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1966-08-29 第52回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年八月二十九日(月曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員の異動  八月二十九日     辞任         補欠選任     大橋 和孝君      小林  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 鹿島 俊雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 亀井  光君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 小林  武君                 杉山善太郎君                 森  勝治君                 山崎  昇君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        労 働 大 臣  山手 滿男君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        労働政務次官   海部 俊樹君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政に関する件) ○社会保障制度に関する調査  (厚生行政に関する件)     —————————————   〔理事鹿島俊雄委員長席に着く〕
  2. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題といたします。  この際、山手労働大臣及び海部労働政務次官から発言を求められておりまするので、これを許します。山手労働大臣
  3. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) 先般の内閣改造で、労働省を不肖私が担当することになりました。労働問題がますます重要性を増してまいります今日、私は、労働行政に誠意と熱意を持って取り組んでいく考えでございまするので、どうか皆さま方のよろしくお引き回しを賜わりますことをお願いを申し上げます。  これまでの高度の経済成長は、経済社会の構造に急速な変化をもたらし、わが国経済は、かっての労働力過剰基調から不足基調へと大きく変化をしてまいりつつあります。その過程におきましていろいろ労働面にやっかいな問題をつくり出しております。すなわち、地域、年齢、職種等による労働力需給の不均衡や種々の摩擦現象の発生、経済社会発展の陰におきまして恵まれない労働者層の問題、さらには産業技術の進展に伴いまして、労働災害の頻発、明るい社会実現均衡のある経済発展をはかっていくためには、そうした問題を一刻にもゆるがせにするわけにはまいらないと考えております。これらの問題は、いずれも経済社会の変転と密接な関係を有するものでございまするし、労働力事情の最近の変化をよく見まして、経済社会問題との相互関連の度合いがますます高くなってまいりますから、うまく処理をしていく必要があると考えます。  今後の労働政策は、経済政策社会政策等関連政策のあり方について労働行政の立場を積極的に反映させていくとともに、労働政策としても、経済社会の動向との関連を重視しつつ推進しなければならないと存じております。同時に、労働問題は、言うまでもなく、人間としての労働者の問題であります。したがって、労働政策は、基本的には人間性尊重の理念のもとに、広く人間としての労働者福祉目的として進められなければならないのでございまして、このような観点に立って、労働者福祉向上、恵まれない労働者層に対する積極的な配慮を行なってまいりたいと存じております。労働者福祉向上をはかることは、単にそれら労働者福祉の増進となるばかりでなく、労働者が持つ潜在的な能力を引き出し、それが十分に発揮される条件をつくることとなると思うのでございます。  私は、以上のような基本的な考え方に立って、積極的な雇用対策推進と、人間能力開発向上労働災害防止職業病対策確立労働保険全面適用勤労者持ち家政策推進等重点を置きまして、積極的な労働行政推進し、明年度予算編成あたりましても、このような考えをもって進んでまいりたいと思いまするので、どうか委員各位におかれましては、積極的に御鞭撻を賜わりますことをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 鹿島俊雄

  5. 海部俊樹

    説明員海部俊樹君) 労働政務次官に任命されました海部俊樹でございます。微力でありますが、一生懸命勉強いたしますので、よろしくお願いいたします。     —————————————
  6. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) では、労働行政に関する件について調査を行ないます。  本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言願います。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働大臣に所見を承りたいと思うのであります。大臣就任早々でありますから、これから、いまごあいさつがありましたように、いろいろの面で勉強して人間尊重労働政策を立てると、こうおっしゃったわけでありますから、これはひとつ大いに期待をしてみたいと思います。  そこで、私は、いま来年度の予算編成準備段階だと思うわけであります。ですから、この予算の主目標をどこに置いて予算折衝をおやりになっているか、このことについては少し関係者からお聞かせをいただきたいと私は思うわけであります。何といっても、いま大臣あいさつにありましたように、労働力が不足しているというお話でございましたが、しかし、単純に労働力が不足しているのだ、ただそれだけを見ていただいておれば問題をあとに残すと私は思います。新規のフレッシュな若い安い労働者がだんだん取り合いで不足していって、中高年以上の労働者むしろ失業は深刻になっていると言わざるを得ませんし、技術を持った労働者が定年のもとに首を切られております。そういう点は十分にまあ今後ひとついろいろな角度から取り組んでいただきたいと私は思うのです。  ただ、ここで申し上げたいことは、先日も雇用対策法を通しました。その雇用対策法の主たる目的は、広域行政からくる労働力流動対策、それから広域職安行政という問題がありますけれども、私は、やはり根本的には、いかにして日本の全土の産業開発とあわせてそこに労働力配置されていくかということなしには、完全雇用という問題は私はなかなか至難だと思う。そこで、雇用対策法審議にあたって経済企画庁調整局長、それから総合計画局長、それから通産省企業局長というぐあいに大臣お忙しそうですから、関係者を呼んで、完全雇用への日本がなすべき問題について、質疑を通じて明らかにいたしましたことは、太平洋ベルト地帯工場を集中して、他の非常に困難な格差、それから離村という条件を含んで、大都市には住宅が不足している、そういう状態住宅建設ができないから困っているということ、やっぱりそういうぐあいに工場配置労働力配置とを関連して考えない限り、日本完全雇用の道は開けないということをここで議論いたしまして、それをやろうということになっておったわけでありますから、ひとつ企画庁通産省労働省が三者一体になって、あの雇用対策法の骨になります基本計画をお立てのもう準備をされていると思うが、いま私は準備経過を聞きません。聞きませんけれども、その三者一体となった基本計画準備されて、これに基づいて予算措置というものがいま考えられているのではないか。分散するための費用、地方自治体の援護、こういうものも、単に直接労働省予算ではなくても、そういうものの構想というものが私は構想の中に今日あるのではないか。それなしに雇用計画というものは私は成り立たぬとそう思うのでありますから、そこらあたりの詳しいことは聞きませんけれども予算構想というものをどうお持ちになっているかということが第一点、予算措置の問題。  第二点は災害対策であります。八日間以上の災害給付を受ける人が四十二万も、労働災害労災法で保護することになっているわけでありますけれども安全衛生の面からそれだけ膨大な災害があって、順次皆さん努力で減りつつありますけれども、しかし、私は、もっと急速に力を入れて減らさなければならぬのではないか。これも私は来年度の予算の大きなウエートの一つにかかってくるのではないか、こう思っておるわけでございます。  三番目は最低賃金の問題であります。これは最低賃金の問題であります。この最低賃金の問題は、審議会労働省の見解をむしろ求めているというようなかっこうになっているわけでありますけれども経済の面からいっても、これは所得購買力が低くて、生産と消費アンバランスで、そうして不況状態が続いている。労働問題というのは経済政策の問題だと私たち考えているわけでありますから、そういう面からいって、社会保障の中の所得保障とあわせて、最低生活保障、むろん児童手当も入りますけれども、そういうものが上がってこない限り、いまのようなアンバランス経済不況というものは私は解消する手だてがないのだと思うのです。その意味でも最低賃金というのは、単に業者間が賃金をつくってきたから、はい、よろしい、それじゃ証書に書いてあげましょうというような最低賃金の施行の状態ではどうにもならないというのが今日の状態だと私は思う。だから最低賃金審議会で、ここで大いに勉強していただきますけれども大臣はこれに対する考えがあるでありましょうし、いますぐ直ちに明らかにできないというならできないでよろしゅうございますけれども、それに基づいて予算措置をどうしていくかという問題がある、これも来年度の予算方向になっていく。  もう一つ、四点目は、これだけ産業と工業というものが国内だけで処理できないようになってきているのだから、いまはむしろ経済発展のためにも、IOLというものが非常に大きな活動をしていると私は思う。ドライヤーが日本に来ましたことも日本に大きな課題を役げかけたのでありましょうし、だから、そういう意味労働保護、すなわち、文化経済向上において、人類が守られている、国民が守られている、それで経済が繁栄していくという道を非常に大胆にILOというものがとっている。ILOを含めて、外国の労働事情というものはいかなるところにあるのかどうかということも、私たちは立法府でありますから、十分に知らなければならない。そういう賃金労働条件処置は、その設置法ができて行政府で努力しているわけでありますけれども、あわせて、何らかの形で私はこれは委員会としての要望でありますけれども、この点は、ILOの総会や専門委員会があれば、少なくとも衆参両院関係者が出て、そうしてその事実をよく知る機会をつくったらどうだと私は常日ごろ思っているわけであります。それから、そればかりでなしに、直接のILO会議に出席する人は、それは代表だから一人でも二人でもいいという話でありますけれども、そういうものじゃないと私は思うのです。国際的な経済の中における労働問題と取り組む代表というものは、もっと予算をとって、労働者代表消費者代表もけっこうでありますから、予算をとって、おまえたちは金をつくって行きなさいというかっこうじゃなしに、そういう問題については大胆に取り組まれたほうがいいのではないかと、私はそう思う。これも予算処置をいただくと思うわけでございます。たとえば失業保険積み立て金向上してまいります。そこで、失業保険、それから失業対策というものはうらはらだと私は思う。この失業保険特別会計が千五百億も六百億も積み立て金を持っているというようなことでいいのかどうか。一面、建設省がやる労働者住宅をその金を出して建っている。いま金があるから、いま住宅が不足しているから、やることを私はあえてここで反対はいたしませんけれどもそこらあたり失業保険失業保障という問題と、先ほど第一点に申し上げました雇用対策との関係というものが非常に私は重要な相関関係を持っていると思うのです。ですから、私は、失業保険、それから失業対策、それからもう一つ突っ込んで言えば、一体いまの失対労務者の失対事業対策もあのままでいいと私は思いません。だから、これについても、実際に困っている人々が国の失業対策の中で救済するというようなことの関連の問題、それから、出かせぎの皆さん方の、やはり正規のルートによる職安を経て、そして正規な労働者失業保険との関係というものの割り振り方が十分でないのではないか。私は、そこらあたりの問題について、たとえば失業保険の、日雇健保とか、日雇失業保険というようなものは、むしろ国家が保障してあげるべきものではないかと私は思うのです。だから、そこらのものをただ保険会計だけを頭に入れて、問題の取り組み方を、あなたのさっきのごあいさつにあったように、いま労働者は不足しているのだというような端的なお話だけでは解決しない問題がたくさん私はそれに内蔵をしている。ここらも私は来年度の予算関係になってくるのではないか。ですから、主要な問題点を三つ四つあげましたけれども、締めて、ここらの予算の交渉はいまどういうぐあいになっているのだ、政府は一定の方針をもって予算要求をされているわけでありますから、そこらの点をひとつできるだけ、まあ大蔵省との関係があるから、何もかもこまかいことは言えないにいたしましても、大臣と、それから労働省がいま予算折衝を進められているその方向基本になるものについて、それから、行政施策基本になって予算要求になるわけでありますから、そこら関係を少し私はきょうはよい機会でありますから、御報告をいただければ、大臣はいまなりたてでございますから、特に大臣にということは言いませんから、担当者のほうから御返答いただいても、それが多くなってもけっこうでございますから、ぜひわれわれに知らしてください。
  8. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) 藤田さんのただいまのお話のとおり、いままでのように、労働政策を単に労働政策として見るわけにはいかないような情勢になってきておりまして、経済問題と一体にして、双方が密接不可分関係にあるのだという考え方で見ていかなければならない時期だと考えております。労働省役割りは、いまお話がありましたように、いろいろ重要な役割りを持っておりますが、何と申しましても、第一に考えなければなりませんのは、積極的に完全雇用実現をするということが私たちの一番重要視しなければならない施策であろうと思います。いろいろお話がございましたように、問題は複雑でございまするが、これについて全力をあげたいと思います。  それから、また、最低賃金お話がございましたが、労働省としては、完全雇用実現をする方向に向かって前進をいたしますと同時に、雇用された者に、最低賃金を含めて、条件改善をしていくことに勇敢に進んでいきたいと考えております。御承知のように、審議会答申を求めておりまして、それが最終段階になっておるかと考えておりますが、労働省といたしましては、いろいろ予算措置等についても、事務的なものは見て万全を期したいと考えております。  それから、最近労働災害が非常に伸びておりましたのが、少しその伸びが鈍化しております。しかし、最近はその鈍化の傾向もややゆるやかなカーブになってきて、軽視するわけにはいかないような状態になってまいっております。しかし、非常な業界の努力によりまして、いい方向にいっていることは間違いないと思いますけれども、重大な災害は二割方以上も件数がふえておるかと思っております。労働災害はきわめて深刻な問題でございますので、それに対する対処も十二分にやってまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、ILO問題等、いろいろお話がありましたが、御意見をよく拝聴いたしまして、今後私としては前向きでいろいろ対処、取っ組んでまいりたいと考えております。  予算の面、そのほかの事務的なこと等につきましては局長から御説明申し上げますが、もう一つ保険の話がございましたが、この間から鋭意労働省で研究もいたし、検討をいたしまして、五人未満事業所等についても全面適用をしようというようなことて結論を出そうといたしております。与党とも相談をし、さらにその了承を得られれば大蔵省とも最終的な詰めに入っていくというような措置をとりたいと思いますが、この委員会各位の積極的な御協力を賜わりたいと考えております。
  9. 有馬元治

    説明員有馬元治君) 大臣の御説明に若干補足させていただきます。  第一点の雇用計画の問題は、先生指摘のような経過雇用対策法が前々国会で成立を見ましたので、私どもとしましては、この対策法に基づく最初の雇用計画でございますので、現在企画庁をはじめ、関係者との間に緊密な連絡をとりながら策定を進めております。この策定の時期は本年の十二月、これは新しい長期経済計画策定の時期と合わせて考えてまいりたい。計画期間も、経済計画と同様に、五年の期間を一応前提と考えております。で、経済計画との調和をはかるということが対策法においても指摘されておりますので、その精神でいま作業を進めておりますが、やはり経済計画にすべて埋没してしまうという形ではぐあいが悪い点もありますので、私どもとしましては雇用計画独自性も担保しながら経済計画との調和をはかってまいりたい、こういう考え方作業を進めております。  失業保険積み立て金活用の問題で御指摘がございましたが、これも昨年、今年度に引き続きまして、できるだけ還元融資という形で労働者福祉のために活用をしてまいりたいと思っております。さらに保険の問題につきましても、御指摘のございましたような五人未満の問題については、いま大臣から御答弁がありました基本線作業を進めております。また、当委員会で御指摘がございました低所得層に対する給付改善についても並行的に検討を進めてまいっております。  また、先生指摘の出かせぎ問題につきましても、これは多年の懸案でございまして、いわゆる失業保険打ち切り等の問題は、これは出かせぎ者の生活保障という面から、失業保険制度本来の趣旨からいいますといろいろ議論はございますけれども、これを打ち切るわけにはいかないというふうな考え方のもとに出かせぎ問題を積極的に解決してまいりたい、かように考えて、現在予算作業を進めておる次第でございます。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと私はいまのお話の点で、局長お話なら、もう少し突込んだお話があってよかったんじゃないかと思う。いまの健保日雇健康保険関係、それから失業保険日雇失業保険関係というものは、五人未満を適用するという問題とは少し事柄が違うと私は思う。だから、その事柄の違う問題は、私が先ほど申し上げたように、むしろ少しの掛け金をかけたり何かしなくても、独立採算制だから、経済バランスということだけを考えないで、むしろ国日雇い労働者や不安定な雇用関係にある方々失業保障健保の問題は、五人未満はむろんいままでの約束でございますけれども、しかし、そういう方々に対する援護処置を、私たちは別に保険料をとらなくても、むしろ失業保障だとか、施療患者医療給付みたいに近いようなかっこうにしてあげていいんじゃないか。そのかわり、いまの日雇健保建設省も全部を含んでいるというものを、みそもくそも一緒にせよということを言っていない。非常に零細な困っている方々援護処置というものは、この際、最低賃金とあわせて、そこらにメスを入れて考えるべきではないかということを先ほど申し上げた。それは五人未満のことをやってもらうことはいままでの約束でありますから踏み切っていただいたので、それはまことにありがとうございましたけれども、それとあわせて五人未満を適用したからといって解決する問題じゃない。そこらの点は深くことしあたりは入って次の国会でも議論になりましょうし、予算措置が要るわけですから、だから、そういう点はどういうぐあいになっているかということを聞いているわけです。
  11. 有馬元治

    説明員有馬元治君) 日雇保険の問題は、前国会においても先生から御指摘かありました点でございますので、私ども、今回五人未満と低所得層給付改善二つの大きな柱を立てて失業保険制度の改正を検討しているわけでございますが、この二つの問題を解決する場合には、必ず現行の日雇失業保険制度にも直接間接いろいろな関連がございますので、私ども日雇失保の問題についても、この際できるだけ前向きで解決をしてまいりたいというふうに考えております。
  12. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 先生から御指摘のございました労働災害防止は、従来より増して、行政重点として予算面にもできるだけの努力をいたしたいと存じておりますが、その基本的な考え方といたしましては、従来の物的施設整備充実といったようなアプローチのほか、さらに人間科学的な手法を採用いたしまして、もっと総合的な積極的な労働災害防止対策を展開したいということでございます。その内容としておもな点を申し上げますならば、まず第一に、産業災害防止五カ年計画という問題がございまして、昭和四十二年度がその改定期に当たっておりますので、全体の進め方のいわゆるめどを確立するために、新しい産業災害防止五カ年計画策定すべく準備を進めたい、しこうして、そういった全体的展望の中におきまして科学的な労働災害防止対策を進めたいということでありますが、しかし、何ぶんにも、災害対策は具体的な拠点を持ちませんと対策が展開いたしません。そこで、総理府の産業災害防止対策審議会からございました答申にのっとりまして、たとえば安全衛生センターといったようなブロックにおきます安全衛生推進拠点といったようなものも新しく取り上げて考えたい。また、従来ございました各種災害防止団体拡充強化につとめたいというような構想を持っております。特に最近の災害傾向から見まして、新しい物質等を使用することによって生じます有害環境、並びに、それによって生じます有害ガス中毒といったような問題につきましては、いわゆる職業病対策確立という観点から、とりわけこれを大きく取り上げまして、その具体化を進めたいと考えております。過般来へ当委員会におきましてもいろいろ御検討でございました諸問題をも含めまして、今後施策を進めていきたいと考えております。  また、中小企業の安全問題は最も困難を感ずるところでありますが、来年度におきましては安全融資改善中小企業に対する特別指導巡回健康診断といったようなきめのこまかい手法をまじえまして、中小企業に対する災害防止の徹底をはかりたいと考えております。しかしながら、全体として行政体制を見ましたときに、全産業災害防止に当たる行政体制として、いまのままで適当かどうかという点につきましては、今後における総合的計画的な災害防止推進と相関連いたしまして、基本的検討に迫られておる段階でございます。今日この席で申し上げるまでに明確になっておりませんけれども災害防止行政基本体制につきましても、真剣な検討を加えたいと存じておる次第でございます。  次に、最低賃金の問題につきましては、基本方針大臣からお答えがあったとおりでございまして、私どもも、この問題がいわば最終ラウンドに近づきつつあるという認識のもとに、審議会におきまして具体的な結論を得ましたならば、これにのっとりまして最低賃金制の実効性ある展開につとめてまいりたいと思っておりますが、予算といたしましては、行政事務費としてはそう多額なものではございません。大臣が申し上げましたように、必要なものは確保するという姿勢で臨みたいと考えております。  労働保険全面適用関連する問題は労災保険にもございますけれども、これは先生御承知のように、昨年労災保険法を改正いたしました際に、基本的な姿勢はすでに法律上も示されておるところでございまして、既定路線の上に今後その具体化をはかりたいと考えております。なお、労災関係におきましては、労災に対するリハビリテーションの問題が従来特に重視されておりますが、来年度以降におきましては、総合的なかなりの規模のリハビリテーション・センターといったものも考えたいと存じておる次第でございます。  その他、家内労働問題など、いわゆる恵まれない労働者に対する問題がございますが、この問題につきましても、それぞれ政策的な目標を掲げまして予算獲得に努力したいと考えておる次第でございます。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ微に入り細に入り、皆さん方針を伺ってやると時間が非常にかかるわけでございます。ただ、主要な点だけを質問したのでありまするが、これは来年度予算予算措置に対する構想というものがいまお話になったわけですが、五人未満は来年度から実施するという労働大臣の御方針は、来年度から実施するということですか、どうなんですか。
  14. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) 先ほど詳細よく申し上げませんでしたが、四十三年度から実施するわけでございますが、次の通常国会に法案等の用意をいたすわけでございまして、そういう観点から申し上げたわけでございます。
  15. 森勝治

    ○森勝治君 私もその点質問をしてみたいと思ったのですが、藤田委員の質問は、来年度に関する新大臣構想、所見ということで質問でございました。ところが、大臣は、いまはしなくもおっしゃったように四十二年度に五人未満工場事業場にも適用したい。四十二年ということばはそのときは使わなかったが、質問の設定期限というものは、四十二年度の予算編成に対する心がまえということでした。それを受けて立った大臣の答弁は、明らかにこれは四十二年度の予算構想の範囲内に含まれておる、私はそう思う。ところが、どうも他の局長の御答弁を聞いていると、たとえば基準局長は、兼本線はきまっているんだから基本の線に沿ってやる。これはもう前の大臣のときの答弁と何ら違わない。そうするとわれわれは疑問があるから、重ねて藤田委員が四十二年度ですねという質問をしたところが、今度は気がついて四十三年度でございということならば、一体大臣はどういうつもりで御答弁をされているのか。私どもが質問しているところ、聞きたいところは、新大臣として、四十二年度の予算に向かってどういう中身を持つ、たとえば五人未満工場事業場の適用についても四十二年度に実施する、こういう答弁というようにわれわれはこのやりとりから受け取ったが、いま四十三年度ということであるならば、それはまあ前の大臣も答えていることですから、実は私は感心して聞いておった。小平大臣は四十三年度と、これは私の質問に答えたんです、前大臣は。ところが、今度の新しい大臣は労働界のベテランだから、なるほど実施することも早いわと楽しみにしておったら、あなたは四十三年であるということならば、大臣の答弁というのは一体どういうことなのか。就任早々にこんな質問は恐縮だが、どうも初めから信用ができないような気がしておる。したがって、この上は、ひとつ明らかに御答弁をいただきたい。とにかく四十二年と言ってしまって修正しないでよろしいから、四十二年度に完全設定ということで大蔵大臣と折衝してもらいたい。
  16. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) 先ほど藤田先生から予算の話に関連をしてお話がありましたので、多少誤解があったかと思いますが、完全に実施をいたしますのは四十三年度でございます。ただ、しかし、徴収の問題とか、まあ法律を通過さしていただきますのがおそらく来年の通常国会になるわけでございますが、それに引き続きまして徴収をどうするかとか、いろいろな事務的な準備、いろいろな整備をいたす必要があろうかと考えます。そういう広い意味におきましては、法律を通してこの準備をして、それから実際に労働者諸君との関係で実施をするのは四十三年度、こういうような段階が必要であろうかと考えます。多少ことばが足りませんでしたけれども、御了承を願いたいと思います。
  17. 森勝治

    ○森勝治君 重ねて恐縮でありますが、大臣御承知だと思うのです、本件については。いいですか、四十三年というのは一番後退した話ですよ。その前の、数回前の議会の当該委員会においては、いずれももう四十一年度に実施するという答弁をしておったわけですから、それが先般四十三年というように後退したので、なぜ後退をしたかという私が質問をしたわけです。ところが、新大臣になって、いまおっしゃったように、四十二年度に実施すると言うから、前の議会で関係者がお答えになったと同様に、大臣就任早々お話ですと前向きということですから、四十二年というのが四十二年というのでは実は後退ですよ。いままでの各種の答弁を聞いていると、四十三年にしちゃ一番後退した姿だから、前向きということだから、一番最初にお約束したところの四十二年度に戻ります、これが大臣の前向きの御説明であろうというように私は理解しておったわけですが、くどいようですが、ひとつその辺は前のいきさつがありますから、唐突に四十三年度とおっしゃるのですから、四十三年というのは、四十一年、四十二年に実施をしたいというのがだんだん延び延びになってしまって後退した姿が四十三年だから、四十三年に実施するなら、失礼ですが、あなたがやらなくても前の大臣約束があるからできる。前向きで実施するということは、一番最初に政府が約束したこの一年を繰り上げて四十二年からやる。四十三年は一番あとの話ですから、もっと前向きで一年繰り上げて、やはり少なくとも、あなたが藤田委員の四十二年度の予算構想の質問については四十二年度でおやりだということなんだから、四十二年度ということで努力していただきたい。初めから質問は四十二年度という質問をしておって、たたみかけられたら四十三年というのでは、ちょっとわれわれはこの暑いさなかに、うたた寒心の情を催しますから、もっと夏らしく積極的な御意見をいただきたい。四十三年というのはどうも先ほどの御答弁いただいても、私どもはあなたの四十二年に実施する、こういう答弁とわれわれは承っているわけですから、その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  18. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) 私もできるだけ早く実施をしたいという感じでございますが、事務当局の諸君からいろいろ聞いてみますと、法律も来年の通常国会、この年度末に召集される通常国会、それが相当長期にわたって時間がかかるわけでございます。それが成立をいたしましてから、さらに第一線でいろいろ準備をさせなければいけません。徴収機構等につきましても、労働問題だからといって、いろいろ不経済なような徴収機構にするのも許されないかと思いまするし、いろいろ整備をいたしまして万全を期したいということになりますと、なかなか事務の処理等の関係もありまして、来年度法律を通しまして、準備をして、四十三年度から完全に実施をするというような方向にいかざるを得ないかと私も考えております。先ほどことばが足りませんでしたが、私はいまそういうふうに考えておりますので、いろんなこまかいそういう事情については、必要があれば事務当局から御説明を申し上げさしたいと思います。
  19. 山崎昇

    ○山崎昇君 せっかくの機会ですから、二つほど新大臣に符に私は要望を含めてお聞きをしたいと思うのですが、一つ労働災害の問題です。先ほど大臣から、労働問題というのは、これは人間の問題だというお話がございました。そこで、労働災害というのは一番まあひどい災害になれば命を失ってしまう、これは何といっても人間にとりましてはもう最大の不幸だと思います。それから、多少けが程度に終わっても、これは国家からいっても優秀な労働者が傷つくことでありますから、これも国家の損失でありますし、企業からいってもたいへんな損失になる。労働者からいえば、これはもう自分の生活に関する問題でありますから根本的な問題であります。そこで、この労働災害の問題はたいへん労働省でも心配いただいておるのですが、どう皆さん方出される資料を見ても、先ほど鈍化の傾向にあると言いつつも、かなり数字的にはふえておる、こういう状態にあるわけです。そこで、来年度予算等については、先ほど局長から新しい労働災害阻止の五カ年計画のようなものを立ててみたいというお話でありますけれども、ぜひともこの労働災害については根絶するような方策というものを私は労働省考えてもらいたい。そうでなければ、これは幾ら労働災害労働災害と叫んでも実効かあがらぬじゃないかと思いますので、この点だけは強く私は要望しておきたい、こう思うのです。  それから、二つ目には完全雇用の問題でありますが、これも歴代内閣が必ず言うことばがこの完全雇用なんです。ところが、完全雇用というのは、私の理解でいえば、一人も失業者がない状態をつくることになるのだと思います。ところが、これもいま数字を私は明らかでありませんか、たとえば完全失業四十万とか五十万とか、あるいは潜在失業も入れればかなりな数字になっておる。なぜ歴代内閣は完全雇用をうたいながらこの完全雇用か達成できないのか。もちろんこれは経済計画との関連もあると思うのですが、いずれにしても、いま労働大臣はこの完全雇用実現を筋一番目に述べられたわけですから、私はこれは必ずあなたの手元で実現されるような方針策定されるのではないかと期待いたしますが、どうぞひとつこれも私は十分に考えてもらいたいと思います。この完全雇用実現をすれば、当然関連して失業保険の問題が出てくると思います。極端な表現で恐縮ですか、完全雇用実現すれば失業保険なんぞ要らないと思うのですね。失業保険なんぞというのは要らなくなってくる。これは極端な表現ですよ。しかし、世の中は現実的に動くわけですから、そうもいかないと思うのですが、いずれにしても、この完全雇用失業保険その他の労働者救済の規定というものはうらはらの関係にあると思います。こういう点は、やはり今後労働省で立案される際にひとつ十分検討されて、この完全雇用についても、何年たったら実現できるのか、今日まで保守党の内閣ができてもう二十年たつわけですが、一向に完全雇用というのができ上がらない。したがって、私は、何年ならば何方で、何年ならば一体完全雇用実現できるか、こういうほんとうに実現できる年次計画的なものをぜひこの経済計画の際に立ててもらって、われわれ労働者、あるいは国民に向かってこれは明確にひとつ示してもらいたい、この点を強く意見と要望を兼ねておりますけれども、できれば再度大臣からひとつ強い意思表明をお願いをしておきたい、こう思います。
  20. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) ただいまお話の第一点でございますが、労働災害については全く同感でございまして、全力をあげて労働災害が根絶をいたしまするように対処してまいりたいと思います。特に先ほど局長から御説明をいたしましたように、計画改定期でもございまするので、労働者諸君が安心して就労できまするように、さらに万全の手配をいたしてまいりたい、御期待に沿いたい、こう考えております。  それから、完全雇用の問題でございまするが、いろいろ廃業の実態から割り出しまして、全然失業者かゼロになるというようなことはなかなかむずかしかろうと思います。私は労働省に参りまして、日本の失業状態はどうなのか、雇用状態はどうなのかということを事務当局にもいろいろ聞いてみましたが、必ずしも十分ではございませんが、欧米諸国に比べまして特に日本が非常に悪いという状態ではないようにも感じました。いずれにいたしましても、完全雇用を達成をいたしますことが労働省の最大の目標でございまするので、御趣旨のように全力を注いで対処をしてまいりたいと思います。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと。ほかにもう一つ質問があるのですけれども、外国に比べて日本の失業というものがほとんど悪くないという、そういう表現をされて——私はきょうは触れませんけれども、その第一線のいまの労働力調査に出てくる四十万とかのが完全雇用だというような認識で日本の失業問題を見ていってもらったらこれはたいへんですね。それから、いまの殺到率等を見てもらってもわかりますように、これはひとつ局長大臣に十分に理解しておいてもらわぬと、これは大議論が生まれてくると思うのです。これ以上に触れませんが、少しそこのところはよく実態を見ていただきたいということをお願いしておきます、きょうは。  そこで、だからそういうように潜在失業という表現であらわれておりますけれども、しかし、日本の今日の不況下における各地域格差による殺到率なんというのはたいへんなことですよ。たいへんな状態が続いているわけです。こんなことは外国にないですよ、摩擦失業ですから、だから、そこらはひとつ理解をもう少ししていただくようにお願いをしておきたいと思います。また議論はこの次ということにいたしておきます。  そこで、私は、もう少し予算関係の数字をあげて知りたいのでありますけれども、なかなか折衝の段階でむずかしいようですから、これ以上私はきょうは言いませんが、ただ一つだけ質問しておきたいのは、この炭鉱離職者住宅の問題なんです。これは大臣十分御存じないと思いますから、事務当局からでも詳しいことは説明していただきたいと思いますが、本来の姿でないけれども、緊急措置として失業保険積み立て金住宅を建てて、炭鉱離職者緊急住宅にする、初めは一年という期限で他の住宅に移っていただく、公営住宅とか社宅とか、就職がきまれば移っていただくということになっておった。ところが、最近聞くと二年とか二年半ということになっている。しかし、現実の問題は、一ぺん入ればなかなかそこを出てどこかに住宅を求めるなんということは非常に困難です。だから、ことしも一万戸も建て、来年も一万戸をお建てになるのだと私は思うのですけれどもそこらあたりの炭鉱離職者住宅に、各地にある住宅に入った人が、たとえば他に住宅がなくて出られぬ場合どうするか、これが一つ。それからそういう場合にはどういう住宅計画でその人を移していくか。それから、いま炭鉱離職者住宅に入っている方々は非常に不安定な状態にあると思うのです。半年刻みに延ばしてもらっている。だけれども家がないというようなことであれば、これまたたいへん。それじゃ永住がここでできるかというと、中にいる人は実際永住をしたいという人が、家族の少ない人は永住がしたいという人も、私はこの問ちょっと回りましたが、相当あると思うのです。こういうものをそれじゃどういうぐあいにこさえてあげるか。  それから、もう一つの問題は、離職者住宅で百戸も、またもっと大きく離職者住宅ができても、たとえば近所の住宅間同士のおつき合いといいますか、子供がたくさんある、その寄り合いの場所をつくって融和をはかるとか、そういう処置が全然ないので、原っぱに建てっぱなしという、それは最初の話では一年ということであったのだからそういうことになったのでありましょうけれどもそこらのものをあまり費用も要らないのであるから、少なくとも五十戸、百戸と集まって建てるところにはりっぱなものは要らぬから、私はやっぱり集会所やクラブみたいなものをそのまん中のどっかのところへ建ててやるとか、それで生活に潤いを持たしてあげる。まあ大きくいえば文化センターのようなものです。小さくいえば、要するにちょっと子供の遊び場といいますか、何か寄り合い、相談ごとがあるときそこに寄ってできるようなところを、あまり費用も要らぬの、だから、建ててあげる。何かそうしてあげないと、周囲の住宅との関連が、私は何かまたそういうところで差別的なものが起きてくるということになるとたいへんだと思う。だから、いま労働省が炭鉱離職者住宅の今後の処置をどうしていこうとしておいでになっているか、現状がどうかということをちょっと詳しく説明をしていただきたい。
  22. 有馬元治

    説明員有馬元治君) 御指摘の移転就職者用の宿舎でございますが、これは御承知のように、三十五年からぼつぼつ始まりまして、本格的に建設を始めたのが三十七年、八年ごろからでございます。で、最初は石炭離職者用を主たる目的にいたしておりましたが、最近は一般の離職者で広域にわたって移転就職をする場合に住宅を提供するということに目的を広げておりますが、七月現在で建設が完了しておるものが現在二万二千九百十戸ございます。現在建設中のものが九千三百四十六戸それから、現在計画中のもので、近く着工するものが六千百五十戸ございます。この二万二千戸に対して、同じく七月現在で入居しておる世帯は一万七千六百九十六世帯、入居率が七七%でございます。うち、炭鉱離職者は一万一千五百十九世帯入居しておりますので、炭鉱離職者の占める割合は六五%となっております。まあ言いわけになって恐縮でございますが、この入居率が若干低いように私どもも見ておりますので、現地を督励して、入居の基準を若干緩和しながら入居率を高めていきたいと思っておりますが、そもそも移転宿舎でございますので、大体一割見当は絶えず空室があるというふうなことは当然予定されておるわけでございますが、それにしても入居率が若干低い。できて三ヵ月以内というものは、移転就職者の宿舎でございますので、一般のアパートと違いまして、すぐ転居するという状態にないわけでございますので特に入りが悪い。このできて三カ月以内のものを除きますと入居率は八三%というふうに少し上がってまいります。それにいたしましても、九割目標の入居率からしますと若干下回っておりますので、入居についてはさらに基準を緩和しながら、現地の実情に合ったように進めてまいりたい。しかし、あくまで移転就職者用の宿舎でございますので、地元の住宅困窮者をこれに入れるというわけにはいかぬので、あくまで移転就職者用という目的は貫きたいと思います。ただ、御指摘のように、この宿舎の性格から永住ができないという問題がございますが、これは住宅でございますので、当委員会においても繰り返し申し上げておりますように、強制的に立ちのきを迫るとか、あるいは追い立てるというようなことは一切しない。したがいまして、完成当時から入っておる方々も相当ございます。この方々はもうすでに五年程度になる方もおるわけでございますが、これらの方々について追い出しをするということは一切考えておりません。ただ、二年間を経過いたしますと、この宿舎が政策的な見地から非常に低質でやっておりますので、一般の三種の公営住宅と同じような基準で若干賃貸料を上げております。大体移転就職者用の宿舎としては三千五、六百円くらいが相場でございますが、二年以上居住する場合には三種並みの家賃といたしまして、四千円見当の家賃に相なるようになっております。そういうことでだんだん永住的な機能が果たされつつございますが、私どもとしましては、この宿舎の性格上、無理はいたしませんけれども、社宅にお引き取り願う、あるいは建設省がやっておりまする公団アパート、あるいは地方団体の公営宿舎等にワクを設定いたしまして、そのワクの範囲内においてそちらへ転居していただく。これも無理やりに転居するというやり方ではなくて、できるだけ御希望に応じて転居していただく、こういうやり方で指導をしております。  それから、第三点の付帯施設の問題でございますが、最初短期間の移転宿舎だということで発足いたしましたので、家を建てることが精一ぱいでございましたけれども、永住的な傾向も見えますし、また、短期間であっても、子供連れの場合には子供さんに対するいろいろな施設も必要でございますので、御指摘のような付帯施設についてはできるだけ今後補充をしていきまして、既設のアパートにつきましても、これから新設するアパートにつきましても、これらの付帯施設を充実してまいりたい、こういうふうに考えております。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 よくわかりました。そこで、いまの構想でいくと大体四万戸ほどになるわけですね。これからの計画でいくと四万戸ほどになる。で、まあその趣旨が趣旨ですから、それは新しい人は他の産業の転用住宅にも適用していくということもわかりました。そこで、他段が上がるというのは、公営住宅の三極の基準で大体四千円くらいしているということですね。そこで、まあ一番入っている人の不安というのは、地方自治体なんかにつとめている人がたくさん入っているのですね。ところが、なかなか住宅がないから入れない。これはこういう言い方がいいのか悪いのか知なぬけれども建設省関係で非帯に環境の悪い困難な条件のもとに転用住宅に来られたのだから、一般の住宅とは違った幾らか配慮をしてそこへ移転をするようなことができないのか、これがまあ一つ。  それから、住宅はこう建ってきて、そんなにあいておるなら、建てた分のその何割かは永住の住宅、万やむを得ぬ場合には、労働力がなくて他にいい就職がないとか、そういう条件のもとにあるような人には、特別にその全体の、まあ少ない数字でしょうが、何割か、万やむを得ぬ人はそこで一生細々と収入があって暮らす人はみてやるとか、将来のことになるでしょうが、何かそういう基準を配慮していいのじゃないかという気が私はしました。私はこれをやれということまでは、この目的ですから自信がないのですが、どうもそういうことを配慮してやったほうがいいんじゃないか。もう少しやっぱしりっぱな植木を植えいとか、私は何も言いませんけれども、せめて近所に植木ぐらいは植えてあげて、それでクラブのようなものをやっぱし建ててあげるということが必要じゃないか、私はそう思うのです。いまの公営住宅でも、御存じのとおり、建物のまん中に緑地帯をつくったり、それから生活必需の買いものとか、そういうもののセンターをつくったり子供の遊び場をつくったり、何かやっぱし人間が生活していくんですから、そういう思いやりが私あってしかるべきだと思うんですよ。そこがどうも予算がなかったからというお話でしたから、それ以上言いませんけれども、何かそこらあたりのところは、もう少し入っている人の人間的なあたたかいめんどうをみてやるということを、私はもうちょっと血を通わしていいんじゃないかという気がします。そうでなければ、ただそれは炭鉱で離職された人をこっちへ持ってきて住宅を建ててやったのだから、それはめんどうをみていると。その面だけ見ればそれはそうです。しかし、もう少し何というのですかね、あたたかくしてあげるというか、せっかく生産についてもらうわけですから、転用住宅を通じて社会に貢献してもらうわけですから、何かりっぱなものを私はせいとは言いませんけれども、それくらいのところは少し来年度は予算をとって、そうしてあげる、住宅ごとにあたたかい施策をするということを私はしてもらいたいという気がする。これはひとつ特にお願いをしておきます。そうしてやはり労働行政、これは雇用促進事業団の管轄ですけれども労働省と雇用促進事業団、そうして現地の住宅に入っている方々、むろん職安を通じていろいろの行事はつながっているとは思いますけれども、これはもう少しあたたかく、せっかくあれだけの転用住宅を建てられたのだから、これはひとつやってもらいたい、こう思います。
  24. 山手滿男

    国務大臣山手滿男君) ただいまのお話に対しまして局長から答弁をいたしましたが、私も藤田委員と同じように、まあ、ああいう離職をしまして移転をするというような境遇に立った人の心境は非常にすさんでもおりまするし、たいへん気の毒な事態にもあるわけでございまするから、いまお話がございましたように、環境をよくするためにその周辺に木を植えるとか、あるいは子供の遊び場といいますか、砂場のようなものを整備するとか、そういうようなことは、たいへん私もお話のとおり必要であろうと考えます。いま聞きましたら、労働省のほうで予算をとりまして、そうして事業団のほうにそれをやらすというようなことはどうだというようなことを考えられているようでございます。ぜひ御趣旨の線に沿うて整備してまいりたいと、こう考えます。
  25. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) それでは、午前の調査はこの程度といたし、午後は一時に再開し、厚生省関係調査を行ないます。  これにて休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会   〔理事鹿島俊雄委員長席に着く〕
  26. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) ただいまより社会労働委員会を打開いたします。  まず、委員の異動について報告いたします。本日、大橋和孝君が委員を辞任せられ、その補欠として小林武君が選任されました。     —————————————
  27. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) 社会保障制度に関する調査を議題といたします。  この際、鈴木厚生大臣から発言を求められておりまするので、これを許します。鈴木厚生大臣
  28. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 先般の内閣改造に際しまして、引き続き厚生大臣をやるようにという御指示がございまして、きわめて微力な者でございますが、お受けすることに相なった次第であります。つきましては、委員各位のこの上とも御指導御鞭撻を賜わりますよう、心からお願い申し上げる次第であります。     —————————————
  29. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) では、これより厚生行政に関する件について調査を行ないます。  本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 厚生大臣は留任されたのでありますから、いま予算準備もだんだん詰まっているときだと思います。ですから、大臣から来年度の厚生行政方向についてひとつ報告を願って、そしてそれに必要な予算要求折衝がどうなっているかということ、なかなか微妙な問題について、こまかいことは要りませんけれども、大かたの御報告を願いたいと思います。
  31. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) ただいま藤田委員より、昭和四十二年度の厚生省の予算について、その重点施策があればそれについて説明をせよ、こういう御質問かございました、私は、まず四十二年度の重点施策について御説明を申し上げる前に、四十二年度の予算編成あたりまして、事務当局に対して私から竹に指示をし、私自身もその心がまえで予算編成に当ったのでございますが、それは過去一年二カ月、国会におきまして私か当委員会をはじめ、衆議院、参議院の予算委員会、社労委員会等を通じて委員各位の御質問に答えてお約束を申し上げたところの事項については、速記録を調査をして、全部お約束を申し上げた事項を私の手元に提出をしてほしい、そのお約束を申し上げた事項は、四十二年度予算編成に当たっては特に配慮をするということ、こういうことを事務当局に指示いたしまして、国会の御意向をできるだけ尊重して今後の厚生行政を進めたい、こういう心がまえで予算編成に当たっているわけでございます。したがいまして、ただいまから御報告申し上げる厚生省の四十二年度の重点施策は、おおむね当委員会等におきまして委員各位からもいろいろ御要望なり、あるいは御意見があったところであり、また、私自身からもそれらの点を特に重視をして努力をすることをお誓い申し上げた点にあるわけであります。  そこで、まず第一点は、従来から昭和四十一年度におきまして重点施策として取り上げましたところのガン対策、あるいは重症心身障害児対策、あるいは性病対策、そういうような政策昭和四十二年度におきましても引き続きこれを強化充実をしてまいる、そういうことはお約束を申し上げた。今後こういう政策重点的に年次計画をもって推進をする、こう申し上げたとおりであります。それから、さらに新しい情勢に対応いたしまして数項目の重点政策を取り上げた次第であります。  まず、第一は生活環境施設の整備でございます。最近における経済成長の結果、都市に人口が過度に集中する傾向も出てまいっておりますし、農村からの人口の移動、その他経済社会情勢が大きく変わっておりますること等からいたしまして、われわれの日常の生活炭境、これをその新しい情勢に即して、できるだけこれを早く整備する必要がある。特に上下水道の整備、あるいは、し尿処理、じんあい処理、あるいは公害の発生に備えての環境の整備、こういうようなことを考慮いたしまして、昭和四十二年度を出発点とするところの新しい生活環境施設の整備五カ年計画を立案をいたしまして、われわれの日常の生活をできるだけ住みよい健康な環境をつくるように政府として努力したい、このように考えておるところであります。  第二の点は公害対策推進でございます。公害問題につきましては、最近深刻な社会問題にもこれが発展をしておるということで、一日も放置を許さない情勢に相なっております。そこで、政府といたしましても、ただいま公害審議会基本的な問題につきまして格間をいたしておるとこでございますが、どうしても次の通常国会には公害対策を抜本的に行ないますために公害基本法を制定をしたい、こういう考えで、関係各省庁とも連係をとりながらいろいろ具体的な検討を進めておるところでございます。また、現在規制しておりまするばい煙規制法、あるいは水質汚濁防止法等々の、すでに規制をしておりまする公害につきましても、現状から見て不十分な点が多々ございまして、これを新しい情勢に即応するように、さらに適切な措置を講ずる必要があると考えておりますし、さらに、また、騒音でありますとか、あるいは振動であるとか臭気であるとか、あるいは自動車の排気ガス等のごとく、いまだ規制しておりません公害に対しましても適切な規制の措置を講じ、公告の防除について強力な対策を講ずる必要がある、このように考えておるわけでありまして、公害防止事業団の機構並びに事業面の強化をはかると同町に、大気汚染等に対するところの全国的な調査網の整備等、必要なる措置を四十二年度において講じてまいりたい、このように考えておるのであります。  第三の点は救急医療体制の整備でございます。最近交通事情が相当激化いたしまして、交通災害が激増をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。また、その他の産業災害等、救急医療を必要とする諸事情が顕著になってきておるわけでありまして、救急医療体制を整備することは、この深刻な社会情勢になっておりまする交通災害等に対処するためにもぜひ急がなければならない施策である、かように考えるわけでありまして、国立の病院、国立療養所、さらに都道府県立その他の医療機関に対しまして専門の脳外科医を配置をして、そうして救急医療センターをつくり、また、それを中心としたところの全国に救急医療網を整備いたしたい。医師会その他の民間医療機関の積極的な御協力を得る面につきましても、十分予算的にも配慮をする必要があると、こう考えまして、所要の予算措置も講じようと、かように考えておる次第でございます。  第四は、これは古い問題であって、なお新しい問題であると私は考えるのでありますが、僻地医療対策の強化でございます。皆保険下におきまして被保険者である国民全部に適正な医療の給付を行なうということは、これは政府の責任であると、このように考えておるのでありますが、そのためには僻地、離島に対するところの医療機関の配置を適正なものにする、また、避地、離島の医師、診療担当者の確保をはかるということが私はきわめて大切な、また、急がなければならない対策であると考えておるのであります。そのためには、僻地医療の問題は、これは私的医療機関に依存をしておりましても、本来が採算に合わない医療でございますので、どうしてもこれは国公立、あるいは特殊法人等の医療機関がこのような採算のとれない医療の面につきましては中心的に責任を持って当たるという体制をつくる必要がある、このように考えるわけでございますので、国立あるいは県立の病院等を親元病院として、これの医師の定員をふやしまして、その余力をもって僻地、離島の診療医療機関に医師を派遣をする。また、各府県にそれぞれ僻地医療対策連絡協議会のようなものを持ちまして、必要なる僻地に対しまして適切な対策を講ずるようにいたしたい。それに必要な予算その他を来年度において十分裏づけいたしたいと考えておるわけであります。  第五の点は、保育所の整備を計画的にこれをはかってまいりたい、このように考えておるわけでございます。現在保育を必要とする子供さん方は相当の数に上るわけでございますが、そのうち、三十万人程度の児童につきましては、早急に保育所をつくってこれを収容し、保育いたしたいと、このように考えまして、今後五カ年間に四千カ所の保育所を整備をするということを目途にいたしまして五カ年計画を作成いたしました。昭和四十二年度を出発点として、計画的に保育所の全国的な整備をはかりたいと考えておるわけであります。また、従来ありましたところの規格に合致しないということで認可されなかった未認可の保育所がたくさんございますが、これに対しましては補助あるいは融資等の面を通じまして、認可保育所に昇格せしむるような措置を講じますと同時に、あるいは事業所、あるいは団地、そういう方面に対しましても積極的に保育所を設置するような指導と必要な措置を講じたい、このように考えておるわけであります。と同時に、農山村に対しまして僻地保育所、あるいは季節保育所というような面も今後力を入れてまいりたいと考えておるわけであります。  第六の点は老人福祉対策推進でございますが、老人福祉の問題が社会問題としてもきわめて重視しなければならない情勢になっておりますことは御承知のとおりでございます。そこで、従来からやってきておりまする老人ホーム、あるいは養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等の増設をはかりますと同町に、四十一年度におきまして五万ヵ所の老人クラブをつくったのでありますが、さらに一万五千カ所を四十二年度におきまして増設をいたしまして、六万五千カ所の老人クラブを全国的につくり、これに対する助成の措置を講じたい、こう考えております。また、従来は六十五歳以上の御老人に対しまして、一年おきに公費による健康診断を実施いたしておったのでありますが、これを全部の老人に毎年公費で健康診断をする、お年滞りの健康管理を十分やってまいりたい、このように考えておるわけであります。また、老齢福祉年金の充実等につきましても特に力を入れていきたいと考えております。また、各方面から要望がありますところの老人世帯に対するホーム・ヘルパーの増員、そういう面につきましても考慮を払っておる次第でございます。  第七の問題は、これは一番最後に申し上げるのでありますけれども、医療保険制度の抜本的な改正でございます。私は、就任以来、国民健康保険なり、あるいは組合健保なり、その他の医療保険制度につきまして当面応急の措置を講じてきたところでありますが、診療報酬体系の適正化とあわせて、各種の医療保険制度のアンバランスの是正、被保険者の負担なり、あるいは給付の格差の是正なり、あるいは財政の問題なり、そういう医療保険制度の抜本的な改正は、昭和四十二年度の予算編成あたりましては、特に私はこれを解決をし、四十二年度からこれを実施いたしたい。これは非常にむずかしい問題でございますけれども皆さん方の御協力、御援助を得ましてぜひこれを実現いたしたい、かように考えておる次第でございます。  以上、その他いろいろございますが、数点にわたりまして来年度ぜひこれだけは重点的に行ないたいという問題につきまして大筋を御報告申し上げた次第でございます。  なお、御質問によりまして、細部にわたりましては、名局長も見えておりますので、御説明申し上げたいと存じます。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いろいろの方針や大筋が述べられて、これに応じて予算措置の要求をされていると思うわけでございます。厚生行政の全般にわたりますとたくさんの問題があるわけでありますが、一番最後に重要な問題をここで非常に抽象的に述べられたわけで、私はここで予算編成の根本について大臣に御意見を伺っておきたいと思う。  いまの日本経済の推移から考えて、私は、何としても勤労を通じての所得、購買力、もう一つのファクターは所得保障による購買力、民生、生活環境、生活向上、購買力向上という、これにプラスされて生産が上がってくる中において経済のバランスをとっていくという重大課題が今日の日本の政治経済に課せられている問題だと私は思う。そこで、いつも予算編成になると、私はいろいろのことも大事でありましょう。国家政治経済の中で大事でありますけれども、閣議の閣員の一員として、昨年度の予算に平均何割プラスで予算編成というようなことを聞かされるわけでございます。厚生行政に至っては、各行政庁平均何割増しということで解決する問題ではないと私は思う。だから、そういう意味で、特に今度は内閣改造で厚生大臣が留任をされたというこのことは、必要なものは高めるという私は決意のもとに厚生大臣が留任をされたと、そこまで言い切っていいかどうかはともかくといたしまして、いまの厚生大臣の今度の予算編成に対する責任と申しましょうか、期待というものは非常に大きいと思う。だから何割増し予算編成というようなことでなしに、厚生行政というものは、人間の生命を預かる行政でありますから、そういう意味で、閣議の中で、予算編成に入ってそういう一律何ぼということでなしに、全く人間の生命を預かる厚生行政の拡大といいましょうか、いまの日本の政治経済に必要な拡大といいますか、そういうものを基礎にして閣議の方向が理解されて編成ということになっていく、そこらあたりは、国民が知っているのは何割増しというようなかっこうで、また同じような機械的にやられるというようなことが心配されているわけですから、そのことについて、来年度の予算編成については、厚生大臣は他の行政も必要でありましょうけれども、特に厚生行政についての心がまえと申しましょうか、大臣の決意のあるところを私は聞きたい。
  33. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 社会保障関係予算を充実をする、そして低所得対策を初め、また、所得保障の面を充実をしてまいる。このことは、経済政策としても、また有効需要を喚起して、経済の立て直しをはかる上からも大切な問題である、こういう藤田委員の平素の御主張、私はこれに対しましては全く同感であり、常に敬意を表しておるところでありますが、そういうような観点からいたしまして、私は、社会保障予算というのは、これは今日のような経済社会情勢下においては、特に予算編成上、重点を置いて予算編成に当たるべきであるということを強く考えておるところでございます。先日も、社会保障制度審議会の大内会長ほか、委員各位と、佐藤総理はじめ、関係大臣との懇談会がございまして、社会保障制度審議会の各委員から、強く社会保障の充実につきましての御所見が述べられたところであります。その際に、来年度の予算編成にあたっては社会保障関係予算はおおむね一兆円を目標にすべきである、こういう具体的な実は御提案もあった次第でございますが、いずれにいたしましても、私どもがこの社会保障整備充実をはかってまいりますためには、長期の展望に立って、そして一つの目標、年次計画を定めて、着実にそれに向かって前進をする、こういうことが必要だと、こう考えておるのでありまして、経済情勢の変化から中期経済計画は御破算になりましたが、新しい経済計画を政府においてはただいま立案の作業を進めておるのでございますが、私は、この新しい経済計画に見合ったところの長期の社会保障計画というものをつくる必要があるということで、ただいま事務当局に指示いたしまして、その作業を急いでおるところであります。私は、この昭和四十六年度を最終年度とする長期の社会保障計画におきましては、西欧並みということは一挙にはできませんにいたしましても、少なくともそれに急いで近づけるように格差を縮小するという方向で、中期経済計画の中に盛られたベース以上の水準で長期の社会保障計画を進めたい、また、必要な予算措置を講じたい、こういうような考えでおるわけであります。また、御指摘がございましたが、厚生予算は、御承知のように、自然増が非常に多い。具体的に申し上げますと、たとえば国民健康保険の場合におきましては、昭和四十二年度には、四十一年度に比べて三百億円の自然増が見込まれる。こういうような例を見ましても、厚生予算につきましては、特別にここに政府全体として配慮をし、重点を置くということでないと厚生省の施策は硬直化する危険があるわけでありまして、そういう点を十分考えながら、四十二年度の予算編成あたりましては、財政当局に対してこの点を十分理解をしてもらい、また、そういう面で努力をいたしたい、かように考えておるのであります。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、来年度の予算は、自然増も何もかも含めて三割増だとか何割増というようなことであっては国民生活は守れない。特に日本の生産能力発展とあわせて、いま落ち込んでいるのは購買力の問題、国民生活の問題だと思う。だから、そういう印象を国民に与えないように、いま一つの例として、自然増を別にして、ほかに必要な予算編成をやりたいと、こういうことでありましたから大いに私はがんばっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、一、二お聞きしたいのでありまするが、私は、国会がまだことしの春済んだところでありますから、具体的なことには入っておいでにならないと思いますけれども、たとえばいまの社会保障計画の中にどう立てていかれるかという問題に関係すると思いますけれども、たとえば年金のごとき所得保障がばらばらである。だから、たとえば六十とか六十五、五十五という共済年金の基金があるわけでありますけれども、できるだけ老後の要するに所得保障というものは、その職のいかんを問わず、老後の生活を全体ができるだけ早い機会保障していくという努力と調整が、今後の社会保障五カ年計画をお立てになるとすれば、非常に重要ではないか。これは予算の要ることでございます。ですから、これは要するに社会保障計画と、ことしの秋からの経済計画とにらみ合わせて議論する問題だと思いますけれども、私はいままでの委員会でたくさん出ました、たとえばアンバランスの問題、格差の問題、そういう問題については私は十分心をいたしてもらわないと、この前の国年の改正においても、それはそのまま前に進んだのでありますけれども、他の年金との関係においては、私は一日も早く調整処理、それからしなければならない問題がたくさん残っておったと思います。大臣の御発言が、その問題も、単に五年を待つのでなしに、早急に調整の処理をしたいということでありましたから、私は期待をいたしておりますけれども、そういう点についても、ひとつ何とか早い機会にお年寄りに対し、身体障害者に対し、また母子家族に対しても、この問題はできるだけ公平なバランスをとるような形に進めていただきたい。裏を返せば健康を守る保険制度がそこにあるわけでございます。  私は、最後に大臣がおっしゃったのでありますけれども、何か高いところのものを取ってきて——きょうはおっしゃらないのでありますか、新聞を見ますと、大臣は高い給付を下げてバランスをとるんだというような、私はそういうぐあいに新聞紙上から受ける印象として受け取ったのであります。社会保障制度というものが、いま大臣がおっしゃったように、社会保障計画が今後の経済計画のむしろ柱になっていく問題であります。そうなってくると、何といっても所得保障と医療保障、それから社会保障の、要するに所得保障の一部でありましょうが、明後年からやるという児童手当関係がここへ出てくるわけでございます。それとの中で、医療保障の問題については、できるだけ私はいまの産業工業国のやっているような方向に近づけていくということが、日本産業工業国として発展をしつつあるこの事態における社会保障をむしろ高い給付に統一——一時的にはできないにしても、統一をしていこうというお考えでなければ、高いところを低めてバランスをとろうということでは問題があろうかと、私はそう思う。大臣のお考えを私は新聞で見ただけでありますから、そこらの点が少し私の誤解ならよろしゅうございますが、その点は少し御見解を承っておきたいこう思うのです。
  35. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 医療保険の抜本改正にあたっての医療給付をどういう水準にするか、この問題につきましては新聞紙上等でもいろいろ報道がされています。しかし、私はここではっきり申し上げておきたいことは、留任いたしましてから来年度の厚生予算編成等がございました関係もありまして、まだ実は医療問題につきましての掘り下げた検討をいたしておりません。御承知のように、牛丸事務次官を長とするところの委員会がございまして、いろいろな事務当局の案と申しますか、メニューと申しますか、そういうものはいろいろございます。それはこれとこれを組み合わせればこういう一つの案かできる、こういう点とこういう点を考慮に入れるとこういう案もできるという、幾とおりかの案がいろいろ事務当局において検討されておりますことは、私そのとおりであると思うのでありますが、しかし、それらの案をさらに煮詰めてまいりまして、そして最終的に政治的にこれをどう扱うかという面については、もう少し国民の皆さんの世論といいますか、そういうものにも耳を傾け、また、診療者側、支払い者側、その他各種団体の御意見等も私は十分聴取をいたしたい、また、委員会等におきまして政府の最終的な案を御審議を願う前に、いろいろ御意見があればそういう御意見も十分拝聴したい、そうしてできるだけ早く私は政府の原案をまとめまして、そして社会保障制度審議会その他の既存の委員会活用せざるを得ませんが、そういう委員会の御協力も得、審議会の御協力等も得まして、四十二年度予算編成最終段階までにはぜひ医療問題の改定をいたしたい、このように考えておるわけであります。  そこで、具体的にこの給付の水準をどうするかという端的なお尋ねでございますが、私は、国民皆保険のもとにおきましては、医療の給付というのは、できるだけこれが均衡のとれたもの、格差のないものにしたいということが一つの目標でなければならないと思うわけでございます。いま世帯主本人の給付のほかに、その世帯主のめんどうをみておりまする家族の給付ということを考えました場合におきまして、世帯主は十割であって、見かけはいいのでありますけれども、政府管掌の健康保険等におきましたては家族は五割というぐあいに、国民健康保険も家族七割を四十二年度までに全国的に実現しようという水準から見ますと、世帯主は十割であるけれども、家族が五割ということで、国保に比べて私は全体としての水準は低いのではないか、そういう面等を十分彼此勘案をいたしまして、そして均衡のとれた、格差のできるだけない医療給付をするようにいたしたい、このように考えておるわけでございます。そういうようなことで、私は、全体としてこの医療給付の水準を引き上げこそすれ、決して引き下げるようなことは社会保障の精神からいってとるべきではない、こういうことははっきりここで申し上げておきたいと、こう思うわけでございます。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあこれ以上この具体的なことには突っ込みたくないのでありまするが、私は、国保と、国保の関係において健保のほうの家族五割給付を引き上げていこうというお心持ちであるとすれば、私は、それはやっぱり歴史の流れに沿って医療給付というものが改善されていくというぐあいに理解をする。ところが、新聞に出ておるようなかっこうになると少し問題が出てくるのではないか。だから、私は、いまの大臣の御発言は、国保が家族を含めて七割給付になる、だから健保のほうも、世帯主が十割であり、家族が五割であるから、この家族の分を均衡上引き上げたい、こういうぐあいなお考えを中心にしながら検討をされている、こう理解してよろしいのですね。
  37. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 先ほども申し上げましたように、世帯主、家族、全体を含めまして、現在の給付水準を引き下げるようなことは絶対にしない。全体として給付水準を向上させる方向で制度の抜本的な改正を考えていきたい、こういうことを申し上げた次第であります。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは大臣、非常に微妙なむずかしい問題で、事務当局において検討されるのは幾重にも検討をされても私はけっこうだと思います。だけれども、たとえば家族給付五割を上げるために世帯主のいままで長い歴史的な関係においてやってきた十割給付に手をつけて、そういうものを含めての均衡だということになると、これは私は少し納得がいきにくいと思う。だから、そういりことでなしに、家族の給付が五割であるから、その五割を、国保の家族も七割になったのだから、そういう方向均衡考えたいというお話でしたら、私はその方向努力に対して理解をいたす次第でありますけれども、その根本が間違うようになってくると、これはなかなか大問題であろうと思う。まあいずれにいたしましても、社会保障制度審議会に諮問され、いろいろの階層の意見を聞いて結論を出されるということ、それまでは結論を出さぬということでありますから、私はきょうはこの程度でやめますけれども、しかし、そういうことでもしも構想の中にいまのような疑念を持つような構想があるというなら、ひとつ改めていただきたい、このことだけを私は申し上げておきたい。まだきょうあすきめるという問題でなさそうですが、しかし、そういうことを新聞で取り上げるときには、どうも大臣の意向がどの程度反映しているのか知りませんけれども、世帯主も家族もバランスをとって云々ということが出てまいっております。また意見はあまり国民の中で出ていませんけれども、これが本式の問題になってくると私はたいへんな問題になろうという心配をしておりますから一言聞いたわけでありますが、その点だけはひとつ心して、日本の生産、文化、経済繁栄の道についている皆さん方医療給付の問題を、そういうバランスやそろばん勘定で操作するということだけはいまのうちにひとつ思いとどまっていただかなければ私は問題が残るということだけをきょうは申し上げておきたい、こう思います。よろしゅうございますか、その点は。  そこで、もう一、二点私は聞いておきたいことがあるわけです。いまお話の中にありました公害の問題とか、または生活環境整備の問題、それから緊急医療体制の強化、僻地医療、それから保育所の整備、老人対策、医療保険制度と、こうおっしゃって、昨年からの問題を引き続いておやりになるということになったのですが、きょうお述べになりましたいろいろの問題とずっと大体関係することは、私はこれの実をあげるのには、施設をつくっただけ、それから資金を流しただけでは実らないものがある。それはそこで働いている方々の生活の問題だと思うのです。いま看護婦さんが何万も不足しているというのも、看護婦制度というものがこれだけでいいかどうかという重要問題を今日課題として持っているわけであります。このたくさんの施策の中から出てくる施設の職員の給与がこれでいいのかどうかという問題は、施設を拡大するのとイコールの問題だと、私はそう考えております。だから、たとえばこの施設の職員の問題は歴史がございます。もう四、五年前から問題になって、最低公務員並みにするというのが厚生省の約束であります。ところが、一時あまりにもひどかったから急角度に上がったのであります。私は非常に喜ばしい行政だと思ったのでありますが、実際はいまだに公務員との関係においては三、四割の格差が出てきていると私は思います。ですから、これはやっぱし今度のいろいろの重点施策をお出しになったのでありますから、これにつけ加えて、施設職員の給与、それから看護婦さんの給与をあわせて待遇、そして看護婦さんが、せっかく看護教育を受けた人が、看護の作業を通じて、私は病人が早く治療する、これは早く治療するということは国家的に非常にプラスであります。だから、そこらの人的な問題の処置というものをこの際思い切って来年度の予算処置をしてもらいたい。そうでなければ、せっかくたくさんの企画をお立ていただいたのでありますけれども、なかなか実らないのではないかという感じがするわけでありますから、御所見を承っておきたいと、こう思います。  それから、もう二、三聞きたいのでありまするが、その二番目の問題は、精神病の患者です。これは生活保護の医療扶助を受けている方々と一般の民間の精神病の方々との間に、どうも負担が大きくて、最近の精神病というのは、ノイローゼとか、そういうものが多いわけでありますが、負担が多くて困るということを盛んに訴えられるわけでありますが、この点の処置をどうお考えになっていただいているのか、それが二番目でございます。精神病で入院さすといろいろと負担が大きくて、とてもかなわぬという声を盛んに聞くのでありますが、この点もひとつお考えをいただいておきたい。  それから、福祉事業のことについてはいろいろおあげになりましたけれども、私は非常に大事な行政だと思います。私は一々ここで申し上げませんが、福祉事業については、篤志家がおやりになろうというこの気持ちを伸ばすようなかっこうでひとつ御指導をいただきたい。そうでないと、いまも米公認のところを補助金その他によって公認をし、援助をしていくというお話がありましたから、非常にけっこうだと思うのですが、その点も十分に配慮をしていただきたいと思うわけであります。  それから、同和対策でございます。同和対策は同和対策審議会から方針が出て、そうして同和対策が進んでいるわけでありますが、たとえば部落の中に隣保館をこしらえる、隣保館というか、自分の資力を寄せ集めてこしらえてみたが、同和対策の隣保館としてなら運営費がくるわけですが、篤志でやった場合には運営費がないので、せっかく金をはたき出してつくった隣保館の運営がつかぬというような、非常にこれは不平というか、泣きごとというか、非常に困っているということで訴えられているのがあるわけですから、非常にきめのこまかい問題ですが、ここらもひとつよく考えていただきたい。  それから、僻地医療対策でありますが、いまのお話を承ったのですが、どうも私はいままでの議論をながめてきた感じでは、なかなかそれだけではいかぬのじゃないかという感じがしているわけです、これは感じですけれども。だから自信を持っておやりいただくのですから非常にいいと思いますけれども、それだけではなかなかどうも僻地対策の——むしろ僻地対策で一番肝心なことは、先ほど申し上げましたように、設備はできた、しかし、人の問題だと私は思う。ですから、この人の問題を得られるようにしない限り、僻地医療対策というのはなかなかできないのであります。お医者さん、それから看護婦を含めての医療従業員が、僻地でたとえば巡回的に医療センターから派遣される、それがどれだけの責任を持って派遣されるかどうかというような問題も、非常にこれはお医者さん、医師会との関係で微妙でむずかしいでしょうけれども、そこで賃金要求が出たら全部医者が引き揚げられたというようなことになってしまっても困りますし、ああいうところへ行っても勉強できないから行かぬのだということになっても困りますし、そこら対策というのは、どうもいままでうまくいっていないのではないかという感じがしますから、もっと深くえぐって、大胆に処置をしてもらいたいという感じを私は持っております。だから、ここでこまかいことをどうこうということまで私は言いませんけれども方向としては、どうももっときめこまかく入らなければ、看護婦の問題も、それから僻地医療対策の問題もそれから施設職員の問題も、給与それから環境、そうして喜んでこれを通じて社会に貢献していただくというものの考え方をもう少し深く入ってもらって、今度の来年度の予算編成の中には、施設の拡大や施薬の拡大とあわせて、人の面の実際に医療給付というものが生きてくるようにひとつ考えを深く突っ込んでやっていただきたい、こういうぐあいにお願いしたいのでありますが、御所見があったら聞いておきたいと思います。
  39. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 藤田さんから数点にわたって具体的な事項についての御質問があったわけでありますが、まず第一点の、社会福祉施設等で働いておられる職員の処遇の改善の問題であります。これは御指摘のとおり、施設が幾らできましても、そこに働く方々の待遇が劣悪でありますれば能率も上がらないし、また、そこに収容いたします人々に対するサービスの面に対しても影響があるわけでありまして、そういう面から、福祉施設で働く人々の待遇の改善、また、看護婦その他の医療職員の処遇の改善ということは非常に大切な問題だと私も考えております。そこで、社会福祉施設の職員の待遇改善あたりましては、まず民間につきましてはこの職員の大幅な増員をはかるということが一つであります。収容いたします子供さん何人に対して一人というようなきめ方になっておるわけでありますが、それが一人で相当多数の者の世話をしなければいかぬというようなことで、非常な労働強化になっておるという面がございます。そういう点は私は十分緩和をして、そして行き届いた世話ができるように定員の大幅な増員ということを考えなければいかぬということで来年度の予算要求考えております。また、具体的な待遇改善としての調整号俸等の改善、これが一つの問題でございます。それから旅費あるいは庁費等の予算の増額、第四点は保育所の地域差をなくするという既定の方針をぜひ四十二年度におきましてはこれを実現をしたい、こういう四つの柱を中心といたしまして、施設で働く人々の働きやすいように、また、待遇の改善ができまするようにいたしたいと考えておりますし、なお、医療職員の処遇改善につきましては、私、人事院の勧告がなされる前に佐藤人事院総裁に親しくお目にかかりまして、そして民間との格差がこの際思い切って是正をされるようにということを中心に、医療職員の処遇改善を強く要請をいたしておったところであります。また、重症心身障害児収容施設等で働きます人々の特別な手当等についての配慮、こういう点を御要望申し上げておったのでありますが、先般人事院の勧告も出されたのでありますから、私ども政府としてはこの人事院の勧告を尊重して、この医療職員の改善も大いにできるように努力をいたしたいと考えております。  それから、第二のお尋ねは、精神病の治療にあたって医療費が高いという点でございますが、この点は精神病が非常に長期にわたって治療を要する病気であり、また、相当最近精神病関係の患者がふえておるのに、その精神病の専門医療機関が少ない等の点からいたしまして、大いにこれを改善する必要があると考えておりまして、精神病院の設立等に対するところの医療金融公庫の融資等につきましては特別に配慮を加えておりますと同庁に、民間の病院だけでなしに、国立、公立の精神病関係の病床をふやしていくというような対策も実は講じておるような次第でございます。  第三点の、民間の社会福祉施設を伸ばすように、さらに政府としてあらゆる援助を与うべきだという御指摘でありますが、私もそのように考えておりまして、来年度の予算編成あたりましては、そういう方向でできるだけ配慮をいたしておるところであります。  第四点の、同和対策についてでありますが、これは同和対策審議会から政府に対しまして答申があるのでありまして、この同和対策に対しましては、厚生省といたしましては環境の整備という点に重点を置きまして、そうして政府全体としても年次計画を立てて同和対策整備充実に当たり、その際におきましては、厚生省としては積極的にこの生活環境施設の整備を極力進めてまいりたいと考えております。また、御指摘がありましたところの、市町村が独自で乏しい財政の中から隣保館等をつくった際におけるその運営費の問題につきましては、明年度予算におきましてはこれを実現するように、ただいま省議で予算要求をすることに決定いたした次第でございます。  最後に、僻地医療対策についてでありますが、先ほど私は、これを来年度の重点施策として取り上げる、古くて新しい問題だということを特に申し上げたのでありますが、御指摘のように、僻地医療の問題点は、医師や看護婦、保健婦等の医療職員の確保のむずかしさでございます。そのためには巡回診療車だとか患者輸送車だとか、そういうような補完的な面を強化いたしますことも考えておりますが、基本的にはやはり必要な僻地の診療所その他を整備をするということ、さらに医師の確保をはかるということ、そのためには地元関係医師会の協力を得ると同時に、国立、公立の医療機関が医師の定員をふやして、それが責任を持った親元病院になって、そうして僻地の診療所等に二年なり、三年なり医師を責任を持って交代交代に派遣をするそういうように、親元病院としての国公立病院に対する医師の定員の増、定員の確保という面についても具体的な予算措置を講じていきたい。また、僻地等で働いておられる医師の方々の研究や研修がおくれてはいけないのでありまして、そういう意味で特別な調査研究費を計上する、あるいは海外の進んだところの地域へ派遣をいたしまして留学させる等の措置も講じてまいりたい。こういうきめこまかい配慮が必要であるということで、四十二年度の予算でそういう点を十分考えながら僻地対策を立案いたしておる次第でございます。
  40. 森勝治

    ○森勝治君 時間がだいぶ経過いたしましたから、私はたくさん大臣に質問してみたいと思うのでありますが、時間の関係上、一点だけ日本脳炎について質問をしたいと思うのであります。  御承知のように、ことしは昨年よりも一カ月くらいピークと申しましょうか、脳炎の発生がおくれたそうであります。ところが、今月の二十三日の数字を見てもわかりますように、もうすでに千六百十六名の患者を出し、そのうち死亡者が三百八十四名ということに相なっております。これは当初厚生省が予測をいたしました数字をはるかに上回っておるわけであります。すなわち、当初厚生省は大体九百六十から千程度がことしの発生予想だろうということであったわけでありますが、いま申し上げたように、千六百十六名という数字、もう六割方上昇を見ておるわけであります。これははなはだ残念な姿でありますけれども、特に今週がこの発生のピーク時といわれておるわけであります。したがいまして、こういう問題で、われわれがこうして発言をしたり、こうした日本脳炎等によってあたらとうとい生命を失うことのないように、なかんずく、佐藤総理は人間尊重をたてまえとしている方でありますので、その佐藤総理が内閣改造をしたとたんに日本脳炎でばたばたいかれてしまったということになると、これはもう笑うこともできない、まさに私どもの悲劇と申さざるを得ないのであります。御承知のように、日本脳炎の死亡率は大体二〇%から三〇%というふうにいわれておるわけでありますが、万が一助かったといたしましても、知能異常、性格異常、あるいは脳性小児麻痺等々の後遺症が残り、あとは悲惨な生活が控えておるというふうなことで、ほんとうにわれわれは同情を禁ぜざるを得ないわけでありますけれども、ことにことしは昨年発生していないところに多く見られたということをいわれております。関東以西、特に九州では、もうすでにこの二十三日で六百十八名、こういう最大の数字が出されておるわけであります。  そこで私がお伺いしたいのは、この日本脳炎のこしの特徴的な現象は一体どこにあるのか。特に私がさっき若干触れました、厚生省の予測しておりました数字をはるかに上回っているというこの残念なできごとというものは一体どうなのか。すなわち、日本脳炎の流行の実態というものについてお伺いをしてみたいと思うのであります。ついでに、この感染経路は、俗に豚からということが言われているわけでありますが、蚊の媒介ということでありまして、これは御承知のように、ビールスということでいわれておりますが、そういう感染形態についてもひとつお伺いしたいのであります。ですから、数字的な問題、具体的な問題は、当該局長がお出ででありますから、局長からお伺いすることにし、基本的な問題については大臣からお伺いしてみたいと思います。大臣からお伺いしたいと申しますのは、いわゆる先ほど大臣から、四十二年度の予算編成の展望についての説明の中でも、人間尊重ということを盛んに言われ、これは内閣の生命である、われわれも人間尊重はもとより賛成するところであります。そういう立場で質問をするわけでありますが、どうも政府の施策というものは、こういう事件が起こらないとどうも力こぶを入れないような気がしてならぬのであります。幸いこれは私の単なる杞憂もしくは邪推であるならば非帯にけっこうなのでありますが、ひとつそういうことのないように、抜本的な、特に流行性のこの病気というものは、瞬時にして人命をそこなうというようなことがままあるわけでありますので、そういう問題について、一体基本的な考え方としてどう対処されようとしているのか、このことについて大臣からお答えをいただいて、あとの問題については局長からお答えをいただきたいと思います。
  41. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 日本脳炎、この病気は森さんが御指摘になりましたように、きわめて致命率の高い、また、なおりましても後遺症が長く残るというようなおそろしい病気でございまして、私どもこの日本脳炎の流行に対しましては早くから警戒をし、また、できるだけその予防の面につきまして各県を督励をして指導に当ってまいったところであります。何といっても、日本脳炎につきましては、日本脳炎に対する衛生教育ということを私は強化をして、子供さん方を持つ親の方々に十分この病気に対する認識、知識を持っていただくということが第一であると思います。と同時に、これを媒介いたしますところの蚊の駆除その他の防疫対策を強化する必要がある、こういうぐあいに考えております。さらに予防接種ワクチンも開発をされておることでございますので、できるだけ多くの子供さん方にこれを行なうということを指導してまいりました関係で、約千八百万人の児童に対しまして予防接種を行なってまいった次第でございます。  また、森さんから御指摘がありましたように、豚の血液の中に免疫抗体がどの程度できておるかということを早く調査をするということが日本脳炎のその地域の汚染の度合いを測定することになりますので、今年度は全国三十二都県にわたりましてこの豚の血清抗体の測定もやってまいったところであります。しかし、御指摘がありましたように、ことしは昨年に比べまして、この真性及び疑似の患者が多数出ておりまして、この点につきましては一そう私ども各方面の注意を促し、先ほど申し上げましたような防疫対策に特段の努力を払っているところでございます。
  42. 中原龍之助

    説明員中原龍之助君) 日本脳炎の発生の状況について申し上げたいと思います。  ことしは例年よりも涼しかったという関係上、例年ならばもう少し早く発生しているだろうと思われるものが、結局これがおそく発生をしているというかっこうになっております。しかし、全体の日本全国の日本脳炎の発生状況から見ますと、昨年度はいままでで一番発生が少なかった年でございます。今年も私ども、わりあいに涼しいということ、及び、早くから、ことに日本脳炎の多発している九州地区を中心にいたしまして日本脳炎の防疫対策を進めてまいりました。そうたくさんにはのぼることはないだろうという観測を持っていたのであります。ところが、八月になりましてから急速に昨年よりも数の上ではオーバーしてまいり、ことに近畿地方は少し例年になく多くなっている状況でございます。いままでの森先生が御発言になりました患者数につきましては、これはいわゆる疑似の患者を含めました全部のいわゆる届け出でございます。これは防疫課が直接各県からとっている届け出の数字でございます。大体におきまして一年を終わりましてその患者の状態を診定をしてまいりますと、このうち真性であったのは大体半数くらいという形に、半数以下というように大体なるようでございます。で、おそらくことしもそのようであろうと思います。いずれにいたしましても、流行の一番のピークは八月から九月の上旬にかけてということになりますので、これからもなお一そう警戒をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、先ほど大臣からお話がございました豚の検査でございますけれども、この豚の検査と申しますのは、豚のいわゆる子供であります。その年に生まれた豚の子供がいわゆる蚊に刺されまして、いわゆる日本脳炎の血中における抗体化を見ていく、豚が刺されて日本脳炎になったとか、それが豚の流行に比べまして大体二、三週間あとに人の流行が起こっていく、こういう観点から豚をいろいろ調査をして、そうしてそれのいわゆる流行の予想を立てましていろいろ警戒をし、それに対する防疫措置をとっていくというためのものでございます。これは日本独得のものでございます。  なお、この日本脳炎の防疫対策につきましては、何と申しましても、第一番目が蚊の駆除でございます。それから、次には、それを今度は人間の面におきましては、これは予防接種という方法もございますけれども、この日本脳炎の面は学問的にもなおまだわからない面が相当ございます。したがいまして、予防接種を受けておりましても一〇〇%防止するというようなかっこうにはなっておりません。その理由は、どうもやはり個人の個体のいわゆる体質というか、そのときの状況によりまして発病するというようなことがどうも観測されるわけでございます。したがいまして、この日本脳炎と発病防止という面につきましては、予防接種もさることながら、個人の一つの衛生ということも非常に大事になってまいります。ことに炎天下における過労というような問題は非常にこの発病に関係があるのではないかということで、その面のいわゆる衛生教育を行なっていくということを実施しているわけでございます。したがいまして、蚊の駆除と予防接種、それから個人の一つの衛生、こういう三つを十分に進めまして対策をはかっていくというのが現在における段階でございます。
  43. 森勝治

    ○森勝治君 いまの話ですと、予防接種をしても一〇〇%でないということでありますね。ところが、反面、特効薬がないそうですね。これに対する特効薬がないそうですから、じゃこの病気を防ぐためには、やはり予防以外はないわけでありますよ。個々人の衛生、注意力の涵養ということも当然あるのでありましょうが、やはり予防接種ということが過去の例から見ても相当効果を発揮していることは、これは統計に出ておりますね。一〇〇%ではないかもしれぬけれども、とにかくいま政府が手を打っているのは予防接種以外はないわけであります。そうですね、予防接種だけ。日本脳災に対する予防策としては、もう予防接種の指導だけしかしておらぬでしょう。ところが、いま局長お話ですと、炎天のもとの重労働を避けろとか、個々人の衛生的な思想の涵養とかいうことが言われておりますけれども、具体的に下部で指導されているのは、日本脳炎の場合には、それはもうかからないように予防接程をしておきなさい、こういう指導のみです。日本脳炎を防ぐためにはには蚊の駆除をしなさいという一般的な衛生面の指導はいたしますが、特に本件について事前の予防措置というのは下部でやっておらぬでしょう、市町村の末端では。やっておるのは、病気にかからぬように予防接種ということでありますね。そうであるならば、もう少し個々人の衛生思想の涵養の点にもひとつもっと積極的な指導をされてしかるべきではないでしょうか。この点は、率直に言って、日本脳炎を予防するための措置というような文章はないでしょう。蚊、ハエ、伝染病予防をするための措置と一般論的にはありますけれども大臣が言われましたように、一週間かそこらでもう人命を断つようなこの重大なおそるべきこうした問題についての指導というものは、予防接程の指導もしていない、私はそう思うのですね。したがって、そういう面にもさらに力を私は尽くしていただかなければならぬと思うのであります。したがって、特にことしは、先ほどちょっと触れましたが、昨年の非流行地域、こういうところがふえたということになると、やはりその辺に私どもは関心が、ややもすると去年発生しなかったからだいじょうぶだという安易な気持ちが今日のこういう不祥事を招来したとは私は断定しませんけれども、その辺の気のゆるみというものが著しくことしは患者数をふやしたという、こういう結果論から申し上げるわけですが、そんな気がしてならぬのですが、その点はどうですか。
  44. 中原龍之助

    説明員中原龍之助君) 日本脳炎の予防につきましては、大体日本脳炎の発生が九州から漸次北にのぼってくるというような大体の例年の発生の状況でございます。いずれにいたしましても、蚊が非常に有力な原因であるということから、蚊の駆除につきましては、これは各府県を督励をいたしまして励行しているところでございます。もちろんなかなか蚊は全部なくなるというわけにいきませんので、この点につきましては全きを期するということはなかなかできませんけれども、やはり先生は予防接程ということについておっしゃいましたけれども、蚊の駆除につきましても、市町村、府県につきまして努力していただいているところでございます。  なお、確かに個人の衛生につきましては、予防接種なり蚊の駆除なりということに重点が置かれて、とかく個人の衛生というものが忘れられているという面につきましては、私ども、今後ともそういう場合のいわゆる個人の衛生といいますか、につきまして十分にひとつ指導してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  45. 森勝治

    ○森勝治君 いま局長がはしなくもおっしゃった、この病気は毎年毎年九州から始まるというお話がありましたので、私は日本脳炎と気温との関係についてお伺いをしてみたいと思うのであります。やはり九州からということは、あたたかいところからだんだん熱のようにこっちに伝わってくるんですから、もちろんビールスですから、蚊の媒介がなければそういうことはないのですけれども、何か聞くところによりますと、平均気温が七日間ぐらい続くようになりますというと、日本脳炎に感染する豚の進行順位と大体並行線をたどる、こういうことがいわれているのですが、それはどういうことなのか、ひとつお伺いしてみたいのです。
  46. 中原龍之助

    説明員中原龍之助君) これは日本脳炎の流行か非常に気温及び湿度、そういうものと関係があるだろうということは前々からいわれておりました。ある学者がやはり調べましたところ、平均の気温が二十六度の線をこえる時期の早いおそいというものがその年度のおもな流行期の始まりと密接な関係がある。あるいは、ある流行発生前に一定期間にわたりまして平均気温が二十六度以上、平均湿度が七六から八五%以上、日照時間七時間以上、降雨量十二ミリ以下の日が続きますと、それに対して気圧の関係がございますが、こういうものが例年一つ、どうも見当たるようだということがいままでいわれているところでございます。
  47. 森勝治

    ○森勝治君 だとすると、流行予測の方法というのは的確につかむわけにはいかぬのですか。
  48. 中原龍之助

    説明員中原龍之助君) これはほかの疾病にも、気温の関係というもの、気象とその疾病の関係というものが最近は研究され始めました。しかし、それに関係があるといたしましても、直接的の関係ということになりますとなかなか学問上むずかしいわけでございます。それで、これのいわゆるこういう疾病の流行予測を一体どうしたらよいかということで研究が進められまして、そのいわゆる人間における流行のきっかけになるものは何であろう、予備段階になるものは何であろうかということが調べられていったわけでございます。日本脳炎そのものはいわゆる蚊が伝播するものでございますが、人から人にうつるということはあまりございません。蚊が伝播をするならば、じゃあどっかに病原体を持っているものがあるだろうということになるわけでございます。病原体を最初に持っているものはどういうものであるか。冬はないのであるから、一体冬はどこにいってしまうのかというような学問的な研究がなされるわけでございます。それに対しまして、渡り鳥が持ってくるとか、いろいろの学説が立てられているわけです。しかし、直接的になかなかそれをすぐにいわゆる流行の予測に結びつけるということがむずかしい。ところが、いろいろの動物がかかるのでありますが、その中で豚をたまたまいろいろ調べてみたところが、豚の血清中における抗体価を調べてみますと、人間の流行に先立って豚の血清抗体価が上がってくる。したがって、その地区地区における豚の血清抗体価をはかっていけば、これは流行がそろそろ始まりそうだということがわかるのじゃないかということで、豚のいわゆる血中抗体価をはかりまして、それをいわゆる警戒警報として防疫につとめるというような指標にしておるわけでございます。
  49. 森勝治

    ○森勝治君 ガンの場合にも特効薬がないそうでありますね。同じビールスという病原体を持つこの日本脳炎にまた特効薬がないそうでありますが、ガンの場合と違って、媒介体が、これはしろうとの談義で恐縮でありますが、蚊という明らかな媒介体がわかっておるわけでありますから、特効薬というものが出てもよかろうと思うのでありますが、この種の研究というのは一体どの程度進んでおるのでしょうかね。筋萎縮の場合も病原体が発見できない。日本脳炎の場合には病原体はわかったのでしょうけれども、病原体がわかれば当然これは対抗的な対抗薬が発明できるのでしょうが、いまの場合は特効薬がないというわけでありますね。したがって、どうも私どももこういう問題に首を入れるほど次から次へと、もちろんそれは医学界というのはまだ未知な世界、なぞの世界がたくさん内蔵しているだろうと思いますけれども、何とかしてこういうものは一日も早くその原因を突きとめて特効薬なら特効薬をつくり、その対策を講ずることが人命救助の最も患者に対する近い道のような気がするのですが、この種の特効薬というものは、これは見込みがないのですか、それとも、どの程度まで研究が行なわれておるのでしょうか、その辺のところもひとつあわせてお答えをいただきたい。
  50. 中原龍之助

    説明員中原龍之助君) お答えをいたします。  日本脳炎につきましては、これは日本ばかりにあるわけではございませんで、大体におきまして東南アジア一帯におきましてずっと蔓延をしておる一つの疾病でございます。これにまた日本脳炎類似のいわゆる脳炎を起こす疾病がシベリアその他にもいろいろございます。したがいまして、現在この方面の研究が世界の学者のいわゆる関心を呼んでいるところでございます。その中で、世界の学者の関心を呼んでおりますけれども、その対策になりますと、予防接種の液を持っておるのは、現在のところ、世界じゅうで日本だけでございます。それで、大体日本の学者がやはり研究の中心になっておるように私には思われます。で、その原因につきましては、いろいろ説もございます。従来蚊が一つの伝染の最も有力なものであるということが医学界においては認められておるところであります。しかし、蚊以外に何か原因があるのじゃないかというような説ももちろんございます。先ほど申しましたように、じゃあ蚊のほかにその病原体を持つ経過としてはどうであろうかといいますと、渡り鳥が持ってくるとか、いろいろの動物がほかにあるのだというような説がいろいろ行なわれておるわけでございます。今度は治療方面におきましては、現在のところ、いろいろ研究はされておりますけれども、特効薬というようなものはまだ見当たっておりません。一部は研究の途上におきまして新しい薬が出て、多少はきくというようなものは見つかっておりますけれども、いわゆるこれを使えばぴたりとなおるというような特効薬は見つかっておりません。したがいまして、主として現在の治療の状況は、やはり対症療法というものが主体になって治療が進められておる。今後この日本脳炎の問題は、先ほども申しましたとおり、世界じゅうの学者が注目をしておるところでございますので、研究は急速に私は進められていくというふうに考えております。厚生省におきましても、そう額はあれですけれども、毎年のように日本脳炎につきましては研究費を出しまして研究を続けてもらっておるところでございます。
  51. 山崎昇

    ○山崎昇君 直接予算関係がありませんが、大臣に一言だけお聞きをしたいと思います。  実は八月一日に内閣が改造になりまして、新しい政策の中に行政機構の整備という一項がございました。きのう朝九時からのNHKの放送を聞いておりますと、ここでもまた臨時行政調査会の会長でありました佐藤会長以下、座談会がやられておりまして、新しく行管の長官になられた田中大臣も、きわめて張り切ってこの行政機構整備についてやられるというお話をきのうもやっておりました。そこで、その座談会を聞いておりますと、あの臨時行政調査会の答申というのは、各界の方が七人委員になって満場一致で答申されたものであるから、当然これは政府がしっかりしなければならないものじゃないかと思っておりますが、こういう佐藤会長の発言等もございました。そこで、先般の行政管理委員会でも、社会保険、あるいは陸運事務所、あるいは職業安定所のこういう行政については都道府県に移管をすべきではないか、こういう結論が出されておるのですが、大臣はこの社会保険関係の都道府県移管についてどういうお考えを持っておられるのか、これはあらためてまた別な機会にお聞きをしたいと思いますが、きょうは大臣の決意だけ一つ聞いておきたいと、こう思います。
  52. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 社会保険関係の運営の監督指導をやっております地方事務官の制度につきましてのお尋ねでございますが、この問題は長年の検討事項でございまして、しかし、また社会保険関係行政の実情から、過去においていろいろ検討された結果こういう制度が生まれてきたということにもなろうかと、こう思います。結論から私申し上げるのでありますが、いま私が取っ組んでおりまする医療保険制度の抜本的な改正、これとの関連も実はあることでございますので、私といたしましては、この地方事務官問題につきましては、この抜本的な改正と見合って慎重に検討をいたしたい、このように考えておるわけでございます。  御承知のように、社会保険は、年金にいたしましても、あるいは政府管掌の健康保険にしても、あるいは、また、日雇健保や船員保険にいたしましても、政府の責任で全国的な規模において実施されておる行政でございます。また、国民健康保険の面にいたしましても、御承知のように、保険団体は市町村ということでありまして、市町村に対して政府が定率四割の国庫補助を行ない、また、事務費の補助を行なっておるということで、都道府県とはこれは直接の結びつきのない行政である、国と市町村との関係の医療保険行政、こういうことに相なっておるわけであります。こういうように、他の年金、あるいは他の国民健康保険を除く医療保険の面は、政府の責任で全国的規模においてこれを実施しておる。こういうような観点からいたしまして、私は、この運用というものは厚生大臣の責任において、そして各都道府県地域においてアンバランスのないように公正な運営がなされることが必要である、このように考えておるわけでございます。この点につきましては、臨時行政調査会におきましてのこの結論は、私は必ずしも賛成はしておりませんが、かりに地方事務官を都道府県に移した場合においても、この全国的な広域行政という観点から、これを監督指導するために、新たに都道府県に国家公務員たる職員を数名配置してやらなければいけないということを言っておるのであります。こう考えてまいりますと、この行政改革のために、かえって国家公務員がいまのままであれば要らないのが、二百数十名——三百人近い国家公務員をふやさなければこれを運営していけないような事情になるのではないか、こう思うわけでございまして、私はいまただちに結論は出しておりませんけれども、医療保険制度の抜本的改正とあわせて慎重に検討いたしたい、こう思っております。
  53. 山崎昇

    ○山崎昇君 中身のやりとりはいずれやりますから、きょうは私はきのうの座談会を聞いておりましても、臨時行政調査会でやっておりますのは、何といっても各界各層の代表委員になって二年間も検討されて、それでなおかつ政府からもいろいろ意見を聞いて、その結果都道府県に移管することがいいのではないか、こういう結論が出されて、加えて行政管理委員会でこれを受けてまた検討されて、そうしてその方向についての結論が出されている。政府みずからつくったそういう機関の結論というものを、何か各省大臣がかってといったら語弊がございますが、それと反対の考え方をとるということになると私ども納得がいかぬ点があるわけであります。そこで、やはり大臣としてはそういう結論というものを尊重してやっていかれるという決意なのかどうか。もちろんやるにあたってはいろいろな運営上の問題があるかもしれませんが、いずれにしても、大きく言えばそういう結論に従って都道府県移管の方向でやりますというのが政府のとるべき態度じゃないかと思いますが、その点についての重ねての大臣の御意見だけを聞いて、この問題はきょうは終わっておきます。
  54. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) その点につきましては率直に申し上げましたように、医療保険制度の抜本的な改正、これも国会の御承認を得て行なう制度の大改革でございます。そういうものといま取っ組んでいる段階でございまして、そのことはただちに地方事務官の制度のあり方にも関係があるというぐあいに思いますので、そういう点と関連させながら慎重に検討いたしたい、こう思います。
  55. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会につきましては委員長に御一任を願うこととし、追って公報をもってこれをお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会