○
稲葉参考人 私、懇談会の
委員と
審議会の
委員といたしておりまして、そのほかに
石炭鉱業審議会の
需給部
会長をいたしておりますので、その点からいまの多賀谷さんの御質問に対しましてお答え申し上げたいと思います。
確かに五千五百万トンという
ものを
生産し、それを消化せしめるというのがいままでの
石炭政策の大きな柱であったということは事実でございます。ところが、先ほどおっしゃいましたように、その供給責任が途中で果たせなくなりまして、実は私、その間非常に苦労したのでございますけれども、一番問題の
電力用炭につきましては、
昭和三十八年も三十九年も、つまり引き取ってもらう数量をお渡しすることができない、そういう実情にあり、またやや現実過ぎるかもしれませんけれども、
昭和四十
年度につきましては千八百万トンを引き取っていただくということで、これは荷渡しはそれ以上したのでございますけれども、今度は景気が悪くなりまして、
電力需要も下がってくる、そのほかに水がたくさん出る、こういうこともございまして、相当お願いをいたしまして使っていただくということにいたしましたが、千七百万トンが実消費、こういったような実情でございます。そうして将来のことを
考えますと、それをもとにしてでき得る限り
現状の
生産をプラスアルファにしていく。そうしてその中で
需要を満たしていくということが、やはり今回の
検討の場合に非常に大きな問題でございました。そこで
需要サイドと
生産サイドと、その双方からひとつ内部で出てまいりました問題点をやや率直に申し上げまして、そうして御判断を受けたい、このような感じがいたします。
まず
先生方もすでに御了承になっていただきますように、ほうっておきますると、国内炭の
需要という
ものがどうしても減るという傾向になります。また全部の
石炭需要につきまして
現状維持をはかるとか、プラスアルファをするということはむずかしいので、これは外国でもやっていることでございますけれども、まあわが国では
電力用炭と鉄鋼用炭、そのほかの
原料炭にでき得る限り
増加引き取りを要請をする、こういったようなことで進んでまいりました。そうしてそれにつきましては、実は法的な裏打ちがございませんので、話し合いでひとつ進めていく、こういったようなことをいたしておりまして、そうして
需要者と
生産者の間に立っていろいろ苦労もいたしましたし、さらに国会その他の御協力も得まして、今度は一番問題の
電力用炭につきましては、
生産会社をつくるとか、さらに販売
会社をつくるとか、こういったようなこともやってまいりました。今回につきましても一体可及な限りどの
程度まで
需要がつけられるかということは、
生産サイドと並行して、通産省の中でも、また私たち学識経験者の間でも、非常に苦労したことでございましたので、この点の事情を御報告をいたしますと、現実の四十
年度の前の案では、大体二千二百万トンくらい五千五百万トンベースで引き取っていただいていくというはずでございましたが、それがいままでの関係と、先ほど申しましたような事情で、千八百万トンマイナス百万トンといったような事情でございます。しかし今後につきましては、やはり労使の御協力という
ものを前提にいたしまして、でき得る限り計画的にこの
石炭の
増加引き取りを
電力会社に要請したい。まあおよそ一年百万トンずつひとつたくさん引き取っていただきたい。こういったようなことが
骨子でございました。
ところが、現実の事情はそれでは済まないわけでございます。と申しまするのは、このところ
出炭がやや増大いたしておりまして、しかも
電力の
需要が減るということになりましたので、本
年度につきましてはでき得る限り貯炭を解消するということもございまして、初めはもっと大きな数量をお願いしたのでございますけれども、百五十万トンたくさん引き取って、二千五十万トンをことしは使っていただく、またそれに必要なお金を払っていただく、こういうことにいたしました。そしてさらに二千五十万トンをもとにして
増加引き取りを要請をして、そうして
昭和四十五
年度に九
電力につきまして二千三百万トンを要請をする。さらにいろいろこれにつきましても内部の問題がございましたけれども、一応電発火力を二基増設いたしまして、百五十億円弱の資金がいると思いますが、それを東京と姫路でつくっていただくことによりまして、百三十万トンないし百五十万トンのひとつ増量引き取りをしてもらう、こうすることによりまして三百五十万トンくらいの増大、電発火力の
石炭が消化できます。
それから、いま
一つ、すでに御協力を得てやってまいりました産炭地の低品位火力、そういう
ものが三百万トン強ございますから、これでひとつ供給を、
現状維持プラスアルファにしていただくという前提で
電力用炭をやっていくというのが、いろいろな関係もございましょうけれども、合理的で、
電力会社も最小限こういったようなことについて自発的に御協力願うというのが筋ではなかろうかといったような判定をいたしました。
もう
一つ大きな問題は、実は
先生方もよく御存じだと思うのですが、
原料炭の問題でございます。
原料炭を増産をするということは、鉄鋼に対しまして寄与するばかりではなくて、もう
一つは、カロリーがよくて手取りもいいんですから、でき得る限り、北海道と九州で
原料炭の増産をしたい。ところが最近の鉄鋼業界の実情を見てまいりますると、だんだん溶鉱炉が大型化してまいりました。そしてコークスレーショが下がってまいりました。そして強弱比ということにつきましても、でき得る限りやはり品質のよい強粘結炭をすることによって、鉄鋼のコストを下げてほしい、こういった要請が出てまいりまして、四十五
年度に、かりに六千万トンくらいの鉄鋼が
生産をされるといたしましても、九百万トンか九百五十万トンしか引き取れないといったような
お話でございました。それをさらにお願いをいたしまして、長期契約をなさっている分も、でき得る限り可及的にこれを小さくして、弱粘結炭は国内分に切りかえる、こういったようなことと、強粘結炭もなるべくこれをプラスにしてもらうということで
努力もいたしましたが、実は私、千三百万トンくらいは、初めは
原料炭はほかのガスだとかコークスを入れましてできるんだと思っておりましたが、そういったような技術的な事由その他を
考えまして、さらに鉄鋼業界その他の御協力も得まして、九百ないし九百五十万トンを千百万トンまではひとつ認めましょうといったような線になり、それに三百万トンを加えまして、千四百万トンという
原料炭の消費を見込むということが、
需要サイドから見まして、やや
経済が正常に発展をしているという基礎の上で、ほぼ国内的にはマキシマムだろうといったような推定になりました。それに国内の無煙炭という
ものが
現状維持だ、こういうふうにいたしますると、大体今度の
需要サイドでは、五千万トンということになっておりますけれども、これを公にしていいかどうかということは、私ちゅうちょいたしますけれども、ここだけの話として、あまり公にしないという限度でお聞き取りを願えれば、原炭で大体五千百五十万トン、しかもその五千百五十万トンは、
電力以外の
一般炭の
需要を相当圧縮をしたベースで確保されている、こういうふうにお
考え願いたいと思います。
それからもう
一つ申し上げたい点は、最近は
石炭のカロリーという
ものが非常に上がってまいりまして、つまり数年前に国会その他で五千五百万トンペースというふうにおきめになったときの
ものと、現在のカロリーをもとにした
ものを
考えますと、実は五千万トン、五千二百万トン、五千五百万トンと、いろいろ非常に社会的、政治的な論争の種になりますけれども、これも私個人の計算ですが、今度確保されておりまする
ものは、前のベースに
考えますと、大体五千三百万トンくらいの
出炭確保ということにはなるというふうにお
考え願ってもいいのではなかろうかと思います。その点では、つまり実炭ベースとカロリーベースといろいろなことを精密に御計算をしていただきますと、そういわれている。五千万トンがどうだとか五千二百万トンがどうだとか、五千三百万トン、五千四百万がどうだとかいうことは、それほど大きな差ではなかろうといったような感じはいたします。しかも今度は、やはりいろいろな変化をもとにいたしまして、それぞれの引き取り業界とも
お話し合いをして、そしてやってまいりました。つまり植村あっせん案とか
石炭鉱業審議会の
努力と、それを受けて
政府がやっていただくという前提でやりました
ものでございまして、ただ架空の数字ではないんだ、こういう点でいままでの
ものと相当違うんだというふうに御了解願っても私は差しつかえないのではなかろうかと思います。
それでは供給がどうなんだということになります。供給につきましては、いま五千五百万トン以上の実炭ベースの
生産ができるのじゃなかろうか、こういったような
お話がございましたが、これも公開していいかどうかということにつきましては、
委員長さんその他で御
配慮をお願いをいたしたいと思いますが、つまり大
企業と中小
企業を通じまして、
各社から一体どの
程度まで
出炭が可能だ、その場合は人はこれだけ要る、そして自産炭とその全部の損益がこうだといったような資料はいただいております。これはおそらく御希望の数字だと思います。そのほかに新鉱
開発その他の
ものについてもいただいております。しかしそれがそのまま実行に値するかどうかということにつきましては問題でございますし、個々の
企業につきましては、ここで申し上げるのをはばかりたいと思います。しかしそれを集約いたしました数量は、大体五千三百万トン強ぐらいではなかろうか、こういうふうに私たちは推定をいたしております。さらにそれらをもとにして、今度のようにただ五千五百万トンは国の責任で掘るんだ、こういうことじゃなくて、やはり今度の
措置を前提として、各
企業で一体どの
程度まで自分たちは
出炭責任をおとりになるか、こういうことをいただきまして、そうしていま申しました
需要ベースをにらんで、年々どういうふうに供給責任とそれから
生産責任を結びつけていこうかということが、いままでと違った、これが
抜本策かどうかという問題はございましょうけれども、そういったようなことになります。確かに埋蔵量が二十億トンあるわけでございまするから、六千万トン一年に掘れといえば掘れないことはないでありましょう。しかしそうした場合においては、一体コストがどうなるのか、またそれに対する
補給がどうなるのか、国民負担がどうなるのかということになりますと、今度はいままでいただきました資料をもとにいたしましても、この五千三百万トンをそのまま掘っていただくとなりますと、大体
炭鉱によりましては、トン当たり先になりますと二千円も
赤字が出る、こういったようなところもございます。それを無限に国民として補助をさせていただいていいかどうかということは問題でございまして、今度は五千万トン前後ということを予想して、ひとつ供給構造についてはっきりした姿をとっていこう。それに対しまして、いま私たちが現実の場で、実際はもっとこまかいいろいろな操作というのをいたしておりましたが、そういったいままでにないような操作をして、そうしてそれぞれの
需要についてこういう
措置をとったということを、毎年ひとつ目標をにらみながら実施をしていくということによりまして、いままでと違った線が出るのじゃなかろうか、またそれが
総合エネルギーの
政策の中のワクとして、国民としても御承認を受ける線になるのではなかろうか、こういったような
考え方がいままでと本質的に変わったわけではございませんけれども、今度は
需要の面、供給の面ということにつきまして判断をいたしましてやったのでございますということを申し上げておきたいと思います。