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1966-07-19 第52回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月十九日(火曜日〕    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 青柳 秀夫君                 日高 広為君                 藤田 正明君                 柴谷  要君                 中尾 辰義君     委 員                 伊藤 五郎君                 植木 光教君                 大竹平八郎君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 近藤英一郎君                 西郷吉之助君                 田村 賢作君                 任田 新治君                 西田 信一君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 戸田 菊雄君                 成瀬 幡治君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        外務政務次官   正示啓次郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長事務代理   滝川 正久君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局次        長        岩尾  一君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        外務省経済協力        局外務参事官   吉野 文六君     —————————————   本日の会議に付した案件外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(第五十一回国会内閣提出衆議院送付)  (継続案件) ○アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案(第五十一回国会内閣提出衆議院送付)  (継続案件)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の以上両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務大臣、私はすわったままで質問させていただきまずから、大臣もどうぞすわったままで御答弁ください。  アジア開発銀行アメリカベトナム侵略をはじめとするアジア侵略政策と密接不可分に結びついておると私たちは考えております。このことは、わが党が本委員会でも、またその他のいろんな機会に、具体的事実をあげまして証明してまいりましたところだと思います。したがって、いま全世界の最大の焦点であるベトナム問題、特にアメリカハノイハイフォン爆撃に見られる侵略戦争拡大及びこれについての日本政府立場についてどうしても明らかにしておかなければならないので、まずこの問題から以下数点について外務大臣質問をいたしたいと思います。  第一は、六月の二十九日のアメリカによるハノイハイフォン爆撃は、アメリカがこの侵略戦争をさらに大規模な拡大に踏み切ったことを示すきわめて重大な事態であると考えます。これに対しまして、政府は、さきの参議院決算委員会でわが党の岩間議員質問に答えたように、不当にもこのアメリカ軍事行動を直ちに支持する態度を明らかにいたしました。このことは、日本政府は、今後ともアメリカベトナム侵略戦争がさらに拡大され、どんなに無制限に広められても、あくまでもアメリカに追従し、どこまでもこの侵略戦争に加担していくことを明らかにしたものと考えます。これを外務大臣は認められるかどうか、まず伺いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ハノイハイフォン爆撃とおっしゃいましたけれども、これはハノイハイフォン目標にした攻撃ではなくて、ハノイハイフォン近郊石油施設目標にしたものだ。この石油施設は北からの浸透を容易にするものでありまして、最近トラックによる輸送が相当ひんぱんになっておるということにかんがみ、その根源をつくという意味でございまして、決して無差別爆撃であるとかあるいは都市破壊であるとか、そういったようなものではない。あくまで北からの侵透、つまり南ベトナムにおける破壊行動を支援する北の行動というものを、これを排除するという従来からの軍事行動目標一つも変わっていないというわけで、新しい性格のものではない。したがって、これは無限にベトナム戦争拡大するというような徴候はどこにも見られない。すなわち、南ベトナム独立と自由というものをあくまで防衛するという性質のものである。したがって、日本は、今回の爆撃というのを特に従来と変わったものであるという趣旨において、これに対して特別の抗議を申し入れるという意向はございません。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 私がいま伺っておるのは、従来よりも爆撃範囲が広まり拡大しておる。この状態でいくならば、将来どういうところまで広まってしまうかわからない。そうして無差別爆撃をしないと言っていますけれども、従来ともいろいろな、病院が爆撃されたり、いろいろした例がこれまでもたくさんあるわけです。また、今度の爆撃におきましても、一般市民も被害を受けておるということも明らかです。でありますから、あなたのいまの答弁は、私の質問に十分答えておると私は考えません。  そこで、具体的に聞きますが、アメリカベトナム侵略戦線を、今後さらにラオスカンボジア、また中国領土にまで本格的に拡大した場合にも、日本政府はなおこれを支持し、加担していくのかどうかという点を伺っておきたいと思います。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまで北からの南に対する浸透を防ぐという、いわば自衛権範囲を逸脱するものではないのでありまして、今後もこの範囲を決して越えないと私どもは確信しております。したがって、ただいまの、ラオスカンボジア、あるいは中共まで戦線拡大するというようなことはあり得ない。かような仮定の御質問にはお答えするわけにはいきません。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたたちはこれまでも、アメリカ戦線拡大するというようなことは考えられない、考えられないと、同じ答弁を繰り返してこられた。ところが、あなたたちの考えはともかく、アメリカはどんどんと戦線拡大して、そうして今度のハノイハイフォン爆撃というような、そういうところまで発展してきておるわけです。これはあなたがいかに否定しても、戦線拡大ということは世界がみな認めておることであり、そうして世界じゅうが大きな関心を示しておることだと思うのです。ただ日本政府のみが安閑として、アメリカは決して戦線拡大いたしません、そういう安易な気持ちでおるということは、これはとうてい許されないことだと私は考えるのです。  政府は従来、これは総理答弁でありますが、アジア全面戦争の危険はないと思う、それはジョンソン大統領中国についての発言も柔軟なようだし、中国側の言っていることからも判断して危険はない、こういうふうに繰り返してこられました。ところが、一昨日ホー・チ・ミン大統領は、「米国の侵略者は彼らの条件でわれわれを交渉の座に着かせようと、北ベトナムに対する空からの攻撃を公然と重ねてきている。しかし、北ベトナムは屈服しないだろう。戦争がさらに五年、十年、二十年、いやそれ以上続こうとも、ハノイハイフォンその他の都市や企業が破壊されようとも、ベトナム人民はびくともしない。わが人民と軍は一体となって、どのような犠牲と困難があろうとも、完全な勝利を得るまで断固として戦うであろう」、こういうアピールを発表して、徹底的にアメリカ帝国主義と戦うことを表明しております。また、中国周恩来首相も、「米帝国主義が何をしようが、中国は引き続きベトナム人民の利益と要求に基づき、一切の必要な行動をいつでもとり、最後の勝利までベトナム人民の偉大な闘争を支援する」という決意を表明されました。さらに、ワルシャワ条約加盟国七カ国も七月七日声明を発表したが、その中で、アメリカベトナム侵略を糾断し、ベトナム人民闘争を全面的に支援し、義勇軍を派潰する用意があることを声明しました。昨日の夕刊によりますと、ワシントン十七日発のAP電によりますと、ラスク国務長官は十七日のラジオ・インタビューで「中国ベトナムに軍事介入すれば、ベトナム情勢はきわめて深刻な進展を見せよう。また、ワルシャワ条約機構加盟国によるベトナム義勇軍派遣も、きわめて深刻な問題となろう」、こういうふうに語っております。このような緊迫した事態の中で、なおあなたたち前言を繰り返して国民を欺瞞し、ごまかそうとするのか。この点、今日の新しい段階についての政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お答えは繰り返しになると思いますが、結局、アメリカベトナム征服目標としているのではない、南ベトナム政治的独立と自由を擁護するために北の浸透を防いでおる、こういう限界を越えていないのでありますから、要するに北ベトナム浸透、そうして南ベトナム内の破壊活動というものがやむならば、いつでもそれに呼応してアメリカは撃ち方はやめる、武器を置く、そうして和平の話し合いに入る、こういうことを言っておるのですから、ベトナム征服目標にして戦っているのではない、あくまで防衛的な軍事行動で終始しておる、こういうわけでございます。でありまするから、この問題を収拾するといなとは、それは北ベトナムの出方次第によって決定されるということになるわけであります。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは全くアメリカ側立場に立った発言だと思うのですよ。アメリカラスク国務長官すらもこういう事態の深刻さについて言及しておるときに、日本外務大臣がそれを一向に意に介せずといいますか、感じなくて、単にアメリカ側立場に立って、アメリカ側はこういう意図を持っておると信じるから絶対心配ありません、戦線拡大というものはあり得ませんなんという、そんな無責任な答弁をしておっても、国民は絶対それを信用しないのです。あなたたち答弁は、そういうことを何回繰り返しても、国民は信用しませんよ。あなたたちがそういう答弁を繰り返しておる間に、どんどんと事態が進んで、非常に緊迫の度を加えてきておるではありませんか。ここらで国民が納得するような答弁をしないと、これはだめですよ。  私は、アメリカ戦線拡大をしないしないと言って、どんどんと拡大していく。そうすれば、やはりベトナムだって、何年かかっても、二十年かかってもやるのだという強い意思を表明しておる。それから、中国も、ワルシャワ条約諸国も、これに援助をするということをはっきりと強く打ち出してきておる。こういう事態がどんどんと進んでいくならば、非常な危険な状態が切迫してきておるというように私たち感ずるわけです。それに対していま外務大臣前言を繰り返していかに国民をごまかそうとしても、国民はそういう無責任なことばではごまかされません。アメリカの真の意図がどこにあるかということを、私はこれからの質問でそれを解明していきたいと思いますが、決して外務大臣がのほほんとかまえておるようなそういうものではない。外務大臣自身もそのことをよく知っておるはずなんです。知っておってなおそういう無責任なことば国民をごまかそうとしておるのだと私は理解します。  それでは、外務大臣、今度の日米合同委員会国際情勢冒頭演説で、ラスク長官はこういうことを言っております。たとえ国際世論のすべてを敵に回してもベトナム戦争をやり抜く、こういうふうに言っておるのです。これから見ましても、アメリカが何を考えておるかということははっきりするではないですか。日本政府はこのラスク声明を支持するのか、それとも支持しないのか、はっきりと伺いたいと思います。
  10. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 新聞のいまの報道というのは、私は真相であるかどうかわかりませんが、とにかくアメリカがいまやっているのは、結局、力によって、武力によって南ベトナム独立と自由を奪い取るという考え方は、これはアメリカとしても賛成できないし、その擁護のためにアメリカの助力を要請されているから、これは責任を持ってその約束を果たす、こういう固い決意を漏らしておったことは私も記憶しております。世界じゅう世論を向こうに回してなんということは、私は頭に残っておりません。とにかくそういうアメリカ立場は私は正当である、こう考えます。これに反して北ベトナムは何のために一体南ベトナム征服しなければならないのか、これを不問に付して、そうしてアメリカが一方的に侵略戦争をやっているというような判断は、これは間違いであると私は考えております。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう答弁ならば、あなたは、たとえ国際世論のすべてを敵に回してもベトナム戦争をやり抜くと、こういうラスク発言を支持するということなんですか。
  12. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たとえ国際世論のすべてを敵に回してもというようなことは言わなかったと私は思います。アメリカ決意ラスク長官によって明瞭にこの間言われたと記憶しておりますが、それは結局、南ベトナム政治的独立と自由、これを南ベトナムの要請によって、それを守るためにいま軍事行動を起こしておる。であるからして、これが正しいと思っているから、どういう抵抗にあおうともアメリカは絶対に引かない、こういう決意を漏らしておりました。これは私は、ラスク長官の主張が正しいと、こう考えております。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、ラスク長官の言ったことばをあなたは支持しておるという立場ですね。どうしてもやり抜くという、その立場をあなたは支持しておるということになるわけですね。
  14. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま申し上げたとおりであります。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなた、いま、北ベトナム南ベトナムに侵略して、征服しようとしておると言いますが、それは話が逆なんじゃないですか。南ベトナム解放戦線ができたのは、ジュネーブ会議結果、北と南と別れた。ところが、南のかいらい政権ベトナム人民を弾圧して、武力をもって虐殺をした。それから、みずからの生命、財産を守るためにどうしたらいいか、そのためにはみずから立ち上がって戦わなければならない、それがいわゆる南ベトナム人民解放戦線のできた原因ですよ。それをいいことにして、アメリカ武力をもって南ベトナムに侵略しようと、これが今日の状態の始まりではないですか。あなたの言うことと全く逆のことですよ。あなたたちアメリカ立場に立って、すべてアメリカがいいという立場に立って、アメリカの言うことは何でも聞くという立場に立って、そういう議論をしますけれども、そんなこと、だれも信用しませんよ。何で今日、アメリカベトナム侵略戦争世界じゅう評判が悪いのですか。アメリカ国内においてすらも評判が悪いではないですか。そこから判断しましても、いかにアメリカベトナム侵略戦争が不法なもので、不当なものであるかということは、これでわかるじゃありませんか。それをアメリカ立場に立って、北ベトナム征服してくるから、侵略してくるからという、こういう議論を立てても、これはむだですよ。外務大臣ともあろう人がそんな答弁をするとは、あきれ果てたものではないでしょうか。そんなこと、だれも納得しませんよ。そのアメリカのやり方の間違い、不当さ、それは全世界が知っているのです。ただアメリカを中心とする一握りのかいらい国従属国、それだけがアメリカ立場に立ってそういうものの言い方をしているのです。全く私は不当だと思います。  七月十三日、ラスク長官帰国後初めての記名会見でこう言っております。二週間にわたりオーストラリア、フィリピン、台湾、日本、韓国などの諸国を訪問した結果、われわれと連合国ベトナム戦争をやり抜く意思と手段を持っていることを確信した、こういうふうに請っております。どんなにごまかそうとしましても、日本アメリカベトナム侵略にどこまでも加担していくことをアメリカに約束していることを、ラスク自身がこのようにはっきりと言明しておるではないですか。アジア開発銀行設立を急ぐ背景には、このようなあなた方の態度があるのではないでしょうか。いや、ラスク長官帰国後の初の記者会見で、日本アメリカ協力するということをはっきり約束しているということをラスク自身が暴露しているのですよ。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ラスク長官記者会見での意見発表は、私はどういう根拠に立ってそれを言っているのかよく存じません。日本は憲法のたてまえもございまして、ベトナム戦争協力する方法はない。別に特別、日本政府としてこのベトナム戦争協力するというような行動はとっておりません。  それから、アジア開発銀行ベトナム戦争とは、これは関係のない問題です。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、ラスクの七月十三日の記者会見の話は、全然根も葉もないことを言っているというふうにあなたはおっしゃるのですか。何かラスクとの間にいろいろ話し合うた、それをラスクにすっぱ抜かれて、これは都合が悪いということで、日本都合が悪いことは知らぬ存ぜぬで、あなた、どうして済まそうとなさるのですか。どういう話をなすったのですか。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう話ということを言われてもちょっと困りますが、とにかく、ベトナム戦争をしっかりおやりなさいと言ったわけでもなければ、現にベトナム戦争に対して直接何らの協力をやっているわけじゃない。ラスク長官はどういう一体根拠のもとにそういう発言をしたのか、それは私は知りません。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃラスクに、あなたいつも衆議院委員会などでも答えているように、日本安保条約のたてまえ上中立国ではあり得ない、だから、日本アメリカベトナム戦争に対して積極的に協力をいたしましょう、そういうお話でもなすったのじゃないですか。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことは申しません。いま現に日本のやっていることは、今回のベトナム戦争にいかなる点からもこれに直接協力しているというようなことはない。もしそういう事実があるならば、ひとつおあげを願いたいと思います。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 ぼくらは直接だと思っておりますことがたくさんありますよ。原潜寄港の問題も、原子力空母寄港を許そうとしているそれも、それからアメリカのB52の日本着陸の問題も、それからもっと直接的な問題でたくさんあるはずです。それをひた隠しにして、直接じゃない、間接だと。どうして間接だと言えるのですか。直接じゃないですか。アメリカの軍艦が日本に入ってきて、そこで補給して、出ていくのです。戦争補給を切り離すことはできませんよ。戦争補給がなかったらできないですよ。その直接の補給日本が認めておきながら、これは直接でありません、こう言っては筋が通らないじゃないですか。その点、どういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 原潜寄港問題とか、あるいはこれに類したようなことは、これは何もベトナム戦争に関連することではなくて、日米安全保障条約から当然出てくる日本義務でございます。でありますから、今度のベトナム戦争に関連して、直接日本がこれに協力するというようなことは、毫もない。これはただ、安保条約から出てくる日本義務として日本が引き受けておる、こういうことであります。直接協力するというのは、たとえば中共、ソ連のように兵器をもってこれを支援している、ああいうのは直接協力と言える。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 「直接」の解釈に、私たちの間に大きな食い違いがありますが、しかし、日本国民はすべてああいうことに対しまして、これは直接介入である、直接援助であるというふうに理解して、そして大きな怒りと不安を持っておるのです。だから、原潜が入ってくれば、入ってくるたびに大きな反対運動が起こる。これは一つのあらわれじゃないでしょうか。いかにあなたたちがそういうことばをもってごまかしていこうとしても、これは日本国民には筋の通らぬ話です。あなたたちに筋が通る話かわからぬけれども、日本人民には筋の通らぬ話です。そう私たちは断ぜざるを得ないのです。  次の質問に移りますが、政府は本法案提案理由説明の——本法案というのはアジア開銀の問題でありますが、この本法案提案理由説明の中で、このアジア開発銀行設立アジア及び極東地域経済開発経済協力を促進するためだ、こういうふうに言っております。また、今度の日米経済合同委員会でも、東南アジア経済援助問題が大きく取り上げられております。一体、あなた方の言う経済開発とか経済援助というのはどういうことなのか、説明をしていただきたいと思います。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 経済開発とは経済開発なんですが、結局、経済を豊かにするために、いろいろな資源開発して、これを国民経済に有効に役立てる、こういう趣旨で行なわれる開発のあらゆる面を総称して経済開発援助というのは、その開発を助ける。あるいは技術の面において援助することもありましょう。資金の面において援助することもございましょう。その他いろいろな運営の面において経験、知識というようなものをもってこれに協力することもございましょう。そういったようなものを総括して、経済開発経済援助、こういうのであろうと思います。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは大臣、一般的な字句解釈で、どこかの入学試験の答案みたいな説明だと思うのです。そうじゃない。今度の日米経済合同委員会に心いて議題となった経済開発とか経済援助というものは、もっと深い意味のあるものじゃないのですか。  これまで私たちの聞いているところによりますと、このアジア開銀設立については、いわゆる低開発諸国開発のためにこれは使われるのだという、いわゆる低開発というような字句がこの中にあると思うのです。そもそも、いわゆる低開発諸国といわれる、戦後独立をかちとったアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国経済的立ちおくれの根源は、一体どこにあるのでしょうか。貧困無知原因は、どこにあるのでしょうか。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アジア開発のおくれた原因は、いろいろございましょう。長い間植民地になっておって、そうして、いわゆる何と申しますか、ただ最も原始的な、労働力というものだけを提供して、みずから、その自分の国の資源開発とかその運営というようなものに当たらなかったために、そういう面の知識が非常におくれた。だから、政治的独立をかちとっても、なかなか経済的あるいは文化的にこれを発展させるという能力が非常にまだ低い、こういうような状況であろうかと思います。
  27. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなた、初めてややほんとうに近い答弁をいましたと思うのです。あなたが言うまでもなく、これらの諸国は、長い間、日本をはじめイギリス、フランス、アメリカなど、いわゆる帝国主義植民地支配によりまして、自国資源、その原料を略奪され、民族経済自主的発展を押えられ、帝国主役搾取収奪によって自国の一切の南を収奪され、長く苦しんできた。これが今日の低開発国のよってきた歴史なんです。そうして貧困無知という問題も、この帝国主義者搾取、略奪、収奪、ここから止まれているということがはっきりわかるのです。このことは、今年一月三日から十五日までキューバのハバナで行なわれました三大陸人民会議の決議にはっきりと、帝国主役者の搾取収奪によると、こういうふうにうたっております。すでにアジア、アフリカ、ラテンアメリカ人民は、このことをはっきりと見抜いているわけです。  それでは、真の経済援助はどういう立場に立たなければならぬか。これは、平等互恵の立場に立たなければならない、こう思いますし、これら諸国の主権と独立を尊重し、これらの国の自主的発展経済的発展を助けるもので、何らのひももつかないものでなければならないことは、私が言うまでもないことだと思います。ところが、あなた方の言う経済援助とか開発というのは、これと全く反対のものであって、これら諸国のいわゆる真の独立をおそれ、これを形だけのものにし、依然として旧来のように自国の植民地的支配下に置こうとするのが、真のねらいではないでしょうか。あなたも先ほど言いましたように、アジア・アフリカ諸国、低開発諸国は、これまで帝国主義搾取収奪にあって、そうして苦しんできた。だから、最近、民族的な意識が高まり、自由に目ざめて、そうして帝国主義と手を切って、各地で独立が起こりたのです。それにあわてたのは一体だれか。これはこれまで搾取収奪を続けてきたところの帝国主義者なんです。その国の独占資本なんです。これは何とかして食いとめなければならぬ。そこで、この開発とか援助とかいう名にかりて、あくまでもこれにひもをつけていこうという考えのもとに、あくまでも自国の植民地的支配下に置こうという、こういう考えのもとにこの経済援助とか、開発援助ということがたくらまれておる。アジア開銀もまさしくその一つのあらわれだと私たちは理解します。どうですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アジア開銀開発援助目標は、あなたの御意見と反対で、逆の方向で進もうと、こうしていると思います。そういう旧帝国主義的な野望の手先になってアジア開銀が働くのでなくて、そうじゃない、ほんとうに独立した低開発諸国が、今度は経済的にも十分に実方を備えて、そうしてりっぱな国になるようにアジア開銀というものはそれに協力をする、援助をする、そういう趣旨のものと考えます。あなたの考えと逆でございます。
  29. 須藤五郎

    須藤五郎君 米州開銀は、ラテンアメリカにおきましてアメリカ帝国主唱の植民地支配の道具であることは、これは世界周知の事実であります。昨年四月に来日しました当時の米国務省政策企画委員長ロストウは、アジア開銀には米州機構を参考にしろと、こういうふうに言っておりますし、また、前の世銀総裁である、ジョンソン大統領特別補佐官のユージン・ブラックも、アジア開銀は米州開銀と同じことをやる計画だ、こう言っておることから見ましても、アジア開銀がいかなる運営によっていかなることをやろうとしておるかということは、これで私ははっきりすると思うのです。それに対して答弁ありませんか。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういうところが米州開銀の悪いところであるか知りませんが、かりに米州開銀の悪いところがもしあれば、悪いところはまねる必要はないと思います。
  31. 須藤五郎

    須藤五郎君 アジア開銀が新植民地主義の道具であるばかりではありません。ラスク国務長官は、七月六日、京都におきます日米合同委員会で、アメリカは米国に対する非難を続けている国に対しては金は出せない、こう言っております。だから、経済援助とか経済開発といっても、あなた方が言うように後進国の経済、技術、民主向上とか、福祉の増進ではなく、アメリカの言うままになる国だけにしか与えられない。全く米国の侵略政策の道具であることがはっきりとしておると思います。アジア開銀だけがこの例外であるというようなことはあり得ないのではないでしょうか。また、マクナマラ国防長官は、安全保障とは軍事だけではなく、開発と安定だと、こういうふうに言っております。すなわち、経済開発とか経済援助というものがアメリカの侵略政策の重要な内容をなすものであり、その目的はバンディ国務次官補も言っておるように、中国封じ込めにあることは明らかだと思います。そのために、アメリカ日本に大きな期待を寄せ、その中心的役割りを果たさせようとしておるのではないでしょうか。  そしてまた、日本の独占資本も、アメリカに追従して、中国封じ込めを中心とするアジアにおける反共の侵略の体制に積極的に参加することを要求しております。たとえば、経団連をはじめとする経済五団体が昨年十二月発表しました低開発国援助に関する提言の中では、低開発国を自由圏に抱き込むために経済援助拡大をはかるべきだ、中立諸国に対しては幅のある態度で接して、弾力的に自由圏に引き入れるという高い見地からの開発援助が必要だ、こういうことを言っております。  まさに日米独占資本のこの大方針に基づいて、あなた方は東南アジア開発閣僚会議の開催、ソウルの反共閣僚会議への積極的参加、さらにアジア開発銀行設立を急ぎ、十月の農業開発会議を開くなど、これに積極的にこたえているのが今日の姿だと考えます。これこそジョンソン大統領の言うアメリカベトナム侵略の背後で形成されつつあるところの新しいアジアであり、またラスク国務長官の言う西太平洋地域に吹き始めておるところの新しい風にほかならないと考えます。  このようにアジア開発銀行が、私が最初に指摘したように、アメリカアジア侵略政策の道具であることは明白であると言わなければなりません。アジア開銀の本質がそういうものであり、アメリカ日本経済援助の本質がそういうものである限り、日本アジア人民生活に何一つ利益をもたらさないことは明らかだと言わなければなりません。アジア開発国人民は、アメリカ日本の独占資本によっていままで以上に貧困を押しつけられ、また、日本人民は、国民所得の一%、すなわち六千億円もの税金をしぼり上げられた上に、低米価、低賃金のための一次産品輸入を押しつけられ、日本農業は深刻な打撃を受けざるを得ないし、働く労働者は、高物価と低賃金に苦しまなければなりません。これがアジア開発銀行の本質だと考えます。  いま紙が回ってまいりまして、社会党の戸田さんが外務大臣質問したいから、私の質問を十一町で打ち切ってくれという紙がここへ回ってまいりました。私もできるだけ協力したいと思いますので、一応私の質問をこれで打ち切りますが、最後に、何か大臣、おっしゃりたいことがあったら……。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ非常にるるとしてこのアジア開銀アメリカの侵略政策の道具に結局なるんだというようなことを言われましたが、それは全然根拠のないお説であると、こう考えております。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、私はさっき新植民地主義の問題に触れましたのですが、要するに、従来のようなしぼり方では、今日の独立に目ざめた人民諸国搾取することはできなくなる。そこで、今度マクナマラが「安全保障の新しい次元」というこういう本を出版して、これはアメリカ大使館から私のところへ送ってきましたよ。これを私はずっと通読してみました。やはりその中にアメリカ意図するところが明らかにあらわれておる。安全保障は開発と安定だと、こういうふうなことばを使っております。開発と安定だという裏に、やはりグループをもって法秩序を、法を守らなければならぬというようなことが書き込まれております。いわゆる、これまでの武力一方では、もう国民を、いわゆる植民地の諸君をだまくらかすことはできないから、だから、一方は武力で押え、そうしてそれをごまかすために、金を持ち込んで、そうして開発援助とか経済援助という名によって、自分たちから離れていこうとするところの旧植民地の諸君をつなぎとめていこう、これにひもをつけて、あくまでも従来の搾取政策を続けていこう、これが今日いわれておるところの新植民地主義じゃないでしょうか。そのことをこれは裏書きしておるのです。  そのアメリカのいう新植民地主義に日本が加担して、そうしてあわよくばというのが、今度のアジア開銀の、あんたたちが積極的に乗り出した一つの大きな意味じゃないでしょうか。よく、むちとニンジンということばが使われますが、まさにそのとおりだと思う。それが今日のアジア開銀だ。だから、社会党の諸君もその点を指摘して反対していらっしゃいますよ。あなたたちの言うような低開発国に対する援助だ、経済援助だ、低開発国国民のしあわせを願うためだ。——これは表面だけのことだ。それなら、なぜひもをつけるのです。アメリカに従わない、アメリカに反対するような国には金を貸さない、そういうことをなぜ言う必要があるのでしょうか。これは明らかに、金の力によって、失われていくところのアメリカの威信といいますか、勢力をつなぎとめていこうとする考え以外にないじゃないですか。これがそのままアジア開銀。だから、アメリカは非常にこれに乗り気になっている。特にベトナム戦争がああいう状態になってから、特別な熱意をアメリカが示していた、それもここに原因があるのじゃないですか。アジア開銀はそういう意図をもって、失われていくところの旧植民地を新しい形の新植民地に仕立てよう、これがいわゆるこの経済援助開発援助の本質なんです。私たちはそう判断をしておるわけです。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 何か御質問ですか。——あなたの御判断を拝聴しておりましたが、全然どうもわれわれ同意するわけにはまいりません。それで、結局、アジア開銀は正しいアジア開発をあくまで目標とするものでございますから、かりにアメリカがどういう意図をもっていかなる発言をしようとも、正しい意味アジア開発に沿わない場合には、そういう発言は通るはずはありません。アジア的銀行でございまして、アジアの中に位する国は、こぞってこれに反対するわけでありますから、かりに、そういうような主張がかりに出てまいりましても、それは通るはずはない。日本としても、正しいアジア開発からはずれた提言であるならば、これは絶対に賛成するわけにはいかない、こういうたてまえをもってこのアジア開銀に臨みますから、特別の野望を持った提言というものは通るはずはありません。
  35. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 外務大臣が三十分までということでありますから、主として要点をしぼって二、三の点について質問したいと思います。  その第一点は、従来この低開発国等に対する援助体制としては、非常に政府は熱意がなかったと思うのです。また、具体的にそういう内容を実行したというのはあまりない。あえていえば、賠償あるいは技術協力。あとはほとんど民間ベースでやってきたというようなことが従来の政府態度ではなかったかと考えるのです。ところが、ここ半年ぐらいの間に、何か政府としては急速に低開発国援助体制ということを打ち出してきたのでありますが、こういった一体要因は、そういった積極化する要因は一体どこにあるか、この点について外務大臣に伺いたいと思うのであります。  それから、七月五日から三日間、京都で日米貿易経済合同委員会、これが開かれたのでありますが、二日目でありますか、ことにラスク国務長官と椎名外務大臣は個別会談を持った。その個別会談の内容は一体どういうものか、主としてどういうものが議題になってどういうものが論議をされたのか、その辺について明確にひとつ御答弁を願いたい。  第三点は、これはちょっとアジ銀とは関係がありません。安全保障体制の問題、あとから関連が出てきますので確かめておきたいのでありますが、椎名外務大臣は五月の二十五日であります、衆院の外務委員会で、日米安保条約は軍事条約であるということを明言された。これはおそらく公式の場で外務大臣がこういった見解なり解釈をとったことは初めてであると考えますが、さらに五月三十一日の参議院外務委員会でわが党の森議員から、同じような質問をなされました。これに対して、日本は純然たる中立国ではない、日本は米国と安保条約を結んでおり、したがって日本北ベトナム、あるいはアメリカ、両国に対して中立的立場にはない、日本安保条約に従って米国の行動に対して援助する役務を負った、こういう特殊関係にあるということを、外務大臣は明確に答弁をいたしております。このような二つの回答を私は考えますと、従来はこの日米安保条約を、国連憲章、こういったものに規定する地域的安全保障の取りきめにかなうものである、こういう解釈をとってきたと思うのでありますが、ここではっきりと、軍事条約であり、中立的立場ではないと、いわば法的な解釈に大きな相違が生まれてきたと思うのでありますが、こういった外務大臣の考え方なりそういう変化に対して、外務大臣の明確な考えを聞いておきたいと思います。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 第一点は、ここへきて急に低開発国援助に積極的になったのはどういうわけかと、こういうわけであります。これは別に、私に関する限り、もう就任して二年になりますが、その当初から、日本としては国際的な発言力をどこに求めるかというならば、やはり経済協力、低開発国に対する経済協力というものに基調を置かなければならぬという意見を述べておったようなわけでありまして、別に急にここへきてどうということは私はないと思います。ただ、そうはいっても、日本の財力、財政的な余裕というものを考え、それからまたそれに関する諸準備というものが整った上でないと、簡単にこういったようなことはただ口先で言っただけでは、それが実行を伴わない場合にはかえって逆効果を来たすおそれがございますので、そういう問題を打ち出すためにも、ある程度慎重を期する必要があったことは事実でございます。そういう意味におきまして、十分に準備を整えて、そして去る四月に東南アジア、少なくとも日本に縁の濃い東南アジアの現状にかんがみて、これを経済的に開発する必要があるということからあの閣僚会議を開いた、こういうことでございまして、まあ目立つ目立たぬという観点からいうと、御指摘のとおり、ここ半年ぐらいの間に急に目立ってきたということになるのかもしらぬ。事情はそういうことでございますから、御了承をいただきます。  それから、個別会談の内容でございますが、これは私はそのときの記録に基づいて申し上げるのはよろしいかとも思いますけれども、しかし、外交上の会談を、だれがこう言った、だれがどう話したというようなことを言うべきでないと思います。取りまとめて申しますと、いま申し上げた東南アジア経済開発の閣僚会議の状況を話し、そしてこれに対するわれわれの考え方、そういうようなものを向こうが非常に聞きたがっておりましたから、詳しく話した。そしてこの会議の成果は、これからどういうふうにこれを発展させるかということに関係する問題でありまして、その一つとして、東南アジア全体が非常な食糧不足に悩んでおる、これを放置すればほとんど近い将来に半飢餓状態におちいるというような状況も看取せられるので、この問題を出したところが、みな双手をあげて賛成をした、東南アジア農業開発会議というものをもう一つ生み出して、そうして専門家をまじえてそれを研究し、結論を出して、そしてその結論によって施策を今後進めるようなこともだんだん追及していく、こういうようなこと等を明らかにした次第であります。  なお、中共問題に関しては、日本としては国連加盟の問題についてどう考えるかというようなことは、まだこれは情勢の推移に応じてなお将来研究をし続けていかなくちゃならぬ問題であります。この問題も十分に話し合って、お互いに理解を深めていく。また、日本の政経分離の方針による経済交流の積み市ね問題、これらの問題についても相当深く分析して向こうに解明し、また向こうのこれに関する意向もただしたわけであります。もちろん、こういう会議は具体的に結論を出すというような性質のものじゃありません。お互いに率直な意見を述べ合って理解を深める、そういう性質のものでございまして、十分に日本立場も向こうは了解したものと考えます。その他ベトナム問題等、その他の国際情勢についても話し合った、この程度に御了解を願いたいと思います。それから、日米安保条約は軍事条約だと。この軍事条約ということば法律上の用語ではないのであります。結局、私がそういうことを言いましたのは、安保条約の中に軍事的条項が含まれているのであるから、軍市的条約、あるいは軍事条約といって差しつかえない。軍事防衛条約というのが正しければ軍事防衛条約ということばも適当でございましょう。いずれにしても、軍事的な条項が主要な部分を占めておる、こういう趣旨でそういうことばを使ったにすぎません。  以上三点について答弁申し上げます。
  37. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もありませんから、あまり詳しく聞いていられないと思うのですが、まず第一の点については、外務大臣は、いまの回答でいきますと、東南アジア経済の現状にかんがみて、そういことを言うのでありますけれども、少なくとも一九五四年にインドシナ半島各国が独立、それ以来、一貫して今日のような経済情勢にあったのじゃないか、こういうふうに考えるのです。ですから、いままでの日本のそれらに対する援助体制というものが、もっぱら口約束だけであって、言ってみれば、賠償とか技術協定、こういった問題についてはやっておりますけれども、実際最近取り上げられるような本格化したような、こういったあるいはアジ銀を開設したり、あるいは援助体制全般について本格的に乗り出されたような、それで国民総生産の一%に当たる援助体制をこれからしいていくのだといったような具体的な諸制度が出てきていると思うのです。だから、そういうものがなぜとみに急速化したのか、私はそういうことを考えて、いまお伺いをしたのですけれども、どうも外務大臣の回答ですと納得いかない。東南アジア経済の現状、こういうものだけでは、これは従来続けてこられた現状と変わりないわけです。そういったことでは、どうしても私は納得できないのですが、これをもう少し詳しく……。  どうも私は印象として、アメリカ日米経済合同委員会、こういうものを五回やられたのでありますが、そういうものをやられるたびにアメリカの構想に従って日本が追い込まれていく、あるいは押しつけられる、こういう印象を強くしております。あるいはまた、いま国際情勢としてベトナム戦争アメリカにきわめて不利だ、こういう姿ですね、非常にそういうところからアメリカはあせっておることは間違いないでしょう。これらに対して何かアジアのいわば世論対策として、そういうものを隠蔽しようというそういうところにいろいろな経済体側というものを日本に肩がわりをさせる、こういうような状況で来ているような気がするのですよ。だから、こういった問題について、もう少し具体的に外務大臣の内容というものを聞きたい。  それから、第二の問題について、これはいま外務大臣が回答されたことは大体各新聞に出ておりましたその域を出ていない。もっと私たちが知りたいことは、少なくとも、この間の日米置場経済委員会でやられた骨格は、私たち聞いているところは、一つは、あくまでも当面のベトナム戦争の解決問題と、もう一つは、今後のアジア全般に対するところのアジア会議、これらを含めた経済援助体制、これはどうしたって国民の税金からいくものですから、日本の国内経済の情勢でもそんなに好転しているとはわれわれ考えておりません。そういう中で、具体的に金を出して援助していくわけですから、こういった問題がやはり当面会談の中ではいろいろ討議をされただろうと思うのです。そういう部分についてもう少しやはり具体的な例示で説明をしてもらわぬと私はわからぬと思う。  それから、安保条約については、これはいまさら論議するまでもないのでありますけれども、軍下防衛、そればかりではないと思う。第何条かは明らかに、経済援助協力体制、こういうものを明文化をしてやっておるわけでありますから、軍事・経済両面にわたってというのが安保条約の基本路線じゃないか。ですから、そういうことからいけば、いまの外務大臣の回答ではどうも私は不満足なんであります。  まあそれはあれですが、新しくもう一点外務大臣にお尋ねをするのでありますが、これは「経済協力の現状と問題」、一九六四年版でありますが、これの通商産業省貿易振興局発刊によりますと、従来の賠償なり、あるいはまた経済協力、こういった問題についてはすべて中期経済計画、こういうものを土台にして一九六八年までどの程度の額をどういう具体的な措置によってやっていくという、こういう一端の構想というものがあるわけですね。今回いろいろとアジ銀の開設をしたり、あるいはまたこれから具体的にそういう援助体制をとっていく、こういうことになるわけでありますけれども、その基本の置かれ場所は一体どこなのか、そういうものがまたあるのかないのか。この前私は質問の中で、そういった援助協力基本計画、外務大臣が一端の構想として発表した、そういうものがあるわけでありますが、確かにいままでの日本政府態度としては、こういうものを土台にして具体的にそういう諸施策をとってきた、こういうものが一体あるのかないのか、もしないとすれば、これから具体的にどういう構想なりそういうものをやっていくのか、これはあとでいろいろとアジ銀の貸し付け条件あるいは融資条件、こういうものを聞くにあたって非常に関連がありますので、この辺の基本構想について外務大臣の意見を伺いたい。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 個別会談の内容をもう少し具体的にと、こうおっしゃいますが、これは総理大臣も国会で二、三回同じような御質問にあいましたが、具体的な問題についてはちょっと申し上げにくいと、こういうことで答弁をしております。いま私が申し上げた程度以上、さらに具体的な会談の内容は、この際はひとつごかんべん願いたいと思います。  それから、第一点の理由の問題でございますが、先ほど申し上げたように、東南アジア開発閣僚会議をやったことが一つの山でございまして、これがすなわちスタートであって、今後どういう施策を具体的にやっていくかということは今後の問題でありますが、内政上の問題、あるいは政府部内の体制を整えて、そしてこの問題を打ち出した、こういうことでございまして、表面的に積極化したのはごく最近だという御観察であればそのとおりかもしれません。どうしてそうなったかということは、いま申し上げた理由によるわけであります。  それから、東南アジアの現状、これは日本としては東南アジアが非常に大事な従来市場でございまして、大体三〇%以上の輸出市場であった。最近これが二〇%くらいに減っておる。それはほかのほうが伸びたせいと、それから東南アジアに対する関係がこれ以上はどうしてもふえない、こういうことでございまして、東南アジアというものは世界の全体の発展の速度というものに追いつかない、そういうことを如実にあらわしているものとも言えると思います。そして日本と東南アジアとの関係は、ほとんど片貿易でございまして、これ以上向こうが片貿易の傾向をますます、是正するどころかむしろこれを助長するというような傾向でいくならば、これは遺憾ながらボイコットせざるを得ない、こういうような状況にある。どうしても東南アジアというものを育成して、そして十分に体力をつけて、そしてしかる上にお互いに共存共栄をはかっていく、こういうことにしなければならぬ。でありますから、従来以上に東南アジアというものに対して、いわゆる開発援助と申しますか、東南アジア経済開発に特別に長い日をもって協力援助を与えるという必要が、最近になってはっきり顕著になってまいったのであります。しかして、申すまでもなく、そういう貧困のままに放置するということは、いろいろな政治的なトラブルを起こすゆえんでもございます。そういう意味において、日本として独自の立場からこの問題を取り上げて取り組んだ、こういうわけでございまして、特にアメリカの指示を受けたとか、そういったようなことは毛頭ございません。そのことだけを申し上げておきます。  それから、中期経済計画は、いま改定を準備しつつあるような状況でございまして、大蔵省のほうから御答弁いたさせます。
  39. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 御質問の後進国、低開発国援助のことの、日本のすべての経済における位置づけの問題でございますが、私ども理解していますのは、従来そういった面の考察ということは確かに十分行なわれていなかったというふうに考えております。しかしながら、現在DACによる国民総所得の一%の勧告等もございまして、こういったものがはたして日本においてどういう時点において可能なのかということにつきましては、全体の経済計画とあわせて考えなければならない。もちろん御存じのように、低開発国援助と申しましても、財政資金によるものだけではございませんで、若干の部分について、あるいは相当の部分についての予測というものにならざるを得ないかと思いますが、現在企画庁でもやっております中期経済計画の審議の際には、そういったことも含めて検討している次第でございます。したがいまして、この報告が出ました際には、そういった点についても当然触れられることになろうかと考えております。
  40. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 十一時三十分までですから、簡単にもう一点だけ外務大臣にお伺いしたいと思います。それは外務省の調査月報、一九六六年の三月ないし三月号、これの百十八ページに、OECD開発援助委員会上級会議というのが開催されました。これに外務大臣が直接参画をしておられ、この中で今後の経済援助等に対する援助条件の緩和、こういうものについて具体的に資料が掲載されているわけですが、たとえばこの中で、今後借款を与えるような場合には、年数を何年にする、あるいは利子は幾らにする、あるいはその一定の金額は無償供与といったようないろいろな内容というものが具体的に含まれておると思うのでありますが、こういう会議の中で具体的にそれらの問題についてどういうことが一体論議をされ決定されたのか、その辺について外務大臣からお答えをいただきたい。それから、勧告の内容ですね。
  41. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ただいまのOECDの勧告は、援助条件の緩和に関する勧告ということでございます。私いまここへちょっと手元に持っておりませんが、内容は大体先生がおっしゃったとおりでございますが、ただ先生のおっしゃらなかった一点は、現在そういったものをすることについて著しく困難な状況の国は、ただその期間の間にそれを改善すればいいということで、これらは日本の主張を入れられて、そういった勧告がなされたわけでございます。したがいまして、本文においてはそういった、要するに金利とか年限についての規定がございますが、その下に、ただし現状においてこれより著しく不利といいますか、金利なり年限の短いものを出している国はその期間に改善すればよい、こういうふうになっているわけでございまして、その条項というのは日本等が主張して入れた、そういうような実態でございます。
  42. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 外務大臣、いまの国際金融局長の回答になったような状況でしたか。これは外務大臣が直接参画をしているわけです。さらに、今後の経済援助の努力目標というものがあるわけですね。いま局長が言ったことと同じですか。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ちょうどそのときにOECDの会合がございまして、ちょっと瀕を出しただけで、あまり内容に参画いたしませんでしたので……。
  44. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうすると、私たちは、いま国際金融局長が言ったことであれば、さらにその答弁に対する継続質問ができるのでありますが、外務大臣が直接これに参画をしていると、たとえば英国からはカースル海外開発相が出ているのだと、これはぎょうぎょうしく掲載されておるわけです。ですから、非常にこれ、椎名外務大臣がこの場で奮闘したような、あるいは権威のある決定のような気がするのです、われわれこれを読むと。ところが、いざ帰ってくると、単に顔を出しただけだと。それじゃ、大体この月報の言っていることと与えた印象と、こういうものについてはあまりに国民自体を侮辱することになるのじゃないですか。もう少しやはり信憑性のあるものについてここに掲載をしてもらいたいと思います。外務大臣が時間がないというから、またあとで機会があれば質問してまいりたいと思います。
  45. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をつけて。
  47. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは国際金融局長のほうにお伺いをしたいと思うのですが、アジア諸国の財政と日本援助の問題で若干お伺いをしたいのでありますが、主要発展途上と言われる国々が私の調べた範囲では三十七カ国と、こういうのですね。主としてアジア開発銀行加盟諸国と予定される三十一カ国というものはおおむね入っておる。これらに対して、三十六年以降からの日本援助総額、これは政府ベースで、そういう資料がわかれば、ちょっと教えていただきたいと思います。内容としてはいろいろあると思いますけれども、主として私が聞きたいのは、ラオスカンボジア、それからタイ国、南ベトナム、こういうことで教えていただきたいのであります。
  48. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 日本の、私手元に持っておりますのは一九六一年から六五年までの低開発諸国に対する資金の流れでございます。その中に合まれておりますのは、贈与、これは賠償その他あるいは技術協力予算でもってやっておりますもの、あるいは二国間の長期信用供与、この中には直接借款あるいは債権繰り延べ等、それから五年超の延べ払い輸出、それから先ほどちょっと触れましたが、再融資を除くいわゆる債権繰り延べ、こういったものが含まれております。それ以外に民間投資というものがございます。それから、国際機関に対する政府出資、こういったものを全部足しまして申し上げますと、一九六一年にドルで換算いたしまして三億六千八百九十万ドル、一九六二年に二億八千二百万ドル、一九六三年に二億六千四百万ドル、一九六四年に三億四千五百万ドル、昨年一九六五年は四億一千四百万ドル、これが現状でございます。  ただいまの御質問の特にラオスカンボジアについて申し上げますと、ラオスは一九六二年が六十万ドル、それから一九六三年が三百二十万ドル、一九六四年が十万ドルでございます。それから、カンボジアは一九六三年が百四十万ドル、一九六三年が八十万ドル、一九六四年が百二十万ドルでございます。
  49. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私が調べた内容によりますと、主要発展途上国三十七カ国の合計援助資金は総額で一九六一年は百五十三億三百万ドル、それで一九六三年は二十三億八千三百万ドルですか、ばかに数字が少なくなっているんですよね。いまの発表ですと、たとえばラオスカンボジア一国を見ても、まあ一九六二年は百四十万ドル、八十万ドル、百二十万ドルということでありますが、少しはふえてきているようでありますが、総体的にはそういう援助資金というものは何か減らしていくという、そういう内容によってやられておるのかどうか。それで、あとから中期経済計画における経済協力規模ということで一端の資料を拾い上げますと、大体一九六三年は七百六十六億一千八百万、一九六八年にいっておおむね千百五十億、こういうことが一端の計画がなされておるのでありますが、いま発表された内応とこっちの主要発展途上の三十七カ国の債務累積額総額、こういうものの統計を見ますと、非常にその辺が違っているような考えを持つのでありますが、その辺のことについて少し明確に、もう一度この主要発展途上における援助総額でけっこうです、三十七カ国の、でき得れば一九六一年あたりから六四年程度まで、おそらく統計がとれるなら、この辺の総額と、それからいまのラオスカンボジア、これは大体わかりましたけれども、中期経済計画における経済規模ということで援助想定をしておった、一九六八年の内容というものは大体間違いがないのかどうか、その辺ちょっともう一ぺん確かめておきたいと思います。
  50. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ただいま私が申し上げましたのは、三十七カ国という御質問でございますが、私のいま手元に持っておりますものは、国際機関その他全部を入れた、いわゆるDACにおきまして通常低開発国に対する資金の流れと称するものを申し上げたわけでございます。これはいわゆるネットベースと申しまして、こちらから出したものに対して向こうから返還があったものを差し引いた数字でございます。したがいまして、もし先生のおっしゃる意味が、日本の予算のように、出したものと入れたものとが別々だというお考え、あるいは財政投融資の計画もそういうふうになっておりますが、そういった数字で申しますと、一九六一年、これは三十七カ国と私は限定した数字を持っておりませんので、いわゆるDACにおけるそういった標準に従いました数字を、グロスといいますか、支出ベースで申し上げますと、償還を差し引かない以前の問題でございます。そういたしますと、一九六一年が三億七千九百万ドル、一九六二年が三億三千四百万ドル、一九六三年が三億二千三百万ドル、一九六四年が三億二千九百八十万ドル、一九六五年が五億四千七百万ドルでございます。したがいまして、先ほどの数字と一見して違いますことは、日本経済協力等につきまして、やはりたとえば延べ払い等の償還の期限が、初めは非常に延べ払いも遅々たるものでございますが、ある程度進んでまいりますと、それが償還になってそれを差し引くというようなことで、相当の数字が今後も、ネットベースの議論で一%という議論でございますから、グロスを考える際には、償還の予定まで考えていかなければならない、こういう問題があるわけでございます。
  51. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 問題になるのは、この前どなたかの質問にあったと思いますが、インドネシアに対して今回三千万ドル、私が調べたところでは、すでに二百九十七億七千二百万、これの借款を約束をして、実行をしているのは二百九十五億七千七百六十万、こういうことでいっておるわけですね。それに三千万の上積み、こういうことになると思いますが、その辺はどうですか。  それから、もう一つは、南ベトナムのいままでの円借款はダニム発電所建設ですか、これに対して二十七億ほど実はいっていると思います。これが数字的に間違いないのかどうか。  問題になるのは、そういう政府ベースでの貸し付けあるいは援助体制というものが、従来は償還期限というものは一体どのくらいで、利子がどのくらいでやられておったのか。今後アジア開発銀行として、それらに対して具体的に貸し付けをしていくという場合には、特別緩和規制が織り込まれておるようでありますから、それらとはだいぶ違うようでありますが、これらの取り扱いがどういうふうに変化されていくか、その辺のことについて少しお聞かせを願いたい。
  52. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 第一点の、インドネシアにつきましての御質問趣旨は、例の経済協力協定による借款という意味でございますか。もしそういうことと理解いたしますと、これはまあ経済協力協定のその後の中にカウントしないかという問題でございますが、現在その点についてどういった解釈をするかということにつきましては、私どもは当然ああいったようなものも経済協力協定の中にカウントし得るものと考えておりますが、しかし、これは両方でそういったものについてのカウントということを、いままで三千万につきまして議論したことは現実においてはございません。したがいまして、まあ別個のものとも言えますし、一緒のものである、こういう性格としては私は一緒のものだと考えております。公的な解釈につきましては、あるいは外務省のほうから、担当官がおりませんけれども、後刻御返事したいと思います。  それから、ベトナムの問題につきましては、従来いたしました協力というのは、賠償協定が三千九百万ドル、それから直接借款七百五十万ドルの取りきめを通じまして、ダニム・ダム建設工事等を行なってまいりましたが、賠償につきましては、昨年一月全額支払いを完了いたしました。それから、いま申し上げました直接借款についても、輸銀によりすでに貸し出しを実行済みでございます。こういったのが実情でございます。  それから、そういった政府間ベースの借款でございますが、これにつきましては一がいにどういった条件ということがあるわけではございません。それは私どもの基本的な考え方としては、やはりそこの国の経済なり、あるいはプロジェクトといいますか、融資いたします対象事業がどういったものであるか、これはまあ日本の地方債等で運用部がやっているというような非常に償還期限がかかるような長いものであるとか、そういったものについては若干長くしていくという基本的な方針をとっております。まあ従来の一番代表的な例を二、三申し上げますと、インド、パキスタンにつきましては、現在十五年及び十八年という、三分の一ぱかり十八年にしておりますが、それが五分七厘五毛、こういうことでございます。それから、インドネシアにつきましては、これはすでに御承知かと思いますが、これはコモディティーといいますか、商品でございます関係もございまして、そういったこと、あるいは緊急であるというようなこともございまして、四年据え置きの五年償還、金利は五分五厘ということにしております。  アジア開銀がいかなる条件で貸すかということでございますが、これにつきましては、協定の何条でしたか、私いまちょっと覚えておりませんが、要するにそこの国の国際収支の見通しと、それから貸し出す先の対象プロジェクト、こういったものを二つ勘案して、要するに自分で、自己努力で返し侍るということを前提として貸すということになっております。したがいまして、もし非常に小さな工場で、その工場の利益が非常にあがるというような場合には短くなるでしょうし、インフラストラクチュアの港湾施設だとか、そういったものにつきましては、当然それだけの収益力がない、そういった意味で長い条件になる、こういうふうに私は想像しております。それから、もう一つは、やはりそこの国の国際収支の見込みからいって、たとえばそこの国に貸します場合に、工場であって非常に収益力があっても、それはもうローカル・カレンシーといいますか、現地通貨は十分消化されてもその国の対外的な外貨を返し得ないというような状況がある場合には、若干これは長くする、こういうふうに考えられます。しかし、現実にいかなる運営をするかということにつきましては、当然執行部たる総裁が理事にはかりまして決定するということでございます。  ただ、申し上げておきたいのは、大略のことを申し上げますと、準備委員会等の議論におきましては、いわゆる世銀のタイプのローンでございますね、いま世銀は低開発国に六分ぐらいの金利で貸しておるわけです。これは今後の国際金融情勢にもよりますが、そういったものを中心として、それ以外に若干の低利のものが出る、こういうふうにお考えおき願いたい、こういうふうに思います。
  53. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 協定の十四条の「業務の原則」というところにですね、「銀行は、適当な事業計画を選定するにあたり、常に第二条(ii)の規定を指針としなければならない。」、こういうことが明確にうたってあるわけですね。それで、財源の使用は「もっぱら、第一条及び第二条に定める目的及び任務を実施するために使用されるものとする。」、こういうことをさらにつけ加えられている。  そこで、問題は、さっきもちょっと外務大臣にお伺いをしたんですけれども、そういう条件があるから、ことにこの任務の第二に「地域の全部若しくは一部又は一国を対象とする事業計画及び総合計画であって地域全体としての調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するものを優先させ、」となっておる。さらに後段には「地域内の小加盟国及び低開発国が必要とするところに特別の考慮を払うものとする。」、こうなっておるわけですね。ですから、私は今後アジア開発銀行が融資もしくは貸し付けていくという場合には、これを土台としてやられていくんだと思うんです。  ですから、ここでお伺いしたいのは、総合計画というもの、そういうものは一体他動的にあるいは自動的に銀行内部でやられてくるのか。もちろん、それは各国のいろいろな開発状況というのがあると思いまするから、そういうものとにらみ合わして貸し付けをしたりなんかすることは当然でしょう。そういうことになると、非常に私は貸し付けの範囲というものは膨大になってくると思うんですね。そういうことになりますると、先日柴谷先生が質問されたように、十億ドルの資本でもって、いまの疲弊こんぱいをした東南アジア諸国の参加国の経済情勢を好転させていくのにいいのかどうか。また、それだけの任務と役割りが適切に果たされていくのかどうか、こういうことについて非常に疑問を持つわけです。ですから、そういういわば貸し付けの基本的な計画、こういったものが今後つくられていくことは当然だろうと思う。その辺の作業がいつごろから二体始められるのか。あるいはまた、十億の資本で一体間に合うのか間に合わないのか。もうすでに米州開発銀行では資金不足で悩んでいる。貸し付けが盛んにふえている。これは当然だと思うんですね。アジアの場合はもっとひどくなる。そういうものに対応できる万般の施策がこれで十分なのかどうか。その辺の問題についてひとつお伺いをしたいと思う。  それから、政府から渡された資料によりますと、アジア開発銀行への加盟予定国と出資予定額という藤見があります。これなんか見ますと、一番最も援助を受けたいと私たちから見れば考えられる国があるわけです。たとえばラオスとか南ベトナムなんとかいうのは、最も代表的なものじゃないかと思う。そういうものが、この出資状況を見ますると、ラオスは四十二万ドル、南ベトナムは七百万ドルと、こういうことになっておるようですね。こういうことを考えますと、出資額が非常に低位である、しかし貸してくれというときにはその辺が重要になってくるんじゃないか。この辺に対して貸し付けと出資、これとの見合いですね、そういうものはどういう関係になっているのか、この辺についても御説明を願っておきたいというふうに考えるわけです。
  54. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 今後銀行がいかに発足してまいりますかということでございますが、まずテヘランで十月の半ばに総会をいたしまして、現在の予定では、十二月ごろ銀行の営業開始という行為をマニラでやりたいと、こういうふうに現在の準備段階では考えております。  したがいまして、それから貸し付け行為が始まるわけでございますが、先ほど申されましたように、もちろん、アジア開発銀行として、一つアジア経済協力といいますか、経済発展に対するイメージは当然執行部として持つでございましょう。しかし、一方において各国の開発計画というようなものにつきましては、やはり主権もあることでございますから、その制約というのは当然あるかと思います。それから、したがいまして、貸し付け計画というものは、むしろ金額のアッパー・リミットを考えまして、その中で、各国から適当なプロジェクトの申請があって、それを審査してそして貸す、こういうのが実際の状況になるかと思います。  それから、十億ドルで足りないのではないかということでございますが、これにつきましてはもちろん永久に私ども十億ドルで足りるかどうかという判断はしかねますけれども、御存じのように、経済援助と申しましても、アジア開発銀行だけがすべてではございませんので、世界銀行、IDA、あるいは最近はIMFも経済援助という、ことばは悪いかもしれませんけれども、いわゆる保証融資等もやっております。それから、二国間の援助もあるわけでございますから、当分はこういった資金でもってやっていく。その間に銀行がほんとうに信用のある貸し出しをするようになれば、外債の発行ということも可能でございましょうし、また特別基金という条項もございますから、これについての期待も持てるわけでございます。したがいまして、要は、まず発足して、そして実績をつくって、銀行がほんとうの役割りを果たす。ほんとうにこりいう銀行ができていいということになれば、私はやはり増資というようなこともある段階においては考えられないことはないと思いますが、しかし、いまそういったことは全然議論されておりません。したがいまして、以上のことが現状でございます。  それから、第三点の、出資額の低位な国があるのに、逆にいえば、低開発国であり、小加盟国に融資しろということとの関連でございますが、出資と貸し付けの対象ということは本来別個でございまして、日本が二億ドル出したから二億ドル貸せということはできないわけなんで、むしろこれは別個の問題としてお考えくだすったほうがよろしいかと思います。したがいまして、それはその国のプロジェクトの妥当性、そういったことを中心に考えて、今後運営されるものと期待しております。
  55. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 したがって、そういうことを私はいま質問したのですがね。問題は、その二条の「任務」の中で、「総合計画」云々ということがありますが、それは明らかに銀行側でそういう調和のとれた趣旨に沿う援助体制をやっていかなくちゃならぬ。ですから、そういうものの具体構想というものはいつごろから作業に取り組まれて、営業開始は十二月というから、当然その前に一定の構想は打ち出さなければならぬだろう、そういう内容、具体的なものがあれば、私はそういう内容について聞きたかったのです。  それから、もう一つは、ここに「低開発加盟国」、こういうものがあるわけです。これには特別考慮をしなければいけないということがあるのですが、こういう対象国は一体どういう国なのか、その内容を知っておればちょっと教えていただきたい。  それから、もうすでに協定の批准期日というものは九月末日ということになっていると思いますね、内容は。けさの新聞によると、相当数加盟があったようなことを言っていますが、いままで批准をした国は何カ国ぐらいですか、その辺。
  56. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 第一点の現在そういった構想があるかということ、あるいは十二月の業務開始までにそういった構想をつくるべきではないかということは、まさしくわれわれのきらっていることでございまして、私どもは現在は国を代表する委員会がこれをやっているわけでございます。まだ総裁もできていない。総裁ができまして、総裁がみずから自分のスタッフを使って、そういったことを当然ニュートラルな立場で考えるべきものである、こういうふうに考えておりまして、現在格間委員会に出ておる国も、全加盟国を別に代表しているわけでございませんから、あまりそういったものを現在の段階でつくるということは、むしろ銀行のためにはよろしくない。まあ、ほんとうの草案程度のものをつくるかどうかという問題もあろうかと思いますが、そういったものをつくるにしても、新しい執行部がそれに拘束されるということはいかがかということで、現在はそういったものをつくっておりません。したがいまして、これは十二月なり、総裁選挙があったテヘランの後に、総裁が一つの構想を出すということになろうかと思います。  それから、小加盟国、低開発加盟国という文字が一体何を意味しているかという御質問でございますが、議論の過程においてはそういった、これがどの国であるというようなことを、条約を作成する段階においては一度も議論されたことはございません。いわば比較的小さい国と低開発国加盟国が特別の考慮を払うべきだという精神規定だと、こういうふうに解しております。  最後に、批准状況の点でございますが、現在批准をしております国は、調べが古いものでございますから、その後の状況はちょっとはっきりわかっておりませんが、はっきり国会で承認して、私どもの知っておる情報では、七月中に寄託の見通しというのは、インドでございます。それから、ラオスは、七月七日までに国王がフランスに出発されるので、その前にそれに署名して、その後直ちに発送の予定ということが書いてございます。それから、フィリピンはすでに批准をしております。それから、ベルギーは六月末に国会承認済みで、通過後二、三週間で寄託ということになっております、それから、フィンランドは六月に国会承認済みで、批准手続を準備中ということで、そのほか国会の承認の終わった国を全部参考に申し上げますと、オーストラリア、インド、大韓民国、ラオス、マレーシア、フィリピン、ベトナム、西サモアはすでに批准寄託済みでございます。それから、パキスタン、ネパール、これも寄託済みでございます。それから、デンマーク、これは国会承認済みでございます。ドイツ連邦共和国、これも六月末国会承認済みでございます。イタリアは七月の半ばに承認の見通し、アメリカ、これは手続を完了しておりますが、批准はされておりません。以上のとおりでございます。
  57. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  58. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  画素に対する午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は零時五十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  59. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  午前に引き続き、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案、以上両案を一括して議題とし、質疑を続けます。  質疑の通告がありますので、これを許します。木村君。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず、総理大臣に伺いたいのですが、アジア開発銀行に関する協定及び関係の法律案は、前の国会でこれは成立しなかったわけですね。そのために今度臨時国会を召集せざるを得なくなった。それほどアジア開発銀行の問題が重要であると思うのです。そこで、まず、なぜ臨時国会を召集してまでこのアジア開発銀行関係の承認を求めなければならなかったか、そのアジア開発銀行の重要性についてまず伺いたいのです。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは木村君もよく御承知だと思いますが、アジア開発銀行の協定、それから見まして、有効に成立するまでに一応の期限を私どもは予定しておる。その場合に、日本が二億を出資する、こういう状態でありますから、日本協力といいますか、この協定並びに出資についての国会の承認が前提としてぜひとも必要なんです。そうでないと、所定の時期にアジア開発銀行が成立しない、こういうことになるおそれが多分にある。こういうわけで、特に御無理をお願いしたわけであります。私どもは、前国会におきましても、ぜひ成立させたい、かように思ったのであります。大体いま一息で成立するだろう、かように考えたものができなかった。それについてはそれぞれの理由があるようですが、そういうことを勘案いたしまして、ぜひアジア開銀成立、これを円滑にやりたい、こういう意味で、できるだけ早目に国会の承認を得たい、かようにお順いしたわけであります。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、アジア開発銀行がどうしてそんなに重要なんですか。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは国連のアジア関係のサーベー等によりまして、アジアにも開発銀行を持つのがいいだろう、これが東南アジア諸国を発展さす上において必要な機構だ、こういう結論に達したのであります。この点はもうすでに御承知のことだと思います。そういう意味で、さきにアジア開発銀行本店を東京あるいはマニラというようなことで、それをマニラに決定したというような次第もございます。関係各国が相談をし合って、そうして国連のすすめもあり、この種の運びになった、それから見まして、私どもはしごく賛成をしておる。賛成をしておれば、とにかく円滑に所定の時期に成立させたい、かように思っておるのでございます。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本アジア開発銀行設立に非常に積極的に行動しているようでありますが、いま総理の話を聞いておりますと、何か他人ごとのような話ですが、アジア開発銀行の目的は一体どういうところにあるのですか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私はもうアジア開発銀行の目的は十分外務大臣説明したんじゃないかと思うのですが、まだ説明しておりませんか。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理の口から……。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 外務大臣がお答えしたとおりであります。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理一体どういうふうに重要性を考えておりますか。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 同じ考え方でございます。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃないですよ。これはあとで質問しますが、総理はジョンソンと昨年一月に会談をしておるのです、東南アジア開発について。最初は日本政府アジア開発銀行設立については冷淡だった。アメリカだって冷淡だったのです。その後なぜ急にこのアジア開発銀行の創立に熱心になったのか。それだから、アジア開発銀行はなぜそんなに重要なのか聞いておるのです。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、もう外務大臣や大蔵大臣等からすでにお答えしたことだと、かように思っておりましたが、私について特にお尋ねがあったのであります。私は昨年ジョンソン大統領と、東南アジア諸地域についての経済開発についてお互いに話し合ったことは確かであります。その際に、私どもは在来から日本経済援助あるいは技術協力、こういう形において東南アジア諸地域の繁栄、安定、これらに寄与しておる、かように私は考えておりますので、そういう意味の話し合いをいろいろ続けました。特に東南アジアで一番問題ば貧困を克服すること、同時にまた、疫病その他医学的にもたいへんおくれておる、こういう意味で、そういう点について先進国である日本の果たすべき役割りがあるんだと、こういう話を実はしたのであります。この点ではアメリカジョンソン大統領も非常に私の所感について協力といいますか、共鳴といいますか、共感を覚えたようであります。  そういう意味で、まず相互に協力をして、一つは医療田、医学的な団の編成にひとつ協力しよう、こういうことであります。この点では、まず、アメリカにはあまり経験のないものですが、ライの問題、あるいは肺結核等について、また南方諸地域には特殊な病気もございますから、そういう面についての医学的な援助をしていくということ。それから、もう一つは、経済的な貧困克服のために、いかにすれば経済的な繁栄ができるか、そういうことをひとつ積極的に取り組もう、こういう話ができたのであります。しかし、これはアメリカ側が主張したというのではなくて、私のほうから特にその必要を要望したということであります。  そこで、アジア開発銀行の構想は、国連そのものにおきまして、国連がイニシアチブをとって、いろいろ開発銀行の設立についてあっせんをしてきた。ことに私どものほうから出ております渡辺君は、IMFあるいは世界銀行の理事等もしておりまして、これらの国連機構の開発構想については十分理解しておりますので、アジア開発銀行設立することについては積極的な意見を述べたわけであります。これがようやく実を結んだということになるのであります。ことにこの貧困を片づけるという場合に、しばしば言われるのでありますが、工業化になかなか熱心でありまして、しかし工業化することが必ずしも開発途上にある国に全部同じようにしあわせするとも思いません。だから、東南アジア諸地域について経済開発閣僚会議を過日開きました際も、工業化も必要だが、やはり産業のあり方としてまだもっと勉強する方法があるのじゃないかというような結論になって、だから、いずれ近く、農業、農政の面で、食糧増産等についてひとつ検討すると、この会議を開くということになっております。しかし、他の面におきまして、やっぱり商業ベースにおいて金融の円滑化を期することも必要でありますので、そういう意味で、このアジア開発銀行の構想が生まれた。そうしてこれは各国とも多大の関心を示しておりまして、その方向で設立についての準備を進めておるわけであります。  それらのことを私はジョンソン大統領とも話しましたが、しかし、東南アジア諸地域におきましては、何といいましても、日本アジアの主柱であり、また日本自身がそのアジアの先進国でもある、こういう立場で、こういうような場合こういうような問題では、日本自身が積極的な考え方で取り組むことが必要だと、かように思っておるわけであります。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アジア開発について総理は非常に積極的な意見を持ち、むしろ日本側から、総理のほうからジョンソン大統領に東南アジア開発等についてお話をしたと。総理は、本気に東南アジアあるいはアジア開発を、しかもそれも、アジア国民の利益になるような開発を、本気になってあなたはお考えになっておるのですか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) そのとおり、本気になって考えております。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、アメリカが一カ月二十億ドルの予算をもってアジアを破壊している点を矛盾に思わないですか。アジア銀行が十億ドルです。しかも、半分払い込みと。一カ月に二十億ドルのアメリカは予算を使って、いまベトナムを破壊しつつあるのですよ。そうして片一方で十億ドル、しかも払い込みわずか五億ドルでアジア開発ったって、これは全くナンセンスじゃありませんか。ですから、本気に総理アジア国民のための開発をお考えになるならば、アジア銀行をつくる曲に、アメリカに対して、なぜ、破壊をやめることを、三十億ドルの予算を使って破壊やめることを、総理は進言されなかったのですか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、平和に徹する、その基本的な態度をとっております。そういう意味で、一日も早くベトナム紛争が平静、平和に帰することを心から願っておるわけであります。だからこそ、いままでも、直接の当事者ではありませんが、アジアに位するこの日本として、アジアの地域でこの種の紛争があることは、これはたいへんなことだ、だから非常な関心を示しておりますが、一日も早く関係諸国が話し合いの場に、席に着くことだ、こういうことを提唱しているのもそういう意味でございます。ただいま御指摘になりますように、私どもはどこまでも平和、また自由を守り、そして繁栄への道をたどりたい、その意味協力をするつもりでございます。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうお考えなら、さっそくですね、このままほうっておけばですよ、一カ月たてばアメリカは二十億ドル使って破壊しているのですよ。これをいま直ちに——一カ月たてば二十億ドルお金が浮くのですよ。そうすればアジア銀行を十億ドルで設立する問題なんか、これは簡単なものです。もっと豊富な資金をもってアジア開発のために協力できるわけなんですよ。いまほうっておけば、アメリカはもう月に二十億ドルの予算といわれておりますが、これはどこまでほんとうかわかりませんが、とにかくそれだけの予算を使って破壊しているのですよ。月に二十億ドルずつ破壊して、年に二百四十億ドルの破壊をやって、いまここでアジ銀千億ドルでアジアの繁栄、開発のために尽くすったって、時がたてばたつほど破壊がひどくなるのじゃありませんか。全く矛盾している。だから、そういう意味で、ほんとうにアジア国民のためにアジア開発を考えるならば、政府は積極的にアメリカに、なぜこんな矛盾したことをやるのか、そしてアジア銀行に参加してそしてアジア開発、繁栄と言ったって、もうナンセンスではないか、そういう点をなぜ強力に言われないのですか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ベトナム紛争でアメリカが月二十億ドル使っているか、あるいは十億ドル使っているか、それは私の知ったことではございません。存じません。しかし、いずれにいたしましても、この戦争というものが、あるいはただいまの紛争が、これは多額の出費である、この出費をもしも平和的な方向に使うならたいへんな効果があがるだろう、かような意味の御指摘、私はそのとおりだと思うのです。だから、こういう事柄は関係の国として、いろいろないきさつはありましょう。とにかくこだわらなければならないような筋もあるでしょう。しかし、やっぱりですね、冷静に、また平静にものごとを考えて、やっぱり平和への努力をお互いにすべきじゃないだろうか、かように私は思います。また、そういう方向でありたい、かように念願しておるのでありまして、ただいま言われますアメリカを批判するばかりでなく、そういう意味で積極的に効果のあるように繁栄への道をたどり得るように、そういう金を使いたい、これは確かに私もそう思います。しかし、ただいまの紛争そのもののアメリカだけを批判しても、これでおさまるものでもない、かように私思いますので、とにかく関係国がお互いに協力して、とにかく平和が大事だ、平和のうちの繁栄それが最も望ましいことだ、こういうことでひとつ協議にかける、これを心から願うような次第でございます。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、総理はこのごろ言われることが非常にりっぱなことを言われるようになったと思うのです。たとえば、前に池田内閣を批判して、日本は高度経済成長をした、事実発展したが人間性が失われたから、自分は人間性を取り戻す政治をやるとか。ほんとうにアジア開発を考えると言いながら、アメリカアジア経済を破壊しているのです。いま農地も破壊しているでしょう。いろいろな施設を破壊しているでしょう。それに協力しているのじゃないですか、日本は。協力しておいて、そしてアジア銀行をつくってわずか千億ドル、日本は二値ドル出す、アメリカは二値ドルですよ。それに十倍も二十倍もの破壊を片一方でやっとって、それを放任しておいて、何がアジア銀行設立でありましょうか。それを矛盾感じませんか、総理は。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私はどうも、木村君の言われるように矛盾、こうは実は思わないのであります。まあ全部の関係国がとにかく協力することが必要だ、かように思います。まあ今回のアジア銀行にいたしましても、あるいは共産圏、あるいは左寄りの国、そういうものはこれに参加していない、こういうような御指摘があろうかと思いますけれども、ソ連は実際には加入したいようです。しかし、ソ連は参加しない、実を結ばなかった、こういうことであります。これは私はやっぱり参加してくれるほうが望ましかった。それを除外した、かようにきめてかかることはないだろうと思うし、また、いまのアメリカの場合にいたしましても、どれだけの戦費を使っているか、これは私つまびらかでありません。やっぱり南も使うでしょうが、北側においても使うだろう、こういうことを考えるわけであります。やっぱり北側のその出費も、平和への方向にその金が使えないか。金額は多少の差はありましても、とにかく相当消費的だ支出をしている、かように私思いますので、こういうことはいま木村君の言われるように、みんな各国とも平和が大事だ、民生を向上さすことがこれが真の幸福、また人類の、われわれの活動の目標だ、こういうところに気がついてくれば、お互いに協力の方法もあるのじゃないかと思います。  ただ、いまの現状においてはこういう紛争が現実に行なわれる、そうしてそれについてはそれぞれの国がそれぞれの意義を持っている。そのそれぞれの国が持つ意義を私はこの際にまあ批判しようとは思いませんけれども、それはむだだとかは申しませんが、ただいま申しますように相当の出費をしている。その出費自身が平和への方向に使われること、これが望ましいことではないだろうか。そういう意味では、私は北も南も一緒になりまして、そうして一日も早く話し合いに入る、こういうことで撃ち方やめをしていただきたい、かように念願するものであります。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理はおことばが非常にこのごろはりっぱになっていますね。しかし、言われることと実際とが非常にますます開いてきておるところに総理に対する支持率が減る根本の原因があると思うのですが、総理は、ソ連も入ったほうが望ましい、こう言われましたが、ソ連はなぜこれに入らなかったか、その理由を総理はどういうふうにお考えになっていますか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) どうも、どういうわけで入らなかったか、私はつまびらかにしておりません。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ソ連の「新時代」という雑誌があるのですね、「新時代」。七月一日号にユ・ポチカリヨフという人の論文が載っている。「ワシントンの新しい戦術」、この内容は、簡単に言いますと、「アメリカは民族解放運動と正面から対決することを避け、まず現地勢力を結集して、それを正面に立たせる方針に切りかえており、アジア太平洋理事会の特徴は、東南アジア条約機構や中央条約機構でアメリカが公然と指導的役割りを演じているのと違って、日本アメリカの筋書きで指導者となっていることにある。アジア太平洋理事会は、もしも日本がその結成に参加しなかったならば、日の目を見なかっただろう。日本はあすの日もわからない現地反動政権の結集の中核となりつつある。日本政府は、アメリカ政府の祝福を受けて、新しい反動的同盟の指導者の役割りを引き受けた。アメリカにとって日本の支配層との密接な結びつきは、この反共楽団が日本の指揮者のもとでアメリカ国務省の楽譜を演奏する保証になっている。日本アジア太平洋理事会加盟国の中では唯一の大国であり、大きな顔をすることができる。すでにアメリカでは極東での防衛の主要な重荷を日本に肩がわりさせることが語られている」、こういうアジア太平洋閣僚会議に対する評価であります。また、東南アジア経済閣僚会議に対する評価もそうであります。アジア銀行もその一連と見ておるわけです。したがって、ソ連がこのアジア銀行に加盟しないのは当然なんですよ。こういうソ連の認識なんです。  最近の一連の佐藤内閣のアジア政策に対してばそういうふうに見ておる。アメリカの片棒をかついでいると。それで、アメリカは表面に出ない、アメリカに踊らされておるのだ、アジア銀行もその一環だというように見ておるのです。ですから、この間椎名外務大臣にわが党の人が、ソ連が加盟しないか、こういう質問に対して、外務大臣は、なるべく加盟してもらえるように努力してみる、少なくとも信託基金には出資してもらえたらいいといり答弁をしているのです。全くナンセンスです。ソ連はいま申したようなことを「新時代」ではっきりと発表しているの、ですよ。そういうことを総理はおわかりにならないはずがないと思うのです。これはアメリカの片棒をかつぐ、しかもアメリカは表面に出ると新植民地主義というので批判があるから、アメリカは背後にいて日本を踊らせる、そういう性格を持ったものではないのですか、このアジア開発銀行というのは。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) そういうものではございません。御承知のように、日本は戦後は、もう過去の帝国主義的な、また軍国主義的な膨張政策はしないはずです。私どもは絶対にさようなことは一切忘れております。膨張政策はとらない。ほんとうに平和に徹した考え方でございます。したがいまして、先進工業国としての役割りを果たすという、それが国際連帯感のもとにおいて役割りを果たすということ、これが私どものいまの考え方であります。先ほどお読みになりましたソ連の考え方というもの、これは木村君自身別にそれを主張してはおられないと私は思いますが、私はこの際あらためて、東西の対立はあるにしろ、いずれの国とも仲よくして、そうして平和と繁栄への道をたどろうとする新しい日本の行き方にぜひとも御賛成をいただきたいと、かように思います。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまのアジア開発銀行についていろいろと世界的にも批判があるわけですよ。そういう点にかんがみて、私は、日本がこの際前向きに、ほんとうの意味で、さっきそういうふうに言われたアジア開発にこれは乗り出すチャンスだと思うのです。そういう意味で、またDAC等でも、日本がこれまで非常に消極的であったことに対しての批判があるわけですが、私はほんとうにそういう方面に努力しなければならぬという意味で、私は批判しながら質問しているわけなんです。日本の行き方を間違ったほうに行かれかしとして質問しているのではないのであって、これを言いかえれば、いまの方向で行けば非常に間違った方向に行くわけです。低開発国開発に関するアメリカの基本的な考え方が間違っておるのですよ。これは総理、十分御検討願いたい。大体、一番基礎になっておるのはロストウ理論ですよ。ロストウさんの考え方は前のダレスのあの反共と違うのですね。ロストウ理論はやっぱり軍事方に重点を置いておるのですよ。それで、アジア開発を妨げておるのは共産主義勢力だという考え方が根本的にあるのですよ、ロストウは。ですから、まず共産主役勢力の影響を排除することのみに重点を置いておるのですよ。そういう開発の考え方です、ロストウの段階的発展理論の背後にあるものは。ですから、この点は、アメリカのいまの低開発援助政策の背後にある基本的な考え方ですが、低開発国が共産主義勢力の撹乱によって発展がおくらされておるのじゃないと思うのです。前にも椎名外務大臣がよく言われましたが、長い間植民地であったことや、あるいはその後にできた政府が腐敗政権で、そして腐敗政権に外国援助していた。一向にそれが下へ浸透していないのですよ。あるいはまた基本的に、農業につきましても、制度的改革をやらないで、インドなんかいい例ですよ。あるいは資本主義的方法でインドの発展をはかろうとエカフェは考えたのですけれども、結局、資本主義的方法では低開発国開発は困難であることは、インドが如実に示したと思うのですね。その点十分に考慮されることが必要じゃないかと思うのです。私も前向きの形で質問しているつもりなんですが、そういう点について、総理、ひとつお答え願いたい。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ようやく木村君と私とが同じように意見が出てまいりました。私はこの際申し上げたいのは、アジア開発銀行についてアメリカがどう思おうとも、日本の考え方は先ほど来出て、明確になった。また、これを御賛成願うならば、アメリカがどう考えておるかということにはあまり重点を置かれないで、また置かれるにしても、そういう方向に日本が引き込まれないように、そしてもう政府も注意いたしますが、皆さんのほうからも、行き過ぎたとか、おまえのほうが追随だと、こういうような批判で引きとめていただいて、日本のほんとうの行き方、先ほど申します平和に徹した、また過去のような膨脹政策はとらない、この真意は十分信頼していただきたい。また、そこにこそ私どもは大いばりで誇りを持って東南アジア諸国とのつき合いができる、かように思っている次第であります。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このアジ銀につきましては、あとでまた外務大臣なりあるいは大蔵大臣にこまかく内容について付いたいのですが、総理質問する時間が少ないですから、アジ銀については総理に二つのことを要望しておきます。  一つは、片一方でアジ銀を通じて、あるいはその他のいろいろな方法によって、アジア開発国開発協力するといっても、他方においてさっき申しましたように大規模な破壊が行なわれておったのでは、意味ない。この点はアメリカに十分に積極的に、私はその破壊をやめるべきだと、破壊をしながら低開発援助はナンセンスだということを厳重に申し入れてもらうこと。  第二は、総理がいま言われましたように、ほんとうに前向きにこのアジア開発を考えるならば、もっと具体的に従来の援助のしかた、これは外務省から出ていますここに、いろいろ反省が書かれております。経済協力に関する基本的政策及び具体的対策で、従来はコマーシャリズムを中心にしてやっておって、いろいろな条件等についても非常に日本は諸外国に比べて不利な条件で援助をやっておった、こういうようなことについて根本的に再検討する必要がある、こう思うわけです。  次に、もう時間が少ししかございませんから、外為会計に関する質問を最後に二ついたします。  今度外為法の改正によりまして、御承知のように過去のインベントリーの金は全部なくなるわけです。一般会計にもこれを繰り入れる、あるいは韓国とのオープン勘定の処理ですね、これにも使う、それからアジ銀に出資をする、これで全部インベントリーの金はなくなっちゃうわけです。これがなくなりますと、今後の日本の財政ですね、一般会計の財源がそれだけ窮屈になるわけです。前にも大蔵大臣にも申しましたが、したがいまして、財源不足から公債発行等もいままでよりは多くならざるを得ないのですね。来年は八千億ないし九千億ぐらいの公債発行が必要だろうと大蔵大臣答弁しました。こういう状態が続きますれば、これは何と言われようとも、どうしたってインフレを助長せざるを得ない。  ところが、総理はこの間の本会議で妙な答弁されているのです。これは取り消す必要があるのですね。赤字公債は全然発行しておりませんと。そんなばかな話はないじゃありませんか。四十年度の二千五百九十億は、わざわざ財政法四条を特例措置を講じてまでも、赤字公債を発行したじゃありませんか。そうでしょう。しかも、その後はあの四十年度の歳入欠陥は税収あるいは歳出の削減によってあれは処理してないのです。したがって、四十一年度の七千三百億の公債発行の中には、四十年度で処理したあの二千五百九十億の赤字がやはり入っているんですよ。そういうふうに理解しなければ間違えますよ、日本の財政を担当していく上に。その点は総理は間違って解釈していますよ。赤字公債は発行しておりますよ。ところが、絶対発行しておりませんと言い切っておりますが、この点は間違いです。しかも、今後そういう考えで、来年、再来年、八十億、九千億公債を発行した場合には、どうしても私はインフレは避けがたい、こう思うのですが、どうですか。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 四十年度の公債発行、これは御指摘のとおり、これは特別の法律を設けたのでございますから、言われるとおりであります。あるいは私の答えましたことが正確を欠いているかもわかりませんが、この点では、いわゆる一般的に赤字を出す、四十年度のものというよりも、その他のものについてのほうに主眼があったように思いまするが、私の表現も不適当かもわかりませんが、いまこういう意味で正確な説明は木村君のお説のとおりであります。  今後のインフレ問題につきまして、これは大蔵大臣もたいへん心配し警戒しているところであります。インベントリーがたくなり、財源等が非常に窮屈になる、これは十分認めます。そこで、将来の問題について特に注意するつもりであります。ただ、私の用語が非常に不適当で、インフレーションということば、これは木村君のほうはたいへん専門的で、本まで実はいただいたのであります。私が言っておりますインフレーションは、いわゆる悪性インフレだ、こういう意味にひとつ御理解をいただいて、悪性インフレではないのだ、こういうことであります。まだ十分そしゃくもしかねておりますので、あるいは私の用語が不十分かと思いますが、その点は御了承いただきたいと思います。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでしたらわかります。悪性インフレだけがインフレのように解釈しやすいのですね。この間、いないところで言っちゃ悪いのですが、宇佐美日銀総裁も、あるところで、東洋経済を見ましたが、まだ換物運動が起こっていないからインフレじゃないなんと言っているのです。換物が起こったら悪性インフレです、そうでしょう。しかし、悪性インフレに至らない段階のインフレもいろいろ悪い影響を及ぼすのでありまして、それがやはりクリーピング・インフレ、忍び寄るインフレとかいわれるわけで、インフレでないと言い切ったのでは政策を行なうのに間違えるし、ケインズのように、デフレよりインフレのほうがより悪さが少なくて、自分は悪さの少ないほうを選ぶということなら、論理的にわかる。ところが、何でもかんでもインフレでないと、こう言い切られると、今後のいろいろな施策を講ずる場合、正しい施策にならない。こういう意味で、総理のお考えは悪性インフレをインフレと考える、悪性化していない段階はインフレでない——失礼ですけれども、もう少し私の本をお読みになって。……(笑声)そうですね、七十点くらい差し上げておきます、(笑声)そこまで読んでいただいたので。最後に、時間がございませんので、一点だけお伺いします。それは今後の景気の情勢です。これについては新聞等にもいろいろ載っておりますが、政府の考え方も総理の所信表明で述べられておりますが、しかし、これまで佐藤内閣は日本経済見通しについて二度間違っているんです。間違った根本原因は、経済の自律的回復というものに非常に期待を持った。たとえば日本銀行の金利を下げる。金融をゆるめれば、過去の不景気のときに自律的に景気が回復した。ところが、今回の不況に限って、さきに日本銀行の公定歩合を下げ金融をゆるめても景気はよくならない。前に福田大蔵大臣は、昨年下期には、秋にはつま先登りに景気がよくなると言ったが、つま先下がりに景気が悪くなった。それで積極財政をとった。ところが、その後、多少在庫が減ってきている、それから生産も少しふえている、それから卸売り物価も少し上がって、そして企業収益も多少持ち直している、そこで順調に景気が回復している、こういうふうにおっしゃるのです。ところが、いまの日本経済の特色は自律的な回復力を失っているところにあるのでしょう。そこに問題があるのですよ。そこで、景気を持ち直していくということで、政府が積極財政を実施して、しかも上期に重点的にお金を使ったということが一つと、それからベトナムの特需が出てきているということが一つと、それから政府がこんなに相模財政、物を買うのに、清算制限を解除していないのですよ、操短を。これが今後の問題になることは前にも私は指摘したのです。操短を続けながら政府が積極的に物を買い出せば、卸売り物価は上がるのは当然ですよ。そこで、私はこのままでいけば、自立的回復の段階にまで来ていないと思うのですよ。だから、順調に回復しているという考え方は、これはまた早計であって、自律的に回復してくるならば、これでもう次々と公債を発行しなくてもいいのですよ。ところが、自律的回復力を失っているから、来年また七、八千億も公債を発行する、再来年も発行すると大蔵大臣言われておるのですから、それを考えれば、まだ日本経済は自律的回復力を取り戻していない。だから、順調に景気が回復していると言うのは私は言い過ぎであるし、それはお考えを直さなければいけないのだ、こう思うのですが、私はもう私の質問時間はございませんから、これで質問終わりますが、その点について御答弁を願いたい。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私はやや違いますが、まあ大体今回の不況がたいへん深刻なものであった。だから、相当の時間を要する。それで、その後どういう方向に行っているかというと、まあ私どもが想像するように、輸出が大体よろしい、また生産状況も上がってきた、在庫のほうも減っている、消費もだんだん伸びている、機械受注もややふえてきた、こういうような指標を見まして、大体順調といいますか、あるいは、とにかく上向いておる、遅々としてはおりますが、まあ大体私どもが想定したような数字が出てきている、かように実は思って、その表現が過日の所信表明にもなったと思います。  そこで、問題は、こういうところで、いま御指摘になりましたように、ことしの需要は、ただいま予算的な財政的なもの、これを特に使ったのであります。そういう意味では、いわゆる民需が活発にはなっておらぬじゃないか。また、特需はこれも朝鮮事変のとぎのような数量ではございません。大体私どもがいま見ている特需の数からいえば、まあ半分以下じゃないか、かように思っております。こういうものの中がどれだけベトナムに行っているか知りませんが、特需がささえた景気だというようには私は考えておりません。そういうこと等を見ましても、御指摘になりました一番問題は操短、いわゆる生産調整をいまなおやっている、そういう部門が相当ありますから、したがって、現在の景気動向は、これは楽観を許さない、これだけは私どももさように考えております。もう順調だ、すべてが上向いたというので手放しで喜んでおる状況ではありません。しかし、私が見ている数字的な資料その他は、私どもが大体予想したとおりの数字が出ている、これなら方向はよろしいのじゃないか、かように思ったような次第であの所信表明となったのであります。しかし、専門的に見れば、政府は楽観しているのじゃないか、こういうような御批判があろうかと思います。楽観はまだしておるわけじゃございません。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  90. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 中尾君。
  91. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、時間がありませんので、要点だけ総理にお伺いをいたします。  東南アジアの食糧事情が逼迫していも、そういうことに対しましてはわれわれもよく認識をいたしております。したがって、低開発国援助ということにつきましては、これは異論もありませんし、まあ当委員会におきましても、その点だけであれば大体了解もしているように思うわけでありす。ところが、問題は、先ほどからも委員会の論点になっておりますように、アジ銀に対して米国が二億ドルも出資をしている。しかも、その資本構成の面から、当然これは表決権、投票権等のことから、どうしてもアメリカに牛耳られるおそれがあるのじゃないか、あるいはまた賀し付けの対象が平和目的にのみ限定されていないようなふうにもとられますので、こういったようなことからベトナム援助に通ずるのではないかということが問題になっておるわけですが、わが党は本会議におきましても賛成をいたしておりますが、非常に重大な問題でありますので、あらためて総理からその点につきましてはっきりとひとつ明快な答弁をお願いしたいと思います。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) このアジア開発銀行の構想というものは、これが実は初めてのものではありません。米州にも一つありますし、またアフリカにおきましてもアフリカ開発銀行がすでにあるわけです。そうしてそういうものがいわゆる域外の、区域外の各国から援助しでいるところもあるし、援助していないところもある。そこで、ただいまの、アメリカがこれに参加した、これはいわゆる域外からの参加であります。したがいまして、アメリカばかりじゃなくて、今回はドイツその他もこれに参加しておるわけです。だから、域外の国をみんなシャットアウトして開発銀行が十分の機能を達するとは私は考えません。いまの国際連帯観から申しまして、この域外の国もやはり参加してくれることがよろしい、かように思います。  問題は、それじゃ貸し付けその他の問題が、ただいま御指摘になりましたように、あるいは軍事的に使われる、あるいは政治的に使われるとか、こういうようなことがあってはならないと思います。この点はアジア銀行の設立の協定にちゃんとありまして、その貸し付けの対象、これは政治的であってはならない、こういうことで、ただいまの御懸念、御心配がないよりに規定されておるのであります。
  93. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、時間がありませんので、次の問題に移ります、  先般行なわれました日米合会委員会におきまして、対中共貿易が話題になりました。その場合に、日本政府側といたしましては、LT貿易の延べ払いにつきましては、かなり通産大臣外務大臣等が強調をしておられたことを新聞紙上で見ております。そういうことに対してアメリカのほうは反対であったようなことを聞いておりますが、その間のいきさつ、模様等につきまして、お伺いいたします。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 中尾さんもこれは御承知だと思いますが、アメリカ日本中共貿易についての考え方が非常に違っておるのであります。私が昨年ワシントンを訪問いたしました際に、この貿易の面でははっきり違っておる。日本は積極的に政経分離の形において貿易をする、経済交流をする、あるいは人事交流もする、かように申しておりますが、アメリカはこういう点には触れておらないのであります。したがいまして、このジョンソン大統領と会っての共同コミュニケにも、日本態度だけははっきりさしたつもりでありまして、それで、政経分離の形において日本はこれをやるのだということをアメリカも承認したという形です。  ところで、今度の京都の会談におきましても、もちろんその基本的な食い違いはあります。しかし、最近になりますと、アメリカの国内には、中共貿易を何とかして始めたらどうだ、こういうような考え方があることは先刻御承知のとおりだと思います。したがいまして、アメリカ自身も過去においていわゆる封じ込め政策といわれておる、これがただ単に軍事的な封じ込めだけでなくて、経済的にも封じ込めるのだ、そして経済交流をやらない、これがアメリカの姿であるようにいわれますが、必ずしもそうではない。どうも封じ込め政策というものは、最近はアメリカにおきましても封じ込めではないのだ、まあこぼれるというか、こぼれるのを防ぐといいますか、外へはみ出すのを防ぐ、こういう意味なんだ、こういうように説明を変えておりますが、私はこの点ほんとうははみ出すのを防ぐというほうが本筋じゃないかと思います。前の封じ込め政策と訳したのがやや積極性を持つ、これは訂正されるのじゃないかと思います。したがいまして、アメリカ自身の行き方もあろうかと思いますが、しかし、まだアメカとすれば西欧並みにはこれを考えていない。西欧の諸国のうちの中共を承認している国から申せば、積極的に貿易を拡大していくわけであります。アメリカ自身もまだ承認はしておりません。そういう意味で、西欧並みではない。また、日本立場一体どうなのかというと、アメリカと西欧並人の中間くらいだ、こういったほうがわかりいいのではないかと思います。承認はしておらない。しかし、アメリカのように貿易までもやらないような形じゃなくて、日本は積極的に政経分離の形で貿易をやるのだ、かように申しておりますから、この点では誤解のないように願います。  また、ココム等の制限につきましても、いろいろ実際問題として、だんだん品種や品物も変わるようでありますから、最近その制限が不要になったようなものについては、ココムの会議等において日本も主張するつもりでおります、その制限解除について。  それから、さらにまた、いわゆる輸銀を使うか使わないか、こういう問題が過日も議論されたのであります。まあ、もともとこの種のことは、日本が独自の責任において考うべき事柄であると私は思います。どこの国が承認したからそれで日本がやれる、こういうようなことじゃなしに、これは日本が独自の立場できめるべき問題だ、かように思います。ただいまは輸銀の問題については慎重に問題を検討しておる段階であると御了承いただきまして、いわゆるケース・バイ・ケースというような発言もされておりますし、また具体的にそういう問題に当面もしていないからということだと思いますが、慎重にこの問題も前向きで取り組んでいく、かように御了承願いたいと思います。
  95. 中尾辰義

    中尾辰義君 慎重で前向きに対処するということは、結局輸銀使用を認めてもよろしい、こういうふうに了解してよろしいですか。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま西欧話国の例を見ましても、五年以上の延べ払いをしておる国はないようであります。したがいまして、日本の場合、承認する西欧並みというわけにはいかない、かように思います。この点が一つの問題だろう。その他の点においてどういうような扱い方をしますか、これは具体的な問題について検討をするということで御了承願いたいと思います。
  97. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 瓜生君。
  98. 瓜生清

    ○瓜生清君 時間がございませんので、二つの問題について御質問いたしたい。  一つは、きのうも大蔵大臣にちょっとお尋ねしたのですけれども、五月の終わりにインドネシアのハマンク・ブオノ副首相が来まして、緊急経済援助の要請があったと思うのですが、事務レベルで調整がつかずに、最終的には総理大臣の裁断によって三千万ドルという数字が決定したわけでありますが、どういうふうな政治的判断に基づいてそういうふうな金額がきまったのか、できれば教えていただきたいと思います。  もう一点は、政府は今後日本が先進国の一員として後進国に対して国民所得の一%を経済開発のために使うという意図を明らかにされたわけでありますけれども、それがほぼ実現する時期を総理としてはいつごろとお考えになっておられるか。  その二点について御質問をいたします。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) インドネシアに対する緊急援助三千万ドル、これを総理裁断というのはややことばが強過ぎやしないかと思いますが、閣僚それぞれが相談をいたしまして、そうして最終的に緊急援助としてはこの程度が必要だろう。しかし、インドネシアの経済再建、あるいは国際収支等の関係から見まして、さらにもっと積極的な援助を必要とする。これはまあ日本だけではなくて、各国集まって国際的に協力すべき問題だと。その場合に一体どのくらいの金が必要なのか、まあ大体二億ドル程度だといわれておりますが、そういう場合に、二億ドルといったときに、日本がどのくらい各国と相談し合って日本援助をきめたらいいのか。まあ大体日本にインドネシアが期待するのは五千万ドル程度だ、かようにいわれております。こういう、その五千万ドルのうちの緊急援助としての三千万ドル、まあその辺が適当ではないだろうか、こういうことで三千万ドルがきまったと、かように私は覚えておるのであります。これはいわゆる総理裁断という意味ではございません。私はあまり、経済の事情に構いのですから、それぞれの専門大臣が十分補佐してくれて、ただいまのような結論になったと思います。  次に、国際協力の問題であります。DACで、国民所得の一%、そこまでは先進国として協力するのが適当なりと、こういうような申し合わせができて、日本の場合におきましても、これは工業先進国としてそれを果たしたいという気持ちであります。しかし、現状におきまして、まあことしからすぐにそうできるものではございません。ただいま〇・五%になるかならないか、その辺を大体オーバーしたり、あるいはその内輪であったりする程度の援助でありますから、したがいまして、これはまあできるだけ早くそういうように実現したいということでございますが、今後数年はかかるのではないか、かように私は思います。
  100. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 須藤君。
  101. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は総理に対しまして、安保条約につきまして一、二点質問をしたいと思います。このアジア開銀安保条約と関係がないようにお考えになりますかわかりませんが、決してそうではないのであります。ひとつ総理から明快に答弁をしていただきたいと思います。  わが日本共産党は、日米安保条約アメリカ帝国主義日本独占資本の侵略的軍事同盟の条約であり、日本日本人民意思に反してアメリカ帝国主役のたくらむ侵略戦争に巻き込む危険な条約であるということを、これまでずっと指摘してきました。このわが党の主張に対しまして、あなた方は一貫してこれを常に否定した。しかし、いまやあなた方の答弁が全く意識的なうそであり、国民に対する欺瞞であったことが、相手国であるアメリカラスク国務長官によって明らかに今回されたわけです。すなわち、去る七日、ラスク国務長官は京都における椎名外相との共同記者会見で、次のようにはっきりと言明しております。第一、アメリカ日本、韓国、国府、タイ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドと相互防衛条約を結んでいる。つまり日米安保条約は、アメリカアジアの反共国家と締結している条約と同じ相互防衛条約であると、はっきり言明しているのです。第二に、したがって、日本アメリカは軍事的な同盟国であり、アメリカはこの同盟条約発動のためには核兵器の使用を含めて手段を問わない、こういうふうに述べております。一体これはどういうことなんでしょうか。事態は明瞭だと思います。すなわち、日米安保条約は決して日本の安全を保障する条約ではなく、反対に、日本が同盟国としてアジアにおけるアメリカの侵略と戦争協力、加担することを意義づけている軍事同盟条約であることが端的に証明されたものであります。  私はここで佐藤総理質問しますが、あなたはこのラスク国務長官の言明を否定するのかどうか。もちろん、私はラスク長官発言があったからというだけで質問しているわけじゃないのです。わが党は一貫してこのことを指摘しております。それをたまたまラスク長官が端的に言明したにすぎません。この点について佐藤総理のはっきりとした答弁を求めたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 須藤君から、日米安全保障条約の性格についての御議論がございました。ただいまは質問の形はとられましたが、大体共産党の御意見を聞いたような気がいたしております。私は、日米安全保障条約に対する認識、これが共産党と私どもとは根本的に違っておる、この一事をはっきり申し上げてお答えにいたします。もしも共産党の諸君が私どもと同じように、日米安全保障条約は防衛的なものであって、わが国の安全の確保に寄与しているし、同時に、アジアにおける戦争がないというか、戦争抑止の効果があるということを認めるならば、ただいまのようた御議論はないと思います。  ことに私どもの主張を、国民に対しましてうそと欺瞞とで一ぱいだと、これだけは私はどうしても黙って聞くわけにはいかない。私どもうそは申しておりません。前総理ではありませんが、絶対にうそは申しません。また、欺瞞をいたしておりません。これはどこまでも日米安全保障条約は防衛的なものでございます。  そこで、ただいま御意見として、あるいは答えなきゃならぬかと思います。ラスク長官の京都における談話であります。京都における談話は、私はこれを共産党のただいま読み上げられたような主張で解釈してはいかぬと思います。ラスク長官は、日本との間に日米安全保障条約がある、もしも日本攻撃を受ける、そういうようなことがあれば、アメリカは自分たち義務を果たしていくんだと、こういうことを言っただけでありまして、私は、ただいまのような認識、これはどうも基本的な認識が違っておるんですから、議論がこう行き違うというか、これはどうもしかたないように思います。
  103. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中上〕
  104. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記起こして。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣にお伺いしますが、最初、このアジア開発銀行、これは御承知のように、国連の機構であるエカフェで取り上げられて、それからこのアジア開発銀行がだんだん具体化するようになったことは御承知のとおりなんですね。ところが、いろいろこの経過を資料によって調べてみますと、最初日本はこのアジア開発銀行設立に対して非常に冷淡であった。ところが、その後積極的になったというふうにいろいろな記録には記されておるのです。その経緯を具体的に伺いたいのです。最初はなぜ冷淡であってですよ、そしてその後急に積極的になったのか。  たとえばですよ、昨年の五月の中旬に日本を訪問したウ・ニュン事務局長、この事務局長は、佐藤総理大臣、椎名外務大臣、それから田中大蔵大臣、櫻内通産大臣等と精力的に会見して、日本の積極的参加を事あるごとに要請して回った。ところが、日本がいままで開銀設立についてそれほど乗り気でなく、出資金についてもはっきりした約束をしていなかったこと等から、非常に不満を漏らしているのですよね。そして一昨年十月のこの専門家会議に渡辺武氏を派遣したときも、これはあくまでも事務的討議の段階として、極力静観的態度をとっていた。そこで、このウ・ニュン氏は、あの当時の日本の冷たさを批判して、日本は工業化が進むにつれてアジア人種ではなくなってきたと、強い口調で批判していると、こういうのですね。ところが、その後非常に日本はこの設立に積極的になっているのですが、その経緯がよくわからないのです。最初は非常に冷淡であって、せっかくウ・ニュン事務局長が来て、そしてこの設立参加に奔走しておったのに、日本は非常に冷淡だった、こういう経過ですね、これは記録にあるのですけれども、一体事実なのかどうかですね。そしてそれが事実であるなら、どうしてそういう冷淡であったのがその後積極的になったのか、その経過を知らしていただきたいですね。
  106. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  107. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記起こして。
  108. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本は別に、当初冷淡とか、そういうことじゃなしに、この問題については終始相当な熱意をもって推移を見ておったわけです。ただ、やはり自分だけ、こうひとりひょろひょろ出るということは、あらゆる場合においてこれは考えものでございますから、やはり他の仲間の顔色を見て、そしてこれならまあいけると、こう思えば、今度はいよいよ最後に決意をして堂々と出ると、こういう態度をとったにすぎないのです。そういうふうに聞いております。
  109. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  110. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記起こして。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は率直にいいまして、最初——これは私がいま申し上げた議論根拠は、山本優という人が書いた「エカフェの推進するアジア人の銀行」という、こういう論文があるのですよ。これは経済発展協会から出た「アナリスト」という雑誌に害いたのですが、これはかなり正確に私は書いていると思っている。山本優という人はどういう人か知らないのですけれども、この人の書いたところによりますと、いま申し上げたように、最初は日本はそんなに積極的でなかったんだ、こういうふうに書かれています。その後積極的になったことの原因として考えられるところは二つあるんじゃないかと、こう思うんです。  一つは、DACの会議外務大臣が出席されまして、そこでかなり、何というか、刺激を受けた。これが私は事実じゃないかと思うんです。一つは、さっき戸田君も触れましたが、昨年の七月二十二日から三日までに、OECDのいわゆる上級会議が開かれて、そこに外務大臣は出席されておりました。そこでいわゆる低開発国に対する援助の条件の緩和、それから援助拡大の努力という、二つの勧告が行なわれておるわけで、この中で、かなり積極的に援助条件の緩和についての議論も行なわれ、それから勧告も行なわれているんです。それに対して、しかし、ドイツ、日本は当初、援助条件は援助国の事情、プロジェクトの性質などにより異なってしかるべきであると主張して、一律の条件緩和目標設立に反対した、こういうこともこの記録にあるわけです。かなりここで議論はされたわけですね。この内容を見ましても、かなり積極的に、低開発国援助に対していわゆるDACからいろいろ批判を受けたと思われる節があるんですよ。それが、初めはあまり積極的でなかったけれども、積極的にならざるを得なかった一つ原因ではなかったか。  それから、第二の原因は、さっき総理大臣にも質問したんですが、昨年一月、総理大臣ジョンソン大統領と会って、それで東南アジア開発についてかなり議論をした。総理は、ジョンソンのほうから言われたよりも、むしろ自分のほうが積極的に東南アジア開発についていろいろ意見を述べたと言われていましたが、いろいろその後の記録を見ますと、ジョンソン・佐藤会談以後、かなり積極的にアジア銀行設立措置が進んでおるように見受けられるのです。  この二つが、突然変異ではありませんけれども、かなり積極的にアジ銀の設立について日本協力するようになった原因ではないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  112. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、それはさっき申し上げたように、もともと日本としては国際的な発言力の基調といいますか、よりどころはやはり経済協力というのにある、こういう考え方でアジア銀行の問題についても終始注意を怠らなかったのでありますが、だんだん周囲の状況が相当熟してまいりましたので、日本としてもこれならほんとうだというので乗り出した、これが真相でございます。   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕  それはDACの場でいろいろ問題が起こり、その場合にまたいろいろな観察をすることもできたわけでありますが、また佐藤・ジョンソン会談で低開発国、特に東南アジア経済協力等について話が出たことも、これは事実であります。しかし、以上二つの場で啓蒙された、そういうふうにごらんになることは適当でないと私は考えております。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは事実問題ですから、議論してもしようがないと思うのです。  次に伺いますのは、いわゆるジョンソン構想ですね、昨年の四月ですか、ジョンソン大統領がボルチモア演説で、東南アジア開発のための十億ドル構想を発表した。このジョンソン構想とアジ銀との関係ですね、これは関係が私はあると思うのですが、いかがですか。
  114. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはたびたび同様の御質問がありまして、申し上げてあるとおり、ジョンソン構想以前からの問題であって、時間的にもジョンソン構想によって急に浮かび上がってきたというような問題ではございません。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、アジ銀にジョンソン構想が反映されておることは事実でしょう。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アジ銀の成立とは関係ない。アジ銀の設立の動機とかあるいはその経過において、ジョンソン構想に刺激されたとか、あるいは啓蒙されたとか、そういったようなことはございません。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が質問しておりますのは、アジ銀のいろいろな業務とか、あるいはアジ銀に対する出資とか、そういうものを通じてジョンソンの東南アジア開発構想というものが反映されておるのじゃないかと思う。だから、ジョンソン構想がアジア開銀の中には入っておるのじゃないかと、こういうことを質問しておるわけです。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはどうも、ジョンソン構想というのは、東南アジア開発に関して、はっきりした現地からの盛り上がりを待って、そういうことがあればこれに十億ドルの資金を出す用意ありという構想だけを言ったのです。その十億ドルのジョンソン構想というものはまだ実現していないのです、一文も。ところが、アジ銀の二億ドルというものはそれとは別になっておると私は考えております。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アメリカがアジ銀に二億ドル出しておる以外に、信託基金として一億ドル出しております。私は、ジョンソン構想の千億ドルのあの中の一部が信託基金として出資されておると、こう理解しておるのです。その点いかがですか。
  120. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さあ、それはどうも私も確かめておりませんが、まあ十億ドルという構想を出しておいて、そうしていつの間にかなしくずしに、あれもあれだった、あれもあれだったと、こういうようなことじゃ、まるで何を言っておるかというようなことになりますから、それから出す場合には、やはりはっきりしたけじめがついていないと、どうもジョンソン構想というものは雲みたいなものだということになる。やはり千億ドルの自分の構想というものは、部分的にはこれが一つのそのあらわれであるというふうに断わってもらえば非常にはっきりしますけれども、何のことなしに、あとからあとから、あれもそうだった、これもそうだったということになるのじゃ、それはちょっと世の中をごまかしたようなことになりますから、どうも適当でないと思いますが、まあそんなことをするはずはないと私は考えております。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、もし外務大臣が言われるようなことであると、これは重大なんですよ。なぜみんな多くの委員が入れかわり立ちかわりこのジョンソン構想のことをアジ銀との関連で質問するかといいますと、いわゆるジョンソン構想というのはよくアジア・マーシャル計画とか別名で言われているわけですよね。これはヨーロッパのこのマーシャル計画が果たした役割りをこのアジアにおいて果たさせるというのがいわゆるジョンソン構想、アジアのマーシャル計画といわれるものであって、これは非常に政治的な性格を持っていると見られている。そのジョンソン構想がアジア開発銀行に部分的にも具体的に反映されているということになると、アジ銀の性格というものがそこで何か非常にすっきりしない、外務大臣が言われるように。そこで質問しているわけなんです。ところが、これからアジ銀の総裁に候補として予定されている渡辺武氏は、この信託基金というのはやはりジョンソン構想の一部であるということを言っているのですよ、はっきり。それですから、質問しているわけなんです。  それは、渡辺武氏が「アジア開銀構想のその後の進展」という題で、これは昨年の八月二十七日に霞山会館でこの報告をされているわけなんです。この報告によりますと、こういうふうに言われているのですね。このアジア開発銀行の普通の出資以外に、「信託基金あるいは特別基金という名前になるかもしれないが、そういうものを考えている。これは出資金以外に、アジア開銀を通じて一定の目的のために、拠出する場合、その条件なり目的がアジア開銀の大きな目標に違反しないものである限りは、アジア開銀がその都度審議をして、これを受け入れて支出してもいい。つまり別経理として、そうした資金を受け入れる窓口が開けている。これに対して最初に申し出があったのがアメリカの東南アジア開発基金である。このアメリカの提案は東南アジアだけに限っているので、いわゆるジョンソン構想の一部である。」、はっきりこう言っているのです。それで、これから総裁になろうとしている渡辺武氏がはっきりとこういうことを述べておられるから、私は質問している。そうなると、この信託基金の性格が非常に問題になるのでありまして、アメリカがこの信託基金を通じてジョンソン構想をそこへ反映させてくる、こういうふうに考えているとわれわれは見るわけなんです。その渡辺さんがはっきり言われているのですから、私がこの速記を見まして、なるほどそういうもんか、それならばみんないわゆるジョンソン構想とアジ銀との関係についていろいろ疑問を持つのは当然ではないか、こう思ったのです。その点いかがですか、大臣。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕
  122. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジョンソン構想を実行する上に、十億の用意ありということを言った場合に、これを実行する場合にどういう手続をとるのか、私もよく研究しておりません。ただ預金を持ってくるように十億持ってくるわけにいかぬだろうと思う。やはり国会に相当説明をして、そうしてこれを実行に移すということになると思うのですね。ですから、信託基金の一億ドルと、こう言われておりますが、それが一体どういう経路で、どう説明をつけて国会の承認を得たものであるか、そういうことをよく研究してみないと、どうもはっきり私は言えないような気がいたしますが、渡辺君はもうすでにそういう研究をしておるのかもしれません。それはいまここでは何とも申し上げることができません。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこが一番いま焦点になっているんじゃありませんか、アジア銀行の性格について。この信託基金の問題がなければ、わりあいに条文だけから見ますと疑問を持たれないような形になっていますよ。特別基金も出資の一部だから、ソフトローンとして貸し出されているのであって、そこに信託基金というものが出てきたので、これとジョンソン構想と関係があるのだということを総裁になろうとする渡辺武氏がはっきり述べている。それで、いま一番問題になっているのは、アメリカがアジ銀をやはりてことして、そうしてアジア経済侵略の道具とするのではないかということのいろいろ批判が出てくる、そういうことで性格が問題になっておるのですよ。一番そこのところが具体的な焦点になっているのですよ。アジ銀の性格についての疑問点がそこへ出てくるのは、具体的にはこういう点だと思うのですよ。この点をもっと明快にしておかないと。そこがあいまいであるということになると、いつまでも疑念が残るわけです。
  124. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のように、この信託基金はまだ実現しておりませんし、今後どうなるかもわからない。まだ、アメリカのほうで二億ドルの出資金のほかに、信託基金として何がしか拠出する用意ありというようなことが言われているだけの話で、まだこれも構想の段階を脱しないもののようでございます。でありますから、したがって、アジ銀としてはこれを受けるか受けないかもまだはっきりしない。まだ出されていないものですから、本物が出ていないですから、受け取っていいものやら悪いものやら、判断もつかない、こういう程度のものでございます。しかし、二億ドルの出資はジョンソン構想の内訳ではこれはあり得ないと私は考えます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、どうもあれですね、たいへんなまた重大な御発言だと思うのですよ。これまで審議してまいりまして、信託基金というのにアメリカが、二億ドル出資以外に一億出すということが前提でみんな審議しておったと思うのですよ。信託基金というのがある。それから、これは渡辺さんが講演して、もっとまだ詳しく説明しているんですよ。この説明を聞けば、そんなあいまいなものではないですよ。渡辺さん非常に説得しているのですよ。そうしてそんなあやふやなものではないと思うのですよ。そんなあやふやなことでいいんですか、外務大臣。そうなると、これは何だか振り出しに戻りますよ、この審議はね。この点もう少しはっきりさしてください。何だかアメリカが出資するのか出資しないのかさっぱりわからぬというような——もし必要ならば、私はまだここにありますから、渡辺氏の……。
  126. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ただいま木村先生のおっしゃいましたのは、渡辺氏がその当時申し上げてあるとおりでございます。というのは、先ほどお読みになりましたように、アジア開銀の信託基金というのは、制度としてそういうものを受け入れられる、こういう条文だけができておるわけでございまして、したがいまして、先ほど前段でお読みになりましたものは、アジア開銀が銀行の目的にそぐうものであるならばこれを受け入れることができる、ただこういうことを非公式に——非公式か公式か知りませんが、国内でアメリカが言ったということも事実のようでございます。しかし、まだ銀行も設立しておりませんし、一体その一億ドルの信託基金というものを何に使うのか、そういったものをアジア開銀ができましてから、それが銀行の目的に沿うものであるかどうかを思惟して、しかる後に受理する。ただ、アメリカのほうは、信託基金の予算措置はまだいたしておりません。それが現状でございます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 渡辺氏がそのいきさつについて、こう述べているのですよ。このジョンソンがいわゆるジョンソン構想を発表しまして、「それに関する大統領の特別顧問として、前世銀総裁のブラック氏が任命されたという話が新聞に出た。」、そこで、渡辺氏が言うには、「私は以前にアジア開銀問題でブラック氏と話をしたことがある関係上、同氏に手紙を出し、もしジョンソン構想でアメリカ資金を提供する意志があるならば、できるだけアジア開銀を通じて出すようにしたらどうかと要望した。ブラック氏は返書を寄こし、アメリカ政府を説得して、アジア開銀に出資させることになったといってきた。」、で、その後に、六月初めに東京都債の交渉のために渡辺氏が行っているわけです。渡辺氏が「その後六月の初めに東京都債の交渉のために、またアメリカに行く機会があったので、ブラック氏をはじめアメリカ政府の関係者とも会って、アジア開銀問題について再び意見を交換した。アメリカ側の考え方でかえてもらった点もあるが、大筋において意見が一致した。」、こういうふうにあります。そうしますと、あいまいなものでなく、渡辺氏がブラック氏を説得して、そうしてジョンソン構想で資金を出す意思があるならば、それをアジア開銀を通じて出してもらう、そうすると非常に性格が違ってくるのですよ。アジ銀エカフェ全体の地域についての開発資金の貸し出しをやるでしょう。ところが、ジョンソン構想は来雨アジアだけですよ。地域を限定しているのです。そこで、異質なものでないけれども、そこにコーインサイドしておりますですね。エカフェの範囲とジョンソン構想とは重なっているところがありますけれども、しかし違うものなんですよ。しかし、それをアジ銀を通じてジョンソン構想の資金を出資したらどうかというので意見が一致した、こういうことになっているのでしょう。そうでしょう。だから、そこでそのアジ銀をてことしてですね、いわゆるジョンソン構想をそこで実施する、そういう仕組みになっているということをわれわれは問題にするわけなんです。
  128. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) それは渡辺さんが、おそらく速記かなんかのほうで、はたして渡辺さんがそうおっしゃったかどうかはよく私も存じませんが、意図するところを想像いたしますと、渡辺さんがなぜそういうことを言われたのかということを想像いたしますと、渡辺さんの頭の中には、アジア開発銀行というのは、けさの御質問にあったように、十億ドルという資金では非常に足りない、こういう考えがまず渡辺さんの頭にあったのじゃないかと思うのです。それから、もう一つは、さればといってアメリカに出資をよけいさせるということになりますと、これこそラテンアメリカ銀行のように、アメリカがドミネートする銀行になる。日本の財政力からいって二億ドル以上のものを出せないとすれば、アメリカは二億ドル以上は出すべきではない、そういうようなこともあったのじゃないかと思います。  したがいまして、アメリカが、ジョンソン構想もよく知りませんが要するに東南アジアなりアジアなりに資金を出すとするならば、アジアのためには非常に、木村先生のお話によれば政治的だというお話ですが、アジア開銀というしっかりした機構のもとにアジア人が理事に入りアジア人が総裁になってやる自発的な機関でございますから、そういったものを通じてやることによってほんとうの意味アジアの安定と福祉に貢献するような使い方ができるという、いわゆる資金のソースといいますか、資金の源としてそういったものを、もしアメリカがせっかくそういう気持ちがあるならば、出したらどうかと言われたのじゃないかと思いますが、これは全く想像でございますので、渡辺顧問がはたしてそういうことを言ったかわかりませんが、そういったことではないかと思います。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあその点はそうした記録があるのですから、これをよくいまごらんになってみてください。さっき私が申したとおりなんで、これを読んで率直に感じたことは、結局、もちろんアジ銀はエカフェを中心として進められてきたのですよ。その後ジョンソン構想というものが出ているのですね。ですから、アジ銀にジョンソン構想の一部を肩がわりされている、こういうふうに見ざるを符ないのですよ、率直に申しますれば。それで、アジ銀とジョンソン構想とは違う違うと言っているのですけれども、やはりそこにはっきりと渡辺氏が言っているように関連があるのですよ。違うのじゃないですよ。それがそっくりそのままジョンソン構想ではありませんよ。ですけれども、開運がないとは言えないのですよ。はっきり渡辺さんが言っているのですからね。そういう点が疑念を持たれる理由になる。この点はまああとでよく調べて、事実問題ですから、しかし重要問題ですから。  それから、ほかの方もまだ質問ございますから、次にあと簡単に伺いますが、もう一つアジア開発銀行の内容について伺いたいことがあるのです。それは貸し付けをした場合ですね、アジ銀が低開発国に貸し付けをした場合に、その貸し付け資金の使い先ですか、使用先、これはアジ銀に参加している以外のところで使ってはいけないということになっているのですね。そういう最初はアメリカの主張であった。ところが、それでは資金を借りた国が最も効率的に資金を使うのに、アジ銀に参加していない国からも安く物が買えるのなら買えるようにしてもらいたい、そういうひもつき、ひもつきというか限定ですか、借りた金に対しての使途に対して限定されては困るという議論があったと思うのですね。ところが、アメリカの意見によって結局それはアジ銀に参加した国からでなければ物を買っちゃいけない、こういうことになった。  ところがですよ、ところが、けさほど戸田君が質問いたしましたが、OECDの上級会議の勧告によりますと、この勧告の第五項を見ますと、「援助資金による買付け先制限を縮小するようつとめることとする。」、こういうことになっております。そして聞くところによると、DACではそういう援助を受けた国の資金について制限することはいけないということになっているそうですね。そこで、それに反するのではないか、いわゆるOECD綱領の意図するOECD加盟国間の無差別待遇の原則に抵触するおそれなきやの疑念が生じてきた、こういうことを外務省の調査月報が言っているのですよ。この点はどうなんですか。
  130. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 第一段の、アジア開発銀行が通常の業務としてやります貸し付けは、原則として加盟国において生産される物品及び役務のその加盟国における調達のみに限られているということは事実であります。しかし、先生のおっしゃるように絶対にそういう例外がないかというと、そうではなくて、加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表する理事の表決をもってこの例外はつくることができるわけでございます。これは十四条の(ix)に書いてございます。  これのいきさつでございますが、これは先ほどアメリカの主張で入ったということでございますが、むしろ私ども準備委員会の段階では、大蔵省の連中がよく言っておったわけでございますが、私どもの立場とすれば、やはり今回のアジア開発銀行はできるだけ多くの域外資金を調達する必要がある。したがいまして、ヨーロッパのように若干アジアについて関心のない国はこういうインセンティブをつけておくほうが入りやすいという感じを強く持っておるのです。その結果ヨーロッパの諸国が入ってきたことも私は事実だと思っております。したがいまして、こういった規定を設けたのは決してアメリカだけの主張ではなくて、むしろ準備委員会の段階で日本等が主張してきた考え方でございますから、これがOECDのコードに違反であるかどうかということは、私の知っている限りでは、DACのアンタイドの思想に抵触するということで問題になったことは全然ございません。むしろ経常的貿易外取引の自由化行動というのがございまして、これに海運の無差別——要するに旗籍による無差別原則というのが別表にあるわけでございます。しかし、これは現在まで若干の国、特定の国の名前をあげるのはいかがかと思いますが、そういった国からそういうものに違反するのではないかという議論があったことも聞いておりますが、しかし、そういった決定は全然なされておりません。全然そういうことは現在われわれ日本としても違反であるというふうには考えておりません。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだいろいろ疑念が質問しているうちに非常に出てまいりまして、質問すれば際限がありませんが、同僚委員がさらに発展した質問をしてくださるので、私は最後に、日本政府の今後の低開発援助に対する基本的な方針ですね、それはどういうところに重点を置いていかれるか。一応経済協力局から「経済協力に関する基本的政策および具体的対策」というものがわれわれに資料として渡されているのです。それで、これには最後に、今後の基本的政策として、まず政府ベース援助を強化するということが第一、第二は、経済技術協力の規模を拡大することが第二、第三は、援助の質の改善、つまり期間とか利率、そういうものの質を改善する。こういう三つの方針を出されているわけであります。しかし、これは非常に抽象的なわけです。そこで、具体的に特に私はここで一番問題になるのは、政府ベースの援助の強化ということですね。そうなると、いままでは、午前中戸田君も質問されているように、賠償とかあるいはこの延べ払いとか、コマーシャルベースの援助であったが、政府ベースの援助の強化で、必ずしもコマーシャルベースでないと解していいのかどうか。たとえばDACの勧告にもあるように、贈与とかあるいは準贈与とか、その他コマーシャルベースよりはるかに利率あるいは期間が有利な、そういうような条件のものであるのか。この点がいままでと非常に変わってくるのじゃないか。私は日本の低開発国援助政策の大きな転換期が来ておるのじゃないか、こう思うのです。それで、午前中の戸田君の質問もそういう意味の御質問だと思うのですが、何か、これは、外務大臣の御答弁は前からずっとやってきているのですが、たいして違わないような御答弁になったんですが、非常に大きなここで具体的、質的な変化が訪れようとしておるのではないかと、こう思うのですが、特に期間とか利率についてはずいぶん、DAC等で日本の条件は非常にきびし過ぎるという、シビアだということをずいぶん批判されておるのですから、ずいぶん変わってくるように思うのですけれども、その点もう少し具体的に御説明願いたい。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府ベースの援助の強化というねらいは、お説のように協力の条件、内容も、民間の場合よりももっと期間が長いとか利率が安いとか等の条件が緩和されておるという場合もございます。何よりも共通して言えることは、こっちのほうが輸銀、そうして向こうは民間直接にやる場合よりも、政府から政府に、あるいは政府機関から相手方の政府に貸し付けて、そうして政府の手から、あるいは公共事業あるいは特殊の製造工業とかあるいは資源開発企業とか、そういうところに政府から貸し付ける、政府のつまり経済政策というものを強化すると、こう申しますか、お手伝いすると申しますか、そういう線で経済援助するということが最近非常に有効であるというどうも実情からいって、そのほうが有効である、こういうふうに考えられるような情勢でございます。直接向こうの民間というのは、その国の経済政策の一体どういう部分であるか、場合によってはその国の政府から見たらあらずもがなという場合もあるかもしれない、あるいはそれをやるくらいならまだまだこれこれの方面にやってもらいたいという場合があるかもしれない、そういうその国の経済政策というものにぴたり合った経済協力を実行することができるかどうか、こういうことがはっきり言えるわけであります。  それから、技術協力は、これはもういままでやっておったことでございますけれども、東南アジア等の低開発国経済協力という面で、技術協力ということが金の高ではたいしたことはなくても、とにかくこういうことが怠っておるために、幾らつぎ込んでもむだになってしまう、少しの金でも技術協力というものが伴えば非常に有効にそれが生きていく、こういう場合がありますので、これは非常に重要なポイントである、こういうわけであります。  それから、一般的な資金の質の問題は、これはもう申し上げるまでもなく、日本は他の先進国から比べるとまだまだ緩和する必要がある、こういうことは国際会議においても指摘されておるようなところでございまして、これはやらなくちゃいけないと思います。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 終わりますが、そこのところがここにも書いてはあるのです、いままでシビアであったからもっと緩和すると。具体的にどの程度かということが、そこが聞きたいわけですよ。これを見ますと、もちろんアメリカのAIDの返済期間四十年、あるいは金利は据え置き期間中一%、その後は二・五%、これは極端な条件だと思う。ここまでいかなくても、いままでよりどの程度緩和できるのか、そこが非常に重要だと思うのです、抽象論じゃなくて。  もう一つは、政府間ベースというものはいままでと非常に違う考え方じゃないかと思うのです。それは向こうのいろいろなプロジェクトを具体的に検討して、向こうの政府の政策に協力する、こういうような意味だと思うのですよ。そうすると、これは従来の経済協力と非常に質的に違ってくるのじゃないかと思うのですが、この点ですね。  二つの点。これで質問を終わります。
  134. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 具体的金利をどうしていくかということは、実はわれわれの悩みの種でございまして、要するに、現在の対外援助をやっております、まあ一般会計は別といたしまして、先ほど先生は贈与とか半贈与とかおっしゃいましたけれども、そういうものをわれわれはいま考えておるわけではございません。したがいまして、条件緩和という場合には、輸銀の貸し出しか協力基金の貸し出しかということでございます。そこで、輸銀、基金ともに若干の運用部資金政府出資をもって成り立っているわけでございます。したがいまして、今後財政的な負担面から一体どの程度金利を下げ得るかということが一つの問題でございます。  それから、もう一つは、午前に申し上げましたように、村手国の国際収支なりプロジェクトなりというものを見てどういうふうに考えていくかということでございますが、先の予告をするということは、私こういうことは外交上の問題もありましていかがかと思いますので逐次改善していきたいということで、そのはしりというものは、すでに若干の国に経済協力基金ということで金を貸すということも考えておるわけでございます。そういった場合には、輸銀で貸す従来のインド、パキスタン等の直接借款よりは緩和した条件が適用される、こういうふうに考えております。
  135. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  136. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  137. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣にお伺いいたしますけれども、いままで多くの同僚議員がアジア開発銀行とジョンソン構想との関連を聞いて、それはほとんど関連がないようなお答えばかりでございましたけれども、私は、アジア開発銀行とこのごろの東南アジア開発計画、この問題とは決して関連のないものじゃない、単独に出ているものじゃないと思います。で、最近の東京で開かれましたアジア開発閣僚会議ですね、それからソウルのアジア外相会議、それからさらについこの間の日米貿易経済合同会議、これらはみんな一連の関連があったと思います。それはアメリカアジア経済に対する政策の変更、それと対応しているから問題があるんじゃないか。先ほど佐藤総理大臣は、封じ込めというようなことばが間違っているので、新しくこれは別のことばを使わなければならないのじゃないかというふうなことを言われましたけれども、つまりそれがアメリカの対中国政策についての考え方の変化をあらわしているのであり、またアメリカアジアにおける経済開発の政策の変化が出てきているということだと思うのです。  日米貿易経済合同会議は、いろいろの新聞紙上で高度に政治的だったというふうに批評されておりますけれども、内容については、個別会談の内容は話すことはできないということで、ほとんどお漏らしいただけませんでしたけれども、高度に政治的だったということは、どういうふうなことを意味しているのでありますか。
  138. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 高度に政治的だったということは、新聞紙がそういうレッテルを張りつけておるのでございまして、われわれは普通のことをまあ普通に話し合ったという感じしか持っておりません。ただ、情勢がアジアは特に流動的でありますから、自然その情勢に応じた話し合いというものが行なわれることになるわけです。それが去年あるいはその前と比べて、より政治的であったというふうに見られるのも、これは当然かと思いますけれども、高度に政治的だったということはですね、
  139. 田中寿美子

    田中寿美子君 ほとんどのマスコミがそうだったから。
  140. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別に当事者としてはそういうことを意識してやっているわけじゃないのです。
  141. 田中寿美子

    田中寿美子君 その三つの会議が折り重なって行なわれました。それからまた、農業開発会議も行なわれるわけで、そこに常設機構をつくろうというような動きがあるようにうかがわれるわけですけれどもね。まあソウルの場合は例のASPACということばで呼ばれているのです。このASPACということばは、さっきどなたかアジア太平洋理事会というふうに言われましたけれども、そう呼んでいるわけですか。
  142. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまあ主催国のほうで呼びやすいように、ASPACとくっつけたように思うのであります。
  143. 田中寿美子

    田中寿美子君 ええ、そうですけれども、日本側で正式には何とこれを言われるのですか。
  144. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) コンファレンスかカウンシルかというようにやはり意見がありましたけれども、カウンシル、日本ではアジア太平洋閣僚会議
  145. 田中寿美子

    田中寿美子君 ええ、会議ですから、カウンシルという名前がついているわけですね、原文のほう。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり会議と訳しておる。
  147. 田中寿美子

    田中寿美子君 カウンシルというのは、NATO理事会とかSEATO理事会とか、みな理事会というのは常設的な機構を意味するのがほんとうだと思うのですけれども、日本では特に考慮してそれを理事会と言わずに、アジア太平洋会議と呼んでいるわけですか。
  148. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいろいろに試しているようでありますが、これは会議の実態からいって、会議と訳することにいたしました。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 常設的な機構をつくりたいという欲求は、非常にソウルの場合にはあったわけですね。そうして私たちはいろいろなものから読みますと、この場合そういうふうにすると刺激が強いから、だから、常設機構というようなところにはしないようにしたというふうに聞かされておりますけれども、それは事実でございますか。
  150. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまのところは、常設的な会議にしない。ただ、会議のおしまいのころになって、継続してこの会議をまた開こうと、こういうことになっておりまして、常設的な会議という考え方はどの加盟国も持っておりません。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 全体として、東南アジア及びアジア経済開発、それから軍事的な協力体制、あるいは政治的な体制というようなものが進みつつあるように私たちは感じますので、それが将来常設的な機構に向かう可能性があるんじゃないかというふうに思っております。  ところで、アジア開銀ですけれども、これが長い間遅々として進まなかったと、これは事実だと思います。しかし、それが急に進むようになった契機というものは、やはりベトナム戦争の危機、アメリカがやっておりますその危機が契機になつているんではないんでしょうか。それはどうお思いになりますか。
  152. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アジア開銀の問題は、ときにソウルの会議であるとかあるいは東南アジア開発閣僚会議ということを結びつけてお考えになることは、どうも少し事実に即しておらないように考えます。結局、まあ米州開発銀行あるいはアフリカ開発銀行というものができておるけれども、きわめて貧困な東南アジアアジアにそういう国際金融機関というものができておらなかったことがむしろおかしいので、結局こういうものをつくろうということになると、善は急げということでどんどんまあ進んだと。まあ時流に適した企画であるということになると思います。別にそれに意味はないと私は考えます。
  153. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、さっき少し言い間違えたかもしれませんけれども、アジア開銀だけじゃなくて、ジョンソン構想も全部含めて、アメリカアジアにおける経済あるいは政治的な政策の変化というもの、特にジョンソン構想、そういうものはベトナムの危機が直接の契機ではないかということです。
  154. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはジョンソンの腹の中に入って見たわけでもないからわかりませんが、結局まあ政治的に動揺というものは何から来るかといったら、やっぱり貧困から来る場合が多いと思います。貧困、したがって文化の程度も低い、そういうようなことでいろいろ政治上のごたごたが起こると。でありますから、やはりそういう政治的な不安、動揺をつくらないためには、どうしても経済、社会の環境を高めていくということが必要なんで、これは別にジョンソンさんが言ったから急にそういうふうになったというんじゃなくて、国連の機構そのものが経済社会理事会というものがあって、安保理事会と対立して、そしてそういう世界のいろいろな混乱を未然に防止する一つの有力な機構として、国連が非常な力を入れていることは御承知のとおりであります。でありますから、東南アジアにそういうものがなさ過ぎた、あっても十分に浸透しなかったと、こういうことでございまして、われわれもこれをどうしたって、日本に近い東南アジア開発だけは、これは日本の音頭とりで持っていかなくちゃならない、そういうふうに考えたので、自然にだれが考えてもこういうことになるのじゃないかと思います。
  155. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったようなことはもちろんわかっているのです。ところが、もうそういう東南アジア経済援助に関して、アジア開銀の問題についても六三年ごろまではもうほとんどさっさと進んでいない。そして昨年から急に進み始めた。昨年の初め佐藤さんがジョンソンと会ったわけです。  で、実は西山外務省経済協力局長がそういうことを書いていらっしゃいますね。「米国の東南アジア開発援助構想」という題で、経団連月報、昨年の九月号に書いていらっしゃるので、ちょっと読んでみます。「この構想(ジョンソン構想)が打ち出されたのは、ベトナム戦争が直接の契機となっているため、これまでその真の意義が若干曲解された感なしとしない。」と。一体真の意義というのはどういうのか、私お伺いしたいのです。それから、なお「事実、これまでの米国の大規模な援助計画は、マーシャル・プランにせよ、進歩のための同盟にせよ、いずれも国際政治上の危機から生まれている。」、こう書いていらっしゃいますね。  明らかに外務省の経済協力局長は、ジョンソン構想はベトナム戦争の危機が直接の契機となっているということを言い、そうしてこれまでアメリカ援助計画をやったのは、みんな政治的な、国際政治上の危機が原因になっているということを言っていられるわけですね。ですから、通り一ぺんのことをおっしゃっていただかないで、それがほんとうに確かにそういうことだ、だから日本もこれに協力するようになったのだということをおっしゃっていただくほうが、私たちはもっとはっきりわかるのです。
  156. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 簡単なことでございまして、しかも、当の問題のアジアに位している日本が、ジョンソンさんから言われなければ気がつかないというのじゃ、あまり情ないことだと思います。われわれはこういったようなことはもうとうから実は気がついておったのですが、どうも……。
  157. 田中寿美子

    田中寿美子君 気がついていたけれども、できなかった理由はどういうわけですか。
  158. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 四月のこの開発閣僚会議というのは、とにかく独力でひとつ日本がこの地域の唯一の先進国として音頭とりになって、まずみずから助くる者を助くということわざもあるので、イニシアチブをとって東南アジア開発をどうすれば最も有効にやれるかということをひとつやってみようじゃないか、こういうことに踏み切ったわけでございます。これはやっぱり、とはいうものの、相当に日本としても経済的に負担を招くことになるのでございますから、簡単にそういったような計画を打ち出すということは困難なわけでございます。まあそのために私は一年ぐらいこれはかかっているのじゃないかと考えております。
  159. 田中寿美子

    田中寿美子君 結局、財源が十分まだなかったというふうにおっしゃっているのかと思いますけれども……。ところで、いままでアメリカが低開発国にした援助というのは、これは低開発国に対してあまり効果がなかったということを、やっぱり西山さんは書いていらっしゃいます。「しかも、米国の経済援助の二分の一または三分の一がPL四八〇計画による余剰農産物援助であり、AIDの援助もほとんど支持援助である。支持援助は米国の緊急な安全保障と対外政策目的を達成することを主目的とし、その国の安全が外部から脅かされている場合、治安の維持、民生の安定のために行なわれる緊急援助物資の供給、財政支持等であり、ほとんど直接生産効果のないものである。」、つまりいわゆるカンフル注射型の効果しかなかったということを言っていられるのですね。だから、一体それは具体的にいったらどんな援助なんですか。たとえば韓国の場合をとってみていただきたいのですけれども、アメリカは韓国に軍事援助経済援助をしてきていると思いますが、それが何もあまり直接生産効果がなかったという実情をお話しいただきたいと思います。
  160. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) ただいまの御引用の論文は、西山経済協力局長が書かれたものと思いますから、そこの参事官をやっておる私がかわりに内容について簡単に御説明いたします。  アメリカ援助が、そこに書かれてあるとおり、主として余剰農産物ないしは支持援助であるということにつきましては、異論がないわけであります。しかしながら、それにもかかわらず、先進国から低開発国へ物資が流れたり、あるいは資金が流れれば、やはりそれだけに何分の一かの効果はあると思います。まあ韓国も長い間の援助によってようやく今日の経済復興も着々と進みつつあるような現状でありまして、長い目で見れば、やはり先進国が後進国に援助を増加すれば、何分の一かは必ず開発のために効果があるんではないかと、こういうように考える次第であります。
  161. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連をしてちょっと外務大臣にお伺いをするんですが、どうもさっき木村先生もいろいろお話をし質問をし、いま田中先生も質問しているわけですが、具体的な実行内容というものは全然出てこないんですが、いまの答弁でもそうだと思うのです。抽象的な、経済援助をすれば東南アジアは少しよくなるとか、そんな程度で終わっているんですね。確かにいろいろな紆余曲折はあったにしても、一九六一年以来この問題の設立にあたっていろいろ検討された。あるいはまた、いろいろ関連あると思われるジョンソン構想に基づいてさらに急速に発展をした。そしてなおかつ、法の中には、第一条ないしは第二条でその目的なりあるいは出資というものが明確に明記されて、そしてなおかつ、先ほど総合計画というものの基本的構想はあるのかないのか私が質問をしたけれども、ただその具体的に実行内容というものはない、こういうことですね。さらに国連の下部機構も経済開発構想については具体的政策を出し、委員会からいろいろな具体的政策というものが述べられ、さらにジョンソン構想なりそういう具体的な内容というものが述べられる。ただ日本政府だけが、この東南アジア一帯に対して援助体制をとるんだと、その中心になるこのアジ銀という問題について、全然実行内容というものが、構想というものが具体的なものとして説明されておらないのです。こんな私はあやふやな不安定なそういう状態というものはないじゃないか。ことに先ほど国際金融局長に聞けば、少なくとも営業が十二月以降開始されるという運びになるという。一体このアジ銀というものはどっちの方向を向いているか。確かにそれは三十一カ国の低開発国開発だと、抽象的には言える。しかし、実行内容というものは具体的に一体どっちの方向を向いていくのか、その辺は何ら説明されていない。いま参事官が何かいろいろと言われたように、抽象的な何か援助すればいいといったようなことだけなんです。こんなことで私は国民の税金をぶち込んでですよ、そして皆さんが臨時国会まで開いて、政府が真剣に通過させなければいけないというこういう熱意とあわせて、この裏面の実行形態というものは全然説明されない、こんなばかな話はないじゃないか。だから、その辺の内容についてもう少し親切な私は答弁があつてしかるべきじゃないか、こういうふうに考えます。  それから、もう一つは、先ほど木村先生がちょっと質問をした信託基金の問題についてああいう答弁だとすれば、私はアジ銀の討議というものをもう一回やり直さなければいけないんじゃないかと思うのです。少なくともこの政府から提案されたアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案説明書の中で、明確にこういうことを言っておるんですね。その五番目でありますけれども、特別基金の中で、「銀行は払い込み資本の一〇%までを保留して特別基金を設定し、また、加盟国から信託される資金等を特別基金として管理・運用することができる。」と、こうなってる。先ほどの総合計画なりそういうものを聞いたときに、精神規定だと局長は言ったけれども、しかし、こういうものを明文化するというこの法律案を制定するわけですから、当然その裏づけなり実行内容というものは構想として持たなければいけないと思うのです。そういうものが全然ないわけです。それで、アメリカが一億出すとか出さないとかわからない、そういう状態が予想されると渡辺さんははっきり言っておる。本家本元の政府は、はっきり言っていない。こういう不親切な答弁はないと思う。だから、そういう点をもう少し明確に自信のあるところを説明をしてもらわないと、私は納得がいきかねる。
  162. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 私が先ほど具体的構想がないと申し上げましたのは、御存じのように、これは国際機関でございますから、日本がたとえばこういう構想でもって押しつけるということは、当然おかしいわけでございます。むしろ銀行の総裁、副総裁、理事会あるいは各部長以下の事務局ができまして、そういったものが一つの考え方を打ち出してくる、それに対しまして日本も当然理事を出すことになりますから、そういった場面を通じて議論をするというのが筋道だというふうに私どもは考えております。したがいまして、日本がそれこそ何か構想をつくって、ジョンソン構想じゃなくて何とか日本構想といえば、それこそ東南アジアの反感を買うわけでございまして、むしろそういったものは心の中にあるにしても、いまの段階で発表することは差し控えるのが当然じゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、信託基金につきまして「できる」というふうに書いてありますのは、まさしく権能規定でございまして、そういったことを申し込む国があるならば、信託基金を受け入れることができるという権限を協定で与えておるわけでございまして、現実に受け入れられるか受け入れられないかということは、法律上は総裁がその申込みを受けまして理事会の決定を経て受ける、そういうふうになるのが運びでございます。それを申し上げたわけでございます。
  163. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 田中先生の時間がなくなりますから、簡単に伺いますが、いまの局長の回答からいっても、協定を生み出すのは、昨年の十二月にアジア開銀に関する全権代表者会議というものを開いて、そこで協定というものを最終的に決定したのです。だから、そういう協定であるから、当然決定する経緯はいろいろな構想なり協定として、法律として生まれているわけですから、当然こういう内応について一定の構想なりというものが討議されて一定の成文化されるのが常識じゃないですか。そういうものが単に日本版として権限がないというのじゃなくて、同種同格のたてまえからそういうことはやられているわけです。こういう会議の中では、いろいろな具体的な実情なり構想というものが陰にあって協定というものが生まれてきた。日本版の構想ではなくて、生み出すところの構想があってしかるべきじゃないか。だから、そういうものがあったのかないのか。
  164. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) その構想なるものは、まさしくここに書いてあります一条の目的、任務、そういったことが構想でございます。これは私、先ほど国際機関と申しましたけれども、もう一つの特色というのは、金融機関でございます。したがいまして、一つの金融機関をつくる場合には、状況の変化に応じてどういったことがあるかわからないわけでありまして、要するに権能の規定だけを昨年の代表者会議ではきめたわけでございまして、その構想なるものは、いわゆるアジアの低開発国地域の開発、このタイプはいろいろあると思います。それはしかし、そういうことで限定的にたとえば工業開発はいけないとか港湾開発はいけないとかということを書くというのは、むしろ執行部を縛ることになりますから、相当大きな範囲のすべてのあらゆる援助というものを含めるというかっこうで合意したわけでございます。したがって、先生のおっしゃるような具体的な融資計画であるとか、ベトナムに幾ら貸すとか、そういった構想というのは、現実に全然議論されたこともございませんし、そういったものはございません。
  165. 田中寿美子

    田中寿美子君 さっき私がお尋ねしましたときも、たいへん抽象的な答えしがなかったわけなんですけれども、つまり、たとえば、かりに韓国をとってみた場合に、アメリカの軍事援助経済援助でほとんど今日までやってきた国で、そして軍事援助というのは、それを受ける国は防衛水準を維持する程度に経済援助をするということになっておるわけです。だから、入ってくる金は防衛のために使うということが非常にたくさんあるわけですね。予算の半分以上国防に使ってきた。それからまた、支持援助というのは余剰農産物なんかが入ってきて韓国農業のほうがもうかえって荒らされてしまうというような、非常な効果のないというか、むしろ植民地的な援助のしかたをしておる。それに対する、そういうやり方に対する反省がアメリカにあって、こんなことをやっていたのではたいへんだというのが、このごろのベトナム危機と一緒になって、新たに東南アジア経済援助のやり方を変えなければならない、それについては日本にイニシアチブをとらせて、そしてここに新たな、さっきは封じ込めということばを使わないほうがいいと言われましたけれども、新しい封じ込め体制を東南アジアにつくりたいと、こういうような気持ちが動いて、それに日本が対応しているというふうに私は考えられるのです。  そこで、米州開銀とアジア開発銀行の関係、というよりは、このアジア開発銀行の構想に参加した専門家の中には、EEC関係の専門家や、それから世銀の元の総裁ブラックさんや、それから例のロストウ氏や、それから米州開銀の専門家なんかが参加した。日本からも大来さんとか参加されていると思いますけれども、そこでは米州開銀を一つのモデルにとったというふうに聞いておりますけれども、一体どういう点をモデルにされたわけですか。
  166. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 類似点と申します点は、アジア開銀も米州開銀も地域的開発を目的とする国際金融機関であります。したがいまして、こういったものは一つの私がモデルと申しますのは、たとえばチャーター——チャーターといいますか、協定でございますね、これを井きますときに、米州開銀のいろいろな条文を参考にしたということは事実でございます。米州開銀及びアフリカ開銀等を参考にしてつくったということは事実でございます。  ただ違う点は、極端に違う点が二、三ございます。一つは、米州開銀というのは資金アメリカだけがいわば出し手側のような立場の銀行でございますが、今回のアジア開発銀行はそういった資金アメリカのみに求めることはなく、域外では西欧も全部入っております。域内国にも先進国である日本とかオーストラリアとかいうのがいるわけでございます。これが一つの違う点でございます。そういった関係から、実際上の運営の問題も非常に違ってきますのは、米州開銀ではアメリカの出資金の割合というのが実に四三%に達しております。そこが米州開発におけるアメリカの地位を物語っているのではないかと思います。  それから、もう一つ、非常にアジア的といいますか、そういうアメリカのドミネーションというものがアジア開銀には全然ないという一つの例といたしましては、各国平等の立場を相当取り入れて、インター・アメリカン・デベロプメント・バンク、米州開銀の場合には基本票が一で出資の割り当てに比例する票が六十七ということになっておりますが、アジア開銀では基本票が一で出資に比例する票が四、この割合となっております。この点が大体の相違点でございます。
  167. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、米州開銀では非常に、アメリカのオーケーがなければほとんど融資してもらうこともできないというようなことがたくさん起こっておりますが、その実情をおわかりでしたら少し。たとえば、どういう国に主として資金が出されているかですね。
  168. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ずらっと申し上げますと、アルゼンチンが一億八千九百万ドル、ボリビアが四千二百五十万ドル、ブラジルが三億一千九百万ドル、チリが一億三千二百万ドル、コロンビアが一億三千百万ドル、コスタリカが三千五百万ドル、ドミニカが二千百万ドル。エクアドルが四千三百万ドル、エルサルバドルが二千九百万ドル、グアテマラが二千三百万ドル、ハイチが六百万ドル、ホンジュラスが二千八百万ドル、メキシコが一億八千四百万ドル、ニカラグアが四千二百万ドル、パナマが二千六百万ドル、パラグアイが三千三百万ドル、ペルーが七千四百万ドル、ウルグアイが三千七百万ドル、ベネズエラが一億六百万ドル、中米統合銀行という中米の銀行がございますが、これに、国でなくてその銀行に対して千七百万ドル、全部で十五億二千三百万ドル貸しております。
  169. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう外務大臣がお帰りですから、一点だけ先に外務大臣にお伺いしますけれども、昨日でしたか木村委員がお尋ねになりましたときに、つまり今度のアジア開銀の信託基金が非常に危険である、ひもつきができるということについて尋ねられましたときに、大蔵大臣が、これはだいじょうぶだと、協定の十九条で歯どめがしてあるとおっしゃった。それは目的に沿った出し方をするのだとおっしゃったけれども、米州開銀はちゃんと、加盟国の経済的発展の促進に資するということが目的に出ているわけですね。ですから目的にうたったって、それが守られるという保証はないわけです。アジア開銀の場合には、そういう点についてちゃんした保証がございますか。
  170. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 先ほど申しましたように、協定の解釈——先ほど申しませんですが、協定の解釈というのは、結局最終的には理事会がやることになろうかと思います。したがいまして、理事会の構成の票数がどうであるかということが重大な影響を持つわけでございまして、私が先ほど米州開銀とアジア開銀の差をるる申し上げました点は、アメリカの投票権といいますか、理下会における代表権というのはたしか一七%くらいなものでございます。これがアメリカの米州開銀の場合においては四十数パーセントであるというところに根本的な差があり得るということで、米州開銀がそれほど政治的にやっているかどうかということは私は若干疑問に思っておりますが、もし法律的な問題だけで申し上げれば、そういうことでございます。
  171. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまアメリカの投票権だけが問題じゃないわけですね。プロアメリカンの国がたくさんありますから、そういうものはみな一緒になる。  それで、外務大臣、今度のアジア開銀に対しては、アメリカが米州開銀であんなに勢力を、支配力を持ったということについて相当警戒があったということは、私は事実だろうと思うのです。それで、出資金は二億ドル。三億ドルということについて、一体日本に対しての心配というものはありませんでしたか。たとえばマニラに本店を取られたというようなことは、これはやはりかつての植民地でありました諸国日本に対してある種の不信感を持っている。私は低開発国に対してかつてそういう国を支配した植民国であった国々が経済援助をする義務はあると思っています。そのやり方が問題だからこういうふうにみんな議論しているんですけれども、今回のアジア開銀に関して日本に総裁が来るだろうという予定をしているわけですけれども、マニアに本店を、東京に取るつもりだったが取られたというのも、日本に対する不安感といいますか、不信感というか、警戒心というか、そういうようなものがあったんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 不信感とか警戒心とかというものとは違うと思いますね。やっぱり持ってきたいと、マニラに持ってきたいと、こういう、とにかくそういう世界機関、国際機関をマニラに持ってきたいと、しかも開発のこれはもう本尊とも私は考えないが、十億ぐらいの資金でございますから。しかし、相当の発展性もありますから、そういうものをどうしても持ってきたいと、こういう執念がああいうことになった。別に日本に対する不信感とかそういうものでは私はないと思います。
  173. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  174. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記起こして。
  175. 田中寿美子

    田中寿美子君 米州開銀に開運してですけれども、進歩のための同盟というものを米州にアメリカはつくったわけです。これはどういうものですか。
  176. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 進歩同盟は、多角的協力を目的として、一九六三年に設立された特別常設委員会、八名の委員をもって構成されるので八名委員会とも称せられているそうでございますが、そういったものでございます。俗称CIAPと申します。
  177. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは何のためにできたかおわかりでございましょうが、一九六一年にこれはケネディがつくったというんですね、提唱した。
  178. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 一般に後進国に対する先進国の援助は国際機関を通じてやるのが一番よろしいという意味で、この全米開銀ができたわけでございますが、さらに開銀を運営するにあたりまして、どのような開発計画に金を出すか、またそのような開発計画に金を出す条件はどのようなものであるべきか、こういうことにつきましては、さらに専門家がよく審議する必要があると思います。その意味で、銀行とは別に、銀行の金も含めて、先進国、ことにこの場合にはアメリカでございますが、アメリカ及びその他の国際機関の金がラテンアメリカ諸国のおのおののプロジェクトにどのように行くべきか、こういうようなことにつきまして審議する目的でつくられたのが進歩のための全米委員会でございます。
  179. 田中寿美子

    田中寿美子君 まるで字引きを読んでいるようなんですけれどもね。もう少し歴史的に具体的に見ますと、これは一九五九年にキューバのカストロが政権を握った、それに対するアメリカの対策なんで、マーシャル・プランのラテンアメリカ版と呼ばれているものでございますからね、そんな平板な目的でできたものではない。ラテンアメリカに民族解放運動が非常な波を起こしてきた、これを押えるためには食糧の援助をしたり、その他いろいろ文化の交流をしたり、それから防衛もする、そういうことを目的として、カストロ対策みたいなものでできたのが進歩のための同盟。名前はそうですけれども、そういう非常に高度に政治的なものだと思うのです。ですから、今度のジョンソン構想だってそういうものだし、それから一連の東南アジアでの会議もみんなそういう政治的な意味を持っている。そういう具体的な条件を問題にしないでの御説明というのは、ほとんど私たちには意味なく聞こえる。  で、この米州開銀と進歩のための同盟との関係ですね、それはどういうふうな関係にございますか。
  180. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 一応、米州開銀と進歩のための同盟とは政治的には大きな輪郭の中で関連はしておりますが、片方は御存じのとおり国際金融機関であり、片方は政治的な機構でございますから、法律的には関係がございません。
  181. 田中寿美子

    田中寿美子君 もちろん法律的には関係ないことはわかっているんですけれども、これは何といいますかね、アメリカ資金を米州開銀を通じてラテンアメリカに流していくためのほんとうはかっこうをしておりますけれども、そのことによって、むしろこれは反対に、ラテンアメリカ諸国搾取するのに使われている。それで、大体これができたのは、例のニクソン副大統領がラテンアメリカに行ってたいへんひどい歓迎を受けたものですから、あわててこれは反米思想を押えるという意味でつくった同盟である。それには金出して、ひもつき援助をしていく、こういうものであったと思うのですね。したがって、ほんとうに必要としているところの低開発国のプロジェクトにこれは使われていない。運営上ですね、米州開銀の資金が使われていないし、また信託資金、これは向こうのあれでは特別資金といいますか、そういうふうに使われていないのですね。ですから、そういう点を考えますと、今度できますアジア開銀というものは非常に気をつけなければならないものだと私たち思っております。  で、やっぱり一般にいままでの先進国の低開発国に対する援助というのは、自主的にそこの国が立ち上がれるような援助のしかたをしていない。先進国の製品を持って行って売りつける。あるいは今度のアジア開銀では軽工業は興すというところまでいっているらしい報道がされておりますが、その点はどうなんですか。
  182. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 別に軽工業と限っておりませんで、重工業でも協定上はできるわけでございまして、これはまさしく銀行の執行部がそういった貸し付け申請があった場合にその国の経済の発展に役立つかどうかということを判断してきめるべきものだと思っております。協定上は何らの制限はございません。
  183. 田中寿美子

    田中寿美子君 社会開発基金というのはどういう方向に使われるのですか、
  184. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 米州開銀ですか。
  185. 田中寿美子

    田中寿美子君 じゃなくて、アジア開銀です。
  186. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  187. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  188. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 社会開発基金という特定の名前を持った基金はございませんです。通常貸し付けによってそういったものをやる。社会開発といいますか、要するにインフラストラクチュアをやる場合もございましょうし、それが金利等の条件でできない場合には、特別基金というものを使ってやるわけでございます。
  189. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう大臣も帰られましたし、あまり政治的な発言もしていただけませんし……。ただいままでの米州開銀なんというのは、ほんとうに新植民地主義の典型的なものなんです。そういうような運営を今度のアジア開銀がするという心配を非常に私どもしております。そういう点で日本が、アメリカアジア政策をいま転換しつつあるときに、その片棒をかついで、新しい植民地主義者になっていくことを特に警戒したいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一つだけ伺います。さっき鈴木局長が戸田委員の質問に対しまして、最初からアジア開発に関するいろいろな具体的な計画ですか、そういうものがないのがおかしいじゃないかということに対して、あまり初めからそういう計画を明らかにすると、何か日本が、何というのですか、何か指導的な役割りを演ずるとか、いろいろな誤解を起こすおそれがあると、こう言われたのです。ところが、鈴木さんもよく経過を御存じなわけなんですがね、最初三人委員会ができまして、大来君やなんか参加して、そうしてアジア開銀設立を含む全文十二章の報告というものを事務局長に出しましたね。そのときに、その報告書は公表されないまま、その構想が立ち消えになった。そこで、どうして加盟国がこの構想に対して消極的であったか、その理由といたしまして、アジア経済協力機構にせよ、開発銀行にせよ、機構の設定以前に地域経済協力の具体的問題について十分な協議を行なう必要がある、こういう点で十分協議していないので、これは単にエカフェ事務局の理想主義だ、こういうことで、これが熟さなかったのですね。もし各国が十分な地域的な経済協力の具体的問題について協議を行なわないで、機構だけが独走してしまいますと、そうしてまた各国の経済計画を調整しないまま機構だけが先走ってしまうと、あとになって資金の争奪戦が起こったり、あるいはまた地域全体として二重投資などむだが起こる、そういうことから事前にやはり地域の経済協力の具体的問題について、十分協議をする必要がある。ところが、それがなされていないで、これは単なるエカフェの理想主義だといって立ち消えになった。そういう経過があるわけですよ。  そこで、実際問題として、そういう十分な名地域の具体的な計画の討議がなされないまま、いわば機構が独走してしまったわけです。できちゃったわけです。そこで、戸田委員の言われるのは、このあとでいろいろな資金の争奪が出てくるのではないか、そこである国はおれのほうを先にやってくれとか、あるいは資金のほうをもっとおれのほうにくれとか、あそこの国にこれだけ資金をやっておれのほうは少ないじゃないか、そうなると、今度二重投資の問題が起こったり、いろいろごたごたするのじゃないか。そこで、従来の経過からいって、そういう具体的な計画がないまま、機構が独走してしまったのではまずいのではないかというので、一町立ち消えになったという経過があるわけです。その点は今後の運営に非常な問題を残すのではないかということで質問されていると思うのですがね、そこのところは非常に重要な私は問題じゃないかと思うのですよ。その点についてよく経過を御存じなわけですから、その点はざっくばらんにあれしていただきたいと思うのです。
  191. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 先ほど戸田先生のおっしゃった意味がそういう意味でしたら、まさしくそういうことだと思います。確かに日本が最初消極的だった、少なくとも大蔵省は金を出すところでございますから、消極的であったというふうに一般に印象を受けていらっしゃる方があるとすれば、アジアの中に、地域というアジアがあっても、はたしてそういう経済的な一つのユニティーがあるかどうかということに対しての若干の疑問を私は当時持っておりました。しかし、その後エカフェの議論等を見ますと、まあ隣の国で仲が悪くても、みんなこういったものに参加していこうという空気が出たわけでございます。ずいぶん仲の悪い国が隣同士におるわけでございますけれども、そういうことは忘れて、みんなこういうものに入っていく。したがいまして、こういった機構を通じて、アジアの逆に地域的なそういう経済的な調整というものも可能になる。どっちが卵でどっちが鶏かわかりませんですが、そういうものができなければ機構をつくるべきでないという議論もあろうかと思いますが、逆にこういうものをつくることによって、いま木村先生がおっしゃったようなそれほど露骨に、各国に、おまえのところは鉄工所をつくるなとか、おまえのところは製錬所をつくるなということを言えるかどうか、私は若干疑問だと思いますが、しかし、効率の悪い投資を防ぐということば、こういう機構を通じてこそやり得る可能性ができたということで弄ぶべきことではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはずっといままでの質問の点から、政府側の答弁から見まして、どうも私は率直にいって、これは機構だけが独走しちゃったと思うのです。まだ十分に熟していない、条件が熟していないのに、機構が独走しちゃった。そこで、なせ機構だけが独走したかというと、やはりこれは非常に政治的な配慮から独走したのであって、したがって、外務省調査月報にも書いてあるのですけれども、十分な国際的慣例に基づく手続をしていないのですよ。十分な議論を尽くしていないで、そうして非常な高度の政治的な配慮によってこれができたということがちゃんと書いてあるのですね。ですから、さっき質問しましたように、いわゆる一月のジョンソン・佐藤会談から始まって、それからジョンソンの構想ですね、十億ドルの構想というものが出てきて、従来からアジア開銀自体は話はありましたけれども、その中にジョンソン構想を織り込んだわけですよね。そういう形に私はなっていると思うのですよ、ずっといままでの質疑応答を見まして。そこで、今後日本政府が、いや、ジョンソンがどう言おうと、アメリカがどう言おうと、日本日本として独自の道を進むというのならいいですけれども、はたしてそういうことが可能かどうか。十分にそういう点は考慮に入れて、今後運営しなければならないと思うのですよ、率直にいって。非常に結論として政治的なものであるというふうに思うのですが、最後に意見がありましたら答弁していただきます。なければないで、これで終わります。
  193. 正示啓次郎

    政府委員(正宗啓次郎君) いろいろ御審議をいただきまして、最後に木村委員からただいま、なおこういう機構をつくる場合に、もっと国際的な手詰めをやっておくべきじゃないかという御忠告もありましたが、この点につきましては、もちろんこれは新しい一つの行き方であります。したがって、なお今後努力する余地は大いにあると思いますが、しかし、繰り返し申し上げましたように、これはわれわれのアジアアジア的性格を持った国際金融機関をつくるという熱意がここに実を結ぼうとしておるわけでございまして、したがいまして、こういうものをつくりました以上は、いま御心配のような点について十分にひとつわれわれとしても、いままでもやってきたつもりでございますが、今後とも努力をいたしまして、このお暑い中に臨時国会をお開きいただいて。せっかくの御審議をむだにしないように、大いに配慮いたしたいと思います。
  194. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 局長に一点だけちょっと、あさっての関係がありますから、聞いておきますが、二条の「任務」に「地域内における公私の資本」とあるわけです。この私資本というのは、どういうものをさしていますか、具体的には。
  195. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) これは民間という意味でございます。したがいまして、アジア開発銀行の任務のところにはこう書いてありますが、の企業にも貸すことができますし、場合によっては、これは制限はございますけれども、民間の株式を取得することもできる。したがいまして、このアジア開発銀行というのは、いわばいま全世界的な国際機関であります世界銀行、これが貸し付けの機関であります。アジア開銀でいう通常貸し付けをやっている。それから、IDAというのがソフトローンをやっている。それから、IFCという国際金融公社、世銀の姉妹機関でございますが、これが株式投資と民間の貸し付けをやっているわけですが、その三つのファンクションを一つの銀行で全部負わせよう、一応法律上はこういうことになっております。
  196. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 本案に対しては、本日はこの程度にとどめます。  なお、次回の委員会は、七月二十一日(木曜日)午後一時からとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十三分散会