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1966-09-12 第52回国会 参議院 建設委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年九月十二日(月曜日)    午前十時二十八分開会     ―――――――――――――    委員異動  九月十二日     辞任         補欠選任      竹田 現照君     伊藤 顕道君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         松永 忠二君     理 事                 石井  桂君                 稲浦 鹿藏君                 山内 一郎君                 小酒井義男君     委 員                 大森 久司君                 奥村 悦造君                 小山邦太郎君                 中津井 真君                 平泉  渉君                 米田 正文君                 伊藤 顕道君                 大河原一次君                 田中  一君                 片山 武夫君                 春日 正一君    国務大臣        建 設 大 臣 橋本登美三郎君    説明員        建設政務次官   澁谷 直藏君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省河川局長  古賀雷四郎君    参考人        東京都建設局部        市改造部長    石井 三郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (建設行政基本施策に関する件)  (八ッ場ダム建設計画に関する件)  (新橋駅前市街地改造事業に関する件) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 松永忠二

    委員長松永忠二君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、竹田現照君が委員を辞任され、その補欠として伊藤顕道君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 建設事業並びに建設計画に関する調査議題といたします。  初めに、建設大臣から、建設行政基本施策について所信を承りたいと存じます。
  4. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) このたび、内閣改造にあたりまして、建設大臣を仰せつかりました。私、その方面につきましては全くのしろうとでありまして、皆さんから教えを請わなければならないことが多々あることと存じております。凡才にむち打ちまして、皆さんの御協力を得て仕事をいたしたいと考えておる次第でありまして、従来ともに当建設委員会皆さんにたいへんな御協力を願って、順調に仕事が進められておりますことを心から御礼を申し上げるとともに、今後とも御協力あらむことをお願い申し上げます。  この機会に、私が考えております建設行政に関する基本的な考え方を申し述べまして、皆さんの御協力と御批判をいただこうと考えておる所存であります。  私は、建設行政使命は、農村地域都市地域の均衡ある開発に留意しつつ、道路河川住宅下水道公園等公共施設整備拡充中心とする総合的な施策推進することによりまして、産業経済及び国民生活基礎をつちかい、もって豊かな住みよい国土建設することにあると考えておりまするが、これは、政府の最重点政策であるところの社会開発の中核をなすものであり、その責務の重大さを痛感する次第であります。  このような使命を達成するためには、産業活動及び国民生活の今後予想される著しい変化に対応し、長期的展望のもとに、諸施策推進する必要がありますので、先般、今後の所管行政の指針として、国土建設長期構想についての試案を取りまとめた次第であります。  すなわち、およそ二十年後には、わが国の国民総生産は約百四十兆円に達し、一人当たり国民所得は現在の西欧水準をこえるものと考えられます。この間に産業構造は急速に高度化し、全国を通じて都市化が進行するものと推定されますが、このような都市化の進展と地域間交流の増大に適切に対処するためには、都市化に伴う地域発展趨勢を正しく評価し、そのエネルギー計画的に誘導し、秩序づけながら国土全体の効率的な開発をはかる必要がありますので、大都市地域にあっては過密の弊害を避けつつ国民経済及び国際経済に占める高次の役割りを十分に発揮させ、地方中枢都市その他地方都市においても都市化エネルギーを分担させて積極的に発展をはかるとともに、特に地方住民の福祉を確保することを重視することとし、農村地域においては、農村関連都市を充実させるとともに、農業近代化を促進するため、日常生活及び産業基礎的条件整備する必要があると考えます。  また、経済活動広域化を促進し、地方産業活動を効率化するため、地域間の交通条件改善して、住民生活及び産業の諸活動の機長を増大させ、国土全体の利用度向上をはからなければならないと考える次第であります。  このような長期的構想に基づいて今後施策を進めていく所存でありますが、以下当面の施策につきまして申し述べる所存であります。  住宅は、国民生活基礎でありますので、住宅事情改善し、国民の要望にこたえることは、政府に課された重大な使命であると考えております。  御承知のように、政府は、さき通常国会で成立いたしました住宅建設計画法に基づいて、先般住宅建設五カ年計画を閣議決定いたしましたが、今後この計画に基づく住宅建設を積極的に推進するため、公的資金による住宅供給の着実な実施を期するとともに、民間自力による住宅建設を積極的に促進し、あわせて質の向上をはかる所存であります。  すなわち、公的資金による住宅につきましては、低所得者に対する公営住宅並びに都市勤労者に対する公庫融資賃貸住宅及び公団賃貸住宅建設拡充をはかるとともに、スラム地区解消のための住宅地区改良事業推進に努力いたす所存であります。  また、持ち家の取得を促進するため、住宅金融公庫個人住宅融資公庫公団分譲住宅等拡充をはかりたいと存じますが、特に農山漁村における住生活近代化をはかるため農山漁村向け住宅融資を増大していく考えであります。  道路につきましては、国土の総合的な開発と均衡ある発展をはかるためには、道路整備が緊要であり、その推進につとめているところでありますが、高速自動車国道につきましては、さき通常国会において成立した国土開発幹線自動車道建設法において定められた予定路線のうち、東北縦貫自動車道ほか五道については、すでに整備計画を決定し、日本道路公団施行命令を発し、事業の促進をはかっている次第であります。  さらに、道路交通需要量的拡大質的変化趨勢に対処し、輸送能力画期的拡大をはかり、もって国土有効利用流通合理化及び交通難解消等国民生活環境改善に寄与するため、この際現行の道路整備五カ年計画を根本的に改定して、新たに昭和四十二年度を初年度とする道路整備五カ年計画を策定したいと考えております。  この計画におきましては、産業基盤施設としての高速自動車国道一般国道及び都道府県の整備を促進するとともに、流通改善のための道路地域住民日常生活に密接な関係のある市町村道につきましても十分配慮する所存であります。  河川は、申すまでもなく治水は、国政の基礎であり、民生の安定をはかり、国民経済の繁栄の基盤を確立するためには、災害のない国土建設が必要であります。  最近における激甚な災害発生と、河川流域における人口資産等の急増に対処するため、特に中小河川重点を置いて、治水事業を積極的に実施するとともに、災害復旧事業早期完成水防体制整備河川管理強化等について所要の措置を講ずる所存であります。  また、増大する水需要に応じ、水資源の積極的な開発をはかるとともに、広域的な水利調査推進し、国土開発の前提となる水資源開発長期計画を策定する等河川行政各般にわたり、積極的な施策を講ずる所存であります。  近年における地価高騰が、公共投資の効率を低下させ、国民生活の安定と国民経済発展をはかる上で重大な障害になっていることにかんがみ、地価高騰を抑制し、その安定をはかるための諸施策を強力に推進する所存であります。  このため、住宅金融公庫宅地造成融資拡充土地区画整理による宅地開発推進等公的な宅地供給推進をはかるとともに、民間による宅地開発助成措置強化を行なう所存でありますが、さらに、公共施設整備された良好な宅地開発既成市街地環境整備及び高度利用を強力に行なうため、新たに公的機関体制整備をはかりたいと考えております。  また、これらの施策をより効果あらしめるためには、土地収用法改正土地についての税制の改正等の総合的な施策を強力に推進する必要のあることは申すまでもないことと存じますので、これらのすみやかなる実現を期待いたしておる次第であります。  産業構造高度化に伴う人口及び産業都市への集中は必然の趨勢であり、都市対策は、現在及び将来における重要な課題であると考えられます。  都市問題を解決するための基本的方策として、土地利用計画の確立をはかり、必要な規制を強力に行なうための法制の整備を行なう所存であり、特に既成市街地土地利用合理化及び都市機能の増進をはかるため、広域かつ総合的な都市開発事業実施するための制度を検討いたしたいと考えております。  また、立ちおくれの著しい下水道整備を促進し、都市生活環境改善をはかるため、新たに昭和四十二年度を初年度とする第二次下水道整備五カ年計画を策定いたしたい所存であります。あわせて、緑地を確保し、児童の遊び場を整備し、青少年の体力の向上に資するため、児童公園、運動公園及び河川敷緑地等整備を促進する所存であります。  なお、大気汚染水質汚濁地盤沈下等公害発生の著しい都市につきましては、公害防除のための都市計画を策定して、具体的な公害対策推進する所存であります。  以上、建設行政に関する当面の施策の概要について申し述べましたが、豊かな住みよい国土建設するために微力を傾ける所存でありますので、各位におきましてもよろしく御協力あらんことを心からお願い申し上げまして、ごあいさつにかえる次第であります。
  5. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 次に、澁谷建設政務次官から発言を求められておりますのでこれを許します。澁谷建設政務次官
  6. 澁谷直藏

    説明員澁谷直藏君) 今回建設政務次官を拝命いたしました澁谷直藏でございます。  きわめて重大な責任を持つ建設行政推進のために真剣に力を傾けてまいりたいと考えております。委員各位の御指導、御協力のほどを心からお願い申し上げる次第であります。
  7. 松永忠二

    委員長松永忠二君) ただいまの建設大臣所信に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  8. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 次に、八ッ場ダム建設計画に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次発言を願います。  なお、建設省から建設大臣のほかに、古賀河川局長が出席しております。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は、いま問題になっております群馬県吾妻川に計画されている八ッ場ダムの問題について、大臣中心にして二、三御質問したいと思います。利根川総合開発計画の一環としていま沼田ダム建設が進められておるわけですが、この建設計画に対して、群馬県知事は、地元のあのような大きな犠牲をしいてまでも建設する意思はない、こういうことを先般の県議会で答弁して、その答弁を通して公式な見解を述べておるわけです。また、いまお伺いしようとする八ッ場ダムの問題についても、地元民反対期成同盟をつくって、大体昨年の年末ころから猛烈な反対運動を展開しておるわけです。このように沼田あるいはこの八ッ場ダムのいずれにしても、地元民は強い反対をもっていわゆる反対運動を続けてきておるわけです。  こういう情勢の中で、建設省がもしこの地元民反対意思を無視して計画を着々と進めるということであれば、これは国民のための国民の政治に反するきわめて非民主的な措置になろうかと思うわけです。そういうことから、まずもってこの問題に対する建設大臣としての基本的なお考え方をお伺いしたいと思います。
  10. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ダム問題は、皆さん専門家でありますからして、私が申し上げるまでもなく、いろいろな問題を伴ってむずかしい問題であります。ただその国の産業発展し、あるいは国民生活向上してまいりますにつれて水の利用というものが非常な勢いで増大することも、これは皆さん承知のとおりであります。しかも、何せ国が狭いのでありますからして、いわゆる天然の水からとるそれにつきましても自然の状態でとれる範囲というものはだんだんと狭められてきておる、数年前までは、あるいはもっと前までは、奥地において、あまり国民皆さんに迷惑をかけない場所においてダム建設することが可能であったわけでありまするが、先ほど申しましたような産業経済発展、これは当然国民生活向上ということになるわけでありまするが、そういうことのために、だんだんといわゆる国民皆さんに迷惑をかけないでダム建設する地点というものが非常に少なくなったということも、これは御了承を願えると思います。そういうことからして、しかしながら建設省としては、できるだけ国民に迷惑をかけないで済むような措置を一面において講じたいということからいたしまして、おそらく日本ダム行政といいますか、水利用行政では、世界より一歩先んじて、一年間に降る流水量をある程度利用してひとつの水使用のために振り向けるという検討も前からやっており、しかも、それが現実的には確保できるようにあらわれておることも皆さんは御承知のとおりであります。そこで、現在建設省がいろいろな方面の、工業用水あるいは農業用水あるいは一般飲用水等から希望せられておる水の必要量は、昭和四十五年度までは大体百二十トンというものが必要である、これだけの供給をしなければ産業発展に悪い影響を与える、こういう計算昭和四十五年度までの計画が一応なされておるわけであります。  こまかく申し上げなくても皆さんは十分御承知でありますが、一応検討している点を申し上げますれば、矢木沢ダムで十七・六トン、下久保ダムで約十六トン、那珂川、江戸川の流水量で六・八トン、印旛沼の水を利用することで七トン、神戸ダムで十二・六トン、ただいま工事中の利根河口せきで二十トン、こういうことで合計して八十トンというものはまあ一応計画に乗っかって実施計画が進められておるわけであります。したがって、百二十トンのうち八十トンというものは検討がついてすでに工事が始まっておるわけですが、残りはいわゆる霞ケ浦の水を利用しよう、これは第一期計画で十トン、それから思川の流域でもって約二十トン、それといま申しました八ツ場の約十六トンを加えて約四十六トンで、総計必要量の百二十トンという計算になるわけであります。しかし、いま伊藤さんの御質問がありましたように、群馬県下で、あそこはたいへんダム適地があるために、いろいろ群馬県の皆さんに御迷惑をかけておりまするが、沼田ダムにいたしましても、あるいは八ッ場ダムにいたしましても、地元の方々から反対の意向のあることもよく承知いたしております。特に八ッ場の場合は、一つは、関東耶馬渓が阻害される、あるいは川原湯温泉の温泉源が水没するのではないか、こういうような御心配から反対を受けておるわけでありますが、もちろん建設省としては、地元納得を得ないままに強行する考えはありません。できるだけ地元皆さんと十分に話し合って、そこで了解の上で、納得の上でやりたいと、かように考えておりますからして、いわゆる地元民を無視して、いきなり強権でこれを行なうという考えはありませんが、ただいままでだんだんと御説明申し上げましたように、いわゆる首都圏内工業発展、あるいは国民生活上の飲料水等から考えて、どうしても百二十トンの供給の要請があれば、それに沿うだけのことはやっていかなければならない、そういう点で、建設省としては苦労があるわけであります。したがって、もちろん強行でこれをやる考えはありませんが、以上のような事情をも十分に了解されて、そうして地元に対してはなるべく損害を与えない方法、まあこれは検討してみなければわかりませんけれども、そういうような方法によって、なるべく御納得を得たいという考えでおるのであって、その点をもひとつ皆さんにおいても御理解を願いたい。  ただ、最初に申しましたように、だんだんと日本――日本というか、全国的に見ましても、奥地適地ダム皆さんに迷惑をかけないでダムをつくることが非常に困難になってきております。けれども、一応は、ある程度は地元理解を得て実現していかなければ、日本工業発展日本経済発展には必要なものでありますからして、これも一面においては考えていかなければならないとともに、いわゆる年間の流水量をできるだけ利用する。現在、利根川等は、大体一六%ないし一八%の流水量利用であろうと思いまするが、これを河口ぜき、あるいはその他の方法によってどこまで引き上げられるか。これが三〇%まで上げられるか、あるいは四〇%まで上げられるか。もちろんいま申しましたことは、これは四十五年度までの供給量でありますから、これを昭和五十年もしくは昭和六十年、こういう長期構想に立ちますというと、ダムだけによってもちろんこの水を確保することは不可能であります。したがって、思い切った流水量の活用ということが問題となるのではないか。あるいは将来、たとえば渡良瀬遊水地の約三千町歩というものも、これも治水を兼ねて、同時にまた利水にも使える方法検討していかなければならない。あわせて今後十年、二十年の首都圏内工業発展、あるいは生活向上文化発展のための諸施策を講じていかなければならぬ、かように考えておる次第であります。どうか、この点につきましても、この水の専門家である皆さんの心からの御協力を得たい、かように考えておる次第であります。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この八ッ場ダム計画案については、産業計画会議利根川上流ダム計画案なるものをつくっておるわけですが、その内容を見ますると、この産業計画会議は、八つダム建設考えておる。そのうち六つについてはもうすでに完成しておるわけです。あるいはほんの最近、近く、間近に完成されようとしておるわけです。あと残されたのは沼田ダムと八ッ場ダム、こういうことになるわけですが、いま大臣も御指摘になったように、この沼田ダム、八ッ場ダム、残されたこの二つダムについては、私が先ほど強調したように、地元はそれぞれ強力な反対をしておる。そこでお伺いしたいのは、この案は民間のいわゆる産業計画会議の案であるわけです。しかも、八つダム建設案のうち六つはもうすでに完成しており、一つ、間近に完成するものを含めれば、ほとんど完成する。あと二つ残ったわけですが、この二つを、また、産業計画会議案であるものを政府の案としてこれを実施するお考えなのかどうか、そういう問題についても、この際お伺いしておきたいと思います。
  12. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 民間産業会議は、かなり工業用水の問題を中心にして御検討なさっておるようであります。ただ、長期構想でも申し述べましたが、首都圏内で――こまかい点はいまは申し述べませんが、首都圏内工業用水あるいは飲料水農業用水等に今後必要な分というものは、大体において毎秒二百三十トンないし二百五十トンくらいは必要とするであろうというのが、一つの見通しになっております。いま申しましたのは、昭和四十五年度までに百二十トンは要る、残る百十トンないし百三十トンが要るわけなんですが、そこで八ッ場ダムの場合は、建設省がかねてから検討しておったことでありますので、必ずしも産業会議がきめたものを建設省がやっておるという問題ではありません。また、沼田ダムについては、産業会議では、この案を参考意見として政府のほうにも非公式には出されておりますけれども、建設省建設省として独自の観点から考えて、今後検討を進めていきたい、かように考えておりますが、まだ決定の時期ではない、かように御了承願いたいと思います。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 利根川水系のいわゆる洪水の調整については、私がここで申し上げるまでもなく、昭和二十二年九月のいわゆるキャサリン台風のときの洪水の量を基準としておる、こういうことでありますが、これは八斗島地区で一万七千トン・セコンド、そうして、その問三千トン・セコンド上流地区調節する、こういうことになって、八斗島では結局一万四千トン・セコンド、こういうことになろうかと思います。しかしながら、上流においてはもうすでに藤原とか相俣あるいはまた薗原、こういうダムが完成しておるわけです。なお、矢木沢についても近い将来に完成する、こういう情勢であるわけですね。そうなると三千トンしかない、これらのダムでも可能であるというふうに当然考えられる。そこで、これは治水はもう十分であって、これは何といっても八ッ場ダム治水観点からつくる必要はないではないか、こういうことが言えると思いますが、この点はいかがですか。
  14. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) その点、数字上の根拠については、河川局長から具体的に説明いたさせます。
  15. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) お話しのありましたとおりに、利根川は一万七千トンで基本計画を終わっております。これは二十二年のキャサリン台風根拠にしてきめているわけでございます。その一万七千トンのうち三千トンを上流でカットする、ダム調節するということになっております。この計画に従いまして藤原相俣薗原矢木沢下久保等実施してまいりました。現在までおおむね八斗島において二千四百トン程度の効果を出すダム計画が成り立っております。したがいまして、まだ三千トンの調節をやるためには、上流ダム群をつくらなければならぬということになるわけでございます。  なおさらに、この二十二年のキャサリン台風洪水と申しますのは、主として利根川本川上流に降った雨を対象としている。ところが、利根川には上流地域で鳥川、神流川流域及び吾妻川水系及び本川上流という三水系に大きな流域が分かたれます。したがいまして、最近のようないろんな流域状態を、豪雨状態考えますと、いろんな方面からチェックしていかなくちゃいかぬ。三千トンのダム調節量もまだ十分でないのですが、さらに最近のような豪雨の形態、いろんなものを参照しますと、その治水の万全を期するためには、どうしてもさらに検討しなくちゃいかぬということがあるわけでございまして、なおさらに、最近のように流域開発されますと、従来の二十二年の洪水ではたしてよかったのかどうか、あるいは従来からはんらん等ありまして、そういったものをいまさらに二十二年の洪水を再現した場合どういうことになるのかということをいま検討しておりますが、一万七千トンでは足りないんじゃないかという考え方も相当ございます。ただいまそれらの点について検討中でございますが、従来の計画におきましても、上流ダム群をつくって調節する必要があるというふうにわれわれ考えております。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、下流についての治水計画は一体どうなっておるのかということと、この下流治水計画と、この八斗島付近治水計画、それとの関連は一体どうなのか、こういうことについてもこの際明らかにしていただきたいと思います。
  17. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) 先ほど申し上げましたように八斗島で一万四千トンという水を河道基本高水流量といたしております。したがいまして、八斗島から渡良瀬川合流点までは一万四千トンで河道改修をやっております。さらにそこで渡良瀬川が合流するわけですが、それが約九千トンぐらいの流量を持つ川でございますから、これにつきましては渡良瀬遊水地ですべてをカットする、利根川本川に合流させないということで、そのまま一万四千トンを流すことにしております。これもいま鋭意工事を施行中でございまして、ただいま大臣が申されました渡良瀬遊水地の三千町歩の具体的な調節計画を立てまして施行いたしております。さらにそれから江戸川におりまして、江戸川で約五千トンを分配いたします。そして江戸川は五千トンの高水流量で改修をいま実施中でございます。その間さらに残りを利根下流に流すわけでございますが、利根下流におきまして、田中、菅生の遊水地で調節をいたしまして利根下流ではおおむね五千五百トンの高水を流すことになっております。なお、その間におきまして、これはまだ計画が具体化いたしておりませんが、従来からの計画をお話しすれば三千トンの流量を布佐の上流地点におきまして、東京湾に流すという昭和放水路計画がございます。しかし、それはまだでき上がっておりません。でき上がってないし、計画も今後可能性があるかどうかという問題もあるわけでございます。そういうことでございますので、特に昭和放水路との関係で従来から一万トンぐらいの水でも、たとえば三十四年の七号台風等による洪水は、堤防の計画高水をオーバーするというような、下流は危険な状態になっております。河道の改修計画としてはいま申し上げたような計画実施いたしております。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御説明によりますと、藤原とか、薗原相俣、それから矢木沢、こういうダムはすでに上流において建設されてもなおかつ治水の上で不十分だと、そういうふうに建設省としては現状況においては治水上必要であるからと、そういうことを強調されておるわけです。そうだとすれば、先ほど大臣所信表明をされた中にも、治水は国政の基礎であり、民生の安定をはかり、国民経済の繁栄の基礎を確立する、こういうふうに所信を表明されて、民生の安定という点については相当意をいたされているお心持ちがよくこれに出ておるわけです。そうだとすれば、治水上どうしても必要であるならば、最初、もう犠牲を払わないでダム建設することはだんだんむずかしくなってきたという御説明もございました。そういうことであるならば、ちょうど利根郡の薗原ダムについては分散ダム群をつくっておるわけですね。そうして犠牲を少なくしておる。こういう実例もあるわけですから、どうしても治水上絶対に必要だということであるならば、こういう大きな、はかることのできない大きな犠牲を無理にしいないで、分散ダム群奥地につくることによってこの問題を解決し得るのではないか、こういうことが考えられるわけです。こういう点についてはどうなのか。民生の安定という点はいかなる国政においても忘れてはならない問題だと思うのですね。そうだとすれば、分散ダム群建設することによって犠牲をより少なくするということはもう明確だ、利根郡のいま申し上げた薗原ダムはそういう生きた実例を示しておるわけですね。そうだとすればひとつそういう方向を検討すべきではないか、こういうことが当然に考えられるわけです。この点はいかがですか。
  19. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) 私らも、その上流で幾らも小さいそういうダムをつくりましてカットできないかどうかということをいろいろ検討いたしました。御承知のとおり吾妻川の流域は、地形、地質上ダム建設地点が少ないわけでございます。地形的によくても地質的に悪い、あるいは地質的によくても地形的に集水容量が少ないというような問題がございます。ただいま検討しましたのは、須川筋に六合ダム、温川筋に鳴瀬ダムというものを検討いたしましたのですが、鳴瀬ダムというのはもう非常に家屋がつかるようになりましてなかなかむずかしいし、また流域面積も非常に小さいので、洪水調節の目的を十分達しない。したがいまして、検討の段階としましては、六合ダムはまあ比較的いいわけでございますが、これの集水面積も非常に小そうございまして、六合ダムにおきましては約二百二十五平方キロで、いま計画しております八ッ場ダムにおきましては七百八平方キロあるわけでございます。約三分の一程度の流域面積でございまして、したがいまして、八ッ場ダムに高水調節を期待するような効果が六合ダムでは期待できない。それでわれわれも、地元の御要望もございますし、またそうすることも非常にいい方法でございますので、いろいろ検討してみましたけれども、現在の段階では技術的に治水の目的を十分達し得ないということをわれわれとしましては判断いたしております。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この分散ダム群建設については十分意を用いて早急に検討されていただきたいと思います。  なお、建設省としては、この八ッ場ダム計画については、三十四年度から大体予備調査に入って三十九年度から本格的調査に入ったようです、実情を承ると。そういうことでございますけれども、憲法二十二条、二十九条には、それぞれ私が申すまでもなく居住の自由とか、あるいは財産権の保障ということが――もちろんこのことは公共の福祉に関連しておるわけですから、こういう問題も考えにやなりませんが、さてここで問題なのは、地元民の了解あるいは納得の得られないままに、そういう情勢の中で先般岩盤爆破作業が地質調査のために行なわれた。これはもう文句なしに遺憾のきわみだと思うのです。しかしながら、もうこれはやってしまって建設省も――過日建設省に私、参りました際も、遺憾の意を表しておるわけなのです。で、過去をここでいま一度取り上げてそのことを追及するという、そういう考え方ではなくして、こういうあやまちを二度と繰り返さざるよう、この際この機会にひとつ明言していただきたい。地元の了解、納得なしに調査するというようなことは言語道断だ、こういう点をひとつ新任の、この問題に特に理解の深い大臣からひとつはっきりと明言をいただきたいと思います。
  21. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 伊藤さんがおっしゃるとおり、まあ国民全体の利益のためとは言いながら、やはりその国民の一部が犠牲をしいられるということは、これは好ましくないことでありますからして、その国策としてあるいは国民全体の利益向上、民生安定のために必要であるゆえんのものは、十分にこれは説明をし、納得してもらってから、さような強硬手段をとるということで、もちろんこの強硬手段をとることはできるだけ避けていくべきだと考えております。この機会に私、まあ日ごろ考えておりますことは、この長期構想の中でも一つの思想としてあるのですが、明治以来百年間、やはり一応既存の条件で日本産業経済発展国民生活向上ははかられてまいりましたが、これからの百年を考えてまいりますと、一種の国土改造というものを考えて――これは過密都市の問題も含めて考えていかなければならぬと思います。そういう意味において、いわゆるこの種の問題、これは宅地造成の問題も同様ですが、新しい国づくりとしてどういう形でこれらの問題を含めて考えていくか、いわゆるニュータウンといいますか、そういうことまで大きく考えていかないと、これらの問題の解決がつかない。それにいたしましても、憲法上保障された国民の権利というものは十分に尊重し、そうして少なくとも心から一部の国民が犠牲にされたという悪い感じは残さないように、つとめて十分自戒をして仕事をやってまいりたい、かように考えております。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、先般福田大蔵大臣地元の陳情団の方々を相手にお話をした際、地元皆さんが八ッ場ダム建設反対をしておるならば、地元の方々の意思を十分尊重することはもちろん、いわゆる実地調査関係の予算については、大蔵省としては出さないようにする、そういうことを陳情団に対して意思表示をなされておるわけです。これは私が十日の日に地元に行って、また聞きではなくして、直接このことを承っておるわけです。一国の国務大臣が陳情団に対してはっきりそう言っておられる、もちろんそういうことには間違いないと思います。また大臣は、そういうことをその場限りで、約束を破られるというようなことも絶対ないと、一国の大臣がいやしくも国民に対して約束をしたことは必ず実施される、そういうことであるならば、いわゆる実施を前提とした実地調査はできないということになるわけです。来年度は予算を組めないわけです。こういう観点からも建設省は、こういう犠牲の大きいこういう現状のままの八ッ場ダム建設については断念すべきではないか、こういうふうに当然考えられるわけですが、そのことにまた関連してくるわけです。私どもは大きな視野から、いわゆる国土開発に根本的に反対しておるわけでは絶対ないわけです。大臣よく聞いてくださいよ。大臣国土開発のために云々とおっしゃいましたが、これはわれわれ国土開発せにゃならぬ、当然これには協力するわけです。ただ民生の安定ということも、二十二条、二十九条の憲法の趣旨も尊重するということであるならば、最初申し上げた分散ダム群建設することによって犠牲をより少なくする、こういう方法が残されておるわけです。だから、そういう点を真剣に検討すべきであるということを最初申し上げたわけです。こういうたてまえから私どもは建設省としてのお考えをお聞きしておるわけであって、いわゆる現在盛んに強力な反対をしておる中を押し切ってやるべきでないということが筋であるわけです。そういうことで、そのことの関係した一つのこととして、福田大蔵大臣も、地元意思を尊重して、地元反対するならばいわゆる実地調査に関する予算措置はしないということまで大蔵大臣としても意志表示をされておる。こういう中で、建設省としてはここで無理押しをしないで十分、私しろうとでよくわかりませんけれども、たとえば利根郡でもうすでにそういう実証のある分散ダム群をつくるような方法も十分検討すべき余地があるのではないか、こういうことをお伺いしているわけです。このことについてもひとつお伺いしておきたい。
  23. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 大蔵大臣地元における陳情者に対するどういう答弁をしたか、私どもに正式の連絡がありませんので承知をいたしておりませんが、建設省としては、昭和四十二年度に実地調査費を要求をいたしております。もちろん実地調査費を要求したからといって強行のできるものでもございませんので、地元の十分なる納得理解がいかなければ、予算がたとえ計上されましても、実際上にこれを使用するということは不可能の場合も往々にしてあります。したがって、建設省は要求を出しておりますが、たとえこれが予算上認められましても、地元の十分なる理解納得がいかざる限りは、強硬には行なわないという方針で臨みたい。  もう一つ伊藤さんからもお話の、奥地におけるいわゆるダムを、分散ダムといいますか、この点も十分従来も検討してまいりましたが、なおこの機会に十分に調査して、幾らかでも、それでもってある程度の治水の目的が達成されるならば、八ッ場ダムの場合におきましては規模を縮小することも可能でありますからして、なおこれらの問題を十分に検討した上で、慎重に事を運びたいと思っております。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおこの機会にお伺いしておきたいと思いますが、一昨日、九月十一日のこれは地方新聞ですが、地方の上毛新聞、これによりますと、建設省は近く八ッ場ダム計画内容について公表する意図である、こういう意味の報道が記載されておるわけです。そこで、このことについてお伺いしたいのは、この記事を私どもは信用していいのかどうか、これに間違いないのかどうかということを、この機会にお伺いしておきたい。
  25. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) この八ッ場ダムは予備調査も大きなところがほぼ終わりまして、ただいまのいろいろな、八ツ場ダムをつくるためにいろいろな問題点がございます。たとえば、温泉源の問題あるいは農地の問題。泉源の問題につきましては、これは今回のダム湛水におきましてはあまり支障がない。若干わずかだけつかるのですけれども、これはほとんどつかりません。同じだ。泉源が三つあるそうですが、下のほうの二地点の泉源につきましては相当いま湯量が出ておる。上のほうの泉源についてはあまり湯量がないということでございますが、下のほうの泉源につきましても一応確保できる見通しがついております。  それから、特に農地と水田の問題でございますが、これにつきましては、具体的に個所を二、三カ所指定しましてただいま調査を行なっております。土地としては十分できると思いますが、地質上の問題とかいろいろな問題がありますので、いま調査中でございます。そういった段階におきまして、先ほど申し上げましたとおり、利根川の全体的な治水上必要でもありますし、また吾妻川自体の治水上も必要でございます。したがいまして、そういった点を考えまして、われわれもただいま計画を練っておるところでございまして、この計画で一応県とも、地元とも十分意思疎通をいたしまして、具体的にお話し合いができればお話し合いをしたいというふうに考えておるわけでございます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 長野原の町の問題ですが、長野原町の議会としても、先般から八ッ場ダム建設反対の決議を上げておるわけです。このことについては建設省も御承知だと思いますが、ただ単に地元の関係の方々が反対しておるということではなくして、長野原町の議会がそういう反対決議を上げておるということは、町ぐるみ反対である、町の総意である、そういうふうに見なければならぬわけです。そうだとすると、ただ単に水没される土地を持った関係の方々だけの反対ではないと思う。町ぐるみの反対だということがここで筋を通して言えると思う。そうだとすると、これは単なる関係の方々だけの問題ではなく、町全体の問題である。この問題に対して建設省としては一体どう考え、どう対処されようとしておられるのか。この問題についてお伺いしておきたいと思うわけです。
  27. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) 長野原でそういったダム反対の決議がなされたことも承知いたしております。ただ反対のいろいろなお話を承わりますと、若干ニュアンスの違う点もございまして、われわれとしましては、この点を十分今後県とよく話し合いまして、県の考え方、あるいは県は当然町とお話し合いになると思いますので、そういった段階を尽くしながら、どういうぐあいに今後持っていくべきかということを検討してまいりたいというふうに考えております。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたいのは、この川原湯温泉の温泉源ですね、泉源は一体どういうことになるのか。中央温泉研究所の調査によると、これはもう絶望であるということを証明しておるわけです。そうだとすると、川原湯という温泉源に資源を置いて生きておるこの長野原町の方々は、全然今後の生活が破られてしまうという羽目になるわけです。これはなかなか補償するとかそういう問題じゃない。畑ならまた別地にということも考えられますが、温泉源は、どこ堀っても温泉は出るわけじゃない。そういうことになると、こういう問題からも、これはこれだけの理由で申し上げておるのじゃなくして、こういう困難な問題も存在しておるということをひとつ申し上げておるわけです。この点についてはどうお考えですか。
  29. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) 八ッ場ダムをつくりますとすれば、やはり一番の問題点は泉源対策をどうするかという問題だと思います。泉源が確保できるのかどうかという問題だろうと思いますが、この点につきまして、われわれとしましても、非常に将来の長野原の発展、あるいは川原湯の発展等に関しまして重要な問題でございますので、慎重を期しておるわけでございまして、ただいま伊藤先生から、温泉研究所の報告によると、ダムができた場合だめになるというお話でございますけれども、その辺のお話をよくわれわれも検討いたしたいと思いますし、ただいまの段階では、川原湯の泉源につきましては、ほとんど水没をしない。非常な大洪水の場合には、あるいはつかるかもしれない。普通の洪水、いわゆるわれわれが計画している――大洪水の場合は考えられるかもしれませんが、その他の洪水につきましては、ほとんどつからないということになる、おそらく泉源は水没しないということになると思います。その辺につきまして、従来からの、たとえばダムをやった地点における温泉の状況、鬼怒川のダム、そういったものにつきましていろいろ調査してみますと、ダムをつくっために泉源を増した、泉源が増量したという話はよく聞きますけれども、あるいは洪水があったために泉源が非常にふえたという話はお聞きしますけれども、そういう点で、先ほど伊藤先生の申されました泉源の研究所、研究機関による調査につきまして、十分お話を別の機会にお伺いしまして、善処したいと、かように考えております。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、いま御指摘申し上げた川原湯付近は、吾妻渓谷として、また関東耶馬渓の称のある景勝の地で、天然記念物の指定を受けている、いわゆる、いうところの文化財であるわけです。で、現地に行かれた方はよくおわかりのように、あの駅のすぐ直前が温泉になっている、交通きわめて便利であって、長野原町はあげてこの温泉で生きておると言っても過言ではないわけです。こういう吾妻渓谷がいわゆる水没になるということになると、これは簡単に水資源のために、治水のために必要だからということだけでは済まされぬ問題だと思う。最初申し上げたから同じことを繰り返しませんが、ほかに研究の余地が十二分にあるわけです。こういう意味からも、ひとつ十分建設省としては前向きの姿勢で、この際考え方を改めていただきたいと思う。ただ単に計画をずるずると進めるということではなくして、前向きの姿勢で、こういう文化財を犠牲にしないでも済む方法が、たとえば最初言った分散ダム群建設とか、ほかにもあろうかと思いますが、そういう極力犠牲を――絶対にしいないでというところはあり得ないかと思いますけれども、あまりにもこの犠牲が大き過ぎる。温泉源については、いま、おそらく大洪水でもない限りは何とかなりそうだという意味の御答弁があったわけですけれども、それは何人も保証できないわけです。ただ推定であるわけです。しかも、こういう渓谷が水底に沈んでしまう。これは長野原町としては衰微の一途をたどる以外にないわけです。だからこそ町をあげて一丸となって反対決議まで上げて、一丸の反対をしているわけです。こういうたてまえからも十分に検討されてしかるべきだと思うわけですが、この点についてもお伺いしたい。
  31. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) 八ッ場地点の上流関東耶馬渓と称せられまして非常に渓谷美を誇る地点であるということは承っております。したがいまして、一応われわれの考え方といたしましては、治水上あるいは利水上どうしてもダムが必要でございます。それらの文化財あるいは関東耶馬渓と称せられます天然記念物、そういった問題等も十分今後協議をしなければいかぬというふうに考えております。したがいまして、それらの計画の設定、それらに対する協議というものはまだ終わっていないわけでありまして、いまの段階でまず地元の御納得が得られるかどうかという点を、先ほど大臣も申されましたように、今後十分御了解を得た後にそういった問題に入れるだろうと思います。ひとつその点は今後とも注意してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  32. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 河川局長の説明を補足いたしますが、いま伊藤委員がおっしゃること、いわゆる関東耶馬渓の名称なるものに影響がないかどうか、並びに温泉源、それに対して影響があるかどうか、その問題はかなり地元にとっては重要な問題だと思います。したがって、これをやるかやらないかという前に前提条件があるだろう、話を進めるにしても。もちろん、これは絶対に寸土も土を譲らないのだ、こういう問題なら別ですけれども、いま申したような関東耶馬渓といわれる地点は、温泉源等が何らかの方法で保存され、あるいはかえって環境の美を増すということがある程度理解されればまた問題は別途あり得ると思います。しかし、いずれにせよ、そこまでまだ実際上の問題で各方面との検討がいっていないようであります。したがって、そういう問題がある程度目鼻がつかなければ実際上の実地調査ができるものでもありません。そういう意味で伊藤委員のおっしゃるような問題をまず前提として研究調査をし、そうしてたとえば分散ダムの問題等も十分に検討した上で、それにしてもどうしてもこれだけのものは足らない、あるいは関東耶馬渓のことにしても、どういう方法地元の人が納得できるかどうか、あるいは温泉源の問題もまあまあ原則として支障がないということが、科学的にも実際的にも証明されるかどうか、そういうことを十分に考えた上で実地問題についても、調査問題についても話し合いを進めていく、大体ダムの問題、そういう前提条件の解決方が私は先決だろうと思います。将来、岩本ダムあるいは沼田ダムという問題も二千数百戸が埋没される、また鉄道等も水没地帯に入る、こういう問題でそこにダムをつくる、水が必要だということが前提としてあっても、やはりその前に民生の安定あるいは民生の転換が地元の人によって納得されるかどうか、そういう問題をまず考えないとダムの問題は非常にむずかしいのじゃないか。技術だけの問題ではない。その意味では総合対策が必要である、こういうことを考えて、その上でいわゆるダムの問題に取り組む。したがって、伊藤委員から注意のありました点は、十分に今後とも念頭に置いて、しかもそれを一つの前提として十分検討した上で事を進めていく、かような態度をとっていきたい、かように考えております。
  33. 田中一

    ○田中一君 いまの建設大臣の答弁、その前提があって初めて国民納得せられると思う。あなたが大臣になる前の大臣は、公共工事公共施設あるいは公共事業という名において常に国民の直接な利益、利害から、広く言うと、いま伊藤委員が言っているような文化財にしても、それから自然な姿にしても、全部こわそうというような強硬意志がある。橋本さん、あなたは宮居長官を長くやったものだから非常にあなたの考え方はよろしいですよ。そういう考えで公共事業を行なうことは、一番これは政治の姿だと思う。いままでの歴代大臣は、常に実力をもって、権力をもって並行しようという形がある。だから、いままであなた方のそばにいる局長連中は、どうも大臣の命令だからやむを得ず強く出てくるようなわけなんですけれども、あなた建設大臣になって非常によろしい。そういう気持ちでひとつ対処してほしい。直接の利害というものも、いわゆる憲法上の財産権の問題もありますけれども、少なくとも、再び得られないような自然というものを破壊するなんということはあり得ないことなんです。これはアスワン・ダムの例を見てもわかるとおり、諸外国においてもそれを行なっております。私が申し上げたいと思っていることをあなたが先に言ってしまったから、これは非常にいいと思いますけれども、どうかひとつその姿勢で公共事業を行なっていただきたいと思うんです。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この計画については、建設省としては、繰り返しお伺いしておるように、治水のためだと言われておるわけです。にもかかわらず、実際はそのねらいは利水にあるのではないか、こう考えざるを得ないわけです。なぜならば、この産業計画会議のメンバーを見ますれば明確のように、いずれも一人残らず独占資本主義者で網羅されておるわけです。しかも、純然たる民間団体である。その計画案建設省が一〇〇%取り入れておる。これはここにも問題があろうかと思うんです。一体建設省としては利水、治水について全国的な視野で計画を立てられてあるのかないのか。そういう具体的な案についてはどうなのか。常にこの民間団体である産業計画会議の案を取り入れておるのか。その利根川八つダムについては、少なくも八つのうち六つはその計画案通りに実施しておるわけです。あと残された沼田ダム、八ッ場ダム、この二つが万が一強行ということになれば一〇〇%取り入れることになる、利根川水系に関する限りですね。おそらく沼田ダムについても八場ダムについても、いままで述べられた大臣のお考えからすれば、こういう無謀なことはやらないと、そういう感じを受けたわけです。そのことをさらに深追いする意図はございませんが、一体この産業計画会議建設省との関係はどういうことなのか、こういうことを御指摘申し上げざるを得ないわけですね。この点はどうですか。
  35. 古賀雷四郎

    説明員古賀雷四郎君) われわれとしましては、国全体の治水事業がどうあるべきか、それから水資源開発がどうあるべきかという大きな観点に立ってものごとを判断しているわけでございまして、産業計画会議とは関係ございません。従来から産業計画会議に盛られておる、できた、また施行中のダムにつきましては、治水上の要請でわれわれが先にやったんでございまして、それをたまたまダム計画の中に入れてあるということでございます。八ッ場ダムにつきましても、従来から利根川治水、利水の観点から、たとえば八ツ場あるいは本庄、岩本、それらの地点につきまして、あるいは実施いたしました六つダムにつきまして、それぞれ調査を二十二年以後逐次やってきた問題でございます。この八ッ場ダムにつきましても、昭和二十七年からわれわれとしまして実施いたしております。その後八ッ場ダム上流の水質改善の問題がございまして、これは品木ダムというダムをつくりまして、あそこの酸性を中和しまして、従来酸性が二・幾らというのを大体六から七ぐらいまでに中和できたわけでございます。従来の状態では八ッ場ダムは不可能である、六とか七とかなればダムができるということで三十九年に再開したわけございます。そういうわれわれとしましては利根川全体の治水、利水上あるいは大きくいえば全国的な治水上の観点からどうあるべきかということでいろいろ建設省自体の考えとして調査を進めておるわけでございまして、決してその辺関係がありませんので、誤解がないようにしていただきたいと思います。
  36. 松永忠二

    委員長松永忠二君) ちっと速記とめて。   〔速記中止〕
  37. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 速記つけて。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の制約が大いにあるわけで、時間を相当超過いたしましたが、最後に強く要望申し上げて本日のところ私の質問を終わりたいと思いますが、臨時行政調査会は、官房長官時代よく大臣も御存じのように、いわゆる行政の民主化とかあるいは簡素化、効率化、こういうことを強く強調されておるわけであります。これを受けた佐藤内閣も効率化、民主化、簡素化、こういう点については機会あるごとに主張されておる。そうだとすれば、私がいままでお伺いしてきたこによって明らかなように、地元はあげて反対意思表示をしておられる、こういう反対地元民の心を心としてこれを政治に反映さしてしかるべきだと思うわけであります。こういう観点から建設大臣としては、この八ッ場ダム建設については、今後も十分、これを強行すればはかり知れない大きな犠牲をしいるということになりますから、この点を心して、繰り返して申し上げるように、分散ダム群とか、その他専門的な視野から考えて、八ッ場ダムじゃなくて犠牲の比較的少ないそういう方法を十分考えることを前提として今後意を用いられるよう心から要望申し上げておきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  39. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 本件に対する質疑は、この程度にとどめます。
  40. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 次に、新橋駅前市街地改造事業に関する件を議題といたします。  本件に関し、東京都建設局都市改造部長石井三郎君を参考人として出席を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、政府側から橋本建設大臣及び竹内都市局長、また参考人石井三郎君がそれぞれ出席いたしております。  本件に対して質疑のある方は、順次御発言を願います。
  42. 田中一

    ○田中一君 この法律は、御承知のように三十六年四月十八日当委員会で可決されたものであります。そこで最初に申し上げたいのは、この法律の審議にあたって、最後に附帯決議をつけております。その附帯決議をちょっと読み上げますと、こうなっております  こういう附帯決議がついております。  そこで、明日落成式を控えた新橋駅東口の市街地改造事業は、いままでの経緯から見て管理処分あるいはその他の条項について法律違反を犯している点が多々ございます。一つ一つ列挙してもいいのでありますが、そのうち地元民の陳情あるいは反対等から、内容を緩和しまた引き下げたものもあります。一つ一ついま申し上げますから、東京都はひとつ十分にお考えおき願って、そうして担当の建設大臣から答弁を願いたいと思いますが、それに先立って先般委員会から要求しておきました資料について、大体の説明をしていただきたいと思います。
  43. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) お手元に「新橋駅前(東口)市街地改造事業関係資料」というガリ版刷りの資料がお配りしてございますので、これにつきまして簡単に御説明いたしたいと思います。なお別途参考までに冊子をお配りしてあります。  第一が事業経過の概要でございますが、三十六年に都市計画決定、事業決定をいたしまして、その後地元と交渉を進めまして三十九年に事業計画について大臣の認可並びに公告をいたしております。さらに三十九年十一月に管理処分計画について大臣の認可をいたしております。四十年、四十一年にかけまして、四十年に着工いたしまして四十一年八月二十五日竣工いたしております。で、四十一年九月一日に従前の権利者――そこにおりました従前の権利者に対しましてビルの引き渡しをいたしております。さらに四十一年の八月二十九日から九月五日に保留床――保留床と申しますのは建物のうち権利者に代物弁済として渡します床以外の部分でございます。その保留床の特別の者に対します特別公募、さらに九月十二日から九月三十日に一般公募をやる予定でございます。  計画の概要といたしましては、そこに整理前と整理後と書いてございますように、公共施設は、整理前が九千四百二平方メートルのものが一万九百九十平方メートル、それから建物につきましては、延べ面積のところだけ申し上げますと、八千五百四十二平米のものが四万四百四十四平米のものになっているわけでございます。  資金計画といたしましては、その次のページにございますように、全体といたしまして八十四億四千五百万円かかっておりますが、右の支出の欄のところでございますが、八十四億四千五百万円かかっておりますが、それに対する財源といたしましては、左に書いてございますように国庫補助金、都の負担金、国鉄の分担金、保留床の処分金、それから都の単独負担金というようなものでまかなっているわけでございます。  四番目に譲り受け希望申し出の状況がございます。これは法律によりまして、従前の権利者はビルに入居する権利を取得する、あるいはビルに入居するということを申し出ることになっておりまして、その申し出に対しましてビルの床を与える、あるいはビルの床に入居させるということになっておりますが、まず一、(イ)のほうに書いてございますのは権利者ということであります。これを見ますと、所有権者、借地権者、建物の所有権あるいは建物占有権、それぞれ分かれておりますが、全体に対しましてビルの入居の申し出をした者の数が書いてございます。  それから(ロ)のほうは借家権者でございますが、借家権者は従前の家主がビルの権利を取得します場合にはその家主のところに入居するわけでございますし、従前の家主が外へ出ていってしまうという場合には都が借家権を与えることになっておりますが、それの状況が書いてございます。  それから次のページの五番目は、施設建築物の床の配分の概要でございます。これは御承知のように、ビルは専用床とそれから共用部分とに分かれておりますが、ここでは専用部分の床の配分の状況を示しているわけでございます。これに対応いたしまして共用部分が当然ついてくるということになるわけでございます。最初の行に書いてありますのは権利床の床面積、それから次に書いてございますのは保留床の床面積でございまして、そこに三欄に分かれておりますが、第一欄が疎開者に対する特別公募の床面積、二番目が権利者に対します特別公募の床面積、三番目に書いてありますのが一般公募の床面積ということになっております。これは第一ビルでございますので、第一ビルの専用面積は総計で、一番右の下に書いてございますように、一万五千六百平方メートル。このほかに、注に書いてございますように、共用部分が一万七千六百平方メートルあるわけでございます。  次のページに第二ビルの状況が書いてございます。これも同様な書き方で書いてございます。  それから次のページにまいりまして、保留床の分譲価格が書いてございます。保留床の分譲価格は、建築物の施設費並びに用地の取得資金というようなものを各保留床に案分して決定するわけでございますが、そこに書いてございますように、店舗、事務室、住宅というふうに分かれて、各階ごとに差をつけて分譲価格をきめております。  それから一番最後のページに、保留床の処分(公募)の概要というものがございます。  (イ)は特別公募というものでございます。これは新橋の駅前近くには、戦争のときに強制疎開を受けた者がございまして、これに対しましては、しばしば当委員会でも問題になったわけでございますが、強制疎開者に対します特別の措置でございます。強制疎開者に対しまして、特別に保留床を分譲しようというものでございます。それからもう一つは、権利床の入居者でございます。権利床の入居者に対しましても、この事業の遂行に協力したということもございますので、権利床の入居者に対する特別公募、それから東駅前広場事業の関係者に対する特別公募、三つに分かれております。それで、これに対しましては、特別分譲の部分といたしましては、いずれも一人一区画ということでやっております。代金の支払い方法につきましては、原則としては即金でございますが、分割希望の場合には、契約時一〇%で、残りは二十年間の元利均等償還でよろしいと、こういうことになっておるわけでございます。  一般公募につきましては、そこに書いてございますように、合計八十三区画、八千六百三十九平米が一般の公募の対象になるわけでございますが、これにつきましては、原則として即金、分割希望の場合は、契約時一〇%、それから引き渡し時四〇%、残りの五〇%を五年で割賦償還というような条件になっているわけでございます。  以上でございます。
  44. 田中一

    ○田中一君 そこで、具体的な問題について申し上げますが、第二号ビルの入居者の問題です。法律には、御承知のように、借家条件の協議事項ということが第四十三条に明記してあります。この内容はいろいろこまかく書いてあります。いわゆる借家権者が損をしないように、また再び戻ってきて負担し得る家賃で営業できるようにということが四十三条、四十四条に出ております。そこで、この協議が行なわれたかどうか。これはむろん協議が不調になった場合には裁定が持たれることになりますけれども、この点の手続は行なったかどうかという問題を、ひとつ最初に伺いたいと思うのです。東京都に聞くのか、あるいは政府に聞くのか……。
  45. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 私、東京都の建設局の都市改造部長石井三郎でございます。  平素、先生方各位には、東京都の建設事業に関する法律並びに予算案等について、いつも御高配を賜っており、御支援のほどをこの機会を借りまして感謝申し上げる次第でございます。  それから、ただいまの質問のお答えに入らせていただきます。  二号ビルの入居者に対して、その入る方々と借家の条件その他について、いろいろ協議をしたかと、こういう内容に田中先生の御質問を受け取るわけでございます。このことにつきましては、現在二号のビルに入る方々と話し合いは数多く行なったとは言うものの、円満にそれでは入りましょうというふうな空気になっておらないのでございます。この家賃その他について、という先ほどの内容でございまするが、家賃につきましては、一坪が七千六百円でございます。そうして付近類地の、やはり同じような地下一階の、新橋であるとか、有楽町であるとか、ああいうような大体類似性を持ったビル数カ所について調べましたところによりますと、どこのビルも大体家賃で一坪一万円を下回るようなところはないのでございます。そういうようなことからしますと、家賃というものについては高くない、こういうようなことが申し上げられる。ただここで、その二号ビルに入る方々においては、新橋の駅から地下の公共歩道を通って都営の地下鉄に直結するような交通の施設がまだない、こういうような点について御不満があるようであります。
  46. 田中一

    ○田中一君 委員長参考人に質問以外の答弁をしないように注意してください。  私が申し上げているのは、借家人と借家条件についての協議を行なったかどうかということを聞いているのです。
  47. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 行なったわけでございます。
  48. 田中一

    ○田中一君 その結果どうなったか、報告してください。
  49. 石井三郎

    参考人石井三郎君) その結果は先ほど申し上げましたように、円満なる満足をいただいている状況ではございません。
  50. 田中一

    ○田中一君 それがこの法律にあるように、これに対するあなたのほうの手続というものは全部済ませましたか、法律で規定しておりますところの。
  51. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 手続については、法律に従ったものについては、ただいま全部終わらないものもありますが、大かたその最終の段階に到達しようとしている状態でございます。
  52. 田中一

    ○田中一君 九月五日までに申し出をしろということを言っておりますけれども、あなたのほうで明示した条件というものを全部のんで、大部分の者が申し込みをしたのじゃないのですか。
  53. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 三十一のこの区画の関係のうち、六区画の関係の方は入居していただいております。二十五区画の方については、いろいろ希望がございまして、その希望について満たされる状態にまだなっておらないということでございます。
  54. 田中一

    ○田中一君 そうすると二十幾つかの人たちは、その日までに申し出をしないから、これは希望がないものと一いわゆる法律にありますところの希望しない者という項目に入れて、それでそれはもう入らないという前提で考えているのですか。
  55. 石井三郎

    参考人石井三郎君) この九月六日より協議を続行しております。入らないというようないま断定をしているわけではございません。
  56. 田中一

    ○田中一君 近傍類地の家賃という問題が出ておりますが、その近傍類地の家賃というものを調査評価した公文書がございますか。いま抽象的に近所を調べたら一万円ぐらいが普通だということを言っておりますけれども、どのビルが幾らでどういう条件でやっているということを都が調査したのか、あるいは第三者に調査さしたのか、それらのものは公文書として出ておりますか。
  57. 石井三郎

    参考人石井三郎君) これは単なるうわさでございませんで、具体的に何番地に存する何ビルの地下一階がどうであるというように都の調査したものでございます。
  58. 田中一

    ○田中一君 それをひとつ次の機会に委員会に出してほしいと思うのですが、委員長、ひとつそれをもらってください。出せますか。
  59. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 出すことにはちゅうちょする理由はございませんから、出します。
  60. 田中一

    ○田中一君 次に、二号館に居住しておって、借家希望の者が……、立ちのきの条件というものがどうなっておるか、伺っておきたい。立ちのきの条件。当然これは管理処分計画をする前に、一定の時期に居住、借家を希望する者がおるわけです。借家を希望しない者もおる。借家を希望しない者の立ちのきの条件、それから希望する者の条件というものはどうなっておるか、伺っておきたいと思います。
  61. 石井三郎

    参考人石井三郎君) この二号ビルに借家を希望される方は、あるいは希望されないでよそに行かれる方々、そういうものについての補償の内容と思いますが、従前住んでいた方々でよその地区に行かれる方については、新しく家屋を求めるに必要であろうというような金額を補償要綱にのっとりまして補償してございます。しかし、新しくできます二号ビルに入居される方については、新しいビルに入居するために要する金ということは特にないのでございまする関係上、補償はしておらないわけでございます。
  62. 田中一

    ○田中一君 そうすると、借家人の借家補償というものは、希望する者には払っておらないわけですね。
  63. 石井三郎

    参考人石井三郎君) この借家補償ということばの表現いかんにもよりますが、要するに出ていって家を求めるために必要な金というものは、外へ出て行った方にはお払い申しておる。二号ビルを利用される方々はお払い申してない、こういうことでございます。
  64. 田中一

    ○田中一君 そこでこの法律の二十四条にはこうなっております。「管理処分計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、建築施設の合理的利用を図るように定めなければならない。」となっております。むろんこれは、管理処分計画は、譲り受け人または借り受け人ともにこれは適用されるものであって、現在の二号館が災害を防止し、衛生を向上するような施設になっておりますか。私が見たところによりますと、災害を招くためにあるような施設のように見受けられるわけです。たとえばですね、これはせんだっても建設省から来てもらっていろいろと説明を聞いてみると、これはもう地下一階は一方出口です。一方階段です。そうしてそこに小さな三坪くらいの店舗がずらっと並んでおる。大体その避難階段というものは別途つくるのが正しい、安全な、災害を守る、火災等の場合を考えても出口が、逃げ道があってこそ初めていいわけです。この建物を見ますと、一方入口でもって何も出るところがないでしょう。これは少なくともここにある災害を防止するためのものでなくて、災害を招くための建物と言わざるを得ないのです。この点はどうですか。
  65. 石井三郎

    参考人石井三郎君) ただいまの、元来こういう事業が、災害防止と衛生の向上というような、その他居住が文化的になるというような意味合いであることは、これは承知しておりますし、当然そうでなければなりません。ただいま御指摘あられましたことについては、そういうことと違うのではないか、こういうことでございます。この点につきましては、いま早急に計画決定になり、事業決定に進もうとしておる駅前の、いわゆる広場の計画というものが完備すれば一そう環境的にはよくなるわけでございますけれども、現段階ではこの災害防止、衛生向上と、こういう点については、法規的には許されるといえ、理想的であるというようなわけにはまいっておらないということを感ずる次第でございます。
  66. 田中一

    ○田中一君 そうすると、いま二十数名ですか、まだ申し込みをしない、借り受け希望者の申し出というものが話がつかないというのはその点にあるんではないですか。
  67. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 二十五区画の方々と話し合いがつかない、九月六日以来やっておってつかないというポイントは、まさに御指摘のとおりでございます。
  68. 田中一

    ○田中一君 そうすると、事業施行者の東京都としてはどういう責任をおとりになるつもりなんですか。
  69. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 東京都といたしましては、ただいまこのわら半紙のプリントにもございますように、一号ビルと二号ビルとございまして、一号ビルのほうが大きく二号ビルのほうが小さいのでございますが、このビル二つを早急につなごうとしております。地下をつなごうとしております。そうしますと、一号館に入ったお客さんは二号館にも入れる、行ったり来たりできる、お客がそれぞれ便宜に通じ合うということは、一面災害の防止にも役立ち、また、そういう方々の営業の面でのつまりお客を吸収するというような面において改善を見るものであると、さように考えまして、早急にこの九月の議会に、現在付帯条件が付せられておる条件を解くような運びに至り、それをすぐ実施に移したい。それがこの二十五区画の関係の方々に当面としては御満足をいただく方法ではないかというように考える次第でございます。
  70. 田中一

    ○田中一君 これは政府に、都市局長に聞きますが、いま部長が説明しておるように、事態が、建物施設がこの第二十四条にある基準に合致していないということを部長自身が説明しておるわけなんです。そうして九月の都議会か何か知らぬけれども、部長はそういう希望を持っているという、都はそういう希望を持っていると言うけれども、春の議会では通路八千万の予算というのは削られております。したがって、理事者側においてその希望を持っておっても、実際都議会で通るか通らないかわからぬものです。そんなものを当てにして、居住者がそれに話し合いがつかないというのはこれは当然であって、その点は政府としてはどういうことを監督の問題ではお感じになっておるか。それが実際言うところの「災害を防止し、衛生を向上」するというようなよい環境ということになりますかどうかということです。また、それがこういう状態であることを部長みずから自分で説明しているんですから、政府はそれに対する態度をどうおとりになるか承りたい。
  71. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) 一号館と二号館をつなぐ部分の施設がおくれているということにつきまして、われわれとしても監督上の責任があるわけでございますので、できる限りこの施設が早く完成するように、われわれといたしましても都のほうを指導いたしましてやってまいりたいと、こういうふうに考えております。
  72. 田中一

    ○田中一君 そこで、借り受けを希望した人たちは三十何人かと言っておりましたが、その人たちは、従来どおりビルができるまでの間休業補償をもらっております。そして借家予定期日が延びたために引き続き休業補償をもらっておりますが、これが完成して安全になるまではむろん仕事ができるはずじゃございません。これはおそらく東京都、消防庁、警察等が絶対安全だから入れ、責任は自分たちが持つ、こういうことをはっきり言ってくれるならおそらく居住者は入ろうと思うのです。しかし、それがない限り入ることができないだろうと思うのです。その場合に政府としては、従来どおり工期がおくれたために支給しておった休業補償を、これが完成するまでは休業補償を出すべきであるというお考えにならぬでしょうか、どうでしょうか。工期が延びた八月までは出しておる。しかし現在生命の危険を感じて入れないという場合に、いま申し上げたような契約の問題もできておらぬというのもそこにあると思うんです。それらは決して借り入れ希望者の責任でも何でもありません。この場合には政府としてはどういうぐあいに指導してもらえますか。
  73. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) 休業補償を延長して認めるかどうかという問題は、具体的なケースでございますので、ただいまここで認めるとか認めないとかということは、私十分検討いたしましてからその考え方をきめたい、こういう、ふうに考えております。
  74. 田中一

    ○田中一君 石井部長は、いま政府は何とかして監督して早急に通路をつくらせよう、こう言っておりますけれども、その場合には当然居住して災害があるよりも、契約を早く締結して、そうして居住させないで、通路のできるまで休業補償を出すのが妥当な措置であるというようにお考えになりませんか。
  75. 石井三郎

    参考人石井三郎君) ただいま田中委員からのお考えと違うという御返事をしなければならないことを御了承いただきたいと思います。
  76. 田中一

    ○田中一君 違うという返事は、部長としてそれぞれの支出をすることの権限がまだ協議ができていないからできないというのか、あるいは部長として自分の責任で絶対払わないというような意思表示なのか、どちらなんですか。
  77. 石井三郎

    参考人石井三郎君) そのことについてお答え申し上げますが、一号ビルとの問題は、早急につなぐべく努力しております。これは議会のことで一私が必ず議会はそのように通過するというようなことは僭越ながらできませんが、そういう空気に推察しておるわけでございます。それから、この都市改造事業というのは一つ事業でございまして、民生事業というような性格でございませんで、採算の、もうけるというようなことは考えておらないわけでございますが、都市公共施設整備というようなことを主眼としながら都市環境の改善をはかるというねらいでございまして、社会通念的に見てこれは当然補償すべきであるというような内容の範疇に属するものならばこれはすべきであるというような判断を即座に下せるわけでございますが、ただいま申し上げるように、法的にはすべて満たされておりながら、なお新橋の駅からあのビルにつながる地下鉄に入るのができれば一そうよくなる、一号ビルとの関連ができればさらによくなる、ステップ・バイ・ステップで少しでもよくなるように今後いろいろのものを進めていくことがこれに対する答えとなると思うわけでございまして、端的に申しますと、そういうような性格のものになるわけでございまして、補償はいたすことができないということでございます。
  78. 田中一

    ○田中一君 いま補償ができないというのは、部長としての責任ある答弁なのか、それとも個人の意見なんですか。いままであなたの与えられた権限のうちでは補償するというようなことにはなっておらぬということなんですか。
  79. 石井三郎

    参考人石井三郎君) これはああいう事業の性格上、私、職責にかんがみまして解釈いたしまして、できない、こう申し上げるわけでございます。
  80. 田中一

    ○田中一君 事業の問題はあなたより私のほうが詳しいですよ。あなたは法律によって仕事をしているにすぎない。この経過をあなた一ぺん読んでごらんなさい。この審議の中ではそれらの問題が事こまかに質疑をしつつあるのです。一体、当然もっと広い広場への通路というものができない現状において、責任はだれにあるかというと、都にある以外にないじゃありませんか。この事業のワク内でもって払おうと払うまいとそんなこと一向に関係ございません。少なくとも生命の危険を感ずるこういう施設に入ることを強要されることは、これは社会問題なんです。
  81. 石井三郎

    参考人石井三郎君) ただいまの件につきましては、いま私が説明申し上げたのはどうである、こうであるということはしばらくおきまして、事実のまま申し上げますが、都議会においても、この問題については慎重に検討され、長い間論議せられた問題でございます。そこで、補償するかという問題につきまして、私は、末席と同様、補償はできませんとお答えを申し上げたような経緯でございます。また、それについて前向きの姿勢でもって善処せられたい、こういうような意見が都議会の建設労働委員会で出たわけでございます。これは都の本間跡に関する経過を申し上げると、かようでございますということでございます。
  82. 田中一

    ○田中一君 そうすると、部長が都議会でそういうことを発言してしまったから、いまここで払うなんということはできませんというわけなんですか。それは庁議できまった問題ですか。
  83. 石井三郎

    参考人石井三郎君) 私、都庁の組織の中の一員でございまして、ここで質問を受けて即座に答弁できる問題、できない問題、あるいは考うるべき問題とがございますが、この問題については、考えるまでもなく、補償はできないとお答えするのが私の任務であると考える次第でございます。
  84. 田中一

    ○田中一君 都市局長、これは自分の事業の施行者が自分のほうの施行上のミスというものを認めながら、それに対する対策はないということになると、これはこの法律の前文をお読みになればわかるとおり、この法律に当てはまらない施設をつくったということに結論づけられる。それを監督官庁として、政府はそれでよろしいかどうかという問題が残るわけです。私は借り受け人よりも、それに集まるところの一般大衆、客ですね、これらにもし災害があった場合にはどうするかということです。ところが一方、相当の額の頭金か保証金か知らぬけれども、これを出して仕事にもならないということになるならば、だれがはたしてそれに入ろうという希望をする、営業しようとする者がありますか。一切の責任は東京都にあるから客集めしてきてくれというなら、これは考えるでしょう。こういう不完全な施設をつくって、それで責任を居住者に転嫁するというような事業は、私は、いままで神戸その他方々でやっております市街地改造事業はすべてスムーズにいっております。みなに喜ばれております。ところが東口の――私がこういうことを言うのも、この立法、これを制定される際から非常に熱意を持ってこの問題に取り組み、そして都市整備と同時に居住者にしあわせを持たせようとして努力してまいった。ところが、こういう不十分なものをつくって、これを一定の期限を区切って、入らなければ失権だと言ったり、それからそれに対する生活権というものも無視するという暴言は、この法律のたてまえからいって許されるべきことじゃございません。これはひとつ、石井部長は自分の権限内の答弁をしておりますから、それはそれで認めましょう。しかし、政府は何らかそれに対する対策を立てなければならぬと思います。これは建設大臣、あまりこまかいことですから、あとで局長に聞いていただくことにして、正しい解決をしていただきたいと思います。  それから近傍類地の価格の問題ですが、近傍類地のものとなっております。この点は何年の何月にどういう人たちが集まって、こういう算定をしたということをひとつその資料を出してほしいと思います。そして、これは都市局長に申し上げるのですよ。四十三条の「借家条件の協議」ということをしないで、一方的に押しつけているというような形が残っている。いまの部長の説明を聞くとそう見られますよ、これは。一方的に押しつけるということは法律違反でございます。どこまでも協議をしてきめる、そうして第三者の裁定でもって問題が解決するということの手続をしないで、一方的に押えているところの行き方は、これは法律に非常に間違った運営をしておりますから、この点もひとつ解明してほしいと思うのです。  それから疎開者の問題について質問をいたします。これは戦後あの混乱時代にやくざ者というか暴力団というか、あそこに、しいていえば東京都と組んでああしたやみ市をつくって、そのやみ市が一夜にしてああした建物になる。むろんこれは土地の所有者は知らぬことである。しかしながら、東京都はこれを許可して一応建ててきた。それが今日ではあのような繁栄した町になっているわけです。で、この管理処分計画のうちで、疎開者はいち早く譲り受けさせてくれというような譲も受け希望を出しております。ところが、先ほど説明があった権利者のうち、譲り受け希望をした者と譲り受けを希望しない者と二色ございます。護り受けを希望した者も、自分の希望する床面積を申し入れ、それからあとの部分は現金補償をもらってそれで立ちのいております。むろんこれには法律から見ますと、多少の、床に対しては伸び縮み、弾力があるということをいっております。これは縮めても伸ばしても、これはもうその点は一向差しつかえないと思うのです。伸び縮みはかまわぬと思うのです。それが社会政策的な、終戦後の処理のゆがみから来るところの特別な扱いと同じような扱いを、放棄した権利に対してもそれを該当するという行き方はこれはどうかと、こう思うわけでございます。その点は都市局長どうお考えですか。床面積の弾力性はこれは認められております。
  85. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) 御指摘のように、法律上は従前の権利者に対しましては権利床を与えるということになっておりまして、過小の面積の床しか与えられないというような場合には、それを増して床を与えるということもできるようになっております。今度の特別公募の中の権利床の入居者でございますが、こういうような非常にむずかしい事業をやります場合には、関係権利者というものと相当いろいろな交渉があるわけでございます。その場合に、事業の遂行に協力してもらうという意味合いから、しかも、強制疎開者の場合におきましても当然権利があるというものではございませんので、そういう強制疎開者とのバランスのことも考えまして特別の公募をいたしまして、床を与えるというのも、こういうような複雑な事業をやります場合にはやむを得ない措置ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  86. 田中一

    ○田中一君 いま局長が説明したのは、公募の場合に、一般権利者、権利床に対してもこれはむろんこうした形の事業協力していくのですからいいと思いますが、そういうことを容認しますと、これは多少の伸び縮みの弾力性は認めますが、西口には御承知のようにかつて衆議院議員であったボスがいる。そうしてそのボスが自分は三十億程度の金をもらえるからこれを持ってどこかへ逃げ出すのだと言っておりましたが、東口のこの七坪、土地をあとで幾らでも――坂田課長が声明したんです。あと余っているからやる。希望する者は申し出ろということを言ったそうであります。そのために西口のボスがここにいすわって少しずつ自分の権利を残しておる。そうして東口と同じように相当の面積をとろうというような計画をしております。この弾力性というものは、全く過小宅地、あるいはどうおさめても三十坪しか入らぬところに三坪なら三坪残る、おさめてみると三坪残る。だから三坪だけはこの人に出そうじゃないかというところの弾力性であって、決してこれは自分のほうから事業主体者が権利のない者に対して、おまえたちに対して幾らでも分けてやる、二十年年賦で分けてやるという性質のものじゃないわけなんですよ、弾力性というものは。ところが、坂田課長はそれを幾らでも分けてやるということを言明したために、たいへんな騒動が起きましたが、これも撤回された。これは非常にいいことだと思う。自分の悪いことに気がつけば撤回するのは当然です。しかし、西口は現にこれから同じように事業を始めようとしている。このケースになりますとこれはたいへんです。あそこで戦後何十人か人が殺されております。その残党もおります。それらの者は、そうしたことをやった場合にそれは一体どうなるか。地域社会発展のために行なうこの市街地改造事業というものが、悪徳の巣になるおそれが多分にございます。それに東京都は一枚かんでいるような気すらおぼえるものであります。西口の問題も東口の問題も、それらの者が何人かおったそうです、要求する側には。鈴木副知事は、殺してやるなんておどされるもんですから、やむを得ずそれを承認しましたなんということを本人が自分で言っております。西口で同じような騒動が起きるならば、これは地域社会をよくしようという政府並びにわれわれの意図というものは全然通じないことになります。私はその点を非常に心配するわけなんです。西口には、かつては、不法占拠の土地でありましたけれども、後にはもう地代を西口のボスは払っておるようでありますが、ただ、いま借地権の問題で地主と西口のボスはけんかしているらしいのでありますけれども、同じようなケースを西口でもって要求された場合に、一体東京都はどうするか。それをまた政府自身はこの法律をつくってよい環境をつくるということにしておりながら、どういう結果になるかと想像するとおそろしいものを感ずるわけです。したがって、この点は都市局長、どう対処しようとするのか、伺っておきます。
  87. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) この市街地改造法による保留床の処分につきましては、単に「原則として、公募により譲り渡し、又は賃貸しすることとしなければならない。」という規定しかございませんで、具体的な分譲の方法なりあるいは対価のきめ方なんというようなものは規定してないわけでございます。しかしながら、この事業が適正に行なわれまするように、われわれといたしましては指導監督あるいは勧告等をする責任がございますので、ただいま田中先生がおっしゃいましたような特別分譲というのはよくよくの場合でございますので、西口とその他市街地改造事業をこれから進めます場合には、やむを得ないもののみにしぼるというふうな考え方で指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  88. 田中一

    ○田中一君 一応、西、東ともに疎開者の問題はこれで解決されると思うのです。しかし先ほど言った、この法律にありますところの弾力性というものを悪用して特別分譲するという形が要求される場合にどうするか、そういう場合に絶対に認めないという態度でいるのか。この点は、大阪等では聞いておりますけれども、三階を許可した建築基準法の無法時代があった。三階をつくってしまった。都市計画では三階をつくってはならないとなっておる。ところが三階をつくって現存しておる。許可しておる、大阪府は。その場合に、その三階の補償をどうするかということになると、その三階部分を特別分譲という形でその権利を認めてやるという方法をとっております。これも一つの行き方だと思います。何といっても無法地帯が主として市街地改造事業の対象になるということになるから、どうしてもそういうケースがあるわけです。これは一つの権利が存在するということが言えます。ところが、弾力性だけでものを考えますと、これはとんでもないことになります。いままでの東京都の行政を見ましても、常にそうした形のものは今日都民に指摘されるたくさんな問題を起こしておるのです。せめて市街地改造事業だけは、この法の精神に十分にのっとって、それに対する正しい施策をしてほしいと思うのです。西口の場合には、その点はどう指導監督していくか、はっきり聞いておきたいのです。
  89. 竹内藤男

    説明員(竹内藤男君) 西口のビルの場合につきましては、特別分譲というものにつきまして、いま先生御指摘ございましたような合理的な理由のあるもの、あるいは非常に気の毒で、そういうものを与えなければ困るというものにしぼってそういうものを行なうようにわれわれとして指導してまいりたい、そういうふうに考えております。
  90. 田中一

    ○田中一君 石井部長は、参考人としてお見え願っておるけれども、あなたはあなたの権限だけのことしか言えないので、これはあなた自分で一ぺん都議会でものを言っちゃえば、それが都の意思のようなことを言うから非常に困るのです。あなた自身が苦しんでも困るから、少なくともこれから西口の問題を控えているのです。あなたがどういう事業を行なおうとするのか非常に疑問を持ちます。もっともあなたも最近来たので、いままでのよってきた今日までの悪い結果というものはあなたの責任じゃないかもしらぬけれども、しかし、そのポストにつけば、これはやむを得ません。少なくともいまのあなたが断言したような問題は、いま政府のほうに頼んでありますから、政府のほうで十分調査検討すると思います。したがって今後の問題は、まだまだ問題ありますけれども、あすに控えている問題ですから、二号館の問題は必ず契約を早期にすることです。当然のことです。あなたは借家権というものは放棄しているわけじゃないから、借家権に対する、何というか補償はしておらぬとあなたは言っているのですから当然のことです。条件の悪いことをあなたは認めておるのならば、都が譲歩するのは当然でありますから、そういうことを強弁するのはおかしいのです。あなたの立場だけで血弁ずるのはおかしいのです。それから全体がバランスのとれた事業で行なわれなければならぬことになっておりますが、これは当然です。当然ですが、何も市街地改造事業の予算で出す必要もなければ、またこれを調べてみますと、二%程度の総工事費のこれは余裕を見ております、この計算は。これはもう政府に聞いてみると、それくらいの余裕はあるからと言っております。したがって、この事業のうちでもって調弁できる問題です。それからもう一つ、いま行なっております公募というものは、これはどのくらいその応募者があるか。あなたはおそらく全部が直ちに一ぱいになるという想定でありましょうけれども、今日の景気ではなかなかそうはいかないぬじゃないかと思うのです。まあいかない場合を想定しましょう、いかない場合には、むろんこれに対する金利等は、いまこれを見ますと、借り入れ金の利子というものは、一応あなたのほうで支出に見ておりますが、これに見合うところの都単独負担金というものは七億六千八百万円と、こう見ております。だからこれに見合うものだと思いますけれども、少なくともこの清算にあたって、それだけのものができないなんということはあり得ないと思うのです。自分のほうの欠点というものをたなに上げて、どうでもいいなんということは、あなたおそらく石井さん個人の良心からはそういう答弁は出ないと思うのですが、その点はひとつあなたにこれだけ言っておきます。あなたから答弁をもらう必要はありません。  私がるるこういうことを申し上げるのは、結局都市の再開発ということに非常に関心を持っておるということなんです。これは建設大臣は就任早々さっそくその問題を取り上げて強くその政策を推進すると言っておりますし、非常にけっこうです。しかしながら、親の心子知らずで、政府のそうした方針というものが歪曲されて施行者が行なうということを考えると、非常に危険を感ずるわけです。ことに東京都に対しては十分な監督をして、こまかい指導をしないと、また都民のひんしゅくを買うような事業になりますから、この点は十分に配慮していただきたい。  これだけ申し上げてその質問やめましょう。
  91. 松永忠二

    委員長松永忠二君) 本件に関する質疑は、この程度にとどめます。  これにて散会いたします。    午後零時三十六分散会