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井谷委員 第一班の調査の概要について御報告申し上げます。
派遣委員は、
日野吉夫委員長、
渡辺栄一君、それに私、
井谷正吉の三名であり、ほかに
地元選出議員の御参加を得て、石川県、新潟県における
集中豪雨による
被害状況等につきましてつぶさに調査をいたしてまいったのであります。
本日の
委員会の運営上、時間の関係できわめて簡単に概要のみを申し上げることをお許しいただくとともに、細部につきましては、県及び市町村からの
陳情書等、資料を
委員長のお手元に提出してありますので、これを御参照願いたいと存じます。
まず、石川県について申し上げます。
七月十一日ごろ、三陸沖から山陰沖にかけて停滞していた
梅雨前線上を小さな低気圧が次々に東進したため、低気圧の進路に当たった
能登地方では、十一日夜半から十二日の昼過ぎにかけて大雨となり、総雨量は、輪島で
測候所開設以来の二百三十四ミリを記録したほか、各地で二百ミリをこえたのであります。
このため、
能登地方の各
中小河川が増水はんらんし、護岸が決壊するなど、県の報告によりますと、死者二名、住家全半壊三十棟、
浸水家屋二千四百五十一棟、
被害額は、
土木関係、
農林関係それぞれ九億円余、
商工関係一億円余、総額十九億五千万円にのぼっているのであります。
私
ども調査団は、二十一日午後、
石川県庁において説明を聴取し、翌二十二日能登半島のほとんど全域について被害の実情を克明に視察いたしたのであります。
県の説明によりますと、
能登丘陵を源とする町野川、
河原田川、山田川、
小又川、若山川、御祓川等は、いずれも延長十キロないし二十キロの
中小河川であり、
流域面積の七割は山間部を、三割は低地を貫流する急流の小河川が多いため、出水に際し急激に増水しやすく、また、気象的にも
梅雨前線の
停滞度数が多く、特に七月の
梅雨明けごろには
集中豪雨による
被害発生の回数が非常に多いのでありまして、過去、昭和二十年、三十一年、三十三年、三十四年に大きな災害に見舞われているのであります。これらの水害を契機として
災害復旧事業が大いに促進されました結果、今次災害においては、
河原田川、八ケ川、
山田川等の
一般被害が
最小限度に食いとめられたのでありますが、一面、
中小河川の
年次計画のおくれのため、
小又川、御祓川等の
河川改修がおくれ、これがため、穴水町及び七尾市の
一般被害、特に住宅の
床上浸水が多かったとのことであります。これを要するに、今回私どもが現地を見、各市、町の方々から説明を聞いて感じましたことは、まことに当然のことながら、
河川改修のおくれているところに災害が発生しているのでありまして、対策といたしましては、
中小河川の
改修促進の一語に尽きると言っても過言ではないとの印象を深くしたのであります。現地の声といたしましても、二度と同様な災害が起こらないよう、十分なる
災害対策が強く望まれていたのであります。
県及び視察市、町からの要望をまとめて申し上げます。
県の要望といたしましては、一、
中小河川改修事業の促進について、例年の
河川改修の
進捗状況から、今後十年間に一五%程度しか改修が見込めないので、
国家予算の
大幅増額について格段の配慮をされたいこと。二、
災害復旧事業費国庫負担年度の短縮について、
緊要外工事の四カ年を
緊要工事並みに三カ年に短縮されたいこと。三、
農林水産業施設災害に対する
国庫補助適用範囲の拡大について、
農業生産法人または
任意組合所有の
共同利用施設についても
適用対象となるよう配慮されたいこと。四、治山、
林道工事の
緊急施行について格段の配意をされたいこと。五、
治山事業に対する
国庫補助等の増額について、いわゆる
応急治山事業を
緊急治山事業と同様に
補助対策に採択するとともに、
小規模災害についても、
補助採択基準額を引き下げるよう配意されたいこと。六、
林道災害復旧事業に対する
国庫補助率の
引き上げについて、
奥地林道七五%に、その他林道六五%に
引き上げられたいこと。七、
中小企業に対する
特別金融措置について格段の配意をされたいこと、八、
天災融資法の適用について措置されたいこと、の八項目であります。
各市、町からの要望といたしましては、七尾市におきましては、御祓川、
中小河川改良工事の
早期完工について強く要望がなされました。鹿島町では、久江地内の
地すべり現場を見たのでありますが、昭和三十八年の同地区の
地すべりの後につくられたコンクリートの防壁によって、からくも人家がつぶされずに済んだのでありまして、
抜本的対策が望まれておりました。穴水町は、七尾市とともに商店街の浸水による被害の最も大きかったところでありますが、町当局は、目下、
小又川のつけかえ工事について、
用地買収の促進に鋭意努力されているところでありまして、
改修工事の
早期完工のための
予算増額が強く望まれていたのであります。能都町からは、
準用河川山田川の
根本的改修について特段の配慮が望まれておりました。輪島市におきましては、
河原田川上流などの未
改修部分の溢水による被害が顕著であったのでありまして、
緊急査定の実施、現
年災復旧事業費の
予算増額計上、起債の
特別措置及び
宅地造成地のがけくずれに対する対策について要望がありました。珠洲市からは、二級河川の改良と
一般河川の二級
河川昇格について、内浦町からは、松波川の改修について、それぞれ要望がなされました。門前町におきましては、
地すべり多発地帯でありますことから、これが対策について、並びに
八ケ川上流部分の改修について要望があったのであります。
次に、新潟県について申し上げます。
七月十五日、新潟県北部に停滞していた
梅雨前線の活動により、同日午後からふりだした雨は、十六日から十八日の昼過ぎにかけて同地方で
集中豪雨となり、特に十七日は午前六時から六時間の間に百ミリを越える激しさで、総雨量は、二王子岳の五百四十三ミリを筆頭に、下関四百八十五ミリ、三面四百五十七ミリ、
新発田三百五十九ミリ、新津三百ミリ、新潟二百七十ミリ、佐渡の両津で二百四十八ミリを記録しているのでありまして、
一雨降水量としては新記録またはそれに近い雨量だといわれております。このため、下越、
佐渡地方の
中小河川は各所で破堤を見るに至ったのでありまして、特に
新発田市、北蒲原郡、岩船郡及び
佐渡地方に激甚なる災害が発生したのであります。七月二十四日午後四時現在の県の報告による被害の概要は、死者三名、負傷者二十三名、住家の全半壊・流失二百十七棟、
床上床下浸水二万六千五百四十二棟に及び、
被害額は、
農林関係七十億円余、
農地関係六十億円余、
土木関係五十六億円余、
建物関係二十億円余、
商工関係十三億円余で、総額二百三十億円にのぼっており、いまだ数字はふえる見込みであります。
県におかれては、十七日に
災害対策本部を設け、加治川村など三町村、さらに
新発田市、豊栄町など九市町、合わせて十二市町村に
災害救助法を発動し、
地元警察、
消防団並びに自衛隊の
災害派遣による協力を得て、被災者の救援に全力をあげるとともに、
防疫対策等についても万全を期したとのことであります。
さらにまた、豊栄町及びその周辺六千ヘクタール以上に及ぶ広範な
湛水地域の排水を促進するため、加治川破
堤個所の
締め切りを急ぐ一方、
排水機の
フル運転による排水を続けたのであります。
加治川締め切り工事のうち、特に大きい右岸の向
中条地区と左岸の
西名柄地区の作業は困難をきわめ、自衛隊の主力がこれに当たり、消防団、
建設業者等の協力によって、二十二日午後三時に右岸の
締め切りは完了したのでありますが、最後の二十メートルに七時間を要したとのことでありまして、左岸は右岸の四倍の水流があり、水深も三メートルから四メートルといわれ、くいを打ち、そだを結びつけて水流を弱め、
うしワク四十個を入れる予定であるとのことでありましたが、
自衛隊員千百名、
消防団員千七百名、労務者八百名の計三千六百名の人員をもってしても、二十四日中に締め切ることは困難だといわれ、この問、毎秒百四、五十トンの水が流入しているとのことでありますから、さしも東洋一を誇る
排水機も威力を発揮し得ない状況であり、一方、
阿賀野川右岸堤防の
開さくにつきましては、
地元農民の強い要望もあり、知事の言によれば、大英断をもって
開さくが決定され、二十四日早朝、所期の目的を達したとのことでありました。
私
ども調査団は、二十三日午後新潟に入るや、さっそく、防衛庁の協力により、ヘリコプター三機に分乗して、午後三時二十分から一時間にわたり、空から被災地を視察したのでありますが、災害時からすでに一週間を経過していたにもかかわらず、きわめて広範囲にわたって
湛水地域が連なっており、聞きしにまさる被害の激甚さにまず一驚を喫するとともに、
被災住民の方々に心から同情の念を禁じ得ないものがあったのであります。
豊栄町とおぼしきところでは、泥水の上に、わずかに電柱の先端の部分と、新潟県特有のはざ木の先端が頭を出して連なっていることで、そこがたんぼであることを知り、
新発田市などの都市部では、
鉄筋アパートの最上階だけが頭を出しているところや、色とりどりの屋根が軒から上だけ水上にあるといった光景があちらこちらで見られるとともに、唯一の
交通機関ともいうべき小舟が二、三行きかっている状況は、泥水の切れたところに青畳を敷き詰めたようなみごとな水田が広がっているところと、まことに対照的であり、随所に見られる各河川の破
堤個所は、まるで土色の絵具をぶちまけて
力一ぱいはけで同一方向にはいたように、当時の洪水の鋭い
つめあとがはっきりと見てとれたのでありまして、何とも形容しがたい自然の暴威に脅威を感ずるとともに、破
堤個所や鉄道の復旧に、一週間というもの
不眠不休で忙しく立ち働いておられる方々の姿には、心からなる敬意と感謝の気持ちを深く感じてまいった次第であります。
翌二十四日は、県庁において、知事、副知事をはじめ、
県議会議長、同
災害対策委員長、
県議会議員の方々多数からこもごも説明を承ったのでありますが、その要旨は最後に御報告申し上げることとし、引き続き、新井郷川大
排水場及び
阿賀野川堤防開さく個所並びに
湛水地帯を視察してまいったのであります。
平常において毎秒百トンの排水を行なう大
排水機は一時は
自然流水も含めて三百トンをこえる排水を行なっていたとのことで、当時は二百トンの排水がされており、水深はなお一メートル半をこえるといわれておりました。この
排水場にさらに建設省のポンプ十台程度を施設して応援に当たるとのことでありました。
新崎地区の
阿賀野川の
堤防開さくは、決定されてから二日以上はかかるように聞いていたのでありますが、夜を徹する
突貫工事で一日足らずで
開さくされたとのことでありまして、毎秒二十トン程度が流出している状況でありましたが、とにもかくにも、
加治川左岸の
締め切り完了が待ち望まれていたのであります。
次いで、
湛水地域視察のため、車の行けるところまで行ったのでありますが、すでに
湛水地域一帯には臭気が立ち始めており、
減退水後の
あと始末、特に
防疫対策などに万全の配慮が必要であると痛感してまいったのであります。
最後に、県の
要望事項等について御報告申し上げます。
県の
要望事項は、
一
激甚災害に対処するための特別の
財政援助等に関する法律に基づき、
激甚災害の指定と同法第二章、第五条、第八条、第十条、第二十一条及び第二十四条の適用について配慮されたいこと。
二
災害復旧事業等の
地方負担額に対しては一〇〇%の
起債充当を行ない、この償還については一〇〇%の
財源措置を講ぜられたいこと。
三 当面の資金繰りのため、
地方交付税の繰り上げ交付を行なうとともに、
政府資金の
短期融資の措置を講ぜられたいこと。
四 農作物の
災害対策、
湛水排除等の
対策事業費の増大が予想されるので
特別交付税で格別の措置を講ぜられたいこと。
五
天災融資法の
早期適用と
特別被害地域指定、
資金使途の拡大をはかるとともに、
農林漁業金融公庫資金、
農業近代化資金及び自作農
維持資金等の
貸付条件の緩和並びに
既往貸付金の
償還条件の緩和について特別の措置を講ぜられたいこと。
六 今次災害の顕著な特徴は
単作平野部の作物(特に稲作)災害が甚大であることにかんがみ、これら
罹災農民を対象とする
救農公共事業を早急に起こされるよう措置されたいこと。
七
米穀予約申し込み農家で
概算金返納を要するものが多いので、
概算金返納に対する
利子軽減の措置を講ぜられたいこと。
また、飯米の不足する
罹災農家の
飯米配給については、安い価格で、かつ、来年産
米収穫期後まで代金を延納する措置をとられたいこと。
八 長時間にわたる耕地の浸、冠水による病害虫の
異常発生を防止するため、農薬の
空中散布による
緊急防除を実施しなければならないので、この経費に対し
助成措置を講ぜられたいこと。
九
水道施設、
清掃施設等の復旧及び緊急を要した
清掃事業、
伝染病予防措置にかかる経費について、高率の
国庫補助を行なわれたいこと。
十
罹災農家にその
存立基盤をもつ
中小零細商工業者に対し、
長期低利の
融資措置を講ぜられたいこと。
の十項目にわたっているのでありますが、知事からは、
伊勢湾台風、
新潟地震等と同様、法規の適用はもとより、
行政措置によって、実効上同等の措置が強く要望せられました。
次いで、
県議会災害対策委員長からは、二度と同一場所に同一災害が起こることのないようにすることが第一の願いであり、激甚法、
天災融資法の適用のほか、法規その他の基準を最大限に解釈して、最善の措置をとってもらいたい旨の要望がなされ、
県議会議員の方々からは、重複を避けて御紹介しますと、
営農資金貸し付け額の
引き上げ、一切の家財をなくし、全くの無収入となった農家の方々の
生活維持について、実情に即した
救済措置、新潟市の一部で
災害救助法の適用が技術的に困難であった地域に対する
特別措置、佐渡における
災害復旧事業の
採択基準の緩和、山沿いの
産炭地帯の
救済対策等について、熱心な要望がなされたのであります。
以上で報告を終わるのでありますが、いまだ完全に水がひいていない中で、
防疫対策、
病虫害防除対策はもちろん、いまだに、着のみ着のままで、家族が別かれ別かれに避難所に収容されている方々もあると聞くのでありますが、これらの方々に対するあたたかい
援護措置、
被災農民の
現金収入の道を講ずるための、
農業再建に結びついた
救農公共事業の
早期立案、実施等、当面緊急を要する対策について、きめのこまかい措置が早急に進められる必要があることを申し添えて、御報告といたします。(拍手)