津田実

    説明員津田実君) この判決裁判所が引用して、まあ一つの事実を認定しております。といっても、これは直接訴訟に関する事項とは言えないわけでありますから、そのこと自体でその内容が確定不動のものであるというふうに言えるかどうかということは、これは疑問があると思います。したがいましで、もちろんその裁判所判決内容をそのまま事実として、われわれといいますか、検察官が受け取るかどうかということは、これまた別問題であり、もしそのまま受け取るということになれば、これはその事実を認めることになりますけれども、そのまま受け取っておるかどうかという点は、私は必らずしもそのまま受け取っておるかどうかわからないと思うのであります。繰り返して申し上げますが、先ほど申しましたように、この関係事実についても検察庁調査をし、捜査の端緒となるべきものは認められなかったというふうに私は報告を受けておるわけでありまして、その程度以上にどこまでの心証をとっておるかということは私どもはわかりません。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの答弁は納得できませんけれども、まあここで言い争ってもあれですから……。そこで法務大臣、いままでのことを要約してあれしますと、この山本幸雄という代議士が、建設次官をやっていて、それが河野大臣のすすめで三重県の一区から立候補した。官房長平井學という人が、これが公職選挙法に違反して、自分の建設省が請負いをやらしてる特定の企業から金を集めた——六百三十万ですね。そういうことで裁判があったわけですが、それに関連をして聞いておるのは、いまの森清という人が、三十九年の八月十七日に自分の部屋にその山本平井らが集まって、そこに、私の調べでは、検察庁調べを受けた高岩というのが、あれは被告ですが、これが帰ってきて、一緒になって事件についての打ち合わせをまずしておる、これが一つですね。それからその次に判決の中で援用されておるのは、森清氏が検察官調べられたわけですね。その関係で援用されておるのは、平井官房長が金を集めるのについて——金を集めるのについてとは書いてありませんけれども、そうと思うのは、当時河野大臣直系代議士——これは森清をさすと見られますが、暗に山本支援を要請されていたということは、これは森清官房長に対して、次官である山本代議士を出すために、同じ河野派ですから、物心両面の援助をするように要請をしていた。その物のほうの援助の中で、官房長が金を集めろ、その金を集めるについての包括的な要請をしていた、こういうことが考えられてくる。場合によっては、その意を受けて平井が、この公選法に違反である、自分の省と請け負いをしている特定の業者から金を集めたと、こういうことが疑われておるということ、これが第二。それから第三については、その後において、これは法務省のほうで認めませんけれども清和会森清名義で六百三十万受け取ったと、業者あてに受け取りを出しているわけです。その受け取りを出しておることが事実であるとすれば、場合によっては、そういういき方をとれば、これは清和会が受け取ったならば、これは普通の政治献金で犯罪にならないということになってきて、平井なり何なりの犯罪事実をあれするためにやったとも考えられる。私はそうではないと思いますけれども、そういうような疑いも出てくる。いろいろな問題があるわけです。大きく分けて三つあるわけです。ですから、その三つというのは、一つは、実質上この官房長に金を集めさせて法律違反を犯させた一つの主体が、春秋会なり、あるいは春秋会の分かれですか、清和会森清氏がそういう役割りを演じたのではないかということ。それから、集まって自分の部屋でやったということは、防御権の範囲を越えている。場合によっては証拠隠滅というおそれがあったのではないか。その結果として本件が無罪になったのではないかというようなことが考えられる。いろいろな問題が出てくるわけです。こういう問題については、これは綱紀を粛正するという意味、政治の姿勢を正すという意味からも、これは法務大臣が直接森清さんなら森清さんにお会いになって、こういう話が委員会に出たけれども事実関係はどうなのかということを確かめるなり何なりをすることが私は必要だと、こう思うのです。それが国民に対して正しいあり方だと、こう思うのですが、こういうようなことについての法務大臣のお考えをお聞かせをお願いしたい、こういうように思います。
  79. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) ただいまお話のあったようなことが事実問題としてどういうことか、それを私は詳しくそのとおりであるか、この点はどういうように違うということは、そのことはちょっと別にしていただきたいと思います。私の聞いておりますところでは、まあ検察庁のほうでこの問題を取り調べる全過程におきまして森清君の名前の出ておることも事実でございます。そうしてその調べもやったようでございます。そうした結果は、森君はこの事件には関係ないと、またこの問題について、証拠隠滅とかなんとかという問題ちょっと言われておったようだけれども、そういうものにも関係ないという判断をいたして今日に及んでおるということに了承しておるわけであります。私は森君が潔白であるということを信じておりますが、しかし、ただいまのようなお話が、友だちとして、同僚として、そういうことをまだ言うておるがどうだということを友だちとして聞いてみたらどうだとおっしゃるならば、おっしゃらなくても、私はいつかは聞く機会もある。その結果、こう聞いたがと、こう申し上げますと報告すべきものではないと思いますけれども、友だちとしてはそういうことを話し合うということはあると思います。
  80. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記を起こして。     —————————————
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 少年法の改正の問題ですが、要点だけお聞きしますと、最高裁はこれに対して、いわゆる法務省構想というものに対して意見を求められたわけですが、これに対してどういうふうな意見をいま持っておるわけですか。
  83. 細江秀雄

    説明員(細江秀雄君) 法務省のほうから去る五月に、少年法改正に関しまして改正構想というものが発表されましたので、最高裁判所といたしましては、その発表直後事務総局内に少年法改正問題協議会というものを設けまして、現場の裁判官なんかを交えて種々検討してまいり、また全国の高等裁判所長官、家庭裁判所所長会同を開催いたしまして意見を求めました結果、最高裁の事務総局においていろいろこの問題を検討しまして、去る十月十八日に法務省に対して構想に対する御回答を申し上げるとともに、少年法改正に関する意見という書面をつくりまして公表した次第でございます。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間の関係があるのであれですが、法務省構想について、青年層の設定について、検察官先議について、その他ありますが、これについてはどういうふうに考えておられるんですか、要点だけでいいです。
  85. 細江秀雄

    説明員(細江秀雄君) 最高裁判所の事務総局といたしましては、現在の少年法の基本構造あるいは基本的理念というものについては変更する必要がないんだというのが結論でございます。ただ十七年の家庭裁判所の運営の実績に徴して改善すべき点は、ほかに審判手続の改善とかその他ございますので、そういう面についてはすみやかに改正したほうがよろしいという意見でございます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもぴしっと答えないで——遠慮しているんじゃないか。青年層の設定の問題、検察官先議の問題についてはどうなんですか、最高裁としては。
  87. 細江秀雄

    説明員(細江秀雄君) ただいまの私の説明が非常にまずかったために意味がおくみ取りいただけなかったかと思いますが、先ほど申しました基本的構造と申しますのは、いわゆる現行少年法の基本的構造のうちの、家庭裁判所がいま保護処分に付するか刑事処分に付するかのえり分けをやっておりますが、そういうような構造を変える必要はないということでございますけれども検察官先議については私どもとしては賛成しがたいというわけでございます。また、青年層の設定にいたしましても、現在の少年の非行状況及び各家庭裁判所における処理の実績に徴しまして、青年層を設ける必要はない、こういう考え方でございます。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣少年法改正については、あなたのほうとしてはどういうふうにしたいわけですか。大体のスケジュールはどうなんですか。スケジュールというか、少年法改正をどういうふうにやっていこうとするのか、大体のところはどうなんですか。片方だけ聞いて片方聞かないのは不公平ですからね。
  89. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 五月に法務省の考え方を公表いたしまして、私はこういうふうな案として、世間一般に、こういう考え方を持っておるがどうだといって、あらかじめ広く意見を聞くのは非常に珍しいことだと思うのでございますが、少年法の性質上、こういうたてまえをとることが非常にいいことじゃないかと思いまして、広く意見を求めることにしたわけでございます。ただいま各方面において公聴会等をずっとやっておりまして、ずいぶんたくさんの面で会議、説明会、公聴会等をやったのでございます。年末ごろまでまだずっと続けていけば一通り終わるのじゃないか。それからそういうものを整とんいたしまして、そうしてその間に、ただいま最高裁のお話がありましたように、ちょっと私どもの考え方と対立的な考え方になっているので、世間ではそのためになわ張り争いなどと言われて、はなはだ残念でございます。裁判所としても残念でございますが、私どものほうとしてもそう思っておりますので、私の意見を初めに公表したわけでございます。それに対して、最高裁の長官も、私と心持ちは同じだ、意見の相違点は別として、青少年問題にしっかりと取っ組んでいく、みなの意見を聞くという私の態度に対しては敬意を表すると言うていただいたわけでございます。最高裁をはじめ裁判所側ともとくと今後、いろいろな意見書も出していただきましたので、これも研究もいたしまして、話し合いを続けていくというようなことで、だんだんまとめまして、そうした後法制審議会にかけ、成案を得ましたら国会に出すという手順にしたい、こういうふうに思っております。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、お聞きのとおり、些末的な問題は別として、基本的な問題についての青年層の設定と検察官先議の件ですね。ほかにこまかい点はありますけれども、それは別として、こういう基本的な点については最高裁はかえって反対の意見を出しているでしょう。これじゃまとまりっこないんじゃないですか、それについてはどうなんですか、その点どういうようにお考えなんですか。
  91. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) まとまらないかもわかりませんが、これは私、最後には私自身乗り出して話し合いを、最高裁長官になるか、どなたか知りませんが、適当な方と話し合いをして、私自身もやっていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。まとまらなかったらどうするかということでございますが、まとまらないときにはまとまらなかったままで、私どもは、こういう意見があるが、こういう意見もすべてのものをみなまとめまして、そうして私どもの考え方はこういうことであるということで法制審議会の議に付しようと、こういうふうに思っております。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、最高裁との話がまとまらなくても法制審議会に出すと言っても、ちょっとそれは国会のほうは通らないんじゃないですか。いまから言っても悪いかもしれませんが、ちょっと無理だと思いますね。そんなことよりも、先決問題としてやらなければならないことは一ぱいあるんじゃないですか。あなた方のほうで少年法改正を出されたとしても、おそらく国会は通らない——通らないと言っちゃあまり僣越して悪いかもわからぬけれども、そう簡単にはいかないですね。一年や二年で結論が出るとは言えないでしょうしね。やらなければならないことはほかに一ぱいあるんじゃないですか、少年法の問題に関連しても。その点についてはどういうふうにお考えなんですか。少年法の充実の問題、保護処分の多様化の問題とか、こういう点についてはどういうふうにしようとお考えですか。少年法改正が通らないかもわからぬし、通るまでになかなか日数がうんとかかるわけですね。私は通らないと思うのだけれども、とにかくかかるわけですね。その間に何をしようというんですか。ほったらかしておくんですか、ほかのことは。これをどういうふうにしようというんですか。その点はどうなんですか。
  93. 津田実

    説明員津田実君) 具体的の考え方の問題で、これは私どもの所管ばかりには限りませんわけですけれども、少年法問題は私のほうで一応取りまとめをやっておりますので、私からまず申し上げますが、この少年法の改正というものの法務省構想なるものは画期的なものでありまして、よくこれは現在の少年院の状況や現在の検察官の状況じゃできないことじゃないかという御批判を受けることがしばしばございます。しかしながら、この改正構想は、多年の問題の画期的な解決をしようという問題でございますので、現在の規模や現在の人員という前提でものを考えているわけではございません。したがいまして、現在はこうであるからこういう改正は無理だというのも、一つのそれはステップ・バイ・ステップといういき方からすれば考えられることかと思いますけれども、私どもはそれを画期的なものとして実現しようというふうな考え方をこの構想に持っておるつもりでございます。そこで、現在は何をすべきかということにつきましては、これはまあ、先般と申しますか、当国会あるいは当委員会その他関係委員会において常々法務省当局あるいは法務大臣から申し上げておりますように、少年院の充実強化というような、その他保護関係の充実強化ということについては年々努力をいたしておるわけですが、こういうふうな漸進的な問題というものはやはり一挙に大きくするということは困難であり、一挙に充実するということが困難なことは、御承知のとおりでございますので、それは着々と進めていくという現実の問題と、それからある時点において画期的なことをやろうというこの考え方と、二つ並立しておるというふうに私は考えておりますので、したがいまして、現状に満足しておるのじゃない、あるいは現状をこのままの形で変更しようという考え方で新しい立法と結びつけようという意図は全くいまのところはないわけでございます。
  94. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 少年法改正関連しての議論をいまここでしようというわけじゃないんですよ、とてもこれは無理ですから。まだ法案も出ていない段階で先走ってやって、ここを法務省のPRの場に使われても迷惑だし、前の質問のときはあなたあまりしゃべらなかったですけれども、今度は聞かないことまで一生懸命しゃべるわけですが、PRの場にされてはかなわない——かなわないというか、そういうことではなくて、基本的な論議はありますから、これは別の機会にゆっくりやらなければならないわけで、そう簡単にはいかないということなんですね、いろいろの論議があるんだから。それまで、少年法の改正ばかり一生懸命やっていて、ほかのことはやらないのか。少年院充実の問題もあるし、矯正の問題もあるでしょう。そういう問題を具体的にどうするかということを聞いておるわけですね。そればかりではないと思いますけれども、いまの少年院と今後考えている少年院の考え方を変えていかなければならぬという考え方もありますよ。いろいろな論議があることはそのとおりでありますが、そういう点をどういうふうにしようとしているかということを聞いているわけです。少年法の改正だけがすべてではなくて、その前にたくさんやらなければならないことがあるのではないかということなんですね。これに対してどうもはっきりしないんですけれども、ほかの方の質問がありますので、きょうはいろいろの関係で時間の制約がありますからあまり聞きませんけれども、少年院充実の問題は非常に大きな問題でしょう。大臣、少年院ごらんになって、少年院の教官の方と話したことがありますか。少年院の教官の方も非常に良心的な不平不満というものは一ぱいあるんですよ。これは法務省の矯正行政一般に対してあるわけですよ。それは、刑務所というものが作業収入というものを中心に運営されているわけですよね。作業収入をあげないと大蔵省に対して法務省としての立場が十分でなくなるのかどうかわかりませんけれども、どうしても作業収入があがる刑務所を中心に矯正行政が行なわれておる。だから、矯正行政というのは非常に刑務所中心でしょう。少年院関係のことを矯正局の中でどこが大臣扱っていると思いますか、御存じですか、変なことを聞いちゃ悪いけれども。課の中のほんのわずかなところがやっているんですよ。あとはみな刑務所。しかも、それは作業を中心として行なわれている。いかぬですよ、そういういき方は。少年院の教官の人と話してごらんなさい、いろいろな不平——悪い不平も良心的な不平もありますが、少年院の充実ということが非常に大きな問題です。矯正と保護を比べた場合どっちが……、保護は矯正のかげにかくれているような印象を与えられているようなところもあるわけですね。しかも、保護司といっても、ぼくも保護司をやっておりますけれども、なかなか民間の人たちですから、保護観察官をあまりふやさないで、そっちだけに負担をかけさせてやっている。これじゃいかぬ。そういう面を直さなければいかぬですよ。そういう面での直さなければいかぬ大蔵省の折衝とかいうことは、石井さんが大臣になられたのだから、あなたのお仕事のわけです。ほかの小ものじゃできないけれども、あなたならできる。大蔵省の関係ができるわけですから、そういう方面を中心にしてやらなければいかぬと思うわけです。少年法の改正改正というけれども、それまでにはとても年月かかるのですから、それまでに現在やっていただかなければならぬことをどういうふうに判断されるか、それをひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。あまりこまかいことは御存じなくてもけっこうですが。
  95. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 私は、少年院というか少年問題は、青少年問題——非行少年だけでなく、全体の青少年問題に関心を深く持っているものであります。法務省関係においては特にこの青少年問題に関心が深いわけであります。できるだけ少年院なんか見たいと思いまして、東京、それから大分、この間は愛知県等の少年院等いろいろ見まして、いろいろ話を聞き、私の考え方もいろいろ話しあったわけであります。大体私は、少年院と申しますか、非行少年を引っぱっていくには、初めて入った、初めて悪いことをしたというようなことで連れてこられたというような人たちが一番多いわけでございますから、これが二度と、世の中へ出て、社会にそのまま溶け込んでしまって、変なことにならないように、そして本人もいじけないように、りっぱな社会人になるようにということが一番私は大事なことだと思うのであります。そういう心持ちで少年たちを扱ってくれ、皆が少年たちを自分たちの弟のような心持ちで見てやってくれ、朝晩のあいさつでもにっこりして笑ってあいさつをすれば、どれだけいい感じが起こってくるかというようなこと、要するに人間と人間の接触ということが第一。そこからすべての問題は解決していくのだというようなことから、いろいろなことについての私たち気のついたことは申し、また聞いているわけで、なかなかいろいろな点でまだ至らぬところもたくさんあるのでありますが、私のまず任にある限り、できる限りのことはこれから先もしていきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 石井さんの言われる精神論で問題が解決すれば、非常に簡単と思います。問題はそういうところにないのだと思いますが、しかしその議論は別として、少年法の問題についてのあれは別な機会にゆっくりやりますが、まだその時期が早いのかもしれませんけれども。     —————————————  朝鮮人の交流の問題が、この前北朝鮮への往来、いわゆる再入国の許可の問題、これについて三名認め、一名病気で行かれなくて二名行ったわけでしょう。これはどういうようなことからその往来を認めるようになったわけですか。
  97. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 昨年の暮れに、長い間の懸案でありました在日朝鮮人——ということばを使っていいかどうかわかりませんが、日本におります朝鮮系の人が北のほうに帰りたい、お墓参りであるとか、あるいは親きょうだいにせめて一度会いたいというようなことで行きたいという問題、これは私は、ずいぶん長い間日本におって、そしてずっと帰れなかったと、いつまた会えるかわからぬ、せめて一度会いたいと、お墓参りしたいという心持ちは、もっともだと思います。なるべくそういう人たちを、まあ一ぺんにどかっとこうやるわけにもいかないけれども、ぼちぼちとこうお参りさせてあげたり、たずねさせてあげたりしたいというので、昨年の暮れに初めて何人かの人をやりました。  そのときに、特にいろいろなことに注意をしなくちゃいけない、初めてであるからお祭り騒ぎにならないようにしてもらわなくちゃあとが続きませんよと、政治的なこれが扱いというか、政治的にいろいろ——本人たちはほんとうにお墓参りだけであり、親きょうだいに会うためであっても、ほかのほうからいろいろそういうことにおちいると、結局あとが続かないことになりますが、そういうことのないように気をつけてもらいたいということを、入管局長からも各方面にと言うていいくらいいろいろな方面にも注意をし、本人ばかりでなく注意してやったのでありますが、結果はそのとおり必ずしもなかったようであります——という状態でございます。  その方針といたしましては、依然として私ども方針は変わっておりません。けれども、やはり情勢というものがございますから、少しく時を置いてということで今日までずっときておるわけでございます。  いまそれじゃあ、もう一年もたつのだから、これ許したらどうだということを言う方もあるかと思うのでありますが、まあ情勢を見ておるということが正直なところでございます。方針は、私の考え方は変わらないということだけ申し上げておきたいと思います。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 基本的な理論といいますか、議論はいろいろあると思うんですけれども、それはまあきょうは別にいたしまして、一ぺんにどかっとやられてはどうかと思うからぼちぼちやるというようなこともあったし、何か情勢を見てという話もあったんですけれども、そうすると基本的には、ぼつぼつ往来というか、再入国の問題を認めたいと思うと、情勢を見ているというんだけれども、その情勢というのは、あれですか、それは日本の政府が自主的に判断すべきことでしょう。それは間違いないでしょうね。その情勢を見ているという意味は、国家主権を持つ日本の政府が自主的に判断すべきことであるということでしょう。それは間違いないと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  99. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 日本は、いつも申し上げますように、日本の立場でものごとを考えるわけでございますから、その点は日本の政府は日本の立場で考えることに変わりはないのでございます。それは同じことでございます。  いま許すことがいいかどうかという問題は、政府として、各方面と意見が一致して、やはりもう許していいかどうかということを、あらためて相談するということになると思います。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあぼくは、全部が全部許せというか、そういうことはちょっとぼくも言わないんですよね。だから、北朝鮮に本籍がとりあえずある者ですね、で日本に非常に長くいると、それで北朝鮮のほうにたとえば家族や何かがおるというわけですね、それで向こうで生活をしておると、むすことか何とかが。それからあるいは向こうでだれかが病気であるとか、それから日本にいる本人も老齢であるとか、こういうような特殊な事情のある者はとりあえず認めてあげても、これはもう人道という面からいっても、別に日本の国益というようなものを何ら害するものではないと、こう思うのですよね。ぼくはだから、この問題をそういうふうに大げさに各方面と相談しなきゃならぬとか、情勢を見なきゃならぬとかいうほどのこれは大きな事件なんですかね。事件というとことばが悪いけれども、どうなんですかね、これ。それは一万人も何人も行けとか、千人一ぺんに行けとかいってあれしておるというならあれだけれども、そうでないのに、ぼつぼつ行かせるというのが、そんなにこれ大事件なんですかね。大きなウエートを占めているのでしょうかね、日本の政治にとって。どうもその点わからないのですがね。もっとフランクに、おおらかな気持ちで、そういう特殊な人というなら気の毒だから行って帰ったらいいということでいいんじゃないですか。どうしてそんなに大げさに取り扱うのでしょうか。大きく政治的に取り扱うのでしょうかね、政府として。ちょっとその点わからないのですがね、その辺のところが。
  101. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) まことにそのとおり、おおらかにこういう問題は進めたいのです。だが、何の何がしというまあ世間的な有名人でもない、ほんとうの市井の市民という人が、それが行くと、新聞記事にでもなるような人でもないという人が老齢でお墓参りに行くとか、子供たち、孫に会いに行くというのなら、それだけのことで、すっと行って、船に乗って行って、あるいは何で行くかしらぬが行って、それですなおに孫の顔見たりお墓参りしてすっと帰ってくれば、それで何の問題もない。この前そのとおりであったら続いてやれたと思います、そのとおりだけであれば。しかし、北鮮においての待遇、まあ日本に帰ってからの空港における歓迎状況と申しますか、そういうふうなものと、外のほうからの騒ぎが少しぎょうぎょうし過ぎたと、そういうことあなたお聞きになりませんか。もうフランクに言えとおっしゃるから申し上げましたが。やっぱりそういうふうなところが、私ちょっと行くときも、まあすっとすなおに行ってこいと、すなおに行ってきますということであった、それからこの八木局長からも、そんなことあまりぎゃあぎゃあ騒ぎ立てないで行くようにということであったのが、新聞も——それはどういうところからというと、どこからかわざわざこうやって行くのだと知らして、新聞記事にしてもらった。本人たちは御迷惑だったんだろうということかもわからぬが、そういうこともあったというようなことをわれわれ聞くのであります。そういうふうなこととか、まあざっくばらんに申しておきますが、いろいろあれやこれやということで、なかなか続いてやるのがやりにくくなったと、平たく申せば。政治的に利用されると、むずかしいことばで言うと、政治的にそういうのが利用されるということはおもしろくないということになるわけで、こう言うと、ではどこが政治的だとあなたは聞かれるかもわかりませんが、正直に言うとそういうことになる。しかし、これは本体からすれば、それはお気の毒な情勢を聞くのでありますから、私どもは何とかして許すような方向になるべく持っていきたいと思っております。まあそういう心持ちです。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ほかの方の質問がありますからこれで終わりますけれども、別にぎょうぎょうしくやっているわけじゃないですよね。あまりかたく考え過ぎるからなんで、日本は大国なんだし——大国というのも変なことばだけれども——大国なんだしね。あまりけちけちして神経質になる必要もないと、こう思うのですがね。被害妄想みたいになっているのですよね、法務省も外務省も。これはちょっと考え過ぎるような気がするのですがね。だから、それは別として、すなおな気持ちですなおに行ってすなおに帰ってくるという形をとりたいと思うのですよ。新聞記事だって、新聞は報道の自由であれなんでね。すなおに、市井の人がこちらに長くいて、年寄りだし、向こうにいろいろな子供や何かがいて、向こうでも困っている、会いたがっている、生きているうちに一ぺん会わしてやる。それなら行きっぱなしでいいじゃないか、日本に再入国しなくてもいいじゃないかという議論もあるかもわからぬけれども、これは日本に生活の基盤が十分あるわけですから、それもそうもいかぬ——ということになってくれば、そういう特殊なものに限ってはおおらかな気持ちで再入国という形で認めてあげても別に弊害はないとぼくは思うので、年末から正月にかけて、あまりやかましいことを言わぬで、すなおな気持ちで大臣もひとつ認めてあげて、ここでそこまで断言できないと言われるかもしらぬけれども、ある程度の返事をしていただいて、あとはよく話し合いましょうというようなことできょうのところは終わりたい、こう思うのですがね。そこら辺のところいかがですか。年末から正月にかけて、別に政治的な害がないというものなら、政治的に害があってもぼくは日本にとってどうということもないと思うのですが、こういう議論をするとあれになりますけれども、そういうものを選ぶなら選んで認めてあげたらどうですかね。そこら辺のところ、大体返事は出ましたけれども、もう一ぺんいい返事を聞かしていただいて、そうしてぼくの質問はきょうは終わりたいと思います。
  103. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 大体の心持ちは同じようなところだと思います。実際上にどう扱うかという問題はいろいろあると思いますので、よく承っておきます。     —————————————
  104. 黒柳明

    黒柳明君 私は仙台地検の気仙沼の庁舎の敷地の寄付問題についてお伺いしたいと思います。大臣にもちょっとお聞き願いたいと思います。  これは私去る七月一日の決算委員会で本件を取り上げたわけですが、そのときの営繕課長さんの答弁は、三十九年の六月五日この敷地を寄付受納した、こういうことを前提として、三十九年一月二十一日気仙沼市長より寄付採納の願い出が来た。さらに問題のこれに関しての地方財政再建促進特別措置法二十四条について、「地方自治体が国に寄付するということについては、自治大臣の許可のない限り制限があるわけです。」、あるいは「自治大臣の承認のない限り禁止されている」、このようなお答えがあったわけです。まず、自治大臣の承認、このことについて、どういうことであるかお伺いしたいと思います。
  105. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 自治大臣の承認につきましては、地方財政再建促進特別措置法の関係でございまして、いわゆる地方財政が非常に赤字の都道府県が多いので、今後地方自治体から官公庁等が寄付を受けることは一切差し控えたい、ただし特別な事情がある場合には必ず自治大臣の承認を受けてからでないとその寄付は効果がない、こういう法律上の規定でございます。
  106. 黒柳明

    黒柳明君 その自治大臣の法的規定、根拠はどこにあるのですか、承認が要るという。
  107. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 地方財政再建促進特別措置法の第二十四条の二項でございます。
  108. 黒柳明

    黒柳明君 そうですね。その二十四条の二項にはただし書きがあって、寄付金を支出してはならない、原則としては。ただし、こういう場合に限ってはいい、自治大臣の承認があれば。その中で、地方公共団体がその施設を国に移管しようとする場合——要約しますと、それからおしまいのほうに、「やむを得ないと認められる政令で定める場合」と、こうございますね。国と地方公共団体と協議して、そうして寄付をしてもいい、自治大臣の承認を得たものは、こういうわけですね、そこのところは。そうすると、今度のこの場合ですけれども、気仙沼の庁舎の敷地の寄付の問題、これはこの「ただし」のただし書きの中に該当することですか。ということは、さらに同法施行令の十二条の二——ここに書いてあります一、二、三、四、五、これに該当することであるかどうかと、こういう意味ですか、いかがですか。
  109. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 御趣旨のとおりでございまして、赤字の地方団体である場合、それから赤字を出していない、いわゆる指定を受けていない地方団体と、両種類あるかと思います。したがいまして、その両種類にわたっての措置がこの十二条と二十四条に書かれておるわけでございまして、御指摘のとおりでございます。
  110. 黒柳明

    黒柳明君 いまのこの庁舎の敷地の寄付問題が、結局、自治大臣の承認を要する、地方公共団体が国に寄付をする場合にはですね。ただし、自治大臣の承認を必要としない場合がある。このただし書きは、二十四条の二項、やむを得ないと認められる政令で定められた場合はいいんだ。それが今度は十二条の二になるわけですね。それでここに五項目あるわけなんですね。読み上げると時間が長くなってしまいますから、第十二条の二、ここの五項目に該当するかいなか——該当しないのじゃないですか。
  111. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 御質問の趣旨をあるいは的確に把握していないかもしれませんが、この気仙沼の検察庁の庁舎の敷地の問題の経緯を私のほうにございます資料で取り調べてみますと……。
  112. 黒柳明

    黒柳明君 時間がないので、経緯や何かみんな調べてございますから、この前も質疑したんです。これが当てはまるかどうか、その点だけ答えてください。
  113. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 結論は、気仙沼の場合は地方財政再建促進特別措置法の附則二項で処理されるものでございますので、したがって、この十二条、二十四条の適用がない、このように理解いたしております。
  114. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、先回営繕課長が、自治大臣の承認云々、こういうことを言われましたが、自治大臣の承認は必要ない、こういうことですね。
  115. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) さようでございます。
  116. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、自治大臣のほうから、本件に関しては附則第二項に該当し、承認を要しないものと認められる、こういう書類がきている、自治大臣は承認必要ない。この承認必要がないということを、今度は、だからこちらは庁舎の敷地を公共団体から受けたものと、こう解釈してもいいのだ、こういうようなことでおとりになるわけですか。
  117. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 気仙沼につきましては、附則の二項に該当しない事項であるから承認は必要でない、このように理解いたしております。
  118. 黒柳明

    黒柳明君 この気仙沼市と法務省と、寄付しよう、納受しようと、こういう契約ができたと思うのです。それはいつか、その契約具体的内容、それから契約書があるかどうか、契約当事者はだれか、その点はいかがですか。前回の説明では、二十八年十一月七日気仙沼市——これは決議、三十二年十一月三十日土地登記、三十五年十二月十日気仙沼支部並びに区検庁舎完成、三十九年一月寄付採納願い、三十九年六月寄付受納、こういうふうになっているわけですがね。契約締結の時期、内容、証明書の文書、あるいはその担当官、当事者。
  119. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) いわゆる寄付契約と申しますか、いわゆる事実上の寄付が行なわれていたかどうかという問題と、それからいわゆる契約書類という文書でそれがなされたかどうかという問題があるかと思うのでございますが、私のほうの手元にある資料と、それから当時この寄付に関与したと思われる方々について、できるだけ調査をしてみたわけでございます。結論といたしまして、この問題についてきわめて御熱心に気仙沼市の当局等と折衝をされたのは当時の仙台の検事長の堀検事長でございますが、その堀検事長が実はすでに物故されておりまして、直接堀検事長から実はお話を伺うことができなかったわけでございます。したがいまして、その後検事正がたびたびかわってございます。あるいは支部長がかわっていたり、その中にやめられている人等もありまして、残念ながら直接の当事者からこの事実を確かめることができなかったのでございまして、したがいまして、現在手元にある資料から申し上げますと、この寄付についての正式の契約書が、いわゆる三十年十二月二十九日地方財政再建促進特別措置法の施行前に事実上寄付の話ができていたということを証明する文書は、ずばり私のところにはないのでございます。したがいまして、これはいわゆる状況証拠推測するような話になりますが、先ほど御指摘がありました昭和二十八年の十一月七日の気仙沼区検察庁庁舎建設促進協議会の規約の制定、さらに二十八年の十二月十五日の土地売買契約書、さらに二十九年一月十一日付の陳情書、さらに私のほうの気仙沼検察庁の庁舎新営の予算要求の経過——これは昭和二十八年から予算要求をいたしておりますが、そういった事実を総合いたしてみますと、私どもといたしましては特別措置法の施行前に事実上の寄付ができていたというように認めているような次第でございます。
  120. 黒柳明

    黒柳明君 こちらの調べによると、そういうことじゃない。だから私はいま言っているのですが、それは誤りなんですよ、部長さんのおっしゃることは。だってこれ国有財産じゃないですか。国有財産は、一人の人が死ぬと、どれだけの期間契約したか、契約文書がどうなったか、担当官名はどうだったか、それがわからないで、客観的な資料で、情勢判断でいい、こういうような雑なことでよろしいんですかね。国の少なくとも財産を管理する立場において。
  121. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 御指摘のとおり、この庁舎敷地が登記になりましたのは昭和三十九年の六月二十七日でございます。それからこの土地を使用いたしまして庁舎を新営いたしましたのが、昭和三十五年の八月十二日から工事に取りかかっております。その前に、昭和三十四年の一月二十七日に市長との間に土地使用の無償貸借契約書ができているようないきさつになっているわけでございます。  それからなお、これは昭和二十九年の一月十一日付でございますが、当時の仙台高等検察庁検事長の堀忠嗣と気仙沼区検察庁庁舎の促進協議会の会長菅原運治郎さんとの間に覚え書きが取りかわされているのでございますが、そういった事実関係から、この促進措置法施行前に事実上の寄付があったと認めるわけでございますが、御指摘のように、こういった問題について的確な文書あるいは資料をつくり、それを保存していないということは、国有財産の管理上妥当を欠くと私自身も考えておりますので、この本件について御指摘を受けましてから、全国的にそういったものがないかということを調査する一方、その後におきましても、自治体のほうから検察庁の移転等の問題にからんで敷地の提供等の話がございますが、これにつきましては、現在厳に抑制をいたしまして、必ず不動産買収登記、購入した上でいくということを前提にして事務処理を完全にしているというのが現状でございます。
  122. 黒柳明

    黒柳明君 要するに結論としては、これは明らかに不備である、こういうことですね。
  123. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 書類の作成その他につきまして不備があったとは、私は考えております。
  124. 黒柳明

    黒柳明君 書類の作成その他と言っても、当事者の覚え書きとか、あるいは当事者が死んだからそれが文書として残らないとか、こういうことが国有財産を管理する立場においていいのかどうか。契約といったって、ちゃんと期間があるんじゃないですか、契約の当事者の官名があるんじゃないですか、契約内容があるんじゃないですか。当然文書が残っているんじゃないですか、契約したなら、寄付をしたということなら。この法律施行以前二十八年に寄付を受けたというのでしょう。三十五年において使ったというのでしょう。その間においてどうなっているのか。契約したならしたで、どれだけの期間契約したのか。その文書がなければ、三十五年から使えるということもできないんじゃないですか。
  125. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 三十五年から使えるというのは、いままさに御指摘のように、そういった話が進んでいたからできたのだと思いますが、その書類が完全に保存されていなかったということは、事務処理上不備であったと私のほうでは思いますので、それ以後につきましては、いま厳に注意しているところでございます。
  126. 黒柳明

    黒柳明君 事務処理上じゃなくて、これから話が発展していきますが、これは法律上うまくない。事務処理上うまくないだけならいいです。それだけだってうまくないですよ、国有財産を管理する上において。何回も言いますように、きちっとした契約文書がないということは、決定的致命傷です。ところが、事務処理上だけじゃなくて、法律上に照らして明らかにこれは違法である、違法じゃないか、こういう問題がこれは出てくる。ですから、この事件において書類がないということは、非常におかしいのです。ですから、あなたのお話からここにたどってくると、ここで契約書がないということは致命傷であると同時に、ここの寄付に対する問題が、これが法に反しているのだ、こういうことが述べられる。その点はいま話しますけれども大臣、いま言ったように、部長さんからお話がありましたように、非常にこれは事務処理の上においても不備です。全国的に手配したと、こういうことですけれども、これは一庁舎の問題でありますけれども、あくまでも法をつかさどる法務省としてこういうことがあるということは非常にうまくない、事務処理上だけじゃないのです。事務処理上だけだとしても、これは非常にうまくない事実だと思うのですがね。大臣、いかがでしょう。
  127. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 私詳しく存じませんが、お話のやり取りを受けておりますと、話し合いはできておった、しかし書類がなかった、いま保存されてないというところに、確かに手落ちのあることは申すまでもない、このように思うのでございます。それをどういうふうに法的に力があるかないかという問題は私存じませんが、いまおっしゃった点だけはそのとおりだと思います。
  128. 黒柳明

    黒柳明君 これは問題だと思うのですよ、大臣。前時代的ないまの世の中じゃないと思うのですよ。あくまでも書類がないということは、法的に拘束力がないということにもなるんじゃないですか。法的にどうなるかということは私は知りませんですけれども——これは非常に担当大臣としての御答弁として私は不満だと思うのですが、そういう書類があることが事実関係が成立するんじゃないですか。その書類がないということは、これは事実関係が成立しない。法的には、契約書がないということは、これは違法である。どうでしょう、大臣
  129. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 経理部長から御説明申し上げます。
  130. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 若干法律問題でございますので、たいへんこまかいことを申し上げるのでございますが、御承知のように、この種の交換あるいは寄付につきましては、一応民法の契約の規定が全面的に適用になるわけでございます。したがいまして、売買あるいは寄付等については、必ずしも書面で取りかわさなくても売買その他の契約が成立するということは、法規上認められているところでございまして、ただし文書で明らかにしておくということは、これはあとに紛争の種を残したり、問題を起こさないというためにもベストでございますので、そういう意味におきまして、これにつきまして事実上の寄付が行なわれていたと私どものほうでは考えておりますが、文書でもってそれを保存してなかったという点について遺憾があったと、かように考えるものでございます。
  131. 黒柳明

    黒柳明君 くどいようですけれども、もう一問いまのことに関して、要するに、国有財産でルーズな管理をしている、そういうケースがございますか。さっき、調べていただいたというお話がありましたが。
  132. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 一例でございますが、たとえば五年あるいは十年という前に、あるいは自治体のほうから、ぜひここに庁舎を建ててもらいたいということで申し出がありまして、当時不動産購入費等の予算の手当てがつかない、それでは市のほうでこの土地を無償で提供するから、ぜひ建ててもらいたいというような話し合いのもとに庁舎が建てられていて、その敷地についても、はっきりした使用上の契約ができていない。いわゆる有料で、賃借でいくのかどうか、あるいはいつ予算で購入するのかどうかという点は、必ずしもはっきりしていない事態のものも二、三発見されましたので、それらのものにつきましては、不動産購入費で買い得るものは直ちに買い、あるいは一年限りで買えないものは、二、三年分割して買う、あるいは有料に直すというような措置をとったものが数件ございます。
  133. 黒柳明

    黒柳明君 その点に関してはまた資料要求として資料を提出してもらいたいと思うのです。  また本問題に入りますが、先回のときに、三十五年十二月より法務省が庁舎敷地として使用した、これは無償使用である、このように課長さんからお話があったのですが、寄付を受けて所有権を取得した、こういうことではないのですね、このことは。無償使用ということは、これはよろしいですね。
  134. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 昭和三十四年の一月二十七日に気仙沼市長と当時仙台地方検察庁検事正との間に土地使用貸借契約書というものが取りかわされております。無償使用でございます。
  135. 黒柳明

    黒柳明君 寄付を受けて所有権があるということじゃないでしょうね。
  136. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 所有権は、まだ国有財産として発記もされておりませんので、書面上もございません。
  137. 黒柳明

    黒柳明君 三十六年十二月二十二日の気仙沼の市議会の議案五号ですけれども、それにはいまおっしゃいましたように、「該市有地は気仙沼検察庁々舎敷地として無償貸与中のものにて、今般これを寄附せんとするに因る。」と、こうあります。ですから、このときにはまだ寄付してなかった。三十四年、先ほどもう二十八年のときに寄付してある、こうおっしゃいましたね。どうですか、ここは。
  138. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 私が、二十八年から九年の間に寄付がなされていたと言うのは、事実上寄付がなされていた。しかし、その寄付をするについては、市当局としては、それぞれの議会の議決あるいは地方財政再建促進特別措置法に該当するかどうか、該当するとすれば、書類の手続が要る。また、私のほうとしても、登記を移すについては、必要な権利関係、原因関係を明らかにする書類が要るということで、所要の手続を踏んでおく必要があるわけでございます。その所要の手続が事後に行なわれた、このように理解するものであります。
  139. 黒柳明

    黒柳明君 それはおかしいじゃないですか。だから、先ほどのまた契約書類がない、その不備の点に戻る。事務上の不備だけじゃない。実質的に二十八年において寄付をされていた、そういうふうに言いますけれども、その証拠が、何か裏づけがありますか。また、この市議会の議事録がある。読んでみましょうか。検察庁より申し出により云々と、地財法によってはできませんというのです。これは検察庁の方々がこの場合手続してくれるというので、どうせやることになっているので提案いたした次第でありますと、要するに、庁舎を寄付することに関してでしょうけれども昭和三十四年ですか、気仙沼の本会議における議事録ですよ。要するに、二十八年のときには実質上の寄付をされていない。議会の手続が要るでしょう。これはこの前課長さん、そういうようにおっしゃったでしょう。手続がなければ寄付されていない。そんな覚え書きで寄付されたというような、そんなばかなことはない。だから私が先ほどから言っている。契約書類がないじゃないか。そういうことは不備じゃないか。そのこと自体が寄付の議決をされたのは、これはあくまでもこちらから、地方公共団体から寄付したということになっていない。申し入れが検察庁から、国からあった。これはあくまでも地財法の違反だと書いてある。だけれども、しょうがないからやろうじゃないか、こういう議事録です。明らかにこれは二十八年のときに寄付されたのじゃないと、こういう証拠です。どうですか。
  140. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 私のことばが足りなかったかと思いますけれども、いわゆる形式的にも実質的にも両方完全に寄付が完了して、所有権が移ったのは事後で、御指摘の時期でございます。ただ、私のほうとしまして、再建促進特別措置法の適用の問題、それから官房長官の抑制の通達の関係、それに応じて処理できるかどうかという問題については、先ほど申し上げましたように、自治省のほうの気仙沼市長に対する回答をもとにしてやったのだ、こういうことでございます。
  141. 黒柳明

    黒柳明君 そうするとおかしいですよ。法律が施行される前にこの寄付行為がなされたのだから、だからいいのじゃないか、こういう御答弁だったんでしょう。ところが、三十年、法律施行前には寄付されてなかったんでしょう。そうじゃないですか。おかしいじゃないですか、それでは矛盾しますよ。
  142. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) この法律の施行前に…。
  143. 黒柳明

    黒柳明君 施行前に寄付があったから使ってもいい、法律は適用されない。ところが、そうじゃないのじゃないですか。形式的、実質的にされたのは三十四年である。そうすると、二十八年じゃないのじゃないですか。
  144. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 形式的手続があとから追完された。
  145. 黒柳明

    黒柳明君 では、実質的手続があったという証拠はどこにあるか。
  146. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 実質的に寄付があったのは二十八年、二十九年。それにつきましては、先ほど申し上げました促進協議会の規約、土地売買契約書、さらに陳情書並びに覚え書き、これらを総合して、実質上の寄付がなされたと認められるものでございます。
  147. 黒柳明

    黒柳明君 この前課長さんは、寄付行為をなすためには、議会の議決が必要である。これは三十四年の議会の本会議において、このときに初めて寄付行為をしよう。これはしかも、公共団体——気仙沼のほうから申し入れたものではないのだ。検察庁のほうから来たのだ。だけれども、地財法違反だけれども、しょうがないからというので、ここで初めて議決されている。それはあくまでも、先ほどから何回もおっしゃいますがそういうインチキな答弁で逃げようといったってだめなんです。正式な契約書がないじゃないですか。覚え書きとかなんとか、そういうものは法的に効果を発揮するのですか。あくまで法律的に効果を発揮するのは、契約当事者はどことどこ、契約期間はどうか、その内容はどうか、また、気仙沼が寄付するということを議決した、こういうことが法的に拘束力があるのじゃないですか。どうですか。
  148. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 現在の問題の庁舎の敷地については、事実上の寄付は、先ほど申し上げましたように、三十年の十二月以前になされたと認めていいと考えるのでございます。
  149. 黒柳明

    黒柳明君 おかしいじゃないか、そんなことは。事実上の証拠はどこにあったのだ。部長の考えなのか課長の考えなのか。こちらはあくまでも、こういう客観情勢があるのだ、事実上寄付されたと認められる。ではその客観情勢を出しなさいよ。こちらも出しましょう。どちらが法的に拘束力があるか。二十八年以前になされたというと、またさらに問題点があるのですよ。その点はっきりさせましょう。議会の議決があるのですよ。議事録をごらんなさい。議決がなければ寄付行為は成り立たない。議決をした議事録をとった。そうしたら、二十八年になっていない。三十四年になって議決されている。しかもそのときは、国から言ってきたから、しょうがない、地財法違反だけれども、気仙沼としても、どっちみちやることだからやろうじゃないか、こういうことをはっきり言っているのです。二十八年には議決してない。拘束力はないのじゃないですか。しかも、先ほどから何回も言うように、契約の文書なんか何もない。部長さんの頭だけでそんなことを言ったってだめじゃないですか。
  150. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 先ほども申し上げましたように、完全な形の寄付契約書等はございません。
  151. 黒柳明

    黒柳明君 だから、完全な形は三十四年ですよ。
  152. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) これは、私のほうでは二十八年から二十九年の間に寄付がなされたと認めても差しつかえない資料として先ほど指摘したものでございまして、そのときに、いわゆる必要な議会の議決等の条件でございますが、これは、いわば法律的に申し上げますならば、条件づきの寄付が三十年の十二月前に行なわれていたと、したがいまして、条件づきでございます。したがいまして、この議決等が行なわれなければ、さかのぼってその寄付は無効になるかと思いますが、その条件がおくれて満たされたので、さかのぼってこの寄付が行なわれたと見て差しつかえない、かように考えております。
  153. 黒柳明

    黒柳明君 これは見解の相違になるかと思います、この場では。ですから、今度は法制局を呼んでいただいて、どちらがはっきりした事実関係が成り立つか、その点を含めてまた次回に回したい。これは何回言ったって水かけ論ですから。ところが、今度三十九年の二月の三日、仙台地方検察庁検事正から東北財務局長に出された「仙台地方検察庁気仙沼支部庁舎敷地寄附受納について(内協議)」となっていますが、これによると、その土地取得事由書によると「使用貸借契約に基づいて」云々と、こういうふうにあるんですよ。それを敷地利用計画書によって、「昭和三十四年一月二十七日付、当該使用土地について「無償貸借契約」を締結、当契約書を交換」、はっきりこう出ている。仙台地方検察庁検事正から東北財務局長あてにこういう通達が出ている。これはどうですか、法的拘束はないですか。「昭和三十四年一月二十七日付、当該使用土地」、要するに敷地です。庁舎の敷地です。「無償貸借契約を締結、当契約書を交換」した。三十四年一月二十七日付と、こうはっきり明記されている。
  154. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 昭和三十九年の二月三日に仙台の検事正と東北財務局長との間に……。
  155. 黒柳明

    黒柳明君 三十四年一月二十七日。
  156. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 三十九年じゃございませんか。御指摘のは、三十四年の一月二十七日の土地使用の貸借契約書でございます。これは結局、先ほど申し上げましたような議会の議決の問題とか、そういったようないわゆる条件が満たされていない。しかしながら、予算がようやく入った。それで、予算は入ったけれども建てられないというような事態になると、気仙沼市のほうも困るし、われわれのほうも困るので、ひとつの技術的な問題として無償契約ということで進行したというふうに理解いたしております。
  157. 黒柳明

    黒柳明君 先ほども言いましたように、この辺を含めて今度は法制局の見解をはっきりして、それで問題を解明しようと思うんですが、賃貸契約の無償貸借の場合ですね。政府は寄付として取り扱う、こういうことじゃないですか。二十三年一月三十日の閣議決定の「官公庁に対する寄附金等の抑制について」、その四の(ロ)「公共施設の寄附(適正賃借料を下廻る借入の場合も含む。)」と、こう書いてある。この無償貸借契約寄付契約、こういう手続をしなかった理由、この根拠、あるいはこの閣議決定は廃棄されたのか。
  158. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 昭和二十三年の一月三十日の閣議決定は、いまなお生きております。その後数回同趣旨のものをさらにふえんしたと申しますか、さらに強調して閣議決定の趣旨を周知徹底をはかる官房長官通達も行なわれております。で、この無償の場合、これももちろん官房長官通達による「適正賃借料を下回る借入の場合」に含まれるわけでございます。ただ、官房長官の通達の中にもございましたが、「自発的好意による寄附の場合においても、割当の方法によるものでなく、且つ主務大臣が弊害を生ずる虞がないと認めたものの外は寄付を受けてはならないということになっており、例外は一応認められているわけでございます。これは例外に該当するかどうかは慎重に検討しなくてはならぬと思いますが、この場合は例外の規定に該当するものと私のほうで考えたわけでございます。
  159. 黒柳明

    黒柳明君 三十年七月二十七日、法務大臣が当院の地方行政委員会で、法務省の所掌事務の性質上からいっても弊害を生ずるもの、こういうおことばが前にあって、「自今、法務省所管各庁においては地方公共団体から寄附を受けない」、こういう言明をしているわけです。その直後にこの法律が施行された、こういうわけですね。で、さらにそのとき通達が出ているんです。三十年九月八日の法務事務次官及び経理部長通達、「寄附受納の禁止について」、こういう通達の「二」に、「然しながら」云々とありまして、「前記法案附則第二項においても例外を認めている点にもかんがみ、さしあたり左のとおり経過的取扱を定めた」として、「1」、「2」、「3」、「4」と、こうある。この気仙沼のケースは、この「3」、「4」は全然問題じゃない。「1」、「2」のうちどれに当たりますか。
  160. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 一応私のほうとしては、「1」に該当しているんではないかと考えております。
  161. 黒柳明

    黒柳明君 「1」にですか。事実上寄付受納済みのケース、こういうことですか。
  162. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) そのように解釈いたしております。
  163. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、先ほどから言っているように、三十四年になぜ契約書を結んだのか。しかも、仙台地方検察庁から東北財務局長にあて、出して、契約を結んだということ、これははっきり法的に拘束力があるんじゃないですか。契約書を結んだのは三十四年なんです。事実上受納済みですか、このケースは間違いございませんか。
  164. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 事実上寄付は受納済みであるが、形式的に手続がなされていなかったと、このように理解しているわけでございます。いまの財務局等の内議等については、これは大蔵省のほうから寄付についてのいろいろな改善措置がとられた一環として、事前に必ず内議するようにという措置の通達がなされているのに基づくものでございまして、一応私のほうとしては、事実上寄付は受納済みであるが形式手続が踏まれていなかった、このように理解するものです。
  165. 黒柳明

    黒柳明君 その事実上の手続をもう一回言ってごらんなさい、どういうこととどういうことか、事実上の手続。
  166. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) それにつきましては、昭和二十八年に気仙沼のほうで検察庁の庁舎を建てるための敷地を物色していただいたわけでございますが、その際にいろいろ関係の有志等がお集まりになりまして、寄付金を集めているようでございます。その寄付金もすでに集まりまして、その寄付金によって庁舎の敷地——候補地が買収された。その寄付金を集める趣旨におきましても、これは検察庁のほうに寄付するんだという趣旨のもとに集められているということが、この促進協議会のいきさつの中から、あるいは昭和二十八年の十二月十五日に土地売買契約書ができておりますが、その中を見ますと、土地は所有者から直接国のほうに寄付をするというような条項が含まれておりますので、それらから一応私のほうで推定するものであります。
  167. 黒柳明

    黒柳明君 くどいようですけれども、そういうものと、あくまでも契約書は三十四年にかわされている。しかも、仙台地方検察庁から東北財務局に、きちんと契約書をかわしたと、その時点においてはっきり文書で通達が出ておる。しかも、二十八年の、いま言ったような云々ということは文書として残ってない。ただ客観的推察じゃないですか、それは。そういうことをもって寄付を集めたんだから、何となく自発的に寄付したんだろう。そういう地元の意思があったんだろうと。ところが、この議事録を見ると、そうじゃないのです。三十四年の時点においてすらも、いやいやながら、上から言われたんだからしょうがない、寄付せざるを得ないじゃないかと、こういうことがはっきり出ているわけですよ。そういうことと、非常にあくまでもこれはもう部長さんの主観あるいはこちらのこういういろんな資料から基づいた契約書、あるいは事実上の契約が二十八年にない、三十四年に通達が出されているというようなことから見て、しかも、この議事録にはっきり明示されているのは、意思表示として、「寄附」、そういう意思表示をされているのは三十四年、しかも、そのときの議事録には、下からのものじゃなくて上から来たもの。こういうようなものがどれだけ拘束力があるかというと、これは常識で考えても、形式上形式上と言われますけれども、形式上にきちっと手続してないことは非常に大問題じゃないですか。先ほど、事務上の手落ちがあった、こう認めたわけでしょう。事務上の手続に手落ちがあったと認めたこと自体、形式上の手落ちがあるということは、実質的に手落ちがあったことに通ずるんじゃないですか、実質上に。お金を集めたからみんなはそれを寄付するつもりだったんだろうと、そういう裏づけありますか。あるいは促進協議会が集まってそれでお金を集めたから、だから、寄付する、そういう意欲、意図があったんだろうと、そういう裏づけが何もないじゃないですか。あくまでもそれは推察じゃないですか。こういう公的な文書がはっきりしているんですよ。そういう公的な文書を度外視して、そしてあくまでも形式上の契約は成り立ってなかった、形式上の寄付行為はされてなかった、だけれども実質的に二十八年に寄付行為があったのだ、だから文句がないのだ、こういうような論法は、これは法をつくり、法を運営し取り締まる法務省の発言としては非常におかしな発言で、あくまでも法務省の見解というものは、法をつくっているんですからね、こういう法律に基づいてこうなるのじゃないかと、こういうことがあるからこういう断定ができるのじゃないか、こういうものがあってしかるべきでしょう。こちらのほうはそういう資料として出している。にもかかわらず、そちらには何もものがない。それでありながら、実質上は実質上はと言ったって、実質上があるということは形式上が伴なわなければだめなんです、今日の法治国家にあっては。そういう実質的なものが伴なわずして実質上実質上と言ったって、これはそこらの小学生が話しているような法理論に通ずるように私は思うのですけれども、どうです。
  168. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 昭和三十五年の市議会の速記録でございますから、私まだ拝見いたしておりませんが、その議会の議事録からある事実を推定するということも、これはもちろんできることでございます。問題は、結局、この気仙沼の庁舎敷地の発端から最終までの各種のいろいろな資料を検討いたしまして、一種の証拠による事実認定の問題でございますが、遺憾な点はあったと私思いますが、事実の認定といたしましては、先ほど申し上げましたように、昭和二十八年に事実上の寄付が行なわれていた、そして形式的な手続がおくれていたというように見て差しつかえないと、このように私考えるわけでございます。
  169. 黒柳明

    黒柳明君 もう一問。それは自分の主観であるか、客観的材料をそろえたものであるか、この点が非常に問題ですよ。これは形式上、実質上というふうに分けて考えるような法務省のお役人の頭というものは非常に困ると思うのです。そういう点はもう一回これはよく調べてください。明らかに、こちらの調べによると、地財法違反行為である。地財法に違反しているんです。三十年に施行された地財法に該当しないんです。これは二十八年の行為は、該当しないと言いましたけれども、該当する違反です、明らかに。地元の気仙沼でもこれは地財法違反であると、ちゃんとこういう論議が戦わされているんです。そういうところから見て、明らかにこれは地財法違反。それを客観的にどういうふうにとっていくか、こういうことがいまここで行なわれて、主観的にそれはこうあるなんという議論をここでしたってだめだ。もしそれが違反でないとするならば、もう一回それじゃ違反でない材料、客観情勢をはっきりそろえていただきたいと思います。次回に法制局呼んで、どちらがはっきりしているか、法的根拠、理屈があるか、聞いてもいただきたいと思うんですけれど、ひとつ、ここじゃあくまでも主観を交えてそうして違反である、違反でないということを論じたって始まりません。あくまでも違反である、違反でないという問題をやったら、これはたいへんな問題ですからね。これで内閣が倒れた例もあるんです。事実調べてみましたら、こういう法律のことが、一つのちっぽけな問題ですけれども、これが違反であったということでガタが来たことがあるんです。ですから、この場で、違反であったということは言えないと思いますが、これは第三者が客観的に見て、どう見たってこの寄付行為は違反です、地財法の。ですから、その事実をもう一回確めてください。こちらにも、これは金を集めたときのいろんなもの、きょうは間に合わなかったものですから——私も集めます。それによってもう一回これをはっきりして、こういうことが二回と繰り返されないようにしていただきたい、こう思うわけですが。——済みません、以上でございます。
  170. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) よろしゅうございましょうか、一つだけ。  御趣旨承知いたしましたので、先生のほうからも資料いただきたいと思うんです。なお、法制局の意見も私は聞きますが。
  171. 黒柳明

    黒柳明君 こっちはこっちで集めてるんですからね。そっちはそっちで集めなさいよ。
  172. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 岩間君。
  173. 岩間正男

    岩間正男君 時間を最初にはかっておきますけれども、昨日の予算委員会で質問しようと思っていましたら、所用があって法務大臣も自治大臣も途中で退席する、こういうお話でありましたので、きょうは一時半まで法務大臣残っていただくことを確約して私は昨日の委員会やめたわけです。その点、守っていただきたいと思います。  私、お聞きするのは盗聴器の問題ですが、この問題は単にわれわれ共産党だけの問題じゃありません。実に日本の民主主義の危機が来ておる。言論、集会、結社の自由、こういうものが一体守られるかどうかという重大な問題なんです。  私はまず法務大臣にお伺いしますが、日本共産党第十回大会の会場である世田谷の区民会館から、十月二十七日と同二十九日の二回にわたって、盗聴器装置が摘発されました。法務大臣はこの事件を一体どういうふうに考えられるか。このようなことが許されるのかどうか、許されないのか、まず、その御見解をお伺いしたいと思います。
  174. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 日共の大会の場所で秘聴器が発見されたという事実だけで、これが許されるとか、許されぬとかという問題に直結するには少し早過ぎるんじゃないかと思うんです。どういう目的で何ぴとがそういうことをしたかというようなこと等が非常に問題になると思うのでございます。また、いっそういういうものが設置されたかも問題だと思うのでございますが、一向わかってないようでございます。私らのほうにはわかっておりません。こういうことで、いまおっしゃったおことばの中で、われわれの言論の自由がこれによって非常な大きな障害を受けるというようなことがあってはならないということは、私も同感でございます。
  175. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの御答弁ですが、これを調べる前に、盗聴器を据えつけて他人のそのような集会の自由というものを侵すという行為そのものが、これは憲法違反であるかどうかという判断が法務大臣、つかぬのですか。そのこと自体を聞いておるんです。そのこと自体をむろん調査をされて、具体的にはこれはやってもらわなきゃならぬのですけれども、この段階でそういう自体がどうかということを私はお聞きしている。いかがですか、重ねてお聞きします。
  176. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 大会の会場から発見されたというだけで、それがどうだということにすぐ結びつくのは私は早計ではないかと思うのでございます。一体どういう目的でだれがやったかということが、いまあなたのおっしゃった、われわれの言論の自由に大きく影響をするかどうかという問題に強く影響する問題だと私は思うのでございます。ところが、残念なるかな、こういうことが発見されたということは承っておりまするが、それがどうであるかということは何も聞いておりません。
  177. 岩間正男

    岩間正男君 これはあとでわかりますがね、盗聴器をつけるというのは人の会話の内容を盗むという目的でやられるのだ。その行為自身が、調べなければわからぬとかなんとかいうような話でありますけれども、これはおかしいと思うのです。憲法二十一条あるいは有線電気通信法の二十一条、二十三条、二十六条、刑法二百六十条、二百六十一条、電気事業法、その他数々の法律にこれは違反した行為であるということは明白であります。  私はその次にお伺いしますが、私たちは、この問題は非常に重大だ、単に党だけの問題ではない。先ほど申しましたように、日本の民主主義の重大なこれは危機に関する問題であります。そこで、大会として特別決議をしまして代表団を構成して、第一に政府、国家公安委員会、警察庁、警視庁、公安調査庁等に厳重に抗議した。二回にわたって抗議をしているはずです。したがって、この抗議について、これは責任者において適当な措置をとったか、どのような措置をとったか、いま関係官庁これははっきりさしてほしいのです。このような事態に対するあなたたちの反応のしかた、これは民主主義の度合いをはかるために非常に重大です。そのためにお聞きしておるのでありますから、はっきり答弁していただきたい。まず総理——総理はここにおりませんから、昨日これは総理がああいうばかな答弁をしたけれども、あれは許すことができない。全くあれはごまかしの答弁です。総理はここにおりませんから、できましたら、副総理格の法務大臣からこれは答えていただいてもいい。そのほかに国家公安委員長、それから各官庁答えてもらいたい。どういうふうに思います。
  178. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) いま申し上げましたように、だれがどうしたかわからないという状態であることは事実なんであります。そういうような、そのことはどうも——私はいいかげんに聞いておったかもわかりませんが、何かあまりはっきりしなかったのですが、総理も、だれがやったかわからないということを言うた意味だと思うております。私も、その意味においてはだれがやったかわからないという状態にいまはあるということだけしか私承知いたしておりません。どこからも報告を聞いていないのでございます。報告があれば知っております。そういう状態でございます。関係者からまた……。
  179. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 盗聴器の問題につきましては、警察といたしましては、十一月の二日に、世田谷の区長から世田谷の警察署長あてに、公民館に秘密盗聴器が敷設された、あるいはまた、ほかにも設置されておるかもしれないというようなことで捜査願いが提出をせられたわけであります。それに基づきまして十一月五日に実地検分を行ないまして、近く参考人等を招致いたしまして調査をすることに相なっております。
  180. 岩間正男

    岩間正男君 その抗議文に対する、それにどう即時に反応したかその度合いをお聞きしている。われわれは二回にわたって抗議をしている、二十七日、二十九日。これに対してどういう措置をとったかということをお聞きしておるのです。その後世田谷の署長がどうしたとかということは聞いていない。警察庁どうですか。公安調査庁。
  181. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 日本共産党から私どもの役所に抗議がございました。これに対しまして、私たまたま不在でございましたので、部下の者が御面接いたしました。その節、わが庁といたしましては全然関係がないということをお答えしておるわけでございます。全くわが庁として関係のないことでございます。措置のとりようがないというような状態でございます。
  182. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) さっそく警察関係調査いたしましたけれども警察庁は全然これに関知しておりません。
  183. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは政府は調べた形跡がないですね。それから、国家公安委員長は、世田谷区長のこれは告発によってこれを捜査した、警察はやった、こういうことですね。その結果どういうことがわかったですか、どういうことが。
  184. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど公安委員長が申しましたとおり、捜査願いが出ておりますので現在調査中でございまして、その結果はわかりません。
  185. 岩間正男

    岩間正男君 警察庁にお聞きします。第一回の二十七日に摘発された盗聴器については、いままでどれだけのことを調査しましたか。
  186. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ただいま申しましたとおり区長から願いが出ておりますので、現場を調べまして参考人をこれから逐次呼んでその内容をきわめていきたい、こういうふうに考えております。
  187. 岩間正男

    岩間正男君 手ぬるいですよね。これは、私はここに写真を持ってきました、実物はこれは持ってこないけれども。昨日も予算委員会で総理に見てもらったものですけれども、これはひどいものです。これは現場から発見された盗聴器です。録音機です。マイクは、これは上のほうの座席のところに据えつけてある。これは実物の四分の一くらいの大きさです。これはあと——ここになお小さく写真にしたものがあるから、これはあとで上げますから、あなたのほうに。この経過についてここで実は詳細にやりたいと思うけれども、時間の関係から詳細やるひまがない。私は要点だけ読み上げますから。  「摘発された盗聴装置のマイクは、縦、横八ミリ、厚さ三ミリほどの小さなもので、マッチ棒ほどの金属棒の先に取りつけられていた。  このマイクを、大会会場のほぼ中央に当たる座席のコンクリート床に穴をあけ、頭だけ出して埋め込み、これから絹糸のような極細のコード約四メートルを座席下の通風口に通して階下に当たる清掃会社、大岩商会——東京都中央区銀座西一ノ五、高野ビル内——詰め所横の物置きに設置した大型テープレコーダーに接続させてあった。テープレコーダーには、タイム・スイッチが取りつけられてあり、毎日午前九時半から十二時間自動的に作動するようになっていた。また、テープのリールには「4」と書いた紙きれが張りつけられてあり、これは大会「四日」という意味と見られる。  専門家の説明では、このマイクは性能がきわめて高くその製作には高度の技術が必要とされ、このようなマイクは日本では市販されていない。また、専門技術家の鑑定によると、このマイクは、コンクリート床に穴をあけ、埋め込んでいたセメントの固まりぐあいから見て、最近埋められたものではなく、埋められてから相当の期間経過しているものと見られる。さらに、このマイクに取りつけていたコードも、絹糸のような極細の、特殊な構造を持っており、発信機を装置すれば、無線用としても使用できる。これに対して世田谷区民会館、大岩商会関係者は、これらがいずれも会館や同商会の備品でないと言明し、いつ、だれが持ち込んだかわからないと言っている。しかし、テープが一日一回取りかえられていた形跡からいって、この詰め所にスパイ機関の者が出入りしていたことは間違いないと見られている。」  こういう、いままでのわれわれの調査によるとはっきりしているのです、事実は。こういう事態。  次に第二回目の問題については、あなたたちやっぱり調べていないのですか、第二回の二十九日のときは。これについて調べておりますか、調べておりませんか。どうですか。
  188. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) なお、その関係を、逐次参考人を呼んで、その現物等を見て調査をいたしたいと考えております。
  189. 岩間正男

    岩間正男君 これは第二回目のやつについても内容を一回読みましょう、時間の関係から。  「第二回目に摘発された盗聴装置は、大会会場演壇下、代議員席に向かって左側、発言者の受付付近にしかけられていた。盗職器は、搬送電話方式で、いわば無線と有線を結合したようなもので、マイクで集音したものを特定の波長の電波に変調し、それを有線で流す方法をとっていた。これなら、発信電波を探知されることも少なく、一般の電話線に乗せ、それをどこかで同じ波長の受信機で取り、音に再生することができる。このマイクの大きさは、直径二・五センチ、高さ一・五センチ、発信機は電波を含めて縦一四センチ、横五四センチ、厚さ四センチの大きさで、いずれも演壇下に隠されていた。私も実地に現場を検証したが、世田谷区民会館は、客席、排気道、地下道の三層からなっている。排気道は、地下の機械室にある鉄の戸の幅約三十センチ、縦約五十センチの小さな穴を、体をかがめて通り抜け、さらに、はしごを伝って約三メートル上まで登らなければならない。登り口付近は、人が立って歩ける高さであるが、すぐ四つんばいにならないと通れない斜面道となり、さらに進むと、また人が立って仕事ができる地点に出る。ここからさらに奥に入ると、道はもう四つんばいでは通れず、はいつくばるような姿勢で右に左に何回か折れて行くと、光がさし込み、かすかに明るくなってくる。ここが盗聴現場である。演壇に向かって右手の換気口の裏側、換気レンジの右上端に幅二・五センチ、高さ一・五センチのマイクが取りつけてあった。レンジを固定するナットを一本取りはずし、その穴にマイクの集音口をぴったり付着させ、外側を特殊セメントですっかり塗りつぶし、外側では会館の建造物の一部としか思えない仕組みの中に隠されていた。マイクから出たコードをたどると、奥に縦一四センチ、横五四センチ、厚さ四センチの木箱があり、この中に搬送電話方式盗聴器の中枢に当たる発信器が密閉されていた。この小箱からは、さらに一本のコードが伸び、換気レンジから約二メートルの位置にあった電話線につながれていた。発見した技術者は、「この方式の盗聴は、マイクで集めた音を特定の波長に変調し、それを電話線など有線で外に流すわけです。電電公社の承諾済みなら電電公社の責任は重大ですし、無断ならもちろん違法です」、と語っています。また、この現場を調査した人は、「こんなところを知っている人は、会館の設計、建設に当たった人か、会館の管理、運営に当たっている人しかいない。これだけの工事は、一民間人や、だれも知らないうちにやれるわけがないことははっきりしている」ということを語っているのです。」それで、どうです。大体このような大じかけの仕組みのものですよ。昨日不謹慎にも佐藤総理は、これは内部にいるかもしらぬとかなんとかおかしな言い方をしたけれども、技術的にこれはわれわれは追及しているのです、事は重大な問題だから。この技術の問題点をたくさんあげることはできます。しかし、まあ要約する、時間の関係から。  第一に、個人や単なる民間人ではとても作成できるものではないということ。極細の絹糸のような——超小型マイクは市販されておらず、特定な電線メーカー、それからマイクメーカーに深いつながりがあるか、利用できる立場にある者に限られるというのが第一点。  第二点は、装置そのものが大がかりである。会館の設計をよく知っており、配線図を理解しており、しかも、電気に相当明るい技術者、設計者、さらには電話の技術者、工事者が関係していると思う。単独犯行とはとても思われない。  第三に、証拠となるべき製造ナンバーなどのプレート類は取りはずしてあった。たとえばテープ・水銀電池は故意に製造ナンバーが削り落とされていた。  この三つの点から見ましても、いかにでたらめな昨日の首相の答弁であったかということを、私はほんとうにここに再出席を要求して糾弾したいくらいな問題であります。そこで、どうです。私は以上のような資料を時間の関係から概略申し上げたのでありますが、このような大がかりな組織的な盗聴器をやることは、こういう点から考えて、いままでしばしば摘発された盗聴器において言えば、いままでの警視庁、警察関係、公安調査関係、こういうものから考えて、警察庁や公安調査庁のしわざであると私は思うけれども、あなたたちひた隠しにしているが、どうなんですか。この点はっきり言い切れないのか、この点を伺いたい。公安調査庁長官警察庁どうですか。
  190. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) ただいま御指摘のとおりに、昭和三十二年ごろであったと聞いておりますが、公安調査庁の広島公安調査局管内におきまして、秘聴器を使用したという事案が発生いたしております。これ一回だけでございます。この事案につきましては、御承知のとおり、当時広島地方裁判所に準起訴手続の請求がなされましたが、裁判所におかれていろいろと審理した結果、違法ではないという結論に到達されて、請求を棄却する決定がなされているわけでございます。しかし、こういう決定にかかわらず、わが庁といたしましては、その後は調査の方法として盗聴器を使用させておりませんので、この点をぜひ御了承願いたいと考えておるわけでございます。
  191. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私のほう警察庁としては、盗聴器等の使用はさせておりません。
  192. 岩間正男

    岩間正男君 あなたたちはそういうことを白々とぬけぬけと言っているが、しかし、そんなことは通りますか。世の中に通るか。私はこのように資料を持ってきておる、資料を。これは配ってください。わが党がいままで摘発したおもなものだけで二十三件ありますよ。昭和二十六年以後です。二十三件。昭和二十六年以後です。詳細にこれに出ております。これはおもなものだけで、こんなものは九牛の一毛です。しかも、われわれはこれを追及していって、その中で犯人が明らかだと、こういう者が何人いるかというと、警察関係では四件ある。犯人の名前までちゃんとなにしているから。それから、公安調査関係では四件ある。あなたたちは広島のが一件だと言って、三十二年以降には使っていないと言うが、こういう答弁がぬけぬけとされることは、非常にこれは重大な問題だと思う。ほんとうにそのとおりの方針なんですか。そうしたら、下のほうで違反をしておったということには、厳重に処罰すべきだと思うが、どうか。公安調査庁長官どうですか。
  193. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 私ども調査いたしましたところ、ただいま御答弁申し上げたとおりでございます。ただいま岩間委員から、公安調査庁はそのほかにも数件あるというような資料の御提出がありましたので、この点につきましては、私ども調査いたしたいと考えております。
  194. 岩間正男

    岩間正男君 処罰するかどうか。違反しているのだから、これは。
  195. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 先ほども申し上げたとおり、秘聴器の使用が違法であるかどうかという点につきましては、具体的な事案に即して事実関係を明らかにし、これを検討しなければならないと考えておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、昭和三十二年の事件以来、調査の方法として、秘聴器は使用させておりません。さようにまた指導いたして監督している次第でございますが、ただいままだ資料は読んではございませんが、岩間委員提出の資料につきまして、詳細、慎重に調査して、その措置をきめたいと考えております。
  196. 岩間正男

    岩間正男君 あなたは、方針として、三十二年以後使っていないと言っているでしょう。これに違反した者は明らかに違反者だ、綱紀を紊乱したんだ、これを処罰するということをはっきり言うべきでしょう。言えないならおかしい。そう言いなさい。それ以外にないじゃないですか。
  197. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) お申し出の事項につきましては、私どもといたしましては、独自の立場から調査をいたしましてその内容を明らかにした上、措置をきめたいと考えております。
  198. 岩間正男

    岩間正男君 警察庁、公安調査庁に言っておきましょう。  国家公安委員長、これについて責任ある答弁を求めたい。
  199. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 私もただいま岩間委員の配付された表を初めて一読しただけでありまして、従来の経緯等も承知をしておらぬ次第でありますが、先ほど課長からお答え申し上げましたとおり、現在、警察といたしましては盗聴器の使用をいたしておりませんので、具体的にどういう処理とかというようなことについては、まだ考えておりません。
  200. 岩間正男

    岩間正男君 考えていないだなんて、あなたははっきりしないじゃないですか。使用させない方針だと言っている。ところが、違反した事実はかくのごとくあげられているのですね。そうしたら、これは明らかに方針違反だということですから、これは処罰すると言うのが当然じゃないですか。そうおっしゃいよ。
  201. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) いまこの事案と言われるものを拝見しただけでありまして、一体この内容がどういうふうな内容であるかというようなことにつきましては、検討をいたしておりませんので、お答えをいたしかねる次第であります。
  202. 岩間正男

    岩間正男君 内容のいかんを問わず、盗聴器を使うということが憲法第二十一条にまっこうから違反する問題でしょう。最大の問題ですよ、これは。憲法違反かどうかということなんです。これについて一国の国務大臣がはっきりした言明ができないというのはおかしいじゃないですか。私は、こういう点で、これは明確にすべきだし、法務大臣にお伺いいたします。  法務大臣は、当然このような事犯例があることは明らかに日本国憲法に違反している。かくのごとき事実は、これは九牛の一毛にすぎない。当然、これについて検察権を発動してこの事態を検討しなければならない。そして、これについて追及しなければならない。それでなければ、当然、言論、結社の自由というものは守れない、こう思うのですが、いかがでしょう。
  203. 津田実

    説明員津田実君) 検察権の問題のお尋ねがございましたのでお答え申し上げるわけですが、御承知のとおり、これは……
  204. 岩間正男

    岩間正男君 法務大臣、法務大臣に聞いているのです。
  205. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) まず刑事局長から答弁申し上げて、私はあとで申し上げます。そのあとで答弁申し上げます。
  206. 津田実

    説明員津田実君) 検察権に関する問題として、もちろんこれが犯罪となるものにつきましては、端緒を得れば当然捜査をすべきものというふうに考えております。ただ、御承知のとおり、この秘聴器の問題に関しまして判例の示すところは、秘聴器そのものがすべての場合において違法になるというふうな判断ではありません。したがって、その判断のもとになされた場合において、その行為自体がどうかという批判の問題は別といたしましても、法律的にこれをどうこうするということはできない場合もあることを御承知いただきたいと思うのであります。
  207. 岩間正男

    岩間正男君 当然、これは憲法違反の事実です。これは最大でしょう。その事態を検察庁としてもはっきり法の示すところによってこれを追及するということは当然でしょう。非常に不十分、あいまいだと思うのですが、法務大臣いかがですか。
  208. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) さっき私が答弁いたしましたのをいま刑事局長が裏書きしたようなものでございまして、同じようなことを申しただけでございます。  ただ、盗聴器が備えつけられたという、そのものだけで憲法違反と片づけてしまう、われわれの自由が、自由な言論が妨害されるときめつけてしまうわけにはいかない。やはり一つ一つの場合をつかまえて、どういう状態でどうなっているのかということによって判断しなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。それで、これが広くわれわれの言論の自由を害するということであるならば、それは罰せられるべきもので、そうでない場合はそうでないということになるだろうと思います。
  209. 岩間正男

    岩間正男君 法務大臣の御答弁としてははなはだ不満です。盗聴器というのは人の話を盗むことを目的としているもので、この盗む行為がよく調べて見なければわからないなどと言われておって、どうして憲法二十一条を守れるかという疑問が、これは深く国民の間に残りますよ、いまの答弁では。そういうことですから、たとえば昨年の三月三日の宮本書記長宅から普通の電話線の引き込み線に盗聴器が据えつけられた、この問題をわれわれは当委員会でも取り上げ、追及をした。ところが、いまだにこの結果については明らかになっていないじゃないですか。これはどうなんです。警視庁にこの前行ったら、警視庁の福田勝一公安第一課長は、これは日本製の秘聴器である。その後、東京地検に送検しているということを言っているのですが、問題としてこれを明らかにしなかったのは、これは盗聴器であったと鑑定したのかどうかということなんです。これは昨年予算委員会で三回やっている。法務委員会で二回やっている。決算委員会で一回やっている。これだけ追及された問題、この問題についてこれはどうなんですか。国家公安委員長、いかがですか、その結論を明確にしてください。
  210. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) ただいまお話しになりました宮本書記長の問題につきましては、昭和四十年三月四日告発以来、警察といたしましてはこれが徹底的な調査を行なったのでございますが、容疑人物を発見することができなかったわけでありまして、そういう段階で一応捜査を打ち切って、これを有線電気通信法第二十一条違反という問題で、被疑者不明という形で東京地検にこの問題を送付いたした次第であります。
  211. 岩間正男

    岩間正男君 盗聴器であったのですか、どうなんですか。その結論はどうですか。送検した限りは犯罪を認めたわけでしょう。犯人はわからない。しかし、盗聴器であるということは明らかでしょう。どうです。
  212. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) ただいま法務省側のほうからの御答弁を承っておって、そのとおりだと思うわけでありますが、盗聴器自体が、すべての場合にそのもの自体が一体犯罪であるのかどうかというようなことにつきましては疑点もあるようでありますし、警察といたしましては、有線電気通信法第二十一条違反としてその事件を送付したわけでございます。
  213. 岩間正男

    岩間正男君 盗聴器であったかどうかという結論が、科学警察研究所に出して何日もかかっているわけです。それで、私は何日も追及した。その結論だけでも出ないのですか、どうなんです。
  214. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 鑑定をいたしました。鑑定は東大に委嘱をしてやっておりますが、鑑定人の氏名、それから鑑定の結果、これは公表することは、まだ捜査過程でありますし、その関係者に迷惑をかけることにもなりますので、公表はできませんが、鑑定をいたしまして地検に送付をしました。
  215. 岩間正男

    岩間正男君 そういう歯に衣を着せた言い方で、すでにじんぜん一年半になる。それが許されますか。なぜ出さないのか。はっきり出すべきである。私はこの前、あなたたち答弁できなければ私は盗聴器だと断定するがよろしいか。答弁できなければそう断定すると決算委員会でも言ったところが、黙っていた。だから、これは断定する。きょうも断定してもしょうがない。そうでないという反証は一つもないということだ。犯人を捜査したのですか。これは全くだめなんだ。こういうことで、どうして一体機密の保持、言論の自由、集会の自由が守れますか。私は、こういうでたらめなやり方についてはこれは問題にならないと思う。  私は次にお聞きしたい。星川進という人がいます。この人は当時世田谷区民会館に泊まった者です。泊まっていたその日に、十月二十七日、私も会っている。同会館の清掃を請け負っている大岩商会につとめている。同会館の職員でもあります。つまり、この人は録音テープを取りかえることができる条件のもとにあった人です。これを調べましたか、警察に伺いたい。
  216. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど申し上げましたように、これから参考人を呼んでいろいろと事情を聴取したいと考えておるので、まだやっておりません。
  217. 岩間正男

    岩間正男君 会館の関係者の中に警察関係者またはその前歴者がいないか、これを調べましたか。
  218. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) まだ調べておりません。
  219. 岩間正男

    岩間正男君 次のことを私は調査要求して、当委員会に、さらに私に報告を要求します。  警察は第一に、よく書いておいてください。一、昭和二十七年から二十八年の間、千代田区代官町二番地に警視庁警察学校と警視庁第一機動隊があるのですが、これがあったかどうか。第二、昭和三十一年当時、千代田区神田小川町三の二十八の六番地に警視庁警察寮、これがあったかどうか。これは三十九年までは警視庁警察寮があったかというのです。現在はこれは中央大学の学生会館になっているところ。これを調査してもらいたい。第三に、警察の建物の中に警察の人間以外の者が住むことができるのかどうか。これはいまでも答えられるでしょう。第四に、そこに住んでいた人物で現在大岩商会に関係している人物がいないかどうか。この四点について至急調査して、第三点については現在これは答えられると思うのですが、どうですか。これは警察の建物の中に警察の人間外の人が住居することができるか、これはどうですか。それは答弁できますか。答弁できなければ、時間の関係もあるから、あとで、それでは委員長からもはっきり確認しておいてください。  それでは、われわれの調査によると、大岩商会の主任、前記星川進という人物は昭和二十七、八年ごろ警視庁警察学校と警視庁第一機動隊の所在する千代田区代官町二に住んでいた。昭和三十一年には千代田区神田小川町三の二十八の六の警察寮に住んでいた。大岩商会にはこのような警察に密接な関係のある人物がいる。しかも、この星川はまことに不可解な人物だ。彼は早大仏文科卒と経歴を言っておりますけれども、実際は、われわれの調査によると、国学院大学を四年で中退している。これはまさに経歴詐称であります。これははっきりしていますが、星川が「週刊大衆」発行社の双葉社というところに入社した当時に出した調査によりますと、昭和二十八年三月国学院大学国語科卒、それから二十八年国士館高等学校奉職、それから右退職、自由国民社何々というので、これは事実と違反する。そういうことをやっています。それから、盗聴器が摘発された以後の行動についても、まことに不可解な点があるのであります。これは私も当日、二十七日の早朝に会っている、この人物に。これについては、これはどのような調査警察庁は進めましたか、お伺いしたいと思います。
  220. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) いまのところ、先ほど申しましたとおり、まだ参考人を呼び出すことをしておりませんので、これから調査いたします。
  221. 岩間正男

    岩間正男君 次にお聞きしたいのですが、先ほど警察も、公安調査庁が盗聴器を使ってそういうスパイ行為をやっているということを言ったわけです。しかし、あなたたち自身がやらなくたって、第三者に、たとえばスパイ会社のようなものをつくらせるという新しい体制ができ上がっていないですか。旧警察関係の人を入れ、それでもって、たとえば請け負わせる。何々大会の全部を録音すれば何百万円になるというような関係で、そういう新しい手が——第三者ですから、あなたたちはやっていないと言って涼しい顔でうそぶいているかもしれない。しかし、実際はどんどんそういう背後からのスパイをやっていないか。特に私はこういう関係から、この点についてやっているかやっていないか、まずお聞きしましょう。公安調査庁長官、それから国家公安委員長、二人にお聞きします。
  222. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) お尋ねのようなことは、いたしておりません。
  223. 岩間正男

    岩間正男君 国家公安委員長、どうです。
  224. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) お尋ねのようなことは、私どももいたしておりません。
  225. 岩間正男

    岩間正男君 お聞きします。公安調査庁の調査費、これはどのくらいですか。それから調査員の数、これはどういうことになっていましょう。
  226. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 本年度の予算から申し上げますと、調査活動費は八億円であります。公安調査官は、大体ラウンド・ナンバーで申し上げますと千七百名でございます。
  227. 岩間正男

    岩間正男君 警察庁に聞きます。調査費。
  228. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) きょうはその資料を持ってきておりませんので、お答えできません。
  229. 岩間正男

    岩間正男君 八億円というこれは、年々ふえていっているわけですね。三十五年度あたりから考えると、五〇%くらいふやしているわけだが、千七百名で割ってごらんなさい。一人平均何ぼになるか。膨大なものになる。しかもピンからキリまである。現にそういうことをやっているでしょう。案件によっては一件五百円、ものによっては十万円、こういうものが調査のお礼として渡されておる。そうして、これに対する伝票は、私は決算委員会でもいままで明らかにしたが、今度も明らかにしたいと思うが、全くこれを見込み、もう伝票そのものを一つ一つ書いてない。項目を書いてないのです。概略的なものであるのです。こんなものは調査の対象とはならない。御承知のように、買っておりました芸者の花代、あるいはまた小うたを習うその費用まで国民の血税によってまかなわれておるという事態がはっきりしておる。だからどうです。今度の共産党の大会、この資料は何百万で買うのだ、そういう事態が行なわれていないという保証はないのじゃないか。これはどうなんです。どう考えますか。法務大臣、公安調査庁の責任者としてお伺いします。このような国民の血税によって調査費が乱用されているこういう事態について、一体どういう見解を持たれますか、お伺いしたいと思います。
  230. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 公安調査庁の費用は、国会の御承認を得て通過したものであります。そうして、これを使うには厳正な態度で使われておるのでございます。そういうふうないいかげんなことに使われるということは考えておりません。
  231. 岩間正男

    岩間正男君 大臣の時間の関係もありますし、私はこれは具体的にいままで何ぼもやりました。見込みで相当な金を取る。私自身がそのスパイにあったのだ。私の係のスパイがあったのです。公安調査庁、知らないとは言わせません。はっきりしておるのです。このことが全く、私の母親が病気だとか、それに見舞い金をやるとかなんとかいうことで金をもらってくる。ばく大な旅費までもらっていって実際は自分のふところに入れる。そうして、これは帰ってきてから報告をする。こういうような具体的な例というものがたくさんこれはいままであるのですからね。そういうばく大な国民の血税が使われているということは、絶対にこれは許すことはできないです。ですから、法務大臣は御存じないのです。あなたは部下がかわいいから、足元でまさかこういうことが起こっているとは思わない。ところが、全く鬼っ子なんです。それが公安調査庁というものです。その背景にはやはりアメリカとのつながりがあるのだ。こういう事態を考えますときに、日本の暗黒、私は非常に重大な問題だと思う。いま日本の黒い霧の問題が非常に大騒ぎになっている。しかし、黒い霧の問題はなぜ起こったか、徹底的に黒い霧を追及する手はとっていない。反対に、この黒い霧と戦うところの民主勢力を弾圧するという体制をとっているのが今日のやり方じゃないですか。そうして、このような盗聴器をしかけ、そうして言論の自由と憲法違反のやり方をやっている。これが今日の暗黒政治じゃないですか。まさに黒い霧と黒い手、この二つが今日の姿だ。あなたは法務大臣として、こういう事態に対して、この佐藤自民党内閣のとっている、しかも歴代の内閣もそうだし、最近ことにひどいやり方に対して厳重な反省をすべきだし、国民は絶対こういうことを許しません。どうなんです。これに対してどう一体対処するのか。それから、具体的にこのような事件が起こっているのですから、この問題も真剣に取り上げて、もしあなたたちがほんとうに政治を粛正するのだと言ったら、黒い霧だけの問題じゃない。黒い手の問題もこれは粛正しなければならぬと思うのです。この問題、さきにも申し上げましたように、日本共産党だけの問題じゃありません。日本の民主主義は守られるかどうかという問題。だから、この問題は非常に世論が大きく起こってきている。現にどうです。松本清張氏をはじめとする七人の文化人、学者、法律家、これが抗議の署名を呼びかけています。日本の民主主義は危殆に瀕している。これを守るためにこのようなことは絶対許すことができないという、こういう行動がすでに起こっている。こういう現実を考えてみなさい。そうして、しかも、なぜこういう背景があるか。これはまさに安保体制下の日本の姿だ。半植民地体制の暗黒の姿の政治の正体です、これは。そうしてまた、ベトナム戦争協力における日本の総力戦体制、非常事態体制をつくっていくための一環として、これは全く日米のスパイ活動というものが広範に行なわれている日本の現実を考えたら、重大な問題です。あなたはお急ぎになって、これから園遊会にもおいでになるだろうと思います。私はその時間を束縛しようとは思っていませんけれども、退席をされる前に、これに対するはっきりした見解を述べて退席してほしいと私は思う、石井さん。
  232. 石井光次郎

    ○国務大臣石井光次郎君) 御高説は御高説といたしまして公安庁に関する問題で、いかにもこの問題が公安庁が責任があるごとき口吻のおことばでございます。それはないということを公安庁長官、言明いたしておるところでございますが、私はこれを信じております。また、公安庁の金がたくさんあってそうしてそれが乱費されておると。これも大事な金でございますことは私ども百も承知いたしております。したがいまして、これの使用方につきまして、また、調査員その他の動きにつきまして非常に慎重に、人の御迷惑にならないように、また、金がめちゃくちゃなことに使われないようにということは、かねて私ども訓示もいたし、また、長官もその方針でみんなを指導しておると、私、固く信じております。今後ともそのつもりでやるつもりでございます。
  233. 岩間正男

    岩間正男君 先ほど申しましたように、あなたの部下を信じられるのはあなたの自由でありますけれども、それとは違った現実が起こっているのでありますから、大きくやはり目をむいて足元を見てもらいたい。  国家公安委員長になおついでにお伺いします。あなたは自治大臣でもありますから、この公共の用に供する区民会館のようなところに、多くいままでは民主団体がこれを使っているのですね。したがって、単に世田谷の区民会館だけに盗聴器があるとは考えられない。しかも、世田谷の区民会館はどういう人が使われたか。われわれは六月以降の、これもみなあなたたちに資料として上げましょう。だれがどう使ったかということを調べたものがあります。これによりますと、公明党の諸君が五回使っています。民主青年同盟が二日間使っている。わらび座の公演が一回、共産党の会議が一回、演説会が一回、日本共産党の大会が六日間。こういうふうに考えますと、単に区民会館における言論、結社、集会の自由というものをほんとうに守るという、憲法を守るこの戦いというものに対して、今度の事件を契機として、当然これに対して何か通牒かなにかを発し、また、実際にこの事態をはっきりと検査、再検討をする、これが絶対必要だと私は考えるのでありますが、自治大臣として、いまのように、憲法二十一条を真に守り抜く、その決意を伺いたい、いかがです、これは。先ほどの答弁とあわせてやっていただきたい。
  234. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 公共機関に、岩間委員のおっしゃるようないわゆる盗聴器が取りつけられておるというようなそういう事態は、私ども好ましいと考えるものではございません。しかしながら、ただいま通牒を出すとか、いろいろなことを言っておられたわけでございまするが、これは公の機関というものは非常に多いわけでありまして、直ちにそういった設備があるのだという前提のもとに、非常に特殊なものに対して通牒を出したり、あるいは個別的に全部検査をするというようなことはいかがかと考える次第であります。前段の問題につきましては、考え方の基本におきまして、相当の前提の食い違いもあるようにも考えますし、しかしながら、主として公安調査庁に対する御意見では、経費を合理的に使うというような問題でございましたので、そういったような点につきましては、警察としては心得てやってまいりたいと思います。
  235. 岩間正男

    岩間正男君 これもはなはだ不十分ですね。こういう答弁で、実際何に使われているかといったって、使われるおそれのあるそういうものが現在起こっているのですから、この事態にかんがみまして、全面的にこれを調査するということが必要だと思う。そういう万全の措置をとるのが当然でしょう。当然なことを言えないのですか、重ねて伺いたい。それからもう一つは、警察の費用は三十億ですね、調査費は。あなたたちこういう資料を持ってきていない。こういうような調査は公安の関係は何人いる、わかりませんか。ここでわからなければ、資料として出してもらいたい。調査費と、公安の関係、これもばく大なものです。このほかに内閣調査室だとか、そういう問題を合わせると、ばく大な機密費が動いているというのが、実は黒い手が黒い霧とともにある日本の姿なんだ。私は以上のような問題について、刑事局長、どうですか、あなたたち。非常にさっきの答弁不十分だと思うのですが、疑わしいこういう事態について、これはまだ告発の段階までわれわれはいっていませんけれども、こういう事態について、もっと検察として活動する必要があるのじゃないですか。憲法を守る、憲法の番人としての任務がほんとうに果たされるためには必要だと思うのですが、いかがです。
  236. 津田実

    説明員津田実君) 私ども関係は、検察関係といたしましては、犯罪事件があれば、当然必要な捜査はやるつもりであることはもちろんであります。したがいまして、本件につきましては、また、先ほど警察から御答弁かありましたような状態にあるわけであり、検察庁に告訴、告発は全然受けておりませんが、もし事件として取り扱うものであれば、当然厳正な捜査を行なって結論を出すつもりでございます。
  237. 岩間正男

    岩間正男君 警察の資料の問題。
  238. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) それの資料、私、先ほど申し上げましたように、ちょっと資料持っておりませんので、お答えできません。
  239. 岩間正男

    岩間正男君 資料を提出してもらいたい。委員長いかがですか。いまの問題を確認しておいていただきたい。私の質問を終わります。警察と、調査庁の調査費。いいですか。その点、確認しておいてください、速記録に載せて。
  240. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  241. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 速記起こして。  それではあとで。
  242. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) よく調べて報告したいと思います。
  243. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十九分散会