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佐藤内閣総理大臣 イギリスのウイルソン内閣ができて以来、当面している問題は、いかにしてポンドの価値を維持するか、こういうところにあると思います。そこでたいへんな
努力を払っておられる。ただいま円が引き合いに出されましたけれども、ポンドの持つ意義は、これは国際通貨な、国際決済通貨だ、かようなことで、とにかく三割近いもの、これはやはりポンド決済だ、そういうところを
考えますと、これはたいへんな意義を持ち、価値を持つものだ。ひとりウイルソンばかりでなく、
各国ともそのポンドがいかにあるかということはたいへんな問題で心配もする、だからこそ
各国も協力をして、そうしてポンド価値の維持に最善の注意を払ってきた、大体まずそれは成功したと思えたとたんに今回の処置をとらざるを得なくなった。これは、私は
考えますのに、
各国の心配、それにもウイルソン首相がこたえなければならない、同時にまた、当面する
経済の問題はたいへん深刻なものがある。そこで非常な思い切った処置がとられたんだと思います。私は先ほど
お答えいたしましたように、この物価あるいは賃金、配当、これを据え置くという、これはよしその期間が六カ月にしろ、また六カ月経過後においても特別な規制をするというようなことですから、まず一年はそういう
状態をとろうというんだと思います。この種の思い切った
措置、これをとるということが、そのねらいとしての効果は必ずあがるだろうと思いますが、一面、
経済の
発展、成長というか、それには非常な悪影響があること、これは認めないわけにはいかない。しかも、そういうような欠陥があるにかかわらずこのドラスティックな
措置をとった、これはたいへんな決意だと私は思います。私は、
わが国においてさような
措置をとらなくて今日まで経過していること、この意味においては、国民の協力、これに感謝するということを先ほど申しましたが、とにかく国民の協力なしにはこの種のことはできないんです。最近のウイルソン首相の決意は、おそらく海員ストからこの決意を実行に移したということになるのじゃないかと思います。海員ストがないならば、こういう
構想は持ちながらも、実施はあるいはこの時期ではないかもわからない、私はかように思います。そういたしますと、これは各界、各層の協力、これがいかに必要かということをこの際にあらためて私どもも認識しなければならないと思います。
ただいま御指摘になりましたあるいは消費者米価、あるいは粗鋼等の
お話も出ております。これは米の値段——これは生産者米価というわけじゃありませんで、消費者米価がその主体になりましょうが、米の値段、それから賃金は一体
幾らかという、標準賃金と申しますか、そういうものがかつては予算編成の場合の基準になった、かように思います。私どもが政界に入ったその当時、来年の米は一体どこになるか、その際に賃金はどういうような動きをするだろうか、そこで初めて予算の組み方ができたように思います。それほど実は大事な問題なんです。だから、
政府自身も米の問題については真剣に——また、ただいまは労使双方の話し合いによって賃金などきまりますけれども、力で大体きまっておる、かように思いますが、しかしこのままでも困る。まあ鉄鋼の
関係の賃金などは、これは一発回答ということでりっぱな先例ができつつある。これはたいへんけっこうだと思います。そういうことで、順次、いわゆる力によってきめないというか、お互いに話し合いによってきまっていく、しかし、これがまた力によってきめる、いわゆるストライキだ、こういう形でものごとがどんどんきまっていくと、これはたいへんなことで、
経済の破綻になる、私はかように思うのであります。だから、私はその労働者の権利を否定するというのじゃございません。しかし、各界、各層の方々の協力を得る、そうしてそれが常識的な範囲にきまる、こういうことならば、
経済の
発展もこれはもう期して待つべきものがあるだろうと思うし、物価などもそのうちに鎮静するだろうと思う、かように思うのであります。
最近の形において私どもがいま当面しておるのは、物価も物価だが、まず
経済を正常化すること、そうして成長への方向をたどり、物価があまりお互いの生計を圧迫しないで済む、こういうような
状況、そのためには、何といっても
経済が成長しなければならぬと思いますので、そういう方向が望ましいと思います。さような意味で、いわゆる消費者米価をどうするか。今回は生産者米価がああいうようにきまった。食管会計の赤字も二千億円にもなる。しかし、これを一体どうするのだ、こういうことをしばしば言われるのでありますが、私はそれについて、当分の間上げないということを答えました。当分とは一体いつまでなんだ。これはしかし、当分は当分だという
お話をしておりますが、なぜさようなことを言っているか。これは私が申すまでもなく、食管会計が赤字であれば、食管会計の赤字は食管会計で消すという、これは法的に財政上の原則で非常にはっきりしておると思います。そのとおりがやれない、これは一体何なんだ。諸物価に及ぼす影響なり生計費に与える影響、それを
考えたら食管八会計の赤は食管会計で埋めろ、こう簡単には言い切れないのです。だから、私どもそういう点をさらに慎重に
考えよう、こういうことで、ただいま当分の間はとにかく上げません、かように申しておりますが、その結論は、いま申すように、一般物価の動向、生計費に対する圧迫のその程度でこの処置はとらなければならない、かように思います。これは、英国の
総理が当面している苦しみも、程度の差こそあれ、やはり私にも同じような悩みがあるわけであります。これはやはり
経済を一日も早く安定成長の線に乗せて、そうしてお互いの生計もその安定成長の中において行なわれる、したがって、その安定成長を守る物価である、そういうならば、お互いの生計に重大なる圧迫を加えるということはない、かように
考えておるのであります。