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1966-07-20 第52回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十日(水曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 原   茂君    理事 菅野和太郎君 理事 纐纈 彌三君    理事 中曽根康弘君 理事 前田 正男君    理事 石野 久男君 理事 岡  良一君       大泉 寛三君   小宮山重四郎君       河野  正君    三木 喜夫君       山内  広君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 上原 正吉君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    佐々木 即君  委員外出席者         原子力委員会委         員         総理府技官   西村 熊雄君         (国立防災科学         技術センター所         長)      和達 清夫君         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         農 林 技 官         (水産庁水産研         究所水質部長) 新田 忠雄君         通商産業事務官         (工業技術院総         務部産業公害研         究調整官)   高瀬 光弥君         通商産業技官         (資源技術試験         所石油部長)  松本 敬信君         参  考  人         (国立公衆衛生         院顧問)    齋藤  潔君         参  考  人         (大阪総合計         画局公害対策部         技術課主査)  中野 道雄君         参  考  人         (元東京教育大         学教授)    和田  保君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団理事         長)      石川 一郎君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団専務         理事)     甘利 昂一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(脱硫科学技術  等、原子力船建造及び放射能に関する問題)      ————◇—————
  2. 原茂

    原委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず最初に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  脱硫科学技術等に関する問題調査のため、本日、国立公衆衛生院顧問齋藤潔君、元東京教育大学教授和田保君及び大阪総合計画局公害対策部技術課主査中野道雄君、また、原子力船建造に関する問題調査のため、日本原子力船開発事業団理事長石川一郎君及び日本原子力船開発事業団専務理事甘利昂一君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原茂

    原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  4. 原茂

    原委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳は、お一人十五分程度にお願いすることとし、後刻委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願い申し上げます。  それでは、脱硫科学技術等に関する問題について、最初齋藤参考人からお願いいたします。齋藤参考人
  5. 齋藤潔

    齋藤参考人 突然のお呼び出しで、どういうことをお話ししてよいか、何かよくわからなかったのでありますが、私の仕事であります公衆衛生立場から、公害問題をお話しすることにいたしたいと思います。特に短い時間で申し上げますから、大気汚染に対して今後どうあるべきかという問題中心として、十分か十五分くらいお話し申し上げたいと思います。  大気汚染は、御承知のとおり、だれにでも肉眼的にもわかり、また感覚としても不快であるという感じがありますからして、一見して非常に簡単な事柄のように思えるものであります。その発生の原因、それから汚染度拡散、その影響、そして対策は、全体としてだれにでも容易に理解できるように思えるのであります。しかしながら、大気汚染研究が進むに従いまして、大気汚染及びそれから引き出されるところのいろいろの問題の複雑であるということが明らかにされつつあるのであります。この複雑である、困難であるというふうなことに負けて手をこまぬいておることは許されないのであります。その間に大気汚染は悪化するからであります。事の真相が明らかでないところに完全な対策の樹立というようなことはとうてい望み得ないことであることは、申し上げるまでもないことであります。この相反する事情をいかに克服するかが、現在の大気汚染対策に当たる人々の重要な課題と言えると私は考えております。  まず、大気汚染の解明に役立つであろうところのいろいろな分野研究がもっと多数の人々によりまして、もっと基礎的に進められねばならない時期にあると考えております。応急的の対策と基本的な対策への研究は、おのずから異なったものでありましょう。過去の、今日までの研究は、むしろ応急的な研究でありまして、とりあえず大気汚染がわれわれの環境に悪い影響を及ぼすんだなというようなことが、ようやくわかりかけたような次第であります。  そこで応急的な研究がありましても、それから明らかになった事柄を勇敢に元気よく取り入れるという態度が、一方においては要求されておるのであります。これは大気汚染に特有な事柄であろうと思いますが、たとえば自動車排気ガス、それから汚染を幾らかでも減少する、少なくする方法が考案されたならば、それを利用していくという態度が必要であろうと考えられます。  一方におきましては、大気汚染に動員されるところの分野の学問というものは非常に範囲が広くわたっておるし、かつまた、それが互いに関連し合っているものであります。たとえば自動車排気ガス対策道路政策というようなものも、これも考えてみると無縁なものではないのであります。  大気汚染状態は、汚染物の量と質とその地域においての気象条件、これらが相互作用で決定されるものであります。したがって、国による相違はもちろんでありますが、一つの国の中にありましても、都市によっても違うし、また町村によってもそれぞれ異なる様相を呈しているのが大気汚染であります。したがって、外国におけるやり方を参考——参考にはなりますが、模倣することは必ずしも歓迎しないのであります。そして、わが国のような狭い国土に一億の人口、この膨大な産業をかかえ込んで無計画に放置すれば、人も工場も過密にならざるを得ないのであります。だからこそ、わが国大気汚染対策のため独自の立場計画性のある技術を開発して、そして、しかも勇敢に立ち向かっていかなければならない時期にあろうと考えております。  大気汚染は人のつくり出したものであります。言うまでもないことであります。したがって、われわれ人間の力で解決のできるうちに解決すべきものは着手しないと、将来に悔いを残すことがあり得るのであります。工場からの大気汚染影響を少なくするための都市計画、さらには工場配置計画、それも全国的視野に立ったところの工場配置計画を含めまして、計画が行なわれるべき時期に達しておると私は考えておるのであります。現在多くの関心を引いておりますところの大きな火力発電所石油精製所からの亜硫酸ガス汚染と国の燃料政策、このあとに脱硫の話があるのでありましょうが、これらの燃料政策とは無関係ではないのであります。  今後の公害研究に望むことは、われわれ人間に対する影響なんであります。これが最も重要な点なんでありますが、遺憾ながらわれわれの研究は、まだ人間に対する影響という点につきましては十分なところへ達してはおりませんが、いま着々と進めておるのであります。しかしながら、これらの研究におきましても、ようやくその緒についたという状態であって、さらに人間のからだについてのもっともっと進んだ大じかけな研究がなされなければ、まだまだ満足はむろんできないのであります。水質とかあるいは騒音、振動というような研究につきましては、ほとんどまだ何ら技術も提供されていないし、研究もきわめて貧弱な状態にあるのであります。  以上、私は与えられた時間に私の考えているところだけを申し上げておきます。ありがとうございました。
  6. 原茂

    原委員長 どうもありがとうございました。  次に、中野参考人にお願いいたします。中野参考人
  7. 中野道雄

    中野参考人 いま齋藤先生から大気汚染問題日本における状態について説明がありましたけれども、現存の日本大気汚染を考えますと、一つ東京大阪のようないわゆる戦前からの工業地帯中心とした既成工業都市における蓄積型の大気汚染があります。これは特に気象条件が静穏なときに非常に広域的に起こっておりまして、その上、さきに齋藤先生もおっしゃいましたけれども、それらの地域日本の全生産額の約七〇%が生産されている。そういう産業の発展とともに人口稠密化が非常に進んでおりまして、その上、これらの過密都市におきましては、都市計画というものがほとんど公害対策の面からは考えられておりません。したがって、工場地帯の中に住宅があり、あるいは住宅地帯の中にひどい場合には工場が入り込んでいるというような状態にあります。しかも日本気象条件から見て、そういう広域的な汚染の中にかなりきわ立った局地性というものもありまして、そういう点では局地的な大気汚染というものが中小工業地帯中心にして起こっていると同時に、大企業による広域的な汚染というようなものがかぶさって起こっております。  次に、現在各地で建設が進められております新産都市あるいは工業整備特別地域など、新開発地域における公害問題があります。  この両者の大気汚染というのは、質的にはかなり変わったものがありますけれども、これらを共通してわれわれが対策を考える場合には、まず対策目標をどこに置くのか、それは実際に人間が生活している環境における濃度というものをどこまではよいと考えるのか、それが現在では客観的には明らかにされておりません。この問題は非常にむずかしい問題ではありますけれども、ある程度そういう目標を客観的に設定しない限りにおいては、その対策がはたして結果として効果を発揮するかどうかということについて議論が統一できないのではないかと思います。  さらに、そういう環境濃度というものが設定された場合に、もう一つ問題は、そういう工場等排出源から出てきた有害物質環境にどのように広がるかという問題があります。この拡散問題は、たとえば放射能物質などの場合には非常に神経質に諸外国においても行なわれておりますし、現状日本におきましては、新しい開発地域というものが非常に巨大な企業、巨大な生産設備を持っているだけに、その関係を明らかにすることが非常に大切だと思います。この点につきましては、既成工業都市対策を進めるためにも、やはり排出源状態環境汚染濃度状態を明らかにすることがきわめて根本的に必要だと思います。  このような考えからしまして、現在の環境濃度設定ということはしばらくおくとしましても、少なくとも大気汚染物質大気中における拡散研究調査に関しましては、もう少し全研究者の統一した研究というものが国家的に推進されて、そしてその中からそれに関係する専門学者が大勢として一致できるような調査方法あるいはそれの考え方というものを確立されるべきではないかと思います。  先日東京において行なわれました科学技術庁防災科学技術センター主催大気汚染物質拡散シンポジウムにおきましても、拡散関係の諸学者あるいは技術者から、この拡散問題について、やはりプロジェクトというような形で科学技術庁などが中心となった研究計画促進され、その中で、現状においては大気汚染物質拡散をこのような方法で考え、そしてその調査結果についてはこのように解析すべきであるというようなところのものを確立すべきではないかという強い意見が出されております。この点に関しましては、現在まで沼津・三島における黒川調査団調査を初めとして、そういう調査各地で行なわれようとしておりますけれども、それらの結果については学問的にもあまり深い検討をする機会がオープンな形として保証されていないのではないかと思います。そういう面から、もう少し全専門家を結集したような調査研究というものが、特に大気汚染物質拡散問題中心にして組織される必要があると思います。現在大気汚染研究というのは広範な分野で相当急速に進んではおりますけれども拡散問題につきましてはかなりおくれている面があるのではないか。  以上、要約しまして、まず対策目標としての環境濃度設定を何らかの形で、少なくとも暫定的にでもきめていくということ、それから大気汚染濃度を根本的に支配する拡散研究促進を国家的な規模で統一して進めていただきたいということ、それからそういうものを含めた人体等への影響調査を今後さらに充実して行ない、具体的な公害影響で後悔を残さないように対策が進められることを要望したいと思います。  以上で終わります。
  8. 原茂

    原委員長 どうもありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。
  9. 和田保

    和田参考人 私、公害審議会水質審議会委員として関係しておりますので、それらの審議会審議を通じまして感じましたことを二、三申し上げてみたいと思います。  申すまでもなく、公害問題は、大気汚染水質汚濁、騒音等非常に幅の広いものであります。しかもこれが近年急激に問題になったというところにこの問題の特質があると思います。そのためにこの防止対策にもいろいろと問題が起こってきているということが考えられます。その問題一つとして私痛切に感じますことは、先ほどからもお話がありましたが、その防止対策技術的な方法確立されていないという問題が数多くある、こういう点であると思います。  重油専焼火力発電における亜硫酸ガス問題につきましては、従来あまり多くの調査費が計上されないでもたもたしていたように感ずるのですが、本年から国会の配慮で十億円の予算で相当な。プロジェクト研究が進むというような段階になったということを伺っておるのでありますが、われわれとしては、こういう種類研究が一日も早くその実を結ぶことを期待せざるを得ないのであります。しかし、問題はこの脱硫問題に限らないのでありまして、広い範囲にわたって防止対策技術的な基礎確立ということが必要となっておると思うのであります。  昨年、四日市市の海域の水質保全問題調査したことがあるのですが、このときの中心課題は、あそころあります石油化学工場から放出される油分によって魚ににおいがついて水産業に大きな打撃を与える、こういう問題中心であったのであります。いろいろ調査いたしました結果が、従来行なわれておりますAPI方式でやったのでは十分でないということ、それで十分に油分を抜く方法として醗酵研研究されておった生物処理方法、こういうものがあったのでありますが、これによればどうにかこの油分を抜くことができる。しかし、これはまだ実験段階の成果であって、これが実際に中間試験まで行なわれていない、こういうような状態にあったのであります。したがって、これを直ちにそのまま企業に対して義務づけるという、そこまで踏み切ることはいささかちゅうちょせざるを得ない、こういう問題がございました。こういう種類問題は、法律で規制いたしますと直接企業に相当な負担をかけることになりますので、その点について十分考慮を払いながら、しかも技術的に確立されたものでないとこれを強制することはできないわけなのであります。そういう関係にあるものだと思いますので、こういうものの研究なり方法確立ということについては、国の手で十分に配慮されるということが望ましいのではないかと考えるわけであります。  農業関係問題では、カンショでん粉廃液だとかパルプ廃液、こういうものが各所で問題となっております。カンショでん粉廃液がいろいろ悪い影響を及ぼすというような問題で最も大きいのは宮崎県の大淀川流域で、あの流域におきます数多くのでん粉工場から流れ出ます廃液のために大淀川がよごれまして、宮崎市の上水道にまで影響するというので問題にになったのであります。宮崎県は特別に条例をつくりまして、審議会を設けて非常に熱心にこれらの対策研究して問題解決に当たったのでありますが、結局、大きな沈でん池をつくって洪水のときにのみこの廃液を放流するというような処置を講じておるわけであります。そうして一応の解決をつけておるというわけであって、いまだにはっきりした技術的な対策というものは確立していない、こう思っておるわけであります。  この問題の場合において四日市の場合と異なります点は、企業対象でん粉業というきわめて零細な企業でありまして、その背後には農民の生活という問題がつながっておる。したがって、これに過大な負担をかけるような対策というものはなかなか強制しにくい、こういう困難な問題があるわけであります。これらを考慮の中に入れた一つ方法というものがやはりここで考えられなければいけないのではないか、こういう問題であります。  パルプ廃液問題もしばしば水産業との間で問題を起こしております。これは廃液の利用と組み合わせてさらにこれの対策研究をされていかなければならない問題だと思うのでありますが、総じてこの種の公害問題処理困難性は、第一には技術的な方法確立されていない場合が非常に多いということ、しかも、この方面の研究は、企業者自体はとかく消極的であるということであります。それから零細な企業においては負担をすることが問題になるというようなことも考えなければならない。いろいろの問題がありますが、都市地域の河川の水質汚濁処理問題になりますと、結局これは下水道事業促進ということに帰着すると考えるのでありますが、隅用川の水質問題水質審議会検討されたときにも、一番問題になりましたのは、沿岸にいる零細な企業廃水処理問題であります。これは排水量の少ない小企業を除外しまして、これは将来下水道にまかせることとして、一方、荒川からの希釈水の放流によって隅田川の水質は今日やや改善される方向に向かったのでありますが、このような場合は他にも数あるのでありまして、単純に法律で規制すれば足りると考えられない場合が多いのであります。要するに、産業公害というものはその範囲が広くて、原因と考えられるものも幅広くあるのでありますが、まず基本的には、対策技術的な基礎確立するという点、これが一番大事であって、その上に立って行政及び立法上の適切な処置が行なわれなければならないと思うのであります。  簡単でございますが、以上です。
  10. 原茂

    原委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。  引き続き、関係政府当局より、脱硫科学技術水質汚濁及び大気閥汚染防止技術等について概要説明を聴取いたします。  それでは最初に、松本資源技術試験所石油部長よりお願いいたします。
  11. 松本敬信

    松本説明員 それでは重油脱硫技術についての概要を、私の知っておる範囲について御説明を申し上げます。  この脱硫技術につきましては、すでに科学技術庁資源調査会から、同会報告第三六号で、昭和四十一年二月二十二日に「重油の低いおう化に関する調査報告」というかなり詳細な報告が出されておりまして、これ以上を出るようなことはまだわれわれもインフォーメーションを得ておりませんので、これ以上を出たような御説明ができないのははなはだ残念でございます。  現存検討されております重油脱硫技術と申しますのは、方法としてはいろいろあるのでございますが、いわゆる水素化脱硫水素をもって分解しながら脱硫をしていこうという技術が一番有望なように一般に認められております。それで、現在このプロセスで実用の段階に大体達したろうと考えられておるものは、アメリカで開発された三つのものがございまして、これは例のガルフ・リサーチ・アンド・デベロプメント・コーポレーションが開発しましたガルフHDS法というのがございます。これが一つ。それからもう一つハイドロカーボン・リサーチ・コーポレーションがアメリカのシティーズ・サービス・オイル・カンパニーと共同で開発しましたHオイル法というのがございます。それから、これにもう少しおくれて出てまいりましたのにアメリカのユニバーサル・オイル・プロダクツが開発しましたUOPのアイソマックス法と称するものがございまして、この三つ資源調査会検討のおもなる対象になったプロセスでございます。  それで、これは技術的に見ますと、触媒問題あるいは反応器の型式といったような問題プロセス問題については一応技術的な可能性というものは大体見当がついて、かなり段階にはきているというようなことは一般に認められたようでございます。しかし、これの経済性になりますと、いろんな問題が出てまいりますので、あらゆる面から総合判断をしないと軽々しい結論はおそらく出ないのではないかと思われます。資源調査会でやられました検討におきましても、やはりこれらについてのいろんなデータは、これらのそれぞれの会社にいろいろ照会をされて、そして集められた資料に基づいていろんなコスト計算も出されておるようでございます。したがいまして、この辺の点もやはりよく考慮に入れないと、脱硫経済性問題となりますと、かなり問題があるのではないかと考えられるわけでございます。  それで、現在試算されております脱硫費というものについて見ましても、重油一キロリットルを処理して硫黄を一%減らすための脱硫費というものが大体五百円程度でございます。したがいまして、たとえば三・八%くらいの中近東の残滓油硫黄分一%くらいのコンテントのところまで脱硫しようといたしますと、大体千三百円からやはり千円以上というところのコストが計算されておるわけでございます。したがいまして、経済的に見ましてこういう脱硫の費用がかけられ得る状態にあるのかどうかということは、私どもいまよく判断がつきませんけれども、やはりまだ脱硫費としてはかなり高いものではないだろうかというのが一般考え方のようでございます。  そこで私どもは、こういう外国技術かなり状態にはまいっておりますけれども、やはり日本の国内といたしましても、これらに対抗できるような技術を開発する必要があるのではないかというような考え方をもちまして、本年度からようやく特別研究で私ども資源技術試験所が八百万の予算をもって一応触媒開発というものを目的といたしました基礎研究を開始いたしたわけでございます。これの装置は本年の八月一ぱいくらいにはおそらく完成すると思いまして、そこで研究を始めることに予定しておるわけでございますが、日本がこれからこの脱硫技術を開発しようという場合には、やはり問題は、一つ外国触媒と匹敵できるような新しい触媒を開発するということが一番の問題ではなかろうかと思います。  それで、日本は御承知のように戦前から例の石炭液化の問題水素添加という技術についてはかなり高いポテンシャルを持っております。その後、戦後になりましても石油の軽い留分の脱硫についてはすでに実施されておりまして、これも技術的には相当なポテンシャルは持っておると思います。でございますから、これらの官民の持っておるいろんなポテンシャルを結集して、力を集中して研究をもし進められれば、必ず近い将来には外国技術と対抗できるような脱硫技術というものもできるのではないかというようにわれわれも考えておるところでございます。  簡単でございますが、以上でございます。
  12. 原茂

    原委員長 次に新田水産庁東海区水産研究所水質部長にお願いします。
  13. 新田忠雄

    ○新田説明員 水質汚濁に関しまして水産側がどういう影響を受けるのかといったようなことについて、どういうような研究がどういう形でいままで行なわれたかといったようなことを御説明いたします。  従来いろいろの調査などが行なわれて、大体において国の水産研究所とか府県の水産試験場といったようなところが行なっております。そういう調査を通じて、大体そういう汚濁の影響判断が可能の場合もかなりある。調査の内容というのを大ざっぱに分けますと二つありまして、一つは実際に廃水が出ているところで、その影響があらわれるかどうかということの調査、それからもう一つは、今後何らかの工場ができるようなところで、今後被害を予想することができるかどうか、そういうような形の調査が従来行なわれております。  それをまた分けて御説明いたしますと、影響調査というようなことに関して、大体において水質調査をする。それからそこに住んでいる生物がどうかという生物の調査をする。それに加えまして、どういう環境条件にあるかというようなことを調査する。そういうような調査をやりますと、どういう影響があるだろうといったようなことを大体考えることができるというように思われます。従来そういうようなことをやっていろいろの結論を出している。こういう調査は、大体においてはその地元でやることがかなり必要です。従来いろいろの調査は、あるいはかなり離れたところで調査組織をつくってやるということもございましたけれども、実際において調査をやるためには、そこの場所で、ちょうど条件のいいときに調査をしなければいけないということが多いもので、そのためにそういう調査が従来行なわれて、その結果をあげているというようなことでございます。  それから、新しく今後つくる工場に関しての問題といったようなことに関して、従来しばしば被害を予測するという調査が行なわれました。被害を予測するということは、これも必ずしもいまのような場合においては不可能ではないというように思われます。たとえば天気を予測するとかなんとかいう場合には非常にむずかしいと思うのですが、工場が、実際においてある程度どういう種類のものができるというように推定される。それからどういう環境のところへそれを流すといったようなことがほぼわかるものですから、その結果として、被害がどうなるだろうということが見当がつく。  どういうようにしてそういう予測をするかといいますと、一つは、流される廃水の水量に基づいて、どのような影響範囲があるかといったようなことを考えることが大体できると考えられております。これはもちろんそこの条件、たとえばどういう海況であるとかいうようなものと伴わして考えないとできないのですが、そういうようなものが伴いさえすれば、大体においてどの範囲にどういう影響が広がるだろうといったようなことはわかるだろうというように考えられます。  それからその次に、廃水の影響が及ぶということに関して、どういう水質が考えられるかということも重要な項目になります。水産側では、水産用水基準というのを昨年整理してつくったのですが、少なくとも被害といわれるような問題は、どの程度水質であればだいじょうぶだろうといったようなことの整理が一応はできている。そういうようなものを参考にしまして、それからもう一つ、今後つくられる工場というものについて、どの程度処理を行なうのかということがかなりはっきりしてまいりますと、その影響の及ぶ程度といったようなものを大体において推定できる場合が多い。そういうようなことをいろいろ含めまして、従来においてある程度判断をし、そしてある程度調査をしてきたということが、水産側において行なわれた従来の水質の扱い方である、そういうようなことで御説明を終わります。
  14. 原茂

    原委員長 次に、和達防災科学技術センター所長にお願いします。
  15. 和達清夫

    和達説明員 現在、公害には種々のものがあり問題になっておりますが、これらの公害防止には、まず科学的の観測調査による、実態の把握と、その機構の解明が大切であると思います。また、将来の公害防止対策にとりましても、科学技術がその基礎になると思うのであります。たとえば大気汚染にいたしましても、まず汚染の刻々の状態を把握して、その状況を監視する観測網の確立をはかる必要があります。特に汚染の進んでおるところにつきましては十分にこの施設の整備をはかり、常時的の観測の実施を考えるべきだと思われます。  大気汚染調査研究面につきましては、ただいま申しましたように、観測網の整備とともに、その観測に用いる測器の開発と測定方法の改善についても十分研究する必要があります。ここで観測と申しますのはもちろん汚染物質の観測でありますが、一般の気象は大気汚染拡散に重要な影響のあるものであります。その気象観測におきましても、従来は地面付近と上層一般の観測は行なわれてきましたが、大気汚染拡散に重大な関係のある高さ数百メートルまでの下層大気状態につきましては、従来の観測は不完全と申してよいと思います。この点は十分に今後の観測施設の整備をはかる必要があると思います。  次に、そのようにして観測をいたしましても、大気汚染の機構を知るには、やはり特定の地域で、ある時期における大気拡散の実態とその機構をよくきわめるための精密調査の必要があります。  次に、これらの拡散の状況を知るためには、実験室内における実験を十分に行なって、これと実際に起こっておる拡散現象との間の関係を知る必要があります。そして、これらの観測や調査や実験に基づく資料によって、大気拡散の理論というものを樹立しなければなりません。この理論は従来も多くありますが、それらは地面付近のものが多く、さきに申した下層大気における拡散の理論は、現在でもかなり研究はありますけれども、やはり一番適用し得る理論式というものをつくり上げる必要があります。  要するに、大気汚染につきましては科学技術が非常に重要な役目をするのでありますが、それは、いままでに公害防止に関する科学技術が十分に発達しないうちに公害という事象が進展したところから、現在におきまして科学技術がこれを追いかけているというような傾向がなしとしないのであります。  今後の科学技術の振興は常に安全ということを基調に置いて、こういうようなことが起こってから、そのあとから科学技術の発達によってこれを防ぐというようなことでなくしたいものでありますし、また、このような研究がじみなものでありますので、どうしてもこの推進が十分に行なわれないといううらみがありますので、この点につきましても、じみではあるが大切なこの種の安全とか防災とかいう研究を十分に振興せられるようにお願いいたしたいと思います。
  16. 原茂

    原委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  17. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それぞれの参考人から、簡単ではありましたけれども非常に示唆に富んだ御意見を承りまして、非常に参考になりました。産業公害対策特別委員会というものが本院にもありまして、その部面において政治的な問題法律的な問題については研究を進め、討議を重ねておりますので、私はもっぱら学問的な立場で、これにどう対処していくかということについてお聞きいたしたいと思います。  ただいまお聞きいたしておりますと、産業公害の起こった原因というものについていろいろ申されましたし、あらゆる論説や意見の中にももうこれは言い尽くされております。言うまでもなく、産業の非常な発展が、公害問題まで十分に手を下すというところまでいかない前に大きくなってしまった。そしていまやこれを放置しておきますと、どうにもならないのではないかという心配にまで発展してきたのでありまして、私が本委員会でこの問題を取り上げていただきたいという大きな願いの一つも、どうにもならなくなってしまってはこれはいたし方がないと思いますので、そういう意味合いで、皆さんの日ごろ御研究になった研究をひとつお聞かせいただいて、国としての方策を立てていただかなければならない、こういうように思うのであります。  それからもう一つは、立場ですけれども、私のいま住んでおりますところに、これは新聞にも出ましたので御存じだと思いますけれども、石油精製工場が来る、続いて、これはまだ未確定でありますけれども、他の石油産業が来る、現在はこれを受けて火力発電所があるわけで、この三つが一緒になってコンビナートができる。こういうことで地元では、公害があるのだ、あるいはまた、公害はあまりないのだというような論議が、科学的な基礎によらずして、単なる政治的な発言や政治的な圧力でなされております。これは私の第二の立場であります。  第三の立場は、私、昨年ソ連に、これは公害問題ではありませんけれども、主として原子力関係の視察に行ったわけであります。そこでいろいろ聞いたことなんですが、ソ連においては、あのバイカル湖の沿岸に、火力を使い、水力を使って、電気を起こすが、特に公害を及ぼさないような配慮を十分にして、バイカル湖の水をよごさないように北極海のほうに排水専用の大きなみぞをつくって、そちらに流していく。こういうようなことにして、日本の瀬戸内海よりはるかに大きなバイカル湖の水でさえよごさない国家的な配慮がされておる。さらにスイスのレマン湖においては、これも工場汚水の流入によって湖水が汚染されることを非常におそれて、いま対策を急いでおるということであります。私、瀬戸内海の沿岸におりまして、非常に風光明媚で、しかも空気と水のよいところに、工業の立地条件として非常によいものを持っておるから、ここに工場を建てようという、全体的な計画を持たない考え方には、私たちは反対なんであります。こういう大きな立場と、私の郷土の立場と、さらには本委員会の持てる科学を主とした追究をするという立場から、きょうはひとつお聞きいたしたいと思います。  いま大気汚染のことについて二人の方からお話がありました。私、中野先生にひとつお聞きしたいと思うのですが、先生方もそういうように言われておりますし、最後の私達国立防災科学技術センター所長さんも冒頭におっしゃいましたが、私は、やはりこの公害問題については、第一は調査だと思います。そうしてその調査に応じて対策を立てなければならないと思うのですが、いま私の立っておる姫路の地区では、その調査があまりはっきりしていないように思うのです。そこでどういう調査公害と非常に関係をつける有効な調査であるか、厚生省や通産省からいろいろ資料もいただきました。東京では自動観測の装置もつけておられるようでありますけれども、私らのほうはそういう装置ではなくて、定点的に観測をして、それも一カ月の平均が出るというようなことでありますけれども、まず、どういう観測装置をやって、そしてそれにはどういうことが一番の条件であるか、これをひとつお聞きいたしたいと思います。  きょうは時間の関係もありますので、水質汚染問題大気汚染問題の二つにしぼりたいと思いますが、最初大気汚染についてお聞きいたしたいと思います。
  18. 中野道雄

    中野参考人 大気汚染の事前の調査につきましては、さきにも申しましたように、沼津・三島におきまして黒川調査団といわれる各界の専門的な学者によりまして、事前調査わが国ではきわめて画期的なものとして行なわれた例があります。それをこれからも事前調査一つのテストとして、その方法を考え、そしてそれをさらに改善して、こういうような事前調査をできるだけ常に進めようというのが、厚生省のお考えだというように聞いております。具体的には、さきに申しましたように、まずその地域に進出する工場から発生する汚染物質の質、量あるいはその発生の状態というものを事前に把握する必要があると思います。さらに、そういう汚染物質が拡散する条件として、現地での気象観測、特にこの気象観測につきましては、従来気象庁で行なっておりました気象観測資料というものは、主として非常に大局的な天気予報のための観測資料であって、公害防止のための資料としてはきわめて利用しがたい条件を持っております。そのためには少なくともその地域気象条件というものを、春夏秋冬について特性として把握する必要があると思います。さらに四日市で起こりました大気汚染のように、従来の東京だとか大阪のような、そういう大気汚染物資が静穏な気象条件のもとに蓄積して起こる、そういう静穏スモッグタイプの汚染ではなくて、汚染源がきわめて巨大であることによって、相当不安定な風の強い気象条件のもとにおいても局地的に相当ひどい公害を起こしております。そういう見地から、具体的な汚染源を、その地域気象条件、地形的条件を踏まえて事前に調査する必要があると思います。これは現在行なわれておりますものとしては、ヘリコプター、飛行機あるいは係留気球その他を用いた現地でのそういう拡散の観測、それからさらに、その現地の地形模型図によって、あるいは工場の条件を模型的に設定して、それを風洞実験の中でかなりモデル的に予測するという調査が行なわれております。さらにそういう不安定な条件と同時に、従来問題になっております静穏な気象条件における気温の逆転層の状態等の調査もきわめて必要であると思います。そういうような調査が現在漸次進んではおりますけれども、まだ全体的な方法論としては学問的に確立されている状態ではないと思います。そういう面におきまして、そういう事前調査というものが、ある面では短期的な調査で済む場合もありますし、ある面では比較的長期的な調査資料の把握が必要ではないか。そういう点におきまして、工場設置計画あるいは工業地帯のそういう建設計画が具体的に進む以前に、そういう可能性のある段階から、比較的基礎的な気象調査などの資料が蓄積される必要があるのではないかというように思います。現在私も大阪府の堺臨海工業地域公害対策専門委員会委員として参加しておりますけれども、堺におきましては、現在申しましたような調査を、かなり断片的で、総合的な計画とはいかないまでも、一応は実施いたしました。これらの成績をどのように評価するかという問題については、現在まだ学問的にもいろいろな議論がありまして、直ちに非常に一致した結論に到達することはできませんけれども、そういう資料がもし整備されたならば、四日市で起こったそういう公害というものは、ほぼ完全に防ぐことができるのではないかというように思います。そういう面におきましては、現在の公害対策研究というのは、少なくとも四日市の事件が起こった発端であった昭和三十五年当時に比べればかなり長足の進歩をしておりまして、それらの調査というものが総合的に行なわれ、さらに国家的な見地でそれの質的な向上あるいはもっと総合的な見地からのそういう研究が実施されれば、公害というものを、完全にとはいえないまでも、少なくとも社会問題としての公害を相当程度解決できるのではないか、そういうように考えます。
  19. 和達清夫

    和達説明員 ただいま中野さんのおっしゃったことに大体尽きておると思います。
  20. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 現在私のほうでも実際の問題としていろいろ論議されております。その点についてひとつお伺いしたい。それにはひとつ背景を申し上げねばならぬと思う。  四日市では大体火力発電が百六十万キロワット、私のところはいま九十万キロワットに対して近く四十五万キロワット。すでに石炭を九〇%たく火力発電が四十二万キロワット。その上に出光興産の製油所がいま八万バーレルですけれども、将来十五万バーレルになる。四日市の製油所が三十万バーレルですから、これは半分です。それから周棚にある工場は製鉄、セルロイドとありますが、製鉄がほとんどですが、沿岸十二キロの間に大小二十ほど工場がある。そこで私たちの非常に心配しておるのは、これが四日市と同じようにならないかという心配を持ちまして、事前の調査を十分にしなければならない、こういう観点に立っておるわけです。  ここにあります県公害課の調査による亜硫酸ガス汚染状況をもとにいたしまして、将来公害がないというようなことを言っておるわけです。私たちは、いま言うような将来工場が大きくなることと、さらに石油の第二次産業、石油化学がこれに付随してやってくるだろう、こういうことを非常に心配してやかましく言ったわけであります。県の計画では、最近あわてて出してまいったところによると、石油の第二次産業がくるということをはっきりと数字で示してまいりました。これでは、四日市の規模とほとんどひとしい、こういうふうに思いますので、ここに工場をつくってしまってから、これではたいへんなことだと思いますので、科学的な調査を十分しなければならぬ、こういうたてまえです。  ここに二酸化鉛法による大気中の亜硫配ガスの反応の状況を示しておるわけです。これでは川崎市、尼崎市、名古屋市と比べますと姫路市は非常に低いとしております。ミリグラムであらわして〇・七五ミリグラムを表示しております。しかし、こういう二酸化鉛法でやって亜硫酸ガスを正確につかめるかどうかということが問題だと思うので、これは厚生省からも見えておりますから厚生省にお聞きしたいのですが、厚生省が出したこの資料、全国の大気汚染の状況を見ますと、これは私たちのほうでやりましたような二酸化鉛法でやっておられるのかどうかということです。  この資料によりますと、最初にこういう断わりが書いてあります。「この資料は、第五回全国大気汚染防止連絡協議会が兵庫県において開催されるのを契機に、ばい煙の排出の規制等に関する法律の適用を受ける主要都府県及び市に、大気汚染に関する資料を持ち寄っていただいて、とりまとめたものであります。」その中で都府県としては兵庫県が入っておりますし、市といたしましては、昭和四十年十月一日に姫路市が適用になっておる。そして二としてこういうことが書いてある。「そもそも、大気汚染の度合いを把握し、かつ各地域の比較をする場合は、それに必要な条件を整備したのちに行なう必要があります。例えば、測定点の数、配置箇所、測定器材、測定方法等です。しかし、ここに掲げた数値は、単に各都道府県市で現在実施中の方法等によって得られたデーターをとりまとめたものに過ぎません。それだけに、必ずしも全国の大気汚染現状を、正しく表わしたものとは言えないことをお含み頂きたいと思います。これを契機に、このような条件が整備され、全国の汚染状況が正しく把握できるようになれば幸いです。」こういうように非常にあいまいなように書いてあるのでありますけれども、姫路市では、この調査をもって亜硫酸ガスが非常に少ない、こういうように断定してしまっておるのです。県も、公害はない、大気汚染の地上濃度は許容値の十分の一以下である、こういうようにきめつけてしまっておるのです。そういうことを断定するのは私は危険だと思うのですが、厚生省はどういうぐあいに思われますか、あるいはきょうおいでいただいておる学者の方はどういうぐあいにお考えになるか、ひとつ聞きたいと思うのです。  もう少し情勢を言いますと、兵庫県には、五月十一日出光が起工式をやってから、私は、公害がないというデータを行政の当局も、さらに企業の責任者も早くわれわれに提示して説明をしてくれということを言っておったのですが、六月の十五日まで何も説明がなかったわけです。そこで県はあわてて六月の二十一日だったかと思うのですけれども公害審議会に諮問をしたわけです。公害審議会に諮問をして、そして八月中に結論を出せ、そうでなかったら出光を再誘致する——いまは出光が千葉のほうへ移転するということで、だだをこねておるわけですが、このだだをこねておるのを早くどうぞ帰ってきてくださいというためには、そういうデータをはっきりせねばいかぬので、八月中に結論を出す。私は、六月の二十一日から諮問して、公害審議会が八月の末日までにそんなデータが出たら、これこそ化けものでないかと思うのですけれども、そういうことでだいじょうぶだという結論を出そうとしておるのを私は非常に危険に思うのです。その基礎になっておるのは、この二酸化鉛法が基礎になっておる。あと私はまた意見なり疑問点を申し上げますが、この点について最初お聞きしたいと思います。  もう一つつけ加えておきたいことは、この地方でなるほど亜硫酸ガスはそれだけの降下量ですけれども、ばい煙につきましては一平方キロメートル当たり一ヶ月十一・二トン落ちるわけです。それは言うてないわけです。だから、亜硫酸ガスだけが害があって降下ばいじんなんかは考えに入れてない。それでだいじょうぶだという、姫路市は市費を使い広報を出して宣伝をやっておるわけです。こんな危険なことを、こんな非科学的なことを、しかも法治国家で、行政の責任者がやっていいかということで、以上私は文句を言うておるわけなんですが、まず学問的な見地からそれをお聞きしたいと思います。
  21. 橋本道夫

    ○橋本説明員 厚生省の公害課長でございます。  いま御質問のありました測定の問題でございますが、あとで先生方からお話があるかもしれませんが、純学問論争をいたしますと、現在の大気汚染防止行政というものはなかなか進められないというような非常な弱点がございます。一平方キロメートルについて一カ所ずつ測定点を置けということが純理論的にはイギリスではいわれておるわけですが、事実上はそのような形ではなかなか実施できません。現在兵庫県がいたしておりますのは、神戸、尼崎においてはかなりなところの段階に入っておりますが、姫路におきましては、まだそのステージのごく初めの段階であるということでございます。当初の段階では、やはり粗大な汚染物質につきましての降下ばいじん法、あるいは一カ月間の蓄積の暴露をやりますPbO2法、これを用いるということは、これは伝統的に行なわれておることでございまして、不十分なものではございますが、それをもって第一次的な判断をするということは、行政上の判断としては、最終結論を出すには問題がありますにしましても、著しく誤ったことではないというように私ども思っております。  今度事前調査を厚生省がいたし、通産省もいたすことになっております。この事前調査は、一定の短い期間でございますが、この短い期間の間に、非常にたくさんの測定点を張りまして、多くの方が非常に関心を持たれておられますが、一時間当たり何PPMであるかということを測定する調査をいたします。ただこの調査は、現在の汚染源の能力で、そのときの気象条件でどのような姿であるかということをつかまえる調査でございますが、この調査をわずか一週間ぐらいいたしますのに、約三百人余りの人員を動員するわけでございます。膨大な組織の調査でございまして、それを一年間ぶっ続けにやるということはとうていできない。そういうことで、そのような短い期間たくさんの測定点を張って調べるということと、長期にわたる気象データを調べるということは、WH ○の測定の専門委員会におきましてもすすめている方法でございます。これは学問の前段階の行政の段階でございますが、そういうことをいたしまして、それから次に自治体の体制を強化するということが、私どもの一番のねらいでございます。  中央からの調査団がわずか数日参りましても、これではとうてい長年の間住民のそばで十分な監視をすることができないということを私ども常々感じておりまして、この調査を契機に、自治体の測定網を次第に強めていくということでございます。一台の自動記録測定器が約百数十万いたしますから、それを次第に配置をしてまいりまして、少なくとも私ども、現在までのところは、一つの指定地域で幾ら何でも三つから五つは置こうということで、次第に張り出しておりまして、現在全国的に見ますと約百五十から二百ぐらいの自動測定網があると思いますが、そのような状態でございまして、まだまだ事実不十分でございます。  この評価をいたしますときに、これだけのことで断定するのは非常に危険ではないかという仰せでございます。私どもも、完全な学問的な断定ということは、これはなかなかできないというように思っておりますが、ただ、公害防止の行政の観点に立ちますと、この調査をした結果から出してくるというものと、それから理論的な推測計算あるいは風洞実験等から出してくるということと、もう一つは、実地踏査あるいは従来の非常に似通った形態の工業地帯における経験を見て、これはほんとうにとめるべきような危険性があるものか、あるいはこれは非常に大きな変革をしなければ前に進めてはいけないものであるか、あるいはこれはこのような条件を訂正するならば前に進めてよいものか、あるいはこれはこういう注意を払いながら進めて、問題があらわれたときに変えなければいけないものか、あるいは万一このようなことがあるかもしれないが、それだけを注意をしてやるというような、幾つかの段階を頭に置いておりまして、私ども事前調査をいたしました結果につきましては、すべてこれは先生方からも学問的な御批判をいただいております。学問的には、先ほど専門の先生方の言われましたように、いろいろまだ不十分な点があると思いますが、現段階では、なし得る最善の方法としていたして、結果の評価につきましては、先ほど申し上げましたような学問と従来の経験ということによりまして、どの程度の危険性を考えながらその事業の進行をチェックするかということを中心として進めていきたいと思っております。  先生のお話しになりました姫路市のパンフレットは、私どもは直接拝見いたしておりません。いろいろ言い方につきましては、確かにおっしゃるような問題が全然ないとは言い切れませんが、公害防止の技術といいますのは、非常に金がかかって、時間がかかって、人手が要って、それを全部完全に満足させなければ前に行ってはいけないということになるならば、すべての開発計画がストップになるという危険性もあるということも、行政の担当者としては思っておるわけでございます。
  22. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 厚生省がいま調査をされようとしておることにつきましては、私ども敬意を表するわけなんです。せめてこれくらいのものをやっていただかぬと、たいへんなことだと思います。  そこで、一週間で十分であるか十分でないかということを私はいま言うたわけでなくて、いま質問しましたのは、この亜硫酸ガス汚染状況というものを、二酸化鉛法によって、公害の心配はないと断定し、県公害課による公害問答のところにも、公害はありませんと、こう断定してしまうのは早いじゃないかということを言っておるのですが、その点をどうお考えになりますか。
  23. 橋本道夫

    ○橋本説明員 現在までの汚染の測定の結果では、比較的よごれの程度は少ないということと、今後事前調査をして段階的に安全性を確認しながら進めていって、その結果によって必要な措置を行なうということを言うのが現在の段階では一番適切な言い方ではないか、そういうように思っております。
  24. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 押し問答じゃなしに、二酸化鉛法で定点的に八ヵ所やったのです。これがそういう信憑性があるかどうかということです。これくらいの大きさの、つり鐘みたいなものに穴があいておって、その鉛にひっついた分だけをかき落として、どれだけ亜硫酸ガスがあるかということをはかる。価格にすれば千円ほどの器械で、定点的にやってみて、それでだいじょうぶだということは私は言えないと思うのです。先ほど参考人の方も言われましたように、気象的な観灘がなさ駐なかったら、特に気象は逆転層のできる冬分が問題です。冬は徳山とか市原とか、さらに沼津とかいうところなんかでも、いろいろ調査の結果、一カ月に十六日も逆転層ができた。一ヶ月の半分逆転層ができた。この逆転層ができるところは、そこはちょうど——スモッグと逆転層とは違いますけれども、全部亜硫酸ガスとか降下ばいじんが集中してしまって危険な状態が出るわけなんです。これに出ております亜硫酸ガス汚染状況は、これを一カ月に引き延ばして全市を、田園のところも、住宅のところも、工場地帯も一緒にして、そして平均したものです。だから局地的な見方をしていかなければならぬ。そこで、いま言われましたような短時間でもいいから非常なたくさんの人が厚生省がやられるような方法でやっていただくことは、これは、事前の調査現状把握においては意義があると思うのです。しかし、そういうような逆転層も、工場の近くの集中的に汚染されるような地域のところも考えずに、平均だけ出してだいじょうぶだ、工場誘致けっこう、これは私は危険じゃないかということを言っているわけです。その点はどうですか。
  25. 橋本道夫

    ○橋本説明員 いま先年のおっしゃいました公害関係のパンフレットは非常にむずかしくて、実は私どもも要約したパンフレットをつくりかねているというのが現在の実情でございます。そういう点で、地元といたしましてはみんなにわかりやすいように短く書いたのでございましょうが、純学問的にいえば先生のおっしゃるような問題があることは私は事実だと思います。これにつきましては、やはり調査の結果をだんだん延ばしていって、この辺まではだいじょうぶだ、あるいはこの辺、先ほど申しましたように幾つかの段階を踏まえながら納得のいくように進めていくというのが一番正しい行き方ではないかと思います。
  26. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そういう御返事をいただければ私も納得いたしますが、余分のつけ加えになるかもしれませんけれども、いま工場が米ようとしておるところは、先がた申しましたように、現に関西火力発電があります。それから二十ほどの製鉄等の工場がある。現状をひとつ行って見てください。私はおとといも行って見たが、まつ黄色な煙がそこら一ぱいに立ちこめておりますから、こういう状況の上に新しい工場が加わったらどうなるか。そうして工場のすぐうしろにずっと海岸地帯に向かって姫路市の約半分、十八万人の家屋が立ち並んでおるわけです。すぐに工場住宅、こういうことになっておるところでこういう結論を出したら住民こそいい迷惑だと思うのです。ただ、企業はこれによって栄え、産業はそれで興るかもしれません。その方面のプラスはあろうと思いますけれども公害を直接背後にすぐに受けるのが住宅なんですから、それで現地を見ていただきたい。短いことばでこういうパンフレットを出すことはむずかしいとおっしゃいますなら、そういうむずかしいことを宣伝するということには危険があるんじゃないか。短い文章で書いては誤解を呼ぶ。これ一ぺん見ておいてください。そうして姫路市に対しても、こんなばかなことするなということを言ってください。厚生省は近く調査をしていただくので姫路市と連絡をとっていただいておって、私たちが文句を言うておることもお聞きかもしれません。しかし、私の立場は、今言いました立場でどこまでも進んでおりますので、ただいま言われましたような調査、観測はどんどんやっていただいたらけっこうです。  それから、いまの自動観測器の問題です。東京都の大気汚染測定網の測定の結果が出ておるわけですが、ただいま中野先生からは、飛行機を飛ばすとか風洞実験をするとか、こういうようないろいろな方法を駆使しなければならぬ、特に気象観測、逆転層の測定、こういうものをやらなければならぬといわれましたが、それはされるかどうかということ。さらに都内では測定機器として、亜硫酸ガス自動測定記録計、それから浮遊ばいじん自動測定記録計、一酸化炭素自動測定記録計、窒素酸化物自動測定記録計、総酸化物自動測定記録計、こういう五つの測定器は、一応そういう重要な段階にありますので、測定においでるときはこれを御持参になって一週間測定されるのかどうか。さらにその上に風洞実験と飛行機を飛ばしての事前調査、この前の産業公害委員会では近く総合調査をやりたい、こういう話だったのですが、この一週間やられるのがその総合調査に当たるのかどうか、その辺をひとつ聞きたい。
  27. 橋本道夫

    ○橋本説明員 姫路の地区の事前調査につきましては、厚生省と通産省と両方がやることになっております。その中で厚生省が担当いたしますのは、その時点における気象条件、これはヘリコプターを飛ばしてやることは私どもはいたしません。これは通産省のほうがおやりになりますけれども、地上気象の状態と、それから測定網を張りめぐらしまして、そうしてガス濃度、粉じん濃度を測定する、それから移動測定車を持ち込みまして、それによりまして粉じん及びガス及び気象状態をこちらのねらう場所で測定をする、こういう形にいたします。そこに持ち込みます移動測定車の中には、先生のいまおっしゃいました器械の中の粉じんのほうと、それから亜硫酸ガス及び無水硫酸、この両方の自動測定記録計と気象条件につきましての自動測定記録計が中に入っております。しかし、そのほかにおっしゃいましたCOであるとかNOであるとかNO2であるとかオキシダントとか、そういうようなものをはかる測定器までをそこに持ち込むようなことはいたしておりません。いま申しました後者の測定器は、自動車の排ガスの汚染状況調査のほうに主眼を置いた汚染物質のほうでございまして、将来は測定していくべきものであろうと私ども考えておりますが、直ちに姫路の場合にCOあるいは窒素の酸化物、オキシダントをはかるという計画は本年の計画にはございません。本年私どもの持ち込みますのは自動測定記録計、これは機械についておるだけでございますが、あとは移動式の自動的に一定時間の間にサンプルをとって、そうして亜硫酸ガスを測定するという計器をたしか二十カ所以上だったと思いますが、これを持ち込みまして、それで毎二時間平均をとっていくということをいたします。  そういうことで、発生源の評価につきましては、あとで通産省の方がおっしゃると思いますが、通産省の方がヘリコプターを使ったり、あるいはトレーサーを使ったり、あるいは従来の風洞実験のデータをお持ちになりますから、通産省の方がおやりになる風洞実験のデータと、それから通産省の方がやられるトレーサーによるデータと、私どもがやりました地上観測のデータと照合させるということをやるのが非常な大きなねらいであるというように私ども考えております。
  28. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 次に進めまして、公害のうちで大気汚染の一番の元凶というか根源になるのは石油精製工業と、火力発電だ、こういわれておるのです。その火力発電の中でいま一番注目しなければならぬのは脱硫装置だと思うのです。私も科学技術庁資源調査会が出されておるところの「重油の低いおう化に関する調査報告」を読ましていただきました。これを読んでみますと、この脱硫装置というものは公害対策でないような気がするのです。これは見解の相違かもしれませんけれども脱硫装置というのはちょっとおこがましいのじゃないかと思うのです。いまも発表していただきましたように、大体中近東の原油は硫黄分を三・五%から三・八%含んでおります。アメリカ産は一%くらいのものですから、かりに三・八%のうちで脱硫をしても結局アメリカ産の石油に近づいたというだけであって、品質をよくするためのものであって、依然として重油の中には一%の、他の地方で取れるところの原油と同じ量の硫黄が含まれておるわけなんです。しかもそれが濃縮されて重油になるわけですから、その重油をたきますと依然として硫黄分が出る、こういうぐあいに思うのでありまして、どうも私、これを読んでおりましても脱硫装置というものは公害対策——結論的には亜硫酸ガスを少なくすることになるかもしれません。しかし企業から見ればそこまでが限度で、そこまでは金は出すけれども、他の地方の製品と負けてはいけませんから、そういうようにやると思うのですが、ちょうど石油部長が見えておりますので、先がた脱硫装置のことについてお話がありましたが、どういうふうにお考えですか。
  29. 松本敬信

    松本説明員 ただいまおっしゃいますように完全に硫黄を取ってしまえば初めて亜硫酸ガスは出ないわけであります。それは現在の技術でやれば、金は幾らでもかけてよろしいとなれば取れるわけでございますけれども、しかし、そこに経済とのバランスの関係でできるだけ重油中のサルファを少なくするということは、やはり公害をより少なくするということになると思いますけれども、そういう考えはいかがでございましょうか。
  30. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで、ただいまアメリカ三つ脱硫装置の開発の状況、それを日本に導入した場合にまだ自信が持てない、まだ未知数のものであるということはよくわかりましたが、この三つ方法一つを用いて企業脱硫装置をやる、こういうようにかりにわれわれは想定した場合に、大体私たちの聞いておるのでは、アメリカの、いま言われたアイソマックスですか、この方法によっても三十五億の金がかかるだろう、これは行政の問題なり政治の問題にはなってくるのですが、この三十五億の脱硫装置は公害防止の一つの策だから、これについては税金の減免をやれ、こういうような意向も出ておるように思うのです。その観点が、完全なる脱硫装置だというような観点か、品質をよくするという観点に立つか、それによって私たちは同じ免税をするにしてもその考え方は違ってくると思うのです。大体三十五億ほどかかるそのような装置も、まだ未知数のものです。企業公害防止のために五十億をかけるとか何だとかいっておりますけれども、その公害防止を詳細に私たちが検討いたしてみますならば、出光さんのいっておるのも、真に公害防止の役をするのはただの十二、三億円だ、このように思うのです。この検討はいずれ企業とも一ぺんよく照合もしてみたいし、石油部長もおいでになっておるからして、後難検討をする機会を得たいと思いますけれども、どういうふうな観点でこのアイソマックス法を見ておられるのかということを、私は税の減免とも非常に関係があると思うのでちょっとお聞きしておきたいと思います。
  31. 松本敬信

    松本説明員 私は研究者でありますので、行政の問題になりますとちょっとお答えできかねるのでございますけれども、ただ、やはり、かなり金はかかります。金がかかりますので、ある程度は、やはりこれは公害を少しでも減らすような装置をやるんだからということで、企業立場としてはそういうように少しでもその分の負担を軽減してくれということだろうと思いますけれども、それがいいか悪いかについては、ちょっと私お答えできませんのです。
  32. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それならちょうど資源局長が見えておりますからお聞きしたいと思うのです。  これは国策もあるのだと思います。かりにソ連の原油を使うとすると、硫黄分が〇・八%ですね。一%ないわけですね。だからソ連の石油を使う、あるいはアメリカの石油を使うということにしてしまえば、三・八%も硫黄を含んでおる非常に質の悪いものを使ってそんな脱硫装置をする必要はないわけなんです。しかし出光という会社はそういうようなものを使ってやるということをたてまえにしておる関係上、三・八%も硫黄分のある原油を使わなければならぬ、言うなら非常に気の毒なところもあると思うのですけれども、そういうように切りかえれば簡単じゃないかと思うのです。ソ連ならば〇・八%でしょう。その点どういうぐあいにお考えになりますか、これは参考のために聞いておきたいと思う。
  33. 佐々木即

    ○佐々木(即)政府委員 お答えいたします。もちろん原料産地によりまして硫黄の含有量というのがいろいろございまして、公害だけを考えれば硫黄含有量の少ないところから買う。原油として少ない、もしくは重油として少ないものを買う。少し高いところのものがあればまぜて使うというように、いろいろ組み合わせばあると思います。やはり相手国の事情あるいは貿易事情等もあって、全部が全部そういうものを買い占めるのは、経済的にもあるいは市場関係でも容易でなかろうということが察せられるのでありまして、そういった場合の根っこの原因から硫黄分を取るということについての資源調査会考え方を今後の方向としてひとつ関係方面で御検討願いたいという意味で出した次第でございます。
  34. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 安かろう悪かろうでは困ると思うので、公害がどんどんとふえていくということになって、その硫黄分を少なくするだけに、アメリカなりソ連に追いつくだけに金をたくさん使うということになれば問題だと思いますが、その点は国策の問題もあろうと思います。参考のためにお聞きしたのですが、そこで石油部長が言われました重油から抜くあるいは原油から抜くというのにはそういう方法をとるとしまして、いまお話にありました排煙から取る、煙の中から抜くというような方法技術的に開発されておるということなんですが、その点はどの程度まで進んでおるのですか。
  35. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 お答えいたします。工業技術院の産業公害研究調整官でございます。  現在までの大気汚染の中で、一番大量に重油を消費しているのは、御承知のように火力発電所なわけでございます。で、火力発電所からの硫黄をとるということが、まず四日市その他におきましても非常に要請されているといった面と、もう一つは、原油なり重油の中から硫黄をとるよりは、煙の中から硫黄をとるほうが、純技術的に見て比較的容易であるという見通しが現在ございます。それともう一つは、三菱重工とか日立製作所あたりで、すでに自前である程度基礎研究を終えておりまして、それをプラントのユニットまで、もう一段スケールの大きい研究を行なえば実施段階に入れるのではないかといったような見通しもございまして、本年度工業技術院で予算化いたしました十億円の大型工業技術研究開発費というもののうち、三億二千万円をこの排煙脱硫研究に使う予定に現存なっております。あと、ことしと来年、再来年と、約三カ年計画で実用化の段階にもっていきたいというふうに考えております。  なお、コストといたしましては、一応目標として、重液一キロリットルに換算いたしまして排煙脱硫費用が五百円という程度目標といたしております。
  36. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 五百円の目標というのはどれだけの単位なんですか。
  37. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 重油一キロリットルから出る煙の処理費用でございます。ですから、六千円の重油を使えば六千五百円の重油を使ったことになる。先ほどの重油からの脱硫法ですと、資源調査会報告によりますと、約三%落とすのに千五百円前後かかるということで、それよりははるかに安くあげたいというふうに考えております。
  38. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで、結論として、参考人もおいでいただいておりますし、政府の当局も来られおりてますから、ひとつお聞きしておきたいのですが、これは産業公害対策特別委員会で話が出たわけなんですが、私たちの党としては公害対策基本法を出しております。その中で五条、それから十一条、十二条。四条におきましては、公害発生の防止に関しては国は必要な施策を総合的に講じなければならない。十一条では、大気汚染または水質の汚濁について、許容限度に対応した基準を定めるよう必要な施策を講じなければならない、こういうようにうたっておりますが、要するに企業のできる限界点は、私は採算のところが限界点じゃないかと思うのです。先がたお話がありましたように、大体脱硫一%、一キロリットルに対して一%下げるためには五百円という計算を出されました。それは二%下げるのですから、いまのお話では、これで千円要ります。排煙から一キロリットルについて五百円ということになりますと、企業の限界は千円というところが限界ではないかと思うのです。他の地方の、アメリカとかソ連の石油に追いつくまでに千円かかるのですから、それ以上五百円またそれにプラスいたしますと、これはそれだけコストが高くなると思うのです。それはどの工場でも一緒だろうと思いますけれども、大体限界点が私はあると思うのです。そこで皆さんのお考えでは、公害対策というものは国と企業と、あるいは地方行政自治体とが持つべきもので、特に国が公害に対して抜本的に対策を立て、費用を持つべきだという強い信念を持ってこういう公害対策を進めておられるのかどうか。変な言い方ですけれども、そういう強い皆さんの要請があれば、国側は前向きになって費用も出すと私は思うのです。そういう点どういうぐあいにお考えになりますか。どなたでもけっこうですから……。
  39. 佐々木即

    ○佐々木(即)政府委員 私に御指名でございますが、こういった実施部門を担当いたしておりませんので……。通念としては、あらゆる面からコストを下げ、あるいはどうしてもいかないところはまた政府の援助も仰ぎながら、全体としては、何しろ人間の生命いかんの問題だと思いますので、こういった害が皆無になる方向で各方面が努力するというのが一つの筋だろうと思っております。さて、具体的にそれぞれの関係当局が何をなさるべきか、していただきたいかというのは、私ども資源局から申し上げるのもちょっと筋が違うように思いますので、そういうようにひとつお聞き取り願いたいと思います。
  40. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 お答えいたします。現在工業技術院で十三の試験所を持っておりまして、公害関係予算を見てみますと、数年前までは大体一億五千万程度だったのですが、四十年度約二億五千万、それから四十一年度は大型プロジェクトを含めまして約七億というように、倍々とふえてきております。さらに来年度予算につきましては、これは大蔵省との予算折衝で、お約束しかねる面もございますけれども、先ほど松本部長が申し上げました重油からの直接脱硫につきましても、工業技術院長の諮問機関でございます工業技術協議会に公害対策技術部会というのがございます。その下に重液脱硫分科会というのを東京工大の斯波先生を委員長といたしまして、官、学、民一体となりまして委員会を設け、現在どういうふうにプロジェクトを組んでいったらよろしいかということを諮問いたしております。その結論が出次第、四十二年度予算として、排煙脱硫と並行してでもそれの予算の獲得に努力したいというふうに考えております。したがいまして、考えられる対策技術につきましてはできるだけ十分な配慮を加えていくという体制にはあるかと思います。
  41. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 新しい産業公害というものは国の問題ですから、これは異常な決意でなかったら、被害を受けるのは住民であり、もうけるのは企業であるという変でこなことになってしまって、住民が害を受けることによってもうかるというような、結論的には変なことになると思うのです。それは企業側も十分に気をつけてもらわなければならぬことですけれども、そういう研究をされている方も非常な決意でやっていただかなければならぬと思いますので、お願いしたいと思います。  ここに「財界人放談」が載っておるわけなんですが、関西電力の副社長の吉村さんが、公害対策についてこのように言われておる。もっともなことです。「煙の公害を防ぐのに一番手っ取り早いのは、煙突を高くし、煙を上に吹き上げて煙を散らす方法です。」いまおそらく亜硫酸ガス対策として、対策といわれるのは煙突ぐらいしかないんじゃないかと思うくらい無策なんですね。これは技術がそれに追いついていないからしかたがないとしまして、自治体もほとんどそれについてはお手あげで、煙突だけ高くしてくれ、こういうことなんです。四日市を見ましても、そのとおりなんです。しかし、「煙突を百五十メートルぐらいにし、その上秒速三十五メートルぐらいの風を送り、ばい煙を吹き上げるんです。そうすると三百五十メートルくらい上空に舞い上がり、公害の心配がなくなる。それにごみを出さない装置を取りつけることですね。」と、こう言うておる。なるほど、逆転層が百メートルか二百メートルにできるとしたら、その上へ突き抜けると、そこで勢い公害になるところの物質は拡散されると思うのです。しかしながら、集じん装置は各企業がつけておられるかどうかということは、この言い方を見ますと、関西電力ではつけておられるようにも思うのですけれども、いま鉄鋼と電力と機械とこう分けてみますと、日本工場はどのくらい集じん装置をつけておるか、これは私はやってもらう必要があると思うわけなんです。先年、某製鋼会社が外国から集じん装置——おそらくこれは電気集じん器だろうと思うのですが、集じん装置を一億円で買うことになっておったのですが、業界の不況のためにこれを取りやめた。現在ではどんどんばい煙が落ちておるというような状況ですけれども、これくらいなことは、その企業にする力がなければ低利の金を出してやらすとかなんとかいうことは私必要だと思うのですが、科学的にものを検討されておる立場から、現在企業が集じん装置をどれだけつけておるか、これについて調査をなさっておるかどうか、ひとつお聞きしてみたいと思う。
  42. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 工業技術院では、防止技術確立をやっておりまして、そういった問題は、企業局に立地部がございまして、公害課がそういう調査をやっておると思いますので、本日は資料がございませんので、後日、公害課なりあるいは立地部のほうから御返事申し上げるのが適当かと思います。
  43. 橋本道夫

    ○橋本説明員 ばい煙規制法によりまして、厚生・通産両方の完全共管で実施いたしておりますが、指定地域におきましては、指定されてから二年以内に既設の発生施設は排出基準に適合しなければならない、こういうことになっております。現在猶予期間が切れておりますのは、京浜と阪神と北九州と四日市、これだけのところが二年間の猶予期間が切れまして、その辺の地域でどれだけの集じん装置をつけておるかという数字を私いまちょっと持っておりませんが、非常に特異な、たとえば羽田の飛行場の横の特異な重工業のようなものはございますが、そのほかの顕著な赤い煙はもうほとんど簿いピンクになったというような状態でございまして、現在の製鉄あるいは電気あるいはセメント、それから指定地域内におきまして、全く特異な例外をのけては、きわめてよく集じん装置をつけてコントロールし申したというのが、ばい煙規制法を担当しております私どもの実感でございます。
  44. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そういう抽象的な言い方をされると困るのですが、ばい煙規制法に合わすと、どの工場もばい煙規制をそうオーバーしているところはないのですね。一番問題は、それが重合した場合が問題になってきて、四日市では公害を起こしておる。四日市のどの工場を見ても、規制法以内でみなやっておりますね、亜硫酸ガスにいたしましても。しかし現実に指定地域はどうこうおっしゃいますけれども、指定地域においても、まっ黄色な煙を出しておるところがあるので、日本企業においては、大体三・五%ぐらいしか集じん装置はつけていない。こういうふうにアメリカと比較していわれておるのですけれども、しかしやはり行政当局としても、この実態をつかまえておいていただきたいと思うのです。しかしこれはいま資料をお持ちでないですから、後ほどでけっこうですから、今度現地へ行って見ていただいたときに、黄色い煙はありませんということを言っておられますけれども、黄色い煙は出しつばなしになっておりますから、よく見てきていただきたい。  それから次に水の問題です。いま新田水質部長がおいでになっておりますが、私、あなたにお聞きしたいことは、これは三日ほど前に私は播磨灘へずっと船を出してみました。沿岸五キロぐらいは、もうこのテーブルのような色のまつ黄色な水になっております。これでは私は水はもう死んでおると思うのです。水質を保全するとかあるいは魚族保護の立場に立ちますと、こんなまっ黄色な水でプランクトンが生きておるのだろうか、さらにそのプランクトンを食べるところの稚魚がこれで育つものだろうかどうだろうかということを私、非常に疑問に思いまして、兵庫県の水質調査状況を調べてみました。そういたしますと、これは水産庁の指導だろうと思いますけれども、定点観測が二十九年からなされております。大阪湾、播磨灘海洋観測定点因というのがありまして、そうして沿岸から一番短いところで四・六キロ、それから五・一キロ、五・八キロ、長いところで十五・四キロのところに定点を設けて、そうして昭和二十九年からこちら月に二回ずつ調査をしているのですが、それは温度と水色と透明度と塩素の量、その付近の気温、これだけが調べてありますが、魚族保護とかあるいは漁業を守るという立場からすれば、当然沿岸のごく近いところの水質調査される必要があると思うのです。今度厚生省が行かれたら、それを調査されるのかどうかということもあわせてお聞きしておきたいと思います。まず新田水質部長からお聞きしたいと思います。
  45. 新田忠雄

    ○新田説明員 いまお話の、実際に沿岸からかなり範囲に黄褐色の水があったというお話ですが、実は私、現場をよく見ていないものですから、はっきりした御返事はしかねるのですが、かなりの広範囲にいろいろと着色しているという場合は、いろいろほかの条件のあることもございます。ほかの条件と申しますのは、たとえば相当出水があって黄褐色の水が出るという場合も、かなり意外に海面に色がついていることがございます。それからたとえば赤潮めいたものが出たような場合もかなり黄褐色になる。それからもちろん廃水が影響した場合にも黄褐色になる。そういうようにいろいろな条件がございますから、実際においてのいまの御質問の内容に関してほんとうに実情をその気になって調査をしてみないと、ちょっと御返事しかねるような気がいたします。  それからもう一つ水質調査のことについておっしゃいましたことに関しては、それは確かに広島にあります内海区敷津研究所が指導して生産力の調査のためにやった資料だろうと思います。これはやはりおっしゃるように、沿岸に関して直接やらなければ、そういう廃水その他の影響という点は出てこないというようには考えます。
  46. 橋本道夫

    ○橋本説明員 水質調査は厚生省は今回いたしません。水産とこの問題は、厚生省のほうの今回の水空調査では省いております。
  47. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それならこれと公害ということは、やはり総合的に出てくる問題ですから、公害があるないということと関連してきますから、水産庁のほうでは兵庫県に二名水産庁の役人がおられるようでありますが、そのほうと連絡をとって、ひとつ沿岸の水質調査願いたいと思います。私たちがなぜそういうことを言うかといいますと、工場排水の場合、これは専門家がおいでになっておりますから、私たちの考え方が間違っているかどうかお聞きしたいと思いますが、こういう工場排水によって水中の溶存酸素というものが非常に消費分解される、そうして有機物が分解すると酸素が欠乏してきて、塩基が分解され、有毒物質が発生して、魚の生存が不可能になる、こういうような段階をたどるようでありまして、大体石油工業廃水におきましては、BODが一一〇PPMだ、こうされております。正常な川ではBOD、が一ないし二PPMとされておりますので、一〇〇以上出ますと、これは私はたいへんなことじゃないかと思いますので、この上石油工業の廃水がどのようなものを出すかという現状認識をしておかなかったら、魚族は死滅することはありませんという結論は出せぬと私は思います。その点、新田水質部長はどういうぐあいにお考えになりますか。そういう観点をもってやはり調べる必要が私はあろうと思うのです。
  48. 新田忠雄

    ○新田説明員 いまの御質問の件に関しまして、確かにBODが高いというのは水質の上に思わしくない、それから水の中で溶存酸素が欠乏するということは思わしくないというような点に関して、実はその問題があるのは河川における問題なんです。海面においては大体において溶存酸素が欠乏しているという、実態はあまり起こっておりません。もっともこれは全然起こってないと申し上げるわけにはいかないので、たとえば相当極端なパルプ廃水の近くでBODが欠乏しておるというような事態が調査事例に出ることがございます。しかし、これはごく狭い範囲なんで、海全体を問題にした場合に、それが問題になるような区域にならないことが多い。ただ、河川というのは水域がきまっておりますから、そこで溶存酸素が欠乏すると、これは非常に河川自身を悪くする、水域自身の生存生物に対して重大な影響を及ぼすということがございます。したがって、BODの問題を議論するのは、これは河川の場合が多いので、海面においてはあまりその議論をする必要がないことが多いというように思います。いまいろいろおっしゃいました点は、ですからこれを河川の場合として考えると、かなりそのとおりの御議論なんだと思うのですが、海面に関しては必ずしもそんなようなことにはならないだろうというように思っております。
  49. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで念のためにもう一つ言っておきたいと思うのですが、先がた申しましたように、五キロにわたって色がついておる、その色はいろいろな原因があって何かわからない、こういうことなんですが、漁師たちは、これはプランクトンが完全に死んでおる。そうして魚は産卵に来なくなった。私も現在見まして、十年ほど前は稚魚がずいぶんたくさんおりましたけれども、いまは全然おりませんから、そういう心配を持つのと、それからアサリが石油のにおいがして、くさくて食べられない、こういうような状況も出ておりますから、ぜひこれは調べていただきたいと思います。  水島の例がここに報告されておるわけなんですけれども、三年前、化成水島のフレアスタック、廃ガス燃焼塔の高さ二十メートル、幅三メートルの炎のため、付近は騒音と臭気と夜でも新聞の読める炎の明るさに耐えられなかった。昨年六月には、青酸イオン廃液のため水島灘で魚数万匹が死滅する事件が起こり、十一団体で会社、県、市に押しかけたが、結局、各社責任のなすり合いで、わずか百五十万円の共同見舞い金を得たにすぎなかった。異臭魚の範囲は次第に広がり、かつて大魚を誇った呼松港では、数年前の人口八千人が今日三千人に減り、二百五十人が失対でかろうじて生計を立てている現状である。これが石油コンビナートの現在置かれておる漁民、農民の位置のように思うのです。そこはひどいところかもしれません。かつて新産都市の優等生であった水鳥も、漁民にとってはこういう影響が最終的にはきてしまっておるわけです。そこでこういう状況がこないために、いまわざわざ参考人としておいでいただきまして、今後の対策をひとつ立てていただく、こういうことでお願いをするわけでありますので、よろしく。  それからただいまお話しになりましたことで、ひとつお聞きしておきたいのですが、廃油をバクテリアに食べさす、そうして石油分をなくする、こういう方法が進められておる、こういうようなことを新聞に報じておるのですが、これは私が行って聞いたのではありませんけれども、出光のほうでそういうような言い方をされておりますが、そういうことは現在実験の段階を出て、それを企業に適用することがはたして可能なのかどうか、これをひとつお聞きしておきたいと思います。
  50. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 お答えいたします。  いまお話に出ましたのは、微生物を利用して廃液処理するという方法についてでございますが、工業技術院の十三の試験所の一つに発酵研究所というのがございまして、その面の研究を従来から続けてきております。そこでは主として基礎研究を行ないまして、どういうバクテリアがどういう廃液に適当かといったようなものをフラスコの中で実験を行ないまして、ある程度見通しのついたものを資源技術研究所に産業公害防止技術部というのがございまして、そこに先ほど話の出ました排煙のための風洞と、それから廃水処理のモデルプラントが去年の予算でつきまして、ことしの二月に完成いたしました。それである程度の大規模な工場廃液をそこに持ち込みまして、何日間かテストするという設備が現在すでに完成しております。したがいまして、現在のところ、四日市地区につきましても幾つかの工場のサンプルを持ってきましてテストしよう、どういうバクテリアが適当かというものを見つけようという計画が現在ございます。したがいまして、ある程度見通しがつきますればそういう処理プラントをつくれば、よりきれいな水が出るということはいえるかと思います。
  51. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 大体一つ企業で一時間に十トンの廃液が出るのですね。それがバクテリアがどれだけ旺盛な、油を食うところの力を持っておっても、十トンの水をどういうぐあいに処理していくかということになると、私はまだ試験管の域を脱していないと思うのです。しかし、新聞にはもはやこういう宣伝をしておるわけです。「油を食うバクテリア使い、安全な廃液処理、出光興産姫路精油所、日本で初の実用化」こういうことがいわれておるのですが、これは科学技術庁調査によりましても、五年前なるほどドイツでこういうような研究に着手したということは載っておりますけれども、現在これが実用化するかしないかということについては私はまだ疑問を持っておるのです。しかし、こういう新聞に載ってしまうと、荒唐無稽とはいえません。いまのお話ではどんなバクテリアがいいか、いままだ研究の域だ、こういうぐあいにおっしゃっておりますけれども研究の域にもせよ、そういう考え方は、あるいはそういう計画はなされておるのだと思いますけれども、こんなことを書いておるわけなんです。私はこれは、科学を信ずるのはけっこうですけれども、科学を使っての欺瞞じゃないかと思うのです。「油を食うバクテリア使い、安全な廃液処理日本で初の実用化」これはいま実用化されておるかどうか、ひとつお聞きしたい。
  52. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 詳しい研究のほうは専門の研究家に聞かないと、ちょっとお答えできないと思いますが、その新聞は活性汚泥法じゃないかと思いますが、活性汚泥法でございましたら、現在あちこちで使われております。それからさっきのバクテリアで処理する方法パルプ廃液とか、ビール工場とか、幾つかの実験例で、成功しておる例は幾つかございます。
  53. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 次に、最後に、中野先生にお聞きしておきたいと思うのですが、拡散状況調査は本格的に推進し、環境濃度はどこまでがよいかという客観的なものを明らかにしなさい、こういうお話でありましたが、これは大気汚染の場合、その基準をいま大体〇・二PPMにして、これは亜硫酸ガスの場合ですが、そうして何時間〇・二PPMの状況が続けば危険状況であるかということが大体基準にあがっておると思うのですけれども、先生のほうでは、環境濃度はどこまでがよいかという客観的な基準を明らかにせよ、こう言われましたが、これはどういうようにお考えになっておられるのか、拡散状況の調査を国家的に推進するのはどういう方法があるのか、ひとつこれをお聞かせいただきたい。
  54. 中野道雄

    中野参考人 現在大気汚染関係の、特に自治体で大気汚染対策に従事している人たちの共通な要望としては、環境基準の許容濃度といいますか、その目標となる濃度設定をしてもらいたいということが厚生省に対してかなり強く出されております。このことは、一つは人体に対する大気汚染影響研究というものがまだ全体としてはかなりおくれた状態にありまして、直ちにどの濃度でもって人体に対する影響を評価すべきかということが明らかにされてはおりません。そのことから、さらにそういう産業の発展というようなものを、具体的な科学的データを十分に調査することなしに基準濃度をきめるということによって阻害するという面がやはり大きく問題になると思います。最近におきまして、厚生省自身として人体影響調査あるいはその他の経済被害調査などが前進しておりますけれども、それだけにこの具体的な基準というものが現時点においては必ずしも学者の中でも統一されておりませんし、それだけに厚生省もまだその段階に対して、アプローチはされておりますけれども、具体的な実現がいつになるか私たちもはっきりとは聞いておりません。ただ、現在われわれが一つの基準として使っておりますのは、ばい煙規制法の中で、〇・二PPMが三時間以上、それから〇・三PPMが二時間以上続いて、さらに気象条件としてその状態が継続する可能性のあるときには注意報、ないしさらに〇・五PPM以上の濃度が二時間以上続くような可能性があるときには警報を出すということが法律できめられております。現時点におきましては、われわれとしてはそういう警報ないしは注意報が出る状態一つの臨界点として、具体的な、ある意味では非常に強い対策をとるということを目安にしております。この点につきましては世界的にも、たとえばソ連だとかアメリカにおける考え方も必ずしも一定しておりませんで、その国の事情あるいは産業立地のいろいろな条件というようなものを配慮して具体的な方針というものが考えられるべきだと思いますけれども、そういうものをできるだけ早く決定していただけば、事前調査段階においても、その実験によって得た濃度が、あるいは理論的な推定濃度がどの程度であれば安全であるかというような目安がつくと思います。現状においては、そういう具体的な対策目標が客観的に非常に困難であるという条件はありますけれども、はっきりとしていないということが大気汚染対策の推進のために非常に大きな隘路になっている、そういうように考えます。
  55. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 最後に、それでは高瀬さんにもう一度念を押しておきたいと思うのですが、私はこういうぐあいに聞いておるのです。「油を食うバクテリアを使い、安全な廃液処理」という問題は、出光の技術者に聞いたときに——私が聞いたのじゃないですよ。それはまだ試験段階で、そんなにうまくバクテリアが油を食べてくれません、そういうことで食べてくれればありがたいのですが、という話を聞いてきておるわけなんです。そこで、そういうことを言った技術者は左遷されたとか、しかられたとかいう話なんですが、あなたは、この油を食うバクテリアを使い安全な廃液処理がもう実用化されておる、こういうようにいま言われましたが、そういうように認識していいですか。
  56. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 お答えいたします。  バクテリアの専門の研究者が発酵研究所におりますので、研究者に聞いてから正確にお答えしたいと思いますが、先ほど申し上げたのは、廃液種類によりまして適応のバクテリアが異なります。したがいまして、いろんな廃液をフラスコの中で実験を行なっているし、また事実、廃液処理の可能な液とバクテリアの適応性というものは種々ございまして、不可能だということは言い切れないと思いますし、現在石油を食うバクテリアの研究がどの程度進んでいるかということは、後日調査してお答えしたいと思います。
  57. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで、念のためですけれども、先がた言いましたように、一時間十トン出るところの廃液ですが、それを何日間か置かなければならないと思いますので、どうせ沈でん池にでも置いておかなければ、こういう処理はできないと思いますので、そういう方法の上のこともあろうと思います。そういう点もひとつあわせお聞かせいただきたいと思います。
  58. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 お答えいたします。  いま発酵研究所で研究している内容のもう一つは、重油の中にある硫黄をバクテリアに食わせようという研究もあわせ行なっております。このほうはまだ若干の研究程度で、これが適当だというバクテリアは目下のところ見つかっておりません。ただし廃液処理するためのバクテリアはある程度可能性があるのじゃないかと思います。
  59. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いまおっしゃるのは、試験管の範囲か、あるいはもう実用化の範囲かということです。
  60. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 試験管の中である程度できますれば、それはやや大量の水を、先ほど申し上げました資源技術試験所の中に設置されておりますモデルプラントに持ち込みまして実験すれば、実用菌の開発が可能かどうかはわかると思います。
  61. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 以上で終わります。
  62. 原茂

    原委員長 岡良一君。
  63. 岡良一

    ○岡委員 大気中の亜硫酸ガス、それよりも除硫装置あるいは大気内における亜硫酸ガスのいわば人体に対する限度、こういうことについての研究は、石油化学なんかの進んだ国ではかなり高い水準を持っているのじゃないかと私は見ておるのだが、工業技術院のほうでは一体どういうことになっておるのですか。
  64. 橋本道夫

    ○橋本説明員 亜硫酸ガス影響につきましては、労働環境で暴露されるような濃度研究は非常にたくさんございます。日本におきましても十分ございます。ただ非常に低い濃度で長い時間暴露をされて、それで慢性の影響が起こってくるということにつきましては、各国が非常に苦慮しておるという状態でございまして、ロンドンスモッグで四千人ばかりの人が急にこの過剰で死んだというときの濃度を幾ら実験をしてみても影響はあらわれないというのが、現在医学者が最も困っておるところでございます。そこのところで、私どもばい煙規制法のときにも環境基準を設定すべきであるという論議を非常にやりましたが、学問的にも技術的にもむずかしいということで、先ほど中野参考人も言われました緊急時の措置という条件を一応定めまして、それによって措置をしておるという状態でございます。そのときに参考にいたしましたのは、ドイツがいたしておりますよごし得る最大の権利の程度を示した濃度というものを一応の参考にはいたしておりますが、これも影響を確定してきめた数字ではございません。
  65. 岡良一

    ○岡委員 しかし、そんなものは、やれば医学的にそうむずかしい問題ではないと私は思う。何も人体実験をしなくたって、動物実験でやればいいのだから。それは薬の許可の審議会なんかでは、きくかきかないか、毒か毒性でないか、全部それでやっておるのだから、熱心にやればやれないことはないと思う。そんな点ももう少し、ドイツの許容量の関係もあるだろうが、やはり各国の事例などもよく調査して、ロンドンのスモッグは何も亜硫酸ガス関係だけじゃないのだから、もっと勉強しなければいかぬ。  除硫装置のほうはどうなんです、各国のほうは。どの程度進んでいますか。
  66. 高瀬光弥

    ○高瀬説明員 脱硫技術でございましょうか。先ほど松本部長が申し上げましたように、アメリカ三つ方法がやや完成されたやに聞いておりますが、実際の石油工場にはまだ現在建設中のものでございます。それから先ほど申し上げましたように、日本に適応した重油脱硫技術というものを、工業技術院としては研究費を投下して早く実用化したいというふうに考えております。
  67. 岡良一

    ○岡委員 実は一度この委員会で、昭和三十八年のことなんだが、高度経済成長というかけ声で、しかも技術革新の波に乗って重化学工業中心に国の産業の振興をはかろう、こういう政策をとられてくると、やはりそれに伴っていろいろな弊害が必ず起こるに違いない、であるからいち早くこの弊害の防止のための措置を政府は講ずべきであるというので、もう一度読み上げますが、こういう決議を昭和三十八年の六月二十七日にしておるわけです。その決議は公害防止の促進に関する決議ということで、前文を略しますと、まず具体的には、公害防止に関するいろいろな法律やその運用についてはもっと実情に即して十分に再検討を加えなさい。そして公害防止を遺憾なくするとともにその対策の実施を強化促進をするためには関係行政機関の密接な進絡協調の体制を十分に整備し、特にまた科学技術上の調査研究の強化をしてもらわなければならない。国立防災科学技術センター等官公立試験研究機関の機能を充実し、特にスモッグ対策の早期確立に資するため科学技術庁研究合同会議を設ける。また公害防止に関し必要な財政上、資金上及び税制上の優遇措置、これはやはり除硫装置等に対する国のいわば税制上、財政上の優遇措置というか取り扱いをされること。こういうようなことをもうすでに足かけ四年前に決議をしておる。それがどの程度実現されておるかということについての御答弁をきょう実はいろいろ承ったような結果になったのだが、私をして率直に点をつけさすと、国会のこの決議というものは、ほとんど無視されたとは言わないが非常に軽視された。こういうことでは結局公害が始まってから調査する、そしてしかも、ものができ上がった時分には住民に対する悪い影響がすでにできてしまっておる。いまのテンポで行くとそういう結果になって、ものがいわばあとを追い、あとを追いというような状態になる心配を、私はいまの三木さんに対する御答弁を聞いて痛切に感じた。参考人の方々の御意見もやはりそういう点を指摘せられたのだ。要するに国ももっと真剣にこの対策に取り組むということ。これは憲法にもはっきり書いてあるのです。憲法第二十五条には、国はすべての生活の面において国民の公衆衛生の向上と増進をはからねばならないと書いてある。だから公害対策というものはむしろ憲法のたてまえからも国に大きな責任がある。にもかかわらず、これがいま御答弁のような遅々たるテンポであるということは、私は国の重大な責任であり怠慢であるといわなければならない。  もう一つは、政府としては企業家の協力というものに対してはもっと強くこれを求める必要がある。私はそんな事例を一々申し上げたくはありませんが、しかしたとえばピッツバーグというところは、昔はばい煙の町といわれていた。しかしあそこが最近は実にきれいな町になった。あの町のまん中を流れておる大きな川があるが、これは全く清例な水がほとばしっておる。私はおととしピッツバーグで、どうしてここまで持ってきたのかと言ったところが、USスチールの社長がみずから音頭をとってピッツバーグを清潔にする市民運動というものを展開をした、これが大きないわば資金を出す、そうして町全体がピッツバーグをうるわしくする運動を起こしてりっぱな成果をあげておるわけです。こういう企業家の公害に対する努力と、政府のもっと思い切った真剣な対策というもの、これがマッチしなくては公害防止というものはなかなかできがたいと思う。いまのようなこういうテンポののろい、四年前にわれわれがこれを憂えて決議をしながら、三年四年たってまだ目鼻がつかないというような結論であるということは、私は政府の大きな怠慢だと思う。  ここは上原長官も来られましたからもう一度申し上げますが、要するにわれわれは、三十八年の六月に、技術革新の名のもとに重化学工業中心に高度経済成長が進められた、そうなってくれば石油コンビナートというようなものがそこにできてくる、この結果、大気汚染が起こるあるいは水質の汚濁が起こってくる。で、われわれは技術革新といういわば新しい人間の英知に基づく産業分野の開拓が、その結果として住民に災害をもたらすようなことがあったのでは、科学技術振興対策委員会立場においてまことに残念であるから、ぜひこの公害というようなものの防止について政府は真剣に取っ組んでもらいたいというので、具体的な点をとらえて列記をしながら決議をしておるわけです。ところがいま三木さんから各省庁の方々への質疑応答を聞きますると、われわれの決議というものが全く軽視されておる。また参考人の方々の御意見を聞くと、やはりそのことを指摘をしておられるとも私には感じられる。したがって、これは政府としての大きな責任であるから、この際科学技術庁長官として科学技術の振興に伴う住民へのいろいろな災害というか、そういうものについては憲法二十五条でもはっきり、政府はすべての国民の生活分野における公衆衛生の向上と増進につとめなければならないと書いているのだから、政府としても真剣にこの問題に今後取り組んでもらいたい。もちろん国会には公害対策の特別委員会もできておることであるから、したがってこの特別委員会が現に取り上げておられることは私も承知しておるが、当委員会としてもそういうものができるきっかけをすでに三十八年につくっておるのであって、この委員会の決議には今日まだきわめてスロモーであるということは、これはまことに遺憾千万であるので、この際長官としての御所見をひとつ伺いたい。
  68. 上原正吉

    ○上原国務大臣 おっしゃるように公害対策は決して完全だとは言えないのでございまして、それを所管する役所の長官といたしましても残念に思う次第でございます。何分にも心がけておりまするほどの仕事が思うように進捗しない、これが現状でございまして、おしかりを受けましても言いわけのことばがない次第でございます。今後一そう努力をいたしますことをお誓いする次第でございます。
  69. 原茂

    原委員長 この際、本件に関する参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。     —————————————
  70. 原茂

    原委員長 次に、原子力船建造に関する問題について石川参考人よりその後の経過並びに今後の事業計画等について意見を聴取いたします。石川参考人
  71. 石川一郎

    石川参考人 三十九年の八月に原子力船開発事業団は出発をしたのでございますが、その後たびたびお目にかかっておると存じますので、いま委員長からのお話で、去年ぐらいから後というようなお話がございましたので、そういうことでお話をさしていただきます。  昨年の一月でございますか、その時分に大体の船並びに炉の仕様書、設計等ができ上がったものですから、そういうことに御関係のある各会社の方々に、こういうことをやって、こういうものができましたので、将来皆さま方に入札なり、あるいはまた契約なりをしていただくようなことに相なりまするからということを申し上げまして、そして昨年の一月の中ごろに書類ができましたので、それをお送り申し上げて、そして三月の初めにこれについて皆さま方のお考えを伺いたいから、こういうことでスタートを切ったのでございます。ところが、初めはわれわれが観察しておりました時分には、炉のほうは御研究をそう深くなさっていらっしゃる方がございませんから、原子炉のほうはこれは、まあたいした数の会社からお印し出はないだろう。しかし、船のほうはいろいろお話もあったのでございまして、まるっきりやらないということはないであろう。と申しますのは、ある会社がございまして、それは非常に御熱心にやるようなお話があったものですから、それでそういうものを出しまして、一体どのくらいな金でできるか入札していただきたい。この入札につきましては、これはあるいは応募者がないかもしれないけれども、ともかくも入札は一応してはっきりしておかないと将来いろいろの問題を起こすといかぬから、ともかくも入札でいこう、こういうことに相なりまして入札をお願いしたのでございます。もちろんその前の年あたりから、船をつくる場合におきまして、炉と——炉というよりもむしろ機関です。機関と船とは一体でなければならない。それを船炉一体ということばをわれわれは使っております。そうして、そのでき上がったものをわれわれが買い上げる、注文をする、こういうふうな段取りで進むつもりでございまして、各先輩方、顧問もございますし、いろいろな方に伺ったところが、やはり船をつくる場合においては船炉一体でなければならない、それが本犬だ、こういうことにお話がございましたので、そういうふうななにで見積もりをとったのでございますが、一軒もございませんでした。と申しますのは、炉のほうは一、二軒一生懸命やっておるところがあったのですが、船のほうも一、二軒非常に熱心なところがございまして、そこがおやりになるだろうと思っておったのでありますけれども、その会社の方のお話によりますと、こういう新しい開発の仕事はこりたのだ、非常に損をして、非常にめんどうで困るから、やるつもりだったのだけれどもやらないことになりました、こういうようなお話があって、結局一軒くらいは出るだろうと思ったのが出ませんというような状況になりましたので、これはむずかしいかもしれない。特に船炉一体となって、炉のほうと船のほうとの両方の御経験のある方が少ないものですから、これはむずかしいかもしれない。ともかくもこれをできるだけ簡略にして、そうして受けやすいようにして、もう一ぺん見積もりをとろうということで、さらにこの中から、こうこういうむずかしい点は除いて、そうしてこれでもって応募者が出るかどうかということをもう一ぺん尋ねたのでございます。ところが、それも炉のほうはあるのですけれども、船のほうは一軒もないというような状況であったので、これでは困る。一体この原子力船をつくることに対して最も御熱心であったグループは、船をおつくりになる造船のほうの方々が非常に御熱心であったものですから、それで造船のほうの工業会もございますので、そこの方にいろいろ御相談申し上げて、あなたのほうが非常に熱心であったのだが、だれもこれに応募する方がないというのでは困る。だれかひとつ選手を選んで、その方にひとつ見積もりをしていただくようにできませんか、入札の問題は、これでやるわけにはまいりませんものですから、そういうことをお願いして、いろいろ御相談もした結果、石川島がいいだろうということで、石川島もやってみようということになりまして、私のほうはお願いしたわけでございます。ともかくも、それまでの間に船のことについてのこまかい研究——炉のほうはかなり研究があったのですが、こまかい研究をしておるところは一軒であって、これは申し上げてもいいでしょう、三菱重工であったのです。炉のほうも三菱重工業、三菱重工業では両方自分のほうでやるわけにはいかない。いかにも独占的になるから困る。ほかにまたいろいろいままでの開発事業に対する御不満もございまして、非常にこりておるから、自分のところは炉だけやる。そういうわけで石川島にお願いをして、その見積もりをつくっていただいたのであります。それがだんだんできてくる途中におきまして、実は炉のほうは外国のほうで新しい型で相当安いものがあるというようなお話がございまして、特に委員会のほうからその問題も同時に研究するようにということでございまして、われわれといたしましても、そういうものがあればそれを一緒に研究してどちらかいいほうにきめるということは当然のことでございますので、それはよろしゅうございますというので、また今度は外国の炉についての見積もりをとり、あるいは研究をしてもらうということを始めまして、それがようやくできたのが六月でございます。それまでの間に日本の内地のほうの炉の見積もり等ができておったのでございますけれども、また船のほうもそのころまでには内地の炉を載せる場合と外国から輸入する炉を載せる船の設計と両方できておりましたものですから、それを六月まで待ちまして集めまして、そうして七月の一日にその書類をあけまして見たところが、いろいろ新聞紙上等にも出ておりますように、内地でつくるのと外国のものを買ってつくるのと同じくらいな値段になったのであります。そのほかに、外国でつくりますもの、これはバブコック・アンド・ウィルコクスですが、この炉は、炉を構成するものは出すけれども、それに対する保証みたいなことはしない、組み立てもやらないということでございますので、それは石川島にでもやってもらおうと思いましたが、この石川島も責任を持ってやることは困るというようなこともございましたし、またアメリカのほうの炉は、値段は先ほど申し上げましたとおり大体同じようなものでございますけれども、あとの、たとえば重大な問題が起こりましたときの賠償問題その他に対するある一つの希望があちらにございまして、それが日本とやり方が違うようなことでございますので、これはとてもそういうものもこちらでよろしいといってそれを注文するわけにはいかないというふうな考えを持っておりまして、その結果を原子力委員会のほうに御報告申しましたところ、原子力委員会のほうではいろいろお調べになりまして、そうして結局日本内地の炉でやったらいいだろうということになり、また、それまでの間に、先ほど申しましたとおり石川島では、外国炉も日本の炉も両方積めるような設計を二つつくってくださったものですから、それに合わせましてスタートを切ることにいたしたわけでござ  います。いろいろ皆さま方の御意見等も伺っておりますが、われわれといたしましては、何と申しますか、一時原子力船のアトモスフィア、空気というのが非常に悪うございまして、みんな、たとえばイギリスにいたしましても、方々の国々で原子力船をやることを延ばそう、ゆっくりやろう、こういうふうな話になったのです。その後また最近になりましてから非常に急ぐような傾向も見えておりますので、私らといたしましては、なかなか人の養成、それから船を動かす船員の問題、動かし方の問題あるいは動揺に対する問題、いろいろございますので、やはりできるだけ早くやっていくほうがいいのじゃないかと思います。ただし前もって申し上げると、これはわれわれの関係する前でございますが、原子力委員会で専門委員等をつくりまして、そしていろいろ御計算を願って、幾らぐらいでできるだろうか、こういうふうなお指図がありまして、それを計算してみたのが三十六億円でできるというお話でございました。実はこの事業団ができますときに、お役所のほうの話ですが、どうも机の上でやっているだけではほんとうのところがつかめないから、本気になってひとつやるような段取りでやってもらいたいということのお話もございまして、だんだん調べてみますと、三十六億でできるといった数字に対応するものが、初めは六十億余になるような状況でございましたので、これではいかぬというのでいろいろ検討いたしまして、これが五十数億にのぼり、その後いろいろの、三十六億に入っておらないアイテムまで入れまして六十三、四億でできるということになって、その数字を委員会のほうに差し上げたような状況でございます。いまこれをどういうふうに委員会のほうで御決定くださいますか、その御決定によりまして、われわれはまた自分のほうのモーションを送ろう、こういうふうなことになっております。
  72. 原茂

    原委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。内海清君。
  73. 内海清

    ○内海(清)委員 原子力船のいままでの経緯につきましては、いま事業団の理事長さんのほうから大体経過をお話しいただきまして、われわれもこれは大体承知いたしておるのであります。つきましては、去る十四日に原子力委員会で大体いままでの経過に基づいて新しい一つの方針と申しますか、建造に臨もうということがきまったようであります。いまいろいろお話がございましたけれども、もともとこれは三十八年に法律によって特殊法人の日本原子力船開発事業団というものができて、そうしてその十月に原子力第一船開発基本計画というものがきまった。それによりますと、大体総トン数六千トン、それから主機の出力約一万馬力のもの、軽水冷却型の炉を使って原子力船をつくろう、しかもそれはできるだけ国内技術によって設計、製作をやっていこうではないか、その船は将来海洋観測船として使おう、こういうことが決定されたわけでございます。そこで三十八年度からこの米本設計が開始されまして、そして大体四十三年に一応の完工と、その後一年間の慣熟運転をやり、二年間の実験運航を見込みまして、事業団は大体九年で、つまり四十六年に使命を達成する、これで終わり、こういうことがきまったわけでございます。  それによっていろいろ進めていかれまして、事業団の基本計画が終わって、そしていまお話しの、昨年になりまして造船七社に対しましてこれを指名して入札を求めた、ところが応募者がなかった、こういうことであります。そこで事業団としては、いまお話しもございましたが、仕様書の一部を改めて、そして実質五億円程度のいわば値上げを認めた形になったと思いますけれども、ある程度の値上げを認めて、さらに応札を要請したけれども、これが成功しなかった、こういうことであります。そこで事業団では、その後は、まあこれは造船工業会その他といろいろありましたことはいまお話しのとおりでありますが、今度は特定礼とのいわば随意契約の形で進められた、しかし最終的には価格の問題でこれも不成功に終わった、こういうことだと思うのであります。そこですべてを御破算にして白紙に返そうということが決定された。このために二カ年建造がおくれておるわけですね。そういう経過からいたしまして、その後事業団では、いわゆる国産炉の面と、それからアメリカのバブコック社との両方に設計と見積もりとを要請された、それが出てまいりまして、去る十四日に委員会としての決定が生まれた、こういうことだと思うのです。  そこでこの十四日に委員会できまりまして、私ここに「原子力第一船建造について」というものをちょうだいいたしておりますが、こういう基本線によって今後進められるのだと思うのであります。  そこで、最初にこれらについて少しお尋ねしておきたいと思うのでありますが、この「原子力第一船建造について」の「記」で、(4)のところに、ドイツのオットハーン号あるいは米国における高速原子力商船隊の建造計画の推進、こういうふうに国際情勢が非常に変わってきた、同時にまた、将来におけるわが国の造船技術の国際的主導性を維持するために、現時点において原子力第一船の建造を促進する必要性が強まってきた、こう書いてあるわけです。この点は私もそう思うのでありますが、これらをもう少し具体的にひとつ御説明いただいて、いわゆる原子力商船に対する世界の情勢がどうあるか、私も若干調べてみましたけれども、それらをひとつ、これは委員会のほうの関係になるかもしれませんが、一応御説明いただきたい。
  74. 村田浩

    ○村田政府委員 ただいまの御質問で、最近の世界各国における原子力商船関係の開発状況についてのことでございますが、この委員会の決定にもございますように、西ドイツでは先般来原子力によります鉱石運搬船を建造中で、オットハーンという名前もつけられておるわけでございますが、この建造状況は、その後私どもの承知しますところでは、大体順調に進んでおりまして、船体のほうはすでに早く進水いたしておりますが、原子夢のほうにつきましても、すでに工場における製作を終わっております。工場でモックアップ試験を行なっておる。他方、炉のほうは船に圧力容器を現在もう搭載する、そういう作業を進めておるということを聞いております。この圧力容器を搭載しましてからいわゆる艤装を行ないまして、そうして燃料をいよいよ装入する、こういうことに今後相なると思いますが、燃料を装入しました段階からさらに低出力運転実験、それから出力上昇試験等を経まして、おそらくは来年あたりには早ければ試験運転に入るというようなことではなかろうかと予想いたしております。  他方、アメリカにおける高速原子力商船隊の話でございますが、その前に、前々からアメリカが持って動かしております世界唯一の原子力貨家船サバンナ号の状況でございますが、すでに御案内のとおり一九六二年の先月に就航いたしまして今日まで、ヨーロッパ大陸との間で数回にわたり航海をいたしまして、技術的には大きな成功をおさめたといわれております。ただ非常に豪華船につくられておるようでございまして、最初の原子力船、いわば実験的性格も持っておりますために、安全面その他でも非常に慎重につくられておるというようなこともございまして、当初は別でございますが、その後はもっぱら貨物船として使われておりまして、お客さまは扱わない、そういう形であるようであります。そのため、ちょうど一年くらいになりましょうか、昨年の夏来ニューヨークの造船所におきまして貨客船を貨物船に改造、そういう仕事をただいま進めておるように承知しております。これは、今後は高速貨物船として稼働されるということに相なろうかと思います。  そこで、高速原子力商船隊でございますが、このサバンナ号の運航を委託されてやってまいりましたアメリカンエクスポート・アンド・イスプランセンという会社が、このサバンナ号における経験をもとにしまして、今後世界の海上貨物輸送というものがより高速化するということと、それから船荷、船おろし等の時間の節約、ひいては港湾における滞留時間の短縮等々も考えまして、最近に見られます一つの傾向でございますコンテナ船として原子力船を応用するというようなことから、太平洋航路に四隻の原子力貨物船を配置する、こういう計画を立てまして、アメリカの海事局の了解を得て予算化することをはかってきております。私どもの承知いたしますところでは、今年度のアメリカ予算にはまだこれが入っておりませんが、一九六七−八年度予算において計上されるように現在熱心にいろいろと進めておるように承知しております。  このほかの国としましては、御承知のとおりソ連が原子力砕氷船レーニン号を持っておるわけでございますが、レーニン号は一万六千トン、軸馬力四万馬力という非常に強力な砕氷船でございまして、一九五九年の冬から就役して北氷洋で非常に大きな成果をおさめ、活動いたしてきておるようであります。この成功にかんがみまして、ソ連政府ではその後、同じような原子力砕氷船をさらに二隻つくりたい、こういう計画を出しておりまして、私どもの承知しますところでは、そのうちの一隻につきましてはすでに計画に着手しておる、こういうことでございます。  現に原子力商船を所有し、あるいは実際に建造しておりますのは以上の三カ国でございますが、その他の国におきましても、最近の船舶の大型化、さらに先ほど申し上げましたようなコンテナ船としての高速化等の情勢から、今後非常に大きな高速の船を動かす動力としてのエンジンにつきましては、燃料消費量の増大等もございまして、原子炉に依存するという傾向が強く出てくるのではないか、こういうふうに見られるわけであります。たとえば先ほど来申し上げました国のほか、ノルウェーあるいはオランダ、ベルギー、さらに中共あたりにおきましても原子力船の計画検討しておるようでございまして、これらのものを合わせますと、約十隻ぐらいにのぼる模様でございます。  以上が最近の状況でございます。
  75. 内海清

    ○内海(清)委員 一時この原子力船の問題も世界的にちょっとその趨勢がダウンした形でございましたが、いまお話のように、最近におきましては、将来の海運ということを見越して多くの国がこれに非常に熱意を持っておるように思うのであります。ことにアメリカの商船隊の問題は、海運国であるわが国に、特にアメリカであるだけに非常な影響を与えると思う。このことをわれわれは十分頭に入れて今後に対処しなければならぬと思うのであります。アメリカのこの商船隊の建造しようということにつきまする内容ですが、これは御承知のような、アメリカで今日二隻以上、三十ノットの原子力コンテナ船、これを早急に建造して、そうしてさらに、これはあとでも申し上げたいと思いますけれどもアメリカの海運界が今後二十五年間に少なくとも原子力船五十隻を建造しよう、これを議会に提案したと報告されておる。しかも、この提案はアメリカの上院の商務委員会委員長がありまするマグナソン議員の要求によって商務省がこれをやっておる、こういうことであると思うのであります。ことに、これにつきましては、商務省のアラン・ボイドという次官代理が中心になって原子力委員会それから海事局あるいは国防省の関係各官庁、これらの意見を取りまとめて報告書を出した、その内容によって進められておるように思うのであります。いまお話のようにいわゆる一九六七年にこれは廃案になっております。で、六八年の財政年度の予算ではこれが復活されることを非常に期待して努力いたしておるようであります。これは、前回の場合は、予算要求を支持いたしまする資料が不十分であったということであるようでありますが、その後多くの原子炉メーカーから集めた情報を基礎にして、またコスト計算に基づいてやっておるようであります。この内容を見ますと、われわれはなかなか安閑としておれないのじゃないか。海運国であるわが国としても十分考えなければならぬのじゃないかということがうなづけるのであります。  もちろんこれは、委員会関係においては十分御承知のことだと思いますけれども、私がアメリカの原子力業界誌でありますニュークレオニクス・ウイークというもので調べたところによりますと、三、四隻の最初の船隊をつくるためのコストの犠牲、つまり犠牲というのは、原子力船の建造費が同等の在来船を上回る費用ということになると思いますが、これは一般当たり千百万ドル、ところがこれを一応やれば、それに続きます原子力船は油だき船に比べまして四百万ドル程度の船価高となるにすぎない、ところが一方、燃料費の節約は、年間一船当たり百万ドルに達する、こういっておるのであります。それから見ますと、建造費の超過分の償却並びに原子力船としての追加費用を差し引きましても大体一船当たりの年間の節約は約二十五万ドルになるのじゃなかろうかという計算がされておるようであります。そこで海事局としては今後二十五年間に四万軸馬力以上の大馬力の船を五百隻つくろう、こういう計画があるようでありまして、その少なくとも一〇%、つまり五十隻、これは必ず原子力船をつくるという見込みを立てておるようであります。したがって、一隻当たり年間二十五万ドルの費用の節約、これが五十隻に及ぼされますならば、年間の節約高は千二百五十万ドルということであります。そうすれば、まあ三隻、四隻つくりまして三千万あるいは四千万ドルの最初の投資というものは、これが動き出せば三、四年で大体償い得るという計算が出てくるようであります。こういうふうな立場をとりまして、原子力委員会は海事局による多数建造計画とそれから原子力委員会による長期研究開発計画の並行実施をはかろう、両方をいこう、こういうふうに主張いたしておるようであります。この報告書の中にもそういう方針が堅持されておるようでございます。そこで、アメリカの原子力委員会と原子力産業は、原子力推進の資本費並びに燃料費の低下に、海事局及び海運業は早期に建造される数隻の原子力船の運航によって運航費及び助成費の低下にそれぞれ努力することが期待されておる、こういうふうにいっておるのであります。  こういう点から考えてみますと、米国の原子力船計画の内容というものは、この計画が実現した場合——計画どおりに実現するかどうか、ある程度の疑問はありますけれどもアメリカの力をもってするならば、なおかつ、現在のアメリカの原子力に対する研究技術程度からいくならば、これはある程度実現するのではないかとわれわれは覚悟しなければならぬと思うのであります。その場合にわが国がはたしてどういう影響を受けるだろうか、このことが問題だと思うのであります。私はここで思い出しますのは、おそらく十年くらい前になると思います、甘利専務理事は十分御承知のことだと思いますが、マリナー型の高速船がアメリカでつくられましたときに、太平洋における積み荷というものは一時ほとんどこれに集中したという形があるのであります。われわれはそういう苦い経験を持っております。そこでわが国はあわててわが国の商船隊の高速化をはかったということがあるのであります。これを考えますときに、こういうアメリカ計画に対しては、われわれ海運国の日本としては安閑としておれないのじゃないか。こうなってまいりますと、われわれはどうしても原子力船にはやはり原子力船をということでやっていかなければならぬのじゃなかろうか。したがって、今後におきまするわが国の原子力船の開発ということは当然急いでいかなければならぬという結論が出てまいると思うのであります。  これは、私はしろうとでありまして、専門家の方にたいへん失礼でありますけれども、船の抵抗は一般に速力の増加に伴って急激に増加するものであります。軸馬力はそれにさらに速力を乗じた数に比例することになるのでありますから、積載重量一万五千トン程度のコンテナ船の場合をひとつ考えてみますと、三十ノットといたしまするならば、およそ十万軸馬力が必要になると思うのであります。そうすると、太平洋を横断するといたしまして、この横断距離を最小限度六千海里と見込みましても、バンカー油の重量は大体六千トンになると思うのであります。そうすれば、載荷重量の半分近くがこのバンカー油ということになると思うので、原子力船でなければ役に立たぬ、こういう時代になってまいりますということは、この事柄を見ましてももうすでにあまりかれこれ言う必要もないのじゃなかろうか、十分専門家は御理解できると思うのであります。  さらに、さっきのアメリカの原子力船の開発構想についてわれわれ注目しなければならぬと思いますことは、二隻以上の同時建造によって、三基目の炉心あたりから燃料費が毎軸馬力時当たり一ないし二ミル、すなわちボイラー、タービンあるいはディーゼル式の在来船の燃料費の四ないし五ミル、これはこういうふうに従来いわれておるようでありますが、それの三分の一ぐらいに燃料費が低下する、こういうふうにこの計画の中にあるようであります。この点はよほど注目しなければならぬのじゃないかと私は考える。しかも燃料に関しましても、アメリカの海軍ではすでに十二年間入れかえなくても済むような原子炉心の製造技術ができ上がったといわれておるのであります。そこでアメリカの原子力会社の中には炉心の製造がもはや採算的な事業ではなくなったというので、燃料部門の閉鎖を決意したところすらあるといわれておるようであります。この点はわが国の状況と比べてみますとまことに寒心にたえぬのでありまして、わが国でいま電力会社が原子力発電所の建設の具体化ということで非常に急いでおられる。それでまた動力炉の開発という問題も起きておるわけだと思いますが、わが国ではむしろ反対に、燃料会社の乱立さえ気づかわれる状態である、こう思うのであります。まことに対照的な現象だと私はこれを見まして強く感じたわけです。すなわち、米国ではすでに燃料加工が企業としては成り立たなくなった。それほど長もちのする燃料ができ上がるようになった。燃料費は格段と低下したということが言えると思う。したがって、船の面から申しますれば、さっきの計画でいえば三基目から在来船の三分の一という燃料見通しは決して夢ではないのじゃないかということもうなずけるわけであります。こういう点から考えましても、おそらく十分この点をお調べになっておることと思うのでありますが、いま一つは、「将来におけるわが国の造船技術の国際的主導件」というふうにいわれておる。さっき原子力局長からも船の大型化の問題を言われました。これはわれわれも強く感じておる。わが国のいまの造船海運界  の状況から見ますと、最大の悩みはやはりタンカーの大型化であると思うのです。御承知のように最近NBC——ナショナル・バルク・キャリヤーズから二十七万トンのタンカーが日本へ発注された。これも御承知だと思う。これがいま話題を呼んでいるわけでありますが、わが国におきましても、船の大型化につきましてはやはりいろいろ研究されておるわけでありまして、巨大船総合研究委員会というようなものもあるわけであります。ところが、外国ではすでに五十万トンの設計を検討しておるといわれておる。こういう趨勢からいきますと、非常に問題が出てくるであろうと思うのであります。この点はわが国も御承知のように三十二年以来建造量において世界一の造船国で、四十年度におきましては世界の建造量の四四%を確保しておる。その輸出実績もわが国の外貨の獲得に非常に貢献しておるということは御承知のとおりであります。そういう大型化の傾向に対しまして日本の造船所というものが御承知のように二十万トン台の大型船の建造施設というものを——大庭もこの前日立造船の堺をごらんいただいたようでありますが、あれが二十五万トンといわれておりますが、そういうものが次々といま完成しつつある。ところがこれが三十万トンになり、五十万トンになってまいりますならば、すでに二十七万トンはきておるわけです。さらにその上設備拡張を考えていかなければならぬということであります。そういうふうにひっきりなしに、御承知のように三、四万トンのタンカーが、マンモスといわれておるのが十万トンになるのに十年かかった。ところが十万トンが二十万トンになるのには三年しかかかっていない。こういう非常な速度で大型化していっておる。わが国の造船所としても、これに次々に追われて設備の拡張をやっておったのでは、いま造船は利潤なき繁忙といわれておりますが、この姿が慢性化していくのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。そうは言いましても、船舶の大型化ということは、これは限界を求めようとしても非常にむずかしい問題であります。なぜかなれば、海運界としては採算の晦からいきますならばこれは大きいほうがいいということになります。大型化するほうが採算面がいいということに相なる。だからどこかでこれを解決していく方法を考えなければ、この大型化の傾向はなかなかやまないのではなかろうかと思うのであります。これは直ちにわが国におきまする港湾の問題、航路の問題、すべてに響くわけであります、そういう現状であります。そこで、そういう船が大型化しますと、やはり出力の大きい機関を積まなければならぬ。だから出力の大型のディーゼルの開発というものがいま真剣に考えられておる。超大型船の建造設備の再検討こういうものが開始されておるのも当然であると思います。  そこで私が一つ問題があると思いますのは、船体が大きくなることだけが運航経済をよくする方法であろうかどうかということをひとつ考え直してみなければならぬと思う。厚子力船の開発と巨大船問題、これを結びつけて考える段階にきておるのではなかろうかというふうに思うのであります。すなわち、原子力船によってタンカーの大型化を阻止できぬであろうかということであります。これをひとつ特に考えていかなければならぬのではなかろうか。すなわち、現在タンカーは急速に大型化しましたけれども、その速力は、御承知のように十年前に比べて船が大型化したほど進歩してないということであります。たいして変わっていない、一口に申しますと、ほとんど変化がないということであります。これは在来船のエンジンに性能上に大幅の進歩がなかったということでありますので、大力量のものについての割り安の傾向が少ないということであります。こう思うのであります。原子力を利用いたしますならば、これは大馬力ほど割り安になるはずでございます。しかも燃料費も在来の三分の一程度になるということでありますならば、船型の大型化のかわりに原子力推進の利用、これによりまして機関の大馬力化が考えられていいのではないか、こういうふうに思うのであります・しかしそれだけでは、大きな船でもって一度に多くの荷物を積んでゆっくり運ぶかわりに小さな——小さなといってもかなり大きなものができるわけですけれども、五十万トンなんて言わないで、たとえば二十万トン、二十五万トン、半分でいいでしょう、そういう船でもって速力を速めて二回で運ぶということ、これを考えていく、このことが必要じゃなかろうか。しかし、それではまたなかなか船主側としてはうまみの少ないところもあるだろうと思います。  しかし、いま一つ私は問題があると思いますのは、巨大船について考えなければならぬことは、設備ばかりでなしに安全性の問題があると思う。この問題を無視してはならぬと思うのであります。これは調べたところによりますと、十五万トンの東京丸はその巡航速度で航海中に急停止しようとしてエンジンを回転させても、停止するまでには四千三百メートル走るといわれておるのであります。まして日本のような海峡の多い、入り海の多い所でいろいろ問題もあるであろう。また二十万トンの出光丸が、これが建造されておると思いますけれども、これは喫水が十七メートル。ところが御承知のマラッカ海峡は、水深が二十メートルといわれておりますね。そういうことから考えてみますと、船の大型化というものはすでに良識の限界に達しておるのじゃなかろうか、こういうことが考えられる。だから、この大型化を阻止するにはやはり原子力推進によって、そうしてこのピッチを上げていくということ、船の安全性を保つということ、こういうことがこの際考えられなければならぬのではなかろうか。今後におきまする海運の経済化への技術革新というものは、原子力の推進による機関の画期的な進歩にその方河を求めるのが正しい行き方じゃなかろうか。これはしろうとなりの考えも入っておりましてはなはだ恐縮なんでありますけれども、そういうことから考えましても、わが国が世界の海運造船国である以上、どの面から考えましてもここでこの原子力船の建造の技術の習得ということ、それから運航の技術の経験を積むこと、乗員の教育訓練ということが、わが国が海運造船国であるだけに早急にこれは考え、解決しなければならぬ問題じゃないか、私はこう考えるのです。  これにつきましては、ひとつ大臣なり理事長のほうから、ただいま申し上げましたような意見に対する御所見をお伺いいたしたい。
  76. 上原正吉

    ○上原国務大臣 たいへん貴重な御意見を伺いましたけれども、専門的なことがたくさん入っていますので、私にはわかりかねるところが多いのです。石川先生その他からお答えしていただきたいと思います。
  77. 石川一郎

    石川参考人 ただいま貴重なる御意見、ありがとう存じます。実は私もちょうどいまから一カ月ほど前に、どのくらい大きな船にしまして原子力でやったらどうなるかということを計算してみてくれということでやったのですが、実はまだ原子炉のほうが進歩いたしませんものですから、どうも経済的にはいまのところ引き合わないだろうという。これはそそっかしくちょっとやってみろというのでやってみたんですが、そういうことがございましたということを申し上げておきます。ぜひともいまお話のようなことは考えてみたい、こう考えております、特に大きな船につきまして…。
  78. 内海清

    ○内海(清)委員 甘利専務理事専門家でありますから御意見があったらお伺いしたいと思います。
  79. 甘利昂一

    甘利参考人 私は現在原子力第一船に専心しておる者でありますので、いま内海先生のおっしゃったような一般のあれは専門でないのでありますが、いままでの経験あるいは最近の状況から判断いたしますと、全く内海先生のおっしゃるとおりであります。したがって、今後日本の海運を伸ばすあるいは造船業界を伸ばすためには、巨大船化するか、あるいは高速化して中型にするか、その二つでありますが、いずれにしましても動力としては原子力を用いなければとうていできない、こういうふうに確信いたしております。御同感でございます。
  80. 内海清

    ○内海(清)委員 いま申し上げましたようなことから、この(4)にございます、つまり現時点において原子力第一船の建造を促進する必要が差し迫っておるということは、私は痛感いたしておるのであります。これが一つ。今回の場合、過去のような苦い経験を繰り返さないように、前進の形をとっていただきたいと思います。あのことによってすでに二年おくれておるわけです。このことを強く要望申し上げたいと思います。  そこで、私は過去原子力船につきまして三十八年の三月、去年の三月と八月と実は三回御質問申し上げております。たとえば船価の問題にいたしましても、あるいは発注方式にいたしましてもいろいろ御質問申し上げたのでありますが、はなはだ残念ながら私が当時御質問申し上げましたこと、疑問に思ったことが現実になってあらわれてきたと思うのです。船価の問題につきましても、三十六億というものは大体妥当なものだというお話がございましたし、発注方式にいたしましても、私は船と炉を分離して発注するのがいいのではないかということであったのですが、その当時は一体がいいのだということで、これはまことに強い御態度であった。それが、船価はいま倍近くに上がってきた、発注方式は分離される、こういうふうな形になってきておるのであります。前に私質問いたしましたので、それらについて少しお尋ねいたし、ひとつ納得いくような御答弁をいただきたい、こう思うのであります。それで前の会議録を持ってきておりますから、必要によってはまたその当時のお答えもなにしますけれども、第一船の船価についてのお尋ねをするわけでありますが、これはこれにも書いてあると思いますけれども、第一船はこの前の計画でいけば三十六億、こういうことであったのであります。これが今回の場合は船価でいけば六十四億ほどと六十三億ほどと、まあ二つの、輸入炉と国産炉の問題であるわけであります。かなりの値上がりになっておるのであります。これは一体当時の状況とその後どこがどう違ったか、あの当時かなり自信を持っておられた三十六億というものが、どういうことで変わってきたのか、この点をひとつ御説明をいただきたい。
  81. 村田浩

    ○村田政府委員 その点につきましては、原子力委員会の去る七月十四日の決定の中に、「記」の二番目で響いてあるわけでございますが、委員会におかれても、この方針を決定されますにあたりまして、当初船価三十六億円と、今回輸入炉を搭載した場合をも含め検討しました船価五十数億との間で非常に大きく開いております点をいろいろと御検討いただいたわけでございますが、正直申しまして、今日の段階でひるがえって考えますならば、三十六億というものを一応船価としてはじきましたときに、その計画を立案いたしました当時にいろいろ資料を十分集め、専門家に集まっていただきまして、十分な御検討をいただいたわけでございますが、そういった資料なり情報が、今日見まして必ずしも十分でなかった、そのために船価の推定において適正を欠いた面があるというふうに判断しなくてはならないのではないかと思っております。もとより、昨年船価につきましての見積もりが出ました後にいろいろ検討しました際にも、この計画を立案しました当時からの物価の値上がり、ひいては船価の上昇、さらには安全基準等の条約発効に伴う改定等によりますところの設計変更等がありました。それらが一部船価の上昇に響くであろうということは考えておりますし、またその要素も今回の船価増額分の中にはある程度入っておるわけでございますが、しかしそれらを勘案いたしましても、二十億近い増額ということは、それだけでは埋められるものではないわけであります。船価の上昇につきましては、たとえば私どものほうで運輸省に伺っておるところなどからしますと、昭和三十八年当時九万トンタンカーでトン当たり八十八ドルくらいであったようでありますが、その後非常に船価は下がっておるといいますのは、むしろ先ほど来お話がございました大型化による面が大きいようでございまして、同じ規模、つまり同じく九万トンタンカー程度でございますと、四十一年度には八十八ドルのものが九十六ドル・パー・トンというように一割余り増加しておるようであります。一般管理費につきましても同様で、これまた一割五分から二割程度上昇しておるようでございます。こういうような船価の上昇ということも、計画立案当時から今日までの間にある程度あったであろうことは考えられるわけでございますが、冒頭に申しましたように、やはりそれだけの問題ではないようであります。ただ、昨年あるいは一昨年当時御説明しましたときと、今日におきまして私どもが五十数億の船価を、これは現時点においてはかなり適正なものではなかろうかと見ておりますその違いの最大の要素は、昨年もそういう声があったわけでありますが、国産炉によってやるために船価が非常に上昇しておるのではないかという心配であります。その点を確認いたしますために、先ほど石川理事長からもお話がございましたように、原子力委員会のほうでは海外から原子炉を入れまして、そうして同じ原子力船をつくった場合には幾らになるかということを慎重に検討されたわけであります。この場合、原子力潜水艦等の軍艦は別としまして、商船で舶用炉を実際につくった経験のございますのはアメリカのバブコック・アンド・ウイルコクス社でございますので、また現在ドイツのオットハーン号の原子炉もこの会社の設計でございますので、この原子力船開発事業団を通じまして、バブコック社にわが国の原子力第一船搭載用の原子炉の価格見積もりをやっていただいたわけであります。その結果は、大体予想しましたところと違いまして、三十六億円ということを考えました当時に比較しますと、かなり高い値段で出てきておるわけでありまして、先ほど内海先生からちょっと御指摘がございましたが、このバブコック炉を積みました海洋観測船も、国産炉を積みました海洋観測船も、船価の合計におきましてはほとんど差がないという結論になっておるわけであります。  なお、先ほどお話の中で、国産炉の場合六十数億円というようなお話がございましたが、これには、三十六億円の船価の際に対象外としておりました燃料の値段あるいは燃料の交換用の特殊器具の値段、保船費等が省かれておりますので、三十六億円に対応するものといたしまして、事業団がこれから計画を進められる際に、造船会社及び原子炉メーカーと契約を結ばれる際の対象となる金額は五十数億になっております。手元の資料によりますと、国産炉の場合は約五十六億円、輸入炉の場合は約五十八億円という数字が出ております。この点から見まして、現在実際にできております原子炉を積みましてもこの程度の船価が必要だということが、慎重な検討の結果確認されましたので、このような点から見まして、国産炉を積みました場合にやはり五十数億かかるであろうという挙証を得られたということから、今回のような結論を出されたわけでございます。
  82. 内海清

    ○内海(清)委員 いま私は国産炉が高いとか安いとか、輸入炉のほうが高とか安いとかいうことを申し上げておるのでなしに、三十六億円程度の当時のものと約二十一、二億上がった船価というものの最も大きな原因は、それはいろいろなコスト高の問題もありましょう、材料の問題もありましょう。しかし、これはとても二十億も二十二億も響くものじゃない。管理費も上がっておりましょう。それもわかります。しかし、当時あれほど自信に満ちた御答弁があったのに比べて——私はその当時は、船価については、特に日本としては新しい一つ技術の開発だから、十分その点は考えなければいかぬだろうということを言ったが、これでだいじょうぶだということであった。それに対してはもちろん、もともとその計算の基礎になるものはあるいは民間の業者からも出たかもしれない。しかし、少なくとも国会で審議して、予算までもつけて、それがどうもその当時十分なる研究ができておらなかったということでは、なかなか受け取れぬのじゃなかろうか。したがって、その船価の上昇というものは、もっとこまかく分析して、こういうことによって船価が上がったということ、あるいはその当時の見積もりが間違いであったならば、それはこの点が最も間違いであったということが、やはり明らかにされるべきじゃないかと思うのです。少なくともこの委員会ではそれをやってほしいと私は思うのです。ですからその点をお尋ねしておるわけです。
  83. 村田浩

    ○村田政府委員 三十六億の船価がどのようにして出されたかということは、当時もお答え申し上げたと思うのでありますが、政府としましては原子力委員会に原子力船専門部会を二回にわたりつくりまして、造船工業会あるいは原子炉メーカー等からの専門衣あるいは大学等の先生等もお集まりいただいて、そうしていろいろと御検討いただいたそれらの結果に基づいて、原子力委員会で第一船の建設方針を打ち出していただいたわけであります。その間には政府、民間の代表から成ります原子力船の調査団も海外に派遣いたしまして、その当時における海外の実情、資料等もでき得る限り収集いたしたつもりであります。また、一九五八年ですか、ジュネーブでございました国際原子力平和利用会議の際にも、代表の方が参りまして、日本の原子力船の計画を発表するとともに、諸外国専門家といろいろ討議もいたしまして、そうしてそれらの情報、資料をもとに専門部会でいろいろ御検討いただいたわけであります。  三十六億の内訳は、ごく大ざっぱに、大まかに申しまして、大体船体が十八億、炉が十八億というようなことであったかと記憶いたしますが、今回の五十数億というものと比べましたときに、そのいずれもが増加いたしておりますけれども、特に船体の増加というのが私どもの予想しましたところとかなり違っておるようであります。この点につきましては、当時の資料を一応調べてみますと、当時の船体の単価といいますか、トン当たりの価格を推定するにつきましては、計画造船の際の、これは計画造船の対象となっている船種でございますから、原子力海洋観測船のようなものではないわけでありますが、その船価を一応トン当たり十五万円というようなことから、これを基準としまして、原子力海洋観測船の場合、大体その倍くらいのコストを見ればよかろうということから、トン当たり三十万円程度、これが総トン数で六千トン程度の原子力海洋観測船といたしますと、大体十八億円、こういうような積算根拠であったと記憶いたします。もちろんもう少し詳しくいわゆる概念設計等を行ないまして、内容の積み上げをやっていただいたわけでございますけれども、大まかなところそのような考え方であったと思います。  ただいまの船価五十数億と出ておりますうち、船体は約三十億近くでございます。二十九億何千万円だったかと思いますが、と申しますことは、当時の予想に比べまして十億以上多くなっております。これは一つは、先ほど申し落としましたが、当初六千トン程度と考えましたものが、現在の見積もりの対象になっております設計では六千九百トンになっております。二割程度総トン数がふえておりますので、そのためのせいも幾ぶんはあるわけでございますが、それ以上にやはりトン当たりの船価が高くなっておるわけです。この点は結局、この船が一隻だけつくられる。計画造船のような場合に、たくさんの同じものが幾つもつくられるということではなくて、一隻だけつくられ、かつまた、特殊な目的の船である。海洋観測を行ないますために、普通の乗り組み員のほかに観測を担当します研究者が乗るわけでございますから、そういった研究者の居室あるいは実験室等の整備も必要である。これはもちろん当初から考えられたことではございますけれども、その後南極観測船ふじ号等の建設を通じまして、これもほぼ似たような目的のものでありますので、そういったような経験を取り入れまして、海洋観測船にふさわしい設計になってきておる。こういった点がある程度影響しておるようでございます。  それから原子炉のほうにつきましては、当時およそ十八億と見ましたものが現在二十五、六億くらいの線に出ております。これまた七億程度ふえておるわけでございますが、この原子炉のほうは、確かにただいまのお話にもございましたように、当時まだ日本で十分に設計ができる段階になっておりません。この第一船計画とともに設計を勉強して進めてまいっております。当時、原子力船研究協会というのがございまして、ここを中心にメーカー関係が集まりましていろいろ研究を進めてこられたわけであります。御案内のとおり、何と申しましても安全性というものを特に重視する必要がございます。そういった要素もありまして、現実に安全審査をパスさせるような必要性、そういった点を十分考慮して、三十六億の船価をやりましたときよりも、一そう具体的な詰めた検討及び試設計をやっていただいた。その結果がこのような原子炉の価格になってきておる、こういうふうに了解いたしておるわけでございます。
  84. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろ御説明がありましたが、昨年から一年たっておるだけですよ。いま言われました説明の中にも、それはいろいろな要素、考えられることはありますけれども、少なくとも原子力委員会計画され、法律によって事業団ができて、予算をとって実施しようというときに、あとから考えてみてどうもあの点が足らなんだ、この点が足らなんだ、研究不足であったということでは、私はちょっと問題があるのじゃないかと思うのです。しかしこれは人間のやることですから、もちろんそういうものも出てくると思うのですが、あまりにも開き過ぎておるという気がいたします。しかし現在のこのものが妥当であるならば、それはわれわれは認めるのにやぶさかでない。さっき申し上げましたようなことから、一日も早くこの予算の獲得ができて、そしてこれが建造されることが好ましいと思うのでありますけれども、いまの御説明では、いままで私どもがいろいろ伺がっております観点から言えば、どうも十分納得がいきにくいという気がいたすのであります。もちろんいままでのが誤りであって、これが正しいのだと言われればそれまでであります。ただこれが民間の事業と迷うところに、私はくどいようでありますけれども申し上げておるのであります。時間がありませんから、いずれまたそれらについて詳しい資料があれば御提出いただきたいと思うのです。在来のものとの比較において、この点がこうなっておるという資料が、できればひとつ御提出いただきたいと思う。これはしかし、なおこれから発注の段階になりますから、いろいろ外部に出せないものもあると思います。これは委員会でありますから、マル秘であればわれわれはそれを厳守するつもりであるけれども、少なくともわれわれには納得させていただきたい、こう思うので、その点いかがでしょうか。できますか。
  85. 村田浩

    ○村田政府委員 先生おっしゃいますように、ただいま私の申しました船価約五十六億とかあるいは五十八億とか申しますのは、事業団にお願いしまして、関係業界とともに検討されましたそのままの数字でございますので、予算に組みます際、あるいはこれをもって実際に契約を交渉します際には、まだそういうことは行なわれておりません。そこでいまこの数字を具体的にいろいろ出すのにははばかりが若干あるかと思います。しかしながら、結果的にどのような船価になりますにしても、三十六億でないことは明らかでございまして、五十何億かということになるわけでございましょう。それがきまります際に、三十六億のときにはこういう項目をこう見ておった、それがただいまはどのような理由でどういうふうになっておるかという点は、これは比較できるわけでございますので、そのように努力して資料を整備したいと思いますが、いつそのようなことができますかは、いまの段階ではちょっと具体的に申し上げかねます。
  86. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの船価の問題も、これは事業団が直接業者との交渉に当たられてこられたし、今後も当たられると思うのですが、何かいまのについての御所見がありましたらお伺いいたしたい。
  87. 甘利昂一

    甘利参考人 いま原子力局長から申し上げましたとおりでありますが、資料については私たちも協力いたしまして、できるだけ御了解が得られるような資料を整備したいと思っております。
  88. 内海清

    ○内海(清)委員 これは私どももこの科学技術委員をやってこの問題に参画しておるとときどき聞かれるわけです。一体どうなったのか、これはいま答えようがない。これでなければできぬのじゃそうだということしか言えぬわけであります。私は従来多少海運造船に関係してきただけにまく聞かれるわけです。一体どういうことをやりおるんだということなんです。私はまあこれは適当にいままでは返事をしておりますけれども、いよいよこれが建造されるということになれば、それだけではいかぬと思うのです。少なくともここの委員会委員をしておればある程度のものは承知しておらなければならぬだろうと思います。どうかひとつ資料を御提出願いたい。  それでは次にお尋ねいたしたいと思いますのは、今度国産炉を使用して建造するということが決定いたしたわけです。ここでひとつお尋ねしておきたいと思いますのは、先般いただきました資料で「原子力第一船船価対比表」というのをちょうだいいたしました。これの中の、「原子炉部価格」の中の「基本価格」、これの中の輸入炉のほうで三十億一千三百万円、これは二十四億三千二百万円とプラス五億八千百万円、この五億八千百万円は、この「備考」を見ますと、Xか何か知りませんが、この金額は「据付工事費、機能試験費(一次側)、建造保険料、その他MAPI原子炉範囲に相当するもののうちB&Wの見積際外となったものを参考見積した額である。」こう説明が入れてあります。これはつまり据付工事費とか機能試験費あるいは建造保険料、その他とあるわけでありますが、この点について私はもう少し分析してほしいと思うのです。と申し上げますのは、造船の側から申しますと、造船は御承知のように受注生産です。見込み生産じゃありません。したがって、日本で原子力船の開発がどんどんできてきた、技術的に進歩してきたという場合には、輸出船の受注があるかもしれません。そのときには船主から要求された炉を積まなければならぬ、こういうことです。だから船主から要求されたら、日本じゃこれをつくっておるのだからこれしか積めぬというわけにはいかぬわけです。そこで各造船所の共通の問題はこの項になると思うのです。ことに据えつけ経費などの問題、これは原子力船の輸出をやる場合に各造船所に共通した問題です。だからそういう点から考えましてこの五億八千百万というものは、バブコックの見積もりにはなかったのをこちらで見積もって参考見積もりをして入れたというものであります。これがどういうふうな要素に金額的にはなっておるかということ、この点をひとつお知らせいただきたい。
  89. 村田浩

    ○村田政府委員 こまかい点は後ほど甘利専務理事からでも御説明いただいたほうがよろしいかと思いますが、私どもの承知しますところを申し上げます。  国産炉を搭載します船の場合には、実際に設計見積もりをやりましたのは三菱原子力でございますが、この場合の原子炉並びにその据えつけ、ここにいろいろ書いてございます据付工事費とか機能試験費とか、こういったものを含めまして三菱がこれを見積もったわけであります。それに対しましてこのような、つまり炉まわりの据えつけ工事その他の見積もりをバブコックの場合にはバブがいたさなかったわけであります。これはこちらでさせなかったわけじゃございませんで、私の了解するところでは、バブコックはこれは自分のほうではできない、したがって日本側の船体の見積もりをやるところで、あるいはまたどこか適切なところがあればやってほしい、こういうことでございましたので、事業団のほうでごあっせんになりまして、そうして一応船体のほうの見積もりを出していただきました石川島播磨のほうへ、そのような部分の炉まわりの据えつけ工事その他の見積もりをしていただいた。その場合の必要な資料、技術的な資料でございますが、これは一応バブから提供願ってやられた。ただし、時間の関係もございまして、本来詳しく実際に契約するような見積もりになりますと、実際に石川島播磨のほうからアメリカに参りまして、バブコックの社のほうでさらに技術的な詳細を打ち合わせてされるべきものでございますけれども、この場合はいわば船価の見積もりという範囲でございますし、かつまた、時間的な制約もございまして、一応向こうから送られた資料の範囲でやっていただいた、こういうことでございますので、参考見積もりした額であるというふうになっておると了解いたします。  なお、詳しくはひとつ甘利専務理事のほうから……。
  90. 甘利昂一

    甘利参考人 先ほど原子力局長からお話のありましたように、本来われわれも、原子力船という以上は最終的の取りまとめは造船所がやるべきであるということで船炉一体、しかし初めてのことであるから、炉の艤装その他については炉メーカーからあらゆる資料その他援助、そういうことをしてやれば造船所が取りまとめることはできるのじゃないか。また造船所で実際建造している現場によその工員が入り込んで、そこで炉の艤装をするということは人事管理の面からも非常にむずかしいということで、いろいろ努力したのですが、やはり石川島としても、MAPIとの間に約半年この問題でもみましたが、最終的にはどうしても石川島は主契約者になり得ないということで、日本炉の場合には、原子炉室というのは全部MAPIから人を出してやる。それからそれ以外の部屋についてはやはりMAPIが主契約者になって、石川島がその下請けをするということで話がついたのでありますが、バブの場合には、やはりわれわれ申しています船炉一体方式というものは当然そうすべきであるから、われわれはそういう範囲の見積もりはしない。したがっていまのような状態ですと、石川島も自分が主契約者になり得ないということを言っておりますので、いま内海委員からお話があったように、外国炉を入れた場合に、その艤装は、日本の造船所はいまのところできない。それから外国炉メーカーもそれはやらないということです。石川島がやらないと言っているのは、要するに全然やれないのじゃなくて、実際経験がないから、どのくらいの時間とどのくらいの費用がかかるかわからないから見積もれないので、もしコスト・アンド・フィックスド・フィーと申しますか、そういう方針でやるなら引き受ける、こう言っております。したがって、そういう事情でバブが見積もらないし、石川島も本式の見積もりができないということですから、MAPIが見積もったものに、たとえばバブからいろいろ資料をもらいまして、その機械の数あるいはその目方、それから主として艤装は配管、配線が主ですから、そのパイプの長さ、電線の長さ等に比例しますが、そういう四つの項目をいろいろ考えまして、両方の比較をいたしまして、それに適当のウェートをかけて換算したものでございます。その問題についてはバブのほうの人もこれはちょっと高いのじゃないかということを言っておりました。しかしそう違った値段ではなさそうであります。その後、石川島からバブのほうにわざわざ人を出しまして、事業団の人と一緒に派遣したのでありますが、いろいろ現地で詳細に検討した結果、それからたしか現状では三千五百万円くらい低くなっております。ですから見積もり価格として向こうがやった場合にも、そう大きな開きはないと思います。
  91. 内海清

    ○内海(清)委員 そうするとMAPIの場合も、大体こういう経費につきましてはややこれに似たものが組まれておる、こう理解してよろしいのですか。
  92. 甘利昂一

    甘利参考人 そのとおりでございます。
  93. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、五億八千百万が三千五百万程度安くなるということですね。わかりました。ここで炉の基本価格で大きな差ができておるので、これが参考見積もりであるということでありますので、その点をお伺いしたわけであります。さっき申しましたように、今後におきまして各造船所が艤装を実施した場合は、結局直接今回の建造に当たったところは経験するわけでありますけれども、他の造船所は経験しないのでありますから、この点は今後における最も基本的な、標準的な価格になってくるであろうということを思うわけであります。ですからこれに対してはひとつ今後事業団におきましても十分なる検討をやっていただきたい、このことを要望申し上げておきたいと思います。  それから、次は資金関係でありますが、これも私案は質問をすでにいたしております。私どもが従来承っておりますものにつきましては、以前の六十億時代は、その大体二割五分を民間で出資するということであります。その民間の二割五分のうちの半分というもの、一割二分五厘というものは大体造船工業会と申しますか、造船業界である。あとの四分の一が船主協会であり、あとの四分の一が関連業界であるというふうに承っておるのであります。ところが、この二割五分というものが当時すでに問題になっておった。民間では二割五分というものを約束した覚えはないということであったと思う。一割程度ならよかろうが、二判充分もなかなか出せぬじゃないかという問題があったようであります。これは、もっともこの三十八年に事業団ができまして、三十九年の予算の折衝のときですか、たしか科学技術庁で大蔵省との予算折衝の段階で、結局二割五分は民間出資ということを、いわば大蔵省から押しつけられたという形の経過もあるように聞いておるのであります。ところが今度は、この原子力関係は前の六十億が百八億になるわけです。したがって、やはりこの二割五分というものが従前の場合と同様に民間出資に相なるのかどうか、この点がはっきりいたしませんと、おそらく科学技術庁予算折衝される場合にも問題がございましょうし、この二割五分というものを基礎にして予算折衝いたしますならば、また第二の壁ができてくると私は考える。したがってこの問題は、いまの段階においてはっきりコンクリートしておかなければ、第二のつまずきがくると私は心配いたすのであります。その点につきましてひとつお聞かせいただきたい。
  94. 村田浩

    ○村田政府委員 ただいまの内海先生の、資金計画に関連して民間出資分のことでございますが、経緯はただいま先生の御指摘になったとおりでございます。今回船価を改めまして、大蔵当局と折衝いたすことになるわけでありますが、具体的には四十二年度の予算折衝に相なるわけであります。この際に、民間出資についてどのような形で予算をまとめて要求するか、これが焦点でございまして、御指摘のような重要な問題であることはそのとおりと思っております。ただいませっかく四十二年度の予算の概算要求を取りまとめ中でございますが、実は原子力委員会におきましては、本日原子力船開発事業団からのお考えを一応承ったばかりのところでございまして、八月末に大蔵省に提出しますまでに、民間出資分をどのようにして出すかということは、これから関係業界あるいは運輸省ともよく御相談しまして、十分御相談のいったところで提出し、大蔵省側と折衝いたしたいと考えております。
  95. 内海清

    ○内海(清)委員 この民間出資の政府の基本的な態度がきまりませんと、これはたびたび繰り返すようでありますけれども、まさに問題にぶつかるわけであります。私、先ほど海運造船の問題で申し上げましたが、二割五分の半分は造船界が持つということでありますが、さっき申し上げましたように、造船界におきましては、いま大型船に対処する設備の拡張というものにみんな苦しんでおるわけです。これが造船界の利潤なき繁忙の一つ原因である。でありますから、この問題につきましては、船主関係あるいは関連産業関係、業界、これらを十分コンクリートされなければ私は相ならぬと思うのであります。もちろん、海洋観測船ができまして九年たてば、いまの段階では事業団がなくなりますから、その際には、観測船は当然運輸省の所管に移されるでございましょう。あるいは、それに付随いたしましたいろいろサイトの問題その他も当然船と一緒に向こうに移らなければならぬ問題だと思います。その際に、運輸省において、つまり国においてこれを買い取るということもあるかもしれません。しかし、これはなかなか簡単には、政府部内の問題であるけれども、いかないのではないか。海洋観測船は、あながち原子力船でなくとも海洋観測はできるわけであります。そういう高いものは買うなということになるかもしれません。安ければ買おうということになるかもしれません。もしこれが相当の価格で買われるならば、これは返りが出てくるわけであります。民間の出資をしておきましても、これは運輸省に移管した場合の価格の二割五分は還元されるわけであります。問題解決すると思いますが、これはなかなか見通しがむずかしい問題である。したがって、いまのわが国におきまする造船あるいは海運、関連業界の状況を見ましたときに、はたして——六十億の場合は、二割五分は十五億であるけれども、百八億になれば二十七億である。そういうものがやすやすと出ると考えてこれに対処すれば、またつまずくのではないかという心配を私はいたすのであります。したがいまして、これらの民間出資の点を十分コンクリートされまして予算折衝されなければならぬのじゃなかろうか。もちろん、私は、この原子力船ができることによりまして、造船業界にいたしましても、あるいは海運業界にいたしましても、関連産業にいたしましても、そこに利するものは大きなものがあるとこれは確信いたします。でありますから、これらの民間におきましても、こういう新しい開発の際でありますから、自分の将来への発展のためにできるだけの投資をすべきであるということは考えるのでありますけれども、業界の実情が実情であるという点で私心配いたすのであります。この点はひとつ十分今後御検討になりまして来年度の予算折衝に当たるべきである。これは予算がとれなければ、また建造は見送りということに相ならざるを得ないということであります。その点を特に要望申し上げておきたいと思うのであります。  それからいま一つ、私の要望事項みたようなことでありますけれども、申し上げておきたいと思いますのは、いま動力炉の開発ということが問題になっておるのであります。これに対しまして、動力炉の事業団をつくれというような議も出ておるようであります。あるいは、これは原子力発電会社でやらしたほうがいいという議も出ておるようであります。聞くところによりますと、原研にこの事業団をつくる準備室的なものができておるというようなことも聞くのでありますが、この点はよほど快心に対処していただきたい。この動力炉の場合、新型転換炉は四百億から五百億かかるだろうといわれておるし、高速増殖炉に至れば千五百億くらいかかるだろうといわれている。これを並行的にいくならば、二千億というものが要るわけであります。あるいはそれに対して、この原子力船事業団と動力炉の開発の事業団を一緒にしたらというような議論もあるようであります。私は、この点はよほど慎重に対処していただかなければ、再び原子力船にも影響が出てくるのじゃなかろうかという気がいたすのであります。ことに、事業団とあるいはまた原子力発電会社でやらせるというような、あるいは、まあ電発でやらしたらいいというのもあるようでありますけれども、どうもここらが、私の感ずるところでは、少し役所のなわ張り争いのにおいがするのではないかというふうな気もいたすので、すなわち、科学技術庁と通産省の関係である、少なくとも国家的な事業でありますから、これはまあ要らぬことでありますけれども、こういうことは十分高所からお考えになって、国家国民の利益という立場から御判断いただかなければならぬと思います。それは余分でありますけれども、いずれにいたしましても、この際、原子力船開発事業団というものと動力炉の開発事業団というもの、あるいはこれが原子力発電会社でやるといたしましても、その辺のけじめと申しますか、はっきり考えて対処していただかなければならぬのじゃなかろうか。特に、これが原子力船事業団と一緒にしたらどうかというふうなことも耳にいたしますだけに心配いたすわけであります。この点に関しましては、ひとつ大臣のほうで御所見がありましたらお聞かせ願いたい。
  96. 上原正吉

    ○上原国務大臣 たいへんごもっともな御意見だと伺いました。検討させていただきたいと存じます。
  97. 内海清

    ○内海(清)委員 よほど時間がたちましたようでございますので、いま一つ……。  これは先ほど甘利専務理事からお話がございまして、申し上げるのもどうかと思いますけれども、昨年の三月の二十五日のこの委員会でお尋ねいたしました場合には、炉と船体の分割発注はいかないということが強く述べられたわけであります。今回の場合はこれが分離されるという形に相なっておるようであります。この点につきましては先ほど若干お伺いいたしましたが、このやり方についてのお考えをひとつ重ねてお伺いしておきたいと思います。
  98. 甘利昂一

    甘利参考人 先ほどもちょっと申し上げましたように、本来なら、一体でやって最終的に造船所がプラントとしてまとむべきものでありますが、今回は遺憾ながら造船所側の事情あるいは炉メーカーの事情から、一応分離発注いたしまして、最終的には事業団が引き取りまして、船については二次遮蔽が終わったあと、炉については炉の艤装並びに機能試験が終わったあとに事業団が引き取り、そしてあと事業団がこれらの業者並びにそれ以外の方を使って事業団の責任においてやるということにいま一応きめております。しかし、バブの事情あるいはMAPIの事情から申しましても、造船所が最終的に受けないということになりますと、外国炉を入れるということは現状では不可能になりますが、しかし、これも今回の船で一度経験をすれば、今後そういうことはなくなると思いますので、そういう意味からも、第一船の建造というのは非常に意義があるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  99. 内海清

    ○内海(清)委員 大体私の聞きたいと思いましたことは、お伺いしたわけでございます。いずれにいたしましても、この段階で最も重要なことは、環境を整備して、この原子力船の建造がスムーズにいくように、政府も原子力委員会事業団も一体になって進められることじゃなかろうかというふうに考えております。なお、これに関連いたしましては、すでにお尋ねした部分もありますけれども、国際条約の関係、あるいは乗員の訓練養成の関係、あるいは安全規則の関係、いろいろの面があると思います。これはもちろん科学技術庁の担当でもございませんけれども、十分これらについては関、係各省と連携をとって、密接な連携のもとに万遺憾なきを期していただかなければならぬ。ことにこれが原子力船であるだけに、そういう問題については慎重に取り扱われなければならぬ、かように考えるのであります。  最後に私は、これはたいへん言いにくいことでありますけれども、ごらんになったと思いますが、朝日新聞の社説に「原子力船が教えるもの」というのがあります。これにはその見出しで「発注段階でつまずく」「出資比率も未確定」「各界は責任を痛感せよ」ということをあげておるわけであります。こういう事態になりまして建造が二年もおくれた。先ほど申しましたいろいろな事情から、これはひとしく皆さんがそういうことを認めて、一日も早く原子力船の建造ということでやってきながら、ああいうつまずきができた。これは政府はもちろんでありましょうし、委員会事業団、さらには、これに関連いたしました業界のほう、その他各界がすべて責任を負わなければならぬ問題だと思うのです。ことにこれが国の事業でありますだけに、その問題は私は等閑に付さるべきではないというふうに考えるのであります。しかし、今日まで、いまだ、委員会にいたしましても、あるいは事業団にいたしましても、その点に関する態度はきわめてあいまいである。私は、昨年の八月の質問のときにも、この責任問題は論議さるべきである、しかし、きょうはいたしませんということを申し上げましたのは、その後それぞれ関係方面がどういう態度で臨まれるかということを実は静かに見てきたわけであります。それらについては、今日までどの面におきましても一言も触れていられないのであります。それに対しましての御所見があれば、この際お伺いしておきたい、かように思います。これは事業団なりあるいは委員会なり、さらに原子力局のほうにもございましたら、ひとつお伺いしておきたいと思うのであります。特にこの問題につきましては、昨年入札の段階でああいう事態になった。これは私も質問の際申し上げたのでありますが、入札に至るまでには、十分業界の意向というものも察知されて、見通されて入札に踏み切られたと思うのでありますけれども、それがああいう結果になった、しかも、今川に至れば、三十六億というものが六十億近くになったということ、あるいはまた、強行されようとしておりました発注方式にしても同様である、しかも建造が二年おくれたというようなこと、この問題は、これは朝日新聞の社説も指摘をしておりますけれども、局間会社であったならば当然倒産しております。役員は総退陣である、こういう事態であると思うのであります。しかし、これが政府関係機関であるだけに、私はその点はやはり一応明らかにせられるべきではなかろうかというふうな気もいたすのであります。しかしながら、最初に申し上げましたように、わが国の原子力船の建造というものは、きわめて急がなければならない問題だと思うのであります。そういう点から考えまして、私は、そこにはいろいろ考える余地は十分あると考えますけれども、一応のことはされるべきではないかというふうな考えがいたすのであります。それに対しまする御所見がありましたら、この際お伺いしておきたい。
  100. 上原正吉

    ○上原国務大臣 私も実はその社説を拝見したんです。そして科学技術庁長官としましても、原子力委員長としましても、残念ながら、返すことばがございません。
  101. 石川一郎

    石川参考人 私、実はあまり詳しく朝日新聞の社説を読んでおりませんけれども、いまお話しの筋はごもっともの点があると存じます。よく反省したいと思っております。
  102. 村田浩

    ○村田政府委員 原子力船の開発ということが、わが国の原子力平和利用のみならず、海運、造船、関連産業というものの振興のためにも非常に必要だということで乗り出すことをきめて、もう数年になるわけでありますが、何といいましても、初めて行ないます、世界でもまだ非常に初歩的段階にある新しい科学技術の応用でございます。また、先ほど内海先生おっしゃいましたように、単に技術的開発だけではなくて、その周辺の環境の整備、たとえば、船でございますから、国際的な環環境の整備ということもございますし、安全の剛胆もございます。そういったバウンダリーコンディションの整備ということも含めまして、これを一刻も早く、世界の造船国であり海運国であるわが問として整えていくべきである、こういう観点で乗り出し、その方法としましては、日本原子力船開発事業団という特殊法人を設立しまして、これを中心にやっていく、こういうことで参ったわけであります。私ども立場といたしましては、理事長以下事業団のほうで実務を担当してきていただいておりますが、新聞にもございましたけれども、これまで決して円滑に参らなかったということを反省いたしまして、従来、どちらかと申しますと、事業団というものの責任において、そこが中心になって推進していっていただくようにいろいろ考えておりましたが、やはりこの種の新しい仕事でございますから、事業団が中心となって当たられることはもちろんでございましょうが、運輸省及びわが科学技術庁といたしましても、これと今後は一体となりまして、そうしていわゆる総力をあげまして、原子力船計画が今後円滑に進むように、これまでの経験を十分生かすように反省しつつ進めてまいりたい、こう思っております。
  103. 内海清

    ○内海(清)委員 それぞれ御所見を拝聴いたしたのでありますが、いずれにいたしましても、過去の失敗と申しますか、これを十分に反省され、経験を生かされて、この次こそはほんとうに計画どおりにスムーズに進むように、各関係者が一体となられましてこの建造に当たられますことが、過去の失敗の償いにも相なると考える。それがこの際は最も重要なことではないか、私はかように考えます。どうかひとつ再びああいう轍を踏まないように真剣に取り組んでいただきまして、わが国の原子力産業の発展はもとより、海運、造船の伸展にも十分意を用いてやっていただきたい、強く要望いたしたいと思います。  なお、いろいろお聞きしたいこともまだございますけれども、時間がよほどたったようでございますから、きょうはこれで終わりたいと思います。
  104. 原茂

    原委員長 石野久男君。
  105. 石野久男

    ○石野委員 原子力船の問題では、ただいま内海委員からいろいろ御質問がございましたように、現在までの経世を見ると、当初の計画はすでに非常に大きな失敗と、言っていいほどのところへきていると思うのです。だから、やはりその失敗にかんがみて、今後うまく円滑にやるようにという内海委員の言われるとおりに私も考えますが、この際、ただそれが失敗だということだけでは私どもどうも理解しにくいことがあります。それは、たとえば、先ほど村田局長からお話があったように、船価の問題一つ取り上げましても、当初、専門部会等を通じて、トン当たり十五万円という計画を立てられた。しかも、この十五万円なるものは決して小さいものじゃなくて、むしろ、これは普通造船から見れば非常に大きく見積もっておったわけでございますね。それが今度の船価でいきますと、先ほど、六千九百トンというもので二十九億三千万という額になると、トン当たり四十二万という数字が出てくるわけですね。四十二万四千八百円、大体四十二万五千円程度のものになっていきます。この見積もりの相違があまりにも大きいということです。当時最も経験の乏しい炉の計画の見積もりにおいてはあまり大きい違いがないわけですね。これは外国のものと日本のものと計画でもあまり違いがない。ところが、技術的には世界に冠たる造船技術を持っておるその船価の見積もりであまりにも大きい開きがある。こういう問題を、これは間違いだったのだということだけではちょっと済まされない気がするのです。どこにこういう大きな狂いが出てきたのかという問題について、先ほど局長からも、それは物価や船価が上がった、あるいは安全基準の条約発効による設計変更などもあった、しかし、それだけではない、だろう、こういうお話があった。そのそれだけじゃないという意味がどういうところ——たとえばトン当たり十五万円と見積もったものが四十二万、四十三万近くになった、それだけではないだろうというようなことはどういうところにあったのか、これをやはりわれわれとしても一応は理解しておきたいと思いますので、皆さんのほうで私どもにわかるようなおよその説明がしていただけたら、ひとつこの際説明していただきたい。
  106. 村田浩

    ○村田政府委員 私、船自体のほうの専門でございませんので、あるいは後ほど甘利専務理事あたりから補足していただいたほうがよろしいかと思いますが、私の理解では、ただいま石野先生のお話にございましたトン当たり十五万円と申しますのは、当時の計画造船の船価でございまして、それを一つの旨安にしまして、この原子力船の場合はその倍のトン当たり三十万円というものを考えたわけであります。したがいまして、六千トンとしまして十八億円、このような計算で出ておったと記憶いたします。当時といたしましては、もちろん計画造船のような船とはこれは違うわけでございますので、相当値が張るであろうという想定のもとに、その倍である三十万円を見たわけでございまして、おそらく当時としては、これだけ見れば十分できるのじゃないか、こういう考えであったと思います。ただいまお話にございましたように、原子力船の専門部会の中には造船メーカーのほうからも専門家においでいただき、運輸省等からも関係者が参加されての試算でございますので、そういう配慮は十分入っておったものと考えるわけであります。しかしながら、その後の情勢としまして、現在のものがトン当たり四十数万円になっておるわけでありますが、ごく最近にできました、先ほど私もちょっと触れましたけれども、南極観測船のふじ号というものがございますが、これは、ここで考えております海洋観測船よりも一回り小型ではございますけれども、その船としての機能というものはかなり似通っておるようでございます。これが最近できたわけでございますが、この船価がトン当たり四十万円になっておるようであります。私、船の専門でございませんので、詳しいことはよくわかりませんが、そのことは、これは相当高くかかるものだという印象をそのとき持ったわけでありますが、観測船というたてまえで、観測着たる研究陣の居住性その他も配慮しますときに、かつまた、この種の観測船としては世界でも一流の原子力観測船になるわけでありますが、実験船とは申せ、やはり海洋観測の機能を十分果たせるようにというようなことから、その後の進歩発達を取り入れて、種々のファンクションが十分発揮できるようにというような配慮も、やはり設計する立場から入ってくるわけでございまして、そういうようなことから、実際に設計図を引いてみました結果が、トン数においても六手九百トンというふうにふえましたし、かつまた、船価もトン当たり四十二、三万円というようにふえたのではないかというふうに現在見ておるわけでございます。
  107. 石野久男

    ○石野委員 私、先ほどちょっとそれを聞き間違っておりましたが、確かに、当時トン当たり十五万の倍と見て三十万、その三十万が四十三万円に結局トン当たりで上がっておるわけですね。これは現状をそういうふうに——たとえば南極観測船がトン四十万円くらいでできておるのだから、大体似通っているじゃないか。近似値が出ておるのですから、あまり大きい違いがない、もしそうだとすれば、私も、よくわかりませんから、それは理解をいたしますが、そうしますと、その当時、結局、相当のエキスパートを集めて専門部会なるものが一つの想定値を立てたということに信憑性がほとんど置けないということが出てくるわけですね。しかも、当時の船価に普通のものの倍を一応見込んで、それがなおかつ、また倍に近いものが狂ってきたということになるのですから、そうなりますと、事業団といいますか、その当時専門部会が出したことに対する反省がなければならぬということになるわけです。こういう反省はやはり事業団なりあるいはあなた方のほうでなさっておるのでございましょうかどうか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  108. 村田浩

    ○村田政府委員 当時このような推定をいたしましたのは、先ほど来申し上げておりますように、原子力委員会に原子船専門部会を設けまして、そこに関係業界を含め専門の方にお集まりいただいたわけでございますが、今回再検討いたすにあたりまして、昨年の八月でしたか、原子力委員会に原子力船懇談会を設けていただきまして、ここに十二名の関係業界等の代表の方あるいは専門の技術の方に加わっていただいて検討を進めてまいったわけでありますが、その際、この十二名の中には、以前の専門部会で部会長をやっていただいた先生あるいは積極的に作業に参加していただいた先生も加わっていただきまして、そうして再検討していただいたわけでございます。したがいまして、三十六億という以前の船価につきましても十分内容を御承知の方々も加わって、いろいろ資料を御検討いただいたわけでございますので、その点につきましては、個々の先生方の御感触を特に伺ってはおりませんが、私どもの承知しますところでも、専門部会当時としてはこれで最善を尽くしたものと考えておられましても、現段階では、ここまでこういうふうに具体的に詰めたものであるとすれば、かつまた、その内容をいろいろ御検討なさったわけでありますが、やはりこの程度の大幅な値上がりになるのはやむを得ないのではないかというように私ども聞いております。
  109. 石野久男

    ○石野委員 私は、原子力船はできる限り早く、できるものなら国産のものをつくれば、それにこしたことはないという考えを持っておるし、また、そうしたいと思っておるわけです。しかし、国がこれをやるということになれば、やはり当然国民の金を使ってやるわけですから、その金の使い方なども真剣に考えなければならぬだろうと思う。計画を立てるにあたって、相当著名な方々、その道の専門の方々が集まって立てた値が、こんなに大きく開いてくるということには、しろうととしてちょっと疑問に感ずるわけです。なぜ疑問に感ずるかというと、一番経験のない炉の場合には、十八億が二十四、五億になったというわけで、ここも少し幅が上がってはおりますけれども、これにはこれで上がるような理由もまたあったように見受けられるものがあるわけですね。ところが、船体の場合になりますと、それがあまりにも差が大きい。こういうところは、やはり原子力委員会としてももう少し検討を加えなければならぬだろうと思いますし、やはりこういう事業団をつくって、こんなあまりにも開きのあるものが基底になっていろいろな計画を進めていったりすると、いつも損をするものが出てくる、計画が途中で壁にぶつかってしまって動かなくなってしまうというようなことではしかたがない。だから、原子力局がそういうエキスパートを集めた専門部会をつくっても、それが全く無意味なものになってしまうなら、これはつくらないほうがよっぽどいいので、むしろ、業者から見積もりを先に出さして、それに従っていくほうがよっぽどいいのじゃないかというような、機構をつくる上での問題点が一つあるとわれわれも思うのです。この点はいまここで論議しようとは思いませんが、この点ひとつ十分考えていただかなければいかぬし、われわれもその問題については協議しなくちゃならぬじゃないか、この点あとでまた十分検討を加えてもらいたいと思います。  それから、これは特に委員長にも、そういう問題についてやはり考えなければならぬ問題だということを、この委員会として考えるようにしていただきたいと思います。  それから次にお尋ねしたいことは、資金関係問題で、先ほど内海委員からいろいろお尋ねがありましたので、私もそれ以上あまりなにする必要はないと思いますけれども、しかし、当面四十二年度の予算の編成をしなくちゃならない、そういう段階で、予算はつくらなくちゃいけないわ、内海委員の言うように、その考え方基礎になる民間業者がどの程度持つかというようなことなどについての腹がきまっていないようなことでは、これはどうにもならぬ。その問題についてはあとでまた原子力局なりあるいは政府が十分考えることでございましょうけれども、しかし、この種のものの資金分担と申しますか、こういうものを新規につくる場合に、国と民間業者との間ではどのような比率で——といいますか、どのような持ち分で仕事を進めていくのが妥当なのか、こういうことは非常に重要だと思うのです。政府としては、こういう問題について、すでにその最初計画を進めるときには、とにかく、大蔵省のほうから科学技術庁のほうに対して、二五%くらいは持てと言われたのだろうと思いまするし、科学技術庁はやはり運輸省関係と連絡をとりながら、その辺のものはひとつ民間で持つようにしようじゃないかということで、当初、予算が進んだものと思いますけれども、今日の場合、当面具体的にやらねばならぬ段階になってきますると、しかも額におきましても、当時から見ればおよそ倍から三倍近いものの出費を必要とするようになってまいりますれば、この考え方について基本的にどうあるべきかというものがしっかり出ていなければいかぬのじゃないか、こう思います。国の仕事だから、先ほど内海委員も言われたように、事業団がなくなれば、この船は当然政府が観測船なり何なりに買い上げるだろう、しかし、その場合、あまり高いものは観測船には必要ないからというようなことになったりして、それの行く先はだれがどういうように買い取ってくれるかということが問題になってくる場合があるだろうと思いますけれども、いずれにしましても、こういう仕事を初めてやるということの意義が非常に大きいこともまた言うまでもありません。だから、国と事業家、民間との間のこの仕事をするにあたっての用益の配分といいますか、そういうものなども、資金分担においては非常に重要な要素として考えなければならぬのではないだろうかと思ったりしておる。そういう点について政府はいまどういう考え方をしているか、ひとつ聞かしていただきたい。
  110. 村田浩

    ○村田政府委員 国がこの種の特殊法人をつくりますときに、民間出資をどの程度の比率にするかということは、それぞれの目的あるいは関係業界との関係、財務当局との折衝等によりまして、必ずしも一定した法則というようなものはないわけでございまして、原子力船事業団の場合には、ただいまお話にもございましたように、この事業団を設立する計画を出しましたときに、たしか昭和三十八年度の予算でございましたか、その際に大蔵当局といろいろ折衝しまして、その結果、大体総額の四分の一程度を民間出資をもって充てるというような了解でスタートしたわけでございます。このような了解が、かなりいろいろと折衝上の最後の段階で定まりましたために、業界のほうで必ずしもその趣旨が徹底しなかったきらいがあるかと思うわけでありますが、当時業界も含め、関係省、運輸省その他の関係者と御相談いたしまして、やはりこの機会に原子力船の建造計画に着手すべきだ、このような判断からスタートして今日に至ったわけであります。これから四十二年度予算でこの船価の改定等を行なうわけでございますが、その折衝を行ないますにあたって、大蔵省としましては、第一船計画でございますから、当初設立のときに話し合った線をやはり守ってもらわねばならぬ、こういう考え方で臨んでまいると思います。これに対しまして業界でもいろいろ御意見もございます。かつまた、全体の資金計画というものも大幅に変わってまいります。そういうような状況で、私どもとしましては、この際あらためてよく関係業界とも御相談し、あるいは大蔵当局とも御相談して、関係者全体の納得のいく線で民間出資の問題を取りきめ、そうして今後の計画の推進を円滑ならしめたい、このように考えておるわけであります。具体的にどのような比率できまるか、どのような金額に相なるかは、今後の相談あるいは折衝によるわけでございますので、ただいま具体的に申し上げかねるわけでありますが、ただいま申し上げたような趣旨から、原子力委員会が今回このような計画を打ち出されるにあたりまして、民間側の代表の方々、特に民間出資を負担する場合のおもだった業界の代表の方々にお集まりいただきまして、そうして政府の原子力委員会考え方を御説明し、業界の積極的協力を原子力委員長である上原長官から特に御要望いただいておるわけであります。現在その御要望の線に沿って事務的な折衝を行ないつつある、こういうところでございます。よろしく御了承いただきたいと思います。
  111. 石野久男

    ○石野委員 この問題は、予算編成上非常に重要な、また早急にまとめなければならぬ問題になると同時に、私たちの立場から見ましても、これはほんとうの新規の仕事をやることになるわけですから、先ほど内海委員からも話があったように、民間産業であれば、おそらく試作の段階でぶっつぶれてしまうというような、非常に重要な経営上の問題を含んでおると思います。しかし、それを、国の事業であるからということで、これは見込みが倍になってもあるいは三倍になってもやるのだということでやれるわけですけれども、普通ではやれない。しかも、これをやったあと、おそらく、事業団がなくなってしまえば、その造船の技術なり何なりというのは、国のものというよりも、むしろ民間のもの、業者のものになっていくのだと思います。そうなりますならば、他の産業において新規に開発する部門での危険負担というものと、それから今回のこの原子力船を開発するにあたって造船業界が持つ危険負担というものとは同じ内容を持っておるのですから、だから、ここで、民間産業が国家の予算におんぶされながら——と言ってはちょっと失礼かもしれませんけれども、みずから進まないものを押しつけられるのだというふうな言い方もあるかもしれません。しかし、必ずしもそれは国が業界に対して押しつけているものでもないと思うのです。業界自身が世界の競争の中でみずからもやはりそれをかちとらなければならぬ使命を持っておるわけです。たまたま国がそれに協力しておるわけですから、この資金分担の問題については、私は、相当程度、造船業界における事情もあとましょうけれども、これはやはりある種のみずから進んでこれに協力するとか、あるいはまた、自分がその仕事をやるのだという心がまえで取り組んでいただくことがいいのじゃないかと思います。したがって、先ほど局長から、民間業者の了解を得てというおことばがありましたが、その了解ということばは、先ほど内海委員が言われておるように、二五%は多過ぎる、一〇%ぐらいだ、こういう話が、了解を得る線になってくるのだろうと思うのです。私ども立場からしますと、そういうように業界だけの意図ではなくして、むしろ、出資者は国というけれども、納税者なんですから、納税者の立場も考えなければならぬ。納税者ももちろん、この原子力船ができることによって国民経済の上で用益を受けることはよくわかっておるけれども、当面企業としての立場における造船業界がより大きい成果を自分のものにするのですから、そこのところはひとつ資金配分の点では十分に頭に置いていただきたい、こう思う。いたずらに業界が——こういうことばを言っては悪いけれども、三十万円と見たものが、四十三万円だ。しかも十五万を三十万に見て、三十万円が四十三万円になってしまった。われわれは、なぜそうなったかという問題については、やはりわからないなりにも理解させるような説明はいただきたいと思っておりますけれども、かりによしんばそれが理解されたとしても、あまりにも大きい食い違いがある。それをわれわれはあえてのんで、なおかつ原子力船というものをつくろうという意気込みを持っているときに、一番大きい用益を受けるであろう造船業界なり、あるいは船主とか何とかの方々がこれに出し渋るようなことがあっては、これはちょっと納得のできないものがあると思います。だから、局長が言われた、業界の関連する方々の理解を得る中でということの意味は、やはり納税者の側における立場も十分頭に置いてもらうということが入っていないと困る。いまの立場からいいますと、どうも造船業界のごね得なんということを言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、何もわからない者から見ていると、どうもそういうふうに見える面もある。だから、そういうことにならないように、この際真剣にひとつ取り組んでいただきたいと思います。この点については、ひとつ局長からのお話をいただくとともに、特に大臣からその問題についての御決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
  112. 上原正吉

    ○上原国務大臣 ごもっともなお話ですから、その趣旨に沿いまして努力をいたします。
  113. 村田浩

    ○村田政府委員 私、先ほど関係業界の了解を得てと申しましたことで、若干ことばが足らなかったかと思うのでございますが、私どもの今後努力したいと思っておりますことは、関係業界の積極的な協力を得てと、こういうつもりでございます。了解を得てと申しましたのは、さきに申し上げましたように、発足当時、民間出資の比率を二五%ということで財政当局と話し合いをいたしました際に、非常に時間的にも余裕のない折衝でございますために、十分その趣旨の御理解を徹底する余裕がないままにそういう次第できまっていったということが、その後民間出資の問題につきましていろいろ事業団でもお困りになったわけでありまして、そういうようないわゆる了解違いというようなことがないように、今回この民間出資につきまして積極的協力をいただくについては、はっきりした相互の理解というものをつけてまいりたい。そういたしませんと、今後、四十二年度予算はともかくとしまして、四十三年、四十四年と、そのつどいろいろとまたその点に話が戻ってごたごたし、ひいては計画その他にそごを来たすというおそれなしともしませんので、その点につきましては、今回この機会に十分に——と申しましても、これまたそう時間がたくさんございませんけれども予算提出の期限まで十分努力をしまして各界の積極的協力が得られる形にいたしまして進めてまいりたい、こういう趣旨でございますので、御了承願いたいと思います。
  114. 石野久男

    ○石野委員 石川さんにひとつお尋ねしておきたいのですが、今度の原子力船の建造にあたっては、当初事業団が原子力局と真剣な協議の上で進めてきた中で、こんなに大きなそごを来たして、計画の年次からいきましてもすでに二年間もおくれるというような状態になっておるし、これからまた予算を取る上においても非常にむずかしい問題があったりするわけでございますが、私は、原子力船というものはつくらなければならぬものだということはよくわかっておるのでございますけれども、何かしら非常にせっかちに急いでおる血が強くて、どうも基礎がためをするという面で、ずいぶん検討を加えたのだけれども、それも的はれずになってきておるというような感じを受けるのでございますが、石川さんは事業家としても非常に練達の方でございまするし、今度のことに関して、これからは積極的に原子力船というものを開発するためにわれわれも協力しなければいけないと思っておるのですけれども、何か感じたことがありはせぬだろうかと私は思うので、その感想をひとつ聞かせていただきたい。
  115. 石川一郎

    石川参考人 どうもわれわれ行き届かないために皆さんに非常に御心配をかけておるのですが、実は私はいまから五十年前、昭和にまだならないころに、日本に硫安がまだなかった時分です。その時分に、試験をいたしまして、これは会社に金を出してもらいまして、私は常務をやっておったのですが、三十万円出してくれ、それで試験をするといって試験を始めたのです。五十年前の三十万円というのは何億というものになるのでございますが、やりましたところが、だめだということが、約一年半ばかりやっておる間にわかりました。それはどうしてかというと、あの仕事は装置工業なんです。われわれはあの時分に、キャタライザー、接触剤を入れまして窒素と水素を結びつければアンモニアができる、こう簡単に考えておったのですが、さにあらずして、むしろ、メカニズムがどうなるか、機械がどうなるか、コンプレッサーがどうなるか、そういうことが大事なことがわかりまして、途中でやめまして、それから、ちょうど二人ばかりヨーロッパにやっておったものですから、何かいい方法はないかというので児つけさせたのが、いま日本でも相当大きくなっておりますハウザー法というやつで、イタリアの方法であります。われわれのほうから技術者をやりまして、それが一体幾らできるかというそろばんをはじいてもらったところが、初めですから小さくて、いまは何十万トンなんですが、二万五千トン・バー・イヤーのもくろみであって、それで、技師から電報で返事がきたのを見ますと、三百五十万円でできるということなんです。ところが、私は知らないけれども、たとえば道路を引っぱるとか、下水道をどうするとか、社宅をどうするとか、引っ込み線をどうするとか、そういうことと、また、将来拡張するかもしれないから、それに対する準備をしておかなければいけないというようなことで計算してみますと、向こうは三百五十万円といってきたやつが、七百万円かかるんですよ。それから、七百万円かけても一割くらいの配当ができるのならやったほうがいいだろうということで、計算してみますと、それまで二十年くらいですが、統計をとってみますと、一番安いやつでやっても一割配当ができるということがわかりましたので、それを始めたのです。やることにきめまして仕事を始めたのですが、途中で、これはだいじょうぶだ、だから、二万五千トンなんというけちなことを言わないで五万トンにいきなりしろというので、建築中にやったようなことがありました。  今度のことも、やはりわれわれのほうも技師をやって向こうでちゃんとものを見てやっているのですけれども、実際船の炉なんぞを見ておらないししたものですから、船の炉のほうも少なからず金額が高くなった。それから船の問題、私らも船のほうの値段が上がることを非常に心配いたしまして、実はわれわれ石川島にお願いしたのですけれども、それのほうの担当の方は、あそこに関係のない方が理事にもなっていらっしゃるし、また部長もやっていただいておるわけであります。ずっといろいろな話を聞きますと、常に安くて、非難が起きないというのです。ただいままではっきり申し上げませんでしたけれども、あの中に二次遮蔽というのがあるのです。それが二億もかかるんですよ。そういうようなことも実はあったのであります。それで、それを積み重ねてまいりますと、いまの二億もあったりするので、あまり高くない。それから、たとえば電気の設備でありますが、これが普通の船の四倍かかるという。それは無停電、それから予備じゃなく後備の発電所——発電所じゃないけれども、電池まで持ってやっているものですから、それが四倍くらいかかるというのです。それからまた、線を引きますと壁に穴をあけますな、そこからまた放射能が漏れるわけです。それをとめること、そういうことになかなか金がかかるのです。そういうことを、初めおやりになった方はみなよくわかっていらっしゃらない。われわれ経験が幾らかできてきてからそういうことがわかったのですが、そういうこともありまして上がったので、実際また、あれに御関係になった技術者の方で、申しわけなかったということをおっしゃっている方もあります。しかし、それは君だけが悪かったんじゃないから、そういうふうに言わなくてもいいからというようなことで慰めておりますが、そういう状況であるということも御了解願っておきたいと思います。  よけいなことを申し上げたのでありますが……。
  116. 石野久男

    ○石野委員 いま石川参考人からのお話を聞きまして、船価が上がってくる内容の一部分がわかるような気もいたします。それほどにいろいろ経験が積まれ、われわれしろうとでもわかるようなことが、技術者のほうでもっと大きな貢献度としていろいろやはりここで経験されたことになるのだろうと思います。だから、この際私は、原子力船というものはできる限り早くつくるように努力する、同時に、やはり業界のほうでもこれに積極的に協力するように、あまりけちくさいことを言っていないで、やはり金を出すものは出すようにして、両方で協力するような体制をひとつ早くつくるようにして、そうしてほんとうにいいものをつくるようにしていくような体制を考えてもらいたい、こう思っているのです。  あとこまかいことはまた聞かせていただきますが、私の質問はこれで終わらせてもらいたいと思います。
  117. 石川一郎

    石川参考人 全く御同感でございます。もう少し業者の方に力を入れていただきたいと思うのです。また、造船のほうの方々は、出す金は半分は出そう、あと、ほかの機械をつくる方もあるし、海運もあるのだから、ほかでみんなで出してもらいたい、これはもうはっきりおっしゃっていますが、その金額については多少渋っていらっしゃるところもあります。できるだけわれわれのほうも政庁のほうにお願いして動きたいと思っております。
  118. 原茂

    原委員長 前田正男君。
  119. 前田正男

    ○前田(正)委員 内海委員とか石野委員からも大体お話がありましたから、私はもう整理して、この際ちょっと一言言うておかなければ、また質問しておかなければならぬことだけに限りまして申し上げておきます。  それは、七月十四日に原子力委員会が原子力船についての方針を再確認してきめておられるわけですけれども、この中で私がこの際非常に考えなければならぬと思うことは、先ほどから御指摘のありました予算の増額の問題、あるいはそれに対する民間出資の問題、これはたいへん問題が多いと思うので、これはぜひひとつ、すでに質問があって御意見があったところですが、強力に御解決を願わなければならぬと思うのです。いままでの中であまり触れておられなかった問題でひとつこの際考えなければならぬと思うのは、その趣旨としては、この「原子力第一船建造について」の中の第四番目のところの、現時点におけるいろいろな必要性というものについて、先ほど来内海委員から非常に見識の高い御質問があって、われわれも非常に参考になり、大いに勉強になったわけですけれども、これを単にこういう抽象的な文句でもってやるということになりますと、いま申したように、船価が増額した問題とか出資の問題だけでも相当問題点があるところへ、さらにこれはどうしてもいまから急いでやらなければならない必要性があるのかどうか、もう少しそういう問題を詰めてやるべきじゃないかというふうな話になってくるわけです。しかし、この情勢から見ますと、当然一日でも早くやらなければならぬという情勢が出てきておるわけです。ところが、こういうふうに情勢が出てきておるのにかかわらず、それが抽象的な文句で書いてあるという点に私は非常に問題があろうと思います。これは先ごろ原子力委員会の中に原子力船の懇談会ができてこの問題検討をされたようでありますけれども、その同じ原子力委員会の中でも動力炉の懇談会のほうは、新型炉はこうする、高速増殖炉はこうするというような一応の考え方をまとめて、まあこれもずいぶんいろいろと意見が違ったようですけれども、いろいろ議論してそこまでのものをまとめてきておられる。それであるから、来年度の予算においては動力炉の推進本部をつくらなければいけない、それに対してこういうふうな特殊法人をつくってやっていかなければならぬ、こういう具体的なものが出てきておるから、予算を獲得していく上において、あるいはまた、みんなに理解を求めていく上において、私は非常に強力だと思う。ところが、この船の場合は、こういう問題解決することに懇談会、原子力委員会が努力されたことは、私もよくわかりますけれども、しかし、これはやはり動力炉の場合と同じケースじゃないか。やはり予算を要求されるまでには、その懇談会でいまから勉強してもなかなかまとまりにくいと思いますけれども、いよいよ予算が年末の最終段階で政治的に決定するまでにはまだ時間があることでありますから、なるべく一日も早く原子力船懇談会が中心になって、動力炉懇談会と同じように、将来の原子力船は——事情は、抽象的な文句であるが、ここに書いてあるとおりだし、また、先ほどから内海委員が非常にりっぱな見解を述べられたとおりの事情があることはわれわれもわかっておるわけですから、そのような事情をもとにして、懇談会としては、具体的にどういうふうにこれから船体の問題をやっていかなければならない、あるいは炉の問題をやっていかなければならない、それにはいまからスタートしていかなければ間に合わないのじゃないかという、そのところをはっきりしていかないと、ことしは実際問題として、原子力関係だけでも、こういう動力炉の問題と船の問題と重なってきて、そのほか、科学技術庁関係予算は、宇宙開発、いろいろと問題があるので、私はそういうことをもう少し勉強を詰めていただかなければならぬのではないかということを非常に考えておる。そういう点において、原子力委員会あるいは原子力船懇談会、こういうものが、この段階においてひとつぜひ御努力願いたいと思っておるわけです。  その問題について、私、具体的な問題にちょっと触れて申し上げてみたいと思うのでありますけれども、この船の船体のほうの問題については、先ほど、高速コンテナの問題、大型化の問題、こういうふうなこと触れてきておられる。これは当然私たちの国においても造船のほうの問題については相当経験も多いし、また海運関係のほうにも相当経験もある。したがって、皆さん方が、そういう懇談会を開かれ、あるいは研究していかれれば、相当具体的に、どういう段階においてどのようにしていかなければならない、したがって、ここで早くこういう計画を立て、船体のほうの問題については、こういうふうな原子力船特有の事情等も勉強していかなければならないし、また、海運界における将来の占めていく地位というようなことも大体わかってくるのじゃないかと思うのでありまして、そういう線をひとつ早く船体関係で出していく必要があると思うのでありますけれども、船の炉のほうの問題については、現在のところ、日本においては動力炉と同じ問題であって、やはりほとんどまだ経験がない、こういうことであります。したがって、この船の炉のほうの問題について原子力船懇談会が結論を出していく、あるいはそういうふうな動力炉懇談会と同じようないろいろの計画を立てていくについては、自分たちの置かれておる立場というものを足元からもう一ぺんよく考え直して立てていかなければならないのではないか。これは私は何べんも皆さん方に注意したこともあるように思うのでありますけれども、第一、今度の原子力委員会の決定にも「国産舶用炉」、こういうふうに書いてある。私はこれは非常な誤りだと思う。国産舶用炉じゃないわけです。これは国産化された舶用炉だ。この化という字が一つ入るか、入らぬかでも、自分たちいまおる日本の舶用炉の現状というものを自分たちでよく認識していないで、こういうようなことばをいつまでも原子力委員会とか原子力船懇談会あるいは造船工業会が使っておったのでは、国民の認識も間違ってくると私は思いますけれども、同時に、自分たち自身も自分たちの立場というものをよく考えていかなければならぬ。今日できょうとしておる、国産炉国産炉と言っておりますけれども、この国産舶用炉というものは、いわゆる技術導入をして、技術情報をもらって、そうしてこの際つくるわけであります。しかも、まだ一つもつくってない。したがって、初めてつくるわけでありますから、当然技術導入して国産化した炉である、国産化炉である、こういうことをまず考えないと、朝日の社説にもちょっと書いてありましたけれども一般のこういうものに関係ない人から見ても実におかしいことばのように見える。私は、まずそういうことは認識を欠いておるのではないかと思うのです。そういうふうな点で、これを国産化炉という点から考えていけば、いまの動力炉と同じなんです。いまの動力炉においても、とりあえず、電力をつくるためにはやむを得ないから、技術を導入して今度軽水炉をつくっておる。しかし、同時に、いま動力炉問題の懇談会のほうで、新型炉をこの際つくらなければならぬ、こういうことを考えておられる。これは舶用炉についてもすでに新型炉ができつつある。われわれが聞いておる範囲でも、ウエスチングハウスとか、あるいはGEとか、あるいはまたバブコックとか、おのおのみな改良型を考えておるようでありますが、そういったようなものに対して、ここで、いまの動力炉の場合と同じように、やはり新型炉についてはできるだけ技術情報をもらわなければならぬ。そういうふうにしてわれわれはある程度現実に次の段階を考えていく。しかし、その新型炉がそれでは将来の原子力船の動力炉の決定的なものであるかというと、私はそうではないと思う。動力炉における高速増殖炉みたいなもので——高速増殖炉であるかどうか、これは別であります。船の場合ですからちょっと違うと思いますけれども、しかし、いま考えられておるような新型炉が将来の船の炉であるかというと、そうではないと私は思う。もっと別な考え方のもの、たとえばGEのいま考えておるようなものは、相当考え方の違う炉のようでありますけれども、そういうような改良型じゃなしにもう少し原理も構造も変わったような型ができてくる可能性もある。しかし、それは何もGEのものがいいわけではない。そういういろいろ新しいアイデアが出てくる。そこを世界はほとんどこれからやろうとしておるのでありますから、その問題に私たちがこの際力を入れて、そして日本の独自の国産の研究開発というものをやって、その力で、日本が世界より進んだ、ほんとうの国産炉というものをつくり上げていく、こういうふうにしなければならない。いま動力炉懇談会では、高速増殖炉について、できればひとつ日本独自のものをつくり上げていこうという気魄でいまいろいろと研究しておりますが、私は、そういうようなものをこの際——しかし、それにはやはり十年とか二十年という歳月がかかるわけです。それですから、そういう十年、二十年の歳月がかかるならば、この機会には、われわれはとりあえず一日でも早く技術算入して国産化炉というものをつくっていかなければだめではないか、そしてそれをまた実際の船に積んで、いろいろな運用その他によっていろいろな問題が起こってくる、そういうことを勉強する。さらに続いて、改良型といいますか、新型といいますか、そういうものをいますでに外国で考えておるわけですから、そういうものを考える。これは何か事業団ではやれないとかいう一つ法律になっておるようですけれども科学技術庁とか原子力局とか、そういうところではやれるわけですから、そういうものを推していくということを原子力委員会としては考えていくことができる。さらにそれらのものをもとにして独自なものの研究開発を進める、そういうふうな、いまの動力炉と同じような構想を考え出していって、そうしてそういう観点から見て、ここでいま一日も早くスタートしなければできないし、そして一日も早くスタートするのには国産化炉をつくらなければならないのだ、こういうようなことを私たちは率直に話している。国産炉ができると、こういうふうに新聞に書いてある。それでは、日本は独自の研究をしたとか、できるとか、そういうふうに誤解を受けても困るし、また、われわれから見ましても、これがほんとうの国産炉だったら、基礎的な研究実験もしていない、一つもつくったものがない炉が第一船に積み込まれる、こんな不安なことはない。原子炉ほど安全性をとうとぶものはないのに、そんな日本基礎的な研究も実験もしていない、それが第一船に積まれるということは、たいへんなことなんです。原子力というものは、そんな安全性を無視したものではない。これは十分に外国研究し、実験し、しかもいろいろな方面に、軍艦だけでなしに商船その他いろいろなものにずっと積まれてやってきた、その技術、経験というもの、研究実験を導入して三菱でつくるから、国産化するから、これは第一船に積んでも安全なんだ。何べんも船に使われたから安全だ、こういうことをわれわれは考えて、第一船に積むことについてあまり安全性の問題に触れないのは、経験があるから触れない。しかし、そういう国産化される、技術化されるということだけでわれわれの国はいいかというと、そうではないので、やはり将来計画というものを立てて、そしてそれにはやはり十年、二十年の歳月が要る。いまの動力炉懇談会と同じです。だから、やはりこれはどうしても船に使う動力炉の問題だけでも早く政府が一つ計画を立てて、そういう観点から、これはいろいろと予算の金額がふえたとか、あるいは出資の問題とか、いろいろな問題があっても、おくれておるからどうしてもここで早くスタートしなければならない、こういうことを出していかなければならない。炉の問題でもそうです。あるいは船体の問題も、あまり私から触れる必要もないけれども、先ほど内海さんから言われたとおり、もう高速コンテナの問題など現実に運輸省においては、ことし、これは一般の船でありますけれども、高速コンテナの輸送の問題を相当研究しようとしておられる。現実にもうかがっておられる。高速コンテナの問題あるいは大型化の問題、あるいは潜水貨物船の問題、こういうような問題があるわけです。やはりこの問題も同じように懇談会でやっていく必要がある、そういうものが原子力委員会の決定に入っていないと、実際問題としてこれを予算的に納得を受けていくということは非常にむずかしいと私は感ずるのであります。できたら、七月十四日の決定のときには、そういう原子力船懇談会を中心にしてなるべく早くひとつそういう計画をつくっていくのだ、そういう必要性があったらつくっていくのだということを、実はここであわせて第五番目の決定にしていただきたかったのであります。そうするとこれは非常によく理解をしてもらえたのではないかと思っておるのでありますけれども、その点、現時点において非常に急ぐ必要があるような感じもいたしましたので、私から追加して質問をしたわけであります。したがいまして、きょうは大臣も来ておられることでありますから、原子力委員長として、原子力委員会として、原子力委員会の中にある原子力船懇談会にお願いして、そういうふうな情勢をもとにした計画を早く立てていく、そういう点の必要性を具体的に理解してもらえるような計画を立てていくということについて尽力すべきではないか、私はこう思っておるのでありますけれども、大臣の御見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  120. 上原正吉

    ○上原国務大臣 原子炉は国産でもやれるように私聞いておりますし、小さなものならやったものもございまして、もとは技術導入でしょうけれども、やれるのではないかと思っております。  それから、予算折衝までにはぜひとも具体的な案にしなければ予算はもらうことができませんので、これはおっしゃるように、極力努力をいたしまして、大蔵省にも、また皆さま方にも得心していただけるようなものをまとめ上げなければものにならないと考えておりまして、それはやるつもりでございます。
  121. 原茂

    原委員長 石川甘利参考人には、本日長時間にわたりましてどうもありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  122. 原茂

    原委員長 この際、放射能に関する問題につきまして質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  123. 石野久男

    ○石野委員 たいへんおそくなりましたけれども、大臣にひとつぜひお伺いしておきたいと存じます。  実は、先般の委員会でも、東京都立アイソトープ総合研究所の放射能安全性の問題についていろいろ問題を取り上げたのでございます。そのときも、実は私は、科学技術庁が、どうもやはり原子力関係について、特に放射能の安全性の問題について何かルーズなものの考え方をしているのじゃないかというように考えていたのです。そういうことがあってはならぬ、こういうふうに思っておりましたが、きょう実は新聞を見ますと、きょうの読売新聞にムルロア・マグロの問題が取り上げられて、フランスのムルロア環礁で実験したあの水爆実験、これはあと九月まで前後六回にわたってやるわけですが、その放射能を浴びてくるであろうマグロの放射能検出問題、そういうことを東京都のほうでは一応検討して、ガイガー計数器に当てて検査をしようという態度をとっておったにもかかわらず、科学技術庁のほうでは、そんなことは必要がないからというので、これをさせないようにしたというような記事をきょう実は読売新聞で見たわけなんです。これはどういう理由であったかわかりませんけれども、私どもの感じでは、もしかりにその地域から来るマグロがそういう危険がないにしても、先般ビキニにおける問題などで、久保山さんの問題から、あの当時はずいぶん多量のマグロを捨てた経験もありましたし、それから一般の都民なりあるいは一般人々の感じでは、ああいうところで核爆発の実験があった場合に、そこの魚類が帯びてくるであろう放射能問題というものには非常に神経質になっておると思うのです。そういうときに、こういうようなことをもし科学技術庁が指導し、それは心配要らないから放射能の検査をせぬでもいいんだというようなことを言ったとすると、これはわれわれとしても納得のできないことでありますし、私は、特に先般の都立アイソトープ総合研究所の問題などと考え合わせてみますと、どうもやはり科学技術庁考え方というのはそういう点ずさんじゃないだろうかというふうに思うのです。はたして科学技術庁としてこういうような何か指揮あるいは命令というようなことをしたのかどうか、その実態をひとつこの際ここで知らしてもらいたいと思う。
  124. 上原正吉

    ○上原国務大臣 新聞の記事必ずしも正確ではないようでございまして、科学技術庁がそれほどずさんなことでもないようでございますので、局長から説明を聞いていただきたいと思います。
  125. 村田浩

    ○村田政府委員 私も拝見いたしましたが、若干誤解の点もあるかと思うわけであります。御案内のとおり、政府には、放射能関係問題としまして、関係各省庁が構成します放射能対策本部というのを内閣に設けてございます。この放射能対策本部の事務局を私どものほうでやらしていただいているわけでございますが、放射能対策それ自体は、私のほうで都道府県に委託しているものもございますし、関係各省庁でみずから実施していただいているものもあるわけでございます。それらを総合調整しまして、資料の検討なり今後の調査方針の決定なりをしていただくのが対策本部になっているわけでございます。  今回フランスがムルロア環礁において一連の核実験を行なうということが報道されまして、外務省当局に聞いてみますと、正式な政府のレベルでの通知はなかったそうでございますが、フランス政府から、ムルロア環礁付近の漁船の待避といいましょうか、そういうようなことの通報が一方的に出されたようでございます。また、そのほか海外から伝えられる情報によりまして、核実験が行なわれるということでございますので、中共の核実験の場合と同様、放射能対策本部の事務局としまして、構成各省庁の担当の方にお集まりいただきまして、これが六月の末であったかと思いますが、今回のムルロア環礁における実験について対策本部としてどのような措置をするか、すべきことがあるかどうか、一応御検討いただいたわけであります。その結果、これには関係省庁として運輸省、厚生省あるいは農林省、水産庁というようなところがきておるわけでございますが、伝えられますところの核実験の規模、回数並びにムルロア環礁からわが国までの距離、そのほか、その方面へ出ておりますわが国からの漁船の状況その他、そういったようなことにつきましての、わかる範囲ではございますが、関係各省庁からの御報告がございまして、その結果、直ちに対策本部として放射能調査を従来行なっております以上に強化する必要があるとまでは断言できない、したがって、どのような間隔でやられますか、規模にしましても、やってみませんとわからない点もございますので、推移を見つつ考えたらよかろう、大体こういう御判断をその集まりでいただいておるわけでございます。その中に、具体的にマグロをどうこうするというところまでの話はなかったかと思いますが、その方面へ行っておる漁船の問題についても、当然、判断をする際の対象にいたしたわけであります。そういうようなことでその後の推移を見守っておりましたところ、七月二日に第一回の実験がございました。それから二十日に第二回があったわけでございますが、中共の核実験あるいはソ連の場合等と違いまして、非常に距離が離れておりますために、直接的に、たとえば微気圧計とか、あるいは地震計とか、そういうものでのわが国での捕捉はできておりませんし、また、現段階におきましては、雨水その他におきましての放射能増加等もあらわれておらないようでございます。ちなみに、ムルロア環礁から約一万キロぐらい離れておるようでございます。中共の場合に比し倍から倍以上ぐらいの距離にあるようでございます。  そういうような放射能対策本部としての考え方でこの推移を見守っておりますときに、東京都のほうで、中央市場のほうで自主的に、近く入ってきます漁船を調べまして、その漁船がムルロア環礁付近を航行し、そこで漁獲したというようなケースの場合には、一応放射能調査を今後ずっと定期的にやってまいりたいというふうにお考えになったようでございまして、これは政府の放射能対策本部とは直接関係なく御計画になったわけでございますから、それはそれでけっこうなわけでございますが、その実施、特に測定方法その他等のこともございまして、東京都のほうから、今回のムルロア環礁の実験に対して放射能対策本部はどのように考えているのか、その影響の大きさ等についてどのような見込みを立てておられるのかというふうなことの問い合わせがあったわけでございますので、特に捕獲魚類等に対する影響等の関連につきましては、私どものほうは専門でもございませんし、関係の厚生省及び水産庁の係官においでいただきまして、東京都の方も立ち会っていただいて、ここでいろいろ問題検討していただいたわけでございます。その結果が、現在でも一般的な放射能調査が年間計画において行なわれておるわけでございますので、それに加えて特に特別の調査を行なうというまでの必要は、現段階においてはないのじゃないかというような関係各省での御意見もございましたので、そのことをお伝えしたわけでございます。というより、実際は立ち会っておられたので、そういった御議論をお聞き取りいただいたわけでございます。  そこで、対策本部としてのそういうような考え方を申し上げただけでございまして、自主的に行なわれますものを差しとめたとか、やる必要なしとかいうことで申し上げたわけではないということが一点と、本件につきまして、そういうような調査の実施とか、あるいはその調査した結果をどう判断するかということは、たとえば食品衛生法の観点から厚生省とか、あるいは漁獲物の問題から水産庁とか、直接担当しておられる省庁もございまして、そういう省庁との御意見の交換の場を私どもがつくらしていただいたわけでございます。  念のために申し上げておきますけれども、この調査を特別にやるということの積極的な必要性がいま感ぜられていないということを申したわけでありまして、御案内のとおり、政府は一般的に放射能調査をずっとやっておりまして、年間約一億円を支出しております。その大部分は二十五都道府県に委託して調査していただいているわけでございますが、その中にはもちろん東京都も入っておりまして、東京都のほうにおきましても、雨水とか、ちりとか、そういうことのほかに、食品、それから標準食とわれわれ呼んでおりますが、そういったものも、ものによりましては直接自分の手で、ものによりましては政府の機関である放医研あるいは特別の専門の機関でございます分析研等に送っていただいて、費用をこちらで負担して分析して、その結果をずっと記録してございます。そういったような調査はもちろんずっとやっておるわけでございまして、それに加えて特別にいますぐそうしなくちゃならぬかどうかという点の判断関係各省庁と御相談して、一応対策本部としてのかまえをお伝えした、こういうのが実情でございます。  しかしながら、もちろん、国民一般の方々の核実験の影響という点に対しての不安ということも、御指摘のようにあろうかと思うわけでありまして、そういった不安ということを考えますならば、場合によりましては、まずそういう放射能増加ということは考えられないと見られます場合も、念のためにそのことを確認する意味で調べてみるということもあるいは必要であろうかと思います。そういった点につきましては、ただいま先生のお話でもございますが、関係の省庁とこれからも十分に協議して善処してまいりたい、こう思っております。
  126. 石野久男

    ○石野委員 新聞では、大体二日の実験の結果が、早くても十八日以降には、そこで操業している船が日本に帰ってくるだろうという見通しを立てて、築地のほうでは、その時分から漁船をチェックし、シンチレーション・カウンターをもってやろうとかまえていたところが、皆さんのほうの合議の結果、これによりますと、「もし放射能が検出されたとき、マグロを廃棄するのか、どの程度ならだいじょうぶか、廃棄するなら都が補償に責任をもつか……など痛い点をつき、側面から都の検査に横ヤリをいれるムードだったという。」ので、それで結局、都としては、国から検査をやってほしいという要請もないので、苦労の多い検査をやり遂げるという気持ちはなくなったといって口をつぐんでしまったと、まあ言うならば、やめろとは言わなかったけれども、いやみを言って、やらさなくしてしまったと、こういうように新聞は報じているわけですよ。私はいまの局長のお話を聞いておりまして、従前もやっておるし、現在もやっておることだから、それを特別にやらなくていいだろうという意味はよくわかりますけれども、しかし、都が考えているところの、現地から船が帰ってくる、それの持ってくるマグロや何かいろいろの魚類を検査しようというものをとめる必要はないんじゃないかということを考えるわけですね。そこまでは指導したのじゃないけれども、相手方があるわけですから、相手方の受けた感じがそういうふうになっているとするなら、ちょうどあなた方がそんなことをやる必要はないと言ったのと同じ結果が出ている。そうであるとするならば、結局、需要者の側に立っているものは不安をそのまま残したままで、場合によれば、ガイガーカウンターを入れれば皆さんは安心していただけるものを、それをやらないということのために、逆に今度は一般の人たちのいわゆる気分的な不安感というものが増大するという結果が出るといけない、こういうふうに思うのです。  だから私は、実はきょうは水産庁や何かもお呼びしておりませんので、科学技術庁だけにお尋ねするのは、こういう事実がなければそれでけっこうなんです。と同時に、かりにないからといって、ほっておくのじゃなくて、やはり都がやろうとしておったものについては、できる限りそれを実施させるというふうにしてやっていただきたい。皆さんのほうの意向を曲解して、都のほうであらかじめ用意したことまでもあとへ引っ込めてしまって、やらないというようなことはあまりよくないことでもあると思いますので、もしそういう誤解があるとするなら、その間の事情を、ひとつ新聞が報じているようなことのないように——しかも、ここでは、東京教育大学の三宅博士もやはり、「問題が政治的、行政的にゆがめられているのは困ったことだ。」こういうふうに書いておるので、私たちも、この記事をそのままに読みますと、そう思う。事実がそうでないならば、そうでないように、ひとつ都の側とよく話し合いをした上で、やるべきものはやっていただくように、そしてみんなが安心していただくものはいただくというようなことができるようにしなければいけないのじゃないか、こういうふうに思いますので、そういう配慮をひとつしていただきたいと思います。私は、科学技術庁があえて新聞が書いているようなことをやっていなかったというなら、それでけっこうなんでございますけれども、しかし、ただそれだけではこの事態は収拾できませんから、あと都との間の話し合いをしてくださるように私のほうからもお願いして、一応私の質問をおきたいと思いますが、それについての所見だけ聞かしていただきたい。
  127. 村田浩

    ○村田政府委員 私その会議に直接出ておりませんので、具体的にどういうことのやりとりがあったかというところまでは断言できないわけでございますが、趣旨は私が先ほど来御説明したとおりでございまして、もしそれがそこにありますようなぐあいに都側等に受け取られたとするならば、私としましてもこの指導が十分でなかったと思っております。その点については以後十分に気をつけてまいりたいと思っております。  お話のとおり、放射能問題というのは非常にデリケートな問題でございます。事実、目に見えない、われわれの五官に感じないものでございますから、責任ある機関が十分にそれを監視して、そしてその汚染の状況、その対処すべき措置等を間違いのないように御指導申し上げるべきであろう、そういうことで私どももせっかく業務を一生懸命やっておるつもりでございますが、東京都のほうで自主的にお考えになりましたものを、われわれは、別にこれで差しとめたとかなんとかいうことになったとは思わなかったのでありますが、結果的にそういうふうな受け取られ方をしたことにつきましては、私どものほうからこれをどうこうということも、本来の筋としては必ずも適切なあれではございませんので、関係の省庁ともよく協議いたしまして、そして東京都のほうへ正しくこの考え方なりというものが伝わるようにいたしたいというふうに考えております。
  128. 石野久男

    ○石野委員 終わります。
  129. 原茂

    原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる七月二十七日水曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。    午後七時十二分散会