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1966-07-19 第52回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月十九日(火曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員の異動  七月十一日     辞任         補欠選任      近藤英一郎君     木暮武太夫君  七月十九日     辞任         補欠選任      向井 長年君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         村上 春藏君     理 事                 赤間 文三君                 豊田 雅孝君                 柳田桃太郎君                 近藤 信一君     委 員                 井川 伊平君                 剱木 亨弘君                 宮崎 正雄君                 吉武 恵市君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君    政府委員        通商産業政務次        官        堀本 宜実君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞壽君    説明員        通商産業省繊維        雑貨局長     乙竹 虔三君    参考人        日本紡績協会理        事長       田和 安夫君        日本化学繊維協        会理事長     杉村正一郎君        日本綿スフ織物        工業組合連合会        専務理事     野沢 久雄君        日本絹人繊織物        工業組合連合会        専務理事     坂井 五郎君        全国繊維産業労        働組合同盟企画        局長       久村  晋君        日本繊維産業労        働組合連合会委        員長       小口 賢三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (繊維工業構造改善に関する件)     —————————————
  2. 村上春藏

    委員長村上春藏君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、理事会において協議いたしました事項について報告いたします。  本日は、繊維工業構造改善に関する件について参考人出席要求の御決定を願い、引き続き参考人方々から意見をお伺いすることにいたしましたので、御了承願いたいと存じます。     —————————————
  3. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、委員の変更について報告いたします。  本月十一日、近藤英一郎君が委員辞任され、その補欠として木暮武太夫君が選任されました。     —————————————
  4. 村上春藏

  5. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  参考人方々には、すでに御出席をいただいておりますので、これから順次御意見を伺いたいと存じますが、その前に参考人一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙のところ、当委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員一同にかわって厚くお礼を申し上げます。御出席皆さま方から繊維工業構造改善の諸問題につきまして御忌憚のない御意見を開陳願い、当委員会の今後の調査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の進め方につきまして申し上げますが、まず最初に、お一人十分ないし十五分程度で順次御意見をお述べ願いまして、そのあとで委員から質疑がありました場合にはお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず田和参考人にお願いいたします。
  6. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 繊維産業構造改革は、綿、スフ合繊、羊毛、それぞれの諸部門からなっておりまして、現在検討が進められておるのでございます。しかし、各業界立場事情によりまして、その内容目的、具体的なまた方策にも、将来は一致するかもしれませんが、現在のところはまだ一致点に達しておりません。私は綿紡立場から所見を述べることにいたします。  話の順序といたしましては、現在まで綿業がどういうふうな実情、実態になっておるか、またそういう不況原因はどういうところからきたかということを申し上げるのが順序かと思いますが、時間の都合がございますので、そういうことは省略いたしまして、今後の対策についてわれわれがどう考えているか、どういうことをお願いしたいかということを申し上げたいと存じます。  現在われわれが綿紡績のほうで考えております構造改革は、三つの柱からなっておりまして、その一つ過剰設備処理二つには設備近代化三つには企業統合中心といたします企業整備統合という三点でございます。この三点は互いに相関連いたしておりますので、いずれが重要であり、あるいはいずれを先にするかというようなことは問題ではないのでございまして、これは同時に並行して措置せらるべき性質のものであると、かように考えております。  以上三本の柱をわれわれが考えております理由の第一といたしましては、われわれは、かくして、まず何よりも輸出産業としての綿業の位置を維持したいということでございます。現在繊維輸出は、これは綿だけではございませんが、日本の総輸出額のなお一九%を占めておりまして、今後とも輸出産業としての繊維は重要なる役目をまだ持っておる、また果たすべき事情にあるというふうに考えるのであります。  そこで問題になりますのは、現在はたしてそれでは綿業国際競争力というものはどうなっておるのか、あるのかないのかという点がよく問題になるのでございますが、私は、これについて二つの見方があると思います。元来綿紡というものは、労働集約産業性格が非常に強いものでございますので、労働条件わが国に比べまして比較的に低い後進産業国、すなわち香港であるとか台湾であるとか、あるいは近くの韓国など、労働条件の低い国に対しましては、ある品種、たとえば綿糸であるとか、あるいは生地綿布であるとかいうような、こういう粗筆的な製品につきましては、漸次競争力が困難になりつつあるというのが実情でございます。一方先進産業国である英、米、フランスなどにつきましては、なお現在のところ競争力を持っておると言うことができると思います。しかし、御承知のとおり英国では、全体の設備のおよそ半数に及びます過剰設備処理を断行いたしまして、その設備改善政府の力で行ないまして、そういう上に、ICIコートローズという二つの大きな世界的な化学繊維中心とする大企業団ができ上がりまして、これが大きな一つ英国における繊維競争力を付加いたしまして、したがいまして、英国はすでにもはや斜陽の繊維産業国ではなくて、再び有力なる国際競争力を持つ繊維産業国として国際市場に乗り出そうといたしております。一方アメリカは、数年来非常な不況をかこっておりましたが、御承知のとおり綿布の一ポンド六セント半という輸出奨励金紡績に与えられることになりまして以来、非常な繁栄を取り戻しまして、そこヘアメリカ経済の全般の繁栄並びに現在のベトナム戦争影響等もございまして、ここ数年来未曽有の好況に見舞われております。そうしまして、そのばく大な利益のうちが設備近代化に投資せられまして、そして強力な輸出競争力を推進いたしております。フランスの例もございますが、もし御質問があったらお答えいたしますが、これは省略いたしまして、こういうふうにいずれも政府綿業という、あるいは繊維産業というものの重要性を認識いたしまして、相当な国家の補助あるいはそこに行政力を加えまして、その産業の復活に協力いたしたのでございます。かような状況におきまして、現状のままにいたしますれば、日本綿業は、要するに追っかける産業から追っかけられる産業になりつつある。また、追っかけておったほうもまた力をつけて、要するに先進後進両方面から挾撃される態勢というのが日本繊維産業、ことに綿業の国際的な状況でございます。  一方、国内労働事情から申しますと、従来の綿業の主要の労働力でございました中卒女子新規採用が急減化いたしました。この理由はいろいろございますが、一つには中学校卒業だけではなくて高等学校に進むようになったというような関係がございますし、また中卒需要が非常にふえておるというような関係から、この中卒労働者にたよることはだんだん困難になっております。さような関係から賃金も上昇いたしまして、過去五年間におきまして、賃金年率平均八%の上昇を見ておりますが、一方綿製品のほうは、小売り物価は大体横ばいでございますが、われわれの関係しております卸売り物価におきましては、かえってこの五年間に二〇%という下落をいたしております。要するにコストは上がって売り値は下がるというこの二重の困難によって、綿業不況はここに非常に激化されたというのが実情でございます。  かような内外の情勢に対処いたしますには、まず何よりも思い切った設備近代化をはかることが必要である。第一番に掲げましたが、設備近代化ということが必要でございます。具体的には、設備自動化あるいは今後能率化によりまして労働力の節約をはかるとともに、将来一部の女子工員にかわる男子工員を採用いたしまして、三交代二十四時間操業に踏み切る必要がある。そうしなければ、いま申しましたような後進綿業国あるいは先進綿業国に対抗することができないという事態でございますので、将来輸出産業としての綿業を維持するためにも、われわれは特に思い切った近代化を必要とするというふうに考えるのでございます。で、かような近代化というものは、本来ならば企業の自主的な活動によって、努力によって達成せらるべきが本来でございますが、しかしながら今日の綿業にはこのような努力を困難にせしめるほど構造的な欠陥がある、それが第二番目に申し上げました要するに過剰設備の問題でございます。現在第一区分に属します——と申しますのは綿スフタイプの紡機でございますが、これが千二百万錘ございますが、このうちの約三百万錘、全体の四分の一に当たるものが過剰であると目されております。現在の繊維新法におきまして、第一の凍結が百万錘ございます。また不況カルテルによって百万錘が凍結いたしておりまして、要するに二百万錘がすでに凍結いたしておりますが、なお過剰で現在の不況でございます。したがいまして、三百万錘過剰であるというのが一つの常識になっておるわけでございます。この過剰のほかにもう一つの問題は、綿業構造の問題、要するに過小設備が多過ぎる、そしてそれが過当競争原因になっておる、こういう構造上の一つの問題があるわけでございます。現在綿業で申しますと、三万錘というのは中小企業のカテゴリーに入る企業でございますが、三万錘以下の企業が全体の頭数からいうと八割を占めておるのでございます。これは現在、前申しましたように国際的には大企業化の方向をたどっておるのに、日本繊維産業ことに綿業というものは中小企業が大部分を占めておる。それが過当競争原因になり、構造的な不況原因をなしておるというわけでございます。  またこれを技術的に申しましても、番手によって違いますけれども、まず二〇番手でいえば三万錘、三〇番手でいえば四万錘、四〇番手以上は五万錘というのが工場単位とされておりますが、前申しましたように、一万錘であるとかあるいは五千錘であるとかいうような企業経済単位に達しない工場があまりに多過ぎる、そうしてそれが不当競争原因になっておる。したがって問題の解決は、こういうところにもメスを入れなければならぬというのが現状でございます。したがいまして、この際、一方においては過剰設備処理を行ないながら、同時に企業集中統合によって企業規模適正化をはかり、いたずらなる競争の激化を抑制するということが綿業体制整備の重要なる目的となるわけでございます。  ただし、この企業統合というものは強制できる性質のものではございません。したがいまして、各企業が将来を見通して自発的に、また自己の判断のもとに、それぞれその企業に合う統合方法を考えなければなりません。したがって、企業統合といいましても、単に合併統合だけではございません。グループ化であるとか、あるいは企業系列化であるとか、あるいは経営の提携であるとか、いろいろその企業に合うその統合方法整備方法を考えなければならぬ。そういうことがまた今後できるような情勢基盤をつくっていくということがこれから大切である。そうしてそういう基盤の上に各業者努力をして、自覚して行なっていくというふうにすべきであろう、かように考えております。  以上のような構造改革の大事業は、ひとり業界努力のみでは達成が困難でございますので、ぜひとも政府におかれまして、重要政策一環としてこれを御採択願い、推進していただきたいというのがわれわれの希望でございます。  申すまでもなく、繊維産業中小企業的性格が非常に強い産業でございますので、これが改造は一朝一夕ではなし得るものではございません。英国でも綿業改善には政府が手をつけだしてから約十年を要したというわけです。要するに、政府設備を買い上げ始めてからでも二年四カ月、それの改善にも設備改革にも三年を要しております。こういうふうに相当われわれが長期的に、そうして根気よく官民一体となって進めねば、この膨大であり、そうして複雑である繊維産業構造改革というものは私は困難であろうと考えておるのでございまして、したがいまして、以上のような点を遂行いたしますには、必要とあれば法律の改正もしていただかねばならぬと思います。また国家資金投入援助、税制、金融上の諸施策などいろいろあると思いますが、そういう具体的な問題は、ただいま通産大臣の御諮問に基づきまして、体制小委員会において具体的に研究をされつつあるのでございまして、この八月末から九月半ばまでには大体の案ができて答申できるというふうに考えておりますが、どうか諸先生方の御理解と御協力によりまして、繊維産業わが国経済の上に引き続き重要なる役目を果たされますように、この上ともお力添えをお願いいたしまして、私の公述を終わります。ありがとうございました。
  7. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、杉村参考人にお願いいたします。
  8. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 私は日本化学繊維協会理事長杉村でございます。本日は参議院の諸先生方繊維工業に非常に関心をお持ちくださいまして、われわれの話をお聞きくださることになりましたことを厚く感謝する次第でございます。  繊維産業と申しましても非常に範囲が広うございますが、そのうち化学繊維製造業は、従来からありました紡績あるいは織布と違いまして、かなり別特色を持っております。と申しますのは、化学工業は装置産業的な大企業で行なわれるという、したがって、労働集約的な産業というよりは資本集約的な産業である。また技術革新の余地が非常にあるということ、それから新しい需要構造にマッチしているというようなこと、そういういろいろな条件に恵まれました新しい産業でございますけれども、非常な発展を続けまして、今後も日本繊維産業の中核となるのではないかということをわれわれとしては期待しておるわけでございます。しかし、世界的にこれを見ますと、まだまだ日本合成繊維といいましても、小さなものでございまして、デュポンやICIというようなものに比べますと、日本一流企業でもまだ非常に小さい。したがって、今後はこういう企業につきましても、もっと資本力を強くし、生産規模も大きくし、技術開発力についても外国に負けないようにしていかなければいけない。一言にしていえば、強大な企業になるということが必要じゃないかと考えております。そのためには官民協調方式によります化学繊維工業協調懇談会という方式がございますが、これを活用いたしまして、単なるシェア争いでなくて、各企業がそれぞれの体質、実力に合った発展をするようにしていくことを心がけておるわけでございます。  合繊は以上のようでございますけれども、昔からありました人絹スフ、つまりレーヨン工業でございます・このほうは需要の拡大は今後そう見込めない状態になっております。新しい需要はむしろ合繊のほうにとられたわけでございます。したがって、この部門につきましては、品質の改善をはかりまして、従来ともすれば人絹スフだといって悪いもの、代用品のようなふうに言われておりましたけれども、そういうことを抜け出まして、レーヨンレーヨンとしてのいい特色もあるわけでございますから、それを生かした製品に変えていくということ、それと同時に、何といっても総生産規模が大き過ぎますので、これをやはり縮小していく、もっと発展性のある合繊にかわっていく。その結果レーヨンスフについては生産規模が小さくなっていくことが望ましい。そうして残ったレーヨン企業については、もっと集中生産をはかり、合理化を進めてコストダウンをする、そして他の繊維に負けないようにやっていく、そういうことが必要じゃないかと考えまして、これにつきましては、業界の中でただいまいろいろと具体策を研究している段階でございます。  次に、紡織業でございますが、紡織業というのは天然繊維も使いますし、化学繊維も使っていただくわけでございますが、だから化学繊維紡績業とは段階的に対立する産業だ、片方原料をつくる産業片方はそれを使う産業だというふうにも考えられますけれども、私どもはそうは考えていないわけでございます。広い意味の化学繊維産業というのは、単に原料繊維をつくってこれを紡績あるいは織布の段階に売ればよろしい、なるべく有利に売ればよろしい、それでは発展しないものだと考えております。やはり紡織業でそれをよく使いこなしてもらうということによって化学繊維産業発展するものだというふうに考えております。したがって、両方の業界関係が、単に横断的に対立するのではなくして、縦の形で結びつくのが望ましいのだというふうに思っております。たとえば加工の技術にいたしましても、化学繊維が新しい製品がどんどん出てくるわけですから、それをじょうずに使いこなすには、やはり化学繊維のメーカーと紡績あるいは織布業界とよく手を携えなければならぬし、また製品が新しいものでございますから、需要の開拓なり宣伝なりにつきましても、よく結び合わなければならぬ。そういうふうにして伸びていくものだというふうに思っておるわけでございます。したがって、紡績業、織布業が今後どうなるかということにつきましては、化学繊維産業としましても非常に深い関心を持っているわけでありまして、やはり何といいましても、これからは国際競争力紡織業段階でも非常に強いものを持ってもらいたいと思うわけでございます。そうしませんと、原料をつくりまして、内地で消化できなくなれば外国原料のまま売るとか、あるいは新興国自給化をはかっておりますが、それらの国では原料をつくるのはむずかしいけれども紡績、織布について自立しようという傾向が強いわけですが、そういうところへ単に原料を売るということになってしまって、日本国内繊維産業としての付加価値をできるだけ増すということにそぐわなくなってくるわけでございますから、できるだけそういうことでなくて、日本国内でできるだけ付加価値をたくさん生むというふうにいたしたいと思うわけでありますので、それにはやはり紡織段階でも強い国際競争力を持っていただきたいと考えているわけでございます。従来日本紡績業、織布業は、国際競争力を問題にするということはなかったわけであります。というのは、非常に強かったわけであります。それが最近になりまして、これの前途が非常に憂えられるようになりました。これはなぜかということでございます。私どものみたところでは、長い間需給調整体制がしかれ、したがって限界企業と申しますか、そういう企業が温存される体制が非常に長く続いてまいった。それはそれなりに必要性もあったわけでございますけれども、今後のことを考えますと、まずそれを脱却する必要がある。そうして業界自体が新しい情勢に対応するように弾力的な形になることが必要ではないかと考えているわけでございます。そういう弾力的な形になりまして、紡織業としましては、まず何よりも技術面設備面、あるいは生産品種、あるいは流通関係につきまして新しい情勢に適応するように体質改善を行なってもらいたいと思うわけでございます。これは先ほど田和さんからもお話がありましたように、日本労働需給情勢も変わってきますし、後進国の追いかけも激しいわけでございます。したがって、労働集約的に一方にたよる形からやはり抜け出していく、そのためには規模を大きくし、近代化を進めるということ、それからあるいは生産品種につきましても、従来のような量産品を売りっぱなしというような形ではなくて、多様な高級品をつくっていく。日本でなければできない非常な技術を生かすやり方、こういうものをどんどん進めていく必要があるのではないかと考えております。これらはもとより業界が、業者が自主的にやるべきことでございます。やり方はそれぞれの企業によって千差万別だと思います。そういうことを業界としてはぜひ進めなければならぬ。ただ、政策として、しからばどうしたらいいかということでございますが、私たちとして望みますことは、企業が自主的に努力するわけでございますけれども、それをはばむものがやはり長年の間にいろいろなものが残っている。それらをできるだけ政策としては排除して、企業自主性が生かせるようにすべきではないか。それから一方、企業単独でやるべきであっても、力の及ばない点がある。これらの点につきましては、政府がしかるべく助成をして、企業努力の力を励ましていただくという必要があるのではないかと考えております。これらを通じまして、従来ありましたような需給調整的と申しますか、単に質の問題は取り上げなくてもよろしいと、量的な問題をしかるべく調整すれば、繊維産業がうまくやっていけるというあり方から変わって、今後の国際競争にたえるような近代化をした紡績業に質的に変わっていくという政策を推し進めるということにしていただきたいと思うわけであります。具体的なその内容につきましては、目下審議会でいろいろ検討されておりますので、その際取り上げられることになると思いますが、ここで私として政府にお願いしたいことは、こういうむずかしい問題ではありますが、それだけに政府としての基本ラインをはっきり出して、少々のことではそれを動かすことのないようにしていただきたい。  以上申し上げましたように、まず企業自主性を回復するという方針、それから質的な対策を進めるという方針、この二つ方針基本であろうと思います。こういう方針をしっかりと確立していただきたい。  それから、また業界としましては、非常に長い間規制の本制のもとにありました。それに惰性がついております。したがって、こういう惰性的な考え、いろいろございますが、そういうものをできるだけ早く捨て去って、そして新しい紡織業になりかわるという覚悟を固める必要があろうかと考えておるわけでございます。  以上構造改善につきまして、大筋の考え方を述べさしていただいたわけでございます。ありがとうございました。
  9. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、野沢参考人にお願いいたします。
  10. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 私綿織物、スフ織物、それからそれに類似する合繊織物を織っております機屋の代表として諸先生にお願いしたいと思います。  いままで紡績業界、化繊業界の御意見がございましたが、繊維業界の中でも比較的大企業の方方の御意見のようでございます。私どもはほんとうに中小企業といいますか、むしろ零細企業業界でございます。しかも、私どもがつくります織物でございますが、繊維産業と言いますものは、その需要の面から言いまして、大部分のものが織物として需要者に供給をされる。いかに化繊会社が優秀な設備原料をおつくりになっても、紡績が糸をおひきになっても、私ども業界で織物をつくらぬ限りにおいては繊維産業というものは成り立たない。しかも、私どもの織物業界が現在一番惨たんたる現状にあるわけでございます。で、てまえみそでございまするが、今回の繊維産業に対する諸先生のいろいろな御施策の重点を、できますれば、織物業界中心にしたお考え方で御指導を願いたいということを心から最初にお願い申し上げておきたいと思います。  私ども業界の概況を簡単に申し上げますると、御承知のように私ども業界は各産地産地に集団として存在しております。主として大阪地区であるとか、名古屋地区、浜松地区、兵庫県地区、その他のところに集団の形で、それぞれ集団のそれぞれの特徴を持ちながら操業をしております。全国で現在一万六千工場の機業者がございます。大体労働者が十七、八万人、つくっておりますのが年間約五十億平方メーター程度、この約半数は輸出と内地とに分かれております。現在繊維産業輸出のウエートとして次第に全体のバランスは下がりつつございまするが、まだこの半数の輸出は現存もしております。ところが、この私ども業界が諸先生のかねてのいろんな御支援は受けつつあるものの、非常な困難な状況になっております。もちろん自分自身の構造的な問題、過当競争の問題、過剰設備の問題ということもございまするが、また一つは、私ども業界が戦争を契機として下請企業的な性格に転落をした、せざるを得なかった。これが一つの現在の苦境の原因であろうというふうに考えております。先ほど紡績の方も言われましたが、一般の消費者物価指数がこの五、六年約三割の上昇を見ているということでございまするが、私どもが現在下請企業としてもらっておりまする工賃は逆に三割ダウンしております。それでこの引き下げというものが、本来であれば企業合理化、コストダウンということで工賃が下がっているということであれば非常にこれはけっこうなのでございまするが、あとで申し上げまするように、そのようなことではございません。このコストダウンは直ちに自己資金の食いつぶし、あるいはまた借金の累積という形ににおいての操業をせざるを得ない現状にあるわけであります。それで、もちろんそのような市況でございまするので、設備の更新、近代化というふうな余地はございません。現在この近代化の世の中におきまして、できれば設備は少なくとも一割前後の更新をいたさなければ国際競争力を持つ産業として成り立ち得ないのでございまするが、残念ながらこの数年間の実績を見ますると、二%前後の設備の更新きりできない。もちろん中小企業のわれわれに対しましては、諸先生の御援助等で近代化資金等の御配慮はいただいておりまするが、いかんせん全体の需要をまかなうわけにはまいりませんので、その程度の設備の更新きりできていない現状でございます。そのような、いわば古ぼけた設備をもって、工賃はだんだん下がって苦しんでいるわけでございまするが、反面生産に要する諸物価は申すまでもなく逐年次第に高騰をしております。特に賃金の面から申し上げると、私ども業界では三十三年当時に比較いたしまして、現在二三%ぐらいの賃金アップになっております。にかかわらず生産性はわずかに三五%きり上昇できなかった。これは一つは、先ほど来申し上げました設備合理化企業近代化というものができなかったために労働の生産性も上がらなかったということにもなろうかと思いますが、そのような現状でございます。したがって、この労務費の加工賃の中に占めるウエートは逐年上昇しております。三十年前後、私ども大体機屋の加工賃の中に占める労務賃はせいぜい三側程度、私ども機屋は大体加工賃の中に占める労働賃金というものは、まあ三分の一ぐらいの程度が健全な経営の内容であろうというふうに考えておったのでございまするが、現在はもうすでに五割、六割、下がった工賃の中でさらに五割、六割というものが労働賃金として払わなければならない現状でございます。したがって、機業は逐年疲弊してまいることにならざるを得ないわけでございまして、ほんとうにわれわれの機屋というものはもう崩壊の寸前じゃなかろうかというふうにさえ考えておるわけでございます。その一つの例は、先ほど私ども業界の機業者数が一万六千数百工場というふうに申し上げましたが、この工場の数が毎年々々ふえている、この三、四年で二千工場ばかりふえております。これは別に設備がふえたからとかという理由ではございません。中堅機業の崩壊、分裂でございます。少なくとも近代産業として合理的な経営の形に今後持っていかなきゃならぬと思っているにもかかわらず、業界はもうすでにそういう中堅的な指導機業が存立することができなく、分散、崩壊の過程に入っているということで端的に御了解が得られるんじゃなかろうかというふうに考えているわけでございます。私どもはこのような実情にありながら、先ほど紡績のほうからもお話がございましたように、われわれは、今後といえども日本の大衆の必需品である衣料品というものの国内生産はもちろんのこと、従来の程度における輸出産業としての責任を果たしていきたいという熱意を持っているわけでございます。そのために、現在綿工連としていかなる構造改革をすべきかということを鋭意研究をしておるわけでございまするが、その内容は、一つは私ども自体の企業のあり方をもう一度反省をする必要があるであろう、と言いまするのは、現在のようなこま切れの非常に抵抗力の弱い、企業力の弱い形ではだめだ、この際大同団結をするなり、あるいは一つの取引関係におけるブロック競合という問題の推進をしなければならないということが一つ、しかもその運営については、先ほど申し上げましたように、私どもはそれぞれの産地を持っております。産地というのが私どもの商売の母体でございます。先ほど申し上げた大阪産地であるとか愛知県の産地であるとか、あるいは静岡県の産地というものが歴史的ないろんな存在価値を持ちまして、現在の私ども業界を形成しているわけでございまするが、この産地を中心といたしまして、いま申し上げました私ども自体の体質改善をぜひしていこうというふうに決心をいたしておるわけでございます。同時に、先ほどるる御説明を申し上げました抜本的な設備近代化をいたしたい。実は私どもの使っておりまする機械は、先ほど申し上げましたように非常に古い、更新ができない、したがって過去の非常に古い設備が累積をされております。したがって、現在耐用年数を過ぎた設備が六割程度になっております。とてもじゃないが、これでは国際競争力もないし、外国との戦争もとてもこの兵器ではできない現状でございまするので、この抜本的な近代化をいたしたいと思っております。幸いなことに——幸いなことといいまするか、これは不幸なことなのかわかりませんが、織機の近代化というのは、ほかの産業設備に比較いたしまして非常に進歩がおくれております。近代化が機械メーカー自体の面においてもテンポがおくれております。やっと昨年、一昨年の末ぐらいから飛躍的な織機が出てまいりました。で、この設備にわれわれは切りかえたい。と同時に、先ほど過当競争原因一つであると申し上げました過剰設備処理をいたしたいと思っております。この過剰設備処理はわれわれの責任でやりたいと思っております。一部の転廃業者に対する制度はすでに前国会において諸先生の御配慮によりまして予算の成立を見たわけでございまするが、この転廃業者の整理の問題を併用しながら過剰設備処理を自分らの手で、自分らのサイドで処理をしていきたいと思っております。  で、ここでお願いがあるのでございまするが、過剰設備処理はわれわれのサイドにおいて責任を持ってやる。そのかわり近代化の面について特段の御配慮をお願いしたいと思っているわけでございます。近代化合理化のためのお願いといたしまして、一つはぜひわれわれこの中小企業業者近代化のために、抜本的な近代化をするために補助金をいただきたいと思っております。この補助金の問題については、先ほど田和さんからランカシアの問題等でもお話がございましたが、私どももこの際抜本的な構造改革をするためにぜひ補助金の制度をつくっていただきたい。私ども業界では約三分の一程度の補助金をいただきたいというふうに考えております。この理由は、はなはだあつかましいのではございまするが、先ほど申し上げましたような市況、それから蓄積の現状からいたしまして、この近代化をする現在余裕がございません。なお、いま申し上げました近代化は従来のような機械の近代化ではない。従来で言いますと、織機というものの値段は大体十万円から十五万円ぐらいで一台買えた。そのくらいで機屋というものの商売ができる。もっと古いものを買えば四、五万円でもできるということでございまするが、そのような近代化をわれわれはいま目的としてはおりません。現在の新しいボックスルームであるとか、ユーフルルームというふうなものを設置いたしますると、やはり七、八十万円ぐらいかかります。話を聞きますると、アメリカ等ではもう大部分の設備がそういうふうに転換をしている。それによってコストダウンをし、品質の向上をしているというふうに聞いておりますが、私どももそういう近代化をしたいのです。そういたしますると、先ほどから申し上げておりまするように、蓄積のない私ども業界、かりに若干の蓄積がございましても、耐用年数の短縮等でいろいろ御配慮をいただいておるわけでございまするが、それは十万円か十五万円の耐用年数の処理によっての蓄積以外にはないわけでございまして、いまここに抜本的な近代化をするという能力はなかなか期待できませんので、ぜひこの際補助金制度をわれわれの中小企業の機屋の近代化の問題については御配慮をいただきたいと思っているわけでございます。で、残余の資金については、特に長期低利の貸し付けによる運営をしていただきたいというふうに考えているわけでございます。  重ねて、申し上げまするが、私どもは自分の現在置かれている立場をよく認識しております。その上に立って産地別のいまのみずからの体制の強化をせなければならぬ。と同時に、過剰設備というものは原則的には自分の力でこれを処理しなければならぬという覚悟をしております。で、そのかわりと申しまするとはなはだあつかましいのでございまするが、われわれのその覚悟を御了承いただきまして、特別の措置を国会の諸先生の皆さまに心からお願いを申し上げまして、私どもの考え方の御説明を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  11. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、坂井参考人にお願いいたします。
  12. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 御承知のように私ども業界は絹織物、それから綿織物、それから主として長繊維を主体といたしました合成繊維織物を生産いたしておる業界でございまして、全国で工場が約二万七千七百ございます。生産設備は約三十万でございまして、これに携わる従業員が約十九万三千人おりまして、昨年の総生産額は二千四百億あげております。このうち約六百億輸出いたしておりますが、御承知のとおり、非常に中小零細企業でありまして、老朽織機、いわゆる耐用年数十三年を経過いたしております織機が約十一万であります。現時点における需給から考えましても、約二割ぐらい過剰設備をかかえておりまして、御案内のとおり、過剰生産、過当競争によってその経営は著しく困難をきわめておりまして、その内容につきましては、先ほど綿スフ工業の野沢参考人が申されましたように、非常に困難でございまして、内容は全く綿スフも絹人絹織物製造工業も同じでございまして、このまま放置いたしますと、重大なる事態を招来するのではないかとして非常に憂慮いたしておるわけでございます。  昨年の十二月以来、政府におかれましても、審議会で業界構造改革についていろいろと御審議願っておりまして、私どもの産地産業といたしましても、各産地でただいま構造改革の実施を立案中でございまして、いずれ審議会でも十分御審議願って御答申があると、かように考えておりまするので、これらの構造改革をやる上におきましては、どうしてもばく大な資金を必要といたしますので、ぜひともひとつ政府並びに国会において取り上げていただきたく、格段の御配慮をお願いいたしまして、私の口述を終わりたいと思います。
  13. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、久村参考人にお願いいたします。
  14. 久村晋

    参考人久村晋君) 全繊同盟の久村でございます。私ども全繊同盟の繊維産業政策につきましての考え方を申し述べたいと思います。その前に、私どもがこの政策を立てるにあたりまして、全繊同盟が運動を進めるにあたりましての基本的な考え方にちょっと触れさしていただきたいと思います。  私たちは産業民主主義という立場に立ちまして、企業と労働の社会性の上に立って公正な分配をはかるということに運動の主体を置いております。したがいまして、具体的な方針としましては、高賃金、高生産性という立場でございます。で、労働条件の向上のためのいろいろな闘争等をあわせまして、その前提となっております産業あるいは経済の面におきましての改善をかちとっていくと、この両方が相まって初めて実効のある成果があがるんではないであろうかと、このように考えております。そこで、具体的には、産業別の段階であるとか、業種別の段階であるとか、あるいは企業別の段階で事前協議を十分に行ないまして、できる限り問題を発生せしめないように事前にいろいろな問題を解決してまいりたい。このような立場におきまして、私ども繊維産業につきまして次のように現状を認識いたしておりますし、そのためにまたいろいろな対策が必要ではないだろうかと、このように考えます。  日本繊維産業の概括的な背景といたしましては、製造業の中において、従業員数におきましては大体一八%余りの者がおる。付加価値額におきましては一二%程度のものである。さらに輸出におきましては、昭和四十年度の総輸出額中、大体一八・七%程度のものを繊維産業輸出しておるのではないか。で、綿業等におきましては、大体バランスといたしまして六千六百七十万ドル余りの受け取り超過になっておる。このような実態ではなかろうかと思います。したがいまして、それぞれの品目におきましては、非常に大きいものは五〇%程度の輸出比率になっております。  このような現状におきまして、内外の環境がどのようになっておるかというふうに考えてまいりますと、いろいろな理由によりまして大きな転換期に立っておるのではないか、このように判断をいたします。その最も大きな理由といたしましては、国際的にも天然繊維から化合繊維へというふうな大きな流れがあると考えます。昭和三十年から三十八年におきまして、世界的に繊維品が大体二・九%程度の年率でもって伸びておりますが、その場合に、天然繊維といたしましては一・八%程度しか伸びない、化学繊維におきましては三・七%程度伸びておる、合成繊維におきましては年率大体二二・五%程度伸びております。このような中におきまして、日本繊維産業におきましても、昭和二十七年当時におきましては、天然繊維と化合繊の比率は大体七五対二五というような位置づけでございました。しかしながら三十五年になってまいりますと、大体それが六〇対四〇ということになっておる。昨年に至りましては五〇対五〇というようなふうに変わってきておる。このような問題もございます。さらに、国際的に合成繊維の増設が進められておりまして、昨年の三月とことしの暮れとを比較いたしますと、ナイロン等においては三五%程度、エステル関係におきましては四四%程度の増設が行なわれる。このように、非常にもう国際的に、あるいは国内的にも、天然繊維から化合繊へとなっておる。さらにまた最近非常に大きな増設が計画されておる。このようなことが問題の一つではなかろうかと思います。  それから第二の問題といたしましては、発展途上諸国において非常に繊維産業が興っておる。すでに自給以上の生産が行なわれております。このことによって、従来の日本繊維輸出市場というものは相当狭隘化してくるんではないであろうか、このような問題があると考えます。  さらに第三の問題といたしましては、先ほど来幾多の参考人から申されておりましたように、既発展諸国におきましてはいろいろな集約化政策がとられまして、構造改善がすでに非常に進展をいたしてまいっておる。たとえて申しますと、英国をおきましては、一九五九年に綿業法ができまして、政府負担において三分の二の資金を出して過剰設備の廃棄が行なわれた。非常に極端なことでございますが、紡績においては大体四八%程度の設備が廃棄される。織機においても三八%程度のものが急激に廃棄されております。それらの結果、ICIとかコートローズ合繊メーカーが中心になりまして再編が行なわれて、紡機は大体五〇%程度、織機は二〇%程度というものがその傘下にあるというふうに聞いております。さらに米国等におきましても、御承知のように一方では輸入制限をやる、さらにまた、近代化投資をした場合には税額について近代化投資の七%程度ほど控除すると、このような政策がとられまして、斜陽であるといわれておった繊維産業がみごとに立ち直ったと、このような要因もまた無視することができないのではないであろうかと思います。  さらに、国内の問題については幾多ございますが、私ども労働組合の立場といたしましては、若年労働力が非常に不足いたしております。昭和三十年程度におきましては、製造業も繊維工業も大体充足率は七〇%程度であるというふうに言われておりました。しかしながら、それが昭和三十五年ごろになってまいりますと、双方とも四五%程度の充足率になっておる。ところが昨年になりますと、それが繊維におきましては二二%というような充足率になっております。このような大きな環境変化が生じておりますので、従来繊維産業におきましては、繊維工業設備等臨時措置法であるとか、あるいは中小企業団体組織法等におきまして、秩序づくりが行なわれておりましたが、それらの政策ではこのような大きな環境変化にたえていくことができなくなっているのではないであろうかというふうに考えます。したがいまして、私どもといたしましては、いわゆる繊維新法にかわる新々法の制定、それと後刻申し上げますが、家内労働につきましても大きな問題があると考えております。さらにまた、先ほど少し触れましたように、発展途上諸国において非常に繊維産業が進んでまいる、このようなことから国際的な各種の対策ということも必要ではないであろうかと考えます。このように新法にかわる新々法をつくってもらいたい。それから二つ目には、家内労働対策を積極的に進めてもらいたい。それから三つ目には国際的な対策を積極的に進めていただきたい。このような三つの考え方を、先ほど来申されておりますところの通産大臣の諮問機関でありますところの体制小委員会等に全繊同盟といたしましても提案をいたしておる次第であります。この三つにつきまして、限られた時間でございますので、概括的に内容を御説明いたしたいと思います。  まず、新法にかわります新々法という点につきましては、現在の繊維産業は御承知のように非常に大きな過当競争下にあるというふうに考えております。それらの結果、一、二の例を申し上げますと、たとえば輸出の問題におきましても、非常にその過当競争が激しいために、輸入制限を設けるような口実になっておるというような問題もあるのではないだろうか。さらにまた、私ども労働の分配率にいたしましても、いろいろな点で問題が生じているというふうに考えます。したがいまして、これらの過当競争を排除いたしまして、国際競争力を強化し、そして国民であるとか、あるいは産業であるとかに安定的な資材供給というようなふうにできるだけ持っていってもらいたい。その場合に、さらに大きな問題として出ております過剰設備の問題もございますので、それらの過剰設備処理につきましても、大きな社会的な摩擦現象が起こらないようなために、ひとつぜひ新法にかわる新々法というものをつくっていただきたい、秩序ある競争ということができるようにぜひしていただきたい、このように考えます。そのような目的のもとに考えました場合に、何と何を新々法の対象にするかということになってまいりますと、私どもの考え方といたしましては、紡績と織布とメリヤス関係の編みもの、この三つを新々法の対象にしていただきたいと思います。なぜそのように考えるかと申しますと、昭和三十五年程度におきましては、糸の消費を見てまいりますと、織布において九〇%、編みものにおいて七%、その他の漁網とかあるいは資材関係において三%程度のものが消費されておりました。ところが本年の一−三を例にとって申しますならば、それが織布においては糸が大体八〇%使われる、編みものは一五%使われる、残りがインテリアとかその他産業資材等に使われているというふうに考えております。そのように考えまして、紡績と織布と二つだけのもので秩序づくりをやるといたしましても、編みものが抜けているということによって織布と編みものとの間においては幾多の競合関係が生まれるのではないかと思いますので、ぜひこの三つを対象とした新々法というものをつくっていただきたいと考えます。  二つといたしましては、現在も審議会がございますが、審議会において、大きなワクを設定するようなことを各界、業界も労働組合も消費者も入りまして、いろいろ論議を行ないまして、そこで大きな問題についての意思統一をはかるようにしていただきたい、そういうふうにいたしまして、紡績紡績、織布は織布、編みものは編みものと、一元的な運営ができるような機関設置をぜひともしていただきたいと思います。で、大企業中小企業も入りまして、紡績についてはその審議会できまったものを実施される場合に一体どのようにするか、あるいは織布についてもどのようにするか、あるいは編みものについてもどのようにするかというようなことを大企業中小企業も一体となって、そこで検討できるような機関設置をしていただいたらどうであろうかと思います。なぜこのようなことを申し上げるかと申しますと、たとえば綿スフ織物を例にとって申し上げますならば、綿スフ織物の専業者企業当たり何台織機を持っておるかということを考えますと、大体二十台であります。ところが紡績経営の人たちは一企業当たりどれだけの織機を持っておるかといいますと、千八百八十台余りのものを持っておられる。あるいは毛織りについても専業は一企業当たり六台程度である。兼業は百二十台近いものを持っておられる。このような点からいきましても、大企業中小企業も一体となってそれぞれの何と申しますか、機能別に十分な調整行為ができるような機関の設置が必要なことではなかろうかと思います。  なお次の問題といたしましては、生産単位の引き上げ、あるいはまた生産方式の調整等の問題が中小企業対策等の場合にぜひ必要ではなかろうかと思います。そのためには中小企業ができるだけ競争力を強化するような方法といたしまして、部分的に何といいますか、協業を行なわれるような協業化法人というようなものを設立いただきまして、そこで単位の引き上げなりあるいは生産方式の調整等についてもはかってもらってはどうであろうかと考えます。  それから次の問題は、過剰設備処理でございます。いま現在どの程度が過剰であるかという点につきましては、今後の生産性向上の問題、あるいは国内需要の問題、あるいは輸出の問題、いろいろむずかしい議論がございますので、数量的にはっきりとしたことは今日の段階では申し上げかねますが、しかしながら、いずれにしても相当膨大な過剰設備の存在ということはあると思います。その場合におきましては、私どもといたしましては、英国綿業法等の例もあることでございますから、ぜひとも三分の二程度の補助金を出していただいて、それによって適正な規模になるように考えていただきたいと思います。なおその際に、私どもといたしましては、転廃業者も生ずると思います。あるいはまたそこで働いておる労働者の問題もございますので、現在まで雇用促進事業団法あるいは雇用対策等におきましていろいろな方法が決定されておりますが、それらの内容の充実と、現実に即応した運営というものをぜひお願いいたしておきたい。設備は何とか処理できたが、自営業主なりあるいはそこで働いておった雇用労働者の問題というものがなおざりにされないように格段の御配慮を賜わりたいと、このように考えます。  それから次の問題といたしましては、流通機構の問題につきましてもぜひとも何らかの措置をお願いをいたしたいと思います。その理由といたしましては、いま現在も繊維製品をなべて考えました場合に、最終価格を一〇〇といたしましたならば、原材料なりあるいは加工費というものは五〇%から多いもので六〇%程度ではないだろうかと考えております。残りの四〇%ないし五〇%というものは流通経費ということになっておるのでございますが、はたして現在の流通機構のままでいいのかどうかということになってまいりますと、非常に多くの疑問がございます。あるいはまた私どもは生産性向上に協力するという立場で労働の分配率を高めるためにも積極的に協力するのでございますが、生産点においてたとえば一〇%生産性が向上したと、しかしながら、それが価格形成の中で二分の一でありとするならば、それは最終時点におきましては五%の効果しかないのではないだろうかと、このように考えますので、ぜひ私どもはその新々法の中に流通機構の問題を定量的に分析をして、そしてそこで具体的な対策が立てられるような場所というものをつくるように考えていただきたいと、このように思います。  なお、先ほど申し上げましたようないろいろな構造調整等の問題を進めるのでございますから、ある期間におきましては設備の新設制限等の措置も必要ではなかろうかと、このように考えております。以上が新法にかわる新々法の内容の概括の説明でございます。  それから、第二の問題といたしまして、家内労働の対策というものも積極的に進めていただきたい。現在繊維産業の場合に、雇用労働者と家内労働者との地位は、大体七六対二四ぐらいの位置で家内労働が占めておるのではないであろうかと考えます。特に織物とかあるいはメリヤス等におきましては、家内労働の占める地位というものは非常に高うございます。したがいまして、これらの問題解決のためにも、前国会で御決定いただきました家内労働審議会等を通じまして積極的に家内労働法を制定していただきたいし、また最低賃金というような問題につきましても制定の促進をぜひお願いいたしたい、このように考えます。  それから第三番目の柱といたしまして、私ども発展途上国が、それぞれの国が繊維産業を重点的に取り上げるということは、繊維産業自体の持つ特質から考えましてこれはやむを得ないことではないであろうかと思う。そこで、それを頭から否定するということじゃなしに、どのようにして国際間におけるところの協調分業というような形を推し進めてまいるのかというような点につきまして、非常に次元の高い場所におきまして、これらの問題を積極的に解決をはかっていただくような方法というものを考えていただきたいと思います。  なお、共産圏貿易等いろいろな問題がございますが、それらの点につきましても何とか、冒頭に申し上げましたように輸出依存度の高い繊維産業でございますので、発展途上国の分業の関係、あるいはまた既発展国との関係におきますところの貿易制限の問題であるとか、あるいは共産圏貿易等の問題につきましても、全般的な総合的な視野に立っての対策をぜひお願いいたしたい、このように考えます。どうもありがとうございました。
  15. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 次に、小口参考人にお願いいたします。
  16. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 繊維労連の小口でございます。申し上げます趣旨を明確にしたいと思いまして、お手元にプリントを用意してまいりましたので、それを見ていただきながら以下説明したいと思います。  繊維産業はいま歴史的に大きな転換点にきております。石炭産業と並んで産業的に非常に大きな問題をかかえていると思うのですが、これらの転換期というものをどのように私たちが、これから国会でも、あるいは政府でもいろいろな立場産業政策を進めていただくわけですが、その上で転換期の条件について私たちはやはり事情について次のようなふうに考えておりますので、御検討願いたいと思うのですが、第一点は、国内の経済の面から見ますと、日本経済の重化学工業政策の推進によって輸出貿易構造の上で綿糸・綿織物、人絹スフ織物の輸出に対する依存度が低下している。それから第二番目は、一九五五年以来化学繊維産業発展して、繊維需要の中で天然繊維消費が停滞し、化学繊維合成繊維消費が伸びてきたために、綿、絹、人絹糸を中心として成り立っておりましたいままでの紡績、織布業とその流通構造が新たな消費需要に即応して再編成せざるを得ないような状況にきておることです。この点は久村参考人が数字をあげて申し上げたとおりです。  それから第三番目としましては、農村の若年婦人労働力の低賃金と混綿技術によって今日まで発展してまいりました綿スフ紡績業が、後に述べます国際的条件の変化に加えて若年婦人労働力が不足してきたこととコストの低下と国際競争力強化のために、資本集約的な方向による高速化、連続化、自動化装置の開発、工業化に追られているということです。  それから四番目としましては、国際的、国内企業競争の中で、独占的企業輸出の比重が日本の経済で総体的に縮ったために、全体としての経営の基盤というものが国内に依存するという度合いが非常に高まってまいりました。そうして経営の収益性を高めるために、いままでの糸売り、賃織りという過程から、付加価値生産性の向上を求めて、二次加工製品のチョップ販売に乗り出してまいりました。その結果、戦前からの大手と中小企業の間において大手は輸出中小企業は内需、それから大手は原糸に多く、加工が中小企業、こういうような生産分野がそれぞれあって、それぞれの位置というものが、国民経済全体の諸条件の中ではある適応性を持っておったのです。ところが、これがチョップ販売によって全体的にこれらの地図が塗りかえられて、系列的な生産と販売が体系化してまいりました。これが早いものが一九五五年ごろから、おそいものでも一九六〇年ごろ完成してまいりました。ところが一方において綿スフ紡あるいは合繊糸におけるところの高度成長による投資というものが原糸の過剰生産力を産み出してまいりまして、そのことの売りさばき競争及び天然繊維資本対化学合成繊維資本の競争というものが圧力になって、これが全加工生産と商社機構を巻き込んで、繊維産業企業構造不況というものを実は体系化しておるのが実情でございます。それからまた化学繊維産業自身にとってみましても、資本の自由化を迎えまして、先ほど杉村参考人のほうからお話ありましたように、一社だけで見た場合に、今後の国際競争について、生産プラントの単位として問題が出てくる。これらのことがいま国内的な条件ではないかと思うのです。  それから国際的な血から見ますと、新興独立国の綿紡績発展して自給度が高まってまいりました。一部の国では輸出市場に低賃金による低コストで強い競争相手となって現われてきています。特に中国、韓国、香港との間に問題が多いのであります。戦後日本繊維輸出構造が特に市場の点で変わってまいりまして、アメリカ、ヨーロッパに片寄ってまいったのですが、いずれもこれらの国々においては、繊維産業はどちらかというと国際産業性格を持っておるために、国内産業の保護の立場から関税と輸入規制を設けております。これらのことによって、日本繊維輸出市場はますます狭くなっておるのです。これらのことが一そう企業競争を激化しております。それからそういう中で、今後日本繊維産業の方向として、新興国との市場競争を避けつつ繊維輸出を伸ばすためには、どうしても合成繊維製品輸出の増大と、高度の加工、デザインによる高級二次加工製品輸出に力をいたさなければならないという情勢が、繊維産業全体の諸問題として与えられてきておるわけです。  こういう情勢を受けて、通産省繊維雑貨局は、大臣の諮問に応じて、体制小委員会が持たれているわけです。私は、ごく最近の動きをとらえながら、これらの体制小委員会の経過について、とりわけ私は中小企業の労働組合の立場で、以下次に申し上げますような疑問点を持っておりますので、この点を一つお聞きとりを願いたいと思うのですが、第一点は、国民経済全体の上から見て繊維産業は確かに構造改善近代化政策の推進が必要であるということは私たちも認めます。しかし、その論理を独占的な繊維資本の国際競争力の強化という論理に実はすりかえて、その結果、解決の方向が、経営規模の拡大によるコスト低下と独占の寡占化による市場安定という方向に流れております。そして過剰生産力は中小企業のスクラップ化によって排除しつつ大企業のビルド策に近代化をになわせようと、こういう傾向が強く出ているのではないかということを危惧しております。  例をあげますと、たとえば綿糸の二〇番手、三〇番手、四〇番手等の量産品種は、一工場当たり五万錘以上の規模にして従来紡績もしくは商社系列による賃織りをやっておったものを、今度は身分たちのほうに、紡績のチョップの一貫生産をする、そして五万錘と千五百台というものを生産単位として想定する、それから企業規模においても、単一番手として六万錘を基準とし、さらに、それだけではいけないので、グループの対象としては十五万錘ないし二十万錘を単位として生産と市場の安定化を目ざすこと、こういうふうに動いておるのであります。ところが、これはたいへん問題がございまして、現状での企業規模を見ますと、先ほど田和参考人がるる実情を申し上げましたように、この基準は、綿紡では実は百三十二社中百五社、スフ紡でいいますと九十五社中七十八社、合繊紡では百四十七社中百四十一社が、この基準からスクラップの対象になるといいますか、そのライン以下になる。それからカナキン、ポプリン等のものは、戦後企業別の賃金差で、従来は紡績自身の中で自家織機があったものが、自分の工場を閉鎖して中小の機屋、繊維業者にまかせておったのが実情です。ところがぐあいが悪くなったら、おまえたちの仕事をわれわれのほうがやったほうが人も集まるし、コストも安くなるというので、実は専業者の仕事を今度は大手の紡績が自分のところでやろうということです。これでは綿スフ専業織布業者の五十台未満の業者一万四千五百八十社、織機の十八万一千六百台がスクラップの対象になってまいりまして、専業者の九一・四%、織機の四六%が実はこれによってオフリミットされてしまうということになってまいります。これは全然自動織機による労働生産性の向上部分を考慮しておりません。こういう状態でいきますと、原産地として特にカナキン、ポプリンの生産品種のウエートの高い知多、泉州の機業者は壊滅するという状態を含んでおります。また、繊維雑貨局の試算によりますと、紡績設備の過剰は現状で三百万錘、日勤連続操業装置と三交代制度によりますと二百九十万錘、一九七〇年末までには現在の設備の五〇%をスクラップもしくはそれに伴う更新をしなくてはならぬ、こう予想しておるのでございます。  これは最初に申し上げましたように、独占資本の立場からの国際競争力という論理から見ればたいへん都合のいい点でございます。必ずしもこれは国民経済全体の諸条件から見て適切であるかどうか疑問に思うのです。特にこのような分析が繊維需要の動向について配慮に欠けておるのではないか。特に原糸、布地生産でのコスト分析にのみ重点が傾いて、その結果、量産品種の大企業への集中、特殊番手糸の中小企業による小規模生産という図式で、以下全体を押し流しておる傾向があるのではないかと思うのです。ところが、現在においても実は日本は国際的に見まして、原糸と布地コストは必ずしも高くはないのです。たとえば、それを綿のバーバリコートに例をとってみますと、日本ではこれが大体三千二百円から三千四、五百円ですが、これに対してアメリカは一万円、ヨーロッパでは八千五百円から一万円、綿のワイシャツにしましても、日本では一着七百円から七百五十円、 これがアメリカでは千七百円、ヨーロッパでは二千二百円、婦人のスリーマーにしましても、日本では二百四十円のものがアメリカでは九百四十円、ヨーロッパでは五百円、このように日本繊維製品及び原糸のコストは、国際的に価格自体としては安いのです。価格は安いけれどもなおかつもうからないで、全体的に過剰になって繊維産業はたいへんなところにきている、これが実情であります。そういう点で、私どもは米国、英国フランス等について、先ほど田和参考人あるいは杉村参考人からお話がありましたけれども、確かに現状段階を考えますと、高度成長政策近代化政策に取り組むという点については、私も賛成でございますけれども、他の国について見ますと、やはり過剰設備の廃棄、それに伴う設備更新、近代化というものを進めますが、非常に特徴的なのは、どの製品をつくるのに使用する糸かということで、実は消費血から原糸の生産等について体系化しておるというのが実情ではないかと思うのです。日本では原糸の品質はよいし、価格も相対的に安いのにもかかわらず——そういう製品が安いのです。ですから、確かに原糸と布地コストの低下によってのみ、繊維産業政策の主力をそういうところに置くというのではなくて、むしろ加工とかデザインの高級化、その結果製品付加価値による収益性を高めるとか、また、久村参考人からお話がございましたように、工場の生産原価に対してたいへんに流通コストが高くなっておるのでございます。これらの問題についても考えなければ、原糸と布段階で何ぼコストを下げても、必ずしもそれが消費者の益になっておらないのです。それからまた輸出競争力から見ても、とても売れないほど商いものではないのです。ここらの点ももちろん十分考えてもらいたいと思うのです。  そういう点で日本繊維産業は実はたいへんに産業構造としてかたわに育っているのではないか。これを例をあげますと、たとえば日本アメリカについて通産省から出されました資料を例にとりますと、大手の八社による実は生産力の集中度を見た統計がございますけれどもアメリカの例については一九五八年、ちょっと古いですが、日本では六二年をとっておりますが、綿紡八社につきますと、アメリカの場合では集中度が三六に対して日本は四四、毛紡は、アメリカが三四%に対して日本は三八・五%、この数字を見ますと、むしろ日本のほうが原糸段階における生産の集中度は高いのです。ところが、それと反比例しまして、たとえば綿広幅織物に例をとりますと、アメリカの八社については生産集中度が四八%に対して日本はわずかに五・六%毛織物にしましても、アメリカが四〇%に対して日本は一三・九%、人絹織物ではアメリカが四四に対して日本は五・二%という数字になっております。それから一九六三年の事業所統計一つとってみましても、繊維工業の一万八千百四十九社の総資本金が二千百十八億円で、その有形固定資産が五千七百二億になっております。このうち資本金が十億以上の会社というものは三十二社です。三十二社の資本金が一万八千百四十九社の総資本金に対し何と五八・九%を占めている。それから有形固定資産が三十二社で四六・九%を占めている。加工段階におきまして、衣服身の回り品製造業になりますと、七千二百三社のうち総資本が百六十七億、有形固定資産が三百三十八億しかありません。それで企業の資本規模をとりましても、五千万円以上の会社というのは三十社しかありません。それで有形固定資産が三百三十八億のうちの一二%、従業員規模で見た場合に、実は衣服身の回り品製造業になりますと、三百人以上のものは七千二百三社のうち五十九社しかありません。会社の七四%というのが、実は三十人以下の零細な企業で働いているわけです。先ほど野沢参考人は、労働生産性ということをいろいろ具体的に御説明になりましたけれども、この系列生産と系列販売、こういうような体系化した日本繊維産業構造の中では機屋さんは実際に労働生産性を高める場合の物的基礎になる設備投資自体が、自分たち自身の経営の中では拡大生産できない体質におかれておるわけです。こういう問題を抜きにして、これは紡績及び加工を何ぼコストを下げてもこれはいけないのだ。  そういう点で、また欧米の繊維製品需要等から見ましても、今後布地を裁断して縫製するという方法から、順次メリヤス編み機による製品化の傾向が強くなっておるのではないかというふうに感じておるのであります。そういう点で自動織機の導入に関しても、織機と編みもの機械の設備比の検討をいまから始めないと、自動織機に政府から金を出して、国として全体の設備投資をしてみたけれども、全体として時代おくれになるという可能性もないではありません。  それから繊維産業構造改善近代化政策というものは、いま申しましたように、国際的な内外の諸条件から見て進めること自身については、国会でも抜本的な取り組みをお願いしたいと思いますが、どうも従来の繊維政策というのは、あるいは政府政策というのは、原糸の段階のみに傾いておる傾向がございます。それから現在取り上げられておりますものも、原糸と織物過程からの構造政策あるいは近代化政策が議論されておりますが、私は視角を変えて、むしろメリヤス、縫製、染色加工の立場から再編成していくという視点も重要ではないか。それは国際的に見ても、高級二次加工製品の生産と輸出が、新興国との競合、収益性の向上の上で要請されておるときに、なおさらその必要性を痛感するのでございます。これら全体的に、どうも現在の体制小委員会一つの流れ、ムード、こういう点について、何としましても私たち中小企業労働者及び中小企業の経営の実態について接触しておりますものから見ますと、これは国民経済全体の諸条件から見て必要だということと、それが資本の論理に変わってまいりますと、どうもまたぞろ繊維産業の一そうかたわの生産構造にさらに傾斜していく危険があるのではないかという感じも実は率直に持っておるものでございます。その辺については、国会のお立場で十分御検討を願いたい。  それで、私たちは今後どういう方向に持っていったらいいかということについて、以下多少考えているところを項目的に述べますのでお聞き取り願いたいと思いますが、繊維産業の転換期を国民経済的な立場から見て、また中小企業労働者の雇用と生活条件の安定的向上という立場から見て、効率的な政策によって乗り切っていくということについては、繊維労働者の一人として賛成でございます。しかし、それには次のような十分な配慮が払われることを希望します。  第一点は、綿紡績、綿、スフ織機の過剰設備の廃棄については、政府近代化の目標を示し企業が適用しやすいよう誘導するにとどめ、立法もしくは行政指導によってスクラップ、ビルドを強制するようなことがないようにお願いしたいと思います。そのことについて、私たちは石炭政策についての現状について危惧を持っています。もちろん現状の石炭政策の動きになりますと、一体責任はだれなのか、私は国民として見てもわからなくなっております。もちろん今日、繊維産業が当面した諸問題については、いろいろ経営の責任もありましょうし、政府政策の転換のまずさもあると思いますが、私は単に政府が悪いということだけで片づけないで、これらの転換については、ある面で企業の自己責任制というものについても明確にしていただきたいと思うのでございます。その立場から見まして、国民としまして、国家予算による補償は転廃業による部分のみに限定して、ただ登録設備に対するプレミヤムを与えるようなことに対しては慎重に御検討を願いたいと思うのでございます。  それからまた、先ほども理由の中で述べましたように、構造対策につきましても、綿紡績五万錘、織機一万五千台の一貫生産がよろしいというだけで、以下全体を押し切ってもらいたくないのでございます。そういう点では、原糸、織り布コストだけの問題ではなくして、染色加工、縫製、メリヤスなど、製品化全体の過程を通じた製品コストの国際競争力の強化という点について、もっと口を向けていただきたいと思うのでございます。  それから二番目としましては、日韓保税加工貿易による現在中小繊維加工業者が深刻な問題をかかえておる。一方においてはスクラップ・ビルドをして、国がいろいろな財政投融資その他の点について対策を立てようというときに、一方においてこれらの問題が野方図にされますと問題があります。たとえば、スクラップにした織機あるいは紡績機械を韓国に売って、一方では補償金をもらっておいて一方では織機を売ってもうけるというようなことは、これは業者としても御検討願いたいと思うのですが、それらのことが絶対ないという保証はないわけです。そういう点で、この日韓保税加工貿易による契約の規制措置についても、あわせて御検討願いたいと思うのでございます。  それから三番目としましては、先ほど申しましたように、繊維産業輸出産業で伸びていくという場合のその輸出は、従来のような生地とか布地でそれが綿織物あるいは絹、人絹スフ織物という布地ではなくて、今後は製品輸出にするというのが、構造改善の大きなねらいではないか。そのことは先ほども繰り返しましたように、新興独立国との競合の問題、付加価値生産性の問題、これらの点から見ましても、その点は必要ではないかと思うのですが、そういう点から見まして、日本繊維産業が、有形固定資産の投資の状況から見ましても、企業規模から見ましても、いろいろの点から見まして加工段階においてたいへんな立ちおくれをしているという点について、もう少し高所から目を向けていただきたいと思うのでございます。そういう点で、私は、染色整理業、織布業、縫製業、メリヤス業について、その資本装備と技術を飛躍的に高めるような近代化投資について、大幅な体制金融措置をお願いしたいと思うのでございます。  このために、実はそれにつけ加えてほしいと思うのは、繊維工業審議会に染色加工、メリヤス、縫製部会をあわせて併置して御検討を願いたいと思うのです。先ほど久村さんが紡績及び織物に限らず編みものをつけ加えろという御意見がありましたが、賛成でございますが、それに染色、加工、縫製もあわせて全体的な製品加工というものについて目を向けるようにお願いしたいと思うのでございます。  それから四番目は、流通コストの切り下げについても御検討を願いたい。  それから五番目は、企業間の公正競争労働力確保の立場から、全産業全国一律の法定最低賃金制をお願いしたいと同時に、また使用者の方々において、産業別最低賃金についての労働協約の締結についても現形を示してほしいと思うのでございます。  また政府は、家内労働法の制定をお願いしたいと思います。  それから六番目としましては、過剰設備処理と並行して、労働時間の短縮についても、私たちは意見を持っておるのでございます。当面、週四十四時間、これは国際的に見ましても、日本繊維産業競争力から見まして不当なことではないと思うのです。一九七〇年に五〇%スクラップするということであれば、並行して四十時間制の問題についてもあわせて御検討をお願いしたいと思うのでございます。  三交代制については私たちは賛成できません。  七番目につきまして、繊維工業審議会は、年一回、繊維産業現状報告、長・短期の需給予想、設備能力と投資資金配分計画案を策定して国会に拠出していただきたいということでございます。その点は、実は企業の自己責任制の点について、私は意見として申し上げましたけれども、実は企業の自己責任制は、一たんそれが政策として法律もしくは国会から離れますと、銀行の信用という形で問題が流れていきますと、結果的にはまたそれ目打が独占化につながってくるわけです。ところが、私は国民として見まして、現在、企業は御承知のように、自己資本はいいところで三〇%、平均して大体二二%前後です。このことは産業政策と並行して、産業への資金の投入について国会が高い立場から監視について方向づけをお願いしたいということを意味しています。  御承知のように、八〇%の資金というものは、それが何らかの形で財政投融資あるいは市中銀行を通して流れておるのでございますけれども現状産業政策が実際に推進されておるのは銀行でございます。ところが、それがまた系列銀行等による投資の集中化ということの現象を生じまして、国民経済の全体的なバランスのある成長をはばんでおるのでございます。これらの問題を規制しますのが国会の立場で、産業政策についての御討議にあわせて資金計画についても、私は、監視あるいは誘導、御指導等が必要ではないか、こう考えるのでございます。そのような意味において七番目のことについて考えました。  以上でございます。
  17. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 以上で参考人方々の御意見の開陳が終わりました。  参考人の方に対する質疑は、これを午後に行なうことにいたしたいと存じます。     —————————————
  18. 村上春藏

    委員長村上春藏君) 先ほど委員の変更がございました。  向井長年君が辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。  午後一時に再開することにいたしまして、これにて休憩をいたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  19. 村上春藏

    委員長村上春藏君) これより商工委員会を再開いたします。  それでは、これより質疑に入ります。  参考人方々に対して質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  20. 近藤信一

    近藤信一君 本日は、業界方々や労働組合の方々に御出席願いまして、いろいろと貴重な御意見を承ったわけでありまするが、まず質問に入る前に、私の私見を一言申し上げまして、それから順次御質問を申し上げたいと存ずる次第であります。  繊維新法が施行されましたのが昭和三十九年の十月でございます。この繊維新法は、御承知のとおり過剰設備をかかえて慢性的操短体制下にあった紡績業構造を打開するとともに、複合繊維の増加、労働需給の変化に対処して、わが国繊維産業を今後とも輸出産業として確立していくために、企業の自由な創意を発揮し得る基盤を造成するということでつくられたものであります。ところが、こういう目的でつくられまして施行された繊維新法でございましたが、何という皮肉か知りませんが、町を同じくして産業界全般の不況の波に巻き込まれるということに相なりまして、繊維新法自体の内在する欠陥から和変わらず設備過剰が顕在化し、綿糸市況の低迷は、ときには大きくコスト割れの状態におちいっております。施行後一年にもならないうちから、早くも繊維新法の改正論が出る始末ということでございます。昨年の九月から独禁法による不況カルテルを結成、今日に至っております。この間における業界方々の苦悩というものは私どもも十分にこれを推察できるところであります。繊維新法施行後におきまして、全く法律の意図するところと逆の現象におちいったのは一体なぜなのか、このことに関しましては、去る三月の本委員会において、同僚大矢委員と三木通産大臣乙竹繊維局長との間で論議されたこともあります。ここで繰り返しはいたしませんが、その理由はともあれ、とにかく構造的な改善が一日も急がれなければならないという点については、業界方々政府も一致したところであると思うのであります。本日の委員会関係方々に御多忙中にもかかわらず御出席をお願いして、その御意見をお伺いしたのも、実はこの問題について、われわれ商工委員会としても、業界政府ともどもに、このむずかしい問題でありますが、きわめて重要な問題についてこれを一日も早くよりよい方向で事態を解決させなければならないという考えからでございます。本日は、業界及び労働者のそれぞれの代表の方々から貴重な御意見を承わり、これらの御意見を十分私ども参考にいたしまして、日をあらためて政府当局と論議をしたいと考えておりますが、本日はとりあえず参考人方々に、本日の御意見中心に若干お尋ねしておきたいと思います。  まず最初に、紡績協会の田和参考人にお尋ねするわけであります。現在、第一区分の紡績設備は、先ほど来約三百万錘が過剰であると言われておりますが、繊維新法では二対一の比率でスクラップ・アンド・ビルドを行なうたてまえとなっていたのであります。三百万錘過剰と言われておる状態のもとにおきまして、この繊維新法の二対一のスクラップ・アンド・ビルドの方法は、今日においてどのように一体評価されておるのか、この点をまず最初にお尋ねしたいのであります。
  21. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 新法で二対一で処理いたしましたのは、はっきりした数字は覚えておりませんが、七、八十万錘に達すると思います。なお、新法によります凍結が百万錘残っております。で、われわれが三百万錘だけ過剰であるといううちの百万錘がそれに当たるわけでございます。したがいまして、これをどういうふうにして今度の、われわれが三百万錘の廃棄が必要だということを言っておりますが、その中に追い込むかということは、これから体制小委員会の中で解決される問題でございますが、これは従来すでにその法律によって二対一の規則に従って処理した方がございます。したがいまして、その人たちとのバランスから見まして、これはおそらく今後どういうふうになるにいたしましても、この凍結に属します、残っております百万錘は、従来のやり方を踏襲せざるを得ない、こういうふうに私は考えております。
  22. 近藤信一

    近藤信一君 次に、繊維新法が施行されましたとき、第四区分への登録が予想外に多かった、業界や通産省もともにこの問題につきましては非常に苦慮されてこられたと私聞いております。このことから第四区分でやみの糸をひいているのが相当出ているというふうにも見られますが、このやみの紡機の実態は一体どんな状況でございますか。これにはどんな対策をとったらよいと、あなたのほうではお考えになっておられるのか、この点はいかがですか。
  23. 田和安夫

    参考人田和安夫君) やみの紡機が予想よりふえました原因は、従来は御承知のとおりに生産制限でございまして、設備制限ではない。それが新法によりましては設備制限に変わりましたので、したがって、その法律の切りかえの間に、三カ月間の猶予によって届け出によって全部登録せられました。その期間にぞろぞろを出てきて、やみ紡機、要するに従来のやみ紡機がふえました。こういうのがふえました原因でございます。また、それは法律によりまして、自由糸しか引けないことになっておりますが、はたしてこれが自由糸だけひいているのか、あるいは違法の糸をひいているのか、要するに禁止されておる違反糸をひいているのかということは、市場ではいろいろいわれておりまするが、はっきりした数字はつかめません。しかし、相当なものが違反糸をひいておるということは考えられます。しかし同時にまた、はっきり法律どおりではございませんけれども、従来の白山糸でない糸をひいておると申しますと、どういう糸かと申しますと、反毛した原料を使って、そうして従来の純綿糸なりあるいは純スフ糸でない用途に向けられるものをつくっておるというものもあるんでございます。したがいまして、これがどれだけのものが純粋の意味で違反糸をひいているか。それからいま申しましたように、違反糸ではあるけれども、これは従来の糸とは違う、要するに新しい分野の新しい原料を使ったそういうものであるというものもありますので、この正解な数字ははっきり——おそらく政府のほうでも、ぼんやりした数字はつかんでおられるかもしれませんけれども、正確な数字は要するにわかりませんが、しかし、相当なものが違反糸でできて、それが需給を満たしておるということは否定できないと思います。したがいまして、今度のわれわれの構造改革におきましても、この四部落の問題をはっきりしてもらいたいということは、これはわれわれの業界の非常に強い要求でございまして、四部落の処置がはっきりせられないようであったら、どんな改正案にも反対だというくらい強い意見の人が多いのでございます。これはいわば神経にさわる問題であるというふうに、経済人の正義の観念からくる問題もあると私は思うのでございますが、それでわれわれの考えといたしましては、現在持っておりますのは、ほんとうの自由糸しかひけないのでございますから、自由糸の需給というものを調べ上げまして、そうしてその白山糸の需給に合うものは白山糸をひく、そのはみ出たものはやめてもらうか、あるいは凍結するか、あるいはわれわれとしては四対一の割合で、四錘つぶしたら、一錘のものを第一部落のほうに編入するとか、こういうような四部落についてははっきりした処置をとっていただきたい。こういうのがわれわれの希望でございます。
  24. 近藤信一

    近藤信一君 いまもお答えがございましたように、やみ紡機の実態というものはなかなか把握できにくいことは私もよく存じております。そこでやはりこれは将来もこのやみ紡機の問題はなかなか解決がしにくいのではないか。これは実態がつかめないから、これはどうしても当局としても、また業界としても、なかなかこれに対する問題を処理するということは困難であろう。しかし、困難であろうからといってこれは捨てておくわけにはいかない。何らかの方向で将来はこの問題を解決しない限りにおいては、これはいつまでたってもまた同じようなことが繰り返される、こういうふうなことを私は心配するわけでございますが、この点はどうでございますか。
  25. 田和安夫

    参考人田和安夫君) お説のとおりでございます。はっきりいたしませんけれども、しかし要するに、できる限りにおいてはっきりさして、そして先ほどわれわれが申しましたように、将来この問題を可能なる限りにおいて解決をはかっていただきたい、こういうのがわれわれの強い希望でございます。
  26. 近藤信一

    近藤信一君 繊維新法施行後、綿糸の市況は低迷を続けて、たとえば四〇番手で大体百七十円といわれるコストを大きく削って百四十円というところに落ち込んだこともあるように聞いておるが、このような状態が長く続いておりますが、この対策としては、構造的な問題の解決から手をつけなければどうにもならないことで、繊維工業審議会でも検討が続けられているのであります。これは一日も早く有効適切な対策というものの手を打たなければならないのではないかというふうに私は考えておりますが、整備促進協会はようやく六月十五日に発足したばかりで、事業団を設ける構想をはじめといたしまして、抜本的な対策は昭和四十二年度以降になるというふうな見通しであるわけなんです。このようにいわゆる不況状況が長期にわたって継続している中で、業界の経営状態はどういうようなことになるのか、これで持ちこたえられるのかということが非常に心配になるわけでございますが、この際経営の実態というものについて、できれば御説明が願いたいと思います。
  27. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 経営の実態は各企業によって相当な開きがございますので、したがいまして、これを一つは概論するということはむずかしいと思いますが、ただ一例として申し上げますと、四年ほど前には、紡績の自己資本の比率は四〇%になっておりましたのが、現在二〇%に落ちております。と申しますことは、この四年間の不況によりまして各社が自分の資産内容がそれだけ落ちた、借り入れ金によってまかなってきたということがわかるのでございます。要するに、現在はすでにそういう限度にきているということは申し上げられると考えられます。
  28. 近藤信一

    近藤信一君 それから紡績協会では、構造改善策で中小紡のグループ化を推進するということをきめておられるようでございますが、このことは、工作機械業界でも昨年十二月からグループ化をどんどんと進めてまいりまして、すでにこのグループが十以上結成されております。このグループ化、いわゆる機械工業におきましてはいろいろと部門を分けまして、それぞれのグループによってこれを推し進めていこう、こういうふうなことを考えているようでございますが、紡績業界における今後のこのグループ化に対するところの効果、いわゆる今後どのようにこれが推移していくのか、これは将来の展望として合併または協業、こういうふうなことの措置を考えて有効な対策を立てていかれるのか、この点は工作機械とは若干違っておりまするけれども、やはり私どもが機振法の改正のときにいろいろと業界方々参考人としておいで願いまして、その工作機械のグループ化の問題についてもいろいろとその実態というものをお聞きしたわけでございます。紡績協会といたしましては、このグループ化を推し進めるという過程は、将来どのような展望の上に立ってこれを進めていかれようとしておられるのか、この点はいかがですか。
  29. 田和安夫

    参考人田和安夫君) まず過剰紡機の処理の問題に関係いたしますので、それから申し上げますと、われわれは、現在の構造対策一つの大きなポイントでございます過剰紡機をこの際思い切って処理する、そしてそれを効果的にする、やった以上は効果のあるやり方をしよう、こういうことを一つの念願といたしております。そういたしますと、相当思い切ったことをやる場合に、はたして業者の自発的な希望を待ってやって間に合うかどうか、そういうことでテンポが合うかどうかという点が疑問でございまして、これはこれからの問題でございますが、場合によってはプロラタ方式にして各人に割り当てるということを考えるのもいいのじゃないかということが話題になっております。そうなりますと、ここに一つの予盾が起きます。と申しますことは、われわれは企業の整理統合によって企業の拡大をはかろうとしておるのに、プロラタ方式というものをとりますと、各企業をかえって小さくするという問題がございます。したがいまして、何とかその過剰紡機の処理ということの反町においては、企業の拡大ということをこれはあわせて実行いたしませんと効果がございません。その手段といたしまして、合併統合系列化企業の提携というようないろいろな方法が考えられております。それで会員もこういうような問題についてはなかなか思い切りがつかなかったのでございますが、政府のほうでも、単純なる過剰紡機の処理だけでは目的を達しない、これは従来の操短の延長にすぎない、それだけでは政府のほうでも協力ができないということを御説得になりまして、その点は大体皆そういう気分になりました。そこで、そうかといいまして小さな紡績は大体個人的な傾向が強いので、株式なり資産内容が取引市場において公に公示されておるわけでございません。したがって、合併等というようなことはなかなか容易に行なわれるわけのものでもございません。そこで、企業統合はするが、何とかその間を調整する方法はないかというので、グループ化ということが考えられておるわけであります。それでどういうふうにしたらグループ化の価値が上がるか、どういうふうにしたら目的を達せられるかということは、これからの検討でございまして、いろいろ方法が考えられておりますが、この間もわれわれのほうでもその研究会をつくりましたばかりで、それは主として中小企業の人が主体になり、これに若干の大企業の人も加わりまして、われわれは今度小委員会に間に合わすようにこの結論をつけようと思って勉強いたしておりますが、この間、そのときに一つ意見として出ておりましたのは、たとえば、ここに五万錘なら五万錘、十万錘なら十万錘の単位のものが寄りまして、そしていま一番問題になっております小さな紡績でも、みんなたくさんの品種の糸あるいは布をつくっております。これが非常な不経済になり、そうして合理化を妨げておりますので、そういうもののグループ化によって生産品種の単純化をはかり、そうして経営を合理化していこう、こういうくらいのところはまずやらなければならぬ。初めからあまりきついことをやってもできないが、まずそのくらいのことをしなければ、グループ化の価値はないじゃないかというような意見が出ておりましたので、おそらく今後の問題としては、その生産品種の単純化、経営の合理化、しかし各企業単位はつぶすんじゃなくて生かしていこうというようなぐあいに研究が進められるものだろうと、これは私の想像でございますが、この間の話の出ました点を御参考に申し上げますと、そういうようなことが問題になっております。
  30. 近藤信一

    近藤信一君 いま中小紡のグループ化の問題をお聞きしたわけでございますが、またその反面において、   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕 私ども新聞を通じていろいろ知るわけでありまするが、大企業でもグループ化でなくして合併問題が今年起こってきた。紡績の大企業で合併に成功したところもございますし、いわゆる合併に不成功に終わったところもあるわけなんですが、この中小紡のグループ化と同時に、十大紡の中での合併問題というものが一つの話題になっているわけなんですが、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  31. 田和安夫

    参考人田和安夫君) これは私がどう考えておるかということじゃなく、事実どういうことになるか、あるいはどういうふうになろうとしているかということの御質問だと思いますが、理事者の人も、いろいろと将来の企業のあり方、要するに大企業化の傾向あるいは流通構造に関する将来の行き方、こういうようなことについてはいろいろ各企業活動の範囲においてお考えになっておりますが、これは企業の自主的な企業活動の範囲でございまして、業界として取り上げておる問題ではございません。
  32. 近藤信一

    近藤信一君 さらに、紡績原料高の製品安、こういうことばがいわれておりますが、これはいままで機屋でいわれたことでございますが、また繊維品は卸売りの場合には安いものが、それが小売り値ではあまり下がっていない、こういうことがいわれているわけですが、それは一体どこに原因するのでございましょうか。この点はどうですか。
  33. 田和安夫

    参考人田和安夫君) これはいろいろ見方があると思いますが、私はこれを二つに分けて考えておるのであります。一つは、生産者自体に問題がある。これは端的に申しますと、やはり需給のバランスが合わない、過剰の設備があって需給のバランスが合わない。それからもう一つは、前に申しましたように、過小設備下の過当競争による要するに販売の問題がある。こういうふうに考えるのでございますが、しかし根本は、私はやはり流通機構にあると考えます。したがいまして私は、繊維構造改革というものは、生産者の部面から見た構造改革というものは繊維全体の構造改革の半分である、要は流通構造改革までいかなければ、ほんとうの繊維構造改革にならない。と申しますのは、たとえここに近代化いたしましても、年々八%も労銀が上がっていきますと、とても合理化なんかで追っつくものではございません。結局はわれわれは消費に直結する生産をする、午前中も話がございましたが、従来のような市場販売でなくて消費者に直結する販売を考えていく、要するに販売組織につながるものを考えていくというところまでいかなければいかぬのだろうと考えまして、先ほどの御質問にお答えしたように、私は生産者自体の問題であるから、それを姿勢を正すことによって次には流通構造まで及ばねば解決のできない問題である、かよう考えております。しかし、これは私の私見でございます。
  34. 近藤信一

    近藤信一君 そういたしますと、やはり紡績業改善をはかると同時に、この流通機構の改善ということもやっていかなければ、これはいつまでたっても今日安定というものはばかっていけない、こういうことになるわけですね。
  35. 田和安夫

    参考人田和安夫君) お説のとおりでございます。
  36. 近藤信一

    近藤信一君 先進国の英米が合理化体制整備を行なった上に関税と輸入規制で保護している。日本は、この先進国の保護をやめてもらいまして、これらの先進国への輸出を多くしなければだめじゃないか、こういうふうに私思うわけなんですが、その方法として何かいい方法でもあるというふうにお考えなされませんですか。
  37. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 現在綿製品に関しましては、御承知のとおり、国際綿業協定というのができまして、ほとんどの輸出国、輸入国はこれによって規制されております。したがいまして、量的に申しますと、この国際綿業協定というものを改めなければ量的にふやすことはできない。しかし、現在すでにこの綿業協定は改定の時期に至っておりますが、世界的に見まして、この協定は延長するという空気になっております。したがって、これを量的に大きく変化さすということは、まず不可能であろうと考えます。したがいまして、今後の紡績の行き方といたしましては、その量の範囲において内容を高級化していく、あるいは従来の生地をこれを加工品に持っていくとかいうふうに、要するに加工度の商いもの、もっと加工賃の多く取れるものに持っていくということ以外には、私は実際問題として困難であるというふうに考えております。
  38. 近藤信一

    近藤信一君 特にわが国輸出振興の上からいきまして、いつも、アメリカでもこれは問題になるわけですが、輸入規制の問題がアメリカで出てくる。その場合には日本政府といたしましても、いろいろアメリカと協議をいたしまして取りきめをしているわけでございますが、取りきめはいたしまするけれども、非常にそういう点では日本政府として、輸出振興の立場からいきましても、何かまだなまぬるいような気が私はするわけなんですが、この点業界を預かっておられる協会としては歯がゆいような点もあろうかと思うのですが、この点はどうですか。
  39. 田和安夫

    参考人田和安夫君) お説のとおりでございまして、われわれはアメリカとはこの十年間綿業の貿易についてはずいぶん争いましたのですが、現状あるいは将来のことを考えますと、けさ、午前中申し上げましたが、アメリカは非常な大きな投資によって競争力をつけております。したがいまして、アメリカへ出しますものは生地綿布とか、糸とかいうような、こういうようなものではとてもこれは、たとえワクは広げても国際競争はできない。したがいまして、アメリカヘの輸出をかりに考えます場合には、アメリカと直接競合しないようなもの、そうして加工度の高いようなものを考えていくという以外には方法がないのでございまして、歯がゆいとその点でおっしゃられればそのとおりでございますが、実際問題としては、やはり向こうとしても、綿業は向こうのほうが重要な産業であり、   〔理事柳田桃太郵君退席、委員長着席〕 しかも、非常に大ぜいの労働者をかかえた産業でございますので、急激に打撃を与えるようなことは、われわれとしてもやはり慎むべきであり、また向こうとしてもこれは容易承知しないものだろうと思うのであります。
  40. 近藤信一

    近藤信一君 現在紡績界におきましては、新鋭機械が採用されまして、私聞いておりますところによると、連続自動紡績機械というものが設備されて、稼働状況というものは非常に能率をあげておる、こういうふうに聞いておるわけですが、この機械が全紡績の機械中に占める割合というのは、一体どれくらいの率を今日占めておるか、さらに、能率性というものがどうなっておるか、それからイギリスやアメリカではこの新鋭機械というものが導入されておるかどうか、この点はいかがですか。
  41. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 現在どれくらいのものが要するに自動化されておるかという御質問ですが、自動化という実は定義がむずかしいのでございまして、自動化の意味は、部分的な自動化もございますし、あるいは工場全部をオートメ化したものもございます。したがって、ただいまの御質問は、工場ぐるみの自動化のような意味に私はとりました。部分的な自動化といいますか、オートマティック・スプーラー・ワインダーが、たとえば人手をたくさん使いますところで比較的経費が少なくて自動化できるので、そういうのは相当なパーセンテージに達しております。それから工場ぐるみ自動化というのは、まだ試験段階でありまして、まだ一、二工場をやっている、完全にやっているのは東洋紡の浜松工場、富山の工場がそうなりますというような程度で、錘数にして二万錘程度で、試験的にやられているのは数カ所でございまして、全体で十万錘程度だと考えております。それが税状でございます。  それから英米ではこれはどういうふうにやっているかという御質問でございましたが、わりかた英米ではオートメーションというものが工場ぐるみのオートメーションでございます。これが案外進んでおりません。むしろアメリカなんかでは荷能率化というものが進んでおりまして、非常に能率の高い機械を入れまして、そうして生産費を下げるという方法をとっております。と申しますのは、オートメーションには非常に長所もございますが、また欠陥も多うございます。欠陥と申しますと、一部分がとまりますと全体とまってしまうようなことになりますので、これの運営というものはなかなかむずかしいので、したがって、まだ試験段階でございまして、現在アメリカでやられているのは、非帯に高能率化という面に多くとられているように私は聞いております。
  42. 近藤信一

    近藤信一君 その連続自動機械の二十四時間操業をめぐりまして、業界の中に意見の対立があったように私聞いておりますが、現在は一体どうなっておりますか。この点おわかりでしたならばお知らせ願いたいと思います。
  43. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 意見の対立とおっしゃいますことが私どうもよく理解できないのですが、思い当たります点から申しますと、一般に生産過剰で、生産力をみんな減そうとしているときに、三交代によって生産量を上げるということは、全体の行き方と矛盾するのじゃないかという、そういう意見のこともありましたのがいまのお話の点だろうと思いますが、その点は政府のほうの御裁定で無事に解決いたしまして、現在は問題ございませんが、しかし、将来のことを考えますと、こういうものは大いに伸ばしていくべきであるというので、これからはそういうものに対する制限でなくて、むしろ伸ばしていく方向に進もうというような空気が盛り上がっているように思っております。
  44. 近藤信一

    近藤信一君 最後に、日本紡績はかつては世界で第一位を占めておったわけでございますが、それが今日では英米におくれをとっておる、こういうふうに私聞いておるわけですが、一体第一位を占めておった日本紡績が英米におくれをとったという原因について、何か心当たりでもございましたならばお聞かせ願いたいのであります。
  45. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 午前中申し上げましたが、私は現在おくれをとったとは申しておりません。このままにいくとおくれをとるおそれありと申しておるのであります。おそれありと申しますのは、イギリスの場合におきましては、まず政府の補助によって、そうして過剰の紡機は貰い上げる、そして過剰紡機が処理された次に政府がまた金を出して近代化する、そして一つ業界が安定した基盤の上に化繊業者でありますICI及びコートローズのごとき大きな企業が乗り出して、その傘下に紡績業をおさめて巨大なる企業体をつくり上げた、したがって、これは将来おそるべき競争力を持つに至ったということを申し上げました。それからアメリカの場合には、アメリカが綿花の補助金というものを今度ポンド六セント半というものを紡績に直接くれてやるようにいたしました。現在バーリントン紡績というようなアメリカの有力な紡績業者が総会で述べているのは、現在の利益のもとはそれである、繁栄のもとはそれであるというように、政府アメリカ綿業の、これはケネディのセブン・ポイントから発しているのでありますが、そういうような政府の補助によってアメリカが大きな企業設備改善に乗り出している。したがって、現在は私は貫けておると思いません。現在の設備はまだ日本アメリカとフリー・ハンドに競争して負けておると思いません。しかしながら、このままにおいたら、日本不況によって設備改善はできない、こういう状態に追い込まれて、そうして自分の財産を食いながら命をつないでおるという状態を続けていったら対抗できなくなるというのでございまして、現在において負けておるとは私は考えておりません。
  46. 近藤信一

    近藤信一君 次に、化繊協会の杉村参考人にお尋ねするわけでありますが、化合繊はここ一、二年、品種によっては需要の停滞で生産調整をしているものもありますが、将来の大勢としては、まだまだ伸びるものと思っております。現に欧米の巨大会社である例のICIなどでは大型設備の増強をはかっているやに聞いております。これらを相手とする国際競争に対処するために、わが国の化合繊工業というものは非常にむずかしい事態に当面していると思います。国内では協調懇談会におきまして設備の調整をはかっている状況でございますが、欧米メーカーの生産規模拡大への動きは、これを傍観しておれないという事態でなかろうかというふうに思うのです。これに対しましてわが国の化繊はどう対処すべきか、これはむずかしい問題でございまするけれども杉村参考人から御見解をひとつ伺っておきたいのであります。
  47. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) ただいま近藤先生からお話がございましたとおり、合繊の将来性はまだ十分期待できますけれども日本企業力を国際的に比較しますと、まだまだ弱体でございます。それに対してどういう対策業界として考えたらいいかということでございますが、何ぶん若い廃業でございますので、いままでのところは、それぞれの企業がそれぞれの企業なりに十分の自信を持って出発したと、これからが問題だと思います。そこで設備の増設によって拡大していくわけでございますけれども、それが単にシェア争いになり、十分な販売体制、あるいはそれの加工体制、あるいは十分な輸出体制なしに、いたずらに設備部門だけ他社に負けないというふうに広げていくということでは、早晩行き詰まりがまいりますので、そういうことのないように、協調懇談会方式を使いまして、役所側あるいは学識経験者側の意見も伺いつつ、それぞれの実力、体質に相当した伸び方をしようという心がけを持っております。しかし、ほんとうのことを言いますと、現在合繊に進出した会社の数そのものがそのままで、どれもこれも並列的に伸びていくことがいいのか、あるいはもっと集約して、資本、企業自体の大きさというものについても、国際的に十分に太刀打ちできるようにしなければならぬじゃないかという気もいたすわけでございますが、この点は、近藤先生からも非常にむずかしいだろうということでございますが、まさにそのとおりでございまして、その辺は今後の業界自体の問題で十分考えていかなければならぬところだと考えております。
  48. 近藤信一

    近藤信一君 ちょうど二、三年前の国会で特撮法が廃案になったのですが、この特撮法が国会の提案されましたときに、一番熱心でございましたのは、化繊業界だったと思うのです。当時、化繊業界や特殊鋼などはあの特振法に、大きく言いますと、一つの生命をかけてと、こういうふうなことでもあったと私は思うのですが、あの特振法が廃案になりまして、その後この化繊業界におきましてはいろいろと困難な事情が出てきたんじゃないかと私思うのですが、あの当時と今日との比較は一体どのようなことになっておりますか。この点おわかりでございましたならば、お示しを願いたいと思います。
  49. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 特撮法が成立することを私たちの業界は望んだわけでございますが、御存じのようなことで不成立になりました。しかし、あの法律は私たちから見ますと、統制法ではない、業界が自主的に今後のあり方を考える。それについて、単に業界だけでなしに、役所側あるいは学識経験者側の意見も十分聞いて方向づけをしていくということが本本思想のように私たちは了解しておったわけでございます。したがって、法律は通りませんでしたけれども、できるだけの範囲内であの精神を生かしたやり方を使うことができるのじゃないか、そう考えまして、化繊工業協調懇談会というものをつくらせていただきまして、そこで合繊が今後伸びていくのにはどういうふうな基準でいかなければならぬかということをきめていただきまして、それによって各品種ごとに、その基準のさらに具体的なものをきめ、それに基づいて各社が自主的にその基準に応じた伸び方をしていく、それについても、懇談会の形式で各社が基準にこういうふうに合っていると思いますということを説明するという方式を使いまして、行き過ぎのないようにやっているわけでございます。まだまだ十分とは言いかねますが、一応協調懇談会の精神は、生かしているんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  50. 近藤信一

    近藤信一君 化合繊は次から次へと新しい品種を創造して発展していくものだと思います。おそらく十年先には、現在考えられていないような新しいものがっくり出されるだろうというふうに思うのです。これをつくり出すのが、また企業発展につながるものでございますし、新製品開発の体制というものは現在どのようになっておるのか。また各会社で研究開発のために売り上げの何%くらいをこれに使っておるのか。これは研究開発について各社の共同作業、分業が行なわれているのか、重複して実施しているのかどうか、この点はどうですか。
  51. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 合成繊維は、いまお話しのように、技術革新に伴って発展するものでございますので、常にその努力を怠ってはならないわけでございます。そのためには研究投資を相当大きくしなければならないわけでございますが、ちょっと私数字のいま用意がございませんけれども日本繊維業界の中では合繊メーカーが一番研究投資に力を入れておるということは確かに言えると思いますが、それを外国に比較いたしますと、まだまだ低いと言わざるを得ないと思います。そこで、今後の問題としましては、従来合繊が出発しますときには、外国技術を導入するという形でもって一応基礎を確立したということで伸びてまいりましたけれども、将来のことを考えますと、単に外国技術を導入するだけではいけないので、自社の技術を開発し、あるいは進んで外国技術と交換するとか、あるいはさらに技術輸出をするというところまでいかなければならないのじゃないかと考えております。そういう基本的な点につきましては、メーカー自体がしなければならないのでありますけれども、もう一つ、消費と需要とつながりまして、どういうような商品を開発すれば需要名のためになるか、業界から言えば、売れるかということでございますがそういう点についても、単に原料を売りっぱなすということでなくて、ほんとうに需要家に迎えられるような製品を、紡績あるいは織布の業界と、あるいは商社と力を合わせて開発をしなければならぬ、そういう点にも大いに力を注ぐ必要があるということを考えているわけでございます。
  52. 近藤信一

    近藤信一君 いま杉村さんも、占われましたように、研究費については、外国と比較すればまだだいぶ低いということでございますが、外国と比較して、化合繊の研究費なんというものはいまどれくらいの開きがございますか、大体でよろしいのですが。
  53. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 日本一流の合繊企業と向こうの一流のと比べますと、あるいはこちらのあれに対して向こうは四、五倍か、五、六倍、その比率ですね、まだそれくらい違うのじゃないか。
  54. 近藤信一

    近藤信一君 三十九年以降の国内ナイロン市況の低迷とともに、輸出市場におきまして多額の低落ということがあるように思いますが、一部の市場への輸出の急増、輸出面での過当競争など好ましくない事例というものが発生したことは御承知のとおりでございます。このために、ナイロン糸輸出振興株式会社を設立するなどの対策がとられてきておりますが、化合繊工業が輸出産業としての地位を確立していく上で、「輸出秩序の維持」ということがきわめて重要な問題であろうかと思います。この「輸出秩序の維持」について業界では今後どういうふうな措置をとっていかれるのか、この点はどうですか。
  55. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) ただいまお話がございましたように、せんだって来輸出秩序がかなり乱れましたので、それに対してナイロン会社は輸出振興会社をつくるとかその他努力をしてまいりました。合繊業界はその他の業界に比べますと、何といいましても、メーカーの数が少のうございます。いずれも大企業でございまして、もちろん輸出する品物はそのメーカー自体がつくっているのではなくて、紡績のごやっかいになり、あるいは機屋のでごやっかいになって製品化されるわけであります。もとをつくるものが比較的少数の業者でございます。したがって、まず合繊メーカーの協調体制をしっかり立てまして、それに紡績なり織布業なりあるいは商社の協力を得て秩序を保つということが一番望ましいんじゃないかと、そういう方向で努力すべきだというふうに考えております。
  56. 近藤信一

    近藤信一君 輸出振興につきましては、政府もこれを盛んに奨励しておるわけでございます。やはり綿業界におきましても、長い歴史の上において、輸出振興のためにずいぶん寄与された。ところが、いつの間にかアメリカの輸入規制という問題が起こってきて、輸出振興も一〇〇%うまくいかない。現在、化合繊におきましてもやはりこれと同じような過程というものがたどられるんじゃないかというふうな一つの心配もあるわけなんで、やはりこの点は、いま杉村さんが言われましたように、化合繊は比較的大企業が多いが、お互いに業界で秩序を維持していけばそういう心配はないだろうというふうなことでもあろうと思うんですが、一つ間違いがあると、これはやはり輸入規制の問題がまた出てくる危険性というものは私あるんじゃないかと思うんですが、この点の見通しはいかがですか。
  57. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) ただいまお話しのとおり、やり方が一歩誤りますと、外国から日本合繊の進出に対してすぐ防遏的な措置が出るおそれがございます。そこで、そういうことのないように、事前に輸出の動向を十分にキャッチいたしまして、間違いの起こらぬように、長続きのする輸出、じょうずな輸出をするように考える必要があると思っております。
  58. 近藤信一

    近藤信一君 私一人であまり時間をかけておっても、他の委員の方も御質問があろうかと思いますので、次に移りますが、綿合繊と絹合繊野沢さんと坂井さんにお尋ねするわけでありますが、企業の集約化ということが今後の構造改善対策におきまして大きなウエートを占めることになると思われますが、業界における集約化への機運というか、心がまえといいますか、どんな状況にございますか、この点いかがですか。
  59. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 企業の集約化と申しましても、先ほど申し上げたように、実は私のほうの業界は産地別のいろいろな特異性を持っております。したがって、従来私どもは、綿合繊でいいますと、西から東まで全部一律にこうだというふうな考え方がやや強かったわけでございますが、そういう考え方は現実に適しないというふうに考えまして、産地刑に、その産地を生かす構造改革はいかなることが一番適切であるかということを、産地産地で現在熱心に研究しております。で、いま先生がおっしゃいました企業の集約化の問題も、その一番ポイントでございまして、たとえば機産地の名古屋であるとかあるいは大阪産地等は、相当集約化を強く行なう必要があろうかと思います。これはまだ最終的には結論を得ておりませんが、たとえば三百台前後ぐらいまでの生産規模を持つことが望ましいというふうに考えております。がしかし、反面、播州地区であるとか、あるいは一部の静岡地区のように、非常にこまかい多品種のものをつくっている産地は、一がいにそのような大規模化をすることが必ずしも構造改善の道ではないというふうに考えまして、それぞれに適するような、たとえば五十台程度とかというふうなことで企業の集約化をしたいと思っております。さらにその上に、親機であるとかあるいは従来の取引先というふうなものの関連において、あるいは産地でございますと血縁関係というふうなものがたくさんございますが、そういうふうな人たちのもっとも大きいグループ化というものを進めたいと思っております。
  60. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 私どものほうも大体産地産業でございますので、現在の構造改革につきましては、大幅な近代化を促進すると同時に、企業の集約化ということに重点を置いてただいま検討をいたしておるわけであります。企業の集約化につきましては、御案内のとおり産地産業でございまして、親機関係あるいは共同施設を中心にするとか、あるいは共同受注、共同販売とか、あるいはまた系列の商社とかというような面でつないでおりますので、これらを中心企業の集約化をはかるように検討をいたしたいと思っております。
  61. 近藤信一

    近藤信一君 先ほども意見の中にもございましたが、近代化促進法の指定業極に指定されておるわけでございますが、いままで近代化資金の借り入れによって近代化した、またそういう効果というものが十分あがったのか、まあ期待したほどもその効果というものはあがらなかったのか、あなたのほうの業界としてどのようにいままでこれを利用されたのか、この点はいかがですか。
  62. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 近代化促進法による融資——公庫にそのワクをつくっていただいておりますが、具体的な数字は私いま持っておりませんので、はなはだ恐縮でございますが、結論的に言いますと、期待したことが全然——全然というのはこれは間違いでございますが、行なわれておらない、そういうふうにやっていただけてないという実情でございます。これは一つは資金ワクの問題もございます。私のほうの近代化促進法で調査いたしましたときの近代化の要求額、これは三年前でございますが、三年前においても五百億ぐらいが必要であるという答申をしたのでございますが、全然中小企業に対する近代化のワクが、先生御承知のようなことで、とても私どもの希望を満たしていただけるということはできない現状でございます。
  63. 近藤信一

    近藤信一君 そうすると、やはり金額の点で、いまのあれからいくと、近代化資金があまりにも少ないのだ、借りられるほうが。これだけでは何ともならぬと、近代化できないと、こういうことにもなろうかと思うのですが、また、あなたのほうの近代化に対する資金というものは、相当大きな資金が必要じゃないかと思うので、そういう点で、なかなかこれの運用という面になると、近代化はしたいけれども実際にはできないのだと、こういう面であろうかと思うのですが、その点はどうですか。
  64. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 近代化の問題で私どもが現在苦しんでおりますのは、いまのワクの問題で申し上げましたようなことですが、もう一つは貸し出し条件の問題がございます。一応金利も安く、長期ということでございますが、金利はきめていただいたようになっておるようですが、七年の長期金融ということは、実際にはなかなか許していただけないのが実情のようでございます。あわせて、公庫からの、これはまあお借りするわけですから当然のことですが、借りる場合の揖保の問題、それから返済の見通しの問題、これらの問題が必ずしも、午前中から申し上げておりますが、われわれの現在の業界実情では、お借りをするために完全な条件をそろえることが非常にむずかしい実情でございます。したがって、今後お願いをするのは、いわゆるそういう金融ベースの金融でない、補助金なり金融体制をお願いしたいということでございます。
  65. 近藤信一

    近藤信一君 それから、絹業界ではここ数年非常に業界としては振るってない、こういうことを私も聞いておるわけなんですが、また絹業界としてはやはりほかのほうと比べると近代化ということが私はおくれているのじゃないかと思うのですが、この点絹工連のほうとしては何とか近代化していきたいけれども、いまの綿工連の野沢さんが言われましたように、貸し出し条件が非常にむずかしいという点、それから限度額というものがなかなか悪い、こういうふうなことでなかなか思うような近代化ができないというふうなことでなかろうかというふうに思うのですが、この点はどうですか。
  66. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 先生が御指摘になりましたとおりでございまして、私のほうは、先ほど申しましたように、絹織物の関係は非常に生糸の価格が暴騰暴落いたしまして、しかも絹織物工場は比較的小さいもので職人気質が旺盛でなかなか近代化がおくれておるようなことでございます。幸い合繊関係は系列生産でございまして、合繊メーカーの技術的指導その他の援助によりましてやや近代化は進んでおります。したがいまして、近促法の指定業種で五カ年間に約二百七十億の近代化計画を樹立実施いたしておりますけれども、これも、先ほど綿工連の野沢参考人が申されましたように、やはり貸し出し条件あるいは受け入れ体制で、信用問題等でこれをあまり活用いたしておりませんので、今度の構造計画では借りやすい構造金融によって、あるいはまた国の助成によりまして十分な大幅な近代化を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  67. 近藤信一

    近藤信一君 機業の集約化が設備の効率的利用の観点から見ましたときに生産単位としてはどの得度にまでまとまる必要があるとお考えになっておられるのか、綿織物では特殊織物で五十台程度、それから量産織物では三百台程度ということも言われているようでございますが、この点についてお考えを伺っておきたいのであります。
  68. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 機業の集約化につきましては、先ほどの親機とかあるいは共同施設あるいは廟社の系列によりまして最終的には大幅なグループ化をやりたい。個々の機業の集約化につきましては、大体やはり量産品につきましてはサイジングを中心に三百台程度、あるいは特殊品につきましてはやはり三十台から五十台程度で機業の集約化をはかるように推進していきたい、かように考えております。
  69. 近藤信一

    近藤信一君 それから低開発国の進出に対処いたしましてわが国独自の市場というものを確保するためには、やはり新商品の開発、それから新設備の開発が必要であろうかと思いますが、特に織物の関係ではこの点が強調されているようでございます。この問題につきまして業界ではどういう見通しを持っておられるのか、またその対策として具体的なものをお持ちになっておられますならば、お話をしていただきたいと思います。
  70. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) いま先生の御指摘の点が、実は私どもの最も弱いところでございます。先ほど申し上げたように、私ども業界は戦後ずっと下請企業的な性格になりまして、悪く言いますると、そういった自分の商品に対するいろいろな研究、販路の開拓という点において不勉強であったということは、十分これは私ども反省しなければならぬと思っております。そのような問題について今後は、まあ先ほど申し上げたその産地というものは、一つのそういった品物の方向を具体的にそれぞれ特異性を持つわけでございますが、側々の機業ももちろん勉強もしなければならぬのですが、その産地の共同体において、海外の動向であるとか、あるいは国内の商品の傾向、デザイン研究というふうな問題について、共同して研究をしていきたい、また個々の業者もそういう面について従来以上に勉強していかなければならぬというふうに考えております。
  71. 近藤信一

    近藤信一君 染色の進歩が将来輸出に対しましては重大な影響があろうかと思うのですが、そういう点から考えまして、その染色関係との提携状況というふうなものは、一体今後どういうふうにあなたのほうはやっていかれようとしておられるのか、こういう点の何かあなたのほうの抱負といいますか、そういうものがございましたならば、この際お聞かせ願いたいのであります。
  72. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) いまの御質問も、私のほうの業界内容からいたしますと二つに分かれます。一つはいわゆる生殖産地の問題でございますが、この生地産地の現在のやり方、先ほど来何べんも申し上げておりますような下請加工で品物を織っているということで、直接染色加工業者との関連性は、いまの機構においてはよけいないわけでございます。一ぺん品物を織りましたものをまた注文先に返して、注文先からまた別に染色加工業界に流されるというわけでございまして、直接関係ございません。もう、一つ部門は先染め産地でございますが、これは糸染めされた糸を織ってしま柄、格子をつくっているわけでございます。一番まとまっておりますのが播州地区でございますが、これらの産地では、染色業者、仕上げ業者、それから私どもの機屋、これらのものが常に緊密な連絡を持ち、協調体制をもって、現在もお互いに研究をしながら仕事をしている脱状でございます。これらの考え方は、さらに一そう緊密にする必要があるだろう、かように思っております。
  73. 近藤信一

    近藤信一君 野沢さんにお伺いするのですが先ほどの御意見の中で下請賃が三割を下っているとのことでございますが、下請を出しているのは紡績のほうで出しているのか、それとも商社のほうで出しているのか、この点はどのようになっておりますか。
  74. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 両方でございます。紡績からもいただいておりますし、化繊会社からもいただいておりますし、商社のほうからもいただいております。
  75. 近藤信一

    近藤信一君 両方からこの下請のほうに出しているということになりますと、これは紡績は下請させて、高い小売り価格で綿布を売っているということになるのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  76. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 紡績さんが何ぼで売っておられるかよく知らないのですが、おそらく紡績がお光りになる製品の値段というものも安いのだと思います。さらにまたその先の流通段階に入って非常に高くなるようですが、機屋に安い工賃で織らせて、それを紡績が高く売られては——いまのところそういうことではないというふうに私どもは感じております。
  77. 近藤信一

    近藤信一君 まあこのことは、お互いにあなたのほうも紡績さんと相助け合っていかなければならぬような立場でなかなかむずかしいと思うのですけれども、遠慮されるような点もあろうかと思うのですが、やはり先ほども私お尋めしましたように、おそらく絹関係では、絹織物ということになりますと日本固有の織物でもある。それがだんだんと現在では綿に押され、それから化合繊に押され、だんだんと衰退したようなことになり、またいなかに行きましても、私ども子供の時分にはずいぶん桑畑というものがございましたが、このごろは桑界はどんどん整理され近代的な工場が誘致されておる地方も相当あるわけなんです。私どもしろうと一から見た場合に、日本固有の絹織物というものがやはり国際的にもだんだん押されてきておるのじゃないか、こういうふうにもまた考えるわけでございますし、地方におきましては、やはり染色技術というものがだんだんと進歩してまいりまして、やはり染色の面におきましても昔とはだいぶ違った染色の面というものも出てきておりますし、こういうもろもろの事情から考えますると、絹工連として苦慮される点が私は非常に多いと思うのですが、将来これをやはり近代的な産業にして、そして将来の大きな展望のもとに立って何か巻き返しをやるというふうな大きな一つの目標というふうなものを持っていなければ、私はなかなか絹工連としても将来の寿命というものが短いのじゃないかというふうにも、これはしろうとの私の考えでございますが、こう思うのですが、これにつきましてあなた方のほうとしては、将来大きなまだ展望を抱いておられると思うのですが、将来の展望について何か抱負がございましたならば、この際お聞きしてみたいと思いますが、この点いかがですか。
  78. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 御指摘のように、日本の絹織物は古い歴史を持ちましてえんえんとしてきょうの立場を築いておるわけでございますが、何と申しましても、国民生活から申しますと、絹を中心に着尺その他消費されておりまして、御指摘のように、量が減っておるのじゃないかというお話でございますけれでも、御案内のように、生糸の生産は、農林省では年間五%ぐらい増産されるような傾向でございますが、これは御案内のとおり非常に天候に左右されまして、最近はほとんど三十二万俵ぐらいに停滞いたしておるわけであります。国内消費は、これを分析いたしますと、決して消費は減っておりませんで、むしろ輸出関係が非常に生糸の価格が不安定のためここに一、二年非常に停滞しておりまして、糸輸出で約一万七十俵——往年十万俵出ておった糸が、現在は、昨年は一万七千俵しか出ておりません。それから輸出絹織物につきましても、大体年の輸出目標が四千万ヤールでございましたが、これもまた四千万ヤールを割っておりまして、糸換算にいたしましても二万俵から二万五千俵ということで、大部分の三十二万俵の糸が国内で消費されておりますが、純絹織物といたしましては、そういうような値段の関係上ごく一部の高級品でございまして、その他はあるいはレーヨンあるいは毛と交織いたしまして、いわゆるシルクブームで相当売れておるのじゃないかと、かように考えております。ただ単にいまのような生産構造でなしに、もう少し先き染めの技術開発、あるいは市況によります色柄の選定、流行の実態を把握いたしまして、そして設備近代化技術の開発によりまして、やはり国内の国民必需衣料として今後伸ばしていきたい。同時に輸出につきましては、生糸の価格の安定をもちまして一そう増進いたしたいというように考えて、業界あげて研究精進いたしておるような次第でございます。
  79. 近藤信一

    近藤信一君 次は全繊同盟の久村さんにお尋ねするわけでありますが、全繊同盟はわが国繊維労働者の大分部で組織しておられる繊維関係の大きな組合でございますが、それがゆえにいろいろと内包しておられる問題はたくさんあろうかと思うのです。端的にものを申し上げまするならば、過日例の鐘紡と東邦レーヨンの合併が話題になりまして、そうしてこれが途中で人員の整理というふうなことで御破算になった。大体この合併をするのに対して、労働者不在の合併なんということは私どもあり得ないと思うのです。それが一つ条件になったような合併になって、ついに東邦レーヨンのほうの労働組合または全繊同盟として反対されてこれが不調に終わった、こういうことで、いろいろと同盟としてもなかなか苦労の点が多かろうと思うのですが、この問題は今後の産業編成問題について一つの大きな示唆を私は与えたものではなかろうかというふうに思うのであります。そこで、今度の問題について、もし差しつかえなかったならば、全繊同盟としては一体合併というものはかくあるべきものだというふうなお考えを持っておられると思うのですが、この点についてひとつお考えをお聞きしておきたいと思います。
  80. 久村晋

    参考人久村晋君) 私見にわたる分野も相当多かろうと思いますので、その点あらかじめお断わりいたしておきたいと思います。で、私ども鐘紡と東邦レーヨンの合併問題につきましては、当初は東邦の従業員は全員鐘紡に引き取るというふうに聞いておりまして、現在いろいろ構造的に問題があるから、そのような状態であればこれは賛成をするという態度をとっておりました。ところが、いま御指摘のような、労働者不在のもとに途中から急に男子について千二百人余り合理化が必要じゃないかということが言われましたので、私どもは当初の聞いておった話とこれは違う。やはりわれわれは大局的に考えました場合に再編成ということは必要であろうと、そのことによって先ほど申し上げました過当競争の排除にもなるし、あるいは今後繊維産業が伸びていくためにも必要ではないかという、そういう見地に立っております。しかしながら、私どもは、労働条件もさることながら、雇用という問題について非常に重大な関心を持っておりますし、重要視いたしておりますので、雇用不安があるような合併という問題については反対をしてまいりたい。で、先ほど申し上げましたように、構造政策がやはり今後とも必要であろうと考えておりますから、労働の流動性については格段の御配慮を各方面において講じていただきたい、このように思っております。
  81. 近藤信一

    近藤信一君 特に大企業の合併ともなりますると、背後で糸をあやつるのは、金融資本が特にあやつっておるわけなんですね。ああせい、こうせいと、いろいろ示唆をするわけなんです。このことはやはり私は、日本産業資本家が近代化合理化というと、特にその中で合理化というと、人員を整理することがまず第一義的に考えられる。こういう合理化は私はあってはならないと、こう思うのです。それが、日本での産業資本家の合理化というと、すぐ人員の問題にかかってくる。やはり将来企業が伸びていく上においては、近代化合理化ということは、これはもう必要であるわけでございまするが、この近代化合理化ということのあり方自体が、いまのあり方では私は労働者に非常に不利な立場が往々にしてもたらされていく、特にその背後で金融資本がいろいろと言うことは、私どもはどうもけしからぬと思っておるんですが、特に日本企業の合併問題になると金融資本が大きな発言力を持っておる。こういうことは私は常々けしからぬというふうに考えて、いろいろと委員会でもこの点を追及しておるわけなのです。こういう点について、あなたとしてどのようにお考えになっておられますか。
  82. 久村晋

    参考人久村晋君) いま申されました問題点は、私どもも次のような方法で解決をしてまいりたいと思っております。それは、本日冒頭で全繊同盟の産業政策についての基本的な考え方にちょっと触れたわけでありますが、私どもやはり、問題が発生してから議論をするよりも、問題を発生せしめないように、産業別の段階なり、あるいは業種別の段階なり、あるいは企業別の段階で、極力事前協議を積極的に進めてまいりたい、このように考えております。  そこで、具体的に合併等の場合に金融資本がどのように動いておるかというような点については、幾多の例も全繊の組織の中でもあったわけですが、それは結果的にわかることが非常に多くあるわけですから、非常に問題になりますのは、企業別の段階において問題を発生せしめないように、いろいろな話し合いの場を十分につくっていくように指導を進めてまいりたい、このように考えております。
  83. 近藤信一

    近藤信一君 それから、過剰設備処理につきまして補助金の三分の二を希望すると、こういうふうなことがございましたが、これは紡績機械か、それから織機か、いわゆる紡機か織機か、または両方、双方なのか。それから、先ほど野沢さんは、過剰織機の処理は自分たちでやるから近代化については補助金を希望したいと、こういうふうに述べられたわけですが、業者と組合だからいろいろと相違点はあろうかと思いますが、その差はどこから一体出ておるのか、この点はいかがですか。
  84. 久村晋

    参考人久村晋君) 野沢参考人のお考えはあとで聞いていただきたいと思いますが、全繊同盟として三分の二の補助をしていただきたいと言っております趣旨は、やはり従来繊維産業日本の経済発展に資した度合いというのは非常に大なるものがあったのではないだろうかという点が一つ。それともう一つは、やはり今後の国際収支等を考えました場合においても、地位としては相対的には下がっておりますが、その取引条件等からいきまして資金繰り上非常に貢献するところが多いのではないだろうか、そのように考えました場合には、やはりたまたま、先ほど幾多の方から申されておりますように、英国においても、日本と全く同じではありませんが、似たようなケースがあった。その場合、やはり繊維産業再編成のために政府は三分の二の補助金を出して近代化して体質改善した。そのような例にならいまして、私どもとしては紡機とか織機であるということで限定せずに、繊維産業過剰設備処理については三分の二の補助をしていただく、このように考えております。
  85. 近藤信一

    近藤信一君 これは久村さんも、小口さんも、御両君からもお互いに述べられたのですが、家内労働法の問題ですね、これはわが党も、民社党も、家内労働法の問題は非常に重要視して、国会でもしばしば提案しているわけでありますが、一向に今日までこれが実っておらない。したがって、この家内労働法の制定ということは私ども大賛成でございますが、そういたしますと、社会党も民社党もこの内容についていろいろと検討しておるわけでありますが、労働組合から考えたこの家内労働法の内容というふうなものですね、何でしたらばこの際詳しくひとつお聞きしておきたいと思うのですが、この点……。
  86. 久村晋

    参考人久村晋君) 家内労働法の問題につきましては、私ども非常に、先ほどからも申し上げておりましたように、先生も言われましたように、繊維産業に占める地位というのは非常に大きい、このように考えております。特に、まずどのようなところから手をつけてまいり、どのような方法でこれを制定いただくというような点につきましては、私どもといたしましては、前国会であったかと記憶いたしておりますが、家内労働審議会の設置を決定いただきましたので、そこで十分に検討いただきたいと思っております。しかしながら、どのような内容のものにするのかという点につきまして、私見になりますが、特徴的なものを一、二申し上げてみたいと思います。それはやはりまず重要なことは、工賃の問題が相当繊維産業の場合に特に大きな問題であろうと思います。私どもも、いまそのような見地から、全国の支部を動員いたししまて、実態調査等を行なっておるのでございますが、やはり工賃設定の経路と契約の内容の問題についてはぜひとも明らかにする必要があるのではないであろうか。そうして、それがやはり家内労働者と雇用労働者との関係をどのように見るのかという問題、それともう一つは、これは家内労働法そのものの問題ではないかと思いますが、家内労働に転化せざるを得ないような一次産業労働者というものを国家政策としてどのように解決をしていただくのか、このような三つの点が、家内労働の問題としては、有機的にといいますか、並行的にと申しますか、解決をいただきたい問題であろうと思います。  なお、この問題に関連いたしまして、先ほど先生からは第四区分の問題が出ておりましたが、第四区分の問題もさることながら、やはり非常に大きな問題は、家内労働利用による織機の問題が非常に大きい問題ではないであろうかと思います。したがいまして、やはりそれらのことも一連の措置として解決するようなことを考えていただきたい、このように思っております。
  87. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 家内労働のことについての御質問だと思いますので、その点についてお答えいたしたいと思います。  繊維産業の零細の部分になりますと、実際には生産品のうちのたとえば縫製業でいきましても、自分の自家工場でやる製品は三割、あとの六割ないし七割は家内労働によってやっているというのが実情でございます。それから機場でいきましても、絹織物の機場でも、やはり自分のうちの機場と同時に零細企業の機場と自家機の家内労働の機場とがこん然一体となっていわゆる産地の生産機構をつくっておるわけであります。そういう意味合いにおいて、特に家内労働の場合ですと労働基準法の時間に制限がございません。それから多く労働者の流動過程からとらえて見ますと、若いときに親機であるというような企業に働いて技術を覚えて、少しためたらそのお金で織機を借りたりして自分のうちの納戸に織機を据えつけて家内工業に転化するという形態をとっています。したがって、技術はそれらの家内労働者は高いので、工賃だけから見ますと一カ月の収入は零細企業の雇用労働者よりも高い場合が多いのです。しかし、これが現実の問題を見ますと、生産調整の場合の障害にもなりますし、それからとりわけ労働組合にとった場合に、労働基準法をこれがくずしているのでございます。それから、一カ月の収入は高いけれども、時間当たりの賃金に換算してみますと必ずしも高くないのです。これらを含めまして、私たちは中小零細企業、とりわけ産地の近代化という場合に、最低賃金制とこの家内労働法の制定なしには、何ぼ機械を入れても実は近代化貧乏になるというのが実態でございます。そういう立場から、家内労働法というのは、先ほど川和参考人のほうから流通機構の点からお話がございましたけれども、これは単に労働組合の立場からだけでなくして、産業機関の立場からいいましても、家内労働法の制定は近代化の必要な側面ではないかと考えております。そういう政策的な面で家内労働をとらえますのと、具体的な内容につきましては、何といいましてもむずかしい点は、五人以下の零細企業の自営業者と家内労働とが、言ってみれば、景気のいいときは自営業になって何人か雇用労働者を使う、景気が悪くなればやめてもらって家内労働になってしまう。こういう層がございまして、この点では立法の対象としてたいへんむずかしいというふうに私は思っております。しかし、それらを含めまして、この法の適用対象をどうするかという問題が一つございます。  それから、特に委託業務におけるところの経路というものはたいへんこれまた問題でございまして、現在、御承知のように、政府によって内職職業補導所もありますし、あるいは厚生省による生活補導等を通じましての内職あっせんもございますが、総じて実は業者の登録というものがはかれないと、法律だけつくっても全く取り締まりができないわけです。したがいまして、法の適用対象の次には登録の問題——場合によってはそれが悪質にわたる場合にはそれらの業種自体も家内労働によっては禁止するというような措置を行政上考える必要があるのではないか。  それから、家内労働の問題につきましては、労働基準法の適用対象になっておりませんので、法の内容として、やはり労働時間の保護あるいは環境衛生に関する保護、これらの問題についても法の内容の具体的なものになるかと思うのです。それから最低工賃に関する規制が最も大きなものだと思います。  それから、賃金統計ないし賃金調査だけをとってみますと、必ずしも家内労働だからといって低工賃になっていない面がございますけれども、それはそういうことだけが問題でなくて、実は一時間当たりの単価にしますと、大体、たとえば岡山県の児島地方の縫製業ですと、あそこは家内労働についても業者と下請業者との間で加工賃協定が行なわれている、わりあい進んでいるところですが、その場合でも、賃金の基準というのは工場労働者の一時間当たりの賃金に対して大体八割になります。低いところになりますと、大体現在でも家内労働の一般工賃というのは、東京、大阪で四十円から五十円の間です。地方に行きますと、これが三十円、二十五円という段階になります。御承知のように、雇用労働者は、大体三十人以上の労働者規模でとった場合に、いま一時間当たり百六十円になっています。婦人労働者の場合でも九十五円です。これが家内労働になってきますと、一時間大体四十円から五十円。パートタイマーですと、大体八十円から百円になっています。パートタイマーは家内労働としてもちょっと側面が違った労働の雇用形態ですが、それがそのような形態です。したがいまして、河よりも近代化の面で家内労働が野方図になっていますと、せっかくなけなしの金を借りて近代化投資しましても、結局家内労働における生産コストと近代化による生産性によって得られるコストとの間に工賃の点で競争できないという問題を実は内包しているのであります。それらの側面を私どもは考えた上で、家内労働法の制定を希望しておるというふうにおくみ取り願いたいのであります。
  88. 近藤信一

    近藤信一君 最後に日繊の小口参考人にお尋ねするわけでありますが、特に日繊連の組織は染色関係中心中小企業方々のほうの組織が多いと思うので、これは言いかえますならば、と金融資本の間にはさまってやっていかなければならぬと思うし、かつて私どもが聞きましたところによりますと、これは労働組合のほうでございますから、直接的にはあまり関係ないかもしれませんけれども、やはり染色の近代化をやるという場合には、相当大きな賃金というものが必要である、こういうことを聞いたわけなんです。ところが、染色工場近代化をやろうとする工場はおおむねボーダーラインのところにある。たとえば中小企業近代化資金というワクからはずれるというようなところもある。それはなぜかというならば、従業員と資本金で規制されているわけでございますから、どっちかが適用になればいいが、それがワクから若干出るというようなことで、人員の点でも三百人はちょいと上回る、資金の面でもちょっと上回っているというようなことで、なかなか中小企業近代化資金というものの借り入れができないというようなことを聞いたわけなんですが、そういう点からいくと、染色関係近代化ということが相当おくれているのではないかというふうに私は思うのですが、これはほんとうは染色工場の方が出てくれるとよくわかるのですが、もし小口さんがそういうことを把握されているならば、知っておられる範囲でよろしいのでございますが、ひとつ御説明願いたいと思います。
  89. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 染色繊維業といいましてもいろいろございまして、機械染色の場合と、それから手捺染のような場合とございます。それで、いま近藤先生から御意見が出ました点について、私ども目下研究して、労働組合と業者と相談中でございますが、御承知のように、中小企業近代化促進法の対象の指定業種に染色関係がなっており、とりわけ機械染色については、その近代化について通産省も力を入れているのでございますが、近代化の融資に関して、資本金が五千万円、従業員規模が三百人、この条件にかなりの部分がひっかかっているわけです。そのために、融資の条件として、一部開発銀行等の、あるいは長期信用銀行等から融資の得られる企業もございますが、どちらかというときわめて限られた層であって、必要なところで対象の取引銀行との間に法律上のワクで実はお金が借り入れられないという問題が非常に大きな問題として出ていることは事実です。この点につきまして、業界では、単独法で産業の振興法の特別立法をお願いするか、ないしは特例の措置としてこれらのことについてその事情を認めていただくことについて検討してほしいという要求を政府に対してもやっており、また私たちもこれを支持しているところでございます。  それから捺染になりますと、糸染めの部分及び捺染のところになりますと、これは先ほど近藤先生もお話しになりましたように、たいへんに日本の織物というものは古くから実は絹織物を中心として伸びてきた。それがその後人絹の織物にも、あるいはそれが毛織りの織物にも、染めから布地のいろいろなデザインに至るまで伝統的なものから発しておりますが、遺憾ながら日本の養蚕の近代化のおくれ、それからまた市場であるアメリカ日本の生糸の生産メーカーにおける資本の対抗関係の力のないというところから、紡績に比べましてたいへんそういう点で生糸のメーカー自体も竹本の装備がおくれておりますし、ましてこれとの関係におけるところの絹織物の生産の機構は先ほど申し上げましたような紡績に比べておくれをとっております。しかしながら、そういうところにおいては現状かなり職人的な技術中心の生産が行なわれておりまして、たとえばネクタイ一本につきましても、日本のネクタイはせいぜいニューヨークヘ行きまして七、八ドルすればいいほうであります。ところが、日本の原糸を買ってネクタイのプリントをしておりますイタリーあるいはフランス業者は十四、五ドルのネクタイを売っている、けっこう利益をあげている、こういうのが実態でございます。絹のスカーフにしても同様でございます。これらはあげて原糸に問題があるということよりかは、むしろ加工におけるそれらの染色技術、デザイン、こういう点に問題がございます。したがいまして、これらの業者近代化という点も非常に大きな問題だと思います。ただ、これは染色の問題に限りません。一般的に中小企業の問題としまして、特に先生方に御検討お願いいたしたいと思いますのは、現状中小企業の再生産条件をそのままほうっといて、そして何とかもう少し金を出してやれば少し近代化するか、力がつくか、こう言っても、一面では借り入れ条件のことについて先ほど野沢参考人意見として述べましたように、借り入れ条件自体について金融ベースで締められており、一方では大手からの加工賃でたたかれる、こういう状態がそのまま現在の経済機構の中で維持されておるために、高い技術がある面では職人的な形で温存されている以外に、企業としての発展条件を欠いておるのであります。私は、どうしてもこのような産業政策が議論されますと、えてして国会においてはもっと金を出せという話になるんです。しかし、金も必要ですから、必要なところに出すことは私は反対ではありませんけれども、問題は、産業政策と金融とが常に密接に結びついて重点的な投資が行なわれて、それが現在の市中金融を通した以外の金融ベースで資金として入らない限りは、近代化政策近代化政策として実らないというのが実態ではないか、この辺についてもぜひ中心的な御検討をお願いしたいと思います。
  90. 近藤信一

    近藤信一君 最後に一点お尋ねいたしますが、先ほど御意見の中に、従来は独占企業の経営というものが糸売り、賃織り段階であったものが、だんだんとそれが二次加工品のチョップ販売に乗り出してきた。その結果、戦前からの大手と中小企業の間における輸出と内需、原糸と加工というふうに生産分野の地図というものがくずれつつある。そこでこれを原糸と加工という生産分野にはっきりと分離する必要があるんじゃないかというふうに言われたわけなんですが、このことは社会党も民社党も事業分野の確保、産業分野の確保ということで法律を国会へ何回も提案しておるわけでありまするが、これがそのつど廃案になり、また継続審査ということで、一向日の目を見ないわけなんです。やはりこういう点は、事業分町なり産業分野というものを確保するという法律ができて、そしてその生産の面においてもそういう面がはっきりすれば、かなり中小企業というものが十分に生きていける道というものが聞かれてくるんじゃないか、こういうふうに私思うわけなんですが、この点について残念ながら今日までまだそういう法律の制定というものは日の目を見ていない。だからといって、私どももそれをあきらめることはないわけなんでございますが、今後もやはり社会党も民社党もまた国会で提案されるでありましょうし、この問題についてやはりそういう法律ができれば、さらに労働者立場からいってもこれは今後のいわゆる将来の展望の上に立って非常に有利になるんじゃないかと思うんですが、この点、小口さんも御意見の中に言われておりましたが、この問題についてもう少しはっきりとした小口さんの御意見をお聞きしておきたいと思います。
  91. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 生産分野の問題を生産分野だけの形で、たとえば生産分野固定法というふうな法律を使っても、それ自体は私は結果が、実効があがるというふうには考えておりません。と申しますのは、商品には商品の一定の流通する論理がございます。いい製品で安く売れば、それはどのようなことをやっても商品は流通してきます。こういう論理は、たまたま従来の絹織り業界がメリヤス製品をやってはいかぬといっても、その絹織り業者がいいメリヤス製品を出すこと自体の営業を妨害することは私はできないと思う。それで、そういう商品流通自身が持っておる論理というものを生産分野法ということで考えるということではなくて、私は現在の問題は、そういう商品の流通の論理と別な、資本のそれ自身の論理があると思うのです。それで現状私たちはいろいろ産業政策を考える場合に、何よりも金融が持っておるウエートというのが圧倒的に高いのです。今度の場合でもたとえば繊維産業構造改善及び近代化政策を必要として、政府がかりに五千億なら五千億を出そうということを次期国会できめた——国会の部分では従来そこで終わっておりますけれども、問題は、その五千億の金がどのような資本の論理を通して実は流れて、個々の企業あるいは生産現場の設備投資になっていっておるか、ここが実は非常に大きいところなんです。従来、それが国民経済的な条件から、産地の育成が必要だ、それは地域経済の開発にとっても必要だ、ほうっておけばどんどんと人口が都市に集中してしまう、こういう一方の問題が政治的にはありながら、現実的には金融ベース、資本の拡大、生産の条件ということで、その金が市中銀行から大手企業にいろいろな形で、担保条件その他の形で流れてしまう、その結果せっかく五千億なら五千億というものが議決され、予算血では編成されて体制金融的な措置が一応開発銀行のワク中でとられましても、それは結果的に一番大切なところの根元に水が届かない。そういう意味で、私は産業政策を考えるときに、先ほどからもちょうちょうしておりますように、何よりも産業政策と不即不離な金融政策、と同時に産業資金の配分における規制、こういうものががっちり責任を持ってとられない限り、それは抽象的に五千億というものを予算の面で、あるいは補助金の面でやっても、これは実効をあげない、こう考えておるのでございます。
  92. 赤間文三

    ○赤間文三君 本日は繊維関係方々にお集まりいただきまして、それぞれの分野から御意見を拝聴して、非常に参考になる点が多かったのでございます。この点厚くお礼を申し上げます。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕  私は、この日本の全般から見まして、国民に一番関係の深いのは、何といっても衣食住だと思うのでございます。住につきましても、国家はばく大な金を出してなおまだ今日足らないで非常に困っておる。なおまた食の問題につきましても、御承知のようにばく大な金を出してわれわれの食問題が円滑に行なわれていない。衣食住の中の衣だけは、私の承知するところでは、あまり国といたしましては、お世話は非常に申し上げておるが、食住等に比べるとあらゆる面においてまだ努力が比較して少ないということを私はかねがね考えておるのです。そういう点からいたしまして、これはもう全くこの敗戦後の今日までの衣の問題か今日のようにうまくいっておるのは、これはとりもなおさず本日お集まりの方々をはじめ関係者のなみなみならぬ御努力のたまものであるということは、ほんとうに心から感激をいたしておるのでございます。しかしながら、本日承りましても、われわれは、この繊維業界は、今後において官民一致し、みんなが努力を合わせて、ますますこの繊維繁栄を期さねばならぬという私は希望を持っておるのでございます。そういう点からいたしまして、私はここにおもに国と業界との関係をさらに密接にするという意味を中心に御質問を申し上げたいと考えておるのであります。  まず第一に、田和参考人にお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、今日において日本紡績というものは世界でどのくらいの位置にあるか、戦前戦後を比べて世界における日本紡績の地位というものはあまり変わらぬのか、あるいは戦後下がったのか、やはりいまでも世界では日本が一番繊維においてはすぐれておるのか、この点をちょっとお聞きしたいと思います。
  93. 田和安夫

    参考人田和安夫君) どういう位置にあるかというと、なかなか見る角度によって違うと思いますが、まず一つの尺度といたしまして、輸出力という点から申しますと、やはり世界の一番大きな輸出をいたしておるのが日本でございますから、その意味においてはまだ日本は世界の綿業における指導的位置にあるということは申し上げることができると思います。ただしかし、繰り返し申しますように、われわれが心配いたしておるのは、日本綿業現状のごとく疲弊して、そうして近代化等ができない事態があるにもかかわらず、よその国が国家の力あるいは業界の力によって近代化を進め競争力をつけていく、こういう事態をわれわれ看過できない、こういう点を繰り返し申し上げておる次第でございます。
  94. 赤間文三

    ○赤間文三君 その点はよくわかりましたが、さっきから承りますと、この綿業関係においては四つの柱で今後ひとつ大いに躍進していくということ、非常にごもっともに思うのであります。ただ、いまもお話がありましたように、英国においてはやはり政府が相当補助等もやっておる、そうして近代化を非常に促進をしておる。米国においても、綿花の補助等をもこの繊維工業の振興の一助にする、あるいは関税の問題で輸入の制限をやる、あるいは非常な近代化を高能率主義をとっておる。いろいろ承りますと、私たちは、参考人のお話のように、今日では日本が一番進んでおるが、将来においては油断がならぬ。ことに英国なんかは、私の知っておるところでは、わりあい人間が保守的にできておる、ひいては機械等もわりあい保守的なものだと思って実は半分好ましいように思っておったのでありますが、こういう英国のようなところまで思い切って近代化をやっておるとなると、容易ならぬことに私はなると考えております。しかも、低開発国は、中共の輸出、あるいは香港の関係とか、あるいはまた低開発国自体が国を興さんとするときはまず第一に繊維の自給自足をやるのは、これはもうそういうことになっております。英米が非常な近代化、低開発国がまた日本の思うような状態にいかぬとすると、非常にこれは考え方によるとたいへんなことに将来はなるおそれなしとしない。私は特に、田和さんにお尋ねしたいのは、戦前もそうであったと思います、戦後においても自立自営ということをモットーに奮励努力されてきて世界一になったので、今後においても、まあまあ景気不景気はときの回り合わせで、やがてまた景気も来るであろうから、あまり国のほうで補助とかあるいは近代化資金を思い切って出すとか、そういうふうにやらぬでも、まあまあ何とかなるであろうというようなお考えを持っておられるのか。重化学工業品等が一位を占めて繊維がだいぶ下がってきたから、この際やっぱり思い切った施策を講じなければならぬ、そのためには国の力を非常に必要とされるのかどうか、ひとつその点ざっくばらんにお考えをお話し願いたいと考えます。
  95. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 紡績業者の中にも、現在大阪のど根性と申しますか、あるいは紡績の伝統の思想と申しますか、政府の力なんかにたよらずに自分のことは自分でやったらいいじゃないかと、こういう意見の人もないことはございません。しかしながら、現在の状況では、私はそういうだけでは問題は解決しないじゃないか。しかし、といって、いつまでも政府のやっかいになってやるべき性質のものではありませず、やはり自分のことは自分でやるというのがこれはたてまえでございますので、われわれは現状の欠陥を除去するのに、あるいは除去する基盤をつくるのに政府の力をおかし願ったら、あとは自分の力でやっていく、そこまでをやっていただいたらけっこう、いつまでも政府のごやっかいになろうとは思っておりません。しかし、現状段階では、自分の力だけでは解決できないところまで来ているのだから、そこのところをお助け願いたい。あるいは、それにはずみをつけるといいますか、そういうような意味において御協力を、御助力を願ったらいいのだろうというように私自身は考えております。
  96. 赤間文三

    ○赤間文三君 現在の欠陥をひとつ是正するということで政府の力がほしい。しからば、現在の欠陥を是正するということは、いわゆる、たびたびおっしゃるように、過剰設備の整理の問題、あるいは外国並みの近代化という、そういう欠陥のことですか、その欠陥をひとつ。
  97. 田和安夫

    参考人田和安夫君) そういうことです。要するに、近代化に必要なる資金を出していただくとか、それもできれば低利資金というような意味である期間、それが一たん近代化いたしましても、それが効率をあげますには、この間政府のお調べでも五年くらいかかるのであります。したがって、そういう期間の間をお助け願ったらけっこうだと。  それからもう一つは、過剰設備処理ということになりますと、これは自分でつくったものは自分で処理したらいいという意味もあるかもしれませんが、やはり産業全体としての改造ということになりますと、これは個々の企業だけでは解決のできない問題でございますので、そういう点は、やはり政府の法律なり、あるいは行政指導なり、そういうような政府の力をお加え願いたい。  それからもう一つの柱でございます企業整備統合でございますが、これは企業整備統合ということはなかなか強制できる問題ではございません、制度等できるものではございませんが、これが可能なような、またそうすることが利益であるような状況をつくっていただきたい。あるいはそうするものは金融上の援助を与えるとか、あるいは税制上の多少のフェーバーを与えるとか、こういうふうな、そういうものが積極的にできるような環境をつくることに政府の力をおかし願ったらけっこうだろう、かように考えるのであります。
  98. 赤間文三

    ○赤間文三君 参考人のお説は非常にごもっともに思うのでありますが、これは私がお尋ねしてもすぐは御無理かとも思いますが、もし御無理であればあとからお知らせ願ってけっこうです、書面でも何でもけっこうですが、私も全然同じ考えで、過剰設備の整理は業界だけでは困難であろう、三百万錘もとにかく過剰がある、あるいはやみ紡織機の取り締まりや、あるいはまた機械設備その他を備えつけようということについても、こういうものの取り締まりから、なかなか容易ならぬことであると思います。金にいたしましてもばく大なものであって、その比率は幾らというものは調べてみなければわかりませんが、とにかく国と業界とができるような立場で思い切ってやる。しかも、そんなものはずいぶん昔からあることであります。今日始まったことではなくて、過剰設備は、ずっともうこれは、どうもむずかしいところがあってなかなかできぬように考える。そういうようなもの、それから近代化でも、思い切ってひとつ外国に負けぬだけの、幾ら優秀であり勤勉であっても、設備で負けたらいけない。オートメーションの問題にしても、また高度の近代化の問題にしても思い切ってやる。そういう過剰設備、それから近代化、これについて大体どれくらいの金が要って、どれくらいを国に補助を願えばいいというお考えを持っておられるか。あまり正確な数字——大体の見当で大きな金があれば、これは五カ年計画くらいでいずれやられることになるだろう、わずかなら早くやれる。その点について、ひとつお考えがあるならば承りたい。また田和先生個人のお考えでけっこうです。
  99. 田和安夫

    参考人田和安夫君) これは、実はこれから小委員会のほうで取り上げられる問題でございますので、私からかっちりしたことを申し上げるわけにもいきませんですけれども、まあ希望的な意見といたしましては、少くともこの間、政府のほうでお調べになりました近代化費用でございますね。とりあえずは近代化設備として三百二十億かでございましたか、計算が出ておりました。それから過剰設備処理に対する金でございますね。これは非常にむずかしいのでございますが、政府のほうのお考えでは、中小企業の転廃業の代金は半分は見てやる。しかし、それだけでは解決しないから業界のほうでみんながプロラタでやる。こういうようなものは、これはみんな自分でやったらいいんだ。こういうような政府のほうのお考えでございますが、われわれのほうでは、やはり転廃業だけではとても三百万錘というようなものでは解決いたしません。したがって、業界の者がプロラタでやるということになれば、これは法律でしいるわけにいきませんので、これはどうしてもみんなの共同行為でやらなければいかぬ。共同行為でやるということになると、おれはいやだとかやるとかということではなくて、みんなにやらせるためには、やはりここに政府の何らかの補助が必要である。先ほど全繊の方からは三分の二の政府のほうから補助を出せというお話がありましたが、三分の二がいいのか二分の一がいいのか、これは政府にもお考えがあるだろうと思いますが、私はやはり共同行為をするのにも、またみんなが参加してできるように、その状況をつくる意味において、何らかの政府の補助をいただいたらけっこうだ、かように考えるのであります。かりに二百万錘の処理にいたしましても、そうしてかりにいま七千円の予算になっているのでありますが、これをいま半分の三千五百円出しても七十億ということでありますから、そう大きな金ではないと思います。
  100. 赤間文三

    ○赤間文三君 次にお尋ねしますが、輸出の振興に従来も非常に努力されてわれわれは喜んでおりますが、将来においても、やっぱり輸出というものを大いに重視せられ、さっきもお話があったように、われわれが見るところでは、まず第一に輸出の秩序を保たなければならない。たとえば物が売れるからといって、むやみやたらと一ぺんに出したら、即刻反対を食う。やっぱり全体から見ればわずかであっても、一度にばく大なものを出したりなんかしたら悪いということをたびたび聞くので、まあ秩序の問題がある。私は特に考えておりますことは、皆さま方繊維をつくられる繊維関係でありますが、やはり輸出の振興ということになりますれば、私はやっぱり、低開発国に繊維関係は相当出したい。またこれも文化国とあわせて出す。そうするとその金がないからということになると、やっぱりそこの第一次製品日本が思い切って入れて、また繊維などをどんどん出される——そううまくいくかいかぬか、非常に調子がよくて日本繊維輸出になるのではないかというようなこともしょっちゅう考えられる。だから、ただ繊維のことだけではなく、繊維が送り出されるための状態をつくるために、低開発国からは、そこの産物を思い切って日本にそのかわり入れるようにするとか、あらゆる面において私は、繊維輸出ということに努力をされると、あながち悲観せぬでもいいのじゃないか。ただ従来の行き方だけでは、なかなか輸出をそう思い切ってやる、あるいはまたインドあたりから安い綿布あたりを入れて、思い切った高度の加工をやって、また高度の品物にして出すとかいろいろな方法があろうと私は考える。従来のからを破った思い切った方向で繊維輸出をやることも考えられるのではないか。こういう点について、輸出の振興について田和参考人はどういうことを考えられておるか承りたい。
  101. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 輸出先のまず問題でございますが、先進国に対する輸出は、大体において、きょう午前中も申し上げましたが、国際綿業協定によって規制されております。したがって、量的にはこの協定が大幅に改定できるという見込みのない現状においては、私はそう大きくは伸びない。したがって、これは量的よりもむしろ、質的な発展努力すべき問題である。しかし、それは従来、綿製品輸出については安売り競争というものがやかましくいわれますから、かように綿業協定ができて、各国とも大体シェアのきまりました現在では、安売り競争ということは、それほど問題になっておりません。  で、問題は、あとで赤間先生が御指摘になりました、後進国からの輸入の問題でございますが、これは御指摘のとおりに、たとえばナイジェリアとかという国が、従来非常に大きな輸出市場でございましたのが、片貿易になった。スーダンもそういう趣がございます。そういうところから向こうの産品を買ってくれ、ところが、買うものはまあナイジェリアでいえば綿花と南京豆しかない。ところが、南京豆のほうはむしろ、向こうは買ってほしい。綿花のほうはどこでも売れるが、南京豆はなかなか売れない。そうすると、これが日本の農業政策と抵触して、なかなか農林省のほうで簡単にオーケーをくださらぬ。しかし、その中でもバーターとかあるいはコンペ方式とかいろいろな方式によって輸出には努力いたしておりますが、どちらにいたしましても、こういう綿製品を買ってくれる国は貧乏な国か、でなければ金がない国が多いのです。まあ一番われわれのほうでいまさしあたっての問題は、インドネシアであるとかあるいはセイロンだとかというような国、そういうような国に対しましては現金で商売ができたら一番いいのですけれども、相当そういう後進国、特に東南アジア諸国については開発という意味も加えて、そうしてクレジットによる貿易ということもお考えいただかないと、大幅な綿製品の貿易の増進あるいは輸出ということはむずかしいだろう。私はむしろ、政府のほうとしては後進国に対しては物を買ってやる、同時にクレジット、クレジットの売買、長期クレジットの売買による貿易ということもひとつお考え願いたいというふうにお願いしておきたいと思います。
  102. 赤間文三

    ○赤間文三君 大体お考えがよくわかったのでありますが、つまり、繊維界においても、国と業界と力を合わせて業界の困難な点は、思い切って国がこれを誘導、指導をして、ともどもにひとつやっていく。そうでないと、なかなか世界の先進国に対しても、いまはいいが、将来太刀打ちができなくなる日が来るというふうな御意見のようでありました。これで田和先生に対する御質問は終わります。  次は杉村参考人。私、杉村参考人に尋ねたいのは、化学繊維というものは、これはもう日進月歩のものである。今日の設備、今日の技術でいわゆるものすごい大きな工場をつくっておっても、また三年か五年かすると、それ以上のものが発明をせられるというようなふうに私は考えております。そういう業界承知をしておりまするが、さきの杉村参考人の陳述の中に、企業の何か自主的努力をやるのを妨げるものがあるとかいうような、自主的な努力をやろうとしても、それを妨げるようなものがあるというようなことを、聞き違いか何か知りませんが、聞いたのです。どういうことか、その意味をひとつ御説明願いたい。
  103. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 繊維産業が今後伸びていくためには、まず企業が自分でなすべきことをしなければならぬことは、申すまでもないわけであります。それに対して、それをそうしなくても何とかやっていけるという状態がございますと、なかなかそれが達成できない。そこで、いままで戦後のどの繊維産業を顧みましても、最初は原料が非常に不足だったものですから、割り当て制がしかれた。したがって、割り当てをもらえば非常な有利な事業ができるということから始まったものですから、ともすれば惰性に明かれまして、自分の努力をそうしなくても何とかやっていけるという体制がいまでも少しずつ残っております。そういうものは早く脱却する必要がある、そういう意味でございます。
  104. 赤間文三

    ○赤間文三君 それから自主的にやる限りのことをやって、業界だけではどうも力が及ばぬところは、国が補助するとかあるいは指導するとか、いろいろな方法を講ずる必要があるということをおっしゃったのでありまするが、業界の及ばぬところというのは、どういうところですか。
  105. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 先ほど来ほかの参考人からもお話がございましたけれども繊維企業は最近までの市況の低落あるいは世事競争のために力が弱っておる。したがって、本来各企業近代化なり、設備合理化なり自分でやるべきでありますけれども、力が弱っておるものでなかなかやりがたい。特に小さな業者がたくさんおります。そういうところに、おまえは自分の努力でやれといっただけでは、なかなかうまくいかないのじゃないか。そういう点に対して、国から資金面等について援助ができたら非常に望ましい、そういうことを意味しておるわけでございます。
  106. 赤間文三

    ○赤間文三君 これは私の私見でございますが、絶えず非常な進歩を続けなければならぬ、これは業界全部そうであります。特におたくのようなところは、事業の性質上そういう必要があると思います。私はそういうところの業界におきましては、半官半民くらいの思い切った研究機関だとか、そういうものをひとつ設けて、絶えず各国におくれぬだけの研究をやることが、私は望ましいことだと考えております。業界業界だけで、たとえば東洋レーヨンにいたしましても、八百人からなる大きな研究所を持っておられるとか聞いたことがありますが、やはり不況があり、いろいろあるが、こういう国の重要な産業としては、半官半民くらいのひとつ研究所でも設けたら、非常に業界のためになるのじゃないか、そう私はかねて考えております。参考人はそういう必要はない、業界は自主的に研究をやればやれるというようなお考えか、この点ひとつ承りたい。
  107. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 御指摘のように、合繊業界は非常に技術が日進月歩でございますので、この技術開発をおろそかにしたらば、将来が危ぶまれるわけでございます。そこで外国合繊企業は、非常に強力な研究機関を持ってやっておりますので、それに負けたらたいへんでございます。ところが、いま御指摘のように、日本業界では、めいめいが技術開発しておったんでは、それが分散していて、なかなか効果があがりがたいのではないかという御指摘でありましたが、確かにそういう点もあろうと思います。しかし、一面考えてみますと、合繊のような新しい一顧につきましては、企業が自分で努力して自分で商品を開発していくという血が非常に大切でございますので、ある程度までは、やはり技術開発についてもそれぞれの企業競争によって刺激するということが必要であろう。ただ、基礎的な部分につきましては、これは非常に物理学とかあるいは応用化学とかいう非常な基礎的な部分については、共通的な部分がございますので、できますればこういう部面につきましては、官設の研究機関あるいは学校、大学等の研究によって基本を固めていただく、その上に立っての応用商品化といいますか、そういうところは各企業が自主的にやっていくというような形が望ましいのじゃないかと思います。もちろん業界相互間であるテーマをきめまして力を合わせるというようなことができますれば、これもけっこうだと思いますが、全部をそれに充てるということは、むずかしいのじゃないかと思います。
  108. 赤間文三

    ○赤間文三君 化学繊維のことは、日本ではまだ日が浅いのでありまするが、現在のこの化学繊維の世界における地位は大体どういうふうになっておりますか。
  109. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 従来の人絹スフにつきましては、世界の生産の一五%くらいでございまして、世界で第二位だと思います。それから合成繊維につきましては、世界の生産の二割くらい占めておりまして、これはアメリカに次いでやはり二位でございます。各国はみんな日本の下についております。
  110. 赤間文三

    ○赤間文三君 次に野沢参考人坂井参考人、両参考人にお尋ねを申し上げます。この織物につきましては、これは非常に今日不況関係等で相当私は深刻な打撃を受けておると承知をいたしておるのです。それに先ほどから承りますると、中小企業近代化資金というようなものが、どうも思うように消化が困難である、あるいは貸し付けの条件がきついというのか、あるいはいろいろなその他の条件もあるでありましょうが、私らは近代化資金というものが喜ばれてどんどんと消化をできると、他の金融機関よりかもこれで借りるということが業界のためにもなれば、あらゆる面において利益だと、こういうことで近代化資金というものをわれわれは政府に要求したり、いろいろしておるのです。きょう承りますると、どうもわれわれが思うたほどの効果があがってないというようなことを聞いて、非常に私は力を落としておるのであります。先ほどから大体のお話を聞きまして、これはどういうふうに改善したら、各中小企業が喜んでどんどん消化をしていくか、みんなが。われわれはいまの七十億とか八十億とかいうものを、将来思い切って中小企業の方が喜ばれるなら二倍、三倍にふやすこれは必要がある。特に輸出の大半を、半分以上を占めておる中小企業においては、特に輸出関係する限りにおいては、思い切ってこの近代化資金が一番便利で一番うまくいくようなことを念願しておる。  それで御両所に承りたいのは、この近代化の現在ある資金というものは、どういうふうにすれば非常に喜んで使われるか、そのことについて両参考人意見を聞きたい。
  111. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) どうもいろいろ諸先生のお世話になって、資金ワクをつくっていただいてけちをつけるようなことを申し上げて申しわけないのですが、一つは、私の個人的な感じでございますが、ワク自体の運営が、中小企業ということで十ぱ一からげになっている例が、一つの根本原因ではないかと思いますと同時に、それぞれの中小企業を、私のほうでいいますると、先ほど申し上げたように、三年前の近代化促進法の調査による近代化資金というのが五億か六億必要である。それに対して残念ながら私のほうは一割を出ないワクっきりなかった。しかもそれがいわゆる公庫の窓口において、どのような業種を優先すべきかということはなくて融資をされておるんじゃなかろうかと思います。まあ中小企業者であれば、来た者から適格者があれば貸していくということであって、綿スフ織物業だからこのくらいは回してやろうとか、いわゆる近代化計画と金融の計画というものがお互いに関連性がないということが、根本のようでございます。もちろん、私のほうの業界でも、全然今度の近代化資金のお世話になっていないと申し上げているのではございません。なかなかむずかしくて、期待するような融資を受けることができないということを申し上げているわけですが、できれば今度私どもがいろいろ通産省の御指導も得て、産地別の構造改革努力いたしているわけでございますが、その直接裏づけとなるような形の助言をいただきたい。一般の中小企業全体というふうな考え方じゃなくて、綿スフ織物業としてこのくらいのものを確保してやる、この条件はこういうことであるというふうに具体的にきめていかないと、なかなか五十億、百億のワクのところへ何百億も希望者がいきますれば、どうしても金融機関とすれば、条件のいいほうに金がいくのは当然でございます。先ほどもちょっと申し上げたのですが、七年の機関融資をしていただくということでございますけれども、これは公庫の方にお聞き願えばわかるのですが、七年の長期で貸していただいている例は非常に少ないはずです。それぞれの借り入れる申し込み人の内容によってお前は三年で払えとか、お前はせいぜい五年で払えということで、七年はなかなか貸していただけない実情でございます。  それともう一つは、これも先ほど申し上げた、いろいろ担保の条件であるとか、それから返済の見通しという非常に厳重な金融の際の査定を受けますので、先ほど午前中申し上げたように、私のほうの非常に困窮している業界実情からして、そのまま申し上げてもなかなか公庫の金融ベースには乗らない現状でございます。
  112. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) ただいま野沢参考人からお話がありましたが、ほぼ同様でございますが、全体の中小企業近代化の特ワクで百億足らず、一方資金助成法による資金にいたしましても百億程度で、全中小企業ではやはりわれわれ業界に回る資金というものは非常に限定されておるようなわけで、その上、業界は非常に体質が悪いために貸出条件あるいは信用補完の点で十分活用できない。特に織物業界につきましては、指定業種なり構造改善五カ年計画で、私ども業界でも、五カ年で七十億の近代化の計画を持っておりますが、やはり近代化計画と資金計画とが全然結びついておりませんので十分活用できないと同時に、資金助成法によりまして県の負担がありまして、やはり県の財政上の事情がありまして、そういう県における繊維産業関係が、利用が困難だというようなことも見受けられると思います。したがいまして、今度の構造改善計画におきまして思い切った近代化をいたしますのには、個々の企業でなしに、全体の産地の構造改善によって大幅な近代化をさせるというような仕組みでいきませんと、近代化投資の効率が、非常にいま過剰設備をかかえておりますから、ビルド二に対して廃棄を三というようにして過剰設備処理しつつビルドしていく、こういうような考え方でいきますと投資の効果があがりまして産地の構造改善が大幅に刺戟されると考えておりまして、構造改善金融のほうをぜひ長期低利でお願いしたいと、かように業界としては要望しております。
  113. 赤間文三

    ○赤間文三君 いま大体両参考人のお話でわかったのでありますが、つまり個々の業者目当てでやっておるが、綿スフは綿スフ構造改善というものを頭に置いてやってもらいたい。綿スフ構造改善には三十億なら三十億というものを、それをどういうふうに貸すかという貸し方をやるということが第一点のようでありますね。
  114. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) そうです。
  115. 赤間文三

    ○赤間文三君 第二点としては、七年ということを言っておるが、七年より短く、普通の金融と同じような条件で、三年でよかろう、四年でよかろうということで七年は貸してくれない。産業助長というその金を、貸すほうの者の頭に、だんだん営業化して、あまりないような気がある。まあ言いかえると、そういう気分も幾らかある、こういうふうに受け取ってよろしいですね。
  116. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) そうです。
  117. 赤間文三

    ○赤間文三君 それから次にお尋ねしたいのは、先日大阪の堺の綿の加工業者の組合の理事長が見えまして、堺の三十四軒の綿加工業者、いわゆるふとん製造業者が今度七千坪ぐらいの工場をその三十四軒が共同で建てる、一万坪ぐらいの敷地で建てる。そこでいままでの綿加工業の各個のものは全部やめて、そこ一カ所でやる。そうして大いに能率をあげて、そうして時代の要求に応じたい。これくらいのことをやらなければなかなかやっていけないということで、私のところに意見を聞き、また骨を折ってくれということがありました。私は三十四軒のだんなさんばかりで、私が言ってもなかなか一緒にならないと思っておりましたが、そういうことはやめて、一つのところにまとめるということで、いま骨を折ろうと思っておりますが、織物の実情を見ましても、私は泉大津、あるいは岸和田あたりを見ますと、織物業者の小さいところもいろいろあるので、私は産地が全部一つ工場というわけにはいくまいが、三つ工場なり四つの工場になって、——まあ趣が違うから一がいには言われぬが、いわゆる協業化、こういうものをひとつ時代の要求に応じてやる。それには最新の設備をやって、国からも補助するなり長期低利の金をやる、国もできるだけやるというようなことが私は望ましいのじゃないかとかねて考えておる。通産省もようやく今年からこういうものを始めたのでありますが、そういうことについてどういう考えを持っておられるか。織り屋というものもずいぶん小さいのもありますが、将来はそういうふうな共同北、合同というようなことについて、何かお考えなり研究されておることがあれば承りたいと思います。
  118. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) いまの先生のおっしゃったような気持が、織り物業界においても、ほうはいとして起こりつつございます。それで特に私のほうの業界の中で、中核的な分子、業界にいろいろ大小中あるわけでございますが、先ほど家内労働法等の問題でいろいろ御指摘がありましたような、まあいわば家族工業というふうなものは、これは一応別といたしまして、一応企業として成り立っている中核の企業が、実はいま一番困っている。片や労働問題、いろいろな資金計画にいたしましても相当あるわけでございます。なかなかこの運営について問題があるのは、その辺が一番多いわけであります。したがって設備合理化等も非常におくれている。先ほど午前中申し上げました、いわゆる企業の崩壊というふうな面が、この方面にあらわれつつあるということが、一番われわれとして頭を痛めておるところであります。で、この連中が現在私どももこの産業構造の研究と一緒にやってもらっておるわけでございますが、ぜひ早くこういうふうな体制で自分らもいきたいから、一日も早くそういう体側を整えてくれということを実はこの間も、まあ気のいいやつですが、一体いっそういう申請書を出したらいいか、申請書のフォームを教えてくれというような者もおりまして、実は申請書のフォームどころの騒ぎじゃない、根本の問題をいろいろ研究している過程であるということをお請いたしたのですが、いま先生のおっしゃっているような動きは、非常に強くあらわれております。で特にそういうあらわれ方は、大阪を中心とした生地部門、あるいは名古屋周辺のそのような企業に非常に強く熱望されております。で業界もいままでのような形ではとうてい勧告なり——いろいろなそういうふうな関係で、自分らも生きていけない、この際は長い自分らののれんであるとか、また個人企業者でございまするので、まあ一国一城のあるじということの頭はありますけれども、事ここに至っては、どうしてもそういうふうなことではやっていけないという気持ちが非常に強くなっておりまして、そういうような形でそれぞれ大阪なり名古屋なりで、産地ごとに現在どういうグループなりどういう体制で集約したほうがいいかということを、産地産地が一生懸命現在検討を進めております。通産省なり国会のほうで、諸先生のほうでこの具体的なわれわれの希望をどういうふうに入れていただけるか、実は首を長くして渇望してお待ちしている次第でございます。
  119. 赤間文三

    ○赤間文三君 最後に一言お尋ねしたいのでありますが、一番心配なのはもちろん農業でもそうでございますが、この繊維業についても従業員の獲得と申しますか、特に中学出とか高等学校出というようなものを採用するということが、非常に困難な状態で奉ります。大阪の例をとりましても、従来は四国とかあるいは南九州あたりからよく入ってきておったのであります。どうもこのごろ調べて見ると、非常にそういうところにも各自産業が興ってきて、なかなか獲得が困難だ。全国を通じてこの若年労働者の獲得が困難だ。これがいま不景気だから、しばらくの間しんぼうすれば、また相当ふえてくるということも予想が困難なようにも私は考える。これに対する策を考えて実行に移されないというと、だんだんにその方面から行き詰まってくるような気がするわけで非常に心配している。私が大阪の知事だったときには、一ぺんもそんなことに気を使ったことはなかった。いまの知事はたびたび九州や四国に従業員の獲得に回っているというような実情で、非常にこれは心配をしている。これがうまくいかないと、私はたとえ設備近代化をやってもいろいろなことをやってもまた苦労が出てくる。これの対策というものについてどういうことを現在やられておるか、承りたい。
  120. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 実は先ほどもちょっと申し上げましたが、いわゆる若年労務者の獲得については全く困っております。最近の例でございますが、私どものところで大体十七、八万人の労働者がおるわけでございますが、毎年五万人前後の充足が必要であるわけでございますが、この若年労務者の職安を経由して獲得できた実績は、需要の五分の一程度でございます。で、しかもその獲得できた工場は一万六千企業の中の一割くらいしかございません。九割の企業はほとんどとれない状況でございます。そのような労働対策、労務管理の面からいっても、労働者の働く職場の形は、いまのような形ではだめだ。それは働いてもらう若い人たちにしても、要するにりっぱな気持ちのよい工場があれば、おんぼろな機屋に行きたくないというのはこれは無理もない。少々くらい給与を上げても、とても来てもらえない、ということも先ほど申し上げた。みずからの工場体制、経営体制というものを抜本的に考え直さなければいかんという、原因の大きな一つ理由がそこにあるわけです。で、実はこの間も四、五人の経営者が参りまして、いま先生がおっしゃるように、自分らは別々に四国なり九州に求人に歩いているわけです。小さな企業者のおやじが一月も二月も労働者集めで回っていたのでは商売もできない。だからこの際は一緒になって新しい会社を、ほんとうの会社をつくろうじゃないか。で、おれは労務問題を担当する、お前は販売係をやれ、お前は工場の工務係だというふうなことで、新しい機屋の経営の形というものをつくらなければ、いかにかねや太鼓を鳴らしても、若年労働者の獲得というものはできないだろうというふうに、業界の自覚もそこら辺からきているわけでございます。で、どうしたら具体的に労働者が来るかという先生のお話でございますが、私どももやはりその職場を、従来のような考え方でない、近代的な合理的なそういう形に転換することが、また若い労働者等の魅力になって労働力の不足ということが緩和できるようになるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  121. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は各委員から詳細に繊維産業現状と将来のあり方についての御質問があったのでありますから、重復することは避けておきたいと考えるのであります。きょう参考人の方、御多忙中にもかかわらずおそくまでこうして列席願っておりますことを、厚くお礼を申し上げますと同時に、私は具体的に繊維産業の行き詰まりに対する対策としての御説明があったのでありますが、そういう面に対する私は実際に可能な方法をお聞きしたいのであります。特に昭和三十九年の十一月の新法施行以来、先ほど強い反対の意思表示をしておられました村区分等の問題に対しては、私もこの席で、たしか十六号室であったと思いますが、強く、この点については通産大臣なり局長に対して質問を申し上げ、反対もしたのでありますが、だいじょうぶだという答弁の中から考えてみますと、全くのこの新法がむしろ日本繊維界に対しては大きく混乱の拍車をかけたと、私はこう見ておるのであります。したがって、いかなるりっぱな法律だと政府が考えましても、実際には業界の自信の持てる私は法律というものが今後生まれてこなければ、これだけどん底におちいっておる繊維界としては、再起の可能性がむずかしいのではないかというような考えをいたしておるのであります。特に小企業じゃなくて中企業の崩壊が目前に控えておるということも、野沢参考人の言われたとおりであります。至るところでそういう傾向が出ております。各位から私は具体的な問題でひとつ御質問申し上げますので、御答弁願いたいと思うのであります。  まず、田和参考人の方にお聞きしたいのでございますが、ここにも書いてありますように、約二百八十社の八〇%が三万錘未満の小規模で、この錘数は大体全体の一二%にすぎない。社数はこれだけ多くあります。したがって、この錘数を持っておられます三万錘以下の方が今後自主的に、自主性を無視することはできないと思います。したがって、どういう方策をとろうとも、その業界自主性を認めざるを得ない。そういう場合に、政府が意図しておられます、将来買い上げていきたいということでありますが、そういう点に対する、自主的な廃棄をして転換しようという意思が協会の中にもあるのかどうか。そういう気配が三万錘以下の人にはあるのか。それとも、大企業といえどもある程度減して、また転換しようと考えておられるのか。結論は出ていないでしょうけれども、全体の意向はどこにあるのか。これをちょっとお聞きしたいのです。
  122. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 中小というよりも、むしろ弱小企業に属する人の今後の業界の持っていき方、俗に言えば身の振り方でございますが、それは各業者の自分のふところぐあいもございますし、また将来に対する見通しもあって、私は必ずしも同じではないと思います。それからまた、だれしも自分の今日まで骨折ってつちかった企業でございますから、簡単にこれを金をもらったら廃棄しようというような気持ちはございません。しかし、周囲の情勢から見て、現状のままではやっていけぬだろうということはみんなおぼろげに考えております。そこで、どうやったらいいかということについては、正直のところみんな悩んでいます。悩んでいますし、苦悩しておりますねえ。それで、何かいい知恵はないかと事務局でも考えておりますというようなことも言うております。そこでこの間、協会のほうではそういう人たちを集めて、ひとつどういうやり方がいいのか、現状のままではやっていけないということをわかっておるが、どうしたらいいかということをひとつ研究しようじゃないかと言うておりますのですが、その中で一応考えられておるのがグループ化というやり方ですね。しかし、グループというよりもいろいろな行き方があると思いますけれども、まず、現実に即したグループということをひとつ主題にして考えようじゃないか。それから中にはそうしているうちにこれはむしろ一体になったほうがいいというので合併まで持っていこうやという人もいるだろうし、これよりもむしろ大きなところの傘下に入ったほうがいいだろうというふうに時勢の変化とともに考えていくだろう。とにかくこの現状のままではいかないし、そうかといって、先ほど申し上げたように簡単に合併もできないということになれば、まずグループのほうで考えていこうじゃないかということでその問題を取り上げ研究しようということになっております。
  123. 高山恒雄

    高山恒雄君 おっしゃるとおりに、過剰設備をどうするかという問題はグループ化するか、それともこの一律廃棄をやるかの二つしかないと私は思うのです。あるいはまた転業をやるか、この転業ということは相当の私は処置をしなければ、現在のような日本不況状態の中ではなかなか困難だと思いますね。したがって、一律廃棄というものを第一前提にまず考えてみたらどうか、その場合にまあ三万錘以下を持っている企業に対しては、これこそ特別の何か処置を考えてグループ化するか、それとも一方には転業させるか、その辺が一番私は重大なポイントだと思っているのです。せっかくいろいろの法律をつくってみても、なかなか実現のできないようなことは空文に終わるし、結果的にはますます混乱を起こすのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、この一律廃棄というような問題はお考えにならないのかどうか、ちょっとお聞きしたい。
  124. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 一律廃棄というようなことは、非常にむずかしいことでございますし、それからこれを法律で私は強制する方法はないと思います。したがってこれをやるとすれば、どうしても共同行為しかない。そこで先ほど申しましたけれども共同行為でやるといたしますれば、みんながいやいやでもそれについていけるだけの一つ条件をつくり出してもらいたい。それには自分でつくったものを自分で廃棄するのだから、そんなものには金は出されぬのだというふうなお考えでなくて、これは国家的な意味においてそれ以外に方法はないのだから、そうさすのだからこれが可能なようなひとつ下地をつくる、基盤をつくる、こういう意味において、そういう場合に政府のほうでこれに何らかの助成金なり何かを出してもらえれば私はそれが可能ではないか。要するに共同行為を可能とするような何かここに条件をつくり出していただきたいと、こういうふうに思っているのです。
  125. 高山恒雄

    高山恒雄君 次に、化学繊維の問題で杉村参考人の方にお聞きしたいのですが、合成部門は言うまでもなく、滞貨もある程度減ったのじゃないかと私は思っているのです。したがって繊維過剰設備と言いながらも、その中では多少安定しつつあるのじゃないかという気がいたします。ただし、これは気持ちだけですが、全般の景気がよくなっていないのでありますから、そう思う程度でございます。ただ、問題はスフに対する問題ですが、これをいろいろ業界においては自主的な減産方式をとっておられるということも私聞いておりますが、もっとスフの新しい市場の開拓といいますか、あるいはまた、スフとの強力繊維合繊等の混紡等による何かそういう開拓はないのか。そういう点の検討はなされていないのか、ただ減産処置だけを今日はお考えになっているのか、その点をお聞きしたいと思います。
  126. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) ただいまお話のように、スフにつきましては非常にむずかしい事態になっております。これを在来のスフのままで伸びていこうというのでは非常にむずかしい。そこで業界では改質スフというのを非常に研究いたしております。日本で発明された技術でトラ木綿というのがございます。これは技術外国輸出しまして、逆にまたそれが日本に入ってくるというようなことで、改質スフというのは非常に私たちはいいものだと思っております。ただ、それを販売していくときに、従来のスフと同じようなやり方で売りますと、買い手のほうではどうせスフかということで、せっかく努力した非常にいい品質のものでありますけれども、うまいぐあいに売れないということがございまするので、これは別の、原料からいえばスフに近いけれども、製造方法が非常に違った、品質も非常に純綿に近いいい性質を持っている。そういうものを別の名前をつけまして、ポリノジックという名前をつけまして、品質表示法でもそういう名前を認められまして、いま一生懸命需要開拓につとめているのであります。それと同時に、在来のスフでありましても、合繊と比べまして対照的な性質がございます。合繊というのはどちらかといえば水を吸わない。スフというのはどちらかといえば水を吸い過ぎる。両方まぜて使うことによって非常にいい味が出るということがございますので、それを両方まぜて使うということについてもいろいろ研究をいたしております。そういうことで、スフにつきましては、合繊が伸びるのにつれてスフが伸びるということを期待いたしているわけでございます。ただ、何と申しましても、そういうことをやりましても、一方では合繊も自分たちでつくっておりますので、両方同じような規模でというわけにはいきませんので、重点は、やはりどうしても合繊のほうに傾いているというのがいまの状況でございます。
  127. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうしますと、このスフに対しては一説には三分の一の減産方式をとると、こういうことは可能なのか、また実現されようとしておられるのか、これをちょっとお尋ねしたい。
  128. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) それで、スフにつきましては、需要の大幅な増が期待できない、いまの設備量を見ますと確かに多過ぎる。このままの形でやっておると、各社とも少しずつ遠慮した生産をしなければならない。どうしてもコスト高になる。そうすればますます売りにくくなるということでは困りますので、やはり全体として規模を縮小する必要がある。その場合に、幸いのことに、スフ業者と申しますのは、他に綿紡績を兼ねている業者もありますけれども、大部分の人は何らかの合繊を取り上げる。そうすると新しい品種のほうになるべく転換して、スフのほうは、残った人がそういうやめたほうの会社の生産まで引き受けて量産体制をはかり、集中生産をはかって合理化をしていくということがいいことじゃないか、それを話し合いによってできないものだろうかということで、いま具体的なやり方を研究しているわけでございます。
  129. 高山恒雄

    高山恒雄君 それでは野沢参考人にお聞きしたいんですが、最も繊維界の悪いという中でも一番苦しい立場に追い込まれておると、私はこう考えておるわけです。したがって、この近代化がおくれておるという大きな要素は、先ほど御質問もございましたように金融の、つまり処置が円滑にいっていないと、これは私もそうだと思うんです。そのほかに一体現在の見通しで、近代化というものがやれるのかやれないのかという不安が業界に非常に満ちておるのではないかと、そのために銀行もやっぱり相当近代化にはしぶっておると、したがって信用協会が保証しても出さぬという実例があるのかどうかですね、私は信用協会が保証したものに対してはないと思いますけれども、ややもするとその傾向があるのじゃないかということを聞きますが、そういう点はどうなっておるのかですね、その点をちょっと……。
  130. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) ただいまの、まあ保証協会で保証をしたものまで融資をしないという話は、私は輝いたことはございません。ただ、私どもがお願いしているのは、そういういわゆる金融ベースの金をお借りしたのでは、とても責任が、将来不安であるということを企業者自体が自信がないわけです。したがって、まあどうしても生き返りたいのだけれども、その場合においてはいわゆる金融ベースのお金じゃなくて、特別の御配慮のお金を貸していただくなり、補助金でいただかなければ立ち直れないであろうということのお願いを申し上げたわけでございます。  それから委員長、ちょっとほかのことでお願いを申し上げたいこと、さっきちょっと忘れたものですから——といいますのは、もちろんいまの構造改革でみずからの体制整備しつつ、その近代化をし、かつ必要な過剰設備処理をみずから行なっていきたい、こういうふうに申し上げたのですが、転廃業者の場合の補助金を今国会でもおきめいただいたわけですが、ところが補助率が五〇%、半分はてまえで出せ、こういうふうにおっしゃっていただいているわけです。一応常識的には非常にやむを得ないこととは思うのですが、この補助率の五〇%という問題を、業種、業態に応じて残存業者の負担能力を勘案して、まあ隣りにおられる田和さんのことを持ち出すと悪いんですが、紡績業者の残存業者の負担力、それから別に田和さんのほうを削っていただきたい、こういう意味じゃないんですよ。私どものよたよた機屋の残存業者の負担力というものを、やはり実情に適したように別にお考えをいただきたい。ですから紡績の側でかりにまあ五割補助と、私はそれはけっこうだと思います。でありますが、私のほうにはまた別の七割とか、八割という補助率というものをお考えいただけないものだろうか。というのは、もちろん残存業者が全然負担しないとか、責任持たないということじゃないんです。残った者が、金持ちが残った場合と、貧乏者きり残ってないという場合とで、非常にその点負担はしたいのだけれどもできないということがあるものでございますから、ぜひその点特にお願い申し上げたいと思いまして。
  131. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は織物の関係については非常に重大な問題が山積しておると思うんですね、まずいろいろな方法はあろうと思うのです。でありますが、その中で一番重大な問題は、これは日本政策の大きな失敗からきておることだと思うんですが、つまり農業政策が非常に立ちおくれてきておる。しかも地価が一方では暴騰している。産業地の地価はもう非常に高騰して、一反ぐらいのたんぼを売れば四、五台の織機を買うことができる。そのために兼業、いわゆる織物をやる、こういうのがしかも無登録で行なわれておるという現実があるわけです。この問題を一体どうするかですね。これは業界としては、政府に対して強く私は要望しておられると思いますが、しかし、私は全体ということは申しませんよ。たとえば愛知県の知多等における綿織物等においては、かなり業界が現在のその組織の中からそうしたアウトサイダーの規制をみずからしておるという地域がないことはございません。けれども、その他の地域はかなり私はこれが今日出ておるのではないか、まずこの整理をどうするかということが第一前提の一つになるのじゃないか、こう思うのです。  次に、おっしゃるように、この共同化ということもおっしゃるとおりでございますが、たとえば私も実際これを見てきたのですが、いまの——現在の法に基づいてこの兵庫県の播磨繊維センターというのが設置されておることは御承知だと思うのです。しかもこれが全部高校卒業者が機織りをやっておる。全部そうだ。しかも宿舎は文化的な設備になっておる。こういう試験をやっておるところを、私は現地見てまいりましたが、もう一歩だと考えられるような気がいたしますけれども、これはしかし繊維の——織物に対する考え方としては促進する必要があるのじゃないか。いわゆる若年労働者を将来どうするか、昭和四十三年以降のこの若年労働者の不足から考えてこれをどうするかということになれば、やっぱりこの播磨繊維センターが現在やっておるような方式を直ちにこれをやっていく、したがって政府もこれには思う存分の資金を出して、そうして先ほどおっしゃるように五〇じゃなしに七〇も八〇も、そうしてまずそれを解決していくということにならなければ、私は空論に終わるのじゃないかというような気がするのですが、そういう面の検討をひとつやっておられるのかどうかですね。この点をお聞かせ願いたい。
  132. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 実はいま非常に具体的な例で、播磨繊維センターというのが、実は明石からちょっと入ったところに団地として私のほうの業界で初めてのプランでやり出したのでございます。まあおかげさまでいろいろな、団地に関する融資等いろいろ御配慮いただいて昨年から動いているわけでございますが、実はこの非常にまありっぱにできた団地が、当初の間期待したような仕事の運営ができなかった、これは非常に私どもの勉強になりました。やはりまあ十人、二十人という人が集まって一つ企業に溶け合って新しい事業場として運営するためにいろいろな、私どもが予期しないようないろいろな問題が出てまいりました。で、この一年ばかり非常に苦労をいたしましたが、おかげさまで最近の話を聞きますと、もうこのごろは注文が多くて受け切れないほど経営の見通しがよくなった。御承知のように播州地区非常に古い先染め織物産地でございまして、古い工場がたくさんあるわけでございますが、その中にそういうまありっぱな合理化された工場ができたことを、やっと紡績筋や化繊筋でも認めてくれまして、最近はほんとうにもう実は仕事を断わるのに困っているのですというくらいまでいけることを、やっとこの間聞きました。非常に私まあいろいろ御配慮いただきましたことについて、感謝申し上げるとともに、喜んでいるわけでございますが、われわれの先ほど来いろいろ申し上げておりますることは、これが一つのモデルである、決して零細、弱小企業だから一緒になっても仕事ができないのではない。もちろん個人企業の従来の行き方を脱却して一つの集団活動をするためには、いろいろな問題が起きます。起きますが、それを乗り越えればああいう形になれるという形を目の前に見て、いろいろ私どもいま考えておりますことについて、非常に強い自信を得ましたということを御報告申し上げます。
  133. 高山恒雄

    高山恒雄君 したがって参考にもしておられるようですし、かなり力も入れておられるようですが、この集団化というのは非常にむずかしい問題で、例を申し上げますと福井県の鯖江等については染色の集団化が行なわれまして、いまだに、二年たちますけれども一軒しか移動しなかったという実例がありますし、だからやらなくちゃいかぬ。業界努力もかなり要ることでしょうが、こういう問題に対する政府の特別の措置が必要ではないかと私も考えるわけです。今後の織物に対しては、かなりそういう面に力を入れておられるようですから質問を終わりたいと思います。  次に坂井さんにお聞きしたいんですが、実は昨年でしたか前回の国会ですが、生糸の価格安定法ができまして、その後かなり値上がりをいたしましたが、実際問題として私はその当時、結果的には最低がきまるということは値上がりするということになるのだが、中小企業の織物業としてはかなり困るのではないか、いわゆる糸高の製品安ということは起こらぬのかということを業界に聞きましたけれども、その点はだいじょうぶですから進めてくださいという意見を私も聞いておりますが、その後聞いてみると、糸高ということがあちこちに出ておったのですが、現状はどういう状態なのかお聞かせ願いたいと思います。
  134. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 生糸の価格安定につきましては、御承知のように繭糸価格安定法という法律によりまして最低、最高価格をきめまして、そして輸出の振興、蚕糸業の振興をはかるような仕組みになっております。御案内のとおり天然繊維でありまして非常に天候に左右されまして、午前中に申しましたように、本年度も春繭で七%、夏秋蚕も非常にこの天候で一割五分から二覇の減産だというような予想が発表されまして、御案内のとおり横浜、神戸の生糸取引所では三十八年以来の六千九百円というような大きな暴騰を示しておりまして、生糸業者といたしましては非常に困惑しておるわけでございます。農林当局にも駐日も参りまして、蚕糸局長にもお願いいたしたわけですが、そういう需給の逼迫によりまして、横神の生糸取引所が仕手関係で非常に生糸取引量も大きいし値幅も大きく上げているわけでございます。生糸だけ糸価安定法を持ちながら、生糸についてのみこの業界不況のときに非常に暴騰して、海外でも信用を失墜して、生糸輸出はごらんのとおり全く輸出できないということで、御指摘のように原料製品安でわれわれの輸出はもちろんのこと、国内需要にいたしましても六千円をオーバーいたしますと、これは赤字サイドということになっておりまして、この糸価安定につきましては、何とか関係業界とも十分話し合ってできるだけひとつ安定をしていきたい、かように考えております。
  135. 高山恒雄

    高山恒雄君 時間がありませんから、簡単に質問したいと思いますが、久村さん具体的に御説明なされましたので、私は具体的なことでちょっとお聞きしたいのですが、この紡績業と織物業、編みもの、大体三業種を一緒にして考えなくちゃいかぬという考え方ですが、三業種の共同行為のできるような調整、一つの機関を持つべきだ、こういうふうに言っておられるのですが、その機関というのは、たとえば大臣の勧告によってできるような方法にするのか、そういうことを考えておられるのか、この点はどうですか。
  136. 久村晋

    参考人久村晋君) 紡績業、織物業、編みもの業等に何らかの調整行為が必要ではないかと思います。それの運営する方法といたしましては、現在も審議会ございますが、審議会の機能を充実することによりまして、そこで大きな原則をきわめまして、それを大臣に答申して、その結果をそれぞれ紡績紡績、編みものは編みもの、織物は織物というような形で調整行為をしてはどうか、このように考えております。
  137. 高山恒雄

    高山恒雄君 いまの問題で聞きたいのは、必要な勧告の処理政府がやっぱりこれを考えるような方向にする、こういう考えですね。
  138. 久村晋

    参考人久村晋君) ええ、そのとおりで、アウトサイダー規制命令が発せられるような組織をつくるべきである、このように考えます。
  139. 高山恒雄

    高山恒雄君 こういう状態からいきますと、むろん、先ほど近藤委員のほうからも御質問がありましたように、最低賃金制の問題と家内労働法の制定の問題というものは、これは前から実に問題になっておるわけです。しかし、労働省も、家内労働法のいま調査機関ができまして、一つの資料ができ上がっておるようですが、これは何とかしてやはり成立をさせるという方向にわれわれもともにいきたいと考えておるのです。ただ、しかし、今度の繊維のこういう先ほどのような機構の中で一応整理をするということになれば、離職者の一体補償をどうするかという問題が一番重要になろうと思うのです。特に最近は年少労働者が不足して、かなりそれに伴う希望退職等も行なわれておりますし、現在でもかなり問題になっておる上に、こういう一つ方法繊維産業の将来を考えればやらざるを得ないという必要性に迫られておるけれども、一体離職労働者の補償というものをどういうところに持っていくのか、この考え方をちょっと御説明していただきたい。
  140. 久村晋

    参考人久村晋君) その点につきましては、労働力の流動化を促進する対策政府業界もやはり一致して促進してもらいたい。それで、そのためには、現在あります雇用促進中業団であるとか、それから前国会で成立しました雇用対策法をさらに充実強化していただきまして、実態に即してそれらの措置が行なわれるような運営をぜひお願いいたしたい。そうじゃございませんと、私ども先ほど申しましたように、設備の問題は片づいたが、人の問題が片づかないことによって、要らざるトラブルが起こるのではないであろうか。したがいまして、これはたとえばでございますが、今度の買い上げ等の問題についても、やはりそれらの措置と並行的に進められるよう、促進協会に対しても要望をいたしております。
  141. 高山恒雄

    高山恒雄君 簡単に申し上げますならば、なんですか、この雇用促進をするための事業団的なものをやってもらいたい、こういうお考えですか。
  142. 久村晋

    参考人久村晋君) ええ、そのとおりです。しかしながら、それはことしには間に合いませんので、ことしの問題としては、先ほど申しましたように、いまある機構と、いまある法律を有効適切に働かしていただきたい、このように考えます。
  143. 高山恒雄

    高山恒雄君 もう一つ重要な問題が具体的に出ておりますから、私なにしておきますが、この商品取引所の廃止論を言っておられますが、これはむろん流通機構の問題とも深い関連性がございます。この点について、もう少しその考え方を具体的にひとつ考えがあればお聞かせ願いたい。
  144. 久村晋

    参考人久村晋君) その点は次のように考えます。それは天然生産物につきまして、ヘッジ機能としての商品取引所の機能そのものを私は否定はいたしません。しかしながら、現実に運営されておる姿を見ますと、特に、たとえば化繊の取引所なんかの場合、これは天然生産物とは言えないわけでございますし、したがって、あのような工業生産物を液晶取引所という形で取引することがいいのかどうかというようなところから考えて、要らないのじゃないか。あるいはまた、その他の天然繊維関係におきましても、現実に動いておる姿を新聞報道等で見ますと、これは端的に言いますならば、場違い筋の投機資金によって変動しておる部分が非常に多いというふうに聞いておりますので、一方では抜本的な構造対策を立てるということをやりながら、一方であのような行為が行なわれますと、これは非常に価格形成上かえって混乱が起こるのじゃないであろうか。そのような点からも、ぜひあのような機構は廃止してもらったほうが、正常な価格形成が行なわれるのじゃないであろうか、このように考えております。
  145. 高山恒雄

    高山恒雄君 これは非常に重要な問題でもありますし、田和参考人にも杉村参考人にも聞きたいと思うけれども、まあ大体趣旨はわかりましたので、今後の問題として私は残しておきたいと考えております。  小口参考人にちょっとお聞きしたいのですが、ここに「体制小委員会の討議経過についての疑問」というのが出ておりますが、現在の日本繊維界における過剰設備を具体的にどうするかという点については、まあ大体各参考人の方がお話しになりました点の中に出ておると私は思うのです。そこで、この一番大きな問題は、この紡績・織布等における一貫性の問題ですね。これから——この五十台未満の業者がここに書いてございます一万四千五百八十社、織機数で十八万一千六百台というようなスクラップ化という問題が起こってきます。おっしゃるとおりだと私は思うのですが、これを一体しからばどういうふうにしたらいいかということがやっぱり問題の焦点になろうかと思います。この問題については、先ほど私が質問いたしましたように、協業化するか、集団化するか、何かそのほかに救いの道があるのか。協業化あるいは集団化していくか。さりとて、まあ合併ということは非常に困難ですが、長年の懸案ですけれども、これは実現に至りませんから、そのほかに、このいわゆる紡績・織布一貫性の作業に耐え得る企業にするためには何か方法をお考えになっておるのか。指摘はできますけれども、実際にそれに対して何かなければ、私は結局、やりようがないのじゃないかというような気がするのです。たとえば紡績にしましても、五万錘以下はある程度この際整理統合させるべきじゃないか、そうして五万錘単位のものにすべきじゃないか、あるいは六万錘にすべきじゃないか、いろいろな意見があると思うのでありますが、その面に対する何か具体的な案があればお聞かせ願いたい。
  146. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 岡山先生の御質問は、実は先ほど野沢参考人のほうからお答えになっておると思うのですが、私は、日本繊維産業はかなり歴史的に、原糸生産段階と、それから織布段階、あるいは染めの段階という、そういう生産分野がこま切れにいろいろ産地をなしておるわけです。それで、確かに、現状から申しますと、コストの問題から考えれば、紡績は一貫生産をやったほうが、労働力の確保とか、あるいは紡績資本自身だけの再生産の条件が整うという点では、私もそうだと思う。しかし、国民経済全体の条件から考えます場合に、そういう論理を追求していきますと、産地の経済構造というものは崩壊していくわけです。それは国民経済全体の条件から見てとるべきじゃない。これが私の前提でございます。  それで、その場合に、それではしからば高山先生の御質問のように、どうして一体現状の織布業についての近代化をするか、こういう点だと思うのですが、これはやはり先ほど野沢参考人あるいは坂井参考人からお話あったように、私は、やはりスクラップについてのある条件をつくって、それに伴う近代化投資のひもをつける、それから融資についても、たとえば設備すべき機械について、ちゃんと融資にそこで条件をつける、こういう融資条件を明らかにして、低金利と長期の年賦返済ということをお考えいただきたい、金融面では。それから全体的に政府でおきめになる場合についての融資のワクについては、はっきり指定業種をつけていただきたい。それから二番目に、協業化あるいはグループ化という点がございましたけれども、どうも私は、今後の産地というものを発展させる場合に、産地は産地全体としての生産機能というものをやはり見ていくべきではないか。そういう点で、一事業所、一会社、従業員一名ということにものをとらわれないほうがいいんではないか、そういう点で、産地の機構では、撚糸は撚糸、糸染めは糸染め、織物は織物、こういうふうになっているのは御承知のとおりです。また、それに関連して産地問屋もからんでいるわけですが、そういう点で、私は、播州の例も高山先生から御指摘がありましたけれども、そういう先進的な経験もございます。それから、何よりもいま言ったような融資に関係して、何といっても、ある程度コストを下げる場合には、一定の生産機能というのは産地には産地なりに必要だと思うので、できるだけ共同施設というもののウエートを高めていく、こういうことによって産地全体としての生産性も高まる。それから、機能ももう少し専門化して、デザインあるいは加工の研究、こういうものに対しては、現在、地方にもそれぞれ繊維工業試験所もあり、あるいは染色試験所もあり、あるいはまた、現在はできておりませんけれども、縫製の試験所、あるいは、そういうようなところの援助、こういうようなことが行なわれることによって、私たちは、産地は産地なりの発展が可能ではないか。これは食事のときにも柳田先生とお話ししたのですが、全然古い時代から、明治以前から殿様は、産地という少なくとも産業的なコンビナート——いまのことばで言えばコンビナートをつくったのです。これだけ日本の経済が発展しながら、産地はどんどん崩壊していくのは、これはどういうことか。そういう点で、私は、これは大手の資本の方々にもお考え願いたいと思いますけれども、個々の資本から考えれば、一貫して付加価値生産を高めるということは、あるいは生産過程におけるところの系列支配というものがその立場で貫かれることが望ましいと思います。その結果、国民経済全体の次元で考えた場合に、産地が崩壊して、地域経済の開発の問題とか、労働力の問題とか、いろいろな点がまた出ておるのです。で、国会でも十分御規制願いたいと思うのは、実は、その辺を国民経済的な投資の効率の問題と、大手の資本自体の拡大生産条件との調整をどうするかということだと思うのです。  以上で高山先生の御質問に対するお答えにかえます。
  147. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうしますと、紡績産業が一時兼業織布というものを持っておったが、兼業でやるよりも、専業織布に切りかえたほうがいいと、こういうことで、ほとんど専業織布的なものに移行してきたということ、一時。今日また逆に、今度は一貫性のシステムをとりつつあると、これもさりながら、結果的には、地域の開発を考慮しながら一貫的なグループの強化をはかっていくと、協業化していくと、こういうことをやればいいと。それには、特別の税制の問題、金融の問題の処置をとれと、こういう考え方でしたね。
  148. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 私としては、原則として、現状のこの織布自体の設備についても、過剰な状況において、紡績兼業がさらに一貫生産を一そう強化するということは、原則的に反対であります。これははっきりそう考えます、中小企業立場として。しかも、先ほど言いましたように、国民経済全体の事情から考えましてもそう思います。その点、紡績はある面で、かなり流通機構に歴史的に強い力を持っております。それで、紡績資本自体が、いまのままでいった場合に、かなり原糸の生産の部分で収益性を高めることが困難な経営事情にあることも、多少知っています。しかし、むしろ、長い伝統を持った資本力で、私は現在実際に織布専業でないところの、たとえばメリヤス業、縫製業の近代化、そういう部分の全体の、繊維製品化全体の部分についても、大手の系列の方々はかなり努力してくださる余地があるのではないか。この点はよく審議会でも意見が出るのですが、イギリスのバーバリーの例が出ます。もっと製品を、下のほうから全体としてコストを高めていくということについて、紡績方々がもう一度御検討を願うように、また、力も持っていらっしゃいますし、長いそれぞれの伝統の上で技術も持っていらっしゃるように私は拝見しているのですが、そういう点について、特にせっかく専業でやってきた産地を崩壊してまで一貫生産をする必要は、投資効率の点から見てもむだではないかというのが意見です。
  149. 高山恒雄

    高山恒雄君 反対の理由も十分わかっているのですが、したがって、現状の地域のその産業自体ではいかぬということは、御指摘のとおりですね。そこが一番問題であろうと思うのですが、そういう点の協業化の問題ですね、この協業化の問題を強く打ち出すのか。私が聞きたいのは、先ほど播磨繊維センターというような状態まで統合経営をやっておるということでありますがそういう状態までいくことを賛成しておるのか、その点は非常に大事な点だと思うのです。いまは播磨センターというのは試験的だと、こうおっしゃいますけれども、やることがほんとうに可能か可能でないかという点は、非常にこれは理論はいかに立てようと、実際問題としてむずかしい点があると思うのですが、その点は、協業を主張されるのか、それとも、ああした播磨センターのような統一改善を要望されているのか、その点がお聞きしたい。
  150. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 将来の方向として、やはり産地自体において、合資会社みたいな形での統合ができるならば、私はそれが理想だと思います。しかし、それ自身も、段階的な協業化の諸経験を経ないと、一気にそれ自身は困難ではないかというふうに考えております。
  151. 高山恒雄

    高山恒雄君 終わります。
  152. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 時間も迫っているのですから、簡単に極力御質問をいたしますが、まず第一点は、繊維産業衰退の原因、これについて各参考人からいろいろ御意見が出たのでありますが、それを分析いたしますると、大体において海外の原因を強くあげられたようであります。具体的に言えば、後進国繊維産業に進出してきている、また、先進国と言われるものが、一時は斜陽的であったけれども巻き返しをしてきた、これがために、日本繊維産業は、いつの間にやら、ゆゆしき事態に追い込まれてきている、こういうことでありましたが、一面におきまして、日本政策が、輸出の面につきましては特にそうでありますけれども、重化学工業重点主義ということが、機会あるごとに言われてきている。これの影響というものがあるのかないのかということであります。具体的に言うと、たとえば重化学工業重点主義ということを機会あるごとに言われるがために、ついつい繊維産業等においては、勤労意欲が一時に比べてそれほど出ないとか、あるいはまた、金融機関というのは非常に敏感でありますが、重化学工業重点主義を言われれば、金融の面において、あるいは場合によって、過去においては当然出してもしかるべきであったものが十分の措置が講ぜられないとか、あるいはまた、従業員自体が繊維産業には集まりにくいというような傾向も出てきている。それがやはりこの重化学工業重点主義の一面のひずみであるというようなことがあるのかないのか。きょうは各参考人方々、いろいろな面についてお触れになりましたが、その面についてお触れにならなかったように承るものでありますが、私はまた、やむを得ない所用のために、出たり入ったりしておりましたので、あるいはお触れになっているかどうかわかりませんが、この点について、基本的な問題として、あらためて各参考人方々から、簡単でいいですから、どういうお考えを持っておられるか、これを承りたいと思うのであります。
  153. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 非常にむずかしい御質問でございまして、これは見る人によって意見が違いますが、私どもの感じから申しますと、現在の繊維産業の当面しておる、近代化がおくれている、また、おくれんとしているといううちには、金融資本が繊維産業に対する投資を前ほど積極的でなくなったと、こういう点があると思いますが、その裏面には、要するに、伸びる産業である重化学工業に力を入れて、したがって、渋滞する、あるいはむしろ若干でも後退するというような傾向のあるものに対する投資を渋る、快くしないというようなことが、その裏面にも若干あるように考えますので、そういう意味では、いま御指摘のように、重化学工業重点主義が、現在の繊維産業発展、投資に悪い影響を及ぼした、あるいはマイナスの影響を及ぼしておるという見方は成り立つように考えております。
  154. 杉村正一郎

    参考人杉村正一郎君) 私は、重化学工業重点主義ということが繊維産業の衰退を促進したかどうか、どうも自信を持ってお答えすることはできません。ただ、繊維産業の中でも化学繊維は装置産業的でございますので、化学繊維の中だって重化学工業的なものがあるんだということで、ただ単に軽工業と市工業とを分類して機械的な考え方をするのは間違いだと思っておりますけれども、特にいまお尋ねのようなことがあったかどうか、ちょっと自信を持って答えられない次第でございます。
  155. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) まあ繊維産業といいますか、機屋というものの評判はあまりよくないです。どうも機屋と言うと、労働者の募集に行きましても、あまりいい返事を聞かせていただけないようなことは事実のようでございます。それともう一つ、私はそれと別に、先ほどもちょっと午前中申し上げたんですが、機械室の繊維機械に対する熱意というふうな問題は、明らかにそんなようなふうに私は感ぜられます。なぜ機器メーカーがもっと繊維機械の改良発展について熱心でなかったのか、あるいは、まあ買うほうがよたよたしてるから、どうもあんなところにつくっても売れぬだろうというようなこともあるかもしれません。たとえば「豊田」なりそれらの工場にしてみたところで、自動車のほうは改良されてるけれども、織機のほうの改良はやっと去年ことし、少しできかかったというふうに私どもは感じております。
  156. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 重化学工業の重点主義が影響があったかということになりますと、非常に私ども業界は零細企業でございますから、どうも自信ある御返事が申し上げかねると思いますが、あるとすれば、やはり労務の問題、金融の面で多少影響は生じているのではないか、かように考えております。
  157. 久村晋

    参考人久村晋君) 私も、重化工業重点主義の影響という表現では自信ありませんが、それと裏の関係では影響あると思います。それは、繊維産業は斜陽産業ではないかというようなことが、逆な形で表現されることによって、人の問題ではいろいろ問題が出ているように思います。したがって、私どもは組合独自で、「繊維産業に明るい職場を」というような運動をせざるを得ないような状態はございます。
  158. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 私は、国全体として戦後の日本輸出市場のいろいろな諸条件を考えまして、国が重化学工業政策を進めざるを得ない、また、そのことがある程度必要だったというふうに認めている一人です。しかし、そのことの結果、実は、たとえば繊維産業全体にとってみますと、かなりここのところで長期にわたって、事業所の規模あるいは従業員の規模、それらの点は変わっておりません。全体的な国の産業資金の配分から見て、やはり石油精製業あるいは自動車産業あるいは鉄鋼業、セメント、造船、こういうような部分に投資が集中した結果、繊維産業自体の近代化投資について、化学繊維産業は別としまして、総体的にバランスを欠いたという一面は、これはいなめないのではないか。それから、特にこの点は麻産業、それから蚕糸業等になりますと、一そう実は、重化学工業化の政策が農業生産全体の崩壊という形をとって、それ自身の繭生産の崩壊、あるいは亜麻の生産の崩壊、こういう形で実はその繊維工業自体の天然繊維の形にはね返ってきたり、あるいは一面において、農産物支持価格制度、とりわけ、食管会計が国際的な農産物価格の影響を受けないという背景のもとできめられておりますけれども、同じ農産物である繭は、国際的な繊維競争による価格の影響をストレートに受けます。したがいまして、製糸企業自体については、非常に合理化努力が行なわれ、生産性は四倍以上に上がっておりますけれども企業の収益は非常に少ない。これは企業努力以外に、そのような国の農業政策と工業生産物価格の価格政策のズレ、こういうようなところから収益性の低下をもたらしている、こういう点などにいろいろ投影しているのではないかというふうに見ております。
  159. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私は、国際収支の改善から言うというと、今後あらゆる産業、特に従来の国内産業の大宗であったこの繊維産業というものには、あらゆる手を尽くしていくべきだと考えているのでありますが、そういう点では、機会あるごとに私は、政府最高首脳部にも、それぞれそういう立場から主張をしてきておりますけれども、皆さん方も大いに自信を持たれて、この際、他に対する関係よりも、みずからの立場を十分にお考えになって、真剣なる自信のもとに、再建に邁進せられるように、この機会に希望するわけであります。私はその面からあらゆる努力をするつもりでありますが、その点特に申し上げておきたいと思います。  次に、野沢参考人にお尋ねしたいと思うのでありますが、下請加工形態をとってきたことが、綿スフ業の衰退を来たしたことに相当大きな原因をなしてきているのではないかというお話がありました。私も同感の点がありますが、しからば、今後どういう形態に重点を置いていこうというふうに考えられているか。一面において紡績・織布一貫生産傾向とにらみ合わせて、どういうふうにお考えになっておられるか、具体的に承っておきたいと思うのであります。
  160. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 私は、戦前機屋が自分の能力のもとに自分の見通しでいろいろ商売をしておったときからの、戦後の結果いまになったことを申し上げたわけでございますが、一つは、下請で商売をいたすということになりますと、自分自身の問題として、はなはだ不勉強になります。機屋として、親企業からこういうものを織れ——かしこまりました——つくればそれで用は足りる。そのものがどういう需要に、どういうところに仕向けられるかも勉強できなくなってくる。したがって、進歩というものが一つの限界にとまるわけです。別の意味からしますると、下請仕事というのは、これは非常に気が楽です。工賃さえもらっていれば、月給取りみたいなものです。気が楽で、利息で暮らしているようなことで、いい面もあるわけです。他面、発展がない。私どもは、織物というのは、これは諸先生御承知のように、糸は二〇、三〇、四〇というふうな糸でございますが、織物は数千数万の種類がございます。その数千数万の種類をいかに組み合わせ、どういうものをつくったならば需要にマッチするのか、消費者に喜ばれるかということが、私どもの商売のキーポイントになるのであります。そういう自分の商売の基本に関する問題がわからなくなってしまいます。これはもう企業の経営者として一番大事なことじゃなかろうかと思っております。でございますから、そういう複雑なものを個々の創意くふうによって、自分の責任において自分の経営をつくり上げていくということが、やはり中小企業者として非常に大事なことじゃなかろうか。したがって、私は、下請仕事が全部これはいかぬことだと申し上げておるわけではございません。下請のいい面もございます、ございますが、そこには発展性もないし、成長がない。ですから、もちろん、従来の関係で親企業からある程度の下請で仕事を受けるのもけっこうでございますが、ある程度は自分の創意くふうに基づいた自分の考え方での自前の仕事というものも伸ばしていくべきじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。これは自前の仕事になりますと、資金も要ります。それから、いろいろ販路の問題であるとか、なかなかこれは勉強しなければならぬことがたくさんございまして、急に一〇〇%転換するということは、これは非常に危険でもございます。むずかしいことでございますが、そういう努力をしながら、自分の商売の販路というものを自分でつかんでいくことが非常に大事なことであるというふうに申し上げたい。
  161. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 業者自身の立場からいうと、できれば買い取り生産をやりたいというのが普通だと思うのです。それを下請加工に追い込まれてきておるというところは、自他に原因がそれぞれあるんじゃないかと思うのですが、お話の点で、買い取り生産にも向けたいという御意向はわかりますけれども、しかし、これは経済のことでありますから、採算的でないということになるというと、いかに指導してみても、その効果がないんじゃないか。その辺はどういうふうに見ておられますか。
  162. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) これは先ほどから何べんも申し上げておりまする産地の製品によっても違います。端的に申し上げますと、この辺の近くで、青梅で夜具地をつくっております。これは自分で売買行為をしております。組合がある程度共同的なそういうこともやっております。自分で東京の問屋に行って、こういう柄でどんなものだろう、来年はこういう流行でいかがでございましょうかという相談をし、組合のほうで商工中金等とも相談をして、運転資金等の見通しをつけて自分でやっている例もございます。また、大阪方面でも、商品の内容によって、そういうふうなことができやすい品物とできにくい品物とございます。ですから、これは産地がみずからその内容を分析して、その品物の流通の形であるとか、得意先のいろいろの内容等を研究をした上でやるべきことだと思います。
  163. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まだいろいろお尋ねしたい点がありますけれども、一応この程度にいたしておきまして、次に、やはり野沢さん、原糸中心政策といいますか、それよりも加工中心に今後改めていかれるべきものだと思うという希望的見解の御披露があったのでありますが、具体的に言って、どういうふうにすることを希望するかということを承っておきたいのであります。
  164. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) 私の立場から、私のほうをお忘れなくという意味で、それを中心にお考え願いたいという意味のことを申し上げたわけでございますが、別に原糸段階がどうでもいいということを申し上げたわけではございませんので、その点ひとつ御了承願いたいのですが、私どもは先ほど概要申し上げましたように、産地別にいま企業体制を今後どうすべきかということを進めております。その内容は、企業統合の場合もございますし、グループ化による過当競争の防止ということも現在進めておるわけでございますが、で、あわせて、みずからの力によって、先ほども申し上げたように、ある程度の過剰設備処理はしたい、おおむね七、八万台の過剰設備処理は必要であろうと思います。で、これは自分の力でしたいと思っております。そのかわり、そのスクラップダウンしたあとのビルドについて、特段の財政金融的な補助をお願い申し上げたいと思っているわけですが、この金額等の内容等は、実はまだ産地の具体的な構造をどういうふうに持っていくかという積み上げができていないわけです。先ほども申し上げたように、近促法によって三年ほど前に調査いたしましたときの数字が、約五百数十億ということになっておりますが、おそらく、その数字は、先ほど申し上げました最近の超自動装置のできてきた現在におきましては、これよりも相当上回るという見通しを持っております。まあ目の子で概算いたしましても、一千億近くなるのではなかろうかと思っております。その中で三分の一ぐらいは、ぜひ、いわゆる企業補助という名前でいただきたい。で、全体の二割程度は自己資金でやらざるを得ないと思いますので、残りの五割程度を長期の金融でいただきたい、構造金融というふうなものでやっていただきたい、こういうふうな希望を持っておるわけでございます。  で、あわせて、もちろん、先ほどもちょっとお願いを申し上げた転廃業者に対するやり方等は、これは当然今後も続けていただかなければいかぬと思っておりますので、それらの問題は従来どおりぜひお願い申し上げたい、かように思っております。
  165. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 野沢さんと坂井さんにお尋ねしますが、御承知のように、構造改善積み立て金、これは税制改正の際に相当抵抗があったのでありますけれども、やっとこさっとこ通したわけであります。これを大いに今後構造改善のために使用されるであろうと思いますけれども、きょう、その問題にお触れになったかどうかでありますが、あの制度で相当効果があるという見通しがついてきておられるかどうか。まだあれじゃ、こういう点が足らぬというならば、またそれについて考えなければならぬのでありますけれども、制度をつくって早々のことでありますので、また、それの成果もろくに見ないうちに、次の改善ということも容易じゃないかと思いますが、それだけに、あれをどういうふうに利用していこう一それで、今度の繊維産業再建について相当これは効果があるかどうか、そこについて承っておきたいと思います。
  166. 野沢久雄

    参考人野沢久雄君) これは最初に諸先生にお礼を申し上げなければいかぬことを忘れておりまして申しわけありませんが、実は、いまお話しの構造改善積み立て金を、私がいま申し上げました自己資金の積み立てに充てたい、二割程度はどうしても自己資金でこの構造改善の費用に充てなきゃならぬというつもりでおりますが、その金の積み立てをいまの制度でやらせていただきたいという希望を持っておるわけです。構造改善積み立て金で自己資金の積み立てをして、それをいわゆる、いま申し上げた国の補助のほかの自己資金に充当したいというふうに考えておるわけでございまして、その場合にいまの、この間きめていただいた法律の適用が受けられるかどうか、実はちょっと私ども心配しているわけでございますが、法の上で、あの構造積み立て金が、今度の場合の構造改善の金の中で使えるという形に、ぜひさせていただきたいというふうに希望を持っているわけでございます。
  167. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 私のほうも、先ほど野沢参考人から申しましたように、本制度を設定していただきまして、厚くお礼申し上げたいと思います。  御案内のとおり、長期のビジョンによりまして、産地の構造計画が樹立しておりますので、これらの、やはり施設費の一部として、この改善積み立て金の制度を利用したいと、目下勉強させております。よろしくお願いしたいと思います。
  168. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは、相当の効果があると期待せられておるというふうに考えてよろしいわけですね。  次には、久村さん、小口さんにお尋ねをしたいんでありますが、流通機構改善のことにお触れになったのでありますが、具体的にはどういうことをお考えになっておられるのか、特に流通コストを引き下げなきゃいかぬというふうに、配られた資料にも出ておるのでありますが、この点について、具体的にはどんなふうなお考えを持っておられるが、この点をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  169. 久村晋

    参考人久村晋君) まとまったものはまだありませんが、一例として聞いていただきたいと思います。たとえば産地には買い継ぎ商というような力がおられます。で、その買い継ぎ商の存在価値がはたしてあるのかどうかですね、というたとえばの問題があるんじゃないかとか、あるいはまた、ワイシャツ等考えました場合に、スーパーに出る価格と、幾つかの段階を経て出る価格と、生産段階においてもスーパー向けのものもありますが、一般向けのものにおいても、流通経費が相当違っておるというふうに私ども聞いております。したがって、そのような中間段階の整理を、本来的な流通機能を維持できるような形にしながら簡略化すべきではないか。抽象的な言い方といたしましては、次のように思います。たとえば商品規格とか、あるいは流通本来の機能が果たし得るような機構に簡素化をしてもらいたい、こういうふうに思っております。
  170. 小口賢三

    参考人小口賢三君) これはたいへんにむずかしい問題だと思っております。いま久村さんがあげたような一、二の例をとりましても、たとえば、この買い継ぎ商一つとりましても、本人にとりましては生業になっているわけです。それで、全体的に、これは日本の中小の零細の生産の形態か、あるいは中小商工業における組織化の問題とか、こういうことと並行的にやらなければ、部分的に、おまえは仕事はどうもまずいからやめたほうがよいということにはなりにくいんじゃないか、抽象的にそのように考えております。  それからもう一面、これは物価問題懇談会でもいろいろ指摘がされておりますように、卸売り価格について、まだまだかなり下がり得る余地もあるのではないか、末端へ行きますと、小売り価格はかなりその人たち自身の生活資金も含めた、ある面で労賃に入ったようなのがマージンとしてなっておる部分もありますので、これは単にこの部分だけを取り除いて、非常に流通コストが下がるというふうにはなかなかいかないと思う。ですから、総合的な、そういう中小企業の組織化あるいは中小零細企業におけるところの商品の流通経路の中間段階をだんだん省いていく、そういうことによるその人たちの生活は、協業化ということが聞かれますが、そういう措置が並行的にかなり長期にとられていくという措置として、私どもはこの問題を考えております。
  171. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 もう少し突っ込んだ質問をしたいと思いますけれども、もう時間がないもんですから、この問題はこの程度にいたします。  久村さん、小口さん、ともに家内労働法のことには、それぞれお立場上特に触れられたわけでありますが、家内労働法の具体的な構想というものを承れれば承りたいと思うのであります。特に、それに関連しまして、さっき高山委員からも綿の問題で触れられたのでありますが、似たような問題で、たとえば丹後ちりめんなどは半農半工と言っていいような状態であります。全く、かあちゃん工業、ねえちゃん工業になっておる。これがまた非常な問題を業界に提起しておることは御承知のとおりであります。これについてどういう考えを持っておられるか、これは坂井さんに承ると同時に、久村さん、小口さんに承り、それからさらに、繊維局長せっかく見えておられるのでありますから、この問題をいかに対処しようとしておるか、この点を承りたいと思うのであります。同時に繊維局長には、さっき参考人のほうから、野沢さんでありましたが、あの構造改善積み立て金制度というものが今回の役に立ち得るのかどうか、一まつの懸念を持っておるということでありましたが、われわれは、これは十分に利用せられてしかるべきだというふうに考えておるんですけれども繊維局としては一まつの懸念があるというふうに考えておられるかどうか、その点承りたいと思うのであります。  まず最初、坂井さんに業界代表として御意見を承り、あと久村小口参考人から、家内労働法一連の関係において今度の方向をどういうふうに見られ、いかに処理するかというふうにお考えになっておるか、あと繊維局長から承りたいと思います。
  172. 坂井五郎

    参考人坂井五郎君) 豊田先生から丹後の零細企業の実態についてお話がございましたが、仰せのとおりだと思います。最近非常に高級呉服ブームに乗りまして、ちりめん関係が非常に旺盛になりまして、従来一万五千台の織機が、他産地から動力織機を買いまして、約三万台の織機を所有いたしまして、生糸も日本で一番大きく年間八万俵も消費いたしております。中には半農半工でやっておる業種もかなりございますが、これは繊維業者もかなりおりまして、高級呉服のちりめんを生産いたしておるわけであります。御案内のとおり、私どものほうは、全体といたしましては、やはり過剰設備、過剰生産、過当競争ということで、中小企業団体法によりまして、現在設備制限あるいは生産調整のこの両制限をいたしておりまして、個々の企業に対しまして、それぞれ内需向けのちりめん等につきましては、ちりめんの品種によりまして、一台当たりの生産量を策定いたしまして割り当て制度をやっておりまして、実際の個々の企業におきましては、家内工業も、あるいは繊維業者も、時間の制限とか、あるいは時間の厳守とか、あるいは生産数量の制限のワク内で生産を行ないまして、あまり過剰生産にならないように、あるいは過当競争によって工場経営が苦しくならないような仕組みでやっておりまして、御案内のとおり、丹後は組織としては、非常にわれわれの業界では上位のほうであると思っておりますし、アウトサイダーも非常に少ないわけですから、現在の段階では、京都市場の自生地問屋を中心にいたしまして、各企業との生産につきましても、十分調整しつつ生産を続行いたしておる。ただ、いろいろとまだそういう家内工業的な面がございますので、労務者の労働条件、あるいは福利厚生施設、その他全体の産地の構造問題については、今後相当改善する余地はあると、かように考えております。
  173. 久村晋

    参考人久村晋君) 先ほど近藤先生から御質問がございまして申し上げたのでございますが、私どもの考えといたしましては、家内労働の存在する理由、問題はやはり農業政策なり漁業政策等との関連する分野が非常に多かろうと思います。したがいまして、先ほども申し上げたわけなんですが、その辺の問題を今後どのように解決していくかということも並行的に考えていただきたい問題であろうと思います。  それから、法の内容といたしましては、まだまとまったものは、検討いたしておる段階でございますし、設置されます家内労働審議会において十分御検討いただきたいと思いますが、大きな問題といたしましては、やはり工賃の問題が大きな問題であろうかと思います。で、契約をする場合に、上下関係、力関係が非常に大きく左右する分野でございますので、工賃決定の方法なり制度内容等について明確な線を出していただくことを柱として、ぜひ入れていただきたい。それと関連する雇用労働者との関係をどのように調整するか、そのような内容のものにぜひしていただきたいと、このように思っております。
  174. 小口賢三

    参考人小口賢三君) この問題は、先ほど近藤先生のときにお答えしたので重複すると思いますが、お答えいたしたいと思います。  これは、私たちは二つの面から問題を見ておるわけですが、一つは、産業政策の面から見まして、中小零細の、とりわけ、新しい近代化というものをとらえた場合に、家内工業が現在の状態で野放しされておりますと、中小企業自体の近代化を、俗にいうところの近代化貧乏に終わらせ、しかも、その中間の階層において、実は一定以上の投資をすることと、ある安い労働力を活用することとの間で、損益分岐点が非常に分かれておるというのが実情じゃないかと思います。そういうようなことを考えまして、やはり産業政策の部分で家内労働というものについて野放ではいけないということが一つございます。  それから、労働の部分で考えますと、やはり久村参考人が答えましたように、何と申しましても、これは最低工賃のところに実は問題があると思うのであります。それで、半農半工あるいは半漁半工というような形で、いろいろな形で労働力が出てまいりますので、その部分が、労働力のダンピングによって常にこの種労働者が発生する条件は本質的に持っておりまして、また、そういうものには、それ白井全体的な資本主義の再生産の中で吹きだまりになっているというのも実情じゃないかと思うのです。そういう点考えまして、私どもは最低工賃規制ということをまず強く考えております。それは、最低賃金法におけるところの一時間当たりの賃金の最低を最低工賃として考えていきたいという点が一つでございます。金額につきましては、先ほども例もあげましたように、一般の雇用労働者の一時間当たりの男女込みの三十人の平均は百六十円でございますけれども、現在、丹後あたりはかなり高うございますけれども、一般の婦人子供服あるいはくつ下、メリヤス製品、これらになりますと、大体家内労働になりますと、まあまあよくて、七、八十円、普通の団地におけるところの内職になりますと、三十円から四、五十円のものです。このようにダンピングが行なわれますと、中小零細になりますと、何々産業株式会社と言っても、行ってみますれば、そこの事業所にあるのは、いわゆる事務所だけであって、事務所と一部の倉庫だけであって、あとは全部家内労働、機屋は機屋、かがりはかがり、あるいは刺しゅうは刺しゅうという形で、製品すべての部分が分散して、さらに分散零細家内労働という形でやっているのが実態でございます。そういう点を考えますと、やはりどうしてもこれは最低工賃規制をやることが第一。それから、業者の登録というものをぜひともお考えいただきたい。そうでないと取り締まりの対象ができません。その登録ということを私たちは考えております。それから、契約条件についての明示、これは現在、臨時家内労働問題調査会でも、工賃手帳の普及という形でやっておりますけれども、これはたいへんに不明確なものでありまして、契約条件の明示というようなことがもう少し奨励されなければならぬじゃないか。実際に法的の面から見ましても、これは当事者の契約によっているために、工賃の不払いがあっても、持っていき場所がないというのが実態でございます。そういう点から考えまして、契約条件の明示、それから、家内労働手帳を業者は必ず備えるという点が法の中心ではないか。そのほか、労働基準法の適用を受けていない労働者でありますので、労働時間のほうも、環境衛生の問題、安全衛生の問題、特定の危害を伴う職種については、たとえばアメリカなどについては、一部の食品加工については家内労働を禁止する。たばこ製造業についても同様でございます。外国の例もあります。私ども組合といたしましては、社会党が国会に提案しております家内労働法案を支持しておりますので、御研究いただきたいと思います。
  175. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 家内労働の問題は、これは私たちの所管ではないわけでございますけれども、非常に関係があるわけでございます。現象的な問題から申しますと、調整行為が行なわれております分野に、事実上調整を乱す要素として家内労働というかっこうでニューカマーが入ってくる、この問題をどうするかという問題が一つあるわけでございます。いまの御質問は、その点が中心ではないと思うのでございまして、それは別にいたしまして、私たちといたしましては、何と申しますか、近代産業中小企業はもちろん、零細企業も、家内産業、家内生業も近代産業に当然なっていかなければならない、だんだん上げていかなければならぬ。われわれは、近代産業に育成するように、極力政府としてもお手伝いを申し上げるということで、生産の指導を申し上げましたり、それから流通の問題についてもいろいろお手助けしたりする必要もある。ということを申し上げますのは、私は、生産形態が非常に小さい家内労働であるから、頭からいかぬというふうな問題ではない。業種によっては、非常に生産形態が小さくても、これは十分価値を実現し、有力な生産力を発揮するということは可能である。ただ、あまりに生産形態が小さいために、お手助けをしなければならないという部面があると思います。その面は、われわれとして十分産業政策だと思います。その面の手助けをしていくということが一つでございますけれども、それとともに、家内労働であるから賃金が低くてよろしいという、そういうことであってはこれは絶対ならない。この点はわれわれとしては労働政策に特に強く期待を申し上げたい。当然、同一の労働であれば同一の賃金が支払われてしかるべきであるし、それが私上の、私契約といいますか、私上の取引で実現されない場合には、ときとして国家のそれに対する関与も必要であるのではなかろうか。この点は私は専門外でございますし、所管外でございますので、まずその程度でごかんべんを願いたいと思います。  それから、話はちょっと横へまいりまして、積み立て金の問題でございますけれども、これについて野沢参考人から、積み立て金は大いに今度の構造改善に活用はいたしたい。活用はしたいけれども、現実に活用になるかどうか、その辺について若干の危惧なしとしないというお話がございましたが、おそらく、こういう意味ではなかろうかと思っております。業界と通産省とがタイアップして、機屋、織布の業界について現在考えております対策は、きょうも朝からるる御披露がありましたように、産地対象で構造改善をやる。産地が構造改善計画をつくり、その計画を政府がこれはけっこうであるという場合には、産地とお約束をいたしまして——お約束というのは、設備はこれだけ近代化いたします、当然相当数の設備はスクラップ化いたします、必要があるならば流通については共販体制をおとりになります、加工についても共同加工をおやりになります、ないしはマーケッティングについてはこれこれの手をお打ちになります、ときによれば必要があるならば労働の共同施設もおつくりになりますというふうな、いわゆる近代化計画、これは総合的におつくりになるのだと思いますが、生産のみならず、労働から流通からマーケッティングから、必要があるならば公害まで含めた近代化計画をおつくりになりまして、それも政府が、これは非常に前向きであり非常にけっこうであるというふうに考えました場合には、補助金を交付する、組合に交付するというかっこうを、実はいま体制小委員会で勉強している最中でございます。そういう方向がかりにできたという場合に、政府はその産地組合に補助金を交付する、もちろん、これは一部でございますので、相当部分は融資によらなければいかぬ、ないしは相当部分は、少なくとも五分の一くらいは自己資金がなければいかぬ、その自己資金をいまの積み立て金、せっかく国会でも御援助いただいてできた積み立て金、この積み立て金で充当できるかどうかという問題でございまするが、この積み立て金は、いわゆる共同施設に使われるということが原則になっております。この政府が組合に補助金を出す、その補助金は、おそらく、われわれのいまの研究段階では、その組合が新設される織機の何分の一を補助するというかっこうで組合に補助金を差し上げるという案を考えておりまするが、その補助金を受けた組合は、組合員に対しまして今度は出資か融資のかっこうで御援助をする、そして組合員が新しい織機をお入れになる、こういうたてまえになるわけであります。その組合員のお入れになります織機は、大部分はこれはもちろん組合員が融資をしたり、融資を受けたりしておつくりになるわけでありますけれども、一部は組合からの出資というふうなかっこうになりますので、法律的にはちょっと共有のようなかっこうになるわけであります。共有ということになりますと、この積み立て金は、いわば組合の積み立て金は組合の共同資金に使うというふうなたてまえで解釈できるかもしれないということでございますけれども、しかし、もし組合員の、やはりこれは新設の織機は組合員の個人の所有の新しい織機であるということになりますると、共有施設を買うために積み立てた積み立て金が個人の織機に充当されるということはいかがであろうかという問題が実はあるわけでございます。この点は今後勉強させていただきまして、構造改善計画にこの積み立て金制度が十二分に活用できるように勉強いたしたいと思いますし、もし、それがなかなか無理な点も若干あるということでございますれば、いろいろまた関係方面にお願いもしなければならないかというふうに思う次第でございます。
  176. 柳田桃太郎

    ○理事(柳田桃太郎君) 他に御発言がなければ、参考人方々に対する質疑はこの程度にいたします。  この際、参考人方々一言お礼を申し上げたいと存じます。  本日はきわめてお忙しいところ御出席をいただきまして、長時間にわたり御意見の御開陳、に対するお答えをいただきまして、まことにありがとうございました。重ねて委員一同にかわりまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会