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1966-07-18 第52回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十一年七月十一日)(月曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りで ある。    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 田中 龍夫君    理事 松澤 雄藏君 理事 八木 徹雄君    理事 川俣 清音君 理事 楯 兼次郎君    理事 野原  覺君 理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林榮吉君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    小山 長規君       田中伊三次君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    水田三喜男君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       小松  幹君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       今澄  勇君    竹本 孫一君       加藤  進君 ————————————————————— 昭和四十一年七月十八日(月曜日)    午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       大橋 武夫君    上林榮吉君       倉成  正君    小山 長規君       笹山茂太郎君    田中伊三次君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    松浦周太郎君       水田三喜男君    大原  亨君       加藤 清二君    勝間田清一君       角屋堅次郎君    多賀谷真稔君       高田 富之君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大 臣 佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君        国 務 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         国防会議事務局         長       北村  隆君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府総務副長         官       細田 吉藏君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         大蔵事務官         (大臣官房長兼         銀行局長)   村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         食糧庁長官   武田 誠三君         通商産業事務官         (通商局長)  山崎 隆造君         通商産業事務官         (企業局長)  熊谷 典文君         通商産業事務官         (重工業局長) 高島 節男君         中小企業庁長官 影山 衛司君         運輸事務官         (海運局長)  亀山 信郎君         運輸事務官         (航空局長)  堀  武夫君         自治事務官         (行政局長)  長野 士郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     —————————————七月十五日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として野  口忠夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員江崎真澄君及び川崎秀二辞任につき、そ  の補欠として倉成正君及び久野忠治君が議長の  指名委員に選任された。 同月十八日  委員古井喜實辞任につき、その補欠として笹  山茂太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員笹山茂太郎辞任につき、その補欠として  古井喜實君が議長指名委員に選任された。 同日  理事久野忠治君六月二十七日委員辞任につき、  その補欠として久野忠治君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  先般の理事会の協議に基づき、予算実施状況について調査を行なうことにいたしたいと存じます。  つきましては、この際、議長に対し国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  4. 福田一

    福田委員長 この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員の異動により、現在理事が一名欠員となっておりますので、これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、久野忠治君を理事指名いたします。      ————◇—————
  6. 福田一

    福田委員長 それでは、これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。倉成正君。
  7. 倉成正

    倉成委員 私は、当面の外交財政経済の諸問題並びに米価を中心とする農政基本的姿勢について、総理大臣以下関係閣僚お尋ねいたしたいと思います。  まず、ベトナム情勢について。今日、アジア一角ベトナムにおいて戦争が続き、アジア人の血が毎日流されていることは、平和を望む日本国民にとって深い関心事であります。しかしながら、ベトナム戦争は、先月来アメリカハノイハイフォン地区石油施設爆撃以来新しい段階に入ったと考えられますが、これに対して、昨十七日北ベトナム政府は、米国戦争エスカレーションに対応する事実上の非常事態国家総動員宣言ともいうべき三つの重要文書を発表いたしまして、徹底抗戦をはかるということを声明いたしております。この点につきましては、われわれ日本国民としても深い関心を持つと同時に、戦争の将来に対して憂慮にたえないところでありますが、この事態に即して、総理としていかなる所見を持って対処されるつもりであるか、お伺いしたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私どもは、アジアにおいて紛争が起きておるというその現実に当面いたしまして、一日も早くその紛争が平静に帰すること、これのみを念願してまいりました。最近、ベトナムにおきまして石油貯蔵庫等爆撃した、これはいままでなかったことでありますが、そういうことが行なわれた、こういう意味でたいへん新たなる拡大ではないか、エスカレーションではないかと、こういうことで非常に心配をいたしております。一日も早く平静に帰するようにと、かように私ども考えておる次第でございますが、このハノイ近郊爆撃について、その性質をしさいに私ども検討してみますると、在来から米軍で行なっております爆撃目標、その一つであるだろうと、かように考えますので、いわゆるエスカレーションというものに簡単に私は同意はいたしません。しかし、少なくともいままで爆撃をしなかった、そういうものが対象にされた、こういうところで新たなる意義があるのではないかという御心配もさることだと思います。一日も早くこういう事柄が終息するように、平和がもたらされるように、この上とも心から願う次第でございます。
  9. 倉成正

    倉成委員 この問題に関して、政府紛争平和的解決についてどういう具体的な努力を払ってこられたか、これを承りたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本政府は御承知のように直接の関係者ではございません。また、積極的に援助する立場でもない。この種の紛争については、日本自身関係を持ちたくない、また持つ筋でもない、かように考えて、いままでは厳正に、ただ私どもが平和を心から願っておる、こういうことを率直に説明してまいりました。また、具体的な方法として、私は国会の場を通じ、またその他の機会にしばしば申し上げておりますように、話し合いの場に双方が着くことだ、そして、話し合いをすることによって休戦あるいは停戦することによりまして新たなる方向を見つけるべきだ、こういうことをしばしば申し上げてまいりました。また椎名君が訪ソいたしましても、こういう点で話し合いをしておりますし、あるいは横山特使等を派遣もいたしましたし、また今回は、ラスク長官等日米合同委員会へ参りました。この機会にもわがほうのこの願いを率直に披露いたしまして、アメリカ側におきましても、当初からの平和への努力を今後とも積極的に進めるように、かように要望したような次第でございます。
  11. 倉成正

    倉成委員 日本の置かれている立場は、ただいま総理大臣お話でよく理解できるわけでありますが、北ベトナム徹底抗戦を表明して、事態は深刻な状態に入っておる。また先般北ベトナムで撃墜され捕虜になった米軍飛行士戦犯として処刑するということが伝えられておるわけであります。こういう事態は、米側の報復を招き、ますます事態を悪化せしめるのではないかと思われるわけでありますが、この米軍飛行士の処刑の問題について、何らか総理としてこの問題について対処したいとお考えになるかどうか、お伺いしたいと思います。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国際法といたしましては、あくまで捕虜としてこれを処遇すべきであるということが規定されております。これを戦犯として処理するということは、従来の国際法の通念に著しく反することになるのであります。そういうことによって問題を激化することのないことをわれわれは衷心より希望しております。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、このベトナム紛争が一日も早く平静に帰することを願っております。そこで、私ども立場、これはたいへん冷静に、また平静にそのことを見ることができると思います。しかし、ただいまベトナム紛争の渦中にあるそれぞれの国におきましては、それは私どものような平静な状態ではないだろうと思う。しかし、ぜひともその平静さを持ち、また冷静に事態をぜひとも終息するように、この上とも努力を払っていただきたい、かように実は思うのであります。  過日の所信表明でもその一端は実は披露したつもりであります。私は、話し合いの場に着くこと、これが必要だ、在来の行きがかりにとらわれることなく、この際はぜひともそうしてほしい、こういうことを実は要望いたしました。しかし、それぞれの直接の当事者としては、私どもが考えるような冷静さというものもなかなか保ち得ないのではないか。そこで、いまお尋ねになりましたような問題が起こる。これについては、いろんな議論があるだろうと思いますけれども、しかし、とにかく一方で戦いながらも、その冷静さ、平静さを持って平和への協力、この道をやはり探す、こういう気持ちであってほしい、かように思います。
  14. 倉成正

    倉成委員 この問題につきましては、全世界の注目の的でありますから、日本政府としてもできるだけこの努力を続けていただきたいと思います。  そこで、日米合同委員会の問題に入りたいと思いますが、今月初旬、京都において行なわれました第五回の日米貿易経済合同委員会は、貿易を看板としておるといいながら、今回の共同コミュニケにもあるがごとく、政治色が強められておる印象を受けております。わが国にとって、この合同委員へ会はいかなる意義があったか、総理大臣にお伺いしたいと思います。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米合同委員会では、両国が共通の関心事項につきまして忌憚のない意見交換をいたしました。そういう意味で、それぞれの立場における意見相違はあるにいたしましても、なごやかなうちにお互い理解することができた、かように思います。なお、その詳細等につきましては、また経過等につきましては、外務大臣から御説明させたいと思いますので、お聞き取りをいただきたいと思います。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま総理からお話がありましたが、これは貿易経済合同委員会でありまして、それを中心にあくまで討議を行なったわけでありますが、自然両国関心の問題である国際情勢に関しましては、やはりお互い話し合いが行われたのであります。問題によっては、日米双方考え方が違う点もあります。しかしながら、これらの問題については十分に忌憚なき話し合いの結果、だんだんお互い立場というものを、従来以上に深く認識するという効果が私はあったと思います。また、問題によっては、お互いの従来の研究調査、そういうことを披瀝して、そしてお互いの問題に対する理解というものを深める効果もあったのであります。  要するに、今回は、従来よりも両国経済上の懸案問題がわりあいに狭められてきております。しかし、残された問題は、決して軽微な問題ではもちろんございません。それらの問題について十分に討議をいたしまして、なおかつ、両国関心国際情勢について忌憚のない意見交換を行なって、お互い理解認識を深めた、こういう点において私は従来以上に新しい場面というものが開かれたように考えております。特に、日本の東南アジア中心とするアジアに対する政策、あるいはその姿勢というようなものについての理解を深めたことは、私は日米の将来の提携の上に非常に大きな利益をもたらしたものと考えております。
  17. 倉成正

    倉成委員 以上の点に関連して、総理ラスク会談が行なわれたわけでありますが、この会談においていかなる点が取り上げられたか、総理からお伺いしたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私とラスク国務長官との話し合いの全部は、申し上げるわけにいかない点がございます。しかし、私はたいへんいい機会であったと思いますので、当方でいま問題として取り扱うのが適当だと思えるような問題、これは十分話し合ったと思っております。ただいまお尋ねのありますベトナム紛争の問題、あるいは中国代表権の問題、あるいはまた、身近な問題ですが沖繩の問題、ことに沖繩では裁判移送の問題が起きておりますので、こういうような問題には全部触れたつもりでございます。事柄外交の問題でございますから、この機会にこれらを明らかにすることだけは差し控えさせていただきたいと思いますが、問題の基本的なことは、わが国益をいかにして維持し増進するかという立場に立ちまして、国民皆さま方が要望されるような事項には大体触れた、かような確信を持っておる次第でございます。
  19. 倉成正

    倉成委員 ただいまお話がありました中で、裁判移送の問題は、法律的見解は別としても、政治的には沖繩裁判権に関する重大問題でありますから、民政移管の問題とともに今後十分研究されることを要望いたしたいと思います。  そこで、ただいまの総理ラスク会談の内容の点は別といたしましても、日米貿易経済合同委員会共同コミュニケの中にもある程度明らかにされておるわけでありますが、中国についての認識について、日米間の認識相違があったようでございます。この相違点はどういう点が一番ポイントであるか、また、今後この意見の調整は可能であるかどうかということについて、これは総理よりお伺いしたいと思います。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま倉成君が沖繩裁判権の問題についてお話しになりましたことは、私もそのとおり同感でございます。こういう事柄は、あまり理屈っぽく話をしないで、問題が沖繩民政、その基幹をなす裁判権の問題でありますだけに、現地におきまして円満なる解決を見ること、これを心から願うのでございます。この問題はラスク長官の担当のようにも聞きましたので、たいへんいい機会であった、かように思います。この点をつけ加えておきたいと思います。  また中国問題についてのアメリカ日本との考え方相違といいますか、これは、私どもがいわゆる政経分離の形において中共政府ともつき合いをするのだ、こういうことを申しておりますのが、これがもう非常にはっきりした相違であります。今後の問題等についても、外務大臣もいかに扱うべきか、国連の場における今後の働き等々について、意見交換はいたしたようであります。しかしこれは、慎重にこの問題と取り組むという以外にはただいま申し上げることはできない、かように思いますが、いずれにいたしましても、基本的にわが国中国の隣である、こういう地理的関係、また歴史的にも過去において非常な密接な関係を持っておった、また経済的にも唇歯輔車の関係にあった、こういうような事柄が、これはもう特殊な事情でございますので、その点は十二分にわが方の意見を披露し、また披瀝することができた、かように確信を持っておる次第であります。
  21. 倉成正

    倉成委員 ただいまの総理ことばの中に政経分離ということばが出てまいりました。共同コミュニケの中にも政経分離原則ということばがあります。このことばは、かなり言い古されたことばのようでありますけれども、いま一度総理から、この政経分離原則というのはどういう意味か、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の京都会談米側がこれを認めたわけでもないし、また、以前からもこういう考え方があって、米国ではよく了承していたと思いますが、佐藤政権といたしまして、私昨年ジョンソン大統領に会いました際も、この点を非常にはっきりさせた。在来方針に変わりはないということを確認をいたしまして、日米共同コミュニケにもその点をうたったのであります。問題は、いわゆる政治的に政府承認するとかいうことはしないけれども経済的な交流は従来からも実際にこれを行なっているのだ、こういう考え方でありまして、最近はスポーツの関係においてもいろいろ発展するようでありますし、人事交流どもある程度の制限はありますけれども、比較的活発に行なわれている、かように思います。ただ政治上の問題として、ただいままで承認問題がペンディングになっておる、かように御了承いただけばいいかと思います。
  23. 倉成正

    倉成委員 私は、対中国政策において、日本のパートナーであるアメリカ立場を無視して、対中国政策を急ぐのあまり、中国の意向を迎えてアメリカを敵に回すごとき態度は絶対にとるべきでないと考えております。しかしながら、今日アメリカは、自由陣営における最大最強の国であり、同時に中国も、政治体制は異なるとはいえ、アジアにおける七億の民を有する最大の国であり、建設のため発展途上にあることも厳然たる事実であります。米中の和平、これが世界の平和の要件であると同時に、日中関係解決なくしては日本の平和と繁栄は不安定なものにならざるを得ないと考えております。  従来アメリカは、新聞記者、学者、医者などの中国旅行を認める方針を打ち出しておるようでありますが、中国側がこれに応じないで今日に至っておる。しかるに、総理も御承知のとおり、新聞報道によりますと、ダグラス米国最高裁判所判事中国政府から正式に招待され、今年末中国を訪問する旨が伝えられております。また、ジョンソン大統領全米大学卒業者評議会において演説をいたしまして、中国との協力未来図を描きまして、その日の来たるのを早めるために思想、人物、物資の流通の拡大ということを提唱いたしておるわけであります。中国より敵視されておるアメリカ国内においても、中国封じ込め政策、あるいはこれまでの中国観が若干というか変わりつつあるような印象を受けておるわけでありますけれども、これらの点について、中国とただいまお話のように歴史的にも経済的にもまた地理的にも最も関係の深い日本政府総理大臣として、これらの情勢を背景にしていかに処していかれるつもりであるか、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ考え方がいろいろ最近はっきりしてきた、こういうようなお話をされますが、わが国は、アメリカの考えがどうあろうと、いずれの国とも仲よくする、そうして平和に徹するということがわが国の基本的態度であります。この点は誤解のないように願いたいと思います。その上、日本の行き方を支援するかのように、アメリカ自身も、最近は一部でいわれたようになくて、弾力的な態度をとっておる、こういうことがいわれるようになりました。これは私は、世界の平和のため、特にアジアの平和のためにたいへんしあわせだ、かように思っておりますので、この空気、これを醸成して、そしてほんとうに成果のあるようなところにまでぜひとも持っていきたいと思うのであります。  過去におきまして、アメリカは封じ込め政策をとっておる、あるいは中共の孤立化政策をとっておる、こういうことで、アメリカが非難をされていた。しかし、私が昨年ジョンソン大統領に会いまして、アメリカはいわゆる封じ込め政策あるいは孤立化政策をとっておるのか、こういう話をすると、いや、そうではない、私のほうはそういう政策はとっておらない、あるいは通信報道関係交換を許そうと言ったり、あるいはその他の関係の部門でも交流等をいろいろ言っているんだけれども、なかなか中共側においてこれを受け入れてくれないんだ、こういうような話を昨年聞いたのであります。また、その後、ハンフリー副大統領が日本を訪問した際に、米国側の中共孤立化政策、あるいは封じ込め政策、かように思われること、これが誤解だということを十分説く必要があると思うがどらだということを申しましたに対しましても、ハンフリ一別大統領も、自分のほうは、いわゆる封じ込め政策はとっておらないんだということで、交流関係を実は申しておりました。しかし、今日まで実現しなかったのですから、そういうことがあったにしろ、アメリカ側が誤解されるというような状況にあったと思います。  今回、ジョンソン大統領自身が、平和共存の方向を打ち出したと、かように私は思いますので、アメリカ考え方もたいへんはっきりしてきた、かように思うのであります。こういう機会にこそ、私どもも、在来のいずれの国とも仲よくするというこの考え方、またアメリカ自身も、平和共存の路線を積極的に表面に打ち出しておるのでありますから、こういう機会に、この平和ムード、いわゆる親善関係樹立の方向で努力すべきだと思います。中共におきましても、在来考え方にとらわれることなしに、動きつつある、流動しつつあるこの国際情勢に処して誤られないように、私は心から祈る次第でございます。
  25. 倉成正

    倉成委員 ただいま総理お話のとおり、世界平和のため、米中関係のかけ橋としての日本の役割りは非常に大きいと思いますし、世界日本にそういうことを期待しておる、また、国民全体もやはりそういう念願を持っておると思うわけでありますので、これらの点については、ただいま総理のおことばどおり、今後とも十分この流動せる状況に対処して努力をされたいと思います。  そこで、さきに河野参議院副議長がスポーツ交流のため訪中されまして、一昨日帰国されたようでありますが、スポーツ交流は今後とも進めていかれる考えであるかどうか、お伺いしたいと思います。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この会議が始まります前に、河野副議長からも報告を受けました。ただいまスポーツの交流についていろいろ制約はあります。制約はありますが、河野謙三君が交渉してまいりましたこと、これはこのまま私は進めていきたい、かように思っております。
  27. 倉成正

    倉成委員 スポーツの問題について、総理の積極的な御発言がございまして、まことによかったと思います。  そこで、次の問題として、中国に対する空路、航路の開設が、私は非常に大事なことではないかと思うわけであります。この点につきましては、すでに全日空から、上海−熊本間の定期航空事業の免許申請が運輸省に出されております。これに対して政府としてどう取り扱うつもりであるか。また、航路につきましては、戦前、長崎−上海間の定期航路があり、一九五二年に上海と天津の港を中国が開放して不定期の航路でいろいろな苦労をして今日に至っておるわけでありますが、この定期空路、定期航路の開設については、中国側からも希望があるやに聞いておるわけでございますが、政府としてどういうふうにお考えになっておるか、ひとつこれは運輸大臣からでけっこうですから、お答えいただきたいと思います。
  28. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 日中の航空路の問題につきましては、全日空から申請が出ておるように倉成委員は仰せられましたけれども、正式な申請はいまのところでは出ておりません。ただ、日中間の航空路につきましては、国交が正常化されておりません現段階におきましては、航空協定を結びまして定期航空路を開設するという段階ではないと考えております。民間ベースでやるという手もありますが、これも現在の時点におきましては、いまだ機が熟しておるとは考えられませんので、日中間の動向等をよく見合わせながら対処してまいりたい、かように考えております。  それから船による定期的な旅客あるいは貨物の航路でございますが、これは日中間の商社間にできるだけ早く定期的な航路を開設したいという意向が一致しまして、双方で研究を進められておるような段階でございます。日本でも関係船会社の間で、採算等その他諸案件の問題につきまして検討中でございまして、その結論を得まして政府としては対処してまいりたい、かように考えておる状態でございます。
  29. 倉成正

    倉成委員 空路の問題について、ただいま運輸大臣からお話がございましたが、確かに国交が回復しない前の空路の開設ということについては、いろいろな問題があることは私もよく承知しております。しかしながら、民間ベースによる航空商務協定の締結については前例がございます。すなわち、わが国が大韓民国と外交関係を設定する前の昭和三十八年十二月十九日に、日本航空が韓国の大韓航空公社と航空商務協定を結びまして、日韓両国政府の認可を経て翌年四月十五日から東京−ソウル間に定期航空の運航を開始していることは、運輸大臣御承知のとおりであります。そのほか、航空運航の技術上の問題、あるいは事業主体あるいは経営上の問題、いろいろあるようでございますけれども、とにかく上海空港については、パキスタン航空がカラチからダッカ経由で乗り入れている。あるいはフランスも上海へ乗り入れを計画しているというような状態でありまして、これは時間の問題は別として、早晩やらなきやならないことだということになってまいりますと、いろいろな隘路は隘路として、この問題についてやはり前向きで対処していくという姿勢政府として必要であろうかと思います。  また、航路の問題については、ただいまお話のように、だんだん話が進んでおるというようなお話がございましたけれども、何と申しますか、定期航路がないということになりますと、いろんな貨物の取り扱いであるとか、あるいはいろいろな点において不便を生じておるということも御承知のとおりでありますから、これらの点についても今後十二分に前向きで検討していくべきだと思うわけでありますが、総理大臣、この点いかがでございますか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在のような日中間の関係、これを未来永劫続けていく考えはもちろん持っておりません。したがいまして、ただいますぐどうこうという問題ではございませんが、お話しになりましたような御意見、述べられたように、こういう問題についても慎重に検討してまいるつもりであります。
  31. 倉成正

    倉成委員 政府アジア地域、特に東南アジアに重点を置いて経済協力、技術協力を拡充して、特に農業開発の問題を重視するとの態度を明らかにしておりますが、これは東南アジアの民生の向上のために緊喫の問題であり、ひいては同地域の安定、平和をもたらすものとしてけっこうであると考えますが、この点について政府の考えておられる具体的な方策をお伺いしたいと思います。
  32. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 東南アジアの問題につきましては、確かに現在、食糧、農産物その他が非常に不足しておる。一部の地帯においては若干輸出能力はありますが、全体を通じて非常に不足をいたしておる。また、将来を見ましても、人口の増加よりも食糧の増加の部分が非常に少ないという点から見まして、これらの問題はできる限りの援助をいたしたい、かように考えておるのでございます。さようなことから、主として食糧増産についての援助をいたしたい、かように考えておりますが、何ぶん各国々の実情が非常に違いますので、これらに即応して考えてまいりたいということと、また、東洋の本質といたしましては、やはり自分みずからが発展したいという心持ちに協力していくということが重要でありますので、でき得る限り今年中に農業開発会議を開いて具体的なことを考えてまいりたい、かようにいたしておるような次第でございます。
  33. 倉成正

    倉成委員 アジア開銀設立に伴い、今後のわが国アジア及び極東地域に対する経済協力をどういうふうに進めていくお考えであるか、ひとつ総理からお伺いしたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣からお答えいたさせます。
  35. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 本件は、かねてエカフェにおいて研究されておった問題でありますが、いよいよ関係国の非常な強い支持のもとにこれが実現することになったのであります。それぞれラ米関係あるいはアフリカ等におきましては、国際金融機関というのが設置されて、それぞれその機能を発揮しておることは御承知のとおりであります。アジアに関してはそういうものが非常におくれて、今回、実現することに相なったのであります。アジア経済的なおくれを取り返す意味におきましていろいろな方法があります。二国間の問題ももちろんある。あるいはまた、通常の貿易という方法によって開発を促進するということも考えるわけでありますが、同時に、かような金融機関によって、純経済的に諸般の開発事業を育成助長するとい方法もある。今回のアジア開銀は、その理事者の数、あるいはまた、出資の構成その他諸般の面におきまして、域内の国を主とする、こういうたてまえで、いわゆるアジア的金融機関、そういうことを強く打ち出しておるのであります。御承知のとおり域外からはアメリカその他先進国の出資はあります。日本アメリカと同額の二億ドルを出資しておる。今後この機能をどういうふうに発揮するかということは、これはいずれ具体的に定まっていくものでありますけれども日本といたしましては、このアジア開銀の機能によって十分にアジア開発の実があがることを期待し、今後この方面に相当の力をいたしてまいりたい、こう考えております。
  36. 倉成正

    倉成委員 ただいま外務大臣からいろいろお答えがございましたが、アジア開銀が商業ベースで融資するといたしますと、低開発国の実情に即しないと考えるわけであります。日本最大の株主として本銀行に参画するわけでありますが、外交的な要素を十分勘案してこれらの問題に対処する必要があると考えるわけであります。この点についてどういうお考えであるか、お伺いしたいと思います。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり金融機関である以上は、金融機関のなし得る限度というものがあるのであります。でありますから、普通の商業機関のように、短期の、そして条件の辛い、そういうものであっては、アジアの現状にかんがみて、これを開発、助長するというたてまえからいって適当ではない。でありますから、十分にゆるい条件のものでなければならぬのでありますが、それ以上限度をこえていろいろな政策上の色彩を加味してやるということは、これは開銀としては限度をこえるものであろう、私はこう考えております。
  38. 倉成正

    倉成委員 外交問題の最後の問題として、北朝鮮の技術者入国許可問題について参議院でもいろいろ論議があったようでございます。今回は例外的に許可するとしばしば外務大臣が言われておるようでありますが、しかし、これらの問題については、やはりこれに対処する原則というものがなければならない。どういう原則に従って対処するかということ、政府の御方針をお伺いいたしたいと思います。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の技術者入国の問題は、実はこれは三年越しの懸案でございまして、日韓国交正常化以前からの懸案であります。いやしくもプラントを買い入れるというような場合には、その相手国の現状を十分に実地について観察をして、そうして、それがはたして説明書のとおりほんとうに、動いておるかどうかというような点を詳細に観察をして、そしてそれを購入するかしないかを決定するのが、これは普通のやり方なのであります。そういうような状況でございますので、日韓国交問題が具体的に進行する以前からの問題でありまして、当然プラント輸出をやる以上は、技術者の入国は認めざるを得ない、こういう考え方でずっと引き継いできた。ただ、日韓国交の問題が具体化してまいりましたので、よけいな刺激を与えることは適当でないというのでだんだん延ばしてきたわけであります。いわば借金の支払いを延期してきたようなことでございまして、政治といたしましては、あくまでそういう責任は果たさなければならぬ、こういうことでやったのでありますが、これを先例としないということは、今日の日韓関係が正常化しておりますし、それからまた、韓国に対する経済協力もまだほんの緒についたばかりでございます。そういう状況でございますので、これは先例としない——日韓関係を害してまで考えなければならぬとは私は思いませんので、先例としない、こういうたてまえでいきたいと考えます。
  40. 倉成正

    倉成委員 事外交の問題でありますから、一応この問題はその程度で承っておくことにしますが、ひとつ十分慎重に処理していただきたい、また原則を確立していただきたいということを御要望申し上げておきます。次に、財政の問題に移りたいと思います。ことしの日本経済は、国債をかかえた経済ということが特色でありまして、公債発行と財政支出の促進を軸といたしまして景気は浮揚しつつあるように考えられますが、この点について、景気回復の現段階をどう認識されるか、ひとつ大蔵大臣からお伺いしたいと思います。設備投資の動向、あるいは在庫投資の動き、あるいは財政支出の状況、こういうのをあわせてお答えいただけば幸いと思います。
  41. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国が当面しておる経済問題は二つあるわけでありまして、一つは景気を回復しなければならぬ、同時にまた、もう一つは物価の安定につとめなければならぬ、こういう問題かと思います。昭和四十一年度におきましては、適正な規模の公債の発行をいたすという方針に基づきまして、一面においては景気の回復をはかるが、しかし、発行額を適正な規模にとどめるということによりまして、物価政策に景気回復が支障を及ぼさない、こういう基本的な考え方をとったわけであります。私は、この考え方の推移がどういうふうになっておるかということを見てみる場合におきまして、きわめて順調に推移しておる、かように見ております。  予算を編成するに先立ちまして経済計画というものをつくったことは御承知のとおりでございますが、大体これが計画の線に沿っていま推移しておる、こういうふうに見ております。すなわち、景気回復の面から申しますと、昨年の暮れから鉱工業生産が上昇に転じてずっとその基調を維持しておるわけであります。また、生産されたものがどういうふうな動きをしておるか、これは出荷指数に端的にあらわれるわけでありますが、これも並行してきわめて堅実な動きを続けておるのであります。また、製品の在庫が非常に低落してまいりまして、これはすでに昭和三十八年の不況直前の状態に戻りつつある。また、会社等の収益状態も逐次改善されつつありまして、九月期は三月期に比べて相当の改善をされるということが予想されるような段階になってきておるわけであります。これをそういうふうな状況に持っていった主導力である財政のほうは、上半期中に六割以上の契約をする、こういう計画だったのでありまするが、これもきわめて順調に実施されつつありまして、この目標は着実に達成される、かように見ておるわけであります。  そういうふうに景気の側面は非常に好調でございまするが、しかし、これが物価にどういう影響を及ぼしておるかという点になりますると、景気上昇の過程でございまするので、卸売り物価が上がる従来の傾向、そういうことから卸売り物価に反発の調子が出ておりまするが、消費者物価はやや落ちつきぎみに推移しておる、こういうふうに見ております。そういうふうに見てみまするときに、政府がねらいとしておる景気回復と物価安定という問題は、非常に両々困難な問題ではございまするけれども、並行して順調に動きつつある、かような判断でございます。
  42. 倉成正

    倉成委員 物価の問題については、あとで触れたいと思いますが、ただいまの大蔵大臣の認識では、経済は順調に回復過程に入っておるというお話で、私も現象的な点でその点は認めます。しかしながら、中小企業の倒産件数は、六月に入りましても五百二十一件、それから株価は、御承知のように非常にもたつきかげんの状態になっておる。これは粉飾決算の穴埋め、あるいは借金の返済というふうないろいろなことが言われておりますが、やはり経済の内部を少ししさいに点検してまいりますと、必ずしも手放しで景気回復の段階に入った、そのテンポが出てきたというわけにはいかないのではなかろうかという点が一点。それからもう一つは、いわゆる在庫の動きが出てきたということで、この今回の不況は、従来の景気変動と同じく、いわゆる在庫循環的性格のものであったのではないか、だから、政府の施策がひとつ不況を深刻にしたのではないかというような意見が一部にあるわけですが、大蔵大臣としては、やはり需要の不足、いわゆる今回の不況は構造的なものに基づく不況であり、今後ともこの需要不足を財政で補っていかなければならないというふうに認識しておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  43. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 実は、昨年の経済の非常な深刻な状態に対しまして、財政をきわめて大規模に拡大いたしまして一挙にこの不況を回復すべし、こういう議論もあったのです。それは、財政を極端に拡大をするというようなことになれば、そういうことができないわけではない。しかし一面、政府は物価の問題というものをかたくかかえておるわけでありまして、これをやり損じたら、不況は回復するけれども、たいへんなまたインフレ処理という重大な問題に当面する。そこで、不況の実態はどうかというと、これは設備の過剰な状態であるという判断、それを財政で埋める、埋めるが、これを一挙には埋めない、二、三年かけてやるんだ、こういう考え方をとってきたわけなんであります。これによって不況の回復と物価の安定を同時に解決し得る、こういう考え方に基づくものであります。したがいまして、今後まだ二、三年の間におきましては、民間の設備投資意欲はそう急激には起こってこない、その設備投資を政府が補うという必要がある、こういう判断をしておるわけであります。
  44. 倉成正

    倉成委員 大蔵大臣の御見解によれば、今日は過剰設備で供給力が過剰である、しかし、この民間の設備投資の浮揚力ではなかなか景気の回復ができないので、このギャップを財政支出によって補う、いわゆる来年度の公債につながる問題でありますから、ひとつその見解を伺っておくことにいたしまして、あとでこの問題には触れたいと思いますが、本年度の税の自然増収はどの程度見込まれるか、この景気の問題と関連して、税目別に概要をお示しいただきたいと思います。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ年度発足早々でありまして、ことしの税収が予定に比べましてどういう動きになるだろうかという判断は全くつきかねるような状態であります。しかし、年度早々でありまするが、これまでの動き、また、経済全体の動きを見ておりまして、予定の数字を落ち込むということは万々あるまい、こういうふうに見ております。しかし、実際それがどういうプラスアルファを出現するか、そうたくさんなことはないと思いますが、その辺はもう少し推移を見ないとわからない、こういうのが現状でございます。
  46. 倉成正

    倉成委員 ただいま大蔵大臣からは、税の自然増収についてはそう大きな期待はできないというお話がございました。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 年度早々でありますから、確かに最終の見込みについてはなかなかおわかりにくいと思いますが、少なくとも、そう大きな自然増収、かつての時代のようには見込まれないといたしますと、ここで問題になってまいりますのは、いわゆる補正財源の問題でございます。すなわち、先般いろいろな論議をされました食管の赤字補てんが七百数十億、また公務員のベースアップを昨年どおりといたしましても三百五十億前後、災害復旧費として、ここ三年ないし四年の平均をとりましても四、五百億のものが要る。そのほか、ベースアップその他の関係で地方財源の補てんの問題が出てくる、あるいはいま懸案になっております石炭対策について近く審議会が答申をしようといたしております。これを政府が実施しようとしますと、かなり巨額の財政支出を要するわけでございますが、この膨大な補正予算の財源を何によって調達されようとされるか。予備費は六百五十億あるようでございますが、すでに五十億は使った、税の自然増収はあまり期待できない、予備費はあまりないということになりますと、この補正予算の財源、どうしてもやらなければならないものを何でまかなうかということについて、国民は非常な不安を持っておるわけでありますが、この点について大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のように、本年度も補正要因というものが支出面で出てきておるわけであります。つまり、ただいまお話しのような米価の問題で七百何十億かあります。それから、おそらく公務員のベースアップ問題というのが来月になると勧告される、そういうことにまあなるであろうと想像するのです。それに伴う財源措置を必要といたします。その他、災害がなければと思っておるのですが、これはお天気次第のことでありますから、その他こまごましたものが若干あります。そういう歳出補正要因に対しまして、歳入面では、ただいま予備費六百億円を持っておるというだけでございまして、まことにこれは頭の痛い問題ではありますが、しかし、歳出補正要因をほうっておくわけにはいかない、何らかの措置を講じなければならぬわけであります。今後租税収入の推移がどういうふうになりますか、そういうようなこともよく見てまいらなければなりませんが、少し時間の推移を見つつ、これらの要因に対しましては相当の措置を、必要な措置を講じなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  48. 倉成正

    倉成委員 ただいま大蔵大臣からお答えがございましたけれども、こういう事態について、私ども昭和四十一年度の予算を審議する際に、私自身も当委員会におきまして質疑に立ちまして大蔵大臣にいろいろお尋ねをした。その際大蔵大臣は、今年度中は赤字公債は発行しない、また総理もさような御言明をなさったと記憶しておるわけであります。赤字公債を発行しないという一つのたてまえは、今後とも堅持していかれるおつもりであるかどうか。また、どうしても自然増収にあまり期待できない、また災害等もかなり——きょうの新聞を見ましても、新潟の災害等出ているわけでありますから、かなりの額を要するということになりますと、どうしても公債の増発という問題が必然的に出てくる。もっとも、増税をやれば別ですけれども、年度半ばでやるわけにはまいらない。そういうことですから、その点についてどういうお考えをお持ちになっておるか。これはもうすぐ差し迫った問題でありますから、基本的な態度についてはやはり大蔵大臣として決意をしなければならぬ時期であると思いますので、この点をお伺いしたいと思います。
  49. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま本年度のこれからの財政の運営については苦慮しておるということを申し上げたのですが、おっしゃられる赤字公債ですね、これはおそらく昭和四十年度の歳入補てん公債という意味であろうと思いますが、さような性格の公債を発行するという考えは持っておりません。これははっきり申し上げておきます。その他の方法によって対処していきたい。それから、そういう性格の公債は、今後といえどもこれを発行する意図は持っておりません。
  50. 倉成正

    倉成委員 その他の名案があればけっこうなんですけれども、御承知のとおり、予算総則に掲げられておる公共事業費の総額は、大蔵大臣の説明によれば七千六百億、これに対して今年度七千三百億、予算総則の以外に掲げられておる項目、官庁営繕費、公務員宿舎等を入れて、いわゆる財政法第四条に基づく公共事業費の対象としては八千三百億、これは明らかです。そこで、こういう前提のもとで赤字公債でない方法、公債を発行されるとは申されておりませんけれども、どうも公債増発のにおいがする。そうすると、一体どういう方法で、どういう説明のできる方法で発行されるかということは、やはりわれわれ非常に知りたいところです。そこで、もし大蔵大臣でただいまの点についてお答えができるなら、ひとつお答えいただきたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 かりに非常に大規模の災害がある。これはもう普通の財政手段では応じ切れないような規模のものである。こういう際におきまして、その財源をどうするかという問題になった場合に、これは極力、そういう際におきましても一般財源でやっていくように努力したいと思います。しかし、法律論といたしまして、そういう際に公債が発行できないかというと、これはできるたてまえの方針をとっておるわけであります。これはさきの国会においても御審議をわずらわしておるような次第でございますが、建設的な公債は発行し得るという状態にあるというふうに御了承願います。
  52. 倉成正

    倉成委員 私も、どうもはっきりしないわけでありますけれども、一応この問題は留保いたしまして先に進みたいと思いますが、かりに公債を発行するといたしますと、インフレにならないためには、市中消化の原則というのが、やはり大蔵大臣の頭の中にあると思います。そういたしますと、大蔵大臣は何かの記者会見等で、今年度公債を増発したいというような御意見を出されたように聞いておりますけれども、日銀総裁は六月三十日の記者会見で、国債の消化能力はこれ以上出せる状態でないと言っております。大蔵大臣と意見が違うようでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 新聞に出ましたのは、ただいま倉成委員からお尋ねのような質問がありまして、災害があったらどうだ、こう言うから、災害があった場合には、これは災害復旧費は公債の対象になり得るものである、こういう理屈を申し上げたわけです。それが一部には公債を発行する計画であるがごとき考えのように書かれておりますが、そういうことを申し上げておるわけじゃないのであります。公債を発行します以上、私は常々申し上げておりますとおり三つの原則がある。一つは、何といっても公債発行財源として取り進める財政の規模が、国民経済の規模に照らして適正であること、この原則です。第二は、公債発行が市中において消化される、こういうことでございます。第三は、公債の発行目的が建設目的である。つまり国民財産として将来残るものを対象として発行する、この三つの方針をとっておるわけです。これは将来とも厳に堅持していく、かように考えておるわけであります。  それから日銀総裁が言われたという、これも新聞記事に出ておりますが、市中消化のほうがなかなか容易な状態ではない、こういうことを申されておるようでありますが、これはそう簡単なもんじゃございません。今日まで七千三百億円の公債の消化状況は非常に順調でございます。けれども、これがふえるというような状態になってきた場合に、日銀総裁が歓迎だというようなことを言うはずがない、もう当然のことをおっしゃっている、かように御了承願います。
  54. 倉成正

    倉成委員 それでは、来年度の国債の発行額についてどういうふうにお考えになっているか。何を基準としてこの額をおきめになるつもりか。世上では八千億ないし九千億といわれておるようでございますが、この点について、ひとつ大蔵大臣から率直にお答えいただきたいと思います。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年度のことはまだ検討に入っておりません。しかし、考え方といたしまして申し上げますれば、来年度の財政の規模をどうするかということがまずきめられなければならぬ問題だと思います。これが、私が今日見るところによりますると、市中の民間の設備投資がなお停滞状態であるということを考えておかなければならぬ。そういう際に受け持つべき財政の役割りを考えますると、これは財政がややその規模を昭和四十一年度よりも拡大しなければならぬ傾向にある、かように考える次第でございます。したがいまして、来年度における租税収入が一体どうなるであろうか。その租税収入をもって充て得る財源を差し引きまして残りが建設費の範囲内であり、かつ市中の消化可能であるという限度において公債の発行ワクはきめられるべきである、かように考えておるわけであります。大きく申し上げますると、今日の大胆な見通しによりますれば、来年度は公共投資が本年度よりもやや増大し、したがいまして、これの財源といたすべき公債は、またそれにつれて幾らか増大する傾向にある、かように見ております。
  56. 倉成正

    倉成委員 国債の発行額はフィスカルポリシーとしての財政の役割り、すなわち、日本経済は当分は需要が不足であり、景気浮揚力として財政に期待するという認識に基づいておると思うのでありまして、この点については大蔵大臣からお話しのとおりでございます。  そこで、ただいま公債の歯どめとして市中消化の原則ということを大蔵大臣は強調されたわけでありますが、漫然と国債が累増するということは、これはわれわれも国民全体も非常に寒心にたえないところでありまして、市中消化の原則を貫くためには、公社債市場に一日も早く公債が上場されて、価格、利回りをにらみながら発行量やあるいは利率を決定することが必要だ、これがやはり前提条件になると思うわけであります。この点・について、公債の上場が非常におくれておるようでありますが、どういう事情によって非常におくれておるか。公社債市場で国債の上場がない限りにおいて、やはり公債を金利機能によってセーブするという手段はないはずです。そういう点で、これはまことに残念に思っておるわけですが、この点はいかがでございますか。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債は私は国民個々が、いわゆる大衆消化というか、そういう形によってお持ちくださることの幅が広ければ広いほどよろしい、こういうふうに考えておるのであります。そういう見地から見まして、特にただいまおっしゃられるような公債の市場上場ということを急がなければならぬ、これまた全く同感でございます。ただ、公債を市場に上場した場合におきまして、相当量の取引が行なわれるというような状態でありませんと、適正な価格形成ができないのです。国債について適正な価格形成ができないという環境のもとにおいて国債の上場をする、それでおかしな相場が出てくるというようなことになりますることは、また国債の信用上からもとるべからざるところである、かように考えておるわけなんであります。  そういうようなことで、なるべく多くの取引がすでに実際問題として行なわれておるという状態を念願しておるのでありまするが、その方向に実際動いております。そういう状況を見計らって、なるべく早く上場を行ないたい、かように考えておりまするが、その前提準備として、すでに気配交換相場の発表をとり行なっておるというようなわけで、着々お話しのような準備を進めており、そう遠くない時期にこれを実現し得る、かような見通しでございます。
  58. 倉成正

    倉成委員 来年度も国債が相当大規模に発行されるという状態の中で、やはりただいま申し上げました点が前提条件になると思います.それと同時に、かりに公社債市場に上場された場合において、現在では民間の資金需要が必ずしも繁忙でございませんが、もし設備投資の需要がどんどん起こってきたといたしますと、やはり金利の機能によって公債の価格が下がってくる。そうなると、これは外国の場合には公債発行の中止をするということが行なわれておりますが、日本の場合には財政需要が硬直しておりますから、なかなかむずかしいということになりますと、公債の乱発という危険なしとしないわけでありまして、この点については十分ひとつ御検討されて、注意をしていただきたいと思います。  同時に、次の問題に移りたいと思います。国債を中心として今日は低金利政策を続けておるわけでございますが、そのためには、やはり銀行、金融機関の近代化、合理化ということがどうしても必要だと思います。この点について大蔵省は少し消極的ではないかという批評がございますけれども、大蔵大臣はいかにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま世界各国は高金利政策だ、日本は低金利だといわれる、そういう声が多いのでありますが、日本は低金利、低金利といわれまするが、それでもなお金利は非常に高いのです。これが私は、産業の負担なんかに大きな影響を及ぼしておる、こういうふうに考えますが、とにかく貿易は自由化だ、ケネディラウンドはもう発足されようとしておる、資本の導入についても自由化を要請される形勢である、こういうふうなことを考えまするときに、やはり日本の産業の体質を強化しなければならぬ、そういうことからいいまして、どうしても日本の金利水準を下げていく努力というものは執拗にやっていかなければならぬと思います。そういう方向で今日まで努力をしてきておりまするが、金融機関のコストの低減、こういう問題は、そういう立場から見ましてきわめて重大な問題でありますので、今後もねばり強くこの問題と取り組んでいきたい、かような方針をとっておるわけであります。
  60. 倉成正

    倉成委員 大蔵大臣からちょっと触れられましたけれども、やはり国債発行下の金利体系は、もちろん外国の金利より、もとが非常に日本の場合は高いわけですから、大蔵大臣の言われるのはよくわかります。しかしながら、今日米国の景気の過熱、あるいは米国で一流企業に対する貸し出し金利あるいは銀行手形の割引率、法定準備率が相次いで引き上げられておる。また連鎖反応を起こすように、カナダ、オナンダ、西ドイツ、ベルギー、スエーデン、こういう国が公定歩合の引き上げを行なってきておる。またこれがイギリスにも及ぶだろうというふうに、世界各国が非常に高金利時代を迎えてきておる。こういう状態でありますと、現在のところは確かに外貨準備率あるいは国際収支にはそうたいした影響はないようでありますけれども、やはりこれは相当考えておかなければいけない。現に日本の大企業が外国から借りております金の金利が高くなってきておるということで、金利負担が出てきておる、あるいは輸入ユーザンスの金利が上がってきておる、そういういろいろな問題がありますので、これらの状態に応じて望ましい日本の金利体系ということについて、やはりひとつ大蔵省としては十分今後御検討を進めていただきたいと思います。  ところで、去る十五日、大蔵省が長期の減税構想について税制調査会に示されました試案は、私がこの委員会におきまして、国債発行下において減税というのは何を基準として考えるか、どういう構想を持つかという質問に対して、大蔵大臣は、ひとつ検討するということをお約束いただいたわけでありまして、そのお約束を果たしていただいたという意味で非常にこれは歓迎するわけでありまして、非常に意欲に満ちた所得税の減税あるいは退職金の減税ということでありますが、問題は、こういうふうに財源不足あるいは公債をかなり出さなければならぬという時代において、いつからこれを実行するかということであります。  そこで、来年度のことはなかなかこれはわかりにくいと思いますけれども、大蔵大臣としては、来年度、この大蔵省が税制調査会に示した試案のうちで、少なくともこれは実現したいという意欲をお持ちのものがあろうと思うわけでありますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま税制調査会に対しまして、長期にわたる減税構想という問題の御検討をお願いしておるわけであります。なぜそういうお願いをしておるかと申し上げますと、やはり現実に見通し得るこの数年間において、税制というものを理想的な形においてはどこへ持っていくのが適当であるか、こういうことを考えて税制というものに取り組むべきである、そうしないと、毎年毎年の事情によって、そのときどきの都合で、まあ極端に言うと場当たり的な傾向なしとしない、こういうふうに考えまして、長期目標を掲げたい。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席〕 そして、その実現は、その年々の財政状態に応じてこれを段階的に実行していくということにいたしたい、かような考え方に基づくものであります。  税制調査会のほうで、さようしからば、大蔵省では、かりに理想的な税制ということを考える場合に、所得税についてはどういう点が問題点であり、どういうふうにすべきであるかということを主税局——庁というような立場において示されたい、こういうので、ああいうものを差し上げたわけでありまして、これは税制調査会がどういうふうにさばいてまいりますか、これはもとより税制調査会の御意思によることでございます。大蔵省は、御勉強の資料というような意味において差し出しておるわけでありますが、税制調査会で問題がきまりました以上、まあ非常に財政状態は、特に四十二年度、三年度は窮屈だと考えておるわけでありますが、それにもかかわらず減税というものは執拗にこれをやっていくという意図のもとに最善の努力を尽くしてみたい、かような考えであります。
  62. 倉成正

    倉成委員 国民の前に非常に意欲的な減税構想が発表されたわけでありますが、やはり国民はこれが近い機会に実現できると期待しておるわけでありますから、この点は、ひとつ十分お忘れなく今後の施策を進めていただきたいと思います。  次に、企画庁長官お尋ねしたいと思いますが、最近の消費者物価の動向について、比較的落ちついているというお説明が大蔵大臣からありましたが、どういう状況か。  それから、何が一番いま問題になっているか。これから先、今年度中の消費者物価が、当初政府計画の五・五%におさまるかどうか。この点について、ひとつお伺いしたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 消費者物価の問題につきましては、対前年度で考えてみますると、全都市でもって、四月が四・七%、五月が四・八%、それから東京都で見ますと、四月が四・四%、五月が五・三%、六月が五・八%、大体こういう状況でございます。そして、かりに全都市の消費者物価指数が、五月水準横ばいで四十一年度を推移するとすれば、対前年度上昇率は三・六%、それから全都市消費者物価指数が六月に若干上がりましたから、それ並みに〇・八%六月が上がると見て、横ばいにしていきますと、四・二%でございます。こういう数字から見て、いま大蔵大臣の言われたように若干落ちつきぎみになってきておる、こういうことでございます。  ただ、昨年は御承知のとおり期の初めがわりあいに高くて、四月が九・九%、それから平均七・四%まで落ちたので、年間順次下がってまいりました。今年もそれと同じような情勢が続くかどうかということについて私ども心配しているので、したがって、物価に対する手を決してゆるめては相ならぬ、楽観をしないで各方面に手を打っていかなければならぬ、こういうふうに大体見ております。
  64. 倉成正

    倉成委員 最近の値上がりの特色として、雑費、特に運賃とか授業料、また特に家賃の値上がりが非常に激しいことは、企画庁長官も御存じのとおりです。佐藤内閣の最大の課題は、物価問題と称しても過言ではないと思うわけでありますが、特に最近目立つことは、卸売り物価が上昇してきておる。これは、消費者物価は上がっても卸売り物価が安定していればだいじょうぶだということが俗にしばしば言われてきましたが、その卸売り物価が上昇しておるということは非常に問題だと思うわけであります。この原因と見通しについてひとつお伺いをしたいと思います。
  65. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 卸売り物価は最近若干騰勢ぎみでございまして、昨年の六月から本件の五月まで四・四%ぐらいな騰勢を続けてきたわけでございます。そこで、その中で見てみますと、やはり非鉄金属の値上がりというのが相当ございまして、非鉄金属を除いた工業製品の値上がりというのは一・八%、非鉄金属は御承知のとおり国際価格が上がってまいりました。その関係で、銅が上がったばかりでなく、アルミ等が代替物として非常に不足してきましたから上がってきた、こういうことでございます。ただ、今後の問題といたしまして、いまお話しのように、どういうものが卸売り物価を上げているかということを、やはり相当考えてみておかなければならぬと思いますが、いま申し上げたような上がり方をウエートで考えてみますと、非鉄金属が四五・三%ぐらい、半分弱のウエートを持っております。非鉄金属を除きました工業製品が三〇%、農林水産物が二六・五%、その他のものにつきましては、むしろマイナス二・二%、こういう関係になっております。したがって、工業製品につきましても、非鉄金属は国際価格で上がるのですから、いかんともしがたい点もございますが、工業製品、農林水産物等につきましては、相当にやはり留意をしてまいらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  66. 倉成正

    倉成委員 現在の卸売り物価が、非鉄金属を中心にして上がっておるということは御説明のとおりだと思うのですが、昨年の七月、政府が不況対策をとるにあたって、不況から脱出すれば物価は下がるはずであると表明をされました。実際には、昨年七月を底に、工業製品の統計をとってまいりますと上昇を続けておる。これについて総理また企画庁長官の御所見はいかがか、お伺いしたいと思います。
  67. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のとおり、今回の不況は設備過剰から来ておる。したがって、ある程度政府需要を刺激することによって景気を回復しながら過剰設備の稼働率を上げていくということによって、製品の値上がりを吸収していけるものとわれわれも考えております。いまちょうど不況から脱出する過渡期にございまして、若干のものにつきましては、いわゆる管理価格的なあるいはカルテル的なものでささえた面もございます。したがって、そういうものが逐次はずれてまいりまして順調にまいれば、まず、いま申し上げたような点に落ちついていくのではないかというふうにわれわれ考えておりますけれども、これらの点については相当注意してまいらなければならぬと思います。
  68. 倉成正

    倉成委員 現在の卸売り物価は、消費者物価の継続的な上昇がはね返ったものというふうに考えられますけれども、この点はいかがでしょう。企画庁長官、ひとつ見解をお伺いしたい。
  69. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さしあたりのところ、たとえば農水産物の関係等におきましては、やはり卸売り、消費者物価、ともに高騰を続けておるわけでございまして、そういう面については、はね返ったと申しますか、むしろ両方共通の題材として扱っていかなければならぬ。その他のものにつきましては、やはり消費者物価が上がれば、おのずから賃金を上げていくというような問題も起こってき得る。それが、生産稼働が十分でない間は、まだ吸収されないという面もございます。しかし、いまのところ、まだ著しく消費者物価そのものが卸売り物価を上げているというよりは、これは今後の動向として注意してまいらなければなりませんが、その意味においては、まだそこまでいっているとも考えないのでございます。
  70. 倉成正

    倉成委員 卸売り物価と関連して、鉄鋼生産調整について、通産省の勧告操短続行の方針に対しまして、公正取引委員会は、一部因子を除き鉄鋼界全体としてはすでに不況を脱出しておる、行政指導による生産調整を継続するような理由はないといたしておりますが、いわゆる産業政策と物価政策の観点から食い違いがあるように考えられます。総理大臣としてはいずれの立場をとられるか、お伺いしたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 所管大臣からお答えするほうがいいと思いますが、長くかような生産調整をやるということは、本来いい姿ではございません。ことに物価問題と真剣に取り組むという立場から申せば、価格が自由競争で形成されるということが望ましいこと、これはもう言うまでもないのでございます。しかし、現在の産業の置かれておる実情、それに相応しての政策、これを考えますと、通産省が申しておりますように、いましばらくこの状態を続けていかざるを得ない、かように私は思っておる次第でございます。しかし、こういう事柄はできるだけ早期に解決するように指導することが必要だ、かように思っております。
  72. 倉成正

    倉成委員 これらの問題については国民が非常に深い関心を持っておりますので、ひとつ十分慎重に御検討をいただきたいと思います。  政府は物価対策について物価担当官を置くとか、いろいろ最近前向きの姿勢をとりつつあることは、私もまことにけっこうなことと思うのでありますが、また衆議院の物価対策特別委員会では、与野党一致をもって物価対策の決議をするという状態でありまして、この物価問題につきましては、政府国会あげて真剣に取り組んでいかなければならないと思います。何と申しましても、物価対策について、総理大臣以下本気でやるという姿勢を示すことが一番大事だと思うのでありますが、この物価安定に関する総理の決意をひとつお伺いしておきたいと思います。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この内閣に課せられた課題は、ことしは物価問題と真剣に取り組むことだ、また同時に不況克服だ、この二つの課題を年当初におきまして披露したのでございます。その後あらゆる場合に、この二つの成果をあげるために努力してまいりました。ただいま言われるように、ただ単にムードをつくるわけではございません。これは実行する、もう実際に問題を解決する、これが私どもの仕事だ、かように思っております。
  74. 倉成正

    倉成委員 それでは次に、米価の問題に移りたいと思います。  まず総理大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の生産者米価の決定につきましてはいろいろと混乱があったように思いますけれども、これについて総理の御所見をまずお伺いしたいと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米価決定にあたりましては、私どもは過去の経験を生かして、そして将来を見通してこれを決定する、こういう態度であったと思います。これは、過去の経験を生かすというのはどういう点か、申すまでもなく、生産者が安心をして、そうして十分生産意欲を持つということと、同時にまた、米食は民族的なもう主食でございます。そういう意味から、消費者米価をいかにするかということは別にいたしましても、この生産者米価の決定については、各方面で非常な関心を寄せられる問題でございます。そういう意味で、生産者、また消費者、各階層、これらの方々に及ぼす影響も非常に深刻でありますから、重大でありますから、そういう意味で、あらゆる観点に立って調節をしながら今回の米価を決定した、かように私は考えたのでございます。
  76. 倉成正

    倉成委員 総理のお立場はわかりました。  そこで、総理は、米価が一万八千円をこえてはならぬと指示されたと報道されておりますが、その事実がありましたか。もしあったとすれば、どういう考え方に基づきそういう御指示をなさったか、お伺いしたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま言うように、過去の経験を生かすということを申しました。そういう意味から、米価は、ただいまのような特別会計のもとにおきましても、理論的に米価決定の方向はきまるわけであります。一万八千円以上になってはいかぬとか、こう申しましても、ちゃんと筋があればそういうわけにはいかない、かように私は思いますが、過去の経験を生かしたその意味において、生産費補償方式その他のいわゆる指数化方式というものが、過去の経験から一つの原則ではないか、こういうので、これを骨子にして、そうして米価を算定させた、かように思っております。
  78. 倉成正

    倉成委員 私は、今回の生産者米価をめぐる異常なまでに盛り上がりました米価問題というのは、単なる価格の問題でないということを、やはり総理認識していただきたいと思います。世界的な食糧不足の状況を背景に、国内の食糧も、ここ数年は、毎年百万トンに近い米を輸入しなければならない。加えて、農村には若い働き手がなくなった。将来の農村は一体どうなるだろうか、こういう不安がこの背景にあると思うわけでありまして、物価懇談会の生産者米価抑制の方針というのがやはり農民にいろいろな意味で大きな刺激を与えた。諸物価は上がるのに、農民の生産する中心作物である米には犠牲をしいるのか、こういう危機感が米価運動に集中してまいったと思うわけであります。この素朴な農民の要求は、私はやはり当然のことであると思いまして、われわれはこの要望にできるだけ沿ってやるべきであると考えたわけであります。ところが、こういったことを考えます場合に、私は、やはり忘れてはならないのは、米価決定に至るまでの経過というか、そういう点で、ほんとうに農民とじっくり話し合って、その気持ちを聞いてやるという努力、また政府のいろいろな姿勢がどうも欠けておったのじゃないかという点を考えるわけでありまして、農林大臣にお答えいただきたいと思いますが、どういう見地に立って今日の米価を決定されたか、お伺いしたいと思います。
  79. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申します。米価の今度の決定にあたりましては、常に考えておりまするように、生産費及び所得補償方式、この原則をどうあらわすかということに苦心はいたしておりまするが、方針はさような方針に基づいて今度の米価の決定に当たったわけでございます。
  80. 倉成正

    倉成委員 生産費所得補償方式を堅持したというお答えでございますが、私は具体的な価格の決定について考えるべきことは、米価は高ければ高いほどよいというものではないと考えます。社会党の主張されるように、いたずらに人気取りの無責任な主張にはくみするわけにはまいりません。かりに成田書記長の二万五千円米価ということを考えますと、食管の赤字の増加は三千五百億円、現在の食管会計と加えて申しますと約五千億。増税はやっちゃならない、公債を発行してはいかぬ、物価は押えろということで、一体五千億の財源をどこから見出すか。そういう手品みたいなことはなかなかできない。そこで、そういう無責任なことにはくみするわけにはまいらないわけです。そういう点では、私は、もうはっきりやはり政府は自信を持っていろいろ考えていただきたいと思うわけでありますが、少なくとも、今日の状況において適正な米価を合理的な手続に従って決定するというのがやはり政府の任務である。農民に対しても、一般国民に対しても十分納得せしめるという点については総理の考えに同感でありますが、そのためにはやはり共通の基盤を持たなければいけない。米価決定の前後になって大騒ぎをしてもこれはいかないのでありまして、かねてからやはりそういう共通の基盤を持って、共通の土俵の上に立ってものごとを考えていくということが必要でないかと考えるわけでありますが、今回の米価決定にあたっては、米価審議会の機構の運営のあり方、あるいは先ほども申し上げましたように、政府の農民に対する説得力、PRの努力、こういうのが欠けております。また、恵まれざる農民が物懇の勧告に対して反発を持つということは当然でありまして、これの気持ちをやわらげるだけの親切な努力ということが非常に大切なことではなかったかと思います。同時に、具体的な農業のビジョン——やはり米価だけに集中して、米価のみによって農民の所得を得ようということになりますと、ここにやはり非常な無理がいくことは御承知のとおりでありまして、非常に地域的にも相違がございますし、また階層的にも相違がある。米価が上がることによって、かなり支出がふえる農家もある現実を考えるときに、米価にあまり過重な負担をかけることは誤りであると思うわけであります。しかし、一面において、将来どのような過程を経て自立農家になり得るか。あるいは農業用資材の肥料、農薬、農機具等について積極的な値下げをするとかいう具体策、あるいは老後の年金制度であるとか、そういう各種の施策について、総合的な施策があって初めて米価についていろいろな論議が生きてくると思うわけであります。こういう点について、私は、やはりどうしても一日も早く具体的なそういう農政に対する基本的な態度を総理大臣が先頭に立って確立される必要があると思うのでありますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  81. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいま倉成委員の仰せのとおりでございまして、私ども総理も同様でございますが、つまり生産性を向上してまいる、生産の方面に向かってもら少し生産性を十分伸ばしてまいりたい、そういうことについては努力をいたしておるわけでございまして、農業基本法制定以来その方面に向かって二十数個の法律を制定もし、いろいろやっておるわけでございます。したがって、私が常に申すように、結局これによって、非常に農業は進みにくいものであるにもかかわりませず、いまでは馬耕もなくなり、みな機械力によって耕うんされておるという実態でありまするし、また選択的拡大の面におきましては、米の生産はいまから十年前に比較いたしまして御存じのとおり二千万石以上の増産になっております。それくらい増産になっておりましても、なお全体の比率からいいますと五〇何%の比率が現在四三%になって、そしてほかの畜産あるいはその他の蔬菜、果実というものが非常にふえておるというような点から見ましても、かなりこれらの問題についての進展は行なわれておると存じます。しかし、これだけではなお足らぬのでございまして、私どもといたしましては、これらの面をもう少し進めてまいることは、当然倉成委員のおっしゃるとおり必要でございますことは言うまでもありません。  そこで基盤整備の問題にいたしましても、十カ年計画で御存じのとおり二兆六千億の土地改良それから基盤整備といったものを進めておるのもその一つでございます。また農道の整備といったようなものに進んでおりまするのもそのとおりでございますが、これらに基づきまして、さらに有能なる機械を農作業に採用する問題その他について、いまおっしゃったとおり、構造改善あるいは生産政策というものに十分の努力を払っていくべきであることは言うまでもないのでございまして、この点に向かってより以上の努力を進めてまいりたい、かように考えております。  ただ御存じのとおり、農業は土地をもとにするものであり、天から降ってくるものでもありませんので、土地の規模を拡大する際でも、ただ放逐するわけにいきません。現に経営しておる多数の人々がおるのでありまするから、それらと見比べて考えていかなければならぬというのが農業の特質であって、工業のように工場を拡大し、資本を投下すればそれでいいというものではありませんだけに、相当ある程度の時期を要するのでありますることも御了承のとおりでございまして、そういう点について、両々相まって進まなければなりませんので、価格問題もやはりその期間においては重要であることは言うまでもございません。しかし、価格だけでこれらを解決しようとすると、そてこに非常に大きい問題がいろいろと出てまいりまするので、両々相まってこれらの問題を進めていくことの決意を新たにしておるわけでございます。
  82. 倉成正

    倉成委員 以下数点、重要な問題について農林大臣にお尋ねしたいと思いますので、ひとつ簡潔にポイントをお答えいただきたいと思います。  今回政府の決定した米価一万七千八百七十七円は、政府原案一万七千四百八十四円に対し三百九十三円が加算されておりますが、これはどのような算定方式に基づききめられたものであるか、お伺いしたいと思います。
  83. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この米価決定につきましては、指数化方式による当初試算との差は、いまお話しのとおりに三百九十三円加わっておるわけでございます。このような関係は、生産事情を現在考慮いたしてまいりますというと、稲作生産に対する農家の労力を期待し、農家の資本蓄積に余裕を見て、今後も一そう生産性の向上に資するという考えのもとに指数化方式による算定値を補正することといたしたわけでございます。算定値にいわゆる三百九十三円というものを加えまして一万七千八百七十七円と決定したわけでございます。
  84. 倉成正

    倉成委員 この三百九十三円というのはどういう中身か、お伺いしたいと思います。
  85. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申します。  つまり、この指数化でまいりますると、労賃の問題あるいは物価の問題は指数によってその傾向がはっきりわかるわけでございますから、それでいいのでございまするが、御存じのとおり、生産性が向上いたしておりまするから労働時間が非常に減っているわけで、これは御了承のとおり。したがって、非常に努力をすると労働時間が減ってくる、それが農家の所得を減らすということに相なるわけでございます。そういう点において努力最中でございまするから、その努力のメリットを与えていきたいということでございます。そのメリットを与えるということについては、大体さような数値を用いることによってそのこと自体が達成されるわけであることを御了承願いたいと思います。  なお、一面においては積み上げ式の算出もあわせていたしまして、両々見返りをいたしてその補正——いろいろの見返りもいたしておるということもあわせて申し上げるわけでございます。
  86. 倉成正

    倉成委員 農林大臣の苦心の存するところはありますが、要するに指数化方式に何らかのいろいろな生産性向上なり、いろいろな要素をつけ加えた方式で算定したというふうに理解いたしたいと思います。  そこで、この問題はやはり今後の米価算定の問題の基礎にもなるかと思いますから、十分やはり説明のできる体制をひとつつくり上げていただきたいと思うのですが、そもそも指数化方式に対していろいろな不満がありますのは、三十九年の基準米価の算定について地代の評価あるいは付帯労働時間のとり方について問題がある、すなわち、地代算定にあたりましては、いわゆる統制小作料、こういうものをやはり基準としておるものですから、どうも実情に合わない、この点は農林大臣よく御承知のとおりでございますが、こういった点をいろいろ考えてまいりますと、地代についてある程度改めていくと、やはり農地法の改正という問題に通じていく、いろいろな複雑な問題がからみ合っておるわけであります。  そこで、ところで端的に来年度の米価決定は一体どういう方式でやられるつもりか、農林大臣にお伺いしたいと思います。
  87. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 来年度の生産者米価の算定につきましては慎重に検討いたしたいと考えておりますが、いずれにしろ生産費及び所得補償の考え方に基づき、賃金、物価等の動向を適確に反映し得るよう算定したいと考えておるわけでございます。
  88. 倉成正

    倉成委員 来年度の問題についてはことしのような混乱がないように、どういう方式をとられるにしても十分国民にPRをして、また農民にも納得させるような形でひとつ米価決定をしていただきたいと思うわけであります。現在のような米価審議会のあり方についても私は非常に疑問を持っております。これはやはり相互の歩み寄りの精神がない限りにおいては幾ら審議会をやっても混乱を繰り返すのみでありまして、こういう状態であるならむしろ米価審議会を廃止して、公聴会等に切りかえてやったほうがいいじゃないかとすら思うわけでありますが、農林大臣は米価審議会をどういうふうに取り扱われるつもりであるか、お伺いしたいと思います。
  89. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 米価審議会の点につきましては、非常に各方面からの御意見がございます。また審議会の内部においても非常な意見がございます。いま申されましたように、さようなふうにしたらどうかという議論も、意見も多々あります。しかし、米価の問題はきわめて重要でございまするので、これらの問題についてはさらに一そう各方面の意見もよく聞き、また私どもも十分に検討をいたしまして、この米価審議会の運営並びに構造、そういう点について検討を加えたいと考えておる次第でございます。
  90. 倉成正

    倉成委員 農業を長い目で見る場合には、やはり米価の地域に及ぼす影響も非常に異なりますし、農家の性格によっても違う。そこで相当これは長期間かかっても農業の構造改善、生産性向上ということをやらなければならないと思うわけであります。その際、特に考えなければいけないのは、日本のように、北は北海道から南は鹿児島という千差万別の地域性に即した農政を積極果敢に展開することが必要であると思うわけでありまして、そのためには日本よりはるかに農業人口の少ないヨーロッパの諸国でもかなり多額の金額を農政につぎ込んでおる。思い切った財政投資ということを、やはり計画が適切でさえあれば、つぎ込む決意が必要であると思うのでありますが、総理大臣、ひとつこの点についてどうお考えになっているか、またあわせて今度の米価問題で、総理は米価問題ということについて、農業の問題についていやというほど——これは日ごろもお考えになっておったと思いますが、なお一そうその感じを抱かれたと思うわけでありますが、やはり米価決定に先立って農業団体の代表者と会われたということは、私は非常にこれはけっこうなことであったと思うのでありますけれども、これをこういうぎりぎりのまぎわに会われるということでなくして、やはり日ごろ定期的というわけにはいかなくても、ひとつ農民の代表、また末端の声を聞く、その機会をつくっていただくことが大切なことではないかと思うのでありますが、この点についての総理の所見をお伺いしたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま倉成君から、長い長期的な観点に立って、農政のあり方等についての御意見を述べられました。私も確かに農業の構造改善は、積極的にまた時期を失しないようにこれと取り組むべきだ、かように考えております。したがいまして、財政的な措置が必要でございますが、これなぞも許す範囲におきましてできるだけ構造改善に積極的に取り組んでいくということでありたいと思います。  また農政一般の問題につきましても、今日いわゆる農は国本、かような見方はあるいはやや狭いかもわかりませんけれども、私どもはこの農業のあり方、これこそほんとうにたよりになるものだ、また農家の方々の健全な活動こそ国運をますます伸展させるものだ、かように考えておりまして、いわゆる保守党はそういう意味では絶えず、またいつも農村の味方であり、農家の味方だ、特に米作などについては格別の理解を示してきた、かように自負しております。その保守党の中でも倉成君はたいへん専門な方面で、特に農政の通だといわれておるのでありますから、先ほど来の御意見もそういう意味でよほど啓蒙あるいは啓発された、かように私は思っておるのであります。直接農業団体の代表者と会うことはもちろんでありますが、直接農家の方々の声を聞く、こういうことでありたい、かように思います。今後私ども努力する方向、それらがただいま御指摘になったような点にあるのじゃないだろうか、もっとほんとうに農村、農民と一体となって、そうしてこの問題と取り組むべきだ、このことが実を結べば、米価の決定なぞは、これはもう末の問題だ、こういうふうにも考える次第であります。  ただいま私が申し上げるまでもなく、食糧特別管理制度をやっておりますので、そういうもとにおいての米価そのものが政治米価だ、これはもう性質上からそういうようなものだ、かように私は考えております。政治米価だという非難だけでこれを左右するというような考え方はございません。食管会計そのものから申しましてそういう筋のものだ、かように思います。しかし、冒頭に申しましたように、影響するところがまことに重大でありますから、これはできるだけ理論化されて納得のいくような方向でありたいものだ、かように思っていろいろ政府努力しておるわけであります。  ただいま米価審議会の問題にも触れられました。今後のあり方としてどういうことがいいのか、さらに私どもも検討を加えてみるつもりでございますが、どうか先ほど来のお話を通じまして、いままで特に農政を推進してこられ、また問題の解決にあたられた、かように思いますから、この上とも御協力を願いたいと思います。
  92. 倉成正

    倉成委員 ただいま総理から、農は国のもとである、また農業者こそ健全な民族精神の根源であるという非常に力強いお話がございましたが、私はやはり農政に対しては天地を相手にする哲学が必要だ。ジョンソンの教書を読みましても、天地の恵みは国民経済の基礎であるという、冒頭からリンカーンが一世紀前に農務省をつくったことに触れるくらい格調の高いものであります。私はやはり土の中で黙々と働く農民が健全な民族精神の根源であることに思いをいたしまして、ちょうど池田さんが経済のことは池田にまかせよと言われたように、農政のことは佐藤にまかせよというくらい、ひとつ総理が熱意を持たれまして、推進していただくことを希望いたしまして、質疑を終わりたいと思います。
  93. 福田一

    福田委員長 この際、荒木萬寿夫君より関連質疑の申し出があります。これを許します。荒木君。
  94. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 私はお許しを得まして約三十分ばかり質問をさしていただきたいと思います。  お尋ね申し上げる事柄はILO条約の発効並びにそれに関連します国内法の実施段階に入りましたので、そのことに関して総務長官人事院総裁、自治大臣、文部大臣等にお尋ねを申し上げたいと思います。  まる一年前の国会におきまして、御案内のとおり、政府与党の申し合わせによりまして国会の審議が順調に運びまして、条約の承認案件とともに関係国内法が実質的には原案どおり衆参両院を完全に通過いたしましたことを御同慶に存ずるものであります。しかしながら、この与野党の協定に基づきまして、いわゆるたな上げ条項が同時に設置せられました公務員制度審議会の議に付せられる、その結論を尊重するという線につながりまして、まる一年後の先月の条約発効日にようやく国会の議決にほぼ近いところのものが国内法の実施となり、条約と歩調をそろえることができましたことで最終的なけりがついたものと思うのであります。その意味において、その間における衆議院、参議院の議長はじめ与野党の方々、さらには政府関係者等のまる一年間における御協力に対して深く敬意を表するものであります。この意味において、初めて数年来の懸案であったILO八十七号条約の実施が佐藤内閣によってようやく解決を見たということが言えると思うのであります。  しかしながら、最近マスコミ方面におきましても、このことに関連をしていろいろな批判がございますことは御承知のとおりであります。それは、いやしくも国権の最高機関の衆参両院を通過させながら、いわば国家意思は決定しておりながら、その中の一部を、内閣の一諮問機関でしかないところの公務員制度審議会の判断にゆだねる、そうしてたな上げしたまま、その結論を尊重して実施するということになったのは、いわば国権の最高機関としての自信のなさというのか、みずからの権威を低めることになりはしないかという疑問を投げかける向きがあるようであります。私もその考え方に、あと知恵ではございますが、考えさせられる者の一人であります。今後につきましては、国会の審議を通じての国権の最高機関の権威を保持するためには、むろん政治は妥協であることは万々承知をいたしますけれども、おのずからそこに限度があるんじゃなかろうか、みずから国会の構成員の一人として反省しておるような次第であります。それらのことは私一個の考えでございまして、これに関して政府側の御答弁を求める考えはございません。  さっそくお尋ねに移りたいと思いますが、わずかの時間でございますので朗読調でお尋ねを申し上げます。なるべく簡潔に結論だけをお答え願いたいと存ずるのであります。  まず総務長官にお伺いしたいわけでございますが、いまも申し上げましたとおり、去る六月十四日、ILO八十七号条約が発効して、同時に関係国内法が施行され、多年の懸案であったILO案件はついに解決を見ましたが、この際政府は、公務員等の公共部門の労働関係に対して、どんなふうな基本的態度で臨もうとしておられるのか、その御見解を伺いたいと思います。
  95. 安井謙

    ○安井国務大臣 いま荒木先生のお話しのとおり、六月十四日から国内法も発足することになりまして、新しいいわば公務員関係の労使関係が確立されると存じます。この精神を十分体しまして、双方が相互信頼のもとに円滑にかつ忠実に運営されるようにやっていきたいと思っております。
  96. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次のお尋ねに移ります。  公務員制度審議会の答申の最後の部分に、未施行規定、いわゆるたな上げ条項——今回施行された改正規定につきましても引き続き基本事項とあわせて審議の対象とし、その当否についての意見は逐次答申する予定である旨述べておりますが、これらについて答申があった際には、政府としてはどのように対処するお考えなのか、御見解を伺っておきたいと思います。
  97. 安井謙

    ○安井国務大臣 公務員制度審議会に対しましての諮問は、御承知のとおり、公務員、公労協関係の労使の基本に関する問題を中心にいたしまして、さらにいわゆるたな上げ部分の早期御答申を願ったという結果でございまして、そのうちたな上げ部分につきましては、一部在職専従の問題を保留されまして御答申をいただいたわけでございます。したがいまして、公務員制度審議会というものは今後も続くわけでありまして、基本問題等を御検討になる際、あるいは専従問題を御検討になる際、そういうものと関連しまして、新しい答申が出ますれば、これもまた政府は十分尊重をしてまいる、こういうつもりでございます。
  98. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 お答えでよくわかりますが、本来公務員制度審議会の設置目的というか、法定されておりますのは、いまお話しのとおり、公務員制度そのものについての基本事項調査、審議に当たられるのが本来の職責であります。したがって、関係国内法の施行という意味においては、先刻触れましたような順序を経て実施されたわけでありますが、在籍専従だけが残っておるということは、私は、公務員制度審議会の少なくとも公益委員の方々の本旨とするところではなかったのじゃなかろうかとかってにそう思っております。いずれにしろ、いわゆるたな上げ条項といえども国会はまさに原案どおりでよろしいと判定を下した。しかし、公務員制度審議会が公務員制度そのものの基本事項をじっくり腰を据えて検討される過程において、施行されましたたな上げ条項に関しましてもいろいろな御意見があり得ると、むろん想像いたします。このことは、インスタントな課題じゃなしに、基本的な事項が究明されたその派生的な一つの事項として、たな上げ条項に関する御意向は出てくるものと私は思うのであります。そういう意味で、在籍専従についてはなるべくすみやかに答申するつもりだと答申そのものにも書いてあるから、それはむろんわれわれも期待するところでありますが、その他の、すでに実施されたものを含めましての御答申というのは、かけ合いであわてて出さるべき筋合いのものじゃない。必ずや会長以下各委員は、慎重に腰を据えて御検討されるものと期待をいたします。これは御答弁を求めません。私はさよう理解いたします。  次に、ILO関係改正法の施行に伴いまして、人事院規則の制定をはじめいろいろな法制的な措置が必要であると存じますが、総合的な立場に立って、政府全体の立場から、いま申し上げたことの進行状況の概要を承りたいと思います。
  99. 安井謙

    ○安井国務大臣 六月十四日から国内法は施行と相なったわけでございまして、これに伴いまして、人事院、あるいは文部省、あるいは自治省等で、それぞれ関係の団体に対する手続も必要になったわけでございます。おおむね人事院におかれましても、七月九日付の官報でそれぞれ所定の手続をとられたようであります。それに準じまして、各関係方面もいまそれぞれの所定の手続をとられておると承っております。
  100. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に、人事院総裁に伺いたいと思います。  まず第一は、人事院は管理職員等の範囲について人事院規則を制定されましたが、これを立案されるにあたっての基本的な考え方がおありだったろうと思います。そのことについて承りたいと思います。
  101. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ごく基本的な線は、申すまでもありません、法律そのものにもうかがわれるところでございます。要するに、組合の純粋性と申しますか、自主性と申しますか、そういうことをはっきり維持していこうというたてまえから、ああいう条文が出てきたものと思います。私どもは、その観点からあらゆる作業を進めたのでございますが、さしあたりめどになりますものは、公労委の告示で、一応公労委関係の職員に対してわりあいに精密なものが出ておりますので、それなどを手がかりにしながら公務の特殊性を勘案して、まずまず妥当な結論を得たように考えております。
  102. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 関連して申し上げることもないではございませんが、次に進みます。  国立大学の問題についての人事院規則の中に、教授については、大学が人事院と協議してその範囲を定めることとしてあります。改正法の趣旨は、申すまでもなく、いまもおっしゃったように、元来管理職なるものは、行政組織運営上の必要からする法令に基づいて国民のために定めらるべき職制が管理職だと思われるわけなんで、したがって、その意味からは、大学と人事院とが協議するという問題じゃなしに、法令上あるいは行政組織上はっきりと定まったものがある。その定まったものの中からおのずから職制ないしは職務配分等を通じて推定されるべきものではありましょうけれども、しかし、その実質は法令できまっておる。そのことを人事院が公正な立場に立ってみずから判断して、人事院規則でこれこれこれこれだとおきめになるのが筋合いだ。法律上は私はそう思いますが、それをあえて、大学が人事院と協議して範囲を定める、教授についてはそういうふうなことに御制定になっておりますが、その趣旨はどういうお考えでございましょうか。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どものはっきり指定しましたものには、学部長、あるいは学長、あるいは評議員会のメンバーというようなものは列挙してございます。それ以外に教授の方々で、これは大学の制度は、釈迦に説法でございますけれども、教授会その他の構成を見ますと、助教授から講師まで入ってある程度管理運営にタッチされておる面もあるというふうなことで、ごく典型的なものは規則ではっきり除外いたしましたけれども、それ以外の、たとえば教授会のメンバーになっておられる平教授の方々というようなものについては、適正な結果を見ますためには、各大学によってそれぞれ事情が違いますので、それぞれの大学のいわゆる自主性等も尊重しながら、協議の上適正な結果をつかみたい、こういう趣旨でございます。
  104. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 大学については、伝統的な大学の自 治、自主性ということが強調される意味を特にお考えになっての御考慮かと思う意味において、一応理解いたします。  次に進みます。職員団体が登録される資格を有 して引き続き登録されているためには、職員だけで構成されていることを必要といたしております。人事院はそれをどんなような方法で確認されようとしておるのか、伺いたいと思います。
  105. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは私どもの規則にも明らかにしておりますが、規約をまず示していただくことになっておりますので、規約によって知り得ることは判断をいたします。と同時に、さらにその規約の提出に際しまして、証明書を組合側から出していただく。いまのような者は入っておらぬという証明ということになるわけでございます。それらのものを中心として検討いたしますとともに、なお一応は、これは組合員の良識あるいは良心を信頼してのものではございますけれども、極端な場合等も万一ありました場合は、またそれらについて適当な注意をもってそれを見守ってまいりたいというふうに考えております。
  106. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 これに関連しまして、私はお尋ねじゃないですけれども、触れてみたいことがあります。それは、職員だけという意味では、改正法におきましては、管理職員等と一般職員とが一緒になりまして職員団体をつくれないということにもなっておることとも関連いたしますが、一般職員の職員団体の役員に管理職である者がなることは差しつかえないのだ、役員の選任の自由という意味から、かってにできるのだというふうなことが一部に言われておるように私は聞いております。このことは、元来八十七号条約それ自体が労使不介入、対等の原則というたてまえになっておるわけでありますが、その見地からいきましても、構成員であろうとなかろうと、専従者が、もしくはパートタイムの役員でありましょうとも、管理職たる者がその役員になっておるということ自体が、労使不介入の原則に反する、自主性をそこなうおそれあり、さらにはまた、管理職そのものも、公務員として職務専念の義務があるとの関連においても考え方に矛盾がある。そういう意味で、いま御披露しましたような見解は、最も間違った見解であると私は考えるのであります。このことは、人事院をはじめ関係各省で御検討願いたいということを申し上げるにとどめます。次に移ります。職員団体の登録を取り消す場合は、法律第百八条の三第六項によって、人事院規則によれば、別に定めるところにより、あらかじめ口頭審理を行なうことになっておりますが、それをどんなようなやり方でおやりになるのか、この際承っておきたいと思います。
  107. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この関係の規則だけが、いま急いでやっておりますが、まだ完成しておりません。したがって、ただいまのようなお尋ねがあることと存じますが、この取り消しの場合の口頭審理は、いままで法制上例のございますいわゆる不利益処分の取り消しを要求する場合の審理とは性格が違いますので、したがって、大体の形は、当事者争訟主義ではなくて、形は聴聞の形式になろうと思います。しかし、もちろん口頭審理の保障もございますし、事の性質から申しましても非常に重要なことでございますので、その点、手続上遺憾のないように目下作業を進めておる次第でございます。
  108. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に移ります。改正法におきましては、交渉の前提として予備交渉を行なうことになっておりますが、予備交渉を経ないで直接交渉を要求してきた場合の処置は、どうなるであろうか。さらに、予備交渉が不調に終わった、このために交渉を行ない得なかったという場合には、正当な理由がなくして拒否したことにはならないと私は思いますが、御見解いかがでしょうか。
  109. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知のとおり、公務員法百八条の五でいわゆる予備交渉——まあ予備取りきめと申してもよろしいと思います。一種の予備取りきめをした上で本交渉にかかれということが明らかになっておりますので、この予備の取りきめなしに、突然やぶから棒に交渉を申し入れてくるとしても、それは当局者側としては応ずる義務はない、これははっきりしております。ただ、予備交渉は、最初からなぜ始まらなかったのか、あるいはまた予備交渉がなぜ途中で不調になったかということについては、これはまたいろいろな事情がございましょうから、その事情事情、具体的の事情によって、あるいはまた当局側としては、これを応諾できないという理由になる事柄もあるいはあろうかと思いますけれども原則としては、いま申しましたようなたてまえで法律はできておるということであります。
  110. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 時間の節約上、人事院総裁についてのお尋ねは終わります。  自治大臣にお伺いをいたします。  まず第一に、自治省は、地方公共団体における従来の労使慣行について、今後どんな指導方針をもって臨むおつもりであるか。聞くところによりますと、超勤拒否闘争、出張拒否、有給休暇闘争など、従来の慣行上認められたようなかっこうになっておる、あたかもそれが合法的な姿であるようなふうにも見えないことはないということを初めとしまして、いろいろと総評ないしは自治労、日教組等、いままでの客観的には間違っておる慣行も、なお適法な慣行としてこれを推し進めようとする動きがあるやに聞いております。そのことにも関連をしながら、自治大臣はどういうふうに指導をなさるおつもりか、お尋ね申し上げます。
  111. 永山忠則

    ○永山国務大臣 旧来のよき慣行につきましては、これを尊重をいたしてまいりたいと存じますが、法の精神に反するような慣行については、この場合改めていただくような指導をいたしたいと存じておる次第でございます。
  112. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 場合によりましては、自治大臣の職権であるところの指導、助言の権限を行使してでも間違いのないようにすることが、八十七号条約実施以後のわが国の、特に公務員関係の労使関係を是正するゆえんだろうと存じます。御善処を御要望申し上げます。  次に移ります。改正法の施行に伴いまして、地方公共団体が制定すべき条例や規則の制定をしばらく見合わしたらどうだという意見があるようにも聞きますが、そのことについてどうお考えでございましょうか。さっきもちょっと触れましたように、たとえば総評では、不当条例阻止闘争、先月の末にそういう指令を発しておると承知いたします。自治労におきましてもしかり。このようなことと関連して、自治大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  113. 永山忠則

    ○永山国務大臣 この管理職の範囲を定める人事委員会あるいは公平委員会の規則の制定やあるいは登録条例、その他組合員の行為の制限の特例に関するような条例等は、本法律の趣旨に従ってこれを見合わすべきではない、そのこと自体がやはり組合の利益につながるものであると考えまして、そういうような見合わせをするようなことには同調はできないのでございます。
  114. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に移ります。人事委員会、公平委員会が管理職員等の範囲を定めるにあたりましては、「その他これに準ずる者」というような抽象的な規定をして、具体的には労使間の話し合いで決定するようなことが認められないと思いますが、これは人事院総裁お尋ねしたことと同工異曲でありますけれども、自治大臣のこの点についての御見解を承っておきたいと思います。
  115. 永山忠則

    ○永山国務大臣 法の精神は、基準を定めるものではございませんで、職そのものを定めることになっておりますので、基準を定めることにとどまることは、これはやるべきではないと考えるのでございます。
  116. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 私もそのとおりだと存じます。  次に移ります。従来の登録職員団体は、三カ月間の猶予期間、すなわち九月十三日までに登録切りかえしなければならないことになっておりますが、ほっておけば混乱を生ずるおそれもなしとしない。従来の職員団体はそのまま再登録すべきだとの意見すらもあるぐらいでありますが、混乱防止の意味合いにおいて、自治大臣はいかなるお考えで、どういう措置をなさろうとしておるのか、承っておきたいと思います。
  117. 永山忠則

    ○永山国務大臣 登録は、規定のように三カ月以内にやることになっておるのでございます。その際、たとえば簡易水道等の職員がわずか入っておるというような場合には、これらの職員がその組合から出ていって、そして適当な組合をつくるということがはっきりいたしますれば、これを黙認いたしまして、不当な混乱が起こらないようにいたしたいと考えております。
  118. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 まだ問題も残っておりましょうが、時間の関係上省略いたします。  次に移ります。従来教育界におきましては、勤務時間の管理が一般的にはきわめてルーズであったように思われます。たとえば法律、条例で許容された場合以外に、勤務時間内に代議員会に出席したり、要求貫徹集会を開いたり、措置要求大会に参加したり、公私を混同して、公務員としての職務専念義務に反する事例が枚挙にいとまないほど見られました。また、伝えられるところによりますと、日教組は十月下旬に午前中から授業打ち切りの半日ストを行なうことを戦術会議で決定した由でもあります。ところで、地方公務員法第五十五条の二第六項によって、勤務時間内に給与を受けながら職員が職員団体のための活動をすることが禁止され、条例で定める場合だけ例外的に許されることとなりましたが、この条例で定める場合とはどのような場合か、具体的に自治大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  119. 永山忠則

    ○永山国務大臣 第五十五条の二の第六項にいう特例は、これが交渉をするときに限定をされておるのでございまして、それ以外の場合は、給与を受けながら勤務時間内に、あるいは執行委員会をするとか、あるいは役員会をするとかいうようなことは、この特例で認めていないのでございます。
  120. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 いまの御答弁で大体わかりますが、いまお話しの自治省が示しておられる準則——私も見ました。準則に定めておる場合以外の事項を定めるということができますかどうか。地方公共団体から給与を受けながら職員団体の活動を行ない得る場合は、いま申されたとおりですけれども、準則以外のことを追加することが地方公共団体で可能であるかどうか、お考えを承りたいと思います。
  121. 永山忠則

    ○永山国務大臣 準則以外の点を認めるということは、可能ではないと考えております。
  122. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に、文部大臣にお伺いをいたします。  先に申し述べましたような、日教組の行なってきました、また行なわんとするオルグ活動、措置要求大会参加、半日ストなどについて、いかなるお考えでこれに対処されようとしておるのか、承りたいと思います。特に条例で定める場合以外に、組合業務に従事した職員に対しては、賃金カットを当然実行すべきだと思いますが、御所見を承りたいと思います。
  123. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 地公法第五十五号の二の六項によりましても、また今度自治省が、いわゆるモデル条例といいますか、そういうものを出しておるのを見ましても、年次有給休暇とか、あるいは正規の休日休暇期間中ならばいかなる行動もやむを得ないと思いますが、正規の勤務時間内に御指摘のような行動がありました場合には、これは今後厳格に賃金カット等を行ないまして、さような行為の行なわれないように指導してまいりたいと思っております。
  124. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に移ります。改正法では、公立学校の管理職員等の範囲を人事委員会、公平委員会が定めるにあたっては、国立学校の職員の例に準ずることとされておりますが、文部大臣はどういう御指導をなさいましたか。通牒内容は私もべつ見したことはございますけれども、くどくなるようでしたならば、資料としてお出しいただいてもよろしいのですが、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  125. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 まず、人事院におきまして、人事院規則で管理職の範囲等をおきめになりましたので、この人事院規則をまず関係機関に十分に周知徹底させるようにいたしましたのと、それと同時に、教育公務員特例法に規定されておりまするように、国の公務員の人事院規則の例に準じて、人事委員会あるいは公平委員会で条例で定めるようになっておりますから、さようなことの徹底するように、各地方教育委員会あるいは地方自治体の長等に指導をいたしておるわけであります。
  126. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に移ります。いまのお答えで、ことさらお尋ねする必要もなさそうですけれども、念のために伺っておきたいと思います。国立学校の教頭と公立学校の教頭とは、その職務執行の実態が違うので、国立はともかく、公立学校の教頭は管理職員等ではないという考え方に立って、各人事委員会または公平委員会に日教組が働きかけようとしていると聞いております。教頭の職務は、国立、公立、私立学校を通じて法令によって定められているもので、学校設置者の区分によって管理職員等に指定されたりされなかったりという筋合いのものではないと思いますが、御見解はいかがでしょう。
  127. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 これは御承知のとおり、学校教育法施行規則によりまして、国立学校の教頭と地方自治体の公立学校の教頭と何ら区別しないで、「教頭は、校長を助け、教務を整理する。」というように規定されておりますので、私どもは区別すべき筋合いではないと思います。国立大学の付属学校の場合には、学校長はその学校の附属する大学または学部の教授から校長を選任せなければならないという若干の制約がありますが、しかし、学校教育法施行規則では、教頭の任務として、国立だから、公立だからといっていささかも区別いたしておりません。したがって、同様の見解で取り扱っていくのが適正であると私ども考えております。
  128. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 次に移ります。また日教組が出てきまして恐縮ですが、日教組は、一般組合と校長教頭組合とをそれぞれ結成し、登録を受けた上で、在籍専従職員を確保し、その上で両組合の事実上の連合体を結成することとして、実質的には現行体制のまま活動を行なうことを企図していると聞いておりますが、このことは、管理職員等と一般職員とが職員団体を組織することができないとする改正法の趣旨に抵触すると考えますが、文部大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  129. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 地方公務員法五十二条には、御承知のとおり、管理職員と管理職員以外の者とは同一の職員団体を組織することはできないということを明記いたしております。したがって、いかなる方法を講じても、管理職の職員団体と非管理職の職員団体とが連合して正規の職員団体になることは、制度上絶対に私は不可能だと思います。そこで、この五十二条には、さらにただし書きのような規定がありまして、もしそういう連合体をつくった場合には、法律による職員団体ではないと明記してありますから、それは職質団体でない何かの任意団体としてならば存在し得るかもしれませんが、正規の職員団体としては存在し得ない制度になっておると思います。
  130. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 最後の質問をお許しください。  改正公務員法附則第二条によりまして、いわゆる登録がえのための経過期間、すなわち本年九月十三日まででありますが、旧法律に基づく登録団体が新しい法律に基づいて登録されなかった場合は、当該団体はもはや登録団体ではなくなることは自明のことと思います。その場合、従来の在籍専従職員に対する専従許可の効力はどうなるか、当然に失効したものと私は解しますが、御見解は いかがでしょう。
  131. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 御指摘のとおりと思います。
  132. 荒木萬壽夫

    ○荒木委員 質問を終わりました。時間超過しましておそれ入ります。お許しください。
  133. 福田一

    福田委員長 これにて倉成君の質疑並びに荒木君の関連質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ————◇—————    午後三時十二分開議
  134. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  酷暑の候でございますので、委員の諸君におか れては、上着をおとりになってもけっこうでござ います。  予算実施状況に関する件について質疑を続行 いたします。野原覺君。
  135. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として当面の政局に対する政府の取り組みないしは政治姿勢、あるいはまた外交、防衛の重要な基本的な問題につきましてお尋ねをしたいと思うのであります。  その前に、まず政府にお聞きしたいことは、十五日の夜から十七日にかけて、新潟県、山形県、秋田県、この地方一帯にものすごい豪雨がございまして、そのための被害が実に大きいものがあると新聞が報じておるのであります。特に新潟県の加治川のはんらんによる被害というものは、私ども昨晩のテレビなり、けさの新聞を読みまして、まことに御同情にたえないのでございますが、その実情について簡潔に御報告いただくと同時に、緊急対策について、どのようなことを政府は緊急になさんとしておるのか、お伺いしたいと思う。総理大臣関係大臣からお願いしたいと思うのであります。
  136. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 新潟県下その他、いわゆる日本海岸に大正九年以来といわれる五百ミリ近くの豪雨が降りました。加治川その他いわゆる中小の河川を中心として、相当の出水がございました。約五千町歩にわたる田畑等にはんらんをいたしております。幸いにいたしまして、まだこまかい点まではわかっておりませんけれども、いわゆる人畜には大被害はなくて、その点については、他の場合に起こりました被害とは違っておることにやや気を休めておるわけでございます。特に加治川については、従来中小河川計画として雨量二百ミリの想定で計画を進めておりますが、今度はその二倍以上の雨量があった、こういうことで、十数カ所に堤防の決壊を来たしております。したがって、新発田市等にも相当なはんらん浸水があった、こういう状況でございますが、建設省といたしましては、さっそく係官を派遣して実情の調整をする、こういうことにいま手配を進めております。被害のこまかい点は、そういう状況でございますからまだわかっておりませんが、現在おおむね十数億という県からの報告がきておる、こういう状況でございます。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま建設大臣から経過を御報告いたしましたが、今回の集中豪雨の被害、これは私どもの想像を越すような大損害を与えたようでございます。ただいま災害の実情について至急取りまとめ中でございます。現地におきましては災害救助法の発動を広範に認めておるようでありまして、この救助法の発動を受けた町村が多数にのぼっておると思います。  まず、この際の応急的対策、これをとりまして万全を期して、生命の保護から防疫、その他生活の安定等についてのいわゆる応急措置をとります。同時にまた、恒久的な災害対策、後ほど調査のまとまった上でこれについても十分対策を立てる考え方でございます。  いずれにいたしましても、十五日以来の集中豪雨、この災害をこうむられた方々に対しまして深甚なる御同情をし、同時にまた、ひとつ元気を出していただくように、政府自身も応急対策をとることをただいま決意しておるような次第でございます。
  138. 野原覺

    野原(覺)委員 北信越地方は、御承知のように台風常襲地帯ではございません。そういう地帯ではありませんけれども、一たん天然の災害が起こりますと、その被害は実に大きいものがあるのです。最近では富山県、あるいは数年前でございましたか、これは別でありますけれども、新潟の地震等々がございまして、やはりこれは国土の建設の上で政府としては配慮を加えていかなければならぬのじゃないか。表日本のみ力を入れるのではなくて、裏日本にも私はそういった配慮、いろいろな施設その他の面で配慮を加えておかなければ、思わざる大きな被害が生ずるということを指摘しておきたいのであります。どうかひとつ遺憾のない措置をとられるように要望いたす次第であります。  次にお伺いしたいことは、当面の政局についてでございます。  まず第一は総理お尋ねをいたしますが、内閣改造についてであります。新聞の報ずるところによりますと、この国会が終わりますと直ちに内閣が改造される、そのように私どもは聞いておるのでありますが、総理は内閣改造の方針をどこに置いておられるのか。この問題は、実は私は社会党を代表してお尋ねをするというよりも、国民の一人としてお聞きしたいのでございますが、今日の自民党内閣の内閣改造と申しますか、見ておりますと、ややともすれば大臣の乱造、派閥ムード、党内を取りまとめるための派閥対策としか見えないではないかという国民の批判が高いのであります。これは吉田さん以来、大臣を乱造してきておる。せっかく行政的にも板について、これからというときに、一年たてばまたかえる、何かしらぬ、大臣の任期は一年だ、一年たてば次々と大臣をつくられるというようなやり方では、これは国民の中に大きな疑問が出るのも、私は当然だろうと思う。これらの点に対する総理のお考えがあれば、承っておきたい。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 内閣改造についてお尋ねでございます。また、野原君からもいろいろ御意見をまじえてのお尋ねでございます。御意見は御意見として、私十分伺っておきたいと思いますが、私、最近の佐藤内閣のあり方を見まして、まず池田内閣以来の引き継ぎ内閣としての大体の使命は達してきたように思うのであります。いわゆる経済のひずみ、これと真剣に取り組みまして、そうしてこれを克服する。大体上昇の方向にいっておる。また、その他の外交の問題におきましても、日韓交渉、国交正常化など、これは多年の懸案であったと思いますが、これも片づけることができた。もちろん各界の御協力の結果、これらの事柄が次々にできたと思います。また、ILO条約の批准もできたし、そのあと始末も大体の方向がはっきりしてきた等々、それぞれの懸案事項を御協力のもとに片づけることができまして、まずいわゆる引き継ぎ内閣としての仕事は一応いたしたように思います。これからは新しい観点に立ちまして、どうしても政治を前進さす、国運を伸展さす、こういう方向でなければならないと、かように思っておるのであります。他の表現をもっていたしますならば、この際に人心を一新して、そうしてただいまの重大事案に対して真剣に取り組む体制を整備したい、かように思っておるのであります。これらの事柄が、ちょうど臨時国会等を済ましますとそういう段取りになるんではないかと思いますが、いま御意見あるいは御批判のうちにありましたように、定期異動的な考え方ではございません。私は、そういうような意味で真剣にこの問題と取り組むつもりでございます。
  140. 野原覺

    野原(覺)委員 次にお伺いしたいことは、この国会が終わりますと、これもまだ正確には日程がきまっていないようでございますが、総理大臣は外遊をされるように私どもは承っておるのであります。近くソビエトからはグロムイコ外相が日本に来られる。日本外務大臣もソ連に行かれましたが、佐藤さんは訪ソをされるおつもりがあるのかないのか。というのは、私がこれからお尋ねをしていくベトナムの問題に大きく関係をするからであります。私の考えるところでは、今日ベトナムの問題を解決できる実力を持っておる者の一人は、ソ連だと思うのであります。ソ連でなければ 北ベトナムの説得はできない、北ベトナムを説得 できる力を持っておる者はソ連だ、こういうこと であれば、平和に徹するという総理大臣は、ソ連の総理大臣忌憚のない話し合いをする必要もあろうかと思うのであります。訪ソの用意があるのか、あるいはまた東南アジアを外遊されるということも聞いておりますが、その辺はいかがですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ソ連から招待を受けております。また許せば、その招待を実現するというか、引き受けよう、かような気持ちのあることは、これも確かでございます。しかし、まだソ連訪問を決した、もうそういうことをきめた、こういう段階ではございません。また、東南アジア諸地域に対しましても、経済閣僚会議を開いた後でありますし、ぜひとも東南アジア諸地域も私がこの目で親しく接したい、かようにも思っておりますけれども、これまた、ただいまこの段階で行くことにきめた、こういうことが言えるような状況でもございません。また外遊ということばから、外で遊ぶように思われても困るのですが、むしろ内遊——外遊に関連することばで、国内でもう少し政治のあり方等も説明したらどうか、こういうような要望もございますので、もっと国民と直接接するような機会を内でつくるべきじゃないか、こういうようなことも頭の中にあるわけです。そのいずれをもただいままだきめかねておる。もちろん、国内の問題は非常に簡単なことでございますから、そう用意する必要もございません。外遊の場合と同じに考える必要はございませんけれども政治をいたします者、また政治をまかされておる者、担当しておるその立場から申せば、もっと私ども政治的な諸問題について国民理解を深めることが必要なようにも思っておる次第であります。せっかくのお尋ねでございますが、まだ気持ちが、それは要望はありますけれども、はっきりまだきまっておらない、これを御了承いただきたいと思います。
  142. 野原覺

    野原(覺)委員 グロムイコ外務大臣日本に来られましたら、どういうようなことをお話しになる御予定ですか。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ソ連外相が訪日しますその際は、外務大臣中心になりまして、いろいろ外務大臣同士で話し合いをいたしますが、もうすでにモスクワ訪問をいたしました椎名外務大臣としては、日ソ間の懸案事項について、まずその懸案事項と取り組んだ話をする、これがまず第一であります。また、先ほどお尋ね、御意見を述べられました両国が共通の関心事項である国際問題等についても、意見交換する、これはもう当然のことでございます。私が外務大臣と会います場合におきましては、さらにただいまの懸案事項ばかりでなく、日ソ両国間にあります基本的な問題等についても十分意見交換したい、かように考えております。
  144. 野原覺

    野原(覺)委員 懸案の問題といえば、漁業の問題、安全操業の問題、あるいはまた北方領土の問題等がある、それらも含めてお話しになるようでございますが、私はこの際、ベトナムの問題は、これはひとつ真剣に話をしてみる必要があろう。英国のウィルソンはわざわざそのためにモスクワに飛んでおるのでありまするし、絶好の機会ですから、ソ連の見解等もただしておく必要があるのではないか、このように思うのであります。  次にお伺いしたいことは、佐藤さんにまことに言いづらいことでございますけれども、いろいろ国民の中から問題が指摘されておるその一つに、参議院の小林章議員の復党があるのであります。これは過日、十三日の本会議でわが党の山本幸一君が質問をいたしましたが、これに対しては総理から何らの的確な御答弁が得られておりません。そこでお聞きするわけでございますが、どういうわけで、あれだけの史上空前の選挙違反をやった、国民から総スカンを食っておる——新聞によりますと、たとえ小林さんがどのような発言をしようとも、どのように議員として働こうとも、もう小林さんには国民は信頼を置くわけにいかないとまで極論したマスコミもたくさんあるのであります。当時——小林さんが問題を起こした当時でございましたが、総理大臣は、いや、わが党から党籍を離れたんだということで責任をおのがれになろうとされましたが、再びまた復党をなさろうとしておる。総裁である総理大臣は、どういう信念があれば、どういう考えがあれば、このような復党をお認めになるのか、これは国民の聞きたいことです。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日、本会議でも小林君の復党についてはお尋ねを受けました。それぞれの方でそれぞれの御意見がおありだ、このことは御自由だ、かようには申しましたが、私どもは、離党し、その後の反省等、それらのものが、いつまでも復党を許さない、こういう状態でもよろしくない。もう反省等もいたしておりまするので、この際に復党を許すという処置が適当だ、かように考えて、その適当なる処置をとったのであります。
  146. 野原覺

    野原(覺)委員 この点は国民が批判するでしょう。単に形式的に解決できる問題ではない、これは道義的に問題が残る。私は、このことだけを指摘しておきます。  次にお尋ねしたいことは、衆議院の解散についてです。私どもの任期は四年でございまするから、まだ私どもの任期はあるわけでありますけれども、しかし、もう解散すべきときではないかという声が、やはり高まってきておるのであります。総理は、このことをどう御認識されるのか。佐藤さんが池田さんからバトンを受け継がれてから、もう二年になるのであります。その間、池田さんの考えを継いで政権を担当してきたとは申しますものの、佐藤さんは佐藤さんなりに着々と、あなたの言によればその実効をあげておられる。たとえば、多年の宿題であった日韓はおれが解決をした、ILO八十七号条約の批准もやった、祝日法の改正についても、異常な決意をもってなし遂げようとしておる、こういうことでございまするから、私は、これらを含めて佐藤さんは国民に信を問うべきではないか。今日、佐藤内閣に弱点があるとするならば、解散をしていない、国民の信を問うていないということではなかろうかと思うのであります。解散についてどのようなお考えを持っておるのか、承りたい。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日も、参議院におきまして解散についてお尋ねがございました。これにお答えしたばかりでございまして、ただいま考えておらない、かようにお答えしたばかりであります。その後数日もたたない今日でございますので、同じように、私、考えておりません。
  148. 野原覺

    野原(覺)委員 ただいま考えていないということでございますが、私の申しておる、つまりあなたは国民に信を問うていないことが佐藤内閣の弱点ではないかということを私は申し上げましたが、この点をどうお考えになりますか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまのお話、御意見のあるところ、これもたいへんけっこうなお話かと思いますけれども政治、これはもう衆議院ばかりではなく、参議院選挙等もございまするので、必ずしも、信を問わなかった、こういうようにきめてかかることはちょっと無理じゃないだろうか、かように私は思っております。
  150. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題は、これは相当国民の中にも解散すべしの声が高まっておる。ただ解散できないのは、世の中が不景気で、物価高で、そうして人気が非常によくない。世論調査を見ても、佐藤総理大臣の人気はがた落ちに落ちておる、こういうことを総理大臣はお考えなのではなかろうか。党利党略で解散をしないのではなかろうか。あなたは先ほど内閣改造について何とおっしゃられたかと申しますと、人心一新ということを言われたのです。内閣の大臣をかえて人心が完全に一新できるとは思わない。池田さんからバトンを継いでもう二年もたつのに、そのままこの政権にかじりついておられる。政権にかじりついておられるということでは、私は人心の一新はできない。ほんとうに、もういいかげんに国民にとにかく佐藤内閣の政権、政策というものを審判していただいてはどうなのかという感じを、私どもは強く持っておる。まあ当面考えていないとされれば、今年はしないということでございましょうか。今年しないということであれば、来年の四月は地方選挙だ。地方選挙が済んでからということになりますと、任期一ぱいだ。これはどうなんですか。来年の再開早々にでも解散をしなければならぬとお考えなのか、それとも任期一ぱい政権を担当するというお考えですか、いかがですか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、ただいま考えておらないのです。したがいまして、これだけははっきりしておりますので、先がどこへいくのか、そんなことまで考えておりませんから、ただいま考えてないという、それだけを御了承いただきたいと思います。
  152. 野原覺

    野原(覺)委員 これから申し上げることもたいへん失礼なことかと思いますが、しかし、これは国民としてぜひお聞きしたいことの一つであります。それは世論調査です。十三日にわが党の山本幸一君がこれも本会議で申し上げましたが、総理大臣は、謙虚に反省をしてまいりたい、こういう御答弁であったように私は記憶いたします。池田さんからバトンを受け継がれたときには、四六%の世論調査支持であったのであります。それが本年の六月、毎日新聞の調査によりますと二八%台だ。朝日新聞の四月の調査は三〇%、NHKも大体同じ数だ。これらの数字というものは、佐藤さんのお兄さんの岸さんが安保条約の改定で非常に国民から批判を受けた、あのときの数字と同じではないか。一体総理大臣は反省なさるというが、国民が聞きたいことは、どうしてこのように人気が低落しておるのか、何をどう具体的に反省しようとしているのかということを国民は聞きたいのです。いかがですか。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 権威のある新聞社の調査ですから、私はとやかく申しません。とにかく、こういうような結果が出ておれば、これを反省の資料にする、これは当然のことです。私は、それを率直に反省の資料にする、かように申したのでございます。
  154. 野原覺

    野原(覺)委員 そういう抽象的なことではなくて、そこまでおっしゃるなら、私の政策のここではなかろうか、たとえば物価問題について、あるいは中国政策について、ベトナム戦争協力について、こういうことがやはり国民に評判が悪いのではなかろうかと、何か具体的にあなたの政策なりその他いろいろな問題でお感じになっておられることがあれば、これは国民に、私は、国民総理大臣でございますから、申されたほうがいいのではないかと思う。いかがですか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの人気云々は、具体的にはっきりして、この政策について批判がこうだ、こういうものではなかったように思います。そういう意味で、私はやはり一般的に、抽象的なこれは反省の資料だ、かように思っております。
  156. 野原覺

    野原(覺)委員 これは十分御反省なさらないといけないかと思います。  そこで次に本論に入ります。  外交、防衛の問題であります。第一にはベトナムの問題、第二には日韓の問題、第三はインドネシアの緊急援助問題、沖繩問題、防衛問題、こういうことでこれからお尋ねをしてまいろうと思いますが、実は午前中の委員会で与党の倉成君からベトナムの問題については若干お尋ねもあったのであります。あるいは私の質問することが重複するかもわかりませんが、考え方の土台が少しく異なりまするので、もし重複の点があればこれは御理解を願いたいと思うのであります。  けさの新聞は大々的にホー・チ・ミン大統領が、世界国民に向かってのアピールを報道いたしておるのであります。そのアピールによりますと、北ベトナムアメリカに対して徹底的に抗戦をする。たとえ戦争が何年続こうとも十年続こうとも、二十年続こうとも、この北ベトナムが破壊し尽くされようとも、降伏は断じてしない。そこで、これから総動員体制をとる、徹底抗戦のために総動員体制をとる、こういう実に強硬なアピールであったと思うのです。佐藤内閣はハノイ、ハイフォンの北爆をやむを得ないとして支持してこられておる。ハノイ、ハイフォンの北爆があれば、補給の根源がたたかれる、あるいは北ベトナムは平和のテーブルに着くのではなかろうか、こういう考えがあって、やむを得ないとして支持してこられたのかどうか知りませんが、ハノイ、ハイフォンのいわゆる聖域の爆撃というものは、和平を遠のかせてしまっておるのであります。私は、新聞で各国の反響という欄をずっと読んでみた。どの国も和平は遠のいた、残念ながらこれは、もっともっと長引くということを指摘しておるのでございますが、総理はどうお考えになりますか、この点。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、和平が遠のいたとか近まったとか、こういう見通しよりも、私ども一体どうするのか、一日も早くここに和平、平和を招来する、その方向で努力する、それ以外にないように思っております。ただいまの各国の見通し、それが当たるとか当たらないとかいうことでなしに、とにかく紛争を一日も早く解決されること、そうして平和が招来されること、これを心から念願しておる、かように御理解いただきたい。
  158. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、これも倉成君がお尋ねをされましたが、平和を願う、どうするのかということを心配されるというならば、どうするのか。どうしたらいいかという具体的なお考え方政府にございませんか。どうしたらこの戦争が一日も早く終結できるかという、そういう考えがあればお述べ願いたい。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 午前中もお答えをいたしたのでありますが、日本が直接の当事者でないことは御承知のとおりだと思います。私どもアジアにいる国として、アジアでこの種の紛争が激化すること、これはどうも見ているわけにいかないといいますか、そういう意味で、どうしても関係の方々が、関係の国々が至急に同じテーブルに着いて、そうして話し合ってもらいたい、これ以外ないのだ。いろいろそれぞれのいきさつがあるだろう。いままでの経過もあるだろう。それらにこだわるということなしに、この際、ひとつ平和を招来する、こういう意味話し合いをしなさい、こういうことを強く要望しておるような次第であります。
  160. 野原覺

    野原(覺)委員 平和に徹せられる総理大臣が、ベトナム平和を心から願うと、こう何回もおっしゃられるわけでございますから、どうしたら平和のテーブルに関係各国を着かせることができるか。平和のテーブルになかなか着かないのは、アメリカ北ベトナムなんだ。同時に、民族解放戦線の、いわゆるベトコンと言われる人たちなんです。この関係者を、どうしてテーブルに着かせるかが問題なんです。私はその中身を聞いておるのです。どうもないようでございますね、何も。国連事務総長のウ・タントは三つの条件を出しておる。たとえば北爆の停止、これをやめろ。それから、アメリカ軍が一人残らずベトナムから撤退するということはなかなか困難だろうが、軍事作戦の規模を縮小しろ。これが第二にウ・タントの出しておることなんです。同時に、平和のテーブルには民族解放戦線の諸君もすわらせろ。これが三条件なんです。これに対してホー・チ・ミンは四条件を出し、アメリカも幾つかの条件を出しておる。これらの条件について、ほんとうに平和に徹せられるならば——アジア日本としてですよ。ベトナム戦争を、ほんとうにあなたが真剣に心配されるならば、これらの具体的な条件というものを、日本政府としてもきちんと腹の中にたたみ込んでおいて、私は、今度グロムイコが訪日されたならば、グロムイコとお話をする等の努力をすべきではないかと思うのです。いかがですか。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、アメリカとはいままで話をする機会がしばしばございます。そういう意味で、アメリカが平和を望んでおる、そういうこともよくわかっております。だから、アメリカ側話し合いの場に着くということは、これは拒むものではないと思います。ただその話し合いの場に着く場合に、これこれの条件のもとに話し合いの場に着くという、これはやや先回り過ぎているんじゃないか。そういう事柄をいわゆる話し合いの場できめることが問題なんです。これこれの条件を実現するならば話し合いの場に着くという、これでは私はほんとうの話し合いではない、かように実は思っておるのです。北爆について、これを至急にやめろというお話がありますし、また北爆をなぜやっているか。これはやはり南にお ける破壊分子に対する北からの援助、この援助を やめてもらいたいという、この援助の力を減殺する、こういう意味の北爆が続いておるのでありますから、この点では、私は、一方で北爆をやめろと言うだけではいけない、やはり南に対する破壊分子に対する援助、これも同時にやめなければならないと思います。そのやめる事柄は、どういうような方法でやめるのかというような点は十分相談をされたらいい。とにかく撃ち方やめ、一応停戦に入ってそうしてただいまのような諸懸案——それぞれの民族的な悲願もありましょうし、宿願があるだろうし、そういう点を十分話し合ったらどうか、かように私は思うのであります。
  162. 野原覺

    野原(覺)委員 なかなか平和のテーブルに着かないのでしょう。平和のテーブルにすわらせる。すわらしてからの話し合いということももとより大事。それが一番大事かもしれませんが、すわるまでの今日のその当面の問題について、やはりお互いが若干の条件を充足するということが、私は席にすわりやすいことになるのではないかと思うのです。これらの問題は、考えておかれたほうがいい。何にもないようです、これは何回聞いても。  そこで、議論を発展させます。京都における日米貿易経済会議、それからまた、その会議に来られたラスク国務長官が、総理大臣会談をなされた。この会談の中で、一体中国問題というものは、これは相当大きなウエートを置いて私ども会談をされたに違いないと思っております。同時に、ベトナムの問題も、これは相当大きなウエートが置かれたに違いないと思います。ところが、どういう話し合いがなされたのか。もちろん密談をした件に関しては、外交上の機密ということでなかなかお漏らしにならぬのでございますが、私どもが知りたいことは、中国問題について、たとえばジョンソン大統領が、やや弾力的な態度を持ってきたとか、あるいは人的交流についてアメリカが考えるようになったとかいうことは、断片的にはお述べになりますけれども、当面の、たとえばこの秋に行なわれる中国の国連代表権の問題、これは一体話し合いがあったのかなかったのか。本会議椎名外務大臣は、重要事項桁定方式でいくかのような御答弁をなさっておるが、この点はアメリカ側と、今度の会談意見が一致した上の御意見であるのかどうか、あるいはまた日本にラスクが来られる前に、台湾に行って、蒋介石とラスク、長官会談をしております。そうなりますと、いわゆる中国問題については、たとえば一つの台湾、一つの中国、一つの中共、アメリカはこれから具体的にそういう考え方で中共対策を取り上げていこうとしておるのかどうか。ここら辺、総理大臣なり外務大臣は、率直にやはり国民にお述べいただきたいと思う。外交上の機密といってこれを隠すことなく、やはり国民に向かってお話をし、国民意見を聞いて政治を進めるというのが民主政治家でございますから、これはお述べいただきたいと思う。どういうお話があったのですか、中共問題では。いかがですか。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共問題について、もちろん話し合ったことはございます。しかし、まだ加盟問題については時間もあることでありますし、情勢の変化、それに対応する必要もあるのでありまして、そういう問題について結論的なものに到達したのではない、話し合ったというだけのことであります。なお、今日の段階として、日本政府としては、やはりかような重大な問題は、国際世論の大勢に照らして処理するという必要があるという考えは、変更しておらないということを申し上げておきます。
  164. 野原覺

    野原(覺)委員 時間の関係がございますから、私まとめて申し上げます。  外務大臣、これは総理大臣でもなおけっこうでございますが、一つは、この国連代表権問題については、アメリカはどういう意向でございましたか。これが第一。重要事項指定方式を、依然としてことしもとるという考えであったかどうか、これが第一。  第二は、一つの台湾、一つの中共、一つの中国、こういう考えが述べられはしなかったか。これで今後の中共対策を進めるという意見アメリカ側から出ることはなかったか。これが第二。  第三は、ベトナム戦争に関して、米中戦争がよくうわさをされるのであります。なお、今度のホー・チ・ミンの大統領声明の背景にも、やはり中共が大きくのしかかってきておることも事実なんです。米中戦争の可能性についてアメリカはどういう見解を持っておるか。もちろん昭和二十六、七年の朝鮮戦争のような形ではなくても、このまま戦争が長引けば、これは中共は黙っておかない。中共は、必ず何らかの形で立ち上がるかもしれないという分析を、アメリカ側はしておったかしていないか。米中戦争の可能性というものをアメリカはどういう認識をしておったか、この三点。率直に御答弁願いたい。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第一の国連代表権問題は、先ほど申し上げたように、お互い外交ルートを通じて、情勢の推移を十分に検討分析しようという程度のことであります。  第二の一つの中国、一つの台湾、これは第一の問題に関連する問題であって、第一の問題についてまだ結論的なものをお互いにつかんでいない今日、第二のこの問題は、依然として論議の段階ではない、こういうことになるのであります。  それから第三は、ベトナム戦争に関するアメリカ考え方は、依然として変わらないのでありまして、北の浸透を防ぐ、南の、南越の政治的独立というものを守る意味において軍事行動を起こしておる、それ以上の考えは、絶対に持っていないということをアメリカが繰り返して申しておるのでありますが、その点に関しては、やはり従来の方針を変更しておらないように私は考えております。見受けられました。したがって、米中戦争の可能性というものは、アメリカのほうから見る限りにおいては、これはあり得ない、こう判断しております。
  166. 野原覺

    野原(覺)委員 エスカレーションということは、漸次拡大をするのです。だから、いまアメリカが何と言おうとも、米中戦争の可能性がないなどと、気休めは言っておれないのです。ハノイ、ハイフォンの爆撃なんか、一年前には、アメリカは絶対にしないと言っておった。それがやった。都市爆撃をしないと言っておるかどうか、私は知りませんが、しかし、たとえば防衛施設がある、あるいは軍隊が駐とんしておるような都市は、やはりアメリカはねらっておるじゃないか。単に石油のタンクがあるところだけじゃない。無差別な、都市村落の爆撃ということになれば世界の世論の反撃をおそれて、いま引っ込んでおるだけである。しかしながら、たとえ国が焼土になっても降伏は絶対しない、おれを降伏させてベトナム問題を解決しようというアメリカには、おれは絶対ついていけないというホー・チ・ミンのあのがんばりがあれば、アメリカは今後何をするかわかったものじゃない。これはだれでも言えることなんですよ。こういうことが、やはり一国の外務大臣としては、どういうようにエスカレーション拡大していくのか、エスカレートされていくのかということをやはり考えながら、そういう点についても、ラスク長官その他と隔意のない話し合いをしておくということが、総理大臣の言う具体的な平和の問題につながってくることじゃないかと私は思う。  そこで、これからベトナム問題の核心に入ります。  まず第一は、ハノイ、ハイフォンを六月二十九日にアメリカ爆撃をいたしました。この爆撃について、日本に対して事前に通告があったはずです。いかがですか。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事前通告はございません。
  168. 野原覺

    野原(覺)委員 英国には事前通告があり、ソ連にも事前通告があったと新聞は報じております。アメリカは、アジアアメリカの役割りを日本に押しつけておいて、日本とは安保条約を結んで、どこの国よりも密接であるにかかわらず、このハノイ、ハイフォン爆撃をやるのに、なぜ事前通告がないのか。これは完全にアメリカ側日本をなめたことじゃないか。礼儀としても通告すべきではないか、こういう抗議をラスクにしましたか、外務大臣。しませんでしたか。いかがですか。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、なめられたとも思ってないから、逆襲もいたしません。
  170. 野原覺

    野原(覺)委員 私は完全になめられておると思う。英国のウィルソンは、この通告を受けて拒否したのです。日本には何の通告もないのです。アジアアメリカが何をしようと、何の通告もないのです。これは椎名さん、よほど考えなさいよ。一国を代表する外務大臣としては、これはよほどしっかり考えてもらいたいのであります。安保条約を締結して、日本は安保条約の義務を履行することに最も忠実に努力をしておる国じゃございませんか。それが何らの通告もされないとは、私は何ごとかと言いたい。あなたは、アメリカ側に最も忠実な外務大臣でございますから、なおさらそのことは言えると思う。  そこで、次にお尋ねしたいことは、これは総理大臣にお聞きしますが、ラスク長官新聞記者会見でこういうことを言っております。アメリカは同盟国にとって脅威が生ずる場合には、核兵器であろうとなかろうと、手段を選ばず、あえて同盟国との条約を守るための方法をとる、こういうことを言っておるのですが、ラスク長官のこの発言の中身から推していきますと、単にハノイ、ハイフォンを爆撃するということだけでなしに、私は都市爆撃、それから場合によっては最後のどたんばになれば核攻撃、そういうこともあり得るのではないか。もちろん、ラスク長官のこの発言は、政治的なねらいを持った発言だと解されないこともありませんが、核の問題をこう簡単に持ち出しておる。同盟国を守るためには手段を選ばない、核兵器であろうとなかろうと、おれはこれを使う、こう言っておりますが、これは総理大臣との会談をされたラスク長官日本に来ての談話でございますから、この辺のお話し合いは、総理、いかがでしたか。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨年私がアメリカを訪問した際、ジョンソン大統領と、日米安全保障条約についていろいろ意見交換しました。その際に、アメリカ日本に対する外部からの攻撃、その攻撃が在来の兵器であろうが、また核兵器であろうが、日本に対する攻撃に対しては、日本を守るのだということを実は申しておりました。ただいまのラスク長官の発言は、それに該当するものではないかと、ただいま披露されたのを聞いたのであります。これは、ベトナムにおけるアメリカ軍の行動云々の問題ではない、かように私は理解するのですが、野原君、やや考え方違っておりはしませんでしょうか。
  172. 野原覺

    野原(覺)委員 いや違っておりません。もう一ぺん申し上げます。  これは総理大臣、あなたが十三日の本会議で山本議員に重大な答弁をされたこととうらはらなんです。これはあとで私取り上げてまいりたいと実は考えておるのですが、ラスク長官が、同盟国にとって脅威が生ずる場合には、核兵器であろうとなかろうと、つまり同盟国が核で攻撃される場合とはこれは限定していないのですよ。脅威が生ずる場合、同盟国が単に核以外の非核兵器によって攻撃される場合といえども、というようなことになってくると、核兵器であろうとなかろうと——これは特に、それがあなたにアメリカ側から話があったとすれば、ことに私は重大ですが、その辺いかがですか、どうお考えになりますか。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は日米安全保障条約の本来のたてまえは、昨年ジョンソン大統領と会ったとき、そのままでよろしいのだ、また、そういうようにアメリカが安全保障条約の義務を履行してくれる、かように私期待しておりますから、今回もラスク長官に会いました際も、こういう問題については話をしなかった。ただいまの、日本が攻撃を受ける脅威がある場合、これはややことばとして行き過ぎじゃないかと思います。日米安全保障条約では、そんな脅威がある場合に、直ちにアメリカが特定の行動に出る、こういうことは規定されておりません。だから、これは現実に攻撃をされた場合に、その場合にアメリカ日本を守る、こういうことだ、かように私は理解しております。
  174. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、現実に日本が攻撃された場合にアメリカ日本を守る、これは安保条約です。しかし、それじゃ、あなたにお尋ねいたしますが、あなたは七月十三日の本会議でこう答弁をしておりますよ。山本幸一君はこう尋ねたのです。速記によって申し上げます。日米安保条約がわが国を危険な立場に追いやるのではございませんか、日米安保条約が火中のクリを拾うことになりはしないか、この条約があるために、おのれの意識しないことで、自覚しないことで、いつの間にか戦争に巻き込まれておるということになりはしないかという意味でこれは質問をしておる。日米安保条約がわが国を危険な立場に追いやるのではないか、こう尋ねたのです。これに対するあ.なたの答弁は、こうなっておる。「アメリカの圧倒的な核の報復を最初から覚悟して初めて沖繩やわが本土に対する攻撃が加えられるのであります。私は、かような暴挙をする国はどこにもないと、かように確信をしております。」これは総理、御訂正になるところございませんか。あなたはこの答弁でけっこうですか。よろしゅうございますか。——それじゃ、よく考えておってください。  じゃ、私、次にお尋ねをいたしますが、沖繩や本土に対する核兵器でないところの攻撃があったと、こう仮定いたしましょう。今日ベトナムは攻撃をするかもわかりません。ただ彼らには力がない。これは外務大臣が認めておるとおり。遠方にある。戦略的にもそれが困難だというから、やらないだけのことだ。沖繩や本土に対する非核兵器、核兵器でない攻撃があったとかりに仮定した場合に、アメリカは核兵器で報復をすることになるわけですか、あなたの答弁からいきますと。いかがですか。この辺御説明願いたい。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の答弁は、そこまでは申しておらないように思います。私は、日本あるいは沖繩に対して攻撃を加える、これが核兵器で攻撃を加える、こういうようなことがあれば、これはやはり攻撃をする側においてアメリカの圧倒的な核戦力、報復行為といいますか、それを承知の上でないとやらないでしょう、こういうことを申したのですね。それじゃ、核兵器じゃないんだ、ただいまの通常兵器による攻撃だ、こういうお話ですが、私は、通常兵器による攻撃に対してアメリカが直ちに核兵器でこれに対抗するとは考えません。おそらく、そういう場合においては、日米安全保障条約を普通考えられるような状況において発動するものだ、かように私は思っております。
  176. 野原覺

    野原(覺)委員 それなら、あなたのこの御答弁を生かそうとするならば、「核攻撃があった場合にはということを入れなさいよ。本会議の答弁にはないんですよ。いかがですか。核攻撃があった場合にはアメリカは核報復をするだろう。これは推察をしてくれと言ったって、日本の平和と安全に関する重大な問題について、しかも責任のある総理大臣が本会議で答弁をするのに、私はアメリカの核報復だ、こうきておりますから、核攻撃があった場合にはという前提がつくわけですか、総理大臣。もう一度明確におっしゃってください。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私は、本会議の席上で山本準一君の質問は、核攻撃をするというように聞いたのですが、ただいま速記その他でいろいろお話があるようですが、私が当時受けた感じは、ただいま申し上げるように核攻撃を受ける、こういうような場合は、ただいま申し上げるアメリカの圧倒的な核報復、これを事前にしゃんと了承しておらないと、そういうことはやれぬだろう、こう言うのであります。
  178. 野原覺

    野原(覺)委員 それならば、これはしかるべく本会議で御訂正願いたい。核攻撃があった場合にはと御訂正願いたい。本会議の答弁を、こういう委員会で、こういう重大な修正はできないと私は思う。いかがですか、総理大臣
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は別に必要ないように思っております。
  180. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは必要ないと言うが、私どもは必要があるのです。必要があるのです。これは、私は議院運営委員会において問題にいたします。あなたの本会議の答弁は必ずしもあなたの真意を満たしていないのです。核攻撃があった場合にはという前提がつくのだということになれば、これはやはり本会議の答弁において訂正してもらわなければならぬ。これだけ申し上げておきましょう。いずれ議運において私ども問題にしてまいりたいと思うのであります。  そこで、外務大臣お尋ねします。  外務大臣北ベトナムのことをあなたはよく北越、北越と言うのです。一体北越というのは独立国ですか、何ですか、これは。外務大臣の見解をお聞きしたい。
  181. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北ベトナムのことを言うのであります。
  182. 野原覺

    野原(覺)委員 それならば、北ベトナムというのは国家ですか、独立国家ですか、そうお考えですか。
  183. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 実際上そこに北ベトナムという政権が存在するという事実関係は、これは認めざるを得ないと思います。
  184. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、国家ですかと聞いております。あなたは、政権が存在する事実関係は認めなければならぬと言う。それはどういうことですか。政権の存在する事実関係というのと独立国家は同じか、違うか、どっちですか。
  185. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 法律論でございますから、条約局長から正確に申し上げます。
  186. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ベトナム民主共和国という国号を称しておる政権があることは、外務大臣から答弁のとおりでございますが、日本政府はこの国を承認しておらないのでございます。
  187. 野原覺

    野原(覺)委員 日本政府はこの国は承認していない、これは私も知っております。それならば、南ベトナムとの関係において、法的地位をどう解釈すべきでございましょうか。南ベトナムとの関係において、北ベトナムは独立した国と解釈すべきでしょうか、いかがですか。
  188. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 南北両政権のもとに、それぞれの地域に施政が行なわれておるという事実関係があるわけでありまして、国家といたしましては、世界じゅうの国がそれぞれその一方だけを承認しておる、そういうことでございます。
  189. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、ベトナムという一つの地域に、南の政府と北の政府がある、二つの政府がある、こう考えてよろしいのですか。
  190. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 南北をそのように平等にはどの国も認めてないわけでございまして、その第三国の国家としての立場を離れて客観的に見れば、仰せのとおりでございますが、かりに日本立場からしますというと、南ベトナムにある政府だけが唯一の合法政府である、こういうことになるのでございます。
  191. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなると総理大臣、いま条約局長の答弁で明らかになったように、わが国北ベトナムを独立国家とは認めていないのです。南ベトナムとの関係においては国境はないのです。十七度線というのは、ジュネーブ協定によって暫定軍事境界線なんです。国境ではないのです。これはどうしても国家ではない、国家とは思われない、そう理解していいですか、総理大臣でも外務大臣でも。独立国家とは思われない、いかがですか。
  192. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北は承認しておりませんが、十七度線はわれわれの承認する南ベトナムの実際の支配権が事実上そこでストップしておる、そういうふうに見ております。
  193. 野原覺

    野原(覺)委員 事実上北ベトナムという支配権が存在しておることは、私も認める。これは事実上そういう団体があるわけだ。ホー・チ・ミンを首領として、北ベトナムという一つの団体があるわけです。これは認める。しかしながら、日本はこれを国家と認めていないわけだ。ベトナムという一つの地域に南と北の二つの集団と申しますか、二つの政府が存在しておるというのが現状じゃございませんか。国際的にはジュネーブ協定でそうなっておるでしょう。二年後には統一選挙をやるんだということで、暫定軍事境界線をつくったんだから、これは二つの単なる政府だ。ベトナムという一つの地域、この全地域を、南も北もいまは統括できないような国際法のもとに置かれておるんじゃございませんか。外務大臣、いかがですか。
  194. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょうど、朝鮮半島に事実上二つの政権がある。しかし日本は、韓国は認めておるが、北は認めていない、しかし事実上の政権のあることは承知しておる。それと同じ状況にあると思います。
  195. 野原覺

    野原(覺)委員 それと同じ状況ですか。それはいつそういうことに変わったのですか、外務大臣。岸内閣のときに、二百億の賠償金を払う、鶏三羽で二百億、これは騒いだ問題があった。南に払ったら北はどうなると言ったら、北は一切解決いたします、南に払えば終わりです、こう言ったんじゃありませんか。ところが北鮮の場合には、三十八度線以南が韓国、三十八度線から北はこれはオーソリティーがある、白紙、だから北鮮に対する賠償権は残る、三億、二億のこの緊急経済援助というものは、三十八度線から以南の韓国にしか適用できない、こう言ったんじゃありませんか。ベトナムのときには北も一切解決すると言ったのです。違うでしょう、それは。いつ変わったのだ、外務大臣、それは。
  196. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体似ているということを言ったのであって、やはりこまかいことを言ったら多少違っているところがあるかもしれません。
  197. 野原覺

    野原(覺)委員 大体似ておる、北は白紙、それから北は一切経済援助は解決する、大体似ておる。——何が大体似ておりますか。根本から違うじゃありませんか。総理大臣、これはどう考えても、北ベトナムは国家と認めていないとすれば、あなたは北からの浸透がある、北からの浸透があるので南がアメリカに援助を求めた、そこで、アメリカは軍事介入をした、これは集団安全保障の憲章五十一条だ、こうあなたはおっしゃっておるんです、これも本会議でね。だから、これは国連憲章に違反をしない、侵略でない、こうあなたはおっしゃってきておるわけです。しかし、この北ベトナムというものは、国家でないという日本政府の見解だとすれば、これは単なる一つの政府だという見解であれば、北ベトナムがかりに北から浸透していこうとも、あるいは南におけるいわゆるベトコン、民族解放戦線の諸君が南ベトナム政府に反撃しようとも、これは国内事項ですね。総理、これは国内事項ですよ。北ベトナムという国家の侵略じゃありませんよ。北ベトナムの北からの浸透、それからベトコンの政府に対する反撃というのは国内事項、いわゆる内乱、国内紛争ですよ。総理いかがですか、これは。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム民族がつくっている国、その国を南を承認している国もあるし、北のほうを承認している国もある。北を承認したものが南を承認するとか、南を承認したものが北を承認するとか、こんなことはないのです。そこで、その関係は、ちょうど朝鮮半島において韓国を承認しているものが北を承認してない、北朝鮮を承認しているものが南を承認してない、こういう関係は同じようにあるわけです。この点はもうおわかりだと思う。日本の場合は北を承認しておりません。これは非常にはっきりしているので、先ほど来議論があると思います。  そこで、南の国内におけるいわゆるベトコンといいますか、これは破壊分子だ、こういうふうに思っておりますが、この破壊分子に対して北からこれを援助している、こういうことが実は問題になっている、これが今日の問題だと思うのです。私は、北ベトナムが積極的にやっているんだと思いますが、とにかくこれは北からの援助だ、かように私は考えていいんだと思います。ただ、国連憲章五十一条というものが出てきておりますが、国連憲章五十一条のこの精神というものが私はこういう場合に合うので、これは技術的の問題でございますから、後ほど条約局長にさらに説明させたいと思いますが、この点は、五十一条の精神がこの場合に生きている、そうしてアメリカの行動がその精神に基づいて行動しているのだということが言われる、かように私は思っております。
  199. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、総理大臣——いやいや、それはあとで聞きますよ。あとでよく聞きますが、ジュネーブ協定で南と北は暫定軍事境界線を引いたのです。だから北と南のその国境なんというものはないのだ。これはあいまいなんですよ。だからベトナムという一つの地域における二つの政府と見るのが国際法上正しい見解なんだ。それは各国は承認をしておるかしれません。共産圏は北を承認し、アメリカ圏は南を承認しておる。しかしながら、国際法の上からいけば、一つのベトナムという国家であるべき地域にいま二つの政府ができておる。これがジュネーブ協定なんだ。二年後には統一選挙をやるのだということにしたのですから。そうでしょう。そうなれば、特に日本の場合には独立国と認めないということであれば、これは国内紛争と見るのが日本政府の見方としては正しいのではないか。北ベトナムという国家と見ないのだから、北ベトナムという国家が南に侵略を企てておるのではない、国内の紛争だ、内乱だ、こう日本政府としては解釈しなければならぬのではないか。総理大臣、いかがですか。
  200. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ベトナムの十七度線にいま御指摘のように臨時軍事境界線がしかれておる。これはつまり休戦ラインでございます。この点は、朝鮮半島に、三十八度線の近辺に休戦ラインがしかれておるのと全く同様なわけでございます。御指摘のとおりこれは国境ではない。それじゃ、国境でないから幾らでも武装した軍隊を忍び込ませてもいいかというと、そういうことになったら休戦ラインというものの意味はなくなるわけでございまして、そういうように武力をもって浸透してはいけないとか侵略してはいけないとかいう観点におきましては、これは全く国境と同一視すべきものであるというのが国際の常識であると存じます。
  201. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなってくると、これは初めから北ベトナムが侵略したのじゃありませんよ。私は、議論を立てる上で仮定的にずっと話を進めてきたのだが、これは最初はいわゆる民族解放運動なんだ。ゴ・ジン・ジエム政権が血の弾圧をやったんだ。そこでゴ・ジン・ジエム政権に反対して、この民族解放の運動の諸君が反撃を加えた。これは明らかに内乱ですよ。ところが、その民族解放運動のいわゆるベトコンの背後には北がある、こう判断をして、南の政府から要請されたと称してアメリカが入っていったのだ。共産主義の南下を防がなければアジアに共産主義がびまんするというのでアメリカは入っていったのだ。これが歴史的事実なんですよ。  時間の関係もあるから結論に入りますが、こうなってまいりますと、これは明らかに国内紛争なんだ。国家として承認していない限り、日本政府としては国内紛争として見なければなりません。岸内閣以来、北ベトナムはなかったのです。ジュネーブ協定は一九五四年ですよ。岸内閣は何年でした。北はいいのかとわれわれは聞いたんですよ。二百億で北は黙っておるかと言ったら、これで北は終わりです。今度は北鮮の場合は——外務大臣、実にあなたはおとぼけの名人で、人を食った答弁をして笑わしておりますけれども、北鮮の場合は違うでしょう。北は白紙、三十八度線以内だ、こう言っておるのだ。ところが、ベトナムの場合は全体だ、こう言ったのだから、事日本政府に関する限りは国内紛争と見なければならぬ。こう言っておるのだ。総理大臣、いかがですか。総理大臣、あなたは責任者だ。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国内においては私は責任者ですが、ベトナム問題の責任者じゃございません。その点は誤解があるようでございます。  それで、ただいまベトコンというものの見方ですが、野原君の認識では、ベトコンが活動しているのだが、これはベトコンという南ベトナム内だけの破壊活動じゃないのだ、北自身だ、こういうようにとれるような議論に私聞いたのですが、そういう意味ですか。どうも、内乱問題だ、これは国内問題なんだ、だからこれは北自身が民族解放をやっているのだというようなお話をずっと論理を推進してまいりますと、ベトコンはベトコンとしての団体じゃなくて北自身の軍事活動だ、こういうようにとれるのですが、それだとちょっとたいへんな問題になるのじゃないだろうか、かようにただいまの御議論を聞いたような次第であります。
  203. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、北ベトナムは国家としては見ていないのだから、これは北の浸透あるいはベトコンの反撃といってもベトナムにおける内乱ではないかという見解を言っておるのです。これが間違いなら間違いと言ってください、根拠を示しながら。私は内乱ではないかと言っておる。これは沿革的に見ても、総理大臣、これは事実を追って申し上げますが、ホー・チ・ミンがフランス軍をディエン・ビエン・フーで破っております。ホー・チ・ミンがフランス軍とは戦ったのです。フランス軍はここで破れたわけだ。もうそのときにはすでにアメリカ軍が入ってきておった。しかしながら、ジュネーブ協定というものができて、二年後には統一選挙をやるということになっておったのです。ところが、いつの間にか南のほうにはゴ・ジン・ジエム政権ができて、これが統一選挙を拒否した。その背後にアメリカがあったわけだ。つまりゴ・ジン・ジエム政権はアメリカを背景にして反政府派を弾圧いたしました。弾圧された諸君が山にもぐり、あるいは里に帰って政府反撃ののろしをあげた。これがいわゆるベトコンだ。民族解放運動だ。ゴ・ジン・ジエムを倒せ、最初はこういうことになってきておる。明らかにこれは内乱なんだ。ところが、その後ずっと時間一が経過すると、このベトコンの背後には北があるというので、この北をやっつけなければならぬということになってきておるわけでありますけれども、しかし、その北にしたって、これは国家じゃない。国家とは日本は認められないわけですから、内乱です。総理大臣、いかがですか。この辺でこの問題は終わりましょう。これは内乱です。いかがですか。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、南ベトナム内の紛争、破壊活動、これは内乱だと、こういうことは言えるだろうと思う。その内乱を北から援助している、そこに浸透があるのだ、かように私は見ているのです。これは、ジュネーブの会議から申せば、十七度線を設けて、お互いに軍事活動をしないことにしよう、これが一つの線であったと、かように思います。だから、このジュネーブ協定そのものからいえば、会議の精神からいえば、十七度線を引いたときに、これは国境ではないけれど軍事行動はこれを越してはやらないことにしよう、こういう申し合わせであったと思います。しかし、その後続いている。こういう事態についてただいまのような御議論が出ているのだ、かように思っております。
  205. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、そうすると南においては内乱だ。その内乱というものにアメリカが兵を出すということは行き過ぎですね。国内紛争アメリカが兵を出すということは。これは総理大臣、いかがですか。あなたは時間の経過を見て答弁してくださいよ。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカがただこういう問題にみずから買って飛び出すといえば、これはよろしくないと思います。しかし、平和を守るために要請されてそうしてこれが出てきた、かように私は聞いておりますが、またそのとおりでもあります。
  207. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、総理大臣お尋ねいたしますが、あなたは北からの浸透は内乱ではないと言った。じゃ、これは何ですか。戦争ですか、侵略ですか、何ですか。内乱でなければ戦争か、何だ。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、南の破壊活動を物資その他によって応援している、かように申している。だから、これはいま南の破壊活動そのものが問題だ、かように思っております。
  209. 野原覺

    野原(覺)委員 南の破壊活動を応援しておるのは、北という国ですか、それとも政府ですか。日本政府はどう見るのですか。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、北の実力だと、かように思っております。
  211. 野原覺

    野原(覺)委員 日本政府は北の国は認めていない。だとすれば、やはりこれも内乱だ。これは内乱ですよ。内乱だということになると、これは国内事項ですから、国内事項に外国が介入することは国連憲章で禁止しておるのです。ここのところはあなた方は言を左右にして、これはたいへんなことになる、国連の二条七項違反だ、こういうことになるから、がんとして内乱ということをお認めにならない。そういう答弁で終始されておりますけれども、明らかにこれは国内紛争事項だ。国内紛争事項アメリカ軍が介入しておるのですから、これは国連憲章の二条七項の禁止しておるところの内政不干渉の原則違反なんです。問題はここにある。そうなってまいりますと、集団安全保障の第五十一条だって、第五十一条の集団安全保障というのは国家の侵略を前提にする。北ベトナムというのは国家とは日本政府は認めていないのですから、アメリカが言うならいざ知らず、日本の本会議で、集団安全保障五十一条だと言うのは、総理大臣、ややおかしいじゃございませんか。北ベトナムというのは国家と認めていないのですよ、日本政府は。どうしてあなたは本会議で集団安全保障の五十一条を援用されたのですか、いかがですか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 南と北との関係は、これは法律的に言えば、先ほど条約局長がお答えしたとおりであります。ただいまもその観点に立ってものごとを見ていただきたいと思います。実力のあるそれぞれのものがいるわけでありますから、私ども承認はしておりませんけれども、しかし北にそういう権威のあること、これは現実の問題として認めざるを得ない。だから、法律論的には先ほど条約局長が答えたとおりであります。しかし、現実の問題とすれば、私ども承認しないからといって、北の権威を無視するわけにはいかない。このことは野原君もよくおわかりだと思います。そういう観点に立って事態を見ていかないとほんとうの説明にはならない、かように私は思っております。
  213. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは集団安全保障五十一条というのを本会議で答弁されたんだ。アメリカは侵略しておるじゃないかと山本幸一君が質問したのに対して、いや侵略じゃない、これは集団安全保障の国連憲章五十一条の規定による行為だ、こうあなたは答えておる。ところが、集団安全保障の五十一条の規定は、これは国家の侵略に対して規定されたものなんだ。北ベトナムは国家じゃありませんよ。とんでもない答弁ですよ。あなたの兄さんは国家と認めなかった。日本はまだ認めておりません、南に払った二百億で終わりです、北は何にもありません、みんな南のものですと言ったのですよ、岸内閣は。われわれはそのとき承知しないと言ったんだ。そうですよ。どうしてあなたは集団安全保障の五十一条でと答弁したんだ。侵略じゃありませんか。明らかに集団安全保障の五十一条による行為じゃありませんよ、アメリカの行為は。あなたが答弁したんだから答えなさい。総理大臣、いかがですか。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その質問は国際法的な根拠を示せ、こういうお尋ねだったと思います。そこで、国連憲章五十一条が出てきたと思いますが、私、先ほど来説明しておりますように、国連憲章第五十一条の精神、それに基づいてこの行動が是認されているんだ、行なわれているんだ、こういうことを申したと思います。
  215. 野原覺

    野原(覺)委員 国連憲章の五十一条は、総理大臣、国家の侵略を前提とするのです。国内事項には五十一条は適用されないのですよ。北ベトナムは国家じゃないのですよ。どうして五十一条が適用されますか。いかがですか、総理大臣
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その説明は、先ほど条約局長がお答えしたとおりであります。だから、もう一度条約局長から説明させます。技術上の問題です。
  217. 野原覺

    野原(覺)委員 じゃ、条約局長の答弁を聞こう。
  218. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ベトナムの北と南の関係が国家と国家の関係でないということは事実でございますが、それではこれは単純な一国内の内乱にすぎないのか——国内事項ということばをお使いになりますが、そう見るかというと、それもまた実態にそぐわないのでございまして、第二次世界戦争後の特殊事態として分裂国家というものができた。それで、その間に国際会議で定められたラインが引かれておる。これは休戦のために設けられたラインであって、これを越えることはもちろん許されないわけであります。したがって、これを越えたらこれは侵略になり、武力攻撃になる、そういうものを受けた側には当然自衛権がある、こういうふうに考えるのがもう現在の国際の常識でございまして、これは朝鮮動乱の際もいささかも疑われなかったところでございます。
  219. 野原覺

    野原(覺)委員 どうもわかったようなわからぬような答弁をしております。それではかりに集団安全保障の五十一条でいけるといたしましょう。これはいずれあらためて、掘り下げた議論は時間の制約もあるからここでは私は繰り返しませんが、かりに五十一条だといたしましょう。それならば国連の安保理事会に報告があったはずだ。報告がございましたか、外務大臣
  220. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長に答えさせます。
  221. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一九六四年八月トンキン湾事件の直後に報告いたしております。
  222. 野原覺

    野原(覺)委員 その報告に対して、安保理事会はどのような判断をいたしましたか。
  223. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 安保理事会は、ベトナムの北のほうと南のほう両方を呼んで事情を聴取しようとして——これには当時ソ連ももちろん賛成したわけでございますが、その招請があったのに対して、北ベトナム側は、国連にはベトナム問題を取り扱う権能なしということでこれを拒絶し、そのまま安保理事会としては実体的な審議に入られないままになっております。
  224. 野原覺

    野原(覺)委員 集団安全保障の五十一条の規定が適用されるものか、あるいはアメリカの侵略行為であるのかどうかという判断は、国際連合のいかなる権威機関もまだ下していないのです。佐藤内閣の独断的判断、アメリカアメリカ経済的に、軍事的に従属するところの国家の独断的判断です。かつて私どもは、ヒトラーが戦争をやった、日本の軍閥が戦争をやった、東洋平和のためならばといって戦争をやった、戦争をやる国はそれぞれの目的意識というものを持っております。みなそれぞれ言い分があるわけです。おれが正しいということで侵略をし、戦争を引き起こしていくわけでありますけれども、戦後の世界では国際連合という権威ある機関ができて、一体これが侵略であるかないかという判断を下すことになっているが、国際連合の機関は、まだアメリカのその軍事介入に対してはいずれとも判断を下していない。佐藤内閣が独断的判断をやっている。集団的安全保障の問題でも、五十一条で安保理事会で報告はあったというが、これが議題として討議すらなされていないのです。こういうことを考えるというと、侵略行為でございますとか、集団安全保障五十一条の規定が適用されるということは、私は言えないと思う。少なくとも、日本政府としては答弁できないはずです、国家として認めていないのですから。実態、実態と言いますけれども、やはり私どもが議論をするとき、私は、いま法律論争をやっておるのだから、国際法の上から言えば、これはできないと思う。しかし、これはあらためて掘り下げて議論をしたいと思う。  そこで、外務大臣にお聞きしますが、ベトナム戦争に対して、今日日本はどのような立場に置かれておると、あなたは外務大臣としてお考えですか。
  225. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約がありまして、極東の平和と安全に関係のあるアメリカの行動がある場合には、安保条約に基づく法律関係に従わなければならぬ。すなわち、日本の施設区域を、米軍がこれに関連して使用することを認めなければならぬ、こういう義務があるのであります。そういう意味において、ベトナム戦争に対して、日本は純然たる法律上の立場から言うと、中立的な立場ではない。何となれば、アメリカの軍隊が日本の国内にあって、合法的に施設区域を使用しておるという状態がある限りにおいては、純然たる中立の立場にはない、こういうことが言える。
  226. 野原覺

    野原(覺)委員 中立国でないということは、北ベトナムから日本は敵性国家だと見られてもやむを得ないということになろうかと思います、戦時国際法から言って。この点いかがですか、外務大臣
  227. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナム戦争に関して、日本戦争に介入しているという判断は、これは下すことはできない、こう考えます。
  228. 野原覺

    野原(覺)委員 いや、中立国でないんでしょう。中立国でないということは、戦争をしておる一方に加担をしておるんでしょう。加担をする意思がなくても、日米安保条約によって、あなたがいま言ったじゃありませんか、外務大臣、施設区域を提供しておる。アメリカ側に加担をしておるのでしょう。だからあなたは、純然たる中立でないと言ったんだ。国際法上そうなる。そうなれば、片一方の相手側の北ベトナムから、日本は敵性国家だ、おれの敵であるアメリカに加担をしておる国家だと見られてもしかたがございませんねと、こう聞いておるんですよ、あたりまえのことを。外務大臣いかがですか。
  229. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦争の当事国ではない。
  230. 野原覺

    野原(覺)委員 戦争の当事国ではないが中立国でもない、どうですか。
  231. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうであります。
  232. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、これは最高裁の前の長官の横田喜三郎先生が、「非交戦状態の法理」という著書の中で書いておる一節です。「もし交戦国に対し不公平な態度をとり」、日本は不公平な態度をとっておるんです、好むと好まないとにかかわらず、安保条約で「不公平な態度をとり、一方の交戦国に対し特別の援助を与えるならば」——施設区域の提供をやっておる、補給基地、軍事基地の提供をやっておるんですよ。「援助を与えるならばこの国家を他方の交戦国はもはや中立国として認めず」、これは戦時国際法の精神だ、中立国としては認めない、「敵国またはこれに準ずるものとして取り扱うに至るであろう。」これは戦争の当事国ではない、敵国ではない、しかし、これに準ずるものとして取り扱うに至るであろう、こう述べておる。これは外務大臣、あなたも御承認されますか。
  233. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本からどういう戦争協力しているかということになりますと、特別に日本政府としては何もやっておらないこ。れに反して、中共、ソ連は、直接戦争に使う兵器、その他戦争を有効に遂行するあらゆる援助をやっておるというようなものと比較すると、何にも政府としてはやっていない。物資を買い付けて、あるいはその一部が向こうに送られるかもしれぬけれども、これは政府としては何も関与していない。普通の商行為として物を買い付けて、そうして向こうに送るかもしれない。その程度のことでありまして、おのおのその立場が非常に差異があるということをひとつ御了解願いたいと思うのであります。
  234. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、あなたは外務大臣ですよ。日本は何もやっておりませんか。アメリカに何の援助もしておりませんか。アメリカから、今度はラスクから援助を要求されたでしょう。ほんとうに何もやっておりませんか、外務大臣。何もやっていないと言ったんだ、君は。国会を愚弄してはいけませんよ。アメリカに何にも援助していないか。
  235. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦争に関して、政府としては、ベトナム戦争に関しては、特別のことをやっておらない。ただ日米安保条約のたてまえによって、施設区域を提供をしておるという従来からの関係をただ維持しておるにすぎない、こういうことを言っておるのです。
  236. 野原覺

    野原(覺)委員 施設区域を提供しておる。やっておるのじゃありませんか。あなたは特別のことをしていないと言うけれども、安保条約によって提供しておるじゃありませんか。やっておるじゃありませんか、その限りで。そのほか軍需品だって出しておるじゃありませんか。あなたは何を言っているんだ。やっておるんだ。やっておりますから——戦争の当事国ではない、そのくらい私もわかる。しかし、それに準ずる国だということになると、総理大臣、これはベトナムから敵国に準ずる国と見られてもやむを得ないですよ。そう見られるのが遺憾ながら安保条約ですよ。安保条約がある限りは、そう見られてもやむを得ないですよ。総理大臣、ここは割り切って考えましょう。これはしようがないですよ。施設区域を提供しておる。ベトナムがそう受け取る。これはどうですか、総理大臣の考えは。敵国に準ずるものとベトナムから受け取られても、これはやむを得ないということになる。いかがですか。
  237. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカといろいろな条約を締結している国は世界じゅうに何十とありますが、そうなると、あるいはそういうところから買い付けたものをベトナムに送っているかもしれない。全部敵性と見るということになるのでありまして、世界じゅうが全部敵と味方になってしまうというようなことになりまして、これはちょっと私は聞いたことのない議論でございます。
  238. 野原覺

    野原(覺)委員 何を言うんですか。そう見られてもやむを得ないだろうと言っておるのです。これは戦時国際法の精神からいって、そう見られてもしかたがないじゃないかということを言っておる。いかがですか。施設区域を提供したら、そう見られてもしかたがないじゃないか。敵国に準ずると見られてもやむを得ないじゃないかということを言っておる、外務大臣
  239. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦時国際法の適用はないと思います。
  240. 野原覺

    野原(覺)委員 戦時国際法の適用がない、つまり戦争ではないと言う。しかし実質的には戦争なんです。そうしてアメリカに施設区域を提供しておるのですから、敵国に準ずると見られてもやむを得ない。これは、総理大臣は平和に徹すると言うけれども、遺憾ながら安保条約のためにそう見られてもやむを得ないのです。  そこで、私が長々といま申し上げてきたのは、結局、アメリカ北ベトナム侵略というのは、私どもの考えによりますと、これは北ベトナムという国家の侵略に対する反撃ではなくて、ベトナムという一つの地域における国内事項、これにアメリカが内政干渉しておる。これは国連憲章違反ではないか、問題はここにある。ベトナム戦争の問題は一つここにある。  第二点は、日本は純然たる中立でございません。いま椎名外務大臣が答弁をした。純然たる中立でないということは、日米安保条約に原因があるわけです。そうなってまいりますと、これは厳密には戦争ではない——あるかないかは議論がありますけれども、これはいずれにいたしましても、相手国のベトナムから敵国に準ずると見られてもしかたがないのであります。これが第二点です。  第三点は、これは先ほど総理大臣が——山本幸一君の質問に対して、核報復ということを答えられたが、これは相手が核攻撃をした場合だと訂正されましたから、この訂正は、いずれ本会議で私は要求をいたしますけれども日本の平和というものは、アメリカの核報復にたよる平和、そういうようにどうも総理大臣は考えておるように私には思われてしょうがない。あなたの、平和に徹するということは、憲法の絶対平和主義じゃないのか。アメリカが核で守ってくれておる、だから核報復に、つまり核兵器に依存するところの平和、そういうことになると、総理大臣の平和に徹するということは、これはたいへん重要なことになってきはしないかと思う。最後の一点だけは、これは総理大臣、明確にしていただきたい。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、先ほどの椎名君との話をずっと聞いておりまして、椎名君はりっぱにお答えしておりますが、この日米安全保障条約によって施設区域をアメリカが使用している、こういう事実はございます。しかし、大事なことは、この施設区域を使用することは、ベトナム紛争のためにこれをやっておるというならば、お説のような問題が起こると思います。しかし、この施設区域を使用しておりますのはベトナム紛争のためじゃないのです。ここは誤解のないように願いたい。ことに同じ日本人でありながら、どうもみずからが中立をなげうっておるのだと、こういうような見方をされると、私は、他の外国への聞こえもよくないと思いますので、この点はひとつはっきりしておいて、これはベトナム紛争のためにやっておるのじゃないのだ、日米安全保障条約の当然のものでやっておるのだ、日米安全保障条約は、日本の安全確保、その意味において防衛的な条約だ。このことをひとつはっきりしておいてもらいたいと思います。  それから第二の問題は、内政干渉の問題、アメリカの内政干渉だ云々でございますが、これは先ほど来いろいろ法律的な議論と、また実際的な問題としての議論と二つございますので、この際は、現実にも納得のいくような処置でこれを観念づけることが必要ではないかと私は思います。どこまでも二つの国があるわけじゃないのだ、おまえたち承認しているのは一方だけじゃないか、したがって、その紛争は内政なんだ、だから、それに兵隊を出していくのは内政干渉だ、かようにきめてかかるのはどうかと、かように私は思います。  それから最後の問題は、わが国の安全の確保、これはまことに大事な問題でありますし、私はまた、平和に徹するということを申しております。私どもは、あらゆる攻撃に対しましてこの国の安全を確保しなければならない。しかし、私どもの持っておる力は、これはもうすでに御承知のとおりであります。なかなか私どもは十分の力を持っておらない。しかし、この力でよろしいのだ、今日の状態においては、集団安全保障の方式をとらざるを得ないのだ、こういうように私は考えておりますので、ただいま平和に徹するその考え方で、日米安全保障条約、これを一つの柱にもしております。しかし、ただいま御指摘になりましたように、日本がその外国の力だけにたよる、そんな情けないことではいかぬ、こういうおしかりであるならば、そういうおしかりは甘んじて私は受けるつもりでございます。
  242. 野原覺

    野原(覺)委員 安保条約がベトナム戦争だけを目的としたものでないことはおっしゃるとおりです。しかしながら、ベトナム戦争にも安保条約は使われておるわけです。そういう意味で中立国でないわけです。だから問題は、安保条約にあるわけです。一切の根源は安保条約にあるわけです。  そこで、安保条約の改定は一九七〇年でございますが、総理大臣、私は、この七〇年までの解散、総選挙において、当然このことを課題として国民の審判を受けなければならぬと思う。社会党は廃棄を言っておる。自民党は改定を言っておる。十年改定でいくのか、あるいは自動延長でいくのか。これは、私は、的確に政府方針を示して国民の審判を受くべきであると思います。いつごろその方針ができますか、お聞きしておきたい。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国際情勢に重大なる変更がない限り、また、みずからの自衛力が今日の状況のもとにある限り、ただいまの安全保障条約を破棄することは適当でない、かように考えております。したがいまして、現在の日米安全保障条約を続けていく、こういう考え方でございます。ただ、その場合に、いま言われるように、十年か十五年かというような技術上の問題、これはまだ私どもが、安全保障条約が満期になりますその時期が、満期になると申しますよりは、期限到来の時期がまだ先でございますから、それまでに十分ひとつ技術上の問題は検討してみたい、かように私は考えております。
  244. 野原覺

    野原(覺)委員 ベトナムの問題は、私がただいま申し上げましたように、これは内政干渉、この点はあなたは違うと言うけれども、私どもはそう信ずる。アメリカの内政干渉、侵略、遺憾ながら私どもはそう見ざるを得ない。そうして外務大臣が中立でないということは、ベトナムから敵国に準ずるものと見られてもこれはしかたのないことだ。それが多かろうと少なかろうと、これはやはり戦時国際法の精神で適用されるべきものだ。そういう意味で、非常に日本ベトナム戦争に関する限り重要な立場に置かれておるということを指摘しておきたい。したがって、一日も早く和平を実現しなければならぬが、遺憾ながら、そういう立場に置かれておるために、ベトナムを説得する力は日本にはないのである。この点、だから、そういうことになったのは安保に原因がある。だから私どもは安保の廃棄を主張しておる。しかし、これはいずれ国民の審判を得なければならぬと思うのであります。  そこで、次にお聞きしたいことは、北鮮の技術者の入国についてでございますが、北鮮の技術者の入国を政府が認めた、三年越しの課題としてお認めになった。これに対して韓国では非常にいきまいておる。報復措置をとれといきまいておる。これはどうも私どもには理解ができない。どういう理由で、北鮮の技術者が日本に入ってくれば報復措置をとられなければならぬのか。韓国はどういうことを言っておるのか。どういう理由でそういう報復措置の問題を出しておるのか。外務大臣から御答弁願いたい。
  245. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北鮮の技術者入国の問題は、相当な近代設備を北鮮が日本から輸入するということを前提にした事柄でございます。したがって、北鮮を太らす、北鮮の繁栄をつちかうというようなことは、日韓正常化の今日においてはこれは不信行為である、こういうような考え方のようでございます。しかし、これは日韓正常化の折衝以前からの問題として肯定的に取り扱ってきた問題でございますので、政府の内外に対する信を維持するという立場から、この問題だけはどうしても片づけておきたい、こういうことで今回の措置をとったわけであります。
  246. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、いま韓国で騒いでおる報復措置なるものはどういうことを言っておるのですか。報復措置、報復措置というが、具体的にはどういう報復措置を韓国は主張しておるか、考えておるのでしょう。
  247. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは別に向こうからはっきり通告してきたわけではございませんので、ただ、いろいろ向こうの報道機関等々において伝えておるところをわれわれは聞いておるだけでございまして、はっきりしたことはいま申す段階ではございません。
  248. 野原覺

    野原(覺)委員 その中で、つまり韓国が報復措置をとらなければならぬと主張しておる理由の中に、例の三十八度線以南か、韓半島全体かという、あの合法政権の日韓条約の基本関係に関するところがあるようですがね。これは、私が思うのに、私どもが日韓条約の審議のときに、この問題を明確にしなければならぬぞ、李ラインの撤廃を明確にしなければならぬということが、はしなくもまた出てきておると思う。新聞の伝うるところでは、漁業権の問題を出してきておるわけですね。漁業協定を破棄する、これは報復措置の第一に向こうが掲げておるようです。漁業協定が破棄されれば、日本は領海三海里ですから、日本にとってはプラスなんです、専管水域がなくなるわけだから。しかし、向こうが漁業協定を破棄するということは、李ラインの復活をねらっておるのではなかろうか。李ラインを復活しない限り、向こうがマイナスですからね。したがって、私どもは、李ラインというものは撤廃されたのか、こう言ったら、あたかもそれは子供の言う議論だといわんばかりに、政府はそういう態度で出てきましたけれども、やはり李ラインの問題がまた、日韓の間にごたごたが起こりますと、出てくるわけですね。それから韓国の政権の問題もそうだね、韓半島における唯一の合法政権であるかどうかということもまた出てくる。こういうように、日韓基本条約の審議において徹底的にこれを堀り下げて、やはり野党側の言うことにも耳を傾けて、あいまいにしないで処理しておけば、日韓国交の間にいろいろな問題が起こっても、この種の問題は、報復措置とか何とかという形では出てこないのではなかろうかと私どもは考えておるわけであります。  そこで外務大臣お尋ねいたしますが、こういうようなことを言っておる——まだ正式には言ってきておりませんか。金大使からどういうような意思表示があったのですか、あるいは木村大使に李東元外務部長官はソウルでどういうような表明をなさっておるのですか、承りたいのです。
  249. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が金大使から聞いたところと、それから向こうの外務部長官から呼ばれて木村大使が聞いたところとは、一致しておるようでございます。すなわち、今回の措置は非常に遺憾である、厳重抗議する、この問題によって起こる不祥な事柄については日本の責任であるといったような、二つの条項でございます。
  250. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、北鮮技術者入国については自信を持ってなさったことであります。ところが、これも新聞の伝うるところですが、私どもどうも解せぬことは、これを先例としないとか、これは例外であるとか、こういうようなことを言っておるやに聞くのですが、政府の意のあるところをお述べ願いたいと思う。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは外務大臣がすでにお答えしたとおり、また新聞に出ておるところと変わりはないようです。これは例外とし、これを原則としない、こういうような決定だったと、かように思っております。
  252. 野原覺

    野原(覺)委員 先例としないとか原則としないというのは、具体的にはどういうことですか。今度やったことは間違いで、これから絶対しないということですか。
  253. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先例としないということは、文字どおり先例としないということなんであります。それで、これは国交回復の交渉中とはいいますけれども、まだ本格的な国交回復の折衝前の話でございまして、これは肯定的にずっと取り扱ってきた事例でもございますから、いわば借金は認めて支払いはしばらく待ってくれ、こういったようなかっこうでずっと引き継いできた問題なんです。これだけは片づける。例外措置というのは、あとはそういうものはないのです。そういう国交回復以前からの懸案として肯定的に取り扱われておるものは、今回の問題以外にはない。したがって、先例にならないわけなんです。先例としないということを言うまでもなく、先例というものを適用する対象物はないわけであります。
  254. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、今後はこの種の北鮮技術者の入国は一切なくなる、こういうことなんですか。
  255. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今後は一切なくなるともなくならぬとも、何も言っていない。
  256. 野原覺

    野原(覺)委員 なかなか哲学者みたいなことを言いますね。私にはわからないのだ。人的交流、あるいは経済貿易交流、技術者の交流、これはやはり共産圏といえども必要である。これは総理大臣がかねがねおっしゃったことであります。国家は承認していないけれども、そのことは必要だと。だから、その必要性までもこれはつみ取ってしまうものではなかろうと私は思うのです。これは先例としないということを国民がいろいろ疑問に思っておりますから、総理大臣の意のあるところをお述べ願いたい。
  257. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局相対的な問題でございますから、いまスタートを切ったばかりの日韓関係に重大な支障を与えるということはいたしたくない、そういう考えでございます。
  258. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、いかがですか。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣が答えたとおりでございます。
  260. 野原覺

    野原(覺)委員 もう一度総理大臣、人的交流、文化の交流経済貿易交流、これは共産圏といえども、現にオーソリティーとして存在しておる限り、国家を承認していなくても、断わるべきものではない、これがあなたの中共に対する態度であったわけです。あなたはそれを否定されるわけはなかろうと思うのですが、いかがですか。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣も、それを否定している、かように私はとらなかった。ただ、日韓の問題がようやく正常化した、そういう意味でこれから親交を始めよう、そういう際でございますから、それに重大なる影響のないようにしたいのだ、これが外務大臣考え方であります。同時に私の考え方でもございます。
  262. 野原覺

    野原(覺)委員 次にお尋ねをいたしますが、朝鮮人の帰国問題です。これは御承知のように、一九五九年八月十三日にカルカッタ協定、つまり日本赤十字社と北朝鮮の赤十字社の協定でございますが、この協定によって帰国がずっと進められてまいっておるのであります。人道問題だということで進められてまいっておる。聞くところによれば、政府は本年限りでこの協定の実施を打ち切るかのように、これも報道でございますけれども、伝えられておりますが、いかがなんですか。どうなっておりますか。
  263. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最近は、御承知かと思いますが、帰国の申し出が非常に減っておるのであります。それで、特別の少数の人の帰国のために恩恵を国の費用でいつまでも続けておることは、もう打ち切るべきである。のみならず、従来はもしこれがなかったならば、ずっと香港回りで行かなければならなかったが、もうすでにだんだん北洋航路が開かれるというような情勢にもなっておるので、ここで考えてはどうかというような意見もございます。ただいまのところ、これは十分検討してきめたいと考えております。
  264. 野原覺

    野原(覺)委員 まだきまっておるわけではないということのようですね。そういたしますと、これは検討されることはけっこうでございますけれども、これは赤十字社の人道的協定なんです。韓国に対する政治的配慮からこの協定が打ち切られるかのごとき印象を与えないようにしてもらいたい。私、ここにこの協定文を持ってきておりますが、これは世界赤十字社に対する報告もなされておりまして、国交回復があるまでは、人道問題であるから、希望者がある限りはやはり協定を続けなければならぬ。これは人道協定です。これを政治的配慮で、日本政府がこの際韓国のごきげんをとるかのような印象をいまここで持ち出されて新聞に書かれるということは、私は好ましいことではないと思う。だからして、検討されることはいいけれども、この協定というものはやはり続けてもらいたいのであります。  そこで外務大臣、竹島ですがね、その後どうなったんですか。竹島はいまどうなっておるのですか。
  265. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 しばしば国会でお約束したとおり、国交回復して両国の友好機運が醸成されたところで、適当な機会をとらえてこの交渉を始めたい、こう申し上げておるわけであります。まだその時期ではない、こう考えております。
  266. 野原覺

    野原(覺)委員 まだその時期でないと申されますけれども、その時期はいつになったら来るのですか。日韓の国交が回復をして、そうしてソウルでは外相会議が持たれる、かなり友好機運は盛り上がってきておるじゃありませんか。私ども政府のなさっておることを見ておりますと、日韓条約を通すときには、国交が回復して友好機運ができたら、これは直ちに交渉に移すということであった。ところが何の交渉もしていない。何の交渉もしていないということになりますと、現に竹島には兵隊が警備をしておるのです。いまだにしておりますね。そうなるというと、これは結局はかつてアルゼンチンがフォークランド島ですか、これが時効的に英国に占有されたときのような状態が竹島においても私はないとは限らないと思うのです。これはやはりすみやかに交渉に移すべきだ。外務大臣、あなたはほっておるでしょう。いかがですか。
  267. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、ほっておくつもりはございません。適当な友好ムードの醸成を待って外交交渉を始めたい、こう考えております。
  268. 野原覺

    野原(覺)委員 警備兵の撤去くらいは、これは韓国にも要求すべきじゃないでしょうかね、紛争の途中でありますから。それもいまだにそのままですか。最終的な解決は交渉でいきましても、警備兵くらいは撤去して、これを白紙の状態において交渉に移す、そういうことにしないと、問題の解決はできないと思う。いかがですか、これは。
  269. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあその警備兵の撤去を言うことも、これはおのずから時期があろうかと考えております。いまはその時期ではない、こう思います。
  270. 野原覺

    野原(覺)委員 どうも椎名外交というものを見ておりますと、実に私、ことばがよくありませんけれども、何だかこう卑屈な、そういう卑屈外交と申しますか、印象国民に与えておると思うのです。たとえば李東元外務部長官の報復措置が大きく新聞に載る、漁業協定を破棄しろ、日本けしからぬ、文書で証文を取れ、悪うございました、今後は一切このようなことはいたしませんという誓約書を日本政府から取れなんというようなことが、堂々と韓国からの報道で日本に来ておるじゃありませんか。これは外務部長官が記者談話を出しておるじゃありませんか。こういうようなことをされておるということは、そもそもほんとうに日本政府に朝鮮政策について一貫したき然たる態度がないから、このようにされておるのじゃなかろうか。そういうふうに向こうが強く出てくると、赤十字社のつくった帰国協定までもう来年度でやめますとか、あるいは先例にしないとか、こういうようなことが出るに至っては、国民としては佐藤内閣をほんとうに信頼するわけにいきませんよ。アメリカの追従外交だけで実はもう国民は頭にきておるんだ。韓国に対してまでこういうふうな卑屈な態度をとるということは、これは承服できませんよ、総理大臣。いかがですか、総理大臣、この点、どう考えますか
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は卑屈な態度はとっておりません。
  272. 野原覺

    野原(覺)委員 とっていないと言うけれども、私の指摘したことは事実なんです。ことばの問題じゃないのです。  次にお尋ねをいたしますが、総理大臣は五月二十八日にインドネシアのブオノ副首相と会談をいたしまして、三千万ドルの緊急援助をお約束になった。そうして六月十四日の閣議でこれが承認されておるわけです。これはまあ東南アジアが生活に困っておる、で、これを援助しなければならぬということも、決して私どもわからないわけではございませんが、しかし、三千万ドルのこの援助という金額については、インドネシアからの要望があったのか、どういうことでこの三千万ドルというものがきまっていくのか、そこら辺をひとつ御説明願いたい。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 インドネシアからブオノさんが来られまして、当面する経済問題についても援助方を要請されました。そこで私も会いましたが、経済閣僚もそれぞれ会いました。そうして最終的に、私が相談して申し上げたわけじゃございませんで、会議を持ちまして、適当なる緊急援助措置、これについてまず三千万ドルというものを決定したわけであります。しかし、いずれは引き続いて根本的な経済対策と申しますか、そういうものの相談を持つだろう、この三千万ドルも、そういう際にもその中に入っているものとして緊急の援助としての三千万ドルを出す、こういうことをきめたのでございます。それらの詳細のいきさつについては、大蔵大臣から答えさせます。
  274. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 率直に申し上げまして、インドネシアでは国際収支の状況が非常に悪化しておる。ことし二億ドルどうしても資金を調達しなければならぬ。つまり国内の生活必需物資、それから原材料等であります。そこで、しかし二億ドルというが、そのつなぎとして幾らかどうしても緊急に要るんだ、こういう話であります。わが国としては、そういう事情はよくわかる。わかりますが、二つのことを要請したい。一つは、インドネシアが国連の財務機構であるIMFなどにすみやかに復帰する努力をすべきである、それから日本が応分の努力をする、これにやぶさかではないけれども、これは日本一国で片づく問題じゃないのだ。これはどうしても国際的ベース、特に債権国が共同して重大な関心を持つべき問題である、そういう要請をし、その趣旨は了承をされた。そういうようなことで、まあさしあたり三千万ドルということを決定したわけであります。
  275. 野原覺

    野原(覺)委員 さしあたり三千万ドルというのは、二億ドルの中の三千万ドル、そうなれば、この三千万ドルはまた援助としてこれは増額されるかもわからない。さしあたりの三千万ドル。インドネシアは日本にどれだけの援助を経済再建のためにお願いをしておるわけですか。
  276. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 二億ドルことしじゅうにどうしても要るというのでありまするが、わが日本に対しましては五千万ドルくらいお願いしたい、こういうことを申しておったのです。しかし、日本ばかりじゃない、ただいま申し上げましたように、他の多数の債権者がおるわけです。また、国際金融機関もあるわけであります。ですから、それだけの額を日本が持つべきかということになりますると、それはもう少し広い視野で考えなければならぬ。まあいろいろ検討いたしました結果、三千万ドルを日本がこの際ひとつ受け持とう、こういう結論になったわけであります。
  277. 野原覺

    野原(覺)委員 経済再建のためにする援助であるならば、インドネシアの経済再建構想に対しても、貴重な国民の税金から援助するわけでございますから、検討されたと思うのです。一体インドネシアの経済再建構想というのはどういうことになっておるのか。インドネシアは、今日世界各国に対してどれだけの債務を負っておるのか。この辺は国民の税金からぽんぽん援助するんですから、政府としても、国民にやはり説明してやる責任があろうと思う。これはいかがですか。
  278. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアは、世界じゅうの各国合計いたしますると、約二十七億ドルの債務を負担しておる、こういうふうに申しております。また、国内は貿易が数年来だんだん、だんだん低下してくる。したがいまして、生活必需品が困窮する。ことに食糧において非常な逼迫を告げるような状態になり、次いで衣料品であります。ただ、食糧につきましては、別途緊急な手当てをしたと称しております。それから衣料品においても大体手当てができた。その他の生活必需品とか、それから産業を復旧させるための資材がこの際どうしても必要である。こういうような状態であると、こういうふうに申しております。物価の状態は、以前に比べましてやや安定してきておる、こういうふうに申しておりますが、この際の段階といたしましてインドネシアが何をなすべきか、こう言うと、インドネシア政府は、やはり長期の財政、経済の再建の方策を講じなければならぬ、こういうふうに考えておるようであります。  そこでまず第一に着手されておる問題が歳出の削減であります。歳出の削減の中で非常に大きなウエートを占めますものはやはり軍事費。そこでマレーシアとのコンフロンテーションを何とか方向転換をしようというようなことも考えておるようでありまするが、それはおそらく財政的見地ということを重要視しておると思うのであります。それから新規の建設、これをおしなべてオールストップ、そして民生安定に全力を傾ける、こういうような政策であります。それから国際収支の面でありまするが、不急の物資の輸入抑制、それから輸出増進対策、これにもこまかいいろいろな手を打っておるようであります。そういう努力を数年間積み上げまして財政の再建をする、そしてインフレを克服する。しかし、これは二つの突っかい棒が要るという考え方、つまり国際金融機関から援助を得るという問題と、それから利害関係国、つまり債権国の間から、その二十七億ドルにも累積した債務の繰り延びについての承認を得ること、と同時に、これらの国から経済再建のためのつなぎ資金の注入を受ける、こういうことだ、こういうふうな見解をとっておるのであります。
  279. 野原覺

    野原(覺)委員 二十七億ドルというのが総額だとすれば、日本は三千万ドル以外にインドネシアにどれだけの債権を持っておるのか、この数字をひとつお示し願いたい。
  280. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本はその二十七億ドルの中で、向こうのリストでは二億六千万ドル、こう言っております。わがほうの計算では一億七、八千万ドルになるのですが、その差額は、川島さんが向こうへ参られていろいろ約束をされた何かで、日本とインドネシアとの間に契約のできているものがあるのです。ところがインドネシアの経済事情が悪いというので、その積み出しをストップしておる。そのストップしておるものは当然積み出しがされるのだ。したがって、それだけは日本側に対する負債になるのだ、こういうような計算で、そこに開きがありますが、向こう側の言い分——言い分というか、リストでは二億六千万ドル、わがほうの計算では一億七千何百万ドル、こういうことでございます。
  281. 野原覺

    野原(覺)委員 その閣議で決定した三千万ドルは、そうすると、若干ふえていく可能性もある。なおまた二億六千万ドルの債権があるとすれば、その取り立てについての成算があるのかないのかという問題も起こってくる。聞くところによれば、東京でインドネシアの債権国会議というものを持って、いろいろ御相談があるようですが、その債権国会議というものは、いつごろ、どういう国々が集まって——つまりその債権国、それはどういう国々であるのか、それが一つ。  二つ目には、三千万ドルの緊急援助の使途、使い道及び条件、融資の方法。これは簡潔に御答弁願いたい。
  282. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 債権国会議はあした予備会議といいますか、利害関係国だけで、インドネシア側を抜きにした会議が持たれるわけでありまして、この会合、あるいはまた一回、二回続けるかもわかりませんが、そこでほんとうの債権国会議がいつ開かれるのが適当であるか、こういうことをきめるわけであります。関係者は大体において債権国会議は早いほうがいいという感触でありますので、あるいは九月のIMF総会の前に開かれるということになるかもしれません。  それからわが日本が三千万ドル約束いたしましたが、これはおもにフローティングクレーンだとかあるいは綿花でありますとか、そんなようなものが対象としていま交渉を進められておるわけであります。  条件は四年間据え置き、五年間の償還、こういうふうになっております。利率は五分五厘、日本輸出入銀行を通じます。
  283. 野原覺

    野原(覺)委員 輸銀法によるということだそうですか、これは、信用不安のある国に対しては輸銀法は使えないということになるんじゃございませんか、大蔵大臣。信用不安でしょう。二億六千万ドルも日本に対して向こうは債務を持っておる。しかも、この三月末には二千八百万ドルですかの焦げつきもある。これはどうなんです。信用不安のある国には輸銀は使えないはずだ。それを使うというのは、これはどういうことですか。
  284. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 輸銀法におきましては、回収確実な融資でなければならぬというふうにきめられておるわけなんです。回収が確実であるかどうか、こういう判断の問題でありまするが、第一に、インドネシア政府が長期の計画のもとに、その財政と国際収支の再建に真剣に乗り出しておるという点。それから第二には、インドネシア政府が、日本等の勧誘を受けまして、IMFに復帰するという交渉を現実に始めることになってきたわけであります。国際金融機関の援助を受ける立場になるであろう、こういうこと。それから第三は、近く債権国会議が開かれる、この債権国会議の場において、既存債務の繰り延べ、新規借款の獲得ということに成功するであろう、こういうふうに判断される。それらの状況を考えまして、もしここで日本が、またその他の国が、インドネシアの緊急に必要とする経済援助をしない、そしてインドネシアの経済が崩壊するというような事態を考えまするときには、その二十七億ドルにも及ぶ債権の取り立ても不可能になる、そういうようなことも考えまして、積極、消極、そういう事情から、インドネシアにこの際三千万ドルの融資を行なう、これが債権を確保するゆえんでもあり、またこの回収については確実にこれを確保し得る、かような考えに立つわけであります。
  285. 野原覺

    野原(覺)委員 私が疑問に思うのは、この輸銀法を使って三千万ドルの援助をするという点なんです。これは何といっても信用不安がありますよ。それは債権国会議を開いて安心が持てるという状態じゃないですよ。二十七億ドルですか、それだけあるとインドネシアも言っておるし、インドネシアの貨幣価値というものは一ドル二百五十ルピア、それが昨年のごときは十一万ルピアに下落しております。そしてあの革命騒ぎです。これは五年たって、十年たって、二十年たっても立ち直るとは私は思わない。輸銀法というのは法律なんだ。この輸銀法が、信用不安のある国には出しちゃいかぬと、こう規定しておるならば、三千万ドルの援助をしなければならぬという判断がそこにできておっても、輸銀法は使うべきじゃないでしょう。国会がきめた法律ですよ。大蔵大臣。輸銀法は信用不安のある国への融資はできないというならば、これは守るべきです。どうしてこの法律を破るような行政措置をとるのですか。何のために法律があるのですか。これは信用不安があります。信用不安がないなんということは、これはだれも納得いたしません。どうしてこういうことをやるのです。新聞の伝うるところでは、閣議でやったようですね。閣議できめた。大蔵の事務当局通産の事務当局も反対をしたのだ。これは法律違反だ、こういって抵抗があったものですから、いや政治的責任だけ明らかにしようというので六月十四日の閣議で輸銀法と、こうおきめになった。そこで私が疑問に思うのは、法律違反が閣議の決定で阻却できるのかという疑問なんです。私は、その新聞を見たときにそう感じた。法律屋の律法違反じゃないか。それを閣議できめれば法律違反でなくなるというならば、閣議というものは最高の決議機関なんだ。何のために法律があるのだ、こういうことになる。大蔵大臣、この辺どう一体御説明願えますか。
  286. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 野原さんは何か勘違いをされているのですが、信用不安ということばは使っておりませんです。輸銀法はその十八条の二で、資金の償還ということを使っておるわけであります。金が返ってくるという確実なめどがなければならぬ、こういうことなんです。で、その確実なめどは一体あるのかないのかという判断です。これは閣議においてその判断をするのは当然のことでありまして、閣議でこの法律を曲げるというわけじゃないのです。閣議はその償還が確実と見るのか見ないのかという判断をする場であります。ただいま申し上げました三つの理由に基づきまして、償還は確実であり、そういう積極的な理由です。それから同時に、この援助をしないでインドネシア経済が崩壊する、まさにそういう崩壊の寸前のような判断をしたわけでありますが、そういうことになったら一億八千万ドルもありまする日本の債権は一体どうなるのか、そういうようなことを考えまするときに、この援助はこの際ふん切るべきである、こういう判断をいたしたわけであります。
  287. 野原覺

    野原(覺)委員 時間もありませんからこの辺で終わりたいと思いますが、インドネシアがスハルト政権の右回りを演じたわけです。アメリカはこの右回りに大いに乗ろうとしております。アメリカとしてはベトナム戦争をやっておる。そこで、直ちにアメリカが右回り政権ができたからといって経済援助をしたりすることでは国際的の刺激が大きかろうというので、ハンフリー副大統領なりその他の人がインドネシアの援助の要請をしたことも事実のようです。私どもが疑問に思うのは、もちろんこうした南の経済の開発のおくれた国々に対する援助は反対はいたしませんけれども、あまりにもアジア開発銀行に見られるように、アメリカ圏内の、アメリカが主張されることならば易々諾々として、法律違反であれ何であれ閣議できめて、いやこれは償還できるのだと認定すればできるのだ、これは私は閣議のその認定が問題です。こんなものはとても私は償還はできないと思う。これはとても償還は困難です。私どもはそういうような疑いを実は持つのです。同時にまた、インドネシア向けの綿布が注文されて、それが何万コリかできておる。これを吐き出さないことには財界が困る。そこでこの三千万ドルということに便乗して、その方面の仕事も進んでおるやに世間では取りざたをされておるわけであります。だからインドネシアの緊急経済援助というならば、そういった食糧とか衣類、そういうものではなしに、経済開発の援助、その経済開発の援助も、はっきりやはりインドネシアの経済が成り立つような配慮をしてしなければならぬ、このように私どもは考えておるわけです。大蔵大臣、アメリカからの要請等はなかったらなかったと、これでけっこうなんです。これは、そう言えば、いやアメリカの要請があってやったんじゃない、こう言われるかしれませんけれども、今日の公債を発行しなけれどならぬ日本財政経済のもとで、あまりにもアジアの開発、開発といって、何億ドルというような金がどんどんこう出されていく。このことは私はやはり問題があると思うのです。だからして、たとえば輸銀法が禁止しておるのに、いやこれは償還できるという認定が閣議でできるからと、あまりにも安易にこういうことで事を進められておる。いわゆる共産圏反対の政権、スハルト政権、これは共産反対だ。この際インドネシアに援助をしておけば、こっちのほうを向くじゃないか、少々な犠牲があってもやれ、こういったような考え方は厳にやはり慎まなければならぬ、このことを私は申し上げておるわけです。いかがですか。これは御答弁だけ聞いて私の質問を終わります。
  288. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題につきましてアメリカから私どもは何らの要請に接しておりませんです。それははっきり申し上げます。  それから、これを実施するにあたりまして、これはどうしてもインドネシアの経済の再建に役立つものでなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。でありますから、インドネシア側から申し越した物資をそのままうのみにするというわけではないのでありまして、これが再建計画のどこにどういうふうにはまっていくのかということをしさいに検討いたしまして、わが国としてもその使途を決定するという態度をとっておるのであります。いまアジア開発に対する日本協力ということがいわれますが、お話しのとおりであります。これらはすべてわが日本国民の負担になるわけであります。これは軽々に判断すべきものじゃない。結論を出すべきものじゃない。そのよって生ずる効果について、利害得失について、十分検討に検討を重ねた上、慎重にやっていくべきものだ、そういう考えでありまするし、今後もその慎重なかまえは堅持するつもりであります。
  289. 野原覺

    野原(覺)委員 以上で終わります。
  290. 福田一

    福田委員長 これにて野原君の質疑は終了いたしました。  次会は明十九日とし、日程の関係もありますので、正、午前十時より開会することといたしますので、委員の諸君においては御協力をお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会