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1966-03-30 第51回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三十日(水曜日)    午前十一時四十分開会     —————————————     主 査         北畠 教真君     副主査         北村  暢君     委 員                 赤間 文三君                 西郷吉之助君                 西田 信一君                 日高 広為君                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 亀田 得治君                 木村禧八郎君                 黒柳  明君                 岩間 正男君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        通商産業大臣   三木 武夫君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵大臣官房会        計課長      瀬戸山孝一君        大蔵大臣官房財        務調査官     川村博太郎君        大蔵省主計局次        長        鳩山威一郎君        大蔵省主計局次        長        武藤謙二郎君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省証券局長  松井 直行君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君        通商産業大臣官        房長       大慈彌嘉久君        通商産業大臣官        房参事官     吉光  久君        通商産業大臣官        房会計課長    佐々木 学君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省重工        業局次長     赤澤 璋一君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     森  五郎君        中小企業庁次長  影山 衛司君    説明員        通商産業省企業        局産業立地部長  中川理一郎君        通商産業省企業        局産業立地部立        地指導課長    佐賀新太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 北畠教真

    主査北畠教真君) ただいまから予算委員会第二分科会開会いたします。  本日は、大蔵省、通産省及び外務省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北畠教真

    主査北畠教真君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、昭和四十一年度予算大蔵省所管議題といたします。  まず、政府説明を求めます。竹中政務次官
  4. 竹中恒夫

    政府委員竹中恒夫君) ただいまから昭和四十一年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明いたします。  まず、一般会計歳入予算額は四兆三千百四十二億七千万円でありまして、これを前年度予算額三兆七千四百四十七億二千五百万円に比較いたしますと五千六百九十五億四千五百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち、おもな事項について内容を御説明いたします。  第一に、租税及印紙収入総額は三兆一千九百七十七億一千百万円でありまして、前年度予算額に比較いたしますと一千六百九十億八百万円の増加となっております。  この予算額は、現行の税法によって見積もった場合の租税及び印紙収入見込み額三兆四千六十六億六千六百万円から、今次の税制改正に伴う所得減税企業減税及び物品税等減税による減収見込み額二千六十三億九千百万円及び関税率改定等による減収見込み額三十一億一千二百万円を差し引き、これに租税特別措置調整合理化による増収見込み額五億四千八百万円を加算したものであります。  次に、各税目別におもなものを申し上げますと、  まず、所得税につきましては、今次の税制改正に伴う中小所得者負担軽減に重点を置いた基礎控除配偶者控除扶養控除給与所得控除専従者控除及び生命保険料控除引き上げ並びに課税所得三百万円以下の所得階層に適用される税率緩和等による減収額一千三百四十四億三百万円を見込み、一兆四百三十九億八千五百万円を計上いたしました。  法人税につきましては、今次の税制改正に伴う留保分に対する法人税率引き下げ、建物の耐用年数の短縮、同族会社留保所得課税軽減等企業体質改善、特に中小企業経営基盤強化等に資するための措置による減収額三百八十一億一千九百万円、特別措置新設に伴う現行特別措置調整合理化による増収額五億四千八百万円、差し引き減収額三百七十五億七千百万円を見込み、八千九百四十七億二千八百万円を計上いたしました。  相続税につきましては、今次の税制改正に伴う相続税の遺産にかかる基礎控除引き上げ及び配偶者控除新設夫婦間贈与贈与税軽減並びに相続税及び贈与税税率緩和による減収額四十九億八千九百万円を見込み、四百三十億三千九百万円を計上いたしました。  物品税につきましては、今次の税制改正に伴う課税の廃止、免税点引き上げ税率引き下げ及び課税合理化による減収額二百八十七億一千三百万円を見込み、一千三百三十五億四千四百万円を計上いたしました。  関税につきましては、今次の関税率改定等による減収額三十一億一千二百万円を見込み、二千三百七十六億八千万円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、酒税四千六十八億五千万円、砂糖消費税三百十三億五千六百万円、揮発油税二千八百三十二億八千九百万円及びその他の各税目並びに印紙収入を加え、租税及び印紙収入合計額は三兆一千九百七十七億一千百万円となっております。  第二に、専売納付金は一千八百十三億七千七百万円でありまして、前年度予算額に比較いたしますと百十九億八千二百万円の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計納付金において八億三千四百万円減少いたしますが、日本専売公社納付金において百二十八億一千六百万円増加することによるものであります。  第三に、官業益金及官業収入は百七十三億三千八百万円で、前年度予算額に比較いたしますと三億四千万円の増加となっております。  これは、病院収入において三億一千七百万円減少いたしますが、印刷局特別会計受け入れ金において六億五千八百万円増加することによるものであります。  第四に、政府資産整理収入は二百六十四億九百万円で、前年度予算額に比較いたしますと二十五億八千九百万円の増加となっております。  この収入のうち、おもなものは、国有財産売払収入——百六十五億三千九百万円、地方債証券償還収入——九十一億八千九百万円等であります。  第五に、雑収入は一千五百六十一億三千二百万円で、前年度予算額に比較いたしますと二十三億四千五百万円の減少となっております。  この収入のうち、おもなものは、日本銀行納付金四百三十二億三千五百万円、日本中央競馬会納付金八十七億四千百万円、特別会計受け入れ金六十億八千四百万円、懲罰及び没収金二百六十二億三千五百万円、外国為替資金受け入れ百四十二億九千二百万円、農業近代化助成資金受け入れ二百八十一億四千三百万円等であります。  第六に、公債金は七千三百億円で、前年度予算額に比較いたしますと四千七百十億円の増加となっております。  この公債金は、財政法第四条第一項ただし書きの規定により、公共事業費出資金及び貸し付け金財源に充てるため発行する公債収入を見込んだものであります。  最後に、前年度剰余金受け入れにおきましては、昭和三十九年度決算によって同年度に新たに生じた純剰余金二百三十九億六千七百万円のうち、昭和四十年度補正予算に計上した百八十六億六千六百万円を控除した五十三億百万円を計上いたした次第であります。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は三千九十七億九千三百万円でありまして、これを前年度予算額二千四十二億七百万円に比較いたしますと一千五十五億八千六百万円の増加となっております。  これは、国債費において三百五十八億四千七百万円、政府出資金において六十九億一千万円、特殊対外債務処理費において八十七億七千九百万円、産業投資特別会計繰り入れにおいて四百四十億円、予備費において二百億円を増加いたしましたが、他方海運業再建整備日本開発銀行交付金において十八億七千三百万円、国際通貨基金及び国際復興開発銀行出資諸費において二百十五億三千四百万円の減少を見たこと等によるものであります。  この歳出予算額を、まず組織ごとに分けますと、大蔵本省二千三百八十六億五千四百万円、財務局七十億四千百万円、税関六十六億三千百万円、国税庁五百七十四億六千五百万円となっております。  以下、この歳出予算額のうち、おもな事項について内容を御説明いたします。  まず、国債費につきましては四百八十八億五千六百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計負担に属する国債償還国債利子及び大蔵省証券発行割り引き料支払い並びにこれらの事務取り扱いに必要な経費でありまして、国債整理基金特別会計繰り入れるものであります。このうち、国債償還財源に充てる額につきましては、財政法第六条及び附則第七条の規定に基づき、三十九年度決算上の剰余金の五分の一に相当する額として四十六億六千六百万円を計上いたしております。  公務員宿舎施設費につきましては七十二億三千八百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎設置に必要な経費でありまして、公務員宿舎充足がなお不十分である現況にかんがみ、前年度に比し十三億一千五百万円を増加し、その充足をはかろうとするものであります。  政府出資金につきましては、住宅金融公庫等機関に対し、一般会計から出資するために必要な経費として二百億円を計上いたしておりますが、そのおもなものは、中小企業信用保険公庫七十五億円、海外経済協力基金七十五億円、森林開発公団三十八億円、新東京国際空港公団十億円等であります。  海運業再建整備日本開発銀行交付金につきましては六十九億九千三百万円を計上いたしておりますが、この経費は、海運業再建整備に関する臨時措置法に基づき、日本開発銀行整備計画を実施中の会社に対し外航船舶建造融資にかかる利子支払いを猶予することに伴い、その猶予利子相当額日本開発銀行に交付するものであります。  特殊対外債務処理費につきましては三百十四億九千百万円を計上いたしておりますが、その内訳は、賠償等特殊債務処理特別会計法第一条に規定する賠償等特殊債務処理に充てるための財源を同会計繰り入れるために必要な経費百八十四億円、日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費四十二億一千二百万円及び財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費八十八億七千九百万円となっております。  産業投資特別会計繰り入れにつきましては四百四十億円を計上いたしておりますが、この経費は、産業投資特別会計において行なう産業投資支出財源に充てるため、一般会計から同特別会計繰り入れるものであります。  アジア開発銀行出資につきましては三十六億円を計上いたしておりますが、この経費は、アジア開発銀行を設立する協定第五条及び第六条の規定に基づき同銀行に対し出資するため必要な経費であります。  予備費につきましては、予見しがたい予算の不足に充てるため六百五十億円を計上いたしております。  以上が大蔵本省に計上された歳出予算額のおもなものでありますが、財務局税関及び国税庁につきましては、その歳出予算額の大部分は、これらの機関人件費その他事務処理に必要な経費であります。  次に、当省所管特別会計としましては、造幣局特別会計をはじめ十一の特別会計のほか、新たに地震保険特別会計設置を予定しております。これら特別会計のおもなものにつき、その概略を御説明いたします。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも七十四億八千九百万円でありまして、前年度予算額に比しいずれも十七億七千五百万円の減少となっております。歳出減少のおもな理由は、補助貨幣製造枚数減少による製造経費及び施設関係経費減少等によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入百五十四億三千六百万円、歳出百四十億五千万円、差し引き十三億八千六百万円の歳入超過であります。歳出におきましては、前年度予算額に比し一億五百万円の減少となっておりますが、これは、日本銀行券等製造経費増加しましたが、工場施設等整備経費減少したことによるものであります。  資金運用部特別会計におきましては、歳入歳出とも三千五百四十六億一千九百万円でありまして、前年度予算額に比しいずれも六百二十七億九千万円の増加となっておりますが、これは、主として歳入においては資金運用に伴う利子収入歳出においては預託金に対する支払い利子に必要な経費が、それぞれ増加することによるものであります。  国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出とも六千四百五十二億三千四百万円でありまして、前年度予算額に比しいずれも一千五百六十九億七千百万円の増加となっております。これは、国債償還に必要な経費においては減少いたしましたが、短期証券償還借り入れ金返償、国債利子及び大蔵省証券等短期証券割り引き料等に必要な経費において、増加を見たことによるものであります。  外国為替資金特別会計におきましては、歳入歳出とも二百十億九百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも二十一億六千五百万円の増加となっておりますが、これは、主として歳入においては、外国為替資金運用による収入歳出においては、外国為替資金証券発行増加による利子支払いに必要な経費がそれぞれ増加することによるものであります。  また、本年度外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案規定に基づき、この会計資金から一般会計歳出財源に充てるため百六億九千二百万円、アジア開発銀行に対する出資財源に充てるため三十六億円を、それぞれ一般会計繰り入れることとし、一方、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定に基づき、本会計保有清算勘定残高の一部十六億四千六百万円について、大韓民国からの賦払い金支払いがあったものとみなされることにより外国為替資金に生ずる損失を同資金の金額から減額して整理することとしております。  産業投資特別会計におきましては、歳入歳出とも八百六十五億三千二百万円でありまして、前年度予算額に比しいずれも一億八百万円の減少となっております。  この会計投資計画のうち、出資金につきましては、日本輸出入銀行ほか九機関に対し総額四百七十九億五千万円の出資を行なうこととし、その出資財源に充てるため、一般会計から四百四十億円を受け入れることといたしております。また、貸し付け金につきましては、本年度五千万ドルの外貨債を発行することとし、その手取り金百七十億円をもって日本道路公団への貸し付けを行なうことといたしております。  地震保険特別会計は、地震保険に関する法律案に基づく地震保険事業に関する政府の経理を明確にするため本年度新たに設置する予定でありますが、歳入歳出とも十二億一千七百万円でありまして、主として歳入においては再保険料収入歳出においては再保険費であります。事務費一般会計から繰り入れを受けることとしております。  以上申し述べました各特別会計のほか、貴金属、経済援助資金余剰農産物資金融通賠償等特殊債務処理及び国有財産特殊整理資金の各特別会計につきましては、お手元予算関係書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、日本専売公社におきましては、収入五千六百二十一億一千百万円、支出四千三百二十二億八百万円、差し引き一千二百九十九億三百万円の収入超過であり、専売納付金は一千八百一億円を見込んでおります。  これを前年度予算額に比較いたしますと、収入は五百七十三億九千九百万円、支出は四百八十三億三千二百万円の増加であり、専売納付金は百二十八億一千六百万円の増加を見込んでおります。  なお、専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、本年度製造たばこ国内販売数量は、前年度に比し百十二億本を増加し、一千八百八十四億本を見込んでおります。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各機関につきましては、収入支出予算は、主としてこれら機関事業の運営に伴う貸し付け金利息収入並びに借り入れ金支払い利息及びこれらに必要な事務費等を計上したものでありますが、前年度に比し、各機関とも事業量増加を見込みましたことに伴い、収入支出とも増加いたしております。  これら各機関収入支出予算額及び前年度予算額に対する増減等につきましては、お手元予算関係書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  以上をもちまして、大蔵省関係予算概略について説明を終わります。
  5. 北畠教真

    主査北畠教真君) 質疑は再開後行なうこととし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ——————————    午後一時十三分開会
  6. 北畠教真

    主査北畠教真君) ただいまから予算委員会第二分科会開会いたします。  昭和四十一年度予算中、大蔵省所管議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこれから大体大きく分けて三つの問題について質問したいと思うんです。一つは、政府の自慢している戦後最大規模減税の問題です。これは大蔵委員会でも質問いたしましたが、予算委員会ではまだ本格的に質問してないので、多少ダブるかもしれませんが、この減税問題が第一です。それから第二は、海外経済協力の問題です。先ほどの大蔵省所管予算説明の中にもありまして、海外経済協力基金一般会計から七十五億あの基金出資するわけです。また資金運用部資金、あれも七十五億出すわけです。それに関連して海外経済協力関係の質問をします。これは外務省関係ありますけれども、主として大蔵大臣立場で御意見を承りたいわけです。それから三番目は、これは通告しておけばよかったんですけれども、証券対策なんですよ。ずっと株が上がっていますわね。株式が上がっておりまして、これに対しての政府対策。特に株が上がってきますとね、株式保有組合の問題、それから共同証券との関係が出てくるわけですね。それと山一整理がだいぶ進んでいるようでありますから、日銀で二百八十二億も融資したのでありますから、この機会に、山一整理が目鼻がつくというような機会に、一応大蔵委員会でも、この問題について、やはりその整理経過等について、これはただしておく義務があると思うのですが、この三つの問題ですね、減税問題と、海外経済協力の問題、それから証券対策について大臣に……。  まず減税問題ですが、これは前の大蔵委員会でも伺ったのですけれども、戦後最大規模減税と申しましても、しかし他方において戦後最大の米価あるいは公共料金引き上げを行ないますから、実質的には戦後最大減税意味をなさないと、こういうのがわれわれの立場なんです。この点について、大蔵大臣は、いや経済の成長を考えてないじゃないか、たとえば実質七・五%経済成長するのだから、それだけ所得がふえるじゃないか、その点を考慮しないで、ただ減税公共料金の値上げだけをあれこれ比べて、それで実質的に減税にならぬじゃないかという見方は正しくないと、こう言われたのです。そこで伺いたいのは、大蔵大臣は、昭和三十六年以後消費者物価は急激に上がってきているのですが、それと貯蓄との関係をどういうふうに把握されているかですね。この公債発行下における税制あり方一つとして、大蔵大臣は、個人及び企業蓄積を多くするのだ、こういうことが一つのねらいだと言われたのです。ところが、その蓄積というものは、個人の家計から見ますと、物価値上がりによって非常に蓄積が阻害されているのです。そういう実態をお調べになったことはあるのですか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、三十六年から消費者物価が上がり続けている、これを実は非常に憂慮しているのです。これは数字としてはなかなかつかみにくいのでございます。しかし、これが健全な貯蓄意欲、そういうものに対してマイナスの相当大きな影響を持っていると、こういうふうに思うわけですね。私は、消費者物価が安定し、そうして国民も企業もたくわえというものに関心を持つ、そうして企業はその計画を、また家庭はいろいろな夢を実現をするというために備えて蓄積をしていく、こういうことは、企業あり方あるいは生活それに非常な安定感を与えると、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、現実には遺憾ながら物価が上がり続けてきておる。それから、そういう状態において貯蓄がどうかというと、貯蓄は総体としては伸びておる。伸びておるが、もし通貨価値が安定しておると、消費者物価が落ちついておるという状態だと、もっとその程度も大きくなっておるであろうし、またその内容が変わってきておる。いま保護預かりというような性格の分子ですね、それから保険的な要因ですね、そういうものが相当含まれておるんじゃないかと、こういうふうに思うのですが、私としては、一刻も消費者物価を早く安定さして、そうして貯蓄というものが貯蓄本来の持つ意味を発揮さしたいと、こういうふうに念願をいたしておるわけでございます。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本では比較的所得の少ない勤労者貯蓄がかなり多いのですね、大体平均一割ないし一割五分、一〇%−一五%、非常によく貯蓄をすると言われるのですが、なぜ貯蓄をするかお調べになったことございますか、貯蓄目的
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、貯蓄推進委員会なんかで抜き出し的に、アンケート式にやったこともあるようですが、六兆億、七兆億にもなろうという貯蓄の全体の傾向をカバーするようなわけにはなかなかいかぬと思いますが、しかし傾向としては私ただいま申し上げたようなところがあるのじゃないか、そういうふうに考えております。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまと言いますと。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つまり、保護預かりだとか、あるいは保険的な意味における貯蓄、そういうものがあるのであろうということは想像にかたくないと思います。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、あの貯蓄増強中央委員会貯蓄に関する世論調査というものをやりましたのですが、昭和四十年度調査があるわけですが、送ってきたわけです。これは毎年度やっているようでありますが、これを見ますと、大体老後の安定、それはいま大蔵大臣言われた保険的という意味が含まれていると思うのですけれども、保険というのは、老後の安定、それから病気になったとき、最近特に教育費の貯蓄が非常に多いという現象が出てきておりますね。これは何回も私これまで申し上げたのですが、大蔵大臣には。福田大蔵大臣には初めてなんですが、前にお茶の水大学の助教授の伊藤秋子さんという人が勤労者の家計を調査されたのがありますが、教育貯蓄が非常に最近多くなってきている。そして、それが食費に影響があらわれてきているのですね。食べ盛りの子供に十分食べさせないで、そして無理して貯蓄している傾向がある。これは、今後国民体位にも重大な影響を及ぼし、これは注意しなきゃならぬということを日本人口学会というところで発表したのです。これは私は、日本経済新聞にそれが出ておりまして、それを読んで、非常に関心を持ったわけですが、そういう教育貯蓄、それからうちを持つための貯蓄とか、大きく分けて大体この四つぐらいと言われているのですね。ところが、これが、大蔵大臣政府の社会保障の対象となるべきものだと思うのです、社会保障制度の。そうだとすると、政府の社会保障が不十分であるために、政府だけにたよっておれない。そこで少ない所得の中で無理して貯蓄せざるを得ない。まあ全部そうじゃありませんけれども、そういう人が非常に多い。そうなると、余裕があって貯蓄しているのじゃないということですね。そこが非常に重要じゃないかと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は貯蓄はいろんな要因があるだろうと思うのですがね。一番私が好ましい貯蓄だというのは、貯蓄する人が、たとえば教育もそうでしょうと思います。子供を大学まで出したいとか、あるいは場合によれば家も持ちたいとか、あるいは非常に短期間のことを例にとれば、ピアノを買いたいのだとか、そういう事業なりあるいは家庭設計の夢を実現するという手段としての蓄積ですね。これが私は一番好ましい性格だと、こういうふうに考えます。しかし、そういうことを実現していくためには、やはり消費者物価の安定、こういうことが非常に重要な前提条件になるわけです。しかし、いま消費者物価がこう上がり続けておる。それはそういう性格の貯蓄というものに大きなマイナス要因になっていると、こういうふうに考えるのです。しかし、現実は、消費者物価が騰貴しておるにもかかわらず、貯蓄が増強されておる。これは何だというと、消費者物価の上昇にもかかわらず、そういう貯蓄によって自分の夢を実現したいというような因子が相当あるということは、これは私は否定するものじゃないけれども、まあ不時の備えといいますか、保険的な意味の性格、こういうものが相当織り込まれておるのじゃあるまいか、あるいは保護預かり的な要因もそこに入ってきておるのじゃあるまいか、そういうふうに思うわけであります。  それで、社会保障のお話がありましたが、私は、自分の事業なり暮らしについてはそれぞれの個人が最終的な責任を持つべきである、こういうふうに思います。それに対して、人生の落後者というか、何かの都合で非常に困窮な立場に立ったという人に対しまして政府が施策をする。まあ社会保障にはいろんな意味がありまするが、そういう意味合いも込めての施策が多いのじゃないか、そういうふうに思います。それで、社会保障が完備されていないから貯蓄をするのだと、こういうような面は、まあ全然ないというふうに私は否定はいたしませんけれども、それは私は貯蓄の中の要因としては少ないのじゃないか、そういうふうに思います。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこが非常に実情認識において大蔵大臣と違うところなんですね。大蔵大臣はそれは感じとして言われているのですが、われわれまあ自分で調査したわけじゃないのですけれども、こういう一応貯蓄に関する調査機関があるわけですが、そういうところの調査、あるいは伊藤秋子さんみたいに個人調査したもの、あるいは生活協同組合等で家計簿を調査したものがあります。あるいはまた労働組合でも、最近では春闘で賃上げする場合に、組合員の家計簿をもとにして具体的に調査をやっているのですよ。そういうデータを見ますと、やはり老後の安定とか、病気になったとき、あるいは教育のため、住宅を持つため、これが何といっても四大大関です。保護預かり的というのは、別に金利を目的にするわけじゃないけれども、現金を持っていると火事で焼けてしまったりあるいはどろぼうに奪われたり非常に不安だから、金利目的じゃないけれども一応銀行に預けておく、こういうことを言われるのでしょう、大蔵大臣。それはもちろんあります。ありますけれども、しかしそれこそ私は全体の貯蓄の中でそんなに多くないと思うのですよ。ですから、一応こういう機関でやったのを、大蔵大臣、やはり尊重して、こういうデータがあるわけですから、やはり考える必要があるのじゃないかと思うのですけれども、その点が認識が違うと、減税のしかたにつきましても、それから物価抑制政策につきましても、非常に違ってくるのですよ。実態認識がもう違うものですから、基本が違ってくるのです。そういうところなんか、ずいぶんわれわれと対策についてかけ離れてきてしまうのですね。これは非常に重要な点ですがね、大蔵大臣
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、社会保障につきましては、だんだんとこれを整えていかなければならぬ、こういうふうに思います。そういう努力をしているのです。しかし、社会保障にたよらなくともみんなそれぞれ憲法に定められた生活がやっていける、こういう世の中のほうを待望しておるわけなんです。しかし、それにもかかわらず、そういうわけにはなかなかいきません。そういう理想が達成できません。そこで、社会保障というような制度をやっていかなければなりません。また、国民の大半がそういうふうになりましても、やはりどういう事情かで落後者が出る、こういうことも考えなきゃならぬ。そういう意味からも社会保障というのは整えなければならぬと思いますけれども、理想としては、そんな他人の、国民全体のお世話にならぬでちゃんとやっていくという社会、このほうが好ましいのです。そこで、皆さんにたくわえを持っていただきたい、こういうふうに言っているのです。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこがまた考え方が根本で違ってくるのです。それは大蔵大臣の言われるように実際になればけっこうだと思うのです。何ら異論を差しはさむ余地はないと思う。しかし、現実のいまの資本主義の経済、つまりこれは自由競争経済ですよ。そこでどんなに能力があり、どんなに人格がりっぱであり、どんなに道徳的にその人が水準が高くても、その人がお金がなかったらこの世の中では安定した生活はできないのです。しかもその人は、能力があり、人格がりっぱであって、人間的にも非常にヒューマニストでよくても、この自由競争の世の中ではそこで生き抜けないわけなんです。そういう能力がなくても、また非人間的な人間でも、ガリガリ亡者みたいな者でも、金があればぜいたくもできるしいい生活もできる、こういう仕組みの世の中なんですよ。ですから、大蔵大臣はあのようにさっき言われましたが、そうなるのが望ましいけれども、現実にできないのです。そこでやはり、個人の責任だけではなくて、社会的な原因によってできない面は社会がその点はめんどうを見なければいけないですよ。これが社会保障だと思うのです。だから、個人全部がみんなできればそれはいいのですけれども、これは自由競争でやるわけでしょう。弱肉強食なんですよ。ですから、そこは制度的にやはりその欠陥を補う。大蔵大臣、資本主義経済全部いい、理想的とはお認めになっていないんでしょう。ネセサリーイーブル——不可避な悪というものがあるでしょう。それをお認めになった上で、そうしなければ社会保障なんかやる必要ないということになってくるわけですね、社会保障の意味はそこにあるんですから。ですから、そういうやはり基本的認識からやらざるを得ないんです。新保守——ネオコンサバティブですか、新保守というのはそのくらいのやはり認識を持たなければいけないんじゃないですか。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私ちっともそれを否定しているわけじゃないんですよ。社会保障制度というものは、資本主義社会のささえとしてこれは完備していかなければいかぬ。しかし、同時に、社会保障でみんな生きろ、こういうような社会にしちゃいかぬ、みんなが自分の責任で生きられるような社会をつくらなければいかぬ。あなたはそういう方面を非常に軽視されておるように、きのうも大蔵委員会所得の造成にきわめて消極的であるというふうに私は申し上げたんですが、私はどこまでも所得をみんなふやしてやる、これにも重点を置かなければならぬ、両々進めていかなければいかぬ、こういうことなんです。そこが違うと言えば違うんじゃないでしょうかね。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣違いますよ。現実にいまの問題にしましても、大蔵大臣は今度減税をやる、その減税財源公債を発行して減税する、その減税個人蓄積をふやすようにする、あるいはもう一つは有効需要の造出によって不況対策に役立たせるということでしょう。ですから、それが不況対策に役立たせるということになれば、われわれ賛成ですよ。そういうことは経済成長に役立っていくということで、何もわれわれ反対するわけでもありませんし、われわれの立場で、経済成長を否定するなんということは、これはナンセンスだと思う。私は、経済がバランスとれて成長する、こんな望ましいことはないです。成長度が高いほどいいですよ、バランスがとれていれば。それは決して否定しているわけじゃない。それは大蔵大臣よく御存じなわけですよ。それを何かことばじりをとらえてそこのところをやっておられるようですけれども、そういう抽象論でなく、具体論として、いまの四十一年度予算審議に即した質問としては、大蔵大臣減税一つ個人蓄積をふやすに役立たせたいと言っておるんです。もう一つは不況対策に役立てたい。不況対策のほうはこれから質問するわけですけれども、個人蓄積に役立たないというんですよ、こんなに物価が上がってしまって。ところが大蔵大臣は、いや物価が上がっても経済が成長するんだから、その成長分はプラスになるじゃないか、こういうお話です。ところが、実際の物価貯蓄調査によりますと、そうならないというんです。ちょっとこの結論だけを申し上げます。そんなに長くありませんから聞いていただきたいと思う。この貯蓄増強中央委員会昭和四十年度貯蓄に関する世論調査によりますと、つまり物価上昇の貯蓄への影響という項目です、こういうふうに結論しておるんです。物価上昇のため貯蓄ができなくなった世帯が一二・七%なんです。貯蓄ができないんです。それが四十年度で一二・七%、ところが三十九年は一一・一%、四十年度はむしろ増加しておるんです。ところが、貯蓄額を減らさざるを得なくなった世帯が三三・五%もいるんです。前年度は二八・七%、それが四十年は三三・五%とふえているわけです。貯蓄する額を減らさざるを得なくなった世帯がこれは非常にふえているのです。現実に貯蓄する額の減少を訴える世帯が半数近く、つまり四六・二%もある、前年の三九・二%に比べてかなりふえている、こういう報告なんです、結論なんです。そして貯蓄する額は変わらないという世帯が二八・三%、貯蓄する額がふえた世帯が五・六%あるが、それらの世帯でも家計費の切り詰めを行なったものが過半数にのぼっており、家計費を切り詰めず、しかも収入増加により貯蓄する額が同じかふえたとする世帯は全体の一四%にすぎない、こういう報告なんです。ですから、経済成長によって物価が値上がりしたにもかかわらず貯蓄がふえた世帯はあるのです。あるわけだけれども、それは全体の一四%にすぎないというのです。残りは、貯蓄が同じか、あるいは貯蓄減少していく、あるいは全然貯蓄はできなくなってしまった、こういう結果がはっきり出ているのです。ですから、物価値上がりによる貯蓄に対する影響というものは、かなりこれは私は重大視しなければなりませんので、政府が戦後最大減税と自慢していますけれども、この程度の減税大蔵大臣個人貯蓄増加に役立てようというけれども、これはとうてい私は役立たないと、こういうデータをもとにして考えれば。だから、ほんとうに貯蓄増加させようとすれば、物価の値上がりというものを押えることにもっと真剣にならなければ、五・五%に押えると言ったって、五・五%自体が相当高いですよ、もっと真剣に努力しなければいけないと私はそう思うのですが、いかがですか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はさっきから申し上げているのですがね。貯蓄消費者物価の上昇によって阻害されないというふうには考えません。あなたのおっしゃるとおりだと思う。ところが、あなたと違うのは、それだからといって減税が無意味だというふうには考えられないのです。これは減税というものは非常に貢献がある、そういう消費者物価の上昇、こういうものを消してなお余りある効果を発揮するであろう、こういうことを申し上げております。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は大蔵大臣物価値上がり貯蓄に影響しないと言っているんではないと、それからまた減税が決して無意味なものでもないと、私もそれは認めるんです。しかし、減税をしなかったらこれはむしろ増税になってしまう、そうでしょう。税金は据え置きどころか、物価が上がった場合名目所得がふえる、それに累進課税がかかってくるんですから、むしろ増税になってしまうんですよ。そこで、物価値上がりに対しては、物価調整というものが行なわれるわけでしょう。それは実質減税じゃありませんよ。四十一年度所得税の千二百八十九億の減税の中には、その物価調整による減税が——これは主税局で調べてもらったが、二百九十何億、約三百億ある。それを差っ引いて考えなければいけないですよ。ネット減税は。ですから、大蔵大臣減税は無意味でないと言いますけれども、それは無意味でない、減税しなかったら増税になってしまうんですからね。ただ問題は、減税の程度、幅ですね、それと物価値上がりとの関係、それと減税の種類ですね、どういうものを減税するか、そこに問題がある。で、私は全然減税は無意味だということは言っておりません。もし減税しなかったならば増税になってしまうんですからね。そこをもっと具体的に、何ですか、大蔵大臣と私との質疑の焦点を詰めてみれば、結局四十一年度戦後最大減税と言っているけれども、物価の値上がりのほうを考えればそんな自慢すべきものじゃないと、こういうことを私は言っているんですね。で、むしろ自慢したいなら、企業減税分を全部個人所得減税分に振り向ければやや実質減税という意味になることでしょう、個人貯蓄を多少増加させると思うのですけれども、この程度で個人貯蓄増加に役立てると、それが四十一年度の大幅減税一つの重要なねらいになっていると——大蔵大臣個人及び企業蓄積をふやす、それが減税の目的だ。ところが、物価上昇の貯蓄に対する影響という調査を見ると、物価値上がり貯蓄への影響というものはかなり深刻なんですよ。そんなこの程度の減税でとても私は貯蓄の増強にはならないと思う。だから、ほんとうに貯蓄をふやすというなら、もっと減税幅を多くするか、個人所得、あるいは物価値上がりのほうをもっと真剣にこれは押える。大蔵大臣は、不況対策としては物価値上がりやむを得ないというような考えです。そこで、これは矛盾すると、大型予算を組んで、そうして公債発行財源公共事業費にどんどん使うと、そうすれば物価が上がらざるを得ない、それで物価値上がりを押えれば不況対策のほうにはマイナスになる、こういうお考えでしょう、大蔵大臣は。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはあなたの取り違いなんですね。私は、不況対策と、それから物価対策、これは矛盾する一面がある。その一番端的な例は、不況カルテルというものがある。これは明らかに矛盾しますね。そういう面があるんですよ。そういうことで矛盾する面がある。それからもう一つは、今度は私の立場から言いますと、物価に総力をあげ得ない。つまり、私は右の手で不況をたたかなければならない、左の手で物価をたたかなければならぬ。不況を克服すれば両手でたたけるわけだ。そういうような、何というか、相矛盾する面もある。しかし、私はこれは何回言ったかわからぬが、結局大型予算が、これが物価対策と矛盾するかというと、これは決して矛盾しません。つまり、物の需給をそれによって混乱させるわけじゃないんです。いま生産力は潜在的には非常なものがあるわけです。あり余っておる。それを消していこう。しかもその消しが、一挙に消せない、二、三年で消すんだ、こういうことになるわけなんです。したがいまして、そういう面の衝突というものはないんですが、物価対策と不況対策は、ただいま申し上げました事例で明らかなように、矛盾する一面もこれはある。それを矛盾しないようにやっていくというところが、これが経済政策の苦心のあるところなんですね。まあその両者の問題を同時に解決する、これが当面のわれわれの課題です。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣のいまの御説明でそれはわかりましたがね。従来の不況対策物価との関係についての大蔵大臣の御発言は、私は理解できなかったのは、まあカルテルの問題は別として、歳出がふえると——歳出が不況対策として積極財政だから、それで有効需要がふえるからセメントとか鋼材の需要がふえる、そうすればそっちのほうの物価が上がってくる。最近では物価値上げとは言っていない、市況が堅調になると言っている。市況が非常に上向くとか堅調になると言っている。これは卸売り物価の値上がりのことを言っているのですね。そういう状態になると、だから不況対策をやる場合、そういう卸売り物価の値上がりは不可避になってくるのでと、こう言う。しかし、それは今度は、卸売り物価が上がれば、小売り物価が上がってくる。全体的に物価が上がれば大衆購買力が相対的に引き下げられますから、そこで有効需要がそっちの面で減ってきますよ。相対的に減るから、これは不況対策と矛盾するわけですね。矛盾してくるわけです。ですから、私は、矛盾しないようにするには、やっぱり物価を押える、物価値上げを押えるということがやはり不況対策の中に入らなければいけないんじゃないか、こういうわれわれの主張だったわけですよね。結論とすれば、いまのお話を承れば、そんなに違わないということになるのですが、両方やらなければいけないということを強調されれば、あまり変わらないのですが……。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあしかし、どうも立論が少し違うようなんで、あなたのほうはどうも、国民総生産、つまり経済の成長についてはあまり関心は示されない。私のほうは、それがなければこの経済問題というものは解決できないと。経済の成長というものを度外視して考える、そうなれば物価問題なんというのは、これは極端な話ですが、そうむずかしくないんですよ。企業はもうどんなに落ち込んでもかまわぬ、農村は疲弊してもかまわぬ、勤労者の取得は減ってもかまわぬ——これは物価はたちどころに安定しちゃうのです。そうあってはならぬ。中小企業も、大企業も、あるいはそこらに働くところの勤労者も、あるいは農村も、みんな所得をふやさせなければいけない、こういうことを考えるものですから、そういう極端なことは私どもはできない。あなたがおっしゃられることを非常に浮き彫りにして言えば、まあ成長はそっちのけにしておけ、物価だと、こういうことになるんじゃないかと思うが、そういう考え方はとらぬと、こういうことを申し上げているのです。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に経済企画庁で物価白書というのを出したのですよ。最近の物価動向という——昭和三十六年四月二十八日ですね。ここで迫水さんが序文を書いているのです。この序文では、社会党の木村禧八郎物価問題で対談したということが書いてある。こういう面では意見が一致したというのです。ただ意見が一致しなかったのは、公共料金のうち、国鉄、郵便料金については、これは意見が一致しなかったけれども、たとえば独占価格については厳重に無視するということね、それから公共料金は原則として値上げを極力抑制しとか、それから需給を調整する措置として必要な場合には外貨を活用して輸入によって調整すべきとか、そういういろいろな点については意見が一致した面もあると。私は、経済成長の場合、これは前にも下村君か何かも言っておりましたが、成長の過程において、大体摩擦的な物価値上がりというもの、これはどうしても不可避である。自由企業の原則のもとでは、それまで私は否定できないのですよ。大体成長率の三分の一程度ということでしょうね。それはサービス業が大体総生産の三分の一と、こう見ての立論と言われておるのですけれども、どこまで正確な理論か知りませんけれども、大体一〇%、名目成長——実質成長かな。とにかく一〇%の成長の場合は、三分の一程度の値上がりは、これはまあ仕方がないと、不可避であると。ちょうど摩擦的な失業というのがありますね。それと同じように、摩擦的な物価値上がり、それまでは私は否定していないのですよ。しかし、昭和三十六年以後のあれは、そういう理論上からいっても、異常なものですよ。成長率の三分の一をはるかにこしているのですよ。これはノーマルとはだれも言っていないのです。アブノーマルですね。五・五%だって、これはアブノーマルだと思うのです。成長論者から言えば、五・五%というのは、一六・五%でしょう。成長したときに、五・五%の摩擦的騰貴はやむを得ない、こういうことになるのですけれどもね。そうなら、七・五%の成長といったら、三分の一というのは、二、三%、三%ぐらいでなければならぬと思うのですがね。これはどうも大蔵大臣は、私は成長なんかを無視しているように言われますけれども、それは何かやはり極論で、私が大蔵大臣物価のほうを非常に軽く見ていると、そのしっぺ返し的に、私は成長を無視していると言っているように思うのですけれども、いままでずっと私のまあ何ですか、書いたものなんか見ていただけば、また前に社会党が自民党以上に高い成長作業をやったことがあるのですよ。池田さんの成長率は低いと、社会党がやればそれ以上の成長率が可能であるという作業をしたことあるのですよ、事実。これは立論の前提が違っちゃいますからそうなるのですけれども、決してわれわれは、成長を軽視したり、無視したり、これは社会主義になろうが、資本主義になろうが、社会主義国になればなるほど、成長というものはこれは高くなければならぬですよ。しかしそのときには、あまり重化学工業に重点を置いちゃうと、農業のほうは停滞してアンバランスが生じますから、その点は私は成長を否定しているわけじゃないですよ。ですから、いまのように物価が上がると、四十一年度非常な減税をやっていますが、それが個人貯蓄をふやすということですが、貯蓄増加に役立たないということ、もう一つは不況対策にもこれは十分効果がないということになるのですね。だから、そこで物価の値上がりを押えるために、もっと重点を置くべきだということなんです。まあ物価問題についてはこの程度にしておきたいと思うのです、この間経済企画庁長官にもこれをもとにしてたっぷりいやみを言いましたから。これをごらんになりますと、はっきりとこういうことを言っていたのですからね。消費者物価が今後も最近のような速いテンポで上昇を続けることはまずないものと考えます。——一・一%しか上がらぬということを言っておったのです。そうしたら六・二%上がっちゃった。はっきりと言っておったのです。だから、政府の言うことは信用できない。物価白書ですね、この点大見得を切っていた。まあそれはちょっと横道にそれましたけれども、その点ですね。もちろん大蔵大臣物価抑制をネグレクトしているというわけではないけれども、そこのところはちょっとニュアンスの違いになるかもしれませんが、どうしても大蔵大臣が、多少物価が上がっても不況対策のほうに重点を置くべきだ、物価値上がりのほうは犠牲にしてもやむを得ないというような感じをこれまで大蔵大臣の発言で与えていたんですよ。それが最近やや両方ということになってきたのですが、そうじゃないですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうじゃないです。私は昨年の一月自民党を代表して佐藤新総理に質問したことがある。そのとき私は、佐藤総理の経済上の最大の課題は何だ、これは物価の安定だ、あなたはこの問題を解決することができなければ総理になった意味がないぞ、こういう趣旨の質問をしております。あなたもお聞きになったと思う。私は物価問題というのは非常に重視しておるのです。ただ、その後、不況問題というものが出てきております。ですから、当面の私たちの課題は、物価の問題と当面の不況克服の問題である、こういうふうに言っているわけです。これはもうあなたもよく承知しておるはずのことだと思いますが、国会でも本会議でそう申し上げております。少しも変わっておりません。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 衆議院での御発言だったものですから、特にまた福田大蔵大臣のそういうお話を新聞で注意しなかったことは私の不勉強だったわけですが、いまのお話を伺ってこれは非常に心強くしたわけですが、それほど物価問題に大きな関心を持たれているということ、これは今後も十分閣議でその点は主張していただき、物価の安定に極力努力していただきたいと思います。  それから次に伺いたいのは、物価値上がりによって、減税によって物価値上がりの家計負担増加をカバーできない人がいるわけですね。それからまた、社会保障によっても物価値上がりで家計負担緩和してやれない、いわゆるボーダーライン階層がおるわけですね。そういう人たちには何らの対策が示されていないんですね。これは非常にむずかしい問題で、われわれもそういう場合に一体どうしたらいいかというときには、一つは地方税の問題がありますね。住民税の戸数割ですか、これを減税すればそういう人たちに均てんするでしょう。あるいは消費税ですね。物品税なんかも多少均てんすると思うのです。しかし、それでも効果がないと思う。それなら最後はやはり、あまり物価を上げてはいけないんじゃないかという結論になってきて、そういう人たちを考えるときに、こういう点についてはほんとに取り残された階層なんです。かなりこういう階層が多いんじゃないかと思うのです。政府のほうではこういう人たちに何か対策をお考えになっておられますか。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは社会保障政策の一番むずかしい問題点だろうと思うのです。生活保護世帯、それの適用基準なんか運用上あまりむずかしくしないようにしたいというので、乱に流れないような範囲内においての努力はしておりますが、やはりボーダーライン階層というものがおること、これはどうも否定することができない。そういう人たちが、消費者物価の上昇によって所得の増強がない人については、これはそれだけ苦痛を与えられるということになると思います。これはなかなかしかし対策としてもむずかしい問題ですが、まあできる限りそういうもののために、一方においてはそういう階層の所得を納税ができるような地位まで引き上げる。そういうための景気の回復、それから同時に、先ほど来ありましたけれども、消費者物価の鎮静とか、こういうものに努力する。どうもそれ以外に道がないように思うのですが。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局、雇用対策一つになるんだと思うが、所得税を納め得る程度の所得が得られるような職業補導ですね、そういうようなこととか。しかし、そういう面もあることを大蔵大臣、これは一つの何か盲点みたいなもので、取り残されちゃっているのです。ですから、施策を行なう場合、そういう取り残されるような人がないようにひとつ御検討願いたいと思うのです。われわれもいま思いつきでどうしたらいいという知恵も出ないし、こそく的に、先ほど申しましたように、たとえば住民税を納めている、戸数割、これを分けたらいいということも考えられますが、あるいは消費税ですか、物品税、それはしかし、こそくな思いつきですから、何かそういう人たちに対しての対策というものを政府で、これは何回質問してもその点についてははっきりした答えがないのです。これは一つの盲点みたいなものだと思います。やはりそういう階層の人が多いと思う。それに一つの焦点をしぼって研究をしてみてもらいたいと思いますが。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは非常にむずかしいが、大事な点であるので、木村大先生の御教示にあずかりたいとお願い申し上げます。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういういろいろな党派的な問題じゃないと思うのですよ、これは。ですから、積極的なそういう対策を考えていただきたい。  それから次は、これは大蔵委員会でも伺ったのですけれども、ちょっと整理する意味大蔵大臣にここでもう一度、長期減税構想あるいは減税計画についての基本的な考え方をこの間伺ったのですが、まだ私として未消化なものでありますから、もう一度考えを伺いたいのです。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの経済、財政のことを考えてみますと、やはり私は国の財政需要というのはふえる、そういうふうな見通しです。それをふやさなければならぬ。つまり国家の受け持つべき仕事がだんだんと任務としてふえていく、こういうふうに考えるわけです。それを一体増税でまかなっていくかというと、これは私はむずかしいと思うのです、増税でまかなうということは。むしろ減税を行なって、そうして国の経済のささえとなっておる企業、家庭の地位を安定させるべきである、こういう考え方であります。ですから、長期の目標として、どうしてもそういう目的に沿って、増税じゃなく減税をやっていくというまず基本姿勢を、それを設定しようと思うのです。  それから第二に、しからばその減税をしていく方向は一体どうだという、その方向づけをしてみたい、こういうふうに思っておるわけです。その方向づけをする場合において大事な問題は、個人、法人、その負担の理想型は一体どういうことであるか。これは先の先まで言うわけにいきませんけれども、近い将来における個人負担率、また法人の負担率、そういうものはどの程度に持っていくべきであるか、こういうことであります。  それからさらに、そういう際において、どういう形で個人負担を減らすか、あるいは法人の負担を減らすか、こういう方法論の問題であります。それらを少し長期の面で検討をして、目標を設定しておいて、そうして年々の財政事情をにらみ合わせながらねばり強くこれを追求していきたい、こういうふうに思っているわけであります。そういう問題について、これから税制調査会にもはかりまして、努力をしていきたい、こういうことであります。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 従来の本格的な公債政策を導入する前の減税は、自然増収を財源として減税したわけですが、その場合、従来いわば国民所得の何%、あるいはまた自然増収の何%、こういう目安をつけて減税をしてきたわけです。また、税制調査会の答申もそういう答申であったわけです。今度は公債政策を本格的に導入して、一部公債財源をもって減税するということになるので、その点は非常に従来と違うのですが、公債政策導入後の税制とか、あるいは減税計画、それからそれ以前の、前の減税計画ですね、減税政策というのですか、それは自然増収を財源として、国民所得の何%に国税、地方税の負担率がなるようにするとか、あるいは自然増収の何%を減税に向けるというやり方だったと思う。一番違う点は、どういう点なんですか。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はそう違わないと思うのです。ただ、私のまた個人の考え方を申し上げますと、国民所得の何%という考え方だけを減税の幅を決定する基準にするというわけにいかぬ。また、前年度剰余金の、あるいは自然増収の何割というようなことを基準にするわけにもいかない。それらは、国民所得に対する。パーセンテージとか、あるいは自然増収の額でありますとか、それは一つの大きな目安にはなる。常ににらんでおかなければならぬ問題であるけれども、やはり私は、今後長期にわたって減税政策を進めていく、そうして企業にも家庭にも蓄積を持つ刺激としていきたい、こういうことを考えますときに、大体近い将来においてあるべき税制の姿というもの、これを設定する。その設定にあたって、ただいまあなたから御指摘のような問題を横目でにらんでいく、こういう考え方がむしろいいのじゃないか、そういうふうに考えておるわけです。ただ、それらの考え方をどういうふうに持っていくか、最終的な結論を出すわけにいかぬ。これは、政府にも税制調査会という機構がある、そういう中できめていきたい、こういう考えであります。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 従来ですね、日本の税負担は戦前に比べても非常に重い、諸外国に比べても非常に重い。そこでやはり減税が必要であるということが言われたわけですよ。で、これもやはり減税する場合の一つの論拠になると思うんですが、まあ日本経済は、戦前といいましても昭和九年、十一年平均ですけれども、その当時よりはるかに大きくなっているわけですね。そういうもとで、戦前は国税、地方税合わせて国民所得に対する税負担率一二・九%、四十一年が二〇・二%、それで、これも国民所得のみをにらんで減税するのではないと大蔵大臣言われましたが、かりに国民所得に対応して国民負担率を考えた場合、戦前の一二・九%に戻るということは今後考えられないものかどうかということ、それから四十一年二〇・二%、この負担率は今後上がるのか下がるのか、国民所得から見た場合です、どの程度。やっぱりこれも一つの目安になると思う。それだけで減税をきめようというわけではない。これも一つにらむ場合に、従来そういうふうにやってきたんですから、どの程度をやはり見るか。前の所得倍増計画では、最終年度では一八%ぐらいに負担率を下げると、こういうようなあれじゃなかったかと思うんですがね。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 戦前の財政では、申し上げるまでもなく、軍事費が三割五分くらい入っておったんですね。それが今日は軍事費が八%だと、こういう状態です。それにもかかわらず租税負担率というのが二〇%、なぜふえているかというと、社会保障、文教、そういう国の行政面が非常に戦前と比べて進んできておるわけですね。そういうことを考えますと、これから財政の需要というものは私は決して減ることはない、こういうふうに思います。したがって、公債政策をとらない限りにおいては、これは租税負担率というものは、私はパーセンテージから言うとふえていく傾向を持つだろうと思います。しかし、私は前々から申し上げているんですが、昭和四十二年度、三年度は、これは公債が増発される傾向を持つであろう、四十四年度、五年度ぐらいが境目になる、そしてまあ公債発行額が逐次その後においては減っていく傾向をとるだろうと、こういうふうに思うんですが、まあ当面は、私は国民所得から言うと、今度の税制は二〇%になっておりますが、こんな程度のところを、程度ですよ、見当のところを維持していくのが適切じゃないか。二、三年後になると経済が非常に発展する、国民所得がふえてくる。国民所得がふえた場合における負担率と、それから国民所得がふえない場合の負担率、これは非常に私は企業、国民に与える影響というものは違うと見ておるんです。ですから、国民総生産、また企業や家庭の所得がふえるという際におきましては、二〇%というこのパーセンテージが多少上がっても、これは響きというものは、これはそう強くはあるまい、こういうふうに見ておるわけですが、この動向が一体どうなるか、そういう問題は、公債政策のかじをどういうふうにとっていくか、また国民総生産がどういう動きをするか、そういう点とにらみ合わせながら考えていきたい、これだけを全体の基準にすることはできない、こういう考え方です。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もちろんこれだけを基準にすることはできないでしょうけれども、公債政策を考える場合にも、やはり税負担率というものを何かめどにしながら、どれだけ公債を発行するか、どれだけ減税するかということも出てくるのであって、大体の目安というものがないと私は困難じゃないかと思うんです。前からこれは大臣は、長期的な財政の計画とか、あるいは資金計画、その必要性を認めているのだし、そういう長期的な財政計画あるいは資金計画を立てる場合にも、その点をある程度目安を置いておかないと立てようがないかと思いますが、いかがですか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういう問題は、税制調査会等ともよく議論をしてみたいと思います。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから財政計画とか、それから総合的な資金計画政府、民間を含めて。そういうものを実際おつくりになる意思があるのですか、ないのですか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体資金計画は総合的なものをつくりまして、そうして予算の編成に当たり、また金融政策の参考にする、こういうふうにしているわけなんです。その概略につきましては予算委員会あるいは大蔵委員会等の質疑の過程を通じて申し上げておるわけでありますが、これはなくてはならぬものさしなんです。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、この長期的ないままでの大きな欠陥は、財政それから民間の資金を含めての総合的な長期計画というものがなかったから、いわゆる昭和三十六年以後高度経済成長段階でめちゃくちゃな施設の拡大競争が起きて、そうして日銀のオーバーローンが行なわれて、そうしていまの設備過剰の問題が起こってきていると思うんですよ。それで、民間の自主調整にまかせておってもできないわけですよね。ですから、大まかな、やはりいままでの大きな欠陥は民間と政府のほうのそれがなかった。政府のほうには一応部分的にはあるわけですね。たとえば道路なり、あるいは治山治水なり、何カ年計画というものがある。それから電通なら何カ年、国鉄なら何カ年というものはあるわけです。あるけれども、部分的なものですね。ですから、そういうものを含めて、全体としての長期の民間の資金需要も含めて計画をつくり、そうしてそのもとでの財政規模なり、また公債発行額——公債発行についてはわれわれも反対でありますけれども、たとえば減税の規模をどういうふうにするとか、そうしませんと、大蔵大臣が何回も今後公債発行して、それがインフレにならないようにするには財政の規模なんだ、適正規模なんだ、こう言うんですけれども、その適正規模をきめる一番基礎がなければならぬ。だから、非常に困難ではあるけれども、いままで大蔵大臣あるというふうに言われるけれども、ないですよ。ないから問題になってきたんですよ。これまで設備投資は行き過ぎであったわけです。ですから、今後非常にむずかしい作業かもしれないけれども、特に民間を含めますと非常にむずかしいと思いますけれども、なくちゃならぬわけですね、いかがですか。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは、ぼつぼつそういう作業にかかろうと思っております。その総合した結果は、新長期計画、これにまあ織り込まれるわけですが、予算でも通過したら、経済審議会の開催をお願いし、そしてそういう諸問題を長期的に考えていきたい、こういう考えでございます。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはほんとうにこの問題を取り上げられますか。いままでは、一応国会答弁としては、前に田中大蔵大臣も言われたのですね。いま福田大蔵大臣も言うてはいるわけです。しかし、本式にこれは取り組むつもりなんですか。本気に取り組もうとしたら、これはたいへんな作業になると思いますが、しかしどうしても必要だと思うのですけれども、これはほんとうに取り組まれるつもりかどうかです。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは本気です。本気ですが、これをこまかい数字で表現するということになりますと、まあいろいろ差しさわりも出てこようと思います。ですから、大まかな、経済をこういうふうに指導していくのだ、こういうふうに誘導していくのだ、そういう筋につきましてはぴしっとしていきたい、こういう考えです。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、ある程度これはまあ物価の要素も考えなければならないと思うのですけれども、一応まあそういう計画ですから、物価は大体まあ摩擦的な物価騰貴程度に考えて、そしてある程度数字的な作業をしなければ意味ないのじゃないですかね、ある程度。所得倍増計画でもつくったでしょう。ああいうようなものを一応つくれないですか。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ所得倍増計画で非常にこまかくやりましたが、あんなこまかくやっても私は意味がないと思いますが、数字がない計画はありませんから、数字は掲げますよ。しかし、大まかな考え方を数字で示すという意味合いのものであるべきであるということを申し上げておきます。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ次に伺いたいのは、課税最低限、これは大蔵大臣、やはり今後の減税考える場合に免税点、これがある程度何ですね、免税点が高ければ税率はかなり重くしても、つまり標準生活が保障されればそんなに税は負担は重く感じられない、普通だ。そこの税金のかからない限度ですね、そこをどの程度にするかということは非常に重要だと思うのですね。国民所得の何%の税負担にするということも一つの目安ですけれども、全体の場合。しかし、個人にとっては、幾らまで税金かからないかという課税最低限が必要だと思います。この間大体八十三万円ぐらい、夫婦子供三人で課税最低限。現在なるほど夫婦子供三人については引き上げられてきましたね。今度六十一万円ぐらいになりました。どうも独身者は何か非常にまだ低いような気がするのですが、非常におくれてしまっているような気がするのです。と申しますのは、私は自分のことを例に引きますと、私は大正十三年に学校を出た。そのとき七十五円の月給だった。あのころ百円まで税金かからなかった。いま、あのころから消費者物価をあれしてみますと、大体三百六十五倍ぐらいですよ。消費者物価に換算してもらった、経済企画庁で。大正十三年を一として最近まで消費者物価に換算すると、大体三百六十五倍くらいになる。そうすると、三十六万五千円までは税金かからないことになる、独身。現在は二十二万ぐらいです。そういうところから見て、どうも独身は非常に低いような気がするのですが、その点はどうなんですか。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もそう思います。思いますが、なぜそういうふうになっておるかというと、国でやる仕事がふえてきたわけですね。先ほど申し上げたとおり、軍事費をほとんど負担しないようになっても、これだけの財政規模ということになってきておるのですから、その財源を一体どこに求めるかというと、やはり課税対象というものが広まってくる、これはやむを得ないと思うんです。現に二千百万人も所得税納税者がいる、こういうことになりますと、やはり最低限も昔のようなわけにはいかぬと、こういうことなんです。しかし、これは私は課税最低限は低きに失する、これを上げていくことが一つの今後の税制上の大きな課題である、こういうふうに考えております。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから次に伺いますが、これも大蔵委員会で一応伺ったのですけれども、もう一度念のために伺いたいのですが、今後の租税特別措置法の取り扱いなんですが、どうもいままで、昭和二十五年シャウプ税制改正のときに設けられた租税特別措置ですね、これはだんだん項目が多くなってきて、貯蓄奨励のため、つまり、資本蓄積のためとか、あるいは経済成長、輸出の増進とか、非常に目的がありますけれども、これはみな臨時立法であったわけですけれども、時限立法なんですね。一たんこの措置が講ぜられますと、もうずうっと延期延期でほとんど恒常的に行なわれてしまって、ちっとも弾力的に運用されていないんですね。ですから、これはもっと景気対策としても弾力的に私は運用すべきじゃないかということが一つですね。  それから資本金以上にうんと特別措置が免税されて貯蓄が多くなっておる、そういうような企業に対して、さらに特別措置を認める必要が一体あるのかどうか、そういう点が第二点です。  それから第三点は、利子と、それから配当の分離課税ですが、これは税制調査会の答申もあって、どうも、大臣のこれに対するお考えはこの間も伺ったのですけれども、やはり資本蓄積のたてまえからこれは続けるようなお考えのようでしたけれども、これはもっともう少しはっきり今後のこの取り扱いについて伺っておきたいんです。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一に特別措置ですね。これはどこまでも特別ですから、これは固定化する考えは私はありません。これはもう流動的、機動的に考えていってよろしいと思います。しかし、経済のそのときどきの要請に従ってとられている政策的意味を多分に持っているわけでございますから、その状況も見ながら運用を考えなければならぬ、どういうふうに申し上げておるわけなんです。  それから第二に、資本金以上に蓄積のあるものに何の措置も要らぬじゃないかというお話でございますが、これは御承知のように、いま日本企業というものは資本金の何倍という借金をしまして、そうして設備をやっている、その形が私はよろしくないと、こういうことでございまして、まあ資本金は、これはいろいろの事情で、そうその基準というものなしにきめられておると私は判断します。つまり、全体のこの会社の資産の裏づけとしての資本、それを私は考えていくべきじゃないかと、こういうことを申し上げておるわけであります。  それから配当、利子に対する特例措置は、これは特例措置であり、しかも、これは時限の措置であります。したがって、その期限が来る来年度の問題といたしますと、これは相当深刻に考えなきゃならぬ問題だと思います。ただ、これも一がいに非常に気軽に廃止せい、もう期限が来たのだから、それでそれっぱなしだという議論があるのですが、そういう気軽な議論には私は賛同できないのです。これはその時点における経済環境を考えまして、これが証券大衆化、あるいは貯蓄の増強、そういうものとどういう関連があり、もしそれを撤廃したらどういう影響があろうかという点も、その時点に立ってよく検討してからでないと、結論が出ない問題だと、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その最後利子、配当の特別措置ですが、これをもし廃止すれば、所得税法三十七条が適用されて、源泉で二〇%、それから、それがまた総合されるわけですね。そうなるわけですね。だから、廃止すれば、すぐ三十七条の源泉二〇%、それからかつ総合ということになるのですけれども、そこまではすぐしないとしても、やはりこれを廃止する方向に向かって、たとえば、いま源泉選択の配当のときには配当控除をもらうとすれば一〇%ですね。配当控除をもらって総合のときは一〇%、分離するときは一五%ですね。これを、もう少しこの条件を強化する、三十七条に近づくように強化し、段階的に廃止していく、税制調査会の考え方はそういう考え方じゃないですかね。ですから、そこを伺っているわけです。一挙にここですぐ二〇%で総合というと、これはかなり急激だと思うのですよ。しかし、方向としては、これは税制調査会でもはっきり言っておりますように、こういうものを残しておくことは私はよくないと思うのですよね。大蔵大臣ね、いかがでしょうか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村先生の強い御意見があったということは十分頭に置いて検討してみます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは一般の納税者はこういう利子、配当の分離課税とかなんとかいうものにわからぬですよね。しかし、具体的に、たとえば、いまこの四十年度の改正で、これは主税局長に計算してもらったのですけれども、大まかですが、配当所得五千万円の場合ですね、三十九年までの税金のかけ方によりますと、大体二千五百万円ぐらいの税金を納めたものです。ところが、四十年度の分離課税によって、二千五百万円の税金が七百五十万円になっちゃうのですよ。それはなんぼなんでも、あまりに大所得者本位の減税措置である、こういうことが一般の人にはわかっていないと思うのですよね。まあ、わかっていないから、そんなに税金のかけ方は不公平だとは思っていないのじゃないかと、こういうことがよくわかったら、これはひどいじゃないかということになるのじゃないかと思うのですよ。ですから、税制調査会ではかえって——これにはメリットもあるかもしれませんけれども、かえって国民の納税意欲を減殺して、大局的からいって、かえってデメリットの問題が大きいのだと、こういうことなんですから、大蔵大臣十分御承知だと思うのですけれども、そういう廃止する方向でお考えになると、こういうふうに理解していいですか。
  54. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  55. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記を起こして。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま五千万円の配当所得者の話ですが、そういうケースがありますかどうか、あり得る大体の場合を考えての税制なんです。ですから、そういう頭の中では考えられるというような場合を想定しての税制じゃないことを申し上げておきますが、つまるところ、利子、配当含めまして特別措置が、これはどこまでも特別なんだと、これはそのときどきの経済情勢に応じて政策的にとられる措置なんだと、ですから、そういう措置全体を通じまして、なるべく特別がないような事態にというふうに努力していきます。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣の言うことも、五千万円の配当所得というのは、今度は元本はたいへんなもんでしょう。しかし、この計算方法には間違いないのですよ、計算のしかたには。しかし、これは端的にわかるように拡大して現象自体をはっきり言ったわけで、計算自体は私は間違いないと思うのです。そうでしょう。主税局長が計算してくれたんです。その点はお認めになるでしょう。何かぼくのこれが間違った計算で質問しているとなると、これはまた誤解を受けますから。主税局長おりませんか。
  58. 川村博太郎

    政府委員川村博太郎君) ただいまの木村委員の、その他配当以外の所得をどういう前提でとっておられますか……。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 配当だけ。
  60. 川村博太郎

    政府委員川村博太郎君) 配当だけでございますか。配当だけで五千万……。ただいまちょっとその資料を手持ちしておりませんので、その計算確かめてみたいと思いますが、後刻またお答えいたしたいと思います。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に主税局長から聞いたのだから、速記がありますから。計算間違いないということにしておけばいいのです。  それから次に、これは何回も質問してこだわるようですけれども、どうしても私納得いかないのは、四十年度の補正の場合、二千五百九十億の赤字出ましたね、それを四条の特例措置によって赤字公債を出してこれを埋めたわけです。この赤字は四十一年、四十二年ずっと後年度にもこれは持ち越されるわけでしょう。その点はどうなんですか、なくなるはずがないでしょう。だって、これは歳出を削減したわけでもないし、そうして公債によってこれをまかなったわけですから。増収によってまかなったわけでもないですから、歳出でまかなった、その歳出を四十一年度で削っちゃうわけでもないですよ。ですから、この二千五百九十億という四十年度に生じた赤字は、四十一年度にも四十二年度にもずっと続いていくわけでしょう、そう理解すべきじゃないのですか。   〔主査退席、副主査着席〕
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年度公債は、四十年度の経過中に歳入欠陥という事態が出てきたわけですね、ですから、私はそういう事実を率直に認めて、そうして特例債を出す、こういうことにしたわけなんですね。これは理論的には特例債なんか使う必要はない、財政法第四条の規定でやっていきなさい、こういう意見も相当強くあったわけです。しかし、それをあえて取り入れないで、特例法を出して国会の御審議を、めんどうくさいわけだったのですが、お願いをしたゆえんのものは、私は率直にやったほうが民主的である、こういう考え方なんです。ですから、四十一年度になりますと、もう初めから予想された事態で、年度途中というような状態じゃないのです。財政法第四条に従って、そうして建設的な費用だけを対策とした公債を発行する、どういうふうにしたわけなんです。少しも矛盾はない、こういうふうに考えております。ただ、木村さんのおっしゃられる点、私わからぬことはないのです。いま申し上げた点は、それで御了解を願っておると思うのですが、木村さんがおっしゃられんとするのは、四十年度に二千五百九十億円歳入欠陥があったんじゃないか、それが今度、実質的に将来にも尾を引くじゃないか、そうすれば、その部分だけは公債はこれは四十年度と同じじゃないか、こういうことのようですね。それは実質的にそういう一面を持つと思います。持つと思いますが、しかし、四十年度公債というものは決して建設的な事業だけを対象としておるわけじゃないんです。一般的な財源を対象としての発行なんですね。そういう点で、私は先ほども申し上げましたが、四十一年度から発行する公債とは、理論的にははっきり区別さるべきである。ただ、あなたがおっしゃられるような、実質的に四十年度歳入不足がそのままというか、根となって尾を引くじゃないか、こういうことは私はそのとおりに思います。事実、歳入不足の状態が一挙に四十一年度になったら解決される、こういうもんじゃない。これは経済の成長とともに、時間をかけてそれが解消されていく、こういうもんだと思います。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その実質的な意味で、四十年度に生じた歳入欠陥がずっと尾を引くということを大蔵大臣、認められればいいんですよ。そうでないと、これは常識に反すると思う。いままでそれも認められないように、大蔵大臣の御答弁では思われたから、何回も質問したのです。そこで、実は非常に意地悪い質問なんです、これはね。意地悪い質問なんですよ、ほんとうはね。   〔副主査退席、主査着席〕  最初は、四条でまかなってもまかなえないことはない、こういう考え方もあったわけですね。それを、それではあまりに強弁的になって、それも二千五百九十億、これは公共事業費のほうに含まれるんじゃないか、公共事業費の不足として二千五百九十億を出せば、これは四条違反にならないんじゃないか、こういう説明をつけようとすればつけられないこともないですよね。しかし、何かばかにへ理屈的にもとれるし、もっとすなおにこれは赤字公債だと、だから四条に違反するから特例法でまかなうと、こういうふうにされたそのことは非常にいいと言うんですよ。そのかわりに、この矛盾ができちゃったわけですね。その二千五百九十億を歳出を削るか、あるいは四十一年度の増収によってまかなうかすれば残らないものを、それはそのまま赤字が続くかということになるから、七千三百億の今度は四条による公債で埋めるということになると、これは財政法違反なんですよ。やはり二千五百九十億については、そういう理屈が成り立つじゃないかということなんです。ですから、非常に性質は矛盾しているわけで、最初あまりへ理屈を並べているよりは、すっきりと特例法でいけと、こう言ったんで、特例法ならしかたがないと、われわれも……。ところが、二千五百九十億が今度ずっと後年度残るということは、大蔵大臣お認めになったんです。それは実質的には公共事業費だけの赤字じゃないんですからね、いまのお話のように。そうしたら、それは財政法四条で認めてないんですから、そこで非常にこれは矛盾したことになっちゃって、だから大蔵大臣は、いや四十一年度はあくまでも堂々と四条に基づく公共事業費財源としての公債発行である、こういうふうに御説明している。だから、ぽつんと切っちゃうんですよ。関連がないようにしちゃう。これは私はいつまでも残る問題だと思うのです。ですから、その苦衷は察しますよ。苦衷は察しますけれどもね、事実は事実としてやはりはっきりさして、財政法に違反しているなら違反していると、これはしようがないと思うのですよ。
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年度歳入不足のその状態が尾を引く、これは私率直にそのとおりだと思うのです。しかし、予算の組み方はこれまた別問題なんです。ことに、その中において公債をどういうふうに使うか、これはもう性格がまるきり違うのです、四十年度は建設事業じゃないのです、対象は。一般の歳入不足のためなんです。それから四十一年度のやつは、これは建設費を対象にしておるわけなんです。どこまでもこれは財政法第四条で許されておることをやるので、ちっとも違法のことでもない。四十年度はその辺が多少年度の途中のことなものですから、疑義があるものですから、私は民主的に、特例法を御審議願うことがよろしいと、そういうことを考えたわけなんです。かりに四十年度、まあこれは理屈になりますが、あなたのおっしゃられるような疑問を形式的にはっきり残しておくと、こういうことを考える場合におきまして、四十年度歳入不足があるから、四十一年度歳出はそれだけ削っちゃってかまわないのです。そして削って新しい四十一年度予算の出発をすると、で、公共事業費はまあ大体削ってしまう、そして今度は新しく七千三百億円の対象事業、これを設定して、そして、それに見合った公債を発行すると、こういう関連公債ですね、これをすれば、何の支障も不可解なことも起こらない。私は、あるいは四十年度、四十一年度公債は、これは正確に言うと、四十年度は特例公債だ、四十一年度財政法第四条公債であると、こういうふうに観念しちゃえば、何の疑問も起こってこないと思うのです。どこに財政法に違反するという疑問が起こってくるか、ちょっと理解ができない。ただ、実質の問題として、四十年度歳入不足が財政政策の運営上将来に尾を引くと、これはもうそのとおりであります。それで弱っているのです。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つだけで終わりますから……。  それは大蔵大臣お認めになった、四十年度の二千五百九十億の赤字は後年度にこれは持ち越されると。四十一年度のその二千五百九十億の赤字は何で埋められるか、何で埋められたか、何をもってこの二千五百九十億の赤字は埋められたのですか。自然増収では埋めるだけの自然増収はない。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年度のことは四十年度で済んでしまったので、特例公債を出して埋めてしまったので……。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実質的に赤字は、後年度にそういうものが残るということはお認めになったのです。それでは、その二千五百九十億の赤字は、四十一年度は何をもって埋められたか。
  68. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十一年度は、これは新しい財政構想から出発しておるわけです。埋める埋めないというあれじゃない。新しい財政方式をとっておるわけです。つまり、四十年度の特例債とは違いまして、建設公債を出すということなんです。しかも、一面においては大幅の減税をすると、こういうことなのです。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その建設公債公共事業費以外の赤字を埋めていいのですか。それはできないわけです。
  70. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 発行する公債は、すべてこれは建設事業を対象としておる。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこは、その二千五百九十億の赤字は、公共事業費以外に生じておる赤字なんです。それを建設公債を発行して埋めていいか。それは埋められないですよ。だから、それは、それをまた特例法を残しておかなければいけなかったのじゃないかと思うのです、そこのところは。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) もし財政状態が四十一年度に急変をいたしまして、四十年度に生じた赤字なんというものは問題にならぬという程度になったと仮定すれば、もっと大幅な減税をしたのです。つまり、私どもは、発行する公債は、経常費の財源ですね、減税財源、形式上減税財源なんかじゃ使っていない、これはどこまでも発行する対象は建設事業である、こういうことなんです。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはよく大蔵大臣、また検討してみてください。どうも私は大蔵大臣の論理はおかしいと思います。何かあれですね、非常に逆になっちゃって、特例法でやったところまではよかったのですけれども、今度は堂々と四条でやったら、今度また特例法でやらなければならぬ面も出てきちゃって、そこは非常に矛盾だと思います。まあ岩間さんが次に質問されますから、私はこのほかに海外経済協力証券対策について御質問するはずだったんですけれども、これは後刻に延ばすことにいたしまして、一応これで質問は終わります。
  74. 北畠教真

    主査北畠教真君) 次に、岩間正男君。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 この前決算委員会で、国家公務員共済連合会の汚職の問題を質問したわけです。これはこの次、四月四日に、資料の要求をいまいろいろやっておるわけですが、それを求め、また、大蔵大臣の出席を求めて、ぜひ再質問したい。ことにまあ理事長、共済連の理事長の出席も要求しておる問題なんですね。そこで、私はまあ基本的な二、三の問題をことでまあただしておきたいと思うのです。時間もあまりありませんから、その点で端的にお答えを願いたいと思います。  第一に、今度の共済連の問題が、土地の買収あるいは造成の問題をめぐって、これは警察当局の現在手にかかっているわけです。共済連の常務理事、それから課長、それから嘱託、三人が逮捕されたのですね。それから虎の門の事務所は二回にわたって、これは警察の手が入っておるわけです。第二回目のときのごときは、よろい戸を閉ざしてしまって、全部外部からの交通を遮断する、そうして帳簿までこれは押収されるという問題です。私はこのような、いま表面に浮かんでいる問題は、これは氷山の一角だと思う。ですから、この際、根本的にこの共済連の性格というものを再検討する必要が出てきているのじゃないか、それほどの重大な問題だというふうに考えておるわけです。したがって、まず大臣は、今度のこの汚職問題が起こったこれは監督官庁の立場にあるわけですが、これに対してどういうふうに、最初、考えておられるか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は実は新聞で初めて知りまして、それで驚いたのです。驚いたのは、あの国家公務員共済連合会は、理事長が今井一男さんなんです。この人は非常な人格高潔な人で、私も常日ごろ尊敬している方なんです。その人のもとにおいてああいう事件が起こった、人格高潔のみならず、部内の把握力、そういうものも非常に行き届いておったというふうに言われておっただけに、私も非常に驚きまして、担当の局長に、どういう事情であるか、よくタッチをしておくように、もとよりこれは検察事件でありまするから、なかなか真相はつかめませんが、できる限りのタッチをやっておき、なお今後再びこういうことがないように注意しなければならぬのですが、そういう点につきましても、よく指示をしておるのですが……。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあこの前、これは大蔵次官と、それから主計局次長に出てもらっていろいろこまかく聞いたわけですよ。あまりタッチしておる様子もないわけですね。法律を読んでおる答弁くらいで、とてもあれでは私は不十分だったように感ずるわけです。したがって、この問題と取り組む大蔵省の態度、これはもっと、やはりほんとうにもっと根本からこの問題を調査して、いま非常に大きな疑惑の中に包まれておる、これは今年度最大の汚職だなんと言われておる、性格的にはそういうものだと思うのです。波及するところが非常に大きい。したがって、大蔵省の態度としては、これはもっと真剣に取り組む必要がある、大臣とも相談してほしいと言ったんですけれども、これはまだ相談いってないでしょう。
  78. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま私は国会へ朝から晩まで閉じ込められておるものですからね、なかなか部下の人とも接触する機会がないのですが、この予算もあしたごろは成立するでしょうから、(笑声)そうしたら、十分調査もし、どういう点に問題があったのか、つまり、人にあったのか、あるいは機構にあったのか、そういう点まで含めまして検討してまいりたいと考えております。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはやはりどのような調査をするか、そのような機構みたいな、そういうものをやっぱりつくる必要があると思う、委員会みたいなものを。そうでないと、簡単にやる、できるだけやるなどというのではちょっと済まない問題だというふうに考えますので、この点も、この次の四日の返答としては要求しているのですから、そのほか、資料をたくさん要求しています。その結果お聞きしたいと思うのですが、大臣出てもらえますか。都合ついたら、ぜひ出てもらいたい、非常に重要な問題なんですから。この点はどうですか、四日の決算
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四日はちょっとぐあいが悪いのですがね。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっとだめですかね、時間をさいて出るくらいの覚悟を……。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 他の日にしていただきたい。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはまたあとで手続をとってやります。  じゃ次に、今度の問題は、これはまあ予算に没頭されて忙しかったかもしれませんが、どういうふうに、どうしてこんな問題が起こったかというふうに、その点ではこれはお考えになっていますか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、これは司直の手にあるわけなんで、真相がわからないのです。ただただ、先ほど申し上げましたように、驚きのみというようなことなんですね。非常に今井さんはよく部内のことを把握されておった。そこでそういう事件が起こったので、どういうことなのか、もう少し真相をつかんでみないと、所感もわかない、こういうかっとうです。ただ、ああいう事件がはからずも起こった、まことに遺憾千万に存じております。
  85. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは先ほど申しましたように、私は氷山の一角で、まあ、この汚職の問題も、それ自身としては非常に重大ですが、これを起こす問題はもっと深くメスを入れなければ、その点からいいますと、共済連のやはり構成の問題、機構の問題それから制度上の問題、それから運営の問題、こういう点をやはり私は十分に洗ってみなければこれははっきりしないのじゃないかというふうに考えるわけです。だから、いまの汚職だけをどうするかという問題、これは非常にそれ自身重要だけれども、それだけじゃやはり私は不十分だというふうに考えるわけです。その中で機構上の問題ですがね、第一に、これは理事、評議員、監事というのが役員になっているわけです。この役員の選び方ですね、それから役員の数、二十の組合があってその組合の連合会ということになっているのですが、この前の主計局次長さんの答弁では、少数精鋭主義だ、これは非常にやはり一つ問題だというような答弁があったわけですけれども、これはどうなんですか、選び方がほとんど天下りになっておるのですね。理事の選び方も、これは監督官庁、その所管の長が任命する、そうして、それを集めて理事会がつくられる、それから理事長は、これは大蔵大臣が任命する、常任理事については、大蔵大臣の許可を得て理事長が任命する、こういうかっこうになってるんですが、六十九万もある組合員の意思というものが反映するようなかっこうにはこれではならないんじゃないか、この点はどうお考えになってますか。
  86. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公務員共済連は非常にうまく運営されておって、そういうようなことから、私としても、あまり組織なり運営について勉強したこともないんです、率直に申し上げまして。白紙の状態で新聞を見たようなことでありますから、今後検討してみます。
  87. 岩間正男

    ○岩間正男君 それから、人事の問題ですがね。顔ぶれを見ますと、相当な年齢者ですね。それから大蔵官僚の古手というか、これは知ってますよ、今井さん、これは私も終戦後の労働組合運動の中でだいぶタッチしたんだから。もう二・一ストのときには、私はちょうど相手役だったですから、それはよくわかってる。わかってるけれども、どうもね、顔ぶれ見ると、元防衛庁関係の陸幕長、それから会計検査院の元検査官、そういう人たちが最高の幹部になっているんですが、そういう人によって相当独断的に運営されている面が出てきているということは、これははっきりしているんじゃないかと思うんです。たとえば、この運用金を運営する場合に、どこに貸すか、貸し付け先なんかの決定の問題、金利の決定の問題、こういう問題になってくるというと、ほとんど少数精鋭主義という名前で、まあいわば二、三の幹部によってこれは運営されていく。これはやはり六十九万の下からの組合員の要望をほんとうに反映させるというかっこうにはなっていないというのが現状だというのは明確だと思いますが、この点はどうでしょう。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どういう動き方をしているか、それをほんとに私も今度初めて関心を持つような状態なんです。まことに円滑に行なわれたので、機構といい、あるいは仕事のやりっぷりといい、うまくいっているとばかり思っておったんです。それですから、特別の感触もいま持ちませんが、よく検討してみたいと思います。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、足元から水鳥が飛び立ったって感じですか、いままで非常に平穏でうまくいってると思った……。しかし、そうでないようなものが内部にこれは伏在しておったというふうに思うんです。というのは、これは問題としてね、やはり一つの問題になると思うのは、いままで、この組合員の大部分を占めている国公共闘会議というのがありますね、労働組合の会議が。これが百回以上にわたって要望しているわけですね。これは大臣の耳には全然聞こえないんですか。つまり、こういう寡頭政治みたいなやり方じゃ困る、組合員の意思を反映させるために、もっと選挙せよ、公選でやれとか、下からの意見を十分に反映するようにやれとか、それから、ほんとうに組合員の要求に基づいてやってもらいたい、どうも現在のやり方については納得がいかぬというので、百回以上もこれは要求されてるんですよ。それに対して、いままでほとんど理事長は会ってないですね。それから最近、会うときの規則を発表したけど、まあめんどうなこれは規則ですね。そういうことですから、この点については、十分にこれは検討する必要があるんじゃないかということと、それからもう一つは——時間もありませんから次に移りますが、次の問題として、運営の内容ですね。これはどうなんですか、掛け金が高いんじゃないですか。これは数年前に改正をやって千分の四十四に上げたわけですけれども、これはどう思いますか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう国家公務員共済は、他のいろいろな共済がありますが、そういうものなんかとの権衡なんかもよほど考えなきゃならぬと思いますが、これは政府部内においては十分検討して、つり合いのとれた、まあ適正な率になっておると、こういうふうに承知しております。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまあ、ほかの共済なんかとの当然均衡、そういう関連の問題を検討しなくちゃならないんですから、全般的な検討になると思うんですが、大体掛け金というのはどういう性格のものですか。大体これは社会保障制度でしょう。性格としてはそういうものでしょう。ほとんど老後の年金、いままで恩給だったやつをあわせてそれでやっていくわけでしょう。そうしたら、この掛け金というのは、組合員の福祉厚生をこれは増進する、そのたてまえで貫かれるというのが基本的な態度じゃないですか。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは掛け金は積み立てられて運用されておって、そうして年金支給額の財源となる、こういうものですね。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところが、これはどうでしょう。まず第一に、私、計算してみたのだが、驚いたのです。月千分の四十四ということになりますと、一年間で千分の五百二十八になる。二年足らずで一カ月かける。つまり、国家公務員の諸君は二年間で二十三カ月しか俸給もらってないということになるわけです。御存じですか。ぼくも驚いた。二年間で一カ月くらい取られちゃう。そうなるでしょう。そうならざるを得ない。算術、小学校の計算です。そういうことでやって、あとの残りは当然雇用主の、事業主ですから政府が出すということになる。これは当然なのです、社会保障制度からいって。それは、しかし全部公務員の諸君のいろいろの利益のために使わるべき性格のものだと、そう解釈していいですか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはそうでしょう。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうでしょう。ところが、運営を見ますと、たとえば年金はじめ一切の支出総額を見たら、三十九年度で六十四億です。ところが、積み立て金が三十九年に千二百十七億、四十年になりますと、三百三十八億もふえちゃって、千五百五十五億、そうすると、その利息が三十九年度では六十四億あるのですよ。そうすると、支出総額が六十四億で利息が六十四億ですから、同じです。そうすると、これは全部利息でまかなえる。何のためにこれは掛け金を取っているのかということを非常に組合員は考えますよ。四十年を見ますと、支出総額が七十九億、ところが、利息のほうがふえちゃって八十四億です。そうでしょう。五分五厘の公定の金利でやっていますけれども、しかし、五分五厘以上ということになっているから、一割のもあるだろうし、一割五分もあるだろう。これは全部理事がさいはいをふるうことになるでしょう。こういうかっこうですと、やはり裏金利みたいなものがあるわけだ。その利差益をずっと詰め込んできているわけです。そういうことになりますと、組合員六十九万に支払いをする一カ年分の年金を含めた一切の費用よりも利息のほうが多くなる形にだんだんなる。そうでしょう。はっきりしているのです。
  96. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) お答えします。  御承知のように、長期給付の関係は、いま職員から掛け金を集めまして、そうして、やめるときに払っていくということですので、現在は現金としては、これがいろんな社会保障の長期的な関係ではそういうことになる。そういう関係で、いまは現金としては余っている資金になるわけですけれども、長い目で見ると、それは保険計算で全部使ってしまう、そういうことになっております。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 そう言うけれども、これはずっとこうしていくわけですから、非常に資産がふえていっている。過剰になってきている。その結果、一方では資金運用部資金に三十九年度は二百二十七億ですか、それから四十年度は三百七十億、こういうことになっているのです。だから、この点はやはり私は、この法の性質からいって、どうも性質のところを逸脱していっている、そうして実際は金融面がふくれ上がっている、そういうかっこうになっている。組合員の福利増進ということとだいぶこれははずれていっている面があると思うので、時間がありませんから、この点については十分に検討していただいて、決算委員会でこれはもっと明確にしたいと思うのですが、この点についての決意を大臣に承っておきます。
  98. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 運用の面、機構の面はもとより、この事件全貌についてよく検討してみます。
  99. 北畠教真

    主査北畠教真君) 大蔵省に対する質疑は、本日はこの程度とし、残余の質疑は明日行なうことにいたします。     —————————————
  100. 北畠教真

    主査北畠教真君) 昭和四十一年度予算中、通産省所管議題といたします。  まず、政府説明を求めます。三木通省産業大臣
  101. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 昭和四十一年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  まず、昭和四十一年度の通商産業省所管一般会計予定経費の要求額は、輸出の振興と経済協力の推進、中小企業施策の拡充、技術開発の促進、石炭対策強化等、現在特に強く要請されている諸施策を強力に推進していくため、前年度の当初予算六百十六億二千万円を百八十六億三千万円上回る八百二億五千万円を計上いたしてございます。  次に、重点別に内容を御説明申し上げます。  第一に、輸出の振興と経済協力の推進をはかるため、八十九億七千万円を計上いたしました。これにより、日本貿易振興会等の輸出振興関係機関の活動の強化、輸出振興態勢の整備、海外投資の促進、技術協力の充実等をはかることとしておりますが、特に、わが国との貿易バランスの不均衡から長期的貿易関係の確立に問題を生じている発展途上国からの輸入を促進するため、これら諸国の割り高な一次産品の輸入を促進することとし、日本貿易振興会にそのために必要な三億円の基金を設けることにしております。また、昭和四十五年に開催予定の日本万国博覧会の準備費として二億六千万円を計上いたしました。そのほか、国際経済協力費八億四千万円等がおもな内容でございます。  第二に、中小企業施策の拡充浸透をはかるため、前年度を五十四億三千万円上回る二百二億八千万円を計上いたしております。これにより、設備近代化資金貸し付け対象の拡充、高度化資金貸し付け条件の改善、小規模事業対策の充実、中小企業に対する指導事業強化等、従来の施策を引き続き拡充強化するとともに、新たに小規模事業者の協業化と設備の近代化をはかるため、中小企業の共同工場建設貸与制度及び中小企業者に対する機械類の貸与制度を創設することとし、それぞれ十六億円及び二億八千万円を計上しております。また、中小企業金融の円滑化をはかるため、政府関係中小企業金融三機関の貸し出し金利の引き下げを行なうこととし、これに必要な二十五億円を商工組合中央金庫に出資するとともに、大蔵省所管経費でございますが、中小企業信用保険公庫に対する七十五億円の出資を計上し、信用補完制度の運用強化をはかることにいたしました。さらに、小売業者のチェーン化の推進、都道府県の総合指導所の設置の助成等、中小企業に対する各般の施策を拡充強化することとしております。  第三に、国際競争力の根幹をなす技術の開発を促進するため、技術開発の促進と特許行政の強化のための経費として、前年度の九十八億円に対し百二十九億五千万円を計上してございます。特に、四十一年度からわが国独自の技術を積極的に開発するため、技術的波及効果の高い大型工業技術につきまして、十億三千万円の研究開発費により学官民が一体となった研究開発体制を整備し、その開発を促進することにいたしております。なお、特許行政につきましては、出願等の処理の迅速化の見地から特許及び実用新案制度の改正を行なうための所要の経費を含め、二十二億二千万円を計上してございます。  第四に、産業の国際競争力の強化をはかるため、十二億七千万円を計上いたしました。金属鉱業の体質改善をはかるための金属鉱床の精密調査等を引き続き拡充するほか、新たに、繊維産業の構造整備を促進するため五億五千万円を計上いたしました。  第五に、総合エネルギー対策を推進するため、前年度を五十七億二千万円上回る二百九億七千万円を計上いたしております。特に、石炭対策につきましては、昨年十二月の石炭鉱業審議会の中間答申の趣旨を尊重し、合理化資金利子補給の拡大、保安坑道の掘進の促進、鉱山の施設等の近代化の推進等のため、石炭鉱業合理化事業団への出資の増額、安定出炭の確保のための炭層探査の助成等の諸施策を講ずることにしておりますほか、鉱害復旧事業量の増大、産炭地域振興対策の拡充等をはかっております。なお、鉱山保安の確保につきましては、監督検査の強化、保安施設の整備の促進等をはかることにしております。これらのほか、天然ガスの探鉱の拡充、電源開発の促進等、エネルギー関係施策を拡充強化することにしております。  第六に、産業の適正立地環境の整備につきましては、八十三億三千万円を計上いたしまして、工業用水道事業の実施、産業公害対策の充実等をはかることにしております。  第七に、流通及び消費者行政の拡充につきましては、消費財の商品テスト等を行なう日本消費者協会に対する助成の拡充等、消費者行政及び流通近代化のための経費として四千万円を計上した次第でございます。  以上、通商産業省所管一般会計のほか、特別会計といたしまして、まずアルコール専売事業特別会計でございますが、歳入として七十一億一千万円、歳出五十八億四千万円、専売納付金十二億七千万円をそれぞれ計上してございます。輸出保険特別会計につきましては、歳入歳出とも二百八億一千万円でございます。機械類賦払信用保険特別会計につきましては、歳入歳出とも十一億五千万円を計上してございますが、歳入のうち五千万円は、一般会計からの繰り入れを予定しております。中小企業高度化資金融通特別会計につきましては、歳入歳出とも八十一億三千万円を計上しておりますが、歳入のうち七十九億八千万円は、一般会計からの繰り入れでございまして、残り一億五千万円余が償還収入であります。  次に、当省関係の財政投融資計画につきまして御説明いたします。  昭和四十一年度の当省関係の財政投融資計画総額は、五千九百三十一億円でございまして、これを昭和四十年度当初計画に比べますと、千百十一億円の増加となっております。  以下、機関別にその概要を御説明いたします。  まず、日本輸出入銀行でございますが、プラント類を中心とする輸出の伸長と経済協力を推進するため、運用規模を二千三百三十億円に拡大し、このため、出資三百七十億円を含め、千五百二十億円の財政資金を投入する計画でございます。  次に、中小企業関係政府金融機関につきましては、各機関の貸し出し規模を四十年度当初計画に比して約二〇%拡大するとともに、貸し出し金利を昨年九月の引き下げに加えて本年四月以降さらに年三厘程度引き下げることといたしており、中小企業金融公庫千三百十億円、商工組合中央金庫六十五億円、国民金融公庫千百二十九億円の財政融資等を計画しております。なお、名古屋中小企業投資育成株式会社の業務の充実をはかるため、中小企業金融公庫を通じて一億五千万円の出資を行なうことといたしておりますが、中小企業金融公庫にはこのための所要の財政出資を含めて計上いたしております。  日本開発銀行につきましては、施策の重点を産業の国際競争力の強化、流通、消費者対策の拡充、総合エネルギー対策の推進、技術開発の促進、地域開発の促進等に置き、従来の施策の拡充強化をはかるとともに、新たな施策といたしまして、流通機構の合理化をはかるため、小売り業者のチェーン化の推進に十五億円の融資を予定するほか、液化石油ガスの備蓄用タンクの整備、卸総合センターの建設、自動車タイヤ工業及び電線工業の体質の改善等の施策を促進するための融資を予定いたしております。このため、運用総額は二千八十億円に拡大するものとし、これに必要な財政融資等千四百六十億円を予定しております。  電源開発株式会社につきましては、引き続き石炭火力発電所三基の継続工事と大水力電源開発の工事推進に主力を注ぐことといたしまして、出資十五億円を含め二百五十八億円の財政投融資を予定しております。  石油資源開発株式会社につきましては、引き続き海外における原油の探鉱を拡大するため、二十億円の財政出資を行なう計画でございます。  石炭関係機関につきましては、石炭鉱業合理化事業団整備資金に五億円の財政融資を予定いたしておりますほか、産炭地域振興事業団が営む業務に新たに運転資金貸し付け、工業用水事業等を加えるとともに、鉱害基金の業務についても、新たに鉱害復旧事業団に対する長期運転資金貸し付けを加えることにより、両機関事業の拡充をはかることとし、このため、それぞれ三十八億円及び十三億円の財政融資を行なう計画でございます。  金属鉱物探鉱促進事業団につきましては、探鉱融資規模を二十四億円に拡大し、このため、出資二億円を含め二十億円の財政投融資を計画しております。  日本航空機製造株式会社につきましては、中型輸送機YS11の量産事業に必要な資金として、四十八億円を政府保証によって調達することといたしております。  公害防止事業団につきましては、本年四月以降、公害防止施設等の貸し付け金利の引き下げ及びこれらの施設を年賦払いで譲渡する際の金利の引き下げを行なうとともに、公害防止施設に対する貸し付け事業の対象として、従来の共同施設のほか、新たに公害多発地域における個別施設を加えることにより、事業の拡充をはかることとし、このため、四十五億円の財政融資を行なう計画といたしております。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計及び特別会計予算案並びに財政投融資計画の御説明を終わります。  何とぞ十分御審議の上、すみやかに可決されますことをお願い申し上げます。
  102. 北畠教真

    主査北畠教真君) これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  103. 北村暢

    ○北村暢君 私はまず中小企業問題についてお尋ねいたしますが、今回は、大臣もおっしゃっているように、中小企業の問題に非常に力を入れて、財政、予算面においても、一般の伸び率よりもはるかに上回った中小企業対策として力を入れた、このようにおっしゃっておられるわけでありますが、しかし、中小企業は、総体の予算からいえば、これは私はまだまだ問題にならない予算だと思います。それは農林業の予算と比べれば、同じような性格の低生産部門として今後国の重点施策として見ていかなければならない、高度成長下のひずみ是正の点からいっても、この点は努力はされたんでしょうけれども、まだまだ足りない、こう思っております。それの金融面においては相当考慮される——まあ一般予算ではあれですけれども、金融面で相当考慮される、こういう面もわからないわけじゃないのです。しかし、こういう程度のものでは、まだまだ中小企業の問題は簡単には解決しない。それよりも、なお今日不況下にあって中小企業の皆さんは相次ぐ倒産に苦しんでおるということで、経済不況とも関連をして非常な悩みを持っておる。そういうことで、まず第一に大臣にお伺いしたいのは、この程度のことでは私は非常に不十分だと思うのです、努力はされたでしょうけれども。そういう点で、どういうふうな感じを大臣はお持ちになるか。今日、中小企業省までつくれという要望があるくらいでありますから、中小企業問題について、大臣の率直な考え方をお伺いしておきたい。
  104. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、予算はなかなか飛躍せぬのが原則であるわけです。そういうわけで、三六%という伸び率とすれば、大きいのですが、しかし、これで満足だというのではないわけです、金額とすれば。パーセンテージからいえば、三六というと大きいのですが、金額からすると大きな数字ではない。ただ、しかし、農業と北村さんが比較になりました。私の記憶に誤りがなければ、農業は三千億円くらいの農業対策費が出ておりますし、それに融資の面で千五百億、こういうことですが、中小企業の場合は、三金融機関で五千五百億円くらいの融資のワクですからね。それに、対策費としては金額は少ないけれども、そういうところも加えて考えてみると、その両方合わせますと、農業とのバランスはとれておるわけです。対策費は少ない。農業のほうは融資の面が少ないですから。しかし、将来中小企業問題というものは、これは自民党でもそうでしょうし、各政党とも真剣に取り組まなければならぬ課題であって、そのためには、施策は、ことしはこれだけ伸びたということに満足しないで、もっとやはり施策を強化していくためには、予算はふえていかなければならぬ。一応は、できるだけ予算の上においては、われわれとしてもつけたと思いますが、これでも十分ではないという反省は持っておるわけでございます。
  105. 北村暢

    ○北村暢君 それで、いまの物価問題の中でも、低生産部門の生産性を上げなければ、どうしても物価問題そのものも解決しないというふうに言われているわけでございますが、物価に対する対策として、中小企業問題の低生産部門の改善をはからなければならない。この点について、これは物価問題ですから、急に即効薬というのがないでしょうけれども、それかといって中小企業がそれに対応するだけ急速になるとも考えられないのですけれども、物価問題に対する中小企業のこれの認識というものを、一体どのように持っておられるのか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  106. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中小企業が当面する大きな環境の変化は、労働の需給状態が非常に激変が起こった。いまは人手不足の時代に入ろうとしている。中小企業が低賃金でやっていくということは許されないわけです。大企業と同じような水準、同じような厚生施設というものが要求されております。だから、どうしても物価政策という上からいえば、中小企業は賃金の値上がり等をやっぱり生産性の向上によって吸収していかなければいかぬわけです。それが吸収できないということになれば、物価値上げに転嫁していきますから、実際、中小企業の持つ物価政策への影響というものをどういうふうに考えるかというと、やはり根本は中小企業の構造改革といいますか、体質を改善して、そして生産性を高める。そして、いろいろな環境の変化を生産性で吸収していけるというようなことがやっぱり基本だと思うのですね。また、なかなか物価問題というものは、この国会を通じても、政府もなかなかこれは歯切れのいい答弁はあまりしてないですね。それというのは、やはり構造政策というものが物価問題の背景にあるからだと思います。それで、即効薬ではないけれども、中小企業の生産性を高める施策というものが、これは物価政策の根底に横たわる問題である。そんなことを言ったら時間がかかりますから、いまのところは、今年度予算でも、ボランタリーチェーンなんかは、流通機構というものをもっと合理化したらどうか。生産者と消費者との間の機関がなかなか複雑でして、そういう点で、物価問題に対していろいろな悪い影響を与えておる点もありますから、独立をしながらも、チェーン式で小売り商の経営の合理化をはかっていこうというのがボランタリーチェーンの考え方です。欧米諸国を見てみると、やはり五、六〇%もこういう連鎖式の小売り商になりつつある傾向があるわけであります。日本の場合も、これは一つのテストケースですから、日本には、はたしてそういうものが健全に育っていくかどうか。今年度のこういう施策を通じて、日本の風土に合ったようにですね、これは育てていくよりほかないじゃないか。こういうことで、共同仕入れとか共同貯蔵とか、いろいろな点で小売り商の合理化、あるいは卸売り商にもやはりそういう考えで卸のセンターをつくろうということで、開発銀行の融資のワクも持っておるわけでありますので、流通機構の合理化というものをひとつ今年度からやってみようということで、これも物価政策に直接の影響を持つ施策であります。ほかにもいろいろ関係がある点がございますが、まあ私のいまの御質問に対して考えつく点は、以上のようなとおりでございます。
  107. 北村暢

    ○北村暢君 先ほどの大臣のおっしゃるこの高度成長してきた過程における大企業の賃金上昇と、そして中小企業も低賃金ということは許されなくなった。生産性を上回ってもなおかつ賃金を上げなければ人を確保できない。これが中小企業には非常に大きな悩みの一つになっておる。それがおっしゃるように、対策として考えられるボランタリーチェーンの問題は、後ほどお伺いいたしますが、その商業サービス部門における零細企業というのは、これは賃金が上がれば、それかといって生産性を上げるといっても、なかなか簡単にいかない。したがって、賃金の上がったものは直ちに料金なり物価なりというものに影響していって、物価値上がりの大きな原因になる。  それからもう一つの形は、耐久消費財を、あるいは資本財の製造業ですね、これらの中小企業は、これは下請が非常に多いわけですけれども、この部分、この場合は、この部品コストを引き下げるとかなんとかという、この場合には、やはり生産性を近代化していくということによって、ある程度この賃金上昇というものをカバーしていく、こういう性格を持っておると思うのですね。  それから非耐久消費財を製造しておるものについてはですね、これは一部は製品価格の引き上げ、ある一部は生産性の向上をやる。大体分類して三つくらいあるようです。  したがって、これらに対する物価問題との関連、この中小企業の悩みとする賃金コストの上昇というものをどういうふうに評価していくかということによってですね、きめのこまかい対策というものが中小企業には私は必要だと、こう思うのです。そういうようなことを考慮されて、中小企業対策として、対応する対策というものが考えられておられるのかどうなのか、この点ひとつ御説明を願いたいと思います。
  108. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今年度中小企業予算をごらんになってもですね、いま北村さんの触れられたようなところに重点を置いて予算の編成はなされておる。それは不徹底じゃないかという御批判はあるかもしれぬが、われわれが考えてもそういうよりほかにないんじゃないかということで、今年度予算はそういうところに重点を置いて編成をされておるものでございます。
  109. 北村暢

    ○北村暢君 政府委員でようございますから、いま私の申したようなことを予算面で具体的にどういう配慮をされているか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  110. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 物価問題と関連いたしまして、先ほど通産大臣からも御答弁ございましたように、中小企業の近代化をはかり、コストの低減をはかっていくということが一番の問題点でございますが、そのための予算といたしまして、まず流通関係でございますが、この点につきましては、流通関係の近代化をはかります上におきまして一つの問題点は労務者不足、従業員が不足であるという点にかんがみまして、できるだけセルフサービス方式の経営形態をとっていただくという点があるわけでございます。その点につきましては、中小企業が協業化を行ないまして、できるだけセルフサービス方式の経営形態をとっていただく、小売り商がそういう形態をとっていただくということを目的といたしまして、四十一年度予算の高度化資金の中に、小売り商業店舗共同化資金といたしまして七億九千九百万円を計上いたしておりまして、約六十軒の店舗の共同化を推進していくということを考えております。それから商業関係につきましては、そういう協業に適しない小売り商の零細層があるわけでございますので、それはおのおの独立の店舗をかまえたまま小売り商業の連鎖化をはかりまして、本部を設けまして、そこが共同仕入れをするとか、あるいは経営の指導をいたしますとかというようなことで近代化をはかっていく、それが小売り商の連鎖化でございますが、これは一応高度化資金で一億二千二百万円というものを計上いたしまして、四十一年度におきましては約二十五軒を考えておるわけでございます。それから卸段階におきましては、卸商業が団地を形成いたしまして、従来町中に散在いたしておりまして、交通関係等で非常に不便があるわけでございます。それが郊外に団地を形成いたしまして集団移住をする、その際におきまして、共同施設、共同運搬施設、共同倉庫あるいは共同展示場というようなものを設けまして、全体としての合理化をはかっていくというような措置をとる商業団地の整備、これにつきましても、高度化資金におきまして、四十一年度におきまして十億七千七百万円を計上いたしておるような次第でございます。その他、商店街の近代化につきまして二億八千五百万円、それから個別の店舗につきまして設備近代化補助金につきましては、従来、製造業しか適用していなかったわけでございますが、生鮮食料品関係で今度コールドチェーンを推進していくということになりますが、このコールドチェーンにつきましては、小売り商業のコールドチェーンへの対応というものが非常に進んでいないわけでございますので、設備近代化資金に生鮮食料品のコールドチェーン関係の設備を補助する、無利子貸し付けるという意味におきまして、約十二億円を予定いたしておるようなわけでございまして、そういうふうに流通関係の近代化という問題につきまして、四十一年度予算につきましては相当程度の計上をいたしておるわけでございます。  それから製造業関係でございますが、これは大きく分けまして、耐久消費財あるいは非耐久消費財というふうに分けられるわけでございますが、おのおのそれよりもさらに小さく業種別に近代化をはかっていかなければならない、業種、業態に応じまして近代化をはかっていかなければいけないという問題があるわけでございまして、そのためには、御承知のように、中小企業近代化促進法という法律がございまして、そこで従来まで六十八業種を指定しておりますけれども、来年度は二十五業種をさらに指定するということで、業種、業態に応じたところの近代化をはかっていく、それによって生産性を向上していくということを考えておるわけでございまして、そういうことに関連いたしまして、設備近代化補助金あるいは中小企業高度化資金におきましても、そういうことを目的とした予算相当程度計上いたしております。また、中小企業金融公庫からのそういう面での特別の金利、特利によるところの融資も考えておるわけでございまして、そういうきめのこまかい中小企業の近代化というものをはかりまして、物価対策の面にも寄与していくということをねらっているわけでございます。
  111. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、きめのこまかい対策をやって、なおかつ倒産が非常に激増しておりますね。倒産問題について若干お尋ねいたしたいと思いますが、資料によりまして、いただいた資料で、一千万以上の負債の、四十年一月から十二月までの倒産件数は六千百四十一件で五千六百二十四億一千万円ですか、そういう膨大な負債額で倒産が六千件以上、ところが、一月になるというと、この資料によりますと、これは件数が減っているのですね。二月、三月はまだできないでしょうけれども、二月の傾向は一体どうなっているのですか。この一月の減ってきているのはどういう原因なのか、また、今後の倒産の見通しというのはどんなふうになっているか、この点お伺いいたします。
  112. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 四十一年の一月が三百七十八件で、負債金額は二百八十億でございます。それから二月が五百四十二件で三百四十七億でございます。それから三月が四百二十九件と減りまして、二百六十七億一千万円というふうな負債金額になっておりまして、二月がちょっとふえましたけれども、四十年の平均が大体五百件をちょっとこえたところだろうと思いますが、そういう点から考えますと、一月が三百件台、それから三月も年度末で相当倒産件数が出てくるであろうというふうに予想いたしておりましたけれども、四十年中の平均を下回る四百二十九件というふうなところで、多少一段落をしたというような点も見えるわけでございますが、負債金額等から考えますと、大体四十年中におきましては、中堅クラスのところが非常に多かったわけでございますが、最近におきましては、多少、小規模のほうに倒産が多くなっておるというようなことでございます。一月につきましては、まあ大体昨年十二月が六百十一件というふうに非常にたくさんの数の企業が倒産したわけでございますが、それで年末で一応一段落をして、一月はちょっと少なくなったというふうなことがあるのだろうというふうに観測いたしておるわけでございます。  今後の見通しでございますが、多少将来に明るい見通しも、日本経済全体として出てきておりますし、それから景気の回復も、政府が財政、公共事業費等を中心にいたしまして、責任を持って景気の回復をはかっていこうというような措置も講じておるわけでございますので、これ以上中小企業の倒産がふえていくというふうに私どもは、希望的観測かもわかりませんけれども、見ていないような次第でございます。
  113. 北村暢

    ○北村暢君 中小企業信用保険臨時措置法を制定して、急速に倒産対策をやられたわけですね。これの効果というのはどうなんでしょうか。
  114. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 倒産防止対策といたしましては、昨年の暮れに中小企業の信用保険の臨時特例という法律を国会で通過させていただきまして、それに基づきまして、倒産関連の企業につきまして、たとえば山陽特殊製鋼等につきましては、下請のそういう関連倒産を防止するというための信用の保険の特別措置を講じたわけでございます。で、十二月に通りまして、指定をいたしましたものが、姫路の播磨鉄工、それから山陽特殊製鋼、それから高知重工というような数件の企業を指定をいたしまして、その下請企業の関連倒産を防止するということをやっておるわけでございまして、まだ発足したばかりでございまして、その的確な効果等は把握いたしておりませんけれども、それによって中小企業者が信用保証を受けることによりまして、相当つなぎ資金の融資を受けられまして、それによって関連倒産の防止がはかられたというふうに考えておるわけでございます。
  115. 北村暢

    ○北村暢君 これは大臣にお伺いしますがね、中小企業信用保険臨時措置法というのは、ごく当面の対策として、時限立法ですわね。で、いまおっしゃるように、関連倒産というのは非常に困ったことなんで、これに対する対策として、何か関連倒産を防ぐための恒久立法という考え方はございませんでしょうか。
  116. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは一年ですけれども、必要があれば延ばすつもりですが、まあ景気の動向等も見まして、できるだけこういうことが恒久法として要らないような状態になっていくことが理想であります。まあ、やり始めたばかりですから、もう少し経過を見てみたいと思っております。
  117. 北村暢

    ○北村暢君 倒産問題はそれくらいにしまして、次に、流通関係の問題について御質問いたしますが、先ほどの質問で、商業関係の協業化、高度化等を予算をもってやっておる、こういうふうに言われているのですけれども、白書によりましても、協業化、スーパー等の助成対象件数というものは急速に減っておるですね。非常な勢いで減っております。それは、せっかく流通の合理化、人手不足で人の要らないセルフサービス方式を取り入れて指導しても、なかなかその指導に乗ってこないわけです。したがって、スーパーマーケットの最近の趨勢を御説明願いたいのですが、これは通産省の高度化資金なり近代化資金による協業スーパーばかりでなしに、民間でもやっているわけですが、どうもスーパーが成績が悪くて倒産するものも相当出てきている。特に協業スーパーについては、どうも結果的にうまくいってない。この協業スーパーは、通産省の近代化資金なり高度化資金を使ってやっている。これが倒産しているような状況にあるような、経営内容の非常に悪いものが出ているようですが、スーパーマーケットの総体的な傾向というものを、ひとつどういうふうになっているか、御説明願いたい。
  118. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) スーパーは五千軒ぐらいあるようです。協業化したのが八十九軒、その中で六、七軒は、北村さんの御指摘のように、うまくいかないところもあるようですけれども、全体の評価としては、まあそういう少数のものを除いては、わりあいにうまくいっているという評価をしているのです。そのうまくいかなかった点には、こういうスーパーの方式が悪かったということよりも、そのスーパーに対して固有のいろいろの問題点があったように思っております。
  119. 北村暢

    ○北村暢君 私は、スーパーは確かにふえているし、今後もふえていく可能性があるだろうと思います。一時的に急速にふえましたので、したがって、経営能力のないものが無理してやったために、倒産したりなにしたりするのも、これは過渡的な状態としてやむを得ないと思うのですけれども、ただ、私がお伺いしたいのは、近代化資金なり高度化資金なりを使って、役所の指導のもとにやったスーパーがうまくいかないというのは、これはちょっと困るのですよ。それはやはり経営者、経営陣の能力の問題なんです。特に協業スーパーに至っては、形ばかり押しつけてこれでやれと言ってもできるものではないのですよ。やはり人間ですから、感情はあるしなにもあるので、協業の場合は非常にむずかしいわけです。したがって、自主的に、ほんとうに気が合ってやっているのは成功しているわけです。無理したのは失敗している。ここら辺の指導が、私はやはり、役所の指導によらないのはこれはしようがないわけですけれども、指導によったもので、しかも、不成績なものがあるということについては、よほどこれは反省を要する問題ではないか、こういうふうに思う。そういう点についての御所見をひとつ承りたい。
  120. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように、高度化資金の出ているものにうまくいかぬものが出るのはやはりまずいと思う。これはやはりいま言ったように、日本人はあまり協業ということに適さないという面もありますね、小売り商の人たちの。そういう点で、なかなかむずかしい面ですけれども、しかし、いまお話のように、みなの共同の運命を開拓するわけですから、ウマの合ったような連中だったら、これはずっとそういうスーパーのほうがいいことは明らかですから、これから事前の審査というものをもっと厳重にいたすことをいたします。少なくとも高度化資金が出たようなところから経営が行き詰まるようなところの出ないように、これからそれを事前審査を十分にやって、これならいけるということと、高度化資金とを結びつけるように今後指導していきたいと思います。
  121. 北村暢

    ○北村暢君 この資料を見ますとね、高度化資金融資状況、融資額貸し付け条件というところの融資状況の中で、三十九年度ですか、企業合同資金というのが、二十五件予算で予定をして、一件しか実施してない、貸し付け実績が一件しかないのですよ、二十五件予定して。これはどうかと思うのですね。そのほかにも、商店街近代化資金、新規に五カ所予定をして一カ所しか実施されてない、そういうようなことで、大体こう見ましても、四十年度もそんなような傾向になるんじゃないかというふうに思われるのです。したがって、この三十九年度がこういう状態にあるのと、四十年度はこれはまだ予定になっておりますから、全部貸すことにはなっているようですけれども、実際にどういうような状況になるのか、この点をひとつ御説明いただきたい。
  122. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御指摘のように、二十五件が一件ですか、これはやはり合併、共同出資というのは、中小企業には非常にむずかしいのです。これは非常に独立の一城のあるじという意識が強いものですから、なかなか。もっとできる、これくらいのところはできるんじゃないかということで見込んだのですが、なかなかむずかしいということで、これは予定どおりにいってないのですが、しかし、中小企業の場合には、協業ということが徹底したのは合併の形態でしょうから、もう少しこれは合併の場合も、いつの場合でも合併しなければならぬというのでもないが、合併も経営の合理化のためには一つの方法でしょうから、もう少しここであきらめずに続けてみたいと思うのです。ここで四十年度は四件出たそうです。それにしても、なかなかああいう合併というものは、中小企業になじめない面があるのですけれども、しかし、もう少しこれは努力してみたいと思います。
  123. 北村暢

    ○北村暢君 四十年度四件というのですが、これは三十九年度が二十五件予定して一件しか実績がない、今度四十年度また十件ふやして三十五件にして四件と、比率からいえばどうかと思うのですが。その下のところの小売り商業店舗共同化も、三十九年度百五十店舗予定したのが三十九店舗ですね。それから四十年度は百店舗予定をしてどれくらいできたかわかりませんが、このように実は大臣中小企業の近代化ということについて、近代化資金をもってやっております、それから高度化資金でやっています、こうおっしゃるんですよ。いかにも中小企業がどんどん近代化し高度化していって、そうして施策がうまくいっておるかのごとくに、予算説明を聞いても何しても聞こえるわけです。ところが、実績はこのとおりなんですよ。いかに中小企業の近代化なり高度化ということがむずかしいかということですね。ですから、予算説明なり何なり、額面どおり私は受け取れない面があるのじゃないか、こういうふうに思っておるのです。これらの中小企業の近代化、高度化という問題について、これ一つ見ても、いかにむずかしいか、これは根本的にやはり私は問題があるのだろうと思うのです。それは役人が頭の中で考えるスーパーなり、高度化なり、近代化なりというものと、実際の中小企業者が肌で感じているものと、相当開きがあるのじゃないかと思うのです。実際、幾ら指導をしても、中小企業がそれについてこれないというのは、やはり中小企業者の自主的な創意くふうによらない限りは、これはだめだということですね。したがって、予算を取ったり何かするということもあれでしょうけれども、こういう実績からいって、私は中小企業対策として指導の徹底というか、こうやれば有利なんだということを、みずから納得していないからだろうと思うのですね、これは。だから、確かに、大臣のおっしゃるようにむずかしいです。むずかしいですが、しかし、むずかしいからといって、いまのままでほうっておいていいということにはならないので、そこら辺に私はまだ非常に大きな中小企業対策としての欠陥があるのじゃないかと思うのですね。この点について、この実績から判断されて、私の言うことが無理なのかどうなのか、ひとつそこら辺のところを解明を願いたいと思うのですが。
  124. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 無理だとは思わないですね。やはり零細の企業には相談とか指導という面が中小企業対策として非常に重要だということは反省させられるわけであります。だから、極端にいえば、一方において近代化を進めると同時に、相談とか指導という、こういう中小企業の、こういうふうな新しいいろいろの施策があったら、こういう施策があるのだ、これに乗っかってやらないかという、こういう指導の面というものは、非常に大きなやはり中小企業対策の柱だと思いますね。今度も総合指導所のようなものを各県につくりたいということで、三年計画で全部つくるのです。そこに優秀な人を置いて、こういう施策ができた場合に、みなにこういうものがあって、こうすることがみんなのためにいいのだということで、施策を宣伝し、また、そういう施策に乗っかっていくような指導をするという点が、今後の中小企業対策の中でやはり大きな問題点になってくると思うのです。中小企業でも相当優等生はいろいろのことをやりますが、零細企業というものは、やはり指導の面というものを強化しないと、中小企業政策と結びついてこないという反省を持つべきだと思っております。
  125. 北村暢

    ○北村暢君 だれがやっても中小企業問題むずかしいのだろうと思いますけれどもね。いま申したように、せっかく予算を確保しても、ほとんど使わないでしまうというような状況、これは大げさに言って、この企業合同とかなんとかというところがひどいわけですけれども、それ以外に、工業団地だとか商業団地だとか、これは確かに消化されている面もある。そこで、大臣のおっしゃるように、指導に乗ってくるのは、これは中小企業のうちでも、どちらかといえば信用力の強い人が乗ってくるんですよね。で、一般の零細な圧倒的な部分というのは乗ってこない。乗ってこないということは、これはやはり政府の施策に対する信頼感というものを持ってないんじゃないかと思うんですよ。ということは、共同化なりをやるということは、自分のいま現実にやっている——まあ、赤字とか黒字とか、採算がどうだとか、非常に苦しい経営はやっておりますけれども、それなりに中小企業というものは、雑草のように、踏まれても踏まれても何とかやってきてるんですね。それをやめていくわけでしょう、企業合同だってね。それが失敗したら一体どうなるんだろうと、失敗することのほうが先に来ちゃって、なかなか思い切ってできない、そういうことなんだと思う。したがって、中小企業を近代化する上において、共同化なり何なりする場合において、やはり政府の施策というものに信頼感——あとをどうしてくれるのか、もし失敗したならどうなるんだろうかと、これが私はあるんだろうと思うんです、根本的に。これが解決できないものだから、思い切って政府の指導に溶け込んでいかない。これはやはり政府に対する不信感というものが——不信感というか、信用し切れないんじゃないかと、こう思うんです。したがって、そういう面について何か欠陥があるんじゃないかと思うんですがね、どうでしょう。
  126. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 北村さんの言うように不信感とは考えてないんですよ。それは、やはりこういういろんな新しい施策ができても、施策と零細企業とが結びつかない。だから、総合指導所なんかで今度巡回やるんですよ。じっと机の前にすわって相談に来るのを待っておるのでなしに、巡回診断、巡回相談というような形で出向いていって、そうして、やはり、こういうことになっておるから、将来のためにこういう施策があるんだということを周知徹底さして、そして、本人もそういう自覚を呼び起こすような、そういう結びつけていく努力というものが足りないのではないか、政府に対する不信というよりも、現状に対する執着というのは、人間の本性として持っておる。そういう点で、これは農業でも兼業農家がなかなか減らぬようなもので、執着というものはあるんです。それを政府の施策と結びつける努力というものが足りない。これをやれば、いろんな施策というものにもつと乗ってくるような状態に持っていけるのではないか、それを今度総合指導所なんかで、そういう欠陥を補っていきたいと考えておるわけです。
  127. 北村暢

    ○北村暢君 共同化の問題は、あとからボランタリーチェーンの問題で質問するので、そこでまたやることにいたしまして、中小企業の——中小企業ばかりでないのですが、利潤率の低下の問題があるわけです。これは中小企業の生産性を向上させるということになかなかいかない面、労賃が上がっている面、こういうようなことで利潤率というものが低下している方向にいっていると思っているのですが、この状況というものをどのように把握されておられますか。
  128. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 総資本利益率は、中小企業白書でも検討をいたしておるわけでございますが、三十八年度が五・八%、中小企業全体で平均が出ております。それから三十九年度は四・九%というふうにだんだんと下がっておるわけでございまして、そういう中小企業全体から見まして経営の悪化傾向というものが、三十八年度の好況期にもかかわりませず、ずっと傾向的に続いておるということが言えるかと思うわけでございます。で、その原因といたしましては、何と申しましてもやはり中小企業の賃金の上昇というものを生産性の向上で吸収ができなかったという点が、大きな原因でございます。また、資本費の負担も非常に増大しておるわけでございますが、そういう点もやはり、生産性の向上というもので吸収できなかったという点が原因かというふうに考えております。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。いまの総資本利益率ですね、売り上げ高利益率はどうですか。
  130. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 売り上げ高純利益率で見ますと、中小企業が、三十八年が二・〇%でございます。三十九年が一・九%ということで、三十六年が二・三%でございますので、やはりこれも低下傾向にあるというふうに考えていいと思います。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合、売り上げ高利益率低下の傾向、割合と、それから総資本利益率の低下の割合と比べて、総資本利益率の低下の割合のほうが大きいでしょう。その理由はどこにありますか、原因ですね。
  132. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 非常に専門的になりますので、ちょっと私もよくお答えできないのは残念でございますけれども、総資本利益率のほうにつきましては、やはりどう言いますか、借り入れ金をも含めての総資本ということになりますと、自己資本だけの利益率ということではないので、そういうことで金利の点あたりも非常にかさみますので、そういうふうに出てくるのじゃないかと考えております。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点はね、二つ原因があるのじゃないかと私は思うのですがね、これは中小企業だけじゃないのですが、特に中小企業に強く出てきていると思うのですが、それは売り上げ高利益率の場合には、総販売利益率ですから、その利益からいわゆる資本費ですね、金利負担と減価償却を引きますと、ぐっと総資本利益率が下がるのですよ。そこで、お調べになればわかりますが、一つは金利負担ですね。これは金利自体が、両建て、歩積み等で金利水準が下がらぬということ以外に、借金が多くなる、借金の量が多いということと、もう一つは、減価償却が耐用年数を非常に短縮したでしょう。昭和三十九年四月から強制になっている、減価償却が。その前は任意だったはずですね。商法改正で強制的になった上に、昭和三十六年には平均の耐用年数が十七年でしたが、現在は十一・九年ですから、ものすごく短縮されているのですね。そうすると減価償却も非常に大きい、金利も非常にかさんでくる。そこにやはり非常に問題があるので、中小企業対策を講ずるときにその辺ですね。ただ、法人税が安くなるのですね、耐用年数を短縮すると。だから法人税を安くということだけ考えれば短縮したほうがいいようですけれども、金利負担と減価償却の点を何かもう少し考え直す必要があるのじゃないかという気がするのですが、いかがですか。
  134. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 中小企業の自己資本の蓄積を促進するという見地から見ますというと、できるだけ減価償却をいたしまして自己資本を蓄積するという方向が好ましいかと思います。したがいまして、減価償却部分が相当程度ふえるということは、一方におきましてはまあいい面もあるわけでございますが、一方におきまして、今度は借り入れ金がふえるということは、逆に自己資本部分というものに依存する率が非常に少なくなるということでございますので、そちらの金利の負担軽減いたすという方向に、やはり中小企業対策としては努力していくべきだ、このように考えております。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その面のウエートがかなり大きいということですね。やはり中小企業対策を考えるときに、金利負担の面は両建て、歩積みをなくせということをずいぶんわれわれも言いますけれども、中小企業の経理を具体的に検討していきますと、金利負担というものがかなり大きいウエートですね。ですから、そこにやはりかなりウエートを置いた施策を、先ほどの企業診断とかいろいろな相談も大切ですけれども、それと同時に現実の問題として、特にこれは日本企業に特殊の現象ですよ、最近ものすごく他人資本が多くなってきていて金利負担が多いということは。その点はひとつ特に留意していただきたいと思うのです。
  136. 北村暢

    ○北村暢君 いまの質問でもおわかりのように、歩積み、両建ての問題は、これはもう何回も論議されているのですけれども、零細企業になってくると、歩積み、両建てどころじゃないのですよね。これはほんとうに高利の金を運転資金として使っている面が非常にあります。したがって、零細商業者なんかの金融の内容銀行なり信金なり中金なりいろいろ調べてもらえば明らかに出てくるのですけれども、相当高利の金を借りてやっているということは、この統計に出てこないような零細企業だったらたいへんなんです。それがやはり利潤率を非常に低下さしている大きな原因になっているのですね。それからもう一つは、非常に賃金が上がっているために、売り上げ高の利潤率が低下してくる。そういうようなことで私はやはり中小企業というのは、そういう面でも非常に大きなしわ寄せを受けておるのじゃないかというふうに思います。したがって、いま木村委員からも言われているように、この面の中小企業対策というのは、利子補給にしてももう少しやはり親切な金融というものを考える必要があるのじゃないか、このように思いますが、所見をひとつ承っておきたいと思います。
  137. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま木村さんも御指摘になったように資本費がかかる、どのくらいになるかというと二割くらい。ですから、これはやっぱり相当なコストに影響するわけですから、金利をもっと下げていかなければ、金利を、木村さんも御承知のように九月に下げて、あさってからまた下がるわけですよ。これは予算折衝のときには一番最後まで残った問題ですけれども、しかし中小企業が開発銀行のほうの金利以上の金利水準ということは、説明ができないじゃないかということで下がったわけですが、これはもっとやはり中小企業というものに対してはできるだけ金利負担を少なくする、法人税なんかも大企業に比して違っているようですから、自己の蓄積をふやして資本の構成比率を変えていって、資本費の負担というものもこれを軽減していく方向にいかなければならぬ。労働賃金これだけはもう無理ですよ、労働賃金は、大企業よりも中小企業は低賃金でいいという理由は成り立たない。やっぱり上がり方が急激であったときだけに、中小企業が打撃を受けておるんですけれども、もうこういう人手不足の時代になってきて、低賃金で中小企業が人を使っていい、こういう合理性は何もないんですから、資本費の面などで今後配慮していかなければならぬと思います。
  138. 北村暢

    ○北村暢君 次に、先ほど流通の合理化のためにコールドチェーンの話をちょっと聞きました。このコールドチェーンの内容的な問題については、時間の関係から私は省略いたしますけれども、このコールドチェーンの問題について、いま中小企業の団体の中に相当のやはり批判があります。いわゆる冷凍食品が現在魚で一七、八%、青果物というとこれはずっとまだ低いと思います。そういう状態のものが今後相当時間がかかるでしょうけれども、相当な勢いでもってコールドチェーンを普及さしていこうということになりますと、これは現実にこの生鮮食料品を取り扱っている中小企業というものは、これはたいへんなことになるんじゃないかということで、相当の批判をしております。ですから、そういう中小企業のしかも零細企業、いわゆる八百屋さんであるとか魚屋さんであるとか肉屋さんであるとか、こういう零細小売り商業者の立場というものを考えずに、一気に合理化の線として、これは合理的なんだからということでどんどん強行していくということについては、中小企業対策として相当問題であるんじゃないか、このように思うんです。しかも、これをアメリカ等の例を持ってきて、それを翻訳したような形で、直らに日本の実情に合わないものをやっていくということについて非常に問題があると思います。しかも、これはもう生産者からあるいはその輸送の形態、小売り商店の受け入れの問題、それからこれは消費者の家庭の電気冷蔵庫に問題がまた出てくるのですよ。電気冷蔵庫のアメリカの普及率と日本の普及率では、問題にならないわけですけれども、しかもその電気冷蔵庫の形が、まずいまの電気冷蔵庫の状態では問題にならないわけですね。百立方程度の家庭の冷蔵庫では、このコールド・チェーンを普及してもお話にならない。で、アメリカの家庭の電気冷蔵庫は四百立方ぐらい入れているのではないですか。そういうのが普通、最低でも二百、こういう事情でしょう。だから、このコールドチェーンはだれかに頼まれて、電気業者に頼まれてやったのか知れぬけれども、そういうことから変えなければ、こういうものを持ってきたって、お話にならないですよ。そういう点から言って、これは私は非常に科学技術庁、きのうも質問しようと思ったのですけれども、やらなかったわけなのですけれども、科学技術庁は非常に日本に普及しようとして努力をしておる。もし失敗すれば私の責任で、農林省の責任ではございませんというようなことで、失敗するかしないかやってみようなんということのようでございましたが、これは直接の指導行政からいけば通産省ではないのかもしれませんが、流通の合理化のためにこのコールドチェーンというものを導入していくという御意見がございましたから、私はこの面について相当慎重な計画でないというと、ちぐはぐのものができてしまうのではないかというふうに思います。したがって、この点についてひとつ所見をお伺いしておきたい。
  139. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはまあ北村さんの言われるように、まだ問題がたくさんあると思いますね。だから、一挙に普及段階に入るかどうかということには疑問がある。しかし水産物は卸売りの段階では四〇%、みなこの冷凍、冷蔵の低温でやはり運搬されてくるわけです。小売りのほうで何もできていないでしょう。だから卸売りは半分は、そういう低温で卸は流されてきて、それを受け入れる小売りの態勢が全然できていないところに、流通機構の点で非常に不合理な面があるわけです。だからまあこの冷凍とか冷蔵のケースなどの設備に対しても、資金を貸そうというような制度をつくったわけです。しかし大きな方向としては、やがてそうなっていくのではないでしょうか、日本でも。これは電気屋に頼まれたわけでも何でもないが、生鮮食料品に対しての価格安定というような点から考えれば、ああいう腐りやすいものですから、だから腐りやすいものを、何らの施設もなしに生きのいいものを食べようというところに無理があるのではないでしょうか。だから、こういうふうな形でやはりそれを受け入れていくような態勢が小売り商でもこれは普及していくのではないか。いろいろ問題はありますけれども、大きな大局論としては、そう思うのですけれども、ことに日本人は生きのいいやつを好むものですから、卸まできても末端で何もそれの受け入れ態勢がないということになれば、どうしたって価格が高くならざるを得ない。だから私たちはそういうものはやはり受け入れ態勢をつくってやるのが、生鮮食料の価格安定、あるいは衛生上の見地もあるでしょうが、そういうことで、大きな方向としては、これは普及していくものである、こういうふうにわれわれは見ているわけです。
  140. 北村暢

    ○北村暢君 いまの魚の場合は、確かに産地冷蔵もやっておりますし、相当冷凍品出ておりますよ。それから遠洋漁業では、もう船で冷凍で来るのですから、そういうものは現実に一七、八%流通していることは間違いない。またその冷凍を溶かす技術も非常に技術的によくなりまして、冷凍されたものか、鮮魚なのかわからないぐらいになっているのですね。そのくらいになっていることは事実であります、魚の場合は。ところが、このコールドチェーンというのは、魚だけやるわけじゃないわけですね。将来野菜から青果物まで、しかも肉、ブロイラーに至るまでやろうというわけでしょう。そういう計画なんですよ。だから、魚の場合はもう大体いっているのです。ただ消費者の家庭のほうは、受け入れ態勢が全然ないのです。しかも、いまの冷蔵庫でいかぬというのは、やはりこういう冷凍食品というのは、生産して流通して消費者の家庭に行っても、同じ状態が、保たれないというと意味がない。で、家庭に行ってしまいますと常温になってしまうというのでは、もたないわけです。したがって、いまリンゴ、ミカン等はある程度やっておる。しかし、リンゴなんというのも、これはいまとても青森のリンゴは冷凍をやってうまくいっているかというと、決してうまくいっていない。もう冷凍をやって出すというと、とたんにふやけてしまって、あれは長もちしないわけです、一日か二日ぐらいで。ですから、リンゴはその日に、いま出たものを買って食べるならいいのですけれども、食べるだけしか買えないのです。いまの冷凍品というのはそういうことになっている。したがって、リンゴならリンゴを一週間分とって置くということは家庭ではできない状況でしょう。だからそういう点からいくと、長い目で見れば確かに大臣のおっしゃるようなことでしょうけれども、だからしたがって、アメリカだってこれは直ちにこういうふうになったのではなくて、相当の年月を経て、しかもアメリカ人と日本人の嗜好というものが違うのですね、これは。これを無視してやったら必ず失敗する。とても日本人のように料亭で食べる魚の尾とひれのびんとしたもののほうがいい、高く売れるというのではどうも——切り身になってどこが何か、何の魚かわからない形で食べるように日本人の嗜好というのが変わってこない限りは、それはだめなのです。したがって魚だけ見ても、嗜好の問題もありまして、加工食品がどんどん出てきますけれども、加工食品の時代にだんだんなってくるのだと思いますけれども、それでもなおかつ、やはり鮮魚に対する日本人の嗜好というものは、さしみを食べるとか何とかいう嗜好というのは、これはちょっと簡単に直すわけにはいかない。これを直すのはまたたいへんなことだと思うのです。だから、そういう面が、私は流通の合理化等からこれがいいのだと言ってやれば、失敗することが往々にしてある。もう青森のリンゴなんかは、冷凍したのが損をしたという例がたくさん出ています。そういう点で、ひとつ十分これは慎重に考えていただきたい。先ほど申したようにそれはそれなりに価値を認めたとしても、いわゆる零細な八百屋さん、魚屋さんですね、この数ある八百屋さん魚屋さんが、相当完全に納得をしておらないです。そこの答弁が先ほどちょっと足りなかったように思うんですけれども、その中小企業者の圧倒的なそのためにそれで生活している八百屋さん魚屋さんというものを無視して、このコールドチェーンを一方的に普及してみても、これは問題が摩擦が起こるんじゃないかというふうに思います。この点はどうでしょうか。
  141. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは農林省と関係あるんですから、農林省とも相談をして、そういう小売り生鮮食料品の小売り業者とあまり混乱が起こらないように、こういう業種ごとに段階を置いて、こういうことをやる方向に持っていきたいと思います。まあ方向としてはこういうふうにわれわれもなると——北村さんも御存じでしょう、線香たいて扇風機でやっているような形は、文明の形ではない。やっぱりこういうふうにいくものだというふうに思いますが、それはあくまで急激にやると混乱が起こりますから、そこはこれが納得づくでやれるような方向に指導していきたい、農林省ともよく打ち合わせてやることにいたします。
  142. 北村暢

    ○北村暢君 それじゃ次に、先ほどお話のありました、小売り商業のいわゆる連鎖化、ボランタリーチューンの問題について御質問いたしますが、この予算書の先ほどの予算説明を聞きましても、融資額が大体十五億ぐらい融資するのですか。そしてその本部には助成金が一億何千万ですかするようでございますが、このボランタリーチェーンのどういう形を考えられておるのか、これをまず——コールドチェーンなとボランタリーチェーンなぞとあまり聞かないような名前が次々と出ている。ひとつその説明をしていただきたいのですけれども。
  143. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) ボランタリーチェーンは企業局長のほうからお答え願ったほうが適当かと思いますが、欧米等におきましては、先ほど大臣のお話もございましたように、非常に五〇%以上という普及率が出ておるわけでございますが、やはりそういう欧米等におきます小売り商業の連鎖化、事業の典型的なものをとってみますと、中央に本部をつくりまして、そのおのおののメンバーの商業者というものが独立の形態のまま存在するということで、そういう連鎖化の本部が共同仕入れをいたしまして、たとえばくつならくつの共同仕入れをいたしまして、それで共同宣伝をいたしまして、販路の拡張もはかる。共同仕入れによって仕入れコストの軽減もはかっていくというような仕組みになっておるものをボランタリーチェーンというふうに言っておるわけでございます。
  144. 北村暢

    ○北村暢君 どうもあまり簡単過ぎて、ちょっとわからないんですけれども、それで計画内容をひとつ御説明願いたいのです。四十一年度に一体どういうことをやろうとされておるのか。そしてまた将来どういうことをやろうとするのか、これをひとつ御説明願いたいのです。
  145. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 企業局のほうで開銀資金から十五億を計上いたしておるわけでございますが、中小企業関係におきましては、高度化資金におきまして、小売り業連鎖化の資金といたしまして一億二千二百万円というものを計上いたしておるわけでございますが、これは県と合算いたしまして、約二億四千四百万円ということになるわけでありますが、これによりまして必要資金の半額を無利子貸し付けるということになるわけでございまして、その貸し付けの対象は、ボランタリーチェーンの本部が必要といたしますところの共同倉庫でございますとか、あるいは運搬施設であるとか、あるいはいろいろと小売り商の人たちに勉強をしてもらわなければいけませんので、そういう会館をつくるとか、そういうふうな施設につきまして、いわば共同施設でございますけれども、助成いたしておるわけでございます。それで中小企業のほうで分担いたしますのは、大体県段階の県の範囲内でその事業を行なうというものを対象にいたすわけでございまして、大体四十一年度は二十五県程度予定いたしておるわけでございます。将来におきまして、これはできるだけ四十一年度におきましてはモデル的なものをある程度つくっていくわけでございますが、次年度以降におきましては、できるだけそういうボランタリーチェーンを結成したいという希望のあるものにつきましては、できるだけこれを結成さしていくという方向で、必要資金は十分に獲得していくということを考えたわけでございます。
  146. 北村暢

    ○北村暢君 将来の計画なんですけれども、大体この小売り商店というのは、どのぐらいあるんですか。百四、五十万でしょう。そういう膨大な小売り商業業者にこのボランタリーチェーンで計画しているものは、一体どの程度のものを考えておられるのか。   〔主査退席、副主査着席〕
  147. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 私どもの考えております将来の計画といたしましては、少なくとも欧米並みに五〇%以上の中小企業者が、この小売り商の連鎖化計画に参加をしてまいるというふうに考えております。
  148. 北村暢

    ○北村暢君 将来と言ってもいつの将来か知らないけれども、ここ五年なり十年の計画の中で、一説には十年間で大体十三万店舗程度連鎖店に持っていこう、こういう計画のように聞いているのですけれども、十年間に十三万店、それはいま私が言ったような程度のことなのか、五〇%くらいチェーンに持っていくために、それはとんでもない五十年かかるんじゃないかと思うのですけれども、そこら辺のところをひとつお聞かせ願いたい。
  149. 影山衛司

    政府委員(影山衛司君) 世上、小売り商の連鎖化の計画といたしまして、現在小売り商が百三十万軒あるといたしますと、その一割程度を十年なら十年間に結成をさしていくというような計画があるやに聞いておるわけでございます。そうしてまたその際に誤解がございますのは、小売り商の零細企業者が大体九〇%くらい占めておるので、あとの一〇%だけをこの小売り商の連鎖化計画の中に盛り込んでいこう、だから零細の切り捨て対策ではないかというような誤解もあるわけでございますけれども、私どもの企業局のほうもそういう計画を立てたことはございませんので、やはり小売り商の連鎖化計画と申しますのは、むしろ零細企業者を頭に置いて、できるだけそういう人たちを吸収をしていこうという考えでおるわけでございます。特に十年間に幾らとか、あるいはこれだけでなければいけないというような計画ではなくて、できるだけたくさんの小売り商がこの計画の中に入ってもらうという考えでございます。
  150. 北村暢

    ○北村暢君 チェーンの形ですが、いわゆる中小企業を中心にやる場合、あるいは大企業中心でそれに中小企業をつけていく場合、あるいは大企業だけのチェーンを考える場合、いろいろチェーンの考え方があるのですが、ここで考えているのは、中小企業のチェーンだと思うのですけれども、どうなんでしょうか。今後の流通段階においてマスプロの時代になるのですから、そういう意味において同じチェーンというものを考える場合に、日本の流通機構の中で一体どういうものがほんとうに中小企業のためになると、皆さんお考えになってこのようなボランタリーチェーンというものを考えておられるのか、この点ひとつ明らかにしていただきたい。   〔副主査退席、主査着席〕
  151. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 御承知のように、ボランタリーチェーンというのは、何といっても中核と申しますか、基盤は小売り店にあるわけです。ただ問題は、小売りというものが独立して、要するに近代化をしていく、経営の合理化とかあるいは小売り価格の引き下げ物価政策に寄与するということになりますと、小売り独自だけではどうしてもそういうわけにはいかない。そういう点、小売り商を独立したもので組織化する、その組織化する場合に、御承知のように、単に小売りという段階でなしに、卸の段階というものと結びつけてそれを近代化していくということになりますと、やはり単に集まっただけでは近代化しないわけでございまして、先ほど先生のお話がございましたように、少なくとも近代化するための組織体として、近代化するための能力なり知識なり、そういうものがやはり必要でありまして、いわゆる組織体としては販売の面、あるいは市場調査の面、あるいは輸送、配送、保管、共同仕人れの面が組織体として計画化されなければならないわけでございまして、それが近代化される意味において計画化されるということになりますと、その組織体全体としての能力ということになろうかと思います。そこで問題の形態は、小売り店を前提にしまして、その小売り店から卸まで営む場合にも、卸段階において小売り商が協業いたしまして、中小企業である小売り商が協業いたしまして卸を営む場合と、あるいは中小企業である者が卸を営む場合と、それから中小企業でない者が卸を営む場合、こういうものがあろうかと思います。その場合の問題点は、やはりあくまでも組織体としての経営の合理化、全体としての大量の仕入れ、大量販売の効果を組織体として持つ、共同化あるいは統合という形でなしに持つわけでありますから、それはそれぞれの業種の実態によって変わってまいると思います。たとえば全国的な、あるいはそれに近いチェーンもあれば、あるいはある地域的なチェーンもあろうかと存じます。いずれにいたしましても、中小企業というものの実態からいうと、組織体としての近代的経営という面について知識、能力が欠けているものがあろうかと思いますので、むしろ中小企業の卸として、あるいは中小企業外の卸として、そういうもの、知識、能力というものを持って、全体としての企業の組織体としての経営合理化、あわせてコスト低減による物価政策に協力するということが必要だと思います。  しかも、ボランタリーチェーンの、いまお話の今後の計画として、どのくらい組織体として組織するかということは、実はいまのような相当組織体としての能力がレベルアップいたしませんと意味がありませんので、なかなか組織化がむずかしいと思います。そういう意味で、どららかというと、今年度はむしろテストケースでありまして、その情勢のいかんによっては、これがどんどんそういうことの効果をあげるということになれば、増していくことが必要でありましょうし、場合によってはなかなかそういうふうにいかぬ場合もあると思いますが、そういう意味では、今年度はできるだけ啓蒙、宣伝、指導という面で、小売り商全体がそういう方向に向かっていくことを期待いたしております。
  152. 北村暢

    ○北村暢君 あと一問だけで……。不十分でしたがやめておきます。その助成の内容ですが、金融面について先ほど十五億を用意したと言われるのですが、そういう金融面の措置についてどれだけの優遇策があるのか、それから税制面についてどういう配慮があるのか、そういうような近代化資金なり高度化資金なり、あるいは税制の面についてチェーン化についての助成の内容、どのようにお考えになっておるのか、これを奨励していくということになれば、先ほども申しましたように、ただやれやれと言って指導しただけでは、私はなかなか前進しないと思うのですが、その助成の内容はどういうにふうなっておりますか。
  153. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 助成の内容は、まず中小小売り商の面に対するチェーンの中のメンバーで、小売り商の面に対する助成と、それからもう一つは卸段階の面に対する助成とあろうかと思います。まず卸段階の中では、卸が中小企業者で結成される場合には、先ほどの無利子の高度化資金がこれが貸し付け対象になる、それから中小企業でない場合は、八分四厘の開銀の資金貸し付けられるわけでございますが、この場合には限定がございまして、たとえば倉庫でございますが、卸なら本来いろんな卸業を営んでおりますが、チェーン化のために、言いかえればチェーン化された小売り商のために、いわゆる流通コストの低減を目的といたしました部面だけにつきまして、そのために使う倉庫の面につきまして、ただいまの開銀の融資が融通措置として考えられておるわけでございます。
  154. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  155. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記を起こして。次に黒柳君。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 私、本委員会でやりました工業団地の問題ですが、先日質問し切れなかったことでございますので、引き続きやりたいと思います。  工業団地の全体的な造成あるいは売却、処分率、そのような現状はどのような状態になっておりますでしょうか。
  157. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 造成主体といたしまして、地方公共団体とそれから日本住宅公団、産炭地振興事業団等がございます。それから造成の場所といたしまして、臨海部と内陸部、それぞれ違いがございますが、計画面積の全体を申しますと、一番新しい時点で大体三億八千七百二十八万七千平方メートル、それに対しまして、造成が終わりました面積が八千二十八万三千平方メートル、そのうちのさらに売却を終えました面積が七千二十六万五千平方メートル、造成されました面積に対しまして売却されました面積の比率は、これのトータルで申しますと、大体八七・五%、かように考えております。これを先ほど申しました造成主体別に見ますと、日本住宅公団の場合で大体八〇・九%、産炭地振興事業団の場合で二一・一%、地方公共団体等で九〇・九%という数字に相なっております。  なお、前回の予算委員会で黒柳先生からお話のございました日本住宅公団の処分率、私のほうが八〇・九と申しましたのに対しまして、住宅公団側から、大体似かよっておるけれども、住宅公団からは七五%前後、こういう御説明がございまして、この辺の食い違いにつきまして、時間がございませんで御説明する機会を得なかったわけでございますが、この際つけ加えさしていただきますと、このもとの数字は、私のほうも住宅公団の数字を使っておりますので、使いました資料は全く同一でございます。ただその際に、私どものほうは、造成済みの工業用地と申します場合に、その団地内全部がつくり終えた場合をとっております。処分、売却済みの工業用地も工業用地として売却されたものを入れておりまして、住宅公団が申しましたのは、その地区としては造成中でございますけれども、部分的にできましたものを造成済み用地、つまりこの率で申しますと、分母の中へつけ加えておく。それから処分済みその他の用地ということが、実は工業用地以外の店舗用地だとか送配電線の敷地用地とか、逆に今度は分子の中に入れておる。私どものほうよりも少し分母分子ともに広くとっておるという違いがございまして、基礎数値と私どもの出しました比率との食い違いは、双方つけ合わせいたしましたところさような理由で変わってきておる。それがどのくらいのものであるかということは、はっきり確認をいたしております。これは御説明する余裕がございませんでした、まことに遺憾ながら。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、先日この表によって処分率九〇・五%と、こういうふうにお答えになったと思うのですが、この表が出た根拠、私、いろんな質問したいと思いますが、端的に結論だけどんどん質問していきたいと思うのですが、この根拠が非常にあいまいだ、こういうふうに思うわけなんですが、これはどっからこういうような表をつくったのですか。それから大臣は九〇・五%の処分率という御答弁をなさったが、まずその調査した根拠ですね、私が資料要求して出たわけです。大臣もこれによって御答弁なさったのですが、それを御存じでしょうか。
  159. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは私も事務当局から提出された資料でお答えしたわけですが、中川立地部長からこの根拠、どっからこういう数字が出たのか説明申し上げることにいたします。
  160. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 日本住宅公団の部分につきましては、日本住宅公団の宅地開発部が四十一年二月二十三日につくりました工業用地開発事業施行地区一覧表という資料から私どもは私どもなりの判断で数字をとったわけであります。選び方につきましては、多少の住宅公団との数字のとり方、範囲を広くとったか狭くとったかという違いが生じましたことは、ただいま御説明したとおりであります。それから産炭地振興事業団につきましては、産炭地振興事業団の土地造成業務の現状という四十一年二月二十八日につくりました資料をもとにいたしております。それから地方公共団体等の数字でございますが、これは私どもの立地指導課が四十年十月に工業団地の造成実態調査というものを行ないましたものによったわけでございます。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 先日、処分率九〇・五%と言い、いまは八七%ですか、処分率。
  162. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 前のときも総合計では八七・五%と申し上げたはずでございます。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、大臣は九〇・五%と、こういう答弁と記憶しておるのです。八七%でもけっこうです、たいして開きがないから。そうすると、大臣はそれだけのほんとうに処分率がいま現在あると、こういうふうに数字が出ているというからは御確信だと思いますけれども、そういうふうに信じますでしょうか。工業団地が八七%処分されておる。処分率はそれだけあるという数字が出ておりますけれども、いかがでしょうか。
  164. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 私どものとりました数字は、造成面積につきましては一つのまとまった団地、一つの地区と考えていただけばよろしいのでございますが、団地計画一つの単位でございます。その単位が全部終わりましたものの面積を造成面積と考えております。その中で、売却されたものは幾らあるかという角度で数字をとったわけであります。黒柳先生の御感触と多少違うところが、実感とお違いになるところがあるとすれば、それは計画面積の中での実は工事に着工しておるけれども全体、その地区としての全体の工事は完了していない。しかし部分的には完了している、現実的にはそういうような場合でございましても、実は売却のための公募を行なっておるものがございます。そういうものとの感じでお考えになりますと、それは九割近く売れてないんではなかろうかというお感じを持つのではなかろうかと思います。その意味におきましては、私どもの造成面積はやや狭い意味でございまして、何々団地と申しております。その計画が全部造成事業が終わりましたときに、初めて造成面積という形でこの数字をとっておるわけでございます。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 これに関しては、別に見解の食い違いはないと思うのです。計画面積はどれだけだとか、売却するために造成できた面積はどれだけであると、売却されたものはどれだけ、処分率はどれだけであると、これに対して私の見解は相違はないと思うんですけれども、どうでしょうか。それともやっぱりありますかね、見解の相違が、あるいは計算の相違が。計画面積は幾らか、造成するということは、売却するために造成するんですからね、そこらあたりの食い違いがあるというのじゃないですか。私はないと思うんですけれどもね、それ。私の調べたのはあまりにも数字がかけ離れている、べらぼうに。
  166. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) ここで計画面積と申しておりますものにつきまして、やや説明が不十分であったかと思いますが、ここで計画面積ととっておりますのは、実際に幾らかでも工事を着手している、部分的に工事が着手されているもののもとになる計画の面積をいっております。したがいまして、計画だけは持っているけれども全然着手していないと、造成工事に着手していないというものは、机上の計画面積という考え方でこれからはずしてございます。それから造成面積につきましては、一つのまとまった団地として造成が完了したものをとっております。その意味では、一部でき上がっているというものから見ますと、やや狭い数字のとり方をしておるかと思います。それから、前提としてあるいは食い違っておるといけませんので付言しておきます。民間が造成をしておるといったものは、この表の中には一切入っておらないわけであります。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 民間が造成している分は、どこでそれをコントロールするわけですか。
  168. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 民間が工業用地の土地造成をやっております場合は、建設業法等建設省の関係でもそれぞれの規制法的なものはあろうかと思いますけれども、しかしそのものについては、私どもいまのところコントロールしておらないのであります。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 工業団地を全国的にコントロールする場所というのは、どこでコントロールいたしますか。どれだけの計画量があるのか、どれだけの造成面積があるのか、売却済みはどのくらいあるのかというようなことをどこで——通産省の企業局であるか。
  170. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 多少住宅団地の場合と異なりまして、工業の場合におきましては、民営で工業団地をやっていらっしゃるというのはほとんど例がないんではなかろうかと、工場側が適当な下請を使うかなんかはわかりませんけれども、みずから入手しておるというケースが多いんでございまして、いままでの広い意味での工業用地の取得というものは、企業自身の手によって入手されてきたというのが大部分でございます。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もいろいろな本——ここにも本ありますけれども、「工業立地」とか「工業団地」とかなんとかいろいろあるんですけれどもね、「工業用地の概況」なんてあるんですけれども、これを見ただけでも、どう見たって八七%売却なんという数字は出てこないのですよ。非常に工業用地がダブっている。それから野村の総合研究所の本を見ましても、有名会社大体百二十調査して——これは決算でやった。そのときお答えになったと思うのですがね——百二十調査したら、今後五年間四百万坪ですか、必要なところを、いま四千万坪ダブついていると、こんなことから、それ一つ見ただけでも八七%の売却済みの工業用地が、処分率があるだなんぞということは、私はこういうことは常識で考えられないわけなんですよ。ものすごくダブついているわけですが、新産都市見てごらんなさい。新潟にしてもあるいはどこにしても、相当造成しているわけですけれどもね、どんどん工場が入っていますですか。
  172. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 先生の御印象と私どもの数字が食い違いますのは、トータルで私どもお答えしているものですから、部分部分で見ますと、おそらく一〇〇%売れたところと、ほとんど売れておらぬという、見た感じでも非常に広いところ、こういうものがございますので、その辺の御実感と私どもの数字がだいぶ違っているということではなかろうかという感じが一ついたすわけであります。  それから前の決算委員会でございましたか、先生から御指摘ございました野村証券の数字、これは一部、二部の上場会社の数字だと考えております。工業用地全体といたしましては、この前大臣からも御答弁願ったのでございますけれども、三十八年十二月末現在で、七億六千七百六十万平方メートルというのが工業統計表によりますところの、この時点におけるわが国の工業用地、三十六年から三十八年までの間の年平均増加面積というのは大体八千万平方メートルでございます。これは企業みずからが入手するものが大部分でございますが、先ほど申しましたような公的主体による土地造成も含めての実績数字でございます。これは年間八千万平方メートルという数字と、いまの野村証券等の御数字とを比較していただきますと、おわかり願えるかと思うのでございますが、実は日本の——このときは今とは多少情勢を異にしておりまして、非常に強い成長率を示した時期でございますので、必ずしも今の時点の数字と当たるか当たらぬかは別でございますけれども、その数字から見ましても、必ずしもその一部、二部の上場会社の数字のウエートが、工業用地としてさほど大きいとは私どもは考えておりません。
  173. 黒柳明

    ○黒柳明君 たとえば日本住宅公団ですけれどもね、これは先ほど食い違いがあったと、こういうふうに、——私どもが調べたのは、日本住宅公団の分は二百十七万八千坪、処分したのが百六十一万九千坪、七四%、それから立地部で調べたのは八〇・九%、非常に大きな開きあるしですから、何でこの住宅公団だけとったかというと、住宅公団だけ見てもこれだけの開きがある、——それで大臣に来てもらったのは、それを確認するためなんです。そうなると、ここに出た表は非常に食い違いがある。それから産炭地あるいはまた住宅公団、ここにありますけれども、いま現在募集している土浦にしても真岡にしても、十六分の一、十分の一、あるいはもう二十分の一しか売却がされていない、こういう数字が出ている。そういう数字を全部引っくるめた数字がここに出ている。ここにあるわけですよ。これは日本工業立地センター、これが全部出ているわけです、この表とこの表と全然けたが違うのです。だからこれに対して、これははたしてどこから調べたか。それでくどいようですが、この住宅公団の一つだけとってみても六%、六%だって坪単位何百坪という数字が出てきますがね。これは六%にしますとですね、十八万の六%ですから一万何千坪、何百万坪という開きが出てくるわけです。ですからこれを、数字をどこから出したかと、はたして通産省としては、そういう全国的な工業用地の処分率とか、そういう売却、造成とか、そういうものをつかんでないのか。決算のときにはそれを追及したわけですよ。お尋ねしたわけだ。そうしたら、残念ながらうちじゃやってないと、こういうわけなんですね。ですから、このときになって、おやりになって、こういう数字出たと思うのですけれども、これは誤りじゃないかと、こういうわけなんです   〔主査退席、赤間文三君着席〕
  174. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 前にも、あるいは本日も御説明いたしましたように、住宅公団側の数字と私どもの数字が五%近く違うということ、それとその違う理由につきましては、先ほど御説明しましたように、もとの資料は全く同一の資料でございます。数字のとり方といたしまして、私どものほうはやや狭い意味で造成面積と処分済み面積を出しました。住宅公団のほうは、われわれの数字よりもやや大きい数字、つまり造成中ではございますけれども、一つの団地としては造成中ではございますけれども、その中の何割かができ上がっておる。でき上がっているときにその何割かでき上がったものを造成済み面積に数え、かつ処分済みの面積のほかに、私どもの使いました処分済みの面積のほかに、店舗だとか鉄道軌道用の敷地だとか、送電線用の敷地だとか、緑地だとかいう、狭い意味の工場用地じゃないけれどもその団地内の他の用途に充てられるもの、これが処分済みのほうに入ってきておる。まあ分母も分子もやや私どもがとりました角度よりも広い角度で数字をとっておる、そういう違いでございます。
  175. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃあ産炭地事業団の場合はどうですか。造成面積、売却面積、処分率は。
  176. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 産炭地事業団の場合におきましては、造成面積が二百八十六万九千平米、売却面積が六十万五千平米、処分率二一・一%というのが私どもの出した数字でございます。
  177. 黒柳明

    ○黒柳明君 こちらは坪で出ているわけで、二百六十三万と、坪に直しますと、こちらが得たものを坪に直すと……
  178. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 大体三で割ればよろしいのでございますから、七十九万坪。
  179. 黒柳明

    ○黒柳明君 七十九万坪、大体八十万坪ですね。ところがこの工業立地センターで出しているのは五十四万坪と、こうなっておるわけですよ。
  180. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) まあこういうものは時点のとり方でずいぶん違ってまいりますので、立地センターの数字、私ただいま手元に持っておりませんが、数字が低いということは、調査時点が私どものよりは前だったのではないかと思います。御参考までに産炭地振興事業団のやっております土地造成は、この時点で急速に造成面積が進んでおりますので、一、二カ月、あるいは半年ぐらいの相違がございましても、だいぶ数字が変わってくるのではないかと思います。
  181. 黒柳明

    ○黒柳明君 この調査、産業立地部のほうは二月二十八日ですね。このほうは三月十六日です。半月でこんな数字違いますか。
  182. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) どうも私実は立地センターの数字を調べておりませんので、向こうの根拠その他を十分承知しておりませんので、お答えがしにくいのでございますが、帰りまして立地センターがどういう時点でどういう数字をとったか調べまして、後ほどまた御報告いたしたいと思います。
  183. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 済みません。立地指導課長からちょっと説明させたいと思います。
  184. 佐賀新太郎

    説明員佐賀新太郎君) ただいま黒柳先生のお話の中に立地率六%というような非常に低い数字が見受けられたわけでございますが、これは昨年の十月の決算委員会で黒柳先生から御質問がございました、通産省が実施しております工場適地調査の全地区の調査団地の面積が現在二十億平米でございます。   〔主査代理赤間文三君退席、主査着席〕  そのうちで企業が立地した立地率は六%でございます。そういうような低い数字を全体の計算の中に織り込みますと、全体としての立地率は非常に低くなるというように考えます。  それから先生のこの全体の分母の中の数字には、あるいは現在造成中のもので未完成のもの、それから一応売買の契約は済んだけれどもまだ工場の建設に着工していないもの、こういったようなものもあるいは含まれて全体としての立地率が非常に低いんではないかというふうな印象ではなかろうかと、このように存じます。
  185. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、造成面積というのは売却できるための条件があるから造成面積と、こうなるんじゃないですか、どうでしょう。
  186. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) この日本の公的主体によります工業団地もかなり数がございますために、一つの団地の造成が完全に終わったかどうかということをまあとらえておるわけでございまして、その団地内の工事がどれくらい進んでおるかというのは刻々変わるわけでございますために、私どもは便宜上一つの単位としてまとまったその団地がいつ造成が終わったか、ある時点で終わっておるかということで造成面積をとっておりますので、でき上がってすぐ売却できると、部分的にでき上がったけれども売却できるというものが含まれていないという意味合いにおきましては、先生御指摘のように、売れる状態にあるものを造成面積の中に数えるべきではないかとおっしゃいますのも、そのとおりかと思います。ただ調査の便宜上、やや簡便な方法で、一つまとまった団地が造成を終わったかどうかということで、造成面積をとったということでございます。
  187. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃあ結局工業立地センターと通産省とのその造成面積のとり方の違いであると、こういうようなことですね。やっぱりそういうことを指導監督するのは、通産省の立場じゃないでしょうかね。何かこういう複雑な数字が出て、この食い違いがわからない。またいまの産炭地の問題ですけれどもね。要するにこちらは二月の二十八日、二月の二十八日のが八十万坪で、三月の十六日のが五十四万坪と、減るということはないのじゃないですか。どうですかねこれは。
  188. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) どうも、私さっき申しましたように、立地センターの数字をただいままでに確認しておりませんからお答えしにくいわけでございます。事柄の道理から申しますと、あとのほうが大きいというのが当然という先生の御指摘どおりだと思います。
  189. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 指導課長説明をさせます。
  190. 佐賀新太郎

    説明員佐賀新太郎君) 若干補足さしていただきますと、先ほど来のこの立地センターの数字でございますが、これは私どもが昨年十月に調査しました全国の工業用地の実態調査に、まあ少なくとも通産省所管の分につきましては基づいておるというふうにまあ解釈するわけでございますが、実はそのときのこの表のつくり方が若干誤解を招くようなふうになっておりまして、すでに先生にも差し上げてございますけれども、この着手済み未完成というこの考え方の問題は、先ほど来部長がるる御説明しておりますように、部分的に完成しておっても全体として未完成であるならば、それは未完成で未売却であるというふうな考え方をとっております。したがいまして、この数字では、たとえば二億九千八百万平米というふうな非常な膨大な数字になっておりますけれども、この中でほんとうに未売却なのはたった八百十万平米であるというふうなことでございますので、現実に造成されかつ現実に売却された面積を分母としますれば、全体としての立地率は高まるというふうにまあ考えておる次第でございます。
  191. 黒柳明

    ○黒柳明君 それにしてもですね、産業立地部で出した造成面積というのは二千百二十九万九千坪、立地センターのほうは八千四百八十一万八千坪、四分の一じゃないですか。四倍じゃないですか。先ほどからごたごたあれしていますけれども、そういうわずかの、いや向こうのほうは一部分できたのも造成地としているとか、こちらは全部できなきゃ造成地としないのだ何とかということがあったとしても、四分の一、四倍という、こういう数字の食い違いが出るということは、これはちょっとおかしいと思うのですがね。
  192. 佐賀新太郎

    説明員佐賀新太郎君) いまこの八千というふうな御数字でございましたけれども、実はこれも私どものほうの資料の誤解を招きやすい点でございまして、県なり各事業主体が現実に全然着工しないで、ただあくまでプランとして持っております数字はどうであるかということもついでにまあ調査しましたので、その数字が全体の半分の四千六百万平米のうち二千三百万平米というふうな数字がそこに含まれております。したがいまして、この数字は、あくまでまあ現実には架空的な数字でございますので、こうした面の要素も入りまして、非常に分母がふくらんでおるというようなことも言えようかと思います。
  193. 黒柳明

    ○黒柳明君 工場適地面積と、ここに書いてありますけれども、工場適地面積というのは、適地面積じゃない架空のものも入っていると、こういうわけですか。
  194. 佐賀新太郎

    説明員佐賀新太郎君) 工場適地面積と申しておりますのは、先般先生からも御質問ございましたように、通産省が立地調査法に基づきまして、全国的にここが工場立地の可能性の高いところというふうなことで、通産大臣調査ということで、実は県のほうに委託しております工場団地の総面積、先ほども申しましたように現在二十億平米でございます。したがいまして、それらは造成ということとは全く関係ございません。
  195. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) いま佐賀課長説明しました適地の面積と申しますのは、うんと長期的なことも考えまして、およそ日本の中に将来工場団地として使い得る可能性のあるものはどれくらいあるだろうかということを調査した数字でございまして、これは現実にすぐこれらの機関による計画につながったり、造成の仕事に入ったりするものではございません。その中から選ばれておるということはございましょうけれども、現実に造成事業等が行われることとは、まずかかわりのない数字だというふうに御理解願えればよろしいと思います。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 住宅公団の数字も、若干計算の違いにしても食い違っておりますし、資料を要求したいと思うのですが、全国の工場用地の昭和三十六年度以降の政府及び地方公共団体の住宅公団、産炭地事業関係及び県の開発公社及び民間の分、分けてですね、計画量と造成面積、売却処分率、それから昭和三十九年度以降の応募の面積、それに対しての売却面積を……。それによってどのくらい処分率が出てきたかはっきりすると思うのです。  大臣にお伺いしたいと思います。昭和四十一年度予算では、工場用地の造成関係予算、多少手かげんはされていますが、ここにあります四十一年度のほうが若干多くなっているのですが、そうすると、いまは処分率八七%、こういう状況ならいいと思いますけれども、私の聞くところによると、もっともっと低いのじゃないか、こういうように思うわけです。四十一年度で、前年度と同じ、あるいは若干予算が多くなっているわけですが、これはどのように考えたらよろしいでしょうか。
  197. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中川部長から。
  198. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) いま黒柳先生おっしゃいましたように、これは予算と申しますよりも地方債の計画でございまして、四十一年度は公営企業公庫債を四十一億、それから縁故債を十九億合計六十億をいま予定をいたしております。これは通産省が推算いたしまして、自治省が大蔵省と御相談になって内陸用の団地、いままでお話をしておりました臨海部のもの等を除きまして内陸用の団地の起債の金額といたしまして用意したものでございます。これにつきましては四十年度が五十億円でございましたので、御指摘のとおりふえておるわけでございます。このものにつきましては新規に買収をいたしますもののほか、すでに三十九年度以後工事を進めております。買収が終わって、これから造成にかかるというようなものもございますので、三十九年度以降の計画を継続事業といたしますと、この継続事業に新規事業が上積みになるわけでございますので、多少数字が上になるのはむしろ当然でございます。ただ私どものほうは、従来の地方公共団体等のとにかく土地を買っておけば工場が来るだろうという甘い感じに、ある時期には通産省も引っ張られ過ぎておった感じがいたします。これは率直に申しまして、さような反省をいたしているのでございますが、四十一年度の数字につきまして、その点は相当、この前も決算委員会でお話いたしましたように、相当シビアな態度で、現実に企業立地の可能性がある、地方財政の負担にならない形で土地を買い、土地の造成は行なったけれども、どうも買い手がつかないで、少なくとも金利分だけは地方自治体が困るということのないように、相当継続事業等につきましても、売れそうにもないところの計画を、スローダウンする等のことを配慮いたしておりまして、四十一年度は、私は私なりに、先生御心配になるような方向については、十分留意をいたしたつもりでございます。
  199. 黒柳明

    ○黒柳明君 資料を提出されて、もう一回この点についてはいろいろお話したいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は簡単に日中貿易の問題について通産省の意見をただしたいと思うのです。  最近西独のデマーク社など国際借款グループが中国向け鉄鋼プラントの延べ払いですね、これは額は一億ドルとか、あるいは二億ドルとか言われているのですが、こういう商談を進められているという、そういうことが報道されておりますが、これに対して日立造船では技術提携をいままでデマーク社とやってきた、そういう関係からこれと協力する、そうして下請体制をとってこれに参加をする、こういうようなことが幹部の間に決定されておるというふうに聞いているのでありますが、この間の事情はどういうことでございますか。
  201. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 新聞でそういうのを私も読んだんですけれども、何も日立造船からはそういう報告は受けておりません。新聞記事だけでございます。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかし、これは非常に日中貿易の将来に大きな影響を持つ課題じゃないか。したがって、通産省としてはこれに対して何の報告も受けていないというような受け身の立場だけではぐあいが悪い、これを積極的に相談するとか、実情を調査するとか、これはしていると思うのですが、どうしているのですか。
  203. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはけさの新聞だったと思いますが、見たのは。そういうことで事情はよく聞いてみようと思います。新聞記事でありますから、どういうような真相か、よく聞いてみたいと思います。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう申請があれば、これは政府としては許可するという考えでしょうか、どうでしょうか。
  205. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 具体的な問題が起こりまして、あまり仮定でお答えすることは、真相を何にも知らないで、ここで新聞記事を仮定してどうだということは、お答えすることはあまり適当でないと思います。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここは政策論議の場ですから、事実の問題もあるけれども、政策は論議しなければならないわけです。そういう点からお聞きしているのです。ことに三木通産大臣は日中貿易に非常に熱意を持っておられる、閣僚の中でもそうだとわれわれは考えているわけですが、表面の形と腹の中はどうか知らないけれども、そこに違いがあるというふうにも考えているわけです。そういう立場でお聞きしているわけですが、新聞にこういうのを各社が報道している、これはおそらく事実だろう、その上に立ってこれは、ま近にそういう申請がなされるんじゃないかと考えるのですが、そういうときの態度については、ケース・バイ・ケースで、急に来てからどうするというのではこれはあまりに国会答弁らしいので、政策論議にふさわしくないと思うが、そこでどうでしょうか、こうなれば三角貿易というかっこうになるのですが、三角貿易のかっこうにこれはならざるを得ない。結局プラント輸出が輸銀融資を断わることによって成立しない。それでしかたがないので他国を経由して、そうして結局は最終的には中国に入る。そうするとこれは日中貿易の変形、ゆがめられた形、こういうふうに考えるのですが、この点は、通産大臣どうお考えになりますか。
  207. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは西独のものは私は初めて見たのです。初めてきょうですかきのうですか記事が出たときには、西独が鉄鋼のプラントを輸出するという単純な中共との貿易である、何か各国が入って国際的なそれを輸出する、何というか下請関係ですか、国際協力の形でそういうことになるのだということを初めて読んだわけです。だから一体、西独の鉄鋼の輸出というものがどういう形なのか、そしてこれに対して日立などは、いろいろ新聞でもいっておるようであるが、その真相はどうであるのか、こういうことをよく調べてみたいと思います。このことはまた、振興局長がおったら、私よりももっとあれがあればお答えできるかと思います。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 振興局長は……。
  209. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  210. 北畠教真

    主査北畠教真君) 速記を始めて。
  211. 岩間正男

    ○岩間正男君 西独のデマーク社の中国向け鉄鋼輸出プラントの問題を聞いておるわけですが、このデマーク社というものはどういう性格の会社なんですか。
  212. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 西独のデマーク社は、私も西独における大きなプラント・メーカーという以上の実質的な認識は持っておりません。鉄鋼、製鉄関係企業としては相当西独では名が通っておるように聞いております。それ以上の私資料持っておりません。
  213. 岩間正男

    ○岩間正男君 何かもう少し調査して資料出してほしいと思うんですが、大体向こうの立場としたら、日本の鉄鋼会社を使うことが非常に有利だという立場でこのようないままで技術提携も進めておったんです。そういう立場から当然目を向けてくるということは考えられる。向こうよりも船賃が安いだろうし、それからコストも安いでしょう、日本の鉄鋼は。そういう形ですから、当然これは利用するという立場が考えられる。それからこちらの立場とすれば、この前の日立造船のプラント輸出は、輸銀の融資がだめなために中国側から断わられた、しかも、日本のいまの産業界の情勢から見れば非常に滞貨があふれている、操短もやっていると、こういう実情からいえば、背に腹は変えられないというので、結局これと提携をやって、その系列に入って、乗っかってやっていくというふうに考えられる。これは間もなく申請がおそらくあるんだろうと思うんですけれども、そういうことになれば、これはもう三角貿易というようなかっこうで、結局西独の支配下の下請産業という形になる。これは通産大臣、どうでしょう。とにかく一つの壁があるために、こんなところに追い落としている。はっきりいえば、いまの政府のとっている輸銀の融資を認めないと、こういう困難のためにこういう事態が起こっているんで、これは政策の問題としては私は非常に重大な課題だと思う。そして、しかも業者たちも、こういうやり方については、こういうところにいかざるを得ないということに対しは、非常に納得していないんじゃないか。それから輸出貿易商社なんか、ことに日中貿促の諸君などというのは、こんな近いところで、壁さえ破ればもう簡単に解決はつく、現に倉敷の場合、こういう一つの道を開いて、その道が今度はニチボーや日立でこれはだめになってしまった、こういうことで、非常に私は憤りを持っていると思うんですね。ここに、この政策そのものが、何といいますか、非常に障害になっているわけでしょう。この問題は、したがって、このような事態が起こった中で、私は再検討が迫られている課題じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  214. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 事実関係につきまして、まず私から、知っております限りのことを申し上げます。もちろん、まだ正式に申請がありましたというわけでもございません。また、日立自体に聞いてみましても、向こうからコントラクトとしてやろうという形で言ってきたことでもこれはございませんので、したがって、あくまでも仮定の上に立った問題なのでございますが、日本として、例の輸銀のプラント問題があるからこういう形が特に出てきたというよりは、西独自身、デマーク社自身が、日立とは従来から提携関係でわりあい密接な立場にございまして、そのラインに乗りまして話が出てくる可能性がむしろございます。したがって、先生のおっしゃいます論点といたしましては、下請として企業が働いていくということかどうかという点は、これはひとついろいろと評価の出てくる問題であろうかと思いますが、輸出を伸ばしていく方法としては、下請であってもこれは一つではなかろうかとも考えられます。したがって、例のプラント問題、輸銀問題とひっからんで出たいとうよりは、どうも日立とデマークというものの間のつながりというものが、日立を使うことがデマークとして有利であると、こういったベースから話が出てくる可能性のほうが多いんではなかろうかという感じもいたします。現実に、契約の申し入れ、商談の交渉等は、新聞紙に伝えられますところと違いまして、現実にはまだございませんので、何とも申し上げかねますが、いずれにしても、問題はそっちのほうに起こりやすい可能性があるんではないかというように私なりに見ております。
  215. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどうでしょうか、日立の立場に立って考えれば、やむを得ずそういう提携をせざるを得ないというところに追い込まれているというふうに私は考えられるわけですね。一体下請に甘んじるのですか。わざわざ甘んじるわけはないだろうと思う。その証拠には、もう二年になりますか、二年前には、これははっきり通産省に公然と申請をして、しかも、もう非常に近いんだから、しかもこれは、政府立場としてはあくまでも貿易を拡大するという方針をとっておる、その方針にも乗っかって、いままではっきりした態度をとってきたわけでしょう。それがだめになったと、だめになってやむを得ずこういう道を選ぶということになった。そこでお聞きしますけれども、どうですか、こういう提携をやれば、結局ここで直接取引をやるよりは——どうしてもぼくは利ざやの問題が出てくるんじゃないんですか。それから結局船賃の問題なんかこれは出てくるわけですから、そうすると、このような提携でやる、そうじゃなくて直接やると、こういう二つの立場を考えるときに、一体どっちが有利だというふうに考えられますか。これは技術的に見てお答え願いたいと思います。
  216. 高島節男

    政府委員(高島節男君) まず、日立とデマークとの、むしろ先ほど申し上げましたような実質的な関係からこういった形が進むんではないかという感じのほうが私には強いわけでございますが、これは予測でございますから何とも申し上げかねますが、輸銀のプラントで先般日立が申請してまいりましたのは、たしか船でございます。これは、船は一隻まるまる輸出する、そしてそれに輸出入銀行の延べ払いを要請していくという形のケースでございまして、今般は製鉄プラントという一つでワンセットをなすプラントを、デマーク社が中共との間で一つの商談のチャンスを持っているらしいと、それで、デマークと日本でわりあいに関係の深い人たちに対して、かりに、おっしゃるように、下請の必要があるとか、あるいは部品を買うとか、あるいは一部日本から調達するとかというようなことが起こるのではないかと、こういったケースではなかろうかと思います。ただ、現実に起こっているわけではないので何とも申し上げかねますが、私はどうもそういうふうに予測するのが自然のように思います。したがって、中共向けのプラント輸出に輸出入銀行を使うかどうかというその懸案から、真正面に障害になってこういう形になったというのではなくて、日立とデマークとのつながりが、デマークがとらえた一つの商売のチャンスというものに影響されて食い込んできているというように見ておりますが、これは一つの観測でございますから、何ともそこいらは申し上げられませんけれども、そう見るのが自然ではないかと思います。
  217. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまのような御説明ですが、逆にいえば、この前のプラントが成立していれば、今度の製鉄の場合も、鉄鋼の場合も、もっとこれは直接いったに違いないんですよ。あそこで道をふさがれているから、やむを得ずこういう道を選ばざるを得ない、これは本心とするところじゃないということはだれが考えてもわかると思うのですが、通産大臣どうですかね。こういう道を選ぶ、いわばゆがめられた変則の道を日本の産業の方針として今後これをおとりになるのか、それとも、こういう問題についてやはり障害をなくして正常化する方向に進もうとするのか、基本的な問題で通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  218. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、この問題はいろいろな仮定が多いですから、それだからここでいろいろ推測して論ずるということはまあ適当でない。問題は、中共に対する輸銀の問題ですけれども、これはいま申請も何も出ていないわけです。出たときには検討するというのが政府立場ですから。いまストップしておることは事実です。これはいつということは申せませんが、この問題はやはり解決をされなければならぬ問題である。いつかということはちょっと言えないけれども、これはやはりこういうことで中共に輸銀を永久に使わないんだということは、私は合理性はない。いつかはこれは解決しなければならぬ。それがいつかということはまあなかなか申し上げることはむずかしいと思います。
  219. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ解決されなければならない、こういうことなんですけれども、そこのあとのほうが非常に含みがあるんですな。いままでのあなたの発言を聞いておりましても、なかなかこれはいろいろなことを言われておりますね。この前の衆議院の速記録を見たんですが、輸出入銀行を利用する延べ払いを認める問題は、流動するアジア情勢が安定に向かう過程で適当な時期をとらえて解決すると、こういう答弁をされましたな。それから、まあそういうことなんですが、ちょっとこれはわかりにくいですな。どういうことです。流動するアジア情勢が安定に向かう過程で適当な時期をとらえて解決するというのは、非常に含みが多く、ちょっと国民はとまどうと思うのです、これは。このような発言をされている背景は何ですか、いまのベトナム戦争ですか。
  220. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はこういう考えを持っている。基本的には貿易でしょう、貿易は拡大したい。貿易の基本になるものは平和だと思うのです。だからいろいろ紛争が起きて、そうしてそういう形で貿易の拡大というのはノーマルな姿ではない。やはり貿易の拡大には、中共貿易でも何でも、これはやはり拡大していくためには、アジアの平和というものが前提になる。それはいろいろな点でベトナム戦争というものは貿易拡大の障害になっておることは事実です。だから日本の貿易をもっとノーマルな形で伸ばしていこうとすれば、アジアがやはり安定するということは大前提である。これは私の基本的な考え方であります。それをちょっぴり、基本的な考えがいま読まれた中に出たのであります。
  221. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはわかりますけれども、それと関連して、現在政府のとっている政策は政経分離ということを表に出して、その看板でいっているわけでしょう。そうすると、ここは通産省とそれから政府の方針との間には食い違いが考えられる。いまのお話だというと、ほんとうに正常化が一〇〇%、ベトナムの平和が回復しなければできないのだということ、そういうことになりますと、これはいまの方針とだいぶ食い違う。当面する、いま増大する、大きな問題になっているベトナム問題が解決しないうちは基本的にはこれは中国との貿易の正常化、真の拡大はこれはあり得ないのだと、こういうことになるのですね。ここはどういうふうに解釈したらいいでしょうか。二つがどうもこれはやはり食い違う。そうして業者なんかはとまどうのではないかと思うのです。この点はどうなのですか。
  222. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、とまどわないと思います。その証拠には、日中貿易は伸びているのです、五年間で五倍にもなるのですから。とまどうておればこんなに伸びるはずはない。とまどわないで、輸銀の問題だけはいま言ったような、それはそういうケース・バイ・ケースに自主的に判断をするというのですが、それ以外のことには民間貿易というのは、こんな五カ年間に五倍にもなるというのはそんな貿易の伸び方はないはずでありますから、とまどうてはいない。私の言うことは国民にはわかると思うのです。何といっても貿易というのは平和の手段ですよ。戦争をどかんどかんとやっているときにはやはり貿易というものが地について伸びていく時期ではない。やはり前提になるのはいろいろなやはり安定が、アジアというものが安定するということが必要なので、戦争はいろいろな障害です。政治と経済と言ったって、そんなに、それなら政治と経済を分けられるかと言ったって、こんなものを画然と政治、経済——これが政治、これが経済と言えるようなものではない。もし政治と経済を分けるということを、国を承認しているかいないか、国交が正常化しておるか正常化していないか、それと貿易を別個に考えるということなら分けられますよ。しかし、そんなに政治、経済というものを私は分けるすべを知らないのです。やはり戦争というものが片づかないと貿易の拡大のためには障害になる。どうしてもああいうものが、ベトナム戦争があると日中関係の改善にもやはり障害になる。これは日中関係ばかりではなしに、ほかの国との間にもやはりいろいろな障害になる。そういうことで私はベトナム戦争を、岩間さんもベトナム戦争の平和的解決に協力をされて、そうしてアジアの安定のために皆が力を尽くしておれば、こういう問題というものもやはりもっと自然な形で解決していくのではないか、こういうふうに考えます。
  223. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなた、いま伸びているのは、これは政府の努力で伸びているのではないという感じがするのですが、これは川が低きに流れるように、やむにやまれない勢いで伸びているのじゃないですか。しかし、現在は戦前の貿易の規模から考えてみたら問題にならないのです。大体四〇%ちょっとですね。現在これは何%になりますか。三億ドル相当ぐらいでこれは問題にならない。しかも市場、マーケットは七億です。そういう点から考えますと、これは要求は満たされていないのです。これをどうしても打開するのに、一つのプラント輸出の輸銀の融資を断わったというようなことが非常に障害になる。それがまた大きな影響を与えている。政経分離というような問題も、私も正確にいえば政経分離というのは、これは非常にあいまいなことばだと思います。影響いたしますよ。一体経済と政治がそんなふうにきちんと分けられるものではないというふうに考えるわけなんだけれども、一応そういうことで、実は何か政経分離というのは、一つの何というか、あいまいなことばになっているわけなんですけれども、そういう点からもっと、これは国民の要求が出ているわけですから、これは国の要求でもあるわけですから、そういう点についてはやはり積極的に努力をするという方向を私は選ぶ必要がある。ベトナム戦争の解決がなければ基本的なものは進まないというようなかっこうになってくれば、これはやはりいつの日かわからない、百年河清などとこれは言わないまでも、そういうかっこうになっている。逆にこれは貿易を拡大することがあなたのいまのお話のように平和に役立つわけですよ。ぼくは、現在の日本政府のベトナム戦争協力態勢をやめること、そうしてほんとうに平和的解決の方向に大きく日本の国策を変えていく、そういう背景の中に中国との貿易拡大ということは当然出てくるわけですから、したがって、いま通産大臣がおっしゃられたことは、まにことばとしてはそうなんですが、いまの佐藤内閣のとっている政策そのものと引き合わして考えてみると、そこに矛盾があるように思うのですけれども、そこで私は、どうなんですかね、西ドイツの例ですけれども、西ドイツでも中国との輸出を今度きめる、これについては相当の圧力があった。これは具体的にいえばアメリカの圧力があったというふうに聞いております。それに対して西ドイツははっきりした立場をとったじゃないですか。これはラスク国務長官が三月二十日のテレビ会見を通じて、北京に対して二百万トン以上の製鉄能力を与えることになる前に問題の再検討を希望すると、こういうような圧力を加えて、この意見が出先のモリン米公使によって西独側に伝えられた。考え直してもらえばありがたいというようなことで圧力があった。しかるに、結局はその圧力に屈しないではっきりした方向を選んだ。いま西ドイツの立場というのは非常にこれは日本に劣らず親米的でないかと思うのです。これはいままでの関係からいいまして、西欧の国の中では最も親米的な国だ。しかし、はっきりそういう自主的な立場をとって、そうして圧力に屈しないでこの中国とのプラントの道を選んだというのが真相じゃないのですか。そういうふうに考えますと、これとの対比でやはり日本の業者やそれから日本の国民が、これに対してどうも日本政府の態度について検討を加えざるを得ないというような感じを持つのはあたりまえですね。この点いかがでしょうか。
  224. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ西独は西独、日本日本ということだと思います。西独がやったから日本もやらなければならぬということでなしに、やはり輸銀の問題は、できるだけこの問題は前向きに処理されなければならぬ課題であるということで、西独がやったから日本という、そういうふうには考えない。日本立場から自主的にこれは判断すべきものだと思います。そういうことで政府自身は永久にやらぬといっておるわけではないのです。この問題はやはり将来解決をしたいと考えておるわけであります。
  225. 岩間正男

    ○岩間正男君 何もそんな西ドイツは西ドイツで、日本日本だというような、それはものによると思うのです。私これはやっぱりこのほうがいいと——そういういいとか、そんなに突っぱねなくてもいいですよ。むしろ学ぶべきことなんだ。そうして、それこそ自分の自主的な立場を貫いているんですからね。まあここで議論しません。吉田書簡の問題とか、それの背景、台湾政権の問題その背景のアメリカの問題など、ここで議論しようとは思わないけれども、しかし、今日ではだれもこれは知っている問題です。そういう話の中で、日本立場がございます、と言ったならば、いつまでたっても自主性は貫くことができない、こういうことになると思います。したがって、これは業者を含めて国民の要望にはこたえることができない、こういうことになるわけですから、こういう強い要求をやはりはっきり取り上げて、それでそういう中で、いずれはこの問題は解決するのだと言うのなら、そのいずれはが、いつかわからないことで、非常に下のほうでは混迷が起こって、具体的にはいま言ったようなゆがめられた道を歩まなければならないというふうに業者は追い込まれてきておるのだから、この問題非常に象徴的な問題だと私は見ております。典型的な形でこの問題出てきてますよ。この問題について、これは通産省としては相当、単に一つの事例だとか、そういうことでなくて、私はいずれこれは業者の申請があるだろうと思うのですが、申請を待たずして国策的な立場から全面的に検討するということは、いま非常に重要課題のように思うのですが、いかがでしょう。
  226. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、これは西独が出てきたからというのじゃなしに、この問題はやはり解決をされなきゃならぬ問題でありますから、これは絶えず検討を加えていくことは、これは間違いないわけです。ただ、これで右から左という問題とは考えていない。やはり日本日本としての立場があるわけですから、それはそういう世界の情勢なんかもいろいろ参考にはなるでしょうけれども、それだから右へならえというふうには考えていない。日本のやはり国家的な利益、そういう点から自主的な判断をすればいいと考えておるわけであります。
  227. 岩間正男

    ○岩間正男君 国家的利益に今度の問題はつながりますか。国家的利益にこれはならないから私たちは問題にいましているのです。国家的利益にこれはつながらぬじゃないですか。明らかに下請に追い込まれる。そうして日本のいまの窮状打開、やむを得ざる道だというふうにこれを選んでおる。業者の体面からいっても、日本の独立という点からいっても、企業の健全な発達という意味から考えても、こういう道を選ばないで直接の道はあるのですよ。しかも、これはアジア人同士の、しかも隣国の長い歴史的な、地理的なこういう深い交流のある、そして七億の人民を持っておるこの中国、ここのところにやはり本気になってこの問題を解決するような、そういう課題を含んでおると思う。問題は決してこれは小さな問題じゃない。典型的に出ていますよ、これは。非常に私はそういう意味ではいいものじゃないかと思います。私はしろうとなんです。しろうとで、いままでこういう問題を十分やっているわけじゃないけれども、しかし、これはこの問題に触れてみて、なるほどこれは多くのいろいろな課題を含んでいる。そしてこの問題については検討の余地がある、やって決して損じゃないのです、政策論議の立場からこれは明確にすべき問題だ、こういう立場で、私は非常に自分では勉強不足なんだけれども取り上げたのです。どうも通産省の立場を見ると、日本には日本の事情がある、その事情とは何ぞやといえば、どうもあまり芳しくないんですよ、ここでやりませんけれども。どこの立場に立って日本の実情というものを進めるか。私は、どうもそういう点では対米従属の問題が出てきますからね。こういう中で何ともならぬというかっこうではまずいじゃないか。こういう点でひとつ三木さんどうですか。私は勇気をふるい起こすべきときだと思うのですが、いつかはなる、そして情勢を判断して、流動する情勢の中でいつか最も適当な時期を選んでと、これは哲学的になる。同時に、これは美文ではあるが、しかしそうでなく、もう一歩踏み出して、あなたの、蛮勇とは言わないけれども、やはり民族的勇気をふるい起こしてほしいときだと思いますがね、いかがですか。
  228. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今度の場合は西独がイニシアチブをとってやっておるんですからね。これと別個にやはり日中関係最大の課題だと私も思っておるんですよ、この関係は。だからこの問題は、日本も長期的な展望の上に立ってやはり日中関係は打開していかなければならぬ、これは私の前提です。ものの考え方。  そこで、輸銀の問題なども、永久に中共とはやらぬと言うんじゃない。いつかはこの問題は解決しなければならない問題である。したがって政府も、これは西独がやったからというんじゃなしに、日本がやはり懸案の一つとして検討を加えておることは事実です。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 通産省の佐橋さんですか、事務次官、最終仕向け地が中国であっても直接の仕向け地が西独であるならばかまわないというような意向ですね。これは述べておられることを聞いておるんですけれども、あまりこれではまずいんじゃないですかな。もう少しやはりはっきりした指導性を持つべき時期が来ておるんじゃないかと思いますがね、どうなんですか、実際は。これじゃもう流されちゃいますよ。そういうかっこうで通産行政というものはやっていっていいのかと。
  230. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) その佐橋君の記事は、実情がそのとおりでないという報告を私にしておる。やはりこれは正々堂々とやるべきです。やらなければならぬ。日本は思い切ってそういうことで、そういう何か輸銀のいまの日本がストップしておることを、それを裏街道でやるべきではない。やる場合にはまつ正面からやれというのが私の意見。
  231. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ時間もありませんから、通産大臣の勇気をふるい起こしていただくことを希望して私の質問を終わります。
  232. 北畠教真

    主査北畠教真君) 次に北村君。
  233. 北村暢

    ○北村暢君 私は、まだ経済協力の問題、それからベトナム特需の問題をもう少し掘り下げてやりたかったんですけれども、時間もあれですから、これで私の質疑終わります。
  234. 北畠教真

    主査北畠教真君) 他に御発言もないようでございますので、以上をもちまして通商産業省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  明日は午前十時に開会いたします。  本日はこれにも散会いたします。    午後六時三十分散会