○門司小
委員 それでは私から……。
いま
委員長からお話のございました、これは私どもしろうとの考えたものでございますので、専門家の各省の担当の方がごらんになればいろいろの欠点もあり、またあまりにも理想過ぎるというようなきらいはかなりあろうかと思います。しかし、私どもがこういう問題を
検討し、さらにこういう
一つの対策というようなものをまとめた動機につきましては、御
承知のように、ここに書いてありますように、ことしの
交通事故の死者というのは大体九月二十五日現在ですでに一万人を突破しておる、十月の末の統計を見てみますと二万一千人をこえている、こういうことになっております。そうして、年間の死者が大体史上最高であると言われております三十九年の一万三千余人をこすことはすでに必至になっておる。さらに、負傷者を加えれば、年間四十五万人の犠牲者が出ておって、これはまことに憂慮すべき事態でございます。特に、最近の
事故の傾向を見てみますと、大都市から地方の中都市に
交通事故が移りつつございまして、同時に、死傷者に老人、幼児が非常に多くなっておる。
交通事故というのは、いまやわが国をあげての大問題になっておることは御
承知のとおりであります。こういうときでありますので、私どもといたしましては、
道路交通の安全
確保に関する特別
措置法案要綱を一応立案をいたしまして、これをすみやかにひとつ当
委員会等においても審議をしていただきまして、
国会に提出する分があるとすればこれを提出するというようなことにひとつしていただきたいということを冒頭に申し上げておきたいと思うのでございます。
その次の骨子でございますが、
一つは、行政機構の改革を行なう必要がありはしないか。そのためには、内閣に
交通安全閣僚
会議を設置して、
交通安全、
事故防止等の基本
計画を立てるということ。これはいまも一応行なわれておるようでございますが、さらにこれを進めて、
交通省を新設して、
交通行政を一元化する必要があるのじゃないかということ。
その次は、
交通安全教育の問題でございますが、これについてはいろいろ学校で教えはしておるようでございますが、しかし、こういう時期になってまいりますのと、それからもう
一つは、将来非常に車がふえるであろうということ、したがって、
交通はますます繁雑になるであろうということが想像されてまいりますので、したがって幼稚園あるいは小学校の正課として、社会
教育の中にひとつ
交通規律というようなものを入れていただいて、そして子供のときから
交通行政に対する法規その他を十分会得することのできるようなことにできないであろうか。さらにまた、中学校以上の学校に対しましては、
運転技術の基礎
教育をひとつ科目として設けていただくことはできないだろうかということ。車の構造あるいはエンジンの状態というようなものを十分お互い国民全体が知っておるということ。いまの
運転免許の
制度からいきますと、結局法規その他を学問的に知っておって、あとは
運転の技術さえあれば大体免状がもらえるというようなことでなくして、やはり
運転者である限りにおいては、車の全体の故障がいつでもわかるように、あるいはオーバーホールをすることもできるぐらいの基礎
知識がやはり必要ではないかということ。したがって、これらの問題を中学校以上の学校にはやはり
一つの科目として教えていただくというようなことが必要ではないか。
その次には、
道路構造の改善でありますが、これについては、いろいろ問題はあろうかと思いますが、
自動車税を一応の
目的税とかりにいたしまして、そして、ガードレールであるとか信号機であるとか横断橋であるというような
歩行者保護の
施設というものの
整備をもう少しすみやかにする必要はないかということであります。
その次の四は、車体構造の改善でありまして、
制限の速度をこせば警報が鳴るような警報機つきのいわゆる
タコメーターといわれておりますものを全
自動車に取りつけるというようなこと。また、
自動車の
整備に万全を期するために、
自動車整備公団というようなものを設置して、故障があった場合にはすみやかにこれらの問題が、
道路の上でごたごたいつまでも長くしているというようなことでなくして行なわれるような設備はできないであろうかということ。
それから、その次の五といたしましては、人為的の
事故防止の確立をする必要がある。それには、
自動車免許の技術をひとつ
全国的に一元化をはかっていただきたい。
免許に際しては、
医師の証明する
運転の
適性診断書というようなものを提示することはできないだろうかというようなこと。このことは、人権とも
関係いたしまして、非常にむずかしい問題ではあろうかと思いますが、しかし、往々にして、間違いをこしらえる
運転者の中には、
運転者としての性格がはたして適正であったかどうかというようなことが、あとでしばしば
議論されておりますので、こういうことにしたらどうか。したがって、不適格者には
免許証を交付しないというようなこと。特に精神病に関しましては、
医師から
公安委員会に通告をする
制度をひとつ
実施してみたらどうか。この問題も非常にむずかしい問題でありまして、精神病院に収容した人というようなものの
公安委員会との連絡は容易にとり得るかと思いますが、それ以外だとなかなかむずかしい問題もあろうかと思いますが、一応
検討する必要がありはしないかということ。
それから、六に書いておりますのは、
損害賠償支払い準備金
制度の創設をしていただきたい。
自動車損害賠償法の最高百五十万円の最高額をこえて、その残余の賠償責任を雇用者が負う場合に備えて、そのための
損害賠償準備金
制度をひとつ創設していただいて、そうしてこれに
一定額を
積み立てる。しかし、この場合には、この準備金を損金算入に加えることができるというような租税特別
措置法の一部をここに利用してもらったらどうか、こういう考え方であります。
それからその次は、
交通裁判の機能の
整備強化でありますが、事務処理をもう少し簡素化して、そうして
交通専門の裁判官の育成
強化をしていただいたらどうか、
交通裁判所をいまの
制度からさらに充実していただく必要がありはしないか、こういうことであります。
これは大体要綱といいますか、一応の大きな項目といたしまして、次に、私どもが考えておりまする
道路交通安全
確保に関する特別
措置法の案に対しまする要綱を、きわめて羅列的ではありますが、御
説明を申し上げて、御了解を得たいと思います。
これは、冒頭にお断わりいたしておきますが、どこまでも私どもの考えた素材であって、必ずしもこれが適正ではないと思いますので、当局におきましても、また、同僚におきましても、ひとつ単なる素材としてこれをごらん願っておけばよろしいのではないかというように私自身は考えております。
まず「(
自動車事故の現情)」は先ほど申し上げましたとおりでございまして、
自動再
事故は、わが国経済の成長と文明の発達にともなってますます激増し、
昭和四十年においては、死者一二、四八四人、負傷者は四二万五六六六人を数えるに至り、今後増加の一途をたどらんとしている。二といたしまして「(
自動車事故の原因)」で、
自動車事故の原因は、複雑多岐にわたるが、
昭和三十九年の
調査によれば、スピード
違反、わき見
運転、酩酊
運転などが全
事故の約半数を占めている。さらに地域的にこれをみれば、最近の傾向として、
事故は
道路の
整備によって地域的に拡大され、東京、大阪等大都会が、わずかな増加に止っている反面、その周辺あるいは、中規模の都市に署しく増加している。
三といたしまして、したがって「(今後の諸
施策)」といたしましては、
かくして、
交通事故の激増は、わが国の大きな社会不安となりつつあり、国民が一致して、この解決に当らなければならない
段階に到達した。これら
交通事故を撲滅し、
交通の安全を
確保するためには、
交通行政の一本化、
交通安全教育の徹底、
道路交通の構造改善、救済
制度の
充実強化、
取締り制度の近代化など基本問題の綜合的、
計画的な解決が必要である。
「(特別
措置法)」の
目的といたしましては、
交通の安全を
確保し、これらの
事故を未然に防止することは、人命尊重の理念と国民生活の安定向上のための国家的使命である。本法は、人命尊重の基本理念に立脚し、
交通の安全を
確保するとともに、
交通事故によってもたらされる個人的悲惨及び人的経済的な国家的損失を最小限に防止することを
目的とし、これを綜合的、
計画的に
実施せんとするものである。
第一として、したがって「行政機構の改革」でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、
交通安全閣僚協議会あるいは
交通省の独立をはかってまいりまして、
交通安全、
事故防止対策を強力且つ速かに企画
実施するため、内閣に
総理大臣を長とする
関係各大臣(運輸、自治、建設、大蔵、経済企画、厚生の各大臣)をもって「
交通安全閣僚協議会」(仮称)を設置し、
交通安全ならびに
事故防止の基本
計画を樹立し、その
実施を推進する。
交通行政機構の一元化につきましては、なお、
「
交通省」を新設することとし、各省にまたがる
交通行政を一元化する。
ということにしたいと考えております。
それから第二に「
交通安全教育の徹底」でありますが、
学校
教育による徹底
1 幼稚園、小学校において正課として社会
教育の中に「
交通規律」の課目を設け、
交通安全教育の徹底につとめる。
2 中学校以上においては、
自動車運転技術及び法規の課目を設け、
運転技術の基礎
教育を徹底する。
ことが必要ではないかということ、さらに国民に対しまする再
教育といたしまして、
国及び地方自治体或は
一定規模を有する企業体は
政令で定めるところにより、通交規律の
教育を行なうこととする。
第三に「
道路構造の改善」でございますが、これにつきましては、
一、
道路の改善、改良
1 主要
道路の完全舗装及び構造改善
現在
道路整備五ケ年
計画を
実施中であるが、その
実施に当っては、安全性に重点を置き
道路構造の改善改良を十分考慮し、
道路の質的向上につとめるべきである。
2
交通安全施設としてのガード・レール、
横断歩道橋、横断隧道、信号機等は、
歩行者と
自動車の安全を
確保するため速かにしかも適正に充足すべきである。
3
運転者自覚装置
踏切、横断
歩道等に対して警報機の設置場所の工夫、或は
運転者に直接感知し得る設備等の改善を図る。
4
道路照明、標識の
整備
事故多発個所等に関しては、地域毎に中央及び地方に
事故対策協議会を設け適切なる対策を樹立
実施する。
二、路上放置車の
取締りの
強化
道路におけるふくそうする
交通量の実情にかんがみ
自動車の保管場所の
確保に関する
法律施行に当って厳正に
実施することとする。
三、
自動車税を
目的税とし、主として横断橋、信号機等
歩行者の安全を
確保すべき
施設整備に充当するものとする。
四、国及び地方自治体は、
交通の緩和並びに利用者の利便に供するため、主要
道路等必要なる場所にタクシー・ベイを設置することができることとする。
第四に「車体構造の改善等」でありますが、
車体構造の改良改善により
事故損害特に人身
被害を軽微にする必要がある。
1
道路運送車両法による安全基準に左の安全装置の技術開発を速かに行ない、逐次これを加える。
2
道路運送車両法による
自動車は、
政令で定めるところにより速度超過警報機を備えつけなければ運行の用に供してならないこととする。
ここに問題となりますのは、
路線の定まった業態に使用する車両及び粗暴
運転に陥りやすい
業務に使用する車両等にあらかじめ定めた速度をこえて速度を出した場合、
運転者及び周囲に警報を〔音並びに光〕を発する装置をつけたらどうかということでございます。
三、「新型車の速度安全装置」でありますが、「速度
制限装置付
自動車を製造する。」あるいは「速度超過警報機等も安全装置の備付の費用は製造業者の
負担とする。」こういうことでございます。
ここでちょっと注釈を加えておきたいと思いますのは、実はこういう装置のない車が現在のような状態で新しいこういう装置をつけようといたしますと、どうしても仕事をしておりまする業者に対する
負担が大きくなるのでございまして、したがってこれはすでに新型の車をこしらえるときにこういう安全装置をつけておくということにいたしたほうが取り扱い上よろしいのとそれから実情に合うということでございます。
それからさらに次の「安全装具の着用」でございますが、これは、
二輪車に乗車する場合に乗車用ヘルメットを
着用すべき
道路の
範囲を拡大する。このことはこれだけでございますが、しかしここで申し上げておきたいと思いますことは、当然ヘルメットを着用しなければならない——たとえば東京などに行ってみましても、ほとんどこのごろではヘルメットをつけて二輪車に乗っている人はないのであります。はたから見ますと、どうして警察でやかましく言わないのかという気がするほど実は軽んじられておるのであります。さらにこれを
道路の
範囲を広げていくということになりますと、いまより以上の指導が必要かと考えます。
それから、
2 乗用
自動車には安全ベルトを取り付けなければならないこととするとともに、高速
自動車国道、
自動車専用
道路等においては安全ベルトを着用しなければならないこととする。
実は追突それからその他の事件によって、中に乗っております
運転者あるいはその他の乗っておる人が負傷することを防ぎますために、いろいろな方法はあろうかと思いますが、いまアメリカ等におきましてもかなり進んで
検討され、また
実施されておりまする安全ベルトというようなもの、あるいはいま
運転台のうしろにまくらのようなものをくっつけて、首の骨の折れないような
施設を取りつけてございますが、これらの問題も十分
検討して、そうしてこれで人命の安全が保たれるというならば、あるいは負傷の程度が非常に少なくて済むということが現実にあらわれておりまする以上は、これらの問題はやはりある程度
義務づけられてしかるべきではないかということが考えられるわけでございます。
それから、その次に「車両
整備の
励行」でありますが、
整備不良を原因とする
事故を防止するため車両検査をより厳正にする。
ということでございます。これについては、
国は
自動車の
整備の万全を期するため
自動車整備公団を設けて
政令で定める都市において別途
政令で定めるところにより
整備工場を設けて車両の
整備検査の推進をはかる。
ということ。これにつきましては、ひとついまの車検の程度でなくて、もう少し万全な
整備をしていただく必要がありはしないかということでございます。
それから「第五、人為的
事故防止の確立」でありますが、これについては、第一は
運転者でありまして、そうしてその中で
運転免許の基準をやはり引き上げる必要がありはしないかということでございます。
さらに、
適正検査の
強化を図る。肉体的適応性の検査を徹底するため
医師の証明する
運転適性診断書を提示するものとし、不適格者には
政令で定めるところにより
免許しないこととする。但し、右に不服のある者は当該公安
委員に対して不服の申立てをすることができる。特に精神病に関しては
医師から
公安委員会に対して通告する
制度を
実施する。
ということにいたしております。このことは、先ほども申し上げましたように、
適性診断書を呈示するということがなされて、そのことのために
免許証がおりないというようなことは、ややともすると、本人に対しては人権の侵害にもなろうかと思いますので、ここではやはりこれを公平に処置することのために、不服のある人は当該
公安委員会に対して申し立てをすることができるような道を開いたのでございます。
それから「
免許基準に関しては
法律で定めることとし、
全国的一元化をはかる。」ということにいたしました。このことは、
免許証の基準については、おそらく
全国すべて
一定されておると思うのでありますが、しかし、今日までの世間のうわさ、あるいは実際を見てまいりましても、どの県でどれだけの受験者があって、どれだけの合格者があったかということを比較してまいりますと、世間のうわさとはあまり違わないような実態が実は出てきておるわけであります。したがって、これらの問題で露骨に言うことを私は避けておきたいと思いますが、いままでの統計を見ますと、やはりうわさにあるような、ある県に参ると案外
自動車免許が取りやすいのだということ、それを実際を調べてみると、さっき申し上げましたように、
試験の申し込み者と合格者との数を勘定すると、どうも合格の率が多いというようなことがあるわけでありまして、こういうものはやはりなくしていく必要がありはしないかということであります。
それから「優良
運転者に対しては
法律に基づく優良
運転者褒賞
制度を設ける」必要がありはしないかということであります。これは各警察やその他で優良
運転者に対する褒賞を出しておるようでありますが、それをさらに
制度化する必要がありはしないかということであります。
その次に、「
自動車を営業の主体とする中小企業者の特別
措置」を考えたらどうかということであります。
企業経営の合理化
国はタクシー業及び貨物運送
事業の健全なる経営を図るため財政税制及び金融上の特別
措置を講ずることとする。
それからさらに、
運転従事者の労働条件の改善
労働時間の短縮、最賃法等労働条件の改善により
違反運転を解消する。
交通事故による
損害賠償支払準備金
制度の創設
交通事故による賠償金支払は、
自動車損害賠償補障法によって処置されているが、残余分について雇用者が賠償責任を負う場合もあるので、企業者がこれに応ずるため
交通事故による
損害賠償準備金
制度を創設する。この支払準備金については
政令の定めるところにより損金算入するものとする。
六といたしまして、
賠償
保険制度の
充実強化
交通事故救急センターの設立
国は
政令で定めるところにより
交通事故救急センターを設け、
交通事故の救急処置を行うとともに左の
事業を行うものとする。
1 救急病院の経営
2 年次
計画を定めて脳外科.
医師の充実をはかる
3
全国数ケ所に長期療養のための療養所を設ける
4
事故相談所の開設
センターは、
被害者の救急処置に当るほか、法の周知徹底をはかり、
被害者の救済の相談に応じ
保険金請求
手続き等の代行を行う
こととする。
賠償補障限度額の引き上げ
死亡事故一件当り限度額を三百万円に逐次引き上げる。
支払
手続の簡素化
自動車損害賠償補償法の事務能力を向上させ、保障センターによる代行処理を認めるとともに、事務の簡素化、近代化をはかる。
救急
施設の
整備強化
国は
事故応急処置に必要な機械機具を
整備充実させるため、特別の財政的
措置を講じ、
被害者救済の万全を期すこととする。
交通裁判の機能の
整備強化
事務処理を簡素化し、
交通専門裁判官の育成
強化につとめる。
大体以上でございます。
これらの問題は、冒頭に申し上げましたように、私どもしろうとの集まりで大体の起案をいたしたものでございますので、専門的にはいろいろの欠陥もあり、また不十分なところがあったり、あるいは
実施困難な面等もあろうかと思いますが、これらについては、ひとつ
関係当局も、これを素材として御
検討願いまして、また
委員各位におかれましても、これを素材として御
検討願いまして、よりよき
法律をお互いにこしらえていって、
交通の今日の現況を緩和したいということが私どもの念願でございますので、ひとつ、さように御了承願いたいと存じます。