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1966-07-20 第52回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十日(水曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 小笠 公韶君    理事 木村 俊夫君 理事 砂田 重民君    理事 山本 勝市君 理事 井岡 大治君    理事 兒玉 末男君 理事 村山 喜一君       坂村 吉正君    床次 徳二君       藤尾 正行君    粟山  秀君       帆足  計君    玉置 一徳君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         経済企画政務次         官       鴨田 宗一君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         通商産業政務次         官       堀本 宜実君         通商産業事務官         (重工業局長) 高鳥 節男君 委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤沢 璋一君     ————————————— 七月十三日  消費者基本法案春日一幸君外一名提出、第五  十一回国会衆法第一六号)  物価安定緊急措置法案堀昌雄君外二十四名提  出、第五十一回国会衆法第四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 小笠公韶

    小笠委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 本日は、理事会の申し合わせによりまして、粗鋼生産調整の問題だけにしぼって質問をいたしてまいります。  通産省は、鉄鋼業界の強い要望にこたえて、七月から九月の第二・四半期生産調整を、公取委員会の強い中止申し入れにもかかわらず、指示をいたしているわけでございますが、それには、やはりそれ相当根拠というものがなければならないし、また、理由がなければならないと私は思うのです。したがいまして、まず第一に、通産省がそういうような立場を強行したというその理由というものにつきまして、これはやはり政務次官のほうから——大臣出席であられるならば大臣から御答弁をいただくのでありますが、OECDの会議に出かけておいでになりますので、政務次官のほうから、この立場について御説明を承っておきたいと思います。
  4. 堀本宜実

    堀本政府委員 今回の粗鋼生産調整につきましては、鉄鋼業が全体としてまだ不況の域を脱し切っておりません。いま調整措置をはずしますと、現在の設備余力等から考えまして、市況が急落をするというおそれがございますので、ことに中小の平電炉メーカー等、小さい業者にとりましては重大な打撃を与えると見るのでございます。また、経済全般回復基調に少なからぬ悪影響を及ぼすであろうということが予想されますので、通産省がその責任のもとで実施をしたものでございまして、現状ではやむを得ない措置であると考えたのでございます。  お話しのように、通産省公取委員との間に若干の意見の食い違いが残っておるのでございますが、それは、不況状態程度生産調整を行なわなかった場合の業界に与える影響等につきまして、両者の認識が若干食い違っておるということであろうかと思うのでございます。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、具体的な価格現状等につきましては後ほどお尋ねしてまいりますから、それは政府委員のほうで説明を願うことにいたしまして、まず、対立する立場にあります公正取引委員会に、この中止申し入れをいたしました根拠理由というものにつきましてお尋ねをいたしたいのでありますが、独禁法違反であるとまでは公取委員会のほうは言っていないわけであります。独禁政策上望ましいものでない、好ましくない、こういう立場をとっておるようでございますが、公正取引委員会のその中止申し入れ根拠理由というものを、概括的に御説明を願いたいと思います。
  6. 北島武雄

    北島政府委員 粗鋼生産調整は、昨年の七月から実施せられておるわけでございますが、当初本措置をとるにあたりまして、公取といたしましては、もし鉄鋼業界不況であって生産調整を行なう必要があるならば、独占禁止法に基づく不況カルテルによるべきであって、行政指導による生産調整は好ましくない旨の意見を表明いたしたわけでございます。しかし、通産省といたしまして、鉄鋼業界内部事情から不況カルテルの結成が困難である、それからまた、この粗鋼生産調整をもって日本経済景気振興のてことして早急に実施する必要があると判断せられまして、通産省責任指導においてこれを実施するということになりましたので、公正取引委員会といたしましても、一応事態推移を見守ることといたしたのであります。しかし、粗鋼生産調整はこの六月をもちましてすでに一年を経過しております。この間、鉄鋼需要は本年の初頭から次第に増加してまいりまして、最近では、一部品種を除いて需給バランスが著しく回復し、市況も大いに立ち直りの状況を示しておるのでありまして、鉄鋼業界全体としては不況状態をもはや脱したと見られます上に、わが国経済全般景気回復も着実な歩みを続けております。昨年通産省がこの措置をとる理由とせられた事態は、すでに解消したものと認められましたので、公正取引委員会といたしましては、第二・四半期も継続したいというお話に対しまして、これは本年度第一・四半期限りで打ち切るべきだ、こういう意見を表明したわけでございます。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、大まかな立場からまた経済企画庁のほうにお尋ねいたしますが、経済企画庁としては、新聞によりますと、物価政策上あるいは経済運営の観点からなるべく早く廃止をすることが望ましい、こういう見解を出されておりますが、これは政府統一見解として承ってよろしいですか。
  8. 鴨田宗一

    鴨田政府委員 お説のとおりでございます。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、今度は具体的な内容の問題に入ってまいりますので、これは事務当局のほうから御答弁を願って差しつかえないと思います。  いま伺っておりますと、通産省としては、この調整をはずした場合には市況が悪化するおそれがある、特に弱体企業である平電炉メーカーに大きな圧力が加わってくる、やむを得ない措置として今回第二・四半期も同様な措置をした、こういうことでございます。その理由とされております不況要件が、今日の状態の中においてあるかどうか、そしてなおそれが、もし調整がはずされた場合にそういう事態に突入をするおそれがあるかどうか、これのいわゆる現状認識の問題が、お互いに食い違っておる中において論議されても始まりませんので、現在の市況から見てまいりまして、あるいは生産余力の点から見てまいりまして、そういう事態が招来されるかどうかという問題を、数字の上から説明を願わなければならないと思うのでありますが、まず通産省のほうで、そういうようないわゆる不況要件が存在をするという現状認識をされます、その説明を願っておきたいのであります。
  10. 高鳥節男

    高島政府委員 鉄鋼業粗鋼生産調整を継続しなければならないバックグラウンドになりました事実の認識につきまして申し上げてまいりますと、ただいま御質問のありましたように、第一には、まず現在の市況、表面的にあらわれました価格状況をどういうふうにとらえるかということであり、第二には、その背景にあります鉄鋼業実態と申しますか、設備余力、あるいは鉄鋼業界の現在の協調機運と申しますか、ある姿というものに関連する部分と、この二つに大まかに申して分かれるかと思います。  市況のほうでございますが、これは中小企業への影響等中心考えねばなりません。丸棒中形形鋼線材等分野、あるいは亜鉛鉄板パイプ等もこの傾向がございますが、この分野は、粗鋼生産調整を前年始めましたその時期と同じように、価格低迷状態になっております。ものによってはやや落ち込んだものもございます。幾ぶん回復しているものがありましても、ほとんど横ばいに近いという状態でございまして、これが大体全体の半分くらいのウエートを占めている分野であるかと思います。そのほかに、薄板あるいは厚板というような分野になりますと、これは生産調整の効果も出てまいりまして、相当回復の実績を示してまいっております。ただ、これがどこまで回復していくかということとのにらみ合わせでございますが、国際的な比価をとってみました場合には、まだそれよりは相当低位にある感じでございますが、これは、まずいいところへ回復をしてまいっておるかと思います。  そういった状態前提にいたしまして、なお今後の状態判断いたします場合に、その背景になる第二の柱であります鉄鋼業実態ということとあわせて判断をいたさざるを得ないわけでございますが、まず、第一に生産能力は、現在、年率で申しまして約一千万トン程度余力をかかえておるという実情にございます。現在粗鋼生産いたします転炉平炉電炉といったような分野でございますが、その中で、もしこの際生産調整をはずしました場合に、平炉中心にいたしまして、修理等を要するようなものは一応除いて考えてみましても、五百五十万トンから六百万トン程度のものが直ちにこの第二・四半期で稼働する年率で申しての数字でございますが、そういう実態にございます。  こういう稼働の余力及びスタートし得る状態というものを客観的にとらえます以上に、さらに考えねばなりませんのは、鉄鋼業界の現在の経営者としてのものの考え方と申しますか、雰囲気というものが非常に大きな要素をなしておりまして、現在の鉄鋼業界は、いろいろ過去においても問題を起こしてまいりましたが、中小企業電炉中心に非常に多いということのほかに、高炉を持っております大メーカー相互間におきましても、昔のような大きな製鉄会社があったという時代とは変わっておりまして、最高でも二〇%を割るくらいのシェアに相なっております。それが全体としまして六社、あるいは高炉を持っているものを総ざらいしまして十社というような状態でございまして、これがお互いにドングリの背比べで、シェア争いを非常に強くやっていく機運と相なっております。特に製鉄業は、最近技術の革新によって、一本の高炉を建てますと、大体百五十万トン程度粗鋼ベース生産の増加を来たす状態になってまいって、さらに能率も今後上がっていく可能性が非常にございますし、世界各国規模製鉄所の建設に狂奔して、これによって国際競争力をかちえようという雰囲気にございますが、そういう状態前提にいたしまして、今後の鉄鋼業が六ないし十社のかたまりでこれが高炉を建て、平炉を用意し、転炉をつくり、あるいは圧延の設備をつくっていくという場合に、非常に大きなユニットのもので対処しなければならぬということに落ち込んでまいっております。そういう状態前提といたしますと、鉄鋼各社は、採算でもうかるかどうかということを生産基調にするよりは、できるだけ自分のシェアを大きくして、将来の設備投資なりなんなりを握っていく基礎をつくっていきたい、こういう気持ちが非常に衝動として強いわけでございます。これが、いま鉄鋼業相当の大企業でありながら、過当競争状想といいますか、まとまりのつかない状態におちいっている非常に大きな動機に相なっております。そういった業界のムードと一千万トンの設備余力というものが結びつきまして、ポテンシャルにこの傾向相当強く生産調整の上に、調整をはずした場合の影響としてあらわれてくるのではなかろうか、こういう判断をいたしたわけでございます。  以上が、私どものほうの事実認定の基礎になった方針でございます。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 その具体的な経済実態市況実情については、数字をあげてまた後ほど質問をしてまいりますが、いま重工業局長から説明されました内容は、生産余力というものが年率にして一千万トンというものが予想される、その中におけるいわゆる業界シェア争いというものは、これは、このまま放置しておった場合には企業自体自制力にたよることはできない、こういうような危惧の表明をされたわけでありますが、それは、やはり粗鋼生産調整をするにあたっての二つの柱になろうと思うのであります。一つ不況要件の問題、一つ企業自体の内部的な自制力に関する問題、そういうような問題の理由の柱になろうと思うのであります。これにつきまして、公取としては異なる見解を私はお持ちであろうと思うのであります。そういう立場から公取見解を、不況要件があるのかないのか、ないという立場生産余力というものは、これは第二・四半期においては七十万トンくらいのものではないかという推察をしておられると私たち承っているのでありますが、そういうようなものについて説明を具体的に、これは事務当局のほうからでもけっこうでありますが、お願いしたい。
  12. 北島武雄

    北島政府委員 先ほど通産省から御説明がありましたように、一部の品種についてはまだ価格が立ち直っていないものもあることは事実でございます。たとえば小形棒鋼中形棒鋼中形形鋼あるいは普通線材亜鉛鉄板、こういった種類のものでございます。しかし、こういった種類のものといえども、最近は強含みで強調を呈しておりまして、操短前に比べて値上がりしておるのでございます。私ども考えといたしまして、これらの品種についてもし不況要件があるならば、これらの品種別不況カルテルをやったらどうか、こういう考えであります。鉄鋼業全体としては、私はもうすでに不況状態を脱したと思います。あとでまた数字はいろいろ出るかと思いますが、原板、中板、熱延薄板冷延薄板あるいは軽量形鋼、こういった品種につきましては、最近、いわば過熱状況を呈しておるような状況でございます。こういった点全体を総合して考えますと、鉄鋼業全体としてはもうすでに不況事態を脱したのではなかろうか、こう考えます。  独占禁止法上の不況カルテル不況要件といたしましては、需給が著しく均衡を失したために、価格平均生産費を下回るような場合に不況カルテルが認められるのでありまして、粗鋼全体として考えてみますと、鉄鋼全体としてこのような事態はもうすでに脱した。たとえば三月期におきましては、各鉄鋼会社の経理も、相当無理な配当もあるいはしておったかと思われるのでありますが、おそらく九月期、十月期におきましてはそのような事態はなく、積み立て金の取りくずしなどの手を使わなくて一割なり、八分なり、六分なりの配当を維持できるのではなかろうか。こういう状態になりますと、全体として平均生産費を下回るという状態ではないのじゃないか、こう考えまして、鉄鋼業全体としてはすでに不況事態を脱した、こういうふうに判断しているわけでございます。  それから、次に設備余力が一千万トン程度あって、もしこれをはずせば、さらにシェア争いのために一斉に増産に転ずる、そうすると市況が反落して、ひいては日本経済にも悪影響を及ぼすのではないか、これが通産省の御心配であります。お立場としてはごもっともな御心配とも思うのであります。ただ、先ほどもお話がありましたように、設備余力一千万トンと申しましても、直ちに稼働できるのは、年率にしまして五百、五十万トンから六百万トンというお話、これは一つ四半期だけにしますと、百四、五十万トンということになるわけであります。当初の私どもに対するお話では、第二・四半期において約百万トン程度直ちに稼働できる能力があるというお話でございましたが、すでに第一・四半期に比べまして六十八万トンも割り当てを増加いたしておる。こうなりますと、直ちに稼働し得る設備余力というものはきわめてわずかなものになるのでありまして、たとえ生産調整をやめましても、一斉に増産競争に走って、そのために価格が著しい反落を呈して、日本経済悪影響を及ぼすというようなことは万々ないのではなかろうか、こう私ども考えているわけであります。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、まず不況要件状態が実在をするかどうかという問題の意思統一がなされていないと私は思うのです。そこで、今日の市況というものは、一体どういうふうに動いているのかということを、私も経済新聞等をもとにいたしまして調査をいたしてまいりました。その前に、通産省から鉄鋼価格推移についての資料をいただいております。これと見比べながら、今日の市況は、一体通産省が言っているような状況低迷をしているか、どうか、この現状認識というものが一致しなければ議論の発展性はないわけでございますので、そこで七月十五日の価格調査をいたしてみたのでございます。  いま、通産省当局説明によりまする丸棒とか、あるいは中形形鋼線材、こういうようなものを一つ一つ調べてまいりますと、必ずしもここに数字として打ち出されているものよりも実情は悪くなっているのではなくて、最近においてはきわめてよくなっているという現象があらわれておるのであります。たとえば、七月十五日の小形棒鋼の場合には、東京市場においてトン当たり三万一千八百円から三万二千円、それから大阪市場は三万二千円から三万二千五百円という数字になっておる。これは、四十年の六月に生産調整を始めた当時においては三万円そこそこであったものが、それがずっと続きまして、そしてことしの六月ごろまでは同じような傾向があったけれども、七月に入りましてから急激にこれが上昇傾向に転じている、このことが言えると思うのであります。それから中形形鋼の場合におきましても、これは届け出価格が三万五千円ということでありますが、すでに四万三千円から四万三千五百円という市況が出ておる。これは、いろいろな形鋼によって違うわけでありますけれども、そういうような状況が出ておる。それから厚板、中板につきましては、これは通産省も認めておりまするように、四万三千五百円から四万四千円、すでに届け出価格の四万三千円というのを上回っているという状態にきておる。まさにこの点は過熱状態にあると私は見ているのであります。それから冷延薄板につきましても、これは一番値上がりをいたして、緊急放出といいますか、大手高炉メーカーに対して、そのような指示もされたと聞いておりますが、東京市場におきましては、五万九千円から五万九千五百円という価格が出ておる。これは、そういうような調整措置をとられたので若干下がっておるかもしれませんが、中には、六万円という価格も聞くというような状態東京市場においては生まれておる。ただし大阪のほうは、五万三千円から五万三千五百円という届け出価格のところを低迷しておるようでありますが、これにいたしましても、生産調整を始めたころに比べますと、約一万円のトン当たり値上がりでございます。鋼管については、これはいまのところあまりさえていないようでありますが、上亜鉛鉄板にいたしましても二百四十円、線材関係は、不況低迷状態にあるといっても差しつかえないと思うのでありますが、そういうような状況が今日の価格現象としてあらわれてきておる。  とするならば、いわゆるこの市況というものは、日本経済の全体的な景気回復といいますか、不況から脱出をしていく中において、公共投資中心設備投資が行なわれて、そういうようなところから需要と供給との関係において、あなた方が六十八万トンの粗鋼増産指示されておる、その増産指示体制の中において生産調整が行なわれているという一つ現象があらわれているわけです。その現象下において、なおこのような価格上昇というものが行なわれておるという状態が生まれてきたとするならば、これは明らかにこういう生産調整という源を閉ざす行為によって、価格自由形成が行なわれないという、一つの典型的な現象としてとらえなければならないかと私は思うのでありますが、そういうような市況は、今後において持続をしないという見方を通産省としてはされておるのかどうか。こういうような過熱状態におちいった一部の部門に対しては、どのような措置をされるのか。これは生産費低位状態にとどめる、こういうねらいがやはり物価政策の一環としてはなければならないと思うので、そういう立場からするならば、このような状況が今後において続いていくという見通しが立つならば、基本的な考え方前提条件がくずれてくるということになるわけですから、そういうような場合には、それに対応する政策の展開がなされなければならぬ。もし、これは一時的な現象であって、将来はそういうような状態ではございませんというのであるならば、それに対するところの説明がなされなければ、私は公取委員会の理論に対する反駁ができないのではないかと思うのでありますが、それに対する通産省説明はいかがでございますか。
  14. 高鳥節男

    高島政府委員 ただいま村山先生からお話のございました市況の実勢でございますが、一般専門新聞等が伝えておりますのは、おそらく市中相場中心としたものであろうと思います。この市中相場は、いろいろな心理的な要因で動いてまいりまして、結局、それがどれくらい鉄鋼販売体制の中でウエートを占めているかということが問題になってくるところであろうかと思います。御指摘の、一番強含みになっておるという冷間薄板等で実例を見てまいりますと、このうちの八割程度大口需要家に対して直送をいたしております。これは取引形態一つ特異性であります。これは五万二千円程度値段取引が行なわれておるようでございます。残りの二割が結局店売りになっていくわけであります。この中にも特約店経由という形で、大部分のものがひもつきになっております。これがやはり五万二千円から五万四千円ぐらいの取引で動いているようでございます。五万四千円という一つのめどをはるかに突破した例があるではないかといまおっしゃいましたのは、おそらくその残り部分、いわゆる特約店経由のうちで浮動的に需要家に売り出されている部分でございますが、この部分は、全体に占めるウエートは何%になりますか、二〇%のうちのおそらく一、二%のものではないかと量的には思われますが、これが、粗鋼生産調整が続くとか、あるいは公共投資の上半期の繰り上げといったような材料を衝動的に織り込みまして、相当高い相場東京に出ておるわけでございますが、そういう現象があることは事実でございます。それで、私どものほうも全体の増ワクをいたしまして模様を見ておりますと同時に、特にこういった分野に対しては、その分野での生産あるいは出荷の払い出し等の処置で対応していけ、大体こういう感じで臨んでおるわけでございます。厚板についても、取引形態は大体薄板に準じた、一般のほうは長期契約ひもつき契約で安定をしておるという点は変わりありません。それから中形形鋼あるいは小形棒鋼といったような中小のほうの分野は、これは国際価格に比べてもはるかに下がっております。冷間薄板あるいは厚板等も、国際価格に比べるとまだはるかに低位にあるわけでございますが、小形棒鋼中形形鋼等取引は、これはいまの冷間薄板等とは違いまして、市中取引に依存する分野相当多いところでございますけれども、この値段は、大体現在押えてみましたところで、小形棒鋼については三万円見当に、昨年の六月より落ちたということが問題であったわけでございますが、これが六月に入りまして三万円台にかろうじて達し、七月の最近のところが幾ぶんそれよりも上回ってきたということで、ここは非常に不況状態が激しいところでございまして、せめて三万五千円ぐらいには直していくべきものではないだろうか。四十年の一月見当で見てみますとその辺の相場になっておりますが、それに極力近づける努力を要する分野ではないだろうか。中形形鋼につきましても、大体三万五千円見当のところをねらいとしていく品種だと思います。先ほど御指摘の四万三千円というのは、私、少し高く出過ぎているように思いますので、この点はちょっとチェックをいたしてみたいと思います。  以上の状態で申しますと、確かに鉄鋼市況そのものは、ある意味においては生産調整の継続ということでカバーされつつ、そういった市中相場的なウエートが軽い分野でございますが、そういうところが比較的強気を示しかけておる。これに対処する方法としまして、われわれのほうは数量を増加して、数量増加の対策によって、この分野値段を適正なところの水準に極力保つ方向で持っていきたい、そしてこういった生産調整が自然のうちに、むしろ操業度も上げつつおのずから自然に解消していくという方向に次第に追い込んでいくべきものではないだろうか、こういう認識を持っておる次第でございます。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 通産省説明を承っておりますと、まさに統制経済下における官僚統制の最たる見本のような説明をされるわけです。そういうような考え方でやっていくならば、鉄鋼というものは国が価格をきめるという政策が優先をしなければならないと私は思うのです。自由な価格形成というものが閉ざされて、そして鉄鋼公販制の価格支持のもとにおいて鉄鋼業界があぐらをかいておるとするならば、いまはなるほど国際価格に比較をして低価格でありましょう。しかしながら、外国の企業の場合にも、イギリスの鉄鋼の国有化措置の問題にも関連をするように、近代的な大型の鉄鋼施設をつくり上げて、そして生産性の向上をはかると同特に近代化措置をする、そうする中において民間企業に対する意欲的な合理化、近代化政策を、これを手本にして価格競争を再現させようというような動きが見られているわけです。これはイギリスの例だけじゃなくて、イタリアにおいても、あるいはフランス等においてもそのような方向がとられようとしている。  今日、経済不況を脱出するために、アメリカに主としてこの鉄鋼を輸出することによって、日本の不況を脱出しようとして輸出ドライブがかけられたわけですが、なるほど今日の状態においてはそういうようなことがいえるとしましても、このような状況をいつまでも続けておったら、これは、価格の硬直性という問題を中心生産性の向上などというものは消されてくると私は思うのです。  最近の鉄鋼業界の首脳部あたりの意見表明をめぐりましても、鉄鋼は日本の産業を支配をする、したがって、国家権力によって生産調整等は当然やらなければならないことであるし、そして自由競争にまかせておったのでは、経済の上から見た場合は不景気を招来をする、不景気が生まれてきて不況が存在をする中において日本の経済の安定はあり得ない、したがって、自分たちとしては二社制というのですか、日本全国を二つに割って、そしてその中で処置をするとか、あるいは、今日の独禁法は業者団体の生産調整については認めていないので、鉄鋼についてはそういう独禁法の政策を改めて、話し合いによって価格をきめ、生産調整をやり、そうして競争の原理というものを押えていくような措置をとらなければならない、こういうようなかってほうだいなことを言っているわけです。  私は、通産省がお出しになりましたこの資料は、ほんとうにどこのあたりの資料をおとりになって出されたのか、この数字の食い違いをちょっと説明を願いたいのでありますが、通産省の「鉄鋼価格推移」という資料は、市況の中における最低の価格をここに取り上げられてわれわれのほうにお出しになっていると思う。ところが、公正取引委員会のほうからの資料をここに私いただいたのですが、これは最高と最低の中間値で統計指数をあらわしている。たとえば、いま重工業局長のほうで言われました中板の場合ですが、ここには厚中板として一緒にしてありますけれども、私、先ほど四万三千五百円から四万四千円ということの話をいたしましたが、これを中板の四・五ミリでとってみますと、公取のほうで押えた資料は、これが五万五千五百円という数字が出ている。厚板の場合にいたしましても四万五千三百円という数字が出ている。あなた方のほうは、ここに資料としていただいた中には、これは十二ミリですから厚板になりますが、その場合に四万一千円という数字が出ている。そこで、四万一千円対四万五千三百円というような、いわゆる統計指標のとり方自体にも、私は今日の市況回復をした、しないという問題のとらえ方の起点が違うのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでありますか。たとえば、具体的な例として厚板の場合は、この四年来の高値を呼んでおると私たちは市況状態から見ている。というのは、この価格の形成の推移をたどってまいりますと、最近の価格現象というのは、四年来の高値を呼んでいる、こういうふうにとらえて差しつかえないと思うし、中板の場合におきましても、公販価格をすでに五千円も上回っている。こういうような現象があらわれているわけですが、これをいまのような通産省措置によって、価格を公販価格あるいは届け出価格以下におろす自信があるのですか。その点を、自信があるならあるように答弁を願っておきたい。
  16. 高鳥節男

    高島政府委員 ただいま御指摘の厚中板は十二ミリのものをとっておりまして、それで御指摘のように六月三十日現在で見ましたこの資料によりますと、四万一千五百円の下値に対して四万三千円が高値でございます。その間のところにちょうど厚中板というものは回復をしてきているというのが実情でございます。したがって、私もこれが非常に不況に沈んでいる状態だとは思いません。相当いいところに回復をしてきている品種であろうという感触でございます。七月のほうのデータはちょっとここにございませんが、あるいは若干の変動があるかもしれないと思います。したがいまして、こういった品種全体につきまして、総合的に鉄鋼業全体から判断いたしての結論をつけたわけでございますが、冷間厚中板等の価格届け出価格に大体近づいてまいりつつあるという状態にはあるかと思いますが、これは、大体その辺まで国際価格等と比較してみて回復してくるのが、まず穏当なところではないかという感触を持っております。今後は、生産の増加が第二・四半期において相当計画をされるように指示いたしましたので、その成果があらわれまして、それぞれの分野に鋼材の供給がふえてくる時期にあるかと思います。厚中板は、長期的に見まして、どちらかというと非常に沈んでいたもので、相当に長期にわたってこれの価格対策ということに頭を悩ましてきた品種でございます。それがようやく最近この辺のところへ返ってきたという感じではなかろうか、こういうのが私の判断でございます。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、この届け出価格なりあるいは公販価格のラインというものが適正なものである、こういう現状認識に立って通産省生産調整をやられるわけでしょう。そうするならば、一体届け出価格というのはどれだけの適正なマージンを見込み、そしてどういうようなものであるのか。これは自由に価格が形成をされるわけではなくて、原価計算から何から全部やりまして、これが適正価格なりということで鉄鋼公販価格というものがきめられる。あるいは日常の実際売買取引をされているその立場から見て、届け出価格というものが一つのラインとして示されている。それはやはり適正なものであるのだということをあなた方が確認をされておるわけですか。それとも鉄鋼連盟あたりが、こういうようなものが望ましいんだとして出している数字なんですか。
  18. 高鳥節男

    高島政府委員 鉄鋼のこの価格が幾らであるべきかの基準の求め方は、先ほど先生御指摘がありましたように、統制経済をやっていない現状におきまして、非常にこれは把握がしにくうございます。石炭あたりでございますと、全部でつっくるめて、これも品位の問題はございますが、全体の生産に対しての原価というものは非常につかみやすうございますが、何しろこれだけの品種にわたりましたそれぞれの原価をまさぐってまいりますことは、それぞれの品種がやはり原価変動が激しく、需要に応じてやってまいります生産の数量いかんによって非常に狂いますので、なかなかこれは把握のしにくい性格のものだと思います。それで、基準としてわれわれの頭にございますのは、やはり国際価格という感じでございます。国際価格というものもまた、これは比較の時点やらそれぞれの取引実態やら、アメリカあたりでも相当いろいろ価格のストラクチャーがあると思います。その辺はなかなかむずかしゅうございますが、現在われわれが見ておりますのは、一応向こうで出ました国際価格よりは、現在の突発相場、あるいは届け出価格としてそこまで回復をしようとして努力をしている相場、ともに国際価格相当下回っている。むしろ日本の鉄鋼については、外国のその資料等と突き合わせてまいりますと、非常に過当競争の結果、価格水準は安いという結果が出ております。価格構造全体を分析してまいります場合に、こういった分野は、ある適正な水準のところまではやはり回復をしていくべきものではないだろうか。現在、各社ともに相当経費の切り詰めをやりましてこの上期に入ってきておりますが、もちろん、増配できるようなことはなかなかない状態かと——まだ決算がまいりませんが、前期ではかなり積み立て金の取りくずしその他でつらい決算といいますか、やかましく言えば、いささかどうかと思えるような決算をやってまいらざるを得ない現在の状態でありまして、この状態は、今期は続いてまいると思います。そういった状態から判断いたしまして、現在程度届け出価格あるいはその前後ぐらいのところの相場にはいくのが、まず適正なところではないだろうか。ただ、一部市中でやや思惑的な高価で出たりすることは、これは好ましくございません。その点は十分注意をして、生産のほうから、そういった分野に特に量を多目に備えていくということは心がけていかねばならぬと思いますが、全体の水準として非常に高騰するところへ持っていこうとか、独占利潤を握らせようとか、そういう気持ちでやっておるのではございません。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 世界的に価格形成を調べてまいりますと、独占的な部門においては、後発メーカーが参入するのを防ぐために障壁を高くして、そしてその中において独占企業の経営に合うような利潤というものがちゃんと織り込まれた価格形成がなされるのは、これは日本だけじゃないのですが、そういうような方向へ進めていくことが望ましいと考えておられるのかどうか。これはやはり今後の企業形態をめぐる問題にもなりますので後ほど質問をしてまいりますが、最近卸売り物価指数というものが上がってきた。この中身をずっといろいろ調べてまいりますと、神武景気のときには鉄鋼が先頭を突っ走って、そして値上げというものが生まれたわけですが、今回はそうではなくて、鉄鋼は一・四%の上昇にとどまっている。こういうような中身の分析ができるわけでありますけれども、国際市況に比べて日本の鉄鋼価格というものが高ければ、これは輸出も何もできないわけですから、輸出の能力があるということは、それだけ低位生産で、日本の鉄鋼が輸出の花形として外貨をかせぐ、これはやはり価格が安いからこそそういうような貿易が生まれてくると私は思う。これを、やはりそのままこういうような行政指導、勧告操短というぬるま湯の中にいつまでも浸らせておくことが、はたして企業自体が健全な方向になっていくかどうか、このことが私は問題だと思う。したがって、問題は、今日そういうような価格上昇が見られる中において、しかも増産という措置をとりながらなお価格上昇をしていく。通産省としては、粗鋼生産という源を押えておくことによって全体の鉄鋼生産調整による適正な価格形成が生まれてくるという、そしてその措置は、品薄のところにはその部門についての生産を増加させる、あるいは価格がどうしても上昇しないというのであれば、その部門についてはさらに指示をして生産を減らさせる、こういうような行政指導でやっていかれようとしているわけですが、これがやはり私たちの見方からするならば、独占禁止法の定めるところと、政策的に産業政策が矛盾をしているのではないかと思うし、私は違反をしていると思うのです。あなた方としては、それは別の分野なんだ、こういう考え方で第二・四半期は車が走り出したわけですが、第三・四半期においても同じような考え方でやろうとお考えになっているのかどうか、この点について通産当局の考え方をまず初めにお伺いをしたい。
  20. 高鳥節男

    高島政府委員 将来の政策にわたります非常に大事な事項でございますが、まず第一点の、鉄鋼業に対して競争原理というものを与えて、その方向にできるだけ早く切りかえるべきではないかという御指摘、特に、ぬるま湯の中へつかったような状態でそこへなれていくという点は、まことに好ましくないではないかという点は、これは私個人の考え方でございますが、全く賛成でございます。この点は、公正取引委員会よりも、むしろこの第二・四半期において自由に突っ放して、自由競争の原理にまかせたほうがいいのではないか、こういう御指摘もありましたが、ただ、第二・四半期現状に関します限り、先ほどからお話のございます不況の脱出の程度のほかに、その裏になっております設備余力、特にそれとからみました業界自身の機運、これが非常に大事な時期にいま差しかかっておりまして、先ほど御指摘のような、いろいろな意見が出ているではないか、そしてその意見が、どうも独占利潤を壟断しそうな形の意見ではないかという点は、あるいは見方によってはそういう点があるかと思いますけれども、私の若干抱いておる希望は、現在、鉄鋼業の将来について、この七月から九月の期間に、通産省も、あるいは民間も、学識経験者も、それぞれそのある姿を非常に活発に論議をされ出した。その一環として、新聞紙上等に伝えられていますような、ある意味では競争原理を否定しそうな形のものが必ずしもいいとは思っておりませんけれども、将来に向かっての姿について業界自身が芽ばえて、意見が出だしてきたということは、この一番大事な時期にそちらのほうへ話が集中してきたというトレンドは、決して悪いことではないのではなかろうか、こういう感じを抱いております。  その問題と関連いたしまして、第三・四半期以降どういうところへ持っていくかということでございますが、これは、私ども大臣とも目下いろいろと御相談をいたしておりますが、私の感じでは、目下のところいままでのままの形のものを延長していくという気がまえは持っておりません。業界等に対しては、もちろんこういった調整措置は一応ないものとして、白紙で、いかなる体制にあるべきか、いかなる措置をとるべきか、そこを検討していただきたいという要請をいたしておるわけでございます。したがいまして、第三・四半期以降このままの体制でいってしまおうということは、現在考えていないということは申し上げられるところではなかろうかと思います。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで私は、最近の鉄鋼業界の首脳部の人たちの意見を見ておりますと、どうもやはり競争は悪なんだ、協調こそまさに日本の鉄鋼が生きる道である、そうして独占禁止法もこれは悪なんだ、法律によって鉄鋼資本のもうけを確保しよう、経営者立場は、そういうような政策を国がとる中においてその地位を保っていこう、こういう印象を与えるような内容の構想が発表されていると私たちは受け取る。これはまさに、いわゆる経営者立場をみずから放棄した、こういうふうに私たちが指摘しても差しつかえないと思うような意見内容だと見ている。ましてや国民一般は、設備投資をやるときには非常に過当競争をやって、そうしてその産業資本と金融とのつながりの中において、それぞれの金融、産業資本の癒着の中からそれぞれのシェア競争を激しく行なって、その間に鉄鋼公販制等で価格維持をとっているけれども、それがうまくいかぬときには、通産省のそでの下にすがりついて生産調整指示してもらう。好況になっても——これは不況ではないと思う。価格は明らかに上昇に転じている。大体厚板不況カルテルの期限が切れるときには、不況カルテルが切れたら大暴落をするであろう、こういうふうに業界は見ておったのが、何のことはない、一年前の価格に比べると一万円も上昇をしている。そういうふうに自分たちの利益を守るためには大騒ぎをしておりますが、しかし、今日の状態の中においては、設備余力があるからということを一つ理由にして、そうして国家権力の手によって独禁法の精神に違反をする行為を行なっておる。選挙が近づいてくると政党に政治献金をする、そして官僚と独占資本と政治が癒着をしていく中において、自分たちの生活は一向によくならないのに、大きな鉄鋼資本家だけはちゃんともうかっておるじゃないか、こういうような印象を国民は持っておると思うのですよ。これは国民の、いわゆる通産行政に対する不信の声につながってくるし、官僚政治の批判となってあらわれる。あるいは八幡のあの政治献金の訴訟をめぐるように、政治献金をもらっている政党は、みなそれぞれ妥当な判決だと言っているけれども、しかし国民は、また株主の立場から見た場合には、あれは妥当な結論であるとは私たちは見ていないと思う。そういうような形の中で日本の産業の近代化がおくれるということになるならば、これはみずからの足をタコが食べるようなかっこうで、企業自体にとっても望ましいことではないし、日本の産業全体の成長の上から見ても望ましいことではない。そういうような立場から、第三・四半期からは現在のようなものとしては考えないという方向が、すでに三木通産大臣あたりからも出されているように聞きますし、きょうも担当の重工業局長からお聞きいたしたのであります。  そこで、一体それならばどういう対応策を立てるのか。これはやはり業界自体で考えてもらわなければならない問題であると同時に、今日まで指導行政をやっておいでになった通産省自体としても考えなければならない問題だ思います。いまこれについては、鉄鋼関係の小委員会というのですか、それが開かれて、将来の問題をどうするかということについて九月に中間答申が出されるように聞くのでありますが、これは、そういう中間答申を得てやるということになりますと、第三・四半期が十月から始まり——第二・四半期が七月から九月までの間なんですから、九月までにその結論が適当なものが得られない、あるいは業界自体の内部的な体制が整備されない、こういうことになってまいりますと、やはり現在のような調整を続けなければならない。形は若干違っても、そういうような心配があるのではないかと私たちは危惧しているのですが、そういうような心配はございませんか。その点についてお答えを願いたいのであります。
  22. 高鳥節男

    高島政府委員 問題の方向を出しますむしろ基礎の点につきまして、いろいろな先生の御意見、また私ども立場、そこに若干食い違いもあるように思いますので、やや先ほどの繰り返しになりますが、現在の鉄鋼業をどう見ているかというところをひとつお聞き取りいただきたいと思います。  それは、確かにおっしゃるように、自由競争というものを業界の将来の体制の中の大事なポイントとして生かしていかなければならないということは、私もそう感じます。自由競争がすべての経済の進歩の一つの動機でありますから、これを全く抹殺するというような方向には行き得ないと思いますが、鉄鋼業について現在あれだけの議論が出ておるのは、日本だけの問題でもございません。世界各国相通じて悩んでいる一つの問題でございます。これは、鉄鋼需給の将来というものが、日本に限らず各国とも相当不安を持っておるというところにあるかと思います。これは経済成長全体からつながってくる線でございますが、それで西欧、特にドイツあたりでは、あるいは企業相互間の合併、提携等が力強く推進されており、またドイツあたりでは、ある程度の協定が販売面ではできるそうでありまして、がっちりした販売の体制、また生産の体制というものをこしらえ上げて、自山競争の基礎はありつつも、制限された形で、制約された形で自山競争のメリットがそこにこそ出てくる、こういった姿で、過当競争を防止した形で西欧諸国の動きというものは出てまいっております。これが、ひいては西欧自身の巨大製鉄所の建設等が生産コストのダウンと相結びつきまして、将来における日本の大きな脅威になるという時期にまさに差しかかっておるのではないかと思います。アメリカにおいても同様の動きがあること、また企業の形態自身が相当に大きいものであることは、あらためて触れるまでもない状態かと思います。そういう海外の状況、特に日本もこれから新しく設備投資をやっていこうとするものは、メリットとして非常に大きなものでないと将来の競争に立ちおくれる、これはまさに先生の御指摘のとおりで、だから、それで自由にすべてやっていけるのか、あるいはそこに摘当な規制方法をとらなければいかぬのかというところに、直面している一番大きな悩みがあるのではないかと思います。  現在、鉄鋼業界意見は、御承知のように、めいめいそれぞれ違ったニュアンスを持った立場をとっておられます。一部には、確かにこの体制ではだめなんで、極力少数の企業になれ、あるいは生産その他の面でも鉄鋼業として長期にわたって安定することが大事なんだから調整をしていけ、こういった意見も出てまいっております。また一部には、いま、思い切って自由競争でいけ、こういう意見も出ております。したがって、通産省といたしまして、将来の方向がどれでなければならぬということはまだ決意をすべき時期でもないし、鉄鋼基本問題小委員会、お触れになりました九月末を目途に勉強いたしておる委員会でございますが、そこに諮問をいたしておるという段階でもございまして、これだけ議論が活発になれば何らかの方向は打ち出されてくる、こういう期待を持って見守っている現状なのでございます。  その際、第三・四半期以降の体制といたしまして、完全な野放しということはなかなかむずかしい点ではないかというように私は考えております。中小電炉業者の問題もございますし、あるいは今後国内の価格がある程度のところに安定いたしてまいりました場合、さらに輸出についての体制等は、輸出価格がはたして外国の非難を受けないような値段で安定してくれるかどうか等の問題もございます。また、需要者自身も、鉄鋼価格というものがしょっちゅう上がったり下がったり、特に安いところで事業の採算をとって計画を立て、見込み違いになるというようなことが起こりますし、また、下がった場合には、機械等の弱い分野では、とかく買った鉄の原価よりも先に安いところに自分の製品のほうを先たたかれをするというような現象等もいろいろ起こりまして、需要者自身もある線に安定してほしいという要望もございます。そのあたりを総合勘案してまいりますると、いたずらに突っ込んで安い価格になってしまうということでいいのだとは言い切れないところにわれわれの悩みもございますので、したがって、今後の価格推移というものが、いま、まだ増産を命じました効果というものが出ていない現在の段階でもございますし、今後の相場推移等も十分に見ていかねばならぬ段階であろうかと思います。ただ、粗鋼生産調整というものを始めまして今日まで一年有余の間でございます。この期間は、大いに鉄鋼業界自身がある自覚を持つための大事な期間であったと私は思いますし、そういう意味において、最後の仕上げ段階にかかってきておりますので、全体の体制を小委員会の中で方向を出してもらって、その一環で将来の生産というものも、ある線を出していただくことを強く期待をいたしております。ただ、こういった経緯でまいりました制度でもございますし、現在のところでは、状況をよく見てみないとわかりませんが、私としては、このままの姿ですらっと続けていくというようなことは、これは大臣も申しておりますとおり、安易な延長ということになるので、そういう気持ちはございません。しかし、具体的にどうするかということは、きわめてむずかしい課題を背負っております際だけに、目下のところ、こういうものであるということは申し上げかねる次第でございます。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 先ほど第二・四半期生産余力の問題は、公取としては、大体六十八万トン増産指示をされておるので、残りは七十万トン程度という受け取り方をしておるわけですが、先ほどの説明によりますと、生産余力は、通産省としては一千万トン、もちろんその中には、平炉等で修理を伴うものがありますから、年率に換算をした場合に、大体五百六十万トンから七百六十万トン程度、こういうふうに踏んでおられるわけですが、これは、もちろんその生産関係を握っておる通産省のほうの資料というものにわれわれは重きを置かなければならないと思いますけれども、それだけの生産余力があるんだということをおっしゃるが、今日の稼働率というものは一体どういうふうになっているのですか。  それから在庫調整の問題にも関連をするわけですが、そういうような在庫指数というものが、これが私は相当減ってきていると思っているのです。そういう立場から見てまいりますと、操業度もほかの産業よりもこれはきわめて高いと見ております。少なくとも八五%以上の操業度、あるいは九〇%くらいのところまできているのじゃなかろうかと思っております。そういうような状態の中にあり、在庫指数はこれは減ってきている。こういうような状況が生まれる中において、はたして不況であるのかどうか。この点がやはり認識の差にかかってくると思うのですが、かりに、やはり不況部門であるところの鉄線関係、こういうようなものは何らかの措置を、不況産業として将来にわたって講じなければならないと私は思いますけれども、自由に競争さしてももう差しつかえないようなところは、これはそういうような措置をとるということが一つと、それからもう一つは、平電メーカーが企業採算点が非常に低い、こういうような実情もありましょう。しかし、最近の生産状況を見てまいりますと、いわゆる転炉による生産はどんどんふえている。そして平炉は、これは減少の一途をたどっているわけです。そうなってまいりますと、転炉の場合はスクラップはもう全然使わないでやっている、平炉の場合は銑鉄を五割から六割使う、電炉の場合は一〇〇%スクラップを使う、こういうような状態から見てまいりますと、平電メーカーが今後企業の経営を近代化し、合理化する、その中において原材料価格という問題との関係も出てまいろうかとも思うのですが、高炉メーカーと平電炉メーカーとの間に何らかの関連の措置をとるとかいうような、企業の組織形態というのですか、あるいは平電炉メーカーは平電炉メーカーなりに、通産省としての産業政策上から見た企業の近代化、合理化政策というものがなければ、これはやはり生産調整だけをやっておいてそして事足れりというのじゃ、産業政策ではなかろうと思う。そういうようなものに対する政策はいまどのように行なわれているのか、今後どういうふうにして低位安定生産を続けようという考え方に立ち、しかも、企業の経営内容を向上させようと考えておられるのか、そういうような内容についての説明を承っておきたいのです。
  24. 高鳥節男

    高島政府委員 最初に操業度でございますが、この四月に粗鋼生産ベースでは七五%程度に相なっております。その後増産を続けてこれよりは若干上がった数字にきていることは御説のとおりでございますが、余力としては相当あって、しかもその余力の使い方が、業界のサイコロジーと申しますか、姿勢と申しますか、そういうものが前へ進もうという一本やりになってしまっておるという点に非常な心配を持ち、例の小委員会でも、そういった業界自身の機運を何とかここで変え、業界の競争を否定するわけではありませんが、体制を整備して、その体制の中での競争の利益をエンジョイできるようなものがないものかと思って、目下検討を進めているわけでございます。  御指摘の平電炉メーカーについての点、これが弱いからこういった事態をやむを得ずとることにもなるので、そこの対策が確立されることば必要ではないか、まことに御指摘のとおりでございます。一つの方法としまして、平電炉メーカー高炉メーカーとの一つの関連において極力系列化の方向へ取り込んでいって、高炉メーカーが転炉を備え、平炉メーカーが術量的に平炉を持ってその間の調整をやっていくという体制も、これも一つのあり方かと思います。ただ、御承知のように、鉄鋼業のもとのほうの六社というもの自体がまず多過ぎるのではないかというところから議論も発展いたしてまいっておりますので、いかなる体制がこれに即応するかということは、将来の国際競争力考えて、競争否定ではないけれども相当にこれで体制の整った、業者の数の少ない実態を招来するように努力しようということがまず先決になってまいりまして、それと平電炉メーカーのあり方というものがつながっていくようなことになるかと思います。  それに、さらに一つ電炉メーカー問題で頭の痛い点は、現在の鉄くずの価格というものが世界の全体の傾向として下がる傾向にございます。これは平炉から転炉に変わりまして、全体で鉄くず消費量が製鉄業として減ってまいりますと、あふれ出てくるところのスクラップというものがどうしても多くなってまいりますので、どうしてもその値段というものが今後下がっていくのではないか。それで転炉平炉との間の効率というものの差になってまいりますと、一がいに平炉転炉の間の優劣をきめつけるわけにいかないところに問題点が伏在いたしております。したがって、どのくらいスクラップの値段が下がるであろうかという想定から、この平電炉メーカーの行くえというものもひとつ探ってみなければいかぬかと思いますが、何らかの形で、単独に浮動するというかっこうではなく、ある程度系列化されたスタイルになって、スクラップの価格の変動等にも応じ得るような実態にもなるかと思いますので、御指摘のような点も頭に置きつつ、目下検討を進めておる次第でございます。
  25. 村山喜一

    村山(喜)委員 ここで私公取のほうにお伺いいたしたいのは、粗鋼六社、八幡、富士、川崎、住友、日本鋼管それに神戸、これの生産シェアから見てまいりまして、高炉を一本つくったときに百五十万トンの生産能力が出てくる。日本の経済の成長力その他から見てまいった場合には、大体鉄鋼生産の伸びというものは三百万トン前後である。二つくらいしか新しい増ワクとしては余地がない。そういうようなところから、全国を三社に分けて、各社一本ずつの生産能力を増強させる方法をとったらどうだろうかというような構想の源があろうと思うのです。その中でも、確かに一部の意見として出ておりますのは、八幡と富士とを企業合併したらどうだろうか。そうなるとシェアを大体三五%ぐらい持つわけです。そういうようなものが片一方において企業合同という形において生まれる。そうなりますと、残った川崎なり住友というのはシェアが一五%程度ずつあるわけです。企業間の格差というものは、今日においては八幡が二〇%ぐらいで、その他の四社が一五%ぐらい、それに神戸が少し落ちて一〇%ぐらい、そういった企業間のシェアを持ちながらお互いに競争をして価格形成をやろうとする条件下にあると思うのですが、これが一社で三〇%あるいは四〇%、こういうような形態が生まれてくると、やはりこれは独禁政策の上からは私は好ましいものではないと思う。そういうようなものを頭に置きながら、今日産業政策と独占禁止政策の衝突といいますか、その面が今回のこの鉄鋼生産調整をめぐる問題として、意見の相違が立場上あらわれているものだと思うのですが、そのような、いわゆる企業合同というようなものの方向が望ましいと公取委員会としてはお考えになっているのか、それとも産業界の統合というものはある程度必要といたしましても、業務提携であるとか、あるいはまた共同施設であるとかいうような方向の中において近代化し、合理化し、価格形成が行なわれるような環境の場をつくっていくというような方向が正しいとお考えになっているのか、この点について公取委員会見解を承っておきたい。
  26. 北島武雄

    北島政府委員 現在の日本経済実情にかんがみまして、業界の各方面に再編成の問題が起こっているわけでございますが、私は、日本経済の方向として再編成の問題が起こることは、それは当然のことかと考えるわけでございます。今後の国際競争力の増強のためにも、あるいは業界自体の内部の整備のためにもそういう必要が多かろう、こう考えます。したがって、公正取引委員会といたしましては、企業の合同そのものについては反対することはいままでいたしておりません。ただ、それが独占禁止法第十五条にいわれる「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」ような合併や営業の譲渡などについては、これは独占禁止法で禁じておりますので、そういう点につきましては、個々の状況に応じてケース・バイ・ケースでいままで判断いたしてまいったわけでございます。この場合に、一応シェアというものを基準にはいたしておりますが、単なるシェアの一定のパーセンテージをもって態度を決しているわけではございません。競争会社の力、あるいは相手方の力、あるいは代替品との競争、あるいは外国品との競争、こういった方面も総合いたしまして、個々の場合において態度を決定いたしておるわけでございます。一律にシェアによってこれを論ずるわけにはいかないわけであります。  いま鉄鋼業界におきましても諸説紛々、いろいろな案が出ておりますが、これに対して、私ども一々論評を加えることはただいま差し控えたい。基準といたしましては、あくまでも市場を支配することになるような、独占となるような合併は困る、こういうことでございます。個々の実情に応じて、その再編成の影響を十分見きわめました上で、態度を個々の場合において決定いたしてまいりたいと考えております。
  27. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間もありませんので、このあたりでやめますが、今日の株価の状態を見てまいりましても、神戸製鋼あたりは、これは価格を割っておるようですが、そのほかは、それぞれ五円なりあるいは十円なり高いわけです。そして配当も、一割あるいは八分の配当を行なっている。そういうような中において、なお将来の採算点が自信がない、だから生産調整粗鋼の源のところでやらなければならない、こういうようなことでやっておるけれども、実際は、大部分の業種については、最近においては景気が上昇をして、採算点はよくなっている。ところが、中には鉄線部門等に見られるような一部のものについては、全体的な産業との関係もあってさえない。操業度はどうかといえば、操業度は、ほかの産業に比べて高い。こういうような実情の中から、しかも減産体制といいながら、事実上は増産指示ワクが出ている。こういうような中において、一体粗鋼生産調整を、その源のところでやらなければならない必要性というものが今日あるのかどうか。それよりも、むしろ不況部門のところに、その不況に対応する不況カルテルを認めて、これによって措置する、あるいは行政指導の部面についても、その部門で措置をするとかというような方向が考えられなければ、国民経済全体から見てまいりますると、私は問題があろうかと思います。稲山さんあたりが言っているように、生産余力というものが、鉄鋼は基幹産業だから、一割から二割あることが望ましいのだ、こういうような主張をしておられますると、生産余力がある限りにおいては、今後においてもずっと永久に生産調整を続けていくというようなかっこうに私はならざるを得ないと思う。そういうような一部の産業が国家権力と癒着をしてしまう形の中で、自由主義経済と言うのもおかしな姿だと思うのです。  そういうような立場から考えてまいりますると、鉄鋼というものはもちろん国の基幹産業ではあるけれども日本経済全体がよくならなければ、鉄鋼だってそれだけがよくなるわけじゃないですが、そういうような主客転倒をした議論というものが、鉄鋼業界の首脳部の人たちの中には大いに見受けられるのであります。そういうような立場から、まあ今回このような措置がとられておるわけでありますが、これはやはり第三・四半期においては、このような形態の中でいつまでも続けていくということではなしに、ひとつ善処方をこの際要求をいたしておきたいと思うのであります。  そこで、最後に経済企画庁に私はお尋ねをいたしておきますが、物価対策の基本的な手段というものをやはり考えなければならないと思うのです。それは、この独禁政策を強化するというのも、明らかに物価対策の一つ政策に違いないと思うのです。貿易の自由化というものも、物価政策一つの柱になりましょう。あるいは農業の保護政策に対する再検討という問題も、これは物価政策考えなくちゃならぬ。あるいは流通組織と産業組織の近代化、合理化という問題も、これは当然考えなければ、従来の保護行政だけではどうにもならない問題だと私は思うのです。  そういう立場から考えてまいりますると、やはり通産省がやるところの勧告による操短とか、あるいは鉄鋼の公販制とか、あるいは生産調整とか、あるいは独禁法の適用除外になっておる機械工業振興臨時措置法であるとか、繊維工業設備等臨時措置法というようなものも、漸次これは減少に転じて、カルテルは最近だいぶ減ってまいりました。そういうような状態の中から、やはり不況カルテル等についても、緊急避難的なものとしてこれを認めていく場合はあり得るわけですが、カルテル行為そのものをやはり漸次減少させていくという方向の中でやっていただきたい。われわれがこの委員会で決議をいたしまして、企業の自由競争の原理というものを、価格政策の中ではもっと重視する行政をやるべきだということを指摘いたしたのでありますが、そういうような方向から考えてもらいたいと思うのでありますが、このような方向のものを経済企画庁としては今後強力に推進をしていただきたい。まあ通産省通産省なりの産業政策の問題もありましょうし、公取公取立場から、独禁法の番人として言わなければならないこともありましょう。そのときに、やはり政府全体がどういう方向で今後これと取り組んでいくかということは、これはやはり主管官庁であるところの経済企画庁が、できるだけ早くやめさせるというような考え方は、これはけっこうでありますけれども、少なくとも第三・四半期以降においては、このようないわゆる行政官庁による行政カルテルのようなものは避けていくのだという基本的なかまえというものを、私は披瀝をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  28. 鴨田宗一

    鴨田政府委員 物価の安定という面から考えまして、ただいま村山委員の仰せのとおりの事態が、現在の経済動向の中で強く取り上げられておるわけでございます。企画庁といたしましては、一つの例で先ほど来論議せられました粗鋼の問題でありまするけれども粗鋼生産調整の面だけを取り上げましても——実は今回の通産省のとりました措置について、いろいろ公取からも御意見もありまするけれども、要は、価格需要面で需要者に悪影響を及ぼさないよう慎重な配慮をすべきであるということは、これは言うまでもございません。しかし、こういうふうな面からいたしまして、かかる生産調整というものは、需要回復とか、市況の立ち直りという、この環境を勘案いたしながら、今回の措置につきましても、また先ほど申しましたとおり、将来のカルテルの問題であるとか、あるいは再販売価格維持制度の問題であるとか、こういう問題につきましては、でき得る限り早い時期にそれを廃止すべきである、こういう考え方でおりますので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。
  29. 村山喜一

    村山(喜)委員 終わります。
  30. 小笠公韶

    小笠委員長 山本勝市君。
  31. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間もございませんので、十分ばかり簡単にお伺いしますが、公取のほうから、ほんとうに不況ならば不況カルテルをつくればいいじゃないか、それを行政指導、勧告操短というふうなことは望ましくない、こういう意見を出されたのに対して、業界内部事情からどうも不況カルテルはつくれぬのだ、こういうことであったというふうにこれに書いてあります。私は、この業界内部事情というものは一体何かということを伺いたいのです。おそらく業界の中に、不況カルテルなんかつくらぬほうがいいという意見がやはりあるからできないんじゃないかと思うが、まずこの点はどうなんですか。
  32. 高鳥節男

    高島政府委員 不況カルテルをやってまいります場合の業界内部事情というものでございますが、まず、先ほどから問題に触れておりますように、平電炉メーカーというものが非常にたくさんございます。これは、生産品種も全般にわたって生産しているのではもちろんございませんが、一番やっかいな中形形鋼とか、あるいは丸棒とかいうふうな関係に大きく入ってまいっておりまして、これの業界が、いわば中小企業が非常に多い。先ほど御指摘のような系列化なりなんなりの努力をこれはいたしてまいらなければならぬ点でございますが、数が非常に多いという実態にありますこと、及び業界全体の、今度は大きいところの意欲といいますか、実態でございますが、これが、確かに御指摘のように、設備投資は思い切ったものをやってしまった。政府経済見通し、長期にわたっての問題等にもこれは関連いたしてまいりますけれども業界として非常に強気な立場設備を大きくやって、それによってシェアをとっていこうという傾向が強かった。それが、ついに昨年の秋ぐらいから、いよいよ今後大型の設備でないと世界的に乗り切れないということが具体的にわかってきました場合、業界の大手どころの相互の間というものは、生きるか死ぬかと申しますか、曲がりかどに立ったという気持ちが非常に強く出てまいりまして、それぞれスタッフとしては社長以下良識ある人をかかえておるのではございますけれども、相互の間の引くに引かれない設備投資の競争、あるいは生産の競争という機運が非常に強く出てまいったわけでございます。
  33. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 時間がございませんから、答弁は結論だけ簡単に願いたいのですが、大体、不況不況でないか、ことに、一ぺん調整を始めた場合に、その調整を解いたら、これはたいへんな混乱になる、それから日本経済全体に悪影響を与えるというのが通産省考え方ですけれども、その不況不況でないかとか、ことに、一ぺん調整を始めたときに、その調整を解いたらどうなるかということは、これは、結局水かけ論になってしまって、とてもきめ手があるもんじゃないと思うのですよ。それは、いま調整しておるからこれだけもっておるのであって、やめたらもうたいへんなことになるのだという理屈も立つし、そうでないということにもなって、これは、結局水かけ論です。調整を続けるか続けぬかということは、結局水かけ論で争うことであって、事実認識前提といいましても、事実認識そのものがきっちり一律的にきまってくるものではないのですから、これは問題にならぬと思う。それよりも、大原則として、日本のいまの政府、国の方針が公正な競争をやらせる、こういう原則がきまっておる。公取はその番人といいますが、通産省もそのことには同意をしておられる。  そこで、いま生きるか死ぬかという話がありましたが、ほんとうに業界が生きるか死ぬかということになったときには、私は不況カルテルができると思うのですよ。業界全体が生きるか死ぬかということでないから、自発的に不況カルテルができない。そこで役所にたよってきて、役所の力でやってもらう。ですからきめ手は、共倒れになる、生きるか死ぬかというようなときこそ自然にできるのだから、そういうときには、私はこれは認めていいと思うのです。かねて私は公取の方にも言っていますが、任意にできるカルテルと、政府がそこへ介入してつくるカルテルとは、同じカルテルであっても、経済全体に対する機能がまるで違うんだということをはっきりしなければいけないと言っている。自然にまかしておけばできないのだということなら、そういう調整をする必要がない。すべきでないという事態なんです。自然にまかしておいても、どうしてもみんなが倒れるからというのででき上がってくるようなときにはは、これは私は認めていいと思う。ところが、いまのやり方では、その自然にできたときには、これは私的カルテルだというので公取のほうは取り締まる。背に腹はかえられぬで政府の力にたよらなくてやむを得ずしてやったときには、これは公取から独禁法違反でやられる。ところが、同じことで、自然にほっておけばできないような状況、まだ競争でやれる、競争したほうがいいというものがおるときに、そのときに通産省が中に入ってやったときには、公取はまるで手がつかぬ。ほんとうに背に腹はかえられぬというときには、独占禁止法違反だというので取り締まる。今度はそれほど必要ではなくて、ほっとけばできないようなものを通産省が中に入ってやったときには、これは違反にも何にもならない。独禁法違反には問えない。一体、私的でやっていけないことが、役所が中に入ったら差しつかえないんだということはおかしな話で、大体独占禁止法をつくった意味はそんなところにあるのじゃなくて、日本経済全体を競争秩序の上に立てようということでやっておるのであって、個人がやったらいかぬ、役所がやったらいいという、そんなおかしなことはないのですよ。いわんや個人でやる場合は、むしろ背に腹はかえられぬで、ほんとうにやむを得ずやるのだから、公取法のいろいろな法律問題もありますけれども、そういうときは、むしろ今後はやむを得ざるものとして認めて、それほど必要でないときに、これは役所が入ったから大目に見ておくというようなことは、もう少しわれわれも考えにゃならぬが、公取考えにゃならぬと思うのです。そうしないと、日本の経済の秩序の問題じゃなくて、まるで経済の秩序はどうなろうと、個人がやったらいかぬのだということになってしまうと思うのです。  もう一つ通産省のこれを見ますと、目下根本的に鉄鋼のあり方について検討中だ。検討の方向は、村山君の質問に対してもある程度お答えになりましたが、しかし、このあとのほうに書いてあるのを見ると、一方では調整を行ないながら増産指示も与えたり、それから品種別生産指導を強化する、こういうことを平気で行なうような考え方だと、村山君が言われたように、まるで統制経済というものに対して——今日自由経済のたてまえに立っておるのだ、競争の立場に立っておるのだということがはっきりしない。局長は、先ほどの話ではっきりしておるかしれぬが、しかし、全体の通産省の意向として、どうかするといまの統制、統制に入っていって、品種別生産指導をやったり、それから増産命令を出したり、だんだん統制は統制を生んでいくおそれがある。どの統制でも、初めから全部統制するなんと言って始める人はありません。どこか始めると、その目的を貫くためには次から次にやらざるを得ないようになってしまう。だから、その点を考えられて、今後検討されて体制を考えられる場合にひとつ参考にしておいてほしいと思うのは、自由カルテルと強制カルテルとは機能が違う、だから、自由カルテルはすべてほっておけと私は申しません。自由にやって談合をやる場合もありますけれども、競争というものは本能みたいなものですから、企業者の競争というものは原則としてはなかなか絶えないものですよ。独占というものはよくよくやむを得ぬとき、ちょうど軍縮の協定みたいなもので、もうどうしてもみんながやりきれぬというときにやむを得ずやるものですから、自然に出てくるようなときには、むしろこれはほんとうの不況だなと認めざるを得ないという一つの頭で見ていって、そうして、なおそれがそうでなしに、超過利潤を目的としてやっておるというなら、これは取り締まってもいいのですが、行政上の勧告なんというものは一番いかぬですよ。私的カルテルよりも、行政が介入してやるとこれは強制カルテルになりますから、これは一番いかぬのだという頭で、そのあり方を考えていく場合に参考にしてもらいたい。  時間もございませんから、御答弁は要りませんけれども、そのことを申し上げて私の質問を終わります。
  34. 小笠公韶

    小笠委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、散会いたします。    午後零時四分散会