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坂本委員 大臣にちょっと一点だけ先に承っておきたい。
十月二十一日の
ストライキの問題ですが、これについて東京都と岩手県、
佐賀県、
福岡県で家宅捜査が警察の段階で行なわれ、そして参考人の調べがいままだ続行しておる、こういう状態にあると私どもは思っております。被疑者の呼び出しあるいは尋問等はまだないじゃないか、こう思っておるわけです。
そこで家宅捜査、参考人尋問のいろいろな問題については
あとでお聞きしますから、ここで
大臣にお聞きしておきたいのは、一〇・二一
ストに対しては、文部省は、違法であるから厳罰に処する、こういうような
スト前の状態で十月二十一日
ストに入ったわけです。多少まちまちではございますけれども、全国で九十何%が半日
ストあるいは一時間ないし二時間の時間内
ストに入ったわけです。それに対して、
先ほど申しました東京都ほか三県だけについて家宅捜査が行なわれ、参考人尋問が行なわれております。
そこで、われわれの見解では、やはり
公務員、地方
公務員も
スト権がある。いわゆる労働
基本権は教員にも認められている。これに対しては憲法二十八条の保障がありまして、それで労働組合法の一条に基づく
ストライキであればこれは適法である、こういうふうに
考えていたわけなんです。その後二十六日になりまして、これは中郵事件と申しまして、公労協の中央郵便局の事件ですが、これに対して最高裁の大法廷の判決が下されました。その判決の中において、
公務員あるいは地方
公務員に対する労働争議の件についての見解が出ておるわけであります。「労働
基本権は、たんに私企業の労働者だけについて保障されるのではなく、公共企業体の職員はもとよりのこと、国家
公務員や地方
公務員も、憲法二七条、二八条にいう勤労者にほかならない以上、原則的には、その保障を受けるべきものと解される。「
公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とする憲法一五条を根拠として、
公務員に対して右の労働
基本権をすべて否定するようなことは許されない。」こういう見解が出されている。さらに詳しく申しますと、この判例にあるわけですが、国家
公務員も地方
公務員も全体の奉仕者だから
スト権がないという見解ではなくて、やはり労働
基本権を持ち、二十八条の保障はあるのだ、こういう見解が示されたわけなんです。二十一日の
ストライキは何ら暴力その他のことはないのでありますから、まさにその判例に従いますと、これは刑事責任はないではないか。その他の責任は別としまして少なくとも刑事上の責任はない。こういうふうに、われわれの
考えとマッチするような判決が下されておるわけです。
こういう状態でありまして、学校の先生が
ストライキをするなら、もうそれだけで文部省の諸君なんかは、観念的に
考えて、
ストライキはできないのだ、こういう
考えでやっていたのが文部省の方針であったわけです。しかしながら、憲法の解釈については、公労法の判決ではありますけれども、その中にその解釈が下されたる以上は、やはり大法廷の判決は権威あるものとしてわれわれは尊重しなければならぬ守らなければならない、こう思うわけです。したがって東京都ほか三県については、参考人の調べも、あるいは
最初のように二十一日が
ストライキですから、二十二日あるいは二十三日には、
ストライキは違法であるというので積極的に家宅捜査並びに参考人の調べを行なったが、いまはやや数においても少なくなっておるではないかと思う。この点は
あとで警察当局にお聞きするわけですが、そういうような段階にありますから、これは
福岡の検事正並びに
佐賀の検事正に面会しましたときには、家宅捜査並びに参考人の調べは、これは検察庁にまだ事件がきていないし、検察庁は素通りして警察から直接家宅捜査令状をとってやっておるのだ、だからいまは
関係ない、こういうことでした。ただ
佐賀の場合においては、副検事が巡査と一緒に学校の先生の自宅あるいは学校に参りまして、参考人調書を警察官がとると、それに引き続いて副検事が検察官の調書をとっておる。これは私が十一月一日に
調査に参りましたときはわずかに六人だけでありましたけれども、そういうようなことが行なわれておるわけですが、これはかりに検察庁に事件が回りまして、そうして
調査をされ、さらに起訴されましても、これは重大な問題であるから、この判決を契機に、これは起訴しても公訴維持ができないのじゃないか、こういうような見解もあるわけです。
佐賀県のごときは、学校の先生、組合員は四千数百人しかいない。それがいたずらに千人以上を参考人として調べ、さらにまたこの点を検察庁にきて調べる、こういうことになりますと、
ストライキは教育を撹乱するという名目で文部省はそれはいかぬと、こういうふうにやっておりましたけれども、今度は
ストライキは違反であるという見解で、参考人の調べに学校に行く、さらには自宅に行く、こういうことになりますと、教育者である学校の先生に対し、形の上では任意供述というふうになっておるのでありましょうが、まことに迷惑であるし、そのことがやはり翌日の教育にも影響することでありますから、四千名のうち千名以上も参考人で調べるということになると、それがかえって教育の撹乱を来たすのじゃないか、こういうふうにも
考えられます。さらにまた東京都ほか三県以外は何ら家宅捜査も参考人の調べもないわけでありますから、これはひとつこの際打ち切って、やはり、最高裁大法廷の見解が出た以上は、文部省もいままでの見解を変えてやるべきである、そうすることが日本の小中学校、もちろん高等学校もありますけれども、日本の教育をよりよくするものである、こういうふうにも
考えられますから、参考人調書等も打ち切ってはどうか、こういうふうに
考えるわけであります。御存じのように
選挙違反等については、ある一定の期日がきますともう打ち切るというので、その後相当の違反がわかっても捜査をしないというようなこと、まあこれは
選挙違反とは別ですが、私は教育の撹乱というようなことを
考えるとやたらに調べてやるべきじゃない。
さらに一言しますと、日教組の
組織自体から
考えて、二十一日の
ストを
考えますと、これはあるいは日教組各県本部、県下の郡、市町村支部で、その執行部があおり、そそのかし、扇動するというようなことをしなくても、これは大会、この場合は臨時大会も持たれておるようですが、それから各県において毛大会が持たれて決定したことでありますから、何もあおり、扇動しなくても、そのとおりに、特に先生方は理知的な人ですから、きまったことはやるんだ、やらないものはやらないということで、二十一日の
ストは行なわれておるようなわけであります。今後の教育の問題等も
考えて、さらにまた先生が
ストをやるのはてんから違法だというような
考え方は、最高裁のこの判例を見ます上においては言えないわけでありますから、そのような判例の上に立って今後は善処するのが日本の教育のためだ、こういうふうに
考えますから、この点について
法務大臣の今後の処置についてここに御答弁を願って、そして参考人等にいつ来るかもわからぬ、まだ東京都ほか三県以外のところもどうだこうだと不安がないように、ここに一掃するようにひとつ御見解を承っておきたいわけです。