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国務大臣(
橋本登美三郎君)
ダム問題は、
皆さん専門家でありますからして、私が申し上げるまでもなく、いろいろな問題を伴ってむずかしい問題であります。ただその国の
産業が
発展し、あるいは
国民生活が
向上してまいりますにつれて水の
利用というものが非常な勢いで増大することも、これは
皆さん御
承知のとおりであります。しかも、何せ国が狭いのでありますからして、いわゆる天然の水からとるそれにつきましても自然の
状態でとれる範囲というものはだんだんと狭められてきておる、数年前までは、あるいはもっと前までは、
奥地において、あまり
国民の
皆さんに迷惑をかけない場所において
ダムを
建設することが可能であったわけでありまするが、先ほど申しましたような
産業経済の
発展、これは当然
国民生活の
向上ということになるわけでありまするが、そういうことのために、だんだんといわゆる
国民の
皆さんに迷惑をかけないで
ダムを
建設する地点というものが非常に少なくなったということも、これは御了承を願えると思います。そういうことからして、しかしながら
建設省としては、できるだけ
国民に迷惑をかけないで済むような
措置を一面において講じたいということからいたしまして、おそらく
日本の
ダム行政といいますか、
水利用行政では、世界より一歩先んじて、一年間に降る
流水量をある程度
利用してひとつの
水使用のために振り向けるという
検討も前からやっており、しかも、それが現実的には確保できるようにあらわれておることも
皆さんは御
承知のとおりであります。そこで、現在
建設省がいろいろな
方面の、
工業用水あるいは
農業用水あるいは
一般飲用水等から希望せられておる水の
必要量は、
昭和四十五年度までは大体百二十トンというものが必要である、これだけの
供給をしなければ
産業発展に悪い影響を与える、こういう
計算で
昭和四十五年度までの
計画が一応なされておるわけであります。
こまかく申し上げなくても
皆さんは十分御
承知でありますが、一応
検討している点を申し上げますれば、
矢木沢ダムで十七・六トン、
下久保ダムで約十六トン、那珂川、江戸川の
流水量で六・八トン、印旛沼の水を
利用することで七トン、
神戸ダムで十二・六トン、ただいま
工事中の
利根河口せきで二十トン、こういうことで合計して八十トンというものはまあ一応
計画に乗っかって
実施計画が進められておるわけであります。したがって、百二十トンのうち八十トンというものは
検討がついてすでに
工事が始まっておるわけですが、残りはいわゆる霞ケ浦の水を
利用しよう、これは第一期
計画で十トン、それから思川の
流域でもって約二十トン、それといま申しました八
ツ場の約十六トンを加えて約四十六トンで、
総計必要量の百二十トンという
計算になるわけであります。しかし、いま
伊藤さんの御質問がありましたように、
群馬県下で、あそこはたいへん
ダムの
適地があるために、いろいろ
群馬県の
皆さんに御迷惑をかけておりまするが、
沼田ダムにいたしましても、あるいは八
ッ場ダムにいたしましても、
地元の方々から
反対の意向のあることもよく
承知いたしております。特に八
ッ場の場合は、
一つは、
関東耶馬渓が阻害される、あるいは川原湯温泉の
温泉源が水没するのではないか、こういうような御心配から
反対を受けておるわけでありますが、もちろん
建設省としては、
地元の
納得を得ないままに強行する
考えはありません。できるだけ
地元の
皆さんと十分に話し合って、そこで了解の上で、
納得の上でやりたいと、かように
考えておりますからして、いわゆる
地元民を無視して、いきなり強権でこれを行なうという
考えはありませんが、ただいままでだんだんと御説明申し上げましたように、いわゆる
首都圏内の
工業発展、あるいは
国民生活上の
飲料水等から
考えて、どうしても百二十トンの
供給の要請があれば、それに沿うだけのことはやっていかなければならない、そういう点で、
建設省としては苦労があるわけであります。したがって、もちろん強行でこれをやる
考えはありませんが、以上のような
事情をも十分に了解されて、そうして
地元に対してはなるべく損害を与えない
方法、まあこれは
検討してみなければわかりませんけれども、そういうような
方法によって、なるべく御
納得を得たいという
考えでおるのであって、その点をもひとつ
皆さんにおいても御
理解を願いたい。
ただ、最初に申しましたように、だんだんと
日本――
日本というか、全国的に見ましても、
奥地の
適地ダム、
皆さんに迷惑をかけないで
ダムをつくることが非常に困難になってきております。けれども、一応は、ある程度は
地元の
理解を得て実現していかなければ、
日本の
工業発展、
日本の
経済発展には必要なものでありますからして、これも一面においては
考えていかなければならないとともに、いわゆる年間の
流水量をできるだけ
利用する。現在、
利根川等は、大体一六%ないし一八%の
流水量の
利用であろうと思いまするが、これを
河口ぜき、あるいはその他の
方法によってどこまで引き上げられるか。これが三〇%まで上げられるか、あるいは四〇%まで上げられるか。もちろんいま申しましたことは、これは四十五年度までの
供給量でありますから、これを
昭和五十年もしくは
昭和六十年、こういう
長期構想に立ちますというと、
ダムだけによってもちろんこの水を確保することは不可能であります。したがって、思い切った
流水量の活用ということが問題となるのではないか。あるいは将来、たとえば
渡良瀬遊水地の約三千町歩というものも、これも
治水を兼ねて、同時にまた利水にも使える
方法を
検討していかなければならない。あわせて今後十年、二十年の
首都圏内の
工業発展、あるいは
生活向上、
文化発展のための諸
施策を講じていかなければならぬ、かように
考えておる次第であります。どうか、この点につきましても、この水の
専門家である
皆さんの心からの御
協力を得たい、かように
考えておる次第であります。