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1966-07-22 第52回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十二日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       四宮 久吉君    田中伊三次君       濱野 清吾君    早川  崇君       森下 元晴君    神近 市子君       山口シヅエ君    山田 長司君       横山 利秋君    田中織之進君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備課長)   後藤 信義君         検     事         (人権擁護局調         査課長)    宮代  力君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     清水 成之君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 七月二十二日  委員濱野清吾君、馬場元治君及び森下元晴君辞  任につき、その補欠として野田武夫君、鍛冶良  作君及び宇都宮徳馬君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員宇都宮徳馬君、鍛冶良作君及び野田武夫君  辞任につき、その補欠として森下元晴君、馬場  元治君及び濱野清吾君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 私は、昨日横山委員その他と静岡に参りました。全相銀関係の問題と、全自交に属する静岡タクシーの問題と、静岡教組に関する問題の三つについて、県警本部長警察署長にもお会いしまして、大体の事情はわかりましたけれども、そのことについて御質問をいたしたいと存じます。なお、全相銀の問題については、福島県の大東相互銀行関係お尋ねしたいと思います。  そこでまず第一に、沼津警察関係になっておりまする掛川事件といっておるのですが、これと静岡事件静岡の全相銀関係について、警察のほうではどういうような考え方で、またどういうような方針で、銀行に対する労使双方団体交渉、これについて連日のように警察官が行っているようでございますが、それはどういう根拠に基づいて出動しておるか、その点について、概略でけっこうですからお尋ねしたいと思います。
  4. 後藤信義

    後藤説明員 お尋ね静岡相互銀行の件でございますが、これは沼津市にその本店があるわけでございます。そして各地支店があるわけでございますが、いまお尋ねの件は、本店及び各地支店におきましてそれぞれ事案が起こっておるわけでございます。  その発端は、その遠因は、この組合の従来ありました労働組合から脱退しました人々が、ことしの五月二十一日に至りまして新しい労働組合を結成したようでございます。これに関連しまして、それぞれ、あるいは銀行側のほうに、新しい組合を結成せしめるというための何らかの働きかげをしたのではないかというようなことで、銀行側にその釈明を求めるというようなこととか、あるいは新しく労働組合を結成した人々に対して、これを脱退してもと労働組合に戻るようにというような働きかげをやっておるようでございます。これに関連しまして、警察官出動したり、あるいは出動する以前に電話がかかってきて待機するというような、そういう事案が起こっておるのであります。  まず一番初めには、ことしの三月の十一日に、これは旧労から——いわゆる新労、旧労と申しますか、この組合から脱退を申し出た人がございまして、この人に対して外出先で、これを撤回して脱退をやめてくれという意味説得をしたようでございますが、この説得の程度が強かったためでしょうか、その人はそれを振り切って、まあ端的に申しますと逃げたようなかっこうでございます。これが警察署の中にまで入ってきたというようなことで、そういう事件がございました。これは後日このことが警察のほうに知らせがありましたので、これはつきまとったということで軽犯罪の容疑がございますから、これにつきましては捜査をいたしたわけでございます。ただ、しかし被害者においてそれほど被害意識が強くございませんので、それは打ち切ったのでございます。  次は、五月二十日でございます。これは夜間に旧労の組合員吉原支店の中で、約四十枚ばかりのビラ店内に張ったという事案がございました。申しおくれましたが、一番最初に、三月十一日の事件と申しますのは、これは掛川支店でございます。今度の五月二十日は吉原支店でございますが、これにつきましては銀行側から知らせがありましたので、所轄吉原警察署から係官が四名ばかり参りまして、そして写真をとったり実況検分をいたしておるのでございますが、これまた被害者側と申しますか、銀行管理者側のほうでそれほど強い処罰の意思を表明しない状態でありましたので、これもそのままで捜査を打ち切っておるのでございます。  それから次は五月の二十四日でございます。これは浜松支店でございます。この浜松支店におきましては、やはり五月二十四日の夜間でございますが、松浜支店店内に、第二組合即時解散といったようなビラを約六十枚貼付したという事案がございました。これは翌日、浜松中央警察署から係員が出まして、そして写真をとり、実況検分を行なっておるのでありますが、管理者側の態度が吉原支店と同様な状況でございましたので、これまた捜査を打ち切っております。  次は、六月十日でありますが、これは静岡支店でございますが、旧労の組合員が約三十名ばかり支店長室に入りまして、第二組合結成について謝罪しろということで詰問したようでございます。それからさらに引き競いて、支店次長に対して数名の旧労員が、なぜ第二組合に入るように説得したのかというようなことで詰問をしておるのでございますが、これは退去要求に応じないということで警察のほうに出動要請があり、これは一一〇番で届け出があったわけでございますが、これは所轄静岡中央警察署から係官出動いたしまして、現場に到着しましたところが、すでに旧労員が引き揚げたあとでございました。これは事情を聴取して、捜査は一応打ち切ったかっこうになっております。  それから六月十一日、これは静岡支店でございますが、旧労員約五十名が支店長のところに参りまして、第二組合になぜ入るように説得したのかということで詰問をしております。これに対しましても、前の件と同様に出動要請が一一〇番でございましたので、所轄静岡中央警察署から警察官出動いたしまして現場に到着しましたところが、これは前回と違いまして、警察官出動しました時点においても現場に滞留しておりました。そしてまた支店長退去要求をしておるのにかかわらずそこにおるということで、その状況証拠保全という意味写真撮影をし、録音をとり、そしてさらに退去要求が出ておるということで、警察からも退去の警告を発しました。それに応じて旧労の組合員退去をしております。  それからその次は六月三十日、これは沼津本店でございます。これはやはり旧労の組合員沼津本店総務部長に対しまして、第二組合の問題につきまして抗議をしたのでございますが、これは総務部長退去要求に従って退去しております。このときも一一〇番で警察のほうに出動要請があり、所轄沼津警察署では係官出動せしめておりますが、現場に到着しました時点にはすでに退去した後でございましたので、これまた管理者側から事情を聴取するということで、この日の事案処理は終わっております。  それから七月の六日でございます。これは沼津本店でございますが、管理者側から就業規則違反ということで、これは前回にも処分発表があったようでございますが、この日にも発表があったようでございます。これに対しまして、旧労員が約四十名ばかり総務部長に対しまして、処分理由を明らかにせよというようなことで詰め寄ったということで、これはやはり警察に対して出動要請がございまして、所轄沼津警察署におきましては係官現場に派遣しております。それで、この時点にはまだ退去せずに旧労の組合員がおりまして、警察はなぜ来たんだというようなことで気勢をあげておったようでございますが、間もなく退去をいたしております。このようなぐあいに、合計いたしますと前後七回にわたりまして警察のほうで現場係官をそれぞれ派遣をしまして、状況の視察ないしは現場措置をしたという事案が発生いたしておるのでございます。  冒頭にお話しでございますが、こういう組合労働争議に関連します問題につきましては、申し上げるまでもなく警察はいずれの側に立つものでもございませんし、厳正公平な立場事案処理をいたさなければならぬことは当然でございます。ただ労働争議に随伴いたしまして、正当な範囲を逸脱いたしまして諸般不法行為が行なわれるという場合におきましては、犯罪捜査責務を持っております警察といたしましては、当然責務上これらの捜査に当たらなければならぬわけでございますし、また生命、身体、財産の保護という義務も持っておりますので、それぞれ防犯的な立場から諸般活動を行なうことは、これまた責務上当然のことでございますので、いずれの側に立つというようなことでなくて、公平な立場から、不法な行為がある場合にはそれぞれ法規にのっとりまして職責の遂行に当たる、こういう立場を堅持しておるのでございます。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 この全相銀の問題については逮捕とか、そういうのは起きていないわけですが、いま御説明のように、本店沼津のほうについては前後七回警察官出動しておるようなわけであります。もちろん首切りその他についての労使関係、それから組合内部のことについては若干われわれも聞いておりますが、しかしながら組合内部関係並びに労使関係で、一一〇番の電話がかかったというので、警察官が、そのときどきによって数は違っておりますけれども、多いときは十四名あるいは七名、四名というようなふうに出動しておるわけです。いずれにしても、団体交渉を始めておるとすぐ警察官が出てくる。そしてほかの組合組合旗を立てておると、それはおろせというふうに銀行使用者側のほうでやるとそれをおろすわけです。そうするとまたすぐ立てる。それに対して、警察官がそこにいるということは、やはり使用者側に有利であって労働者側のほうには不利である。したがって首切りあるいは、これはまだ春闘の賃上げが解決していないわけですが、その交渉について警察官が先回りして出てくる。一一〇番で電話をかけて署から来る時間よりも早く来る。だからいろいろ調べてみると、すでにもう何にもやらない前から警察官銀行のある部屋あるいは近所に待機をしておるというようなことで、あまりに早過ぎるのは、やはり使用者側人事課長、その他支店長、あるいは本店使用者側のほうとあらかじめ予約し合っておる。いわゆる不当労働行為に対する警察官の導入が——逮捕したりや何かはまだしないけれども、その前からそこにおるから、そのこと自体弾圧になって正当な交渉ができないという点があるのです。その点はきのう県警本部長にお会いしますと、労働者側警察官出動については多少水かけ論みたような点もあるけれども、いずれにしても警察官が早く出てくるというところに、不当労働行為をしている使用者側警察が加勢しておるというふうに見られておる点があるわけですが、そういう点についてはどうなっておりますか。
  6. 後藤信義

    後藤説明員 いわゆる労働法に認められました団体交渉ということでございますれば、正当な理由がないのに使用者側がこれに応じないということでありますと、これはそれぞれ労働法規に従って不当労働行為としてのそれぞれの救済措置がいろいろな手続によって進められることになるわけでございます。したがいまして正当な団体交渉ということにつきましては、これは警察のほうで関与する筋合いではもちろんございません。しかしながら先ほど私が申し上げましたように、この静岡相互銀行本店支店において行なわれましたいわゆる集団交渉というものは、これは日時、場所あるいは人数あるいは取り上げるべき内容というようなものをあらかじめ労使双方において話し合いをして、そして正規のルートに従ってお話し合いをするということではなくて、数もたくさん出てまいりまして、一方的な、俗に申しますつるし上げのような状態に立ち至るようでございまして、やはり身辺の危険を感じて警察のほうに保護を求めるというのが実情のようでございますので、やはり一一〇番に連絡があるということになれば当然飛んでまいりますし、またそういうことがたび重なるということでございますと、やはりそういうことで万一のことがあってはいけないというので、防犯的な立場からそれらの状況警察のほうで承知しておく必要があるということで、それぞれ警察活動を開始すべきものであると私ども考えるわけでございます。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 そこで本店の問題について一、二の例をあげますと、六月三十日には警備課員十四名が銀行の中に入りまして、そうして二階ですか、二階の団体交渉をしておるところにまでやってきて、ろくに交渉も進んでいないのに警備課員が入ってきて——もちろん使用者側退去命令だとこう言うわけですが、そうするともうすぐ警察官が十四名も入ってくるから退去をする。結局その日の話し合いはできない。さらに七月の二日には警備課員二名が正面玄関の入り口前の舗道上に——これは銀行の外ですが、舖道上にカメラを携帯して威圧を加える。というのは、やはり女の従業員なんかはカメラを持ってきてとられるというのは非常に困るものですから、結局正面玄関入口前の舗道上に立っておるだけで組合のほうは何もできない。こういう関係があるわけです。それから七月の四日には警備課員七名が、七月二日と同様玄関前の舗道写真をとる。さらに七月の五日には、警備課員四名が銀行のまわりを徘回して張り込みを続けている。そういうことですから、組合としてもどうもしようがないから、何もできない。したがって七月の五日は午前中で引き揚げる。さらに翌日の七月六日には、先ほど御説明もあったのですが、警備課員七名が銀行の中に入りまして、経営者側の旗の引きおろしによる関係について、これは傷害事件が起こったものですから、救急車を依頼する。ところがこの一名は強引に組合側本部のほうに入場せんとするから、これは組合員のほうで阻止しておる。このときも、なぜこんなに早く警察官出動してきたか、こういうふうに抗議を言いますと、一一〇番から電話があったから来たのだ。これが一一〇番から電話をかけても、まだ距離的に時間が早いのに来ておる。しかしながらトラブルは起こしてはいかぬというので、組合側はやむなく退去をする。したがって逮捕者とかそういうような者は出ていませんけれども、この警察官出動自体労働法による団体交渉を不能に至らしめておる。さらに七月の七日には、警備課長外三名が早朝から来ておる。その日団体交渉をやるかどうかまだわからないのに、出動してきておる。そうして三階の重役室へ、鈴木調査役に案内されてこの四名が入っておる、こういう事実もあるわけです。そういうことで、組合のほうでは、もちろん第一組合、第二組合の問題はありますけれども、トラブルを起こさないように十分注意をして、しかしながら春闘もまだ解決しておりませんし、さらにこの分裂の問題は使用者側から積極的にやっておるのだから、分裂した組合においてはなるたけ説得して、分裂をしたならばもとに戻すような努力をしておるのが、警察官があまりに早く出動してくるというのでその目的を達せられない。何度も申しますけれども、組合のほうはそこにトラブルを起こして逮捕とかそういうような問題は起こしてはいけないという配慮で、トラブルを起こしていないですけれども、警察官があまりにも早く出動してくるから、せっかく団体交渉をスムーズにやりたいと思っても、いわゆる労働法に基づく団体交渉がそういう警察官出動によってやれない、こういうような状況になっております。きのうも県警本部に行きますと、人事課長県警本部に来ておる。何のために来ておるかというと、警察打ち合わせをして団体交渉が不能になるように、使用者側ではいわゆる警察威力を借りてやっておる。こういうような状況があるから、こういう点はもちろん防犯の立場もあるでしょうが、やはりそれも限界があると思いますから、今後においてもそういう出動については十分注意してもらわないと——人事課長県警本部に来て打ち合わせをしておるだろう、これはしなくても疑いを持つわけです。そういうような状態でありますから、今後はこういうことがないように、警察出動についても、一方だけの援助にならずに、やはり労使双方立場に中立的に立たなければならぬと思いますから、そういうふうにひとつ善処してもらいたい。こういうようにも考えるわけですが、そういう点、いかがでございますか。
  8. 後藤信義

    後藤説明員 おそらく私先ほど申し上げましたように、先生のおっしゃいます団体交渉、これは通常意味における団体交渉、平穏な雰囲気における団体交渉というかっこうではなくて、やはり何らかのそれ以上の威力と申しますか、それが銀行当局者側に加えられているような事案であるように私ども受け取っておるわけであります。ただしかしながら、先年何度もおっしゃいますように、それが通常の形における集団交渉ないしは団体交渉であるということでございますので、それにつきましては、私どもさらに念を入れて事情を調べ、さらに今後の問題も検討していきたいと考えております。場合によりましては、銀行側のほうであまりこうした労使関係になれておらないというために、通常の場合よりはその危険を感ずる度合いが強いということも、あるいは言えるかもしれぬと思います。ただしかし、身の危険を感じて、あるいは仕事のじゃまになるから退去要求するというようなことで警察出動要請する。それをまだその段階でないということで出ないでおるということは、どうもいささかどうかという感じもいたしますので、その辺を銀行当局とも十分に話し合いをいたしまして間違いのないようにしていきたいと考えております。  ただ、私どもの手元にあります報告によりましても、いわゆる交渉と申しますものが、交渉というよりは、一方的なつるし上げというようなかっこうで、しかも時間もかなり長時間にわたっておるようでございますので、ある程度で話し合いを打ち切って、そうして、もう仕事があるから帰ってもらいたいというようなことを要求することは、通常の場合、これは当然なことだろうと思うわけであります。それに従わないということになりますと、やはり警察の力を借りなければならないということになるのではないかと思います。そういう点につきましては、警察のほうでも不当に介入することのないように十分に戒心いたしますが、同時にまた組合の側におかれましても、そう大ぜいの人が詰めかけて一方的に話を進めるというようなことではなくて、やはり少数の代表を選んで、落ちついた雰囲気話し合いを進められることが、こうした問題を回避するのに非常に力があるのではないか、こういうふうに感ずるのでございます。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 最後に、やはり何としてもあまりに警察の出方が早いから経営者警察との結びつきがあるのだ、ほかの春闘に関しては妥結しているのに、静岡相銀関係だけ妥結していないというところに、逆に考えると、あまりに警察が早く出て結びつきがあるものだから団体交渉ができない、こう思うのです。もちろん不当な首切りもやっておりますから、また交渉には声を大きくするとか、少しはあれしなければ、とにかく経営者のほうは傲慢で聞かない。それのしり馬に乗って、一一〇番から要求があったからすぐ警察が出たというのでは、これは話し合いができないわけですから、その点が最も重要であるし、経営者警察が結びついて不当な弾圧をして、組合側要求なんかは通さないし、団体交渉も行なわれないのだ、そういう結果になっておる点も私はあると思うわけです。そういう点については今後十分注意をして、出動については配慮してもらいたいと思うわけです。  そこでもう一つは、全相銀福島大東相銀組合関係ですけれども、これもやはり分裂攻撃が重点になっておりまして、静岡と同じような問題が起きておると思うのですけれども、これもやはり不当労働行為に対する、いわゆる分裂攻撃に対する組合抗議その他を安易にするために使用者側警察を利用しておる、こういうふうに考えられる点もあると思いますから、これは実際私たちも調査しているわけではないですが、そういうことがないようにひとつ今後善処をしてもらいたいと思いますが、その御所見を承っておきたい。
  10. 後藤信義

    後藤説明員 いまお話し大東相互銀行、これは福島県の郡山市に本店がございまして、各地支店がある銀行でございますが、いまお話しのように、やはりこの相互銀行でも組合分裂がございまして、本年の七月の十五日に第二組合ができておるようでございます。これをめぐりまして、やはり静岡の場合と同様に、それが管理者のほうの不当なる介入によるものではないかということで、旧労のほうが管理者側に対してその実情調査するということで詰め寄っておる——詰め寄ると申しますか、そういう詰問をするというような事態が起こっております。また同時に、第二組合に対しましては第一組合に復帰するようにということで活動を開始しておるようでございます。これをめぐりまして、やはり静岡の場合と同様にトラブルが予想されますので、警察のほうとしましては、当然責務上その事態の成り行きを注視しておるのでございます。したがいまして、第一組合とあるいは第二組合との間に、就労阻止であるとかいうようなことで、両者間にトラブルが起こるというようなことが予想される場合におきましては、事前にその銀行の付近に見張りを立てて、その状況を視察するというようなことはいたしておるのでございますけれども、これまた静岡の場合と同様に、警察銀行側の肩を持って云々というようなことは厳にないようにということで私ども考えておりますし、現地福島県警及び所轄警察署でもそのつもりで任務の遂行に当たっておるわけでございます。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 それからその次は、昨年の十二月と思うのですが、静岡教職員組合の問題で、そのときはトラブルが起きたわけですが、そのときの事件で、静岡教組執行委員である塚本春雄という方を、先般五月の十一日ですか、静岡教育委員会分限免職をした。その分限免職理由の中に、教育長交渉の際にバンドを握ってやったのだ、ゆさぶったか何かしたということが分限免職理由に入っておるらしい。そこで、そのことでいまになって免職になった塚本春雄氏に対して呼び出しを警察はかけた。なお一名か二名の方に参考人の出頭を命じておる。こういうことになっておるわけで、一名はいま起訴されて裁判になっておるのですが、その当時は、そのほかにもう何ら問題がなくておさまっていたのを、いまになってそういう分限免職の中に理由があるというので、これは教育長が告訴か何か出したらしいが、それをいまになって調べておる。こういう事実があるわけですが、こういう点はもう取り上ぐべきでない。もちろん刑事問題であって、その刑事問題の有罪か無罪かということは、すでに一名が裁判になっていて、いま公判の通行中であるわけですから、そのほかの者に、分限免職理由にそういうのがあったからといって、それをまたほじくり出す、こういう点が警察としてはもう行き過ぎではないだろうか、こういうふうに考えるわけですが、この点いかがでございますか。
  12. 後藤信義

    後藤説明員 この点は昭和四十年三月二十二日の事件であったのでございますが、おっしゃいますように、一年以上もたちましてから捜査に着手するというのはいかがかというお話でございます。これは私どもも通常の場合でありますと、捜査を開始するということは非常に慎重にしなければならない事案だろうと思いますが、これはことしの六月三十日に静岡市の教育長から公務執行妨害で、お話にありました塚本という人を、静岡中央警察署に告訴があったのでございます。犯罪につきまして、犯罪ありとして告訴がなされました場合におきましては、これを受理して捜査を遂げ、これを検察庁に送付するというのは、刑事訴訟法に定められました警察に対する義務でございますので、これはその事柄の当否を問わず、やはり犯罪容疑ありとして捜査を進めていくということに当然なるわけでございまして、この事件をあえて警察側が古いのを掘り起こしてやるというような考えは毛頭ないのでございます。かりにこれが全然事実無根であるのに告訴をしたということになりますれば、告訴をしたほうがそれぞれの責任をまたとられるということにもなりますので、そう不用意に告訴をするというようなこともまずなかろうと思いますが、私どもといたしましては告訴がありました以上は、これに従いまして、法の定めるところに従い捜査を進める義務があるわけでございます。その義務の履行をただいまやっておる、こういうことでございます。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 告訴状が出たから立件されておる、そういうことでありますが、これは私去年の十二月と言ったのは間違いで、その前の、一年半くらいになります。この古い事件をいま掘り返すというのは、静岡教組においてはいわゆる教組の役員選挙をめぐって、教育長のほうからいわゆる分裂行動が起こされて、これは何ですか、若干の組合離脱者と第二組合ができておる関係があるから、そこでその第二組合をどんどん強力にし、ふやすために、警察のほうで一年半も前の事件をここにほじくり返してやっておるのではないか、こういう点で非常に疑いもありますし、またいかに教育委員会が告訴したにしても、立件されるのはそういう理由でやむを得ないと思うのですが、一年半も前の事件であるから、こういう古いのを特に警察で何人も呼び出しをかけてやるということは、いわゆる第二組合を助長する、こういうことにもなると思います。その点はもうすでに警察、検察庁の関係は済んだ事件でありますから、いまさら告訴状を出すというところに違法があるじゃないか、私はこういうふうに思うわけですし、そういう点でひとつ至急善処していただきたい、こういう点をお願いしておくわけであります。  それからもう一つは静岡の葵タクシーの争議問題ですが、ここで問題になりましたのは、私はあまりわかりませんが、いわゆる自動車のキーと車検証を威力業務妨害、建造物侵入の疑いで捜索をして、捜索した際に幾つか、七つか十か押収して、そして押収物を今度返すときは会社側に返すわけです。だから、会社側はそれによってその自動車をフリーに動かして商売をやるのだから、ストにはちっとも関係はない、こういうような関係を考えますと、何か捜索によって得た重要な——タクシーの争議には、キーと車検証、これがなければ運転はできないし、これは大体運転手が持っておるものです。それを捜索の際に押収して、今度は会社側に返す、こういう点から考えると、どうも会社のほうに、使用者側のほうに便宜を与えておる、こういうようなふうに組合のほうからの強い主張を聞いたわけですが、こういう点は、これは小さい会社の、自動車は三十台か四十台しかないタクシー会社の争議だと思うわけですが、そういうことをしてもらうと、せっかくの組合の要望なんというのは通らなくなってしまう。不当労働行為かあるいは賃上げの問題と思うのですが、それに対する警察のそういうような、表面は合法的みたいなことで会社側一方を利益する、こういうような結果になるのじゃないかと思うのですが、こういうことはぜひひとつないようにしてもらいたいと思うわけですが、その点についての御所見を承っておきたい。
  14. 後藤信義

    後藤説明員 ただいまの件は、静岡市にございます葵タクシーの事件でございます。これは六月八日に勤務成績不良ということで解雇されました。その解雇が不当であるということで、六月八日から組合がストライキに入りました。そのことに関連して起こったことでございますが、そのときに組合側は、その争議の過程におきまして、車庫の中にありました自動車の車検証あるいはキーを抑留し、それからビラ張りなどをやったという事案が起こったのでございます。これらは当然威力業務妨害罪を構成するということで、この組合の事務所及び会社の所要の場所につきまして捜索、差し押えの許可状を裁判所からもらいまして、そして捜索、差し押えをしたのでございます。さらに検証許可をもらいまして、検証もいたしておるわけでございます。それをやったのでございますが、その差し押えましたエンジンキーを会社側に返したということでございますが、これは刑事訴訟法の規定にのっとりまして、それぞれ仮還付できることになっておりますので、そのエンジンキーを当然所持すべき会社のほうに返還したということで、その点は私どももこれを他意あって会社側のほうに返還したとかいうことではございません。タクシー争議において、よくエンジンキーの抑留は行なわれることでございますが、エンジンキーの抑留を行なって業務を行なえないようにすること自体がすでに威力業務妨害罪になるということで、判例もありますし、起訴事例もあることでございますので、私どもはそれに従ってやっているのでございます。組合側になぜ返さないかという問題でございますが、組合側のほうにエンジンキーを所持すべき占有権があるかどうかという問題になると思いますが、これは私どもは、組合側は会社の業務命令に従って業務に従事しておる間、会社側にかわって占有しておるという、いわば第二次的な占有権は持っておると思いますけれども、会社側の意思を排除してまで占有するという、そういう占有権は持たない。したがって、会社側のほうに差し押えをしましたエンジンキーを返すのは、これは何ら差しつかえないことであるというふうに考えておるのでございます。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、ストに入った後に、そういう建造物侵入とか威力業務妨害とかに入ったら、それが問題だと思うのですが、家宅捜索を捜査令状によってして、そうして運転手が占有して自動車を動かすキーを押収して、それは判例に基づいて所有者に返すべきものだといって返してもらったら、犯罪が成立するかどうかということはまだわからぬ前に所有者に還付してしまったら、それは不利になります。ほかの自動車運転手を雇って自動車を動かせば、ストなんかできなくなるわけです。そういう点でいわゆる犯罪を名目としてそういう捜索をやるという手を用うる。その点は、私はそういう場合は、やはりストに入った場合は運転手の占有を捜査令状で奪って占有するわけですから、その場合はやはりいわゆる所有者でなくて、そのとったときの占有者がやはり所有者になるんじゃないか、こういうふうに私は考えるわけである。そうでないと、タクシーの争議なんというのは成り立たないわけです、それでやってしまえば。だから、結果論から見てもそういうふうに考えられるから、この点についてはもちろん法的の問題もあるかと思いますが、そういうふうにして葵タクシーの労働争議はほとんど争議でなくなった、こういうような状態になっておるわけですから、そうしたらやはり警察権の捜査という合法的な捜査令状によってそれを一方的に渡す、こういうふうな結果になるのであるから、それはいけないじゃないか、こういうふうに思うわけです。まだこの争議等も続いておるようですから、今後の問題としても、やはりこういう点についてはひとつ善処をしてもらいたい、こういうふうに要望いたして私の質問はこれで終わりたいと思います。
  16. 後藤信義

    後藤説明員 御要望でございますけれども、この点は私どもはやはり従来の方針をそのとおり踏襲せざるを得ないと考えておるのでございます。労働争議の正当なる争議権の行使の範囲、つまり労働争議が正当であると認められる範囲はどうであるかということにつきましては、すでに最高裁判所の判例をはじめ幾多の判例が出ておりまして、判例上確立しておることと私どもは信じております。その判例が一貫していっておりますのは、労働争議において労働者側に認められている正当な争議行為の範囲というものは、雇用契約上負担しておるところの労務提供の債務を履行しないという、つまり労務提供という債務を履行しない債務不履行が限度であって、それ以上に進んで使用者側の財産権を侵害するということは違法であるというのが確立した判例であると存じておりますので、いま先生のおっしゃいましたようにエンジンキーを使って会社側が自動車の運転をする、したがって争議をやっても何ら意味がないということでございますが、これは会社側にとって何ら争議中は事業を継続してはならぬという義務も何もないわけでございますので、その点まで立ち入って使用者側の財産権を侵害するような行為は、私ども違法であるというふうに考えておるのでございます。
  17. 坂本泰良

    坂本委員 それは、そういうような犯罪があるとして、これは警察使用者側がなあなあになって、そういうことがあるというので、警察は権力を持っておるから、捜査令状によって捜索をするわけでしょう、そうしてその捜索によってとったんだから、その仮還付については私はもっと慎重に考えなきゃならぬと思う。しかしこの点は法的な問題もあると思いますから、留保しておきます。時間がありませんからこれで私の質問を打ち切りたいと思います。
  18. 大久保武雄

    ○大久保委員長 神近市子君。
  19. 神近市子

    ○神近委員 私は、いまの社会の暴力団のいろいろな形での跳梁をたいへん憂慮するものでありまして、そういう意味で、この暴力によって殺されたと思われるような人の不幸な死からこの問題を取り上げてきているわけですけれども、きょうも、その一つの拠点のようになって、青少年をそういう方向に教育あるいは教えるような傾きのある国士舘の問題をひとつ最初に御質問申し上げたいと思うのです。  この前、四月の十三日だったと思うのですが、このことで御質問申し上げたときに、学長の柴田徳次郎ですか、この人に対する判決がおりたというようなこと——その前にいろいろ刑事局長お尋ねいたしましたけれども、調査中だというので御返事がいただけなかった。そのときの、判決が下った、その内容を一度は伺っておりますけれども、どういうわけでこれを起訴猶予にしたか。その動機をもう一ぺん伺いたいと思います。
  20. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ね事件は、昭和四十年の四月十九日に、東京地方検察庁が健田谷署から送付を受けましたところの、被告訴人である国士舘大学学長柴田徳次郎に対する告訴人佐藤英夫の傷害の告訴事件であると思うのでありますが、この事件につきまして捜査を遂げました結果、本年五月十一日、暴行罪のかどによりまして起訴猶予処分にしておるわけであります。  本件の告訴事実の要旨は、すでに何回か当委員会でも調査になっておりますが、柴田徳次郎は、昭和三十九年十月二日、国士舘大学校庭にて、佐藤英夫をステッキで欧打あるいは足げにするなどの暴行を加え、全治約二カ月を要する胸部打撲傷等の傷害を負わせたというのであります。  そこで、捜査の結果によりますと、柴田が昭和三十九年十月二日午後二時ごろ、世田谷の国士館大学校医兼解剖生理学の教授佐藤英夫に対して、診療票並びに医務室の管理のことから口論の上、憤慨をして、所携の、直径約四センチ、長さ約一メートルの木製のステッキで突きかかったという事実は、これを認めることができるのでありますが、本件は、もともとささいな動機から発比いたしました学内における学長と校医兼教授間の事犯でありまして、事犯自体は軽微であります上、被告訴人は七十歳をこえて、前科前歴等もないことでありますので、諸般の情状に照らしまして、あえて処罰の必要がないものと認めて起訴猶予にしたものであります。  なお、告訴事実の中に、被告訴人である柴田徳次郎が、佐藤英夫に対し、胸部をステッキで殴打したり、足げにした、その結果、全治二カ月を要する外傷性左側膝関節血腫、右側胸部打撲傷の傷害を与えたということでありますが、この右側胸部打撲の点については、全くその証拠がなく、また、血腫の傷害を与えたという点では、積極的な証拠が全く存在しないわけではありませんが、告訴人の供述には他の証拠と符合しない点が多々ありまして、多くの消極証拠も存在することと相まって、告訴人が被告訴人の暴行に基づいて傷害を負ったものということはとうてい認定することができなかった次第であります。そこで、証拠として、明らかな暴行を加えた事実について、事実は認定されますが、これについて起訴猶予処分をした次第であります。
  21. 神近市子

    ○神近委員 その診断書はだれの名前で出ておりますか。その傷害を受けたのが、いま、右側のどこかに傷がなかったということですが、その証明書は、医者はだれが出しておりますか。
  22. 津田實

    ○津田政府委員 告訴人側から提出されました診断書によれば、全治おおむね二カ月を要する外傷性左側膝関節血腫、右側胸部打撲傷というふうに記載されております。しかしながら、この診断書は、告訴人の、すなわち佐藤英夫の実兄であります佐藤忠昭が告訴人の訴えに基づいて、告訴人の主訴に基づいて作成したものでありまして、この診断書関係のカルテは存在しておりません。今日、この診断書の記載の正確性を裏づける資料というものは全くないのでありまして、他の諸般の証拠と比較、考慮いたしますと、証拠価値はきわめてうすいものであると認めざるを得ないのであります。
  23. 神近市子

    ○神近委員 その問題のときは二百人からの人が見ていたということと、それから玉川署のパトカーが行って運んできたということになれば、たとえば佐藤忠昭がこれを出したからといって、その本人の言い分だけを取ったということは、ちょっと私はおかしいと思うのです。玉川署を呼びましたか。
  24. 津田實

    ○津田政府委員 この事件当時、告訴人の依頼によりまして、パトロールカーを呼んだという事実はあるようでありますが、したがいまして、パトロールカーは、その連絡によって出動したわけであります。ところが、パトロールカーを呼んだ者も、現場に臨んだパトロールカーの警察官も、暴行あるいは傷害の事実を確認しておりません。したがいまして、この診断書の証拠価値の判断は、加害者である柴田だけの供述を信用したものではなく、諸般の証拠を総合して考えますと、この診断書の証拠価値はきわめて薄いということがわかるわけであります。
  25. 神近市子

    ○神近委員 そのときは、二百人からの人が見ているのですよ。それを、たとえば教授であれば、これを見たといえば首になる、学生であれば停学や退学になる、こういうふうな恐怖を与えて、これを隠したということはいえると思うのです。それを七十歳というようなことで、七十歳だったら、かなりの犯罪を犯しても、これを見過ごすということがいままで前例としてあるのですか。町の人たち、たとえば労働者とか、そういう人たちも、年齢によって裁判を変えますか。ちょっとそれを伺わしていただきたい。
  26. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお話の、見ている人はたくさんおったということでありますが、あるいは目撃者はいたかもしれぬと思うのでありますが、学校関係者であるとないとを問わず、関係のある者は全部取り調べた結果判断いたしたわけでありまして、学校関係者だけを取り調べて判断したわけではないのであります。   〔委員長退席、小島委員長代理着席〕  先ほど、起訴猶予理由に年齢を申し上げましたが、年齢につきましては、これは、他の事件につきましても、比較的高齢な人にはそれ相当の情状を酌量するということは、しばしば行なわれていることでありまして、本件に特別に行なわれたことではありません。
  27. 神近市子

    ○神近委員 それで私もちょっと愉快になりました。私も七十歳以上ですから、何をやっても、だいぶ点数をまけてもらえるということがわかったので安心しましたけれど、あの事件は、単純なけとばしや、なぐりだけではなく、この間私がちゃんと言ったでしょう。女の人がからんでいるというようなこと、それを七十歳でございますとか、あるいは証拠が不十分でございますとか、二百人も——何十人かの教師の前で、大っぴらに学長が暴力をふるったということをあなた方は見過しにしていらっしゃるというところに、私どもは納得のできないことがあるのです。  この人の履歴をよく聞いて見ますと、戦前の大日本国粋会というようなところに属した人です。この人たちの名前は、ここにありますけれど、大体頭山満とかあるいは廣田弘毅とか緒方竹虎とか藤山雷太とか、そういう人たちが大日本国粋会。今日何とか国粋会といって、赤いビラを毎日まくでしょう、電信柱に張るでしょう、あれを考えてごらんなさい。あれと同質だとは言いませんけれど、もっとこれは有力な、お金のある藤山雷太の名前も出ていますから、それは今日の赤尾敏とは、それはクラスが違うでしょう。だけれど、国粋会ということを名のる以上、今日の時世と非常にずれているということはわかりませんか。私は柴田という人は知らない。だけれど、この大日本国粋会——緒方竹虎という人はよく知っていましたよ。この人は、今日生存していらしたら、ずっと変わった、頭を変えた考え方を持って日本の政治を前進させるという方だろうと私は信じています。だけれど、あとの、この頭山満さんとか、あるいはというような方々が、どういうように頭の切りかえができる人かということは、私には想像できません。だけれど、柴田という人は、そのときの頭で、そのときの仲間で、今日の何をやっているというような人、それをあなた方がかばうというところが、私は非常に変だと思うのです。佐藤さんが、きのうも問題になった検察審査会に提訴しています。最高裁の人にきのうちょっと伺ったのですけれど、いま案件がどのくらい検察審査会にかかって、それがどのくらい取り上げられた、そしてそれに解決が与えられたかという数を、もう一ぺん出してください。きのう最高裁で出してくださったので大体わかっておりますけれども、もう一ぺん。
  28. 津田實

    ○津田政府委員 昨日最高裁からどういう数字を申し上げましたか私もよくわかりませんが、検察審査会につきまして、法務省が調査したところの結果によりますると、たとえば昭和三十九年におきましては、申し立てられた事件及び職権で取り上げた事件の合計は、千五百九人であります。そのうち、起訴相当、不起訴不相当の議決がなされたものが百三十一人でありまして、あと千百六十五人は不起訴が相当であるというようなことになっておるようであります。そのうちで、正確にはそのうちにならないのでありますが、同じく三十九年中に、起訴相当議決事件について起訴手続をとったものは、十八件になっております。
  29. 神近市子

    ○神近委員 いまあなたの言ったのは、その十八件だけがこの検察審査会にかけた目的を達したという意味ですか。
  30. 津田實

    ○津田政府委員 目的を達したと申しまするか、起訴相当であるという議決のあった分に対しまして、同年起訴手続をとったものが十八件である、こういうことでありますから、目的を達したという意味においてはあるいは目的を達したということになるかもわかりません。
  31. 神近市子

    ○神近委員 それはそうでしょう。そうじゃありませんか。やってもらうんだからやり直してもらいたい。ところが、きのうも検察審査会というところが問題になっておりましたけれど、その案件を扱った人がもう一ぺん扱うということになっておるというのはほんとうですか、それを取りかえるということはできないんですか。
  32. 津田實

    ○津田政府委員 この起訴相当の議決がありました場合には、そのうちの検事正に議決書が送られるわけであります。そういたしますると、もちろんその前の事件の当時の処分をした検事正である場合もありますし、あるいは転任等でかわって別の人になっておる場合もあります。いずれにいたしましても、この起訴相当の議決があった事件につきましては、これは高等検察庁と十分協議をして捜査をし、結論を出すということになっております。  検察官は御承知のとおり全国一体でありますので、具体的な人が同じであるかないかということは、これは裁判官の場合と非常に違っておりまして、その意味においてはそれは全国組織で、問題があれば検事総長までの判断を受けるということになっております。そういう意味におきまして、同じ人であるかないかということは、私は直接関係はないというふうに考えております。
  33. 神近市子

    ○神近委員 同じ人でないかしれないけれど、同じグループだということはわかりますね。ごらんなさい、吉田石松の事件は、あれはその役人が全部かわって、五十年ですか、二十五年ですか、かわっていたから、あれだけの判断がはっきりと出て、そうしてあのときに——私はあとである人に聞きましたけれど、あの裁判に対して全国の人からほめるというか、お祝いというか、よくやったという激励の手紙が殺到したというじゃありませんか。私はこのあれは、そのくらい年数がたって役人がかわっていたからできたと思うのです。きのうもちょっと石原莞爾という人のことばを出しましたけれども、ほかに鈴木忠一という人が司法研修所で講演したものを読んでみると、法務官僚は保守でなければいけないというふうなことを言っておるんです。そういうことを考えれば、この国士舘の問題なんかにあなた方がどういうような調査をなさったかということは、私は非常に疑惑を持たなくちゃならない。どういう人を——あのときに調査中だから言えないとあなたはおっしゃったけれど、八人呼んだというときに、どういうメンバーを呼びましたか。
  34. 津田實

    ○津田政府委員 国士舘大学の事件につきましては、国会でも当初から御調査のあった事件であります。したがいまして検察庁といたしましても、十分の捜査を遂げたわけでありまして、具体的に何人の人、まただれを調べたのかということは、これは捜査の内容でございますから、一々明らかにすることはできませんが、とにかく告訴人はもとより、先ほど申しました関係のパトロール警察官であるとか、あるいは目撃者というものを全部調べ、また診断書関係につきましても、先ほど来申し上げましたようなことがわかるまでには相当関係者を調べておるわけであります。そういう意味におきまして、国士舘のこの柴田徳次郎の地位が、いかなる地位にあるかということを特別に考慮して検察捜査に手心を加えたというようなことは絶対にございません。これはその人の持っておる考え方の内容がいかようであろうとも、刑事事件は刑事事件として当然に扱うのが検察官のたてまえであります。その意味において適正な判断をしておるわけであります。
  35. 神近市子

    ○神近委員 あなた方は言えないだろうと思いましたが、大体において私のほうにはわかっております。それは、大体この間ここに呼んだ横山、ずいぶんふかしぎなことを、講演だか演説だかした館長代理というか、それに類する管理者というか、そういうような者が呼ばれています。あれはみんな柴田グループの者で、あのときにここで全く笑ろうべきようなことを綿々と言ったのです。あの男のようなタイプの人がみんな呼ばれて、そしてこの人たちが柴田に有利なことを言っている。柴田もお呼びになったということは聞いておりますけれども、ともかくあれがまともなことを言うはずがないでしょう。頭がちっとどうかしていますよ。ともかくそういうような人をあなた方は起訴猶予になさった。このことはわかりますよ。年もとっていたし、頭も少し変だし、だからこれは起訴猶予にしてやっておこう。まあ顧問に総理大臣だとか、石井法務大臣だとか、椎名外務大臣だとか、大臣の名前がずらりと五人出ているじゃありませんか。あなた方が権力にはちっとも弱くないといったって、それはどうしたって頭にそれがあるということは考えられる。それでいて、私はあなた方の裁判がどうとかこうとかということは言いませんよ。だけれども、それの一面に七十歳でございました、なぐったということは事実でございます、ただその外傷が二カ月分であったか一カ月分であったかということは疑わしい、こういうことは別として、人間としての柴田というような人を、次官がどういうようにお考えになるか。法律的には、これは起訴猶予ですから、何もこれは障害はないでしょう。再度同じことをすれば、これはやられるかもしれない。だけれども、人間として、あるいは教育家として、あるいは道徳上どういうようにお考えになるか、それを承りたい。
  36. 山本利壽

    ○山本(利)政府委員 いま本件につきましては、先ほど来刑事局長から御説明申し上げましたように、これは純粋な刑事問題としての処置でございます。ただいま神近委員の私に対する意見を申し述べられましたのは、こういう人物が教育者として適当かどうか。これは少なくとも学内において、自分のほうが雇っておるといいますか、いまの診療関係及びそういった方面の教授を依頼しておる人と、原因がどこにあろうと、そういういさかいを起こして、多少とも傷害を加えるというようなことは、まことに教育者としては遺憾しごくだと思います。けれども、その人が大学長としてほんとうに適当であるかどうかという点については、なおその人がどれだけのまた長所を持っておるかということも調べてみなければなりませんけれども、私、今日までのところ柴田という方に、まだどれだけのよい面があるかというようなことについて、一向聞き及んでおらないわけでございますから、ここであの人が適当であるとか不適当であるとかいうことを断定するわけにはまいりません。繰り返すようでございますが、その断定はできませんけれども、大学長として自分の大学の先生または学生たちと、ときどきいろいろなことで衝突が起こり、部下の者に不満を与えるというその点だけから考えますと、私は、教育者としてはまことに遺憾であり、お気の毒な方である、かように考えます。
  37. 神近市子

    ○神近委員 私は、次官のお考えが、ほんとうにまともなお考え方だろうと思うのです。で、刑事局長に伺いまずけれど、そういうあなた方は甘い、私どもから見れば甘い判決を出して、年寄りでございます、あるいは柴田象の何年来かのかかりつけの医者でありました、あるいは病院をやったなんというのはみんな、文部省にあとで尋ねますけれども、うそなんですよ。病院長をやっておる人、そうしてその人に奥さんが始終かかっていた。そうして、そのあとでできた問題で、文部省のこの報告には、首になったから病院を開設したなんて大うそが書いてある。  刑事局長に伺いますけれども、その判決をあなた方がお出しになったときに、文部省にそれをお聞かせになりましたか。法務省は法務省のことをやっておればいい、文部省は文部省のことをやっておればいいというわけで、その批判というか、あなた方の考えを文部省に聞かせておおきにならなかったのですか、どっちなんですか。
  38. 津田實

    ○津田政府委員 この柴田に対する起訴処分は、先ほども申し上げましたが、ステッキで突きかかったという暴行でございまして、これは傷害を与えたわけではございません。傷害の診断書というのは、先ほど申しましたように証拠価値がきわめて薄く、それを傷害と認定することはできない。そういたしますると、従来往々にして巷間けんかというのがございますが、けんかで多少なぐりかかったということがあっても、傷害が起こっていない場合は、これは起訴猶予になるのが普通であります。したがいまして、この事件を、特にその背景とかそういういろんなことを考えて起訴猶予にしたということでは絶対にありません。要するに暴行事件、しかもけんかにおける暴行事件で傷害が起こっていないとすれば、通常の場合は起訴猶予となるのが普通でありまして、特段の事情があれば別でございます。そういう意味におきまして、これはけんかという面からものを見れば、きわめてささいなことだということになる。きわめてささいなことは、こういう地位にある者はやることではないということは当然のことでありますけれども、しかしながら、やった場合は、それじゃ地位があるから起訴すべきだ、こういう議論にはならない。これはやはり全体として考えて、全体の基準に従って起訴猶予にしたり、起訴したりするという性質のものであると思うのであります。  それから、文部省に連絡したかというお尋ねでございますが、本件は起訴猶予でありますので、起訴猶予につきましては、もちろん告訴人に対しましては通知をいたしますけれども、これは起訴猶予ということで、検察庁限りということになりますと、これは本質的には外部に秘匿すべき事項でございますので、文部省に特段にこれらの事実を知らせるということはいたしておりません。国会におきましては、御調査があるから申し上げるだけでありまして、これを一般に公表するというようなことはいたしておりません。
  39. 神近市子

    ○神近委員 この佐藤某教授をなぐったということのほかに、この前に三隅という人をなぐっておるのです。これも公衆の前で、学生あるいは教授の前でなぐっておる。学生なんかはしょっちゅうなぐられておる。私は、こういうような集積の結果として佐藤教授のことが起こったということを考えています。  それで、私はここへいろいろたくさん問題を持っておりまずけれど、一点だけ。これは文教と法務とで合同審査ということに約束がなっていたのですけれども、きょう突然日があったというので、文教の方がきょう出られないのですけれど、私は文部省の方が見えているならちょっと伺いたい。  鈴木忠一という方の司法研修所の講演で、法務関係は保守でなければならないというような講演をしている。これは、私ちゃんと持っていますけれど、やっている。法務というところは非常に保守なものだということがよくわかるのですけれど、文部省だけは、たとえはこの間中村大臣がいろいろ教育の、たとえば五歳就学とか、あるいは古都保存法だとか、いろいろよい法律をつくっていらっしゃる。ですから、少なくも、文部省だけは、私は多少進歩的なことをお考えになってもいいと思うのです。いま審議官としてあなたのお仕事は、大学、あるいはその他の学校についての価値評価というようなことのやり方について、しょっちゅう関係をなさっていると思うのですけれど、いまの国士舘のあり方——まだたくさんありますよ。委員長が早くやめろといわれるし、後日またこの問題はやるそうですから私はこの次にやり直します。やり直すけれど、この問題が道徳的に、自分と同じ学校の教授を数百人の生徒の前で、そして教授の前でなぐって、けって、二カ月の傷を食わせた。それを起訴猶予——私は法務省の方々そうでないとおっしゃっても、 いや総理大臣だとか、いや外務大臣だとか、この学校は五人の閣僚の名前を使っている。確かにいろいろ古い文書を見ると関係があるということがわかる。だから、ああいう起訴猶予になんかなさったんじゃないか。検察審査会にかけても、この数字を見れば、これはもうすぐ消されるということはわかりきっています。私はちっともこれには期待できないと思うのです。きのうその話が出たのですけれど、審議官として、こういう暴力を教えるような大学をこのまま置かせていいとお考えになるかどうか。文部省の報告なんかは、もうてんでうそばかりでしたよ。これはおそらく文教で問題になりますから、私もあれは目を通しておりますけれど、ともかく審議官として——起訴猶予にはなったけれと、暴力をふるったということは事実である。そして、年が七十過ぎて、少し老化をしている傾きもある。私は、七十だからこの犯罪を見過ごしにするということ、老化だからこれを許すということが考慮されていると思うのです。そういう人を大学の学長として毎日、毎日——まだ暴力の問題はたくさんあります。人権擁護局にもお尋ねしたいことがあるのですけれど、委員長が早くやめろということですから、やめなければならぬのですけれど、これでいいと審議官はお考えにはなるかどうか。この報告書を見ると、電話で聞いたのかどうか、柴田君が言ったとおりのことを書いてあるじゃありませんか。横山という学監ですか、その人と、学長が言ったことが書いてあるじゃありませんか。それをあなた方は、あのままでいいとお考えになっているか。あるいは今日ここで多少事実を聞いて、そうだったかというふうにお考えになるか。どちらかということをお伺いしたい。
  40. 清水成之

    ○清水説明員 私最近七月、大学のほうに参りましたが、その点まだ不勉強でありますので、正確なお答えができないと思いますが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  最初に報告書の点でございますが、三月公文をもちまして大学へ照会をいたしたのでございます。それに対しまして文書をもって回答がきましたものを、そのまま国会へ提出をしたといういきさつのようでございます。  なお、いま御質問になりました柴田館長兼学長の点につきましては、私ども、先ほど刑事局長からお話がございましたように、事実関係につきましては、ごく最近まで知らなかったのでございます。調査関係も文部当局としまして御承知のとおりできにくい問題でございまして、国会審議を通じまして、いまの事実を承知したようなことでございます。そういう事実の前提の上に立ちますならば、先ほど政務次官からお答えがございましたように、柴田舘長は、かねがね教育に非常に熱心な方であるということは私ども聞き及んでおるわけでございますが、そういう事実に対しましては教育者として非常に遺憾なことである、こういうように私たち考えております。
  41. 神近市子

    ○神近委員 その熱心というのは、ほんとうに平和を愛する日本国民をつくろうというのじゃないのですよ。いまあの人たちは暴動でも起こして、日本に革命を起こそうというようなこと、そういうことをしょっちゅう口にしているのですよ。温厚な人では絶対にないのです。あなた方は何を一体わざわざ見に行ったのですか。人間に会ってみて顔だけで、言うことだけであなた方は判断してはだめなんです。その人の行動を全部さらってみないと……。たとえば学生たちに、自分たちのことを書いた新聞、朝日新聞を読むな、そしていまここに紙がありますけれど、こういう紙をみんなに回して、ほかの新聞を読めというようなことをやっている。この間人権擁護局にこの一人の生徒が呼ばれて、午後四時に行くというのが、暴力団の、あの運動部か何かの何十人というものにつかまって、さんざんたたき上げられて、おまけにメモをとられて、そのメモにあった二十六人というのがみんな退学とかあるいは停学とかになった。四人は退学になっているはずです。そういう事実をあなた方は知らないでいて、ただ会ってみて調子よく言われたことで問題を判断していらっしゃるということは、私はちょっといただけないと思います。でも委員長がしきりに時間のことを気にしていらっしゃいますから、また後日委員会をやるということですから、そのときにもう一度御足労でも来ていただいて、さらにこれはまだもっと究明したい問題がたくさん残っておりますから、私の質問をここで中断して、この次にやらせていただきます。
  42. 小島徹三

    ○小島委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会