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篠田委員 前もってちょっとお断わりいたしておきますが、私は明後日外国に参り、またいま与えられた時間は十分しかありません。したがいまして、
総理の御都合もあって、最後まで御答弁を願うということはむずかしいと思いますので、まず最初に私の
質問を全部申し上げまして、時間があったら
総理その他の閣僚に答弁をいただきたいと思います。
まず、私の一番最初に申し上げたいことは、国の基幹
産業である
石炭問題の解決といったような問題については、これは
政府と
国会が責任を持ってやるべきものであって、そういう
政治的の責任を持たない
審議会に依頼をして漫然と日を送る。しかも出た
答申は、全くヘビのなま殺しであって、こんなものではとうてい今日瀕死の
状態にある
石炭業界を救うことはできない、これが私の結論であります。
さきに有沢
調査団は、第一回の
調査におきまして千二百円のコストダウン・スクラップ・アンド・ビルド、こういった面について
答申をし、
政府もまた業界も多大の犠牲を払って今日まで
石炭対策をやってきた。しかるにその第一回の
調査団の
答申は、数年を出ずしてまた第二次の
調査団の
答申を求めざるを得なくなる。しかもいま申しましたように第二次の
答申というものは、全く不徹底きわまるものであって、いかに与党といえ
どもこういう
答申には賛成いたしかねるというのが結論でございます。
総理並びに
政府関係として、
一体調査団のこの
答申というものが非常に尊重すべきものであって、しかもそれが
国会の
決議や自民党の
石炭調査会のそういう
答申よりももっともっと重いものである、こういうふうに
考えておられるのかどうか、それが第一点であります。
第二点は、
石炭の位置づけであります。いろいろ五千五百万トンとか五千二百万トン、五千万トンという説があります。私は、
石炭の位置づけそのものも必要でありますけれ
ども、より大切なことは、
需要の確保であると
考えております。五千万トンでもけっこうでありましょう。ただし五千万トンを全部掘ったものは
需要が確保されるという、そういう
前提でなければなりません。五千万トンという
数字をきめれば五千万トンは出ません。これはもう
石炭のイロハを知っている者はだれでもそういうことはわかっておる。しかも一たん減らした
石炭は二度とふやすことはできません。
労働者は離職し、坑道は荒廃し、技術は低下し、そして再び何らかの必要に応じて
石炭の再生産をやろうというときには、もはやその再生産は不可能になるということは、これは常識であります。しかも五千万トン全部を必ず
需要を確保するかという問題になってきますと、最近電力業界に二千三百万トン、鉄鉱に一千百万トン、その他いろいろな
数字が示されておりますけれ
ども、これは努力
目標であって、義務的な
目標ではないということをそれぞれの業界において言っておるということは、
政府も
御存じであろうと
考えます。
その次に
お尋ねしたいことは、いわゆる
異常債務の千億円の
肩がわり、いわゆる出世払いであります。
政府は、まずここにありますように、市中
銀行に対して五%ずつの助成をしていって、最後に市中
銀行が、たとえば七%、八%貸しているものは切り捨てるということを言っております。これは
答申の
内容であります。毎年五%の金利しか助成しない、その差は免除する。市中
銀行に金を預けている者は
国民大衆であります。
審議会が五%で
あとを打ち切るといったって、
国民大衆の金を預っている市中
銀行がそれほど簡単に承知するものであるかどうか、また承知させてあるのであるかどうか、これが
一つの問題であります。
その次に、千億円の
肩がわりの問題で一番問題になるのは、
中小と
大手の不公平であります。いろいろ計算をしてみますと、これによって
大手は四百円ぐらいの助成になるそうでありますし、
中小は百円ぐらい、
石炭局長の話を聞いても二百円ぐらいと言いますから、
大手の半分しか助成されない。これはわれわれが
佐藤総理の御命令によってつくった自民党の
中小石炭の小
委員会、私が
委員長をやりました。そして非常に長い間時間をかけてやった
答申とも全然反対である。そのとき
石炭局長は、
大手と
中小とは絶対に区別をしない、これは公平にする。なぜかならば、
日本の
石炭の三分の二は
大手が掘っており、三分の一は
中小が掘っておる、そういう見地から見ても絶対に不公平はしないと言ったにもかかわらず、明らかにこれは不公平である。
その次に、千億円の
肩がわりは、これは私は悪いとは言いません。けっこうであります。しかし過去の
異常債務の
肩がわりをしただけで、
一体明日の再生産ができるのかどうか。金融の道は
一つもこの
答申の中にはうたっていない。しかも
政府が
肩がわりをしたにもかかわらず、担保は依然として残されておる、こういうおかしな話はないと私は思います。
政府が一千億の
肩がわりをした以上は、担保を解除して、そして翌日からの金融をつけて再生産をさせるということが当然であって、
政府が保証しても担保を解除しないということは、
政府の保証なんていうものは、金融機関から見れば何らの権威に値しないものだということを裏書きしているものである。そんなばかな話を
政府がそのままのみ込んで、これは非常にけっこうな
答申であるなどと
考えたとしたならば、私は
政府というものはおかしいと思います。
それから次は
安定補給金の問題だ。これは自民党の
石炭対策委員会におきましても、また
中小の小
委員会におきましても、あるいは
石炭鉱業審議会におきましても、最初は三百円ということをうたっておりました。われわれは公平にと言ったのでありますが、
審議会の
委員と懇談した結果は、それを産地から港までの距離に比例してABCぐらいに分けて、
中小も
大手も区別なく渡すということで、われわれは
審議会の諸君との話し合いについても賛意を表したのであります。しかるにここに出てきたものはたった百円である。その理由を私は
審議会にただした。そうすると、答えは、
国民の税金でやることであるから、他
産業とのバランスも
考えなければならぬ、こういう返事でありました。私は、
審議会というものは、
政府から諮問されて、いわゆる
石炭という、瀕死の患者を、
審議会という医者がどうしたら健康にし、立ち直らせることができるかということだけを
考えればいいのであって、言いかえればこの病人をなおすのにはどういう療法、どういう処方せんを書けばいいというだけのものであって、よその患者に遠慮したり、金が少し高いからといって削ったり、それで
一体病人がなおりますか。それはわれわれ
政治家、
国会並びに
政府が
考えればいいことであって、そういうような右顧左べんをした、
自分の権限以外のことまで頭の中で
考えてやったという結果が、病人に対する正当なる治療もできず、正当なる処方せんも書けず、学者であるのか
政治家であるのか、それとも諮問機関であるのかわけがわからないような不徹底な
答申となってあらわれたと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、
政府がこの不徹底なる
答申を最大のものとして尊重してやられるということになるならば、もう二、三年を出ずして
石炭産業はまた今日と同じ
状態になるということを申し上げておきたいのであります。
最後に、石油関税をもって特別会計をおつくりになったということはまことにけっこうです。しかし従来、特別会計もなく、あるいは
石炭鉱業審議会も発生しておらない以前においても、産炭地の問題であるとかあるいは
鉱害の問題は一般会計によってこれをまかなっておったのであります。しかるに、瀕死の重傷を負っておる
石炭業界を立ち直らせるというための特別会計の中から、なぜ一般会計によって従来まかなっておったところのものまでもまかなわなければならないか、これは私は
政治の筋としては非常に違う、こういうふうに
考えておるものであります。
以上、私の
質問でございますが、時間がありましたら、
総理から順次御答弁を願いたいと思います。