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1966-07-28 第52回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十八日(木曜日)    午後一時五十三分開議  出席委員    委員長代理理事 田口長治郎君    理事 大石 武一君 理事 倉成  正君    理事 舘林三喜男君 理事 本名  武君    理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       坂村 吉正君    丹羽 兵助君       野呂 恭一君    長谷川四郎君       藤田 義光君    松田 鐵藏君       森田重次郎君    ト部 政巳君       兒玉 末男君    千葉 七郎君       中澤 茂一君    西宮  弘君       森  義視君    林  百郎君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         食糧庁長官   武田 誠三君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房企画         室長)     小暮 光美君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月二十八日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選 任された。 同日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  農林水産業振興に関する件  請 願   一 農業協同組合農機購買事業是正に関す     る請願始関伊平紹介)(第二号)   二 同(服部安司紹介)(第一〇号)   三 同(山田彌一紹介)(第三八号)   四 同(櫻内義雄紹介)(第六八号)   五 伊那市沢山国有林移管反対に関する請     願(原茂紹介)(第六号)   六 食糧自給政策確立に関する請願宇野     宗佑紹介)(第四三号)   七 食糧自給政策確立に関する請願(相川     勝六君紹介)(第四四号)   八 でん粉行政に関する請願中島茂喜君紹     介)(第四五号)   九 日韓漁業共同規制水域への出漁等に関す     る請願池田清志紹介)(第八二号)  一〇 大中型まき網漁業等の大海区制反対に関     する請願池田清志紹介)(第八三     号)  一一 小名浜港の外麦等荷揚港指定に関する請     願(八田貞義紹介)(第九四号)  一二 国有林産物地元優先払下げに関する請     願(八田貞義紹介)(第九六号)  一三 辺境地振興に関する請願小川平二君紹     介)(第九七号)  一四 同(唐澤俊樹紹介)(第九八号)  一五 同(吉川久衛紹介)(第九九号)  一六 同(羽田武嗣郎紹介)(第一〇〇号)  一七 同(小坂善太郎紹介)(第一三七号)  一八 同(増田甲子七君紹介)(第一三八号)  一九 同(松平忠久紹介)(第一三九号)  二〇 農業協同組合農機購買事業是正に関す     る請願野原正勝紹介)(第一三四     号)  二一 山村振興対策に関する請願野原正勝君     紹介)(第一三五号)  二二 肉牛増産対策に関する請願湊徹郎君紹     介)(第一四八号)  二三 でん粉行政に関する請願外二件(菅野和     太郎君紹介)(第一九五号)  二四 農業協同組合農機購買事業是正に関す     る請願黒金泰美紹介)(第一九六     号)  二五 同(松澤雄藏紹介)(第一九七号)  二六 辺境地振興に関する請願(林百郎君紹     介)(第一九八号)  二七 同(中澤茂一紹介)(第一九九号)  二八 同(原茂紹介)(第二〇〇号)  二九 鳥取市道吉岡辛川線農免道路として     改良に関する請願足鹿覺紹介)(第     二〇九号)  三〇 鳥取県岸本町の農免道路建設に関する請     願(足鹿覺紹介)(第二一〇号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長病気のため、委員長指名により私がその職務を行ないます。  請願審査を行ないます。  今国会において当委員会付託になりました請願は、三十件であります。  これより請願日程第一から第三〇までの各請願を一括して議題といたします。  まず、審査の方法についておはかりいたします。  各請願の内容につきましては、請願文書表等により御承知のとおりであり、先刻の理事会におきましても慎重に御検討をいただきましたので、各請願についての紹介議員説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、直ちに採決いたします。  本日の請願日程中、第五ないし第七、第一一ないし第一九、第二一、第二二及び第二六ないし第三〇の各請願は、いずれも採決の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 なお、本日までに当委員会に参考送付されました陳情書は、農業構造改善事業推進等に関する陳情書外十六件であります。御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 閉会審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、農林水産業振興に関する件、農林水産物に関する件、農林水産業団体に関する件、農林水産金融に関する件、農業災害補償制度に関する件、以上の各件につきまして、閉会中もなお審査を行ないたい旨議長に対し申し出たいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  9. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 次に、閉会中の委員派遣に関する件についておはかりいたします。  ただいま議長に申し出ることに決しました閉会審査案件付託になり、その調査のため、委員を派遣する必要が生じました場合には、その調査事項派遣委員派遣期間派遣地並びにその承認申請手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  11. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
  12. 西宮弘

    西宮委員 実は、きょうは大臣最後出席をするというものですから、大臣に対する質問を保留して、せっかく大臣最後機会ですから、いままでの大臣の労をねぎらいながら、ぜひきょう最後お尋ねをしたいと思ったのですが、どうも大臣もこないしするので、しかも農林省の幹部の皆さんもそれぞれ近いうちに異動だということで、これは非常にタイミングの悪いときにぶっかかりました。私は、もし大臣がこられたならば、お尋ねをしたいと思っておったことは、まず米価問題について、なぜこういうふうに米価問題が毎年毎年やかましく論議されるのか、こういうことについて、いわば米価問題の背景というようなことをお聞きをしたいと思ったのです。それでは、やむを得ないので、食糧庁長官にそういう点についてお尋ねをしたいと思います。  まず、今度の米価問題について、一般世論は、必ずしも農民の側に味方をしておらなかったということは、われわれも十分承知をしておるし、農民諸君もよく知っておると思うのです。しかし、さればといって、そういう言論機関等が指摘しておる点は、要するに、農政不在なんだ、これがそもそも米価問題として毎年爆発をするんだ、こういうことを言っておるのだけれども、そういう点についてどういうように認識しておりますか。
  13. 武田誠三

    武田政府委員 いまのお尋ねのことは大臣でないとお答えできないようなお話かとも思いますが、米価の問題につきまして、消費者の側あるいは生産者の側から毎年いろいろな御議論がございます。いまの生産者米価につきましては、現在のような物価あるいは労賃値上がりということがございます限り、年々ある程度上昇を見ることは、私はやむを得ないのであろうと思います。ただ、その上昇水準というものが、どういう水準が適正かということにつきまして、それぞれのお立場からの御主張がいろいろと入り乱れる。一方におきまして、消費者立場からしますれば、米価値上がりというものが、消費者米価値上がりということにも当然ある意味関連を持つわけでありますから、そういう意味価格上昇を非常に懸念をするということで、できるだけ低い水準であることを望むというのは、これはみなそれぞれの立場で当然のことではないかというようにも思うのでございます。  農政不在の結果、米価問題がいつもいろいろと大きな問題になるというような見方も、新聞紙上その他でいろいろございますわけでありますが、農政はやはり厳然として私はあると思います。ただ、農業それ自体の持ちます生産性の上がり方が、必ずしも一般の鉱工業のようにはまいらない。まして、面積的な経営規模拡大というものが、耕種農業におきましては生産性を向上してまいりますための一つの大きな要素でもあるわけでありますが、それ自身がなかなか簡単なものではない。一方でまた、稲作その他耕種技術それ自身機械化というものについても種々の技術上のネックもある、いろいろなことがあるわけでありますが、それの解決あるいは展開が必ずしも十分ではないということが一面言えるのであろうと思います。したがいまして、そういった一般農政と申しますか、耕種関係の進展のための各種施策というものを今後とも一方で強く進めてまいらねばならないと思いますが、一方でやはり生産者価格というものは適正な水準を維持していくことが必要であろうというように考えております。
  14. 西宮弘

    西宮委員 生産者価格が適当な水準を維持することが必要であるということは当然であるし、また、その中で、いわゆる労賃値上がりその他そういうものが当然に反映して、ある程度値上がりをするということは、これは説明を要しない、相手のある、きまっていることであります。私の言うのは、そうでなしに、いま農政不在ということがもし言い過ぎならば、農政の貧困あるいは農政不足、そういうことが今日米価問題に農民をかり立てる大きな動機になっているということであります。  たとえば、日本経済新聞というのは、新聞の性格から言っても、必ずしも農業者に特に同情がある、理解があるというふうには考えられないわけでありますが、そういう新聞でさえこれが非常に重大問題だとして取り上げているのは、農村都市との所得格差が縮小しない、こういうことがそもそも米価問題を毎年大きくしている理由だということを言っている。そういう点について、政府に重大なる決断がなければ、おそらくもう毎年年中行事としてこれは繰り返されるであろう、こういうことを言っているわけです。そこで、私はさっきも言ったけれども農民もそういう世論の冷たさというようなものもよく知っているし、同時にまた、米価問題だけで一切の問題が解決するわけでもないし、あるいはまた、すべての農民米価問題に全部集中をしているというわけでもないし、そういうことはこういう運動を展開する農民自身も十分知っている。それにもかかわらず、あえて毎年こういう年中行事を繰り返さなくちゃならぬ、しかもそれが年を追って激しくなってくるということについては、十分なる反省がなければならぬと思います。  要するに、いまもあげた所得格差が解消されない、あるいは政府が宣伝しておる選択的拡大も十分な実りをあげておらない、あるいはまた、いわゆる構造政策も、つまり自立農家育成というようなことが、これまたほとんど成果をあげておらないというようなことが非常に農民に焦燥を感じさせる、あるいはさらに、最近の米の生産の減退、それによる食糧不足、こういうこともその背景として重大なる要因をなしていると思いますが、私は、そういうきわめて基本的な問題、そういう問題が依然として解決をされておらないということから、米価問題に集中してくる。繰り返して言うようだが、米価問題がすべてを解決する道ではないのだけれども、要するに、そういういまあげたもろもろの要因が何一つとして満足するような解決を見ておらない。結局文句の持っていく場所がほかにないので、価格問題、その中でも、直接政府相手にするということになれば米価問題、こういうことで、問題がそこに集中をしてくる、こういうふうに思われるのですが、その点についてはどうですか。
  15. 武田誠三

    武田政府委員 先生お話しのように、農業発展と申しますか、あるいは構造改善といったような施策が全部完全に効果をあげており、また十分であるというふうには現在の段階において言えない面もあると思います。それらのことが、ある意味では米価というところに集中して、運動として盛り上がってくるというようなことも、もちろん私は一つ要因としてあると思っております。  ただ、いま先生お話にもございましたように、それをすべて米価解決することは、これはとうていできないことであろうというふうに思います。また、農村都市格差というものが必ずしも是正をされておらないということも事実であると思います。しかし、これらのことは一朝一夕にすぐ改善できるというような事柄でもないと思いますし、これはじみちに、しんぼう強く、かつまた、施策もできるだけ充実をして解決をはかっていくという以外になかろうかというように考えております。
  16. 西宮弘

    西宮委員 長官の言うように、いまのような問題が全部米価解決をするわけではない、これは私も言ったとおりだが、そういうことである。したがって、いまのような問題について食糧庁長官に答弁を求めるということは必ずしも適当ではないと思うので、私は農政局長等お尋ねをしたいと思うのですが、いま長官が言ったような政府施策も、各種の、いま私があげたようなそれぞれの政府農業政策も、必ずしも十分な成果をあげているとは言い切れないものもあるというお話だったけれども、私の理解では、そういう程度ではないんじゃないか。たとえば、格差解消の問題にしても、自立農家育成の問題にしても、あるいは食糧自給問題等にしても、そういう程度の問題ではない。もっともっと深刻な問題ではないかと私は思うのだが、農政局長どうですか。
  17. 和田正明

    和田(正)政府委員 米価の問題にからめまして、今後の農政基本方向等についてお尋ねがあったことであろうかと思うのでございますが、今後の農政基本的な方向といたしましては、かねがねいろいろな機会大臣なり私ども政府委員からも申し上げておりますように、やはり価格対策だけでは万全ではございませんので、いろいろな生産対策でございますとか、構造政策でございますとか、そういうものの相互関連の中で今後の基本的な方向を進めていかなければならないという立場で、すでに御承知のように土地改良の十カ年計画というようなものも立案をいたしまして、基盤整備を進めてまいりますとか、あるいは生産組織あるいは生産体制合理化と申しますか、そういうことをいろいろとかみ合わせまして、逐次進めていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  現在実施をいたしております構造改善事業なり何なりが、必ずしも所期の成果をおさめていないではないかというような御意見も、ただいまの御質問の中にあったように思うのでございますが、昨年の秋、私どもの手で構造改善事業成果について調査をいたしましたところでは、やはり現地の農家のこの事業に対する受け取り方は、そういう御批判とはむしろ逆に、非常な期待と、またそれによっていろいろな効果をあげたということを言っておりまして、はでではございませんが、じみち農業近代化事業も逐次漸進的に地についておるというふうに私は理解をいたしておるわけであります。今後とも、即効的な政策はなかなかないと思うのですが、従前から積み重ねてまいりました仕事、それはこれからもさらにいろいろな構想を練りまして、じみち方向で、生産政策構造政策価格政策等相互関連させながら進めてまいるという考え方でおるわけでございます。
  18. 西宮弘

    西宮委員 いま、構造改善事業について去年調べたところが、たいへんな成果をあげているという話だけれども構造改善事業の最終的なねらいである自立農家をつくり上げるという点についてはどうですか。
  19. 和田正明

    和田(正)政府委員 現在行なっております構造改善事業ということで実施をいたしておりますものは、計画地区数で七割くらい、それから事業実施地区数で今年度のも含めて五割くらい計画が進行いたしておるわけでございます。ただ、御承知のように、この事業はこれ自体構造政策のすべてであるというふうには私どもはやはり理解はいたしておりませんで、将来の広い意味での構造改善あるいは構造政策方向の一助にし、またその基礎をつくっていくという考え方で進めてまいったわけでございますので、この事業が直ちに自立経営農家育成になるとかいうことではなくて、その基礎づくり成果をあげたという意味において、農家自身も評価をしてくれておると理解をいたしております。いろいろ統計調査部調査をいたしております資料その他でも、西宮先生すでに御承知のとおり、まだ萌芽的でございまして、戸数等も多くはございませんにしても、相当多くの所得農業であげるような農家も逐次伸びつつある現状であろうかと考えております。
  20. 西宮弘

    西宮委員 私は、いわゆる構造政策としての最終的なねらいである自立経営はどういうことになったかということをお聞きしたのであって、言うところの構造改善事業というものと、農業基本法当時に考えられた構造政策というのとは、たいへん違っておるわけです。私は、いわゆる構造政策農業構造拡大する、そういう意味の、そして最終的な自立経営農家をつくっていく、これが少なくとも農業基本法にうたわれた大きな目標であったはずなんで、いま自立経営農家がどうなったかということをお尋ねした。それはどうですか。
  21. 和田正明

    和田(正)政府委員 基本法の制定以後、日本農業構造あり方について、いろいろな考え方と申しますか、自立経営農家育成してまいりますとか、あるいは協業を助長してまいりますとか、そういうことを一つ目標とかビジョンに掲げてまいったことは事実でございますけれども、何と申しましても、農業というものは、そうきょうかあすかに一挙に変化をするわけにまいらないことは先生承知のとおりでございます。今後も基本法で掲げましたビジョンあるいは構想方向への努力を先ほど申しておりますように積み重ねてまいりたいということを申し上げておるわけでございまして、いま何戸できておるかというようにおっしゃられますれば、所得の多くなった農家とか、そういうようなことで、たびたび数字も申し上げておるとおりの実情でございます。
  22. 西宮弘

    西宮委員 きょうかあすではできないということならば、あさってでもけっこうでありますが、少なくとも倍増計画では、十年間に二町五反歩の農家を百万戸つくるということになっておったわけですね。ところが、それが全然進んでおらない。そこで、たとえば、これは例の小倉武一さんなんかが中心になって考えた構想であることは明らかなんです。その小倉さんが最近言っておるのに、いわゆる四十年の農業白書で見ると、自立農家と目されるものが大体全体の農家の一割くらいある、そしてその一割の農家で三割くらい生産をあげておる、こういうふうに彼は想定しておるわけです。その中でこういうふうに言うておる。そういう自立経営を、今後の農業経営あり方あるいは今後の日本農業のにない手として考えた場合に、一体それが重要な目標となり得るだろうか、こういうことを今度は自分で言い出しておる。あるいは数にして一割、生産において三割というような程度では、一体今後の日本農業のにない手としての役割りを期待することができるかという疑問が起きるわけである、日本農業現状では、自立経営日本農業の中核である、あるいはそのにない手であるというわけにはいかない、兼業がふえていくことは、自立経営が育っていくこととは全然逆な現象である、こういうことを言っておるので、小倉さん一人を責めてもしようがないかもしれませんけれども、私はまことに無責任きわまると思うのです。あのとき明らかに自立経営農家をつくるということを構造政策に掲げて、農業基本法がはなばなしく登場した。ところが、いまになってみると、そんなことはとうてい問題にならないのだということを当の張本人が言っておる。こういうことについてどういうふうに考えておりますか。
  23. 和田正明

    和田(正)政府委員 いま西宮先生が御引用になりました小倉先生の文章は私まだ拝見をいたしておりませんので、的確なことを申し上げるわけにはまいらないのでございますが、お読みになりましたのを伺っております限りにおきましては、小倉さんの言っておられることは、別に自立経営育成というようなことを目標に掲げたこと自体が間違っておったということを言っておられるのではなくて、そこまでまだ至っていない現況についての小倉さんの反省なり考え方なりを言われたのであろうかと思います。なるほど、現状においては兼業農家が非常にふえております。それはやはり御承知のような労働市場が非常に広がりましたこととか、あるいは不動産の価格上昇等に見合いまして必ずしも農地移動化が進まないとか、いろいろな事情もあろうかと思いますが、将来の方向として、私は、やはり農業だけでやっていけるような農家が今後とも育成し得ないとは考えませんし、一方、ある程度兼業農家のようなものも相当数残るでございましょうから、これにつきましては、さきの通常国会のときにも坂田大臣からもお答えがございましたように、それらを一つ生産組織として共同化のような形で育成をしながら、両々相まって日本農業の将来の発展のにない手たり得るものというふうに考えておる次第でございます。
  24. 西宮弘

    西宮委員 それでは数字についてお尋ねいたしますが、いわゆる自立経営農家と目されるものがどのくらい、何割くらい出ておりますか。それはいろんな数字で、どの程度年間所得のあるものは自立経営農家に該当するというようなことを算定したり、そういうことをだいぶやっておるようだけれども、どのくらいできておりますか。私は小倉さんの言う一割もとうていいっていないと思う。
  25. 小暮光美

    小暮説明員 自立経営農家の定義をいうのは、御承知のように、必ずしも法令的にきちんとしたものではございませんので、考え方によって若干の差があると思います。私ども年次報告の際に申し上げました考え方でまいりますと、都市農村との物価差と、その他計量しがたい困難な問題がございますから、むしろ農村の中で、ごく若干の農地を耕しながら、わりあいにきちっとした職について恒常的な職員勤務をやっておる農家で、兼業農家として存在する、そういう人たちの平均的な一人当たり家計支出水準、そういうようなものとバランスのとれた家計支出農業所得だけからまかなっていく、こういうような形で見ますと、物価差その他の問題もある程度捨象されますので、農家所得からそういうものを推測いたしますと、おおむね七、八%というふうに見ております。ただ、家計支出の面だけでものを見ますと、それが農業として生き生きとして発展していくためには若干の蓄積も必要なわけでございます。それから、当然租税公課等もしかるべきものを分担しなければならないわけであるというふうにも考えられますので、一人当たり家計支出だけでものを見るのはきわめて大ざっぱな比較ではないか、むしろ貯蓄率なり租税公課の負担率なりといったようなものもある程度加味して考えますと、昭和三十九年なり四十年あたりでは、おそらく農業所得が八十万円から八十五万円くらいないと自立農家とは言えないのじゃないかと考えますが、そういう角度で厳密に考えますと、やはり五%程度という試算も出てまいります。私どもは五%ないし一割というふうに判断しております。
  26. 西宮弘

    西宮委員 五%ないし一割というのも、ずいぶん幅があると思うのです。私は五%やっとだと思うのです。四%程度じゃないかと思うのです。五年報−五年報か何か知らないけれども農業基本法ができてから五年目の総決算をする年報が出ることになっておりますね。あれはいつ出ますか。
  27. 小暮光美

    小暮説明員 基本法制定後五年間における農業の動向について、ただいまいろいろと検討いたしておりますけれども、正式にこれを五年報というような形で外にお出しするとすれば、なお若干の時日を要するものと考えております。
  28. 西宮弘

    西宮委員 若干の後、いつ出るのですか。
  29. 小暮光美

    小暮説明員 目下作業中でございますので、しかと申し上げられません。
  30. 西宮弘

    西宮委員 いずれ農政審議会にはかって1新聞に出ておるのだから、農政審議会にはかるわけでしょう。前に私が新聞で見たのは、五月に開いて云々というようなことだったが、すでにその五月からずれておる。近くあるというのなら出るはずだが、そういう審議会を開くという予定も立っていないのですか。
  31. 小暮光美

    小暮説明員 四十年度の年次報告の原案を農業基本法に基づいて農政審議会の御意見を伺います際に、大方の委員の方から、五ヵ年についてのまとめをしたらどうかという示唆がございました。それについて、大内委員が従来の年次報告の著者でございますが、大内委員の指導のもとに、その後の五年間を通観しての動向を分析しておりますけれども、まだ農政審議会にその草案をおはかりする段階に至っておりません。
  32. 西宮弘

    西宮委員 至ってないならしかたがないが、私は、おそらく、そういう意味で分析してみたらせいぜい四%か五%、さっきの八十五万というものを標準にして計算すると、せいぜいその程度にしかいってないと思う。そこで、たとえば小倉さんは一割と見ておるが、その一割でさえ、これではてんで問題にならないというようなことを言っておるので、私は実にそういう点では無責任もはなはだしいと思うのだけれども、さっき私は、農政局長に、きょうあすだめなら、あさってでもいいということを言ったのだけれども、そのあさって、はたしてできるのかどうかということが私は非常な疑問なんです。なぜならば、この前、政府というか、審議会がつくった中期計画、あれにはこう書いてある。「自立経営育成は、政府農業従事者等の長期にわたる努力をまってはじめて可能となるものである。したがって計画期間後も施策を強力に推進してなるべく早い時期に一〇〇万戸程度自立経営育成されるような配慮が必要である。」あの中期計画は一応中断しておるけれども、あの中にはこういうふうにうたわれておる。これで見ると、自立経営育成というのは、政府あるいは農業従事者の長期にわたる努力によって初めて可能になるんだ、こういうことを言っておるので、これはいつできるかわからないということを言ったことばですよ。そう思いませんか。
  33. 小暮光美

    小暮説明員 中期経済計画策定の際に、農業分科委員会で、小倉部会長のもとでこれを御検討になりました考え方は、ただいま御指摘のように、必ずしも時限を限ることはできないだろう、しかし、生産者の努力と施策のこれに対する応援ということで、できるだけその方向に進みたい、こういう判断であったと思うのです。
  34. 西宮弘

    西宮委員 いわゆる所得倍増計画は四十五年度までの計画ですから、まだあと四年残っておる。その間にできるならば、むろんそれでもけっこうだと思うが、それは全然見込みがないということを中期計画などは明らかに承認したのだろう。だから、長期にわたる努力が必要である、あるいは計画期間後もこれを強力に推進をして、やがて百万戸つくるのだ、そういう配慮が必要であるということを言っておるにすぎないので、おそらくその中期計画の立案に参画した人たちは、これはとうていできないのだということで、さじを投げておるだろうと思う。私は、そういうことでは、さっき言ったように、農民が非常な焦燥を感ずるというのも無理もないと思うのです。さっき私は所得格差の問題を最初にお尋ねをしたのですね。その問題についてもお尋ねをしたいが、おそらく得られる答えは似たり寄ったりでしょうから、私のほうで申し上げたいと思います。これまた先ほどの中期計画によると、他産業の生産性向上の見通しから見て、農業と他産業の生産性格差是正することは「必ずしも容易ではない。」といっておる。「必ずしも容易ではない。」ということは、とうていできないということの役所流の表現にしかすぎないわけですよ。どうですか。そう思いませんか。
  35. 小暮光美

    小暮説明員 まあ御指摘のように、自立経営農家になるということ、それから自立経営農家になりまして、それから絶対にあとずさりしないというか、自立経営農家として生き続けるということ、いずれもなかなか困難なことは事実だと私は思います。しかし、先ほどのおことばにもございました、あきらめておるというようなことはないと思うのでございます。若干計数的なことになって恐縮でございますけれども、先ほど御指摘の五ヵ年間についてのいろいろな検討、目下作業中でございますから、役所としての正式な見解ではございませんけれども、作業に参加しております者としての所見を申し上げますが、非常な経済の急速な成長がございまして、先ほど申しましたような一人当たり家計支出の伸びが、年度の伸び率といったようなものを見ましても、まあいわば人並みの生活をするためには少なくとも毎年一一、二%ずつ家計支出を伸ばしていかなければ均衡しないというような姿が、現実に高度経済成長下にはあったわけです。ところが、農業における労働の生産性は、年次報告にも報告しましたように年率六%くらい、これは世界各国の農業の中でも類を見ないほど高い農業生産性の伸び率でございますけれども、これは農業従事者が減ってきておるということと、農業生産が、率は多少減っておりますが、年々着実に伸びておるということの結果でございまして、価格がそのままでございますと、これは先ほど申しましたような家計支出を年々十数%伸ばすということはなかなかできない。そういった点が価格政策で押えられながら、やはりかなりな数の農家が営々として努力して、年々の生活水準上昇をやり遂げております。その五年間に自立経営農家的なランクに下から上がってきたものも相当あるというふうに判断されますが、他面、そこから脱落したものもある。これは、日本農業は御承知のように北から南までいろいろの立地条件がございます。気象条件の影響もございます。北海道の大冷害あるいは九州の長雨の被害とかいろいろございますから、なかなか生産面でも困難が多いと思いますが、基本的には、やはり非常な経済の成長の中で相当のテンポで生活水準を上げていかないと均衡が維持できないということがございますから、そういうわけで、自立経営農家に積極的になる、あるいはなってからさらに自立経営農家として存続するということは、相当努力を必要とするというふうに考えております。
  36. 西宮弘

    西宮委員 私の言ったのは、たとえば所得格差の問題にしても、いまの中期経済計画は、農業と他産業との農業生産性格差是正をはかることは必ずしも容易ではない、必ずしも容易ではないということは、要するに、これはできないのだということをいっているわけです。その必ずしも容易ではないということは、そのことばどおりに解釈すれば、やればできるのだ、裏を言えばそういうことかもしれないけれども、役所でこういうことばを使うのは、とてもできませんとは言えないから、こういうことを言っているにすぎないので、これはおそらく見込みがないということ、あきらめておる、確かにこれはもうさじを投げておる。だから、たとえば、この間の経済同友会が発表したビジョンですね。あれの中には、いたずらに格差の問題を強調するなということをいっているので、たとえば数字上の格差を極端に表面に押し出すことは、農業者に著しい格差意識を植えつけ、ひいてはこれが焦燥感を抱かせるとともに、政治への過度の依存態勢を招来し、農業者の自立性をそこなう、こういうことをいっている。だから、格差があるということを百姓に聞かせるな、こういうことをいっているわけですね。私はずいぶんひきょうだと思うのですな。たとえば、いま室長は家計費は年々向上しているというようなことを言っているけれども、農林省の出した白書によると、家計費の開きが縮まったのは農外所得がふえたからだということを白書はいっているわけですよ。農業所得がふえたのでそうなったのではなしに、農外所得がふえたからだということを少なくとも農林省の白書はいっている。そういう状態の中で、とにかく格差は厳然として存在する、容易に縮まらないという状況下にあって、経済同友会などは、そういうことを百姓に聞かせるな、聞かせるから、百姓がいたずらに焦燥感にかられるのだ、こういうことをいっているので、私は、そんなことではとても満足な農林行政はできないのじゃないかと思う。どうですか。たとえば自立農家育成、いわゆる構造政策のために農地の流動化というようなことを盛んに言っているのだけれども、そういうことに関連して、私は、農民年金を設けるというのは一つの対策だと思うのだけれども、これはいつあるいはどういう形で出しますか。どこの所管か知りませんけれども……。
  37. 和田正明

    和田(正)政府委員 農民年金という場合に、いかなる構想なり制度なりでそれを考えるかということが必ずしも明白でございませんで、いろいろなことばに使われておるように思うのです。現在私の手もとで検討いたしております内容につきましては、先般通常国会の際に農林年金法の御審議をいただきましたときに、芳賀委員の御質問にお答えをいたしたのでございますが、いま私どもとしては、一般の自由職業者と申しますか、農家であれ、あるいはお医者さんとか弁護士とか理髪業とか、要するに雇用関係にありません者については、その社会保障制度は御承知のように国民年金一本であります。これが前国会でようやく一人五千円という月額の支給額になるがごとくに改定をされたのでございますが、雇用関係にあります場合の年金は、たとえば厚生年金の制度であれ、あるいは国家公務員の共済制度であれ、あるいは農林漁業団体職員の共済制度であれ、御承知のように、最低金額の保障をいたしまするほかに、報酬比例部分と申しますか、毎年の得られます給与に対応して、ある程度の頭打ちはあるにいたしましても、いろいろな給付を受けます年金額に当然差がございます。ところが、国民年金は、いま申しましたように、一人五千円という出し切りでございます。そういう所得比例部分のようなものがないわけでございます。そこに一応目をつけまして、農家の老後の生活の安定なり、あるいは孫たちに対してある程度の小づかいがやれるようなそういう程度のものを、所得比例部分的なものとして何かお渡しすることはできないか、また、そのことによって老後の生活の保障があれば、ある程度リタイアの促進と申しますか、農家の経営主の世代の交代を促進することにも役立つであろうという考え方に立ちまして、現在検討を進めておるわけでございます。でき得れば、農協が御承知のように現在生命共済とかあるいは各種の保険会社がやっておりますような養老共済とか、そういったような保険的なものを実施をいたしておりますが、まだ年金的な共済事業をやっておりませんので、職域年金として農協がそういうことを手がけていく、それに国が構造政策的な視野をも加えて掛け金の助成というようなことができれば望ましいのではないかということで、現在いろいろと設計をいたしましたり、検討をいたしておる段階でございます。
  38. 西宮弘

    西宮委員 目下検討中のものは、次の国会には提案されますか。
  39. 和田正明

    和田(正)政府委員 いま私が申しましたような構想でございますと、法律の必要はなくて、農協の共済事業として実施ができるのではないかというふうに思いますが、実施時期を直ちに明年度として発足するかどうかについては、なお細部の検討事項がございますので、いまのところ、来年から実施をいたすようになりますというふうには申し上げかねる状態にあります。
  40. 西宮弘

    西宮委員 農民年金、あるいは老齢年金といったり、離農年金といったり、いろいろな呼び方があると思うのでありますが、この構想はすでに関係者の間では相当真剣に研究している。あるいは構造政策委員会といいましたか、あそこでもそういうものを発表しているし、それぞれそういう案も出ているし、あるいは諸外国の例もあるし、そういうことで、これはほんとうに政府が主体になってやるということでなければ、とうていものにならない。特にいまの世代の交代を願うといったような、そういう政策を盛り込んだ、それに役立つようなものはとうていできないと思うのだけれども、どうなんですか。政府が主体になってやる、そういう考え方はないのですか。
  41. 和田正明

    和田(正)政府委員 制度の仕組みのしかたによってはいろいろなことが考えられると思いますが、やはり国民年金制度があり、また国民年金制度自身にも、いま申しました所得比例的な付加年金制度というものがある程度厚生省のほうでも検討されておりますので、その場合には、おそらく何も農民ということには限らず、一般事業者全体を通しての所得比例部分の付加年金的なものが、国が管掌する社会保障制度としては考えられるということになりましょうし、社会保障制度が、日本全体のあり方としては、職域別にばらばらになるということが必ずしも好ましいことではないというふうに私どもも考えます。したがいまして、むしろ、お説のように国が中心になってやるという考え方は、私の考え方では実現がかえっておくれ、いろいろ困難があるのではないか、やはり職域的な考え方で考えますれば、農協等の団体が中心になって事業実施し、それに政策的な考え方をもって国が助成を加えていくということのほうが、実現のスピードは早いのではないかというふうに私は考えておりますが、まだ農林省全体として最終的な構想にはなっておりませんので、明年どうかというふうにおっしゃられましても、実施し得る時期ということはまだ確たるお返事を申し上げかねるわけで、いま申しましたような方向で、現在いろいろ設計なり何なりを詰めておる段階でございます。
  42. 西宮弘

    西宮委員 実現のスピードということになれば、それは確かに農協にやらせれば早いだろうと思うのであります。そういういわゆる人のふんどしを当てにしているような他力本願では、農林省で意図しているような、世代の交代を促して、それで構造政策をやり遂げようというようなことはとうていできない。あるいはさっさ言われた、たとえば職域的にそれぞれつくるというのは、国民年金のたてまえ上適当ではない、厚生省あたりの考え方は当然そうだと思いますけれども、しかし、そういうことならば、かつての農林年金なども全く同様なんで、国民年金のほかに農林年金という特殊なものができ上がった。それと同じような考え方でいけば、農民年金あるいは老齢年金が当然農業者のために設けられてしかるべきだ。そうでなければ構造政策などを遂行することはできない。そういうことで、ぜひともやってもらわなくちゃならぬと思うのだけれども、これから大蔵省との折衝その他もありましょうから、次の国会に必ず出すとか、そういうことはここで確言できないかもしれないが、少なくとも農林省としては、いつまでに出すということを目途にしてやるんだ、こういうことは言えると思うので、その点聞かしてください。
  43. 和田正明

    和田(正)政府委員 いまの御質問にお答えをいたします前に、私が一つ考え方としてこういう考えもあり、その方向で現在詰めておるというふうに申し上げたわけでございますが、おっしゃるように、国自身がやるとか、いろいろな考え方が成り立ち得るわけでございますので、いま私が申しましたような構想が唯一のものであり、それだけしかないというふうには私も実は考えてはおりませんで、いろいろな方法の利害得失あるいは実施の可能性等を含めまして、幅広く研究をいたしたいと思っておりますが、いつからやるかというふうにおっしゃられますれば、どうもいついつからというふうに確言を申し上げるところまで私ども自身の作業がまだ煮詰まっておりませんので、なるべく早くというふうにお答えをする以外には現段階ではお答えしょうがございません。
  44. 西宮弘

    西宮委員 だからさっき言ったように、政府全体としてまとめるということは、それぞれ各省の意見もありましょうから、大蔵省、厚生省、いろいろありましょうから、最終決定はそう簡単には予言できないと思うのだけれども、農林省としては、次期国会に提案するという、そういう目途で努力されますか。
  45. 和田正明

    和田(正)政府委員 先ほどから申しておりますように、いろいろな方向で現在検討中でございます。先ほど私が申しましたような考え方で進めます場合には、必ずしも法律を要するというふうにも考えておらないのでありまして、いずれにいたしましても、明年度から直ちに実施ができるという段階まではちょっと私どもとしての準備作業は進んでおりません。
  46. 西宮弘

    西宮委員 私は、せっかく構造政策的なことをやかましく言われているし、しかも、自立農家の実現ということがいま言ったようにほとんどできていない、こういう情勢下にあって、ぜひこの問題は取り上げなくちゃならぬと思うが、せっかくそういう作業が行なわれているならば、ぜひ次の国会ではものにするように、それは法律であろうと予算であろうと、どっちでもいいと思うのです。どっちでもいいというか、われわれは、いわゆる政府が主体になったりっぱな政策が法制的にでき上がることを期待するわけではありますが、しかし、とりあえず予算でやるのだというならば、それも一つの行き方だろうと思うのです。少なくともこの次の国会あたりに出さなければもう間に合わなくなってしまうのではないかと考えるのだしけれども、もう一ぺんだけその問題を聞いて、この問題は終わりにします。
  47. 和田正明

    和田(正)政府委員 なるべく早く実現の方向に持っていきたいということにつきましての基本的な考え方は、西宮先生と私も同意見ではございます。ただ、実際に実施をいたします場合に、これはやはり農家自身の問題でもございますし、あるいは農協その他の関係団体の意識統一というようなことも必要でございます。そういう農業全体をあげての総力の結集ということがどうしても必要な問題でございますので、そういうような全体としてのムードと申しますか、気がまえと申しますか、そういうもののでき上がりとのタイミングという点もございますので、なるべく早いことが望ましいことは言うまでもございませんが、来年出発することが、はたして準備作業その他の点から考えて適当かどうかということについては、なお検討させていただきたいと思います。
  48. 中澤茂一

    中澤委員 関連して。  私は、総体的に農林省が萎縮しているのではないか、もう少し積極的に大胆に大きな農業ビジョンを出すべきではないですか。今度武田さんは次官になられるのだし、大臣がだれになろうとも、ここにおられる優秀な人材の皆さんがそういう一つビジョンづくりをやらなければ、大臣がだれになったってどうにもならない。たとえば、建設省の道路整備五ヵ年計画四兆何千億、それから港湾整備十カ年計画何兆何千億、それから自衛隊までみんな一つ計画ビジョンを出しているのですよ。ところが農林省は、見ていると、一つもそういう将来に対する大きな計画と抱負というものが出てこない。そしてその場当たりの農政にきゅうきゅうと追われているというのがいまの農林省なんです。だけれども、それではいかぬのです。今度武田さんは次官になられるのだから、しっかり聞いておいてください。やはり大きな計画ビジョンというものを出すべきだと思うのです。たとえば日本農業ビジョンというものを松永安左衛門の産業経済計画会議が出したのは、十五カ年に八兆三千億の投資をしろ、そうすれば日本農業は外国農業に太刀打ちできるということを出している。農業基本法についてわれわれ社会党で検討したとき、われわれは、基盤整備だけで完全に集約大農化して外国農業と太刀打ちできるには、五兆円という数字を出して検討しておるのです。だから、いま西宮さんが言った構造政策なんというものは、これは構造でも何でもないのです。考えてごらんなさい。一億二千万の予算単価で十カ年に三千ヵ町村やって、何で日本構造政策になりますか。なりっこないですよ。構造政策のパイロット政策というのがいまの構造改善です。そうでしょう。それならば、これはもう目鼻がついた。皆さん批判するけれども、非常に農民は喜んでいると言うけれども農民にそういう意欲が向いてきたということは、百歩譲って認めてもいい。そうしたら、もうこれは見込みがついたのだから、いよいよ日本構造大改善に乗り出すのだ。それにはもっと十カ年間に五兆円なら五兆円、七兆円なら七兆円という大きなビジョンを出すのです。それを出すことによって前進していくのです。いまの農林省は、私が見ていると、うしろへ戻る後退政策だ。いまの農民年金だけ取り上げても、半分逃げ腰なんだ。だから、まるでいまの農林省を見ていると中途はんぱなんだ。離農政策なり構造政策にからんで、ぼくも予算委員会で離農対策をなぜはっきり出さぬのだと言ったのです。これもはっきり出せないのだ。いつもふらふらしておる。そうかといって、大きなビジョン一つも出てこない。これでは農林省というものはあってもなくてもいいようなものになってしまっている。そこで、今度は少なくとも十カ年の日本構造改善事業で、大体構造政策の見通しはついた。ここで政府は十カ年なら十カ年に五兆円の投資をしなさい。年間五千億やりなさい。それだけやれば日本農業はこうなりますという責任官庁としてのビジョンを出せばいい。道路整備計画にしても何にしても、全部出ているでしょう。ところが、農林省からそういうものは出たことがない。逆に産業経済計画会議なんかが、十五年に八兆三千億投資しろ、そうすれば日本農業というものは外国農業に太刀打ちできる、こういうことを言っておるのだ。だから、そういう大きなビジョン描きというものをほんとうに真剣に考えなさいよ。それで思い切った数字を出して、これでは十年でいけないと思ったら、十五年でもいい。十五年計画だ。これで七兆円投資だ。これだけやれば日本農業はこういう図柄になってくるのだ、外国農業価格政策でも完全に太刀打ちできるのだ、こういうものを思い切り出したらどうか。  それといま一つ、これはぼくに言わせれば消極的政策、広範な社会保障政策です。これに重点を置くなら、私はこれでもいいと思う。そういう大きなビジョンのものを出すよりは、まず現実の問題が重大だから、広範な社会保障政策として農民をどうするのだ、それにはこういうめんどうを見ていくのだ、それにはこれとこれとこういうものをやって、農民に後顧の憂いをなからしめるのだ、そういう広範な村会保障政策で1前進じゃなくして、これはわしに言わせれば後退部面だ。後退だけれども、そういう大きなビジョンが出るなら出るで、またこれはいいのですけれども、ほんとうに意欲的なら、前進ビジョンと広範な社会保障政策の理想という問題を中心にして、大きなビジョンを出していく。農民年金にこれだけ金をぶち込んでいきましょう、だから安心して農民の皆さん農業を離れてください、それならそれでまた一つ政策ですよ。見ていて、どっちつかずなんだよ。中身は何にもないんだね。それで、その場その場のものに追われて右往左往しているというのがいまの農林省ですよ。どうです、和田農政局長さん、ちっとでかい構想を出しなさいよ。
  49. 和田正明

    和田(正)政府委員 武田さんからお答えいただくのが適当かと思いますが、御指名がございましたので、前座を承りまして、少し申し上げます。  いまいろいろと御激励を受けたわけでございますけれども、私個人の意見をまじえて恐縮なのでございますけれどもビジョンとかあるいは数字的ないろいろな計画というものを出すべきじゃないかという御意見もごもっともであろうと思います。ただ、道路とか建物とかいいます場合には、相当額の金がありまして、それに見合って資材があり、あるいは土地の取得ができる、労働者があれば、それで計画が遂行できるという問題もございましょうが、農業の場合には、もちろん金がなければなりませんけれども、金だけあるいは資材だけという問題ではなくて、やはりそれに従事しております農家の心理といいますか、そういうものが大きく作用しておりますことは、いまさら私が申し上げるまでもないわけでございまして、やはり農家戸数がすべてそのままの形で残って、全部が自立経営になるということはあり得ないことで、いまでもないわけでございますけれども、他面、単に社会保障政策ができたり、あるいは就労の機会が万全になったりしただけでは、必ずしも農村から離れるとかあるいは農業から離れるとかいうようなことではなくて、いろいろとやはり人間心理に根ざした大きな社会問題があろうかと思います。そこで、そういうビジョンを掲げることも大事でございましょうけれども、私の気持ちとしては、それに構造政策というような即効的なものがやはりあるのではなくて、将来の構造改善方向を目ざしながら、そこへいくためのいろいろな橋渡しとか、それをプッシュするようないろいろな政策を進めていくということが一番適当であろうというふうに私は考えておりまして、たとえば、逃げ腰だとおっしゃられましたけれども農民年金なんかについても検討を詰めましたのも、また一方では、いろいろ農地法上問題のございます請負耕作をいろいろな意味でオーソライズいたしまして、生産組織の整理というようなことを考えましたのも、そういう将来の一つの掲げたビジョン方向へのじみちな橋渡し、あるいは何と申しますか、渡し船というようなことが行政の仕事ではないか、そういうじみな面も進めていかなければいけないのではないかというふうなことも考えてみているわけでございます。もちろん、ここでビジョンを掲げることが悪いなどということを申し上げておるわけではないのでございますが、やはりビジョンを掲げるからには、そこへの過程で、単に金の面ばかりでなしに、いろいろじみちに詰めなければならぬ準備作業がありそうだというふうに私は考えておるということを申し上げるわけでございます。
  50. 中澤茂一

    中澤委員 いや、それはじみちにやらなければ、農業問題なんて、あなたが言わなくても、そんなことはきまっているのですよ。きまっているけれども目標がないんだよ。何にもビジョンがない。十カ年後なら十カ年後の農業の姿というものは一つも出ていないんだよ。だから農民が不安動揺するのです。そんなものはむしろ指導力を持ってやればいいのですよ。農地管理事業団なんて、あんなへにもならないものを出してきて、通らないといって頭にきてみたり、全くなっていないじゃないですか。あんなものは通ったってどうにもならぬじゃないですか。通ったって、あんな構想はものにならないですよ。すべて見ていると、私もしばらく農林から離れているからよくわからぬけれども、何だかみみっちいのだ。それで、出すならもっと大胆に出したらいいでしょう。あんなけちなものを出してみたり、すべてが何か大蔵省がおっかなくて、何にもできないような消極的姿勢が農林省全体の姿勢ですよ、ぼくらが見ていると。もっと積極的に大胆にやったらいいじゃないですか。それならば、政策の可否によっては、われわれ社会党は、反対の場合もあるかもしれないけれども、あるいは社会党も積極的にそういう大きな構想に対して協力する場面もあるのです。すべてが消極的なんです。ガソリン税もようやくおとといまとめて農林、大蔵両大臣に申し入れたが、あんなのを見てもなっていないじゃないですか。予算要求を六十億しかしていないとか、そうして——あなた、次官には答弁は求めやせぬよ。そうして、あなたはへ理屈を言っているけれども、われわれだって協力して、政策的にとれるものは幾らでもとっているじゃないですか。だからそういうことで、場合によれば社会党だって幾らでも協力し得る場合もあるのですよ。しかし、いまの農林省のやっていることじゃ、協力のしょうがないんだな。あまりにも消極、退嬰、もうなっちゃいないんだ。だから、まあ大臣がだれになるか知らぬが、大臣がだれになろうと、有能な行政官の皆さんが一つ構想を——出す出さぬは大臣考え方ですよ。それは政治家が考えることです。しかし、農林省は、少なくとも積極姿勢としてはこういう大きな姿勢を持っているんだ、それから消極的な対策としては農民立場におけるこういう大きな構想を持っているんだ、その二つぐらいは出ないと……。そうして、ごちゃごちゃやったことを白書に書いて一あの白書なんて何ですか。あんなものはばからしくて読む気がしませんよ。農林省はあまりにも農民心理になり過ぎちゃっている。ぼくは何も和田さんの言うじみちにやることを否定するのじゃないですよ。それは百姓の仕事なんというものはもともとじみちなんだから、じみちにやらなければいかぬ。じみちにやるにしても、一つの大きな積極姿勢の目標に向かって前進するという、農林省全体の姿が出てこなければだめじゃないですか。何でも大蔵省がおっかなくて、ものを言うのもいやだという、そんなことでは話になりませんよ。だから、それは基本的には大きな政府の政治姿勢の問題、農業政策の問題なんだ。しかし、絵かきは、やはりやるのは有能な皆さんがやることなんです。ぼくは答弁は求めないが、次官になられる武田さん、少し積極構想を出しなさいよ。だめですよ。それで、一つの大きな、三兆でも四兆でもばっと——基盤整備、これにはこうなんだ、この構想で行くんだ。土地改良なんかだって、いまみたいな構造改善、あんな補助率に差のあるようなことをやらないで、これを一本化して、こういうふうに行くんだ、こういう姿勢で、五ヵ年間に三兆円要るんだ、あるいは八カ年計画なり七カ年計画で三兆円要るんだと打ち出して攻め合えばいいじゃないですか。そして、いまの農林省の出しているのは目標として前進させなければいかぬとするならば、政府として政策的に前進させていく。だから、いまの野菜の値上がり物価値上がり問題で、野菜や生鮮食料は非常に大きなウエートを占めているわけでしょう。これは農林省としていいてこじゃないですか。これはわれわれの言うようなビジョンを描いていけば、何年後には解消するんだ。いまのようなことをやっていたら、こんなものは解消しないんだ。だから、ここで思い切り政府も財政資金を動員しろ、こういうような形で問題を処理していかないと、とてもそれは一このごろ中西君ともしばらく話したけれども、いまみたいなことを農林省がやったってどうにもならないですよ——農林省の外へ出ていれは、中西君なんか農林省の姿がわかるらしい。だから、そういう点においていま少し、私は答弁なんか要りませんが、次官の就任の抱負として、ひとつ大きなものを持って出てくださいよ。いまのような農林省なら、ほんとうに農民だって、農林省は一体何をやっているんだと言いたくなるですよ。そういう点においては、ひとつ思い切り新しい構想で、新しい大局的角度で出発する。そしてそういうものはやはり省全体として前進をする。採用するしないは、今度だれが大臣になるか知らぬが、これは政治の立場で考えればいいのであって、実際それをつくるのはあなた方だ。一つビジョンづくりでも、広範な社会保障政策づくりでも、いま言われる農民年金なんかの問題も、もっと積極性を持った形でそういうものをつくり上げていく。さあ、前進姿勢にはこれがある、後退の姿勢の中にはこういうものがある、どっちかに重点を置いて政府施策としてやれ、その採用は政治の問題になってくるわけです。   〔田口(長)委員長代理退席、芳賀委員長代理着席〕 だから、そういう点において、農林省全体がいまみたいな農民根性になって、もうもらうものなら正月のお葬式でももらっておけというような考え方はやめて、もっと大きなスケールで問題を処理してもらいたいということを要望しておきます。
  51. 西宮弘

    西宮委員 私が最後に結論として言いたいと思ったことをいま中澤さんが全部言っちゃったわけですが、私もそのことを痛感するのです。つまり、たとえば米価問題等にしても、何となく農林省は世間に対して申しわけない、そういう気持ちでいるのじゃないですか。あるいは構造政策等にしても、格差が詰まらない。さっきも言ったけれども、経済団体等からは、そういう格差問題は農民に話すのはいけないのだ、そういうのは百姓に聞かせるようなことではないと言われて、別に反論もしないし、あるいは米価問題等農民米価をつり上げるというようなことを言われて、そういうのを見て、これに対する何の釈明もない。だから結局何となく肩身が狭いような思いで、非常に農林省は恐縮しておるのじゃないか。私はほんとうにそう見えてならないのですよ。たとえば米価問題なら米価問題についても、問題がどこにあるのだというようなことを堂々と主張できないのですか。私は一例だけあげても、昭和二十八年に初めて一万円という米価になったわけですね。それから昭和三十五年まで七年間というものは、米価は上がらなかったのですよ。あの間に物価が一二・七%でしたか、上がっておる。にもかかわらず、米価は一文も上がらない。むしろ毎年若干下回ってきたわけですよ。だから、そういう一般物価が上がっていくのに、米価が上がらないで、百姓はがまんしてきた。それが昭和三十五年の経済政策の転換によって、急に物価が高騰したというので、やむを得ず米価も上げざるを得ないということになった。いわばそういう意味では、完全に農民は、あるいは米価は、いまの経済政策の犠牲になっておるにすぎない。少なくともあの当時の出発点はまさにそのとおりだったと思うのだけれども、そういうことに対しても、農民に対する釈明もないし、とにかく何といってもそういう点についてほんとうに世間に対して申しわけないというようなつもりで農林省はいるのじゃないかという気がするのですよ。今度経済同友会でさえ、この間の提言の中で、農業自身、積極的に国民経済に占める地位を主張してよい、こういうことばがあるわけなんです。農業者がもっと積極的に国民経済の中に占める農業の地位を主張しなさい、こういうことを経済同友会でさえ言っておるのですよ。私は、そこで、たとえば昭和二十八年の経済白書を見ると、食糧の輸入が大きいために、日本経済が伸びられないというようなことを言っておるわけです。それが昭和三十年から豊作になって、だんだん米がとれるようになって、輸入が減ったわけです。それで初めて工業資材の輸入というようなことが可能になって、そして今日の経済発展の大きなスタートが切られたわけですよ。あのときもし食糧増産というようなことがなかったならば、昭和三十年の豊作ということがなかったならば、おそらく今日見るような経済大発展ということはとうてい期待はできなかった。そういう点でも、もっと農業が声を大にして、胸を張って、自分の立場を主張してよいのじゃないか。そういう点についてあまりにも遠慮し過ぎるというか、非常に恐縮し切っておるのじゃないか。  そこで、武田次官心得に一つお尋ねをしたいのですけれども、いまの食糧自給の問題ですね。私は非常にさっきのあれは無責任だと思うのです。そもそも基本法をつくるときには、食糧は余るという前提で出発したわけですね。これは明らかに答申の中にも書いてあるのだけれども、消費に対する相対的過剰生産のおそれを考慮しなければならぬ、そしてその次に、米についても長期的見通しでは生産過剰のおそれがないわけではない、こういうふうに書いてある。これを作文したのは小倉武一さんだ。その小倉さんが最近になってこういうことを言っているんですよ。おそらく二十年、三十年先になると日本食糧自給は五〇%を割るだろう、そのときには日本の人口は一億二千万になっている、一億二千万の人口をかかえて、しかもそのときには所得水準は相当高いものになっている、そういう状態、そういう国で、食糧が半分以下だというような国は世界にはどこにもない、こういうことをぬけぬけと言っているわけですね。何の反省もない。私は、これでは基本法なんというのは全く最初の出発の根拠を失ってしまっていると思うのですけれども、どうですか。そういう見通しの誤りというようなことに対する反省はないのですか。
  52. 武田誠三

    武田政府委員 食糧の自給の問題につきまして将来の見通しは、これは本来いろいろな与件があって初めて正確な予見ができるのであると思いますが、なかなかそれらのすべてを網羅するということはむずかしい。それで、過去における傾向なり何なりを基礎にいたしまして、それぞれの想定を立ててまいっておると思います。したがいまして、二十年あるいは三十年後の日本食糧自給度というものがどういうふうになるかということについては、にわかに即断することはあぶないというように思います。農業基本法ができました当時から今日まで、あるいは主食を中心といたしましても、あるいは食糧全般といたしましても、その見通しにつきましてすべて見通したとおりということではなく、そこに相当の開きが出ておるのは先生の御指摘のとおりであると思います。食糧の自給というものをどういうふうに持っていくか、これは、国民の食生活というものの変化というものも、所得の向上、変化に関連をして出てまいるわけでありますから、海外に依存せざるを得ないものもあると思いますが、基本的には、私は、国内の農地を有効に利用し得る限り、かつまた合理的な生産ができます限り、自給の線を強めていくというのが本来であろうというふうに考えております。そういった意味で、農林省としても今日までの施策を展開してきておると思いますが、そのときそのときの考え方なり何なりによりまして、重点の置き方が多少ずつふれるということは当然なわけであります。  今後の問題につきましても、一方では長期的な見通しをできるだけ確実に把握をしながら、短期的な問題をその線に沿って解決していくという態度でなければならない。また、そういうことで今日まで進んできておると思いますが、いろいろと不足をしておる面も多かろうと思います。また、先ほど中澤先生からのお話のいろいろなビジョンというようなものにつきましても、いままでの過去の反省と同時に、将来につきましてできるだけの考え方というものをまとめてまいる必要もあろうかというふうに思っておりますが、急にあしたすぐそういうものができるということでもございませんので、今後の努力を私どもとしては十分傾けていかなければなるまいというふうに考えております。
  53. 西宮弘

    西宮委員 私の言ったのは、いろいろ将来の見通しだから、それは狂ってくるものもありましょう。しかし、少なくとも農業基本法は米が余るという前提に立って、さればこそ、選択的拡大ということを基本にしたわけですよ。ところが、今日は全く逆になってしまって、それをしかもそのとき立案をした人が、やがて食糧は半分以下になるというようなことを平気で言っている。こういうところに、私は、全く無責任というか、良心がないということを慨嘆をせざるを得ない、あるいはそれを強く指摘せざるを得ないと思う。しかし、きょうは大臣もいないし、そういう論議はやめましょう。  あと一、二お尋ねしてやめにしますが、さっき言ったように、たとえば米価問題等にしても、農林省が非常に世間に対して申しわけないというようなことで萎縮しきっているというように思うのだが、私は逆に、たとえば管理価格、肥料の価格等にしても、これはその逆に、ああいうものを下げないのはけしからぬというようなことを反論してしかるべきだと思う。私は私の手にした材料によって見ても、たとえば昭和三十八年と昭和四十年の同じく上期を比較してみると、その主要な肥料会社の八つを取り上げてみると、あるいは設備投資、総資本投資、付加価値というようなものは、それぞれ相当の生産性の向上をしておるわけですよ。にもかかわらず、肥料の値段はほとんど下がっていない。あるいは逆に上がっておるものもある。こういう状態で、こういうものを黙って放置するから、米価が上がらざるを得ない。私は、さっき中澤さんも言ったけれども、もしこのままでいったら、毎年毎年米価運動は繰り返していく、そうしてしかもそれは世論にたたかれる、ほんとうに百姓はかわいそうだと思うのです。それをそうではなしに、将来こういうやり方をすれば米価は上げなくてもよろしいのだ、こういう大構想を発表し、またそれを着実に実行していくということになれば、百姓も自信を持って米作に取り組むでしょう。あるいは一般世論もそれで十分納得できると思う。そういう点を何ら一つも手をつけずに、あるいは将来の方針も示さないで、そのままにしておくから、百姓だけがたたかれる。もう全く米価値上げの極悪犯人みたいにたたかれておる。われわれは全く見るに忍びないと思う。そういう点についての何の反論もなしに、また将来の何の構想も打ち出さないというようなところに、私はどう考えてみても、農林省の怠慢があるのではないかと考えざるを得ないわけです。私は、政治米価というようなものが、政治が過剰だということで論ぜられているのではなしに、むしろ逆に政治が貧困だ、あるいは政治が不足している、あるいは政治が欠除している、そういう意味での政治米価だというふうに非難されざるを得ないと思うのですけれども、実は大臣お尋ねをしたいと思うことがたくさんあったのですが、それができないので、はなはだ残念です。これで終わりにいたしますが、私は先日日本農業新聞を見たのでありますが、そうすると、今度の米価決定に非常に不満であるという青年部の全国組織体が声明を発表し、あるいはいわゆる農協の米対本部に対して要請をしておる。それを見ると、われわれはこのような農民農業無視の政府の態度に厳重に抗議をするととともに、今回の米価決定による今後起こり得るあらゆる混乱はあげて政府の責任であるということを言い、あるいは政府・与党に対して非常なふんまんを訴えて、これから強力な抗議行動を展開する、こういうことを声明しておるわけです。私は、いまのような状態でいくならば、おそらくこれが起こり得るという可能性は十分にあると思うのです。そういうときに、どうですか、政府は何らの責任を感じませんか。
  54. 武田誠三

    武田政府委員 私どもとしては、今年の米価につきましていろいろ御議論があり、またきまりましたあとにおいていろいろな御批判が各方面からございますことは承知をいたしておりますが、私どもとしては、ことしの条件のもとにおきまして、ことしの米価については、適正にきまったものだというように考えております。
  55. 西宮弘

    西宮委員 きょうは大臣も次官も、つまり政府・与党の代表者がおりませんから、そこでこういうことを言っても始まらないと思うのだけれども、その政府・与党か米価を発表するというか、ことしでいうと一万八千百五円とか一万八千五百五十九円、こういうものを発表すれば、一部の幹部はこれはまだ政府最後の決定ではないということがわかるのだろうけれども一般農民はそんなことは全くわかりませんよ。ですから、これはいやしくも与党の発表だ、与党の決定だということになれば、一万八千五百五十九円というようなものが直ちに実現するというふうに思ってしまうのは、もうあたりまえだと思うのです。そういう中で次々問題が起こってきている。あるいは五十億の問題も、いま長官などを相手にしてこのことを話してもしかたがないと思うので、私はやめますが、これなども期待を裏切ることおびただしいわけですね。おそらく一万八千五百五十九円なり百五円なり、そういうものが実現できないならば、せめてこういう五十億の問題だけでも、あのときの約束に従って処理すべきだというふうに考えるのだけれども、しかし、いまあなたにこれを言ってもしかたがないと思います。そういう点で、責任者がいないので非常に残念ですが、幸いにして長官はやがて直ちに次官になられるのだから、さっき中澤さんも言われたけれども、私も繰り返して申しますけれども、いまのようにいたずらに何か恐縮千万だというような農林省でなしに、経済同友会が言っているように、堂々と農民の、農業の国民経済に占める地位を主張して、胸を張って農業問題を強く主張してもらいたい。こういう状態だと、米価もさることながら、農民はどうしていいんだ、一体どうしてくれるのだというような気持ちが、これは大農、小農を問わず、一体これから先とうなるのだという不安、あるいはしたがってわれわれをどうしてくれるのだというような気持ちが実に深刻だと思うのです。それをひとつ十分理解をし、認識をしておいてもらいたいと思います。  これで終わります。
  56. 武田誠三

    武田政府委員 西宮先生らいろいろ御批判並びに御激励をいただきましたが、それらの点につきましては、私いつもよく考えてまいりたいと存じます。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 林百郎君。
  58. 林百郎

    ○林委員 私は、きょうやはり農林大臣に、米価の問題、東南アジア農業開発会議問題等農政に関する政治的な問題を質問したいと思って用意していたのですけれども、非常に残念ですが、大臣も見えないし、政務次官も見えない。五十二臨時国会の最終日であるこの機会に両者とも見えないということは、はなはだ遺憾であると思います。そこで、現在出席しておる農林省の幹部の諸君で答えられる点をひとつ答えてもらいたいと思うのです。  最初に、米価の問題について質問したいのですけれども、ことしの米価問題の特徴の一つは、いち早く経済団体等から米価の値上げを抑制するような先制攻撃が意識的に出され、そしてマスコミもこれを全面的に取り上げてきている。それから米価が決定した今日も、なお消費者米価とからんで、生産者米価の値上げの問題が再批判され、しかもその中でわれわれ国会議員の果たした役割りについてすら、いわゆる農林議員というようなことで、何か屈辱的な、侮辱的な響きさえあるようなことばで、われわれまでもが政府政策の犠牲を受けて非難されるような状態になった。われわれは少なくとも国会の農林水産委員の一人としても、この問題をどうしても明らかにする責任があるというふうに思うわけです。そういう立場で、実は農林大臣にその問題と農業開発会議の問題とを聞きたかったのですけれども、残念ながら大臣見えませんので、その他の幹部の諸君からお聞きしたいのでありますが、大体佐藤総理はこの国会で、本年度の米価は石当たり一万七千八百七十七円である、これは閣議決定の米価であるから、これが責任ある米価だと言っておられるわけです。そこで、これを前提として聞いていきますと、長官も御承知のとおり、今年度生産者の側の要求する立場は多少違いがあるにしても、農協中火会と全日本農民組合から、それぞれ生産者立場に立った農民米価要求がされているわけです。これはどう見ても、生産者としての農民の要求が、若干立場は違っても、この二つによって出されていると見るのが至当だと思うのです。これ以外に生産者農民立場に立って日本の艇民の圧倒的な多数を組織しているものとしては見当たりませんので、そこで、長官も御承知のとおり、農協中央会が要求している米価は、人口五万以上の都市の勤労者の労働所得と均衡を保つ立場に立って、石当たりの農業労働時間やいろいろ計算していきますと、石当たり二万一千六十三円、こういう要求が出されている。それから全日本農民組合のほうでは、農家の家族労賃農業労働者の労働賃金を都市の製造業百人規模以上の工場の男子賃金で計算して、石当たり二万六千円という数字を出してきている。そこで、政府決定の米価とこれら生産者農民の要求米価との差に供出の米の総額をかけて計算してみますと、農協中央会の要求米価とは千四百九十七億円の差が出てくる、また、全日本農民組合の要求米価との差は実に三千八百十八億という収入減になってきている。これは、生産者農民の側に立っての要求との大きな違いがこういう数字となってあらわれてきているわけでありますけれども、この大きな数字の違い、生産者農民の要求しているところとかけ離れた政府決定の米価、それによる農民の収入減というものは、生産者農民にとっては非常に致命的な数字だと思うわけです。  そこで、長官お尋ねしますが、この本年度の政府で決定いたしました米価は、食管法できめられておる生産費と所得を補償する米価に値するものである、一体こういうものといえるのかどうか、まずこの点を一点、それから、もし十分でないというならば、生産費の何%を補償していると考えているのか、これで赤字の出る米の生産農家はないというのか、ここをまず長官にお聞きしたいと思います。
  59. 武田誠三

    武田政府委員 私は、本年の米価につきましては、食管法にきめておりますところに従って適正にきめられておるものというように考えております。それから、本年の米価につきましても、かつまた過去におきます米価の算定におきましても、生産費そのもの、これについてはまたいろいろ御議論もあろうかと思うのでありますが、純粋に調べました生産費、それに対して都市均衡労賃というものをもって置きかえておるということのほかに、たとえば反収につきましては、平均反収よりも標準偏差一シグマ引きました低い反収をもって処理いたしておるのでございますから、生産費につきましては十分これをカバーしておるものというふうに考えております。
  60. 林百郎

    ○林委員 念のために聞いておきますが、そうすると、長官の考えとしては、食管法できめられておる米の生産費と所得を完全に補償しておる、これによって赤字の出ておる農家があるとすれば、それは農家の責任だ、生産費については十分補償してある、こう聞いていいですね。これはわれわれも農民に発表する責任がありますから、政府のはっきりした回答を聞きたい。それと同時に、いまこういう本年度の農協中央会や農民組合の要求米価政府決定米価との間の違いについて、供出米の総量でかけた数字を出したわけですが、このことはことしだけでなくて毎年毎年繰り返されているわけですね。そうすると、長官の考えは、毎年毎年歴代自民党政府のきめたこの米価は、食管法できめられている生産費、所得を補償しているのだ、これで米の再生産は保障されているのだ、こう聞いておいていいですね。
  61. 武田誠三

    武田政府委員 これは先生の御承知のように、米価につきましては一本の価格でございます。したがいまして、全部の米作農家がこの価格ですべてがカバーされているかどうかということを個別に当たってまいりますれば、あるいは災害農家でございますとか、いろいろその間には差が出てまいる方もあろうかと思いますが、現在の算定方式によりますれば、生産調査農家に対しまして約九五%のものがカバーできるという計算値に相なっておるわけでございます。したがいまして、主として米を生産しておる農家については、十分に生産費をカバーし得るものというように考えておりますし、また、過去におきます政府決定米価というものも、食管法に基づきます精神にのっとりまして適正にきめられておるものというように考えております。
  62. 林百郎

    ○林委員 長官がそう答弁するのと現実との間には非常に大きな違いがある。もし長官がそういう歴代自民党政府のきめた米価が再生産を保障するのだということなら、米の生産農家がどうしてこのように大きな崩壊をしておるかということについて、長官の責任ある答弁を求めたい。たとえば、数字から言いましても、米作農家の戸数は昭和三十五年度五百十七万戸であったものが、昭和三十九年には五百四万戸、実に十三万戸が減っておる。また、水稲の作付面積も、昭和三十五年約三百三十万ヘクタールだったものが、昭和四十年には三百十二万ヘクタール、十八万ヘクタールが減少している。一方、水稲の総生産量も、昭和三十七年に千二百七十六万トンだったものが、昭和四十年には千二百十八万トンと、約五十八万トンも減収しているわけですね。このように、日本の国の米作農業は非常な危機に瀕していると言わざるを得ないわけです。これは、毎年政府決定米価が食管法で規定されている米作農家所得を十分補償しておらない、いろいろの要因がかりにあるにしても、これが決定的な要因だ、こういうふうに長官お考えにならないですか。なぜこんなに、米の生産農家が数年の間に十三万戸も減ったり、作付面積が十八万ヘクタールも減ったり、五十八万トンもの減収をせざるを得ないのですか。どこに原因があると長官はお考えですか。
  63. 武田誠三

    武田政府委員 これはやはり、農業を取り巻きます各種の社会的条件の変化、あるいはまた天候条件の変化等がいろいろ作用をしておるものと思います。現在きめられております米価が再生産を保障するに値しない米価であるというようには考えておりません。
  64. 林百郎

    ○林委員 あなた、言うことが矛盾しているのじゃないですか。九五%の米の生産農家生産費を補償しているのだ、再生産を十分保障しているのだと言うけれども農家戸数や米の生産量がこのように減退すのは、他のいろいろの要因があるとか、あるいは天災やいろいろの被害農家があると言うが、しかし、そういうものが全部加味されて生産農家生産を保障してやれというのが、食管法で規定されている生産費と所得を補償する、こういうことじゃないですか。災害があればあるで、それを回復するために、それに投入される労働力は必要になってきます。周囲の環境が変わって、たとえば資材費が上がれば、生産費・所得を補償するためには米価にその要素が加味されるのは当然なんです。だから、あなたは九五%の米の生産農家生産費を補償すると言いながら、米の生産がこのように崩壊していくのは、他の社会的要因あるいは自然的な被害をこうむっているということでは理由にならない。それじゃ、他の社会的な要因だとかあるいは天候の影響とか、そういうものを無視した生産費・所得を補償する米価というものが別にあるのですか。あなたの言われる、米の生産がだんだん減退している、それにはいろいろの要因があるのだ、そのいろいろの要因を加味してきめられた米価こそが、生産費・所得を補償する真の米価になるのじゃないですか。どうでしょう。
  65. 武田誠三

    武田政府委員 生産費をもとにいたしまして、各生産費を構成をいたしております要素の中で、自家労賃に相当いたします部分について都市の均衡労賃を置きかえていく、また、生産費というものが平均生酢値として出てまいりまするから、限界農家と申しますか、といったものまでカバーし得るということを前提としつつ、また、反収の変位がございますから、その反収の変位というものをなくすと申しますか、といった意味で標準偏差一シグマをとりまして、本来三石近い反収を二石四斗程度に落としまして、生産費の計算をいたしておるわけであります。したがいまして、現在計算をいたしております米価というものは、本来食、糧管理法にきめられております考え方、あるいはそれに基づきまして従来からとってまいりました生産費及び所得補償という考え方に沿って計算をされ、きめられておるというように考えております。
  66. 林百郎

    ○林委員 食管法できめられている生産費・所得補償をする生産者米価を決定しろということからすれば、こんなに米の生産農家が激減をし、耕作反別が激減し、米の総生産量が激減する値段をきめていいなんということは、少なくとも食管法を責任ある立場理解すれば、きめられるはずはないのじゃないですか。  もう一つ要因を申し上げますけれども、この食管法の生産費・所得補償をする米価をきめろというのは、米の自給率をあくまで高めていくという精神もあるわけでしょう。ところが、現実はどうですか。米の輸入面を見ましても、ものすごい増加率じゃないですか。たとえば、米の自給率を高めるどころか、毎年毎年米の輸入が増大している。昭和三十六米穀年度では、私のほうの調査、これは農林省の統計にもありますけれども、約十四万トンの米の輸入実績だったのが、ことしは約百万トンをこすだろうと言われている。この数年間の米の輸入の実績は、実に七倍近い増大率を示しておる。しかも、問題なのは、その三割近くがアメリカから輸入されている。それから、ほとんどがアメリカの経済圏から輸入されている。私が特にアメリカのことを申しますのは、このことは、アメリカからの小麦の無制限と言っていいほどの輸入と相まって、日本の国民の主食が完全にアメリカに握られようとしているということについて、われわれは国政を担当する者として、どうしてもこれは見のがすことができないわけなんです。たとえば、米のほかに、小麦あるいは大豆、なたね、トウモロコシ、こういうように、アメリカからの輸入穀物の総数量は約一千万トン、金額にして日本の国の輸入総額の約三割、国内の穀物総生産量千五百万トンのうち流通部門に入る一千万トン、これと同じものがアメリカから入ってきておる。たとえば、いま日本の国の食糧庁の長官が家庭でおあがりになっているものを見てみましょうか。あなたが家庭で食べられる米のめし、その三割がアメリカ並びにアメリカ経済圏から入ってくる外米になってきておる。晩酌用の酒の原料までアメリカの米が最近は入ってきておる。パンやうどんや即席ラーメン、お宅で即席ラーメンを食べるかどうか知りませんけれども、パンやうどんに至るまでアメリカの小麦でつくられておる。とうふや油あげや、みそやしょうゆの原料は、ほとんどアメリカ産の大豆に取ってかわられている状態ですね。このことを考えますと、日本農業にとっては、いま重大な時期がきているとどうしても考えざるを得ないわけです。しかも、このような主食の依存度をますますアメリカに寄り添っていくということは、これは政治的にも従属を深めていくということにもなるのじゃないですか。  こういう観点からして、米の生産費を今日のようなきめ方にして、そして米の生産をますます減退させて、アメリカからの米の輸入を増大さしていく、これでよいのですか。しかも、ことしの三月、これは長官はもう御承知だと思いますけれども、アメリカ農商務省の海外農務局長が来て、日本が毎年米を買うならもっと生産をふやす、この約束をとっていき、現実にアメリカでは米作の作付制限を一〇%解除している。こういう事実を長官知らないはずはないと思うのですよ。これを考えるときに、本年度の米価の決定のしかたがこれでいいのか、日本の国の米の生産をこのように減少さしていっていいのか、アメリカの米はもちろん、そのほかの日本の各家庭の主食の輸入をますます増大さしていくことが、このままでいいと考えられるのかどうか、その点について長官の意見を聞きたい。
  67. 武田誠三

    武田政府委員 日本で現在私どもが消費をいたしております米に限らずすべての食糧を自給するということは、私はできないと考えております。現在、米につきましては、お話のように、中共あるいは台湾並びにアメリカを主といたしまして、本年度は約八十二、三万トンの輸入をいたしております。しかも、一面、昨年あるいは一昨年の日本の米の生産につきましては、御承知の冷害でございますとかあるいは台風被害というようなものが相当大きく減収に響いてまいっております。しかし、私どもとしては、米についての自給というものを目途にいたしまして、いろいろと生産施策その他の強化をはかっておるような次第でございます。米価それ自身につきましては、再々申し上げておりますように、私は適正にきめられておるというように考えておる次第でございます。
  68. 林百郎

    ○林委員 食糧庁長官が、米、小麦、大豆は日本の国民の需要をまかなうだけのものをつくる能力は日本農民にないのだということをおっしゃるなら、私は何をか言わんですよ。もし農業の保護政策を十分とるならば、こんな事態にはならないはずです。いま米の裏作の小麦だって、二百七十万町歩近くも放棄されているでしょう。これだって、アメリカの安い小麦をどんどん入れるから、何らの保護を与えられないから、採算に合わない小麦の生産を放棄しているわけです。大豆だってそうでしょう。こんなたくさんの量を日本の国がかつてアメリカから輸入していたことはないですよ。これだって、適切な保護政策をすれば、相当日本の国で大豆はまかなえるはずですよ。それをこういう現況を憂えて、将来自給率をこういうように高めるつもりですということを食糧庁長官がおっしゃるならまだわかりますけれども日本の百姓が日本の国民の主食をまかなうだけの能力がありませんから、輸入が増大するのはあたりまえだ、こうここで平然とおっしゃるなら、それでやむを得ないですよ、そんなに根本的に私とあなたの立場が違うなら。  そこで、もう一つ私はお尋ねしたいのは、食管制度を守れ守れと言っているのですけれども、そうしてまた、このことはわれわれ農業関係の議員の立場についてもこれは明らかにしておく必要があるのですけれども、われわれは食管制度を堅持しろと言っているわけです。これは農林水産委員の各同僚の委員もみな私と同じだと思うのです。われわれの食管制度を維持しろ、守れということはどういうことか。われわれは、もちろん、生産者米価については、食管法の中にある生産費及び物価その他の経済事情を参酌して米穀の再生産を確保することを旨とする、この食管法に規定されている生産者米価の決定の基準を守れと言う。しかし、われわれは同時に、消費者米価のことについても常に強調しているはずです。それには、もうあなたに言うまでもなく、消費者米価については、家計費及び物価その他経済事情を参酌して消費者の家計を安定せしめることを旨として決定しろ、消費者の家計を安定せしめることを旨としてこれを定めろと書いてある。われわれはこのことを常に政府に要求しているわけですよ。われわれ農林水産委員の国会議員だって、消費者米価がどうなっていいなんて、決してそんなことを考えておらない。このことを無視しているのは政府だと私は思うのです。その責任をわれわれがいま転嫁されている。ですから、食管法では、言うまでもなく、生産者米価消費者米価は二重制であるということははっきりきまっているわけですね。しかも、このことは、もう戦前からこういう制度は確立しているわけです。ところが、佐藤内閣になってから、この制度がますます破壊されている。これは歴代の自民党内閣もそうでありましたけれども、佐藤内閣になってから特にこれがはなはだしいわけです。生産者米価消費者米価を常にスライドさしている。このことをもう慣例にしようとしているわけですね。これは食管制度の破壊じゃないでしょうか。もし政府が食管制度を維持するというならば、消費者米価は、食管制度のたてまえから、ことしはもちろん来年もこれを上げない、スライド制という制度を慣例化すようなことはしないとここで私ははっきり言ってもらいたいし、このことについて長官の責任ある答弁をお聞きしたいと思うわけです。ということは、政府は常に、生産者米価を上げると必ずスライドして消費者米価を上げて、そして生産者農民消費者と両方を対立させて、両方を苦しめて、両者の生活を破壊させて、そして実際は独占資本のための低賃金に見合う低米価政策を強行しようとしている。そして、両方スライドさせて、みずからの責任は両者を対立させて逃げておる。こういう立場にある。現に佐藤総理は、今度の臨時国会の本会議で、米価については政治米価である、こういうことをはっきり言っている。佐藤総理の言う米価については政治的米価だということは一体何か、この政治的配慮は何かといいますと、それは言うまでもなく、食管会計に対する国家財政の負担をなるべく少なくして、これを出し惜しんで、あくまで低賃金のための低米価政策を貫く、そしてどこまでもスライド制にしていく、事実上食管制度を破壊していく、これが私は佐藤総理の本年度米価は政治米価であるということの意味だというふうに考えておるわけです。これは本来大臣に聞く質問ですけれども長官も一端の責任がありますから、このことについてお聞きしたい。消費者米価については、食管制度のたてまえから、当然これはことし、来年にかけて上げるべきでない。生産者米価が上がったからといって常に安易にスライドするということは許されないはずです。これらの点について長官はどう考えるか。大臣がいないから、あなたにお聞きします。
  69. 武田誠三

    武田政府委員 米価につきまして、生産者米価消費者米価が全く関係のないものというようには私ども考えておりません。消費者米価につきましては、家計の伸びというものと見合いまして従来からその算定ないし決定をいたしてまいっておるわけでございます。したがいまして、消費者米価につきましても、今後の家計の伸びでございますとか、物価その他の事情を勘案いたしまして決定をいたしていくことに相なろうと思いますが、先般来予算委員会あるいは本会議で佐藤総理あるいは農林大臣から申し上げておりますように、当分の間、現段階ではこれを上げないということでございます。
  70. 林百郎

    ○林委員 長官理解しておる当分の間というのは、どこまでのことを言うのですか。少なくとも昭和四十一米穀年度、すなわち、来年また新しい米価決定があるわけですけれども、ことし、来年、要するに昭和四十一米穀年度、この間は消費者米価は上げるべきでない、これが当分の間という意味ですか。それとも違う理解長官はされていますか。あなたの解釈を聞かしてもらいたいと思います。
  71. 武田誠三

    武田政府委員 いつまでというふうな具体的な限界をもっていまの段階では考えておるわけではございません。これは今後の推移に応じて検討をしていく問題であろうというように考えております。
  72. 林百郎

    ○林委員 長官、あなたがそうごまかしているというのは、あなただけの責任じゃないけれども、結局腹の中では、また消費者米価を上げる、ただ、いますぐ上げたのでは差しつかえるから、適当なときに上げる、それを腹の中に考えているから、ここで私は食糧庁長官立場として食管法を堅持し、上げるべきでないと考えます、こう言えない。それは、政府の本性をあなたがよくわかっているから、はっきり言えないのじゃないですか。おそらく近くほとぼりでもさめればまた消費者米価を上げるのだ、政府もそう考えているし、長官もたぶんそうなるだろうと思っているのじゃないでしょうか。
  73. 武田誠三

    武田政府委員 いつ上げるとかどうとかいうことは、現在私は何とも申し上げかねる次第であります。
  74. 林百郎

    ○林委員 そこで、これは大臣に聞くことで、あなたに聞くことは少し酷のようですけれども消費者米価を上げるときに、国家財政負担を国民のために少なくしたいのだ、だから食管制度のいわゆる赤字1われわれは赤字なんということばを使うべきでないと思っておりますけれども政府は赤字ということばを使っていますが、この赤字の増大を、国家財政負担を少なくして、国民の負担を軽くするためにこうやるのだというようなことを、よく言いわけに使っています。ところが、私は、これをよく長官にも知ってもらいたいし、農林省の幹部の諸君にも知ってもらいたいのですけれども、どうして米のことばかり、米のときばかり、こういう二重価格制の逆ざやの問題がそんなに大ごとに言われるのか。たとえば、この二十五日に発表されました石炭鉱業審議会の抜本的対策というものが、石炭産業に対する最終答申として出されているわけです。これを見ますと、どうです。政府や独占資本は、生産者米価の値上げにはあれほどけちをつけておる。ところが、この石炭産業に対する最終答申なるものを見ますと、実に驚くべき答申がなされておる。しかも、このことについては、政府も自民党の皆さんもマスコミも、一言も批判を加えてない。  この内容はこうですよ。第一は、炭鉱の大手会社の一千億円にのぼる借金は国家財政で肩がわりしてやる。一千億円ですよ。第二は、肩がわりをしてもなお赤字が出るときは、トン当たり百円程度の安定補給金を出してやる。第三に、再建資金融資制度を適用して、借り入れ金の利子も免除してやる。第四番目には、合理化をさらに促進する場合には、合理化の費用も出してやる。第五には、石炭価格の保障も十分してやる。これが答申として出された。政府は常に、この石炭鉱業審議会の答申はいままでそのまま政策として実行に移しているわけです。これを全部国家財政でやるというんですよ。  ところが、配給米を受けている六千数百万人、三百三十万戸の供出農家のための、しかも食管会計制度ではっきりと規定されているわずか一千二百八十三億、これは今年度の逆ざやの部分ですけれども、これをどうしてこんなに政府も独占資本もけちをつけ、しかも食糧庁長官までが、何かこのことについて何らの意見もないようなことを言われるのは、私ははなはだ心外だと思うのです。これは、大きな国家財政のたてまえからいえば、千二百八十億程度の食管制度の米の二重価格による逆ざやなんというものは微々たるものですよ。本年度予算のわずか三%に足るか足らない金額。石炭業者には大手会社の一千億にのぼる借金を政府の財政で肩がわりしてやるというんですよ。これは長官に聞くのはたいへん酷のようですけれども、どうお考えになりますか。
  75. 武田誠三

    武田政府委員 石炭の関係につきましては、私から特に申し上げる立場にはないと思っておりますが、現在の生産者米価あるいは消費者米価、それに関連をいたしましての食管特別会計への一般会計からの繰り入れの問題等につきましては、財政上の問題もやはり一つあろうかと思いますが、同時に、現在の食管法というもののたてまえからまいりますと、消費者米価生産者米価とが末端価格において逆ざや現象を生ずるということは、これは恒久的なあり方としては非常に問題であろうというように私は考えております。同時に、消費者米価につきましては、これはやはり、家計の伸びというものがございますれば、それに応じましてある程度上昇ということは、これは理解をしていただけますし、また了解をしていただける線であろうというように思っております。
  76. 林百郎

    ○林委員 食糧庁長官、まああなた次官になるというから、もう食糧庁長官としての立場を一日、二口でおやめになるからそういうことをおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、食管法の規定そのものからいえば、二本立てになるのは当然じゃないですか。そのことが食管法できめられているんじゃないですか。本来がそういう立場でしょう。生産費及び米穀の再生産を確保することを旨とする生産者米価をきめろ、消費者の家計を安定せしむることを旨として消費者米価をきめろということは、二本立てということじゃないですか。二本立てであることが本来の制度で、これが好ましい制度でないということならば、食管制度をやめるということなんですか。食糧庁長官としては、やがて次官になられるあなたとしては、食管制度の本来の立場はもうやめたほうがいいんだ、こういうお考えだととっていいんですか。
  77. 武田誠三

    武田政府委員 私はいま食糧庁の長官でございますから、食糧庁長官としてお答えをいたしております。先ほど申し上げましたのは、現在の消費者米価あるいは生産者米価というものを比軟いたしてみますと、いわゆる生産者米価に中間コスト並びにお米屋さんのマージンを加えました米価らいきますと、はるかに下の価格で現在消費者米価がきまっております。私が先ほど申し上げましたのは、こういった中間経費あるいはお米屋さんのマージンというものをいま財政でほとんど全部を負担いたしております。したがって、生産者政府に売ります値段と消費者がお米屋さんから買います値段とがほとんどまあ匹敵した同じレベルにあるということを申したわけでございます。食糧管理法というものが、農家には一定の保有米というものを前提にいたし、それの残余と申しますかを政府に売るということが前提に相なっております。専売とはそういう意味で違うわけですが、そういった制度の仕組みというものを考えてみますと、生産者米価消費者米価よりも高いというような事態が継続いたしますことは、そういった制度を前提としての管理というものは非常にむずかしいことになる、実際の運営上むずかしいことになる、これは好ましいことではないということが一つあるということを申し上げたわけでございます。
  78. 林百郎

    ○林委員 あなたからそんな抽象論を聞いているわけじゃないですよ。要するに、農業が崩壊されないような再生産を保障する価格をきめてやらなければ、日本農業は崩壊されていくではないかということなんですよ。そういうことがやめられて日本農業拡大生産に移っていく、そういう政策がとられている段階では、もちろんあなたの言うようなことをここで言ってもいいかもしれない。しかし、日本農業は崩壊に崩壊を重ねて、日本の国民の主食までが圧倒的によその国に依存しなければならないという状態のもとに、食管法のたてまえをいまこそ堅持してこの危機を食いとめなければならないじゃないか、こういう立場で私はあなたに言っているので、そんな一般的な抽象論を聞いているわけじゃないのです。  そこで 私は、次に、日本農業の実態について、これは農政局長がいれば農政局長に聞きたかったのですけれども食糧の問題ばかりでなくて、農業の全体の問題についてお聞きしたいので、どなたか責任者の方からお答え願いたいのですけれども、やむを得なければ農地局長でもけっこうだと思いますが、昭和三十五年から四十年までの五年間に、言うまでもなく農家戸数が六百五万戸から約四十万戸減っておるという状態ですね。そして、これはもうあなた方十分知っていると思うのですが、兼業農家が七八・五%。一種兼業が三七%、二種兼業が四二%。兼業農家はますます激増していく。もう農業ではやっていけない。専業農家はわずか二一%です。農業だけで食っていけるという農家日本の全農家のわずか二割にすぎないのですよ。圧倒的な農民農業だけで生活ができなくて、出かせぎや日雇いに出る農民の数がますますふえている。その数は、最近は年間百万から百五十万、こういわれておる。これに伴う悲劇も非常に多くなってきている。たとえば、出かせぎ農民の行くえ不明の者が非常に多くなってきている。出かせぎ農民の出かせぎの先での痛ましい事故死が毎日の新聞に載せられている。加えて、昨年は冷害を苦にした農民の自殺者が、新聞に出ただけでも全国で五十人の数に達しておる。価格の暴落による養鶏農民の自殺や、一家の夜逃げや、生活保護の打ち切りで一家心中をしたという悲惨な事件が相次いで起きているわけです。この最近の統計で、農民のこういう悲劇は戦前より増加しておるわけです。しかも、問題になるのは、いままでは年寄りとか女の人というようなところに多かったのですが、最近では農村の青年層にまでこの悲劇が及んできているというのですね。こういう事態のもとにおいて、いまこそ食管法を堅持して、米の例でいえば米の生産農民立場を守ってやるべきじゃないか。ぜいたくを言っているのじゃないのです。農民がぜいたくを言って消費者に不当な負担をかけているわけじゃないのですから、これをどう考えるかということを私は先ほどから聞いておるし、この農業の非常な危機、二割の農民を除いて八割の農民農業だけでは食っていけないという実情を、一体農林省の幹部の皆さんはどう考えているのか。先ほど中澤さんのお話にもありましたけれども、これをどう解決していこうとされるのか。これをどなたからでもいいから私に聞かしていただきたいと思うのです。どなたかありますか。
  79. 武田誠三

    武田政府委員 私からお答えいたしますのはいかがかというふうに思いますが、食糧庁といいますか、米価というような問題もお話に出ておりますので、申し上げますが、米の価格で米作農家のすべての所得を補償するというような姿には現在のところなっておりません。これは価格の限界を越えるものであろうというように私は考えます。価格の問題、それから、そのほかの生産手段の問題、あるいは土地基盤の整備の問題、いろいろな施策が相まって農業が健全に発達していくということを目途に、農林省としては努力を重ねておるということでございます。
  80. 林百郎

    ○林委員 大和田さん、どうですか。
  81. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私からお答えすることが適当であるかどうかわかりませんけれども、現在の状況を農業の危機というふうに表現することが適当かどうかよくわかりませんが、農業問題が重大な段階にきていることはお説のとおりであろうと思います。また、こういう問題を米価あるいは農産物の価格政策だけで打開することがきわめてむずかしいことであることは、いま食糧庁長官からも言われたとおりで、私も、個人として、農産物の価格政策がきわめて重要であることは言うまでもありませんけれども、農産物の価格だけで日本農業問題を解決することは至難ではないかというふうに思います。これは何も日本農業問題だけの特色ではございませんで、林先生にそういうことを申し上げて恐縮でございますが、ヨーロッパの諸国の農業の段階を見ましても、農産物の価格政策から、農産物の価格政策を伴いながらやはり構造改善という段階に進んでおるわけでございますから、根本的には農産物の価格支持をやりながら農業の体質をどういうふうに向上させていくかということが現在の課題ではないかというふうに思うわけでございます。私は、兼業農家がどんどんふえて八割くらいになるということだけをつかまえて、それ自体が非常に悪いことだというふうには必ずしも思いません。これは兼業に向かうことによって農家の生活水準が上がっていることは確かでございますし、日本のような国において、六百万戸に近い農家農業だけでいい生活を営むということもなかなかむずかしいことでございますから、私は、ある程度兼業農家がふえることは当然の筋道であって、それ自体は別に悪いことではございませんけれども兼業農家兼業農家として生活が安定するかどうかということ、あるいは国全体として、兼業農家の生活を安定させると同時に、日本農業がオール兼業にならないように、その中で、いろいろな言い方はあるわけでございますけれども農業だけを一生懸命やろうとする人たちをどういう形で国が力をつけて、日本農業生産力を高めていくかということが大きな課題である、そういうふうに思うわけであります。
  82. 林百郎

    ○林委員 時間がまいりましたので、御迷惑をかけてはいけませんから、あと東南アジアの農業開発会議の問題を聞いて締めくくりたいと思うのですが、いまの食糧庁長官や大和田農地局長お話はちょっとおかしいと思うのですよ。日本農家農業だけで生活していくということは必ずしもどうかと思うということはおかしいので、むしろ、農業が非常に発展していくので、他産業から農業へ入ってくる、あるいは少なくとも農業から他産業へ流出することはないように農業を守っていってやるということが、日本の農林省の幹部の皆さんの目標でなければならないのじゃないですか。どこの国の農政目標に、その国の農政担当の最高責任者たちが、ことばを要約すれば、農業だけで食っていくなんて考えるのはどうかしている、ほかのものも入れていい生活をするのがあたりまえだというようなことを言う者があるか。これはちょっと異例じゃないでしょうか。  そこで、さっき大和田農地局長のほうから、価格政策だけでは日本農業発展させる方向としては不十分なんで、基盤整備やそのほかの生産手段の根本的な体質改善が必要だ、こう言われた。そこで、私はそのことに関連してお聞きしたいのですけれども日本の農林省の幹部の皆さんがそう考えているときに、一方日本政府がどういうことをやろうとしているか。この国会で佐藤総理は、この秋東南アジア農業開発会議を東京に招集すると言っているわけですね。これは経済局長や国際協力課長にお聞きしたいのですけれども、一体これはどういうことなんだ。今日ベトナムで戦争の火がふいており、しかもそれがアメリカによってますます拡大されようとしている東南アジアの諸国で、しかもそこでは、社会主義国は除いて、長い間帝国主義者や大地主によって収奪の限りを尽くされて、荒れほうだいに荒れ果てている地域が圧倒的に多い。こういうところの農業に対して、いま言った日本農業ですら体質改善のために乗り出さなければならないというときに、このような荒れ果てた東南アジア諸国に対してどのような開発をしようとするのか。どの地域にどのような資金をどういう方法で投入しようとするのか、これを私はお聞きしたいと思うのです。そのことが、一体日本農業にどのようにプラスになるのか、これを最初にお聞きしたいと思うのですけれども……。
  83. 森本修

    ○森本政府委員 御案内のように、現在世界的に問題になっております重要な一つの課題としまして、後進国に対する援助ということがきわめて大きな問題になっております。後進国におきましては、御案内のように、人口がきわめてふえておる。ところが、経済開発が必ずしもそれにつれて増大をしない。こういうふうなことから、世界的に見ましても、後進国に対して援助の手を差し伸べるべきであるということが一種の世論になっておる、こういうふうに見られるわけであります。したがって、日本としましても、国際社会の一員ということで、そういった世論の動向を参酌するというか、世論の動向に即しまして、後進国援助のために国として相当の努力を尽くすべきであるというふうなことが、政策方向として考えられつつあるということでございます。そういう観点から、直接日本農業に対してどういう関連があるか、あるいはプラスがあるかということではなしに、そういった対外的な一つ政策といいますか、そういう側面から、東南アジアに対する農業開発ということを進めていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。  具体的にどういう地域に対してどういう方法あるいは資金を投ずるかということにつきましては、御案内のように、国別にもきわめて農業事情が複雑でありますし、必ずしも画一的な方法、手段ということでは律しきれないというふうに思います。現在のところでは、政府部内におきまして、一体どういうような方法、手段によって、あるいはどういう程度日本の国が援助の手を差し伸べるかということについて、具体的に検討しつつある段階でございます。
  84. 林百郎

    ○林委員 はなはだあいまいな答弁ですけれども、通産省の構想、たとえば肥料回転基金制度、あるいは外務省や財界での構想、これは、日本米を大規模に耕作さして、それを中心として第一次産品を日本の国へ輸入させる、こういうようなことが発表されているわけなのです。したがって、これは日本農業にとっては非常な大きな影響を及ぼしてくるわけです。これらの構想を見ますと、これは決して日本の国の全体の利益という立場からはなされてはおらない。いま日本の国全体の立場、ことに日本農業という観点から見れば、よその国の援助どころか、日本農業の崩壊と危機をどうするかということが中心になる。よその国を援助するということは、自分の国の基礎が成り立って初めて考えられ得ることであって、日本の国の農業がこのように崩壊して重大な危機とまで言われておる状態のときに、東南アジアの農業を開発する、しかも国際的な会議日本で持つようなことは、これはとんでもない話だと思うのです。  そこで、通産省や外務省から発表されている東南アジア開発会議構想を見ますと、これは結局、肥料、農薬、農機具、技術等を東南アジアに進出させる、その見返りとして第一次産品を安く買いたたいて日本へ輸入して、これを日本の低賃金労働者に食わせる、こういうことです。一方、日本農業のほうは、一部の富農を除いて、ますますこのために経営困難に追いやられ、八割以上の日本農民がむしろ見殺しにされるような結果になるのではないか。しかもこのことが一これはいろいろの問題がありまして、私は時間がありませんので申し上げられませんけれども、このような日本の資本を東南アジアに進出させるということは、必ず、それに伴う治安対策とか、あるいはアメリカとのいわゆるアジアにおける安全保障体制への組み入れ等とも関連してきて、進出した資本を守るために新しい軍事的な目的がそこへ加わってくる、あるいは日本の資本を投下したところの治安の確保という問題も起きてくるということになりますと、これは再び日本の帝国主義的な進出の道を開くことになる。それを農業開発というオブラートで包む、こういう構想であると私は考えるわけです。これはかつての大東亜共栄圏を再現するものだ。これはいつか来た道を再び歩もうとするものであって、非常な危険な方向だと思うわけです。  このことについて、もうすでに十一月には東南アジア農業開発会議が招集されるということまで伝えられているし、この臨時国会でも総理ははっきりそのことを言っておりますし、さらにはこの四月の東南アジア開発閣僚会議の共同コミュニケの中にもはっきりあるわけです。農林省としてももう少し構想が固まっているはずだと思うのですけれども、農林省としてはこのことについてどう考えているのか。巷間伝うるところによれば、通産省あるいは外務省あるいは農林省との間で若干ニュアンスが違うということも伝えられているわけですけれども、農林省としては現在どのような構想を持ち、この政策についてどのような考えを持っているか。もう少し固まっているはずだと思います。ことに、最近アメリカで行なわれたDACにも三木通産大臣出席していますし、ここでは必ず農業問題にからんだ議題も出ているはずですから、もう少しこの問題について日本の農林省の責任ある説明をされたいと思うわけです。
  85. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、農業開発について、特に東南アジアの諸国に対してどういう手段、方法で開発するのがいいかということについて、目下実は政府部内においても検討しておるという段階でございます。そういうことでございますので、いま例示されましたような手段、方法は、あるいは一部で発表され、新聞等に伝えられておるかと思いますが、それは必ずしも政府部内で統一したものになっておるということではございません。  農林省のこれについてのさしあたりの考え方はどうかというお話でございますが、そういうことでございますので、詳細については現在検討中でございますので、申し上げる段階には至っておりません。基本的な考え方としましては、御案内のように、東南アジア諸国においては、総体としては、人口がふえ、食糧生産がそれに追いつかないという状況であります。したがいまして後進国で、かつまた、農業が産業として一番大きいにもかかわらず、国民食糧の相当部分を輸入に依存しなければならない。また、国際機関の推計といいますか、そういうものによりましても、将来これが増大する可能性があるということになっております。したがいまして、東南アジアにおける食糧生産の増加あるいは安定ということが、経済開発上も一番重要ではないか。特に日本技術等で東南アジアに対して直接役立ち得るもので大きいのは米の分野である。食糧としても、東南アジアにおいては米が大部分の主食になっており、したがいまして、米の生産の増大と安定について、可能な限り日本としてもその持っている技術あるいは耕作方法といったようなものを活用して援助をしていったらどうかというふうなことを基本的な考え方として、目下具体的な方法について検討中であります。そういう段階でございます。
  86. 林百郎

    ○林委員 東南アジア諸国にまず米の増産を考えるというのですけれども、そこで、当面はそのための技術提携を考えておるというが、その東南アジア諸国というのはどこの国のことを考えておるのか、まずそのことが一つ。それから、三つばかり続けて聞きますが、技術導入というのですが、技術導入だけなのか、資金は考えておらないのか。たとえば借款であるとか、あるいは民間ベースだとか、あるいはそのほかの方法は考えておらないのかということが一つ。それから、御承知のとおり、東南アジアといっても、社会主義国を除いては、大きな地主的な土地所有形態もあるし、あるいは長い間の封建的な生産関係がそのまま温存されている。それで、農業生産拡大させるためには土地改革も徹底的にやらなければ、そういう米を中心としての農業の増産などということは考えられないことですが、こういうことについてはどういう構想をお持ちになっていますか。  まず、どういう国に、技術といってもどのような技術を、しかも資金はどのような形の資金を、そうして、投入する先の農業の基盤、土地関係はどのようにしようと考えているのか、そして、現にそれぞれの国々に農林省としてはたとえば意向を確かめて集約しようとしておるのか、さらに、結論から言えば、十一月には間違いなくこれは開くのかどうか、その点も含めて、もう少し突っ込んだ質問をもう一ぺんしたいと思います。
  87. 森本修

    ○森本政府委員 東南アジアの対象国はどこかというお話でございますが、先般の閣僚会議では、ビルマより東の九カ国を招聘いたしております。したがいまして、今回の開発会議にもおそらく前例にならったような国を招聘するというようなことになろうと思います。ただ、従来からもそうでございますが、日本のほうで技術なりその他の協力をいたしておりますのは、単にそういった国々だけではございません。もちろん、何ぶんにも地理的な関係、歴史的な関係からいたしまして、そういう国が非常にウエートが大きかったということは事実でございますが、依頼がありますれば、その他の国に対してもできる範囲において協力をする、こういう考えでございます。現在具体的に協力の依頼がございますのは、たとえばフィリピンでありますとか、インドネシア、あるいはマレーシアといったようなところの、主として東南アジアにおいても相当大量に食糧を輸入している国、そういうところから、食糧増産に対する日本技術援助の依頼がございます。したがいまして、先ほど申し上げましたのは、そういった類型の国に対して主として技術を、特にそこが米の生産といったようなことを希望いたしますれば、日本としても農業技術として活用できる範囲内においてやっていきたい、こういうふうに考えております。  それから、手段として資金援助はどうかというお話でございますが、御案内のように、アジア開銀というものができましたので、もちろんそういった国際的な金融機関から農業部門の開発に対する資金援助が行なわれるということはあるわけであります。しかし、アジア開銀のみの資金援助ではたして農業開発上抜かりはないかというふうな点についても、われわれとしても検討を進めなければならぬと思っております。ただ、具体的にどういう分野についてその必要性があるか、あるいはどういう方式がいいかというふうなことは、今後日本としても研究しなければならないと思いますし、また、先ほど申し上げましたように、各国の農業事情が画一的ではございませんから、各国の要望あるいは実情に即した希望といったようなものも十分かみ合わせて、国際的な一つ考え方として、そういった問題を将来練り上げていくということになるのではなかろうかと考えております。
  88. 林百郎

    ○林委員 十一月に東京で開かれることは確定的ですか。
  89. 森本修

    ○森本政府委員 政府部内で現在きまっておりますのは、今秋を目途にして準備をし、各国に呼びかけようということがきまっております。開催の時期としては、当然参加国の都合にもよるわけでありますから、そういう国の意向を打診しながら、最終的に具体的な月日が決定される、こういうふうに考えております。
  90. 林百郎

    ○林委員 それじゃ、最後にしめくくりをしたいと思いますが、締めくくりの質問をしますので、食糧庁長官農地局長、経済局長にお答え願いたいと思います。  いまも説明がありましたように、政府は東南アジア開発のために膨大な資金を投入することを考えておるようですけれども、そのようなことを考えておるならば、なぜ日本農業の今日の荒廃の実情を救おうとしないのか。この点が根本的に私たちの考えと相違しております。すなわち、日本農業自体がどういう状態か。毎年洪水の発生は繰り返されております。このことをどうしても防がなければなりませんし、また、かんがいや排水等の土地改良を全面的に国の負担で行なってやる、そうして黒磯の惨事のようなことが再び起こらないように十分考えてやらなければならない。また、百万から百五十万に及ぶ農民農村から流民にひとしいような姿で流出しておることも防がなければならない。日本農業生産能力を失った老人や婦人の手にまかされていくという、兼業化のおびただしい増加の状態を食いとめなければならない。さらには、農業の将来を苦にして自殺者が戦前よりもはるかに多く出ておるというような事態に対して、至急対策を講じなければならない。私たち共産党はそう考えております。これはよその国の農業開発どころの騒ぎではないと思います。現に、ことしだけでも、日本農民は最初に春冷害で非常に苦しめられました。続いて台風か来まして洪水で苦しめられました。四号台風の被害だけでも、新潟県では水田の冠水、埋没が二万二千ヘクタール以上に及んでおる。その被害額は稲作だけで五十五億円、農業関係全体の被害額は実に二百億を突破しているといわれています。また、これと同時に被害を受けておる秋田、山形、福島の三県を含めますと、実にその総被害額は二百八十四億、こういう数字が報道されております。これは四県だけの被害であります。しかも、このことは毎年繰り返されておる。今後またどのような大きな被害が待ちかまえているかということは予測できないような状態で、戦々恐々としておるのが農民の今日の心情であります。私は、黒磯惨事がありましたとき、すぐ現地に出かけていきました。これは大和田農地局長も御存じでありますけれども、そのとき、遺族の一人の人が涙にむせんで私に訴えました。そのことばは、先祖代々守ってきた用水路だったから、そして稲はいまちょうど生育期で、水が一番必要な時期だったから、死が待っているということがわかり切ったそういうトンネルにもみんな入っていったのです、大きな資本家には何億という金をくれてやる国や県がほんの少しでもわれわれ農民のために出すことを考えてくれるなら、こんな惨事は起きなかったでしょう、われわれもこんなつらい思いはせずに済んだでしょう、こう私に訴えました。これはむすこをなくした父親のことばであります。政府と農林省の幹部の諸君は、この農民の悲しい、しかも切実な声にこたえて、日本農業救済のために直ちに全面的な手を差し伸べるこを真剣に考えるべきだと思います。そして、日本農業の危機を救済するための根本的な施策を立てて、すみやかに全面的に国家財政による援助の手を差し伸べる時期だと思います。共産党はこのように考えておりますけれども最後に農林省の幹部の皆さんのこれに対する意見を聞いて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  91. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 お答えをいたします。  私ども農業振興上必要な土地改良費、あるいは災害が起こりました場合の災害復旧費等につきましては、必要なものについては十分予算として確保するよう努力をいたす決意でございます。また、お話の中でお触れになりました、黒磯の木野俣の用水トンネルの事故は、はなはだ不幸な事態で、なくなりました二十五人の方々に対して深く哀悼の意を表するものでございますが、その善後措置につきましても、現在各省間で精一ぱいの努力をいたしておるわけでございます。
  92. 武田誠三

    武田政府委員 私ども食糧庁といたしまして、米、麦、その他いろいろな関係の農産物の一部については価格の決定あるいは管理といったことを行なっておりますが、これらにつきましては、それぞれの法律なり規定に定めますところによりまして、適正な措置を講じ、また、日本農業の前進的な発展に役立てるように今後とも努力をしてまいりたいというように考えております。
  93. 森本修

    ○森本政府委員 御指摘のように、国内の農業政策としましては、農家生産水準の向上、農業生産性の増大ということに向かって進むべきである。したがいまして、私どもとしましては、そのための手段、方法について、できるだけ検討をし、最善の努力を払うべきであるということは当然でございまして、私も、その所管の範囲内におきまして、そういう観点で大いに努力をしたいと思います。なおまた、当面の災害対策についても、御指摘のようなことでございますので、その点も努力をいたしたいと思います。  それから、先ほど来の後進国援助の問題につきましても、国際的な世論の動向に即するように、国の全体の政策の一環として、可能な範囲内において私どもも今後力を尽くしていきたい、そういうふうに思っております。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会