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1966-03-29 第51回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十九日(火曜日)    午前十時三十六分開会     ————————————— 昭和四十一年三月二十八日予算委員長におい て、左のとおり本分科担当委員を指名した。                 梶原 茂嘉君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 田村 賢作君                 内藤誉三郎君                 船田  譲君                 小林  武君                 小柳  勇君                 林  虎雄君                 鬼木 勝利君                 山高しげり君     —————————————    委員の異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      山高しげり君     林   塩君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         鬼木 勝利君     副主査         内藤誉三郎君     委 員                 梶原 茂嘉君                 木暮武太夫君                 田村 賢作君                 船田  譲君                 小林  武君                 小柳  勇君                 林  虎雄君                 林   塩君    委員以外の議員        議     員  加藤シヅエ君    国務大臣        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生大臣官房会        計課長      戸澤 政方君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省医務局次        長        渥美 節夫君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省国立公園        局長       大崎  康君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        厚生省援護局長  実本 博次君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君    説明員        厚生省大臣官房        企画室長     加藤信太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者木暮武太夫主査席に着く〕
  2. 木暮武太夫

    木暮武太夫君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木暮武太夫

    木暮武太夫君 御異議ないと認めます。  それでは、主査鬼木勝利君、副主査内藤誉三郎君を指名いたします。    —————————————  〔鬼木勝利主査席に着く〕
  4. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) ごあいさつ申し上げます。  皆さまの御推挙によりまして、不肖私、主査に御任命いただきまして、まことに光栄に存じております。すこぶる未熟者でございますので、何かと手違いが多いかと存じまするが、皆さま方格別の御協力をお願い申し上げまして、責務を全ういたしたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)  本分科会は、昭和四十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省、厚生省労働省及び自治省所管を審査することになっております。議事を進めまする都合上、本日は、一応厚生省及び労働省の審査を行なうことといたしたいと存じております。     —————————————
  5. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 昭和四十一年度総予算中、厚生省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。鈴木厚生大臣
  6. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 昭和四十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案概要について御説明申し上げます。  厚生行政につきましては、日ごろ各位の御協力をいただき、逐年予算増額を見、厚生行政の進展がはかられつつありますことはまことに喜ばしいことでありまして、この際あらためて厚く御礼を申し上げたいと存じます。  さて、昭和四十一年度厚生省所管一般会計予算における総額は五千八百二億四千二十二万四千円でありまして、これを補正第三号後の昭和四十年度予算五千七十八億九千八百八万八千円に比較いたしますと、七百二十三億四千二百十一方六千円の増加と相なり、前年度予算に対し一四・二%の増加率を示しており、また、前年度当初予算に対しましては二〇・四%の増加と相なっております。なお、国家予算総額に対する厚生省予算比率は一三・四%と相なっております。  以下、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、生活保護費関係経費であります。  生活扶助費につきましては、その基準額を一三・五%引き上げることといたしており、また、教育扶助出産扶助及び葬祭扶助につきましても基準引き上げを行なっております。  このほか、保護施設職員待遇改善を行なうなど、生活保護費として総額一千二百四十億一千八百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百七十二億五百余万円の増額となっております。  第二は、社会福祉費関係経費であります。  まず、児童保護費でありますが、収容施設等飲食物費日常諸費等改善するほか、保育所及び収容施設職員待遇改善をはかるとともに、職員の増員を行ない、また、新たに民間施設経営調整費を計上いたしております。  また、重症心身障害児(者)の保護対策強化をはかるため、新たに国立施設を設けて収容保護充実をはかるとともに、在宅重症心身障害児(者)の指導強化をはかるなどの所要経費を計上するほか、母子保健衛生対策強化並びに身体障害児結核児童等療育対策に必要な経費を、それぞれ増額するなど、児童保護費として三百十億六千四百余万円を計上いたしております。  また、保護施設児童福祉施設等各種社会福祉施設整備に必要な経費として二十九億円を計上いたしております。  このほか、身体障害者保護費老人福祉費世帯更生資金児童扶養手当経費をそれぞれ増額するとともに、重度精神薄弱児扶養手当の内容を改善し、その支給対象範囲重度身体障害児にまで拡大するなど、社会福祉費として総額五百十一億六百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、七十一億八千九百余万円の増額となっております。  第三は、社会保険費関係経費であります。  まず、国民健康保険助成費についてでありますが、昭和三十九年度以降四カ年計画をもちまして進められている家族に対する七割給付実施につきまして、昭和四十一年度は第三年目として計画どおりこれを行なうとともに、療養給付費補助金につきましては、財政調整交付金に含まれており、ました世帯主給付改善費交付金と、世帯員七割給付実施のための療養給付改善特別補助金を統合いたしまして、世帯主分はすべての市町村世帯員分は七割給付実施を認めた市村町について四〇%を国庫より助成するほか、事務費補助金基準単価を大幅に引き上げるなど、国民健康保険助成費として一千四百五十一億六千四百余万円を計上いたしております。  次に、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として、政府管掌健康保険財政健全化に資するための百五十億円を含め、四百三十億八千七百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百七十一億七千三百余万円の増額となっております。  また、国民年金につきましては、給付水準大幅引き上げを中心とする改善措置を行なうことといたしました。すなわち、拠出制国民年金につきましては、年金額を二倍半程度引き上げ、二十五年拠出老齢年金額月額五千円とし、夫婦で月額一万円の年金を実現するとともに、障害母子年金等最低保障額月額五千円に引き上げ障害範囲拡大支給要件緩和等制度の各般にわたって改善することとし、国庫負担金として百七十三億七千八百余万円を計上いたしております。  福祉年金につきましては、各年金額月額二百円ずつ引き上げるとともに、扶養義務者所得制限等支給制限緩和をはかるなど、福祉年金給付費として四百八十一億一千七百余万円を計上し、国民年金国庫負担金として七百五十三億八千五百余万円を国民年金特別会計繰り入れることとし、社会保険費として総額二千六百五十億五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し三百六十二億二千四百余万円の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費関係経費であります。  まず、ガン対策経費でありますが、専門医療機関整備充実をはかるとともに、ガン研究のための助成費強化し、さらに、新たに医師等専門職員の研修及び集団検診推進等を行なうための所要経費を計上いたしております。  また、性病対策経費については、婚姻をしようとする者に血液検査を受けることを義務づけ、その費用を公費で負担するとともに、性病予防重点地区における予防思想の普及の徹底をはかるための所要経費を計上するほか、保健所職員給与費単価改善に必要な経費法定伝染病予防費等保健衛生諸費として八十億五千七百余万円を計上いたしております。  このほか、結核医療費として三百五十五億六百余万円、原爆障害対策費として二十三億八千七百余万円、精神衛生費として二百七億五千百余万円、また、国立療養所に必要な経費として三百二十八億四百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額一千五十六億七千八百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、百五億八千九百余万円の増額となっております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費でありますが、新たに遺族範囲拡大障害年金支給範囲拡大等を行なうことともに、準軍属に対する遺族給与金等の額の引き上げを行なうこととし、必要な経費百三十九億六千二百余万円を計上いたしております。  このほか、戦傷病者特別援護費として八億七千六百余万円、留守家族等援護費として三千六百余万円をそれぞれ計上するなど、遺族及び留守家族等援護費として総額百四十九億四千九百余万円を計上いたしており、前年度に比し十八億四千四百余万円の増額となっております。  第六は、生活環境施設整備費であります。  明るい生活環境を実現するため特に環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、新たに簡易な下水道終末処理施設整備費を計上するほか、ごみ処理施設について大幅な増額をはかる等、清掃施設整備費補助金については三十一億五千二百余万円、下水道終末処理施設整備費補助金については四十億六千三百余万円を計上し、また、簡易水道等施設整備費補助金については十六億九千百余万円を計上するとともに、市町村財政事情に応じて、従来一律四分の一の補助率を三分の一まで引き上げる道を開くこととし、生活環境施設整備費として総額八十九億六百余万円を計上いたしております。 以上、昭和四十一年度厚生省所管一般会計予算案について、その概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十一年度厚生省所管特別会計予算案の大要について御説明申し上げます。  まず、第一は、厚生保険特別会計についてでありますが、一般会計より四百十五億四千六百八十一万八千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてであります。船員保険特別会計につきましては、十五億四千五十二万九千円の一般会計よりの繰り入れを行ない、歳入二百五十八億三千八百五十八万二千円、歳出百八十九億八千七百七十七万円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてでありますが、一般会計より四十四億八千五百三十四万円の繰り入れを見込みまして、歳入歳出とも三百四十五億七百九十一万五千円を計上いたしております。  第四は、国民年金特別会計についてでありますが、一般会計より七百五十三億八千五百二十七万四千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  最後に、あへん特別会計についてでありますが、歳入歳出とも七億四千六百七十万七千円を計上いたしております。  以上、昭和四十一年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ、本予算案成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第であります。
  7. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 初めに、社会保障の問題から質問に入ってまいりますが、現在の社会保障制度の基本的なレールとして、昭和三十七年八月に社会保障制度審議会総理大臣に対しまして出した答申がございますが、それは、社会保障制度総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障制度推進に関する勧告、この答申を、現在におけるわが国社会保障に関する一つの路線だと私は考えておりますが、厚生大臣の御見解をお聞きいたします。
  9. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) わが国社会保障は、欧米先進国に比べまして、近年改善をされたとはいえ、まだ相当の見劣りがいたすのでございます。政府といたしましては、長期的な展望に立ちまして社会保障計画的に推進してまいりたいと思うのでございますが、さきに、所得倍増計画並びに中期経済計画に見合った社会保障計画を一応持っておったのでございますが、経済情勢の大きな変化によりまして、この中期計画も廃止をするということになったのであります。そこで、社会保障の面につきましては、ただいま小柳さんからお話がありましたところの社会保障制度審議会勧告、また御意見というものを、今後の社会保障制度を進める一つの指針といたし、また、政府といたしましても、今後新たなる経済計画を策定をいたします際には、それと十分見合った長期的な社会保障計画を樹立いたしまして、わが国社会保障施策を強力に推進してまいりたいと、このように考えておるのであります。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま大臣から、この答申に沿って、さらに前進する方向で施策を講ずるというお話がございましたが、いま予算案説明がございました。国家予算総額に対する厚生省関係予算並びに前年度の厚生省関係予算に対するおのおの増加割合などが示されておりまするが、このただいま御説明ありました予算案を、このレールに合わせまして、基準に合わせまして、厚生大臣はどのような見解を持っておられますか。
  11. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど御説明を申し上げましたように、昭和四十一年度の予算は、前年度当初予算に比べまして、全体予算では一七・九%の伸び率に相なっておるのでありますが、厚生省予算は二〇・四%というぐあいに上昇を示しておりますことは、予算案で御審議をいただいておるとおりでございます。もとより、私は、この予算をもって十分だとは考えておりませんが、少なくとも、今日の経済情勢下において、厚生省予算が他の予算に比べてこのような伸び率を示した、また重要な項目につきましては、それぞれ施策としての柱が立ったと、私はかように確信をいたしておるところでございます。また、国民所得についての社会保障給付費割合等につきましては、欧米先進国に比べて、率直に申し上げて、まだおくれておるのでございますが、逐次格差を縮めておりますことは御了解いただけると思うのでありまして、今後も一そう努力をしてまいる所存でございます。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 アメリカの例をとったら、ちょっと匹敵できませんけれどもアメリカは、大統領教書によりますと、総予算に占める軍事費予算が三割強でございますが、それにもかかわらず、なお国家予算総額に占める厚生予算割合は三二−三%あるものと私は推察をいたしております。それに比べますると、いま平和憲法を持っております日本は、軍事費が非常に削減をされておりまして、そのゆえでもありますし、一番の原因はそこでありましょうが、厚生省予算国家予算の一三・四%を占めておる。伸び率においては二〇・四%。厚生大臣は、いま、まあまあというような見解でございましたけれども、そういうような諸外国に比べまして——アメリカだけではごさいません。欧州先進国に比べまして、全体の国家予算の中に占める厚生省予算割合というものが、まだ二分の一、あるいは三分の一に満たないのではないか。いろいろ見方はございます。計算のしかたもありますけれども、そう思いまするが、国家予算に占める厚生省予算割合は一三・四%であるということで、厚生大臣はこれでよろしいと考えておられるかどうか、お聞きいたします。
  13. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、私は、これで決して満足をいたしておるものではございません。全体の予算の中に占める社会保障給付費をもっと引き上げたい、これがが私どもの念願であるのであります。ただ、ここで私は、小柳委員に御理解を特にお願い申し上げたいと思いますことは、わが国が、敗戦後廃墟の中から立ち上がりまして、国の復興をはかっていく、また国民生活の安定をはかっていく、そういうことで、立ちおくれになっておりまするところの道路でありますとか、あるいは住宅でありますとか、あるいは港湾、鉄道、そういう社会資本充実、あるいは戦禍からの復興、そういう面に特別な予算が要りますことは、御了承いただける点だと思うのであります。北欧諸国等におきましては、道路の問題にいたしましても、あるいは住宅の問題にいたしましても、すでに、これらは解決をされておる問題であります。イギリス等におきましては、三百年、四百年前の住宅に居住をしておる。こういうように、社会資本の底に長い問の蓄積がなされておるのであります。わが国におきましては、終戦後、そういう面につきまして、どうしてもそれに最重点を置かざるを得なかった、こういうことであったのであります。幸いにして、この数年間、わが国経済も非常に飛躍的に発展をし、国民の総所得もふえてまいりまして、社会保障の面に相当予算を計上できるように相なったということで、政府といたしましても、社会保障に特に力を入れる、佐藤内閣経済開発に見合った社会開発を強力に推進するということをお約束申し上げておるのでありまして、そういう線に沿いまして今後努力を重ねてまいりたいと存じておるような次第でございます。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 ちょうど終戦後二十年たちましたが、四十一年、二十一年目をこれから出発するのであります。この二十年、第一段階を十年といたしますと、第一期は終戦後の混乱時代で、人のことを考えるひまもなく、自分の生活だけやってまいった。第二期は十一年目から二十年目までの十年間で、この間、やっともの心がつきまして、周囲を見回して、社会福祉あるいは社会保障などを国民全部が考え始めました。いま、ちょうど第三期の十年目に入るわけでありますが、先般来私は、ガン対策重度身障児の問題を考えまして、それを国会で取り上げるということは、やはり国民がそのほうに向いてまいっておる、まあまあ、みずからの生活を一応見直して、そこから谷間にある、日陰にある人々に国民全部が目を向け始めたというような時期でありまして、そういう第三期の十年に入りましたこの四十一年度の予算という観点からいたしますと、非常におざなりなものがあるのではないか。いま大臣は非常な抱負を、新たな意欲を述べられましたけれども、いままでの惰性といいましょうか、昭和三十七年に答申が出まして、その線に沿ってやってきておりますけれども、いま大臣が言ったように、社会資本もまだ充実しておりません。まだ日本の全体的なべースというものは戦前に復帰していないのだ、立ち上がっていないのだ、というような意識が底にあるような気がしてならぬのです。これは、政府全体、自民党の政策の中にそういうようなものがあるような気がしてならぬのです。私ども見解としては、総理大臣も言われるように、福祉国家社会保障をこの際充実しようとするならば、社会資本充実ももちろん大事でありますけれども、この際、第三期の十年として、もう一歩、飛躍的な社会保障への前進をする年でなければならぬ、私はそういうふうな見解を持っているわけですが、社会保障制度審議会答申の三本の柱の第二にこう書いてございます。「国民所得および国家財政における社会保障費の地位については、今後十年の間に、日本は、この制度が比較的に完備している自由主義諸国の現在の割合を、少なくとも下廻らない程度にまで引き上げるべきこと。」、昭和四十五年ごろを目途に、こういう勧告が出ておるのでありますが、私は、いまの日本の国力から申しましても、もう少し内閣全体が社会保障に取り組むならば、この答申に出ました第二の柱である、少なくとも大半の自由主義諸国の辺までに到達する勢いをもって予算を組んでおかなければならなかったのではないか。カーブを描きますならば、そのままの延長のカーブになっておる、そういうような気がしてならぬのですが、この点について大臣の御見解をお聞きいたします。
  15. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 社会保障給付費国民所得に対する割合でございますが、北欧諸国におきましては、大体十数%前後のところに平均がいっておるのではないかと思うのであります。これを目標に、これに到達するようにということが、私どもの当面の目標であるのでありますが、一九六三年にその割合は六・四%という水準になっております。四十一年度の予算成立をさせていただきました暁におきまして、それが国民所得に比べて何%になりますか、まだ試算をいたしておらないのでございますけれども、一九六三年よりは相当上回っておりますことは事実であると思うのでございます。そこで私は、この国民所得に対する社会保障給付費割合を検討いたします際に特に留意をしなければならぬ点は、医療保障の面におきましては、私は、おおむね北欧先進国並み水準までに近づいておる、こう思うのでございまして、立ちおくれておりますのは、制度発足が、非常に近年になってその発足をみたいというけうなことで、所得保障の面、年金制度の面が非常に立ちおくれになっておる。これが、全体の国民所得に対する社会保障給付費割合北欧諸国に比べて低い水準に数字的になっておるという大きな原因であろうかと思うのでございます。もう一つの点は、児童手当制度の問題でございます。これは、私ども、ぜひ児童福祉制度を早く発足させたいと、こう考えていろいろ検討を進めておるのでありますが、この児童手当制度北欧諸国ではすでに行なわれておる、それがないという点も、全体の比率を低めておる有力な要因になっておると、こう思うのでございます。そういう点を率直に私ども反省をしつつ、今後社会保障制度審議会の御答申の方向に向かって努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 大臣がいまおっしゃったように私も考えます。医療保障についてはまあまあ、それから所得保障年金制度というものがおくれておる、特に児童手当制度がないということは、先進諸国に対して恥ずかしいことであると、こういうふうに私も理解いたしておるところであります。したがって、その所得保障の一番最低のところである生活保護基準、このことについて質問いたします。  先般、一般質問で鈴木君もちょっと触れられましたから、率などについては触れませんが、私は、この生活保護基準引き上げが、日雇い労働者の賃金、いわゆる失対賃金と常にてんびんにかけられながら予算査定をされることを非常に不満に思っているところであります。失対賃金は、これは労働省担当でありますが、生活保護基準引き上げ厚生省であります。それが常にてんびんにかけられて、常に足を引っ張り合いながら、これが日本の最低生活を規制いたしておる。そこで、この生活保護基準というものをどこへ持っていくかということが、日本国民生活一つの方向をきめるのではないか……、これは、大臣もそういう御見解だと思います。そこで、この生活保護基準について、われわれは常にこの引き上げを要求、要請いたしておるところでありますが、その率よりも、私は、内閣自体が労働省で扱う失対賃金と厚生省で扱う生活保護基準引き上げを常にからませながら予算を査定してまいる、そこにべースを置いて、一切の予算をそこから発足していくという、このシステム自体に非常に不満を持っておるのでありますが、この点について大臣の御見解をお伺いいたします。
  17. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今年度の失対賃金の伸び率は、御承知のように一二%であったと思います。これに対しまして、生活保護基準伸び率は、前年度比一三・五%、こういうことになっておりまして、失対賃金の伸び率とは、必ずしも、それによって制約を受けたり、また足を引っ張られたというようなことではないのでございます。予算折衝の際におきましても、私は、そういうことを全然念頭に置かずに、生活保護基準改善ということは、わが国社会保障の有力な柱である最低の社会保障の線をきめるものであるという点に特に意を用いまして、予算折衝をいたしたのであります。当初、厚生省といたしましては、一六%アップということを提案をいたしたのでありますが、それは、どういうことで一六・五%を提案しながら結論的には一三・五%になったかという点につきましては、生活保護基準改善をいたします場合に、その考え方の基礎になりますのは、一般国民生活水準伸び率がどうなるであろうかということを、まず私ども前提に置くわけでありまして、昭和四十一年度の経済見通しによりますと、一般国民生活水準伸び率は一〇・二%でございます。それに対しまして生活保護の面をできるだけ格差を縮めていこうというので、最初その格差の縮少を五%程度見込んで一六%ということで折衝をいたしたのであります。しかし、いろいろ折衝の過程で、財政事情等もございまして、格差の縮少を本年は三%程度でがまんをする、こういうことに相なりまして、一三・五%というところに終局的に落ちついた次第でございます。私は、社会保障制度審議会昭和四十五年度を目途にして、昭和三十五年ベースの実質三倍程度のものに改善をすべきであるということを念頭に置いておりまして、そこに向かって前進を続けていきたい、このように考えておる次第でございます。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 ここに生活保護基準引き上げ率を私が表にとっておりますが、昭和三十六年が一六%、三十七年一八%、三十八年一七%、三十九年一三%、四十年一二%、四十一年一三・五%、率からいいますと、約九〇ぐらいになりますが、これから物価の値上がりの率を引きますと、率は六五・五%くらいにしかならない。この答申によりますと、昭和三十七年から四十五年度に約三倍に引き上げるということが言われておりますが、これでは六五・五%でありまして、約三分の一しか上がってないわけであります。この答申のねらっておるところは、私が申し上げましたように、この生活保護基準と失対賃金というものが日本国民生活一つのベースであるから、これを上げなければ、どんなに文化国家をうたっても、から念仏だということで、この三倍に上げなさいということが答申の中にあるものと理解いたします。そういたしますと、いま大臣はいろいろここで見解を述べておられますが、実際数字がそれを示しているわけです。物価の値上がり、あるいは鉱工業生産の上昇等から比べましても、この生活保護基準が六年間に六五・五%しか上がっていないというこの事実は、何と弁解されましても、厚生大臣が何と言われましても、まだ、いわゆる自民党内閣というものが、生活保護者あるいは失対の諸君に対してほんとうに国民的な思いやり、日陰の者としてこれを引き上げようとする思いやりがないのじゃないかと言われても弁解できないのではないかと思うが、いかがですか。
  19. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 全体の御批判に対しましては、私も数字的には率直にそのことを認めるわけでございますが、しかし、私どもができるだけこの格差を縮少しよう、そうしてできるだけ早く一般国民生活水準に近づかせるようにしようという努力をし、今年は物価等も十分織り込みまして、そうして一般生活水準が一〇・二%の上昇に対しまして一三・五%というぐあいに、格差縮少の努力が、そこに数字の上でもあらわれておるのでありまして、今後も答申目標に向かって鋭意努力を続けてまいりたいと考えておるわけであります。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 政府生活保護基準引き上げというものが、国民生活の全体のレベルを引き上げる一番ベースになるものと私は理解いたしますから、重ねて今後の努力を要請いたしまして、次に入ってまいりますが、次は、何といいましても、年金制度が諸外国に対しておくれているという、大臣がおっしゃったとおりであります。この年金制度の問題で最も私どもが憂えておりますのは各種年金で、その給付が違う、アンバランスであります、非常に格差がひどいということであります。また、財源もおのおのばらばらでありまして、プールしていないものですから、豊かな財源を持つ年金もあれば、枯渇している赤字の年金もあるというようなことであります。したがいまして、この年金制度をよくするには、まず財源の問題など、それから格差の是正など、根本的に改正していかなければならぬのではないか。かつて、私どもは、厚生大臣から、国民年金と厚生年金を中心にして、各種年金をこれに統合し調整していくのだという話を聞いてまいりました。この年金制度について、一体根本的には、いまの内閣はどういう方向をとっておられるか、お聞きいたします。
  21. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 年金制度は、国民に対する所得の保障、特に老後の生活をそれによって保障し、これがささえになるという給付の内容でなければならぬ、こう考えておるのでありまして、それに向かって、私は、国民所得の向上、また経済の発展と見合って逐次内容を改善していくべきだと、こう考えておるのであります。昨年、国会の御協力を得まして、厚生年金制度が、いわゆる一万円年金改善を見たのであります。今年は、国民年金につきまして二・五倍程度給付内容を引き上げる。そして夫婦でいわゆる一万円年金を達成するという改善をやろうと、法案の提出をし、御審議をお願いするわけでございます。私は、その厚生年金あるいは国民年金の改正によりまして、相当程度給付内容の改善ができるものと、かように考えておるのでありますが、しかし、私は、これでもって老後の国民生活を完全に安定させるということにはまだ十分でない、かように思うのでありまして、先ほども申し上げましたように、国民所得の伸び、経済の発展と見合って逐次段階的にその内容を改善していきたい。また、負担の面につきましても、現在のところ、各制度間におきましていろいろ差がございます。国民年金のほうは、何といっても、一番経済力の弱い階層の方々を対象といたしておりますので、三分の一国庫負担をやっておるのであります。他の年金におきましては、国庫負担が二〇%のものもあるというような、いろいろ、そこに事情を異にいたしておりますけれども、今後、この所得保障制度がほんとうに老後の生活のよりどころとなるように改善をしてまいりたいと存ずるのであります。  なおまた、障害年金でありますとか、遺族年金でありますとか、そういう面につきましても改善を加えておるのでありますが、今後とも、制度的にもいろいろ改善を要する点があると考えておりますので、その点につきましても留意をいたしてまいる所存でございます。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 深い年金の論議は、また社労委員会などでやられるでしょうから、私は、ここでは予算委員会的に質問してまいりますが、年金の問題で、いま老後の安定とおっしゃいましたが、一番心配なのは、物価上昇に伴う年金の金額の実質的低下でありまして、物価上昇に伴ってスライドアップしなければならぬということを再三再四われわれは言ってまいりました。制度だけはどんなによくても、物価がこんなに上がりますし、また、インフレが生じてまいりますと、現在月に一万円もらう年金は、もう五年たち、十年たちますると、ほとんど生活のささえにならぬわけですね。このスライドアップの問題を真剣に考えなければ年金は骨抜きではないかと思いますが、現在のスライドアップに対する取り組みと、将来の構想についてお聞きいたします。
  23. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 年金に実質的な給付が確保されるようにスライド制をとるべきであるという御提案でございますが、私どもも全く同感でございまして、しかも、二十五年、三十年というようなぐあいに長期にこれを拠出し、積み立てていく制度であります以上、どうしても物価との関連あるいは貨幣価値との関係、こういうものは当然注意をし、それによって給付が実質的な低下をしないようにはかるということが大切な問題であると考えておるのでありまして、ただいま、スライド制につきましては、これを採用するという前向きの方向で、年金審議会等で御審議をお願い申し上げておるところでありまして、その御答申をまって、スライド制につきましても前向きで検討したいと存ずるのであります。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 いまの問題、もう少し事務当局から具体的に説明を願いたいと思いますが……。
  25. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) スライド制の問題につきましては、かねて前国会におきまして、厚生年金保険法の成立の際、両院におきまして、審議会において御審議いただくように附帯決議をいただいておるのでございます。その結果に基づきまして、厚生省所管年金制度であります厚生年金保険法及び国民年金法それぞれにつきまして、社会保険審議会あるいは国民年金審議会におきまして御審議をいただき、一方各国から、ただいま大使館を通じまして、スライドに関する資料の収集をしておるという状況でございます。なお、スライド制につきましては、いわゆる政策スライドと自動スライドというようなタイプが言われておるのでございますが、政策スライドは、趣旨として、国民生活水準、物価等に年金水準を合わしていかなければならないという趣旨でございます。一方、自動スライドのほうは、一つの方式を定めまして、自動的に年金額が上がっていくということでございますが、この政策スライドの意味におきましては、現行の国民年金法、あるいは厚生年金保険法、特に改正後の厚生年金保険法におきまして、その二条の二あるいは第四条におきまして、その趣旨が明らかにされておるものでございます。したがいまして、われわれのほうといたしましては、この趣旨を、いま少しく具体的な形にまとめ上げていくということに重点を置いて御審議をいただきたい、かように思っておるのでございます。  なお、ただいま、各国から集まりました段階におきましては、完全な自動スライド制をとっておる国は比較的僅少でございまして、西ドイツ、英国、あるいはフランス、あるいはイタリー等につきましては、一つの方式を定めつつも、基本的には、政策的なスライドであるという状況のように承知いたしております。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 スライド制が早く実現いたしませんと、現状では、どんなにりっぱな制度ができましても、もう信頼がないのでありますから、早急にスライド制の実現のために努力してもらいたいと思います。  それから、これも少し基本的な問題でありますが、年金制度大臣は老後の安定ということを中心にお話しになりましたが、いわゆる社会保障的に考えるのか、あるいは保険主義、保険的に考えるのか。掛け金が幾らだったから年金が幾ら、というふうに考えてまいるのか、あるいは社会保障的に、農村に働く皆さんも、中小企業あるいは商店に働く諸君も、とにかく老後六十歳、六十五歳になったら、年金で化清していかれるようにしなくちゃいかぬと考えておるのか、それをまず聞いておきたいと思います。
  27. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、先ほど申し上げましたように、この拠出年金制度が老後の生活の保障になるように、その実質が確保されなければならない、かように申し上げておるのでありますが、したがいまして、あくまで保険主義でなくちゃいかぬとか、あるいは社会保障的なものでなくてはならぬとかということは、その主義とか形態には実はこだわっていないのでございます。国民年金等におきましては、五年ごとに再計算をするという制度もございますし、経済の発展や国民所得の上昇、また負担力、そういうものを勘案しつつ、適正な保険料の御負担を願うと同時に、これに対して、国としても、それに見合ってできるだけの助成をする。そうして老後において、それが生活のささえになるように、それが確保されるように、そういうことでこの保険制度を運用してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 あらゆる場所で私は申しておりますように、いまこの年金の問題で二つあります。一つは、かつて年金を高く納められた御老人が、実質的な効果がないために、生活に非常な不安があるという問題が一つ。それから、制度の完備しておった職場に働いた人は、まあまあ老後の安定を得ておりますけれども、それがなかったところの人は生活が非常に不安であるという、この二つの問題が、この老後の安定ということについて非常に大きな問題であります。で、私どもは、制度全体として根本的に変えなければなりませんけれども、とりあえずは、昔掛け金をかけた人で現在年金をもらている方に対する助成ですね、それと、国民年金を、現在の無拠出の福祉老齢年金などを大幅に引き上げて、そして商業の人も農村の人も、国民年金の福祉老齢年金で、まあまあ子供から小づかいをもらわなくても暮せるところまでいかないものだろうか。ですから、掛け金をかける一国民年金の老齢年金は、これは十年先二十年先でありますから、これはじっくりかまえて検討できるわけです。現在七十歳なり七十五歳になった老人方が福祉老齢年金の千三百円を非常に喜んでいるのでありますから、これもせめて五千円なり六千円に引き上げたら、もっと日本が明るくなりはせぬか。これは少し私の極端な意見かもしれませんが、たとえば軍人恩給などというものがあります。あるいは遺族年金などというものがあります。これは総理府とも相談されて、ひっくるめて財源をプールいたしたならば、平均五千円なり六千円なりのその金が支給できるのではないか、福祉老齢年金が支給できるのじゃないか、もちろん、軍人恩給というものは軍人としての権利でありますから、だからそれを引き下げろとは申しません。そういうものをひっくるめまして、御老人、たとえば六十五歳の御老人に対してはどうするかという、こういうような国としての根本的な対策が、まず暫定的に必要じゃないか。だから、たとえは公共企業体なのど共済年金などを厚生年金に合わせていこうとか、国民年金に合わしていこう——これはなかなかたいへんでありますから、まず、年齢的に六十五歳なり、一歩譲りまして七十歳以上につきましては、一切をこれでパーにしながら福祉老齢年金を生み出していったらどうか、こういうことも、いましょっちゅう考えているわけでありますが、こういうものについて抜本的な福祉老齢年金改善の方策について検討されたことがあるのかないのか、お聞きいたします。
  29. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 各種の年金を総合いたしまして、ただいまお話しのように、六十歳から六十五歳あるいは七十歳で一律に一つ年金制度を考えてはどうかという御質問でございますが、現在、厚生年金国民年金、あるいは各種共済組合で徴収する保険料は、総額でおよそ四千五百億円程度でございます。かりに六十五歳以上の人口で考えてみますと、六百五十万人程度でございますので、これらをすべて、この四千五百億円でまかなうということは理論的には不可能ではないのでございますが、しかし、御案内のとおり、老人人口は急速に増加をいたしまして、あと五十年以内に、現在の英国の老齢化比率を上回る見込みでございまして、世帯間に非常に不均衡が生ずるわけでございます。また、共済組合あるいはその他の年金制度におきましても、たとえば五十五歳から支給するといったような既得権があるのでございまして、それらのものを無視することはできないわけでありまして、やはり、各種年金制度の均衡のある発展をはかりつつ、福祉年金についても引き続き改善をはかっていくということで考えるほかはないというような考えでいるわけでございます。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 年金制度は、もう少し別の場所で根本的に質問することにいたしまして、次は児童手当でありますが、大臣も言われたように、児童手当制度がないということは、諸外国に対して恥ずかしいことでありますが、先般ちょっと姿をあらわしまして立ち消えになりました原因はどこにあったのか。予算の問題であるのか、あるいは制度の問題であるのか、お聞きいたします。
  31. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、児童手当制度は、ぜひこれを実施に移したいということで検討を進めておるところでございます。かりに、義務教育を受けておりますお子さん方以下の子供さん全部を対象といたしまして、月額千円ずつ支給するといたしましても、三千億程度の膨大な原資が必要に相なるのでございます。そこで、国としての財政事情もございますし、その支給の範囲をどの程度にしてこれを段階的に広げていくか、低所得の方々からこれを始めて、逐次段階的に範囲を広げていくのか、また、第二子あるいは第三子に支給するということをまずやって、逐次これを全体の児童に広げていくという方法をとるべきであるかどうか、また、給付の額をどの程度にすべきであるかという問題、さらに、勤労所得者等に現在各事業主が支給しております家族手当制度、この中には子供さんの扶養手当的な趣旨も含まれておるわけであります。そういう関連をどうするか、いろいろ研究を要する点があるわけでありまして、目下、先進諸国等の制度の実態、そういう点も検討を加えながら、また、わが国の実情に即するようにするにはどうあるべきかというような問題を鋭意検討いたしておるのでありますが、できるだけ早く成案を得まして実施に移すようにいたしたいものと努力を重ねておるところでございます。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 児童手当制度については基本的に考えていただかなければなりませんが、いま検討中のようでありますが、いつごろになったら、その素案でもできるのかお聞きいたします。
  33. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのタイムテーブルにつきましては、企画室長のほうから……。
  34. 加藤信太郎

    説明員加藤信太郎君) 児童手当制度のタイムテーブルにつきましては、現在、三十七年度以来調査を進めておりまして、四十一年度も調査予算の御審議をお願いしておりますが、制度の基本の問題につきまして、大臣からも御説明申しましたように、非常にむずかしい問題がありますから、いま、はっきりした時期を、いつできるかということをお答えするのは、ちょっと困難かと思いますが、四十三年度以降の段階において何らかのものをつくっていきたい、そのような方向でいま努力をしておる次第でございます。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 去年一応案が出たのですからね。厚生省から一応案が出て、たたかれて引っ込んだんだ。これをまた四十三年以降といったって、ちょっとわかりませんから、大事な予算委員会ですから、もう少しその内容を言っておいてもらわぬと困る。
  36. 加藤信太郎

    説明員加藤信太郎君) 小柳先生のいまのお話のは、中央児童福祉審議会の児童手当部会における中間報告の案のことをおっしゃっていると思いますが、これにつきましては、私どものほうは、中間報告をいただきまして、その中間報告に盛られた点などを中心にしまして、現在事務的に諸外国の制度その他と比較しながら検討しておる段階でございますので、厚生省の案というものは、まだ正式に素案もできておりません段階でございますので、さよう御承知願いたいと思います。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 まあ、はっきり言いませんけれども厚生省案として出たんですから。それはスクープされたのか、あるいは発表されたのか、知りませんけれども、それは新聞に出たのですからね。まあ、それは取り上げませんが、大臣も言われたように、児童手当制度がないということは、社会保障制度の一番大きな歯が欠けておるとおっしゃるのですから、もう少し真剣に取り組んで、まあ千円だと三千億円要るとおっしゃるが、ほかに、たとえば、現在、各会社なりあるいは公務員、準公務員、それぞれ家族手当というものが出ておりますから、そういうものとのバランスもありましょう。妻だけの手当は会社からもらうけれども、子供の手当は政府が出すのだという考えもございましょう。いろいろ、もう少し真剣に前向きで検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  38. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私、先ほど来申し上げておる趣旨は、小柳さんのお考えとやはり同じ気持ちで努力をいたしておるわけであります。御了承いただきたいと思います。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 次は、一番初めにおっしゃった、医療保障についてはまあまあとおっしゃいました、その医療保障の医療並びに医療保険で一、二質問いたします。  それは、私が長い間疑問に思っていて、何とかならぬかと思っている問題が二つあるんですが、  一つは、開業医のお医者さん方は、月末になりますと、自分の仕事のあとの始末、カルテを整理して保険事務をやる、そのために家族総動員で二日も三日も徹夜されるという話を聞いておるわけです。それを医師会に持っていって、同業の医者が選出した委員から判定もらって、それで金が来るというシステムですね。  第一の問題は、そのお医者さんは、これはもうずっと年々歳々のことでありますが、大事な病人をかかえながら、朝から晩まで働いておられる。その医者並びに御家族が、月末になりましたら二日も三日も徹夜をして、その整理をして自分で事務をやって医師会に届け出るというようなことをやらなければならぬのであろうか、これは私は長い間疑問に思っているんですが、そんなものは省いたら、医師というものはもっとほんとうの仕事ができやせぬか、こういうふうに思うんですが、大臣どうお考えですか。
  40. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 医療保険の給付のやり方につきましては、現金給付のやり方もございましょうし、いまのように現物給付のやり方もあるわけでございます。私は、基本的には、やはりいまの制度のほうがよろしい。ただ、請求書等をもっと簡略なものにする、そうして御指摘のように、あまりそういう本来の医療の仕事でない面で、むだな浪費をしないような簡略化、簡素化をすべきであるという観点で事務当局に検討を命じておるのでございます。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 私、しろうとでよくわからぬのですが、医療費の単価には事務費などというものが入っているんですかね。医者が貴重な、ばく大な日にちをかけてその事務をやられる、その事務費などというものは、医療単価に入っているんでしょうかね。
  42. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) お医者さんの請求につきましての労力費といいますか、そういう形のものは入っておりませんけれども、しかし、処方箋を書いたり、いろいろと診断書を書いたりする場合の文書料的なものは点数の中に入っておるわけでございます。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 もう一つ、これはもう最近非常に問題として、もう少し実態調査をしなければならぬと思っておるんですが、ある役所の厚生課長に会いましたところが、一カ月に十五万円も保険給付を受ける、それは全体で何千名か何百名でございますか、で二人いたというんですよ。調べようとした……。もちろん調べなければならぬ。それが十五万円ということは常識で考えられぬというわけですよ。一カ月にしたらそんなはずはない。だから、その人を徹底的に調査しよう、ところが、係員はやれぬというわけですよ。調査が具体的にやれぬというわけですよ。それで、いろいろほうぼうから聞いてみると、やっぱりその、かかった医者などに、もう次から保険を扱わぬぞと、やられる危険性があるということを係長が言うておったですね。そういうことで、もちろん私は、それだけ医療なり実費がかかったものと思いますが、厚生課長はあきれて、あまりやりよったら自分も首を切られるというのですが、そういうようなものが方々にあるのじゃないか。これは、私が社労の委員長時代でしたから、徹底的に一ぺんやろうかなと思いましたけれども、私もほかの仕事があったものですから、できませんでしたが、そんな話は聞きませんですか。
  44. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 一件当たりにつきまして非常に高額な診療費にのぼるということは、その患者の病状なりその他医師の診療内容によりまして多岐にわたっておりますので、ケース・バイ・ケースでこれは考えていかなければならぬ場合が多いと思います。ただ、症状によりまして他の症例と比べてみまして、非常に点数内容が多過ぎるというような例は、私どももしばしば聞くことはあるわけでございますが、これは長年にわたりまして、個々の保険医療機関につきましての一定の請求のしかた等を見ておりまして、支払い基金等では、大体この医療機関につきましては他の医療機関に比しましてはなはだしく請求が多過ぎる場合が多いという判定があったときには、これは支払い基金におきまして査定をするとか、あるいは場合によっては県の保険課を通じまして指導をし、さらに監査をするというような形で、直接保険医療機関の指導監督をやっておるわけでございます。何しろ二十万近い保険医療機関並びに保険医でございますので、中には不当と思われるようなケースもなきにしもあらずでございますが、そういうことのないように十分今後、関係機関を督励して、善処いたしていくつもりでございます。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 たくさんそんなものがあるものですから、きのう、東大の卒業式で学長がおっしゃったあの訓辞がひしひしと身にしみるわけです。東大を出た諸君がここにもたくさんおられると思いますが、ほんとうに決断と勇気をもって、そういうふうなものの不正と戦い、あるいは暗い谷間のものを引き上げ努力をするなら、もっと世の中がよくなるのじゃないかということをしみじみ感じておるわけですが、私は、昨年の予算委員会で、医業実態調査の予算が空白になっておったものですから、前の神田厚生大臣に迫りました。ところが、必要があれば予備費から出させるという大蔵大臣の言明がありましたから、一応それで通過しましたが、ことしはどうなんですか、この医業実態調査というのは。
  46. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ことしも同様でございます。医業経営の実態調査、これにつきましては、先般中医協からも意見書が出ておりまして、診療報酬体系の適正化を行なう前提といたしまして、医業経営の実態調査をやるべきである、また、中医協自身におきましてもそれを行なうことを決定をいたしまして、ただいま診療者側、支払い者側の委員等で、その進め方につきまして、いろいろ話し合いをやっておる段階でございます。政府におきましても、厚生省が直接管理監督をいたしておりまする国立病院あるいは国立の療養所、あるいはまた地方公共団体、あるいは公的医療機関等々の、厚生省として直接なし得るところの医業経営の実態調査は、これを進めておるのであります。ただ、開業医の方やあるいは私的医療機関の調査ということになりますと、どうしても医師会等の理解ある協力を得て、円満にこれを実施しなければ、その目的を達することができない。しかも、全体の医療機関の中に占める比重というものは、やはり半分以上を私的医療機関が占めておるのでございますから、どうしてもそういう面の実態調査もやらなければ、完全な医業経営の実態を把握することができないのであります。だから、せっかくそういう考え方で話し合いをいたしておるのでありまして、話し合いがついて実施に移すという場合には、予備費からこの予算を支出するということにしまして、大蔵大臣とは話し合いがはっきりついておるのであります。
  47. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ちょっといまの問題に関連して大臣にお伺いしたいのですが、局長さんでもいいのですが……。医業の実態調査は長年の問題で、ぜひ十分な調査のできるようにしてもらいたいと思うのです。  それに関連しまして、これは健康保険組合の問題ですけれども、お医者さんのほうの調査をすることは、もちろんこれはできないけれども、組合員のほうの実態を、これを一ぺん調査してみたい、ふに落ちないというか、実態がなかなか把握できないので、患者である組合員のほうの調査をしたいという考えで調査にかかったのですけれども、そういうことをすることは、医療機関に対するこれは不信用を意味するものだから、医者のほうの立場から見て、そういう調査をなさることには絶対賛成ができない、反対だというわけで、患者のほうの状況を調査することも実はできないというようなことを聞いたのですが、はたして、そういうことがあるのであろうか、どうであろうかという疑問を持つのですが、これについて伺いたい。
  48. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先生御質問の中身につきましては、実は前々から日本医師会のほうから厚生大臣あてに、いわゆる保険者が患者調査をやることについては、患者と医師との人間関係、信頼関係を妨げるおそれがあるから厳重中止をするようにという申し出を、再三にわたって、私どもはいただいておるわけでございます。ただ、現実に、ある組合、あるいは共済組合等で患者調査をやっております実態は私どもも承知をいたしております。ただ、これは調査自体の中身の問題になってくると思うわけでございまして、診療のこまかい細部の点まで患者調査を通じてやるということにつきましては、確かに診療内容の干渉といいますか、そういう形に発展するおそれがあるので好ましくないと思っておりますが、片一方、保険者としましては、保険につきましての患者の認識を深め、また患者の健康管理をやる責任を持っておりますので、その範囲内において調査をすることにつきましては、私どもは、別に医師会が人間関係云々という筋合いのものではないと考えておりまして、要は調査内容の中身の問題であるということで、それぞれの健康保険組合なり、あるいは共済組合の方々と御相談をいたしているところでございます。中身につきまして一部誤解がございまして、そのような議論が国会内においても行なわれたことが実はあるわけでございます。十分に、お互いに意思の疎通をはかるようにして、やっていただくという方針でもって、今後やってまいりたいと思っております。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 医療保険の問題——最後の問題でありますが、医療保険の財源プールが現在ないのでありますが、組合健保あるいは国民健保のプール等、努力すればできるものからどんどん始めたらどうか——こういう努力をしておるかどうか、聞いておきたいと思います。
  50. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のとおり、わが国の各種医療保険制度は、その沿革的な関係等からいたしまして、負担の面におきましても、また給付の面におきましても、相当アンバランスがそこにあるのであります。また、したがって保険財政の内容におきましても、健全なものと非常な財政的に困窮をきわめておるものとあるのでありまして、私は今回、当面の臨時応急の対策といたしまして保険三法並びに国民健康保険法の改正案の御審議をお願いすることにいたしたのでありますが、しかし、どうしても長期にこれを安定をさせ、また健全化をはかっていくというためには、各種医療保険制度総合調整なり、あるいは必要に応じては統合というような、制度の技本的な改正が必要であると、かように考えておるのであります。具体的な例をとってみた場合におきましても、国民健康保険にはたくさんの老齢者をかかえておるのであります。組合健保のもので会社をおやめになったために、今度は国保のほうに移ってくる。若い年代におきましては非常に元気で病気もしない、医療給付を受けることもそうたくさんはないのでありますが、退職後の六十、七十という高齢になってまいりますれば、どうしても病気がちになるのであります。そのときには国民健康保険のほうの被保険者にならざるを得ない、そういうようなことで、一番負担力が弱いといわれる国保のほうにたくさんの高齢者をかかえ、また、それだけ多くの給付をせにゃいかぬというような問題も、そこにあるのであります。私どもは、こういう点につきまして、やはり十分掘り下げた検討を必要とするのではないかと、かように考えておるのでありまして、今回の保険三法並びに国保の御審議をお願いを申し上げたあとで、引き続き、制度の根本的な改正に取っ組んでいきたい。そして昭和四十二年度を目途に、ぜひ成案を得て、国会の御審議をお願いしたい、かように考えておるのであります。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 これは社会福祉全般の問題でありますが、各県ですね、各県民一人当たりの所得などはすぐわかりますが、社会福祉的恩恵などはすぐはわからぬのでありまして、事故の発生、乳幼児の死亡率、学校の所在、住民の保健福祉など、四千に余る市町村の実態はまちまちであります。これを調査して手直ししませんと、一律にこの法律で、立法措置で手を打っておりますると、各県、市町村でやっているのがプラスしたりマイナスしたりいたしまして、やらぬところはマイナスいたしますが、そういう市町村などのアンバランスを早急に手直ししないと、一律に社会保障とか社会福祉の議論はできないと思いますが、この点について調査なりあるいは手直しの方法なりあればお聞きいたします。
  52. 加藤信太郎

    説明員加藤信太郎君) 御指摘の点は、私どももその必要を痛感しておりますが、非常に問題がむずかしゅうございますので、実は数年来引き続きまして生活指標調査その他の調査を続けておりまして、どういう基準でそれを調査し、手直しをすればいいかという、実は方法論の研究を続けている段階でございますので、先生のおっしゃるような方向に持っていきたいということは、私ども念願しておる次第でございます。もうしばらく時をかしていただきまして、何かの方法を見つけたいと思っております。
  53. 小柳勇

    小柳勇君 公衆衛生局長にひとつ質問いたしますが、環境衛生はまあまあ年次計画が一応できております。公衆衛生のほうはまだはっきりした年次計画がないようでありますが、この予算の中ではそういう年次計画的なものがあるのかないのか、お聞きいたします。
  54. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 年次計画的のものといたしましては、一般疾病につきましてははっきりしたものはございませんです。
  55. 小柳勇

    小柳勇君 環境衛生では、まあ何次計画などといって提案されてくるわけです。公衆衛生のほうは、将来の見通しなり将来の政策というものが非常にあいまいもことしておるものですから、お聞きしておるわけですけれども、来年の計画なり、あるいは三年先、五年先の施設なり、あるいは指導方針なり、自治体に対する対策なりあるいは予算の方向なり、そういう年次的な計画がないと行き当たりばったりになって、いわゆる陳情政治になってしまうのでありますが、こういうふうな公衆衛生局としての一つの方向を、どの方向に持っておられるか、お聞きするわけです。
  56. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 公衆衛生局といたしましては、その所管する事項は結核、精神衛生、伝染病、こういうものが主体でございます。精神衛生につきましては患者の実態調査によりまして、この精神障害者の数というものが大体見通しがつき、それによりまして実際上これから把握できる患者が大体できてくる。結核においてもそういう形になっております。したがいまして精神衛生につきましては、大体数年のうちに、たとえばベッドにつきましても二十一万五千床を目標にしてやる、そういうふうなことは考えてやっております。
  57. 小柳勇

    小柳勇君 私、朝から質問いたしましたが、この三十七年の答申に沿って、その根本的な問題を、きょう御説明のありました予算案について質問したのでありますが、これから先般総括質問と一般質問で質問いたしましたあと、その詰めが残っておりますから、具体的に少しお聞きしておきたいと思うのでありますが、第一は、総括質問でいたしましたガン対策の問題で、時間が足りませんものですから突っ走りましたが、私が一番心配いたしますのは、現在の厚生大臣なり医務局長、あるいは公衆衛生局長がおられるなら、それはまあそれでいい、ところが大臣局長も年々おかわりになるのですから、やはり立法化しておきませんと、将来のレールがなくなりますから——これはまずい法律じゃ困りますけれども、大綱はわかっておるのでありますから、立法化いたしまして、それに沿って予算を逐次ふやしていくというような方針を立てておきませんと、これはことしはこんなに騒ぎましたが、来年になりましたら、もうガンなどというものは忘れてしまいまして——それかといって病気はなくなりません。やっぱりわれわれの周囲の人がどんどんガンでなくなっていくわけですから、先般も検討するとおっしゃいましたけれども、その立法化についての大臣見解と、大臣がさきに発表になりました、四カ年間に二百億ぐらいまでにこぎつけていきたいという、このいわゆる年次計画ですね、年次計画を少し詳しく御説明願いまして、これが将来の立法化のときの一つの要綱なり骨子になりますように、大臣見解を求めたいと思います。
  58. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ガン対策につきましては、今日までも政府としてやってまいったのでありますが、本格的にガン対策をこれから整備をし、力を入れてやっていこうというのが、昭和四十一年度を第一年度とする今後の計画的なガン対策推進でございます。私は、その際に法律の裏づけによって、そのガン対策の総合的な施策を年次的に整備充実をしていく、そのほうがいいのではないかという小柳さんの御提案は、これはお気持ちはよく理解ができ、私もその面の研究を進めたいということをお約束いたしておるのでありますが、ただ、いままで私どもが考えてまいりましたのは、結核でありますとか、あるいは精神病でありますとか、そういうものは一方において感染性、伝染性が強い、ほうっておくと周囲の人にこれが感染をする。そこで政府としては、これに対しまして強制収容等の措置を行なう。また、精神病の場合におきましては、自分を傷つけたり、あるいはまた他人を害したり、そういうような非常に周囲の者に迷惑をかける、またいろいろの事故が起こる。こういうような面から、やはりこれを施設に収容して適切なる措置を講ずる必要がある。そういうような面で結核や精神衛生に対しましては立法化をいたしまして、そして措置入院等の措置を講じておるのであります。また、そういう強制収容等をやります場合に、当然その裏づけとして公費でもって療養給付をする。こういうことに相なっておるのでありますが、ガンは病気の性質上、これが他に伝染をしたり、他に迷惑をかける、こういう病気の性質でないのでございまして、そういう面からいたしまして、国が、あるいは市町村が患者に対して措置入院等をさせるというような場面は想定できないのであります。ただ、わが国におけるガンは、年々十万人以上もガンのために倒れていっておる。しかも、三十四、五歳から五十五、六歳、六十歳あたりまで——社会の第一線で中堅になって働いておる方々がガンのためにたくさん倒れていっておるということは、重大な社会問題でもありますので、早急にガンに対するところの対策を強化する必要がある。そのためには、まず、ガン専門の医療機関を——中央のがんセンターを頂点としまして、全国的にこのガンの医療機関を組織的に整備充実をする。また、その専門医療機関に働くところの専門の医師あるいは放射線の技術者の養成——そういう専門医師、技術者の養成確保。さらに第三の問題としては、学問的あるいは臨床的なガンの研究を国の強力な助成のもとにこれをやってまいる。さらに現段階におきましては、早期発見、早期治療ということがガン治療の大切な点でございますから、集団検診を行なう。その際に、直接、集団検診に対する公費負担ということは採用いたしませんけれども、検診車及び検診車の運営費、そういう面を国が助成することによって、結果的に集団検診は安い料金で検診ができるように、そういうような対策を総合的に確立実施をしよう、これを年次的にその施策強化してまいる、こういう考え方で、いまおるわけでございます。  で、それに対して立法的な裏づけをして、そうして国の意思、国会の意思ということで、国がその実施を責任を負うてやってまいる。これも一つの考え方でございますが、いま病気の態様が結核や精神病と違います点から、私ども予算措置によって年次計画を立てて、これを計画的に、総合的に措置を進めてまいる、こういう考え方でございますから、小柳さんの立法措置を講ずべしという御提案につきましても、私ども十分に考慮いたしまして、今後研究してまいりたいと、こう思うわけでございます。
  59. 小柳勇

    小柳勇君 大臣の話を聞いておりますと、もう非常にばく大な夢が生まれるのですけれども、実際は二十億何千万円でしかないのでして、たとえば検診車の問題にいたしましても、三分の一だけの補助ですから、これは申請できない県もありましょうし、それから六十四万人を対象とした半額公費負担の集団検診が全面的に否定されておる。いま入院いたしまして患者に治療すると、四十万かかるということで、低所得者ではできないのですね。それから夫婦で、たとえば御主人と奥さんと一緒に診察にいきますと三千円から四千円かかるでしょうか。病気でないので保険が適用できないということになると、なかなかこれもたいへんなことであります。いま伝染病でないのだからということでありましたけれども、たとえば労働省所管では、じん肺というのがあります。これも伝染もしないし、危害も加えられないが、じん肺にかかりますというと、労災病院で治療するわけです。そういうことを私は申しておるのでありまして、立法化を考えるとおっしゃいましたから、まあくどく言いません。二十億円の今回のこの予算では十分の対策はできない、したがって、もっとふやしてもらいたいと思います。  最後に、WHO専門委員会のほうとの国際的な関連、ガンのほうの問題で、日本厚生省なりあるいは日本の医師会などが、どういうふうなつながりがあるのか、お聞きしておきたいと思います。
  60. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) WHOにおきましては、現在世界的な規模でやっておりますものは、比較的に公衆衛生の初歩的な問題が多うございまして、たとえば低開発地域における徹底的なマラリアの防除であるとか、地方病の撲滅であるとか、あるいは結核対策、らいの撲滅というようなことが主眼点になっておりまして、いわゆる先進国における保健衛生の問題については、どちらかというと比較的冷淡でございます。組織的に仕事が行なわれておりません。ガンの問題につきましても、現在、世界各国に対して共通の歩調でやっていこうというようなことはありませんので、ただガン専門委員会というものができておりまして、そこでガンの対策はかくあるべしというような一つのモデル的な構想を示しております。その中には、一次的な予防といたしまして、いわゆる生活環境内におけるガンの発因になるような条件をできるだけ排除していく、産業あるいは職業と関係のあるようなガン原性の条件を排除していくというようなことが基本的でございまして、そのほかには、医療機関の整備ということと、研究の共同化をやろうということでございますが、研究の共同化については、フランス等から提案がございましたけれども、いまだ実現を見ておりません。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  次には、この前、重度身障児に関する質問をいたしましたが、これのたとえば看護助手などの入手計画、募集計画、あるいは先般、具体的に提案しました三井三池、あるいは山野、あるいは北海道の炭鉱爆発などによる罹災者の未亡人の、養成による看護助手あるいは炊事婦などの採用について、条件など具体的に何かめどがありましたら、お聞かせいただきますと、私どもも最善の努力をしたいと思います。
  62. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 重症心身障害児施設の看護助手あるいは洗たく、調理その他の仕事につきましては、現在のところ、これらの施設の児童に対しましての愛情と申しますか、そういったものが一番根本的に大事な問題であろうかと思いますし、また、たいへん重労働を要するということでございます。しかしながら、それに反しまして、現在のところ、必ずしも給与がそれに伴っていないと、こういう状態がございます。  なお、お話のような炭鉱爆発関係の未亡人家庭の人たちが働くにつきましては、子供さんのおられる方もありましょうし、そういった住宅の問題、また、ある程度のやはり訓練を必要とするというふうに考えるわけでございます。そういった場合の生活の問題、こういう問題は、おもに労働省の関係かと思いますけれども、十分相談をいたしまして検討をさしていただきたいと、かように思います。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 高崎に精薄児のコロニーが決定したようでありますが、その決定のいきさつと、それから、どういう程度の児童まで入れるのか、それから、もしあのほかに将来計画があれば、それもお知らせ願います。
  64. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 重症心身障害児あるいは障害者、これらのお気の毒な方々の総合的な収容施設といたしまして、重症心身障害者の村を、国が中心になりまして、モデル的にまず一カ所建設をいたしたいということで、昨年来、コロニー懇談会をつくりまして、各界の御意見を伺いまして、その準備を進めてまいったのでございますが、とりあえず、その候補地を決定することに相なりまして、今回、高崎市郊外の通称観音山といっているのでございますが、その観音山一帯を候補地に決定いたしたのでございます。この決定にあたりましては、モデル的なものにいたしたいということで、東京近辺の各県の厚生部長等に候補地を御推薦を願いまして、十四カ所の候補地があげられまして、それを実地調査をし、また資料等によって検討いたしました結果、最後に残りました候補地が、静岡県の長岡市郊外の大仁地区、そこと、いまの観音山一帯の国有林野、この二カ所にしぼられたのでございます。それにつきまして、自然的な条件、それから環境、気象の条件、また、社会的な条件、居住性、地域の施設の利用の問題、交通の問題、また主体的な条件としては、社会復帰の効果等々の条件を比較検討をいたしました結果、高崎市郊外の観音山地区一帯と、こういうことになったのでありますが、私どもが特に重視をいたしておりますことは、この身体障害者の村をつくる目的、これはただ、そういうお気の毒な方々を一カ所に収容をして、終生そこでただ生活をさして、一生を送らしてあげる、そういうような消極的なものであってはいけない。そういう方々でも、残された能力というものがあるはずであります。そういう残存能力を発見をし、その能力を助長し、指導をし、そうしてその残存能力を通じて自活の道を与え、また社会への貢献ができるように、そうして、生きがいを持って、そういう方々も意義ある生活が送れるように、そういう社会復帰ということを大きな眼目にいたしておるのでございます。そういう観点からいたしまして、この村には病院もなければなりません、学校もなければなりません。また、職業訓練あるいは授産施設というものもなければならぬのであります。一つ生活共同体としての、そこにあらゆる総合的な施設がなされて、しかも、周囲の社会、一般の社会とも交流ができる、経済的にも文化的にも交流をされていく。社会から隔離してやるのではなしに、社会とのつながりを持って、そうして、これらの人たちをそういう方向で守り通していく、こういうのが、私はコロニーの目的に合致するという観点で、高崎市は交通の便も非常によろしい、また中小企業、手工業の盛んなところでございます。また群馬大学の医学的な施設もございます。また、いろいろな居住性におきましても、水道や、電気や、ガスもすぐ高崎市内から引けるというような点等を考えまして、高崎市に決定を見たような次第でございます。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 将来計画どもお聞きしたいと思いますが、またの機会にいたしましょう。  次は、結核病棟の問題でありますが、結核療養所などで空床が目立ってまいった、自宅療養の者がたくさんあるし、入りたい者がたくさんあると思うのでありますが、どうしてそんなに結核病床が空いているのか、簡単に御説明願います。
  66. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 結核の患者につきましては、実態調査等によりますと、患者数が減少してきておるということは事実でございます。それで、患者数といたしましては、三十九年度は九十七万九千五百六十六人、そのうち入院している者が二十二万三千九百九十五人、こういうようなかっこうでございます。なお、その中で活動性の者は二十万九千六百八十人で、こういう病床の関係からいきますと、これは三十九年度では利用率が七八・二%、こういうふうなかっこうになっております。これはこの患者として病院に入る場合におきまして、患者の中から法律によりまして命令入所をするというような者もあります。それからそうでない者ももちろんございます。それが全部含まれて入るかということになりますと、なかなか入らない者もございます。しかし、大部分の者が入っていくというかっこうになります。実情から申しますと、その数が満床に至らず、最近は空庁が多くなっている、こういう実情でございます。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 利用率が七八・二%ということは、二二%空いているということです、ベッドが。三百五十億の予算が組まれておったら、もう少し何とか——患者があるわけですから、何で入られないのか、そういうことを一ぺん調べておいてもらいたいと思うのですがね、そうでないと自宅療養がよろしいということならば、また対策を考えなければならぬでしょうし、この結核の問題、性病の問題、あるいはガンの問題などを考えてみまして、積極的な取り組みというものが足らぬような気がするわけですが、ただ一部だけ見て責めてもしようがありませんから、この結核問題についてはまた別に、その問題だけ調べておいてください。二二%なぜ空いておるのか。  それから看護婦の問題を最後にお聞きいたします。これは看護婦——正看護婦が足りないと聞いておりますが、正看護婦、あるいは准看護婦を含めて希望者が多いのか少ないのか、先般聞きましたところが、正看の希望者が少ないという話を聞きました。なぜかといったら、高等学校を出て三年も勉強して、そして短大卒の免状もない。だから、もし応募率が少ないとするならば、高等学校を出て三年も勉強されるのだから、短大の免状くらいやったらどうかと思うと言いましたところ、それには教科課程を若干編成がえしなければならぬ。あるのかないのかと言ったら、いま日本に二カ所くらいある、そこを出た人は短大の資格を持って出る。それにはカリキュラムがちゃんとある。それなら、ほかの看護婦養成所にもやったらどうか。それは厚生省管理です。厚生省と文部省と話ができるとおっしゃった。したがって、質問することは、この間もちょっと質問いたしましたが、看護婦については希望が多いのか少ないのか。たとえば国鉄の病院等で、この間、正看護婦養成の希望者を採用しましたところ、三十分の一、三十倍です。ところが看護婦さんが足らぬ足らぬといって、不足なんです。だから一体、希望者があるのかないのか、去年、私非常に心配になりまして、看護婦さんの希望者を高等学校に行って頼みなさいと言ったのですが、現在はどうかということと、それからいま私が申し上げましたようなことで、たとえば資格などというものがあれば、資格を与えたらどうか。きのうも新聞を見ましたところ、高等学校に看護科ができて非常に有望だと——嬉しいこととだ思います。こういう問題について質問いたします。
  68. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 看護婦の養成確保は、非常に大切な問題であると考えております。現在二十一万人ほどの方々が第一線で看護職員として働いておられるわけでありますが、まだ四万人程度不足を告げておるのでございます。そこで看護婦養成につきましては、厚生省関係の病院等はもとより、公的医療機関等にも助成をいたしまして、看護婦の養成をいたしますと同時に、文部省にもお願いをいたしまして、高等学校に看護科を増設をしていただく、そういうような養成に努力をいたしておるのであります。大体これによりまして昭和四十年度以降は、年間二万五千人程度養成ができる見通しでございますが、一面におきまして、いろんな御事情等で一万人くらいの方がやめていかれるのでありますので、ネットで一万五千人程度ふやしていくことができる。しかも、最近におきましては、看護婦さんになる志望者が数字的には相当ふえております。小柳先生は御心配なさっているようでありまして、あとで医務局長から御報告をいたしますが、幸い最近非常に志望者がふえてきておる。これがベビーブームの影響であるのか、また看護婦という職業に対する理解が相当各方面に浸透してき、また、十分ではございませんが徐々に看護婦さんの待遇改善されつつあるのであります。そういうことが相まってだろうと思うのでありますが、幸い希望者もだいぶふえておりますので、昭和四十五、六年ごろまでには十分看護婦のこの不足の問題は解決できる、こういう見通しを持っておる次第であります。数字的には医務局長から御説明をいたします。
  69. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の需給の基本になります看護婦になる人の問題でございますが、御承知のように、三十六年ごろが一番この看護婦の志望者も少なく、窮屈の度合いがひどかったのでございますが、その後非常な努力をいたしておりまして、養成施設の数におきまして、三十六年の六百七十八が四十年度には八百三十五になりました。この五年間で百五十七施設が養成施設として増加いたしております。これに応じまして、入学者の数も、この五年で約一万三千名ほど増加いたしております。こういう状況で、将来は、最近までに比べますと幾らか緩和されてくる。しかも、全体の病床の増床計画とにらみ合わせて計算をいたしましても、ただいま大臣から御説明がありましたように、四十五年ごろにはかなり緩和される。しかし、なお、不足を完全に解消いたすことはできないと存じております。  なお、本年度の志望者につきましては、国立病院あるいは国立療養所に設置されました養成施設の入学希望者をみますと、国立病院の看護婦養成所が五・五倍の志望、それから国立療養所の養成施設の志望者が六・一倍、准看護婦の養成は二・二倍、国立療養所では准看護婦の養成は非常に少のうございます。  以上のようで、最近はかなり伸びてきております。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。短大の問題は二、三話があったから、これは聞いたので、生徒さんはそういうことは望んでおられないかもしれませんが、私は、希望者が少なくて——それはそういう資格などの問題があるからと思ったものですから……。しかし、もしカリキュラムが変えられて、看護ということに差しつかえなく短大の資格がとれるようなら、やはりこれは一生のことですから、やるように検討してください。  それから最後に、また性病の話になりましたのですが、私が予算委員会で質問しましたら、これは売春防止法と混同しているわけですね。雑誌社からきまして、売春防止法を質問されたそうですが、と言われたのですが、売春イコール性病という観念がある。これは非常に悲しいと思うわけです。この間も言いましたように、売春がありましても性病の病源がなければ蔓延しないはずであります。青少年の非行化がありましても、病源がなければこれは青年に蔓延しないのでありますから、それと別個に考えなければならない。それは終戦後の混乱の時期に売春が出て、これが性病の病源だという誤った考えを国民に植えつけたということを、私は非常に遺憾に思うわけであります。したがって、啓蒙宣伝の問題ですね、学校教育には文部大臣は、中学校にも小学校にも教科があるとおっしゃいました。ところが実際教師に聞きますと、先生があまり教えたがらない、性病の問題はいやだといって……。そういうことでありますから、青年団の講演会だとか映写会だとか、私ども少年、青年時代にはトラックなどで模型を運んできて、梅毒のなにを陳列だなに並べてありました。最近はないようでありますが、手っ取り早くわかるような方法で梅毒など性病の脅威を知らせると同時に、矯風会が純血運動など活発にやりましたが、それが最近は少ないようでありますから、そういうものに対する指導援助ですね、援助など頼んで相当宣伝してもらって、そうして全部が気やすく検診をして、そうして秘密に国が責任を持ってなおしてあげるという態勢——売春婦や、あるいはそういう性病になった者を全部ぱくり上げるというような、そういう思想でなく、根本的な問題を私は期待をするわけです。宣伝啓蒙、それから診断、それから無料の治療、しかも秘密に治療してあげるという態勢を——私はここで答弁は必要ありませんが、私の気持ちを申し上げまして質問を終わる次第であります。いろいろ失礼なことを申し上げたでしょうが、以上で……。
  71. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  72. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 速記を起こして。  午後は、引き続いて厚生省所管について審査を行なうことといたします。十四時まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      —————・—————    午後二時十九分開会
  73. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) これより、予算委員会第四分科会を再開いたします。  昭和四十一年度総予算厚生省所管を議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  74. 林虎雄

    ○林虎雄君 大臣並びに関係の局長さん方に二、三お伺いいたしたいと思います。  最初は生活保護の点でありますが、先ほど小柳君からも質問がありましたので、それに関連したことになろうかと思います。今度の予算大臣も申されますように、だいぶ予算の増は見ましたけれども、はたしてこれでいいかどうかという点でありますが、ここにあります、まあ各級地によっても違いますけれども、大体標準の世帯の改定された、まあ一級地の場合二万六百六十二円ということでありますが、これではたして生活がどの程度てきるのか、そういう根拠をお聞きしたいと思います。
  75. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 東京都の、まあ一級地二万六百六十二円でありますが、FISの全国都市勤労の一級地の大体九〇%程度——第十分位といいますのは、一番下から全国に数えまして十に割りまして、一千万人階層でありますが、それから見ますと大体九〇%並みの生活と、一千万人の一番下の階層というかっこうになろうかと思います。
  76. 林虎雄

    ○林虎雄君 一級地でも何級地でも同じでありますけれども、この程度で四人の標準世帯の生活が、たとえば食糧、家がない人が多いでしょうから家賃、あるいはその他生活必需品等、そういうものを計算されてこうしたものも出たと思いますが、その点どのように計算されておりますか。
  77. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 保護基準に、御承知のように、一級地——都会から純農村まで四級地に区分してございますが、便宜上都会の一級地、それから計算を申し上げますと、四十一年度予算におきましては二万六百六十二円のうちで、飲食物費が一万三千二百三十四円。そのほかに住宅費が平均として二千円と計算してございますが、一級地の場合には第二種公営住宅の最高限度五千八百五十円、これは最高でありますが、平均的には一応二千円としてございます。そのほかに学校給食費というのは、これは実費でございますが三百八十八円、これは教育費のうちの飲食物でございます。それから基礎控除というのがございまして、いま申し上げました二万六百六十二円というのは、全然非稼働の三十五歳の男の人——あるいは体が悪いとか、失業しておるとか、非稼働の場合、それから三十歳の女の方、それから九歳の男の子、それから四歳の女の子という、標準的なもので非稼働の場合でありますけれども、普通FISと比べますときには、FISというのは勤労家庭でありますから、稼働が必ずあるわけです。その場合に、センサスのほうでは二万六百六十二円のほかに、主人か働けば飲食物費——カロリーも要る、地下たびも要るというふうなものが、たとえば日雇いのような、中程度というか、ちょっときついような労働程度という場合には、それに千四百七十円飲食物費を加える。そのほかに諸雑費、いわゆる地下たびとか手ぬぐいとかいうふうなものが要りますので、それが大体三千百五十円、それが上乗せになります。そういうふうなかっこうになりますので、主人が日雇いというようなかっこうになりますと、全部ひっくるめますと、大体二万六千ちょっとということに相なります。
  78. 林虎雄

    ○林虎雄君 大体食費というものが一万三千二百三十四円ですから、一人当たりにしますと三千三百円ですか、大体カロリー計算など一応してみた計算でございますか。
  79. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは一級地で申し上げますと一万三千二百三十四円で、一人当たりに直しますと百十円二十八銭、一人一日でございます。そのほかに、主人が働きます場合の飲食物費、さっき申しました勤労控除というのがありますので、それを合わせて飲食物費を一家族四人で割りますと百二十二円、こういう数字になります。これは栄養審議会の答申で労作別に、年齢別、性別で非常にこまかいカロリーが出ておりますか、その三十五歳、三十歳、九歳、四歳全部足しまして平均しますと、千八百八十五カロリー、子供もおりますので、そういうところから計算いたしております。
  80. 林虎雄

    ○林虎雄君 まあ年々厚生省も、生活保護も実態に即するように努力はしているだろうと思いますか、なお一そう、最低限の生活でありますから、いまの千八百カロリーというのは、二千五百カロリーという平均から見ますとだいぶ低いので、これに持っていくように努力をする必要があろうと思いますが、これに関連して末端の生活保護の世話をするとか指導をするとかいう点で、先ごろ何か指導の行き過ぎか勘違いか知りませんが、自殺者を出したようなことがあったのですね。古い冷蔵庫を持っているために打ち切るとかというようなことで。この実際はこの前もちょっとどなたか質問されたと思いますが、指導の行き過ぎであるのか、あるいはその被保護者の勘違いであるのか。そうしてもう一つお聞きしたいことは、こんな古い冷蔵庫を、冷蔵庫といえば、だいぶ中流家庭のような印象を受けますけれども、何か古いもりだそうでありますが、そういうものを持っていることを機械的に標準にして対象にするとかしないとかいうのも少し軽率ではないかと思いますが、この今後の指導といいますか、その考え方を承りたいと思います。
  81. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 大阪で起きましたところの、冷蔵庫を被保護家庭が持っておったというようなことで親子心中をした、この問題につきましては、まことに残念な事柄であるわけであります。生活保護の際に耐久消費財をどの程度認めるかという問題につきましては、これは国民一般の生活水準の向上と見合って逐次改善をいたしているのであります。現在自家用車、電気冷蔵庫、ステレオというようなものは、まだ一般家庭にはそう多く持たれておりません関係から、これは被保護世帯では認めないようにいたしておるのでありますが、その他のテレビでありますとか、あるいは電気洗濯機でありますとか、そういうようなものは国民生活全般に普及をいたし、各家庭でも相当持つようになっておりますので、これは被保護世帯でも認めるようにいたしておるのであります。また、バイクでありますとか、あるいは電話でありますとかいうようなものにつきましても、それが世帯における内職なり副業なり、そういうものの必要上から持たなければならぬというようなものにつきましては、その事情に応じまして認めておるのでございます。私どもといたしましては、国民生活の向上と見合って逐次そういう文化的な生活ができまするようにしてまいりたいと、こう考えておるのでありますが、地域社会の人々でまだ一割か一割五分しか持たないようなものを生活保護を受けておる御家庭で持っておりますことは、勤労しまた税金を納めておって、なおかつ、そこまで持てないものを持っておるということになりますと、地域の住民の方々との感情の面からいたしましても、そぐわないものがそこにあるのではないか、こういう納税者の立場もやはり考えなければなりません。ただ、私どもは、ケースワーカーの方々がよく実情に即した理解ある運用をしていただきたいということにつきましては、常にそういう方向で指導をいたしておるところであります。この事件につきましては、民生委員の奥田さんという方がこの母子世帯の日常の生活についてよく御相談にも乗っておったようでございまして、こういうような事件が発生するなどということはほとんど考えられなかったような事情にあるのであります。今後とも十分気をつけてやってまいりたいと考えております。
  82. 林虎雄

    ○林虎雄君 大臣のほうでお調べになった冷蔵庫ですね。確かに電気冷蔵庫なるものは一般の家庭ではまだ十分に普及しておらない。そういう、いわば一般の水準以下の、生活保護を受けておる人が冷蔵庫を持っておるということは、これは国民感情の上からも納税者の立場からも、大臣のおっしゃるとおりだと思います。ただ、だいぶ古いものだったという——電気冷蔵庫なと、ピンからキリまであって、自動車にも五万から十万で買えるような中古もあるので、そういうものだったのですか、あるいは常識的に見てかなりぜいたくといいますか、その生活の実態に照らして少しぜいたく過ぎたという、そういう見解をケースワーカーがとったようですけれども、実際そうなんですか、どうですか、その点をおわかりでしたら。
  83. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  昨年の夏に主人がなくなられたのですけれども、その前、おそらく一年ぐらい前に買われたのじゃないかと思います。したがって、買ってから二年か三年ぐらいたっておるだろうと思います。それで、一般の家庭にあるような大型のものではございませんで、それよりだいぶ、ちょっと小型なかっこうになっておりますけれども、いまおっしゃいましたように相当古いというほどのものではなかったようでございます。
  84. 林虎雄

    ○林虎雄君 次に移ります。  先ほども小柳君からも質問がありましたが、児童保護、この保護費中にあります重症身体障害児でありますが、その保護対策は、先ほど大臣からも高崎のコロニーの見通し、構想について承ったわけでありますが、在宅重症の身障児というものに対する指導とは具体的にどんなものでございますが。
  85. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 在宅の重症心身障害児に対しまする指導といたしましては、やはりこういった子供につきましては、早くから訓練をしていくと、こういう必要があるわけでございます。従来、そういった面で家庭に対する指導が十分でなかったというような点からいたしまして、いわば放置されていた状況でございまして、そのために、すでに手を加える、あるいは治療を加えるということができないという面も多々あるようでございます。そういう面からいたしまして、やはり施設と同様というわけにはまいりませんけれども、訓練の方法を指導するということを第一に考えておるわけでございます。それから第二番目には、やはりこういった子供をかかえておりますと、家庭の中での生活、あるいは親きょうだいの子供に対する態度、そういったことも非常に影響が深いわけでございますから、そういう面の生活指導と申しますか、家庭を含めました生活指導あるいは生活の相談、そういったことを大体考えて今後指導に当たりたいと思っておる次第でございます。
  86. 林虎雄

    ○林虎雄君 大体この対象となる患者ですね、これは全国的に見てどの程度に推定されておいでですか。
  87. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 昨年の八月一日に調査をいたしたわけでございますが、重症心身障害児と言われます者は一万七千三百というのが全国の推定数でございます。で、この中に、施設へ収容する必要があるという児童が約一万四千五百というふうに推定がされております。
  88. 林虎雄

    ○林虎雄君 一万七千三百のうち一万四千五百が収容を必要と認めるわけですか。
  89. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) さようでございます。
  90. 林虎雄

    ○林虎雄君 じゃ、だいぶ多いのですね、収容を必要とする者は。それで、現在、私、長野県の諏訪ですけれども、諏訪に整肢療護園等がありますがね、やはり対象として見ていいわけですね、施設として。
  91. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 重症身障児と言いますのは、精神薄弱でかつ肢体が不自由、手足が不自由だという、こういうダブルの障害を持っておる場合を考えるわけでございまして、現在、たとえば諏訪にありますような整肢療護園の場合は、主として手足の不自由ということでございます。
  92. 林虎雄

    ○林虎雄君 いま重症の心身障害児——児とカッコして(者)とあるが、これはおとなも対象として考えておられるわけですか。
  93. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) ただいま申し上げました数は子供の問題でございまして、このほかに重症心身障害者のおとなの場合につきましては、昨年の調査では約二千名が要収容だということでございますので、収容すべき子供、おとなを含めまして一万六千五百という数字になります。
  94. 林虎雄

    ○林虎雄君 身障施設で、肢体不自由児施設ですか、整肢療護園というのがありますが、あれといまのお話、重症の場合とはダブる場合が多いと思いますが、区別して、ダブっている施設と、単なる身障——肢体不自由児と区別しての施設を考えておられるわけですか。そういう方針でおるのですか。
  95. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 現在、肢体不自由児施設と申しますのは、主として短期または短い期間に収容いたしまして、手術等を加え、また訓練を行ないまして、それによりまして家庭へ復帰する、社会へ帰る、こういうような目的を持っておるわけであります。これに反しまして、重症の心身障害の場合は、そういった医療によりまする障害の除去と申しますか、あるいは軽減といったようなことがあまり期待ができないという、非常に重い程度の、特に精神薄弱を伴なっておりますので、肢体不自由児施設では、これは現在のところでは、そこまで取り扱う能力その他の点につきまして、まだ問題があるようでございますので、別個のものをいま考えているわけでございます。
  96. 林虎雄

    ○林虎雄君 次に移ります。  そうすると、これも先ほど話が出たのですが、ガン対策でございますが、まあガン対策というのは、最近ガンが一番成人病としてクローズアップされておりますが、私の考えでは、日本国民は少しガン、ガンというのでガン・ノイローゼにかかっているという傾向もありはしないか。この点、大臣どうお考えになりますか。
  97. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 確かに近年そういう傾向がなきにしもあらずということだと思うのであります。食生活その他の関係からいたしまして、日本の場合には胃ガンがガンのうちでも多い。また、最近は欧米のような肺ガン等が漸次ふえてきておると、これは公害の問題等も関連があるのではないかと思うのでありますが、そういう傾向も出てきております。そういう社会情勢、あるいは食生活の関係等々からいたしまして、いろいろな傾向がそこに見受けられるわけでありますが、全般的に十万人以上もガンで倒れておるというようなことから、いま御指摘のようなノイローゼのような傾向が出ておるのではないかということを私どもも心配をいたしておるのでありますが、そのためにも集団検診というようなことを計画的に実施をいたしますことが必要ではないかと、こう考えておるわけであります。
  98. 林虎雄

    ○林虎雄君 このガンは戦前の調査というものは、専門家の方でけっこうですけれども、戦前の数は、一体ガンが、これほどなかったのかどうかという点を承りたいのですが、いま大臣お話しのように、日本人はどうしても食生活の関係で胃ガンが多いというのはそのとおりだと思いますが、戦後はまあパン食というように、だいぶ食生活も変わってきて、胃ガンというようなものも少なくなるような食生活の傾向になってきておる。ところが、戦前にはほとんど米飯を中心にやってきたわけですが、そういう意味からいけば、戦前のほうが多かったはずだというような感じもしますが、公害の問題は別として、肺ガンは。戦前にはそういうようなのは的確な資料として、資料を持たなかったのであるか、あるいは実際少なかったのであるのか、この点はどうなのでしょう。
  99. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ガンとしてのあれでございませんで、悪性新生物と申しますか、通常のガンよりも広い意味のガンでございます。これは死亡者数から見てまいったものでありますけれども、戦前年々悪性新生物による死亡者数は増加しております。
  100. 林虎雄

    ○林虎雄君 増加している。
  101. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) はい。
  102. 林虎雄

    ○林虎雄君 戦前は同じそういう病気でなくなっても、医学がまだ現在よりも十分でなかった関係で、そういう判断をしなかった、そういう関係があるのではないですか、どうですか。
  103. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 死亡の場合には一応死亡診断書を添えまして届け出ることになっておりますけれども、ただその際の診断名の記載のしかたがどうであったかということになりますと、これはわかりかねます。その死亡の診断名によりましてそれを分類いたしまして統計をとって分類した数でございます。なお、これは全くの想像でございますけれども、悪性新生物、それからこういう中枢神経系の疾患とか、それから普通の老人性の疾患、こういうものは現実問題として若年者の——若者の死亡数か減ってくれは年をとった者の病気がふえてくるということは、当然に考えられるわけであります。
  104. 林虎雄

    ○林虎雄君 まあ専門家による早期診断、早期発見、早期治療ということが必要だと言われますが、そのとおりではあろうと思いますけれども、医学のことは何も私わかりませんが、いまの医学で早期診断して中期発見した、発見したというときにはすでにもうおそしというような感じがするわけですが、私の知っている人でガンで死亡した人をずっと見ても、もうかなり早く診断を受けて、そうしてでも結局半年なり一年なりたてば大体死亡しているわけでありますが、早期発見という、早期という定義というものは何かあるのですか。早期に発見したときにはもうすでにおそいので、その前のほんとうの初期なんというのは、やはり医学的にも完全にわかるわけですか。その点どうなんですか、いまの医学で。
  105. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 早期というのはどういうことかということでございますが、胃ガンの例で申しますと、胃の粘膜だけに、まだガンの芽ばえが粘膜だけにあるというのは大体早期、それが粘膜の下の層まで広がり、あるいは筋肉の層に広がり、さらに胃の外側に出て、ほかの臓器にまで広がるというような段階がございます。大体早期ガンといいますのは、粘膜か、せいぜい粘膜の下の層ぐらいのところまでを早期ガンと言うわけでございます。それで、どの程度のものがよくなるかということでございますが、粘膜の中だけにとどまっていたものであれば、理論的には一〇〇%なおり得る。それが、先ほど申しましたように、一番の手のおくれた胃の外側にまで広がっているものになりますと、これは一〇〇%だめだ。その中間がそれぞれあるわけでございまして、通常いままでの大学で胃の手術が行なわれました場合を見ますと、胃の手術で根治手術と称します胃の切除をいたしまして、それでどのくらいなおるかといいますと、大体一〇%から二〇%程度。これがいわゆるどこまでなおったかということは、また標準がございまして、五カ年間再発しなければ一応なおったという見方で医学界は統一されております。五年間で再発をしなかったというものはなおったといたしますと、それが大体二〇%、ところが、集団検診を専門的にやっておりますある大学では、これを五〇%程度まて治療率を——自分のところで早期発見をやれば五〇%程度まで上げ得るという報告をいたしておりますので、やりようによってはある程度早期で救命的な仕事ができるものと考えております。
  106. 林虎雄

    ○林虎雄君 本人が多少自覚症状があって診断を受けるわけで、まあいまのお話のように、粘膜だけにあるというような早期発見をされればいいわけですが、大体自覚症状が少し思いということになると、いまの早期でなくて、少し中期に進んでおるというふうにもしろうと考えでできるわけですけれども、大体理想を言えば、人間ドックに入って一週間精密検査すればいいわけですが、これは全部の国民がやるだけの力ももちろん設備も無理な点があると思いますが、もう少し早く診断する方法といいますか、大臣の言われたのは、集団診断は定期的に全国民に行なおうと、そういう意味でございますか。
  107. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 昭和四十一年度におきましては、全国の都道府県に一台ずつの検診車、それに運営費の助成をいたしましたのでありますが、これを逐次増強してまいりたいと考えております。そうすることによりまして、県下を巡回し、そして集団検診を進めるということで、ガン年齢を対象にしまして、逐次その集団検診範囲を広げていきたいと、このように考えております。
  108. 林虎雄

    ○林虎雄君 一台ずつの検診車では各府県微々たるものですが、一台の検診車がフルに——フルといっても三百六十五日働けるわけじゃないのですが、フルに動いてどのくらい、何人くらいを診断する能力があるのですか。もっともお医者の数にもよりますけれども、一台が一日に何人ということ、その程度はどうなんですか。
  109. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 一応プランを立てます上におきまして、大体一台の自動車で年間動き得るのが、医者の都合その他の都合いろいろありますので、百四十日、一日に見られ得るのが大体五十人くらい、こういうような計算をいたしております。
  110. 林虎雄

    ○林虎雄君 ガンの医学もだいぶ発達したり、治療のほうもなかなか進んで、いまお答えになりますように、大体早期発見ならば一〇%ないし二〇%は完全になおる、将来は五〇%くらいはなおるという見方もあるようでありますが、それにつけても、このガンという病気が、非常に国民がノイローゼになっている、恐怖の的になっておる病気でありますが、結局は、その原因といいますか、病原といいますか、そういうものが何であるかという点にまだ学問的に追及のできないものがあるというふうに聞いておりますが、そういたしますと、そうであるならば、もちろん当面の診療それから治療は必要でありますけれども、もっと根本問題を追及する上に、国といいすか、国ばかりじゃなくて国際的な問題もありましょうが、もっともっとわが国としてもこの研究機関というものを強化充実する必要があると思いますが、その点大臣いかがですか。
  111. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 概括的に申し上げまして、ガンの研究の国際的な水準からいたしますと、日本ガン研究も国際並みに私は進んでおると、こういうぐあいに見受けておるのであります。しかし、政府といたしましては、このガンの学問的なまた臨床的な研究をさらに促進をいたしますために、昭和四十一年度におきましては厚生省におきまして二億円、文部省におきまして二億五千万円、それに科学技術庁等の協力を得まして、この関係各省庁でガン研究に対する連絡を十分緊密にとりまして効果ある研究を進めたいと、こういう措置を講じておるわけでございます。
  112. 林虎雄

    ○林虎雄君 四十一年度予算、文部省と厚生省で四億五千万円程度載っていますが、これで十分でございますか、当面として。
  113. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 決して十分ではございませんが、昭和四十年度に比べまして倍増を実はいたしておるわけでございます。
  114. 林虎雄

    ○林虎雄君 まあ、私自身とすれば、年もとっておりますし、ガンになろうと何になろうとそう恐怖心をいだいておりませんけれども、どうも非常に大きな問題でございますので、一そうの努力を希望いたしたいと思います。  ガンに比較いたしまして、先ほどもお答えがありましたが、結核患者はだいぶ減ってきたようでございます。その傾向について最初に承りたいと思います。
  115. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 結核患者につきまして、全結核患者の要指導者推計数としてあげてあるのが実態調査でございます。それによりますと、昭和二十八年と三十三年と三十八年にやりました。その際に全国推計といたしまして昭和二十八年には要医療の者が二百九十二万ありました。昭和三十三年には三百四万。それが昭和三十八年には二百三万と、こういうふうに減少をしてきております。また、要観察につきましても、昭和二十八年には二百六十一万、昭和三十三年は百四十七万、三十八年は百四十一万と減少をしてきております。
  116. 林虎雄

    ○林虎雄君 この結核は現在のガン・ノイローゼのように、当時は結核といえば命取りであると、絶対ほとんどがもう死亡するということで恐怖をいだいておったのでありますが、最近は新しい薬が発見されたり、新しい治療方法もできまして、いまお答えになったように、だいぶ患者も減りしておりますが、この死亡率は比較はどうなんでございますか。
  117. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 死亡率の比較でございますが、これを最近にして見ますと、昭和三十六年には人口十万に対して二九・六、これが三十九年になりますと二三・五と、こういうふうになっております。これをさらにまた昭和三十年ごろと比較しますと、全結核の死亡率が三十年ごろは五二・三と、こういうふうになっております。
  118. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまお答えのように、だいぶ結核のほうは、結核退治のほうは成果をあげておるわけでありますが、そこで承りたいことは、戦前から結核は非常にわが国としても多かったわけですが、戦前から戦争直後ですか、この間は薬もないし、治療機関もいいかげんなといいますか、戦争の混乱で不十分であったというようなことで、患者数も非常に多かったわけであります。ことに、外地から引き揚げた人たちの中にもずいぶんそういう患者があったことは御承知のとおりであります。そこで国としては、当時国立はもちろんのこと——国立は百六十ぐらい診療所がありますが、その他公立あるいは財団法人その他で結核療養所というものが設置されまして、あるいは拡充強化されてきたわけであります。国立の場合は国の財政の関係ですから、先ほど午前中のお答えにもありましたように、病床の利用率というものが七八・二%ですか、だいぶあきがあるわけです、国のほうのあきが。これも対策を考えなければいけないが、それ以上切実な問題は、民間の診療所等であろうと思います。結核対策として国も大いに施設を拡充しろというので、財団法人などがベッド等をたくさんに増設して、増設するについては融資等を仰いで金を借りて施設をした。ところが、あきベッドが多くなってきて経営難というケースが、ことに民間なり財団法人あたりでは多くなってきておりはしないかと思いますが、この点お調べになったことございますか。
  119. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 民間のベッドも同様にあいてまいりまして、一番減少の激しいのは保険組合等の、大企業が持っておりました施設でございまして、これはもう現在半数以下に減少しております。それから、民間のベッドが比較的小さなベッドで、一般病床等に転換の容易なものがございますので、それらのものは比較的早く転換をいたしました。それでも結核の専門のベッドは転換その他がむずかしい関係上、まだ相当残っておりまして、これも大体七〇%の上のほうから、施設によっては八〇%程度という状況でございます。
  120. 林虎雄

    ○林虎雄君 具体的な事例持っていますけれども、御承知だと思いますから申し上げませんが、融資を、借金をして建てたところが、あいているベッドが多くて採算がだいぶとれなくなって、その償還に苦慮しているというような例がありますけれども、これを国のほうでだいぶ奨励して、慫慂して建てて、融資も心配してやったが、その融資も、社会情勢が、病気の事情がだいぶ変わってきたためにあきができてきた、さりとて専門につくった病院であるだけに転換も困難であると、こういうものに対して何か対策というものをお考えになったことございませんか。そういう事例をお聞きになったことございませんか。
  121. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現実にはいまのお話しのように、結核専門の施設でございますと、なかなか地域的な条件が一般病院に転換するというようなことは困難でございますために、採算等が非常に苦しくなっている点があることは承知いたしております。これに対して、何か、民間の施設で結核対策に協力したのであるからというような意味で何らかの救済方法というようなことになりましても、病院の施設によって、その成り立ちから経営のやり方にいろいろ差異がございますので、これを、現在のところ、特別の救済策というようなことは考えておりません。何とかして一般ベッドその他に転換して、施設の利用を考えていただくということを指導してまいるわけでございます。
  122. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまの点は局長さん、具体的な事例、御存じでしょうね。——申し上げません。  今度はね、環境衛生のことについて、少し、承りたいのです。最近文化生活といいますか、社会生活が次第に改善されてきているわけでありますけれども、東京都においてすらそうですけれども、下水道の完備ということが口では叫ばれておりますが、なかなかこの実効があがっておらないようであります。東京都ですらまだ五〇%までいっておらないと思います、新市内を含めればですね。そういうような状況で、私は、外見だけがりっぱで、一番最終的な終末処理がおろそかにされていると、だれもがこういうことを痛感しながらも、なかなか力を入れにくいという現状であろうと思います。厚生省も新年度予算におきまして、下水の終末処理の施設について相当予算を計上されたようでありますが、地方の農村までそれをいまただちにということは、これは無理な話ではありますけれども、少なくとも都市はできるだけすみやかにこの下水の完備をすべきであろうと思いますが、現在の日本の都市において、一応下水が完備といいますか、完備でなくても、ある程度下水道が備わっているところは何%ぐらいになりますか、この点、最初に。
  123. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 下水には、御承知のように、二種類ございまして、単に雨水、台所の水等を排水する下水と、完全に終末処理場を備えた公共下水道と二種類ございまして、公共下水道でございませんと、ただいま林先生のお話しのございました水洗便所をこれに直結することができないわけでございます。わが国の公共下水道の普及率は、昭和四十年度におきまして一二%ぐらいでございますが、それでは、それによりまして水洗便所にいたしている国民の数はと申しますと、八%程度でございます。
  124. 林虎雄

    ○林虎雄君 全国でですか。
  125. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 全国で全国民の八%程度でございます。と申しますのは、いつでも水洗便所化ができるにもかかわらず、施設がありましても水洗便所にしてない住宅がございますために、下水道の普及のパーセントと水洗便所化のパーセントとは、少し差があるわけでございます。この八%水洗便所化しているという数字は、文明国では飛び抜けて低い数字でございまして、ただいま先生のお尋ねの、都市の中でどの程度普及いたしているかと申しますと、最も普及率の高いのが岐阜市でございまして、岐阜市では五〇%をこしております。それに次ぎましては飯田市、名古屋市というような順序でございます。
  126. 林虎雄

    ○林虎雄君 一応兼用の下水道を持っておっても、水洗便所に切りかえる個人がなかなか積極的に施設をしないということはどういうことですか。もう下水までできておれば、水洗便所に切りかえることはわりにたいした金はかからないと思いますが、どの程度かかりますか。あるいはそれに切りかえることをちゅうちょするという理由はどこにあるのでございますか。
  127. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 下水道が、比較的便所のそばを本管が、公共の管が走っておる場合、これはうちが引っ込んだ場所にございまして、引き込みのための経費相当かかる場合もございますので、そういう特例は別といたしまして、普通の状態で、下水管が比較的近所まで来ておりまして、水洗便所にいたしますだけの改造費でございますと、二万円台、三万円以下でできるわけでございます。ただ、実際問題といたしますと、せっかく水洗便所にしたのであるからということで、便所をタイルにしたり、改造をかなりいたしますので、実際上は五万円前後かかるのが実情でございます。それで、どうしてそのような、せっかく水洗便所ができるのにしないかと申しますと、一つには、その経費相当の額にのぼるということも理由であろうと思います。いま一つは、それほど切実性を感じていない。家庭の中にはかなり文化的な電気製品がありましても、そして金にそれほど困っておる状況でないのに水洗便所化しない、どうも理解に苦しむというような事例がございまして、非常に極端な場合は、くみ取り便所のほうが気持ちがいいという人も実は中にはかなりな数おるという事例もございまして、なお、私どもの普及の努力が足りないところがある実情でございます。なお、この水洗便所化に対しまして金がないというような事例もございますので、国といたしましては融資をいたすことにいたしておりまして、国民年金の融資で、昭和三十九年度は四億、四十年度は六億、明年度は八億の融資をいたす予定でおりまして、それをもとにいたしまして、各市町村はさらに市町村側の財源をこれに加えまして融資をいたし、また一部の市町村におきましては補助金を出すということをいたしております。
  128. 林虎雄

    ○林虎雄君 いま局長さんのお話しのように、施設に対して市町村で補助金を出しているところがだいぶんありますですね。これはいろいろまあ普及されない原因はあると思いますけれども、それは早急に、少なくとも都市は完備する必要がある。これは文化的な意味からも、衛生的な意味からもあると思いますが、本年度の予算整備費の補助金として四十億六千三百万円ですか、これを計上してありますが、この補助金の対象とするということになりますと、パーセンテージまでいかないと思いますが、どの程度を対象としておりますか。
  129. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 昭和三十九年度におきましては、二十五億五千万円の補助金に対しまして要望は四十四億五千万円。したがいまして、五七%ということでございまして、四十年度は補助額三十三億八千万円に対しまして要望は五十九億、したがいまして、五七・三%、そのように、三十九年度と同じ充当率でございます。明年度は、ただいままではヒヤリングがおおむね終わりまして、聴取をしたわけでございますが、要望が七十二億五千万円でございます。これに対しまして、明年度の補助金といたしまして予定をいたしておりますものは、ただいま先生が申されました四十億の上に北海道分が別個にございまして、これを加えまして四十三億六千万円ということで、六〇・二%に当たるわけでございまして、従来よりは充足率がいいわけでございます。そのほかに、明年度は部落単位の下水道を特につくることにいたしまして、新規でコミュニティ・プラントということを進めることにいたしたわけでございまして、その分が二億ございます。その分を加えますと、四十五億六千万円になりますので、おおむね六三%ほどになるという予定でおります。
  130. 林虎雄

    ○林虎雄君 簡易下水道というのを、その定義をちょっと。
  131. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 普通の下水道でございますと、大都市であれば、おおむね東京等の例では、海のきわ、あるいは大きな川のきわにつくりまして、そこを起点といたしましてだんだん太い線が伸び、細い線に行くという形になっているわけでございますが、都市の形態は、最近すべてそのような中心集約的でございませんで、飛び地のように住宅地が発展してまいるわけでございまして、そのような地方が、中心から伸びていくのを待っておれば、将来七年にも十年にもなってしまうということで、早急に特に水洗便所化をはかる必要がある地域に対しては、その地域だけの下水道をつくる、そうしてその地域だけで処理場をつくって付近の川に流すというようなことをするということで、ただいま先生が述べられました簡易下水道を明年度から発足させたいということでございまして、この下水道の特殊な点は、多くの下水道は工場排水がこれに加わってまいるわけでございまして、家庭排水と工場排水とを共同処理するというような構造設備を持っているので、かなり高級な処理施設でございます。それに対しまして、ここに入ってくるものは、ほとんど家庭下水だけでございますので、それほど高級処理施設は要らないかわりに、朝晩の時間的な差異が、都市全般でございますと、朝晩は家庭から出るが、日中は工場から出るということで、時差の開きは多くございませんけれども、そのような簡易下水道におきましては、量的な差異がひどいという特殊な事情がございまして、これらを勘案いたしまして、水道で言うと、簡易水道のごとくつくってまいりたい、かように思っております。
  132. 林虎雄

    ○林虎雄君 大臣、いま下水道談義をいたしたわけですが、社会生活をする上に、文化生活をする上に、衛生的に非常に重要な問題だと思うので、最近は村山団地で赤痢などが出ておりますが、これは下水に不備があって下水が井戸に入ったということでこのようになったということでございますが、これについても、もっと積極的に国のほうが旗を振れば、地方のほうでももっと力を入れてこれに努力すると思いますが、この点、大臣にお考えを承りたい。
  133. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 環境衛生施設整備につきましては、昭和三十八年から整備五カ年計画を立てましてこれを推進してまいったのでございますが、上水道、下水道、終末処理等は相当前進をいたしておりますが、ごみ処理施設はまだだいぶんおくれているわけでございます。今後一そう文化的な生活国民にしていただきますために、この整備促進をはからなければならないと思っているのでございますが、いま林先生が御指摘になりましたように、最近における都市の発展の傾向が、ベッドタウンその他いろいろこの五カ年計画を立てた当時とは様相がだいぶ変わってきておるのであります。こういう点につきましても再検討を加えまして、現状に即する環境施設整備の促進をはかりたいと、かように考えておる次第でございます。
  134. 林虎雄

    ○林虎雄君 最後に国民健康保険について伺いたいと思いますが、国保の財政が非常に危機に瀕しておりますことは大臣も御承知のとおりでありますが、こまかい点はまた他の機会に譲りたいと思いますけれども、この国民健康保険の財政の現状ですね、この概要をまず承りたいと思います。
  135. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 国民健康保険の財政の現状でございますが、三十九年度の決算におきまして、実は三十九年度が非常に赤字を多く出した年でございまして、全体で実質収支の差し引き額が——赤字市町村七百九十五ございまして、赤字額が五十一億ということになっておったわけでございます。ところが、このような赤字の状況にかんがみまして、四十年度におきまして臨時財政調整補助金を四十億計上いたしまして、片や三十九年度分の支払いの未済分につきまして四十年度の補助金を繰り上げして百億充当するという措置をとりました。四十億の財政調整補助金の交付によりまして、七百九十五の赤字市町村は二百二十六に減りました。赤字も三十三億ということになりまして、三十八年度あるいは三十七年度に比べまして、赤字市町村並びに赤字の金額も、三十九年度は結果におきまして、四十億の措置によりまして減ってまいったわけでございます。四十年度におきましては、三十九年度のそのような事情を考慮いたしまして、ただいま申し上げましたような四十億の財政措置と、それから百億の繰り上げ交付というのに加えまして、昨年の補正予算におきまして、当該年度の補助金を、不足額を見込みまして、その分を百十一億計上たしましたので、合わせて二百数十億の年度中の補正をいたしたことになったわけでございます。したがいまして、四十年度の決算につきましてはまだ正確な数字はつかんではおりませんけれども、三十八年あるいは三十九年度に比べまして、当初非常に心配いたしておりました赤字の模様は相当好転してまいる、むしろ三十九年度よりもよくなるのであろうというような見通しを持っております。
  136. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまお答えの赤字の数字というものは、各市町村一般会計から繰り入れしているのもありますが、それを計算に除外されてありますか、どうなっていますか、町村によって赤字をそのまま出しておるところもあり、あるいは町村が一般会計から繰り入れて赤字を少なくするような、あるいは解消するところもあろうかと思いますが、その点の計算はどうなっておりますか。
  137. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) ただいまの赤字分につきましては、一般会計から繰り入れをしておる分も含めてあるわけでございます。ただ、現実に市町村におきまする一般会計繰り入れの状況でございますが、理由が個々に分かれておりますけれども、三十九年度で八十九億程度一般会計繰り入れをいたしておりますが、この中身につきましては保険料の賦課が不足しておるという分が大体三十億程度、それから法定給付の、実は御承知のように七割、五割ということにいたしておりますけれども、法定給付以上の給付をやるために十九億程度繰り入れをいたしておるというのが大部分でございまして、あと事務費の不足等に充てるために十九億程度、そのほか保健施設費に充てるために七、八億程度の金額を計上しておりまして、その主体が保険料の賦課が不足しておるということと、法定給付以上の給付をやる、及び事務費の不足を見なければならないというふうな状況になっておるのが現実の姿でございます。
  138. 林虎雄

    ○林虎雄君 ちょっとお聞きすることを変えますが、国保の窮状については大臣もことごとく御承知で、国のほうでもだいぶ対策を立てられまして、いまお答えのような措置を講じられているわけでありますが、これは今後も、いまの国保の現状ではほとんど国保の組合員というのは老齢者であるとか子供であるとかいうような、ほとんど病気にかかると国保へかかり診療する人のほうが多くて、赤字になるのは当然だと思いますが、これはあとで申し上げることにいたしまして、国保の組合では、御承知のように、直営診療所というものを設けて、それぞれ無医村の解消にも役立っており、一時は非常に当該関係者のほうから感謝されてきたのでありますが、最近お医者さんがなくなって、だいぶお医者のいない直営診療所があると思いますが、全国でどのくらいありますか、お聞きしたいと思います。
  139. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 国民健康保険のいわゆる直営診療所と称せられるもので私のほうでつかんでおります施設は、大体全国で二千六百ぐらいあるわけでございまして、うち病院が五百五十程度であとは診療所でございますが、診療所の中にも出張診療という形で病院からお医者さんが出張して診療しておるという数が大体三百ぐらいあるわけでございます。御質問の直診の中で、医者の全然おらないところの数につきましては、必ずしも私のほうで正確に把握いたしておりませんけれども、出張診療所という形態で運営されておるところは、医者が来なかったりする場合もあるわけでございますし、根っこの無床診療所で、つまり診療所を開設しておりながら医者が全然おらないといったところは、各県の国保連合会その他病院と十分相談をいたしまして、そういうことのないように十分配慮して運営するように指導いたしておりますが、なお、正確に数はわかっておりませんけれども相当数の医者がおらない診療所があるということは疑いない事実だと思います。
  140. 林虎雄

    ○林虎雄君 出張診療所は、これはお医者はいなくてもいいわけですけれども、当然いなければならない、あるいはかって医者のおったところで、現在お医者さんに逃げられてしまって、いないというのが相当数といいますか、大体八百人くらいが当然医者のいるべき直診だと思いますが、このうち半分ぐらいはいないんじゃないですか、そんなことはありませんか。
  141. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 半分おらないというふうには私ども聞いておりませんけれども、あるいは二、三割ぐらいはおらないということは言えるかもしれません。正確に数字はつかんでおりません。
  142. 林虎雄

    ○林虎雄君 長野県の場合、当然医者のいるべき診療所、直診が十カ所いないのだそうです。ただ長野県は十ヵ所ですから、全国で四百ヵ所ぐらいじゃないかと推定されるのですが、とにかくこれは大問題だと思うのです。この原因は何だとお考えになりますか。
  143. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 国保の市町村全体で三千にわたるわけでございますが、各市町村単位で経営いたしておりますために、市町村によりまして、非常に僻陬の地にあるところにおきましては、当初開設された当時はお医者さんが当然おられるということで、厚生省のほうで補助金も出しまして診療所をつくったところが多いわけでございますが、やはり僻陬の地であるために、お医者さんの子弟教育、その他新しい医学の勉強をするというふうな機会を都会に求めまして都会地のほうに流れていくということで、そのあとの補充がつかないというままになっておるというふうなところが多いんじゃないかということを推定いたしておるわけでございます。
  144. 林虎雄

    ○林虎雄君 その対策についてどう考えておられますか。たとえばいま若いお医者さんが、僻陬だからいやだ、あるいは勉強する機会に恵まれないからいやだといって逃げてしまっておる。それは個人個人の立場とすればわからないことはないけれども、直診としては大問題でありますが、国としての保健対策としてこの対策をどうお考えになるか。
  145. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 実はいわゆる無医地区対策といいますか、無医村対策といいますか、この措置につきましては、省内でも主として医療機関の所管をいたしております医務局を主体にいたしまして、僻地診療対策を片一方で強力に推進をいたしておるわけでございまして、私のほうにおきましても直営診療所を持っておりますが、直接所管が市町村でありますために、必ずしも十分な手当てはできないわけでございますけれども、たとえば運営費等が赤字になった場合には、この運営費につきまして、医務局でやります僻地医療対策におきましては、片一方で国の補助金を出すと同時に、私どものほうの直営診療所につきましては、財政調整交付金の中の特別調整交付金でその赤字の分を見ていく、補助していくというような措置によりまして、僻地医療対策と並行的に私どものほうも今後積極的に医師の獲得その他につきまして努力していきたいと思っております。
  146. 林虎雄

    ○林虎雄君 医師の待遇の悪いということが一応一つの大きな原因だろうと思います。僻阪でということもありますが、待遇が悪いということであります。また地方の公共団体の保健所などでもお医者が少なくて困っておる。これはあまりにも国の標準の善価が低過ぎるということで、例の超過負担などの解消をことしは大臣のほうでも力を入れていただいて、少し医師の単価が上がったようでありますけれども、一体この直営診療所がいまある以上は、当然医者がいなければいけない。医者が逃げて寄りつかないという点について、待遇問題が第一であろうと思いますが、この待遇をもっと考えるということになりますと、いまお話しのように市町村営でありますから、国のほうですぐ補助でも考えるよりほかに道がないということでありますけれども、これはこの医療というものは、社会的な大きな事業でもあり事柄でもありますので、もっと積極的に直営診療所の無医解消といいますか、医者不足の解消について大臣のお考えございませんですか。
  147. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 国民皆保険の制度のもとに医療を給付する責任を政府としても持っておるわけでございますので、この医療給付が都市にだけ偏在をいたしまして、それが地方の農山村、特に僻地、離島等に医療の給付手段が欠けておるということは、これは何といっても政府としても大きな責任があるのでございまして、先ほど来保険局長等から御説明申し上げましたように、僻地の医療対策ということにつきましては、私どもも真剣に取り組んでおるつもりでございます。特に私は岩手県の出身でございまして、多くの僻地をかかえておりますので、痛切にそのことを感じておる一人であるのであります。今回、超過負担の問題もございまして、保健所に対しましては医師に対して七五%前年度に比べてアップいたしました。また保健婦さんその他に対しましても三五%程度のアップをいたしたのでございますが、そういう心がまえで今後僻地の医師あるいは看護職員の充足確保ということに力を入れてまいりたい。そのためには待遇改善や、あるいは奨学資金の貸し付けでありますとか、そういう面につきましても配慮をいたしたいと思います。  なお、一挙になかなかお医者さんをたくさん確保することも困難でございますので、その間の補完的な方法といたしまして、患者輸送直あるいは巡回診療車等の増強をはかりまして、地元の医師会なり病院等の協力を得まして、その補完対策もやってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  148. 林虎雄

    ○林虎雄君 診療所におるお医者さんが逃げ出すという理由は、いろいろいま申し上げたようにあるわけですけれども、この給与が低い、不十分だという点、それからいわゆる山間僻地で文化的な空気に接する機会がないという、そういう点もあろうと思いますが、そのほかに若い学究の人などは、学位等を取りたいために研究等も必要であるが、そういう僻地では機会が与えられないという、いろいろ原因が一方にはあろうと思うわけであります。結局、農村といいましても、いろいろ条件も違いましょうけれども、旧村ごとに必ずしも医者がいなければいけないということもなかろうと思います。出張所があって、そうして交通機関等が完備しておれば、それを補っていき得ると思いますが、それにしても少なくとも一郡市に二つか三つのセンターの病院といいますか、センターがあって、そこから適当なある程度のお医者さんがいて、巡回出張をするということになればけっこうでありますけれども、かなり能率が上がると思いますけれども、センター病院をつくるとしても、町村立ではやはりその力もないということになるわけであります。そこで先ほども、午前中にも意見が出たと思いますけれども国民健康保険組合の制度というものが、そもそも、もう時代におくれているというか、少し時代にそぐわなくなっているのではなかろうかと思います。御承知のように、赤字の出るのはあたりまえの組合であります、性格からいって。それに比較いたしまして、官公庁の関係の健康保険あるいは大きな事業場等の健康保険はりっぱにやっておるのみならず、相当の成績をあげ、黒字をあげ、またその遊金でいろいろ施設等もして、りっぱにやっておられるということと、国民健康保険と比べるとあまりにもその差がひど過ぎる、落差があり過ぎるというふうに思うわけです。国民皆保険の立場から考えますと、国民が平等の立場から考えますと、私は理想とすれば、赤字の組合も黒字の組合も一本になって、強化していくことが理想だと思いますが、そう簡単にはこの実現は困難でありますが、少なくとも、福祉国家というふうに考えていく場合には、国民の保険制度というものは、統合するというか、大きく統合する構想を持って、それに一歩近づけるような考え方でいく必要があるのではなかろうかというふうに思いますが、大臣のお考えはいかがでしょう。
  149. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま林さんから御指摘がございましたように、わが国の医療保険制度は、その発達の沿革等、いろいろな事情からいたしまして、今日給付の内容におきましても、また被保険者の負担の面からいたしましても、さらにまた、保険団体の財政内容からいたしましても、そこに相当大きな格差がございますことは、御指摘のとおりでございます。どうしても医療保険の安定的な発展をはかってまいりますためには、この各種医療保険のアンバランスを早く解消をしなければならない。このためには、各制度間の総合調整なり、さらに一歩を進めて、統合できるものはこの際統合する、こういう必要があると思います、また、これに対しまして、国といたしましても、応分の財政的な援助を、助成をする、こういうことでなければならぬと考えておるのでありまして、今回保険三法と国民健康保険法の改正法案を今国会に提案をし、御審議をお願いすることになるのでありますが、これは当面の応急対策でございまして、私といたしましては、引き続き、いま申し上げた方向で制度の根本的な改正をぜひいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  150. 林虎雄

    ○林虎雄君 いま大臣のお答えを聞いて意を強うするわけでありますが、これを一挙にということはいろいろな支障があり、容易ではないと思いますが、少なくとも政府は、厚生省はやるんだという方向を示す、大方針を示すことがまず必要ではなかろうかと思うわけであります。私ども政治的な立場から見ても、そういうものを離れても、こうした健康保険の問題、あるいはそれとうらはらの関係にある医療の問題は、もっと社会化すべきであるというふうに考えております。これは思想をこえて、そうしなければ現実的にも解決しないと思いますが、保険団体の側においても、相当に財産を持っている組合は、観念としては社会化を必要だと思っても、現実にはなかなか赤字団体と統合するというような考えにはならないわけでありますし、まあ同時に、医療団体側にもいろいろむずかしい関係があろうと思いますが、しかしこれは早晩、いずれこれは対決といえば、少し言い方が強過ぎると思いますけれども、保険の、国民皆保険の社会化、統合化というもののうらはらの医療機関のもっと社会化ですか、害をもう少し牽制して、社会化していく必要があろうというふうに思うわけでありますが、最後にこの点大臣のもう一ぺん御意見を伺いたい。
  151. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 医療保険の問題につきましては、保険財政の確立をはかるという、ためには、一面診療報酬体系が適正でなければならないし、またその支出面が合理化されていなければならぬと、こう考えるわけでありまして、各種医療保険制度の統合なり総合調整ということと、診療報酬体系の適正化という問題は、これは本問題解決の二つの大きな問題点であるわけでありまして、私はこの点につきまして、政府といたしましても決意をもってその改善努力を払う所存でございます。
  152. 林塩

    ○林塩君 私は、看護従事者の不足の問題について当局の施策、どういうふうに将来していらっしゃるかということについて伺いたいと思います。一応、看護従事者と申しますと、保健婦、看護婦、助産婦——看護婦の中には准看護婦を含めまして看護従事者でございますが、保健婦の問題もいろいろあると思いますが、当面問題になっておりまして、そうして非常にこの問題は、看護婦の問題、医療施設その他の運営、いろいろなところに、世論といたしましても、これを何とかしなければという声が出ておりまして久しいのでございます。毎年のようにそのことを出すのでございます。これが予算面にどういうふうにあらわれてくるかということでございますが、これにつきまして、本年度もあまりに、非常な進歩を見せていないということにつきまして、私はお伺いをしたいと思います。  先ほど大臣は、四十五、六年ごろまでに何とかなるであろうというようなたいへん甘い見通しでお話がございました。それから志願者の問題にしても、ことしはたくさんあるからということでございましたが、志願者がたくさんあるからすぐに看護婦がたくさんできるわけでないということでございます。それにつきまして、どういうふうな対策をお持ちになっておりますか、伺いたいのでございます。そう申しますのは、医師も少ない。その医師の業務と看護従事者の業務とはもちろん違いますけれども、少ない医師の仕事を補って、診療の補助もしなければならないし、それからまた、保健指導もしていかなければならない大事な仕事を持っております。看護従事者は、何といっても医療の上に大きく役立たなければならないのですが、それが非常に少ない。それに対しまして厚生省は少しゆっくりお考えになっていらっしゃるのじゃないか。それから、この数年といいますか、非常に伸びがないわけです。そういう意味で、根本的な問題を少し検討いたしまして、もう少しこれが数が多く、質、量ともに拡充していきますのにはどうしたらいいかということについて意見を述べ、厚生省の将来の御態度について伺っておきたいと、こう思うわけでございます。  まず、お伺いいたしますのは、今年度は予算の上で、これが看護対策費となっておりますが、予算の上に昨年と比べまして、あまり伸びがない。いろいろ財政上の問題もございまして、やむを得ないと思いますけれども、一四%幾らか昨年には伸びているはずでございます。こんなに世論が高まっておりますにもかかわらず、看護対策費としてありますのはただ一〇%しか伸びていないということにつきましては少し不満でございますが、そのことについて、どんなふうにお考えになっておりますか。一応御見解、それから御対策を伺いたいと思います。
  153. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 看護職員の養成、確保の問題につきましては、午前中小柳さんの御質問に答えまして、私から所見を申し述べたのでありますが、いま林さんから大臣の考え方は少し甘いと、こういうおしかりがあったのでありますが、これは、数字的に御説明をしたほうがよろしいと思いますので、事務当局から御説明させます。
  154. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護関係の予算が、厚生省全体の伸びに比して少ないということでございます。確かに比率から見ますと、伸び方は少ないのでございますが、それでも約一割程度は伸びておるわけでございます。特に看護婦の確保のために必要な就学資金、補助金等を約九百万円増額して、昨年看護学生総数の七・九%の伸びでございましたのを八・二%にした。また、養成所の補助金はほぼ同額でございますが、その内容のやりくりを実はやりまして、従来よりはかなり積極的に養成施設の設置ができるようにいたしております。なお、このように養成施設の設置を大幅に伸ばしますために、どうしても看護婦養成施設の教員の不足ということが非常に大きなネックになっておりましたので、本年度は新たに国立病院におきまして、特に特別会計の中で看護婦の教員の養成を行なうことといたしたのであります。そういう点が特に新しい点でございまして、その他の点について若干の新規費目として、看護婦等の業務指針改訂版、その他の経費等を計上いたしております。なお、私ども看護婦の養成確保につきましては、私どものやっております養成施設のほかに、文部省にお願いいたしましたものがございます。看護高校の整備費が、本年度は三十五カ所分が実際に使用されるわけでございまして、その面でも文部省も積極的に協力をしてくれることになったことをありがたいと思っております。
  155. 林塩

    ○林塩君 文部省の問題は、これはよく存じておりますが、これは准看護婦の養成のあれで、看護婦の養成でないわけでございますが、それでも助かることは助かりますけれども、抜本的なものではないと考えます。特にお伺い申し上げたいと思いますことは、どうしても看護婦の数が、看護従事者の数が需要に追っつきません。最近でも起こってきた問題でございますが、せっかく病院は建てられたというのです。これはしかも国立の世田谷の小児病院、それなのに、看護婦がないために、せっかくの施設がそのままになっているというような状況、ですから厚生省当局におかれましても、病院を建てると同時に、看護従事者の何といいますか、対策がなくてはならないのじゃないかと思いますが、それについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  156. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 私ども看護婦の対策を無計画でやっているわけではございませんで、大体昭和四十五年度を目標にいたしまして、その際に、およそ現在のベッド数を結核、精神一般、合わせまして約百二万床程度にするであろう。また、その間におきまして、外来患者がまた二、三十万程度ふえるであろうというようないろいろな予想をいたしまして、それに必要な看護職員を確保をするために、どの程度施設があればいいかということを一応めどを立てまして、できるだけそれに近寄せようという努力をいたしているわけでございます。しかし、何分にもこの養成施設は、国だけがやるものではございませんので、都道府県あるいは民間等が協力して養成施設を設置運営いたしますので、計画的といいましても、こちらの思うとおりになるというわけではございません。また、そのときどきにおける中卒、高卒者の数の変動等もこれに影響してまいります。また、経済事情等によりまして、工場その他に若年労働者が非常に多く需要されるときは、どうしても看護婦のなり手が少ないといういろいろな事情がございまして、私ども計画どおりにというわけにはまいりませんが、大体の見通しといたしまして、いままでの経過から見ますと、先ほども大臣が申されましたように、四十五年度ごろにはかなり緩和する、絶対に不足が解消するとまではとても申せませんけれども、かなり緩和するという見通しを立てまして、大体そのような線で現在進行中であるということでございます。
  157. 林塩

    ○林塩君 いまおっしゃいましたように、これは国だけの問題でない、国が全部するわけでなくて、民間あるいは都道府県もそれについて考えるという非常にばく然とした御答弁でございましたが、それで一体この看護計画というものは、病院が増設されていく、病院の増設と病床の増設はこのごろ目ざましいわけです。それで何でも建っていきさえすればいいというふうな考え方でありますが、あとの処置に困っております。そうして、あとになりますと、せっかくできた病床が使えない、それなら何のために建てたのかと言いたくなるような状態がうんとございます。大体患者さんでありますので、そこで病気がよくなるために、あるいはまた、どうしてもよくならないときには、手厚い看護を受けて死んでいく場というようなこともありましょうが、とにかく生きている人間であるから、ことに病気のある人、それを何か荷物を入れればいいというような考え方でありましょうが、そんなことを言っては酷かもしれませんが、現実にそういう問題が起こってきております。ですから病床をつくるときには、何とかだれが世話をするかということと同時に、計画がされなければ、せっかくつくりました病棟自体が何のためにつくったかということになるわけでございますが、この点、法的に何も規制がないのです。病棟はどんどんつくってよろしい。それから、そこでだれがどういうふうに働くかということについては、何ら規制がございません。許可を出しますにしても、そのことを考えて、病床の増床計画をしてよろしいということになるかというと、そうではないのですが、この問題は、将来ぜひ考えていただかなければ、とても追っつかないのじゃないかと、こう思います。 それから、いまこういうものはどこが責任を持てばいいかということ、看護婦の養成、准看護婦の養成はどこが責任なんだろうか、都道府県においてもとおっしゃいましたが、都道府県も法的に何もないようでございます。これは厚生省でぜひとも計画を立てていかなければならないのじゃないかと思います。常に厚生省はどこかがやるだろうというふうに考えられているように考えられてしかたがないのでございますが、これについてはどういうふうにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  158. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の養成という制度を、いまここで新たに始めるということでございますと、その責任の分野というものを明確にし、国が養成するあるいは都道府県が養成するということも、一律にできようかと思いますけれども、実は看護婦の制度というのはきわめて長い伝統がございまして——これは先生に申し上げるのは失礼でございますけれども、伝統があるわけでございますから、昔は医師それ自体が、自分の病院あるいは診療所で、これを個人的に養成していたというような事態もございました。そういうような経緯を通りました。したがって、現在の養成施設というものができましたときも、大体そういうような歴史的背景のもとで、個人病院、個人的な病院も、あるいは市町村の病院も県の病院も、それぞれの、むしろ必要に応じ、あるいは場合によっては自分の病院の自給計画というものを中心にして養成所を設置するというような傾向がございました。そういう意味で歴史的なこういう経過のために、非常にアンバランスがございます。また、したがって、そういう歴史的に国あるいは県の責任ということでなく養成が行なわれた経緯がございますので、そういう経緯のもとにこれだけ伸びてきた養成施設を、さらに最近は厚生省は総体的な需給の責任を持っておりますので、総体的な視野あるいは長期的な視野というものを加えまして、さらにこれを計画的に助成していくという立場になりました。そのために別途の方法といたしまして、たとえば養成施設それ自体の設置の補助金であるとか、あるいは看護婦自体に対する奨学資金的な給費であるとかいうような制度を設けまして、ある程度の統制あるいは調整、あるいは促進というようなことを行なっておるのが実情でございます。これを急速に変えるということはきわめて困難だと思います。
  159. 林塩

    ○林塩君 その点もちろん私も、お答えのように、看護婦養成の歴史はよく存じております。歴史は。それでありますので、こういうふうな事態になってきますと、その養成自体ができない状態が起こってきておるということについては御検討でございましょうか。で、個人の医師が自分のところで使う看護婦を養成していたということ、それからまた、自分の病院で必要な看護婦数だけは病院みずからが養成していた。そのために看護婦不足というものは起こらなかった、こういうようなことでございますが、今日それでは、はたしてその病院がほんとうに看護婦を養成するだけの資力を持っているかどうかということについてお考えになっているかどうかということでございます。で、この点が非常に大事なことであろうと思うんです。それでございますので、国として、あるいは都道府県といたしましても、国民の健康の増進に寄与するという意味から、国民のための看護婦であるという立場から考えますと、単に医師がそこで助手のように使うべきものでないという考え方、これは保助看法にもちゃんと規定してございますが、その法律の精神に従いまして対策を立てていかなければならないのじゃないかと思いますが、そういうふうな意味から考えまして、今日それではかってのような状態でない医療制度の中で、それをたよっていいだろうかということでございます。  それについて私は、ことしはベビー・ブームでございまして、それから不況の多少あおりを受けたのでございましょうか、近年になく看護婦の志願者が多い。それで調べてみましたら、先ほども御答弁がございましたが大体五倍というところが普通でございます。それだけ若い女子がこの方面で働きたいのだ、そうして自分の職務としていきたいのだという意欲がようやく盛り上がってきておりますときに、それを採るだけの看護婦学校がないということ、これはたいへん私は残念に思います。いままでは厚生省の御当局は、志願者がないから、志願者がないから、こういうことだけで言っておられました。私はたびたび、志願者がないというんではありません。看護婦学校が足りない、それでだと言っておりました。志願者がない、志願者がないということだけで来ていましたが、ことしあたりは、もう少しその点で対策が講じられていたならば、たとえばもっと多くの養成所ができるような措置があるならば、こういう優秀な人を看護婦の中に入れ込むことができるだろう。ベビー・ブームというものは二、三年続くわけでございます。この機会にひとつ積極的な方策を立てまして、そうして看護婦の確保に、いい素質の人を看護婦の中に入れ込むということについて考えられるわけでございますので、ただ従来そうしておりましたから、それでいいというふうなお考えはぜひやめていただきたいと思います。と申しますのは、かつての時代には、病院に必要な看護婦を病院において養成しておりました。それで病院に働く看護婦であるからということで、それこそ徒弟的な考え方でもって養成をしておりました。むしろその中で病院の労働力ということからも考えてみまして、経済的に考えてもそれほど損でなかったというのがかつての例でございました。現在でも准看護婦養成についてはそういうところがございます。そして医師会なんかで、そういうのが養成されておりますところは、医師会の先生方が准看護婦になる人たちを入れまして、そして准看護婦養成所をつくりまして、そして午前中は家の手伝いをさせておるというようなものがたくさんございます。  それは歴史でございますから、そういうこともやむを得ないと思いますけれども、全部が将来そうであり得るかどうかということについては、そうであってはいけないし、また、そういうことはできない事情がきますので、それで公共のいろいろな対策につきましては、費用などを取りまして、そして学校の運営費、経常費などはやはり公費で負担をしていくという対策を立てなければならないんじゃないかと思うわけでございます。それならば現在大きな病院に看護婦養成所をつけてもらえば、まことにけっこうだと思うんでございますけれども、看護婦養成所のある病院というのはほんの少しでございます。なぜなれば、現在の、それでなくても窮屈な病院費の中から、婦養成所を持つということは、病院としてはたいへんに困るわけでございます。それからまた規則によりまして、そこで養成された人が必ずしも残ることにはなっていないということになってまいりますと、そうですね、二十人、三十人養成しましても、残るのはほんの五分一ということで、病院自体も、たださえ少ない病院費の中から苦労をして、そして特別の支出をして、そうして養成した人たちが自分の病院に残ってもらえないということになると、もういやになります、意欲を持ちません。ですから看護婦の養成所はふえないわけです。それからまた都会で、病院を大きくつくりましても、たとえば東京なんかはずいぶんそれで地方から恨まれている状態でございますが、少し初任給を高くしまして、地方で養成した人をどんどんつれてくるというようなことで、病床はどんどんふえましても、地方で養成した人がどんどん都会に集まってくるものですから、絶対が絶対を生んで、どうしようもない状態になっておるということは、病院費の中でもはや養成をしておる現状というものについては、何らかの形で是正をされなければならぬのじゃないかと思うわけでございます。厚生省御当局は、そういうふうなことであったから、それでいいじゃないかというふうにお考えになっておられはしませんとは思いますけれども、この現実をどんなふうにお考えになりますか。それから将来どういうふうにしていけばいいかということについて御検討なすったことがございましょうか、伺いたいと思います。
  160. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の養成に対する制度並びに態度のあり方が、他の職業人の養成等の態度あるいはあり方と非常に違っております。違っております一番大きな問題は、先ほど来申しましたような歴史的な沿革によるわけでございますが、そういう意味では昔は先生もおっしゃった徒弟制度的なものであって、住み込んで徒弟的に看護業務を習って、そうして食べさしてもらい、着せてもらって、そうしてお給金ももらいながら看護婦の勉強をするというような観念がありましたために、それが続いて現在にもなお尾を引いております。数年前まで国立病院においても看護婦の生徒にお小づかいを出したというような時代もございました。しかし、だんだん看護婦の養成というものがきちんとした教育課程により、きちんとした職業教育をして初めて看護婦になるという意識がだんだん高まってまいり、それと同時に、そのような制度面でも改善が加えられまして、当然小づかい等をもらって徒弟的な扱いをしてはいかぬということから、待遇としてはかえって後退になりますけれども、そういうお小づかいみたいなものを切ってしまう。しかしなお、現在、養成所はほとんど給食を無料でやっておるところもかなりございます。私といたしましては、やはりこれは職業教育であり、かなり程度の高い専門教育であります以上、このような昔の徒弟的な雰囲気をできるだけ早く脱却していくべきものであろうと思います。そういう意味で今度の看護婦職業高校における保健看護学科というようなもので、学校教育は正規に月謝を払って、そうして職業教育を受けて、そうしてりっぱな職業人になるということが最も望ましいことであろうと思います。そういう意味で私は職業高校なり、あるいは看護短大というような正規の学校教育というものがますます伸びていくことを私どもは念願いたしておりますし、またそういう方向にすべきものと考えております。しかし、何ぶんにもいまのような長い伝統が尾を引いておりまして、一挙の解決はなかなか困難であろうと思います。  また、もう一点の御指摘の、看護婦の養成を医療費のピンはねでやっているということも、これもまことにまずいやり方だと思いますし、当然乏しい医療費の中でそれだけのものが出るわけがございません。したがって、本年度におきましても国立の養成施設はすべて一般会計からの負担でまかなうことにいたしました。  また、先ほど来の地方公営企業体の運営についての法律改正の問題に伴いましても、看護婦の養成等を公的医療機関、公立病院等で行ないます場合は、これは一般会計の支出によってやるべきものというふうな考え方を確立いたしております。  民間の養成について国が相当の助成ができるかどうかという問題につきましては、これは数年来いろいろ論議されておりますが、現在のところ、養成施設それ自体に対する助成がなかなかいろいろな意味で困難であるということはまことに残念であります。
  161. 林塩

    ○林塩君 国立はそれで一応一般会計からお出しになるということになれば、筋が立つわけでございます。事実ほんとうにそうなるかどうか、やはり病院は特別会計になっておりますが、確かに一般会計から出しておられるものでございますかどうか、一応伺います。
  162. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) もちろん国立病院の養成は特別会計でございますので、養成の費用は特別会計に繰り込んでございます。しかし、その財源として、一般会計から特別会計に診療収入以外の一般会計を繰り込んでこれに充当してあるわけでございます。
  163. 林塩

    ○林塩君 国立でそういうふうな措置をとってあるということはたいへんに私うれしいことと思いますが、国立はそういうふうに出せるところがございますのでそれで出せると思いますが、そういう姿勢を、それならば他の養成所に持ってくるということがなかなかできません。国立の中だけで対策をお考えになった場合は、一応四十五年までには充当できるわけでございます。しかし、国立関係で養成していらっしゃる数は、日本全国の数の何分の一か知りませんが満たしておりません。それについてはどんなふうにお考えか、たとえば民間が学校をつくりたいと思う場合、あるいはそれらの運営費をどうするかというようなときに対して、何らかの形の補助、あるいはまあ校舎をつくるというならば、それに対して何らか融資の方法というようなものはないものでございますかどうか、現在どんなふうになっておりますか、伺っておきたいと思います。
  164. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 民間の機関が看護婦養成施設をつくろうといたします場合、補助金を出したいということをいろいろ考えたのでございますが、なかなかそれができなかったということを申し上げましたが、現在医療金融公庫ではそれを補う意味で定率の融資をいたしているわけでございます。
  165. 林塩

    ○林塩君 医療金融公庫でそれが借り出されるのでございましょうか、ちょっと御確認を願いたい。
  166. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 医療金融公庫で、医療機関並みに融資をいたしております。
  167. 林塩

    ○林塩君 それではこれは御努力をいただきたいと思うわけでございます、将来。  それから次には運営の補助金でございますが、これも民間で学校をつくりたいと思います場合に困るのは、人件費その他の運営補助金でございます。ただいまの養成所の指定規則によりますれば、専任教師がやはり三名、四名要ります。これがただいまのところ病院の職員になっているということがございます。それがたいへんに教育自体を進めていないという状態がございますのですが、そういう場合に運営の補助金というものは絶対に出してもらえないものかどうか、そういうことについては規則的にはどうなのか、政府当局の態度はどうでございますか、伺いたいと思います。
  168. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 運営費の補助金がほしいほしいという気持ちは私どもも同様でございましたけれども、いろいろ法規その他の制約もございまして、現実には不可能というのが最近の私どもの結論でございます。
  169. 林塩

    ○林塩君 そういたしますと、ますますこの少ない医療費でもって学校を持っていこうとするところが意欲をなくするわけでございますが、公立——たとえは都道府県その他で、できるだけ公立の看護婦養成所というものを奨励していくよりほかに手がなくなってくると思いますが、それはどうでございますか。
  170. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) いろいろお話が出ましたように、私立の養成所あるいは私的の機関がこういうような養成を行なうことは、経済的な面も含めまして非常に困難がございますので、できるだけ公的なものにこれを振り向けたい、公的なものでございますと、公的医療機関でも、あるいは市町村都道府県というような団体でも、国からの補助が容易でございますので、できるだけそういう方向に持って行きたいと存じております。
  171. 林塩

    ○林塩君 できるだけそういうことで、何か片手間に看護婦の養成をしているというような姿勢でなく、かつての看護教育のいいところもあったと思いますが、近代社会でございますので、ことに看護従事者と申しますと、やはり医療の中の一つの専門職として、発展していかなければならない運命にあるのでございますので、教育その他の姿勢につきましても、できるだけ公的なもの、府県は責任をもってそういった看護従事者の養成をしていくというふうな姿勢を、ぜひ厚生省当局は示していっていただくというふうにすればいいじゃないかと思いますが、それにつきましては、先ほど御答弁ございましたように、かつてはそうであったからそれでしようがないというようなことから脱却をされまして、一応そういう姿勢を推し進めていっていただくことが扶助もつけられるということならば幸いだと思いますが、その点もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  172. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の養成ということは非常に古い伝統に根ざしておりますために急激な改革ができないということを申し上げましたが、従来の古い伝統のままでいいということは決して考えておりません。何とか新しい時代の新しい態勢、新しい考え方で専門職業人の養成ということを考えていかなければならない。そういたしますと、これは相当経費等も当然かかります。したがって、むしろ国が行ないます学校教育の一環というような考え方でむしろこういう問題は扱っていくべきもの、ただし現実には、厚生省の指定施設と文部省の学校とではそれぞれ現在学校法規その他が違いますために、同じように扱うことはできませんけれども、考え方としては私はむしろ専門学校教育という考え方でこれを推し進める、したがって、学校でない施設については、できるだけこれは公費が自由につぎ込めるような形で持っていきたいというのが念願でございます。
  173. 林塩

    ○林塩君 それでもなお私は看護婦不足問題は解決しないと思います。それで従来ありましたところの病院でも奨励をされまして、そしてできるだけ医師の教育も付属病院を持っているというような考え方でいきますと、看護婦の養成のためにも実習が必要でございますならば、できるだけ公的医療機関だとか、あるいは有名なそういう教育には経験のあるところを奨励してもらって、そして恩典を与えて、そして養成を続けていくということがいいのじゃないかと思いますが、そういう場合に看護婦養成所を持っております病院につきましては、特別に何らかの恩典ができないものかどうか、たとえばある点は非課税をいたすとか、あるいは免税の恩典を考えるとかいうようなことについてはいかがでしょう。
  174. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 特別な恩典を与えるというようなやり方は、国では問題にはなりませんが、都道府県、市町村あるいは公的なものにつきましては、それぞれ国の補助金なり助成なりの方法がございます。私的の医療機関についてはそれがございません。しかし、公共性の強い医療法人等の病院で養成をやっております、そういうような場合には、その公共性の認定の資料といたしましてこれが活用され、租税上の恩典が若干与えられておるわけでございます。
  175. 林塩

    ○林塩君 現在でもなおそれ以上の恩恵があるわけでございますか。どういうふうになっておりましょうか、ちょっと……。じゃあとでもけっこうでございます。また、参考資料をいただきたいと思います。では一応私は、看護婦養成の問題につきましていろいろ隘路になっているものがありますために、これがうまくいかないということについては御当局もぜひとも御検討いただきまして、そして何か看護婦志願者があればすぐ看護婦があるという、ふうに甘くお考えになりませんで、それを養成するために機関がなくてはならないということです。で志願者の問題だけ考えますと、それならばもう看護婦はいい、こういうふうなことがあるようでございます。でこれをよく吟味いたしまして、そして三年かかるのでございますから、その三年の間の教育がしっかりとできますように、そしてまた十分な数が確保できますように、三年後の対策をしておかなければ、三年後にやはり同じことを繰り返すんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。その結果どうなるかといいますと、そういう対策がございませんでしたために、たいへんきついことを言うようでございますけれども厚生省御当局ではそういうことを真剣にお考えになっているようで、かえってお考えにならなかったと見えまして、この看護婦の不足問題というのは、長年やっておりますが、なかなかそのうちには何とかというふうにお考えになっていたんじゃないかと思います結果がいま参りまして、そして、困っている状態でございます。そして病床はたくさんできていきますけれども、人がない、それですからしかたがないので、准看護婦はまだよくて、無資格者の導入というのをやっております。現にそういうところはたくさんあるわけです。それで看護は法にもちゃんと規定されておりまして、こういう免許を持ち、これらの資格がなければしてはいけないという問題が書いてあるのに、その無資格者にたよらなければいけないということは、私は、看護行政ひいては厚生行政上たいへんに盲点になっておる点じゃないかと思いますので、そのことを申し上げます。  それからもう一つは、准看護婦の数が非常にふえております。これはいまの養成施設がございませんためにできたと思うのですが、現在では三倍半というような数でございます。先ほど高等学校の中に看護教育を入れるとおっしゃいました。一学級ことしは五十校くらいできる予定でございます。私はけっこうなことだと思っておりますが、それをもってすぐ看護婦だというふうにお考えになりませんように。ということは、これは出ましても准看護婦でございます。でありますので、そこに看護という大事な仕事をしますためには、その教育としてどうしても基礎に高等学校程度が必要だということから高等学校の教育の中でということになっておりますが、もともと准看護婦の養成のためにだけの高等学校教育でないと思います。一般におくれておりますところの保健教育というものも、になっておると思うのでございますので、ぜひこれは高等学校の中に、そういうふうにしたからそれでもう万事終われりというふうにお考えのないように、将来各都道府県でどうしても高等学校の中に衛生看護というものを入れていくことは、文教対策としても大事なことだと思いますとともに、看護婦になる人の基礎的な要素、幅広くそういうふうな要素を持っておることは国民の健康の同上の上に大事なことだと思いますから、そういう意味の施策であってほしいと思います。でございますが、片方、同時に看護婦の養成につきましては経済的にもやはり内容的にもこれから十分に検討していきまして、そして将来ますます、福祉国家でございますので、福祉国家の果たす役割りをこの看護陣において相当していくという形で厚生行政があると、ずいぶん国民が幸いするように考えますので、ぜひ御検討をお願いいたしたいと思うわけでございます。  それから次にお伺いしたいと思いますことは、看護婦の給与が非常に低いということでございます。看護婦の給与が低いから、それで来る人が少ないと、これも影響がございます。労働条件が悪いということもございますが、じゃなぜ看護婦の給与が低いかということでございます。初任給あたりは他の職業に比べまして、まあその仕事の評価を正しくしました場合には私は低いと思います。非常に低いと思います。医療職三表によって国家公務員の場合はきめられておりますが、他の同様な仕事では、同様な仕事ではございませんけれども、それだけの背景を持ち、それからまた負わされておる責任、それから内容というものを考えてみましたら、私はたいへん正しい評価がなされていないというふうに考えられるのでございますが、それをどういうふうにしてそれならば上げていけばいいかということでございます。病院に参りまして、これはもう国立あたりはそういう点はきまっておるのでございますけれども、病院に参りまして、なぜ看護婦の給与が低いかということを病院経済の上から、財政の上から調べてみましたら、それ以上出せないということでございます。ここらあたりに問題があると思います。それで国立病院におきましてはという御答弁でございますが、一般の病院は非常に困っている。そこにも国立だけじゃございませんで、一般の人が行って、そして治療を受けるわけでございます。看護を受けるわけでございますから、全般によくしなければならないと思うのですが、そういうところの看護婦に払うものがないという病院財政が行き詰まっておると、これはまあ保険経済のものでございますので、それだけでは解決できませんと思いますが、そういう点につきましてお考えをいただいたことがあるかどうか。いかがなものでございましょうか。
  176. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来、林さんからきわめて専門的な立場から看護婦行政につきまして、お教えをちょうだいいたしまして恐縮をいたしておるのでありますが、看護婦の養成確保につきましては、午前中に私が申し上げましたように、国立病院・療養所等におきましては、養成所の増設をいたしまして、国としても看護婦の養成に努力をいたしております。また、都道府県等の公立の病院等で看護婦養成機関を付置いたします場合には、その施設費に対しまして二分の一の国が助成をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。また、民間の看護婦養成所等に対しましては、医療金融公庫から低利長期の資金を融資いたしております。御不満であろうと私感じました点は、これらの都道府県立なり、あるいは私的養成機関の運営費——運営費をなせ補助せぬか、こういう一点に尽きるようでございますが、これらの問題は、その他の各方面の養成所、あるいは養成機関等に対しまして、運営費まで助成をしておるということは、これはあまりその例がないのでございまして、この点、私ども毎回、予算折衝の際に努力をいたしておるのでありますが、運営費まではいまの段階では困難であるということを申し上げておるのでありますが、施設整備につきましては二分の一の助成をするとか、あるいは長期低利の資金の融資をするとか、そういうことでできるだけ国としても配慮をいたしておるところでございます。  なお、数の確保につきましては、昭和四十年、四十一年におきましては、おおむね二万五千人程度の養成が見込まれる。そのうちいろんな御事情で一万人くらいおやめになりますので、ネットで一万五千人くらいはふやせ得る、こういうめどを立てておるのでありまして、昭和四十五年に百二万床の大体ベッドが整備される見通しでございますが、それに対しまして必要な看護婦の要員は二十七万人、私どもの今日の養成が大体順調にいたしますれば二十六万五千人、五千人ほどまだ不足を告げる見通しでありますが、おおむね四十五、六年ごろには看護婦の充足ができる。こういうめどでせっかく努力をいたしておるところでございます。  なお、看護婦さんの確保につきましては、根本問題は、何といっても待遇の問題でございます。喜んで看護職についていただく方々がたくさんできてくることが根本問題であろうかと思うのでありまして、そういう面から看護婦さんの待遇改善につきましては、私ども不断の努力をいたしておるところでございまして、先般のベースアップにおきましても、一般職よりは看護職員のほうの給与の上昇率というものはよくなっておるのでございます。また、昭和四十年度から、看護婦さんに対しましては、夜勤について手当を百円ずつ出しておるのであります。また、今後特別な看護に当たる看護婦さん等につきましては、調整号俸等で処遇のさらに改善をはかってまいりたい。で、御指摘のように、公務員のベースアップは、一般の場合には民間の給与にさや寄せするということ、一般公務員の場合はそうなっておるのでありますが、看護婦さんの場合におきましては、むしろ、国のほうがよくて、民間のほうが悪い。待遇が悪いというところに問題があるのでありまして、この問題につきましては、将来、診療報酬体系の問題を検討いたします際に、十分その点も考えてまいりたいと、かように存ずるわけであります。
  177. 林塩

    ○林塩君 大臣にそう言っていただきましてたいへん私うれしいと思いますのは、まあ医療職(三)表によりますと、これは国家公務員でございますが、それが少し正しい評価でないじゃないかと言いましても、いや民間が非常に低いからと、こういうことです。医師については民間が高いからそれで上がる率も多いけれども、看護従事者にあっては、民間が安いからということなんです。これは民間を正していかなければならないということになります。どういたしましても上がらない。そのためにいろいろな問題が起こる。集まる人も少ないということになりますれば、民間というのはそれではどういうことか、どこからその給料を払っているのかと思いまして、いろいろな病院を調べて見ましたら、やはり何といっても、医療報酬の中に看護の評価がなされていないということでございます。実際には仕事をたくさんしておるわけでございます。先ほども申し上げましたが、医師の診療の補助ということが法律にうたってございますが、診療の補助の名において、医師がしなければならない仕事までみなやっているということでございます。その上に看護をやらなければならないし、それからまた、ほかの仕事もするということで、一人でございますので、一ぺんに何もかもできませんし、それだけに仕事の内容が非常にきびしいということでございます。他の職業に比べて非常に労働の内容がきついということ、これは現場を見ればすぐわかることでございます。それに比べて給与が低いのはどういうわけか、その評価が医療報酬の中の点数の中にあらわれていない。それでたとえば注射をしております。静脈注射問題は別といたしまして、注射はかなりこれはしております。その注射の点数というのは一体、中はどういうふうになっているかと言いますと、看護業務として査定されていないのですが、これは積算の基礎がどうなっておりますか、よく研究していただきたいと思いますが、私どもしていかなければならない。試みに、そういうことから考えまして、どのくらいな仕事をしているだろうかということを調べて見ますと、これはデータの中から出てきたのでございますが、医師の六分の一の仕事しか稼価評価が出ない、保険点数の中へは出てこない。ですから、調べて見るとそういうふうになります。事務の人が三倍、看護婦さんはその三分の一、事務の三分の一、医師の六分の一という仕事をしている。実際問題としましては、至るところに看護があるわけです。診療にしましても、看護婦はついていく。それから手術をしても看護婦がついている。それは何をしましても、ちょうどごはんを——食事をするようなもので、医師の業務のあとには、それの何倍かの労働力とそれから準備というものが全部看護婦によってなされておりますが、そういうことが点数の中にどうして含まれていないかということでございますが、何かのために、おそらく評価をしますときに、このくらいだと出てくるのじゃないかと、こういうふうに考えます。それにつきまして、いま大臣がおっしゃいましたように、将来、医療報酬点数をきめるときに、そういうことも十分考慮してと言っていただきましたので、私はたいへんにうれしく思います。  それから、この看護自体の看護業務なるものの評価が正しくなされてないために、給与が低いということと同時に、病院におきますところの看護業務自体を、医師も患者も病院経営者も正しく評価していないということがあるわけでございます。これも心理的には、非常に看護業務がきびしくて、そうして入りづらいということにもなろうかと思います。それがひいては、病院の看護状態をよくしないで、患者さんにしわ寄せがくるというようなことも考えまして、将来の医療報酬のときにぜひ看護の点数化をお願いしたいというわけでございます。いつもこの問題を出しますと、抜本的な改正、抜本的な改正が必要であると言われますが、その抜本的な改正をいつなさるのかというふうに迫るわけでございますが、いつまでも延び延びになっておりますが、それはいつごろできるものなんでございましょうか、伺いたいと思います。
  178. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 診療報酬体系の適正化の問題につきましては、先般、中医協から意見書をちょうだいいたしまして、中医協におきましても、医業経営の実態調査の問題とともに、議題としてこれを取り上げまして、これからこの問題を検討してまいる段階にあるわけでございます。私は先ほど来申し上げておりますように、わが国の医療保険制度を建て直してまいりますためには、各制度給付内容、あるいは被保険者の負担等の面に見られるところの不均衡の是正をする。そのためには各医療保険制度総合調整なり、統合ということも根本的に再検討をしなければならない。それと同時に、一方において診療報酬体系の適正化をはかる必要がある。この両方の問題を解決しなければ、わが国の医療保険制度の安定的な長期的な発展はないと、安定はないと、こういうことを申し上げておるのでありまして、当面保険三法あるいは国保改正法案を御審議をお願いすることになっているのでありますが、引き続きこの根本問題と取り組んでまいりまして、昭和四十二年度の予算編成を目途に、根本的な制度の改正をいたしたい、こういうことを申し上げておるのでございます。
  179. 林塩

    ○林塩君 たいへん心強く思います。いろいろな問題がおありのようでございますが、看護も非常に大事な国民医療の上の大きな役目を果たさなければならない段階に来ておりますために、その意見というのがきめられますときには、ぜひ入れられていくようにしたほうが進歩するのではないかと思います。中医協の組織の問題、中に入っておられる方々、薬剤師会それから医師会、これは法律でそういうふうになっておるようでございますが、同じく専門職の団体として、そこに代表を送って、その声を聞いているということでありますが、看護のみは聞かれておりません。それでそういうことについても、将来ぜひ正しい意見を、実際に仕事をしておりまして、こうすればと考えるものの意見というのはすなおにそこに入れられていくのが向上に役立つと思うのですが、それについてはいかがでございましょうか。
  180. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この点につきましては、診療者側の方々、並びに公益委員の方々、さらに厚生省といたしましても御審議に必要なるところの資料その他の意見というものは、十分これに反映するように努力をいたしまして、看護職員の方々の御意見、御要望も十分反映するように処理してまいりたいと考えております。
  181. 林塩

    ○林塩君 もう一点お伺いしたいのでございます。  これは大きな問題ではないと思いますけれども、同じく医療点数につきまして、ただいま大臣が看護点数についても考えるとおっしゃっていただきましたので、これもぜひひとつお願い申し上げたいのは、作業療法、OTの点数化でございます。これは先ほどおっしゃいましたように、社会復帰を目ざして、いろいろなところでまあ医療の内容も非常に変わってまいりました。そうして社会復帰までを含めての、リハビリテーションまでを含めての医療だという考え方で拡大をしてまいりましたのに備えて、作業療法というものが出てまいりました。ただいまのところ、主として精神病院でそれをやっておりますが、しかし、これも点数化がありませんために、せっかくやろうとしております意欲が経済問題、人の問題、それに必要な設備の問題あたりができませんために行き悩んでいるという状態がございますが、これにつきましてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  182. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 林先生の質問の作業療法、OTの点数の問題でございますが、これにつきましては、現在の取り扱いといたしまして診療報酬表の点数、甲表の場合には作業療法は基本診療料、入院基本診療料の中に入っておる。また、乙表の場合には入院料の中に含まれているということになっておるわけでありまして、これは三十二年当時に一応取り扱いがきまっておりまして、三十六年にまたリクリエーション療法ということで、ちょうど精神科の治療指針が制定されましたおりにもその点を再確認されておるわけでございます。しかし御指摘のように、精神病院における作業療法そのものを、今後作業療法の進展にとりましてどのように評価していくかという問題は、やはり重要な問題だと私思っておりますので、精神病院の実態等をよく勘案いたしまして、診療報酬の適正化の問題の一環として将来検討いたしてまいりたいと思います。
  183. 林塩

    ○林塩君 終わります。
  184. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  185. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 速記を起こしてください。  委員外議員加藤シヅエ君から発言したい旨の申し出があります。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 御異議ないものと認め、発言を許します。加藤シヅエ君。
  187. 加藤シヅエ

    委員以外の議員(加藤シヅエ君) 私、委員外発言をお許しをいただきましてありがとうございました。  ただいま林委員から看護婦養成の問題につきまして非常に専門的な御質問、御説ございまして、私もたいへんに教えられたことがあって喜んでおります。ただ、それに対しまして厚生当局の御答弁は、ややもすれば非常に消極的で、大臣がかなり積極的におっしゃったので、林さんも喜ばれたと思いますけれども、それでもまだまだこれは消極的で、私ども委員外の者といたしましては、看護婦がいかに必要であるかということがたびたび言われておりますので、もうどうにかなっているのかしらと考えておりましたら、いまだにまだこの程度で、林さん一人で奮戦していらっしゃるというような事情であるということはたいへんな驚きであったわけでございます。厚生大臣には、どうぞこれはたいへん大事な問題でございますので、どんどんと予算の面も獲得なさって、積極的な手を打っていただきたいと思います。どんなに積極的な手を打っても三年間かからなければ一人前の看護婦はできないと林さんがおっしゃるのですから、よほど積極的に力を入れていただきたい、これはもう国民一般の要望であろうと思います。  私は、先ほどから林さんの御質問を伺っておりまして、ちょうどけさ外務委員会に出ておりまして、移住者の事業団法というのを取り扱っておりましたので、海外に技術移住者というのが今日非常に歓迎されているという、これは一つの新しい傾向でございます。で、日本といたしましては、ことしあたりからカナダに技術を持っている移住者を技術移住者として送ることができる、これは全く新しいことでございまして、カナダのように、生活程度は高い、人口は非常に希薄である、こういうところに日本から何か専門の技術を持っているというような条件で歓迎されるということは、これはたいへんな明るい見通しだと思います。しかも、いままでは全然そういうことが許されなかった医者、看護婦、こうした者も歓迎される、こういうことになりましたので、私はそのときにも、将来日本の看護婦というものをもっと養成し、この地位を高めるためにもたいへんにこれは一つの助けになるんではないかということをそのときから感じまして、たまたまこの委員会に参りましてそういう質問と合致いたしましたのです。それは日本の赤十字社看護婦が、戦前は世界的にたいへんな信用を獲得して、日本の名誉が赤十字社看護婦によって高められたというようなことを私はいろんな国際会議で聞かされまして、非常に感銘もいたし、うれしくも思いました。それほど高く評価されておった看護婦が、今日、日本はこんな状態に置かれている。ややもすれば前の伝統というようなものにとらわれてしまって、十分才能があり、生かせばどんどんりっぱな看護婦ができる素質がある日本婦人をそうした職業に向けることができない、こういうことは残念なことだと思っておりました。そこで厚生大臣に伺いたいのでございますが、先ほどから看護婦の待遇が非常に低いということで、それにはいろいろの具体的内容があるということが林委員からも御指摘があったのでございますが、一つは、この海外移住者として、たとえばカナダに日本の看護婦の資格を得た者が、さらに語学のほうの訓練を得まして——また今日は語学の訓練も非常に即席に、しかも役に立つ語学の訓練方法というのもいま試みられておりますので、そういうようなものをまぜ合わせて、日本の看護婦がカナダに移住者としてどんどん発展して出ていく、こういうことになりますと、さっそく月額三百ドルぐらいの給料がもらえる。しかも、欧米における看護婦の地位というのは、御承知のように、非常に高くて、病院などでも地位のある、責任を持った看護婦に一にらみされたらもうだれも何にもすることができない、全部看護婦の命令に服従しなければならない、それほど権威を持った看護婦さん。そういうところに、日本婦人もカナダに行けば何とかできるというようなことにいまなりつつある。そういうようなチャンスをつかんでいただきまして、養成された看護婦の中から希望する者はカナダに技術者として移住する。そして、向こうでそういう高い境遇と権威ある地位を確保する、そういうようなことがたいへんに看護婦の地位を高めるための一つの刺激になるんじゃないか。民間の看護婦の給料が安いから、国立のほうもなかなか上がらないというようなことはとんでもないことで、外国ではそんなに歓迎してくれている国があるというようなこともひとつ考えていただいたらどんなものだろうか。これは日本の看護婦の地位を高め、その給料を高める刺激としても考えていただけるんじゃないか、厚生大臣いかがでございましょうか。
  188. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 午前中以来諸先生から看護婦の不足、これに対処するための養成の問題、待遇改善の問題で御鞭撻を受けておったのでございます。そこで政府といたしましては、当面わが国の看護職員の充足確保ということに最重点を向けて承るところでございますが、ただいま加藤さんからお話がありましたように、全体の看護婦さん方に対する刺激の意味合いでも、そういう方面においでになるという方が出ることはけっこうだと、こう思っておるのであります。
  189. 小柳勇

    小柳勇君 私は変わった質問でありますが、四月一日から農林省関係で牛乳に対する補助金の法律が通るのであります。それは加工原料乳生産者補給金等暫定措置法。したがいまして、この法律が出ますというと、この法律の中には、今日まで厚生省が指導しておりました衛生関係が条文がないということで、食品としては将来どのような品質の牛乳が出てまいりましても、これを検査、監督、指導ができないというような羽目になってまいります。したがって、われわれ毎日牛乳をいただいておりますが、薄い粗末な牛乳がどんどん出てきはしないかという心配がありますので、厚生省として、この法律が出ましたあとどのような指導措置をやられようといたしておるか。また、この生産をふやすために補助金が出まして、そのことによって質が落ち、かつ厚生省の手を離れてどんとん悪質の、——悪質とは言いませんけれども、薄い牛乳が出てまいる。そうしますと、今度は外国から粉乳を買いましてこれを溶かして売ってもちっとも遜色ないような牛乳になってしまう。そうしますと逆に、せっかく生産をふやすためにつくりましたこの補助金法というものが死んでしまう。こういう結果になるのでありますが、今後の措置について大臣の御見解をお伺いいたします。
  190. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま小柳さんから御指摘になりました点は、きわめて重要な問題でございます。原料乳に回すのであるから、またそれに対する補給金等が出るのであるから、品質はどうでもいいと、こういうようなことになりますれば、保健衛生、また栄養の面からいたしまして、きわめて重大な問題でございます。  そこで厚生省といたしましては、品質のいい、生鮮ななま乳を国民に供船ができまするように、今後ともさらに一段と検査を励行する、こういうことを痛感をいたしまして、実は通牒を、三月十七日に都道府県あるいは指定都市の衛生主管部局長あてに通達を出しておるのであります。「酪農経営の安定を図ることを目的とする加工原料乳生産者補給金等暫定措置法が制定され来る四月一日から実施されることになった。需給の安定と酪農業の安定は勿論重要なことであるが、衛生面からは品質の優良な生乳の全席が肝要であるので、この際酪農業の安定対策等と併行して乳質の改善向上を図るため今後ともさく乳業者及び関係業者に対する指導の徹底と検査及び監視の強化について格段の御努力を願いたい。」このような通達を三月十七日に出しまして、御趣旨に沿うように努力をしてまいりたいと考えております。
  191. 加藤シヅエ

    委員以外の議員(加藤シヅエ君) ただいま通達をお出しになったという厚生大臣の御答弁でございますけれども、私はそれだけでは非常に不十分ではないかと思うわけでございます。それは不足払い法によりまして、酪農民が生産いたしました乳は一つのところにみんなまぜられてしまうわけでございますから、それをどうやって、行政指導をなさるといって具体的にどういうふうなことができるのでございますか。これは全くちょっと考えられないことでございます。つまり細菌数がどういうものであるかというようなことが現在どんなふうになっているかということはもう厚生当局がよく知っていらっしゃるのであって、非常な優良な、細菌数の少ない牛乳も生産されておりますけれども、また同特に、落第するような細菌数の非常に多い牛乳も生産されている。そういうようなものがとにかく不足払いによってみんなそれが採用されてしまってまぜられてしまうのですから、それを一体どこでどういうことをなさるのですか。通達くらいでもってとうてい私は乳質の確保というようなことはできないのではないか。消費者として大問題だと思って心配しております。その点をどういうふうに具体的になさるのか知らしていただきたいと思います。
  192. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お尋ねのように、わが国の生乳は今日の状態におきましても世界の文化国の中では非常に品質の悪いものでございまして、多くの文化国家におきましては、一CC中の最大細菌許容量は二十万個までであります。多くの国においては十万個以内というのが常識でございますが、わが国では法令上四百万個まで許さざるを得ないという現状でございまして、しかもしぼった乳の四五%しかこの基準に合わない、残りはただいまお尋ねのような二等牛乳として、バター、チーズ等の原料に回さざるを得ない、かような現状であるわけです。その際、質の悪い牛乳に対して補給金が出るおそれがあるというような傾向が今度の法律改正によって生じておるということは御指摘のとおりでございまして、私どもとしてもその点を心配いたし、先ほど大臣からお答え申し上げたような措置をとったわけでございますが、御指摘のとおり、この通達だけでは必ずしも心配が解消せられるわけではないわけであります。もちろんただいまでも優良な牛乳、細菌数三万以下というような優良な牛乳に対しましては、消毒上特段の措置が講ぜられることにはなっておりますけれども、その程度によって優良な牛乳の奨励が行なわれておるとは言いがたいのでありまして、全般的にわが国の搾乳業者の環境衛生上のレベルアップということが前々から非常に必要なものとされ、私どもとしても指導の徹底を期するとともに、牛乳を集めて加工する業者がみずから従来は個々の業者に対してかなり指導をしておって、役所のやることを補ってくれておったわけでございますが、この点これにかわるものとして、私どもは何らかの措置を考えざるを得ないということで、その指導としましては、搾乳業者とか、プラントとか、あるいは獣医師会あるいは県の役人というようなものが集まって、何か特殊な懇談会のようなものをつくり、乳質向上の指導の何か講習会というか、話し合いの会を開くというような措置を講じてもらいたいということで、いま具体的な案を検討中でございます。これによりましてもその完全を徹底できるかどうかわかりませんけれども、ただ今般の法律改正が直ちに質の悪いもののみ価格差補給が行なわれるかどうかという断定もできないわけでございますが、今後の推移を十分見ながら私どもとしても牛乳が最近非常に飲用され、国民の主食的地位を占めてくるにつれて、衛生面でも特段の何らかの措置を考えざるを得ないということで検討を進めておるところでございます。
  193. 小柳勇

    小柳勇君 いま聞きますと、私ども想像しておった以上に厚生省としても重大問題視しておられるのでありますが、内閣として、大臣から少し農林大臣にも話していただきまして、立法措置をしていただきまして、通達ではいかんともしがたいような情勢ではないかというような強い意見をさっき関係者の集まりで加藤さんが聞いてきたのでありますが、早急に立法措置をしていただきまして、業者団体の指導は指導として、政府政府として国の牛乳をよくする方向に、私どもが安心して良質の牛乳が飲める方向に立法措置をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  194. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはきわめて国民の保健衛生また栄養の面からいたしまして重大な問題でございます。外国等におきましては基準法のようなものがあるやに伺っておるのでありますが、さっそく農林大臣その他とも話し合いをいたしまして、政府全体としてこの問題を取り上げて検討したいと存じます。
  195. 加藤シヅエ

    委員以外の議員(加藤シヅエ君) ぜひそういうことにしていただきたいと思いますけれども、これはどうもお金をもらうということになりますと、もうすでに四月一日から不足払いでお金が出るということになりますと、どうしてもお金がほしいというふうに流れるという、その傾向というものはこれはたいへんな大きな問題だと思いますので、ちょっとやそっとのことで——そこへ流れていってしまう。たださえ国際的な基準から見てあまり良質でない細菌数の多い牛乳を日本でつくっている。それがもっとさらに低下してしまう。これは病人だの子供にとってはたいへんなことなんでございます。それで、牛乳に何か事故が起こりますと、先年、粉ミルクの中にああいうような事件が起こって赤ん坊が死んだりして、もちろんそれは業者の責任でございますけれども、厚生当局としてはこれはもうたいへんな責任でございまして、いま目の前にまた厚生大臣が大きな責任を負わなければならないような事態が起こってはこれはたいへんなことだと私思います。いま農林当局のほうでもいろいろこういう法律をお出しになった手前、考えていらっしゃるんだろうと思いますけれども、幾ら農林当局が知恵をおしぼりになりましても、結局どこで検査するかといえば、家畜保健衛生所というところでもって検査する以外に方法はない。牛が検査されるところで牛乳が検査されるなんてとんでもない話でございまして、これは通達だの、これから相談するとおっしゃったのではたいへんにもうすでに手おくれでございますけれども、それでもまあいまからでもどうぞひとつ粗悪な牛乳が出なくて、牛乳全体の信用が落ちるというようなことはこれはゆゆしき大事、生命に関する問題であるということを大臣も十分御承知だと思いますので、非常にはっきりした強硬な手を打っていただかなくちゃならない。それについてもう少しはっきりした御見解を述べていただきたいと思います。
  196. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 重ねて申し上げますが、この問題は非常に重大な問題でございます。私は、厚生行政の責任者といたしまして、今回の問題を非常に重視いたしておるのであります。先ほど来、環境衛生局長から申し上げましたように、日本の牛乳の質は欧米先進国に比べて品質の低いものであるということをかねがね憂慮いたしておったのでありますが、今回の措置によりましてさらに心配な事態が発生するようなことがあってはこれはゆゆしき問題であるのであります。さような観点から、さっそくこの問題につきまして農林大臣その他と十分協議いたしまして、政府全体としてこれに対処する方策を早急に講じたい、かように存じます。
  197. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 質疑の途中でございますが、暫時休憩いたします。    午後五時十分休憩      —————・—————    午後六時五十四分開会
  198. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) これより予算委員会第四分科会を再開いたします。 休憩前に引き続き、昭和四十一年度総予算厚生省所管を議題とし質疑を行ないます。
  199. 小林武

    小林武君 前に、一般の場合に性病の問題がだいぶ出ました。私は、いろいろそのときに文教問題ともからんでの話でありましたので、たいへんまあ興味深いと言えばおかしいですけれども、文教と厚生との関係というものはなかなか深いものであって、ある意味では、文教の非常に落ち込んでいるところ、文教で一番見落としやすいところを厚生省が担当しておるという意味で、たいへんこれは重大な問題がたくさんあるということを感じました。そこで、私はこの際に性病の問題一つ取り扱っても、文部省の純潔教育というのはどういうことを言うのか、実は若干疑問を持っているのです。性病というのはおそろしいものだ、おそろしいものだというようなことを言って、そうして性に触れること、性についていろいろなことを知るというようなことも何かいけないような恐怖心を持たせるような純潔教育になっちまうとこれは困るし、といって、これはなかなかこの面の教育をやるとなると具体的にはなかなかむずかしい問題だ、したがって、小柳委員もその際申しておりましたように、学校の先生の中には、そういう問題から逃げたがる人がある、効果があまりあがらないということでありましたが、まあそういういろんな問題があって、厚生省の問題と文部省の問題には非常に相交わる点があると考えておりますが、そういう角度からいきますと、この間も大臣にお尋ねしたのですが、やっぱりあの性病にかからないようにする、かかったら早くなおすとか、あるいはかかっているか、かかっていないかということを調べるとかという問題、非常に大事な問題です。しかし、性病を生むような環境を一方にはつくられているのを見のがしておいて、そうして、やっぱりあらわれた病気の面だけを何とかいろいろ対策を講ずるというようなことは若干やっぱり不十分ではないかと、こう考えたわけです。そういう点から実は、たとえば日本性病対策というようなものが青少年不良化の問題とからまったりあるいは性に対す日本人の考え方がどうなければならぬかという問題にもからまってくるということになりますというと、アメリカの軍人を休息させるというようなことについてもう少し日本政府ははっきりした考えを持ったらいいじゃないか。何だか話を聞くと、どこかの国で非常にそういうことについて心配をしてはねつけたものだから、行く先がないので、日本を選んだということをぼくは聞いているわけです。そういうことで受け入れたのでは私はたいへんだと思う。これはやはり厚生省としてもそういう点について大臣としてのお考えがあるだろうと思うから、まあお伺いもしたいし、実際のお仕事に携っている方々もやはりそういう問題について関心を持っていただきたいというような気がするのです。これはおとな同士の話ですから、端的に申し上げますというと、日本へ来て、わざわざ景色がいいから休息するなんてそんなことはうその皮だと思うのですよ。それは何のために来るかと言ったらば、必ず私はそこには売春とつながる問題がある。この間の何か新聞記事を見ましても、大体何か受け入れの宿舎みたいなところにはだれも泊まらない。一人か二人だろう。あとの者はみんなホテルを予約していなくなるのだということを言っている。そうすると、一体売春問題とこれを切り離して考えようというのは無理じゃないか。それは十分何か対策を講ぜられてあるし、アメリカのほうでも対策を講じられておるということを言われておりましたけれども、そういうことになると一体この性病対策というのは、あるいは教育とかかわり合いを持つ性病対策ということになると、どうやったらかからないか。そういうものに接しても病気にかからないようにするにはどうしたらいいのかというようなことも学校で教えなきゃならぬというようなことになると、重大なことですから、私はそういう意味で、そういう問題は一体どう政治的にしたらいいのかということを大臣にひとつお伺いしておきたい。
  200. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 性病だけに限りませんが、すべての疾病は、病気にかかってからこれを治療するとか、手当てをするとかいうことではおそいわけでございまして、予防ということがまず国民の健康を保持する上からいたしまして大切な問題であると思うのであります。またその予防の前提として、疾病に対する正しい知識、そういうことを持つことが私は大切である、かりうに考えておるのでございます。私は性病につきましても、性病予防の根本は、性病に対するところの正しい知識を持つということ、そういうことがまず大切な問題ではなかろうか、かように考えておるのであります。小林委員からは、それと同時に、性病が起こらぬような環境を整備することが必要である、こういう御指摘がございました。私もそのことにつきましては全く同感であるのであります。ただ米軍が日本に駐留をし、また米国の艦船や飛行機がそれぞれの港なりあるいは基地の飛行場に参りますことは、これは日米安保条約に基づく問題であり、基地の使用等は基地協定によってきめられておる問題でございます。そこで私どもは、性病だとか伝染病の外部からの侵入という、その面から考えますれば、私はそういう外国の兵隊さんや何かがたくさん日本に入ってくるということは、これは必ずしも歓迎すべきことではないと思うのであります。しかし、日本の防衛という問題からいたしまして、日米安保体制というものがここに現存いたしておるのであります。これにつきましては社会党さんとは考え方を異にいたすのでございますが、私どもは、この日米安保体制によって日本の平和と安全を確保してまいるという立場の上に立っているのであります。そういたしますと、この前提の上に立ちます場合に、これに関連して性病対策をどうするか、こういう現実の問題にぶつかるのでございます。そこで、昭和二十七年当時性病予病に関しますところの、米軍側といろいろ協議をいたしました結果、米軍側と日本政府並びに都道府県知事は緊密な連携、情報の交換をいたしまして、そうして性病の予防、これを完全に行なうように措置してまいる、こういう申し合わせをいたしているのでございます。また、性病予防法にございますところの第十条、第十二条の規定につきましては、これは日本国民であると外国人であるとをそれによって区別されるものではございません。すべての人にこれは適用されるということでございますが、わがほうといたしましては、もしはっきりとアメリカの兵隊が性病を持っておったとか、あるいはそれから感染したというようなことが医師の診断によって確認されました場合には、直ちにこれを米側に通報をいたしまして、そうして米側としてこれを措置する、また、アメリカ軍におきましては、月に一回なり二回は身体検査をやり、性病に対する診断をやっていると聞いておりますが、そこで日本の女性ともし接触いたしまして、そうしてはっきりそれから感染したというようなことになりますれば、その情報を日本側に通報を受けて、そうして直ちにそれに対する適切な対策をとる、こういうようなことに相なっておりまして、今日までそういう向こうさんから通報を受けたというような事例もあるのでございます。私どもは性病ということを、繰り返して申し上げますが、性病予防あるいは伝染病等の外国からの侵入、これを防遏するという、そういう観点に立ちますならば、これはたくさんの外国の軍人等が入ってまいりますことは、私は小林さんの指摘する好ましからざる環境がそこに生まれるということにつきましては、同感ではございますが、一面わが国は、安保体制の上に国の防衛をやっている、したがって、米軍の兵隊等が日本に参るということは、この条約によって認められている、こういう前提、こういう条件のもとにおきまして厚生行政としてまいります場合は、私がいままで御説明申し上げたような、そういう対策を講じて性病の予防に全力を尽くしてまいる、こういうことに相なるのでございます。
  201. 小林武

    小林武君 いま安保条約の問題でどうこうという議論はひとつ抜きにいたしまして、いろいろな病気、熱病であるとか、あるいは、その他の病気が日本に入ってくると、このことについては防疫の体制をとっていくということ、これはもう当然です。これはもう厚生省の非常な努力でそういうことは防がれておる。ただ日本に売春防止法というやつがある。そこで、幾らやっても売春防止法という一つの法律の問題は残るわけです。これはほかの病気と違いまして、日本の婦人と接触するということになるわけですから、そこで当然そこには環境のいろいろな問題が起こってくるわけです。そのこと自体によって子供の教育にも影響するでしょう。そういうこと等をいろいろ考えますと、やはり私は、これは安保条約の問題とは別個の問題じゃないかと、そのことだけは断わり得る問題ではないかと、一方においては、そういう法律が存在して、さらに今度は野党全体の空気としてはもっと強い法律にしようじゃないかというような考え方もあるらしい。それもけっこうであるけれども、一方においてそういう環境をつくって、そういう環境にいろいろ巻き込まれるところの青少年もできるだろうし、青少年よりかもなお悪いおとなのほうが巻き込まれるというようなことが出てくる。そうしますと、私はほんとうの厚生省の行政というものはできないんじゃないか、その面のですよ。それからまた、教育の面から文部大臣も大いに力み返って、とにかく純潔教育、純潔教育をやりましてというようなことを言っても、これは違うんですよ。いまのようなことを認めてやるというのだったら、とにかく売春の問題なんというのは問題ないのです。売春の問題が起こったら、どういうふうにして性病にかからないように身を守るかというその技術のほうを教えたほうがいいことになるということになったら私はたいへんな問題だと思う。まあそういう点はこれは大臣、ここで私とあなたとやって結着をつけようなんということもできないけれども、これはやはり政府として青少年問題と取り組んで、そうして今度は青少年局というものができて、それからこれからもまたお尋ねをしたいと思いますが、少年の不良化の問題もある、これらのことを考えますというと、これはこれらの関連を十分にお考えになってやはり政府としてその対策を立てるべきだと思うんです。私は、その面のあれはやはりお断わりしていいんじゃないか。これはやはり何といったってそういうことのために来るわけですから、これはもうそんな日本の景色を観賞して疲れを休めるなんというものではないということだけは明らかなんです。その対象は日本の婦人であるということになりますから。それを私は、いまあなたからこうやりますという御答弁はできないだろうと思いますけれども、これは考えるだけの価値のあることだというくらいのことは、ほんとうにこの厚生省の行政を預かる大臣としてはおっしゃっていいんだと思うのですが、どうでしょう。
  202. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のとおり、米軍がわが国に寄港すると、参りますことをこれは拒否することができないのであります。ただ小林さんの御指摘になりましたように、日本には売春防止法がある。問題は、この売春防止法に基づいて、日本人たると外国人たるとを問わず、これは売春は禁じられているわけでございます。私は小林さんから、この売春防止法に基づいて厳正に取り締まりをせよと、こういう御鞭撻を受けたものと私了承をいたすのでありまして、こういう面につきましては、今後におきまして、政府は全体としてこの女性の人格の尊厳を冒涜するような売春行為、またそれを犯すような行為、こういうものが起こらないようにさらに特段の努力を私、性病予防の面からも特に力を入れるようにしてまいりたいと考えております。
  203. 小林武

    小林武君 まあ売春の話はここらでやめたいのですが、最後にやはりもう一言申しておきますというと、私の知り合いに女医さんがいるのです。その女医さんはこのごろ性病が特に若い層に非常に出ているという話をされて、こうなったら、やはり性病からほんとうに守るために、また性病にひっかかったら治療するということをあれするために、いろいろ対策もあるが、赤線地域というのを復活したらどうだろうというまじめな考え方なんですね。まじめに言うことは、そのことのよしあしは別として、そうでもしなければこのことは将来どうなるだろうということを言うのです。私は、それは赤線はおかしいわという話になって、いろいろ議論したのですけれども、というのは、もう若い層はてんでそのことに知識もないということもありましょうし、まあおそれを知らないといいますか、その女医さんの話だというと、そういうことを商売になさっている方のほうが、からだが資本ですからねと言って、たいへん治療には熱心だそうですわ。ところが、からだが資本でないところの連中はきわまれり。ある、地域は申しませんけれども、そこらになると、ちょっとコーヒー飲みに行ってくるわという程度のあれで行く若い衆が相当あるということを聞いておる。しかし、その原因がやはりアメリカの兵隊が来たからなんという、そういう妙な論理の運び方はしませんけれども、やはり日本の国にそういうことに対するかなりもっとまじめな考え方が私は出てきているのじゃないか。清潔な気風というようなものが出てきているのじゃないかということを——厚生省も非常に御努力なさっていると思うのですよ。それからまた、文部省もいまやっきになって純潔教育純潔教育と、こう言っておる。私はそういう効果をつくるためにも、兵隊が来ることはまあ厚生大臣としてはそれはとめるわけにはいかぬということはあれだけれども、そういう女性を日本が提供すると言ったら悪いけれども、そういう形になるようなやり方だけはぼくはお断わりしたって、これは安保条約違反にならないと思うのですがね。安保条約のどこかに女性提供のあれがあるわけでもないでしょうし、わが国はりっぱな近代国家であって、その中にりっぱな売春防止法なる法律があるわけでありますから、私も法律をうんときつくするということもけっこうだと思いますけれども、それよりかもっと大事なのは、ぼくはそういうものに対する、もっと何といいますか、警戒心とか、もっときれいな感じを持てるようなぐあいにしたほうがいいのじゃないかと実は思うのですよ。そういう角度からひとつそういう問題は、来たらとにかく何をやるかということはわかっているのですから、その面のことについてお断わりする。私のほうでは接しても決して病毒は置いていきません、そんなことの保証なら、私は売春防止法をやめて、政府はこれから赤線復活して、なるたけ一般の御婦人に御迷惑のかからぬようにということをやったほうがいいくらいだと思う。そういうことには鈴木厚生大臣の御答弁を聞いていると、きわめてまじめで、私たちもその点は好感持てるのですよ。売春防止法に対しては私は真剣に取り組みたいというお話ですから、これはもう当然だと、そうあってしかるべきだと、そういう御態度であれば、ひとつ責任の立場でちょっと言いにくいかもしらぬけれども、何も入るのを拒否するということを私は要求しているわけじゃない。その面だけはお断わりするような、そういうあれはやはりできないのかということを申し上げているのですから、まあ返事しにくければしなくてもけっこうですが……。
  204. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私と小林さんとの間には、だんだんお話を伺っておりまして、少しの意見の隔たりもないように思うのでございます。性病予防、また売春というような面からいたしまして、そういう好ましからざる環境が生まれるというようなことは、私の厚生行政を預かる立場からいたしまして歓迎をいたしていない。しかし、それはやむを得ない安保体制ということでまいるわけでございますが、これに対しましては、われわれは、小林さんが御指摘になるように、何か売春の面を便宜をはかっておるようにちょっと感ずるのでありますけれども政府としては、さようなことは絶対にいたしていないのでございまして、やはり日本国民に対しましても、外国人に対しましても、日本の女性の尊厳というようなことからいたしましても、売春は厳にこれを禁止また取り締まりをすると、こういうたてまえには変わりはないのでございまして、また、もし不心得な者がそこにありましてもその病気が蔓延をしないように、また、十分な対策を講ずると、こういうことを申し上げておるのでありまして、小林さんとの間には少しの私は意見の隔たりはない、かように理解しておるのでありまして、御指摘のように、今後日本の女性がそういう不名誉な行為におちいらないように、また、そして性病等も外国人によって国内にそれが流布、蔓延をしないように十分政府としても最善の努力をしてまいりたいと考えるわけであります。
  205. 小林武

    小林武君 それから、先ほど来林さんからたいへん行き届いたいろいろな面についてのお話がございましたが、私はその問題に触れるといっても、ほんの一部分でありますが、私は労働組合の経験から、やっぱり看護婦さんというものを天職であるとかなんとかいうことを強調するより、もっと近代的な労働者としての扱いというものをしたらいいじゃないかということを考えております。そのほうがもっと看護婦さんをたくさん募集することもできるだろうし、またとどまっていただくこともできるんじゃないか、こう思うんです。  一つ例を述べますというと、私はいまのような勤務状態、これはちょっと学校の特殊教育なんかに携わっている寮母さんという形があるんですね。この人たちについて言うと、大体結婚できないということに私はなるんじゃないかと思うんです。しようとしたってできない。なぜならば、勤務が夜間、一日中なんです。結婚して夜帰らないなんという奥さん持っておったらこの結婚満足にいくはずはない。そうすると、これは仕事としてはきわめて重要な仕事をしていながら、永続性がないということになって、人を求めるのにこれは困難が出てくる。これはどうも間違っておったらひとつ御指摘をそれぞれしていただきたいんですが看護婦さんもちょうど適齢期の方が大体一人前になって出てこられる。そうすると、それらの人たちかいまのような病院の体制では——私がかなり長く通っておった大きな病院の状態を見ても、一番労働条件がいいようなところを見ても、これはなかなか家庭生活というのはだいぶこれは問題があるんじゃないかということを考えるんですが、この点についてどうなんでしょう。厚生省としては、そういう面の対策というか、看護婦の職業というものに対する指導というかをお立てになったことがあるんですか。
  206. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 看護婦さんの仕事は、非常に御苦労の多い、また特殊な勤務でございます。また、国民医療に果たしておりまする役割りもきわめて重大なお仕事をされているのであります。そこで、私ども今日看護婦さんの定員の確保が十分でないために、非常に労働の面につきましても御無理をかけているということにつきまして責任を痛感をいたしているのであります。先般人事院におきまして判定がなされました。特に看護婦さんの夜間勤務の労働条件の改善につきましての判定があったわけでございます。この判定の趣旨を十分体しまして、これに改善をはかりますために努力をいたしているところでございます。従来二交代制であったものをできるだけこれを三交代制に勤務体制を編成がえをするとか、また、直ちに三交代制にできないものは、変則二交代制にいたしまして、できるだけ夜間勤務の重荷を緩和するようにつとめているところでございます。また、一面その根本は定員の確保が困難だというところに原因があるわけでありますので、定員の養成につきましては、きょう小柳さんや、林さんにお答えいたしましたように、できるだけの努力をやり、早く定員の確保をはかるようにということで努力を重ねているところでございます。また、給与の改善の問題につきましても、夜間勤務に対しましては、特別な手当を出すようにいたしておりますし、看護婦さんの待遇につきましては、一般公務員のベースアップよりも高い率の昇給をお願いをいたしたい。また、特別な看護につきましては、調整号俸の措置もとりたいということで、人事院のほうともせっかく話し合いをいたしている、こういうことであるわけであります。この人事院の判定に対する措置につきましては、事務当局からさらに具体的に御説明を申し上げたいと存じます。
  207. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の需給問題が困難をしております一つに、看護婦の勤務形態というものがあるということは、これは確かなことであろうと思います。現在の若い女性が普通のオフヒスに一日昼間働いて、夜は自由に楽しめる。しかし、看護婦さんになりますと、夜勤が非常に多いということが看護業務に魅力を失なわれているということの大きな原因となっていると思います。いま大臣の申されました全医労の行政措置要求に対する判定といたしまして、夜勤の日数を減らすように、また、看護単位を患者四十名以下にして二名以上の夜勤にして、いわゆる一人夜勤というものを減らすようにということ、また、産後一年間は夜勤を禁止するように、また、休憩、休息時間を明示するようにというような要求があったわけでございますが、それに対しては、それぞれ若干ずつの進歩をさせるような人事院判定が出ております。夜勤を月六日以内という要求に対して、少なくとも約八日を一応の目標として計画的にそれを近寄せる、また、一人夜勤はできるだけ減らすようにせよ、もしも二人夜勤を必要とする場合には、他に及ぼす影響等も考慮して、計画的に一人夜勤を減らしていくようにしたいということと、また、産後一年間の夜勤禁止はおおむね六ヵ月程度を標準としてそれに努力するようにし、また、休憩、休息時間の明示につきましては、これは一人一人に明示することがなかなか困難でありますし、また、一人夜勤というような場合に、休息時間を与えようとしても、現実に与えることができないという事実上の困難もありますので、それらの点は実情に応じて改善するという判定でございました。これにつきまして、私どももできるだけその線に沿って現在改善しようといたしております。しかし、何ぶんにも夜勤を減らすということは、夜勤の看護婦全体として一人当たりの夜勤回数を減らすということでありますし、また、現在一人夜勤をしているところを二人にふやせ、二人夜勤にしろということは、逆に夜勤の回数をふやせという、ふやさなければやっていけないという状態にもなりますし、それぞれ矛盾撞着する性質を持っております。また一方、夜勤というものの、病院は二十四時間勤務でございますので、どこかでだれかがその時間に割り振りをされなければならない、また、仕事の量というものはある程度患者数によってきまることでございまして、夜勤の回数をある程度減らすことを人数の増でまかなうということは確かに不合理な点もございます。そのような点で、現在は夜勤の問題につきましては、一応私どもは、夜勤の勤務環境をできるだけ整備し、夜勤を能率的にやれるように、また、夜勤が快的にやれるように、また、勤務中のいろいろな休息、たとえばお茶を飲むとか、かりに体を休めるというような、そういうような設備の改善をはかるというような方向で現在努力をいたしております。また、産後の夜勤の禁止につきましては、六カ月間全面的に夜勤を禁止するということはなかなか困難でございますので、幸い、たとえば病院におきましては外来勤務であるとか、手術室勤務であるとか、あるいは中央材料室勤務であるとかいうように、夜勤のない勤務個所がありますので、そういうところにできるだけ振り向けるという方法でこれを解決してまいりたい、また、休憩、休息時間につきましては、これは休憩といいますのは、実は八時間の勤務時間中、四時間について三十分休憩を与えることであり、休息時間といいますのは、これは勤務中の休息であります。一人夜勤の場合は、先ほど申しましたように、事実上休息をいたしますと、その時間だけ完全に看護が空白になることもございましてなかなか困難である、しかし、できるだけ休息、休憩という制度につきましては、これを実施するように指導してまいるというようなことで、看護婦という業務に伴いまして最もいやがられておりまして、また、事実上看護婦の志望あるいは魅力を減らしている夜勤業務というようなものについては、できるだけ量的に、あるいは質的な改善をはかってまいりたいと存じております。
  208. 小林武

    小林武君 夜間勤務がやっぱり問題ですから、それに対するいろいろな対策をお考えになっている点はこれは当然だと思いますし、何といっても、やはり看護婦の労働条件というのをもっとよくしなければ、私はやはりこの仕事に入ってくれる人たちは、何といっても、どのような手当てを講じても望みどおりの結果は得られないと思うのです。重症心身障害児童の看護に当たるような人たちでも、たとえば秋田県から若い娘さんが来たというようなことをテレビや何かでのべつやっているような気がするのです。毎年同じような時期になるとそんな話が出てくる、私はこれは何かある特殊な、特殊なと申しますか、非常に心がけがいいというか、そういう女性だけにたよっているということでは問題なんです。やはりほんとうにこの自分の仕事の尊さとか、意義というものを確認するのには、やはりそれに相応の待遇なり何なりがないと、労働条件がないというと、これは集まってこないものです。幾らきれいごとを言ってもだめなんです。私は、まず国立その他政府でやれるようなところから徹底的にそういうものの改善策をやっていただく、それにだんだん見ならっていくというやり方をしてもらいたいのです。  それから、もう一つは、養成の問題ですけれども、私は、実は高等学校の看護科というものについては、あまりよく調べもしないで言うのは僣越でございますけれども、一体これはほんとうに期待するほどのあれが出るのかどうかということが一つ心配なんです。それともう一つは、それらの人たちがほんとうに仕事に携わってくれるかという問題も一つある。だからあまりこれにこう、何というか、大きな期待をかけられるということはどうか、将来の需給計画を立てられる上において誤算が生ずるのではないか、これは養護課教諭の問題でもそうです。相当たくさん養成はされているようですけれども、実際職場に来てくれる人というのはほんのわずかです。何か二、三年前ですけれども、文部省が一生懸命やって、馬力かけてやっても、いまのままでずっと進んでいけば、まず充足されるには百年かかるという計算が出たのです。そんなことになるようでは、なかなか問題なんで、ですから養成の問題でも、やはりいろいろお考えになってくださっておるが、とにかく待遇がこれに伴うとか、技術がこれに伴う、特に看護婦の場合には、私は、これから高度な技術を身につける人たちをうんと養成しないというと、いわゆる対お医者さんと、対患者というものの立場において、私は、誇りを持つような仕事にはなかなかならないような気がするのです。しろうと考えですが。でありますから、そういう点にも特段のひとつ配慮が加わらないというと、ただ数だけ合わせるということではどうかという気がするのです。この点についてどうでしょうか、担当の局長のお考えを伺いたい。
  209. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) まず、第一点の、養成に関しまして、職業高校の保健看護学科の卒業生にそれほど期待できるかどうかという問題でございます。まだ実際に卒業生が出ておりませんために、どのくらいの歩どまりといいますか、看護の畑に入ってくる人の割合というものはまだ予想はつきませんけれども、私も実は小林先生と同じように、全面的にこの卒業生が看護婦になるという期待は持てないと思っております。しかし、非常に少ない時代でございますので、できるだけ看護婦になっていただくようにお願いもし、また勧奨もしたいと思っております。しかし、現在はある意味では変則ではございますけれども、将来はできればやはり正規の学校教育という課程で看護婦を養成したいという気持ちは先ほど来申し上げたとおりでございます。また一方、看護婦の質という問題になりますと、これも先ほど林先生からもお話がありましたように、看護婦というものは文明諸国ではかなり高い職業でございます。日本の准看というような程度ではとても外国と比較できない。したがって、准看の数がふえたからといって、看護婦の充足成れりと考えてはならぬというお話がございました。まことにごもっともな御意見であると思います。しかし、同時に、現在では看護婦というものと准看というものとの絶対的な数から言いましても、とても准看を無視するわけにはきません。また一方、先ほどもお話がありましたけれども、看護婦が非常にいろいろな業務をやってまいりますし、医師の診療の補助としてのいろいろな仕事が増加しておりますと同時に、昔から惰性的に看護婦がやっておりました業務の中にも、本来看護婦でなくてもいい業務がたくさんあるはずでございます。薬を薬局等に運んだり、あるいはめしを運んだりというような雑務まで看護婦がやっておる面が多々ございます。したがって、私はやはり将来は、高級な知識経験と技能を持つ看護婦、それから補助的な要するに准看護婦、さらに雑役的な看護助手というものが十分に組み合わされて、そこに最も能率的なチームというものができて、看護というものをチームとしてやっていくということが必要であるわけでございまして、現に看護の世界ではそういう流れが非常に強い勢いでできておりますので、そのようないろいろな程度の人々の割合というものも、現実等と考えあわせながら、将来やはり最も合理的な看護力の編成ということを考えていきたいと思います。
  210. 小林武

    小林武君 最後に、看護婦の問題でいまのような考え方は私は賛成です。いわゆるほんとうに、何といいますか、われわれが考える看護婦というのは、高度な技術を有する人、そういう人を言っているのですから、そういう方にはうんとやはり立場を高めていくような技術を身につけさせるべきだと思うのです。いままででもたいへんりっぱな方が出られた。私は、あるお医者さんが、熟練した非常にりっぱな技術を持たれた看護婦さんに頭が上がるようになるのには二十年かかるというようなことをお医者さんが言っておったのを聞いたことがあるのです。そうして二十年たってようやく看護婦さんの指導ができるようになったら、老眼かけなければならなくなったというお話をしているお医者さんがありますが、それはお医者さんの特例かもしれませんけれども、そういうやはりりっぱな方が出ないというと、看護婦さんの地位というものも高まらないわけでありますから、そういう意味で、できればやはりそういうものの養成に重点を置くべきでないか。そして、いまはどうなんですか。各種学校のようなことになっているらしいのですけれども、私は各種学校というのはちょっとおかしいのじゃないかと思うのですよ。各種学校程度で置くということはどうかと思う。この点なんかもやはりふんぎりをつけてやられる時期じゃないかというふうに、学校制度の面から考えると、そんな気がするわけです。これは特に御答弁をいただかなくてもけっこうでございますが、意見として申し上げておきます。  それから重症児対策というものは、大臣どうなんですか。一万七千名ある、この一万七千名のうち、一万四千名を収容しなければならぬ、これの親というものはぼくらが見ていても、これはもうほんとうに、相当裕福な人でも閉口するのですね。これはどうなんでしょうか。この問題がいま非常に取り上げられてきた。私は、まあ取り上げられてきたからこれでわいわい騒ぐというのではなしに、これを解決するとしたら、年次計画のようなものがあるのかどうか。それからまた、これが年次計画でやるにしろ、一挙にやるにしろ、これは一体総額としてどのくらいの金があればこれができるのか、ちょっとその点を伺いたい。
  211. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま御指摘がありましたように、一万七千名ほどの重症心身障害児、そうして施設にぜひ収容して療育しなければならぬ子供さんが一万四千数百名おるわけであります。そこで、私どもは、少なくともその三分の一、五千人程度のお子さんを常時収容できまするように五千ベッドを整備をしたい。ことし第一年度といたしまして五百二十ベッドを整備することにいたしたのでございますが、今後年次計画をもちまして五年計画ぐらいでこの目標を達成いたしたい。大体昭和四十一年度の経費、これに対する予算は一ベッド百万円程度に見ておるわけでございます。それだけのお子さんがおるのであれば、もっともっと昭和四十一年度に大きな予算を計上して収容施設整備すべきではないかという御指摘があろうかと思うのでありますが、このお子さん方をお世話をいたしますためには相当の看護職員が要るのでございます。四十ベッドを一単位に考えておりますが、それに対しまして、お医者さんが二人、看護婦さんが二十名、その他の医学療法士でありますとか、そういうような方々等を加えますと、四十人の子供さんを世話するのに三十名の医師及び看護職員が要る。しかも、相当専門的な技術を必要とするということでございまして、今回は全国で十一ヵ所にこれをつくりまして、なおこれらの施設にはそういう技術者の養成機関を付置いたしまして、看護職員のほうの養成をしながら年次計画のほうで整備をしてまいりたい、このように考えておるわけであります。  なお、収容についてはそういうことでございますので、在宅で療育をするお子さんもあるわけでありまして、そういう面につきましては、保健所あるいは児童福祉司というような人たちを講習あるいは研修等をいたしまして、そうして在宅の指導もやる。またパンフレット、リーフレットのようなものも配りまして、そうして十分在宅の指導もやってまいる。また、昭和四十年度まで重度精薄児のみに扶養手当を給付いたしておったのでありますが、これを重度の肢体不自由児、さらにダブルの重症心身障害児まで範囲を広げまして介護費の一部として扶養手当も支給する、こういうようなこともいたしておるのでございます。私は、今日まで非常にお気の毒なこういうお子さんをかかえた御家庭の方々の御苦労を見るにつけましても、早急にこの重症心身障害児の対策を政府としては急がなければならない、かように考えておるのであります。
  212. 小林武

    小林武君 一万七千名という数、これは、何といいますか、原因の除去によって減りつつあるのかどうか、あるいは、これはふえる傾向にあるのかどうか、これはどういうことですか。
  213. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 重症心身障害児につきましての調査は、昨年行ないました調査が初めてでございますので、これにつきましてのふえたか減ったかという問題につきましては、まだ解答が出ないような状況でございます。ただ原因につきましては、四分の一程度原因についてわかりつつありますし、原因がわかりますと、その予防対策を講ずればいいわけでございますが、主として妊娠前後の問題あるいは出産前後、そういったことが原因になっておりますが、最近におきましては御存じのように、未熟児という、月足らずあるいは非常に体重が軽い子供が生まれてまいりますが、そういう未熟児の対策が進んでまいりまして、従来ならば生まれて間もなく死んだ子供でございますけれども、最近ではそういう子供さんが生きることができる、こういうような対策になってまいりまして、そういう未熟児の対策が進むにつれまして、かえって心身障害児が増加するのではないか、こういうことも言われております。海外の状況なんかを聞きますと減りはしない、むしろふえるのじゃないかということも言われております。正確なことはわかっておりません。
  214. 小林武

    小林武君 質問終わります。
  215. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  216. 鬼木勝利

    主査鬼木勝利君) 速記を起こして。  以上をもちまして厚生省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十三分散会