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1966-07-19 第52回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月十九日(火曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       大橋 武夫君    上林山榮吉君       倉成  正君    小坂善太郎君       小山 長規君    田中伊三次君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    大原  亨君       加藤 清二君    勝間田清一君       角屋堅次郎君    小松  幹君       多賀谷真稔君    高田 富之君       中澤 茂一君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       今澄  勇君    竹本 孫一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君        国 務 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         国防会議事務局         長       北村  隆君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正弘君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      内海  倫君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (大臣官房長兼         銀行局長)   村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         厚生技官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         食糧庁長官   武田 誠三君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  山崎 隆造君         通商産業事務官         (重工業局長) 高島 節男君         運輸事務官         (航空局長)  堀  武夫君         郵政事務官         (人事局長)  山本  博君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件  閉会中審査に関する件      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について、前会に引き続き調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、農政問題、特に米価の問題に焦点をしぼって、佐藤総理はじめ関係大臣に率直にお伺いをいたしたいと存じます。  ことしほど早くから米価問題がマスコミの爼上にのぼったことも珍しいと思いますが、同時に、ことしほど生産農民米価で全国的に激しい立ち上がりを見せたこともかつてなかったと存じます。しかも、米価問題が一応決定をしたといわれる今日の時点においても、その火はいまなお燃え上がっておる状態であります。  われわれは、この際この問題について正しく解明し、全国民の前に国民食糧現状米価のあり方を明らかにする責任があると考えるわけであります。その意味におきまして、簡明直截に御答弁を願いたいと存じます。  まず、米価問題に入ります前に、少しく総理にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、実は参議院法案審議関係で、政府側から要請がありまして、外務大臣あるいは労働大臣等をさいてくれないかということでありましたので、私としては予定がありましたけれども、快くこれを承諾したわけであります。  そこで、本来外務大臣に聞くべきところでありますが、本論に入ります前に、総理に少しくお伺いをいたしたいと思います。  その一つは、きのう野原さんからも少しく触れられましたけれども、近くグロムイコ外相おいでになられる。当然イシコフおいでになったあとを受けてソ連外相が初めて日本に来られるということでありまするから、懸案の領土問題、あるいは漁業関係では日ソ漁業条約改定が十二月にまいるわけで、これは、まあ大体現行どおりのそのまま継続でいこうということでありますから、この点についてはたいした問題がないと思いますけれども、しかし安全操業問題というのは、イシコフ漁業相の来られたときにも問題を持ち越すという状態でありました。したがって、今度の外務大臣来日を契機に、これらの問題が率直に話し合われるだろうというふうに思うわけであります。  もう一つは、ライシャワー大使がきのうお帰りになられた。新聞報道では、これは特別の要務があって帰られるのか、かねてから世上にうわさされております辞任問題、日米経済委員会も終わった今日の時点でもあり、相当長く日本大使をやっておられたというふうな関係で、この機会に辞任をされるのではないかということ等も報道されておるわけであります。  さらに、三木さんがOECD国際会議DAC関係で出かけられる。おそらくその中では、日本政府として東南アジアの開発問題ということについて特に意見を申し述べるであろうというふうにもいわれておるわけであります。本論の前でありますが、これらの諸問題について、総理から考え方判断をお伺いをいたしたい、こういうふうに思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず角屋君に、今回のこの審議にあたりまして、新しく、特に先例にはしないのだろうと思いますが、御協力願っておることについてお礼を申し上げておきます。それは、外務大臣その他が参議院のほうに出かけたことであります。  そこで、お尋ねになりましたイシコフ漁業相が先だって参り、その際も安全操業の問題について話し合ったのであります。また、漁業条約期限が到来する。それの扱い方についての方向、このほうは近く両者において相談をしよう、こういうことでまとまっておるようであります。ただ、安全操業の問題については、イシコフ漁業相としては、自分できめることはできないのだということで、グロムイコ外相が来られた際に十分話をしろと言わんばかりのサゼスチョンをして帰った、こういうことであります。したがいまして、グロムイコ外相との間には、その他にもいろいろございますが、この安全操業の問題も一つの問題である、このことははっきり申し上げることができると思います。  また、ライシャワー大使が急遽帰りました。その用向きは、私は知りません。アメリカ政府から、帰ってこいということで帰られた、かようにだけは聞いておりますが、こちらから出かけたということでもないようです。どういうことか中身は知りません。  また三木君が出かけましたのは、これはDAC閣僚会議、それにぜひとも出てほしい、十カ国ばかりの会議でございますから、ぜひ出てくれ、こういうことで、国会審議中にもかかわらず、皆さま方の御了承を得まして出かけたような次第でございます。これはOECDの重要なる会議である、かように私も理解しておりますし、日本の今日の立場から申しまして、この種の会合はみな必ず出席するということが望ましい、かように思っております。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの点について、直接担当責任の一人である坂田農林大臣から、北洋漁業安全操業、それから日ソ漁業条約改定問題、特にグロムイコ来日機会に、どう具体的に基本的な立場で話し合うのかという点について、さらに御説明を願いたいと思います。
  6. 坂田英一

    坂田国務大臣 北洋漁業問題につきましては、イシコフ漁業相と話し合いを進めてまいったわけでございますが、その当時、なお引き続いてこの問題は検討してまいりたいということでございまするので、さらに引き続いてこれらの問題を検討をしてまいりたい、かように存じておるわけでございます。  それから、日ソ漁業条約改定の問題ですが、これは、十二月末に改定期限が切れることになりまするのでございます。黙っておればどっちもこれは続くわけでございます。これらの問題については、いままで両国とも、これによってそれぞれ漁業の問題については非常に効力を発してまいりましたのであるから、これらの問題は続けてまいりたいのである、次の機会等において、なおいろいろの問題については相談をいたしたい、こういうことで進んでおるわけでございます。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの質問の諸問題については、なお問題はあるわけでありますけれども、本論に入りたいと思います。  米価問題のお尋ねをする中で、質問順序としては、私は、これから消費者米価の問題をどうするのか、また、いろんな経過を経て最終的にきめた昭和四十一年度生産者米価一万七千八百七十七円といわれるもの、さらに新しく本年、農政費五十億円がついたわけでありますが、それらの諸問題、こういう点を単刀直入にお尋ねをしながら、基本的にわが国の食糧政策あるいは食管問題、そういう総合的な問題について、これからどうするのかという順序お尋ねをいたしてまいりたいと思います。  冒頭に消費者米価の問題でありますが、今度の臨時国会が召集されてから、衆参両院の本会議を通じ、あるいはまた新聞記者団との会見その他を通じまして、総理並びに関係大臣から、消費者米価の今後の問題については、残念ながら必ずしも明確に判断をすることができないわけであります、率直に言って。過般の衆議院本会議における足鹿質問に対しての佐藤総理の御答弁を見ても、これから検討するというのだけれども、その検討というのは、上げないという前提検討するとも言えないし、また上げるという前提に立って検討するというわけでもない。とにかく現在は白紙の状態であって、これからいろいろな点を総合的に考えていくのだというお話のように受け取ったわけであります。しかし、何といっても、これだけ重要な消費者米価の今後の問題をどうするかという点について、やはり一国の政治責任者である総理として、少なくとも今年度中についてはどうするとか、明年度の問題についてはどういう考えでいきたいとかという点について、もっとやはり明確にされる政治的立場ではないか、こういうふうにも考えるわけであります。それは五月の時点で、総理みずから与党首脳との会議の中で、本年度消費者米価は据え置く、こういう考え方を率直に表明されたと当時の新聞が大々的に報道しておるわけであります。したがいまして、いろいろなコースを通じてことしの生産者米価がきまった時点において、消費者米価については、やはりもっと考え方を率直に明確にされる必要があるのではないか。この点については、もう少し従来の答弁以上の総理腹の中を率直に御説明願いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が足鹿君の質問に本会議で答えた、角屋君はそのままよく御理解をいただいた、かように思います。ただいまのお尋ねを聞いておりましても、私のいまの心境と同じものでございます。いまの腹のうちをこの際さらけ出せ、こういうことですが、腹のうちに特別のものが実はないのです。したがいまして、当分の間米価は上げない、これはもう閣僚等もしばしば申しておりますので、お約束でございます。この点を変更しようとは思いません。また、私が上げたくないというその気持ちはもちろんあるわけであります。しかしながら、将来の問題といたしまして、今回の生産者米価食管会計に及ぼす赤字、これもなかなか見のがせない多額なものになるようであります。総体では二千億にもなんなんとするのじゃないだろうか、かように言われております。また一方、諸物価等と取り組んでおるその状況から見まして、国民のほうの生計費、これもまたたいへんな実情にございます。したがって、そういう間にあって政府はどうするか。もう一つは、ことに消費者米価のきめ方いかん、これが諸物価に及ぼす心理的影響というものも見のがすことはできない、かように思いますので、それらの点を全部考え合わせて検討した上で決定しなければならない問題であります。したがいまして、ただいま腹のうちを出せというたいへん御理解のあるおことばでございますけれども、私は腹の中をさらけ出すと、ただいまのように、ただいま検討中だと、これ以上申し上げかねるのであります。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 さらに総理に重ねてお伺いしたいのですが、当分の間上げないということは、かねてお互いが確認しておるので、これはそういうふうにやる。この当分の間というのは、私の理解では、少なくとも明年の三月までは、これは一つ年度中ですから、上げない、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当分の同、これは政治家がよく使うことばですが、いわゆる当分の間でございます。どうかそういうように御理解をいただきたい。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 五月二十四日の政府与党首脳会談の際に、佐藤総理が、生産者米価消費者米価を今度の段階においてはできれば同時決定をいたしたい、その際消費者米価については据え置く気持ちである、こういうふうに当時の新聞が報道いたしました。そのときに、新聞報道によれば、大蔵大臣農林大臣とが強く難色を示したというふう伝えられておるわけですけれども、これは、大蔵大臣農林大臣、事実でございますか、簡単にその点だけを……。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういう記憶はございませんです。
  13. 坂田英一

    坂田国務大臣 私も別にその記憶はございません。
  14. 角屋堅次郎

    角屋委員 今日の大新聞といわれる各紙とも、この消費者米価の問題は非常に重要でありますから、正しく情報をキャッチして伝えたものであろうというふうに私は理解をしておるわけですけれども、肝心かなめ大蔵農林の両大臣から、一方は記憶はないと言う、一方はそういうことが事実としてなかったような否定のことばを言われたわけですけれども、これは、消費者米価据え置き賛成であると総理が当時発言されたことに全面的に賛成である、こういうふうに理解をしていいわけですか。再び大蔵農林の両大臣からお答え願いたい。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生産者米価をきめるにあたりまして、消費者米価のことまでも考えないという考え方は私はよろしくないと思うのです。しかし、これを同時に、生産者米価幾らである、消費者米価幾らである、こういうことをきめることはなかなか困難である、これは角屋さんもよく御了察のできることだと思うのでございます。ただいま総理から御答弁がありましたように、総理は、生産者米価が上がる、上がったが、消費者米価はなるべくこれを据え置いていきたい、物価対策上の見地、また国民生計費状況、そういうものを考えると何とかして据え置きたい、こういうお気持ちもありますことは承知しております。しかし、同時に一方財政のやりくりの問題もあるわけでありまして、そういう三つの観点に立って今後慎重にきめていきたい、こう申されておるわけでありまして、その点については、私も農林大臣も全く同意見である、こういうふうに御了解願いたいのであります。
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林大臣にお伺いしたいのですけれども、食糧管理法の第三条第二項で生産者米価の算定についての考え方というものが明らかにされておりますし、また同法の第四条第二項では消費者米価決定考え方というものが明らかにされておることは御承知のとおりであります。一方は、再生産確保ということを旨にしながら生産者米価のことは考えていかなければならぬ、一方は、やはり消費者家計の安定ということを旨としながら消費者米価のことは考えていかなければならぬ、私どもは、これを二重米価的性格というふうに理解をいたしておるわけですが、そういう食管法の全体的な法の考え方の上に立って、いま言った消費者米価はどうするかという、そういう考え方が結果として考えられてこなければならぬじゃないか、こういうふうに思うわけです。農林大臣はよく、米価は私がきめるのだというたことを米価審議会でも相当みえを切って言っていられましたが、大体この消費者米価改定するかどうかということの条件を、農林大臣としてどういうふうに考えておられるわけですか。
  17. 坂田英一

    坂田国務大臣 消費者米価決定は、やはり家計費の安定をはかるということを主眼として、そうして物価その他の経済事情をしんしゃくしてきめる、こういうことに相なっておるわけでございます。つまり生産者米価とその点は別々にきめておるようでございますが、一年一回は必ずきめなければならぬという問題があり、また物価その他の経済事情をしんしゃくする点については、生産者米価消費者米価も同様にそれらのものを考えてまいるということであり、やはり米の問題、いわゆる米価の問題でございまするから、一応は離れた考え方のようでありまするけれども、実質においては、そこに全然つながりのないものではない、かように考えておるわけでございます。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 従来のこの消費者米価値上げの推移を見てまいりますと、昭和二十四年以来の資料をいただいたわけですが、これによりますと、昭和二十四年以来十回消費者米価改定が行なわれておるわけです。つまり昭和二十四年、二十五年、二十六年二回、それから一年おいて二十八年、二十九年、それから二年おいて三十二年、それから四年おいて三十七年、それから二年おいて四十年、四十一年、こういうふうに二十四年以来の段階の中で十回改定が行なわれてきておるわけです。しかもわれわれが心配をするのは、この十数年の間行なわれてきた中で、四十、四十一と続いてきて、しかも物価問題の非常な政治的課題だといっておる中で、再び四十二年に政府消費者米価値上げするんじゃないかという、こういう問題について非常に懸念をしておるわけです。同時に、いままでの消費者米価値上げの月日を見ますというと、この十回のうち一月一日というのが六回もある。他は、あるときば四月であり、八月であり、十月であり、十二月であるというように、それぞれ一回ずつになっておりますが、正月一日のおとそのお祝い気分のときに消費者米価の値上がりのお年玉を与えるというのは、これは現実の政治ではないと思いますし、同時に、この四十、四十一年と続いてきて、さらにまた四十二年に消費者米価値上げをするということ、これもやはり消費者米価の問題が物価全体に、単に数字上の影響ばかりでなしに、連鎖的反応、いろんなものに影響を与えていくことを真剣に考えてまいりますと、少なくとも総理としては、昭和四十二年の段階においては、消費者米価は、財政上の問題もあろうけれども、やはり物価対策その他の点から見て上げない、こういうき然たる態度が必要ではないかと率直に私は思うわけであります。同時に、昨年の暮れの米価審議会藤山経済企画庁長官が、いわゆるこれからの物価安定の方向は、七、五、三のその数字のめどで消費者物価の安定をはかりたい。初年度七割、次年度五割、三年目三割、大体欧米の各国の状況から見ても、二%前後までなら許容されるであろううけれども、それ以上については、やはり物価対策というものは、日本現状から見ても真剣に考えなきゃならぬ、こういうふうに七、五、三の数字を並べられました。物価の直接担当省である経済企画庁藤山長官としても、これらの点については、物価安定の立場から見ても、積極的に昭和四十二年度については、やはり消費者米価は、三年連続ということもいままでの歴史にないわけであって、しかも物価問題は非常に重大な政治的課題という今日の現状においては、上げるべきでないという考え方で閣内においても最善の努力をし、またその努力を受けて総理が裁断を下す重要な問題ではないか、こう思うわけでありますが、まず藤山経済企画庁長官からお伺いをいたしたいと思います。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 物価担当しております。しかも安定させていかなければならない責任を持っております私といたしましては、三年連続して消費者米価を上げることは必ずしも好ましいとは思いません。したがいまして、現状において、私は、物価問題が軌道に乗ってきてはおりますけれども、手をゆるめてはいけないと思いますので、現在の消費者米価を上げたくないということで、上げないような主張をいたしたいと思います。ただ、私も経済閣僚の一人でございまして、物価の安定がどの程度に今後いくか、安定していってどういう状況に秋ごろまでになっていくか、これが一番心配でございますが、その見通しがつき、あるいは財政上の事情等もございましょうし、あるいは賃金等関係もございますから、それらの問題を、最終的決定の場合にはやはり勘案しなければならないとは思います。しかし、やはり現状立場でいえば、三年連続して上げたくないという立場意見を申し述べたい、こう思っております。
  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 消費者米価の問題について、さらに総理にお伺いをいたしたいわけですが、先ほども申し上げた過去十数年の消費者米価改定の経過を見てまいりますというと、少なくとも戦後の混乱の時期以外には、三年連続して消費者米価を上げるということはなかったわけです。多くの場合、二年なり四年なりという間があって、そうして諸般の状況からやむを得ず消費者米価改定が行なわれたという経過になっておるわけです。最近のこの消費者米価の、三年連続値上げをするということは、これはやはり物価問題からいっても避けなければならないし、同時に総理が言われたように、消費者米価改定するかどうかということは、やはり判断のめどとしては、一つ物価対策上の問題を考えなければならない。総理も言われるように、おそらく大蔵大臣も念頭に置かれておるように、財政の問題がやはり一つ判断の素材になるだろうと思います、率直に言って。同時に食管の運営の全体的な問題ということもあるだろうと思います。これらの三つの問題を、食糧管理法の精神というものを念頭に置きながら最終的にどうするかというのが、これは政治判断の問題だと思うのです。そういう点において、やはりこの際消費者米価については、総理の本日の答弁からは当分上げない。この当分については、私の理解では、三年連続の消費者米価値上げは避ける、そこまでが少なくとも当分である、こういうふうに理解をするわけでありますけれども、そういうふうに気持ちの上ではとってよろしゅうございますか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の話を気持ちの上でとっていいか、こういうお話ですが、ことばじりで申すわけではありません。とにかく私も政治家とし、角屋君も政治家とし、そういう立場米価問題を真剣に扱っておられる。これは、気持ち気持ちでわかりますけれども、その気持ちだけの問題ではなしに、いかにするかという具体的な問題がお互いにこの場における意見交換の重要な点だと、かように思っております。  そこで、先ほど私申し上げましたように、まだきまっておらない。ただいまきまっておることは、当分の間上げないこと、また私自身が上げたくないという気持ち、これだけは率直に申し上げますが、先ほど来御議論になりましたように、あらゆる点を検討してしかる後に政治判断をしなければならないのですから、しばらくその結論は預からしていただきたい。先ほど来のお話をずっと静かに聞いておりまして、たいへん貴重な御意見を拝聴することができました。私ども政治判断をいたします参考になるものだ、かように思いますので、この点を率直に御披露いたしましてお礼を申し上げておきます。
  22. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、総理答弁しにくいといかぬという政治判断から気持ちと申し上げましたけれども、しかし、われわれの考え方としては、先ほども申しましたように、少なくとも総理の言われる答弁というものは、当分の間というのは、連続三年の値上げをしないという前提の当分だ、政治的にはこういうふうに理解すべきである、こういうふうに思っておるわけです。だから今後の検討は、そういう当分の間というのは、連続三年の値上げはしないという前提に立って慎重に検討するというふうに理解をしていいかどうか、さらにお伺いをいたします。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来のお尋ね、御意見では、たいへん私の考え方をよく理解していただいておる、かように思って感謝いたしたのですが、最後のお尋ねになりますと、さらに竿頭一歩を進められておる。そのためにあるいは誤解を受けると困りますが、そこになりますと、ただいままだきめておらないのだ、さように御了承いただきたいと思います。
  24. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、ただいまの時点では、総理から当分の間というのは、少なくとも今年の十二月までは間違いがない、来年三月までは、お年玉というのは避けたいということを、私の質問に対して先ほどの答弁のニュアンスとしては答えられたと思いますので、三月まではこれは上がらない。四月以降の問題は、結局米価審議会の議論とも関連してくるわけですから、少なくとも七月段階までは消費者米価値上げは爼上にのぼらないだろう、こういう強い期待をいたしたわけでありますが、これ以上質問をいたしましても、今日の時点で明らかになっていくという期待が持てないわけですが、この消費者米価の問題は、今日の物価問題の中の一つの連鎖反応的性格を持った非常に重要な問題でありますから、従来の十数年の経過から見ましても、連続三年というのは、敗戦後の異常な食糧危機の時代以外にないということを慎重に考えられて、三年連続の値上げは絶対にやらないという方針で取り組んでもらいたいと思います。  次に、生産者米価の問題にずばり入ってまいりたいと思いますが、生産者米価の問題に入る過程では、当然ことしの米価審議会の問題とも関連をして、今日の米価審議会の会長副会長の辞任、あるいは八名近くの委員諸君の辞任という事態の中で、米価審議会のこれからのあり方をどうするかという問題も含めてお伺いをしなければならぬと思います。  私も、ことし国会承認人事として米価審議会に加わったわけであります。麦の審議で三日間、米の審議で五日間、各委員ともお互いに真剣に米麦価の問題について議論をし、あるいは農政、食糧政策全般の問題について議論をした。残念ながら米の問題については、かつて例を見ないような答申不能という事態になりました。これは、私としても非常に残念であります。この答申不能という今日の米価審議会の事態というものを、表面的にこれを見る人があります。もっとやはり従来の米価審議会の経過を踏んまえて、今日の時点における米価をめぐる諸情勢というものを十分にらみながら、米価審議会がついに答申不能に至ったという、そういう正しい理解をはたして与えておるかどうかということがやはり一つの問題だと思います。  まず農林大臣からお伺いをいたしたいと思いますが、ことしの米価審議会の答申がついに不能になったという事態を、なぜそういうふうになったか、農林大臣は終始出席をしておられましたから、どういうふうに判断をしておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
  25. 坂田英一

    坂田国務大臣 私も五日間かかさずに参っておりましたのでございまするが、その間、各委員ともきわめて熱心に御審議を願ったことは、角屋委員も十分御了承のとおりでございます。それだけにまた議論もなかなか達者でございました。また、ある意味において非常な各方面からの議論が出たわけでございます。そして三日でとてもこれは及ばないということであり、またその間においては、大蔵大臣あるいは企画庁長官の出席も求めまして、皆さんに十分お話を申し上げ、また資料等についても、ほとんど徹夜的に資料の要求に対して作成いたしまして配付をいたしておったようなわけでございます。最後に取りまとめのところに立ち至りまして、従来この審議会の取りまとめは多数決ということを避けてきた。これは、いままでの性格としては当然であると思いますが、そういうことであります。それから、どうしても一本の答申にしたいという気持ちが強かったことも当然でございます。数年来一本の答申というよりも幾つもの一こういうこと、こういうこと、こういうことというふうに三本立てで答申をするといったようなことがここ数年間ありましたのでありまするが、それに対する世論の批判が相当強かったということもあろうと思う。そういう点から、さようなまとめ方をせずに一本にしようという熱烈な考え方がありましたことも角屋委員のお知りのとおりであると思います。その際において、一本にまとめることはできない。三つの大体議論がございましたが、その点についても併記するということもしないというような関係からいたしまして、夜の八時ごろからちょうど九時間ばかり小委員の方が、十分努力をされましたが、結局それがまとまらずに、まとまらないことであり、答申をしないことにしようということで総会にかけて、総会においてもさようにいたそう、それよりほかにないということで御審議を終わったようなことに相なっておるわけでございます。私どもも十分これらに対して、しかし五日の間各委員の御審議を十分お聞きをいたして、参考に相なったことをつけ加えて申し上げる次第でございます。
  26. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの農林大臣の答申不能のいわゆる経過と原因というものについて、数年来の経緯にかんがみて、各委員一本化答申の努力をした。しかし、結局それはまとまらなかった。かいつまんでいえばそういうことだと思う。しかし私は、本年度米審に参加をし、また従来からの米審の議事録を詳細に目を通して見て、一体政府米価審議会というものを置いておるけれども、この米価審議会の機能、権限というものを誠意をもって尊重してきておるのかどうかというところに一つの問題点がある。たとえば去年の米審の答申でも、生計費均衡方式あるいは指数化方式というものは、新たに次のような意見があったということで併列された意見である。この一つをやはりつまみ食いして、去年指数化方式を強行されたということがことしやはり問題になりますし、また私、本年度米審に参加をしてみて、昭和三十九年度政府と与党との折衝の中で生まれたいわゆる五百五十円の特別加算金、あるいは去年指数化方式を採用して、なおかつ二百五十五円という予約奨励金とか、政府・与党の間において、必ずしも十分明確でないそういうものがいろいろついていった。そういうことに対する米価審議会の不信感、一体米価審議会は真剣に議論をしても、われわれのまとめる意見というものに政府は誠意をもってこたえないじゃないかという不信感、こういうものが根底にあるということを見のがしてはいかぬと思う。私は、戦後の米価審議会の経過、ずっと答申の変遷を見てまいりますというと、昭和二十六年以来、当初の段階では、政府の諮問価格について適当でない、妥当と認めることはできない、不適当と認める、こういうのが二十六年から三十年まで続いております。こういうふうな状態の中で政府は価格をきめていった。三十一年以降、いわゆる生産費及び所得補償方式の意見というものが米審の中で台頭し、まずバルクライン農家八〇%に基づく生産費及び所得補償方式の考え方が三十一年に台頭し、それでずっと経過がございますけれども、いずれにしても、こういう米価審議会の答申というものが政府によって軽視をされ、ある場合においては無視をされてきた。こういうことが基底にあると思う。したがって、今日の時点米価審議会をどうするということを議論する場合に、米価の正しい決定のルールということを明確に考えずして、米価審議会の小手先だけの手直しでは問題は根本的に解決をしない、こういうふうに私は思うのでありまして、総理に、米価審議会の今日の時点の経過、これに基づいての米価審議会のこれからの改組の方向、あるいはまた米価の正しい決定のルールを一体どうしたらいいのか、こういう点についてお考えを承りたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米価審議会のあり方、これは今回の米価決定にあたりましていろいろ努力されたその結果、各方面からも、今後こういうままでいってはいけないのじゃないかという意見が台頭しております。したがいまして、私も、米価審議会のあり方につきまして、やはり各界各層の御意見を聞きまして、そして、それに従ってあるべき方向をきめることが望ましいのじゃないか、それができなければ、まあ在来どおりにやっていく、こういうことですが、とにかく一度こういうあり方について考える時期にきているのじゃないか、かように思いますので、さらに検討を続けるつもりでございます。  また、米価決定につきましては、生産費及び所得補償方式、これがただいままでのところ過去の経験に照らしまして望ましいしかただ、かように思っております。この生産費及び所得補償方式に基づいて、そして物価やまた賃金等の動向をも加味して決定する、これが今日とられるものだ、それがいわゆる指数化方式というような形でまとめられておる、かように私は理解しております。また、そういうことが望ましいのだと思いますが、しかし、なかなかこれですべてが満足するというような方法のものではないようでありますから、過去におきましてもいろいろ論議されたのですが、今後とも各界各方面の方々が満足いく、あるいは納得のいくような方法がさらにあるならば、この上とも十分考えていかなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  28. 角屋堅次郎

    角屋委員 米価審議会のこれからの問題、坂田大臣にお伺いしたいのですが、この米価審議会の構成について、これは米価審議会の議論の中でも、東大教授の川野さんあたりから三者構成ということを考えたらどうだという意見も出ておりました。あるいは総評の安恒君からも同様な意見が出ておりました。あるいは川野さんの新聞における米価審議会のこれからのあり方という記事をちょっと見ますと、場合によっては公益委員だけで考えたらどうだというふうな意見も出ておりましたが、私は、やはり米価審議会というものを考える場合に、少なくとも生産者あるいは消費者の代表というものを全然その舞台の中に乗せずして米価審議会を考えるということは、基本的に誤りだと思う。やはりそういう全体的な中で米価審議会としての統合機能を発揮するという努力が望ましい、こう思うのです。  それから数年来米価審議会のあり方としては、ことしの米価審議会に対する米の諮問を見ても、こういう諮問であります。「昭和四十一年産の米穀の政府買入価格の決定に関し、生産費及び所得補償方式により算定すること及びこれに関し留意すべき事項について、米価審議会意見を求める。」数年来こういうきわめて抽象的な諮問に基づいて議論をするという段階でありますが、やはり正しい米価決定のルールをどう考えるかということが基底にならなければいけません。今日のように米価審議会が第一ラウンド、政府・与党の折衝が第二ラウンドという形が避けられない、そういう性格として是認をするのか、もっとやはりその辺のところをすっきり割り切る打開の方法はあるのかどうか。私どもは、米価審議会審議を経て最終的に国会できめるようにしたらどうだということを、わが党の足鹿委員から本会議を通じて質問したところが、佐藤総理は、国会できめるということには私としては賛成できないというふうに言われた。賛成できないというならば、佐藤総理は、米価決定のルールというものを、米価審議会第一ラウンド、政府・与党の折衝第二ラウンドという今日の姿は避けられないものとして、これをやはり通過をして政府がきめるということを今後ともにとっていくという意味であるのか、その辺の考え方について。そうして同時に、運賃あるいは電報電話料金等が国会できめられるという問題であるのに、米価という国民生活、食生活に直結した重要な問題について、なぜこれだけは国会できめるのに反対なのか、その真意をこの際明らかにしてもらいたいと思う。
  29. 坂田英一

    坂田国務大臣 米価審議会における構成の問題、あるいは審議のしかたの問題等については、数年来からでもありますが、今年特に各委員の方々からも、そういう点について、十分考えてもらいたいという御要求が出ましたことは角屋君もよく御承知のとおりでございます。なお、そのほかにおいて、世間においてもそういう問題が非常にいろいろと議論がされ、また意見を拝聴いたしておるようなわけでございます。かような関係からいたしまして、私どもといたしましても、米価の問題はきわめて重要な問題でございまするので、この米価審議会の構成、あるいは諮問の方法、運営の方法等についてはさらに一段と各方面の意見を聴取いたしまして、これらの改正の問題等については十分検討をいたしたい、かように存じておるわけでございます。  なお、国会の問題でございまするが、現在の法律によりますと、生産者米価のきめ方、消費者米価のきめ方その他については、第三条、第四条等に規定をいたしておるのでございまして、その規定の範囲内において政府がこれを決定いたしてまいるということが時宜に適したゆえんでもあり、また食糧管理そのものの中心をなすものでございまするので、これはやはり行政庁においてやっていくということでなければならぬ、現在のところさように考えておるわけでございます。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま農林大臣が答えたのでございますが、食糧特別会計制度、こういう食糧の管理制度がございますから、その中心をなすものが米価決定だ、かように思うので、これを分けるということは適当でない、かように私ども考えて、これはやはり行政庁にその権限は置くべきだ、かように思っておる次第でございます。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの総理答弁では、国鉄運賃、電報電話等の料金、郵便料金等については国会で取り扱うのに、米価だけは国会で取り扱うことができないというよりも、そういうことには反対であるという意味は、いまの答弁を聞いても私はわからぬ。おそらく総理のざっくばらんな腹のうちは、国会できめるというのはなかなかむずかしいのではないか、こういう気持ちなのですか。これは予算ですから……。  それと同時に、もう一つ聞きたいのは、米価審議会の構成問題というのが、やはり今日の時点一つの重要な問題になります。すみやかに再建をしなければなりません。これは立法事項であります。農林省設置法の一部改正ということにからんでくる立法事項でありますから、政府が一方的な判断米価審議会の再編を考えるということになると、これは国会舞台でこの立法が通過するかどうかということは保証できない、こういう問題にもなろうと思うし、これは国民食糧であり、米価というのは非常に重大な問題でありますから、米価審議会の再建を考える場合には、やはりプランについてよく与野党の間に意思の疎通ができる、また野党側の意見も聞く、あるいは団体側等についても意見が反映されるというふうな形でこの問題は取り扱われるというふうに理解をいたしたいわけでありますけれども、米価審議会の再建問題について、そういうふう配慮でやられるお気持ちがあるかどうか、これは総理からお伺いをしたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 生産者米価、これはただいま申しますように、食管会計の中心をなすものだ、その決定いかんで食管会計が維持できるかどうかという問題だと思うのですよ。ただいま言われる運賃やあるいは郵便料金のような一般国民の負担という、そういうものとは違うわけなんです。ですから、これはどうも行政官庁において、そして食管特別会計、管理制度、これを維持しているその場所でやることが望ましい、かように私はいまだに考えております。  また、ただいまの米価審議会のあり方について、これは先ほど私申しましたように、各界各方面の意見を聞いて決定すべきだ、ただ、現状についてどうも困るじゃないかというような話がありますし、先ほど来出ている御意見のうちにも、いまのままでいくのかどうか、また、その辺くふうをしたらどうか、こういうような話のあること、これはお認めだと思うのです。そういう意味でこの問題は検討すべきものだ、ただいまの立法事項であるという、こういうような意味からも各界各層の方々が納得がいく、こういうことでないと、その立法事項がうまく通過できるとは私も思いません。したがいまして、それらの点は十分検討したい、かように申しておるわけであります。   〔「国会できめてはなぜいかぬ」と呼ぶ者あり〕
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 だいぶわが党の委員の中から、国会できめるのがなぜ悪いか、予算的に非常に大きなウエートを持つこれほどの問題を国会できめることについて、なぜ悪いか、総理答弁がさっぱりわれわれに理解できない。私もそのとおりでありますが、なぜいけないかという点、えらいオウム返しに聞いて恐縮ですが、もっとやはり明確にお答え願いたい。食糧管理あるいは予算、非常に全体的な問題から見ても、これほどの問題を国会できめてはなぜいかぬかという点が明確にならない。お答え願いたい。総理、ひとつ……。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は不適当だ、かように思っております。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 その不適当という理由がわからない。もう少し具体的にひとつ、重要な問題ですから……。という意味は、この米価決定の正しいルールというものをどう考えるかという場合に、いままでのように、米審を経て政府決定という形もありましょう。また、ことしの新しい米価の問題の動きとしては、生産者団体がやはり政府と直接交渉したい、こういうふうな動きがありまして、農林大臣自身会われたという。ヨーロッパ等の例から見ると、やはり政府と生産者団体との農産物価格におけるところの協約、それに基づいての価格決定、そういう国々も必ずしも少なくない、これも一つのやはりヨーロッパに見られる例だと思います。それと、われわれが主張するように、最終的に国会できめるという新しいこれからの行き方、これもあろうと思うのです。このいずれをとるかという点について、われわれが主張する路線について総理の国会できめては不適当であるという理由が必ずしも明確でない。
  36. 坂田英一

    坂田国務大臣 食糧管理法の第三条にいわゆる生産者米価のきめ方の原則をうたっております。それからまた第四条に消費者米価をうたっておる。これらは、国会においてよく審議を願ってこれらの問題が規定されておることでございます。これに基づいて進むわけでございまするが、この米価決定というそのもの自体が非常に時期に合わなければなりません。たとえば国会の時期に来ていないときにこれを変えなければならぬ場合も起こってまいりまするし、時期によく適応してこれを行なってまいらなければならぬことは言うまでもございません。経済情勢の変更に応じて進めていかなければならぬ、そして米価そのものはいわゆる食糧管理そのものの中心をなしておるものである。したがって、国会においてきめられましたところの食管法に基づいて、そして時宜に適してこれらの問題を決定してまいるということは、現在の食管法の運営の上において当然これは政府決定せざるを得ないということに相なっておることでありまするので、その点、御了承を願いたいと思います。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 総理の、国会できめることは不適当であるということばは、われわれとしては理解できないし、断じて納得できないわけです。やはり米価決定ルールをどうするかというのには、幾通りの方法も考えられるわけです。そのいずれをとるかというのは、当面の時点としてどうするかという判断の問題だと思う。これは不適当であるとか、そういうことはどうだという問題ではない。今日のこの時点になれば、幾つかの考えられる米価決定のルールの中でどの方向をとるかということの総合判断の問題だと思う。私は、不適当ということばについては、これは抹殺をすべきだ、取り消すべきだと思う。  それと同時に、坂田農林大臣がいま答弁した中で、国会できめるということについては、国会の開会されておる時期等の問題ということを言われますけれども、今日の食管法は、御承知のように、麦については六月中に告示をするという時期的設定がございます。米については毎年これをきめるということであって、いまはまあ恒例のように七月段階生産者米価の問題を議論しますけれども、七月にきめなければならぬと法的にきちっときめておるわけではございません。また同時に、通常国会あるいは臨時国会等が最近の開かれる段階から申せば国会が開会されておるかどうかというような判断は、今日の国会の現状からいえば、それは理由にならない、こういうふうに思うわけです。やはり基本的には国会できめることがどうかという問題に私は帰すると思うのです。会期云々ということであれば、じゃ運賃はどうだ、郵便料金はどうだということにならざるを得ない。坂田さんの答弁というものは、これは理由にならない。だから、いまの国会できめることは不適当というのは取り消すべきだと思うのです。いや、これは総理から。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、(発言する者あり)ちょっと静かにお願いしておきます。  坂田農林大臣現状についてるる説明をいたしました。現状坂田君の申し上げるとおりです。この現状はすでに法律立法事項であり、皆様方の協賛を得てただいま米価決定の方法がきまっておるわけです。ですから、私は、その点について在来からやっておることは、これは最も適当な方法だ、かように考えておるのであります。今後の問題としていかにあるべきかということでただいまお尋ねがあって、それについて私が不適当だ、かように申したのでありますが、これが不穏当だとか、けしからぬとか、これは、意見が違うとかいうのならいいけれども、不適当とはけしからぬ、こういうことですが、しかし、私が意見が違うという結論は、不適当だと考えて初めて意見が違うのでありますから、その点を取り消せというのはやや言い過ぎじゃないか、かように私は思います。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員 不適当というふうに言われたのをあくまでも取り消さない、あるいは再度確認をされるということになると、国会できめることの不適当な理由という総理の見解を、はっきりやはりしてもらいたい。   〔発言する者多し〕
  40. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、すべてのものが国会で審議される、それは、国会でおきめになればけっこうだ。しかし、政府はどういう考え方を持っているのだといえば、政府考え方は、不適当だと思うから賛成しない、かように申しておる。これに対して別にただいまそれを取り消せと言われる筋のものは私はないと思います。
  42. 角屋堅次郎

    角屋委員 不適当の理由。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは、先ほど申しますように、現状のたてまえが適当だといって立法事項でおきめになりました、それで、ただいまの事項がすでに行政にまかされておる。それから、先ほど私が説明いたしましたように、これは食管会計の、また食糧管理制度の中心をなすものです。したがって、これは行政府担当するのが望ましい、かように私は申したのであります。ただ、いま言われるように、これを二つに分ける、それはどうも私は賛成しない。
  44. 福田一

    福田委員長 この際、川俣清音君から関連質疑の申し出がありますのでこれを許します。川俣君。
  45. 川俣清音

    ○川俣委員 行政府決定すべきことだと言うならば、総理の裁断があったのですが、あの裁断は、過去の行政の内容からして、買い入れ価格というのはどういうことを意味するのですか。もっとわかりやすく言うならば、総理はわからないでしょう。わからないで裁断をするくらいあぶないことはないと言うのです。去年の買い入れ価格は、政府が買い入れ価格と称したものは一万六千七百三十五円なんです。去年買ったのは幾らで買ったのですか。再生産を確保するという趣旨に基づいて買ったのは、幾らで買ったのですか。一万六千円を割っておる。平均価格一万五千七百八十円で買っておるじゃないか。これがほんとうの買い入れ価格ですよ。知らないでしょう、総理。知らないで裁断するくらい危険なものはない。農林省の統計で、去年の実際の買い入れ価格は一万五千七百八十円です。それが実際の買い入れ価格なんです。赤字なんと言うけれども、二千億の赤字とか、千三百億の赤字なんというのは、仮装の赤字なんです。買わないでも、高く買ったと称した赤字じゃないですか。世間をごまかすための赤字なんだ。学者などもこのことを知らずに議論をしている。行政府がもっとしっかりしたら、学者がこんな誤解を招くことはない。新聞社もこういう誤解を招くことはない。誤解を招かせるようなことをしているのは行政府責任じゃないですか。そういうことでお尋ねします。
  46. 坂田英一

    坂田国務大臣 川俣委員から言われたことでありますが、それはもちろんそれに対して俵の問題も入れば、いろいろの問題が入っておるのでございまして、それからまた、等級格差の問題もあり、あるいは時期別格差の問題もあり、それから歩どまり加算の問題もあり、それらを加えての話がそういうことになっておるので、何もごまかしておるものではございません。  それから、赤字が現実と多少の違いが出てくるのは、それは一等−四等米できめたものが、現実においては五等米が非常に多いというようなときには、それだけの違いが若干出てくる。これは多少の差が出てまいります。私はそのことを申しておるわけであります。
  47. 川俣清音

    ○川俣委員 質問に答えていただきたい。私が質問したのは、農林省の統計によりますと、いろいろなものを加算して一万六千四十一円で実際支払った。政府が支払った額はそうなんです。表向きの価格は一万六千七百三十五円だけれども、実際農民に支払った価格は一万六千四十一円。しかもこの一万六千四十一円というのは、モチ米加算も入っておる。ウルチを買うのになぜモチ米加算を入れなければならないか。ウルチの計算ですよ。モチ米加算を入れるべきじゃないのです。モチ米を買うならモチ米加算を入れなければならぬでしょうが、ウルチを買うのにモチ米加算を二十六円入れておるじゃないですか。しかも予約奨励金を入れている。これを差し引くと一万五千七百八十円じゃないですか。明らかじゃないですか。だから、買い入れ価格と称するものは、表向きの、なだめるための価格であって、金額が上ならばいいだろうという価格であって、実際の買い入れ価格じゃない。払わない金を払ったと称するのは、ごまかしじゃないですか。行政府責任を持つなら、なぜこんなごまかしをやるのです。買い入れ価格は自分で知っておるじゃないか。これほど明瞭になっておるじゃないですか。毎年、実際の買い入れ価格は安く買っておる。毎年ですよ。実際の支払い価格は、百五十キロ当たり四、五百円から千円の間において安く買っておる。したがって、国会でこれを見なければ——学者とかなんとかいうものは予算を知らないのだから。知っておっても、ごまかされた数字を見て言っておる。はなただしいのは、いまやめる委員などは、かつて何と言った。価格は需給均衡価格が一番適切なんだ。ことし需給均衡価格をとってごらんなさい。こういう長期予想の中で需給均衡価格をとってごらんなさい。どんな価格になるか。非常に豊富に米がとれたときは需給均衡価格、足りなくなったら需給均衡価格でないという、これはごまかしじゃないですか。これはにせ学者の言う議論じゃないか。(「御用学者だよ」と呼ぶ者あり)御用学者以下ですよ。こういうことなんです。どうですか、ほんとうに買っていない価格でしょう。
  48. 坂田英一

    坂田国務大臣 川俣委員の言うとおりで、ごまかしておるものではないのでありますが、いま食糧庁長官にその点を詳しく説明いたさせます。
  49. 武田誠三

    ○武田政府委員 数字のことでございますので、私から申し上げます。   〔発言する者あり〕
  50. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  51. 武田誠三

    ○武田政府委員 川俣先生のお話しの一万六千四十一円というのは、包装代二百九十七円を差し引きました裸の平均価格でございます。したがいまして、包装込みの価格は一万六千三百三十八円ということでございます。  それからモチ米の問題でございますが、モチ米加算につきましては、生産費の中にも当然モチの生産費も入っておるわけでございます。したがいまして、米の平均的な標準価格ということを毎年きめておるわけでございますので、当然モチ米加算につきましては入ってしかるべきものというふうに考えております。
  52. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、行政府責任だと言うから、行政府責任であれば、総理が最高責任者だ、そこで総理にお聞きしておるのです。総理は、行政府が一番権威があるかもしれませんけれども、知らずに行政をやっておられては困るから、国会でこれを問題にしなければならない。反省を求めるのは、米審じゃなくて、国会でなければならない。したがって、国会の意見を聞かれることが必要であろう、こういうことなんです。行政府責任を追及するのは米審じゃないのです。米審は行政府の補助機関なんです。したがって、行政府責任だと言うからには、国会に諮問をして国会の意思を問うのが私は至当だと思う。それでなければこれはあやまちをする。食糧庁長官があんな答弁をするとは、よくもあんなていさいの悪い答弁をするものだ。確かに俵代はこれから除かなければならぬでしょうけれども、俵を売った金はどうするのですか。あれはただでない。払った金は除くけれども、俵代で戻ってくる金など入れるものはない、そういうことを大っぴらで言うなんて——これは陰で言うなら別ですよ。こういう席上で質問に対して答弁に立って、俵代はこれから抜かなければならぬ、冗談じゃありませんよ。俵代はただじゃないのです。農民から買って安くは売る。古俵だから安くは売るでしょうけれども、ただだなんという計算はどこから出てくる。それだから食糧庁なんて赤字になる。あたりまえのことですよ。売った金が収入にならないなんという食管会計はおかしいじゃないですか。金額は別ですよ。確かに古俵だから安いでしょうけれども、これは収入になっておる。それを収入にならないんだというような答弁がよくもできたものですね。恥ずかしくないかということです。総理答弁してください。
  53. 武田誠三

    ○武田政府委員 四十年産米の価格につきましては、基本価格一万五千五百七十円に、時期別格差あるいは等級間格差、歩どまり加算、モチ米加算、包装代、それに予約奨励金を加えまして一万六千三百七十五円ということにいたしておるわけでございます。現実に政府が支払いました包装込みの価格といたしましては、これはまだ決算が全部済んでおりませんので、多少の移動は出てくるかもしれないと思いますが、予約奨励金を含めまして一万六千二百六十五円でございます。このような差が出てまいりましたのは、予約奨励金は、御承知のように、政府が買い入れましたお米の全部についているわけではありません。予約なしに買い入れたものがございます。したがいまして、その分が、予約奨励金としては二百五十五円が実績としては多少下がるというものになっております。そのほか、等級間格差につきましては、当初の米価決定におきましては、御承知のように一−四等で計算をいたしておりますが、現実に買い入れをいたしておりますのは、一−五等、並びに等外米を相当多量に買っております。そういう関係から、等級間格差が当初の見込みよりも広がっておるということがございます。そのほか、時期別格差、歩どまり加算等は、逆にこれは当初の見込みよりもよけい支払っておるという結果に相なっております。以上のような結果、一万六千三百七十五円が、買い入れ実績としては一万六千二百六十五円ということに相なっております。
  54. 福田一

    福田委員長 食糧庁長官、俵の問題の質問があったのに答えてないじゃないか。
  55. 武田誠三

    ○武田政府委員 失礼いたしました。  包装の問題でありますが、これは現実の包装代といたしまして三百円を見込んでおります。これは先生お話しのように、農家が紙袋あるいは麻袋、カマス等を買い入れ、あるいは俵につきましては自己生産をするものもございますが、その包装代として三百円を見込んでおります。現実にわれわれが見込みましたよりもカマスあるいは麻袋、それらの割合が違ってまいります結果、包装代としてわれわれが支払いましたものは二百九十七円でございます。この分については、農家の手元において自己生産したものは農家の手元に残る部分がございますが、それ以外のものについては、労務費などを除きますと、通り抜け勘定になるということは、お話しのとおりでございます。
  56. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま川俣委員が関連で触れられた問題等については、さらに専門の農林委員会等で具体的に追及を行なうというふうにいたしたいと思いますので、次に入りたいと思います。  ただ、この米価審議会の今後の問題については総理に最後に確認をしておきたいのですけれども、いま再建問題をいろいろ検討中だと思いますし、すみやかにこれはやらなければならぬ。われわれはむしろ、政府米価決定の前に、米審の答申を得てやるという従来の伝統的慣例があったわけですが、それが今度できなかったということ自体にも問題を持っているわけですが、今度の米審の再建にあたっては、やはりいずれは立法的な問題ですから、政党関係あるいは関係者団体の関係、それらの意見を十分取り入れて、あるいは意見を聞きながらきめる、それはやはり国会の運営上も必要であるということを強く申し上げておきたいと思います。  次に、本年度の、われわれ専門家から見ても、どういう算定方式で数字を出したのか十分理解のできない、いわゆる一万七千八百七十七円の算定方式と算定基礎の問題、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず冒頭に、農林大臣から簡潔に算定方式と算定内容の骨子について御説明を願いたいと思います。
  57. 坂田英一

    坂田国務大臣 これは角屋委員もよく存じておられるはずでございます。すなわち、この生産費及び所得補償方式によるということは御存じのとおりでございます。その中で、積み上げ方式のもの、あるいは指数化方式ということでいくわけでございますが、この基本は、三十九年度米価を基礎にいたしまして、指数化方式できめております。それに対して、また反面においてはやはり試算ということをやりますから、この積み上げ方式の試算ももちろんやっております。その間において、農家の生産性を向上することの努力を期待いたしまして、三百九十円というものを加えたわけでございます。
  58. 角屋堅次郎

    角屋委員 今度の算定方式というのは、世上、指数化方式と積み上げ方式との混合方式だといわれているのですけれども、これは混合方式なのか、あるいはもうすでにくずれようとしておる指数化修正方式なのか、あるいは鋭く批判をする人々は、混乱方式だ、こういうふうに率直に言っているわけですけれども、いままでもずいぶん米価算定について、政府、与党の折衝で特別加算その他がついて、世上に批判がございましたけれども、しかし、方程式そのものはずっとあって、それにプラス何がし、こういうふうな形だったのですけれども、今度のこの政府、与党の折衝を見ておりますと、政府は指数化方式固執、与党はあげて積み上げ方式と、政府、与党全く算定方式については対立した中で折衝が行なわれたと伝えられておる。そうしてきまったものは、混合方式なのか、あるいは指数化修正と称すべき方式なのか、あるいはいわゆる混乱方式なのか、われわれ専門家をもってしてもさっぱりわからない。一体こういう方程式にならない数字でやった場合に、来年度米価の算定方式はどれをとるか、あるいはどういうふうにきめるかというスタートに本年度米価というものはならない。米審の問題もあるけれども、今日米価問題を全くわけのわからぬ混乱状態にしておるのは、政府、与党じゃないですか。算定方式についてもっと数字的に明らかにしてもらいたい。
  59. 坂田英一

    坂田国務大臣 別に混乱したわけでもないのでありまして、指数化方式によって、三十九年度米価に、労働賃金その他についての指数によって実態を出したものでございます。それに対して、生産性向上を期待いたす意味において、三百九十円を加えたのでございまして、これらの問題については、従来とも、できるだけそういうものを加えないという方向に進みたいとは存じますけれども、昨年のごときもやはり三百五十五円というものによって、供出を可能ならしめるものを加えております。もちろん、それを加えるということをできるだけ避けてまいりたいとは思うけれども、そういう必要がある場合には、その必要性を度外視するわけにいきませんから、そういうものを加えてまいっておることは事実であります。昨年のみならず、積み上げ方式の場合といえども、やはり必要なものを加えてまいるということ——できるだけ加えないことがいいと思うのでありますが、加えざるを得ないという場合があるわけでございます。これはやむを得ないと思います。今度は、その生産性向上を期待する意味においてそれを加えてまいったというふうに御了承を願いたいと思うのでございます。
  60. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいまの説明をもってしても、いわゆる補正額、三百九十円という数字の内容が明らかにならない。三百九十円という数字を出した根拠は何です。生産性向上のメリットを、どういう理由で、どこまで見たのか、あるいは、その他いわゆる指数化方式の中では、手直し問題、米審の中で与党の四人のうちの三人までが、三十九年度基本米価については手直しをする必要があるという意見を強く述べられておったが、その手直しの理由として、労働時間、資本利子、地代、それぞれの各項目に触れておりましたけれども、そういうことであるとするならば、その点について、三十九年度に見た数字に、それぞれの項目のこういう理由においてこれだけのものを数字として加えたという内容がなければならぬはずである。もっと三百九十円の補正額の内容についてさらに説明を願いたい。
  61. 坂田英一

    坂田国務大臣 この三百九十円というのは、地代とか、そういうものを補正するといった問題ではないのでございまして、そういうところからきたものではないのでございまして、積み上げ式の問題はやはり積み上げ式として、試算をいたしました。これは当然やるべきであると思う。そういうたくさんの問題が出てまいりましたときには、積み上げ式の方式も考えることは当然でございます。そこで、それらのものも試算いたしました。しかし、それを試算いたしたのであって、それを用いたわけではございません。しかし、いま小作料の問題とか、いろいろの問題でございまするが、これにいたしましても、実情によって非常に違ってまいるわけでございます。地代論からいってもそういう問題でございますし、これはむしろ、長らく申し上げますまでもなく、角屋君もよくおわかりだろうと思う。地代、小作料をどうするかという問題はそう簡単にきまるものではありません。非常に大きないろいろな問題を考えなければならぬ。これを考えておったらまだ一年も二年もかかるだろうと私は思います。なかなか重大な問題なんです。そういう問題でありまするから、それは積み上げ式としていろいろ考えも横ちょに置いて考えをして、そしてそれを参考にはいたしておりまするけれども、問題はちゃんと指数化にいきまして、そして生産性向上を期待いたしまして、三百九十円、こういうものを加えておるわけでございます。
  62. 角屋堅次郎

    角屋委員 三百九十円の内容についてはさっぱりわからない。同時に、積み上げ方式による米価を横ちょに見たというのですが、横ちょに見たといわれる積み上げ方式の米価数字というのは、いわゆる赤城懇談会の山中小委員長案といわれる一万八千百五円というのを横ちょに見たのか、あるいはさらにそれが積み上げられた一万八千五百五十九円というのを参考にしたのか。やはりこれは数字としては、一党の責任ある機関として設けられた小委員会なり総会なりの算定の根拠があって出してきたものと理解をしなければならぬ。横ちょに見たというのは、大臣自身、与党の正規の調査会の案というものを全くないがしろにしたような感じがするわけですけれども、一体この積み上げ方式の数字の根拠は、どの数字を横ちょに見たのですか。
  63. 坂田英一

    坂田国務大臣 私はどちらかというと口べたなほうですから、いろいろ思うことがちょっと言えぬ場合があるので、たいへん恐縮でございます。ただ、申すことは、積み上げ式も計算をいたしまして、そして従来やっておることとそれと見比べながら試算をしておるということ、これはひどい間違いが起こらぬかどうかという試算の意味において積み上げ式を計算としてやはりやっておるということを申し上げたので、それを横ちょということは、口があまり回らぬものだから、たいへん御迷惑をかけておるわけでございます。  それから、いわゆる生産性の向上を期待するというのは、昨年はやはりいろいの点から見まして、今年の生産も非常にいいというわけでもございませんので、やはり九・二%の増強がいいということとか、そういういろいろな点もあります。これは一つの例でございます。そういう点からいきましても、三百九十円を加えるということによりまして千五百円の問題、それは結局昨年と同じような引き上げに相なるというようなこと等、その他申しますと長くなりますが、いろいろそう点を加味いたしまして、そして農家の生産性向上に十分期待していこうという考え方から加えたというわけでございます。こういうものを加えるということは本意でないことは言うまでもありません。しかし、これはやはり必要なものは、いかに本意でなくても、加えてまいらなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。
  64. 角屋堅次郎

    角屋委員 総理にお伺いしたいのですけれども、日米経済委員会の前に、マスコミでは総理裁断というふうに報道されておるわけですけれども、いわゆる去年の米価よりも千五百円アップという一万七千八百七十五円、最初はそうでしたが、結局それにどう理由をつけるかで四苦八苦をして、しかも私の判断では、坂田さんは指数化に固執をするものでありますから、双方の混合形式に数字の説明ではならずに、いわば指数化修正混乱方式、こういう形式でいま説明をされておるわけですけれども、結局総理裁断というのは達観的にやったのと違いますか。千五百円アップ、去年とほぼ同率のアップ。それにいろいろあとから食糧庁が計算機を何ぼ回しても理由がつきにくい。しかも、どちらの方程式に依拠するかということでも、与党は積み上げ方式にウエートを置く。坂田さんは指数化にウエートを置く。なかなか理論がまとまらない。結局説明は、私のこの説明を見ると、指数化修正混乱方式、こういう形にならざるを得なかったと思うのですが、もともとの大もとは達観でやったのと違うのですか、どうなんです。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、先ほどもお話がございましたが、政治的に私が最終的にかくあるべきだろう、かようにきめたのでございます。
  66. 角屋堅次郎

    角屋委員 いまの佐藤総理答弁からいくと、結局理屈はあとからつけた、大局的な政治判断でめどをきちっとしたということだろうと思うのです。でありますから、三百九十円という数字に一応この式ではあらわしたけれども、三百九十円の補正額の内容について、一体どういう項目がどの金額入っておるかということについては、実際には根拠を明らかにすることができない、こういうのが率直な実態なんですか、坂田さん。
  67. 坂田英一

    坂田国務大臣 これは先ほども申しましたように、農家の生産性向上に期待するというためにこれを加えることにいたしたわけでございます。
  68. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林大臣総理も、結局、科学的、合理的に米価をきめるのでなくて、そしていわゆるわけのわからぬ内容で米価がきまったということは、もっとやはり生産をしていかなければならぬというこういう時代要請の中で、やはりことしの米価の場合も、こういう論議を通じてでも国民に深い理解を得ることができない姿だと私は思うのです。きのう倉成君が、社会党の米価に対するところの態度について当たらざる非難をされましたけれども、これはわれわれの心外とするところであります。私は深くこういう問題について触れることはいたしませんけれども、やはり生産者米価というものの考え方は、どういう算定の考え方に立つかということがまず明らかでなければならない。われわれは八〇%バルクというところに前提を置き、労賃についての対象規模についても、どういう規模にするかというところにも基準を置きながら、労働時間についても、実労働時間あるいは拘束時間等についても調査のできる資料等を実態に即して取り入れながら、地代、資本利子等々の問題についてもかくあるべきであろうという基準に基づいて、こういう生産者米価になるということでわれわれも主張しておるのであって、野党だから、気楽だから、こういう形でこういう問題をやられるという発言については、われわれとしては了承できない。やはり全日農の要求にしても、あるいは農業団体の要求にしても、その算定方式、その内容というものを十分検討し、理解をし、今日の財政、食管あるいはその他各般のいろいろな問題から見て、その主張は十分納得できるけれども、政府としてはかくかくの基準については今日の時点ではこういう基準をとらざるを得ない、こういう姿勢がやはり政府米価決定するにあたっての姿勢ではないか、こういうふうに私思うのです。各項目のとるウエートの基準によって金額そのものが違ってくるということは総理もよくおわかりのとおりです。したがって、これは金額の多寡じゃなしに、やはりどういう算定の項目の基準に基づいて考えたかというところに出発点がある、こう思うのです。そういう点からいって、ことしの政府決定米価というものは、いまわずか聞いただけでも、残念ながら従来かってないほどの説明のつかない米価決定の内容である、こういうことになったわけです。総理としては一体こういう姿にまできて——私が最初言ったように、米価決定の正しいルールというものを考えていく場合に、米審の再建ももちろんけっこうでありますけれども、いわゆる第二ラウンドといわれる政府と与党との間の問題、こういう点について、ことしの場合には、率直に言って佐藤総理のリーダーシップというものは全くなかった。五月の段階における消費者米価据え置という問題についても、冒頭の質問の中では従来よりも若干明らかになったけれども、われわれが望む方向で明確にされない。また、いま言った生産者米価決定の中でも従来以上に混迷をした。日米の経済委員会の前に総理の裁断は下ったけれども、結局総務会等正規の機関の了承を得られぬ。後まで難航に難航を重ねてやっときまるという事態である。そういう中できまっただけに、ことしはますます内容のわからない、説明のつかない米価決定になった、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 角屋君は専門家ですから事情を御存じだと思いますが、いまのお話を聞く国民からいたしますと、最初の一円から政治的に決定したように思われる。これは私はたいへん残念に思います。先ほど農林大臣が答えましたように、生産費並びに所得補償方式を基準にして、いわゆる指数化方式というもので、もちろん物価の動向やあるいは賃金の動向なども加味されて決定されたのであります。これが先ほど来いろいろ御議論になっておりますが、いろいろ積み重ね方式などもございますけれども、指数化方式で計算した、そして最後に三百九十円がこれに加算されておる。その三百九十円がわからない、こういうことでいろいろ追及されたのであります。そこで、私が最終的に政治的な判断をしたのです、こういうことを申しました。どうもそれから全部が政治判断であるかのような印象を与えられること、これはまことに残念です。ただいま首を振っていらっしゃいますから、角屋君の御議論はそうではなかった、かように思いますが、三百九十円がどうしてもわからない、これが政治的にもっと明確に説明のできるようにしろ、こういうお話だろうと思います。しかし、過去におきましても、一つの方式があって、そうしてそれで計算される、しかし、まだまだ現状においてはその方式自身が認められておりませんから、したがってそれではじき出した金額だけでは各界で納得しない、そういうので最終的にいつも政治的な判断が加味される、こういうような経過をたどっておるのであります。このことを私は決していいとは申しません。いいとは申しませんから、将来生産者米価決定する場合におきましては、あまり議論がないような、そういう方向できまるような原則が樹立されれば、たいへん私はしあわせだと思います。  しこうして与党との関係において、いわゆる第二ラウンドというものがどうも不明朗だ、こういうことを言われますが、政府は、ただいまの民主主義のもとにおいて、政党政治のもとにおいて、与党と十分連携を緊密にすること、これは当然なことで、私は、社会党の方が与党と政府があまり仲がいいんだ、こういう意味でお話しになるのは、ちょっとその攻撃はいただけないように思います。民主政治のあり方として与党と政府、これは一体であって、どこから言われましてもこれは当然のことで、これはもう堂々たることだ、かように私は思っております。  また、社会党の米価についての御議論を倉成君がいろいろ批判いたしましたことについて御不満のようですが、しかしこの際には私はそれについては何も言及はいたしません。御了承いただきます。
  70. 角屋堅次郎

    角屋委員 結局佐藤総理は、三百九十円はこれは政治判断数字である、こういうことであろうと思う。ところが、私ことしの米審に出て、昭和三十九年度の基本米価の中に含まれておる特別加算金五百五十円という問題が、米審に出ておった与党の仲原君から、この五百五十円には根拠があったのだ、その全額じゃないけれども、そういう根拠のあった中からその一部が認められたのだ。坂田さんも大臣であることを忘れて、そうだそうだ、あのときはぼくも一緒にやっておって、そしてあれは根拠があったのだと最初は米審で言ったのだけれども、さて自分が農林大臣であることをちょっと忘れておりまして、しからば大臣がそう言うんならその資料を出せとこう言われたら、はたと参りまして、あと大臣として答弁するときには、あれは内容はない、こういうふうに開き直られて一もんちゃくがありました。これはまじめな一般の米審委員からさえも、根拠があったというんなら、なぜ米審で次の機会に明らかにしなかったのだと非難されたわけです。私どもはやはりそういう点で、最終的に政府、与党でいろいろ話し合われることはけっこうですけれども、わけのわからぬ内容になるということだけは基本的にやはり避けなければならない。三百九十円にしても幾らにしても、かりにそういうものをつけるということがあった場合においては、これはかくかくの要素をこういうウエートで見て、しかしてこうなりましたということが明確になることが望ましい。われわれの質問を通じてでもその点が、達観的にやったとかあるいはどうであるとかいうようなことで抽象的に終わるということは、これはやはり望ましいことではない。積み上げ方式を横目ににらんだにせよ、あるいはこれを念頭に置いたにせよ、その中から指数化方程式で出てくる中のこの点に欠陥があるから、この点のところをこういうウエートで大体この程度の金額を入れたということの説明ができることが望ましいと思う。  そういう点は、次の問題もありますから、この短時間の中でさらに追及をすることは困難でありますけれども、結論としては、政府のこの一万七千八百七十七円という米価については、従来以上の混乱の中で説明のつかない形できまったという印象が払拭できない。いずれこれは補正予算をかけてくる段階になればもっと具体的な論議が巻き起こるだろうと思う。まああとから理屈をつけるという形になるかもしらぬけれども、しかしこれはやはり今後のためにも明確にする必要がある。したがって、本日は三百九十円についてはいわばつかみ金だという印象を払拭できないけれども、さらにこの点については明確な説明資料というものを、結果的ではあるかもしらぬけれども、明らかにされる必要があるということを強く要求をしておきたいと思います。  次に、いわゆる農政費五十億円という、難航の末最終的にきまったこの予算の使途の問題でありますが、これがことしの新しいケースです。調整額三百九十円というのもちょっとわかりにくいけれども、さらに新しいケースとして農政費五十億円というものが、福田さんの答弁によりますと、これは食糧管理特別会計に一般会計から入れるという形式を考えていない。これは一般会計として取り扱う、こういう考え方のようです。いずれこれは補正にも組みたいと思う、こういうことのようですけれども、農政費五十億円の出てきたそもそもの要因というのは何であったのか。私をして率直に言わしめれば、総理裁断によってきまった一万七千八百七十七円と称するものでは低い米価水準であって、生産農民を与党といえども納得させることは断じてできないという激しい突き上げの中から、総理としては、ずばり米価で修正をするということは、一たん裁断を下した以上できない。したがって結局農政費五十億ということに落着をしたのではないか、こういうふうに思うわけです。五十億円をつけた根本的な要因はどこにあったわけですか。これは総理
  71. 坂田英一

    坂田国務大臣 総理がお答えになる前に申し上げますが、これはいわゆる構造改善等によって農業の生産性を上げて、そしてもっとそういう点を強力に推していく必要があるということは言うまでもない。それから米価審議会の際においても、角屋委員ばかりでなしに、多くの人々からもう少し生産性向上のための努力を払うべきではないかという点のお話がありました。これはやはり米価と同時に、こういう問題になぜもっと力を入れないかという点について非常な議論がございまして、私どもも共鳴をいたしておったことは角屋君もよく御了承のとおりでございます。こういうときにおいて五十億というものが、特に農業の生産性向上の方面に向かって非常な効能のある施策を講ずるということになりますることは、私といたしましても非常に賛成いたしたいということでありまするのでさっそくこれは御賛成申し上げたような次第でございます。その内容等については検討中でございます。
  72. 角屋堅次郎

    角屋委員 いまの農林大臣の御説明からいきますと、これは、いわゆる農林予算が生産性向上全体の予算として必ずしも十分でないので追加計上したという意味であるのか、あるいはそうでなくて、政府・与党間の七月八日のいわゆる了解事項と称せられるものの中では、この五十億円の増産対策費については、その方策の遂行による効果が供出農家に均てんすることに重点を置いて、これが処理を考えていく、こちらに五十億円の考え方のそもそもの要因があるのか、この点さらに明確にしてもらいたいと思う。
  73. 坂田英一

    坂田国務大臣 この点もちょっと一つ落としましたが、生産性向上のために努力をすることでありまするが、いろいろくだものの生産性向上もありますが、そういうことよりもやはり米そのものに向かっての生産性向上ということについての方策を特に考えていこうということでございますので、これらの方策をどうするかということについていま検討中なのでございます。
  74. 角屋堅次郎

    角屋委員 大蔵大臣にお伺いをいたしたいのですが、この五十億円の追加予算、これは特別会計でなく一般会計で計上したい——御承知の去年の米審の答申に基づいて、政府は麦作改善特別奨励費という形で、特別措置の米審の要請を受けて、これは一般会計でなくて特別会計で去年の段階は処理をされた経緯がございます。これは、金額としては一億九千五百四十万九千円ぐらいということに理解をしておりますが、今度の場合、一般会計でやるということは、これはそれでけっこうかと思いますけれども、けっこうだという意味は、本来、実際われわれの主張からいけば、一万七千八百七十七円はこれは低過ぎるということに基づいて、政府・与党間においてそもそも五十億円が出てきた。だから、きっちり米価そのものとして組むべきだというのが本来の主張になるわけですけれども、しかし、そういう前提に立ちながら、五十億円の問題としては一般会計で組まれるというのは、特に特別会計の中で処理をするということをある意味では避けたというのはどういう意味ですか。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは、この前本会議米価が三つあるがというような御質問がありまして、それに対してはっきり米価一つである、こういうふうに総理からもお答えを申し上げたとおりであります。米価は一万七千八百七十七円、こういうふうにきまったわけでありまして、新たに五十億円の増産対策費を講じますが、これは米価には関連はない、かように理解しております。
  76. 福田一

    福田委員長 この際、中澤茂一君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します中澤茂一君。
  77. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵大臣、これは食管特別会計で組むのか一般会計で組むのか、その辺をちょっと明らかにしてください。
  78. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一般会計で補正をする考えであります。
  79. 中澤茂一

    ○中澤委員 一般会計で補正をするとすると、財政法の二十九条によって補正をやるということでございます。財政法の二十九条のどこをもってこの五十億の補正をやるか、それを明らかにしてください。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 補正は緊要なる使途であることという制約があると思いますが、いま米作の状態を考えてみますと、私は、政府において格別の配慮をしなければならぬ時期に来ておる、かように見ておるのです。あなたもよく御承知だと思いますが、三十七年、これがピークでだんだんと米の生産が下がっておる。したがって輸入がだんだん多くなって、昭和四十年度のごときは百万トンの輸入をしなければならぬ。現にそれを実施中でございます。そういうような状態ですから、自給度、これが下がってくる。ひょっとすると、四十年度よく締めてみると九二%ぐらいに転落するような状態も見られるわけであります。そういう状態からいいますと、米の生産というものにつきまして格段の配意をしなければならぬ。それから同時に、今回の米価論争を見てみると、高米価の主張がずいぶん多いわけであります。ところが、これがまた一般の物価政策というような見地から見ますると、なかなか問題であることは御理解されるところだと、こういうふうに思います。そういうようなことを考えますときに、米価はやはり生産費所得補償方式を基準とし、昨年、一昨年のように多少の政治的考慮等、つまり生産増強対策費を講じなければならぬというところで一万七千八百七十七円というふうにきまり、これは私は昨年の米価が一昨年に比べて千三百七十円の上がりになっておる、今回はこれが千五百円になる、そういうようなこと、それから指数化方式で出た結果が一万七千五百円になる、そういうようなところに昨年は二百五十五円を加算しておる、一昨年は五百五十円を加算しておる、ことしはそれが三百九十円になったというようなところから見て、まず私は国民経済全体から見て妥当ではないか、そういうふうに考えて、この米価は動かすことができない、こういうふうに考えております。しかし、ただいま申し上げましたような事情があるので緊要な必要性がある、こういう認識のもとに補正において御審議をお願いしたい、かような考えを持っております。
  81. 中澤茂一

    ○中澤委員 そんなことは答弁になりませんよ。緊要なんということは、もう昨年から米の需給状況の悪化というものはわかっているんですよ。しかも予算編成のときに、それならばなぜそういう編成方針でやらなかったのですか。緊要などという要項、そういうところで大蔵大臣逃げようなんということはひきょうですよ。緊要な事態がどこにありますか。緊要な事態なんかありませんよ。五十億の内容というものが、もし緊要という立場大蔵大臣が一般会計補正をするとすれば、これはとんでもない話です。米の需給逼迫の問題を緊要な要件だと言う。それはまさにへ理屈ですよ。財政法上の緊要な要件というものはそんなところにありませんよ。そこで、緊要じゃないとすれば、一体二十九条のどこでこれを一般会計予算に組むか。同時に、これは財政法上の大きなミスをあなたはやっておるのです。あなたという人を私は非常に尊敬しておるが、こういうふしだらなことをやり出すと、また切りのないことになるのです。だからその緊急要件が二十九条のどこにあるか、客観情勢のそんなことで国民は納得しませんよ。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたような米穀事情を考えまするときに、米作農家の生産性を向上する、そういうようなこと、それからまた自給度を向上するようなこと、これは私は非常に緊要な問題じゃないかこういうふうに考えるわけであります。そういうような状態でありますから、まあ緊要な条件に相当しているかしないか、それは具体的な計画を見てから御判断を願いたい、かように存じます。
  83. 中澤茂一

    ○中澤委員 それならば、それほど緊要なら、まだあと一週間ありますから、五十億の補正を出しなさい。それだけ緊要なら秋の臨時国会まで待たないで、この五十億だけこの国会に補正を提出しなさい。
  84. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ米の生産性をあげるその方策いかんとなると、そう簡単に結論が出るものじゃない、こういうふうに思います。いろいろと御提案は承っておりまするが、はたしてこれがおっしゃるような意味に適合するかどうか、これは慎重な配慮を必要とする、かように考えておるのでありまして、これはいずれ補正予算を提案する際にとくと御審議をお願いしたいと存じます。
  85. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは、実際の内容は新聞でだれも承知のように、自民党の中の増田米対協がどうしても一万八千円に乗っけなければいかぬ、こういうことで自民党の中が騒然として、幹部突き上げをやったのは、これは毎日の新聞国民みな知っていますよ。そこで最後これをどう一体押えるか、幕を締めるかということで出されたものがこの五十億じゃないですか。こんなこと国民だれも知っていますよ、毎日、新聞が連載しつつありますから。そのことが何で緊要になりますか。私が問題点を指摘するのは、そういうことで与党の内部でもってもめたことを、国の予算でもって押えて、これを補正でいくというこんな悪例があなたありますか。そんな悪例はありませんよ。こういうことをもしふえんして悪例を続けていくなら、予算というものは自民党と政府できめればいい。国会はもう要りません。金額が五十億だという問題じゃないです。これは財政法の根幹に触れる問題なんですよ。これをどこまでもふえんしていくならば、五百億でも一千億でも、与党がもめたらこれを押えるために一千億出した、これは次の補正で組むんだ、一般会計でいくんだ、そういうことの財政法の根幹に触れる問題だから私は文句を言うんですよ。そのやり方はよしなさい。緊要ということは、あなたの言う緊要などだれも納得しません。そこであなたに言うことは、むしろ「法律上」「契約上」という二十九条の第一項で問題を考えたほうがいいんじゃないか、私はこう考えるのです。どうです。
  86. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 「法律上」「契約上」というような趣旨がただいま申し上げたようなどこに当たるか、私は理解できませんが、要するにこれは米価事情というようなものを考えるときに、何とかして知恵をしぼっても米作農家の生産性の向上は考えなければならぬ、そういう意味で、おおむね五十億円を目途といたしましてその方途を検討しよう、こういうことでございます。
  87. 中澤茂一

    ○中澤委員 この五十億というものは、生産者米価決定するためにこの五十億というものが問題になって出てきたのでしょう。そうじゃないですか。生産者米価関係ない五十億ですか。ただ食糧が急に輸入が増大したから、そういうことと関係なく何でも五十億をこの際出すんだ、こういうことですか。
  88. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その五十億は生産者米価決定の過程においてそういうふうな方針をきめたわけでございます。そういうふうなことから関連がない、こういうふうには申し上げませんが、しかし性格は米価じゃない、こういうことをはっきり申し上げます。
  89. 中澤茂一

    ○中澤委員 しかし明らかに米価とからんだとすれば「法律上」でいいじゃないですか。食管法という法律で生産者米価をきめるんだから、「法律上」でいいんじゃないですか。
  90. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 米価じゃございませんから、法律上の関係は何らないのであります。
  91. 中澤茂一

    ○中澤委員 それならばますますこれは緊要性はないと私は断定せざるを得ない。どういう緊要性がありますか。緊要性があって五十億というのなら、大体五十億の内容というものはこれは何ですか。どういう緊要性があって五十億を組んだのですか。
  92. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十億の内容につきましては、まだきめておりません。おりませんが、しかしながら、これはもう米の事情というものは非常に窮迫をしておる、そういうようなことを考えまして、これは何とかして考えようじゃないか、知恵をしぼろうじゃないか、知恵をしぼった結果出てくる施策をこの辺を目途として実行しようじゃないか、こういうことと御理解を願いたいのであります。
  93. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは絶対に理解できません。緊要というのは、緊急の事態があるから緊要なんでしょう。そうじゃないですか、緊要というのは。しかも、その緊急の事態がある緊要の中の中身がわかりませんという、そうゆう緊要がどこにありますか。中身は全然ない、わからぬ、ただこれをつかみで五十億は緊要なんだ、そんな緊要がどこにありますか。中身は何ですか、明らかにしていただきたい。
  94. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中身はまだきめておりませんが、米作事情は、よほど生産性において、またその増産において考えなければならぬ。まあ五十億円の程度において、予算編成後の新事態ということではありまするけれども、ひとつ知恵をしぼってみよう、その知恵をしぼった結果、具体的な提案ができるようになりますれば、補正の際に御審議をお願いしたい、かように申し上げておるわけであります。
  95. 中澤茂一

    ○中澤委員 補正の際に御審議じゃないんですよ。問題は、こういうものを、尊敬しているあなたが一般会計で組みますということ自体が問題なんですよ。こういうことをやっていけば、かつての田中大蔵大臣のようなああいうでたらめなルーズにあなたが引き込まれていきますよ。何で大蔵大臣としてはこういうでたらめな五十億を了承したのですか。あなたの政治責任ですよ。
  96. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ具体案がきまっているわけじゃないのです。しばしば申し上げているとおりであります。これからそういうことを目途にいたしまして検討して、具体案ができれば御審議をわずらわしたい、こう申し上げておるわけでありまするが、これが緊要である、予算編成後生じた緊要な事態であるかどうかということに適合するかどうか、これはその際とくに御議論を願いたい、かように存じます。
  97. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは緊要性があるというからには、中身のない緊要性なんというものは一体どこにありますか。これからとくと研究して、十月の国会の補正に出そうというものが何で緊要なんですか。だれが聞いてもそんなものは緊要じゃないですよ。財政法からいって、これはあなたが大蔵大臣に就任して一番マイナスを始めたわけです。こういうものを何で了承したのですか。こんなものは、緊要性はありませんよ。だから、私の言わんとするところは、法律上の米価に関連して出たものだから、これは法律による五十億である、むしろこう言うほうが筋が通るじゃないですか。米価関係しているのですから、法律上による五十億である、このほうが筋が通るでしょう。米価関係なく五十億を組んだんじゃないでしょう。生産者米価関係して五十億が出てきたんでしょう。だから、それならばむしろ法律上のほうが正しいのじゃないですか。
  98. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 五十億円は、審議の過程においてそういう議論が出てきた、こういう意味において、この米価と関連はありまするけれども、あくまでもこれは米価じゃないのです。そういう意味において、法律上米価と何らの関係はない。したがいまして、これは一般会計から負担をすべきものである、こういう考えであります。
  99. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵大臣、それはまさに詭弁ですよ。ぼくはあなたを尊敬しているが、これは邪道で、財政法の悪用ですよ。こういうことは、財政法からいったって明らかに違反ですよ。こういうことがいいとするならば、もう国会は要りませんぞ。そういうことでしょう。与党の中で問題が起きた、それならば一千億ばかり出してやれば与党はおさまりそうだ、それじゃ一千億ばかり出してこれを次の国会の補正で組みましょう。それならば、国会の審議権の問題は一体どうなるのですか。そういうやり方をふえんすれば、そういう方法が出てくる。総理、盛んにそんなことはないと言うが、それなら答弁しなさい。
  100. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 おっしゃる意味は私はよくわかります。わかるという意味は、こういう五十億という問題が米価決定の過程において出てきた、そこで、いろいろの御感触を持たれる結果となるのである、かように存じますが、そういう誤解を招かないように、今後は、御所見等も大いに参考にしてまいりたい、かように考えます。
  101. 中澤茂一

    ○中澤委員 ことしの米価闘争は、異常な盛り上がりをしたことは御承知のとおりです。これは、まさに政府の農政が貧困であるのが価格政策に一切しわ寄せしてきて、端的に農業政策の貧困が出たのが、ことしの米価のあの農民の要求だと思うのです。そういう中において、ことしの佐藤総理の裁定米価には、農民は非常に不満を持っているのです。与党の議員の一部では、これは完全に上乗せする米価なんだ、こういう演説を選挙区でぶって、一万八千円は、おれは努力して上げたんだから、こういう演説をぶっている人が現実にいるのです。これはどうなるのですか。どういう名目にしろ、結局この五十億円は、上乗せするのかしないのか。
  102. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 米価は一本でありまして、一万七千八百七十七円であります。上乗せは絶対にいたしません。
  103. 中澤茂一

    ○中澤委員 上乗せはしないが、需給体制が非常に逼迫した、これこそ緊要だ。だから、需給推進対策費というような形で考えられる余裕はあるのかないのか。
  104. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 米価に上乗せするという考えは毛頭持っておりません。しかし、米穀事情、稲作の状況等を考えまして、生産の増強、生産性の高揚のためにできる限りの努力をいたしていきたい、かような考えであります。
  105. 角屋堅次郎

    角屋委員 本年度の基本米価の算定の内容についても、ただいまの五十億円の使途の問題についても、残念ながらことしの政府米価決定過程におけるいまの問題点については、どうもわれわれは明らかに理解することはできない。率直な気持ちそういうことだと思うのです。まあしいて言えば、佐藤さんも福田さんも、そうつらいことを聞くなということではなかろうかと思う。しかし、やはり食糧管理法というたてまえがあり、また予算的問題というそういう内容に関連する重大な問題でありますから、これは明らかにする政治責任があると思うのです。そういう点では、中澤さんの追及を通じてでも、われわれの理解する答弁が得られなかったのはまことに遺憾であります。今後補正予算審議機会がありまするから、さらにそれを通じて明らかにいたしたい、こういうふうに思います。  そこで、基本的な問題からいえば、私は、消費者米価あるいは生産者米価という本年度の問題を中心にしながらいままでお尋ねしてまいりましたが、根本は、現在及び将来にわたって食糧管理制度というものをどう考えていくのかということが基本にあるわけです。総理は、国際的な食糧の需給関係、あるいはわが国の食糧の需給の実態、あるいは食糧の安定的供給と経済の安定という、食管法が掲げておる第一条の精神と、戦前戦後を通じて食糧管理制度の果たしてきた役割りと将来展望、こういうふうなものを十分考えに入れられて、これから食糧管理制度というものを基本的にどう位置づけていこうとするのか、この点をやはり率直にお伺いをいたしたいと思うのです。  と同時に、過般の衆議院本会議における足鹿さんの質問に対して、やはり食糧管理制度というのは、一つには食糧の安定的供給、こういう重要な役割りがある、同時に社会保障的性格というものを持っておるという、そういう基盤からの質問をされたと理解をしております。それに対して総理答弁では、私の議事録から読み取ったところ、あるいは答弁から受け取ったところでも、社会保障的性格というものを否定をされたんではないかと思う。ところが、これは米審の中でも歴代の農林大臣、あるいは去年の暮れの米審の中で藤山経済企画庁長官も、食糧管理制度の基本的性格という問題に触れて、一つは、やはり食糧の安定的供給、同時に、社会保障とはことばでは言いませんでしたが、社会政策的性格というものを持っておる、こういうふうに述べておると思うのです。そういう点では、やはり総理農林大臣や藤山さんとの間に、食糧管理制度の認識論において食い違いがあるんじゃないか、こういう感じも率直にするわけです。これらの点も含めながら、総理は現在及び将来にわたっての食糧管理制度の位置づけというものをどういうふうに考えておられるか、明らかに願いたいと思います。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 食糧管理制度、今後の状態についてどう考えるかということです。私は、食理管理制度、これは現行を持続するつもりでございます。もちろん、ただいま角屋君のお尋ねの中に、あるいは間接統制というような議論も出ておるから、それで、その食糧管理制度を変更するんじゃないのか、こういう意味のお尋ねもあるかと思いますが、私は現行の食糧管理制度、これは続けていくつもりでございます。そうして、この制度を設けましたことは、食糧の安定的供給、同時に生産者の安定的耕作といいますか、生産といいますか、それを保障する、こういう意味のものでございますから。現行の制度を持続していく、そこに何ら疑念を持たれないようにお願いしておきます。  そこで、今度は、この食糧管理制度は同時に社会保障的なものだ、これが過日の本会議における私に対するお尋ねであります。厳格な意味においてのいわゆる社会保障だ、社会保障的施策、政策としてこの制度を設けた、かようには私は考えません。しかし、これが社会政策的な意義も持つ、こういうことは私は無視するのではありません。しかし、これは制度を設けたときの基本的な考え方ではないんだ、社会保障的にはその働きとしてたいへん弱いが、そういう意味はあるんだ、かように私は思います。そこで、農林大臣やあるいは企画庁長官と私との間に意見の相違はないように思います。
  107. 角屋堅次郎

    角屋委員 たいへん予定の時間をおくれて恐縮でございますが、あと質問予定も数項目を予定しておりましたが、集約いたしてまいりたいと思いますから、御了解を願いたいと思います。  食管制度の問題について、総理から、従来よりも明確に現行制度を維持する、そういう点について何ら疑念のないようにしてもらいたい、こういう御発言があったことは、非常に重要な発言だと思います。ただ、食管会計の内容の問題に入ってくると、やはり多くの議論をしなければならぬ問題がございます。たとえば政府経費の問題、これは米審の中でも、国会の議論の中でも多くありました。ただ、私は時間の関係上この問題に深く触れませんけれども、こういう問題についても、従来の意見あるいは検討というふうなものを十分内容に織り込まれて、食糧管理制度の堅持という前提に立ちながら、内容改善をどうしていくかということについてはやはり真剣に考えてもらいたい、こういうことを強く希望しておきたいと思います。  そこで、これは五十億の問題のときに、大蔵大臣からも盛んに、国際的食糧の需給関係あるいは国内の食糧の実態、こういうふうな問題に触れられたわけでありますけれども、物価問題懇談会の米に対する勧告を見ても、非常に安易な外米依存主義の考え方というものがある。最近数年来、財界、経済界の農業に対する提言というのは——これは何も提言をしてはいかぬとは申しませんけれど、それらを貫いておる基本的な流れというものの中には、やはり農業を斜陽化させる中で多くの外米依存にたよっていこう、こういう考え方が基本的にあるように思うのです。そして同時に、価格政策から構造政策へという形の中で、農業の再編成を資本主義的に行なっていこうという考え方が出ておるんじゃないかと思いますが、そういう問題については、この機会は別として、国際的な食糧需給関係、そういう中で国内の食糧需給体制の確立というものについて、責任ある農林大臣として、今後どういうふうに臨んでいこうというのか。御承知の、これから立てようとしておる経済の長期、中期計画の中で、農林省も秋までに、いわゆる農業関係の中期、長期計画を根本的に練って成案を得ようという努力の過程にあるように、過般の農政審議会でも坂田農林大臣から見解を述べられたと思うのでありまして、それらも含めて御見解をはっきり承りたいと思います。
  108. 坂田英一

    坂田国務大臣 角屋委員からの御質問でありますが、現在、やはり米も足りませんものですから、外米、特に準内地米というものを、御存じのとおり八十三万トン輸入しておるわけでございます。そのほか外米、いわゆる内地米と違う長い種類のものも若干輸入しておる、こういうのでございます。しかし、全体としては、これは大体において、日本全体から見ますと九六%程度の自給だと思います。この米のごときものは、気候、風土の非常に適した日本の国であり、長らくの間、これは養成いたしてまいりましたものでございまするから、東南アジアなんかと比較しますというと、大体三倍から五倍までの反収をあげておるくらいの進歩したものでございます。さような関係からいたしまして、もうわずかの点が自給に進みたいというわけでございまして、かように日本の風土に適した、気候に適したそういうものを、日本の主食としてでき得る限り自給してまいるということは、これは当然進むべきものであると思います。  現在の世界の情勢を見ますと、インド。その他ソ連あるいは中共においても、特に東南アジア、アメリカ、カナダあるいはニュージーランド等を除く諸国において——タイやその他は若干ありますが、これらの諸国においては、どちらかと申しますと、食糧が非常に窮乏しておるときでございます。アメリカのごときは、CCCにおける貯蔵というものが非常になくなった。フリーマン農務長官がことしほどいい年はない、こう言っておりますことは、CCCに貯蔵するものがほとんど吐き出されまして、今年は一五%の増産をやらなければならない、こういうふうに進んでおるようなわけでございます。世界全般的に見まして、いろいろな点からいうて、日本の気候、風土に適したこの米の問題については、できる限り自給の方向に向かって努力を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  その他のものについても申し上げたいことはありますけれども、長くなりますから、この点で御了承を願いたいと思います。
  109. 角屋堅次郎

    角屋委員 最後に、総理にお伺いをいたしたいと思いますが、私は、本日は農政全般の問題ではなくて、当面の焦点の米価問題に集約をしてお尋ねをしたわけでありますけれども、しかし、われわれ社会党は、米価は、やはり日本農業の中での農業収入の相当大きな比重を占めておるという現状から見ても、非常に重要な問題だと思いますが、これはやはり先ほど中澤さんからも言われましたように、歴代の保守党内閣の農政の貧困、しかも、特に経済の高度成長過程におけるところの農政の不在ということが、集中的に米価に、やはり真剣な激しい姿でこれが表現されてきておる、こういう実態をわれわれは十分認識しなければならぬと思う。したがって、農業政策全般の中で米作あるいは酪農、果樹、いろいろなものを含めて、また同時に国際的な視点から、やはり土地生産性の舞台では国際的に高い水準にあるけれども、労働生産性という点では、相当な差異が近代国家との間で現実に存在しておる。こういう事態を考える場合には、土地基盤整備の問題をはじめ総合的な構造政策を、どう日本の実態に即して取り入れるかということを真剣に考えなければならぬ事態に直面をしておると思うのです。そういう点も含めて、今日の農付のいわゆる若年労働力の減少傾向、老齢化、婦女子化の中で、はたして近代的農業をにない得る後継者が今後ともに安定的に供給できるかという憂うべき実態の中で、この際やはり経済の総合長期計画、その中で農業の近代的な総合計画というものをどう立てるか。財界、経済界からのいろいろな提言がありますけれども、むしろ農林省が、沈滞したいまのような後退傾向の気分を排して、やはり積極的に生産農民に明るい展望を与えるような、総合計画のビジョンというものを明らかにする事態に今日直面しておるということを痛感するわけであります。したがいまして、そういう点から、基本的にここからの農政というものを、いわば佐藤農政としてどう持っていこうというのか、この点を最後にお伺いして質問を終わりたいと思います。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま角屋君から、農政一般についての御意見を述べられました。私の聞く限りにおいては、昨日の倉成君の最終的な質問といい、角屋君のお尋ねといい、その御意見は同一のような気がいたしております。農政についてもっと本格的な取り組み方をしなければならない点、あるいは社会党は社会党的な行き方があるかもしれない、また私どもには私どもの行き方があり、その基本的基盤にはあるいは相違があるかわかりませんが、御指摘になったものについては大体私も同感でございます。ことに、米価自身が農家収入の中心をなすものであるという認識、これまた同一だ、こういう事柄のきめ方いかんが、やはり次代をになう若い農家を育成する根幹にもなるのだ、かように思います。その際に、いわゆる成長農業科目、酪農あるいは果樹等についても触れられましたが、これらのことも農家収入、いわゆる成長部門として特に私ども今後力を入れなければならないものだ、かように思いますし、また労働生産性を高めなければいかぬということ、これは、私もほんとうに痛切に感ずる点でありまして、農業の構造改善、これこそは大事なことだが、同時に農業労働の生産性がどうしたら上がっていくか、充実ができるか、ここに特に力をいたすべきだ、かように私は思うのであります。しかし、それぞれ断片的なことを申して恐縮ですが、要するに農政全般、いわゆる総合的施策としての農政、これでは、どうもいままでのところ魅力がない、こういうようなおしかりを受けたと思います。今後とも一そう真剣に取り組み、また画期的な改善方法、ことに農政の今後のあり方、こういうビジョンを提供する、こういう意味で真剣に取り組むべき問題だ、かように思います。
  111. 角屋堅次郎

    角屋委員 たいへんおくれて恐縮でございましたが、以上でもって質問を終わらせていただきます。(拍手)
  112. 福田一

    福田委員長 これにて角屋君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時半より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時三十八分開議
  113. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況に関する件について質疑を続行いたします。大原亨君。
  114. 大原亨

    ○大原委員 私は、ただいまから内政問題一般について、当面の国民の重大関心事につきまして逐次質問をいたしたいと思うのですが、回答はひとつ簡潔にお願いいたします。議事妨害にならぬように、長い演説をしないように、ひとつやっていただきたいと思います。  第一は、新長期経済計画に関する問題であります。政治にはやはり目標がなければならぬと思うのですが、池田内閣の所得倍増政策は、高度成長政策の結果として、弱肉強食の所得倍増、いや物価倍増、こういう結果になって、ひずみが拡大をいたしました。そこで、このひずみの是正と物価安定を期するために中期経済計画を策定いたしまして、佐藤内閣はこれを一度閣議決定をいたしました。しかしながら、中期経済計画の昭和三十九年から四十三年までの計画の中で、物価を二・五%に押える、それから公債発行をしないで健全財政主義でいくという、そういう中期経済計画の柱がこわれたので、これを破棄いたしました。そして長期計画のやり直しをいたしたわけであります。これは国民立場に立ちますると、政治に対する信頼というか、無責任さというか、私はきわめて問題が大きいと思うのです。  まず第一に藤山長官お尋ねをいたしますが、新長期経済計画は、一度佐藤内閣は閣議決定したわけですが、中期経済計画とどのような関係において策定をされつつあるのか。前の国会におきましては、四月中に作業を始めて大体五月にかけて終わって、佐藤総理もお答えになりましたが、八月にはでき上がる、こういう藤山長官も御答弁でありました。これら策定の見通しとあわせて、この問題について、まず藤山長官からお伺いをいたします。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いま大原さんの御指摘になりましたように、中期経済計画というものを策定されましたけれども、経済の状況がことごとく変わった状況になってまいりました。また、政府の施策におきましても、公債を発行して景気を刺激するという段階にもなってまいりまして、新しい公債導入の経済になってまいったわけであります。したがいまして、この際これを改めまして、そうして新しい長期経済計画を立てる。そこで、新しい長期計画の基本的な考え方から申せば、構造上の問題を解決してまいらなければなりませんし、重点として物価の安定あるいは産業基盤の育成、社会保障の充実、社会保障の充実の中には住宅の問題もございますし、生活向上の問題もあり、あるいは公害等の対策の問題も含まれておりますが、そういう面、それから構造上の問題の中には、中小企業あるいは農業上の問題というものを中心にして、そして新しい経済計画を策定していきたい。  そこで、私どももできるだけ急いでこれをつくりたいと考えておりましたけれども、やはり新たな観点に立ちまして論議を尽くして経済審議会でやっていただきますには、若干の時間的余裕もございます。ただしかし、この計画が予算編成前にできなければ相ならぬのでございますから、したがって、ただいまでは、おそくとも十一月中ごろを目途としてすべての計画を完成して答申をしていただく、それを検討してまいりたい、こういうことでございます。
  116. 大原亨

    ○大原委員 あとで逐次申し上げるのですが、これはきわめて遺憾なことであります。藤山長官はしばしば、新しい長期計画を策定する際においては、その計画の目標を国民生活の安定に置くのだ、こういう所見を国会や外において発表されたと思うのですが、そういう方針に変わりはございませんか。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 基本的に、経済というものは、国民経済発展の結果として国民生活が安定する、また国民生活の安定に寄与するということが経済の目的でありまして、経済そのものが目的じゃないという立場に立って私はものを考えておるのでございます。
  118. 大原亨

    ○大原委員 佐藤総理大臣お尋ねいたしますが、池田内閣以来の高度成長の中で、社会開発、人間尊重という新しいスローガンを佐藤内閣は出されたわけです。この新計画について、国民は二つの点を私は心配をしていると思うのです。  その第一は、目的と手段を混同して、最近自由化に対処する経済合理化、こういう問題が非常に大きな関心事になって、財界その他でいろいろなプランが発表されつつあるわけですが、大企業に奉仕をするような、そういう新長期計画になるのではないだろうか。いま藤山長官が御答弁のように、国民生活の安定を最高の目標とする、経済は手段である、佐藤内閣は高度成長のために日本の金と物と人間を総動員いたしまして、そして設備過剰、生産過剰におちいって、その反動が今日国民にきておるわけです。そういう面において、自由化に対処するために経済合理化、合理主義を第一とするそういう方向に変わっていくのではないかということが一つ。  もう一つは、これはバターか大砲かという問題ですけれども、最近の安全保障や防衛計画その他の論議を通じまして、第三次防が非常に大きなウエートをもって財政や経済を圧迫するのではないか、こういう不安を持っておると思うのであります。佐藤総理は、池田さんにかわられましたときに、人間尊重、社会開発ということを言われたわけですけれども、新経済計画、長期の昭和四十六年までの計画を策定するにあたって、佐藤内閣としてのひとつ所見のほどを明らかにしてもらいたいと思います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  御承知のように、経済の立て直しといいますか、不況克服、また物価問題と取り組むこと、これが私どもに課せられた課題だ、かように申してまいりました。今日まで真剣に取り組んでおるわけです。そうしてこの取り組み方が、ただいま御指摘のように大企業に奉仕するのではないか、こういう御心配のようでありますが、私は、わが国の経済の全般について、いわゆるひずみ是正その他効率ある経済組織、こういうことを考えておるのでありまして、その一部である大企業だけに奉仕するような考えはもちろん持っておりません。ことに、わが国経済の二重構造といわれるもの、あるいは中小企業であったり、あるいは農業である等の低生産性部門につきまして特別の配慮をすることはもちろんであります。そういう意味で、経済全体と取り組んでおるのだ、ここに誤解のないようにお願いをしたいと思います。  また、防衛計画につきましても、過去から現在におきましても、国力、国情に応じた防衛力を持つ、そしてわが国の安全を確保するという考え方に立っておるのでありまして、いま言われるように特殊なバターか大砲か、こういうような表現でこの問題を取り扱われないようにお願いをしたいと思います。
  120. 大原亨

    ○大原委員 お願いしたいのはこっちでありまして、私の質問順序からいいまして、この際ひとつ福田大蔵大臣お尋ねしたいのですが、新長期計画の中での公債発行の問題であります。これは中期経済計画とは違っておる問題ですが、公債発行の問題です。本年は七千三百億円発行されました。四十二年はおそらく九千億円をこえるのだろう、こういうふうに世上いわれておるのであります。昭和四十六年までの新長期計画の中で、国債発行というものは大体国民所得と見合ってどのくらい発行するお考えであるか、その点についてひとつ率直にお考えを明らかにしてもらいたい。
  121. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 新長期計画と見合って国債をどうするか、その点はまだ考えておりません。  新長期計画に対しましては、いままでは数字が非常に多かったのですが、私といたしましては、経済の大勢ということを踏んまえまして、どういう施策が必要だかという点に重点を置いて検討していきたい、かように考えておるわけであります。  公債につきましては、この前の予算委員会のとき、昭和四十一年度七千三百億円から始まりますが、まあ大体五カ年間通じまして四兆をやや上回る程度の発行となろうか、こういうことを申し上げたわけでありますが、ただいまも大体そういう観測をいたしておるわけです。なおしかし、これは経済の推移等刻々と動いてまいりますから、それに応じて多少の修正はあろうかと、かように考えておる次第でございます。
  122. 大原亨

    ○大原委員 四兆円の昭和四十六年までの公債発行計画、これはひとつ、あとでその大体年度別の推定の中身を私のほうへお出しいただきたいと思います。  そこで、国防会議の事務局長にこれからお尋ねをいたしますが、第三次防衛計画、第三次防は、世上、防衛庁の見解発表やあるいは松野さんの発表等でも、六月の二十七日に国会が終わって六月末に発表されるとか、ある場合には、臨時国会が今度ありそうだから七月末になるとかいうふうに、国会は避けて通っておられるわけです。それはともかくといたしまして、そういうふうに第三次防について計画が策定される、国防会議決定されるということがいわれておるのでありますが、いまだに出てきておりません。これは早く出せという意味じゃありませんよ。そこで、国防会議を今日までそういう点で開かれたのか、あるいはこの問題に、いろいろ国民は重大な関心を持っておりまするが、どのような障害があってそういう六月末とか七月末とかと予定が延びておるのか。さらに、事務局長からはこれはむずかしいと思うのですが、これからの見通し、こういうものがございましたならば、ひとつお答えをいただきたい。
  123. 北村隆

    ○北村政府委員 お答えいたします。  第三次防衛力整備計画の五カ年にわたる防衛構想、あるいは部隊の運用構想、またこれに必要とする兵器体系並びに経費、こういうようなものが非常に各般にわたって相互関連して検討しなければならぬ、こういう関係で、四月の中旬から逐次防衛庁の事務当局から話を承り、参事官会議を開きまして部内で検討しておりますが、まだ十分お互いに了解し、お互いに歩み寄るというところまでいっていないような事情でございます。
  124. 大原亨

    ○大原委員 これは新聞の論説等も出ておりますが、日本の防衛問題は、とにかく国民不在の防衛計画だ、防衛構想だ、こういうことが論議の的になっておるのであります。ですから、私は第三次防衛計画について、たとえば防衛庁の案であるとか、あるいは大蔵省の主計局案であるとかいうことが、世上いろいろと記録になって出ておるわけであります。こういうこっそりした形で論議されるのではなくて、国民の前で堂々と論議をされるべきであると私は思うのでありますが、この際、二つの点について経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  ばく大な税金を使う第三次防と新長期経済計画についてはどのような関係で——あなたは国防会議の議員ですが、調整が行なわれておるのですか。具体的には、たとえば経済企画庁が新長期経済計画の基本になる問題として、計画の目的と重点政策課題というのを先般発表いたしたのであります。私も手元にいただきました。この文書によって、経済審議会が新長期計画を策定いたすわけでございましょうが、これを私が読んでみますというと、五カ年間に国民の負担が、赤ん坊、おじいさんに至るまで一人当たり六千八百円、二兆七千億円のそういう三次防の問題が、防衛産業の面においても、あるいは防衛計画の面においても、国民生活——これはみな血税です。こういう問題がこの中に一字一句も入っていないのです。これは第三次防衛計画というものは独走しておるのではないか。昔統帥権というのがありまして、統帥権の干犯だというようなことを言ったことがあるのですが、それはともかくといたしまして、そういうことは、私は、ことさらに事実を国民の前に隠すような傾向にあるのではないか。こういう二つの点につきまして、経済企画庁長官の率直な見解を御披瀝いただきたい。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経済計画を立てます上において、防衛計画も考慮に入れなければならないことは、これは当然のことでございます。ことに日本といたしましても、国民生活の全般を考えまして、防衛計画というのは重要な計画でございます。ただ、先般も経済審議会に対して、策定の方針等で申しましたことは、まだ防衛計画そのものが国防会議にもかかっておりませんし、あるいは、先ほど国防会議の事務局長が言われましたように、はっきりした形が出てきておりません。したがって、そういうものが出てまいりましたときに、これをどう織り込んでいくかというような問題は、今後経済の計画を立てる上において十分慎重に考慮してまいらなければなりませんし、同時に、他の財政事情あるいは経済の基盤整備あるいは国民生活の充実というような問題との調和をとりながら、一番健全な防衛力の計画として立てていく、こういう形で私どもは扱っていく、こう考えております。
  126. 大原亨

    ○大原委員 遺憾ながら納得できないのであります。国防会議でまだきまっておらない、こういう話ですが、きまってしまえば、国防会議は、機関の権限上、これは閣議決定と同じようなものでありまして、五カ年間の長期にわたって確定をするわけであります。拘束するわけであります。だから、これは簡単に、こそこそと国民が知らぬうちにきまるということはおかしいのであります。それはともかくといたしまして、これは松野防衛大臣お尋ねいたしますが、第三次防衛の規模として五カ年計画で二兆七千億円、最終年度昭和四十六年に六千七百億円、国民所得の二%を目標とするというふうに、世上、松野構想とか、あるいは防衛庁構想とかいうものが早くから打ち出されておるのであります。これは長期構想が十一月にできようかというのに、これをそっちのけにして、これが独走するというのは私はおかしいと思うのであります。  そこで、お尋ねしたい点は、その点と、ちょうど二つの五カ年計画が時限的にダブっておるわけです。重複しておるわけです。これらの数字が出てまいりました——二兆七千億円とか、二%とかいったような数字が出ておりますが、昭和四十六年の国民所得は大体どのくらいと推定して二兆七千億円という防衛予算をはじかれておるのか、こういう数字上の根拠についてお答えをいただきたいと思います。
  127. 松野頼三

    ○松野国務大臣 これはあくまで私のほうで試算した数字であります。この期間における国民所得の総額は百三十五兆を下らない。その二%ですから一兆七千億。したがって、百三十五兆を下らないであろうという推定のもとに二%をはじき出しますと二兆七千億円になる、こういう数字であります。
  128. 大原亨

    ○大原委員 経済企画庁長官は、経済企画庁においては、国民所得がこれから毎年どのくらい伸びるか、いろいろと議論されておりますが、ただいま松野防衛庁長官の見解に対しまして、どういう見解を持っておられますか。
  129. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれの経済審議会におきましては、御承知のとおり、経済見通しを立てます前に、一応経済成長の問題も考えてまいらなければならない。どの程度の安定的な均衡ある成長を逐げていったらいいか、そういう成長の中で国民所得がどの程度に伸びていくかということも推定いたさなければならぬので、私は、これは経済計画の基本的な非常に重要なところだと思います。したがいまして、それが決定いたしましてできるわけでありまして、防衛庁長官は大体七%くらい国民所得がふえていくんじゃないかというような推定でやられておるんじゃないかと思いますけれども、われわれそういう点につきましては、今後十分な検討をした上でないと、まだ何とも申し上げられない。それはいま申し上げましたように、経済成長をどの程度にとどめて、あるいはどの程度に伸ばす、それが経済の均衡ある発展によろしいかという問題もあるわけでございます。
  130. 大原亨

    ○大原委員 新長期計画は十一月ごろできる、こう言われるのですが、私ども国民立場に立って考えてみますと、防衛計画だけ長期計画でぴしっと数字がきまって、それを天引きをしておいて、あと残りを国民生活、社会福祉、いろいろな国土開発に使えというのは、私はおかしいと思うのですよ。どだい、これは逆だと思うのです。たとえば住宅とか、社会保障とか、減税とか、そういう国民生活に関係の深いものは、これはよほど計画的に努力をしなければ、なかなか達成することはできないわけです。だから私は、そういうものこそ、一定の計画に基づいて水準を引き上げていくという努力がなければならぬ。これは両々相まつということでなしに、このほうが先行するというのが人間尊重や社会開発の考え方じゃないかと思うのであります。しかも、十一月に策定をされようというのに、六月に、七月にというふうな、第三次防がだんだん既成事実をつくるというふうなことで、しかも、その中身も十分国民がわからないというようなことでは私はいけないと思う。国民不在の防衛計画であると思う。私は、この点については、総理大臣は国防会議の議長でもありまするから、けじめをびしっとつけてもらいたい。こういう点につきましていかがお考えでありますか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどからお答えしておりますように、まだ第三次防衛計画、これは決定しておりません。したがって、ただいま大原君の言われることもやや先走った議論ではないかと思います。私は、これがきまったらたいへんだと、こういうのが御指摘でございますが、経済計画、また同時に社会保障、あるいは住宅その他の問題とからんでおりますから、全体の計画、長期計画を立てて初めてできるのであります。だからこそ、私が最初に申し上げましたように、防衛力は国力、国情に応じて考えるんです、これはまだ在来からの方針を変えておらないと、こう言って断わりました点で御了承いただきたいと思います。ただいま防衛計画だけ先行して決定する、こういうものではないこと、これを御了承いただきたいと思います。
  132. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣の御答弁はやや具体的でありました。つまり、先行して三次防だけが決定されるというふうなことはない、あるいは、国力、国情に応じてというお話でございました。つまり、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。八月に策定される予定の新長期経済計画は十一月になる。これは予算編成から見ましてたいへんですけれども、まあ政治的な策定の段階でしょう。少なくとも、新長期経済計画が決定される以前に、簡単に第三次防が、国民が十分理解をしないうちに、論議をしないうちに決定されるというふうなことがあってはならぬと思いますけれども、その点はよろしゅうございますか。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点誤解がないように願いたいと思います。それぞれの担当部門におきましていわゆる長期計画を立てている、また事務的にもそういう準備が進んでいると、これを否定するものではございません。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕  また長期経済計画、その樹立を非常に急いでおりますが、しかし、これが各般の問題にそれぞれみんな関連を持ちますから、先ほど企画庁長官から説明いたしましたように、ややおくれるという問題もある。そこで、来年度、あるいは再来年度といいますか、きわめて短い期間の予算はどうしてできるか、長期経済計画なしに来年度予算はできないじゃないか、こういう議論もあろうかと思いますが、しかし、来年度予算の編成すべきその時期、これはもう到来しておるわけでありますから、例年のように八月末までには第一次の要求を出してくれと、かようなことを申しておりますので、この予算はそれぞれ要求される。それで長期経済計画、それぞれの部門における長期計画、これは一応の目標として、おそらくそれぞれの省において持つだろうと思いますが、しかし、来年度予算に間に合うというようなことは、なかなか今日から言いかねるのじゃないか、かように思いますから、いわゆる長期経済計画が樹立されて初めて来年度予算ができる、こうまでおきめになることは、やや実際に合わないと、かように御了承いただきたいと思います。  三次防の問題も、来年度予算につきまして、これはもちろん予算編成の際にどういうような状況になりますか、検討しなければならないと思いますが、いわゆる目標として、あるいはそれぞれの要求官庁としてそれぞれが持ちますその計画は、頭から無視はできない、かように御了承いただきたいと思います。
  134. 大原亨

    ○大原委員 つまり、私が申し上げておるのはこういうことであります。三次防も来年から五カ年間を拘束するのであります。しかも、この拘束のしかたというものは、住宅計画五カ年計画や社会保障の長期計画というように、いままで打ち出された問題とはこれは違うのであります。ですから、長期経済計画でどれだけ物価を押えるのか、あるいは産業構造についてどうするのか、貿易構造についてはどうするのか、あるいは社会保障、国民生活向上の各分野においてどうするのかということの総合的な議論の上にこういう問題は議論されるべきであって、やはり独走してしまって、そして国民不在のそういうギッャプをますます拡大するようなことは、これは国民のために、たとえ保守党であってもとらぬと思うのであります。ですから、新長期経済計画がそういう国民生活を中心とすると、藤山さんも言われておるとおり、また、あなたも言われておるとおりですが、そういうことを中心としながら、三次防についても、私は、国民のみんなわかっておるところで論議をしたほうがいい、これは当然だと思うのですが、いかがですか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われます点がどういうようにお話したら御理解いただけるか、私は、防衛計画、これはわが国の安全を確保する意味で必要なことは申すまでもありません。しかし、それを考えるのは国力、国情に応じて樹立するのであります。また、防衛庁自身におきましては、しかし一年一年に防衛計画を持つというわけにもいかないだろう、そこで長期の防衛計画を包蔵しながら、そのうちの一部をどういうように実施していくか、こういうことで予算編成に当たるだろうと思います。そういう場合に非常に誤解を受けやすいのは、いわゆる長期計画そのものを承認し、何が何でもその長期計画を忠実に実施するのだ、こういうようにきめる程度の防衛計画が立つか立たないかという問題です。おそらく、今日の状況のもとにおきましては、そういうような長期計画は持ちたいと思いますが、しかし同時に、それが一銭一厘も狂っちゃ困るというような、そういうものでないこと、この点は御了承いただきまして、そうして現実の問題として、来年度予算をどういうように編成するか、これが現実には一番大事な問題であります。国力に相応してこの点が考えられるだろう。そうしていずれを先にするか、先ほどバターか大砲か、こういう話が出ておりましたが、やはり民生を安定さすこと、向上さすこと、こういうところに特に重点が置かれるだろう、これこそが、いわゆる日本の国情に応じた防衛計画だ、私はさように理解しておりますので、このいわゆる長期防衛計画というものと、また来年度予算の編成、その中に盛り込まれる金額、そこらに相当の開きのあることも、これも御承知置き願いたいと思います。
  136. 大原亨

    ○大原委員 私は、来年度予算編成については、時間的にお話のこともわかるわけであります。それから長期構想をつくったからといって、一銭一厘も動かしてはならぬというものではないわけであります。しかし、政治には若干長期の見通しを持ってやらないと、行き当たりばったりになれば、それは予算だって分取り合戦になってしまって強い者勝ちになるわけですよ。ですから弱肉強食になって、そういう力の拘束だけによってやると権力政治、ファッショ政治になるのですよ。ですから私は、その面において新長期経済計画は重要である、こういうことを言っておるのであります。したがって、そういう意味において、新長期経済計画の策定と、少なくとも国民不在の形で第三次防がこの長期計画以前に暴走するようなことは、独走するようなことはいけない、この点はひとつ留意をすべきではないか、こういう点を、私は十一月の目標の問題実施策定時期の問題と関連して申し上げた。簡単に御答弁してください。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  先ほどから、よく私どものほうの事情も御説明しました。また、大原君のお尋ねになります点もはっきりしたように思います。私は、いわゆる暴走して、一つだけを先に先行してきめるというようなことはいたさないつもりです。そのきめるという、これも一つの問題なのですが、一銭一厘も狂わさないというような、そういうきめ方のものはできないということを、この機会に申し上げておきます。
  138. 大原亨

    ○大原委員 つまり新長期計画の以前に三次防が国防会議でぽんと、国民が論議しないうちにきまるというようなことはこれはあり得ない、こういうふうな点については相当議論が煮詰まって、私は、うなずいておられる点から見ましても、総理大臣は御理解になった、御答弁からもそういうふうに理解をします。  それで、次にまいるわけですが、二つの問題が防衛構想をめぐってあるわけであります。その一つは、第三次防において、外からの核攻撃に備えて最大限の努力をすべし、松野さんがある会合においてこういうことを発表になりました、考え方一つあるのです。もう一つは、第一次防、第二次防の既定方針であるところの局地戦以下の侵略に対処する在来兵器による防衛を考えるのだという考え方があるのです。論議はけっこうですけれども、御承知のように、自民党の中には、安全保障調査会の保科元将軍が発表なさった保科案というのがあります。それから、きょうの新聞によりますと、小坂構想というのがあります。小坂前外務大臣の外交調査会の構想がきょう新聞に出ておるわけです。これは防衛産業関係の財界のグループのいろいろな構想もまじっておるわけですが、私は、防衛構想について、国防会議の事務局長がこれらの問題を含めて十分議論が煮詰まっていない、こういうお話で、国防会議決定、開催がおくれているというお話であったと思うのでありますが、この防衛構想について、総理大臣はやはりイニシアチブをとって国氏の前にその考え方を明らかにすべきである。これは私は問題点の一つであると思うのであります。いかがでありますか。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねがちょっとわかりかねるのでありますが、防衛産業についても自主的に国内の防衛産業を強くしろ、こういう意味のことならば、私どもも、防衛産業は自国において強化する、こういうことに努力すべきだ、かように私は思っております。
  140. 大原亨

    ○大原委員 答弁をそらされたわけでありますが、保科案といわれる安全保障調査会の案の当初の案と現在の案は若干違っております。中国核実験、核武装等に対処して、そういう核攻撃に対してはぎりぎりのミサイルその他をもってやるべきだという前提で、核兵器持ち込みの憲法改悪を、改正を、当初は保科構想には出ておったのであります。安保条約の長期固定化の問題と三次防が密着した形で出ておったのであります。その考え方と、そして従来どおり第二次防までの考え方と、あるいは総理大臣がいままで御答弁になったような考え方との間において、そういう防衛構想をめぐって国防会議の事務局長がやはり指摘をされているように問題がある、こういうことであります。そういう議論が公然と今日あるわけですから、こういう国会を通じまして総理大臣考え方をこの際明らかにしてもらいたい、こういうのが質問の趣旨であります。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われる保科構想、あるいは先ほど御議論のありました小坂構想、それぞれの構想は、これも自由にあるだろうと思います。しかし、私が国防会議の議長としてまだ最終的な決定もしておりませんし、また事情も聴取しておらないという現状であることだけをはっきりさしておいて、そう先ばしらないようにお願いしたいと思います。  ただ、私は、この機会に申し上げたいと思いますのは、核武装について、たとえば中共の核武装を弁護する人が日本人の仲間にある。そして、それらの人はどう言うかというと、自衛のためだからこの核武装は是認さるべきだ、こういう議論が日本人の仲間にあること、これだけははっきりしておきたい。私はいままでしばしば申し上げましたように、日本政府は、これは平和に徹する国であり、防衛的なことはするが、いわゆる日米安全保障条約によってわが国の安全を確保する、こういう態度はとっておる。しかし、被爆国として核兵器の持ち込みや、核武装はしない、こういうことをはっきり言っております。また、それが自衛のためだろうが、ただいま申し上げるように、私はそれをとらないということを申しておるのであります。この点が非常な相違であるということを御認識いただいて、自衛のためなら、はたして核兵器を持つことを是認されるかどうか、こういうことが国民に課せられたいまの問題だ、かように私は理解しておるのであります。
  142. 大原亨

    ○大原委員 この核論争については、私は議論はいたしませんが、持っておる国の意図については、これはいろいろあると思うのです。しかし、これを乗り越えて核兵器を全廃する、これは私どもの考えであります。そういう意味において、絶対平和の憲法を守ることが日本の安全を守るし、生活防衛になるのだ、こういうことにおいて私どもは今日までいろいろな議論を展開しているのですから、その点を明らかにしておきます。  次に、第三次防に関連いたしまして、問題点は、兵器の国産化という問題であります。時間の関係がございますのでずばりと質問をいたしますが、松野防衛大臣にお答えをいただきたいと思うのです。  いわゆる三次防の構想の中でナイキとかホークとか、あるいはTXのジェット練習機、そういうものを国産の方向に持っていくのだという、こういう方針が来年度予算編成の中にも頭を出しているわけであります。これは、そういうミサイルを含んで国産の高度化をしていくというふうな、そういう考え方に立つ場合と、有償援助等を背景としながら考えていくということについての賛否は別にして、そういう場合と、予算上、財政上の負担における差額ですね、どのくらいの違いがあるものですか。
  143. 松野頼三

    ○松野国務大臣 防衛をやるためには、貯蔵、修繕、備蓄のために国産でなければ完全じゃありません。なお、そればかりでなしに、改良、開発ということを加えますと、やはり国産ということは当然防衛上の基本であると私は思います。ことに、あらゆるものを実は私は国産でいきたい、これは私は、どの国民も納得していただきたいと思います。したがって、その価格の面においては、今日ただいまの単価を計算すれば、あるいは二、三割の割り高になるかもしれません。しかし、十年間の補給、補修、改良を加えますと、国産のほうが割り安になるものであります。したがって、その高いか安いかは、その時点の比較によって議論が出ると私は思います。
  144. 大原亨

    ○大原委員 ミサイルなんかはどんどん国産にしておいて、量産をしながら東南アジアに出していけ、こういう議論もあるわけです。輸出産業として防衛産業をつくっていけ、こういう議論もあるわけであります。兵器をつくる兵器産業を興して、東南アジア等にこれを輸出していけ、ある場合にはベトナムなんかにも出していけ、量産になって安くなるという考え、こういう考えがある。しかし、これは時間がないのできょうは議論いたしません。大まかな点だけを指摘をいたしておきますが、この問題は、たとえば、ミサイルやその他兵器の国産化をめぐって、世上では、たとえば発注先がもうきまっておるんだとか、いろいろな議論があるわけですよ。そういう点は、あくまでも国民が納得する形においてこの問題は議論してもらいたい。財界と軍が結びきつますと、そのことがますます軍事予算を増大さして、私どもは臨時軍事費の苦い経験があるけれども、やはり暴走、独走するようになってくる、赤字公債にもつながる、こういう問題等もきわめて重大なときに来ておると思いますので、私はこの問題を指摘をしておきたいと思うのであります。  ただ、この際申し上げておきたい点は、来年の計画が出ておるわけですが、たとえば、防衛庁は来年の計画の中に女子自衛官を千五百人ふやす、こう言う。女子警察官は、たとえば青少年の補導とか、すりを捕えるとか、いろいろなことをやるのにはある面では役割りがあると思うのですが、女子自衛官を千五百人ふやすというようなことは一体どういうことだろうか。からめ手からひとつ防衛しようということかもしれませんが、それはともかくとして、たとえば、まず私どもが聞きたい点は、戦車を四百台ほどつくるという、これは一千億円をこえるでしょう。一体戦車というのは何に使うんだろうか、こう思うわけですね。何に使うんだろうか。これは水陸両用でどこかに渡っていくのかわからぬけれども、しかし、これは私どもがいろいろと疑問にしたいところがあるわけであります。来年度予算の中に頭を出しておるから、私は架空のことではないと思うので、それらの点については、思いつきで——思いつきとは言わぬけれども、そういうことで防衛費がどんどん既定方針どおりふえていくというふうなことは、どんなへ理屈をつけましても、私どもは納得できないのであります。これに対して、防衛庁長官の見解をちょっと伺いたいと思います。
  145. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今日でも自衛隊に女子自衛官がおります。最高の位は二佐までおります。これは今日の看護婦であります。したがって、自衛官に女子はいないということは今日でもありません。ただ、千五百人ふやそうというのは、女子に適した仕事、電話の交換手とかあるいは小さな計器の計算とか事務的なものであって、戦闘要員ではもちろんございません。御安心いただきたいと思います。  なお、その戦車は、今日わが自衛隊に六百両から以上ございます。その約七割は米軍からの供与品、したがって、二十年の実は年齢をこえております。毎年三十両ずつこの置きかえをしております。この速度を少し早めようというだけで、特に新たな構想ではございません。
  146. 大原亨

    ○大原委員 この際、やはり国民不在の防衛という観点から一つだけ指摘をしておきたいのですが、かつてロッキードF104の問題があったわけです。二百機ほど、あれほどいろいろ議論いたしまして購入をされておるのですが、六十五機ぐらいしか動いておらぬわけです。アメリカに行っても部品がないというわけでしょう。ドイツかどこかへ行って古いのを集めてきたとか、こなかったとかいうことでしょう。やはり非常に防衛問題は金を食うのであります。しかも、この問題については議論が多いのでございますから、私は一つの例を指摘いたしましたが、思いつきその他でやられるというようなことはないにいたしましても、これは慎重に考えてもらいたい、こういう点を私は指摘をしておきたい。それからあとの答弁のときに、このことについてもし見解があれば御答弁いただきたい。  それから、私は、第三次防に関連いたしまして、私見ですけれども、ひとつこういう提案をしたいのです。自衛隊が非常に喜ばれておるのは災害復旧や国土開発であります。これは喜ばれておるのであります。これは世論調査を見ましても、自衛隊を支持されておるというのは災害復旧や国土開発でありまして、戦争をするのではないわけであります。つまり人間を殺すのではなくて、国土と戦う、自然と戦って、これを開発していくという、そういう考え方に立ってブルドーザーやトラック等の国産をやって、そうしてこういう面において国民の要望に沿うたような形で、こういう問題の議論がなされてもよろしいのではないか。こういう点で、われわれは国土建設隊その他の構想を持っておりますけれども、これとは一応分けましても、この点を指摘しておきたいのですが、所見があれば、ひとつ防衛大臣から聞かせてもらいたい。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 幸いに自衛隊が今日精鋭であるということは、高い目標、高い精神、規律というものによって維持されておると私は思います。たまたま災害出動に行ったときも、その精神が国防であり、国難に殉ずるという精神があるから、今日の災害における精神がそこに入ると私は思います。したがって、目標とその規律というものを私は一番自衛隊における精神の基本だと考えて今日まで指導してまいりました。したがって、幸い今日まで国難が外部からの侵略というものがないために、今日その非常な危険な状態がないために、自衛隊は今日国民とともにその職務を遂行しておるわけでありますから、それはその場合における部隊の心が、その災害派遣における精神に置きかわると私は思います。  なお、104の飛行機がただいま六十五機と言われました。今日ただいまは六十五機ぐらいであると私は思いますが、今月末は百機近くになります。したがって、飛行機は整備修繕のために一カ月おきにその状況は変わります。もし、これをフルに動かそうと思えばフルに動く状況はできます。しかし、工場の能力、単価、計算、そういうものを加えますと、ある程度のものを交代交代に正常にするために、大体二割ぐらいのものは定期修理に入れます。そういうふうなことで、今日ただいまは、ある程度において一つの部品の故障もございましたので、その補給のために今日は六十五機ぐらいだと私は思います。今月末は百機ぐらいになります。来月になればまた向上いたします。したがって、全部のものが全部動いておるとは私は申しませんが、一つの計画によって段階が上下がある。これは世界じゅう同じだろうと私は思います。
  148. 大原亨

    ○大原委員 ロッキードについて、二割ぐらいはやはり整備しながら使っていくのだ、こういうお話ですが、これは逆でありまして、二百機の中で六十五機しか動いておらないのでありますから、八割は休んでおるわけでありましょう。八割は休んでおって二割しか動いておらぬのは、あなたのおっしゃることから言えば逆でありますから、私はこの点を指摘をしておきたいと思います。  そこで、長期政策と物価の問題に移ってまいりたいと思うのですが、藤山長官お尋ねをいたします。  卸売り物価の上昇に対する見解については、きのうも自民党の委員からも議論になったところであります。しかし、かつて通産省は——あなたは通産大臣を兼任されておるわけですが、消費者物価つり上げの真犯人は生鮮食料品やサービス料金である、工業製品は関係がない、現に卸売り物価は安定していると繰り返し述べておったのであります。三木さんは、いまは飛行機かどこかにおられるらしいから、あなたのほうでひとつお答えいただきたいのですが、この流通コストの問題等もございまするけれども、私はこういう見解を持つわけです。卸売り物価が上がるということは、銅を中心とする非鉄金属や木材や食料品等が主として上がっておりまするが、この影響というものは、第一はベトナム戦争の軍需調達の直接間接の影響一つあると思うのです。これが一つある。私の見解ですよ。もう一つの原因は、消費者物価がもっとずっと上がってきて、なお今日宅地や家賃や地代や教育費等が上がっておりますし、一般に物価も強含みですが、そういう消費者物価上昇傾向の結果が卸売り物価に反映をしておるのであります。だから、次の段階には、さらに消費者物価に移っていく危険性を持っておるのではないか。私は卸売り物価が上がるということはその危険信号であるというふうに考えてよろしいと思うのであります。時間がありませんから申し上げませんが、日銀その他を含めまして各方面の見解がそれぞれ出ておりまするが、私はこれは危険信号である、こういうふうに指摘をいたしますが、この点について経済企画庁長官はどうお考えになりますか。
  149. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話しのように、卸売り物価が上昇傾向にある。昨年六月に比べ本年六月は、全体としては四・四%、非鉄金属その他特殊のものを除きましては一・八%くらいな上昇傾向にあるわけであります。これは消費者物価だけの影響だとも私はまだ考えませんし、むろん消費者物価が今後、昨年のような状況でもってどんどん上がってまいりますれば、これは卸売り物価影響してまいりますから、私どもも本格的に、そういう問題が起こってはならぬということで、現在消費者物価を押えていくということに努力いたしておるわけであります。現在の過程までのところ、必ずしも消費者物価の結果としてそれが起こりつつあるとまで断定するわけにはいかないのじゃないかと私は思います。ですから、将来消費者物価が引き続きどんどん上昇するといえばそういう危険がまた起こってくる、これはそのとおり私も考えておりますけれども、現在のところはまだそこまでいかないだろう、こう思っております。
  150. 大原亨

    ○大原委員 まあ藤山さんはお金持ちですから……。実際の生活の実感からいいましたら、消費者物価に対する統計のとり方や表明のしかたというのは、これはおかしいのじゃないかというのが国民の実感ですよ。物価については決して安心をしておるわけでもないですよ。信頼をしておるわけでもないですよ。これはまた統計資料のとり方その他で、ひとつ別に議論をしたいと思います。  そこで、長期計画の中で、物価安定、国民生活の安定は、何といっても重要な目標であります。これはあなたが言われたとおりであります。ですから、卸売り物価は下がるべき問題だ、生産性が増強して量産の段階にくれば下がるのです。それは消費者に還元されるのが当然でありまして、逆に上がるということは、これはどんな理由があってもおかしい。銅が上がり、アルミが上がれば、なべやかまに全部影響するのですから、そのことは常識ですが、私は簡単な議論で楽観論は厳重に戒めるべきであるというふうに警告しておきます。  そこで、物価政策の中で、私はまず二つの問題を取り上げるのですが、一つは鉄鋼カルテルであります。管理価格については、通産省やその他の見解で、あるなしについて議論があるのですが、この議論についてはまた別といたしまするが、問題の粗鋼カルテル、鉄鋼カルテルの共同行為を、勧告操短という行政措置で通産省はやったわけであります。それを第二・四半期において、七、八、九月においても続けよう、こういうことであります。  そこで私は通産大臣お尋ねするわけです。一つは、行政指導による鉄鋼生産調整の法的な根拠は一体何か、もう一つはこの行政指導が法的な拘束力を持つものかどうか、この二点であります。いかがですか。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私も臨時代理を先ほど受けただけでございまして、詳しい法的な問題については事務当局から御説明をいたすことにいたしたいと思います。
  152. 高島節男

    ○高島政府委員 お答え申し上げます。現在やっております勧告操短の根拠といたしましては、しいて申しますれば、通産省の設置法によりまして行政指導としてやっております。これは強制力はございません。あくまでも相手方の納得を基礎といたしまして、説得によってやっておるというのが現在のたてまえでございます。ただいまお話のありました業者間のカルテルを認めているという、そういうたてまえではございませんで、あくまでも通産省から数量の指示を、通産省の判断責任において流しまして、これを各業界の生産者に納得の上で守ってもらう、こういうたてまえに相なっております。
  153. 大原亨

    ○大原委員 弱小業者の立場から見ると納得できないことがあるわけですが、これは法的な拘束力はない、こういうことですが、通産省は、昨年の七月以来の生産調整をめぐる経過の中で、メーカーが文句を言って言うことを聞かなければ原料炭の輸入制限をするぞというふうにおどかしたということが新聞その他に出ておるわけであります。業界でも当然のようにいわれておるわけであります。こういうことを通産省がやるということは越権行為であります。権力の独裁だ。消費者立場を考えていない立場であります。いかがですか。
  154. 高島節男

    ○高島政府委員 昨年の住友金属の問題のときのことの御指摘であろうと思いますが、その当時この職におりませんでしたので、正確なことは記憶いたしておりませんが、たてまえといたしまして、生産の指示を納得ずくでやってまいることになりまして、ただその際に、不服があって言うことを聞かぬというときに、原料炭の問題は別の為替管理法上の問題でございますが、納得ずくで適正な生産に見合った原料炭は当然割り当ててまいりますが、それをさらに超過生産をいたしましてプラスアルファになるという形のものを、外国為替管理のたてまえからしいて見てやるということまではいかない、しかし、世上外で見ておりましてやや誤解を招いたであろうと思われますことは、何か報復的に、通産省の言うことを聞かなければ、それで原料炭をゼロにするぞとか罰を食わせるぞとか、そういう意味のことが多少新聞紙上等にあったかと思います。これは非常に誤解でございまして、やはり必要量を割り当てる、こういうたてまえでございます。ただ石炭の割り当てというものは、為替管理法に基づきまして、国内炭の関係あるいは生産上の必要の関係あるいは貿易、経済上の関係等々を総合判断いたしてやってまいりますので、もし不服があれば、これは為替管理法上の手続の問題として問題になってくるかと思います。
  155. 大原亨

    ○大原委員 二回繰り返して答弁をしている。頭の悪い証拠だ。  通産大臣昭和三十五年に特振法というのが問題になったんです。これは法律によってそういう調整行為をやろうということが一つあるわけです。しかしながら、これは議論の末、なくなったわけです。通らなかったわけであります。そこでやはり問題は、法的な拘束力のないということは通産省も認めているのですが、行政指導で強引にメーカーの利益に奉仕するというふうなことは、これは管理価格の議論と一緒に、一般の弱小メーカーはおこっているのですよ。いろいろな理屈があろうとも、こんなことがあるものか、自由競争の中において公平に国民にサービスするというのが皆さん方の自由競争の唯一の原理でしょう。これが独禁法の基礎ですよ。これを否定するのだったら、鉄鋼は国営にすべきなんですよ。私はこの議論をなお深めたいのですが、次に公取の見解を一つ聞きます。  公取委員長お尋ねをいたしますが、いまの鉄鋼カルテルの問題についての法律解釈であります。通産大臣の勧告操短といえども、それに関して独禁法上違法カルテル行為が行なわれた場合は、その違法性を阻却するものではない、行政措置である通産大臣の措置であるからといって、違法性を阻却するものではない、こういう独禁法の有権解釈を、主管官庁としての公取の見解をしばしば発表されましたが、これが一般の法律の通説であります。この点については、公取はそういうはっきりした見解を持っておられますかどうですか、お尋ねをいたします。  それから、時間の関係で、政策上の問題として、通産省の行政指導による勧告操短が、独禁法によって保護された国民の利益を実質的に侵害をしたり、あるいは公正取引委員会という国家機関、行政機関の権限任務遂行を妨げることは、政策上も法律上も許されない、こういうふうに私は独禁法の立法の精神から考えますが、いかがですか。
  156. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。  行政指導にはいろいろ問題が多いことでございます。ただ行政指導によって個々の業者に対しまして操短を勧告するということそれ自体でございますと、実は独禁法違反というわけにはまいらぬわけであります。と申しますのは、独禁法は直接には事業者と事業者団体を規制する法律でございまして、政府機関を拘束するものではない。したがって、通産省がほんとうの行政指導であられる場合には、これは独禁法違反という問題ではございませんと私ども思います。  ただし、行政指導の隠れみのといたしまして、業者間の共同行為があるということならば、これは共同行為自体はやはり独禁法違反ということになるわけでございます。かつて通産省の行政指導による勧告操短が三十近くもありました当時におきましては、あるいは中には通産省の行政指導を隠れみのとして行なわれたような気配も私どもなかったでもないかと思われます。こういうことは私どもは絶対に避けていただきたいと思うのであります。したがいまして、こういう行政指導は独禁法では好ましくない。もし生産調整を必要とする事態にあるならば、独禁法上の不況カルテルでやっていただきたい、これが公正取引委員会の見解でございます。
  157. 大原亨

    ○大原委員 公取の見解、私は大体において納得できるわけです。通産省の見解もありましたが、行政指導による勧告操短、つまり行政措置は法的な拘束力を持たない。実際には原料炭その他の圧力をかけておるということは事実上認めたけれども、この議論は別の機会に譲るといたしまして、もしカルテルをやるのであるならば、不況カルテルとしてやるべきである。あるいは粗鋼その他全部の意見が上向きになっている、公共事業その他の投資で上向きになっているというときにこれをやるということは自殺行為である。この点については通産大臣がいま直接おられなくて代理でありますけれども、私は総理大臣に聞きたいと思うのですが、この問題は七月以降の問題もあるわけです。七月以降の問題もあるのですが、七、八、九月で、これが終わって、その以降の問題もあるわけですが、それらの問題を含めまして、強いものだけが行政指導の隠れみのの中に入って、そうして公共性を主張しながら、基幹産業を主張しながら権力をもてあそぶような形において操業短縮を続けて必要以上の利潤を確保するというようなことは、私は公正な競争の趣旨からいっても、法律上の趣旨からいっても、道義上、モラルからいっても、これはいけない。今後の措置といたしまして、公取の見解は明らかになったわけでございますから、私はき然たる措置をもって国民が納得できるような措置をとってもらいたい。きのうの総理大臣答弁によりますと、そこがちょっとぼかしてあります。将来の問題等を含めまして、法律論争や違反問題その他につきましては、これはまた議論するといたしまして、将来の政策上の問題について、き然たる態度を総理大臣はとるべきである、いかがですか。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、大原君が明らかにしたように、通産省と公取とのこの問題についての取り扱い方にやや違いがある。これは結局、私は事態についての認識の相違だろう、かように思います。通産省が今日なお必要だと、かように見ておりますのは、いまの不況状況、それの見方について、またこれを競争にまかしたら業界にどういうような影響があるだろうか、その悪影響がある、かように考えたということ。この二つが通産省の行政指導をやらした、かように私は見ております。したがいまして、現状においてはこれはやむを得ない行政指導だ、かように思います。しかし、もともとこの種の生産調整、こういうような表現で持たれることは、本来の姿から見まして正常な状態だとは思いません。もう競争によって自然的にそれが決定される、こういうことが望ましいこと、これは申すまでもないのでありますから、通産直におきましても、事態の推移によりまして、経済が立ち直ることによりまして、こういうような生産調整は長期にわたって行なうべきでない、かように私は思っております。
  159. 大原亨

    ○大原委員 長期にわたって行なうべきでない。——いつの見解かは別にいたしまして、私はやるのであれば、平電メーカーその他で必要があるならば、これは不況カルテルをその部分に適用すればよろしいのである。いま鉄鋼景気は、だれが見ても、それは一トン当たりの値段にいたしましても、どんどん上がっているわけでありますから、消費者立場に立って管理価格の問題から考えてみましても、これは及ぶところが大きいわけであります。これは住宅その他全部に及ぶわけであります。私はその点で国民が納得できるような措置をとらなければ、物価政策を推し進めておるというふうなことは、これは国民は信用できないのではないかと思う。その点につきまして、あなたの決意をもう一回ひとつお聞かせいただきたい。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでございます。私は、ただいま数字をはっきり持っておりませんが、事務当局から説明させてもいいのですが、鉄鋼価格、これが下がりましたときと現状とほとんど差がない。かように私思っておりますので、これが非常に高くなったという状況でないことだけ御了承をいただきたいと思います。
  161. 大原亨

    ○大原委員 ちょっとあなたに値段だけ聞きたい。簡単に答弁願います。
  162. 高島節男

    ○高島政府委員 鉄鋼価格の傾向について申し上げます。  中型形鋼あるいは小棒等、いわゆる不況に沈んでおります品種につきましては、これは確かに総理のお話のとおり、調整前とあまり変わらないところに低迷いたしております。これは中小業者も多く、業態、需要関係等々で恵まれない部分でございます。これが大ざっぱにいって大体半分くらいの傾向ではないかと思います。あとのものにつきましては、調整措置が全然効果がなかったわけではございませんで、薄板等につきましては、これは若干直ってまいっております。しかし国際価格に比べますと、全般の情勢からいいまして、日本の鉄は相当低位にとどまっているという現在の状況でございまして、私どもとしましては、設備に相当の余力があって、この程度の回復のところでは、まだ現在の調整措置は必要ではなかろうか、こういうように判断をいたしたわけでございまして、総理の御答弁を補足いたしますと、大体の価格情勢はそういうものかと思います。
  163. 大原亨

    ○大原委員 総理答弁の補足になっておらぬですね。  次に問題としてあげたいのは、再販売契約に関する問題であります。独禁法二十四条、つまり独占禁止法の例外としてやられておる例外措置でありますが、これは公取にお聞きをいたします。これはいままでしばしば議論になったのであります。化粧品や医薬品や洗剤その他を中心といたしまして約二千五百億円、これは著作物を除きまして二千五百億円の例外品目、例外商品があるわけであります。これはだれが見ましても、たとえば小売り店の段階に対しましてメーカーが販売のノルマを課する、あるいはセット販売を要求する、あるいは返品を認めない、あるいはリベートというものでつっていく、たとえば一千本ほどドリンクを売ったならば、一千本ただでやろうというようなことで、百円の再販売価格であっても、実質上は五十円だという結果になっておる。そういう問題から考えてみまして、その問題等につきましては議論が相当出尽くしておるのであります。衆議院の物価特別委員会も決定いたしております。あるいは藤山さんのところの物価懇談会も、これにつきましてはやや私どもが納得できるような結果を出しておるのであります。  これは私はまず公取にお聞きをいたしたいのでありますけれども、これらの問題につきましては、やはり消費者立場に立って実態を徹底的に究明をしながら、独禁法第二十四条の二、例外措置の再販売価格維持契約の問題の条件である自由な競争が行なわれているかどうかという問題について、私は十分事態を究明をして、厳重な措置をすべきであると思うが、公取委員長はどういうお考えであるか、お聞かせいただきたい。
  164. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。再販売価格維持契約制度はたいへん問題の多いことでございます。もともとはメーカーの信用保持という見地から認められたのでございますが、その理由は一応はあるわけでありますけれども、他方、消費者から見るとたいへん問題がある。これは物価問題懇談会等におかれましても、再販売価格維持契約の問題点が十分に指摘されてございます。私どもは、こういう状況にかんがみまして、再販売価格維持契約についてこれからひとつ真剣に取り組んで、その対策を立てていかなければならぬ、こう考えております。特に従来きわめて手薄な陣容でございまして、ほとんど実態もつかめておりませんので、ただいま目下実態を把握いたしまして、その上で諸般の施策を講じたいと考えております。特にお話しのような、これは自由な競争が行なわれておるかどうかということは、当該商品の指定される一つの大きな要件でございますので、現行指定されておる品目につきまして、はたして現在それが自由な競争が行われておる状況かどうか、こういう点も十分ひとつきわめた上で適当な措置をとりたいと考えております。
  165. 大原亨

    ○大原委員 目玉商品ですね、宣伝商品を中心としてセットを組んで、これを全部売らなければリベートをやらないとか、あるいはノルマを課するとか、あるいは返品を認めないとか、そういうふうなことについては、全国の薬局の薬剤師の皆さんは非常に困っておるのです。良心的に自分がこれがいいと思う薬を消費者国民に渡すことができないで、そのセットに縛られて、そしてそれを売りつけるという結果になっておるということを認めておるわけであります。こういう問題については、私は、至急に独禁法の精神に従って、消費者も小売りも納得できるような措置をとるべきであると思いますが、いかがですか。
  166. 北島武雄

    ○北島政府委員 再販売価格維持契約に付加いたしまして、お話しのような各種の付帯契約があるようでございます。こういう点が実は私どもまだ把握の足りなかった点でございますので、この数日中に再販売価格維持契約届け出規則を改正いたしまして、いままでとっておりませんでした付帯契約も今後徴取する。それと、契約の実施状況を把握する、こういう二点のために現在届け出規則を改正中でございます。  こういった付帯契約の中には、場合によりますと、独占禁止法による不公正な取引方法に該当するおそれのあるものも多分にあるかと存じますので、そういう内容を検討いたしまして、適当な措置をとりたいと考えております。
  167. 大原亨

    ○大原委員 次に、国民生活に関係の深い減税や社会保障や住宅についての長期構想について簡単に触れたいと思うのですが、これらの問題は、長期構想がなければ、これは水準を引き上げることはできない。毎年、圧力団体にちょっとゆすられただけでちょびり、ちょびりやっておったのでは、全体が沈んでしまう。医療問題に見られるようにこれは矛盾が拡大する。だから、長期計画においてはそういう問題を、防衛計画以上にしっかりと政策を樹立をして、これを内閣が意思統一をいたしまして、総力をあげてやるようにしなければ、政治の信頼をつなぎとめることはできないし、国民生活の向上を第一義とするというようなことを言っても、これはから念仏である、こう思うわけであります。ですから、新長期経済計画の中で、社会保障等を中心といたしまして、長期計画を策定し、そしてその新経済計画の中においてこれを有機的に総合的に実現できるように、そういう方途をとるべきである。こういう原則的な問題について経済企画庁長官の御所見をこの際明らかにしてもらいたい。
  168. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 原則論から申せば大原さんの言われたとおりで、社会保障の問題、住宅問題、あるいは公害その他国民生活の重要な問題につきましては、これはやはり一気にできるものではございませんし、長期な計画で積み上げてやってまいらなければならぬ。それを財政需要なりあるいは産業の構造基盤、中小企業の対策、農業対策とあわせて考えまして進めていきたい、こういうのが私の考え方でございます。
  169. 大原亨

    ○大原委員 藤山さんは、防衛だけが計画じゃない、社会保障や住宅その他減税等についてはっきりとした方針を持って経済計画を策定する、こういう点において同感だという御答弁であります。  そこで私は、税金の問題について、問題点を簡単に申し上げて福田大蔵大臣の御所見を聞きたいのですが、最近たいていの場合に、税調の答申等を大体これはけ飛ばしておいて、大蔵省が企業減税等をやられたことが多いのでございます。しかし今回は、大蔵省試案という所得税減税を中心とする、標準家族で八十三万円、あるいは退職金については五百万円までは免税、あるいは独身者の課税最低限を引き上げる、こういう問題等を出してこられたわけであります。これにつきまして大体いつどういうふうに実行するという目安というものを立てておられるのかどうか。いつやられるのか。これはもうずっと後のことだというのでは、所得税の納税者が千六百万人で、このままほうっておきますると五年後には倍以上になるわけでありましょう、二千九百三十万人にもふえるというような実情でございまして、実質的な重税になるわけでありますから、これもやはり相当思い切った長期の計画を立てなければいかぬと思います。  そこで最近、これに関連をいたしましてこの際聞いておくのですが、たばこの値段を上げるというのがあるわけです。当然所得税中心の減税をやるべきことはやることで、私ども賛成ですし、いいことですが、しかしたばこのほうを上げていく。一方で下げておいて一方で取っていくという、そういうことであるかないか別といたしまして、あるいは間接税中心に税金の体系を移していくという考えでもあるのか、こういう話が最近出ておりますので、その点に関連いたしまして、簡単に大蔵大臣のお答えをいただきたい。
  170. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国の政策を長期的観点でやっていかなければならぬという大原さんの御説に全く同感です。税もそういう考え方に基づくべきものである、そういうふうに思うわけでありまして、一年度、一年度で減税をやっていく、そういうやり方になりますと、どうしても税の体系というものが乱れてくる、つまり、場当たり的になる傾向を持つ、こういうふうに考えまして、税につきましても、長期にわたって実現すべき目標というものをきめて、そうしてそれを一年度、一年度ごとの財政事情等を考慮いたしまして、緊切なものからやっていく、こういう考え方に立ちたいと思っておるわけであります。いま昭和四十二年度においてどれだけをするという考え方じゃございません。数年間においてぜひこれだけはやりたい、こういう目標につきましてただいま税制調査会の御審議をわずらわしている、こういうことであります。
  171. 大原亨

    ○大原委員 たばこの点について……。
  172. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 間接税中心の税制に移行する、そういう考え方はとっておりませんです。たばこにつきまして、ただいまこれを上げるというような考え方を私は持っておりませんでございます。
  173. 大原亨

    ○大原委員 この際非常に大切な問題で国民立場に立って聞くのですが、たとえば交際費が五千億円もあるのにこれに正当な課税がないということは、モラルが乱れるもとではないか、こういう問題がある。それから、利子や配当に対する分離課税は公平の原則からいっておかしいじゃないかという意見が圧倒的であります。この二つについてひとつ簡単に所見をこの際、国民生活の安定あるいはモラルの上から非常に大切な問題ですから、お答えをいただきたい。
  174. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 交際費につきましては、本委員会でもずいぶん議論のあったところであります。政府では、昭和四十年度も税制の改正をいたしまして、交際費に重課をするという考え方を実施しておるわけでございまするが、交際費というのは営業に必要な経費と見るべきか見ざるべきか、これはなかなか問題のあるところであります。名前が交際費というのでございまする関係で、いろいろ御議論を呼んでおる傾向もなきにしもあらず、こういうふうに考えておりまするが、ともかく不急の交際的な経費を減税するということは、私はよろしくないことである、そういうふうに考えます。これを具体的な問題としてどうするかということは、今後も考えていきたい、かように考えます。  それから利子、配当の問題ですね。これは私はもっと重大な問題だというふうに考えております。つまり、今日わが国の経済の成長をささえる根源は何であるかというと、貯蓄であるのであります。この貯蓄政策との関連で、この利子、配当の問題をどういうふうに考えるべきか、これはきわめて重要な問題である。一面、税制の体系から言うと、税は一律でなければならぬ、こういう要請もあるわけでございます。それらを勘案いたしましていかなければならぬ問題でございまするから、なお今後税制調査会等ともよく相談をし、意見を承りまして、最後的な結論は出していきたい、かような考えであります。
  175. 大原亨

    ○大原委員 次に、社会保障の長期計画ですが、新経済計画の中においての原則的な問題は、これは議論いたしました。そこで、社会保障の水準をヨーロッパ並みに引き上げる。これは昭和三十六年の社会保障制度審議会、大内報告の中にもあるわけです。しかし、その後、中期経済計画その他において一部取り上げておったわけですが、これもだんだんと物価の高騰によりまして非常にみじめな形になっておる。あるいはいままでの計画が、いろいろな問題があるために、医療保障のような大きな問題になっておるわけです。そこで、この国際水準に引き上げるという目安は、これは振替所得であります。振替所得の問題、これは国際的に比較をしやすいから、振替所得が国民所得の中でどれだけの比重を占めておるかということを私どもは議論するわけであります。そこで、いままでの中期経済計画の議論やあるいは新長期計画に関連をいたしました国会の議論で、昭和四十三年を一応七%の目標、あるいは新長期経済計画の四十六年には一〇%の目標、こういう国民所得の中におけるそういう目標をきちっと持って、そうして日本の社会保障制度の足りない点を補うていくべきである、こういう議論がなされるわけであります。これについては鈴木厚生大臣も積極的に発言をしてこられたし、あるいは藤山経済企画庁長官総理大臣等も言ってこられたわけであります。この点に関しまして、私は厚生大臣から、長期経済計画の中における社会保障の長期構想、これでヨーロッパの水準に近づけるという、そういう問題点に対しまして明快な一つの見解を示していただきたいと思うのであります。
  176. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、わが国の社会保障、具体的には振替所得についてでありますが、西欧諸国に比べましてまだ相当の見劣りがいたすのであります。昭和三十九年のわが国の振替所得は五・四%、西欧諸国は十数%、こういうようなことで、相当の開きがあるわけであります。そこで、中期経済計画におきましては、御指摘のとおり、昭和四十三年度に七%を目標に振替所得を考えておったのでありますが、今回新しい長期の経済計画を立てます際におきまして、経済の発展なり所得の上昇なり、そういうものを国民生活の向上、国民の福祉にこれを使うということが政治の重要な課題であるわけでありますから、私ども新経済計画に見合ったところの長期の社会保障計画、特に振替所得につきましては、最終年度に当たりますところの昭和四十六年度におきましては、中期経済計画の水準を上回ることを目途にいたしまして、経済審議会等とも御相談の上で、十分長期的な展望に立って社会保障の充実を期したい、かように考えておるわけでございます。この長期の社会保障計画の具体的な、基本的な内容でございますが、何といっても所得保障の面、児童手当でありますとかあるいは年金保険の制度、こういう所得保障の制度が立ちおくれでございます。そこで、今後の長期社会保障計画におきましては、そういう所得保障の充実、児童手当は、昭和四十三年を目途にただいま準備を進めておるわけでございます。また、厚生年金や国民年金につきましても、昨年及び今年の国会で御承認を得まして充実をはかったわけでありますが、今後福祉年金その他の面でさらに一そうの年金制度の充実をはかりたい。また、医療保障の面につきましては、先般来申し上げておりますように、各制度間のアンバランスや給付内容の充実につきまして、今後抜本的な改善をはかってまいりたい。いずれにいたしましても、この社会保障の問題は、長期の計画、長期の構想に立って着実にこれを伸ばしていきたい、かような考えで進んでおるわけであります。
  177. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣、いま社会保障について長期の計画を立てながら、ヨーロッパの水準、少なくとも中期経済計画以上の振替所得の国氏所得の中における比率、そういうものの確保のためにやる。当面は、たとえば内容的には医療保障もあるけれども、六十何カ国でやっている児童手当、あるいは国民年金でも、二十五年先に夫婦に一万円やろうというわけです。いまの調子で物価が一三%、五%と上がっていったら、二十五年先にはかすになっておるわけですよ。ただ、ゼロになっておるわけです。掛け金をかけるというだけになります。したがって、福祉年金を——いまそこまでは触れなかったけれども、福祉年金を当面増額するということは、振替所得の比率を増大するということにもなるわけです。したがって、これらの問題を含めまして、来年度予算編成を含めて、長期経済計画の中で社会保障については水準を積極的に引き上げる、このために総理大臣がイニシアチブを発揮するのだ、こういう点について私は決意を持っておられると信ずるわけでありますが、御見解をお聞かせいただきたい。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の諸施策を西欧並み、これが一つの合いことばに実はなっておるようです。そうして特に皆さん方から言われる場合に、社会保障、これをぜひとも西欧並みにひとつ引き上げろ、こういうことを言われるのですが、しかし、どうも国民負担、それも非常に西欧は高いのだ、そういうことを見のがさないようにひとつしていただきたいのです。その支出のほうの社会保障だけ西欧並みと言われるが、国庫収入、これがやっぱり西欧並みでないと、それができないのだ。また、先ほど議論されましたが、国防費なども、西欧に比べたらたいへんにわが国は負担が軽い、こういう状況です。だから、西欧並みを考えるのはよろしゅうございますが、しかし、それぞれ国情が違っておりますから、その国情に合うということがまず第一に基本的な考え方だ、そういうことで施策の充実もはかりますけれども、ただ形の上だけで西欧並み、こうは言えない、こういうことを御了承いただきたいと思います。
  179. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣、あなたよく御承知でない点もあるのですが、振替所得の中で、その内訳をいろいろ見てみますと、税金で取っておる。これは所得割りを大体原則として、日本は非常に不公平で、弱い者にきついけれども、所得割りで取る。あるいは掛け金をかける。これは頭割りの場合が多い。いろいろ取り方があるわけです。それをどういうふうに再配分していくかということが社会保障ですよ。そういう観点から言って、はっきりいえば、社会保障税というようなものを取りながら、最低生活については保険料が食い込まないような、そういう制度をとらなければいけない。これはやはり政治一つの目標であります。これは社会主義であっても、資本主義であってもそうだ。公平に取っていってこれを再配分していくということが、生活安定につながる。ですから、これは私は議論はいたしません。その点で、これはパンか大砲かという典型的な問題が、ここのところに一つ出るわけであります。私は防衛予算の問題を議論いたしましたけれども、ぜひとも社会保障については、ひとつ内閣をあげてこの問題については責任をもって善処をしてもらいたい。  それから人事院勧告に移ります。人事院総裁、人事院勧告についてお尋ねをいたしますが、あなたは最近管理職の範囲その他——まあ、きょうは時間がないから十分議論できないが、いろいろ人事院規則等に関連をして問題があるわけであります。人事院は、ストライキ権を剥奪いたしましたその代償機能であって、公務員といえども憲法二十八条の労働三権を保障されておる上に立っての、そういう代償としてやはりあるわけであります。したがって、人事院勧告についてでありますが、人事院勧告の一つの問題は、ことしの春の賃上げにおいて、民間は三千五百円、あるいは公労協もそれに近い、それと同じような賃上げがなされました。しかしながら、時間的には五月以降に実施をいたしまして、四月一日にさかのぼって支給をするというふうな状況になっておるわけです。しかし、人事院の調査によりますと、四月調査ということになっておりますので、その点についての配慮がおくれますと、一年間おくれるということに相なるわけであります。この点についてどのような見解、納得できるような見解があるかどうかという点が一つであります。  それから勧告の実施の時期について、これはいままで議論をいたしましたからはしょって申し上げますと、どのようなお考えを持っておられますか。その点につきまして、ひとつはっきりと、この議会を通じまして国民の前に明らかにしてもらいたい。
  180. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おっしゃいますとおりに、私どもとしては、四月現在の民間給与を克明に調べまして、その水準を求めて公務員の給与と比較をいたします。そして、その格差を五月にさかのぼって埋めていただこうというのが、例年のやり方でございます。ただ、いまお話に出ておりますのは、おそらくこの四月における、あるいは四月を中心とする賃金関係の闘争あるいは春闘というようなものの関係が、どういうふうに織り込まれるのかということにからめての御質問であろうと思いますが、その点は、私どもとしては、四月に調査実施の基礎を置いております関係上、その以後に民間における賃金改定の結果出た数字は、原則から申しますと、もう翌年度回しということになるわけであります。しかし、最近春闘が非常におくれてまいりまして、そういうことばかりに徹してもおれない。また、物価関係その他の生活条件等も勘案して、これをほうっておくわけにはいかぬということから、実は、昨年きわめて例外的な措置でございますけれども、この春闘によるおくれというものを取り入れたわけであります。ことしもその関係の調査は例年どおりやっております。われわれのほうの調査としては、備考的な調査という形になりますけれども、それによって春闘のおくれというのはどの程度極端なものがあるかということの実態だけは十分把握しておきたいということで調査だけはやっておりますが、さらにその結果がどういうふうになりますか、これはあらゆる諸般の条件を勘案した判断の結果の結論ということになろうと思います。  それから実施期日の問題は、これも、もうずっと私どもとしては八月に勧告はいたしますけれども、五月にさかのぼって実施をしていただきたいということで、政府、国会に御勧告申し上げておるのであります。これが残念ながら、そのとおりにまいっておりません。これは小しづつは改善されておるようでございますけれども、私どもとしては、これはぜひ五月に完全にさかのぼって実施していただきたい、こういう気がまえで臨んでおるわけでございます。
  181. 大原亨

    ○大原委員 人事院総裁、あなたは管理職の範囲とか組合活動については、規則をつくるときに、政府の言いなりになったわけであります。そこで、こういうふうな人事院勧告、給与生活者の問題については、政府の言いなりにならぬようにして、労働者の言いなりになるようにしてもらいたい。あるいは法律のたてまえから筋が通るようにしてもらいたい。実施の時期についても御所見がありましたが、私は、人事院総裁としては、重大な決意をもって臨んでもらいたいということが一つ。  それから勧告の内容——勧告は八月に勧告になるのですか、いつになりますか。勧告の時期ですが、その時期の問題と一緒に、内容において、たとえば扶養手当の増額や住宅手当等が見送りになっておるわけであります。これは今日の物価高騰や家賃の状況、その他家屋状況等から見まして、非常に低所得階層の公務員には負担になっておるわけであります。こういう諸手当について善処する意向があるかどうかという点が第二点であります。  それに付加いたしまして、厚生大臣が、医師の欠員や看護婦の欠員等の実情等から、医療職、たとえば医者の技術を尊重するというたてまえからも、そういう待遇改善の問題を申し出ておられましたけれども、これらの問題につきまして、御所見をこの際明らかにしてもらいたい。
  182. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもは、中立機関と考えておりますから、政府の言いなりにもなりませんし、組合側の言いなりにもならない。両方の御趣旨をよく体して、御希望を十分拝聴した上で、公正なる中立的な判断をするという心がまえで臨んでおるわけでございます。  給与関係につきましては、先ほど申しましたように、民間調査がまだ集計ができませんから、どのくらいの格差があるのやら、その格差の範囲内でどの程度の配分ができるのやら、全然見当はつきませんけれども、いまおことばにありましたような要望も耳に強く入っておりますし、目下研究をしておるわけであります。
  183. 大原亨

    ○大原委員 いつ出しますか。
  184. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おそらく、従来の例のペースで目下進行しておりますから、八月の十日、あるいは過ぎになりますか、その辺になろうかと考えております。
  185. 大原亨

    ○大原委員 諸手当はどうですか。
  186. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 諸手当も、ただいま申しましたように、いろいろな要望がございますし、調査もしておりますから、それらを勘案いたしまして、適正な結果をもたらしたい、こう考えております。
  187. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣お尋ねします。  実施時期は十月を九月に繰り上げた、こういうのが、従来からの政府は尊重したというたてまえであります。しかし政府は、公務員に対しては法律を守れ、法律を守れと言うのですけれども、政府が代償機能である人事院の勧告の完全実施をしていない。法律を守っていないわけだ。憲法の精神と反しておるわけですよ。尊重したということで逃げられるわけでございますけれども、そういうことでは、綱紀粛正の問題も、高級公務員の問題等、小林章の問題もあるけれども、私はけじめがつかぬと思うのですよ。法律を政府自体が守らぬでおいて、そして管理職じゃ、やれ組合活動じゃといって、法律を守れ、守れと言ったって、これは労働者は納得しない。いずれはこの問題等を含めまして、また国際舞台で、青木議長には気の毒でありますけれども、議論になるような、そういう趨勢であります、公務員制度審議会の運営等。私は、この際たくさんの問題については議論をいたしませんが、人事院勧告は八月の十日にはあるというお話でありますが、これが完全実施について、最大の誠意をもってこれを実施をする。たとえば公労協その他におきましては、最近は時期等におきましては完全実施をされるようになったわけであります。この点については、公務員は、いろいろなハンディキャップがあって、おくれおくれておるわけであります。そういう点につきまして、納得できるような総理大臣の所見をこの際明らかにしてもらいたい。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 人事院の勧告は、従来から尊重する、こういう政府の態度でございます。これが実施につきましては、私は、誠意をもって善処する、こういうことをお約束いたしたいと思います。
  189. 大原亨

    ○大原委員 誠意をもって善処するという意味は、人事院の総裁も完全実施を要望するというふうに言われておるわけです、この席上でも。人事院が勧告したとおりそれを実施する、代償機能のそういう人事院の役割りを尊重してやるのだ、こういう点を、総理大臣は、はっきりともう少し具体的にこの際ひとつ決意を示してもらいたい。  それから永山自治大臣に、これに関連をいたしましてお尋ねするわけでありますが、いつも地方公務員が問題になるわけであります。財政上の措置については、地方公営企業を含めて、これは政府責任をもってやるべきであって、あなたのファイトをもって閣議において徹底的に主張しまくって、このことを実現してもらう、こういうことにつきまして、あわせてひとつ御決意を明らかにしてもらいたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、誠意をもって善処する。
  191. 永山忠則

    ○永山国務大臣 公務員に準じまして、これを必ず実現するようにいたします。
  192. 大原亨

    ○大原委員 とにかく、法律を守れ守れというふうなことを言って、きのうも荒木さんから熱心な議論がここでありましたが、私は、これを一つ一つ問題があるから議論したいのですが、遺憾ながら時間がないのです。これは大いに論争しなければならないのです。これはやはり将来国際問題にもなるし、あるいはドライヤー勧告もあることなんですし、ILOについては有権解釈はILO当局が持っておるわけですから、この問題については国際問題にもなるので議論したいのですが、とにかく、法律を守れ守れと言う政府が法律を守らぬというのは、これはだれが考えたって納得できぬですよ。秩序は立たぬですよ。かって過ぎる。これは権力政治と、こういうわけです。人権の否定、権力政治、こういうことです。そこで、この点につきましては、私は強く要望いたしておきます。  それで最後の問題でありますが、戦後補償の問題につきましてひとつお尋ねをいたします。  その一つは、在外資産の問題でございます。この問題は、審議会においては七月が期限でございましたが、これを二カ月延ばして九月までということになりました。私どもと同じように、政府は法律上補償義務ありというふうな——日韓会談の経過から見ましても、担保になっておるわけですから、そういう議論もありまするが、それに対しまして同調しない議論もあります。何はともあれ、政府はこれについて何らかの指貫をとるべきであるというのが、これは全員一致の意見であります。したがって、九月という時期も相当迫ってまいりましたけれども、総理大臣お尋ねをいたしますが、来年度予算の編成の中にこの勧告を実施するような、そういう決意、そういうものがおありであるかどうかという点をこの際明らかにしてもらいたい。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま審議会の審議も、報告といいますか、結論の出るのを待っている状況でございます。いずれその報告を、決定を得ました上で、これといかに取り組むか、十分慎重に検討したいと思っております。
  194. 大原亨

    ○大原委員 そういうばく然たる答弁でなしに、総理大臣、何かわけがわからぬことでなしに、私が言っているのは、政府は、安井さんが七月まで任期のあったのを九月まで延ばして、そして基本的な論争ももう大かた片がついた、その点について多数、少数意見はあるけれども、全員一致で何らかの措置をとるべきである。こういう段階にきて、四十二年度予算編成を迎えようといたしておるわけですから、この際私は、総理大臣がこの問題について——内容について私はきょう触れようとするのではありませんが、当然戦後処理の一つといたしましてなすべきではないか、こういう点を申し上げておるわけであります。もう少し誠意のある答弁を、メモだけ読むんでなしに、議論を通じまして誠意のある答弁をひとつしてもらいたい。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しますように、ただいま審議会が答申を出しておりません。これは結果を待っておる、いずれそれは出てくるものだ、かように考えておりますので、しかる上は、国民の納得するような処置をとることにいたします。
  196. 大原亨

    ○大原委員 それで次に、これは旧防空法関係についての議論であります。これは先般戦傷病者戦没者遺族等援護法が衆参両院に提案されましたときに私ども議論したところですが、私は、大切な問題で、事実についてこの際私がいろいろと調査いたしましてもわかりませんから、この点につきまして、ひとつ並んでおられる各閣僚において、あるいは政府委員において、この問題について的確な御答弁をいただきたいのであります。  昭和二十年の八月十五日以降、旧防空法関係の事務は一体どこに引き継がれたのであるか。内務省の防空本部、あるいは内務省の文書課、あるいは内務省解体後は総理府の内事局、そういうこと等が予想できるわけであります。これに関係のある官庁といたしましては、総理府、あるいは地方自治庁、あるいは厚生省等で旧防空法関係の事務をどこへ引き継がれたか、こういう点についてひとつお尋ねをしたいのであります。昭和二十一年一月三十日に防空法は廃止になっておるのであります。廃止になっておりますけれども、防空法の十二条で規定をいたしておりまする防空の実施と訓練に従事をいたしました死没者や傷害者、犠牲者に対しましては、扶助をするという勅令が出ておるのであります。この勅令につきましては、昭和二十一年一月三十日の防空法が廃止されましたときにも、附則におきまして残してあるわけであります。これは存置するということになっておるわけであります。もちろん時効がございます。一体、旧防空法関係の事務は、どの官庁に引き継いでおるのであるか、その一点につきまして、この際私が指摘をいたしました各省から、総理府、自治省、厚生省、警察庁の順にお答えがいただきたい。
  197. 安井謙

    ○安井国務大臣 旧防空法の関係につきましては、当時内務省の内事局に移管されて、内務省が解体いたしますと同町に、あと、引き継ぎというものははっきりいたしていないというのが実態でございます。
  198. 大原亨

    ○大原委員 それで、それ以上のことについて、内事局以後のことについて、各省において御承知であれば、この際ひとつお答えいただきたい。私はいろいろ調べましたけれども、なかなか協力を得られないわけであります。
  199. 安井謙

    ○安井国務大臣 あとは、これは戦後処理で、いろいろな爆弾を整理するとか、そういったようなものになりますが、これは大体防衛庁が中心になりまして、他の地方機関が共同してそういった操作や処理に当たっておるというような形になっております。  なお、被害者に対する補償制度というものは、今日御承知のとおり、国の補償制度というものは確立されていないわけでございます。
  200. 大原亨

    ○大原委員 安井さん、こういうことを言っておるのですよ、旧防空法の十二条に基づいて防空扶助令という勅令が出ておる。千五百円、千円、当時の金ですから、千円といたしましても四百倍では四十万円ということでありましょう。相当の金であります。しかし、防空法が昭和二十一年の一月三十日に廃止になりましてから、いまのように内事局から行くえ不明になっておるから、どこで扱うかということは、扱っていないわけであります。その点について調査してもらいたい、こういうことを私は申し上げて、今日まで調査いたしたのでありますが、なかなか協力が得られなかった。私の承知をいたしておるところによりますと、地方においては、警察関係の一部と一緒に、旧防空法関係、隣組関係を含めまして、これは全部資料を焼いちまえと、こういうふうな徹底をいたしました、やむを得ない情勢かもしれませんが、そういう指令が流れておって、全部これを破棄いたしておるわけであります。これは一々私はあげれば事実がわかるわけでありますけれども、扶助令という勅令が防空法の廃止法律の附則においてなお存続しておるのに、これが実施をされていない、放任をされておる。特に戦争のどたんばの八月六日、八月九日の広島、長崎の原爆投下以降は、全く国家の機能は麻痺状況になりまして十五日を迎えておりまするから、全然そういう扶助規定というものは実施をされていない。これは厚生大臣のほうで御研究になっておりまするならば、この点についてお知りの範囲でこの際事実を明らかにしてもらいたい。
  201. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいまお話しになりましたように、防空従事者扶助令というものがございまして、防火活動等に従事中に被害を受けた、けがをしたという場合に、これに対する補償、援護の措置がなされておったのでありますが、その後この業務が終戦後十分な完了を見ないままに終結をしておる、こういうことでございまして、先般援護法の御審議を願いました際に、衆議院並びに参議院の社会労働委員会におきまして、防空活動に従事した者のうち、原爆被爆地におけるものについての援護につきまして、特に特別な措置を講ずべきである、こういう趣旨の決議がなされておるのであります。私どもこの決議の趣旨を十分体しまして、鋭意この問題につきましての検討を進めておる段階でございます。
  202. 大原亨

    ○大原委員 安井さん、これはこの問題についてあなたに質問してもわからぬ。わからぬことはわからぬだろうから質問しませんが、当時、防空法によりまして、たとえば医者とか、看護婦とか、警防団員とか、そういうものには一々命令が出た。たとえば防空従事者という者、これは産婆さんとか医師でありますとか、防空法、特に扶助令の第二条に列挙してあるこういう人たちが出ております。そしてその職場を動いてはいけないという指令を受けたままで被爆をする、あるいは空襲を受けるということに相なっておるわけであります。当時の資料を全部破棄いたしましたものですから、それが残っていない。法律は附則において一部は残っておって、扶助令は残っておるけれども実施はされてないという事実が明らかになっておるわけであります。  そこで、私は厚生大臣お尋ねをするのですが、これは相当議論をいたしておりました。この問題は、附帯決議のお話もございましたけれども、防空従事者の防空実施に伴うこれらの被害というものは、公法上の被害であるか、国との関係において命令服従の関係における公法上の被害であるかどうかという点につきまして、現在における公務上の傷害死亡であるかどうかという点について、これは相当議論が煮詰まったものでありまするけれども、この点についてひとつお答えをいただきたい。
  203. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 防空活動に従事しております者が、防空法によって一定の計画のもとに活動をしておった。現実にそういう爆撃その他の災害にあたって、防空活動に現実に従事しておったかどうか、この事実を確認するという問題が、私はこの判断を下す場合におきましてきわめて重要な点だ、かように考えるわけであります。当時、戦時中におきましては、防空従事者の指定を受けない一般の国民におきましても、隣組の末端に至るまで防空活動に従事しておった、こういうような事実からいたしまして、一般の戦災者等との関係等をも考えまして、慎重にこの問題は検討を要する点である、かように考えるわけであります。ただ、衆参両院の社会労働委員会でこの問題をしぼりまして、原爆被爆地において防空活動に従事しておった者、これに対する援護の措置を十分検討すべきである、こういう御趣旨につきましては、私ども目下鋭意この御趣旨に沿うように検討を進めておるところでございます。
  204. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣総理大臣は、被爆の問題、救援の問題については、先般の予算委員会においても、昨年は三千数百万円かけまして調査をしておる、いま集計をしておる、こういう段階でありますが、その実態調査の結果を待って、やはり唯一の被爆地でもあるし、この問題は人道上の立場からも善処すべきである。援護の問題は、両院の決議もある、こういうことで善処を約されておりますが、これらの問題を含めて、この問題については十分熱意をもって取り上げていただきたい。これに対する御所見をお聞かせいただきたい。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 重ねて御趣旨を私は説明をいたしませんが、ただいま大原君の言われるとおり、この問題については両院の決議もございますし、その趣旨に従って十分誠意のある処置をいたしたい、かように考えております。
  206. 大原亨

    ○大原委員 最後に厚生大臣、いまの実態調査というのは、これは日本人が世界ただ一つの体験者であるわけでありますから、この実態を明らかにしながら、そして再びこのようなことがないように私どもは期さなければならぬ、こういうことはしばしば議論されたとおりであります。実態調査は、聞くところによると来年にかかるというようなことなんですが、中間報告を八月までにまとめて、できるだけこの問題等について国民にその事実が明らかになるように、政府もこれを十分究明されて、施策に反映をされるように希望いたしますが、これに対しまして御所見をいただきまして、最後の質問といたします。
  207. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 原爆被爆者の実態調査につきましては、昨年来これを実施してまいりまして、ただいまその調査の結果を集計をし、これの解析を進めておる段階でございます。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 この集計解析の結果は、明年六月ごろその結論が出る予定でございまして、その結果をもちまして原爆被爆者に対する援護の万全を期するように対策を進めていきたい、このように考えておるわけであります。  なお、中間報告につきましては、今年八月ないし九月ごろ中間報告が一応まとまるのではないか、こう思うわけでございますが、これをもとにして昭和四十二年度予算措置を講ずるというようなことは困難な事情にございまして、私ども明年六月の、全体の調査の結果の判明を待ちまして、十分な検討を加え、対策を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  208. 大原亨

    ○大原委員 以上質疑応答を重ねてまいったわけでありますが、いまやこれは予算編成に取りかかろうとしておるし、あるいは新経済計画を策定されつつあるときであります。私は、これらの議論を通じまして、いままで議論を重ねました問題について、政府は誠意をもって実行してもらいたい。社会開発とか人間尊重ということは、総裁に立候補するときのスローガンだけでなしに、政治の上に生かしていただきたい。これを私は強くここに要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  209. 福田一

    福田委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に小平忠君。
  210. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、民社党を代表いたしまして、佐藤内閣の当面の政治、経済、外交、防衛問題などについて、若干の質問を行ないたいと思います。  まず第一に外交問題についてであります。いまわが国外交が当面する課題は、ベトナム問題、中国問題をはじめ多くの難問題が山積しておりますが、今回は特に日本政府として緊急に行動を起こすべき二、三の問題に限定いたしまして、佐藤総理にその所信をただしたいと存ずるのであります。  先般のハノイ、ハイフォンの石油貯蔵庫、カムラン湾に対する北爆のエスカレートを契機として、また一昨十七日には北ベトナムにおいて三つの重大発表があり、その中でもホー・チ・ミン大統領の演説は、全国土焼土と化するも徹底抗戦の強硬なる声明であり、ベトナム紛争の戦火拡大が今日ほど憂慮されるときはないと存ずるのであります。私は、日本政府はこの北爆拡大の事態に直面して、昨日、本日の本委員会の質疑を通じ、総理並びに外務大臣答弁を承っておりますれば、この北爆もやむを得ないというような見解にうかがわれるのでありますが、この見解について、まず私はその理由と根拠をお伺いいたしたいのであります。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム問題は、ただいま日本が当面しております問題、もちろんいわゆる直接の関係者ではございませんが、当面しておる問題といたしまして非常な重大関心のあることでございます。したがいまして、私はしばしば申し上げたのですが、ベトナム紛争が一日も早く平和を招来するように関係各国が、直接関係する国々が話し合いに入るよううに、こういう私の率直な気持ち、同時にまたこれが日本国民の要望だ、かように考えますので、それを披露してまいりました。しかしながら、いわゆる北爆もだんだん激化された、こういうので、ただいま私どもが願っておる平和招来というのがまだまだ遠い、こういう感がするのであります。しかし今回の北爆、いわゆるハノイ周辺を爆撃したということ、これがいわゆるエスカレートした、こういうように見るべきか、あるいは在来からの北に対する爆撃とそれは同じようなものか、ただその範囲がいままで攻撃しなかった石油貯蔵庫、タンク等を爆撃している、こういうことですが、その中身はあまり私は変わったようには思わない。いわゆる南ベトナムにおける破壊分子に対する北からの応援体制、これを弱めるという、そういう意味の効果をねらった爆撃だ、かように思います。したがいまして、この機会に非常に変化があった、かように見ることはいかがかと思いますが、しかし、北側ではこれを非常に重大視して、そうして、ただいま御指摘になりましたように、重大声明まで発表しておる。その発表のしかたも、焼土と化すとも徹底的に抗戦する、最後の勝利を確信して徹底抗戦を呼号しておる、こういうことであります。しかし私は、こういうときこそ冷静であり、平静にこの問題と取り組むべきではないか、かように思いますので、過日の所信表明でもその間の私どもの憂慮を率直に披露いたしまして、どうか北側におきましてもいままでの行きがかりにとらわれることなく、この際はひとつ話し合いにつくように、こういうことをすすめたような次第であります。大国といたしまして、こういう際こそ平静であり冷静であることが最も要望されるのではないか。ことに、ベトナムに一日も早く平和を招来したい、かように念願すればするだけ、平静にまた冷静にこの問題を見たい、かように私は思っております。
  212. 小平忠

    小平(忠)委員 この緊迫した事態に対処して、総理が慎重に冷静なる態度をとるということは理解できるのでありますが、さらにこの北爆のエスカレートの事態に対しまして、中共は、米国が空と海から侵略してくる限り、われわれが地上から行けないことはないという発表を行なっております。これは暗に中共がベトナム紛争の直接の当事者になる用意があることを声明したものと注目すべき点であると私は思うのであります。同時に、ソ連並びに東欧諸国ワルシャワ機構が、義勇軍の派遣をはじめ、軍事、経済援助の方針を強力に行ち出してきたことは、ベトナム紛争が急速な勢いで拡大する様相を示したものであると思うのであります。特に中共の直接介入がかりに行なわれるならば、ベトナム和平のチャンスは遠のくのみならず、アジア全体の緊張は世界戦争の規模まで発展する可能性さえ秘めておるのであります。今回のアメリカの北爆拡大は、そのような導火線になりかねない危険な綱渡りであると私は思います。政府は、そのような危険なことは絶対ないと断言できない限り、やむを得ないというような態度は私はとれないはずだと思うのであります。すでにアメリカにおきましてさえも、この危険を察知いたしまして、ずいぶん自重論が出ておることは周知のとおりであります。このような事態に対処いたしまして、佐藤総理は、中共の直接介入は絶対にないのだということが断言できましょうか。もし断言できるならば、その根拠はどこにあるのかお伺いいたしたいのであります。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの状態からいわゆる米中戦争に拡大するという見方はいたしておりません。これは、数次にわたってアメリカ政府自身が、中共を攻撃する考えがないし、また中共自身も南に直接軍事行動を起こす考えはないという声明をしばしばしておるところであります。私どもは、ただこの両国の意向、その声明を信頼する以外には方法はない。私自身、日本がどうこうするのではございません。またアメリカ並びに中共のその意図、それは、ただいまの公式声明をそのまま信頼していく以外にはないのであります。そこで私が一番心配いたしますのは、確かにただいまのような激した状況であるというか、そういうことは見のがせないのでありますし、東欧諸国の言動等もなかなか活発なものがあります。しかして、こういう片言隻句、それを一々問題にいたしますと、私どもも冷静さを失いがちであり、慎重さを失いがちだと思います。こういうときこそ慎重に、また平静に事態の推移を見きわめることが必要だ、そして心から願っておる一日も早く紛争が終息して平和が招来される、このことを願うのみであります。そういう意味で、私は冷静に推移を見る、こういう態度でありたい、かように思っておるのであります。
  214. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、現在各種の情報判断からいたしまして、米国が北爆の強化によって一時的に軍事的戦果をあげたといたしましても、それによってアメリカがベトナムで完全勝利し、ベトナム紛争を終息させることは不可能だと確信いたしております。また半面、共産側の軍事的一方的な勝利もまたしかりであると思うのであります。私は、ベトナム紛争を終息させる唯一の手段は、どちらかの軍事的勝利によって決定されるものではなく、これは、ただいま総理もおっしゃいましたようにやはりお互いが、この点はなかなかめんどうではありまするけれども、現状維持を認め合う和平の話し合い以外にないと考えるのでありますが、この点は、総理の所見はいかがでございましょうか。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま小平君が御指摘になるように、私もこれが一方的な勝利といいますか、あるいは相手方を打倒し尽くす、とこういうような形でおさまるとは思いません。問題は、すでに南ベトナムあり、また北にも一つの実力がある、こういう状況でありますから、ジュネーブ会議等におきましても、十七度線を境にしてお互いに軍事行動をやめようじゃないか、こういうような話し合いまでもあった経緯がございます。そういう関係等から見、また今回のベトナム紛争の実態を見ましても、これが宣戦布告をしてただいまのような紛争が行なわれておるとか、争闘が展開されておるとか、かように私は思わないのでありますから、ただいま申し上げますように、どういうような形でこれが終息するか、おそらくただいま小平君が御指摘になりますように、お互いにその立場を尊重するようなことに気がついて、話し合いが行なわれて、そうして平静に帰すのではないだろうか、かように私も思います。しかし、いずれにいたしましても、いまの状態では相当長期にわたってこういう状態が続くだろうと見られますが、日本その他の諸国におきましても、一日も早く平和が招来されることが望ましいのでありますし、またそういう意味の努力が払われなければならない、かように私は思う次第であります。
  216. 小平忠

    小平(忠)委員 平和の招来、それは話し合いだ、いわゆるその話し合いの和平がベトナム紛争解決の唯一のきめ手であるといたしまするならば、その条件をつくり出すことに日本は積極的な努力をすることが、今日、私、日本外交の使命でなければならないと思うのであります。しかし、和平の条件については、アメリカ側の条件と北ベトナム側の条件、これはまっこうから対立いたしております。日本がほんとうに自主的な立場から和平を求めようとする場合には、どちらか一方の条件を支持するだけでは、ただいま総理もおっしゃいましたように、これは真の問題の解決に寄与するのではないのであります。そこで日本政府としては、和平の条件についてどのようなことが今日最低必要なりとお考えかどうか、総理の見解を承りたいと思います。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんむずかしいお尋ねであります。私は、もしみんなが納得がいくようなそういう条件があれば、もう直ちに和平が招来されただろうと思いますが、しかし、なかなか今日まで効果をあげておらないのであります。ことしの初めに椎名外務大臣がモスクワに参りました。またそれ以前も、ソ連側のいろいろの意向を私どもが聞いてまいりました。その際に申しますことは、ソ連は直接の当事者ではないんだ、これは実ははっきりさように申しておるわけであります。また日本についていろいろの、日本政府はどうするんだというようなお話がございますけれども、私どもも直接の当事者でないこと、これはお認めだ。ただアジアにいる日本として、アジアにおいてベトナム紛争というものが長期化するという、これはたいへん耐えられないことだ、そういう意味で、どうか何とか話し合いをして、そうして和平を、平和を招来するように、こういって願っておるわけであります。そこで、ただいまもその和平が、南北、これが対立しておる。一方に軍配をあげるわけにはいかない、かようなことでございますので、私が申しておるのは、とにかくいろいろのいきさつはあるだろう、過去にこだわらないで、この際はひとつお互いに平和を願うという、そういう立場に立って話し合いの場について、そして、今後どういうようにすれば真に恒久平和がもたらせるか、ベトナム民族にとりましてどうすれば一番しあわせか、それは、そのテーブルについたところできめていただきたい。事前から条件条件と申しますと、これはどうしてもかたくなになりますから、それこそ話し合い、そういうところで十分相談されたらいかがか、かように私は思っておるのであります。
  218. 小平忠

    小平(忠)委員 アメリカも北爆の徹底強化、また北ベトナムの徹底抗戦、こういうことについて日本政府の見方はどうかということで、平和を望むけれども、この事態はやむを得ないというような段階では私はないと思う。ただいま総理もおっしゃいましたように、具体的に和平の方向を望むならば、やはりさらにもっと突き詰めた現状分析が必要だと思うのです。私はもとより現在のベトナム紛争の本質が、毛沢東戦略の中核である人民解放闘争に深く根ざしておるということは否定しようというものではありませんけれども、その意味で、一部の容共勢力が言うような、この紛争がアメリカの侵略戦争だという見方には同調できないのであります。しかし、この人民解放闘争をたたくために、あくまで軍事力によってこれを阻止するという方式は、やはり問題の基本的な解決にはならないと思うのであります。それは、やはり逆に紛争をいたずらに長期化する、逆にまた、その間に地域住民の自由と平和に対する希望を失わしめて、貧困と大国に対する不信感を増大せしめて自暴自棄に追い込むことによって、革命条件の整備に絶好の条件を与える結果になると私は考えるのであります。これこそがやはり毛沢東の持久の戦略の真髄であり、軍事偏重政策は、その道程への突入を不可避にすると私は考えるのであります。だとするならば、われわれのとるべき道は、まず北爆をはじめとする戦禍の拡大をあらゆる面でチェックし、和平への道を一刻も早く見出す努力を傾注をすることであると思うのであります。しかしこの点において、遺憾ながら今日までの日本外交の姿を見ますると、その努力を完全にしているかどうか。この点は、佐藤総理が、常にアジア外交を推進するあなたの従来の姿勢から見るならば、われわれとしましては実は不満であります。戦禍の拡大もやむなし、そして自主性を欠いた態度に終始して、アジアの一国としての責任と使命を放棄したような感じ方が、やはりどうしても一般国民に見受けられるのであります。したがって、私はこの際、佐藤総理はベトナム和平に対しまして日本の自主的な行動を今後どういうふうに求めようとするのか、そういう積極的な和平の行動を起こす余地がないのか、やはりもう少し自重し静観するという考えなのか、その点をもう一度突き進んでお伺いしたいと思います。
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、今回のこのベトナム紛争が米国の侵略戦争ではないと言われたこと、これは私も賛成であります。侵略戦争ではない、人民解放戦線だ、こう言われて、いかにも紛争を是認するかのように言われたように私聞き取ったのですが、この人民解放戦線そのものが実は問題なんではないか。私がしばしば申し上げておるのは、人民解放戦線だろうが何であろうが、とにかく南の破壊分子、この破壊活動をしておる分子に対する北からの声援、これはただ声だけではなく支援、そういうことが問題を巻き起こしているんじゃないか、こういうことを申しておりましたので、これを今日もなお私は訂正する考え方は持っておりません。やはり民主主義革命、これは平和のうちに、平和の手段によって行なわれるんなら何をか申しませんが、いわゆる破壊分子、破壊活動によってそういうことをなし遂げようとする、これは私どもの賛成のできないものであります。この点が一つの問題だと思います。それはともかくといたしまして、ベトナムに紛争のあること、これは現実の問題であります。これを、その理由のいかんを問わず私は賛成するわけにいかないので、そこで、平和を一日も早く招来するようにと心から念願をし、また平和招来をするような方向において努力してまいったと思います。  ただいま戦火の拡大、これをやむなしとして承認することは是認できない、かように言われますが、私は戦火が拡大をする、かようには考えておらないと先ほどのことを申したのであります。これが無差別爆撃に変わるとかいうようなことになれば、これはもう確かに戦火は拡大する。あるいは十七度線を越えて、そうして陸海軍が侵入していく、こういうことになると、それこそ戦火の拡大だと思います。しかしながら、いままでも北からの支援、その力を弱めるという努力がなされておりまして、そして、それが限定的に、いわゆる軍事施設あるいは軍事物資の集散、そういうところへ目が向けられている限り、今度新たにハノイ付近において行なわれたと申しましても、これは量的な問題として変わったということは指摘できましょうが、質的には私変わっておらない、こういうことを先ほど来から申し上げておるのであります。そこで、その質的な変わりがない、こういう状態だから、ただいまの拡大もやむを得ないのだ、こういうような結論に私はなっておるのであります。それで、どうか北側におきましても、その強い話もさることですが、とにかく平静に、冷静に事態を見きわめて、そうして平和招来への努力をしていただきたい、かように念願するのであります。  日本の国が自主的に行動すべきだ、かように言われておりますが、私は、どこからも日本政府考え方について拘束を受けておりませんし、また干渉を受けておりません。私は、日本は自主的にただいま行動をしておると思います。どうか小平君にも御了承いただきたいことは、私どもが直接の関係者じゃないんだ、ここは何だかいかにも直接の関係者であるかのような錯覚を起こしやすいんですけれども、ベトナム紛争については、私どもは直接の関係者ではない。しかし、アジアにいる国として、アジアにおいて現実に紛争が展開されておる限り、私どもはその紛争について関心を持たざるを得ない。それで、関心を持った結果が、一日も早く平和を招来するように心から願っておる、またそういう意味において、外交におきまして、あらゆる機会にこの平和達成への協力といいますか、そういうことをしておるというのが現状でございます。
  220. 小平忠

    小平(忠)委員 ベトナム紛争がわが日本にとって直接関係があるかないかの問題は、これはさらに次の論議を進めてみれば総理理解できると思うのでありますが、いずれにしろ日本がアジアの先進国として、このベトナム問題は、直接の当事者であろうとなかろうと、これはきわめて重大な問題でありまして、日本国家としてすみやかに和平を望むのは、日本民族として当然であります。そういう意味から、私はただいまの総理のお考えをさらに一歩前進いたしまして、今日のような事態に当面いたしますれば、もう佐藤総理としては、あなたが常にアジア外交を主張される以上、ベトナム和平のためにいまこそ具体的な行動を起こすべきだと私は思う。私の分析では、アメリカも北ベトナムもあるいは中共も、お互いが強がりを言っておるときこそ和平の芽があると私は思うのであります。またそれを看破することが日本外交の真髄でなければならないと思うのであります。みずからはベトナム紛争を拱手傍観し、第三者的立場に立って、アメリカに一定の提言をすればそれでこと足れりという態度は、日本外交の使命放棄であると思います。少なくともこれまでの日本外交は、その域を一歩も出ていないと思います。いまこそ日本外交はベトナム和平に対して、静から動に転ずべきだと私は思います。佐藤総理の所見はいかがでございましょうか。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで日本が崇高な平和への理想を持ち、またそういう意味で行動したにかかわらず成果があがらなかった、椎名外務大臣、あるいは横山特使等々の努力もそう実を結ばなかったし、また今回もラスク長官をはじめ、その他の方々が見えたので、そういう機会にこそ日本として日本の宿願を率直に話すときだ、かように考えて、これもいたしたのであります。しかし、私どもは、別に北側を責むるわけでもありませんけれど、北側におきましても、あまりいままでのいきがかりにとらわれることなく、やはりこの際は冷静に私どもにも耳をかしていただいて、そうして平和への道をはかるべきだ、かように思うのであります。そこで、こういう事柄はチャンス、そのチャンスをつかまないとうまく話はできるものではない。幾らいいことを考えましても、その時期でないとこれは実を結ばない。私は、いままでのところはチャンスが来ておらない、かように思ったのであります。しかし、ただいま小平君の説では、双方においてなかなか強い発言をしている、そういうときこそ一つのチャンスではないか、これは和平を切り出すべきもっともその好機だと思う、こういう際にこそ努力すべきではないか、こういうことも私は一つのりっぱな御意見だと思います。私どもは、そういう意味におきまして、あらゆる機会を無にしないように努力するつもりでございますので、いま小平君が積極的に、また端的に御議論なさいました、ただいまその時期だ、かような御指摘については、十分政府においても検討してみたいと思います。
  222. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、せっかく政府が十分に検討をする、佐藤総理自身が検討されるというのでありますれば、特に民社党としてここに一つの提案、提言をいたしたいのであります。  それは、日本立場が直接のベトナム問題に対する関係国、当事国でないにいたしましても、先ほどから質疑をかわしておりまするように、きわめて重大な段階にあることから、私は、日本政府はやはりこの辺でベトナム和平のために、静観あるいは傍観でなく、積極行動を始めるということだと思います。もとより現在置かれておるわが国の立場からいいますと、その積極行動ということが直ちに効果があらわれるかいなかということは、これは別であります。しかし、その効果のいかんはともあれ、アジアの紛争解決に日本が行動をもって努力をするということは、アジアに位置する日本の使命だと私は思うのであります。すでに英国のウィルソン、フランスのドゴール、あるいはインドのガンジー首相は組閣早々であり、御承知のような食糧危機の中にありながらも、しんぼう強くすでに行動を起こしているのは周知のとおりであります。したがって私は、この際日本政府としてベトナム和平のために、重ねて申し上げますが、積極的な行動をとるということであります。その積極行動とは、率直に申し上げますれば、いわゆる首相外交であります。単に横山特使を派遣するとか、その程度のものでなくて、やはり総理みずからがこの和平に乗り出すということだと思います。ただいま申し上げましたように、すでに西欧では、ウィルソンやドゴールはもうみずからベトナム和平に献身的な努力を内外に示している、そういうときに、アジアの先進国たる日本総理がこのベトナム和平にみずから行動を起こすということは、むしろ時期がおそいぐらいであります。したがって、この首相外交、総理みずからが和平に乗り出すということについて、総理、いかがでございましょうか。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たとえばいまのお話の首相外交という、特に総理でということですが、直接交渉することもありますし、また有能な外務大臣がやることもあります。その辺の行き方は、ひとつおまかせを願いたいと思います。ただ、先ほど来お話がありますように、その時期、チャンスがひとつ必要だ、こういうチャンスのつかみ方が問題だ、またそのつかみ方も、国家を真に代表する、あるいは相手方を説得するだけの力がなければならない、そういう意味で、いまの首相外交ということはそういう意味だろう、かようにとるのでありますが、ちょうど幸いなことには、過日、日米経済合同委員会が開かれ、ラスク長官が訪日しました。また、近くはグロムイコソ連外相も見える、こういうことでございます。ただいまアメリカ側の考え方については十分な話し合いもできているし、またこの問題について一つの大きな役割りを果たすであろうとだれもが想像するソ連の外相を近く迎えるのであります。こういう機会にこそ私どもの考え方を率直に話をすることが望ましい結果を生むのではないだろうか。なかなか事柄が事柄だけに、そう簡単なものではないと思いますけれども、しかしたいへんいいチャンスだ、かように私思いますので、あらゆる機会にあらゆる努力をする、こういう意味でこのチャンスも使いたい、かように私は考えております。
  224. 小平忠

    小平(忠)委員 かような意味で、先般の京都における日米経済委は、私は特に総理とラスク国務長官の長時間にわたる会談、きわめてこれは時宜を得たことだと思うのであります。会談の内容は、本会議でもまた本委員会でも前者の質問を通じて総理答弁されておりますから、あえて外交上の秘密をここで私はお伺いしようと思いません。しかし、ただいま総理は、小平君から言われるまでもなく、また民社党から言われるまでもなく考えているんだ、積極的な和平の行動についても考えているのだというように私はとりました。同時に、総理みずから行動を起こさなくても、やはり総理にかわるべき人物、これが首相外交を行なう前提としてのレールを敷く意味かららも、総理はいま含蓄のある表現をされたと思うのであります、すなわち、その人選についてはまかしてほしいということばがありました。したがって、ただいまの総理答弁から見まして、総理は近くチャンスを得て、総理みずから行動を起こさなくても、総理にかわるべき大ものが直接和平の行動に出るというように私はいま解釈したのですが、いかがでしょうか。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あるいは誤解があって、非常に積極的にとられますと困りますが、とにかくこの種の問題は、政府が、もちろん国を代表して交渉します、またそういう意味では、政府も事態の推移についてさらに真剣に、また慎重に取り組むべきだ、かように思いますが、この点では、小平君からも御指摘があったように思います。またこの種の問題は、ただひとり政府だけの問題だ、かように考えないで、これはやはり国民全体からそれぞれの触角があり、触手がありますから、どうか各界、各層におきましても、アジアの平和、ベトナム紛争の終息、それにはどういうような道があるか、これは皆さんとともどもに私は考えていきたい、かように思いまして、先ほど来のお話もたいへんありがたく拝聴いたしたわけであります。  そこで、今後もこの種の問題は続くだろうと思いますが、ただいま私がお願いをするもの、これは御趣旨に沿うかどうかと思い、迷っておりますけれども、近くグロムイコ外相が見えるのだから、このソ連と話をする機会が持てるのだ。これもやっぱり本国でなければいけない、こういうことも言われるかわかりませんが、少なくともこういう問題についての一つのチャンスといいますか、そういう動きというか、これは、こういう機会につかめるのじゃないだろうか、かように私は思いますので、十分意を尽くして話し合っていきたい、かように思うのであります。ただ、私がかように申したからといって、この機会に特定の人を選定いたしまして外国に派す、こういうところまでは考えておりませんから、その点の誤解のないように願いたいと思います。
  226. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいま総理が、近くソ連のグロムイコ外相来日されて話す機会を得たい。私は、この点は先般ラスク長官が来日機会に話をした。ソ連との話も、グロムイコ外相来日機会に話をする。これでは総理、やはり意味がないのです。あなたは当面の外交問題も重要であるが、内政問題も大事だという見地に立って、臨時国会閉会後直ちに大幅な内閣改造を断行して、すみやかに佐藤体制を確立したいという意思はわかります。私は何もいま直ちに明日でもということではないのであって、このような問題は時期を失し、チャンスを失うということは意味がないんだ。だか前々から、通常国会が終われば、秋に外遊をするというお話があります。これも年中行事の外遊に出かけていって、ベトナム和平の話をするというのでは意味がない。わざわざやはりベトナム和平のために出かけていくというぐらいの考え方——ですから、それは十分なる打ち合わせ、総理として激務がありましょうけれども、やはり総理みずからこの際アメリカに飛んで、ジョンソン大統領とこの緊迫したベトナム問題について話をする、ソ連におもむいて話をする、さらに東南アジアの諸国についても、もし総理みずから行って悪いところは総理にかわるべき人物を派遣する。与党でぐあいが悪ければ、あるいは場合によっては野党の人にも話をする、民族の問題と平和の問題ならば、党派を越えてやっていただきたい。私は、わが民社党ならば、総理の和平に対する情熱、熱情があるならば、あえてきん然協力する用意があると思います。したがって私は、単に外国からお客さんが来る、その機会に話をするというようなことでなく、もっと積極的なお考えがほしいと思う。もし総理自身がいま行動を起こすのがぐあいが悪ければ、首相外交のレールを敷く前提として、総理にかわるべき人物を派遣してはどうですか。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん熱意のこもった御提案でございます。また私もそういう意味で鞭撻を受けていると思います。私がただいま申し上げるように、じっとすわっていてその機会を待っている、こう言うのではございません。しかし、幸いなことには、ラスク長官が来られ、またグロムイコ外相も見えるのであります。これこそたいへんしあわせなチャンスでございます。そういう際に十分話をする、これがまず第一の問題だ、かように思っているので、先ほど来から申し上げておる次第であります。しかし、さらにお話を進めて、いろいろ具体的な御提案、御指示等がございますけれども、これらについてはまた私も十分考えてみたいと思います。熱意がないわけじゃございません。これは私、しばしば申し上げますように、非常な熱意をもってこの問題と取り組んでおりますが、まだ小平君が言われるように、今日がたいへんいい時期なりやいなやという判断も十分しなければならないことでもありますし、具体的にいかなる行動をとるか、これはしばらく私どもに研究さしていただきたい。
  228. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、先般の佐藤・ラスク会談において、ベトナム問題をいかように話し合われたか、それは外交上の機密としてこの席で総理は述べられない問題はあろうと思う。しかし、極秘事項に関する問題は別として、その基本的な姿勢くらいは、総理いかがでしょうか、お話しいただけるのじゃないでしょうか。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、わが国の基本的態度、これは十分お話しをし、皆さま方の御了承を得た、かように思っております。また、少なくとも先ほど来から申し上げておりますので、日本の平和に徹している、また民族的な願いというものは、これも小平君と考え方は変わってないだろう、かように思います。私がラスク長官と会いました際に、私が申し上げましたように、ベトナムばかりじゃございません、沖繩の問題も話しましたが、ベトナム問題について日本国民的感情並びに日本の国として要求すべき点、これらは遺憾なく十二分に申し上げた、こういうことを実は披露いたした今日でございます。私は、どういうような話し合いをしたとは申しませんが、ただいま述べるべき事柄、こちらからこれだけは言っておかなければならないと思えるような事柄は、十二分に言い尽くした、かように思っております。
  230. 小平忠

    小平(忠)委員 佐藤・ラスク会談の内容について、あえてここでさらにお伺いをしようとは私は思いませんけれども、これは外交上の秘密として総理も厳に口をかたくされて、それは発表をしないでございましょう。しかし、総理がどういう話をされたか、ラスク長官がどういう話をされて、そこで総理としては、かくかくのことはこういうふうにやろうとか、この点についてはこういう方針でいこうとかいうようなことは、総理が話をされなくとも大体われわれのところでわかっておるのです。  ただここで、ラスク長官と佐藤総理が話し合ってこうだから、いわゆる外部の中傷によって行動する、動くということは、日本外交のとるべき立場ではないという見地から、私は、冒頭からアジアの問題は、特にベトナム紛争は、日本外交の自主的な観点から行動を起こすべきだということを申し上げておるのであります。したがって、先ほど総理は、やはりそのチャンスが一番大事だということをおっしゃっておられるから、総理の腹はもう固まっておると思う。この点について、貴重な時間でございますから、私は最後に重ねて申し上げますが、われわれは総理みずからこの問題について行動を起こすべきだ、その起こす前提として、総理にかわるべき人物を特派大使として関係国に送り、積極的な和平工作に乗り出すべきだということを私は強く総理に提言をいたします。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小平君の提言、これはたいへん貴重なる提言だ、かように私も考えておりますので、ありがたくお礼を申し上げておきます。
  232. 小平忠

    小平(忠)委員 第二の問題は、今後の中共対策であろうと思います。今後の中国の動向は、ベトナム紛争の解決はもとより、アジアと世界の平和の明暗を決する重要問題だと私は思うのであります。中国に対する従来のわが国外交の是非は、わが国の安全とアジアの緊張緩和に深刻な影響を与えておるのであります。特に問題の核心は、中国をしていかに今後ソ連並みの共存路線をとらせるかということだと思うのであります。そのためには、ただ単に中国に対して共存への転換を求めるのではなくて、中国をして共存の方向をとらせる日本外交の具体化が必要だと思うのであります。その意味で、わが国としては、まずわが国自体が中国との共存の原則を確認し、政経分離のワクをこえて、中国に対して門戸を開放する政策を大胆にとらなければならないので、その点について、まず佐藤総理の中国に対する現時点における基本姿勢をあらためてお伺いしたいのであります。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、日本のあり方といたしまして、いずれの国とも仲よくする、これが私が国会の本会議その他において説明いたしたところであります。このいずれの国とも仲よくする、そのためにお互いに独立を尊重し、また内政に干渉しないことにしようじゃないか、こういう提案をいたしておるわけであります。ただいまは中共そのものに共存主義をとらせるというような表現をされましたが、私はとらせるというような表現はいたしませんけれども、中共政府自身も日本考え方日本立場理解していただくならば、私は共存の原則が必ずとられるものだ、かように理解をいたしているわけであります。どうも今日みずから求めて孤立政策をとっているのじゃないか、かような心配をいたしておりますが、これはただ単に隣国中共に対して私が憂慮しておるばかりか、各方面でもそういうような批判があるのではないか、かように私は思いますので、この共存の原則、お互いにそういう方向で国を進めていくこと、これが望ましいこと、これはもう申すまでもないことであります。
  234. 小平忠

    小平(忠)委員 そこで、現在米ソの共通した利害は、中国の封じ込めであろうと思います。それは軍事、経済の両面において確かにきびしさを増しておると思うのであります。日本またこれにならっていきますならば、中国の脅威をわが国はまともから受けるということになり、同時に、アジアの緊張緩和は逆に望むべくもないと思うのであります。いまアメリカは中国に対して徐々に柔軟な態度をとりつつありますが、その本質がいわゆる孤立化なき中国封じ込めの政策にあると思うのでありまして、佐藤内閣はこのアメリカの中国封じ込め政策を支持するのかどうか。それとも、中国とは共存という立場に立って、政治経済の両面において共産中国との接触交流を増大して、今後の日本の基本策として進めていくというのであるか。最近アメリカが、中身は変わらないけれども、非常に巧みな表現を使って中国に対する態度を変えようとしております。この点について総理の見解はいかがでございましょうか。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、封じ込めあるいは孤立化政策をとっている、これは少し言い方がオーバーじゃないか、かように実は思っております。アメリカ政府といろいろ交渉いたしましても、ジョンソン大統領も、日本の独自な行き方、いわゆる政経分離で中共政府とつき合うこと、これは認めざるを得ない状況だ。また昨年末ハリマン特使等が来ました際も、いろいろ話をしてみますと、いわゆる封じ込め政策あるいは孤立化政策というのはオーバーな表現のように聞き取れたのであります。アメリカ自身はそうかたくなな政策をとっておるようには思えません。また、きわめて最近でありますが、ジョンソン大統領の記者会見等におきましても、よほど弾力のある行き方をしている。したがいまして、ただいま共存政策に踏み切るなら、今後の中国のあり方等につきましても、私どもも考え方をはっきりさすことができるのじゃなかろうか、かように思うような次第であります。
  236. 小平忠

    小平(忠)委員 決して封じ込めということばはオーバーではないのです。しからば具体的な事例として申し上げますならば、先般の日米経済委で、アメリカ側は中共に対する長期信用供与には反対の旨をはっきり言明しておるのであります。これは共同声明にもはっきりうたっておる。私はこのアメリカ側の意向はわからないわけじゃないのです。しかし、日本には日本立場があるはずであります。したがって、日本政府としては、アメリカ政府の意向のいかんにかかわらず、独自の立場に立って、今後の中共貿易にあたって、輸銀の使用あるいは長期信用供与の実行などを行なう、こういうことについて意思があるかないか、私は総理の所見を承りたいと思います。
  237. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共に対する長期信用の問題でございますが、これは吉田書簡発出の当時は、たまたま日本の経済政策上の方針に合致したわけでありますが、しかし、情勢の推移によって、経済政策上の方針などというものは、本来は柔軟な態度で適宜改変すべきものであろうと思います。そういう意味におきまして、長期信用の改策に絶対に踏み切らないというような考え方はいたしておりません。
  238. 小平忠

    小平(忠)委員 やはりそこが問題です。最近アメリカにおいても、共産諸国に対する禁輸品目を緩和する用意があることが明らかにされておるではありませんか。現にココムリストについては、イギリス、フランスの諸国においては公然と破られておる現状です。にもかかわらず、日本だけがアメリカの意向を体してこれを忠実に守っている。しかし、この点は日中貿易の拡大ということにとっては非常に大きな障害になっていると私は思うのであります。なぜアメリカのみの顔色をうかがってこのようなちゅうちょした態度をとっておるか。なぜもう一歩前進できないのか。私は、この点は——通産大臣は見えていませんか。
  239. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三木通産大臣がかねて言われておりますことは、できるだけ西欧並みの貿易をしたい、そうして延べ払い等についてはケース・バイ・ケースでやっていくのだ、こういうことを三木通産大臣としては言われておるので、私、臨時代理としては、そのことを申し上げて答弁といたします。
  240. 小平忠

    小平(忠)委員 私は率直にこの際申し上げます。佐藤総理は、アメリカに対しましても、共産圏に対する禁輸品目の大幅緩和をやはり提案すべきだと思います。そのことが今日日中貿易の幾多懸案となっております問題解決の近道だと思います。いかがでしょうか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ココム、それは最近の技術の進歩等によりまして、また過去におきまして、これが軍事に使われる、こういうようなこともありましたが、それはよほど変わってきている。そういうような意味でこのココムのリストを改正するということ、それはちっとも差しつかえないことだし、また、そういう意味で日本もそれをやはり会議において述べております。ただいま言われますように、まだ追加するものも案外出てくるかもわからない。これなどは最近の原爆、水素爆弾とか核兵器の発達による等、ココムリストそのものにやはり近代的な修正を加えるような時期にきているのだ、かように私は思います。私は、その意味におきまして、いわゆる平和的な経済交流、これは望ましいことですが、ただいまのような核武装、そういうことに関係のあるようなものについては、これは厳重になってもしかたがない、かように私は思っております。  先ほど封じ込め云々について議論いたしましたが、私は軍事的な膨張政策に対してはよほどアメリカもはっきりした態度をとると思いますが、しかし、経済的な問題については、軍事的な問題でとるような厳格な強い態度はとっておらない、かように思うのでありまして、それは私は、封じ込め政策というものについても、ややオーバーではないかと言うのは、そういう意味の表現でございます。誤解のないように願っておきます。
  242. 小平忠

    小平(忠)委員 総理の常に言う政経分離の考え方は、今日ではやはり一歩前進した考え方をとるべきだと思います。  次に、今日中国の最大問題は、国連における代表権の問題。世界の大勢は、自由陣営のイギリス、フランス、カナダの動向を見ましても、北京政府に国連代表権を与える方向に着実に前進していると思います、この問題は、今秋の国連総会でどうなるかは別としても、私はおそらく時間の問題であろうと思います。このときにおいて、日本政府が先般の日米経済委で相変わらず重要事項指定方式を米国との間に再確認したということは、私はまことに遺憾だと思うのであります。それはともかくとしまして、この大勢に処して日本がこの際はっきり決意ないしは腹固めをしておかなければならぬ問題は、台湾問題だろうと思います。私は、この問題を一つの中国論、二つの中国論、こういった形式的な抽象論で片づけるべきでないと思います。それは、あくまでも日本、アジア、世界の平和、安全にとっていかなる解決が望ましいかという見地に立って答えを出すべきだと思うのであります。この点に対しまして総理の所見いかがでございましょうか。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中共の国連加盟、同時にそれが代表権問題、これはなかなかむつかしい問題でございます。小平君はこの国連代表権問題を割り切っておられるようですが、私は割り切れないところに今日の悩みがあるのだと、かように理解しております。そういう意味でとつおいついたしておるということであります。申すまでもなく、国際情勢は流動的でありますから、その流動に処して、そして間違いをしないようにする。そのためには政府としても一そう慎重ならざるを得ない。ましてや中国の代表権問題だ、かように考えますと、これに慎重であるのは当然なことである、かように私は思っておりますので、京都の会談の詳細は知りませんが、その後椎名外務大臣が発言しております事柄はしごくもっともだ、かように私は思っております。
  244. 小平忠

    小平(忠)委員 総理のそのような御答弁でございますと、やはり完全に逃げておるのです。私は、中国問題に対していまのような逃げた答弁では、結局中国問題に対する答えはないということになると思うのです。  北京政府の国連代表権承認の問題が時間の問題であるというのであるならば、その場合の台湾の処遇策は私は次の二つしかないと思う。その一つは、台湾問題は単なる中国の内政問題だとして、北京政府の国連代表権の承認とともに中国の内政事項にゆだねて、台湾の議席を消滅させるという方向一つであります。二つは、北京政府の国連代表権が実現する段階において、台湾の議席はこれを暫定的に確保して、その後の台湾の地位については、台湾住民の自決にまつ方向であると思います。この二つの方向しかないと思う。だから、この二つの方向について、総理大臣は、現在の時点においてどちらがベターだと考えられるのか、それとも、それは言えないとおっしゃるのか、いかがでございましょうか。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、私どもは台湾にある国民政府と条約を締結し、そして修好関係を結んでおります。お互いに大使も交換しております。そういう状況のもとにおいて私どもが条約上の義務を持つ。権利もありますが、同時に義務を負っている。このことははっきした事実であります。ただいま御指摘になりましたような点については、私はその観点からこれを判断するということにしたいのでございまして、条約上の権利を持つと同時に条約上の義務がある。したがいまして、それに反するようなことは、私ども考えてないというのが私の結論であります。しかして中国問題は、先ほど来申しますように、国際的に流動しておる、こういう状況のもとにおいて私どもがあやまちないことを期する、こういう意味において慎重ならざるを得ないと、かように申しておるのでございます。
  246. 小平忠

    小平(忠)委員 これはあえて佐藤内閣の内部の問題でありますけれども、外務省の大勢は一つの中国、一つの台湾、これ以外に中国問題の円満な解決はないという意向が強まっておることを総理は十分に念頭に入れられまして、すでに時間の問題でありますこの問題について、そう逃げ腰ばかりでなく、善処されることをここに切望いたします。  次に、貴重な時間でありますし、今朝来相当長い時間を費やしておりますので、総理も閣僚もおくたびれでございましょうが、あと重要な事項がありますので、ごしんぼう願いたいと思います。同時に、私も端的にお伺いいたしますから、簡潔に御答弁いただきたい。  次に、私は、本臨時国会の開会の性格から、やはり総理の所信表明に対して質問する範囲も拡大すべきでないと考えている。ただ先般通常国会終了直後に起きました米価問題は、確かに大きな一つ政治問題化されたことであります。この点について、私はここで、すでに本会議、本委員会で論議されたこの終末の段階で、米価算定の内容あるいは算定方式、基準等について、所管大臣たる農林大臣に十分お伺いしたいと思いますが、まず総理に、私は、この米価問題に対する基本的な姿勢、考え方をお伺いしたいのであります。  率直に申し上げて、今回の最終的に閣議決定を見た百五十キロ当たり一万七千八百七十七円、これは政治米価であります。前年の一万六千三百七十五円に千五百円アップした一万七千八百七十五円というこの価格を総理は裁断できめた。計数整理をして一万七千八百七十七円に最終的にきめたのであるけれども、これは完全に政治米価であります。先ほどの角屋君の質問に対しましても、総理はそのように答弁された、私はそう思うのです。同時に、当初米審に諮問した一万七千四百八十四円というこの数字に三百九十円のいわゆる計数整理、調整費、この問題も、あるいは稲作の増産奨励費としての五十億の問題も、これは結局いわゆる政治配慮——私は率直に申し上げて、この五十億についても、米価に算定しないのならば、これが政府と与党の単なる協定、取引であるならば、この国会で、五十億をきめたなどと私は発言すべきでないと思う。五十億をきめたとおっしゃるから、先ほど中澤君から、それは財政法二十九条の違反ではないかという問題が出てくるのです。国会で五十億を出すと言うのなら、米価に算定すべきです。米価に算定することによって、自民党、与党議員の一万八千円というラインに近づくことによってそれが了解できるなら、五十億を本年買い上げ数量四千七百万トンに比較いたしますと、一石当たり百五円という数字が出るから、ちょうど一万八千円です。それをめんどうなことをしてやりくりするから、結局以上のような苦しい答弁になると私は思うのですが、結果的には、こういうことを毎年毎年繰り返すことは、政府としても、また米作農民としても、非常に迷惑な話と思うのです。したがって、私は、この米価決定について、もっと一歩前向きの前進的な提案をしたいと思います。提案をしながら政府の所信を承りたいと思うのでありますが、この米価決定について、生産農民代表に団体交渉権を与える意思はありませんか。と申しますのは、今日労働者には労働組合法によって団体交渉権が付与されておる。さらに官公労や重要産業に従事する者を除いては罷業権さえも与えられておる。ところが、農民につくることを強制しておって、価格は政府できめて、食管法によって米は政府以外に売り渡しはできないということにしておりながら、何ら自主的にこれを交渉する立場がないというのは、農民に対する弾圧ではありませんか。したがって、私は総理伺いたいが、この際農民に対して組織的な、いわゆる民主的な方法によって団体交渉権を付与して、政府と価格について民主的な話し合いをしてきめるという団体交渉権を与えるという意志はありませんか。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に結論だけを申しますが、そういう考えは持っておりません。
  248. 小平忠

    小平(忠)委員 そういう考え方がないというのはどういう理由でしょうか。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそういう考え方賛成しない、かように申しておるのです。
  250. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは労働者と農民を差別いたしますか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 労働者は労働者、農民は農民です。労働者の場合は雇用関係があるわけでしょう。そういう意味で団体交渉をしている。私ども政府と農民との間に団体交渉する何ものもございません。ただいま御指摘になりましたように、食管法です。その特別な状況のもとにおいて政府にただいまそれを売るという、また政府もそういう意味で農民が安心して生産に携わる、同時にまた消費者自身も食糧の安定供給、こういうことで満足をしている、これが今日の食管法を創設したゆえんでございます。したがいまして、これは生産者と政府とが団体交渉するような対象ではございません。
  252. 小平忠

    小平(忠)委員 総理はそうむきにならぬとですね。私は食管法の内容もよく存じ、総理もよく存じられておるわけですが、従来の食管法に基づく、その点から食管法のいわゆる現状については、これは総理食管法は持続したいというお考えであり、われわれも持続すべきだと考える。しかし、それと最も密接な関係にある米価決定について今日の状態を見ると、何らか少し一歩前進した考え方をとらなければ、これは今日の物価の問題にも、すべての問題に大きな影響をもたらしているという点から、私は前向きな提案を申し上げようとしておる。総理、なにも農民に、それも何でもかんでも農家がつくっておる食糧全部にこれを適用しようと言っているのじゃないのです。食管法で、米については、政府以外に売り渡しができないことになっておるのです。米の価格は政府がきめることになっておるのです。いいですか、これは一般労働者の雇用関係と現実の立場は違っても、中身は同じなのです。これをもっと掘り下げて理解すべきだ。これはもちろん労働組合法等、われわれは終戦直後、農民組織法あるいは農民団体法あるいは農民組合法という問題までさかのぼってまいりますから、そういう広範囲のことを私申し上げておるわけじゃない。米価決定だけについてもっと民主的に農民代表と政府が話し合う、その団体交渉、そういうことを考えてはどうか、こういうことを実は申し上げておるわけです。いかがでしょう。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は団体交渉ということばにとらわれるわけではございません。が、どうも団体交渉してきめるような筋のものでない、かように私は考えますので、それは反対だ、いろいろ議論すれば際限のないことだ、かように思いますので、そういう点についてさらに意見の交換の要があれば、他の場所においてでもお話しをしたい、かように思います。
  254. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは一歩突き進んで、先般の米価決定をめぐって、与党の有志議員が二百名も心を一にして、政府の米審に対する諮問米価はだめだ、低米価だ、これは承知できないということから、——これは与党の議員ですから、無責任な、財政の問題や物価の問題を考えないできめたんじゃないのです。責任ある与党の議員が二百名も集まって、そうしてこれは最低ぎりぎりの、いわゆる要求米価は百五十キロ当たり一万八千五百五十九円という線を打ち出しておる。この価格は、総理、正しい主張だと思いますか、それともこれは了解できない主張だと思いますか。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど社会党の方からお尋ねがございました、第二ラウンドでどうも政府と与党との間でいろいろ取引をしたじゃないか、こういう御指摘がございました。しかし、今日私は与党と政府が十分意見の交換をするのは当然だ、政党政治の当然の姿ですというお話を申し上げましたから、政府と与党との関係については、とかくの御批判はひとつ差し控えていただきたい、かように私は思います。  また、そういう意味で政府与党関係についてとやかく言われないまでも、ただいまの米価決定が安いのか高いのか、こういうようなお考えですが、前年に比べて九・二%の値上げでございます。いわゆる低米価、こういうのは私は当たらない、かように思っております。
  256. 小平忠

    小平(忠)委員 それは、前年対比をおっしゃって九・二%、前年度から千五百円上がったんだ、この考え方が私は根本的に間違っておると思う。それは、すでに前年の米価が他の物価と均衡のとれない低米価に押えつけられておるそれを基本にして、前年対比九・二%、前年対比石当たり千五百円のアップだと言っても、そこに私は問題があろうと思うのです。さらに政府は口を開けば、財政負担が苦しいから、食管の赤字が増大するからと言って、正しい生産者の米価の抑制をするということは、私は本末転倒だと思うのです。公共料金を上げておいて、鉄道運賃も郵便料金も上げておいて、それで、今度は生産者米価が生償方式が正しいと政府が認めるならば、その方式で農協、農民団体、特に政府を支持する自民党の議席を持つ方々も大半加わって、そうしてきめた農協、農民団体の統一米価二万一千六十三円、これは最小ぎりぎりの要求なんです。それを正しくないという見解は、総理この辺で清算をしないと、これはいつまでたってもいわゆる物価問題ではイタチごっこになる。だからこの辺で根本的に米価問題については検討しないといけませんぞ。政府もこの際調査会を設置して検討するという考えのようであるけれども、これはこの辺でやはり根本的にやらなきゃならぬと思う。  結論を申し上げます。公共料金を上げて生産者米価だけを押えることは正しいのですか。財政負担や赤字のことを考えて農民を犠牲にするという考え方は正しいのですか。だから、これは納得をする線でやるためには、民主的な農民の意思が米価に反映する手段を講じてはどうですかと私は申し上げているのです。いかがでしょうか。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは生産者米価を上げないとかなんとかいうので、農民を犠牲にしたとおしかりを受けるならば、何をか言いません。しかし、現に上げて、九・二%も上がっているのです。だから、私はこれは低米価じゃない、かように言っているのです。それをいかにも農民の犠牲において食管会計をやっているような言い方、これは私は賛成できませんから、ひとつそういう極端なことは言われないようにお願いしたい。  またこの米価決定についてもっともいい方法はないか、こういうことでございますれば、政府も十分検討する、かように申しておるのであります。ただいまは団体交渉によってこれをきめろ、こういう御提言でございますから、それは私は反対だ、かように申しておるのです。政府はいままでのやり方自身がそのままいいからそのとおりやります、かように申しておるわけじゃございません。十分検討はいたしますけれども、もう毎年同じようなことで騒がしてもたいへんだと思いますから、これは全部が納得のいくような道があれば、それにこしたことはございませんから、十分検討するつもりでございます。先ほど来言われる——小平君は団体交渉は一つの方法だ、かように言われたように思いますけれども、私はそれは反対だ、かように申しております。また一部におきまして、自由価格が決定されるほうがいいんだという議論もあろうかと思いますけれども、私は、それに対しましては、食管会計は、また食糧管理は、従前どおりのこの制度を維持してまいります、かように申しておりますので、その範囲内においてどうしたらいいか、こういうことをお互いにみんなひとつ知恵をしぼり合ってきめたい、かように思っておるのであります。
  258. 小平忠

    小平(忠)委員 総理もなかなか前向きな真剣な答弁でありますから、私もこの点は、さらにもう一歩総理に、この米価について認識を深める意味から、現状を申し上げたいと思うのです。しからば総理、米は他の食糧や物価と比較して高いと思うのですが、安いと思うのですか。結局、私は、前年対比石当たり千五百円上げた、前年対比九%上げたという政府の誠意はわかりますよ。しかし、それをもってして足れりという考え方は、私は間違いだと言うわけです。賃金と米のことを申し上げますと、これは笑い話になるかもしれませんが、戦前は大工の日給、出面は米二升で済んだものです。その当時米一石二十五円です。そうすると、一升二十五銭ですから、大工の一日の出面はいわゆる五十銭、だから二升で済んだものです。いま大工の日給は千五百円から千七百円、千八百円、してみれば、米は大体一斗、いわゆる十升ですね。そうすると大体五倍です、総理。それから一斗千八百円という価格にした場合、これは一升は百八十円ですから、そうすると大体国民のいわゆる消費者人口から割っていった一日の消費量は、これは一年で九四・二キログラム、金額にして一万四百五十六円です。一日のいわゆる平均摂取量は二百五十八グラムで二十八円六十銭なんです。これを一食に換算すると八十六グラムで九円五十銭です。これは今日の食糧費の全体から、家計費の全体から見るならば、この米の値段というものは、総理、安いのです。だから前年対比千五百円上げたとか九%上げたからといって足りるものでない、ということを私は主張しておるのです。米の価格そのものが他の物価と比較して低価格に押えられているところに問題がある。これを指数化方式、積み上げ方式あるいは併用方式、いろいろ言われておるけれども、これらの問題が、一体農業農民団体が真剣に実態調査をして、そしてあの二万一千六十三円という計算をはじき出したのは、何も膨大な価格ではないのです。それをはるかに下回っておるから、安いんじゃありませんか、こう申し上げておるのです。この論議はこの辺にいたしまして、さらにどうかこの問題について、次の臨時国会あるいは通常国会、次の予算編成、食管のあり方、いわゆる赤字解消のために、消費者米価値上げ等に関連してくる問題でありますから、私は、本件は総理も真剣に考えていただきたい、こう思うのであります。  総理のいろいろ所用の関係もございましょうと思いますから、総理にお伺いする問題を先に私はお伺いしたいと実は思うのであります。  そこで、お疲れでございましょうが、現下のわが国の政治の実態について、特に佐藤内閣の政治姿勢について、私は端的にお伺いいたしまして、総理の所信をただしたいと思うわけであります。  第一は、小選挙区制について、佐藤総理は、一体日本の現下の情勢から、わが国民政治の確立の上にこれが是なりとお考えか、非なりとお考えか、お伺いしたいのであります。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小選挙区についての私の考え方を聞かれましたが、御承知のように、選挙制度審議会に諮問いたしておる際でございます。総理といたしまして、私の意見は一切言わないということを堅持しております。この機会にも、それはお許しをお願いしたいのであります。
  260. 小平忠

    小平(忠)委員 小選挙区制の是非については総理は見解を披瀝しない。それは私はまことに遺憾であります。それならば、総理に小選挙区制の問題について私は一つの提言をいたしたいと思うのであります。それは、小選挙区制を主張する方々には、現下の日本の国情から見て、非常に長所もあり、また短所もある、特に長所とするところは現在の保守党の派閥政治現状から見て、あるいは自党内における紛争から見て、これは小選挙区制を主張される方があるのでありますが、私は、今日日本現状から見て、小選挙区制ほど厳に慎まなければならぬ問題はないと思うのです。なぜならば、現在のようなわが国のいわゆる国民政治意識、婦人参政まだ二十年、きわめて政治意識の低い階層のある部門を考えてみまするのに、もし小選挙区制を強行したならば、少数政党は壊滅的な打撃を受けて、今日の一党独裁の政治がさらに私は倍加すると思うのであります。したがって、現在の政府の一部で考えておる、また与党の一部で考えておりまするこのいわゆる小選挙区制並びに比例代表制も、現在論議されておる程度の比例代表では、これはそのマイナス点をカバーできないのであります。ということから、小選挙区制はきわめて時期尚早である、こう考えるのであります。この点について、小選挙区制の是非については意見を述べないとおっしゃったけれども、日本の現在の政党政治のあり方から、民主政治を育てるという見地に立って、総理、いかがでしょうか。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく選挙制度審議会に諮問している最中でございますから、これについての私が意見を差しはさむということは差し控えさしていただきたい。
  262. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、総理はもう少し積極的な、日本の民主政治を前進する熱意と考え方を示すべきだと思う。さらにまたわが国の議会政治現状を考えてみるのに、これは選挙そのものが大きく影響していることは御承知のとおりであります。しかし、小選挙区制の問題はそれは一応保留いたしまして、現在の議会政治のあり方、さらに民主政治の前進について、総理はお考えありませんか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この民主政治をもり育てるといいますか、とにかく守る、そういう観点に立ちまして考えさせられることは非常に多いと思います。ただいまの小選挙区の問題にいたしましても、民主政治を守りたい、またさらにそれを有効にその効果をあげるようにしたい、こういう意味から選挙制度審議会に諮問をいたしたのであります。したがいまして、私が民主政治に対する熱意を疑われるようでは困ります。私は、さような意味におきまして、民主政治を守り民主政治をさらに進めていく、こういう観点で各党でも十分話し合っていくということをいたしておるのであります。  国会そのものについての意見などもございますけれども、これまた、それぞれの機関におきましてそれぞれ意見を発表する機会もあるだろうと思います。そういうところで十分審議を重ねまして、そうしてさらに民主政治、これにりっぱな成果をもたらすようにぜひともしたいものだと念願しております。
  264. 小平忠

    小平(忠)委員 特に私は総理に、解散間近しのいまの政局の現状から見て、えりを正し、あなたの長い経験と、また三百名に近い絶対多数の上に総理、総裁という立場で本来のリーダーシップを発揮し、政党政治の、議会政治の前進に大いに私はがんばっていただきたいと思う。というのは、国会運営でも、最近の運営の姿を見ておると、何か一部の人がこそこそと裏取引をして、何か非常に明朗でない姿がある。これが国会の正常化を阻害していると私は思う。現に先般の本委員会において野党の委員が委員長席を占領し、大臣席を占領して、それで委員会の開会ができない。これは正常な姿ですか。三百名に近い絶対多数を持っている自民党が、総理、総裁が真にえりを正すならば、こういうことはやはり国会みずからが墓穴を掘るというか、予算委員会は他の委員会の模範的な総括的な委員会として最も重要な国政審議をするという場において、あのような状態は見苦しいと思う。このことがやはり総理のリーダーシップ——このことは自民党の多数横暴をせよというのでは私はないのであります。そういう見地から、もっとこの点について総理の前向きな努力を私は熱願したいのであります。特に、あなたは常に民主政治を口にされるが、民主政治そのものは、今日の姿はこれはゆがんでいるのですよ。私から言えば、申し上げるまでもなく、民主政治は複数の政党が政策で争うところに妙味がある。それが保守、革新の勢力がハンディキャップがあり過ぎて、競争にならない、そのことがやはり特定の政党が長期にわたって政権の座につくから、結局、やはり多数で、何回選挙をやってもその数は変わらない。そこに多数の上にあぐらをかく結果になり、水も長くたまっていればボウフラがわく結果になって、やはり今日のような保守党内部における派閥政治がいつまでも絶えないという結果、やはりあなたは一党の総裁よりも一国の総理とするならば、むしろ進んで民主政治の育成に、そのことは健全なる反対党の育成にみずから行動を起こすということが、私は一国の総理として望ましいと思うのであります。総理、いかがでございましょうか。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民主政治を育成し、さらにこれを前進さす、こういう事柄は先ほど来私も同じ考え方で非常な熱意を持っております。そういう民主政治のものとにおけるリーダーシップ、これはなかなかわかりにくい問題であります。ただいまも具体的なお話を披露されまして、そうして反省を求められました。私は、民主政治のもとにおきましては、反省こそ民主政治を前進さす唯一の方法だ、かように思っております。これはリーダーだけの責任ではないのだ、お互いが同じ立場において民主政治を育て、そうしてこれを守っていくのだ、こういうことだと思います。そういうもとにおいての反省が最も大事なことだと思います。私はそういう意味で反省もいたしますが、これをただいまのように謙虚にお互いに反省する、こういう立場でありたいものだ、かように思っております。
  266. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、総理に勇断をもってこの現下の重大な時局を乗り切ってもらうために、あえて最後の提言をしたいと思いますが、あなたは戦後の混乱の中での総理、総裁という幾人かの中で、いろいろそれは野党からは批判もし、えりを正すところはえりを正す立場において主張もいたしますけれども、率直に申し上げて、あなたが総理、総裁になってから、幾多の懸案事項を、問題はありながらも解決されているのです。そのところは、私はあなたの政治力、また総裁としてのリーダーシップを大いに買うのであります。具体的な内容についてあえてここで申し上げません。しかし問題は、それをもって足れりでなくて、そのあなたの政治力と豊富な経験と、またいま置かれた立場を十二分に発揮して、先般来申し上げました外交的には最大の焦点であるベトナム問題に、あなたみずからがその陣頭に立って和平工作に乗り出すべきである。さらに、内政問題については、私から申し上げるまでもなく、これは臨時国会終了直後に大幅なる内閣改造によって強力なる佐藤体制をしくでありましょう。この際やはりこれはいままで野党から率直に、また私も申し上げた点に十分に耳をかして、経済問題も当面は何といってもいわゆる経済不況を乗り切るための物価問題でありますが、これらに四つに取り組む態勢を総理に私は心から進言いたします。  以上申し上げまして、特に総理の貴重な所用の時間がありましょうから、総理に対する質問は終わりたいと思います。  私は、予定をいたしました重要なる質問事項がまだ数件残っておりますし、まだ私に与えられた時間はあるのでありますが、しかし、いずれも総理を中心に関係閣僚からお伺いしたい問題でありまして、せっかくの総理が退席されたのでは、質問申し上げても要を得ないとこの際思うのであります。残余の質問は次回、適当な機会に譲ることといたしまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。(拍手)
  267. 福田一

    福田委員長 これにて小平君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤進君。
  268. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表いたしまして、若干の質問をしたいと思います。  政府は、去る日米貿易経済合同委員会において、アメリカのベトナム侵略戦争、アジア反共同盟の結成、そのためのいわゆる東南アジア開発及びアジアの社会主義諸国との貿易制限などについて、アメリカに全面的に協力することを約束されたことは周知のとおりであります。その上さらに、輸入制限品目の一そうの緩和、関税の一括引き下げ、及び資本の自由化と称して、アメリカ資本が必要とする日本の企業に対しては五〇%以上の持ち株を許すなどをあらためて約束されたのであります。  そこで、私は時間の関係上、特にいゆわる資本の自由化について政府の所信をお尋ねしたいと思います。  第一に、今日アメリカは、わが国の重要産業、わけても石油、石油化学、電気機械、電子工業など、アメリカのアジアに対する侵略と戦争に必要とする産業への支配を強めております。いわゆるベトナム特需が膨大な額に達しておることは、御承知のとおりです。これは、アメリカが日本をベトナム侵略戦争のための兵たん補給基地として動員しつつある証拠でもあります。特に私がここで指摘したいのは、日本政府は、すでに日米安保条約に基づく地位協定によって、アメリカに対して、日本政府にかかわりなく、自由に公然と必要な軍需物資を調達する権利を与えている。さらに、関税検査もなしにこれを海外に持ち運ぶという権限も与えております。さらに、日米通商航海条約によれば、アメリカが日本において行なう企業活動は全く自由であります。このような条件のもとで資本の自由化を行ない、アメリカ資本に事実上無制限の投資と活動を認めたならば、一体日本の産業と経済はどうなると思われるのでありましょうか。特にいまアメリカがアジアに対する侵略戦争を一段と強化し、戦争拡大に必死となっていることは、御承知のとおりであります。してみれば、今後アメリカはこの資本の自由化によって、だれはばかることなくその必要とする企業を握ることができる、日本は一そうアメリカの軍需調達のアジアにおける拠点とされる、彼らの兵器廠とされることは火を見るよりも明らかではないか。この最も危険きわまる問題について、私は、あなた方が一体どう考えておられるのか、関係閣僚にお尋ねをしたいのです。
  269. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 資本の自由化の問題につきましては、従来わが国の政府といたしましては、わが国の企業の特殊性、つまり中小企業が非常に多いわけであります。資本がみだりに入ってくるということは、中小企業を非常に混乱させる。それからもう一つは、わが国の産業を全体として見まして、ただいま発展の途上である。そういう途上の一つの大きな現象としては、過当競争、設備競争というようなものがある。そこへ外国の資本が入ってきて、また過当競争というようなものに参画をするというようなことになりますと、非常にこれもまた混乱の原因になる。そういうようなことで、抑制的な考え方で臨んできたわけであります。しかし、今日の世界経済の情勢を見ますときには、経済自由化の体制、これは世界的趨勢であります。関税障壁を下げよう、あるいは貿易の制限もなるべく撤廃するようにしよう、資本の交流も自由にしよう、そういう態勢であります。その中で、日本の経済が今後大いに発展していく。わが日本は貿易によって生きていかなけりゃならぬ。そういう際に考えなけりゃならぬことは、日本が、資本の導入と一緒に入ってくる世界のすぐれた技術、これの導入に立ちおくれてはいかぬ。資本の導入を防遏するのあまりに、技術の導入、これがおろそかになり、そうして日本が国際競争に立ちおくれを来たすというようなことになってはならぬ、そういうふうに考えるべき段階に来ておる。そこで、今日の政府の態度としては、資本の導入に伴う技術面、つまり資本の導入の持つところの長所、メリットについてもあわせて考えなけりゃならぬ、こういうふうな考え方にしようという態度をとるべきであるという決定をいたしたわけであります。したがいまして、今後は資本の導入につきましても、業種別に、あるいは事業別に可能な限度におきましてやっていこう。もちろんいままでの中小企業の問題、あるいは日本産業自体の防衛、こういうものについて、これをおろそかにしようというような考えはないのであります。ディスメリットのほうばかり見ないで、メリットのほうもまたこれをあわせ考えていこう、こういうふうに態度を変えてきておるわけであります。
  270. 加藤進

    加藤(進)委員 まことに楽観論でございますが、私は、この資本の自由化を中心として日本の産業経済にどのような大地震が起こるであろうかということは、あともう一度触れたいと思いますが、一つ質問の中でお答えの願えなかった問題があります。日本が軍需産業化されて、アメリカのベトナム侵略の兵たん基地、補給基地としてますます強化されるということについて私は質問しておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  271. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういう傾向は、別に認めておりません。
  272. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、時間の関係上こまかい議論ができませんが、すでに私をはじめ他の委員諸君からも、この予算委員会を通じて、日米安保条約に基づく地位協定がある限りは、アメリカ軍の日本における調達は自由、しかも海外に持ち出すことまで自由、これはもうはっきりと認められておることなんです。政府自身がそれは認めました。しかもその上に、資本の自由化で企業自身が握られるということになれば、アメリカの思うままになる企業において生産が可能であるし、調達が可能であるし、そして海外へ持ち出すことも可能だ、この道をはっきりとつくるということが資本の自由化からくる非常に重大な問題ではないかということを、私はいまあなたたちに質問しているわけです。  次に、私は日本の農業がどうなるかという問題について質問をしたいと思っておりますが、いまアメリカの農産物が事実上無制限とも言っていいほど輸入されております。そのために、日本の農業と農民の生活が一体どんなに破壊され、破滅の状態になりつつあるかということは、もう言わなくてもわかっていることです。このたび政府がアメリカに約束した輸入制限品目の一そうの緩和と関税の一括引き下げということは、このアメリカの農産物の輸入をさらに一そう拡大するものであることも明らかです。すでに農産物ばかりでなく、農薬、農業機械、肥料などはもちろん、日本の農産物の加工に至るまで、アメリカの資本がどんどん入っております。しかも政府は、このような状態のもとである日本の農業にもかかわらず、何一つこれに対して保護の政策をとっておらぬではないですか。しかも、そればかりではない。いわゆる東南アジア農業開発などに血道をあげているというのが、現在の政府の態度じゃないですか。これは、日本の農業をアメリカのアジア侵略政策の犠牲にするものであると言わなければならぬと私は思います。それゆえに、わが党は、従来も一貫してこのような自由化の名によるアメリカ資本や農産物の無制限の輸入に反対して、日本の農業に対する全面的な保護政策をとることを要求して今日まで戦ってまいりました。あなた方政府は、一体日本の農業の保護とその自主的発展のためにどのような政策を持っておられるのか、端的に農林大臣にお答え願いたい。
  273. 坂田英一

    坂田国務大臣 アメリカとの関係において日本が輸入を無制限にやっておるというお話でありまするけれども、さようなことではございません。たとえば米のごときは、国内で不足の分だけを、アメリカだけでなしに、各国の産地から輸入しておるという状態でございます。またその他の農産物にしても、日本の国にないというものは、食糧の自給をつとめてまいるのでありますけれども、それができないという部分については、これはアメリカのみならず、世界の各国からそれぞれ輸入をいたしておるという状況でございます。  なお、日本の国内において保護すべきものについては、関税あるいはその他の制度によって十分の保護を加えているような状態でございます。
  274. 加藤進

    加藤(進)委員 それはまことにずさんきわまる答弁ですよ。日本でつくれないものは外国にまつ、あたりまえのような論理ですけれども、第一、日本の農業は次第次第につくれないような状態になってきておるじゃないですか。つくれないような状態に追い込んできておるじゃないですか。したがって、その結果は、どんどん外国の農産物を輸入せざるを得ないという状態になって、ますます日本の農業は発展と自主性を失っていく。これは事実じゃないでしようか。こういう政府答弁では、私は納得できません。私たちは、あなた方政府が、日本の産業も農業もほんとうに腹から守る気持ちが毛頭ない、こういうことを断言していいと思うのです。  そこで私は、あなた方が資本の自由化ということについて一体どのように認識しておられるのか、こういうことをお尋ねしたいのです。通産大臣はきょうおられませんけれども、通産大臣はすでにこう言っております。資本の自由化に備えて合併、業種転換などを中心に産業体制を整備せよ、これは通産省によってすでに指示されております。また、財界の調査機関であります日本経済調査協議会のごときは、こう言っております。資本の自由化を受け入れるために、自動車産業は三、四社に統合合併せよ、石油化学工業は合併か、あるいは外資との提携を一そう進めよ、電子工業はすべて外資にまかせよ、こういう重大な提案を現に産業界に行なっておるじゃありませんか。すなわち資本の自由化というのは、日本の産業をアメリカ独占資本のえさにすることであります。日本の産業を破壊して、アメリカ資本の支配のもとに日本の全産業の再編成を強行しようとする、こういう性質を持っておるということは言うまでもないじゃないですか。したがって、そのもたらす結果はきわめて明らかである。重大ですよ。全産業にわたるさらに一そうきびしい企業の合理化、首切り、低賃金、こういうものがどしどしこの自由化のもとで強行されてくることは明らかです。藤山企画庁長官、いかがでしようか。
  275. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自由化をやることが、世界貿易拡大の上においても世界の趨勢であることは、先ほど大蔵大臣の言われたとおり。したがいまして、日本も漸次その方向に向かっていかなければならぬと私は思います。したがって、今日までその準備をしているわけですから、今日まで踏み切っておらないわけです。今後も、将来その方向に向かっていくだけの準備をしていかなければならぬ。そのためには、やはり合併も合同もして、基盤の強化をはかっていくということは当然のことであって、自由化の問題に対処して当然やらなければならぬことを、政府も産業界もみずから考えているということであります。資本の自由化そのものが、日本の過去の歴史から見まして、御心配になっているほど——日本人というものは、私はもっと気力があると思います。たとえば東芝の前身である東京電気がGEと合弁でやりました。あるいは富士電機がシーメンスとやりました。しかし、最初外国人の重役が来ておりましたけれども、ことごとくこれは帰って、そうして投資した資本は日本の株主に肩がわっていたという歴史がございます。ですから、私は、お話よりももっと日本人の経営者に信頼を持っていただきたい。将来の日本の経済は発展していくもの、こう考えております。
  276. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、こまかい議論を申し上げる時間がありませんが、たとえば、最近、日本のベッド製造工業、この一会社にアメリカの資本がいままでは四割入っていた。ところが、これがいよいよ一〇〇%自由化を見込んで、ほとんど全製造工業の株を握った。そのために、このベッド産業全体に大恐慌が起こりつつある。これは藤山長官も御存じだと思うのです。こういう状態は、単に一、二の業界ばかりでなく、調査機関がすでにいっておるように、自動車産業においても、電機工業においても、電気機械工業においても、石油化学においてもどんどん進行する。日本の最も重要産業にそのような状態が進行してくる。これが結果じゃないですか。それがいいといわれるのがあなたたちの立場であり、そのような状態は許せぬというのがわれわれの立場だと思うのです。したがって、わが党は、このように日本の全産業をアメリカの独占資本に売り渡す、このような自由化には今日までも絶対反対してきましたし、今後とも絶対に反対であります。わが党は、あなたたち政府が直ちにこの自由化政策をとりやめて、日本の経済に対するアメリカの資本支配を排除して、日本の産業、農業、貿易の自主的発展の道をとられるように強く要求して、簡単でありますけれども、質問を終わることにいたします。
  277. 福田一

    福田委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  278. 福田一

    福田委員長 この際、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  予算実施状況に関する件及び予算委員会運営の改善に関する件、以上二件につきまして、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、閉会中審査案件が付託された場合、委員を派遣して現地を調査する必要もあるかと存じますが、その際、派遣委員の選定、派遣地の決定等につきましては、委員長に御一任を願い、議長の承認を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  280. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十三分散会