○東畑参考人 私、東畑でございます。いま
委員長から御紹介がありましたように、
税制調査会の会長をいたしております。その
審議状況につきまして、簡単に御報告をいたします。
税制調査会は、昨年の八月でございますが、前の
委員の任期満了に伴いまして、新しい
委員が選任されまして発足いたしたのでありますが、そのときに、総理のほうから「経済の安定的成長に即応ずる
税制のあり方とその具体化の方策」という
諮問を受けまして、今日まで
審議を続けてまいった次第であります。その後、昨年の十二月には「
昭和四十一年度の
税制改正に関する
答申」を
政府に提出いたしまして、ほとんどその大
部分が国会の御承認をいただきまして実施されるようになったことを非常に喜んでおる次第でございます。
本年度になりましてから、例年よりも少し早目の四月二十二日に最初の総会を開きまして、本年度の
税制調査会の運営方針等をきめまして、あとで申しますが、四つの部会を構成いたしまして
審議をいたしておる次第でございます。
本年度におきます
税制調査会には、特別にこれまで以上に問題を取り上げまして
審議しなければならないことがほぼ二つございます。
その
一つは、
諮問案にあります安定成長を目ざすわが国の経済社会の体質に合致いたしました長期
税制構想をどうするか、こういう問題でございます。御
承知のように、公債政策が導入されたりいたしまして財政政策に新しい展開がなされたことに関連いたしまして、
税制といたしましては、これに即応して長期的な視野から今後のあり方というものが問題になっております。そこで、
税制調査会といたしましては、たとえば、これからの税負担の軽減の問題とか、あるいは税体系のあり方、それから国税と地方税との間の税源配分、こういった基本的な問題について、広い角度から大きなビジョンを持って
審議したい、こう
考えておるのであります。これは前の、改組以前の
税制調査会におきましては、御
承知のように、税の自然増収というものが非常に多うございまして、その二〇%ぐらいを減税に充てたい、こういう構想できたのでありますが、現在自然増収はそう大きくなりませんで、新しい財政政策も行なわれるようになりましたので、財政政策と租税政策との関連が前の
審議会のときよりは一そう密接になったわけであります。そういう次第でございますので、この全体の問題はわれわれ
税制調査会だけで結論づけることはできないかと思っております。そこで、新しい経済計画をお立てになっております経済
審議会、あるいは今後の財政のあり方を
審議して.おります財政制度
審議会、その他いろいろ関係の
審議会がございますが、そことの関連を
考えながら税の問題を議したい、そういうつもりでおります。それが一点であります。
第二点として、新しく取り上げました大きな
審議事項は、
税制の簡素化という問題でございます。
税制が御
承知のようにだんだん複雑になりましたのは、日本の社会経済制度が非常に複雑化したということの地盤の上に立って、いろいろな理由でそうなったと思いますが、今日のように
税制が複雑になってきますと、納税者が自発的に納税するとか、納税に協力するという気持らを少なくとも強めはしない、弱めるという心配もございます。それからまた、税務を
執行なさる当局におきましても、形式的な違反ということがあると、それの指摘に追われまして時としましては大きな脱税を見のがす、こういうことがありまして、その結果また納税者からいろいろな批判が生じ、
税制は不公平ではないか、こういうような非難も出てきているかと思っております。
そこで、われわれ
税制調査会といたしましては、こういう弊害を避けるために、税に関する法令あるいはいろいろな通達等を通ずる
税制の簡素化につきまして検討する必要がある、こう存じております。ただ、一口に
税制簡素化と申しましても、いろいろな問題がありまして、法令とか通達の規定を平明化する、あるいは課税標準とか税額の
計算を単純化するとか、申告あるいは納税の手続を簡単にするとか、いろいろな問題があるわけでありまするが、さらに大きく言いまして、税負担の公平を維持するという問題と
税制を簡素化する、この両原則を両立するようにするということはなかなか技術的にもむずかしい問題じゃないかと思っておりますが、それに取り組んでおる次第であります。同時に、この簡素化問題は、税を納める納税倫理と申しますか、その倫理の向上とか、それから税務行政の方向の転換などに関係ありますので、当たってみまするとなかなか容易な問題でないかと思っております。しかし、どうしてもこれはひとつ現在の時点においてやりたい。でありますから、この
調査におきまして今度は徹底的に検討しまして、新しく簡素化を実現する組み立てをつくりたい、こう思っております。
その二点でございますが、さらにもう
一つつけ加えたい問題は、長期的な
税制ということになっております。長期と申しましても、おそらくは、実際問題といたしましては四、五年ぐらいのことじゃないかと思っておりますが、その長期のことはそれといたしまして、それと矛盾しないような範囲で毎年毎年現実的な問題として減税なり
税制の整理ということをやっております。昨年の暮れにも先ほど申しましたように四十一年度の
税制改正ということで
答申を出しておりますが、ことしも同じような
考えで、来年度の予算の編成というか、あるいは財政政策の一環としての
税制改正ということを今日これから努力するということになっております。
現在の
審議は、進捗をはかるために先ほど申しましたように四つの部会になっております。第一の部会は一般
税制部会、第二の部会は企業
税制部会、それから第三の部会は地方
税制部会、この三つになっておりまして、これが一般的なことでございますが、そのほかに、先ほど申しましたような簡素化のための
税制簡素化特別部会というものがあって、四つの部会でいま運営いたしております。
一般
税制部会におきましては、長期
税制のあり方というのはもちろんでありますが、それから始めまして
所得税一般、相続税それから間接税につきまして根本的な問題を
審議しようとしておりますが、さしあたり
所得税につきまして当面の目標ということにつきまして具体的ないろいろな試案を出しまして、それを検討いたしておる次第であります。
第二の企業
税制部会のほうにおきましては、言うまでもなく企業
税制についての主要な問題点を概括的に
審議いたしましたあとで、特に法人税の基本的べ仕組みということにつきましていろいろと議しておりますが、これは今回の
税制調査会におきまして、ある意味において最も重要な問題であります。法人税の基礎の
考えとなるものに法人段階源泉課税
方式、支払い配当控除
方式、それから法人
利潤税
方式、こういう三つの
考え方がございますが、その基礎になるような
考え方について検討しながら問題点を究明いたしつつある次第であります。
それから第三の地方税部会におきましては、地方
税制のあり方、ことに、その背景となります地方行財政との関連及びそれに伴ういろいろな具体的な問題を現在検討いたしておる次第であります。
それから、最後の
税制簡素化特別部会におきましては、
税制及び税務行政の現状とその簡素化の必要性、それから納税者及び徴税者双方から簡素化に対する要望事項というものをそれぞれ聴取いたしまして、種々の事例を参考といたしながら、簡素化のための具体的方向につきまして一わたり検討いたしました。それで、特別にその部会の中に専門小
委員会を設けまして、今後、実際の衝に当たられた御経験がありますところの税務の経験者とか、法人会計等の実務者を専門
委員に委嘱いたしまして
審議を続けたい、こういうふうになっております。
大体荒っぽい御報告はそれにとどめます。
なお、ちょっと言い忘れましたのですが、この会へ来て報告をしろということがございましたのですが、ちょっと家庭的な事情がございまして、ほかの
委員会との関連がございまして、私、実は二度ばかり御延期を願った次第でありまして、あるいは御迷惑を及ぼしたかと思いますが、この席からお断おりを申しておきます。
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