運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-07-20 第52回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十一年七月十一日)(月曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 高瀬  傳君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 三原 朝雄君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 西村 関一君    理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    池田正之輔君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       内海 安吉君    菊池 義郎君       小坂善太郎君    重政 誠之君       野田 武夫君    野見山清造君       前尾繁三郎君    増田甲子七君       森下 國雄君    岡  良一君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       帆足  計君    松平 忠久君       松本 七郎君    竹本 孫一君       川上 貫一君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十一年七月二十日(水曜日)    午後一時八分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 永田 亮一君    理事 三原 朝雄君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君       内海 安吉君    菊池 義郎君       野見山清造君    岡  良一君       黒田 寿男君    帆足  計君       松本 七郎君    竹本 孫一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君  委員外出席者         内閣調査官         (内閣調査室         長)      大津 英男君         警  視  長         (警察庁警備局         外事課長)   渡部 正郎君         検     事         (公安調査庁調         査第二部長)  子原 一夫君         外務事務官         (経済協力局外         務参事官)   吉野 文六君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    堀込 聡夫君     ――――――――――――― 七月十一日  委員重政誠之辞任につき、その補欠として安  藤覺君が議長の指名で委員に選任された。 同月二十日  理事安藤覺君五月二十七日委員辞任につき、そ  の補欠として安藤覺君が理事に当選した。     ――――――――――――― 七月十八日  アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件  (第五十一回国会条約第二号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件  (第五十一回国会条約第二号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。まず理事補欠選任についておはかりいたします。去る五月二十七日、安藤覺君が委員辞任されましたので、理事に一名の欠員を生じております。この際、その補欠選任をいたしたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認め、委員長は、安藤覺君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 高瀬傳

    高瀬委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  当委員会としては、国際情勢に関する件について調査を行なうため、衆議院規則の定めるところにより、議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  6. 高瀬傳

    高瀬委員長 アジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題として、審査に入ります。
  7. 高瀬傳

    高瀬委員長 本件は、御承知のとおり、前国会におきまして、当委員会で審議の後、本院において議決し、参議院に送付いたしましたものを参議院継続審査に付し、去る十八日参議院において議決して本院に送付してきたものであります。したがいまして、この際本件に対する趣旨説明の聴取は省略し、直ちに質疑に入るに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  9. 高瀬傳

    高瀬委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  10. 帆足計

    帆足委員 アジア開発銀行の問題につきましては、前国会におきまして相当詳細に論議し尽くしたのでございますが、なお参議院におきましてさらに詳細な質疑応答が重ねられましたので、当委員会におきましても重ねて若干触れるところがあろうと思うのでございます。  昨日の新聞を読みますと、佐藤総理発言されまして、日本アメリカ立場は全く同じというわけではない、日本には日本独自の立場というものがあって、たとえば中国との関係につきまして最近アメリカ新聞記者並びに国会議員の訪問を許すという意向を発表し、また中国との貿易について若干緩和する政策をとりたいという意味のことをアメリカが発表いたしておりますが、それに対しまして佐藤総理は、たとえて言うならば日本立場アメリカ西欧中間ぐらいの立場であろうと、そういう弾力性のある発言をされておるわけであります。私どもはこの発言に対しまして、これは一つの形容詞でありますから、それはそれなりに独自の私ども見解を持っておりますけれども、保守党の立場といたしまして、それはそれなりに半歩前向きの姿勢になる要素を含んでおると注目しておるわけでありますが、たとえばチンコムのごときも、ココムのごときも、この際再検討の余地があるということもいわれておるようでございます。  そこでお尋ねいたしたいのですが、私はむしろ日本アメリカ西欧中間にあるというよりも、かりに日本中国貿易をたとえに引きますと、ヨーロッパ東ヨーロッパ関係フランスアフリカとの関係、または北アメリカ南アメリカとの関係経済関係からいえばそういうふうに類推して考えるべきであるまいかと思うのでございます。すなわち政治関係を除いて言うならば、北アメリカ南アメリカに持つ緊密な経済関係西ヨーロッパ東欧諸国に対して持つ緊密な経済的関係、またフランス等アフリカに持つ緊密な関係、それと日本中国並びに東南アジアに持つ諸関係は似ておるものではないか。したがいまして、日本日本としてやはり独自の政策を持つべきである。最近そういう点について政府が考慮せられておるということは私はよいことであると思うのでございますが、日米会議の席におきまして、中国貿易の問題には発表された文書に深く触れてありませんし、深く内政干渉するような印象を与えるような文書は慎んでおるような印象を受けましたけれども、なおかつアメリカ側輸銀の使用のごときは望まないというような意思表示があったという意味が伝えられております。それはただアメリカの趣味というか意見ということを述べられただけであって、日本政府としては政経分離ということをいわれております与党立場において、純粋の貿易金融機関である輸銀の活用のごとき、別にアメリカ意見に影響を受ける必要も顧慮する必要もないと思うのですが、外務大臣は、あの文面だけでは私どもによくわかりませんから、どのようにあれを解釈しておられるか、またアメリカがコロムを緩和しようとか、または中国貿易を緩和しようというようなときに、日本政府に相談して発言しているわけではないと思うのです。だとするならば、日本政府もまた一々アメリカに相談し鼻息をうかがう、そういう自明の件については鼻息をうかがう必要はなかろうと思うのでございます。これももとより当然のことですけれども、従来占領政策の余弊が続きまして、あまりにもアメリカ鼻息をうかがう感を国民に与えておりました、また事実もそういう傾向が強過ぎまして、国民をしてうんざりした気持ちにおとしいらしめている傾向があったのでありますが、外務大臣はただいまお尋ねの点についてどういう御解釈であられるか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ立場をただアメリカが言っただけの話でありまして、輸銀なんということばは使っていない、中国貿易をやるにしても長期延べ払いというようなことはアメリカはしない、そういう立場を言っておるだけの話であります。これを同様の歩調をとるように日本に要求しておるわけでもなし、またそういうことが通るものでもございません。  それからアメリカ追随国民印象づけておる、こういうお話でありますが、むしろ社会党あたりで盛んに御宣伝になっておるように思われるので、事実とだいぶ違う印象を与えることだけはひとつ差し控えていただきたい、これは私どもはそういう感想を持っておりますので、御参考までに申し上げます。
  12. 帆足計

    帆足委員 久方ぶりでさわやかな夕立にあったような爽快な御答弁を伺いまして光栄のいったり来たりというような感想でございますが、たいへんけっこうな心がまえでありまして、ラジオ等を通じまして国民がこの大臣答弁を耳にしますならば、それがほんとうに実行にも移されるならば、どれほどによいことかと心強くすることであろうと思います。ただいまの御答弁実行が伴うならば、私は敬意を表したいと思う次第でございます。これは穂積委員から引き続いて詳細に質問もし、要望もしますが、たとえばこのたび政府は、東西貿易につきまして若干のゆとりがあったほうがよい、これは当面先例にはしないけれどもということで、朝鮮から技術者入国を三名認めました。しかるに官庁の下部におきまして、これに対して多少の反対工作をする役人がおることを耳にしておりますし、また韓国大使館において業者を一軒一軒つぶすような圧力をかけております動きがあることは御承知のとおりでございます。せっかく閣僚会議におきまして、政府としては自由主義陣営と調整をはかりながら東西貿易について若干の弾力性を持たせようということで、アメリカですら最近中国に対してそういう弾力性のある政策考えておるときに、これは当然のことであろうと思いますが、せっかく政府ブドウ酒をつぐ、そうすると、たるの底に別なのがいて、こっそり抜いておるというようなことになれば、政府の権威にもかかわることです。共産圏から客が来ます場合に、内政干渉はしないという一札を入れることが従来慣例になっておりますが、韓国アメリカもそうですか、その他、他国の内政に対して過大な発言をする国に対しては、内政干渉しないという一札入国の衝に当たった方から同じように入れてもらいたいほどの気持ちがするわけでございますけれども政府国策できめたことを、そのたるの底を抜くような工作に対しては、これは好ましくないと思うのですが、まず原則的に外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 内政干渉とおっしゃいましたが、アメリカにおいて日本の綿布の輸入を阻止するというような各種の方策が民間やあるいは政府においてとられるというような場合に、日本大使がこれに反抗して、そしていろいろアメリカ国内において反対の勢力に連絡をとって国内で盛んに活発な活動をするというようなことは間々ありましたし、またこれは日本政府としても認めておったところであります。在外の大使がかような行動をするということはむしろ当然じゃないかとわれわれは考えておった。しかしおのずからそれには限度がございまして、今回の金大使がとっておるという行動についてしばしば耳にしておりますが、一がいに向こう側立場というものを無視して、そして日本国内における一定の方針が立っておるのに、それにいやしくも反対するような行動は一切とってはいかぬというようなことは、これはどうも私は少しこの考え方もおのずから限度がある。許される限度というものがやはりあって、それを越えるということについてはもちろん注意をするという必要もありますけれども、そういうことで、ただいまのところ一体韓国大使がどういう行動をとっているかあまり立ち入った調査はしておりませんけれども、概括的にどうも批判を受けるような行動については十分御注意を願いたい、こういうことは一再ならず話してありますので、大体適当な限度を守ってくれるものと信じております。
  14. 帆足計

    帆足委員 政策についての一般的批判というものは必ずしも内政干渉意味しない、私もそう思います。それは相手が共産圏であろうと資本主義圏であろうと同じであろうと思います。言論批判はその国の政府及び個人の自由でございます。しかし、ただいま外務大臣が言われたように、一応の常識的限度を越えて個々の商社に圧力を加えるというようなことになると、一種の脅迫を意味する。正常な商習慣に障害を与えるというようなことになりますから、その限度を越えることは困る、こういうふうに外務大臣は申されたこととして理解できるのでございます。  私がそれに対して御注意を促したいのは、単に韓国大使館だけでなくて、日本の役所の下級官僚が同じようなことをするとしたならば、これはもう官吏服務規律というものがありまして、やはり限度を越えて、たとえば業者貿易を思いとどまらせようとして電話をしたり、また訪れたりするようなことはおかしいと思うのでございます。また入国管理局のほうにも、局長がお見えでございましたら局長のお耳に入れておきたいのですが、管理局の次長に対して、私は同学の者と思って、別に偏見を持っておりませんけれども、聞くところによりますと、非常に一般国民に対する態度がよろしくなくて、そして国策がどうきまろうと、たとえば共産圏との問題について自分は特殊の考えを持っておって反対であるからというような立場で、陳情者や手続をする者に接するということを聞きまして、まことに残念に思っております。こういうことは下克上傾向として、ひとつ法務省において十分御注意を願いたいと思うのでございます。立ち入って詳細を存じておりますけれども、それ以上のことを申しますのは個人に対して傷をつけることになりますから控えますが、下克上傾向がありますことは、まことに遺憾であると思っております。  それから帰国協定継続の問題につきましては、外務大臣すでに御承知のとおりでございまして、四月二十七日の外務委員会におきましても、その前の四月十三日の外務委員会におきましても、外務大臣から、この赤十字が行なっておる人道的事業政治的雑音などのからむことのないように注意して、赤十字の指導のもとに静ひつに公正に行なわれるならば現在の基調を変える必要はないと思うというお話がありまして、またアジア局長並びに正示外務次官からはさらに詳細な政府立場の御説明がすでに四月にあったのでございます。しかるに最近の新聞にしばしばこの大臣の弁明と相反するようなふうにとられる事務当局の談話が発表されました。帰国仕事は、御承知のように在日朝鮮人の持っております法的権利一般在留外国人とほぼ同様でありまして、国に帰りたいときはいつでも帰る権利があるわけでございまして、また、お前はいつ帰るかと聞かれても、北に対しても事情をつまびらかにせず、おおむね南には親戚などがおりまして、そして決断を定めがたい今日の南北朝鮮状況でございます。大部分の朝鮮人諸君は心のうちでいろいろ考えもし研究もしておられましょうけれども、いつ帰るかといわれると明確でない。しかし子供が大きくなったり、景気、不景気の交代があったり、年をとったり、いろいろの環境から、いま日本におる約六十万の朝鮮人から必然的に年に二千人、三千人の帰国者が出る。その帰国の便がないために赤十字船赤十字の旗を立てて便宜をはかっておる、そして比較的円滑にいっておる、こういう状況です。こういうときに、官庁当局の相当責任ある方が実情も調べないで、香港から飛行機で帰ったらよかろうとか、ナホトカ経由貨物船で帰ったらよかろうとか、場合によっては今年一年で打ち切りになるというような印象を与える記事が発表されますと、来年、再来年帰国しようと考えておった人たちに非常な不安動揺を与えるわけでございます。私は、事務当局の方が発言されるときは、やはり当該事項に対する外務委員会会議録ぐらいごらんになって、そして大臣また政務次官の御意見も伺って、その上で今後は発表するようにしていただきたいと思うのでございます。一体、打ち切ったとすれば、打ち切ったあとどうするか。それはやはりもとに戻って赤十字に頼んで、そして帰国の便をはからなければ、国交がある程度正常化し定期船が通う日までは、やはりもとの課題に戻ることは当然でありまして、少なくとも実情を知っておるものであるならば、大体四月の外務大臣並びに正示外務次官の御答弁どおりがおよそ良識であろうと私は思うのでございます。すでに四月に、二回にわたって会議録に、詳細に私が質問し、大臣良識をもって答えられたことをもう一度問いただす必要はないと思うのですが、四月の御答弁から御心境の変化なり内外の状況変化がありましたかどうか、歓送迎に対して多少政治的雑音がありはしないかという公安調査庁からの何かレポートがあったそうですか、これはいずれ本日大臣に対する各同僚議員の御質問がありますから、時間の関係上、大臣御退席後に私は詳細にそういうことがあれば承り、また赤十字にも注意を与えて、あやまちがあればあやまちなからしむることを期したいと思っておりますが、ただいままでのところそういう事件があったことは聞いておりませんし、現地の帰国協力会会長の村田氏という方は、ロータリークラブの会長でありまして、自民党の方で、前市長で、帰国協力人道的事業ということをも考慮して藍綬褒章をそのために、ただいた方でございます。超党派的に比較的よくいっている仕事一つであると思っております。したがいまして、ことさらに雑音をたてる人がいるならばそれは恥ずべきことであって、一、二欠陥があれば、日本赤十字なり新潟県の帰国協力会なり、また中央の協力会に言っていただけば、そういう点は注意するでありましょう。したがいまして、四月から何ら情勢変化はないと思っております。こまかなことはいずれ事務当局に詳しく伺いますから、外務大臣から四月の御答 弁と変わったところがあれば伺っておきたいと思う次第です。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体において私はそう変更すべき現状においては何ものもないと思いますが、御承知のとおり十一月には期限が来るのですね。そしてそのときに、いろいろな意見がございますので、それらの意見を十分に聞いて、そして結論を出すということになるのでございます。その際に、従来はこういうことがなければ香港経由であったものが、北回りの連絡船が就航するというような計画もだんだん近づいておるというような話もありまして、これに関連してこの問題の結論を出す、その出しぐあいが違ってきているのじゃないかというような主張もあるようであります。そういったようないろいろな意見を総合的に調べて、そして慎重に結論を出したい、こう考えております。
  16. 帆足計

    帆足委員 これが最後ですが、基本的基調において大臣の御見解変化がなければ、それで私はけっこうだと思うのです。この問題は、やはり従来約九万に近い朝鮮諸君帰国し得た大きな事業です。帰国ということは、自分の職業をやめ、家屋敷をたたんで国に帰るのですから、一年または二年前ぐらいから多少の準備をしながら、おのずから帰国仕事が整うわけでございますから、来年のことについて不安を与えるような言動を事務当局が、大臣の許可なくしていとも気軽になさるということは慎んでいただきたいと思うのです。ギリシャのことわざに、イグノーランス・ノー・アーグメント、知らないことはしゃべるなということわざがありますが、もし事務次官などが何かしゃべりたければ、少なくとも局長を呼び、また援護局長を呼び、入管局長意見を問いただし、少なくとも赤十字意見を聞き、また私ども長年協力してきた帰国協力会意見等も善意を持って聞かれて、こういう点は情勢が変わったからどうであろうという自然の現実の実情から発したことであるならば、これは有用であろうと思います。しかし五十男の夢をただ新聞に大きく語られたのでは、はたが迷惑いたしますから、夢を語ることはなるべく事務当局では慎んでいただきたい。大臣の夢ならば、これは責任者の夢ですからわれわれは十分尊敬して伺いますけれども事務当局がみだりに根拠なき夢を語って人心を困惑せしめることはやめていただきたいということを、この委員会を通じて厳重に申し上げておきたい。と申しますのは、わが外務委員会におきましては、ときとしては与党、野党がくがくの議論も出ますけれども、また、ときとしては、人道、友情、貿易等の問題につきましては比較的超党派といいますか、円満にいっている委員会であることをわれわれは自負しておる次第でございますから、野党の発言と思って甘くお考えくださらないように、そういうような人道仕事については、与野党ほとんど近い意見を持っておりますことも事務当局において十分心にとめていただきたいと思います。先年この問題がありましたときに、何某という元参事官がおりまして、この人は、この問題について何ら予備知識もなくて相当の発言をして人心を撹乱し、たくさんの人に心配をかけ、その無知ともうまいをもって関係者を大いに感銘せしめた方がおりましたが、いまはほぼ記憶も薄らぎまして、たいへんけっこうだと思っておりますので、またその事件をもう一度思い起こさせないようにしてもらいたい。すなわち、援護局または赤十字または入管等事務当局の人が、良心的に政治的に仕事をして、その仕事を進める上においてこうしたほうがもっと円滑であろうというような議論が出ましたときに初めてそれは参考になるのでありまして、根拠なき夢を語るなかれ、こう申し上げたいのでございます。  時間がありませんから、これは大臣から御答弁しにくいことと思いますけれども大臣次官の志す方向と違うことを事務当局がかってに発言したり行動するような最近の下克上傾向について、ひとつお取り締まりを願いたいということ、これは大臣としては自分のかわいい部下のことですから、しかりおくとも言いにくいと思いますけれども、ここは国会ですから、外務委員会政府の施策を横から監視し批判する場所でございますから、われわれがそういうことを痛感しておるということを申し上げまして、御注意を促し、大臣からほどよい御答弁をいただいておきたいと思います。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御質問でなくて御注意のようでありますから、つつしんで承っておきます。
  18. 帆足計

    帆足委員 つつしんでという形容詞がありますから、趣旨を了としたものと私のほうでも、つつしんで考えまして、あとは事務的な点を質問しますし、穂積君から質問がありますから……。
  19. 高瀬傳

  20. 穗積七郎

    穂積委員 外務大臣にちょっと議事進行について。これは委員長から言っておいていただきたいんだけれども、先ほどの理事会で冒頭にあと二人国際情勢、これはアジアの情勢に限りますが、お尋ねをいたしました後に、私のアジ銀に関する質問に入るという申し合わせになっております。私は冒頭に北朝鮮技術者入国の問題に限ってお尋ねいたしますが、その前に、いまの帆足委員質問に関連して、もう一ぺんちょっと一言だけ確認をしておきたいと思うのです。  いままであなたや外務省、政府関係当局が御答弁になりましたのは、ことしの十一月で期限の切れる帰国協定について、これを延長するという方針について何ら変わらない、変える必要はない、こういう御答弁であったわけです。十一月までの間は変える必要がないということではなかった。一年更新の協定になっておりますから、来年度の協定更新にあたって期限を付すとか条件を付すとかいうようなことはないでしょうねというのに対して、いまのところの情勢では、来年度この協定期限のときの更新にあたっては方針を変える必要はないという答弁であったわけですね。ところが、いま伺いますと、十一月までは変える必要はないけれども、十一月の更新のときには、いろいろな意見があるようだからそれを検討して、期限その他について根本的な変更があるかもわからぬというふうに聞き得る心配があるわけです。そうなると、前の答弁とは根本的にちょっと相違を来たしますから、もう一度その点は確認をしておきたい。私どもの言ったのは、十一月まで変わりませんねと言ったのではないのです。いいですか。更新にあたって、来年以後の協定について、従来の帰国希望者がある間は変更する必要がないという趣旨でお尋ねしたのですから、もう一ぺんそれを確認しておいていただきたい。帆足質問に対する関連で、一問だけ前もってお尋ねいたしておきます。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは帆足委員から質問がありまして私が答えておるのであります。「帰国政策でございますが、その基調を変更する意思はございません。ただこの問題に、どっち側と言えませんが、関係者があまり肩ひじ怒らがして、そしてよけいなことを言ったり、ふるまいをするというようなことからごたごたがときどき起こるらしい。これはあくまでやはり人道的な意味でこの事業を始めたのですから、関係者はごく静粛に行動してもらう、そういうことを希望しております。」こういうことでございました。これはもともと人道的な意味でこの事業を始めたのであって、もしこれがなければおそろしく遠回りをして帰らなければならぬということになりますので、こういうことが始められたわけでございます。ですから、この考え方については、いま申し上げるとおり、この考え方を変更する、その考え方に変更を加えるというようなことはないのであります。ただ、情勢が変わって、もう少し近い北回りの便ができるとかなんとかということになりますと、その当時と違って、だいぶ希望者も少ないというようなことになりますので、そういう方法論の問題になりますが、そういうことでいろいろな説がございますので、そういう点を十分に調査、考究いたしました上で、慎重な態度をもって結論を出したい、こう考えております。
  22. 穗積七郎

    穂積委員 私の質問にまだ正確に答えていただいていないのだが、 つまり帰国希望者が継続をし、それから帰国の方法については、新しく出てきた他の方法よりは従来の方法のほうが本人の便宜のためによりいいという状態が続いておれば、延長については制限を加えないで、期限をつけないで、従来どおり継続延長をしていく、こういう理解でよろしゅうございますね。それはちょっとはっきりしておいてもらいたいのです。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 期限をつけて、そして情勢の推移というものに即応した手を打っていく、こういうことがやはりたてまえになっております。それで、そういったようなたてまえを全然無視してここ当分はこれでいくのだ、こういうことをかりに言ったからといって、その区切り区切りというものを全然無視して、のっぺらぼうな制度というふうに考えられることはどうかと思うのです。でありますから、この十一月に一応の区切りが来るのだから、その区切りに十分に新しい事実というものを総合考究した上で、そして結論をまたつけていく、こういうことなんですね。ですから、そういったような節々のところはやはりちゃんとそれ相当、相応した手順を運んで、そして次の段階に進む、こういうことにしたほうがいいと思うのです。それを、全然そんなことを考えるなというようなことであれば、これはどうも制度を無視した少し行き過ぎた議論でございますから、やはり節々に来た場合には、それ相当な考慮をめぐらして、そして次の段階に進んでいく、こういうことになると思います。
  24. 穗積七郎

    穂積委員 私の育ったのは、私どもも初めからのっぺらぼうに半永久的に、もう時期が来たらすぐ自然延長をやれということなんか一言も言ってないのです。そうではなくて、協定が一年更新になっておるという精神はちゃんと理解しておりますよ。ところで、私どもがなぜこれを心配をもって言うかということは、次に私がお尋ねする技術者入国についてもそうです。日韓条約のときにあなた方は何と言いましたか。日韓条約を結ぶことによって日本と北朝鮮との関係を悪化する、阻害する、閉ざす、あるいはまた北朝鮮のオーソリティーを無視するというようなことは絶対いたしません。そしてまた個々のケースにつきまして、いろいろな帰国問題あるいは貿易あるいは文化、技術の出入国問題につきましてケース・バイ・ケースで要請をいたしましたときにも、日韓条約があるから相手が不当な誤解を招いてはいかぬからしばらく待ってもらいたい、日韓条約が済んだならば必ず公平、平等にやる。国交の回復については、池田さんはそれも将来は考えなければならぬだろうというようなことまで言われたわけですが、現佐藤内閣でも北との関係を阻害する、日韓条約ができたためにそれを阻害する、分裂を固定化する、そういうようなことは毛頭考えていないのだ、政治的なこと以外については、南北関係は経済、文化、人事の交流については、公平、平等にいずれの国とも仲よくやっていくつもりだ、そういうお題目を唱えて国民に向かって日韓条約の説得をしたわけでしょう。ところが韓国のほうは、そのときわれわれが指摘したように、日韓条約ができれば日本政府と北朝鮮との関係は一切、政治関係も経済、文化、人事の交流ももうシャットアウトするのだ、阻害するのだということで宣伝をしておった。それが今度国交回復いたしまして、そして南から不当な、これから触れる干渉にしましても、それから政府に対する申し入れにいたしましても、北の存在、北との人事の交流、経済、文化の交流も一切遮断すべきである、朝鮮半島全地域においては、韓国政権並びにその支配下にある国民とのみ交流を深むべきだ、そういう説明をしておるわけです。その食い違いがいまあらわれてきておるから、したがって帰国協定についても、日韓条約妥結後のそういう政治情勢にわずらわされることはありませんか、ありますかということを念を押して聞いておる。韓国ではいろいろなことを言っておるようだけれども、われわれは日本政府とわれわれ国民との関係国会との関係ですから、それについてただしたところが、更新にあたっては、いまのところ、そういうことの政治的な影響は何ら受けない、差別はしないということですね。もとよりいまおっしゃったとおり、だから私はあげたのです。いいですか。帰国希望者がなくなったら、そんなものはもうナンセンスですから、事実上その協定は不要になります。それからまた、帰国の経路、方法についても、直行船によらずして他を回ったほうがより安全であり、より低廉であり、より便利であるというようなときには、それは双方で話し合ってそれの方法を検討することは当然のことなんです。それであなたのほうからあげたのですよ。私は無条件で永久に自然延長しろというようなことを要求したり、そういう答弁をしたとは言ってない。いいですか。いまあなたのあげたのは、帰国希望者がいま継続してあるかないか、それから第二は、帰国の方法、経路についてより便利なものがあるかどうか、それだけですよ。それだけの条件が変わらないならば、この十一月の更新期にあたって、そういう条件、期限の切りかえはしないという意味でございますねと念を押しておる。――ちょうど藤山さんが見えました。これは藤山さんの外務大臣中のただ一つの国際的に評価された人道立場による公平な功績です。藤山さんは安保条約があって手がよごれておるけれども、実はこの帰国協定をやったという立場で、自主性を尊重され、人道的なヒューマニストとして理解され、そして最近は、アジア・アフリカ問題についてはひとつ政治的な偏向を来たさないでやっていこうというようなことで藤山さんが評価され、期待されておる大きな一つ事件なんです。その精神で間違いありませんね。外務大臣、そういう意味ですよ。あなた、ことばをごまかしてはぐらかしちゃいけませんよ。
  25. 高瀬傳

    高瀬委員長 穂積君に一言申し上げます。藤山経企庁長官は三十分たったら退席いたしますから、そのつもりで御質問をお願いいたします。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さっき申し上げたように、人道意味においてこの制度が開始されたのでございますから、その基本的な考え方はもちろん変更いたしません。変更いたしませんけれども情勢変化によっていろいろ考えなければならぬことが出てきた場合には、そういうことも十分に考慮に入れて結論を出す、こういうことであります。
  27. 穗積七郎

    穂積委員 その情勢変化に政治的な問題は入りませんね。日韓間の政治的問題は入りませんね。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはもともと政治的な関係を全く考慮しない、もっぱら人道的な考え方で、そしてそれを事実に当てはめてこの制度がしかれたのですから、情勢変化というのは、政治的な考慮は入れない、全く純粋の情勢変化だけを十分に考慮して、そしてこの問題を処理したいと考えます。
  29. 穗積七郎

    穂積委員 議事進行でちょっと委員長を通じて両大臣と御相談ですが、藤山さん、あなたはあとから見えたものだから、ちょっと理事会の申し合わせを申し上げておきますけれども、きょうは外務大臣に対して冒頭に国際情勢について、私が二人目で、あと二人質問をして、問題のポイントは一問ずつ限っております。それが済んだあと、私がアジ銀に対する総括質問をする。そのときには、本来言えば参議院でやったように、大蔵大臣、通産大臣、農林大臣並びに経企長官においでいただいて伺いたい。それがきょうは参議院の予算の関係で三経済大臣がお見えにならないならば、藤山さんは調印者でもあるし、そうして同時に日本経済全体の計画の上に立っておる、いわば経済的な総理大臣であるから、そこで経済各大臣を代表して藤山さんだけと、これは政府に対する最大の譲歩です。与党の方々が熱心に言われるものだから、ぼくもついほだされて、それで妥協したわけです。そこで私は、実は最初の約束どおりこれから国際情勢について、特に緊急な朝鮮技術者入国問題について外務大臣質問しようと思っておったら、あなたが見えて、それでやるから、順序を変えることも考えられるわけですね。ところが、外務大臣がそれで一緒に逃げていってしまうと、私の緊急質問ができなくなる。――逃げない。――それでは順序を変えまして、他の質問者の了解を 得て、先に藤山さんのおられる間、どうせこれだけじゃ済みませんけれども、アジ銀に関する経過並びに本質についてお尋ねいたします。  衆議院におきまして、私当時ちょっと病気をいたしまして欠席いたしたので、私の質問はしなかったわけです。それがもう一ぺん返ってきたものだから、私が最初に質問させていただきますけれども、他の質問者の趣旨とダブらないようにするつもりでございます。もしダブってすでに答弁済みであるということでありましたら、それはもう答弁済みだから、何月幾日の会議録を見てくれと言われれば、私はそれで協力しますから、その意味で……。  最初にお尋ねいたしたいのは、このアジア開発銀行という経済機関は、純然たる金融機関と理解していいのか。それだけではなくて、日本政府の、あるいは他の各国もそれぞれ自分の方針は持っておるわけですが、アジア外交政策のベースの上に乗って運営さるべき経済金融機関であるのか、これは金融機関であることは間違いありませんから、したがって、その性格ですね、これは一体どういうふうに理解したらよろしゅうございましょうか。金融機関であると同時に、日本政府のアジア外交政策を発展させるためという立場をもこの基本性格の中へわれわれは理解すべきでございましょうか。そうではなくて、純然たるコマーシャルベースによる金融機関であると理解すべきかどうか、その点をちょっと伺いたい。
  30. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アジア開発銀行はエカフェが中心になりまして、エカフェの会議においてこの設立が計画されたものでございまして、全くアジアの開発のための純然たる金融機関として出たわけであります。日本が出資いたしますのは、アジアのそれぞれの国のそうした意欲に対して、われわれも同じアジア人として協力していく、こういう立場でございます。
  31. 穗積七郎

    穂積委員 外務大臣にその問題についてお尋ねいたします。新聞報道その他外務省関係者の談話発表等を見ますと、純然たる金融機関であると同時に、わが国のアジア外交政策によって裏づけられるべきものである、その精神というのは、言うまでもなくエカフェの精神と合致するものではあるけれども、そういう理解を強調しておられるわけです。特にこれからあとで、きょうはそこまでいかぬと思いますけれども、機構、人事の問題について、国内においては、大蔵省、外務省、通産、農林、それらについて、それぞれの立場による意見があるようです。それで、条約については、これは外務省が窓口になるべきでございますし、今後の運営にあたっては、日本だけでやるわけではなくて、総裁をたとえ日本から出したとしても、アメリカその他諸国との関係ですから、いわばそういう大きな政策の路線、運用の路線については、外務省の言うように、やはりアジア外交政策の路線のぺ-スの上に乗るものでなければならないという理解のほうが私は正しいのではないかと思う。外務省の主張のほうが私は真実を伝えておるのではないかというふうに考えるのですが、外務大臣いかがでございますか。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外務省のどういうところの意見がどういう形式で発表されておるのか知りませんが、これはあくまでエカフェのきめた方針に従って設立さるべき国際金融機関であって、日本がかってに日本独自の外交政策によってこの運営の方針を左右し得るものではない、こう考えます。
  33. 穗積七郎

    穂積委員 あなたは話を飛ばしていかぬですよ。このアジア開発銀行の運営は、総裁だけがその総裁の属する自国の外交方針でかってに運営できるものではない。役職員の中にも、副総裁もあれば、それから理事会もある。それから運営全体については総務会もあるわけですから、そんなことはわかっている。そんなことを聞いているのじゃない。日本政府のこの金融機関に対する取り組み、基本的な態度、理解、日本国民がこれを支持するかしないかをきめるための基本的なものとしては、アジアの経済外交政策というものが日本立場に立っての基本的な路線でなければならない、そういうことなんです。それが実現するかしないかは別ですよ、各国おのおの自国の経済外交政策というものは持っておるわけですから。それが最終的に銀行として意思を決定する場合にどういうふうになるかということを私は聞いているのじゃない。日本政府としてはどうか、日本国民としては、この問題は日本の経済外交政策の国益に沿っておるものであるかどうか。
  34. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本がエカフェの加盟各国と協力すること自体、私は日本外交の対アジア外交における非常に大きな貢献だと思います。
  35. 穗積七郎

    穂積委員 椎名さん、あげれば切りがありませんけれども、打ち消すべからざる正確なものとしては、実は外務省の所管の出版物の中にちゃんとそう書いてある。経過から見ても、その性格、目標から見ても、これは純粋な単なる金融機関ではない。政策的な非常なあれが加わることが当然である。そうしてまた事実がそういうふうな経過をたどっておる。そうしてそこで着目すべきものは、これはアジアだけのものではなくて、南北問題に対する先進諸国の外交路線、政策路線にのっとるべきものである、こういうことがちゃんと書いてあるのですよ。その解釈を私は正しいと思うのだ。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 エカフェのきめた方針は、要するにアジアにおける後進国の経済的な開発を助長するということにあるわけです。日本のアジアに対する外交政策の重要なる項目も全く同じことでございます。でありますから、その限りにおいて、日本の対アジア外交というものを遂行する上において、このアジア開発銀行というのは非常に助けになる、こういうことは言えると思います。
  37. 穗積七郎

    穂積委員 エカフェ、エカフェといって、あるいは国連、国連といって、国連を隠れみのにして何もかもその中に逃げ込んで、政治的な目標なり性格というものをはぐらかそうとしておられる。そんなひきょうな態度はやめたほうがいいです。そういうことを言っておるから、かえって東南アジア諸国から誤解を招いたり、あるいは新植民地主義といって警戒されたりするのです。たとえば、アジ銀の問題を起こすに至りましたのは、条約がとっこつとして出てきたものではない。その背景をなしますのは外交政策、特に問題になるのは日本アメリカその他ヨーロッパの先進資本主義国の最近の経済動向というものが大きな背景になっておるわけですね。そこで出されたものは、過剰生産による恐慌、潜在的恐慌です。表面にあらわれておるものは不況段階ですけれども、そのときに出ておるものは、言うまでもなく、まず第一が、先進国間における自由化の問題、それから第二が東西貿易の拡大の問題、第三が後進国すなわち南側との経済、購買力の育成並びにそれに対する拡大の問題、こういうことでそれは一致しておるでしょう。ところが現実に行なうことになりますと、これは日本アメリカ日本ヨーロッパ諸国との間においても、それぞれのナショナル・インタレストによる違いは出てくるわけですね。先ほどあなたがお話しになったように、近い話が第二の目標である東西貿易について、中国との貿易拡大について、日本日本アメリカアメリカ、そこに食い違いがあったって何ら心配はない。われわれはアメリカの方針に影響を受けたり、チェックされたりしないで独自の道を行くんだ、そういう意味東西貿易問題は日本立場に立って取り上げられておる。技術者入国でも輸銀の問題でも何でもそうです。したがってそれは当然でしょう。そういう意味なんです。抽象的、包括的に私は伺っておるのではないのです。つまり東南アジアのおくれておる経済を引き上げるために開発し、そのためにわれわれが協力をするという抽象的なことを私は聞いているのではない。そうではなくて、その中における日本の態度、日本の目標は何ですかというのです。アメリカアメリカヨーロッパヨーロッパ、その違いというものはおのおのあるでしょう。抽象的なことばでは一致しておっても、全部態度が違っておるのだ、この設立の経過の中では。参加する、しないから、もう分かれておる。エカフェに参加しておる国でも参加していない。それはなぜかといえば、ナショナル・インタレスト、すなわち自国の経済外交政策立場の上に立って、参加すべきものかすべからざるものか、参加しても幾ら拠出するかどういう人事を要求すべきものか、全部違っているじゃありませんか。日本はそういう抽象的なことばでこの機関を理解すべきではなくて、日本は外務省の指摘しておるように、客観的に見て、金融機関ではあるけれども、無性格、無目的な――無目的というか、日本国民立場に立ってですよ、そういう抽象的な問題ではなくて、日本経済外交の路線に沿ったものでなければならない。そういう性格が織り込まれてきておる。そういうふうにわれわれは理解しなければならない。今後の運営についても、それを注意しなければならないとして強く主張しておるわけです。いかがですか。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共貿易については、日本日本のやり方、アメリカアメリカのやり方というものは許されるわけです。しかし、同じアジア開発銀行という一つの銀行を、日本日本の思うとおりにやる、アメリカアメリカの思うとおりにやる、こういうことでは一つの銀行じゃとても受け付けられない。でありますから、そこはやはり最大公約数で、いろいろアメリカアメリカ意見があるだろうし、あるいはその他の域外国は域外国の意見があるだろう、あるいはまた東南アジアの低開発国にはまたそれぞれの意見がある。そういう場合に一つのアジア開銀として動いていく場合には、それを…(穂積委員「そんなことを聞いているのじゃない、日本の態度を聞いている」と呼ぶ)ですから日本の態度は、違っているからといって銀行は一つなんだから、最大公約数で大いに協議をして、ちょうど中庸をとっていくよりしようがない、こういうことです。
  39. 穗積七郎

    穂積委員 そんなことは聞かぬでもわかっている。国会だってそうですよ。おのおのの政党の意見があるので、そのとおり思うように国会全体がいくものじゃない。そんなことぐらい言わぬでもわかっている。  私の聞いているのは、日本政府並びに国民が、このアジ銀というものを理解するとき、受け取るときに、これは日本の外交政策路線に乗って運営されるという安心感があるかないかということた。それを聞いておるのです。そうでなければ、あなたのようなことを言っておれば、おれには何の方針もない、みんながきめたとおりついていくということになれば、これは言うまでもなくアメリカの方針に追随することを証明しておるにすぎないじゃないですか。何を言っているのですか。とぼけないで、はっきり答弁してください。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何を聞いているかよくわから汚かった。――それで結局やはりアジア開発銀行にはそれなり一つの目的があるのでありますから、それに沿うた場合にはこれを大いに活用する。それから日本の外交政策でこれからはみ出すようなことがある場合には、これはどうも使いものにならぬということになるだけの話なんです。
  41. 穗積七郎

    穂積委員 だから日本の外交政策というものはその基本の路線の中にあるのだということですね。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の外交政策というものを具体的にくだいていくといろいろな形があらわれろと思いますが、その場合にアジア開銀にふさわしいものだけはこれを活用することができるだろう。
  43. 穗積七郎

    穂積委員 つまらぬことでいつまでもかかって、あなたの責任ですよ、私は早く済まそうと思っているのに、あなたは問題をはぐらかしてわざとあんなとぼけたようなことを言っているから。簡単なことです。あなたの部下がちゃんと文書で発表しておるとおりですよ。  次にお尋ねいたしますが、これは事務当局でもけっこうです。十億ドル援助のジョンソン構想 は、その後どうなっておりますか。
  44. 吉野文六

    ○吉野説明員 一般にジョンソン構想といわれておりますが、具体的にはそのようなこれがジョンソン構想であるといって打ち出されているよなたアメリカ政策は、われわれはいままで知りません。
  45. 穗積七郎

    穂積委員 ジョンソン構想と全然関係がないということだし、ジョンソン構想は単なる無責任なアドバルーンにすぎない、あるいは宣伝にすぎない、こういうことでございますね。具体化する動きはないということですね。
  46. 吉野文六

    ○吉野説明員 具体的にアメリカ政策としてこれがジョンソン構想の一部であるというように指摘されて行なわれているような構想なり施策は、われわれいままで聞いておりません。
  47. 穗積七郎

    穂積委員 私は政府のように調査機関を持っておらぬからはなはだ寡聞ですが、一つの例を引きましても関連が出ておるわけですね。この授権資本の二億ドル以外に、もうすでに、アメリカ政府は他国の協力を条件にして信託基金一億ドルを提供する用意があるということを言っておる。その信託基金一億ドルというものは国務省予算ではなくて、ジョンソン構想の中から出すのだ、この前の払い込み資金二億ドルとは違うのだということは、私どもいろいろな資料で調べたところでは明瞭になっている。もうすでに関連が出ております。その事実は御存じでしょうか、どうですか。御存じであるとするならば、その事実とそれに対する政府の理解を説明していただきたい。
  48. 吉野文六

    ○吉野説明員 アメリカが特別信託基金に金を出してもいいというような意向を表明したことは間接には聞いておりますが、それがジョンソン構想の一環であるのかどうかということは、われわれとしてはいまだ聞いておりません。かついずれにせよ、信託基金に金を出すかどうかということは、いまだにアメリカ政府としてもきめていないと思いますから、この問題は具体的な形ではわれわれは何ら聞いておりません。
  49. 穗積七郎

    穂積委員 優秀な官僚にしてはちょっと不勉強ですね。これはもう声明している。アメリカ政府当局の説明では二つの条件がついている。一つ国会承認を求めることが条件である、第二はアジ銀に参加する他国の先進国の協力があるならばという二つの条件で、その場合には当面一億ドルを信託基金に提供してよろしい。すなわち普通貸し付け以外のいわゆるソフトローンの中でですね。それは一〇%の特別金融とは別ですよ、いわゆるひもつき基金となるやつだ。これを提供するということをもうすでに公然と発表しておりますよ、このアジ銀の定款の中で……。
  50. 大和田渉

    ○大和田説明員 ただいま穂積委員がおっしゃいましたように、アメリカとしては他国が同程度出すということを条件に一億ドルまでは出す用意があるということを言った事実はございます。ただ吉野参事官の言われたのは、その一億ドルがいわゆるジョンソン構想の十億ドルの一部であるかどうかということについては何ら触れられていないということのために、一億ドルもし他国が出せば出す用意があるというだけであり、同時に、したがってまだ他国がそういう意思表示をしておりませんものですから、したがって予算上の措置としても一億ドルというものをすでにイヤマークしたとか、あるいはその一億ドルが十億ドルのジョンソン構想の中の一部であるという式のことは何ら言われていないという状況であります。
  51. 穗積七郎

    穂積委員 私が手にした資料によりますと、二億ドルは国家予算の一般予算の中で来る。それから信託基金はジョンソン構想の資金の取り扱いとして出すということまで発表しておりますよ。日本政府に通告があったか、他の外国に通告があったか、あるいはアジ銀のいままでの準備会あるいは諮問委員会等において発言したというのではないが、そういうことの重大な発言をしておるのです。
  52. 大和田渉

    ○大和田説明員 そのような発言あるいは発表があったという事実は承知しておりません。
  53. 穗積七郎

    穂積委員 それは事実があったのですからよく調べてください、いいですか。よく調べて国会に報告をしてもらいたい。いいですね。
  54. 大和田渉

    ○大和田説明員 はい。
  55. 高瀬傳

    高瀬委員長 穂積君に申し上げますが、藤山国務大臣は二時二十分前後には退席いたしますから、そのつもりで質問を続行してください。
  56. 穗積七郎

    穂積委員 私は最大の協力をしているのです。政府が都合が悪ければ一ぺん行ってきて、また夕方やってもいいのです。
  57. 高瀬傳

    高瀬委員長 どんどん質問を続行してください。そのつもりで……。
  58. 穗積七郎

    穂積委員 続行しますよ、大事なことですから。藤山さんは純粋なる金融機関にすぎないと言う。大蔵省もそういう解釈だ。それで外務省は違うのだから、そこが大事な点ですよ。しかも藤山さんは交渉に当たった調印者の責任者じゃありませんか。ジョンソン構想というものは具体化のきざしはないということになると、ジョンソン構想は小出しにして、まずアジア開発銀行によってその構想を発展する可能性があるという理解をしたから、それでアジ銀をプッシュし、しかも信託基金は当座一億ドル――一億ドルとは限っていない、一億ドルでも二億ドルでも日本が出すならば出してもよろしいという意味でしょう。他国というのは、まず第一に上がってくるのは日本にきまっている。日本を道連れにすることができるならば、この信託基金、すなわちジョンソン構想をこちらへ合流さしてもいいということなんです。そういうふうに、われわれは、いまの質疑の中で明瞭になったと思うのです。  そこで続いて、ちょっとこれに関連いたしましてお尋ねいたしたいのは、いままで私どもの同僚の議員の方から、軍事目的に使われはしないか、政治的偏向を生じはしないか、アメリカの指導権に日本が追随する心配はありはしないかということが指摘されました。それに対して全然そういうことはないということであったわけですが、ここでちょっと今度は外務省にお尋ねいたします。  実はジョンソン構想が発表されましたのは、御承知のとおり昨年の四月七日でございますね。彼が大学における演説で明瞭にして、これは大きなベトナム戦争の遂行中でありましたし、拡大政策を進める時期でありましたから、朝日新聞のごときは、いみじくもドンキホーテ・ジョンソンが右手に原子兵器を持ち、左手に十億ドルのドルを下げてアジアをひとつ押さえるのだというカリカチュアを発表されたことがあった。そういう意味でこのジョンソン構想というのは非常な政治的なショッキングな事件であったわけですね。これは関係がないと言っているが、私の調べたところによると、ジョンソン構想とは無関係にアジ銀というものは出てきたのだといって抽象的なことばで政府は言いのがれをしておる。ところが、これはもし間違っておったら、先ほど言ったように、われわれは野党で調査機関を持っていないから、不十分な資料で間違いがあったら指摘していただきたい。私の調べたところでは、一九六〇年エカフェ総会でこの問題がアイデアとして話題にはのぼったことはあるが、その後全く立ち消えになってしまっておる。続いて六三年のマニラの第一何アジア経済協力閣僚会議でもう一ぺん話題にのぼった。これはまだジョンソン構想前ですね。それから同じ年の十月にバンコクにおける専門家合議、ここでもちょっと問題になった。ところが急速にやろうということになってきたのがジョンソン声明の発表一月前の昨年の三月です。そして続いてこれほど長く水浸しになって忘れられておったアジア開銀というものが、昨年の十月のバンコクにおける各国の政府代表会議の準備会でこれが取り上げられた。そして十一月、それから藤山さんが行って調印、この経過とスピードを見ると、ジョンソン構想というものが非常に関連をする。すなわちアジアにおけるアメリカの侵略戦争のタイミング・スケジュールと合わされておる。主観的にはどうだこうだといって、政治というものはおよそ客観的にこれを評価、理解しなければなりません。そしてさらに私は事実をもって指摘しておきたいことは、ジョンソン構想の発表がありました前後に、これは私の調べたのは、この問題については朝日新聞の記事でございますが、アジア閣僚会議でこの問題が出まして、そして日本は、外務省としてはこのジョンソン構想を支持する態度を明らかにしたわけですね。それからさらに重要なことは、同年の――昨年の十一月です。ワシントンにおける日米合同委員会でこれに関する日本構想を示しておる事実が報道されております。おそらくこれは事実だと思う、信頼すべき報道機関の報告でありますから。それから六四年、ここで一つの大きなイレギュラーな動きが出ておる。すなわち、いま私が言いましたようなジョンソン構想が発表された昨年の四月から、この問題が急速にスピードアップされました昨年の秋までの中間ですね。すなわち昨年の三月にウエリントンにおけるエカフェの総会で、これは私の見ましたものでは三月十八日でありますが、アメリカ代表がアジア銀行に対してはアメリカは出資をしないという態度を表明しておる。これは明言しております。それですぐ追いかけるようにジョンソン構想が発表されたわけだ。そしてアメリカ政策が急転換をして、これからあとは藤山さんにその交渉の経過の中の事実にのっとってお尋ねいたしますが、日本の態度がここで急速に積極的になり確定的になってきた。こういういきさつがあるわけです。しかも出資額についても、アメリカの要望によって二億ドルずつという抱き合わせがここで提案をされたわけです。そのときがすなわち北爆拡大のときであります。これは私は主観的な解釈じゃありませんよ。事実であります。  以上区切りましてお尋ねいたしますが、以上の政治日誌、スケジュールの中で、私の調べたものに違ったところがあったら指摘していただきたい。そうでなければ事実を確認をしていただきたい。
  59. 滝川正久

    ○滝川政府委員 ただいま先生のおっしゃいました年代を追っての事実でございますが、多くの点において間違いはございませんが、私の承知していない点もあります。しかし知っている点で、若干必ずしも一致しない点があるように思います。それは、ジョンソン構想が発表されて日本が積極的になって出資をきめたというふうに断定されたようでございますが、さっきお引きになりましたウエリントン会議では、アジア開銀を設立することにつきまして数カ国の共同提案で一つの決議ができたわけでございます。その際には日本は共同提案国になって、設立側に回っておったのでございます。その際はアメリカは、先生もおっしゃいましたように、必ずしも協力的でなかった。しかしそれは反対であるというのではなくて、域外の問題であるから、まず域内諸国が賛成して盛り上げてくるならば考えようというかっこうで共同提案国にならなかったわけでございます。それが三月のことでございまして、こえましてその翌月にジョンソン構想なるものが初めて発表になりました。したがってジョンソン構想が発表になったから日本がそれに踏み切ったという断定はどうかと思っております。
  60. 穗積七郎

    穂積委員 ウエリントン会議の報告の私の見たものでは、アジ銀を設立することに反対はしない。そういうことを私は言っていませんよ、アジ銀に反対したなんということは言っていない。アジ銀に参加し、しかも出資をするかしないかについて、出資をするとは言っていない。出資をしないということを明言しておるわけです。どうですか。
  61. 滝川正久

    ○滝川政府委員 その点は先生のおっしゃるとおりでございます。
  62. 穗積七郎

    穂積委員 あなた、野党の資料というものを軽べつして、いまはきめられぬといったというような、いわば棄権じゃなくて反対なんだ、そういう大事な事実を曲げて国会で報告してはいけませんよ、これは重大な事実でございますから。  そうしてみますと、六四年三月のエカフェ総会で大体そういう共同決議をして具体化しようとした。ところが日にちでは半月ばかりジョンソン構想の発表がおくれている。ところがその後に急速に出てきたものではないわけですね。これは北爆と、北爆エスカレーションと、それからエスカレーション政策をはっきり確認した時期と、そして事実行動で拡大し出したときと、それからジョンソン構想にかわって急速にアジ銀に積極的な態度をアメリカがとってきた時期とは一致しておるわけですよ。
  63. 高瀬傳

    高瀬委員長 藤山国務大臣どうぞ……。
  64. 穗積七郎

    穂積委員 それを言うのです。一九六〇年なんて、一九六〇年というのは話題が出ただけで立ち消えになっておる。――藤山さんは答えられたいらしいが……。
  65. 高瀬傳

    高瀬委員長 御都合があるでしょう、御退席になってけっこうです。
  66. 穗積七郎

    穂積委員 そうじゃない、御答弁でしょう。
  67. 高瀬傳

    高瀬委員長 退席されてけっこうです。答弁は向こうの滝川君。
  68. 穗積七郎

    穂積委員 それじゃちょっと待ってよ。委員長、約束しておいてよ。金曜日に十時からこの継続をやりますからね。十一時に総理が来て、総理に対する総括質問をこの問題についてすることになっている。それで私は、きょうあとは外務大臣にやります。ですから委員長、約束しておいてもらいたい。
  69. 高瀬傳

    高瀬委員長 その点はいずれ後刻の理事会で決定いたします。
  70. 穗積七郎

    穂積委員 いやいや、ちょっと待って。約束しておいてもらいたいのは、(「理事会で」と呼ぶ者あり)――聞いておるんだから要らぬことを言うな。
  71. 高瀬傳

    高瀬委員長 いや、理事会で決定いたします。
  72. 穗積七郎

    穂積委員 藤山さんはきょうの向こうの参議院が済んでからでもよし、それからどうしてもできなければ、それが望ましいけれども、できなかったら金曜日の十時に出てきてくださいますか。
  73. 高瀬傳

    高瀬委員長 いま質問したければ、いまやってください。
  74. 穗積七郎

    穂積委員 だって、もう立つ立つというから、それで聞いておる。
  75. 高瀬傳

    高瀬委員長 いや、ほかのことを質問しておられるから……。
  76. 穗積七郎

    穂積委員 ほかのことじゃない、関連してそれを聞いておいてもらわなければ困るんだ。
  77. 高瀬傳

    高瀬委員長 藤山国務大臣質問がないと思ったから、委員長はそういうふうに申し上げたのです。
  78. 穗積七郎

    穂積委員 そのどっちがいいでしょう。
  79. 高瀬傳

    高瀬委員長 いや、ここで一問で済むんなら、いまやっていただいてけっこうです。   〔藤山国務大臣「きょう、これから参議院でまた米価の問題があるんです」、穂積委員「それじゃ金曜日にお目にかかりましょう」、藤山国務大臣「しかし早く終われば、あるいは出てきてもいいんですけれども参議院の予算委員会が……」、穂積委員「それじゃ金曜日にしましょう。金曜日どうですか。」と呼ぶ〕
  80. 高瀬傳

    高瀬委員長 理事会できめます。――穂積君に申し上げます……   〔穂積委員「あなたが調印者なるがゆえにちょっと質問がある」と呼ぶ〕
  81. 高瀬傳

    高瀬委員長 いや、直接国務大臣との話し合いはやめていただきたい。いずれ後刻の理事会で決定いたします。   〔穂積委員委員長横暴だよ」、藤山国務大臣「いずれにしても、もう一ぺん出てまいりますから」と呼ぶ〕
  82. 高瀬傳

    高瀬委員長 委員長にまかしてください。どうぞ。――穂積君質問を続行してください。   〔穂積委員委員長は審議妨害してはいかぬよ」と呼ぶ〕
  83. 高瀬傳

    高瀬委員長 いや妨害ではありません。当然のことです。
  84. 穗積七郎

    穂積委員 それでは藤山さんにこれからちょっと交渉の経過についてお尋ねしようと思いましたけれども、それは次の機会に譲りまして、外務大臣に、このアジ銀の経過で外務省のほうで理解しておられる事実を最初に確認をいたしましょう。  これは実は今度のアジ銀設立の交渉の経過で非常なイニシアチブというか、リーダーシップをとったのはエカフェのウ・ニュン事務局長がこの協定の案をつくったり、それからいろいろな提案したり、中心になっておる事実がわれわれの調べたところでは明らかになっております。そうしてその中で非常に不可解というか政治的に不当だと思われる、異常だと思われるいろいろな事実があらわれてきております。  まず第一は、この問題は本来いえば、政府の御説明によれば一九六〇年に提案されたものであって、そして六五年まで五年間の長き月日を経ておる。真実それがあるなら、続いておったとするなら――私どもこれは継続性はなかったと思いますよ。自主的な継続性はなかったと思うが、そういうふうな理解で見ますと、異常な感じを持ちますことは、本来いえばこの問題は、諮問委員会という機関がありましたから、これを通じて実は慎重に審議をして、そして参加国をより多数にするために、そして政治的偏向をなからしめるために東西あるいは南北の参加国を説得をし、それでそれらの一致するような案を慎重に討議するのが当然だと思うのです。ところがそれは全く私の調べたところではおざなりでございまして、そうして昨年十月にあった各国政府代表者会議でほとんど十日足らずの日にちの間に、いま申しましたウ・ニュン事務局長のプロモートによりまして、深い討議も経ないできめられておるわけですね。同時にさらに異常なことは、本店の所在地までがここできまっておる。こういうふうに諮問委員会で――専門委員会でしょう。金融専門委員会ですね。諮問委員会じゃない。金融専門委員会で決定されておる。こういう進め方をしておるわけです。ということは、この事実を見ましても、アジアの外交情勢国際情勢が非常な影響を与えておるという事実は、これはネグレクトするわけにいかぬと思うのです。そういう理解でよろしゅうございますか。
  85. 滝川正久

    ○滝川政府委員 お答えしなければならない点が二、三点あると思いますが、まず第一に、さっき私の発言があるいは誤ってちょっと言い違っておったかと思いますけれどもアメリカが出資しないと言ったわけじゃございませんで、出資するということはコミットしなかったのですが、出資しないということを言ったわけでもございません。これは訂正さしていただきます。  それから第二に、これは急に最近になって具体化したんではないかというお話でございますが、いま先生がお聞きになりましたような経過で、まあ六〇年のは立ち消えになりましたけれども、六三年以降は実際にその計画がございまして、御指摘の諮問委員会なるものもできまして、事実上相当の時間をかけてやっておったわけでございます。そしてこれが具体化しましたいきさつにつき ましては、各国がこれをいろいろ自国の立場から検討してだんだん態度がはっきりしてきたということもございますけれども、同時に五九年に米州開発銀行がすでにできておりますし、六四年にはアフリカ開発銀行が設立されたというような事情もございまして、具体化が急がれたというふうに理解しております。  それでもう一つは、所在地の問題が委員会段階できめられたというような……
  86. 穗積七郎

    穂積委員 委員会でございません。金融専門委 員会です。
  87. 滝川正久

    ○滝川政府委員 金融専門委員会できめられたというような御指摘だったと思いますが、これはアメリカその他の域外国が入っていない域内国の委員会でございます。そこできめましたのは場所をどこにきめるかということの手続でございまして、どこへ持っていくかというような、そういうようなことではなかったわけでございます。
  88. 穗積七郎

    穂積委員 これはアジ銀の政治的、経済的背景を明確にするために非常に大事です。言いかえれば、なぜこういうことを聞いておるかということは、このあれがエカフェの隠れみのといたしましてアジアの戦争の軍事的目的のために利用されたり、あるいは反共強化のための政治的偏向に利用される心配が、これは取り越し苦労ではないということを証明するための重要な事実として私はお尋ねしたわけです。  まだありますけれども、いま毛利委員からも御注意がありまして、藤山さんが見えたものだからついアジ銀に入ったわけですが、これから国際情勢質問を切りかえます。私の分は朝鮮技術者入国問題、それであと何か外務大臣伺うと時間がないし、続いて竹本さんと川上さんが国際情勢について一問ずつお尋ねになるそうですから、敬意を表して早く済むように私もいたしますし、外務大臣答弁を明確にしていただきたい。  まず第一にお尋ねいたしますが、朝鮮技術者入国問題に限ります。その後、これはどういうふうになって、政府の御方針、これは外務大臣に申し上げるまでもなく、私どもこの問題をやるべきことが国益に合致するという立場で、そしてまた日韓条約審議中の政府の約束にも合致するものであるということで、あなたにきらわれるほどあるいは公式にあるいは非公式に幾たびか問答をし、お話をしたわけです。そうして先週末に政府はこれの許可をする原則を確認をされた。そして橋本官房長官を通じてわれわれに御連絡をいただきましたのは、金曜日の次官会議でそれを決定をして、事務当局の意思統一をした後に、来週早々――一昨日です、月曜日には許可を出すつもりだということを政府を代表して御答弁があったわけですが、不幸にしていまだにそのことが停滞をして、どこに原因があるかわかりませんが、許可がおりていないわけですね。それで、その後の実行はどういうことになっておるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  89. 八木正男

    ○八木政府委員 北鮮技術者入国を認めるという御方針が先週の金曜日にきまりまして、大臣からそのための事務手続を進めろという御指示をいただいて、いま現に私のところでやっておりますが、御承知のとおり国交未回復の国の国民入国であり、しかも北鮮から経済関係での入国というのは今度が最初でございますので、われわれとしても十分に慎重にやっております。まず三人の人、その人について個人的に難点があるかどうかというような点、それから入国してどういうスケジュールで何日ぐらい日本に滞在するかといった点、そういうような点について、現在代理申請をしました会社の人との間に私のほうでいろいろ折衝をしております。いつまでに片がつくかちょっと存じませんが、そう遠い時間ではないと思います。
  90. 穗積七郎

    穂積委員 実は御承知のとおり、これは初めは七名を申請いたしましたのを、政府すなわち佐藤さん、橋本官房長官、石井法務大臣それから外務大臣局長等と私ども折衝をいたしまして、四人に切ってもらいたい、内容はこれこれだということでございましたから、それはわれわれとしてはちょっとけちな話で思わしくないと言いましたけれども、たって言われるものですから、私たちは入国の事実を早く実現したほうがいいという判断でこれは譲歩いたしまして四人という約束になった。それがいま局長お話だと三人に切って下げてきたということで、これは実は公約と違うわけなんです。ですから、当事者がもし納得すれば私どもはかまいませんけれども、当事者が納得しない、どうしても第四番目の切られた一人は必要だというなら、前の約束がそういうことですから、これはぜひそのとおり実行していただきたいと思います。  それから第二の日程の問題でございます。これはさらに重要な内容を持っておるわけです。実は私の仄聞いたすところでは――違っておったら八木局長、訂正をしていただいてけっこうですが、私が直接折衝したわけではありませんから、これは実は初めは二つの品目についてネゴシエーションをするということですから、三十日の日程をとっておったわけです。これは妥当な日数です。それで政府も受け付けてもらった。ところがその一つの呉造船がドロップいたしましたから、そのために一週間は不必要になったのではないかというので、二十三日にカットしてこられたわけですね。これも私は前に申請書に出しましたスケジュールから見て必ずしも不当なものだとは存じません。われわれも入国目的に必要な日数だけいただければけっこうなわけですから、この日数を一週間カットされることについてこの際ごたごた言って手続をおくらそうというふうな考えを持っておりません。ところが、ここで重要な事実は、これはあなたの部下の笛吹次長、これはさっき帆足委員も事実にちょっと触れまして、態度が不当だと言われたようでしたけれども、私もはなはだしく遺憾に思っております。これは御注意いただきたい。大臣にも報告していただきたいと思うのです。というのは、笛吹さんがこういうことを日程について言われたようです。先方と、つまり朝鮮側とにち合わせた上で、もう具体的にどことどことどことどういう話をするということをこまかく確定をして、そしてスケジュールを出せ、そうで なければ許可をしない、つまりビザを出せないという強い態度を示しておられるようです。そのときに漏らされた意見が、これは上のほうで入国せしめていいということを決定したようだが、実を言うとわれわれはあくまでこういうものは国益に反するものとして反対なんだ、決定された後にお いても反対なんだ、そういうことを放言をされて、しかもいま言ったような前例にない言いがかり的なきびしい日程を出せという、こういうことを強要しておられるわけです。これは私は、事務当局が内閣あるいは大臣が決定いたしました国策に対して、下僚の者が、おれは反対なんだからそう簡単には許せないぞということを言うこと自身がもうすでに下克上であるし、それはすべての人に対して公平たるべき事務当局としては越権もはなはだしい態度である。これは注意をしておいていただきたいわけです。  同時に、日程の問題については、二十三日にカットされて、当初申請書で出しました呉造船の交渉、ネゴシエーションのための七日を切るだけ で許可をしていただきたい。というのは、いままでこれは相手国の在外機関もなければ施設も何ら、政府だけでなく民間のあれもありません。代表部もないわけですから、向こうと打ち合わせておいてというのは一体どういうことでしょうか。そうして何月幾日は何時から何時までどこで何をするというようなことを一々やった例はないので す。われわれが向こうの未回復国へ行く場合でも、およそ幾日ぐらいの滞在と、目的はどうだというようなことにして行っておる。それから向こうから受け入れるときもやって、代理申請者のほうでおよその日程を必要と思われるものをつくって、それで法務省に代理申請をして代理許可を得ておるわけでしょう。それで向こうから来たり、われわれが行ったときに、着いたあくる日に向こうでもこっちでもいままでの慣例は、一応こういうスケジュールをつくっておきました、それでこのスケジュールで大体動いてもらいたいと思うが、もし必要があったら言ってもらいたい、それをさらに具体化しましょうという態度でやっておるのを、なぜ今度いかぬというのですか。すなわち未回復国である中国の代表の場合と日程について差別をすべき理由がどこにあるのか、それを伺いたいわけです。
  91. 八木正男

    ○八木政府委員 まず笛吹次長のことでありますが、私は実は先週金曜に出張から帰ってまいりまして、留守中にあったことを一応報告を受けましたが、そういうことを言ったということは本人が言っておりません。それから、そういうことを言ったか言わないかというようなことは、個人の趣味の問題もあるかもしれませんが、入国審査課にその関係会社が出頭してきておりますから、その会社の人がそういうふうに何か聞き違ったか何かしたのだろうと思うので、私が従来接触しておる範囲では、笛吹次長はなかなかりっぱな人でありまして、常識もあるし、そういう失言をするようなことはないと思います。ただ、もちろん役人といえどもやはり投票権のある一個の人間でありますから、北鮮との貿易自分の趣味に合わぬという人もあるとは思います。ただ、それを仕事の上で反映させるようなことはもちろんあり得ないことだと思います。一応私、笛吹君にもう一回よくその点は話しておきます。  それから、次の日程の問題でございますが、実はこれは正面から先生にそういうふうに御質問を受けると、それに対して非常に明快なお答えをするということは、そう簡単ではございません。と申しますのは、いまも御指摘がありましたように、北朝鮮も国交未回復の共産国である。対立政権のある一つでありますから、そういえば、中共と北鮮とどこが違うのだ、北ベトナムとどこが違うのか、同じに扱うべきだという御議論もりっぱに立つと思います。しかし同時に、実際の現実の入国問題で、われわれが中共に対してとっておる政策とその他の北ベトナムとか北鮮とかに対しているものは、全部ニュアンスが違っております。これは御承知のとおり、過去においてそういう国とのいろいろな接触が、いろいろな事態の積み重ねによって発展してきておるという歴史的な背景に基づくものでございまして、言いかえれば、たとえば北鮮の人に言わせれば、中共人の入国については比較的寛大なのに、なぜ北鮮にうるさいかといったような感じを持つことは、それはあり得ると思います。ただ、政府としては先ほど申しましたように、北鮮から貿易経済関係技術者が人ってくるというようなことは、これは全然初めの事例でございます。問題を狭めまして、入国計可だけの段階について申しますと、昨年、実は今度の東工物産の問題よりももっと前に、別の工作機械の会社の問題がかなり具体化した時代がございまして、そのときに私どもとして初めて、こういうケースがある、近く許可になるかもしれない、それについてはどういうふうにして処理するかということについていろいろ省内で打ち合わせまして、いずれにしても、これはとにかく初めてのケースなんだから、なるべくきちっと筋目をつけてやろう、とやかく批判を受けないようにやろうというようなことから、したがって、日程についても、われわれが合理的であると思うような内容のものであることを条件として許可しようじゃないかというような立場でやっておりました。そり結果、今度の事件に対しましても、私どもとしては、やはり同じように、合理的な、しかも不必要に長くいる必要はない、合理的であると考えられるような日程、これは決して肉体的にそんな日程じゃとても働けないというようなきついものではございません。そういうリーズナブルな日程で許可をしようということにして話をしておるはずでございます。そこで、ただ問題は、そういう日程を会社と私どもとの間で話し合いを詰めていきましても、最後は向こうの来る人がその日程じゃ困るというかもしれません。その点はやはり念を入れて、その会社のほうから先方にも、その日程でいいか悪いかということをもう一回確かめるだろうと思います。われわれとしては、あくまで一方的に強制するということは全然考えておりませんけれども、同時に御承知のとおり、いろいろ北朝鮮については日本でも問題があり得るわけでございまして、いろいろ日本朝鮮人との間でも対立等もございますし、われわれも不測の事態を起こしたくないという警戒もございます。みんなが納得できるような案をつくって、それによって入国許可するほかないと考えております。  それから、最後に人数の問題でございますが、これは私どもとしては、一応三人で入ってくるということについて向こうが了解しておるというふうに解釈しております。ということは、その三人で事が足りるのだろうと思います。と申しますのは、先ほども御指摘がありましたように、今度のプラント輸出の対象というものは、比較的専門的なごく狭い範囲のプラントでございますから、一人か二人でも十分に用が足せるものと私ども――私は専門家じゃございませんが、一般にそういうふうに会社の人が言っておりますから、向こうがどうしても三名じゃだめなんで、絶対に四人でなければ困るのだということならば、あるいはそういう申し出が会社を通じてまたあるかもしれません。しかし今度のことについてはわれわれも、政府関係閣僚の協議の結果、技術者を三名に限って入国を認めるという御方針をいただいたものですから、一応そのラインで処理しておるわけであります。
  92. 穗積七郎

    穂積委員 実は笛吹さんは最近かわられまして、この経過を御存じないわけだ。そして私は、ほかの問題でたびたびお会いいたしまして、はなはだ俊敏なジュリストですから、いささか人に与える感じはかたい感じを与えますけれども日本の法務関係の人のジュリストとしての正義感というものは私は信じているわけであります。それで、合理的な話し合いをやっていくことを期待しておったわけですが、こういうような今度のことを聞いて、実は非常に私も遺憾に思い、将来つまらぬことで民間と政府との間の摩擦を起こすように思うので、実はきょうは直接来ていただいて、陰口にならないで私は言おうと思ったのだけれども、それで二人そろって来ていただきたいと言うたのだが、あなたしかお見えにならぬから、あなたから大臣と本人にはよく言っておいていただきたいのです。私は何も言いがかりをやっていやがらせをしようというのじゃない。政府とわれわれとの関係というものは、リーズナブルなもので話をしたいという精神ですから、御注意をいただきたいのです。
  93. 高瀬傳

    高瀬委員長 あとの人がつかえておりますから、簡単に願います。
  94. 穗積七郎

    穂積委員 それから、この入国問題については、日程については、これは政治的行動をやる心配がありはしないかというときにはあれですけれども、そうでない、これは経済人ですから、経済の商取引のために必要な範囲ということですから、そういう意味で理解をして、なるべく大体のあらましでやってもらいたい。これはここで一々押し問答しません。またあらためて役所へ行ってお話しをしたいと思う。  最後に、これでやめますが、お尋ねしたいのは、さっき帆足委員も触れましたが、韓国大使館の不当な干渉、横暴あるいは脅迫、この事実を認めることはわれわれとしては承認できない。だから、外務大臣、前に韓国金大使が不当な動きをしたことは、参議院のわれわれの同僚の亀田君が質問をいたしまして、そうしてそういうことは行き過ぎだ、これはよく調べた上で注意をすると言った。この間金大使は、富士銀行その他に対して非常な圧力を加えている。その事実を知ったので私はすぐ、小川アジア局長、担当局長にお知らせをいたしまして、これはこの間の政府答弁、国際慣例に反する行為であるということであるからよく調査して注意をしていただきたいと言うた。そうしたらまた今度は安公例がこのことをやっておる。そうしてけさの新聞報道によると、各紙一流新聞みな書いておる。それは何かというと、この新聞報道によりますと、このことに対しては金大使の引き揚げを一時考えると言ったようですが、それは引っ込めて、政経分離の適用を中国にやるような適用を北朝鮮にはやらないという覚え書きを文書でとることを決定をしたという。これは外務大臣に対してお尋ねいたします。これは吉田書簡より以上の不当なものでございます。それを向こうへ渡せと言っておる。それから、その次に問題は、ビザの発給の引き延ばし作戦をやる。第三には、業者圧力をかけて業者をドロップさすということです。そうして同時に、言ったように、私が金大使のその後の行動について御注意を申し上げて、アジア局長が、それは御趣旨は当然だと思いますからよく調べた上で注意をいたしましょうという御答弁であったにかかわらず、その後まだ伺っておらぬけれども、ところが安公使がまた盛んにやっておる。しかも向こうの政府の決定はこれをやろうと言っておる。事実をあげれば切りがありません。外務大臣、そこで一括してお答えをいただきたいのは、まず第一に、政経分離の適用を北朝鮮にはやらないという文書、覚え書きをよこせと言っておるが、こんなものに応ずべきではないと思う。吉田書簡以上の屈辱的な行為であると私は思う。こういうような貿易問題というものは日本の自主性の判断に立ってやるべきことであって、韓国に約束すべきものではない。韓国に制肘さるべきものではありませんから、そのことは私はやるべきものではないと思いますが、それに対する外務大臣の明快な御答弁をいただいておきたい。  それから、ビザの発給については、これは整ったならば早くやるということ、先ほどの人数の問題と日程の問題だけかかっておりますから、これが済めば即座にやるということを八木入管局長からお答えをいただきたい。  それから、業者引き下げに対する策動を徹底的にやると言っておるが、これに対してはアジア局長からでけっこうですから、私が報告いたしましてから御調査になった結果と今後の方針について、はっきりした御答弁をわずらわしたい。  以上をもって私の質問は終わります。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国に対して、政経分離の方式を北朝鮮には当てはめない、そういう文書韓国に対して出す、これはどこの話かよくわかりませんが、何も私どもには申し出ておりませんし、またこういうものを出すべき筋合いでもございませんから、その点は御安心を願います。
  96. 八木正男

    ○八木政府委員 入国審査については、随時その段階で常に大臣連絡をとっておりまして、全部完了し次第、大臣の御指示によって許可通知を渡すつもりでございます。
  97. 小川平四郎

    ○小川政府委員 韓国大使館の動きにつきましては、冒頭に大臣が申されたとおりでございまして、そのような注意をいたしております。
  98. 穗積七郎

    穂積委員 いやいや、この前のを調べましたか。富士銀行に圧力をかけてやめさせたという……
  99. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは先生から電話でお話を伺ったのでございます。
  100. 穗積七郎

    穂積委員 事実があったのですか。
  101. 小川平四郎

    ○小川政府委員 事実は存じません。
  102. 穗積七郎

    穂積委員 調べたのか。
  103. 小川平四郎

    ○小川政府委員 調べる必要はないと存じます。むしろ私は先ほど大臣が申されましたとおり、行き過ぎた行動のないようにということを韓国側に申しております。
  104. 穗積七郎

    穂積委員 注意しましたか。
  105. 小川平四郎

    ○小川政府委員 注意いたしてございます。
  106. 穗積七郎

    穂積委員 今後も心配ないですね。
  107. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ないものと存じます。
  108. 高瀬傳

  109. 竹本孫一

    竹本委員 最初に委員会の運営について希望を申し述べておきますけれども理事の間で話した時間の約束自体どういうふうにするつもりでやっておられますか。
  110. 高瀬傳

    高瀬委員長 委員長といたしましては、できるだけ議事進行に熱意を持って対処しておりますが、いかんせん穂積君の生理的現象でなかなかうまく運ばないことは残念でございますが、やむを得ません。今後御注意いたします。時間を各党間で守るようにひとつ御善処あらんことを希望いたします。
  111. 穗積七郎

    穂積委員 ぼくはそんな約束を破っていないですよ。あなたのほうがかってなことを言って、大臣が来たからアジ銀に切りかえろと言っておる……。
  112. 高瀬傳

    高瀬委員長 ちょっと答弁いたします。  全体の外務大臣の都合もありますし、大体竹本君、川上君、やっぱり十五分くらいずつ質問予定しております。それについてわれわれも毛利理事とよく打ち合わせをしてやりました。穂積君はもうすでに四十分以上やっております。いろいろ御意見が多かったようでございますから、私は今後御注意いたします。もっと端的に質問を展開していただきたい。これを私委員長として穂積委員に切望いたします。
  113. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣に、私は時間の関係もありますので、きわめて簡単にお伺いをいたしたいと思います。  それはベトナムの問題について、日本政府は慎重にということをよく言われるのだけれども、もう少し積極的に動いていただきたい、こういう立場で簡単な御質問をいたしたいと思います。  最初に、イギリスのウィルソン首相が訪ソされました。これを外務大臣はどういうふうな感じを持って受け取っておられるかを承りたいと思います。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ウィルソンのたびたびのベトナム和平工作に対する熱意ある活動に対しては敬意を表しておりますが、しかしそれにもかかわらず、今回は成功しなかったようでございます。どうもイギリスの考え方、ソ連の考え方、これが相当基本的に違っておるのでありますから、やはりこれはせっかくの御努力にかかわらず不成功に終わったこと、これまたやむを得ない次第である、こう考えております。
  115. 竹本孫一

    竹本委員 いま外務大臣のおっしゃるように、私は、世界の平和を愛する人々は、イギリスのウィルソン首相あるいはインドのガンジー首相の御努力に対しては、みんな謙虚に敬意を表しておると思うのです。そういう意味日本政府も、なぜアジアの一番近いところにおる日本政府としてもう少し積極的に動けないか、動かないかということであります。昨日も衆議院の予算委員会において、総理その他の応答を聞いておりましたけれども、いまその時期でない、あるいはチャンスがあればそういうこともやりたい、こういうような政府の御答弁でございました。しかし私は、チャンスというものはつくるべきものである、傍観しておっては何も出てこない、もう少し政府が動いて条件をつくり、情勢をつくり出し、チャンスをみずから求めていく、こういう積極的な熱意を世界の人々にも、特に日本国民にもアジアの民衆にも印象を与えるだけの積極的な行動がなければならぬと思うのでございますけれども政府は極端に言えば慎重一点ばりであります。これはまことに残念でありますので御質問いたすわけでございますが、たとえば北爆につきましても、七月、八月は軍事強圧が盛んに行なわれるだろうけれども、九月に国連総会が開かれるというようなことになれば、あるいはアメリカが一時北爆を停止するというようなことを考えておるのかもしれません。そういう場合になって、あとから日本が動いて北爆停止を言うてみても、これはさっぱり魅力もない。効果もない。やはりこの際日本は、いま大臣もおっしゃったように、事の成否にかかわらず誠意を持ち、熱意を持って動くべきであると私は思いますが、特にこれはチャンスを逃がしてはどうにもなりません。九月に国連総会があるという前提に立った場合に、これはいまのうちに動かなければどうにもならないではないか。チャンス問題はむしろじっとしておれば失うだけであると思いますが、外務大臣のお考えを承りたいと思います。
  116. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その各国のとるべき措置は、それぞれの立場及びその考え方によって自由にやるべきでありまして、イギリス、インドの最高首脳部が動いたから日本の最高首脳部も動かなければならぬというものでもないと思います。問題は、要するにアメリカの提案に対して北ベトナムはこれに同調しない、あくまで戦争の勝利によって自分の政治的意図を達成しようという考え方を捨てない限りにおいては、その問題、その急所に触れるということでなければ問題は解決しないのではないか。日本立場からいってどういうことをやれば最も効果があるかということによって、おのずからとるべき手段、方法が異なるわけでありまして、その点は必ずしも動き回るというだけでは私はこれに賛意を表するわけにはいかぬ。
  117. 竹本孫一

    竹本委員 インドやイギリスが動いたから日本も動かなければならないという理由はない、これは大臣のおっしゃるとおりだと思います。しかし同時に、イギリスやインドが動いたから日本は動いてはならないという論理もありません。そういう意味から言うならば、やはりこの際は日本国民、アジアの民衆が何を求めておるかということにポイントをしぼって考えるべきだと思います。私はいま大臣の御答弁にもありましたけれども、これは子供のけんかにしましても強いほうがなぐりたいだけなぐっておいて、そうして何かおまえ考え直せというようないまの折衝のやり方では、これは私はアメリカ的な考え方が強過ぎてとても話にならないと思います。私どもきわめて公平、冷静にものを考えておるつもりでございますけれども、やはりこの際は何といってもアメリカのほうが北爆を停止するように、日本の総意、総力をあげて説得をする、あるいは申し入れをする、場合によっては開き直るというくらいのいわゆる積極外交でなければならぬと思うのでありますが、先ほどの御答弁は、どうも私どもその点がだいぶ違っておるようであります。  時間もありませんので、端的にひとつ私伺いますが、たとえば六月二十二日のニューヨーク・タイムズによれば、こういうことを書いております。これはウ・タント国連事務総長が述べた提案を取り上げまして、国連のウ・タント事務総長は、再びベトナムの平和的解決について、現実に即して有益な提言を行なった、こういうのがニューヨーク・タイムズの批評でありますが、その内容は、番号はついておりませんけれども、私がつけますが、事務総長は、第一に北爆の中止、第二に南ベトナム内での軍事活動の漸進的な停止、第三にベトコンを含むすべての実際上の戦闘参加関係者による平和会談の開催の三点を骨子とする休戦案を明らかにしたわけである、おそかれ早かれベトナム紛争を解決するためには、このような手段しか存在していない、こう書いてある。これは私は非常にニューヨーク・タイムズの批評も穏健適正であって、同時にウ・タント事務総長の提言も、まことにだれが考えてもこれが世界の良識ではないかと思うのです。もう一度申しますけれども、北爆の中止、南ベトナム内での軍事的活動の漸進的な停止、ベトコンを含むすべての実際上の戦闘参加関係者による平和会談の開催、この三つくらい現実的で建設的な、それこそニューヨーク.タイムズのいうとおり、現実に即した有益な提言はないと私は思いますけれども日本政府あるいは椎名外務大臣は、このウ・タント事務総長の提言の内容について一体賛成であるか、あるいはそんなものは取るに足らないというお考えであるのか、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  118. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、三条件それぞれ双方の当事者の同意によって行なわれることが望ましいと私は考えております。その場合に、ベトコンを含む関係者の会談ということについては、いろいろその立場において意見が異なるかもしれませんが、とにかくこういったようなことが関係者全体によって受け入れられて、そしてその約束どおり北爆の停止、それからまた、それに対応する北からの浸透というものもやはりやまなければならない。そういうことによって、今度は南ベトナムにおける戦闘行為の段階的な停止ということも実行可能になるわけでございますから、そういったようなただ一方的じゃなしに、関係者すべてがこういう事態がつくり出されるように協力すべきである、こう考えます。
  119. 竹本孫一

    竹本委員 大臣の御答弁で大体わかりました。しかし言うまでもなく、これは関係者全体が合意しなければ、テーブルを囲むのでなければそういうことはできない。問題は、どういう条件のもとにどういうことを目標にしてテーブルを囲むかということがいま問題になっておると思うのです。そういう意味から申しますと、さすがにウ・タント事務総長の提言というものは、たびたび申しますように、現実に即した有益な提言であって、私は常識をもって考える場合に、これ以外に当面現実に即して考え得るものはない。大臣もいまお話しになりましたように、これは関係者が合意によってやる、そういうものをつくり出していくということが望ましいというお考えのように聞いたので、結局そういうことができることを望んでおられる、内容的な三つのポイントについてはおおむね賛成である、こういうように解してよろしゅうございますか。
  120. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これにはつまり北爆の停止、それから南ベトナムにおける戦争行為の段階的漸減、こういうことだけを書いてありまして、しからばベトコンは破壊活動を停止しなくてもいいのか、あるいは北からの浸透は依然として続けられてかまわないのかというような問題に触れておりませんけれども、第三段において、関係者みんながこぞって和平のテーブルに着くということが書いてありますから、そういう三つの条項をすべて実行するということは、北からの浸透の停止あるいはベトコンの破壊活動の終息というようなことをこれは当然含むもの、こういうふうに解釈いたしまして、私はこの三つの提案は適当であろう、一こう考えます。
  121. 竹本孫一

    竹本委員 そこでひとつお伺いいたしますが、日本政府はどうも、いままでに平和を願っておる、平和的な解決を願っておるという政府のお考えをわれわれはたびたび聞かされましたけれども、どういう条件というか、どういう具体的な構想のもとに平和的解決をはかろうとしておられるのか、あまり伺ったことがないように私は思いますが、たとえばいまのウ・タント事務総長がそういうことを言ったとすれば、日本政府考えもおおむねこの三つについて賛成であるとか、あるいは第三のベトコンのものについてはこういう条件つきではあるが賛成であるとか、やはり具体的な日本の平和解決への熱意と構想を示すべきだ。いままでに政府はそういうものを何らか具体的に示されたことがありますか、あるいは間接にウ・タント事務総長の考え方を批判するとか支持するとかいう形において間接的にでも示されたことがありますか。私はその点を伺いたいと思います。それが示されなければ、ただ平和に徹するといったような結論だけ聞いておっても、さっぱり日本の熱意も構想もわかりません。当然これは示すべきだと思いますけれども、何らかの形において日本のピースプランはこうであるというものを日本で示されたことがあるかどうかを承りたいと思います。
  122. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ウ・タント総長の三つの提言に対して特に日本政府としては意見を出しておりません。ただ佐藤総理大臣が、まず撃ち方やめ、武器を置いて戦闘行為を停止して、そうして関係者が平和のためのテーブルを囲む、これを繰り返し、繰り返し言っております。これを分析してみれば、結局北爆の停止であり、南ベトナムにおける段階的戦闘行為の漸減、そしてそれに対応して破壊活動、浸透行為の停止、こういうことを言って、そして第三番目の和平のためのテーブルを囲むということになるのでありますから、佐藤総理の口にしておる提案というのは、ほぼこのウ・タント事務総長の提案と大体において同じではないか、こう考えております。
  123. 竹本孫一

    竹本委員 佐藤総理の撃ち方やめというのはちょっと抽象的過ぎますので、少なくとも私は、ウ・タント事務総長の提言の中にある程度の具体性を持たなければならぬと思います。しかし、いずれにいたしましても、佐藤総理、椎名外相のお考えも大体このラインだということがわかったわけでありますが、それはそれとして、それならばやはりそれを具体的にアピールしていかなければいかぬ。特にそういう面を出すということだけでなくて、昨日の予算委員会でも問題になりましたように、いま世界はみな首相外交の時代である、首相みずから飛んでいって熱意を示し誠意を披瀝する、こういうことによって、事の成否は一応別としても、みなが努力しておる段階でありますので、日本政府においてもそれを示さるべきである、具体的行動に移さるべきであると私は思うのでありまして、その観点から最後にもう一つだけ伺いたいのでありますが、きのうの予算委員会において、最悪の場合がかえって最善の場合の契機になるのだというような意味合いにおいて、今日ホー・チ・ミンの声明その他非常に激しい言い合いがお互いになされておる、そのときにかえって新しい芽がはぐくまれておるのかもしれない、こういうようなお考えがありました。総理もそのことに同調されましたけれども、私はちょっと考え方が違います。私は、アメリカの側もホー・チ・ミン大統領の側も今日ぎりぎり結着のところまでまだいってない、やはりお互いに最後の平和のチャンスをつかもうということで、それぞれがステーツマンシップを発揮して慎重に行動しておると思うのです。たとえば、アメリカの軍事的論理から言えば、われわれが賛成するかしないかは別としまして、やはりハノイ、ハイフォン、その港に機雷の封鎖でもやるというところまでいくのが軍事的論理としては要請されるのかもしれませんけれどもアメリカは港湾施設の破壊とかあるいは機雷の封鎖というようなことだけは、最後の一点はちゃんと避けております。これは私はアメリカのジョンソン大統領その他も何とかして平和のチャンスをつかもうというまじめな努力をしておると、私はかように考えております。しからばホー・チ・ミン大統領のほうはどうかといいますと、これも非常に激しい声明書を出されておりますけれども、まだこの間の声明の中には、捕虜の問題で、これを戦犯としてたたき殺してしまうといったようなことは言いません。義勇軍を直ちに要請して、中国のほうからなだれ込んでもらうといったことにも具体的には声明は触れておりません。これをやればやはり私は最後のどうにもならない段階に落ち込まされるということをホー・チ・ミンもステーツマンシップで十分考えて、一歩手前で、エスカレーションはそれぞれエスカレーションをやっております。それぞれ激しい声明を出しておりますけれども、やはり最後の一点においては踏みとどまっておると思うのです。この踏みとどまっておる間に、日本の誠意ある平和への努力が具体的な呼びかけをやるべきだ。もしこれを軍事的なエスカレーションで軍事的論理を追求してどうにもならないところまでいってしまって、われわれは平和のために動きたかったのだ、念願しておったでは、ツーレート、おそ過ぎます。だから日本がもし動くという意思があり、平和への熱意があるならば、いまが私は最後のチャンスだ、こういうように思いますけれども、その段階の見きわめについて外務大臣はどういうふうに見ておられるか。まだチャンスを待っておればいつかもっといい時期が来るというふうに見ておられるのか。あるいは私のいま申し述べましたように、この辺がもう最後のチャンスで、これから捕虜を殺したり、義勇軍がなだれ込んだり、あるいはアメリカが機雷封鎖をしたりしたような段階になって日本がじたばたしたって問題にならない、証文の出しおくれになる、いまが最後の機会である、したがいまして、先ほどの撃ち方やめの程度でもけっこうですから、日本が積極的に動く最後のチャンスがいま来ておるとかように思いますけれども、その点についての大臣のお考えを承りたいと思います。
  124. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に適切な御意見だと私は拝聴しております。そこで、この最後のゆとりを残しておる間が一体どれぐらい続くものか、われわれは軍事専門家でございませんので、また実情もよく通じておりませんのでわかりませんけれども、御意見のほどは十分に拝聴いたしましたので、今後の施策の上にたいへん参考になると思います。
  125. 竹本孫一

    竹本委員 大臣が最後のチャンス、ぜひこれを御活用いただいて、政府が具体的に動いていただくことを特に要望いたしまして、あとの御質問の時間の関係もありますので、この辺で終わります。
  126. 高瀬傳

  127. 川上貫一

    川上委員 時間が十分にありませんから、私は一、二の点を具体的に外務大臣にお尋ねしたいと思います。  おそらく外務大臣は十分に御承知のことと思いますが、いま日本の造船所で次のようなものをつくっております。これは外務大臣承知だと思います。それは長さ九十一メートル、幅が二十三メートル、高さが四・二メートルのエアタンクを持った二千排水トンの箱船であります。その箱船の上部は全部一枚の強固な鉄板でつくられております。さらにこれは十本の柱で適宜に海底に固定できるような構造になっておると思います。ここにその写真があります。この写真にはその箱船の形がはっきりと写っておる。これは明らかにアメリカのベトナム侵略戦争におけるヘリポートであると思うのです。つまりヘリコプターの基地です。また大規模な上陸作戦用のものであることは、軍事専門家でなくても明瞭であります。しかもこの船は一隻や二隻ではないのです。たくさんつくられている。そのうちの一隻はすでに明日アメリカ軍の直接監督のもとで進水するはずであります。しかもこれらの作業は、労働者には使用目的を全く秘密にしておる。明らかにされておらぬ。私が聞きたいことは、一体これは日本政府を通じて行なわれるアメリカの特需であるのか、それとも安保条約に基づく地位協定によるアメリカの直接発注なのか、これをお答えを願いたい。同時に、これです、これはどこの造船所でつくっているのか、何隻つくりおるのか、これもあわせて外務大臣の御答弁を願いたい。
  128. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 不明にしてそういうことは一向存じません。
  129. 川上貫一

    川上委員 だから私は写真まで持ってきているのです。これはもうベトナムの戦争に使うヘリポートであることは間違いない。政府はベトナム戦争については日本政府の態度はどうとかこうとか言うておりますが、これをつくってアメリカにあすは引き渡す。これを外務大臣は知らない。これはどういうことなんですか。これで外交ができますか。これはベトナムの戦争に日本が具体的に協力しおる証拠なんです。これは単に運輸省の問題でありません、日本政府の問題で外交上の重要問題です。外務大臣はこれを知らぬと言う。そんなことで一体外交ができますか。外務大臣の職責が尽くせますか。外務大臣考え方をはっきり言うてください。
  130. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 造船事業はソ連や中共と違って国営でございません。民間企業でやっております。そこに一体どういう注文がどこから出されておるか、一々政府は調べておりません。したがっていま御提示の問題につきましても全く政府としては関知しないことであります。
  131. 川上貫一

    川上委員 それではこう理解したらいいですか。この発注は日米安保条約に基づく地位協定によってアメリカ日本の造船所に直接発注しておるのであるから外務大臣は何も知らぬ、こう解釈していいですか。
  132. 安川壯

    ○安川政府委員 いま御指摘の事実は私、存じませんけれども、たてまえだけ申し上げますと、地位協定上、米軍は公の目的のための需品を、自由に業者と直接契約し得るということになっております。
  133. 川上貫一

    川上委員 やはりはっきりわからぬです。これは、安保条約による、いわゆる地位協定に基づいて、アメリカ軍が直接日本の造船所に発注しておるのであるから、日本政府は何も知らないのだ、こう解釈してよいかどうかということです。
  134. 安川壯

    ○安川政府委員 私は、いま御指摘の事実は承知しておりませんから、もし事実としましても、それがどういう手続に基づいて行なわれているかということを、私、御答弁できませんけれども、たてまえは、先ほど申し上げましたように、米軍が自分の公用の目的のために物資、役務を必要とする場合には、日本業者と自由に契約し得るというたてまえになっておるわけでございます。
  135. 川上貫一

    川上委員 事態は明瞭になりました。これは具体的にあす進水するんだとまで私は言うておる。必要によっては、どこで何隻つくっておるということを由し上げてもよろしい。この私が知っておること、それを政府は知らないと言う。これは一体どういうことになるのですか。アメリカがおやりになることはどんなことをやっても政府は知らぬ、これで済みますか。この箱船は普通の箱船じゃないのです。ベトナム戦争用の箱船です。だから、私はここに写真がありますとまで言うておるのです。それを政府は知らぬと言う。こういうことになったら一体どうなるでしょう。ベトナムの戦争のみならず、このベトナムの戦争がアメリカの侵略政策によってますます拡大した場合においても、日本は、あなた方の知らぬ間に、はっきりとアメリカの戦争の兵器廠になってしまう。何をつくっても、何を出しても知らない、これで一体政治ができるでしょうか。これで一体外交ができるでしょうか。同時に、これで平和に徹する、こんなことで国民が、ごまかせるでしょうか。ことに、アメリカのベトナム侵略戦争に対しては、日本は協力しておるということをわれわれは追及しておるのです。してはおらぬと言っておる。私は、これは重大な問題だと思うのです。時間がありませんから一々聞く余裕がありませんが、あなた方は、いままでわれわれの追及に対してどう答えましたか。日本アメリカのベトナム侵略戦争に兵器、弾薬は提供していない、したがって、アメリカのベトナム戦争に直接協力してはいない、一貫してこういう答弁をしております。ところが、この箱船はどうです。明らかに兵器です。日本はこれを供給しておるのです。一隻はあす進水するというておるのです。それをあなた方は知らぬと言うのです。これほどふしぎな、また無法なことがありましょうか。これでは、政府は、外交とかベトナムの問題については、平和を望むとか、アメリカに対しては兵器弾薬を供給しておらぬ、直接協力はしておらぬとか言うが、全部信用することができない、政府は知らないと言うんだから。たとえ政府が知らないでも、日本の国土はアメリカの戦争の兵器廠になっておる。この事実は動かすことができないのです。  そこで私はもう一ぺん聞いておく。外務大臣はこういう事実を前にして、日本は兵器の供給は絶対していないと言い切れますか。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約によって、アメリカの軍隊が自由に日本の企業と接触して品物を発注し、これを受け取って適当な処理をするということはできるのであります。これは、政府アメリカの委任を受けて、そうして政府の手で発注してこれをアメリカ軍隊に供給するというのと違いまして、自由に民間企業に接触をしてその目的を達成しておる、こういう関係でありまして、その品物がどこでどういうふうに使われようと、とにかく日本政府としてはこれに関知しておりません。日本として、戦争にこれによって協力しているという関係にはないわけであります。これは、日米安保条約の一つの効果として、そういうことが当然行なわれるわけであります。
  137. 川上貫一

    川上委員 事態は非常にはっきりしてきた。日米安保条約によって、アメリカは、日本政府の意向には関係なしに、あるいは日本政府の意向を受けて自由自在に日本を兵器廠にするのだ。そのことは政府は知らぬのだ。こういう答弁である。これが国民が黙っておれる問題でしょうか。かつて、政府は、この地位協定によるアメリカの直接発注もいろいろな方法で知っておるという答弁をしておる。これはアメリカ側からの報告があったり、業者側からの報告がありますからわかるだろうとたびたびわれわれは聞いた。わかっておりますと言うた。今度のこの分は全然わからぬ。ここに、アメリカ軍のベトナム侵略に対する政府の、あなた方の根性がむき出しに出ている。これは事実上、米軍の日本にあるベトナム戦争に対する基地の使用、原潜の無制限の入港の承認、物資、役務の提供、これらとともに、戦時国際法の精神の乱暴なじゅうりんです。これを政府は知らぬ存ぜぬと言っておる。アメリカと共同して事実上ベトナム侵略を推し進めている証拠である。  私は繰り返して言うが、これだけのものをこしらえて、これだけのものをアメリカへ渡そうとしている。労働者に秘密にしておる。しかもこれを、アメリカの軍人が毎日監督してつくらしている。あなた方は、いまの答弁によると、これらすべてが日米安保条約の義務だ、こういう意味のことを言うておる。これは非常に重大な問題である。私は、この点については十分に質問したいのですが、時間がありませんから……。  これは、きのう、参議院で、わが党の須藤議員が質問しました。この質問をしましたとおり、日米安保条約というものは、日本アメリカのアジアに対する侵略と戦争にすべて加担し、協力する相互防衛条約、相互防衛義務をになわされておるその軍事同盟条約なんです。かつて外務大臣は、安保条約は軍事条約だと言った。アメリカのラスク国務長官は、今度の合同委員会のあとで、あなたと一緒に新聞記者会見をした。そのときにどう言いましたか。日米安保条約は相互防衛条約だとはっきり言っておる。これをあなた方はごまかしておる。私はこれをいろいろの形で質問するのではなくて、具体的な事実をあげて質問しておるのです。外務大臣は、日米安保条約というものが、どうして相互防衛条約ではなく、軍事同盟条約でもないと言えますか。また、これは今後アメリカの戦争拡大――どこまで戦争が拡大するかわからぬのだから、いかなる場合にも日本はこの安保条約によって加担し、協力する義務を持っておるんだ、これが安保条約なんだ。この問題は個々の問題ではなくて、きわめて根本的な重要な問題であります。あなた方は、これを否定してきよる。ここに及んでは否定できまいと思う。外務大臣は、これに対する答えをはっきりしてもらいたい。私の質問は、一、二の部分的質問じゃありません。きわめて重大な、日米安保条約の危険な本質とねらい、これを質問しておるのです。これはあいまいな答弁は許されない。明確な答弁をお願いします。
  138. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約が締結されてから、すでにほぼ六年を経ております。この間アジアの情勢はきわめて流動的で、一国の安全という見地からはまことに危惧すべき状況にあるのでありますけれども、日米安保条約というものが現存する限り、これを堅持する限りにおいては、日本は国の安全ということにいささかの危惧の念を抱かずに、専心経済の再建に努力することができた、おかげで世界がびっくりするような経済再建が実現できたわけであります。これは日本国民のほとんど大多数が認めておるところでございます。
  139. 川上貫一

    川上委員 時間がありませんから、質問を続けたいのだけれども、約束もありますから打ち切りますが、最後に一つだけ聞きます。  外務大臣、ベトナムに対するアメリカの侵略戦争はどこまで拡大するか予想がつかない。いま民社党の方は、両方がチャンスをねらっておるんだと言われましたが、われわれはそう考えません。北ベトナムは独立と解放が達成するまで絶対に戦う決意を持っておる。世界の民主勢力はこれを支援する考えを持っておるのです。これは不動の事実です。これに対して、アメリカはいいかげんなことでほこを納めるだろうというようなアメリカではない。どこまで拡大するか、アメリカはわからぬ。そのとき日本政府は、ここまでは支持する、これから先は支持、協力できないという境はありますか。とことんまで支持、協力しなければならないでしょう。これは安保条約の義務でしょう。私は、もう時間がないから質問を終わりますが、もしここで、ここまでは支持するが、ここから先は支持しない、こういうような境目でも持っておるのなら、はっきり言ってください、持っておるはずはないのですから。ここに安保条約の危険性があるのです。ねらいがあるのであります。ここに安保条約が相互防衛条約であり、軍事同盟条約であり、アメリカのアジアに対する侵略戦争が、どんなことであっても日本は支持し、協力をしなければならぬ義務を負わされておる条約だという本質があるわけでしょう。これをはっきりしなさい。国民をごまかしちゃいかぬです。ここに安保条約の問題の中心があるのであります。私はきょうはこれを聞いておるのですから、最後ですから、限度を言うてみなさい。
  140. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナム戦争に関しては、アメリカのほうとしては、自由陣営である南ベトナムの政治的独立と自由を守るために、いま軍事行動を起こしておる。これに反して北ベトナムは、結局南ベトナムを征服しようとしておる。でありますから、その征服しようという目的を追求する限りにおいては戦争はなかなかやまらない。やまらないが、アメリカはそれ以上北ベトナムを征服しようとか、あるいは他の支持国にまた踏み込んで戦争を拡大しようという気持ち一つもない。南ベトナムの独立、自由というものを守るという姿勢の立場に立っておるんですから、むしろこの問題の、戦争を終息するかぎは、北ベトナムが南を征服しようという意図を放棄すれば、それで問題は解決する、こう思います。でありますから、これがアメリカ側から見た限度、それからまた北べトナムがそういう野望を捨てない限りは、いつまでも続くかもしれません。
  141. 川上貫一

    川上委員 これで終わります。これは椎名さんの答弁はもうどうしようもない。私の聞いたのは、アメリカは何をしおるのかということをきょうは聞いたのではない。安保条約について聞いておるんです。ところがほかのことを答弁なさる。こんなことを続けてもしようがない。  なお、私のきょうの質問については、さらに多くの質問しなければならぬ点がありますから、これは留保しておいて、次の時間に十分に質問します。私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  142. 高瀬傳

    高瀬委員長 引き続き国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  143. 帆足計

    帆足委員 外務大臣はお時間の都合がおありだそうですから、退席して差しつかえございませんか、正示政務次官の使命はいよいよ重くなってまいります。関係局長もおいでですから伺いますか、先ほど外務大臣から、人道仕事としての基本的姿勢は変えない、ただ実務的に情勢が変わったのについて考慮せねばならぬということがあったならば、その報告を聞いて善処する、こういう意味の御答弁でありました。これは帰国協力の事未についてでございます。私は旅行中でまだ当時の新聞を見ておりませんか、官房長官からも若干事実の認識を誤った談話かあったそうでありまして、先ほど副長官が見えまして、事実認識については昨日帆足氏からよく聞いてよくわかったから、きょうは休んでもいいかというお話がありまして、副長官はよく事情はわかってくれましたから、どうぞお休みなさいと私は申しておきました。そこで、こういう問題について雑音が起こることは私はきわめて遺憾だと思っておるんですけれども雑音は三つありまして、第一には、ずるずるべったりに帰国仕事が続くのはかなわぬ、多額の国費を使って、こういう意味です。しかし、御承知のように、日本には約五十八万の朝鮮人諸行が在留しておりまして、そうして過去の歴史の重荷を背負っておるわけでございます。したがいまして、帰国事業が、捕虜収容所、強制収容所の捕虜のように左か右かと一晩で解決がつかないのは、そういう歴史的事情から来ておるのでございますから、これはずるずるべったりにしているのは日本政府なり朝鮮諸君なりが意識的にしておることではなくて、やむを得ない客観的事情でございます。そこでお尋ねしたいんですが、いま在日朝鮮人の数はどのくらいおりまして、その佳日朝鮮人諸君は北へ帰るか、南へ帰るか、日本にとどまるか、第三国に行くか、この四つの質問に対して直ちに答え得るような環境に置かれておりますかどうか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  144. 八木正男

    ○八木政府委員 いまの御質問に対しては、正直なところわかりません。と申しますのは、五十八万何千という登録の数があって、その人たちは北の政権を支持しているのもあるし、南を支持しているのもあるし、どっちつかずの中立といいますか、腹をきめていないというのもございます。帰国意思を表示しましても、現在までに北へ帰りたいという意思を表示して、その結果現実に帰ったのは約九万ぐらいでありまして、四万ぐらいは帰ると言っておきながら、意思がなくなったといって、変わっておる。それからあと、現在かなり意思は表明したままになっておりますが、まだ船に乗ろうとしないのが四千ぐらいおる。この数も別に固定したものではないと思います。その中にはあるいはまた意思をひるがえして残ると言い出す者もありましょうし、また現在帰国意思を表示していない人でも、あるいはまたどんな事情の変化で帰るという気持ちを持つかもしれませんので、これは数字の上で、われわれとしては把握するということは不可能だろうと思います。
  145. 帆足計

    帆足委員 まことに合理的、実際的な御答弁で、そのとおりだと思いますが、朝鮮人諸君は、おまえはいつ国へ帰るかと聞かれねばならぬ義務があるか、聞かれれば無理に答えねばならぬ義務があるか、それをお尋ねしたいと思います。ちょうど下田政務次官が、おまえは近くもう定年がくるが、長崎に引退したいと思うか、または福岡に引退したいと思うかということを私から聞かれねばならぬ義務があるか、答えねばならぬ義務があるかと同じ問題であろうと思いますけれども、念のために専門家に伺っておきたいと思います。
  146. 八木正男

    ○八木政府委員 法律的の点から申しますれば、御承知のとおり、これらの人々はかつて日本人であった。そして平和条約発効と同時に、自己の意思に関係なく外国人ということにされたというわけでありまして、もちろん普通の一般の外国人とはその成立過程において若干違っております。ただいま先生の御質問の趣旨、たとえばいつ帰るのか、どこに住むつもりだとかいうことを質問されてそれに答えねばならぬ立場にあるかどうかという点でございますが、これは逆を言いますと、この人たち日本における在留の法律的根拠はどうかという意味かと存じます。その趣旨から申しますれば、例の法律百二十六号というのがございまして、これは昨年の日韓国会の当時、たびたび政府関係者答弁しておりますように、政府としては現在のところこの法律をすぐに廃止するという意思はないということを言っております。この百二十六号がある限り、在日朝鮮人は別に日本から出ていかなくちゃならぬという理由もないし、普通に正業についている限りは正式に在留ができるわけでありまして、何ら不安はないわけであります。  それから帰還意思の有無ということになりますれば、これは帰りたい人が帰るというわけでありまして、帰りたくないのに無理に帰れと言ったことは私どもないし、これからもそういうことはあり得ないんじゃないかと思います。御質問の趣旨がそういうことでございましたら、百二十六号が存置されている限り、在留の法律的根拠は何ら心配はないと申し上げていいと思います。
  147. 帆足計

    帆足委員 まことに正確な御答弁だと思います。だとするならば、何人帰国するであろうかということは、たとえば景気のいいときは日本にとどまることを望むでありましょうし、不景気で生活が困難を来たせばだれしもふるさとを思う。子供が成長してくればふるさとに帰りたいと思い、老年、病気等のときにはやはりだれしもふるさとに帰りたくなる。また南朝鮮に親戚のある方が、その親戚の方がおとうさんがなくなり、おかあさんがなくなれば、それで北朝鮮に行こうかという方も出てくるであろうし、または日本の婦人と結婚したりして子供でもできれば日本にとどまろうと気持ちも変わる。こういうように不確定要因が非常に多い。しかも帰国することは、ただいま局長の言われたように、自由意思に基づくものである。約六十万近くの朝鮮人諸君が自然発生的に年に二千人または三千人ぐらい、不景気があり、そして住み心地がよくなければ帰る人がややふえ、住み心地がよい条件のもとでは帰る人が減っていくでしょう。そういうことを常識的に言い得るのでありますが、何人帰るかということは、ある想像はつきますけれども、きわめて不確定である。私は帰国問題で最も重要なのはこの事実認識だと思うのです。これが捕虜のキャンプのイエスかノーかという問題と違うゆえんで、いわゆる俗論の言うだらだらとなる客観的基礎であって、だらだらとなることが自然であって、それは正当なことである。だらだらとならなければ、それは強制力、圧力を加えたことであって、それは赤十字精神に反することでもある。長い歴史の積み立てによって起こったこの朝鮮人在留の問題が帰国によって一部解消していくというのは、こういう歴史的過程であると思います。  そこで、まず第一にこのだらだら論の無意味ということをよく理解していただくために、内閣調査室室長さんもお見えですが、私の記憶するところによると、五年前に帰国運動が始まりましたときに、内閣調査室か、公安調査庁かの御調査であったと思いますが、政府当局は、帰る朝鮮人諸君は三千人ないし五千人であろうということでした。そのときに櫻内氏が外務委員長でありましたが、まあ、政府がああ言うから、帆足君、せめて三万人以上帰国者が出たらこの事業としては成功だね、歴史の大きな仕事としてこれは勲章を授与されるぐらいの大きな仕事である、また、外務委員長としては三万人ごとに一度ごちそうせねばならぬね、こういうお話でした。まだごちそうにあずかっておりませんが、外務委員長はその後交代いたされましたので追及するいとまもないわけでございます。しかし、八万六千人の轗軻不遇の流離の友がそのふるさとにとにもかくにも安住の地を見出していくということは、赤十字人道仕事として大きな仕事であって、これを助けた関係諸機関の諸君のお骨折りは私は尊敬すべきものであると思っております。それもありまして、新潟帰国協力会会長村田氏は同時に自民党の前市長さんであり、ロータリクラブの会長さんでありますが、このすぐれたリベラリスト、清廉潔白なリベラリストは、この人道仕事に貢献したということをもって、それも加わって藍綬褒章を先日授与された次第でございます。内閣調査室は五千人ないし三千人などという根拠なき数字を発表されたが、一体それはどういう理由でありましたか。いま八木局長が言われました朝鮮人在留の歴史的地位、国際法上の地位というものの一端でも知っておったならば、ただいまのような内閣調査室のようなあほらしい報告は出ないであろうし、また、今日その雑音が官房長官の耳に入ったり、下田外務次官の耳に入ったりして、私どもからひん笑を買うようなおろかな言動を残して、余分な雑音を起こさないで済んだであろうというものを、一体内閣調査室殿は何を調査なさっておったのか。一応学歴を調べて、はたして学生時代の成績、はどの程度の諸君が集まっておられるのか調べたいような衝動にかられると思うのですが、そのころの調査室長は大津さんのような秀才ではなかったと思いますから、ひとつ大津さん、御答弁を願いたい。
  148. 大津英男

    ○大津説明員 お答えを申し上げます。  私どものほうで調査月報というものをずっと出しておりますけれども、ただいま先生がお話しになりましたような数字でそういうものが発表されたというものは一つもございません。ただ一つ、似たようなものがございますが、これは昭和三十四年の四月の調査月報の中で、一月二十日に朝鮮総連が帰国申請書の提出促進をはかって一月二十日にはその数十一万七千名と発表するに至った。それに対して、それは宣伝用の数で申請書の実数は四、五万名と推定されるというようなことを書いたものがございます。これは四、五千という数字はその当時も使っておらないようでございますが、これは推定でございまして、当時これを書いた人は現在おりませんから詳しい事情はわかりませんが、それくらいの推定をするような事情があったのではないだろうか、かように思われるわけでございます。  なお、この調査月報も内閣調査室の公式の見解というようなことではなしに編集をしておるような次第でございまして、その点も御了承いただきたいと思うのでございますが、もしほかに何か四、五千名というふうなものが発表されたものがありといたしますならば、お教えいただきまして、さらに調査いたしたいと思います。
  149. 帆足計

    帆足委員 もう一つお尋ねいたしますが、帰国問題を外務委員会で論議されましたときの会議録を私は調べてみましてまたお知らせしたいと思いますが、しかし大津さんが当時の責任者であるわけでもありませんから、過去のことを言ってもしかたのないことでありまして、お尋ねしたいことは、大津さんのほうで今後こういう問題の調査をされるとき、すなわち在日朝鮮人の実態を把握なさるときには、朝鮮人日本に移り住んだ諸条件などもよく御研究になり、そして必ずしも快適な条件でなくて、非常に苦しんだ、轗軻流離の生活をした隣邦の友であるということもよく御研究になり、またいま、国際法上の法的地位が入管局長が申されましたような状況にあるということ、すなわち帰国意思というものはなかなか表明しにくい複雑な環境の中に朝鮮の友がおるということ、いろいろな状況で、あるときは帰国したくない、あるときは日本にとどまったくなるということ、まさに諸君がやがて退官後にどこに安住の地、隠栖の地を見出すかということが定めにくいのとちょうど同じ事情であるということ、それをおおむね御理解くださったならば、だらだら帰国が続くなどという愚かなことを言うて、そしてそれが官房長官の天聴に達して、そこから雑音が流れ出るというようなことはなかろうと思うのでございますから、調査室長にこのことを御注意をいたしておきたい、こう思う次第であります。これにつきまして、調査室として八木局長のただいまのような国際法上の解釈は大体御理解願えておりますかどうか。
  150. 大津英男

    ○大津説明員 内閣調査室としては、何の偏見もなしに実態を調査をするということでございますので、もちろん入管局長お話しになったような点は十分承知をいたしておるつもりでございます。
  151. 帆足計

    帆足委員 それでは次に、ただいまのだらだら帰国の問題はばかでない限りこれで解決がついたと思いますので、ばかにはつける薬がないと言いますから、これはばかだけ別扱いといたしまして、普通の偏見のない良識を持っている行政機関として話し合いたいと思うのですが、第二は外務大臣は、だらだら論は敗れたということで、今度は他の航路ができたならと、こういうことが新しい条件だと、こう言っているわけです。しからば他の航路とは何ぞやと言いますと、ある者は軽々しく香港経由で行ったらどうだと言う。一体、香港を経由して、一人や二人の新聞記者ならば、中国に頼んで北京経由で朝鮮に行くことはできますけれども、何百人、何千人という引き揚げ人たち香港に飛行機で運ぶことも容易でありませんし、香港経由で北京を通過してもらうには、国際条約でもなければ不可能なことでございますから、香港経由でなどということばを漏らした役人がおるとするならば、これも学歴詐称の疑いがあって、はたして小学校を出た者であるかどうかも一応調べねばならぬということになりますが、これはどこの担当でしょうか。ひとつ正示先生から、指名制度というわけでもありませんけれども、そういう香港経由などということは荒唐無稽のことであるということを御確認願いたいのございます。
  152. 八木正男

    ○八木政府委員 いまの直接のお答えとなるかどうか知りませんが、それから先ほど帆足先生並びに穂積先生もちょっと触れておられましたが、先生方も帰還協定が何も未来永劫続くものとは思っておらぬというふうにおっしゃっておりました。われわれも確かに、終戦後の在日朝鮮人の帰還問題というものはごく特殊な問題であって、日本の特別な協定であるというふうに了解しておりますし、いずれかはなくなることは当然でございます。ただ先ほど先生がたびたび触れておられますように確かに在日朝鮮人が国へ帰る気になることは、未来永劫続くわけでございまして、あと五十年、百年たってもぽつぽつ帰っていく人があり得るわけであります。そういう人たちの帰り方、そのときに日本と北朝鮮との間に国交が回復されていれば問題は簡単でありますが、現在のところではその見通しは立っておりません。  そこでいまの御質問の段階になると思います。そこで現在のところ香港経由というのは、ちょっとあまり突拍子もないように思いますが、むしろ現実的には北鮮に行く一番簡単な方法は、先生御承知だろうと思いますが、特日船がございまして、これが月に十ばいぐらいは通っておりますから、将来ぽつりぽつりと国へ帰る気になった人が帰ろうと思えば、いつでも好きな船に乗って帰る道は開けております。ただ今度の問題になっております協定の延長問題というのは、これは私の理解しておりますところでは、毎年満期前になると、向こうから延期の意向を打診してくる。それに対して日本政府赤十字から相談を受けて、関係機関がそれに対する方針を相談してきめて、それから赤十字から返事が出るというのが、これはずっと従来かう繰り返されたところでございまして、ことしもその一つにすぎないと私は考えております。たまたま例の技術者の問題に関連して、韓国から何か意思表示があったとかいうことを私も旅先で新聞で読みましたが、そういう問題があったので、もしそれに対して先生のほうが、韓国からの圧力があったために、政府があわてて対策を考えているのかというふうにお考えだとしたら、私はそれは当たらないと思います。これは単に毎年の例によって、六月末に北鮮の赤十字から日本赤十字に延長の意向の問い合わせがあったので、政府機関が例によって同じような相談をしているというふうに私は単純に了解しております。
  153. 帆足計

    帆足委員 ただいまの八木局長のいわれるとおりだと思います。ただ局長は一、二週間御旅行なさっておりまして、その御旅行中にちみもうりょうがばっこいたしまして、そして新聞にあらぬ雑音をたて、そしてむだな雑音を引き起こしたわけでありまして、もうこの問題は、先ほど申し上げましたように四月の外務委員会で解決して、しかも政治力の高くかつ良識あふるる正示政府委員は、   先ほど外務大臣もこの問題についてははっきりと言明いたしましたように、われわれは部内一致いたしまして、将来ともこの大切な事業が円滑に進みますように十分配慮してまいりたい、かように考えておることを繰り返して申し上げます。  ○帆足委員 ただいまの外務次官の御答弁はすばらしく満足でございました。 これで解決済みです。もし官吏の服務紀律というものが正しく守られておられるならば、すでに解決済みの問題です。しかるにちみもうりょうと申しましたが、その次にさらに雑音を立てるやからがおります。いまの特日船というのは貨客船のことであろうと思いますけれども、毎月百人、二百人になります。中には病人もおるし、おじいちゃんもおばあちゃんもおる。世帯道具も持っていかれる人たちを貨客船に乗せるということは、不定期船に乗せるということは、私は困難であると思います。その上、食べものも違いますし、船の中でお産があったという例さえあるのでございます。また、中には結核患者の方もおります。ところが赤十字船となりますと、看護婦さんも数名、十名近く看護婦さんがおりまして、主治医もおります。食べものも朝鮮の人にふさわしいような特別のコックを置いてあります。二、三百名の人が貨客船で参るということは、ごく少数の貿易ミッションとかごく少数の学生の帰国とかという場合には、船長の了解を得てそれを使うことはできますけれども一般的に大量の帰国の場合は、現状では困難である。清津、羅津に向けて百人以上乗れる定期旅客船が出るようになれば、これは問題はおのずから解消されるであろうこと、入管局長の申されたとおりです。それ以外に予想されるのは、ナホトカ航路でありますが、下田次官はそれを言っておりました。一体ナホトカに参りまして、ナホトカからどういうふうに清津、羅津に参りますか。どなたか御存じの方があったら、手をあげてお知らせを願いたいのであります。ナホトカから朝鮮へ帰るには、どういう航路を通って帰ればいいかということです。――お答えがないことは当然でありまして、これは下田次官の五十男の夢でございまして、または地理に対する勉強が足らなかったせいでございましょう。ナホトカから朝鮮へ行くのは非常に遠いのでありまして、話に聞きますと、二十四時間もかかるというようなことでございます。またソビエト経由でなぜ行かねばならぬのか。そうすると、ソビエトと朝鮮との間にやはり帰国者の輸送協定が結ばれねばならぬし、直接清津、羅津に現在赤十字船が通っておるものをわざわざやめて、ナホトカを通らしてくれなどと申されて申し込んでみたところで、他国のもの笑いになるであろうということも当然であります。先ほどの椎名外務大臣の御答弁は、将来相当の人数を乗せて運び得る定期旅客船が通うような方法が実現したならばと、こういうふうに訂正してしかるべきでなかろうか。したがいまして、五人、七人乗せる貨客船が数隻あったところで、それは食べものの点からも、衛生上の点からも、いろいろの事情のために私は困難であると思っております。何かその他思いつくロケットで送るとか潜水艦で送るとか何かお考えでございましょうか。お知恵があったら拝借して、外務次官にもひとつ知恵をつけていただきたいと思いますが、どなたか御答弁できる方があったら教えていただきたい。――御答弁できなかったら、雑音をたてた人は雑音に対して一応道徳的責任を感ずべきである。先ほど申し上げましたように、ギリシアのことわざに、知らないことはしゃべるな、皆さん沈黙を守られておられるようですが、沈黙は金ですか銀ですか知りませんけれども、少なくとも石ころよりはこれは優秀なことでございます。――御答弁がないようでございますから、他に適当な方法はないものと認めまして、それでは他の航路が近いうちにあり得るということも五十男の夢であった。ただ世間を騒がしただけであった、こういうことになりました。  最後に、雑音としましては、歓送迎が行き過ぎがあるということ。そこで公安調査庁に来ていただいたのでございます。公安調査庁という役所は、公安を守るための役所でございまして、公安を乱すための役所であるべきではなかろうと存じております。しかし、ときどき公安を乱すことによって予算がとれるという錯覚を抱くことは、現在の公安調査庁の程度の教養水準ではあり得ること、これ人情のしからしむるところであろうと思います。と申しますのは、帰国仕事を私は二カ月に一度または三カ月に一度は現場に参っておりまして、新潟の現場は村田さんが、前市長の、自民党の非常なすぐれたデモクラットの村田さんが委員長でありまして、超党派的に、県内は一戸一円、市内は一戸十円ずつ出し合って、そうして帰国朝鮮人諸君が、石をもて追わるるごとくというような感を抱かずに、やさしい心で、そしてなつかしい思い出を持って、せめて最後のよい思い出を持ってふるさとに帰るように、朝鮮の友よお元気でというのがその別れのスローガンになっております。五年前に帰国のことが始まったときには、多少私が聞きましても、ちょっと行き過ぎた、公式的なへたな演説をするやつがあるなと、内容が粗末というよりも、演説がへただということで、これは懲罰にしたほうがよかろうと思っておるときに、赤十字から注意がありまして、やたらに大きな声できまったことばを、アメリカ帝国主義とかなんとか使う人がおるから、そういうあいさつは適当であるまいという注意がありまして、私も理論雑誌にそれを書けば多少原稿料を出す左翼雑誌もあろうけれども、別れのことばとしてはあまりふさわしくないと思いまして、そうして相談いたしまして、どうもスピーカーがあると元気を出す、と申しますのは、空気は非常に安いものですから、空気を大きく振動せしむることによって自分の理論の合理性を高めようとする傾向は、この国において、特に進歩陣営においてはやや強い傾向がございますので、スピーカーの音を小さくすることをいたしました。その後必要なかろうといってマイクは一応やめました。しかしそれはもう五年前の物語でありまして、今日はすべてなれておりました。ただ問題は、時として朝鮮の高等学校の生徒たちが、やがて自分たちも帰国するから、この人道仕事赤十字船の設備のいいことなどを見学したいといって、送迎をかねて見学にくる場合もございます。これは政治に利用されて好ましくないではないかと言う方がおりましたけれども、地元の警察ですら、いや、これは政治の雑音から離れた人道仕事であるから、赤十字船による帰国を見送り、そうしてみなお元気でといって行く姿を見、祖国を思うことは、これは社会科の教材として悪いことではあるまいと、おおむね文部省筋はそのように考えておる程度でございます。朝鮮総連の諸君が、その帰国のたびごとに赤十字諸君と打ち合わせをいたします。帰国について、朝鮮人の健康状況について、朝鮮人の生活状況について、失業状況についてなどをおそらく報告するでしょう。それらのことばが朝鮮語でなされるのを聞きまして、あれは何か秘密の諜報でもやっているではなかろうかと、疑い深いはこれ公安調査庁の方の一種の本能になっておることも、これ人それぞれの職業的嗅覚というものが発達するわけでございますから、これまたとがむべきことではあるまいと思いますが、それらのことを誇大に放送して、何かことありげに語っておられる節がある。と申しますのは、この問題に責任を持っております赤十字社長、副社長並びに直接現場に始終参ります高木社会部長に聞きましても、まず目にあまるようなことは、自分は見たことも聞いたこともない。聞けば帰国協力会は自民党、社会党双方で共同でやっておりますから、その総幹事長たる帆足君の耳にも入るはずだ、こういうわけで、また人間ですからあやまちはありましょう、多少の行き過ぎがあることも一年に一度はあるでしょう。そういうときには、気がついた方から赤十字に言うていただけば、私どももその人道仕事を逸脱するようなことのないように注意いたしますものを、現在帰国協定がまた期限の延長のことが議にのぼったときに、ことさら雑音をたてるとするならば、これは国の治安を維持するに役に立つのでなくて、国の治安を乱し、雑音をたて、帰国する朝鮮人の方は、職をやめるにも半年前ぐらいには申し出ねばなりませんし、中小企業の方がやめるのには、いつ工場を売ればよいか、いつ自分の土地を売ればよいか、権利金は幾らもらえるか、子供の学校はどうか、とすれば一年、二年前からもう準備せねばなりません。帰国しないうちに、彼は帰国するといううわさが立ちますと、借金取りが借金を取りに来て、借りている金を無理に払わねばならぬような事態にもおちいるでしょう。したがいまして、朝鮮諸君にとっては、帰国協定打ち切りなどという記事が大きく出ることは、非常な不安動揺を感ずるわけでございます。せっかく円滑にいっておるものをことさら不安動揺を起こす、しかも国際赤十字の協力によってうまくいっているものを、ここでもしこうして外務委員会に問題にせずに、連絡不十分のため、錯覚に基づいて、正示さんのようなすぐれた政務次官がおられるにかかわらず、ついうっかりしているときに、居眠りなどしている機会に、ひょっと一応打ち切りというようなことにでもなれば、今度は明年不景気でもって五千人帰る人ができた、五千人仕立てる船がない、そういうときにまた赤十字にお願いにいかねばならぬ。そのとき国際赤十字から、あまり人をばかにするな、こう言われたら、進退きわまるではないか。そういうことになるならば、公安調査庁は公安撹乱庁ということになってしまう。したがいまして、公安調査庁で善意でこういう点は行き過ぎで困るということがあれば、内閣に通達したり、雑音をたてたり、新聞に書いたりするよりも、赤十字に内面的に言うていただいて、赤十字から関係筋に、こういう点を改めようではないかと提案があってしかるべきで、現在はそういう良識によって運営されておるのが現実でございます。したがいまして、もう過去のことはとがめませんから、公安調査庁の必要な予算は十分差し上げますから、そういう雑音によって何かかせごうとするような傾向は、ひとつこの人道仕事についてはお慎みのほどをお願いしたい。私がこれほど懇切に申しましても、なおどうも御不満の点があったならば、ひとつこの際、どういう点が帰国問題について不満であるかということを、どういうことを一体政府に悪知恵をつけたか、この際明らかにしていただきたい。子原公安調査庁第二部長が見えておりまして、お見受けするところまことによいお人柄のようでございますが、本来ならばこういうことは公安調査庁の長官または次長を呼んで、厳粛にひとつ訓戒せねばならぬ、それが外務委員会仕事でありますけれども、よきお人柄の子原さんに苦言を呈してまことに恐縮でございますが、ひとつすなおにお答えのほどお願いしたい。
  154. 子原一夫

    子原説明員 お答えいたします。  長官が参るはずですけれども、役所の会議を主宰しておりますので、説明員として参りました。  いま御質問雑音の問題なんですけれども、私どもことさら帰還業務の打ち切りをやるために、荒唐無稽なあるいは針小棒大な事柄を――私どもの報告するのは法務省関係なんですけれども、法務省内部に調査結果などについて申し上げたことはございません。  いま御質問にあるように、あそこの新潟港での――私も視察いたしましたが、外から見ました関係では、かって、五年前に行なわれておったような状態はございません。まず平静、こう言えると思います。ただ、証拠を出せと申されますと、どうかと思うのでございますけれども、船内において、いろいろ迎接員という名で来ておる人と朝鮮総連の活動家との間にいろいろな話し合いがなされておるというような情報がございます。それが帰還打ち切りすべしという基本的なものとして私どもは申し上げておるのではございませんが、そういう事実があった、そういうようなことを法務省関係に報告したことはございますけれども、それをことさら取り上げて、公安調査庁が大いに雑音を高めて、そして帰還業務の打ち切りをやっておるというようなことはございませんから、どうぞひとつ御了承願います。
  155. 帆足計

    帆足委員 何とかを調べてみたら枯れ尾花というふうで、幽霊だと思ったものが何もないことで、子原公安調査庁第二部長さんには、わざわざ御足労願ってまことに済まないことでございました。しかし、にもかかわらず、公安調査庁からの報道として大ぎょうに伝えられておる火の手は、私はむしろ政治方面にあったのではあるまいかと察しております。また、朝鮮総連の諸君赤十字諸君といろんな意見を交換しているということ、今日、意見の交換、思想は自由な時代でございますから、また日本における朝鮮人状況ども話に出るでしょう。しかしそれは、ベトナムにおける米軍とアメリカ大使との話し合いのように、機関銃何台どこによこせとか、ダナンの基地に原子力潜水艦をよこせとか、そういう話し合いではありませんから、まあ気にするほどのことではなかろうというのが一いま公安調査庁のほうで、何も帰国問題の打ち切りに関係あるほどの事態は現在のところないと思う、仰せのとおりであろうと私も思っております。そうすると、これは一体何のためにきょうはこう時間をとって皆さんの御在室をわずらわしたか、まことに雑音というものはつまらぬものでありまして、敬愛する諸兄においては、どうか今後は雑音に耳をかさずという国民性を樹立していただきたい。  最後に雑音の残っているのが、内閣調査室公安調査庁とがこれはくさいと思ったのが、われわれの嗅覚の間違いでございまして、たいして深い根もなかったということになるのでありまして、あとは韓国大使館殿からの雑音、これは例によって例のごとしでありますから、別に――その雑音あるがゆえにわざわざジュネーブまで出かけていって赤十字さんに来れもらったわけですから、さればこそ赤十字船でこの仕事をしておる。すなわち帰国の問題に常に雑音があるから、そこで赤十字に来てもらった。しかるに、雑音があるから赤十字を断わったとなると、今度は、ゆえにまた赤十字に来てもらわねばならぬということになってしまうわけですから、こういうことでもう堂々めぐりはお互いにやめましょう。私の持論である、人生は短い、互いに健康で楽しく暮らさねばならぬ、こういうことで、正示次官、もう大体よろしいでしょうか。いかがですか、ちょっと正示次官の……。
  156. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど来外務大臣それから各省からの政府委員がお答えを申し上げましたように、別にわれわれとしては故意にこの事業の打ち切りその他について考えておるということはございません。ただ、先ほども外務大臣も申しましたように、この人道的な事業の根本の趣旨については十分これを理解し、またその円滑な実施について従来も努力いたしましたし、今後においても努力するつもりでありますが、いろいろ情勢変化に応じまして、各省各庁の意見を総合的にこの問題について十分かわすことによりまして、本問題の今後のあり方等について、今後とも十分打ち合わせをしていきたい、こういうふうなことをいたしております。あるいはそういうことがいま帆足委員がるるお話しになったような御不安の原因になっておるのではないかと思いますが、先ほど外務大臣の申しましたような趣旨でございますから、政府の方針については御了解をいただきたい、かように存じます。
  157. 帆足計

    帆足委員 最後に、赤十字センターというものがむだでないかということをよく言われますから一言申し上げておきますが、やはり二百人、三百人となりますと、新潟の旅館に参るのも、病人もおるし、高血圧の人もおるし、お産直前の方もおりますから、三々五々宿をとるということは非常に困難です。その上、あらしが来ますと出港が数日延びる、インフルエンザがはやると、長きは二週間も延びたことがあります。したがいまして、どうしても三泊四日の赤十字センター、赤十字簡易宿泊所という施設は私は妥当であると思います。ただ、そのセンターの設備をもっと能率化するとか、設備をよくするとか、簡素化するとか、食事を朝鮮の方に好まれるようにするとか、そういうようなことは、もう協定の内部の問題でありまして、基本的問題でないことは御承知のとおりであります。  これをもちまして、帰国問題について、もう言うべきことはなくなってしまいました。もうすべて消えてしまいました。したがいまして、今日をもって帰国協定はただ従来のごとく政治的雑音なしに、赤十字人道の精神に従って継続するということに満場一致御了解願ったということにいたします。  最後に、これはもう御答弁だけでけっこうです。警察庁のほうにちょっと注意を促したいのですが、一年前に注意を促しておいたのですけれども、半年ごとぐらいに朝鮮人スパイ問題の記事が大きく新聞に出ます。これは作為的になされているのではあるまいかと思いまして、推理小説の研究家にも聞き、各方面の情勢を探ってみました。ふしぎなことに、いつも新潟の沖合いに日本語もろくにできない朝鮮人が飢えと寒さにふるえながら、ポケットの中に十ドルか二十ドル、金の一、二万円を持ちまして、無線電信の乱数表を持ちまして、そして秘密スパイとして入ってきたけれども、腹が減って倒れていた、調べてみたら前科三犯のすりであったという記事が大々的にいつも出て、あと竜頭蛇尾になるわけであります。わが総明なる新聞記者諸君が、なぜこういうつまらぬ事件を大々的に新聞に載せるか、また警察庁の外事課の方であろうと思いますが、これを大々的に載せるか。だれが見ましても政治的意図があると思わざるを得ません。これまた韓国側の機密資金でも流れておるのではあるまいかという疑いの日をもってすら見られております。私は今日の警察及び日本の検察当局が全部健全であるとは思っておりません。一割くらいまだ腐った部分が残っておると思いますが、九割方はおおむね信頼するに値すると思い、かつ思いたく思っております。国の法律が維持され、明るい国であるということは、与党野党の区別なく、それはすばらしいことで大切なことです。一たびわれわれが警察及び検察関係の諸行政機関、司法機関に対して信頼を失ったならば、国の乱れるもとでございます。したがいまして、警察当局に、一体こういう事件は、最後はどういうふうに消えてしまったか、事件の一覧表を御提出願いたい。そして以後、不確定なことを、たとえ共産主義の国に対しましてもみだりに国交をことさらに阻害するような記事を大体的に載せること、こういうばかばかしい記事を載せることはつつしんでいただきたい。  それから、第二にはソ連の一等書記官が、ごたごた問題がありまして、これもいろいろ世間で勘ぐられておりますが、これはいずれ国会で発表するというお約束でございましたが、政府文書で報告したものがありましたならば、それの提出を願いたい。  それからまた、沖縄から来た議員さんが数日行くえ不明になりました。これもちょっと想像を絶した事件でありまして、あるいはCIAからの動きがあったのではあるまいかということが世間に伝えられております。韓国のやみの軍資金やCIAの資金などでむしばまれる日本の警察機関でないことをわれわれは確信したいのでありますけれども、一まつの不安が残っておるということをよく認識していただいて、君子は李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れず、もう少しこういう事件の取り扱いについては明瞭、迅速にやっていただきたい。かつて鹿地君が沖縄に連れられていって、そこから明治神宮外苑のあたりに捨てられてきたという事件がありまして、泣く子も黙るCIAとその後言われたのでありますが、あれは占領下のことでありました。いまは独立の法治国の日本でありますから、そういう影響からはさっぱり遮断していただきたいと思います。したがいまして、そういうふうに勘ぐられるような事件の取り扱い方は、ひとつ警察庁外事関係において、特に気をつけていただきたいということを切に私は希望する次第でございます。それにつきまして、ひとつ警察庁外事課長さんがお見えですから御答弁をお願いします。
  158. 渡部正郎

    ○渡部説明員 まず御質問の最初の点でございますけれども、スパイということば、これは適当かどうかわかりませんが、そう世間で呼ばれております事件につきましては、私の記憶では、以前に文書で資料をたしか衆議院の外務委員会だと思いますけれども、提出しているはずでございます。その中に、昭和二十五年以来二十件内外、数十名のいわゆるスパイ事件というものの一覧表を御提出したはずでございますけれども、御存じのとおり、これは密入国が大部分でありまして、密入国してまいりますと、出入国管理令違反という犯罪が成立する。同時に滞在しております間に、外国人登録法違反という犯罪が成立する。出入国管理令違反、外国人登録法違反で検挙をいたしまして、何のためにそれでは密入国してきたのかという目的、動機を追及しているうちに、日本でいろいろな情報を集めて北鮮に送るという使命をもらってきたのだという、これは証拠の上でも非常にはっきりしておるものがあるわけでございます。それで提出したと思っております。一覧表にのせております二十数件の事件というものは、この種の事件ということになるわけでございます。  それから第二のソ連の大使館員とアメリカ人の旅行者の間で起こりましたトラブルにつきましては、これはたびたび国会でも相当詳しく事実を御報告申し上げているはずでございますけれども、なお足りない点がございまして、こういう点ということでございましたならばお答えしたいと思っております。  最後に、韓国CIAから金をもらったり、何かさしがねを受けて、いろいろなことをやっているんじゃないかというような御質問の趣旨と承ったわけでございますけれども、警察はそういうことは全くございませんし、考えてもおりませんので、その点はっきりお答えしておきたいと思います。
  159. 帆足計

    帆足委員 たとえば朝鮮人諸君が乱数表を持っていて、日本語もできぬのがわずかのドルを持って新潟の沖の波に漂っていた、それを北朝鮮のスパイとただ即断して、すぐ発表するという、そういう疑いを抱くのがさもしい心根だと思うのです。そういうものは、たとえば韓国からのルンペンの場合も多いし、それからことさらそういうものをつくって、そういうふうに見せかけたということ、小学校すらろくに出ていない、日本語もできない、すり三犯したようなものが北朝鮮のスパイといって何を一体電報を打ちますか。常識で考えてこういうものはつくりごとだとわかっておる。わかっておるものを新聞に大々的に発表するから、あやしい金をもらっておるといううわさが立つわけです。したがって、そういう一つ一つ事件について、最後の結論はどうなったかという一覧表を提出してもらいたい、こういうわけです。外務委員会は清潔なことを好みますから、われわれ腐った金で動く警察当局の一部などというものに対しては全く困る、いやなことだと思うのです。そういういやなことのない警察にしてもらいたい。私ども政治の関係では、源平藤橘の時代から争いはやむを得ません。しかし刑事の問題に関する限りは、おまわりさんありがとうという感謝の気持ちで一ぱいでありまして、私などは、地元の警察では、いつも選挙のときにはそっくり投票していただいておるので、薄給の公務員諸君、日ごろありがとう、娘たちもあなた方のおかげで暗い夜道を無事にわが家に帰ることもできる、皆さんの御苦労ほんとうに感謝にたえませんし、政治の貧困のためにどろぼうやすりが多くて、そのしわ寄せは全部あなた方にいっておる。われわれのほうはほんとうに恥ずかしい。私はいつもそう思っているわけです。したがいまして、こういうにせスパイ事件などがあると、ほんとうに私はいやな思いになるわけです。殺しやいろいろなやつがいるでしょうね。かつてこういうことがありました。中国がアヘンのやみでもうけている、もう二、三年前です。アヘンのやみでもうけているといううわさが立ちまして、それを警視庁がときどき発表する。それから菅原通済という骨とう屋のじいさんが、それをまたあと売春問題の委員長になる資格があるかどうか、ふしぎな男なんですけれども、この人のいいじいさまが、アヘン密売の検察の委員長になりまして、彼の書いたくだらぬ書物に、中共はアヘン密売で政治資金をかせいでおるということを書いてありました。そこで厚生省当局に対して、私ども中国といえどいろいろな欠点がある、しかしアヘン戦争で苦労した中国がアヘンの密売でもうけるようなことだけはしないことは私は確言し得るということを言いました。ところが厚生省のほうの専門家はよく事態を調べて、全くそのとおりです、これは香港系、台湾系の国際的ルンペンの仕事であって、中国政府及び現在の中国大陸と何の関係もないことで、ただ物理的に中国はアヘン薬品の原産地であるというだけのことですと、これは厚生省のアヘンの課長さんが――これはすばらしい書物を書いている学者の方です。――言いまして、そして問題を明瞭にして菅原通済殿に、以後軽率な発言は慎しんでもらいたいという警告を発したこともありました。それで言うわけです。したがいまして、この一覧表をこの次私どものところへ提出していただきたい。北朝鮮スパイ事件の発端と、それから最後の竜頭蛇尾に終わり、乱数表を持っておったなどといわれる、それももう一ぺん見せていただきたいと思います。こういうつくり話のスパイ事件などというもので、そして政治の雑音と時を同じゅうしてこういうことが定期的に発表される。しかも事件の内容に対して不均衡に大きく新聞に発表されるということは私はよくないと思うのです。もう一ぺん御答弁願います。
  160. 渡部正郎

    ○渡部説明員 お答えいたします。  まず、結末についてでございますけれども、これは先ほど申し上げました、すでに確かに御提出しているはずの表にも司法的結末が書いてございます。  最近のものについて申し上げますと、三十五年以来、ちょうど十三件ほどのこの種の事件を検挙しておりますが、うち三件が高裁、あとの十件が地裁でそれぞれ出管令違反、外国人登録法違反として有罪の判決を受けております。なおその表はまた先生にも御提出することができると思います。  それから詐欺三犯という話がございましたけれども、これはおそらくことしの四月の十六日かに新潟県で検挙いたしました詐欺の容疑者のことを申されているのではないかと思いますが、これは当時長野県ほか一県から、詐欺の前科がたくさんございまして、そのときも数件の容疑がありまして、全国指名手配になっていたものでございました。それを職務質問によって新潟県の三条署で逮捕したという事実がございます。このことに関連しての御質問ではないかと思いますが、当時、私の理解する限り、それがスパイの容疑だということを警察が新聞で発表したということはございませんし、当時新聞にそういうことが出たということも承知しておりません。
  161. 帆足計

    帆足委員 実はこの程度では済まされぬことなのですが……。
  162. 高瀬傳

    高瀬委員長 時間ですから、簡潔にお願いします。
  163. 帆足計

    帆足委員 時間がありませんから、いま警察庁外事課長の御答弁を見ても、その非良心的な方でもなさそうでございますから、私が言うた警告の意味は御理解願えたことと思います。たぶん東大出身の方であろうと思いますから、わが後輩と思えばまた友情も感じますし、気をつけていただきたい。今後こういうことを大々的に発表したら容赦いたしませんから。すなわち、たいしたことでもないのを――乱数表とか何とかいうものを一ぺん見せていただきますが、ありもせぬものを、いいかげんの暴力団につくらせて、そしてそういうものだということは商売人の直感でわかっているくせに、一応スパイ事件として大々的に載せる。あとは出入国違反、密入国ぐらいで済んでしまった。こういうことは外務委員として、どこの国に対しても悪い関係をことさらつくろうとする動きはよくありませんから、気をつけていただくことを御注意申し上げまして、以上をもちまして終わります。
  164. 渡部正郎

    ○渡部説明員 先ほど提出した資料というのは、私どもの新井長官が参議院の予算委員会で四月に矢山議員の御質問に答えて資料を提出してございますので、補足いたします。
  165. 高瀬傳

    高瀬委員長 次会は、明後二十二日午前十時理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会