○加藤(高)
委員 ただいまは喜田村
先生並びに北川
先生から今回の阿賀野川に生じた水俣病に関して明快なるお答えをいただきましたことにつきまして、厚く感謝いたす次第でございます。
私は、当
委員会に所属いたしましてからまだ半年でありまして、事実におきまして、科学的の問題についてはまあ通称弱い、こういうところでありまして、これから二、三点両
先生にお尋ねしたい、かように考えておりますが、その間におきまして、用語の上やあるいはその他の点につきまして、不用意な点がございましたらばお許しいただくように、前もって申し上げておく次第でございます。
今回の阿賀野川のいわゆる水俣病事件というのは、地方といたしましても非常に重視しておる点でございまして、ただいまも
委員会を開会するにあたりまして、わざわざ新潟県の流域の漁業組合の代表方から二千数百名に及ぶ漁民の生活問題だ、一日も早くこれが
原因を究明して、除去の方法を政府側並びに
国会側として真剣に努力していただきたいというような話がありました。せっかくの機会でありますので、私といたしまして御質問を申し上げる次第でございます。
これは四十一年十月十八日の新潟日報という
新聞のコラムの切り抜きでございまするけれども、新しく知事となられた亘知事が、「今後の公害は工場経営者のモラルによって未然に防ぐべきだが、善意で始めた産業が結果として公害問題を起こしている場合は、取り締まりも工場側との摩擦を避けるようにすべきだ。」この中で言っている公害というのは、もちろん阿賀野川の水俣病の問題でありますが、さらに付言して、この阿賀野川の水銀中毒事件は、「工場が
原因とは思えず、農薬じゃないかと考えているので、話題にしなかった。」というようなことが言われておるわけでございまして、その間、地方民に対しまして、非常に大きな精神的な動揺を、この公害がもたらしているということは疑いない事実であると思うのであります。
話は本論に戻りまするけれども、ただいま両
先生の
お話を承りましたところ、全く相反した
立場に立たれた御議論のように拝聴したわけでございます。片やこれは工場の排水である。片や農薬である。これは失礼な言い分ですが、そういうようにとった私の印象ですからお許しを願います。そういうような御発言のように聞いたのですが、二、三点にしぼりまして、
先生方の御見解と、なおその後に
科学技術庁並びに厚生省
関係から一言お伺いしたいと考えております。
まず第一に取り上げられるべき点といたしましては、工場排水説をとる
先生方のお考えは、工場の装置内に生成されるメチル水銀が阿賀野川に流出して、下流約六十キロメートルの地方に今回の中毒事件を惹起した、こう言っているわけです。これに関して、ただいま申し上げましたように、お二人のお考えは全く違っておる。本中毒事件につきましては、先ほど
石田宥全
先生から厚生
大臣並びに
科学技術庁長官にお尋ねになりましたように、試験
研究班あるいは厚生省国立衛生試験所診断班また疫学班の三班が、本件の発生後に、この究明に当たったのでありますが、この間に関して、先ほどちょっと北川先年ですか申されましたが、私として考えますと、何か県の衛生部当局としてとった
態度に多少疑問を抱く点があるのでございます。これは
石田先生にまことに悪いんですが、
石田先生のお持ちになった「財界」から引用して申し上げたいと思うのであります。
第一は鹿瀬工場ですか、私はあまり新潟の地理には詳しくないのでお許し願います。通船川という川があるそうであります。信濃川と阿賀野川を結ぶ間に通船川がある。初めは、県側では通船川には閘門というものがあったということを言っておったのですが、後には、いろいろ調べられて問題が大きくなるにつれて、やはりあそこには閘門がなかったという
一つの事実があるわけであります。そして、またさらに、これもこの「財界」の記録でございますから御
承知の上で……。「新潟
地震並びに津波により新潟港の県営埠頭及び臨港埠頭付近の農薬
保管倉庫が倒壊又は水没したが、これらの農薬倉庫は、おりからの津波のため
保管中の農薬のうち毒物、激物に該当する農薬の一部が流出し、これが倉庫付近に漂流、または埠頭周辺の
場所に漂着して発見されております。今回発見された農薬のうちには、きわめて毒性の激しい特定毒物」があるということは、やはり県の衛生部で言っておる。こういう事態から考えてみましても、私、
しろうとの考えでございますが、ただいまの両
先生の
お話にもありますとおり、秒間平均約二百立方メートルの、流量を持っている阿賀野川の水量で、かりに鹿瀬工場のメチル水銀であるというならば、何と申しましょうか、相当溶解性に富んでおるものでありますから、相当溶解してしまって、下流に至っては、六十キロでありますから、もうほとんどなくなってしまうのではないかと、
しろうととしては常識的に考えるわけであります。しかも、その発生が河口から七キロ付近であるというようなこと等も考えますと、どうもやはりこれは農薬の
被害によるものではないかというような感じが私はいたすのであります。
また、初めに戻りますけれども、疫学班の第一回の報告には、県衛生部の調べとして、農薬の流出は皆無であるという報告を出しておる。しかしその後、四十一年八月十六日の第一次訂正では、メチル水銀系農薬の在庫があったということを認め、訂正報告を出しておる。こういう点に私は疑問を持っておるのであります。しかもこの第一次の訂正では精密
調査であると銘打っておるのでありますが、それは考えようによりますと一方的の
考え方ではないか。この訂正の数値によりますと、推定で百二十キロぐらいあったと存ぜられるのであります。県当局の報告によりますと、被災した農薬は全部メーカー引き取り、あるいは減価販売、埋没処分の
措置をとったとはっきりいっておるわけでありますが、新潟県下における平均的な農薬使用の
状況及び新潟県の病虫害防除資材等の調べから、有機水銀系の農薬の量は在庫量ともども相当あったと思われる節が十分あるのであります。一方では流出を認め、片方では否定するということに、何か疑問を抱かざるを得ないというのが私の率直な見解であります。
私はこの問題に取り組みましてまだ数週間なものですから、細密な
調査をいたしまして、後日また機会がありますれば、両先金の御
意見を伺いたいと思っておるのでありますが、とにかく鹿瀬工場というのは、先ほど
先生がお述べになりましたように、約三十年間続いておるわけでありまして、その間いままで事故がなかった、こういうことを聞いておるのであります。
しろうと目に私どもが見ますというと、一面において考えますると長い間微量な水銀が沈積して、それが新潟
地震によって急に浮き上がった、それを食べた魚をまた食べた人が病気になったというようなこともいえるのでありますが、ただいま北川
先生の
お話にありましたように、
地震直後、
被害直後、毎秒平均二千立方メートルですかの、平常の約十倍くらいの阿賀野川の水流があって、その後病気という病気は全部なくなった。さらにもう
一つ奇異な感があるのでございますが、それはこの鹿瀬工場の上流において、また頭髪検査や何かした場合に水銀保持者があるということであります。こういうことから判断いたしますと、やはり農薬というものも大きな
原因になっておるのではないか、かように考えられます。北川参考人の御
意見によりますれば、全く溶解する、そしてよく散らばってしまうということでありますが、私どももこの点については、後日の機会におきまして、技術者あるいは科学者の御
意見を聞いて、さらに承りたいと考えておるのでありますが、
お話の中で、信濃川が汚染されると、その汚染水は阿賀野川の河口から通船川をずっと通って、塩水くさびというので流入するということでありますが、私の
考え方は、その汚染水はやはり通船川並びにいまの塩水くさびのせいではないか、かように考えられるものでございます。阿賀野川の汚染経路というものは非常に重大と存じまして、ひとつよろしくさらに御
研究のほどをお願いしたいと思います。
次に、喜田村
先生にちょっとお伺いしたいと思うのでありますが、
先生は患者の毛髪、阿賀野川の魚、工場の装置並びに排水口付近の水ゴケ等からメチル水銀を検出したということを書いております。これもやはり雑誌でありますが、この九月に阿賀野川で津川町というところの町長さんが主催で魚釣り大会をやったのであります。そして、そのとき、「うちは魚屋をやっているんだが、売れ行きは落ちなかった。そうそう、津川町が主催して毎年フナ釣り大会をやっているんだよ。水俣病の
原因は昭電の廃水からだといわれてからだが、この九月に釣り大会をやったらね、九十人も集まった。地元の人はもちろんだが、新潟、燕、新発田市あたりからきたよ、盛大だったねと豪快に笑った。」と、こういわれておるのでありますが、傍証としてこの点をひとつ
先生、あとでけっこうでございますから、お答え願います。
農薬がまた病源の
一つでありますならば、私も聞いた話でこれもはっきり言えないのですが、やはりメチル水銀ばかりでなく、エチル水銀も検出されるということであります。なおまた、疫学班報告書によれば、その他傍証として、
地震前に犬、ネコが、
先生もおっしゃいました一、二匹死んだ、あるいは患者発生地帯から工場付近に至るまでの間に手足のしびれや歩行障害などが出た、いわゆる有症者がおったということをあげております。
そこでお伺い申し上げたいのですが、第一に水ゴケよりのメチル水銀検出については、試験
研究班において疑問の点がまだあるということ、つまりその試験方法など、それで今度の再
調査にあたりましてはどういうふうにおやりになりますか、ひとつお聞きしたいと思うのであります。
それから私どもの聞くところによりますと、鹿瀬工場の上流で、先ほど申しましたように、水銀を含んでいる万が何人かあった、また地元でいいますと、犬、ネコの死については、必ずしも阿賀野川の魚を食べたのでなくて、あるいは農薬を食べて死んだ場合もあるのではないかということをいわれておるのでありますが、この犬、ネコの死が、現在の県民の水銀中流と新潟
地震による
被害農薬との間の
関係が全くないという証拠にはならないのじゃないか、かように考えるわけであります。
また第四といたしましては、工場付近で手足がしびれるとかいろいろ言っております。それがまた有機水銀の中毒の疑いがあるとして工場排水と結びつくかのようにいわれておりますけれども、新潟医大の教授であり、本件診断班の班長である椿
先生によりますと、上流地区の有症者は県が
調査したもので新潟医大はこれに
関係してない、その後の
状況から見て有
機水銀中毒ではないだろうと新潟医大の診断班の椿班長は言っておられる。
しろうとがいろいろ
専門家の
先生にお聞きするので、失礼なことばがあったと思いますが、どうぞお許しをいただきまして、何らかのお答えをいただければ非常に幸甚と存じます。
何しろこうした問題は、農薬の普及につれて日本の全国的な問題にもなりかねない、あるいは米の中にも水銀があるといわれて非常に重大視されておりますので、この機会にひとつ
先生方もう一歩前進して御
研究くだすって、全国民を納得させるようにお願いしたい、かように考えております。
以上簡単ですが……。