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1966-07-27 第52回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十七日(水曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 浦野 幸男君 理事 田中 榮一君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君   小宮山重四郎君       佐々木秀世君    田中 六助君       中村 幸八君    二階堂 進君       三原 朝雄君  早稻田柳右ェ門君       桜井 茂尚君    田中 武夫君       麻生 良方君    加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第四部長)  田中 康民君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 大慈彌嘉久君         通商産業事務官         (重工業局長) 高島 節男君  委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局次長)赤沢 璋一君         中小企業庁次長 金井多喜男君     ————————————— 七月二十七日  委員五島虎雄君及び桜井茂尚君辞任につき、そ  の補欠として石橋政嗣君及び山本幸一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員石橋政嗣君及び山本幸一辞任につき、そ  の補欠として五島虎雄君及び桜井茂尚君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  工業に関する件(鉄鋼業に関する問題)  請 願  一 輸入韓国ノリの販売に関する請願浦野幸    男君紹介)(第一一号)  二 同(天野公義紹介)(第一二号)  三 同(宇都宮徳馬紹介)(第一三号)  四 同(和爾俊二郎紹介)(第一四号)  五 同(押谷富三紹介)(第一五号)  六 同(木村武雄紹介)(第一六号)  七 同(黒金泰美紹介)(第一七号)  八 同(島村一郎紹介)(第一八号)  九 同(砂田重民紹介)(第一九号) 一〇 同(田中伊三次君紹介)(第二〇号) 一一 同(田中榮一紹介)(第二一号) 一二 同(谷川和穗紹介)(第二二号) 一三 同外二件(西村直己紹介)(第二三号) 一四 同(長谷川四郎紹介)(第二四号) 一五 同(福井勇紹介)(第二五号) 一六 同(福田繁芳紹介)(第二六号) 一七 同(砂原格紹介)(第三七号) 一八 東京にアジア・エレクトロニクス研修セン    ター設置に関する請願前田正男君外一名    紹介)(第三〇号) 一九 国産電子計算機利用増大に関する請願(    前田正男君外一名紹介)(第三一号) 二〇 バナナ業界企業合理化に関する請願(秋    山徳雄紹介)(第五七号) 二一 同(滝井義高紹介)(第五八号) 二二 鳥取県に中小企業金融公庫支店開設に関す    る請願足鹿覺紹介)(第二一一号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  本日の請願日程全部を議題として審査を進めます。  各請願につきましては、委員各位におかれましても、すでに文書表等により内容等は御承知のことと存じます。また昨日の理事会におきましても十分内容を検討いたしましたので、ここに紹介議員説明等を省略して採決いたします。  本日の請願日程中、第一ないし第一九及び第二二の各請願は、いずれもこれを採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  5. 天野公義

    天野委員長 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付いたしましたとおり八件でありますので、十分各位において御検討をお願いいたします。      ————◇—————
  6. 天野公義

    天野委員長 工業に関する件(鉄鋼業に関する問題)について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。板川正吾君。
  7. 板川正吾

    板川委員 きょうは通産大臣鉄鋼操短勧告の問題、物価問題で伺いたいと思うのであります。とりあえず経済企画庁長官に最初二、三承っておきたいと思います。  粗鋼勧告操短をめぐって、通産省は、御承知のとおり昭和四十一年七月−九月の三カ月これを操短勧告延長、こういう方式をとりました。若干前の指示より増量を認めておりますが、基本的には操短勧告を継続した。これに対して公正取引委員会反対理由を表明し、さらに再度にわたって反対意思表示をいたしております。この粗鋼操短勧告後の実情を見ますると、これは時期のとり方によってさらにこの比率は上がりますが、軽量形鋼のごときは、昨年の六月三十日現在に比較して、トン当たり三万五千五百円の価格が五万三千五百円、優に五一%も値上がりしておる。さらに圧延薄板に至っては、昨年六月三十日の三万八千二百五十円が五万五千二百五十円、一万七千円値上がりして四五%、冷延薄板四万四千五百円から六万五百円に一万六千円値上がりして三五%、こういうように基幹産業である鉄鋼、しかもあらゆる産業原料をなしておる鉄鋼がこのように大幅な値上がりをしておる。これは企画庁としては、物価対策上これに対してどういう見解を持っておられるか。通産省は御承知のように継続をした。公取はこれに対して反対をしておる。こういう中にあって、経済企画庁としてはどういう見解をおとりですか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在私ども物価を扱っておりまして、消費者物価の問題が非常に大事でございますが、同時に、最近の状況から見まして、卸売り物価の問題がこれまた非常に重要でございまして、御承知のとおり卸売り物価は昨年より四・四%上がってきております。その中で非鉄金属値上がり国際価格の関係からいって非常に高い。したがって、非鉄金属を除きます工業製品というものは一・八%くらいの値上がりでございますが、しかし一・八%の値上がりであっても、従来大体横ばいできたものが上がってくるということは、これはわれわれとして非常に注目していかなければならぬ点でございまして、単純にそのままでいいんだという考え方は持っておりません。今後ともこの動向を見守りながら、これがさらに消費者物価にはね返ってくる、あるいはまた消費者物価卸売り物価にはね返ってくるというような点について十分注意をしてまいらなければならぬと思います。  そこで、御指摘のように、昨年から見て五〇%あるいは四〇%台近く上がったということについては、われわれも注意しなければなりません。しかし昨年が非常に安かったということは言えるのでございまして、産業会社そのものが経営が非常に苦しい、あるいは不況に沈淪したということ自体もそういう状況から来ておるわけであります。ですから、ある程度の値上がり景気回復のときに私はやむを得ないことである、しかしそれも生産が拡大していくにつれておのずからその生産数量生産性の向上ということでそう上がっていかないで済み得るように処置してまいらなければならぬと思います。したがって、ちょうどその境目にありますのですから、通産行政としてある程度不況回復時期における処置として七−九の問題も考えられたというのも、これは通産行政の上からいえば、ある程度これが基礎産業でありますだけに、一方では物価問題に影響しますし、同時に一方では、景気回復その他の面においても影響してくるわけでありますから、それらの点を勘案されまして、七−九だけはやろうじゃないか、こういうことだろうと思います。そういう点につきまして、私どもも七−九の状況十分注意してまいらなければならぬのでありまして、七−九中といえども、著しく値上がりをするがごときときは、それらに対して通産省から、勧告操短の点につきまして、あるいは時期、あるいはその他数量ワクを拡大するとか、いろいろな面について十分な考慮を払っていただかなければならぬと思います。そういうことで現実の運営をしていきますことが必要じゃないか、こういうふうに考えておるのでございます。
  9. 板川正吾

    板川委員 どうも経済企画庁長官物価に対してある程度値上かりもやむを得ないのだというような感じを受けるのですが、なるほど池田内閣以来、政府は、物価政策を攻撃されると、卸売り物価は上がっていないのだ、だからやがて物価は安定するのだ、消費者物価についてほとんど回答しないで、卸売り物価は上がらないから心配ないと答えてきた。ところが御承知のように四・四%も上がった。非鉄金属を除いても一・八%、これはいままでこの七、八年卸売り物価は動かないという状態から見れば、四・四%の値上がりというのは異常な値上がりですよ。こういう中で私は鉄鋼値上がり等が相当な影響を持っていると思います。通産大臣経済企画庁長官もひとつ考えてもらいたいのは、一九六二年にアメリカケネディ大統領が、USスチールほか大手鉄鋼業者がわずか三・五%の鉄鋼値上げを行なったときに、世論に訴えて国防上の発注を停止すると言った。それから反トラスト法違反でこれは訴追をする、さらに課税の優遇を停止するのだ、こういうことを言って、ついに数日後に三・五%の鉄鋼値上がりを阻止したのですね。それほど外国では、こういう産業基幹である鉄鋼のごとき基本的なものの値上がりはあらゆる産業に及ぼす影響が大なりとして、真剣に取り上げている。自由経済をとっているアメリカですら大統領権限をもって値上げを阻止する。こういう例があるのに、それは去年勧告操短する前を見れば少し安過ぎたというかしらぬけれども、それにしても、五割も四割も三割もこの一年間に上がるということは、これは物価政策上私は重要な問題だと思うのですね。それを、通産省がやるのだから経済企画庁はしょうがないという言い方は、どうも私は経済企画庁長官として職務に忠実じゃないと思う。ケネディ大統領のごとき勇断をもって、経済企画庁として値上がり防止に対する独自の見解というものを持っていいのじゃないですか。通産省がやったからこれはしかたがないのだ、こういう言い方じゃおかしいのじゃないですか。そういうものをまた藤山企画庁長官国民は期待しているのじゃないかと思うのですが、どうなんですか、長官
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 必ずしもしかたがないという立場で私見ているわけじゃございません。お話のように、卸売り物価が上がってくる、しかも鉄鋼製品というものは基礎資材でございますから、経済全般に対して波及的な影響が非常に大きいということはわれわれ十分関心を持って見ているわけでございます。したがってそれに対して、今後の動向について、さらに引き続きそういう状態が続いていくということになるならば、これはむろん政治として適当な手を打っていかなければなりませんし、あるいは勧告操短を中止するなど、それ以上値上がりをするという場合には、それは政府全体としてこの問題に取り組んでいかなければならぬと私は思います。ただ、普通の景気の場合と違って、不況から脱却するという過程における一つの現象でございますから、その点についてわれわれ若干ゆとりを持って見なければならぬのじゃないかという点を考慮しているところが、たとえばケネディのときに打たれた手と私は必ずしも同じじゃないと思う。ですからこれ以上、たとえば勧告操短をやめてそしてそれを推し進めていく、それでもなおかつ鉄鋼値上がりがあるということになれば、これはやはり一つの大きな問題になってくるわけでありまして、したがって勧告操短中といえども、われわれその経緯を十分見守っていきまして、必要があれば、七−九といってもさらに数量問題等についても再考慮をしてもらわなければならぬと思います。いまそういう段階で、われわれとしては十分な注意をしながらながめていくというところでございます。
  11. 板川正吾

    板川委員 経済企画庁長官、ひとつ鉄鋼値上がりがいまの鉄鋼原料とする産業に大きな影響を与えている実態を調査をしてもらいたいと思うのですよ。また、この不況克服のためにやむを得ないといういまのお話ですが、それは勧告操短をしたときには不況克服のねらいだった。ですから一〇%減産を指示してそして回復をしようということだった。いまや減産じゃないのです。すでに昨年の六月よりも増量しております。生産はかつてないほど上がっている。それから在庫は減っております。値段は高騰しています。どこに、いまこの鉄鋼不況要件というのがあるか。部分的に見れば、企業の個々に見れば不況だというものもあるでしょう。しかし、鉄鋼業界自体が現在不況だから、勧告操短をやってこれを救済するということにはならないんじゃないか、それは業界の自主的な努力によって克服できるんじゃないか、こう思うのです。  私の要望は、通産大臣は七−九を出した手前、みずからだめだというわけにいかないだろうと思うから、物価対策上、経済企画庁長官閣議にはかって、こうした勧告操短を早急に解消するような相談をすべきではないか、こう思うのですが、どうですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 物価問題の見地から申しまして、私も決して必要でないとは思っておりませんし、また不況も昨年とことしとの状況から見れば、不況状況が違ってきておるわけでありまして、政府としては景気振興対策なりが次第に浸透してきたといっておるのですから、それに鉄鋼が無影響だとは私は思いません。ですから、鉄鋼そのものも逐次良好な、昨年の状態よりは回復過程になっており、ちょうどその切りかえの時期じゃないかと思う。そこで、通産省としても慎重な態度をもってそういういろいろ内部事情等も勘案しながらやられたでしょうが、いま申し上げたように、私どもとしてもこれを十分監視をしてまいるわけでありまして、その七−九の問題が物価問題に悪影響を及ぼすというようなときがありますれば、われわれとしては、それは当然適当な処置をしていただくように通産大臣にお願いし、あるいは必要があれば閣議等で取り上げると思いますが、しかしいま直ちに、数日中にそれをやるというふうにはまだ考えておりません。いまその状況を見守っておるということでございます。
  13. 板川正吾

    板川委員 鉄鋼については岩戸景気以来の好況だという報道さえ新聞等にあるんです。ですから私は、鉄鋼が今日不況だというのなら、日本産業全体が不況だ、あに鉄鋼ばかりじゃないと思うんです。行政指導するのならそういう面に行政指導すればいいんで、また毎月何千というものが倒産しておる現状だ、だから、そういう対策不況だというなら講ずべきでありますが、私は、そういう状態から比較して、鉄鋼だけに通産省がこのような優遇措置をとるということは、どうも妥当でない、こう思うのです。いずれにしても、ひとつ検討して、早急にこの勧告操短を打ち切るように努力してもらいたいと思います。  時間がありませんから通産大臣に伺います。  この前六月二十四日の質問で、私が粗鋼勧告操短を七月以降も延長するのかと言ったら、まだ考えてないんだ、しかし新聞等によると、通常国会が終わればその期間延長をするということだろうということを言っておったのですが、まだ考えていないという話だった。しかし実際はやはり七−九を延長しましたね。この延長した理由はどこにあるんですか、根拠はどこにあるんですか。これをひとつ通産大臣から明らかにしてもらいたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 緊急避難ということで粗鋼減産を指示したわけであります。緊急避難とは実際の場合多少性質が違ってきておると思うのですが、しかし、不況から脱却しつつある一番大事なときでありますので、鉄鋼のようなこういう基礎的な産業を少し慎重に考えておく必要があるのではないかということで、実際は国会の終わりを待っておったわけではないのです。慎重にどうするかということを考えて、七−九だけはひとつやろうということになったわけであります。いま藤山長官とのお話の中に、通産大臣は出した手前これはどんなことがあっても引っ込められないだろうという質問があったが、そういうふうには私は考えていないのです。必要がなくなれば、途中であってもやめてよろしいし、また市況岩戸景気とかなんとか、それは少しオーバーで、そういう状態では鉄鋼業界は断じてないわけで、ものによったら、薄板などについては、たとえば店売りの思惑もあると思いますが、確かに上がっていることは事実でありまして、届け出価格の五万四千円、これが大阪などでは五万三千五百円、東京では六万円のも店頭売りの場合はあるというような報告がここにきておりますが、これはごく小部分であります。大部分大口需要は御承知のようにちゃんと長期契約になっている。店頭売りは二〇%、その中でもほんとうの浮動的な取引というのはごく一部分でありますが、これは中小企業にも影響を与えるわけでありますので、至急にこれは増ワクを指示したいと思っております。増ワクを指示してこの値上がりに対処して、そうして市況状態を見守りつつ——これは一ぺん指示したからそれにこだわっていつまでもとは考えていないので、通産省は結局において、通産行政として最終需要家というものを頭に入れなければならぬわけで、ことに中小企業などの問題というのはわれわれとしても重視せなければならぬので、そうこだわってはいない。これはよそから閣議などで勧告しなければ通産大臣はやめないだろう、そんなこだわりは私にはないので、そんなに鉄ばかり保護しなければならぬとは考えておりません。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 関連。いま大臣板川君の質問に答えられまして、昨年の七月ですか、この粗鋼減産勧告をせられたときと、今次それを延長するといいますか、この理由は同じですか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 いま板川君にもお答えしたように、緊急避難というような意味では多少ニュアンスが違っておったと思います。この七−九の場合、申し上げたのは、ちょうどいま景気が上向いてくる大事な時期であるので、鉄鋼のような基礎的な産業に対しては少し慎重に考えたい、アフターケアといいますか、そういうふうな意味合いが加わってきたので、昨年の粗鋼減産をいたしたときとは二ュアンスが違っておったと思います。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 その点をはっきりしてもらいたいと思うのですが、昨年の場合は緊急避難的だ——緊急避難とは言わなかったとしても緊急避難的、だからこそ一応は認めた。今度の延長も同じような緊急避難というような観念がありますか、ないですか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 情勢が少しよくなったので、そこでびしっとけじめをつけるという考え方もあるのでしょうが、避難的というのを少し広く考えて、少し大事をとりたいという、こういうふうな考え方も、厳格な意味における避難的とは言えないにしても、何か避難に対するアフターケア的なものも、やはり政治としては避難の中に入れることが非常に不都合なことではないのではないかという感じでございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、本来ならば法律によって不況カルテルが認められておる、それによるべきだ。ところが、それによらずして行政措置によってこのようなことをやられたということについては、何回も大臣おっしゃったように、緊急避難的なものとして考えられておる。そうならば、私は緊急避難的だということで一応了承したわけなんです。今回もまたそうであるのかないのかが問題です。緊急避難ということは、緊急避難観念からいって、同じことが一年も継続するものではない。緊急避難というものは二度重なるものではない。緊急避難には三つの要件があります。その一つは緊急なる事態の存在です。その一つは、避けようとする法益と、それによってこうむるところの被害、いわゆる法規、これの均衡を失してはいけないと思う。第三点としては、やむを得ざるに出ずる行為、これ以外に方法がなかったのだ、こういうことでなくてはならぬと思うのです。昨年の七月にも若干の疑問はあったとしても、私はことしの予算委員会大臣質問したときに、避難的なものだということで一応は了承したわけなんです。ところが、それから一年たったのです。緊急避難というような観念が一年間も継続するはずはなし、当然その一年間には次の手を考えるべきである。かりに、高値になったかどうかは別として、若干高値になったとしても、これは一時的なものであって、まだ不況という域を脱していないということならば、この一年の間に不況を脱するような手段をとるべきである。もしとれないとするならば、その間に法律に従うべき要素をつくっていって、不況カルテルに移行すべきものであったと思うのです。いまそういうことで七—九に延長したということは、私は一年前とは考え方が違っていなくてはならぬと思う。理由も違う。それを緊急避難的だということであるならば、緊急避難観念からいって間違いである、こう思うのですが、いかがですか。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 だから、私が申し上げておるのは、緊急避難とは七−九では言えない。だから、その避難というものを少しアフターケア的なものも避難という中に入れて考えて七−九というものの減産を指示したわけで、それは緊急避難そのものだとは言えないことは田中さんの言われるとおりだと思います。ただ、少しあとを用心深くアフターケアする考えも避難という中に——一つ通産行政としてはやはり大事をとらないと、いろいろなことが起こってからという方法もありますけれども鉄鋼のような基礎産業で混乱を起こせば、国内産業にもあるいは輸出にも非常に影響しますから大事をとったので、緊急避難そのものであると申し上げることは理由に乏しい。避難の範囲を少し拡大したのである、こういうことだと思います。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 関連ですから、あとでまとめて私の意見を述べたいと思うのですが、ただここで一言申し上げておくことは、緊急避難というもの、あるいは避難性というものでもいい、あるということで違法性が阻却せられたと思うのです。ところが、そうでなくなると、私はやはり違法性が出てくると思うのです。この問題につきましては、またあらためてあとでやります。
  22. 板川正吾

    板川委員 大臣はこれを七−九に延長した理由が、どうもはっきり国民に言えないようないまの説明なんですね。なるほど理由がなくて、しかもいま法律によらないで、鉄鋼の品目によっては、先ほど言いましたように小形形鋼については、昨年、一年前から五一%も値上げをしている。それがら圧延薄板は四五%、冷延薄板は三五%、厚板は二五%の値上がり、しかも品不足だというものもある。鉄鋼を使っておる産業はたくさんありますけれども、それはいま値上がりして苦しんでおるのですね。だから通産行政に対する大きな不満をそういう業界は持っていますよ。それに対してなぜ七−九を延長せざるを得ないのだという理由を、いま大臣は明確にできない。これは私は、国民に対して済まないと思うのですね。時間がないからそれを言っておきます。  それから公取は、勧告操短反対して、再度また反対意思を申し入れましたが、公取として勧告操短延長には反対である、いままではまあ消極的に反対であるが、通産省権限でおやりになるなら目をつぶろうという形であったと思うのです。気持ちは反対であるが、通産省権限でおやりになるならいたし方ない。それは緊急性ということもあったと思うのです。そこで今度公取が、延長すべきではない、その理由は解消した、こういうことを主張されておりますが、その主張の根拠を示してもらいたい。
  23. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいまお話のありましたように、昨年七月からこの措置が続けられておるわけでありますが、当初通産省がこういう措置を講ぜられる理由は、何回も委員会に出たわけでございますが、公正取引委員会といたしましては、やはりこのようなものは、もし必要あるならば、独占禁止法上の不況カルテルによるべきである、行政指導によるこういう競争制限行為は好ましくないという態度でおったわけです。ただし、その当時の情勢からいって、通産省がその責任において行政指導をなさるということでございまして、公正取引委員会といたしましては、一応事態の推移を見守るということで、ただいままで事態の推移を見守っておった。事態の推移を見守っておりましたところ、さらに四−六に続いて七−九も延長したいというお話がありました。公正取引委員会といたしましては、すでに鉄鋼業界全体としては不況の域を脱している、こういうふうに私ども感じております。もしかりに鉄鋼業全体として粗鋼の調整を不況カルテルでやるということならば、私どもは認められないたてまえでありますが、ただ必要あるならば、それは業種別に不況カルテル等も考えられないか、それだったらいかがですか、こう申し上げたのでありますが、ただいまお話のように、鉄鋼業基幹産業である、それでアフターケアとしてもう少し続けたい、こういうお話がございましたが、私どもといたしましては、やはりあくまでもこのような措置は緊急避難的で、厳に期間を限るべきである。独占禁止法上の不況カルテルにおきましては、私ども、もちろん一般消費者、関連事業者の利益を十分考えまして、その不況カルテルはいたずらに長期にわたらないように気をつけておるのであります。それとも比較いたしまして、このような場合におきましては、当然他の不況カルテルは打ち切っておるのでありますから、打ち切っていただきたい、こういうことを申し入れたのであります。
  24. 板川正吾

    板川委員 公取の資料を見ましても、価格は非常に暴騰しておるし、昨年七月から見れば在庫も減っておる、生産もふえておる。放置すれば社会的、経済的に重大な影響を及ぼすという緊急性もない。またこの間、いま公取委員長言いましたように、ある品目、品種について、不況状態があるなら、それは不況カルテルでやるという時間もあります。そういうこと等を考えると、昨年の七月に勧告操短を始めたときと比べて、今日では、ほとんど勧告操短をして鉄鋼不況の克服をしようという理由がなくなったのじゃないかと思います。ただ問題は、生産能力が一千万トンばかりオーバーしている、ことしは四千五百万トン生産に対して能力は五千五百万トンであって、一千万トンぐらいオーバーしている、こういう状況だからという説明が私はあるだろう、用意しているだろうと思う。しかし、この一千万トンの生産余剰というのも、古い設備で、ある意味では、そこに設備はあるが予備に用意しておるという程度であって、一千万トン全部じゃないですよ。その半分ぐらいがそうでしょう。動くのだが動かさないというものは五百万トンか六百万トンじゃないでしょうか。ですから、操業率は実質的には九〇%だと言っているのです。一割しか遊んでいない。しかし、どんな産業でも一〇〇%操業開始するのは、それは特殊の場合以外にありません。正常な状態で八〇%から九〇%操業率があるというなら、これはもう理想的な状態をいうのです。ですから、鉄鋼業が実質的な操業率の面からいいましても、あらゆる面からいっても、今日私は勧告操短延長する理由は全くなかったと思うのです。通産大臣は、これはアフターケアだというようなばく然としたことですが、アフターケアを鉄鋼に今日とろうとする理由がわれわれはどうしてもわからないのです。アフターケアなんか、あえて今日必要がない。もうすでにひとり歩きできる。しかも、もしある品種によってどうしてもだめなら、それは公取によって不況カルテルが許されればいいじゃないか。公取も、一週間か十日あれば、おそらくそれを理由があれば認める、こういうことを言っておるのですから、鉄鋼業全体もとせんを締めて調整するというやり方は私は理由がない、こう思うのです。そこで、いま通産大臣、市中価格値上がりしている事実は認める、しかし市中価格で売られているのは二〇%ぐらいで、大半は長期契約になっておって、これは前からの値段によって売られておる、だから心配ない、こういうお話なんですね。しかし、市中価格で買っているのはだれなんです。これは大手は長期の販売契約で買います。あるいは八〇%は安いかもしれません。しかし二〇%の利用者というのは、これは中小企業関係じゃないですか。だから中小企業の業者は三割も五割も高い鉄鋼を買わせられておって、大企業は前の長期契約でやるというような、こういう状態になっておるのですね。ですから二〇%だからいい、市中価格でこれを利用しているものは二〇%でごくわずかだという考え方は、私は中小企業長官を監督する通産大臣としておかしい発言だと思うのです。だから中小企業省というものをつくって、通産省と別個にやらなくちゃいかぬじゃないか、こういうわれわれは前からの考え方を持っているのはそういうところにあるのです。通産省は、中小企業のことよりも、そうした大企業のことだけ考えて、二〇%、三割も五割も高く買っていま仕事をやっている中小企業の立場というものを考えていないのじゃないですか。いかがですか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども申し上げたように、二〇%であっても、これが中小企業関連をするものでありますから、これはわれわれとして重大視せざるを得ない。それで、私が言っておることは、これは直ちに増ワクをいたしたい、そうしてこの値上がりに対処したい、そういうことで、これは直ちに処置をとりたいと考えておりますが、実態については重工業局長からちょっと補足いたします。
  26. 板川正吾

    板川委員 それは薄板を五千トン放出するとか、多少の増ワクというのを考えておるようですが、私は、そういう措置をとったところで、薄板を出すといったって、昨今の値段を見ましても、やはり値段が下がっていないのですね。下がるほど出していないのですよ。その値上がり対策薄板五千トン出すといったって、値上がりは続いているのです。だから私が考えるのには、そういうこそくな手段よりも、もとせんで押えるといういまの措置をこの際やめられたらどうですか。そうしてどうしても不況で困るというものなら、これは公取不況カルテルの申請をして、早急に許可をしてもらって、その期間くらい待ってもいいですが、そういうことに乗りかえをさせて、あぶない病人と思われる業種は不況カルテルに乗りかえをさせて、そうして一般のもとせんを締める鉄鋼勧告操短延長というのは、私は打ち切るべきじゃないか、こう思うのです。放出や緊急対策といったって、それでは問題の解決にはならぬ。もし大臣がこの席上で、しからば勧告操短は八月一ぱいで打ち切る、こういうようなことでも発言すれば、値段は必ず下がります。それはへたな、わずかな放出よりも、そのほうがききます。大臣どう思いますか。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 現在のところはやはりもとにおいて増ワクをいたしたいと考えております。そうして店売りの分の増加をはからなければいけない。中小企業に対して悪い影響を与えるということは、われわれとしてこれは絶対に防がなければならぬ。したがって、そういうふうな中小企業に悪い影響を与えないような処置をできるだけ早急にとりたいと思っております。  それから勧告操短については、ここで八月一ぱいでやめると言えということですが、そういうわけにはまいらぬのです。しかしながら、そういう必要がなくなれば、それはいつでもやめることにやぶさかではないわけでございますので、これは今後の推移を見守っていきたい。とりあえずはやはり増ワクして、この市況値上がりに対処していきたいと考えております。
  28. 板川正吾

    板川委員 生産を調整して、また今度は増産を指示するという、どうも矛盾した対策なんですね。こういう措置自体が矛盾しているのですよ。こういうことを考えてもらいたいと思うのです。  そこで公取にちょっと伺いますが、不況カルテル要件がなくなった場合に、公取としてはどういう措置をとっておるのですか。
  29. 北島武雄

    ○北島政府委員 あらかじめまず認可する際に、はたしてそれが独禁法上の不況カルテルの積極要件あるいは消極要件を満たしておるかどうか、十分検討いたしますが、途中においてもしその要件を欠くことになった場合には、独禁法上の規定がございまして、認可の取り消しができることにはなっております。ただし、いままでそういうことをいたしたことはございません。適当な企業に限って、その範囲内ですべて処理をいたしております。
  30. 板川正吾

    板川委員 これは通産大臣じゃなくても、中小企業庁でもいいのですが、七月十六日の新聞によると、山本次官が、通産省物価対策上、工業製品卸売り物価値上がりしているから、通産省がこれはカルテルを奨励しているからだという非難を何とか避けようとして、通産省で認めておる不況七業種の不況カルテルは、綿、スフを除き九月末で打ち切るという態度をとったということを新聞発表されたのですが、その事実は大体合っていますか。
  31. 金井多喜男

    ○金井説現員 御指摘のように、通産省並びに中小企業庁といたしましては、中小企業のカルテルにつきましては、それがあんまり長く存続いたしますと、企業の合理化をある意味において非常に妨げる、すなわち企業合理化意欲が多少なくなるという事実もございますし、あわせて物価対策という一つの大きな政府考え方の一環として、中小企業のカルテルにつきましても、そういうカルテルをやめることのマイナスよりも、二つの大きなプラスがあるということで、内々指導もいたし、中小企業安定審議会に諮問をいたしておることでございます。しかしながら、ただいま先生のおっしゃいましたように、綿、スフを残しまして七業種打ち切るということについては、私ちょっと数字的にそういうことをここで申し上げるほど詰めていないという実情であります。
  32. 板川正吾

    板川委員 これは新聞の報道ですから、たぶんある程度の話になっておると思うのです。これを引き出したのは、公取の場合でも、不況カルテルというのは、一定の条件を、ちゃんと国民も利用者も生産者も第三者もわかるようにして、それで要件がなくなればそれをなくする。これはほんとうに不況に対抗して、やむを得ない措置だ、一時的な措置だ、こういうことになっておるのですね。それから、中小企業関係のカルテルも、この際大きな世論の批判を受けて、あんまり長いものはなくしていこうというようなことで、通産省中小企業関係もそういう指導をしていると思います。そういう指導をしておるのに鉄鋼だけは、不況要件がなくなっているのに、アフターケアだといって、ぬくぬくとまた三月間ももうけさしているというのは、どうですかな、大臣
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 鉄鋼業界が非常にもうけでおるような御判断ですが、御承知のように、まだようやく不況から脱却しようというような状態で、経理状態がそんなによくなったとは思っていない。配当にしても、無理をして配当しておるような状態であります。ただ、われわれがこういう三カ月延ばしたという背景には、いま板川さんもおっしゃられたように、設備能力というものは実際に五、六百万トンはもう直ちに動くものがあるでしょうね。号、して業界の態勢も、そんなに業務がいいとは思っていないわけです、ビヘービアも。そういうことで、業界の態勢も整っていない。また、平炉メーカー、これは板川さんいろいろ中小のことを言われておられますが、中小メーカーには、いま野放しにすればやはり非常な打撃を与える。こういうことも背景にしながら、少し大事をとったわけでありますが、その間需要家に対して、特に中小企業に対して、非常な迷惑をかけるようなことは、これはわれわれとしても、こういう行政指導でやる以上、非常に責任があるわけです。これに対しては、一部の思惑であるにしても、そのことが中小企業に対して非常に影響を与えますから、適宜の処置をとりたいと思っておる。そのものについても、必要がなくなれば、こんなものはそういっておったところで途中でもやめることもあるのだということを申し上げておるのでありますが、業界自体でも、最近、鉄鋼業のあり方というものに対して真剣な検討が始まっておる。こういう方法で、ずっと行政指導という形で鉄鋼業界というものは保護されていくようなわけにはいかねということで、みずからが鉄鋼業界のあり方に対して真剣な検討を始めておることは御承知のとおりであります。  こういうことで、われわれとしても、市況の推移などは今後も非常に重視して、注目してまいりたいと思っておるわけで、中小企業に対するできるだけの悪影響を避けたい。御承知のように、各国とも鉄鋼を野放しにしておるところはないのですね。だから、ここでようやく景気がちょうど上向いてきたので、直ちに業界の態勢もできないときに野放しにせよということは、そうなってきたらどういうことが起こるかということは板川さんよく御承知のことだと思うので、何とかこの期間に鉄鋼業のあり方というものをここで一つの方向をつけてやらなければならぬわけであります。
  34. 板川正吾

    板川委員 七−九を延長した理由は、私は、一千万トン、さらにことしになって一千三百万トン余剰ができるのだ、先々不安だ、だからいま少しく様子を見る、こういうことであったと思うのです。しかし、設備の余剰があるというのは、実は鉄鋼だけじゃないのですね。セメント、工作機械、カメラ、家庭電器、操業率は非常に低い、三割から四割、六割ぐらいのものがある。鉄鋼は九割の操業率だ。しかし三割から四割、六割ぐらいのものもある。それで、設備余剰があるというのはあに鉄鋼だけじゃないのですが、鉄鋼だけを特別な保護政策をとられる理由はどういうのですか。  もう一つは、これは手続論になるのですが、石油の場合には石油業法がありますよ。業法があって、設備に対して許可制をとり、価格に対しては標準価格制度があります。そうして、それに基づいた生産調整ということもやっております。これはできます。実際、鉄鋼業の現状は設備の調整もやっておられるでしょう、設備の調整もやっておる。今度は生産調整ですよ。そして、公販価格価格も調整しておるのですね。まあやり方は通産省の指導という形をとっておりますが、石油業法の場合と実質的には同じような扱い方をしておる。石油の場合には法律にちゃんと基づいてやっておられる。鉄鋼の場合には基づかない。通産省がかってに業者と話し合ってそういうカルテルをやっておるという形ですね。これは同じような指導をされていると思うのですが、石油の場合と鉄鋼の場合に違う理由はどこにあるのですか。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 鉄鋼の操業度ですが、七五ないし八〇程度の操業で、そんなに他の産業に比べて高いとは思ってないわけです。それから、鉄鋼業というものが地域の経済に非常に大きな影響を持っていますし、関連産業も多いですね。だから各国とも鉄鋼というものを野放しにしてないというのは……(板川委員「それなら法律をつくったらいい」と呼ぶ)そこで、今後は日本の鉄鋼のあり方というものに対してわれわれも真剣に検討しなければならぬということで、基本問題小委員会でいま検討しているわけで、鉄鋼業界自身にもそういう声が起こって、何らかの立法措置が要るのじゃないかという案も鉄鋼業界自身から起こっておるということは御承知のとおりでございます。だから、特に鉄鋼を保護するということではないのですが、日本の産業の上における一つ鉄鋼の重要な地位から考えて、これが混乱を起こした場合の影響は単に鉄鋼というのにとどまらない。そういう点でどうしてもこの鉄鋼業というものに対してはできる限り慎重な態度を通産行政としてとらざるを得ない。特に鉄鋼業界を保護しようというのではなくして、日本産業全般に与える、ことに地域経済にも与える影響などを考えてそういう処置をとったということでございます。
  36. 板川正吾

    板川委員 私も鉄鋼基幹産業と認めておりますし、鉄鋼の日本経済に及ぼす影響、社会的な影響、雇用上の影響、さらに輸出の面においても鉄鋼が現在第一位を占めておる重要な産業である。そういう意味で私は鉄鋼業というものを重大に評価をしておるのです。各国でも鉄鋼に対していろいろの方法をとっておる。しかしそれは、私は法律に基づいてやっておられると思うのですよ。私が聞きたいのは、法律に基づかないで、通産省権限で、通産省のいわゆる設置法三条の任務の中でやられるというのは、やはり問題があるのじゃないかと私は思うのです。時間がありませんから先へ進みますが、実は鉄鋼連盟の会長である八幡製鉄の社長の稲山さんは、かねてより鉄鋼には長期安定のカルテルが必要なんだ、これをやりたいが、独禁法がじゃまだから、独禁法なんかなくしてしまえと言ったり、緩和しろというようなことをもう再々主張しておるのですね。稲山さんは、独禁法がじゃまだからこういう生産調整や価格調整はできないんだと言っているんです。通産省は、任務でできるんだといって現在やっている形になっている。それも緊急に、緊急避難的に行なわれるなら、われわれはある程度任務としてわかるが、長期的にやられることは、やはり独禁法上、行政上からいって問題だと思うのです。それは行政指導に対する通産省権限はあります。いわゆる行政裁量というものがあると思います。しかし、この行政裁量をする場合には法律に違反しちゃならないのですね。法律に違反してはならないということが前提です。しかし通産省のこの行政指導は、今度の措置は、私は独禁法という法律に明らかに違反しているんじゃないかと思うのです。それで、大臣が昨年七月に勧告操短の指示をしたときの条件、先ほど田中委員も言いましたように、緊急避難的だということで釈明があった。私も緊急避難的な——緊急避難というのは刑法の用語ですから、そのものじゃありませんが、緊急避難的な行為であって、これは設置法三条による任務の範囲である程度できる行為であろうとまあ消極的に認めざるを得ないと思ったんです。それは当時としては、この業界が非常な危機におちいっていたということ。その危機を避けるためには、緊急避難の第二の要件である危機を避けるためにやむを得ずとった行為である。法律によらないでそういう措置をやったが、それよりも鉄鋼業の安定をはかったという利益のほうが社会的に大きいということで、法律になくても緊急的な措置としてはやむを得ないかなと私らも思うのです。しかし、今日すでに値上がりもし、在庫も減り——一部そうでないものがありますが、全体としては在庫も減り、生産も上がり、価格も上がり、前よりもずっと高くなっているのですよ。そうすると、価格も上がったんですし、不況要件というものがなくなって、しかも緊急的な対策としての要件はなくなっている。なくなっておるのにこれを継続するということは、いわゆる緊急避難の項目の中にある、その程度を越した場合、いわゆる法益の権衡の程度を越した場合には過剰避難として犯罪が構成されるというのと同じように、これは私は今日の段階では、独禁法の何条に違反というのではなくて、少なくとも独禁法の精神に照らして不当な行為、過当な行為、こういうふうになると思う。いわゆる過剰避難ということになるだろうと思うのです。通産省は、まだ当面の危機、危難があると誤認して避難しているようなものですね。いわゆる誤認避難です。それは別として、とにかく勧告操短を今日とる理由がなくなっておるのにこれをとっておるということは、私は独禁法上問題だと思う。  これは公取委員長、まあ公正取引委員会はこれに反対をしておるのですが、私のそうした見解に対して一体公取はどう考えますか。
  37. 北島武雄

    ○北島政府委員 まず、通産省の行政指導か独占禁止法違反かどうかという法律問題になりますと、これは私的独占禁止法でございまして、事業者と事業者団体のみを規制するというたてまえになっておりますので、直接には通産省の行為をもって独占禁止法違反というわけにはいかないのでありますが、ただし、独占禁止法でもって禁じておる行為を行政指導によって行なうということについては、独占禁止法の精神に沿わないものだと私は思うのであります。もしそういう必要があるならば、やはり独占禁止法に不況カルテルという制度がちゃんとございますので、その制度によってやるべきだというふうに考えております。通産省の場合は、独占禁止法上直接違反ということはできませんが、好ましい行為ではありません。それなるがゆえに、公正取引委員会としては、かねてより、こういう指導のなからんことを常に主張している次第でございます。
  38. 板川正吾

    板川委員 公取委員長に伺いますが、いま鉄鋼関係で公販制度をとっておりますね。公開販売制度というのを鉄鋼の場合にはとっておるのです。公開販売制度につきましては、通産省鉄鋼価格安定対策要綱という要綱、内規ですね、これに基づいて鉄鋼の販売制度を指示しているんだね。この公開販売制は、明らかに私は独禁法に触れる制度だと思うのです。これは法律にないですよ。法律にないのに、通産省はかってに内規をつくって、そして書いてあることはいいことですよ。第一の目的には、需給の著しい変動を防止するための措置を講ずることにより鉄鋼価格の低位安定をはかる。鉄鋼価格を低く、そして安定させるのだ、そして日本経済の発展に寄与するのだ、こういう目的でつくられておる。しかし、この公開販売制度の中で政府がとっておる公販価格というのはどうなんですか。大臣、公販価格というのはその業者の届け出価格よりもはるかに高いのです。しかも昭和三十七年以来五年間動いてない。たとえば中形棒鋼というのは四万三千円だ、こういって公販価格というのは通産省が指示した価格であります。業者の届け出価格はそれより下なんです。通産省は低位安定じゃない、これは高位安定ですよ。ここまで、公開販売価格まで引き上げてもいい、引き上げても業者は文句が言えないのですよ。しかし、いま競争があるから、引き上げられないから、それよりも安くしておる。しかもその公開販売価格というのは、ある程度生産が近代化してコストが安くなったら下げるのかと思ったら、全然下がらないのですね。三十七年以来みんなちっとも下がらない。そうしてうんと高い値段をつけていて、そこまで上げてもいいのだ。一番最初は、これを標準価格と思ったらいい、これより高かったらここまで下げなさい、あまり安売りしないでこの辺までいいでしょうという趣旨であったようなんです。この数年間は、公販価格の制度というのは引き上げる役目しかない。目的を果たしてない。目的と逆ですよ。こういう公開販売制度というものを法律によらないでやっているのです。石油の場合には、石油業法十五条ですかによりまして、著しく高騰し、著しく下落する場合には標準価格を公示する、こういうことになっております。その条例がなくなったら、御承知のように撤廃をしておりますね。ところが、これはそうじゃないのですね。この内規をつくったときと全く需給状態が変わってしまっても、なおかつ公開販売価格というのは高い線に置いておる、こういうことじゃないですか。だから、この公開販売制度というものをいまとっておるところに独禁法上問題があるだろう、私はこう思うのですが、公正取引委員会どうですか。
  39. 北島武雄

    ○北島政府委員 鉄鋼の公販制度が採用されましたのは昭和三十三年だったかと思いますが、現在まで何回か変わりまして、三十五年の要綱によってずっと行なわれてきているわけでございます。このような制度がずっと続いてはございますが、やはり独占禁止法上としてはいろいろ問題もございますので、再検討をいただきたいものと公正取引委員会としては考えております。
  40. 板川正吾

    板川委員 時間がありませんから、一応やむを得ませんが打ち切ります。この鉄鋼には独禁法上非常に問題が多いのです。私がいまそういう問題を出したのは、鉄鋼業法なんというのは何もかにもかまうなという意味で言っているのじゃないのです。しかし、行政指導ということと、法律に基づかないで通産省と業者と、それも一部の大手業者とだけで何かの販売秩序をつくり、設備規制をし、価格調整をする、こういう形がいけないと私は言うのですよ。だから、やるならちゃんと法律に基づいてやられるべきじゃないか。私生子みたいに陰でこそこそやっているという形がよくない。だから、それはちゃんと法律に基づいて、それで国民の代表たる国会の了承を得て、国家が干渉する権限なり方法なり限界なりというものを明らかにしてやるべきじゃないか、私はこう思うのです。  そのほか問題はありますが、時一間のようですから、その点大臣見解を伺いたい。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 板川さんの御指摘のように、行政指導というものでそういう粗鋼減産のようなことがやられる、これは正常な姿だとは思わない。できる限りそういうことでなくして業界の秩序を保っていくことが好ましいという意見は、それは板川さんの言われるとおりです。だからわれわれとしても、鉄鋼業のあり方に対しては真剣に検討を始めておるわけであります。これはいいとは思わない。しかしやむを得ないものだと考えてやっておるわけでありますが、この点については十分な検討をいたす必要のある点だと考えております。
  42. 天野公義

  43. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が中座せられて残念ですが、若干板川質問に引き続いての質問をいたしたいと思います。暑いときですから、ひとつ気楽に簡単にやっていきたいと思います。  そこでまず、同じようなことを復習するようですが、先ほど大臣に私関連質問したのですが、まだはっきりつかめなかったのです。実際にその職に当たった重工業局長がおるから、重工業局長にお伺いしますが、昨年七月のいわゆる粗鋼減産勧告をしたときの理由と、このたび七−九に対して同じような措置をとったときの理由の違い、あるいは同じか違うか、はっきりしてください。
  44. 高島節男

    ○高島政府委員 昨年七月当時私まだこの職におりませんでしたが、先ほど大臣お話がありましたように、七月当時は非常な不況に落ち込みまして、その不況から脱却をしようということが中心になりまして、当時の説明としましては、先ほどからお話かありました緊急避難という——法律的な厳格な意見での緊急避難という意味ではないと思いますけれども、急いで、しかも何とかこういった異常な事態から脱却するための異例の措置をとりたい、こういうお気持ちであったろうと思いますが、それでスタートをいたしてまいったわけであります。現実に即しまして、今度の七−九の延長のときに、その感触でまいりますと、結局こういった事態の認識及びその背景の両者になってまいります。相場のほうは、先ほどからいろいろと御議論がありまして、取引の実態からいえば、一部の市中相場というのは非常にウェートが小さいものでございまして、現実に、先ほどの薄板の例でございましたような八、二の比率のうちの二〇%のものが中小関係にいっておりますが、これもひもつきが中心に相なっておりますので、中小企業に現実に迷惑をかけているということはほとんどないかと思いますが、一部市中相場が唱えとして浮動的なものが高値を呼んでおる、こういった状況は需給全体がタイトに向かっているある程度の先行指標になる状態にはなってきているかと思います。したがって、現在の粗鋼生産調整をこの七−九に延長しようというとき、いろいろな角度から検討はいたしましたが、やはり設備余力の一千万トン、直ちに動くもの五、六百万トンという年率で、その状態というものが、現在の鉄鋼業界の姿勢及びこれを放した場合に起こってくる弊害等も考えまして、この際慎重な措置をとりたい、こういうことで出たわけでございます。したがって、大臣のおっしゃった緊急避難というような何か切迫したような感じから、アフターケア的な感触がそれに加わっておる、そういうようなことだと思います。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 私、先ほどもちょっと言ったのですが、緊急避難ということであったので、いわゆる独禁法の違法性が阻却された。しかし、その状態がなくなっておるならば、私は独禁法からいうところの違法性というものは残ると思うのです。先ほども触れましたが、緊急避難というものには三つの要件がある。そういう要件がここ一年間続いたかどうか、続いていないと思うのです。そうするならば、緊急避難ということでは七−九の延長に対してはこたえられないと思うのです。そこで、アフターケアとおっしゃっておるのですが、アフターケアとは一体何です。お医者さんが病気をなおしたときに、病後の養生というような意味ですね。そうい 意味でのこの七−九は、からだがまだ弱っておるので病後の養生をさす必要がある、こういうことですか。
  46. 高島節男

    ○高島政府委員 まず第一点の、緊急避難ということをあくまで要件として始めてきたということではないことは、先ほど申し上げましたとおりでございまして、違法性の問題につきましては、先ほど公取委員長からもお話がありましたように、私的な相互の連絡という形ではやっていなくて、相手方の納得を基礎にした行政指導という形をとっている法的、形式的なかっこうになっておりますから、一応そこは切り離されてくると思います。ただ、緊急避難ということでスタートをして、そして今日の事態になって、ここで踏み切れないという気持ちの内容、アフターケアと申しますのも、何と申しますか、非常に気分的、ムード的表現を大臣はなさったのだと思いますが、それも一つは、設備が次々と着工されておりまして、生産は、なるほど減産指示をしたときよりは相当高水準に向かってまいっておりますが、操業量としてはまだ相当に余地がある。直ちに動くものが五、六百万トン、全体の能力として、修理等を行なえば動くものが手数百万トンあるという、そういった背景が基礎に一つございます。  それから、これは鉄鋼業界に対して非常に批判がましい表現にはなりますが、現在の鉄鋼業界の気持ちというものが、単に中小企業者が非常に数が多くてまとまりがつかないというだけでなく、基本的に、設備投資の大型化に関連いたしまして、だれかやり得る人間というもののチャンスがごく少なくなってくる。設備投資をやって販路を拡張する余地というものは、大きいものが六つほどございますが、それに対して与えられるチャンスというものは、技術革新の結果少なくなってきておるというようなことから、非常に熾烈なお互いのシェア争いと申しますか、ここで是が非でも自分の販路というものを握らざるを得ない、しからずんば、もっと基本的な体制を整えざるを得ないという、世界的な一つの技術革新や製鉄業拡大化に伴う曲がりかどにきておりますので、大臣も先ほどお触れになりましたように、この七−九の状態というものは、放したら突っ走るか、あるいは反省するかという大事な時期に全体の問題としてきておる。その気持ちから、現在の相場というものは、あるいは一時のものであるかもしれません。すなわち底固めができていないということのほかに、そういう設備や業界の協調という機運と申しますか、そういうものの固まり切っていない体制、この点を大臣は非常に心配されまして、七−九の間は延長したい、こういうお気持ちが非常にざっくばらんのところではなかろうかというように解釈しております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 私が違法性と言ったのは、独禁法だけではない。それではお伺いいたしますが、七−九の勧告ということにしましょう。これは通産省の任務としてやったのですか、権限としてやったのですか。
  48. 高島節男

    ○高島政府委員 行政勧告全般にわたることでございますが、行政勧告をいたしてまいる際には任務としてやってまいりまして、結局相手方の納得という形でいく考えであります。したがって、権限に基づいてこれを処置してまいるというものではございません。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、任務としてやったのですね。設置法の三条ですね。これは三条のどれですか。
  50. 高島節男

    ○高島政府委員 法律的に詰められますと、どうもむずかしい答えになりますが、これは設置法で申しますと、第三条の第二号に、工業品の生産云々とありまして、それに基づいての調整、こういう体制になっております。それが結局任務ということでございます。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局に伺いますが、この設置法のタイプが二つありまして、任務と権限を一緒にしておる詰め方と、この通産省設置法のように分けておる詰め方とありますが、これはあくまでも任務といっても、四条の権限法律に基づき云々ということになりておる。一般的に財産権に関係する問題あるいは職業といいますか、生産ということはそういうことになると思いますが、そういうものに対する調整をするということは、やはり憲法の考え方からいけば法によらなければならないと思います。第三条に抽象的に任務としてきめてあって、それが生産の調整とかなんとかいうことばが書いてある、だからやれるということではなくて、基礎はやはり法によらなければならないと思いますが、どうですか。
  52. 田中康民

    田中政府委員 いま先生御指摘のごとく、憲法二十九条によりますれば、財産権の制限はすべて法律によらなければならないということがありますし、職業選択の自由についても憲法で規定があることは明らかでありまして、これを制限することは当然法律をもってなさなければならないということに解せられます。ただ、今回の生産調整に関する勧告というものが、はたして財産権を制限するという意味の行為であったかどうかということにつきましては、私は疑問があるのでございます。と申しますのは、やはり権利を制限し義務を課するという場合におきまして初めて法律が必要であるということでございまして、今度の生産調整に関する通産大臣勧告は、そこまで言っておるのではなくて、相手方の納得を前提とした行為であると存じますので、特に憲法二十九条に違反をして法律をもって行なわなかったということではないと思います。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは監視委員会という制度は何ですか。
  54. 高島節男

    ○高島政府委員 生産の調整をやってまいります場合に、それがどういう状態になっておるかという実態を把握してまいりませんと、納得ずくでやっておることではございますが、通産省としての日常の動きが把握できない、行政上の次の手を打つのに困りますので、実態調査のために監視の制度を設けておりまして、調整をやる、当然の結果だと思います。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 いまあなたは、単なる勧告であるから、憲法上の、いわゆる法に基づかなくてもよいのだ。しかしもう一歩進んで監視委員会を置く。しかもいま局長が言ったように、納得ずくでやっておるとしても、やっておるかいないかを見なければならない、そうして監視をするのだ、やっておらなければ次の手を打つ、こういうのですね。これはどうですか。単なる勧告だからということで済まされますか。納得ずくということで済まされますか。法制局のほうから先に……。
  56. 田中康民

    田中政府委員 私、監視委員会と申しますか、そういう制度につきまして詳しく存じませんけれども、私が聞きましたところによりますと、これはそういう勧告が守られているかどうかを調査するということでございまして、そのあとでその調査の結果、勧告が守られていないといった場合に、さらに向こうがいやだという行為を命ずるというようなことまで行なうのかどうか、その点につきましては私は存じておりません。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 それなら重工業局長、いいですか。先ほどあなたは、それを監視しておいて、納得ずくで行なわれているのか行なわれていないのかを見て、そうして次の手を打つと言ったのですね。行なわれていないときに、次の手は何ですか。
  58. 高島節男

    ○高島政府委員 こういった制度がどのくらい実効をあげているかを判断いたしまして、次の期においてもなお続けるとか続けないとか、そういう実績を見ながら全体の制度を考えていく、こういうたてまえでございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 監視は個々にやるのでしょう。Aの企業が守っておるかどうか、Bがやっておるかどうか、Cがやっておるかどうか、そして守っていなければ次の手を考える、こう言ったのでしょう。そのための監視委員会だと言ったのでしょう。それならば、守っていなければ次の手とはいかなるものかというのです。
  60. 高島節男

    ○高島政府委員 それが守られているかどうかによって、勧告を続けていく必要があるかどうかということの一つの判断になってまいります。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 守られていなければ勧告はやめるという意味なんですか。
  62. 高島節男

    ○高島政府委員 守られていないようでございますと、これは制度それ自身としても反省を要する面が出てまいると思います。その程度の問題でございますが、ちょっとでも違反があるからあきらめてしまうというような気持ちではございません。大勢はやはり実績として把握をいたしませんと、次の判断材料の一つとして欠けるところがあるのではないかと思っております。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 勧告をする、これは納得ずくでやるのだから法律的効果がない、だから法に基づかなくても任意でやれる、そこまでは一応認めましょう。  次に、監視委員会を置くということです。監視委員会を置くということは、やはりそれを裏から強制するという意味を持つものでしょう。そうするならば、法律的に問題が出てきますよ。そうでなくて、あなたが言うように守られていなければやめるのだということなら、勧告なんかやらなくてもいいのですよ。そうじゃなしに、守っていなければ何らかの手を打つ、こういうことを意味しておる。そのこと自体は行政の遠大なる権力によって威喝しているのですよ。威喝ですよ。そうでなかったら何で監視ということばを使うか。監視ということばはどういうことなのか。一ぺん広辞林でも引いてごらんなさい。これは権限をうしろに持ったものですよ。権限のないところに監視はないですよ。そうじゃないですか。ならば、私はやはり法律上の問題だと思う。違法だというのは独禁法の問題だけじゃない。独禁法の問題についてもあとで触れます。明らかにしていきますが、違法性という問題については独禁法だけじゃない。全体の法観念あるいは設置法からいっても、憲法の精神からいっても、違法性というものが出てまいる。監視委員会という意味を広辞林で一ぺん引いて、監視とはどんなものか説明してください。何なら広辞林を取ってきてもらいたい。
  64. 高島節男

    ○高島政府委員 これは監視ということばを広辞林で引いて、法令審査を経て使ったという経緯が三十五年当時からあるわけではないと思います。あくまでもこの制度は、当該行政指導をやってまいります際の、実態調査を十分にやって、行き届いて見るという以外に他意はないわけでございまして、いわば調査ということをやって、データをきちんとそろえていくということが政策のすべて基礎になるという一環にすぎないものと思います。みんなの納得を得てやる上のことではございますけれども、その結果がどうであるかということは、常にやはり反省の材料としてトレースすべき責任があるのではないかと思います。用語につきましては、若干何か警察的な、そういう意味を含むようにとれる用語かもしれません。用語の点にはややあれがあるかもしれませんが、実態調査というものと差異がないように相なっております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう言い方をしておるけれども、監視委員会ということは、うしろに権限を持っているもののやることです。しかもいまあなたは、それが守られていないなら、自分のした勧告が悪いので、反省の資料にしたいというような答弁をうまくしたけれども、実際はそうじゃないでしょう。守っていなければ次の手を打つ、こう言ったんですよ、あなたは。次の手を打つということは、自己反省の資料にしますということとは違うのです。広辞林を見てもらえばいい。次の手を打つと言ったのでしょう。その次の手を打つということと監視委員会ということとを考えあわせたときに、やはり裏に法律的根拠がなければやれない。したがって、この行為、この行政指導は違法性を持つと断言します。そうでないというなら、それによってこうむったものに対する補償の問題、損害に対する補償の問題、これは一つの訴訟事件になると思うのです。実際は行政指導によるやつは救済の方法がないのです。いつかあったように訴訟にならないのです。だからこそよけい問題があるのですよ。国家賠償法の対象にもならぬし、行政訴訟法の対象にもならないのです。それだけに慎重にやらなければいけないのです。これはひとつ監視委員会というのは改めてください。しかもそれは、やった勧告がいいか悪いかについて反省の資料にするということならまだ考え方がある。次の手を打つということなら、私は了承できない。
  66. 高島節男

    ○高島政府委員 次の手を打つということは、これはちょっと語弊があると思います。結局反省をいたしまして、これの実態を握って、守っている人もあり、守らない人も場合によれば出てまいります。そういう状態であると、これははたしてこの程度で続けていっていいのか、あるいは一人一人の状況を見まして、数量の実施ぐあいを見て、これはこの辺で無理があったのか、あるいはあげるべき問題があったのかというようなことを調べてまいる、こういう意味でございまして、次の手というのは、そういった政策の判断材料と申しますか、それの基礎を握っていくということ以外に他意はございませんので、次の手と申しました点は語弊がございますから、その点は改めさせていただきたいと思います。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 それならば昨年の秋、住金問題で紛争といいますかトラブルがあったことは御承知のとおり。当時あなたはその直接の衝に当たっていなかったとしても、あなたがいま言うようなことであるならば、あの時点において勧告操短なるものを反省すべきじゃないでしょうか。しかも当時の佐橋君はうしろに強権を振り回しながら、優良炭の割り当てを制限するとかなんとかいうことをやったのでしょう。あなたの答弁と過去の経過とは違いますよ。いままではそうであったかもしれないけれども、私が重工業局長になった限りではそういうことをやりますということであるのかないのか伺いたい。
  68. 高島節男

    ○高島政府委員 住金の問題は、私も当時外におりまして、貿易局長にかわっておりましたのですが、むしろ輸出の問題等から非常に心配をいたして見ておりましたわけです。したがって、ああいう体制というものを守らないと言われましたときは、これはいま御説明いたしましたような納得ずくでやっておる行政でございまして、それに対して通産省として何らかの報復的な措置をとるとか、そういう手段は全然ございません。したがって、今後もこういった制度はできるだけ早くやめたいという姿勢で、われわれいま根本的に検討しているところではございますが、こういった行政指導全般につきましてやります際にも、あくまでも相手方の納得ということを基礎にした形で、権限に基づいたものでやっていくということでない姿勢でまいるのは当然のことではなかろうかと思っております。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 それならもう一度確認します。この七−九に対する勧告、これが守られないようなことであるならば、勧告自体が悪かったんだということでそれを取りやめるとか、あるいは通産行政の上における反省の資料にしたい、こういうことで確認できますね。
  70. 高島節男

    ○高島政府委員 この勧告がうまく守られない状態がかりに出ました場合には、その実態を見てみまして、いろいろと原因があるかと思います。したがって、守られないことが直ちに廃止につながるという論理ではございませんで、こうすれば免れるだろう、こうすればまた無理がないだろう、こうすれば能率があがるだろうという辺の材料にはやはり関連をいたしてまいります。直ちにやめるということは、基本の姿勢としてこういうものを長くやらないというのは大臣のおっしゃるとおりでございますが、単純なる論理といたしましては、そういう意味で私は御答弁しております。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 それならまた違うのです。勧告をして、守られなければ、その勧告自体が悪いから反省する、こうあなたは最初言ったのでしょう。ところがそうじゃなくて、いまおっしゃったように、その理由がどこにあるのか、原因がどこにあるのか、それを考えて次の方法を考えるというなら、次の手を打つということでしょう。それは法律的基礎がなければやれませんよとぼくは言っている。やれますか。やれるのなら根拠を明らかにしてください。
  72. 高島節男

    ○高島政府委員 その点は、二つ私は違った問題としてとらえておるのでございまして、勧告をいたしまして、行政指導の効果をずっと見てまいりまして、成果があがるか、あるいはいろいろ問題が出てくるか、いろんな形があります。反省と申しましたことも、反省というのは直ちにやめてしまうという意味ではなくて、材料をいろいろと見てみまして、その上でこういう姿でやるべきものであるというならそれでまたやっていく、やめたほうがいいということの材料が出てくればそれも一つである。しかし、それは単に当該制度が守られているかどうかということだけではなくて、もっと大きな国民経済的な観点のほうの材料もいろいろと出てまいりましょうから、それと組み合わせて判断をしてまいる、こういうことだと思います。したがって、直ちにやめるやめないということにはつながらない立場でございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは、監視委員会のほうで監視して、守られなかったら反省の資料とすると言ったのと違いますか。そうじゃなかったのですか。その原因を探求して次の手を打つというなら、いわゆる勧告の域を脱したことになるのでしょう。なりませんか。それなら私は法律的根拠が必要だと言っておるのです。  さらにもう一点、去年の七月から今年一年たっておる。一番最初、いろいろあれも問題があるし、私は賛成できなかった。しかし緊急のあっせん云々ということだったのです。それなら、そういったものを除去するように努力しなければいけなかったのですね、そういうことをしなくてもいいように。一年間何してきました。ただ自分のした勧告を守らすための、うしろに強権を振り回しながら住金等に臨んだだけでしょう。原因除去のために、連帯的な問題として一体何をしてきました。一年間たって同じことをまた続けてやらなければならぬということは、通産省の任務としてやっているということであるが、それ自体が設置法第三条の任務に忠実でなかったと言えると思うのですが、この一年間一体何をしたのです。勧告を守らすという以外に何をやりましたか。そういうことを除くに必要な措置として何をやりましたか。
  74. 高島節男

    ○高島政府委員 ここ一年間、鉄鋼の問題としましては、非常に世界的にも情勢の変化が顕著に出始めた時期でございました。片方、日本の鉄鋼業界は、設備過剰を中心にさらに循環的な不況に悩んでおる、こういったダブルプレーのむずかしい状態にございました。その状況から脱却をいたすためにいろいろ努力しましたほかに、通産省といたしましては、鉄鋼の将来の政策、たとえば設備投資をいかようにやっていくか、あるいは鉄鋼業の基本的な体制のあり方をどう考えていくか、そういうことと生産ということはまた不可分の関係に基本政策としてはございますから、それらの間の総合的な方向を探りますために、三木大臣みずから提唱されまして、私赴任よりも前でございましたが、産業構造審議会の一つの小委員会として鉄鋼基本問題調査会というものを置きまして、これにおいて基本的な体制をとっていくべく目下真剣な議論を重ねておる次第でございます。とり方のテンポ等々若干一年かかってずれておるではないかというお気持ち、非常によくわかるわけでございますが、何ぶんにも曲がりかどのむずかしい状況であり、また業界相互の間にも、曲がりかどにきただけに、当初のうちは非常なお互いの不信感というものもみなぎっておりまして、肝心の業界自体が自分でどこに行っていいかということについての十分のとらえどころがない状態でありましたために、これの運営等も若干おくれてまいっておりますが、極力今後努力いたしまして、そういった基本的な問題の解決につとめていきたい、こういう姿勢でおる次第でございます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 その鉄鋼基本問題審議会ですか調査会ですか、結局はこの答申待ちですか。言いかえるならば、この答申が出るまではこういった違法のおそれのある勧告を続けていく、そうと見たのですが、違いますか。
  76. 高島節男

    ○高島政府委員 鉄鋼基本問題小委員会は、通産大臣の諮問機関という形になっております。諮問機関でございますから、これの答申には期待を持ち、同時に、出ました場合には尊重はいたしてまいるわけでございますが、しかしこの問題の基本の解決は、やはり通産大臣のお考えを中心にして、責任を持って解決すべき問題ではないか、したがって、これの答申の出ますまでの間と、現在の勧告操短とが当然に重複するというふうには考えておりません。しかし勧告操短と申すより、生産というものと設備というものと、それから鉄鋼業界の体制というこの三つが非常にむずかしくからみ合って、現在の鉄鋼業界の不協和音をかもし出しておるというところが大臣の一番御心配になっておる点でございますので、今後の処置としましては、この基本問題小委員会動向ということは相当大きくものの考え方の中心になってくる可能性はあり得るかと思います。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 基本問題小委員会へどういう諮問を出して、いつごろに結論か出るのか、通産省としてはその答申待ちという責任回避的な考え方があると思う。それまでは、このような違法とまではいかなくても不当といいますか、あまり歓迎すべからざるこういう勧告を続けていくのではないか、私はこういうように思うんですがね。またその小委員会にこの種の勧告はどうかということを諮問されたことはありますか。
  78. 高島節男

    ○高島政府委員 基本問題小委員会に対して臨みました形は、諮問事項としては、鉄鋼業の今後のあり方いかんというようなものであったかと思いますが、私赴任しておりませんので、ちょっと正確には記憶しておりません。ただ、問題を現実にアプローチいたしておりますときは、やはり理論的な体系に従って御諮問を申し上げていかねばなりませんので、現在のアプローチのしかたといたしましては、まず当面の問題としまして、鉄鋼業の需給の見通し、世界経済の伸び率、それの中における日本経済の伸び率、それに占める鉄鋼の需要の増加テンポが従来のテンポよりも落ちてまいっておるという辺の認識、この辺を一応計数的に統一いたしまして、これを示しましたこと、それから発端としましては、まず設備の投資、これは世界各国が大きな、コストダウンになるような大ものの製鉄所をあちらこちらでつくっております。むしろ日本に一部先を越されたような感じに現在なっておる実態を追い越そうとしてそれぞれ手を打っているのと対抗して、大型の能率の高い設備をいたしてまいるにはどういうような方法をとっていったらいいのかというあたりが非常にむずかしい問題でございまして、今後の日本の鉄鋼需要の伸びが年間三百万トン程度でございますときに、そういった大型のものをだれがどうやってやっていくのか、そこに非常にむずかしい苦心点がございますが、この問題をまずぶつけてまいる。  それとあわせまして、その場合の業界の体制というものがいかようにあるべきかをあわせて第二の柱としてお問いをいたしておるわけであります。  それとうらはらの関連をなしまして、業界の体制及び設備ということと、それからその場その場の生産と申しますか、現在の調整措置もその一環をなしておりますが、その場における生産というものを各需給の段階においていかように考えていったらいいか。設備をもしかりに厳重に規制し、需給にぴたりと合うように持っていけば、あとはあるいは生産の調整は要らないという考え方になってくると思います。あるいは設備が現在のような状況であり、経済の変動もあるから相当多めにこしらえていって、またユニットも大きくなってくるから、生産の調整ということも何らかの形で要るという考え方になるのか、そこは自由競争にまかしていくべき問題なのか、そのあたりはこちらの立場はもちろん白紙で問題点を提起して出しております。これが第三の柱の生産の問題であると思います。  続いて第四に、一番むずかしい話になってまいりますが、今回の勧告操短等の措置をとらなければならなくなった相当大きな要因としまして、平・転炉メーカーを中心にしまして不況事態においては相当の倒産も出てくる可能性があり、それが地域社会にも影響のある分野をかかえておる。この分野を一体どういうふうに将来していくのか。ただ、この点に関連しましては、スクラップの価格が転炉への転換と同時にだいぶ下がってまいる世界的な傾向にありまして、この分野のいき方というものの検討はなかなかむずかしい問題ではないか。それもあわせて一環といたしまして、大体その辺に問題点の焦点を置きながら検討をいたしておる状況にございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 いつごろ答申が出るのですか。
  80. 高島節男

    ○高島政府委員 それで非常に大きな問題に取り組みましたが、私ども現在のところの予定としましては、夏休み返上でこれからがんばりまして、九月までには結論を出したい。ただ非常にむずかしい問題でございますし、皆さんに関心を持っていただいたのはありがたいのですが、鉄鋼業界の首脳の意見等も非常に活発に出てまいりましたが、両極端のようなものが飛び出してまいっております。この間の調整にはいろいろとこれから苦労が要ることではあり、たいへんな問題であるとは思っておりますが、九月末を目途に目下進めておる次第でございます。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 この種の行政指導、これが好ましいものであるとはあなたも考えていないと思う。だからこそ大臣は昨年七月これを行なうにあたって緊急避難ということばを使った。だからやむを得ざるに出たる行為である。そのことは長く存在すべきものではない、さすべきではない。さしあたってやむを得ないからこの手を打ったのだ。そうすると、この手を打たなくても済むような情勢をつくらなくてはいけない。そこに一年間というものがあったのだ。ところが、それが結局延長せざるを得ないということであるならば、通産省はその間無為に過ごした。無為ではなかったというが、結果的には無為に過ごしたということになる。そして結局は基本問題小委員会へ逃げ込んだ。ここでは、やむを得ないから七−九の間に同じことを継続したのだから、少なくとも九月までには結論を出して、もうこういうような好ましからざる方法がなお継続しないような方法をとるべきではないかつ同時に、この一年の間に、私は大臣予算委員会で聞いたのですが、なぜ法に基づく不況カルテルをとらなかったのか。すなわちそれはいろいろと企業が対立しておるとか、受け入れ態勢がなかったとか、こういうことであった。少なくとも良心的であるならば、その根本原因は除くことはできなくても、不況カルテルへ移行できるような措置くらいはとれたと思うのです。それをとっていないということは、やらなかったということは、法を軽視したということになる。少なくとも当時から公正取引委員会は、好ましくない、行なうならば法に基づくところの不況カルテルでおやりなさい、こういう議論をしてきた。今回の継続にあたっては、前もって六月二十九日に公正取引委員会は正式に申し出ております。にもかかわらず、なおこれを継続ということをやったことは法の軽視だ。独禁法というものを軽視している。同時に、独禁法に基づいて設置せられておる行政委員会としての公正取引委員会の権威を認めなかったということである。あなたは行政委員会というものは政府の一機関と考えておるのですか。そうじゃないでしょう。政府の一機関であるならば、特に行政委員会というものを置く必要がないわけです。国家行政組織法の三条による委員会というものは権威あるものですよ。政府とは対等に立って政府に対して勧告をし、あるいはそれに対して申し入れをするだけの実権を持たされておるわけですよ。その申し入れにもかかわらず、これを一顧だもせずに継続したということは、法に対する挑戦であり、法の無視である。同時に行政委員会の権威を無視した行為になりますが、いかがですか。
  82. 高島節男

    ○高島政府委員 その点につきましては、公正取引委員会から申し込れを受けまして、それに即応して、私どもその御意見についていろいろと検討し、何回もその点は事務的に討議をいたしましたのみならず、大臣もその点はいろいろとお考えになりました。さらに総理ともお打ち合わせもされたように承っております。決して軽々に扱うというような姿勢でなかったことは事実でございますし、またわれわれとしてもいろいろな角度からこの問題を考えてみた結果、こういうことになったわけでございます。その間の問題の分かれどころと申しますのは、結局この第二・四半期という時期をとらえまして、そのときに、田中先生がおっしゃいましたように、形式的な違法論ということでありますれば、これは問題にならないことになってまいりますが、そうではなくて、やはり独占禁止法の精神でございますいわゆる自由競争の原理、すなわち自由競争をやっていくことが公共の利益に合っていくという方向のものの考え方というものが一つ強くこれは独禁法を運用されるお立場からあるということは、私どもよく理解をいたしますが、この段階において野放しにしていくということは、これはいろいろと考えました結果、まだ無理である。先ほど大臣からも御説明いたしましたような経緯でそこのところの判断をいたしたわけでございます。したがって、決して独禁法を軽視するとか、さらに独禁法にあるところの精神でございます自由競争の原理というものは、これは私も、あらゆる経済の分野でいかなる制度をとる場合にも必ず残していかなければならぬ大事な原理だと思いますが、この第二・四半期でこれを基礎にして野放しにいたしてまいるということは、われわれとして決心はでき切れないというところが問題の分かれ日であったわけでございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 何回も言うようだけれども、昨年七月はやむを得なかったと一応是認したとしても、法を尊重するという精神が通産省にあるならば、今回は少なくとも法に基づく手段をとるべきである。それをやらなかったということ、しかもそのことについて、従来から強く公正取引委員会からの意見があり、ことに公式な申し入れがあった。それを無視してやったということは、行政委員会の権威というものを無視したということで、これはいかに言われようとも私は納得できません。ここはこれ以上言ってもしようがないと思う。だから違った方面からこの問題をもう一度ついてみます。  そこで、公正取引委員長にお伺いしますが、通産省から勧告があった。これは個々に聞いた。Aという企業通産省との関係、Bという企業通産省との関係だけであるならばいいが、その勧告を受け入れるために受け入れ態勢を業界がつくるということ、そこにはABC間の一つ意思というものが動くと思うのですよ。そうなら、私は独禁法の二条六、項のカルテルになると思うのです。勧告を受け入れる態勢をつくること自体が二条六項になると思うのですが、どうですか。
  84. 北島武雄

    ○北島政府委員 もともと行政指導は通産省から個々の業者に対して行なわれるたてまえであります。それ自体につきましては、先ほど申しましたように、独占禁止法に直ちにそれをもって違反するとは言い得ない。もともと独占禁止法は事業者団体を規制するわけでございます。ただ、その行政指導を隠れみのとして、あらかじめ事業者団体の共同行為があって、それを通産省の行政指導の名のもとにやるということになりますと、やはり独禁法違反の責を免れるわけではございません。そういう行政指導にはえてしてそういうふうな感じがつきまといがちでございます。過去において三十三、四年ころにはたしか三十近くの勧告操短がありましたが、その中には多分に業者があらかじめ相談して、共同行為があって、そしてそれを行政指導の隠れみのによってやったという疑いのあるものもあったそうであります。そういうようなことが行なわれがちであるがゆえに、私たちはなおさらこの行政指導による生産調整は好ましくないということをしきりに申しているわけであります。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 通産省操短勧告をする場合に、どういう方法でやるんですか。通産省とA企業通産省とB企業、C企業というように、一人一人呼んで、そしておたくはこうしなさい、ああしなさいという指導をするんですか。業界全体に対してこうしなさいという指導をするんですか。
  86. 高島節男

    ○高島政府委員 業界の個々に対して指導をいたすという形をとっております。ただ、業界全体としましても、それぞれまた違った意見がございまして、その間の実態調査等をやります際には、業界の人を必ずしも一人一人呼ばないということ本あるかと思いますが、いよいよ詰めまして、どれくらいの見当のところで個々の業者にやっていくかということは、あくまでも個々の各メーカーとの間の関係で押し通しております。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 この七−九の延長について、どういう手段をとられましたか。たとえば個々にやるんなら、個々に呼んで懇談の形式をとられたのか、それとも、そうじゃなくて、これを延長しますとか、こうしなさいというような通牒という形をとられたのか、いかがですか。
  88. 北島武雄

    ○北島政府委員 それぞれ機会を見まして、私自身ではございませんが、担当のほうで個々の業者一人一人と話し合いを詰めてまいっております。そして最後は、文書の形において個々の業者に対して指示を発しておる次第でございます。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは資料を要求いたします。  個々の業者、たとえばA企業、B企業、それぞれ出されたものを全部資料として出してください。これがたとえば一つの同じような形式のもとに出されたとする、それを業界が受け入れた。受け入れるためには業界の受け入れ態勢が必要だ。その受け入れ態勢の中に意思の疎通というものがあれば、独禁法違反が出てくると思う。北島さん、そうでしょう。
  90. 北島武雄

    ○北島政府委員 その辺はたいへん微妙な点になってまいります。ただし、私ども通産省の立場から考えますと、行政指導する場合には、やはり官僚独善であっては私はいかぬと思う。したがって、業界の意向を聞くということは、やはり行政指導をする場合には必要ではなかろうか。その場合に、業者団体に対していろいろ意見を聞くということもあり得るのではなかろうか。そこまでは独占禁止法違反ということにはならない。ただ、個々の業者が集まって相談をして、これでお願いしますということになれば、これは明らかに独占禁止法違反ということになるわけであります。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろんその場合もですが、通産省から通達とか通牒とかいうような形式で、粗鋼生産についてこういうのが出される。これは同文のものを一人一人に渡す場合がある。個々にやるなら私は文章が違っておらなければいかぬと思うのです。同じものであってはならぬと思うのです。区別しておかなければならぬ。個々の事情によって、それをしんしゃくして話し合いの上で出てくるのなら、違ったものが出てこなければいかぬ。そうではなしに、同じものが出ているとすれば、それによって業界側は受け入れ態勢をつくるだろうと思う。受け入れ態勢をつくったときに私は問題が出てくるだろうと思う。実際はどうなんです。そうじゃないのですか。去年の七月だって、いま手元にはないですが、通牒のような一片の文書が出たのでしょう。違いますか。
  92. 高島節男

    ○高島政府委員 各鉄鋼事業者個々にあてまして、めいめいそれぞれの事情に応じて、一つの役所側のルールで配分しました数字をきめまして通達いたしております。したがって、最後の結果の通達の形に文書はなっておりますから、おそらく、あなたはこれだけです、あなたはこれだけですといった形の文書の通達に相なっていると想像いたします。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 七月八日付の粗鋼生産調整の必要性についてという文書が出ておりますね。これはどういう意味のものですか。
  94. 高島節男

    ○高島政府委員 七月八日付のは、今度操短を第二・四半期にやります際の通産省の態度というものを御理解いただきますために、そのポイントを書きましたものだと思います。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 対象はだれに向けてのものです。業界向けなんですか、国会向けなんですか。
  96. 高島節男

    ○高島政府委員 これは業界向けではございませんで、説明的なものとして用意いたしました。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、個々の人に、A企業に対してあなたは幾らにしなさい、B企業に対してあなたの生産は幾らにしなさい、そういう権限がありますか。個々の企業に対して、あなたの生産を幾らにしなさい、それをこしてはいけませんということは、法制局どうですか。憲法二十九条からいって、財産権あるいは職業の自由といいますか、この生産の問題になりますと、それを制限する行為ではありませんか。個々に対してやるならば……。
  98. 田中康民

    田中政府委員 この数字でやれという命令でありますれば、当然そういうふうになると思いますけれども、ただいまの事案は、こういうようにしたらどうだという一種の勧告であると思いますので、この程度でありますならば、法律に違反するようなものではないと考えます。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、その文章から受ける感じということになりますね。やはり個々の企業に出したその文章を逐一検討する必要があると思います。  それから、北島さんいいでしょうか。この種の行政指導ということは、やはりあなたがおっしゃるように、あらかじめ業界が話し合って、そういうかっこうで出してくれという場合がある。これは明らかに違反です。そうでなくとも、通産省あたりの意思が出ますと、それを受け入れるための業界側の意思疎通というものがあるのだろうと思う。それがあるなら、私はやはり独禁法二条六項の問題が出てくると思うのです。そこで、そういうことがあったかなかったかということは、証拠は出にくいと思いますが、独禁法の四十五条三項ですか、ひとつそれで職権調査したらどうです。「違反事実の報告・探知」となっていますね。四十五条の三項は、「公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権を以て適当な措置をとることができる。」となっていますね。四十五条三項の職権発動を希望します。その結果に基づいて、必要あれば私が通産大臣を告訴します。いいですか。いかがです。
  100. 北島武雄

    ○北島政府委員 およそ独占禁止法違反の問題、あるいは相対づくの不公正な取引方法のような問題について公取に提訴があった場合には、これは調査しますということは言ってもいいわけでありますけれども、そういう問題でなくて、地下カルテルというような問題については、そういうことを審査いたすとかいたさないとかいうことは、こういう席で申すべきでないと思います。それはどうぞあしからず御了承願います。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、あなたにやれと国会委員会で詰め寄るといいますか、そうすると、私がさっき言っている行政委員会の独立性を無視することになるので、そこまでは言いませんが、公正取引委員会がほんとうに独禁法について忠実であり、公正取引委員会の権威を守るためには、この際四十五条三項の職権発動はやってもいいのではないか、やるべきじゃないか、こういう意見だけを申し上げておきます。  そこで、もう一度申しますが、それと関連して通産大臣かあるいは重工業局長かを、独禁法違反で提訴するか、あるいは他の法律違反で——ここでやってみたって、法律の解釈については平行線をたどったらしかたがないのですから、これは裁判所で、司法権によってきめなければならぬ。法律見解に対しては、私が原告になって争ってもいいと思う。そういう気持ちを持っていることだけを申し上げて、暑いときですからこの程度にします。
  102. 天野公義

    天野委員長 次会は明後二十九日金曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十四分散会