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1966-09-10 第52回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年九月十日(土曜日)    午前十一時二分開議   出席委員    委員長代理 理事 本名  武君    理事 舘林三喜男君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       白浜 仁吉君    高見 三郎君       綱島 正興君    中山 榮一君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       野呂 恭一君    長谷川四郎君       川崎 寛治君    兒玉 末男君       桜井 茂尚君    千葉 七郎君       西宮  弘君    森  義視君       玉置 一徳君  委員外出席者         農林政務次官  草野一郎平君         農林事務官         (大臣官房長) 檜垣徳太郎君         農 林 技 官         (大臣官房技術         審議官)    原  政司君         農 林 技 官         (農林経済局統         計調査部作物統         計課長)    青木  雄君         農 林 技 官         (農政局植物防         疫課長)    安尾  俊君         農林事務官         (畜産局長)  岡田 覚夫君         農林事務官         (畜産局参事         官)      太田 康二君         農林事務官         (畜産局牛乳製         品課長)    松本 作衛君         農 林 技 官         (畜産局衛生課         長)      高村  礼君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    荒勝  巌君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部砂糖類課         長)      石田  徳君         参  考  人         (群馬太田家         畜保健衛生所         長)      市村 一夫君         参  考  人         (群馬農政部         畜産課長)   志田  誠君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月二十九日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として山  中日露史君が議長指名委員選任された。 同日  委員山中日露史辞任につき、その補欠として  山本幸一君が議長指名委員選任された。 八月二日  委員伊東隆治君及び宇野宗佑辞任につき、そ  の補欠として中山榮一君及び仮谷忠男君が議長  の指名委員選任された。 九月十日  委員江田三郎君及び山本幸一辞任につき、そ  の補欠として桜井茂尚君及び川崎寛治君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員川崎寛治君及び桜井茂尚君辞任につき、そ  の補欠として山本幸一君及び江田三郎君が議長  の指名委員選任された。     ————————————— 七月二十九日  一、農林水産業振興に関する件  二、農林水産物に関する件  三、農林水産業団体に関する件  四、農林水産金融に関する件  五、農業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件(豚コレラに関す  る問題、乳価、でん粉価格及び農作物の作柄概  況等)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長代理 これより会議を開きます。  中川委員長は、列国議会同盟地域会議に関する調査等派遣議員団員として海外出張中のため、委員長指名により、その職務を行ないます。  この際、草野農林政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。草野農林政務次官
  3. 草野一郎平

    草野説明員 先月、大臣政務次官の入れかえがございまして、そのとき新しく政務次官を拝命いたしました。  まことに魯鈍でございますが、みずからむちうって一生懸命努力する覚悟でございます。皆さんの一そうの御支援をお願いいたしまして、ごあいさつにかえます。      ————◇—————
  4. 本名武

    本名委員長代理 小委員会設置の件についておはかりいたします。  小委員十二名よりなるいも・でん粉等価格対策に関する小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 本名武

    本名委員長代理 御異議なしと認めます。よって、設置するに決しました。  なお、小委員長及び小委員選任辞任補欠選任並びに参考人出頭を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、その人選等所要手続等につきましても、この際委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 本名武

    本名委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは、後刻委員長において小委員及び小委員長指名し、公報をもってお知らせすることといたします。      ————◇—————
  7. 本名武

    本名委員長代理 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  農林水産業振興に関する件、特に豚コレラに関する問題について、本日参考人として、群馬農政部畜産課長志田誠君、群馬太田家畜保健衛生所長市村一夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 本名武

    本名委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、今後委員会調査のため参考人出頭を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人人選期日等、その他所要手続について委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 本名武

    本名委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  参考人方々には、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見委員との質疑応答の形で述べていただくことといたします。  まず、豚コレラ発生状況について政府より説明を求めます。太田畜産局参事官
  10. 太田康二

    太田説明員 最近各地豚コレラ多発流行いたしておるわけでありますが、最近の状況を見てまいりますと、昭和三十九年、これは暦年でございますが、関東東海地方中心に二十一の都府県で豚コレラ発生がございまして、約一万一千頭に達する発生を見たわけでございます。昭和四十年度におきましては、これがかなり減少いたしまして、発生県が十九県、発生頭数は三千四百七十八頭ということで、非常に激減をいたしたわけでございます。これは発生頭数で見てまいりますと前年の約三分の一、飼養頭数の伸びがあるわけでございますから、これらを考慮に入れて考えますと、発生率では約四分の一に減少したということで、きわめて良好な状態で推移いたしたと考えておるわけでございます。  そこで、問題になる本年でございますが、本年は六月までは前年以上に非常に良好な状態で推移をいたしたのでございますが、七月、八月に至りまして各地発生が続きまして、九月七日現在でありますが、われわれの調査によりますと、発生県が二十一県、発生頭数が一万三千四百二頭ということで、近来にない流行になっておる、こういう状況であります。
  11. 本名武

    本名委員長代理 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。東海林稔君。
  12. 東海林稔

    東海林委員 ただいま太田参事官から、本年の九月七日現在で二十一都道府県、一万三千余頭の豚コレラ発生した、こういう報告があったわけでございます。この新しい農業基本法体制下にあって、政府がその選択的拡大中心部門一つとして畜産を奨励し、その中で、酪農とともに養豚の多頭飼育ということを積極的に指導しておるわけですが、その時期にこのように豚コレラ、おそるべき伝染病発生して、農家が非常な打撃を受けておるということを私は非常に残念に思うわけであります。  たまたま私の地元群馬県におきましても、最近にない発生でございまして、しかもそれが私の居住地周辺でございます関係上、私も発生以来の経過を大体存じておるわけでございますが、私の見聞した結果から私が感じますことは、この豚の流行病に対する日常の防疫体制と申しますか、特に伝染病早期発見というようなことについて、今回の私の周辺における状況からして、どうもどこかに欠陥があるのではないかという感じを私は深く持っておるわけでございます。したがって、この際、他県の例等もよく聞きながら、また、私の知っておる地元のそういう経過等もからみ合わせて質疑を重ねる中から、私が感じておるように欠陥があるのかないのか、もし欠陥がありとすれば、今後それに対してどういう対策を講ずるかということを明確にすることが、今回のようなわれわれの苦い犠牲をむだにせずに、今後の養豚業の発展に対して前進の方向を見出す上に必要じゃないか、こういう趣旨で、以下質問をいたしたいと思うわけです。特に参考人として県から畜産課長並びに発生地家畜保健所長にもおいでを願ったわけでありますが、私はあるいは皆さんに耳ざわりのような質問をあえてするかと思うのでありますが、しかし、その責任がどうこうということではなしに、どこに真の欠陥があるのか、対策はどうしなければならぬかということを今後の問題として明らかにする意味で、ぜひ、農林当局も、それから地元からおいで願った参考人の方も、質問に対する御答弁なり説明は、あまりていさいのいいことでなしに、ひとつ率直にお話を願う、こういうことを前もってお願いをいたしたいと思うわけでございます。  いま太田参事官から、二十一県にわたって一万三千余頭の発生があったというのであります。そこで、まずお尋ねしますが、一番多数発生しておるのはどこらの県であるかということと、発生がいつごろらか始まって、現在はどういうような状況になっておるかという点を御説明をいただきたいと思います。
  13. 太田康二

    太田説明員 豚コレラ発生状況を見てまいりますと、やはりこれは終年出ておるわけでございまして、一月、二月、三月、四月、それぞれ出ておるわけでございますが、今年度は、先ほども申し上げましたように、一月から六月までの間におきましては前年度以上に良好な数字を見たわけでございますが、七月、八月、九月という真夏に向かうにつれまして、非常に発生頭数がふえておるわけでございます。  そこで、県別に申し上げますと、最も発生の多い県は香川県で、戸数にして百四戸、三千二百二十八頭、その次に多いのが高知県、戸数にして三百二十二月、頭数にいたしまして二千二百九頭、その次に多いのが栃木県の百九十七戸、二千百八十二頭、その次に多いのが福岡県でございまして、六十八戸で千四百七十三頭、その次に多いのが群馬県でございまして、百十八戸で千七頭、こういうことに相なっております。  そこで、本年度流行の特徴でございますが、われわれがいままで見てまいりました経緯によりますと、関東とか東海地方などの都県のうち、従来からいわゆる豚コレラ汚染地あるいは常在地と考えておりました地方での発生につきましては、予防注射強化あるいは防疫体制整備等によりまして発生激減をいたしまして、あるいは初期の防疫が適切に実施されて、被害最小限度にとどまっているということがうかがわれるわけでございますが、その反面、新たな傾向といたしましては、ここ数年間われわれが正常化したと見ておりました四国地方、先ほど申し上げました香川高知あるいは九州の福岡、こういった地方にかなりの流行が見られているということが、注目すべき傾向であるというふうに考えております。
  14. 東海林稔

    東海林委員 もう一つ、それに関連してお尋ねしたいのですが、この主要発生地と最近における多頭飼育傾向、これは県によって多頭飼育傾向が違うと思うのですが、そういうような点について何か関連があるように考えられますか。それともそういう点は考えられませんか。
  15. 太田康二

    太田説明員 非常に客観的なお答えで申しわけありませんが、やはり関連があるというふうにわれわれは考えております。
  16. 東海林稔

    東海林委員 関連があるというのは、多頭飼育の普及しているような、養豚の改善についてわりかた熱意のあるところが少ないという意味ですか、それとも多頭飼育ですと伝染率が多いからそういうところによけい出ているという意味ですか。関連があるというのは、内容はどういうのですか。
  17. 太田康二

    太田説明員 われわれ衛生行政を進めてまいります場合に、やはり一番注意しなければならないのは、従来のような一戸一頭飼いというような場合にはわりあいに問題がないわけでございますが、最近におきます飼養規模増大あるいは飼養頭数増大というふうになってまいりますと、発生時の被害もそれに伴いまして当然急増するわけでございます。  そこで、いま先生の御質問に対する答えといたしましては、やはりそういった多頭数地帯におきましては、もちろんそれに伴いまして、当然自分経営自分で守るというような趣旨から、衛生思想についての趣旨は十分徹底していると思うわけでございますが、やはり、病気が出ますと、それに伴いまして当然伝染も拡大するというようなことで、多頭数飼育に伴う病気多発という傾向がうかがわれるというふうに考えております。
  18. 東海林稔

    東海林委員 そこで、ことしの発生主要県は、やはり多頭飼育の比較的進んだところによけい出ているということでございますか。理屈はわかるのでございますが、この問題はだいぶ技術的な問題にも関連しますから、参事官でなくて、担当課長がよくわかっておれば課長からひとつお答え願ってけっこうですから……。
  19. 高村礼

    高村説明員 先ほど参事官が申されました四国地方並びに関東地方でございますが、最初の発生はおおむね小規模の新しい経営者から発生しておるのでございます。二頭、三頭のときには気がつかない、それが大きなところに入ったときに大騒ぎになる、こういう傾向でございます。
  20. 東海林稔

    東海林委員 次にお尋ねいたしますが、現在、畜産当局として、豚の伝染病予防について、国としてどういうような対策を講じつつあるか。それに予算関係もあわせて概略を御説明いただきたいと思います。
  21. 太田康二

    太田説明員 畜産局といたしましては、年度当初に家畜衛生対策というものをきめまして、これは豚コレラももちろんその中に含めまして、各県にこういうふうにやってもらいたいという指示をいたしておるわけでございますが、今回豚コレラ発生に伴いまして、九月五日付で、畜産局長名をもって、各県に豚コレラ防疫強化指導通達を出して、今後の蔓延防止につきましての措置について指示をいたした次第でございます。  なお、予算上の問題といたしましては、やはり予防注射あるいは蔓延防止のための注射措置を講ずることによりまして、被害最小限度に食いとめるということをねらいといたしまして、本年度は当初におきまして三百五十五万五千頭分のワクチン予算を用意いたしましたが、実際に実行する段階におきましては、そのワクをこえまして五百十万七千頭分のワクチンにつきましての手当てを各県に内示をいたした次第でございます。なお、今後さらに七十六万頭分追加いたしまして、現在五百八十七万頭分のワクチン手当てをいたしておるわけでございまして、これによりまして、先ほど申し上げましたような蔓延防止措置をとってまいりたいというふうに考えております。  それ以外に基本的な問題といたしましては、やはり家畜保健衛生所整備強化等が必要でございますし、特に四十一年度からは家畜衛生総合指導対策というものを予算化いたしまして、現在家畜保健衛生所、全国で五百八十六カ所あるわけでございますが、これを百六十五カ所に統合するための、先ほど申し上げました家畜保健衛生所整備強化施設整備あるいは解剖施設設置あるいは衛生車設置等に対する助成。それから家畜保健衛生総合対策というのは、百六十五カ所の中心的な家畜保健衛生所を主体といたしまして、そこでまず行ないますことは、家畜保健衛生講習会等を開きます。さらに協議会を設けまして、できる限り末端における実情が家畜保健衛生所行政の上に反映するように、市町村技術吏員の方あるいは共済組合組合長さんあるいは改良普及員方等に集まっていただきまして、その管内におきまして当然実行しなければならない各家畜別家畜保健衛生所対策等を協議いたしまして、実行に移す、さらに末端におきます病気発生に対しましての情報をできる限り的確に早くつかむという体制整備するための家畜保健衛生総合対策というような予算措置も講じまして、体制整備をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 東海林稔

    東海林委員 今回の豚コレラ発生した後の局長通達によって防御対策強化を指令したという問題と、それから現実にこれまですでにどういうことをやっておったかということの区切りがはっきりしないので、どうも私のみ込めないのですが、これは衛生課長、一応この機構として、家畜伝染病予防なり防御についての機構農林省から末端までどういうふうにいっておるかという点と、いま参事官から一部協議会というような説明もあったのですが、市町村とか農協等畜産奨励機関もあり、あるいは県の農政事務所というもの等もあると思いますが、この指導機関との関連、そういうような点をひとつ機構的に説明してもらいたいと思います。
  23. 高村礼

    高村説明員 直接の家畜防疫機構といたしましては、家畜伝染病予防法に従いまして、従来から一つ機構ができております。末端機構といたしましては、家畜防疫員というものが一つ末端組織でございますが、その以前に、伝染病予防法によりまして、法律では、家畜、牛馬、綿・山羊、鶏が死んだとき届け出の義務が当然所有者にあるわけであります。それから法定家畜伝染病にかかった場合あるいはかかった疑いがある場合も、同様に所有者市町村長に届ける。したがいまして、情報組織といたしましては、一応法律によりまして、所有者市町村長に届けるということが一つ体系になっております。そしてその届けられたものにつきましては、市町村長がさらに都道府県知事その他に連絡することによりまして、家畜防疫員活動になるわけであります。法定伝染病にかかわるものにつきましては、これは法律に基づきまして、家畜防疫員指示によりまして隔離その他の処置を行なう。さらに防疫員指示によりまして、必要がありますれば消毒を行なう。また、その蔓延防止のために必要な場合には、都道府県知事命令によりまして、その病畜を殺すことをいたしまして……(東海林委員「そういうことは知っておる。下部機関との関連を聞いておる」と呼ぶ)そういうふうな知事まで上がります機構法律の上ではできておるわけでございますが、これを実際に動かす場合には、家畜保健衛生所家畜防疫員の主たる根拠地になっておりまして、そのほか、必要な場合にはいわゆる常勤公務員以外の獣医師の資格を持っている者を家畜防疫員に任命いたしまして、手薄のところは家畜防疫員がそういう指示を行ない、あるいは必要なときには予防注射を行ない、あるいは知事命令によります殺処分の指示を行なう、こういうふうな組織になっております。  今年度からの体系といたしましては、先ほど参事官が申されましたような新たな総合対策というものを立てまして、こういう従来の組織に加えまして、保健衛生所中心といたします市町村協議体制、さらに防疫以外の末端技術員方々獣医師あるいは非獣医師を含めましての協力体制を確立するための研修等を行なっておるわけでございます。
  24. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、一応第一線における防疫機関としては、家畜保健所が大体その衝に当たっておる、一口に言えばそういうことですね。そこを課長ひとつ。……
  25. 高村礼

    高村説明員 正確な数字は省略させていただきますが、先ほど申しましたように、保健衛生所以外に、相当数常勤公務員以外の方々家畜防疫員に任命されておりまして、それを含めてやっております。
  26. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、家畜防疫員というのは、家畜保健所職員並びに知事が委嘱した人たちということだろうと思うのですが、しかし、公務員でなくても、委嘱されれば、その人たち活動というものは、家畜防疫に関する限りは家畜保健所指揮下において動いておる、こういうふうになるわけでしょうね。それでいいですか。
  27. 高村礼

    高村説明員 さようでございます。
  28. 東海林稔

    東海林委員 そこで、さっきの質問なのですが、この畜産指導機関である市町村とか、あるいは群馬県で言えば農政事務所というようなものもあるわけですが、そういうものとの関連はどういうふうになっておるわけですか。あるいは農協等生産指導をやっておる場合もありますが、そういうものとの相互関連は、法律上は別にないのだが、実際上はどういうことになるわけですか。従来どういう指導をやっておったわけですか。
  29. 高村礼

    高村説明員 数字で申し上げますと、家畜保健衛生所家畜防疫員は千八百二十九人でございまして、家畜防疫員になっている団体の開業の方々相当数あるわけでございまして、防疫につきましてはそういう相当数方々協力をしておるということでございます。
  30. 東海林稔

    東海林委員 さっきも説明があったように、法律によりますと、飼養飼育しているものが、病気になったり死んだものは市町村長届け出るということになっておるわけですね。その関連家畜保健所との関係——家畜保健所届け出るというふうに書いてあれば、第一線防疫担当家畜保健所だ、法律的に言えば家畜防疫員だということになるわけだけれども、一応市町村長届け出るということになっているわけですね。そこで、私は、市町村なんか常に指導奨励に当たっているわけでしょう。それとの関連がどういうふうになっているかということを聞いているのだけれども、数字どうこうということじゃないので、そこをはっきりしてもらいたい。私は率直に言えば、その関係が非常に不十分だと思うから、そこを聞くんですよ。
  31. 高村礼

    高村説明員 実際の連絡の上では私たちはうまくついておると思っておりますが、法体系の上では、御指摘のように保健衛生所にまっすぐ行かないで、市町村に行っていることで迂回した問題もあろうかと思いますが、やはり市町村のほうが家畜保健衛生所よりも数が多いわけでございますので、法制定当時も、おそらく家畜飼養者に一番身近なところであるということで決定されたと思うのでございます。
  32. 東海林稔

    東海林委員 それでお尋ねしますが、現在市町村獣医設置は大体どんな程度になっていますか。
  33. 高村礼

    高村説明員 獣医師法二十一条の届け出によります現況を申し上げますと、市町村職員農林水産関係に従事いたしております獣医師職員は六百九十四名、全獣医師一万九千七百八十名のうちの六百九十四名が農林水産業関係従事職員公衆衛生関係が五百四十八名、その他百二名で、市町村職員といたしましては千三百四十四名が三十九年度におきます統計で報告されております。
  34. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、相当多数の市町村には、この農業関係あるいは衛生関係を通じてもまだまだ獣医が一人もいない市町村が非常に多数あるというふうに私には思われるのですが、そういうふうに理解するのが当然だと思うのですが、どうですか。
  35. 高村礼

    高村説明員 申されるとおりと存じます。
  36. 東海林稔

    東海林委員 それから今度は技術的なことをひとつお尋ねします。  この豚コレラあるいは豚炭疽というような伝染病、その他ほかにも法定伝染病があるのですが、今回のものは豚コレラの問題ですが、これは一体専門家が見て、外見上だけから判定できるのか、それとも内臓検査によって判定できるのか。かりに内臓検査をしなければわからないという場合に、大体何日ぐらいその判定に日にちを要するのか。その点、これは技術的な問題ですが……。
  37. 高村礼

    高村説明員 豚コレラは、非常に単純な形で出ました場合には見たままで決定できると存じますが、最近はいろいろな病気が混在いたしております。また病豚に対する治療が進んでおりますので、複雑な形を示しております。したがいまして、見たままで一ぺんにきめるということは不可能な場合が相当ございます。そこで、私たちのほうといたしましては、初発の場合には、家畜伝染病予防法に基づきます病性鑑定の規定を用いまして、殺しましてこれを剖検して決定いたしております。腹を裂きまして、非常に顕著な剖検所見があります場合にはそこで決定いたすことにいたしておりますが、さらに疑わしいときには次々と複雑な検査をいたしますので、確実な決定をいたしますにはやはり二日間くらいは要すると思います。
  38. 東海林稔

    東海林委員 それでは、一応これは怪しいというので病性鑑定に持っていって検査した結果、大体二日くらいかかればわかる。そこで、豚コレラ発生したという場合に、御承知のように、豚コレラにかかったものは殺処分を命ずるわけですが、一日に何百頭という殺処分を実際やる場合に、その殺処分を命ずる場合の病性鑑定はどういう基準によってやるわけですか。
  39. 高村礼

    高村説明員 この病気の特性といたしまして、一つの群れに豚コレラのビールスが入りますと、その群れは全群かかるということが当然のことというふうに判断いたしております。したがいまして、一頭が発生しました後は、発熱あるいはその他の臨床症状によりまして、またビールスがすでに体内に入っている疫学的判断を行ないまして、全群がかかっておるというふうに獣医師は判断いたすわけでございます。ただし、その場合に、予防注射等を行なっておる豚につきましては特に慎重を期しまして、予防注射の行なわれたさかのぼった日数、その当時の注射の月齢、そういうことで、予防注射がきいているだろうか、きいてないだろうかということもさらに考慮いたしまして、場合によりましては、全群のうちで予防注射をしているものだけは豚コレラにまだかかっていないだろうということで、しばらく様子を見る場合もございます。
  40. 東海林稔

    東海林委員 いま予防注射の話が出たんですが、予防注射については強制的というところまでいっていないようですが、現在どういう指導をやっておるのでございますか、お尋ねします。
  41. 高村礼

    高村説明員 予防注射につきましては、国全体の方針といたしましては、常在地につきましては、そこにおる豚の七割、八割というような率の注射をする。これは一〇〇%やらぬでも、七割、八割やればこの地帯はだんだん正常化していくという研究もございますので、相当高率な注射をする。それから正常地区につきましては、豚の交流が盛んなような地帯あるいは繁殖牝豚等を重点に置きまして、いざという場合にも壊滅的な打撃を与えないような重点的な予防注射を行なっております。  さらに、その汚染地区と正常地区との間の交流を遮断する意味で、ここ数年間子豚の予防注射ということに一番大きな重点を置いております。この予防注射は、子豚が生まれまして哺乳中におきましては注射をしてもよくききません。したがいまして、完全に離乳が終わりまして、その後十日くらいたちましてから予防注射を打ちます。それから二週間くらいたちますと免疫効果があらわれますので、その免疫効果があらわれたときに市場に出荷して県外あるいは県内に散らばっていくように指導しております。その子豚注射ということは、最近非常に行なわれておるわけでございます。
  42. 東海林稔

    東海林委員 いま汚染地区には高率な予防注射の実施をするし、それから移動の激しいところあるいは出荷前の子豚を中心にやっておる、こういう話でございますが、そういう際には農民の希望によってやるということでございますか。家畜保健衛生所指導によって、強制ではなくても強い指導によって、実際的には強制的な形において注射をやっておる、こういうことでございますか、その点をひとつ……。
  43. 高村礼

    高村説明員 予防注射計画は、おおむね当初予算を考慮いたしておりますが、最近の情勢におきましては、当初予算を考慮しては豚の頭数の伸びに応じ切れませんので、むしろ技術的な意味頭数を決定しておるようなわけでございますが、これを実際にそれぞれのところでやられます場合には、国が二分の一のワクチンを補助する関係もございまして、二分の一の補助をいたすことは家畜伝染病予防法に基づいて行なう必要がございますが、そこで手続といたしましては、発生予防のためには、家畜伝染病予防法第六条によりまして、知事が一定の地域に一定の豚の資格を指定いたしまして、都道府県知事の行なう注射を受けるべき旨を所有者に命じましてやっておるわけでございます。ただ、実際に県がそういう告示を出す場合に、地元の希望を参酌してやることは当然であると思いますが、この点は農林省といたしましては、計画の立案につきましては都道府県知事にまかしておるわけでございます。
  44. 東海林稔

    東海林委員 多発のおそれがある場合に地域指定ということをやるのは当然だと思うのですが、常時予防注射をなるべく受けるようにというような、さっきの特に必要な地帯に指導する意味での予防注射はやっていないのですか、そういう地域指定によってだけやるのですか、その点をひとつ……。
  45. 高村礼

    高村説明員 実際は指導的な形で計画を立案して都道府県がやっておると存じますが、これを制度的にという形ではやっておりません。
  46. 東海林稔

    東海林委員 次に質問を進めますが、今回の多発各県で、ひどいところは三千頭も一県で出ているというような報告があったわけですが、その主たる理由はどこにあるというふうに農林省としては考えておるか、また、今回のそういう多発関連して、何か農林省として、さっき局長通達を出しておるというのですが、特に反省点としてどういう点を考えておるか、お聞かせ願いたい。
  47. 太田康二

    太田説明員 現在のところ、なぜこれだけ出たのかという問題につきましての、多発の要因につきましての最終的な究明というものは明確にするに至っていないのでございますが、本年の主要発生地を見てまいりますと、先ほども申し上げましたように、これまでの状況を見てまいりますと、比較的豚コレラ発生しなかった地域に多発をいたしておるわけでございまして、非常に遺憾に存するわけでありますが、発生予防の処置というものも十分徹底していなかったのではないか。なおかつ、養豚農家の方々の本病に対する認識というものも、やはりこれも指導の問題にもなるわけですが、十分徹底せずに、認識が薄かったということが考えられるわけでございまして、そのために初期の時点におきましての発見がおくれた、さらに飼養頭数の増加というようなことも相まちまして、非常に多発を見たというふうに現在のところ考えておるわけでございます。
  48. 東海林稔

    東海林委員 それでは次に、もう少し内容的にこの問題を検討する意味において、本日御出席いただきました参考人の方にもお伺いいたしたいのですが、そこで、先ほど全国的な発生状況等については農林省から報告があったわけですが、群馬県における発生状況を少し詳細に、県の畜産課長のほうからひとつ御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  49. 志田誠

    志田参考人 群馬県におきましては、三十八年の十二月から三十九年の七月までの過去において発生したのでございますが、この実例に徴しまして、その後豚コレラに対する防疫対策を特に入念にやってまいった結果、三十九年の七月以降その発生を見なかったわけでございます。しかし、特に関東各県につきましては、隣接県が非常に常在地化した形で常時あったわけでございますので、私たちといたしましても、群馬県の防疫についてはさらに一そう徹底を期してまいった。  そこで、今回の発生でございますが、八月になりまして、八月の十八日に採取した材料、それから八月十八日の踏み込み調査による時期判断、これによりまして、八月の十九日に擬似と判定いたしまして、その夜移動禁止措置をしてまいったのでございますが、二十日には真性と決定した。二十日から現地に移動防疫班の差し出し人員を出しまして、摘発と殺処分と消毒と、さらにその後予防注射を励行してまいったわけでございますが、九月七日現在で千十五頭、発生戸数百十八戸、こういうふうな現状に立ち至ったわけでございます。
  50. 東海林稔

    東海林委員 千何頭という発生頭数ということでございますが、これは殺処分を命じた頭数でございますか。それとも、新聞等によりますと、殺処分が五、六百頭の段階において養豚組合で調べたところが、農家自体でもう豚コレラの決定前に、怪しいというので屠場に早期に出してみたり、殺して埋めたりしたのが千数百頭もあるというような数字が出ておるのですが、その千何頭というのはどういう数字ですか。
  51. 志田誠

    志田参考人 これは発生した頭数でございます。と申しますのは、殺処分した頭数でございます。
  52. 東海林稔

    東海林委員 新聞記事によりますと、殺処分が五、六百頭程度のときに、すでに農家自体で処理したのが千数百頭あるという数字の発表が出ておるのですが、こういうものは全然間違いでございますか。何かそういうことを調査しておりませんか。
  53. 志田誠

    志田参考人 私のほうで、実はその発生以前の状況につきまして、八月三十一日、それから九月一日の二日間に、県が実情を三名派遣して踏み込み調査したのでございますが、これもまだ最終決定ではございませんが、判明いたしました死亡頭数が三百八頭あった、こういうことでございまして、内容分析についてはまだそこまで手が届いておりません。
  54. 東海林稔

    東海林委員 それから次に、さっき農林省から全国的な多発の要因というようなことについての一応の説明があったわけですが、群馬県当局としては、群馬県における今回の発生の主たる原因が一体どこにあったかというような点、あるいはそういう点について特に今後留意しなければならぬというような反省点がございましたら、ひとつ出していただきたい。
  55. 志田誠

    志田参考人 御承知のように、隣接県がほとんど常在地化してございますので、私たちといたしましては、予防注射の徹底と家畜の交流制限と、こういう二つの観点からこの防疫を実施しなければなかなか目的を達成し得ない、こういうことを考えておるのでございます。したがって、今回の発生の内容も、最終結論には達しておりませんが、いままでの調査段階から申し上げますと、隣接地から発生した、こういうことでございまして、幸いに太田家畜保健衛生所のうち、現在では周辺地区の予防対策が徹底していた関係と思いますが、旧太田市管内だけで食いとめておりますので、その他の地区につきましてもさらに緊急免疫予防注射等を実施いたしまして強化しておりますが、現状ではいま局地的に押えておる段階でございます。しかし、こういうふうに一度にたくさん発生するということにつきましては、いろいろ事情があると思いますが、これも最終的には十分検討の上資料を集めまして、将来の対策として十分織り入れてまいりたいと思いますが、現在の段階で判明いたしましたのは、当初、夏の時期に、伝染病以外のいろいろなほかの病気等も出ておった、あるいは日射病も出ておったわけでございますが、当初開業獣医師の話を総合いたしますと、治療しておったものがなおっておった、こういうふうな事例が相当あったわけでございます。しかし、私、現在の段階になっていろいろ考えてまいりますと、たしかにそういうものもあったろうとは思いますが、どの時期かには豚コレラがその間にもぐり込んだであろう、こういうふうに判断しておるわけでございます。したがって、その中には、もちろん所有者届け出がなかったとか、あるいはそういうふうなまぎれやすい病状のものがあったとかいう現状はございましたが、さらにこれは防疫対策の根本でございますところの予防注射を一そう徹底することによって、将来防遏の完璧を期してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  56. 東海林稔

    東海林委員 お尋ねしますが、隣の栃木県のほうは群馬県より少し発生が早かったようですね。栃木県にそういうおそるべき豚コレラ発生しておったということは、当然群馬県としては私は知っておらなければならなかったと思う。それに対して一体どういうような処置を講じましたか。今回太田市で発生いたしましたのは、課長は、旧太田地区だけでほかには出てないなんて、のんきなことを言っていますが、今回は栃木県に隣接した矢場地区、韮川地区、毛里田地区、下強戸、全部栃木県に隣接したところなんです。当然、私から考えれば、栃木県のほうにそういう豚コレラが出たとすれば、そういう警戒体制がしかれておらなければならなかった。さっぱりそういうことをやっておるように私には見受けられなかったのですが、いつ一体そういう栃木県に豚コレラ発生したということを聞き、それに対してどういう具体的な措置を講じたか、畜産課長でなければ地元太田家畜保健所長からお答え願いたい。
  57. 志田誠

    志田参考人 私から、順序として、県の立場から申し上げたいと思います。  先ほどの説明の中に、御指摘のように、韮川、毛里田、休泊その他一部の地区のことを触れておらなかったのでございますが、これはいわゆる震源地でございまして、伝播の地域としては旧太田市の範囲でとどまっている、私こういうことを申し上げたかったのでございますが、説明が足らなかったので、この点補足さしていただきます。  群馬県におきまして、隣接の栃木県に多発したことをキャッチいたしましたのは八月の六日でございます。これをキャッチすると同時に、この場合の状況は、安蘇郡葛生その他十カ町村で約四百三十一頭の発生であることをキャッチしたわけでございます。これは栃木県に直接連絡して承知したわけでございます。そこで、直ちに隣接地区の保健衛生所長に、特にこういうふうな事情にあるので、従来の防疫体制強化するようにと、電話でとりあえず指示したのでございます。次いで八月八日には、従来われわれ防疫体制のうち最も穴と考えられておりますのは、発生した地域に対しては移動禁止をやっておりますから、法的には入ってこれる余地がないのでありますが、ただ、屠場直行のものについては、あるいは入れる可能性がある、こういうことを考えましたので、八月八日には、県境に近い各屠場開設者と公衆衛生課長、それから各保健所長、それから私のほうの保健衛生所長に、屠場に入る豚についても、これら流行地域のものは入れないように、強力な指導をしてほしい、こういうふうな指導を第一回目としてやったのでございます。ついで、八月九日に緊急の家畜保健衛生所会議を持ちまして、隣県の状態防疫体制の拡充について新しく、というよりも、従来からやっておったわけでございますから、さらに意を新しくして、緊急体制に入れるように、こういうような指示をやったのでございます。その後、十九日に疑似と決定いたしましたので、この発生地域の移動禁止をやり、二十日には家畜市場関係家畜商、獣医師会等に連絡いたしまして、この事態と、それから家畜市場の処置をどうするか、特に太田家畜市場をどうするか、こういう処置につきまして協議いたしまして、市場につきましては、同日からすぐ当分の間閉鎖する、こういうふうな処置をとって、その後に至っているわけでございます。
  58. 東海林稔

    東海林委員 お尋ねいたしますが、二十日に真性と決定して、殺処分を命じたのは、二十日何頭、二十一日何頭、二十二日何頭、その三日間で何頭命じたか。
  59. 志田誠

    志田参考人 二十日に九頭、それから二十一日に二百六十五頭、それから二十二日には百四十八頭、二十三日に五十一頭、こういうことになっております。
  60. 東海林稔

    東海林委員 いま課長のお話を聞くと、栃木県に豚コレラ発生以来非常に万遺憾なきを期しておったようなふうにも聞こえる点もあるのですが、私にはそうは考えられません。あなたには少し聞きにくいかもしれないけれども、直接私がこの問題にタッチした経過を率直に申し上げます。  私は、八月十六日に韮川地区の同志のところに参りました。まず東長岡のSという養豚をやっておる仲間のところに参りました。この農家は種牡豚、種牝豚十三頭、子豚約百三十頭くらい飼育している農家です。四年前ごろから経営中心養豚に置いておるわけです。皆さん指導を受けて、豚舎もりっぱな豚舎で、運動場も二反歩もわざわざ運動場に使っておる。私どもは前に行って、ここの豚は貧乏人の人間よりもずいぶんりっぱな家に住んでおるなと言ったくらい、りっぱな豚舎をやっております。種類も皆さん指導でランドセールを入れまして、一頭何万円の優秀豚を持っている熱心な男です。行ってみたら、夫婦とも頭をかかえているのです。どうしたんだと言ったら、親豚はすでに六頭だめになった、子豚六十数頭ももうだめだ、こう言うのです。家畜保健所からだれか来たかと言ったら、ちっとも来てくれない、何もいままで指導がなかった。何の病気になったかと聞いたら、いや、まだ病気はわかりません。どうしているのかと言ったら、私のうちは、実はこの辺では一番あとから病気が出たので、周囲ではどんどん病気が出ておった、それで獣医さんを頼んでも手不足でなかなか来てくれないし、またお金も高いので、私のところに相談に来るので、実は私は、いいことか悪いことか知らぬけれども、薬屋に行っていろいろな高い薬を買ってきて、どうも日射病らしいと言う人もあるし、トキソプラズマらしいと言う人もあるし、流行性感冒と言う人もあるので、いろいろな薬を頼まれて注射しておる、こういうことでございます。奥さんが足に負傷しておった。どうしたんですかと聞いたら、うちで全財産をかけている養豚がこんな状態なんで、頭がふらふらしているので、つい足元が留守になり、足に竹を突き通してけがをした、こういうことであります。また、そのすぐ近くでも、主婦が中心になって養豚をやっていて、粒々辛苦してようやく種豚を十一頭、子豚を六十三頭飼っていた。ところが、みんなやられて、いま残っているのは親豚がたった四頭だけになってしまった、ノイローゼになってお里に帰っている、こういう例もあるということでございます。それから、少し離れたNという農家に私は行きました。この人はやはり数年前から非常に熱心にやっている人です。これは養豚専業ではありませんが、それでも親豚五、六頭と肉豚四、五十頭を常時飼っている。これはりっぱな豚舎であります。そこへ行って聞いてみると、ここも全部やられているということでありました。  そこで、これではとても同志めぐりをしているどころではないというので、うちへ帰って局長に電話をかけたところ、局長は省議があっていないというので、太田参事官に電話をかけました。県でもいろいろやっているかもしれぬが、私から見たら信用できぬ、農林省での豚に関する最高の技術者を派遣してくれと要求したら、県に連絡した上でそういたしましょうということでございました。ところが、翌日、太田参事官から私の不在中に電話がかかってきました。私は引き続き市内を歩いておったのですが、その返事によりますと、県のほうに連絡したら、県のほうからは、もう下火になって心配は要りませんという御返事でございましたので、派遣をする準備をいたしましたけれども、とりやめましたというお話でありました。私は憤慨したのであります。私は現実にきのうときょうと二日間見て歩いたが、そんなのんきな状況じゃないじゃないか、すぐ派遣せいということでお願いしたところが、それじゃまた手配するということになった。それが十七日の話でございます。それで、十八日に衛生試験場の豚コレラ室長の熊谷氏に来てもらったわけです。その二日目に太田参事官に重ねて派遣を要請した際に、地元農政事務所家畜保健所、市役所、農協、この四カ所に私のおるところで一緒に電話をかけさせまして、明日農林省から係官が来るということを予告をいたしました。そのとき、あとで向こうの返事を秘書から聞いたところが、農政事務所と農協のほうは、そのことは家畜保健所がやっているからということで、きわめて無関心な態度の御返事であったわけです。いよいよ熊谷室長の来る十八日の日になりまして、到着の時間が確定しましたので、さらに私は地元家畜保健所にその旨を連絡をいたしました。室長は午後二時過ぎに私のところに来られました。なぜ私のうちに来てもらったかというと、家畜保健所の所在よりは私のうちのほうが初めて来る人にわかりやすいから来てもらったわけです。ところが、その時間になっても、私が連絡した四カ所からはどなたも一人もおいでがございませんでした。しかたなくて、私と小川という県会議員と秘書と三人が同行しまして、先ほど申しました韮川の東長岡のSといううちに参りましたら、市の養豚組合の連合会長外四名くらいの熱心な方がおいでになって、いろいろとお話がございました。そこにもどこからも、役所関係あるいは農協からは一人の関係者もおいでなかったわけです。それで、その熊谷室長の話では、どうも農林省から聞いておった状況と全く違う、これはたいへんだということで、非常に熱心に見てもらったわけです。  さらに、そこで二時間ばかりたちまして、もう一つ、今度は安良岡地区の、これはBという農家に行きました。この方は常時二百頭から三百頭の肉豚を中心養豚をやっておる方です。行ってみましたら、やはり十数頭の子豚を、これは見込みがないのだというので豚舎から出しまして、木の下に金網を張って隔離いたしてあるわけです。さらに豚舎の中を見ますと、あの暑いところでございますが、豚の耳がまっ赤になって苦しがっておる。そして、われわれしろうとが見ても病気だとはっきりわかるような豚がたくさん集まっておるわけです。そこで、今度また初めのところに引っ返しまして、どうもこれは何病気だろうとわれわれが聞いたら、もう自分は一見しただけで豚コレラの疑いきわめて濃厚だと思う、こういう室長の話なんですね。しかし、まあ内臓の検査をしなければ確実なことは言えない。そうしたところが、ちょうどその日の朝、十八日の朝ですね、家畜保健所から来て、SのうちからとNのうちからと一頭ずつ子豚を高崎の病性検討所に持っていったということが判明したわけです。しかし、Sのうちで一体どこの豚舎の豚を持っていったかということを聞いてみましたところが、一番早く、八月の初めから病気になって、二週間ないし二十日間ぶらぶらしているが、ともかく死なない、その豚の仲間から持っていったということなんです。熊谷室長は、どうもその豚の様子とほかの豚の病状が違うという疑いを持ったらしいのでございまして、どうもあれは少し違うんじゃないか、したがって、こちらの新しいほうの子豚を持っていって病性を検討しなければならないから、ここからも一頭持っていって調べてみたい、それからもう一頭、さっきのBといううちからも持っていってみたい、こういうことでございまして、そこで、地元家畜保健所長に県会議員の小川君から電話をさせました。そのときの家畜保健所長の御返事は、県から待機を命ぜられておるから、県に連絡した上でなければ何とも申し上げられませんというのが御返事でございました。三十分ばかり待ったけれども、何とも返事がないので、もう一度電話をしたところが、家畜保健所長は、県とは話し中で連絡がつきません、こういう返事でありました。小川県議が憤慨しまして、県があとで文句を言ったらおれが責任を持つから、すぐ来い、こう言ったら、あなたは初めてオートバイで来たわけです。そうしてさらにさっき申しました追加の二頭を高崎の病性検討所に持っていっていただく、こういうことにしまして、同時に農林省にも内臓を持っていきたいからということで、それじゃ晩ゆっくりひとつそれらのことは連絡してくれ、こういうことを私どもお願いしたんですが、それらの経過から見て、私は、県なり家畜保健所が何か豚コレラに対して故意におそれを持っておるような感じを持ってしょうがないのです。  さらに、Nという養豚家が私に憤慨して言うたことがあります。十八日の朝、自分のところに子豚を持ちに来た家畜保健所の係員が、だれが一体東海林に告げ口をした、もし豚コレラになった場合にはおまえがそのもとだぞ、本尊だぞ、こういうことを言われて、自分は非常に脅迫されたような感じを受けて憤慨した、こういうことを私に言いました。  もう一つあります。十七日の日に、私が太田参事官に非常に強い発言をした日でございますが、夕方に、電話ですから顔はわからないのですが、県畜産課の家畜衛生係長から私のところに電話がありました。また晩の八時半に県の畜産課長の名前で私に電話がございました。その趣旨は、私も少し憤慨しておったからあまりこまかくは聞かなかったが、私が受け取った趣旨は、県で万般の措置は講じておりますからあまり心配しなさるな、こういう趣旨でございました。このことは、私の邪推かもしれないのですが、何も農林省までそんなことを言わなくてもいいじゃないか、県で始末するよという趣旨じゃないかと思うのです。そういう点から見まして、あなたが万般の措置を講じたというようなことを言われますけれども、私はなかなか信用できない。  またあります。十七日の日、私は細谷という太田市内の地区、いまの韮川地区からそんな離れた地区ではございません。そこの養豚家に念のために行ってみました。幸いそこは病気がございませんでした。私はおまえのところ病気がないかと聞いたら、病気はない、東海林さん、どこかに何か病気が出ておるのですかというのが向こうからの反問でございました。同じ太田地区で、発生地区とは離れていない地区です。それが十七日の日です。あなた方が先ほど農林省に出したのでございましょうか、私がこれをちょっと見ますと、確かに八月十七日ごろまでには屠畜場にも病豚が出て、それを調べた、しかし、それについては豚コレラという所見はなかった、こういうことが書いてあります。私も太田の衛生保健所にも連絡してみました。その係の話によりますと、八日、九日、十日と連続して廃棄処分の豚が出ておるわけですね。いずれも強戸、毛里田、休泊地区からの出荷豚です。それじゃおまえは家畜保健所に連絡したのかと聞きましたら、連絡しました、家畜保健所から獣医も来ました。その処置はどうしたかということを聞きましたら、内臓はビニールの袋に入れて埋めました、肉は豚コレラかどうかはっきりしませんので、冷蔵庫に入れて一応保管しております。病気の鑑定はどうしたかと言いましたら、県の衛生部に一応内臓を送りましたが、私が聞いたところでは、まだ何ら県からは回答がございません、ただし、太田の保健所の前に、館林の衛生保健所から県に送った分については、豚コレラでないという決定があったそうですというのが当時の話でございました。  私はこういうふうな状況から見て、何か家畜保健所なり県の態度が非常に消極的じゃなかったかということを感ずるわけです。笑い話でございますが、東京から私のところに親類の娘が炊事の手伝いに来ておりました。十七日の夕方めしを食べるときに、おじさん、太田は豚肉が安いですねと言った。何でそんなことを言うのかと言ったら、東京では百グラム五十五円するのに、太田の肉屋に行ったら、豚肉大安売りと大きい張り紙が出て、三十九円ですよと言った。また、元市長をした私の友達が来て、東海林さん、このごろおもしろい話がありますよと言うのです。どうしたのだと聞くと、うちに出入りしている日常非常にけちんぼの農家が、今度大きい豚を持ってきてただでくれていきましたよ、こういうことです。また、太田市内のあちこちではこのごろ豚カツの厚さが厚くなったという話もいろいろあるのですよ。  それがさっき聞きますと、二十日に決定して殺処分を命じたのが、その日が九頭、二十一日が二百六十五頭、二十二日が百四十八頭ですよ。そんなに急に出るはずがない。それ以前から豚コレラが出ておったはずですよ。ですのに、あなた方のほうでは、十八日以前には、いろいろ調べたけれども、豚コレラの所見なしということがずっと書いてある。そして十八日に農林省の指示によってやっと調べたところが、十九日には疑似コレラになって、二十日には真性コレラになった。私は、地元の上毛新聞並びに東京の各新聞の地方版にこの豚コレラの問題が毎日出ておるのを見ております。初めはたしか皆さんのあるいは市役所等の報告を新聞記者もそのとおり受けたと思います。豚コレラが出たのは、これは農民が申告しなかったから手おくれになった。二十日の新聞に初めて出たのですが、太田市に豚の奇病が出た、こういうことです。従来もよく私は知っています。豚の奇病が出た、不明熱が出た、こういうことで問題を処理した従来の例を私は知っております。そして皆さん説明によると、農家や家畜商は、豚コレラとなって移動禁止をされたり殺処分されたりすると困るので、隠すくせがある、こういうふうにみんな農民や家畜商が悪いようなことを言っておる。指導者側の反省というものは全然出ておらぬ。九月三日、これは最後に一段落ついたところで、太田市役所の発表というのが新聞記事に出ておる。どういう原因かということになると、「(1)生産農家が届け出をおこたった (2)定期予防注射を農家がすすんでうけなかった (3)業者の貸し付け豚には、ほとんど予防注射がうけていないため、とくに業者手持ち豚の発生が目立った (4)市場の閉鎖、移動禁止の処置をおそれて届け出をしぶった」などがおもなる原因である、こう書いてある。ところが、これは最後の締めくくりですが、ここに家畜保健所長も来ているから記憶していると思うが、たしか太田市役所で記者会見等やって、保健衛生所長や市の衛生課長などといろいろ話し合ったようですが、初めは、皆さんの言うように新聞記者も百姓が悪いのだというような書き方をしておった。ところが、二十三日になりますと、何とこの上毛新聞は五段抜きで「県も知っていた?」、こういう大きいのが出ている。それから二十五日だったと思ったが、県で家畜防疫関係のお役人さんと畜産業者が集まって、こういうことが書いてある。そこには「二十二日から始まった家畜衛生週間の行事として、二十四日午前前橋・農業会館で家畜衛生県大会が畜産生産者など約三百人が参加して開かれた」というのですが、これは二十二日から始まった週間の行事で、二十四日に大会が開かれた。三百人も集まったが、役所側からも農家のほうからも、これだけの豚コレラについて一言も発言がなかった。家畜衛生週間の行事の大会で、これだけの豚コレラが出ておるのに、一言も集めたほうからも集まった人間からも発言がなかった。だから「家畜衛生大会、反省、具体案素通り」、これも四段抜きの記事が出ておる。これは新聞記事が全部うそだとは私は考えられない。こういう点から見て、あなた方、さっきからの農林省の説明なり答弁も変だが、県当局の答弁も全部、何か役所のほうは悪くないので、農民が届け出ないのが悪いのだというような趣旨のことでは、今後一体この問題について真剣に対処するという心がまえがあるのかないのか、私はその点を疑わざるを得ないのですよ。  以上、私は自分がこの問題に関連したことのありのままを申し上げて、若干皆さんに意地悪なところもあるかもしれないけれども、しかし、そういう点を申し上げないとどうもあなた方の心がまえが変わらぬと思うから、あえて申し上げるのです。私が申した事実について、何か県側と違うというような点があり、あるいは農林省で違うという点があれば御指摘願いたいのですが、そういう点に立って、今回の問題についての反省をもう少しはっきり出してもらいたいと思います。まず、農林省から出してください。
  61. 太田康二

    太田説明員 ただいま先生から現地の実情についての御説明がるるあったわけでございますが、私も実は先生の電話を受け取ったりいたしました当事者といたしまして、私のとるべき措置として、一応県の様子を聞いて、その上で具体的な御連絡を申し上げるということにいたしたのでございます。その間、確かにいろいろな意味で、われわれが先生に当初連絡したような実情に現地においてなかったということにつきまして、深く反省をいたしておるわけでございまして、やはり今後畜産を伸ばしてまいる上におきまして、家畜衛生対策というものが、実は多頭数飼育に伴う病気多発ということで阻害されますと、非常に大きな問題でもございますので、さらに先ほど来申し上げましたような予算措置を加えまして、家畜保健衛生所中心に国、県一体となりまして、防疫の万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  62. 志田誠

    志田参考人 今回たくさん発生したことにつきましては、原因がいずれにあるにせよ、その原因を一つ一つシラミつぶしにして当然排除する努力はしてまいらなければならないと思うのでございます。ただ、先生のおっしゃった中で、いろいろ私のほうからも調査しなければわからないこともございますが、一つだけ申し上げておきたいのは、県も知っていたのではないか、こういうことでございますけれども、実は十六日に農林省から連絡があったときにも、係長と次席を派遣して実情を調べ、さらにその次の日も所長を現地へ回して調査をした、こういうことでございますが、残念ながら、私たちのアンテナにそういう内容がひっかからなかった。そういうことにつきましては、原因を十分調べてひっかかるようにくふうしなければならぬことはおっしゃるとおりでございます。そのようにもちろんつとめてまいりたいと思います。ただ、十八日に、これは直接私の指示で私のところの職員を現地に派遣して、個々の踏み込み調査をして、初めて先ほどの死亡の実態がつかめた、こういう残念な状況でございましたので、率直に申し上げますと、もしも各管内に伝染病が出たときに隠しておいた場合には、所長を処分する、これほど強い指示を私はふだんからしておるわけでございます。と申しますのは、ここでるる申し上げるまでもなしに、伝染病予防の要訣は初動の処置が最も大切でございますので、そういう意味のことをふだんから申しておるわけでございまして、これらの点につきましては将来さらに改善を加えまして、十分そういうことのないように努力いたしたいと考えております。
  63. 東海林稔

    東海林委員 せっかく来ていただいたのですから、太田の所長に伺いますが、太田市管内におけることしの豚コレラ予防注射の実施状況は一体どうなっておりますか。はっきり申し上げますが、私はあれからしばらくたって農協の責任ある役員とお会いしたことがございます。たまたまその際に豚コレラの話が出た。ところが、その農協の責任ある役員いわく、例年ですともう少し豚コレラ予防は徹底するのだが、ことしはどういうことか、大体太田市内で二割程度しか予防注射をやってなかった、それが一つの大きな今度の発生の原因じゃないか、こういうことを言われたわけです。私は、ほかでも聞きますと、豚コレラ予防がことしはどういう関係かどうも非常に不徹底であったという話を聞くわけですが、私にそういう予備知識があることを参考にしてひとつお答えを願いたいと思います。
  64. 市村一夫

    市村参考人 管内におきます予防注射頭数でございますが、太田市におきましては四月から七月までに二千六百七十七頭行なっております。それから新田町が五千三百二十五頭、尾島町が九百六十一頭、薮塚本町が二千二百六十三頭、笠懸村が二千五百七十二頭であります。七月までの太田市及び新田郡全管内におきまして一万三千七百九十八頭の予防注射を完了いたしたわけであります。八月に入りましてから、先ほど課長から説明がありましたように、栃木県に隣接しておる地帯を急速に予防注射を徹底して、侵入を防止せよという命令がございましたので、早急に実施をいたしまして、八月一日から蔓延防止に至る間、十九日まででございますが、千三百頭を行なっております。以降蔓延防止に移りまして、三十一日現在をもちまして、太田市合計で五千七百六十八頭の予防注射を行なった次第でございます。その他周辺の新田郡全域をまぜますと、三十一日現在をもちまして、二万三千五百六十四頭、全管内の飼養頭数約四万頭の中の約半数以上、五〇%以上をこれによって終了いたしたわけでございます。  以上でございます。
  65. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、七月末現在において、特に太田地区が他地区に比べて予防注射のパーセンテージが低いというようなことはないのですか。
  66. 市村一夫

    市村参考人 七月現在をもちますと二千六百七十七頭という数字でございます。これで見ますと、飼養頭数太田市が一千五十四頭ということになっておるのでございます。これにつきましては……。
  67. 東海林稔

    東海林委員 ちょっとおかしいじゃないですか。飼養頭数が千頭で、予防注射二千頭というのは、そんな話はないじゃないですか。
  68. 市村一夫

    市村参考人 これは農業センサスであります。
  69. 東海林稔

    東海林委員 何であろうとそんなおかしな話はないじゃないか。
  70. 市村一夫

    市村参考人 失礼いたしました。太田市は千四百十五戸でございまして、飼養頭数が六千四百一頭ということでございます。このうちの二千六百七十七頭の予防注射を実施したわけでございます。他の郡市に比べまして、数字からいいますと、やや低いという程度でございます。
  71. 東海林稔

    東海林委員 もう一つ伺いますが、この殺処分を約千余頭ばかりやっておるわけですが、予防注射したものとしないものとの関係予防注射をやってさっぱりきき目がなかったというのではこれまた問題だと思うのですが、そこらの関係を明らかにしないと、今後の防疫対策の問題もありますし、また農民に対する指導の問題もあると思いますが、そういう点当然検討されておると思いますので、はっきりしてもらいたいと思います。
  72. 市村一夫

    市村参考人 これは中間の調査でございまして、八百四十五頭のときの調査内容でございます。これを申し上げますと、注射済み豚でかかって殺処分したのが六十九頭でございまして、約八%でございます。未注射豚が七百七十六頭、九二%であります。さらにこの注射済み豚の内容を分析いたしますと、八月五日までに注射の終わったものは一応この段階では抗体ができておる、こういうふうに考えられるのでございまして、これがちょうど六十九頭のうち二十二頭でございまして、したがって、予防注射の有効な範囲内で発生したものは二・六%、それからあとの八月十二日以降につきましてはまだ免疫が完成しておりませんので、これは未注射豚と同じだと考えられるわけでございます。したがって、予防注射の有効度は九七・四%、こういうふうに考えられるのでございます。
  73. 東海林稔

    東海林委員 時間もだいぶたちましたので、最後の結論のほうにいきたいわけですけれども、問題は今後の対策の問題ですが、先ほど畜産局長から通達を出されたということでありまして、防御体制について今後特にどういう点に重点を置かれ、新たにやろうとするのか、そういう点をひとつはっきりしてもらいたいと思います。  それからもう一つは、現実に今回の豚コレラ多発によって被害を受けた養豚農家に対する救済の問題ですね。御承知のように、残飯なんかを中心としてやっておった場合はたいしたことはないと思うのです。しかし、何百頭というような多頭数飼育をやって、ほとんど全財産どころか、農協等からあるいは近代化資金等を相当借り入れてやっておるという場合に、これは決定的な打撃になるのです。したがって、殺処分を受けたものに三分の一の補助金があるというような程度ではとても再建はできないじゃないか。私が何人か今回の多数の被害を受けた農民に聞きましても、もう将来に対する自信を失ったので、養豚をやめて何かにかわろうか、こういうような悲鳴を上げておるものもあるのです。特に今回の私の地元太田の韮川地区というのは、太田市全体でも多頭数飼育を最も中心にやっておるところです。そこが今度非常な被害を受けた。熱心に養豚改良をやっておった連中がもう希望を失っておる、こういうような実情なんです。新聞によると、県でも千七百万程度の対策費を計上したというようなことが出ておるのですが、しかし、その内容を見ると、大体防御対策なんです。今後積極的に、こういう意欲のなくなろうとしておるような農家をふるい起こさそうとするのにはどうしたらいいのか、そういうような点、予防対策の重点とあわせて、今度非常な致命的打撃を受けた養豚業者をふるい立たせるにはどうしたらいいか、そういうようなことについて当然考えなければならないと思うのですが、まず農林省のお考えを承り、次に県からそういう点についての御意見を承りたい、こう思います。
  74. 太田康二

    太田説明員 特に対策として目新しいというようなものはないわけでございますが、われわれは今後の蔓延防止のために、具体的に幾つかの指示畜産局長名でいたしたわけでございます。  その内容を申し上げますと、一つは、開業獣医師に対しまして的確な診断とすみやかな通報が行なわれるように県の指導強化してもらいたい。そして病性決定をすみやかに行なうということにつとめてもらいたい。これが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、飼育農家、特に多頭数飼育の農家に対しまして豚コレラ予防知識の啓蒙をはかってもらいたい。特に新規の導入子豚につきましては、三週間以上の隔離観察を徹底させる。異状豚がある場合には早期に受診するように指導してもらいたい。特に先ほども話が出たわけでございますが、本年度発生の事例を見てまいりますと、家畜商の導入いたしました未注射豚に基因するものがあると思われますので、肥育農家に対しましては必ず予防注射の済んでおるところの豚を導入するように指導強化してもらいたい。特に家畜伝染病予防法の五条に「移動のための証明書の携行」という規定があるわけでございますが、これに違反した家畜商に対しましては、厳格な態度をもって法に準拠して臨むということでございます。  それから発生のあった場合には、市町村あるいは警察等の協力を得て、厳重かつ的確な移動制限を行なうとともに、感染経路の追及を行ないまして、必要な予防注射のほか、病豚の摘発、処分、消毒というような機敏な防疫措置を講じて、蔓延防止につとめてもらいたい。  それから発生が危惧される地域につきましては、あらかじめ県で既定計画に基づきましての予防注射の計画があるわけでございますが、これを再検討いたしまして、先ほど申し上げましたように、予防注射の当初予算の追加もいたしておるわけでございますので、予防注射を徹底いたしまして、発生予防に万全を期してもらいたい。  それから、これも本年度発生一つの特徴でございますが、豚コレラ予防注射の実施済みと称せられるものにも発病している事例が見られますので、やはり予防注射というものを適時的確に実施するようにしてもらいたい。  以上申し上げたようなことの具体的な積み上げによりまして、発生防止蔓延防止というものにつとめてもらいたい、かような指示をいたした次第でございます。  それから、先生お尋ねの農家の立ち上がりの問題でございます。御承知のとおり、家畜伝染病予防法十七条の規定によりまして、殺処分を受けた家畜に対しましては、たしか五十八条の規定かと思いますが、先生がおっしゃいましたように、三分の一の殺処分手当というものを交付することにいたしております。これでわれわれは一応伝染病予防法上の手当金としての対策を講じておるわけでございますが、実際に多頭数飼養をされておる農家の方が被害を受けられまして、立ち上がるためには、いろいろな面での対策ということが必要かと思います。この手当金だけでは立ち上がれないというような具体的な事例もあるかと思いますが、われわれといたしましては、いますぐ的確にこういった措置を講ずるというようなこともないわけでございますが、私のほうといたしまして、繁殖用素畜の導入事業というようなことも農協に補助をいたしまして、肥育用の素畜についてはやっておりますので、飼育農家に対する対策といたしましては、これらが実行がまだ進んでいないような場合には、優先的に被害を受けられた農家にこの措置を適用してやっていただくというようなことも考えておりますし、これはまだ検討の段階でございますが、こういったものが相当全国に発生し、今後の経営資金が必要であるという場合には、天災融資法に準じた措置というようなものも今後検討いたしまして、これは天災ではございませんので、天災融資法の発動というわけにはまいりませんが、それに準じた措置予算上講じて、農家の立ち上がりというようなことに資してまいりたい、かように考えております。
  75. 志田誠

    志田参考人 ただいま畜産局のほうから御説明になった内容は省略いたしたいと思いますが、そのうち、ただ、私どもといたしましては、予防注射の徹底をする場合に、いままで徹底を欠きがちの部分はどういうふうにして徹底していくか、こういう問題が一つ考えられるのでございます。具体的に申し上げますと、家畜市場に上場されるものにつきましては、予防注射したものでなければもうこれは入れない、こういうふうなたてまえをとっておりまして、しかも注射した場合に、三通の証明書を県として特に発行いたしまして、一つは屠畜場、一つ保健衛生所一つ家畜市場、こういうふうに回って、それと現地が照合いたしますので、この点につきましては非常に徹底しておるのでございます。庭先取引なりあるいは農協聞の移動等につきましては、実はふるいにかけるきめ手が現在のところございませんので、これらに対してはさらにくふういたしまして改善したい、こういうことによって完全な予防注射の実施をはかりたい、こういうことをつけ加えて申し上げておきます。  なお、最近の問題につきましては、今回も災害ではございませんけれども、内容的には災害と同じような事態でございますので、県といたしましては、再建融資というふうなたてまえで経営資金の利子補給等、新しく再建するために豚を導入する場合の利子補給、こういう二つの仕事に加えまして、さらに、従来から原種豚、いわゆる子豚の生産の一番のもとになります種豚の配付事業をやっておるのでございますが、その仕事を拡大いたしまして、この地域に特に今回追加して実施する、こういう方法を講じておりますが、それ以上の問題につきましては、さらに検討を加えまして、最善の方法を考究してまいりたいと考えております。
  76. 東海林稔

    東海林委員 いずれにしましても、やはり養豚というものが、今後の畜産の上でも非常に重要な部面を占めておりますし、特に経営形態が前と変わってきておりますから、再建については十分積極的な対策を私は講じてもらいたいと思うのです。この伝染病予防は、人間の場合も同様ですが、日常の予防と同時に、万一不幸にして発生の場合の早期発見というものが何といってもきめ手だと思うのです。そういう点について特に意を用いてもらいたい。さっきからいろいろ説明があったのですが、たとえば当初にも言いましたが、もう少し指導の面とよく連絡をとってもらって、それで保健所のいわゆる防疫員というものがなかなか手不足ということがあれば、指導の人というのは、常に農家と接触しておるはずでありますから、そこらの連絡をよくとってもらいたい。一軒一軒歩く必要はない。一つの部落に行けば、そこに中心養豚家というものがおりますので、一カ月に一回くらいその主要な養豚家を回ることは、何もそんなにむずかしいことではないと思うのです。これはまた畜産課長には少し耳が痛いことばかもしれませんが、いわゆる豚コレラにきまって、ほかの保健所からだいぶ応援が来ましたね。その人たちが、うちでは大体毎月おもなる養豚家のところを回っておるが、こんなに多数発生するまでわからぬということは自分たちにはちょっとおかしいような感じがするということを率直に言う人があるんですよ。それは熱心にやっているところはそういうことになっておるのです。家畜保健所によってはそういう差ができるのかと私は感じましたが、そういう点も十分考えてもらいたい。先ほど農林省の課長のお話ですと、市町村獣医が千ちょっとおるが、その半分くらいが衛生課所管だ、こういうようなことでしょう。そうすると、太田地元において、人口七万人ばかりのところで、相当農家の戸数が多いのです。半分くらい農家です。聞いたら、たしかそこに獣医がいないんですね。多頭数飼育で、これだけ豚もやり、鶏もたくさんやっているんですよ。ところが、専門の指導獣医さんがいなくて、どういう指導をやっているのか、私は非常に疑問に思うのですが、何か聞いたところおらぬようです。また、こういう話もあります。どうもこの辺の獣医さん、年とった方は、これは家畜保健所と開業医を含めての話ですが、実は学校では馬と牛の勉強はしましたが、鶏と豚の勉強はしていない、馬と牛の話だとよくわかるようだけれども、豚の病気についてはあまりよくわからないようだ、こういうような悪口を言うのかもしれませんが、しかし、そういう傾向はなきにしもあらずです。先ほど申しましたように、農林省の係官が来て見ただけで、これはもう豚コレラの危険がきわめて濃厚だとすぐ私にも言うのですが、この県の報告書を見ると、ずいぶん試験検査もやったように書いてある。トキソでございますとか、脳炎でございますとかいうような書き方をしておる。これはさっき課長はそういうことがないように言われたのですが、やはり県の防疫員の心がまえに伝染病をこわがるといったような傾向がまだあるのじゃないか。四、五年前にやはり毛里田地区に伝染病が出たことがありました。あのときも、不明にして奇病で終わらしたはずです。いまなお県のやはり重要な豚コレラ防疫の衝に当たっているある人間が、その後述懐したことがございます。あれは豚コレラにきまっておりますよとあとから言うんですね。これは今回のことではありませんよ。数年前の話ですが、あとから、済んでしまったあとになると、安心をして、いや、あれは豚コレラにきまっておりますよ、こう言うのだけれども、当時は奇病でございます。不明でございますというように、くさいものにはふたをするということです。一頭や二頭だとあなた方はもみ消してしまう。二、三頭になるとあやしいと殺してしまう。めんどうくさければ、埋めてしまってもたいしたことはない。ところが、いまそういう豚が二百頭、三百頭からあって、なかなか下火にならないのです。そういう経営形態の変化があるのに、それに対処する指導の方の皆さんの心がまえがどうも不十分だということを、何と説明されても私は感ぜざるを得ない。これはひとつ畜産課長なり畜産局としても十分反省してもらわなければならぬ。群馬の例を私は具体的にさっき言いましたが、おそらくほかの県においても、群馬において私が指摘したような傾向が必ずあると思う。そうでなければ、一つの県で二千頭、三千頭が起きるまで豚コレラに気づかぬというような、そんなばかなことはない。  それからもう一つお伺いしたいのですが、一部では、家畜保健所の仕事というのは雑用が多くて、なかなか畜産本来の、家畜防疫の仕事に専念できないうらみがあるという話を聞いたのですが、一体家畜保健所の仕事というのは、どんな仕事が重点であり、どんな陣容でどういう仕事をやっているかという点を簡単に、これは説明していただくより、むしろそういう改善に努力してもらえばいいのですが、この機会ですから一応話してもらいたい。
  77. 太田康二

    太田説明員 従来の家畜保健衛生所の仕事、防疫員の方の任務でございますが、家畜保健衛生所法でいろいろ書いてあるわけでございますが、家畜伝染病予防法に規定しております予防注射あるいは蔓延防止のための注射、こういった業務のほうに非常に追われておりまして、これももちろん業務の一つでございますが、それ以外に本来の防疫家畜保健衛生所として当然実施すべき病性鑑定の問題、あるいは衛生思想の普及の問題等につきましての仕事が確かに手薄であった。これは先ほど先生の申されましたように、末端における多頭数飼養に伴う病気多発等の問題もございまして、非常にそういった日常業務に追われて、本来やるべき仕事がおくれておるということは事実でございます。  そこで、われわれといたしましては、そういう点を是正するために、これは明年度予算の問題になるわけでございますが、そういった面におきまして、防疫員活動をゆるめるという意味ではございませんが、やはり開業獣医師をある程度活用する道を開きまして、それによって浮いた労力をできる限りいま申し上げたような病性鑑定とか家畜衛生思想の普及という面に精力的に注ぐといったようなほうに持ってまいりたい、こういった意味での予算要求を明年度としていたしております。ちょうど、他の例等を引いて申し上げますと恐縮でございますが、蚕業技術指導所と養蚕の普及員というような形のものとして、家畜保健衛生所が蚕業技術指導所的な役割りを果たしてもらって、開業獣医師を養蚕の普及員というような形で、養蚕の技術指導に比べて申し上げるのは必ずしも適切ではありませんが、そういったふうに将来持ってまいりたい、かように考えて、明年度予算にもその思想を織り込んだ予算を要求いたしておる次第でございます。
  78. 東海林稔

    東海林委員 もう一つ伺いたいのは、家畜伝染病予防法が従来のままでいいかどうか。何かこれをやはりもう少し、多頭飼育というようなことに情勢が変わってきたことに関連して、私もどこを改正したらどうかというような具体的なあれはないのですが、やはりある程度考える必要があるんじゃないかというような気がするのですが、そういう点についての御見解はいかがですか。
  79. 太田康二

    太田説明員 その点につきましても、確かに、この法律ができましたのは昭和二十六年くらいでしたか、今日の畜産の実情に比べますと、非常にその後の発展も御承知のとおりでございまして、あの当時予想した以上の発展を示しておるわけでございますので、そういった意味では再検討の時期に来ておる。特に国、県、市町村というものの役割りをどういうふうに伝染病予防法上考えていくかということにつきましては、実はわれわれも近い将来に改正をしなければならぬのではないかということで、いま御指摘のとおりの点につきまして検討をいたしておるというような次第でございます。
  80. 東海林稔

    東海林委員 これは所管が若干違うかもしれませんが、共済の関係ですね。どうも養豚関係では、種豚の場合は入ればいいわけなんだけれども、いままであまり入っていないような傾向があるのですが、所管が違うかと思いますが、そういうような点も関係方面とひとつ十分検討してもらいたいと思うのです。  それから最後に一つ。これは政務次官にお願いをかねて所見を伺うわけですが、お聞きのとおり、ことしは残念ながら非常に豚コレラ多発して、しかもその経営が多頭飼育というような関係上、農家によっては非常な打撃を受けておるわけです。農家のほうが不注意だといえば不注意ですけれども、しかし、先ほども御指摘がありましたように、数頭副業的にやっておる農家は比較的衛生についても関心がにぶい。そういうようなところに伝染病発生して、つまり、伝染病ですから、十分管理に注意しておるようなところまでも伝染してくる、こういうことになるので、必ずしもこれは農家が悪いということも言えないと思う。しかもこういうような多発によって非常な被害を受けた。確かに天災とは言えないけれども、何か人災とだけも言い切れない何ものかがある、こう私は思うのです。そこで、今後予防法の徹底あるいは早期発見につとめて、こういう多発防止するということも必要ですが、特に今回全国的に多数飼育をやった農家が大きな被害を受けた。こういう人たちが意欲を失わないで、今後ともまた元気を出して養豚改良に精進できるというような対策を講ずることは非常に必要だ。第一段階としては県でございましょうが、県だけではなかなかやり切れない面があるのではないか。ぜひこれは本省としても積極的な態度でこの問題に取り組んでもらいたいという希望を持っておるのですが、農林省の所見を最終的な締めくくりとして政務次官からひとつお伺いしたいと思うのです。
  81. 草野一郎平

    草野説明員 非常に御熱心な、しかも細部にわたっての御指摘がございました。そうした中で、今回四国であるとかあるいは群馬あたりのああした集団的な発生、たいへんな問題でございます。そこで、農林省といたしまして、この問題に対するいろいろの御希望もございました。畜産というものが新しい農業の中での非常な重要性を帯びておる時期でもあり、同時に、豚コレラというものに対して注射が徹底してなかったとか、あるいは発生してからのあわて方が十分でなかったとか、そういうこともさることながら、それに先立って、もう少し養豚というものに対する近代的なかまえが前提になってこなければいけないのじゃないかということもあります。したがって、指導体制を確立すること、同時にまた、養豚される方々の知識の普及ということも必要でありましょうから、そういうことに対しましても事務当局で十二分に検討しながら、御要望の方向に真剣に努力を続けたい、さように考えております。
  82. 本名武

    本名委員長代理 参考人方々には、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただき、ありがとうございました。お礼申し上げます。  午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  83. 本名武

    本名委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  まず、生乳の価格交渉の経過について説明を求めます。岡田畜産局長
  84. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 このたび畜産局長を拝命いたしました。よろしくお願いいたします。  それでは、生乳の価格問題に関しまして、その後の経過について御説明申し上げます。  六月二十四日の衆議院の農林水産委員会において、乳価問題に関する質疑が行なわれたわけでございますが、その際、政府は、乳価形成の基本的な原則について、生産者、乳業者が了解の上乳価交渉をレールに乗せることができるようさらに指導いたしたいという旨を前局長から御答弁申し上げたわけでございます。その後、七月中旬及び下旬にわたりまして、再度大手四社の社長に対しまして、乳価交渉の早期妥結をはかるため、中央における乳価交渉の基本的な原則を確立するよう協力を要請したのでございますが、乳業者側はいわゆる市価逆算方式を基準とする原則の確立にはあくまで反対であるという態度を示しまして、前進を見なかったわけでございます。一方、中央酪農会議におきまして、七月二十六日会長が大手乳業の社長と会談いたしまして、飲用乳価決定の原則確立につきまして了解を求めたわけでありますが、乳業者の了解を得るに至らないで会談はもの別れとなったわけであります。  このような事情のもとで、中央酪農会議といたしましては、中央における乳価交渉の原則の確立には努力を引き続いて行なうけれども、これと並行して各指定団体においても実質的な乳価交渉を促進するという指導を行ないまして、今日にまいっておるわけでございます。  一方、各都道府県の指定団体の中におきましては、具体的な乳価交渉によって、実質的な乳価水準につきまして妥結に近づいておるものもあるわけでございますが、中央段階における原則の確立に期待をいたしまして、各指定団体とも最終的な結論を出すに至らないまま現在に至っておるわけでございます。  私が畜産局に参りまして、従来の畜産局の原則のもとにおきまして、中央酪農会議と乳業者との間において乳価形成の原則が了解されるようにという指導を続けるために、八月中旬から下旬にかけまして、大手乳業者と数次にわたって話し合いを続けたわけでございます。しかしながら、結局乳業者の態度につきましては、若干弾力的になった点がなきにしもあらずでございますけれども、最終的には態度の変化が見られないままに終わったわけでございます。  そこで、乳価交渉につきまして、中央で交渉の原則が確立いたしまして共通な土俵ができ、その土俵のもとにおいて、それぞれの地方において乳価交渉が行なわれるということが最も望ましいというふうに考えるわけでございますけれども、なかなか中央の話し合いがはかどらないという状態で、いつまでも乳価の決定が行なわれないということは適当でないというふうにも考えられます。  したがいまして、中央酪農会議の方針にもかんがみまして、今後とも中央酪農会議と主要な乳業者との間において飲用向け生乳の価格形成に関する基本的な原則が確立されるような指導をさらに重ねていく方針ではございますが、この際、各県の段階において取引当事者の具体的な乳価交渉を一そう促進することが必要でないかというふうに考えまして、九月五日、都道府県知事に対しまして局長通達を発し、具体的な乳価交渉の促進方を依頼いたすとともに、指定団体を育成強化するための方針を明らかにいたしたわけでございます。  この方針、通達の趣旨説明し、かつ徹底をはかりますために、九月五日から七日にわたりまして、都道府県担当課長をブロックごとに招致しまして、各都道府県の乳価交渉について、その経緯、見通し等を聴取してまいったわけでございます。一方、大手乳業者の代表といたしまして乳協の会長を招致いたしまして、乳協の会長に対しまして通達の趣旨説明して協力を求めたわけでございますが、これに対しまして、乳協の会長といたしましては、協力をして、乳価が早急にそれぞれの地方において決定を見るように努力をするということを明言いたしておる次第でございます。  私が引き継ぎましてから現在まで乳価交渉の問題につきましてとりました態度は以上のとおりでございます。  簡単でございますが、御報告申し上げます。
  85. 本名武

    本名委員長代理 質疑を続行いたします。東海林稔君。
  86. 東海林稔

    東海林委員 ただいま岡田局長から最近における乳価問題についての経過の御報告があったわけですが、私は、その報告について若干の質問をいたしたいのであります。  まず最初に、政務次官にひとつ乳価問題に取り組む新しい農林省首脳としてのその決意のほどを伺ってみたいと思います。  ただいま局長から報告がありましたように、局長段階まではずいぶんと何回もメーカーの代表なり生産者代表を呼んで、中央段階における価格形成の基本的な原則について何とかはっきりしたい、こういうことであっせんの努力をされたということでございますが、いろいろと経過はあったにしましても、結論的には、いまの段階では何ら新しい前進を見ておらぬ、こういうようなことで、一部地方知事に対してもその努力をお願いした、また、生産者団体としても、中央に合わせて地方で折衝するように指導しておる、こういうような報告でありましたが、私はこのような報告を聞いてまず第一に感じますことは、なかなかこれは事務的レベルだけではこの基本問題の解決は容易ではないだろう、こういう感じを強く持つわけです。そこで、新しい有能な大臣並びに政務次官が新たに就任したわけでございますから、これに取り組む農林省の最高幹部としての心がまえといいますか、決意といいますか、そういうものをまずお聞かせ願いたい、このように思うわけです。
  87. 草野一郎平

    草野説明員 乳価の問題が非常に複雑でもあり、ことに地方的にも多岐にわたっておりますが、すでにこの月の二、三日前ですが、各知事あてに通達が出ておるわけでありまして、目下のところ、その通達の趣旨に従って取り進めたいという考え方は持っておりますが、基本的な問題の考え方を一応農林省としても進めていかねばなりませんので、将来の長い見通しをも確立しながら、同時に当面の問題をもあわせて考えながら、前進的な方向への努力を続けていきたい、さように考えておるわけであります。
  88. 東海林稔

    東海林委員 重ねてお伺いして恐縮なんですが、私の判断では、事務的段階ではなかなか容易ではない、こういうふうに感ずるわけです。まあ就任早々でございますから、すぐそれではおれが引き受けたというわけにもまいらないと思いますが、よく事務当局の経過等もお聞きいただいて、事務当局段階で解決が非常に困難だという、私と同じような見解をお持ちになった場合に、大臣なり政務次官として、それでは最高レベルにおいてこの問題の解決に乗り出そう、そういう心がまえをお持ちですかどうですか、その点だけ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  89. 草野一郎平

    草野説明員 もとより当然のことでありまして、先般来の省議においても、この問題は重要な問題として取り上げております。したがって、事務段階で解決し得ることもあるでしょうし、事務段階で解決し得ない問題もありましょうが、しかし、問題は政治的な段階における問題が非常に多かろうと思いますので、そうした高い見識に立って、一つの大きな指導力を発揮しながら進めるべきだという考え方には変わりはありません。しかし、部分的な問題についてどうだとおっしゃっていただきましても、これからの問題であろうと思いますので、よくわれわれは検討しながら進めていきたい、かように考えております。
  90. 東海林稔

    東海林委員 ただいまの政務次官の御発言で、最終的には、大臣政務次官としても責任ある態度でもって善処したいというような御趣旨でございますから、その点については満足いたします。  そこで、局長の報告に関連して若干お伺いしたいわけですが、初め中央で価格形成の基本的な原則をぜひ両者の話し合いできめたい、そういう趣旨指導したというのですが、それは、現在地方にも努力せいということを通達なり、指導しておるということとの関連において、その原則的なことを中央できめるということについての努力は今後ともやられるということなんですか、それとも、一応それはたな上げされたようなことになったわけですか。
  91. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先ほど申し上げましたように、乳価交渉が行なわれる場合に、基本的な考え方というものが確立しておるほうが交渉のためにはベターであるということを考えております。したがいまして、この原則が確立されるように今後とも引き続いて努力をしたいというふうに考えております。
  92. 東海林稔

    東海林委員 私は、算定の方式について最高レベルでの話が合わずに、地方段階において交渉して何が期待できるか、こう感ずるわけです。地方といいますと、メーカー側からいえば、工場などの工場長とかあるいはそれの出張所長というようなものでありましょうが、いままでの乳価のきめ方において、そういう段階において折衝して成果をあげたということはないですね。ただ慣習的に、昨年どおりやりましょうというような場合は別ですけれども、両者の意見が違った場合に、そういう段階で話がつくだろうなんという期待を持つことが、実は農林省自体どうかしているんじゃないかというような感じもするわけです。  私ども、これは非常に皮肉な見方をすれば、中央段階で手を焼いて、何らか問題をしばらく地方に下げて責任を回避したのじゃないかというような疑念すら持たれるような態度じゃないかと思うのですが、その両者の関係を両方並行してやるのだという考え方、特に地方交渉において何らかの効果があげ得るという期待をし得るのかどうか、もしそういう期待を持ち得るとすれば、どういう根拠で期待を持ち得るかという点を御説明願いたいと思います。
  93. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先ほど申し上げましたように、中央交渉におきましてなかなか原則の確立が困難な事態になっておるわけでございますけれども、そのために地方の価格決定がいつまでも延び延びになってきまらないということも困る事態であると考えるわけです。そこで並行してやらざるを得ないということに事態としてはなろうかと思うわけでございます。  一方、乳業者に対しまして通達の趣旨を話しまして、都道府県知事をあっせん役としまして乳価を決定をするということで協力を依頼したわけでございますが、この点につきましては、乳業者も、価格がいつまでもきまらずに不安定であるということについては、これは適当でない、なるべく早く価格がきまるほうが望ましいということは考えておるわけです。したがいまして、従来のように、本社と工場がキャッチボールをすることなく、工場に権限を委任いたしまして、その地帯地帯で価格交渉が行なわれるということにつきまして、会社といたしましても同意をいたしておるわけでございます。なおかつ、現在提示した価格では必ずも交渉が成立するとも考えられない点があるわけでございます。この点につきましては、会社側も地方的に話を進めて、知事のあっせんできまるということになれば、弾力的な態度で臨むということを明言いたしておりますので、両者の話し合い、知事のあっせん等によりまして、妥当な価格が形成されるということは可能であるというふうに考えておるわけであります。
  94. 東海林稔

    東海林委員 私はいまの説明で若干矛盾があると思いますのは、地方別にその地方の実情に合わせてきめるということでございますが、それがまちまちにきまった場合に、中央段階における原則的な価格のきめ方とそれが必ずマッチするようになるということがおかしいと思うのです。地方が先にまちまちにきまって、あとで統一的な原則をきめようなんという話は、私はおかしい。せめて、いつまでもきまらないのでは困るというので、価格について暫定的な措置の話し合いをするという段階なら、これはわかりますよ。しかし、価格そのものについて地方と中央で並行的にいくんだ、しかも、中央できめようとするのは価格決定の基本的な原則をきめるんだということと、私は矛盾があると思うのですが、そういう点はどういうふうに考えますか。
  95. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 指定団体と乳業者との間で交渉が行なわれるわけでございますが、指定団体は、従来から団体側が主張しておりますいわゆる逆算方式ということでこの交渉に臨んでおるわけであります。われわれも、市価を基準にいたしまして、その原料として幾ら支払わられるかということがきめられるべきものだという基本的な考え方を持っておるわけでございます。そういうふうな形でその交渉が行なわれていくと思うわけでございますが、その考えの中でだんだん交渉が煮詰められ、妥結するということになれば、必ずしも原則が中央で最終的に確立するということでなくても——確立するということであればベターでありますけれども、現実の価格の形成がそういう考え方で形成されるということであれば、それが原則の問題と矛盾するものではなかろうというふうに考えておるわけであります。
  96. 東海林稔

    東海林委員 私は、いまの説明によって、どうも畜産局としては、原則的な価格決定についての何か確信がないような感じがするのですが、これ以上は議論になるような気がしますから一応やめますが、私としては、いまの説明では、そういう点であまり納得できません。それで、九月の五日から七日にわたってこの新しい局長通達によって各府県の課長のブロック会議を開いた、こういうことでございます。  そこで、まず委員長にお願いしますが、畜産局長の通達を本委員会に資料として提出させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  97. 本名武

    本名委員長代理 出せますか。——いいそうです。
  98. 東海林稔

    東海林委員 そこで、お尋ねしますが、課長会議において、いまのような通達が出たことによって、地方課長から何か具体的な意見でも出たでありましょうか。ただ畜産局指示をそのとおりに聞いて帰ったというようなことでございますか。もし何か地方から傾聴すべき意見が出たということであれば、それをひとつ出してみてください。課長でもいいですよ、実際に担当した人があれば。
  99. 松本作衛

    ○松本説明員 ブロック会議における経過につきまして、いまお話がありました点について御説明いたしますと、各都道府県におきましても、ただいま先生から御指摘がありましたような、いわゆる中央における原則確立の問題と、さらに現地における交渉の推進という問題についての関連をどう考えるべきかというような点について質問がございました。その点につきましては、ただいま畜産局長からお答えいたしましたような趣旨説明をいたしまして、その結果、各都道府県としても、現状の条件下においてはやはりこういう趣旨に沿って努力してみようというふうな考え方が一般的でございました。なお、都道府県の段階におきましては、やはり県ごとによって相違がございまして、ある県によりましては、県が相当程度それに入りまして具体的な乳価交渉を促進しておるというようなところもございますし、また、ある都道府県におきましては、中央における原則が確立されれば各県の乳価もある程度自動的にきまってくる面があるのではないかというような期待を持っておるとか、ないしは他の都道府県における決定を待って、それに準じて自分の県をきめていこうというふうな考え方等もございまして、必ずしも乳価交渉が十分進んでおらないというふうなところが見受けられる県もあったわけでございますが、現在の条件下におきましては、このまま乳価交渉が停滞しておると、指定団体自体の取引の内容がいつまでも暫定的なものになり、したがって、指定団体の機能というものも制度の趣旨に即した形での運営が困難であるというふうな点から、できるだけ早く乳価の決定を見たいというのが各都道府県の考え方でございまして、そのためにはできるだけの手を尽くしてみようというふうな考え方が一般的であったという印象を受けて帰ってまいりました。
  100. 東海林稔

    東海林委員 皆さまも御承知のように、私どもは、当初牛乳の価格については、社会党としては、原料乳の価格を法的にきめるというだけでは不十分で、市乳についても適切な法的規制をすべきだという意見を強く主張したわけでありますが、残念ながらそういうことにはならずに、私どもも、最終的には、きわめて不十分ながら、酪農民の団結を強化して、そうして各県一本の組織をつくることによって、従来メーカーと対等の話し合いができなかった生産酪農家が、メーカーと団結の力をバックに対等の立場で交渉する、そのことが、自由取引というたてまえをとりながらも、正しい乳価を形成するゆえんであるというようなたてまえで、原案を一部修正して賛成で通したという経過があるわけでございます。  しかし、現在のような状況でありますと、不足払い法をつくったために、確かに原料乳地帯においてはある程度の恩典に酪農民はあずかっておるが、市乳地帯においては何らその恩典にあずからない。ところによっては従来よりもむしろ値下がりしておるというような極端な地域さえあるやに聞いておるわけでございます。そういたしますと、この不足払い法については、当時議論の際に、これまで市乳の利益を一部さいて原料乳のほうに回しておった、ところが、今度不足払いができると、原料乳の点については国が不足払いをしてくれるので、メーカーとしては従来以上に市乳に対する支払い能力が増すのだから、当然その法律の間接的効果として、市乳の価格も従来よりより高いものに期待できるのだというような説明のあったことが、現実の姿においてはちっともまだ生かされておらない。むしろ市乳地帯では、不足払い法を、まだ実施日浅いにもかかわらず、もう無用の長物とか、かえって迷惑だというような声が出ているわけでございますが、その不足払い法を四月以降の実施の経過から見て、実際に当初農林省が期待したような市乳に対するよい影響が出ているか、一体現在農林省としてはどういうふうに認識されておるか、やはり当初からはそこまではいかないが、いまのような状況が漸次改善されれば、不足払い法は市乳に対しても相当な効果を期待できる、そういう確信をいまなお持っておられるかどうか、その点もひとつ基本的な態度としてお伺いしたいと思うわけです。
  101. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 不足払い制度ができまして市乳にいい影響を与えるであろうということでございますが、いままでの乳価交渉の経過を見てみまして、法律が制定されまして指定生産者団体が出発したのが四月でございます。出発してから日が浅いということで、指定生産者団体の運用のしかたにもいろいろ問題がありましたし、組織にもいろいろ問題があったわけでございます。そういう点から乳価交渉というのが必ずしもスムーズにいかなかった点もあるわけでございますが、指定生産者団体が一元供給機関として用途別取引を進めていくということになれば、メーカーとの間に妥当な価格が形成されるのではないかというふうに実は考えておるわけでございまして、ただいま交渉の途中でございますから、提示されました価格についてはいろいろ問題がありますけれども、これが最終的な価格ということでもないわけでございますから、交渉によりまして妥当な価格が形成されるものであるというふうに考えておるわけでございます。
  102. 東海林稔

    東海林委員 私は、価格の算定については、生産者側としてはなるべく有利な算定方式をとりたい、メーカーとしては、またメーカー側になるべく有利な、結局安い答えの出るような算定方式をとりたい、これは当然だと思うわけです。そこで、せっかく法律をつくったことでもあるし、この際、農林省としてはっきりした算定方式を示すという態度は当然であろう。そこで、農林省から先ほど御報告になったように、市価逆算方式というものを一応算定方式として両者に提示した。生産者側においては若干の異論がなかったわけでもないが、一応結果的にはそれを了承した。ところが、メーカー側がそれを了承しないために、現在行き詰ったような状態になっておるわけでございますが、しからば、市価逆算方式に農林省としては確信がある、これは適当な方式であるという考え方をいまでも持っておるのかどうか、その点をお伺いします。
  103. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 価格のきめ方の原則についてはいろいろ考え方があり得ると思うのでございますが、しかし、一応卸売り建て値がきまっておるという前提から出発しますと、原料価格の支払いというものは、その卸売り建て値から幾ら払えるかというふうなことを考えるのが理論的に当然であろうかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、ものの考え方としましては、卸売り建て値から原料代を出し、なおかつ、もちろん需給状況だとか経済状況というものがございますから、そういうものが関連されまして、要するに、卸売り建て値から原料代が支払われるということは、ものの考え方としてこれは間違ってないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  104. 東海林稔

    東海林委員 相当確信があるお答えで、私はその点に関する限り満足なんです。しからば、そういう確信ある方式を生産者側では納得したが、メーカー側で納得していないという点でございますから、今後とも引き続きこの市価逆算方式というものを強力にメーカー側に納得させる、そういう努力をするのが当然だと思いますが、その点についての局長の決意を伺いたいと思うのです。
  105. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 いままで努力をいたしましたけれども、十分目的を果たしておりませんで、はなはだ残念に思っているわけでございますが、ただいま申し上げましたような考え方で今後も話し合いを続けて、共通の土俵をつくるということに努力したい。いろいろ交渉しました結果からいたしますと、メーカーとしましては、従来各工場ごとに生産者団体と話し合いをして具体的な価格を決定しておった。原則というものを確立して価格を形成するというふうな慣習はございませんし、そういう考え方が比較的薄いわけでございます。したがいまして、そういう考え方にふなれな面もありまして、なかなか原則を確立するという考え方がどうも薄いのではなかろうかという感じがいたしておるわけでございますが、今後の指定生産者団体体制整備とも相まって、この原則を確立するように私のほうとしても努力をいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  106. 東海林稔

    東海林委員 価格の点はそうなんですが、価格を生産者とメーカーで相談する場合の相談のしかたの問題も、一つこれに関連すると思うのです。従来はメーカー側からいえば、生産者団体をなるべく分裂さして、その力を弱めながら有利な価格交渉をするというのが、メーカー側から見れば当然なことであるし、従来もそういうことをやっておったように私は考えているわけです。今回不足払い法が出て初めての段階でございますから、これはメーカー側としても十分考えながら対処しておるということは当然想像できるのでありますが、私の承知しておる範囲では、メーカー側としては、従来と同じような形において地方の価格交渉を進めようとして、酪農の出荷団体ごとに話を進めるような態度がまだぬぐい切れておらない。せっかく法律で出荷団体を県一本にしたのであり、これは法律できまったことでありますから、少なくともその点に関しては、メーカー側としては県一本の指定団体を尊重して、地方の折衝の場合においてはその指定団体一本で話し合いをする、でき得べくんば、先ほどのように中央での基本方式がきまることが望ましいのでありますが、少なくとも地方段階においての話し合いの際には、やはりここでは法律できまったことであるから、これは自分たちの好むと好まざるとにかかわらず、指定団体を尊重していくという態度がなければいけない。また、これは長期的展望に立って——生産者もメーカーもその他の関係者も一体となって日本の酪農の振興をはかるという、そういう長期的な大きな展望に立てば、そういう態度が当然あってしかるべきじゃないかと思うのです。  私の見聞している範囲では、残念ながらそういう態度ではないように思われるのですが、農林省はそういう交渉のしかたについての現時点における実態をどのように把握され、どのように指導しようとされておるのか、お伺いしたいと思います。
  107. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 現実の交渉の状況を見てみまして、いろいろな形があるわけでございますが、先生おっしゃいましたように、メーカーのほうで、生産者団体を切りくずして個別的に交渉しようというような動きがあるやに聞いておるわけですが、一方でメーカー側と話をいたしますと、多数の団体と話をして乳価をきめるのはなかなかむずかしいというようなことも実は申しておりまして、指定生産者団体が一本としてまとまるならば、その指定生産者団体と交渉するほうが望ましいというようなことも実は申しております。私たちの立場といたしましては、法律に基づきまして一元集荷機関というものが確立されたわけでございますから、あくまでこの一元集荷機関を一本にいたしまして価格交渉をすることをやるべきであるということを強く指導いたしておるわけでございます。先ほどお話がありましたように、団体が設立されて間がないために、内部的にまだいろいろ問題がございますので、そういう点は逐次是正をしていきまして、強力な団体につくり上げまして、強力な乳価交渉ができるというふうな体制にできるだけ早く持っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  108. 東海林稔

    東海林委員 ひとつ観点を変えてお伺いしたいのですが、メーカー側から、こういうような算定方式なら自分のほうでは話し合いに応じたいというような意味での、何らか具体的な算定方式についての申し出が局長のほうにございましたでしょうか。
  109. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 メーカー側のほうから出しております考え方として、この数カ月の間にいろいろ経過があったわけでございますが、一つの考え方は、積み上げ方式と申しますか、生産費に工場の経費を加えまして、それから卸売り、小売り価格経費というものを加えまして、それで価格をきめるべきであるというふうな考え方があるわけでございます。これは卸の建て値なり小売りの建て値を当然改定をしていくというふうな考え方でございます。それからやや以前に出されておりました考え方は、卸売り建て値を基準にしないで、卸売り建て値だとか、経済状態だとか、それから需給状況だとか、そういうものを全部勘案をしてきめるというふうな、そういった考え方もあったわけでございますが、この点につきましては、生産者側のほうの団体との意見は一致をいたさないわけでございまして、メーカーのほうから提示をされたままになっておるわけでございます。
  110. 東海林稔

    東海林委員 あとで同僚の芳賀委員からも質問があるはずですので、私はもう一問くらいで終わりたいのですが、府県によりましては、指定団体として、これ以上農林省のあっせんなりあるいは出先での機関と指定団体との話し合いではなかなか結論が出そうもないから、この際、酪農振興法に基づいて知事のあっせんを依頼したい、おそらく知事のあっせんも簡単には結論が出ないだろうから、それならば、さらに中央のあっせんに持ち込みたいというような意向を持っておられる都道府県も若干あるやに私は聞いておるわけですが、そういう段階になった場合に、農林省としては、これは法律の規定上当然やらなければならぬわけですが、積極的に酪農振興法の立場からもこの問題に努力する決意を持っておるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  111. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 九月早々に、この乳価の決定につきまして、県が中に入りましてあっせんをしてもらいたいというふうな通達を出したわけでございます。そこで、地方の調停にかけるとかかけないとかいうこと以前に、知事が積極的に両者の間に介入して話し合いをつけるということで指導いたしておりますので、この方法で妥当な乳価がきまるように、われわれとしては県の努力を要望いたしますし、われわれとしてもその方向で努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。あっせん調停の規定はこれは法律にあるわけでございますから、今後どうしても問題が解決しないで、調停が出てくるということになれば、これはあっせん調停ということをしなければならないものであるというふうに考えておるわけでございます。しかし、ただいまの段階では、まずその前段階として、知事が事実上調停あっせんをするという形で進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  112. 東海林稔

    東海林委員 結論的にひとつお願いを兼ねて申し上げるわけですが、私は先ほどもちょっと触れましたように、知事のあっせん程度でこの問題が解決する問題だというふうに甘くは考えていません。いずれにしても、中央の調停というようなことにもなると思いますが、しかし、ただいま局長は、その法律に基づく調停というような段階に先がけて、知事の積極的なあっせんによってこの問題の解決をはかりたい、それが一番いい方法だ、こういうお話がありました。私は、そのことを農林大臣政務次官に申し上げたいのです。そういう法的手続によって、しかたなしにといいますか、いやおうなしに紛争調停に当たるというような形をとることなしに、やはりこういう重要問題でありますから、なるべく早くその事態を農林省の最高幹部である大臣政務次官としてもよく検討していただいて、そうして積極的にすみやかに乗り出して解決する、そういう態度をぜひとっていただきたいと思うわけです。これは当初に政務次官から、大臣なり次官の基本的な態度として御表明がありましたので、重ねてお答えはいただかなくてけっこうでありますが、最後にその点を特に強くお願いをいたしまして、私の質問を終わるわけでございます。
  113. 本名武

    本名委員長代理 芳賀貢君。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの東海林委員質問関連して、二、三お尋ねいたします。  第一の点は、先ほど岡田局長から経過説明がありましたが、説明によると、七月の下旬に当委員会で檜垣畜産局長から農林省の方針を徴したわけでありますが、そのときの方針と、局長がかわりまして、ただいま岡田局長からの説明の結果は、相当方針が後退したように見受けられるわけです。これは畜産局長がかわったことによって、乳価問題に対する農林省の行政態度が後退したものであるか、あるいは農林大臣もかわったわけですからして、農林大臣が交代したことによって、新しい農林大臣の方針として、もう少し農林省としては行政的な指導を後退さすべきであるということで後退したものか、その点はどうですか。局長段階の交代によって後退したのか、農林大臣がかわったことによって態度が後退したか、その点をまずお伺いしたい。
  115. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 私になりまして、前局長のあとを引き継ぎまして、考え方の基本については全く変わってないと思います。ただ、現実の事態が進展いたしておりますので、現実の事態にその考え方をどのように適用するかという問題でございます。当時の事態と現在の事態が若干変化をしてまいっておる関係から、その新しい事態に対して基本的な考え方に立ってどのように処置するかということで進めてまいったわけでございます。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、事情の変化というものは、私たちが見れば、むしろ農林省の行政的な態度というものが変化したことによって、情勢が変わってきた。これは主体的なものが後退してきたわけだから、それで変わったのじゃないですか。
  117. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先生のようなお考え方もあろうかと思いますが、私たちのほうは、考え方の基本は変わってない、適用のしかたがやっぱり現実に応じて変わってまいっておるということだというふうに考えておるわけであります。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 七月下旬の当委員会において、檜垣局長は、八月の中旬までに飲用乳価の中央交渉については政府指導的に介入して結論を出すということを明らかにしているわけです。これはもう数度念を押した結果、八月中旬を目途にして解決をはかりますということになっておるわけですが、それが全然、停滞というものじゃなくて後退の感があるわけです。これは明らかに農林省あるいは畜産局の方針の変化というふうにわれわれは見ておるわけです。  そこで、時間の関係上、端的にお尋ねしますが、岡田局長が九月の五日付で先ほど話のあった局長通達を出したわけですが、その直後に記者会見を公式に行なっておる。その中で幾つかの問題が局長から述べられておるわけですが、これを私が指摘して、これに対して正確な答弁を願いたいと思います。  第一は、逆算方式についての中央交渉はまとめるのがむずかしい、第二は、飲用向け乳価は当事者同士できめるのが本来の姿であり、知事が現地解決に努力してほしい、第三は、用途別取引を行なわないと不足払い金を出せなくなる、第四は、指定団体は発足後間もなく弱体なので、強化措置を具体化し、指定団体の逆をゆくものをチェックする、五、乳価紛争を酪振法に基づいて県と国の調停に持ち込んでも時間の空費でないか、六、飲用向け乳価は有利な価格形成が期待できるので、国が加工乳のように不足払いすることは考えていない、七、飲用向け乳価と市乳末端価格の値上げをすぐ結びつけるのはおかしく、檜垣前畜産局長が明年四月に市乳小売り値の値上げを認めたとは思わない、などの見解を明らかにした、こういうふうに伝えられておるわけですね。そこで、この一から七にわたって、ひとつ局長から、問題を解明する意味において若干の説明を加えてもらいたい。
  119. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先生がおっしゃっておられますのは、「酪農経済通信」に書いてあることかと思いますが、これは実は、私も昨日読みましたが、私が話したのがそのまま書いてあるわけでないものですから、私の考えと必ずしも一致しておらないようでございますが、中央の原則の確立の問題についてあっせんをいたしてまいってきたわけですけれども、これは現段階ではまずまとまらないという状態にきたわけでございます。これから直ちにこれを打開しようとしてもなかなか打開がしにくいという状態になったわけでございますが、先ほどお話し申し上げましたように、指定団体強化と相まって原則はやっぱり確立していかなければならないというふうに私は考えておるわけでございます。今後もこれは引き続いて努力をすべきものだというふうに考えております。   〔本名委員長代理退席、舘林委員長代理着席〕  それから、中央交渉の経過はこれに書いてございますが、経過につきましては、先ほど申し上げましたように、メーカー側の考え方がございまして、そこで合意を得るに至っていないということを申し上げたわけでございます。  それから、中央交渉で原則がきまらないから地方にこれを移すというふうな考え方は持っておらないわけでございます。先ほど申し上げましたように、中央交渉につきましては今後も話し合いが十分できるような形で努力をいたしますとともに、このままで推移をいたしますと、中央交渉がきまらない形では地方の交渉が実質的にきまってまいらないということになりますので、一方で中央の話し合いはできるだけつけるように努力しながら、地方におきましても具体的な乳価交渉を進めていく。中央待ちということでなくて、地方でも積極的にその話し合いを進めていく。それに対しまして県が促進をするという形をとるという考えでございまして、中央でできないから地方に移して、地方でやってくれという趣旨ではないわけでございます。  それから、飲用向けの不足払いの問題でございますが、これにつきましては、飲用乳の価格について不足払いをするという考え方は現在のところ持っておらないわけでございます。  それから、指定団体強化につきましては、これは、今回の乳価交渉の経過にもかんがみまして、設立間もないためにいろいろ問題もあるわけでございますが、この指定団体強化して強力な団体につくり上げて、それによりましてメーカーとの価格の交渉が有利に展開するという形になるように努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  調停の問題につきましては、先ほど東海林先生に申し上げましたように、現在の段階としてわれわれは第三者としての知事の乳価交渉の促進ということに力を注ぐべきものであって、現在の段階で調停をするというのは必ずしも適当でないのではないか、できるだけ知事が入りまして努力をいたしまして、その結果調停の問題が出てくれば、その調停の問題は調停の問題として扱うべきものであるというふうに考えており、調停は時間がかかって話がつかないから空費であるとかロスであるとかいうふうなことは考えてはおりません。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、中央交渉に対する自信を畜産局が失って、地方に差し戻したようなことになるわけですが、従来の乳価の紛争とか決定の経緯を見ても、中央でまとまらぬものが地方でまとまったという例は全然ないのですね。ですから、内容に困難性があればあるほどこれはむしろ中央に吸い上げて、そこで指導的にきめさせるということ以外にきめ手はないと思います。これを地方に差し戻しても、これこそ時間の空費だけで、地方において何ら解決のめどは立たぬと思いますが、その見通しはどうですか。
  121. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 従来の乳価交渉は、先生御存じのように、地方でそれぞれ地方の生産者団体とメーカーとの話し合いで乳価がきめられているというのが実態であるわけです。今度は、不足払いの制度ができ上がりまして、指定生産者団体ができまして一元集荷機関になったわけでございますから、一元集荷機関とメーカーとの話し合いということになる。これが本来的な経済取引の原則であると思うのでございますけれども、不足払い制度もできまして、それとの関連で有利な市乳価格が形成されるためには、やはり中央において統一的な考え方、原則、いわば共通の土俵というものができれば、話し合いがスムーズにいくのではないかということで、原則論を確立しようという努力が生産者団体からもなされたと思うわけでございます。それはまさにそのとおりでございまして、原則論が確立して、そのワクの中で話し合いをするということになれば、スムーズに価格形成が行なわれることになります。それはまた、常に紛争することなく話し合いによってうまくきまるというルールが確立すれば、それが一番望ましいことだとわれわれも考え、そういう立場から両者のあっせんをいたしまして、共通の土俵をつくるということに努力をしてまいったけれども、残念ながらそれが結論を得るまでに至っておらないということでございます。したがいまして、そういう考え方のもとにおいて地方においてそれぞれ話し合いを続けて妥当な乳価を形成するということは、必ずしも中央できまらなければ地方で絶対きまらぬという性質のものではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まだなって間もないですから、深く追及する気はないですが、何か局長の勘違いがあるようですね。中央交渉を始めた経過は、いまの暫定措置法の審議の場合においても、われわれの主張は、全国の都道府県単位の指定生産者団体ということでは不十分である、やはり全国を一本にした生産者団体が形成されることが望ましいし、そうなければならぬということは論議された点です。ですから、いまの法律の運用から言っても、全国段階に都道府県段階の生産者団体が参加する形で経済行為をやることはできる。しかし、立法上から言うと、それが明確になっておらぬ点もあるわけです。そこで、個別交渉では十分な解決ができないということで、中央酪農会議に全国の指定生産者団体が参加して、これを事実上全国一本の交渉団体とみなして——みなしてというのは、農林省もそれをみなして、そしてメーカー側と一本交渉を進むべきである、それに対して誘導するということが畜産局の当時の方針であったわけです。それをまた個々に分解して都道府県段階における個別交渉でやるといっても、これは期待に沿った結論は出ないと思うのですよ。ですから、相当困難があっても、やはりいまの中酪なら中酪を全国的な一本の交渉体と認めて、当然メーカー側もこれは事実上否定はしていなかったわけですから、そういうことでやはり中央交渉を中心にして話は進める。しかし、地方においてもそれぞれの実情というものはあるのだから、単に中央交渉だけにまかせるとか依存するということでなくて、中心は中央交渉で進めるが、地域においても、これはやはりひとり飲用乳だけではないですからして、そういう事情も加味して、必要な場合には中央、地方の両建てでやるということはあり得るとしても、これを地方に差し戻すという形はとるべきでないと思うのです。この点を明確にしておいてもらいたい。
  123. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先生御承知のように、中央酪農会議というのが、指定団体も含めました中央機関としてでき上がっているわけでございますが、この中央酪農会議というのは、あくまで中央の指導機関でありまして、乳業者に対する具体的な契約等に関しては団体交渉するということは適当ではないというふうにわれわれは考えているわけでございます。あくまで経済団体であります指定団体が乳価の交渉をすべき性質のもので、中央酪農会議は中央の指導機関として指導をする。したがいまして、原則を確立するというような問題につきましては、当然中央酪農会議が行なうべき問題であると思いますけれども、具体的な乳価の問題につきましては、指定団体と業者との間で契約を結ぶべき性質のものだというふうにわれわれは考えております。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこが檜垣局長の時代とあなたになって変わっているのです。この点は、契約については当然当事者である指定生産者団体とメーカーにおいて締結すべきである、これは間違いない点です。しかし、交渉については、価格上の交渉とか取引上の交渉については、これは全国の指定団体が参加いたしておる中央酪農会議がそれを代表して交渉を進めるということについては、それでいくべきであるということになっておるわけなんです。だから、あなたの場合には、どっちも指定団体でやらなければならぬということで、それで地方に差し戻しの方針になったかもしらぬが、この点が後退なんです。交渉は中酪で強硬に進めてもらってもいいが、契約ということになれば、制度的に見ても、指定生産者団体とメーカーの間において行なうべきである、との点は前の国会でも明らかになっておる点なんです。それに今度けちをつけて、交渉も契約も指定団体でなければならぬということになれば、それは当然差し戻しということになるかもしらぬが、これは大きな後退なんですよ。ここでその方針をもとに戻してもらわなければならぬ。だから、局長が判断してそういうことをやっておるのか、松野君が大臣になって、これはもう少しゆるめてやれということでやっておるのか、そこが明快にされていないので、場合によってこれは草野さんからでも、どっちがそういうことをやっておるのか、局長か大臣か、まさかあなたとはだれも思っていないが……。
  125. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 その点は、私前局長から引き継ぎまして話を聞いておるわけですけれども、中央酪農会議が経済交渉をやる機関であるというふうな話は実は聞いていないわけです。私は、あくまで指導機関であるというふうに聞いておりますし、そういうふうに現在了解いたしておるわけです。従来からやってまいりました中央酪農会議の動きもまさに、具体的な価格交渉の問題ではなくて、原刑論の問題として、指導機関として原則論を確立するということで中央酪農会議も努力をしてまいったと思います。市乳価格につきましては、先生も御承知のように、非常に地域の実情によって違っているわけでございますから、これを中央で一本で交渉するということはなかなかむずかしいことだと私は考えております。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合、原則としていわゆる逆算方式——逆算方式というのは、われわれ社会党としては賛成もしておらぬし、支持もしていないのです。しかし、四十一年の飲用乳を中心とした乳価を用途別取引の中でできるだけ早くきめなければならぬでしょう。そういう場合、いわゆる法律の対象になっておる乳製品からのいわゆる逆算方式、保証乳価というのは、これは曲がりなりにも生産費と所得を計算して一応きめてあるが、しかし、実際の基準取引価格というものは、政府が設定した乳製品の指標価格からその経費を控除するという、いわゆる逆算を行なって生まれたわけですから、この逆算方式というのは現在政府行政的に行なった一つの算式なんですね。それを、用途別の取扱いでもあるので、飲用乳についても原則として算定の一つの方法論として逆算方式で卸売り価格から経費を除いた逆算でやるべきであるということで、畜産局長が方針を立てて、これは暫定的だと思いますが、全国の生産者団体も大体それでいくということで交渉を進めておるわけですから、この逆算方式によって計算をするという原則が相互間で了承されないといかないわけです。それが基礎になって地域的な要素を加味して、必ずしも、全国一本でなくても、算定の方式としては逆算方式を現段階においては採用すべきであるということできておるわけですから、これはむしろ生産者団体というよりも、農林省として、政府としてこれが妥当であるとするならば、政府行政権限でメーカーに対してこれでやれというぐらいの指導力がないと、これは一年たっても二年たってもきまらぬと思うのですよ。それは地方知事なんかにまかせたって何もできないですよ。
  127. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 原則論の問題は話がまだついていないわけですけれども、われわれとしても、なおこれは努力をしたいと思っておるわけであります。地方になりますと、原則論もさることながら、具体的な価格形成の問題になるわけでありますから、その具体的な価格形成がどういうふうな考え方で主張され、どういうふうにきまっていくか、こういう問題だと思うわけでございます。中央につきましては今後もそういう努力をいたすつもりでおりますけれども、地方におきましては、そういう妥当な価格の形成ができるだけ早くきまってまいるのが望ましいというふうに考えておるわけでございますが、その際、指定生産者団体としては、先ほど申し上げましたように、原則として市価逆算方式という考え方で臨んでおるわけでございまして、そういうふうな考え方で話が進められ、話が合うところで価格がきまっていくという形になってまいると考えております。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 檜垣さんの時代は、これは八月中ごろまでにきめますというのは、いろいろな意味が含まっておるが、一つは、中酪を通じての生産者団体とメーカー側の話し合いが進んで、それを政府行政指導強化して、大体八月中旬をめどにしてきめるだろう、メーカー側が無理解でどうしても応諾しない、話が進まぬという場合には、最後はやはり強い行政指導できめさせるという二様の意味が含まっておったと思う。だから、第一のやり方でも第二のやり方でも、われわれは八月中旬までにこれはきまるというふうに期待しておったわけです。それがずっと後退してしまったわけです。加工乳のほうは、メーカーは納得しておるのでしょう。これは法律があるから、法律に逆らったってどうしようもないから、それともう一つは、有利にきまっておるから、何も反対する筋合いはない。同じ路線できめる場合、飲用乳のほうはその方式はだめだというのはおかしいと思うのですよ。それは自由だからだめなんだという場合は、むしろ用途別なんということではなくて、われわれ社会党が元来主張したとおり、全部の生乳を対象にすれば何も問題はないわけです。用途別でなければならぬのは政府でしょう。あなた方じゃないですか。そういうことをやっておきながら、今度は、これは困難でありますとか、自信がありませんから地方へ差し戻しますなんというのは、ちょっとおかしいと思う。これは権威にも関するじゃありませんか。だから、メーカーが理解して協力しなければ、原則は行政権でのましたらどうですか。そのくらいの迫力がなかったらだめじゃないですか。どうですか。
  129. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 非常な決心をもって努力をいたしたわけでございますが、現在のところ、まだ話し合いがまとまってきまるという段階まで至っていない。引き続いて今後も努力をしたいというふうに考えております。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この方式は結局逆算ですから、消費者に負担をかけるということにはならぬわけですね。いまの物価事情等から言って、これは生産者には言い分があると思うのですよ。しかし、いまの政府の全く無定見な物価政策というものをさらにまた助長するようなことは避けなければならぬという含みもあって、逆算方式というものに対して暫定的に生産者もやむを得ぬという態度であると思うわけです。だから、消費者にはこれは全然迷惑がかからぬ、負担がかからぬ。そして、一定の適正な加工経費とかマージンとかいうものは、畜産局が専門的に調査した結果に基づいて計算されておるわけですから、不当利潤を望む場合は、これは了承できないということは言っても、しかし、いまの国民経済的な立場から見た場合は、大体の線というものは了承しなければいけないと思うのです。ですから、メーカーが無理解で協力しないという態度の場合には、従来よりももう少し高度の政治性とか行政力というものを発揮すべきではないかと思うのですよ。そうでなければ、いつまでたっても生産者だけが下敷きになったり犠牲を転嫁されるというような力関係で終わってしまうのじゃないかと思うのです。そうなれば、農林省というものは、生産者の味方ではない、メーカー側の味方だという従来の不信感というものは払拭できないじゃないかと思う。ですから、この際、基本的な方針とか姿勢とかいうものを明らかにしてもらいたい。
  131. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 飲用乳につきましては、一応経済的な取引という形で残っておるわけであります。これに対して強制する法律上の権限もございませんし、これは話し合いによってきめていくべきものでございまして、これに対して適切なる行政指導をするということであろうかと思うのでございますけれども、一方で指定生産者団体がまだ必ずしも体制が整っていないという点もございまして、メーカー側は原則の確立に直ちに応ずるという情勢にないわけでございます。何といたしましても、この体制を築きますためには、指定生産者団体を一方で強化しながら、体制を整えて原則を確立する必要があるのではなかろうかということを感じておるわけであります。そういう意味から、指定生産者団体組織強化なり機能の発揮ということにつきまして格段の努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、これはきめ手がないということであれば、いろいろ方法はあると思うのですよ。だから、有力なメーカーが一致した行動をとっておる、逆算方式に対しても一致した行動で反対しておるとか、あるいは乳価の交渉についても同一の態度で行動しておるということになれば、やり方が巧妙であっても、場合によっては独禁法違反の事案として農林省がよく調べてみるという方法もあるのじゃないですか。だんだん知能的になっておるから、正面から見てもわからぬと思う。しかし、畜産局というものはそのための役所ですから、あらゆる角度からそういう内容を検討した場合、何らきめ手がないというわけはないと思う。何もメーカーを圧迫して経営ができないようにしろとかなんとか言うわけじゃないのですよ。しかし、われわれは、少なくとも前の畜産局長が打ち出したあの方針は、いまの段階においては大体妥当なものであるというふうに認めておるわけです。国会もそれを支持しておるし、生産者団体もそれを支持しておるし、あるいはまた消費者全体も、別に末端価格が高くなるわけでないから、これはけしからぬと言うこともないわけです。わずか数えるだけの数個の乳業メーカーに対して、国民全体がこういくべきであるという方向、あるいは国会もその行政方向を支持しているという場合、肝心な農林省が全く自信を失って動きがとれぬということは、これはちょっと変じゃないですか。
  133. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 今後も努力をするという考えに変わりはないわけですけれども、原則の確立だけに時間を費やしまして具体的な価格形成がいつまでも延びておるという形で推移するということは、必ずしも妥当ではないではないか。現実に、各指定団体の間ではメーカーとの間の話し合いで実質的に価格水準が接近してまいって、話し合いをしてきめられるという状態になっておるにもかかわらず、中央の話が決定をしないためにその決定ができないというふうな状態にある。そういうことは必ずしも望ましくないので、本来的な考え方、原則を貫徹して価格が形成されるものであるならば、それは中央の考え方、原則が確立するまで待たなければならないということもないのではないかというふうな事態に判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、市価逆算方式なり、そういう考え方のもとで交渉をしまして妥結し得るならば、妥結していいのではないか。もちろん、一方では原則の確立では今後も努力するつもりでございますけれども、そういうふうな状態になっておるのではないかという判断から、今回の通達を出した次第でございます。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 従来は、畜産局が逆算方式を指導的に打ち出して、実際の交渉は生産者とメーカー側にやらしておいたんでしょう。今度は農林省がこの方式をとらざるを得ないということであれば、農林省として、メーカーに対してこの方式でやるべきであるということで納得させたらいいじゃないですか。それが原則でしょう。原則を了解さして、それを基礎にして具体的な価格上の交渉を当事者間でやらすということは、これは能率が上がるのじゃないですか。
  135. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 従来の交渉は、生産者団体のほうで一応市価逆算方式という原則を確立して、この原則のもとにメーカーと話し合いをするという形であったわけです。そこで、農林省としても、市価から原料価格を出していくという考え方は妥当であるということで、そういう考え方で両者の話し合いをつけるということであっせんをしてまいったという実態だと思うのです。ところが、メーカーがなかなかそれは了承しない。原則の確立を必ずしも積極的にやろうという考え方がない。そこで、なかなか話し合いが進捗しない。あっせんをいたしまして妥当なところできまり得るようにつとめてまいったわけでございますけれども、現在のところそれが成功しておらない、こういう事態にあるわけでございます。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、局長段階で大メーカーの社長クラスを呼んでも話がつかぬ、ばかにされて話がつかぬという場合は、農林大臣を前面に出したらどうです。そのための大臣というものじゃないかと私は思うのですけれどもね。大臣もかわったばかりですから、どういう考えかということは、韓国からまだ帰られないので、きょうはやむを得ぬが、次回の委員会にはぜひ大臣が出てくるのはあたりまえですが、それまでに、何も局長でだめなら大臣もだめだというわけじゃないと思うのです。事務段階で話して、それでもだめな場合には、一国の農林大臣としての権限はわれわれが与えているわけだから、そこできちっと話をきめさせて、それから事務的にあとは具体的な価格交渉に対する適正な指導畜産局長が行なうというふうにされたほうがいいじゃないかと思う。これはどうですか、政務次官
  137. 草野一郎平

    草野説明員 全くそのとおりですが、畜産局長が話をしておるからといっても、やはり農林省の看板を背負うてやっておるのでございますから、何も局長という看板一つだけでやっておるわけじゃございませんので、うしろには農林大臣がいるということが背景になってやっておるわけなんです。しかし、御承知のとおり、いろいろの御指摘のあったとおりで、農林省が中央でびしゃっとやって事がきまれば一番簡単なのです。ところが、びしゃっとやるについてはびしゃっとやれるだけの一つの、何といいますか、法的な根拠があるか、しからずんば何かそれに見合うだけの一つの急所のようなものがなければいかぬというわけなんで、そこのところが非常にまた微妙なんで、そういうことが非常に入り乱れておるといいますか、複雑にくしの歯のようにかみ合っておるところにその問題の複雑性があるので、それをどう解きほぐしていくか。一気にずばっとやったらいいじゃないか、それはそのとおりなのです。しんきくさい話ですから、やってしまったらいいようなものですが、そこのところを、原則論は原則論としながら、現実の乳価をど打ち立てていくかということで、指定団体のところで話し合いをつけながら、そこでだんだんに力をつけながら追い込んでいこうという形をとっておるのですが、まあひとつ、これはいま申しましたように結論的に一発でやってしまえばいいようなものですが、一発でやれるような方法があるかどうか。あるとすれば、それだけのだんびらを持っておらなければならぬ。だんびらを振り回してみて一向にきき目がなかったら、もう一つかっこうが悪いということになりますから、そこのところをこれからじっくりやりますが、何も畜産局長がやっておるから農林省の威力がなくて、大臣が出かけたからというわけでなくて、やはり畜産局長農林省の看板を背負うということでございますので、これはひとつ省議の方向で進めていきます。したがってまた、農林大臣が次の機会に出ることは当然でございますが、いろいろの御意見を拝聴しながら、御指摘というものに対して、われわれは、重要な点であるということを考えながら、前進方向をとりたい、かように思っておるわけでございます。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言っておるのは、坂田農林大臣の時代はいまよりも相当進んでおったですからね。たまたま大臣も局長も一ぺんにかわったですから、一セットみたようになっておるが、とにかく、同じ自民党の、しかも佐藤内閣の中で、坂田さんがやった時代のほうが、逆算方式を原則としてやりますということを檜垣局長を通じて国会で明らかにしておるわけなんですよ。それが今度は、大臣がかわり局長がかわったとたんに、これは自信がない、困難である、だから中央交渉はやめて地方に差し戻すから、地方の生産者団体がそれぞれメーカー側と交渉しなさい、こういうことに変わっちゃったのですよ。これはおかしいじゃないかというのが、先ほどからの東海林委員質問でもあるし、これは委員会全体がそういう感じは受けておるのですよ。何もきめ手とか一発とか大げさなものじゃないのですよ。根拠があって農林省としてもいままで指導してきておるのですからね。だから、一番むずかしい卸段階から小売り段階までの販売経費というものはなかなか捕捉できがたいから、そこまではこれは及んでいないのです。飲用乳の卸売り段階の価格というものは非常に把握しやすいのですよ。その価格というものを押えて、それから卸売り段階までに至るいわゆる飲用乳の加工処理の経費と、それからメーカーのいわゆる適正利潤というものを加えた金額を卸売り価格から控除した残りがいわゆる生産者側の手取り乳価、こういう方式でやるべきであるということで話が進んでおるわけです。それが局長の段階では、檜垣局長の場合においても、大メーカーの社長クラスも個別に呼んで話をした経過もあるが、そこでも完全に全面的に全部反対とか考慮の余地がないというほどのものではなかったわけです。たとえば四大メーカーのうちで、四社全部というわけじゃないのですよ。そのうちのごく一社くらいが頑強に——これは法律をつくるときも反対したし、いまも生産者団体を骨抜きにする気になっておるのだから、こういうのは御しがたいですからね。これにはこれに対して対処する方策をとるということを当時檜垣局長は言明しているのですよ。そういうものには驚かぬということを言っているわけですからね。だから、局長の段階でこれ以上進まぬという場合は、そこであきらめて地方に差し戻すということをしないで、農林大臣というものがおるわけだから、大臣が前面に出て、最終的な話し合いとか行政的な指導というものを、それこそ政府の、内閣の権限でこれはやるべきでないか。最終の努力をすべきであると思うのですよ。このくらいのことができなければ何も農林大臣なんというものは要らないのですよ。局長だけ置けばいいのですよ。いよいよのときけじめがつかぬから、国務大臣として農林大臣がおるわけでしょう。だから、ここ一番というとき、年に三回、四回あらわれて、きちっと問題をきめるくらいの価値がないといけない。自民党さんの農林大臣だからとやかくは言わぬが、その必要は現時点ではあると思うのですよ。地方に戻して二カ月もたってからまた、地方ではどうも話がつかぬ、じゃまた中央へ持ってきてやるかということになれば、四十一年の年度というものは終わってしまいますからね。ですから、局長の段階でけじめがつかぬ場合には、やはり政務次官とか農林大臣の段階で責任を持って対処するという姿勢を明らかにしてすべてに臨んでもらわぬと、今後農林水産関係にはいろいろ困難な問題が内外的にあるわけですから、ぜひそういうことで進んでもらいたいと思うのですよ。
  139. 草野一郎平

    草野説明員 最後のお話、非常によくわかりました。したがって、全責任は農林大臣がもとより持っておるわけでありますから、農林大臣としての指導性を強力に進めることは当然でありますが、現実には畜産局長のところで——地方に差し戻したと言われますから、どうもそちらさんからすれば非常にうまいことばの使い方をされますので、こちらとすれば何か逆手をとられたようなかっこうで非常にあれなんですが、差し戻したということでなくて、むしろきめのこまかいことをやっておるというふうにおとりいただいて、やるべきときには指導体制をはっきりしながら、何も四大メーカーの一つだけがぐずぐず言っておるから、そんなことでは農林省の世帯が持たぬと思います。そのくらいのことはやる覚悟でおりますから、きめをこまかくやりながら、そこをひとつ大きな回り方でありますからじょうずに回らなければならぬ、ひとつ皆さんのお知慮もいろいろ拝借したい、こう思っております。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では、この問題は次回の委員会までに明確な処理をされて、結果についての報告を願いたいと思います。  もう一点お尋ねしたいのは、九月五日に畜産局長から出された通達の内容ですが、これを見ますと、四点にわたって通達が列挙されておるが、この内容について重点的に説明を願えばいいわけです。特に、これらの一、二、三、四の事項の中には、当然現在直ちにやるべき事柄はもちろんでありますが、中には、昭和四十二年慶以降これは畜産行政の一環として、あるいは予算措置とか強力なそういう具体的な財政措置等も必要な部面があると思うわけですから、そこらもからめて、四点にわたっての主要な説明を願いたい。
  141. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先生の御質問趣旨は、通達の「記」以下のことと思いますが、そこで、まず第一は、「学校給食用牛乳供給事業における指定生乳生産者団体の役割の確立」、これは、その上に書いておりますように、適正な乳価形成が行なわれるためには、一元的集荷機関である指定生乳生産者団体強化する必要があるということで、その強化の方策の一つでございますが、今後、学校給食用の牛乳を供給いたします場合には、指定生産者団体に価格の決定等についても意見を聞かせるとともに、乳業者への処理委託形式による学校給食用牛乳供給事業者たるものは指定生産者団体だけであるということにいたしますとともに、乳業者が学校給食事業者になります場合には、指定生乳生産者団体の承諾を受けることを要件とするということにいたしまして、学校給食は、御承知のように政策的な牛乳の供給でございますから、これにつきましては、政策的に指定生乳生産者団体の役割りをここで明らかにさせておるわけでございます。  それから、第二に、「酪農振興施策への指定生乳生産者団体の関与」でございますが、これは、指定生乳生産者団体は一元的集荷を行なう経済機関でございます。したがいまして、このそれぞれの都道府県内におきます酪農振興につきましては、当然関与すべき性質のものであるというふうに考えますので、酪農振興施策が行なわれます場合には、それに指定生乳生産者団体を積極的に関与せしめるということにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、第三といたしまして、政府操作にかかる専増産ふすまの配分につきまして、それぞれの生産者団体に配分をいたして、その全国的な団体から各県、各県から需要者へというふうに配分されるわけでございますが、その際、各県の中で配分されます場合には、指定生産者団体意見を必ず聞いて配分するという措置をさせたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、第四点といたしまして、「集送乳段階および生乳処理加工段階における指定生乳生産者団体の機能の強化」でございますが、これは、一元的集荷機関ということでございますので、当然この集送乳施設を持つ必要が出てまいりますので、今後は指定生産者団体に対して集送乳施設の助成をするというふうなことで、現在昭和四十二年度予算要求をいたしております。と同時に、今回の乳価交渉等の経過にかんがみまして、生産者団体が乳製品工場を設置するということが適当であるというふうにも考えられますので、そういうふうな工場を設置する場合には助成をしたいというふうに考えておるわけでございます。  現在のところ、大体この四つの項目によりまして指定生産者団体強化していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの四項目の中で、特に第一の学校給食事業の供給者としての役割りと、第四の集送乳施設及び処理加工工場の設置の点ですね。この四十二年以降の方針をもう少し具体的に。
  143. 太田康二

    太田説明員 学校給食につきましては、先生も御承知のとおり、昭和四十五年に全量国内産の牛乳によって供給する。この数量は約三百三十四万五千石を考えておりますが、いま私のほうで予算要求として大蔵省に出しておりますのは、その第二年度といたしまして百四十万石、ことしが百万石でございますから、四十万石ふやしまして百四十万石、それで、父兄の負担の軽減をはかりますために、前年度五円の補助単価を五円六十銭ということで予算要求をいたしておりまして、約七十八億くらいを要求いたしております。  それから、第四番目の点でございますが、御承知のとおり、検査施設、クーラーステーション、それからミルクタンクローリーにつきましても、従来助成をいたしておったわけでございますが、今回の予算におきましては、先ほど局長から御説明申し上げましたように、指定生乳生産者団体が所有する施設に対する助成、しかも、従来は四分の一助成であったわけでありますが、これは送乳等に関する施設の助成ということで三分の一助成にいたしまして、明年度がたしか二十六カ所、金額としては一億六百万円の予算を要求いたしております。それから、第二番目の指定生乳生産者団体中心といたしました生産者団体のモデル自営工場の問題でございますが、これにつきましては一応四億くらいの規模の工場を建てたい。これに対しまして畜産振興事業団を通じて出資をいたすことにいたしておりまして、その額といたしましては、畜産振興事業団に二億円の交付金を交付する予算を要求をいたしておる。  具体的な内容といたしましては、以上申し上げたとおりでございます。     —————————————
  144. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 次に、でん粉等の政府買い入れ価格等について説明を求めます。荒勝業務第二部長。
  145. 荒勝巌

    荒勝説明員 このたび七月末に食糧庁の業務二部長になりました荒勝でございます。こういう委員会の席で答弁するのは初めてでございますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。  四十一年産のでん粉についてでございますが、その前に、四十イモ年度のでん粉の大体の最近の状況について申し上げますと、四十年度におきましては、いわゆるバでんが非常によくできまして、全部で約二十六万トン、それからカンでんがあまりできがよくございませんで五十七万トン、おおむね四十年度の供給量が百十九万七千トン、政府の手持ちの払い下げを含めまして百十九万七千トン、百二十万トンをちょっと割ったというようなかっこうでございましたが、需要が意外に強くて、政府の手持ちの払い下げも含めて供給がわりあいに多かったにもかかわらず、大体消化は順調に進みまして、特に北海道のバでんが一時はあるいは過剰になるのではないかと思われておったのでございますが、水あめ、ブドウ糖その他のほうで相当量無理して消費をお願いした結果、おおむね順調に消費いたしまして、現在のように大体年間の需要と供給が見合って、しかも、現在のところ、九月現在におきましてでん粉の価格はわりあいに堅調な段階で終始いたしております。  それから、値段のほうでございますが、値段のほうも、この七月、八月、九月でいきますと、おおむねカンショでん粉が、いわゆる三十七・五キログラムあたりでございますが、六月が二千八十円、七月が二千百九十円、八月が二千二百円というふうに非常に堅調に推移しております。それから、バレイショでん粉につきましてもほぼ同様でございまして、六月には二千百九十円、七月には二千二百四十六円、八月には二千二百七十六円というふうに非常に堅調に推移しています。  値段の点よりも、われわれのほうで心配いたしておりますのは、何か各方面からお話のある点では、むしろ物がない。八月、九月、いわゆる新しいでん粉が出てくるまでの間、いわゆるでん粉需要者の間で何とかしてでん粉を手当てしてほしいというふうないろいろな御要求もございましたので、多少政府の手持ちのでん粉を最近払い下げたような次第でございます。  大体四十年のイモの需要状況並びに最近の価格の推移は以上でございます。
  146. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま第二部長から概要の説明がありましたが、特にこの際、四十年の需給の実績とも言えるものだと思うのです。それで、これを基礎にして四十一年の需給見通しですね、計画とまではいかぬと思うのですけれども、やや的確な需給見通しについて説明願いたい。
  148. 荒勝巌

    荒勝説明員 まだ統計調査部のほうのカンショ並びにバレイショにつきましての完全な、いわゆる生産統計といいますか、収穫高のファイナルなものが出ておりませんので、私がただいまから申し上げることは非常に不確定要素が多うございますので、あるいは場合によっては見込みが違っておるかもしれませんが、御了承願いたいと思います。  大体、カンショでん粉につきましては、いまのところわれわれの推定では、六十万トンというふうに一応踏んでおります。これは、昨年までカンショでん粉は五十五万トンというおおむねの推定実績に対しまして、約五万トンくらい供給はふえるのではなかろうか。いわゆるでん粉の主たる生産地帯である南九州の方面がわりあいにことしは作柄が堅調だというふうに聞いております。   〔舘林委員長代理退席、本名委員長代理着席〕  それから、バレイショでん粉につきましては、去年北海道がバレイショの作柄が非常によくて、一時はでん粉が過剰になるかと思われるくらいできまして、約二十五万ほど去年はできましたのに対して、ことしは大体十八万トン前後じゃなかろうかというふうにわれわれは一応推定しておるわけでございます。このほかに、現在のところ、バでんにつきましては、政府は三十七、八年の古いものを含めて約三万一千トンほど持っております。それが大体大きな国内産の供給でございます。  それに対する需要はどうかと申しますと、これは年々五%くらいずつ、人口増と所得増に基づきまして需要が伸びておりますので、われわれの推定では一応百二十五万トン、そういうふうに押えまして見ているような次第でございます。  以上でございます。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、需要見通しが百二十五万トンで、供給の関係はカンでん六十万トン、バでん十八万トン、合わせて七十八万トンですね。そうすると、この不足分は結局コーンスターチとか輸入でん粉で充当するということですか、総体の需給関係から言うと。
  150. 荒勝巌

    荒勝説明員 一応、先ほど申し上げましたように、六十万トンと十八万トン足して、それに三万一千トン足しますと八十一万トンばかりで、百二十五万から八十一万を引きますと、四十四万ばかりの誤差というか、差し引き不足が出てまいりますので、当然それは従来と同様に、あるいは小麦粉でん粉、あるいはコーンスターチ、それから輸入でん粉、こういうことでまかなわざるを得ないと思いますが、ただいまの段階では、先ほども申し上げましたように、国内の生産の供給側の見通しの確定したものがまだ出ておりませんので、現在の段階で直ちに小麦粉でん粉でどのくらい、あるいはコーンスターチで、どのくらいというふうに結論を出すのは当分の間差し控えまして、もう少し推移を見守りたい、こういうふうに思っております。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この不足の四十四万トンのうち、コーンスターチのほうは、原料トウモロコシの関税措置等の関係もあるので、全く無計画でやるわけにはいかないのですね。そういう点から、もう少し内容が明らかにできると思うのです。
  152. 荒勝巌

    荒勝説明員 コーンスターチのほうは、ここの委員会の先生方も御承知のように、一次割当の関税分として、いわゆる基本割当と申しますか、十八万トンは当然この四十四万トンの中に組み込まざるを得ないと思います。そのほかに、われわれの処置としてどう弾力的に対処するかというのがいわゆる特別割当と申しますか、これをどういうふうに処置するかということ、それから、二五%の自由商品と申しますか、高率関税の二五%分をどういうふうに見込んでいくか、こういうふうにしておりますが、まだその辺いまのところ整理が十分済んでいない、こういうかっこうでございます。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀委員 従来はもう少し具体的に説明しているのですよ。あなたは二部長初めてですがというあいさつですが、従来食糧庁が説明できた範囲くらいのことは委員会で明確にしてもらわぬと、あまり高度の政治的な説明だけじゃわからぬですからね、事需給計画ということになると。
  154. 荒勝巌

    荒勝説明員 先生にただいまだいぶん言われたのでございますが、私どもとして、大体バレイショのファイナルな収穫予想が発表されるのが十月十一日、それからカンショについても九月十五日の日にいわゆる作柄概況、両方が示されますので、それに基づかないと、数字的に御説明するのは少し差し控えさしていただきたい、こう思うのでございます。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では、それは次回に具体的に資料を出してもらいたいと思います。  そこで、この際、農産物価格安定法の改正に伴って、今年度のイモでん粉は、改正された法律に基づいて、原料イモの基準価格並びにでん粉の政府買い入れ価格をきめるわけですが、これに対して作業がどの程度まで進んでおるのかをこの際明らかにしてもらいたい。
  156. 荒勝巌

    荒勝説明員 先ほど申し上げましたように、着任早々を理由にするわけではございませんが、この法律が七月二十六日の日に公布施行になりまして、政令が二十八日の日に公布になっております。政令は、委員会法律審議の過程で十分議論されて、客先生方は御了承のことと思いますが、法律に基づいて、政令もその精神をそのまま引き継ぎまして用意して出してある次第でございます。その政令に基づきましてわれわれ事務当局としてはただいまのところやっておりますが、先ほどの答弁の際に申し上げましたように、この統計調査部のほうの作柄の発表が、カンショについては十月の五日にはっきりするということもありますので、われわれとしましては、それに基づいて直ちに価格の作業に入りたい、こういうふうに思っております。  なお、中間的でございますが、現在の段階で、農業パリティそれ自体は七月で一七〇・七四、これは当然御承知と思いますが、二十五年の四月と二十七年の三月の平均を一〇〇といたしましての農業パリティでございますが、七月で一七〇・七四という指数になっております。そのほかに、いわゆる日銀の卸売り物価指数のほうは七月で一〇六・三というふうな、これは三十五年を一〇〇にいたしての話でございますが、そういう指数が表明されておりますので、これに先ほどの作柄状況中心にいたしまして、生産費を基準にして算出いたしたい、こういうふうに考えております。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 従来カンショ、バレイショの収穫の予想があまり慎重を期しているというか、いつも——従来は統計調査しているのは九月十日現在ですか。
  158. 青木雄

    ○青木説明員 サツマイモの第一回予想は九月一日現在でございまして、これを十四日に公表いたしました。第二回予想が九月二十日、それを先ほど食糧庁のほうから申されました十月五日ということでやっておったのですが、この前の御要望によりまして、一日でも縮められればと思って検討いたしました結果、十月三日に公表いたしたいと考えております。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 十月三日に公表をされるとすれば、それ以降でなければ価格決定はできないということになるのですね。
  160. 荒勝巌

    荒勝説明員 従来の食糧庁の伝統的というか、事務的なケースといたしまして、統計調査部から十月三日にカンショの数字をいただく、それとともに、バレイショにつきましては、おおむね八月三十日までの、いわゆる百六十一万トンという数字はある程度いただいておりますので、十月三日のカンショの数字をいただければ、大体作業はできるのではないか、そういうふうに私としては了解しておる次第でございます。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、大体価格決定の期日はどの程度に予測しておるのですか。従来早いときは十月二日くらいに公表したことがあるのですね。
  162. 荒勝巌

    荒勝説明員 われわれといたしましては、やはり十月の三日以降十日ごろまでの間に政府原案というものを整備いたしたい、こう思っております。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 新聞等によると、十月の上旬に農林大臣が東南アジア諸国におもむくということが載っておるが、これは予定がきまっておるのですか。
  164. 草野一郎平

    草野説明員 東南アジアはそのあとになります。十月の二日からカナダにおける閣僚会議がありまして、二日の日に出かけていくことになっております。
  165. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは何日までですか。
  166. 草野一郎平

    草野説明員 これは中ごろまでかかる予定です。出かけますけれども、臨時の農林大臣ができますから、そこで事務はもちろん処理していただきます。
  167. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはわかりますが、大事な問題を処理する場合ですから、そのときになって、農林大臣が不在だから、これは臨時代理ではきめかねるから、帰国するまで延ばしますなどということはないですね。
  168. 草野一郎平

    草野説明員 ありません。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それをはっきりしておいてもらいたいのです。ですから、十月の初旬に出かけるのであれば、その前にきめていくとか、あるいは不在中は当然臨時代理ができるわけですから、その代理の大臣において処理するとか、これはきょう農林大臣のおらないところで議論するのはどうかと思いますが、この点は政府側において明確にしておいてもらいたいのです。
  170. 草野一郎平

    草野説明員 ちょっと待ってください。それをはっきり私が言ってしまってはどうかと思うのですが、その御意見はわかっております。出かけるのは二日の夜です。帰ってきまして、また東南アジアへ出かけることになりますから、したがって、松野大臣が不在になることが前後通じて一カ月くらいになると思います。その間は臨時大臣になりますから、臨時大臣の間農政の重要問題が停滞しているというような、そんなべらぼうなことはありませんから、それはきわめてなめらかに進むような段取りになっております。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、次に、農安法の運用について一、二尋ねておきたいと思いますが、今回の法律改正によって政令の内容も変わってきているわけですが、ここでお尋ねしたいのは、この基準価格の決定について、前年度のイモ類の基準価格に一年間のパリティの変化率を乗ずるということになっているが、これを一年方式でやった場合と、従来ほとんどの農産物に適用している過去三年の基準価格の平均でやった場合、もちろん、そうなると、パリティの変化率も三年間の平均パリティと価格決定時のその月のパリティ指数ということになるわけですが、これを両様比較した場合にどういうことになるのか。いま第二部長から七月のパリティ指数は説明がありました。昨年の基準価格はわかったが、過去三年もまたわかっているわけですから、そこで、この政令のいわゆる附録第一の場合には、前年度の基準価格に一年間のパリティの変化率ということになると、この前年度方式というものは、各農産物の価格決定の方式の中では全く異例なんですよ。それは異例な前年度の場合と三カ年間の平均方式を比較すれば一体どうなるかということをこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  172. 荒勝巌

    荒勝説明員 私、まだそこまで実は数字を整理さしておりませんので、比較検討してどちらが有利かどうかは実はわかっておりません。ただ、御質問趣旨もあまりよくわかりかねているのですが、三十八年の農業パリティをとりますと、平均一五〇・二三、三十九年度のパリティ平均をとりますと一五六・〇九、四十年度の現在までの平均でいきますと一六五・六三という形で、農業パリティだけで三十八、三十九、四十の三年間の平均をとりますと少し上がっているのでございますが、その辺どういうふうに織り込まれてくるか、御質問趣旨がちょっとわかりかねます。
  173. 石田徳

    ○石田説明員 ちょっと補足説明いたしますが、従来価格をきめます場合は算式が一つでございました。これは実勢価格をもとにしてきめておりましたので、過去三年の平均ということにいたしました。それは、各年の豊凶によりまして、実勢の取引の実情によりまして価格が上がったり下がったりいたします。非常に下がったものをとりますと次の年は下がる、上がったものをとれば上がるということで、変化が激しゅうございますので、三年の平均という方式がとられたわけでございますが、今回の基準になっておりますパリティ価格のほうは、前年の基準価格でございますから、これは豊凶によってそれほど大きな差がございません。それで一年をとったわけでございます。したがって、それを修正いたしまして、パリティの指数も過去一年をとって合わせたわけでございます。附録二式のほうは従来の方式をとっておりますが、附録一式のほうは、もとになりまする基準価格が前年のものでございますから、パリティのほうも一年に合わせたわけでございます。前年度一年間どういうふうに変化したかということで見ようというわけでございます。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このバレイショ、カンショの場合は、毎年の基準価格というものはほとんど据え置きですからね。据え置きの場合と、米価のように毎年八%とか一〇%政府の買い入れ価格が上昇している場合とでは、過去の基準価格をとる場合において非常に差異があるわけでしょう。ですから、何も考えなしにやったとは思えないのですよ。ですから、政府の側において前年度の基準価格を採用して、それに対する一年間のパリティの変化でやる場合と、市場価格でなくて、毎年これは法律によって基準価格というものをきめておるわけだから、過去三カ年間の基準価格の平均価格を出して、そうして三年間のパリティの変化という場合とでは、おのずから答えが違ってくると思うのです。ですから、その場合、どういう答えが出るか、簡単にできるでしょう。何もむずかしい要素はないわけだから。過去三年間の基準価格はそれぞれわかっておるわけですね。パリティもわかっておる。ですから、前年度方式でやった場合と過去三カ年間の平均方式の場合、基準価格というものはどうなるのですか。
  175. 荒勝巌

    荒勝説明員 先ほど申し上げましたように、まだその試算をいたしておりませんし、また、そのためにいわゆる準備も不足でございますが、八月の卸売り物価指数なり農業パリティ指数も、一番計算の根拠になる最後の月のやつがまだ手に入っておりませんので、これが手に入れば、あるいは試算も可能かとも思いますが、まだ手に入っておりませんので、試算もいたしていないし、また、そういう試算をやる準備も実はしてなかった、こういうことでございます。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、政令でもうたっておるが、農林大臣の定める価格決定時のパリティの月というのは、何月でやるのですか。さっき言った七月ですか。
  177. 荒勝巌

    荒勝説明員 八月のパリティまで出しまして、それで計算をいたしたい、こう思っております。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 八月はまだ出ていないのですね。
  179. 荒勝巌

    荒勝説明員 ええ、八月のやつはまだ……。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは来月出るのですか、今月のいつ出るのですか。
  181. 荒勝巌

    荒勝説明員 十月の早々にいただけるというふうに私は了解しております。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは石田課長からでもいいが、今度の附録第一の場合は、前任度の基準価格に対して、昨年の九月以降八月ということになれば、八月までの各月のパリティの平均値を求めて、そうして八月のパリティ指数を分子にして基準価格に乗ずるということになるでしょう。一年にならぬわけですね。ごく一年足らずのわずかの、しかも前年度に比べてパリティが決定時にどれだけ上がったということでやるのであればまだ別ですが、十カ月そこそこの毎月のパリティの平均なんということになると、この附録第一というのは据え置き方式と同じじゃないですか。
  183. 石田徳

    ○石田説明員 ちょうど一年間でございまして、決して現在のパリティの実勢では据え置きにはなりません。やはり上昇することになっております。パリティというのは常に上昇するとは限りませんが、現状では上がりぎみでございます。
  184. 荒勝巌

    荒勝説明員 ちょっと追加して補足いたしますと、三十九年度のアベレージがいわゆる九月−八月間で一五六・〇九になっております。それが、四十年度、いわゆる去年の九月からことしの七月末までのアベレージで一六五・六三、パリティだけでいきますと、一応そういうことになっております。
  185. 芳賀貢

    ○芳賀委員 パリティが上がっていることはわかる。だから、そういう場合、基準価格を前年度でやるか、過去三カ年でやるかで答えは違うのじゃないですか。しかも、過去三カ年の場合でも、毎年据え置きの基準価格の場合と、三年間相当の上昇をたどっておる場合は、これはパリティの上昇率がその価格に大体反映しておるということになるが、バレイショ、カンショの場合は三年といったってみんな据え置きですから、基準になる価格が全然動かない場合、パリティの変化というものは短いほうがいいか長いほうがいいか、これはしろうとでもわかるじゃないですか。だから、その場合どうなるかわからぬで前年度方式をとったかどうかということは簡単に信用するわけにいかぬですよ。やってみた結果、前年度のほうが上がらない、これでいったほうがいいということになったのではないですか。
  186. 石田徳

    ○石田説明員 計算の結果といたしましては、パリティの上がり方が、三年間の平均と一年間どうであるかということで変化いたします。それから、基準価格が据え置きであるか上がっておるかということで、先生がおっしゃったような変化が出てくるわけでございます。据え置きの場合は、むしろ長くとったほうがいいんだろうと思います。基準価格が据え置きである場合には、同じものでございますから、三年平均いたしましても……。しかし、昨年も上がっておりますし、今後年々上がるということになりますと、むしろ先生の言われたような方式でやりますと、上がらないといいますか、比較的上がらないという結果が出るのではないかと思います。パリティの上がり方を一定にいたしました場合には。そうでございますから、これが据え置きの場合だけを考えれば先生がおっしゃったとおりでございますが、今後据え置きということを前提にして議論するわけにまいりませんので、一年一年をとっていったらいいのではないかと考えたわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、実勢価格にはかなりフレがございますけれども、これはそういうフレもございませんので、一年で、その後のパリティの変化を乗じて出していくのが一番妥当ではないかということで、一方式を出したわけでございます。
  187. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、勘案事項として、農林省が調査を行なっておる生産費調査ですね。この動向を勘案するということに、これは従来の法律もそうなっておるが、今回の場合にはどういうやり方でいくつもりですか。
  188. 石田徳

    ○石田説明員 従来は、基準というものがございませんで、全部参酌事項でございました。今回は、パリティ価格が基準になりまして、それ以外の従来ありましたものに一つ物価が加わりました。それで、政令の場合は、その基準になりますものを一式にし、それから参酌事項の一部を二式といたしまして、そのほか経済事情を参酌するということにしたわけでございます。第二の参酌すべき事項の中の式でございますが、これは二つの要素を入れてございます。一つは物価であり、一つは需給事情でございます。従来の式は大体パリティと需給事情を加味したものでございましたが、そのうちの一部が一式にいってパリティだけ、二式が先ほど申し上げましたように物価と需給事情ということでございまして、その式は、物価は日銀の物価指数をとりますし、需給事情は従来と同じような方式で見ております。これはあくまでその式から出ますものは一つの参酌事項でございますから、一式のほうを基準にし、この方式から出ますものを参酌にし、そのほかの経済事情、それからもう一つ生産費が出ますが、これも参酌にしてきめるということになっておるわけでございます。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、いま申し上げた生産費の関係ですけれども、これは、農林省の場合には、四十年度のカンショ、バレイショ生産費が八月三十日に公表になっております。ですから、これは年次にすれば前年度の生産費調査ということになるわけですから、その場合、十アール当たりの生産費というものは、カンショにしてもバレイショにしても相当の上昇傾向にあるわけです。バレイショの場合には前年度に比べて約六%の第二次生産費が上昇しておる、カンショの場合には前年度対比六・一%の上昇、こういうことになっております。問題は、百キログラムということであると、その調査年次の調査農家のカンショ、バレイショの反収が基礎になるわけですから、その場合どういう勘案をするか。一反歩当たりの生産費の上昇傾向というものを勘案するのか、反収面を勘案した生産費であるかで、これはだいぶ違うのですよ。それらはどういう方針でことしは臨まれるのですか。
  190. 石田徳

    ○石田説明員 これは参酌事項でございますから、単年度をとらなければならないということもございませんし、それから、豊凶によって、非常に豊作の場合は生産費は当然下がるわけでございます。そういうこともございますので、法律の審議なりの過程といいますか、いろいろ会議が持たれましたが、その際にも御注意がございまして、一年だけではいかぬのではないかということもありましたので、単年度ではなくて、過去三年ぐらいを出してみるなり、それから過去一年のものを出してみるということで、統計調査部から出てまいりましたものを参考にするだけでございまして、そこでこれを足して二で割るとか、三で割るとか、方式はきまっておりませんが、非常に豊作であって生産費が下がったからといって、直ちにそれをそのまま勘案するのは、少しバランスを失するのじゃないかと考えております。
  191. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大事な点なんですよ。問題は、十アール当たりの生産費というものをとるということであれば、これは一応筋道が立つと思うのです。ところが、収量ですね、百キログラム当たりの生産費ということになれば、その調査した時点における収量というものによって影響を受けるわけだが、ことしの場合には八月三十日の春植えバレイショの予想収穫量というのが出ておりますね。これは、大体北海道の場合には十アール当たりの収量が二千キロです。それから昨年の場合には実収が二千三百八十キロですよ。それから、ことし発表になった四十年の生産費調査、これは調査農家だけの平均収量ですが、これによると、二千六百十五キロの十アール当たりの収量ということになっているわけです。だから、その収量というのは非常に変動性が多いわけですから、単位当たりの生産費の動向というものはどうなっておるかということを価格算定上勘案するということであれば、これは採用する価値がありますが、毎年収量が違うわけだから、それに重点を置くということになれば、これは正当な意味がないということになるのですよ。だから、農林省が作業を始めてから問題にしてもおそいですから、約束として、ことしは一体参酌要素というものをどういうふうに用いるか、そういう点は事前に明確にしておいてもらいたいのと、特にことしは委員会提案で農安法の改正をやっておるわけだから、法律改正をやったわれわれの意図というものが行政上生かされなければ、これは改正したことにならぬですから、その点をこの際明らかにしておいてもらいたい。
  192. 荒勝巌

    荒勝説明員 実は、いま先生が御指摘になりました点については、どちらをとるかということについてはまだ結論を出しておりませんので、いずれ価格を算定して御説明するときまでには、先生の御指摘の点についても十分検討した上で結論を出して、価格を算出いたしたい、こう思っております。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、これは七月下旬に政令が出た直後簡単に説明を聞いたわけですが、その際、この附録第二のほうの算式の中で供給の変化率というのが出てくるのですけれども、需要の変化がどうなっているということが今回の場合にも算定上採用されていないのです。需給事情がどういうふうな変化をたどるかということは、これは価格算定上重要な要素になると思うが、供給面だけを取り上げて、需要の動向というのが全然附録第二の算式の中にあらわれてきていないのです。これは全く片びっこなことになっておるわけですが、当事の説明から言うと、この需要の関係というのはわからないというのですね。わからぬというのもちょっと変ですけれども、先ほど第二部長の説明で、正確ではないが大体のことはわかるわけです。たとえば四十年の実績は当然わかるし、四十一年の需要の見通しというものはおおよそ把握できるわけですからして、そういうものを基礎にして、一体国内の総需要に対して、国内のいわゆる国産ですね、供給力というものは、生産を通してどういうことになっているか。ですから、政策的に国内における自給度を高める、供給力を高めるというようなことになれば、当然これは法律の改正の結果としても再生産の確保とかそういう使命というものが一つ付加されてくるわけで、需要が毎年五%も伸びて、供給は全く停滞あるいは低下というような傾向をたどっておるわけだから、そういう場合の参酌要素ということになれば、むしろ国内の生産を刺激上昇させるための要素というものを価格上も加える必要があるので、こういう点が今度は欠けておるのです、政令の内容を見ると。この点について、新任の第二部長としてどう考えておりますか。
  194. 荒勝巌

    荒勝説明員 その経過につきまして私は十分存じ上げないので、はなはだ遺憾でございますが、一応政令が出されまして、御指摘のような御不満な点もあるかとも思いますが、私といたしましては、ことしの算出方法は、この政令に基づきまして、多少需要面はあるいは出てこない、反映しない形のものになるかと思いますが、それで算出さしていただきたい、こう思っております。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後にもう一点。基準価格がきまって、政府のでん粉の買い入れ価格をきめる場合、基準価格を基礎にして従来はそれに加工経費を加えて政府の買い入れ価格をきめたわけですね。今度は加工経費と原料の運賃というものを基準価格に加算しなければならぬということに改正されておるわけです。これも唐突では運賃をどれだけ加算するかということはなかなか正確に把握できないと思うのですね。当然諸般の調査をやっておると思いますが、その点はどうなっておりますか。この加算さるべき原料運賃の調査とか検討はどういうふうになっているか。
  196. 荒勝巌

    荒勝説明員 当然、先生御指摘のように、ことしから原料イモの基準価格は一応いわゆる農家の庭先価格ということにいたしまして、それからあと、輸送費といいますか、そういうものをさらにそれに加算するということになると思いますが、それにつきましては、現在統計調査部を中心調査をお願いしておる、こういうかっこうでございます。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは統計調査部で調べるわけですか。食糧庁ですか。両方ですか。
  198. 荒勝巌

    荒勝説明員 食糧事務所の間違いでございまして、どうも失礼いたしました。
  199. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの段階では、まだその価格決定上の材料が十分整っていないと思うわけですが、きょうはせっかくイモでん粉に関する小委員会設置したわけですからして、閉会中に本委員会をときどき開くというわけにはいかぬと思うので、イモでん粉関係については、小委員会が主体になって審議を進めることになると思いますが、いろいろな作業についても、昨年までは、全く腰だめのような変な価格をまず打ち出して、そして自民党がいかにも苦労したようなことで、若干のプラスアルファをつけて生産者を喜ばせるようなことできめたわけですが、今度はそういうわけにいかないですね。前年度の基準価格に一年間のパリティの上昇率を乗じて基礎的な価格はきまってくるわけですからして、あまり変な小手先を弄することはできないし、そのほうが役人の皆さんとしてはやりやすいと思うのですよ。一定の約束に従って計算するほうがいいじゃないかと思うが、その勘案事項の中において、ぜひこれも良心的に、ことしは最初ですからやってもらいたいと思うのです。まあ、だめ押しではないが、せっかく法律も変わった最初のときですから、その点は十分注意して準備を進めてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  200. 荒勝巌

    荒勝説明員 いま御指摘のありました点については、ことしの法律改正の趣旨、あるいはその法律に基づく政令の線に従いまして、十分尊重いたしまして、私としては作業を進めてまいりたい、こう思っております。
  201. 本名武

    本名委員長代理 兒玉末男君。
  202. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いま価格の点について芳賀委員からいろいろ質問がありましたが、時間もだいぶ経過しておりますので、二、三の点を御質問申し上げたいと存じます。  先ほど部長の説明がありましたが、特にでん粉の需要状況というのは、昭和三十七年、三十八年、三十九年、四十年と、ずっと増加の傾向にあるわけです。この中で特に全体の供給の大体五〇%近くを占めるカンでんの供給量というのを見ておりますと、三十七年六十四万、三十八年七十五万、三十九年七十九万、四十年度は急激に五十五万六千トンと減った。本年度も、先ほどの説明によりますと、おそらく横ばいか少々上がる状況だと思うのですが、この点は、やはり現在までの価格政策というものについて非常に不安定であるということが最大の原因だと私は思うのですが、矛、の辺、どういう把握をされておるのか、この点お聞かせいただきたい。
  203. 荒勝巌

    荒勝説明員 私も二部長になったばかりでございまして、価格政策がいわゆるカンでんの生産量、あるいはひいてはカンショの生産量に農業問題として反映しておるかどうか、現在の価格の建て方が直ちに農業のカンショの生産に反映しておるかどうかということについては、十分わからないのでございますが、ただ、御質問趣旨とあるいは多少すれ違うかとも思いますが、いずれにしましても、この南九州方面のカンでんが日本におけるでん粉の大きな供給力ということになってくることについては、私も十分認めますし、またこれがないと、いわゆる需要面の水あめあるいはブドウ糖といった産業のほうの需要に十分対応し得ないということで、政府といたしましては、極力妥当な値段で政府の値段をきめていきたい、こう思っておる次第でございます。
  204. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は、カンショ生産県である南九州の宮崎でございますけれども、先ほど来芳賀委員からも質問があって、いま作業の途中でありますし、部長としても具体的な答弁は引き出すことはできないといたしましても、とにかくカンショの需要というのが増加の傾向にあるということと同時に、特に南九州地区におきましては、この中間作として、特に畑作地帯においては、御承知のとおり台風の常襲地帯という自然的条件の制約を受けておるし、また大消費都市に非常に遠隔の地にある。近年、茨城なり千葉県等のカンショ生産というのが作付反別も減反の状況にある。しかし、南九州等の場合は、どのような事情があったにしましても、他の作物に転換することはほとんど不可能だ、こういう客観情勢から判断をいたし、同時に、やはり今回の農安法の一部改正にもありますとおりに、再生産を確保する、このためには、やはり価格というものが絶対的な条件になるわけであります。今回開かれました全国のカンショ対策協議会が打ち出しました三十七・五キロ当たり四百二十円、この生産県を主体とする四百二十円の主張というのも、決して私は過当な要求とは思われないわけであります。これは昨年の価格の実績等から判断をし、また生産費なり自家労賃あるいは肥料、農機具など、生産を発展させるために必要な中からはじき出された金額だと私は確信をいたします。もちろん、いまここで部長がそのとおりだというふうに御答弁はできないとしましても、四百二十円ということを出された背景というものは、決してでたらめな根拠に基づく要求でないものと私は思うわけであります。これらの点について、部長としてどういうふうな御見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
  205. 荒勝巌

    荒勝説明員 現在南九州で早掘りのカンショは、呼び値と申しますか、そういう呼び値で大体貫当たり四十二円といいますか、そういう話があるように私は聞いております。実際の市況は、ピーク時でいまの四百二十円くらいはことしはするのではないかと思っております。しかし、この四百二十円という値段が妥当であるかどうか、政府自身がこの値段を強力に支持するかどうかということになりますと、もう少し実は考えさせていただきたい。やはり異常に高ければ、あるいは農家の皆さん方にとってはけっこうな話になるかと思いますが、カンショというものがなまのままあるいはそのままで国民が消化するものであれば、また別だと思いますが、これが一応でん粉という加工形態をたどり、そしてさらに、そのでん粉がそのまま人間が食べるのではなくて、ブドウ糖なり水あめなりあるいは水産関係の練り製品とか、その他いろいろ関連産業のほうに回されるとなりますと、おのずから落ちつくべき価格がまたあるのではないか。あまりにも高過ぎると、かえってそういう加工需要が減退してきまして、別の代替品のほうに走るおそれがあるわけです。やはりカンでんにはカンでんとしての非常に大切な需要先を持っておりますので、そういったものと共存共栄といいますか、持ちつ持たれつの関係を維持できるような方向で施策を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  206. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、質問の内容を変えまして、まだたくさん御質問したい点があるし、要望もありますが、時間の制約もありますので、次にコンスの関係でございますが、御承知のとおり、コーンスターチの製造能力というのが四十万トンをこえるということがいわれておりますし、また最近までのコンスの供給量の推移というものを見ておりましても、とにかくこの二、三年間に何倍というふうにふえております。しかしながら、国内の甘味資源の確保というものと自給度をやはり保持していくという立場から考えますならば、当然コンスの規制というものをある程度強行していく必要があろうと思うのです。先般の国会で、コンスの輸入に対して関税定率法を改正して、十八万トンまで一〇%、それ以上は二五%の課税をすることになったわけでありますけれども、でん粉が不足をする需給関係のアンバランスの場合においては、その範囲内においてやはり一〇%の適用をしながら、コンスのいわゆる製造量を拡大していく。本年もすでに大体二十七万トンですか、この前の質疑の中では約九万トン、上期、下期に分けてこのワクを拡大するということが答弁されておるわけですが、おそらく先ほどの需給関係によると、バでん等はかなり減収だ、こういう点からいきますならば、さらに私はコンスのワクを拡大するような動きが出てくるのではないかというふうに考えますが、この辺はどういうふうな把握をされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  207. 荒勝巌

    荒勝説明員 先ほども芳賀先生の御質問の際に答えましたように、ことしの確実なでん粉の供給見込みというものを把握しておりませんので、正確なことはやはり差し控えたいと思いますが、少なくとも去年きまりました十八万トンの基本ベースの線と、それからいわゆる調整ワクといいますか、そういったものを含めたものは、ことしもある程度必要ではないか、こういうふうに思っている次第でございます。そのほかに、さらにいわゆる二五%の関税のかかるものについては、これはまたあらためて少し検討さしていただきたい、こういうふうに思っております。
  208. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは今後、またさらに来年度のカンショ政策等の点でも考えなければならぬし、生産農民も非常に関心を持っている問題でありまして、この関税定率法の適用というのは、たしか来年三月で期限が切れると思うのです。そうなりますと、もう来年三月以降は野放しの状態になるわけですが、少なくとも一〇%と二五%の税率の適用というものは、やはり最低限として継続していく必要が多分にあるものと私は思うわけですが、その辺はどのような検討をされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  209. 荒勝巌

    荒勝説明員 この関税定率法の時期が来年の三月三十一日で切れることにつきましては、私どもも十分了解しておりまして、このままいわゆる期限が切れることを見送ってしまうといいますか、もうそれでけっこうだというふうには私どもは了解いたしておりません。当然、農林省としていまだ方針は決定いたしておりませんが、従来の二五%と一〇%のタリフクォータ方式がきめられたいきさつもありますので、この取り扱いを政府の責任で取り扱ったらいいのか、国会と十分御相談申し上げて今後の処理をきめていったらどうかな、こういうふうに思っておる次第でございます。
  210. 兒玉末男

    ○兒玉委員 よくわかりました。ぜひひとつそういうふうに継続の方向に努力をしていただきたいと思うわけです。  次に、特に、何といってもトウモロコシでん粉というのが最大の脅威でありますし、また同時に、その製造能力においても近代化された設備を持っております。ところが、私たちが巷間聞くところによりますと、飼料として輸入されるトウモロコシには税金がかからない。無税だ。ところが、コンスにこれが転用される可能性というものが多分にあるのではないか。特にこれが飼料用として、たとえば魚粉なんかと混用されて一応形が出るけれども、これがまた、そのまま混合しましても、トウモロコシはかたいものですから、魚粉とまぜたとしても、またもとのトウモロコシに分離することは決して不可能ではない。倉庫を出るときは混合飼料でありましても、それがいつの間にかまたトウモロコシに化ける、こういう可能性を十分私は指摘することができるわけですが、この点については相当きびしい監視をしないと非常に混乱する可能性があり、また、カンでんなりバでん等の供給状況が不足するような事態になればなるほど、コンス業界がこのような一つの手段に出るということも、私は配慮をしなければいけないと思うのですが、その辺はどういうふうな監督指導をしておるのか、お聞かせをいただきたい。
  211. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま御指摘のように、いまえさとして入ってくるときは無税になっておりますが、そのえさとして入ってきたものがコーンスターチ用に流用されるといいますか、悪用されておるのではないかという御指摘でございますが、それにつきましては、畜産局とも十分に打ち合わせをしまして、かかることのないように、またそういった例があれば、それは明らかに関税法違反というかっこうになりますので、そういうこともまた起こらぬようにわれわれとしてもぜひ努力してまいりたいと思っております。  また、ここでなお、御質問趣旨とは違うかとも思いますが、最近原料トウモロコシの値段が非常に国際的に上がってまいりまして、昨年あたりは六十五ドルというふうにいわれていたものが、いまや七十三ドル、まだ今後も上がりそうだというふうになってまいりますと、トウモロコシで入れてきて、直ちに日本のイモでん粉に重大な脅威を与えるようになるかといいますと、いわゆる価格、コスト、加工賃との関係もございますが、この七十三ドルのものに二五%も将来関税をかけるということになりますと、末端小売り価格は二千三百円というふうなあたりまでコストがかかってまいりますので、こういったコーンスターチがほんとうに直ちに重大な脅威であるかどうかについては、少し検討さしていただきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  212. 兒玉末男

    ○兒玉委員 あと二点ほどお聞きしたいと思うのですが、第一点は、とにかく南九州等におけるカンショの反収というのが非常に少ないわけです。というのは、長崎県等も同じでありますけれども、現在のいわゆる構造改善等を行なう場合、主幹作物としてこれが適用されない。こういうことで、カンショ生産地帯においても——もちろん一部においては、基盤整備等の場合においてカンショを主幹作物として指定されてやって、相当な成果をあげている地区もありますけれども、全体として特にカンショ作以外にない宮崎、鹿児島県等におきましては、いわゆる特産物としての立場から、このカンショの生産性を高めて、単位価格を引き上げるということももちろん必要でありますけれども、やはり収益性を高めていくということ、生産性を高めるという点から、どうしてもカンショを主幹作物として指定していくということが非常に大事じゃなかろうか。もちろん、これは担当は違うかと思うのですけれども、そういう点等、特にひとつ園芸局と十分連携をとられて、反収をいかにして上げるか、この点にもう少し積極的な指導というものが必要ではなかろうかと思うのです。この辺、直接の担当じゃないと思うのですけれども、やはりカンでんの供給としては大きなウエートを占めておりますので、この点ひとつ御見解をいただきたいと思います。
  213. 荒勝巌

    荒勝説明員 いまの先生の御指摘の点についてでございますが、私、食糧庁の二部長でございまして、カンショ作の生産面につきましては主管でないので、見解は差し控えさせていただきたい、こう思うのでございますが、食糧庁の二部長になります前に少しばかり園芸局におりました関係からいたしますと、園芸局で四十二年度予算から、カンショあるいはバレイショ両方とも含めまして、相当大幅に予算制度上の取り扱いを変えまして、新しい方向でこういった生産性を高めていくという大幅な予算を出されたように聞いておりますので、またそういうこととからまして、特に園芸局のほうでも、単なる生産だけでなしに、加工用の生産物をいかに伸ばしていくかということについて相当御検討をされたようでございますので、私たちとしても十分今後協力してやってまいりたい、こう思っております。
  214. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最後に、さっき芳賀委員からも質問があったわけですけれども、統計調査部の作付、作況の集計が九月一日現在のものが九月十四日、九月二十日のが十月三日ですか、公表されるそうでありますけれども、この前の統計調査部長に対する私の質問に対する答弁によりますと、大体九月一日現在の全国の作付状況等のいわゆる資料というものは、ほとんど最終的に九月十四日に出される、その状況等から判断しましても、統計調査部の資料によると、誤差というものは微々たるものだということが答弁されたわけであります。そういう点から言いますと、基準価格を設定する統計調査部の資料というものは、大体毎年同じような状況のもとに結論が出されるわけでございますし、特に南九州地域等はカンショの掘り出しの時期というものが相当早いわけでございますので、特にできるだけ早急にこの基準価格の公表をしていただきたい。同時にまた、これは繰り返してでありますけれども、価格の策定にあたりましては、ぜひともひとつ先般のカンショ対策協議会が要望している線にできるだけ近づけて、生産農民に意欲を与えるような基準価格が設定されますことを最後にひとつ要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  215. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。答弁は求めません。注文だけをつけておきます。  いま児玉君から話がありましたが、九州と四国との農協の協議会ですか、そこで本年度のカンショの生産費について注文が出ております。この中に、三十八年、三十九年、四十年、こういうふうに生産費の明細が載っておりますが、今度統計調査部のほうで八月三十日公表しておるものとちょっと比較して四十年のこれを見てみますと、十アール当たり農協関係のほうでは最終的合計が二万七千百五十六円、こういうような数字が出ておる。反収が六百五十七貫。ところが、統計調査部のほうは、金額が一万九千八百六十二円、この中には租税公課が含まれておりません。反収が六百九十七貫、こういうふうになっております。貫当たり計算してみますと、農協側のほうの四十年度の分は大体四十二円二十銭、それから統計調査部のほうは貫当たり二十九円、こういうように大きな誤差が出てくる。一番大きな誤差が生じてくるのは何かというと、家旅労働費なんです。それともう一つは資本利子です。この家族労働費と資本利子だけで十アール当たり六千円余りの差が出ておる。そうすると、家族労働費は、農協連のほうのこの計算で見ますと、一時間当たり労働賃金は百七十八円、八時間労働に引き延ばすと千四百四円、統計調査部のほうのは、一時間当たり八十九円、八時間に延ばして七百十二円ですから、労働賃金が約半分です。そこで、同じく八月三十日の統計調査部の賃金表を見てみますと、大工さんの賃金が千七百七十円、左官が千八百三十六円、屋根ふきが千九百六十八円、それから土工が千二百四十一円、軽い作業の人夫が八百五十八円、これがことしの七月の金額です。これを前年同期からすると、それぞれ上がっておるわけです。前年同期で上がった分を差っ引いて計算しますと、大工が千五百五十九円、土工が千百三十三円、軽作業の人夫、男七百六十三円、こういうことになる。そうすると、イモの耕作に従事しておる者の賃金というのが七百十二円で、軽作業の人夫よりも低い。こういうことがあるだろうか。こういうことをするから安くなっちゃう。何ぼ政府のほうで農村の所得を上げるといったって、上げるようなことをしていない。だから、これは答弁は求めない。ただ、こういうものがあるのだということ。現にあなたのところのこの調査表で数字が出ているのだから。七百十二円なんて、このごろでいえば失対の人夫の賃金だ。それでイモをつくれと言うほうが無理です。よくひとつ注意して今度の計算をおやりなさい。注文だけつけておきます。     —————————————
  216. 本名武

    本名委員長代理 農作物の作柄の概況について報告を求めます。青木作物統計課長
  217. 青木雄

    ○青木説明員 それでは農作物の作柄について御報告いたします。  初めに水稲について申し上げます。水稲につきましては、八月十五日現在で現地の調査をいたしまして、これを八月三十日に公表いたしました。それによりますと、ことしの水稲の作柄は、北と南で明暗の差が非常にはっきりいたしておりまして、北東北から北海道は悪いのですが、南のほうへいくほどよくなりまして、中国、四国、九州方面は非常によくなってきております。その後、八月二十日ごろから北のほうもだいぶ天気がよくなりましたので、臨時的に九月一日現在で、これは現地のちゃんとした調査ではございませんけれども、情報をとったわけでございます。それによりますと、東北のほうの作況回復が非常に見られるわけでございまして、南のほうはさらにまたよくなっていくというようなことで、八月十五日現在では水稲の作況指数は一〇一でございましたが、九月一日では一〇二%という作柄になっております。  それから、陸稲のほうは、八月十五日の調査だけしかございませんが、これによりますと、作況指数は九八%ということになっておりまして、主産地の関東ではわりあいいいのですが、九州方面では干ばつ等のために作柄は悪くなっております。  それから、夏作物といたしまして、先ほど来問題になっておりましたサツマイモでございますが、カンショの作柄はどうかということで、これは九月一日現在で主産県だけで試掘りいたしまして、今後の肥大率というものを考えて一応の作柄を検討しておりますが、これは現在まだ取りまとめ中でございまして、十四日に公表することになっております。カンショの作柄は植えつけ以後一ヵ月というようなときが大事なときでございますが、ことしはその時分が少し悪かったので、作柄は少し悪いのじゃないかというように感じておりますが、面積も少し減るようでございます。  それから、バレイショのほうは八月三十日に公表いたしました。都府県は収穫高でございまして、北海道は収穫予想でございます。これによりますと、作況指数は一〇一%となっておりまして、都府県のほうがよくて、北海道が悪く、北海道が九七%であったと思います。その後の状況ですが、これは実収高、あとは十月十一日に収穫量が確定して公表する予定になっておりますが、北海道は昨年はバレイショの作柄があとで非常に好転してよくなったのでございますけれども、ことしは去年のようにはいかないようでございます。疫病等も出まして、その九七から下がってくるのではなかろうか、こう考えております。  なお、豆類につきましては、北海道だけの予想を八月一日現在でとりまして、この前発表したわけでございますが、これによりますと、冷害に弱いアズキの作付が三三%もふえたりいたしまして、そこへ持ってきて、ことしの北海道はだいぶ気象条件が悪いものですから、この前の公表では、大豆、アズキ、インゲンマメともに不良、特にアズキは悪いということを公表したわけでございます。今度は、九月一日の状態を現在取りまとめ中でございまして、まだまとまりませんけれども、状況といたしましてはだいぶん悪いのではなかろうかと思います。三十九年が豆類が非常に悪い年でございましたが、あの年と比べまして、前半がやはり同様に悪く、三十九年は後半まで悪かったわけで非常に作況は落ちたわけでございますが、ことしは八月の下旬からだいぶよくなっているので、ああいう作況低下にはならないと思いますけれども、ある程度の作況不良ではなかろうか、こういうぐあいに考えております。  なお、麦でございますが、麦は、この前都府県のものは収穫量が確定して公表いたしました。そのときに北海道の予想収穫量を公表したのでございますが、このときの全国の指数といたしまして、小麦が九六、大麦が一〇五、二条大麦が一〇二、裸麦九四、こういうぐあいになっております。西日本に多い裸麦が非常に作柄が悪うございまして、と申しますのは、九州方面に黄さび病、黒さぴ病が非常に発生いたしまして、これはちょっと近来にない発生のしかたで、下がりました。それの影響を受けて裸麦が悪く、小麦も、熟期がおそい関係もあって、九州方面の小麦が非常に悪いというような状態でございました。このときは北海道はわりにいい指数を見ておったのでございますが、その後北海道の作況が非常に悪くなってまいりました。と申しますのは、連日曇雨天等が続きまして、穂発芽したり倒伏をしたりしまして、だいぶ作柄が低下いたしております。これは最後に収穫量としては十月の二十日に公表を予定いたしております。  以上、主要な作柄について御報告いたします。
  218. 本名武

    本名委員長代理 質疑の申し出がありますので、これを許します。中山榮一君。
  219. 中山榮一

    中山委員 私のは、質疑と申しますか、お願いと申しますか、茨城県下に——茨城県の作柄もたいへん本年はよくて、いままでにない豊作だ、そういう状況でありましたが、最近ウンカが大量に発生をいたしまして、非常に悲惨な状態になりつつあるのであります。農家の方は非常に驚きまして、この防除に当たっておるのでございますが、薬品がないというようなことで、非常にあわてておるわけでございます。それで、ウンカというのは茨城県には珍しいのでありまして、そのために、ウンカの防除方法等もあまりよく心得ていないのでありまして、何とか急速にこれを食いとめませんと、私も現場を見て歩きましたが、ウンカが発生したところはみんな全滅でございます。せっかくの豊作のところに、こういう大災害が起きて、非常に残念でありますので、農林省のほうへ茨城県のほうからそういう連絡がありましたとは思いますが、何とか急速に適当な防除の方法等の御指示もお願いいたしたい。また農薬等の御手配もお願いいたしたい、こういうことでございます。これについてひとつ出局より御意見を伺いたいと思います。
  220. 原政司

    ○原説明員 ただいま中山先生からお話がございましたウンカでございますが、本年の稲作の特徴といたしまして、先ほど作物統計課長から御説明申し上げた点に関連いたしますけれども、非常に特徴がございますが、ただいまお話がございましたウンカの発生というのも、またことしの一つの特徴でございます。その原因につきましては、いろいろございますが、冬あたたかかった。いわゆる暖冬、それからことしは北のほうが低温でありまして、関東以西は非常に高温だという、そういった気象条件になっておりますが、関東以西の西日本の高温干ばつという状況がウンカの発生を誘発した原因ではなかろうかというふうに考えております。  なお、もう一つの原因といたしまして考えられておりますことは、例年でございますと、二化メイ虫の発生を農家も非常に熱心に防除いたしますが、本年は比較的その発生が少ないという関係もございまして、二化メイ虫防除に対する薬剤の散布も必要がないという状況もかなりあったようでございます。そういったことがある意味でウンカの発生をさらに抑制できなかったという副次的な要因になっておるやに承知しております。そのような状況でありまして、ただいま私らが承知しておりまする全国の状況は、ウンカ全体といたしまして約百五十万ヘクタール程度の発生状況になっておりますが、その発生地は、ただいまお話がございましたとおり関東地方がかなり出ております。なお、その他西日本各地に出ておりまして、われわれといたしましては、七月初旬以来本年は非常にウンカの発生が多そうだという警報を出しまして、そのつど注意を喚起し、また指導をいたしてまいりましたが、百五十万町歩程度の発生を見ておりまして、これに対して目下薬剤散布をお願いしている段階でございます。われわれの目標といたしましては、過去最大の防除面積が、たしか昭和三十五年に全国で百六十万町歩くらいの防除をいたしましたけれども、本年は延べで約三百万町歩の薬剤散布を目標といたしまして、それに十分な薬剤をただいま用意している状況でございます。先生から御指摘ございました、地方的にやや薬品の回り方が偏在しているというような事情があるようでございますけれども、その点につきましては、先般来調整をいたしまして、十分間に合うように目下手配をいたしております。   〔本名委員長代理退席、舘林委員長代理着席〕  セジロウンカにつきましてはすでに終息をしておりますし、トビイロウンカにつきましてもおいおい下火になっていく状況でございますので、さらに一段と薬剤散布の励行を督励いたしまして、せっかくのりっぱなできをしております稲作を最終的にいい結果に導きたいということでやっております。  なお、茨城県につきましては、先生の御指摘もございますので、さらに専門家の間で十分御相談をいたしたいと思っております。
  221. 中山榮一

    中山委員 よくわかりましたが、ひとつこの際、急速にそういう必要な手を打っていただきたい、こういうことをお願いして、私の質問を終わります。
  222. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 芳賀貢君。
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま作況概要の報告がありましたが、その中で一、二明らかにしてもらいたいと思いますのは、九月六日の水稲の九月一日現在の作柄概況によると、全国の指数は一〇二%でありますが、そのうち、北海道については八五%ということになっておるわけです。これは過去三カ年の実情から見ましても、昨年は指数が九四%でありますが、ことしが八五%ということになって、これはやはり明らかに冷害の様相が非常に濃厚であるというふうに考えられるわけです。実は旭川市に道立の上川農業試験場があるわけですが、九月三日に試験場の開設の八十年の記念式がありまして、私もそれに参列しまして、そのとき、上川農業試験場で水稲の試験圃場を一巡してきたわけですが、あらゆる品種を通じてことしは単に生育遅延ということでなくて、低温による障害が非常に強度に見受けられるわけです。昨年のごときはわせ系が低温障害を受けたことは御承知のとおりでありますが、ことしはわせ系はもちろんでありますが、中晩生品種においてもちょうど減数分裂期に極度の低温が襲来した関係があって、全面的に低温障害を受けておるというようなな事実が判明して、われわれも非常に憂慮しておるわけです。特に一昨日委員会出席する途次、札幌の統計調査事務所にも寄って、水稲はじめ各農作物の北海道内における概況等を直接聞いてきたわけですが、水稲についても八五%という指数はさらに低下するようなおそれがあるという、そういう実は説明もあったわけです。ここで作況の内容を論議する考えはありませんが、昨年は、長期予報から見ても相当強い冷害が予想されるということで、農林省としても春以来冷害対策本部等を設けて、相当慎重に警戒して対策を進めてきたわけですが、ことしは、長期予報から見てもあまり危険がないという、そういう翻刻があったせいかもしれませんが、特に北海道等においても非常に楽観的に今日まで経過しておるわけです。そういうことで、ようやく低温による障害が強度だということが最近判明したような関係もありますので、やはり適当な機会に、というよりもすみやかに、現地における状況等については出先機関にまかせるということだけでなくて、的確な早期調査をぜひ行なって、必要な対策というものをやはり講ずる必要があるのではないかと思うわけです。一昨年は、これは相当激しい冷害であった関係もあって、農林省から時の赤城農林大臣はもちろんでありますが、特に舘林政務次官が当時先頭になって、中西官房長をはじめ関係の係官が北海道の冷害地帯を具体的に調査して、適切な施策を講じたことは御承知のとおりであります。昨年も指数は九四ということになっておりましたが、地域的に相当水稲の冷害が強かった関係がありまして、委員会としてもこれを取り上げて、本日も出席しておる官房の技術審議官の原審議官が先頭に立って関係の係官を帯同して、冷害地帯を調査して必要な措置を講ぜられた、そういう経過もあるわけです。それで、本省としてもまだ現地の冷害事情というものはあまり明確になっておらぬかもしれぬが、この際、作況を通じて冷害の実態というものを十分調査検討されて、適切な措置を講ずべきであると考えておるわけですが、これに対する農林省としての方針が立てられておれば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  224. 原政司

    ○原説明員 ただいま芳賀先生から、北海道の農作につきましていろいろ御注意や御希望がございましたが、先ほど作物統計課長から全国の稲作概況の際にも申し上げましたように、ことしは非常に特徴がございまして、北海道がたいへんかんばしくない。それに比べて西のほうが非常にできが順調であるという特徴的な傾向にございます。私らといたしましては、先ほど先生からも御指摘がございましたように、昨年がどちらかといいますと三月以来非常にきびしい条件がやってまいりまして、そのために非常に当初から緊張をいたしたわけです。本年はまあ決して安心はできない状態ではありますけれども、昨年ほどの異常な状態ではなかろうという気象庁の観測等もございましたので、格別冷害対策本部、災害対策本部を設けること等の措置は差し控えまして、いわゆる昨年あるいは一昨年の経験を生かして十分行政指導を加えてまいるということで進んでまいりましたが、七月以来の状況を見ますと、非常に状況がきびしくなってまいったわけでございます。そういう状況でございましたので、私らといたしましては、七月十一日に気象庁から従来の予想とは若干様相が変わってまいったという非常にきびしい御宣託がございましたので、翌七月十二日には各方面、関係北日本各県に対しまして特段に注意を促したわけでございますし、また八月になりましても注意を一方で促し、また報道関係その他に御援助をいただくというような措置もいたしますし、同時に、私をはじめといたしまして、普及部長、農産課長がそれぞれ手分けをいたしまして、北海道並びに東北の調査指導に督励にまいったのでございます。幸い八月の後半になりまして、これはまた例年にない高温状態があらわれてまいりましたが、何と申しましても、先生御指摘のように、かなりできが北海道におきましてはおくれております。さらに七月あるいは八月上旬の異常低温によりまして、障害不稔という現象がかなり広範に出ている次第でございますので、去る八月二十七日から九月二日の間にわたりまして、東京農工大学の学長をしておられます、冷害で学位をとられ、冷害で一生やってこられた近藤博士にお願いをして、北海道へ行ってもらったのでございます。さらに農業技術研究所の今井所長を同時に派遣いたしまして、北海道の九月初めの状態を調べていただいたわけでございます。その報告につきましては、両先生非常にいろいろと御勉強をいただきまして、私らにも御注意いただいておりますが、月曜に両先生の御出席を得まして、省内で関係者を加えて十分検討を加えたいというふうに思っております。それらの現地調査の結果等を十分勘案いたしまして、今後適切な措置を講じていきたい、かように思っております。
  225. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで水稲の場合は、いま言ったとおり、三十九年の作況指数が六八、四十年九四、今回が、中間的なものでありますけれども八五ということになっておるのです。必ず七月に極度の低温が襲来するわけですね。これは最近の特徴的な点で、ことしの場合も七月の上旬、それから下旬、二度にわたって最低気温が十度ないし十二度という、こういう気温の状態を繰り返したものですから、ちょうどそのわせにしても中晩生にしても、大事なときにこの低温障害を受けたということになるので、これは試験場等のいろいろ試験研究によっても、こういう極端な低温、これを克服するような品種は簡単に生まれないかもしれぬが、最近の状態から、どうも以前と違って、低温が七月中に、一波だけでなくて二波、三波と来るわけですから、これはやはり農林省の試験研究の部面においても、できるだけ極度の低温に対応できるような品種の改良等についても特段のくふうをひとつこらしてもらいたいと思うのです。  それからイモ類についても、三十九年が作況指数一〇二%、四十年が一一八、今回は九七ということになっておる。それから豆類についても、これは大豆、小豆同様でありますが、三十九年が三五%、昨年は大体八三%程度でありますが、ことしは豆類についても、先ほど説明のあったとおり、作況は全く不良という状態で、北海道全体の作況を概観すると、ほとんど水稲も畑作も平年よりも不良というような状態になっておるようなわけです。農林委員会としては、御承知のごとく、十二日から五日間の予定で北海道の農業事情を調査に出かけるわけですから——これはもちろん委員会独自の調査でありますが、この際、農林当局としても、これに合わせて、いま申し上げたような水稲並びに各作物の冷害の実態あるいはこれに対処すべき対策を立てるとしても、やはり現地の実情を十分調査、検討して、それに対応できる強力な対策というものがおのずから必要であるというふうに考えるわけです。昨年も一昨年も、農林省としては、非常に関心を持ってこれに臨まれたわけでありますが、今年度はこういう事情を前提にして、従来のような方針で対処されるかどうか、この際参考までに聞かしてもらいたい。
  226. 原政司

    ○原説明員 稲の品種改良、特に冷害に強い品種改良を考えよという先生のお話でございますが、まさにそのとおりで、たいへん重要なことだと存じます。本年度から、上川にございます試験場を育種組織の国の一環ということで整備をしてまいることになりまして、たしか自治体におきましても明年の予算要求におきましては、冷害の検定をする各種施設等の整備を重点的に考えているやに聞いております。何と申しましても、育種には相当年限もかかりますけれども、御指摘のような方向で品種改良を進めてまいることが、長期的に見まして非常に重要なことだと存じます。  ただ、一つつけ加えさしていただきたいと思いますのは、御案内のように、気象庁のお話によりますと、昭和三十八年から北半球はかなり異常の気象状態に入っておりまして、特に一昨年が太陽黒点の極小期になっておったようでございます。その極小期を境といたしまして、全体的には天候が多少上向きになるということが過去の経験からいわれておりますが、ことばをかえますと、この数年間は非常に特殊な気象の状態に置かれておったということもございまして、北海道の方々に非常にきびしい思いをさせた、結果的にはそういうことになったということをたいへん遺憾に思いますが、そういうこの数年の異常気象ということも一方にございまして、先生御指摘の障害不稔、これが非常にあらわれておるという事情もあろうかと思うのであります。育種につきましては、十分今後も考えてまいりたいと思います。  それから、十二日からは当委員会から特に現地を御調査いただくということでございまして、よろしくお願いいたしたいと思いますが、私ら本省といたしましても、今後の推移等を十分見まして、それぞれ適切な対策を講じてまいるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  227. 芳賀貢

    ○芳賀委員 終わります。
  228. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会