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1966-07-26 第52回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十六日(火曜日)     —————————————  議事日程 第六号   昭和四十一年七月二十六日    午後二時開議  第一 外国為替資金特別会計法の一部を改正す   る法律案(第五十一回国会内閣提出)(参   議院送付)  第二 アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関   する法律案(第五十一回国会内閣提出)(   参議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 外国為替資金特別会計法の一部を改   正する法律案(第五十一回国会内閣提出)   (参議院送付)  日程第二 アジア開発銀行への加盟に伴う措置   に関する法律案(第五十一回国会内閣提   出)(参議院送付)  沖繩裁判移送に関する緊急質問川崎寛治君   提出)  沖繩裁判移送に関する緊急質問永末英一君   提出)    午後二時七分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(第五十一回国会内閣提出)(参議院送付)  日程第ニ アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案(第五十一回国会内閣提出)(参議院送付
  3. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第一、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案日程第二、アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  4. 山口喜久一郎

  5. 三池信

    三池信君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案内容を概略申し上げますと、  まず第一に、アジア開発銀行に対する出資財源に充てるため、外国為替資金から一般会計への繰り入れを規定いたしております。日本出資額二億ドルのうら、払い込み資本額は一億ドルで、その二分の一が現金による出資、残りの二分の一が国債による出資となっておりますが、現金による出資五千万ドル、すなわち、邦貨に換算して百八十億円は、昭和四十一年度から五カ年間に毎年度三十六億円ずつ分割して行なわれることとなっております。この出資財源に充てるため、外国為替資金から総額百八十億円を限り一般会計へ繰り入れることができることといたしております。  第二は、昭和四十一年度の一般会計歳出財源に充てるため、百六億九千二百万円を限り外国為替資金から一般会計に繰り入れることができることといたしております。  第三は、先般発効いたしました財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二議定書に基づきまして、韓国の要請により、日本国と同国との間の清算勘定の残高約四千六百万ドル、邦貨換算約百六十五億円にかかる債権の賦払い金について、その支払いが行なわれたものとみなされることにより外国為替資金に生ずる損失は、同資金の額から減額して整理することといたしております。  次に、アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、アジア開発銀行設立する協定に基づきまして、わが国アジア開発銀行加盟するに伴い必要となる各般の措置を規定するものでありまして、その内容を概略申し上げますと、  まず第一に、協定によりわが国出資すべきものとされている二億ドルの範囲内において、政府は、この銀行に対して、本邦通貨により出資することができることといたしております。  第二に、政府は、銀行に対して出資する本邦通貨の一部を国債をもって出資することができることとし、政府にこの国債発行権限を与えるとともに、当該国債発行条件並びにその償還方法等に関して必要な事項を定めております。  第三に、銀行が保有する本邦通貨その他の資産の寄託所として、日本銀行を指定することといたしております。  以上両法律案につきましては、さきの第五十一回国会において本院で議決の後、参議院継続審査となり、今国会におきましては、去る七月二十一日、参議院議決の後、本院に送付されたものでありまして、当大蔵委員会においては、慎重審議の後、昨二十五日、質疑を終了し、討論を行ないましたところ、有馬輝武君は日本社会党代表して両案に反対の旨を述べられ、永末英一君は民社党を代表して両案に賛成の旨を述べられました。  次いで、採決いたしましたところ、両案は多数をもって原案のとおり可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  6. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 両案につき討論の通告があります。これを許します。有馬輝武君。   〔有馬輝武登壇
  7. 有馬輝武

    有馬輝武君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま上程になりましたアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案並びに外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について、強く反対の意思を表明するものであります。(拍手)  討論を行なうにあたりまして、私は、まず、反対の基本的な立場を明らかにいたしたいと存じます。  すなわち、本二法案は、アメリカ日本が中軸となり、その出資によってアジア開発銀行設立し、アジア反共国家群資金援助を与え、もって、北ベトナム中国北朝鮮への封じ込め体制を強化し、あわせてアジアにおける日本支配権を強めようとするものであります。アジア開発銀行設立が、アメリカベトナム侵略戦争に対する国際的非難をかわすための方便にすぎないことは、きわめて明らかであります。日本政府の積極的な態度も、失われた東南アジア経済市場の回復と、アメリカ軍事面日本経済面という、侵略分業体制への意欲のあらわれと申しても過言ではありますまい。  ベトナムにおけるアメリカ侵略戦争拡大が、ハノイ爆撃によって一段と危機の様相を深めている今日、佐藤内閣は、日本国民及びアジアの諸国民の希望に逆行して、アメリカ態度いたずらに追随するばかりでなく、経済面においても戦争協力外交政策を推し進めることは、世論を無損する暴挙と申さなければなりません。(拍手)  四月開かれました東南アジア開発閣僚会議、さらに六月に開かれましたアジア太平洋閣僚会議、さらには七月に開かれました日米合同委員会における会議の進展を見ましても、アメリカアジア開発銀行にかけている期待はまことに大きなものがあり、表面では反共軍事同盟的なカラーを隠しながら、アジア諸国反共団結のための経済協力をうたいあげ、事実上のアジア開発銀行構想の推進がその主目的であったことは否定し得ないところであります。ジョンソン米大統領ベトナム問題と関連して十億ドルを支出することを声明しみことから急速に具体化したことに照らしてみましても、まさにアジア開発銀行構想は、アメリカ核戦略体制によるアジアヘの進出を経済面において補強しようとする反共軍事的、経済的戦略の一環であります。日本は、開発途上にある国々政治的独立経済文化水準向上に、無私無欲立場から協力すべきであります。恩恵的な態度ひもつき援助を提供し、それらを通じて開発途上国々を再びみずからの支配下に組み込もうとする態度は、まさに新植民地主義そのものであります。(拍手)  このような立場から、 アジア開発銀行設立は、わが党の断じて容認し得ないところであります。  次に、日本社会党アジア開発銀行設立反対する具体的な問題点を一、二指摘いたしたいと存じます。  その第一は、今回のアジア開発銀行加盟国はすべてアメリカ中心とする反共国家群であり、ソ連中国などが加盟していないというところにあります。エカフェ加盟国でも、域内でビルマとモンゴルが、準加盟国でも香港とブルネイが、域外の五カ国の中でも、最も入らなければならないフランス、ソ連が入っていないのであります。政府は、アジア開発銀行加盟国は、エカフェ総会開銀設立の提案がなされ、その準備が進められたことをもって、エカフェ加盟国に限るような固定した概念で終始その説明に当たってまいりました。しかし、アジア開銀のあるべき性格からして、その門戸をアジアにあるすべての国々中国北朝鮮北ベトナムにも開放することこそが、三十六条にいう政治的中立性格にマッチすることになるのではありますまいか日本はむしろ積極的にこのことを準備段階で主張すべきでありました。佐藤総理は、昨日の大蔵委員会での私の質問に答え、明二十七日、来日中のグロムイコ・ソ連外相にもアジア開銀へのソ連参加について要請される旨言明されたのでありますが、こういったことはむしろ準備段階において政府が強力に主張さるべきことであったはずであります。  第二の問題点は、アジア開銀の貸し付けが平和目的のものに限定されておらず、軍需品の生産などに用いられる可能性があるということであります。  第三の問題点は、発言権出資比率のウエートに大きくかかっておって、世界銀行などと同様に米国の圧力が圧倒的に強く、日本もこれに追随する結果になることが明らかであります。第三十六条に、政治活動の禁止及び銀行国際的性格という一条が設けられてはおりますものの、これが単なる気休めにすぎないことは、このアジア開銀と同じ性格米州開発銀行あるいはアフリカ開発銀行の例に照らしてもきわめて明らかであります。  米州開発銀行は、キューバ事件のとき、むき出しにアメリカ追随運営をやってのけたではありませんか。すなわち、ベネズエラ、コロンビアがキューバと断交したとたんに多額の投資を与えたのであります。また、メキシコやアルゼンチンは、米州外相会議キューバに対する集団的な制裁に反対したとたんに、きわめて冷淡に取り扱われました。それがどうでしょうか。アルゼンチンがその後キューバとの国交断絶に踏み切るや、手のひらを返したように、その翌日に一億五千万ドルの融資をいたしたではありませんか。  以上、私は、アジア開銀設立ジョンソン構想具体化であり、日本参加もその下請にすぎないことを明らかにいたしまして、私の反対討論を終わるものであります。(拍手
  8. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)      ————◇————— 沖縄裁判移送に関する緊急質問川崎寛治   君提出
  10. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、川崎寛治提出沖縄裁判移送に関する緊急質問、及び永末英一提出沖縄裁判移送に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
  11. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。  まず、川崎寛治提出沖縄裁判移送に関する緊急質問を許可いたします。川崎寛治君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔川崎寛治登壇
  13. 川崎寛治

    川崎寛治君 私は、日本社会党代表して、裁判移送の問題を中心とする沖縄の問題について、数点の質問をいたしたいと存じます。(拍手)  佐藤総理は、去る十三日の本会議において、わが党の山本国際局長質問に対し次のように答弁されました。「沖縄の問題については、早く復帰を実現することが日本民族願いであり、アメリカ理解協力のもとにこれを実現すべく最善努力を払っておるのであります。今日、日米間は、今回の会議を通じましても一そう緊密な関係が樹立され、協力する方向がはっきりいたしまして、いまだかつてない日米間の親善関係が樹立された、相互援助関係が樹立された、かように私は喜んでおるのであります。裁判の問題は、これまた十分話し合ってございます。これは現地におきましてこういう事柄が円満に解決することを心から望んでおりますので、この経過はしばらく時間をかしていただきたいと思います。」と、これだけを承りますならば、事はたいへん円満に運んでいるようでありますが、はたしていかがでありすしょうか。  いまだかつてない日米間の親善関係が樹立され、沖縄問題についてアメリカ理解協力のもとに最善努力が払われているのにもかかわらず、何ゆえ日本の横っつらを張るような無理解な、不法、不当なる裁判移送命令高等弁務官によってなされたのでありますか。現在、沖縄現地において局ぐるみ裁判移送命令撤回の戦いが展開されているのはなぜでありますか。日本政府の一方的な理解、一方的な協力にすぎなかったのではありませんか。このことは、アメリカ沖縄統治本質に触れる根本問題であって、単に九十六万沖縄県民だけの問題ではありません。対米従属外交の典型であり、日本国民注視の問題であります。(拍手)問題の本質を冷静に見詰めるとともに、熱い民族の魂をもって対処してまいらなければなりません。  去る六月十六日、ワトソン高等弁務官は、琉球上訴裁判決直前友利事件サンマ課税事件米民政府裁判所に移送するよう命令いたしました。今回高等弁務官が突如としてこの非民主的な措置をとったことは、琉球立法院全会一致決議にあるとおり、沖縄自治権を無視し、司法権をじゅうりんし、司法制度をみずからの統治目的に利用しようとする専断的行為で、およそ近代民主政治基本理念にそむくものといわざるを得ないのであります。(拍手)  琉球立法院をはじめ、琉球法曹会治裁、巡裁全判事、各民主団体県民みんなが裁判移送命令に抗議をし、ワトソン高等弁務官に対し撤回要求に立ち上がり、島ぐるみの運動が展開されていることは当然すぎるほど当然のことであります。  そこで総理お尋ねします。  冒頭触れましたように、アメリカ理解協力のもとに最善努力が払われてきたはずなのに、高等弁務官によってなぜ民主主義政治を否定するかかる裁判移送命令措置がなされたのでありますか。そしてこの行為は不法不当であり、沖縄統治が民政にあらずして軍事占領にほかならない本質を暴露したと言えましょう。現地同胞の怒りをどのように受けとめられたか、総理の御見解をお尋ねしたいのであります。(拍手)  そもそも、基本的人権は、憲法以前、国家権力以前の人民固有権利であり、何人も侵すことのできない権利であります。総理をはじめ政府は、沖縄県民基本的人権の問題を深刻に考えているとはどう見ても理解できません。  単刀直入にお尋ねします。沖縄県民基本的人権アメリカの安全とどちらが優位するとお考えになりますか。国内政治であろうと国際政治であるとを問わず、基本的人権の保障が民主主義政治の根本であることは申すまでもありません。アメリカ施政下にある沖縄県民なるがゆえに差別があっていいということは許されないのであります。もしその人権施政権者みずからによって侵されたとき、今日の事態がまさにそれであります、本土政府いかに行動すべきでありますか。施政権者の善意に期待する以外にないのでありましょうか。独立国日本の対米外交本質が問われているのであります。沖縄現地では解決できないから、政府並びに国会が強力な対米折衝をやってくれと立法院決議を行ない、院の代表並びに民間代表者陳情に上京してまいったのは先刻のことであります。ワトソン高等弁務官も、「問題はワシントンにある」と言っております。しかるに、本土政府佐藤総理は、「現地におきまして円満なる解決を見ること、これを心から願うのであります」と各所で答弁をしておられます。たいへんに大きな食い違いではありませんか。ラスク国務長官に話してあるからうまくやってくれるであろうと言っておられるのでありますが、もう少し突っ込んでお尋ねいたします。  総理は、ラスク国務長官に対して、九十六万沖縄県民総理大臣として、沖縄現地の一致した要望である移送命令撤回沖縄裁判制度民主化被選挙権剥奪規定廃止等、当面の要求並びに基本問題について交渉されたかどうか、その内容を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  総理は、おれは精一ぱいやっているのだと言われるかもしれません。しかし、現地新聞等を見ると、独立国外交ルートとはこんなものだろうか、まっ正面からは取り組めず、最初から最後まで相手の顔色をうかがっているのはなぜか等の不満がつぶやかれているのであります。沖縄現地のみではありません。本土国民もそれをはだで感じ取っているのであります。それが、総理国民的人気の上昇しない原因でもありましょう。総理の名誉のためにも、明快な御答弁をお願いいたします。  石井法務大臣は、法務委員会において、横山、志賀氏らの質問に対し、「ワシントンでないと解決しない問題と思う」と答弁しておられますが、その考え方についてはいまも変わりありませんか。また、沖縄司法制度民主化するためにはどうあるべきだとお考えになられますか、本土政府法務大臣として御答弁いただきたいと思います。  総理は、安井総務長官に、駐日米大使館を通じ、アメリカ政府が問題の解決を急ぐよう促進することを命じたとのことでありますが、陳情活動を通じて、安井総務長官は、いかにしてこの問題を解決しようとしておられるのか、その見通しをお示しいただきたいのであります。  三年前、信号を守って通行中の中学二年の国場君は、那覇の国際道路においてアメリカ兵にひき殺されましたが、軍法会議でこの兵隊は無罪となり、本国に送還されました。今日、また、ベトナム戦争の激化の中で、アメリカ兵による沖縄県民、なかんずく婦女子に対する暴行事件が多くなっております。県民人権を守ることは、占領下なるがゆえにどうにも解決のつかない問題なのでありますか。政府いか解決しようと努力されているか、明らかにしていただきたいのであります。  総理お尋ねします。武内駐米大使沖縄を訪問したことがけさの新聞に報じられています。駐米大使ワシントンにおいて沖縄の問題を交渉したことはかつて一度もないと聞いていますが、今回のこの高等弁務官による裁判移送命令について、駐米大使をしてワシントン政府と交渉させるべきだと思いますが、いかがお考えでございますか。  次に、アメリカ核報復についてお尋ねします。  七月十三日の本会議で、山本幸一氏が、「日米安保条約があるために、おのれの意識しないことでいつの間にか戦争に巻き込まれておるということになりはしないか」と尋ねたのに対し、総理は、「アメリカの圧倒的な核の報復最初から覚悟して初めて沖縄やわが本土に対する攻撃が加えられるのであります。」と答弁されました。この点については、七月十八日の予算委員会において、野原覺委員から指摘がなされました。そして、連日、議院運営委員会においても、本会議答弁予算委員会答弁食い違いが問題にされましたが、ついにこれは取り上げられませんでした。  ここで私はお尋ねをいたします。沖縄本土に対する核兵器による攻撃に対して、アメリカ核報復をすることがあり得るのでありますか。明確な答弁をお願いいたします。  ワトソン高等弁務官は、つい最近も、沖縄ほど自由に使用し得る軍事基地は世界のどこにもないと、半永久的保持の言明をいたしております。今回の事件は、沖縄祖国復帰のいよいよ遠いことを思わしめます。沖縄県民の生命、財産人権を守る立場から、本土政府総理として、また、関係大臣として、明確な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  14. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 川崎君にお答えいたします。  御承知のように、裁判権移送問題、これはなぜ起こったか、印すまでもなく、沖縄についての施政権、これが日本にはなくてアメリカにある結果でございます。私ども、この状態をまことに残念に思っておるから、一日も早く沖縄祖国復帰するように、沖縄同胞百万の宿願をかなえさせようとあらゆる努力をしておるわけであります。  ちょうどラスク国務長官日米貿易経済合同委員会で来朝しておりまして、そこで私もラスク長官に会う機会がありましたので、この沖縄裁判権移送問題につきまして十分懇談をいたしました。お話のうちにもありましたように、沖縄の問題ではなくてワシントンの問題だ、また、ラスク長官所管でもあるということであります。この種の問題が現地沖縄において円満に解決されることが望ましいこと、これは私が申し上げるまでもないところでございますが、しかし、いたずらに長くこの問題が解決されないといたしますならば、日米国民にとりましても好ましくないことでございます。そこで、端的に、施政権者のすることではありますが、当方でこういう問題は早く解決しなければいかぬ、ラスク長官いか考えるか、こういう話を持ちかけたのであります。ラスク長官も、事柄の性質上これを長く置くつもりはない、その解決方策について自分が善処いたしますから、しばらく成り行きをひとつまかしてくれ、こういうお話でありました。そこで、私どもはただいまその結果を待っておるわけであります。過般安井長官をして、アメリカ大使館にその後いかようになっておるかという点をただしもいたしました。また、武内大使日本に帰っておりますこの機会に、この種の問題について十分理解を持って、そしてワシントンへ帰ることが望ましい、かように考えておりまして、御指摘にもありましたように、東京東京ワシントンワシントンでそれぞれ交渉するつもりで、ただいま実情等について詳細に調べておるような次第であります。  私は、たいへん早急に結論が出てくることが望ましい、これは御指摘のとおりであります。しかし、いままでの経過等から見まして、いましばらく時間がかかるのではないかと思います。いずれにいたしましても、沖縄同胞願いである自治権拡大がようやく行なわれようとしているこの際に、またその司法権の問題で非常にあと返りをした、こういうような印象を深くいたしておりますので、司法権制度あり方等をも含めて、さらに自治拡大、これに努力するつもりでございます。そういう意味現地諸君とも十分連絡をとるつもりであります。  また、ただいま沖縄に対する核兵器攻撃ということについて、どうするのかというお尋ねがございました。核兵器たると非核兵器たるとを問わず、沖縄に対する攻撃は、全面的に米国との衝突を意味するものであります。ただいまさようなことを考えておる国はどこにもない、かように私は思っております。  くれぐれも重ねて申し上げますが、沖縄自身、私ども残念ながらただいま施政権は持っておりません。アメリカ施政権を持っておる。そうして、この沖縄にいる百万同胞、これは私どもと同じ日本人であります。そういう意味で、この同胞の生活あるいは福祉の向上等について、私ども施政権者ではないが、非常な関心を持っておる。そういう意味において、一日も早く、祖国復帰宿願がかなえられるように、この上とも努力を続けるつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣安井謙登壇
  15. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 川崎さんのお尋ねサンマ事件立法院の議員の当選無効事件が、下級裁判所判決後これがアメリカ民政府所管に移されたということは、事のいかんにかかわらず、私どもは遺憾と思っております。したがいまして、先ほど総理お話しのとおり、総理からラスク長官にも直接お話しいただき、また、私どももしばしばアメリカ大使館を通じまして、これの解決方を折衝いたしておる次第でございます。  ただ問題は、御承知かと存じますが、事件内容そのものより、御承知アメリカが琉球に対して行なっておる施政権の発動、これは大統領行政命令のもとに布令、布告というもので動かされておるわけでございます。その布令に対しましての琉球政府の有効、無効の裁判権がはたしてあるかどうか、こういう問題とも関連をしてまいっておりますので、事はかなり政治的な問題として扱われておると私ども承知をしておるわけでございます。しかし、一日も早く解決するように強く今後も要望を重ねてまいるつもりでございますが、第一次的には、何と申しましても、施政権の内部で起こった問題でありますから、これは現地解決ということがまず第一次的に要求されるところであろうと思います。  なお、最近、特に暴行、暴力等が多いじゃないかという御指摘もございました。私どもよく注意をして見ておりまするが、特に最近ふえたとは思いません。しかし、先ほど御指摘のような事件もないとは言えません。これにつきましては、すべてが軍事裁判にかかりますために、内容について十分結果を承知いたしかねておる点もありますが、しかし、損害賠償につきましては、別の法律案で、先ほどの国場君等の問題につきましても、それぞれの損害賠償はいたさせるようにやってまいっておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣石井光次郎君登壇
  16. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お尋ね裁判移送問題はワシントンでなければ解決し得ないと答弁したのではないかという問題、これは、裁判移送問題のような行政命令は、米国大統領の名において発せられた命令でありますので、本問題の最終的解決は、米国政府態度による旨を申し述べただけでございまして、それだからこの問題がどうにもならぬというのじゃないのでございます。そういうことを頭に置いて、われわれは解決に当たらなければならない。われわれは現地諸君の要望をしっかりと腹に入れて、日本政府としては、沖縄住民の意思を尊重して、これが実現を期するようにしなければならないという心持ちでお答え申し上げた次第であります。今後ともそういう心持ちで折衝を続けていきたいと思っております。(拍手)     —————————————  沖縄裁判移送に関する緊急質問 (永末英一提出
  17. 園田直

    ○副議長(園田直君) 次に、永末英一提出沖縄裁判移送に関する緊急質問を許可いたします。永末英一君。   〔永末英一登壇
  18. 永末英一

    永末英一君 私は、民主社会党を代表し、沖縄における裁判移送命令事件について質問をいたしたいと存じます。  この事件は、施政権返還を目ざして、自治権拡大へ一歩一歩前進しつつあるかに見えた沖縄のベールをもぎ取り、アメリカの利益のためには、琉球政府裁判権を容易に剥奪し、民主主義の原則をじゅうりんするという、アメリカ沖縄施政の本質をむき出しに見せたものであります。沖縄県民が全島をあげこの命令の不当を鳴らし、その撤回要求するに至ったことは当然であります。  わが党は、この事件日米両国の友好関係にきわめて重大な悪影響を及ぼすものと判断し、すでに六月二十四日、政府にも、また在日アメリカ大使館にも、撤回に関し善処するよう要請をいたしました。  佐藤総理は新生日本ということを好んで口にされるのでありますが、もしこの移送命令をこのままにしておくならば、このことばは一片の口頭禅として、国民からあいそをつかされることは火を見るよりも明らかであります。この問題こそは、アメリカ沖縄支配、ことばをかえていえば、日米関係本質に触れる問題であります。それだけに、日本政府こそがこの問題解決の責任をとらねばならぬ性質のものであると考えます。政府は、友利裁判解決方法とその目途について、どうしようとするのか。以下、問題点指摘して、総理の明確な御答弁要求いたします。  第一に、政府アメリカ沖縄に対する植民地的支配を是認するのかどうかという点であります。  アメリカ側は、沖縄支配の根拠として、サンフランシスコ平和条約第三条を持ち出しております。確かに平和条約第三条は、昭和二十年六月以降七年間にわたるアメリカ沖縄軍事占領に一応の終止符を打ちました。しかし、それは、沖縄を戦前の状態へ復帰せしめるものではなく、日本の領土でもなければ、アメリカの領土でもない、きわめて奇妙な地位に沖縄を置いたのであります。この第三条を理由にして、インドが講和会議に出席せず、エジプトが留保いたしましたのも、長年の自国の状態をかがみにして、その植民地的性格をはっきりと見抜いたからでありましょう。沖縄県民の国籍は、地球上例のない無国籍人のそれであり、沖縄の船は、「われ操縦意のごとくならず」という黄色い旗を掲げて、七つの海をさすらわねばならなくなりました。軍事占領中に出された布令、布告、これが平和条約後、沖縄統治の基本法的性格を有する大統領行政命令との間の不一致をも整理されることなく、くそみそ一緒に有効として取り扱われてまいりました。このような奇妙な状態が一世代にわたって続き、さらにその終結の見込みもない中で、沖縄県民に今回の打撃が加えられたのであります。沖縄県民の基本的権利の主張の根拠は一体どこにあるのでありましょうか。日本国憲法にあるのか、アメリカ国憲法にあるのか、はたまた、世界人権宣言にあるのか、そのいずれにもないのが現状であります。言うならば、それはきわめて悪質な植民地的状態にあるといわなければなりません。このような状態に沖縄県民をおとしいれた責任は一体だれにあるのか。それはまず大日本帝国政府にあり、さらに、沖縄県民十数万に血のあがないをさせてかち得た平和の上にあぐらをかいている現日本政府にあるといわなくてはなりません。この無権利沖縄県民に近代的人権を取り戻す責任を日本国政府の首班である佐藤総理が痛感しておられるかどうか伺いたい。  平和条約第三条は、アメリカ沖縄を信託統治とするまで施政権を暫定的にアメリカに認めたにすぎません。しかし、いまや、昭和三十一年わが国が国際連合に加盟した以上、同憲章第七十八条並びに百三条により平和条約三条は実現不可能なものとなっております。このような情勢の変化の中で、昭和三十七年三月十九日のケネディ大統領の声明は、アメリカ沖縄の信託統治を国連に提案しない意思を明確にしたものであります。佐藤総理は、この際、平和条約第三条の撤廃ないし施政権即時返還の交渉をアメリカと行なう意思があるかどうか、御答弁願いたい。それとも、昨年一月の佐藤・ジョンソン共同声明において、佐藤総理は、「アメリカ大統領は、施政権返還に対する日本政府及び国民の願望に理解を示し、極東における自由世界の安全保障上の利益が、この希望の実現を許す日を待望すると述べた。」ということを確認していることからして、沖縄施政権返還を要求しない約束をアメリカに対してしてきたのか、国民の前に明らかにせられたい。  第二に、沖縄の軍事的意義について政府はどう判断しているか伺いたい。  敗戦以来放置されてまいりました沖縄は、朝鮮戦争勃発とともにその性格を一変し、アメリカの軍事要求のままに沖縄を使おうという意図が露骨にあらわれてまいりました。いま沖縄は、アメリカ軍事力の前進攻撃基地として使われております。しかし、朝鮮戦争時代からすれば、アメリカの兵器も変わり、ベトナム戦争の進展とともにその戦略も変わりました。沖縄は、アメリカ海軍にとっては、港湾施設の貧弱さのために中継基地以上の意味を持たず、また、アメリカ空軍にとっても共産圏に対しては脆弱な発進基地となりつつ航ります。ベトナム戦争のために、自由に使える近接基地、陸軍訓練基地として、アメリカはいま沖縄をきわめて重宝がってはおりますが、ポラリス潜水艦の西南太平洋における配置と、大陸間弾道弾の発展は、中共の本格的な核武装と相まって、沖縄の核基地としての意義を減殺し、また、軍事基地としての重要性をも加速度的に低下せしめてきたと判断されるのであります。これは、アメリカ国防部もつとに気づいているところであります。しかし、アメリカ軍は、なお、やがて消えゆく大型爆撃機の中継基地として沖縄を使用したり、あるいはクイックリリース作戦によって、その軍事的有用性をなお強く主張しようとしております。しかし、アジア地域における局地紛争は、沖縄を中継前進基地として、通常兵力を導入することによって解決されるものでありましょうか。断じてそうではありません。ベトナム戦争に見られるように、アジアの局地紛争は、その地域の住民の意思を争うものであり、その住民の意思は、主として生活の安定と未来の見通しによってささえられるものであります。争われているのは軍事ではなく政治であります。だとすれば、アジアの平和を考える場合、沖縄が軍事的にのみ使用されることについて政府はどう判断するのか。平和に徹することをモットーとする佐藤総理は、沖縄の軍事的地位の変化をアメリカに説明し、ベトナム戦争の平和的処理のため、沖縄を軍事的に使用しないことをアメリカに対して説得する勇気があるかどうかを伺いたい。  第三に、もし極東における自由世界の安全保障上の利益が沖縄施政権返還の条件になっているとするなら、一体、政府は、自由世界の安全保障上の利益のためどのような責任を果たそうとするか、伺いたい。責任感の強い佐藤総理は、まさかアメリカ努力だけが極東の緊張状態を解きほぐすのだと、手をこまねいて漫然としておられるわけではありますまい。あなたは昨日も、「心を許す先進工業国として東南アジア諸国から遇せられる日本国になりたい」と述べられました。東南アジア諸国が心を許す日本は、平和に徹するために責任を果たす国でなければなりません。また、そのような国であってこそ、初めてアメリカもまた、文字どおりのパートナーとして日本を遇するでありましょう。すなわち、わが国の安全をアメリカにのみ寄りすがって経済発展をはかろうとする依存的態度を捨てて、日本の国の安全は日本人で果たすという体制をつくり上げることであります。わが国の安全をわれわれ自身で守ろうとしない体制では、軍事力を中軸に総合的国力を背景に展開されております激烈な国際政治において、自主的な発言力は持ち得ず、国家利益をもまた満たし得ないこととなるのは当然であります。沖縄施政権返還が行なわれず、今回のような裁判権移送問題が起こるのも、そのあらわれであります。わが党は、何よりも日本の国は日本人で守るという国民意思の合意を固めるべきであると考えます。このためには、日本民族の歴史を知り、進むべき理想を国民一人一人のものにすることが必要であります。しかし、守るに値する社会と経済を築くことが先決であります。イデオロギーによって国を差別することなく、積極的に敵をゼロにする多角的平和外交を推進する、そのような手段を尽くして初めて国民意思の合意が固まってくると考えます。この国民の意思の上に築かれるのが自主防衛力であります。したがって、防衛の方針は常に明確に国民に訴えられ、国民によって消化されていなければなりません。防衛にタッチすれば政権がぐらつくのだというようなことで、これまでの自民党政府のように避けて通る態度は、かえって国民意思の混迷を来たすのであります。もちろん、われわれは、完全軍縮、世界国家実現の理想を堅持しつつ、現在における日本国の平和への責任を果たそうとするものであります。いま政府において、第三次防衛計画が策定途上にあります。第三次防においては、すべてが日本経済、すなわち国民のあぶらと汗によってまかなわれます。したがって、国民は、三次防によってつくられる兵力体系が国民にとって真に必要なものであるかどうかを知る権利があります。この際、総理は、三次防決定の時期を明らかにし、その目的、すなわち、防衛の基本構想を明らかにする用意があるかどうかを伺いたい。  この場合、明確にされなければなりませんのは、政治の軍事に対する優越の原則、すなわちシビリアン・コントロールの原則の確立であります。このためには、国防会議議長である総理の統裁のもとに、現在の国防会議を改編、強化し、各省の調整を行ない得る機能を持たせ、防衛の基本計画をまとめるようにすべきであると考えますが、総理の所見を伺いたい。しかし、われわれのいう自主防衛力は、厳格に平和憲法の範囲内で組み立てられるものでなければなりません。ダモクレスの剣のもとにある核戦略時代にあって、日本国民の平和に対する責任は、平和憲法に明示されていることの実行で十分であります。しかし、巷間、中共の核武装の進展に見合って、その核脅威を云々するものがあります。われわれは、核兵器もまた武器の一種であり、それを使用する政治の目的によって用いられるものであると考えます。したがって、理由もなく中共の核脅威を云々する態度賛成いたしません。われわれ日本人で、日本社会の運営をりっぱにやってのける体制を固めるならば、核などによって、これがくずされるものではありません。しかし、核兵器の現存することは事実であります。われわれが核兵器を持たぬと決意する以上、核抑止力として日米安保条約に自主防衛力の補完的機能を認めねばならぬと、わが党は考えます。しかし、安保条約にそれ以上寄りかかろうとする態度をとることは、きわめて危険であります。なぜなれば、安保条約は、アメリカのためにも機能するものであるからであります。われわれが原則的に貸与基地を撤廃し、常時駐留を排除することを内容とする安保条約の根本的改定を主張する理由は、まさにここにあります。総理は、この点についてどう考えられるか、伺いたい。  現在の平和に対する死活的問題は、核拡散の防止であります。核を持たぬと決意したわれわれにとっても、核拡散防止を実現し得るかどうかはまさしく死活の問題であるといわなくてはなりません。政府のように、アメリカの核のかさにたより、一国の核保障に依存する態度ではこの目的を達することはできません。核を持たぬと決意する国々に呼びかけ、複数以上の核保有国の共同核保障を内容とする核拡散防止条約の締結こそ、日本外交の最も緊要な今日的課題ではないでありましょうか。ソ連は、わが党案に類似の提案をジュネーブの軍縮会議で行ないました。佐藤総理は、この点について来日中のグロムイコ・ソ連外相と話し合う用意があるかどうか、伺いたい。  私は、太平洋戦争中海軍に従事し、沖縄を基地として戦い、また、沖縄に関東軍の将兵を送りました。これら将兵十万は沖縄県民十数万とともに沖縄の地で玉砕し、私が最後に勤務した戦艦大和も沖縄への途上撃沈されました。もしアメリカが自国の将兵三万の血を流した沖縄について、自分たちに要求権があるのが当然だというのであるならば、同時に、そこで二十万をこす日本人の血もまた流されたということを、そのアメリカ人に思い出してもらわねばなりません。何よりもまずアメリカに忘れてもらわなくてはならないのは、沖縄戦闘の思い出であります。沖縄本土のために玉砕いたしました。しかも戦後二十一年、いまだに本土から分離されたまま実質的な占領のもとに沈淪いたしております。裁判権移送問題の背景はこのように根深いのであります。われわれは、日本アメリカとが真に対等の立場に立って信頼し合う友人として平和のために前進しようというのであるならば、まず何よりも沖縄の問題を解決しなければなりません。佐藤総理の信ずるところを明確に述べられんことを期待して、質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  19. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 永末君にお答えいたします。  裁判権移送問題について、るるお話がありました。これも先ほど川崎君に答えましたので、私の重複する点は略さしていただきます。そこで、こういう事柄が行なわれるのは、とりもなおさずアメリカ沖縄支配が植民地的支配なんだ、これを是認するのか、こういうきついおとがめであります。私は、この種の裁判移送問題、これはいわゆる施政権者がやることではございます。しかし、ラスク長官にこれらの関係をよく話をし、ことに軍事施設として現地住民の協力がなければその目的を達することもできないじゃないか、この種の問題が起きたことはまことに遺憾だ、そういう意味で積極的にこれが解決に乗り出すように、こういって実は私の意見を率直に話をしたのであります。その結果ラスク長官も、この問題は私がその解決策について十分検討いたしますからしばらく時間をかしてくれ、こういうお話であったのであります。私は、今日まで沖縄に対する施政権の問題、これは一部軍基地についてのいろいろの批判はございますが、その他全般的に民生の面におきましては、いわゆる琉球政府中心にして、そうして民主主義のもとで自治権拡大する、こういうような指導をしていたと思います。また、私どももその方向を支持する、こういう考え方でございますので、昨年私がジョンソン大統領と会いまして、そうして佐藤・ジョンソン声明におきましても、この沖縄が持つ軍事的な価値、日本を含めて十分それを認める。したがって、極東の安全と平和に関係なくなることを期待する、こういうような意味で、平和になり、そうして何ら心配がないならば、これは返してよろしい、こういうことを言外に説明をしておったのであります。しかし、この問題について、私どもは他の党の考え方と必ずしも一致はいたしておりません。施政権返還、本土復帰、これを実現するためにも、私どもアメリカ理解協力のもとにこれを実現する、かように申してまいりました。また、アメリカ要求しろ、こういうような強い鞭撻のことばも聞きますが、私は、ただいま沖縄が果たしておる安全確保へのその重要な役割りを考えます際に、アメリカ理解協力のもとにおいて、祖国復帰を実現するというこの態度が望ましいことだと、いまだに考えておるような次第であります。(拍手)  いずれにいたしましても、この沖縄百万の同胞宿願でございますから、私どもは、できるだけ早く祖国復帰が実現するように、この上とも努力するつもりであります。今日の状況のもとにおきましては、財政的に援助いたしまして、本土との格差をなぐするように、また、本土復帰に備えて生活の充実、向上等にも努力しておりますが、それよりも、やはり何といっても祖国復帰、これがほんとうに同胞宿願でございますから、それに真一文字に進まなければならない、かように思っております。  次に、沖縄の軍事的な意義でございますが、現在の国際情勢のもとにおきましては、ただいまもお答えいたしましたように、米軍施設が、わが国を含む極東の安全のために重要な役割りを果たしていると判断しております。したがいまして、今日、この返還、これを率直に要求しろというお話でございますが、私はする考えはございません。また、ベトナム戦等にこれが基地として使われておる、こういうことでありますが、これにつきましても、特に現状のような状態では、私がアメリカ政府に対して異議を唱える筋ではない、かように考えております。  次に、安全保障上の利益に対するわが国の責任、これは一体どういうことか、こういうことでお尋ねがあります。私どもが平和憲法のもとにおいて軍事力を持たない、かような立場にある日本として、安全を維持するためにはどうしたらいいのか、これがお尋ねの要旨であったと思います。今日の国際平和、これは力の均衡で保たれていると私は考えますが、この安全を確保するということは、独立国家としても国民に対するつとめであるし、また、国際社会におきましても、一国が協力することは、これは当然だと思います。日本はどういうような協力をするか。これは申し上げるまでもなく、平和への脅威となっておる貧困と社会不安を根絶さすべく、積極的に経済協力や技術協力をする、これがわが国態度であります。そして私どもの責任を果たしていくつもりであります。  次に、第三次防をいつ決定するかというお話でありますが、まだその時期を申し上げる段階に立ち至っておりません。ただ、この機会に私は申し上げたいのですが、国力、国情に応じて、有効な防衛体制を確立するということを絶えず申してきました。今日におきましても、その考え方で終始しております。したがいまして、私は、基本方針といたしまして、日米安全保障条約を堅持し、ただいま申しましたような可能な自衛力を整備する、そうしてこの国を守っていくという考えでございます。その際に、御指摘になりましたように、政治優先の原則はこれを守れ、これを厳守しろ、そういう意味では国防会議をさらに活用すべきではないかという御指摘がございました。そのとおりでございます。大いに国防会議を活用し、また、政治優先、そのもとにおいて安全を確保していきたいと思います。  また次に、いわゆる有事駐留論について御批判を求められましたが、私は有事駐留ということが、いざとなったら守ってもらうが、ふだんはじゃまだからいないでくれ、こういうようなことならば、これは私は反対であります。しかし、先ほど来お話しになりましたように、この国土、守るに値するこの国土はわれわれの手で、こういう意味でその自衛力の増強をして段階的に米軍を減少さすのだ、これが有事駐留論の基本的な考え方だ、かようにおっしゃるなら私どもも大賛成であります。(拍手)  また、核拡散防止条約の締結につきまして、グロムイコ外相がただいま来ている。これと十分相談しろ、とくと話し合え、これはそのとおりするつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣安井謙登壇
  20. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 沖縄問題につきましては、ただいまの総理の御懇切な御答弁で尽きておると思います。  私どもはあくまで全面復帰を願って努力いたしますと同時に、その間におきまして、日本と同じように社会、行政機構、民生をレベルアップしていく努力を続けます。また、そのために自治権拡充の必要なためには、この布令、布告等もできるだけこれを圧縮して廃止をしていくという方向で要請をしてまいっております。最近一両年の間に大体三分の二程度にはこれが減ってまいっておると思います。今後もそういう方向で努力を続けてまいる決心でございます。(拍手)      ————◇—————
  21. 園田直

    ○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時十二分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 津田  實君      ————◇—————