○柴谷要君 私は、
日本社会党を代表して、
アジア開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律案並びに
外国為替資金特別会計法の一部を改正する
法律案に対し、反対するものであります。
アジア開発銀行への
加盟を通じてわが国が寄与しようとしているアジア極東地域内低
開発国の経済開発の促進ということでありますが、そもそも、わが国がアジアの一員として、アジア諸国とのきずなを深め、開発途上にある国々に経済協力の手を差し伸べ、ともに繁栄と平和の喜びを分かち合うことは、まことに望ましいことであり、わが党としてもいささかも異論をはさむものではないのであります。
しかしながら、わが国情を顧みますと、アジアにおける先進国とはいえ、その飛躍的な経済成長の陰には、貧弱な
社会保障制度のもとに生活の苦汁をかみしめる身寄りなき老人、身体障害者、母子家庭等があります。また、漫性的な資金不足にあえぎ、倒産常ならない数多くの中小零細企業が存在するのであります。それだけに、海外経済協力に臨む態度は、あくまでも厳粛かつ慎重でなければならないと思うのであります。万一その方途を誤り、国民の血税になる貴重な
財政資金を真に生かすことができないような結果を招来するならば、せっかくの英慮も百害あって一利なしとなるのであります。
アジア開発銀行はあくまでも金融
機関であって、しかもアジア的であるという基本的性格を持つものといわれております。また、
関係加盟国間の政治的性格に影響されない純粋に経済ベースの活動を行なうものと説明されておりますが、その性格がゆがめられ、その運営を誤るならば、これは真にアジアの繁栄に役立たないのみか、かえって
民生の安定を阻害する要因となるおそれなしとしないのでありまして、
アジア開発銀行の指向する域内経済の調和ある成長や貿易の拡大は、砂上の楼閣に帰するのであります。
そこで、域外先進国の加わるこの種
機関の創設に際し、最も重要なことは、アジアの自主性の確立であります。
委員会における審議を通じましても、この点必ずしも明確ではなく、これが真にアジア諸国の発想に基づくアジア人のための
機関として十分にその機能を発揮するものであるか、多分に疑念が残るのでありまして、自主性のないところに性格の純粋性や運営の適正を期待することは、木によって魚を求めるほど困難なことであります。
また、
アジア開発銀行が、ここ数年来の懸案であったとはいえ、そのよって立つ
協定は雑然としていて体系を欠き、また、審議を重ねても一向にその業務の構想に具体性が見出せないのであります。大口資本参加国として、はたまたアジアにおける先進国として重要な役割りの課せられるわが国として、これが創設、
加盟に対してどれだけ慎重な態度で臨んだか、はなはだ心もとないのであります。
わが党の低
開発国援助に寄せる期待が大きいだけに、この
アジア開発銀行への参加には大きな不安をぬぐい去ることができないのであります。
これが
アジア開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律案に反対する
理由であります。
次に、
外国為替資金特別会計法の一部を改正する
法律案についてでありますが、そもそも、
外国為替資金特別会計において、
外国為替資金を構成する原資のうち一般会計からの繰り入れになるいわゆるインベントリー・ファイナンスは、過去において所要資金の調達を一般会計の租税収入に求めたものであり、超均衡
財政下におけるインフレ抑制の役割りを果たしてきたものであります。いまこの資金を取りくずし、再び一般会計に戻入して使用しようとすることは、本格的な公債政策の登場によってインフレの様相を濃くしている現下のわが国
財政、経済にとっては、決して好もしい
措置とは考えられないのであります。すなわち、将来、
外国為替資金特別会計の資金繰りの上、円資金の調達が必要となった場合、その資金は
外国為替資金証券の発行という借り入れ政策に求めねばならず、これがインフレ助長の要因となっても決してその歯どめとしての役割りを果たすものではないのであります。
また、
外国為替資金特別会計の
昭和四十一年度予定損益計算書によると、当年度の借り入れ金利子と運用収入は逆転し、利益金の激減が見られるのであります。減益には種々の要因のからみ合いがあるとはいえ、そこに無利息資金であるインベントリー・ファイナンス取りくずしの影響を看過することはできないのであります。対外取引の不確定要因を一応考慮に入れて考えても、いやしくも会計運営上その収支採算のブレーキになるような方策はとうてい納得できないのであります。
一見、
財政資金の効率使用として運用の妙を得ているかに見えるこの
措置が、
外国為替資金特別会計の将来に問題をはらむのみか、むしろその健全な運営にそごを来たす可能性の芽を植えつけるがごときことは、まことに場当たり的であり、安易な
措置と申さねばなりません。これが本改正法案に反対する
理由であります。
以上の
理由によりまして、わが党はこれら二法案に反対するものであります。以上をもって討論を終わります。(拍手)