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1966-09-02 第52回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年九月二日(金曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴園 哲夫君     理 事                 佐藤 芳男君                 仲原 善一君                 八木 一郎君                 竹田 現照君                 二宮 文造君     委 員                 黒木 利克君                 内藤誉三郎君                 温水 三郎君                 山本茂一郎君                 稲葉 誠一君                 大森 創造君                 岡  三郎君                 達田 龍彦君                 藤原 道子君                 黒柳  明君                 瓜生  清君                 岩間 正男君                 石本  茂君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        池田 修蔵君    説明員        外務政務次官   田中 榮一君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省経済協力        局外務参事官   吉野 文六君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        会計検査院事務        総局第一局長   斉藤  実君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計歳入歳出決算昭和三  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和三十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十九  年度政府関係機関決算書(第五十一回国会内閣  提出) ○昭和三十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第五十一回国会内閣提出) ○昭和三十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第五十一回国会内閣提出) ○派遣委員報告     —————————————
  2. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  これより昭和三十九年度決算外二件を議題といたします。本日は外務省決算について審査を行ないます。  まず、外務省決算について説明を聴取いたします。
  3. 田中榮一

    説明員田中榮一君) 昭和三十九年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は二百十九億七千七百二十八万二千四十九円でありまして、支出済み歳出額は二百十億八千二百三十二万六千百二十四円、翌年度繰り越し額は四億六百五十三万二千二百五十円、不用額は四億八千八百四十二万三千六百七十五円であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額二百九億七千五百七十九万九千円、前年度繰り越し額四億六千六百四十五万二千四十九円、予備費使用額ヴィエトナム共和国民生安定救援費に要した経費)五億三千五百三万一千円でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、外交用器具等購入費五百十三万三百円、海外技術協力実施委託費二億六百二十七万百九十九円、移住者支度費補助金九百四十六万八千円、移住者渡航費貸し付け金五千九百十五万九千円、日本人墓地整備費一千六百三十一万六千六百四十円、在外公館施設関係費一億五千六百六十九万八千九百十円、公務員宿舎施設費一千三百四十万九千円であります。  支出済み歳出額のおもなものは、科学技術振興のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基ずく分担金及び拠出金として、六千七百十七万三千八百四十円並びに国際連合その他各種国際機関に対する分担金等として十三億一千八百五十五万一千三百二十五円。  また、貿易振興一環として、外国におけるわが国商品輸入制限運動に対処して、関係国議会公聴会及び関税委員会公聴会に出席し陳述をする等輸入制限問題に関し、政界、業界首脳わが国に対する理解を深めしめるとともに、輸入制限動向実情調査、分析を行なって、ラジオ、テレビ、新聞、雑誌等マスコミに対する啓発宣伝工作PRパンフレットの配付を行なう等輸入制限運動阻止のため二億九千九百十五万二千四百六十円。  次に、経済協力一環としての技術協力実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員九百六十九名(四十六カ国)の受け入れ及び専門家百九十五名(二十八カ国)の派遣業務並びに海外技術センター事業メコン河開発事業調査、投資前基礎調査海外技術協力事業団出資、EPTA及び国連特別基金拠出等に要した経費三十二億八千六百六十七万二千二百一円。  さらに、移住振興につきましては、中南米等への移住者千百五名、他に派米短期農業労務者三十一名を送出するため等の経費十二億四千百八十四万六百十五円であります。  次に、翌年度繰り越し額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは四億六百五十三万二千二百五十円でありまして、その内訳は、海外技術協力実施委託費九千七百八十万四千三百九円、在外公館施設関係費三億八百七十二万七千九百四十一円であります。  不用額のおもなものは、経済協力開発機構への加盟が予定よりおくれたので経済協力開発機構分担金を要することが少なかったこと、南米等移住者の送出が予定数まで達しなかったため移住者渡航費貸し付け金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。
  4. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 次に、会計検査院当局から検査報告を聴取いたします。
  5. 斉藤実

    説明員斉藤実君) 昭和三十九年度外務省所管決算について検査をいたしました結果は、特に違法または不当として指摘すべき事項はございませんでした。
  6. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣が来るまで別のことをちょっとお聞きしておきます。もちろん重点はアジア外交の形に限ってお尋ねするわけですが、最初にお聞きしたいのは、北朝鮮日本から直接渡航するときの旅券の出し方、それから行く先はどういうふうに表示しているわけですか。
  8. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 北朝鮮渡航する場合に、ただいま出し方という御質問でございましたが、事務的には普通別に変わってございません。おそらくどういうものに出すか、どういうものに出さないかというような御質問かと思います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、それはまたあとにします。行く先です。
  10. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 行く先は、出す場合には平壌であります。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 平壌というのはどこの国にあるのですか。
  12. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 北朝鮮でございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 北朝鮮という国はどこにあるのですか。
  14. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 朝鮮半島の北半部でございます。ただいま国という御質問でございましたが、日本北朝鮮承認しておりませんので国ということばは使わないわけであります。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、旅券の行く先を平壌と書くのは、北朝鮮——朝鮮民主主義人民共和国承認していないから平壌と書くのだと承ってよろしゅうございますか。
  16. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) さようでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 中国へ行くときは、どういう旅券の書き方をするのですか、行く先は。
  18. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) ただいま詳しく記憶しておりませんが、中国という表示であると思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことはないですよ。旅券を担当している人を呼んでいないけれども、旅券を持ってきてごらんなさい。中華人民共和国と行く先がちゃんと書いてあるのです。そんなことごまかしちゃだめですよ。これは私が何を質問しているかということがだんだんあなたはわかってきたと思うけれども、私は旅券を持っております。私の旅券には中華人民共和国とちゃんと書いてあるじゃないですか、行く先が。だめです、そういうことをごまかしちゃ。これは私の旅券だから、ほんとうは帰ってきたら返さなければいけないのだけれども、持っているのです。七ページにちゃんと書いてある。そうでしょう。
  20. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 私事実を承知しておりませんでしたが、そういう旅券が出ておりますならば、中華人民共和国と書いてあると思います。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題の所在がわかってきて、北朝鮮のところで、あなた最初答え方がまずかったでしょう。まずかったものだから、いまになって警戒しだしたのです。中華人民共和国ということに行く先がなっているわけでしょう。私の旅券もあるし、だれの旅券もみんなそうなんです。これはどうなんです。あなたの論理でいうと、平壌と書くのは北朝鮮承認していないから朝鮮民主主義人民共和国とは書かないのだと思う。北京に行くときには中華人民共和国と書いてある。あなたの論理からいえば、中華人民共和国承認しているからそこに中華人民共和国というふうに書くのだと、こういうふうにとれるのです。これは率直にいえば、承認は別の議論になるけれども、なぜ中国の場合には中華人民共和国と書くのか、北朝鮮の場合は平壌と書くのか、それは問題があるでしょう。どういうわけですか。
  22. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 中国との渡航の問題につきましては、すでに歴史が古いわけでございまして、ただいまの旅券表示の問題も過去において何回か議論せられたのでございますが、その後渡航が相当ひんぱんになりました結果、通称中華人民共和国というものを使っても差しつかえないということになったものと思われます。北朝鮮の場合には、渡航歴史が非常に新しいわけでございます。現在でも北鮮に対する渡航というものは非常に限られております。そういう意味で、歴史的に何と申しますか、漸進的に進んできた結果、中国につきましては中華人民共和国という表示をしたものと思いますが、北鮮につきましてはまだ非常に渡航関係歴史が新しいので国名を使っておらない、こういうふうに了解しております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなのおかしいですよ。理論的な答弁にならない。中華人民共和国あてに、行く先として旅券を出して、日本外務大臣はその国へ行くから、だから必要な保護、扶助を与えるよう、中華人民共和国に対して要請しているわけでしょう。旅券日本外務省は公式に中華人民共和国に対して、そこを通る日本人に対して公式に保護を要請しているのじゃないですか、そうとれるでしょう。こうとれませんか。
  24. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 旅券に書いてあります外務大臣の要請のことばは、一般的な叙述であります。それと特にあて先国との関係というもの、あて先が書いてあるから、特にあて先国承認して、それに要請したものだ、そういうふうにはとる必要はないかと思います。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一般的に書くのだけれども、それでは、中国を旅行している日本人がいろいろな、ここに書いてあるような、旅券に書いてあるような保護を必要とする、こうしたときには、一体どこへ保護を頼むのですか。中華人民共和国に頼むのでしょう。そのことを日本外務省中華人民共和国旅券によって依頼しているのじゃないですか、こういうことになるのじゃないですか。そうじゃないですか、旅券というのは公文書でしょう。そういうところからいっても、中国日本は事実上承認していると見ていいのじゃないですか、このことからいっても。平壌のように土地の名前を書いてあるならもちろん理屈は別です。初め北京と書いていたでしょう。それが変わってきたのじゃないですか、中華人民共和国というふうに。そうして、中華人民共和国に対して、日本人保護日本外務大臣は依頼しているのじゃないですか。ということは、公的に交渉をしているということなんで、事実上の承認に該当すると見ていいのじゃないですか、そこはどうですか。
  26. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 先ほど申しましたとおり、外務大臣旅券に書いてある意思表示は、一般的な意思表示でございまして、これと渡航先の記述とは直接には関係ないと思います。渡航先国名を書いたことによって、これを承認したというふうにはとれないと思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 承認の問題は別問題としましょう、承認意思が必要ですから。事実上それに、中華人民共和国に対して日本外務大臣は、中華人民共和国を旅行する日本人生命身体その他の安全を依頼している、こういうことは事実ですね。承認の問題は別にします。いいですか、承認の問題は、承認意思が必要ですから、別個の問題として、日本外務省は公式に中華人民共和国を旅行する日本人生命身体、そういうふうなものを中華人民共和国にその安全を依頼というか、保護を頼んでいるということでしょう。その点は認められるでしょう。それが一つと。  それからもう一つは、北朝鮮もあれですか、そうすると、将来ひんぱんになってくれば、いま平壌と書いてある行く先が、朝鮮民主主義人民共和国と書くこともあり得るということですか、あなたの論理からいうと。
  28. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 私いまの旅券の面に外務大臣がどういう文言を使っておりますか記憶しておりませんが、先ほど申し上げましたように、一航的な表示であると思います。したがいまして、それと渡航先というものとは直接結びつかない、一般的に保護を求めているということは言えると思います。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのは、一般的な保護を求めている理由はわかるけれども、どこの国に求めているかということです。そうでしょう。それが一つと、それから北朝鮮のほうも往来がひんぱんになってくれば平壌と書かないで朝鮮民主主義人民共和国と書くのだ、あなたの論理だとそうなってきますね。そう承ってよろしいかどうか。大臣来ないのでやっているんで、大臣来れば別の問題をやりますよ。
  30. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) ただいまの点でございますが、国名を書いたからといって別に承認ということにはならない。地域を代表する名前として国の名前を使っているということであろうと思います。したがいまして、第二点の平壌朝鮮民主主義人民共和国に変えるかどうかという点につきましては、平壌という表記で差しつかえなければ特に朝鮮民主主義人民共和国という名前に変える必要はないんじゃないかと思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、この問題はいろいろ問題があると思うんです、ぼくも。むずかしい問題を含んでいるんです、確かに。だけれども、ここで論議していてもあれですけれども、あなたの言うことは、初めの答えあと答えと比べてみると、論理的に矛盾があるのですね。そこまでどういう質問が出るかわからないで初めちょっと答えたのかもしれませんがね。承認してないから平壌と書くというから、それじゃ中華人民共和国と書いたら承認しているかという逆な理屈になってきますけれども、これはやめましょう。  大臣来るまでもう一つ別の問題で、モンゴルとの、こちらから行きましたね、外務省から課長補佐の方かなんか行って、あのときのいろいろ伝えられていることは真実はっきりしておりません。どういう話があったのか、モンゴルとの国交樹立の問題については将来どういうことになるのか、どういう点が障害になっているのか、こういう点はあなたのほうからお答え願っていいんじゃないかと思うんですがね。
  32. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 最初の問題につきまして、地名と国名関係で私の答弁あるいは間違っておったかもしれません。  モンゴルの問題でございますが、モンゴルにつきましては、今般外務省の係官を派遣いたしましたのは、主として墓参団の通訳及び世話に当たらせるためのものであります。ただその際、将来のモンゴル日本との関係についていろいろ話が出る可能性もございましたので、その場合には先方言い分をよく聞いてくるようにという訓令を与えて派遣しております。で、話の過程におきましては、モンゴル側日本との外交関係樹立するということにつきましては非常に熱意があるように見受けられます。ただし、それがどういうようなかっこうで外交を再開するか、あるいは外交関係を再開する際にどういうような問題があり、それについてはどうだというような具体的な問題については、今回は先方も話を具体的に出しませんでしたし、当方からは先ほど申し上げましたように先方言い分を聞いておくにとどめておりましたので、深い内容には入っておりません。今後の問題といたしましては、ただいま行ってまいりました者の報告をさらに詳しく検討いたしまして、どういうふうに進めるかあるいはやめるというような点は検討してまいりたいと考えております。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは事務当局のあなたにお聞きするのはあれで、大臣に聞かなければならないことだと思うんですが、そうするとモンゴルとの国交樹立関係でどういう点が障害になっているわけですか。何か障害があるんですか。
  34. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) これ、障害と申しましても、おのおの両方の考え方が合致いたしますれば障害はなくなるわけでございます。現在特に障害になっているという点は、先ほど申しましたように、具体的に先方が意見を具体的な問題について述べておりませんので、障害があるかないかという判定はちょっとむずかしいわけでございまして、そういう点は、もしこれから外交関係樹立というようなことで話を始めますれば、その過程において明らかになると思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、モンゴルとの国交樹立をしたいんですか、したくないんですか、そこはどうなんですか。したいのだ、こういうふうに承っていいんですか。
  36. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) その点も含めまして検討中でございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、検討中というなら、どういう一こういう点で問題になるというところがあるでしょう。向こう日本に対する賠償請求権があるでしょう。台湾の国民政府が何だかんだ言っている、そういう点がひっかかっているでしょう。そういう点はどういうふうに考えているかというのですよ。
  38. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 賠償の点につきましては、はたして賠償を請求するというのか、あるいは賠償要らないというのか、そういう具体的な表示がございませんので、はたして障害になるかどうかという点はわかりませんけれども、第二点の国民政府の点でございますが、これは御指摘のとおり、モンゴルというのは中国領土である。したがって、そこと外交関係を持つということははなはだ自分らとしては困るということは何回か申しております。その点はもちろん考慮すべき問題かと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 モンゴル国民政府自分領土だという根拠はどこにあるか、そんなものあるのですかね。
  40. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 年次を正確に記憶しておりませんが、一九四五年に中華民国とソ連との話し合い、あるいは条約であったかと思いますが、その際に一応条件つきモンゴルの独立を承認をいたしました。後に事情の変化によりまして承認を撤回する、したがって依然として自国の領土であるという主張でございます。撤回いたしたのは多分四七年か八年であったと思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣がもう来られるでしょうから、来たら変えますけれども、モンゴル日本に対して請求権を持っているというふうに考えているのですか、あるいはもうそれは消滅していると考えているのですか。もう当然消滅していると考えているわけでしょう、日本としては。だけれども、いまそれについては微妙な外交関係だから発表するのを待ってほしい、見解を待ってほしいというなら、ぼくもそれで了解しますがね。外務省としては当然モンゴル請求権というものはなくなっているのだというふうに考えているのじゃないですか。
  42. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) モンゴルはかつて、これも年次を記憶しておりませんが、終戦後極東委員会に対して損害賠償あるいは損害額としてある数字を提示しております。発表されておりますが、ただいま記憶しておりません。したがって、そのときには対日賠償請求権があるというように、そのときには考えていたと思います。その後モンゴルがどういうふうに考えているかという点については、先ほど申しましたように不明でございます。わがほうの立場につきましては、先生せっかくおっしゃっていただきましたが、今回見解は保留させていただきます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣が来たら、時間が大臣が来てから二十二分ということですから、しぼらなければいけませんけれども、その前に聞きたいのは、国連総会が開かれるわけですね、二十日からですか。それに臨む日本の態度というか、あるいはこれは大臣が来ないとあれですが、そこで一体何が重要な課題になると日本側は判断しているのか、その点はどうですか、これはどなたか。
  44. 服部五郎

    説明員服部五郎君) 御承知のように、ことしは南西アフリカ問題が冒頭に審議されることになっております。これはかなり重要な問題を含んでおりますので、われわれも非常に重要だと思っております。そのほかやはり軍縮関係でございますが、まあ後半終わりのほうに毎年代表権問題が出てまいります。これは重要問題であると思います。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その中国代表権の問題ということについては、それは大臣が来てからお尋ねをすることにいたしますが、じゃあその前に一つだけ別のことを聞いてみましょう。  南ベトナム援助物資支出ですね、これは五億幾ら出ているわけですが、これは具体的にどういうふうなものを出したのかということと、それを何か三十九年度東南アジア文化協会というのに委託したんだと、四十年度は何か新しくベトナム協会というのをつくったんですか、そこにこれを委託したというんですか。この両方内容は、援助物資というものの具体的内容と、それから東南アジア文化協会というものに委託した理由ですね、それを今度はベトナム協会というものに変えたんですか、その理由はどういう理由か。それから東南アジア文化協会というものの具体的、実体的内容ベトナム協会具体的内容ですね、これはどういうふうになっているんですか。
  46. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 前回のもの、先の援助物資の主要なるものは、物でございませんが、医療団派遣、それから医療器具医薬品衛生材料救急箱救急車、プレハブ、ラジオ、こういうものでございます。  それから今回の、次の年度援助物資のおもなるものは、綿布、毛布及び医薬品でございます。  前回東南アジア文化協会でございますが、これは一昨年緊急援助実施いたしますときに、直接の援助が法規上むずかしいので、団体を使って援助したわけでございますが、当時この東南アジア文化協会につきましては、この点につきましては本委員会においても再三御審議がございましたが、一般的に東南アジア諸国との友好関係を促進するということで設立されておった団体でございまして、以前にもジャワの火山その他がありましたときに援助を行なっているという実績がございまして、そういうようなことから当時といたしましてはこの東南アジア文化協会に委託するのが最も適当であると判断したわけでございます。  次に、では次回にベトナム協会に移したのはどういう理由かということでございますが、前回のときにはもちろんベトナム協会はまだできておりませんでした。その後ベトナム協会が設立されておりまして、これは主としてベトナムとの親善友好関係の促進、あるいは人物の交流、民生の安定に対する寄与というようなことを目的として特にベトナムとの問題を扱っている機関でございますので、ベトナムに対する援助はこのベトナム協会に委託するのが適当であろうと判断したわけでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃあ問題を三つにします。  そのいま言ったベトナムへ行っているいろいろな民生安定の物資ですね、これはベトナム向こうにいろいろな各省がありますわね。そこでどういうふうに取り扱われているかということですね。一つベトナムに戦争宣伝省というのがあるでしょう。そこへこの物資が相当行っているんじゃないですか。それが一つね。  それからもう一つは、何か直接やるのが法規上むずかしいと言ったんですが、その法規上むずかしいというのはどういう理由ですか。これが二点。  三点目は、ベトナム協会というのは今度できたということですが、これのメンバーだとか、それからどういう組織になっているとか、いろいろな資料をあとから出してもらいたいと思うんですが、いまわかっている範囲でこのベトナム協会というのはだれがおもなメンバーで、どんなことをやっているのか。その三つ。
  48. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 今回の援助物資の配付にきましては、ベトナム政府の難民問題庁、これが受領いたしまして、各地方の難民問題庁の出先と連絡いたしまして、これに配分を行っている模様でございます。  それから、法規上でございますが、これは財政法、会計法の関係であると理解しておりますが、無償で交付することがむずかしいもの、したがって民間の援助という形で行なっておるということでございます。  それから三番目のベトナム協会でございますが、これは会長が一万田先生でございまして、その他ベトナム関係の深い方がメンバーになっておりますが、詳細につきましては後ほど資料をお出しいたします。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのですね、難民問題何とかというの言いましたけれども、ベトナムに戦争宣伝省というのがあるでしょう、ありませんか。そこに行っているのじゃないですか、これ。これ全部じゃないけれども、ラジオなんかそこに行っているでしょう。戦争宣伝省というのか、何とか情報省というのか、ぼくは戦争宣伝省ということに聞いているけれども、それを調べてください。  それから、法規上、財政何とか上むずかしいと言っている。いま大臣が来るでしょうが、長い間やっているとあれですが、もう少し、法規上どうしてむずかしいのか。いまでなくていいです。資料として説明して、文書か何かで出してください。いま時間があればいまでもいい。  ベトナム協会というのに、あれですか、五億幾らか全部渡しちゃって、どういう形をとってやっているのですか。ほかのメンバーはどういうメンバーですか。
  50. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 先生、ただいまの五億の点は前のほうでございます。前のは、先ほど御指摘ございましたように、東南アジア文化協会でございます。で、今回の分がベトナム協会でございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、答えがちょっと抜けているのですけれども、ベトナムに戦争宣伝省というのがあるかないか。そこに行っているのじゃないかということ、この日本から行っているラジオや何かは。それが一つ。  それから、ベトナム協会というものの内容をもう少し、おもなメンバーをあげてくれませんか。
  52. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 戦争宣伝省という省があるということは私ども承知しております。  で、今回のものについては、先ほど申しましたように、配付先、私ただいま承知いたしております。難民庁でございます。前回のものがどういう配付経路をとったかにつきましては現在承知しておりません。調べて後ほどお答えいたします。  それから、ベトナム協会でございます。これ、先ほど申しましたように、一万田先生が会長でございますが、その他のメンバーにつきましては現在資料を持っておりませんので……、簡単な資料がございますので申し上げます。主として国会議員の御関係からは、長谷川峻、保科善四郎、大谷贇雄、鹿島守之助、それから野田卯一、それから経済界から植村甲午郎、久保田貫一即——もとのベトナム大使でございます。こういうような方がおられます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのベトナムの戦争宣伝省へ日本のこういった物資が——救援費というのか、物資が行っているということ、これはあなたのほうでも調べてわかっているのじゃないですか、そうじゃないですか。
  54. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 一昨年度の配付状況につきましては、先ほど申しましたように、ただいま資料を持っておりませんので、至急調べます。
  55. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この予備費の使用として、昭和三十九年度に五億三千五百三万一千円ですか、これはどういうような経路をたどってどこへ行ったのですか。そしてそれが確実に向こうへ着いた、着いてそれがどういうふうに配分されたかということははっきりしているのですか。
  58. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) このうちの医療団派遣、これは私いま資料を持っておりませんので記憶で申し上げますが、直接行なわれたのではないかと記憶しております。それからその他の部分は東南アジア文化協会を通じて行なわれたもの、それから配分につきましてはベトナム政府において配分したのでございますが、その後先方のわがほうに対する通知によりますれば、間違いなく配分されております。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどこからどこにどういう通知があったのですか、間違いなく配分されたという通知があったのですか。その中でぼくが問題にしているいわゆる戦争宣伝省関係へ配分されたものはどの程度あるのですか。
  60. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 前回のものは、種類も多うございましたので、先方関係する政府機関も数個あったと思います。その中に戦争宣伝省がどういうものを扱ったか、あるいは扱ったかどうか、これは先ほど申しましたように、至急調べて御報告いたします。
  61. 二宮文造

    ○二宮文造君 関連して。いまの局長答弁ですがね、この予備費の使用額の中に出ておりますベトナムの生活安定救援費に要した経費という、これは五億円の問題だと思うのですが、これは当委員会でもたびたび問題になりまして、局長は調べて御返事しますというお話でございますが、委員会で明らかになったところによりますと、目録をつけて日本を出発したことははっきりしております。それから大使館の関係のところで受け取ったことまではっきりしておる。ところが、その品物が間違いなくベトナム政府に渡されたという、そういう証拠書類といいますか、そういう権威のある書類は外務省にはお手持ちでないはずですが、いま調べて御返事しますと局長言われたので、また新たにつくられたと思うのですが、その後御調査になってわかったのですか。前回までは渡されたことはわかっていないのですよ、書類はないのですよ。その点どうです。
  62. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 前回まで御審議願いまして以後新しいものはございません。私記憶で申しましたわけでございます。
  63. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと、前回までにはっきりしたことは、いま私が申し上げたように、大使館の手元にまで入った書類はある。しかし、それからベトナム政府に渡された——感謝状はありますよ、感謝状は来ているそうですが、しかし、どういう物品がどのように配分されて、どういう効果を発揮したかという、そういう詳細にわたってはいないのですがね。ないはずなんです。それをいま局長は、調べて御返事しますという御返事なんで、稲葉委員のほうも期待されると思うのです。それを私老婆心ながら、ここではっきりないとおっしゃったほうがいいのじゃないかと思って申し上げたのですが。
  64. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 前回の御審議の経過をさらに私自身詳しく研究してみます。特にその後新しいものがあるということではございません。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これ、いまの法規的に何か疑問があるようなことを言ったけれども、法律的に直接すると日本ベトナム戦争に直接協力しているという非難を受けるから、その非難を避けるために変なものをつくって——変なものか何か、まあつくって、そうして日本は直接戦争に協力してないのだというのがれ口をつくるためにやっているんじゃないですか。それが一つと、それから、これらのものの中で、僕が言っている戦争宣伝省というのがあるのですよ、ベトナムに。それがあることはあなた認められたけれども、そこへこの物資が相当行っているわけですよ。ラジオなんか相当行って、そこで戦争宣伝に使われているんですよ。そういう点は外務省としてはわかっているはずですね。たてまえはどうなんですか。日本政府はベトナム戦争については、これは積極的にしろ消極にしろ協力しないというたてまえをとっているんですか。これはちょっとあなたには悪いけれども、外務大臣じゃないからあれですけれども、とっているんでしょう、どうなんですか。あるいは協力するのだ、協力するのだけれども、協力する限度はここなんだと、こういうふうになっているんですか。
  66. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) ただいまの御質問最初の御質問に関連して出たものと思いますが、最初の御質問につきましては、そういういいとか悪いとかいう判断では全くございませんで、法律の問題でございまして、ただいま財政法の第九条に基づきまして、「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」、もっぱらこの条項のためでございます。  それから第二点につきましては、先ほど御指摘のとおり、前回は詳しくこの件につきましては御審議があったわけでございまして、その中で戦争宣伝省が問題が出ていたかと思います。ただいま私記憶しておりませんので、その点は調べて御報告いたします。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 財政法第九条で、法律をつくらなければできないのですか、そういうことですか。ちょっと僕はそこまでは研究しておりませんけれども、法律をつくらなければできないということならば、国会の承認を当然法律をつくることで必要なわけですね。それを避けるためにこういうような変なものをつくってそこをやっているわけですか。おかしいな、それは。ぼくも研究しますけれどもね。脱法行為だな、それは明らかに。このベトナム協会とかなんとかというのをつくるのに国会の承認を得たというのなら、話はわかる。しかも予備費でしょう。予備費だから、一々承認を得ているわけじゃありませんからね、こういう項目をつけて。それはおかしいな。九条でいいんですか。法律的にできない。できないから、こういうようなものをつくって抜け穴をつくった。本来なら、法律をつくるならば国会の審議が必要だ。それを避けるために変なものをつくってやっておると、こういうふうに聞こえるのですよ。それでいいのかな、おかしいな。
  68. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) さらに法律的な点は詰めてみますが、この財政法では直接物を無償で供与することを禁止しておりますが、補助につきましてはこの法律は適用されておりません。そこで補助のほうを使ったわけでございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 補助をやるのを禁止してなければ、財政法九条に従ってやればいいんで、こんなものをつくる必要はないのじゃないですか。そういうふうになってくるのじゃないか。ちょっとこれはおかしいな。
  70. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  71. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  72. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) この法律によりまして、国が直接物を交付することができなかったわけでございます。したがって、直接にはやらなかったということでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 直接できなければ、変なものをつくってやればいいわけですか。直接やる場合には国会の審議を特に必要とするので、そうすると、ベトナムヘこういう物資を送るというそのこと自身について国会の承認を求めたことはあるのですか。予備費だから、出しちゃってあとからの承認でしょう。出す前にそういうふうなことを承認を求めたことがあるのですか。それが一つ。  それから、これは、こういうことをするについては、たとえばアメリカならアメリカと話し合ってというか、アメリカから慫慂を受けた——というのは言い過ぎかもしれませんけれども、アメリカと話し合ってというか、何らかの会議の中でそういう話が出て、そして出したわけですか。そこのところはどうなんですか。
  74. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 事前に国会の承認を求めておりません。それから他の国とは、アメリカも含めまして、この点について相談してやったということはございません。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本とアメリカとの間でベトナム戦争の問題について話し合ったことはあるわけでしょう。そのときに、日本が積極的にいろんな面で——それは憲法があって軍事的に協力はできないけれども、しかし、いろんな面で協力してくれという話はあったのでしょう。アメリカからあったから動いたというのじゃなしに、そういう話があったということは間違いないのじゃないですか。それはいくらでも記録に出ているのじゃないですか。軍事的に協力してくれということじゃなくて、その他の面で協力してくれということじゃないですか。大臣が来られたから、ちょっと答えていただいて……。
  76. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 当時はベトナムにおきまして、その前年度に大洪水がございました。そういうようなことから難民がふえておるということで、自発的にそういう人道上の見地から援助を行なったわけでございます。特にアメリカと相談したというようなことはございません、本件に関しましては。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行。外相の出席が十五分おくれているから、十五分延ばしてもらうようにしてもらいたい。そうしないと全部くずれるから。
  78. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) それは官房長と話してありますから。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外務大臣が来られたので、いまの問題は研究課題にしておきます。  外務大臣に、時間の関係から要点だけお聞きしますが、中国でいまや、いわゆる文化大革命といいますか、それが進んでいますね。これについて日本外務省としては、その原因なりあるいは進行状態というか、そういうようなものについてどのように判断をされておられるわけでしょうか。
  80. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 各種の情勢につきまして検討しておりますが、どういう性格のものだという特別の厳格な定義をつけるほどまだ十分な研究が完了しておりません。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これに関連をする中国の動きというか、そういうようなものに対して日本政府としては重大な関心を持っている一これは当然言えるでしょうね。
  82. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) もちろん重大なる関心を持ってこれを見守っている状況であります。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 見守っていて、そうしてそれにどのように対処するわけですか。もちろん進行にもよりますけれども、ただ見守っているだけですか。具体的に必要があれば、それに対処するということも当然考えられてくる、これはあたりまえですわね。
  84. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 中共とは御承知のとおり国交が正常化しておりません。承認もしておらない日本といたしまして、そのために何らかの注文なり要望なりをすべき立場にもない、そういうことでございまして、ただ見守っておるという段階でございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それが日本に対してどういう影響を与えるか、この点についてはどういうふうに判断されるわけですか。中国が国際的な孤立化を深める方向に進んでいる、こういうふうに見られるわけですか、あるいは、いやこれはそうじゃないのだ、必ずしもそういう方向に進んでいるとは見られないのだ、だからそれに対して日本には影響があるのだとか、ないのだとか、こういう点についてはどうお考えですか。
  86. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 主として国内の整風運動と申しますか、そういうようなものでありまして、対外的な影響力というものはさまで論議されておらない状況であります。いわんや国交のない日本といたしましては、何らのこれに、いま申し上げたように、注文とか要望すべき立場にもないし、また事実上の影響等につきましても、特に私はないと、こう考えております。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国連総会が開かれるわけですが、国連総会に臨む日本の態度、ここでどういうことが一番大きな問題になるか、日本に関連して、そういう点についてはどういうふうに現在お考えになっておられるわけですか。これは外務省としては、外務大臣も行かれることになっておるわけですか。
  88. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 国連総会には恒例によりまして出かけることになっております。さしあたり西南アフリカ問題が論議されるということを聞いております。それから一般演説が続き、いろいろそれに引き続いて重要な問題が討議されるものと考えております。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 当然中国の国連加盟の問題が起きてくる、そこで論議をされる、こういうことについては予想されるわけですか。
  90. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) もちろんこれは予想される問題であります。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本としては、中国の国連加盟を食いとめる、阻止する、こういう気持ちは、これはあるのですか。
  92. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 中共がいま台湾の中華民国政府が与えられておる代表権をとってかわって、それと同時に中華民国が国連外に追放される、そういう一連の問題を従来提起されておるわけであります。今回もまた同様の提案があるものと考えております。この問題は、ただ中共が国連に加盟する、単独に加盟するかどうかという問題以上に、非常に複雑な問題を提供する、アジアの現状に重大なる影響を与え、世界の平和にとっても重大な問題である、こういうふうに考えて、従来日本といたしましては、これに否定的な、消極的な態度をとってきておるわけであります。その点は、今日といえども、従来の方針を変更すべき何らの理由はないと考えております。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本がいわゆる重要事項方式の共同提案国になる、こういうことは、これはあれですか、変わりないのですか。
  94. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、最近は人口十万に足りないような地域が一国として国連に加盟しておる、こういう状況であります。ただ多数決でこの問題をきめるというような場合に、きわめて小国の帰趨によって問題がきまるというようなことも考え得るわけであります。そういう単純な多数主義の方式によってきめるのにはあまりに重大な問題である。でありますから、これは国際世論の大勢というものによってまず判断されるという方式が望ましい、こういうわれわれは意見をとっておりまして、これにつきましても、依然としてその方針を変えない、こういう立場にございます。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと結論がはっきりしなかったですから。私の言うのは、重要事項方式の共同提案国になるつもりなのかと、こう聞いておる。そのことと、重要事項方式が必要だということと、別個の問題ですわね。そうでしょう。私の聞いているのは、依然としてその問題に対する重要事項方式という形の共同提案国になるつもりなのか、こういうことを聞いておるわけです。
  96. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、これは過去二回にわたって共同提案国になっておるわけであります。これをいまどっちとももちろんきめておりませんが、特に従来の立場を変更して共同提案国には絶対ならないというような考え方は持っておりません。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 共同提案国になることによって、日本中国との間の緊張が激化をするということは考えられませんか。
  98. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 重要方式の問題は、これは形式的な問題であって、とにかくこれはきわめて重要な問題であるから、三分の二なら三分の二の国際世論の大勢というものによってきめるべきものであると、こういう議論は、かりにそういう場合になったときに白票を投ずるか青票を投ずるか、そのいかんにかかわらずですね、問題が重要であるから重要方式によってやるべきものである。こういう議論とは関係がない。でありますから、われわれとしては賛否の投票いかんにかかわらず、国際世論の大勢によってきめるべきものである、こういうふうに考えておる。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、国際世論の大勢が変化をしてきてですね。中国を国連に加盟さすべきであるとか、あるいは重要事項方式というものがとれなくなってきたとか、こういうことになってくるというと、国際世論の大勢というものにマッチして日本のやり方が変わってくると、こういうふうに承ってよろしゅうございますか。
  100. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 三分の二の方式でちょっとおかしくなってきたと、今度は四分の三にしようじゃないかというようなことは、これは絶対に日本はやる意思はありません。でありますから、三分の二ときめた以上は三分の二でやって、そしてそれが従来の情勢を逆転させるというような場合には、これはその事実を認めざるを得ないと私は考えております。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ重要事項の共同提案国になるということと、それが提案されたときに賛成するということとは、ぼくは別個な問題だと思うのですね。そうでしょう。あえてその提案国にならなきゃならない理由でも特別にあるのですか、それどうなんですか。自民党の中にも、そこまでやる必要はないじゃないかという議論が相当あるんじゃないですか。
  102. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) いままで三回にわたって共同提案国になっておる。それを何らの理由なしに、これを態度を変更するとか、逃げるとかというような必要は一つもない。理由はない。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その共同提案国になることによって、日本外交というか、政治というか、そういうふうなものに現実に何かプラスがあるのですか。
  104. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) マイナスもないと思います。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、マイナスがないことを聞いておるんじゃなくて、積極的な意味ではプラスはないと承ってよろしいですか。別にないわけでしょう。
  106. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 理由のないことによって従来の方針を変える必要はない、かえってそういうことはマイナスになる。つまり、何でもふらふらしておるということは、これはマイナスになるということです。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも話がはっきりしませんけれども、前にきめたことなんだから、こいつを変えることは、あれですか、ふらふらしておるからマイナスになると、こういうわけですね、なるほど。そうすると、あれですか、北朝鮮の技術者の入国問題に対しては、日本の政府の方針は一貫していたんですか。あまりふらふらしなかったんですか。この点はどうなんですか。
  108. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 理由なしにふらふらするということはいかぬ、理由がある場合にはその問題を多少模様を変えて取り扱うということもきわめて必要である、そういうことを言っております。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自由民主党のおもな方が−小坂さんたちですか、あれは中国を訪問されたわけですね。あれはどういう目的で訪問されたわけですか。ああいうような訪問自身は、あなたとしてももちろん歓迎されているわけですか。
  110. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 別に自由意思によってある国を訪問するということについて、日本政府は特殊の干渉とか制限を加えておりません。おいでになる方の考えについては何も聞いておりません。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ああいうおも立った方が行かれることによって日本外交にプラスになる、こういうふうにお考えになっておるわけでしょう。もちろんプラスになるから認めたわけでしょう。
  112. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) プラスになるから行かす、あるいはプラスにならぬから差しとめるというような、そういう干渉をしておりません。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたとしても、そうすると国連総会におけるあれは別として、日本中国との友好をはからなきやならない、こういうことの考え方はあるわけですか。
  114. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これは総理がたびたび言っておるところでございまして、国の政治体制いかんにかかわらず、どの国とも仲よくしたい、こういうことを言っておるのでありまして、これは佐藤内閣の外交の基本方針であると考えて、私ども日中友好の方針は望ましいところである、こう考えております。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日中友好の方針が望ましいと考えるなら、具体的に今後どういうふうなことをされたいというふうに考えておられるわけですか。
  116. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これは両方が努力しなきゃならぬことでありまして、でありますから、中国もまた日本の立場を尊重して、そしてお互いに互恵平等の精神でもって日中友好を高めようという努力がある限りにおいては、われわれはこれは賛成するのでございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 両方が努力するのはよくわかりますが、日本もそれに対して努力をするというわけですね。具体的に佐藤内閣は、どういうふうに努力をしてきて、今後どういうふうに努力をされるのか、これは国民が聞きたがっているところたと思うのです。その点はどうなんでしょうか。
  118. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 日ソの関係は非常に最近改善されております。遠く何年かあるいは十何年かあるいはそれ以上さかのぼると、なかなかそう両国の間は簡単なもんじゃなかったと記憶しております。ただいまはそれが非常に改善されておる。結局これはソ連の方針が非常に変わってきておる、いわゆる一言にして言えば、平和共存の方針にだんだん徹してきたというためではないかとわれわれは考えております。中共との間におきましても、それぞれまあ具体的には違う点もあると思いますが、とにかくお互いに相手の立場を尊重し、互恵平等の精神に徹するというような状況になることをわれわれは熱望し、かつ期待するものであります。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間があれですからもう一問しかできませんが、あなたのお話を聞いておると、向こうが変わることばかり言っておるのですね。向こうが変わることじゃなくて、こっちはどうするのかと聞いておるのですよ。だから佐藤内閣は人気が出ないということを言われるのです。こっちはどうするかということを聞いておるのです。いままでどうしてきて、今後どうするのかということを聞いておるのですよ。向こうが変わってくるのを待っていたってしょうがないじゃありませんか。こっちがそれを変えるなら変える方向に向かっていく、こっちがどうするかということが日本外交の主体制の問題なんで、それがあなたの口からさっぱり出てこない、のんびりかまえておる。それじゃいかぬ。それがどうするかということ、それが一つと。  もう一つは、あなたは五月二十六日の参議院の外務委員会で、政経分離の方針を大きく変更する必要はないが、何か具体的な問題を解決するため必要なら中共と政治折衝をすることも考えられる、こういうふうに言われておりますね。具体的な問題を解決するため必要なら中共と政治折衝することも考えられるということですね。これはどういうふうな具体的なことですか。中共と政治折衝するというようなことも、これは考えられるのですか。そういうふうにあなたは答弁されておるから聞くわけです。二つの問題を聞きます。
  120. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) まあ日本の大体の大方針は、佐藤内閣がしばしば言うように、政治体制のいかんにかかわらずどの国とも仲よくして、そして互恵平等の原則に徹して、内政干渉などしない。そしてそれぞれの立場において共存共栄するという態度でおるのだとたびたび言っておる。これに別にもとったようなことは私はないと思います。こっちはちゃんと用意ができておる。  それから第二の問題ですがね、第二の問題は、どういう場合に私が言ったのか、どうも忘れっぽいほうなんで、その場合に即して私はお答えしたのだろうと思います。それだけ伺ったのじゃ、どうも私は答弁するわけにはまいりません。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもよくわからないのですが、中国の出方によっては日中の友好を促進する用意が日本の政府にできておると、こういうふうに承ってよろしいのですか、こまのお話どうもそういうように聞こえるので……。  あとの参議院の外務委員会の問題は、別の機会にしましょう、全文をやはり見ないと結論は出ませんから。  あなたの言われた、日本のほうでは何か用意ができておるという意味は、向こうの出方によっては日本は友好を促進する用意はちゃんとできておるのだ、こういう意味ですね。
  122. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) そう手のひらをひっくり返えすように、そうなればあしたからどうのという、それはなかなかそうはいかない、そうはいきませんが、大体そういう方針によって両方ともお互いに心を許しておつき合いするという状況になれば問題の解決はきわめて容易であると、こう考えております。
  123. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は原子力潜水艦の日本寄港の問題を中心にしてお尋ねをしたいと思います。  これは御承知のとおり、従来寄港のペースを見てまいりますと、三十九年以来、大体三カ月に一回あるいは二カ月に一回程度の寄港であったのでありますが、今回の寄港を見てまいりますと、一カ月に二回、しかも期間にいたしまして、大体一週間から五、六日程度というのが滞在の期間でありましたけれども、これが十二回目の寄港には一六日という長期滞在になっているのでありますが、この長期に、しかも短期間に入港しておるというこの辺の事情は一体どうなっているのか、お答えをいただきたい。
  124. 安川壯

    説明員(安川壯君) まず原子力潜水艦の滞在の期間でございますけれども、確かに今回十六日というのは、従来の滞在期間から比べますと最長でございます。  それから、寄港の頻度でございますけれども、八月中に二回入ったというのは、従来になかった例ではないかという御趣旨の御質問であったと思います。まあ頻度につきましては、必ずしも何カ月に一回とか何週間に一回とルールがきまっておるわけではないんでございまして、そのときの任務の状況によって随時入るということになっておりまして、現に過去においても、一月の間に二回入ったという例はございます。そういうわけでございますので、今回の潜水艦の寄港も、従来と同様に補給あるいは兵員の休養という目的は出ておらないのでございまして、これについて特別の何か理由があるということはないわけでございます。
  125. 達田龍彦

    達田龍彦君 その目的の休養と補給、さらに特別の目的、理由がないということは、アメリカ側に確かめられての回答ですか。大臣、どうですか。
  126. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これは日米安保条約によりまして、そのつど理由をただすとかというようなことなしに自由に入港ができるわけでありますけれども、普通の軍艦と違いまして、原子力を推進力に使うというもの、及びこれに対する国民感情というものを考慮して、そして特に予告をして入って来るという状況になっておるのでございまして、われわれはその理由というものを、特に聞くべき条約上の権利というものはない。それはもう包括的に随時入港を認めるというたてまえになっておりますが、しかしいま申し上げたように、原子力を推進力に使っておるという関係と、これに対する国民の感覚というものを考えて、向こうが特に協議的な態度で日本に接しておると、まあこういうことでございまして、それ以上こっちが立ち入って、何のため、どれぐらいというようなことをせんさくすることは全然必要でない、またそういう権利もないと、こういうことになっております。
  127. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは私もそうではないかと思うんでありますが、特に現地では今回非常に滞在期間が長い。しかも月のうちに二回来た。これは原子力潜水艦が事故を起こしておるのじゃないか。その修理のために今回寄港しておるのだと、こういう不安、疑問というものが現地に流れております。この点一体どうですか。外務大臣としてそういう点についてお確かめになったのでありますか。確かめてないとするならば、国民に対してこういう非常に不安と疑惑を持っておる今日の実情に対して、アメリカ側に対してそれを確かめて、国民に安心感を与えるという態度をとるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  128. 安川壯

    説明員(安川壯君) 何か事故ではないかというお話でございますが、これはすでに発表いたしました、原子力潜水艦寄港に同意いたしましたときに発表いたしました文書の中にも、はっきり書いてあるわけでございますけれども、補給、人員の休養ということになっておりますけれども、原子力に関係する部分、すなわち原子燃料の交換でありますとか、原子炉の修理というものは、一切日本の寄港に際しては行なわないということがはっきり書いてあるわけでございますから、少なくとも原子力に関する事故があったというようなことは考えられないわけでございます。もちろん潜水艦でございますから、ほかの艦艇と同様に、ちょっとした修理とか、部品の補給というようなことは、当然起こり得ると思いますけれども、原子炉に関する事故、それに伴う修理というようなことはあり得ないわけでございます。
  129. 達田龍彦

    達田龍彦君 一体確めたのかどうかということと、それからそういう国民に対する不安があるということ、外務大臣としてむしろそういうことはなかったということを国民に安心させるために、積極的にアメリカ側に聞くと同時に、私は態度を表明すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  130. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 原子炉の故障があってそれを補修するというようなことでございますと、日本のどの地点でもこれに十分にこたえるだけの設備を持っておりません。でありますから、そういうことはまあ言わずもがな、問わずもがなの問題であります。そういったようなことは全然問題外である、こう考えております。
  131. 達田龍彦

    達田龍彦君 全くもって回答は納得をいたしません。そこで先ほど御回答の中にありましたけれども、月のうち、二回あるいは三回来たって、これは問題ないのだという回答でありますが、これは私は国会の議事録を見てまいりますと、三十八年の六月六日ですが、参議院の外務委員会で、原子力潜水艦に対して中間報告を政府が、当時は大平外務大臣でありますが、やっている。その中で、わが党の岡田宗司氏が、一体、この中間報告の中で三カ月に一回ないしは二カ月に一回ということになっているけれども、一体そうなのかという質問に対して、政府委員が、一カ月に一回あるいは二カ月に一回ということです、ということを明確に答弁をいたしておるわけです。これはアメリカ側の回答ですと言っているわけです。したがってこの回答によりますと、一カ月に二回来るということは、まずアメリカ側としては考えていない。国会でもそういう答弁を皆さんやっているので、これは私はその意味では全く今日約束違反だと思うのでありますが、この回答と、今日のいまの回答との違い、これは態度が変わったのか、アメリカ側の要請に基づいて、圧力に基づいてそういうふうに考え方が変わってきたのか、外務大臣、その点の明確な御答弁を願いたいと思う。
  132. 安川壯

    説明員(安川壯君) 当時中間報告には、期間は、通常の関係とほぼ同様大体一週間前後で、その頻度は、おおむね一カ月か二カ月に一回程度であろうという御報告をしております。したがいまして、これは必ずしも一カ月に一回でなければならぬとか、あるいは一カ月二回入ってはならぬというような約束をしたわけではないのでございまして、おおむねの頻度という見当で申し上げたわけでございます。現に過去の実績を見ましても、確かに一カ月に二回入った例があるかと思うと、場合によりましては、四カ月ないし五カ月全然入らなかったという例もあるわけでございまして、おおむねという、大体の見当を述べたものでございまして、何カ月に一回というはっきりした約束はあるわけではございません。
  133. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは私は国会の議事録を見てもらえばわかるわけであります。いまの回答はまさに詭弁だと思うのです。当時の事情からいって、国民感情があったために、相当長い期間費やして入港に踏み切ったといういきさつがあるのです。そのときの政府の方針としては、三カ月に一回しかも短期間だということで国民の危険感、不安感というものを除去するためにとった政府の態度だったのでありますけれども、今日ではそういう状態を一応乗り越えたという安易感から、いま回答されたように回答が変わっている、本質的なものが変わっていると私は判断をいたしております。  そこで時間がないので先に進みますけれども、今回八月一日から九月六日までの間を考えてまいりますと、約三十七日の間で入港しているのが二十二日であります。この期間はまさに入港しているほうが長いという結果なのであります。この意味では私はまさに佐世保の場合には、原子力潜水艦の恒久的な基地になったという位置づけをすべきだと思うのだけれども、外務大臣としてこういう実態に立って、どういうようにこの問題を御判断になっているか、お尋ねしておきたいと思います。
  134. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 原子力潜水艦の基地ということになりますというと、その基地という名目にふさわしい実体を備えなければならぬ、その実体というものは何もないのであります。ただ桟橋が一つあるというようなくらいの程度でありまして、これは滞船日数いかんによって基地化するというようなこととは全然別の問題である、こう考えます。
  135. 達田龍彦

    達田龍彦君 その施設だとか、そういうような問題ではなしに、まさに期間の問題からいうならば、入っている期間が長い、こういう状態でありますから、原子力潜水艦の基地だという私は見方をしても差しつかえないと思うのでありますが、再度そういう点について外務大臣の考え方を聞きたいと思います。
  136. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 私もよく調べたわけではありませんが、香港の港なんかにはしょっちゅう原子力潜水艦が寄港している、また出たりまた入ってくるというようなことで、これは延べ日数にするとむしろ一カ月に三十日以上も寄港というようなことになるかもしれません、たった一そうでありませんから。そういったようなことがどの程度まで行なわれているか、私は調べたことはないけれども、何ら香港の当局に断わりなしに入ったり出たりしているようであります。しかし、そういったようなことが何日に及ぶから、これが原子力潜水艦の基地であるというようなことを、だれも考える者はないと思います。
  137. 達田龍彦

    達田龍彦君 これまた時間がないので納得がいきませんけれども先に進みますけれども、もしかりに、いまおそらく私は事実は私が申し上げるように原子力潜水艦の修理をしているためであろうと思うのでありますけれども、修理を現実にやるということになれば、作戦行動の一環として、戦闘行動の一環として原子力潜水艦が行動し、そうして佐世保に入港したということになるのだけれども、今回の修理は作戦行動の一環として見るべきではないかと思うが、この点について大臣はどう思いますか。
  138. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 原子力潜水艦の例を離れてほかの船舶の問題にいたしまして、たまたまそこにドックがある、一般商船の関係のドックがある。そこである程度の修理をするというようなことがありましても、それを目してこれは作戦行動の一つであるというようなことを言うわけには、これはいくまいと思うのです、そういうことは事実上ございませんけれども。この原子力潜水艦にいたしましても、きわめて軽微な修理というものがかりに行なわれたといたしましても、それは決して、作戦行動の一部分であるというふうに見ることは、私は非常に無理があると、かように考えます。
  139. 達田龍彦

    達田龍彦君 再度お尋ねいたしますが、原子力潜水艦の日本寄港でもって、日米間の事前協議の対象になる事態というのは、一体どういう事態を考えておるのか、お尋ねしたい。
  140. 安川壯

    説明員(安川壯君) 事前協議の対象になりますのは、交換公文にありますように、わが国の施設を、日本からの戦闘作戦行動に使用する場合ということになっておりますので、実際に軍艦の場合にそういう事態が行なわれるということは、ちょっと予想し得ないわけでございまして、典型的な事前協議の対象になります戦闘作戦行動と申しますと、最も典型的なものは、日本の航空基地から爆撃機が直接敵地を爆撃するというような場合でございまして、艦艇の場合には、これはほとんど佐世保、横須賀の施設というものが補給あるいは休養というのが本来の基地の使命でございますので、これは原子力潜水艦に限りませず、一般の艦艇が佐世保なり横須賀を、条約に定められておりますような戦闘作戦行動の基地として使用するというようなことは、私は実際問題としては起こり得ないのではないかと思います。  ただ、もう一つ問題は、核兵器の持ち込みの場合でございまして、これは戦闘作戦行動とは関係なしに、かりに原子力潜水艦が核弾頭を装備して入港するというようなことがあり得るとすれば、それは当然事前協議の対象になるわけでございます。
  141. 達田龍彦

    達田龍彦君 そこで問題なのは、いま申されたように、確かに現在までの政府の方針というのは、核兵器の持ち込みの場合、さらには戦闘作戦に参加をした場合ということになっております。そこで、いま国民や市民の原子力潜水艦の寄港に対する不安と危惧というのは、御承知のとおり三十九年の十一月に第一回が入港いたしておりますけれども、その後の情勢を見てまいりますと、御承知のベトナム戦争の激化、さらには中国の核実験の国際的な影響あるいは戦争の国際的な緊張という問題等から考えてまいりますと、背景としては、平常における、通常における艦船の出入りということよりも、背景としては、まさに軍事的作戦行動に基づいて行動をされたという情勢と背景があるのであります。そういう意味で、市民や国民は今日原子力潜水艦が寄港することにおいて、たいへんなる戦争に巻き込まれるのじゃないか、すでに巻き込まれて作戦行動に参加をしておるのではないかということを、不安と危惧を今日持っておるのが、私は実情であろうと思うのです。また、そういう情勢の変化に基づいて原子力潜水艦の果たす役割りと任務というものも、私は戦術上も戦略上も違ってまいると思うのであります。そういう意味で、今日私は原子力潜水艦の入港は単なる通常の寄港ではなくて、戦闘行動の一環としての行動であるということを今日認識をし、そういう立場でこれは事前協議の対象として日本側がアメリカに対して申し入れるのが、これは日本政府のとるべき妥当な姿であるし、国民のそういう不安を除去する道であると思うのでありますが、この点について、外務大臣は一体どういうふうにお考えになりますか、明確に御答弁願います。
  142. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 原潜の入港は、すなわち戦闘行動の一環としてみなすべきものであるという前提のもとにこれは事前協議の対象に加えるべきではないか、こういう御質問でありまするが、われわれは全然所見を異にいたします。戦闘作戦行動がその日本の入港したところから行なわれて、まっすぐ作戦行動を起こすというようなことは、いま北米局長がお答えしたように考えられない、これがきわめて、戦場がごく接近しておる、そしてそこに原潜が入港し、直ちにその作戦行動を港外に出たときからすでに作戦行動に移るというようなことは、今日の状態においてはとうてい考えられない。そういう状況でありまして、これはいわゆる日本の施設区域を作戦行動の直接の進発の地点としてこれを使用しておるというようなことは、とうてい考えられない事実ですので、これを事前協議の対象にするということは、もちろん非常な無理がある、こう考えます。
  143. 達田龍彦

    達田龍彦君 全くこの回答として考えられない、そういうことは対象外という回答だけでもって、アメリカがどう考えておるのか、日本の立場をどう主張するかについては、全然意欲的な御回答がないんでありまして、全くもって私は納得いかない内容であります。  そこで、時間がないので最後にもう一つお尋ねをいたしておきたいのは、そういう情勢でありますから、もう一つ国民や市民の不安というのは、一体こういうふうに長期に、しかも何回も短期間のうちにやってくるということになると、当初私どもが国民の不安として考えたように、もうすでにノーチラス型でなくて、ポラリス型の潜水艦がその中に入っておるのではないか。さらにまたサブロックを搭載しているんではないか、こういう不安が現実に国民の中にも市民の中にもあるのであります。私も今日の国際情勢の中では、そういうことがあり得ると判断をいたしておりますけれども、この点について一体日本として、これは明らかに核兵器の持ち込みになるわけでありますけれども、あるいは核装備をした潜水艦ということになるわけでありますけれども、これを確かめる方法があるのか。ないとするならば、アメリカ側は積極的にこれを通知することになっておるのか、その点明確にしてもらいたい。
  144. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これはたびたび御質問がありましてお答えしておりますが、普通の軍艦にしてもあるいは潜水艦にいたしましても、核兵器を装備しておるかどうかということを直接に現場について臨検をするということは、これは国際法上においても広く認められていないので、他国の軍艦を臨検するということは、これは認められておらない。でありますから、疑えば切りがない。あるいは約束違反をしているのではないかという種類の御質問でありますが、われわれはその厳粛なる条約の条項に従って行動しておるということを信頼しておる。もしそういったようなことがかりにも自後において認められるというようなことになりますれば、この日米安保条約体制というものは、もう一ぺんに崩壊するというようなことになるのでありまして、そういうことは絶対にあり得ない。これは同盟国に対する信頼の問題ということになるのでありますが、われわれはさようなことは考えておりません。
  145. 達田龍彦

    達田龍彦君 時間がないので、将来これはさらに外務委員会あるいは内閣委員会等で解明をしたいと思います。  そこで、最後になりますけれども、これは潜水艦問題とは違いますが、過般の防衛庁長官がおいでになったときの決算委員会の中で、外務省御承知と思いますけれども、例の佐世保の名切谷の米軍の住宅の返還について、実は七月の二十六日に施設特別委員会で返還の話し合いがほぼ一致をいたしております。これは防衛庁の話によりますと、最終的には日米合同委員会でもって正式に決定をしたときに返還が正式にきまると、こういう話でありまして、外務省としてこの取り扱いをどういうふうにお考えになっておるのかをお尋ねをしたいと思います。
  146. 安川壯

    説明員(安川壯君) この問題につきましては、ほかの施設の返還の問題と同じように、合同委員会の下部機構であります施設分科委員会におきまして日米間で協議をいたしまして、この協議が整いますと、合同委員会の本会議でこれを承認するかしないかをきめるわけであります。したがいまして従来の慣例等から見ましても、施設分科委員会で、実質的に日米間で合意を見ましたものが本会議で引っくり返るというようなことは、ほとんどあり得ないことでありまして、本件につきましても、施設分科委員会の場におきまして原則的には同意を得ておりますし、今後具体的な打ち合わせの中で最終的にきまれば、これを合同委員会の本会議で日米双方の代表が承認することは、ほぼ間違いないとお考えいただいてけっこうであります。
  147. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  148. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は中共と国連の問題、それからアジア平和委員会、それからインドネシアの緊急援助の問題についてお伺いしたいと思いますが、きょうの報道によりますと、国連の事務総長が再任を辞退する、こういうことが報道されておるのであります。またこの事務総長の選出ということも、大きな総会における問題一なります。外務省としてこの報道についてどのような御感想がございますでしょうか。
  150. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) ウ・タント事務総長は、きわめてりっぱな人格者であり、しかも識見、手腕ともに兼ね備えたりっぱな事務総長でありまして、各国ともその留任を心から希望しておるのであります。でありますから、今回の辞任の意思表示がありましても、各国はこぞってその留任を要請下るであろうと考えます。その要請が実現することを希望、期待しておるところであります。
  151. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  152. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 その事務総長が辞任の声明発表の中に、中共が国連に参加していないことは、きわめて不満である、このような発言をしておるわけであります。大臣、この点についてどのようなお考えですか。
  154. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) それは事務総長としての個人の見解だと思います。これに対しては、相当の理由があって言われておることと存じますが、内容等については、まだ詳細に承知しておりません。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 この国連における中国代表権の問題は、決して一時的な、あるいは局部的な切り抜け対策、こういう問題では済まされなくなってきたと思うのですけれども、長期的、なあるいはダイナミックなその方針を立てなければならぬ、これが今後の課題である、このように思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  156. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりきわめて重大な問題でありますから、これの取り扱いは、きわめて慎重かつきめたならば全くあとには引かない、退かないというくらいなつもりで、ダイナミックなやり方をしていきたい、これがすなわち重要方式の採用されておるゆえんである、こう考えております。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、確かに大臣のおっしゃるとおりと思いますが、私は一時的なあるいは局部的な一つの期間を限ったようなそういう対策ではだめじゃないか。もっと長期的ないわゆるダイナミックなということは、一つに固定しない、時期に合わせ、あるいはその変化に応じてどんどんこちらの態度も対応していく適切な施策を立てていく、こういうことがダイナミックという意味ですから、そういうことが今後の課題しゃないかと、こう思うわけですが、再度お尋ねしたいと思います。
  158. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) お説のとおりでございます。この問題は、慎重で、しかも果断な、そして重厚な結論で処理されなければならない、こう考えております。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理をはじめ、ただいまの委員会においても、大体重要指定方式の提案国になることは変わりないと、このように私は推察するわけですが、このこと自体が、何か一時的な局部的な態度である、こういうふうに思うわけです。先ほど大臣がおっしゃいましたように、将来、四分の三なり、あるいは支持する国が変われば、そのときはその事実を認めざるを得ない、こういうような推測——前提があるならば、あくまでもっと長期的な視野に立って、そうしてわが国の態度も施策もとらなければならないじゃないかと、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  160. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) もう一々ごもっともでございます。さような心組みでこの問題に対処してまいりたいと、こう考えます。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 一々ごもっともで、私も発言のしようが困るわけですが、ごもっともなら、もうちょっと真剣に考えてもいただきたい、こう思うわけです。また具体的な施策をもってこの次の大臣が行かれる総会にも臨んでいただきたい、こう思うわけですが、もう言うまでもなく、ギャラップ調査でも、ハリス調査でも、中共の国連加盟に対してアメリカ国内でも五七%ですか、支持している、こういうふうなことも出ております。また、封し込めから孤立なき封じ込め政策——アメリカの、何か対中共に対する施策も転換しているような気がするわけです。そういうような反中共政策の最先頭を行くアメリカ国内与論、あるいはケネディにしても、ゴールドバーグにしても、非常に、二つの中国を認めるべきだ、こういうふうなことも言っております。まあ、こういうふうなことを、またどうかと言っても、ごもっともだと、こういう返事だと思うのでありますが、たとえばゴールドバーグにしても、最低、中共が国連に加盟する条件として、四つの条件をあげているわけですけれども、ごもっともごもっともとおっしゃるなら、何かそこに具体的な方策、またゴールドバーグと同じように、これとこれとこういう条件があれば、わが国も中共を国連に認めてもいい、認めざるを得ない、こういうような条件でも考えての上で、私の言ったことをごもっともと、こういうふうにおっしゃるのでしょうか。何か最低の条件でもあるかどうか。これとこれだけ認めれば、わが日本としては中共を国連加盟を認めざるを得ない、認めようじゃないか、こんなような具体的な施策か何かお持ちでしょうか。
  162. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) ゴールドバーグ氏の意見は、中共加盟についてやはり考えなければならぬというような意向を漏らした、そういうことから何か非常に誇大に新聞が扱って、世間もそうかと思ったのではないか、こういう節が多分にございます。中共を代表者と認めて、そうして従来の中華民国から代表権を剥奪する、あるいは国連外に追放するというような一連の問題を総括して、これに対する所見を述べたというようなことはどうもないようでありまして、ゴールドバーグ氏のほんとうの腹は一体どこにあるのか、ただ片言隻語だけではなかなか判断に苦しむ、こういうような状況であると私は考えております。アメリカが大体、こういう問題に対して、かりにどういう意見を持とうが、日本といたしましては、これはきわめて重要な問題であって、実際、国際世論の大勢によってまず、判定をする、日本はその際に、これに基づいて対処すべき方針をきめる、こういう大体の行き方に狂いが出てくるはずがございません、ただいまのところでは。アメリカの首脳部の人がたまたまどういうことを言ったというようなことによって、そう簡単に動く問題でないのです。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、わが国の、中共が国連に加盟する条件としては、国際情勢を待って、要するに、中共加盟の国が多数になれば、わが国も中共加盟を認めざるを得ない、これがわが国の中共国連加盟に対するただ一つの条件である、このように取け取ってよろしいでしょうか。
  164. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) そこまで私はまだ申し上げておらないのです。少なくともこの問題は、国際世論の大勢によってまずきめられるべき問題であって、その際に日本がそれにただしからまということで、これに直ちに追随をするか、あるいは直ちに追随しないで、他の方法を考えるか、そういったような問題は、私は別にいま申し上げておりません。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 次に、アジア平和委員会の問題ですけれども、もう詳細は御存じだと思います。タイ、フィリピン、マレーシアこのような国は明らかに北に対して受け入れられない国です。中共、北鮮はそれに対して背を向け、あるいはまた台湾ですらも、委員会の開催に対して難色を示しているわけですから、こういう委員会において、たとい平和アピールが採択されたとしても、非常に何か力がないものである、また、かえって北のほうに対して挑発するような結果にもなるのじゃないか、こう思うわけですが、この点いかがでしょうか。
  166. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 戦争を、とにかくやめて、平和解決によって終息させるということに対しまして、基本的にどの方面からも積極的な反対があるはずがない。平和はきらいだ、一生戦争をして死にたいというような者は、気違いじゃなければ私はないと思っております。そういう趣旨におきまして、この平和アピールに賛同したわけでありまして、特にアジアの問題は、アジア人の手によって大いに世論を喚起し、その問題の解決に努力したいという提唱に対して、われわれは賛意を表したというわけでございます。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も平和を欲しないような気違はないと思いますけれども、いまの世の中には高等精神分裂者というのが非常に多い。うわべは非常にりっぱな態度をしておりますけれども、腹の中に持っていないだけのものであって、中に行くと非常に混乱している。精神分裂以上にその精神分裂者がいるわけですから、そういうところをやはりきちっと見きわめませんと、非常にうまくない、こう思うわけですが、ともかく、十三日の外務大臣の返書では、アピールに基づく会議が開かれる場合には、日本としては北側が出席することが望ましいと考えると、このようにおっしゃっているわけです。ですから当然、北側の諸国の参加が望ましい。もし、参加が得られない場合には、それでは日本はこの会議に出ないのか、この点いかがでしょうか。
  168. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) この平和委員会の提唱は、これに賛意を表してもらいたいと言って、日本を含む十七カ国に提唱をしたわけでございまして、この際に賛成をするというために、勢ぞろいをして国際会議をやる、そうしてさらに今度は関係国の平和会議、こういった手続をとるか、それとも賛成です、こう言って電報で済ますことになるか、これは必ずしも、私はきまっておる問題ではないと思います。いずれにしましても、日本としては関係国側がこれに賛意を表するということが望ましい、こう考えております。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣は、今度は秋に主要各国をお回りになる、こういうことは決定的らしいのですが、そのときのいろいろ話し合う内容、あるいは外務大臣としてどのような立場でベトナム戦に対する平和アピールを各国に持ち込まれるかというような、具体的な方針がもうそろそろおできになるのじゃないかと、こう思うわけですが、今度の秋に世界各国をお回りになるそのときのとられます態度、特にベトナムに対する問題の態度ですが、いかがでしょうか。
  170. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 格別にあっというような、世間が驚くような内容の提案も用意しているわけではございません。いずれにいたしましても、当事者が戦争によっては、これはもうなかなか解決しない、お互いに傷つくのみである、そういうことを自覚して和平のテーブルに着くという意思を決定するということが、これは一番のかなめの問題であります。そういう空気なり情勢をつくり出すのに、もし役立つとすれば、あらゆる努力を払いたい、こう考えております。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 世間を別にあっと言わせるようなことをやらなくてもいいと思いますけれども、少なくとも日本外務大臣が世界各国を回ると何が起こるのか、かたずを飯んで世界が待つような、そういう日本外務大臣になってもらいたいと、こういうふうな希望があるわけです。  問題を変えまして、インドネシアの緊急援助の問題ですけれども、時間がございませんので、問題点を四、五点あげて、一括して答弁をしていただきたいと思いますが、インドネシアに対する緊急援助、当然これは人道的な立場からおやりになられたことは、間違いないと思います。それにしても、インドも韓国も非常に食糧難で困っているわけです。特にインドネシアに対する緊急援助をした理由はどこにあるのか。  それからこのインドネシアに対する緊急援助物資ですね、お米、それから綿糸、お米の場合は三井、三菱、丸紅飯田、東綿ですか、ところが綿糸の場合はブナン会という——無難だか無難じゃないかこれははっきりわかりませんが、会社の名前はブナン会というのですが、このブナン会が一手に引き受けてインドネシアの緊急援助をやっているわけです。ところがこのブナン会の代表取締役というのが東綿の重役——非常に東綿というのは今回の国有財産にしても政商として疑惑の的です。非常に問題がある会社です。ですから当然この入札が行なわれたと思うのですが、綿糸を一手にブナン会が引き受けて援助した、こういうことに至る入札の経過、いきさつ、それをはっきりしていただきたいと思います。これは二百五十万ドルの緊急援助です。  それからもう一点は、同じく医薬品の二万ドルの追加が、これは報償金として出ているわけです。見舞い金として出ているわけですが、その時期と支出の品目あるいはこれが報償金として、ポケットマネーだと思うのですがそれを報償金として出さなければならなかった理由、どうして緊急援助の二百五十万ドルの中に組み入れなかったのか、その用途についてお伺いしたいと思いますが。
  172. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 詳しく事務当局からお答え申し上げます。
  173. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 最初の点でございますが、特にインドネシアを選んでなぜ援助したかという点でございますが、わが国といたしましては、食糧危機に悩んでおる国に対しましてはできるだけ援助したいという趣旨で、従来もインドその他につきまして援助してきたわけでありまして、特にインドネシアに対してのみ援助したということはないと思います。  次に、綿糸をなぜブナン会が引き受けたかということにつきましては、本件は日本赤十字社に委託して行なった援助でございますから、その結果、ブナン会がどのように本件を落札したかという経緯については、われわれのところにはまだ資料がございません。この点につきましては、いずれ調査の上御報告いたしたいと思います。
  174. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  175. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  176. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 最後の御質問の点の二万ドルの医薬品でございますが、これはこの四月、五月にソロ川の大はんらんがございまして、中部ジャワ地区において洪水が起こりまして非常な被害が起こったわけでございます。これに対しまして、インドネシア側から各国側に対して医薬品その他の緊急の援助を求めたわけでございますので、これに対して医薬品援助したものでございまして、物は七月の十四日に東京を発送いたしまして、七月二十九日にインドネシアに到着しております。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はまず第一にお聞きしたいのは、在日朝鮮人の帰国問題で閣議決定され、そうして日赤を通じて通告がされたはずですね。これをまだ正式に聞いておりませんので、正式にここで発表してもらいたいと思います。
  178. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 北朝鮮に対する帰還問題につきましては、すでに数年の長きにわたって実施しておりまして、帰国者も減少しておりますので、現在のままの協定を続けていくことが適当であるかどうかということにつきまして検討いたしました。人数も減少しておりますので、現在のような形で長く延長することは必要ないと思います。ただ、余裕期間が必要と思われますので、もう一年の延長はそのままやってもらいたい。その以後のことにつきましては、現在の協定は打ち切りまして、さらに帰還希望者がある場合にこれに便法を講じていく、こういう趣旨で決定を見たわけでございます。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 なるたけ大臣からやってもらいたいと思います。私は、こういうような決定をされて、非常にこれは不当な事実に合わない決定だと思うのですが、そのときにこの協定を結んだのは、あくまで政府の考えでは人道的立場からこれを結んだ、こういうことではなかったですか。この点、いかがですか。この立場を政府はもういまや放棄されたのですか。
  180. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり、人道的な立場でこの問題を始めたのでありますが、つまり申し上げるまでもなく、親子兄弟が別々に、自分意思に反してほとんどこのままでは会えるか会えないかわからぬというような状況にさかれておるというような事例がかなりある。そういうことで、それではこれは捨て置けぬというので、これは人道的な立場から始められたものであります。いままで始めてから数年たちまして、一万数千の人がこれによって帰還をしておる。最近はそういったような人も大体もう片づいておるのではないか。ただいまでは、当初よりずっと人数は少なくなっておる、こういうわけでありまして、なお人道的な見地からこれは捨ておけないというような人も中にはあるかもしれない。それはそれでまた別の方法を考えようじゃないか、少なくともいまのような状況をどこまでも墨守する必要はないだろう、こういう見通しのもとに今回の措置に出た次第でございます。
  181. 岩間正男

    ○岩間正男君 人道的な立場と言っているんですけれども、しかし帰還の希望者はこれはずっとあるわけでしょう。これは最近減っておる、それは実際は昔の七年前のようなことではないと思います。しかし政府の数字を見ますと、これは年間四千人ぐらいというふうに見ているようですけれども、これはまあそういうことですね。この数というのは、これは子供の就学の立場とか、あるいは商売の立場からいま急に申請できない、しかし帰国の意思をこれは捨てたんじゃない、あくまでも帰国の希望をこれは持っているわけでしょう。それなのにもう一年であとは打ち切りにしてしまう、こういうことになりますというと、当然持っている、いままでそのような帰国の、いわばこれは人道的な立場からきめられまして、しかもまあ国際赤十字まで入りまして、この背後には広範な日朝両国民の希望があったわけです。運動が下から非常に激しい形でこれは盛り上がってきた、これはそういう中で決定された問題です。しかも、当然国際法あるいは世界人権宣言の立場から見ても当然のこれは権利なんだ、こういうふうにして認められたものをここで遮断してしまったというのには、それだけの理由がなくちゃならない、なぜ一体こういうやり方を今日せざるを得なくなったのか。この辺の点ですね、人道的な立場をここで放棄したという結果があらわれているんですが、そうせざるを得なかった事情というのは、これはどういうことなんです。この点についてお聞きしたい。
  182. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 帰国を遮断するという意思はない。少なくとも従来の方法によってこれを継続するということは、情勢の変化によって考えざるを得ない、そしてなおかつただ帰ってみたい、あるいは誘われたから行ってみたい、これを尊重するということは、必ずしも人道的な問題だとは私は考えない。ふらふらして何だか人が行くから行ってみよう、そういうようなものじゃなしに、ほんとうにこの人の立場はやっぱり同情すべきものであるというような場合がまだ残っておる場合には、それ相当の措置を考えようと、こういうことを言っているんですから、これを全部遮断するという意味じゃない。
  183. 岩間正男

    ○岩間正男君 遮断する意向でないし、まあ立場を放棄したんじゃないというんなら、いままでのやり方でどこがこれは都合が悪いんです。情勢の変化と言うけれども、一体情勢の変化とは何です。ここにははっきり日韓条約を結んで、そしてその結果朴政権がこれに対しまして帰国協定を延長することに対しては、これははっきり抗議をしているんでしょう。そういう申し入れがあったんでしょう。政府はそれに屈してこういう立場をとったと解釈せざるを得ないんですけれども、この点いかがですか。そういう事実があったか、なかったのかどうか、そしてそれに対する考慮からこういうことになったと思うんですが、どうですか、この点お伺いします。
  184. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮動乱、そしてそれに引き続いてきわめて不幸な行政区画の決定であるとかといったようなことがございまして、そういうことによってそれぞれその意思に反して親子、兄弟が別れ、別れになっておるというような状況をそのままがまんしろと、こういうことはどうも人道上からいって適当でない。だからそういうきわめて緊切な状況に置かれておる人を救ってあげようじゃないかというのが、この施策の行なわれたゆえんであります。数年たってそういう人たちがそれぞれもう帰すべきところに帰しておるはずであります。そしてしたがって帰還希望者の数もずっと激減しておる。だから当初のとおりの方法をそのまま持続することはどうかというのは、これは当然のことだと思う。なおかつ私が申し上げたように、人道上これは捨ておけないというような情勢であるならば、それ相当の施策をまたあらためて考えよう、こういうわけであります。
  185. 岩間正男

    ○岩間正男君 協定を打ち切らないだってこっちのほうでできるわけでしょう、ソ連船の数を減らすとか何とか、そういうことをやればいい。協定そのものを打ち切る。つまり協定というものは一つの権利を認めたわけでしょう。人道的な立場で国際赤十字まで入って確認されたわけです。それをここで打ち切るというのは、当然その人たちはいま行かないかもしれないが、しかし行きたいという、祖国に復帰したいという希望は当然これは多くの人が持っているんです。しかし、いろいろな事情でいますぐに実現できないかもしれない。しかし希望を捨てているんじゃない。切実な希望を持っておるわけです。それをいわば一つの希望を打ち切ってしまうということをせざるを得なかった。それは朴政権の圧力があったということは明瞭でしょう。十月九日に韓国大使は、外務省の小川さん、あんたを通じてこれについて申し入れがあったということははっきりしておるでしょう。そういうことでしょう。その結果、こういう事態が起こったということになれば、当然これは日韓会談によって、そうして最近の情勢の中で韓国の圧力に屈したと、こういうことにならざるを得ない。これは技術者の問題も先ほど出ましたけれども、技術者の入国をやはり一応認めておきながら、また朴政権の圧力によって現在あいまいな全くわけのわからないところに追い込んで、そうして先ほど稲葉委員からも質問がありましたけれども、これは椎名外交の右往左往性、非常にあいまいなそういう態度が悪いと、これははっきり認めざるを得ないと私は思うんです。先ほど外務大臣答弁によりますと、何かふらふらとして、まあ行ってみたいから行ってみるのだと、こういうようなことがありましたが、これは在日朝鮮人の希望をあなた御存じないんですよ。そんなものじゃない。だからどうですか。今度の協定打ち切りというような、こういう情報が伝わりますと全国からそういう希望を持っている人が連日のように詰めかけてきたじゃないですか。首相官邸の周辺でまた国会周辺でこの人たちがあくまで打ち切り反対のいろいろな抗議運動を起こした。それから国内の世論もどうですか。国内では帰国協力会というものができておる。この大体背景はどうですか。日本国民はこれを支持しておる。私はお聞きしたいのですが、外務省の認識としてお聞きしたいのですが、大体都道府県会でこれを議決していますよ、これが幾つありますか。それから市町村会でこれを議決しているところは幾つありますか、帰国協定をあくまで実施すべきだ——これは御存じですか、この点お聞きしたい。
  186. 小川平四郎

    説明員小川平四郎君) 都道府県の議決の数については、現在詳細な数字を承知しておりません。相当のところにおいて議決があったということは承知しております。
  187. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことだから、あなたたちはだめなんです。実態に即しないことを言っている。都道府県で三十六都道府県が決議している。三十六都道府県といったら八五%だ。三百市町村が決議をしているんです。帰国協力会に結集しているのはたいへんな数です。数百万です。これはこういう運動は日本国民が当然なすべき仕事なんです。しかも、過去の日本帝国主義が犯した戦犯的なこういう罪悪も考えますと、当然こういう償いの意味からいって、また同胞が、当然自分の認められる権利によりまして自分の祖国に帰りたい、こういう希望を表現するために、国際連帯の立場から日本国民は立ち上がっている。こういうものに対して今度の帰国協定打ち切りというものは、全くこれに挑戦するという結果であるのですが、この点については外務大臣どうお考えになっておりますか。
  188. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 先ほどからたびたび申し上げるように、ほんとうに人道的な立場に立ってこれは何とかしてあげなければいかぬというようなケースについてはできるだけその希望に沿うように考えていきたい、こういう方針をすでに立てております。
  189. 岩間正男

    ○岩間正男君 希望に沿うような方針というのは、帰国協定を無条件でこのままに延長することなんでしょう。そういうことを要求しているのに、それを打ち切っておいてから次善の策として、そういう全くおためごかしのいろいろなことを言っているわけです。あなたたちは答弁ありませんけれども、明らかにこれはもう朴政権の圧力に屈して、みずからの人道的立場さえも放棄した、こういうことになる。椎名外交一つの大きなミスになりますよ、汚点になります。これこそが日韓会談の明らかなあらわれじゃないか。日韓条約を結ぶときに、われわれはこういうような事態になることが予想されたので、この点についてこれは野党の各派から非常に質問があったと思う。このとき、どうですか、政府の答弁というのはどうだったですか。政府の答弁は、これは日韓両国の国交をお隣りの国として回復するだけで、北の国のほうについては、別にその結果どうこうということはないという答弁をしております。ところが、具体的に現実にあらわれてきておる。これこそは全く日韓条約そのものの本質がどこにあるかということを、すでにあれから半年後の現実においてはっきりこういう事態としてあらわれている。これでいいですか、そんな外交というものはないと思うのです。これを一つ承りたい。
  190. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 御心配の点は一切御無用と思います。なおこれを打ち切ったあとにおける措置については、十分に考えたいと思います。
  191. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどういうふうにするのですか、希望があれば便宜を与えるというようなことを言っておりますが、これはケース・バイ・ケースで今後やっていく、こういうことなんですか。その内容はどうなんですか。一人でも希望者があれば、これを完全に送り届ける、そういうことなんですか、どうなんですか。
  192. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 万全の策を講じてまいりたい。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 万全の策などということでは、非常に在日朝鮮人六十五万の人たちは不安に思っておりますよ。そうでしょう、先がどうなるかという保障はない。万全の策などと言っているけれども、最近のやり方はどうですか、たとえば上野に帰国の人たちが行く、これを家族が見送っていく。そうするというと、これに対して公安調査庁がそこに立ち入ってスパイみたいな態度をとっている。なるたけ家族と話し合わさせない。新潟での船の中で、朝鮮総連合の人たちが船の中に入り込もうとすると、これを押しとどめる、こういうようなやり方をとっているのが最近のやり方です。こういうやり方までこれは朴政権の圧力のもとにあるのですか。こういう態勢でありますからいわば非常に挑戦的な立場をとっているのです。反共的な立場をとっているのです。こういうことですと、先へいって万全の便宜を与えるなどといっても、これは了承できない。私は当然閣議決定はこれは正しくない。これはもう取り消すべきだ。そうして無条件延長を認める、これこそが政府がいままでとってきたところの人道主義的立場を首尾一貫する。あくまで朴政権のこのようなよこしまな圧力に屈してはならない。そういう立場をはっきり堅持すべきだ。技術者入国の問題とあわせ考えて、私はこのような国際的恥辱と見られる椎名外交のやり方というものは認めることはでないのです。こういうことについて、あなたの決意を伺いたいと思います。
  194. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 閣議決定の取り消しは考えておりません。それから技術者入国の方針は依然として生きております。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、取り消す意思はないということでありますけれども、これはいろいろな実情、そうして日本外交のあるべき姿からいいまして、また当然われわれが太平洋戦争時代に犯したそういう問題、そうしてこの問題は単なる終戦処理の問題ではなく基本的人権につながる問題で、アジアの平和のためからいっても、それは考慮さるべきだと思います。  最後にもう一つだけお伺いしたいのでありますが、それは沖繩の施政権の分離返還問題を、これは最近総務長官も打ち出してきております。外務大臣がこれに対してどういうふうに考えておられるか。私は教育権の分離返還ということがいま問題になっておりますけれども、こういう問題を云々する前に、当委員会でも先ごろわれわれが問題にいたしました裁判権移送の、まるでこれは徳川時代の鎖国時代にもないようなひどい、全く道理に合わないやり方を、彼らは御承知のように一方的にやっている、朝令暮改的なやり方、そうして大統領命令に違反したやり方で、実は弁務官布令によってああいうことがやられている。これこそが基本的なもう沖繩の百万県民の権利に関する問題なんです。私はこのことを緊急な課題として、これを米政府に抗議し、そうして徹底的にその撤回を求めて戦うのが、当然日本のあるべき立場だと思うのであります。したがって、この分離返還の問題について外務大臣としてはどう考えておられるかということが一つ。もう一つは、この裁判権移送撤回の問題、この背景は非常に深いものですから、これは当然ベトナム戦争と関係があり、沖繩の土地取り上げの問題、さらにそれによって米軍の核基地の拡大強化、それにはっきりつながっている問題でありますから、そういうふうに沖繩百万県民は理解し、そうして最近も県民大会が持たれまして、その代表が本土に参りまして、各党や各政府機関にもこの点について要請したはずであります。だから私はこれを取り上げるべきだと思うのですが、この二つの点についての見解を伺いたいと思います。
  196. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 沖繩施政権の返還は、これはたびたび総理大臣から国会においてお答えをしているとおり、これは百万の県民のみならず日本の同肥の非常な念願である。ただ、しかし、これを実現するということになりますと、極東の情勢がはたしてこれを許すかどうかという問題等とも関連するのでありまして、かなりこれは早急に解決を見るというような性質の問題ではない。しかし施政権の返還という形をとらなくても、県民の福祉向上のために、なおいろいろその事前においてとるべき段階が数々残されておるのでございまして、それをどうするかということが、当面の問題だと考えるのであります。  分離返還という問題も、まあはたして事務的に混乱を生じないでやり得るかどうかというようなことにつきまして、十分にいま研究しておるところでございます。しばらく研究の結果を待っていただきたい、こう思います。  それから裁判権の移送の問題であります。これは法律的な問題としては、これは施政権を向こうに、三権を向こうにゆだねてあるのですから、これは問題にならぬ。ただし、政治的にこの問題に対して、いろいろ折衝する余地はある。それらの点につきましては、なお事務当局からお答えいたします。
  197. 安川壯

    説明員(安川壯君) 移送の問題につきましては、この具体的に問題になっておる件につきましては、ただいま大臣から申し上げましたように、法律的には向こうのとった手段を不当であるとして、これを撤回を要求するということはできないわけでございます。  それからただこの問題の背景には、いわゆる司法権につきまして沖繩住民の、住民の自治が十分に満足されていないというような事情があったことは事実でございまして、それがこの事件の一つの背景をなしておったようでございます。具体的に申しますと、上級裁判所の判事の任命が、高等弁務官の手にゆだねられておるというような事態であったわけでございますが、この点につきましては、今度の事件を契機にしまして、高等弁務官をもし立法院のほうで上級裁判所の判事の任命について何らかの新しい立法をするならば、この任命権は琉球政府に譲る用意があるということを表明しておりまして、この問題の背景をなしました司法権に関しての自治権の拡大という点につきましては、この事件を契機といたしまして、一歩前進したというのが実情であると思っております。
  198. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  199. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 他に御発言もなければ、午前中の、審査は、この程度にとどめます。   午後二時二十分まで休憩いたします。    午後一時二十分休憩      —————・—————    午後二時五十四分開会
  200. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和三十九年度決算外二件を議題といたし、外務省決算について審査を行ないます。  質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  201. 黒柳明

    ○黒柳明君 私はインドネシアの緊急援助について若干質問したいと思いますが、四月の下旬に閣議決定いたしました約八億一千万、これをインドネシアに緊急援助する、こういう閣議決定をしたのですが、この緊急援助の概要についてまず説明していただきたいと思います。
  202. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) インドネシアは当時、ジャワの洪水その他によりまして食糧危機が非常に深刻でありまして、四月ないし五月の端境期には非常に深刻な状況が起こるだろうと予測されておりましたので、人道的見地から同国に対して、百三十五万ドル相当の米約一万トンと、百十五万ドル相当の綿糸五千コリ、合計二百五十万ドルの贈与をしたわけであります。それが閣議決定の実質的な内容になっておるわけでございます。
  203. 黒柳明

    ○黒柳明君 お米と綿糸ですけれども、それの緊急援助関係がある社名、大体の額はどんな内訳になっておりますか。
  204. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 最終的な決算はまだ日本赤十字社から届いておりませんが、米が一万トン、百三十五万ドル、綿糸が五千コリ、百十五万ドルというように一応見積もられております。
  205. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、米のほう、それから綿糸のほうは、どういう会社を通して緊急援助が行われておるのですか。
  206. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) この緊急援助は、日本赤十字社によって委託されて代行されたわけでございますが、取り扱い業者といたしましては、綿糸については有限会社のブナン会、米につきましては三井、三菱、丸紅、東棉が扱い業者になっております。
  207. 黒柳明

    ○黒柳明君 その綿糸を扱ったブナン会ですけれども、この設立の経過、どういう性格を持った会社なのか、あるいは政府としてこういう会社を設立をさせたのか、そこら辺はいかがでしょうか。
  208. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 本件の本会社の設立は、輸出入取引法に基づいて公正取引委員会承認を得てできました。綿糸のほうは、綿糸を扱う大手商社の一この場合には十八社と聞いておりますが、連合して立てました会社でございますが、このような会社は、ブナン会はインドネシアに対する綿糸布の輸出をやっておるわけでございますが、ほかの国に対しても、日本の貿易、輸出振興のたてまえから必要だと思われる地域に対しては、それぞれ別個の会社ができているものと聞いております。で、この場合に、ブナン会というのは、インドネシアに対する過当競争その他を避けるため、及び、先方が政府機関である唯一の買い取りの機関を持っておる関係上、個々の繊維業者が競争で売り込みをはかるということは国家的に見ても得策でないというような見地から、この会の設立を認めたものと了解しております。
  209. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、このブナン会、綿糸の、大体五億円くらいですけれども、それに対しての決定にあたっては、入札はしなかったのか。
  210. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 当時、緊急援助でございまして、一刻も早く物資が現地に到着することが緊要である、かつ、いずれにせよ、インドネシアに対する輸出は従来この会社を通しておったというような経緯から、この会社を通じて先方物資を送ることになったものと了解しております。
  211. 黒柳明

    ○黒柳明君 従来のインドネシア向けの援助は、全部ブナン会を通じて行なわれていたわけですか。別に入札、応札ということは行なわれてなかったわけですか。
  212. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) その点につきましては、ここに資料も記録もございませんから、直ちにお答えすることはできませんが、一応相手が政府機関であり、それが相手に買い付けをするという場合には、日本の各商社の連合体であるこのブナン会が、先方に一手に綿糸布に関する限り扱っておったと推定されます。
  213. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういう過当競争を避けるために、こういうブナン会のような——ブナン会はインドネシア向けだ、こういうような性質の会社なり、そういうものは各国向けにあるわけですか。
  214. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 日本にとって重大な市場であり、かつ、そこに対する日本の商社の過当競争が大きいというような地域ないし国に対しては、通産省の指導によってこのような会社ができておるとわれわれ了解しております。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 すると、そういう会社名ですね、それから、どこにいて、どんな会社があるか、それを通じていままでどのくらいの救援がなされたか、そういうようなことはおわかりになるわけですか。
  216. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 綿糸布の救援に関しまし出ては、あまり前例がないわけでございますから、ここに記録がかつございませんからお答えできかねますが、いずれにせよ、そのような会社がある程度国別ないしは地域別に設立されておるということを聞いておりますから、これに関する資料は後ほど提出いたしたいと思います。
  217. 黒柳明

    ○黒柳明君 すると、このブナン会で扱った品目、綿糸ですね、それから特にインドネシアに対してどういう事情で必要であったのか、その辺の過程はどうでしょう。
  218. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 当時、インドネシアは非常に食糧難であり、あらゆる物資が結果的には不足しておりましたが、ことに衣料が不足しておる。で、衣料がある程度出回れば、それに応じて食糧も出回ってくるというような情勢判断でありまして、先方わが国から食糧のみならず衣料もほしい、こういうような要請をしてきたわけでございます。で、衣料につきましては、御存じのとおり、インドネシアはすでに国内に、ある程度織機の工場、余裕がありまして、日本は伝統的にインドネシアに対して綿布のみならず綿糸を輸出していたわけでございます。そこで、綿糸を輸出することにより、インドネシアの機屋さんを就業させれば、それだけ経済の安定にも役立つ、こういうような見地から、綿糸を援助物資として提供することに日本政府としては決定した次第でございます。
  219. 黒柳明

    ○黒柳明君 資料要求をしたいのですが、日赤の購入した物品の銘柄と、銘柄別の単位、それから数量の総ワク、業者との契約、運送の契約、物品の購入契約、それから物品が現地に到着したそれを確認する証拠の文書、それから物品の現地における配分先、それからブナン会の所在、役員名簿、それから定款、これをいただいて、後日またこのことを検討したいと思います。また予備費の審査が後日あると思いますから、そのときに……。けっこうです。
  220. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) いまの資料要求いいですね。
  221. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) できる限り、いま先生のおっしゃられた項目に従って資料を整えるようにいたします。
  222. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、先ほど沖繩の裁判権移送の撤回の問題で質問したのですが、これは外務省の係、おりますか。この問題で私も簡単に質問しておきたいと思いますが……。
  223. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  224. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。
  225. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど琉球——沖繩の裁判移送の問題につて質問したんでありますが、これについて、アメリカの民政府から日本のほうに、移送することについて考慮しているという答弁でしたが、先ほど、あなたの答弁がはっきりしなかったのですよ。もう一度その点を確認しておきたい。
  226. 安川壯

    説明員(安川壯君) それでは、この問題につきまして、最初からと申しますか、日本政府とアメリカ側との接触の状況についてお話し申し上げます。  この問題の経過から申し上げますと、この移送命令が出ましたあと日本政府といたしましては、施政権を持っております関係上、この移送命令自体を純法律的に見ました場合に、何らこれに対して違法であるとか不当であるとかと言う根拠は成り立ちませんので、そういう意味で、日本政府がこの問題をアメリカ政府と正式に取り上げてこれを不当なものであるとして外交交渉に持ち上げるというようなことは、最初から考えなかったわけでございます。ただ、結果的には、ああいう問題のために沖繩の住民と施政権者との間に非常におもしろくない空気が出るということは、非常に日本政府としてもおもしろくない事態と考えましたので、これにつきましては、総務長官がライシャワー大使とお話しになると同時に、たまたま日米貿易経済合同委員会で来日いたしましたラスク長官に対しましても、外務大臣、総理大臣からも、この問題を何とか円満におさめるようにという要望と申しますか、希望が表明されたわけでございます。その結果、現在、事態がどうなっておるかと申し上げますと、けさ申し上げましたように、この問題の一つの背景といたしまして、沖繩におきます自治権の拡大というものは過去徐々に進んでおるわけでございますけれども、司法権の分野におきましては、たとえば上級裁判所の判事の任命につきまして、高等弁務官がその任命権を持っておるという制度が過去十数年間続いておりまして、その面について一歩も前進がないというような事態がございまして、そういうことも今度の問題の背景として無視し得ない一つの要素をなしておったわけでございます。この点につきましては、アメリカ側も考慮を払いました結果、最近、高等弁務官が、もし沖繩の立法院で新たに裁判官の任命について法律的な措置をとるならば、この任命の権限を琉球政府に譲る用意があるという方針を明らかにいたしまして、このことは日本政府にも連絡してまいりました。そういう意味におきまして、この問題を契機としまして、司法権の面におきますところの自治権が一歩払大するという端緒が開けたということは言えると思うのでございます。ただ、この懸案になっておりますところの二つの、いわゆる移送命令と申しますか、そういうものを撤回するかどうかということにつきましては、私ここではっきりと申し上げる何らの根拠を持っておりません。これを、正当な権限に基づきまして行使しましたものを白紙に戻して撤回をするというようなことはなかなか困難ではなかろうかという見通しでございますけれども、まあ大きな自治権の拡大という面で、アメリカ側も何とか住民との理解の上で、この問題を円満に解決したいと考えておるということだけは申し得ると思う次第でございます。
  227. 岩間正男

    ○岩間正男君 立法院で適当な法的措置をとれば、上訴裁判所の判事の任命権については琉球政府に移譲すると、こういうことを言ってきたというのですが、それは何月何日、それから外交的にはどういうことなんですか、これは明確にしておく必要があるんで、そのことについて、事務的な問題についてはっきりしてもらいたい。
  228. 安川壯

    説明員(安川壯君) この決定を下しまして、それを発表いたしました日付、私ちょっといまここで——必要ならばすぐ電話をかけて調べますけれども、もうかれこれ一カ月ぐらいになるんではないかと記憶しております。  それから、この問題はいずれにいたしましても、施政権に基づく向こうの措置でありますので、これは正式の日米両国政府間の交渉と申しますか、協議と申しますか、日米双方の合意というようなことを必要とするというような性質のものではございません。したがいまして、アメリカ側もこの決定につきましては口頭をもちまして、こういう措置をとったということを通報してまいりました。それだけのことでございます。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは外交的には効果があるわけですか。口頭ではっきり申し上げた、日本政府はそれを確認した、そして国会でもそういう表明をされているのでありますから、そういう点については、これは確認して少しも差しつかえないのですか。それから何月何日そういうことを口頭で言いに来たか、これは資料で、いまわからなければ出してもらいたい。
  230. 安川壯

    説明員(安川壯君) 先ほど申し上げましたように、これは日米両国政府間の約束であるとか合意というものでございませんから、ただいまおっしゃいました外交的効果という意味は、もし日本政府の同意を求めるとか、あるいは日本政府が同意したとかしないとかいうことでありますならば、そういう問題は起こらないわけでございます。そういう事実を通報してきたということでございます。
  231. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本政府はどうするのです。態度はきまっているのでしょう。
  232. 安川壯

    説明員(安川壯君) その措置自体は私申し上げましたように、大きな意味の自治権の拡大の一歩でございますから、日本政府としてもこれを歓迎するという意思を表明しているわけであります。
  233. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは日本政府がそういう合意の意思を示さなければ、ただ通報してきただけで、これはどこまでもぶらぶら流れていくのですか。それをはっきりして推進する意思があるのかどうか、それはどういうことになっておりますか。この問題が外務省の省議にのぼり、それからさらに閣議なら閣議決定というような段階を考えているのですか、いないのですか。
  234. 安川壯

    説明員(安川壯君) これは何回も申し上げますように、日本政府がみずから措置をとるとか、あるいは日本政府とアメリカ政府と今後この問題を交渉するという性質のものではございません。高等弁務官がアメリカ政府を代表いたしましてそういう措置をとる用意があるということを、正式に表明したわけでございまして、あと措置をとるのは、沖繩の立法院がそれに応じた措置をとるかどうか、とるとすればどういう措置をとるかということになるわけでございまして、この問題の成り行きは、日本政府がどういう措置をとるかということとは直接関係はないわけでございます。したがいまして、閣議決定でありますとか、そういうことは現在のところ考えておりません。
  235. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ日本政府の意思は、形式の上ではそういういまの答弁のようになるのでしょうけれども、しかし、この問題を決定するには、やはり日本政府の意思というものは非常に重要なことだと思う。はにかく、その資料をもらいます。  ところで、この問題は、問題のすりかえじゃないか。つまり、問題は、二つの裁判の不当な、まるで徳川時代の暴君がやるような、全然条理に合いません。これは当委員会でこの前、総務長官の出席を求めまして、私が一時間余り時間をもらいましてやった問題です。当然二つのこの裁判というものが、そのままにまるで暴君が、専制君主が一ぺん自分で出したものに綸言汗のごとしで、再び弘っ込めることはできないのだという形でがんばっていったのでは、やはりこれは問題の解決はあり得ないのです。したがって、当然この移送を取り消すという、そこのところに非常に大きな問題があると思うのです。それは私も先ほどちょっと簡単に申し上げましたように、実はこれは総務長官の答弁でもこの前あるのですけれども、サンマの問題、あるいは選挙の当選無効、有効の問題、こういうものはこれも重大な問題ではあるけれども、しかし、それよりももっと重大な問題は、一度出したこういう布令に対して違反する、そして、この布令を侵犯する、こういうやり方は許すことはできないのだ、ここのところに非常に重点があるのだということを総務長官も答弁をしました。私もそうだと思う。なぜそうだかというと、そこには現在起こっている沖繩の土地取り上げの問題があるわけです。これは言うまでもなく、ベトナム戦争の強化によるアジアにおける最も重大な基地、これはもうなぜかといいますと、これははっきりワトソンが次のように言っているわけですけれども「米国は沖繩に重大な利害関心を持っている。沖繩は依然として東南アジアの防衛の基礎であると同時に、ベトナム戦争におけるかなめの軍事基地である。」と言い、また「ベトナム戦争によってアジアの脅威と緊張は増加した。沖繩の軍事基地は、米国と日本及び西太平洋の他の同盟国の防衛にとってきわめて重要である。このことは沖繩からベトナムに軍隊や物資を敏速に移動できたことに示された。」、こういうふうに語って、それから「ベトナム戦争と関連して那覇軍港での補給活動は手狭になったので、新たな軍港を開設することが必要になった。全体の利益のためには一部の住民の不利益は避けられない。」云々ということをワトソンは述べているわけでありますけれども、これは全くこの沖繩を戦争の補給基地、それから中継基地、さらには前線におけるそれらの関係で、絶対に沖繩は確保しなければならない、軍港として、しかも拡大しなければならない、太平洋岸における新たな軍港をつくらなければならぬ、そのために嘉手納あるはい昆布村その他四カ所に膨大な土地の取り上げが現在行なわれている、これと深い関係があるのです。この点についてやはり明確にしない限りは、この問題の正体を、本質を明らかにすることはできないと私は考える。したがって、私はここで長い論議を、大臣もおりませんからしようと思わないわけです。外務省としては、これは総理府に一応まかしておるのだということであれば、それだけのことですけれども、そういうわけにはいかぬと思う。やはり日本外交の立場から、ことに沖繩県民の権利を守る、生活を守る、何よりも祖国の独立と平和を守るという立場、そういう立場に立つ限り、私はこれは黙っていることはできない。したがって、現状どうなっておるように把握しておるのですか。全部これは総理府特連局にまかしておるという態度をとっておるのですか。私がお聞きしたいのは、情報をどうつかんでおるか、たとえば、いまどのような土地取り上げが起こっておるか、これは資料としてあなたのほうでやっぱりはっきり提出される必要があると思う。どれだけの広範な土地がいま取り上げられようとしているか、それから沖繩の軍事基地としての任務ですね、そういうものは何々なのか、これはいろいろな様相を持ったところの多角的な軍事的な目的を持った基地です。アジアにおける全く核心をなすところの中心基地とも言うことができる。それで、アメリカの極東における戦略が成立するかしないかという全くポイントを決定するのがこの沖繩だ、そこに百万県民の権利が侵犯されたり、生活がほんとうに破壊される、そういう大きな被害が起きているわけですから、外務省として一体どういうふうにそれに対処するか、私はそういう点から、少なくともその現状の把握程度をお聞きしたい。いかがですか。
  236. 安川壯

    説明員(安川壯君) 私どもは、裁判移送の問題と、ただいま御指摘のベトナム戦争、あるいは軍事基地の拡張というものと、直接関連しているという見方はとっておりません。ただ、基地拡張のための土地の取得の問題については、日本政府としても、これが住民の協力のもとに解決することを希望いたしております。まあ、そういう希望もアメリカ側に表明しております。現状はアメリカ側も当初非常に事を急ぎまして、ある程度の強力手段をとろうとしたようでございますけれども、その後の状況は、アメリカ側もできる限り、住民と申しますか、土地の所有者との話し合いのもとに、円満な、納得づくでこの問題を解決しようと、目下そういう方向で努力をしているというふうに承知しております。
  237. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうふうに言われますけれども、これは現地の実情をつかんでおられないこと、はなはだしいと思う。この問題はほかの問題のような条件闘争はないと言っているのです。これは裁判移送を撤回するか、それとも強引にこれを強行するか、この二つしかないと言うのです。その中間の問題は許されない。そういう形で、これはもう、一回ならず二回も、全県民のこれに対する移送撤回の大会が開かれているわけです。問題は、とにかく一ぺん出した彼らの命令は絶対撤回しないのだ、とにかく沖繩を高等弁務官布令によって、がっちりとここに君臨している、これに違反するなどということは絶対許されないのだ、これを、もしも裁判の移送を許して撤回してしまえば、がたがたに彼らの権力支配がくずれるのだ、だから絶対できないのだということがポイントになっていることは明らかなんです。これは安井総務長官もそういうような答弁を現にして、それは私も見解は同じことだということを当委員会で明らかにしたわけです。したがいまして、ここのところをつかまない限りは、円満な解決とかなんとか言っておりますけれども、この裁判権の移送の問題を何とかいま言ったところのアメリカの通達程度で問題を緩和するのだ、下から闘争が起こっているから、これに対して緩和剤としていまそういうことを言っているのだ、しかし、その措置については日本政府はあずかり知らないのだ、立法院のやることなのだということで問題をしずめておいて、先に行ってどうなるか、これはわからないということでやるとすれば、私は欺瞞政策と言わざるを得ないのですね。そうなる危険性が十分にあるし、いままでの専制的な、暴君の支配のようなやり方については、沖繩県民はもうこりごりしているのですからね。いまさらそういうものにだまされるということはないわけです。この点の認識をはっきり私は深めないというと、この問題に対決することはできないということを、ここではっきりこれは外務省に忠告したいのです。したがって、森総務長官がこういう問題の中で、教育権の分離返還などということでこの問題にタッチしたとしても、これは沖繩県民のいま要求し、切実にみんなが力を合わせて指向している方向とは違うんですよ。だから、私は、あそこに行って森さんがああいうような一つのアドバルーンを上げた、しかし、そういうことでもって問題は解決されるかというと、そうじゃない。これは問題のすりかえなんだ。問題はぱっと別のようにアドバルーンを上げて、何とかこの闘争をそらすというような、何とかそういう役割りを果たすということにしかならない、そんなことに今日沖繩の同胞はだまされはしないのですから。こういう点について、はっきり私は、外務省日本外交の一番中心の責任者として、この問題を明らかにする必要がある。いまここで論議をしてもしかたありませんから、とにかくいま土地、どういうものが取り上げられようとしているのか、これは外務省知らないというわけにはいかないと思いますから、そういうものを資料としてここに出してもらいたい、こういう努力をまずあなた方重ねてくださいよ。そういうことをしないというと——これは特連局にまかしておくのだ、おれたちは直接タッチしないのだというようなかっこうでは、これはいかぬ問題だと思います。  それからもう一つの問題は、上訴裁判所だけではありません。下級裁判所の場合もでありますけれども、高等弁務官の布令について、これは審査する権利があるのかどうか、これはないのだというので、この裁判権を取り上げてしまったわけです。これは第十節でしたかな、大統領行政命令第十節のa、bではそういうことになっておると思う。ところが、d項におきましては、はっきりその権利は認められておるはずなんだ。ところが、a、b、c、dあるうちのa、bの都合のいいところだけを利用して裁判移送をやったわけです。しかし、d項においては、はっきりそういう権利があるのだから、全体的に解釈すれば、あの不当な大統領行政命令にさえ高等弁務官布令というものは違反しているということは明白なんです。そういうことについては何も外務省見解を出さないのですか。私はやはりはっきり日本外交のもしも自主独立という立場をとるならば、明確にそんなことをやってアメリカと対決をしなければならない、そういうことをしないと、ほんとうに暴君みたいなアメリカの高等弁務官が来て、あそこにどかんとしりを据えて、おれは絶対権力者だ、何でもやれるのだ、生殺与奪の権を握っているのだ、こういうことで、どうして百万のわれわれの同胞の、これは権利を守ることができるでしょうか。ですから、これに対する見解についても、当然明らかなことですけれども、外務省として私はこの二点をどう考えておるか、資料として提出を願いたい。  さっきの一番最初に何日にそういう通告があったかというのが一つ。それから第二には、土地取り上げはいまどういうところに来て、どれだけのものになってるか。そうして、それとも関連して、アメリカの太平洋沿岸における軍港新設の計画というのはどうなってるか、それが第二。第三は、いまの大統領命令の第十節でa、b、d、この項に関する関係におきまして、現在のこの裁判移送で強引に取り上げたやり方、こういう理由、彼らの取り上げた理由というものが、いま言ったように、布告については、これに対して審査する権利はないんだ、それは全くの間違いだと思いますけれども、これについての外務省見解を資料としていただきたい。この三点を要求して、私は時間の関係もありますから、これで終わりたいと思います。この点を委員長確認していただきたいと思います。
  238. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) いまの岩間委員の資料要求、外務省いかがですか。
  239. 安川壯

    説明員(安川壯君) 最初の裁判官の任命につきましてのアメリカ側の通告の日にちその他それに関係する資料は御提出を申し上げます。  それから基地の土地の接収の問題でございますが、これはまあ日本の国内と違いますので、正式に日本政府は相談にあずかるという筋合いのものでございませんので、非常な細部にわたって、はたして資料が入手し得るかどうか、そこまでお約束できませんけれども、入手し得る限りにおいて資料を提出をするように努力をいたします。  それから最後の法律的な見解でございますけれども、これはここでも申し上げてる以上の外務省見解というようなものを、これは御承知のように、アメリカの施政権に基づきます政権者としてのアメリカが制定した大統領の行政命令でございますので、日本政府はそれに対して正式の法律的な見解を出すこと自体がはたして適当かどうか、私ここで自信を持ってお答えする自信がございませんので、この点は検討を、考えさしていただきたいと思います。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことですか。その態度が、私はどうもやはりこういう事態を生んでる原因じゃないかと思いますね。とにかく大統領命命というのが出てるんですからね。その第十節を読めば子供でもわかるのですよ。それについての見解が出せなくて、どうして一体日本外交を守ることができるのです。私はそれはあんたたちの見解でなければ、事実だけでいいですよ、事実として出したっていいんです、資料は。事実はこうだ、a、b項にはこう書いてある。しかし、d項にはこう書いてある、それだけだって、それはあなたたちが指摘して出した資料として、ものをいうわけです。客観的な事実ですから、主観は要らないんだ。これは出すことをやっぱり要求する。  もう一つ安川さんにこれは注意しておきたいのですが、早く出してください。この前、三月に要求したのを最近、半年後にもらったというようなことですから、資料の意味というのは、そんな半年くらいおくれたんでは時効にかかりますから、今度は早く出してくださいよ。この次の、少なくとも——いつごろまでに出せますか、いまの三つの問題。
  241. 安川壯

    説明員(安川壯君) 初めの第一点は、これは別に時間はとらないと思います。  第二点につきましては、現在入手し得る、総理府の特連局ともよく相談いたしまして、現在ある資料だけでできるならば、これは時間はとらないと思います。  第三の点は、これは布令そのものにどう書いておるかということでございますから、これは時間はとりませんので、おそくとも、役所の手続はございますけれども、一週間くらいには出せます。
  242. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長確認してください。これで私の質問は終わります。
  243. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) それでは外務省よろしく。  他に御発言もなければ、本日の外務省決算についての審査はこの程度にとどめます。     —————————————
  244. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 次に、派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般当委員会が行ないました昭和三十九年度決算外二件の審査並びに国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査のための委員派遣について、九州班から報告願います。
  245. 黒木利克

    ○黒木利克君 九州班の現地調査につきましては、鶴園委員長、石本委員と私が、この八月十四日から七日間に、昭和三十九年度決算及び国有財産に関する十一項目について、熊本と鹿児島、宮崎三県下における実情を調査いたしましたが、本委員会の今後の審査に裨益するところがあることと存じております。  報告の詳細につきましては、時間の都合上、会議録の末尾に掲載することで御了承いただきたいと存じます。  以上簡単ながら報告にかえさせていただきます。
  246. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) おはかりいたします。  委員長の手元に提出されております派遣報告書は、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
  248. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 佐藤君。
  249. 佐藤芳男

    ○佐藤芳男君 私はこの機会に私の所見を連ねて委員長の意見をお伺いいたしますとともに、善処をお願いしたいと思うのでございます。  実は、昨日の本委員会における発言にまつわりまして、先刻衆議院議員の山中貞則君がことのほか憤激をされまして、事実全然関知せざることを誹謗された、これは等閑に付すことができない、本委員会に出席をして釈明をいたしたいという内談があったのでございます。しかしながら、御承知あらせられるように、議員がこちらに釈明にまかり出るということは、参考人ということでなければ不可能でございます。また、そうしたことは今日まで慣例も、それすらないのでございます。したがいまして、山中貞則君のとるべき措置といたしましては、衆議院議長に対してこれを具申し、衆議院議長から参議院議長に対してお話がある、こうした順序をまずもって必要とするわけでございます。私はかように考えまして、山中貞則君においでを願わぬほうがよろしいという見解を申し上げた次第でございます。  そこで思い起こしますることは、かつて私がこの決算委員会委員長を受けておりました当時、やはり議員の名前をあげて発言されたことがございます。その際におきまして、私は厳重にその発言者に反省を促す意味におきまして、取り消しなさる意思はこございませんか——ところが、お取り消しに相なりました。なお私はその部会を速記録から委員長権限をもって抹殺をいたしたことがございます。それは昭和三十六年四月十九日の委員会のことでございます。議員はお互いに信頼と信任の上に立って行動しなければならぬことは、申し上げるまでもないところでございます。これが司直の手にわたりまして、そうして事件化されておる問題ならばともかくも、ただ単に、こうした問題がある、それには何のだれがし議員がここに介在をいたしておるというようなことを発言されることは、これは慎むべきことであることは、私はかたく信じて疑わないのでございます。したがいまして、民間におきましても、名誉棄損の訴えを出し得る場合は、相当数多くあるのでございます。しかも、事実の有無にかかわらず名誉棄損の訴えをすることができる。国会は別でございます。しかしながら、かような事実にあらざることを議員の名をあげて発言内容とされますことは、厳に私ども国会議員として慎まなければならぬことはきわめて明らかでございます。したがいまして、これらに対する措置につきましては、いろいろとお考えのある方もございましょうが、とりあえず私はきのう起こりましたこの案件につきまして、私の所見を以上申し上げ、今後の委員会の運営の問題にもまつわることでございまするので、この際、委員長の御所見を承っておきたいと存ずるところでございます。  以上で私の発言を終わります。
  250. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 仲原君。
  251. 仲原善一

    ○仲原善一君 私も一言、きのうの委員会の運営に関する問題で、特に現在政治家として大いに活動している方々の名前がたびたび引用されての審議のあり方、これにつきまして、非常に疑問を持つものでございまして、ただいま佐藤委員からお話のありましたとおり、すでに山中貞則氏自身もその問題について直接登院されまして、その事実無根の点について釈明しておられまするし、当委員会でも釈明したいという意向もございますが、ただいま佐藤委員のお話のとおりの手続もございますので、これは実現は見ませんけれども、おそらく教名以上、十名近くの人の名前がきのうあがっておりますが、その中には、山中貞則君と同じ心境の人もたくさんあろうかと思います。当委員会におきまして、神聖な審議権、調査権に基づいて、いろいろ調査されることは、まことに当然のことではございますけれども、やはりそこには、先ほど佐藤委員のお話のありましたとおり、お互いの信頼の上に立っての審議ということが当然あるべきことでございまして、いたずらに、まだ不確定の事実をもとにいたしまして、具体的な人の名前をあげてとやかく申し上げることは、非常に行き過ぎである、同時に、調査権の上にあぐらをかいた暴力である、一方的に切り捨てる、その記事がけさの新聞に一様に出ている。この事実を見てもわかりますように、その当人にとっては、全く政治的生命を奪われるという結果になろうかと考えます。そういう意味におきまして、当委員会の権威のために、品位を保持するために、今後の運営について、とくと委員長においてしかるべき措置を講じていただきたいということを深く強く念願するものでございます。私といたしましても、この問題を契機に、いわゆる独走と申しますか、暴走するような審議のあり方については、おのずから何か制約をすべき何らかの方策が必要ではなかろうかということを考えておりますが、いずれまた理事会等におきまして、研究の結果をお互いに話し合って、節度のある適正な運営ということについて、微力を尽くしたいと考えておりますが、委員長におかれましても、この点とくと御了解を得て、今後運営について万全を期せられるようにお願いを申し上げる次第であります。
  252. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいま佐藤理事、仲原理事のほうから御発言がございましたが、この取り扱いにつきましては、理事会におきまして協議をいたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会      —————・—————